1 名前:132人目の素数さん [2006/11/23(木) 21:57:04 ] Kummer ◆g2BU0D6YN2氏が代数的整数論を語るスレです。 前スレ science4.2ch.net/test/read.cgi/math/1141019088/
701 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 11:21:03 ] 2次形式による有理整数の表現の問題を考える。 この問題は歴史的には初等整数論の中心的位置を占めていた。 この問題を解く努力から Gauss の2次形式論が生み出された。 ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の2次形式とする。 D は平方数でないとする。 m を有理整数として不定方程 m = ax^2 + bxy + cy^2 を考える。 この不定方程式に有理整数解があるとき m は2次形式 ax^2 + bxy + cy^2 で表現されるという。 解 (s, t) で gcd(s, t) = 1 となるものがあるとき m は ax^2 + bxy + cy^2 で固有に表現される (properly represented)という。
702 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 12:07:26 ] f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を2次形式として m = f(p, r) を有理整数 m の固有表現(>>701 )とする。 gcd(p, r) = 1 だから ps - rq = 1 となる s と q がある。 >>401 より f(pu + qv, ru + sv) = mu^2 + luv + kv^2 である。 ここで m = ap^2 + bpr + cr^2 l = 2apq + b(ps + qr) + 2crs k = aq^2 + bqs + cs^2 つまり m の固有表現 m = f(p, r) から f(x, y) と同値な2次形式 mu^2 + luv + kv^2 が得られる。
703 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 12:15:50 ] 命題 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を2次形式とする。 m = f(p, r) を有理整数 m の固有表現(>>701 )とする。 このとき m ≠ 0 である。 証明 D を f(x, y) の判別式とする。 >>702 において D = l^2 - 4mk (>>281 ) で D は平方数でないと仮定してるから m ≠ 0 である。 証明終
704 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 12:25:51 ] 今後、特に断らない限り2次形式の判別式は平方数でないとする。
705 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 12:32:19 ] 補題 ax^2 + bxy + cy^2 を判別式が D の2次形式とする。 このとき ac ≠ 0 で D ≡ 0 または 1 (mod 4) かつ D ≡ b (mod 2) である。 証明 D = b^2 - 4ac で D は平方数でないから(>>704 ) ac ≠ 0 である。 D = b^2 - 4ac より D ≡ b^2 (mod 4) よって D ≡ 0 または 1 (mod 4) である。 D が偶数なら b^2 ≡ 0 (mod 4) より b も偶数である。 D が奇数なら b^2 ≡ 1 (mod 4) より b も奇数である。 即ち D ≡ b (mod 2) である。 証明終
706 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 12:43:16 ] 命題 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を2次形式とする。 f(x, y) = 0 の有理整数解は (0, 0) のみである。 証明 x = 0 が f(x, y) = 0 の解とすると cy^2 = 0 である。 >>705 より c ≠ 0 であるから y = 0 である。 同様に y = 0 が f(x, y) = 0 の解なら x = 0 である。 従って、f(x, y) = 0 に (0, 0) 以外の解 (x, y) があれば xy ≠ 0 である。従って、d = gcd(x, y), x = dx', y = dy' と おけば 0 = f(x', y') は 0 の固有表現である。 しかし、これは >>703 よりあり得ない。 証明終
707 名前:132人目の素数さん [2007/02/17(土) 12:54:38 ] u^Au=0 u^S^RSu=0 rija^ijaji=0
708 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 14:07:11 ] 命題 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 を2次形式とする。 有理整数 m に対して S(f, m) = {(x, y) ∈ Z^2; m = f(x, y), (x , y) ≠ (0, 0)} P(f, m) = {(x, y) ∈ Z^2; m = f(x, y), gcd(x, y) = 1} とおく。 このとき、全単射 φ: S(f, m) → ∪P(f, m/(d^2)) が存在する。 ここで ∪P(f, m/(d^2)) の d は d^2 が m の約数となるような d ≧ 1 を動く。 証明 (x, y) ∈ S(f, m) とする。 (x , y) ≠ (0, 0) だから d = gcd(x, y) は 0 でない。 x = dx', y = dy' とすれば m = f(x, y) = (d^2)f(x',y') である。 gcd(x', y') = 1 だから (x', y') ∈ P(f, m/(d^2)) である。 φ(x, y) = (x', y') と定義すればよい。 証明終
709 名前:132人目の素数さん [2007/02/17(土) 14:12:19 ] くんまさん 今までの全部まとめた本出す予定ありますか?
