1 名前:132人目の素数さん [2006/11/23(木) 21:57:04 ] Kummer ◆g2BU0D6YN2氏が代数的整数論を語るスレです。 前スレ science4.2ch.net/test/read.cgi/math/1141019088/
401 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 04:46:16 ] 判別式が平方数でない2次形式 (a, b, c) (この記法に関しては >>328 を参照) 全体の集合を Ω とする。 ここで平方数とは集合 { x^2 ; x ∈ Z } = { 0, 1, 4, 9, ... } の元のことである。 したがって (a, b, c) ∈ Ω なら b^2 - 4ac ≠ 0 であり、 ac ≠ 0 である。 (a, b, c) ∈ Ω と σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) に対して、 (a, b, c)σ = (k, l, m) と定義する。 ここで、f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 とおいたとき、 ku^2 + luv + mv^2 = f(pu + qv, ru + sv) である。 即ち k = ap^2 + bpr + cr^2 l = 2apq + b(ps + qr) + 2crs m = aq^2 + bqs + cs^2 である(>>280 )。
402 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 05:03:40 ] 命題 >>401 の記法で f = (a, b, c) ∈ Ω、σ ∈ SL_2(Z)、τ ∈ SL_2(Z) に対して、 (fσ)τ = f(στ) である。 証明 2次形式 f = (a, b, c) に対称行列 M = (a, b/2)/(b/2, c) を 対応させる。 >>277 より fσ には (σ^t)Mσ が対応する。 よって (fσ)τ には (τ^t)(σ^t)Mστ が対応する。 (τ^t)(σ^t)Mστ = (στ)^tMστ だから fσ)τ = f(στ) である。 証明終
403 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/29(金) 05:09:15 ] >>401 の記法で f = (a, b, c) ∈ Ω と SL_2(Z) の単位元 e に対して、 fe= f だから >>402 より Ω は右 SL_2(Z)-集合(>>388 ) である。
404 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 01:32:39 ] 命題 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値 (>>293 ) かつ原始的 (>>279 ) な2次形式とする。 f に (-b + √D)/2a を対応させることにより、 判別式 D の正定値かつ原始的な2次形式と、複素上半平面にある 判別式 D の2次無理数(>>276 )とは1対1に対応する。 証明 >>324 の証明と同様である。
405 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 02:12:00 ] D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 判別式 D の正定値かつ原始的な2次形式の集合を PF(D) と書く。 複素上半平面にある判別式 D の2次無理数の集合を HQ(D) と書く。 >>403 , >>282 , >>297 より PF(D) は、右 SL_2(Z)-集合(>>388 ) である。 >>286 より HQ(D) は、左 SL_2(Z)-集合(>>388 )である。 写像 φ : PF(D) → HQ(D) を >>324 の証明と同様に定義する。 >>404 より φ は全単射である。 f ∈ PF(D) と σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) に対して fσ = g、φ(f) = θ とおく。 >>325 と同様にして φ(g) = σ^(-1)θ よって φ(fσ) = σ^(-1)φ(f) よって φ(fσ^(-1)) = σφ(f) σf = fσ^(-1) と定義すれば PF(D) は、左 SL_2(Z)-集合になる。 上記から φ は 左 SL_2(Z)-集合としての同型射(>>399 )である。
406 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 10:55:49 ] 判別式 D の正定値かつ原始的な2次形式の集合を PF(D) とする。 >>405 より PF(D) は 右 SL_2(Z)-集合(>>388 ) である。 軌道空間 (>>390 ) PF(D)/SL_2(Z) を F+(D) と書く。 複素上半平面にある判別式 D の2次無理数の集合を HQ(D) とする。 >>405 より HQ(D) は 左 SL_2(Z)-集合(>>388 ) である。 軌道空間 (>>390 ) HQ(D)/SL_2(Z) を H(D) と書く。 >>405 より PF(D) は左 SL_2(Z)-集合にもなる。 左 SL_2(Z)-集合としての PF(D) の軌道空間は、明らかに F+(D) と 一致する。 >>405 より φ : PF(D) → HQ(D) は、左 SL_2(Z)-集合としての 同型射である。 したがって、φ は全単射 F+(D) → H(D) を誘導する。 D が虚2次体の判別式と一致するとき、この写像は >>311 で定義した Ψ+ と一致する。 したがって、 D が虚2次体の判別式と一致しない場合も この写像を Ψ+ と書くことにする。
407 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:02:54 ] >>320 と同様に次の定義をする。 定義 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値かつ原始的な 2次形式とする。 G を >>253 で定義した集合とする。 つまり G = { z ∈ H ; -1/2 ≦ Re(z) < 1/2 かつ |z| ≧ 1 で |z| = 1 のときは -1/2 ≦ Re(z) ≦ 0 } (-b + √D)/2a が G に属すとき f(x, y) を簡約2次形式と呼ぶ。
408 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:06:32 ] 命題 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値かつ原始的な 2次形式とする。 f(x, y) が簡約2次形式 (>>407 ) であるためには |b| ≦ a ≦ c であり、 |b| = a または a = c のときは b ≧ 0 となることが必要十分である。
409 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:15:30 ] 定義 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値かつ原始的な 2次形式とする。 [D] を >>253 で定義した集合とする。 つまり [D] = { z ∈ H ; |Re(z)| ≦ 1/2 かつ |z| ≧ 1 } である。 (-b + √D)/2a が [D] に属すとき f(x, y) を広義の簡約2次形式と呼ぶ。
410 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:18:50 ] >>334 と同様に次の命題が成り立つ。 証明もまったく同じである。 命題 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の正定値かつ原始的な 2次形式とする。 f(x, y) が広義の簡約2次形式 (>>409 ) であるためには |b| ≦ a ≦ c となることが必要十分である。
