1 名前:132人目の素数さん [2005/09/12(月) 16:30:31 ] 代数的整数論に関するスレッドです。
152 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2005/09/27(火) 12:57:29 ] わかりきった問いをするなよ
153 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2005/09/27(火) 13:12:21 ] 本当は大学か何かの先生だったりします?>>208
154 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2005/09/27(火) 13:58:34 ] >>153 だろうね。
155 名前:208 [2005/09/27(火) 15:27:24 ] そんなわけねえだろ。学部で圏論教えてるかどうか聞いてるのに。
156 名前:208 [2005/09/27(火) 15:28:45 ] >>152 ほう、教えてくれ
157 名前:208 [2005/09/27(火) 15:45:20 ] A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 N を M の部分加群とする。 Ass(M/N) が1個の素イデアルのみからなるとき、N を M の 準素(primary)部分加群という。Ass(M) が1個の素イデアルのみから なるとき、つまり {0} が M の準素部分加群となるとき、 M を余準素(coprimary)加群という。 M の部分加群 N が真に大きい部分加群の共通部分になるとき、 つまり、N = N_1 ∩ N_2, N ≠ N_1, N ≠ N_2 となる部分加群 N_1, N_2 があるとき、N を可約部分加群という。可約でないとき 既約という。
158 名前:208 [2005/09/27(火) 16:03:24 ] 命題 A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 N を M の部分加群とする。 N が準素部分加群でなければ、N は可約である。 証明 M を M/N に置き換えて N = 0 と仮定してよい。 よって、Ass(M) に属す素イデアルで互いに異なる p, q がある。 p = Ann(x), q = Ann(y) となる元 x, y ∈ M がある。 Ax は A/p に A-加群として同型だから、Ass(A/p) = {p} となる。 同様に Ass(A/q) = {q} である。 Ass(Ax ∩ Ay) ⊂ Ass(A/p) ∩ Ass(A/q) だから、Ass(Ax ∩ Ay) は 空集合である。よって、Ax ∩ Ay = 0 証明終
159 名前:208 [2005/09/27(火) 16:25:22 ] 補題 A をネーター環とし、Mを 有限生成 A-加群とする。 f ∈ Hom(M, M) とする。 ある整数 n > 0 に対して f^n(M) ∩ Ker(f) = 0 となる。 証明 M の部分加群の昇列 Ker(f) ⊂ Ker(f^2) ⊂ ... を考える。M はネーターだから、Ker(f^n) = Ker(f^(n+1)) となる 整数 n > 0 がある。この n が求めるものである。 証明終
160 名前:208 [2005/09/27(火) 17:03:07 ] A を環、I を A のイデアルとする。 V(I) = {p ∈ Spec(A); I ⊂ p } と定義する。 V(I) の形の Spec(A) の部分集合を閉集合と定義することにより、 Spec(A) に位相が入る。この位相を Spec(A) のZariski位相という。
161 名前:208 [2005/09/27(火) 17:04:58 ] 補題 A を環とし、Mを 有限生成 A-加群とする。 Supp(M) = V(Ann(M)) となる。 証明は演習とする。
162 名前:208 [2005/09/27(火) 17:17:27 ] A を環、f ∈ A とする。S = {f^n; n = 0, 1, 2, ...} とする。 S は積閉集合である。A_S を A[1/f] または A_f と書く。 A[1/f] が零環となるのは f がべき零のときに限る。 よって、Spec(A[1/f]) が空となるのは、f がべき零のときに限る。 Spec(A[1/f]) は、集合 D(f) = {p ∈ Spec(A); f は p に含まれない} と同一視される(>>81 )。
163 名前:208 [2005/09/27(火) 17:20:32 ] 命題 A を環とする。A のすべての素イデアルの共通部分は A のべき零元の 全体と一致する。 証明は>>162 より明らか。 A のべき零元の全体を Nil(A) と書く。
164 名前:208 [2005/09/27(火) 17:35:13 ] A を環、I を A のイデアルとする。Nil(A/I) の標準射 A → A/I による逆像を I の根基(radical)とよび、rad(I) と書く。 これは、mod I でベキ零となる A の元全体である。 >>163 より、rad(I) は I を含む素イデアル全体の共通部分である。
165 名前:208 [2005/09/27(火) 17:50:11 ] ネーター環 A の Nil(A) はベキ零である。 証明は演習
166 名前:208 [2005/09/27(火) 17:58:15 ] A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 Ass(M) と Supp(M) のそれぞれの極小元の集合は一致する。 証明 Ass(M) ⊂ Supp(M) (>>99 ) と >>146 からわかる
167 名前:208 [2005/09/27(火) 18:02:21 ] 命題 A をネーター環とし、Mを 有限生成 A-加群とする。 rad(Ann(M)) は p ∈ Ass(M) 全体の共通部分と一致する。 証明 >>161 と >>166 よりわかる。
