1 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/10/06(土) 05:37:40.79 ] このスレはガロア原論文を読むためおよび関連する話題を楽しむスレです 過去スレ 現代数学の系譜11 ガロア理論を読む5 uni.2ch.net/test/read.cgi/math/1338016432/ 現代数学の系譜11 ガロア理論を読む(4) uni.2ch.net/test/read.cgi/math/1335598642/ 現代数学の系譜11 ガロア理論を読む3 uni.2ch.net/test/read.cgi/math/1334319436/ 現代数学の系譜11 ガロア理論を読む2 uni.2ch.net/test/read.cgi/math/1331903075/ 現代数学の系譜11 ガロア理論を読む uni.2ch.net/test/read.cgi/math/1328016756/ 現代数学の系譜11 ガロア理論を読む6 uni.2ch.net/test/read.cgi/math/1342356874/
237 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 06:54:16.65 ] >>10 キーワード:望月新一、abc予想 Q.宇宙際Teichmuller理論とは? A.「望月新一を指導教員に志望する学生・受験生諸君へ」(下記URL)が一番情報が多い www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/students-japanese.html
238 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 07:10:18.25 ] >>237 つづき www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/students-japanese.html 最後に、本サイトの「過去と現在の研究」の解説に登場する「IU幾何」ですが、IU幾何は現在のところ、 まだ発展途上の段階にある理論なので、今から直接IU幾何の勉強を始めてもらうのはちょっと難しいと 思いますが、関連したテーマで、IU幾何の「心」を汲んでいるものについて勉強することは可能です。 IU幾何の「心」は、簡単に言うと、次のようなものです: 「数論幾何において本質的なのは、環やスキームのような‘具体的’な対象たちではなく、むしろそれら の具体的なスキーム論的な対象たちを統制している、様々な(‘組み合わせ論的アルゴリズム’に近い) 抽象的なパターンである。」 このような現象の典型的な例として次のようなものが挙げられます: (1) log schemeの幾何:詳しくは、私の論文 Extending Families of Curves over Log Regular Schemesの 文献リストに出ている加藤和也先生の二つの論文を参照して下さい。簡単にまとめると、 「多項式環等、Noether環の構造のある側面の本質は、モノイドという組み合わせ論的な対象に集約される」 という内容の理論です。 (2) 遠アーベル幾何:これについては、沢山の論文を書いていますが、入門的な解説では、次の二つが挙げ られます: ・「代数曲線の基本群に関するGrothendieck予想」 ・「代数曲線に関するGrothendieck予想 --- p進幾何の視点から」 簡単にまとめると、「数論的な体」の上で定義された双曲的曲線の構造は、その有限次エタール被覆の自己 同型群の群論的構造だけで決まるという理論です。
239 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 07:12:06.15 ] >>238 つづき www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/students-japanese.html それから、講演のレクチャーノート ・「A Brief Survey of the Geometry of Categories (岡山大学 2005年5月)」 を参照して下さい。簡単にまとめると、スキーム(または、log schemeやarchimedeanな構造付きのlog scheme)や双曲的リーマン面の構造は、そのような対象たちが定義する圏(=‘category')の圏論的構造 だけで決まるという話です。 因みに、ABC予想関係の話では、p進Teichmuller理論に登場する「標準的なFrobenius持ち上げの微分を とる」という操作の「抽象的パターン的類似物」が主役です。p進Teichmuller理論の解説としては、 ・An Introduction to p-adic Teichmuller Theory ・「An Introduction to p-adic Teichmuller Theory」 (和文) が挙げられます。
