- 1 名前:初のスレ建て [2007/10/01(月) 17:48:19 ID:/aR7sTR+]
- 無口な女の子をみんなで愛でるスレです。
前スレ 無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179104634/ 初代スレ 【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155106415/ 保管庫 mukuchi.yukigesho.com/ 次スレは480KBを超えた時点で有志が立てて下さい。 それでは皆様よろしくですぅ。
- 369 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/17(土) 09:40:37 ID:WfKN+3Sf]
- >>333 応援(?)リレーSS現状
>>334-335 >>342 >>344-346 >>349 >>351-352 >>359 >>365 >>368 続き書きたい人用に軽く纏めてみた。 今はちょいと時間がないので、夜に続いてたら書いてみようと思ってる。
- 370 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/17(土) 16:17:22 ID:gUHg342n]
- 畜生!
続きが気になって何度もきちまう! ・・・本当は自分で書ければ一番いいってのは分かってるんだがよ・・・
- 371 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/17(土) 19:55:01 ID:gUHg342n]
- 頑張って書いてみた。フリーメモなんて初めて使ったぜ。
明日暇ですか・・・って・・・ 待て。待て待て待て!いきなりか?何のフラグも立ててないのにいきなりか? 焦りすぎな俺の脳が産み出した幻聴か? 「その・・・お店、案内して欲しいから・・・」 どうやら幻聴じゃないらしい。としたら、これはいわゆる孔明の罠、じゃなくて落ち着け俺! デートか?デートなのか?いや、しかし、いやいや・・・。 「あ、ごめんなさい。いきなり迷惑だった・・・よね」 「そんな事ない、ちょうど暇だったんだ」 俺の戸惑いの時間を否定と受けとったのか、気落ちしたような声に、俺は反射で応えた。 すまん友よ、一緒にレポートはできなさそうだ。まあ開始一時間でプレステに電源が入るんだし良いだろ? 「・・・よかった」 心から安心したような響き。俺は自分の返答が正解だったと確信した。 【続きは省略されました】
- 372 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/18(日) 07:31:03 ID:h1OpL4Qs]
- たまには遊びも必要さな
みんなGJだ
- 373 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/18(日) 07:55:17 ID:Xbt6y7bm]
- このもどかしさがたまんねえ
GJだ。頑張れ。ワッフルワッフル
- 374 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/18(日) 11:04:33 ID:1WPenTFz]
- >>372
続けてみる、って夜に続けるといいつつ、次の日の昼前ってどうよ、俺? 〜 her side 〜 「それじゃさ、明日、どこで待ち合わせしようか?」 「……あの、図書館の前で……」 心臓がバクバクとやかましい音を立てる。 顔が熱い。ううん、耳まで熱くなってる。 自分から誘うなんて、はしたないって思われたかな? でも、でもでも、受け入れてくれた。ちゃんと付き合ってくれるっていった。 「じゃあさ、明日十時に図書館前で、待ち合わせで良いかな?」 「はい……、待ってます」 「ん、わかった。時間もそろそろ遅いし、それじゃ××お休み。あ、寝不足でクマとか作らないようにな」 「そんなの、つくらないですよ……、それじゃ、お休みなさい」 「ん、お休み」 ぷつっと、電話が切れた。手に持った携帯から聞こえてた彼の声が、耳の奥にまだ残っている。 「っ」 信じ、られない。だって、諦めてたのに。自分からデ、デ、デートに、誘ったのだって場の勢いだもの。 好きになってもらえるなんて、思ってなかったもの。 けど、受け入れてくれたんだ。彼は、>>333君は私のお誘いを受け入れてくれたんだ。 「……いいよね」 少しだけでも、私に好意を抱いてくれてるって、思っても良いんだよね。 デ、デート、生まれて初めてでしかも初恋だった人との。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」 やった、やったっ、やったっっっ!! 信じられない! 信じられないっ!! 信じられないっっっ!! ぎゅっと携帯を握りしめて、ベッドに身を預ける。預けて身悶える。 嬉しい、とても嬉しい。きっと、生まれて初めてだ、こんな気分! 明日は、精一杯めかし込もう。ファッション雑誌の通販で買ったけど、袖を通してなかったアレを来てみるのも良いかな。 ……し、下着は、すこしだけ、色っぽいのも、いいかも。 き、期待してるわけじゃないけど、でもでも…… って、このままだと、朝まで悶えてしまう気がして、私はベッドの中に潜り込む。 「……お休み>>333君」 想像の彼に言葉をかけて、私は瞼を閉じた。 【続きは頼んだ】
- 375 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/18(日) 12:23:04 ID:/0d7oee2]
- 頼まれたw
待ち合わせ場所を確認して電話を切る。 「ふぅーっ」 電話一本で こんなにドキドキして……まるであの頃に戻ったみたいだな。 電話を枕元に置き、彼女との会話を反芻する。 ……ん? 会話を反芻? 「あの娘……話してたな……」 まどろみの中で そんなことを考える。 電話だと顔が見えない分、話しやすいと言うことを聞いた記憶がある。 「内気なあの娘らしいか……」 まぶたを閉じると彼女の顔が浮かぶ。 いつも、うつむいてばかりいた彼女。 どんな笑顔なんだろう? 明日はどんな服をきてくるのかな? 髪型は? 思いがけず彼女のことばかり考えている。 まったく、中学生でもあるまいに……。 夜明け前に見た夢は とても人には言えないような夢だった……。 家族が起きだす前に洗面所で下着を洗う姿は誰にも見られたくなかった……。 《あと頼む》
- 376 名前:書く人(またも懲りずに頼まれる) mailto:sage [2007/11/18(日) 17:32:01 ID:7hhsaZwj]
- 結果的に言えばパンツの中での暴発は、俺にとって有利に働いた。股間部の不快感によって早く目覚めたため、
身支度の時間を大幅に取ることが出来たのだ。朝からめかしこんだせいで、家族からさんざんにからかわれた記憶は忘れておこう。 図書館の前、元がよくわからない前衛的なモニュメントがある広場。待ち合わせ場所はそこだ。 広場の入り口で腕時計で時間を確認する。時間は9時45分。ちょうどいい時間…だろう、多分。 広場に入り彼女の姿を探す。―――いた。そこには散歩をしているらしい老人と犬を連れた子供以外に、女の子が一人いるだけだ。 図書館の軒先にある石造りのベンチに腰掛けている。角度的にこちらから彼女の顔は視覚になっているが、体格や雰囲気からして間違いないだろう。 俯き加減で座る彼女の装いは、全体的におとなしい印象だった。スカートはロングで、 レースの装飾が少し入っている。靴のヒールは低め。コートは装飾が少ないあっさりとしたもの。人によっては地味と表現するかもしれないが、 俺は清潔感があって可愛らしいと思った。むしろ、俺なんかがエスコートしていいのかという気おくれさえ感じるほどだ。 「…っし!」 小さく気合を入れて、俺は彼女に接近する。第一歩で右手と右足が一緒に出たのは御愛嬌だ。 声が上ずらないようにと細心の注意を払いながら 「ごめん、待った?」 まともに発音できた。その事実に内心喝采を上げる俺。全く、中学生かよ。と頭のどこか冷静な部分がそんな自分に突っ込む。 が、そんな大人な部分も含めて脳が完全にフリーズするような視覚情報が飛び込んできた。 「ぁっ……」 声に反応して彼女の… 「目……どうしたの?」 彼女の眼が、一晩中泣きとおしたかのように真っ赤に腫れあがっていたのだ。 〜her side〜 最悪…最悪…もう最悪だよぉ…。 顔を上げ、彼の驚いた顔を見て、私は死にたいと思った。 そんな彼を見た私の眼は、熱く熱を持ち腫れあがっていた。見た目も、きっとすごくみっともないのだろう。 「目……どうしたの?」 気を使ってと言うより、驚いてといった感じの強い>>333君の声。 諦めと、情けなさと、後悔と…そんな感情でいっぱいになる私。思わず、腫れあがった目から涙がこぼれる。 ああ…最悪だ。ただでさえ美人と言うには程遠い顔をしているのに、その上でこんなひどい顔を見られるなんて…。その上泣き出しちゃうなんて。 落ち込む私にけれど彼は急かすことなく、隣に座って無言で待っててくれる。その態度に私は少しだけ落ち着きを取り戻し、この目の理由を口にした。 「……コンタクト…」 〜>>333 side〜 「コンタクト?コンタクトレンズ?」 彼女は無言で、頷いた。 普段は眼鏡なのだが、今日はめかしこもうと滅多にしないコンタクトレンズにした所、どうも合わなくて目が腫れてしまったらしい。 途切れ途切れな涙声を総括すると、そう言うことらしい。 「……(くすん)」 目を腫らしたまま、すっかりしょげ込んでいる彼女。その姿を気の毒に思う反面、少し嬉しいと感じている自分を感じた。 俺のデートのために、普段しないようなおめかしをしようとしてくれた。その事実が単純に嬉しかった。 けれど、だからと言ってその喜びが、彼女の状態を可哀そうに思う感情を上回ることはない。 「とりあえず…図書館に入らないか?冷やした方がいいよ」 彼女は無言で頷くとポーチから眼鏡ケースを取り出した。ケースの中から出たのは、図書館で会った時に彼女が掛けていたのと違う、縁の細い眼鏡だ。 だが、ここで運命のいたずらが起こる。いや、運命のせいじゃない。単純なヒューマンエラー。しかも責任は八割俺だ。 視界が悪かったせいか、彼女は眼鏡を取り落してしまう。 俺の反射神経はレンズの落下を見た瞬間、即座に反応してレンズが石畳に接触する前に掴みとる。そこまではナイスだった。 グニャリ 思い切り握ってしまった眼鏡のフレームが、上記のような擬態語で歪んでしまったその瞬間までは、ナイスだった。 《さあ、次の挑戦者は君だ!》
- 377 名前:名無しさん@ピンキー [2007/11/18(日) 21:25:26 ID:cv0PgS+z]
- 居るもんなんだな、職人って
GJ!&wktk
- 378 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/18(日) 22:11:13 ID:16P805rY]
- 俺にとって有利に働いたフイタw
- 379 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/19(月) 07:22:16 ID:3qDK9yIg]
- すっごーいリレーだな
何人参加しているんだ?
- 380 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/19(月) 09:28:22 ID:kAwqC1Rf]
- >>379
俺と書く人がこりずに二回三回とバトンもらったりしてるから四、五人かな >>376 携帯だと文字数制限厳し過ぎる…… 「あ……」 嫌な汗がぶわっと吹き出す、 「……?」 眼鏡を外した時の視力が余程低いのか、彼女には眼鏡が曲がった様子が見えていないようだ。 「あの、えーっと……」 まずい、非常に気まずい、それこそ今すぐ土下座したくなるぐらい気まずい。 ――自分だけ 「……どうかしたの?」 彼女が尋ねてくる、ここは素直に謝るべきだろう。しかし、非常にさい先が悪い…… 「……ごめん、眼鏡、曲げちゃった」 この言葉を聞いて、彼女は一瞬驚いた顔をし、それからくすくす笑い始めた。 怒られはすれど、笑われる意味がわからない、自分の頭の中に?が飛び交う。 「……もしかして、眼鏡を、握ったまま?」 彼女に言われる、確かに握りっぱなしだ。 「うん」 素直に頷く。 「離して、みて?」
- 381 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/19(月) 09:29:43 ID:kAwqC1Rf]
- 言われた通りに、握った手を素直に離す、と
「……ええ!?」 曲がった眼鏡がいきなり元の形に戻る、頭がパニック状態になる。 「……これは、えーっと……形状記憶合金?ってやつで出来ててね、 ほら、こうやってぐにゃぐにゃ曲げても大丈夫なの」 俺の手から眼鏡を取り、言ったとおりにぐにゃぐにゃ曲げてみせてくれた。 「……こんな眼鏡あるんだな」 驚きでいっぱいである、 「うん、ちょっと……高いけどね」 彼女は笑顔を見せながら、眼鏡のレンズを吹き、かけた。 《職人さん、投下したい作品があるならがんがん割り込んでください》 1レスにまとめられたものを2レス使わなきゃいけないなんて…… やっぱ携帯の馬鹿!!
- 382 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/19(月) 22:48:26 ID:MWWxSaA3]
- 待て、形状記憶合金は40゚Cぐらいの湯にいれなきゃならん。
考えろ、代替品を… グラスファイバー!!!
- 383 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/19(月) 23:26:01 ID:3X7Bqg7u]
- いや、普通にあるぞ、こういう素材の眼鏡。合金じゃなくて樹脂の一種らしいが。
そんなことより、メガネフレームの弁償のために女の子の手を引いて…というシチュで書いていた俺涙目。 書き直さなくてはorz
- 384 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/20(火) 00:46:31 ID:fKsya/wh]
- >>383
俺も、それ考えてた。 けど、予想外を生かすのもリレーの楽しみってことで、投下。 「えと、それじゃとりあえずハンカチ濡らしてくるから、この辺で待っててくれる?」 眼鏡のおかげ(?)で気分がほぐれた様子の彼女に総言葉をかける。 こくんと頷く彼女を置いて、俺は冷水器に向かった。いくら口に含む訳じゃないとしても、トイレの水を使うのはどうかと思ったから。 ハンカチを濡らして軽く絞りながら、少しだけ視線を彼女の方に向けた。 とくんっと胸の奥が跳ねる。 彼女が見知らぬ男に話しかけられているのが見えたから。 〜her side〜 >>333君が、冷水器でハンカチを濡らしてるのが見えて。 私はまだ涙が少したまった目を、軽く押さえた。 コンタクトはもう外してるから、大分ましになったけど…… 「お、なんや××ちゃん、今日はやけにめかしこんどうやんか? なんかよかこつでんあったんけぇの?」 いきなり背後から声をかけられて、びくって肩が勝手に震えた。 ゆっくりと振り返って、そこにいた何となくとぼけた顔立ちの人に上目遣いを向ける。 「……大林さん、おはようございます」 司書の先輩、大林建昭さんに返事を返しながら、私は早く彼が戻ってくるのを待つ。 正直に言えば、この人はかなり苦手。 喋るのが辛い私に、なぜかいつも声をかけてきて喋らそうとするから。 けど、大林さんにはもう素敵な彼女がいる。 だから、私に声をかけるのは単なる挨拶のおまけみたいなもの。 その大林さんが、不意に周囲をくるりと見渡して、冷水器にいる彼の所で視線を止めた。 「……へえ、××ちゃんにもやっと春が訪れたっぺか。いやしかし、いきなり電話番号貰った相手とデートってのはキャラが違うっぽいわさな」 相変わらず、この人の口調は変だと思う。……何となく纏っている軽い雰囲気も、好きになれない。 だから、私はただ黙って頷く。 「そうかそうか、ええこっちゃ。やっぱ女は男と一緒にならんなんしの。ま、お邪魔虫は馬に蹴られる前に退散しときゃぁでの。なかようせにゃならんとばい」 「……はい」 その、どこか優しげな声に、少しだけ首を傾げながら私は返事をして。 彼が少し焦ったような表情で近づいてくるのを、少しだけほっとしながら見詰めていた。 【つ・づ・き、つ・づ・き(AA略)】
- 385 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/20(火) 12:57:25 ID:8jMFzJ5x]
- GJ
妄想している間に先を越されているのもリレーの面白いところだね さてさて、どう料理してやろうか……
- 386 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/20(火) 15:50:43 ID:wfyzi9hO]
- 【料理してみた】
〜333side〜 その男が彼女の隣から立ち去っても俺の心は穏やかではなかった。あからさまに嫉妬だ。 感情に促されるままに駆け足で彼女の前に立ち 「・・・えっと・・・」 言葉に詰まった。 「・・・?」 俺の不振な行動に、彼女は小首を傾げて、まだ腫れの残る目でこちらを見上げる。 「あっ、こ、これ!濡らして来たから」 「う、うん」 取り繕うようにハンカチを差し出すと、彼女は少し戸惑いを見せながらも受け取ってくれた。 俺は彼女の隣に座り、内心胸を撫で下ろした。 あの時、自分は何を言おうとしたのか? あの時、自分は何をしようとしたのか? 俺自身にも分からない。ただ嫉妬心のままに行動していたら、きっと気まずい事に・・・。 と、俺は気付いた。そもそも彼女には、俺に嫉妬されるいわれはないじゃないか。 俺はただの元クラスメート。彼氏でもないくせに・・・。 ・・・そう言えば、彼女には付き合ってる相手はいるのだろうか?
- 387 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/20(火) 19:51:32 ID:pOKfIU2d]
- このリレー小説が始まってから続きが気になってしょうがないw
こういうのもたまには良いな。
- 388 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/20(火) 20:18:18 ID:8jMFzJ5x]
- 《her side》
ハンカチを渡してくれた時は少し戸惑っていた。 いま、隣に座っている彼は必死に何かを考えている……。 私が何かいけないことをしたのだろうか? 男の人と待ち合わせをして会うことなんて初めてだったから勝手がわからなくて、 何か彼に失礼なことでもしていたのだろうか? 不安が胸をよぎる。 せっかく、彼を誘うことが出来て いま、こうして隣に座っているだけでも嬉しくて仕方ないのに。 私は初めから失敗を犯してしまったのだろうか。 見つめることしか出来ず、不安がどんどん大きくなっていく。 腫れた目から、コンタクトの痛みではない涙がこぼれそうになった。 彼の前では、私はあの頃の女の子のままなのだろうか。 あれから10年、私も少しは成長している。 あの頃と同じ徹は踏むまい。 さあどうだw 神様、私に勇気を下さいっ!
- 389 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/20(火) 20:19:23 ID:8jMFzJ5x]
- あれ?
改行ミスったっぽいですごめんなさい
- 390 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/20(火) 21:33:26 ID:faX3NTSs]
- GJ、いいペースですね。
リアル>>333にも仮想>>333にも最後までうまく行ってもらいたいです
- 391 名前:リレーの途中ですが333です mailto:sage [2007/11/20(火) 23:09:36 ID:VvLbqzkY]
- 四、五日の頻度で書き込もうって勝手に俺の中で決めたわけだ。
俺の仕事が夜の仕事(仕事中)な訳で、全然時間取れないわけだorz
- 392 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/21(水) 16:24:10 ID:0GEzQyH4]
- 神様!私に勇気を下さいっ!
「あの・・・っ!今、お付きあいしてる人、いますかっ?」 〜 333 side 〜 「・・・え?」 このときの俺の顔はきっと間抜け面だったに違いない。 けれど仕方ないじゃないか。今まさに訊いてみたい話題に対して、向こうから触れてきたんだから。 しかしこれはどういう事だ? 無口な彼女が自分から訊いてくるって事は、俺に恋人がいるかどうかは彼女にとってかなり気になるトピックスだと言うことで・・・。 お、おいおい!落ち着けよ、俺の脳!何をご都合主義の妄想をしてやがる!?それより返事だ、返事! 俺は空回りする思考回路を叱咤して言葉を探す。 実際は否定のためのワンセンテンスが必要なだけなのに、処理能力が落ちた生体CPUはクラッシュしまくる。 それでも俺はどうにかして隣に座っておもいつめた様な表情を浮かべる彼女への返事をに成功した。 「い、いや、いないよ」 声が上擦り気味になってしまった。これじゃあ意識しているのがもろばれじゃないか! そんな感じにまたも空回りしはじめた俺の頭は、続く彼女の台詞に一気に氷ついた。 彼女は控え目な、けれど心から嬉しそうな笑顔でこう呟いた。 「・・・良かった」 〜 her side 〜 彼に恋人はいない。 その答えに私の心は踊り、同時にホッとしてーーー不意に気付いた。 自分が勢いに任せて、ろくに考えず出した質問が、実はかなり意味深かつ大胆なんじゃないかと言うことに。 【続きは省略されました】
- 393 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/21(水) 21:03:03 ID:rvb9Jhfj]
- ちょっと見ない間に伸びてるなと思えば…
GJ!
- 394 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/22(木) 12:53:23 ID:dtgPaUMm]
- ワッフル応援
- 395 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/22(木) 12:59:24 ID:QJ5FtGxO]
- どきどき、どきどき
胸が苦しくなる。 なんていうことを聞いてしまったのだろう。 勇気を出して一歩だけ踏み込んだ処が地雷原だったなんて……。 心の扉を開いて踏み込んでいくなんていうことは、私には出来ないのかも。 《昼休みが終わる直前だと短いのしか書けません……》
- 396 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/22(木) 22:59:23 ID:5oTV3bMy]
- なかなかいい流れですな
GJ!!
- 397 名前:書く人(そろそろ自重した方がいいか?) mailto:sage [2007/11/23(金) 00:27:10 ID:QmBNXyMq]
- 恋人はいるか、と訪ねて、いないという答えが返ってきてから「良かった」と言う。
……これってほとんど「私はあなたのことが気になってます」って言ってるようなものだよね……。 ――ぅぁぅぅぁぁぁぁぁぁぅぁぅぁっ! どうしよう!考えてみれば見るほど地雷原!慣れないことなんてするんじゃなかった! >>333君はどう思ったかな?迷惑そうな顔してるかな?けど…もし、もしも万が一、嬉しそうな顔をしていてくれたら…。 私は恐る恐る、けれども若干の期待を込めて、彼の顔を盗み見た。 「………(ふりーず)」 か、固まってる……。これって……ダメってことかな? ……やっぱり…そうだよね。こんなおしゃべりも下手で、地味な女の子に好かれても、嬉しくなんてないよね。 幸福感で膨らんでいた心が、急にしぼんでいくのを感じだ。 うん、けれど……いい。これでいい。最初は恋人になれるなんて期待してなかったんだもの。 二人でお出かけ……向こうはそう思ってないかもしれないけど、デートをすることができただけでも、幸せだもの。 けれど……このままじゃ、このあとも気まずいままかな? それは嫌だと思い、私は何とか顔を笑顔にしてこう言った。 「……あ、その……私も男の人とお付き合いしたことないから……、同じくらいの年の人にそう言うの変かなって聞きたくて……」 とっさに出てきた言い訳。気持ちが落ち込んでいたおかげか、それは自然に言うことができた。 〜 >>333 side 〜 彼女がいつもと同じ控え目な、けれどどこか悲しそうな笑顔で告げた言葉に、俺はようやく冷静さを取り戻す。 それと同時に、自分が随分と恥ずかしい早合点をしていたことにも気づく。うわっ、俺ってダセェ。 「変じゃないよ、きっと。そう言うのは他人に合わせたりするようなもんでもないと思うし」 答える俺の顔には、自然と笑みが浮かんだ。 男と付き合ったことがない―――実は同性と付き合ってるんです、などと言う変化球さえなければつまりは彼女はフリーということだ。 さっきの「良かった」っていうのも、きっと恋人がいない仲間を見つけた安心感で……あれ? 妙だ。「俺が今まで異性と付き合ったことがあるのか?」を気にしているなら「『今』、お付きあいしてる人〜」と言うのはおかしい。 「今までにお付き合いした人〜」と聞くのが正しいはずだ。言い間違いの可能性は低い。読書家なせいか、彼女の言葉は文法的に適格だ。 じゃあ一体…… 「あの……」 遠慮がちな彼女の声が、俺の意識を思考の海から引っ張り上げた。 「そろそろ…出よ?…眼はもう大丈夫だから」 「ん?ああ」 俺は彼女の目を見る。確かに、もう腫れはすっかり引いていた。俺を待たせるのに気兼ねして無理をしているということはなさそうだ。 「ハンカチ……洗って返すね?」 「あ、い、いいよ別に…」 「けど……」 彼女は今まで目に当てていた濡れたハンカチを両手で、まるで何か大切なものであるかのように持って、こちらを見つめる。 そうされると、厚意をむげに断るのも悪い気がした。 「……じゃあ、頼む」 「……」 彼女は頷くと、ポーチから自分のハンカチを取り出し、俺のハンカチを包んだ。 【続…けてください】
- 398 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/23(金) 00:38:25 ID:g2tpxZVQ]
- 職人が…完結させてくれるまで…わっふるを止めない!!!
- 399 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/23(金) 00:59:10 ID:6BGV/H2r]
- (wktkで)震えるぞハート!(GJで)燃えつきるほどヒート!!!
- 400 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/23(金) 12:25:09 ID:OjHZPpd4]
- 自重など…戯言だ!
- 401 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/24(土) 14:16:11 ID:AeqFSRzz]
- ↓次で一気に急展開を期待
- 402 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/24(土) 14:22:56 ID:ukI1+mhs]
- いやいや、ここはゆっくりじっくりねっとりと、恋愛していって貰いたい
- 403 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/24(土) 15:04:49 ID:EYbtQwWK]
- 急展開
「・・・実は私双子なの」 「な、なんだ(ry」
- 404 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/24(土) 16:02:36 ID:dPDXoC0J]
- 保管庫 mukuchi.yukigesho.com/
『404 Not Found error』が出るんですけど、消滅?
- 405 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/24(土) 16:39:10 ID:BJ9XUof1]
- うあぁぁぁああああ!!
ブクマから辿ってもでやがるぞぉぉぉぉお!? ようするに保管庫オワタ\(^O^)/
- 406 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/24(土) 18:50:48 ID:F+juwBUQ]
- >>404-405
なんか忍者の鯖不良っぽい。 2.3日様子見だね。
- 407 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/25(日) 01:12:33 ID:Ja5nu43W]
- というか今更なんだが、忍者って18禁OKなんだ。
- 408 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/25(日) 02:08:13 ID:kQ33eP4M]
- 無口な忍者っ娘萌え〜〜〜!
いやさ、なかなかリレーの続きが来なくてついorz 中断せずに最後まで行ってほしいなぁ。あ、けど終わってしまうのもいやだなぁ…
- 409 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/25(日) 02:09:48 ID:lvHRzDCY]
- 404すら出なくなった
- 410 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/11/25(日) 06:52:24 ID:QLG5I9lw]
- 捕手
- 411 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/25(日) 18:56:49 ID:Sc3SkrmK]
- 甘納豆を食べるたびにミュウマを思いだすとは俺の脳みそが腐ってやがる
- 412 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/25(日) 19:35:28 ID:bU36lhia]
- >>411
大丈夫だ、正常です 仕事でホテル泊まるたびry 自部屋二階にあるんだが窓を見るたびry ベッドが微妙に膨らんでいるとry 旅館に泊まるたびry OBとして学校に行き、保健室ry 人をやめたほうがいいな俺……
- 413 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/25(日) 20:11:00 ID:NWbBfd9r]
- >>412
あれ?俺この時間カレー食ってたはずだが…
- 414 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/25(日) 22:30:26 ID:kQ33eP4M]
- 【his side】
図書館を出た後、俺達は昨日電話で紹介した店―――洋菓子店へと向かった。ワッフルが有名だが俺としてはシュークリームが一押し。 彼女もそこのシュークリームを気に入ってくれたようだ。証拠に、持ちかえりでいくつかシュークリームを買っていった。家族へのお土産らしい。 その頃になると、図書館の時に感じた沈んだ様子も消えていた。まあ、最初から俺の勘違いだったのかもしれないけれど。 店を出たらウィンドウショッピング。クリスマスまで一か月というこの季節、街は華やかで見ているだけで楽しい気分になる。 一緒に歩いていて俺はいろいろと彼女に話しかけたが、やがてそれもせず隣を歩くようになった。話題が尽きた、というわけではない。 彼女が求めるのはあれやこれやと話題を振ることではない。一緒に何かを見て、何かを聞いて、一言か二言感想を交わす。そんな静かな時間の共有だ。 気の早いクリスマスソングが流れる街の中、穏やかな無言に混ざる小さな声。胸がときめくようで、けれど落ち着くような、そんな時間を過ごした。 確信を持った。俺は彼女のことが好きなのだ。彼女以上の美人や可愛い人は、この世に何人もいるだろう。 けれど俺は彼女を選ぶだろうし、願わくば……彼女に選ばれたい。 俺の心は膨れ上がり、そして揺るがないものになっていった。 「今日はありがとうな、誘ってくれて」 「……こちらこそ……ありがとう」 俺達は街灯と窓からの明かりを頼りに住宅地の道を歩いていた。彼女を家に送るためだ。 吐く息が白い。時間は五時過ぎだが、この時期になるとすっかり日は沈み、女の子を一人で歩かせるわけにもいかない。 ―――と言うのは建前で、本当は彼女の家を知っておきたかったから。別にストーキングするつもりはないので勘違いするなよ? それだけ言葉を交わして、再び無言。気まずくはない。お互いの心が通じ合ってるという確信が温かい。 けれどそんな確信が幻想であると突き付けられるような言葉が、彼女の口からでた。彼女の家の前に来た時だ。 「ここ…」 「あ、うん。それでさ…ハンカチのことなんだけど……」 それをネタにして、俺は次に会う約束を取り付けようとした。だが… 「住所…教えて」 「え?」 まさか家に来てくれるのか!?と、期待した俺だが 「小さいものだから……郵便で送るね」 「………え…?」 幸福で膨れ上がった俺の心に、不意打ちの一言が亀裂を入れた。 なぜ……会えばいいものを……。 茫然と俺は彼女の顔を見る。彼女の顔は、家の窓から差す光で逆光になり、良く読み取ることができなかった。 【her side】 「わざわざ……その為だけに会う必要もないよね」 自分の口から出る言葉は、私の胸を切り裂いていく。けれど、止めることはない。諦めるために必要だから。 彼は、私のことを好きではないのだ。 嫌われている、というわけではないと思う。好かれているのだとは思う。けれどもそれは友達として。私が望む形ではない。 もちろんそれだけで、幸せだと思った。けれど……私の心はそれで納得しないだろう。 彼と街を歩いた時、とても楽しかった。 私の遅い足に合わせてゆっくり歩いてくれる彼。口下手な私の言葉を、急かさずに待ってくれる彼。私の言葉に、しっかり答えてくれる彼…。 好き。彼のことが好き。彼の存在を確認する程に、そんな気持ちがあふれる。叶わない想いが溢れる。それが、堪らなく辛かった。 これ以上彼といたら、彼への想いが溢れ続けたら、叶わない願望と不自由な現実の間で、私は壊れてしまう。 だから…もう会わない。そう決めた。その為に自傷の言葉を紡ぐ。もう私に会わないで。もう私に構わないで。もう私に想わせないで。もう私に… 「…楽しかったよ。バイバイ」 せめて、最後は笑顔を彼の記憶に残したい。泣きそうになった私は、逃げるように家に入ろうとして… 「待てよ」 手首を掴まれ、引っ張られた。 驚く。顔を上げて彼を見る。目が合う。顔が近い。引っ張られた。もっと近づく。小さく声が漏れた。彼の吐息を唇に感じた。そして… ―――私と彼の、唇が重なった。 手から紙箱が落ちた。音がして、真っ白になった頭のどこかが、なぜかシュークリームの心配をしていた。
- 415 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/25(日) 22:32:06 ID:kQ33eP4M]
- 【>>his side】
解らなかった。何もわからなかった。 なぜ彼女がそんなことを言うのか?なぜ言ってる彼女の方が悲しそうな顔をしているのか?俺はどうしたいのか?俺が何をするべきなのか? 解らなかった。何もわからなかった。 レポートのために調べたところ、頭蓋骨の中で鎮座している1400t少々の脳味噌様は体が必要とする酸素と栄養をかなりの割合で消費しているらしい。 普段から贅沢させてるんだからこんな時ぐらい働けよ! そんな気持が通じたのか、俺の心の承諾を受けるより早く俺の脳は運動野を中心として行動を起こした。 去ろうとする彼女の腕を掴んで引っ張り寄せて……キスをした。 柔らけえ…。 焦りより、感動が勝った。どれほどの時間が経っただろうか。キスを追え、けれども暴走した脳味噌が支配する俺の体は止まらなかった。 「好きだ」 おいおい。ドラマみたいだな。麻痺した心がそんな感想を漏らす。 「好きなんだ。俺、君のことがずっと好きだったんだ」 繰り返して、俺は言う。眼鏡のレンズを通して見つめた彼女の眼は、丸く見開かれていた。びっくりとか、茫然とか、まさにそんな感じだ。 その彼女の様子を見て、ようやく満足した俺の意思が自分の体の支配権を取り戻す。 最初に俺の心がしたことは、大脳を利用した客観的な状況把握。 ―――女の子を捕まえて、強引にキスをしました。 完 爆死。 「そ、それだけだから!っていうか、だからまた会いたいっていうか…!」 慌てる。俺は慌てまくる。なんてことをしちまったんだ俺は! 「あ、じ、じゃ、じゃあ!また電話する」 なんとかそれだけ言って、逃げるように…というか逃げだした。扉の音がしないことから、彼女はキスをされたまま外にいるらしい。 当然のごとくヘタレな俺は、振りかえることはできなかった。 【>>her side】 「キス……されちゃった」 現実が自覚できたのは、寝る直前だった。パジャマに着替えるまでの記憶がない。髪やお腹の様子からし、お風呂も晩御飯も済ましたようだけど…。 「〜〜〜〜〜っ!」 そんなことはどうでも良い。あ、家族に不審に思われるのはいやだけど…けれどどうでも良い。 「ファーストキス……っ、そ、それに……」 『好きだ』 信じられない! 信じられないっ!! 信じられないっっっ!! まるで子供のように、ベッドの上で足をパタパタする私。どうしたいとか、どうするべきとか、そんなことを考える余裕はなかった。 ただただ、その信じられない現実に、私の頭はパンクしていた。 どれだけそうしていたろうか。私は机の上におかれたポシェットを見る。いつの間にか手に取り、彼のハンカチを取り出していた。 「…>>333くん……の…」 単に、濡れただけの布切れ。けれど私の混乱しきった、そのハンカチには彼の一部のように思えた。 パジャマが濡れるのも気にせずそっと抱き締め、彼に奪われた唇を指先で撫でて… 「>>333…くん……」 ……気づけば、私は変な気持に……Hな気持ちになっていた。 【こ、これ以上は無理っす!誰か、誰か続きを…!】
- 416 名前:名無しさん@ピンキー [2007/11/26(月) 00:48:18 ID:R5F/bqK/]
- エロパートktkr!
- 417 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 01:15:45 ID:p4ucOCvS]
- 翌朝。結局悶々とした気持ちのまま、なんだかよくわからないうちに朝日が昇っていた。
――なんてオチを期待
- 418 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 01:50:46 ID:otUdltZk]
- ここはオナニーしかないだろw
- 419 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 02:31:55 ID:Te3oxryB]
- これは難易度高いなwwwwwwwww
エロは俺には少し無理なので、その後の純愛ルート書いとくぜ
- 420 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 02:42:40 ID:UajaZZZa]
- え、えろ展開は俺には無理だっ!