411 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:28:36 ] 明らかに、>>326 , >>328 , >>329 , >>330 , >>335 , >>336 , >>337 は、 D が負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) の場合もそのまま 成り立つ。
412 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 11:35:35 ] >>339 と同様に次の命題が成り立つ。 証明もまったく同じである。 命題 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 F+(D) (>>406 ) の元の個数は有限であり、判別式 D の簡約2次形式 (>>407 ) の個数と一致する。
413 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 23:16:51 ] 定義 D を負の有理整数で D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 h(D) = |F+(D)| と書く。 D が虚2次体 Q(√m) の判別式のときは、 >>314 より |F+(D)| は Q(√m) の類数と一致する。 したがって上の h(D) の定義は >>316 の定義の拡張になっている。
414 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 23:32:44 ] D = -180 のとき h(D) を計算しよう。 >>413 より h(D) は判別式 D の簡約2次形式 (>>407 ) の個数と 一致する。 >>408 より (a, b. c) が簡約2次形式 (>>407 ) であるためには、 gcd(a, b, c) = 1 かつ、 |b| ≦ a ≦ c であり、 |b| = a または a = c のときは b ≧ 0 と なることが必要十分である。 >>341 と同様にして a ≦ √(|D|/3) である。 √(|D|/3) = √60 だから a ≦ 7 となる。 a > 0 だから 1 ≦ a ≦ 7 である。 4ac = b^2 + |D| = b^2 + 180 したがって、b は偶数でなければならない。
415 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 23:34:34 ] >>414 の続き 0^2 + 180 = 4・3・3・5 2^2 + 180 = 184 = 4・46 = 4・2・23 4^2 + 180 = 196 = 4・49 = 4・7・7 6^2 + 216 = 4・54 = 4・2・3^3 より gcd(a, b, c) = 1 に注意して、 ------------------------------------------------------------ a = 1 のとき |b| = 0、c = 45、(1, 0, 45) ------------------------------------------------------------ a = 2 のとき |b| = 2、c = 23、(2, 2, 23) ------------------------------------------------------------ a = 3 は無い ------------------------------------------------------------ a = 4 は無い ------------------------------------------------------------ a = 5 のとき |b| = 0、c = 9、(5, 0, 9) ------------------------------------------------------------ a = 6 は無い ------------------------------------------------------------ a = 7 のとき |b| = 4、c = 7、(7, 4, 7) ------------------------------------------------------------ よって h(D) = 4 である。
416 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/30(土) 23:39:22 ] 訂正 >>415 >6^2 + 216 = 4・54 = 4・2・3^3 6^2 + 180 = 216 = 4・54 = 4・2・3^3
417 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 10:56:43 ] 補題 D を平方数でない有理整数とすると、D = (f^2)c と書ける。 ここで f は有理整数 f > 0 であり、 c は平方因子を持たない有理整数で、c ≠ 1 である。 証明 D の素因数分解を考えれば明らかである。
418 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 11:02:47 ] 命題 D を平方数でない有理整数で、D ≡ 0 または 1 (mod 4) とする。 このとき、D = (f^2)d と書ける。 ここで f は有理整数 f > 0 であり d はある2次体 Q(√m) の 判別式である。 証明 D ≡ 0 (mod 4) なら、D/4 に >>417 を適用して D = 4(g^2)m となる。 ここで g は有理整数 g > 0 であり、 m ≠ 1 は平方因子を持たない有理整数である。 m ≡ 1, 2, 3 (mod 4) であるが m ≡ 1 (mod 4) なら m は2次体 Q(√m) の判別式である。 この場合、f = 2g, d = m とすればよい。 m ≡ 2, 3 (mod 4) なら、4m は2次体 Q(√m) の判別式である。 この場合、f = g, d = 4m とすればよい。 D ≡ 1 (mod 4) なら、D に >>417 を適用して D = (f^2)m となる。 f^2 ≡ 0 または 1 (mod 4) だが f^2 ≡ 0 (mod 4) なら D ≡ 0 (mod 4) となるから f^2 ≡ 1 (mod 4) である。 したがって D ≡ m (mod 4) となり、m ≡ 1 (mod 4) である。 よって m は 2次体 Q(√m) の判別式である。 証明終
419 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 11:28:44 ] >>287 と同様のことを一般の2次の無理数の場合に考える。 θ を判別式 D の2次の無理数 (>>284 ) とする。 aθ^2 + bθ + c = 0 とする。 ここで a, b, c は有理整数で gcd(a, b, c) = 1 である。 さらに a > 0 とする。 D = b^2 - 4ac である。 D ≡ b^2 (mod 4) だから D ≡ 0 または 1 (mod 4) である。 D は勿論平方数ではない(平方数なら θ は有理数となる)。 よって >>418 より D = (f^2)d と書ける。 ここで f は有理整数 f > 0 であり d はある2次体 Q(√m) の 判別式である。 θ = (-b ± √D)/2a であるが θ = (-b + √D)/2a と仮定する。 a(aθ^2 + bθ + c) = a^2θ^2 + abθ + ac = 0 だから (aθ)^2 + b(aθ) + ac = 0 よって aθ は代数的整数である。 aθ = (-b + √D)/2 = (-b + f√d)/2 だから aθ ∈ Q(√m) である。 m ≡ 1 (mod 4) のとき (-b + √D)/2 = (-b - f + f(1 + √m))/2 = (-b - f)/2 + fω m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) のとき (-b + √D)/2 = (-b + 2f√m)/2 = -b/2 + fω いずれの場合でも aθ = r + fω の形である。 r = aθ - fω は有理数で代数的整数でもあるから、有理整数である (前スレ3の158より有理整数環は整閉である)。