240 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 07:29:15.30 ] >>238 >文献リストに出ている加藤和也先生の二つの論文を参照して下さい。 補足 二つの論文 [8] K. Kato, Logarithmic Structures of Fontaine-Illusie, Proceedings of the First JAMI Conference, Johns Hopkins Univ. Press (1990), 191-224. [9] K. Kato, Toric Singularities, Amer. J. Math. 116 (1994), 1073-1099. なので ”ジャン・マルク・フォンテーヌ、リュック・イリュージーと共にlog代数幾何学を生み出した”=1995年(平成7年) - 井上科学振興財団井上学術賞:p進的方法による代数多様体の数論の研究 かな? ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E8%97%A4%E5%92%8C%E4%B9%9F_ (%E6%95%B0%E5%AD%A6%E8%80%85) 加藤 和也(かとう かずや、1952年(昭和27年)1月17日 - )は数学者。和歌山県生まれ、愛媛県育ち。現在、シカゴ大学教授。 業績 専門は整数論で、局所類体論の高次元化とその一般化、大域化。保型形式の岩澤理論の部分的解決、-進 -元の加群の構成、BSD予想への貢献、スペンサー・ブロックと共にHodge-Tate予想への貢献、L関数における玉河数に関するBloch-加藤予想の提起や、 ジャン・マルク・フォンテーヌ、リュック・イリュージーと共にlog代数幾何学を生み出した業績で知られる。 1995年(平成7年) - 井上科学振興財団井上学術賞:p進的方法による代数多様体の数論の研究。 Hodge-Tate予想に関する結果をIHESでの講演で初めて発表した際、ピエール・ルネ・ドリーニュが驚きのあまり床に転げた。
241 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 07:42:20.94 ] >>240 >p進的方法による代数多様体の数論の研究 ご参考(ご存知と思うが情報集約の意味で) ja.wikipedia.org/wiki/P%E9%80%B2%E6%95%B0 p-進数(ぴーしんすう、p-adic number)とは、1897年にクルト・ヘンゼルによって導入された[1]、数の体系の一つである。 文脈によっては、その体系の個々の数を指して p-進数と呼ぶこともある。 有理数の体系を実数や複素数の体系に拡張するのとは別の方向で、各素数 p に対して p-進数の体系が構成される。 それらは有理数のつくる空間の局所的な姿を記述していると考えられ、数学の中でも特に数論において重要な役割を果たす。 数学のみならず、素粒子物理学の理論などで使われることもある。 「p-進数」という用語における p は素数が代入される変数であるから、各々は例えば「2進数」や「3進数」などである。 ただし、例えば 2 を基準として実数を表現した二進数とは、関連が無くはないものの、全く別のものである。表記は同じなので、どちらを指しているのか文脈によって判断する必要がある。 文献等においては、文字 p がすでに他の場所で用いられている場合、q-進数や l-進数などと表現することもある。 (つづく)
242 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 07:44:23.71 ] >>241 つづき ja.wikipedia.org/wiki/P%E9%80%B2%E6%95%B0 概要 有理数体 Q から実数体 R を構成するには、通常の絶対値の定める距離 d∞(x, y) = | x - y | に関して完備化するのであった。 それに対し、p-進付値より定まる距離(p-進距離)dp によって有理数体を完備化したものが p-進数体 Qp である。p-進数と実数は異なる特徴を持つ別々の数体系である一方で、数論においては極めて深い関係を持つ対象であると捉えられる。 有理数から実数を構成する過程は、小数展開に循環しない可算無限桁を許すことを意味する。p-進数体 Qp における小数展開の類似物は p-進展開である。 p-進数の中で考えた有理数は p の高い冪を因数に含めば含むほど小さいと考えられ、p-進数の p-進展開は、p-進整数(ぴーしんせいすう、p-adic integer)を可算無限桁の整数と捉える見方を与える。 これにより、実数の場合と並行して、p-進数は有理数の算術まで込めた拡張であることを見ることができる。 