[表示 : 全て 最新50 1-99 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- 2chのread.cgiへ]
Update time : 02/08 14:23 / Filesize : 486 KB / Number-of Response : 732
[このスレッドの書き込みを削除する]
[+板 最近立ったスレ&熱いスレ一覧 : +板 最近立ったスレ/記者別一覧] [類似スレッド一覧]


↑キャッシュ検索、類似スレ動作を修正しました、ご迷惑をお掛けしました

FFの恋する小説スレPart5



1 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2005/12/17(土) 15:08:53 ID:GxaSj02M0]
文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
=======================================================================
 ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
 ※sage推奨。
 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。
 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
 ※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。
 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
=======================================================================

前スレ
FFの恋する小説スレPart4
game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101760588/

記述の資料、関連スレ等は>>2-20にあるといいなと思います。

444 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/09(日) 20:34:39 ID:NKIq9mAM0]
どうでもいいが「それが、人、なのだろう」という台詞を見て
某ゲームでエンディングに敵役が吐いて行く台詞を思い出したのは俺だけですか。

「優しいのだな、ラカン。きっと、それが人であることの意義なのだろう」

445 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/09(日) 21:08:01 ID:ho+L9GPU0]
突っ込んだらいかんのかもしれんが
カオス内部ってのはオメガ内部の間違いだろうけど
ユフィはオメガ内部にも入ってないよな?
零番魔コウ炉行ってネロの闇にとっ捕まって精神攻撃喰らってダウン、
ヴィンvsヴァイスの時にやってきてオメガ覚醒時に
ヴィンセントに突き飛ばされてそのまま魔コウ炉から脱出、だよな。
オメガが復活したときには外にいたし、オメガの周りにはバリア張られてたし。

446 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/09(日) 21:16:23 ID:d6sIHsJd0]
>>445
思ってたけど言わないでおいたのに!!

447 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/10(月) 00:42:13 ID:aToOPwCv0]
>>445
ご指摘ありがとうございます。
読み返したらカオスとオメガと間違ってるし、誤字多いし…ort
仕事が忙しくなるので、今の内少しでも進めようと焦ってしまいました。
急ぐよりも、質を落とさない方が大事ですよね。もっと落ち着きます。

>>446
皆さん、気付かれてますよね。あぁ、恥ずかしい…ort

恥ずかしいけど、誰にも言われないより、指摘して頂いた方が救われます。
何か気付いた事がありましたらよろしくお願い致します。

明日、書き溜めた物をまた投下に参ります。訂正分も合わせて投下し直しますね。


448 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/10(月) 05:45:06 ID:zv2alniz0]
>>DC後 ◆BLWP4Wh4Oo
ユフィがエエ娘だー!
6章終盤の出来事をシェルク視点で思い出しているところがナイスです。
FF7プレイ当時のユフィの印象を、うまくDCのイベント(特にビンタの動機として)
描いてくれているのが嬉しかった。

>>444
横レス(そして板違いw)ですが。
自ら進んで人の道を外れて歩む事を選んだ者と、
「生きてほしい」という願いから、結果的に人の道から外れた存在にされたヴィンセント。
彼らの背負っているテーマって似てると思います。どっちも最後は飛んでいくところとかw


そういやネロの闇の中からユフィとシェルクを救出したんだから、ついでにケット・シーも
救出してやってくれないものかと思…わないかw

449 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(17) mailto:sage [2006/04/10(月) 05:51:07 ID:zv2alniz0]
>>375-379より。
----------

                    ***

 額に多量の汗を浮かべ、肩を上下させて荒く呼吸を続けるリーブに肩を貸し、
彼を支え起こしながらシドは問う。
「おい、何があった!?」
「……ろ、が。……」
 俯きながら答えたリーブの言葉に主語はなく、それどころか言葉にすらなって
いない。事情を聞こうと声をかけたまではよかったが、シドはますます訳が分から
なくなった。
「どうしたんだ!? おい、リーブ!」
 気絶するほどの衝撃ではないにしろ、ケット・シーがもたらす影響というのは
少なからずリーブの身体にも及んでいた。シドや、まして何も知らないシェルクが
戸惑うのは仕方のないことだった。
 そもそもリーブがこの能力について、これまで――神羅時代の同僚や上司は
もちろん、3年前ともに戦った仲間達にさえ――詳しい話をしたことは無かった。
何も知らない彼らから見れば、特に外傷を負ったようにも見えない男が、なんの
前触れもなく突然苦しみだしたのだ。そんな状況を目の当たりにして、驚くなという
方が無理だろう。
 リーブの“能力”とは、ある特定の条件を満たした無機物に命を吹き込むことが
できると言うもので、つまりケット・シーは完全な遠隔操作ロボットではなく、リーブが
命を吹き込んだ文字通り“分身”なのである。だから分身が受けた衝撃の一部を、
本体であるリーブも感覚として捉えることができた。零番魔晄炉の最深部でケット・シーが
見た光景をリーブが知り得たのもこのためだ。

450 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(18) mailto:sage [2006/04/10(月) 05:55:47 ID:zv2alniz0]
 しかしこの能力自体、リーブ自身も完全には理解できていない部分が多くあった。
だから語らないのではなく、語れないのだ。
 皮肉にも結果的にはこのことが、リーブの身に及んだかも知れない危険を回避する
ことにもつながった。下手をすれば都市開発部門統括責任者という立場ではなく、
ヴィンセントやレッド13のように宝条の被験体として神羅ビルに身を置く運命が待って
いただろう。あるいはシェルクのように、適性者としてディープグラウンドへ送られていた
かも知れない。もしそうなっていれば、この能力を目覚めさせることもなく、命を落とした
可能性だってある。
 いずれにせよ、今こうしてこの場所にいることは無かっただろう。
「す……みま……、せ」
 口を開けば出てくるのは言葉を成さない掠れた声だけで、シドからの問いかけにも
まともな返答をできずにいた。頭の中には明確なビジョンとして答えが見えているというのに。
 迫っている危険を知りながらも、それを伝えられないもどかしさは、まるでそれ自体が
気道を塞ぎ呼吸を妨げている様だった。
「だーっ、もういい分かった! 分かったからとりあえず黙ってろ!!」
 リーブの姿を見かねてそう言ってしまったのはいいが、シド自身なにが分かったのかは
分からない。強いて言えば、こんな状態のリーブから何かを聞き出そうというのは間違って
いる、という事は分かった。

451 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(19) mailto:sage [2006/04/10(月) 05:56:56 ID:zv2alniz0]


「…………」
 シェルクは黙ってふたりに背を向けた。彼らの姿を目の当たりにしていると、なぜか
居ても立ってもいられなかった。一刻も早くこの場を立ち去りたい、そんな衝動に駆られた。
 ――なぜだろう?
    人間の死
    そんなものには、これまで数え切れないほど立ち会って来たはずなのに。
    今さら……。
(……今さら……?)
 ――今さら、何だと言うのだろうか。目の前で苦しんでいる男が死んでも良いとでも?
    それでどうなりますか? 何が得られるのですか?
(…………)
 当初、エンジンルームへ行くのは自分だった。それを阻止し代わりにケット・シーが
エンジンルームに向かった。その結果として今、目の前に広がる光景がある。
 「ケット・シーは、ふつうのロボットには搭載されていない"感情"を積んでいます」
 「彼らのデータは、私の記憶を介して蓄積されています」――先ほど、リーブ=トゥエスティの
語っていた言葉をシェルクは思い出していた。
 やがてシェルクの中で、点在するデータが関連付けされていく。こうして導き出された仮説が
事実だとすれば、恐らくケット・シーとリーブ=トゥエスティは同期していると考えることができた。
残念ながらその構造やシステムまでは皆目見当もつかないが。ネットワークに意識のみを
潜行させるシェルクの能力と似ているか、とても近い存在の様にも思える。あるいは、まったく
逆なのかも知れない。
(それは、つまり……)
 とにかく今は急がなければ。そんな使命感にも似た思いが、シェルクの足をエンジンルームへと
向かわせた。

452 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(20) mailto:sage [2006/04/10(月) 06:02:07 ID:zv2alniz0]


 無言で立ち去ろうとする少女の背中を、シドは何も言わずに見送ろうとした。
しかし、リーブはそうする訳にはいかなかった。整わない呼吸、たとえ肺の中に
残った空気が尽きるとしても、声を絞り出そうとした。
 エンジンルームにはネロがいる。いくらシェルクがツヴィエートの一角を成す程の
力の持ち主だとしても、ネロには――彼の持つ闇の力には敵わない。彼女を行かせる
のは危険すぎる。
「い、けま……せ、ん……シェルクさん!!」
 たとえここで自分が向かったとしても何の戦力にもならないだろう。かと言ってシドを
行かせるわけにはいかない。ここで軸となる戦力を失えば、魔晄炉破壊の任務を遂行
する人間がいなくなってしまう。先に降下している地上部隊は苦戦を強いられている、
もはや戦況はとても楽観視できる状態ではない。
 となれば、なおさら今ここで彼らを失うわけにはいかなかった。
 考えるまでもない、答えは1つだ。
 自分の身を支えていたシドの肩を退けて、リーブは通路の壁を支えにして立ち上がる。
視線はまっすぐ前方に向け、足下は決して見なかった。まるで何かに取り憑かれたように、
エンジンルームへ向けて身体が動く。
 そんな憔悴しきったリーブの姿を目の当たりにしたシドだったが、目の前で何が起きて
いるのかは未だ理解できずにいた。彼がなぜ苦しんでいるのか、どうしてそこまで必死に
エンジンルームを目指そうとしているのか。
 しかし考えても埒があかない、理解しようとする前にシドは立ち上がると背負っていた槍の
柄をリーブの眼前に突き出した。狭い飛空艇内の通路で、今のリーブの前進を妨げるには
それだけで充分だ。



453 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(21) mailto:sage [2006/04/10(月) 06:07:58 ID:zv2alniz0]
 突き出された槍に手をかけて退けようとするリーブに、シドは言い放った。
「おいてめぇ、……出撃前のオレ様の話を聞いてなかったのか!?」
 その問いにリーブは答えなかった。もちろんシドの戦声を聞いていなかった訳では
ない、むしろ思いはシドと同じだった。

 ――これは、生き残るための戦い。

 だからこそ、シェルクを連れ戻さなければならなかった。
 しかしこの男――シド=ハイウィンドに言葉だけで説明しようとしてもムダなのだ。
それは3年前の旅でリーブも心得ている。シドにとって重要なのは言葉ではなく、
思いなのだ。
「彼女を、行かせる訳には……いきません」
 思いを伝えるには、それだけで充分だった。
 その言葉に、シドは「……そうか」と言ってゆっくり頷いた。しかしそれは、同意を示す
ものではなかった。
「だがオレ様もなぁ、お前を行かせるわけにはいかねぇんだよ」
 そう言って乱暴に胸ぐらにつかみかかると、怒鳴るようにしてシドは続ける。
「いいかリーブ、よぉーっく聞いとけ。
 確かに飛空艇師団への出資者はてめぇだ。だがな……飛空艇の中ではオレ様の
指示に従ってもらうぜ。できねぇなら今すぐ、この艇から降りろ!」
 旧ミッドガル領空付近を飛行中の艇から、ホバーやパラシュートもなしでどうやって
降りろというのか。しかも地上は現在交戦の真っ最中だ。それはどう考えても明らかに
自殺行為だ。
 無論シドとて飛空艇のパイロットとしての知識と経験は豊富にある、自分が言っている
ことが無茶苦茶なのは百も承知だった。だが、リーブに向けられた彼の目は真剣その
ものだった。
「離……」
 その手をどけてくれと言おうとしたが、声は続かなかった。
「大体なぁ、これから地上に降りて魔晄炉爆破するんだろうが?! 部隊を誰が先導すんだよ? 
……空ならともかく、オレ様はミッドガルの構造なんざ知らねぇぞ」
「し、かし」

454 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(22) mailto:sage [2006/04/10(月) 06:13:29 ID:zv2alniz0]
 なおも反論しようとするリーブを一瞥して、シドはため息を吐いた。胸ぐらを掴んでいた
手の力が緩められ、解放されるものだと安堵した。
 しかし次の瞬間、腹部に強烈な痛みが走る。
 その一瞬、リーブの目に見える世界がまぶしく輝いた。直接的なこの痛みは、恐らく。
「……、シ……ド?」
 全身から力が抜けていく。両足と壁、ふたつの支えを失ったリーブは、物理法則に従い
床へと倒れ臥した。どさりという音だけがやけに大きく聞こえた気がする。
 倒れた後、痛みよりも強く感じたのは頬全体に広がる冷たい感覚だった。白光した視覚から
得られる情報はなかったものの、腹部を殴られそのまま意識を失うまでの間、リーブは驚く
ほど冷静に自身の状態を捉えていた。
 気絶する。そう認識した頃には視界を覆い尽くしていた白光は収まり、今度は一転して闇が
広がっていく。
 徐々に視界を浸食していく闇の中で、彼の内に流れ込んで来たのはケット・シーからの声。
たくさんの思い。
 この時になってようやく、リーブは自身の持つ能力の本質に気づいたのかも知れない。
(……ケット・シー、は……)

 ――おっさん。オモチャのわいに命をくれて、おおきに。
    また……
    …………。

 しかし最後までその声を聞くことなく、リーブの意識は途切れた。
----------

455 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/10(月) 13:48:27 ID:5fgW9QZKO]
保守

456 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/10(月) 17:05:33 ID:75RVQt4P0]
鼓吹士続き、待ってましたっ!!
インスパイアの実態、興味深いです。
ケット・シーは……??
更に続きを待ってますー!!

457 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/10(月) 17:40:13 ID:aToOPwCv0]
>>449-454
シドの、乱暴だけど、リーブを心配して止める所がすごくいい!
ギリギリな所でのこの二人のやり取りがすごく好きです。
ケットの最後の言葉も泣ける…続きを楽しみにしてます!

458 名前:DC後 【22・23の訂正】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/10(月) 17:43:44 ID:aToOPwCv0]
>>441 の訂正です。
書き直したのを全部貼ろうかと思いましたが、長くなるので訂正箇所だけで失礼します。

×ユフィはいつもの右手でシュシュッとやる、が、すぐにへたり込んでしまう。
○ユフィはいつもの右手でシュシュッをやるが、すぐにへたり込んでしまう。

×ヴィンセントと一緒にカオスの中心部まで行き、人知外の物を見聞きしてきた
ユフィは自分で気付かない内にダメージを蓄積していたようだ。
○敵地中枢まで行き、人知外の物を見聞きしてきたユフィは
自分で気付かない内にダメージを蓄積していたようだ。

>>442
×「大体さ、アイツ…アタシよりジジィのくせして…無理しんなっつーの!」
○「大体さ、アイツ…アタシよりジジィのくせして…無理すんなっつーの!」

>>448
DC内でのユフィはおちゃらけ担当にされてしまって、物足りなくて。
素直でストレートに怒ったり心配したり…そんなユフィのが書きたかったんですよ。

459 名前:DC後 【24】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/10(月) 17:47:27 ID:aToOPwCv0]
>>348-354 >>360-362 >>416-420 >>427-432 >441-442の続きです。

「心配…してたんですね。」
ユフィがバスルームに消えた後、シェルクがぽつりと呟く。
「そうね。信じてるけど、心配なの。矛盾してるようだけど。」
「私も心配しています。」
「私もよ。」
ティファが微笑む。
「さてと…ユフィの着替えを出してあげなくちゃ。」
ティファはそう言って、階段を上りかけ、足を止める。
「あ…シェルク、さっき何か言いかけなかった?」
「いえ…別に。」
ティファはそう?と訝しげな顔をしたが、
後でゆっくり聞こうと思い直し、部屋に着替えを取りに入る。
残されたシェルクは、クラウドの持って来た段ボールからカプセルを一つ取り出す。
胸の部分のを外し、付け替える。
背中のもそうしようとして、思い留まった。
もう魔晄エネルギーはないのだ。
仮に調達出来たとしても、次に手に入るのはいつになるか分からない。
これだけの量でどれだけ活動出来るかは分からないが、
(少しでも長く保たせなければ…)
残りのカプセルを戻そうとして、箱の底に別の物を見つけた。

460 名前:DC後 【25】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/10(月) 17:48:40 ID:aToOPwCv0]
(何…?)
手に取ろうとした途端、バスルームの扉が開く。
「ティファーっ!着替えー!」
バスタオルだけを纏った(まとった)だけのユフィがガチガチと歯を鳴らしながら出て来た。
「うっひゃ〜!寒い!氷水でも使ってんじゃないの?」
身体を縮込ませ、足をバタバタと踏みならす。
さっき言っていた事と、現在の行動には大きな矛盾が感じられたのと、
ユフィの様子がおかしくもあり、シェルクが思わず吹き出す。
「あーっ!笑ったな!」
目敏く気付いたユフィが拗ねる。
その顔を見て、シェルクはさっきティファが自分を笑った理由が分かった気がした。
ここに来る時に纏っていた毛布が椅子に掛けてあったのを思い出し、
それをユフィに手渡してやる。
「あ…ありがと。」
少し赤くなりながら、ユフィがそれを受け取る。
階段を下りて来たティファがユフィの様子を見て吹き出す。
「なぁに?冷たい水は平気じゃなかったの?」
「だってさ〜、雪ん中で滝に打たれるのって意味あると思えないもん。」
「やっぱり、サボってたのね?」
シェルクも声には出さないが、やはりそうなのかと納得してしまう。
「もぉ、いーじゃん!ねぇ、着替え貸してよ。」
「私の部屋の、ベッドの上に出してあるわ。」
ユフィはやかましく階段を上って行ってしまう。
ティファはやれやれとそれを見送ると、例の段ボールを抱えてその後に続く。
箱の中身を確認しようと思っていたシェルクは、
なんとなくそれが言い出せなくてそれを見送った。

461 名前:DC後 【26】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/10(月) 17:51:07 ID:aToOPwCv0]
部屋に入ると、早々に着替えたユフィが何やらブツブツ言っている。
「なぁに?」
「大きいよ。」
「そのパンツ、ウエストの内側に紐が付いてるの。それで絞って…」
ティファは、色が気に入らない、胸が余る、等等、
やかましいユフィの世話をあれこれと焼いてやり、
最終的にグレイのコットンのパンツに淡いイエローのタンクトップ、
それに白いパーカーを羽織る…という格好に落ち着いた。
「ねぇ、ユフィ。ミッドガルに戻りたかったら、今度クラウドが来た時に
また連れて行ってもらえばいいわ。それまでここで少し休んで行きなさい。」
「それまでに…見つかるかな。」
「きっと見つかるわ。」
ユフィはくるりとティファに背を向ける。
「しょーがないなぁ。それまで居てやるか。」
泣いてる顔を見られたくないんだろう、ティファはそう思い、
「少しこの部屋で休んでらっしゃい。私、夕飯の支度をしてくるから。」
そう言って、部屋を出て、ドアを閉めた。

つづく。

462 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/11(火) 11:20:46 ID:m/NGidVeO]
イイヨイイヨー
続き楽しみにしてる!



463 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/11(火) 16:40:22 ID:o41VMW0u0]
超GJ、楽しみにしてるよ

464 名前:DC後 【27】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/11(火) 21:42:03 ID:uW3vrKUq0]
>>348-354 >>360-362 >>416-420 >>427-432 >>441-442 >>459-461の続きです。

一人で降りて来たティファは、ユフィは少し休んでるからとシェルクに伝え、
カウンターに入ると夕食の支度を始めた。
「今夜はね、シチューとサラダとマッシュポテトよ。」
そう言って、大量のジャガイモの入った籠をでん!とシェルクの前に置く。
「全部剥かなくていいの。これくらいかな?」
ティファは適度な大きさの物を5つくらい選び、少し考え直して、更に3個加える。
「パンもお米も手に入らなかったの。マッシュポテトはライス替わりね。」
シェルクに皮剥器を手渡し、掃除のときと同じ様に、作業を細かく教える。
「こうやって、ジャガイモの皮の上で滑らすの。芽があったらここの爪でえぐり取って…」
手袋を取り、ぎこちない手で皮むきを始めたシェルクの向いに座って、ティフは人参の皮を剥く。
作業をしながら、商店は開いていたが流通が滞っており、商品がなかった事を話した。
「だから保存試食総動員のメニューなの。レタスがちょっと萎れ(しおれ)かけね。」
ティファはふと手を止め、シェルクの手元を見る。
「大丈夫?」
シェルクは皮剥き器に苦戦しているようだ。
ふぅ、と小さく息を吐き、皮剥き器をテーブルに置くと、
「あの…ナイフはありますか?」
ティファは小ぶりの包丁を持って来て渡してやる。
するとシェルクはそれを使って器用にするすると皮を剥き始めた。
目を丸くするティファに、シェルクは頬を少し赤くする。

465 名前:DC後 【28】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/11(火) 21:43:25 ID:uW3vrKUq0]
「昔…母の手伝いをした時に覚えました。」
その頃と同じ様に包丁が使える事に自分で驚いてしまう。
(もう10年以上前なのに…)
ぼんやりと覚えている台所の風景と母の後ろ姿。
包丁を持たせてもらえたのがうれしくて、
姉と二人で競う様にして野菜の皮剥きをした事を思い出した。
「お家のこと、思い出したのね?」
シェルクは頷いた。
「どんなお家だった?」
首を横に振る。
「そっか…」
黙々とジャガイモの皮を剥くシェルクに、ティファはそれ以上話しかけなかった。
野菜の皮を全部剥いてしまうと、ティファは手際良く料理を作る。
横から眺めていると、簡単な手伝いを次々と言いつけられた。
シェルクがポテトマッシャージャガイモと格闘していると、表で賑やかな子供の声がした。
「帰って来たようね。」
ティファは料理を中断し、手を拭いて出迎える。
「ティファ!」
「ただいま!」
「おかえりなさい。」
ティファは屈んで両手を広げると、二人を抱きしめる。
二人はティファと会えなかった間に起こった出来事を口々に喋ろうとする。
「ストップ!お話は食事の時にゆっくり聞くわ。まずはお客様にご挨拶して。」
言われて、二人は初めてカウンターに居るシェルクの方を見た。
挨拶と言われ、シェルクもカウンターから出て来る。

466 名前:DC後 【29】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/11(火) 21:44:43 ID:uW3vrKUq0]
途端に子ども達の顔が強ばった。
目を輝かせてティファにしがみついていたのが、男の子の方はぎゅっと眉を顰め
唇を噛み締めているし、女の子は怯えてティファにしがみついてしまった。
「どうしたの、二人とも…?」
喜ぶとばかり思っていたティファも、二人の反応に戸惑う。
「その人は仲間だよ。」
シェルクが声のした方を見ると、身体に入れ墨の様な模様を持つ、
赤い豹の様な不思議な生物だった。
声がした所に居るのは、この生物だけだ。
(じゃあ、今、喋ったのは…)
シェルクが目を丸くしていると、その生物はシェルクの足下にゆっくりと歩み寄る。
「シェルクだね?」
ぎこちなく、シェルクが頷く。
「オイラはナナキ。みんなから話は聞いてるよ。あんたに会いたかったんだ。」
「ティファが言っていた、もう一人の“仲間”って…」
「オイラの事さ。驚いたかい?」
ナナキはデンゼルとマリンの方に振り返って、
「この人だよ。ヴィンセントを助けてくれた仲間は。」
“仲間”という言葉がうれしくもあるが、
それよりも子ども達の反応がシェルクにはショックだった。
「さ、分かったでしょ?ちゃんとご挨拶して?」
ティファに促され、二人は顔を見合わせ、
そして漸く小さな声で名乗り、ぺこりと頭を下げた。

467 名前:DC後 【30】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/11(火) 21:45:50 ID:uW3vrKUq0]
「二人とも、すぐに夕飯にするわ。上でユフィが寝てるの。起こして来てちょうだい。」
「ユフィ姉ちゃんが来てるの!?」
二人は歓声を上げて、階段を駆け上って行った。
「気にしないでいいよ。」
ナナキは首を伸ばし、シェルクを見上げる。
「あの子達も、ディープグラウンドソルジャーに襲われたんだ。
シェルクの服を見て、それで驚いただけだ。」
「そう…ですか…」
「大丈夫よ、シェルク。」
ティファが優しくシェルクの肩を抱く。
「ほら、もう上でユフィと大騒ぎしてるわ。」
言われて思わず天井を見上げる。
二人はなかなか起きないらしいユフィのベッドに乗ったり、大声を出したりして大騒ぎだ。
「シェルク、窓際のテーブルにテーブルクロスを掛けてくれる?」
物思いに沈むシェルクにティファが声を掛ける。
「ティファ…私…食事は…」
「食べなきゃダメよ。」
「でも…」
「子ども達の事なら、本当に心配ないわ。むしろ…」
「…?」
「心配なのは、むしろあなたの方ね。きっと子ども達に質問攻めにされるわ。」
「特に、男の子の方はやっかいだよ。」
何の事か分からないシェルクの手にテーブルクロスを手渡す。
「さ、これを広げて来てね。次は、カウンターに置いてるグラスを並べて。」
シェルクは何も言えなくなり、ティファに言われるままにテーブルクロスを広げた。

468 名前:DC後 【31】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/11(火) 21:47:00 ID:uW3vrKUq0]
「シェルクって、強いの!?」
テーブルに座って“いただきます”と言って、全員がスプーンを持った途端、
デンゼルの口から出た第一声がこれだった。
さっきの怯えた顔はどこへやら。
「デンゼル、いきなり失礼よ。」
マリンがたしなめる。そして改めてシェルクに、
「ねぇ、シェルク、シェルクは父ちゃんに会った?」
「マリンだっていきなりじゃないか。」
「強いとか、そんな事レディに聞くものじゃないわ。」
「じゃ…じゃあクラウドには会った?」
「ずっと家にいるの?」
「リーブ局長に会った?」
「シェルクはどこから来たの?」
「シェルクはどんな武器を使うの?」
「こらあああ〜っ!」
寝起きで不機嫌なユフィが子ども達を叱る。
「そんなに質問攻めにしたら、シェルクが食べられないじゃない。」
「だって、ティファがお話は食事の時って言ったよ。」
デンゼルがマッシュポテトで口に頬張りながら答える。
当のシェルクはまるで回線が切れてしまったかの様に呆然としている。
質問の内容にも驚いたが、子どもの回復力と言おうか、適応力にも驚いた。
(いけない。質問…答えなくては…)
これでもツヴィエートの一員だったから強いと答えていいのだろうか。
しかし、今回の戦役では悔しいがアスールの言う通り、
情報収集方面でのバックアップがメインで、実戦での勝利はない。
(でも、リーブ局長は“あなたは強いから”と言ってくれた…)
しかし、シエラ号のエンジンルームでネロに破れたわけだし。
悶々と思い悩んでいると、
「シェルク?あんたもひょっとしてマジで考えてない?」
気が付くと隣に座っていたユフィが顔の前で手をひらひらさせている。

469 名前:DC後 【32】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/11(火) 21:48:25 ID:uW3vrKUq0]
「シェルクはネットワークのプロフェッショナルよ。
でもヴィンセントが手こずるくらい、とても強いから、
お行儀の悪い子はシェルクにお仕置きして貰う事にするわ。」
すっげー!と叫びかけてじろり、とティファに睨まれ、デンゼルは肩を竦めた。
「ねぇ、ティファ。」
落ち着いた所で、ナナキが口を開いた。
因にテーブルに座れない彼は、その横でお膳の様な小さな台の上に
可愛らしいランチョンマットを敷いたという、マリンの特製テーブルを使っている。
「オイラも、ヴィンセントが見つかるまでここに居ていいかい?」
「大歓迎よ。」
子ども達と、ついでにユフィが歓声を上げる。
「ところでさぁ、ナナキ。」
口をもぐもぐさせながらユフィが尋ねる。
「アンタ、いつもメールの返信くれるけど、どーやって打ってるの?」
「どうって…普通だよ。」
「アンタの普通と、アタシ達の普通じゃ違うよ。」
食事の途中だけど…と、ナナキは前足の付け根の腕輪(?)から携帯を口でくわえて取り出し、
床にそっと置き、口と前足を使って器用に電話機を開いた。
そして、爪の先で器用にボタンを押して見せる。
「へぇ〜!器用だね!」
「器用どころか、ユフィよりよっぽど使いこなしてるよ。
ユフィ、『お』って打つのに、『あ』を5回押してるだろ?」
「な…なによ、他に方法があるの!?」
「オイラはポケベル入力だから、ユフィより早いよ。」
ユフィは手をワナワナと振るわせ、本気で悔しがっている。

470 名前:DC後 【33】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/11(火) 21:49:50 ID:uW3vrKUq0]
「最近、アンタ生意気だよ!」
ナナキはどこ吹く風だ。
「こう見えてもオイラ、ユフィより年上なんだけど。」
「ユフィ姉ちゃん。お行儀悪いと、シェルクにお仕置きされちゃうよ。」
デンゼルの言葉に、途端に食卓が笑いで包まれる。
最初は戸惑っていたシェルクも、釣られて笑う。
そして、漸くシチューを口に入れる事が出来た。
口の中で味を反芻してみる。
いつも食べていた戦闘用糧食は同じメニューばかりで、
しかも飽きが来ないようにする為、味付けは薄いくせに塩分が多かったのだが、
(…おいしい…)
10年ぶりの家庭料理はシェルクには随分と濃い味に感じられた。
しかし、ずっと忘れていたハーブや、新鮮な野菜の味が次々と思い出された。
そして何よりも、この雰囲気。
(団欒…)
「お味はどう?」
ティファに聞かれて、今度は素直に答えられた。
「とても…おいしです。」

つづく
===========================================================
>>462 >>463
ありがとうございます!続きもどうか楽しみにしてて下さいね。

無駄にエピソードを入れ過ぎて長くなってしまいましたが、
投稿人、また書くのが楽しくて止まりません。
ごめんなさい、長くなりますがどうかお付き合い下さいませ。
今週はここまでです。週末、もしくはその次の週末にまた参ります。

471 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/04/12(水) 00:56:08 ID:H461OTbL0]
シェルクイラネ

472 名前:413 mailto:sage [2006/04/12(水) 14:45:43 ID:8QKd/EujO]
>>421
ありがとうございます!
ちょっと心配だったんですがそう言って貰えると嬉しいです。


書き上げたんですが、今投下されてる方のお話が終わってからの方が良いですよね?