710 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 14:17:29 ] m = ax^2 + bxy + cy^2 において x = 0 のときは m = cy^2 となり これは簡単に解ける。y = 0 の場合も同様である。 よって不定方程式 m = ax^2 + bxy + cy^2 は (x , y) ≠ (0, 0) の場合が解ければよい。 よって >>708 により有理整数の2次形式による表現の問題は固有な表現の 問題に帰着する。
711 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 14:23:53 ] >>709 今はその予定はありません。 全部書き終わったら、そのとき考えます。 しかし、今まで書いた部分は全体の1割くらいなんで、まだまだ先は長いです。
712 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 18:23:00 ] 2次形式 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 と g(u, v) = mu^2 + luv + kv^2 があり、 変換 x = pu + qv y = ru + sv により g(u, v) = f(pu + qv, ru + sv) とする。 ここで p, q, r, s は ps - qr = 1 となる有理整数である。 >>401 より m = ap^2 + bpr + cr^2 l = 2apq + b(ps + qr) + 2crs k = aq^2 + bqs + cs^2 である。 ここで、行列 (p, q)/(r, s) (この記法に関しては>>196 を参照)が (1, q)/(0, 1) の場合を考える。 つまり、p = 1, r = 0, s = 1 である。 このとき m = a l = 2aq + b k = aq^2 + bq + c である。 よって2次形式 (a, b, c) (この記法に関しては>>328 を参照) は行列 (1, q)/(0, 1) ∈ SL_2(Z) により (a, l, k) に変換される。 ここで l ≡ b (mod 2a) である。 さらに >>281 より (a, b, c) と (a, l, k) の判別式は同じである。
713 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 18:24:13 ] >>712 の続き 逆に、2次形式 (a, b, c) と (a, l, k) が同じ判別式 D を持ち、 l ≡ b (mod 2a) とする。 l = b + 2aq となる有理整数 q がある。 D = l^2 - 4ak = b^2 - 4ac だから 4ak = l^2 - b^2 + 4ac = (b + 2aq)^2 - b^2 + 4ac = 4aqb + 4a^2q^2 + 4ac よって k = aq^2 + bq + c よって (a, b, c) は (1, q)/(0, 1) により (a, l, k) に変換される。
714 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 19:03:18 ] 2次形式 (a, b, c) と (a, l, k) が同じ判別式 D を持ち、 l ≡ b (mod 2a) のとき (a, b, c) と (a, l, k) は互いに平行な形式という(Dirichlet)。 >>237 で SL_2(Z) の元 S を S = (1, 1)/(0, 1) で定義した。 z を複素上半平面(>>199 )の点とすると S(z) = z + 1 であった (>>237 )。 >>712 と >>713 より2次形式 (a, b, c) と (m, l, k) が互いに 平行な形式であるためには (a, b, c)S^n = (m, l, k) となる 有理整数 n が存在することが必要十分である。 ここで、(a, b, c)S^n の記法に関しては>>401 を参照のこと。
715 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 19:46:36 ] 2次形式 (a, b, c) に T = (0, -1)/(1, 0) (>>237 ) を作用させると >>401 より (c, -b , a) となる。 (a, b, c) と (c, -b , a) は互いに相補的な形式という(Dirichlet)。
716 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 21:30:40 ] 命題 m が 2次形式 (a, b, c) により固有に表現される(>>701 )ためには ある有理整数 l, k があり (a, b, c) と (m, l, k) が同値(>>302 ) であることが必要十分である。 証明 m が (a, b, c) により固有に表現されれば、>>702 より ある有理整数 l, k があり (a, b, c) と (m, l, k) が同値になる。 逆に、(a, b, c) と (m, l, k) が同値とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 とおく。 (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) があり、 f(pu + qv, ru + sv) = mu^2 + luv + kv^2 である。 u = 1, v = 0 とすれば、 f(p, r) = m である。 ps - qr = 1 だから gcd(p, r) = 1 である。 よって m は (a, b, c) により固有に表現される。 証明終
717 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/17(土) 21:53:37 ] 命題(Gauss: Disquisitiones, art.154) (a, b, c) を判別式 D の2次形式とし、m ≠ 0 を有理整数とする。 m が (a, b, c) により固有に表現される(>>701 )なら、 D ≡ l^2 (mod 4m) となる有理整数 l が存在する。 証明 m が (a, b, c) により固有に表現されれば、>>716 より ある有理整数 l, k があり (a, b, c) と (m, l, k) が同値になる。 D = l^2 - 4mk (>>281 ) だから D ≡ l^2 (mod 4m) である。 証明終
718 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/18(日) 12:20:51 ] 2次形式 (a, b, c) が σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) により (m, l, k) に変換されるとする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 とおく。 f(pu + qv, ru + sv) = mu^2 + luv + kv^2 である。 >>401 より m = ap^2 + bpr + cr^2 l = 2apq + b(ps + qr) + 2crs k = aq^2 + bqs + cs^2 である。 よって m = f(p, r) である。 つまり、(a, b, c)σ = (m, l, k) となる σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) に対して、 不定方程式 m = ax^2 + bxy + cy^2 の固有な解 (p, r) が得られる。 (a, b, c) をある (m, l', k') に移し、解 (p, r) を与える変換は 無数にある。このとき l', k' の取り得る値は任意ではありえない。 l', k' がどの程度の自由度をもつかを調べよう。 言い換えると、(a, b, c) が (p, q')/(r, s') ∈ SL_2(Z) により (m, l', k') に変換されるとき、l', k' と l, k の関係を調べよう。