168 名前:208 [2005/09/27(火) 18:07:01 ] A をネーター環とし、Mを 有限生成 A-加群で余準素(>>157 )とする。 このとき、定義より、Ass(M) は一個の素イデアル p よりなるから >>167 より p = rad(Ann(M)) である。>>165 より、p^n ⊂ Ann(M) となる整数 n > 0 がある。よって、(p^n)M = 0 となる。
169 名前:208 [2005/09/28(水) 09:11:33 ] 現代数学概説Iの悪口を書いたけど、俺はあれで集合論を勉強した。 束論も意識してないけどジョルダン・ヘルダーの定理なんかで、 無意識に使ってるかもしれない。若い頃に読んだものって結構 影響力がある。因みにあのシリ−ズはいい本があるね。 岩沢の代数関数論とか。あの本はいいらしいけど超難しい。 俺も学部のころ仲間で読もうとしたけど、最初の付値論の 近似定理あたりで皆おだぶつ。
170 名前:208 [2005/09/28(水) 09:29:13 ] 今やってる随伴素イデアルとか今後やる予定の殆ど(全部ではない) はBourbakiの可換代数に書いてあるんで、それを参照してくれと 言えばお終いだけどね。その本が手元にない人も多いだろうから こっちの復習もかねてここに書いてる。
171 名前:208 [2005/09/28(水) 09:36:20 ] 前に数回書いてるけどBourbakiの可換代数はいいよ。なんで皆、 Ati-Macとか松村で勉強するんだろ。松村はBourbakiが書いて ないこともあるからいいけど。Bourbakiのいいところは、すべて 証明をつけてあるところ。しかもほとんどの命題の証明が比較的簡単 なんだな。だから、根気さえあれば読める。これはGrothendieck のEGAにもある程度言える。
172 名前:208 [2005/09/28(水) 12:35:52 ] A を環、M を A-加群、N をその部分加群とする。 Supp(M) = Supp(N) ∪ Supp(M/N) となる。 証明 完全系列 0 → N → M → M/N → 0 より、p ∈ Spec(A) に対して 完全系列 0 → N_p → M_p → (M/N)_p → 0 が得られる。 これより明らか
173 名前:208 [2005/09/28(水) 12:43:00 ] A を環、M を A-加群、(M_i), i ∈ I をその部分加群の族で M = ΣM_i とする。ここで、Σは直和ではなく単なる和をあらわす。 つまり、M は(M_i)で生成される。 S を A の積閉集合としたとき、 M_S = Σ(M_i)_S となる。 証明は演習。っていうか明らかだろう。
174 名前:208 [2005/09/28(水) 12:46:58 ] A を環、M を A-加群、(M_i), i ∈ I をその部分加群の族で M = ΣM_i とする。ここで、Σは直和ではなく単なる和をあらわす。 Supp(M) = ∪Supp(M_i) となる。 証明は>>173 より明らかだろう。
175 名前:208 [2005/09/30(金) 16:01:36 ] 定義 Aを環とし、MをA-加群とする。 Aの元 a が M に関して概べき零であるとは、各 x ∈ M に対して、 整数 n(x) > 0 が存在して、a^(n(x))x = 0 となることを言う。 n(x) が x によらないとき、つまり、ある整数 n > 0 に対して、 (a^n)M = 0 となるとき、a を M に関してべき零であるという。
176 名前:208 [2005/09/30(金) 16:52:47 ] Aを環とし、I をそのイデアルとする。 Supp(A/I) = V(I) である。 証明は演習とする。
177 名前:208 [2005/09/30(金) 17:13:43 ] A を環とし、Mを A-加群とする。 Supp(M) に属す全ての素イデアルの共通部分は、M に関して概べき零な 元全体と一致する。 証明 >>174 より、Supp(M) = ∪{Supp(Ax); x ∈ M} である。 Ax は A/Ann(x) と同型であるから、>>176 より、Supp(Ax) = V(Ann(x)) となる。>>164 より、Supp(Ax) に属す素イデアルの共通部分は、 rad(Ann(x)) である。 証明終
178 名前:208 [2005/09/30(金) 17:22:25 ] A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 Ass(M) に属す全ての素イデアルの共通部分は、M に関して概べき零な 元全体と一致する。 証明 >>166 と>177より。 証明終
179 名前:208 [2005/09/30(金) 17:32:47 ] 定義 Aを環とし、MをA-加群とする。 Aの元 a が M に関して正則であるとは、 u(x) = ax により定義される射 u: M → M が単射であることをいう。 M に関して正則であることを M-正則と言うこともある。
180 名前:208 [2005/09/30(金) 17:35:35 ] A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 Ass(M) に属す全ての素イデアルの合併部分は、M に関して非正則な元 全体と一致する。 証明 >>89 と>>90 より。 証明終
181 名前:208 [2005/09/30(金) 17:50:59 ] A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 次の条件は同値である。 1)Ass(M) が1個の素イデアルのみからなる。 2)A の元で M に関して非正則なものは概べき零である。 証明 >>178 と>>180 より。 証明終
182 名前:132人目の素数さん [2005/09/30(金) 18:20:07 ] A をネーター環とし、Mを有限生成 A-加群とする。 N を M の真部分加群 とする。 N は有限個の準素部分加群の共通集合となる。 証明 M の部分加群のなす順序集合は極大条件を満たすから、 N は有限個の既約部分加群(>>157 )の共通集合となる。 既約部分加群は準素部分加群である(>>158 )。 証明終