実数体 R と p-進数体 Qp をひとまとまりにしたアデール (en) の概念が扱われることもある。有理数体のアデール AQ は簡単に言えば、実数体 R と全ての素数 p にわたる p-進数体 Qp との位相まで込めた直積である。 有理数体 Q はそのアデール AQ のなかに(対角線に)埋め込むことができる。有理数体をアデールに埋め込んで考えることは、有理数体を素数(と無限遠)を点とする空間 Spec Z 上の代数関数体として捉えるという視点を与える。 ここでは、Qp は有限素点 p における局所的な振る舞いを、R は無限遠での振る舞いを表すものとして並行に扱われる。このような解析的な取り扱いにおいては、p-進展開はテイラー展開の類似物であると考えられる。 実数体と p-進数体は有理数体の完備化であるが、一般の代数体でも同様の完備化が考えられる。 つづく
243 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 07:48:19.49 ] >>242 つづき ja.wikipedia.org/wiki/P%E9%80%B2%E6%95%B0 略式の解説 本節における p-進数の導入方法や記法は、数学的に正式なものではない。ただし、本節の解釈は、現実には有限の桁しか扱えない計算機の理論においては有用である。後述の p-進展開も参照。 以下の数の表記は p-進表記によるものとする。328.125 のような有限小数に、小数側に無限桁の数を加えて得られる 328.12587453… のようなものは実数のひとつである。 逆に、整数側に無限桁加えたもの、例えば …1246328.125 のようなものが p-進数であると解釈できる。 実数の場合とは逆に、小数側が有限桁でなければならない。p-進数の中でも、小数点以下がない …1246328 のようなものは p-進整数と呼ばれるものに対応する。 p-進数同士の足し算、引き算、掛け算は、p-進表記の有理数における通常のアルゴリズムを自然に無限桁に拡張することで得られ、割り算は掛け算の逆演算として定義される。 実数の場合とは異なり、p-進数においては、別途負の数を導入せずとも加法の逆元が存在する。たとえば2進数で 1 と …1111 を足すと 0 になるため、1 の加法逆元 -1 は …1111 に等しい。また、p-進数においては有限桁の小数範囲で必ず逆数が存在する。 たとえば、実数の世界においては、2進表記で 11 の逆数は 0.010101… であるのに対し、2進数の世界においては 11 の逆数は …010101011 である。 p は素数である必要があり、さもなくば2つの 0 でない p-進数の積が 0 になってしまうことや、逆数が存在しないことがある。p が素数であればそのようなことはなく、実数の加減乗除とよく似た性質を満たす。 p-進整数は p-進表記の整数を無限桁に拡張したものであるから、p-進整数の n + 1 桁目以降を「切り捨てる」事で有限桁の整数が得られる。 先に n + 1 桁目以降を切り捨ててから足し算、引き算、掛け算を行っても、先に足し算、引き算、掛け算を行ってから n + 1 桁目以降を切り捨てても同じ結果になる。 実数に距離の概念があるように、p-進数にも距離の概念(p-進距離)がある。例えば2つの実数 a, b の差が 0.0…0125… であるとき、連続する 0 の部分が長いほど数直線上の a と b は近い。 p-進数の場合、a と b の差が …1250…0 であるとき、連続する 0 の部分が長いほど a と b は近いとみなされる。 つづく
244 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 07:52:23.81 ] >>243 つづき ja.wikipedia.org/wiki/P%E9%80%B2%E6%95%B0 p-進数体の性質 p-進数が p-進展開と一対一に対応することから、p-進数体は連続体濃度を持つ。Q を部分体として含むので、標数は 0 である。どのように順序を入れても順序体にはできない。 実数体 R の代数閉包(複素数体 C)が二次拡大で完備であるのに対し、p-進数体 Qp の代数閉包 Qp は無限次拡大でしかも完備ではない。 その完備化は代数閉体であって、Cp と表される。これは複素数体 C と体として同型であるが、同型写像の存在は選択公理に依存しており、具体的に同型写像を与えることはできない。 Zp の単数群(可逆元全体の成す乗法群)は Zp× = {x ∈ Qp | vp(x) = 0} となる。Zp は局所環であり、その唯一の極大イデアルは と表される。これは p で生成される単項イデアル (p) = pZp である。Zp の pZp による剰余体 Zp/pZp (これを通常は p-進数体の剰余体などと呼ぶ)は p-元体 Fp = Z/pZ に同型であり、上で用いた展開の係数の集合 Ap は、しばしばこれと同一視される。 