719 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/18(日) 13:34:22 ] >>718 の続き ps - rq = 1 ps' - rq' = 1 だから p(s'- s) - r(q'- q) = 0 よって p(s' - s) = r(q' - q) p と r は素だから q' - q = pt となる有理整数 t がある。 p(s' - s) = rpt より s' - s = rt である。 l = (2ap + br)q + (bp + 2cr)s l' = (2ap + br)q' + (bp + 2cr)s' だから l' - l = (2ap + br)pt + (bp + 2cr)rt = 2a(p^2)t + 2brpt + 2c(r^2)t = 2mt である。 よって (m, l, k) と (m, l', k') は互いに平行な形式(>>714 )である。 (m, l', k') の判別式は (a, b, c) の判別式 D と同じだから(>>281 ) D = (l')^2 - 4mk' より k' は (a, b, c) と l' により決まる。
720 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/19(月) 20:09:00 ] 33
721 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/19(月) 20:10:00 ] 34
722 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/19(月) 20:11:00 ] 33
723 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/19(月) 20:12:00 ] 32
724 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/19(月) 20:13:00 ] 31
725 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/19(月) 20:14:00 ] 30
726 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/23(金) 09:19:00 ] 29
727 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/23(金) 09:20:00 ] 28
728 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/23(金) 09:21:00 ] 27
729 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/23(金) 09:22:00 ] 26
730 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/23(金) 09:23:00 ] 25
731 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/23(金) 09:24:00 ] 24
732 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 14:10:01 ] 補題 (a, b, c) を判別式 D の2次形式とし、2次形式 (a, b, c) が σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) により (m, l, k) に 変換されるとする。 さらに τ = (p, q')/(r, s') ∈ SL_2(Z) で (a, b, c)τ = (m, l, k) とする。 このとき σ = τ である。 証明 >>719 において l' - l = 2mt だが l= l' だから t = 0 である。 よって q = q', s = s' である。 つまり σ = τ である。 証明終
733 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 14:23:54 ] ax^2 + bxy + cy^2 を判別式 D の2次形式とし、 m ≠ 0 を有理整数とする。 m = ax^2 + bxy + cy^2 の固有な解(>>701 )の全てを求めるには 以下のようにする。 (1) 合同方程式 x^2 ≡ D (mod 4m) に解があるかないかを調べる。 解が無ければ、m は判別式 D のどんな2次形式に よっても固有に表現されない(>>717 )。 (2) x^2 ≡ D (mod 4m) の解の集合を、mod 2m で類別した集合を S とする。 S の各類から代表 l をとる。l^2 ≡ D (mod 4m) だから l^2 - D = 4mk となる有理整数 k がある。 2次形式 (m, l, k) の判別式は D である。 (a, b, c) と (m, l, k) が SL_2(Z) の作用(>>403 )で同値かどうかを 調べる。 同値でないなら l の属す S の類に対応する m = ax^2 + bxy + cy^2 の 固有な解は無い(>>716 , >>718 , >>719 )。 同値なら (a, b, c)σ = (m, l, k) となる σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) を全て求める。 このとき (p, r) が m = ax^2 + bxy + cy^2 の固有な解である。 >>732 より、このようなσで相異なるものは相異なる解を与える。
734 名前:132人目の素数さん [2007/02/24(土) 15:25:57 ] 質問です。 3以上の偶数は素数ではありません。 でも2で割ると素数になる偶数はたくさん存在すると思います。 たとえば6、10、14、・・などがその例です。 2で割ると素数になるような偶数は無限個存在するのですか? プログラムを組んでみたところ、無限個存在しそうな予感がしているのですが・・。
735 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/24(土) 15:45:38 ] >>734 かなり寒い質問だな。数学を知らないと見える。 素数が無限個あるならば、その一つ一つを二倍した数の全体は無限個だ。
736 名前:132人目の素数さん [2007/02/24(土) 15:49:26 ] >>735 レスありがとうございます。 一応数学科のものです・・。 その論法だと穴があると思います。 定義域が無限集合でも、値域が有限になる例はいくらでもあります。
737 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/24(土) 15:58:58 ] >>736 ものを神秘化し過ぎている。 単に一つ一つを検証すれば良いのだ。 数学的に表現するなら、「任意の素数の二倍が求める物で、異なる物の二倍は異なる」と言えば良い。