いや大歓迎なんだけどね、技量が……
- 421 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 07:56:03 ID:6i2ijyuJ]
- 同志の皆様
現在書いてるよ!! って方がいらっしゃらないなら私が書きますがいかがいたしましょう
- 422 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 08:00:44 ID:R5F/bqK/]
- 何を言うかと思えば・・・。
誰にはばかることがあろうか? 書くがよい、っていうか書いてください、お願いします。
- 423 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/11/26(月) 17:14:43 ID:0OHKIPeC]
- おかしい。
私は軽く息を呑む。 今目の前にあるのは、手に取り握っているのは、ただの濡れたハンカチなのに。 綺麗にアイロン掛けされていただろう布切れは、私のせいでぐしゃぐしゃで、決して目を引くわけでもないのに。 ……どうしてこんなにも胸がドキドキするのだろう。 確かにこれは彼のハンカチだ。でもこれは彼本人ではない。 それなのに私はなんでこんな、 「ん……」 股間に手を伸ばしてみる。 何をやっているのだろう。こんなはしたないこと、ダメなのに。 「……」 指を奥に突っ込んで、軽くかき回した。襞の感触は温かく、ぬめる。 ベッドの上で私は熱に浮かされるように行為に耽った。 何度かこうした経験はあった。彼のことを思い浮かべてしたこともある。 でもこれは違う。妄想の中で都合よく動かす彼ではなく、持ち物を直接手にしているのだ。 (>>333君……) 多少乾いてしまった布切れに慕情を寄せながら、私は狂ったように指を動かした。 「ん……んんっ、あ……んっ」 鼻に押し当てて匂いをかぐ。水っぽい中に彼の温もりがある気がした。 間近に感じた彼の唇と男の子の匂いが、温もりの中に。 (ダメっ……、止まらない) ハンカチの端をぎゅっと噛み締めながら、私は秘所をかき回した。 今まで味わったことのない快感が股から脳天に駆け抜ける。指を動かす度に、快楽の波が意識を溶かす。 羞恥心とか罪悪感とか、そんな余計なことは一切隅に追いやられていた。嫌な気持ちが沸き立つより先に、興奮と快感でいっぱいになる。 今日一日、頑張って話をした。 みっともないところを見せても、彼は優しく接してくれた。 一緒に買ったシュークリームは、祝福してくれるように甘く優しい味だった。 そして、そして、 (キス……>>333君との……) あんなことまでされて、その後さらに思いがけない告白もあって、 「あっ……あっ、んんっ、ひう……んっ、あっ……」 こんなこと、夢の中でしかありえなかったのに、 (好き、>>333君……私も大好き、あなたのことが……ずっと、ずっと前から) 指の動きが激しくなる。私の大事な部分は液でぐしゃぐしゃになっていて、もう指もふやけてしまいそうなくらいだった。 雷に打たれるように体がびくびく震えた。頭はお湯をかぶったように熱くて、寝込んでしまいそうなほどくらくらした。 ……あまりの気持ちよさにくらくらした。 (ダメっ、もう……) 鼻に押し当てたハンカチの匂い、唇に残るキスの感触、身体中から流れる歓喜の汗、全てが麻薬みたいに私をおかしくさせ、もう流されるしかなかった。 そして、 「んん――――っっ!!」 一際高い快楽の波が、意識を一瞬真っ白にした。 (や、やあっ……ダメ……気持ちよすぎるよぉ……) 茫洋と意識が拡散していく。まるでどこか遠い世界に飛ばされてしまったみたいだ。 昂った意識が体が果てると同時に徐々に熱を失っていく。波が引いていく。 「…………」 これまで経験した何よりも気持ちのいい行為だった。ただハンカチを握り締めていただけなのに。 ふと想像する。 (これがもし>>333君の指だったら……) いや、指どころかそれ以上の行為だってある。もしも彼と、そんな風になったら、 (……バカ、私のバカ! 何を考えているのっ、そんな……いやらしいこと……) 火照った頭をバシ、バシ、と手の平で叩いて叱りつける。 「…………」 無言のまま天井を見上げ、私は想いをはせた。 彼に対する恋慕と……謝罪を。 (せっかく好きって言ってもらったのに……こんなはしたなかったら、嫌われちゃうよ……) ごめんなさい、と心の中で繰り返し呟き、私は小さくため息をついた。
- 424 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 17:34:48 ID:Puo9IWDd]
- >>423
あなたは神だ。
- 425 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 18:00:22 ID:R5F/bqK/]
- 神 降 臨 !
続きマジwktk
- 426 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 22:38:35 ID:NUFWFhOO]
- >>333は本当に幸せ者だなwww
- 427 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 22:56:24 ID:3s6Ukqqi]
- 〜 >>333 side 〜
「……俺、何やってんだろう。」 手の中にあるティッシュをゴミ箱に放り投げて、深い溜息を吐く。 勢い任せで告白しちまって、しかもろくな言葉も無しで逃げ出して。 「挙げ句の果てに、コレだもんなぁ」 力無く垂れた【自分】を睨んで、もう一度溜息を吐いた。 彼女の柔らかくて温かだった唇の感触と、その芳しい香りが思い出されて。 気がつけばそのまま……。 「はぁ」 もう、世界の終わりってのをかいま見た気分で、溜息を吐く。 バカなんだろうな、俺。 そりゃ確かにショックだったさ。彼女にあんな風に言われたのは。 彼女から誘ってくれたのに、きっと好きになってくれているのに、あんな風に無かったことにしようなんて言われて。 けど、だからって、いきなり告白して、しかもそのままキスなんて……。 あーもう、自分が本気で嫌になる。 けど、今更告白を無かったことになんて出来ない。 いや、そんなことしたくない。そりゃ気恥ずかしいし、彼女と顔を合わせるのは凄く恥ずかしいけど。 でも俺は彼女が好きだ。彼女が好きだって思いだけは変わらないんだ。 もう振り返ってばかりで話すのを怖がったりなんてしないって決めただろ。 だから、もう止まらない。 彼女の答えを、今日みたいな彼女自身想ってないような偽りの答えじゃなくて、彼女の本当の想いを聞くんだ。 それがもし、嫌いって答えでも――辛いし苦しいけれど――構わない。 「…………電話」 ふと思いついて、手を携帯に伸ばす。 時間はそろそろ午前になろうかとしているところ。 こんな時間にかけるのは非常識だよな。迷惑だよな。 わかってる、けど、どうしても確かめたい。彼女の本当の気持ちを。 だから、俺は携帯に手を伸ば……そうとして、とりあえずパンツをちゃんと上げた。 【ってことで、続きはよろしく】
- 428 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 23:04:03 ID:3s6Ukqqi]
- スレ内リレー纏め二回目
一回目 >>369 >>371 >>374-376 >>380-381 >>384 >>386
- 429 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 23:05:09 ID:3s6Ukqqi]
- >>388
>>392 >>395 >>397 >>414-415 >>423 >>427 ってことで、続き書きたい人用に一旦纏めておきますね。 引用が多すぎって怒られたんで2レスに分かれてしまいましたが。
- 430 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/26(月) 23:52:03 ID:XTvfX60k]
- まとめ乙。あなたがいるからリレーにGJを贈れるんだぜ。
- 431 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/27(火) 01:04:42 ID:pCtEG8l2]
- つぎはテレホンセックルに超期待!
- 432 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/27(火) 09:38:05 ID:jAuAFK56]
- テラシュークリームwktk
- 433 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/27(火) 16:00:31 ID:jAuAFK56]
- うん、電話越しとは言え丸出しはまずい。
パンツをあげて、今度こそ電話に手を伸ば・・・・・・すまえに手を洗う事にする。気分的に息子を握り締めていた手でこんな内容の電話はしたくない。 そうだ、ついでにシャワーでも浴びて気分的を落ち着けよう。さっきのような失敗をしないように。 うん、それがいい。 シャワーを浴びたら電話すると言う堅い決意を胸に俺は部屋を出たのだった。 〜 her side 〜 「・・・ふぁ・・・」 次の日、私は図書館のカウンターで眠気と戦っていた。 彼を想ってはしたなくなってしまった後、私は眠れなかった。 また電話すると言う彼の言葉が頭から離れなかったからだ。 かかって来たら何と答えよう?どんな風に答えよう? そんなことを、ベッドの中で悶々と考えてか、考えて、考えて・・・・・・気付いたら朝になってました。 電話、来なかったな・・・。 彼は後でと言っていたけど、一体どのくらい後なんだろう? ポケットから携帯を取り出す。 普段は電源を切ってロッカーにいれているけど・・・今日はマナー違反をしてしまった。 けれどもそのかいなく、着信はない。 【続きwktk】
- 434 名前:名無しさん@ピンキー mailto:保守sage [2007/11/28(水) 01:41:51 ID:G2gya/9Q]
- ………………
- 435 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/28(水) 11:46:15 ID:SdYIEl2p]
- まったくあんたらはw
ちょっと出張に言っている間に GJだらけじゃないか
- 436 名前:〜 her side 〜 mailto:sage [2007/11/28(水) 19:12:30 ID:SdYIEl2p]
- 着信の無い携帯電話の画面は酷く意地悪だ。
『お前なんかに電話してくる奴なんていないよ』 まるで電話に苛められているような気になってくる。 携帯電話というものを持った頃も そんな気がしたな…… とても淋しかった…… 時間が経つにつれ、そんなことも気にならなくなったけれど。 彼の言葉が気になっている私は電話から意識が離れない。 彼氏からの電話やメールを心待ちにしていた友人の姿を不思議な気持ちで見ていたことを思い出す。 ああ……そうか、こういうことだったんだ。 いやねぇ私ったら、彼氏だなんて…… 彼とは、まだ そういう関係でもないのに。 何を期待しているのかしら? でも、《キス》をした…… 初めてだった…… 唇が触れた感触を思い出す。 とても甘美な気持ちだった。 抱き締められた。 力強く。 彼に男性を感じるには十分だった。 そのことを思い出しただけでショーツが気になる。 いやねぇ私ったら、何を期待しているのかしら? 昨夜……あんなにシたばかりなのに…… 自分の中に、あの頃の少女の私と いまの女である私が同居している。 どちらの私も同じことを言うの。 『彼が欲しいの……。 彼が好きなの……』 彼から電話が来ないのなら、私からしてみようかしら? でも、私が踏み込むと地雷原が…… どうしよう…… どうしよう…… 【あと、よろしく!!】
- 437 名前:じうご mailto:sage [2007/11/28(水) 20:32:24 ID:ZfCg7oxv]
- >>436
少し、時間は遡る ――his side―― 「………ん?」 やけに眩しい、そう思い目を開け、窓を見る。見れば、朝日が俺を照らして…… 「……ってああ!?なんで寝てるんだ俺は!?」 朝になっている、ということを認識した頭は一瞬で覚醒、そして混乱する。 「ちょっと待てよ、落ち着け俺……」 昨夜の記憶を思い起こす、 「彼女に後で電話するって言って、風呂に入って……」 長風呂をし、すっかり記憶から彼女との約束が消え、寝た。 「……………………」 自分の最悪っぷりに思わず自己嫌悪をし、頭を抱えてしまう。 "後で電話する"そう言ってすっぽかされた、自分なら……不機嫌になる。 「ああ……くそっ、なにしてんだよ俺は」 携帯電話を手に取る、が、かける勇気が湧いてこない。 「…………………」 アドレスから彼女の電話番号を呼び出して、発信するだけ、それだけなのに 「う……ああ〜」 ただ、謝ればいい、それだけなのに 「ああああ、もう、なんでだ!」 携帯電話を投げる、たったこれだけのことに、決断をくだせない自分が腹立つ。 「…………でもな」 話さなければ、そう思い、投げた携帯電話をまた手に取った。 《後は任せます》
- 438 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/28(水) 20:47:17 ID:EbzEsJPy]
- うん、任された。
……あれから結局電話を手にした物の、かける事が出来なくて。 俺は学校の中にいた。 「……こ、こんどこそ」 休み時間を狙って、アドレス帳を選択する。 あとは、通話ボタンを押すだけ。 でも、俺からかけても迷惑じゃないかな。 あ、そう言えば昨日すっぽかした約束の埋め合わせ…… 「だ〜〜〜〜〜っっ」 自分が本気で嫌になりながら、思わず俺は小声で叫びながら頭を抱えてしまった。 わかってる、彼女のことだからきっと待ってるはず。なのに……。 「……この臆病者め」 いきなり背後から高い少女のような声が聞こえて、俺は慌てて振り向いた。 「な、何でお前がココにいるんだ!?」 俺の前でにやにや笑っているのは、木船香織だった。 女みたいな名前で、女みたいな顔立ちで、女みたいな衣装を着ているが、れっきとした男だ。 「なんでって同じ講義取ってるんだぞ? 同じ場所にいるのは当たり前だろうが」 にやにやと笑っているこいつが、色恋に関しては天才的なまでに持てまくってることを思い出す。 ……俺が携帯相手に身悶えていることで、大体のことを理解しているんだろうな。 「ま、なんだ。ようやくお前にも春が来たってことか」 「……さあね」 そのどこか楽しんでる声音が不快で、思わず普段以上に尖った言葉を投げてしまう。 そんな俺の苛立ちに気付いたんだと思うけど、木船がなんか邪悪な笑みを浮かべた。 瞬間。 いきなり手の中から携帯が消えた。 「って! 何しやがるコラ!」 「ふーん、××か、初めて見る名前だな。うん、つまり彼女に電話かけようとして、かけられないヘタレ君か?」 「るっせぇっ! とっとと返せ、コラ!」 思わず立ち上がりながら手を伸ばして。 その指が通話ボタンを狙ったように押してしまう。 「あ……」 「ほら、電話なってるぞ? まさか切ったりはしないよな?」 思わず木船を睨みながら、俺は携帯を取り戻した。
- 439 名前:書く人in携帯 mailto:sage [2007/11/28(水) 23:39:17 ID:qYw9yJVc]
- 〜 her side 〜
きっ、き、きき、ききき、来たっ! 電話っ!彼からの電話っ! 携帯の振動に、口から心臓飛び出そうなほど私は驚いた。 電話が来ると分かってた癖にこんなに驚いちゃうなんて・・・こんなんでちゃんとお返事出来るだろうか? 迷っている間にも携帯は私を急かす。 で、出なきゃ!早く電話に出なきゃ・・・。 私の震える指は通話ボタンを・・・ 「××ちゃん、アカンぜよぉ。携帯きらなぁ」 押し間違えて切ってしまった。 原因は、突然肥をかけてきた大林さん。 せっかくの・・・彼の電話・・・ 「・・・どないしたん?」 落ち込んだ私には、答える事も出来なかった。 〜333 side 〜 船木が珍しく気遣うような表情をむけてくる。 ああ、分かってる。分かってるさ。 最近の携帯は、電話帳登録されていれば出る前にかけてきたのが誰か分かる。 そして彼女は俺の番号を登録したと言ってたし、さらに切れたのは着信後。 分かるさ、ああ、わかるとも!これが意味することくらい! 「きっとボタンを押し間違えて・・・」 「・・・昼飯、奢るってやるよ」 船木が俺の肩を叩いた。 グッバイ 初恋 〜her side 〜 「もーしわけなかとです!」 「いいです、もう・・・」 奥の作業室でペコペコと頭を下げる大林さんに私は言う。 大林さんに悪気かあったわけではないのだし・・・ 「こうなったらワシが一肌でも二肌でも脱いで何とか・・・」 等とは言うが、失礼な感想かもしれないけれど、この人に何か出来るとは思えない。 黙ってうつ向く私。消極的な拒絶のつもりだったのに、大林さんはそれを肯定と受け取ったようで 「よっしゃ!今からごっつい助っ人呼ぶから期待しててや!」 「そ・・・っ」 そんなのいいです、と言う前に、大林さんはどこかに電話をかけてしまった。 二、三回のコールの後、 「お、船木か?ちょいと相談あるをやけど・・・」 【勝手に人を繋げてみた。続けてください】
- 440 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/29(木) 00:23:03 ID:zUQ51KBB]
- GJだけど、船木じゃなくて「木船」みたいですよ。
- 441 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/29(木) 00:38:14 ID:8exoIARS]
- ついでにいうなら、
さすがに肥をかけられたら、誰だってびっくりするわさ。 参加したいんだけど、入りどころが掴めない。 リレーって難しいですね。
- 442 名前:書く人 mailto:sage [2007/11/29(木) 00:43:32 ID:kT5AoCit]
- ごめん、巣で間違えた。
脳ない変換でお願いします
- 443 名前:〜 her side 〜 mailto:sage [2007/11/29(木) 09:34:50 ID:zGBQDspN]
- これは>>333がピンチだ
さてさて、どうやって救ってやろうかな >>441 妄想の思いつくままにどうぞw たまには このような遊びも面白いものですよ
- 444 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/29(木) 19:40:22 ID:pf4+5fxt]
- 〜>>333 side 〜
真っ暗闇になった世界の中、木船の胸元から場違いに明るい着メロが流れてきた。 「……あー、悪いな」 苦笑を浮かべながら木船が携帯を取り出すのを、何となくぼーっと眺めてみる。 ……てか、どうでも、いいんだけどさ。 あー、告白しただけじゃなくて無理矢理キスしたってのが、悪かったんだろうなぁ……。 俺って、なんて最低なんだろ。 「……おう、叔父貴、なんのようじゃい? ……変な言葉遣いはおめえのまねじゃけえ、ま、冗談はさておき」 一瞬、聞こえてきた声が理解できなくて、視線を木船に向け直す。 にやっと笑った木船が、そのまま携帯に答えを返していく。 「ああ、ふん……へぇ、面白い偶然だな…………ってマジ? ホントに。いや、実はさこっちも似たような状態でさ」 ……なんかわからないが、俺のことを話題にしてるような気がして、木船をじろりと睨み付ける。 けど、俺のことなんか無視して、木船はそのまま電話に没頭する。 「で、名前は? ……いや、そんな偶然あるのかってビビっただけ。……んじゃ、また後でかけ直すわ」 「……楽しそうだな」 睨み付けながらぼそりと呟いた瞬間、にやりともう一度笑いかけてくる。 「ああ、人生色々って奴だからな。あ、そうそう、昼飯奢るって言ったけど、アレ無しな」 「あ?」 「思いっきり宴会するぞ。俺の叔父貴がさ、奢ってくれるってよ」 なんでいきなりそうなるんだ? ……と目で問いかけるけど、木船はにやにや笑うだけで答えようとしなくて。 「……へぇへぇ、どうせ失恋してんだから、やけ酒でもかっくらってやるよ」 ふかい溜息を吐きながら、それでも木船なりの気の使い方に、少しだけ苦笑を浮かべた。
- 445 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/30(金) 00:32:50 ID:5taRYs5x]
- 彼側と彼女側に分けた描写がこんなに面白い効果を生むと誰が予測し得ただろうか。
GJですよ皆様。
- 446 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/30(金) 18:23:24 ID:zVMWkzlK]
- GJでございます
続きwktk
- 447 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/30(金) 20:23:25 ID:X++4Y4Wo]
- せんせー、そろそろリレー以外の作品も食べたいです……
ワガママいってスマソ
- 448 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/11/30(金) 20:44:03 ID:Qzwjlkcj]
- 読みたいなら、let's自給自足!待ってるぜ!
ただ、俺としてはまだまだリレーにはwktkしっぱなしだが
- 449 名前:名無しさん@ピンキー [2007/11/30(金) 21:01:40 ID:Rq+g8k+E]
- 保管が見れないorz
消えたのか?
- 450 名前:333 mailto:sage [2007/12/01(土) 01:00:07 ID:EJwsUNu9]
- 皆様リレーご苦労様です。癒されております。
最近は、会う機会も少し取れたりでそこそこいい感じです。 自分の一言へのレスが無かったら、メアドすら知ろうとしなかった俺なんで 本当に皆ありがとう。感謝してる。 正直リレーもここまで続くと思わなかったしな とにかく本当にありがとう。空気?何それ?おいしい?
- 451 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/01(土) 01:35:17 ID:1WNqiVM6]
- >>450
なにはともあれ良かったですな。 これからも、進展あったら報告頼む。 がんばれよ〜
- 452 名前:さぁラストスパートですよ!! mailto:sage [2007/12/01(土) 09:51:57 ID:vX1g5Dez]
- >>444
着いた店は、まぁ、なかなか良さそうな所だった。 「さてと、叔父貴はもう来てるかな〜」 木船は店内をキョロキョロ見渡して、 「お、居た居た、ほらいくよ」 店の奥のほうに進んでいく、俺は連れられていくままに、 「おー、やっと来おったか」 どこか人の良さを感じさせる声と、 「……え?>>333君?」 彼女の声に出迎えられ……って、 「……え?なんでここに?」 「……私は連れられて来たの」 その言葉を聞き、思わず二人の方へ振り替えれば、無言でニヤニヤしている様子が目に入った。 ……謀ったな、あいつら そう思うも、自分の頬がなぜか緩んでいくのを感じる。 「ま、早くパァーッと始めよ」 唐突に木船がそういって、たった四人だけの宴会が始まった。 《頑張れー、あともう少しだ》
- 453 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/01(土) 10:42:24 ID:1WNqiVM6]
- >>452
〜 her side 〜 「……えと、その」 目の前に座る>>333君に、私は何も言うことが出来ない。 だって、振られたって思ってたのに。けど、彼は恥ずかしそうで照れ臭そうな、だけどどこか嬉しそうな笑顔浮かべてくれてるから。 だから、私もなんとか微笑む事が、出来て。 「あ〜、さっきはゴメン。変な時間に電話して……」「いえ、嬉しかったです。……私こそ、操作ミスで出れなくて、そのごめんなさい」 「はぁああ〜〜〜〜」 そう言った瞬間、彼が思いきり溜息を吐いて、思わずびくって肩が震えた。 だって、怒ってるんじゃないかって、思ったから。 「よかったぁ〜〜、その、俺 嫌われてんじゃないかって思ったからさ」 「そそそそっ! そんなこと無いですっ! ……ぁ」 彼の言葉を思い切り否定して、それがその告白の答えになってることに気付いて。 私は顔が熱くなるのを感じた。 けれど、その言葉を取り消すことは出来なく――うぅん、したくないから。 「私も……、>>333君と会えて嬉しいです」 素直に思ったことを口に出来た。 きっと顔が真っ赤になってると思う。それだけじゃなくて、きっと耳まで赤くなってるはず。 だけど、いい。 だって、目の前の>>333君が笑ってくれているから。 「ちっ、良い雰囲気出しやがって、手前ぇにゃもったいなさ過ぎるお嬢さんじゃないかよ」 いきなり、>>333君が思い切り頭をがくんって倒した。 うぅん、木船さん――だったっけ、女の人みたいに見える男の人に、思い切り頭を叩かれたんだ。 「って、いきなり何しやがる!」 そんな木船さんに、彼が怒ったような表情を向ける。 けど、それはどこか楽しげで、楽しそうにしている彼を見るのが、私も楽しい。 「まぁ、ええやないか。まずは乾杯からせにゃならんでの。ぶちようけのむっぺよ」 「……はい」 私の隣に、半分くらい間を空けて座る大林さんが、いつもの口調で喋って。 みんなの前にビールの中ジョッキが置かれて、私の前にはチョコレート色の変わった飲み物が出てきた。 大林さんの選んだソレはいわゆるカクテルと言う物らしい。 甘めで飲みやすいのを選んだからって、言われて押し切られたんだけど、 ……私、お酒飲むの初めてなんだよね。 「ま、若いカップルの前途を祝して」 「……あの、大林さん、恥ずかしい、です」 「えと、それはちょっと、まだ……」 「るっさい、アホ介。お前はだぁってろ。ってことで××さんどうぞ」 木船さんが楽しげに笑って行ってくれたことの意味を理解して。 私はカクテルの入ったコップを持ち上げた。 「……乾杯」 かんぱいとみんなが口々に言うのを聞きながら、私はこくんっと生まれて初めてアルコールを口にした。 【続き、がんばれー。エロは自分が書きたいなぁと言ってみたり】
- 454 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/01(土) 10:46:34 ID:1WNqiVM6]
- ってことで、三回目まとめ、行きます
一回目 >>369 二回目 >>428-429 >>438 >>436-439 >>444 >>452-453 てか、いい年こいたオスなのに、男子一人称より女子一人称の方が書きやすいのは何でだろ?
- 455 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/01(土) 21:32:57 ID:oNXFPa2Y]
- >>454
乙にしてGJです。 >エロは自分が書きたいなぁ >女子一人称の方が書きやすい つまり女性視点でエロを書きたいということか。
- 456 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 00:14:16 ID:2+niv/q+]
- >>453
――his side―― 結果から言おう。 あの二人は早々に「あとは二人で〜」と言って去り、 残された俺と彼女は楽しく談笑しながら飲んでいたのだが…… 「……………」 「あー……大丈夫?」 「……え、あ、大丈夫」 彼女はどうやらお酒を飲むのが初めてらしく、ペースが飲むわからなかったのか、 すでに顔は真っ赤で、言葉は微妙に呂律が回っておらず、おまけに反応が鈍い。 「えーっと、そろそろ行こうか」 「……………あ、はい、わかりました」 ちなみに、俺はかなり酒に強いほうなので、これぐらいではなんともない。 会計に行こうと、立ち上げる。それに合わせるように、彼女も立ち上げったが 「…………あれ?」 そう言って、ふらついた足取りで後ろに倒れそうになる。 「わっ!!ちょっと待った」 咄嗟に、彼女の方に行き、支える。 「………………すみません」 「良いって別に」 彼女を支えたまま、会計を済ませ、店を出る。かなり長居をしていたらしく、 日が早く沈むようになった空は、すでに紫色で、月が見えていた。 《なんか限界、眠いから寝るよあとは任せた》
- 457 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 01:04:57 ID:e/i5kVy4]
- 〜 her side 〜
せかいがぐるぐるまわっている。 うん。 だいじょうぶ。わたしも同時にまわってればだいじょうぶ。 でもあまりまわっちゃうとめが回る。 そうだ。 ぎゅっとすればいいんだ。 いいにおい。 汗と整髪料のいいにおいがする。 ぎゅうっ、と腕をだきしめると、そのにおいはもっと大きくなる。 腕はちょっと太くて、筋肉質で、わたしの腕とは大違いだ。 やっぱり男の人の腕って、すごいんだ。 うまれてはじめておとこの人の腕に抱きついて、その感触はとてもすごくステキだ。 耳元で>>333君がなにか言ってきている。 ステキ。ステキ。>>333君の息の温かさとか、耳をジンジンとしびれさせるような響きとか、 その高くも低くもない音程とか。なにをいってるかわかんないけど、すごくステキ。 抱きついている>>333君の腕と触れている皮膚の裏側あたりがなんだか甘痒くうずいてきてしまう。 あれ? ここ、どこだっけ? ちょっと寒い。 >>333君の腕はあったかい。 体もあったかい。 だからぎゅうう、と、もっと強く抱きしめる。 当たってるおっぱいが「くにょん」と歪んじゃうくらい強く。 ふらふらしちゃいそうなわたしを、>>333君はしっかりと支えながらあるかせてくれている。 ステキ。こんなふうに、べたべたいちゃいちゃしながら街を歩くカップルを「バカみたい」と思ってたけど。 わたしは間違ってた。 それはすごくステキで、嬉しくて、楽しくてシアワセなことなんだ。うん。 ろれつの回らない言葉で>>333君にそれを伝えたのだけど、わかってくれたかな? なんだか色とりどりのネオンが目に映っている。 世界がふわふわしてるから気がつかなかった。 隣でわたしを支えてくれている>>333君がなんだかちょっと無口になってるみたい。 ――ダメなのかな。 わたしが地味でつまんない女だから、>>333君はそんなふうにつまんなくなっちゃうのかな。 そう考えると、なんだか泣きたい気持ちになってしまう。>>333君にはシアワセになってほしい。 >>333君みたいなステキな男の人は、いつでもシアワセで楽しい気持ちになっていて欲しい。 でも、わたしじゃダメなのかもしれない。 気がついたらわたしは、 「……わたしじゃ…ダメなのかな」 彼の耳元でそうささやいていた。 【続きは頼んだぜ兄弟】
- 458 名前:書く人 mailto:sage [2007/12/02(日) 09:33:43 ID:jR1yhCZx]
- 〜 >>333 side 〜
「ふふ……」 頬笑みながら、彼女が回る。 クルクルと舞うように、冬の夜風にスカートを乗せて、妖精のように…。 ……と、表現すれば可愛いものの、客観的に言わせてもらえば完全に酔っ払いだ。 「つか、何で回るんだ?」 「…世界が…回ってるもの。だから…私も……」 うん、やっぱり酔っぱらっている。 酔っぱらった彼女はしばらく回っていたが、やがて三半規管に限界が来たらしい。足がもつれる。 「おっと…」 俺は手をのばして彼女の手を取って引張る。反動で彼女の体がこちらに向かってくる。 受けとめた感触は羽毛のように柔らかく軽く、しかし確かな実体と質量を俺に与えた。 「大丈夫?」 店を出てから何度目かの質問。彼女は惚けたようにこちらを見て頷く。 酔っ払ってはいるもののとりあえず大丈夫そうなので、歩きはじめる。 彼女は今度は回らなかった。代わりに、俺の腕を抱きしめるようにしてきた。 正直助かる。いつ転ぶかハラハラして見ずに済むし……それに、暖かい。 錯覚なのだとは思う。冬の寒さによる熱の略奪を防いでくれる厚手の生地は、同時に俺と彼女の間に厳然と存在して熱の交換を妨げる。 けれども腕に感じる彼女の体の柔らかさは温もりを錯覚させる。それは錯覚だが、彼女と言う温かい存在を確かに俺に伝える。 そう……彼女は今、俺の隣にいる。 彼女の体の柔らかい感触も、冬の空気に混ざる甘い香りも、確かに今、俺の隣にいる彼女の存在を伝えてくれる。 感動だった。そうとしか表現する言葉を知らなかった。 人間は生まれた時は興奮と沈静の二種類しかない。それが快不快、喜怒哀楽と分化していき、一つ一つがラベリングされていくことで感情が形成される。 感情が動いた。それは俺が今まで知らなかった類のもので、快いもので、喜楽に属するものだ。 「……××」 何か言おうとして、初めて感じた感情は、彼女の名前という形で口を零れた。 彼女は何も答えなかった。声は小さかったし、彼女も意識が朦朧としていたのだろう。 理性ではそう分かっていても、胸が締め付けられるような切なさを感じる。 ……俺ってばこんなに乙女チックだったのか? 自分のポエマーっぷりに呆れていると、声への答えだとしたら時間差付きの反応が来た。 俺の腕を抱きしめる力が増す。 彼女の柔らかな感触が、よりはっきりと腕に伝わってきた。特に胸とかが「くにょん」と。 「…っ、××?」 「あったかい……」 うろたえる俺に、安心し切ったように彼女は俺に体重を預けながら呟く。 その信頼と、感じるはずのない体温を感じるという錯覚の共有を、俺は嬉しく思った。 「すてき…」 「ん?」 「間違いだよ、私…。ばかみたいなことじゃ間違えだもん…。 だって幸せで、うれしくて、たのしくて、幸せなこと」 酔っぱらっている彼女の言葉は文法が間違っていて、単語が重複していて、呂列が回っていなかった。 けれど、確実に分かったことがある。彼女は今、幸せを感じている。そしてその理由は俺にある。 「ああ…」 俺が言ったのは感嘆だったのだろうか返答だったのだろうか?自分でもわからなかったが、言葉の理由は俺も幸せを感じたからだった。 不意に目が、アンバランスなクリスマスカラーのイルミネーションが巻きつけられた看板を捉えた。 『休憩一時間―――』 ラブホテル、という類のものだ。
- 459 名前:書く人 mailto:sage [2007/12/02(日) 09:35:19 ID:jR1yhCZx]
- 満たされていた幸福感を、稲妻のように切り裂いて衝動が突き抜けた。
性欲だ。腕に感じる彼女の感触が、急に生々しいものに感じられた。幾重もの布切れ越し感じる、やわらかな肉。異性の体。 「……わたしじゃ…ダメなのかな」 耳元で声がして、はっとした。潤んだ彼女の瞳が、俺をとらえていた。 「>>333くん、しゃべんなくて…私が地味でつまんない女だから、シアワセじゃないんだよね? 私が……>>333君が私でシアワセになってほしいのに…」 目の潤みが、涙になって零れる。 めまいがしてきた。世界が回り、自分の脈動が聞こえる。 『食っちまえ』 脳裏に響いた声は、木船が去り際に言った冗談の記憶か俺の本能の誘惑か? 「…何でもするよ?どうすればいいの?私の全部をあげるよ?それでシアワセになれない?>>333君はシアワセになれない?」 耳朶を震わせる声は、彼女の誘惑か俺の都合のいい妄想か? ああ、俺は酔ってる。何に?アルコールにか?彼女にか?性欲にか?ラブホの前でこんなことを言われているという状況にか? ぐるぐると回る思考の中で……俺は…… 「………駄目だよ」 〜 her side 〜 抱きしめられて、告げられた。 「………駄目だよ」 ああ…やっぱり私じゃ駄目なのか…かなしいな。 「そうじゃない!」 じゃあ、どう駄目なの? 「どうって…ま、まだ再会して間もないし… 酔っぱらってる所をなんて卑怯だと思うし… まだ君の気持をしっかり聞いてないから」 気持ち?どういうことだろう。私は… あ、そうか。私、言ってなかったっけ? 彼に言ってなかったっけ? うん、好きだって言ってないや。 恥しいな…。けど言おう。いいや、言っちゃおう。 地味な私だけど、今は酔っぱらってるもの。酔っ払ってていつもと違うもの。 いつもと違う私だから、いつもと違うことをしちゃうもん 「大好き」 ああ、気持ちいい。ぎゅっと縮こまっていた心が広がるみたい。 「>>333くんのこと…大好き。好きなの。私だってずっと好きだったの。 腕が好きだし、たくましいし、ハンカチでエッチな気持ちになっちゃうくらい好きだよ?」 「え、えっち…って」 うん?何か変なこと言ったかな?地雷原かな?けどいい。もっと言おう。 「大好き…私、>>333くんのこと、好き…で…」
- 460 名前:書く人 mailto:sage [2007/12/02(日) 09:37:40 ID:jR1yhCZx]
- 〜 >>333 side 〜
突然に、言葉が途切れてから一分ほど経って、俺はようやく気付いた。 「……××?」 声を掛けても、戻ってくるのは一定間隔の呼吸のみ。寝てしまったようだ。 「はぁぁぁ…」 その場に崩れ落ちてしまいそうな脱力感。 ああ、やっぱり酔っぱらってたんだな、それもひどく。 勢いに任せてここに連れ込まなくて良かった。 たぶん、この状況で行為に至っても、彼女はきっと許してくれるだろう。けれど、俺自身がきっと許せなかったはずだ。 「好き…か」 改めて確認して心が温かくなる。 『>>333くんのこと…大好き。好きなの。私だってずっと好きだったの。 腕が好きだし、たくましいし、ハンカチでエッチな気持ちになっちゃうくらい好きだよ?』 胸中でリフレインして、確信する。 想いが通じた、と。 ……まあ、なんだかめちゃくちゃ爆弾発言が紛れ込んでいる気がしないでもないが…それでも、 「両想い、か」 顔がニヤける。好きな人に、好きになってもらえる。そんなありふれた、けれど最高の奇跡。 「けど……だとしたらちょっともったいなかったかな」 緊張感が抜けた所に、ちょっと魔が差してきた。 が、一蹴する。焦ることはない。 彼女と、これからゆっくりと時間を共有していこう。彼女と着実に時間と、思い出と、絆を積み重ねて……そして…… 「とりあえず、タクシーだな」 俺は彼女を支えながら、大通りの方に歩きだした。 【長文失礼。あえて寸止め。酔った勢いはいけません。 リアル>>333がんばってください。応援してます】
