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【獣人】亜人の少年少女の絡み5【獣化】



1 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/03(水) 23:48:05 ID:KgBQtwon]
このスレッドは、
   『"獣人"や"亜人"の雄と雌が絡み合う小説』
                    が主のスレッドです。

・ママーリand常時sage推奨。とりあえず獣のごとくのほほんと、Hはハゲシク。
・特殊なシチュ(やおい・百合など)の場合は注意書きをつけて投下。好みじゃない場合はスルー。

・過去作品はエロパロ保管庫へ。
sslibrary.gozaru.jp/

+前スレ+
【獣人】亜人の少年と亜人の少女の絡み【人外】
idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1061197075/
【獣人】亜人の少年少女の絡み2【獣化】
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098261474/
【獣人】亜人の少年少女の絡み3【獣化】
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1118598070/


351 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/11(月) 10:29:58 ID:70grUafH]
>>349
投下を許可するッ!

352 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/11(月) 11:18:41 ID:mFsK2OUu]
>>350-351

了解。
もう少し推敲したら投下させていただくよ。
今夜か明日あたり予定。

353 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/11(月) 12:17:44 ID:wzhgb6GQ]
新作クル―――――


と、ソノマエニ

「かっ、からだが…。私に何をしたっ」
「ずっとあなたを見ていたのに、あなた何も気付いてくれなかったじゃないですか」
「私と君では歳がちがい…股をさするな…ぅお…」
「やっぱりあの薬に過敏反応するんですね…私の毛並みも柔らかいでしょう?」
「うぁ、やめてくれっ…君はこんなことする子じゃないだろう!?」





>344のふんいきをかいわであらわすと こうですか わかりません><

354 名前:349 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 07:57:52 ID:cC62Mhpw]
一気に投下させていただきます。かなり長いです。

単品でも読めるように配慮しましたが、
前々スレのころに投下した作品の派生ストーリーです。
(1年以上前なので、覚えていてくださる方いないかもしれませんが)

お気に召していただけたら、保管庫、もしくは ttp://jam.pandora.nu/で以前書いたものも
お読みいただけるとうれしいです。(自サイトのほうは加筆修正してあります)

猫系獣人 基本は純愛です。
少しだけですが残酷系、陵辱系の描写がありますので、苦手な方はご注意ください。

355 名前:01/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 07:58:32 ID:cC62Mhpw]
-Prologue-

悪夢など、とうに見慣れている。
草原が燃える夢。身体が裂かれる夢。誰かを捜し続ける夢。
そのたびにうなされて、歌紡ぎの婆さんに起こされる。
そして覚めた頭で、どれも本当にあったことだと思い出す。
焦げた毛。失った左腕。……離してしまった手。二度と戻らぬ温もり。
叫びたい。でも俺の弱った身体はそれを許さない。
喉の奥で、うなり声がかすかに空しく響くだけ。

「今は無理やりにでも眠らなくちゃだめだ」

歌紡ぎはそう言う。歌で俺を無理やり眠らせる。
俺の心をなだめるために、あのころの夢を見せる。
むせかえる草の匂い。重さを感じるほどの強い日差し。
震えながら俺をにらんでいた青い瞳。
ずっと続くと思っていた、平和で幸せだったころ。
だからこそ、悪夢より何倍も、この夢は残酷だ。

そして。俺の意識は抵抗もできないままに、あの初夏の草原へと沈んでいく。


356 名前:02/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 07:59:05 ID:cC62Mhpw]
-1-

おもしれえな。
“サカリ”の木の下で、俺は白毛のガキに睨まれていた。
どう考えてもこれは恋心を打ち明けるとかそういう甘ったるい態度じゃない。
喧嘩を売ってるとしか思えん。
俺の胸までしか背がないようなコムスメのくせに、挑みかかるように
まっすぐ俺を見ている。そのくせ膝が合わないぐらい足は震えてるし、
今にも小便ちびっちまいそうなほどの緊張の匂いをそこいら辺じゅうに振り撒いている。
だが、こいつははっきりと俺に言ったんだ。

「あたしを抱いてくれませんか」

いったい何を考えているんだ、こいつは。


草原の中心近くにある大きな木の下は、ちょっとした広場になっている。
ここは“サカリ”の匂いをぷんぷんさせたオンナたちと、それを狙うオトコたちが
集まる場所だ。
今はまだ日が高いからか閑散としているが、日暮れ時から明け方にかけては、
どこから集まってくるんだってぐらい、たくさんのヒトで小さな広場が埋め尽くされる。
オンナを取り合うオトコたちの喧嘩は絶えないし、相手を見つけて
愛撫に夢中になる連中もいる。そして、それを見物に来る冷やかしも多い。

今日の俺は、どちらかというと、その冷やかしのほうだった。
何日か前に大きな獲物をとったから、狩りに精を出す必要もない。木陰で涼むの半分
いいオンナを捜すの半分、ぐらいの軽い気持ちだ。
俺ももういい加減ガキじゃない。“サカリ”の匂いのするオンナなら誰でもいいとか
そんな飢えた時期は過ぎた。ナワバリもそこそこ広がったし、仔も何人か作った。
ガキのころ憧れていたオトナのオトコの、とば口ぐらいには立てたような気がしている。

強いオトコに抱かれれば、強い仔が生まれる。弱いオトコが父親だと、
仔が生き延びる確立は低くなる。だから、オンナたちのオトコを見る目は厳しい。
今も何人かのオトコの周りにオンナが集まり、あぶれた奴らはおこぼれを預かろうと
遠巻きに眺めている。
ありがたいことに俺の横にはオンナが何人かいた。“サカリ”の時期に入っていない
暇をつぶしに来たオンナばかりではあったが。

そこに、そいつは来た。
辺りを見回して俺を見つけると、まっすぐこっちに向かって歩いてきたのだ。
そして、俺を睨みつけて言った。

「あたしを抱いてくれませんか」

俺も、周りの連中もあっけにとられてそのガキを見た。

「おまえ、自分がなにを言っているのかわかってるか?」

ガキは、俺から視線をはずさずに頷く。

357 名前:03/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 07:59:39 ID:cC62Mhpw]
オンナのほうから面と向かって誘いをかけるなんて聞いたことがない。
オンナは普通、その匂いでオトコを誘うものだ。
俺の隣に座っていたオンナのひとりが、ガキに見せつけるように俺の首に抱きつく。
喉に絡みつく笑い声を上げながら、ガキにも聞こえるような声の大きさで俺にささやく。

「アカガネはコムスメなんか相手にしないよねえ」

“サカリ”が来る年齢になっても、身体が出来上がるまではコムスメと呼ばれる。
いっぱしのオトコなら、そんなのに手を出すことはない。
もっと年上の、“サカリ”や仔を育てることに慣れたオンナを選ぶ。
コムスメは仔が出来にくいし、なによりいろいろと面倒くさい。

「やめなさいよ、サビ」

もうひとりが、ガキをからかっていたオンナをたしなめる。

「それより、ねえ。あなた、ギン、じゃない? こないだっから噂になってる」

ガキは少しためらったあとに頷く。
あまりにも場違いなそいつを興味深げに眺めていた周りのオトコたちが
いっせいに後ずさる。

「そんな目立つ毛色のコなんてあまりいないもの……。ねえ、あれって本当?」

ギン。その名前なら聞いたことがある。
たしか、“コムスメ喰い”をしようとした流れ者を殺したとか、オトコとして使い物に
ならない身体にしたとかそういう噂だ。話すヤツによって内容は違う。
見た感じ年相応に華奢だし、とてもそんな力があるようには思えないが。
話に尾ひれがついて大きくなっているんだろう。噂なんてそういうものだ。

最近草原に流れ者が増えてきた。
俺も3年ほど前に流れてきたんだから偉そうなことは言えないが
ここ1年ばかりの間に流れてきた連中はどこかおかしい。
オンナに対して異常なぐらいガツガツしている。
もちろんそんなオトコを選ぶオンナはいないから、奴らは成熟したオンナは狙わない。
オトコの誘いを断るのに不慣れなコムスメを狙う。
仔が欲しいんじゃない。それならコムスメを狙うわけがない。
ただ己の身体を鎮めるために、だ。
乱暴に扱われて死んじまったコムスメの話もよく聞く。出来上がっていない身体には
あれはかなり厳しい行為らしい。


358 名前:04/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:00:19 ID:cC62Mhpw]
広場中からオンナが集まってきた。こいつらはなんでこんなに噂が好きなのか。
本当は流れ者は何人いたの? 食いちぎったとか殺したって言うのは本当? などと
口々に不躾としか思えないような質問をぶつけている。
今まで俺をにらみ続けていた、ぴんと張り詰めた視線がはじめて泳いだ。

「だめ、なら……いいです」

抱けと言ったときとはまったく違う、消え入りそうな声でそのガキ、ギンは言って
その場を逃げ出そうとする。

「待てよ」

俺はギンの腕をつかもうと手を伸ばした。ギンは毛を逆立てて一歩飛び退く。
緊張の匂いが一層強くなる。
他人を怖がっているらしい。噂のせいか、噂の元になった出来事のせいか。
そんなヤツが、なんでこんなヒトの集まる場所に来たんだ。
俺にあんなことを言うために?
とにかく、このままここでさらし者にするのはしのびない。

しょうがない。俺は、女たちに囲まれて動けなくなっているギンの首ねっこをつかんで
持ち上げ、ぶんと振り回して肩に担いだ。
ギンは一瞬何が起きたのかわからなかったようだ。
俺の肩の上で固まっていたが、しばらくして我に返ったのか暴れだした。

「嫌! おろしてください!」
「やだね」

暴れるギンの身体を片手で軽く制して、俺は歯を見せて笑う。

「おまえは俺に抱かれたいんじゃなかったのか?」
「あ……」
「なら、おとなしくしとけ」

俺は静かになったたギンを肩に乗せたまま、オンナたちに手を一振りしてその場を離れた。
結局、その頃には、俺はギンに少し興味を持ってしまっていたのだ。
噂の内容にではなく、このコムスメ自身に。
俺を睨んでいた、夏の空みたいな青い瞳に。

まったく、おもしれえ。

359 名前:05/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:00:50 ID:cC62Mhpw]
-2-

「さて。どうするかな」

“サカリ”の木からかなり離れた川べりまできて、俺は肩の上で身を硬くしているギンに
声をかける。このあたりはもう俺のナワバリだ。
途中まで俺たちのあとをつけていた野次馬も引き返した。
ギンはずいぶん落ち着いたように見える。
だが、ひどく震えているし、手のひらや足の裏がびしょびしょに濡れている。冷や汗だ。
体臭は緊張の匂いから、強い恐怖の匂いに変わっている。
むりやり担ぎ上げたのは悪かったが、ほかにどうやってあそこから
連れ出せたって言うんだ?