738 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 18:31:52 ] >>733 において、合同方程式 x^2 ≡ D (mod 4m) を解くのは比較的簡単 であるから、問題となるのは以下の2点である。 (1) 判別式 D の2次形式 (a, b, c) と (m, l, k) が与えられたとき それらが同値か否かを判定せよ。 (2) 同値なら (a, b, c)σ = (m, l, k) となる σ ∈ SL_2(Z) を全て求めよ。
739 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 18:39:00 ] >>738 において (a, b, c)σ = (m, l, k) (a, b, c)τ = (m, l, k) となる σ, τ ∈ SL_2(Z) があれば (a, b, c)σ = (a, b, c)τ より (a, b, c)τσ^(-1) = (a, b, c) ε = τσ^(-1) とおけば (a, b, c)ε = (a, b, c) で τ = εσ である。 従って、>>738 の (2) は次の二つの問題に分解される。 (a) (a, b, c)σ = (m, l, k) となる σ ∈ SL_2(Z) を一つ求めよ。 (b) (a, b, c)ε = (a, b, c) となる ε ∈ SL_2(Z) を全て求めよ。
740 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 20:29:22 ] 補題 (a, b, c) と (m, l, k) を判別式 D の2次形式とする。 (a, b, c) と (m, l, k) が同値であるためには、 gcd(a, b, c) = gcd(m, l, k) で (a', b', c') と (m', l', k') が同値であることが必要十分である。 ここで a' = a/gcd(a, b, c), b' = b/gcd(a, b, c), c' = c/gcd(a, b, c) m' = m/gcd(m, l, k), l' = l/gcd(m, l, k), k' = k/gcd(m, l, k) である。 証明 (a, b, c) と (m, l, k) が同値であるとする。 (a, b, c)σ = (m, l, k) とする。 ここで σ = (p, q)/(r, s) ∈ SL_2(Z) である。 >>282 より gcd(a, b, c) = gcd(m, l, k) である。 d = gcd(a, b, c) とする。 f(x, y) = ax^2 + bxy + cy^2 g(x, y) = mx^2 + lxy + ky^2 f '(x, y) = a 'x^2 + b 'xy + c 'y^2 g '(x, y) = m 'x^2 + l 'xy + n 'y^2 とおく。 f(x, y) = df '(x, y), g(x, y) = dg '(x, y) である。 f(px + qy, rx + sy) = g(x, y) だから df '(px + qy, rx + sy) = dg '(x, y) よって f '(px + qy, rx + sy) = g '(x, y) 従って、(a', b', c') と (m', l', k') は同値である。 逆の証明も同様である。 証明終
741 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 20:55:25 ] >>240 より>>738 の問題は原始的(>>279 )な2次形式に限ってよい。 >>738 の問題は、判別式 D が負の場合のほうが正の場合より簡単 なので、まず D が負の場合を考えることにする。 (a, b, c) と (m, l, k) が同値なら (-a, -b, -c) と (-m, -l, -k) も同値であるから、 a > 0 となる (a, b, c), つまり正定値(>>293 )の2次形式のみ 扱えばよい。 つまり、D が負の場合は >>738 の問題を正定値(>>293 )の原始的 な2次形式に限ってよい。 しかし、この場合は次に説明するように >>738 の問題は既に 解けている。
742 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 20:57:15 ] 訂正 >>741 >>>240 より>>738 の問題は原始的(>>279 )な2次形式に限ってよい。 >>740 より>>738 の問題は原始的(>>279 )な2次形式に限ってよい。
743 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 21:21:06 ] >>738 の問題を正定値で原始的2次形式の場合に解くことを考える。 問題 (1) 判別式 D < 0 の正定値で原始的な2次形式 (a, b, c) と (m, l, k) が与えられたとき、それらが同値か否かを判定せよ。 さらに、同値なら (a, b, c) を (m, l, k) に変換する1次変換 を求めよ。 解答 (a, b, c) を簡約2次形式(>>407 , >>408 )に変形する。 これには、まず >>335 のアルゴリズムを使って、 広義簡約2次形式(>>409 , >>410 )に変形する。 次に、>>337 のアルゴリズムを使って、これを簡約2次形式に 変形する。 これを (a', b', c') とする。 (a, b, c) を (a', b', c') に変形する1次変換 σ はこの アルゴリズムにより容易にわかる。 同様に、(m, l, k) を簡約2次形式 (a', b', c') に変形する。 (m, l, k) を (m', l', k') に変形する1次変換を τ とする。 (a', b', c') ≠ (m', l', k') なら (a, b, c) と (m, l, k) は 同値でない。 (a', b', c') = (m', l', k') なら (a, b, c) と (m, l, k) は 同値であり (a, b, c)σ = (m, l, k)τ だから (a, b, c)στ^(-1) = (m, l, k) である。
744 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/24(土) 21:55:02 ] >709 > くんまさん 今までの全部まとめた本出す予定ありますか? >711 > 今はその予定はありません。全部書き終わったら、そのとき考えます。 > しかし、今まで書いた部分は全体の1割くらいなんで、まだまだ先は長いです。 Kummerさん: 「1割」でもかなりな量ですなあ。今のペースだと2-3年かかりまっせ。 この本↓みたいな精神で今までのを纏めると皆の役に立つんじゃないでしょうかね。 www.amazon.com/Algebraic-Number-Theory-Fermats-Theorem/dp/1568811195 御一考をお願いします。
745 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/24(土) 22:31:01 ] >>744 本にするヒマがあったらこれを書き続けたいですね。 大体、今まで書いたことなんて本にするようなもんじゃないですよ。 重要なことが抜けてるんで。 まだ、2次体論の佳境に入ってないんです。
746 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 00:40:30 ] >>744 サンキュー その本は何かとアマゾン込むへ飛んだ そして別の欲しかった本をマーケットプレイスで 見つけて即注文 今までアマゾンjpになければ諦めていた そうかcomもチェックする必要があることに気付いた
