- 1 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/05/05(水) 12:07:38 ID:wXoQLilw]
- なさそうなので立ててみた
- 301 名前:寝坊之介さん1 mailto:sage [2010/06/14(月) 22:39:50 ID:x6iQbIOA]
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「…もう…」 仕事部屋の戸口に仁王立ちした一反…、いや布美枝は口を尖らせていた。 ゆうべは何時まで起きていたのだろうか。 子守歌代わりにカリカリッとペン先の走る音が聞こえていた。 せめても戦士の休息を与えてやりたい、とは、思うのだが…… もうとっくに陽は天高く上がり、朝の洗濯物まで乾いた昼過ぎだ。 「このままではカラスが鳴くまで起きんわ…」 義母からも重々、茂は寝坊介だと聞いてはいた。 けれどそれは、安来の兄弟達が少年時代もそうだったから、 子供時代の昔話なのだろうと思っていた。が、 四十路近い大男が、酒で酔ったわけでもないのにこんな時間までぐーすかしているのは 如何にも体裁が悪い。 「うん。これではいけん」 ひとつ大きく頷いて気合いを込めると、大口開けて寝息を立てる茂の元にお膝した。 「あの…っ」 遠慮がちに肩を揺すったぐらいではびくともしない。 義母より手紙で直伝されたように声を張ろうとも思ったが、 「や…ご近所さんに聞こえたら…恥ずかしいわ…」と、うまくできない。 上掛けにした布団を一度巻くってはみたが、 大きな背を丸めて背を震わせるのが不憫で、またそっと掛け直してしまう。 「……はあ。うまくいかんことばかりだわ…」 新婚早々間借り人もいる奇妙な新生活。 慣れないことばかりの胸の内を話そうにも、旦那はいつも忙しくて……。 「……うぅん。きっと、私には…私のやり方がありますけん」 胸元に拳を握りしめて、内気さを掻き消すためもう一度気合いを入れた。 「起きて…、起きてごしない?」 いくら呼びかけても聞こえている様子もない。返ってくるのは盛大ないびきばかり。 聞こえていないのならば遠慮はいらないと、布美枝は布美枝なりに大胆に、 その耳元に唇を寄せた。
- 302 名前:寝坊之介さん2 mailto:sage [2010/06/14(月) 22:40:50 ID:x6iQbIOA]
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「ほーら…昨夜から何も食べてませんけん、お腹も鳴いちょる頃でしょう?」 頭よりも先に腹が反応して、茂はぐぅと腹を鳴らした。 「美味しい美味し〜いすいとんが冷めますよー? 香ばしい焼き魚も身が硬うなってしまいます」 「…うーん…」 食欲への呼びかけが成功したのか、茂は寝返り打って眉をしかめた。 「あは。ほら、ちゃーんと顔洗って、それで……、え?」 急に視界が横倒しになり、布美枝は素っ頓狂に声を裏返らせた。 長い右腕に絡め取られるように引き倒されて、気付けば茂の腕の中。 遅れて事態を飲み込んだ途端、布美枝の頬は朱に染まった。 「……あ…あの……」 不意にいびきが途切れ、胸高鳴らせた布美枝の鼓動が聞こえてしまわないか心配になる。 しかし…… 抱き枕でも抱えたように安定すれば、すぐにまた大いびきが上がった。 「……はぁ。ひと筋縄ではいかん人だ…。ね、もうほんとに起き…」 身を起そうとしても茂の腕に抱き寄せられたまま、身動きがとれない。 「あの…っ、あっ…痛たたた……」 無理に身をよじってみても、しっかと抱き包まれた腕の力が枷となり、 振りほどけそうにはなかった。 「ほんに…力の強い人なんだな…。もう、いい加減に起きてっ、起きてー!」 布美枝の願いもどこ吹く風。閉じた目蓋は一向に開く気配がない。 起こすことも、その腕から逃れることもできず、 ただじっと並んで横になっているしかなかった。
- 303 名前:寝坊之介さん3 mailto:sage [2010/06/14(月) 22:41:22 ID:x6iQbIOA]
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「……。こんな間近でこん人の顔見たこと…なかったわ…」 大柄なのに丸顔で、こうして眠っている顔はどこかあどけなく映る。 だらしなく開いたままの口は無防備で、厚みのある唇を見上げた。 ちょっこし男前ではないか? と思うのは、女房の欲目だろうか。 「…何思うとるんだろ…私」 思わずくすくすと肩を揺らすと、ふと肩越しに視線を感じてた。 恐る恐る襖の戸口に目を向けると…… 「! あ…っ」 「……あ…いや、そのぉ……お水を…。いや、いや…いいんです。スミマセン」 「な…中森さんっ。や、違うんですよ、あの…すんません…っ」 こんな恰好をしていたら誤解されてしまう。いや、すでに誤解はばく進中だ。 見られた布美枝も、見てしまった中森も真っ赤で、ただ茂だけが澄ました寝顔を晒している。 こんな時にばかりは、誤解を解く証拠のいびきが止んでしまった。 「あのっ…、お水でしたら…」 起き上がろうとしても茂の強固な腕から逃れることはできない。 「いえ、いえ! こ…これから出かける用事が…できました。 いや! 用事がありました、んで……夕方過ぎになりますので…では」 まるで「ごゆっくり」とでも気遣われたようで、布美枝は頭を抱えた。 パタパタと大慌てで玄関口を出ていく足音が遠のくまで、顔も上げられなかった。 「あちゃー……もぉっ」 こんな(布美枝にとっては)一大事だというのに、茂は今も夢の中。 「ほんっとに…こん人は大人物だわぁ…っ」 恨めしく睨み上げても効果はなく、布美枝は深く息をついた。
- 304 名前:寝坊之介さん4 mailto:sage [2010/06/14(月) 22:42:02 ID:x6iQbIOA]
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「……一体…どげな夢の中におるんだろ…?」 普段から穏やかで大らかな人なのに、精根込めた作品は重厚で不思議な物語ばかりだ。 まだまだ知らないことばかりだと思うと、こんなにそばにいるというのに、 二人の間はどれだけ遠いのだろうかと、不安になる。 「……ぇ…」 「?」 むにゃむにゃと歪めた唇の端から、聞きなれた名前が毀れ落ちる。 「…ふみえ……」 寝息に掠れた声。 布美枝がびくりっと肩を上げて硬直すると、茂の腕がその輪郭を確かめるように動いた。 「な、な…」 なんて声を出すのだろう。 優しく響く茂の声に胸がきゅっと軋んだ。 面と向かってそんな風に呼びかけられたこともまだなくて、 不意打ちの呼びかけに耳まで熱くなる。 「…ん……、んん…?」 恐る恐る見上げると、屈強に閉じていた目蓋が薄く開いていた。 腕の中の布美枝をその手で、その目で確認すると、茂の口元が穏やかに笑む。 「……もう…そんな恰好…しとってか…」 「は…はい?」 軽笑いまで浮かべて、茂はうわ言のように途切れ途切れに呟いていた。 「あんた…着替えるん……早……て…、また脱が……大変…だ……な」
- 305 名前:寝坊之介さん5 mailto:sage [2010/06/14(月) 22:42:45 ID:x6iQbIOA]
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「??? あの…起きて、ます? よね…?」 徐々に腕の力が弱まり、堅い枷からは解放されたが。 代わりにその腕が布美枝の身をなぞるように上下して、布美枝はどうしていいのか分からず、 不思議そうに茂の再び閉じた目蓋を見つめていた。 「……まだ…寝とぼけとるんだろうか…??」 感極まったかのように茂の深い吐息が漏れ、己の吐息に驚いたように、 その目蓋がゆっくりと開いた。 「……ん?」 口端の笑みが消え、茂はぱちくりと瞬きを繰り返す。 「ようやっと、お目覚めですか…?」 見開いた目は、さっきの寝ぼけた薄目とははっきりと違う。 目の前の布美枝、抱き寄せている自分の腕、そして煌々と陽の差す窓辺に視線を走らせて、 茂は言葉を失って「こ、こ、こ…」と言葉にならない驚きに喉を詰まらせた。 「おはようございます。朝ごは…いえ、もう、昼ごはんですね。冷めますよ?」 「お…おぉ、はい。すまんです」 慌てて腕を引っ込めると、起き上がりざまに横向いてしまった。 「私もお腹と背中がくっつきそうですよ。顔を洗ってきてごしない」 「あ…あぁ…はい。か、構わんと先に食べててくれていいですけん…」 ああ。もういつもの茂に戻ってしまった。 二人で過ごす日が浅いせいか、いつまでも「飯田家の娘さん」としか 思っていないのかと思うほど、よそよそしい口調。 「そうもいきません。旦那さんが寝とられるのに、先に食事なんて…」 「気遣うことはありません。夜も遅い稼業ですけん…」 夜、という言葉に何か夢の中でも思い出したのか。 茂は所在なさげに頭をぼりぼりと掻いてごまかした。 「? どげしました…か?」
- 306 名前:寝坊之介さん6 mailto:sage [2010/06/14(月) 22:43:29 ID:x6iQbIOA]
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「あっ、いや。心配には及びません。……おかしな時間に寝ついたせいか… ミョーな夢を見た…」 ブツブツと独りごちたのを、布美枝は聞き逃さない。 「どけな夢、見とったんですか?」 「え……。そ、れは……」 茂はブルブルとかぶりを振って、そんなこと、女子供には言えんとばかりに口を閉じた。 「なんだか、いーい夢やったんですよね? そげな寝顔しとりました」 そんな楽しげな夢に、自分も出ていたのかと思えば気になって仕方ない。 「は、はあ……、それはそれは極楽…で…。いや! 夢は、夢ですけん」 「気になりますー」 「あまり、覚えてなぁです…よ。さ、早くごちそうにありつきましょう」 そそくさと洗面に向かう茂の背で、布美枝は首を傾げていた。 卓袱台に向かい合って遅い朝食をとる間も、茂は物問いたげな布美枝の視線をちらり見て、 目を戻してはまたちらり見て…… そんな奇妙な沈黙に耐え切れず、肩で息をついた。 「……寝ぼけて、おかしなことしちょったようで…すまんでした」 「は? あ…いえ…。それは…ええんです」 今度は布美枝が目を俯かせて、肩腕にまだ残る茂の腕の感触に頬を染めた。 「へ? えぇのですか?」 「はい? あ、いえ…そー…いうわけじゃなくて…」 怒らせてしまったのかと思えば、すぐに朗らかな笑顔を見せる。 ころころ変わる布美枝の百面相に、茂は口元を緩ませた。
- 307 名前:寝坊之介さん7 mailto:sage [2010/06/14(月) 22:44:07 ID:x6iQbIOA]
- 「……いずれ、ちゃんと教えます…けん」
「はい?」 不意に贈り物の時計が時を告げて鳴り響く。もう三時になっていた。 「もうこんな時間か…。では、戦線復帰しますけん。そういうことで」 「あ…、あの……っ」 さっさと食事を済ませて仕事部屋に戻る背中は、すぐに襖の向こうに消えた。 布美枝はまだ半分も減っていない茶碗の中に目を落とし、ため息をもらす。 「…忙しい…人なんだな……」 寂しげに呟いた布美枝の声は、襖に閉ざされて掻き消えるほど心もとないものだった。 終わり ヽ(◎)/ <次回、数ヵ月後「寝坊之進さま」に続く!
