補題 f: X → Y をスキームの射とし、 Y' を Y の部分スキームとする。 射影 p: (X x Y')/Y → X は埋入(immersion)である。 p は位相空間として f^(-1)(Y') への同型を与える。
証明 以下の図式より、p は埋入 Y' → Y の基底拡大であるから、 埋入である。
(XxY’)/Y → X ↓ ↓ Y’ → Y
x を f^(-1)(Y') に属す点とする。 f(x) = y とおく。標準的な準同型 O_y → O_x は、体の準同型 k(y) → k(x) を誘導する。 これは、さらに射 Spec(k(x)) → Spec(k(y)) を誘導する。 これを標準射 Spec(k(y)) → Y' と合成して 射 Spec(k(x)) → Y' を得る。 これは、合成射 Spec(k(x)) → X → Y と一致する。 よって、ファイバー積の定義より、 射 Spec(k(x)) → (X x Y')/Y が存在する。 この射に対応する (X x Y')/Y の点を z とすれば、 p(z) = x である。よって、p の像は f^(-1)(Y') である。 p は埋入だから p は f^(-1)(Y') への位相同型である。
965 名前:132人目の素数さん [03/12/31 01:34]
補題 f: X → Y をスキームの射とし、 Y' を Y の部分スキームとする。 (X x Y')/Y → X を射影とする。 Z → X をスキームの射とする。 Z → X → Y が Z → Y' → Y と分解する為には Z → X が Z → (X x Y')/Y → X と分解することが必要十分 である。
証明 以下の可換図式とファイバー積の性質より明らかであろう。
(XxY’)/Y → X ↓ ↓ Y’ → Y
966 名前:132人目の素数さん [03/12/31 01:38]
補題 f: X → Y をスキームの射とし、 X' を X の f による 閉像(scheme-theoretic image)とする(II Ex. 3.11 (d))。 U を Y の開集合とする。f_U: f^(-1)(U) → U を f の制限射とする。f_U の閉像は X' ∩ U である。 ここで、X' ∩ U は X' の開部分スキームと見なす。
補題 S をスキームとし、X と Y を S 上射影的なスキームとする。 X と Y の直和は S 上射影的である。
証明 定義より構造射 X → S は X → P^n x S → S と分解する。 ここに、X → P^n x S は閉埋入。 同様に構造射 Y → S は Y → P^m x S → S と分解する。 補題(>967)より、P^n x S と P^m x S の直和は P^(n+m+1) x S の閉部分スキームに同型である。 よって X と Y の直和は S 上射影的である。
969 名前:132人目の素数さん [03/12/31 01:46]
補題 f: Spec(B) → Spec(A) を有限型の射とする。 f は準射影的である。
証明 B = A[b_1, ..., b_ n] とする。A[x_1,...,x_n] を A 上の 多項式環とすると、A-代数としての全射 A[x_1,...,x_n] → B が存在する。 これは、閉埋入 Spec(B) → Spec(A[x_1,...,x_n]) を誘導する。 一方、開埋入 Spec(A[x_1,...,x_n]) → Proj(A[y_0, y_1,...,y_n]) が 存在する。よって合成射 g: Spec(B) → Proj(A[y_0, y_1,...,y_n]) は埋入である。 g による Spec(B) の閉像を Y とすると、Spec(B) → Y は 開埋入であり、f: Spec(B) → Spec(A) は Spec(B) → Y → Spec(A) と分解し、Y → Spec(A) は射影的 である。よって、f は準射影的である。
970 名前:132人目の素数さん [03/12/31 01:47]
補題 X → Y を 準射影的な射とし、Y → Z を開埋入とする。 このとき、合成射 X → Z は準射影的である。
証明 X → Y は準射影的であるから、X → Y は X → Y' → Y と 分解する。ここに X → Y' は開埋入であり、Y' → Y は射影的 である。Y' → Y は射影的だから、Y' → P x Y → Y と分解する。ここに、 P は有理整数環上の射影空間 であり、Y' → P x Y は開埋入である。 ここで、次の可換図式を考える。