- 461 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 09:47:44 ID:HaS0x5j4]
- なにはともあれGJ
「そんなありふれた、けれど最高の奇跡」なんて良いフレーズだよなぁ。 お見事でした。
- 462 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 09:56:25 ID:FEBex1Kd]
- 読み終わった今の顔は誰にも見られたくないなぁ
ニヤニヤしてるからw
- 463 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 10:41:14 ID:FEBex1Kd]
- 彼女を自宅まで送り届け、家族に託して家路につく。
ふう……意識はしっかりしている。 まだ酔っているはずだけど、胸の奥深いところから何かが湧き出てくる。 興奮、感動、焦燥? 自分でも正体がわからずに自分の気持ちを持て余す。 落ち着けよ俺。 部屋に入って、ベッドに転がっても気持ちは落ち着かない。 こういうときはクールに一本抜いて……とも考えたが、分身は静かに眠ったようだ。 ピクリともしない。 動物的本能よりも、人として恋が成就した興奮のほうが強いと言うのか…… 彼女が、好きだっていってくれた……ずっと好きだったって……。 俺も……好きだった。 あの頃も、そして今も。 俺の中から湧き上がってくるこいつは……喜びか? ああ、そうか。 俺は嬉しいんだ。 彼女と、想いは繋がっていたことが。 中学生だった あの頃、自分の恋心を伝えることすら出来ずに時間は流れてしまった。 あれから10年。 お互いに成長し、経験を積み、再会出来たことはきっと只の偶然じゃない。 俺と彼女が自分に素直になって想いを伝えあうことが出来るようになるまでに必要だった時間なんだ。 俺は……彼女が好きだ。 一眠りして目が覚めたら、彼女に会いに行こう。 そしてもう一度、彼女に想いを伝えよう。 今度は、他人の手も酒の勢いも借りずに。 自分の言葉で、自分の想いを 彼女に伝えよう。 自分自身の気持ちに整理がついたせいか、少し落ち着いてきた。 落ち着いたとたんに本能が鎌首を持ち上げてくる。 現金な奴だ。 自らの本能と熱く格闘した俺は心地好さの中で眠りに落ちていった。 【クライマックスに向けてラストスパートだw ラストは盛り上げようぜ!!!】
- 464 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 23:11:55 ID:HaS0x5j4]
- 〜>>333 side 〜
「えと、本当に良いのか?」 「うん……」 俺は自分の部屋に上げた彼女を見詰めながら、へたれてしまう自分に活を入れる。 「……ずっと好きだったから。……もう、止まらないから」 彼女の声に、俺は小さく頷いて見せる。 どくんどくんとやかましい音が響く中。 どうしてこうなったかを思い出していた。 今日も講義を受けに出てきた俺の周りは、あっという間に男友達で占められていた。 むろん、原因は言うまでもなく昨日のことをあっさりと言いふらしまくった木船だ。 元々、ダチとバカやってることが多い俺だけど、その手の話題は全くなくて――というか、俺のダチは大抵そう言う奴で木船が変わってるだけだけど――だから嫉妬混じりの祝福でもみくちゃにされてしまった。 単純に言えばそれだけのこと。 ……だったんだが。 昼飯時、学食に行こうとした俺の携帯がいきなり鳴って、彼女から電話が入ったんだ。 木船と大林さんに謀られて校門前に来ていたらしい。 ――しかも、手作り弁当を携えて。 正直、ダチ連中からの殺意を受けながら――無論、木船が冗談半分で広めたからだ――俺は彼女と合流して、そのままふける事にした。 何でかって言えば、かなり身の危険を感じたからだ。 ……なんせ、わざわざ校門までついてきて、彼女と俺の周りを取り巻いてくれたんだから。 しかも、彼女に不躾な質問までし始めたんだから、逃げる以外に彼女を護る手段が無かったわけだ。 で、そのままデートにかこつけて、夕食時になったから送っていこうと思ったんだ。 その時に、彼女が俺の家を見たいって言い出したってだけの話し。 だけど、本当は気付くべきだったんだ。 彼女が、そのつもりでいることを。 「俺、……俺さ」 何の変哲もない、家具らしい家具もない俺の部屋。 なのに、ただ彼女がいてくれるだけで、きっと一流ホテルでさえ敵わないほどの雰囲気に包まれた部屋で、俺は目の前に立っている彼女を見詰める。 彼女は顔を赤くしたまま、ただこっちをじっと見詰めてくる。 その様子に、胸の奥が熱くなる。 昨夜の事を、全部覚えてるって彼女は言った。 とても恥ずかしくて、思い出すと顔から火が出ちゃいそうだとも言った。 そして、彼女が向けてきた言葉に、俺はまだ、答えが出せない。 いや、答えはとっくに決まってる。だけど、その先を口に出来ない。 どこまでヘタレなんだろうか、俺は。 「あの、さ」 彼女は何も言わずにただ見詰めてくる。待ってくれている。 だから、俺は顔をしっかりと上げて、いきなり自分の頬を軽くはたいた。 「?」 驚いたように目を丸くする彼女に笑いかけて、俺は深呼吸をして彼女を見詰める。 「俺もさ、××の……、君のことがずっと好きだった。君が初恋で、言葉をかけることも出来なくて結局、終わるはずだったんだと思う」 呟きながら、一歩だけ前に踏み出して。 「好きだ。君のことを誰よりも何よりも好きで、大切にしたい。そう思ってる」 「……じゃぁ、なんで昨夜は?」 顔を赤らめた彼女が、じっとこちらを見詰めてくる。 その真剣な眼差しに、答えるために、数度深呼吸した。 「だってさ、酔っぱらった女の子に手を出すなんて、男として最低だからな。そりゃ、据え膳食わぬは男の恥って言う奴もいると思うけど……、好きな女性だからこそ、そんな事したくなかったんだ」 言いながら、更に一歩を詰めて、俺は彼女を抱きしめていた。 彼女も俺の背中に腕を回して抱きついてきて。 気がつけば、そのままキスを交わしていた。
- 465 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 23:12:38 ID:HaS0x5j4]
- 〜 her side 〜
キス、してる。 唐突に奪われたんじゃなくて、一方的に押しつけたのでもなくて、きちんとお互いのことを思いながら、キスしてる。 時々、こすりつけるようにされると、ぞくって背筋が粟立って胸の奥が暖かくなってくる。 ……悪戯心を起こして、私は彼の唇に舌を這わせた。 んっ、と彼が困ったような表情を浮かべながら私を受け入れてくれる。 同じように舌を出して、私の唇を舐めてくれた。 それだけの事で、口から生まれた痺れが、背中を通ってお腹の奥に響いて来た。 いけないって思うよりも早く、じゅんっと液体が湧く感触を覚えた。 彼の唇をこじ開けて、舌を差し込む。 彼も同じようにしてくれて。 普通なら他の人が触れるはずもない場所を預けていることが、預けられていることが嬉しくて心地よくて…………気持ちよくて。 液体が漏れていくのを抑えられない。 「んっ……ぷはっ」 彼が私から唇を離して、少しだけ困ったような表情を浮かべる。 「あの、さ。今日はこれからどっか出掛けようか? ゆっくりと歩くだけでも良いんだけどさ」 「……いや、です」 彼の言いたいことが理解できたから。 私はしっかりと首を振った。 だって、決めてたから。彼へ向ける思いをこれからもずっと忘れないために。 初恋……うぅん、違う。 同じ人に、抱いた二度目の恋を、終わらせないために。 私は彼の目を見詰める。 その瞳に、映り込んでる私の顔は真剣と言うより、……どこかはしたなく見えたけど、ソレだって構わない。 だって、こんな顔を見せるのは、彼にだけ。 >>333君にだけだから。 「最後まで、して欲しいです。……抱いて、欲しいです」 彼がじっとこちらを見詰めたまま、一歩下がる。 抱擁がなくなるのが寂しいけど、それが拒絶じゃないって解ってたから。 私はただ微笑んで見せた。 「今まで、大好きでいたから。今もずっと大好きだから。これからも大好きでいたいから」 だから、と。 彼に微笑みを向けたまま、私はまだ羽織ったままだったコートを脱いで、そのままぱさりと床に落とした。 「えと、本当に良いのか?」 彼の戸惑いを乗せた言葉に頷いてみせる。 「うん……、ずっと好きだったから。……もう、止まらないから」 決心を込めて来たんだから。受け止めて欲しいから。 ……好きな人が好きでいてくれるって解って、もうこの想いは止まらなくて、止めようとも思えなくて。 「それとも、私って、魅力ない……かな?」 「そんなこと無いっ!」 思わず呟いた卑下の言葉に、彼が慌てて否定してくれる。 ……ソレを望んでいた自分に、っていうより女の性にすこしだけ嫌気がさすけど、彼は受け止めてくれた。 今はそれだけが真実で、私は彼の返事を待たずにブラウスのボタンを一つ一つ外しはじめた。
- 466 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 23:13:21 ID:HaS0x5j4]
- 〜>>333 side 〜
もう、止められなかった。 彼女が、あの引っ込み思案で恥ずかしがり屋だった彼女が、自分から俺のために服を脱いでいく。 その光景は生唾物だった。 図書館の司書をしているだけあって、日焼けとは全く縁がなさそうな抜けるような白い肌が、露わになる。 ……黒いレースの下着がやけに扇情的で、掌に少し余るくらいの胸は、きっと平均より少し大きいものだと思う。 「……>>333君も、脱いで欲しい……な」 伏し目がちになりながら彼女が呟く。 「あ、ああ」 慌てて服を脱ぎながら、俺は、少しだけ不埒な想像をしてしまった。 自分から求めてくる彼女。 眼鏡で解りづらいけど、きっと誰よりも綺麗な彼女の事だから、今までに誰かと付き合ったことがあるかも知れない。 ホックの外れたスカートが、ぱさりと彼女の足下に落ちた。 ごくんっと大きな音と共に、思わず唾を飲み込んでしまう。 ……黒い下着だから解りづらいけど、彼女の中心部分が色ずんで、……きっと濡れてるって解ってしまったから。 俺も慌てて服を脱いで、下着になった時点で動きが止まってしまう。 もう上を向いて固まっていたから。 それが恥ずかしくて、だけど隠すことは出来なくて。 俺は彼女と向き合う。 「……その、私、ハジメテだから……」 頬を赤らめる彼女に、どくんって体の奥から音が響く。 ハジメテなのに、自分から求めてきた彼女。 それがどれだけ恥ずかしくて、勇気がいることなのか解ったから。 「俺も、はじめてなんだ。だから、変なことしたら、ごめん」 呟きながら手を伸ばして、彼女を引き寄せた。 そのまま背中と膝裏に腕を回して抱き上げる。 「いいよ……貴方になら、なにをされても、いい」 胸が震えるってこんな時のことを言うんだろうなって、そう思える。 けど、その気持ちを言葉に代えることが出来なくて、俺はただ彼女に口づけて、そのままベッドまで移動する。 優しく彼女をベッドに寝かせて、笑いかける。 すこしでも彼女が安心するように。 そして、俺は彼女に覆い被さった。
- 467 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 23:19:19 ID:HaS0x5j4]
- 〜 her side 〜
月明かりの差し込む部屋の中。 私は彼の腕を枕にして、一人顔を赤らめていた。 思い出すだけで、恥ずかしくなってくる。 彼の手の動き一つ一つに自分でも思っても見なかったくらいに気持ちよくなって、はしたない喘ぎ声を上げてしまった。 彼が入ってきたとき、あまりの痛さに涙を見せて彼に心配させた。 必死で彼にしがみついたときに、彼の背中に爪を立ててしまった。 ……なのに、少しの間彼に小突かれただけで、痛みより快感を覚えてしまった。 最後に、彼が達するときに、後先考えずに中に出してとねだってしまった。 全部、恥ずかしすぎて、穴があったら入るんじゃなくてそのまま埋められてしまいたい。 そう思うくらいに恥ずかしい。 「……好きだよ」 彼の寝顔を見ながら、私はそっと舌の上に言葉を載せる。 彼の事が何よりも愛おしい。 彼が側にいてくれると思うと、叫び出したいくらいの嬉しさが込み上げてくる。 きっと、人を好きなるって、こういう事なんだと思う。 側にいてくれるのが嬉しい。 側にいられるのが嬉しい。 お互いを必要と思いあえることが、何よりも嬉しいから、誰かを好きなるんだって。 「……最期まで、いっしょにいようね」 小さく呟いて。 私は彼の頬にそっと口づけた。
- 468 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 23:20:01 ID:HaS0x5j4]
- 〜>>333 side 〜
「ん……」 なんだか、くすぐったさを覚えて俺は目を覚ます。 窓から見える白々あけの空に、そんなに寝てたのかと思って首を傾げた。 なんだか寝過ぎで余計眠くなってる気がして。 ついでに昨夜は結局晩飯を食ってなかったような気がしたから。 「す〜す〜」 いきなり隣から寝息が聞こえて。一瞬口から心臓が飛び出しそうになった。 慌てて視線をそちらに向けて。 昨夜の彼女との甘い一時が一気に蘇る。 「……俺」 気持ちよさとかは、基本的にどうでも良かった。 体だけの気持ちよさを言うなら、自分の手でこすってる方が気持ちいいとかって気がしたから。 けど、痛みに耐えて必死にしがみついてくる彼女の様子が。 幾度か動いていると痛みよりも快感を覚えているらしい彼女の様子が。 なにより、大好きな、……愛しい人と快楽を分かち合えたと言う事実が。 体だけの快感の幾数倍もの気持ちよさを感じたから。 愛らしい寝息を立てる彼女をみながら思う。 これからも、ずっと彼女といられるだろうかと。 「何、大丈夫さ」 そんな僅かな不安とも呼べない想いに、苦笑を浮かべる。 だって、俺は彼女に二度も恋をしたんだ。 幼くて諦めただけの初恋と、ソレよりも遙かに強い二度目の恋。 きっと、これからすれ違いはきっとある。 俺も彼女も、生きているんだ。 想いがずれるときもあるし、好きだから余計にお互いの些細なことが許せなくなるときが来るかも知れない。 だけど、きっと大丈夫。 もしその時、二度目の恋が終わっても、きっと俺は彼女にまた恋をするに決まってる。 言葉が足りなくて傷つけるかも知れない。 彼女を想うからこそ、傷つくことがあるかも知れない。 けれど、俺は彼女を大切に想う。 思い続ける。 きっと、そんな想いが、恋情よりもずっとつよくて大きな愛情なんだ。 「……××、愛してる」 呟きながら、俺は彼女の頬にそっとキスをした。 We hope that >>333 are happyend The End
- 469 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 23:25:57 ID:HaS0x5j4]
- 長文且つ僭越ながら幕を引かせて頂きました。ごめんなさい。
>>333の前途が幸せであることを心から祈っております。 最終まとめ 一回目 >>369 二回目 >>428-429 三回目 >>454 >>456-460 >>463-468
- 470 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/02(日) 23:35:49 ID:bnaXx4dE]
- 最高GJ
なんか終わってしまうとなるともったいない気がするな
- 471 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/03(月) 00:13:27 ID:dDkM/qIu]
- >>469
ナイスフォロー そしてGJ!! 延々と耳元で小一時間GJ!!
- 472 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/03(月) 00:49:17 ID:x/HVO0F9]
- この2週間足らずの間にずっとssを書いてくれた職人達全てにGJ!!!!!
そして願わくば>>333の恋が実りますように。
- 473 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/12/03(月) 03:28:52 ID:xIrHSG4h]
- >>469何かもう感情ごちゃまぜだ・・・
まずはありがとう。理想の純愛ENDだな。 本当にきれいな終わり方だな。ラストがあなたでよかった。 そしてこのスレで力を合わせて書き上げた、最高の純愛【無口】作品に乾杯!!! そして>>333にこのSSが幸せをもたらす事、幸せな未来がある事を心から祈ってる。
- 474 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/03(月) 07:27:30 ID:U72VY0ir]
- 全て参加者と住人にGJ
面白い遊びだったよ
- 475 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/03(月) 07:31:27 ID:xWGvDfHl]
- ああ、もうGJすぎる
そんな作品にGJしか言葉を送れない自分がふがいない 仕方ないので心の底からのGJで伝えさせてほしい GJ!!
- 476 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/03(月) 15:30:29 ID:6HE/Yy1C]
- みんな本当に無口娘を愛してるんだな……
そうでなかったら、こんな風にリレーが最後まで続くはずがない。 そもそも友達同士でさえ、リレー小説はたいてい途中で止まるのに! 完走萌えでとう! 書いたみんなにスーパーGJ!!!
- 477 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/03(月) 16:49:05 ID:HyKdcxk1]
- まさか最後まで続くと思ってなかったな
結局俺は傍観者してるだけだったけど、大変楽しませてもらった リアル>>333もうまくやって欲しいな。 もはや言うまでもないんだが、リレー参加者全員にGJ!
- 478 名前:333 mailto:sage [2007/12/03(月) 23:49:39 ID:tndsjWzn]
- 正直、言葉が浮かびませんが、皆本当にありがとう。
なんか分かんないけど、泣けた。本当にありがとう。 今、全部読んで少しテンパってて上手く言えないけど お前らみたいな奴らがいてよかった。本当に。 後悔しないよう頑張る。俺なりに誠意で応えるから
- 479 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/04(火) 01:57:08 ID:TuOhCM+c]
- その言葉が聞けてよかった。幸せになってくれよ。
てか今更だが、このスレの絆に涙が止まらなくなった。ここにいてよかったと本当に実感させられた。 さて、ところで無口っ娘クリスマスネタの需要が増えて来る訳だが何かいい案あるか?
- 480 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/04(火) 14:20:27 ID:D8BqLqpx]
- すげえ、こんなにきれいにまとまったリレーなんて初めて見たよ
>>333と書いた皆さんGJ!!
- 481 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/04(火) 14:35:38 ID:oMop7wUN]
- 何人か固定のレベルの高い書き手がいたのと、
ジラし担当とプッシュ担当のバランスがよかったのが 成功の秘訣だったのかもな。 何はともあれみんなGJ!
- 482 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/04(火) 18:01:10 ID:gxpVs6f4]
- とりあえず、保管庫がないと勿体無い(`・ω・)
- 483 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/04(火) 18:25:13 ID:TtAF6rLN]
- 無口スレの保管庫は死んでるのか……
- 484 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/12/05(水) 03:03:43 ID:ZOXe+YXY]
- 保管庫消えたのか。
じゃあwiki辺りで作るか?
- 485 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/05(水) 10:18:20 ID:xU98ISg8]
- 消失した作品データ・・・。
勿体ない
- 486 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/06(木) 00:06:08 ID:G+r4swzh]
- >>484
まぁそれがいいだろうな、頼む >>485 過去ログを持ってる人にうpしてもらえば大丈夫だろう
- 487 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/07(金) 05:35:25 ID:jjIQUHsI]
- じゃ、wikiができるまで過去ログ置いておきますね。
red.ribbon.to/~hachiwords/m/
- 488 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/07(金) 23:51:50 ID:AMMrpBh2]
- 読み手の専ブラの中にもdatがあると思うけど・・・
- 489 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/08(土) 07:59:28 ID:69N1cFOq]
- >>486すまん。今出張中で携帯しか持ってないんだ。
まだしばらく帰れないから、すまないが他にできる人がやってくれ。
- 490 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/08(土) 08:12:04 ID:sU4zuN0f]
- 一応、wiki立ち上げだけなら出来る。
そのかわり、更新かなり遅くなるんで出来れば手助け欲しい。 誰でも編集可能にすると、悪さする奴が出そうなんだが、さてどうしよう。
- 491 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/08(土) 08:22:25 ID:g3gkdQpr]
- 実害がでてから制限したら?
猫の手も借りたいところだろうし
- 492 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/08(土) 08:30:32 ID:sU4zuN0f]
- では、誰でも編集可能で立ち上げてくる。
- 493 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/08(土) 09:57:32 ID:sU4zuN0f]
- wiki.livedoor.jp/n18_168/d/FrontPage
ってことで、保管庫立ち上げ完了。 とりあえず時間がないんで、一番最初の一編だけ保管したので、 余裕がある人は、保管手伝い、お願いします。
- 494 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/08(土) 12:15:05 ID:nzr9evy8]
- 保管庫乙&サンクス!
- 495 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 01:59:18 ID:geiosX30]
- こんばんは。久しぶり……ではないですね。リレーに参加したし。
でも一つの作品投下という意味では二ヶ月ぶりです。せめて一ヶ月にできるよう頑張ります。 以下に投下します。縁シリーズラストです。 今回過去の作品を上回って一番長くなってしまいました。 長いのが苦手な方はスルーでお願いします。
- 496 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:00:17 ID:geiosX30]
- 『縁の切れ目 言霊の約束』
遠藤守の住むアパートの一室で、依子は呆然と固まっていた。 部屋には三人の人間がいた。依子と、守と、もう一人若い女性の三人が座卓を囲んでいる。 その女性は美しかった。 人形のように整った顔立ち。流水のように滑らかな黒髪。厚手のスーツは凛とした雰囲気を際立たせ、服の間から見える柔肌は雪のように白い。 そして、依子にとてもよく似ていた。 依子は何も考えられず、何も言葉が出なかった。色々なことが急に起こりすぎて、頭が混乱していた。 一度だけ小さく深呼吸をする。簡単に落ち着けるものではないが、事態の整理には効果的だ。 依子は整理する。頭の中で、今までに起こった出来事を。 昨日の夜、依子は守を二ヶ月半ぶりに訪ねた。 しばらく訪ねなかった理由は気まずかったからだ。 守に告白されて、依子はまだ返事を返していない。さすがにそんな状態で顔を会わせる度胸はなかった。 以前までの依子は、彼の想いに気付いていなかったので気兼ねなく会いに行っていたが、さすがに二の足を踏むようになっていた。 だが昨日、そんなことを頭から消し去るほどの事態が我が身に降りかかった。 縁が突然見えなくなってしまったのだ。 昨日の夕方、自らを生霊と名乗る少女に『何か』をされて、 ……目が覚めたときには世界は変わっていた。 アスファルトからビルの壁、街行く人々から空の彼方まで、世界を覆う無数の糸が、跡形もなくなっていた。 少女は何度も謝ってきた。魂を傷付けた、巻き込んでしまった、傷は治したが、何らかの後遺症があるかもしれない。色々なことを言っていたが、あまり頭には入らなかった。 何が起きたのか、すぐには理解できなかった。世界の変化に意識がついていかなかった。 いや、変わったのは自分の方かもしれない。 それから後のことを依子ははっきりとは覚えていない。少女に何か言ったかもしれない。言わなかったかもしれない。 気付いたときには守の部屋の前に辿り着いていた。 すがれる相手が欲しかったのだろう。家には保護者の義母がいたが、誰でもよかったわけではない。 依子はいつも一歩退いて接していたので、彼女では駄目だった。身近な者で体が向いた相手が守だったのだ。 気まずさが消えたわけではないが、不安の方が強かった。 守は多少驚きはしたものの、いつもと変わらず迎えてくれた。 会った瞬間思わずすがりついて、部屋の中に入ってからも落ち着きのないまま一方的に事情を話して、それを、ただ静かに聞いてくれた。 頼れる人だった。 そのあと安心からか疲労が一気に襲ってきた。遅いから泊まっていくよう守に勧められて、依子は素直に従った。 これまでにも何度か泊まったことはあったが、守の気持ちを知った今、前のような気軽さは持てなかった。 借りたベッドの中で依子は思った。このいとこは、自分にいつでも手を出せたはずなのだ。だがそんなことは一度もなかった。せいぜい頭を撫でる程度だった。 そこに守なりの真摯さが込められているような気がして、嬉しくなった。同時に申し訳なく思った。 だがそんなことは、今の依子には瑣抹事でしかなかった。 守を見やる。その胸元から生えているであろうものを見るために。 何も、見えなかった。 依子と守の縁の糸が前まで確かにあったはずなのに。 依子はぎゅっと目を瞑る。昨日までのあの感覚が錯覚だったかのようで、胸が苦しくなった。 眠気に意識が侵食されるまで、依子はひたすら強く目を瞑っていた。 翌朝目を覚ますと、すぐ横に自分によく似た女性が無表情に座っていた。 ぎょっとして跳ね起きると、女性は微かに首を傾げた。 誰、という疑問はすぐに吹き飛んだ。もう何年も会っていない相手だが、依子には一目で十分だった。 「お姉……ちゃん?」 神守依澄はその声を聞くと、小さく微笑した。
- 497 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:02:44 ID:geiosX30]
- 「依澄さん、どうかな」
守の問いかけに依澄は小さく頷く。 夕べのうちに守が連絡したらしい。目の前にいる麗人は、依子の知らない成長を遂げていたが、間違いなく依子の姉だった。 霊能を操る一族、神守。 その神守の歴代当主の中でも屈指とまで言われる彼女の力をもってすれば、あるいは依子を治せるかもしれない。守はそう言った。 依澄の透き通るような目が依子を見据える。 動悸が激しくなった。八年ぶりに自分の前に現れた姉は、前よりもずっと無彩色性が増したように感じた。 縁も、見えない。 ずっと縁の糸を見通すことであらゆるものを判断してきた依子には、それが不安で仕方がない。 「……」 依澄はやがて無言のうちに首を振った。 「どうなの?」 守が不安そうに尋ねると、美しい唇が開かれた。 「……私には治せません」 無表情に断じた答えは、依子の心にさざ波を立てた。 「魂が以前とは変わってしまっています。縁視の力はもう取り戻せないと思います」 清澄な声が淡々と語る。 それはとても残酷な響きに聞こえた。依子の主観かもしれないが、まるで鋭利な鎌に身を裂かれたような。 依澄は無表情だ。 守が短い息を漏らした。残念そうに肩を落とす。 「依子ちゃん……」 「……」 依子はぐっと歯を噛み締めると、にこやかに笑った。 「……別にたいしたことじゃないよ。見えないはずのものがやっぱり見えなくなっただけだよ」 依子は、言い訳としてはかなり下手だな、と自覚しながらもそう言い切る。 依澄の表情は変わらない。 依子にはその顔の奥にある心が見えない。 「あ……、えっと、」 守が何かを言おうとしてなぜか言い淀んだ。微妙な空気は依子にとっても感じのいいものではない。 「……」 依澄はそんないとこに柔らかく微笑んだ。微かに熱っぽい気持ちがこもった微笑。 そして、 「……依子」 不意にかけられた声に依子はびくりと肩を震わせた。 「……な、なに?」 「…………今度、実家に戻って来ませんか?」 ――唐突。 「……え?」 姉の顔を思わず見返す。 不安や困惑でいっぱいの頭の中に、急にそんなことを投げ掛けられてもこっちは困るだけなのに。依子は姉に少しだけ腹が立った。 「ちょっと待って。なんで急にそんなこと、」 「……大丈夫、……今のあなたなら戻ってこれます」 「……」 何を確信しているのか、姉の言葉には妙に力があった。言霊とは違う感じの力だ。 それに呑まれてしまい、依子は口をつぐんだ。言いたいことも考えたいこともたくさんあるはずなのに。 そんな依子の心情を知ってか知らずか、依澄はおもむろに立ち上がった。 そのまま頭をぺこりと下げると、玄関へと足を向ける。 「依澄さん?」 「戻ります……」 「ちょっと、お姉ちゃん」 呼び止めようとすると依澄は軽く振り向いた。 「待ってます……から」 それだけ言い残して、依澄は部屋を出ていった。 送ってくる、と守も部屋を飛び出し、そして依子だけが残された。
- 498 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:04:53 ID:geiosX30]
- 依子は仰向けにベッドに倒れ込むと、ゆっくりと目を閉じた。
窓から光が射す。閉じた目でも、その眩しさはしっかりと伝わってくる。 とても静かだった。 夜が明けても、結局縁視はなくなったままだ。 それでも、確かにあの感覚は昨日まで存在していた。 溜め息が漏れる。 (駄目だな、私……) 自分はもっと明るい性格だったはずだ。それが今はどうだ。糸が見えなくなっただけでこんなにも不安定になっている。 それだけ依存していたのだろう。あの糸を通して、依子はあらゆる関係を見抜き、理解してきた。 人と人との繋がり、これからめぐり会う出来事との関係、ときには人の心さえも見通すことができたのだ。 ものごころがついたときには既に持ち合わせていた力だった。それ故、見えることが当たり前すぎて、呼吸と変わらないくらい自然な感覚だった。 それが急になくなってしまって、依子はこれからどうすればいいのか何もわからない。 失明したわけではない。腕や脚がなくなったわけでもない。だが、あるいはそれと同等とも言える喪失感が胸に広がっている。 お腹がぐう、と小さく鳴った。 「……」 安物の目覚まし時計がカチ、カチ、と規則正しい音を立てている。短針は『10』の字を差している。 (こんなときにもお腹は空くんだよね……) 夕べ、何も食べてない反動からか、お腹が少し痛かった。 何か作ろうか。そう思ってキッチンを見やる。守によく料理を作ってやっていたので、造りは把握している。 「……」 依子は動かなかった。思っただけで、起き上がることすらしなかった。 錆びれていくような虚しさを抱えたまま、依子はただ柔らかなベッドに身を委ねていた。 無気力な頭の中を巡るのは、再会した姉のことだった。 しばらくして、守が戻ってきた。 「ただいまー……って、大丈夫?」 虚ろに倒れたままの依子に心配そうな声をかける。 「……お腹空いた」 思ったことをそのまま吐くと、守は小さく笑った。 「そう思ってパンと飲み物を買ってきたよ。一緒に食べよう」 「……うん」 依子は体を起こすと、座卓に並べられた菓子パンとペットボトルの飲み物を見つめた。昔から好きなミルククリームのサンドパンがある。 守は紅茶のボトルと合わせてそれを依子に差し出した。 「好きだよね、これ」 「……ありがとう」 こんな些細なことを覚えているいとこに、少し驚く。 袋を破り、パンをかじる。柔らかいミルクの味が口いっぱいに広がった。 「あのさ」 ジャムパンを頬張りながら守が口を開いた。 「迷惑、だったかな?」 「え?」 「いや、急に依澄さんを呼んだりしてさ」 依子は手を止める。 「……別にそんなことはないよ。いきなりだったから驚きはしたけど……」 「それならよかった。二人には仲良くしてもらいたいんだけど、依子ちゃんは会いたくないのかな、ってずっと思ってたから」 「そんなことない。でも……」 「でも?」 「私は実家にはいられないから、こっちから会いに行けないんだよ。向こうは忙しいし会う機会が」 待って、と守が言葉を遮った。 「前から疑問だったんだけど、実家にはいられないってなんで?」 依子は目をしばたたかせた。 「……言ってなかった?」 「聞いてないよ。」 「……」 確かに言った覚えはなかった。だが当然知っていると思っていた。依澄か誰かが話しているものだと思い込んでいた。
- 499 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:08:26 ID:geiosX30]
- 仕方ないか、と内心で呟くと依子は言葉を探した。
「えーと……簡単に言うとね、神守家は一つの世代に一人の人間しかいてはいけないんだ」 「……?」 「『神守』を名乗れるのは一人だけなの。それ以外は『神守』を名乗れない。今だと、お姉ちゃんだけ」 「……どうして?」 「神を守り、神に守られる人数が決まっているから」 胸が少し痛む。自分は選ばれなかったのだ。 守はいぶかしげに眉を寄せた。 「それと依子ちゃんが実家にいられないのと何の関係が?」 「今から話すよ。わかりやすく話せるかどうか自信ないけど」 軽く深呼吸して気持ちを落ち着かせると、依子は静かに語りだした。 「『神守家』の役割はね、二つあるの。 一つは霊能力を持って霊的な問題を解決すること。 で、もう一つはその名が示すとおり、神様を守ること。 緋水の神様についてはマモルくんも知ってるよね? 昔からこの辺り一帯を治めてきた神様。 それを神守家はずっと守ってきた。崇め奉り、保護することで、土地の安寧を得てきた。 眉唾と言えばそれまでだけど、本当に力があるんだよ? 神守の力が強いのは、緋水の神様に力を借りてるからだもの。 だから、神守家は緋水の神様を守ると同時に加護を受けているの。 ただし、緋水の神様の加護を直接受けられる人間は一人だけなの。 つまり神守の当主だけ。当主はいわば巫女となって、正式に『神守』を名乗る。 だから神守の名を持つ者は一人だけしかいない。 本家が神守と呼ばれてるのに、苗字が緋水になっているのはそのためなんだ。お母さんも前までは神守だったけど、今は緋水姓になってるからね。 たった一人の神守が、巫女となって神様を守る。本来概念でしかない神様を規定することで、神様という存在を守る。それが神守の役目。 その見返りに神守は力を得る。名前によって神様からの加護を受け、その力を土地の平安に使う。 ……言葉じゃどうしても嘘っぽくなっちゃうね。私も神様に直接会ったわけじゃないから確信を持って説明できるわけじゃないんだけど、まあとにかく。ここから本題。 神守を名乗れるのは一人だけ。だからお母さんの後継は私かお姉ちゃんのどちらか一人だった。 私は知ってのとおり才能がなかったから、当主にはなれなかった。 正直悔しかったな……私ね、できればお姉ちゃんの助けになりたかったの。当主になれば、もうお姉ちゃんは私の面倒なんか見なくて済むと思ってたから。 でも仕方ないと思ってる。何も問題はなかった。私が一つ諦めて、家族と普通に生きていくだけ――そのはずだった。 お姉ちゃんが当主になることが決まって、ちょうどそのための準備をしていた頃だったかな。 私は高熱に倒れた。 病気じゃなかった。私は緋水の神様の力に当てられたの。 私はお姉ちゃんに最も近い人間だったから、変に影響を受けてしまったみたい。 お姉ちゃんの力が日増しに強くなっていくにつれて私の体調は悪くなっていった。 力にあてられないようにするには二つの方法がある。 一つは自身の魂の形を大幅に変えて、神守固有の魂の形をなくすこと。もう一つは単純にその土地から離れること。 私には才能がなかったから、自身の魂操作さえろくにできなかった。 だから、私には後者の方法しか手がなかった。 お父さんはお母さんの『盾』だったし、お母さんも先代としてお姉ちゃんのそばから離れるわけにはいかなかったから、私は一人で実家を去らなければならなかった。 ……もちろん哀しいよ。でも迷惑かけるわけにはいかないじゃない。あれ以上あそこにいたら、死んでたかもしれないしね。 だから、ただそれだけだよ。私に才能がなくて、ちょっと巡り合わせが悪かっただけ。 本当に、うん……それだけの話。 喉が渇いたので、ペットボトルの紅茶を口元に傾けた。冷たさが心地よい。 守が小さく頷いて、口を開く。 「依子ちゃんがこっちに移ったのはそれが理由?」 「うん。おじさんとおばさんには子供がいなかったからちょうどよかったみたい」 まるで他人事のような言い種だな、と依子は思った。義父も義母もとてもいい人たちなのに。