Qp の任意の元 x に対し、x = upn (n = vp(x)) となる u ∈ Zp× が一意的に存在する。したがって、Zp は単項イデアル整域であり、その任意のイデアルは (pk) = pkZp の形である。 p-進数体は離散付値である p-進付値に関して完備で、剰余体が有限であるので局所体のひとつである。p-進距離の定める位相に関して Zp は Qp の開かつ極大コンパクトな部分環である。 同様に、Zp の任意のイデアルは開かつコンパクトとなる。さらに、これらのイデアルたちは 0 の基本近傍系を成す。特に、Qp は完全不連結局所コンパクトな位相体になる。 p 進数体が n 分体を含むための必定十分条件は n が p - 1 を割ることである。とくに、p が奇素数のときは、p 進数体は 1 の原始 p 乗根を含まない。 つづく
245 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 10:49:15.90 ] >>244 つづき ja.wikipedia.org/wiki/P%E9%80%B2%E6%95%B0 局所大域原理 p-進数が数論において重要な役割を果たす文脈の一つとして、ハッセ の局所大域原理がある。 詳細は「局所大域原理」を参照 ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%80%E6%89%80%E5%A4%A7%E5%9F%9F%E5%8E%9F%E7%90%86 局所大域原理 (きょくしょたいいきげんり、local-global principle) とは、不定方程式が解を持つかどうかを考察する際に用いられる数学の用語である。 より詳しくは、ある不定方程式が有理数の範囲で解を持つことと、実数および全ての素数 p に対する p-進数の範囲で解を持つことが同値である、という命題もしくはそのような現象を指す。 ヘルムート・ハッセにちなみ、ハッセの原理 (Hasse principle) ともいう。 同様のことは、有理数体のみならず、一般の代数体上で考えることもできる。この場合、素数の代わりに素イデアルを考えることになる。本稿では、主として有理数体の場合について記述する。 概要 有理数係数の不定方程式が有理数の解を持つならば、その有理数は実数または p-進数と見ることもできるので、その方程式は実数解や p-進数解を持つ。 局所大域原理に言及する文脈では、有理数解を大域解 (global solution)、実数解や p-進数解を局所解 (local solution) と呼ぶ。 ただし、定数項のない不定方程式においては、全て 0 という自明な解を持つので、その場合は非自明な解のみを指すものとする。 ある不定方程式が大域解を持つならば、全ての素点[1]で局所解を持つが、その逆も成り立つ場合に「局所大域原理が成り立つ」と表現する。局所大域原理が成り立つかどうかは各々の不定方程式に依存して決まる。 例えば、一次の不定方程式は常に大域解を持つので、局所大域原理は自明に成り立つ。したがって、この用語は、二次以上の不定方程式に対して非自明な意味を持つ。 (一旦終わり)
246 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 10:54:21.59 ] >>237 >Q.宇宙際Teichmuller理論とは? www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Kako%20to%20genzai%20no%20kenkyu.pdf 過去と現在の研究の報告 (2008-03-25 現在) (抜粋) 新たな枠組への道 Hodge-Arakelov 理論では、数論的なKodaira-Spencer 射が構成されるなど、ABC 予想との関連性を仄めかすような魅力的な側面があるが、そのまま「ABC 予想の証明」に応用するには、根本的な障害があり不十分である。 このような障害を克服するためには、通常の数論幾何のスキーム論的な枠組を超越した枠組が必要であろうとの直感の下、2000 年夏から2006 年夏に掛けて、そのような枠組を構築するためには何が必要か模索し始め、 またその枠組の土台となる様々な数学的インフラの整備に着手した。 このような研究活動を支えた基本理念は、次のようなものである: 注目すべき対象は、特定の数論幾何的設定に登場する個々のスキーム等ではなく、それらのスキームを統制する抽象的な組合せ論的パターンないしはそのパターンを記述した組合せ論的アルゴリズムである。 このような考え方を基にした幾何のことを、「宇宙際(Inter-universal=IU)幾何」と呼ぶことにした。 (つづく)