PxY → Y ↓ ↓ PxZ → Z
これは、ファイバー積になっている。 X → Y → Z は X → Y' → P x Y → Y → Z と分解する。 これは、上記の可換図式より、X → Y' → P x Y → P x Z → Z に等しい。Y → Z は開埋入だから、P x Y → P x Z も開埋入 である。よって、X → Y' → P x Y → P x Z の合成射 X → P x Z は埋入である。よって、X → P x Z → Z の合成射 X → Z は準射影的である。
971 名前:132人目の素数さん [03/12/31 01:52]
Harstshorne II Ex. 4.10 の解答 Chowの補題 X をネータースキーム S 上固有なスキームとする。 このとき、S 上射影的なスキーム X' と射 g: X' → X 及び X の稠密な開集合 U で g は同型 g^(-1)(U) → U を誘導する ものが存在する。
(a) X は既約と仮定してよい。
証明 X はネーターだから有限個の既約成分 X_i を持つ。X_i を X の 被約な閉部分スキームと考える。仮定より、各 i に対してS 上 射影的なスキーム X'_i と射 g_i: X'_i → X_i 及び X_i の稠密 な開集合 U_i で g_i は同型 g_i^(-1)(U_i) → U_i を誘導する ものが存在する。X' を各 X'_i の直和とする。補題(>>968)より X' はS 上射影的である。g:X' → X を各 g_i から誘導される射 とする。 U'_i = {x ∈ U_i; x はどの X_j (j ≠ i)にも含まれない} とし、U を U'_i の合併集合とする。U'_i は空でないから U も 空ではない。V を X の空でない開集合とすると、V はある X_i と交わる。X_i は既約だからV は U'_i とも交わる。よって U は X で稠密である。i ≠ j なら U'_i と U'_j は交わらない からg が誘導する射 g^(-1)(U) → U は 同型 g_i^(-1)(U'_i) → U'_i の直和であり、やはり同型である。
972 名前:132人目の素数さん [03/12/31 01:54]
Harstshorne II Ex. 4.10
(b) X をネータースキーム S 上固有かつ既約なスキームとする。 X の有限個のアフィン開被覆 U_i で各 U_i に対して 開埋入 U_i → P_i が存在する。ここに各 P_i は S 上射影的 なスキーム。
証明 f: X → S を構造射とする。 S はネーターだからアフィン開集合 S_i による有限被覆を持つ。 f は有限型だから、f^(-1)(S_i) はアフィン開集合 U_ij による 有限被覆を持つ。補題より、U_ij → S_i は準射影的である。 よって、補題より U_ij → S も準射影的である。 U_ij → S の閉像を P_ij とすれば U_ij → P_ij は 開埋入であり、P_ij は S 上射影的である。 添え字集合を適当に変えて U_ij, P_ij を それぞれ U_i, P_i とすればよい。
973 名前:132人目の素数さん [03/12/31 11:32]
補題 f: X → Y をS-スキームの射とし、Y は X の f による閉像と なっているとする。Z を S 上分離的スキームとし、 g_1, g_2 : Y → Z をS-スキームの射で、(g_1)f = (g_2)f と すると、g_1 = g_2 となる。
証明 g_1, g_2 により h: Y → (Z x Z)/S が定まる。 Δ: Z → (Z x Z)/S を対角射とする。 Z は S 上分離的だからΔ(Z) は(Z x Z)/Sの閉部分スキームで ある。よってh^(-1)(Δ(Z))は Y の閉部分スキームである (>>964)。T = h^(-1)(Δ(Z)) とおく。
T → Δ(Z) ↓ ↓ Y → (ZxZ)/S
(g_1)f = (g_2)f だから hf: X → Y → (Z x Z)/S は X → Δ(Z) → (Z x Z)/S と分解する。よって補題(>>965) より、f: X → Y は X → T → Y と分解する。 一方 Y は f の閉像だから T = Y となる。よって g_1 = g_2 である。
974 名前:132人目の素数さん mailto:sage [03/12/31 11:39]
で、おにいさん、それで空は飛べそうですか?
