話をぶり返すようだけど、>>461の証明に使われた位数 n の群は アーベル群でなくても次の性質をもてばいい。
(*) 素数べき p^m が n を割れば G は位数 p^m の正規部分群をもつ。
これから G の任意のSylow部分群は正規なことがわかる。 だから、G はべき零群である。逆に、べき零群は (*) の性質を持つ。
可解群の組成剰余群も素数位数の群だけど、この性質を持つとは 限らない。
563 名前:208 [2005/10/27(木) 10:18:12 ]
この際だから、有理整数環 Z で素因子分解の一意性が成立つことの (ほぼ)普通の証明しよう。
a と b が Z の元のとき a と b で生成されるイデアルを (a, b) と書く。つまり、(a, b) = Za + Zb である。 元の数がいくつになっても同様。
補題 (a, b) = (a, b + at) となる。 ここで、a, b, t は任意の有理整数
証明 明らか。
564 名前:208 [2005/10/27(木) 10:19:18 ]
命題 a と b が Z の元のとき (a, b) = (r) となる r ∈ Z がある。
証明 a ≧ 0, b ≧ 0 と仮定してよい。 a と b の最大値を max(a, b) と書く。 max(a, b) に関する帰納法を使う。 a = b ならこの命題は明らかだから、b > a とする。 b = aq + r, 0 < r < a となる q, r ∈ Z がある。 補題(>>563)より、(a, b) = (a, r) となる。max(a, r) = a だから、帰納法の仮定より (a, r) = (s) となる s ∈ Z がある。 証明終
565 名前:208 [2005/10/27(木) 10:20:39 ]
命題 p を素数とし、a ≠ 0 (mod p) とする。 このとき、a は mod p で可逆である。 つまり、ax = 1 (mod p) となる x がある。
証明 (a, p) = (r) となる r > 0 がある(>>564)。 p は素数だから r = 1 でなければならない。 つまり、ax + py = 1 となる x, y がある。 よって、ax = 1 (mod p) 証明終
566 名前:208 [2005/10/27(木) 10:21:26 ]
命題 p を素数とし a ≠ 0 (mod p) かつ ab = 0 (mod p) とすると、 b = 0 (mod p) となる。
証明 Z/pZ の加法群は位数 p の群であるから単純群である。 よって pZ ⊂ I ⊂ Z となる non-trivial なイデアル I は 存在しない。よって、Z/pZ は体である。 証明終
573 名前:208 [2005/10/27(木) 12:01:44 ]
命題 φ: A → B を環の射、I = Ker(φ) とする。 f: Spec(B) → Spec(A) をφから誘導された射とする。 B が A 上整なら、Im(f) = V(I) である。
証明 A/I ⊂ B と見なせるから、V(I) ⊂ Im(f) は、>>520 殻出る。 p ∈ Spec(A) - V(I) とする。 s ∈ I - p となる元 s がある。φ(s) = 0 だから、 S = A - p としたとき、φ(S) は 0 を含む。 よって、B_p = 0 である。よって、f^(-1)(p) は空(>>539)。 証明終
574 名前:208 [2005/10/27(木) 12:12:23 ]
命題 A, B を環で、A ⊂ B とし、B は A 上整とする。 p ∈ Spec(A), q_1, q_2 ∈ Spec(A) で、 q_1 ⊂ q_2 かつ p = q_1 ∩ A = q_2 ∩ A とする。 このとき、q_1 = q_2 である。
補題 K を無限体、X を K-加群、V, W_1, ... , W_n をその部分加群、 V ⊂ W_1 ∪ ... ∪ W_n とする。 x, y ∈ V なら、x, y ∈ W_i となる i がある。
証明 t ∈ K とすると、x + ty ∈ W_i となる i がある。 t にこの i を対応させることにより、集合としての写像 K → {1, ..., n} が得られる。K は無限体だから、この写像は 単射ではありえない。よって、x + ty = x + sy ∈ W_i となる t, s ∈ K で t ≠ s となるものがある。 よって、(t - s)y ∈ W_i となる。これから、y ∈ W_i となり、 x ∈ W_i ともなる。 証明終