- 308 名前:281 mailto:sage [2010/06/14(月) 22:44:32 ID:t0QfGmhb]
-
281です。 本スレ本当に落ちてますね、なんでだろう。 ところで、次を投下しようと思ってます。 ちょっと事情があって日をまたぐ頃になりそうですが。 時系列に添っていってるので、 初夜編から約1ヶ月くらいは経っていると思われます。 浦木が「少年戦記の会」の看板を持ってきた日になります。 個人的にエロいのも好きなんですが、 ドラマ中の話をあれこれ広げるのが好きなので エロの割合がエロパロ板にしては少ないのかな。 でもがんばって書きました。
- 309 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/14(月) 23:09:03 ID:HbGXw2H0]
- >>300
おお初期の2人だ!GJ 掛け合いが初々しくて可愛くていいわー 茂、マニアックな夢見てそうだw
- 310 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/14(月) 23:09:25 ID:ybtufHZG]
- >>301〜>>307 GJ!
新たな作品に今日も萌えさせて頂きました。 >>281さん エロの割合が少なくても大丈夫ですよ〜 新たな作品の投下お待ちしちょります。
- 311 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/14(月) 23:47:54 ID:DV97JS5L]
- >>301
だんだん 時系列的に言うと、深大寺(初夜)の前でつか? 生真面目なフミちゃん可愛い・・・ 281タン 新作、超たのしみー!!! 夕べからずっとワクワク 頑張って起きてますです♪♪♪
- 312 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/15(火) 00:01:44 ID:mLf3EKn+]
- >>301
職神様が降臨されとるー!だんだんです! しげぇさんに振り回されちゃうふみちゃん可愛いー! もう…可愛ゆすぎて胸が苦しいw 二人に対する職神様の愛情がヒシヒシと伝わってきますけん 次回作・続きも心底楽しみに待っちょります! さて、もう一回読み直そうっとw
- 313 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/15(火) 00:04:32 ID:QkTqnYI5]
- >>308
エロがなくても大歓迎ですけん! 二人がいれば、それだけで幸せ… 投下楽しみにしちょりますー頑張ってごしない!
- 314 名前:281 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:15:15 ID:VctfIvgX]
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281です。 やっとサッカー終わった。 では投下します。 >>301さん 寝言かわいくて萌え。。。 数ヶ月といわず、すぐに続き読みたいです!
- 315 名前:見えないけどあるもの1 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:18:53 ID:VctfIvgX]
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喧嘩、というわけではないけれど、 布美枝はその日一方的に茂と口を利かなかった。 その日の昼すぎ、茂が「金出してくれ」 と言って、さっさと財布ごと持って行ったかと思うと、 どっさり古本を抱えて戻ってきた。 戦記物の漫画を描くのに、もっとリアリティを追求すべく 資料用にと戦艦やら戦闘機やらの本を買ってきたのだという。 浦木から「少年戦記の会」の発足を促され、 その際に「お前の漫画は暗い」と言われたことに端を発していた。 それにしてもどうだ、 戻ってきた財布を開けてみればスッカラカン! その日暮らしでやっと食べているというのに、 日々の節約の努力をどうしてくれるのだ、と布美枝は憤った。 「夕食です」 「お風呂です」 それだけであとは無言を貫き通した。 風呂から出た茂と入れ替わって、急いで布美枝は風呂に閉じこもった。
- 316 名前:見えないけどあるもの2 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:19:58 ID:VctfIvgX]
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仕事の資料なのだから、仕方がないという思いもあった。 それに…。 初めて聞いた戦地でのこと。 左腕を失い、多くの戦友を失ったこと。 どうしても格好のいい戦争漫画は描けないと言った茂の横顔…。 でも!! 日々の糧は何と言っても必要なのだ。 むやみやたらに、相談もなく使ってもらっては困る! 家計を預かったのは自分なのだから、そこはちゃんとしてもらわんと! 布美枝はキリっと顔を引き締めて、ゴシゴシと身体を洗いはじめた。 …が、やっぱり、と手が止まる。 「あげな都合のいい戦争があるか!」 と怒鳴った茂の顔は、苦悩と悲哀を複雑に絡めた表情だった。 その言葉に詰まった本物の叫びを、布美枝はその時ほんの少し心の耳で聞いた気がした。 風呂を出る頃には、すっかり今日の自分に嫌気がさしていて、 茂にどういう態度で接しようか、戸惑ってしまっていた。
- 317 名前:見えないけどあるもの3 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:20:43 ID:VctfIvgX]
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茂は、布美枝が敷いた布団の上で腹ばいになって 今日買ってきた資料の本を眺めていた。 投げ出された足を左右に揺らしてどこかのんきな風だ。 布美枝が口を利かないのを特に気にする様子もなく 夕飯をたいらげ、悠々と風呂に浸かった。 そして今も、風呂から上がった女房を振り返ることもなく パラパラとページをめくっている。 その態度に布美枝は少しむっときたが、 すぐにやっぱり申し訳ない気持ちになってしまう。 自分の負けだ、と思った。小さなため息をつく。 もうすぐ4月になろうとしていた。 夜はまだ肌寒いが、昼間はずいぶん過ごしやすくなった。 ふたりの生活もだいぶ夫婦らしくなり、 二階の中森のこともさほど気兼ねすることもなくなった。 が、あれ以来夜の営みはとんと間が空いていた。 茂が仕事モードに突入すると、夜が不規則になる。 加えて、布美枝の月の周期が一度、その営みを邪魔したときがあった。 そのときは、布美枝は申し訳ないと謝ったが、茂は仕方ないと笑った。 そうするとずるずると何だかタイミングを逃し続けていて…。 しかし、今日は何だか言葉をかけづらい。 独りで勝手に怒っていたことを、布美枝は今さら後悔していた。 肩を落として櫛をとかす布美枝の背中から茂の声がした。
- 318 名前:見えないけどあるもの4 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:21:32 ID:VctfIvgX]
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「やっぱり長門はええ。うん」 思わず布美枝は振り返ったが、茂は戦艦の本とにらめっこしている。 ああ、独り言か…。 それにしても、ずいぶんと熱心に見入っているものだ。 本当に資料として見ているのだろうか? 何だか、漫画に熱中する子どものようでもある。 布美枝は可笑しくなって、くすっと笑った。 茂が顔を上げる。 「どげした」 「え?いや、ふふっ、子どもみたいと思って」 「だら」 少し、緊張がとけた。 布美枝はほっとした。 また茂は顔を本に戻し、うんうんと戦艦の詳細を見ては頷いている。 布美枝は、茂の左腕を見た。 いや、正確に言うと左腕があったであろうあたりを、見た。 その視線に茂も気づく。 「ん?」 「あ…すんません。…ちょっと気になって」 「なにが」 「…あなたの、左腕は…今どこにあるんだろうと思って」 「ええ?さあ…切ったあとの腕のことは聞かんかったなあ」 衛生兵がどっかに片付けたんだろう、と茂は言った。 「今頃土に戻って、ラバウルの果物の肥料になっとるわ」 はははっと笑う茂だったが、布美枝は笑わなかった。 真面目な顔の布美枝を、茂は不思議そうに見た。
- 319 名前:見えないけどあるもの5 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:22:21 ID:VctfIvgX]
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「あたしは…うちの家族は、戦中特に危ない目にも遭わんと過ごせました」 「うん」 「もしかしたら、あなたの左腕が守ってくれたからかも知れませんねぇ」 茂は遠くを見つめるような布美枝の表情に、 寝転んでいた身体を起こし、布団の上に座った。 布美枝はおばばの言葉を思い出していた。 『いずれ一緒になる人とは、ご縁の糸でちゃあーんとつながっとる』 「あなたの腕が、守ってくれたから、あたしはこうして居れるんだと思います」 「だんだん…」頭を下げた女房に、 茂は自身の左側がぐっと反応したような、くすぐったい感覚を覚えた。 いつものように、茂はぽりぽりと頭を掻き、少し鼻をすすると、 やがてそっと布美枝に近寄ってきて、その唇に軽く、口づけた。 布美枝は少し照れて、唇が離れたあとに俯いたが、 茂の寝巻きの左袖をきゅっと掴んで、もう一度、と無言で訴えた。 茂の右手が布美枝の頬を撫で、ゆっくりと口づけをくれた。 唇だけを触れて、お互いの柔らかなそれの感触を確かめたあと、 深い、甘い、濃い、口づけへ。 絡み合う舌が、少し淫らな音をたてて、二人の中心に火をともした。
- 320 名前:見えないけどあるもの6 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:23:18 ID:VctfIvgX]
-
布美枝は、まだかけたままだった茂の眼鏡をそっとはずした。 この男は、眼鏡をとるとあっという間に少年のような顔になる。 10歳も年上なのに、可愛いとすら思えてしまう。 しかしその顔をゆっくり愛でることもさせてもらえずに、 すぐにまた唇を奪われた。 茂の手が、布美枝と寝巻きを縛っている帯を解きはじめた。 布美枝は数日ぶりの胸の高鳴りに息を呑んだ。 しかし今日は前回より冷静に対応できた。 布美枝も茂の寝巻きの帯に手をかけると、ゆっくりほどいた。 適当に着こんでいたのか、簡単にはらりとはだけた。 現れた硬い骨と肉の肌にそっと触れると、胸の向こうの鼓動を感じることができた。 少し早い。 布美枝は嬉しくなった。 相手を求めて胸を熱くしているのは、自分だけではなかった。 今度は茂が布美枝の寝巻きを脱がせていった。 露わになった二つの山の山間に、その顔を埋めた。 柔らかな胸を優しく、強く揉みこむと、布美枝が小さく喘いだ。 一方で敏感な先端を舌で転がすと、また布美枝は熱い息を漏らすのだった。 布美枝が自分の胸の中で遊ぶ茂の額に唇を落とすと、 それに気づいた茂が頭を上げて、口づけを返してくれた。 ふふっと布美枝が微笑むと、茂もにこっとしてまた胸の中に戻る。 「あ…っ」 茂の愛撫が、布美枝の身体の中心をじん、と貫いて、血流を掻き乱す。 下半身に熱が移動して、じわっと泉があふれ出すのを感じた。
- 321 名前:見えないけどあるもの7 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:24:21 ID:VctfIvgX]
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やっと布団に横たわった二人は、 じゃれあうように唇をついばんだり、 舌を絡めた深い口づけをしたり、 くすくすと笑いながらお互いの唇で遊んでいた。 すると。 ミシッ…トタトタトタ… 天井から音がした。 瞬間、はっとして二人は顔を見合わせた。 中森だ。 もう深夜だったが、中森も漫画家。 起きて仕事をしていても当たり前の職業である。 ずいぶんその存在が気にならなくなってきたとはいえ、 万が一この睦みごとの最中に降りてこられては困る。 布美枝はこれ以上の続きを望めないと思いがっかりして肩を落としたが、 茂は少しの間、視線を空に漂わせたあと、布美枝の下着に手をかけた。 「ちょっ…、だ、だめです!中森さんが起きとる!」 「気にするな、新婚の家でも構わんと言ったのは向こうだ」 「あたしは気にしますっ!」 「あずきはかりか何かだと思っとけ」 そんなことを言われても…。 布美枝は別の意味で胸がハラハラして苦しくなった。 が、そんなことはおかまいなしで茂は布美枝の熱くなった茂みの向こうを探りだした。 「やっ…あ…だめ」 「声を出すと聞こえるぞ」 「だ、だって…」 ずるい。 でも、布美枝もこの熱がこのまま冷めるのは嫌だった。 茂の指が、一本、二本、溢れる水の源泉へと出入りを繰り返す。 その度に布美枝はどうにも抑えられない嬌声を 手の甲を押し付けて何とか耐えしのいだ。 茂はもだえる布美枝を、まるで悦んでいるかのように見ていた。 (意地悪っ…!)