473 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/12(水) 15:11:13 ID:fbPJkYEt0]
スレの流れ見てもらえればわかると思うけど…今連載中で投下してる人が2人いる。
だから終わってからの方が良いとかは関係ない。

474 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/12(水) 17:00:18 ID:oXRXCOd50]
>>413
はやく見たいっ!投下キボン(;゚∀゚)=3


475 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/12(水) 17:24:38 ID:fn18U9FyO]
レスアンカーと通し番号あった方が分かりやすいので、投下の際は気に留めて頂ければ幸いです。
(詳細は>>1-4
期待sage!

476 名前:470 mailto:sage [2006/04/12(水) 23:33:35 ID:TpPFOUcq0]
>>472
むしろ自分のせいで投下しにくくなってるのでは…と心配してました。
楽しみにしてましたので、禿上がる程投下キボンヌです。


477 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/13(木) 16:05:18 ID:pWcWANy10]
保全

478 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/14(金) 02:03:37 ID:DtXI7vQS0]
とりあえず保守

479 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/14(金) 13:56:35 ID:cjZLP6AKO]
保守

480 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/14(金) 23:15:09 ID:MTkz1+YA0]


481 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/15(土) 00:21:03 ID:X3ZQ+/hG0]
>>DC後 ◆BLWP4Wh4Oo
日常の風景があたたかく描かれているのが和めます。
特に直前まで(街の光景と…ユフィの水風呂もか!?)が冷たさを強調していた(ように感じた)ので
いっそう、温もりを感じるのかも知れません。デンゼルとマリンが相変わらず良いコンビ。
箱の底に残っていたのは何でしょうかね? シェルクにとって魔晄に頼らない
あるいは希望になり得る何か、なのかな。こういう展開好きだな…。続きまってます。

>>472
書ける時、書きたいときが投下し時。
気にせずどんどん投下汁!!

482 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(23) mailto:sage [2006/04/15(土) 00:31:46 ID:X3ZQ+/hG0]
>>449-454より。
----------

                    ***

 エンジンルームへの入り口を視界の中央で捉えたシェルクは、ためらわずにロックを
解除し室内に飛び込むと開かれたドアの先に広がる光景を目の当たりにして、はじめて
足を止めた。
 室内は恐ろしい程の静寂と、機械を焼いたためか鼻をつく異臭が充満して所々に火が
くすぶっている。メインエンジンに被弾した様子はなかったはずなのに、おかしいとシェルクは
思った。
 しかし燻っているのが火だけではないことを、シェルクの視覚神経は正確に脳へと伝達する。
「……まさか……」
 視覚から得られた情報を元に、ここで起きたであろう大凡の事態を予測するまでには、
それほどの時間を要さなかった。しかし、それはあり得ない――それは単に“あって欲し
くない”という少女の希望のみを拠にした結論なのかも知れない――だが、その予測
以外にこのような事態が起こることは考えられなかった。
 大きな矛盾をはらんだ思考から、あるいは絶望的な結論を導き出す事から逃れようと、
無意識にシェルクは決して広くはないエンジンルームを見渡し、それを見つけた。
(……ケット・シー……)
 仰向けに倒れ、動かなくなってしまったケット・シー。それはもはや、ただの人形だった。
傷つき血を流すわけでもなく、ただ横たわるだけの人形のはずなのに、それを見たシェルクの
中に静かに湧き出る感情が、確かにあった。

 ――『よっしゃ! そんじゃもう一踏ん張りや!
    わいもサポートさせてもらいまっせ〜。一緒にがんばりましょ』

 シェルクは自分に向けられたケット・シーの笑顔を思い出す。それはつい、数十分前の
出来事だったはずだ。
 メディカルルームに現れた奇妙な猫。その正体は、周囲に置かれた機械と中身は変わらない
はずのロボット。けれど小さな体を動かして、妙な口調で話しかけてきた。さっきまで、少女の
耳は確かにその声を聞いていた。



483 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(24) mailto:sage [2006/04/15(土) 00:39:30 ID:X3ZQ+/hG0]
 あの時、リーブ=トゥエスティが語っていた言葉が同時に脳裏をよぎる。
「どんな言葉を使って、どう語れば思いを伝えられるのかが分からない」と、
彼はそう言っていた。そんなものは別に伝える必要のないものだと、シェルクは
否定した。それなのに、今頃になってなぜ?
(ケット・シーは……)

 ――「私たちは、これから10年を取り戻すんだ。」

 血を流すこともなく、気がつけばカプセルの中でただ横たわるだけの彼女の姿も、
そう言えば人形のようだった。つい数時間前まで、彼女は話し、動き、なにより
“生きて”いた。
(……お……姉、ちゃん)
 そんな――姉の語った言葉までもが思い出され、シェルクはぎくりと身を震わせた。
「……こんなところで会うなんて、奇遇ですねぇ」
 今度は聴覚が直接捉えた音声に、シェルクは顔を上げた。聞き覚えのある声、だが
そこに懐かしさを感じる訳ではない。
「……ネロ……」
 本当は恐ろしかった。
 同じツヴィエートとして、シェルクは自分とネロの能力差について嫌と言うほど知って
いる。『漆黒の闇』の名を持ち、彼自身ですら制御の利かないという強大な力を持つネロに
対抗するには、シェルクの存在も力も弱すぎた。軟弱な身体に貧相な能力。そんなことは
アスールに言われるまでもなく分かり切っている事だ。
 そんな彼がなぜ、こんな場所にいるのか?
「どうして……ここへ?」
 シェルクの問いに彼はどこまでも淡々とした口調で「不足している分の生命を回収しに
来た」と答えた。ネロにとって人は生物ではなく、エネルギー源、あるいは単なる有機物に
過ぎない。
「ここにいた人達は……」
 聞くまでもない問いが、口をついて出てくる。考えるだけでも恐ろしい、あまりにも残酷な
結論を、自らの手で導き出したくはなかった。まるで答えることそのものが罪であるように
さえ思えた。

484 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(25) mailto:sage [2006/04/15(土) 00:46:39 ID:X3ZQ+/hG0]
「おかしな事を言いますね」
 わざわざ聞かなくても、あなたには分かっているはずだ。ネロはそう言って
笑った。事実その通りなのだ、分かっている。ここにいたはずの人達が、どの
ような最期を迎えたのか。考えたくなかった。だから目をそらそうとした。目を
そらした先に、横たわる人形の姿があった。
(!!)
 動かなくなってしまったケット・シーは、けれどシェルクに何かを告げている
ような気がした。
(…………)
 苦痛から逃れるために目をそらして、見ようとしなかった光景がたくさんあった。
 それでも、まっすぐ自分を見つめてくれる人達がいた。
 互いに武器を向けながらも、決して目をそらさなかったヴィンセント=ヴァレンタイン。
 自分に武器を向けられても尚、語り続けたリーブ=トゥエスティ。
 本気で怒りをぶつけてきたユフィ=キサラギ。
 一緒にがんばろうと、笑いかけてくれたケット・シー。
 身に迫る危険を顧みず、それでも最後まで諦めなかったシャルア=ルーイ。

 ――自分が世界でいちばん不幸だなんて、思ってなどいない。
    私は、ただ……。

「見ての通り、既に回収は終わりました」
 淡々と語るネロの言葉は、シェルクの奥深くに眠っていた何かに触れた。
 勝てるか勝てないかなんて問題ではなかった。半ば衝動的にスピアを取り
出し意識を集中する。そんな少女の姿を見たネロは、僅かに首を傾げた。
「……何をする気です?」
「さぁ……私にも、よく分かりません」
 魔晄の力とシェルク自身の能力を湛えた2本のスピアはオレンジ色に輝き
出す。衝動に駆られるまま、シェルクはそれをネロに向けた。自嘲なのか苦笑
なのか分からない、そんな作り物めいた小さな笑みを浮かべながら。

485 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(26) mailto:sage [2006/04/15(土) 00:59:52 ID:X3ZQ+/hG0]
 目の前に立っているのは、”仲間”と呼べるほどの存在ではなくとも、これまで
太陽を奪われ死に支配された暗い地の底で、共に生き抜いて来た者。
 これが勝算のない戦いだと知りながら、それでも。
「……ただ」

 ――『それでは、シェルクさん。頼みましたよ』

「いちど受けてしまった頼みを、“反故にするのは気持ちが悪い”ということは、
分かりました」
 そして。その逆も。

 ――「私たちは、これから10年を取り戻すんだ」
 ――『一緒に、頑張りましょ』


 果たされることの無かった言葉たちが、シェルクの内に何度も繰り返して
響いていた。


                         鼓吹士、リーブ=トゥエスティX<終>



----------
・エンジンルームで倒れたケット・シーを見た時のプレーヤー(=投下者自身)の
衝撃を表現してみたかった。(実際には「リーブ死んだのかよ!!」って衝撃でしたがw)
・前回と今回のテーマは「シェルクの遅い反抗期。」
>>421なんとなく自分もそんな風に思ってました…w)

あんまり恋愛要素を含まない(…無いに等しい)話ですが、
一応DC終了時点までリーブ中心に書いていくつもりなので、今しばらく続きますです。。。

486 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/15(土) 17:09:04 ID:JNcgh6xiO]
保守

487 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/15(土) 22:56:28 ID:7F9Gr2yjO]
>>485
乙です!おもしろかった。
キャラそれぞれがすごく良い味出ていて読みやすかった。

488 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/16(日) 11:52:27 ID:HdkbS/sm0]
ほしゅ

489 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/04/16(日) 13:33:31 ID:sOVjZS2Z0]
18禁書いていい?

490 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/16(日) 23:03:03 ID:sNKH2s3R0]
>489
>>3に該当スレがあります。
>>107もご参考にどうぞ。




491 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/17(月) 18:07:18 ID:XtP+Pf1iO]
保全

492 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/18(火) 11:59:51 ID:1AROW/1VO]
保守



493 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/18(火) 22:07:43 ID:dtNUYMwB0]
保守

494 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/19(水) 01:06:34 ID:8EV2z4100]
>>485
シェルクの心に芽生えた色んな感情を一緒になぞっていく感じです。
倒れているケットを見て、はっと息を飲んだシェルク。
そこを丁寧に書いて下さって、あぁ、やっぱりケットの
心配をしてくれてるのね…と、うれしかったです。

シエラ号のピンチあり、シェルクとケットシーの交流あり、
おじさん達のガチンコ対決(?)ありで続きがますます楽しみです。

495 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/19(水) 01:30:52 ID:8EV2z4100]
>>481
ありがとうございます。
DCラストでナナキとユフィが座ってるシーンがすごく好きで。
二人はどんな話をしてたんだろう、とか、
男連中がいなくても、たくましくも華やか〜な女性陣(特にユフィ!)
が、書きたかったんですよ。

投下前に、投稿が長きに渡りましたので、もう一度お断りをさせて頂きますね。

※DC後、ヴィンセントが戻って来るまでの仲間達のお話です。
※プレイされてない方はネタバレになるのでご注意願います。
※夢見がちなクラティと、シェルクがオリジナルメンバーにどういう風に受け入れられていったか
という話なので、彼女が苦手だったり、 オリジナルメンバーと絡むのがお嫌いな方はご遠慮下さい。

496 名前:DC後 【34】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/19(水) 01:31:29 ID:8EV2z4100]
>>348-354 >>360-362 >>416-420 >>427-432 >>441-442 >>459-461 >>464-470の続きです。

食事が終わると、子ども達はてきぱきと食器を運び、
テーブルクロスをランドリーゲージに入れ、
ティファがそれらを手際良く洗って片付ける。
洗った物をマリンが丁寧に拭いて、デンゼルが食器棚にしまう。
あまりにもシステム化されていて、シェルクが手伝う余地すらない。
「まったく、良く出来た子達だよなぁ。」
「本当に良く手伝うよね。コスモキャニオンに居た時だって…あれ?」
ナナキが不意に言葉を切って、店の入り口の方を見る。
「誰か来た。」
「こんな時間に?」
二人の間に緊張感が走る。
「ヴィンセントではないの?」
心配そうにティファが尋ねる。
「匂いが違う。民間用トラックと…一人降りて来た。」
ドアがノックされる。
子ども達を店の奥に下がらせて、ティファがそっとドアを開ける。
「なんだ…おじさん…」
ティファがホッと胸を撫で下ろす。
やって来たのは常連客の一人だった。
「すまないなね、こんな遅くに。」
「ごめんなさい、お店はまだ…」
「分かってるよ。今日はクラウドに頼まれたんだ。」
「クラウドに…?」
そしてティファは、漸く昼間の会話を思い出した。
常連客は、家具屋だったのだ。

497 名前:DC後 【35】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/19(水) 01:34:00 ID:8EV2z4100]
「配達が遅くなっちまったけど、奴らのせいで注文が立て込んでてね。
クラウドがどうしても今日中にって言うもんで…あ、ここに受け取りのサインを頼むよ。」
ティファは戸惑いつつも、言われた所にサインをする。
「どうしたんだい?奴らにベッドを壊れたのかい?」
「え…えぇ…」
ティファは自分の背後で家族と客人が耳をそばだてているのを感じ、努めて明るい声で、
「家に…友達が避難して来たの!それで…ベッドが足りなくて…」
「あれ?おかしいなぁ?クラウドは“ティファのだ”って言ってたんだが?」
「い…いやだわ、クラウドったらなんでそんな…」
「どれにする?って聞いたら、“店で一番立派な物”って言ってたよ。幸せもんだねぇ、ティファは!」
恥ずかしさがピークに達したティファはなんと返していいのか分からない。
「あんまり立派過ぎると、部屋に入らないだろうから適当なのを選んでおいたよ。」
「おっじっさ〜ん♪」
ティファの背中から上機嫌なユフィが顔を出す。
「ねぇ、クラウドが本当にそう言ったの?」
家具屋の親父は突然顔を出したユフィに驚いたが、
「あぁ、言ったよ。」と、頷く。
ユフィと子ども達は歓声を上げて外に飛び出し、
組み立てる前のベッドの部品を店に運び始める。
「うわぁ〜…真っ白なベッドね。お姫さまみたい。」
白いスチールが優美な曲線を描き、マットはピンクだ。
マリンがうっとりと言う横で、ユフィは腹を抱えて笑っている。
「クラウド、すっごい少女趣味!」
ティファはいたたまれず、俯してしまう。
「残念だけどお嬢さん、それを選んだのはわしだよ。ウチの店で一番立派な物だよ。」
そして、困り果てているティファに、
「男ってのは、何を贈れば女房が喜ぶかなんて実は全然分かってないんだよ。
贈られて迷惑な物でも、喜んあげな、ティファ。」
「迷惑だなんて…そう…そうよね…」
からかわれてとても恥ずかしいけど、やはりうれしい。

498 名前:DC後 【36】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/19(水) 01:36:14 ID:8EV2z4100]
「喜んで頂く事にするわ。遅くにありがとう。」
「組み立てるのは大丈夫かい?」
「ええ。」
帰る家具屋に礼を言ってから、ベッドを広げて大騒ぎする3人を、こら!と叱りつける。
「夜遅くに大声出さないの。ユフィ、それを私の部屋に運んでちょうだい。」
「え〜!?今から組み立てるのぉ?」
「そうでないと、あなたが寝る所がないわよ。」
「なんでぇ?」
「じゃあ、今夜クラウドのベッドで寝る?」
「…いえ…結構です。」
そして、横に居るナナキに小声で、
(それしにてもさぁ…クラウドって相変わらずツメ甘いよね〜)
(なんで?)
(どぉーせならダブルにすりゃいいのにさ!)
「聞こえてるわよ。」
ユフィがおそるおそる顔を上げると、手を腰に当てたティファが微笑んでいる。
微笑んでいるが、目が笑っていない。
ユフィは慌ててベッドヘッドを抱える。そして、チラリとティファを見ると、
「ねぇ…アタシさぁ…やっぱ古い方のベッドがいいな。」
「どうして?」
「これ…アタシの趣味じゃないし、それに…」
「それに…なぁに?」
「これで寝たらさぁ〜クラウドになんか、呪われそう。」
「ユフィ!」
ユフィはベッドヘッドを抱えたまま、慌てて階段を上ってしまう。
「…もう!」
ティファはやれやれと溜め息を吐き、説明書片手にベッドを組み立てると、
子ども達にシーツや毛布を運ばせた。


499 名前:DC後 【37】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/19(水) 01:37:08 ID:8EV2z4100]
新しいベッドで寝るのはどうしても嫌だとユフィがダダをこねるので、
お姫様ベッドにはシェルクが寝る事になった。
しかし、シェルクにはベッド一つで何故こんな大騒ぎになるのか分からない。
「それに、これは大事な贈り物ではないのですか?」
「おかしいかもしれないけど、クラウドのベッドには誰も寝て欲しくないの。」
そして、ティファは人差し指を唇に当てて、
「私以外にはね。ユフィには内緒よ。」
ティファは照れているが、とても幸せそうに微笑んでいる。
「…よく分かりませんが?」
「その内シェルクにも分かる様になるわ。でも、今日はもう休んでね。」
そして、シェルクの肩に手を置いて、顔を覗き込む。
「夜、具合が悪くなったりしたら、すぐにユフィを起こして。」
シェルクが頷くと、ティファも満足げに頷く。
「じゃあ、明日ね。おやすみなさい。」
実際、とても疲れていたので少しホッとして階段を上った。
ティファの部屋にはベッドが2つ並び、人一人がやっと通れる程のスペースしかない。
僅かな隙間を通って窓際のベッドに行く。
ユフィは古い方のベッドで、すぅすぅと寝息を立てている。
食事前に少し眠っていたたようだが、疲労が濃いようで、
食事中も時々あくびを噛み殺していたり、だるそうに肩を回したりしていた。

500 名前:DC後 【38】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/19(水) 01:38:09 ID:8EV2z4100]
子ども達も眠ったようで、家の中はさっきまでの賑やかさが嘘のように、しんとしている。
(つい昨日まで、星と…私たちの生存をかけた戦いだったのに…)
激しい戦いと、暖かい団欒とを一度に体験したせいだろうか、
「私も…疲れました…」
誰に言うでもなく、そう呟くと、シェルクはベッドに横になった。
地下に連れ去られてから、眠る場所と言えばずっと無骨なパイプベッドに固いマットレスだった。
いや、ベッドで眠れればいい方で、一晩中カプセルの中だったり、
手術室でたくさんの機械に繋がれて何日も過ごしたり…
それが今や“お姫さまみたい”なベッドの上だ。
お陽様の匂いのする洗い立てのスーツに柔らかい毛布…
それだけでも充分なのだが、やはり気持ちが華やぐ。
ふと動かした視線の先に、例の段ボールがあった。
(明日こそ…ティファに聞こう…)
今度は窓の外を見る。
(彼は…いつ戻るのかし…ら…)
彼が戻ったら、何から話そう?やはり、最後に交わしたあの約束だろうか。
そこからすとん、と意識が途切れ、シェルクに10年ぶりの穏やな眠りが訪れた。

501 名前:DC後 【39】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/19(水) 01:40:18 ID:8EV2z4100]
とても長く眠っていた様な気がする。
誰かが呼んでいて、それで目を覚ました。
「シェルク、朝ご飯なくなっちゃうよ!」
マリンとデンゼルが顔を覗き込んでいる。
「シェルクはお寝坊さんね。みんなお腹を空かせて待ってるわよ。」
マリンのおしゃまな言い方にシェルクも釣られて笑う。
いや、笑おうとしたが出来ない。
ありがとう、すぐに起きます…そう言おうとしたが、唇が動かない。
起き上がろうとしても、身体に力が入らない。
「…?どうしたの?」
子ども達の笑顔が曇る。
(そんな顔、もうさせたくないのに…)
ちゃんと起きて、心配しないでと言ってあげたい。
なのに、身体の感覚がなくなり、手足がなくなってしまったかのようだ。
舌も痺れてしまって、思う様に動かせない。
「…め…うご…け…ない…」
もつれる舌で、それだけ言うのがやっとだった。
「…ィ…ファを……んで…」
二人は転がる様にして部屋を飛び出すと、大声でティファを呼んだ。
(いつか来ると思ってましたが…こんなに早く来るとは…)
耳はまだ大丈夫なようで、誰かが急いで階段を駆け上がって来る音が聞こえた。
でも、舌はもつれ、顎を動かす事すら出来ない。
これでは話も出来ない。
(…話したい事が…たくさん…あるのに…)

つづく。

502 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/19(水) 15:08:55 ID:yfP5NoRHO]
イイヨイイヨー
続きが気になる!



503 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/19(水) 16:35:56 ID:KFAONQ/30]
GJ!!
続きはやくみたい〜〜!!

504 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/19(水) 23:46:32 ID:8EV2z4100]
>>502>>503
ありがとうございます。また週末に参りますねノシ

チラシの裏ですが、クラウドってあまり女心が分からないと言いましょうか、
プレゼントなんか、さんざん外してきたのではないかと思っています。
(ラウディウルフのリングは除きます。)
「そんなことないやいヽ(`Д´)ノ」と思われてる方は
イメージ壊しちゃってごめんなさい。




505 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/20(木) 13:33:54 ID:rYDbZGXkO]
保守

506 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/21(金) 11:03:34 ID:g8LEcWoGO]
保守

507 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/22(土) 11:18:49 ID:6S+u1Tyq0]
保全

508 名前:DC後 【40】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 15:31:12 ID:iCTtZy6p0]
お断り】魔晄エネルギーに関する記述は投稿人の独自の解釈です。間違ってたらごめんなさいよ。

>>348-354 >>360-362 >>416-420 >>427-432 >>441-442 >>459-461 >>464-470>>496-501の続きです。

「ティファ!シェルクが大変なの!」
ベッドの側でマリンがティファに叫ぶ。
「身体が動かないって…うまく喋れないみたいなの。」
ベッドでいっぱいになった部屋の隙間を通って、
ティファはシェルクのベッドの側で屈み、顔を覗き込んだ。
青ざめ、泣き出しそうな顔でティファを見上げている。
唇が震えていて、上手く動かせないのが分かる。
「ユフィ!そこの箱の中のカプセルを取って!」
その瞬間、シェルクが眉を顰めた。
部屋に入りきれないで入り口で様子を伺っていたユフィは
すぐに箱の中からカプセルを取り出し、ベッドの上を通ってティファに手渡す。
それを受け取ったティファは、シェルクの毛布を剥いで、
空になったカプセルを外そうとする。
「ティファ。」
その様子を見ていたマリンがティファの腕に手を置く。
「シェルク…それを付けるの、嫌みたい。」
「え…?」
ティファは思わず手を止め、マリンを見て、そして改めてシェルクを見た。
「そうなの?」
頭が微かに動いた。


509 名前:DC後 【41】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 15:32:40 ID:iCTtZy6p0]
ティファは一瞬悩んだ。が、それでも空になったカプセルを外して新しいのに付け替えた。
「分かるわ、シェルク…でも今は…私に時間をちょうだい。それに…」
シェルクの額に優しく手を置く。
「どのみち、カプセルはこれが最後なの。」
シェルクが目で頷いた。
「頑張れる?」
唇の端が少し上がって、笑っているように見えた。
ティファはシェルクの髪をくしゃくしゃと撫でてから、立ち上がり、
「ユフィ、マリン、デンゼルはまずはこのベッドを壁際に寄せて。
ナナキ、クラウドにメールしてくれる?文面は……」
一同はすぐに動き出した。
ティファは箱の底から、もう一つの箱を取り出した。
昨日からシェルクが聞き損ねていた、あの箱だ。
それは、大きな段ボールのほとんどのスペースを占めていた。
ベッドを移動させて出来たスペースに、ティファはその中身を取り出し、広げる。
細いパイプのような物、点滴のパック…
カプセルを付け替えたお陰で、少し頭を動かせる様になったシェルクは、
ベッドの上からそれを眺めていた。
ティファが細いパイプを組み立てると、それは点滴のスタンドになった。
「ユフィ!脈を見て…デンゼル!地下室にプラスティックのブルーの箱があるの。
それを持ってきてちょうだい。マリンは水差しにお水を汲んで来て。」
ユフィはベッドの側にしゃがむと、シェルクの手を取った。
棒の様に細い腕、手は冷たくなっていて、その痛々しさにユフィは唇を噛んだ。
「ティファ、体温も下がってるよ。」
「ナナキ、体温計も!場所はマリンに聞いて。」
「分かった。」
目の前にあるユフィの顔があまりにも辛そうで、シェルクは溜まらない気持ちになる。
「すみ…ません…」
「ばか!謝ってなんかいらないって!脈も上がって来てんだ。心配いらないよ。」
「それ…は…これの…お陰です…」
シェルクの視線の先にはさっき付け替えたカプセルがあった。

510 名前:DC後 【42】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 15:35:00 ID:iCTtZy6p0]
シェルクはティファの瞳を見つめ返す。
「それはね、私が看護のプロだからよ。」
確かに、シェルクの容態を見ての対応や家族への指示の出し方、
挙げ句の果てには点滴までやってのけたのだ。
「そぉー言えばそうだっけ。」
横でユフィが素っ頓狂な声を上げる。
「クラウドなんてさ、ティファが居なけりゃ未だに廃人だもんなぁ。
シェルク、安心してティファに任せなよ。」
「ユフィ。クラウドが未だに廃人だったら、この星はとっくになくなってたわよ。」
ティファは手を止めず、シェルクの髪を撫で続けてやる。
「クラウドもね…重度の魔晄中毒だったの。他にも色んな…本当に色んな事が重なって…
歩けないし、意識もハッキリしなくって、ひどい状態だったわ。私も、もうダメって何度も
諦めかけたけど、今では元気に子ども達のパパ代わりで、配達屋さんよ。」
ティファの最後の言葉が、シェルクは笑ってしまう。
ぶっきらぼうなあんた呼ばわりのクラウドが、子ども達のパパ代わり…
そして、ティファの言葉通りなら、ひょっとしたら自分も
再び起き上げれる時が来るかもしれないと思える。
「ティファ…」
「なぁに?」
「どうして…みんな私に親切にしてくれるんですか…?私…敵だったのに…
ヴィンセントやWROを手伝ったのも…成り行きで…」


511 名前:DC後 【43】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 15:38:19 ID:iCTtZy6p0]
「私たちだって、成り行きみたいなものよ。そうね…確かに最初は星を救うためだ!
って強く思ってたし、その気持ちに嘘はないわ。」
「ヴィンセントが言ってました。『私の周りには理屈抜きで飛び出して、
誰かを助けるお人好しばかりだ。』と。これはあなた達の事ですか?」
その言葉にユフィは大憤慨だ。
「な…なんだよ!自分だって、相当お人好しのくせしてさっ!」
ユフィの様子がおかしくて、ティファはくすくすと笑った。
「彼にそう言われるなんて光栄ね。でも…ずっと星のためだと思って戦ってきたけど、
本当は自分のためだって分かったの。大切な人といつまでも一緒に居たいって…
大切な人と…会えなくなるのは嫌…失いたくない…」
ふと、ティファは言葉を切った。ユフィも、ナナキも顔を伏せてしまう。
「上手く言えないわ。でも…私はあなたに元気になって欲しいの。それだけ。」
ティファは明るく言うと、血圧計に目を移した。
「ねぇ、ティファ。」
ナナキが口を開く。
「さっきクラウドの話で思ったんだけど、魔晄エネルギーを浴びるのって、
オイラ達が封印した“古の薬”に似ているんだ。」
「なに、それ?」
ユフィが尋ねる。
「昔、戦いの前に戦士が飲む特別な薬なんだ。それを飲むと魔力も体力も強くなるんだ。
だけど、飲み過ぎたり、飲み続けると…クラウドみたいになっちゃう。
聞きかじっただけだけど、シェルクの力は他のソルジャーと違って、
とても集中力が必要なんじゃないかな?それと、10歳の女の子がずっと地下で
色んな実験をされて来たんでしょ?とても怖かったと思うんだ。」
宝条に捕まって実験動物扱いを受けた時、強がってはいたが、
本当はとても怖かったとナナキは言う。
「だから、能力を高めるのと、ストレス緩和の両方を
魔晄エネルギーに依存してたんじゃないかな?」
「麻薬みたいなものね…」
溜め息まじりにティファが呟く。

512 名前:DC後 【44】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 15:41:04 ID:iCTtZy6p0]
「でもさ!ってことは、もう怖くないんだし、すぐに良くなるよ。」
「…だと…いいのですが…」
楽観的なユフィの言葉にシェルクは苦笑いしつつも、
「…私も…最初は思っていました…いつかこの服を脱ぎたい…魔晄に頼らず…」
自由に。そう言いかけた途端、シェルクの身体が大きく痙攣した。
「シェルク…?シェルク!」
「ユフィ!押さえて!」
ガクガクと身体をのけ反らせるシェルクを、ユフィが覆い被さって押さえる。
ティファは箱の中から銀色のケースを取り出し、中の注射器を手に取ると、
一緒に入っていたアンプルから薬を吸い取る。
動かない様に腕を押さえて消毒すると、注射をする。
暫くして痙攣は収まったが、シェルクはそのまま昏睡状態に陥った。