183 名前:132人目の素数さん [2005/10/03(月) 10:00:08 ] >>166 は暗黙に次の命題を使用していた。 A を環、p をその素イデアルとすると、p に含まれる極少素イデアルが 存在する。 証明は、Zornの補題より簡単に得られる。 A がネーターの場合は、零イデアルの準素イデアル分解が存在すること を使えば、Zornの補題は必要ない。 因みに、ネーター環においては、素イデアルの降鎖列は有限で停留する。
184 名前:132人目の素数さん [2005/10/03(月) 11:23:43 ] A をネーター環、M を A-加群、(M_i) を M の部分加群の族で、 M = ∪M_i とする。このとき、 Ass(M) = ∪Ass(M_i) となる。 証明 明らか。
185 名前:208 [2005/10/03(月) 11:32:46 ] A をネーター環、M を A-加群、N をその部分加群とする。 Ass(M) ⊂ Ass(N) ∪ Ass(M/N) となる。 証明 p ∈ Ass(M) とする。M の部分加群 L で A/p と同型になるものが ある。 L ∩ N が空でなければ、p ∈ Ass(L ∩ N) ⊂ Ass(N) となる。L ∩ N が空なら、L は (L + N)/N ⊂ M/N と同型。 よって、p ∈ Ass(M/N) となる。 証明終
186 名前:208 [2005/10/03(月) 11:38:28 ] A をネーター環、M を A-加群、(M_i) を M の部分加群の族で、 M = ΣM_i (直和)とする。このとき、 Ass(M) = ∪Ass(M_i) となる。 証明 >>184 より(M_i)は有限個の族、特に2個の場合を証明すればよい。 M = M_1 + M_2 (直和)とする。 >>185 より、Ass(M) ⊂ Ass(M_1) ∪ Ass(M_2) となる。 逆の包含関係は明らか。 証明終
187 名前:208 [2005/10/03(月) 11:46:19 ] A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 N を M の部分加群 とする。 N = Q_1 ∩ Q_2 とする。ここで、Q_1, Q_2 は準素部分加群であり、 {p} = Ass(M/Q_1) = Ass(M/Q_2) とする。 このとき、N は準素であり、{p} = Ass(M/N) となる。 証明 M/N は M/Q_1 + M/Q_2 (直和)の部分加群に同型である。 よって>>186 より、 Ass(M/N) ⊂ Ass(M/Q_1) ∪ Ass(M/Q_2) 証明終
188 名前:208 [2005/10/03(月) 11:59:08 ] 定義 A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 M の部分加群 N が有限個の準素部分加群の共通集合となっている とする。N = Q_1 ∩ Q_2 ... ∩ Q_n 各 i に対して N ≠ ∩{Q_j; j ≠ i} となっているとき、 これを N の無駄のない準素分解と言う。 さらに、{p_i} = Ass(M/Q_i} としたとき、各 p_i が互いに異なって いるとき、これを、N の最短準素分解と言う。
189 名前:208 [2005/10/03(月) 12:04:07 ] ところで、かなりかったるいな。随伴素イデアルとか準素分解が こんなに長くなるとは思ってなかった。早くDedekind環に行きたい んだけど。まあ、もう少しで終わるから辛抱して。
190 名前:208 [2005/10/03(月) 14:21:29 ] A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 M の部分加群 N の最短準素分解 N = Q_1 ∩ Q_2 ... ∩ Q_n があるとする。 各i に対して {p_i} = Ass(M/Q_i) とすると、 Ass(M/N) = {p_1, p_2, ... , p_n} となる。 証明 M/N は Σ(M/Q_i) (直和)の部分加群に同型だから、 >>186 より、Ass(M) ⊂ {p_1, p_2, ... , p_n} となる。 各i に対して P_i = ∩{Q_j; j ≠ i} とおく。 N = Q_1 ∩ Q_2 ... ∩ Q_n は無駄がないから、 P_i/N ≠ 0 である。P_i/N は (P_i + Q_i)/Q_i に同型であり、 (P_i + Q_i)/Q_i は M/Q_i の部分加群だから、 Ass(P_i/N) = {p_i} となる。P_i/N は M/N の部分加群だから p_i ∈ Ass(M/N) となる。 証明終
191 名前:208 [2005/10/03(月) 14:34:30 ] >>175 Mが有限生成なら、A の元が M に関して概べき零であることと、 べき零であることは同値である。
192 名前:208 [2005/10/03(月) 14:51:49 ] Mが有限生成の場合に、>>158 の別証を述べる。 この証明はネーター自身の証明と本質的には同じである。 命題 A をネーター環とし、Mを有限生成 A-加群とする。 N を M の部分加群とする。 N が準素部分加群でなければ、N は可約である。 証明 M を M/N に置き換えることにより、 N = 0 と仮定してよい。 0 が準素でないとする。>>181 より、A の元 a で M に関して非正則かつ (M に関して)べき零でないものがある。A-加群 としての自己準同型 f を f(x) = ax により定義する。仮定より、f は単射でもべき零でもない。 >>159 より、0 は可約になる。 証明終
193 名前:208 [2005/10/03(月) 15:04:02 ] 次の命題はしばしば使われる。 命題 A をネーター環とし、Mを有限生成 A-加群とする。 M の部分群の列 0 = M_0 ⊂ M_1 ⊂ ... ⊂ M_n = M で 各 M_i/M_(i-1) が A/p_i と同型になるものが存在する。p_i は素イデアル。 証明 p_1 ∈ Ass(M) とすると、A/p_1 と同型な M の部分群 M_1 がある。 M/M_1 ≠ 0 なら、p_2 ∈ Ass(M/M_1) をとり同様にする。 M はネーターなのでこの操作は有限回で終わる。 証明終