「失礼だな。別に喰おうとか苛めようとか思ってねえぞ」

顔を覗き込むと、ギンは耳を伏せて毛を逆立てた。
さっきのは、本当にギリギリ精一杯の虚勢だったってわけだ。
俺は、肩に乗せたときと同じようにギンの首根っこをつかんで草の上にそっとおろした。
ギンは足に力が入らないのか、その場に崩れ落ちる。
そして這うように俺から離れようとする。

「なあ、俺はおまえがそこまで怖がるようなことをしたっけ?」

ギンはぶんぶんと大きく首を横に振る。

「じゃあもう少し落ち着け」

俺は毛づくろいで気を落ち着けようとしているギンを横目に、適当な岩に腰をかけた。
川べりの丈の高い草が風で大きく揺れている。もうすぐ日が落ちる。

「落ち着いたら送ってってやる。家はどこだ」

足を投げ出して、夢中で腹の毛を舐めていたギンが、あわてたように座りなおす。
すがるような目で俺を見上げる。
今度は不安の匂いか。匂いがコロコロ変わる。
ガキからオトナに変わる時期は、気持ちが安定しないもんだ。
しかも、ガキの頃と比べて匂いは強くなっているし、守ってくれる親からも離れている。
大きな生き物に捕まって喰われちまいやすい時期だ。

「やっぱり、だめなんですか?」

絞り出すような声でギンが俺に訊く。

「おまえを抱けってやつか? 今は無理だ」
「噂のせい、ですか?」
「違う」
「あたしが、コムスメだから?」
「それも違うな」
「……魅力、ないから、なんですか?」

ギンの声はどんどん萎れていく。別に苛めているわけじゃないんだが。



360 名前:06/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:01:21 ID:cC62Mhpw]
「正直に言うと、それも違う」

身体の均整は取れているし、珍しい白くて細い長毛と青い目も、将来かなりの美人に
なりそうな気配を見せている。

「じゃあ、なぜ」
「抱きたくなるかどうかは、相手の“サカリ”のときの匂いを嗅いでみないと
 わからねえもんなんだよ。おまえは今、“サカリ”じゃない」
「え」

ギンがただでさえ大きな目をまん丸にする。

「えええ!? ……これ、違うの!? ……じゃない、違うんですか」」

困惑に混じる、安堵の匂い。しかし、おもしろいぐらい感情が匂いに出るヤツだな。

「おまえ今、ヒト恋しくなったり匂いに敏感になったりしてるんだろ? あとは妙に
 落ち着かねえとか、頭がボーっとしてよくわかんねえ行動とったりとか」

ギンが真剣な目で何度も頷く。

「普通は間違えたりしないもんだけどな。そりゃ“サカリ”の前兆ってやつだ」
「前兆」
「前兆の間にオトコの匂いを嗅げば、やがて“サカリ”が始まる。
 まあ、俺はオトコだから詳しいことはわかんねえが、
 オンナが仔を作れる身体に変わるには、それなりに時間がかかるってことなんだろうな。
 コムスメの場合なんかは前兆だけで終わっちまうことのほうが多いらしい」

「……あたしは、あの時“サカリ”じゃなかった」

ギンは呆然とつぶやく。

「そっか、あたし、嘘、つかれたんだ」
「嘘って?」

ギンは、どう話したらいいのか、といった風情で何度か口を開いては閉じる。
もう怯えてはいない。まだ近づくと逃げようとするものの、緊張は薄れている。

「アカガネは、噂、どんなふうに聞いてますか? ……あたしは本当言うと
 噂になってるってことぐらいしか、知らないんです。あんまりヒトと話さないから」
「それは……」

俺は口ごもる。俺が聞いたとおりに話しちまってもいいものか。

「どんなひどいことでも、あたし大丈夫ですから、教えてください」
「……流れ者3人が、“サカリ”に入った白毛のコムスメに誘われて
 ヒト気のないところに行った。ふたりは殺されて、ひとりは命からがら逃げ出した。
 だいたいそんなところだ。殺し方とかは話すヤツによって違うが」

かなり省略している。
男を誘って……どんなふうにヤっただの、殺したオトコのハラワタを喰っただの
そんなくだりは聞かせる必要がないだろう。
ギンの毛が逆立つ。怒りの匂いが、一瞬だけ漂う。

361 名前:07/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:02:06 ID:cC62Mhpw]
「あたし、誘ってなんか、いません」

そりゃそうだ、と思う。1回でも“サカリ”を経験したことがあれば
“サカリ”と前兆を間違えるなんてことはありえないし
“サカリ”の匂いのしないオンナに、オトコは誘われない。
おおかたほかのオンナに振られて、興奮が納まらなかった流れ者の仕業だろう。
ギンは大きくひとつ息をすると、ぽつり、ぽつりと話しはじめた。

「春のはじめのころ、今日みたいに、……前兆っぽい感じのときがあったんです。
 噂は、たぶんそのときのことだと思います。
 知らない、大きなオトコのヒトたちに捕まって、殴られて、……無理やり。
 ……こいつ“サカリ”のクセに濡れねえ、とか、出来損ないのオンナだ、とか。
 そんなことを言われながら。……でも、“サカリ”っていうのは嘘だった」

ギンは、そこでいったん言葉を切った。

「……“サカリ”になったらどうすればいいか、身体が全部知ってるからって。
 “サカリ”になればわかるって、オトナたちからは聞かされてた。
 だから“サカリ”になったことに自分で気づけないとか、そんなことあるはずなくて。
 ……自分は本当に出来損ないなんだって、思わされちゃったんだ」

ギンの言葉から、俺に話すときに使っていた硬い言い回しが消えている。
ガキっぽい、舌っ足らずな話し方。たぶん、こっちが本当のギンだ。

「“サカリ”って……オトコのヒトに抱かれるのって、もっとすてきなことだと
 思ってた。でもすごく痛くて、怖くて。逃げようとしても、ぜんぜんかなわなくて」

恐怖の匂い。思い出してしまったのか、ギンは自分の肩を抱き、尾を膨らませる。
聞いてて楽しい話じゃない。だが、耳をふさぐこともできない。
誰にも話せなかった記憶。忘れようとしてただろう記憶。
訊いちまったのは俺だ。だから、聞くべき、なんだと思う。

「あたし気を失いかけて、オトコのヒトたち、もう逆らわないって思ったんだと思う。
 ……あたしの身体を押さえつけてたヒトが、あたしの口にアレを突っ込んできた。
 ちょうどそのときにその、痛いことされて、あたし、歯を食いしばって、
 …………気が付いたら噛み千切ってた」
「う」

想像してしまった。思わず俺は自分の股間を押さえる。
よっぽど痛そうな顔をしていたんだろう。ギンが心配そうに俺を見上げる。

「気にすんな。オトコはその手の話に弱いだけだ。そこはかなり痛ぇ場所だから」

ギンはわかったのかわかんなかったのか、神妙な顔をして言う。

「じゃあ、次に無理やり嫌なことされそうになったら、そこを狙えばいい?」
「……そんなことをしなくても、オンナが断ればオトコはあきらめる。そういうことに
 なってるんだ、普通は」

あたりまえだ。無理やり犯したオトコの仔を、オンナが大事に育てるわけがない。
だが、仔が目的じゃなかったら? 

「まあ、おまえを襲ったような、非常識な連中にはそれもいいかもしれないな」
「わかった。断って、ダメならそうする」

生真面目に答える様子があまりにガキっぽくて、こんな話をしている最中だと言うのに
俺は思わず微笑む。
つられたのか、ギンの表情も少しだけ和らいだ。

362 名前:08/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:02:43 ID:cC62Mhpw]
「で、そいつらがひるんでる隙におまえは逃げたわけだな」
「うん。痛いことしてたヒトの顔、引っ掻いてから、必死で逃げた」

生きて逃げられただけ、ギンは運がよかったのかもしれない。
仔が目的じゃないということは、オンナを大事にする必要がないということだ。
たぶん、逃げなければ口封じで殺されていただろう。
コムスメを複数のオトコで襲い、しかも反撃されて怪我したとなっては
恥以外のなにものでもない。
ああ、それであんな噂を流したわけか。浅はかにもほどがある。

「アカガネ、ひとつ教えて」
「なんだ」
「ちゃんと“サカリ”の時だったら、……するのって、痛くないものなの?」
「痛いって言うオンナもいるし、痛くないって言うオンナもいる。
 相手のオトコにもよるんだろうな」

「……アカガネのは、痛い?」

突然自分に話を向けられて、俺は少しあわてる。

「お、俺のって、……初めの頃はともかく、慣れてからは痛がらせたことはない、
 ……と思う」

俺のあわてっぷりがおかしかったのか、ギンの顔が明るくなる。もう少しで笑顔に
なりそうな、そんな微妙な表情だった。

「それじゃ、俺からもひとつ質問させてくれ」

俺はずっと気になっていたことを訊いてみる。

「なんで俺なんだ?」

そもそも俺とギンが逢ったのは、今日が初めてのはずだ。
それなのにあの木の下で、こいつはまっすぐ俺のところに歩いてきた。

「まだ、寒かったころ、初めてアカガネに逢った。……アカガネは覚えてないと思うけど。
 ……あたしまだ巣別れしたばかりで、こんな色だから狩りもへたくそで。
 そのころは、森の池でサカナ捕まえやすい場所みつけて、それでなんとか食べてた」

確かにこのあたりで白い毛色が珍しいのは、生き残るのが難しいからだ。
獲物に逃げられやすいし、大きな生き物からは格好の的にされる。逆に、明るい色の毛で
オトナまで生き残ることができれば、それは生存力の高い証拠になる。

「でも、大きい生き物に、そこ追い出されちゃった。
 おなかすいて動けなくなって、もう死んじゃうんだろうなって思った。そしたら」

ギンが顔を上げる。

「目の前に肉のかたまりが降ってきたの。で、声がした。『これ食って元気だせ』って」
「あぁ!? おまえ、あんときのボロボロになってたガキか!?」

俺も思い出した。

363 名前:09/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:03:09 ID:cC62Mhpw]
俺はあのころ、自分の力を試したくて無謀な狩りに夢中になっていた。
森で大きな生き物を狩ったのもその一環だ。
半日かけてなんとか仕留めたはいいものの、疲れ果てて持ち帰るのが
億劫になっていた。だから、通りすがりの年寄りやガキに気前よく投げ与えた。
ギンはそのなかのひとりだったらしい。

「ありゃあな、重いの持って帰るのが嫌だっただけで、別におまえを助けようとか
 そういうんじゃなかった」
「それでもいいの。アカガネがあいつ倒してくれたから、あたしまたサカナ取れるように
 なったし、元気になって、狩りも上手にできるようになった」

そう言いながら、立ち上がる。

「あたし、あんなことがあってから、オトコのヒトも、“サカリ”のことも、
 すごく怖くなっちゃって、でもいまのうちになんとかしないと、
 仔を産めるような歳になっても怖いままだって思った。
 ……おかーさんになれないのは嫌だって思った。だから、考えたの。
 誰になら抱かれたいか、……誰なら痛くても怖くても耐えられるかって」

ギンが、自分から俺に近づこうとする。ゆっくり、1歩、2歩。
しかしそれ以上は足がすくんで動けなくなる。

「……ごめんなさい。そう簡単には、怖いのって、治んないみたい……でも
 改めて、お願いします。……あたしに“サカリ”が来たら、抱いてください」

そう言って、ギンはやっと、かすかに笑った。

364 名前:10/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:04:04 ID:cC62Mhpw]
-3-

すっかり日は落ちていた。
ギンの家は、川のうんと上流の、草原と森がぶつかるあたり、らしい。
ここからだとかなり遠い。
帰るとなると夜に長時間歩くことになって危険だし、ギンは緊張しすぎて疲れ果てている。

とりあえず、今夜は俺のナワバリに泊めることにした。食い物を与えて、背の低い木が
茂っている、身を隠しやすいところを選んで寝床をつくってやった。
俺は腕っ節には多少の自信がある。本気でやりあう心積もり無しに、オトコは他人の
ナワバリに足を踏み入れないものだ。
本当は俺の住処に泊めるべきだったんだろうが、オトコの匂いが強い場所じゃ安心して
眠れないだろう。あの様子だと。