747 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 00:53:07 ] >そうかcomもチェックする必要があることに気付いた 俺は最初に amazon.com でチェックする。 amazon.jp って配達がとんでもなく遅い場合がある。 com もそういう場合があるが頻度は少ないように思う。
748 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 01:30:55 ] ということは、仏語の本は アマゾンのfrか? あしたから検索しよっと
749 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 01:49:41 ] 問題 (2) 判別式 D < 0 の正定値で原始的な2次形式 (a, b, c) と (m, l, k) が同値なら (a, b, c)σ = (m, l, k) となる σ ∈ SL_2(Z) を全て求めよ。 解答 >>743 より (a, b, c)σ = (m, l, k) となる一つの σ ∈ SL_2(Z) が 求まる。 >>739 より (a, b, c)ε = (a, b, c) となる ε ∈ SL_2(Z) を すべて求めればよい。 I((a, b, c)) = { ε ∈ SL_2(Z) ; (a, b, c)ε = (a, b, c) } とおく。 >>405 より写像 φ : PF(D) → HQ(D) は左 SL_2(Z)-集合としての同型射(>>399 )である。 φ((a, b, c)) = (-b + √D)/2a である。 >>267 より (-b + √D)/2a が √(-1) と同値つまり、 (a, b, c) が (1, 0, 1) と同値のとき I((a, b, c)) = {±1, ±T} である。 ここで T = (0, -1)/(1, 0) (-b + √D)/2a が (-1 + √(-3))/2 と同値つまり、 (a, b, c) が (1, 1, 1) と同値のとき I((a, b, c)) = {±1, ±TS, ±(TS)^2} ここで S = (1, 1)/(0, 1) したがって TS = (0, -1)/(1, 1) (a, b, c) が (1, 0, 1) とも (1, 1, 1) とも同値でないとき I((a, b, c)) = {±1}
750 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 07:51:00 ] 29
751 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 07:52:00 ] 30
752 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 07:53:00 ] 29
753 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 07:54:00 ] 28
754 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 07:55:00 ] 27
755 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/25(日) 07:56:00 ] 26
756 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 10:06:22 ] >>733 , >>741 , >>742 , >>743 , >>749 により判別式 D が負の場合の m = ax^2 + bxy + cy^2 の固有な解の全てを求める問題は原理的には 解けたことになる。 さらに >>710 により固有でない解も求まる。
757 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 10:37:28 ] 以上の結果の簡単な応用の一例として、p を奇素数としたとき p = x^2 + y^2 を解くことを考えてみよう。 2次形式 (1, 0, 1) = x^2 + y^2 の判別式 D は -4 だから、 判別式が -4 の簡約2次形式(>>407 , >>408 )を求める。 >>408 より判別式 -4 の (a, b, c) が簡約2次形式であるためには |b| ≦ a ≦ c であり、 |b| = a または a = c のときは b ≧ 0 となることが必要十分である。 >>341 と同様にして a ≦ √(|D|/3) D = -1 だから a ≦ 1 である。 a ≠ 0 だから a = 1 である。 よって |b| ≦ 1 である。 4ac = b^2 + |D| = b^2 + 4 よって 4c = b^2 + 4 よって b^2 = 1 ではありえない。 よって b = 0 である。 よって c = 1 である。 以上から判別式が -4 の簡約2次形式は (1, 0, 1) のみである。 (続く)
758 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 11:00:23 ] >>757 の続き p = x^2 + y^2 に解があればそれは固有である。 よって >>717 より l^2 ≡ -4 (mod 4p) となる有理整数 l が存在する。 l^2 ≡ 0 (mod 4) だから l は偶数である。 l = 2t とすると t^2 ≡ -1 (mod p) である。 よって (-1/p) = 1 である。 ここで (-1/p) は Legendre の記号(前スレ3の746)である。 逆に (-1/p) = 1 なら l^2 ≡ -4 (mod 4p) となる有理整数 l が存在する。 l^2 + 4 = 4pk とする。 p は奇素数だから l とは互いに素である。 よって2次形式 (p, l, k) は正定値かつ原始的で判別式は -4 である。 >>757 より、これは (1, 0, 1) と同値である。 よって (1, 0, 1)σ = (p, l, k) となる σ ∈ SL_2(Z) がある。 σ = (u, q)/(r, s) とする。 >>749 より (1, 0, 1)ε = (1, 0, 1) となる ε ∈ SL_2(Z) は {±1, ±T} である。ここで T = (0, -1)/(1, 0) である。 よって (1, 0, 1)τ = (p, l, k) となる τ は σ, -σ, Tσ, -Tσ の四個である。 即ち (u, q)/(r, s), (-u, -q)/(-r, -s), (-r, -s)/(u, q), (r, s)/(-u, -q) である。 よって p = x^2 + y^2 の解は (u, r), (-u, -r), (-r, u), (r, -u) の4個である。
759 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 11:11:49 ] 訂正 >>757 >>>341 と同様にして >a ≦ √(|D|/3) >D = -1 だから >a ≦ 1 である。 >>341 と同様にして a ≦ √(|D|/3) D = -4 だから a ≦ 1 である。
760 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 16:03:42 ] >>758 >よって p = x^2 + y^2 の解は (u, r), (-u, -r), (-r, u), (r, -u) >の4個である。 これは明らかに間違いである。 修正は後でする(今検討中w)。