- 322 名前:見えないけどあるもの8 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:25:15 ID:VctfIvgX]
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ミシ、ミシ… 二階ではやはり中森がウロウロとしている気配。 下の情事に気づいたのだろうか。 しかし布美枝はそれを気にする理性を失いつつあった。 やがて茂は布美枝に覆いかぶさり、力の抜けた布美枝の脚を開かせた。 侵入してくる茂の熱いものに、布美枝は思わずのけぞった。 初めてのときは、指だけでも痛かったのに、 今日はどうだろう、布美枝は経験したことのない快感の中に居た。 さらに茂自身が布美枝の中を掻き乱し始めた。 思わず、 「ああっ!」 声をあげてしまう。 茂がすぐに唇をふさいでくれた。 押し寄せる快感の波。引いてはまた、押し寄せる。 源泉からどんどん水が湧き出てきて、尻を伝っていくのがわかった。 布美枝は脱ぎ捨ててあった茂の寝巻きを掴んで口にあて、 身をよじって必死に理性にしがみついた。 それなのに、茂は攻撃の手をゆるめてくれない。 打ち付ける腰に加えて、舌で布美枝の耳を舐めあげる。 「あっあっ…!」 我慢できない布美枝の喉から、喘ぐ声がもれ出す。 茂ももう、布美枝の声を押しとどめることはしなかった。 自分自身も限界が来ていた、というのもある。 布美枝の中の一番深い所に達したとき、茂はそこに全てを吐き出した。
- 323 名前:見えないけどあるもの9 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:26:01 ID:VctfIvgX]
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またしてもぐちゃぐちゃになってしまった布団を避けて、 二人はひとつの布団にぎゅっと収まった。 しかし布美枝は茂に背を向けて寝ていた。 「明日どげな顔して挨拶すればええんですか…!」 「普通にしといたらええだろ」 「無茶言わんで!」 「声が大きかったのはあんただ」 「だって!」 「だって?」 「…」 ふふん、と茂が笑ったのが、後ろを向いていてもわかった。 布美枝は真っ赤になった顔を急いで覆った。 拗ねる女房を後ろからぎゅっと抱きしめ、 長い髪の香りを嗅ぎながら、茂は目を瞑った。 「もぅ…知らん…」 布美枝も、自分の腹のあたりにまわってきた茂の右腕を すこしつねって、それからぎゅっと両手で抱きしめた。
- 324 名前:見えないけどあるもの10 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:26:51 ID:VctfIvgX]
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翌日、早速二人は「少年戦記の会」の会報作りに取り掛かった。 布美枝は浦木が持ってきた謄写版を準備し、茂は会報用の原稿を描いていた。 すると玄関の戸が開く音がして、ほどなく中森がにこにこと廊下を通りかかる。 おやっと二人はお互いの顔を見た。 「あ、おはようございます」 中森が何事もなかったように挨拶をしてきた。 「中森さん、あんた…朝早くから散歩にでも出とったんですか?」 「あ、いえ。昨日は大阪に居た頃の知り合いと会っておりまして、 その知り合いの家に泊まらせてもらっていました」 「ええっ?!」 つまり、今帰ってきたところ、というわけだ。 こわばった顔を見合わせる二人を、中森は不思議そうに見ていたが、 すぐにいそいそと二階へ消えていった。 「…でも、昨日…確かに…」 音はしていた、人の気配はあったはずだ、と布美枝は思った。 「うーん、やっぱりあずきはかりだったんかな」 「ええっ!」 茂はにんまりとしたが、布美枝はぞっとして恐る恐る天井を見上げた。 おわり
- 325 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/15(火) 01:50:27 ID:jvU9Etre]
- 281タソ
頑張って起きてた甲斐がありますたw どうもありがd〜 最後のまとめ方とか、さすがだなあwww
- 326 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/15(火) 12:46:27 ID:rl5Z0GFp]
- >>315
素晴らしい作品ですね!! 題名といい、オチといい見事な方ですね!! ドラマ見て、このスレ見て毎日萌えまくってますw 次回作も是非是非お願いします
- 327 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/15(火) 20:55:08 ID:sXXDJY2A]
- >>301
初々しい二人がカワエエ 茂が見た夢が現実になってる話も読みたいw >>315 たまに余裕のあるフミちゃんもいいなw ドラマ内の時系列に沿った続き、期待しちょりますけん!
- 328 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/15(火) 22:53:05 ID:mLf3EKn+]
- >>315
GJだんだん! フミちゃんの気持ちが丁寧に綴られてて良かったよ〜 あずきはかり(?)と中森さんもGJ!www 次回作もがっつり楽しみにしちょります! このスレは本当にレベル高いねぇ エロがなくても作品として素晴らしいし… 小ネタとかアホっぽいやつも大歓迎ですけんw
- 329 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 00:18:53 ID:jDFN5fS2]
- レスだんだん〜
個別レスは流石に控えますが 萌え走り余っての妄想投下にスルーせず感想頂けて嬉しかったです >312 あの頃(河童話〜深大寺まで)はやはし「フミエさん」「シゲルさん」と 互いを呼び合っていたかと思うと激萌えですなw いずれは現在の、御大の左膝に手を置いて朗らかに笑うお二人がいるわけで それまでのン十年の経緯を推し量れば、 こげなふたり、愛さずにはいられませんけんw >327 きっと御大のこと。それはそれはエログロナンセンスなる酒池肉林で たわわに実ったフミエさんが……ハァハァ おっと、こんな夜更けに梅雨の中、来客が…? 取り急ぎ数ヵ月後設定を投下しときます 萌え話もネタフリも投下も心から応援しとります!
- 330 名前:寝坊之進さま1 mailto:sage [2010/06/16(水) 00:19:41 ID:jDFN5fS2]
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「はぁあ…」 時は既に昼下がり。 またも遅くまで仕事に根をつめ、死屍累々といった風情で眠り込んだ夫の姿に、 布美枝は仁王立ちして向き合った。 いくら疲れてはいても、このまま眠らせてしまえば朝夕逆転の生活が続いてしまう。 この寝坊之介、改め、寝坊之進茂左衛門を起こすのは至難の業ではあったが、 今の布美枝にはとっておきの必殺技がある。 折よく、二階の中森は外出中で、驚かせてしまう心配もない。 「……よぅし…っ」 布美枝はスッと息を吸いこんだ。 「シゲーサンッ!」 「!!」 効果覿面とはこのことだろう。義母の口真似は本当によく効く。 茂は上掛けを抱き締めたまま、びくりっと飛び起きた。 「…あー……驚いた。イカルの奇襲かと思うたぞ……」 「ふふっ。もー昼過ぎですよ? 食事にしましょ」 悪戯な布美枝の笑顔を見上げ、茂は安心したようにまた横になってしまった。 「あっ。二度寝はいけんですよ」 「……先に食っとればええだろぉが……」 「もうこげん時間ですよ?」 「うるさい、布団を引っ張るな…っ」 「いけんよっ。ほら、もう目も冴えちょるのでしょう?」 「……」 いくら布美枝が喜んで笑うからといって、 身ぶり口ぶりまで添えて、イカル話をしてやった茂が迂闊だった。 まさかこんなに器用に口真似するほどになるとは…。 「……だらずが…」 「ほら、ほら。えーえ天気ですよ〜」 窓から差し込む陽の光さえも疎ましいと、茂は抱えた布団で顔を覆った。 「ああっ、ほら。もう〜」 「うぅぅ……うるしゃあわ!」
- 331 名前:寝坊之進さま2 mailto:sage [2010/06/16(水) 00:20:48 ID:jDFN5fS2]
- 引っ張り負けて奪われた布団の代わりに、布美枝の腕を引く。
「やっ…」 布団の取り合いには負けたが、その腕で抱きすくめれば布美枝も打つ手がない。 「ふふっ…一勝一敗の五分だ」 「は、離してくださいっ。もぉお…起きんといけんですよ」 「あんたも昼寝したらええが…」 「そげにのんびりともしとられませんっ。私は私で、忙し…い……?」 じたばたと身を捩る布美枝を逃さぬよう組み込んでいるうちに、 肩腕、両足ではさみ技に持ち込んだ茂の、奇妙な感触が腿を擦る。 「!!!」 硬直した布美枝を見て、茂は勝ち取ったりとばかりに満足げだった。 「……ふふっ…ようやく諦めたか…。ふわぁあ。あんたも寝たらええ…」 「寝…っ。そ、そげなこと…、こげん真っ昼間に…」 「うん?」 おかしな様子に気付いて覗き込めば、布美枝の真っ赤な顔。 「??」 最初は、まだこんなことに照れとるのか…と不思議に思ったが、 もぞもぞと身を引こうとする様子を見て、茂も下半身の違和感に気付く。 「おぉ…。そういうことか」 「…っ」 「いや、いや。コレはそういうコトではなぁぞ」 「……はい?」 「直に治まる」 男とはそうしたものだ、と頷かれても、布美枝にはそんな生理現象は分からない。 言えば、茂がどれほど疲労困憊で眠りに落ちたかも知られてしまうから、 心配をかけぬようじっと口を噤んだ。 「……ぁ…。前も、こんなこと……ありました、ね?」 「…んー…?」 黙ったままでいてはまたすぐ眠りついてしまう。布美枝は慌てて話しかけた。 「まだここへ来たばかりの頃…。ふふっ、あなた、寝とぼけてて…」 「おー…。そんなこともあった…、ような? なかった…ような……」 覚えとらん、と一蹴しようとした途端、急激に思い出した。 鮮明に夢の記憶が降ってくる。 (あんなこと…まだ、覚えとったのかぁ)
- 332 名前:寝坊之進さま3 mailto:sage [2010/06/16(水) 00:21:31 ID:jDFN5fS2]