ひととおりナワバリを見廻りして異常がないのを確かめると、俺は“サカリ”の木に
足を向けた。
オンナを漁りに、じゃない。オトコを捜しに、だ。

木の下は、昼間の何倍ものヒトであふれていた。嬌声や罵声が飛び交う中で、
俺は耳を澄ます。例の噂を話しているものはいないか。
誘いをかけてくるオンナの匂いや、顔見知りの挨拶を無視して、
俺は広場のはずれに向かった。

流れ者の群れ。
ほかの集団と違い、オンナが近寄らないからすぐわかる。
下卑た笑い声。酩酊の実と呼ばれる果実を齧りながら、自慢話や噂話に花を咲かせている。
しばらく話に付き合ったり、あたりをうろついたりしたが、
それらしい噂は聞こえてこない。
あの話が流行りはじめたのは、たぶんギンが襲われて間もないころだ。
旬はもう過ぎている。
あきらめて別の方法を捜そう、そう思ったときだった。それが聞こえてきたのは。

「で、そいつの話だとそのギンってコムスメはえらく具合がよかったらしくてな」

うなじの毛が逆立つ。

「ガキのクセに自分から腰振ってよがりまくってよ。しまいにゃ白い毛が血で真っ赤に
 なっちまってるのにまだやりたがる。それが腹いっぱいオトコの精を受けて
 満足したとたん、恐ろしく凶暴になったそうだ」

話しているのは、その集団の中でいちばん大きい赤茶マダラのオトコ。
左目が3本の爪傷で半分ふさがっている。

「おい」

俺は声をかけてそいつを呼び出した。


365 名前:11/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:04:35 ID:cC62Mhpw]
「その噂、誰に聞いた?」
「知らないやつだ」

嘘をついている。目をあわせようとしない。

「目の傷、喧嘩でもしたのか?」
「あ……ああ。でかいヤツとやってな、俺が勝った」

見栄だ。……馬鹿が。
こいつは、弱い。

顔の傷は珍しいものではない。顔や身体の前面に付く傷は、喧嘩に強いオトコの証だ。
怯えて逃げれば、傷は背中に付く。しかし、こいつの顔の爪傷は間隔が狭い。
オトコの爪じゃ、こうはならない。もっと身体の小さいガキの爪だ。
こいつだ。こいつがギンを苦しませた。

「へえ。じゃ、俺もお手合わせ願おうか」

そう言うや否や、俺はその流れ者の顔を手の甲で殴った。爪傷などつけてやる気はない。
あとでどんな自慢話に利用されるかわかったもんじゃないからな。
一発で沈んだ流れ者が、俺を恨めしそうに見上げる。

「あのガキは俺のツレを殺したんだ。懲らしめて何が悪い!」

死んだのは、噛み千切られたヤツか。自業自得すぎて、哀れむ気にもなれん。

「なんでそんなことになったのか、よく思い出すんだな」

俺は流れ者の腹を踏みつける。

「いいか。次に会ったら殺す。俺の目の届く範囲から出て行け」

ギンは自分の復讐に利用するために俺のところに来たわけじゃない。
あいつからは、あんな目にあったというのに不思議なぐらい憎しみの匂いがしなかった。
あいつの頭にあるのは、自分がどうやったら立ち直れるのかということだけだ。
……ガキすぎて、一度にひとつのことしか考えられないだけかもしれないが。

流れ者を追い出したのは、ただ単に俺がムカついたから、それだけだ。


366 名前:12/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:05:10 ID:cC62Mhpw]
-4-

春の“サカリ”の季節はそろそろ終わる。
身体の大きさから見て、今ギンが感じている前兆が“サカリ”に育つことは
まずないだろう。
本格的な“サカリ”を迎えるのは秋になりそうだ。

それまでのあいだ、夏のあいだに、ギンの恐怖心をなんとかしないと。
せめて隣に座ることができるようになるまで。
それから、いろいろなところに連れまわしてヒトに慣らす。
親しい友達もいないようだし、今のままじゃまともに恋もできないだろう。
……抱くにしろ、抱かないにしろ、すべてはそれからだ。

面倒くせえ。なんで俺はこんなことを真剣に考えてるんだ。
俺は一人前のオトナのオトコで、他人に煩わされないで生きてきたし
これからもそうするつもりだった。
……コムスメにかかわると、なにかと面倒くさいってのは
こういうことを言うのかもしれない。

もう少しでナワバリにたどり着くというとき、
風にかすかにいい匂いが混じっていることに気が付いた。
オンナだ。それも極上の。

匂いは重要だ。
どんなに外見が美しいオンナでも、匂いが好みじゃなければ
オトコの“サカリ”は誘発されない。
ヒトによって相性も異なり、俺にとっての最高にいい匂いが
すべてのオトコにとって最高だとは限らない。
ただ、いい匂いのオンナを抱くのは気持ちいいし、いい仔が生まれると信じられている。

匂いはサカリの木の方角じゃなく、俺のナワバリから漂ってくる。川のあたりか。
“サカリ”を迎えたオンナが、相手を求めてオトコのナワバリに入ってくることは
珍しくない。
境界につけてあった、俺の匂いが気に入ったということだ。
……抱ける。
今夜はもうギンのことを考えるのはやめだ。
今まで嗅いだこともないようないい匂いのオンナが俺を待っているのに
コムスメのことなど気にしていられるか。

俺の身体が変わり始める。
オトコの、“サカリ”のオトコの匂いを強く発し始める。
オンナの匂いは、俺の身体を這い回り愛撫する。
鼻だけじゃない。口や目や耳や毛穴や、ありとあらゆる穴から入って来て、俺を狂わせる。
身震いが走る。
喉が鳴る。毛が逆立つ。
昂ぶる。
歓喜。歓喜。歓喜。
俺は半ば酩酊状態に入ったまま、匂いに向かって走った。

だが、そんな興奮は長続きしなかった。
俺の足は次第に遅くなり、匂いにたどり着くほんの少し手前で止まった。

367 名前:13/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:05:46 ID:cC62Mhpw]
なんで、おまえなんだよ。

オンナの匂いに、さっきまでさんざん嗅いでいた匂いが混じっていることには
気が付いていた。あの川べりではずいぶん長いこと話し込んだし、その匂いが
残っているんだろう、と自分をごまかしていた。
月の光が川面に反射して、岸辺に立つ小さな影を青く浮かび上がらせる。
むせ返るオンナの匂いと、困惑や恐怖が混じった匂い。匂いのもとは、ひとり。

俺は丈の高い草の影に隠れるようにして息を整える。
“サカリ”に入っちまったオトコの身体は、そう簡単には元に戻らない。
こっちは風下だが、“サカリ”のオンナはオトコの匂いに敏感だ。
20歩ぐらいしか離れていない。俺がここにいることなんて、すぐにバレる。
そうなったら、もう遅い。
戻るなら、今しかない。
空気がピリピリしている。匂いは俺をからめとるように誘い続ける。
俺の足は、動かない。動いてくれない。匂いに、逆らえない。

「アカガネ?」

影が振り向く。泣きそうな顔で。
心臓が高鳴る。頭の芯がぼおっとする。指先が冷たくなって、しびれる。
俺はまるで操られるように、草むらを出た。

「アカガネ、あたし……どうしよう」

月に照らされた顔は、まだガキで。でも目のふちがうっすらと赤くなっていて。
オンナだ。生意気に、オンナだ。

“サカリ”の匂いは、抱いてくれと俺を誘う。
恐怖の匂いは、自分に近寄るなと叫んでいる。
叫びだしたいのは俺だ。
駆け寄って抱きしめたい。思い切り毛並みに鼻を突っ込んで匂いを嗅ぎたい。
だが、俺を怖がって離れていってしまったら。
この匂いを二度と嗅げなくなるなんて、考えただけで苦しくなる。

「ギン。おまえが、決めろ」

俺には決められない。
もう抱くこと以外考えられないから。傷つけること以外考えられないから。
俺はその場に腰を下ろし、自分の足を封じる。

「え……」
「今、抱かれるか。それともやめるか」

ギンは息を呑む。
もっと時間がほしかった。ゆっくり心を開かせる時間が。
でも、そんな余裕はない。俺はそんなに耐えられそうもない。

「抱かれてもいいなら、俺の手の届くところまで来い。そうじゃないなら」

ギンは、俺に最後まで言わせなかった。

「行く」

震える声で、はっきりと。
そして、目をつぶって走り出す。俺に向かって。
あと5歩。3歩。そこから軽くジャンプ。
勢いよく首に抱きつかれて、俺は後ろに倒れた。
そして、嗅ぎたくてたまらなかった匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

368 名前:14/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:06:17 ID:cC62Mhpw]
-5-

俺の横で震える、小さな身体を抱きしめる。
長い毛に隠された身体は、折れそうなぐらい細い。
真っ白じゃなかったんだな。いまさらのように気が付く。淡いグレーの縞。
ここまで近づかないとわからないほどの、薄い色。

「まだ、怖いか」

恐怖の匂いは、まだ消えていない。

「うん。……でもね、“サカリ”がね、背中押してくれたの」

ふわふわの首筋の毛に鼻を突っ込む。俺の身体も震える。歓喜に。

「アカガネの匂い、あたしを呼んでたから。まっすぐ走れた」

軽く、首筋を咬む。ギンの身体に緊張が走る。まだ、だめだ。急いじゃだめだ。
恐怖が快感に追い出されるまで、ゆっくり。
首筋を舐める。なだめるように。

「おまえの匂いも俺を呼んでいた。……すごい、いい匂いだ」

ギンが、くすぐったそうに身をよじらせた。
抱きしめていた手を解く。
尾の付け根から首筋まで、優しく撫でる。
ギンがぴくりと震える。喉を鳴らす。
吐息が俺の肩の毛にこもる。

「……“サカリ”、どういうのか、ちょっと、……わかっ……っ」

かすれた声が、途切れる。

「これから、もっと、わからせる」

俺の声も、かすれていた。

369 名前:15/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:06:59 ID:cC62Mhpw]
顔を舐める。唾液まみれにする。
ひげに息を吹きかける。
涙を舐める。
耳。そっと、咬む。

「んっ……ふぅ」

ギンは俺に身体をこすり付ける。

「耳、いいか?」

そう聞くと、がくがくと頷く。
舐める。中に舌を差し入れる。

「く」

息が熱い。身体すべてが熱い。

「ここは?」

耳を愛撫しながら、ほんの少し爪を出してしっぽの付け根を軽く刺激する。

「ふっ……ふぁ」

耳やしっぽ付近のような匂いが強いところは、“いい”ところだ。
ギンが気持ちのよさそうな声を上げるたび、匂いが強くなる。
右足をギンの足のあいだに滑り込ませる。
膝でそっと触れてみた。

「……ん……っ」

濡れている。でも、まだ。衝動を、抑えられる限り、抑える。
ゆっくり。だ。

すっかり力が抜け、荒い息をするギンを仰向けに寝かす。
白い毛を透かして、淡いピンクに色づいた乳首が見える。
鼻先でつつく。

「痛……っ」

ギンが少し嫌そうに身体をよじって逃げる。
舌で思う存分味わいたいが、未熟なここは痛いだけだと聞いたことがある。
秋だ。秋の“サカリ”まで我慢だ。
触れないように腹の真ん中を舐めながら俺は目的地に向かう。
足のあいだ、俺を酔わせる匂いの源に。



370 名前:16/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:07:30 ID:cC62Mhpw]
鼻先を足のあいだにねじ込もうとした時、ギンが身を固くした。
まったく、世話が焼ける。
不安そうにこっちを見るギンの片足を掴み、高く持ち上げる。