761 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 20:40:48 ] 訂正 >>758 >よって p = x^2 + y^2 の解は (u, r), (-u, -r), (-r, u), (r, -u) >の4個である。 よって (p, l, k) に対応する p = x^2 + y^2 の解は (u, r), (-u, -r), (-r, u), (r, -u) の4個である。 他方 x^2 ≡ -4 (mod 4p) の別の解 -l には 2次形式 (p, -l, k) が対応する。 R = (1, 0)/(0, -1) とすると (p, l, k)R = (p, -l, k) (1, 0, 1)R = (1, 0, 1) である。 よって (1, 0, 1)RσR = (p, l, k)R = (p, -l, k) U = RσR とおく。 det(U) = det(σ) = 1 だから U ∈ SL_2(Z) である。 U = (u, -q)/(-r, s) である。 >>758 と同様に (1, 0, 1)τ = (p, -l, k) となる τ は U, -U, TU, -TU の四個である。 即ち (u, -q)/(-r, s),(-u, q)/(r, -s),(r, -s)/(u, -q),(-r, s)/(-u, q) である。 よって (p, -l, k) に対応する p = x^2 + y^2 の解は (u, -r), (-u, r), (r, u), (-r, -u) の4個である。 >>758 と合わせて p = x^2 + y^2 の解は (u, r),(-u, -r),(-r, u),(r, -u),(u, -r),(-u, r),(r, u),(-r, -u) の8個である。
762 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 20:46:27 ] p を奇素数とする。 >>163 より (-1/p) = (-1)^((p-1)/2) だから (-1/p) = 1 であるためには p ≡ 1 (mod 4) が必要十分である。 これと、>>757 , >>758 , >>761 より以下の定理が得られる 定理(Fermat-Euler) p を奇素数とする。 p = x^2 + y^2 が有理整数解を持つためには p ≡ 1 (mod 4) が必要十分である。 さらに、このとき解は順序と符号を除いて一つである。
763 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/25(日) 20:47:49 ] >>762 の定理は Fermat により明言され Eulerにより証明された。
764 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/26(月) 11:10:00 ] 29
765 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/26(月) 11:11:00 ] 28
766 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/26(月) 11:12:00 ] 27
767 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/26(月) 11:13:00 ] 26
768 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/26(月) 11:14:00 ] 25
769 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/02/26(月) 11:15:00 ] 24
770 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/02/26(月) 21:11:27 ] >>367 の原始解の定義は >>701 の固有な解と同じものだった。 今後、固有な解に統一する。 さらに、>>717 は >>368 で証明してあった。
771 名前:132人目の素数さん [2007/02/26(月) 21:17:03 ] /⌒ヽ, ,/⌒丶、 ,- `,ヾ / ,;;iiiiiiiiiii;、 \ _ノソ´ iカ / ,;;´ ;lllllllllllllii、 \ iカ iサ' ,;´ ,;;llllllllllllllllllllii、 fサ !カ、._ ,=ゞiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii!! __fカヘ. / `ヾサ;三ミミミミミK彡彡彡ミヾサ`´ 'i、 i' ,._ΞミミミミミミI彡/////ii_ | | ;カ≡|ヾヾヾミミミミミN、//巛iリ≡カi | | iサ |l lヾヾシヾミミミミG|ii//三iリ `サi | | ,カ ,カll|l l lヾリリリリリ川川|爪ミミiリllカ、カi | | ;iサ,サ |l l l リリ川川川川|爪ミミiiリ サi サi | | iカ ;カ, |l l リリリリ川川川川l爪ミミilリ ,カi カi | | iサ ;サ, |リ リリ川川川川川l爪ミミiリ ,サi サi | | iサ ;iカ, | リ彡彡川川川川|爪ミミiリ ,カi :サ、 | ,i厂 iサ, |彡彡彡彡ノ|川川|爪ミミリ ,サi `ヘ、 ,√ ,:カ, |彡彡彡彡ノ川川|ゞミミミリ ,カi `ヾ ´ ;サ, |彡彡彡彡川川リゞミミリ ,サi ;カ, |彡彡彡彡リリリミミミシ ,カi ,;サ, |彡彡ノリリリリミミミシ ,サi ;メ'´ i彡ノリリリリリゞミミシ `ヘ、 ;メ ヾリリリリノ巛ゞシ `ヘ、 ;メ ``十≡=十´ `ヘ、 ┃ ┃ | | / \ / \ / \
772 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/03/01(木) 04:09:00 ] 27
773 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/03/01(木) 04:10:00 ] 26
774 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/03/01(木) 04:11:00 ] 25
775 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/03/01(木) 04:12:00 ] 24
776 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/03/01(木) 04:13:00 ] 23
777 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/03/01(木) 04:14:00 ] 22
778 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 12:28:08 ] >>733 において合同方程式 x^2 ≡ D (mod 4m) の解法が必要であった。 この問題について考える。 m > 1 を有理整数で、m = (p_1)^(k_1)...(p_r)^(k_r) を m の素因数分解とする。 a を有理整数として合同方程式 x^2 ≡ a (mod m) を考える。 この解は、明らかに各 i に対して x^2 ≡ a (mod (p_i)^(k_i)) の 解でもある。 逆に各 i に対して x^2 ≡ a (mod (p_i)^(k_i)) の解を b_i とする。 中国式剰余定理(前スレ1の341)より c ≡ b_i (mod (p_i)^(k_i)) となる c ∈ Z がある。 c^2 ≡ a (mod (p_i)^(k_i)) だから c^2 ≡ a (mod m) である。 以上から x^2 ≡ a (mod m) の解の mod m の個数を N とし、 x^2 ≡ a (mod (p_i)^(k_i)) の解の mod (p_i)^(k_i) の個数を N_i とすると、 N = Π N_i となる(>>100 )。 以上から x^2 ≡ a (mod m) は m が素数 p のべき p^n のときに 解ければよい。 この問題は a が p と素なときが本質的であるが、そのときは 環 Z/p^nZ の可逆元のなす群 (Z/p^nZ)^* (>>516 ) の構造と関係する。 よって、この問題を解く前に (Z/p^nZ)^* の構造について述べる。