つづく。

※チラシの裏です。
ソルジャーになるのに魔晄を浴びるのは、身体を作り替えると同時に、
精神力と言いましょうか、集中力を高めるのではないかと自分なりに解釈しました。
間違っていたらごめんなさいよ。




513 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 15:50:50 ID:iCTtZy6p0]
>>509 DC後 【41】 と
>>510 DC後 【42】 の間が抜けてました。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

ライフストリームの渦に落ちて逝って参ります…o)))rt

以下、抜けてた分です。

514 名前:DC後 【41.5】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 15:51:24 ID:iCTtZy6p0]
「また…話せなく…なる…から…」
ティファは3つの点滴パックをバイパスで繋ぐと、箱の中にあったアルコールを
ガーゼに含ませ、シェルクの左腕の肘の裏側をそれで拭いた。
親指で軽く押して、血管を探すが見つからない。
(落ち着いて…)
少し場所を変えても見つからず、手の甲でやっと細い細い血管を捕らえた。
「シェルク、少し痛いわよ。」
そして、躊躇いなくシェルクの手の甲に針を差し入れた。
傷みに、シェルクが小さく呻く。
「ティファ!」
デンゼルが運んで来た箱を持って来る。
「ありがとう。そこに置いておいて…」
デンゼルは頷くと、心配そうにシェルクを見つめる。
それに気付いたシェルクが、微かに微笑むと、デンゼルは何故か顔を赤くした。
マリンは持って来た水差しをベッドサイドテーブルに置くと、
デンゼルの手を引いて部屋を出て行った。
ティファはナナキから体温計を受け取ると、目盛りを確かめてから
胸元のファスナーを少し下ろして、腋に挟む。
「ティファ…聞いて…下さい…」
「なぁに?」
デンゼルの持って来た箱から血圧計を取り出すと、それを腕に巻きながら答える。
「もともと…カプセルだけでは…足りないのです。」
ティファは血圧計のスィッチを入れると、ユフィの傍らに屈みこんだ。
「どういうこと?」
「私は…他のディープグランウンドソルジャー達と違って、とてもひ弱に出来ています。
魔晄エネルギーも…毎日…全身に浴びなくては身体が保たないのです…」
「それは初めて聞いたけど…あなたが“ひ弱”だとは思わないわ。」
「そぉーだよ!リーブのおっちゃんが頼むくらいだもん。弱かなんかないよ!」
ティファがシェルクの頭を撫でながらは優しく諭すと、ユフィも同調する。
「でも…私…」
「シェルク、あなたが聞きたがっていたこと、答えてあげるわね。
 リーブがあなたが滞在するのに家が最適だって言ってた理由。」

515 名前:DC後 【45】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 23:00:15 ID:iCTtZy6p0]
【お断り】看病の仕方やなんかは、投稿人の適当な知識です。まちがってたら、ごめんなさいよ。

夜になっても、シェルクは目を覚まさなかった。
ティファとユフィは交代で側についていたが、
血圧や脈を測る以外にはただ見守る事しか出来なかった。
「ユフィ…私、食事の支度してくるわね。」
ユフィは椅子に反対向きに、背もたれを抱える様にして座っている。
「うん、分かった。」
ティファは入れ違いに、マリンが入って来た。
「シェルクは目を覚ました?」
「まだだよ。」
マリンはさっきまでティファが腰掛けていた椅子に
よいしょ、と座ると、持っていた絵本を開いた。
「シェルク、眠ったままでしょ?ご本を読んであげようと思って。」
「あ〜…その話なら今のシェルクにはぴったりかもね。」
マリンは声を上げて、その本を読み始めた。
魔女の呪いで100年間眠り続けたお姫様の話だ。
意識がなくなってからずっと、点滴のお陰で血圧は安定している。
身体の力が抜けてしまうので呼吸が浅くなるから…と酸素マスクもされている。
もう必要ないだろうと、ディープグラウンドソルジャーの服も
ティファが用意したパジャマに着替えさせられている。
「あとは…シェルクの気力次第だと思うの。」
ティファはそう言っていた。
マリンが語る物語を聞くともなしに聞いていたユフィだったが、
(もし、シェルクがこのまま眠り続けて目を覚まさなかったら…)
ユフィは慌てて頭を振り、血圧計に目をやる。
その数字を見て、一気に血の気が引いた。

516 名前:DC後 【46】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 23:00:59 ID:iCTtZy6p0]
「大変だ…!」
慌てて脈を取る。今にも途切れそうだ。
「ティファ!!…マリン、ティファを呼んで来て!」
マリンは椅子から滑り降りると、急いでティファを呼びに走る。
ティファが部屋に飛び込むと、ユフィが必死で心臓マッサージをしている。
「ティファ!血圧が…脈も弱ってるの…」
ティファは箱の中からまた注射器を取り出す。
「強心剤よ。効いてくれるといいけど…」
「効くよ!」
即座にユフィが叫ぶ。ティファは驚いてユフィを見る。
「そうね…ごめんなさい。」
ティファは心臓マッサージを続けるユフィの傍に屈むと、
シェルクの細い腕に注射をする。
子ども達とナナキが心配そうにドアの外から様子を伺っている。
「あ、クラウドだ。」
店の外で聞き覚えのあるエンジン音がして、デンゼルが階下に走る。
扉を開けて、また大きな箱を抱えてクラウドが入って来る。
「クラウド!シェルクが…!」
クラウドが箱を抱えたままティファの部屋に入ると、
昨日とはうってかわって、死人の様に青ざめたシェルクが横たわっていた。
「どうした…?」
「クラウド…」
ティファはクラウドの持っていた箱を受け取った。
「良くないの…意識がなくなって…急に呼吸も心拍数も落ちて…」
箱の中を漁りながらティファが答える。
ふと、見た事のない点滴パックを見つけ、取り出す。
「クラウド、これは?」
「神羅ビルの地下にいた研究者達に話を聞いて、
必要な薬も貰って来た。ティファが持っているのがそうだ。」
「ありがとう…これね。」
ティファは早速、薬を点滴に繋ぐ。

517 名前:DC後 【47】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 23:22:45 ID:iCTtZy6p0]
「ユフィ、代わろう。」
「クラウドぉ…」
ユフィは涙でぐちゃぐちゃの顔でクラウドを見上げる。
「手ぇ…っ…止めたら、シェルクが死んじゃいそうで…」
「ちゃんと薬を持って来た。大丈夫だ。少し休め。」
クラウドとユフィが代わる。
「ティファ…シェルクがこうなって、どれくらい経つ?」
「朝からよ。」
「シェルクの担当者が呼吸が浅い状態が長くなると良くないから気を付けろと。
脳に酸素が充分行き渡らないと障害が残ったり、手足にも血液が行き渡らなくて、
最悪の場合、切断しなくてはいけない場合もあるそうだ。」
「そんな…」
二人の会話を聞いていたユフィは突然立ち上がると、部屋の外に飛び出した。
そして、台所で何かを物色する物音がし、だだだだ、という
けたたましい足音と共に階段を駆け上って部屋に戻って来た。
手には料理用のオリーブオイルが握られている。
「ユフィ…?」
一体何事かと呆然とする二人に構わず、ユフィはシェルクの足下の毛布を捲る。
「な…何をするの?」
「要するにさ、血行を良くすればいいんでしょ?」
ユフィは手にオイルを垂らして、よく馴染ませるとシェルクの足をごしごしと擦り始めた。
「ウータイ流のマッサージ!目が覚めて、手や足がなくなってたら
シェルクがかわいそうじゃん!」
「ユフィ…」
ティファはユフィの傍に座ると、同じ様にオイルを手に取る。
「私にも、教えてくれる?」

518 名前:DC後 【48】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/22(土) 23:23:18 ID:iCTtZy6p0]
子ども達をナナキに任せ、3人は付きっきりで看病を続けた。
クラウドの持って来た薬のお陰で、なんとか持ち直したようだが、
油断すると数値ががくんと下がるのだ。
設備も薬も足りない状態で、心拍数が落ちれば心臓マッサージをし、手足を擦り続けた。
空が白々と明けかけて来ても、シェルクの病状は一向に良くならない。
「WROの施設に運んだ方がいいのかしら…」
クラウドは首を横に振る。
「あそこは…もっとひどい。」
そこが今どういう状態なのか、クラウドの表情を見れば十分だった。
「でも…!リーブに頼んで…なんとかならない?このままじゃ…!」
「ティファ、落ち着いてくれ。」
珍しく取り乱すティファの肩にクラウドは手を置く。
「…ごめんなさい…」
「…見て…」
ずっと手を握っていたユフィが二人を呼ぶ。
「シェルク…何か喋ってる…」
酸素マスクの中の唇が微かに動いている。
「寝言…?夢を見てるのかしら。」
「目…マブタも…ほら!」
睫毛が震えている。
「クラウド!カーテンを開けて!」
ティファが叫ぶ。クラウドはすぐにカーテンを開け放つ。
上りかけの朝日が差し込み、シェルクの顔を照らす。
と、眩しげに眉が寄せられ、睫毛がさっきよりも大きく動いた。
「シェルク!」
ティファとユフィが必死に呼び掛ける。
目蓋が、ゆっくりと開く。
うっすらと開かれた目が、ユフィと、その後ろに立つティファとクラウドを見つめた。
その目が閉じられ、今度はぱっちりと開かれた。頬にも、少しずつ赤みが戻る。
「…良かったぁ…」
ユフィはその場にへたりこむと、すん、と鼻を鳴らした。

519 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/23(日) 01:08:29 ID:WLqn0j8F0]
シェルクーー!!
続ききになるなぁw

520 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/23(日) 01:45:21 ID:SBXo5wMA0]
粗忽者のDC後でございます。読んで下さる皆様にご質問。
このままこのペースで書いていたら、【80】くらいまでかかってしまうかと。

1)それでもいいよ。
2)いい加減終われ。

の、どちらがいいですか?
引き延ばし過ぎ、スレ消費し過ぎではないかと気になっております。
ご意見お寄せ下さいませ。

>>519
ありがとうございます。
自分でも早く読んで頂きたくて頑張ってます。
もう少しお待ち下さいませ。


521 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/23(日) 02:04:15 ID:qwbbwwXoO]
>>520
それでもいい
スレ消費しすぎ云々は別に気にしなくていいとオモ。書き手あってこその小説スレだし、変に展開を急がず、この調子でマターリ書いたらいいんじゃないか

522 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/23(日) 09:22:52 ID:H0TrvFwKO]
>>521と同意見
引き続き期待sage



523 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/23(日) 20:02:57 ID:SBXo5wMA0]
>>521 >>522

ありがとうございます。
一応、話の大筋はあるのですが、投稿人が楽しむあまりエピソードを詰め過ぎて、
スレを独占してるのではないか?他シリーズや、他の職人様が
投稿しにくくなっているのでは?と心配になってしまって。

今回に関してはお言葉に甘えてこのペースで書かせて頂きます。
次回作があれば、その時に考えますね。

また次の週末に参りますノシ そして、他の職人様の光臨もお待ちしてます。

524 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/24(月) 02:08:02 ID:ITA/2Lgu0]
>>DC後 ◆BLWP4Wh4Oo
6章終盤、本部施設でシャルアの傍にいたことが描かれているユフィが
(そこにいた時間は長くないかも知れませんが、少なくとも看護に携わっては
いないと思う…という点を根拠に)必死にシェルクを救おうとする描写の中には、
あの時の「奇跡でも起きない限り〜」の“奇跡”を意識していたんだろうか? って。
ユフィ視点で読むと、彼女が自分の手で“奇跡”を起こそうとしている姿が
とても印象的でした。
…と言うか、ケット・シー@FF7本編ミディールのセリフが伏線になっいるなんて!!
ケット・シー好きとしては着眼点がすてき過ぎて素直に嬉しいですよw(>>510の2行目)
違ったらスンマセン。

喜びすぎましたw、おとなしく続き待ってます。


それから>>520に関しては自分も(1)で。
書ける時、書きたいときが投下し時。
気にせずどんどん投下汁!!!

525 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(1) mailto:sage [2006/04/24(月) 02:27:19 ID:ITA/2Lgu0]
前話:>>482-485
舞台:FF7本編開始の約15年前
備考:「ネオ・ミッドガル計画」再開をほのめかす本編(Disc1神羅ビル)
    でのリーブの発言が今作の根拠。
    古代種エアリスが連れ戻された報せを受けての発言である事から、
    同計画が凍結されたのは古代種2名が脱走した時点(本編開始
    15年前=Disc1エルミナ)と推測。この推測が間違っているとおかしな話にw。
追記:都市開発部門に関してはすべて捏造です。
   :ネオ・ミッドガル計画ってそもそも何なのか、未だによく分かってませんwすいません。
   :今回、前説(言い訳)長くてホントすんません。
----------




 倉庫の隅に捨て置かれていたジョウロを拝借しようとしたが見あたらず、仕方なく
フロアへ戻ってくると、窓辺にたたずむ人影が見えた。その人物は、やれやれと言った
表情でジョウロを傾け水を与えるのと同時に、首まで傾げていた。水と視線が注がれる
先には、1つの小さな鉢植えがあった。
 毎日、毎日。彼女が出社すると決まってこの光景に出会う。始業の2時間以上前には
フロアに着いていたのだが、男はそれよりも前からここにいるらしい。妙な男だなという
のが、彼に対する第一印象だった。何度か声をかけようかとも思ったが、なんだかんだと
いつもタイミングを逃してしまい、そのまま日々が過ぎていった。
 そんなある日。
 この日は朝からどんよりとした曇り空が広がり、まだ始業前で人のいな事もあいまって、
心なしかフロア全体も暗く沈んだように見えた。日中の喧噪が嘘のように静まりかえる
フロアの一角、いつもの場所に彼の姿を見出した。
(また)
 特に何かがあるという訳ではないのだが、実は気になっていた。毎日顔を合わせる彼の
存在そのものももちろんなのだが、彼の行為――鉢植えに水をあげる――というのが、
どうしても腑に落ちない。湿気の多い今日のような日にも、彼は鉢植に水をやり続けている。
(こういう事に口出しするから、お節介だとか言われちゃうんだろうけど)

526 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(2) mailto:sage [2006/04/24(月) 02:39:34 ID:ITA/2Lgu0]
 彼女は意を決し、男のたたずむ窓際まで歩き出した。彼の背後まで来たところで、
鉢植えをのぞき込む。それが見えた瞬間、彼女は思わず大声をあげた。
「……ちょっと!!」
 言うのとほぼ同時に、水をやる男の手首を掴むと有無を言わさずジョウロを取り
上げた。
「アナタ何やってるの!? それはもともと乾燥地帯に自生する植物なのよ。そんな
物に毎日、それもこんなに水をあげてどうするの。しかもこんな悪天候の日にまで!
無責任に水ばかり与えればいいって物じゃないのよ」
「……は、はい?」
 いきなり背後からジョウロを取り上げられ、あげく説教のような詰問のような言葉を
浴びせられた男は、驚いて後ろを振り返った。彼の目に映ったのは、黒いパンツスーツを
身につけ、スーツと同じように黒くて長い髪を持った細身の女性だった。
 そんな彼女の勢いに押し切られたような形で、男は謝罪の言葉を口にした。
「す、すみません……」
「……あ。ごめんなさい」
 その姿に思わず我に返った彼女も頭を下げる。
(私はいったい何をしてるのかな……)
 自分の取った行動に疑問を抱きながらも、彼女の口は自然と言葉を紡いでいた。
しかしその声に、先ほどまでの厳しさは見られない。
「乾燥地帯に自生する植物は、根、あるいは茎に水分を蓄えておいて降雨の少ない土地に
順応した機能を備えているの。だから頻繁に水を与えなくても良いし、逆に日差しの少ない
場所では生育に適しているとは言えないわ」
 鉢植えを置くなら場所を変えた方が良いのでは? と提案した。元々オフィスは北向きに
作られているので、休憩室や待合所の方が環境は良かった。しかし、あちらには既に立派な
観葉植物達が置かれているので、男の手元にあるような小さな鉢植えに居場所はなかった。
そのことは、どうやら男も認識していたようで。
「……希望としては、できればここに置いておきたいと思うのですが」
 一度、手元の鉢植えに視線を落としてから少し間をおいて再び顔を上げた男は、申し訳
なさそうに言った。その姿を見た彼女の顔に、はじめて小さな笑顔が浮かぶ。
「そうね。きっと、その鉢植えにとってもここが一番よ」
 笑顔のままで彼女は男の言葉に同意を示すと、次にこう尋ねた。

527 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(3) mailto:sage [2006/04/24(月) 02:44:46 ID:ITA/2Lgu0]
「植物にとって水や日光以上に必要な物があるの。なんだか分かる?」
 男はしばらく鉢植えを見つめて考え込んでいたようだったが、やがて小さく
首を横に振った。
「いいえ……見当も付きません」
「それを得るためには、どうやらこの場所が一番適しているようね。ただ……」
 彼女の言葉を遮ったのは、自身のポケットから聞こえてくるやたらと甲高い
機械音だった。「失礼」と断ってから携帯を取り出してディスプレイをちらりと見た
後、またすぐにそれをポケットにしまう。
「くれぐれも、水はやり過ぎないことね」
 それだけを告げて、彼女は急ぎ足でフロアを後にした。
(……なんや?)
 取り残された男は声に出さず呟くと、彼女の出て行った方をじっと見つめていた。



----------
・うまく繋がるかは今のところ分からないのですが、生暖かい目で見守って頂ければ幸いです。
・ちなみにDC公式コンプリートガイドに掲載されている「38歳」はそれほど考慮してません。
 その点あしからずご了承下さい。

528 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(3)[訂正] mailto:sage [2006/04/24(月) 02:49:50 ID:ITA/2Lgu0]
コピペミスです。…これじゃ意味が分からないw
>>527最終行訂正
----------
(……なんや?)
 取り残された男は声に出さず呟くと、彼女の出て行った方をじっと見つめていた。
----------



それから524、冷静に考えるとミディールでの発言が伏線なのではなくて、
あの場面でのティファの行動を元にしたお話だということに気づいて
お恥ずかしい限りです。作者さんごめんなさい。
そんな重度の(FF7+DC)中毒症状な自分を看病してもらいたいです、ええw

529 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/24(月) 22:25:47 ID:QC1OqzDC0]
GJ!

530 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/25(火) 12:36:00 ID:VEz3Y+FnO]
ほす

531 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/25(火) 14:37:03 ID:N4QfYnFH0]
筋肉

532 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:age [2006/04/25(火) 23:33:15 ID:wkee6stSO]
ほすあげ



533 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/26(水) 21:07:15 ID:uj3I8Oh00]
保守

534 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/27(木) 00:21:18 ID:veR/SUu20]
>>525-528
GJ!
登場した女性はBCのキャラクターでしょうか?
間違ってたらごめんなさい。
ふと思ったのですが、局長は彼も何かを償うかのようにWROの職務に
没頭してますよね。そんな中でも、お花に水をやってるのかなぁ…と、
そんなことを思いました。

535 名前:DC後 【49】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/27(木) 00:35:46 ID:veR/SUu20]
>348-354 >360-362 >416-420 >427-432 >441-442
>459-461 >464-470>496-501 >508-509 >514
>510-512 >515-518の続きです。

【お断り】
リーブの『インスパイヤ』という能力の解釈やシェルクやディープグラウンドソルジャー達の
魔晄中毒の見解は投稿人独自の物です。間違ってたらごめんなさいよ。

まだ襲撃の後が生々しいWROの急ごしらえの局長室で、
リーブは次々と送られてくる報告書を見ていた。
世界は再び混乱に見舞われ、送られてくる報告書は
彼に溜め息を吐かせるものばかりだった。
だが、三日も経つと、ごく僅かではあるが、
ちらほらと明るい話題も飛び込んで来る。
「人とは…前に進むものなんですね。」
そして、どこかで聞いた言い回しだと思い、
誰の言葉だったかと思い出そうとする。
「なんで分からへんのや。ヴィンセントはんやろ?」
書類の間からぴょこん、と顔を出したのは、リーブ自身の分身で相棒だ。

536 名前:DC後 【50】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/27(木) 00:37:31 ID:veR/SUu20]
「そうでしたね。私としたことが。」
「おっさん、ちょっとは休んだらどうや?疲れてるんちゃうか。」
ケット・シーは今度は反対側の書類の山から顔を出す。
我ながら他愛もない遊びだと思いつつ、ここに籠る前に仲間と話して以来、
交した会話と言えば、報告、相談、指示、のいずれかだ。
(だから…まぁ、ちょっとした息抜きですね。)
隊員達は出払っていて、今はこのフロアには誰も居ない。
この一人遊びを誰かに聞かれる事もないだろう。
「あん時はおもろかったなぁ。」
ケット・シーは机の上でぴょんぴょんと跳ねる。
「艦長があんな事言い出すとは思わへんかったなぁ。」
手を後ろに組んで、机の上をちょろちょろと歩き回る。
「それにしても…実際に旅したのは、わいやけど…
みんなわいに話しかけるみたいにおっさんに話しかけとったなぁ。」
ケット・シーはふと歩みを止めると、リーブを見上げる。
「おっさんも…ホンマはこんな所より、
みんなとヴィンセントはんを探したいんやろ?」
自分を見上げる相棒の表情はどこか寂しそうだ。
「一緒に行きたいのはどっちでしょうね?」
リーブはふっと笑うと、指先でケット・シーの鼻を突つく。
ケット・シーは大袈裟に足をバタバタさせながら両手で鼻を押さえる。
「シェルクさんが心配です。レッド…いえ、ナナキから連絡はありませんか?」
「ホンマに…ワイくらいにはホンマの気持ち言うたらええのに…」
ぽてん、ぽてん、と不思議な足音をさせながら
机の端の充電ホルダーに刺してある携帯電話を取りに行く。

537 名前:DC後 【51】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/27(木) 00:40:14 ID:veR/SUu20]
マスターは自分なのに、この分身は時おり
自分の思惑以外のことを喋ってリーブを驚かせる。
『インスパイヤ』という能力はまだまだ未知な何かを秘めているのか、
それとも人が操る故に気持ちの揺らぎのような物を反映するのだろうか?
リーブはそんなことを思いながら電話を受け取り、メールを見る。
「彼は本当にまめに報告してくれますね。」
「おっさんがここから出られへんのを知ってるからや。」
ケット・シーはエエ仲間やなぁ…と言いながら、
うんうん、と何度も頷いて見せる。が、不意に腕組みをして、首を傾げ、
「…せやけど、ナナキはんは一体どないしてメールしよるんやろうなぁ?」
そして、携帯を握りしめるリーブをまた見上げる。
『本部の復旧は後回し』という局長の方針の為、電力不足で部屋は薄暗い。
携帯のディスプレイの灯がリーブの顔を照らしている。
「シェルクはんはどうなんや?」
「意識は戻ったようですね。でも、まだ起き上がるのは無理なようです。」
「一進一退ってとこやなあ。」
「とりあえず、クラウドさんはヴィンセント捜索に戻りました。」
ディスプレイの文字を目で追うと、献身的かつ、
素人とは思えない適格な看護の様子が書かれている。
「やはりティファさんに預けたのは正解でしたね。」
ホンマになぁ…とケット・シーが頷く。
クラウドがティファに言った通り、収容したディープグラウンドソルジャー達は、
皆、魔晄中毒だ。シェルクほど重傷ではないが、人数が多い為、
ベッドも足りず、ろくな治療も受けられないまま床に横たわるだけなのだ。
彼らの治療、社会復帰…課題は山積みだ。

538 名前:DC後 【52】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/27(木) 00:41:43 ID:veR/SUu20]
「こんな時にヴィンセントはんがおってくれたらなぁ…
今頃、どこで何してんねん…」
これは、分身に言わせた本当の気持ちだ。
仲間は皆、彼の無事を信じている。
かと言って、悪い予感が過ぎる時がない訳ではないのだ。
早く無事な姿を見たい。
無事でよかったと、肩を叩いてやりたい。
病身のシェルクにも会わせてやりたい。
彼が無事だと分かれば、彼女も元気になるだろう。
「まったく、どこで何をしてるんでしょうね。」
「ヴィンセントはんの事やから『面倒はごめんだ』
とか言うて隠れてるんちゃうか?」
ちゃんとヴィンセントの声色と仕草をマネさせてみる。
ここで漸く我ながら何をしているんだろう、と苦笑いを浮かべる。

しかし。

『面倒はごめんだ』

そう、確かにそう言いつつも、彼は星の為に戦ってくれた。
(しかし、それは人道的な見地であって…)
一度閃くと、後は簡単だった。
「すぐに行って貰いたい場所があります。」
ケット・シーは頷くと、ひょいと机から飛び下り、どこかへ走り去った。

539 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/04/27(木) 00:51:11 ID:veR/SUu20]
>524
ユフィってエアリスが死んだ時もすごく泣いてましたよね。
19歳と言えばまだまだ多感なお年頃だし、
気楽な様でいて実は『仲間の死』にはものすごく弱くて、
そういう状況だとすごく頑張るコではないかなぁ…と思いまして。
>527
ミディールでケットが何を言ったか、アルティマニアを
音読したのですが見つけられませんでしたorz
別の発言と勘違いされたとの事ですが、
その元になった台詞等教えて頂けるとうれしいです。
看病はティファとユフィとどちらに?クラウドももちろん可ですよ。


今回、ケット初書きですが、ご満足いただけるといいのですが。

【チラ裏】投稿人は生粋の関西人です。
関西人から見ると、ケット・シーの関西弁って、ちょっと不自然なんですよ。
なので却って“ケットらしい関西弁”が難しかったです。
ちゃんとケットになってたかな?

540 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/27(木) 05:28:09 ID:Zkf/xx/E0]
エアリス「やだっ、この水着はずかしいよぉ」
ティファ「大丈夫だって!ほらクラウドにみせにいこっ!」
エアリス「う…うん」

エアリス「ど…どぉかな?似合う?」
クラウド「///ああ…似合っている」
エアリス「えへへ、ありがと」
ティファ「あー!クラウドってばエアリス見て鼻のばしちゃってぇ!ね、ね!あたしはぁ?にあうっしょ?」
クラウド「お前はいつも下着みたいなもんだろ」
ティファ「ひっど〜い!エアリスばっかり〜!いいも〜んだ!サーファーの子たちとあそんでこよっと!クラウドなんて知らない!」
エアリス「あ、ティファ」
クラウド「ティファなんてほっとけ。エアリス。」
エアリス「でも…」
クラウド「ティファが気を利かせてくれたのがわからないのか?」
エアリス「あ…///」

541 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/27(木) 23:02:31 ID:GjhQOfau0]
保守

542 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/28(金) 12:31:58 ID:v4VmnxyTO]
保守



543 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/28(金) 14:44:22 ID:MilYJTn/O]
イイヨイイヨー
ここ読んでたらリーブ好きになりそうだw

544 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/28(金) 19:52:25 ID:o8UuNOo/O]
>>543
嫌いだったの?