- 500 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:10:48 ID:geiosX30]
- すると守が不審げに眉をひそめた。
「つまり、依子ちゃんは緋水の土地に入れない、ってことだよね?」 「うん……そうだよ」 「でも依澄さんはさっき、君に戻ってこないか尋ねた。どうして?」 「わからないよ……。私があそこにいられないのは間違いないことなのに」 「ひょっとして、もう大丈夫になったとか?」 守のポジティブな意見に依子は首を振った。そんな簡単にいく問題ではないのだ。 「どうして大丈夫になったと思うの?」 「いや、依澄さんが言ったことだし」 確かに言っていた。今のあなたなら大丈夫と。あれはどういう意味なのだろう。今の私なら? 依子は考え込む。今の自分。縁の見えなくなった自分。何も持たない自分。そんな自分に何があって大丈夫なのか。 「あ」 そのとき守が短い声を上げた。 「何?」 「いや、そういうことなのかな、って」 よくわからないことを言う。 「……? そういうことって?」 「緋水の神様の力にあてられないようにする方法だよ。離れるだけじゃなく、もう一つ方法があるんでしょ?」 「え? うん、魂の形を変えて……あ」 気付いた。その瞬間守と顔を見合わせた。 緋水の神様の力にあてられるのは、神守家固有の魂の形を保持してしまっているためだ。 当主になるにあたって、魂が力を受け入れやすい形になっているわけだが、自身の霊能や魂をうまく操作できない依子はそのせいで悪い影響を受けてしまっている。 だが逆に言えば、その形を変えてしまえば影響を受けなくてすむということである。 「私の魂が以前とは変わってしまっているから……もう影響を、受けない……?」 「だと思ったんだけど、どうかな?」 「……」 迷いが生まれる。 もしそうだとしたら、とても嬉しいことだ。もう二度と戻れないと諦めていたあの土地を、また踏めるのだ。 だが、果たして受け入れてくれるだろうか。土地は、家族は、以前の私ではない私を認めてくれるだろうか。 「不安なら、ぼくもいっしょに行こうか?」 「え?」 幼馴染みの申し出に依子は驚いた。 「大丈夫。何があってもいっしょにいるから。いっしょにいたいから」 いとこの顔を見つめる。守はとても優しげに微笑んでいた。 前から彼はこんな笑みを浮かべていただろうか。依子は戸惑う。縁が見えないために相手をうまく計れないことが、逆にその顔をより強く見せているような。 不思議と安心できる笑みだった。とても不安なのに、守ってくれそうで。 「……うん」 依子は小さく頷いた。 家に戻った依子は、自分の部屋でばたりとベッドに倒れ込んだ。 (疲れた……) 本当に何もかもが急すぎた。変わっていく世界は依子にとってあまりに激しい。 縁糸の消えた世界が目の前に広がっている。 やはり少し不安だ。自分は今、誰と繋がっていて、これから誰と繋がっていくのだろう。 だが、さっきの守との会話でちょっとだけ立ち直ることができた。 守と話し合って、緋水に戻るのは週末ということになった。金曜日の夕方、学校が終わったら駅で待ち合わせする約束だ。 戻れる。八年振りに、あの場所に。 「……」 しばらくぼんやりと枕の感触に埋もれていると、ドアがノックされた。 「入るわよ」 現れたのは義母の百合原友美(ゆりはらともみ)だった。義父の仁(ひとし)が単身赴任中なのでこの家には依子と彼女しかいない。 「あら……どうしたの? まだ体調悪いの?」 「あ……ううん、ちょっとぼーっとしてただけ」 「そう? 夕べはびっくりしたわよ。急に守君から連絡が来るんだもの。具合が悪くなったって言ってたけど、大丈夫なの?」 「う、うん。もう平気」 百合原家は神守とは縁遠い親戚で、友美もただの一般人だ。神守家についても特に詳しいわけではなく、依子は自分の縁の力についても話したことがない。 だからこういうとき、詳細をうまく話せなくて依子は困ってしまう。ただでさえ接し方に苦慮しているのに。
- 501 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:13:38 ID:geiosX30]
- 「それにしても、あなたが守君の部屋に泊まったのも久し振りね。しばらく行ってなかったでしょ?」
「あー、うん、ちょっと気が乗らなかったから」 「私としてはそれくらいが当たり前だと思うけどね」 「へ? なんで」 「女子高生が一人暮らしの若い男の部屋に泊まるなんて危なすぎでしょ。信用できる守君だから許してるけど、あなたは自覚ないの?」 言われて依子は押し黙った。 そういえばまだ答えを返していないな、と依子は微かに胸が痛んだ。サボテンの棘のように小さな針が一本だけ刺さっているような小さな痛み。 「あの、おばさん」 依子は話題を変える。週末のことを言っておかないと。 「私、金曜日に学校が終わったら、実家に帰ろうと思う」 友美の目が大きく見開かれた。 「……そう、なの?」 「うん。いいかな?」 「……あなたがそういうなら構わないけれど……大丈夫なの? いろいろと家の方で問題があるんじゃ、」 「大丈夫になったの。だから、問題ないよ」 「……そう。ならいいわ。……家族同士仲が良いのが一番だものね……」 依子がこれまで実家に戻らなかった理由を友美は知らない。喧嘩や勘当と勘違いしているのかもしれない。突っ込むと説明が面倒なので何も言わないが。 「そういうわけだから、金曜日から夕食はいらない。土日の間、向こうで過ごすから……」 「依子」 友美の固い声が言葉を遮った。 なぜか、気圧される。 「ちゃんと……帰ってくるのよね?」 「おばさん……?」 友美の顔を見つめる。声と同様にどこか固かった。 「あ……向こうに戻れるなら、もうこちらにいる必要はないのでしょう? そうなると、寂しいと思ってね……」 不安げな表情はまるで迷子のように寂しく見えた。 後ろめたい気持ちが風船のように膨らむ。割れそうなほど、それは儚く感じた。 「……大丈夫。そんな簡単に出ていったりしないよ。まだ私高校生だし、この街が好きだし」 しばらくはまだお世話になるはずである。少なくとも卒業までは。 「そう……ならいいわ。最後まで面倒見させてね、依子」 「……うん、ありがとう。おば……お母さん」 瞬間、義母はひどく驚いた顔になった。 「……初めてかもね。そう呼ばれたの」 「ごめんなさい。恥ずかしかったから……」 「ううん、嬉しいわ。とても」 本当に嬉しそうな様子で言われて、依子はくすぐったく思った。 だがそのくすぐったさは、嫌いじゃない。 「今度、お父さんが帰ってきたときにも言ってあげてね。きっと喜ぶから」 「……頑張る」 温かい空気が感情を上気させるようで、依子はほんのり頬を赤く染めた。 そして金曜日。 依子は守と一緒に、八年振りに故郷へと帰った。
- 502 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:17:31 ID:geiosX30]
- 神守市内某ホテル。
二階の隅部屋で、少年と少女が話をしていた。 といっても一方は言葉を発さない。少年の方が一方的に語りかけているように見える。 「この街もだいぶ回ったけど、もう目立った悪霊はいないみたいだ」 少女はこくりと頷く。 「そろそろ出るか。しばらくは『食事』の必要はないけど、いつまでもこの街にとどまっている理由はない」 「……」 少女が無言のまま少年を見つめた。 「……心残りか? でも俺たちにできることはもうないぞ」 「……」 少女は黙したままだが、互いの意志疎通は問題ないようだ。 「あの子の縁の能力とやらがどういう類のものかは知らないけど、お前はちゃんと魂の傷を治したんだろ。それでどうにもならなかったのなら、どうにもできない」 「……」 「……じゃあ会うしかないな。会って、話でもしてこい。土日は休みだから迷惑でもないだろ」 「……」 「会うのが怖いのはわかる。でも、引っ掛かってるんだろずっと。必要なら謝れ。許してもらえなくても、それしかできないなら、できることをするしかない」 「……」 少女はほう、と溜め息をつくと、少年を見据えて再び頷いた。 「決心ついたか? なら出発だ。あの子の場所は『感知』で測る。で、きっちり謝ろう。大切な友達なんだから」 少女の顔が真っ赤になった。恥ずかしげにうつむくと、上目遣いに少年を睨む。 「そんな顔するな。友達は大事にしないと。……いつまでも実体でいるのもなんだし、そろそろ戻してくれ」 その言葉に少女は居住まいを正した。そして少年の頭を軽く右手で撫でると、少年の体が瞬時に消え去った。 跡には何も残らない。まるで幽霊か何かのような、そんな薄く朧な一瞬だった。 少女は気にした風もなく荷物をまとめる。 旅行バッグに荷物を詰めると、そのまま緩やかな足取りで部屋を出ていった。 小さな金属音と共にドアが閉まり、部屋は元の静寂に包まれた。 神守市から電車で三時間のところに依子と守の故郷、緋水がある。 緋水とはその土地一帯の俗称である。正式な地名を言うなら牧村町という実に平凡な名があるが、地元民には緋水の名で通っている。 かつて土地の神を慰撫するために、一人の女性が血水と化してその身を捧げた、という故事が由来だ。 周囲を山に囲まれた綺麗な土地だが、交通の便は悪い。牧村駅は無人駅で各駅停車の電車しか停まらず、バスも一時間に一台しか通らない。 だから、二人が緋水に到着する頃には、時計の針は夜九時を回っていた。 夜気に冷えた体を依子は震わせる。吐く息は真っ白だ。上空に寒気が流れ込んでいて、明日の夜には雪が降るという話だった。 寂しい夜の駅前に一台の車がやって来た。暗闇の中で明るく映える白い車は、依子たちの前でゆっくりと停車した。 運転席から顔を出したのは和服姿の依澄だった。その格好でいつも運転しているのだろうか。 二人は後部座席に乗り込む。それを確認すると、依澄は慣れた手付きで発進させた。 依子は落ち着かなげに外の景色を見渡す。八年振りの故郷は、何も変わっていなかった。 隣の守が囁く。 「二年ぶりかな、ここに帰ってくるのも」 「……あんまり変わってないね」 闇の中、周りに広がるは畑ばかり。遠くに見える民家の明かりは片手で数えられた。そのくせ道々の常夜灯だけはしっかりと強い光を放っていて、運転には困らないようだった。 心がひどく浮き立った。 不意に依澄が尋ねてきた。 「体は……大丈夫ですか?」 咄嗟に反応できず、依子は慌てた。 「え……あ、えと、う、うん、大丈夫……だと思う」 「……よかったです」 依澄の声は安堵に満ちていた。 それを聞いて依子は少しだけほっとした。同時にとても嬉しく思った。 三十分後、車はようやく目的地に到着した。
- 503 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:20:29 ID:geiosX30]
- 山の田舎のど真ん中、不釣り合いに立派な門扉が鎮座ましている。
離れのガレージに車を入れ、三人は降りる。そこから先程通り過ぎた玄関へと向かった。 懐かしい門扉は昔からの記念碑のように変わらなかった。呼び鈴を鳴らすと備え付けのインターホンから声が響いてきた。 『はーい、三人とも入り口にいるわね、ちょっと待ってて』 底抜けに明るい声が聞こえた瞬間、依子は顔を強張らせた。 そして門扉が開くと同時に明かりがつき、中の空間が開けた。 そこには和服を着付けた女性が立っていた。 美しい人だった。見た目は二十代と言っても通用する。背は依子と変わらない。薄い化粧は柔らかな白い肌に馴染んで、セミロングの黒髪が対称的に明るく映える。 依子は――うまく言葉が出なかった。 するとその淑女がゆっくりと近付いてきた。 咄嗟に反応できない依子の目前に歩み寄ってくる。 そして、依子はそのまま抱き締められた。 一瞬で息が詰まった。懐かしさと切なさ、混交した感情に胸が張り裂けそうになる。 「おかえりなさい、りこちゃん」 依子の母、緋水朱音(あかね)は包み込むような声で囁いた。 明日また改めて挨拶に来ます、と近所に居を構える遠藤家へ守が戻るのを見送ると、依子は母姉と共に屋敷内へと入った。 石畳から玄関へ入ると、そこには冷たい木の匂いが広がっていた。靴を脱ぎ、朱音に続いて長い廊下を歩く。板張りの床がぎしりと音を立てた。 小さい頃にも思ったことだが、この屋敷は広すぎる。昔は大勢の使用人を抱えていたために多くの部屋が必要だったらしいが、今は使用人自体数人しか抱えていないらしい。それは八年前と同じだった。 町の会合や客人の宿泊に使うこともあるらしいが、基本的には使わない部屋ばかりだ。 夜の屋敷は寂しく、怖かった。 「昔はりこちゃんもこの家の中でかくれんぼしてたのよね」 母に言われて依子ははっとなる。 「すみちゃんやまーくんといっしょにいろんなところに隠れたりしてたものね。憶えてる?」 憶えている。依子は小さい頃の情景を思い起こした。 「でも、あれは昼間だったよ。夜とは違う……」 「そうね。怖いもんね。一応結界張ってるから変な悪霊さんとかはいないはずなんだけど、暗いとやっぱりいやな感じするよね」 「べ、別に怖くはないけど」 それを聞いて朱音はおかしげに笑った。 「……何?」 不満顔で返すと、朱音は首を振った。 「なんでもない。りこちゃんかわいいな、って」 「――」 屈託のない笑顔でそんなことを言われたせいか、自分でも顔が赤くなるのをはっきり自覚した。 「さ、こっちよ」 構わず促された部屋に依子は入る。 通された部屋は小さな六畳の和室だった。明かりがつき、真っ白な障子と薄草色の畳が目の前に広がる。 「荷物を置いたら食事にしましょう。お母さん、今日は腕によりをかけて作ったから」 「うん」 小さな旅行鞄を隅に置き、依子は居間へと向かった。 居間には大きな卓の上に、温かい料理が並んでいた。 ご飯、すまし汁、鰤と大根の煮付け、鶏の唐揚げ、二種類のサラダ、蛸とわかめの酢の物、ひじきの和え物に茄子の漬物もある。 そして卓のすぐ横には、母と姉以外に見知った顔があった。 顎に薄い髭を生やした中年の男性。 男性は微笑するとおもむろに近付いてきた。 依子は心臓の早鐘に押されるように、慌てて口を開く。 「ただ」「おかえり。依子」 穏やかな優しい声に、依子の言葉は遮られた。
- 504 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:22:16 ID:geiosX30]
- 「待っていたよ。寒かっただろう。さ、こちらに座りなさい」
父――緋水昭宗(あきむね)の、八年前と変わらない声。 どうしてこんなにも変わっていないのだろう。依子は言葉が出なくなる。細かいことを言えば、お父さん白髪やしわも増えたしいろいろあるけれど、でも、 ぽん、と肩を叩かれた。 横を見ると、依澄が小さな微笑を浮かべていた。 その表情はあまりに小さな変化だったが、とても嬉しそうに見えた。このときばかりは姉の不可思議さが氷解したように映った。 次いで、父と母の顔を見る。 二人とも心からの笑みを浮かべていた。まるで大切な宝物を取り戻したような、そんな笑顔だった。 依子はくっ、と一瞬だけうつむき、すぐに顔を上げた。 「――ただいま」 渾身の笑顔だったと思う。 それから依子は再会した家族と楽しげに食事を囲んだ。 昔の思い出から互いの近況に至るまでたくさんのことを話した。久し振りに食べる母の手料理に舌鼓を打ち、父の穏和な話しぶりに耳を傾けた。 依子は揺れる。目の前に広がる縁のない世界で、それでも楽しくあることに。 縁視の力を失って。でもそれを吹き飛ばすかのような幸運を得て。 喪失感と充足感が入り混じる今の心境に戸惑いつつも、依子はただ嬉しかった。同時に少し寂しかった。 家族との縁を、この目できちんと見ておきたかったから。 夕食後、お風呂に入って髪を乾かして歯を磨いて、そして依子は床に着いた。 不安を煽った暗がりが、今はたいして気にならなかった。暗い方が縁のない世界を見なくて済む。 意識が落ちる直前、いとこのことが思い出された。 不安が薄くなったように思えた。 辺りは雪に包まれていた。 真っ白な雪景色が世界を覆い、その真ん中で依子は呆然と立ち尽くしていた。 目の前には歳上の男の子。 男の子は困ったように頭をかいていた。 依子は気付く。そんな表情をさせているのは私だ。私が何か言ったせいだ。 でも自分は何を言ったのだろう。 男の子はしばしうつ向き、やがてゆっくりと顔を上げた。 ――ありがとう。 一瞬依子は何のことだかわからなかった。しかしすぐに思い出して理解が及ぶ。 少女は自分の拙い想いをぶつけたのだ。幼いながらも真剣な想いを。 男の子は言葉が続かないのか、何も言わない。 白銀の世界の中で、依子の目を見つめたまま、人形のように立ち続ける。 依子はそんな相手を見返しながら、自らの想いを紡いでいった。 依子が目を覚ましたとき、時刻は既に十時をまわっていた。 洗顔と歯磨きをし、髪を整え服を着替える。水が冷たく、朝の空気が体を震わせた。 居間に行くとちょうど朱音が食事の用意をしていた。 「おはよう、お母さん」 「おはよう。昨日はぐっすり眠れた?」 「うん。今から朝ごはん?」 「私はね。お父さんとすみちゃんはもう済ませちゃったわ」 「? お仕事?」 「すみちゃんは今日は少し遠出する必要があって朝早くに出てったわ。夜には戻ってくるわよ。お父さんはまーくんの家に」 「稽古?」 「そう言ってたわ」 守の家は元々神守家を物理的障害から守るために武術を受け継いできた家系である。 神守家の分家として遠藤家があり、昭宗は守の母方の叔父に当たる。昭宗は朱音の『盾』として結婚したのだ。実は大恋愛だったのだが。 「久しぶりにまーくんを鍛えるつもりかもね。嬉しそうな顔だった」 「見に行っていい?」 「ご飯食べてからね。やりすぎないように見張っておいて」 依子は頷き、母の準備を手伝い始めた。
- 505 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:26:29 ID:geiosX30]
- 朝食を終え、依子は遠藤宅に向かった。
庭を抜けるとき、昔馴染みのお手伝いさんに出会い、少しだけ話をした。親しげで温かい口ぶりがこちらを受け入れてくれてるようで、嬉しかった。 屋敷から二百メートルほど離れたところにある小さな二階建ての家に依子は向かった。裏の方により大きな道場があるのが特徴的な、遠藤家の敷地だ。 依子は直接道場に行くために、裏門へと回る。 やや低い塀に囲まれた敷地は広いが豪奢ではない。あくまで家と道場を囲むだけの塀と、華美さに欠けた狭い庭は住人の性格を表しているようだ。 びゅうと吹く木枯らしが、スカートの下の足を縛るように駆け抜けた。依子は軽くスカートを押さえて寒さに耐える。 (寒いなぁ……) 山の中ということもあるのだろう。豊かな自然に四方を囲まれ静謐な空気を湛えた土地は、都会に慣れた依子の肌を粟立たせる。 裏門から道場に近付くと大きな音と奇声が響いてきた。依子は入り口を恐る恐る開けて中を覗き込んだ。 板張りの空間の真ん中で二人の男が対峙していた。道着姿の守と昭宗がじりじりと間合いを測り合っている。 目に飛び込んできた瞬間、その張り詰めた緊張感に当てられて、依子は身をすくませた。 邪魔しないように慎重に扉を閉める。そろそろと忍び足で中に入った。 壁際に守の母、火梁(ひばり)が袴姿で座っている。火梁はすぐに気付いて小さく手招きをした。依子は隣まで寄っていき、同じように座る。道場だからか正座だ。 守が動いた。右足から前に踏み込み、相手の懐に入る。 昭宗は左足を奥に退くように滑らせる。守の体を内側に引き込むような体移動をこなし、上体をやや落とした。 瞬間、昭宗の右足が動いた。そこまでは見えたが、次の動作は依子には見えなかった。 気付いたら守が尻餅をついて倒れていた。 足を払われたのだろうか? そんな依子の疑問を置き去りにするかのように、昭宗がトドメとばかりにサッカーボールキックを放った。 「やっ――」 依子は反射的に叫ぼうとして、途中で止まった。 昭宗が踏み込んだ瞬間を狙って、守が軸足を蹴ったのだ。 座った状態から軽く押す程度の蹴りだったが、昭宗はバランスを崩した。 前のめりに傾ぐ相手の下半身に、守はすかさず組み付く。 同時に引き倒して背後に回り、腕と首を、 「ふっ!」 昭宗の右肘が背後についた守の脇腹に刺さった。 守は怯まず昭宗の首に腕を回し、絞めあげた。 「――」 昭宗の手がバンバンと床を叩いた。降参の合図。 守は慎重に腕の力を緩め、昭宗から体を離す。昭宗は少しだけ残念そうな苦笑いを浮かべた。 (勝った――) 守がまさか昭宗に勝つとは。昭宗は神守家の『盾』を務めるほどの力を持つはずなのに。守はそこまで強かったのか。 (……当たり前か。後継ぎだもんね) いずれ守は遠藤家の役目を果たすため、神守の『盾』となる。本人もそう言っていたので、それは決定事項なのだろう。 それはつまり、神守依澄の『盾』となるということだ。 (あ……) 不意に昨夜見た夢のことを思い出した。 あれは遠い昔にあった出来事だ。小さい頃の依子と守。 あのときも冬だった。辺りは雪に覆われていて、吐く息が真っ白に消えていくのをよく憶えている。 そして、依子は言った。 ――わたし、マモルくんのこと好きだよ。 守はありがとうと言った。依子はそれをマモルくんらしいなと思って、少しだけ寂しく感じた。守は何も言わずに、ただ立ち尽くしていた。 寒空の下の、小さな思い出。 そのときのことを記憶から掘り出して、依子は気付いた。いや、思い出した。 (……そうか) あのとき守が浮かべていた顔。あれがすべてを表していて、依子はあのときに知ったのだ。 守は、きっと、 「依子ちゃん?」 急に声をかけられて顔を上げると、すぐ目の前に守の顔があった。 「ひゃっ!」 依子は思わずのけぞる。守は不思議そうに首を傾げた。 「だ、大丈夫? どうしたの?」 「な、なんでもない!」 激しく動揺しながら、そんな説得力皆無の台詞が出てくる。
- 506 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:28:32 ID:geiosX30]
- 咄嗟に話をそらした。
「あ、お、おめでとう。勝ったんだね」 「え? ああ、その前に結構ボコボコにされてるけどね」 言われてみると、頬辺りを切っており、手も多少腫れていた。 そのとき、帯を締め直しながら近付いてきた昭宗が笑った。 「いや、強かったよ。向こうでも稽古を続けているのかい?」 「基本稽古くらいしかできないですけどね。どうしても打ち込みとか型稽古ばかりになってしまって」 「それであれだけ動けるならたいしたものだ。ラストの軸足払いにやられたよ」 「いやもうとにかく夢中で」 男同士だと気が合うのか、二人は楽しげに談笑し始める。 「ほう。道理であんなに動きがバラバラだったのか、息子よ」 そんな男二人の会話に火梁が割り込んだ。 「剛法と柔法のバランスが全然なってない。これは私が揉んでやらなきゃダメだな」 「え」 守の表情が固まった。なんというか、嫌いな食べ物が食卓に並んだときのような、露骨に苦い顔だった。 昭宗がそれを見て苦笑を浮かべる。 「おや、兄貴もまだまだ元気みたいだね。じゃあ私が相手してやるよ。最近平和ボケがすぎるみたいだし」 「え」 昭宗の表情も固まった。なんというか、昔からのトラウマに出くわしたような、心底嫌そうな顔だった。 火梁は立ち上がると軽く伸びをした。それから振り返って、依子ににっこりと微笑んだ。 「大きくなったね、依子ちゃん。すごく見違えた」 「は、はい、ありがとうございます」 「本当はいっしょにお茶でも飲んで話をしたいところなんだけど、愚息と愚兄の相手をしなきゃいけないから、ちょっと待ってて」 「「いや、お構いなく」」 重なった男二人の言葉を火梁は軽く睨めつけて一蹴する。 そして邪悪な笑みと共に、気軽な調子で言い放った。 「ま、遠慮するな」 三十分後、道場の真ん中には息を切らして膝をつく男二人の姿があった。 左右を畑に挟まれた小道を、依子と守は歩いていた。 昨日は夜だったので周りもよく見えなかったのだが、こうして見回すとやはり田舎の風景が広がる。 四方を囲む山々は昔から変わらない。家はぽつりぽつりと散らばる格好で、土手や林や野原の方がずっと多い。 懐かしさばかりが込み上げてくる故郷の変わらなさに、依子は軽い心地よさを覚えた。 だが、一晩経ってこうして冷静に見てみると、多少の不安も感じる。 今の自分とこの土地に、縁はあるのだろうか。 「どうしたの?」 守の声に依子は顔を上げた。 首を振る。 「なんでもないよ」 「そう?」 「うん、ぼんやりしてただけ。てかマモルくんの方こそどうしたの? 声に張りがないけど」 「誰かが傷を増やしてくれたからね。脇腹痛い」 「それは……ご愁傷さま」 大きな怪我はないみたいだが、投げられたり転がされたりしたせいか打ち身が多いようだ。依子は苦笑いを浮かべた。 そのとき守が尋ねた。 「……やっぱり見えないと違和感ある?」 え? と依子は思わず固まった。 「ぼくには縁の糸なんて見えないから、それがどういう感覚かわからないけど、それって生まれつきのものなんでしょ? 五感がなくなるような感じなのかな、ってずっと考えてた」 「……ずっと?」 「依子ちゃんが先週ぼくの部屋に来てからずっと考えてた。で、なんとかできないか考えてた」 「……どうして」 何を言っているのだろう。守にできることは何もないのに、何もしなくていいのに、彼はそれをずっと考えていたというのか。 「だって、依子ちゃんがずっと不安そうにしてるから、取り除いてあげたくて」 「……でも、力をなくしたおかげで帰ってこれたんだよ?」 「いや、まあそれはそうなんだけど、それでも不安なのに変わりはないんじゃないかと思ってさ」 守は普段と変わらない口調で呟く。
- 507 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:30:24 ID:geiosX30]
- 「……昔からそうだよね」
「え?」 「マモルくんはいつも相手のことを考えてる。相手に合わせるのがうまい。だから、ちょっとかなわないなと思って」 この人はどんなときもお人好しで、気遣いを忘れないのだ。それは性質もあるが意識してのことなのだろう。依子には好ましく映る点だ。 「ありがとう、心配してくれて。でも大丈夫だから」 「……無理しないでね」 「大丈夫だってば。ここに戻ってこれてすごく嬉しいし、不安なんてないよ」 依子はにっこり笑うと、道の先へと駆け出した。 「ほら、先行くよ!」 「ちょ、ちょっと待ってよ。さっきの稽古で体中痛くて」 「どんまいっ」 依子は親指をぐっと立てると、いとこは小さく苦笑を洩らした。 二人が到着した場所は林の奥に流れる小さな川辺だった。 清流が静かに上から下へ。山間を通る水の流れは透明度が高く、底の石々の丸みがくっきりと見えた。 小さい頃、依子たち三人の遊び場だった場所だ。 「さすがに冷たいね」 手を伸ばして水に触れる依子。冬一歩手前の時季。寒さが増せば一面凍りつくこともあるだろう。 「でも懐かしい。ここも変わってないんだね」 夏にはよく川遊びをした。三人で暑い日射しを浴びながら、水をかけあったり魚を捕ったりした。 「……綺麗だね」 微かなせせらぎに耳を傾けながら、依子はぽつりと呟く。 「うん。……座ろうか」 二人は近くの大きな岩の上に腰掛けた。そのままただ何とはなしに遊び場を眺める。 「依子ちゃん」 「ん?」 守が口を開いたので、軽く聞き返した。 「しばらくさ、うちを訪ねてこなかったよね」 「――」 少し不意打ちだった。 「あ、えっと、その、」 慌てふためく依子。その様子を守はじっと見つめる。 その反応に対してか、不意に破顔した。 「……よかった」 「え?」 「少しはぼくのこと、意識してくれてたみたいだから」 嬉しそうに守は頬を緩ませる。 「一番怖かったのは、あの告白をなかったことにされることだったんだ。でも少しは意識してもらえてるみたいだね」 「なかったことって、そんなことしないよ」 「かもしれないけど、人の心は読めないからさ。さっきの反応見るまでびくびくしてたよ」 「は、反応って」 動揺を表に出しすぎたことに依子は赤面した。だって、いきなりあんなこと訊いてくるから。 「本気なんだ、それだけ」 「……わかってるよ」 先伸ばしにしていた答えを、そろそろ明確にしなければならないのかもしれない。依子は小さく深呼吸した。 「……あのとき、すごくびっくりしたんだよ」 「……ごめん」 「いきなりプロポーズなんて、サプライズもいいところだよ」 「……」 小さくなる守。 「……でも、嬉しかったかな」 「っ、」 「初めて人から告白されたし、周りで一番信頼できる人が相手だったから……うん、嬉しかった」 「……」 いとこを横目で見やる。真剣な眼差しとぶつかり、慌てて目を戻した。 微かに逡巡が生まれる。 依子はぐっと歯を噛み締めた。
- 508 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:33:02 ID:geiosX30]
- 「……でも私、正直よくわからないの。マモルくんのことは大好きだけど、恋愛なのか親愛なのか、自分でもよくわからない」
「……」 「……私にとってね、マモルくんはずっとお兄さんだったの。ずっと頼れる兄だったから、そういう目で見てこなかった」 「……」 「でも、今は……意識してる。ちょっと不思議な感じだけど、そういう目で見てる」 「……」 胸がどきどきした。自分の素直な気持ちを吐露するのは、少し恥ずかしい。 「でね、今朝夢を見たの。昔の、私がまだ八歳になる前の夢」 あまり順序立てて話せていないのは依子自身の心が波打っているためだろうか。 「マモルくんに私はこう言った。『わたし、マモルくんのこと好きだよ』って」 「……」 「マモルくんはこう言った。『ありがとう』。そのときにね、気付いたの。マモルくん、お姉ちゃんのことが好きだったんだよね」 「……」 守は答えない。 依子は構わず続ける。 「それでね、思ったの。マモルくんには私よりもお姉ちゃんの方が似合ってるんじゃないかなって」 「……え?」 守の顔が変わった。 予想外の言葉だったのか、表情が強張る。 「お姉ちゃんもマモルくんのこと好きなんだよ。多分、私よりもずっと想いは深い」 「いや、それは」 「マモルくんが今でもお姉ちゃんのことを好きなら、私よりもお姉ちゃんの方を優先してあげて。私はいいから」 「依子ちゃん!」 鋭い声に依子は口を閉じた。 守の目が鋭さを増している。少し怒っているようだった。 「依子ちゃんは依子ちゃんで依澄さんは依澄さんだ。比べることじゃない」 依子は怯みかける。だが、自分は、 「言ったはずだよ。私はマモルくんのことを好きかどうかよくわからないって。あのときの言葉は、恋愛とは違うものだったんだよ」 七歳の頃の出来事なのだ。そんなあやふやな心を引っ張り出して応えることなど、依子にはできなかった。 「それよりもちゃんと好きでいてくれる人を大切にすべきだよ。それとも、マモルくんはお姉ちゃんのこと嫌いなの?」 「――」 「そんなはずないよね。マモルくんはお姉ちゃんのこと、私を好きになるよりもずっと昔から好きなはずだから」 守の想いに応えられるかどうか、依子には自信がない。だが、姉にはそれがあると思う。 それに、それだけじゃなくて、 「……お姉ちゃん、昔から優しいんだよ。私、お姉ちゃんと喧嘩したことほとんどない。いつもお姉ちゃんから折れてくれた」 「……」 「あの人はいつもそう。いつだって自分以外の誰かを優先するの。私はそういうお姉ちゃんが大好きだし、憧れてる。マモルくんだってそうでしょ? 誰かに世話を焼くのはお姉ちゃんの影響でしょ?」 「……」 「でも、それっていつだって自分を後回しにしてるってことだよ。多分あの人は、好きな人さえ簡単に誰かに譲ってしまう。そんなの、私は嫌だよ」 「……」 「でも、もしもマモルくんがお姉ちゃんを選んでくれたら、きっとお姉ちゃんは自分を優先してくれると思うの。だから私は……」 「……嫌だよ」 守が苦しげに言葉を吐き出した。 苦い思いが容易に測れるその響きに、依子は気圧された。 「依澄さんのことは好きだよ。でもそれが依子ちゃんに対する気持ちを上回ることは、ない。ぼくは君しか選ばない」 守の目には明確な光があった。強い想いのこもった目だ。 依子は茫然と相手を見つめる。 「……お姉ちゃんはどうなるの?」 「依澄さんは強い人だから、きっと大丈夫だよ。ぼく以外の人に巡り会えるかもしれないし」 「……冷たいよ、マモルくん……」 「かもしれない。でも、誰かを選ばなければならないのなら、ぼくは自分の想いに正直になる」 「……私にはできないよ。自分の気持ちがよくわからないのに、正直になんて」
- 509 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:35:17 ID:geiosX30]
- 瞬間、依子の体が傾いだ。
守に肩を抱き寄せられて、依子は相手の体にもたれかかった。 「ちょっと、マモルく、」 慌てて顔を上げると、いとこの顔が目の前にあって、 (え?) 硬直したときには唇を奪われていた。 守の顔が今までにないくらい近くにある。生温かい感触がひどく現実感を伴っていた。 何の反応もできずに、依子はただ固まっていた。 初めてのキスは数秒で終わり、気付いたときにはもう相手の顔は離れていた。 「……依子ちゃん」 「……」 依子は何も言わない。何を言えばいいかわからなかった。 恋愛に疎い依子でも、守の想いの深さは充分感じ取れた。 こんなに好かれてしまっている。こんなに愛されてしまっている。 それはきっと嬉しいことだ。この胸の高鳴りはキスの余韻だけじゃないと思う。 だが、その深さが、依子には辛かった。 「……」 「……」 互いに何も言えず、時間だけが無為に過ぎる。 清流の音がやけに哀しげに聞こえた。冷たい風に体を縮め、空を見上げる。 暗い雲が少しずつ天を覆っていくのが見えた。 雪が降ってきそうだったので、二人は川辺から離れた。そのまま緋水の家へと歩き始める。 気まずさから互いに一度も口を開かなかった。喧嘩ではないが、不用意に何かを言えばより気まずさが増すのではないかという危惧があって、会話を躊躇させた。 こんなに互いの心が乖離したことがあっただろうか。依子は以前を振り返り、寂しくなった。前みたいにずっと兄でいてくれれば、こんなに悩むこともなかったのに。 だが、守はずっと想いを抱えていて、何も感じていなかったのは自分だけだったのだ。いつかは向き合わなければならないことだったはずだ。 縁視の力を持っていたにも関わらず、守の想いに気付かなかった自分は本当に馬鹿だ。何のための力だろう。 想いを受け入れた方がいいのだろうか。このいとこの真剣な想いを、受け入れて、 「……?」 気付くといつの間にか屋敷の前に着いていた。 門の前には、着物を着付けた姉の姿。 「お姉ちゃん」 「……」 依澄は不思議そうにこちらを見つめてきた。小首を傾げて漆黒の瞳を優しく和らげる。 依子には理解できない、優しさを湛えた目。どんなときも色褪せることのない深さを持つ目。 昔から、姉はよくわからないところがあった。 歳が少し離れているせいもあるだろう。いつだって依子の先にいて、依子を守ってくれる存在だった。 誰にも頼らず、弱味を見せない。そして誰かのためにいつも働きかけるのだ。 依子はそれがずっと嫌だった。姉を守りたくて、姉の役に立ちたくて、一生懸命背伸びをしていた。 後継を競ったのもそれが理由だった。才能はなかったが、姉に憧れて、同時に負担を減らしたくて、依子は依子なりに頑張った。 だが、それが報われることはなかった。いつだって依子は助けられる側で、姉は一人違う場所に立っていた。 そんな姉が一つだけ執着するものがあった。同い年の男の子だ。 縁視によってずっと見てきたのだ。姉が他とは違う想いを彼に抱いている様を。そしてそれはきっと今でも変わらない。 なのに、その彼は自分のことを好きだと言う。 応えられるわけがなかった。その想いに応えてしまったら、姉はもう、何も特別なものを持たなくなってしまう。 ずっと守られて、こちらは何も返せなくて、さらには逆に奪おうとしている。そんなことできるわけがなかった。 依子は思う。自分は守が好きなのだろう。恋愛か親愛かはともかく、想いに応えたいと思うから。 だが、姉も同じくらい大好きなのだ。ならばそれに対してどうするかは、もう一つしかないと思う。 依子は気軽な口調で話しかけた。 「お仕事終わったの?」 依澄はこくりと頷く。 「雪降るらしいから早く中に入ろ? 今日はマモルくんもこっちで食べてくって言うし」 できるだけ平静な声で言うと、依澄が口を開いた。 「……何か、ありましたか?」 静かな問いにどきりとした。 口を開いたということは、今の問いかけが依澄にとって重要であるということだろう。何かを感じ取ったのかもしれない。
- 510 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:37:14 ID:geiosX30]
- 依子は微笑み、首を振った。
「何もないよ。河原に行って、懐かしい気持ちに浸ってたの」 「……本当に?」 依澄は訝しげな顔で、依子ではなく守を見やった。 「えっと、」 「本当だよ。ね?」 依子は目で守を抑える。守はうまく返せずに黙り込んだ。 「……」 依澄はしばらく不審な顔をしていたが、やがて何も言わずに小さく頷いた。 「どこまで行ってたの? 遠出って聞いたけど」 「少し、東京まで」 「東京……私ほとんど行ったことないなぁ。ディズニーランドには行ったけど……あれは千葉か」 「……」 「でも早く帰ってこれてよかったね。夜から一気に寒くなりそうだもんね。遅くなってたらきっと大変で……」 依子は空々しい会話を続ける。 棘が深く突き刺さるようで心が痛かった。 部屋の襖を閉めて隅の暖房ヒーターのスイッチを入れると、依子は行儀悪く畳に寝転がった。 どっと疲れが出て全身に広がっていく。天井に向かって大きく息を吐き出し、ゆっくりと目を閉じた。 誰かが前に言っていた。 「お前には誰かいるのか?」と。 いる。依子には大切な人たちが。才能がなく、力も失った自分を支えてくれる、大切な家族。 それは、依子が縁視によって誰かを手助けしていたのとは違うのかもしれない。 それでも依子は救われた。それの一番はやはり姉なのだろう。姉がきっかけを作ってくれたからこそ、依子はここに戻ってこれたのだから。 なのに、自分には何も返せない。 そんな自分にできることがあるとすれば、 思考を巡らせるうちに、依子の頭はゆっくりと眠りに落ちていった。 夢は、見なかった。 「……?」 自室の布団の上で体を休めていた神守依澄は、不意に違和感を覚えて顔を上げた。 外の方で何か妙な気配がするのを感じ取った。外と言っても近くではなく、屋敷から三キロメートルは離れているようだが。 この緋水の土地では依澄の感覚は文字通り『神懸る』。 普段なら絶対に捕捉できない距離だが、土地神の力が憑依するこの地では、依澄の霊感は極限まで研ぎ澄まされるのだ。 依澄は気配の位置を正確に捉えるために意識を集中させた。 「……」 少しだけ驚く。 対象は魂が何にも守られていない、剥き出しの状態のようだ。しかし明確な意思を持たない脆弱な霊とは違い、動きは知能の高い生物のそれである。 珍しい。生霊がこの地に来るなんて。それも二人も。 悪意や殺意は見られないので悪い相手ではなさそうだ。むしろ魂の質は優しい感触を受ける。 なぜかこちらに向かっている。 ゆっくりながら、確かにこちらを目指して来ている。何の用だろうか。少なくとも依澄に心当たりはない。 「……」 屋敷の周囲には結界が張ってある。こちらから招かない限り侵入される心配はない。 依澄は迷う。対処すべきかどうか。放っておいても問題はなさそうだが。 しばらく様子を見よう。依澄は相手の位置を捕捉したまま、再び横になって目を閉じた。 居間の方では両親が守と話をしているようだ。 そして依子は、自分と同じように休んでいる。 「……」 魂が昨日よりもブレている。心が不安定なためだろうが、何か心配事を抱えているのだろうか。 依澄は体を休めながら、意識は一切休まずに周りに気を配っていた。 何かあれば、いつでも飛び出せるように。