779 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 13:17:04 ] (Z/p^nZ)^* の構造定理の証明に入る前に有限アーベル群について 復習しておく(これは後にも必要になる)。 G を位数 N の有限アーベル群とする。 N = (p_1)^(k_1)...(p_r)^(k_r) を N の素因数分解とする。 このとき各 p_i に対して G の位数 (p_i)^(k_i) の部分群 G_i が 唯一つ存在し、G は G_i の直積となる。 この事実は、有限群論のSylowの定理からも出るし、アーベル群の 基本定理からも出る。 さらに、単項イデアル環上の有限生成束縛加群の一般論からも出る。 これ等について説明しよう。
780 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 13:42:03 ] Sylowの第一定理を証明する前に簡単な定義をする。 G を群とする。 G の元 g に対して G から G への写像 σ(g) を σ(g)(x) = gxg^(-1) で定義する。 この σ により G は G-集合 (>>388 ) となる。 G を σ により G-集合と見たときの軌道(>>390 )を共役類と呼ぶ。 ひとつの軌道に属す2元は互いに共役という。 x ∈ G のとき x の安定化部分群(>>392 )を N(x) と書き、 x の正規化群と呼ぶ。 N(x) = {g ∈ G;gxg^(-1) = x } である。 G が有限群のとき x の属す共役類の元の個数は [G : N(x)] である (>>394 )。
781 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 14:04:15 ] G を群とする。 G の元 x に共役(>>780 )な元が x のみのとき x を自己共役元という。 G の自己共役元全体 Z は G の正規部分群である。 Z を G の中心と呼ぶ。
782 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 14:08:49 ] G を有限群とする。G の中心(>>781 )を Z とする。 G の共役類(>>780 ) C で |C| > 1 となるもの全体を C_1, ..., C_r とする。 h_i = |C_i| とおく。 このとき、 |G| = |Z| + h_1 + ... + h_r である。 この等式を G の類等式と呼ぶ。
783 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 15:44:44 ] 補題 G を有限アーベル群とする。 p を素数とし、 G のすべての元の位数は p のべきだとする。 このとき G の位数も p のべきである。 証明 G の位数に関する帰納法を使う。 x を G の位数 p の元とする。 x で生成される G の部分群を H とする。 G/H の各元の位数は p のべきだから G/H は帰納法の仮定を満たす。 よって |G/H| は p のべきである。 よって |G| も p のべきである。 証明終
784 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 15:45:40 ] 補題 G を有限アーベル群とする。 |G| = (p^n)(q^m) とする。 ここで p と q は素数で p ≠ q である。 n ≧ 1, m ≧ 1 である。 このとき G には位数がそれぞれ p と q の元が存在する。 証明 G には位数 p の元が存在しないと仮定する。 これから矛盾を導けばよい。 G の任意の元 x ≠ 1 の位数の素因数は p または q である。 しかし仮定より x の位数は p では割れない。 よって x の位数は q のベキである。 >>783 より G の位数は q のベキであるが、これは仮定に反する。 証明終
785 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 16:12:34 ] 補題(Burnside) G を有限群とする |G| = (p^m)q とする。 ここで p と q は素数で p ≠ q である。 m ≧ 1 である。 さらに G の中心 K に位数 q の元があるとする。 このとき K は位数 p の元ももつ。 証明 G の共役類(>>780 ) C で |C| > 1 となるもの全体を C_1, ..., C_r とする。 h_i = |C_i| とおく。 このとき、G の類等式は |G| = |K| + h_1 + ... + h_r である(>>782 )。 各 C_i から代表元 x_i をとる。 h_i = [G : N(x_i)] である(>>780 )。 K ⊂ N(x_i) で |K| は仮定により q で割れるから h_i は p のベキ である。 よって G の類等式から |K| は p で割れる。 よって >>784 より K は位数 p の元をもつ。 証明終
786 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 16:36:42 ] 命題(Sylowの第一定理) G を位数 N の有限群とする。 p を素数とし、p^m が N を割るとする。ここで m ≧ 1 である。 このとき G の部分群 H で |H| = p^m となるものが存在する。 証明 G の位数に関する帰納法を使う。 G の中心(>>781 )を K とする。 G の共役類(>>780 ) C で |C| > 1 となるもの全体を C_1, ..., C_r とする。 G の類等式は |G| = |K| + |C_1| + ... + |C_r| である。 |K| = 1 なら、ある C_i に対して |C_i| は p で割れない。 x ∈ C_i のとき |C_i| = [G : N(x)] である(>>780 )。 よって N(x) は p^m で割れる。 帰納法の仮定から N(x) の部分群 H で |H| = p^m となるものが 存在する。 よって |K| > 1 と仮定する。 K に位数 p の元 x があるなら x で生成される部分群を L とすると、 L は G の正規部分群で |G/L| は p^(m-1) で割れる。 帰納法の仮定から G/L の部分群で位数が p^(m-1) となるものがある。 よって G の部分群で位数が p^m となるものがある。 (続く)
787 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 16:41:42 ] >>786 の証明の続き。 q を p と異なる素数とし、K に位数 q の元 y があるとする。 このとき y で生成される部分群を M とすると、 |G/M| は p^m で割れるから、帰納法の仮定から G/M は位数 p^m の 部分群をもつ。 よって G は位数 (p^m)q の部分群 T をもつ。 G ≠ T なら T に帰納法の仮定を使えて、T は位数 p^m の部分群 H を もつ。 残るのは G = T 即ち |G| = (p^m)q の場合である。 >>785 より K は位数 p の元 z をもつ。 これから前と同様にして G は位数 p^m の部分群 H をもつ。 証明終