194 名前:208 [2005/10/03(月) 16:45:49 ] A を環、Mを A-加群、 N, L を M の部分加群とする。 S を A の積閉集合とする。 M_S の部分加群として、(N ∩ L)_S = N_S ∩ L_S となる。 証明 完全列 0 → N ∩ L → M → M/N + M/L(直和) より、完全列 0 → (N ∩ L)_S → M_S → M_S/N_S + M_S/L_S(直和) が得られる(>>86 )。 証明終
195 名前:208 [2005/10/03(月) 17:13:36 ] A をネーター環とし、Mを A-加群、 Q を M の準素部分加群、Ass(M/Q) = {p} とする。 S を A の積閉集合とする。p ∩ S が空なら、Q_S は M_S の 準素部分加群であり、Ass(M_S/Q_S) = {pA_S} となる。 さらに、φ^(-1)(Q_S) = Q となる。ここで、φ: A → A_S は 標準射。 p ∩ S が空でないなら Q_S = M_S となる。 証明 p ∩ S が空とする。 >>95 より、 Ass(M_S/Q_S) = Ass(M/Q) ∩ Spec(A_S) となる。 よって、Ass(M_S/Q_S) = {pA_S} となる。 s ∈ S、x ∈ M、 sx ∈ Q とする。>>180 より s は M/Q に関して正則元だから x ∈ Q となる。 これは、φ^(-1)(Q_S) = Q を意味する。 次に、p ∩ S が空でないとする。 Ass(M_S/Q_S) = Ass(M/Q) ∩ Spec(A_S) は空となるから、 M_S/Q_S = 0 である。 証明終
196 名前:208 [2005/10/03(月) 17:31:40 ] A をネーター環とし、Mを A-加群、 N = Q_1 ∩ Q_2 ... ∩ Q_n を M の部分加群 N の最短準素分解 各i に対して {p_i} = Ass(M/Q_i)、 S を A の積閉集合とする。 0 < r < n, i = 1, ... , r に対して p_i ∩ S は空、j = r+1, ... , n に対して p_j ∩ S は空でない とする。このとき、N_S = (Q_1)_S ∩ (Q_2)_S ... ∩ (Q_r)_S となり、これは N_S の M_S における最短準素分解である。 証明 >>194 と>>195 より。 証明終
197 名前:208 [2005/10/03(月) 17:44:20 ] >>195 >ここで、φ: A → A_S は標準射。 ここで、φ: M → M_S は標準射。
198 名前:208 [2005/10/03(月) 17:45:20 ] A をネーター環とし、Mを A-加群、 N = Q_1 ∩ Q_2 ... ∩ Q_n を M の部分加群 N の最短準素分解 各i に対して {p_i} = Ass(M/Q_i) とする。 ある i に対して p_i が極小素イデアルとすると、 Q_i = φ^(-1)(N_p_i) となる。よって、 Q_i は、N と p_i により 一意に決まる。 ここで、N_p_i は、いつものように積閉集合 S = A - p_i による局所化。 φ: M → M_p_i は標準射。 証明 >>196 より。 証明終
199 名前:208 [2005/10/04(火) 11:25:15 ] ネーター加群における準素加群分解(>>182 )は、既約部分加群が 準素であるという事実(>>158 または>>192 )に基づいていた。 しかし、準素部分加群は既約とは限らない。既約とは限らない 準素部分加群による分解は次の結果から得られる。 命題 A をネーター環とし、Mを有限生成 A-加群とする。 p ∈ Ass(M) とすると、M の部分加群 N で、 Ass(M/N) = {p}, Ass(N) = Ass(M) - {p} となるものが存在する。 証明 Ass(M) = {p} なら命題は自明なので、Ass(M) ≠ {p} と仮定する。 M の部分加群 N で、Ass(N) に p を含まないものの中で極大なもの とする。このようなものが存在することは、M がネーター加群である ことからわかる。Ass(M) ⊂ Ass(N) ∪ Ass(M/N) だから、 p ∈ Ass(M/N) となる。q ∈ Ass(M/N) で p ≠ q となるものがある とする。N ⊂ L で L/N が A/q と同型になるような部分加群 L が 存在する。Ass(L/N) = {q} で Ass(L) ⊂ Ass(N) ∪ Ass(L/N) だから Ass(L) は p を含まない。これは N の極大性に反する。 よって、Ass(M/N) = {p} である。Ass(N) = Ass(M) - {p} は、これと Ass(N) ⊂ Ass(M) および、Ass(M) ⊂ Ass(N) ∪ Ass(M/N) からわかる。 証明終
200 名前:208 [2005/10/04(火) 12:23:14 ] A をネーター環とし、Mを有限生成 A-加群とする。 各 p ∈ Ass(M) に対して、M の部分加群 Q(p) で、 Ass(M/Q(p)) = {p}, Ass(Q(p)) = Ass(M) - {p} となる とする(>>199 )。 このとき、0 = ∩{Q(p); p ∈ Ass(M)} となり、 これは、0 の最短準素分解である。 証明 N = ∩{Q(p); p ∈ Ass(M)} とおく。Ass(N) ⊂ Ass(Q(p)) だから、Ass(N) は空である。よって N = 0 である(>>90 )。 0 = ∩{Q(p); p ∈ Ass(M)} は最短準素分解である。 何故なら、もしあるp ∈ Ass(M) に対して 0 = ∩{Q(q); q ∈ Ass(M), q ≠ p} とすると、 M は、直和 ΣM/Q(q) に埋め込まれて、 Ass(M) ⊂ ∪Ass(M/Q(q)) となり矛盾する。 証明終