247 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 10:58:34.49 ] >>246 つづき www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Kako%20to%20genzai%20no%20kenkyu.pdf 過去と現在の研究の報告 (2008-03-25 現在) (抜粋) 念頭においていた現象の最も基本的な例として次の三つが 挙げられる: ・ログ・スキームの幾何におけるモノイド ・遠アーベル幾何における数論的基本群=ガロア圏 ・退化な安定曲線の双対グラフ等、抽象的なグラフの構造 この三つの例に出てくる「モノイド」、「ガロア圏」、「グラフ」は、いずれも、「圏」 という概念の特別な場合に当たるものと見ることができる。(例えば、グラフの場合、 グラフ上のパスを考えることによって圏ができる。)従って、IU 幾何の(すべてでは ないが)重要な側面の一つは、 「圏の幾何」 で表されるということになる。特に、遠アーベル幾何の場合、この「圏の幾何」に対応するのは、 絶対遠アーベル幾何 (=基礎体の絶対ガロア群を、元々与えられたものとして見做さない設定での遠アーベル幾何)である。 この6 年間(= 2000 年夏〜2006 年夏)の、「圏の幾何」や絶対遠アーベル幾何 を主テーマとした研究の代表的な例として、次のようなものが挙げられる: ・The geometry of anabelioids (2001 年) スリム(=任意の開部分群の中心が自明)な副有限群を幾何的な対象として扱い、 その有限次エタール被覆の圏の性質を調べる。特に、p 進体上の双曲曲線の数論的基 本群として生じる副有限群の場合、この圏は、上半平面の幾何を連想させるような 絶対的かつ標準的な「有界性」等、様々な興味深い性質を満たす。 (つづく)
248 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 11:02:36.95 ] >>247 つづき www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Kako%20to%20genzai%20no%20kenkyu.pdf 過去と現在の研究の報告 (2008-03-25 現在) (抜粋) ・The absolute anabelian geometry of canonical curves (2001 年) p 進Teichm¨uller 理論に登場する標準曲線に対して、p 進体上のものとして初とな る絶対遠アーベル幾何型の定理を示す。 (略) ・A combinatorial version of the Grothendieck conjecture (2004 年) 退化な安定曲線に付随する「semi-graph of anabelioids」を、スキーム論が明示的 に登場しない、抽象的な組合せ論的枠組で取り上げ、様々な「遠アーベル幾何風」の 「復元定理」を示す。 ・Conformal and quasiconformal categorical representation of hyperbolic Riemann surfaces (2004 年) 双曲的リーマン面の幾何を二通りのアプローチで圏論的に記述する。そのうちの 一つは、上半平面による一意化を出発点としたもので、もう一つは、リーマン面上の 「長方形」(=等角構造に対応)や「平行四辺形」(=疑等角構造に対応)によるもの である。 ・Absolute anabelian cuspidalizations of proper hyperbolic curves (2005 年) 固有な双曲曲線の数論的基本群から、その開部分スキームの数論的基本群を復元 する理論を展開する。この理論を、有限体やp 進体上の絶対遠アーベル幾何に応用 することによって、様々な未解決予想を解く。 ・The geometry of Frobenioids I, II (2005 年) ガロア圏のような「´etale 系」圏構造と、(ログ・スキームの理論に出てくる)モ ノイドのような「Frobenius 系」圏論的構造が、どのように作用しあい、またどの ように類別できるかを研究する。 (つづく)
249 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 11:05:52.17 ] >>248 つづき www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Kako%20to%20genzai%20no%20kenkyu.pdf 過去と現在の研究の報告 (2008-03-25 現在) (抜粋) 数体に対するTeichm¨uller 理論 2006 年の後半から、目指すべき理論の形がようやく固まってきて、その理論を記述するための執筆活動が本格的に始まった。 