- 511 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:39:00 ID:geiosX30]
- 声が、聞こえた。
瞬間、依子は驚きのあまり飛び起きてしまった。 「え……?」 周りを見回す。 高い天井に小さな卓。暖房の音は微かで、障子の向こうからしとしとと音が聞こえる。雪が降っているようだ。 何も気にするようなものはない。 (夢だったのかな……) 人はいつも夢を見ているというが、必ず覚えているわけではない。今の依子に夢の記憶はなかった。 ただ、声が聞こえた気がしただけで。 知った声だった。 それに気付いた瞬間、依子ははっとなった。 なんとなく、もう会うことはないのだろうと思っていた。なのにその声を聞いたというのは、不思議な縁を感じる。 (そうか……) 縁を見る能力がなくなったからといって縁そのものがなくなったわけじゃない。 たぶん彼女とはまだ縁が繋がっているのだろう。 あんな別れ方をしたために中途半端になっていたが、心の隅でずっと気になっていた。 (……力はなくなっても、縁は残ってるんだね……) 少しだけ嬉しくて、少しだけ悲しかった。 それが今の自分なのだ。 「……」 声が聞こえたということは近くに彼女がいるということだ。なぜ彼女がこの地にいるのかはわからないが。 依子は立ち上がると、ハンガーにかかったコートを取り、素早く羽織った。 そして暖房のスイッチを切ると、部屋を出て玄関へと向かった。 その頃守は、緋水夫妻と居間で話をしていた。 依子も依澄も疲れたのか、自分の部屋で休んでいる。夕食までまだしばらくあるので、守は昭宗と火梁に対する愚痴などで盛り上がっていた。 そこに夕食を作り終えた朱音も加わり、三人で談笑していたのだが、途中から朱音が昔の話を始めた。 それは、依子の話だった。 朱音が依子にどんな気持ちを抱いているのか、どれだけ依子を大事に思っているのか、その話からはっきりとした愛情が伝わってきて、守は嬉しくなった。 依子は愛されている。周りにとても恵まれ、大事にされている。 だが依子は、それを素直に受け取ろうとしないところがある。 その理由はわからないが、守はそれが嫌いだった。依子は幸せになっていい人間だし、幸せになってほしいと思う。できることなら自分の手で幸せにしたいと思う。 好意を受け取るのを怖がらないでほしい。それをわかってほしいと切に思った。 「……あれ?」 玄関の方で音がした。足音と、扉が一旦開いてすぐに閉められる音。 「……依子ちゃん、かな」 守の鋭敏な聴覚は靴音の微妙な差異を聴き分けた。依澄の草履の音ではなく、スニーカーの軽い靴音だった。 時刻は七時。外はもう真っ暗だ。加えて雪もちらほらと降り始めているようで、外に出るのは少々危ないだろう。 「ちょっと見てきます」 守が言うと、朱音はにっこり笑ってひらひらと手を振った。 「帰ってくるまでにご飯並べておくから。りこちゃんをよろしくね」 そして立ち上がろうとした昭宗の腕を掴み、台所へと引きずっていく。 「あっくんは手伝い」 「いや、私も依子が心配、」 「『盾』は主に逆らっちゃダメ。それに、まーくんに任せとけば大丈夫よ」 「……」 ずるずる連れていかれる昭宗に、守は苦笑を浮かべた。 「すぐに戻りますから」 守はそう言うと、少しだけ速い足取りで玄関へと向かった。 外に出ると、真っ暗な空から白い雪がさらさらと流れるように降っていた。 玄関の明かりを受けて微かに輝く銀色。寒々とした風が顔を撫で、依子は身震いした。
- 512 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:41:47 ID:geiosX30]
- また、声がした。
(聞こえる?) 聞こえた。はっきりと、頭の中に少女の声が。 依子は庭をそろそろと慎重な様子で渡り、門の前まで近付いた。 いるのだろうか、そこに。 門を開けた。 広がる闇の中、家の前の常夜灯が雪景色を照らしている。 誰もいなかった。 依子は一瞬きょとんとなり、それからため息をついた。白い息が顔にかかるように立ち上る。 気のせいだったのかもしれない。考えてみれば当たり前だった。彼女がここまで来ているわけがない。私がここにいることさえ知らないのに。 (…………依子) そのとき再び声が頭に響いて、依子は弾かれたように顔を上げた。 門から出て依子は駆け出す。近くまで来ている。なぜかは知らないが、確かに今の思念は、 「――」 白い世界の真ん中で、依子は案山子のように立ち尽くした。 目の前に小さな人影が立っている。その背は依子よりずっと小さくて、依子よりずっと深い目を持っていた。 「……美春さん」 美春という名の少女は、小さく頷いた。 「……どうしてここが?」 依子の質問に思念が返ってきた。 (明良に手伝ってもらったの。明良は魂を感知したり探すのが得意だから) 「あきら……?」 (私のパートナー。この前、あなたも会ったはずだけど) 言われて依子は思い出した。見た目は美春とそう変わらないくらいの歳の少年。彼が明良というパートナーなのだろうか。 「え? でもその人は?」 姿が見えないことに疑問を抱くと、美春が答えた。 (彼も私と同じ生霊。ただ、普段は幽体でいるから今は見えない。でもちゃんとここにいる) 「そう、なんだ」 見えないが、美春がそう言うならそうなのだろう。依子は気にしないことにした。 「えっと、こんばんは」 (うん……) 二人は互いに挨拶を交わし、そして黙り込んだ。 何を言えばいいのだろう。どこかに引っ掛かっていた思いがあったはずなのに、本人を目の前にするとそれが出てこない。 依子は目前の少女を見やる。相変わらず口を開かない。 やっぱり姉に似ていると思った。直接会うとどう接すればいいか迷ってしまうところまで、よく似ている。 美春が微かに身じろぎをした。 (あの) 「う、うん」 (私……あなたに謝りに来たの) 「……え?」 予想外の言葉に依子は戸惑いの声を上げた。 (あの時のことをずっと謝りたかった。あなたの大事なものを壊してしまって、謝りきれないくらい申し訳なく思ったから……) 「……」 依子は絶句した。こちらは美春に対して恨みなど少しも抱いていないのだ。それなのに、 (償いなんてできないことはわかってる。でもこれだけは、改めてきちんと伝えたかった。だから……ごめんなさい) 深々と頭を下げてくる少女に、依子は軽く息を呑んだ。 この人はそのためだけにこんなところまで来たというのか。たった一度しか会っていない人間にただ謝るためだけに。 依子はほう、とたまっていた息を吐き出した。 「いいの、もうそのことは、別に」 (……でも) 「また少し、お話したいけど……いいかな」 雪が弱くなった。寒さは変わらないが、だいぶましになった。 (……うん) 少女の頷きに依子は小さく微笑んだ。
- 513 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:44:13 ID:geiosX30]
- 結界が張ってあるため、美春は屋敷内に入れない。依澄に頼めば解いてもらえるだろうが、今は姉と顔を会わせたくなかった。
二人は屋敷から少し離れて、畑道の傍らにぽつりと建っている東屋に入った。 町内にある休憩場所の一つで、畑仕事の合間によく使われている場所だ。寒さはあるが、雪を被らなくて済むのでましといったところか。 木製ベンチに腰掛けると、二人は顔を見合わせた。 (……話、って?) 「あ、うん……」 依子は軽く深呼吸をして気を落ち着かせる。 別に大層な話をするわけではない。ただ、わだかまりなど一切ないことをちゃんとわかってもらいたかった。 「ここ、私のふるさとなの」 (……そうなんだ) 「うん。でも私は八年間戻ってこなかった。戻れなかったの」 美春が訝しげに目を細めた。 依子は続ける。 「緋水の神様……ここの土地神様に私の魂を受け入れてもらえなくてね、ここから離れなくちゃならなくなったの」 (……?) 「でも美春さんが私の魂の形を変えてくれたおかげで、私はここにまた戻ってこれた。美春さんにそんな気がなかったのはわかってるけど、それでもここに戻ってこれたのは美春さんのおかげ」 (それは……) 「だから、恨むどころかむしろ感謝してるの。美春さんが負い目を感じる必要なんてないんだよ」 (……) 美春は何も言わない。無表情な顔は、話を理解できているかどうかもよくわからない。 ただ、納得はできていないようだ。 (……私の犯した失敗が功名だったと?) 「結果的にね。だから気にする必要はないんだよ」 (……それは、責任を負わなくていい理由には、ならない) 無表情に美春は思い捨てた。 「そんな、頑なにならなくても」 (違う。あなたはもう縁の力を失ってしまったんでしょう? それは決して軽くないんじゃないの?) 「――」 真正面から問い掛けられて依子は息が詰まった。 それは――その通りだった。生まれた時からそれがあるのが当たり前で、今ここにないというのは、強烈な違和を感じて、 何より、怖い。 感覚を失うということがこんなにも怖いとは思わなかった。この一週間そ知らぬ顔をしながらも、ずっと不安だった。 だが、 「……うん、それは確かにそうだよ。でも、何かを失ったわけじゃなかった」 (……え?) 「周りは何も変わっていないよ。友達は普段と同じように接してくれるし、家族は昔と同じように温かい。大切な人たちはみんな変わってないの。変わったのは私だけ」 (……) 「……ううん、本当はみんな変わっていくのかもしれない。でも私はそれに気付かないし、周りも私の変化に気付いて変わるわけじゃない」 (……) 「私がどう受けとめてどう呑み込むか。たぶん……大事なのはそれだけだと思う」 何かが変わるということは、それほど特別なことではない。いつだって世界は変化し続けているし、永遠に続くものなど、ない。 力を失ったこと。それは決して依子の存在や意味を否定するものではないし、うつろいゆく日常の1ページにすぎない。 みんなあらゆる変化の中を生きている。失いたくないものもあるだろうし、失ってしまった者もたくさんいるはずだ。それでもそれを受けとめて生きている。 依子はこれからも生きていくのだ。ならばきちんと受けとめて、日常を歩んでいかなければならない。不安でも、怖くても、生きる気があるなら進まなければならない。 そしてその中で、大切なものを見つけていくことこそが大事なのだと思う。それは変わらない何かかもしれないし、変わってしまった何かかもしれない。 その大切なものが、自分にとっての確かなものになるのなら、不安や怖さを乗り越えられるのではないだろうか。 「もう起こってしまったことを変えることはできないよ。私にできることがあるとしたら、『頑張る』、それだけだと思う」 美春は無表情に思念を飛ばした。 (当たり前のことを当たり前にする……それが一番大事ってこと?) 「地道にまっすぐ進むことでしか人は生きていけないと思うの。劇的な何かを期待してもいいけど、それで何もしないわけにはいかないでしょ」 そして依子は、にこりと微笑んだ。 自分にできることを精一杯するのだ。そうすれば少しは、周りの人たちに何かを返せるかもしれない。 姉にも、きっと。 (そんなこと考えてたのね……) 美春は感心したように囁いた。
- 514 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:46:00 ID:geiosX30]
- 「あ、違うの。ずっとこんな考えを持ってたわけじゃなくて、さっきなんとなく思ったことなの」
(……そうなの?) 「美春さんが来るまでずっとうじうじ悩んでた。でも美春さんに会って、ふっきれたというか」 ちゃんと縁は繋がっている。これまでにやってきたことが水泡に帰したわけではないことを再確認して、これを途切らせてはならないと思ったのだ。 「だから、実はちょっと思い付きで言ったところもあるの。ごめんね、偉そうなこと言って」 そのとき、美春が優しげに微笑んだ。 綺麗な笑顔に不意を突かれ、依子はどきりとする。 (強いのね、あなたは) 「……そ、そんなことない、けど」 (でも、もう少し肩の力を抜いてもいいと思う) 「え?」 生霊の少女は笑みを収める。 (さっきから気になってた。無理して明るく振る舞ってるみたいだけど、本当は元気ないのかも、って) 「…………」 依子は言葉を失う。見た目は少女でも中身はずっと大人なのだろう。その鋭敏さは脱帽ものだった。 「かなわないなあ……」 (何かあった?) 依子はごまかし笑いを浮かべながら髪を撫で上げた。 「うん……なんていうか、私は恋愛には向かないなぁ、って話」 (……色事?) 「や、そんなんじゃなくて、ちょっと迷ってるというか」 うまく言えなくて、依子は悩ましげにポニーの黒髪を揺らす。 守は白い息を吐きながら、夜目を凝らして依子を探していた。 そんなに慌てるでもなく、屋敷の外を歩き回る。小降りの粉雪が僅かながらうっとおしいが、常夜灯が視界をかなりクリアにしていた。 しばらくして、少し離れた東屋に人影を発見した。 二つの影が見えた。声から一人は依子と判断する。ただ、もう一方から声は聞こえない。喋っているのは依子一人だ。 誰と会っているのだろうか。 目を凝らすと、依子よりも一回り小さい少女が、依子と共にベンチに座っていた。 邪魔をしてはいけないと思い、守は物陰に隠れたまま待機した。 ぽつりぽつりと呟かれる声が耳に届く。立ち聞きはしたくなかったが、鋭敏な聴力が嫌でも拾ってしまう。 自分にも関係のある話のようだった。 依子は話した。姉のことを。守のことを。自分の気持ちのことを。 どちらも大好きで、だからこそ迷っていることを。 かつて依子は守に言った。相手を傷付けることを恐れて中途半端になってしまう、と。 あのとき依子は、理解のためなら踏み込むと明言した。しかし今、果たして同じことを言えるかといったら、言えないかもしれない。 あのときは縁視の力があった。だからあんなことを言えたのだ。だが今は違う。今の自分は裸に等しい。ただの弱い一人の人間だ。 それでもいい。やるべきことは決まっている。依子はそれを包み隠さずに話した。 「もう私はマモルくんに会わない方がいいのかもしれない。会うと意識するし、向こうも私を意識する。でもそれだと、お姉ちゃんに悪いから」 (……譲るの?) 「譲るなんて……マモルくんは物じゃないよ。でもまあ、そんな感じ。私よりもお姉ちゃんの方が絶対マモルくんのこと好きだと思うし」 (……) それが一番だと依子は考えていた。守には悪いが、姉を悲しませたくなかった。 「随分とシスコンかもね。でも、そうしたいから」 (……本当に?) 美春が首を傾げて言った。 それは別に普通の、何でもないただの問い掛けだった。思念の響きも決して強くない、素朴な問い。 なのに、なぜか依子は怯んだ。
- 515 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:51:26 ID:geiosX30]
- (本当に、そうしたいの?)
重ねられる問い。 「う、うん」 (……それで、あなたのお姉さんは幸せになれるの?) 「……え?」 もちろん、と言おうとして、なぜか躊躇した。 どうして。 (……私はその人と会ったわけではないから、本当のところはわからないけど、でももし私がその立場なら……嬉しくないと思う) 「……」 (その決意はお姉さんと話をして出した結論なの?) 依子は首を振る。 生霊の少女はため息をついた。 (それじゃ意味がないよ。一人だけわかったつもりになっても、一方通行になったらどうするの?) 「でも……」 (話をすること。あなたがお姉さんのことを大切に思っているのなら、なおさらね。お姉さんのこと苦手?) 「……ちょっとだけ」 (でも頑張らなきゃ。当たり前のことをやり抜くなら、お姉さんとちゃんと話さないといけない。そう、思う) 「……」 厳しいな、と依子はうつ向く。 話す。ただそれだけのことをするのにこんなにもためらってしまうのは、自分に勇気がないからだろうか。 (依子) 名前を呼ばれて依子は慌てて顔を上げた。 すぐ目の前に小さな手が伸ばされていた。 驚く間もなく、小枝のように細い指が頬に触れる。 ひやりと冷たい感触は、周りの寒々とした空気よりもずっと肌に浸透してくる。 (あなたはもっと好意を受け入れるべきだと思う。他の人の幸せを願うのも構わないけど、自分が傷付いてまでそれをする必要はどこにもない) 両頬を優しく挟まれながら頭に流れてくる思念。 諭すような言葉はまるで母親のように慈愛に満ちていたが、依子は素直に頷けなかった。 「でも……お姉ちゃんはいつも誰かのために生きているんだよ? なのにお姉ちゃんのために生きる人は誰もいないの?」 (あなたがいるじゃない) 「私なんか――」 (家族がいる。好きな人がいる。守りたい人がいる。お姉さんを支えるのは周りの人たち。いとこの子だけじゃない) 「……」 (肩の力を抜きなさい、依子。生きるのは大変だけど……そうね、『楽しめる』ことなのだから、そんな泣きそうな顔をしてはいけない) 頬を包む両手に微かに力がこもった。 (いとこの子に会いたくないのなら離れてもいい。でもそうではないのなら、少しでも一緒にいたいと思うなら、その気持ちに素直になるべき) 「…………私は」 (自信を持って。あなたはいろんな人たちを助けてきたのでしょう。それは縁の力じゃなく、あなたのおかげ。そんなあなたが、姉を支えられないわけがない。いえ、ひょっとしたらもう支えになっているのかもしれない) 「…………」 少女はとても深い、祝福の笑みを湛え、耳元で囁いた。 (偉そうなことばかり言ってごめん。話は終わり。もう行って。このままだと風邪をひいてしまうから。ほら、迎えが来てる) 美春の手が離れ、依子の後ろを指差した。 振り向くと、守が小さく白い息を吐いて立っていた。どこか気まずそうな風だ。 そして顔を戻したとき、もう少女の姿はなかった。 「美春さん!」 呼び掛けにどこかから思念が届いた。 (さようなら、依子) 「また、また会えるよね?」 (……) しばしの沈黙の後、返事が返ってきた。 (……友達でしょ? なら……きっとまた会える。お互いに、縁を大切に思っていれば) 思念の声はどこか嬉しそうだった。 「約束だよ? 絶対にまた――」 (うん。またね……) そうして思念は闇に消えた。
- 516 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:53:43 ID:geiosX30]
- 二つの人影が離れていくのを遠くから見つめ、美春は小さく頷いた。
(ちょっとすっきりしたかも。会えてよかった) 間近にいる守護霊の少年に囁く。 少年のからかうような思念が返ってきた。 美春は僅かに頬を赤らめる。 と、 (どうしたの?) 不意に、少年の気配が緊張と警戒に変わった。 (……?) 顔を上げる。そして左に目を向けて、よく目を凝らした。 人影が一つ、闇の中で微かに揺れ動いた。 (誰?) 思念を飛ばすと、相手は常夜灯の下にゆっくりと姿を現した。 日本人形のように綺麗な黒髪を持った、美しい女性だった。 着物姿の大和撫子。肌は雪に負けないくらい白く、服の上から窺えるほっそりした肢体は控え目ながら女性らしさに満ちていた。 和傘をさしたその麗人は、厚着でもないのに、寒空の下で身じろぎ一つ見せない。 (……あなたは?) 思わず飛ばしてしまった思念に、麗人は答えた。 「姉です」 短い答えに美春ははっと気付く。 (依子の……お姉さん?) 「神守依澄です。先程は妹がお世話になりました」 姿勢のよい丁寧な一礼に美春はつい見とれる。 (……見てたの? 気配を感じなかったけど……) 「……」 依澄と名乗った女性は、質問に答えなかった。 ただ、言った。 「あなた……言霊を使いますね?」 (!?) 唐突な質問に、美春はらしくもなく狼狽の表情を浮かべた。 依澄の言葉は質問というより確認に近い響きだった。確信しているのだろうか。 (……わかるの?) 「はい……私もそうですから」 (? でも、普通に話して……) 「言霊の制御に多少は慣れていますので」 軽く言ってのけたが、それがどれほど凄いことか、美春にはわかる。強い霊力を持つほど、その制御は難しいのだ。 目の前の美人は美春が出会った中でも最高レベルの霊能者だ。気味が悪いくらい魂が安定している。 何より、美しい。外見もだが、魂そのものが。 本当に人なのだろうか。疑問さえ感じてしまう程に、体と魂が完璧に調和している。 依子が苦手と言った意味がわかる気がした。彼女は『ひどく』特別だった。 美しさに目を奪われていると、依澄がおもむろに傘をたたみ始めた。 小さく一礼する姿に、美春は戸惑った。一体、何を。 そして、 『あなたは言霊を使えません』 瞬間、強烈な霊波が美春の魂を縛った。 剥き出しの魂に直接言霊をぶつけられて、美春はたじろぐ。 しかしそれも一瞬で、すぐに立ち直った。 (急に……何?) 予告もなしにいきなり不意打ちを喰らわされたことに少しむっとして、美春は相手を睨んだ。
- 517 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 02:56:17 ID:geiosX30]
- 依澄は動じた様子もなく、言った。
「喋ってみてください」 (……?) そこで美春は思い返す。今、彼女はなんと言った? 口を開いてみた。 「……まさか」 呟いた瞬間、美春は自らの口を両手で押さえた。 霊波が……出てない? もう一度口を開く。 「あ……」 やはり、霊波は出てない。 恐る恐る顔を上げると、依澄は満足げに微笑んでいた。 「……あなたの言霊の力なの?」 依澄は頷く。その顔には何の邪気もなく、つい見とれてしまう。 一目でこちらが言霊の力に縛られているのを見抜いたのだろうか。 「通じるようですね……では、これも」 さらに依澄は、小さなお守りを差し出してきた。 「……これは?」 「この土地の神様のお守りです。中に私の言霊の力を込めた護符が入っています」 依澄は雪より透き通る、綺麗な声で言った。 彼女の言霊の力は声だけではなく、書いた文字にまで影響するらしい。すぐに消える声とは違い、文字の力は破損しない限り半永久的に残るのだそうだ。 つまり、これを身に付けていれば、美春はもう言霊の力に悩まされずに済むのだ。 思いもしなかった出来事に、美春は喜ぶより先に困惑していた。 「どうしてこんな……」 依澄は再び微笑む。 「……依子の友達、ですから」 「……それだけで?」 「あなたのような方が依子の周りにいて下さるのですから、きっと……あの子は幸せですよね」 目を細め、穏やかに微笑む依澄。 その目は何を見ているのだろうか。美春には判断できなかった。 ただ、彼女が本当に妹を大切に思っていることは理解できた。 「……あなたがおせっかい焼きだということはわかった。姉妹揃ってお人好しね」 「……」 依澄は何も言わない。 美春は相手の裡を推し測るように強く見据える。 「……あなたは肩の力が抜けているようね」 「……?」 「妹とは違うってこと。あなたは無理してないみたいだから」 「……」 美春は姉妹の間に決定的な違いがあるのを確信した。それは能力の差ではなく性質の差で、依澄の異常性を際立たせるものだったが、納得できるものだった。 これに比べると依子は随分と正常だ。そしてこれは、憧れたり目指したりする地点にはないのかもしれない。 美春はため息をついた。 「依子と話をしてあげて。あの子の葛藤は些細なものだけど、その些細なものに迷うのが普通の人だから」 依子は姉とは違うのだ。助けがないと生きていけないし、助け合って生きるのが当たり前だ。 依澄のように助けっぱなしの人間の方がおかしいのだ。 「ありがとうございます。……駅までお送り致しますが」 背中を向けた美春に、依澄の声が届く。凛として、雪よりも清涼な音。 「いらない。あなたはさっさと家に戻って、妹に構ってあげて」 「……」 「あとありがとう、お守り。すごく嬉しかった」 「……はい」 美春は返事を聞き届けると、振り返りもせず、そのまま歩き出した。 そこで依澄は言った。 「あなたも、生きることを『楽しんで』下さい」 一単語だけ強調して言われた。依子との話を聞かれていたのだろう。 少し前ならあんなこと、誰に対しても言わなかったかもしれない。 でも、今の美春には友達ができたから。 「ええ、お互いにね。依子によろしく」 それだけ言って、今度こそ美春はその場を後にした。 少しずつ降り積もっていく雪の絨毯に、生の足跡をしっかりと刻み込みながら。
- 518 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:00:02 ID:geiosX30]
- 屋敷に戻った依子と守は食卓で温かい料理に出迎えられた。
羊肉ステーキにほうれん草と人参のソテーを添え、ミートボールとトマトのスープ、二種類のサラダが脇を彩る。デザートにフルーツの盛り合わせが並ぶ。 朱音は帰ってきた二人ににこやかな笑顔を振り撒くと、すみちゃんももうすぐ来るからちょっと待っててね、と言った。 濡れた髪を拭き終わる頃になって、依澄が姿を現した。 依子はつい気を張りそうになったが、美春の言葉を思い出して小さく息を吐いた。 肩の力を抜く。それはたぶん、いつもの、当たり前の依子でいろということなのだろう。 難しいことではない。本当に、ただの依子でいればいいのだ。 この世界で、ただ一人の人間として、唯一の自分として。 やがて全員が卓につき、にぎやかな夕食が始まった。 食事を終えて依子が一息ついていると、向かいに座る依澄が言った。 「お風呂、一緒にどうですか?」 依子は意表を突かれて目が点になった。 「あ……うん」 なんとなく頷くと、なぜか依澄はにっこり笑った。 こちらが驚いてしまうくらい嬉しそうな顔だった。 緋水家の浴場は広い。 浴室ではなく浴『場』という時点でそれはもう間違いない。実際に目にすれば、浴場から『大』浴場に格上げしたくなるほどの広さだ。 これもやはり大人数がいた頃の名残だった。昔は真ん中を壁で仕切って男女別に分けていたらしいが、今はもう壁も取り除かれている。 掃除が大変だが、そこはお手伝いに任せている。ちなみに現在緋水家が雇っている使用人は三人で、主に掃除担当である。 その広々とした浴場の隅で、依子は依澄に髪を洗ってもらっていた。 熱気のこもった浴場には二人しかおらず、シャワーの音がやけに虚しく響く。 依子はちょこんとイスに座り、背後の姉に任せる。 依澄は依子の黒髪を優しげな手つきで撫でると、シャワーですすいでいった。それから手の平にシャンプーを泡立て、丁寧に洗い始める。 「依子」 ごく自然に名を呼ばれた。それに対して依子は流されるように声だけを返す。 「なに?」 「守くんのこと、好きですか?」 心臓が止まりそうになった。 「なっ……!?」 振り返ろうとする依子の肩を、依澄は両手で押さえ付ける。 「動かないで下さい」 「……うん」 織物を織るように、依澄の手つきは繊細に動く。 くすぐったい感触が心地よい。わしゃわしゃという泡立ての音が耳に響いた。 「……私は好きです。昔から、ずっと」 囁くように、依澄は言った。 「たぶん初恋で……今も変わらないです、それは」 「……」 「でも私は彼を選びません」 「……どうして?」 依子の問いに、依澄は答えなかった。 依澄が蛇口を捻り、再びシャワーからお湯を出す。 温かいお湯を髪にかけられて、依子は体をすくませた。目をつぶってじっと動かずにいると、泡とお湯が体を流れていくのが感じとれた。 「彼はあなたを選んでいますから」 シャワーの途切れと共に、依澄が囁いた。 数秒の間。 「……それだけ?」 依子の確認に依澄は頷く。
- 519 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:02:04 ID:geiosX30]
- 「でも、好きなんでしょ?」
「……」 「なのに諦めるの?」 「……諦めるのとはちょっと違いますが……そうですね」 その淡々とした返しに、依子は悲しくなった。なんでこの人はこんなにも執着がないのだろう。 「なんで……どうしていつもそうなの?」 「……?」 「ずっとそうじゃない。昔から、なんでも簡単に私に譲って、なんにも我が儘言わなくて、人の頼みを断らなくて、そんなの……」 好きなおもちゃも、お菓子も、お洋服も、依澄は人が欲しがれば簡単に譲った。 ものだけじゃなく、心さえそうだった。常に周りに気を配り、自分のことは二の次。いつも自分は後回しで、そっちのけだった。 「少しは自分を大切にしてよ……執着を持ってよ……私は、お姉ちゃんに幸せになってほしいのに……」 口が震える。言葉を募らせるうちに涙が溢れてきて、やがて止まらなくなった。 依子の願いはそれだけなのだ。自分ばかり幸せになるなんて、そんなのは間違っている。 もしかしたらこの世で一番優しいかもしれないこの人が、どうして幸せになれないというのか。そんなこと、許せるわけ、 「……私は幸せですよ」 「……え?」 とめどなく流れる涙の中、依子は姉の言葉にぼんやりと顔を上げた。 目の前の鏡に、依澄の微笑む姿が映っている。 「家族がいます……好きな人がいます……こんなにも愛してくれる大切な妹がいます」 「……」 その言葉はさっき美春が口にしたことと重なるようで、依子は奇妙な既視感にとらわれた。 「それに……私の何よりの望みは、『他の人たちの幸せ』なのですから、私自身が恵まれても、それは私の幸せにはなりません」 「……どういう意味?」 「私は、自分に執着を持つことが『できない』んです」 さらりとした調子で、依澄は言った。 依子は押し黙った。 「……そういう性質なんです。まったく執着がないわけではありませんが、他人と自分を天秤にかけたら、他人を優先してしまう。それは変えようがないし……変える気もありません」 「……マモルくんが欲しいとは思わないの?」 「あなたを悲しませてまで欲しいとは思いません」 けれんみなど微塵もない言葉。 依子は何も返せず、ただうなだれた。 「でも……私は……」 不意に温かい感触が背中いっぱいに広がった。 依澄が依子の体を背後から抱きしめたのだ。 「お、お姉ちゃん!?」 いきなりのことに依子は頓狂な声を上げた。 細腕が強く体を締め付けてくる。痛くはなかったが、乳房の柔らかい感触と肩越しに頬にかかる吐息が密着を明確に感じさせ、ひどく気恥ずかしくなった。 「……最初、あなたに会いに行くのが怖かったんです」 「――え?」 意外な告白に依子は目を丸くした。 「恨まれているかもしれない。そうでなくても会いに行ったりしたら、あなたに嫌な思いをさせてしまうかもしれない。そう思うと……怖くて仕方ありませんでした」 「……」 それは少なからず驚きだった。ほとんど完璧とも言える姉が、そんなことを思っていたなんて。 「……でも、私の恐怖よりもあなたの不安を取り除く方が大事でしたから、私はあなたに会いに行きました。……行ってよかったと思っています」 依澄は諭すように耳元で囁く。 「私はそうしたいからそうしました。あなたもそうしてください。だから――答えて。守くんのこと、好きですか?」 真摯で真剣な問いに、依子は咄嗟に答えられなかった。 だが、ひょっとしたら、もう心の中では決まっていたのかもしれない。 拙く淡い答えが、七歳の頃から。 依子は高揚する胸を押さえて深呼吸した。 「……好きだよ。たぶん、もうずっと前から」 依子にとって、守は兄だった。なぜならば、姉が好きになった相手だったからだ。 二人が結婚すれば、守は自分の兄になる。幼いながらそんな知識と認識があり、依子はずっとそれを受け入れてきたのだ。 だが、本当に心の奥底では。
- 520 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:03:49 ID:geiosX30]
- 「好き。マモルくんが大好き。ずっといっしょにいたいくらい大好き」
「……」 依澄は腕の力を緩め、体を離した。 依子は体ごと振り返って姉に向き直る。 顔を見ると、微笑ではなく、はっきりと深い笑みを湛えていた。 「今のはなかなか可愛かったですよ、依子」 「……へ?」 「肩の力も抜けてるし、素のあなたって感じですね。それでいいんです」 「……」 美春と同じようなことを言う。 「あとは、彼に伝えるだけですね」 「え?」 「告白して、キスの一つでもしてあげたらどうですか?」 「な……」 依子は絶句して、息を呑む。昼の、川辺での出来事を思い出して、思わず赤面した。 茹で蛸のようになってしまった依子に依澄が首を傾げる。 「……ひょっとして、もう済ませてしまいましたか?」 「な、何が!?」 反射的に聞き返したが、依澄は無視してうんうん頷いた。 「……ならもうあとは一つしかないですね」 「……」 「今日は守くんも泊まっていくようですし、アタックしてみたらどうですか?」 「……」 からかわれているのか、それとも本気で言っているのか、姉の言葉に依子は困り果てた。どう答えろと。 「今日は随分饒舌だね……」 「あなたと話せて嬉しいからですよ」 「からかわれてばかりじゃおもしろくない……」 「いえ、結構本気です」 存外に強い声だった。 「依子次第ですけど、好きな人に抱かれるのも悪くないと思います。それとも、怖いですか?」 「……」 急にそんなこと言われても、と依子は困惑した。 少し想像する。 数秒後、恥ずかしさに思わずうつむいた。 だが、あまり嫌な気はしなかった。 「勇気が持てないなら後押ししますよ?」 「……」 依子は白い湯気の真ん中で高鳴る胸に倒れてしまいそうになった。 布団の敷かれた客間で、守は一人考え事をしていた。 昼間、依子が言った九年前のことを思い出していたのだ。 あのとき依子は言った。 ――わたし、マモルくんのこと好きだよ。 あのときはまだ依子より依澄の方が好きで、守は彼女を妹としか見てなかった。 だから守は言ったのだ。ありがとう、と。 あれは誤魔化しの言葉だ。稚拙な想いをうやむやにする、卑怯な言葉。 依子は続けて言った。 ――あとね、お姉ちゃんのことも好き。だからずっと、三人いっしょにいたいな。 依子自身もあまり憶えている様子ではなかったが、言葉だけ捉えると親愛の告白のようだった。 だがもし、あれが恋愛の告白なら、 (先に告白されてたんだな、ぼくは) あるいは機を逃したのかもしれない。守はつい苦笑した。 依子のことを好きになったのはそれから五年後のことだ。 高校に通うために神守市内で一人暮らしを始めて、そして久しぶりに会ったいとこの少女に、守は次第に心を奪われていったのだ。 小学生から中学生になって、可憐さに磨きがかかっていくにつれて、さらに想いは強くなった。
- 521 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:07:01 ID:geiosX30]
- 理由があるかと問われると、はっきりとは答えられない。
強いて言うなら、依澄よりもずっと人間味があって、輝いて見えたためだろうか。 依澄はしばしば超然的な空気を漂わせていたが、依子はもっと等身大で、より身近に感じたのだ。 例えるなら、高い嶺に咲く花と、庭先に咲く花の違いだ。 前者は美しいが遠すぎて現実感がなく、後者は前者ほど美しくないが近くにいて安心させてくれるのだ。 守は後者の花を愛しく思い、守ろうと決めた。 いつか前者を守る立場に戻らなくてはならないと知っていても。 とんとん、と襖を叩く音がして、守は物思いを中断した。 顔を上げて襖を見やる。 「どうぞ」 襖が開いた瞬間、守は目を見開いた。 「……」 依子が顔を真っ赤にして立っていた。 パジャマ姿である。ピンクの布地は薄くはないものの、体のラインが普段着よりも幾分はっきりと表れて色っぽい。 うつ向いたまま依子は動かない。 守は小さく唾を呑み込むと、とりあえず声をかけてみた。 「あの、どうしたの?」 「……」 依子は答えず、恐る恐るといった調子で顔を上げた。 「……」 「依子ちゃん?」 「……は、話が、」 か細い声でそれだけ言うと、また口を閉じてしまう。 「とりあえず入って。廊下は寒いから風邪ひくよ?」 「……」 こくん、と頷くと、そそくさと襖を閉めて中に入ってきた。守は隅の座布団に手を伸ばす。 「あ、ここでいいから……」 依子は首を振ってそれを制し、既に敷かれた布団の上に腰を下ろした。 そのまま体操座りをする少女。脚線がより強調されるようで、守は思わず目をそらした。 「は、話って?」 「うん……」 訊いてみるものの、依子はなぜか話さない。 何度か逡巡して、何かを言おうとするのだが、またすぐ口をつぐんでしまう。 言いにくいことなのだろうか。それとももっと別のことか。 「……昼間はごめん」 先に話を切り出したのは守の方だった。 依子は不思議そうな顔をした。が、すぐに思い出したのか、また顔を紅潮させた。 「あ……その……」 「ご、ごめん。なんていうか、思わず……って思わずでやっちゃいけないんだけど、でもぼくは本気で、」 狼狽してうまく言葉がまとまらない。守は情けない気分になった。 「……ん。わかってる」 依子が頷いた。 守はいとこを見据える。依子は赤面したまま口をぎゅっ、と引き結んでいる。 「……」 「……」 沈黙。 長い静寂だった。暖房の音がぼう……と静かに鳴るだけの室内で、二人はぎこちなく固まる。 どれだけそうしていただろうか。おそらくは一分も経っていないだろう。 だが守には永遠にさえ思えた。この瞬間で全てが止まっているとさえ感じた。 うつむいたまま視線を合わせないでいると、依子が微かに身じろぐ気配が伝わってきた。呼吸のための胸の収縮が、空気を揺らすようだった。 「……お母さんが前に言ってた」 ぽつりと漏らすように、依子は言った。 「私の名前、依子の『依』にはいろんな意味と思いをこめたんだ、って」 「……それは」 守は顔を上げる。