201 名前:208 [2005/10/04(火) 12:59:11 ] A をネーター環とし、Mを有限生成 A-加群とする。 Ass(M) に属す素イデアル全体の共通集合は、Mに関してべき零 となる元全体からなる(>>178 )。 Ass(M) に属す素イデアル全体の合併集合は、Mに関して非正則 な元全体からなる(>>180 )。 特に、A を A-加群とみると、これは有限生成だから、 Ass(A) に属す素イデアル全体の共通集合は、A のべき零元全体と 一致する。つまり、Nil(A) である(>>163 )。 Ass(A) に属す素イデアル全体の合併集合は、A の非零因子全体と 一致する。
202 名前:208 [2005/10/04(火) 17:50:56 ] A をネーター環とし、Mを有限生成 A-加群とする。 M の部分加群 N が準素であるためには、M/N に関して非正則な A の元は、M/N に関してべき零であることが必要十分である。 証明 >>181 と>>191 より明らかだろう。
203 名前:208 [2005/10/04(火) 18:03:34 ] 命題 A を環、I, J を A のイデアル、p を A の素イデアルとし、 IJ ⊂ p とする。 このとき、 I ⊂ p または、J ⊂ p となる。 証明は明らかだろう。
204 名前:208 [2005/10/04(火) 18:18:37 ] 命題 A をネーター環とする。 Ass(A) = {p_1, p_2, ... , p_r} とする。 p を A の任意の素イデアルとすると、 ある i に対して p_i ⊂ p となる。 証明 A の零イデアルの最短準素分解を 0 = q_1 ∩ q_2 ∩ ... ∩ q_r とし、Ass(A/q_i) = {p_i} とする。 (q_1)(q_2)...(q_r) ⊂ q_1 ∩ q_2 ∩ ... ∩ q_r だから、>>208 より、q_i ⊂ p となる i がある。 >>178 より、p_i = rad(q_i) である。 よって、>>165 より、(p_i)^(n) ⊂ q_i となる整数 n がある。 よって、(p_i)^n ⊂ p となる。 再び、>>208 より p_i ⊂ p となる。 証明終
205 名前:208 [2005/10/06(木) 11:39:25 ] ネーター環において極小素イデアルは有限個しかないということは、 >>204 からわかるが、これは、 A がネーター環のとき、Spec(A) の 閉部分集合全体が極小条件を満たすことからもわかる。 これを以下に説明する。 定義 位相空間 X が可約とは、 X = F_1 ∪ F_2 となる、X の閉部分集合 F_1, F_2 で X ≠ F_1, X ≠ F_2 となるものが存在することをいう。 空集合でない位相空間が可約でないとき既約という。 位相空間 X の部分集合 A が既約とは、A に部分空間としての位相を いれたときに、既約なことをいう。
206 名前:208 [2005/10/06(木) 12:05:53 ] u: A → B を環の射とすると、位相空間としての射 u~: Spec(B) → Spec(A) が、u~(p) = u^(-1)(p) で定まる。 u~が写像として定まり、連続であることを確かめるのは 読者にまかす。 u: A → A/Nil(A) を標準射とすると、 u~: Spec(A/Nil(A) ) → Spec(A) は、位相空間としての同型射となる。 これを確かめるのも、読者にまかす。 ここで、Nil(A) は A のべき零元の全体である(>>163 )。 よって、Spec(A) の位相を考えるときは、Nil(A) = 0 と仮定してよい。 Nil(A) = 0 となるとき、A を被約という。
207 名前:208 [2005/10/06(木) 12:33:54 ] 空でない位相空間 X が既約なためには、X の任意の空でない開集合 が稠密であることが必要十分である。これは、2個の空でない開集合の 共通集合が空でないことと同値である。
208 名前:208 [2005/10/06(木) 12:40:21 ] A を環とする。 Spec(A) の開集合は、D(f) (>>162 ) の形の開集合の合併集合になる。 よって、Spec(A) が既約なためには、任意の D(f) と D(g) が空で なければ、D(f) ∩ D(g) = D(fg) が空でないことが必要十分である(>>207 )。 D(f) が空であることと、f がベキ零であることは同値である(>>162 )。 よって、A が被約なら、D(f) が空でないことは、f ≠ 0 と同値である。 よって、A が被約なら、Spec(A) が既約であることと、A が整域で あることは、同値である。 これから、被約とは限らない A については、Spec(A) が既約であることと、 Nil(A) が素イデアルであることは同値である(>>206 )。
209 名前:208 [2005/10/07(金) 10:16:08 ] 位相空間 X の空でない部分集合 E が既約なことと、以下の条件が成立つ ことは同値である。 E ⊂ F_1 ∪ F_2 となる X の閉部分集合 F_1, F_2 があるとすると、 E ⊂ F_1 または E ⊂ F_2 となる。 証明は定義(>>205 )から明らかだろう。
210 名前:208 [2005/10/07(金) 10:48:33 ] 位相空間 X の部分集合 E が既約なことと、その閉包 cl(E) が既約 なことは同値である。 証明 証明は>>209 から明らかだろう。
211 名前:208 [2005/10/07(金) 10:50:59 ] 演習問題 ハウスドルフ空間が既約なのは、それが1点よりなる場合のみである。
212 名前:208 [2005/10/07(金) 11:12:55 ] 命題 位相空間 X の既約部分集合の集合 {E} が包含関係に関して全順序 集合となっているものとする。この合併集合 ∪E は既約である。 証明は>>209 から明らかだろう。
213 名前:208 [2005/10/07(金) 11:48:58 ] 定義 位相空間 X の既約部分集合 E が包含関係に関して極大なとき、 つまり、E を真に含む既約部分集合が存在しないとき、 E を X の既約成分という。 既約成分は>>210 より閉部分集合である。 >>212 とZornの補題より任意の既約部分集合に対して、それを含む 既約成分が存在する。 位相空間の任意の点 p に対して {p} は、既約である。 よって、任意の位相空間はその既約成分の合併集合になる。