788 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 16:54:01 ] >>786 の証明は Burnside の Theory of groups of finite order から 借りた。 Sylowの第二、第三定理もあるがさしあたって必要ないので 今は述べないことにする。 >>786 の証明はアーベル群の基本定理を使えばもっと簡単になる。 それは後で述べる。
789 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 17:08:47 ] >>779 で述べた命題を >>786 を使って証明する。 命題 G を位数 N の有限アーベル群とする。 N = (p_1)^(k_1)...(p_r)^(k_r) を N の素因数分解とする。 このとき各 p_i に対して G の位数 (p_i)^(k_i) の部分群 G_i が 唯一つ存在し、G は G_i の直積となる。 証明 >>786 より G_i の存在がわかる。 G_i の元の位数は p_i のベキだから G_1 × ... × G_r は直積 (アーベル群だから直積と直和は同じもの)である。 位数を比較して G = G_1 × ... × G_r となる。 これから各 G_i は G の元で位数が p_i のベキとなるもの全体で あることがわかる。よって G_i は一意に定まる。 証明終
790 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 17:15:39 ] G を有限群とする。 p を |G| を割る素数とし、 |G| = (p^m)r とする。 ここで r と p は素である。 >>786 より G は位数 p^m の部分群をもつ。 このような部分群を p-Sylow 部分群と呼ぶ。
791 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 17:29:50 ] 命題(Cauchy の定理) G を有限群とする。 p を |G| を割る素数とすると G は位数 p の元をもつ。 証明 >>786 より G は位数 p の部分群 H をもつ。 H の 1 以外の元の位数は p である。 証明終
792 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 17:58:37 ] 前スレ1の669を引用する。 命題 A を単項イデアル整域、M を A 上有限生成の捩れ加群とする。 A の素元 p に対して M(p) = {x ∈ M; (p^n)x = 0 となる n > 0 がある} とおく。M = ΣM(p) (直和) となる。ここで p は、Ann(M) を割る素元 全体を動く。
793 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 18:00:06 ] >>789 は >>792 と >>783 から直ちに出る。
794 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2007/03/03(土) 18:02:49 ] >788 >>786 (Sylow's theorem)の証明は >>Burnside の Theory of groups of finite order から借りた。 Wielandtの(帰納法を使用しない)証明の方が、分かりやすいと思うんが… ま、手段であって目的ではないから良いのかな。
795 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 18:10:40 ] 命題(Cauchy の定理(>>791 )のアーベル群版) G を有限アーベル群とする。 p を |G| を割る素数とすると G は位数 p の元をもつ。 これは、Sylowの第一定理(>>786 )を使わなくても >>789 から 直ちに出る。>>789 は >>792 から出るからやはりSylowの第一定理 はいらない。 逆に、この命題からSylowの第一定理が出る。 それを次に述べる。
796 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 18:22:08 ] >>786 (Sylowの第一定理)の>>795 を使った証明 G の位数に関する帰納法を使う。 G の中心(>>781 )を K とする。 G の共役類(>>780 ) C で |C| > 1 となるもの全体を C_1, ..., C_r とする。 G の類等式は |G| = |K| + |C_1| + ... + |C_r| である。 ある C_i に対して |C_i| は p で割れないとする。 x ∈ C_i のとき |C_i| = [G : N(x)] である(>>780 )。 よって N(x) は p^m で割れる。 帰納法の仮定から N(x) の部分群 H で |H| = p^m となるものが 存在する。 よって、この場合は定理は証明された。 次に、すべての |C_i| は p で割れるとする。 このとき上の類等式から |K| は p で割れる。 K はアーベル群だから >>795 より K は位数 p の元をもつ。 この元で生成される K の部分群を L とする。 L は G の正規部分群で |L| = p だから |G/L| は p^(m-1) で割れる。 よって帰納法の仮定から G/L に位数 p^(m-1) の部分群が存在する。 よって G に位数 p^m の部分群が存在する。 証明終
797 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 18:25:38 ] アーベル群の基本定理からも>>789 したがって >>795 が出ることは明らかだろう。
798 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 18:30:41 ] >>797 >アーベル群の基本定理からも>>789 したがって >>795 が出ることは >明らかだろう。 しかし >>789 の証明にアーベル群の基本定理をもちだすのはやや 大げさだろう。実際、>>789 は >>792 からすぐ出るが >>792 は前スレ1の669でみたように簡単に証明される。
799 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 18:43:20 ] >>794 Burnsideの証明を改良した >>796 は十分わかりやすいと思うけど。 これは >>792 を使っているが、>>792 は単項イデアル整域上の 有限生成捩れ加群の基本であり、初等代数では常識と言えるもの。 証明も簡単だし。
800 名前:Kummer ◆g2BU0D6YN2 [2007/03/03(土) 19:56:51 ] 命題 G を位数 N の有限アーベル群とする。 N の任意の約数 n ≧ 1 に対して x^n = 1 となる G の元 x の個数は n 以下だとする。 このとき G は巡回群である。 証明 >>789 より N が素数 p のベキ p^m の場合に証明すればよい。 G の元 g ≠ 1 の位数を p^s とする。 g で生成される G の部分群を H とする。 |H| = p^s である。 H の任意の元 h に対して h^(p^s) = 1 となるから 仮定より x^(p^s) = 1 の解は H の元のみである。 G = H なら G は巡回群である。 G ≠ H なら H に含まれない G の元 y がある。 y^(p^s) ≠ 1 だから y の位数は p^s より大きい。 G が y で生成されなければ、同様にして y の位数より大きい位数 の元がある。 このような手続きを繰り返せば G の生成元が必ず見つかる。 証明終