583 名前:208 [2005/10/27(木) 16:23:10 ]
命題 K を無限体、X を K-加群、V, W_1, ... , W_n をその部分加群、 V ⊂ W_1 ∪ ... ∪ W_n とする。 このとき、V ⊂ W_i となる i が存在する。
証明 V が W_n に含まれないとする。x ∈ V - W_n をとる。 y ∈ V を任意にとる。補題(>>582)より x, y ∈ W_i となる i があるが i = n では有り得ない。よって、V ⊂ W_1 ∪ ... ∪ W_(n-1) となる。 帰納法より、証明が終わる。 証明終
系 無限体上のベクトル空間はその真の部分空間の有限個の和集合には ならない。
584 名前:208 [2005/10/27(木) 16:24:38 ]
命題 K を無限体、L/K を体の拡大とする。L/K の中間体が有限個なら L = K(c) となる元 c がある。
定義 K を体、L/K を K の代数拡大体とする。 L の任意の元α の K 上の最小多項式が K において1次式の 積に完全に分解するとき、L/K を準ガロワ(quasi-Galois)拡大という。 因みにquasiは強いてカタカナで書くと英語読みでクェイザイと発音する。 L/K が準ガロワ拡大で分離的なとき L/K をガロワ拡大という。 準ガロワ拡大は昔(今も?)は正規拡大と呼んでいたが、Bourbaki流の 準ガロワのほうがよいと思う。
(F) N_1, N_2 ∈ S なら N_1 ∩ N_2 ⊃ N_3 となる N_3 ∈ S がある。
x ∈ G に対して、{xN; N ∈ S} を x の基本近傍系と定義することにより、 G は位相群となる。
証明 G の部分集合 U が以下の性質(O)を満たすとき、G の開部分集合と 定義する。
(O) x ∈ U なら xN ⊂ U となる N ∈ S が存在する。
G の開部分集合全体が位相を定めることは、条件 (*) より明らか。 y ∈ xN なら、yN = xN だから xN は開部分集合である。 よって、{xN; N ∈ S} は x の基本近傍系となる。
S の元 N は正規部分群だから、任意の x ∈ G に対して xN = Nx となることに注意する。よって、 x, y ∈ G, N ∈ S に対して、(xN)(yN) = xyNN = xyN となる。 これから、G の積算法が定める写像 G x G → G は連続である。 (xN)^(-1) = Nx^(-1) = x^(-1)N だから、 x に その逆元 x^(-1) を対応させる写像 G → G も連続である。 よって G はこの位相により位相群となる。 証明終
608 名前:208 [2005/10/31(月) 10:09:51 ]
命題 >>607 で定義された G の位相がハウスドルフであるためには、 ∩{N; N ∈ S} = {e} が必要十分である。ここで e は G の単位元。
証明 {e} の閉包が ∩{N; N ∈ S} となることに注意すればよい。
609 名前:208 [2005/10/31(月) 10:24:26 ]
命題 f, g: X → Y を位相空間 X から Y への2個の連続写像とする。 Y がハウスドルフなら、X の部分集合 E = {x ∈ X; f(x) = g(x)} は閉集合である。
証明 Y x Y の対角集合をΔとする。つまり、Δ = {(y, y); y ∈ Y} とする。 Y はハウスドルフだから、Δ は Y x Y の閉集合である。 h(x) = (f(x), g(x)) により、写像 h: X → Y x Y を 定義する。 これが連続なことは明らか。E = h^(-1)(Δ) だから、 E は閉である。 証明終
610 名前:208 [2005/10/31(月) 10:33:12 ]
命題 I を前順序集合、(X_i) を I を添字集合とする位相空間の射影系とする。 各 X_i がハウスドルフなら、射影極限 proj.lim X_i は 直積空間 X = ΠX_i の閉集合である。
証明 pr_i: X → X_i を射影とする。 i ≦ j に対して E_(i,j) = { x ∈ X; pr_i(x) = f_(i,j)pr_j(x) } と定義する。f_(i,j): X_j → X_i は射影系(X_i)を定義する射である。 E_(i,j) は命題(>>609)より X の閉集合である。 proj.lim X_i は i ≦ j を任意に変化させたときの E_(i,j) の 共通集合だから閉である。 証明終