「や、そんなのっ」

足を広げさせたまま柔らかい身体を折り曲げて、俺はギンに自分のオンナの部分を見せる。
普段は毛に隠されているそこは、“サカリ”の興奮で色づき、ぽってりと膨らんでいる。

「ここ、見えるか?」
「う。うん」

ひだに沿って、そっと舌を這わす。ぬるぬるする液体が舌に絡む。

「ひっ……ぁんっ」

ギンの首が大きく反る。

「どうなってるか、見えるか?」
「……なんか、きらき、ら、してる」

月の光が反射しているのか。俺はギンの手をとった。

「爪、しまっとけよ」

そう注意して、指の腹の柔らかいところをそこに軽く触れさせる。

「っ……濡れてる」
「濡れてる、なんてもんじゃない。周りの毛までぬるぬるだ。なんでだか、わかるか?」

舌の先で、腹側にある小さな突起をつついた。

「……っんっくぅうっ」

こぽっと小さな音を立てて、また液体があふれる。

「おまえが、オンナだから、だ」
「あ……」

歓喜の匂い。ギンの見開いた瞳から、涙がこぼれる。

「あたし、出来損ないじゃなくて、ちゃんと、オンナ?」
「ああ。オンナだ。いいオンナだ」

俺は、ギンに見せつけるようにひだのあいだに舌を挿し入れた。
ギンは声にならない悲鳴を上げる。
尖らせた舌でさえ、きつい。
隙間から染み出してくる熱い汁を思い切り啜る。
そのまま出し入れする。
舌のざらざらに粘液が絡みつく。
それ自体が意思を持っているかのように、包み込んでくる。
滑る。
……準備、できている。
もう、できる。
俺は足を持ち上げていた手をおろす。

371 名前:17/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:07:58 ID:cC62Mhpw]
「待って」
「嫌だ。もう、待たねえ」

ギンをうつぶせに転がそうとして、抵抗される。

「少しだけ。アカガネの、見せて」

意表を突かれた。

「俺の?」
「見たいの」

熱に浮かされたように俺を見上げるうるんだ瞳は、見事に俺の気勢をそいだ。

胡坐をかいて座る俺の股間に、ギンが顔を寄せている。
こんな近くでまじまじと見られるのは初めてかもしれない。
気恥ずかしい。が、限界まで張りつめたものは、なかなか元に戻ってくれない。

「アカガネ、うそつき」

吐息交じりの声。

「これ、痛くないわけ、ない」

匂いに酔ったのか、俺の腹に身体をこすり付ける。
興奮している。

「すごい、大きいし、横んとこ、棘、こんなにいっぱい」

円錐形のそれの、根元のほう。先端とは逆向きの短い棘で覆われたあたりに、ギンが顔を
近づける。
息がかかる。舌が恐る恐る棘に触れる。

「でも、なんでか、怖くないの」

ざらざらした舌がそのまま尖った頂点まで舐め上げる。

「くっ」

不覚にも声を出してしまった。背筋が震える。
抑えられなくなってきている。
初めての時のように。それ以上に。
オンナなんて、もう何人も抱いているのに。
オトナだってのに。

「先のほう、濡れてて、……いい、匂い」

ギンは俺の中心に夢中になったまま、腰を高く上げる。
無意識の動き。

「あたしの、濡れてるの、……これ、ちゃんと、入るように」

白い腰が、動く。
声が濡れている。誘っている。
もう、だめだ。余裕あるふりすらできない。
目の前が真っ赤に染まったような気がした。
ギンを背中から抱きしめる。
首筋に顔をうずめて咬む。

372 名前:18/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:08:38 ID:cC62Mhpw]
「ア……アカガネっ」

ギンが叫ぶ。かまわず胡坐をかいた腰の上に引き寄せる。
もうとまらない。
突き入れる。

「はぁ……うっ」

ギンの身体がのけぞる。
思った以上に狭い。そして、溶けてしまいそうに、熱い。

「は……いってる、す……ご、……おくっ」

すぐにでも爆発しそうなのを必死でこらえ、腰を少しだけ動かす。

「く……んっ中で、ぞわって……動くんあっ……や、棘」

俺の棘は、ギンの入り口近くを内側から刺激する。
そのたびに、中が締まる。俺を搾りつくそうと動く。

「……痛いか?」

首筋を咬んだ、牙の隙間から、訊く。

「た……くない、いいの……」

うわごとのようにささやく、甘い声。
匂いが強くなる。酔う。痺れる。
腰ががくがくと動く。

「んっ……ふぁ、あたる……棘、あたって、い、……いっ」

絡みつく。絡めとられる。意識ごと。

「すご……いぃ」

気が遠くなる。なんで、こんな、早く。
早すぎる。
もっと。なのに。

「悪い、もう、……注ぐ」

俺は吼える。全身の毛が逆立つ。
ギンの中へ。放つ。自分でも、驚くほど、大量に、放つ。

「熱……」

深いため息と共にギンが腰を震わせる。
……俺の仔種を子宮で受け入れようとしている。

「……終わった、の?」

荒い息の下から聞こえる、その問いに答えられない。
抱きしめる手を離せない。
咬んだ首筋も離せない。
……終われない。

373 名前:19/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:09:05 ID:cC62Mhpw]
つながったまま、俺は身体を前に倒す。ギンの上体を地面に押し付ける。

「ね、……ね、アカガネ、中……んっ」

ギンが震える。

「また、……大きくなってる?」

何も考えられない。
深く。中に。

「ふ……ふぁ、んんんっ」

腰を打ち付ける。
大きく。

「……んっくぅう……ン」

かき混ぜる。
水音。俺のと、ギンのが混ざった音。
棘に掻き出され、あふれて草の上にしたたり落ちる音。
抱きしめた腕をずらし、ギンの脚のあいだにある小さな突起に触れる。

「ひぁ……あンっ」

ギンの声がひときわ高く上がった。
きつくなる。俺のを逃がすまいと、飲み込もうとする。
かまわず動く。こすれる。
爪で。はじく。
たちのぼる、匂い。強い、匂い。

「……や……んっ、んぁあたし、あたし、へんっ変だよアカガネぇっ」

俺の身体の下で、ギンが、硬直する。
痙攣する。弛緩する。
小刻みな、吐息。
なのに、その部分だけ、別の生き物のように、俺を捕まえようとする。
だから、もっと。
撃ち込む。何度も。
弛緩していたギンの身体が震える。
ギンの、身体の中の、“いい”ところを。何度も。
弱弱しく、荒い息。
ギンを。
俺の。

「ま、た、……きちゃうッきちゃうのっこわれちゃうっ……いや」

ギンの、声が、遠くに、聞こえる。

374 名前:20/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:09:31 ID:cC62Mhpw]
-6-

恋なんて、すぐに終わるものだ。長くて3日。夜に始まって朝には終わってるようなのも
珍しくない。
オンナの匂いに振り回される、はかない感情。
なら、今俺が抱え込んじまってるものは、いったい何なんだろう。

あれだけ激しかったギンの“サカリ”は、二日目の夜、ふたりとも疲れ果てて泥のように
寝ているあいだに、あっさり終わったらしい。
朝日の中で見るギンの寝顔は笑っちまうほどガキで、でも愛しくて、離れがたかった。

「なあ、ギン。おまえ、俺の仔を産めよ」

寝ぼけているギンの耳に俺は言ってみた。

「今はまだおまえ小さすぎるけど、秋か、次の春」

たぶん、夢だと思ってるにちがいない。

夏のあいだ、俺はことあるごとにギンを誘い出した。
一緒に狩りをしたり、メシを食わせたり。
ギンは俺にからかわれてるんだと勘違いして怒る。
コムスメをからかって遊んでいるんだと思っている。
抱きしめようとすると逃げる。だが、俺は知っている。
俺の腕の中でひとしきり暴れたあと、俺に見えないように、
こっそり幸せそうに目を閉じていること。匂いはごまかせない。

俺はもっと強くなる。
強くなって、俺の匂いがついたギンに、誰も手出しができないようにする。
少なくとも、ギンにとって俺よりもいい匂いのオトコが現れるまで。


こんなふうに、日々は過ぎていくんだと思っていた。
あの、秋のはじめの夜までは。

その夜、俺は別のオンナを抱いていた。
ギンに“サカリ”が来る前兆はまだなかったし、仔を作るのはオトコの甲斐性だ。
だが、よりによって、あんな日に。

事が終わってナワバリに戻り、まどろみかけたころ。きなくさい臭いを感じ、飛び起きた。
夜なのに、空が赤い。
草原が燃えている。

駆けつけたときには、もう“サカリ”の木もあたりの草も灰になっていて、
死体がいくつか転がっていた。生きているヒトの姿はない。
嗅ぎなれない、臭い。
それに混じって、残り香。ギンは、今夜ここにいた。
ヒトに慣れてきたギンは、ここでたわいないおしゃべりをして過ごすのを気に入っていた。

俺のせいだ。
ギンの姿を捜す。名を呼ぶ。匂いを捜して走る。
遠くから足音。ヒトのじゃない。知らない生き物の。この草原で見たことがない生き物の。
風下から火のついた何かが高い音を立てて飛んでくる。
煙。嫌な臭い。嗅いだとたんに身体の自由を奪われ、俺はその場に崩れる。
闇の中に浮かび上がる、黒くて大きな生き物。
走ってくる。
逃げられない。
跳ね飛ばされる。左腕に激痛が走る。
俺の意識は、そこで途切れた。

375 名前:21/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 08:09:54 ID:cC62Mhpw]
-Epilogue-

長い、長い夢を見せられていた。
目が覚めた俺は自分の目が涙で濡れていることに気が付く。

「……この、くそばばあ」
「起きたんなら、コレを食いな」

歌紡ぎの婆さんは、木の器に盛った見慣れない食べ物を俺に差し出す。

「いらねーよ」
「片腕になっちまったとはいえ、オトコ手はこれから必要になる。食いな」

俺はだまって器をつき返す。

草原が燃えた翌日、俺は東のほうから来たと言うこの婆さんの一行に拾われた。
かろうじて息があったのは俺だけだったという。死体の数は少なかった。
皆、どこかに連れ去られたらしい。
あれから何日たったのかは知らない。
婆さんたちは生死の境をさまよっていた俺を自分たちの住処に運び込み、
奇妙な歌と薬草で癒した。
余計な世話だ。あいつを守れなかった俺なんかに、生きている資格などありはしない。
俺は、自分の闇に閉じこもる。後悔と自己憐憫にまみれた、情けない闇に。
婆さんのせいで思い出してしまった、ギンの匂いを抱いて。

ギンの、匂い。
俺は飛び起きようとする。どこからかかすかに、ほんのかすかに。匂いがする。
確かめたい。だが、身体に力が入らない。

「婆さん、いるか?」

入ってきたのは、婆さんのツレの妙に背の高い灰毛のオトコだった。

「なんだい」
「ガキが倒れてたから拾ってきた。なんか食わせてやってくれ」

オトコは無造作に背中に背負っていたガキを下ろす。
黒い。ギンじゃない。ギンよりずっと小さい。しかし。
この匂いは。

376 名前:AmeliaPLM2のひと mailto:sage [2007/06/12(火) 08:38:18 ID:NehqEL4Y]
いきなりアクセス規制みたいなものに引っかかったみたいです。
あとすこしなのに
携帯からのテキストの貼り方がわかりません。

377 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 09:30:14 ID:oWpQVT1w]
支援

378 名前:22/22 ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 10:13:21 ID:cC62Mhpw]
俺は驚く婆さんを尻目に、渾身の力を振り絞って立ち上がり、
よろけながらガキのところに歩く。
ギンの匂い。しかも、“サカリ”のときのギンの匂いだ。
なんで、こんなガキの身体から、そんな匂いが。

「……ギンを、知ってる?」

ガキが俺に尋ねる。真剣な声で。

「ギンの身体、あなたの匂いしてた。……あなたが、ギンの大好きなヒト?」
「……あいつは生きているのか?」

ガキは頷く。

「捕まってたとこから、おれひとり、逃がしてくれた。おれ、ギンを助けたいんだ。
 力、……貸してほしい」

まっすぐな目で。
あの初夏の日のあいつのようなまっすぐな目で、ガキは俺を見上げて言った。
俺は笑う。力の入らない身体で。涙を流して。声を上げて。
息が漏れる程度の、か細い笑い声。これが、今の俺だ。
こんなんじゃ、だめだ。
俺は、こぶしを握る。

「……婆さん、さっきの食い物、まだあるか」

俺は婆さんが差し出した器を奪い取り、中に入ったどろどろの食い物を腹に流し込む。
こんなところで倒れてなんかいられない。俺は、元気になる。
そして、もう一度。
あいつを取り戻す。この腕で、抱きしめる。

379 名前: ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/12(火) 10:17:41 ID:cC62Mhpw]
以上です。
2時間でアクセスできたから、普通にバーボンだったっぽいです。
支援ありがとうございました。

【今回の裏テーマ】 気持ちのいい ぬこちんちん。



380 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 12:48:50 ID:ODvXWi4x]
GJ過ぎて涙が…
投下乙。

規制で書きこめないときは保管庫のろだに張るか
代行スレに依頼すれば書き込みできるよ
自分は公式p2使ってるけど

381 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 16:56:05 ID:Aten5o8E]
ヤヴァイ、凄く良かったよGod Job!!
最後に一言
アカガネ頑張れ!超頑張れ!