- 522 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:14:23 ID:geiosX30]
- 「たよる、とりつく、よりかかる、意味だけ並べると随分悪いイメージだけど、そうじゃないんだって」
「……」 「いいよりどころを持てるように、そして誰かのよりどころになれるように、そんな意味を込めてこの名前にしたんだ、……って」 「……」 守は頷く。それはさっき、夕食前に朱音から聞かされていた話だった。 依澄のときにも同じ理由でその漢字を使ったという。『子』の字をつけたのは子年だったかららしい。 朱音は楽しそうに話していた。 『よりどころっていうのは特別なものじゃないの。ちょっとだけ自分を支えてくれる、ささやかな宝物みたいなもの。私は子供たちにそれを見つけてほしいなと思って、名前をつけたのよ』 ちなみに私のよりどころはすみちゃんとりこちゃん、おまけであっくんね。そう言って彼女は笑っていた。 伯母の顔は穏やかで、娘への深い愛情に満ちていた。 それもきっと特別なことではない。二人を見ていればわかる。それは、朱音がとても依子を愛していると、ただひたすらに当たり前のこと。 当たり前に、大切なこと。 「私は――依子。特別な力なんて何も持たないけど、私は私。これまでも、これからも、それは変わらない」 「……うん」 「一つ一つやるべきことをこなしていって、ずっと生きていくよ。それはたぶん、みんな同じだと思うから」 「うん」 そこで依子は顔を上げ、守を見つめた。 「マモルくん」 「う、うん」 まっすぐ見つめられて、守は少しだけ落ち着かなくなった。 「私ね、マモルくんはお姉ちゃんといつか結婚すると思ってたの。だからマモルくんはいつまでも私の兄で、私もずっと妹だと思ってた」 「……」 「でも、それはもう違う。九年前のあやふやな想いとも違う。私はよりどころを定めるために、今の答えを怖がらずに出さなきゃならないの。だから、言うね」 そして、依子は紅潮した顔をぎこちなく笑顔に変えて、懸命な調子で言った。 「大好きだよ、マモルくん……誰よりも、何よりも」 その言葉は胸に染み込むように、じわりと心に浸透した。 九年前とは違う、明確な愛情を持って放たれた言葉。 今の彼女が出した精一杯の答えに、守は嬉しさのあまり卒倒しそうだった。 だから、 「……」 守は無言で目の前の想い人を抱き締めた。 「っ、」 驚いたように身を固くする依子。 力一杯抱き締めたりはしない。ただ彼女の温もりを感じていたかった。 少女の体から少しずつ固さが抜けていく。しばらくして、体操座りを崩した依子の手が、守の背に回された。おずおずとした手つきだった。 「ぼくも、大好きだ」 「……」 間近にある頭がこくりと頷いた。 「……」 それからしばらく、二人は動かなかった。 守は急速に高鳴る左胸にうろたえそうになる。 依子も同じなのか、固まった体を動かそうとはしなかった。だが、嫌がられているわけではないようだ。 少しだけ、手を動かしてみた。 「!」 依子の肩がびくりと強張る。守はそれに驚いて再び硬直した。 パジャマ越しに、少女の鼓動と温もりが伝わる。 「……」 「……」 暖房の音が小さくなっている。暖かい部屋の中で温かい感触を受けながら、守は唾を呑み込んだ。 不意に依子が口を開いた。 「……したい?」 一瞬何を言われたのかわからなかった。
- 523 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:16:24 ID:geiosX30]
- 「……何が?」
「……だから、……その」 言い淀む依子の様子に守は訝しむ。しかし、 「…………え!?」 「察してよすぐに……」 「いや、だって、それって」 守がその意味に気付かなかったのは、そういうこととは無縁なイメージを依子に抱いていたからだ。だからその言葉に、守は驚くしかなかった。 「いや、まあ、その」 「私は、別にいいよ……好き合った人同士なら、普通……だよね?」 「それは……そうだけど、でも」 「しないの?」 「あ、だって、まだ早いかもわからない、ていうか」 「……お姉ちゃんとはしたくせに」 驚きのあまり、思わず守は依子から体を離した。 上目遣いに守を見やる依子。 「……私とはダメなの?」 「いや、そんなことは……って、なんでそのこと」 「……お姉ちゃんに聞いた」 「…………」 秘密にしておこうと言ったのは依澄さんの方なのに。守は心の中でぼやく。 「……」 また静かな空間が出来上がる。 一言で言えば嬉しい。だがあまりに唐突すぎて、どう反応したものか戸惑いがあるのも事実だった。 前にも同じような場面に出くわしたことがあるが、今回は自分の想い人である。より強い緊張が心を縛るようだった。 依子が、今度は幾分はっきりと言った。 「……『別に』なんて言い方は、ダメだよね。……訂正。してくれる?」 「いや、無理しなくても」 「無理じゃないよ。本当に……してほしい」 頬をうっすらと染めながら、依子はゆっくりと、はっきりと言った。 「……」 守はしばらく黙っていたが、やがて盛大にため息をついた。 自分のへたれ加減に呆れた。好きな相手からの申し出なのだ。躊躇なんていらない。 守のため息に依子がつらそうに目を細めた。 「……ごめん。急に何言ってるんだろうね、私。マモルくんも困るよね、いきなりこんな」 「いいよ」 守が短く答えた。 「え?」 「……好きな人にそんなこと言われて、断ると思う?」 「……マモルくんならあるいは」 「いやいやいやいや」 どんなイメージですか依子さん。 「言っとくけどぼくも男だからね。君の脳内の遠藤守像を根底から覆すくらいに激しくするかもわかんないよ」 「う……」 たじろぐ依子。目元に若干不安の陰が浮いた。 「……どサド」 「大丈夫、優しくするから」 「いらない」 「いや、なんでそこで意地張るの」 「したいようにしてよ。私もそうするから」 依子はどこかふっきるように言うと、おもむろに身を寄せてきた。 守はもうためらわなかった。小さな体を抱き寄せると、その唇に自身のそれを重ねた。 抵抗はなかった。驚くような反応もなく、柔らかく受け止めてくれた。お風呂上がりのしっとりした髪から、優しい匂いがした。 「ん……」 みずみずしい感触に、守はたまらない気持ちになった。髪の香りが、体の温もりが、唇の感触が、こちらの興奮をあっという間に高めてくる。
- 524 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:18:00 ID:geiosX30]
- 体を離し、二人はしばし見つめ合った。
「脱ぐね……」 依子の小さな手がパジャマのボタンを一つ一つ外していく。守はそれをぼんやりと眺めていた。 シャツの下には何も着けていなかった。前立ての間から覗く胸の膨らみが際どく映える。 ボタンを外し終えると、依子はそこで手を止めた。 「マモルくんも脱いでよ……私だけなんて、恥ずかしい……」 「あ……うん」 慌てて守も自分の服に手をかける。黒のトレーナーを脱ぎ去ると、鍛えられた体が露になった。 「……それは?」 右脇腹に貼られた湿布に依子が眉をひそめた。守は肩をすくめて、 「昭宗さんに肘もらっちゃったからね。ちょっと痣になってて。でも大丈夫。折れてないし、すぐに治るよ」 「朝のやつ? 痛くないの」 「多少は。まあたいしたことないよ」 しかし依子の目から不安の色は消えない。 「……やっぱりやめる?」 「そんなこと、できると思う?」 「……」 「正直、早く君を抱きたい。脱がすよ?」 守が手を伸ばす。前立てに触れようとすると、依子の顔が強張った。 守はあえて無視して、そのままパジャマを剥いだ。 「……!」 上の裸身が完全に現れた瞬間、依子が両腕で胸を隠そうとした。しかし守はその手を掴んで赦さない。 発育のよい胸が目に飛び込んできた。巨乳という程ではないが、思わず掴みたくなってしまいそうな綺麗な形をしていた。 羞恥心に真っ赤になる少女。 守は依子をゆっくりと布団の上に押し倒す。胸を凝視すると、依子は恥ずかしさからか目を逸らす。 腕を離し、守は白い双房に触れてみた。 「……!」 反射的に力の入る体の中で、二つの膨らみの柔らかさは別格だった。まるで生クリームみたいにねっとりと柔らかい。 最初こそ抵抗の動きを見せたが、優しく揉み込んでいくうちに、依子は受け入れるように身じろぐのをやめた。 守は美しい胸を丁寧に揉み回す。乳肌はしっとりと吸い付くようで、手の平に驚く程フィットした。 (ちょっと信じられないな……) 今こうして触れていることは夢なのではないか。そんな疑いさえ抱いてしまう。 桃色の先端が固さを帯び始めてきた。少しは緊張も解けてきたのだろうか。 「依子ちゃん、気持ちいい?」 耳に触れそうな距離まで唇を近付けて囁く。形のいいその小さな耳に触りたいと思ったが、守は一旦抑える。 「……」 返事は返ってこなかった。ただ、震える顎を微かに上下させる。弱々しい頷きだった。 たまらない嗜虐心にとらわれて、守は喉をぐびりと鳴らした。 真っ赤になっている右の耳たぶを甘く噛む。不意打ち過ぎたか、依子は反射的に首をすくめた。 唇で挟むようにくわえ込み、舌で感触を味わう。柔らかい耳たぶを唾液で濡らしていくと、よりいっそう震えが強くなった。 耳を舐めながら右手で胸を愛撫する。乳首に指を這わせると、依子は小さく喘いだ。 「かわいいよ、依子ちゃん」 「……」 依子は答えない。 「下も脱がすよ」 ぼんやりとした目を何度かぱちくりさせる。しばらくして無言で頷くと、ズボンをゆっくり下げようとした。 守はそれを最後まで待てなかった。おずおずと下ろしていく依子の手を掴むと、自身の手でズボンをずり下ろした。 下着ごと一気に脱がすと、少女の隠された下半身が明かりの下にさらされた。 「――」 依子は困惑と羞恥で固まり、次の瞬間左手で股の部分を隠した。 何かに耐えるようにぎゅっ、と目をつぶっているその姿に、守は心臓が壊れるかと思った。 普段見られない幼馴染みの様子は、気が狂いそうなくらい新鮮でかわいい。 守は正直に言った。 「ごめん。ひょっとしたら優しくできないかも」 「……」 「できるだけ痛くないようにするけど、抑え効かないかもしれない。すごく……興奮してるから」 依子は無言だった。 それでも左手をゆっくりとずらし、下腹部がよく見えるように腰を気持ち程度浮かせた。続ける意思はあるらしい。
- 525 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:22:04 ID:geiosX30]
- 現れた陰部は、随分と小さく控え目に見えた。静梨や依澄のものとも違う、薄く綺麗な肉質だった。
守は股間に右手を差し入れると、秘部に指を這わせた。割れ目に沿って上下になぞると、ぴくぴく腰が動いた。 人差し指と中指で秘唇を撫であげる。誰も触ったことのないそこは、淡い綺麗な桃色を保っており、ここを今から征服するのかと思うと下半身が激しくうずいた。 割れ目を執拗になぞり続ける。依子は抵抗しない。こちらに気を遣っているのかおとなしくしている。それとは正反対に、指を縦に動かすたびに体だけが小刻みに反応した。 柔らかい感触をひたすら楽しんでいると、徐々に割れ目から液が漏れ出てきた。 感じてるかどうかはともかく、体は反応している。これなら多少大胆に攻めてもいいかもしれない。 指を、中に侵入させた。 「!」 瞬間、依子の体が一際大きく震えた。 守は耳元で、ためらい気味に囁く。 「依子ちゃんの体、触ってるだけで気持ちいいよ。だから……もっと触りたい。いいかな?」 返事はなかなか返ってこなかった。 十秒以上経過してから、ようやく微かな声で「ん……」と呟かれる。 頷きがなければ拒絶の声とも取れる声。 中指を膣の入り口に入れて、小さく抜き差しを繰り返す。始めは慣らすようにゆっくりと動かし、徐々に大きくかき回していく。 処女の秘壺は狭かった。だが中のぬめりは確実に増しており、指に淫水の熱さが伝わってくる。 「……、……っ」 依子は口をぎゅっ、と結んだまま懸命に耐えている。 「……ん……っ、……ッ!」 まともな声ではなく、唇の隙間から漏れ出る空気の塊のような声だった。意識的な言葉はなく、それはまるで依澄のようだと守は思った。 「依子ちゃん、ひょっとして緊張すると声出なくなるタイプ?」 「……」 図星らしい。依子は赤面したまま何も答えなかった。 締め付けが強くなった。中の肉が指に絡み付くように、ぎゅうぎゅうと締めてくる。 そんな膣中を守は容赦なくかき回した。まとわりつく愛液が小さく音を立てる。淫らな刺激音が耳に誘惑の歌を聴かせた。 依子はもはやろくに抵抗できない状態だった。いやいやをするように首を振っていたが、女唇をいじられていくうちにその動きはかき消されていった。 守は開きっぱなしの少女の口を自らのそれで塞いだ。 舌を絡め、唾液を塗り込み、口内をねっとりと犯す。丁寧なキスを送り込むと、依子の体はみるみるうちに弛緩していった。 呼吸が困難になる程濃厚なキスを続ける。右手は秘部をひたすらにかき混ぜ、左手は少女の背中を通って左胸を、ときに右胸を、執拗に揉みほぐした。 「ひぅ……っ、んっ……はぁ……っ、ん……」 処女とは思えない程、依子は淫らに乱れた。 「んんっ……う……ん……あ…………んっ」 きっと意識しての喘ぎではないだろう。声自体は小さく、部屋の外に洩れるかどうかも微妙なくらいだ。 だがその声は、青年の情欲の波を高々と煽るのには充分すぎる効果を持っていた。 依子の目に快楽の昂りが、薄く涙となって滲む。 このまま指でいじり続ければ絶頂を迎えるだろう。だがそれは少し寂しい気がした。やはり、一緒になりたい。繋がりたい。 守は膣穴から指を抜いた。愛液が指先にまとわりつき、秘部と透明な橋を作る。 依子が不思議そうに守を見やった。潤んだ瞳は切なげで、困ったような、苦しそうな顔だ。 「……イキそう?」 「……?」 恥ずかしがるかと思ったが、依子は表情をあまり大きく変えなかった。 怪訝に思い、守は尋ねた。 「ひょっとして、依子ちゃん何もしたことない?」 「……?」 いまいち伝わってないようで、守は言葉を選び、訊く。 「いや、だから、その……自分でいじったり、とか」 「!?」 ようやく理解できたようで、依子は驚いた後、みるみるうちに真っ赤になった。 慌てて首を振って否定する。顔はりんごみたいに赤い。 「じゃあイったこともないよね」 「……」
- 526 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:24:28 ID:geiosX30]
- 知識としては知っているかもしれない。だがその感覚は経験しないとわからないだろう。
「さっきぼくに触られてるとき、変な気分にならなかった? 意識が飛びそうになったりとか」 おずおずと頷く依子。 「その先に絶頂があるんだけど……一回指でイっとく?」 気を抜く意味でもそれがいいかもしれないと思う。本番できちんと感じられるかどうかはわからないし、痛いだけで終わったりしたら依子に悪い。 依子は首を振った。 「痛いかもよ?」 「……大丈夫……だよ」 かすれた声で微笑む。 「マモルくんも……気持ちよくなって……」 「……」 健気な言葉に守は背筋がぞくぞく、と震えるのを感じた。 嬉しさと愛しさが入り混じり、元々高まっていた興奮がさらに高まる。 「ありがとう。ぼくも頑張るから」 依子が微笑と共に頷いた。 守はジーンズを脱ぎ、その下のトランクスも脱いだ。 薄いポリエステル製の下着を取り払い、現れた逸物は、豪儀に硬直していた。 仰向けに横たわったまま、依子が不安げに見つめてくる。 ――ああ、見られてる。 守は少し恥ずかしくなった。依子に見られるのはなんだか特別な気がした。 ジーンズのポケットから財布を取り出す。その中から抜き出したのは、袋に入った薄いピンクの避妊具。 依子がそれを見て、眉を上げる。 「一応きちんとしとかないとね、こういうことは」 すると依子はなぜか苦笑いを浮かべた。複雑な面持ちと言えるだろうか。 そのまま体を起こす。脇に脱ぎ捨てられたパジャマに手を伸ばすと、普段ほとんど使うことのないだろうポケットを探った。 守が尋ねるのを制するように、依子は探り当てたものを突き出して見せた。 「……あれ?」 種類は違うが、守が財布から取り出したのと同じ物品だった。バラではなく箱だったが。 「……依澄さんが?」 依子が用意したとは思えなかった。少女はこくこくと頷く。 普段から常に用意しているわけじゃないだろう。昼間出かけているときに先を見越して購入してきたのだろうか。 もちろん依澄といえども未来予知ができるわけじゃないので、これもたまたまなのだろう。だが依澄にしては下世話な『お遊び』でも、きちんと後で意味を持ってくる辺りがさすがというかなんというか。 「神守に帰ったら、これでたくさん愛してあげるから」 「っ」 依子が微かに怯んだ。耳を真っ赤にしてうつむき、やがて小さく頷いた。 守は微笑むと、袋から避妊具を抜き取り、屹立した自分の逸物に装着した。 依子は自分から仰向けになった。生まれたままの姿の少女は、右手で胸を、左手で股間を隠して守をじっ、と見つめてくる。 守は膝立ちのまま、赤子のように這って近付く。 「依子ちゃん……」 白い両脚に手をかけ、横に開いた。軽い抵抗をあっさり押し退け、大事な箇所を目前に捉える。依子ももう目立った抵抗を見せなかった。 体を股の間に割り込ませ、怒張した肉棒を近付ける。繋がる直前というのは何度やっても緊張してしまう。 「ん……」 濡れた入り口を焦らすように肉棒で撫でると、依子が耐えきれないような喘ぎを洩らした。 今度こそ進入する。粘膜を擦り合わせて早く気持ちよくなりたいという欲望をこらえながら、ゆっくりと、ゆっくりと、亀頭を秘部の肉へと埋め込んでいく。 「んっ……」 苦しげな声が短く発された。守はそこで挿入を止める。 「大丈夫?」 「……」 返事はない。だが息を止めて歯を食い縛っている様子から、痛いであろうことは充分伝わってくる。 「力抜いて。入らないよ」 「……」 真上から声を落とすと、依子は駄々をこねるように首を振った。 「じゃあそれでいいよ。ちょっと乱暴になるけど、我慢してね」 下腹部をさらに押し込む。亀頭が未開拓の秘奥を切り開くように進んでいく。 依子の顔が苦痛の色を濃くした。声は抑えているが、どう見ても苦しそうだ。
- 527 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:29:23 ID:geiosX30]
- 徐々に肉棒全体が依子の中に埋まっていく。カタツムリが殻の中に閉じこもるように、ゆっくりと深く。
「…………」 涙目の依子が荒い呼吸と共にこちらを見上げた。まだだろうかと、もう限界のように瞳がぶれる。 「入ったよ」 「…………んっ」 必死で耐えるその様子は健気で、とても愛しく思った。 「今日は痛いだけかもしれないけど、何度も抱いて必ず気持ちよくさせてあげるからね」 耳元で囁くと、依子はぼんやりと口を開いた。 「……あ……これからも、するの……?」 「当たり前だよ。……言っとくけど、今すごく嬉しいんだからね。好きな娘を自分だけが独り占めしているんだから」 「……」 自分だけの、よりどころ。 「ずっとこうしたかったんだ。一回で済むわけがないよ。恋人として、これから君を何度も抱くから」 真剣に守は言った。 「こい……びと……」 かすれた声で虚空に呟く少女。 やがて嬉しそうに、とても嬉しそうに、依子は笑った。 「わたしも……いっしょかも」 「……その言葉、忘れないから」 守は微笑むと、腰を動かし始めた。 処女の膣は狭かった。先程あれだけ指でいじり回したにもかかわらず、棒を押し潰さんばかりに強い肉圧だった。 愛液で中はとろとろだが、その潤滑油が意味をなさないくらいにきつい。 見ると、何度か往復する中で血が滲み出してきていた。 痛いのも当然だった。今の依子に快楽は欠片もないだろう。ただ早く終わってほしいと願うだけかもしれない。 実際、依子は苦悶の表情で行為に耐えるだけだった。白い歯を噛みしめ、体を委ねて喘ぎ続ける。 だからといって、守は行為を早く終わらせたくはなかった。 力強い締め付けが射精を激しく促してくるが、恋人の肉壺を堪能し続けたいという思いがそれを拒んだ。 果てれば気持ちいいのはわかっている。しかしそこに到る過程をいつまでも味わっていたいという思いも同時にあり、往復をひたすら繰り返す。 「あ……んっ」 色っぽくも聞こえる依子の喘ぎ。たとえ苦痛の声でも、それは守の聴覚を簡単にとろかす。 ……色っぽい? 「ん……あ……んっ、んんっ……あっ」 声に色が混じっている。締め付けは依然としてきついが、拒絶するような抵抗感はない。むしろ締め付けて離さないような。 (……感じてるのかな……?) 守は腰の動きを少しだけ速めた。 「ふあっ!」 それまでどこか抑え気味の声を洩らすばかりだった依子が、初めて大きな悲鳴を上げた。 「ごめんっ、痛かった?」 「……」 返事はなく、依子は落ち着きない呼吸を続けている。 はやとちりだったのだろう。守は乱暴にならないように腰の動きを再び抑えて、 「マモル……くん」 「……なに? どうかした?」 「……なにかヘンなの……」 「は?」 「痛いのに、痛くないの……頭がおかしくなりそうだよ……」 「…………」 守は一瞬呆気に取られて、思わず腰の動きを止めてしまった。 だがすぐに我に返ると、これまでよりも激しいピストンを打ち込み始めた。 「ひゃあ!? あんっ!」 間を置いた不意打ちに、依子は甲高い叫びを上げた。 「やっ、あんっ、……マモル、くんっ、激し……あっ、あんっ!」 もう無言ではいられないようで、最初よりもずっと大きく喘いだ。 守は抑えていた衝動を一気に緩めた。汗と液でまみれた色白の太股に、体当たりをするように腰をぶつけた。 ゴムに包まれた肉棒が奥まで突進する。根本まで完全に突き入れると、内側の肉がまとわり付くように蠕動した。 腰を引く。亀頭が出る寸前まで引き抜くと、襞々が引っ掛かって堪らない刺激を与えてくる。 再び奥まで貫く。すぐにまた引く。出し入れを重ね、互いの性器をゴム越しにひたすら擦り合わせた。摩擦でヒートしていく逸物は、まるで稼働中の電池のように熱かった。 目に映るのは必死に耐える恋人の姿。しかし、苦痛よりも快楽の色が強く見えるのは、守の錯覚ではないと思う。
- 528 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:33:39 ID:geiosX30]
- 守は腰の動きをさらに速めつつ、二つの胸の膨らみを鷲掴んだ。
「やっ……ダメっ」 乳首を人差し指の腹で撫で潰すと、依子は一際高く喘いだ。 執拗に柔らかい乳房を揉み回し、先っぽを刺激する。こねるたびにぴくぴく体が震えた。 守はもう全力だった。依子の体と声と匂いしか知覚できないくらい、行為に陶酔し、没頭した。 顔を近付け、胸から首筋に舌を這わせる。汗ばんだ肌の味はどこか背徳的な甘さがあった。 下から順にキスを贈る。胸、鎖骨、首筋、顎、頬、目元、鼻、額。とにかくあらゆるところに守は唇を添えた。 依子は揺れっぱなしの瞳を細めると、とても嬉しげな笑みを浮かべた。 「すき……だいすき……」 喘ぎと暖房の音に掻き消されてしまいそうな、そんなか細い声だった。 心どころか魂が締め付けられそうな程にゾクゾクした。愛しさが性欲を無茶苦茶に肥大させた。 守は依子の背中に両腕を回すと、ぐい、と抱き寄せるように持ち上げた。急に対面座位の体勢にさせられて、依子はひゃっ、と驚きの声を上げた。 「マ、マモルくん……?」 守は答えずに腰を突き上げた。 「あっ、いっ、」 これ以上入らないくらい深々と肉棒が突き刺さる。さすがに痛みが走ったか、依子は顔を苦くしかめる。 だが守は動くのをやめない。こんなに気持ちのいいこと、抑えられるわけがない。 「ふあっ、あんっ、やっ、やんっ、あ、あぁっ」 最奥に亀頭の先が当たる。粘液が割れ目から染み出て、桃色のゴムの根本まで垂れてきた。陰毛と蜜が絡み合い、部屋の明かりを受けて淫猥に光る。 守は歓喜する男性器の根本から先端まで、圧倒的な快感をむさぼるために意識をひたすらそれに傾けた。 避妊具を着けていてもまったく快感は阻害されない。依子の膣内の熱と感触はめまいがしそうな程に気持ちよく、もういつ射精してもおかしくなかった。 「マモルくん……マモルくん……」 うわ言のように依子は守の名を呟き続けた。守の首筋に両腕を回し、もたれかかるように上体を密着させてくる。 「あう……ダメ……」 力なく体を預ける依子。もう何も考えられないに違いない。突き上げられる肉柱に合わせて反射的に腰を動かすだけだった。 守はもう限界寸前だった。 守は高まってきた射精感を、ギリギリまで溜め込み我慢する。 この至福の時間はもう長くない。一秒でも長く、恍惚に浸っていたかった。 「あっ、んっ、あ、ひぅんっ、やあ……あんっ、ああっ……」 「依子ちゃん……もう……」 二人は至近で見つめ合い、互いに嬉しさと気持ちよさの入り混じった笑みを浮かべ合った。 欲望に覆い尽くされた男性器が激しく秘壺を掻き回す。女陰から愛液が飛沫となって散りそうな程に、二つの陰部は淫らに呼応した。 やがて、頭の中が白い閃光に埋め尽くされるような感覚と共に、守は絶頂を迎えた。 「んん――――――っっ!!」 ゴムの中に精液が吐き出されると同時に、依子の体が感電したように揺れた。 震えはしばらくの間止まらず、依子は目を瞑って懸命に耐えていた。 徐々に互いの体から力が抜けていく。しなだれる少女の体を優しく抱きとめながら、守は萎れた肉棒を引き抜いた。表面を粘液が伝い、避妊具が微かに光を反射させて輝いていた。 二人は脱力した体を密着させたまま動かなかった。 ぼんやりと目線を交差させた状態で何も言わず、ただ抱き合うだけだった。直接肌の温もりを、目の前の息遣いを、心臓の鼓動を、たくさんの汗と一緒に感じ合っていた。 依子がにっこりと嬉しげな笑みを浮かべた。 守もつられて笑った。そしておもむろに顔を近付けて、優しいキスをした。 二人は抱き合ったまま、愛情を確かめるように唇を重ね続けていた。 「結婚?」 翌日、朱音が言った一言に、依子は荷物をまとめる手を止めた。 「誰が?」 「りこちゃんが」 「……誰と?」 「まーくんと」 「…………」 依子は目を細めて実の母親を見やった。 「……なんで?」 「え? だってりこちゃん、まーくんのこと好きなんでしょ?」 「いや、それはそうだけど……」一瞬の間。「……なんで知ってるの?」 「かわいい声だったからね」 顔が刹那で真っ赤になった。昨夜の情事が脳裏に走り、依子はうつむいてしまう。
- 529 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:36:18 ID:geiosX30]
- 「かわいいわーりこちゃん。あっくん泣いてたわよ」
「……」 そんなに大きな声を出していたという意識はなかった。出していたとしても広い屋敷の一隅でのこと、気付かれていないと思っていたのに。 いや、まあそれはともかく、 「……だ、だからって、なんで……結婚……なんて」 うまく声が出なかった。恥ずかしさが顔を真っ赤に覆っているようだ。 「愛し合った二人の行く末なんて、ハッピーエンドなら一つに決まってるじゃない。王子さまがニューヨークで花嫁を見つけることだってあるんだから」 全然関係ないし、そもそもそれ映画だし。依子はため息をつく。 少し落ち着きを取り戻すと、小さく首を振った。 「……ダメだよそんなの」 「どうして? 日本じゃ十六歳で結婚できるわよ」 「まだ高校生だもん。それに……」 依子は昨日友達に言われたことを思い出す。 「……結婚もいいけど、簡単に道を決めてしまうのももったいない気がするの。まだまだ先は長いし、たくさん考えて決めたい。だって……楽しみたいもの」 「……」 朱音は微かに眉を上げると、それからにっこり笑った。 「そっか。先は長いものね。結婚はちょっと早すぎたかな。お母さん先走りすぎちゃった」 「うん」 依子は小さく笑う。 荷物は少ないので整理はすぐに終わった。旅行鞄のジッパーを閉め、依子は軽い息を吐く。 朱音が笑顔のまま言った。 「まあでも、婚約くらいは交わしてもいいんじゃないかしら」 「……婚約って」 大袈裟なことだと依子は苦笑を浮かべる。 「……将来、マモルくんよりもっといい人が現れるかもしれないよ? そのときはどうするの?」 「それは絶対にありえないわね」 断言された。 依子は思わず口ごもった。正直自分でもありえないなと思っていたから。 数日前まであんなにも態度を決めかねていたのに、今は体の内側に根を張るように、心はぶれない。 縁が見えていたときとは違う安定感が、内面にあった。 「結婚なんてまだわからないけど……そうなれたらいいね」 「そのときは遠藤依子になるのかしら」 「……ん?」 そのとき、唐突に思い出した。 前に依子は自分の苗字を言いたくなくて、遠藤姓を名乗ったことがあったのだ。 あのときは咄嗟に口から出ただけだったが、今になってそれが思い出されるなんて。 「……どうしたの?」 「ううん。言霊って、本当にあるんだなぁ、って思っただけ」 「? すみちゃんのこと?」 「違う。お姉ちゃんのじゃなくて……ううん、なんでもない」 朱音は軽く首を傾げたが、すぐに微笑んだ。 「まあいつどこにいようと、りこちゃんはりこちゃんだもんね。苗字なんて関係ないか」 「……ありがとう、お母さん」 依子は神守を名乗れなかった。緋水の名も、今は持っていない。 それでも依子は依子だ。どんな姓を持とうと、それだけは変わらない。 今なら百合原姓を名乗れそうな気がした。 帰ったら友美になんて言おう。やっぱりただいまって言いたいかな。依子は義母の優しい顔を思い浮かべる。 「何時の電車に乗ればいいかな?」 「三時くらいのに乗ればちょうどいい時間じゃないかしら。それまでにまーくんちにも挨拶に行ってらっしゃい」 「うん」
- 530 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:38:07 ID:geiosX30]
- 外は数センチ程積もった雪が地面を白く覆っていた。
ぐしゃ、とした感触を足の裏に受けながら遠藤家に行くと、ちょうど火梁が道場を開けようとしていた。 「おばさん」 「ああ、依子ちゃん。今日守と帰るんだろう?」 「はい。だから挨拶に」 「またちょくちょく帰って来なよ。今回は守がそっちでお世話になったから、次はうちでごちそうしてあげるよ」 男勝りの彼女だが、実は優しい人柄である。実の息子や兄には容赦ないが、それも一種の愛情表現なのだろう。 依子が微笑で応えると、火梁も小さく笑った。 「悩みごとは解決したようだね」 「え?」 「昨日は元気なかったから。でも一晩で整理がついたのなら大したものだよ」 見透かされるほど、昨日は元気がなかっただろうか。 そもそも昨日はこの家を出た後の方が憂鬱で、火梁の前ではそんな素振りは見せていなかったはずなのに。 「……誰だって悩みはありますよ」 「そりゃそうだ。うちの愚息にさえ生意気にも悩みがある。だからあんたが悩んでいても大したことじゃない」 「……」 「でもなかなか解決しないから悩むんだろう? じゃあやっぱりあんたは大したものだよ」 「……マモルくんのおかげですよ」 「あれが役に立ったのなら功名だ。あいつにも意味ができる」 よくわからない言い草に首を傾げると、火梁は言った。 「あいつはあんたに必要な奴かい?」 「……はい。とても」 「そっか」 火梁は一つ頷くと道場の鍵を外しだ。最近は門下生も減ってきててね、とぼやきながら扉を開ける。 そして、 「あれはあんたの『盾』だ。望むなら、ずっと側にいてもらいな。未熟だが、きっとこれからは守ってくれる」 「え?」 依子はまた疑問の声を上げた。 マモルくんが、私の『盾』? 火梁はもう何も言わなかった。ただ親指で家の方を指しただけで、そのまま道場の中へと消える。 多分守は奥にいるという意味だろう。依子は釈然としないまま家の玄関へと向かった。 守の部屋は家の一番奥にある。 依子はドアの前で何度か深呼吸を繰り返し、二回ノックを重ねた。 「んー?」 がさがさと騒がしかった物音が止まり、中から間伸びした声が聞こえた。 入るね、と言ってドアを開けると、守が荷物整理をしていた。 「あ……」 守の顔がりんごのように真っ赤になった。 それを見て依子も急に恥ずかしくなったが、深呼吸が効いたのかすぐに落ち着けた。 「おはよ」 いつもと同じく挨拶をすると、守は照れ隠しの笑みを浮かべ、もうすぐ正午だよと言った。 「……ちょっと不思議だな」 「何が?」 「たった一晩で、依子ちゃんが違って見える」 「……そ、そうかな」 落ち着きが一言で掻き消された。赤面しながらよくそんな台詞を言えるものだ。 「三時の電車がちょうどいい時間だって」 「そうなの? じゃあちょっと急ぐかな」 守は再び手を動かす。何やら部屋中引っくり返しているようだが。 「何やってるの?」 「母さんに後で送ってもらう荷物を整理してる」 「手伝おっか?」 「じゃあそっちの服なんかをお願い」 依子は言われるままに、脇に追いやられた衣類を畳み始めた。 しばらく無言で作業を進める。衣服は畳んだ先から段ボール箱に詰め込んでいった。
- 531 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:42:19 ID:geiosX30]
- 不意に守がぽつりと言った。
「ぼくは昭宗さんの後を継げないみたいだ」 「……?」 依子は怪訝な顔でいとこを見やった。 「母さんに言われたんだ。一つの盾で二人の人間を守れるのか、って」 「それは、」 「依澄さんの『盾』になるには、彼女を最優先に守れる人間じゃないと駄目なんだ。でも、ぼくは依澄さんを選ばなかった」 「……」 心がズキリと痛んだ。 だが後悔はしない。守に対する気持ちは本物だから。 「後継者の立場を外された、ってこと?」 「うん、そうなる。まあ後継候補は他にもいるからそれは大丈夫だけど」 守は口を引き締めると、依子に向かって言った。 「だから、ぼくは君の『盾』になる」 「……え?」 いきなりの宣言に依子は呆然となった。 「この前は君を守れなかったけど、もう二度とそんなことにならないようにする。ずっと側にいたいから」 「…………」 これは――改めて、ということなのだろうか。 「プロポーズ?」 「え!?」 「違うの?」 「い、いや、その、……うん。まあ、そういうこと」 「すぐ結婚したいって思う?」 「……ちょっと早いかな。あと何年か待ってほしい」 「じゃあ婚約だけね」 依子は守に近付くと、唇に軽くキスをした。 驚きの顔を見せる恋人に、少女ははにかむ。 「約束」 「……うん」 二人は照れくさそうに微笑み合った。 依澄の運転する車で駅まで送り届けてもらうと、二人は無人の駅構内へと入った。 後ろから見送りのために依澄もついてくる。昭宗と朱音は町の集会があるため来れなかった。 「依子」 姉の声に依子は振り向く。 「なに?」 「……」 依澄は何も言わず、ただ妹の頭を撫でた。 「……どうしたの? 急に」 笑って返すと、依澄も微笑んだ。 何も言わない。 昨日の饒舌ぶりが夢だったかのように、元の無口に戻っていた。 だが依子は気にしない。言葉がなくても、姉の心は充分伝わってきた。 だから、依子は最高の笑みを返した。 「ありがとう、お姉ちゃん」 依澄は微笑み、そして頷いた。
- 532 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:43:58 ID:geiosX30]
- 踏み切りの音が聞こえる。電車がやって来る。
「いつか……」 「?」 「いつかお姉ちゃんを助けてあげられるような、そんな人間になるから」 依澄は首を傾げた。どうやって、と動作で尋ねる。 「例えばお姉ちゃんの仕事の手伝いで、喋れないお姉ちゃんの代わりに商談をするとか」 「――」 自分の欠点を突かれて、依澄は微かに動揺の色を見せた。 「例えばお母さんに任せっきりな会計を請け負うとか」 「……」 「例えばデジタルに弱いお姉ちゃんに代わって、ホームページを開いて管理・運営するとか」 「……」 「法曹になって緋水専属で雇ってもらうのもいいかもね。田舎だとそういうのにも困るでしょ」 「……」 依澄は困ったように顔を曇らせた。 依子はそんな姉の珍しい顔を面白そうに眺める。 「あは、何でも出来そうなお姉ちゃんだけど、結構弱点あるね」 「……」 依澄はからかう妹の額を猫手でこつんと叩いた。依子はごまかすように笑う。 大きな音を立てて、電車がホームに入ってきた。 「行こ、マモルくんっ」 「あ、うん。それじゃ、依澄さん」 依子と守は停車を待って、開いたドアをくぐる。 振り返って、依子は姉に手を振った。 「私本気だからね。絶対お姉ちゃん助けるからっ」 依澄も微笑のまま手を振った。 ドアが閉まる。外から姉が何か言ったような気がした。待ってますと聞こえた気がした。 電車が動き出す。真横に流れていく駅のホームを、依子はじっと見つめた。 しばらくして視界から姉の姿が消え、駅も消えた。そして牧村町の景色が現れた。 依子は座りもせずに、ただそれを眺めていた。楽しそうに眺めていた。 トンネルに入って何も見えなくなってしまうまで、依子はそうしていた。 やがておもむろに守に向き直ると、満面の笑顔で言った。 「また一緒に帰ってこようね」 「うん」 そのときカーブに差し掛かり、電車が大きく傾いて揺れた。 二人は慌てて吊り革を掴み、難を逃れる。 冷や汗混じりに顔を見合わせた。 「……座ろっか」 「そうだね」 恋人たちは小さく笑い合った。
- 533 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/09(日) 03:50:20 ID:geiosX30]
- 以上で投下終了です。
ぶっちゃけ長すぎですよね……初めての方はストーリーわからないと思うのでエロだけお楽しみ下さいw ところで>>518にミス発見。料理は「出迎え」ないですよねw
- 534 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/09(日) 05:56:26 ID:p73/TQgC]
- GJ
なんという大作を、二人が結ばれて良かったです、ただ依澄さんが切ない(´;ω;`) 良い意味で守を諦めないでもらいたいけどそういうんじゃないのかなぁ
- 535 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/09(日) 06:48:46 ID:OUAE9Ea5]
-
- 536 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/09(日) 11:44:26 ID:3q4rdSy6]
- GJ
- 537 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/09(日) 11:51:35 ID:1qC731uj]
- GJ!!!