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締切に追われて忙しくて……というのは今も変わらないが、 急に生活を変えることもうまくできず、構ってやれず寂しい想いをさせてしまった頃。 「あの時は食事で釣れましたけど、今日は…そげに奮発してないですし…」 「……」 襖の向こうで、慣れぬ土地での生活に途惑う新妻に何もしてやれなかった。 正直、夫婦として生活していくことの意味など、考えてもいなかった頃のことだ。 「私…びっくりしたんですよ? ほんまに凄い力で…振りほどけないし。 中森さんには…見られるし……」 「……ん? そういやぁ…今日も静かにしとるな」 ちらり目を上げて二階の様子をうかがうと、 「今日は朝から出版社まわりに出られましたよ」 「お…おぉ……。そげ…か」 布美枝にとっては単なる状況説明だったが、迂闊な言葉に茂の眠気が覚めていく。 「中森さんも頑張っとってですよ。ね、あなたも腹ごしらえして……」 「ほうだ……。約束を果たさんといけんな?」 「? 今日、何か約束があったんですか?」 それなら尚更早く起きないと…、と身を起こしたものの、すぐにその右腕に絡め取られてしまう 。 「あん時はあげに聞きたがっとったのに、もう忘れたのか? ……忘れっぽいんじゃの」 茂に言われたくはないと、布美枝は頬を膨らました。 「忘れてなぁですよ…っ。えーっと…えっと…」 初めてしっかりと間近で見た茂の寝顔、名指しで呼ばれた寝言…… そんなことばかりにひとつひとつ引っかかって、 なかなか核心の「約束」というものが思い出せない。 懸命に思い出そうとする隙をみて、茂はそっと腰に手を回した。
- 333 名前:寝坊之進さま4 mailto:sage [2010/06/16(水) 00:22:09 ID:jDFN5fS2]
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「ん…っと……」 「思い出せんのだろう?」 耳元で囁くふりをして首筋に唇を寄せる。 布美枝はまだ暢気に約束事が何かを考えていて、茂の豹変に気付かない。 「うーん…。ヒント! ヒントをください。必ず思い出しますけん」 「時間切れじゃ」 「ええー…厳しいなぁ……。って、……えっ!?」 気付けばスカートのホックが外されて、緩んだ腰元に茂の手が伸びていた。 「あっ…な……何しとるんですかっ。……いつの間に…っ」 「おかしなことを思い出させるからだ」 「おかしな…こと? あっ! 分かりました、おかしな夢、見たって言うちょってでしたよね?」 より深く探る手から逃れるよう、左右に身を捩じって交わしながら、 布美枝は勝ち誇ったようににんまりと微笑んだ。 「どんな夢だったか……。もう、知りたくはなぁか?」 「知りたい。教えてごしない」 茂は上機嫌でふふんと笑い、間を開けて逃れようとした布美枝を近付けるため、 チョイチョイと小さく手招いた。 布美枝が耳を傾けると、内緒話でもするようにそっと耳元で囁く。 「あれはな?」 茂がごしょごしょと夢の内容を語るうちに、 最初はうんうんと頷いていた布美枝の顔色が変わっていく。 「はぁあ?」 「…それで……な?」 愉快そうに語り続ける茂とは裏腹に、布美枝は愕然と口を開いたまま、 その頬はみるみるうちに真っ赤に染まっていった。 「ああっ、も…もう、ええですっ」 「……何じゃ。こっからが面白いのに」 「何が面白いのですか…っ。そげな……」 あんな無邪気な寝顔をして、そんな淫らな夢の中にいたとは。 本当にこの人の頭の中は計り知れない。
- 334 名前:寝坊之進さま5 mailto:sage [2010/06/16(水) 00:23:22 ID:jDFN5fS2]
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「まあええわ。夢より現実の方がずっとええ…」 「ひゃっ…な、何し……」 咎める言葉は重なった唇に掻き消される。 寝起きの胸板は酷く熱くて、布美枝は蕩けるように力を失った。 充分に潤った唇が離れると、思わず熱い吐息がもれる。 「……そういうコトではないと…言うちょったのにぃ……」 「今はもうそういうコトになったのだ。世は日進月歩だ。仕方がない」 服越しに当たる、仕方のない状況に陥ったソレの感触に、 布美枝は閉じた唇を歪ませる。 旦那が求めるのであれば、抗うすべはない。 組み敷かれて覆いかぶさってきて、真昼の明るさの中、 布美枝は欲情した表情をはっきりと目の当たりにした。 この人のことをもっと知りたいと、どんな顔も見つめていきたいと、 そう思ってはいたけれど… 「……やっ…」 熱っぽい視線を受ければ恥じらいに耐えきれず、布美枝は身を強張らせていた。 頑なに顔を手で覆ったまま委縮した布美枝を見降ろして、 これではあまりに不憫だと思い、頭まですっぽりと布団を掛けた……が。 互いに長身な二人の足は布団の裾から出てしまっていた。 「……これなら、ちぃっとはええだろう?」 茂の気遣いに、布美枝の硬直は少しづつ緩和していく。 「あ…。でも……」 「何だ」 まだ何か不満なのかと、不機嫌に問いかけると、 「ん?」 「……しわに…なりますけん……」 布美枝は自ら身を捩って服を脱ぎ下ろした。 「…おぉ……。あの夢ん中でも、そうしてあんたから誘……」 「もう…っ、その話は……よしてごしない…」 大胆にも茂の服まで手を掛けて、脱がすように促すと、 茂は思わず笑いを漏らして「そげだな」と、布美枝の首筋に顔を埋めた。 狭い仕事部屋の中。 炬燵でも置いたようにこんもり盛りあがった布団がもぞもぞと蠢く。 噛み殺しきれぬくぐもった甘い声が毀れれば、蠢きは激しさを増した。 覆い切れぬ四本の足は重なり合い、絡み合い、やがて白い足の爪先が捩れる。 ぴたりと止まった布団が崩れ落ち、膨らみは大きく呼吸するように上下した。 「……はぁ…」 ばさりと布団を捲りあげて顔を出した茂は、眩しい日差しに眉を顰める。 「さすがにこれは……息苦しいわ…。おい、大丈夫か?」 布団からこっそり顔半分だけ出した布美枝と目が合ったが、 「…知りません…」 と、弱々しく呟いて、またその顔は布団の中に消えてしまった。 茂はぽりぽりと汗ばんだ鎖骨を掻き、潜り込んだままの布団を優しく叩いた。 「腹が減った。昼寝なら後にしてくれ」 「……っ」 豪快に笑いながら、茂は漸く起き上がって行った。 終わり
- 335 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 00:59:30 ID:pMuwONBV]
- >>330
職人様、乙です。 だんだん! 寝る前に覗きにきてよかった…
- 336 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 01:25:08 ID:yb1nVKHE]
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281です。レスありがとうございました。 ああ〜それにしても>>330サマかなり萌えです。 こういうノリのが書きたいのだけど、 なんか違う方向に逝ってしまう。 というわけで、今日も深夜に投下。 今回はキスのみ。 ゲゲ視点からの話になります。
- 337 名前:白昼夢1 mailto:sage [2010/06/16(水) 01:28:02 ID:yb1nVKHE]
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「…自転車には乗れますか?自転車です、ペダルをこぐ」 「ああ、乗れます、お店の配達で使ってますけん…」 茂は夢を見ていた。 窮屈な義手、両側にはイトツとイカル。 出された美味そうな御膳のその向こうには、一反木綿の女。 これは…見合い、の場面だろうか? ミーーン、ミンミンミン… 五月蝿い蝉の声に茂はふっと目を覚まして頭を上げた。 その拍子にちゃぶ台に頭をぶつけた。「あいたっ」 真夏の昼さがり、茂は居間で汗びっしょりになって寝ていたようだった。 頭をぶつけたものだから、夢のことはもう忘れた。 やおら起き上がって、自らの汗にうへえ、と唸った。 洗面台に立って、顔を洗った。 こうも暑いと、水道をひねっても出てくる水さえ湯のようだ。 居間に戻って時計を見てみると、4時を少し過ぎた頃だった。 ああ…と、やっと今日のことをうっすら思い出し始めた。
- 338 名前:白昼夢2 mailto:sage [2010/06/16(水) 01:28:53 ID:yb1nVKHE]
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朝、起きたのは仕事机の上だった。 珍しく先に目が覚めたのは茂のほうだった。 茂の左側に覆いかぶさるように、布美枝が机に突っ伏して寝ていた。 二人は昨日、夜を徹して「墓場鬼太郎」の原稿に向かっていた。 作業は夜更け、もう朝方と言ってもいい頃まで続いた。 「おい、起きろ」 「ん…」 妙な体勢で寝ていたものだから、布美枝は「イタタ…」と呟きながら目を覚ました。 「原稿を届けてくる」 「あっ、はい。あ、朝ごはんを」 「握り飯でもしてくれ、食いながら行く」 「わかりました」 仕度を始めた布美枝の後ろ姿を、茂は眩しい目で見つめた。 昨夜、締め切りを明日に控えて一心不乱に机に向かう茂に、 布美枝は何か手伝えることはないかと言ってきた。 初めは何を言うかと相手にしなかった茂だったが、 肩こりをやわらげるために、布美枝が生姜をすりおろしたタオルを巻いてくれた。 何か役に立ちたい、そう言いながら夜中にもかかわらず 一心に生姜をすりおろす布美枝の後ろ姿に、茂の心中は波立った。 茂は布美枝に、ベタ塗りと点描を任せた。 もとより器用な布美枝は、さっさとコツを掴んで見事にこなした。 集中して原稿に向かう布美枝の横顔を、茂は頼もしく見つめた。
- 339 名前:白昼夢3 mailto:sage [2010/06/16(水) 01:29:34 ID:yb1nVKHE]
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布美枝に渡された握り飯を、歩きながら食べたのは覚えている。 汗をかきかき、富田書房まで出向いたが、 原稿料はその場でもらえなかった。 本の出来上がりが二週間後くらいなので、そのときに渡すということになった。 しかし暑さと徹夜によっぽどやられたのか、 茂には富田書房から家までの道中の記憶が全く抜け落ちていた。 よくたどり着いたものだと思った。 「おかえりなさい」 と、笑顔の布美枝が迎えてくれたような残像だけが残っている。 そのまま茂はばたん、と倒れて深い眠りに落ちた。 そして、つい先ほど蝉の声に起こされたのである。 ちゃぶ台の上にはふかし芋が置いてあった。 昼飯も食べずに眠っていたから、ちょうど良かった。 芋をほおばりながら、そういえば…と茂は思った。 先ほどから布美枝の姿が見えない。 外で洗濯物でも取り込んでいるのかと、窓をあけてみたが居ない。 風呂場にも便所にも居ないようだった。 ちらっと棚に目をやると、買い物籠がない。 ということは「買い物か…」