545 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/29(土) 02:43:49 ID:XK8Zvah30]
>>535-538
ケット・シー可愛いよケット・シー。
DC1章の事を思えば、リーブの一人遊びとして充分あり得そうです。
それにしても和むなぁ…。(他の方のリーブ話読めるだけで非常に幸せですw)
リーブの提案はどこを指しているんでしょうか? 続き期待sage
 >>539記憶に間違いがなければFF7本編でティファが看病のためパーティーを離脱する際、
 「ティファさんに看病されるなら(クラウドと)代わりたい」という主旨の発言をケット・シーがしてます。
 ティファを気遣いつつ、状況的にそれはギリギリ精一杯の気遣いなんだろうなと。

546 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/29(土) 02:53:46 ID:XK8Zvah30]
横レス失礼します。興味のない方はスルーよろ。



ケット・シーってFF7本編ではあまり良い印象を持たれないか、目立たないキャラクターの様な気がします。
登場時の印象(スパイ)も、古代種の神殿で感動的な見せ場もあっけなく終了(直後の2号機登場)などで、
実のところ初プレイ当時、自分はあまり好きじゃなかったんですが、ウェポン近辺で覆りました。
古代種の神殿と再集結時に関しては、解釈の仕方によってリーブの意図するところが大きく変わるし。
FF7の中でも特に解釈の余地が残されている部分・キャラクターの多いのが、ケット・シー(リーブ)なんですよね。
また、彼を通して見ていくと7の全体像が掴みやすい…様な気がするんです。DCでナビゲーター役になったのは
良い人選だった気がします。

> ケット・シーの関西弁って、ちょっと不自然

そもそもケット・シー自体、存在が不自然ですよね。
本来なら四足歩行の動物を無理矢理二足歩行させている“ぬいぐるみ”。
1つ1つの事実を組み立てた理論(や推論)ではなく、“占い”という不確定の物を扱う存在。
あえてFF7世界中の標準語(共用語)を使わせずに“なまり”を強調させたのか。
これらケット・シーが背負う要素は本体(リーブ)とは一見すると真逆ですが、実は同じ物を指している気がしてなりません。
そして訛りに関しては、望郷を表現しているのだとずっと解釈してきましたが、「不自然」という所に着目すると
実はもっと別の物を表現しているキャラクターなのかも知れない、とも思い始めました。
(Disc1で彼の両親が描かれていますが、出身地はどこなのか等、答えを出そうとすると謎も多いw)
こういった話は専用のスレですべきなんでしょうが、
不自然という発想からふくらんだリーブ考察(妄想)が面白くてやった。今はちょっと反省している。

…そんなことを抜きにしても、お茶目な二人(?)が好きというだけの話w

547 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/29(土) 19:57:32 ID:g8qvP8OdO]
>>544
嫌いでも好きでもなかった
深いなー

548 名前:539 mailto:sage [2006/04/29(土) 23:39:27 ID:WTkbSMIl0]
>>547
実は自分もort
彼の能力自体はとてもおもしろいと思ったのですが、実際にゲーム内では使い辛くって、
実はほとんどメンバーに入れてなかったという。(お好きな方、ごめんなさい)
アルティマニアやDCと、ここでリーブのお話を読んでいる内にだんだんと
彼らの良さが分かって来て、そういった意味でDCと書き手さんはネ申になってます。

>>545
そんな事を言ってたんですか…おどけつつも、気を遣ってるんですね。
リーブが言うと洒落た感じがしますが、ケットが言ってると思うと、
なんだかいじらしいくて、しかも微笑ましいなぁ。

>>546
本当の関西人はめったに“わい”なんて言わないんだけど、程度のボヤきでしたが、
深い考察をしてくださってありがとうございました。
言われてみると、あんな不思議なコンビが目の前に現れて、
いくら本人が強引に参加したとは言え、クラウドはよく仲間にしましたよね。
やっぱり見た目がお茶目だったからと言いますか、かわいらしさにやられたに違いない。

長レス失礼致しました。お話の方はGW中には終わるかなぁと思います。
後半はおじ様達大活躍(の、予定)ですので、どうぞお楽しみにお待ち下さいませ。

549 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/04/30(日) 21:25:06 ID:xEZGr8sSO]
一日一保守

550 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/01(月) 01:07:02 ID:FCK2U/Uc0]
保守

551 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/01(月) 17:37:43 ID:9TLtWJX6O]


552 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/02(火) 08:41:27 ID:FEJM+MuO0]
保全



553 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/02(火) 10:42:51 ID:yMvrN1K40]


          ./    \
          .| ^   ^ |
          | .>ノ(、_, )ヽ、.|
         __! ! -=ニ=- ノ     
     /´ ̄  .|\`ニニ´/ 
    / 、、i    ヽ__,,/
    / ヽノ  j ,   j |ヽ 
    |⌒`'、__ / /   /r  |
    {     ̄''ー-、,,_,ヘ^ |
    ゝ-,,,_____)--、j
     / \__       /
     |    "'ー‐‐---'|'
     | \;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ|
     ト,  ;;;;;;^ω^;;;;;;、 i
     |',',;;   }  ! ',',;;;i

554 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(4) mailto:sage [2006/05/03(水) 00:21:01 ID:EqXZM4yr0]
>>525-527より。
----------


 男がこのフロアを訪れるようになったのはつい最近のことだった。もっとも
日中は、以前までの所属部署で後任者への引継ぎなどに追われデスクを
空けている時間が圧倒的に多く、朝のこの時間ぐらいしかオフィスにいられ
なかった。
 男の所属する部署は神羅の都市開発部門。しかし都市開発と一口に言っても、
さらに10以上の細かい部署が設けられている。中でも『管理課』と呼ばれる
ここは、巨大都市ミッドガルの設計から建造、運営を包括的に担う部署で、
表舞台に出るような事はあまりないが、既存のシステムや魔晄炉の稼働状況の
監視・調整などを主な業務としていた。そして彼はつい先日、このセクションに
配属されたばかりだった。
(なんで管理なんや……)
 今回の人事異動は彼自身の希望によるものではなかった。実のところ、内心では
未だにこの配置転換に納得できていなかった。それでも、上からの指示には逆らえ
ない。それは組織の中にいる以上、従わざるを得ないし避けられない事だとも頭では
理解しているつもりだった。
 むしろ理解というよりも、諦めに近い。
 都市計画・開発という仕事に希望を抱き、神羅という企業に勤め始めた当時とは
徐々に変わりつつある自分の姿に、彼は無意識のうちに焦燥のようなものを感じて
いたのかも知れない。
 男にとって、それはこの先に続く長い悪夢の始まりに過ぎなかった。

555 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(5) mailto:sage [2006/05/03(水) 00:26:12 ID:EqXZM4yr0]

                    ***


 呼び出しに応じてその部屋の前までやってきた彼女を出迎えたのは、総務部
調査課に所属する男だった。先ほど、このフロアに設置されている通信機から、
彼女の携帯用端末にメッセージを送信しここへ呼び出したのも彼である。呼び
出しを受けた時点で、彼と遭遇することは予測していたものの、その姿を見るや
彼女はあからさまに眉をひそめた。
「……こんな所で会うなんて」
「一応、ここも社内ですから。我々がいても何ら不自然ではありません」
「そうじゃないわ」男の言葉に彼女は即座に反論した。「あなた方に会うとロクな
事がないって言う意味よ」その言葉に込めた意味を汲んで、男は苦笑する。
「相変わらず手厳しい」
「事実を言ったまでよ」
 あくまでも事務的な返答であしらいながら、男に先導され部屋の奥へと通された。
そこから専用エレベーターを使い建物上層へ、さらに厳重なセキュリティを通過した
先にある木目の美しい扉の前でふたりは立ち止まると、彼女はネームプレートを外し、
それを扉横に設置されているセンサーに通した。すると赤く点灯していたランプが
緑色に変わり、小さな認識音が聞こえてから扉のロックは静かに解除された。それを
確認した男がドアノブを回して扉を開くと、そのまま黙礼で入室する彼女を見送った。
 男の横を素通りして部屋へ足を踏み入れる。それまで通ってきたフロアよりは薄暗く、
一見すると誰もいないように見える室内に向けて一礼した。まるでそれを見計らった
ようにして部屋の扉は外側から静かに閉められた。扉が閉じられると同時に自動で
ロックがかかる。かちゃり、という音を最後に室内は静寂に包まれた。
 ビル全体が近代的で無機質な印象を与える作りにあって、この空間だけは木目調の
壁と天井、窓際に置かれた観葉植物と扉横にある大型の水槽などのお陰で、他の
フロアに比べると幾分かあたたかみを感じさせた。

556 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(6) mailto:sage [2006/05/03(水) 00:34:06 ID:EqXZM4yr0]
 しかし彼女にとってここは、社内でもっとも息苦しい場所に他ならない。
「……よく来てくれた」
 部屋の奥から、唐突に声が聞こえてきた。まるで声そのものに質量がある
ような、威厳と威圧感に満ちた男性の声。
(人を呼び出しておいて、よく言うわ)
 心の中で悪態をついてみたものの、彼女が男に逆らえるわけもなく。恭しく
礼をした。
「遅くなり申し訳ありません……プレジデント」
 プレジデント神羅。彼は文字通り、この企業の最高権力者だ。大きな革製の
椅子の背をこちら側に向け、姿は見えない。彼女が頭を上げようとしたところに、
プレジデントの声が届く。
「さっそくだが、“例の計画”の進捗状況を報告したまえ」
「…………」
 中途半端な姿勢のまま押し黙ってしまった彼女に、プレジデントは口調を
変えずに尋ねた。
「質問の意味を理解しているかね?」
「……はい」
「ならば答えたまえ」
 プレジデントの言う“例の計画”が何を示しているのか、彼女は充分過ぎるほど
理解していた。
「……はい」反射的にそう返してはみたものの、やはり口に出すことをためらってか、
場に沈黙が流れた。しかし彼女は、自分にこれ以上逃げ場がない事も充分に理解
していた。やがて諦めたようにして口を開く。
「システムの実装段階で、問題が発生しました。検……」
「問題が解決するまでにかかる時間と費用の見積は?」
 彼女が何かを言うよりも先に、プレジデントが言葉を発した。察するところシステムに
関する細かな話には、どうやら興味がないらしい。
「既に対策は講じております。新たな開発者……部内で実績を出している優秀な
技術者を呼びました。問題の解決までには1ヶ月もかからないものと」

557 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(7) mailto:sage [2006/05/03(水) 00:42:40 ID:EqXZM4yr0]
 そこまで言い終えて彼女はいったん言葉を止めた。少しばかり考えた末、
次の言葉を口に出す決意を固めた。
「失礼を承知で、……率直なところを申し上げれば私は、未だこの計画には
疑問を感じています」
 プレジデントは何も答えない。だがこれ以上語るべき言葉を見出せない彼女は、
重苦しい沈黙が通り過ぎるのを黙って待つことしかできなかった。腕時計の
秒針の音だけが聞こえる、その音をどれだけ数えた頃だろうか。やがて声が
返ってくる。
「私は、この計画に対する君の個人的な感想を訊くために、わざわざ君をここへ
呼んだ訳ではないんだがね」
「ですがプレジデント、人々の行動を監視するというシステムが果たして……!」
 彼女が必死に叫んだ言葉を吹き消すようにして、ふぅ、と言うため息の音が聞こ
えてきた。
 次に椅子が軋む音。
 最後に、男の声がした。
「……君は、何だね?」
「はい」

558 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(8) mailto:sage [2006/05/03(水) 00:45:34 ID:EqXZM4yr0]
「君が私に意見できる立場にある者なのか……と尋いている」
 彼女は今度こそ押し黙った。返す言葉も為す術も見つからず、その場に立ちつくす
だけだった。そんな彼女にとどめを刺すように、プレジデントは冷然と言った。

「都市開発部門の統括責任者が不在の今、君は代理としてその任を全うする。
……それだけを考えていれば良いのだよ。分かったなら下がりたまえ」

 結局、プレジデントは一度もこちらを見ることはなかった。



「余計なお世話かも知れませんが」
 部屋を出た彼女を労うように、総務部調査課の男は声をかけようとしたのだが。
「ええ、余計なお世話よ」
 そう言って彼女は会話を続けることを拒否すると、エレベーターホールへ向けて
歩き出した。男は何かを言う事も追うこともせず、ただ彼女の背中を見守っていた。
----------


・再三言っておくと、都合解釈を伴った捏造。
・人と言うよりも、神羅内の各部署の関係性に萌えてみたいという意味不明なコンセプトでお送りする予定。

559 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/03(水) 02:49:22 ID:0jrdMIuz0]
>>554-558
GJ!
やはり“彼女”が誰なのか分からないorz
スカーレットなわけないし…続きが気になります。

560 名前:DC後 【53】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/03(水) 02:50:46 ID:0jrdMIuz0]
>348-354 >360-362 >416-420 >427-432 >441-442 >459-461 >464-470 >496-501
>508-509 >514 >510-512 >515-518 >535-538の続きです。

意識は戻ったが、本当に大変だったのはそれからだった。
シェルクは朝には寒がり、ティファは湯たんぽを用意し、
ユフィはベッドに上がって震えるシェルクを抱きしめた。
夜になると熱が上がり、ティファは今度は氷嚢を用意し、
ユフィは熱で朦朧(もうろう)としているシェルクの口に氷を入れてやる。
寝たきりだと身体中が痛むので、二人で寝返りを打たせてやり、身体を擦る。
クラウドは薬や栄養剤を探して走り回った。
少しずつ症状が落ち着き始めたのは5日目のことだった。

ティファが作った冷たいスープをユフィが飲ませている合間に
シェルクはぽつりと口を開いた。
「夢を…見ました…」
まだ少し熱があるので、顔が赤い。
「どんな?」
点滴を替えていたティファが答える。
ユフィは、冷たいスープなのに、つい息を吹きかけて冷そうとしかけて、
何をやっているんだと肩を竦め、シェルクに照れ笑いを見せる。
シェルクも笑って、ユフィが飲ませてくれるスープを飲む。
ひんやりとして、火照った口の中にも気持ちいい。
(おいしい…)
「おいしい?」
ユフィが顔を覗きこんで来るので、シェルクは素直に頷いた。
「やっぱね〜!顔が笑ってるもん。」
「やっと私の料理を食べてもらえてうれしわ…それで、どんな夢を見たの?」
「…お姉ちゃんの夢…」

561 名前:DC後 【54】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/03(水) 02:52:37 ID:0jrdMIuz0]
せっせとスプーンを口元に運んでいたユフィの手が止まる。
ティファは椅子を持って来ると、ベッドの傍に置き、そこに腰掛けた。
「身体が動かなくなって…私…やっぱり…と思いました。」
「どうして?」
「私…私のせいでお姉ちゃん…」
何かを叫びかけたユフィを、ティファが黙って制する。
「怖かった…束の間だけど私に与えられた団欒、もう一度彼に会う事…
それすら許されないのかと…そう思うと、死ぬのが初めて“怖い”と思いました。」
シェルクは毛布をぎゅっと握りしめる。
「許されるはずがない…私は…幸せになる資格がない…
だからこのまま死んでしまうんだと…そう思いました。」
ネロの闇に捕われた時でさえ、こんなに怖いとは思わなかった。
怖くて怖くて…夢の中の暗闇を何かに追われる様に闇雲に走っていた。
「夢の中だと…上手く走れなくて転んでしまいました。そしたら足に何か絡み付いて…」
シェルクははっと我に返る。
「私…何を話しているんでしょう?こんな…非現実的なこと…」
「でも…話したいんでしょ?」
「シャルアが助けてくれたんだろ…?なんて言ってた?」
ティファもユフィも膝を乗り出して話を聞いている。
(臨死体験なんて…信じてもらえないかと思ってました…)
シェルクは話を聞いてもらえることにホッとして、続きを話し始めた。
「はい。お姉ちゃんが…助けてくれました。」

562 名前:DC後 【55】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/03(水) 02:55:24 ID:0jrdMIuz0]
シャルアはあの時の様に、シェルクの手を引いて走ろうとしていた。
が、絡み付いた“何か”の力と、シャルアが引っ張る力が拮抗して抜け出せない。
「お姉ちゃん…もうだめだよ!」
シャルアの唇が動いた。
言葉は発せられないがシェルクには何を言っているかが分かった。
“生きて…”
シェルクは激しく頭を振る。
“シェルクは強い…そいつだって、自分でやっつけられるよ。”
(やっつける…?)
シェルクは反射的に足に装備していたスピアを片手で抜き、足下を薙ぎ払った。
すると、足に絡み付いていた物達が、ふっ…と消えてしまった。
“ほらね”
シャルアはいたずらっぽい表情でウィンクして、シェルクを立たせてくれた。
「お姉ちゃん…」
“ずっと傍に居るよ。いつも見てるから…だから…”
シャルアは屈んで、シェルクの瞳を覗きこむ。
“頼むから「私のせいでお姉ちゃんが…」なんてうじうじしてる姿、見せないでよ”
「そんなの…無理だよ。」
“大丈夫…もう、一人じゃないだろ?”
夢の中なのに、頬に触れた手は温かかった。
“大好きなシェルク…”
シャルアは両手でシェルクの頬を包み込んだ。
“また会えるから…それまで私の分も生きるんだよ”

「そこで…目が覚めました…ティファと、ユフィと…クラウドさんが居ました。」
気が付くと、ユフィはシェルクに背中を向けて鼻をすすっている。



563 名前:DC後 【56】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/03(水) 02:58:05 ID:0jrdMIuz0]
「優しくて、強いお姉さんね。」
「はい…でも…」
“でも”という言葉に反応して、ユフィがシェルクに向き直る。
「それでも…私のせいでお姉ちゃんが…という想いはきっと消える事はないと思います。
“私の分も生きろ”と…私にそれが出来るのでしょうか?生きる事さえ罪だと感じているのに。」
「だぁーからぁっ!シェルクはそういう風に考えんなって言ってるんだろ?」
「ですが…」
「生きてることが罪なんて!そんなの、どっかの根暗野郎に言わせときゃいいの!」
激高するユフィをシェルクは驚いて見つめる。
「ヴィンセントだよ!アイツもそんな事ばっか言ってさぁ…でも、神羅屋敷の棺桶から出てきて、
アタシ達と旅して、ちゃんと役に立ったんだ!あ〜見えても、“星を救った英雄”の一人なんだって!」
もちろん、『アタシほどじゃないけど』を付け足すのを忘れていない。
「シェルクだって大活躍だったじゃん!ね?アンタが居なかったら、
ヴィンセントの奴だって、この星だって、どーなってたか分からないんだから!」
「ユフィの言い方は問題有りだけど、私もそう思うわ。
あなたは前を向いて生きる事で償っていけると思うの。」
横でユフィがうんうん、と大きく頷く。
「だから…お姉さんの言葉を大切にね。」
ユフィは傍らに置いておいたスープの入った皿を再び手に取る。
「大丈夫だって!アタシが付いてるからさ!とにかく、まずは食べなくちゃね。」
「私達が…でしょ?」
ティファが呆れた口調で言う。
“ほらね”
耳元で姉の声がした様な気がした。
「ん?食べないの?」
ユフィがスプーンを持っておどけている。
(こういう時は…どういう風に言えばいいんでしょう?)
「シェルク…」
ティファがタオルでいつの間にか溢れていた涙を拭いてくれるた。
「今はいいの。いつでもいいのよ…私たちはずっと傍に居るから。」

つづく。

564 名前:また訂正orz ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/03(水) 12:04:25 ID:0jrdMIuz0]
>>563
また訂正です。ごめんなさいorz

> ×「だぁーからぁっ!シェルクはそういう風に考えんなって言ってるんだろ?」
> ○「だぁーからぁっ!シャルアはそういう風に考えんなって言ってるんだろ?」

ところで、ユフィとシャルアは顔見知りなんでしょうか。
今更何を言ってるんだ、ですがDCプレイ時から不思議で。
ひょっとしてBCで会ってるのかな?教えてちゃんでごめんなさい。

565 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/03(水) 12:56:27 ID:EXk559kbO]
>>564
BCでは二人は会ってない
DCでユフィがWROに協力してるから、リーブから互いに紹介されたんじゃないかと思う

566 名前:564 mailto:sage [2006/05/04(木) 00:59:52 ID:Ch7SYC360]
>>565
そうでしたか…お陰でスッキリ(・∀・)しました。
ありが???とうございました。


567 名前:564 mailto:sage [2006/05/04(木) 01:24:28 ID:Ch7SYC360]
>>565
ごめんなさい、文字化けorz
失礼致しました。

568 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/04(木) 04:19:19 ID:owYEGRiq0]
>>560-563
DC本編中で直接的には描かれなかった(様な気がする)シェルクの後悔の念というか、
失ったもの(姉)が大切だと気づく描写があって嬉しいと素直に思う。
この勢いでカプセル回収出立編を書いてもらいたい。またはDC-2をw。
9章(栄枯盛衰神羅ビル)でルクレツィアと同調しながらシェルクは「生きて」と言っていた
(字幕には登場しないんですが、ここは確かに「生きて」と言っているように聞こえたーよ)
ところから考えると、展開的にちょっと切ないです。続きにも期待。


ところでシャルアとユフィの面識について。
>>565と見解は同じですが、正式な形で互いを紹介されたような面識はないかも、と
言うのが個人的な見方です。WROの地下にシャルアを回収しに行ったのはユフィだと
思っている(リーブorケット・シーじゃ無理w)ので、対面はそれが初めてだった…のかな。
とか色々。
6章終盤「シャルアは…」と言いかけたセリフに続く言葉を想像すると、ユフィの人となりを
色々想像できて楽しいです。DCのお陰で好きになったよユフィ。

569 名前:朱の夢1 (DCFF7/シングルプレイモード) mailto:sage [2006/05/04(木) 04:36:55 ID:owYEGRiq0]
舞台:DCFF7第2章〜
備考:マルチプレイモードは考慮の対象外。
   :微妙にエグイ内容なので嫌な方は回避されたし。
   :それから、ロッソが好きな人も(多分に捏造された過去につき)回避推奨。




----------

 この地に生を受けたとき、少なくとも彼女にとって世界はまだとても退屈な場所だった。
 両親の笑顔が傍にある、そんなごくふつうの世界。
 頭上に広がる空がないことだけが「ふつう」とは唯一異なっていたが、それを知るのは
20年以上も先の話である。
 彼女には幼馴染みがいた。彼の名前がなんだったのか、今さら思い出そうとしても
分からない。思い出そうとする事もなくなった。
 ただ、覚えているのは朱にまみれた彼の表情。
 床に転がったそれを、踏みつける巨大な人影。抵抗することなく踏みつけられる彼の顔。
 なぜ、そんなことをするのかが分からなかった。
 なぜ、そうなるのかが分からなかった。
 彼女にとって初めての「死」はこうして突然に訪れた。あまりにも突然の出来事だったから、
彼女にはそれが理解できなかった。だからどうして良いのか分からず、その場で立っている
ことしかできなかった。
「……怖いか?」
 下卑た笑い声をたてながら、巨大な人影が近づいてくる。横たわった彼の亡骸を前に
呆然と立ちつくす幼い彼女に、武器を持たない方の手を伸ばす。
 それでも彼女の視線は、床に転がる幼馴染みに向けられたままだった。さんざん身体に
触れられたあげく、上着を脱がされかけても彼女は動じなかった。
 ただ、男が自分の前に立ちはだかって床に転がった彼の姿が見えなくなった事だけが
腹立たしかった。
「どいて」
 それだけを口にした。だが巨大な人影が退くことはなかった。

570 名前:朱の夢2 (DCFF7/シングルプレイモード) mailto:sage [2006/05/04(木) 04:39:33 ID:owYEGRiq0]
 次にどうしたのかは覚えていない。ただ、巨大な人影が腰に着けていた銃を持ち、
転がったそれを見下ろしていた。
 床に転がる顔は2つになった。だけど片方だけが朱に染まっている。
「どうしたの?」
 呼んでみても返事がない。
「いたいの?」
 頬に触れてみた、あたたかい。彼の顔を染める朱も、あたたかかった。
 自分の頬を伝うものに気づき、手に触れてみる。
 透明なしずく。それはとてもあたたかかった。

                    ***

 倉庫の割れた天窓から見上げた空の色を、彼女は好きになれなかった。
 白なのか黒なのか、はっきりしない曖昧な色。
 降り注ぐ飛沫が身体を濡らす。それはあたたかくも冷たくもなかった。
 斬り殺した――手応えすらなく死んでいった連中が、周囲に散らばっている。
あの日と同じように、彼らの身体は朱に染まっている。
 それを見下ろす彼女の頬を伝うのは、透明な滴。
 だがそれに、温度はなかった。

「私ねぇ、生まれて初めて雨に濡れたわ」

 彼女の頬を涙が伝うことは、二度となかった。

571 名前:朱の夢3 (DCFF7/シングルプレイモード) mailto:sage [2006/05/04(木) 04:44:17 ID:owYEGRiq0]

                    ***


 死とは制圧。
 死とは安息。
 脳裏に焼き付いた彼の表情が忘れられなくて。
 あの時と同じ思いを二度としたくなくて。
 人間であることを捨ててでも、彼女はその夢を抱き、武器を取り頭上に広がる空を見上げた。

「終わりが、始まるわ」



                                   ―朱の夢<終>―


----------
・ロッソが好きでやった。今は(ry。
・DCFF7中、一番好きなんだけど文章で表現すると印象と真逆になるのはなぜだろう。
 (こんな人じゃない!!)
・ゆがんだ人間の手によって作られた、人間ではない存在を演じる(=中央螺旋の塔)
 という解釈はシカトしましたすみません。この辺なんとかしたいです。

572 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/05(金) 03:06:36 ID:l9vcXo0h0]
>>569-570
ロッソ姐さん(*´Д`)ハアハア
エキセントリックで、色っぽくて強い(実際に居たらコワいですが)彼女が(・∀・)イイ!!
ミッドガル大侵攻ではクラウドと切り結んでいましたが、勝敗はどうだったんでしょうね。



573 名前:DC後 【57】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/05(金) 03:07:24 ID:l9vcXo0h0]
【お詫び】レスアンカー(>>)を入れ過ぎると書き込みが規制される為
500以前の引用は省かせて頂きます。
お手数ですが>>508から、500以前の引用を辿って下さい。ご迷惑かけて申し訳ありません。
前回の投稿で>にしたら、IE等のノーマルなブラウザではリンクが
貼られない様で、見辛いと思われた方がおられたらごめんなさい。

>>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538の続きです。

シェルクが快方に向かうにつれて、クラウドが7th Heavenに立ち寄る回数も減った。
食欲が出て来てきた為栄養剤に頼る必要がなくなったからだ。
ヴィンセントはまだ見つからない。
時間が許す限りシドが手伝ってくれたが、クラウドが居ない時は
バレットがほとんど一人で探しているのだ。
「頼みたい物が出来たらまた連絡するわ。」
ティファにそう言われて、ヴィンセント探索に戻ったのだ。
生命反応を調べる携帯型の端末を持って、ミッドガルの廃墟を歩き回る。
バレットにシェルクの様子を聞かれ、それに答えている時にふと思い出したことがあった。
「なぁ…バレット。」
「なんだ?」
捜索を終えた地点に赤いサインペンでバツ印を付けながらバレットが答える。
「家に届けたい物がある。」
「なんだ?ティファから連絡でもあったのか?」
「いや、そうじゃない。」
バレットが顔を上げてクラウドを見る。
「その…俺が、勝手に思っただけだ。これがあればティファ達が助かるんじゃないかって。」
「何を持ってくつもりだ?」

574 名前:DC後 【58】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/05(金) 03:09:05 ID:l9vcXo0h0]
クラウドの答えにバレットは感心した風で、快く許してくれた。
「お前にしちゃあ、珍しく気が利くことを言うじゃねぇか。いいぜ、行ってこいよ!
その代わり…頼むから早く戻って来てくれよ。ここは一人だと気が滅入るからな。」
毎日廃墟を歩き回って楽しい気分になれるはずもない。
それにここは色々と思い出す事が多い。出来ればクラウドも長居したくはない場所だ。
バレットはそんな場所で一人で長時間過ごして来たのだ。
「悪いな。」
「いいってことよ!」
バレットは笑い飛ばし、マリンへの言伝(ことづて)を頼み、クラウドを送り出してくれた。
手近に居たWROの隊員を捕まえ、目当ての物の調達を頼む。
ここに運ばせると言う隊員の申し出を自分で行くからと断り、
クラウドは病院にフェンリルを走らせた。
目当ての物を受け取ると、フェンリルの後部座席に積み、通い慣れた道を我が家に向う。
家に着くと、入り口には鍵がかかっていないのに、店には誰も居ない。
おかしいと思っていると、フェンリルのエンジン音を聞きつけたデンゼルが飛び出して来た。
「おかえり、クラウド!」
クラウドはただいま、と答えると、
「デンゼル…ティファは上か?」
「ユフィ姉ちゃんと二人で出かけたよ。すぐに帰るって。」
「そうか…」
クラウドは二人が戻るのを待とうかと思ったが、ここへ来る時のバレットの言葉を思い出し、
「デンゼル…これをティファに渡しておいてくれ。」
「何…?これ。」
クラウドが持って来たのは折りたたみ式の車椅子だった。
足下のバーを軽く踏んで広げるだけで組み立てられるタイプだ。
実際にやって見せると、デンゼルは大喜びだった。
「うわ〜!すっげーや、これ!シェルクの?」
クラウドが頷く。
「シェルク、きっと喜ぶよ!俺、知らせて来る!」
デンゼルはクラウドの返事も待たずに階段を駆け上ってしまった。

575 名前:DC後 【58】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/05(金) 03:12:14 ID:l9vcXo0h0]
(…参ったな…)
このまま帰る訳にも行かず、クラウドは仕方なくデンゼルの後を追う。
「シェルク!」
デンゼルはシェルクの傍に息を切らせて駆け寄る。
「クラウドがいい物を持って来てくれたよ!」
ベッドに座っていたシェルクと、傍でシェルクに絵本を
読んであげていたマリンが驚いて顔を向ける。
「なぁに?デンゼル!今ご本を読んであげてるのよ。」
「違うんだよ、マリン!クラウドが来たんだ。」
マリンは開けっ放しになっているドアに佇んでいる
クラウドに気が付くと、驚いて椅子を降り、駆け寄る。
「クラウド!どうしたの?お遣い?」
「いや…」
マリンの頭に手を置き、クラウドはどう答えた物かと必死で考える。
「シェルクの為に車椅子を持って来てくれたんだよ、な?クラウド!」
「私の…?」
シェルクに見つめられ、クラウドはますます言葉に詰まってしまう。
口下手で人見知りのクラウドは、まだ数回しかシェルクと言葉を交わした事がない。
頼りのティファも勝手に騒いでくれるユフィも居ない。
「…ずっとベッドに居ると、良くないからな。」
考えに考え抜いて、やっと出た言葉がこれだった。
シェルクが目を丸くして自分を見ているのがいたたまれない。
クラウドはそのまま踵を返して部屋を出ようとしたが、マリンがそうはさせない。
「もう!クラウドったら!ちゃんとシェルクに言ってあげてよ。」
クラウドの手を引くと、強引にベッドの傍まで引っ張って来る。
そして、ませた口調でシェルクに、
「ごめんなさい。クラウドは恥ずかしがり屋さんなの。」
「マリン…!」
(恥ずかし…がり…?)
シェルクはまじまじとクラウドを見つめる。
クラウドの顔が心なしか赤い。

576 名前:DC後 【60】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/05(金) 03:16:19 ID:l9vcXo0h0]
「シェルクの為に持って来てくれたんでしょ?」
クラウドはマリンには敵わないな…と小さく呟くと、
「俺も…長い間寝たきりだった事がある…治ったら身体中ガタが来ていた…
だから、具合がいい時は少しでも外に出た方がいい。」
「そうだったんですか…」
シェルクの返事はは車椅子の事を指しているのではない。
“クラウドは恥ずかしがり屋さんなの”
(じゃあ、あの時の…)
ここに初めて来た時の“クラウドの失礼な物言いに腹が立ったが、
あれはどうやら、彼なりに心配してくれた故の言葉らしい。
車椅子も、ベッドから起きられない自分を心配してわざわざ探して来てくれたようだ。
得心がいくと、今までのわだかまりが消えていく気がした。
また、胸の中がほんわりと温かくなる。
「…ありがとう…ございます…」
「…いや…たいしたことじゃない…」
「とても…うれしいです。」
微笑むシェルクに、クラウドは俯いてしまう。
ふと横を見るとマリンがいたずらっぽく笑っている。
デンゼルは状況が良く飲み込めない様でぽかんとクラウドを見ている。
「…バレットが待ってる…ミッドガルに戻る。」
クラウドはやっとそれだけ言うと、そそくさと部屋を出て行ってしまった。


577 名前:DC後 【61】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/05(金) 03:20:19 ID:l9vcXo0h0]
デンゼルが慌てて追いかける。
その後ろ姿を見送って、マリンとシェルクは思わず顔を見合わせた。
「クラウドはね、仲良しになるのにすごく時間がかかるの。」
一緒に住み始めた頃は大変だったのよと、マリンがこぼす。
「…でも…優しいんですね。」
マリンは腕組みをして、やれやれ、という顔をシェルクに見せ、
「まあ…ね!」
シェルクは思わず吹き出してしまった。
父親代わりより娘の方がよっぽどしっかりしているではないか。
そして、慌てたせいで、マリンへの伝言を忘れていたクラウドは、
ミッドガルに戻ってからバレットに呆れられたのだった。

つづく。
===========================================================

>>574 ×DC後 【58】→○DC後 【59】
もう、本当にね、ごめんなさい_| ̄|(((○

>>572の『生命反応を調べる携帯型の端末』は、DCオープニングムービーで
ユフィが持っていた物だと思って下さい。(正式名、あるのかな?)