この理論の「形」とは、一言で言うと、巾零通常固有束付きの正標数の双曲曲線に対して展開するp 進Teichm¨uller 理論と、「パターン的に」類似的な理論を、一点抜き楕円曲線付きの数体に対して展開する という内容のものである。 因みに、ここに出てくる(数体上の)「一点抜き楕円曲線」の中に、その楕円曲線の上に展開されるHodge-Arakelov 理論が含まれている。 この理論のことを、「IU Teichm¨uller 理論」(=「IU Teich」)と呼ぶことにした。 IUTeich の方は、本質的にスキーム論の枠組の外(=「IU 的な枠組」)で定式化される 理論であるにも関わらず、調べれば調べるほどp 進Teichm¨uller 理論(=「pTeich」) との構造的、「パターン的」類似性が、意外と細かいところまで及ぶものであること に幾度となく感動を覚えたものである。 2006 年〜2008 年春の「IUTeich の準備」関連の論文は次の四篇である: (つづく)
250 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 11:12:18.64 ] >>248 つづき 過去と現在の研究の報告 (2008-03-25 現在) (抜粋) ・The ´etale theta function and its Frobenioid-theoretic manifestations/ www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/The%20Etale%20Theta%20Function%20and%20its%20Frobenioid-theoretic%20Manifestations.pdf (2006 年) p 進局所体上の退化する楕円曲線(= Tate curve)のある被覆の上に存在するテー タ関数に付随するKummer 類をエタール・テータ関数と呼ぶ。このエタール・テー タ関数や、テータ自明化に付随するKummer 理論的な対象は、様々な興味深い絶対 遠アーベル的な性質や剛性性質を満たしている。これらの性質の一部はFrobenioid の理論との関連で初めて意義を持つものになる。また、このエタール・テータ関数 は、IUTeich では、pTeich における標準的Frobenius 持ち上げに対応する対象を定 める予定である。このFrobenius 持ち上げの類似物を微分することによってABC 予 想の不等式が従うと期待している。このようにして不等式を出す議論は、 「正標数の完全体のWitt 環上の固有で滑らかな種数g 曲線の上にFrobenius 持 ち上げが定義されていると仮定すると、その持ち上げを微分して微分層の次数 を計算することにより、不等式 g ? 1 が従う」 という古典的な議論のIU 版とも言える。 (つづく)
251 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 11:15:36.37 ] >>250 つづき 過去と現在の研究の報告 (2008-03-25 現在) (抜粋) ・Topics in absolute anabelian geometry II: decomposition groups (2008 年) IUTeich のための準備的な考察とともに、IUTeich とは論理的に直接関係のない 配置空間の絶対遠アーベル幾何や、点の分解群から基礎体の加法構造を絶対p 進遠 アーベル幾何的な設定で復元する理論を展開する。ただ、後者のp 進的な理論では、 上述の「Frobenius 持ち上げの微分から不等式を出す」議論を用いており、哲学的 にはIUTeich と関係する側面がある。 ・Topics in absolute anabelian geometry III: global reconstruction / www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/Topics%20in%20Absolute%20Anabelian%20Geometry%20III.pdf algorithms (2008 年) 「Grothendieck 予想型の充満忠実性」を目標とする「双遠アーベル幾何」(= bianabelian geometry)と一線を画した「単遠アーベル幾何」(= mono-anabelian geometry) を数体上の大域的な設定で展開する。これは正に IUTeich で用いる予定の遠アーベル幾何 である。この理論の内容や「IUTeich 構想」との関連性については、論文のIntroduction をご参照下さい。 ここで興味深い事実を思い出しておきたい。そもそもGrothendieck が有名な 「Faltings への手紙」等で「遠アーベル哲学」を提唱した重要な動機の一つは正にdiophantus 幾何への応用の可能性にあったらしい。つまり、遠アーベル幾何が(ABC予想 への応用が期待される)IUTeich で中心的な役割を果たすことは、一見してGrothendieck の直感にそぐった展開に見受けられる。一方、もう少し「解像度を上げて」状 況を検証すると、それほど単純な関係にあるわけではないことが分かる。例えば、 Grothendieck が想定していた応用の仕方では、数体上の「セクション予想」によっ て数体上の有理点の列の極限を扱うことが可能になるという観察が議論の要となる。 (つづく)