382 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 16:56:05 ID:2f5XkAlm]
超GJ!
そして前作読んで(;ω;)
最後はどうか幸せになってほしい・゚・(ノД`)・゚・

383 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 19:40:55 ID:4JyJgekw]
とても良かった。
きっちりと文章が練られているので、長文であるにもかかわらず読んでいて冗漫さを感じなかった。
(スピード感を出そうとして短いセンテンスを連ねるのは個人的にはあまり効果的だとは思えないのだけれど、
それでも読みにくくなる数歩手前でちゃんと抑制してあるように見受けられ、その点も感心した。
自分の書いたものが他人にどう読まれるか把握している証拠だと思った)
暴力も愛情もただどちらかを際立たせるためだけに用意されているのではなくて、
作品の世界を形づくるために不可分な二本の糸として違和感無く縒りあわされているように感じた。
作中人物たちが暮らしているのがどのような世界であるのか、
まま陥りがちな世界設定の解説に拠らずあくまで描写で見せようとする姿勢は立派だと思った。
前作同様大変楽しませてもらいました。お疲れ様でした。

ギン可愛いよギン。

384 名前:名無しさん@ピンキー [2007/06/12(火) 22:48:02 ID:zjH1v55O]
この流れいい加減飽きたのは俺だけか?

385 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 23:08:37 ID:fFpc7ASB]
GJ!
いい話だった。最後切なくなった。獣人だけど生態はかなり動物寄りだね。
裏テーマとかやめれ、吹いちまったじゃねえか。

>>384
良いものを良いと言ってるだけだから。飽きたとか言いっこなしな。

386 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/13(水) 03:37:22 ID:yHfq6jUK]
719 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2007/06/12(火) 22:47:13 ID:zjH1v55O
この流れいい加減飽きたのは俺だけか?

恐らくマルチ。気にすんに!

387 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/13(水) 03:38:58 ID:GBFq9cW1]
GJ!
頼むからハッピーエンドにしてくれorz

388 名前: ◆AmeliaPLM2 mailto:sage [2007/06/13(水) 19:09:16 ID:G0B24skW]
ありがとうございます。読んでくださったことに感謝します。

いただいたご感想、助言(P2登録してみました)、激励は次作の糧にさせていただきます。
遅筆なのでいつになるかわかりませんが、またなにか書きあがりましたらよろしくお願いいたします。

……エロ部分、まだまだだなあと読み返して思った。

389 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/13(水) 22:56:58 ID:WL4u/gEx]
ニコニコ動画を見ていて、ライナに逆レイプされるドアラという連想をしてしまって頭痛が……。



390 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/13(水) 23:49:18 ID:PNv6NKA0]
ライナはめっさ可愛いライオン娘で獣人としても違和感ない。
ドアラは嫌いじゃないが、ちょっと獣人としては見られないな。ジャンル違う気がする。

391 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/13(水) 23:57:35 ID:WL4u/gEx]
>>390
なんか交流試合の動画らしいんだけど、ライナがドアラを追い掛け回してドアラが必死に
走って逃げてる場面とか、途中で転んだライナがジタバタしている場面とか、レオや
シャオロン、パオロンも混じって5人(5頭?)でかごめかごめやってる場面とかで和んで
しまってのぅw

392 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/14(木) 03:52:34 ID:W0XhZe98]
家畜に神はいないッ!

393 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/14(木) 15:10:23 ID:dbYYGKf6]
なんでこんなスレにまでアルガスが…

394 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/14(木) 15:10:57 ID:CVfMPcXc]
マグナス様だ、豚が!!!

395 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/14(木) 17:28:50 ID:lStste1P]
>>379
亀だといわないで、めっさGJにつき感動した!
前作知らなかったんで漁って読んでみたら…( ;Д;)ウォォォォォォォ!なんとダークな…
頑張れクロ!立ち上がれアカガネ!!ハゲからギンと平和を取り戻してくれ!!!

396 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/15(金) 20:54:43 ID:vJyVG8xp]
神に家畜はいないッ!

397 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/06/15(金) 22:41:10 ID:1fRgnlnS]
家畜に髪はいらないッ!

398 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/15(金) 22:52:34 ID:aMy4Amow]
>>397
言われたほうが恐る恐る頭に手をやると髪の毛がごっそり抜けて
悲鳴(鳴き声)をあげる姿が思い浮かんだw

399 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/15(金) 22:53:33 ID:25dCPorr]
>>394
東の牧場のマグナスだ!



400 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/17(日) 09:41:13 ID:oGVQgquV]
続きは次スレかな?

401 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/17(日) 15:12:20 ID:MpD+YcgF]
続きはwebで

402 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/17(日) 15:51:35 ID:oGVQgquV]
すまん、誤爆だ

403 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/19(火) 00:37:16 ID:mIFWzcun]
TDNビデオの
犬のくせに服を着てるのか!おい脱がせろ!

の後で、脱がされていくうちに犬になってるみたいな展開を想像したのは俺だけか。

404 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/20(水) 21:21:25 ID:iq1pcprt]
まもるママンに挿入してぇ

405 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/20(水) 21:58:10 ID:NwY3ag/s]
まもるパパンに挿入されてぇ

406 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/20(水) 22:29:39 ID:K9Pq44g8]
まといちゃんの乳しゃぶりてぇ

407 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/20(水) 23:45:08 ID:OsyCiuvD]
地の龍のケツ揉みてぇ

408 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/21(木) 02:25:14 ID:LGKaQ6jA]
わかった、しょうがない。俺はふたばちゃんの穴という穴貰っていきますね


409 名前:赤木しげる mailto:sage [2007/06/21(木) 10:25:52 ID:m5w92Nex]
じゃあ俺はまもる君の担任の先生を倍プッシュだ



410 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/21(木) 19:26:50 ID:LGKaQ6jA]
そのとき署長に電流走る

411 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/21(木) 23:27:36 ID:MjPNQ4mU]
>>407
志勇草薙「 や ら な い か 」

412 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/28(木) 02:20:37 ID:CaOt3UlX]
進展なさげなので以前から頭にあったネタをこれから文章化してみる。
正直、書いてなかったから構成も何もかも低レベルだろうが反省はしない。
同士よ…存分に叩いてくれ。
―以上

413 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/28(木) 06:42:56 ID:2UtpJiMs]
>>412
  ∧,,,∧  +
 ミ ・∀・彡   ワクワクフサフサ
ミ ∪∪ +
 と,,,,,,,ミ,,,,ミ +

414 名前:犬の独白 mailto:sage [2007/06/29(金) 04:13:18 ID:IjeicjQw]
―真っ暗だ…何も見えない。
 ここはどこなのか、自分の体の状況すら見えない。
分かることは衣服も何も身に着けてはいないということだろう。いや、首に何かを巻かれつながれているみたいだ。これは…首輪だ!
よく犬につける皮製のあれ。手触りからすると本皮だろう。首輪の後ろ側には少々太いチェーンのような物でつながれているらしく、ごつごつとした鉄の冷たさを感じる。
ためしに引っ張ってみるが、壁か何かで固定されているのだろうかすぐにピンと伸びきった。それではと思い、首輪を外そうとするがどのような構造になっているのか止め金もなく、自分では外せそうにない。
 大体、何故自分はこんなところにいるのだろうか?
まったくもって思い出せない。そもそも自分は何をしてどのように生活していたのかすら分からない。

ここで考えていたらいつまでたっても埒が明かない…脱出する方法を考えなければ。
……っ!!
 急にまばゆい光が当たり一面を照らす。あまりのまぶしさに手で防ごうとするが、急激な光源の変化のせいか目が追いついていかない。
「お目覚めかしら? かわいい私のワンちゃん。」
それは若い女の声だった。目がまだ明るさでやられているのだろうか…輪郭がぼやけ、色はモノクロで女性の影のような物しか見えない。
強烈な香水をつけているのかものすごく臭う。
「どういうことだ? 何で俺はこんな格好でこんなところに繋がれている。ついでに言っておくが、俺は人間だ。」
「ふふ、質問は一つずつよ。ワンちゃん。」
 まるで子供に諭すような…そんな口調だった。一見、やさしそうな一言の言葉だが、背筋に凍りつくものを感じた。
そう、まるで獲物を目の前にした蛇のような…俺は蛙の気持ちがなんとなく理解できたような気がした。

415 名前:犬の独白 mailto:sage [2007/06/29(金) 14:32:51 ID:Sfp+fcZe]
中3の時、身体測定で男の子のアレを、はじめてこすった。そのとき、
保健室だったんだけど、いつもなら上だけ脱いで、下はブルマで女子
だけで体重とかをはかることになってたんだけど、なぜか男子もいっ
しょで、しかも担任に「全部脱いで」って言われて、みんなでえーっ、
とか言ってたんだけど、「早くしなさい」って言われて、みんな全裸になった。
男子も女子もみんな同じ部屋で全裸だったから、男子はみんな、おちんちんが
ビンビンになってて、顔真っ赤になってた。そしたら、担任がコンドームを
一枚ずつ女子に配りながら、「今から出席番号順に女子は、男子のおちんちんに
コンドームをかぶせて、手でこすってあげなさい。少しこすってたら、おちんちん
の先から白い液体がでてくるから、そうしたら先生のところに白い液体を入れた
ままでコンドームを持って来なさい」って言った。
男子のほうから「おーっ!」って声があがったけど、私たちはどうしようって感じ
だった。いよいよ私のところにもコンドームが来て、担任が、
「ほら、女子!早くする!」って言ったから、みんなしぶしぶ出席番号の合う
男子のところに行った。でも、うちのクラス女子がひとり多かったから、
どうするのかなーって思ってたら、担任がパンツ脱いでスタンバッてた。
私は、クラスの中で背が小さいほうのKくんに当たったんだけど、やっぱり
女子の裸見ててすごい興奮してたらしくて、すぐいっちゃった。
担任は、ぶつぶつ言いながら、手で相手の女子の股間をずーっといじってた。
ちょっとぐちゃぐちゃ音してたけど。でも、あれだけの男のアレ見て、本当は、
すごいぬれててバレないか、ひやひやしてた。家に帰ってすぐオナニーした。
Kくんのおちんちんが頭から離れなかった。
あとで保健の先生に聞いたら、「文部科学省」の発育調査だからって言われた
んだけど、ほんとかなー?