420 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 11:33:45 ] >>419 の続き ここで R = [1, fω] を考える。 (fω)^2 = (f^2)ω^2 ⊂ (f^2)[1, ω] ⊂ [1, fω] よって (fω)R ⊂ R である。 よって RR ⊂ R である。 したがって R は Q(√m) の整数環 [1, ω] の部分環である。
421 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 11:38:32 ] 定義 2次体 Q(√m) の 部分環 R でその加法群が階数2の自由アーベル であるものを Q(√m) の整環 (order) と呼ぶ。
422 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 12:06:04 ] 命題 2次体 Q(√m) の整環 (>>421 ) は Q(√m) の整数環の部分環である。 証明 前スレ1の 505 から明らかだが、改めて証明する。 R を Q(√m) の整環とする。 R のアーベル群としての基底を α, β とする。 つまり R = [α, β] とする。 γ ∈ R なら γα = aα + bβ γβ = cα + dβ となる有理整数 a, b, c, d がある。 (γ - a)α - bβ = 0 -cα + (γ - d)β = 0 よって、係数の行列式は 0 である。 即ち (γ - a)(γ - d) - bc = 0 よって γ は代数的整数である。 よって γ は Q(√m) の整数環に含まれる。 証明終
423 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 12:34:13 ] 前スレ3の 988より R = [a, b + cω] と書ける。 ここで a > 0、c > 0 である。 1 ∈ R だから a = 1 である。 したがって、R = [1, b + cω] = [1, cω] よって アーベル群としての剰余類群 [1, ω]/R の位数は c である。 c を R の導手 (conductor) という。 R の導手は、通常ドイツ語の fuhrer の頭文字をとって f で 表す場合が多い。
424 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 12:45:14 ] 定義 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] に対して、 fω の判別式 (>>276 ) を R の判別式という。
425 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2006/12/31(日) 12:50:01 ] 命題 2次体 Q(√m) の整環 R の判別式 (>>424 ) は (f^2)D である。 ここで f は R の導手 (>>423 ) であり、D は Q(√m) の判別式である。 証明 fω の判別式は (fω - fω ')^2 = (f^2)(ω - ω ')^2 = (f^2)D である。 証明終
426 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:00:16 ] 2次体 Q(√m) の整環 (>>421 ) R = [1, fω] のイデアル論について述べる。 このスレの初めのほうで述べた整数環 Z[ω] のイデアル論と同様の部分が 多い。 補題 a, b, c, e, f を有理整数とし、a > 0, c > 0, f > 0 とする 2次体 Q(√m) において [a, b + cfω] = [a, e + cfω] であるためには b ≡ e (mod a) が必要十分である。 証明 >>34 の証明と同様。
427 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:07:05 ] 命題 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] の任意のイデアル I ≠ 0 は I = [a, b + cfω] と一意に書ける。 ここで a > 0, 0 ≦ b < a, c > 0 で a と b は c で割れる。 証明 I = [a, b + cfω], a > 0, 0 ≦ b < a, c > 0 と一意に書ける ことは >>14 の証明と同様である。 afω ∈ I だから a は c で割れる。 m ≡ 1 (mod 4) なら ω = (1 + √m)/2 であり、 ω^2 = ω - (1 - m)/4 である。 (b + cfω)fω = bfω + c(f^2)ω^2 = bfω + c(f^2)ω - c(f^2)(1 - m)/4 = (b + cf)fω - c(f^2)(1 - m)/4 ∈ I よって b + cf ≡ 0 (mod c) となる。 よって b ≡ 0 (mod c) となる。 m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) なら、 ω = √m であり、 ω^2 = m である。 よって (b + cfω)fω = bfω + c(f^2)ω^2 = bfω + c(f^2)m ∈ I よって b ≡ 0 (mod c) となる。 証明終
428 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:10:31 ] 定義 >>427 における a, b + cω をイデアル I の標準基底と呼ぶ。 ただし、必ずしも 0 ≦ b < a でなくてもよい。 この場合、>>426 より b は mod a で一意にきまる。
429 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:14:57 ] >>428 の訂正 定義 >>427 における a, b + cfω を R のイデアル I の標準基底と呼ぶ。 ただし、必ずしも 0 ≦ b < a でなくてもよい。 この場合、>>426 より b は mod a で一意にきまる。
430 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/03(水) 16:20:21 ] 定義 I = [a, b + cfω] を2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] の イデアル I の標準基底 (>>429 ) による表示とする。 c = 1 のとき I を原始イデアルという。
431 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/11(木) 16:48:33 ] 2次体 Q(√m) の整数環 Z[ω] は、Q(√m) のすべての整環を含む 最大の整環である。 したがって、Z[ω] を Q(√m) の主整環または極大整環とも言う。
432 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/11(木) 17:20:17 ] 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] のイデアル論と主整環 Z[ω] の イデアル論との関連を述べる。