>>568
ゲーム内ではちゃんと書かれてませんが、シェルクが人らしさを取り戻していくと、
絶対にぶつかる問題ですよね。
彼女は被害者でもあるのですが、シエラ号での奮戦ぶりを見てると、
きっと思い悩むんだろうなぁ…と。


578 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/06(土) 01:30:34 ID:whFYJ4Pg0]
>>573-577
今回はクラウドとバレットの描写から主に感じましたが、
シェルクを取り囲む周囲の、FF7オリジナルメンバーの
優しさが滲み出ているお話で、読んでいるとホッとします。
子どもに背中を押される図というのも、なかなか良いですねw。
続き期待sage

579 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/07(日) 01:04:38 ID:WsU6Ny6b0]
保守

580 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/07(日) 17:53:42 ID:StxNlN0/0]


581 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/08(月) 00:30:17 ID:hn38PsZy0]
ぼ   ?

582 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/08(月) 20:22:14 ID:M0eioXRb0]
RPG最萌トーナメントのお知らせ
●5月8日 月曜日
H-09 <<ティナ@ファイナルファンタジー6>> vs ファルナ@エメドラ vs マナ@FE聖戦

本日は<<ティナ@ファイナルファンタジー6>>の投票日です

支援と投票の方よろしくお願いします

ここでティナが負けるわけにはいかない。応援よろしくお願いします。
リルムの分まで頑張れ、ティナ!!
●ルールとトーナメント表(本部サイト)
www.geocities.jp/rpgsaimoe/index.html

●コード発行所(PCは予約制で発行まで通常60分かかります。携帯電話は即時発行)
saimoecode.sakura.ne.jp/RPG/

●支援用張り板
mig380.chez-alice.fr/ja.html (汎用あぷろだ)

現在の投票スレ(投票所板)etc4.2ch.net/test/read.cgi/vote/1146673314/l50
投票の仕方
1.上記のコード発行所で投票コードをもらう(発行は23:30〜)
2.投票スレに発行された投票コードと<<>>囲みの名前(↓をコピペ)を貼る
<<ティナ@ファイナルファンタジー6>>


※投票は5月8日(月曜)の23:00までに!

対戦相手はどちらもかなりの強敵です。
今日投票しておかないと、もう二度と投票できない可能性も大いにあります・・・
ティナへの愛や萌えなどを、ぜひこの機会に投入しましょう!!




583 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/08(月) 23:25:16 ID:2dDvUj1I0]
もう本戦始まってたんか、ありがとう。
ってリルムも出てたのかーーーーーーーー!!!!!!orz
ちくちくちく(ry

コメント読んでると6やりたくなって来たw

584 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(9) mailto:sage [2006/05/09(火) 00:06:29 ID:DmvxAsk30]
>>554-558より。
----------

                    ***

 その日の午後、彼らは朝と同じフロアで再び顔を合わせることになる。
「……すると、あなたが?」
「そう。都市開発部門管理課の主任として、あなたをここへ呼んだ張本人、
というわけ。『よくもこんな地味な部署に回してくれたものだ』と私を恨んで
くれるのは自由だけど、仕事はしっかりこなしてね」
 部内でも大きなセクションである『管理課』の主任を務めるのが女性だった
のは、正直意外だった。ただ、この口調と言葉を聞けばそれも納得がいく。
「改めてよろしく、リーブ君。それから、分からないことがあったら遠慮なく
聞いて」
 そう言って彼女は特に笑顔になるわけでもなく右手を差し出した。つられる
ようにしてリーブも手を差し出し、握手を交わす。まさか彼女が自分の上司に
なろうとは。
 今朝ここで顔を合わせた時と同じく黒いパンツスーツに身を包み、黒く長い
髪はバレッタでひとまとめに束ねている。元々が整った顔立ちではあるのだが、
女性的な美しさはまったく感じられず、どちらかと言えば隙のない――まるで
総務部に所属するタークスのような――印象すら与える。
「それではお言葉に甘えて1つお尋ねします。なぜ今回の配置転換を?」
「理由のない結果はないわ。当然……あなたの能力を見込んでの人事よ」
 リーブは配置転換が決定した当初から疑問に思っていた事を思い切って尋ねて
みたが、あっさりと返されてしまう。言っていることはその通りなのだろうが、
求めていたのはそんな回答ではない。

585 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(10) mailto:sage [2006/05/09(火) 00:12:13 ID:DmvxAsk30]
「具体的に私はどういった能力を見込まれてここへ招かれたのでしょうか? 
差し支えなければお聞かせ頂きたいのですが」
 管理維持と言うのは退屈なものだと思っていた。彼は都市開発に従事する者
として、常に生み出す側である事を望んでいた。魔晄炉誘致や設計から建設。
時には内部のシステムにも関与した事がある。だから管理とは、都市開発の中で
自分には一番縁遠いセクションだと思っていた。
 しかし、彼女はその考えを真っ向から否定した。だからこそ聞きたかった。なぜ
自分がここへ呼ばれたのか? 返答次第では元のセクションへ戻してもらう事を
進言するつもりでいたのだが、どうやら彼女の方が一枚上手だったようだ。
「差し支えるので現時点であなたの質問には答えられないわ。不服かしら?」
「……いえ」
 言葉こそ疑問形ではあるが、それ以上の問いには応じないという彼女の姿
勢ははっきり現れている。それ以上の抵抗は無意味だと、リーブは諦め声で
答えた。
「そう、なら持ち場に戻ってちょうだい」
 彼女はそう言って会話を切り上げると、ふたりは別々の方向からそれぞれ
名前を呼ばれ、忙しない日常業務へと引き戻されたのだった。

(とんでもない上司の下に回されてしもたな……)

 誰にも聞かれないよう、リーブは心の中でだけ呟いたのだった。

----------
・短いですが一区切りです。

586 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/09(火) 16:42:58 ID:Eho5PFu+0]
保守

587 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/09(火) 22:42:33 ID:6gmQd3an0]
>584-585
GJ!上司の人カッコいいです。どんな目的があるんだろう?

588 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/10(水) 11:07:22 ID:enBtP7ijO]
一日一保守

589 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/10(水) 21:57:19 ID:lQhmHSKX0]


590 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/11(木) 08:43:32 ID:FdD5WaIj0]


591 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/11(木) 12:31:08 ID:65BuTDTBO]


592 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/12(金) 00:06:50 ID:y5YBChJ40]




593 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/12(金) 00:37:06 ID:JfmH+GuG0]
サンガリア

594 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(11) mailto:sage [2006/05/12(金) 00:58:57 ID:a48LehO80]
>>584-585より
----------

                    ***

 晴れ渡った空には白い飛行機雲が一筋、くっきり浮かび上がっていた。まるで
絵に描いたような空の下、ミッドガルの外れにある更地にふたりの男の姿があった。
 飛行機雲の行方でも追っているのか、空を見上げているリーブの横顔を見ながら、
彼は込み上げてくる笑いをどうにか堪えながら尋ねた。
「もしかして今『とんでもない人が上司になった』……なんて思ってらっしゃいますか?」
 リーブが都市開発の管理課に異動になったことを聞いた彼は、確信をもって
その問いを向けていた。もちろん、これに対する返答が否定であることも予測済みだ。
 問いかけられたリーブは慌てて視線を下げ顔を質問者に向けると、ふるふると首を
振りながら早口になって答えた。
「……い、いえ。とんでもない」
(読心術かいな!?)
 リーブからしてみればあまりにも的確な指摘だったものだから、内心かなり動揺した
のだった。無論、態度に出ていることなど本人は気づいていない。
 彼はリーブが以前に関わった魔晄炉建設予定地での折衝の際、世話になった男
だった。総務部調査課に所属しており、件の都市開発管理課主任の彼女とも旧知の
間柄にあった。
 リーブは知る由もないことだが、あの日の朝、彼女を社長室へ呼び出したのも彼である。
「……まあ、お気持ちは分かります。彼女はとても厳しい人ですからね」
「あなたが言う程ですから、相当なんですね……」
 ああ、とため息をついて見せるリーブに、男は今度こそ笑うのだった。
「そんなに悲観しないで下さい、現に彼女は素晴らしい人なんですよ。そうでなければ
主任になんてなれませんよ。……ついでに、私が保証しておきます」

595 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(12) mailto:sage [2006/05/12(金) 01:08:12 ID:a48LehO80]
 そんな保証なら、ないのと同じね――と、きっと彼女がこの場にいたらそう
切り返すに違いない。ふと、リーブの脳裏にそんな考えがよぎった。
 それにしても、妙にリアルな再現映像が頭の中には流れている。知り合って
まだ間もないというのに、よほど強く印象に残っているのだろう。
「私の保証なんて意味もないでしょうし、きっと彼女ならすぐさま断るでしょうが」
そう言って笑う男の反応から見ても、リーブの考えはあながち的外れではなさ
そうだ。
 そう考えるとなんだか可笑しくなって、リーブも笑った。その姿を見て、彼は
少し安堵したような表情を向ける。
「立場上、さまざまな部署から依頼を受けますが……あなた方と一緒に仕事を……」
 言いかけて、不意に男は言葉を切った。先ほどまでの笑顔が一瞬で消える。
「すみません。本来、私の口からこのようなことは……」
 話すべき事ではない、男はそう言った。まるで沈黙を嫌うようにしてリーブは
すぐさま反論した。
「人間ですから、何かを思い、感じるのは仕方のない事だと思います」
「ですが、それを仕事に持ち込むのはプロのやることではありません」
 彼の持つ高いプロ意識には敬服する。しかし、感情を全て否定してしまっては
身も蓋もないのではないか? リーブはそう思った。
「私たちは確かにプロです。しかし、プロである前にひとりの人間でしょう? 
それを否定してしまっては……」
「あなたのおっしゃる通りです。ですが、それを大切にするあまり、任務の遂行に
支障を来すようなら……それは我々にとって、無用の長物でしかありません」
 彼の言葉を聞いて、リーブは返す言葉を見失った。人の持つ、人であるが故に
持つ感情を否定されたことを受け入れるまでに、些か時間がかかった。
「……それが、あなた方タークスだと?」
「ええ」
 彼は真っ直ぐにリーブを見て頷いた。揺るぎない自信、確固たる信念。そんな
物を身に纏っているような、強さを感じた。
 都市開発などよりも厳しい現場に直面する総務部調査課・タークスの一員たる
誇りが、彼にそれを与えているのか。それとも、数々の任務を経て身につけた
ものなのか。

596 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(13) mailto:sage [2006/05/12(金) 01:13:30 ID:a48LehO80]
 いずれにしても、自分にはない物だとリーブは思った。
「……私はまだまだ甘いんでしょうね。本音を言えば、あなた方の様になれる
自信がありません。タークスの協力がなければ、先の魔晄炉建設計画は頓挫して
いたでしょう。本来ならば私たちの力で完遂すべき計画だった、……筈なんですが」
 それは配置転換が行われる直前、リーブが関わっていた都市計画の1つだった。
計画の前に立ちはだかった最大の障害は、住民達だった。魔晄炉建設予定地の
一部はすでに居住区として機能していたのである。
 そこでリーブ達は住民達の説得に乗り出した。可能な限りの時間を割いてリーブは
住民達との交渉に当たった。その後、これに応じなかった者達への対応を都市開発
部門は総務部調査課へ依頼した。ここでふたりは知り合うことになる。
 総務部調査課の働きもあって予定通り着工を迎えることができた。しかしこの際、
彼らがどのような手段を使ったのかは、神羅内ですら正式には公表されていない。
 仮にどれほど強く現地住民が反発したとしても、神羅が魔晄炉建設を諦めるはずが
ない。となれば大方の予想はつく。都市開発部門が提示した条件をのまない、あるいは
呑めない者達に対して残された手段は、強制排除しかない。
 たしかに全力は尽くした。決裂した交渉の前に行き詰まったリーブ達を救い、道を切り
開いてくれたのは総務部調査課だった。だが、このやり方が果たして最善の策だった
のだろうかと、今でも思い悩む事はある。
 魔晄エネルギーは神羅にとって重要な収益源になりうる。同時に、ミッドガルの住民
にも富と豊かさをもたらしてくれる。それ自体に嘘偽りはない。
 少なくともリーブはその信念の元に、都市開発事業に取り組んでいる。
 ――それを住民達に納得してもらう方法は、他に無かったのだろうか?
    力で排除する以外に、方法はあったのではないか?
    私たちの声を届ける方法が、他にも……。

597 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(14) mailto:sage [2006/05/12(金) 01:16:03 ID:a48LehO80]
 もう何度目になるか分からない自身への問いかけに、リーブは小さく頭を振った。
過ぎてしまったことを悔やんだって仕方がない。そして、彼らタークスがいなければ、
魔晄炉建設計画は間違いなく暗礁に乗り上げていた。彼らには、どれだけ言葉を尽く
しても感謝を伝えることはできないだろう。
 ただ、都市開発部門――もとい、自分の手を汚さずにいておいて、そんな風に思う
のは虫の良い話だと、同時に罪悪感を抱くのだ。
 魔晄炉建設はもう後には引けない、引くわけにはいかない。とすれば、自分が
最後まで携わることで結果を残そう。それが、ミッドガルの住民達に対する最低限の
責務であり、最高の仕事になるのだと――そう決意した矢先の配置転換だった。
 ――だから聞きたかった。管理課へ回された理由を。
    魔晄炉建設から離れてでも、ここへ来なければならなかった理由を。
 煮え切らない思いを、どこへぶつければいいのだろう? そんなリーブには感情を
「無用の長物」として否定できるはずがない。
 だが――いや、だからこそ。彼の言っている事が正しいのだとも思う。結果として
回答が得られなければ、思いになど何の意味もないのだ。

598 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(15) mailto:sage [2006/05/12(金) 01:22:37 ID:a48LehO80]
 出口の見えない迷路の中を思考が迷走する中で、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
「リーブ。あなたが、我々の様になる必要はありません。……いいえ」
 その声はとても力強く、まるで迷路の出口へと導くように響いてくる。
「あなたのような人が、これからは必要なんです。もし、できれば覚えておいて下さい。
今回の配置転換は……彼女の賭でもあるのです」
 彼は話しながら腕時計を見て立ち上がる。そろそろ、時間だ。
「待ってください?! ……それは、どういう」
 顔を上げたと同時に、リーブの胸ポケットから彼を呼ぶ電子音が聞こえてきた。
それを見下ろして男はやれやれと言いたげに微笑んだ後。彼は表情を見せない
ようにとリーブに背を向けた。
「私は、……あなた方を信頼しています。あなた方には我々……いえ、私のようには
なってもらいたくない、……というのは私の勝手な思いです」
 そう言ってから振り返った彼の表情は、いつもと変わらないものだった。
「私が、あなたを信頼しているように。彼女もまた、あなたを信頼し期待しているのだと
思います」
 もちろん確証はないものの、おそらく間違いありませんと付け足して。

「どうか彼女を助けてあげてください。彼女を救えるのは……あなただけなんです、リーブ」


599 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(16) mailto:sage [2006/05/12(金) 01:30:40 ID:a48LehO80]
「ちょっ……!」
 問い返そうとしたリーブを遮ったのは、ずっと放っておかれている胸ポケットの
携帯電話の甲高い電子音だった。彼はリーブに向けて電話に出るよう促す。が、
そんな彼の胸ポケットからも同じような電子音が聞こえてきた。
 ふたりは互いに顔を見合わせ苦笑しながら、それぞれの携帯を取り上げて
通話を始めた。
『……リーブ君、あなた何やってるの?!』
『主任、大変です!』
 端末の向こうから、それぞれの持ち主の名を呼ぶ声がほぼ同時に告げる。

 ――『ミッドガル魔晄炉建設予定地付近に、軌道を外れたものと見られる
    試作ロケットが墜落。死傷者、被害状況等の詳細は今のところ不明。』

「なんですって?! 場所と状況を詳しく教えてください!」
「……分かった。今すぐ戻る」
 ふたりは携帯を手にしたまま、別々の方向へ走り出した。
 リーブが見上げていた青空に伸びる一筋の雲がたどり着く先と、彼らが目指す
地点は、同じだった。




----------
・大風呂敷広げて夢を見すぎた。後で反省しながら畳もうと思う。
・尚、ロケットの話はFF7本編Disc3ミッドガル上陸後(ウェポン襲来前?)のシドより拝借。
 設定資料とかにこの辺の年代記載があったら目も当てられないw。

600 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/13(土) 01:04:19 ID:/Np77KcU0]
ロケット墜落ktkr!都市開発協力の内幕が面白いです

601 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/13(土) 13:30:37 ID:onyAmoyX0]
>>584-599
女性上司がリーブを呼んだ理由が気になります。
最終的にミッドガルを守れるのは彼しか居ないと思ったんでしょうか。

ついでにロケット墜落でシドとシエラも出て来るのかな?
と、期待sage。

602 名前:DC後 【62】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/13(土) 14:26:38 ID:onyAmoyX0]
>>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577の続きです。
それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573)

広大なミッドガルの瓦礫の山の中でヴィンセントを探す…という
不毛な作業を続けるクラウドとバレットの所にシドがやって来た。
「リーブが呼んでるんだとよ。」
クラウドとバレットは顔を見合わせた。
「おい、まさか探すの止めろって言うんじゃねぇだろうな。」
「いや…そんな事は言ってなかった。が、なんだか要領を得ねぇ…ってか…」
なんでも3人揃ったら話すとのことらしい。
だったら行って話を聞く事だとリーブの居るWRO本部に向う事にする。
道すがら、シェルクの話になった。
「あの娘はどうだ?倒れたって聞いたときはびっくりしたぜ。」
「今ではすっかり元気だ。時々寝込む事はあるが、大した事はないらしい。」
「マリンやデンゼルとも仲良くやってるそうだ。」
「そーか、そりゃ結構。」
シドは満足げに頷く。
「俺も忙しくて見舞いに行けなかったからよ、気になってたんだ。
時々ナナキのヤツがメールくれたんだが…俺も忙しくてな。」
「今、暇なヤツなんか居ねぇだろ。俺だってマリンに会いに行けねぇし。」
「ったく、ヴィンセントの野郎、どこに隠れてやがるんだぁ?シエラも心配してっしよ。」




襲撃の傷跡が生々しく残るWRO本部の巨大なビルの前に佇み、
3人は上空遥か彼方にある局長室を見上げた。
「随分やられているな。」
「…なんだか嫌な予感がするぜ。」
バレットは高層ビルを見ると、嫌な事を思い出さずにはいられないのだ。
中に入るとがらん、としていて誰も居ない。



603 名前:DC後 【63】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/13(土) 14:27:08 ID:onyAmoyX0]
電力が回復していないのか薄暗く、床や柱には銃痕があり、
かつての賑やかさを知るシドは思わず溜め息を吐き、そして煙草に火を点けた。
「ま、こんな調子じゃ、禁煙だなんだ言う奴はいねぇだろ。」
そして突き当たりにあるエレベーターを見ると、見事なまでに破壊されている。
「で、エスカレータも動かないってかぁ?」
回廊の上の方見て、シドとバレットはあんぐりと口を開け、
何も言わずに階段を上り始めたクラウドの後にしぶしぶ続く。
「リーブの野郎、毎日この階段を上ってんのか?」
「ケット・シーはともかく、アイツ、俺らより年上だよな?」
半分上った所で、真っ先に音を上げたのがシドだった。
「俺みたいにタバコ吸う奴にゃ、キツイぜ、この階段。」
階段にどっかと腰掛けて、首にかけていたタオルで汗を拭う。
「おい、行くぞシド。」
バレットは容赦ない。
「うっせぇなぁ、ちょっと休ませろよ。」
シドはうんざりした口調で言うと、また煙草に火を点けた。
これはなかなか動きそうにない。
「悪いが俺はもっと長い階段を上った事があるんだよ。これくらいなんともねぇさ。」
バレットが言っているのは、神羅ビルのあの長い階段の事らしい。
あの時、さんざゴネてティファを困らせた事は
ここでは黙っていた方ががいいな、とクラウドは思った。
かと言って先に行くと言うと、親父二人に文句を言われているのは目に見えてるし。
ポーカーフェイスのまま、うんざりとそんな事を考えていると、
書類の束を持った女性隊員が通りかかった。
3人の姿を見ると、直ちに敬礼すると、遠慮がちに、
「ところで…皆さんはこんな所で何をしておいでですか?」
「リーブの野郎にに呼ばれたんだ。」
「それで、この因果な階段を上ってる所だよ。」
女性隊員は言いにくそうに、
「あの…エレベーターが使えないので、局長室は2階に移ったのですが…」

604 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/13(土) 14:27:57 ID:onyAmoyX0]
短くてごめんなさい。
うまくいけば、今日明日には完結するかもです。


605 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/14(日) 00:46:30 ID:pScTXxYL0]
> 「あの…エレベーターが使えないので、局長室は2階に移ったのですが…」

腹痛い、ホント腹痛いw
リーブ(DC1章)という人物像をここまで的確に表現し、かつオチを着けてくれる作品を
拝見できる日がくるなんて!!
おいリーブ早く言えよ!と、大クレーム勃発の予感!!に期待sage。
(しかもこの後2Fまで下ることも考えると、結局上まで行くのと同じ距離になるんだよな…w)

いやもうホント幸せです。ありがとうありがとう。

606 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(17) mailto:sage [2006/05/14(日) 00:56:27 ID:pScTXxYL0]
>>594-599より。
----------

                    ***

 依然として出力低下の続く飛空艇シエラ号は、コントロールルームで必死に
操縦桿を握るクルーの操縦技術と努力の甲斐あって、辛うじて航行を維持していた。
「チッ、……やりすぎちまったか?」
 目の前で倒れたリーブの身を起こしたが、気を失ったまま意識が戻ることは
なかった。シドとしてはそれほど強い力で殴っちゃいないのだが、などと言い
訳じみたことを考えながら、通路の壁にリーブの上半身を凭せかけてから、
腕組みをして吐き捨てた。
「まったく世話の焼ける野郎だぜ」
 さて、これからどうしてくれようか。ようやくシドが考え始めた。しかし彼が考えて
いるよりもシエラ号を取り巻く事態の進行スピードは早く、そして向かう方向は
悪かった。
 飛空艇全体に、けたたましい警告音が鳴り響いた。それから間もなく、艇(ふね)が
大きく傾きかける。シドはバランスを取るために壁に手をつき、なんとかその場に
踏みとどまる。幸い、飛空艇の方も体勢はすぐ持ち直したようだったが、警告音は
止まらなかった。
 艇に迫る危機と、操縦桿を握るクルーの焦る顔が思い浮かび、シドは勢いよく
立ち上がり呼びかけた。
「……おいリーブ、ちょっと待ってろ!!」
 意識のない彼から返答はないが、シドはリーブの身体を通路の隅に寄せた。完璧と
は言えないが、こうして2面の壁で彼の身体を支えていれば、急激な揺れにも少しは
耐えられるだろう。間違っても、艇が揺れるたびに通路を転げ回る、なんて事には
ならずに済むはずだ。
 それからシドはコントロールルームへと駆け込むと、扉が開くと同時に叫んだ。
「おい、どうした!?」

607 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(18) mailto:sage [2006/05/14(日) 00:59:36 ID:pScTXxYL0]
「艦長……!!」
 先ほどシドから操縦桿を託されたクルーが声をあげる。
「依然としてシエラ号の出力は低下中。それどころか、このままではじきに
……全てのコントロールを受け付けなくなります」
 シドが階段を駆け上がる間にも、彼の状況報告は続く。コントロールルームに
設置された、おそらくはシエラ号全艦に設置されたディスプレイで、同じ現象が
起きていた。
 “退避勧告”。画面には簡潔にその文字が表示されていた。階段を上りきって、
手近にあったディスプレイでそれを確認すると、シドは噛みしめるように呟いた。
「……オレ様に艇を捨てろってのか?」
 クルーは一度シドから視線を外すと、黙って頷いた。シドの顔を見て、それは
言えなかったのだ。
「出力低下に伴い、既に高度調節の機能は使えなくなっています。このままの
軌道で進めば……ミッドガル中央塔付近……あるいは、六から八番魔晄炉
付近に……」
「おい待て! それじゃあ地上部隊が巻き添えになっちまうじゃねぇか!!」
 シドはクルーが言い終える前に叫ぶと、今にも胸ぐらにつかみかかる勢いで
詰め寄る。無論、操縦桿を託されたクルーとてそれを望んで操縦している訳では
ない。
 しかし彼が口にしていたのは考えられる中で最悪の、同時に現段階で最も
起こりうる可能性の高いシナリオだった。確かにこのまま飛空艇が墜落すれば、
爆発の余波で魔晄炉のいくつかは破壊できるだろう。そうなれば当初の計画通り、
零番魔晄炉へのエネルギー供給を絶つことができる。
 しかし、地上にいるクラウド達はどうなる? 仮に魔晄炉ではなく中央塔にでも
接触してみろ、中で交戦中であろうヴィンセントやユフィ、WRO隊員達を一気に
失うことになりかねない。
 どこへ墜落したとしても、シエラ号に搭乗しているクルー全員が間違いなく……。
 それは、なんとしてでも避けなければならなかった。

608 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(19) mailto:sage [2006/05/14(日) 01:05:06 ID:pScTXxYL0]
「ミッドガルに墜落……か」
 口に出してから、さらに嫌なことを思い出した。
 かつて神羅宇宙開発部門が作った試作ロケットが、ミッドガルに墜落した
時の話だ。当時、シドはまだ宇宙ロケットの正式パイロットにはなっていな
かった頃の出来事で、あの当時ミッドガルスラム街付近に墜落したとされる
ロケットは幸いにも爆発しなかったため事なきを得たのだと聞かされ、安堵
したことを覚えている。しかしそれ以降、宇宙開発への風当たりが社内で強
くなったことは間違いない。
 宇宙開発事業からの撤退を最初に提言したのは、都市開発部門だった。シ
ドは上官からそう聞いている。もっとも、今となってはどうでもいい話だ。
「……艦長」
 再び操縦桿を受け取ったシドに、クルーは神妙な面持ちでこう告げた。
「既にプログラムの起動準備は整っています。あとは……」
 それ以上は口にすることができなかった。飛空艇を放棄する選択を、シド
に下せと言うのは、あまりにも酷なことだとクルーは思った。
 しかし、それができるのはシド以外にはいなかった。

「このまま……ミッドガルに落ちる訳には行かねぇ……!」

 操縦桿を握るシドの手に、力がこもった。


----------
・(場面が飛びまくって分かりづらいですが、一応)ネロ戦後のシエラ号。

609 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/14(日) 04:20:19 ID:kTYdcOO80]
シエラ号の続きキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
気を失ったリーブに声を掛けているシーンが(・∀・)カコイイ!!