416 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 15:12:55 ID:kWwXa5yY]
>>414-415
これは、続いている話なのか?
そして、これからも続く話なのか?
それとも、一話で完結しているのか?
さらに、亜人少年少女の絡みに発展していくのか?

それが問題だ。

417 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 19:57:53 ID:79iNfxzb]
虹で小説復帰するっていってた人とそれに付いてきた痛い奴だろうか

418 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 20:29:30 ID:i1DO0UHa]
>>416
ごめん、プレビューだと思ったら書き込んでました。orz
まだまだ続きます。

419 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 20:31:26 ID:i1DO0UHa]
>>415
今の今気がついたが…やる気うせたがな。
続きは別のところでひっそり出すわ。



420 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 20:42:33 ID:i1DO0UHa]
>>418-419
連レスごめん

421 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 20:52:50 ID:kWwXa5yY]
何が言いたいのかいまいちよくわからない・・・
失敗して書き込んでしまったということか?
そして>>415は偽者が書き込んだということなのか?

他の人にわからない説明で事故解決されてやる気失せられて別の場所に出す宣言されても、
見ている側としては萎え萎えで困っちゃうんだぞ。

422 名前:412 ◆/Ru828urTM mailto:sage [2007/06/29(金) 21:08:39 ID:i1DO0UHa]
>>421
すみません、>>414は確認しようとして掲載ミスしていたものです。
こちらのミスは今から続きを載せる事でいいかなと思ってたんですが。
>>415は別人ですね。身に覚えないし、大体完結もしてないのに同じ題名で別の話を私は書き込みません。
ミスによる焦りと作品にけちをつけられた事で少々冷静さを失っていたようです。
トリップつけて続きを掲載させていただきます。

423 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 22:03:12 ID:79iNfxzb]
シチュは申し分ないから、是非書いてほしいな
それに趣旨があう作品なら住人も寛大だ…
と個人的には思う

焦らずいこうぜ

424 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 22:49:26 ID:lRc8fozO]
>>880
うん。恥ずかしいことに消し方がわからなかったんだ。

425 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 23:06:40 ID:3sEbuZ3u]
もうわけわかめw

426 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/29(金) 23:25:14 ID:JEsZCR+t]
とりあえず続きを投下してくれるんだね

427 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/30(土) 05:57:22 ID:MzInWh8U]
>>422
  ∧,,,∧  +  ズレ修正版
 ミ ・∀・彡   ワクワクフサフサ
 ミ ∪∪ +
 と,,,,,,,ミ,,,,ミ +

428 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/30(土) 11:43:49 ID:8H0yOnuE]
なんか初心者っぽいから一言
プレビューはクッキーが生成されたら出てこなくなる。
パソコンだったら絶対p2か2chブラウザ使った方がいい
詳しいことはググれ

429 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/30(土) 13:13:26 ID:8H0yOnuE]
なんか初心者っぽいから一言
プレビューはクッキーが生成されたら出てこなくなる。
パソコンだったら絶対p2か2chブラウザ使った方がいい
詳しいことはググれ



430 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/30(土) 13:38:32 ID:GgnOgZS2]
>>428-429
書き込み前にリロードしたほうがいいぞ。
パソコンだったら絶対p2か2chブラウザ使った方がいい
詳しいことはググれ

431 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/30(土) 18:23:42 ID:y5/W2EmP]
何        だ
  こ の         流
       れ
                      は

432 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/30(土) 22:32:37 ID:/3DDuQLj]
別に変でもないけど


433 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/01(日) 16:50:59 ID:ooWYMO7B]
  ∧,,,∧  +
 ミ ・∀・彡   ワクワクフサフサ
 ミ ∪∪ +
 と,,,,,,,ミ,,,,ミ +

434 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/01(日) 17:58:22 ID:UJnhzEWR]
俺は誰だ

435 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/02(月) 03:54:30 ID:/oVY/7K0]
>>434
狐だ

436 名前:名無しさん@ピンキー [2007/07/02(月) 18:17:48 ID:bFVNOVcH]
ジョイ君「奥さんのこっちのヌルヌルもちょちょいのジョイやで〜」
ジョイ君「奥さんもキュキュット締めんかい」
ジョイ君「どや?わいの海綿活性剤の威力は」
ジョイ君「奥さん、乾く間無いなあ」
ジョイ君「アカン、液切れや」
ジョイ君「こすった瞬間ピュピュッと行くと思たら大間違いやで」
ジョイ君「奥さん、もうこんなに白く泡立ってまっせ」
ジョイ君「正JOYがええんか?騎JOYがええんか?」
ジョイ君「しょせんボクは使い捨てやったんやね」
ジョイ君「子供の手の届くところに保管したらあかんで」
ジョイ君「奥さん、目に入ったら痛いのなんて当たり前やんか」
ジョイ君「このくらいで泡吹いとるんやないで!」
ジョイ君「奥さん、泡たてるんわお手のもんやでw」
ジョイ君「奥さん、なんぼなんでもヌメりすぎやわ」
ジョイ君「そ、そんなに強くこすらなくても大丈夫やで…」
ジョイ君「混ぜたらあかんて!」
ジョイ君「えらいふっといボトル買うてきて、わいを詰め替えんかいな?奥さん底なしやな」
ジョイ君「汚れは落としても、恋に落ちたらあかんで」
ジョイ君「そうや奥さん…、ちゃんと最後の一滴まで搾り取るんや…」
ジョイ君「流石にシーツのしみまでは落とせへんわ」
ジョイ君「奥さんのたわし、泡立ちええな」
ジョイ君「そんなに音立てたら旦那が起きるで」
ジョイ君「ボクに落とせへんもんはないでぇ?どや」
ジョイ君「えっ!なんで!?すっごいすべるよ?すっごいすべるよ!ヌルヌルやわ。」
ジョイ君「奥さん、飲んだらあかん」
ジョイ君「奥さん、舐めたら苦いのは当たり前やんか?よしというまでよー味わったってや」
ジョイ君「奥さん、いくらワシでもその黒ずみの汚れは取られへんで」
ジョイ君「終わったら綺麗に拭くんやで。わかっとるな」

437 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/02(月) 22:08:13 ID:kxkNLp/X]
また訳のわからぬ物を…

438 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/03(火) 00:18:54 ID:RLd4Em2N]
久しぶりに獣化ものが読みたいな。
自分で書いても変なのしか出来ないしなあ・・・。

439 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/03(火) 01:04:05 ID:gDxN38jU]
そういえば『Lycanthrope Syndrome』ってこれからってところで切れてたよなあ。
続きを読みたい…



440 名前:coo mailto:sage [2007/07/03(火) 20:30:21 ID:NQsRJO3t]
投下します。
 人狼 × 牛娘 

 レイプ無し 鬼畜要素無し NTRなし
 中だしメイン  

441 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:37:50 ID:NQsRJO3t]
 亜人の数が緩やかな減少傾向を続けている。
 人類より格段にすぐれた身体能力や回復力、神通力ともいうべき超能力は、幾多の英雄や天才を輩出し、伝説となった。
 神代の時代には、亜人は人類に言葉を含めた文明を教え、神の代理人として人類の上に君臨したこともあったという。
 亜人、ホモ・モンストローズ、デミ・ヒューマン、そう呼ばれた存在は、しかし人類の台頭を機に徐々に衰亡していった。
 その中ではホモ・サピエンス……人類種との血の抗争を繰り広げたこともある。
 しかし人口の圧倒的差を自覚した亜人達は、数百年前を最後に人類との協調態勢をとるようになった。
 それでもその決断をもってしても衰亡は止まらず亜人達は繁殖力を大きく低下させていた。
 大きな戦争で、亜人の男が死にすぎたのもあった。
 もともと長命で頑健な肉体も持っている亜人だから、繁殖力は低かった。
 そこに栄養状態の改善や、病気の克服によるさらなる長命化故の繁殖力低下もあっただろう。
 生まれる亜人の子供の数が次第に減り、亜人の男はさらに減った。

442 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:39:22 ID:NQsRJO3t]
 不意に殺気と風切り音を感じて、俺は身を沈めた。
 頭の上を音をたてて、可憐な足が通り過ぎた。
 キックボクシングの試合でも見られないような、綺麗な回し蹴りだった。
「大神(おおがみ)、うまくよけたじゃん」
 パンツ丸見えながら華麗な蹴りを放ったのは、虎宮眞子(こみや・まこ)である。
 虎宮は、名の通り虎の獣人系亜人だが、今は可愛い人間の女にしか見えない。ただ一つ違うのは、その耳が尖り獣毛に覆われているところだ。
 ネコを連想させるコケティッシュな顔立ちだと、小柄でスレンダーな身体は、人間であったらさぞかしもてるだろうと思わせる。
 もっとも、可愛くても虎は虎であり、その上気性が荒いと来ては、普通の人間は寄りつかない。
 本人もプライドが高く、友人は多くないが、しかしその友人に対しては気さくで良い奴である。
 問題は、俺だった。俺の名は大神晃(おおがみ・あきら)。
 平凡で目立たない高校生で、成績も標準なら、顔も人並み、体も普通ということで問題ない……はずだった。
 そんな俺をなぜか彼女は、攻撃対象と認識していた。平たく言えばいじめる相手ということだった。
 虎宮は口の端を歪めて笑うと、恐ろしいスピードで拳を繰り出す。
 俺は足をよたつかせる動作をしながら、リーチを見切って後退し射程圏外に逃れた。酔拳の要領だ。
「虎宮ぁ、頼むからやめてくれよぉ」
 哀れっぽい声を出して、ちょっと涙を見せてみる。
 周囲の助けを期待してるわけでなく、彼女の気を削ぐのが目的だった。
 気まぐれ虎さんは、たまにお願いすると止めてくれることもある。
「かかってこいよ、大神。おまえ男だろ! あたしを倒してみろよ!」
「人間が獣人に勝てるわけないだろぉ!」
 絶望に落ちた哀れな男を演出してみる。声を震わせるのがポイント。
 歴戦の格闘技家でも獣人は恐るべき存在だ。
 ましてやあちらが虎で、こちらが平凡な一高校生では、普通どうにもならないからこの演技も通じる

443 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:40:53 ID:NQsRJO3t]
「大神、あたしを倒せたら、あたしを抱かせてやる。本気でかかってこい!」
 だが演技は逆効果だった。彼女の目に真剣な光が宿り、殺気が満ちた。
 女子高生好きのロリコンでもこんな恐い目をする女は抱きたくないに違いないと虎宮の目をみながら思う
 大技一発で吹き飛んでおくか、俺はそう内心でつぶやいた。
 それで決着をつけば、虎娘は収まり、俺は狸寝入りで授業もさぼれる。いいぞ、悪くない。
 となると、彼女の大技を誘わなければならない。
「ちくしょぉぉぉ!」
 そして本日の俺の会心の演技が決まった。
 へっぴりごしでよたよたとハエが止まれるパンチを、震えて情けない叫びと共に繰り出す。
 案の定、虎宮の目に失望と怒りの色が生まれる。
 虎宮の腰が引き方をみて、ストレートアッパー系の右パンチを予想する。
 案の定、やや下から出はじめた虎宮のパンチの軌道は、俺の腹部を狙っている。
 肝臓を避け、臍のやや上で受けるべく腹筋を思い切り絞める。
 タイミングをはかり、パンチが届いた瞬間、俺は後方に向かって床を全力で蹴った。
 体をくの字に曲げ、虎宮の荷重移動も利用して、虎宮の拳に乗る。
 あっけなく俺の体は宙に浮き、廊下側の窓にすっ飛んでいく。計算通りだった。
 傍目には、きっと俺が派手に殴り飛ばされたように見えただろう。
 背中のかすかな衝撃と共に、ガラスの割れる派手な音がした。
 うまく窓を破ったと思っているとすぐに廊下の壁が迫る。
 女生徒の悲鳴を聞きながら、壁で受け身をとって衝撃を最小限に殺し、そのまま床に落ちる演技も加えた。
 先生を呼べなどという怒声を聞きながら、俺はさっさと狸寝入りすることに決めた。