214 名前:208 [2005/10/07(金) 19:13:37 ] 定義 位相空間 X の閉部分集合を要素とする空でない任意の集合に包含関係に 関しての極小元が存在するとき、つまり、閉部分集合に関して極小条件 が成立つとき、X をネーター空間と呼ぶ。 これは閉部分集合の降鎖列が途中で停留することと同値である。 さらに、これは開部分集合に関して極大条件が成立つことと同値である。
215 名前:208 [2005/10/11(火) 10:49:44 ] 定義 位相空間 X の任意の開被覆が有限部分開被覆を持つとき、X を 準コンパクト(quasi-compact)という。位相空間がハウスドルフかつ 準コンパクトなときコンパクトという。
216 名前:208 [2005/10/11(火) 10:58:31 ] ネーター空間は準コンパクトである。 証明 X をネーター空間とし、X の開被覆 {U_i} があるとする。 有限個の U_i の合併となる開部分集合全体を考える。 X はネーターだから、この中に極大なものがある。 これを U とすると、U の極大性から、任意の U_i ⊂ U となる。よって X = U となる。 証明終
217 名前:208 [2005/10/11(火) 11:09:44 ] 位相空間がネーターであるためには、その任意の開部分集合が 準コンパクトであることが必要十分である。 証明は各自にまかす。
218 名前:208 [2005/10/11(火) 11:21:25 ] ネーター空間の既約成分は有限個である。 証明 X をネーター空間とし、X の空でない閉部分集合で有限個の 既約閉部分集合の合併とならないものがあるとする。 X はネーターだから、このようなもののなかに極小なものがある。 これを F とする。F は既約ではないから、 F = F_1 ∪ F_2 となる 閉部分集合 F_1, F_2 で F と異なるものがある。F の極小性から これらは有限個の既約閉部分集合の合併となる。よって F も 有限個の既約閉部分集合の合併となる。これは矛盾。 よって X の任意の空でない閉部分集合は有限個の既約閉部分集合の 合併となる。とくに X がそうなる。 証明終 (注) このような論法は今までにも暗黙に使った。例えば>>182 。 この論法をネーター帰納法と呼ぶ。
219 名前:208 [2005/10/11(火) 11:47:45 ] A を環、E を Spec(A) の部分集合とする。 E に属すすべての素イデアルの共通部分を I(E) と書く。 I を A のイデアルとすると、 I(V(I)) = rad(I) となる(>>164 )。 I = rad(I) となるイデアルを根基イデアルという。 Spec(A) の閉部分集合の集合と A の根基イデアルの集合は F に I(F) を対応させることにより1対1に対応する。
220 名前:208 [2005/10/11(火) 11:49:36 ] A を環、E を Spec(A) の部分集合とする。 cl(E) = V(I(E)) となる。ここで、cl(E) は E の閉包をあらわす。 証明 E ⊂ V(I(E)) は明らか。E ⊂ V(J) とする。ここで J は A のイデアル。 I(V(J)) ⊂ I(E) である。I(V(J)) = rad(J) だから(>>219 )、 rad(J) ⊂ I(E) となる。よって V(I(E)) ⊂ V(rad(J)) = V(J) つまり V(I(E)) は E を含む最小の閉部分集合である。 よって、cl(E) = V(I(E)) となる。 証明終
221 名前:208 [2005/10/11(火) 12:02:42 ] A をネーター環とすると、Spec(A) はネーター空間である。 証明 >>219 より Spec(A) の閉部分集合の集合と A の根基イデアルの集合は 1対1に対応する。これより明らか。
222 名前:208 [2005/10/11(火) 12:09:19 ] A を環とする。Spec(A) の既約部分集合の集合は Spec(A) と1対1に 対応する。 証明 >>208 より V(I) が既約なためには rad(I) が素イデアルであることが 必要十分である。これより明らか。
223 名前:208 [2005/10/11(火) 12:13:06 ] 環 A の極小素イデアルと Spec(A) の既約成分は1対1に対応する。 証明 既約成分の定義(>>213 ) と>>222 より明らか。
224 名前:208 [2005/10/11(火) 12:15:25 ] 命題 ネーター環の極小素イデアルは有限個である。 証明 >>218 と>>223 より。
225 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2005/10/11(火) 12:17:36 ] おもしろいスレじゃのう。 よっ、この208! 仕事人!!ガンガレ
226 名前:132人目の素数さん [2005/10/11(火) 12:42:45 ] Hand book of K-theory , Springer (Eric Friedlander & Dan Grayson) kore yondahitoiru??
227 名前:208 [2005/10/11(火) 12:45:57 ] Thanks(>>225 ). これを書くのにBourbakiの可換代数を参考にしてることは前に書いた。 私見によれば、現在のところ可換代数の入門書としてはBourbakiの 可換代数がトップだろうな。8、9、10章が数年前に出たことにより 松村を抜いた。8章は次元論。9章は完備局所環の構造定理とその応用。 10章は、ホモロジー代数の応用とCM環。
228 名前:208 [2005/10/11(火) 12:52:39 ] Bourbakiの可換代数の8章の次元論は、Atiyah-MacDonald とか EGA とか 松村と違って Krull の次元定理 を Hilbert-Samuel の 特性多項式を使わないで直接に証明している。Krullのオリジナル の証明に近い。これは、俺も賛成。他の証明は迂回しすぎ。
229 名前:132人目の素数さん [2005/10/11(火) 14:42:30 ] >>Bourbakiの8、9、10章 French version, or English version?