433 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/12(金) 12:50:20 ] 命題 A を整域とし、K をその商体とする。 A の K における整閉包を B とする。 S を A の積閉部分集合とする。 このとき、B_S は A_S の K における整閉包である。 証明 A_S の K における整閉包を C とする。 x ∈ C とし、 x^n + (a_1/s)x^(n-1) + ... + (a_(n-1)/s)x + a_n/s = 0 とする。 ここで、各 a_i ∈ A で, s ∈ S この等式の両辺に s^n を掛けて、 (sx)^n + a_1(sx)^(n-1) + ... + a_(n-1)s^(n-2)(sx) + (a_n)s^(n-1) = 0 となる。よって、sx は A 上整である。 よって、sx ∈ B である。 よって、x ∈ B_S である。 以上から C ⊂ B_S である。 一方、前スレ1の 514 より B_S は A_S 上整である。 よって B_S ⊂ C である。 証明終
434 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/12(金) 12:58:53 ] B を環、A をその部分環とする。 B を A-加群とみなし、(A : B) = {a ∈ A; aB ⊂ A} を考える (前スレ3の 583)。 (A : B) は A のイデアルである。 S を A の積閉部分集合とする。 B が A-加群として有限生成なら 前スレ3の 586 より (A : B)_S = (A_S : B_S) である。
435 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/12(金) 16:04:40 ] 命題 A を整域とし、K をその商体とする。 A の K における整閉包を B とする。 I = (A : B) とおく(>>434 )。 A の素イデアル P に対して A_P が整閉であるためには、 I ⊂ P とならないことが必要十分である。 証明 S = A - P とおく。S は A の積閉部分集合である。 B_S を B_P と書くことにする。 >>433 より B_P は A_P の K における整閉包である。 従って、A_P が整閉であるためには A_P = B_P が必要十分である。 一方、A_P = B_P であるためには (A_P : B_P) = A_P が 必要十分である。 >>434 より (A : B)_P = (A_P : B_P) であるから、 これは、IA_P = A_P と同値である。 証明終
436 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/12(金) 17:35:13 ] >>435 の訂正 命題 A を整域とし、K をその商体とする。 A の K における整閉包を B とする。 B は A-加群として有限生成とする。 I = (A : B) とおく(>>434 )。 A の素イデアル P に対して A_P が整閉であるためには、 I ⊂ P とならないことが必要十分である。 証明 S = A - P とおく。S は A の積閉部分集合である。 B_S を B_P と書くことにする。 >>433 より B_P は A_P の K における整閉包である。 従って、A_P が整閉であるためには A_P = B_P が必要十分である。 一方、A_P = B_P であるためには (A_P : B_P) = A_P が 必要十分である。 >>434 より (A : B)_P = (A_P : B_P) であるから、 これは、IA_P = A_P と同値である。 証明終
437 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 15:33:51 ] 命題 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] に対して (R : Z[ω]) = fZ[ω] である。 証明 α ∈ (R : Z[ω]) とすると、定義(>>434 )から α ∈ R で αZ[ω] ⊂ R である。 α = a + bfω とする。ここで、a, b は有理整数である。 αω = aω + bfω^2 ∈ R である。 m ≡ 1 (mod 4) なら ω = (1 + √m)/2 であり、 ω^2 = ω - (1 - m)/4 である。 αω = aω + bfω^2 = (a + bf)ω - bf(1 - m)/4 よって a + bf ≡ 0 (mod f) a ≡ 0 (mod f) よって α ∈ fZ[ω] m ≡ 2 (mod 4) または m ≡ 3 (mod 4) なら、 ω = √m であり、 ω^2 = m である。 αω = aω + bfω^2 = aω + bfm よって a ≡ 0 (mod f) よってα ∈ fZ[ω] 以上から (R : Z[ω]) ⊂ fZ[ω] である。 fZ[ω] ⊂ (R : Z[ω]) は明らかである。 証明終
438 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 16:00:20 ] 定義 I ≠ 0 を2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] のイデアルとする。 I = [a, b + cfω] を I の標準基底 (>>429 ) による表示とすると、 |R/I| = ac である。 |R/I| を I のノルム(または絶対ノルム)と呼び、N(I) と書く。
439 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 16:06:48 ] 命題 2次体 Q(√m) の整環 R = [1, fω] の 0 でない素イデアルは 極大イデアルである。 証明 P を R の 0 でない素イデアルとする。P は標準基底を持つから R/P は有限整域である(>>438 )。有限整域は体であるから P は極大イデアルである。 証明終
440 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 16:17:00 ] 命題 R を2次体 Q(√m) の整環とし、P ≠ 0 を R の素イデアルとする。 R_P は Krull次元(前スレ1の379)が1のネーター局所整域である。 証明 R の任意の非零イデアルは標準基底をもつから R はネーター整域で ある。 よって >>439 より本命題の主張は明らかである。
441 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 16:30:50 ] 命題 Rを2次体 Q(√m) の整環とし、P ≠ 0 を R の 素イデアルとする。 R_P が離散付値環(前スレ1の 645)であるためには R_P が整閉で あることが必要十分である。 証明 R_P が離散付値環なら、R_P は一意分解整域だから 前スレ3の 158 より R_P は整閉である。 逆に R_P が整閉なら >>440 と前スレ2の 555 より R_P は離散付値環 である。 証明終
442 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/13(土) 16:39:29 ] 命題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とし、P ≠ 0 を R の 素イデアルとする。 R_P が離散付値環であるためには P が f を含まない ことが必要十分である。 証明 Z[ω] は Z-加群 として有限生成だから R-加群としても 有限生成である。 したがって、>>436 と >>437 より R_P が整閉であるためには P が f を含まないことが必要十分である。 >>441 より、これは R_P が離散付値環であることと同値である。 証明終
443 名前:132人目の素数さん [2007/01/13(土) 17:52:12 ] くんまー拡大!