610 名前:DC後 【64】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:22:52 ID:kTYdcOO80]
>>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577 >>602-603の続きです。
それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573)


「お呼びだてして申し訳ありません。」
局長室には書類が山積みになり、リーブの顔も疲労の色が濃い。
それでも仲間が訪ねて来てくれたのがうれしいのか、目を輝かせている。
が、すぐにシドとバレットが不機嫌そうなのに気付いた。
「…どうしました?」
「なんでもない。」
横からさらりと言ってのけたクラウドのせいで、リーブに文句を言う気満々だった
シドとバレとは気勢をそがれ、腹立ち紛れに、どかりと乱暴に来客用のソファに座った。
クラウドもリーブに勧められ、空いている一人掛けのソファに座る。
「どうしてもここから離れられないので、わざわざ来て頂きましたが…話とは、ヴィンセントの事です。」
「ま、そうだろうな。」
階段の事をまだ根に持っているのか、シドが不機嫌そうに答える。
「何か分かったのか?」
クラウドはそれを無視し、リーブに尋ねる。
「それが…」
言いにくそうに言葉を濁すリーブに嫌な予感を覚え、シドとバレットは身を乗り出した。
「なんだよ、ヤツの身になんかあったのか?」
「もったいぶらずに早く言えよ!」
「私…考えたんですよ。」
また話をはぐらかされて、シドとバレットはあっさりキレてしまう。
「勿体ぶんなっつってんだろ?」
「結論から話せ、結論から!」

611 名前:DC後 【65】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:25:19 ID:kTYdcOO80]
二人の剣幕に目を丸くするリーブだが、簡単にペースを乱される彼ではない。
「順を追ってお話しますので…」
おだやかな口調で言われると、またもや二人のイライラのベクトルが乱されてしまう。
「わぁーったよ!」
「黙っててやるからさっさと話せ!」
「私…考えたんですよ。」
「そこからかよ!」
「クラウドさんとバレットさんが不眠不休で探しているのに、彼が見つからないのは何故かと。」
「その内の何日かは俺一人だったぜ。」
むすっとして、バレットが口を挟むが、リーブは無視して話を進める。
「私たちの誰もが彼の生存を信じています。なのに見つからないという事は、
彼はもうここには居ないのではないかと。」
3人は、ぽかん、とリーブを見つめる。
「じゃ…じゃあ、アレか?アイツは、無事なのにとっとと姿を眩ましやがったってのか?」
「おそらく。」
「俺たちが心配してるのを知ってか!?」
予想通りのリアクションに、リーブは考えに、考え抜いた返事をする。
「私が思うに…」
「おう、なんだ?」
「彼独特の奥ゆかしさではないかと。」
白けた空気が流れた。
シドとバレットは空いた口が塞がらず、クラウドは顔を手で覆ってしまう。
「随分と言葉を選んだな、リーブ。」
「皮肉ですか、クラウドさん?」リーブは肩を竦めた。「他に、どう言い様があるんです?」
口をぱくんと開いたまま呆然としていたシドとバレットだが、
すぐに目に光が戻り、ワナワナと震え始めた。
「二人とも、落ち着いて下さい。」
二人は同時に片足を応接セットの机の上にだん!と乗せると、
「落ち着けだとおおおおーっ!」
「これが落ち着いていられるかよ!」
「お二人とも、お願いですから座って下さい!」
リーブは必死で二人を宥める。

612 名前:DC後 【66】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:27:36 ID:kTYdcOO80]
クラウドは、なんだか子どもの頃に見たサーカスの猛獣と猛獣使いの様だな、と
傍観していたが、さすがにリーブが気の毒になり、
「それで、ヴィンセントはどこに居るんだ?」
リーブに飛びかからんばかりの二人と、そしてリーブがクラウドを見る。
「リーブの事だ。もう居場所は分かっているんだろ?」
さすがに気恥ずかしくなったのか、親父3人はいそいそとソファに座り直した。
「おう、で、奴はどこに居るんだ?」
「私…考えたんですよ。」
「またそこからかよ!」
「だから結論から言え、結論から!」
「シド、バレット。」
クラウドは少し声を荒げる。
「とにかく、今はリーブの話を聞こう。ヴィンセントが無事ならいいじゃないか。」
「ったく、おめぇはどうしてこんな時でも冷静なんだよ。」
ブツブツ言いながらも、二人はとりあえず黙るが、
それでも眼光でリーブを威圧するのは忘れない。
それをさらりと受け流し、漸く話を続けられる状況にリーブは満足げだ。
「まず、命がけの戦いを終えた後、皆さんならどうします?」
この質問は効果的だった。
途端に二人は大人しくなり、誰かの顔を思い浮かべている様子だ。
「ま、仲間ん所に戻るかな。」
「そうだな。俺ならそれからマリンの所に駆けつけるな。」
そうでしょう、とリーブも大きく頷く。
「当然、皆さんを待っていてくれる人の所ですよね。でも…私の質問に真っ先に浮かんだのは、
それぞれの奥方だったり、恋人だったり、娘さんだったのではないですか?」
これはクラウドを含めて、3人とも図星だったので誰も言い返せない。
「待てよ、リーブ。けどヴィンセントにゃそんな相手は…」
言いかけたシドがあっ!と叫んだ。
「…あんの野郎!まさか!!」
「おい、シド、どういうことだ?」
まだ分からないバレットがシドに尋ねる。



613 名前:DC後 【67】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:30:55 ID:kTYdcOO80]
「ヴィンセントはんは“ルクレツィアの祠”に居はります。」
ぽてん、ぽてん、とまたもや不思議な足音をさせてケット・シーが部屋に入って来た。
「わいがこの目で見て来ましたから、間違いないですわ。」
ケット・シーはよいしょ、と飛び上がってリーブの隣に座る。
「じゃあ、あの野郎…!俺らの事を放っておいて思い出の場所に駆けつけたのか…?」
バレットが再びわなわなと震え始める。
「皆さんもご存知の通り、彼はああいった性格ですから。」
「単に照れくさくて、みんなの前によう顔出されへんだけでっせ〜。」
今度は1人と1匹での説得だ。
「あの野郎!俺等が心配しないとでも思ってるのかよ?」
「今すぐ洞窟から首根っこ引っ掴んで引きずり出してやる!」
ケット・シーが慌てて両手を振りながら、
「ま…待って下さい、バレットはん!ヴィンセントはんは悪気があったんとちゃいまっせ!
きっと皆さんやったら分かってくれる、そう思うて…」
「いくら俺達だからって、分かんねーよ!」
「悪気があったらもっと許せるかよ!」
バレットとシドにコワい顔を突きつけられ、ケットシーは毛を逆立てて飛び上がった。
「俺は…少し分かるな。」
クラウドがボソッと呟く。それを聞き逃す親父二人ではない。
「どういう事だ?」
「みんなが待っているのは分かってる…1年前、俺はそれが分かって救われた。でも…」
その活躍のせいか、配達先の街で知らない人にいきなり
握手を求められたりして大変だったとクラウドは説明した。
「だから…出て来ないんだと思う。」
「せやから言うたでしょう?ヴィンセントはんは奥ゆかしいおヒトやって!」
我が意を得たり、とケットシーとリーブが同じタイミングで頷いている。
確かに、いくら気心の知れた仲間とは言え、ヴィンセントは仲間内でも特殊である。
常人とは違う身体の持ち主だ。
彼が出来るだけ人とは関わらない様に細心の注意を払って生きて来た事を思うと、
(さすがのお二人も、これで納得するでしょう…)


614 名前:DC後 【68】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:36:29 ID:kTYdcOO80]
リーブにとって、口下手クラウドがヴィンセントの立場で発言してくれるかどうかは、賭けだったのだが、
(やはり、3人一緒に呼んでおいて良かったようですね。)
作戦成功に、リーブはまたもや満足気に頷いた。
「ですから…今は彼をそっとしておいてあげましょう。大丈夫ですよ。
落ち着いたらひょっこり顔を出してくれまよ。
その時は何事もなかったかの様に、彼を受け入れてあげればいいだけのことです。」
穏やかなリーブの声が、静まり返った局長室に響く。
「…まぁなぁ…」
「アイツの性格を考えるとなぁ…」
説得成功!リーブがそう確信した瞬間、
「でもよ。ちょっとおかしいんじゃねぇか?」
「電話だろうが、メールだろうが、なんでも知らせられたんじゃねーのか?」
「そ…それは…」
情に脆い二人のこと、このセリフで決まりだと確信していたリーブは
思いがけない反応のすっかり狼狽えてしまっている。
「なぁ、リーブ、俺たちはな…」
「飛空艇団員に頭下げて抜け出して何日もミッドガルを歩き回って。」
「マリンにも会えずで、おまけに足が棒になっちまったぜ。」
「シェルクの見舞いにも行けなかったなぁ…」
強面2人に詰め寄られ、リーブは縋る様にクラウドを見るが、黙って首を横に振るだけだ。
ケットシーはとっくに姿を眩ませている。逃げ場はない。
「お前の言い分はもっともだぜ、リーブ。」
「それにヤツの気持ちも分からないでもねぇしよ。」
「そ…そうでしょう?」
リーブは引きつった笑みを浮かべる。
シドもバレットも同じ様に笑っているが、目が笑っていない。
「そこでだ。俺様にいい考えがあるんだ。」
にやりとシドが笑う。
「もちろん、お前も協力してくれるよなぁ?」

つづく。

615 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:37:22 ID:kTYdcOO80]
すいません、やっぱ、もー少しかかっちゃいます。
もーしばらくお付き合い下さいませ。

>>605

>リーブ(DC1章)という人物像

普段はダンディで上司にしたい男性No.1の局長も、
旅の仲間にはお茶目な所を見せるところがうれしくって、
DC1章のあのシーンは何度も繰り返して見てしまいます。
それとも、普段からあんな感じなんでしょうかね。
神羅時代の都市管理課としての重責、そして、WRO局長としての責務で大変だけど、
心から許し合える仲間と一緒の時はリラックスして欲しいなぁ…と思って書きました。

616 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/14(日) 15:51:43 ID:1q0JoqH+0]
「彼独特の奥ゆかしさではないかと。いいww
おっさんらワロタw

保守。


617 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/15(月) 02:44:08 ID:1+1dlJ4e0]
どちらの話も楽しんで読ませてもらってます。

618 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/16(火) 11:48:38 ID:I3ob+UGgO]
イイヨイイヨー
このスレのリーブいい味出しすぎ

619 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/16(火) 21:10:52 ID:4/ci2G760]
age

620 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/17(水) 22:05:01 ID:DyE+ffRk0]


621 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/17(水) 22:25:43 ID:4fHRqUoxO]
しゅ

622 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/18(木) 10:55:08 ID:mMqiugnQ0]
しま



623 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/18(木) 22:55:00 ID:fZXkTGs/0]
>>610-614
DC内のリーブ像が忠実に再現されているというか、微妙なお茶目さorおかしなオッサン
という姿が上手く描かれているので読んでて楽しいです。(激しく個人的な趣味ですがw)
ところで階段の件、シドならジャンプで一発解決できると思うのは自分だけだろうか?w
みんなに合わせて歩いたシドの優しさにちょっと切なくなった。

しかしシドとバレットを窘めるリーブの姿は、重役会議から変わらない役回りなんだなと
ちょっと思うw。小指ぐらい日常的に噛まれてそうな猛獣使いGJ!!

624 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(20) mailto:sage [2006/05/18(木) 23:29:19 ID:fZXkTGs/0]
>>606-608より。
----------

                    ***

 ロケット墜落現場へ向かう車内でも、本社と携帯での通話が続いていた。
都市開発部門管理課には、ロケット墜落についての詳細なデータや各所の
被害状況等がリアルタイムに入る。それを、彼女が電話を通じてリーブに
伝えていた。
『こちらから総務部調査課へ救援要請も出しておいたわ。正式に受理されるかは
分からないけれど……』
 つい先ほどまで一緒だった彼と別れる間際、あちらの携帯に入った連絡が
それだったのだろうとリーブは思った。
 しかし、そうなると不自然な事がある。
「主任、なぜ軍ではなくタークスなんですか? 万が一居住区画に影響が出ていれば、
救助活動には人手が……」
 墜落したのが試作ロケットである事を考えても、現場の惨状は察するにあまりある。
救助活動の規模ももちろんだが、救助する側もそれなりの装備を整えて臨まなければ、
二次被害拡大のおそれがある。
 それらの観点からも、救援要請を出すなら軍が妥当だとリーブは考えた。
なのになぜ、彼女がタークスに出動要請をしたのかが解らない。当然の疑問だった。
『…………』
「主任?」
 呼びかけた声に、ようやく彼女が口を開いた。
『……スラム街に被害が及んだとしても、救助はないでしょう。その代わり
ロケットの撤去作業が優先されるわ。被害状況の調査と報告までが私達の仕事。
軍の出動は、その後よ』
「なんですって!? なぜ……!」

『私たち都市開発部門としても、魔晄炉建設の工期を遅らせるわけにはいかないわ』

 携帯電話を通して聞こえてくる彼女の声が、ひどく機械的な音に聞こえた。

625 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(21) mailto:sage [2006/05/18(木) 23:37:31 ID:fZXkTGs/0]
 ――「……それは我々にとって、無用の長物でしかありません。」
 任務遂行のためには感情を切り捨てると言った、先ほどの男の言葉が脳
裏によぎる。彼の言葉もろとも否定するように、リーブは首を横に振った。
 違う、これは感情の問題ではない。
「主任。……それは間違ってます」
『…………』
「都市開発は……都市はそこに住む人あっての都市でしょう?! なぜ、
そんな風に住民を軽んじる事ができるんです!?」
『…………』
 返答はなかった。携帯から僅かなノイズは聞こえてくることから、通信が
途絶えたわけではなく、彼女からの返答がないのだと分かる。それでも
リーブはさらに言い募った。
「確かに私は……魔晄炉建設計画で力に頼りました。しかし、それが正しかった
とは思いません。利益を……豊かさを、住民に還元するのが、私の務めです。
ですから……」
『ご託は充分よ、リーブ君』
 先を続けようとしたリーブの言葉を、彼女はいとも簡単に遮った。たった一言で、
全てを否定し、拒絶する。
『可能・不可能……結果は2つしかないわ。そして我々は“可能”を実現する以外の
選択肢はない。できもしない理屈だけなら、聞く価値も意味もないわ。……切ります』
 そして事実、彼女は一方的に否定して通話を終えたのである。
「待ってください!」
 叫んだところで返ってくるのは、通信切断を示すノイズだけだった。
 リーブはやり場のない思いを携帯にぶつけるようにして叩きつけた。助手席に転がった
携帯のディスプレイに、リーブの顔が映し出される。
「みんな、間違っとるで」
 視線を前に向け、ハンドルを握り直す。
「……なんや、間違っとるんは自分だけかいな?」
 呟きながらリーブはアクセルを踏み込んだ。地上に真っ直ぐ延びた道路を、ひたすら進んだ。
 この時、見上げることのなかった頭上の空は、とても穏やかだった。

----------

626 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(21)[訂正] mailto:sage [2006/05/18(木) 23:42:22 ID:fZXkTGs/0]
>>625
そして我々は“可能”を実現する以外の 選択肢はない。
   ↓
そして我々には
----------
…気をつけます。

・未プレイですが、きっとシムシティをやらせてもコマンド1つ1つに対してSS書くんだと思います。
・念のため、現在投下中のSSはFF7です、…一応w

627 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/19(金) 21:27:07 ID:Es47DFMR0]
保守

628 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(22) mailto:sage [2006/05/20(土) 01:51:23 ID:acV9jEae0]
>>624-625より。
----------

                    ***

 受話器を左手に持ったまま、彼女はデスクの前で呆然としていた。自ら
切ると言って右手で通話を切断した、その体勢のままで。
 それは機敏に動き回り部下に指示を飛ばす、ふだんの活発な彼女からは
考えられない姿だった。周囲の視線を気にしたのか、俯いてから自分の耳に
すら、ようやく聞こえる程の小さな声を、絞り出すようにして呟いた。
「……分かってる……間違ってることは、分かってる……」
 その言葉を最後に、ずるずると崩れ落ちるようにして机に突っ伏した。
震える手で受話器を置く。遠くの方でがちゃがちゃと騒がしい音を立てていた。
「……でも……!」
 泣くことはしなかった。涙は出て来ない、この道を選んだのは自分自身
だったから。後悔もしていない、正しいと信じて選択したことだから。
 ただ、ただ。
 苦しかった。
「……主任」
 呼ばれる声で顔を上げる。バレッタで束ねられた髪が表情を覆い隠して
くれることはない。だから部下に向ける顔を、とっさに整えた。
「総務部調査課から、主任宛にお電話です」
「ありがとう」
 そう言って彼女は再び受話器を取り上げた。左手に持った受話器がひどく
重たく感じた。ボタンを押した後、耳に当てたスピーカーから聞こえてきたのは、
聞き慣れた男の声だった。彼の声が聞こえてくることを期待していた。その通り
かけて来てくれた男に、心の底で感謝した。
『……用件から簡潔に言うと、君の出してくれた要請は却下された。我々
タークスが、“救援活動”について出動することはない』
「そう……やっぱり」
 それも予想はしていた。しかし、彼の口からその言葉を聞きたくなかったという
思いも、どこかにあったのだろう。隠しきれなかった落胆が声に現れている。

629 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(23) mailto:sage [2006/05/20(土) 02:04:27 ID:acV9jEae0]
『ただ』
 だが彼女の予測を裏切るように、受話器から聞こえてくる声は続けた。
『個人的に、という条件付きですが協力はできます。あなた方の力になりたい』
「……珍しいこともあるのね」
 彼からの申し出は嬉しかった。それでも、皮肉るような言葉しか出て来ない
のは、仕事で染みついた習慣のせいなのか。そんなことを考えた。
 少し間を置いてから、彼はこう答えた。
『……先ほど、あなたの部下に言われましてね。彼はいい人材ですよ』
 その言葉に思い当たる顔が浮かんで、彼女は額に手を当てて苦笑した。
「そう。……実は私もね……叱られたばかりよ」
『良い部下を持ちましたね』
「ええ」
 そう言って彼女は頷いた。相手に姿が見えないと分かっていても、深々と。
その姿は頷くと言うよりも、頭を下げているように見えた。
 彼女は忙しなく社員の行き交うフロアに背を向け、窓から外を眺めながら
切り出した。
「……ねえ、あなたは知っているんでしょう? “例の計画”の事」
 窓の中に広がる空の中に、受話器を持つ自身の姿が映っている。まるで
自分に語りかけているようで、少し不思議な心地がした。
『住民監視システム……』
「ええ」
 僅かだが、答える彼女の声が震えている。

630 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(24) mailto:sage [2006/05/20(土) 02:08:25 ID:acV9jEae0]
『どうしたんですか? 貴女らしくないですね』
「……わたし……」
『待って下さい。お分かり思いますが、我々社員は常に監視されています』
 男の言葉に分かっていると言って彼女は頷いた。監視とはもちろん、今この
瞬間も含まれているのだと。それを聞いた以上、男に発言を妨げる理由はなかった。
「……この計画を最後に、彼にすべてを引き継ごうと考えているの」
『今回の配置転換は、やはり?』
「彼には悪いことをしたと思っているわ。だけどこれが、結果的には彼にとって
最善の道だと思うの……私のわがままかしらね?」
『彼なら……リーブならきっと理解してくれます。そして貴女の期待にも応えてくれる
でしょう。それについては私からも保証しておきます。ただ……』
「ただ?」
『まだまだ甘さが抜けません。仕方がないことだとは思いますが……』
 そう言って受話器の向こうで男が小さく笑ったのが分かった。
 その声を聞きながら彼女はふと目を細めて、振り返るとフロアを眺めやった。
(らしくない、か。確かにそうね……)
 ひとつの結論にたどり着いて、口元に小さな笑みを浮かべると、彼女はこう言った。
「あなたに部下を褒めてもらうのは、上司として嬉しいわ。でもね……。
 そんな保証なら、ないのと同じ」

631 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(25) mailto:sage [2006/05/20(土) 02:13:33 ID:acV9jEae0]
 その言葉を聞いて、受話器の向こうで男が堪えきれずに吹き出した。
『やっといつもの調子が戻ってきましたね。安心しましたよ』
「あなたに心配される様ならお終いね。……ありがとう」
 言いながら立ち上がると、机上の書類を手早く片付けて身支度を調える。
手前の引き出しに入れてあった茶封筒と、ふだんは鍵を掛けてある袖机を
開けて、さらにその奥にしまわれたディスクを何枚か取り出す。ラベルの
貼られていないそれらのディスクを確認して、ひとつ息を吐いた。
「これから私も現地へ向かうわ」
『分かりました。何かあればまた連絡を』
「ええ」
 そう言って通話を終えると、彼女は鞄の中に茶封筒を投げ入れた。
 フロアを去る際、先ほど自分に電話を取り次いでくれた社員に声を掛けられた。
「主任、どちらへ?」
「……ロケットの墜落現場よ。このまま戻らないと思うわ。後はお願いね」
「分かりました」
 しかしその言葉が示す本当の意味を、彼女以外に知る者はいなかった。


----------

632 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/20(土) 12:15:45 ID:1IKlcKb40]
GJ!ロケットが刺さった教会、心配ですね。現場はどうなってるのかな。



633 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/21(日) 02:04:19 ID:6/FYzwLt0]
一日一保守

634 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/22(月) 01:04:01 ID:nTwcWFeA0]
>>628-631
女性上司はもう戻られないのでしょうか・゚・(ノД`)・゚・。
2人ともとても辛い立場で読んでいる方も胸が痛いです。
続きが気になります…

635 名前:DC後 【69】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/22(月) 01:08:05 ID:nTwcWFeA0]
>>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577 >>602-603 >.610-614の続きです。
それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573)

二人の迫力に押されていたリーブだが、ここで諦めるようでは今の彼はなかっただろう。
「ちょっと待って下さい、艦長。」
「んだよ?」
「確かに私は彼を庇ってはいますが、別に彼の失踪に手を貸した訳ではありません。」
気丈に言い放つと、シドをぐい、と押しやる。
「あなたが何を考えているかは分かりませんが、手を貸す理由はありませんよ。」
「おい、シド、気付かれたぜ。」
「当たり前です。」
リーブはぴしゃりと言うと、改めて二人に向き合う。
「まぁ、そう言わずによぉ、協力しろよ。」
シドは脅しが効かないと分かると、今度は懐柔策に出た。
「別に俺だって本気で怒ってるワケじゃねぇよ。それっくらい分かるだろぉ?」
「さっきと言う事が随分変わってますが。」
懐柔されてなるものかと、リーブは冷たくそっぽを向く。
「そこでだ!」
「私の話を聞いてますか、艦長?」
「もちろん聞いてるぜ!」
「では改めてお願いします。どうか彼をそっとしておいてあげて下さい。」
「星を救った英雄を出迎えるパーティと行こうぜ!」
「ですから、私の話を聞いてますか?」
「もちろん聞いてるぜ。んで、場所はティファの店な。」
「勝手に決めるないでもらいたいな。」
クラウドが呟く。
どうせ聞いてはいないのは百も承知だが、一応言ってみる。

636 名前:DC後 【70】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/22(月) 01:12:06 ID:nTwcWFeA0]
「俺の作戦はこうだ。まず、ヤツを迎えに行くのはシェルクに頼む。」
「どうしてここで彼女の名前が出るんですか?」
「そりゃあ…」
「彼を油断させる為でしょう。」
「お前ってどうしてこう…もっと言い方ってもんがあるだろぉ?」
シドはは顔を、やれやれと頭を振る。
「いいか、よく聞けよ。俺たちが行くより、シェルクが行く方が
ヴィンセントの野郎がびっくりして、おもしれぇじゃねぇか。」
「おもしろいとか、おもしろくないとかの問題ではないと思いますが。」
「ど〜せ俺たちが行ってもよ、“あぁ、久しぶりだな”で終わっちまうじゃねーかよ。」
2人の会話は平行線で一向に終わる気配がない。
いつまでこの不毛な会話が続くのだろうと
クラウドが天井を仰ぎ見た時、シドが決然として言い放った。
「分かった!おめぇがそこまで言うなら俺にも考えがある!」

つづく。
===========================================================

保守がてらです。短くてごめんなさい。
リーブとケット・シーでもう一度本編をプレイしたくて、
ついに5周目を始めてしまい、しかもついやりこんでしまいますたorz
もうすぐ古代種の神殿。いつもの倍以上号泣しそうです。

637 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/22(月) 22:41:06 ID:V6FMiC8r0]
乙!

638 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/23(火) 09:42:00 ID:moUfoB5tO]
>>635-636
なんかもう飽きた

639 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/23(火) 15:40:46 ID:1QBjM2EQO]
乙。楽しみにしてるから頑張ってくれ

640 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/23(火) 21:37:53 ID:zC8be+Dn0]
>>635-636
いつも乙です。
読み手としてできる限り保守はするから
書く事に専念してくれて大丈夫ですよー
今回はちょっと展開を急いでる感じがしました。

641 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/24(水) 00:17:47 ID:/ysmsu5q0]
>>637 >>639 >>640
うれしいお言葉ありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・。

640さんの仰る通り、今回はかなりバタバタと投下しました。
また誤字あって、読み手さんに失礼でしたね、ごめんなさい。

>>639
だらだら続けてしまってごめんなさい。まだ少し続いちゃうんですよ。
でも、やっぱり完結させたいので、もし専ブラを
お使いでしたら作品名やトリでスルーよろしこです。

【訂正】>>636
×シドはは顔を、やれやれと頭を振る。
○シドはやれやれと頭を振る。

きっちりお話練って、また週末に参りますノシ

642 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/24(水) 23:09:23 ID:bKlMhxnr0]
保守



643 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/25(木) 12:26:50 ID:rIlKLfq+0]
1日1回保守すればいいの?
保守

644 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/26(金) 08:44:10 ID:V/cra6+80]


645 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/26(金) 20:50:25 ID:jJwWSq7x0]
しゅ

646 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/27(土) 13:51:02 ID:Zie0B69RO]
する

647 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/27(土) 14:02:40 ID:DwqnfsvZ0]
くあ

648 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/28(日) 08:42:18 ID:Sq26fkd30]


649 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/28(日) 22:27:49 ID:sqkZlGc10]


650 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/29(月) 03:23:45 ID:i8ygeqPX0]
>>635-636
やっぱりリーブの姿がうまいなと思います。一見すると周囲に流されているようなんだ
けど、折れることはない。最終的には元の位置に戻ってきてる、柳の枝みたいな。
上手く言えないけどそう言う面があるような気がする。一連の会話の中から、彼の
そんな魅力がよく出てると…
すいません、感想がリーブに偏ってるのは彼が良い味出し過ぎてて(ry。

651 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(26) mailto:sage [2006/05/29(月) 03:42:39 ID:i8ygeqPX0]
>>628-631より。
----------

                    ***

 墜落現場とされる地点はミッドガルの南西に位置する場所で、ちょうど
プレート建設中の現場近くにあった。しかし、ここまで来てリーブは進む
べき道を見失っていた。
「……どないしたんや?」
 車を止めて、初めて気がつく。
 空が、青いのだ。
 運転席から降りて周囲を見回した。風は強かったが空は青く、建設現場
にも何ら異常は見られなかった。
「方向、間違えとるんか?」
 自分で言っておきながら、即座にそんなはずはないと首を振って否定した。
 試作ロケット墜落の一報を受けてから、ナビゲートに従ってここまでやって
来た。都市開発に関わる以上、ミッドガルの地理情報には相当程度の知識が
あると自負しているリーブが、道を間違えるとは考えにくかった。さらに自分
以上の長年にわたってミッドガル都市開発に携わってきた彼女の案内が間違って
いるとも思えない。
 となれば、宇宙開発部門の軌道計算が間違っているか、そもそもロケットなど
墜落していない。というどちらかの可能性しか思いつかなかった。
 もう一度本社へ確認を取ろうとして、リーブは胸ポケットを探った。
「んっ?」
 そうして思い出した。携帯電話は助手席に投げ置いたままだったのだ。
 「しもたなぁ」と呟きながら助手席のドアを開け、携帯電話を取り出す。
 ところが携帯電話を取り上げた勢いで、助手席からある物が転げ落ちた。
履歴から本社を呼び出し通話ボタンを押そうとしたリーブは、視界の端に
車から投げ出されたそれの姿を捉えた。

652 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(27) mailto:sage [2006/05/29(月) 03:53:35 ID:i8ygeqPX0]
「……ああ、すまんな。痛ないか?」
 屈んで地面に転がった猫のぬいぐるみを拾い上げると、そう声を掛けた。
 別にぬいぐるみを集める趣味があるわけではないし、こんな可愛らしい
物を欲しがるような年齢の子どもが身近にいる訳でもない。
 それでもリーブは、そのぬいぐるみを大事に持ち歩いていた。

 ――それはミッドガルのある住民が、リーブに託したものだったからだ。


 それは今回の配置転換から遡ること半年ほど前の出来事だった。
 当時、魔晄炉建設予定地の住民達に向けて彼らは幾度も説明会を開いて
いた。
 それでも尚リーブは業務の合間を縫って、あるいは休日などの空き時間を
利用して、とにかく時間の許す限り該当地域にある一軒一軒を訪問し、彼らの
話に耳を傾け、時には頭を下げながらミッドガル中を歩いた。
 そんな中で訪れた一軒の家。そこには初老の夫婦が住んでおり、生活水準も
決して高いとは言えない。このぬいぐるみは、彼らの家に置いてあったものだった。
 子どもはいたが、既にミッドガルを出て各地を旅しているのだという。
「空が狭くなった」
 最初にこの家を訪れた時、夫は突っ慳貪に言っていた。神羅がこの街の
再開発を初めてからというもの、年々空は狭くなり、空気は汚れて行った。
彼らの子どもはそれを嫌がり、この都市を離れたのだと言う。

 ――自分とは逆だ。話を聞いた後でリーブはそう思った。

 彼は故郷を出て、このミッドガルへやって来た。
 住み慣れた地を離れ、親しんだ言葉を捨てたのは、彼の持つ理想を実現させる
ために他ならない。



653 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(28) mailto:sage [2006/05/29(月) 04:01:46 ID:i8ygeqPX0]

 その後もこの家には足繁く何度も通った。説得ももちろんだったが、そ
れだけが理由ではないような気がしていた。通い続けている間に色んな話
をした。ミッドガルの昔の様子や、彼らの子どもの事。時にはリーブ自身
の家族や幼少の頃にまで話が及ぶこともあった。
 やがて数週間が経った頃、リーブの熱意と誠実さに心を動かされ、夫妻
はこの土地を明け渡すことを承諾した。しかし彼らは、神羅の用意した場
所ではなく、ミッドガルから離れることを選んだ。
 仕事とはいえ慣れ親しんだ人々と別れるのは、少し淋しい。リーブはそう
思っていた。願わくば、自分達の作った新しい都市で暮らして欲しいと、
そんなことさえ真剣に考えた。だが、最後まで口に出すことはしなかった。
 退去の日、妻から渡されたのがこの人形だった。
 無口な夫よりも、社交性のある妻が、それを差し出してこう言った。
「むかし、子どもが好んで読んでいた童話に出てくる妖精が、アンタとそっくりでねぇ……。
こんな老いぼれに付き合ってくれた、せめてものお礼だよ。今までどうもありがとう」
 たくさんのしわを作りながら、彼女は微笑んだ。家財を積み終えたトラックに
乗り込む間際、最後に彼女はリーブを見上げながら語った。

「本当に、アンタもこの妖精もよう似とったよ……。
 アンタはこの都市にとってケットシーと同じ存在なんだよ、きっと」

 彼女の笑顔の裏にある、その思いが何であったのかをリーブが知るのは、
それからまだ先の事になる。

654 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(29) mailto:sage [2006/05/29(月) 04:19:14 ID:i8ygeqPX0]
 彼女の言っていた童話はこうだった。
 かつて世界を滅ぼそうとした狂者を倒すべく、世界各地に14人の英雄が
顕れた。しかし古の禁忌を破り“神”をよみがえらせた狂者は、引き替え
に自らの心と世界を贄として差し出した。神のもたらす圧倒的な力の前に
一度は離散するものの、彼らは再び集い、“神”の復活によって蘇った古
の力を用いて、力に囚われた狂者を倒した。後の世で「14英雄」と呼ばれ
る彼らは、同時に古の力を失った。
 この童話に登場する妖精ケットシーは、自らの生命が失われる代わりに、
石に力を託した猫として描かれ、その姿は人々を惑わせる存在であったの
だと言う。
 その時になってようやく、彼女が口に出さなかった思いの一端に、初め
て触れた様な気がした。
 けれどリーブの手に握られた人形は、ただ愛くるしい笑顔を向けるだけで
何も語ってはくれなかった。

 夫婦は、神羅都市開発部門の説得に応じ退去した、最後の住民となった。




----------
・魔石の頃から好きだったんだよケット・シーが!
・長い回想編もこれでようやく終わりに向かえます。今しばらくお付き合いいただければ幸いです。
>>632…しまった! 重大なこと見落としてたかも…。ありがとうございます。

655 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/30(火) 02:53:05 ID:0XQthXi20]
ぬこぐるみキタ!童話と老夫婦のつなげ方が良いですね。GJ!