命題 I を有向前順序集合、(X_i) を I を添字集合とする位相空間の射影系とする。 射影極限 proj.lim X_i を X とおく。f_i: X → X_i を標準射とする。 X の任意の開集合は、(f_i)^(-1)(U) の形の開集合の合併である。 ここに、 i は I の要素を動き、U は X_i の開集合を動く。
証明 X は直積空間 ΠX_i の部分空間であるから、 X の開集合 U は、f_(i_1)^(-1)(U_1) ∩ ... ∩ f_(i_r)^(-1)(U_r) の形の開集合の合併である。ここで、i_1, ... , i_r は I の要素で あり、 U_k は X_i_k の開集合である。 x を U の任意の点とし、 x ∈ f_(i_1)^(-1)(U_1) ∩ ... ∩ f_(i_r)^(-1)(U_r) とする。 I は有向前順序集合だから、i_1 ≦ j, ... i_r ≦ j となる j がある。 V_k = f_(i_k, j)^(-1)(U_k) とおく。 ここで、f_(i_k, j) : X_j → X_i_k は射影系を定義する射。 f_(i_k, j) は連続だから、V_k は X_j の開集合である。 (f_j)^(-1)(V_k) ⊂ f_(i_k)^(-1)(U_k) だから、 V = V_1 ∩ ... ∩ V_r とおけば、 (f_j)^(-1)(V) ⊂ f_(i_1)^(-1)(U_1) ∩ ... ∩ f_(i_r)^(-1)(U_r) となる。x ∈ (f_j)^(-1)(V) だから、命題の主張が出る。 証明終
621 名前:208 [2005/11/01(火) 10:24:29 ]
>>607 において、各 N ∈ S に対して G/N に離散位相を入れる。 N_1, N_2 ∈ S で N_1 ⊃ N_2 のとき N_1 ≦ N_2 と定義して、 S に順序を入れる。N_1 ≦ N_2 のとき、G/N_2 → G/N_1 が自然に 定義される。よって S を添字集合として、(G/N), N ∈ S は 離散位相群からなる射影系となる。よって、proj.lim G/N が定義 される。 各N ∈ S は開集合だから、標準射 G → G/N は連続である。 さらに、この射は、射影系(G/N)と両立するから、 連続写像 f: G → proj.lim G/N が自然に定義される。 このとき、f(G) は、proj.lim G/N において稠密である。
命題 k を体、K/k を k のガロワ拡大、つまり準ガロワで分離的な拡大とし、 G = Aut(K/k) とする。H を G の部分群とする。 K^H = {x ∈ K; 各σ∈H で、σ(x) = x } とおく。 つまり、K^H は H で固定化される K の部分体である。 G(K^H) すなわち Aut(K/K^H) は H の閉包である。
証明 H の閉包を cl(H) とする。 H ⊂ G(K^H) は明らかである。G(K^H) は G の閉部分群である(>>627) から、cl(H) ⊂ G(K^H) である。よって、σ∈G(K^H) の任意の近傍が H の元を含むことを示せばよい。L/k を K の中間体で有限次ガロワ拡大 となるものとする。M を L と K^H の合成部分体、すなわち K の部分体で L と K^H を含む最小のものとする。M/K^H は有限次ガロワ拡大である。 H の元を M に制限することにより射 φ: H → Aut(M/K^H) が得られる。 φ(H) で固定される M の部分体は、K^H である。 よって有限次ガロワ拡大の基本定理より、φ(H) = Aut(M/K^H) である。 つまり、φ は全射である。 σ∈G(K^H) の M への制限をσ|M とすれば、σ|M は Aut(M/K^H) の元であるから、σ|M = φ(τ) となる τ∈ H がある。 L ⊂ M であるから、σ|L = τ|L となる。これは、τ∈σG(L) を 意味する。σG(L) はσの基本開近傍だから cl(H) = G(K^H) である。 証明終
632 名前:208 [2005/11/01(火) 16:52:43 ]
命題 k を体、K/k を k のガロワ拡大とし、L/k をその任意の中間体とする。 G(L) すなわち Aut(K/L) で固定される体 は L である。 すなわち、K^G(L) = L である。
証明 K/L はガロワ拡大であり、特に分離拡大である。 x を K の元で L に含まれないものとする。x は L 上分離的だから x の L に関する共役元 y で x と異なるものがある。 x を y に写す Aut(K/L) の元が存在する。 これは、K^G(L) = L を意味する。 証明終