444 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:43:07 ID:NQsRJO3t]
 狸寝入りを保健室で本当の眠りに変えて三十分。あまり寝過ぎれば単位の問題もあるので起きることにした。
 かすり傷はすでに処置してあって、それ以上の骨や内臓の痛みはなかった。
 演技が上首尾に終わったことにほくそ笑んでいると、ベッド脇のカーテンが開いた。
「目が覚めた?」
 そこに白衣をはおった巨乳の女教師が、俺を見下ろして立っていた。
 穏やかで優しげな瞳の下に整った小振りな鼻と小さめのつややかな唇があり、そうしたパーツが見事な配置で顔に乗っている。
 その顔を軽くウェーブがかった長い髪が飾り、後で緩やかに束ねられていた。
 その下の身体は腰のくびれも尻の大きさも充分にダイナマイトなのだが、一番強烈に存在感を発揮するのはスイカほどの巨大な胸だった。
 まあ、ぶっちゃけ男の夢を実現したような巨乳ダイナマイトボディで優しい養護教諭なのであるが、彼女は牛の獣人である。
 その証拠に髪の毛に隠れてわかりにくいが、額の少し上に獣人たる証拠の小さな角が二つある。
 フルネームは牛島優香、最近俺はここに担ぎ込まれることが多いので、話こそするが、あくまでも俺は生徒で彼女は教師。
 親しく言葉を交わす間柄でもないので名前が正しいかどうかは確かめていない。そもそも女教師の名前など俺には関係ないからだ。
「はい」
 あまり元気に動きすぎるのもなんなので、あえて俺はゆっくりと体を起こした。
「どうしてこんなことになったのか、教えてくれる?」
「どうしてっても、『また』、彼女から一方的に攻撃を受けただけです」
「なにか虎宮さんに酷いことを言ったとか?」
「酷いこと? 最近ずっとこんなのなんで、俺は虎宮から逃げ回って口もきいてませんが?」
 こちらに非があるような問いつめ方に、おれは少し怒りを覚えた。
 彼女の俺に対する暴力行為は、はっきりいえば、すでに日常茶飯事となってきている。
 何が気に入らないのか、目があっただけでも……いや目が合わずとも彼女は攻撃してきた。    
 いちいち相手するのもめんどくさいので、俺は彼女から逃げ回っている。
 それでも鉢合わせて、さっきのようなざまだ。
「ごめんなさいね。ただどうしてかなって思ったから」
 俺が聞きたいぐらいだと思ったので返事をしなかった。
 それを承服と受け取ったのだろう。女教師は俺のベッドに近寄るとベッドに腰を降ろして続けた。
「虎宮さんは、理由もなく暴力をふるう子じゃないの。明るくて気さくでいい子なのよ」
 彼女を擁護しても実際に被害に遭っている俺には無意味な話だ。
「先生ね、虎宮さんからも話を聞いたの。
 そしたらね、大神君が、虎宮さんを馬鹿にしている。
 弱いふりをしてからかっているって言ったの」
 意外だった。あの虎娘、わりと鋭いらしい。いきなり攻撃してくるから単純だと思っていた。
「……俺には何言っているのかわかりません」
「先生はね、虎宮さんの言っていること、どこかわかるような気がするの」
 演技でごまかそうとしたところで、女教師が俺の目を見据えた。 

445 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:44:53 ID:NQsRJO3t]
「先生の目をみてくれる? 大神君って、虎宮さんとやりあってる割には落ち着いているわね」
 内心であせる俺を見通してか、彼女は圧迫するかのように顔をよせる。
「目をそらさないで。……先生は、虎宮さんをえこひいきしているんじゃないの。
 ただね、大神君は、虎宮さんにも、そして今も、本当の大神君を隠しているような気がするの」
 これだから亜人は始末に悪かった。人間ならもっとドライでクールに放置してくれるところだ。
「あ、あのもう次の授業なんで!」
 無理矢理に話題をそらして、俺はベッドから立ち上がろとした。
「あ、待って! ……きゃぁ」
 と、俺に手を伸ばした先生が腰掛けていたベッドでバランスを崩した。きっとでかすぎる乳のせいだ。
 とっさに先生の腕をつかむが、俺自身も立ち上がりかけた不安定な姿勢だった。
 巻き込まれてバランスを崩していく中で、女教師の頭の行き先に椅子の足が待ち受けているのを確認する。
 とっさに先生の腕を巻き込むようにして俺の身体を地面と先生の間に潜り込ませ、足を伸ばして椅子を全力で蹴り飛ばした。
 受け身をとって、衝撃を最小限に殺したところで、柔らかい身体が被さってくる。
 でかい胸が俺の顔で押し潰れ、視界が肉でふさがる。甘ったるいミルクの香りが広がった。さすがに牛らしい。
「だ、だいじょうぶ? 大神君!」
 さすがに胸をつかむのもなんなので手探りで先生の肩をつかみ、先生の身体を下にずらす。
 柔らかな肉がずり下がって、白いうなじ越しに視界が開け、俺は新鮮な空気を吸い込んだ。
「ふう。だいじょうぶです」
「そう……大神君の頭、いい匂いがする……」
 なぜか心配そうだった先生の顔が呆けて、俺の髪の毛をしきりにいじくりまわし、いっこうに俺の上からどこうとしなかった。
 亜人と密着していると色々不都合があるので大急ぎでしかしあくまでも丁寧に先生の身体を押しのけて、俺は素早く距離をとって立ち上がる。
「先生! 怪我がなさそうですね。じゃ、俺、教室に帰りますので!」
「……え? あ、大神君!」
 背後で呼び止める声に構わず、俺は保健室を飛び出した。



446 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:45:54 ID:NQsRJO3t]
「ふーん、やっぱり大丈夫だったみたいだね」
 教室に向かって急いでいると、突然空から声が降ってくる。
 見上げると、階段を背中から黒い羽根を生やした女生徒が飛んでいた。
「鞍馬か。もうすぐ授業なのにこんな所でなにしてるんだ」
「確認だよ。眞子がさ、大神はぜったいピンピンして帰って来るって言ってたから」
 羽根を生やした女生徒、鞍馬京(くらま・みやこ)はいたずらっぽく笑い高度を下げてきた。
「冗談じゃない! 偶然、怪我が少なくてすんだんだぞ」
「大神ってさ、そういう偶然怪我が少ないとかさ、たまたま避けられたとかが、多いよね」
 俺の隣に舞い降りると、黒羽根を畳んでこっちにむき、にやにやしながらつぶやいた。
 亜人はどいつもこいつも嫌なところをついてくる、そう思って、俺は心の中で苦虫をかみつぶした。
 彼女は天狗だった。獣人系ではない、自然神の末裔で、ちょっとした神通力を使える。
 もっとも山伏姿でなく、当たり前だが制服姿なのでこの格好では天狗とはわかりにくい。
 顔も俗に言う鼻高天狗ではない。
 つんと尖っているが美しく可愛い鼻に神秘的で大きな黒い瞳、そして桜色の唇で、ショートヘアも相まってボーイッシュな雰囲気の美少女だった。
 身体は長身で少年的な顔立ちにふさわしく、胸は薄くて腰もくびれず、尻も小さい。手足は折れそうなほど細い。
 天狗と言うより、鳥人の少年のほうがシックリくる姿だった。
 彼女と虎宮は親友であり、クラスでたった二人の亜人ということでよくつるんでいる。
 だからだろう、彼女は俺の様子を見に来たようで、教室に戻る俺に彼女はついてきた。
「偶然じゃなかったら、何なんだ? わざと殴られているとでも? 俺はマゾか?」
 舌打ちしたい気分を声に乗せ、不機嫌な調子で反駁して、疑念を封じることを試みる。
「うーん、それがわかんないんだよねぇ」
「冗談じゃない。俺は虎宮とあわないようにしてるのに、虎宮が追いかけて来るんだぜ」
「そりゃ、あいつは虎だもん。逃げると追いかけたくなるんだよ、きっと」
「もっといい男を追っかけてくれ。俺みたいな貧乏で平凡で取り柄のない高校生をなぜ追っかける?」
 なんとか話の焦点をずらせたことで、俺は内心安堵した。そして思わず叩いた軽口に、予想もしない返答が返った。

447 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:47:15 ID:NQsRJO3t]
「……そっかなぁ? 大神は平凡じゃないよ。人間にとっては平凡みたいだけど、私はそう思わないな。
 たぶん、眞子もそうだよ。牛島先生もきっとそう」
「……どこが? 俺のどこが人と違う?」
 今まで築き上げてきた自信がぐらりと傾いたのを自覚する。思わず鞍馬に詰め寄ると彼女は意外な答をした。 
「人間達は白黒で、大神だけカラー」
「は?」
「私達、人間とも普通につきあうけど、でもやっぱり異種族。興味がわかないんだよ。人間には悪いけどどうでもいい白黒の存在なんだ。
 だけどさ、大神は違う。私達と同類って気がするよ。だから白黒の人間達の中で大神だけカラー。だから大神のこと正直、すごく気になる」
 よくわからない比喩に俺は焦った。なにか失敗していたのではないかという不安が俺を襲う。
「おいおい、俺は普通の人間だよ? どこがおまえらの仲間なんだよ?」
「それそれ。なんでだろ? 臭いとか姿も人間なのにね。
 天狗の眼鏡で見てもちゃんとした人間だったから、人間で間違いなんだよねぇ。おかしいよねぇ」
 顎に拳をあてて、鞍馬は考え込むポーズをした。俺はその答えに納得した訳ではなかったが、しかし心の奥底でそれを肯定する小さな声があった。
「つきあってられん。そんな理由で人を殴り飛ばさないで欲しい」
「まあまあ、そういうわけで私とつきあえば、私が守ってあげるよ」
 考えを必死に巡らしていた俺は、鞍馬の言った内容に完全に虚をつかれた。
「は? 鞍馬が?」
「うん、大神が私とつきあえば、眞子には手を出させないよ?」
「からかってる?」
 しばらく無言のまま、じっと鞍馬は俺の目をみて、やがてにぱっと笑った。
「全く、もてない男をからかうのはよしてくれ」
 それは冷や汗をかいた俺がかろうじて言えた言葉だった。しかし鞍馬はなにも答えなかった。



448 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:48:31 ID:NQsRJO3t]
 思ったより亜人達の注目を浴びていたことを知った俺は、行動を変えた。
 亜人達との接触が最小限になるようにしたのだ。
 休み時間は彼女たちの目のつかない所に移動するようにした。
 登校は始業五分前、ぎりぎりにやってくる多数の生徒達に紛れて席についた。
 放課後は、すぐに学校から出た。
 効果は程なく現れ、虎宮の暴行は激減した。授業中に睨まれることはあったが、休み時間に素早く脱出することでトラブルは回避できた。
 そのことにより、俺は自分の今までの行動に慎重さが欠けてたことを自覚した。
 そうやって、平和な日々が過ぎた。