656 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/31(水) 07:51:20 ID:DPcWCuxqO]
GJ!

657 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/01(木) 00:13:10 ID:6XvBxKtT0]
保守

658 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/01(木) 00:14:00 ID:xv7tA3fIO]
ほーしゅー

659 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/02(金) 01:12:45 ID:7Ln4SDWt0]
ほっしゅ

660 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/03(土) 01:19:10 ID:773PlVzP0]
よし保守だ。

661 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/04(日) 04:09:52 ID:TEYE1tsO0]
保全

662 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/04(日) 18:15:39 ID:X5ehdxokO]
そろそろ俺の出番か



663 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/05(月) 00:01:51 ID:pc5G+YAN0]
>>662
who are you?

664 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/06(火) 04:40:33 ID:AyC2XNeb0]
ほしゅほ

665 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/06(火) 13:56:52 ID:4gK/FQ8cO]
>>663
いや、なんか書いてみようかと思って

666 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/06(火) 17:35:25 ID:TWHHBHJK0]
DGDGDGDGDGDGDGDGGDGDGDGDGDGDGDGDGGDGDDG

667 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/06(火) 17:36:52 ID:TWHHBHJK0]
まちがいさがしー                                                                        ごめん

668 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/06(火) 20:36:58 ID:sf7+urMfO]
>>662に期待age

669 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 00:22:25 ID:JtOHu/8wO]
>>668
ありがとう
だが何書けばいいかわからん
もう7は職人がいらっしゃるしなあ

670 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 00:51:55 ID:phUzYnzk0]
>>669
月並みだけど
自分が好きなものを好きなように書けば良いと思う。
7ばっかりになるからって憚る事はないぞ。あ、でも
エログロネタはここじゃムリなんで該当スレになるけど。
期待sageそして保守。

>>666
ex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1130611531/

671 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 02:28:08 ID:rc0zO92i0]
669氏にワクテカ保守。
某スレに投下しようとして参加しそこねた、そんなネタを今更こっそり投下します。

672 名前:友達 1/10 白 ◆SIRO/4.i8M mailto:sage [2006/06/07(水) 02:31:17 ID:rc0zO92i0]
 朝靄の遺跡に、雲間から光の帯が伝う。
若者は遺跡の前でカメラを構え、そのフレームに小さなモンスターが入った。
「あれー?」

  おはよう。おにいちゃんたち、なにしてるの?

「これは人懐こいな、ラグナ」
「子供なんだよー。一緒に撮るか?」

  これ、なあに? ぶきじゃないの?

「カメラが珍しーんだな。うむ。セクシーショット」
「……」
「そうともウォード君。我々は取材真っ最中だ」

  おにいちゃんたち、おもしろい。

「ん? ついて来るのか。よし、俺のとっておきのギャグ、見せてやるぜー!」
 若者達の横で、小さなモンスターが楽しげに遊ぶ。
むしろ若者達が遊ばれている。それもかなり。
 彼等は後に、狩られたエルオーネを取り戻し、魔女アデルを封印した。
中心になったラグナは民に請われ、エスタを支えるようになる。



673 名前:友達 2/10 mailto:sage [2006/06/07(水) 02:33:20 ID:rc0zO92i0]
 偉丈夫が、勢い良くドアを押し開く。
「大統領閣下! 就任おめでとうございます! 
 強国ガルバディア元軍人とは、頼もしい限り。
 さあ、敵の屍を乗り越え、我が国に勝利を!」
「んー。そうだなあ。とりあえず大佐さん、戦況見してくれ」
「はっ!」

 入れ替わりに補佐官二人が、エスタ新大統領の顔を見る。
「やあ、ラグナ君。忙しそうだな」
「キロスー! これ罰ゲーム?! 全っ然帰れねえ!!
 大統領って何? ジャンケン負けるとなんの?」
 静かな補佐官が、ゆっくりと頷く。
新大統領は補佐官の肩を抱え、盛大なため息をつく。
「そーなんだウォード。まず停戦させねーとどーしよもねえだろ、これは。
 アデルいねーのに、まーだ戦う気満々だぜ!?」
「全くだ。これは金の……」
「そうそう、それだ。金の粒食べよう、だ。街が破壊され続けて、
 人手がガンガン減って、どーやって経済力つけよう、って話だろ」
「正しくは『金の卵を産む鶏を殺す』だな」

「帰りたいよー。レインに会いてーよー」
「巻き込まれてる我々も帰りたい」
「そう。エルも戻ったし、速攻ウィンヒルに帰りたいんだけどさ。
 俺達が今帰ったら、この国の人が大勢死ぬぞ? それは困るだろ」
新大統領は窓に噛り付き、大空を見上げた。


つづくよ

674 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 08:37:49 ID:aKHYAyk60]
なんか楽しげな話だ、つづき期待

675 名前:遺跡 3/10 白 ◆SIRO/4.i8M mailto:sage [2006/06/07(水) 20:41:59 ID:W7xp3TOi0]
やっちまった…タイトル重複につき変更。もうホントにすいません。orz
前話は>672-673です。
-----------------------------------------------------------

 ふわり。ふわり。軽やかな羊の群れが、山羊の先導で戻ってゆく。
モンスターの子供は、羊に囲まれながら家路を急ぐ。
「モンスターじゃねえか」
「まあ見ておけ。このルートなら面白いものが見られるぜ」
兵士達がモンスターを嘲笑する。

 かちり。

 仔に乳をやろうと、急いでいた山羊。その足元で、轟音。

  やぎさん? なに? なにがあったの?!

「おーし、踏んだ」
「地雷か。なあ、餓鬼も倒しちまおうぜ」
「経験値の足しにはなるか」

  どうして撃つの? こっちはなにもしてないよ!

 逃げ惑うモンスター。けたたましく笑う兵士。その先に――
「きゃあ?!」
震える女性。夕日に照らされ、長く伸びた影。
「民間人か。どこから入りこんだんだ」
「遺跡に行こうとしていたんです」
「観光地じゃねーぞ? まあ、遺跡は向こうだ」
走り去るジープ。山羊の血が、大地に吸い込まれる。

676 名前:遺跡 4/10 mailto:sage [2006/06/07(水) 20:43:40 ID:W7xp3TOi0]
 そろりと、女性の影から小さな影が出てきた。
「もう大丈夫よ。出ておいで」

  おねえちゃん、ありがとう。

「ねえ、小さなトンベリさん。セントラ遺跡を知ってる?」

  しってるよ。じぶんのおうちだよ。

「私はレインよ。ラグナを探しているの。
 ティンバーマニアックスに、セントラ遺跡の記事があったから。
 もうラグナが居る筈はないんだけど、手がかりが欲しくてね」

  こっちだよ。レインおねえちゃん、ついてきて。
  ラグナはやさしかったよ。

「知らないか。そうよね」

  どうしたの? レインおねえちゃん。
  きこえないの? この声が。

「ごめんね。あなたの仕草しか分からない」
小さなモンスターはレインと手を繋ぎ、遺跡に向かう。
宵闇の中、柔らかい潮風に吹かれながら。

677 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 22:25:11 ID:UPSDUnx+0]
新人さんキタ━━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━━ッ!!

元ネタは分からんが、子供モンスターとの交流が
ほのぼのしてて(・∀・)イイ
続きがんがれ!

>>669も期待sage
>>670に禿同だ。投下待ってる。

678 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 22:58:39 ID:kb9lUqm80]
>>675
ほのぼのしたストーリーなのでもしやと思ったら
やっぱり白さんでしたかw

679 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/08(木) 04:02:16 ID:FWviigEY0]
>>672-673,675-676
小さなトンベリのゆっくりとした、拙くも見える歩みに誘われるように
不思議と引き込まれる文章です。しかもほのぼのした中にも彼らを
取り巻く残酷な現実が垣間見えて、ちょっと哀愁を帯びてます。
そんな背景で「みんなのうらみ」だったらと思うと切なすぎる…。
続き待ってます。

680 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(30) mailto:sage [2006/06/08(木) 04:15:06 ID:FWviigEY0]
>>651-654より。
----------

                    ***

 回想を打ち切ったのは、無粋で無機質な携帯電話の呼び出し音だった。
我に返ったリーブは思わず携帯電話を取り落としそうになり、慌ててボタンを
押した。だから発信元にまで注意がいかなかった。
『リーブ君、今どこに?』
 聞こえてきた声に一瞬ためらう。しかし通話を始めてしまった以上、無下に
切る訳にもいかない。同時に発信元を確認しなかった自分をひどく後悔したが、
後の祭りだ。
 声の主は都市開発部門主任だった。回線を通して聞く彼女の声は、今や
当たり前の日常である様な気がするほど自然と耳に入ってくる。考えてみれば
彼女とはつい数日前、初めてまともに会話をしたばかりの筈だったのに、不思議
だと思った。
 いずれにしても、リーブが今いちばん聞きたくない声だった事は間違いない。
「……第6建設現場、エリアF5-268付近です」
 つとめて平静を装って、リーブは答えた。これは仕事なのだと、自分に言い
聞かせながら。そんな事情を知ってか知らずか、彼女は淡々と話を進める。
『ナビゲート通りね。……実はあの後、宇宙開発部門から修正データが送られて
来たの。それによると墜落現場と目される地点が当初と少しずれているわ。
場所はE3-282……』
「第5プレートですか?」
 紙面に出力するなどとうてい不可能と言えるような膨大な量のミッドガルプレート
建設計画書のデータは、本社のコンピュータに記録されている。厳重なセキュリティ下で
管理されているそれは、むろん社外秘で持ち出しも複製もできない代物だ。しかし
完璧に複製したものが、彼らの頭の中には入っている。
 このデータを元に、ふたりの会話は成り立っていた。おそらくは神羅都市開発部門内の
人間でも、参照なしに彼らの会話を理解することはできなかっただろう。
 ところが彼らはそれを平然とやってのけている。あまりにも自然すぎるために、
本人達ですら指摘されない限りは異常さに気づかなかったのかも知れない。

681 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(31) mailto:sage [2006/06/08(木) 04:18:38 ID:FWviigEY0]
『そう』
「ではそちらに向かいます」
『……ちょっと待ってくれる? 今、ちょうど現地にいるの……プレートの下よ』
 プレート下と聞いてリーブの脳裏にはある予測が立った。――ロケットが、
プレートを突き破ったのだと――立ってしまった予測から導き出された現場の
惨状を思うだけで、眉間に寄るしわの数が一気に増した。
『リーブ君、あなたはそのまま本社に向かってくれるかしら?』
「なぜです?」
『やってもらいたい事があるわ』
「何ですか?」
『まずは軍への出動要請。それから被害状況報告書の作成、破損部分の再建
工事の費用概算と計画書の提出……』
 言葉を交わし聞く毎に、眉間のしわが深まっていくのを感じていた。
 彼女が言っていることは分かる。言葉の中で省略されている宛先や方法まで
含めて、その一連の手続をリーブは理解した。が、一点だけどうしても理解でき
ないことがある。
「ち、ちょっと待ってください! それは主任の仕事のはずで……」
『ええ、そうよ』
「だったら……」
 言うよりも早く、彼女の声が耳に届いた。

『たった今から、主任はあなたよ。
 ――都市開発部門管理課の主任に、リーブ。あなたを指名します』

 自分の耳を疑うよりも先に、恐らくは開いたままだったであろう口を閉じようとした。
何か言わなければならないのだろうが、唐突で、しかも全く予想外の出来事に、
リーブは文字通り言葉を失った。

682 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(32) mailto:sage [2006/06/08(木) 04:25:45 ID:FWviigEY0]
 電話からは何の応答もない。リーブからの返答を無言で待っているのだろう。
膠着状態を脱するためには、こちらが先に発言する必要があった。それは充分
すぎるほど分かっているのだが。
「……んなアホな」
 情けないことに、口をついて出た言葉がこれだった。
 開いた口をようやくふさぎ、次に込み上げてきたのは怒りにも似た感情だった。
「悪い冗談だ」と思うのと同時に、そんな冗談をためらいなく口にした相手に対する
怒り――心中で渦を巻く感情に、言葉が追いつかなかった。
 しかし彼女は口調を変えないまま、リーブの言葉を肯定した。
『そうね、アホかも知れないわ』
 沈黙が流れたのは一瞬だけだった。電話を通して聞く彼女の声からは、その心の
動きを読み取ることはできない。
『管理課内の人事権は私にあるわ。その権限を行使して、あなたに全権を委譲するわ。
すでに手続はこちらで進めてあるから心配しないで』
「ちょ……言うてる事おかしいで?」
『そうかしら?』
 おかしいも何もない。リーブは電話を左手に持ち替えて、言い放った。これ以上黙って
聞いているのはごめんだ。
「……おたくさんがそう出るなら、こっちにも考えがある」
 口元に笑みを浮かべ、思うままに言葉を並べた。ふだんは抑えているはずの訛りも、
この時ばかりは気にならなかった。



683 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(33) mailto:sage [2006/06/08(木) 04:35:34 ID:FWviigEY0]
「主任。人事異動に対して拒否権があんのは知っとるやろ?」
『ええ。だけど拒否権発動は依願退職と同義よ』
「そんなん百も承知や。喜んで辞めたるで、こんな会……」
『そう、投げ出すのね。あなたを信頼した人達を裏切って』
 回線の向こうで彼女は溜め息を吐いた。それを聞いて、誰もいない建設現場で
思わずリーブは声を張り上げて叫んでいた。
「投げ出す?! 投げ出すんはどっちや! 電話一本で全権委譲って……
そんなん無責任な話やで」
『盛大に授与式でもやってもらいたいの? お望みなら手配してもいいわ。
 ……そうねリーブ君、さっき私に言った言葉、あなたにお返しするわ』
 しかし彼女の声に皮肉や侮蔑の類は含まれていない。ただある事実を、ありの
ままに指摘していた。いっそ事務的にも思えるその口調は、一方で彼女の怒りと
落胆の表れだったのかも知れない。
『あなた、間違ってる』
 電気信号として送られてきた声が、衝撃を伴って伝わる。リーブの肩を大きく
揺らす程の衝撃は、手にしていたぬいぐるみが足下に落ちるには充分な震度だった。


----------
・口論書くのが楽しくて仕方ない。突っ走ってすんません。
・ミッドガルの地番(?)はテキトーです、見逃してください。

684 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/08(木) 19:47:22 ID:ewZd9pi30]
関西弁キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
リーブ都市開発部門管理課主任さんがんがれ、超がんがれ。

685 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/09(金) 00:42:24 ID:4LW+5PdS0]
>鼓吹士、リーブ=トゥエスティY
場所を聞いただけで、破壊状況を把握する都市開発部門の人々がかっこいい!
真摯な会話の合間に顔をのぞかせる、ぬこぐるみが素敵です。

レス下さった方、ありがとうございます。次回で終了予定です。
そして>669さん期待sage。

686 名前:遺跡 5/10  ◆SIRO/4.i8M mailto:sage [2006/06/09(金) 00:45:29 ID:4LW+5PdS0]
前話は>675-676です。
----------------------------------------------------------------

 澄み渡る空。セントラ遺跡がそびえる。
レインは遺跡の入り口で、モンスターの子供と羊を見ている。

  ちょっとまっててね。
  オーディンに入れるよう、おねがいしてくる。

 トンベリの子供が魔方陣を描くと、するりと遺跡にレインが入った。
星霜を重ねた遺跡が、人間を迎え入れる。
「凄い。あなた、こんな事が出来るんだ」

  おねえちゃんはお客さんだから。たすけてくれたでしょ?
  みんなもレインは刺さないよ。あんしんしていいよ。

「素晴らしいわ。ここにラグナがいたのね。ん?」

  おなかがおおきいね。おかあさんになるんだね。

「撫でてくれるの? そう、ここに赤ちゃんがいるのよ。
 だから父親に、ラグナに見せたいの。勝手に行っちゃって、本当にもう!」

  ぷっ。しかられそうだね、ラグナおにいちゃん。
  こっちだよ。とってもきれいなの。

「わあ……!」
 遺跡の合間を埋め尽くす、色とりどりの花々。
雨季と乾季の合間に出ずる、束の間の花園。

  今だけ、ここはお花でいっぱいになるんだよ。

687 名前:遺跡 6/10 mailto:sage [2006/06/09(金) 00:47:24 ID:4LW+5PdS0]
「はい、これ。綺麗だから、作っちゃった。
 これは、ウィンヒルのお祭りで使うのよ」

  花かんむり? いいの?
  きれいだね。かわいいね。

「これは? 近くに海があるのね」

  ――おねえちゃん、そっちは駄目。行かないで!


 エスタの大佐が、僧侶と酌み交わす。
「新大統領は傀儡にならない」
「停戦などど。小賢しい」
僧侶が口の端を上げ、ぼそりと続ける。
「大統領には妻がいるようですぞ」
「ほう?」
「これは、使えます。我々の人質にすれば……」
 と思ったら、レインはウィンヒルに居なかった訳で。
それはもう、何や知らん悪そうっぽい人達が大騒ぎしたのはさておき。

 海辺の基地に、通信が入った。
「大統領夫人、ですか? そうです。遺跡に向かった女です」
「捕らえよ。手荒な手段を使って構わぬ。生きてさえいれば良い」
 肩で息をつく大佐の極秘指令を、紆余曲折して取り次いだ
そんな密偵の人が、僻地の兵士共に連絡中。
荒地しかないセントラに飛ばされてる時点で、頼りにならない部下の予感。
それでいいのか、大佐と坊さん。

688 名前:遺跡 7/10  ◆SIRO/4.i8M mailto:sage [2006/06/10(土) 02:17:52 ID:piZWgfBE0]
 山羊の時と同じ鈍い音が、レインの足元で鳴った。
「あ!」

  おねえちゃん。うごかないで。
  そう。そうだよ。じっとして。
  それで、この岩をそーっと、上に。
  ゆっくり、足をはなして。ゆっくりとね。
  これでだいじょうぶ。

「ありがとう……トンベリさん」

  おぼえたの。
  にんげんが、ばくだんをいっぱいうめたから。
  ここはオーディンがまもってるけど、そとはあぶないの。
  おもちゃの形をしてたりするんだよ。
  それで、おおぜいの仲間がひろったんだ。
  山羊をね。先に歩かせるんだよ。
  そうすれば、仲間はふまないから。

 銃弾の音。撃ち抜かれる地雷。そして炸裂音。
レインは声を上げることも出来ずに、倒れる。

  どうして?! おねえちゃん、おきて。
  血をとめなきゃ。あかちゃんがしんじゃうよ!
  ねえ。おねえちゃんの足は……どこ?

689 名前:遺跡 8/10 ※グロ注意 mailto:sage [2006/06/10(土) 02:19:12 ID:piZWgfBE0]
「よし、捕らえろ!!」
エスタ兵の一団が、大統領夫人を囲む。


             おまえたち。

           オマエタチガ……。

       我が友から、足を奪ったのか。

  ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。

          決して許しはしない。


 トンベリの呪文。デジョネーターが、標的である大統領夫人を村に送った。
モンスターは、ずるりずるりと一団に向かう。銃弾を全身に浴びながら。
 鮮やかな軌跡が。兵達の肺腑をたちどころに潰す。
そして。まだ生きている兵士を押さえ込み、刃を、太股に突き立てる。

 ごりりっ。ごきっ。ごとん。

 一本一本。兵の骨を切断してゆく。脈拍に合わせて、血が吹き上がる。
滴り落ちる髄液。痙攣し、やがて動かなくなる兵士達。
 生き残った兵士が、走り去ろうとする。その足に喰い込む包丁。
「うっ……うわあああ!」
言葉が通じない事を知ったトンベリは、地面に文字を綴る。

  どこだ? どこにいる?
  おまえに命じたやつは、どこに。

690 名前:遺跡 9/10 mailto:sage [2006/06/10(土) 02:21:33 ID:piZWgfBE0]
「大統領! 大佐と大僧正が亡くなりました!」
まずいな、とキロスが厳しい表情をした。
「つーか国葬じゃーねえか!! まーず大統領の俺が疑われっだろ? 
 なんせほら、二人共バリバリの親アデル派だったしよ。
 疑いを晴らすべく、徹底した科学捜査だなー、こりゃ」
「ほう。あんたにそれを理解する頭脳があったのか」
「お二方とも、両足を切断されております。それと……」
小太りの文官が、汗を拭きながら耳打ちする。
「マジで? レインが重傷!?」
 電光石火でラグナが駆け出した。状況が分かってるのか? みたいな顔のウォード。
「わーかってるぜえ! F.H.に行けば娑婆だって事だ!」
「無理です。既に大塩湖は閉鎖されております!」

 これ以上軍を暴走させない為に。敵を迎え撃つ事が無いように。
視覚的にも物理的にも、幾重にも閉じられたゲート。補佐官が、淡々と告げる。
「ラグナ大統領。和平交渉の時間ですが」
「……レイン!!」
 血を吐くような思いで停戦協定が締結した。しかし。一体誰が和平を命じたのか。
全ては謎のまま、エスタは国交を遮断する。平和と静けさを願いながら。

 停戦後。天衣無縫な大統領は、勢い良くゲートを突破した。
「おーし。いってみよう! エルも待ってるぜー!」
「間に合うのか?」
ウォードは、いや無理だろうと思う。
「あーッ! 無理は承知だ! けどこれは愛だ、愛なんだよー!!!」
キロスが苦笑し、そしてラグナに振り返る。
「そう来なくてはな。さて、行こうか」

691 名前:遺跡 10/10 mailto:sage [2006/06/10(土) 02:24:06 ID:piZWgfBE0]
 窓の外の村人達。眉をひそめ、噂話を繰り返す。
「ラグナを追って地雷を踏むなんて」
「あいつのせいだ。あいつのせいでレインは!」
 車椅子を囲む花冠。横に眠る赤子。部屋を埋め尽くす白い花。
優しい手が、幾つもの花冠を作り出す。
「レイン、無理しないで」
「今日は気分がいいのよ、エルオーネ」
「ラグナが起きたね」
「いい子ね。大好きよ、ラグナ」
生まれたばかりのスコールは、ラグナと呼ばれた。

「ラグナ……ずっとあなたの側にいたかった」

 祭りの音楽が、村に溢れる。優美な花冠が、村の娘達を彩る。
ウィンヒルの花畑に倒れ臥す、足無き刺客の群れ。
命じた者も既に亡く、国を閉ざされて。それでも愚かしく任務を遂行する者達。
――人に聞こえぬ音域で、幼いトンベリが呟く。

  おねえちゃん。
  おねえちゃんは、もうすぐ遠くに行くんだね。
  あのね。お手伝い、するから。

  レインの子供をまもるから。
  
  それで、ラグナ直伝のギャグをやるんだよ。
  大好きだから。
  レインも、ラグナも、みんなみんな大切だから。


END

692 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/11(日) 04:27:13 ID:/EEyX0u80]
>>686-691
セントラ遺跡でトンベリキングに手こずった事を今でもよく覚えていますが
これを読んだ後だと憎たらしいどころか愛着が沸きそうで困りますw。GJ!
全体的にもの悲しい雰囲気だけど、レインもラグナもトンベリも優しさに
溢れてるから、読んでる方は温かい気分になってます。新作も待てます!!



