A を環とし、(M_i), i ∈ I をA-加群の帰納系とする。 ここで、I は有向前順序集合。 同様に、(N_j), j ∈ J をA-加群の帰納系とする。 ここで、J は有向前順序集合。 このとき、 ind.lim M_i(x)N_j = (ind.lim M_i) (x) (ind.lim N_j) となる。ここで等号は同型を表す。
117 名前:132人目の素数さん [2005/09/26(月) 11:47:03 ]
集合 I が前順序集合であるとは、I に以下の条件を満たす関係≦が 定義されていることを意味する。
1) 任意の i ∈ I に対して i ≦ i 2) i ≦ j, j ≦ k なら i ≦ k
前順序集合 I が有向であるとは、任意の i, j ∈ I に対して i ≦ k, j ≦ k となる k が存在することをいう。
有向前順序集合 I を添え字集合とする A-加群の族 (M_i) が帰納系 であるというのは i ≦ j のとき A-加群の射 f_(j, i) : M_i → M_j があり、以下の条件を満たすものをいう。 1) f_(i, i) は M_i の単位射 2) i ≦ j, j ≦ k なら f_(k, j)f_(j, i) = f_(k, i)
帰納系(M_i) から A-加群 M への射を 射 f_i: M_i → M の族(f_i)で i ≦ j なら f_i = f_j f_(j, i) となるものと定義する。
帰納系(M_i) から A-加群 M への射 (f_i) があるとする。 これが次の条件を満たすとき、M を帰納系(M_i) の帰納的極限という。 1) 帰納系(M_i)から A-加群 N への射 (g_i) があるなら、 射 f: M → N が存在し、g_i = f f_i が各 i ∈ I で成立つ。 2) f は上の条件で一意に定まる。
M を ind.lim M_i と書く。ind. はinductiveの略。
118 名前:132人目の素数さん [2005/09/26(月) 12:02:28 ]
有向前順序集合 I を添え字集合とする A-加群の帰納系 (M_i) には、 必ず帰納的極限が存在する。
T を M_i の直和集合とする。T に以下のように同値関係を導入する。 x_i ∈ M_i, y_j ∈ M_j が同値であるとは、i ≦ k, j ≦ k となる k があり、f_(k, i)(x_i) = f_(k, j)(y_j) となることをいう。 ここで、f_(k, i) は、帰納系 (M_i) を定義する射。 これが同値関係を満たすことの確認は各自にまかす。 T をこの同値関係で割った商集合を M とする。 M が A-加群になり、M = ind.lim M_i となることも各自にまかす。
119 名前:132人目の素数さん [2005/09/26(月) 12:18:46 ]
帰納的極限 ind.lim (M_i) は次の意味で同型を除いて一意に定まる。 帰納系 (M_i) の 極限として M と N があるとする。 このとき、A-加群の同型射 f: M → N があり、 f f_i = g_i となる。ここで、f_i: M_i → M, g_i: M_i → N は それぞれの極限を定義する射。
このことは帰納的極限の定義からすぐ出る。
120 名前:132人目の素数さん [2005/09/26(月) 12:30:58 ]
>>118から次のことがわかる。 M = ind.lim (M_i) とし、x ∈ M_i, y ∈ M_j に対して、 f_i(x) = f_j(y) とする。このとき、i ≦ k, j ≦ k となる k があり、 f_(k, i)(x) = f_(k, j)(y) となる。
とくに、x, y ∈ M_i で、f_i(x) = f_i(y) とすると、 i ≦ j となる j があり、f_(j, i)(x) = f_(j, i)(y) となる。
証明 M = ind.lim (M_i) N = ind.lim (N_j) T = ind.lim M_i(x)N_j とおく。