230 名前:208 [2005/10/11(火) 17:08:19 ] 8、9、10章の英語版はないはず
231 名前:132人目の素数さん [2005/10/13(木) 09:50:46 ] ところで、環 A の素イデアルの集合を何故 Spec(A) (Spec というのは Spectrum(スペクトル)の略)と書くか。 これを追求するのは結構面白いと思う。 スペクトルというのは虹の7色に代表されるように光を周波数で 分けたもの。これは、突き詰めると原子内の電子がエネルギー を放出することによって特定の周波数の光を放出する現象 だろう(多分)。 だから、Spec(A) は量子力学からきたものと思う。 聞きかじりによると、Hilbert空間のエルミート作用素の固有値が 原子の出す光の振動数に対応するらしい(間違ってる可能性もある)。 空間が有限次の場合は、>>147 の例が示唆的だろう。 V は K[X]-加群となり、Ass(V) は、線形写像 u の固有値の集合 とみなされる。 この場合、Ass(V) = Supp(V) であり(>>166 ) Supp(V) = V(Ann(V)) = Spec(A/Ann(V)) である(>>161 , >>176 )。 つまり、Spec(A/Ann(V)) は u の固有値の集合とみなされる。
232 名前:208 [2005/10/13(木) 11:06:51 ] >>231 >Supp(V) = V(Ann(V)) = Spec(A/Ann(V)) である この A は体 K 上の多項式環 K[X] をあらわす。 Ann(V) は 線形写像 u の固有多項式で生成される。
233 名前:208 [2005/10/13(木) 11:21:49 ] >>199 >しかし、準素部分加群は既約とは限らない。 この例を Zariski-Samuel から引用しよう。 そのために、次の命題がいる。 命題 A をネーター環、 m をその極大イデアルとする。 整数 n > 0 に対して Ass(A/m^n) = {m} である。 証明 Supp(A/m^n) = V(m^n) である(>>176 )。 一方、V(m^n) = {m} である(>>203 )。 よって、Ass(A/m^n) = {m} である(>>99 )。 証明終
234 名前:208 [2005/10/13(木) 11:42:19 ] 準素部分加群が既約とならない例(Zariski-Samuel): K を体、 A = K[X, Y] を K 上の2変数多項式環とする。 A は Hilbert の基底定理よりネーター環である。 m = (X, Y) は A の極大イデアルである(何故か?)。 m^2 = (X^2, XY, Y^2) は A の準素イデアルである(>>233 )。 m^2 = (m^2 + AX) ∩ (m^2 + AY) となる(演習問題とする)。 m^2 ≠ m^2 + AX, m^2 ≠ m^2 + AY であるから、 m^2 は可約である。
235 名前:208 [2005/10/13(木) 12:37:38 ] Artin環について述べる前に、可換環論において頻繁に使われる 中山の補題を証明する。私の知る限りこの証明は3種ある。 その全部を紹介しよう。
236 名前:208 [2005/10/13(木) 12:38:51 ] 補題 A を環、M を A-加群とする。 n > 0 を整数。 a_(i,j), 0≦i, j≦n を A の元の列。 x_1, x_2, ... , x_n を M の元の列とする。 これ等の間に次の関係式: a_(1,1) x_1 + a_(1,2) x_2 + ... + a_(1,n) x_n = 0 a_(2,1) x_1 + a_(2,2) x_2 + ... + a_(2,n) x_n = 0 . . . a_(n,1) x_1 + a_(n,2) x_2 + ... + a_(n,n) x_n = 0 があるとする。 このとき、det(T)x_i = 0 が各 i で成立つ。 ここで、 T = (a_(i,j)) であり、det(T) は T の行列式。 (注) 行列式は可換環でも普通と同様に定義される。
237 名前:208 [2005/10/13(木) 12:42:13 ] >>236 の補題の証明 上の関係式を行列記法で書くと、TX^t = 0 となる。 ここで、 X = (x_1, x_2, ... , x_n) X^t は X の転置行列。 T~ を T の余因子行列とする。 線形代数でよく知られているように T~T = det(T)E となる。ここで、E は n-次の単位行列。 よって、T~TX^t = det(T)X^t = 0 となる。 つまり、det(T)x_i = 0 が各 i で成立つ。 証明終
238 名前:132人目の素数さん [2005/10/13(木) 13:11:57 ] 定義 環 A のすべての極大イデアルの共通集合を A の Jacobson根基といい、 rad(A) と書く。Jacobson根基を省略して J-根基ということもある。
239 名前:132人目の素数さん [2005/10/13(木) 14:09:07 ] よく恥ずかしげもなくassなんて書けるな
240 名前:208 [2005/10/13(木) 17:26:14 ] 補題 A を環、x を A の元で x = 1 (mod rad(A)) とする。 このとき、 x は可逆元である。 証明 x ∈ m となる A の極大イデアルがあるとする。 rad(A) ⊂ m だから x = 1 (mod m) である。 当然、x = 0 (mod m) だから 1 = 0 (mod m) となって矛盾。 よって、Ax = A でなければならない。 何故なら、Ax ≠ A とすると Zornの補題より、Ax を含む極大イデアル が存在するから。 証明終
241 名前:208 [2005/10/13(木) 17:27:04 ] 補題 A を環、E, F を A の元を成分とする n-次の正方行列とする。 I を A のイデアルとする。 E = F (mod I) とは、行列の成分毎の mod I での合同を意味する とする。このとき、det(E) = det(F) (mod I) である。 証明 明らか。