975 名前:132人目の素数さん [03/12/31 11:50]
補題 f: X → Y, g: Y → Z がスキームの射で、gf が埋入なら、 f も埋入である。
証明 Γ: X → (X x Y)/Z を f のグラフ射とし、 q: (X x Y)/Z → Y を射影とする。qΓ = f である。 次の可換図式を考える。
(XxY)/Z → Y ↓ ↓ X → Z
gf: X → Z は仮定より埋入だから q: (X x Y)/Z → Y も埋入 である。Γも埋入であるから qΓ = f も埋入である。
976 名前:132人目の素数さん [03/12/31 11:52]
Harstshorne II Ex. 4.10
(c) U_i, P_i は (b) (>>972)と同じものとする。 P = (P_1 x P_2 x ... x P_n)/S とおく。 U を 各 U_i の共通集合とし、 f: U → (X x P)/S を U → X と U → P_i から得られる射とする。 X' を U の f による閉像とする。 g: X' → X を X への射影、h: X' → P を P への射影とする。 このとき, h は閉埋入である。
証明 U → (X x P)/S → X は埋入だから、U → (X x P)/S も埋入 である(>>975)。 p_i: P → P_i を射影とする。V_i = (p_i)^(-1)(U_i) とおく。 まず、h^(-1)(V_i) が X' の被覆であることを証明する。 U_i は X の被覆だから、g^(-1)(U_i) は X' の被覆である。 よって、g^(-1)(U_i) ⊆ h^(-1)(V_i) を示せばよい。 (続く)
977 名前:132人目の素数さん [03/12/31 11:56]
Harstshorne II Ex. 4.10 (c) の証明の続き
U'_i = g^(-1)(U_i) とおく、 以下の図式が可換なことを示せばよい。
U'_i → P ↓ ↓ U_i → P_i
U'_i = X' ∩ (U_i x P)/S であり、f: U → (X x P)/S の 閉像はX' であり、f(U) ⊆ U'_i であるから、U → U'_i の 閉像は U'_i である。 よって以下の図式を考える。
h^(-1)(V_i) → V_i が閉埋入であることを示す。 Q_i を P_i を除いた残りの P_j の積とする。 V_i = (U_i x Q_i)/S であるから、 h^(-1)(V_i) = X' ∩ (X x U_i x Q_i)/S である。 (U_i x Q_i)/S → U_i → X のグラフを Z_i とする。 Z_i は (X x U_i x Q_i)/S の閉部分スキームであり、 その (U_i x Q_i)/S への射影は同型である。 X' ∩ (X x U_i x Q_i)/S は f(U) の (X x U_i x Q_i)/S に おける(部分スキームとしての)閉包であり、f(U) ⊆ Z_i で あるから、X' ∩ (X x U_i x Q_i)/S ⊆ Z_i である (スキームとしての包含)。 よって、X' ∩ (X x U_i x Q_i)/S → (U_i x Q_i)/S は閉埋入 である。 V_i の合併集合を V とする。 h^(-1)(V_i) は X' の被覆であるから、h(X') ⊆ V である。 h^(-1)(V_i) → V_i が閉埋入であるから、 X' → V は閉埋入であり、V → X は開埋入であるから h: X' → P は埋入となる。 一方、X' → S は 固有であるから、X' → P も固有であり、 h(X') は P の閉集合である。よって h は閉埋入である。
979 名前:132人目の素数さん [03/12/31 12:31]
Harstshorne II Ex. 4.10 の解答の続き (d) g^(-1)(U) → U は同型である。
証明 g^(-1)(U) = X' ∩ (U x P)/S は f(U) の (U x P)/S における (部分スキームとしての)閉包であることに注意する。 f(U) は U → P のグラフであるから、f(U) は (U x P)/S の 閉集合である。よって g^(-1)(U) = X' ∩ (U x P)/S = f(U) である。よって、g^(-1)(U) → U は同型である(逆の同型は f)。