444 名前:132人目の素数さん [2007/01/13(土) 19:31:51 ] 2次形式論卒論でやったからなつかしい。
445 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 00:31:37 ] 定義 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 R のイデアルを R-イデアルともいう。
446 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 00:35:05 ] 定義 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I ≠ 0 を R-イデアルとする。 IZ[ω] が fZ[ω] と素のとき I を正則な R-イデアルという。
447 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 00:54:20 ] 補題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 P ≠ 0 を R の素イデアルとする。 このとき Z[ω] の素イデアル P ' で P = R ∩ P ' となるものが 存在する。 証明 Z[ω] は R 上整だから Cohen-Seidenberg の定理 (前スレ1の520) より補題の主張がいえる。 証明終
448 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 01:23:58 ] 補題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 P ≠ 0 を R の素イデアルとする。 P が正則 (>>446 ) であるためには P が f を含まないことが 必要十分である。 証明 P が正則でないとする。 fZ[ω] + PZ[ω] ≠ Z[ω] だから、fZ[ω] + PZ[ω] ⊂ P ' となる Z[ω] の素イデアル P ' が存在する。 >>439 より P は R の極大イデアルだから P = R ∩ P ' である。 一方、fZ[ω] ⊂ R だから fZ[ω] ⊂ P となる。 逆に fZ[ω] ⊂ P なら fZ[ω] ⊂ PZ[ω] だから P は正則でない。 証明終
449 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 01:46:24 ] 補題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I ≠ 0 を R-イデアルとする。 I が正則 (>>446 ) であるためには I ⊂ P となる任意の R-素イデアル P が正則であることが必要十分である。 証明 I が正則であるとする。 P を I ⊂ P となる R-素イデアルとする。 P が正則でないなら >>448 より f ∈ P である。 >>447 より Z[ω] の素イデアル P ' で P = R ∩ P ' となるものが 存在する。 IZ[ω] ⊂ PZ[ω] ⊂ P ' で f ∈ P ' だから fZ[ω] + IZ[ω] ⊂ P ' となり I は正則でない。 これは仮定に反する。 よって P は正則である。 逆に、P を I ⊂ P となる R-素イデアルで正則でないとする。 fZ[ω] + PZ[ω] ≠ Z[ω] だから fZ[ω] + IZ[ω] ≠ Z[ω] となり I は正則でない。 証明終
450 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 02:00:28 ] 補題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 P ≠ 0 を R の素イデアルとする。 P が正則であるためには R_P が離散付値環であることが 必要十分である。 証明 >>442 と >>448 より明らかである。
451 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 02:19:25 ] 命題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I と J を正則な R-イデアル (>>446 ) とする。 IZ[ω] = JZ[ω] なら I = J である。 証明 P を R の素イデアルとする。 S = R - P とおく。S は R の積閉部分集合である。 Z[ω]_S を Z[ω]_P と書くことにする。 >>433 より Z[ω]_P は R_P の K における整閉包である。 P が正則なら、>>450 より R_P は離散付値環だから整閉である。 よって Z[ω]_P = R_P である。 IZ[ω] = JZ[ω] より I(Z[ω]_P) = J(Z[ω]_P) であるから I(R_P) = J(R_P) である。 P が正則でないなら、>>449 より I ⊂ P ではない。 よって I(R_P) = R_P である。 同様に J(R_P) = R_P である。 以上から R の任意の素イデアル P ≠ 0 に対して I(R_P) = J(R_P) である。 従って、前スレ3の 587 より I = J である。 証明終
452 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/01/14(日) 09:39:00 ] 2chって来週閉鎖らしいけどだいじょうぶですか スレ汚しすみません
453 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 10:42:03 ] 命題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I ≠ 0 を Z[ω] のイデアルで fZ[ω] と素とする。 I_0 = R ∩ I とおく。 このとき、I_0 は正則な R-イデアルで (I_0)Z[ω] = I となる。 証明(Hilbert の Zahlbericht の定理 64 の証明を拝借) (I_0)Z[ω] = J とおく。 I は fZ[ω] と素だから I + fZ[ω] = Z[ω] である。 よって α + fβ = 1 となる α ∈ I と β ∈ Z[ω] がある。 α = 1 - fβ ∈ R だから α ∈ I_0 ⊂ J である。 よって J + fZ[ω] = Z[ω] である。 つまり、J は fZ[ω] と素である。 一方、(fZ[ω])I ⊂ R だから (fZ[ω])I ⊂ I_0 ⊂ J である。 従って、>>175 より (fZ[ω])I = JL となる Z[ω] のイデアル L が 存在する。 J は fZ[ω] と素であるから、I ⊂ J である。 J ⊂ I であるから I = J となる。 証明終
454 名前:132人目の素数さん [2007/01/14(日) 11:05:51 ] >>452 >2chって来週閉鎖らしいけどだいじょうぶですか お答えします。 閉鎖の場合 → このスレも閉鎖される。 閉鎖しない場合 → このスレも閉鎖されない。 っていうか当たり前だ っていうか第3者としてはどうしょうもない
455 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/01/14(日) 11:22:28 ] >>454 お答えありがとうございます。 私としては、ログの保存を念頭においておりましたが、 言葉至らず失礼いたしました。 たとえ、私が保存しても熊さんに渡せそうにないので。
456 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 12:25:10 ] R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 正則な R-イデアルの全体は R-イデアルの積により可換な モノイド(単位元をもつ半群)になる。 この可換モノイドを I+(R) とおく。 他方、Z[ω] のイデアルで fZ[ω] と素なもの全体もイデアルの積 により可換モノイドになる。 この可換モノイドを I+(f) とおく。 正則な R-イデアル I に IZ[ω] を対応させることにより、 写像 φ : I+(R) → I+(f) が得られる。 この φ は明らかにモノイドとしての準同型である。 >>451 より φ は単射であり、>>453 より φ は全射である。 よって φ は同型射である。 さらに φ はイデアルの包含関係を保存する。 つまり、 I ⊂ J なら φ(I) ⊂ φ(J) である。