- 340 名前:白昼夢4 mailto:sage [2010/06/16(水) 01:30:20 ID:yb1nVKHE]
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部屋にぽつんと独り、蝉の声だけを聞いて座っていると、 何だか妙に尻の居心地が悪くなった。 部屋に布美枝が居ないことに、なんだか強烈な違和感を覚える。 いつも襖を開ければそこに布美枝が縫い物や料理をしている姿があった。 自分の顔を見ると、にっこり笑って「お茶淹れましょうか」と言う。 茂はやけにこみ上げてくる妙な「感じ」を覚えて、 それを打ち消すかのように芋をくわえたまま仕事部屋へ戻り、 本棚から自分の著書を何冊か引っ張り出し、読み始めた。 そしてふっとアイデアを思いつくと、スケッチブックになぐり描きをする。 茂は長い間、そんな日々を普通に過ごしていた。 漫画のことだけで頭がいっぱいで、 次々に浮かんでくるアイデアを、取りこぼさないようにスケッチブックに描きとめる。 そんな日々が、そんな日々だけが当たり前だったのだ。 布美枝がこの家に来るまでは…。 居間の置時計が、5時を報せた。 5時?買い物に行っただけにしてはずいぶんかかっているな。 茂はそわそわしはじめた。 すると二階から中森がやかんを持って降りてきた。 「あ、村井さん、申し訳ありませんが水をいただけますか」 「ああ、どうぞ」 茂はそう返事だけすると、いったん玄関から外を覗いた。 そこまで布美枝が帰ってきているかも、と思ったからだ。 しかし、玄関先に布美枝の姿はなかった。 その代わり、布美枝の自転車が置いてあった。
- 341 名前:白昼夢5 mailto:sage [2010/06/16(水) 01:31:04 ID:yb1nVKHE]
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…おかしいぞ。 布美枝が買い物に行くときはいつも、自分のプレゼントした自転車で行っていた。 どうして今日に限って自転車が家にある? 玄関の戸を閉めると、茂は二階に戻ろうとする中森に声をかけた。 「中森さん、うちの…どこかに行くと言うとったですか」 「奥さんですか?いや、朝は私も出かけましたが、出掛けには会いませんでした。 昼過ぎに戻ったときには、村井さんが横になっていたのは見ましたが、奥さんは見ませんでした」 ぺこりと頭を下げて中森は二階へ戻っていった。 同居人の中森が、今日一日布美枝を見ていない。 そういえば茂もろくに布美枝を見ていないのではないか。 朝、握り飯を渡された、昼、おかえりなさいと出迎えてくれた。 あれは、確かだったか? 茂は言い知れぬ感情を抱えたまま、また仕事部屋に戻った。 ゲーテを手に取ったり、スケッチブックを見直したり、 雑記帳に、思い浮かんだ漫画のストーリーを書いてみたり…。 汗が、奇妙な汗が流れてきた。 夏の暑さのせいではない、背中にヒヤリと流れる汗だ。 そんなことをしているうちに、居間の時計が6時を報せた。 その瞬間、茂は下駄をつっかけて勢いよく玄関を飛び出した。
- 342 名前:白昼夢6 mailto:sage [2010/06/16(水) 01:31:42 ID:yb1nVKHE]
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帰ってこない女房。 いや、そもそもそんな女があの家に居たのだろうか? 自分はずっと独りだったではないか。 見合いからたった5日で結婚して、などと。本当に自分の身に起こっていたのだろうか? 夏の暑さにやられたのではないか。 夏の昼間にみせられた、白昼夢に過ぎないのではないか? 色白の、ひょろっと背の高い一反木綿のような女。 大人しくて、朗らかなあの笑顔の女。 結婚式の夜に、膝をかかえて白い息で外を眺めていたあの後姿。 東京に出てきたときに、鼻歌を歌っていたあの横顔。 自転車を買ってきたときに、大粒の涙を零して微笑んだ顔。 初めての夜に、恥ずかしそうに俯いて口づけを受けてくれた顔。 自分の下に組み敷かれて、快感に悶える官能的な表情。 あれは全部、夢、だったのではないか? 茂は走り出した。 思考を停止させたかった。 それ以上考えると、もう…。 すると。 商店街へと向かう田んぼ道の向こうから 夢の中の女がこちらに向かって歩いてきているのが見えた。 茂は思わず足を止める。 夢の女は茂を認めると、ぱっと笑顔になって手を振りながら走ってきた。 あがった息を整えて、布美枝はにっこりと茂を見上げた。 「遅くなりました。ちょっと色々あって。お腹すいたでしょう?」 「…か、買い物に行っとったんか?」 「はい、実はこみち書房に寄ったら、そこに居た学生さんが急に倒れて! 救急車まで呼んだんですよ!美智子さんがつきそいで行かれたんですが、 おばあちゃんのリウマチの調子も良くなくて、私が店番しとったんです。 さっき美智子さんが戻られたんで、私もやっと帰れたんですけど。 あ、学生さんは大丈夫らしくてすぐに…んっ!」
- 343 名前:白昼夢7 mailto:sage [2010/06/16(水) 01:32:17 ID:yb1nVKHE]
-
ざわっと、夏の夕方の風がそよいだ。 茂は布美枝の背中に右手をまわして、布美枝の話も最後まで聞かずに、 唇をふさいだ。 しばらくして離れると、布美枝は信じられないというような顔で固まっていた。 茂は思い切り、布美枝を抱きしめた。 「…っ、ちょっ。あ、あのっ!人が…通ったら見られます!」 じたばたする布美枝にはおかまいなしに、茂はただ黙って布美枝を抱きしめた。 「自転車…」 「え?」 「自転車では行かんかったのか」 「ああ、あとで見てください、タイヤ、パンクしとるようで」 「ははっ、そうか、そうか…」 「あの…は、離して…」 やっと茂は布美枝を開放した。 布美枝は真っ赤になって胸を押さえた。 「ど、どげしたんですか、急に…こんな…」 「うん、…まあ、あれだ。帰ろう」 そう言って、茂は布美枝が思わず落とした買い物籠を拾って、 すたすたと先に歩き始めた。 自分の後ろをついてくる布美枝を、時折振り返りながら、 夢じゃない、茂は布美枝の存在を強くかみしめた。 おわり
- 344 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 01:45:06 ID:xa04Qqel]
- >>329
だんだん!だんだん! 続き有り難う! めちゃくちゃ萌えた! 数ヵ月後設定までだんだん!
- 345 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 04:55:57 ID:CLIopenb]
- >>300
フハーッ続き投下だんだん! 職人様のフミちゃんは感情豊かで、ほんに可愛ゆいよ〜 ゲゲでなくても構いたくなる…堪らんなぁ ゲゲと言えば寝坊之進茂左衛門にワロタwww そんでもって、もっと夢の内容をkwsk!!
- 346 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 05:00:54 ID:CLIopenb]
- >>336
文学的作品GJだんだん! ゲゲがフミちゃんを必死に探す描写に泣きそうになったげな(´Д⊂) この後キスだけじゃ治まらんかった夫婦は 勿論夜は布団で運動会したんだろうね?…ねっ?! 毎日素晴らしい作品が読めて幸せだ… 自分はアホな感想しか書けないけど 職人様を心底応援しちょります! 次は行水がてらのお風呂プレイとか… はたまた墓場でけしからん野外プレイとか…どげですか?
- 347 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 09:53:42 ID:qDHWQFH1]
- >>343
281タソ GJ&だんだん ゲゲ目線なのがイイ!!! 焦るゲゲに萌えです
- 348 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 16:55:33 ID:znfYVigb]
- 寝坊之進さまも白昼夢も最高でした!職人様がた、ありがとうございます!本当に情景が目に浮かぶし、台詞が声付きで聞こえそう。
あんな夢を見ちゃったり、布美枝の姿を探したりしちゃう茂に萌えますなあ。
- 349 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 18:39:14 ID:bOpLWp1w]
- GJ!
職人様方、続々と新作読めて幸せです
- 350 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 19:52:21 ID:udyxnOsG]
- 今日は2人っきりのシーンが多くて良かった!
個人的に「あんた」よりも「お前」の方が萌えるw
- 351 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/16(水) 20:16:24 ID:udyxnOsG]
- >>330
日進月歩ワラタwフミちゃんがかわええ(*´д`*) >>343 そのエピソードも「ヤッタ♪ヤッタ♪」に繋がる一つになる訳ですね 毎日素晴らしいネ申作品を読むことが出来て幸せですけん! 職人様、だんだん!
- 352 名前:281 mailto:sage [2010/06/16(水) 23:45:10 ID:yb1nVKHE]
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281です。 いつもレスありがとうございます。 >>346さん >この後キスだけじゃ治まらんかった夫婦は >勿論夜は布団で運動会したんだろうね?…ねっ?! なぜかこの展開を全然考えてなかったので、 あ、なるほどと思って今それを書かせてもらってます。 お風呂プレイや墓場プレイではないかも知れませんが(^^; 近々、できたら投下させていただきます。
- 353 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/17(木) 02:18:28 ID:QWl+joPy]
- >>352
>>346ですが…ほ・本当ですかー?!ヤッタ!ヤッタ! 妄想でも書いてみるもんですね〜www プレイにはこだわっておりませんけんw 楽しみに投下お待ちしちょります!