M × N から T への写像φを以下のように定義する。 (x, y) ∈ M × N とし、x = f_i(x_i), y = g_j(y_j) とする。 ここで、x_i ∈ M_i, y_j ∈ N_j で、f_i, g_j はそれぞれ (M_i), (N_j) の極限を定義する標準射。 φ(x, y) = h_(i,j)(x_i (x) y_j) とする。 ここで、h_(i,j): M_i(x)N_j → T は標準射。 これが、x_iとy_jの取り方によらないことと、双線形写像であること の確認は各自にまかす。 よって、テンソル積 M (x) N の性質から、φ(x, y) = λ(x (x) y) となる A-加群としての射 λ: M (x) N → T が存在する。 他方、 μ_(i,j) : M_i(x)N_j → M (x) N が μ_(i,j) = f_i (x) g_j と定義して得られる。射の族 (μ_(i,j)) は帰納系 (M_i(x)N_j) から M (x) N への射を定義する。よって、μ: T → M (x) N が得られる。 λとμが、互いに逆写像になっていることは容易にわかる。 証明終
命題 A を環とし、M と N を A-加群とする。 x ∈ M, y ∈ N とし、x (x) y = 0 とする。 このとき、x を含む A上有限生成の M の部分加群 M' と y を含む A上有限生成の N の部分加群 N' が存在し、 M' (x) N' の元として x (x) y = 0 となる。
証明
M の有限生成部分加群全体の族 (M_i) を考える。 ここで添え字集合 I は M の有限生成部分加群のなす集合であり、 包含関係により順序を定義する。I は有向順序集合である。 当然、有向前順序集合でもある。 M = ind.lim (M_i) は明らかだろう。 同様に、N の有限生成部分加群全体の族 (N_j) を考える。 N = ind.lim (N_j) となる。 こもまでくれば、>>143より命題は明らかだろう。 証明終
命題 A を環とし、MをA-加群とする。 SをAの積閉集合とする。 M_S = M(x)A_S と定義する。 ここで、M(x)A_S は M とA_Sの A 上のテンソル積。 M_S は A_S-加群となる。M_S を M[1/S] と書くこともある。 x ∈ M, s ∈ S のとき、x (x) (1/s) を x/s と書く。 x/s = 0 とすると、ある t ∈ S があり、tx = 0 となる。
証明 x/s = x (x) (1/s) = 0 より、x/1 = x (x) 1 = 0 となる。 >>144 より、A_S のA-加群としての有限生成部分加群 N で 1 を含み、M (x) N の元として x (x) 1 = 0 となる。 N の生成元を、a_1/t_1, ... , a_r/t_r とする。 t_1, ..., t_r の積を t とすれば、N ⊂ A(1/t) となる。 I = {a ∈ A; ある s ∈ S に対して sa = 0} と定義すると、 I は A nのイデアルである。 a ∈ A のとき、a/t = 0 となるのは、sa = 0 となる s ∈ S があるときに限る。つまり、a ∈ I である。 A-加群としての射 f: A → A(1/t) を、f(a) = a/t で定義する。 この射の核は、I に他ならない。f は明らかに全射だから、 A(1/t) は A/I と同型である。よって、 M (x) A(1/t) は M (x) (A/I) = M/IM に同型である。この同型により、 x (x) 1 = x (x) (t/t) は tx mod IM に移る。 x (x) 1 = 0 だから、tx ∈ IM となる。よって、tx = Σ(a_i)(m_i) となる、有限個の a_i ∈ I と m_i ∈ M がある。 すべての a_i に対して sa_i = 0 となる s ∈ S がある。 この s により stx = 0 となる。 証明終
146 名前:208 [2005/09/27(火) 12:17:37 ]
A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 p を Supp(M) の極小元とすると、p ∈ Ass(M) となる。
A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 N を M の部分加群とする。 Ass(M/N) が1個の素イデアルのみからなるとき、N を M の 準素(primary)部分加群という。Ass(M) が1個の素イデアルのみから なるとき、つまり {0} が M の準素部分加群となるとき、 M を余準素(coprimary)加群という。