457 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 12:31:11 ] 命題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 正則な R-イデアルは正則な R-素イデアルのべき積として一意に 分解される。 証明 >>456 より明らかである。
458 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 12:35:08 ] 命題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I を正則な R-イデアルとする。 IZ[ω] が素イデアルであるためには I が素イデアルであることが 必要十分である。 証明 >>456 より明らかである。
459 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 15:00:42 ] 補題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I を正則な R-イデアルとすると、I = R ∩ IZ[ω] である。 証明 I_0 = R ∩ IZ[ω] とおく。 >>453 より (I_0)Z[ω] = IZ[ω] となる。 よって >>451 より I_0 = I である。 証明終
460 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 15:13:59 ] 命題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I を正則な R-イデアルとすると、剰余環 R/I は Z[ω]/IZ[ω] に 標準的に同型である。 証明 I は正則だから IZ[ω] + fZ[ω] = Z[ω] である。 fZ[ω] ⊂ R だから IZ[ω] + R = Z[ω] である。 従って R/(R ∩ IZ[ω]) は Z[ω]/IZ[ω] = (R + IZ[ω])/IZ[ω] に、 標準的に同型である。 >>459 より I = R ∩ IZ[ω] である。 証明終
461 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 15:16:12 ] 命題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I を正則な R-イデアルとすると、N(I) = N(IZ[ω]) である。 ここで N(I) は I のノルム(>>438 ) を表す。 証明 >>460 より明らか。
462 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/14(日) 18:14:26 ] 命題 R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 I と J を正則な R-イデアルとすると、N(IJ) = N(I)N(J) である。 証明 Z[ω] は Dedekind 整域で有限ノルム性(>>68 )を持つから >>70 より N(IZ[ω]JZ[ω]) = N(IZ[ω])N(JZ[ω]) である。 よって >>461 より N(IJ) = N(I)N(J) である。 証明終
463 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/18(木) 23:01:04 ] 定義 A を整域、K をその商体とする。 K の A-部分加群 I に対して A のある元 s ≠ 0 があり sI ⊂ A となるとき I を A の分数イデアルという。
464 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/18(木) 23:07:04 ] 命題 A を整域 K をその商体とする。 K の A-部分加群 I が有限生成なら I は分数イデアルである。 証明 明らかである。
465 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/18(木) 23:09:03 ] 命題 A をネーター整域、K をその商体とする。 K の A-部分加群 I が分数イデアルであるためには I が A-加群として 有限生成であることが必要十分である。 証明 K の A-部分加群 I が分数イデアルとすると、A の元 s ≠ 0 があり I ⊂ (1/s)A となる。 A はネーター環だから I は (1/s)A の A-部分加群として 有限生成である。 逆は >>464 である。 証明終
466 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/18(木) 23:10:18 ] 定義 A を整域 K をその商体とする。 K の A-部分加群 I に対して K の A-部分加群 J で IJ = A となる ものがあるとき I を可逆分数イデアルという。 ここで IJ は集合 {xy; x ∈ I, y ∈ J} で生成される K の A-部分加群である。
467 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/18(木) 23:24:11 ] 命題 A を整域、K をその商体とする。 A の可逆分数イデアル(>>466 )は A-加群として有限生成である。 証明 前スレ2の 504 で証明済みである。
468 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/18(木) 23:28:58 ] 命題 A を整域とする。 A の可逆分数イデアル(>>466 )は A の分数イデアル(>>463 )である。 証明 >>467 と >>464 より明らかである。
469 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/19(金) 21:32:16 ] 定義 A を整域 K をその商体とする。 A の分数イデアル I に対して x ∈ K があり I = xA となるとき I を単項分数イデアルまたは主分数イデアルという。
470 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/19(金) 21:39:25 ] 定義 A を整域 K をその商体とする。 A の0でない分数イデアル全体は乗法により群となる。 この群を A の可逆分数イデアル群と呼び、I(A) と書く (前スレ2の521)。
471 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/19(金) 21:41:28 ] 定義 A を整域とする。 A の0でない単項分数イデアル全体は乗法により群となる。 この群を A の単項分数イデアル群と呼び、P(A) と書く (前スレ2の539)。
472 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/19(金) 22:17:47 ] 命題 A を整域とする。 A の単項分数イデアル群 P(A) は、A の可逆分数イデアル群 I(A) の 部分群である。剰余類群 I(A)/P(A) は A の Picard 群 Pic(A) (前スレ2の360)と標準的に同型である。 証明 K を A の商体とする。K は局所環であるから前スレ2の361より Pic(K) = 0 である。 よって前スレ2の540より I(A)/P(A) は Pic(A) と同型になる。 証明終
473 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/19(金) 22:23:06 ] 定義 A を整域とする。 >>472 より I(A)/P(A) は Pic(A) と同一視される。 よって I(A)/P(A) を A の Picard 群と呼び Pic(A) と書く。
474 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 08:01:31 ] R = [1, fω] を2次体 Q(√m) の整環とする。 Pic(R) と Pic(Z[ω]) の関係を調べたい。 議論の本質を浮き彫りにするため問題を次のように一般化する。 A を1次元のネーター整域とし K をその商体とする。 A の K における整閉包を B とする。 B が A-加群として有限生成のとき Pic(A) と Pic(B) の関係はどうなるか?