- 354 名前:281 mailto:sage [2010/06/17(木) 21:43:06 ID:FUHF8PVv]
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281=白昼夢の者です。 続きができたので投下します。 お目汚しください。
- 355 名前:拝啓、イカル様1 mailto:sage [2010/06/17(木) 21:45:55 ID:FUHF8PVv]
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風呂あがりの布美枝は、風呂場を出てすぐに「そうだ」と何かを思い出した。 そのまま外に出て、郵便受けを確認した。 葉書が一枚、入っていた。 すると慌てた様子であとから茂が飛び出してきた。 「どげした!?」 「え?ああ、今日郵便受け、一度も見とらんだったので…」 「…ああ…そげか」 ほっと息を吐いて、茂は布美枝が中に入るのをじっと見届けてから、戸を閉めた。 今日の茂は一挙手、一投足こんな風である。 布美枝が洗濯物をとりこむ間も、じっと傍でいたり、 夕飯を作る間も、仕事机ではなくちゃぶ台で本を読んでいた。 何と言っても、あの口づけ…。 何か、変だ。布美枝の第六感が告げていた。 葉書の送り主を見て、布美枝は「やっぱり」とつぶやいた。 「何がだ」 「境港のお義母さんです。この前返事を出したもんだけん、 そろそろその返事が来る頃だと思っとったんです」 「…あんた、イカルと文通でもしとるのか」 「そげなわけでは…手紙がくるけん、返事を出すでしょう。 そしたらまたその返事が来て…」
- 356 名前:拝啓、イカル様2 mailto:sage [2010/06/17(木) 21:47:14 ID:FUHF8PVv]
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結局筆まめ同士がやめるタイミングを逃しているだけなのだ。 茂はふっと鼻で笑った。 そんな亭主を布美枝は口を尖らせてじろりと見上げて、 「…返事に、あなたの様子がおかしい、と書いて出しときましょうか」 と、葉書を取り出しながら言ってみた。 茂はぎょっとして布美枝を振り返った。 「な、なんでだ?なんもおかしいことなんかなーぞ! そんなこと書いてみろ、明日にでもイカルが飛んでくるでなーか!」 「だって、今日はなーんかそわそわしとるし、よそよそしいし、 さっきだって、あげなとこであんな…」 言ってから布美枝は赤くなって黙り込んだ。 思い出したら恥ずかしさがこみ上げてきた。 今日の茂は確かにおかしい。朝は普通だったのに。 昼すぎ、原稿を届けて帰ってくるなり倒れこんだので、驚いて思わず覗き込んだが 高いびきをかきだしたので、布美枝は思わずずっこけた。 お腹がすいたら起きるかと思ったのに、2時近くになっても起きない。 (よっぽど疲れとったんだ…) 無理に起こすのも忍びないので、そのままにして買い物に出かけた。 出先でちょっとしたトラブルに見舞われて帰りが遅くなった。 早足で帰っていると、向こうから茂が走ってくるのが見えた。 手を振ると立ち止まって、まるで狐につままれたかのような顔をして布美枝を見ていた。 そこからだ。 何かおかしい、と感じたのは。 布美枝が遅くなったことを謝っている間ずっと、 穴があくように布美枝を凝視していたかと思うと、 急に抱き寄せて口づけた。 布美枝はびっくりして心臓が張り裂けるかと思った。
- 357 名前:拝啓、イカル様3 mailto:sage [2010/06/17(木) 21:48:10 ID:FUHF8PVv]
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「何かあったんですか?」 田んぼ道をゆっくりと帰る途中に、問いかけても答えてくれない。 たまにちらりと振り返って、布美枝がちゃんとついてきているかを確認しながら、 ただ黙って歩いていた。 斜め後ろから茂を観察しながら布美枝は、 なかなか落ち着かないでいた胸の高鳴りと格闘していた。 誰が通るかもわからない道のど真ん中で、 あろうことか抱きしめられて口づけまで…。 「とにかく」 茂の声にはっとして顔をあげた。 「妙なことをイカルに書いてよこすな。ええな」 「…」 偉そうに言ってのけた茂をじとっと横目で見ながら、 布美枝は二人の湯のみにお茶を汲み、ちゃぶ台に並べた。 それから、葉書を前に空を仰いで鉛筆を鼻の下で少し弄んでから、 「拝啓、母上様…」と書き出した。
- 358 名前:拝啓、イカル様4 mailto:sage [2010/06/17(木) 21:49:36 ID:FUHF8PVv]
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「茂さんは近頃女房に何やら隠し事をいたし候…」 「ぶー!」 飲みかけたお茶を噴出す茂。 「きゃー、もう、大丈夫ですか」 「げほっ、お前…妙なことを書くなと」 茂が葉書を取り上げようとする。 ひょいとかわす布美枝。 「じゃあ、何があったか教えてごしない」 「何もない!」 「是非母上様直々に真相の追及をば…」 「だらっ!」 また取り上げようとする。 ひょいとかわす布美枝…の左手を、ぐいと掴むと 次の瞬間茂がその懐に飛び込んできた。 バランスを崩した布美枝が、後ろに体勢を崩す。 そのまま茂は布美枝を押し倒して…。 「んっ…」 甘く、唇が重なった。 ひらひら、葉書は床に舞い落ちる。 しばらくして離れた茂の唇を、布美枝は下から指でなぞりながら 「教えて…ごしない」 ちょっと潤んだ瞳でねだられて、茂はかなり動揺したが、 その答えは、再びの口づけだった。 …言えるか、お前が居なくなったのではないかと焦っていた、なんて…。 そんな茂の心の声を、布美枝は聴けずにいたが、 唇の間から侵入してきた茂の舌が、布美枝の舌と遊び始めたので それ以上の追及ができぬまま、甘美な海に放り出されてしまった。
- 359 名前:拝啓、イカル様5 mailto:sage [2010/06/17(木) 21:52:00 ID:FUHF8PVv]
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茂が明かりを消すと、背を向けた布美枝はそっと寝巻きを解き始めた。 そのうなじにクラクラしながら、茂は後ろから抱きすくめて舌を這わせた。 「ぁ…」 小さく喘ぐ声。 いつもこの女房は二階の住人に遠慮する。 布団にうつ伏せに寝かせると、布美枝の白い背中に余すことなく口づけた。 熱い吐息は布団に吸収されていく。 耳や頬に唇で合図を送ると、 今度はごろり、と体勢を換えて形の良いふたつの山が現れた。 舌と指で刺激を与えると簡単に突起して、また遠慮がちに喘ぐ。 実にもどかしい。茂はもっと布美枝を無茶苦茶にしてやりたくなった。 指を布美枝の一番敏感な場所へと滑らせると、 もうすでにぐっしょり、汗とは違う潤いを溢れさせていた。 下着を取ると、二本の指で手前の突起を弄んでみた。 「は…っぁ…ぃやぁ…」 くしゃっと、茂の頭を自分の方へ押さえつけて悶える。 それから中指でくい、と中の具合を調べると 腰をひねってまた一段と熱い液体を溢れさせた。 茂が指に絡まった布美枝の愛液をぺろりと舐めると、 布美枝は暗がりでもわかるくらいに、恥ずかしがって目をそらした。 茂は布美枝の頬から首筋、胸から腹に、どんどん唇を下ろしていく。 布美枝はくすぐったさに耐え切れず、くすくすっと笑ったが、 次の瞬間、はっと大きく息を吸い込んだ。 「あっ!いゃっ…!!」 茂の舌が、布美枝の茂みの向こうの溢れる泉を直接刺激し始めたからだ。 「や…あ…だめ、あぁ…、そんな…あっ…あ…」
- 360 名前:拝啓、イカル様6 mailto:sage [2010/06/17(木) 21:52:51 ID:FUHF8PVv]
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これまで感じたことのない強烈な快感に、布美枝は悶え通しだった。 クチュ、クチュ、ピチャ…その卑猥な音もまた布美枝を未知の世界へ連れていこうとした。 「は…ぁ」茂の息遣いもどうしようもなく淫靡な空気をもたらす。 それでもまだ、布美枝は布団の端で口を押さえて、 声をたてないように必死になっていた。 茂は布団を取り上げてさらに布美枝の泉を舌で虐めてやる。 今度は枕を引っ張ってこようとしたので、 茂は布美枝の耳元で囁いた。 「…雨だ」 「…ぇ…?」 耳をすますと、ザーーーーという雨音。 いつの間にか夜の帳はぬるい雨に包まれていた。 「雨の音に消されて、二階までは聞こえん」 「で…でも…」 「俺にだけは、聞かせろ」 「え…」 「声を、聞かせろ」 ― 布美枝。 「…えっ…」 ぼうっとした中で、しかしはっきりと聞こえた。 茂が…名前を呼んだ。 やがて、熱くなった茂の硬いものが布美枝の中に入ってくる。 「ああっ」 一気に突き上げられて、肌が泡立った。 「もっと、声…を…」 「ふ…あっ、あ…は…あぁ…!」 茂を抱きしめて、布美枝は本能の赴くままに声をあげた。 茂が布美枝の中で押したり引いたりするたび、 布美枝の意識は遠く、遥か先へ連れていかれる。 二人の息遣いが、重なり、乱れ、また重なり、暑い部屋の中の温度をもっと熱くさせる。 どんどん二人は快感の絶頂へ登りつめて…。 「ああああああっ…」 布美枝が境界を越えたとき、茂も一緒にそこを越えた。
- 361 名前:拝啓、イカル様7 mailto:sage [2010/06/17(木) 21:53:37 ID:FUHF8PVv]
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「どっちかが止めんと、永遠に続くぞ。葉書代もバカにならん」 「嫁の私から止めるのは気が引けます」 毎度の通り、ひとつの布団に二人で入って、 愛し合ったあとの余韻を愉しんでいた。 布美枝の髪をくるくると弄びながら、 茂はため息をついた。「好きにせぇ…」 そうして猫でも抱くように布美枝をぎゅっとすると 額に口づけて頬ずりした。 布美枝がちょっと遠慮がちに、つんつん、と茂の胸をつついた。 「ん」 「あの…」 「どげした?」 「…もいちど…名前で…呼んでごしない?」 「…」 茂はちょっと肩をすくめて「寝る」と言って目を閉じた。 「あっ!もう、けちっ!色々書いて送りますよ!イカル様に」 「だらずっ、もうその話はやめぇ」 「じゃっ、呼んでごしない」 「…もういっぺん襲うぞ」 「えっ…」 たじっとなった布美枝を、茂はまたぎゅうと抱きしめた。 布美枝はじたばたとして逃れようとするがなかなかできない。 ほどなくして茂は寝息をたてはじめた。 あんな時間まで寝ていたくせに、どうしてまたこんなに簡単に落ちるのか…。 茂の睡眠欲に白旗を揚げさせられるのは、いつも布美枝の方だった…。 「けちっ…」 おわり
- 362 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/17(木) 23:34:44 ID:aYPnzcBg]
- >>281さま
投下ありがとうございます 初夜編から大ファンになりました 白昼夢のゲゲもイカル様のゲゲも禿萌え〜です!