693 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/11(日) 22:50:11 ID:piV59owf0]
>>680-683
やはり女性上司は去ってしまわれるのですね。
イラストしか見た事ないのですが、BCの散弾銃の彼女を
キャリアっぽくした感じかなぁ…と勝手に妄想しておりました。
思わず関西弁が出る局長が(´∀`*)
上司が去る理由、リーブのこれからの奮戦ぶりに期待sage

>>686-691
8は未プレイですが、ほのぼのシーンが一転する所をドキドキしながら読んでました。
次回作も期待してます。

694 名前:DC後 【71】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/06/11(日) 23:00:20 ID:piV59owf0]
>>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577 >>602-603 >>610-614 >>635-636
の続きです。 それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573)

※作中のマテリアに関する表記は投稿人の勝手な思い込みです。
 間違ってたらごめんなさいよ。

「どんな考えか伺ってみましょう。」
リーブは余裕の微笑みだ。
「俺様が今喉から手が出る程欲しいもんをよ、涙を飲んでおめぇに譲ってやるぜ。」
芝居のかかった、もったいぶった物言いに、リーブは思わず首を傾げてしまう。
(艦長と私が喉から手が出る程欲しい物…?)
「そんなものありましたか?、もし飛空艇団のことでしたら…」
「そうじゃねぇよ、俺が言いてぇのはな…」
ここでシドは自信ありげに一同を見渡すと、
「ドラフト権だ。」
またもや白けた空気が流れた。
「あの…艦長?」
遠慮がちにリーブが尋ねる。
「その…ドラフト権というのは?」
白けた空気に気付いていないのはシドだけだ。意気揚々と、
「ま、平たく言やぁ、交渉権ってとこかな。」
「…誰の?」
クラウドが冷たく尋ねる。
あの頃は星の危機だったとは言え、よくこのメンバーをまとめていたものだと
クラウドは自分で自分に感心してしまう。
「もちろん、シェルクだよ!あのコがWROに入るよう説得すんのに、力貸してやるってんだよ!」
「説得も何も彼女が決めることだ。そうだろ、リーブ?」
よもやこんなバカげた話にリーブが乗るはずはない、そう確信してクラウドはリーブを見る。
が、リーブは何やら考え込んでいる様子だ。
それがやがて顔を上げると、シドの顔を正面から見据え、
「本当に、力を貸してくれるのですか?」

695 名前:DC後 【72】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/06/11(日) 23:01:30 ID:piV59owf0]
「おい、リーブ?」
「おう!俺様が頼めばイチコロよ!」
「そうですねぇ…」
鉄壁の要塞がこんなバカげた理由で綻ぶとはクラウドは信じたくなかったが、
「リーブ!」
「まぁ…あまり騒がなければ、大丈夫かと…」
あまりものバカバカしさに、付き合いきれないと、
席を立とうとしたクラウドをバレットが声を掛ける。
「どこ行くんだ、クラウド?」
「帰るんだ。」
「だとよ、シド!」
シドは立ち上がると、今度はクラウドの肩に馴れ馴れしく手を回す。
「まぁ、もうちょっと待てよ。」
「あんた達が何をする気か知らないが、俺には関係ないね。」
「関係なくてもいいから、家に帰るのはちょっと待てよ。」
「断る。」
俺の家で勝手をされてなるものかと、クラウドはすげなくシドの手を払い、ドアに向って歩き出す。
それを慌ててリーブが追いかける。
「待って下さい、クラウドさん。」
クラウドは振り返り、自分の腕を掴んだリーブに何か言おうとして、不意にがくんと膝をついた。
リーブがぼんやりとした緑の光に包まれているように見えた。
(…しまった…)
なんとか立ち上がろうとするが、急激に意識が遠のき、
クラウドはその場に倒れてしまった。
「すいません、クラウドさん…」
リーブは倒れたクラウドの傍に屈むと、聞こえるはずのない彼に謝る。
バレットは驚いて倒れたクラウドを助け起こす。

696 名前:DC後 【73】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/06/11(日) 23:02:05 ID:piV59owf0]
「リーブ、一体どうやったんだ?今のはまさか…」
クラウドは穏やかな寝息を立てて、すぅすぅと眠っている。
「これですよ。」
リーブはポケットから小さなブルーのマテリアを取り出した。
「“ふうじる”のマテリアですよ。今はこれくらいしか残ってませんがね。」
「おめぇ…なんでそんなもん持ってんだよ。」
さすがのシドも呆れ顔だ。
3年前とは違い、今ではマテリアの数自体がかなり減っていて、
最近では見かける事すらなくなっているのだ。
リーブはマテリアをポケットに戻すと、
「ボディガードなんか必要ないと言ったら、スタッフが護身用にと持たせてくれたんですよ。
もっとも、クラウドさんに効果があるかどうかは疑問でしたが…」
シドとバレットは同時に吹き出した。
「おまえ、貴重なモンをなんてことに使うんだよ。」
「しかも、使ったのはこれが初めてですがね。」
疲れていたんですねぇ、彼も…と呟きながらリーブは申し訳なさそうにクラウドを見る。
「んだよ、おめぇもやっぱヴィンセントのヤツが気になってたんだろ?」
「艦長があかんねんで!リーブのオッサンも我慢してたのに、
おもろそうな話ばっかりするから。」
いつの間にか姿を現したケットシーが横でぴょんぴょんと跳ねる。
「よし!じゃあ、邪魔者が寝てる間に作戦会議と行こうぜ!」
意気揚々とシドが叫ぶのを、リーブがクラウドさんが起きてしまいますよ、とたしなめ、
バレットは丸太を扱う様にしてクラウドをソファに放り投げ、
ケットシーは申し訳なさそうに上着を毛布代わりにかけてやり、
そうして親父三人は何やら相談を始めたのだった。

697 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/06/11(日) 23:06:56 ID:piV59owf0]
お久しぶりの◆BLWP4Wh4Oo でございます。
親父話、引っ張りましたがここまでです。
次からは場面変わります。長らくのお付き合いありがとうございますた。

最初シリアスだったのが、だんだんおちゃらけてしまってごめんなさいよ。

仕事忙しいのですが、新しい投稿人さん達がが増えてるのを見て
自分も頑張らないと、な気持ちになり少しですが投下です。
ペース遅くなりますが、完結するまでまたお付き合いよろしくです。

698 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/12(月) 02:29:44 ID:0f0x2FZrO]
あっ

699 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/12(月) 20:46:56 ID:IjN3p6uf0]
密かに楽しみにしてるよ

700 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/13(火) 04:11:15 ID:ExNTDCHB0]
>>694-696
各人の個性が行動によく出てると感心させられます。
って言うか楽しそうな親父連中がイイ!
リーブが持っていたのがケット・シーの初期装備「へんしん」のマテリアじゃなくて
ホントに良かったと思う今日この頃ではありますがw、続きも楽しみにしてます。

701 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(34) mailto:sage [2006/06/13(火) 04:20:06 ID:ExNTDCHB0]
>>680-683より。
----------

 ――ミッドガルの住民達に対する最低限の責務であり、最高の仕事。

 説得と視察のために、何度も歩いたミッドガルの雑然とした街並みが。
 自分に向けられた多くの住民達の表情や、声が。
 そして、この都市を去っていったあの老夫婦の笑顔と、後ろ姿が。
 彼女の言葉から一瞬にして思い起こされたそれらの記憶に、リーブは
言葉を止め、足下を見つめた。

 ――願わくば、自分達の作った新しい都市で暮らして欲しい。

 地面に転がったぬいぐるみを今一度拾い上げれば、懲りもせずに愛くる
しい笑顔を向けてくれる。「何度もすまんな」と呟くかわりに、優しくその額を
撫でてやる。
 こうして幾分か落ち着きを取り戻したリーブは、改めて問うのだった。
「……なら聞かせてくれへんか? 今回の配置転換の意図は何やったんか」
 今さら引く気はない。この後事態がどう展開しても後悔はしないだろう。
ただ、納得のいく回答を聞くまでは、追及の手をゆるめるつもりはなかったし、
とうに覚悟はできている。
 ひときわ強い風がリーブの背を叩いた。飛ばされてしまわないようにと、
ぬいぐるみを脇に抱え直す。
 そうして、彼女からの返答を待った。

702 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(35) mailto:sage [2006/06/13(火) 04:24:59 ID:ExNTDCHB0]



 電話を手にしたまま、本来ならこの場所からは見えないはずの空を見上げて
息を吐き出す。それからゆっくりと、彼女は語り始めた。
 しかし残念ながらそれは、リーブの問いに対する返答ではなかった。
「……リーブ君。あなた……神の存在を信じる?」
 通信の向こうにいる男に向けて問いかける。ロケットが墜落した地点から
プレートを挟んでちょうど真下に位置する五番街の一角に、彼女は立っていた。
『いきなり何ですか?』
「私、神なんて存在を信じてなかったわ。いいえ、今でも信じてない」
『はあ……』
 電話の向こうでリーブが呆れ声になっているのは気にせず、彼女は話を
続ける。
「でもね……。今は、今だけなら信じても良いかもしれない。そう、思っているわ」
『そう思わせる根拠が……あるんですか?』
 リーブの問いかけに応じるようにして、彼女は背後にそびえる建物に向き直ると、
それを見上げた。
「ええ。今、私の目の前に」

 彼女の前には、教会があった。
 その頂に、ロケットが突き刺さったまか不思議な教会が。



703 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(36) mailto:sage [2006/06/13(火) 04:58:41 ID:ExNTDCHB0]

                    ***

 リーブがその光景を目にする頃には、頭上高くで輝いていた太陽は姿を消し、
すでに月が顔を出していた。
 結局、あれから一旦は本社に戻ったリーブは、軍への出動要請や関係各所への
手続をひとまず「主任不在」として済ませ、それから現地へ向かったからだった。
 実際に現場を目の当たりにした今でも、目の前の光景を信じられずにいた。
ロケットの推進剤として用いられる燃料は可燃性が高く、一般的には打ち上げ後、
燃焼は制御できないはずだ。墜落したとなれば機体は破壊され、爆発は避けられ
ない。そう考えるのが自然だった。
 だがプレートを突き破ったロケットは、教会の屋根に突き刺さった状態で原形を
とどめていた。機体に加わる衝撃を、プレートと教会の屋根が吸収してくれたのだろうと
漠然と考えたが、それはあまりにも不自然で、まさに「奇跡」としか言いようのない
現象だった。
「……神は、おるのかも知れんな」
 日中、電話での会話を思い出したリーブは思わず零すのだった。
 いっそ滑稽にも映るその光景を見やりながら、どこか他人事のような気になったのは、
確率にして考えるには途方もなく低い上に、およそ人間の意志が関与できる範囲の外で
起きた出来事だと結論づけたからだった。
 前代未聞の大事故ではあったが、落下した教会の外壁やプレートの破片などによる
負傷者を出した程度の被害で済んだのは、不幸中の幸いと言えた。
 すでに教会周辺の現場は警戒域として神羅軍の監視下に置かれ、部外者の立入が
規制されていた。住民達がこの光景を目にすることは殆どなかったが、起こった事実
までもを全て隠すことはできなかった。一部の住民の間では、このロケット墜落に関して
いくつもの噂がささやかれる様になった。神羅内部の権力抗争だとか、新兵器の実験
だった、などが主な物だったが、どれも真相にたどり着けたとは言い難い。
 しかしそれもすぐに立ち消えてしまい、やがてはロケット墜落の事実そのものが人々の
記憶から薄れ、ついには話題に上る事さえもなくなることになるのだが、それはずいぶん
先の話だった。

704 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(37) mailto:sage [2006/06/13(火) 05:03:57 ID:ExNTDCHB0]
「……ご苦労様」
 被害状況報告書を作成するための実地見分を終え、機材を片付けている
リーブの背後で、彼女の声がした。
「まったく、……このロケットのお陰で今日はさんざんな目に遭いましたよ」
 鞄を閉めて苦笑しながら振り返ったリーブに、彼女は笑顔を作るわけでもなく
頷いた。彼らの横を、ひっきりなしに軍関係者やロケット解体・回収班が行き
交っていたが、ふたりとも気に留める様子はなかった。
「私達の仕事はとりあえずここまでね」
「住民は?」
「周辺地域住民の避難誘導と、負傷者の搬送は日中のうちに完了しているわ、
安心してちょうだい」
「そうですか」
 こともなげに語る彼女を見て、やはりリーブは彼女が主任たる人物だと改めて
実感した。現に、軍への要請をした際も、既に彼女が下準備を整えてくれていた
お陰で、手続そのものには時間を要することがなかったのだ。
 それから彼女は踵を返すと、教会を背に歩き出した。
「どちらへ?」
「もう、ここに用はないわ」
「主任?」
「…………」
 その言葉を最後に歩き出す彼女の後を追って、リーブも教会前を出た。

705 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(38) mailto:sage [2006/06/13(火) 05:12:06 ID:ExNTDCHB0]
 ふたりは無言のまま、五番街の中を歩き続けた。軍出動によって沸き立つ
市街地を抜けると、やがてゲートが見えてくる。ここまで来ると人気もほとんどなく、
喧噪は遠くに聞こえるのみだった。
 そうしてようやく、彼女は口を開いた。
「昼間は悪かったわ。時間がなかったとはいえ、あなたの心情をまったく考えずに
……申し訳ないと思ってる」
「……いいえ。その、こちらも言い過ぎました……すみません」
 ぎこちない会話を交わしながら歩くふたりの間を、生暖かい風が吹き抜ける。
舗装の割れ目から芽吹く草を揺らし、ざわざわと風にそよぐ小さな音に促される
ようにして見上げた夜空に月はなく、ぼんやりとプレートの底面が見えるのみで、
ロケットが開けた穴がなければ昼か夜かさえも分からない。
 ゲートから一歩出れば、むき出しの大地と澄み渡った空が彼らを迎えてくれるはずだ。
それを目指してまっすぐ、彼女はゲートへ向けて歩を進める。
「昼間……あなたに『神はいるか』と聞いたの、覚えてる?」
「はい」
 そのあと彼女は『神という存在を信じない』とも言っていた。リーブもどちらかと
言えば同じ考えだった。ただ、今回のロケット墜落の一件に関してのみで問うならば、
その限りではないだろう、とも。
 そこまで考えて、なんとも都合良く現れてくれる神だろうと、リーブは内心で苦笑した。
 しかし、彼女は思いがけないことを口にする。

「神など存在しない……だから神羅はこの都市で、『神』になろうとしている……」

----------

706 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/14(水) 01:01:02 ID:3WyLdPFc0]
被害が少なくてヨカター。都市を育てようとするリーブさんと
都市の支配者になろうとする神羅の差異が(・∀・)イイ!!

707 名前:鼓吹士の中の人 ◆Lv.1/MrrYw mailto:sage [2006/06/14(水) 02:37:13 ID:i22kvNLs0]
こんな長いお話にお付き合い下さってる方がいるだけでも嬉しいです。
どうもありがとうございます。
「6」は今回を含め、あと2回の投下で一応完結の予定です。
(10レス程度の予定) 今しばらくお付き合い頂ければ幸いです。

708 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(39) mailto:sage [2006/06/14(水) 02:48:54 ID:i22kvNLs0]
>>701-705より
----------
「……神、に?」
 繰り返して問うリーブの言葉に、彼女は足を止めて振り返った。
「そう。『神』になろうと……いえ、なるための術を、彼らは知ってるわ。
そしてその力を得ようとしている」
 頭上に広がるプレートが空を覆い隠しているように、彼女の言葉も何かを
覆っているように思えた。あるいは空と同じ、とてつもなく巨大な何かを。
それは聞き手であるリーブに漠然とした不安をもたらした。
「詳しいことは最高機密事項とされているわ。話では科学部門の行っている
という研究が、その中心を担っている――『ネオ・ミッドガル計画』と、呼称されている。
私が知っているのはその器の部分」
「……ネオ・ミッドガル?」
 聞き慣れない言葉だった。それに「器」というのも気にかかる。
「そう。……この地に住む全ての住民の監視と、統制。その上に成り立つ支配体制」
「監視と統制? それに支配って、どういう……」
 そこに付随する言葉はどれも穏やかではない響きだと感じる。それを示すように、
彼女の声は暗く沈んでいる。
「確かにこの計画が実現されれば、ミッドガルは素晴らしい都市になるのかも
知れない……。人々が愁いなく暮らせる、そんな理想の都市」
 彼女がこの神羅都市開発部門に入った頃は、間違いなくそう信じていた。
そのための都市開発事業であり、魔晄エネルギー利用は手段なのだと。
 戦によって利益を生み出して来た闇の商人は、その富を平和に還元するのだ
――と、勝手に信じ、迷うことなくその道を進んだ。
 だから“それ”も手段の1つだと、最初は考えていた。
「反面、豊かさをもたらす代わりに、神羅は住民の監視と統制のシステムを
構築しようとしている。……あなたも知ってるプロジェクトよ」

709 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(40) mailto:sage [2006/06/14(水) 02:52:55 ID:i22kvNLs0]
「ID管理ですか?」
「そう。……1つはね」
 ミッドガルの住民一人一人に個別の認識IDを与える。このIDによって彼らの
行動記録を含めた情報をすべて管理するというシステムが、ID管理計画だった。
都市開発部門のプレート建設計画には、この「ID」の通過チェックを行う装置を
含んだ設備が盛り込まれている。その実装段階で問題が生じたため、リーブは
この管理課へ招かれたというのが表面上の配置転換理由だと、彼女は告げた。
「ID検知システムを稼働させれば、どの住民がいつ、どこにいたのかを把握する
ことができるわ。……もちろん追跡も可能よ」
「その目的は犯罪の抑止、あるいは危険因子の監視」
 リーブが口にしたのは、神羅がID管理システムを提唱する最大の根拠だった。
無論、「危険」だと判断するのは神羅だという前提ではあることは言うまでもないが。
「そう」
 そこまではリーブも知るところだった。しかし、直前に聞いた言葉がどうしても
引っかかる。
「……1つ、という事は他にもあるんですか?」
 その問いに、彼女は首を縦に振るだけだった。
 吹いてくる風が強さを増し、草がざわざわと騒がしく音を立てて揺れた。彼女の
束ねられた長い黒髪も、背中で静かに揺れている。
 慎重に、言葉を選んでいる様子で彼女はしばらく黙っていたが、やがて重い口を
開き、社員にすら知られることの無い事実を語った。
「情報管理と行動監視はIDで充分。あとは統制……その方法を、神羅は秘密裏に
研究している。……幸い、まだ実装段階には至っていないわ」
「具体的にそれは何なんですか?」
「…………」
 その問いに、彼女から差し出されたのは1枚のディスクだった。
 それは彼女が本社を出る直前に、持ち出した数枚のうちの1つだった。
「これは?」
「ミッドガル都市計画の全容、その一部をデータ化したものよ」
「直接あなたの口から教えてもらうことはできない、そう言う事ですか?」
「……リーブ君、」

710 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(41) mailto:sage [2006/06/14(水) 02:59:19 ID:i22kvNLs0]
 何かを言いよどんでいる。目の前の彼女の様子からもそれは明らかだった。
しかし何かが分からない。そんなとき、彼の言葉を思い出す。
 ――「彼女を助けて欲しい。
    彼女を救えるのはあなただけなんです、リーブ。」
 そんな言葉を向けてきた総務部調査課の彼が、何を伝えようとしたのかを
リーブは知らない。だから尋ねた。
「あなたを救えるのは、私だけだと……ある方に言われました。そして、今回の
配置転換には別の意図がある、とも」
 それに、心当たりもなかった。彼らのような強靱な肉体と巧みな戦闘術を身に
つけているわけでもない、戦場へ出れば一瞬で殺されてしまうような自分に何が、
あるいは誰を救えるのだと?
「教えてください、主任。あなたの本当の目的は……」
「彼から聞いたのね」
 苦笑とともに彼女は口を開く。リーブは肯定も否定もせず、ただじっと言葉の
先を待った。
「そうね。今の私を救えるのはあなたしかいない……。
 このミッドガルを、完成させられるのは、あなただけだと思っているわ。だから私は、
あなたにミッドガルを託そうとしている」
 一度、彼女は瞼を閉じた。その奥に去来するものは何だっただろうか? ふと、
リーブはそんなことを思う。
 顔を上げ、目の前に立つリーブを真っ直ぐに見つめる彼女の口から、絞り出す
ような声で告げられる。

「お願いよ、この都市を完成させて。そして神羅の……暴走を、止めて」

「…………」
 リーブは語り続ける彼女を、黙って見つめていた。一言一言に込められた思いを、
あるいは今ここに至るまでに歩んできた道のりを、まるで見定めるように。

711 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(42) mailto:sage [2006/06/14(水) 03:03:58 ID:i22kvNLs0]
 彼女もまた、向けられる視線から目をそらさずに語り続ける。
「神羅は……いいえ、“彼ら”は人の心の内を覗く術さえも持とうとしている。
私には……私にはこれ以上……。そうね、あなたの言うとおり途中で放り出して
逃げようとしてる。無責任、あるまじき行為よ。でも……」
 今現在、部門に統括責任者がいないのは都市開発のみだった。一方で彼女は、
指名されて尚それを断り続けていた。だから管理課主任として、不在の統括
責任者の代役をこれまで務めて来た。
 そこで、望まずに知ってしまった真実がある。
「ミッドガルという土地も……ミッドガルに住む人々も、豊かになってほしい。
今でも……そう、思ってる。願わくば私の手で完成させたかった。でも、それは
叶わないと知った」
「なぜですか?」
 向けられた問いに答えようとして、抉られるような心の痛みを覚えた。都市開発
従事者として、志半ばでミッドガルから離れる決断は、決して軽いものではない。
しかも、自分の後を引き継ぐ者を置き去りにして出て行く事に罪悪感を抱けば尚更、
決意は揺らぐ。
 言葉を向ける側も、それがどれだけの痛みを伴うものなのかは承知している。
承知の上で、それでも残される側として聞いておかなければならない。

「私がこのままミッドガルに関われば……たくさんの犠牲を払う事になるから。
そんなことまでして……私は、神になんてなろうと思わないもの」

 だから、あなたに託すわ。彼女はそう言ったきり、俯いた。
 恐らくは、自分の知らないところで様々なしがらみがあったのだろう。その盾になり、
苦悩し歩んできたのだと、ほんのごく一部でしかないと知りながら、リーブはその声に
耳を傾け心を砕く。
「……主任。あとはお任せください」
 そう言って、リーブは深々と頭を下げる。心で強く願う本心を飲み込んで、彼女に
向けた言葉も決して嘘ではない。
「今まで本当に、ありがとうございました」
 その声に顔を上げ、彼女は心の底から驚いた表情を向けた。まさか頭を下げられる
だなんて思いもしなかった。罵倒され、嘲笑されるのだと覚悟していたから。

712 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(43) mailto:sage [2006/06/14(水) 03:09:59 ID:i22kvNLs0]
 嬉しかった一方で、素直に喜べないのも事実だった。今から彼は、自分の後を
引き継ぐのだ。これから先、今までの自分と同じように、たった一人で“彼ら”と
戦う事になる。
 ――そして、彼の前に最後に立ちはだかるのは。
「……リーブ君、聞」
「ところで主任、もしミッドガルが完成した暁には、1つお願いしたい事があるのですが」
 彼女の暗い表情を見まいと、言葉を遮るようにリーブは明るい声で話し出した。
「私と一緒に、ミッドガルを回ってもらえませんか? 魔晄炉8基が全て稼動した時に、
その稼働状況と完成した炉心制御システムを、ぜひあなたにも見て頂きたい。あなたが
後任に指名した私の仕事を、その目で確かめてもらいたいんです」
 それは管理課へ招かれ、彼女の後継者として指名を受けたリーブが口にできる言葉の
中で、もっとも本心に近いものだった。
 それが本心に近いものだと悟られないように、ことさら明るく振る舞うのは、ミッドガルを
去ると決意した彼女に対する気遣いに他ならない。
 なによりも彼女自身が強く、その思いを感じていた。
「あら、……もしかしてデートのお誘いかしら?」
「ま、そんなところです。我々ならではの演出でお迎えに上がります」
 リーブはずっと脇に抱えていたぬいぐるみを前に出し、まるでぬいぐるみが話している様に
動かして見せた。
『楽しみにしとってな。わいもデート楽しみにしとくさかい、頑張るで』
 そんな動作がおかしくて、彼女は小さな笑顔を作る。
 彼女自身、久しぶりに笑った気がした。目尻に浮かぶ小さな滴を指で拭うと、心に浮かんだ
思いをためらいなく言葉として口に出した。



713 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(44) mailto:sage [2006/06/14(水) 03:16:53 ID:i22kvNLs0]

「リーブ君、ありがとう。……あなたに」
 ――きっと、あなたの前に最後に立ちはだかるのは、私。
「あなたに迎えに来てもらえる事、楽しみにしてる」
 ――ミッドガルが完成した時、私のすべてを……あなたに託すために。
    地下に眠る、たくさんの生命への贄として、私の身を捧げるために。
「……だから、私からも1つお願いをしておきたいの。いいえ、約束してもらいたい事があるわ」
「何ですか?」
 リーブは柔らかな笑みを向ける。それを見ているのがつらいと思った。
 ――だからそれまでは、知らないで居てほしい。
    私と同じ苦しみを、味わって欲しくない。

「“DG、触れるべからず”」

 ――目覚めなければ、触れなくても良い地底の記憶。
    都市開発部門が関わるのは、私で最後……それでいい。

「“DG”?」
 耳慣れない言葉だった。何かの略称かと聞こうとしたが、彼女の悲痛な表情にリーブは
それ以上追及することをやめた。
「分かりました……」
「ありがとう、リーブ君。……それじゃあ、元気で」
 そう言ってレバーを下げると、重々しい音とともにミッドガルと外界を隔てるゲートを開いた。
 闇色の空に浮かぶ月と、照らし出された草原が彼らを出迎える。
 まるで地平線に誘われるようにして、ミッドガルに背を向け彼女は歩き出した。
二度と振り返ることはないだろうと知りながら、リーブはその背中を見送り続けた。


----------
・DCFF7第2章、「知らない」というのが腑に落ちなかった。
・その根拠に対して夢を見すぎているのは否めない。(w

714 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/14(水) 21:14:24 ID:wyaTmvEl0]
DGキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!乙です!
管理社会化に反抗する人々と引き継がれていく志がカッコいいです

715 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/15(木) 09:11:41 ID:rZf9hfCR0]
みなさん乙です!ハラハラしたり和んだりいつも楽しく読ませてもらってます。
480kb超えたので、そろそろ次スレ用意した方がいいですか?

716 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/15(木) 20:32:24 ID:R8Ix3z2R0]
1000行くまでに容量オーバーで書き込めなくなる事があるの?
もしそうならおながいします。
>>715がだめだったら自分もチャレンジしてみるよ。

717 名前:Part6 >>1 mailto:sage [2006/06/15(木) 21:29:36 ID:ZhSaf5sW0]
詳しくないけど、スレの容量制限(512kb>>4参照)があるらしいです。
で、テンプレ案貼っておきますね。改良あったら指摘よろしくお願いします。


〜〜〜〜〜以下〜〜〜〜〜〜


文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎!
皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン
=======================================================================
 ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。
 ※sage推奨。
 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。
 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。
 ※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。
 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。
=======================================================================

前スレ
FFの恋する小説スレPart5
game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1134799733/

記述の資料、関連スレ等は>>2-5にあるといいなと思います。

718 名前:Part6 >>2 (過去スレ) mailto:sage [2006/06/15(木) 21:30:29 ID:ZhSaf5sW0]
【過去スレ】
初代スレ FFカップルのエロ小説が読みたい
game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1048776793/l50
*廃スレ利用のため、中身は非エロ
FFの恋する小説スレ
game2.2ch.net/test/read.cgi/ff/1055341944/l50
FFの恋する小説スレPart2
game5.2ch.net/test/read.cgi/ff/1060778928/l50
FFの恋する小説スレPart3
game8.2ch.net/test/read.cgi/ff/1073751654/l50
FFの恋する小説スレPart4
game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101760588/

719 名前:Part6 >>3 (お約束とその他関連スレ) mailto:sage [2006/06/15(木) 21:35:19 ID:ZhSaf5sW0]
【お約束】
 ※18禁なシーンに突入したら、エロパロ板に書いてここからリンクを貼るようにしてください。
   その際、向こうに書いた部分は概略を書くなりして見なくても話はわかるようにお願いします。
【推奨】
 ※長篇を書かれる方は、「>>?-?から続きます。」の1文を冒頭に添えた方が読みやすいです。
 ※カップリング・どのシリーズかを冒頭に添えてくれると尚有り難いかも。

 初心者の館別館 m-ragon.cool.ne.jp/2ch/FFDQ/yakata/

◇書き手さん向け(以下2つは千一夜サイト内のコンテンツ】)
 FFDQ板の官能小説の取扱い ttp://yotsuba.saiin.net/~1001ya/kijun.html#kannou
 記述の一般的な決まり ttp://yotsuba.saiin.net/~1001ya/guideline.htm
◇関連保管サイト
 FF・DQ千一夜 ttp://www3.to/ffdqss
◇関連スレ
 FF・DQ千一夜物語 第五百五十二夜の2・5
 game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1137717472/
◇21禁板
 FF総合エロパロスレ2
 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1129822592/
 【FF】FINAL FANTASY Z 総合スレ【7】
 sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1128715926/
 FFDQカッコイイ男キャラコンテスト〜小説専用板〜
 www3.to/ffdqss

 どうしても議論や研鑽したい方は book.2ch.net/bun/

【補足】
 トリップ(#任意の文字列)を付けた創作者が望まない限り、批評はお控えください。
 創作文芸及びお絵描き・創作板も共通の見解のようです。

 挿し絵をうpしたい方はこちらへどうぞ ttp://ponta.s19.xrea.com/

720 名前:Part6 >>4 (板設定) mailto:sage [2006/06/15(木) 21:36:56 ID:ZhSaf5sW0]
【参考】

 FFDQ板での設定(game10鯖)
 game10.2ch.net/ff/SETTING.TXT
  1回の書き込み容量上限:2048バイト(=2kb)
  1回の書き込み行数上限:32行
  1行の最大文字数     :255文字
  名前欄の文字数上限   :24文字
  書き込み間隔       :45秒以上
  (書き込み後、次の投稿が可能になるまでの時間)
  連続投稿規制       :3回まで
  (板全体で見た時の同一IPからの書き込みを規制するもの)
   1スレの容量制限    :512kbまで
  (500kbが近付いたら、次スレを準備した方が安全です)

721 名前:Part6 >>5 (板内の文章系スレ) mailto:sage [2006/06/15(木) 21:45:47 ID:ZhSaf5sW0]
【FF・DQ板内文章系スレ】
かなり真面目にFFをノベライズしてみる。その7
game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1144319254/
もし目が覚めたらそこがDQ世界の宿屋だったら七泊目
game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1148786712/



〜〜〜〜〜以上〜〜〜〜〜〜

文章系スレはキャラ専用スレを省いたんだけど、
なんか昔と比べて少なくなってる…。
閉じこめ系はあんま見てないのでよく分かりません。
改良案なけりゃ立てるけど、新スレ立ててもあんまり人いないと
すぐ落ちるから週末とかの方がいいのかな?
聞いてばっかですんませんが、ご意見お待ちしてます。

722 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/16(金) 04:35:42 ID:4GLqYgTY0]
>>717-721
乙です!
テンプレもそれでOKかと。
確かに一晩レスが付かないって事が過疎ってるかもなので
スレ立ては週末の方がいいかも。





723 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/16(金) 17:47:01 ID:fzMg4rs/O]
あっ

724 名前:魔法のレス [2006/06/16(金) 21:12:26 ID:39G6EXCaO]
このレスは書き込まれたスレッドを必ず1000まで到達させる魔法のレスです。
ただしそれには条件があります。
このレスが書き込まれた33分後に、このレスと同じ内容を他のスレッドに書き込んで下さい。
書き込む人物は誰でも構いません。
あなたのスレッドの繁栄を願います。

725 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/17(土) 10:51:21 ID:JWXlB0Hk0]
保守

726 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/17(土) 11:01:44 ID:ZynBKpdO0]
容量ヤバス

727 名前:sage [2006/06/17(土) 14:20:48 ID:ZkwOaSrRO]
すまん、誰か頼む。
漏れ今携帯だ_| ̄|〇

728 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/17(土) 15:18:40 ID:mirqaio10]
スレ立て、ちょっと試してみるお

729 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/17(土) 15:56:02 ID:sH+jOKoc0]
FFの恋する小説スレPart6
game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1150527327/

730 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/17(土) 16:03:44 ID:mirqaio10]
>>729
乙です!本当にありがとうございました。

731 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/18(日) 09:03:24 ID:7czqfqxh0]
誘導も兼ねてこっちも念のため保守。






[ 新着レスの取得/表示 (agate) ] / [ 携帯版 ]

前100 次100 最新50 [ このスレをブックマーク! 携帯に送る ] 2chのread.cgiへ
[+板 最近立ったスレ&熱いスレ一覧 : +板 最近立ったスレ/記者別一覧](;´∀`)<486KB

read.cgi ver5.27 [feat.BBS2 +1.6] / e.0.2 (02/09/03) / eucaly.net products.
担当:undef