252 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 11:18:03.87 ] >>251 つづき 過去と現在の研究の報告 (2008-03-25 現在) (抜粋) これとは対照的に、「IUTeich 構想」では、(数体上のセクション予想ではなく) 数体とp 進体の両方に対して両立的に成立する(絶対遠アーベル幾何の一種で ある)単遠アーベル的アルゴリズムが主役を演じる 予定である。この「単遠アーベル的アルゴリズム」は、pTeich におけるMF∇-object のFrobenius 不変量に対応するものであり、即ちp 進の理論における Witt 環のTeichm¨uller 代表元やpTeich の標準曲線 の「IU 的類似物」と見ることができる。別の言い方をすれば、この「単遠アーベル的 アルゴリズム」は、一種の標準的持ち上げ・分裂を定義しているものである。また、(単 遠アーベル的な)「ガロア系」の対象がp 進の理論におけるcrystal(=MF∇-object の下部crystal)に対応しているという状況には、Hodge-Arakelov 理論における「数 論的Kodaira-Spencer 射」(=ガロア群の作用による)を連想させるものがある。 2008 年4 月からIUTeich 理論の「本体」の執筆に取り掛かる予定である。この作 業は、ごく大雑把に言うと、次の三つの理論を貼り合わせることを主体としたもの である: ・The geometry of Frobenioids I, II ・The ´etale theta function and its Frobenioid-theoretic manifestations ・Topics in absolute anabelian geometry III (つづく)
253 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 11:21:28.56 ] >>252 つづき 過去と現在の研究の報告 (2008-03-25 現在) (抜粋) 因みに、2000 年夏まで研究していたスキーム論的なHodge-Arakelov 理論がガウス (式は表現不可) の「離散的スキーム論版」だとすると、IUTeich は、このガウス積分の「大域的ガロア理論版ないしはIU 版」と見ることができ、 また古典的なガウス積分の計算に出てくる「直交座標」と「極座標」の間の座標変換は、(IU 版では)ちょうど「The geometry of Frobenioids I, II」で研究した「Frobenius 系構造」と「´etale 系構造」の間の「比較理論」に対応していると見ることができる。 この「本体」の理論は、現在のところ二篇の論文に分けて書く予定である。 ・Inter-universal Teichm¨uller theory I: Hodge-Arakelov-theoretic aspects (2009 年に完成(?)予定) p 進Teichm¨uller 理論における曲線やFrobenius の、「mod pn」までの標準持ち上 げに対応するIU 版を構成する。 ・Inter-universal Teichm¨uller theory II: limits and bounds (2010 年に完成(?)予定) 上記の「mod pn」までの変形のn を動かし、p 進的極限に対応する「IU 的な極限」を構成し、pTeich におけるFrobenius 持ち上げの微分に対応するものを計算する。 (終わり)
254 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 11:49:36.86 ] >>246 >Q.宇宙際Teichmuller理論とは? 2008-03-25 以降下記(ほんと短いアブストラクトですが) www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/research-japanese.html / www.kurims.kyoto-u.ac.jp/~motizuki/2010-10-abstract.pdf ・「Inter-universal Teichmuller Theory: A Progress Report」 (2010年10月開催予定の研究集会での講演のアブストラクト。2010年07月に掲載。)