242 名前:208 [2005/10/13(木) 17:36:29 ] 中山の補題 A を環、I を A のイデアルで I ⊂ rad(A) とする。 M を有限生成 A-加群とする。 IM = M なら M = 0 である。 証明 M の A-加群としての生成元を x_1, ... , x_n とする。 IM = M より、I の元の列 a_(i,j), 0≦i, j≦n があり、 これ等の間に次の関係式が成立つ: a_(1,1) x_1 + a_(1,2) x_2 + ... + a_(1,n) x_n = x_1 a_(2,1) x_1 + a_(2,2) x_2 + ... + a_(2,n) x_n = x_2 . . . a_(n,1) x_1 + a_(n,2) x_2 + ... + a_(n,n) x_n = x_n つまり、TX^t = X^t となる。 よって、(E - T)X^t = 0 となる。 ここで、T = (a_(i,j))、 X = (x_1, x_2, ... , x_n) X^t は X の転置行列。 E は n-次の単位行列。 よって det(E - T)x_i = 0 が各 i で成立つ(>>236 )。 よって、det(E - T)M = 0 となる。 一方、E - T = E (mod I) となるから、 det(E - T) = 1 (mod I) となる(>>241 )。 よって、det(E - T) は可逆元である(>>240 )。 よって、M = 0 となる。 証明終
243 名前:208 [2005/10/13(木) 17:47:48 ] 中山の補題(>>242 )の別証1 >>242 の記号を使う。 a_(1,1) x_1 + a_(1,2) x_2 + ... + a_(1,n) x_n = x_1 より、 (a_(1,1) - 1) x_1 + a_(1,2) x_2 + ... + a_(1,n) x_n = 0 a_(1,1) - 1 は可逆(>>240 )だから、 x_1 ∈ Ax_2 + ... + A x_n となる。 よって、M = Ax_2 + ... + A x_n となる。 これから、n に関する帰納法より、M = 0 となる。 証明終
244 名前:208 [2005/10/13(木) 17:58:50 ] 補題 A を環、M を有限生成 A-加群とする。 N を M の部分加群で N ≠ M とする。 N を含む M の極大部分加群が存在する。 証明 N を含む M の部分加群で M と異なるものから構成される 全順序集合(包含関係による) S があるとする。 S の要素全体の和集合 L は M の部分加群で M と異なる。 何故なら M = L とすると L は M の有限個の生成元を含むから S の要素で M と一致するものがあることになり矛盾。 よって Zorn の補題より N を含む M の極大部分加群が存在する。 証明終
245 名前:132人目の素数さん [2005/10/14(金) 08:33:28 ] >>244 明らかな事を証明するな馬鹿
246 名前:132人目の素数さん [2005/10/14(金) 08:51:11 ] >>244 明らかな事を証明するな馬鹿 omae usero BOKE!!!
247 名前:132人目の素数さん [2005/10/14(金) 09:07:51 ] >208 O-BOKE!!! !!!
248 名前:132人目の素数さん mailto:sage [2005/10/14(金) 09:20:45 ] >>245-247 寝た子を起こすな。
249 名前:208 [2005/10/14(金) 10:24:13 ] 補題 A を環、I を A のイデアル、M を A-加群とする。 (A/I)(x)M は M/IM と標準的に同型である。 証明 A-加群の完全列 0 → I → A → A/I → 0 より完全列 I(x)M → A(x)M → (A/I)(x)M → 0 が得られる。これより明らか。 証明終
250 名前:208 [2005/10/14(金) 10:29:27 ] 中山の補題(>>242 )の別証2 M ≠ 0 とする。 >>244 より、M の極大部分加群 N が存在する。 M/N は 0 以外に真の部分加群を持たない。つまり単純加群である。 よって M/N は1個の元で生成されるから、A の適当なイデアル m に 対して A/m と同型である。N は極大だから m は極大イデアルである。 よって、完全列 M → A/m → 0 が得られる。 よって、完全列 M(x)(A/I) → (A/m)(x)(A/I) → 0 が得られる。 一方、>>249 より、 M(x)A/I = M/IM (A/m)(x)(A/I) = A/m (I ⊂ m に注意) と見なされる。つまり、完全列 M/IM → A/m → 0 が得られる。 よって、M/IM ≠ 0 証明終
251 名前:208 [2005/10/14(金) 10:38:20 ] 個人的には、>>250 の証明が中山の補題の本質を突いてると思う。 どの証明もZornの補題を本質的に使っていることに注意。 A がネーター環ならZornの補題はいらないが。
252 名前:208 [2005/10/14(金) 11:23:43 ] 中山の補題と準素イデアル分解の応用として「Krullの共通イデアル定理」 を証明する。 定理(Krull) A をネーター局所環、m をその極大イデアルとすると、 ∩m^n = 0 となる。ここで n はすべての正の整数 n > 0 を動く。 証明 I = ∩m^n とおく。 mI = I を示せば、中山の補題より I = 0 となる。 mI ⊂ I は明らかだから I ⊂ mI を示す。 mI = q_1 ∩ ... ∩ q_r とする。ここで、各 q_i は準素イデアル。 ある i に対して、I ⊂ q_i とならないと仮定する。 mI ⊂ q_i だから m の各元は mod q_i で零因子となる。 よって、{m} = Ass(A/q_i) である。 よって、m^n ⊂ q_i となる整数 n > 0 がある(>>168 )。 一方、I = ∩m^n だから I ⊂ m^n である。 よって、I ⊂ q_i となって矛盾。 証明終