朝から良いものを読ませていただきました
- 538 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/09(日) 13:07:06 ID:dDTpLn6O]
- 神キテターーーー!!
GJ!GJ!GJ! いつも通りの読み応えのある長さ、いいものです そうか、こうなりましたか…… ってか、他の『盾』候補者なんて居たのね……さぁどんなやつだどんなやつだ 守君は依子ちゃんとハッピーエンド、依澄ちゃんは……さぁどうなるんだ しかし、これで終わりかぁ……願うなら、ちょっと番外編が欲しかったりします まだ見てたいしこの作品 最後にもう一度 GJ!
- 539 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/09(日) 18:31:58 ID:pobGDy8q]
- GJ
- 540 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/09(日) 20:49:13 ID:sxXrQteN]
- 前の話とかよくわからんが、良かったよ。
浴場でのやり取りには心が洗われるようだったし、緊張感から入るHシーンもツボだっだ。 GJ&お疲れ様
- 541 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/09(日) 21:21:38 ID:YXxvVO9K]
- 最高のストーリーでした。いや、長いこと楽しませていただいてありがとうございます。
上の方たちも仰ってますけど、依澄さんの補完とかもあれば嬉しいなー、とか……
- 542 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/10(月) 14:48:38 ID:MoB08zvs]
- 御要望があったみたいなので少しだけお答えします。
依澄の話はいちおう別にあります。除霊とかバトルとかエロとか。そのうち投下したいです。 が、まだ書き始めていないのでいつになるかはわかりません…できるだけ早く頑張ります。 あと、美春の話もちょっと書こうかなーと思っています。あのロリ生霊をもうちょっと掘り下げてみたいです。 でもエプロン精霊と無口な幼馴染みの話も書きたいので、次どれになるかはわかりません。すみません。
- 543 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/10(月) 15:54:52 ID:llfj8MNh]
- 落ち着け、早まるんじゃない……!!
>>542 どれも逆立ち土下座全裸待機でお待ちしております
- 544 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/10(月) 17:41:11 ID:ud8lvqt9]
- >>かおるさとーさん
保守しつつスクワット全裸で待機しております。 ところで無口保管庫wikiを見る方へ。 現在保管庫に2スレ目収納中です。 自分のやりやすいように作業してるんで、まだSSページ等のリンク貼ってないんですが、 作業終了時にはきちんとリンクさせますんで、気がついた方もしばらく放置して下さい。 作業終了時にはここへきてその旨書き込んでいきます。 よろしくお願いします。
- 545 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/10(月) 17:52:40 ID:CPOHpijR]
- >>544
2スレ目保管、乙ですー。影ながら応援してます。
- 546 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/10(月) 21:25:14 ID:NmOmOLB6]
- >>544
乙です。 自分も一スレ目の一部を登録したのですが、転載しただけでしたのでタイトル記載、SS一覧への掲載等諸々の作業してくださった皆様、ありがとうございます。
- 547 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/10(月) 22:42:28 ID:ud8lvqt9]
- 2スレ目保管終了〜。
結構時間かかりますね、これ。 可能な限りネタは収納しました(つもり)。 1レスだけの非エロのネタでもそこから発展させてもらえればラッキーです。 タグ検索するとページ設定の呼び方の問題で、そのスレ内の順番は前後しちゃいます。 本文以外は後から設定し直せないみたいなので、後の祭りorz すいませんでした…
- 548 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/10(月) 23:26:52 ID:sqYdK+z8]
- >>546
>>547 手伝って頂きありがとうございます、Wiki立ち上げ人です。 タグ検索は機械的な並び替えで、読みを変えても対処はしづらいと思うので、このままで行くしかないかと思います。 一応、ページの読み方そのものは管理者権限で変えることが出来ます。 おっしゃって頂ければ対応しますので、お気軽にどうぞ。 立ち上げるだけ立ち上げて、保管そのものを人任せのような状態にしていてごめんなさい。 誤字脱字の修正等、裏方作業はこちらで受け持ちたいなと思っています。
- 549 名前:547 mailto:sage [2007/12/10(月) 23:40:18 ID:ud8lvqt9]
- >>548
まあ最初に立ち上げる人がいなかったら、こういう風に手伝えることもなかったんで、 それはそれでいいんじゃないでしょうか? このスレが好きで手が空いている奴が保管する、ってことで。 読み方とタグ検索の順番に関連は無いんですね。 それなら変更する必要性はないかなー。 それでは名無しに戻りますノシ
- 550 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/11(火) 07:49:18 ID:sH4O/rNJ]
- 何の因果か夜中に目が覚めちゃったので、3スレ目もついカッとなって収納しはじめてみてしまった。
後悔はしていない。 (嘘です…眠いですorz) 今から仕事に行くんで、作業再開は夜だと思う。 またリンク等は放置しておいてもらえるとありがたいです。
- 551 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/12(水) 00:02:59 ID:gB8Rz48s]
- >>550
乙です
- 552 名前:550 mailto:sage [2007/12/12(水) 04:22:56 ID:4GDKwNDX]
- つんつん。
「ん?」 振り返ると、彼女が首を傾げていた。 (こんな夜遅くまでどうしたの?朝になっちゃうよ?) 「ああ、ちょっとやらなきゃいけないことがあってね。」 彼女は、僕の瞳の奥に何かが存在するかのように見つめてくる。 でも、その視線は決して非難するようなキツいものではなく、木漏れ日のようにやわらかいもので。 (でも明日も仕事でしょ?そんなに大事なことなの?) 「うーん、無口な女の子がいかに魅力的か、って他の人にお知らせしたくてね。ついこんな時間になっちゃったんだよ。」 そう言うと、彼女はそっと、吐いているのかどうかわからないぐらいのささやかなため息を吐く。 (そう言ってくれるのはとっても嬉しい。でもね、そういうのはわかってくれる人がたくさんいなくてもいいものなの。 少し、ううん、一番大事な人一人が知ってくれていれれば。) ちょっと感動してうるうるした僕は、慌ててモニターを見るフリをする。 「まあ、あと少しだから。…俺のことなんかより、――こそ寝なよ。今が大事な時期だもんな。」 そういうと彼女はちょっと誇らしげに、あまり心配しないで、というようにお腹を押し付けてきた。 (この子もパパが心配だって言ってるんじゃない?) 彼女のお腹にそっと触れると、そこはとても元気で。 「…子供は無口になりそうもないね。」 僕は知らない内に止めていた息を大きく吐き出すと、彼女を支えながら、朝までのささやかな休息をとるべく寝室へと向かった。 果たして休むことができたのか、それとも次の日見事なクマを作って会社の人に笑われたかどうか、別のお話。
- 553 名前:550 mailto:sage [2007/12/12(水) 04:29:11 ID:4GDKwNDX]
- …というわけで、3スレ目も収納終了です。
ちょっと書いてみて思ったけど、やっぱり職人さん達はすごいです。 あんな風には書けないorz しかも最後「それは」が抜けたせいでものすごく最後がヘンorzorz >>coobard ◆69/69YEfXIさん トリップなしでページ作成してしまい、申し訳ありませんでした。 これからは気をつけます。 ぜひこれに気を悪くなさらず、作品投下を続けてください。心待ちにしております。 >>wiki管理人さん 誤ページ早速削除してくれてありがとうございました。 今度こそちゃんと休みます…
- 554 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/12(水) 05:46:38 ID:ebvgtSBy]
- >>553
乙にしてGJ!これはいい奥さん。 過去作品見返してみるとちょっと感慨深いな… 小ネタ、短編、長編、リレーと一年半でこんなにも作品が投下されてきたんだな。 これからもスレ住人として繁栄を願い続けるぜ。無言で。
- 555 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/13(木) 00:34:07 ID:kGs8OSkE]
- じゃあ俺は>>554よりも無言で。
- 556 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/13(木) 01:14:53 ID:8EBr+Zqv]
- >>555
……………
- 557 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/13(木) 01:21:14 ID:bGITk9Q6]
-
- 558 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/13(木) 01:51:20 ID:2dOOUXaZ]
-
- 559 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/13(木) 02:02:27 ID:zJfg5HFw]
- >>557-558
お前さん方、無言は良いが(まんまりよくないが)ageないでくれないか……
- 560 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/13(木) 02:08:43 ID:zJfg5HFw]
- >>559
なんだまんまりってorz あんまり なんだぜ……
- 561 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/13(木) 08:24:59 ID:Gr9kd7hz]
- >>560
全く、いつもあんまり喋らないから いざ話すというときに間違えるんだよ、お前は。 まあそれもお前の可愛いところだけどな(なでなで
- 562 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/13(木) 16:01:55 ID:lZ+BlcU7]
-
- 563 名前:560 mailto:sage [2007/12/13(木) 16:11:09 ID:dlL1l1iz]
- >>561
ん……次は……気をつけるね……
- 564 名前:coobar ◆69/69YEfXI mailto:sage [2007/12/13(木) 18:26:16 ID:eCAwg44Z]
- まんまりに萌え!
>>553氏 いえいえ、お気になさらずー。 ゆくうりおやすみくだしあ。 無口な娘の新しいネタが降りて来ればまた、お邪魔します。 >>wiki管理人様 重ねて御礼申し上げます。 ありがとうございました。
- 565 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/14(金) 22:08:41 ID:rV0+LlPa]
- 《まんまり》
湖の底に漂うマリモのように静かに時の流れるに任せる無口な女の子
- 566 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/15(土) 00:28:55 ID:oKtiJgWd]
- <<まんまり>>
生態:放って置いても一人で本を読んだりして平気そうな顔を見せるが、 実は見えないところで寂しくて泣いていることがある。
- 567 名前:560 mailto:sage [2007/12/15(土) 01:25:12 ID:RQ4g3s+O]
- 自分のミスがどんどん一人歩きしてる^^;
もう小ネタ書いても良いよね? >>561さんにも登場願います。答えは聞かないけどw
- 568 名前:560 mailto:sage [2007/12/15(土) 03:23:13 ID:oBUhuLBn]
- 「まんまり、しないで…………あれ……?」
間違えちゃった…… あんまりって言うつもりだったのに……。まんまりって……なんだろう……? うう……恥ずかしい…… 「全く、いつもあんまり喋らないから、いざ話すというときに間違えるんだよ、まりは」 「あ……ごろーくん……」 いつの間にか隣にいたごろーくんは、ぽん、とわたしの頭に手をおいた。 ……本当にいつからいたんだろう……? それよりも……さっきの間違い……、ごろーくんに聞かれてたんだ…… 「うう……聞いてたの……?」 「そりゃもうばっちりと」 顔が赤くなってくのが分かる……やっぱり恥ずかしいよぅ…… 「まあ、それもお前の可愛いところだけどな」 「あ……」 いつものようにニコニコした笑顔で……ごろーくんがわたしの頭をなでてくれる…… 心地よくて……すごくおちつく…… 「ん……次は……気をつけるね……」 少しだけ……顔がゆるんだかも…… 「どした、まり? なんか嬉しそうだけど」 「ん……なでられるの……好きだから……」 「そっか。じゃあもう少し続けるよ」 「うん……ありがと……」 恥ずかしいのがなくなったわけじゃないけど……でも、今はどうでもいいや…… そんなことを気にするよりも……少しだけ伸びた、この至福の時間を堪能したいから……
- 569 名前:560 mailto:sage [2007/12/15(土) 03:24:31 ID:oBUhuLBn]
- 我ながら遅筆(汗
宣言通り、小ネタを作ってみました。ちなみにキャラの名前ですが、 『まり』は『まんまり』が一人歩きしちゃってるので、「そっからもってくりゃいいじゃん」ということで『まり』。 ごろーくんは『561→ご・ろ・一(いち)→ごろー(伸ばし棒に変更)』という安直仕様w キャラに名前がある方が自分的に動かしやすいので、てきとーにつけましたw >>561さんのおかげでネタが出来たも同然なので、無情の感謝をば。 それでは……ROMに……戻ります……
- 570 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/15(土) 08:33:12 ID:uFSU6gcu]
- >>568
gjwww
- 571 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/15(土) 10:21:35 ID:y9R2q/Af]
- ぐっじょぶ!
誤字から生まれる愛もあるとゆーことか…
- 572 名前:561 mailto:sage [2007/12/15(土) 11:43:32 ID:DIO7yDM0]
- まさか自分の何気ないレスがこんな素晴らしいSSに昇華されるとは……
GJです! 和ませてもらいました
- 573 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/15(土) 14:12:58 ID:oaRxB9F1]
- 561=ごろーくんワロスw
GJです
- 574 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/16(日) 09:47:19 ID:Rd+br2jD]
-
- 575 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/17(月) 21:57:24 ID:bHlWrX71]
- 誰も居ないのか、保守ついでに呟く
じうご氏はいなくなったのかなぁ……
- 576 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/18(火) 06:56:04 ID:ElXaIGwu]
- 毎日チェックしてる俺がいる
- 577 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/18(火) 07:44:46 ID:XMwkWAST]
- みんなしてクリスマスネタを準備していると妄想する俺がいる
- 578 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/18(火) 13:25:45 ID:hS6GSnQD]
- >>577
あれ、この時間俺寝てたはずだが
- 579 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/18(火) 13:27:50 ID:cnXM2ulf]
- ドッペルゲンガーは死の前兆だ!注意しろ
- 580 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/18(火) 18:25:04 ID:v9vU0OTg]
- おいおい、怖いこというなよ(ガクブル
- 581 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/18(火) 18:45:46 ID:dCUaPMPb]
- じうご氏・・・帰ってきて・・・・・。
- 582 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/18(火) 18:54:40 ID:U8VNyS9x]
- 10月アタマに立ったスレがもう448KBまで埋まっているんだから
人気マンガ・アニメ関連を除けば相当早いスレ消化だと思うが。
- 583 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/18(火) 19:49:52 ID:HH0j6NMf]
- >>582
リレーで一気に容量使ったからじゃね? あー、でもかおるさとー氏のも結構長かったからな… 長いのは大好きだから問題ないけど
- 584 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/19(水) 02:38:08 ID:8iXoITbl]
- こんな時間ですが
歌がめっちゃ上手いんだけれど極度の上がり症で普段は無口。 で、家族や信頼できる人にならなんとか話せる女の子ってよくわからない妄想した俺 うん。吊ってくるわ……
- 585 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/19(水) 07:47:43 ID:exfE/IbT]
- >>584
しむらー、保管庫保管庫 似たのはあるぞ、確かな
- 586 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage呼び声 [2007/12/19(水) 10:07:31 ID:99QXySB7]
- いつまでも待ってる
- 587 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 00:05:45 ID:b0K4ON/g]
- 勿論考えてるよね?
さもなくば・・・ 「・・・おしおき・・・」 (好きな無口少女タイプで連想せい)
- 588 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 07:28:56 ID:5qCvbWIL]
- >587
ボンテージ着てロウソクもって鞭持ってる超ノリノリの無口な女の子を連想した
- 589 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 15:51:00 ID:+3aFDfiV]
- >>588
ドSで女王様な無口っ娘とな!?
- 590 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 17:25:03 ID:vzso1orw]
- おいおい、ロリってところを忘れちゃならんぞ?
- 591 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 18:32:24 ID:XfVjcLC3]
- >>587
ボンテージ着てロウソク持って顔真っ赤にして恥ずかしがってる無口なロリっ子を連想した。
- 592 名前:前スレ230 [2007/12/21(金) 20:50:37 ID:EkUGdRGT]
- 突然スミマセン。
前スレでお世話になった230改め“ふみお”というものです。 >>577氏の発言に触発され、クリスマスネタのSSを書いています。 しかし、以外にも長引き、容量が増大。 このまま投下したのではこのスレが、480kbを超えてしまいそうです。 ので、このスレに投下したほうがいいのか、それとも別の所にUPすればいいのか、 それとも新スレを待ったほうがいいのか、悩んでいます。 どうか、皆様の意見をお聞かせください。 また、新スレに投下を希望される場合は、スレ立てもお願いして宜しいでしょうか? 甘えた発言であることは重々承知しております。 それでもお許し願えるのであれば、何らかの意見を提示して頂けます様、お願い申し上げます。 なにぶん、ネタがネタなので、もうあまり時間がありません。 速めの意見を、お願い申し上げます。 それでは、失礼いたします。
- 593 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 21:13:12 ID:W3OEtLlO]
- 何気に初レス。
今SS書いてるんだけど、何も喋れないのはこのスレの部類に入る? 例 男「なぁ・・・・・・今日の晩飯は何を作るつもりだ?」 男がそう聞くと、女はポケットからメモ帳を取り出し、何やら書き始めた カキカキ・・・・・・ 『今日も男君が好きなカレーです』 女は文字を書いたメモ帳を男に見せ、微笑む。 「・・・・・・そうか、楽しみだ」 カキカキ・・・・・・ 『楽しみに待ってて下さいね』 「わかったよ」 女はペンとメモ帳をポケットにしまい込むと、再び台所へ向かった。 男はそれを見届けた後、深いため息をついた。 「・・・・・・今日もカレーか。好物でも1週間続くとさすがにキツイぜ」 女の笑顔に断れない男だった・・・・・・ こんなんで筆談するSSなんだけど、スレ違い?
- 594 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 21:43:58 ID:V+CV1rE5]
- >>593
全然全く問題無しだ、カマーン >>592 うーん……とりあえず、投下途中でスレ容量がっ!! ってならない為に新スレ立てて投下したほうがいいと思います
- 595 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 22:41:26 ID:BwASz9RC]
- >>592
スレまたぎはあまりよろしくないので次スレ投下がいいかと。 >>593 過去作品にも筆談はあったし問題なしです。
- 596 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 23:57:00 ID:WvZNHYuH]
- >>592
君が新スレに25日に書き込めるように努力する。 ところで、我々はみな筆談(?)のみなわけだが、無口が多いな。
- 597 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/22(土) 00:14:04 ID:nQP23DO7]
- >>596
……………?
- 598 名前:593 mailto:sage [2007/12/22(土) 00:35:16 ID:r/rth5ms]
- 受け入れ感謝
だがしかし、あまりの遅筆な為に24日までに完成出来なさそうorz サンタなネタなので間に合わなかったら途中まで投下します
- 599 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/22(土) 02:00:12 ID:/X4ERlFb]
- >>596
と言うことは・・・ 住人の中に無口少女が居るという事でありますか 隊長!!
- 600 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/22(土) 19:50:48 ID:nQP23DO7]
- 600を取りつつ
誰か次スレを……携帯からじゃ無理だから
- 601 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/22(土) 23:54:07 ID:yzuiyKa1]
- 残りはまだ452kbなんだけど、次スレ立てた方がいいの?
よければ自分が立てましょうか?
- 602 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 00:00:23 ID:WVfM/SgA]
- >>601
>>592が容量厳しいって言ってるからね。 でも今すぐじゃなくて24日になってからでもいいと思う。
- 603 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 00:09:08 ID:fI1tIMXe]
- >>602
おお!早い、ありがとう。 わかりました、24日に誰もスレ立てしてないようなら立てます。 「待て待て!直ぐに立てろ!」っていう意見があれば遠慮せず言ってください。
- 604 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 01:37:44 ID:zPOCe6eA]
- ・・・次スレの1のテンプレを作ってみた
<<スレタイ>>無口な女の子とやっちゃうエロSS 4回目 無口な女の子をみんなで愛でるスレです。 前スレ 無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1191228499/ 前々スレ 無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1179104634/ 初代スレ 【隅っこ】無口な女の子とやっちゃうエロSS【眼鏡】 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1155106415/ 保管庫 ttp://wiki.livedoor.jp/n18_168/d/FrontPage ・・・次スレは480KBを超えた時点で・・・立ててくれると嬉しい・・・
- 605 名前:604 mailto:sage [2007/12/23(日) 02:25:36 ID:zPOCe6eA]
- あと追加の一言
・・・前スレは無理に・・・消化して欲しく無い・・・かも・・・ ・・・ギリギリまでdat落ち・・・して欲しく・・・無い・・・から・・・
- 606 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 09:11:09 ID:BOWfsvX+]
- >>604
テンプレ乙です。 あと提案なんだが、カウントの所は『四言目』とかどうだろう? 無口少女がスレが一つ進む毎に一言話してくれる、みたいな感じで良いと思うんだが
- 607 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 09:21:16 ID:Zmz8F+pV]
- >>606
そ れ だ !
- 608 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/23(日) 15:42:59 ID:kTGd0ipg]
- >>606
天才
- 609 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 17:27:58 ID:+soWAz8J]
- 初犬っていう、思いっきりエロアニメが良かったよ。
なんだろう?凄く心癒された。
- 610 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 21:50:06 ID:eOgUCRfG]
- >>609
あれは良いものだ…… 漫画もオススメ。
- 611 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 23:31:55 ID:Zb6d1I5F]
- さっそく注文してくr
- 612 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/24(月) 01:20:24 ID:VsxIKoKB]
- ・・・あ、あの・・・これ(どうぞ)
無口な女の子とやっちゃうエロSS 四言目 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1198426697/
- 613 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/24(月) 09:19:22 ID:8BLUmzFv]
- 新スレ立て乙
どうでもいいが新スレ 無口少女多くなってるw
- 614 名前:前スレ230 [2007/12/24(月) 17:43:55 ID:RbwXe+ee]
- 新スレ立て、お疲れ様です。
ありがたくSS投下に使わせていただきます。 現在、作品でお返しできるよう、ラストスパート中です。 なんとか明日には完成できそうですが……。 とりあえず、シングルベルで頑張ります。
- 615 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/25(火) 09:16:56 ID:gvwWZYlL]
- なんだかんだ言ってこっちも50以上残り容量が。どうしてくれようか。
- 616 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/25(火) 12:06:09 ID:l0cvKkgj]
- >>615
みんなで妄想ネタ連続カキコ きっとそれで埋まるさ
- 617 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/25(火) 20:14:46 ID:zgb+l/W4]
- なら、筆談ツンデレとかどうよ?
筆はツンツン、行動デレデレ。
- 618 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/25(火) 21:52:30 ID:23uifc1m]
- 無口娘に目隠しをして
筆でツンツンして デレーンとさせるプレイ?
- 619 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/25(火) 23:41:39 ID:eHY9gAwu]
- >>618
うまい棒吹いたw 「・・・はぁ・・・ふぁ・・・」 こいつ普段無口なんだが、感じている時は結構饒舌なんだよな。 顔やあえぐ声なんかはほんとエロいし。 ツンツン 「あふっ・・・だ、だめ」 スルスル 「ひっ!・・・も、もう・・・・・・い、いゃあ」 ん?何をしてるかだと?新年の書き初めに備えて筆を引っ張り出したはいいが、こいつが遊びに来たのでつい成り行きで筆プレイをする羽目になってしまったのだ。 細かい点は突っ込んでくれるな。ただ「いつもと変わったことがしたいな〜」という邪気のある青少年の願望によるものだ。
- 620 名前:618 mailto:sage [2007/12/25(火) 23:45:21 ID:eHY9gAwu]
- 下半身に目をやるとはっきり濡れているのが解る。毛の薄い筋目にそろそろと筆を這わす。
ビクッ 声をあげる余裕もなくなったのか、無言で体を震わせる。だが俺にとってはどんな言葉よりもはっきり伝わってくる。 筆を進める度に奥深くから催促の印が染みだしてくる。頃合いを見計らって、一番感じるこりこりした宝石を突っついてやる。 ビクビクビクッ 体を痙攣させて答えてくれた。俺の拙い愛撫で心底感じてくれる、こいつが愛しい。 ん?なんだ? 「・・・来て・・・」 流石に俺もこれ以上は語れない。こいつの乱れ振りを知るのは俺だけなのだから。
- 621 名前:619 mailto:sage [2007/12/25(火) 23:51:21 ID:eHY9gAwu]
- スレ汚しすまん。
ちなみに>>620は618でなく619だな・・・ 罰として筆責めにあってくるorz 素敵な電波を送ってくれた>>618ありがとう。無口少女の幸あれ。
- 622 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/26(水) 12:11:57 ID:P0eygeca]
- >>333は一体どうなったんだろ?
- 623 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/26(水) 15:18:15 ID:GNUDivcU]
- ここもほす
- 624 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/26(水) 16:03:56 ID:DHO5NH7M]
- ほす
- 625 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/26(水) 20:34:59 ID:aOo2sxg5]
- 普段は話すの苦手なの…
でも…今は言わなきゃ。 「保守age」
- 626 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/12/27(木) 03:05:05 ID:NhJAfbkX]
- ここ…も…保守…
…頑張る
- 627 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/29(土) 05:13:09 ID:H2twO6Oy]
- 上げ
- 628 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 16:18:44 ID:7UKH4OAe]
- 保守しなきゃちょうどよかったのにw
つか、埋めてくれみんな。
- 629 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 17:37:56 ID:xj9zRz99]
- 産め
- 630 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 18:30:55 ID:PgPpHOmh]
- >>628
あと330も埋めろと? やはりここは小ネタ連射もしくは保守しないで落とすかだ
- 631 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 19:45:24 ID:dycgK3yR]
- 容量が500kb超えても落ちるから、必ずしもレス数で稼ぐ必要はないんだ。
- 632 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 19:56:54 ID:ArblW7Km]
- >>631
でもあと40kbぐらいあるぞ。 小ネタとか書いてくれる人とか居なかった結構きつくないか? どうしようも無い時はAA使うか?
- 633 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 20:19:22 ID:jhuCju7Y]
- >>632
一本投下してみたいと思いますので、今年いっぱい待ってもらえますか? 落とし損ねたクリスマスネタを書いてます 新年すぎても投下なしだったら埋めていただいてかまいませんので
- 634 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 21:40:41 ID:en5m7HUq]
- >>633
は〜い
- 635 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 22:43:14 ID:xj9zRz99]
- 「俺の子供を産んでくれないか」
プロポーズのつもりで彼女の手を握り、瞳を見つめた。 あまりに唐突だったせいか、彼女の動揺は手に取るように明らかだった。 幼い頃からいつも一緒だった。家が隣で同い年だった俺たちは兄妹と間違われるほど一緒にいた。 口数の少ない彼女は 時に残酷な子供たちの標的になった。 泣きじゃくる彼女を背に、年上の大きな少年を相手に大立ち回りを演じたこともあった。 幼稚園、小学校。俺の隣か後ろに必ず彼女がいた。 気の合う同性の友人にも恵まれたはずなのに、彼女が俺から離れることは無かった。 中学の頃も、それは変わらなかった。 幼馴染を女の子と意識する年頃になった俺が、彼女を遠ざけるようなことをした時期もあったが 言葉無く俺を見つめる その眼差しから逃れられるものではなかった。 俺は彼女のことが好きだった。 高校進学の時には進学先のことで両家の家族を巻き込んだ騒動があった。 唇を噛んだ彼女が俺の服の裾を掴んで離さない姿を見た両家の親が深いため息をついて折れた事件は 俺と彼女の秘めていた恋心が明らかになった瞬間だった。 高校と大学生活を送った7年間は2人にとって試練の連続だった。 お互いの心が見えなくなったこともあった。 信じられなくなったこともあった。 俺にも彼女にも様々な誘惑があった。 仕事を始めてからも擦れ違いは よく起こった。 喧嘩して部屋を飛び出して公園でタバコを吸いながら子供たちが遊ぶ姿を眺めて かつての俺と彼女のことを思い出す。 体が大きくなり。それまで見えていたものが見えなくなり。暮らしが変わり、住む場所も変わり。 考え方やモノの見かたも変わった。 それでも、過去に見えていたものを忘れたわけでは無かった。 目を閉じれば、俺の背中にすがる彼女の泣き顔が浮かぶ。 俺を探す不安に満ちた眼差しが浮かぶ。 俺は……俺にしか見せない彼女の笑顔を守りたくて……彼女の笑った顔が大好きで…… どんなときでも、そのことを思い出すと気持ちが落ち着いた。 部屋への帰り道。 少し遠回りして駅前のケーキ屋に寄る。 彼女の好きなナポレオン・パイを2人分買って部屋に急ぐ。 部屋では彼女が俺のお気に入りの豆を挽いてコーヒーを淹れてくれていた。 お互い、相手のご機嫌を伺うことも達者になった。 20数年間、いつも一緒だった。これから数十年先も変わらないだろう。 だから俺は覚悟を決めてプロポーズした。 俺の言葉を理解した彼女の瞳から大粒の涙がこぼれた。 俺の胸に飛び込んでくる彼女の体を抱きしめる。 ここから先、俺たちに言葉は必要無かった。 キスをしながらセーターを脱がせ、背中のホックを外すと形の良い胸がこぼれてくる。 大きくは無いが先端を咥えると切ない声が―― 省略されま(ry
- 636 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 23:29:42 ID:/8AqeZWu]
- >>635
あっ、こんな所にいやがったか! おい、さっさと執筆の作業に戻れ!!
- 637 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/29(土) 23:41:39 ID:6yfRr6+T]
- >>635
> 大きくは無いが先端を咥えると切ない声が―― まで読んだ。 続きマダーーーー?
- 638 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 01:40:40 ID:L8HRU77b]
- >>635
「・・・まだ・・・?」 中途半端は無口少女も怒るでよ。 では質問。無口少女が主人公(朴念仁)に愛の告白をする時の理想の一言(or行動)とは?