...,、 - 、 ,、 ' ヾ 、 丶,、 -、 / ヽ ヽ \\:::::ゝ /ヽ/ i i ヽ .__.ヽ ヽ::::ヽ ヽ:::::l i. l ト ヽ ヽ .___..ヽ 丶::ゝ r:::::イ/ l l. i ヽ \ \/ノノハ ヽ l:/ /l l. l i ヽ'"´__ヽ_ヽリ }. ', ', 'l. i ト l レ'__ '"i:::::i゙〉l^ヾ |.i. l . l l lミ l /r'!:::ヽ '‐┘ .} / i l l / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ l l l.ヾlヽ ゝヾ:ノ , !'" i i/ i< 今年も数学がんばってね iハ l (.´ヽ _ ./ ,' ,' ' | |l. l ` ''丶 .. __ イ \_______ ヾ! l. ├ァ 、 /ノ! / ` ‐- 、 / ヾ_ / ,,;'' /:i /,, ',. ` / ,,;'''/:.:.i
991 名前:132人目の素数さん [04/01/02 02:49]
補題 Kを体、v をその離散付値、L を K の有限次拡大体とする。 L の付値で v の拡大になっているものは離散付値である。
補題 Kを体、v をその離散付値、L を K の有限生成拡大体とする。 L の離散付値で v の拡張になっているものが存在する。
証明 A を K の付値環、m を A の極大イデアルとし、πをその生成元 とする。L の K 上の超越基を x_1, x_2, ..., x_n とする。 B = A[x_1, ...,x_n] とおく。 A は UFD だから B も UFDである(Gaussの定理)。 よってπは B の既約元であるから、πB は B の素イデアルで あり、B の πB による局所化 B_πB は離散付値環である。 B の商体を M とすると、B_πB は M の離散付値 w を 引き起こす。w は v の拡張である。 L は M の有限次拡大体だから補題より w は L の 離散付値に拡張される。
993 名前:132人目の素数さん [04/01/02 02:51]
補題 A を局所ネーター整域、m を A の極大イデアルとし、 K をその商体とする。m の生成元 x_1, x_2, ..., x_n を適当に とると、B = A[x_2/x_1, ..., x_n/x_1] としたとき、 mB = (x_1)Bとなり (x_1)B ≠ B となる。
証明 m の生成元 x_1, ..., x_n で 各 x_i が 0 でないものをとる。 Hartshorne I Th. 6.1A より K の付値環 R で A を支配する ものが存在する。v を R に付随する付値で G をその値群と する。g_i = v(x_i/x_1) と置く。g_k = min{g_1,...,g_n} と する。各 i に対して v(x_i/x_k) = g_i - g_k >= 0 である。 よって、x_i/x_k ∈ R であり、 A[x_1/x_k, ..., x_n/x_k] ⊆ R となる。 必要なら x_1, ..., x_n の番号を付け替えて x_k = x_1 と 仮定してよい。よって B ⊆ R である。R は A を支配するから R の極大イデアルは mB を含む。よって mB ≠ B である。 i ≧ 2 のとき、x_i ∈ (x_1)B だから mB = (x_1, x_2, ..., x_n)B ⊆ (x_1)B である。 逆の包含関係は明らかだから、mB = (x_1)B である。
994 名前:132人目の素数さん [04/01/02 03:05]
補題(Krull-Akizuki) A を1次元のネーター整域、K をその商体とする。 L を K の有限次拡大体とする。A の L における整閉包は Dedekind整域である。
証明は例えば、Bourbaki VII §2.5 を参照。
995 名前:132人目の素数さん [04/01/02 03:38]
Hartshorne Ex.4.11 (a) の解答
A を局所ネーター整域、m を A の極大イデアルとし、 K をその商体とする。L を K の有限生成拡大体とする。 補題(>>993)よりm の生成元 x_1, x_2, ..., x_n を適当に とると、B = A[x_2/x_1, ..., x_n/x_1] としたとき、 mB = (x_1)Bとなり (x_1)B ≠ B となる。 (x_1)B の極小素イデアルを p とする。 Harsthorne I Th.1.11A(Krullの単項イデアル定理)より B_p の 次元は1である。m ⊆ p であるから B_p は A を支配する。 補題(>>994)より B_p の K における整閉包 B~ は Dedekind整域である。B~ の任意の極大イデアルを M とする。 B~_M は離散付値環である。B_p ∩ M は B_p の極大イデアル である(Cohen-Seidenberg)から B~_M は B_p を支配する。 補題(>>992)より L の離散付値環で B~_M を支配、即ち A を支配するものが存在する。