 その日も、昼休みになって早々に教室を脱出し、俺は人気のいない廊下を歩いていた。
 向こうから歩いてくる白衣の女性をみて、軽く頭を下げて通り過ぎようとしたところで、がっちりと腕を捕まれた。
「なぜ、私を避けるのかしら?」
「た、たまたまじゃないでしょうか?」
 先生は確かに微笑んではいた。微笑んでいたが、目はまったく笑っていず、腕を放してくれる気配も見えなかった。
「話がしたいって私からの伝言聞いたわよね?」
「いろいろと忙しくって」
「ふぅーん、確かに図書館でぼぅーっと本を眺めたり、グラウンドの端の草むらで寝っ転がっていたり、屋上で昼寝をしたりで忙しかったようねぇ」
「え、えーと」
「あんまり来ないから私、大神君を鞍馬さんに空から探してもらったの。
 そうそう、そういえば鞍馬さんも、避けていたわね? どうしてかしら?」
 こんな時ににこにこと笑う牛島先生がなぜかとても怖い感じがする。
「い、いろいろと抜き差しならない事情がありまして……」
「そうなの。じゃあ、保健室でたっぷりと聞かせてもらいましょうか?」
 捕まれた腕を凄い力で握りしめられ、俺は先生にそのままずるすると保健室まで引っ張られた。



449 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:49:57 ID:NQsRJO3t]
「緊張しなくてもいいのよ? ミルクでも飲んでリラックスしてね」
 保健室につくと、俺は丸椅子に座らされた。取り調べのような雰囲気の中、マグカップに入ったミルクを差し出される。
 先生の顔は、相変わらず目が全然笑っていず、能面のような笑顔だった。 
「さてと、……言い訳をききましょうか?」
 すでに判決は下っているようだった。
「えーと、虎宮とのトラブルを最小限にしようと考えまして」
「ふんふん」
「虎宮の頭が冷えるまで、接触を最小限にするのが、いいんじゃないかと。暴力を未然に防いで、俺ばかりか虎宮も守るということで」
「なるほどねー。じゃあ、どうして鞍馬さんまで避けるの?」
 先生の声がとても冷たかった。返答も棒読みだった。
「えー、あの二人は親友じゃないですか。虎宮を避けるために、鞍馬まで巻き込んじゃったというかなんというか」
 先生のプレッシャーが強くなって、俺は無性に喉の渇きを覚え、ミルクを飲んだ。
「そうなのー。じゃあ、どうして私の所に来なかったの?」
「校舎内は、虎宮との接触率が高いので、やむなく校舎外や図書館に退避していたわけで。行きたいのはやまやまだけど危険が高いというか」
 そこで先生は笑顔を消して無言になった。据わった目で俺をじっとりと見つめる。俺は真剣に逃げ出したくなっていた。
「……どうして私達を避けるの? 亜人が嫌いなの? 亜人が怖いの?」
「いや、だから虎宮の暴力を避けるためであって……」
「私達を露骨に避けてわよね?」
「そんなことは……」
「嘘! 避けていた! こそこそと隠れまわってた! ……どうして! どうして逃げるの!」
 先生の迫力に言葉を失っていると、やがて先生は落ち着きを取り戻した。
「私ね、虎宮さんとちゃんと話をして、もう暴力をふるわないって約束をしてもらったの。
 虎宮さんもね、ちゃんとわかってくれたのよ。虎宮さんはね、体調がおかしくていらいらしてたの。
 だからそれをきちんと説明して、大神君と虎宮さんに仲直りしてほしかったのよ?
 なのに呼んでも来てくれないなんて、駄目じゃないの!」
 仲直りって小学生か!と俺はつっこみたくなって止めた。先生の顔がとても真剣だったからだ。
「あー、わかりました。虎宮の件はわかりましたから。別にもう気にしてません」
 近づかなければ気にならないだけだが。
「虎宮さんも鞍馬さんも、あなたに嫌われたって思ってとっても気にしてるのよ。虎宮さんは本当に気にして落ち込んでいるの」
 なんとも返答に困ることを先生は語った。自分で喧嘩売っておいて嫌われたって落ち込むというのは理解できなかった。



450 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:51:07 ID:NQsRJO3t]
「えーと、あいつらに嫌いとかそういう悪感情はないです。これは本当です」
 そういうと先生の顔がはじめて柔らかい安堵の微笑みを浮かべた。もちろん悪感情がないのは理解できないからなのだが。
「……でも、先生は逃げ隠れしていると言いましたけど、俺としては距離を取っていたつもりです。
 実際それであいつも暴力ふるわずに済んだし、俺も痛い目に遭わないようになりました。
 このまま距離を保ったつきあいでは駄目ですか? ひょっとしたら虎宮も顔をあわせば、また暴れたくなるかもしれませんし。
 その方がお互いのためじゃないですか?……」
「大神君!」
 俺の言葉を遮って先生が叫んだ。目には涙すら浮かんでいて、俺は少し驚いた。 
「大神君は人間だから亜人なんか関係ないと思ってる? でもね、昔から亜人と人間は混ざり合って暮らしてきたの。
 自分が人間だと思っている人の中にも亜人の血はわずかずつ流れているわ。亜人と人間で結婚すると子供ができるのがその証拠。
 なのにこれからどこに行っても亜人を避けて生きていくの? 自分の中の亜人すら避けるの? そうやって全部逃げて生きるの?」
 一気にまくし立てて、先生は荒い息をついた、大きな胸が息に合わせて揺れる。
「落ち着いてください、先生。……先生の言う事はわかりましたから。
 でも、距離を置くことなんか、普通の事じゃないですか。亜人と人が別々の星に済んでたら争うことだってなかったんですよ。
 ちょっと距離を置けば、摩擦も減って、みんな幸せになるんです。これは逃げてるんじゃないんです」
「駄目! そんな考え、絶対駄目! 誤解やすれ違いを一つ一つ解いていって、亜人と人間は分かり合っていかなければならないの
 先生は、大神君は亜人の良いところを知らないといけない思うの。だから、逃げちゃ駄目なの!」
 言い終わった後先生は、目の端にわずかに涙を浮かべ、顔を紅潮させでいた。
 俺は何か先生のスイッチを入れてしまったようで、先生は俺の手を恐ろしいほどの力で握りしめていた。
「わかりました。わかりましたから!」
「大神君……」
「でも先生、俺と虎宮や鞍馬の話にどうしてそこまでこだわるんです?」
 俺がふと疑問を口にすると、なぜか先生はすこし慌てた。
「え? ……あ、き、教師として見過ごせないって思ったの。大神君には亜人を誤解してもらいたくなかったのよ」  
「気をつかってくれてありがとうございます。でも、もう暴力が治まったんで、後は俺と虎宮や鞍馬との問題ですよ。
 俺は俺なりに考えてやっていきますけど、でも仲良くしろって言われても、そうすぐにうまくはいきませんよ」
「大神君!」
「怒ってもだめです。俺にだって事情や考えあるんですから。さ、話はこれでいいですか?」
「待って、大神君!」
 引き留めようとした手を俺は思わず振り払っていた。傷ついたような目をして先生は立ちつくしていた。
 しかし俺はそのまま保健室をでた。
 保健室から出て、保健室が甘ったるいミルクの匂いで充満していたことに気付いた。


 その後も何回か俺は保健室に呼び出された。
「虎宮さん達を避けるのはもうやめましょう? 彼女達、とても気にしているわ」
「ですから、嫌いで避けてるんじゃないですから。状況を見て適切な距離を模索しているわけで。感情の問題じゃないんですよ」
「そんな理由は、反省している虎宮さんを避けて悲しませていい理由にはならないと思うの。
 悪意も偏見も無いって大神君は言うけど、先生はね、やっぱり大神君が間違った思いこみをしていると思うわ。
 そういうのをちゃんとぶつけ合って一つ一つ解いていって、亜人と人間は分かり合っていくのよ。
 逃げちゃだめなの。ちゃんと向き合って!」
「先生の考えは立派ですけど……」
「駄目、大神君! 逃げないで向き合って」
 そんな平行線を辿るような空しいやりとりをしているうちに、俺は保健室に行かなくなり、牛島先生も避けるようになった。
 学校に行っても誰とも話をしない日々が続いたが、しかし誰からも干渉されず穏やかで平和な日々だった。
 虎宮と鞍馬、そして先生はあきらめた。そう俺は思いこんでいた。
 


451 名前:狼男だよ mailto:sage [2007/07/03(火) 20:52:54 ID:NQsRJO3t]
 最後に保健室に行ってから二週間がたっていた。
 晴れ渡った夜空にこうこうと満ちた月が輝き、温かさを帯びた春風が夜の町を吹き抜けた。
 俺はバイトを終わらせて、足取り軽く家路についていた。満月が俺に喜びを与えてくれていた。
 月の光を浴びるだけで、身体の疲れも心のモヤモヤも流れ落ちていき、叫びだしたくなるほどのエネルギー身体に満ちる。
 丸い月の下では、どこまでも遠くに行ける気がした。
「……なんにせよ、ごたごたが片付いてよかった」
 今回は少々ついていなかった。高校にもぐりこむというのは名案に思ったのだが、亜人と同じクラスになってしまった。
 これ以上トラブルが続けば、詮索が強くなったに違いない。そうなれば、俺は姿を消さなければならなかった。
 亜人の世界はせまい。人口が少なく、マイノリティということで結束も固いからだ。ゆえに、彼らの間に情報がまわるのもこれまた早い。
 亜人の間で目立てば、どこに行っても亜人達はかぎつけるだろう。
 目立たないように、詮索されないように、集団の隅で人の影にかくれて、そっと存在するのが、一番いい。
「座敷童がそんなこと言ってたっけ」
 俺のつぶやきに、月は答えず、ただ恵みの光をさしかけるだけだった。
 アパートに帰り着いたとき、俺の部屋のまえに誰かがたたずんでいるのに気がついた。
 鋭敏になった鼻が、人影の正体を知らせる。甘いミルクの匂い、牛島先生だった。
 満ちた月により浮かれた心を戒めて、いつもの状態を保つように念ずる。
 視界が暗くなって、鼻が利かなくなる。
 そのままなにも知らない振りをして自室に向かって歩んだ。
 扉の鍵穴に鍵を差し込んだ所で声がかけられる。
「こんばんわ、大神君」
 驚いた演技をして振り返ると、暗闇の中から、緑に光る二つの瞳があらわれた。
 それが近づき蛍光灯の光を浴びて、いつもの優しげな牛島先生の瞳になった。
「牛島先生だったんですか? 驚きました」
 白々しくならないように、すこし早口でしゃべる。
「話をしにきたの」
 その姿はもちろん白衣ではないが、今はいつもよりも飛び抜けてきわどい姿をしていた。
 彼女は、巨大な胸を半ばまでさらけ出しているような扇情的なタンクトップとパンツまで見えかねないミニスカートだったのだ。
 手にはセカンドバッグの他に小さな水筒のようなものを下げてる。
「ですが……もうこんな時間ですし、ここは俺しか住んでないから二人きりってのもまずいと思いますし……」
「じゃあ、こんな時間に私を一人で帰して、襲われてもいいのかしら?」
「それは……」
「お邪魔していいわね?」
 普段からすこし強引だったが、この時の先生はさらに強引だった。
 帰りそうな気配もないので、俺は仕方なく先生を部屋に上げた。それが失敗だった。  








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