475 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 08:09:49 ] 以下 >>474 の問題の解法に関しては Neukirch の「代数的整数論」を 参考にした。
476 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 08:36:21 ] 定義 A を環、I ≠ A を A のイデアルとする。 A/I のすべての零因子がベキ零のとき I を準素イデアルという。 前スレ1の 157 と 181 から、この定義は A がネーター環のときの 拡張になっている。
477 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 08:38:00 ] 補題 A を環、M を A-加群とする。 M-正則(前スレ1の 179)な A の元全体は A の乗法に関して閉じている。 証明 M-正則の定義(前スレ1の 179)から明らかである。
478 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 08:39:18 ] 命題 A を環、I を A の準素イデアルとする。 I の根基 rad(I) (前スレ1の 164) は素イデアルである。 証明 I は準素イデアルだから A/I を A-加群とみて (A/I)-正則な元の 集合は A - rad(I) である。 >>477 より A - rad(I) は乗法に関して閉じている. ゆえに rad(I) は素イデアルである。 証明終
479 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 08:40:11 ] 定義 A を環、I を A の準素イデアルとし、p = rad(I) とする。 p を I の素因子と呼び、I は p に属する準素イデアルという。
480 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 08:41:19 ] 命題 A を環、p を A の素イデアルとする。 J を A_p の準素イデアルで pA_p に属するとする。 I を J の標準射 A → A_p による逆像とする。 このとき I は p に属する準素イデアルである。 証明 φ: A → A_p を標準射とする。 a ∈ A、x ∈ A - I で ax ∈ I とする。 φ(ax) ∈ J で φ(x) ∈ A_p - J だから φ(a^n) ∈ J となる n > 0 がある。 a^n ∈ I だから I は準素イデアルである。 次に p = rad(I) を示す。 a ∈ rad(I) なら a^n ∈ I となる n > 0 がある。 φ(a^n) ∈ J だから φ(a) ∈ pA_p である。 よって a ∈ p である。 逆に a ∈ p なら φ(a) ∈ pA_p だから φ(a^n) ∈ J となる n > 0 がある。a^n ∈ I だから a ∈ rad(I) である。 証明終
481 名前:132人目の素数さん [2007/01/20(土) 08:45:15 ] >>上の人 おはよう。
482 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 09:01:40 ] 補題 A を環、I を A のイデアルとする。 A の極大イデアル m があり、m ^n ⊂ I ⊂ m とする。 ここで n > 0 である。 このとき I は m に属する準素イデアルである。 証明 I ⊂ p となる A の素イデアルがあるとする。 m^n ⊂ p だから p = m である。 よって A/I は局所環である。 よって a ∈ A - m なら a (mod I) は A/I の可逆元である。 従って、b を A の元で ab ∈ I とすれば、b ∈ I である。 m の元は mod I でべき零なことに注意すれば I は準素イデアルである。 証明終
483 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 09:13:45 ] 補題 A をネーター環、p を A の素イデアル、I を p に属する準素イデアル であるとする。 このとき p^n ⊂ I となる n > 0 がある。 証明 p = rad(I) で p は有限生成だから、これは明らかである。
484 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 09:20:40 ] 補題 A をネーター環、I を A のイデアルで V(I) = {m} とする。 ここで V(I) = { p ∈ Spec(A); I ⊂ p } である(前スレ1の 160)。 このとき I は極大イデアル m に属する準素イデアルである。 証明 前スレ1の163より m = rad(I) である。 >>483 より m^n ⊂ I となる n > 0 がある。 よって >>482 より I は極大イデアル m に属する準素イデアルである。 証明終
485 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 09:24:27 ] >>484 の別証 Supp(A/I) = V(I) であり、 Ass(A/I) ⊂ Supp(A/I) だから(前スレ1の99)、 Ass(A/I) = {m} である。 従って I は m に属する準素イデアルである。 証明終
486 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 09:26:18 ] 補題 A をネーター環、I を A のイデアルとする。 p を V(I) の極小元とする。 ここで V(I) = { p ∈ Spec(A); I ⊂ p } である(前スレ1の 160)。 I(p) を IA_p の標準射 A → A_p による逆像とする。 このとき I(p) は p に属する準素イデアルである。 証明 q を A の素イデアルで q ⊂ p とする。 さらに IA_p ⊂ qA_p とする。 I(p) ⊂ q となり I ⊂ I(p) だから I ⊂ q である。 p は V(I) の極小元だから q = p である。 以上から V(IA_p) = {pA_p} である。 >>484 よりIA_p は pA_p に属する準素イデアルである。 >>480 より I(p) は p に属する準素イデアルである。 証明終
487 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 09:41:22 ] 補題 A を環、I を A のイデアルとする。 p が A の素イデアルのとき I(p) = { a ∈ A; sa ∈ I となる s ∈ A - p が存在する } とおく。 容易にわかるように I(p) は IA_p の標準射 A → A_p による 逆像である。 このとき I = ∩I(m) となる。 ここで m は A のすべての極大イデアルを動く。 証明 I ⊂ ∩I(m) は明らかだから逆の包含関係を示せばよい。 a ∈ ∩I(m) とする。 (I : a) = { x ∈ A; xa ∈ I } と書く。 (I : a) を含む極大イデアル m があるとすると、 a ∈ I(m) だから、s ∈ A - m があって s ∈ (I : a) ⊂ m となって 矛盾である。よって (I : a) = A である。 これは a ∈ I を意味する。 したがって ∩I(m) ⊂ I である。 証明終
488 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 09:45:42 ] >>487 の I = ∩I(m) において、 I ⊂ m でないとき I(m) = A だから m は I ⊂ m となるすべての極大イデアルに制限してもよい。
489 名前:132人目の素数さん [2007/01/20(土) 10:01:54 ] 熊先生いつも乙です. 全然わかりませんがログ保存してます.