- 363 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/17(木) 23:50:41 ID:U11RYNG1]
- >>355
GJ!・・・エロいよw ラブラブな感じがいいな〜
- 364 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/18(金) 00:03:25 ID:tO0kKuW7]
- 281様
素晴らしい作品の投下ありがとうございます。 今回のイカル様のゲゲが自分的に一番壺で萌え転がされました。 そして最後もう一度名前を呼んで欲しいとねだるフミちゃんがかわゆすぎて たまりません。 また次回作を首を長くしてお待ちしちょります。
- 365 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/18(金) 00:10:40 ID:+6+habEv]
- 「俺にだけは、聞かせろ」に萌えた(*´Д`)
- 366 名前:名無しさん@ピンキー [2010/06/18(金) 02:14:58 ID:IlfP4L6t]
- /
ヽ、. ,〃 ヾ、 // , -‐' -───∨∠ _ , '´ ヽ、 / , ニvニニヽ / ヽ 〃( (`⌒)⊥ヽ / / l || l ゞ'(て@ ) )ソ ヽ / i | ,. ∧ ヽ 弋 八_ フノ ノノ ! ! | | / / | | ! | i ⌒‐'^ー''′ .| | | | / /r`ー! | ! |│ ||! | | | | |// | il ト、ヾ、 ヽ l || | | | | |! ! .∨〈 ! | ヽヾ、 ヽ l | 川 | | | リ ヽ ! ヽ ヽ_ 0ノ \\ヽ l | || | | | | / ヽト、 i//// ヽ‐ //ヽハ! | |リ l / / ヽ ヘ u ヽ!| //!/_〃'" \ヽ、 ヽ_,r_つ u リ //∠_ >- ┬ -‐ 7'"´ / ヽ | ヽ |ー-─/ / ⌒ヽ! ト、!ト、 ト===7 /| ! ト、l| \ヽ // // _ -‐ ( | |ヽニ」∠ニ‐''" |  ̄ ノ | | | | ! | | | /ーヘ | | | !. \/ / / _∠,=彳 / ∧ /-!__fニ __ , /__〉_ / /∠_ヽ、二ー─ ┼─-、 ト、/-ヘ /=‐''" , '" //_,/ ̄` \′ | / / _, / ./ /_ -‐' ̄ ¬、 / ヽ\ /⌒!-‐ ' / / / | |'´ \__ ヽく ! ヽ/ / /.〈L_ | |___レ' r─'´ `ヽ! ヽ `ー/ / `ー' ̄! く ̄ | `ー─‐' `ー‐ーく_, -¬-‐ 'ヽ ノ `ー-----‐'
- 367 名前:名無しさん@ピンキー [2010/06/18(金) 02:15:35 ID:IlfP4L6t]
-
/⌒ ゙̄'ー-ー'" ̄ \ / ) ! l (^ヽ X )ヽ /彡" ゙'ミヽ 」 し ,〃 ヾゝ、, | /| > (、 ,ヽ( | ̄\ / ヽ /シ ミヽ l /\ ./ ̄\ ヽ 《 (ミ=シ) リ // ヽ | \ \、__ ,,,/ / y | | ヽ| !\ ヽ -─-/ /l. | | .ヽ >、 \゙'-、,\ //./ / / \_/ , へ、 ̄ ̄[三] ̄┌└へ\/ ヽ__l ヒヘ f. l! i rへつ _∨ /\_,/-、,_\/_>、,__/\ ヽ/ ノ ノ i i ヽ \_イ . /\/__/ | ヽ、 / \ < ´>ヽー─┴──'"> ) >--'" ト 人__,,/ ヒ ノ _人 ,へ フ [ ̄`─'" 」 > <_ .  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ L_二二__ノ セーラー子泣き
- 368 名前:名無しさん@ピンキー [2010/06/18(金) 02:16:26 ID:IlfP4L6t]
- /
ヽ、. ,〃 ヾ、 // , -‐' -───∨∠ _ , '´ ヽ、 / , ニvニニヽ / ヽ 〃( (`⌒)⊥ヽ / / l || l ゞ'(て@ ) )ソ ヽ / i | ,. ∧ ヽ 弋 八_ フノ ノノ ! ! | | / / | | ! | i ⌒‐'^ー''′ .| | | | / /r`ー! | ! |│ ||! | | | | |// | il ト、ヾ、 ヽ l || | | | | |! ! .∨〈 ! | ヽヾ、 ヽ l | 川 | | | リ ヽ ! ヽ ヽ_ 0ノ \\ヽ l | || | | | | / ヽト、 i//// ヽ‐ //ヽハ! | |リ l / / ヽ ヘ u ヽ!| //!/_〃'" \ヽ、 ヽ_,r_つ u リ //∠ >- ┬ -‐ 7'"´ くぃっ ._,... -"!. ゝ、-‐‐' ̄. :、 / ._ ヽ.イ 入 ,. !. `ー.、 ,∠''"゙ヽ、!、 )-〈 ヽ''" ´ ヽ. /、\\\゙ヾ. / l. i ,....-l . / ´ \\\\゙}v" .l _ ,!'" l /. \ヽ i. ,i/ .l ゙^‐-.、 / __l . / ,.>゙-゙/、 ,.l ! /. l┌==! ./ ' / /、 ヽ ,...::'",..l ,./ l l ,.-! / / 〈 \゙.,...::'" ! i !.ヾ:__」 ..{ヽ /,.! .ヽ. ,.r! .l. `ー.イ ヽ ノ)' ,.!:::\ ,../ 、. il! 、 l' \__,...-イ !. ´ \ヽ \ i! ,. ヾ. i ,.'" ゙\、 l i .ト.〉 . ,! ,!l ヾ l.il i' . r'/,i :! \. i! ! ! l i lヽi i .i,!l ノ :、.!. ! ヽl {l 、l
- 369 名前:名無しさん@ピンキー [2010/06/18(金) 02:17:20 ID:IlfP4L6t]
- /
ヽ、. ,〃 ヾ、 // , -‐' -───∨∠ _ , '´ ヽ、 / , ニvニニヽ / ヽ 〃( (`⌒)⊥ヽ / / l || l ゞ'(て@ ) )ソ ヽ / i | ,. ∧ ヽ 弋 八_ フノ ノノ ! ! | | / / | | ! | i ⌒‐'^ー''′ .| | | | / /r`ー! | ! |│ ||! | | | | |// | il ト、ヾ、 ヽ l || | | | | |! ! .∨〈 ! | ヽヾ、 ヽ l | 川 | | | リ ヽ ! ヽ ヽ_ 0ノ \\ヽ l | || | | | | / ヽト、 i//// ヽ‐ //ヽハ! | |リ l / / ヽ ヘ u ヽ!| //!/_〃'" \ヽ、 ヽ_,r_つ u リ //∠ >- -‐ "´ r'ヽ.`"''‐- 、, ト` ト _,,、、-‐‐- { i `'‐-、--r'"´ヽ、_ _ ,、‐'´ヾr-、、,r-‐''" ,'": . .} `)、. 、ヽ. ', ト、 ,ィ'Tヽ /l ,' ,- ,、-‐'::::: : ヽ/ ', \\! | ヽ'/´ |i ',ヽ、' :| :i'',~-'" /ヽ:::::::;r' ./ ヽ、 ヽ.| | / |' ', ! }" ,、‐'" ヽ:::i' ( ヽ-、 ::i i / ', :! ! ,、ノ ヾ´ \ ヽ,、'‐'',)_ri┬'''''''''=r-;、ノ | r' ノ <-'" .,r'''"''‐-'=、|;;;i! i! | i'":: ‐-、::::r'" ,' _、-i -―t';‐'| i!; i!; !,-、、,i `{ ,,'イ { ー=,ゞ,| i! i! |ヽ,;; ヽ;;;、_ __ ', i ,' ', =ィ' `! ` ´ ,i'" i ', `ヽ、:', . | ', ヽ、、 -‐' (~>;;r-;r‐‐‐''" ノ } ', :} l ヽ、_____,,、ィ' `''`ー'`-=-r‐='-‐'" ノ / ヽ‐-=、、-‐< `ヽ、_,r-‐'" /
- 370 名前:名無しさん@ピンキー [2010/06/18(金) 02:19:24 ID:IlfP4L6t]
- /
ヽ、. ,〃 ヾ、 // , -‐' -───∨∠ _ , '´ ヽ、 / , ニvニニヽ / ヽ 〃( (`⌒)⊥ヽ / / l || l ゞ'(て@ ) )ソ ヽ / i | ,. ∧ ヽ 弋 八_ フノ ノノ ! ! | | / / | | ! | i ⌒‐'^ー''′ .| | | | / /r`ー! | ! |│ ||! | | | | |// | il ト、ヾ、 ヽ l || | | | | |! ! .∨〈 ! | ヽヾ、 ヽ l | 川 | | | リ ヽ ! ヽ ヽ_ 0ノ \\ヽ l | || | | | | / 父さんこれっきりにしてくださいよ・・・! ヽト、 i//// ヽ‐ //ヽハ! | |リ l / / ・・・・・・・・・・・ハマリそうで恐いんです僕・・・・。 ヽ ヘ u ヽ!| //!/_〃'" \ヽ、 ヽ_,r_つ u リ //∠ /`'ー .=ー`ーベ、<〃´ ヽ、 /:::::::::::::::::::::::::::::::; / `` '' ー三ir==ミ、.い /::::::::::::::::::::::::::::::::/ / . .// /ィ'「ヽ;t‐-、゙i. /:::::::::::::::::::::::::::::::::/ / (.'=彳ハ | ヽ;、 `!|、 /::::::::::::::::::::::::::::::::::/ { ,r―- 、 ノ / | ! ヽ> ヽ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ./ `スヽ、 / .L! ヽ /::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ / / .ヽ `ヽ---' \ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ / / ヽ ヽ、 ,イ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ./ / \ ヽ ハ;:::::::::::::::::::::::::::::::::/ / / ヽ ヽ、.. __ / \::::::::::::::::::::::::::/ / --〈 \ `7 `ヽ、:::::::::::::::/ .! ヽ `ヽ ! `` '''''7 \ \ \ / \ ヽ ヽ _____ i;. | / ヽ \ _,...::::''""`´ ̄ ̄::::::::\ `ヽ. /:`ヾ、 , ′ `ヽ、 \ _,/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ ヽ,!:;r'⌒ヽ、 , ′ `ヽ、 `´/:::::::::::::::::::::::、;::::::::::::::::::::::::::::::::l, ヾ \ ./ / ヽ !::::::::::::::::::::::::ヽ|;:::::::::::::::::::::::::::::::l \ ,i-‐'''フ! ``'|::::::::::::::::::::::::::::::l;:::::::::::::::::::::::::::::::} ノ'^ヽ / ,/ l:::::::::::::::::::::::::::::::i、::::::::::::::::::::::::::::l. / r':' ,、-' ヽ;:::::::::::::::::::::::::::::ヽ、::_:::::::::::ノ __,. イ /,r:'
- 371 名前:名無しさん@ピンキー [2010/06/18(金) 02:20:28 ID:IlfP4L6t]
- /
ヽ、. ,〃 ヾ、 // , -‐' -───∨∠ _ , '´ ヽ、 / , ニvニニヽ / ヽ 〃( (`⌒)⊥ヽ / / l || l ゞ'(て@ ) )ソ ヽ / i | ,. ∧ ヽ 弋 八_ フノ ノノ ! ! | | / / | | ! | i ⌒‐'^ー''′ .| | | | / /r`ー! | ! |│ ||! | | | | |// | il ト、ヾ、 ヽ l || | | | | |! ! .∨〈 ! | ヽヾ、 ヽ l | 川 | | | リ ヽ ! ヽ ヽ_ 0ノ \\ヽ l | || | | | | / ヽト、 i//// ヽ‐ //ヽハ! | |リ l / / ヽ ヘ u ヽ!| //!/_〃'" 父さんちょっとだけですよ・・・恥 \ヽ、 ヽ_,r_つ u リ //∠_ >- ┬ -‐ 7'"´ / ヽ . ,、、、‐ 、ヽ、. |ー-─| /'´ノ/⌒ゝ‐、 ,、(、‐、 )、__) `''‐ヽ._,ノ,、‐'i / /´ _,、、 ' ヽ (、-‐-、)' \ ,i `;" ~ /`>,ノ、ノ ,、 i ヽ! {,,、‐-、 )\\~''''''‐--`―'‐'' ,´/ ,、‐';ー( , ヾ、ヽ {__,,、‐' | i ヽ`、`ー‐--,,、-=='-‐‐‐<_r''' |、`t' ノ|っヾ、 `ー/ | `、 {''''。''~::: :: 。 ::| ノヽ i_,',r'ミ. | / i 人 :i i | i. | ヽヽ | / ! / ,i :i i |iヽ| / i iノ ,' / :i ' | |ヽ|; / i ー''´ :,' / i ! | | |ヽ' i / / ’ } i | |\ | ./ i i ./ i i ヽ | / i' 、 :: , 'i / |
- 372 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/18(金) 16:25:05 ID:ghbNYc/v]
- ふみちゃんの風邪エピktkr!