M の部分加群 N が真に大きい部分加群の共通部分になるとき、 つまり、N = N_1 ∩ N_2, N ≠ N_1, N ≠ N_2 となる部分加群 N_1, N_2 があるとき、N を可約部分加群という。可約でないとき 既約という。
158 名前:208 [2005/09/27(火) 16:03:24 ]
命題 A をネーター環とし、Mを A-加群とする。 N を M の部分加群とする。 N が準素部分加群でなければ、N は可約である。
証明 M を M/N に置き換えて N = 0 と仮定してよい。 よって、Ass(M) に属す素イデアルで互いに異なる p, q がある。 p = Ann(x), q = Ann(y) となる元 x, y ∈ M がある。 Ax は A/p に A-加群として同型だから、Ass(A/p) = {p} となる。 同様に Ass(A/q) = {q} である。 Ass(Ax ∩ Ay) ⊂ Ass(A/p) ∩ Ass(A/q) だから、Ass(Ax ∩ Ay) は 空集合である。よって、Ax ∩ Ay = 0 証明終
159 名前:208 [2005/09/27(火) 16:25:22 ]
補題 A をネーター環とし、Mを 有限生成 A-加群とする。 f ∈ Hom(M, M) とする。 ある整数 n > 0 に対して f^n(M) ∩ Ker(f) = 0 となる。
証明 M の部分加群の昇列 Ker(f) ⊂ Ker(f^2) ⊂ ... を考える。M はネーターだから、Ker(f^n) = Ker(f^(n+1)) となる 整数 n > 0 がある。この n が求めるものである。 証明終
160 名前:208 [2005/09/27(火) 17:03:07 ]
A を環、I を A のイデアルとする。 V(I) = {p ∈ Spec(A); I ⊂ p } と定義する。 V(I) の形の Spec(A) の部分集合を閉集合と定義することにより、 Spec(A) に位相が入る。この位相を Spec(A) のZariski位相という。
161 名前:208 [2005/09/27(火) 17:04:58 ]
補題 A を環とし、Mを 有限生成 A-加群とする。 Supp(M) = V(Ann(M)) となる。
証明は演習とする。
162 名前:208 [2005/09/27(火) 17:17:27 ]
A を環、f ∈ A とする。S = {f^n; n = 0, 1, 2, ...} とする。 S は積閉集合である。A_S を A[1/f] または A_f と書く。 A[1/f] が零環となるのは f がべき零のときに限る。 よって、Spec(A[1/f]) が空となるのは、f がべき零のときに限る。 Spec(A[1/f]) は、集合 D(f) = {p ∈ Spec(A); f は p に含まれない} と同一視される(>>81)。
定義 Aを環とし、MをA-加群とする。 Aの元 a が M に関して概べき零であるとは、各 x ∈ M に対して、 整数 n(x) > 0 が存在して、a^(n(x))x = 0 となることを言う。 n(x) が x によらないとき、つまり、ある整数 n > 0 に対して、 (a^n)M = 0 となるとき、a を M に関してべき零であるという。
176 名前:208 [2005/09/30(金) 16:52:47 ]
Aを環とし、I をそのイデアルとする。 Supp(A/I) = V(I) である。
証明は演習とする。
177 名前:208 [2005/09/30(金) 17:13:43 ]
A を環とし、Mを A-加群とする。 Supp(M) に属す全ての素イデアルの共通部分は、M に関して概べき零な 元全体と一致する。
A をネーター環とし、Mを A-加群、 N = Q_1 ∩ Q_2 ... ∩ Q_n を M の部分加群 N の最短準素分解 各i に対して {p_i} = Ass(M/Q_i)、 S を A の積閉集合とする。 0 < r < n, i = 1, ... , r に対して p_i ∩ S は空、j = r+1, ... , n に対して p_j ∩ S は空でない とする。このとき、N_S = (Q_1)_S ∩ (Q_2)_S ... ∩ (Q_r)_S となり、これは N_S の M_S における最短準素分解である。