490 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/20(土) 10:16:42 ] 補題 A をネーター環、I を A のイデアル、m を A の極大イデアルとし、 m は V(I) の極小元とする。 I(m) を IA_m の標準射 A → A_m による逆像とする。 このとき A/I(m) は A_m/IA_m に標準的に同型である。 証明 >>486 より I(m) は m に属する準素イデアルである。 >>483 より m^n ⊂ I(m) となる n > 0 がある。 よって V(I(m)) = {m} である。 よって A/I(m) は局所環である。 従って s ∈ A - m なら s は mod I(m) で A/I(m) の可逆元である。 a ∈ A、 s ∈ A - m で a/s ∈ A_m とする。 s は mod I(m) で A/I(m) の可逆元だから、a ≡ sb (mod I(m)) となる b ∈ A がある。 φ: A → A_m を標準射とする。 a/s - φ(b) = a/s - b/1 = (a - sb)/s = φ(a - sb)/φ(s) ∈ IA_m よって φ: A → A_m と標準射 A_m → A_m/IA_m の合成をψとすると ψは全射である。 ψの核は I(m) だから A/I(m) は A_m/IA_m に同型である。 証明終
491 名前:132人目の素数さん [2007/01/20(土) 10:18:20 ] わからなかったら質問してよ。
492 名前:132人目の素数さん [2007/01/20(土) 10:51:30 ] 命題 A をネーター環、I を A のイデアルで I を含む素イデアルはすべて 極大イデアルであるとする。このとき I を含む極大イデアルは有限個 であり、A/I は環の直積 ΠA_m/IA_m と標準的に同型である。 ここで m は I ⊂ m となる極大イデアルを動く。 証明 仮定より I を含む極大イデアルは V(I) の極小元である。 前スレ1の224よりこれ等は有限個である。 m_1 と m_2 を V(I) の異なる2元とする。 >>486 より I(m_1) は m_1 に属する準素イデアルである。 よって I(m_1) を含む素イデアルは m_1 だけである。 同様に I(m_2) を含む素イデアルは m_2 だけである。 したがって I(m_1) と I(m_2) をともに含む素イデアルはない。 よって I(m_1) + I(m_2) = A である。 一方、>>487 と >>488 より I = ∩I(m) となる。 よって中国式剰余定理(前スレ1の341)より A/I は環の直積 ΠA/I(m) と標準的に同型である。 >>490 より A/I(m) は A_m/IA_m に標準的に同型であるから A/I は ΠA_m/IA_m と標準的に同型である。 証明終
493 名前:132人目の素数さん [2007/01/20(土) 11:01:11 ] 青木さやかも絶賛!!アンダーグラウンド ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/i.cgi/news/2092/
494 名前:ykr [2007/01/20(土) 12:56:56 ] G={(x,y)∈X;y≦g(x)}、H={(x,y)∈X;y≧h(x)}とおき、 G,Hがそれぞれ凸集合で、y=g(x)とy=h(x)が2点で交わっているとき、 G∩Hである部分は1つしか存在しないということを証明したいです。
495 名前:132人目の素数さん [2007/01/20(土) 15:21:40 ] 念のために言うと、わからなかったら質問してよという意味は、 このスレまたは過去スレで私が書いたこと(雑談等は除く)に関して 分からなかったら質問してという意味です。
496 名前:ykr氏へ mailto:sage [2007/01/21(日) 16:03:53 ] >494 > G,Hがそれぞれ凸集合で、y=g(x)とy=h(x)が2点で交わっているとき、 > G∩Hである部分は1つしか存在しない Kummerさん: ノイズかも知れんが、回答しておきやす。 G,Hがそれぞれ凸ならG∩Hも凸(何故かは自分で考えてね)。 で一般に空でない凸集合は(弧状)連結である(何故かは自分で考えてね)。 y=g(x)とy=h(x)が2点で交わっているなら、G∩Hは空でなく従って(弧状)連結であるよ。
497 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/23(火) 22:04:28 ] >>492 の証明において I = ∩I(m) となり、各 I(m) は m に属する 準素イデアルであることを示したが、これは以下のようにしても分かる。 A をネーター環、I を A のイデアルで I を含む素イデアルはすべて 極大イデアルであるとする。 I = Q_1 ∩ Q_2 ... ∩ Q_n を I の最短準素分解(前スレ1の188) とする。 m_i = rad(Q_i)、i = 1, ..., n とおく。 仮定より各 m_i は極大イデアルである。 I(m_i) を IA_(m_i) の標準射 A → A_(m_i) による逆像とする。 前スレ1の198より Q_i = I(m_i) である。 よって I = ∩I(m_i) となり、各 I(m) は m に属する準素イデアル である。
498 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/23(火) 22:34:06 ] >>475 Neukirch の「代数的整数論」(日本語訳)の命題(12.6) の証明(p. 79) がどうも分からない。 a ≡ c (mod p) かつ a ∈ c(a_q/a_p)O_q となる a ∈ O が取れるのは いいとして、これから ε = a/c が O_p の単数であることが何故言える のか分からない。c が p に含まれないならそうなるが、そうとは 限らないのではないか? この命題(12.6)は >>474 の問題の解法において重要であるので、 1週間ほど考えたあげく、今日ようやく証明することが出来た。 この証明は Neukirch の証明(?)よりわかりやすいと思う。 それをこれから述べる。
499 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/24(水) 21:50:44 ] 命題 A を整域、K をその商体とする。 M を A の可逆分数イデアル(>>466 )とする。 p を A の素イデアルとすると M_p は A_p の単項分数イデアル(>>469 ) である。 証明 前スレ2の509より M_p は階数1の射影加群である。 A_p は局所環だから、前スレ2の191より M_p は階数1の自由加群 である。M_p は (A_p)-加群として K の部分加群とみなせるから A_p の単項分数イデアルである。 証明終
500 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/01/24(水) 22:20:42 ] 命題 A を整域、K をその商体とする。 M を K の A-部分加群で有限表示(前スレ2の176)を持つとする。 A の各極大イデアル m に対して M_m が A_m の単項分数イデアルなら M は可逆分数イデアルである。 証明 前スレ2の235より M は射影的である。 よって、前スレ2の511より M は可逆分数イデアルである。 証明終