- 639 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 02:06:42 ID:NcOzScRt]
- >>638
「私を……お嫁に……して……」
- 640 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 09:19:41 ID:yOxEPRvc]
- 逆レ一択
- 641 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 14:06:27 ID:mtTkebHC]
- >>638
男の部屋で二人っきりのときにベッドに並んで腰掛け、 世間話の途中で急に男の手の上に自分のを重ねて上目遣いで一言、 「……しよ?」
- 642 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 14:18:45 ID:7rbtdTcE]
- >>638
無言で背中に抱きつき、耳元でそっと、顔を真っ赤にしながら 「…………………好き」
- 643 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 16:26:36 ID:EBLXaUm9]
- >>638
裸で後ろから抱きつくとか 目の前で服を脱いで抱きつくとか 寝ている布団に裸で忍び込むとか 無口なだけに突然、突飛な行動に走りやすかったりして
- 644 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 17:39:47 ID:hPZBzX6/]
- 目が覚めた。
どうやらいつの間にか眠っていたらしい。 「・・・・・・・・・おはよう」 聞きなれたか細い声がした。そちらへ目を向けると、 春の優しい日差しに照らされた見慣れた彼女の顔と、真っ青な空。 そこで男は自分が膝枕をされている事に気が付いた。 「・・・・・・おはよう」 恥かしくなって起き上がろうとしたが、彼女の手が男の頭を 幸せそうに撫でているので起き上がる事が出来ない。 しばらく彼女の好きなままにしていると、ボソリと呟く。 「・・・・・・時間・・・・・・止まればいいのに・・・・・・」 「・・・・・・そーだな」 彼女の顔が近づく。男は彼女を受け入れ、唇が重なった。 そんな春の一時。 季節感豚切りスマソ
- 645 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:01:52 ID:krJDweVi]
- 『後輩サンタとクリスマスと』
緑野純一(みどりのじゅんいち)がその娘に初めて出会ったのは一年前のことである。 イブの夜、彼女もいない彼はバイト帰りの道を寂しく歩いていた。 空には紅い満月が昇っていて、なんとはなしにそれを眺めていた。 そのとき、視界に妙なものが入ってきた。 それは、民家の屋根を次から次へと跳び移っていく人影だった。 始めはいまいち認識できていなかったが、それに気付くと純一はあまりの出来事に固まってしまった。 アニメの忍者じゃあるまいに、そんな芸当のできる人間がいるわけがないと思ってしまったこともある。 するとその人影が、こちらにだんだんと近付いてきた。 人影はあっという間に頭上の電線に辿り着いた。やがて呆然となる純一の目の前に音もなく降り立つ。 随分可愛らしいサンタだと思った。 人影は小さな女の子だった。サンタの格好をして、手にはなぜか大きな紙袋を抱えていた。 女の子のサンタコスならミニスカであってほしいところだが、つなぎだった。露出度の低い暖かそうな服。 「…………」 彼は突然の遭遇に声も出なかった。 少女は無言で紙袋に右手を突っ込み、何かを取り出す。 そして、それをこちらに差し出してきた。 「……?」 見ると、それは店でケーキやなんかを入れるための、小さな紙箱だった。 純一はしばらくそれを見つめていたが、念押しするようにさらに突き出してくる様子に押されておずおずと受け取った。 少女はそれを確認するとにこりと微笑んだ。 純一は思わずドキッとした。 少女は背を向けるとそのまま道を駆けて行った。走るというよりはふわふわ浮くような、そんな軽やかさだった。 家に帰って箱を開けてみると、いちごのショートケーキが入っていた。 手作りらしきそれは、程よい甘さで美味だった。 半年後、純一はその少女と再会した。 時間潰しに行った学校の図書室で、静かに読書しているのを見掛けたのだ。 校章の色から一年生であることがわかったが、はたと困ってしまった。半年前のことをどうやって訊けばいいのかわからなかったのだ。 元々そんなに女子と親しくしているわけじゃないので、どう切り出せばいいのかもよくわからない。ひょっとしたら自分のことなど忘れているかもしれない。 どう話しかけようか迷っていると、少女は立ち上がって奥の本棚へと向かっていった。 純一はそろそろとあとをついていったが、そのままだったら間違いなく不審者扱いされていたに違いない。 だが幸いなことに、直後に起きた出来事によってそうはならなかった。いや、幸いではなかったが。 突然、目の前の風景が揺れた。 眩暈ではなかった。次の瞬間、大きな震動が世界を揺さぶった。 悲鳴が図書館に響いた。唐突に起きた大きな地震に、誰もが混乱した。 純一自身そうなりそうな状態で前を見ると、例の少女は大きな本棚と本棚の間で座り込んでしまっていた。 分厚い専門書ばかり並んでいる区画だった。純一は思わず少女に向かって駆け出していた。 少女に覆い被さるように跳び込んだ瞬間、背中にハードカバーの本が無数に降ってきた。 鈍い衝撃が背中を、脚を、時折頭を打つ中、純一は不思議と少女の身だけを案じていた。 やがて揺れが収まると、慌てて下の少女に無事かどうか確認する。 「だ、大丈夫か?」 「……は、はい」 何が起こったのかわかってない様子で、きょとんと見上げてくる少女。 その距離はあまりにも近く、半年前と同じように胸がときめいてしまった。 少女はゆっくり下から這い出ると、不安気な声で囁いた。 「あの……大丈夫……ですか?」 「……何が?」 「……本、たくさん落ちてきました」 言われて、ようやく純一は身体中の痛みを自覚した。
- 646 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:04:46 ID:krJDweVi]
- 本の角が背中や腰、太股やふくらはぎを突き刺すように打ったので、妙に痛みが深い。
少女が無事で安心したためだろうか、一気に痛みが激しくなった。顔を歪めて悶絶する純一に少女が慌てた声を出す。 「あ、あの、保健室に」 少女が肩を貸してくる。 少し気恥ずかしかったが、余裕のない純一は素直にその肩に手を回した。 間近で感じた彼女の匂いは、微かに甘かった。 その日以来、純一はその娘――後羽由芽(あとばゆめ)とよく話すようになった。 彼女は純一に負い目を感じるのか(打撲ばかりでたいしたことはなかったのだが)いつも口数少なくおとなしかった。 それでも純一は気にしなかった。おとなしい娘の方がタイプだったし、彼女は言葉少なくても、気配りのできる優しい娘だったからだ。 だが、あのイブの夜のことだけはどうしても訊けなかった。 ◇ ◇ ◇ 「クリスマス?」 昼休みの食堂内、橋本風見(はしもとかざみ)は弁当をつつく箸を止めて顔を上げた。 対面の席に座っている幼馴染みの甘利紗枝(あまりさえ)は、ん、と頷き、温かいお茶を静かに飲む。 風見は微かに胸が高鳴るのを自覚しながら、紗枝に笑いかけた。 「今年もまたお互い相手なしか……」 二週間後に迫ったクリスマスイブだが、生まれてこの方一度も彼女と過ごしたことがない。というか、彼女がいたことがない。 だが、それを寂しいと感じたことはなかった。 「……」 紗枝は目を細めて風見を睨む。 「怒るなよ。ちゃんとプレゼント用意するし、また一緒に家でケーキ食べよう」 「……」 紗枝の顔が無表情に戻る。わかりやすい反応だ。 こんな風にわかりやすい反応を見せるのは珍しいと思う。それほどイブに執心なのか。 ちょっとだけ、風見は嬉しくなった。 「紗枝も用意してくれる? プレゼント」 頷く紗枝。 「楽しみだな。去年はセーターだったよね」 「……」 「わかってるよ。当日まで中身は内緒だろ」 「……」 寂しいなんて思うわけがない。 一番大切な幼馴染みが今年も一緒にいてくれるのだから。 「で、そのために今日もバイトか」 バイトの帰り道、風見がイブの約束のことを話すと、同級生でバイト仲間の緑野純一はねめるようにこちらを見つめた。 「付き合ってるわけじゃないんだよな、甘利とは」 「うん」 「なのにプレゼントは毎年贈っている、と」 「誕生日もね」 「……」 純一は小さく唸る。
- 647 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:07:11 ID:krJDweVi]
- 「それはどういう関係なんだ?」
「だから幼馴染みだって」 「いや、俺にも幼馴染みくらいいるけど、そんなこと一度だってやったことないぞ。まあ、そんな親しくもないからだろうけど」 「……」 風見は口を閉ざした。 「あー、気にするなよ? 別に変って言ってるわけじゃないんだ。ただ、羨ましいなって」 「?」 「いいイブになりそうじゃねえか。俺はなんにもない」 「ミドリは彼女とかいないの?」 「てめえ、ちゃんと聞いとけよ。なんにもないってことはなんにもないってことなんだよ」 「……ごめん」 「謝るな! さらに腹立つわ」 純一はがなったが、別に怒った様子でもなかった。「まあ、楽しめよ。いつだって仲のいい相手がいるってのはいいことだと思うからよ」 緑野純一とはこういう奴なのだ。言葉や行動は一見乱暴だが、誠実で真摯だ。 だからその言葉も茶化しは一切なかった。 「ありがとう」 風見は素直に礼を言った。純一はああ、と軽く頷く。 小さく息を吐くと、白い湯気が目の前の空間を満たし、すぐに消える。 イブには雪が降るかもしれないという。それはとても綺麗だが、大変そうでもあった。 「なあ、変なこと訊いていいか」 不意に純一が言った。頷いて寄越すと、ややためらうような素振りを見せた。 「何?」 「あ、いや……お前、サンタって信じる?」 「どのサンタ?」 「どのって、」 「公認サンタは実際にいるから、信じるも信じないもない。けど、トナカイの引くソリに乗って空を飛ぶサンタとなると、信じないかな」 「公認サンタ?」 「いるんだよそういうのが。で、なんでそんな質問を?」 「いや……」 純一はまた言い淀む。 「いいから言ってみなよ」 風見が促すと彼は一つ頷き、言った。 「……知り合いの女の子がサンタだったら、お前どうする?」 「……は?」 純一が言うには、去年のイブの夜にサンタに会ったらしい。 そのサンタは小さな女の子で、しかも学校の後輩だったという。 ソリもトナカイも持たないサンタは、屋根から屋根へと跳び移って民家を回っていたそうだ。 眉唾ものだと思ったが、純一が嘘をつくとも思えない。 そのことを冴恵(さえ)に話すと、彼女は思い出したように言った。 「それって、クリスちゃんですよ」 ひょんなことから風見に仕えることになったエプロン精霊は、懐かしそうに目を細めた。 「……クリスちゃん?」 クリスチャンでもクリス・チャン・リーでもなさそうなので訊いてみる。 「はい、『クリスマス』って名前の精霊だったと思います。昔、前のご主人様にお仕えしていたときに会ったことがあります」 「……精霊?」 「私がエプロンについてるのと同じで、確かその子はサンタ服についているんですよ。で、クリスマスになるといろんな人たちにケーキを配るんです」 「……」 「無口な子でした。けど、とてもいい子でしたよ。ケーキ美味しかったですし」 「……じゃあ、その女の子も?」 「心当たりがそれしかないのではっきりとは言えませんけど、おそらく」 「……」 風見は頭をかいた。まさかこのエプロンメイドと似たような存在が他にもいたとは。 とはいえ、それを純一にそのまま伝えるかどうかは悩みどころである。いくらなんでも信じてはもらえないだろう。
- 648 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:10:05 ID:krJDweVi]
- 「……」
風見はキッチンに立つ冴恵の姿を見やる。エプロン精霊は鼻唄と共に、皿洗いにいそしんでいる。 その姿はどこからどう見ても、幼馴染みの甘利紗枝のものだった。 今でも時折疑って見てしまう。これは紗枝の演技なのではないかと。 エプロンを介して紗枝の体に乗り移っているのだと冴恵は言う。だが『冴恵』などという人格は最初から存在せず、甘利紗枝は甘利紗枝でしかないのではないか。そんな疑念はいつまでも晴れない。 「……」 風見はソファーに寝転がり、ゆっくりと目を閉じた。 エプロンメイドもコスプレサンタも別に誰かに迷惑をかけているわけじゃない。演技かどうかもひょっとしたら些細なことなのかもしれない。 世の中にちょっとだけ混じる不思議な味。 (ま、害はないしね) そんなスパイスがあっても構わないだろう。風見にとって、冴恵も日常の大切なピースの一つだから。 「風見さま? そんなところではなく、きちんとベッドでお休み下さい。イブの前に体調を崩されては、紗枝さんも残念がります」 風見は目を開けて体を起こした。覗き込んでくる冴恵を複雑な気持ちで見やる。その姿でそんな心配されても。 「……そうだね。きちんと部屋で寝るよ」 「歯磨きもお忘れなく」 小学生かと風見は苦笑した。 ◇ ◇ ◇ クリスマスイブまであと十日。 その日の放課後、純一は由芽に会うために、下駄箱前で彼女が来るのを待っていた。 しばらくして、由芽が姿を現した。後ろには友達もいる。 「あ……」 由芽がこちらに気付いて、小さな声を漏らした。この少女は純一を見るといつもこんな申し訳なさそうな顔をする。 「ん? どしたの」 後ろの友達が由芽に尋ねる。こちらを一瞬胡散臭そうに見たのは気のせいだろうか。 「ううん……なんでもない。こんにちは、緑野先輩」 「ああ、後羽」 二人が挨拶を交わすと、その友達が怪訝な顔で由芽を凝視した。 「この人、由芽の何?」 「え? ……あの、地震のときに私を助けてくれて、その、」 「半年前の?」 「う、うん」 すると今度は純一の顔をじー、と見つめてくる。 「な、何?」 「……なるほど」 友達は合点がいったのか、うんうんと頷いた。 「由芽、あんた男の趣味悪くないと思うな。私の趣味とは違うけど」 「い、糸乃(いとの)」 声を上げる由芽に糸乃と呼ばれた友達はからからと笑った。 「んじゃ私、先帰るね」 「え、ちょ、」 「先輩と仲良く頑張れー」 友達は謎のエールを残してそのまま足早に去っていった。 「……もうっ」 困ったように頬を膨らませる由芽。その様子が純一には新鮮だった。 「楽しい友達だな」 「ご、ごめんなさい。糸乃が失礼なことばかり言って」 「いや、いいよ。それより、その、一緒に帰っていいか?」 由芽はそれを聞いて目をぱちくりとさせた。 「は、はい、もちろん」 知り合って半年。初めてのことに少々戸惑っているようだった。 由芽がスリッパから外靴に履き替えるのを待って、純一は彼女の隣に並ぶ。
- 649 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:11:42 ID:krJDweVi]
- 「……」
純一は小柄な後輩を眺めやり、それから思案した。 彼女は去年『あんなこと』をしていたが、今年はどうなのだろう。 もし今年もサンタの真似事をするなら、イブに暇などないだろう。 イブの日にデートやなんかの約束を申し出ても断られるかもしれない。 「……」 不安が胸を覆う。 いや、駄目元で言ってみるのもアリだ。言うだけならタダだし、たとえ断られても由芽はその程度で壁を作る娘じゃない。……多分。 純一は意を決すると、校門を出たところで由芽に向き直った。 「あ、後羽」 「……え? ……あ、は、はい」 考え事をしていたのか、由芽はどこかぼんやりしていた。 純一は言った。 「イブの日、暇あるかな?」 「え?」 「その、時間あったら、俺に付き合ってほしいんだけど……」 「……」 由芽は目をしばたく。 「あ……どうかな」 「……イブは……ダメです」 「……やっぱダメ?」 急すぎたか、それとも今年も『する』のか。疑念が膨らむ。 「彼氏と約束とかあるのか?」 「そ、そんなのいませんっ」 大きな声で否定する由芽。我に返ったのか、途端に縮こまる。 「そんなの……いませんよ」 呟く様子はどこか寂しそうだ。 やっぱり言わない方がよかったか、と純一は少し後悔した。 「悪い。急に変なこと言ってごめんな」 「……ち、違います……先輩は別に……」 互いに言って、互いに黙り込む。 「……」 「……」 二人は黙りこくったまま歩く。 微妙な空気を作ってしまったことに、純一はいっそう後悔を深める。 元々おとなしい娘だからあまり会話がないのは仕方ないかもしれない。しかし今の気まずい空気は純一のせいなので、どうにも心苦しかった。 そのとき、由芽がぽつりと呟いた。 「クリスマスなら……」 「え?」 「イブじゃなくてクリスマスなら……空いてます、時間」 その申し出に、純一は一瞬呆けた。 「あの、先輩?」 「あ、いや、……空いてる?」 「はい、クリスマスなら」 「じゃあその日に」 よかった、と純一はほっとした。同時に内心でガッツポーズを決める。 「あの、これって……デートのお誘い……ですよね」 「あ、ああ、うん」 由芽はそれを聞くと顔を伏せた。まるで顔を見られたくないような素振りだった。 やがておもむろに顔を上げると、柔らかく微笑んで言った。 「楽しみに……待ってます」 純一はその笑顔に思わず固まりそうになり、反射的に顔をそらした。気恥ずかしさの熱に、髪の毛の先まで真っ赤になってしまいそうだった。 そこで考える。クリスマスなのだからプレゼントが必要だ。女の子に贈るプレゼントはどういうものがいいのか。 横でにこやかに微笑む彼女を見ていると、いいかげんには考えられなかった。
- 650 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:14:33 ID:krJDweVi]
- クリスマスイブ。
純一は風見とともに夕方の街に来ていた。 目的は風見のアドバイスを受けてのプレゼント購入だ。毎年幼馴染みの女の子にプレゼントを買っているという風見なら、そのあたりの具合というか案配がわかりそうに思った。 「けど……」 純一は周囲を見回す。クリスマス色に彩られた街中には当然ながらカップルが多く、居心地が悪かった。 「なんでわざわざイブを選んだ」 「ぼくもプレゼント買わないといけないんだよ」 「甘利との約束は今日だろ。当日に買ってんのかいつも」 「高いんだよ服は」 「はあ?」 風見が言うには目当てのコートが五万円くらいするらしく、直前までバイトをしていたという。そういえば待ち合わせ場所はバイト先に近いコンビニだった。 「さっきまでやってたのか、バイト」 「ミドリがいない分、いつもより受け持つ量多かったんだぞ」 「悪い、イブとクリスマスは空けるつもりだった」 「まあ終わったからいいけど。お金もちゃんともらえたしね。無理言って手取りにしてもらったよ」 二人はとりあえず洋服店に向かう。 コートを買うと言っていたが、服に無頓着な純一には五万円など考えられない金額だった。それとも、それくらいが当たり前なのか。 「なあ、女の子って何をあげれば喜ぶんだ?」 風見は首を傾げた。 「さあ?」 「さあ……って、お前だけが頼りなんだぞ」 風見は軽く頭をかいた。 「人それぞれだよ。人によってはガラクタでもいいかもしれないし、どんなに高価なものでも満足しないかもしれない」 「じゃあどうするんだよ」 「ぼくはその人に合いそうなものを選んでる。今回はたまたま見掛けたコート。白いのが似合うと思ったんだ」 「……」 なんだかあまりアドバイスになってないような気がする。若干ノロけが入ってないか。 「うーん、そうだな……あえて言うなら実用的なものの方がいいかな?」 「実用的?」 「服とか靴とかバッグだよ。時計やマグカップなんかもいいかも。そういう身近で役立つものの方が喜ばれるかもね」 「へえ」 「高すぎると相手に気を遣わせてしまうかもしれないから、値段も多少考慮した方がいいかな。宝石とかは避けた方が無難」 「なるほど」 純一は感心して頷いた。急に役立つアドバイスを聞かされたような。 「手袋とかマフラーは?」 「それもアリだと思うよ。ベタだけど大きなハズレにはなりにくいし」 手持ちの金は二万円。高価なものは無理だが、それなりのものは買える。 いろいろ思案していると、いつの間にか目当てのブティックに辿り着いていた。表通りから少し外れた場所だった。 店内に入ると、若い女性客ばかりで賑わっていた。居心地の悪さがさらに高まる。 風見が奥の店員と話をする間、控え目ながら店内を見て回る。ここでプレゼントが見つかるなら手間もかからないのだが。 由芽はあまりアクセサリーを身に付けたりするタイプではなさそうなので、セーターやコートといった衣服を中心に探してみる。 ミンクのコート、十七万八千円。 ……………………。 見なかったことにする。レジカウンター近くのセーターに目を向けてみる。 ホワイトカシミアのセーター、二万五千円。 無理だ。買えない。 よく見るとそれなりにリーズナブルな値段の服もけっこうあったが、純一はいまいちピンとこなかった。 (後羽に合いそうなもの……ね) しばらく店内をぶらついたが、結局何も選ばなかった。 風見のところに戻ると、大きな袋を手に提げている。どうやら買えたようだ。 「何かいいもの見つかった?」 「いや」 「じゃあ他のところも行ってみようか。服だけじゃなく、小物屋とかも」 風見は目当てのものを買えたためか、どことなく嬉しそうだ。 店を出て、表通りに戻る途中で純一は尋ねてみた。 「嬉しそうだな」 「そりゃ、お金貯めてお目当てのものがようやく買えたんだから、嬉しいに決まってるよ」 「お前のじゃないんだぞ」 「プレゼントでもなんでも、嬉しいことに変わりはないよ」 簡単に言ってのける友人を、純一は呆れたように見つめた。
- 651 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:17:07 ID:krJDweVi]
- おそらくこいつは相手のことをよくわかっていて、自分みたいに思い悩んではいないのだろう。純一は由芽のことを考えても、はっきり自信を持って捉えることができない。
もちろんまったく思い悩んでいないわけではないだろうが、相互理解の深度が違いすぎるように思えた。 (俺ってホントダメだな……) 空を見ると薄暗い雲が全体を覆い始めていた。 それから二人は何軒かの店舗を回った。 別の洋服屋はもちろん、マスコットグッズ店やアクセサリー店も一応回ったが、純一はなかなかプレゼントを選べなかった。なんというか、どれも同じに見えてしまうのだ。 何を買えばいいのか迷いに迷った。もう適当に決めてしまおうかとも考えたが、そういうわけにもいかず、時間だけが無駄に過ぎていった。 もう一度考え直す。果たして由芽に合うプレゼントとはなんなのだろうか。 純一は熟考する。自分の中での由芽の印象とはなんだろう。 一つしかなかった。一年前のサンタ姿。 あのとき小さな手でケーキの箱を差し出してきて、その後に浮かべた笑顔はとても魅力的だった。 (小さな手だったな……素手だった) きっかけは単純だった。イメージがプレゼントの中身を一気に固めていく。 「よし、決めた」 「え?」 いいかげん疲れていたのだろう、風見が気のない声を漏らした。 純一は悪い、と一言謝り、最初のブティックに戻ることを告げた。 プレゼントをようやく購入して、待ち合わせ場所のコンビニに戻ってきたときには、日はすっかり落ちていた。 ちらほらと雪が降る中時刻を確認する。午後8時だった。 「悪かったな、遅くまで付き合わせてしまって」 「いいよ、紗枝にはメールしたし。それより、うまく渡せるといいね」 「頑張るよ。不安はあるけどな」 果たしてこれでよかったのだろうか。純一は手元の袋を自信なく眺める。 コンビニ前のバス停には何人かの人間がいたが、混んではいなかった。ただ、これから来るバスの中は満杯だろう。雪も降ってきたし、ダイヤに乱れが生じるかもしれない。 純一は白い息を虚空に向けて吐き出した。粉雪と湯気が入り混じるように合わさり、消える。 その虚空の先に、何かが見えた。 (!?) 道路を挟んで向かいの民家の屋根。そこで小さな人影が動いていた。 音もなく歩道に降り立つ。その姿はやはりサンタの格好だった。 気配を消すようにあまりにさりげない動きだったが、格好が格好なのでさすがに目立つ。純一以外の人間も少女サンタに気付いたようだった。 サンタはそ知らぬ様子でそのまま歩道を歩いていく。 純一は居ても立ってもいられなくなり、風見に一言、 「俺、用ができた」 と耳打ちするや、全速力で駆け出した。 「え? ちょっと、ミドリ?」 「早く甘利のところに行ってやれー!」 大声でそれだけ叫び残すと、純一はもう振り返らず、少女の後を追った。 少女の後を追っていくと、次第に中心街から離れて住宅街の方へと入っていった。 少女の足取りは決して速くなかったが、なんというか闇に紛れるような気配の希薄さが追跡を妨げるようで、純一はついていくのが精一杯だった。 ふと気付くと、住宅街の真ん中で純一は少女を完全に見失っていた。 (くそ、どこだ) 周りの小道だけではなく、屋根や電柱の上にも目を向ける。夜闇の中ではろくに探すこともできず、途方に暮れかけた。 そのとき、 「……誰?」 と、聞き覚えのある声がした。 聞き覚えどころではない声に純一は振り返る。 そこに、いた。 野暮ったいサンタ服姿の少女が、常夜灯の下に影を落としていた。 その顔はやはり見知った後輩のもので、一年前の光景と重なるようだった。
- 652 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:18:55 ID:krJDweVi]
- 純一は彼女の名前を呼んだ。
「後羽!」 少女は首を傾げた。 「……?」 その表情は後羽由芽のものには見えなかった。感情が奥底に隠されているようで、由芽らしくない無表情だった。 その様子を怪訝に思い、純一は再び叫ぶ。 「後羽!」 少女が傾げた首を元に戻し、近付いてきた。 「……由芽の……知り合い?」 意表を突く問い掛けに、純一は眉を寄せる。 「何、言ってる……。後羽はお前だろ」 「……」 少女は静かに首を振った。 何の冗談だ、と純一は訝しんだが、一つ思い付いて言った。 「姉妹とかか? 双子とか」 「……」 少女は答えず、背中を向けた。そのまま足音もなく歩き出す。 「おい」 「ついてくれば……話す……」 呟くように放たれた言葉に、純一は黙り込んだ。 意を決して歩き出すと、少女が振り返って答えた。 「クリス」 「……は?」 「私の名前。……本名はクリスマスだけど……私を知る人は……みんなそう呼ぶ」 ぼそぼそと囁く声は若干聞き取りづらいが、純一は頷いた。 「クリス、か。俺は緑野純一。呼び方は好きに呼んでくれ」 するとクリスと名乗った少女はにこりと微笑んだ。 一年前とまったく同じ笑みだった。 しかしすぐに笑みを収め、元の無表情に戻る。 純一はそれを見て、確かに違うな、と思った。姿形は一緒でも、後羽由芽の持つ雰囲気とは明らかに異なっていた。 では、この少女は一体何者なのだろうか。 クリスはしばらく歩き、近くの公園へと入った。奥のベンチに腰掛けると、目の前に立つ純一を見上げた。 「で、話してくれるのか?」 視線を返しながら純一は尋ねた。 クリスはしばし考え込み、それから言った。 「私は……由芽の体を借りてる……」 意味がわからなかった。 純一はおもいっきり不審な顔をし、眉をしかめた。 「……あの、頭悪い俺にもっかい説明してくれるか?」 「……」 クリスは表情を変えなかった。 「信じないなら……信じなくていい」 「いや、俺は困るんだよ。わけわかんねえしな。さっきの意味は何だ? 借りる?」 「そのままの……意味……」 クリスは言葉少なながらも断言する。 「本体はこの服……これを通して……由芽の体を借りてる……」 「……」 純一はクリスを睨む。 口調は真面目だが、内容は馬鹿馬鹿しいの一語に尽きた。 しかし、クリスは特に動揺を見せない。ただ話すだけと言わんばかりに無表情だ。 「……わかった、それが本当だとしよう。で、何の目的があって体を借りてるんだ?」 「……ケーキを、配りたい」 「……」 思い出す。去年もらったものもケーキだった。
- 653 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:21:25 ID:krJDweVi]
- 「去年もやってたな。やっぱりあれはお前だったのか」
「憶えてる。……どうだった?」 「何が」 「……ケーキ」 「……おいしかったよ。甘すぎなくて、俺の舌に合ってた」 「……」 クリスは、とても嬉しそうに微笑んだ。 「今年も配ってるのか」 「イブの夜だけしか……私は動けない。毎年イブの夜だけ……由芽が体を貸してくれる……」 クリスはどこか申し訳なさそうに呟いた。 言っていることは電波だったが、辻褄は合っていた。由芽がなぜイブの日の約束を断ったのかという理由に当てはまるからだ。 だが、現実的に考えるなら、 「演技じゃないのか、『クリス』」 そっちの方が自然だった。 「……手伝って」 唐突に頼まれた。 「は?」 「……イブを過ぎれば……この体は由芽の意識に戻る」 「……その間ついてこい、と?」 「……」 勝手な言い草だと思ったが、言っていることはそれなりに納得できるものだと思った。 本当か嘘か測るには間近で見張るのが一番だったし、何より彼女の活動に興味があった。 実際のところ、演技かどうかなどどうでもよかったのかもしれない。純一は純粋にこの小さなサンタに興味を抱いていた。 「わかった。手伝うよ」 騙されているという思いの中で、騙されてもいいかなと思う自分がいることが不思議だった。 活動はシンプルだった。 各家を訪問し、ケーキを渡す。それだけだった。 もちろん見知らぬ人間の急な訪問に警戒する者は多かったが、イブ限定の無料キャンペーンだと言えばある程度納得してもらえた。それでも警戒して受け取らない相手はいたが。 それより不思議だったのはクリスの持っている袋だった。純一が中を探っても何も出てこなかったが、クリスが探るとケーキの入った箱が出てくるのだ。 「手品か?」 「……魔法」 少女はそうのたまった。 しばらく一軒一軒民家を回っていたが、純一は効率が悪いように思った。 「おい、一つ一つ家を回るより、人の大勢いるところで配った方がいいんじゃないか」 「……」 クリスは答えない。 「おい」 「目立ちすぎると……由芽に迷惑がかかる……」 「……」 純一は押し黙った。 時刻を確認すると9時を過ぎていた。まだ三時間弱ある。 「……まったく、今日だけだぞ」 雪の舞い散る中、クリスは淡々とケーキを配り続ける。 風が強まり、雪が横に凪ぐ。刺すような鋭い寒さに純一は肩を震わせた。 「おい、寒くないのかよ」 「……」 クリスはふるふると首を振った。しかしその小さな体は微かに震えている。 「ウソついてどうするよ」 「っ」 「一旦休憩な。コーヒーでも飲もう。おごるから」 首を振って拒絶するクリスの手を無理矢理掴み、純一は強引に引きずっていく。 (……冷たい手だな) 掴んだ手の感触は、こちらが凍りそうなほど冷えていた。 クリスは諦めて純一の為すがままにしている。
- 654 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:23:26 ID:krJDweVi]
- 近くの自販機で温かい缶コーヒーを買う。クリスはもの珍しそうに自販機をしげしげと眺める。
「ほら、お前のだ」 「……」 クリスは純一が飲むのを見ながら、それを真似るように缶に口をつけ、おそるおそる傾けた。 「……甘苦い」 「砂糖入ってるからな」 純一が言うと、少女はふっと微笑んだ。 「でも……温かい」 「……」 純一はサンタ服の少女をぼんやり見つめる。 次第にわからなくなってきた。目の前の少女は明らかに後羽由芽とは違う。本当に体を借りてるように見える。信じ難いことだが。 いや、もう内心では信じているのだ。少女の言が本当なのだと。 何より、そんなことなど関係なく、純一はこの少女に惹かれていた。 だがそうなると、自分はクリスが好きなのだろうか。 後羽由芽のことは何とも思っていないのだろうか。 「……純一は」 クリスが不意に口を開いた。 「……ん?」 「由芽の恋人……なの?」 「……。違う」 「じゃあ……何?」 「俺にもわからん」 「由芽は多分……純一のこと好きだよ……」 「……なんでわかるんだよ」 「なんとなく……」 「なんだそりゃ」 由芽の体を使っているとそういうところまで感じ取れるとか、そういうことだろうか。 考えが既に毒されているような気がして、純一はため息をついた。 「そろそろ行くか。まだ二時間以上あるぞ」 「……」 二人は飲み干した缶を自販機横のゴミ箱に捨て、再び雪の中を歩き出す。 クリスは厚めのサンタ服を着込んでいるとはいえ、どことなく寒そうに見える。 純一は見かねて、手元の紙袋を開けた。 中から取り出したのは、暖かそうな白い手袋だった。手首部分にはマスタード色のくるみボタンがついていて、シンプルながらかわいらしいデザインだ。 「……?」 不思議そうに目を丸くするクリスに、純一はそれを差し出した。 「つけろ」 「……え?」 「プレゼントだ。後羽にあげるつもりだったけど、この寒い中で素手は見てられねえから、これつけろ」 「……」 クリスは驚いたように固まっていたが、しばらくして首を振った。 「由芽に……悪い……」 純一はカッとなって叫んだ。 「いいんだよ! 元々お前をイメージして買ったんだから」 「……?」 「サンタ服の後羽をイメージして買ったんだ。この色ならサンタ服にも合うんじゃないか、って」 「……」 「そ、それにその体は後羽のなんだろ。じゃあ風邪ひいたらお前のせいってことになる。それはなんか、嫌だしな」 「……」 クリスは何も言わない。 無言の空気に耐えきれず、純一は顔を背けた。 「つけたくないなら別にいいよ。後で改めて後羽に、」 「……ありがとう」 その声は、笑顔は、これまでのクリスのものとは少し違っていた。 見つめ直す。確かにクリスの笑顔だが、なんだか後羽由芽の色も混じっているように見えて、純一はどっちがどっちかわからなくなってしまった。 だが、その笑顔がこれまでの表情の中で一番魅力的に思えて、純一は心の中が一際熱くなった。 思った。自分はどちらの彼女も好きなのだ。クリスも、由芽も、どちらも同じくらい好きなのだ。 なら問題ないかもしれない。目の前にこの少女がいてくれるなら。
- 655 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:25:38 ID:krJDweVi]
- クリスは手袋をつけて純一に両手を掲げてみせた。
「……似合う?」 「……ああ、ぴったりだよ」 少女は再び満面の笑みを浮かべた。 それから二時間以上、二人はひたすら民家を回った。 無限にケーキが出てくる袋を片手に、少女は家々を訪ねる。 本来あまり人と話すのは苦手だというクリスに代わって、純一が玄関から訪問した。いつもは二階の窓などからこっそりケーキを置いていくという。 初めて会ったときに屋根の上を移動していた理由はそれだったわけだが、そんな怪しいケーキを好き好んで食べる人間は少ないだろう。ひょっとしたらこれまでの多くのケーキは捨てられていたのかもしれない。 そういう意味では、役に立てたのだろう。純一は嬉しく思った。 やがて日付が変わる十分前に、二人は一番最初の公園に戻ってきた。 「案外短いんだな、四時間近く配ってたはずなのに」 「……いつもより、たくさん配れた……」 満足げにクリスは呟いた。 純一は小さく笑った。 「そっか、よかったな」 「純一のおかげ……」 「お前の頑張りだろ」 「……」 クリスは照れたように顔を伏せる。 もうすぐ日付が替わる。クリスの言が正しいなら、もう時間は少ない。 聞いておきたいことがあった。 「なあ、なんでケーキ配ってるんだ? なんか理由でもあるのか?」 「……わからない」 「わからない、ってお前……」 「私が喜べなかった分……みんなに喜んでほしい……のかも、しれない」 「……」 少女の言葉は推し測れない。 過去に何があったのか、純一にはわからない。ただ、この少女が誰かの幸せを願っていることだけは感じ取れた。 この少女は本当にサンタなのだ。おとなしくて愛想も足りないが、とても一生懸命なサンタクロース。 「なあ、俺にもケーキくれるか?」 「……?」 「去年うまかったからさ、今年もほしい」 「……」 クリスは袋から紙箱を取り出し、純一に渡す。 純一は受け取ると、礼を言った。 「ありがとな」 「……ん」 クリスはもう一つ箱を取り出す。 「ん、なんだ?」 「由芽の分……」 「……ああ、そうか、わかった」 もう一つの箱も受け取る。クリスは満足したように夜空を見上げた。 雪を掴むように両手を掲げ、広げる。外灯の下、白い手袋が明るく映えた。 純一は携帯電話の表示を確認する。もう、残り五分しかない。 「クリス」 「?」 「来年も会えるよな?」 「……」 「まだ全然配りきれてねえじゃねえか。来年も、配るんだろ?」 「……手伝ってくれるの?」 「ああ、来年だけじゃない、毎年手伝ってやるよ。お前のこと、嫌いじゃないし」 「……」 クリスは口を閉じると、顔を近付けてきた。
- 656 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:29:00 ID:krJDweVi]
- 「な、なんだよ」
「……好きなの?」 心臓が跳ねた。 「な……」 「嫌いじゃないって……言った」 「う……それは、その……」 「……私は好き……かも」 そんなことを言う。 純一はヤケクソ気味に叫んだ。 「ああ、好きだよ! 初めて会ったときから好きだったよ!」 クリスは小さな声ながら言い募る。 「由芽のことは……どうなの?」 「後羽のことも好きだよ。どっちも俺は好きだ」 クリスはにっこり笑った。 「よかった……」 「何が」 「ちゃんと……由芽の側にいてあげてね」 「……」 「また……来年ね」 クリスは小さな手の平をバイバイと振る。あと一分。 純一はクリスを真正面から見つめ、はっきりと言った。 「その手袋は後羽へのプレゼントだけど、お前にあげたプレゼントでもあるんだからな。来年も必ずつけてこいよ」 クリスはにっこりと笑った。 「ありがとう……プレゼントをもらうのは……初めてだったよ……」 メリークリスマス。 その一言を言い終えた瞬間日付が替わり、クリスマスという名の少女は糸が切れたようにその場に倒れ込んだ。 純一は慌てて少女に駆け寄り、体を抱き起こす。 しばらくして、少女は夢から覚めたように目を開けた。 「後羽!」 「……先輩?」 元の後羽由芽の口調。純一はほっとして、由芽に微笑んだ。 「大丈夫か?」 「は、はい。……あ」 由芽は自分の服装に気付き、次いで純一を見た。純一は黙って見返す。 「……クリスに会ったんですか?」 「ああ。ケーキももらった。また来年って」 「先輩がついててくれたんですね。よかった……」 さっきのクリスと似たようなことを言う由芽に、純一はつい笑う。 きょとんとなって純一を見上げる由芽。 「立てるか?」 「は、はい。ありがとうございます」 由芽を立たせると、純一は軽く深呼吸して言った。 「好きだ、後羽。付き合ってほしい」 突然の告白に、由芽はひどく驚いたようだった。 「え? あ、あの、」 「……駄目か?」 「い、いえ、そんなわけ……私も、好きです」 クリスの言ったとおりだった。答えを聞くと、純一は由芽を抱き寄せた。 由芽は慌てたように身じろぎしたが、やがて動きを止め、体を純一に預けた。 「……この手袋、先輩のですか?」 「お前へのプレゼントだよ」 「暖かい……」 由芽は顔を上げ、にっこりと笑った。 「メリークリスマスです、先輩」 「……ああ、メリークリスマス」 大好きな笑顔を見つめ返しながら、純一は祝福の言葉を唱えた。
- 657 名前:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY mailto:sage [2007/12/30(日) 23:32:30 ID:krJDweVi]
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◇ ◇ ◇ 10時頃に風見がようやく自宅に帰りつくと、門の前で紗枝が傘を差して立っていた。 じろりと睨まれ、風見は顔が引きつった。 「ご、ごめん、遅くなった」 「……」 「いや、ミドリの用に時間かかって」 「……」 「あ、あの、バスも事故で遅れて」 「……」 紗枝は何も言わない。普段から無口だが、今は機嫌の悪さがオーラとなって見えるようだった。 「あの、これ、プレゼント」 冷や汗をかきながら、風見はプレゼントの袋を渡す。紗枝は一瞥すると、その袋を受け取った。 それから紗枝は風見の顔に手を添えた。 どきりとする中、紗枝の手は風見の両目を塞ぐ。 目を瞑れ、ということなのだろう。風見はおとなしく目を瞑った。 首元に何かを巻かれた。 思わず目を開けると、首にチェックのマフラーが巻かれていた。 幼馴染みを見ると、ぷいとそっぽを向いて目を合わせない。心なしか、頬が少し赤かった。 「手編み?」 「……」 横を向いたまま、微かに頷く紗枝。 「ありがとう、紗枝」 紗枝はしばらく何の反応も見せなかったが、やがて上目遣いにはにかんだ。 風見はその笑顔がマフラー以上に嬉しく、幼馴染みに対する想いで胸がいっぱいになった。 「家、入ろっか」 紗枝は頷くと、風見の腕を引っ張って傘の下に入れた。風見は抵抗せずに紗枝の好きにさせた。 雪の降る中、幼馴染みの腕の感触は柔らかく、温かかった。 今夜はホワイトクリスマス。 みんなが少しだけ、幸せになれる日。
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