633 名前:208 [2005/11/01(火) 17:04:48 ]
無限次ガロワ拡大体の基本定理
k を体、K/k を k のガロワ拡大とする。 G = Aut(K/k) とおく。 L/k をその任意の中間体とする。L に G(L) を対応させることにより、 K/k の中間体と G の閉部分群の間に1対1の対応がつく。 この逆対応は、G の閉部分群 H に対して、H で固定される部分体 K^H を対応させるものである。
証明 >>632 より K^G(L) = L であり、>>631 より G(K^H) = H である。 証明終
634 名前:208 [2005/11/02(水) 09:52:53 ]
環の整拡大の話題に戻ろう。
補題 A ⊂ B を環の包含関係、B は A 上整とする。 p_0 ⊂ p_1 を A の長さ1の素イデアル鎖(>>379)とする。 q_0 を p_0 の上にある B の素イデアルとする。 B の長さ1の素イデアル鎖 q_0 ⊂ q_1 で q_1 が p_1 の上にあるものが存在する。
命題 A を整閉整域(>>578)、K をその商体、L/K を有限次準ガロワ拡大(>>586) とする。B を A の L における整閉包(>>576)とする。 p を A の素イデアル、q_1, q_2 を p の上にある B の素イデアルと すると、σ(q_1) = q_2 となる σ∈ Aut(L/K) がある。
証明 x ∈ q_1 とする。y = Πσ(x) とおく。ここで、積は Aut(L/K) の すべての元σを動くものとする。y は Aut(L/K) の元で不変だから、 y^q ∈ K となる整数 q がある。ただし、q は、L/K が分離的なときは 1 であり、そうでないときは、K の標数 p の適当なベキである。 y^q ∈ K ∩ B であり、A は整閉だから、A = K ∩ B となる。 よって、y^q ∈ A となる。一方、明らかに y^q ∈ q_1 だから、 y^q ∈ p となる。p ⊂ q_2 であるから、y^q ∈ q_2 となる。 これから、ある σ(x) ∈ q_2 となる。よって、x ∈ σ^(-1)(q_2) となる。以上から、q_1 ⊂ ∪σ^(-1)(q_2) となる。ここでσは Aut(L/K) のすべての元σを動く。よって、>>579 より q_1 ⊂ σ^(-1)(q_2) となるσがある。σ^(-1)(q_2) は、p の上にあるから、 >>574 より q_1 = σ^(-1)(q_2) である。 証明終
命題 A を整閉整域(>>578)、K をその商体、L/K を有限次とは限らない 準ガロワ拡大(>>586)とする。 B を A の L における整閉包(>>576)とする。 p を A の素イデアル、q_1, q_2 を p の上にある B の素イデアルと すると、σ(q_1) = q_2 となる σ∈ Aut(L/K) がある。
証明 M を L/K の中間体で、M/K が有限次準ガロワ拡大とする。 S をこのような M の集合とする。 M ∈ S に対して F(M) = {σ∈ Aut(L/K); σ(q_1 ∩ M) = q_2 ∩ M} とおく。 σ∈ Aut(L/K) を M に制限することにより、 連続写像 Aut(L/K) → Aut(M/K) が得られる。 F(M) は、この写像による、離散群 Aut(M/K) のある部分集合の逆像だから 閉集合である。一方、>>639 よりこれは空ではない。 M, M' ∈ S のとき、F(M) ∩ F(M') ⊃ F(M(M')) となる。 ここで、M(M') は M と M' から生成される L の部分体で M(M') ∈ S である。 Aut(L/K) は >>623 よりコンパクトだから、∩F(M) は空でない。 L は M ∈ S の合併集合となるから、σ ∈ ∩F(M) が求めるものである。 証明終
641 名前:208 [2005/11/02(水) 11:42:11 ]
補題 A を整閉整域(>>578)、K をその商体、L/K を有限次とは限らない 準ガロワ拡大(>>586)とする。 B を A の L における整閉包(>>576)とする。 p_0 ⊂ p_1 ⊂ ... ⊂ p_n を A の素イデアル鎖(>>379)とする。 q_n を p_n の上にある B の素イデアルとする。 このとき、B の素イデアル鎖 q_0 ⊂ q_1 ⊂ ... ⊂ q_n で p_i = A ∩ q_i が各 i で成立つものがある。