風邪ネタって定番だけど萌えるw ゲゲが風邪ひいた時は、あっと言う間に治って エピらしいエピがなかったな〜 でもふみちゃんも頑丈wだし、藍子ちゃんもいるから 風邪長引いたら大変だよね… 足りない描写は此方で補完したいw
- 373 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/18(金) 16:31:26 ID:LQg9eTBP]
- >>372
風邪キタネ! 取りあえず今日は定番の熱計りに萌えたw フミちゃんが苦しんでるというのにorz
- 374 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/18(金) 17:54:19 ID:S5TM0ert]
- ゲゲがすぐ気付いたのは良かった
お産の時といい、案外心配してくれる夫だw
- 375 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/18(金) 20:52:45 ID:+6+habEv]
- このスレ的には
おでこをコツンとやって熱をはかってほしかった。
- 376 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/18(金) 22:40:21 ID:GCpY9FkI]
- フミエはがっつり手のひらで測ってたのに
茂は結構丁寧に測ってたな。意外
- 377 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/18(金) 23:10:00 ID:LaXy6PPs]
- ゲゲゲのエロパロと聞いて咄嗟に太宰の人間失格しか思い浮かばなくてサーセン
ほのぼのスレだったのか
- 378 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/19(土) 00:07:58 ID:Hjx0Wt7y]
- ほのぼのからドエロまで、愛さえあれば何でもありです。
- 379 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/19(土) 00:55:31 ID:0VT28x+O]
- 普段、あれだけ亭主関白なゲゲルだから
夜の方も多少強引なんだろうなあ。。。
- 380 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/19(土) 08:42:07 ID:VakgB3ta]
-
うわー、布美ちゃんの里帰り中に はるこ家にあげるゲゲ… 昼ドラだったら、ここから何か始まってしまうパターンだな。 でもゲゲと布美ちゃんの相思相愛が好きなので 二人が東京と安来に離れるだけでもイヤダ。
- 381 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/19(土) 09:00:46 ID:yVeOsn1+]
- >>380
昼ドラならこれからドロドロの展開に〜となるところだが まあさわやかさが売りの朝ドラだから意味ありげに予告作ってても 実際はなんもないと。 それにゲゲはそういう方面鈍いし。 しかし今日の放送は萌えたな〜 エロ妄想が止まらない。
- 382 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/19(土) 10:14:05 ID:6a7DIT7I]
- >>380
確かに。 一緒に里帰りしてイチャイチャしろよ!とオモタ 最近「浴衣+布団」だけで、このスレ思い出してニヤニヤが止まらないw 今日は色んな意味で良い回だったw
- 383 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/19(土) 12:30:21 ID:Hjx0Wt7y]
- 先生は布枝さんが入院していない時、寂しがって布枝さんの写真を眺めていたからなあ。
もしかしたら布美枝里帰り中は、イタチに撮ってもらった写真を見つめて、しょんぼりしてるかもしれないw
- 384 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/19(土) 18:36:33 ID:0VT28x+O]
- 今日は2人のシーンが多く、なかなか萌え回ですた
281タン〜今日のをベースに いつか作品かいてくれんかのうw
- 385 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/20(日) 00:01:42 ID:YKbDbFe6]
- >>384
お尻に…のシーンなんかは どう考えてもサービスカットw
- 386 名前:281 mailto:sage [2010/06/20(日) 01:13:29 ID:U4kA5TCp]
-
281=拝啓、イカル様の者です。 いつもレスありがとうございます。 今日のをベースに、というのはできなかったんですが、 今日の二人を見てかなりイチャイチャ萌えしたので ショートバージョンでのイチャイチャを書いてみました。 イカル様の続きといえば続き、本が出来た日のことです。
- 387 名前:ヤッタヤッタ踊りのあと1 mailto:sage [2010/06/20(日) 01:20:45 ID:U4kA5TCp]
-
原稿料は入らなかった。 でも「鬼太郎」の長編を続けて描ける。 布美枝は「謹呈 村井布美枝殿」と書かれてプレゼントされた 「墓場鬼太郎」を抱えて大喜びで思わず踊ってしまった。 茂に「何だ、その踊りは?!」とツッコまれたが、 そんな夫の手を取って「あなた、本当にすごいです!」と言うと感激して涙を零した。 茂は呆れたような、けれどにっこりとした顔で、布美枝の頭を撫でてくれた。 布美枝は本を抱いたまま、茂にぎゅうと抱きついた。 心底、茂を尊敬し、愛おしいと思った。 茂もまた、そんな布美枝をぎゅっと抱きしめた。 少しして、布美枝は身体を離すと、ちらっと茂を見上げて、 ちゅ まさに、そんな音で、キスをしてみた。 「おっ」という顔の茂。 「プレゼント、のお礼です」 恥ずかしそうに言うと、茂の腕から離れてちゃぶ台で本を眺め始めた。 ぽりぽりといつものように茂は頭を掻きながら、 本に隠れて恥ずかしそうにしている布美枝を見て、少しほくそ笑んで言った。
- 388 名前:ヤッタヤッタ踊りのあと2 mailto:sage [2010/06/20(日) 01:21:23 ID:U4kA5TCp]
-
「本一冊プレゼントした割りには、礼が甲斐ないな」 「え?」 そして茂の方から、ちゅ、というキス。 すぐに離れたが、茂はやはり物足りないという感じ。 布美枝は「次」と「次以降」の流れを予感して、思わず立ち上がった。 「ゆ、郵便受け見とらんだった…!そろそろまたお義母さんから返事が…」 と言いながら、そそくさと玄関の方へ向かう。 しかし玄関を出る前に捕まって、抱きしめられてしまった。 「ちょ…こ、こげなとこで…。中森さんが降りてきたら」 「さっき出かけとったわ」 「…でも…」 「本一冊分の礼はまだまだこれでは回収できんわ」 「ど…どれくらい要るんですか…」 「さあ…」 意味ありげににんまりとした笑みを浮かべた茂の顔を、 次の瞬間には視界から見失っていて、今度はぎゅっと詰まったキスをされた。 もう布美枝には抗うことはできない、このまま崩れるだけだ。 けどそれも良い。この腕に抱かれるたびに、茂への愛おしさは増すばかりだ。 「おい、ゲゲ、おるかー!」 バタン!と勢いよく開いた玄関から、入ってきたのはイタチの浦木。 玄関のまん前の廊下でコトに及んでいたのだから、 茂も布美枝も石のように固まってしまった。 「あらま。まだ明るいというのにお前ら…」 「…う〜〜〜〜るぁ〜〜〜〜き〜〜〜〜!!」 怒髪、天を衝く、とはこの例えである。 茂はニヤニヤとするイタチ顔の男を外に蹴っ飛ばして しばらく外で言い争いをして近所の顰蹙を買っていた。 布美枝は夫婦の秘め事を他人に見られたショックで、 しばらくその場を動けないでいた…。 おわり
- 389 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/20(日) 02:48:05 ID:pHdjypfa]
- >>387
新作キタ━━ヾ( ◎ )/━━!! チュッチュッしちょるよ〜w 向井リと松下さんが本当に演じてる場面が浮かんできて 放送にないのがオカシク感じてきたw やばいwww それにしてもこの夫婦イチャイチャしすぎである 実にけしからん! もっとやれ(ry
- 390 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/20(日) 02:58:22 ID:bF1aMllm]
- 所構わずちゅっちゅっするのは危険ですぞwでも可愛いのう!萌えをありがとうございますっ!
- 391 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/20(日) 03:20:49 ID:QF4EIjMv]
- 規制解除ヤッタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
時間亀杉かもしれないけどうpしてくれる職人さんに感謝&萌えまくりです 皆さん脇役活用旨過ぎ!! 浦木とか美智子とか中森さんとか一反木綿とかww 浦木の間男疑惑 ほんとにゲゲは1_も疑いとかよくない妄想とか持たんだったんだろーか (その辺のお話ちょっこし期待してみるw)
- 392 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/20(日) 10:16:18 ID:hgmqhzYJ]
- >>387
GJ!カワユス このあとフミちゃんがどれだけ身体で返したのかも是非読みたいですw >>391 皆様、脇役にも愛を持って書いているのが伝わりますなぁ
- 393 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/20(日) 21:19:41 ID:9y7y+z0H]
- 281様!新作待っちょりました。
口づけの嵐で甘いですな〜 そういえば今日の総集編の最初でこれから放送予定の3カットが 公開されましたね。 3カットともイチャイチャカットで萌えw
- 394 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/21(月) 21:16:40 ID:qv3Yj3X3]
- 暫く離れ離れの夫婦ですか…寂しい…
勿論旅立ちの前夜には 二人の絆をしっかりねっとり確かめあうんですよねわかります でも…やっぱり寂しいなぁ(´;ω;`)
- 395 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/21(月) 22:18:29 ID:yi3sQpnp]
-
まいど、281です。 いつもレスありがとうございます。嬉しいです。 本番よりもイチャイチャの時間が萌えるので こういうチュッチュしとるのが実は好きです。 いや、エロいのもええんですが。 あと自分、書くのも好きなんですが、 読む方もすごい好きなので、 職人さまの投下が待ち遠しいです。 今は>>391さんの「浦木間男疑惑」にヒントを得て あれこれ考え中です。 あの回の「亭主の留守に間男しにきたわけではないぞ」の浦木の台詞に 「当たり前だ!だら!」というゲゲの強い口調が なんか妙に萌えたのは自分だけだったのか? と思っていたのですが、>>391さんもそう思っていたのですかね?
- 396 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/21(月) 22:50:49 ID:7m/LWao8]
- >>395
391タソではないですが、あのゲゲのリアクションは萌えましたね〜! 2人きりになってからも、もう少し引っ張って欲しかったくらいw
- 397 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/06/21(月) 23:50:54 ID:73pjz8zi]
- >>395
お〜!やっぱりチューがお好きなんですね。 281さんの2人はよくチュッチュッしてて可愛くて凄い萌えますw 新作も楽しみにしちょりますけん!
- 398 名前:蜜柑1 mailto:sage [2010/06/22(火) 02:03:35 ID:O5311a8s]
- 「今日は、100円で蜜柑がこんなに♪本当この所100円づいちょるわ♪早く帰って果汁絞って藍子に飲ませんと♪…そういえば…おとうちゃんと安来からの汽車の中で蜜柑一緒に食べたなぁ…フフッ」
ドンッ!! 「きゃっ!!」 「わっ!!」 ドサッ!ゴロゴロゴロゴロ… 「「すんませんっ!!」」 「あっ…とっ…失礼しました!ぼんやりしていて…お怪我はありませんか?あぁぁぁ蜜柑がぁ〜!!」 「ええっ!こちらこそすんません。大丈夫ですけん。私も、ちょっこしぼんやりしちょったんです…………蜜柑〜〜〜〜!!」 道端に転がった蜜柑をしゃがんで拾い集めながら男は布美枝の言葉が気になった 「えっ…ちょっこし…しちょった…あっ。最後の1個… ………………………………あの失礼ですが、郷はどちらでしょうか?」 「はぁ〜良かったぁ…ありがとうございます はい?島根の安来の方です。ご存じですか?」 蜜柑の入った袋を大事に抱えながら立ち上がる 「あぁ!やっぱり!自分も安来なんです………って…で…!!(デカい!この人…んっ…大きい→電信柱…) …まさか…布美枝ちゃん?」
- 399 名前:蜜柑2 mailto:sage [2010/06/22(火) 02:05:18 ID:O5311a8s]
- 「えっ…えっと…そげですが…えっと…あのー…」
「俺だ!俺!覚えちょらんかなぁ〜山田!山田太郎!」 「えええぇぇぇタロちゃん!東京に住んどったの?」 「仕事で5年前に…しかし…びっくりした!安来の時より更に背ぇ伸びちょらんか?…………あぁ…でも、綺麗になったなぁ」 「もぅ…最初に私のこと『電信柱』って言ったのタロちゃんだけんね…えっ…綺麗…?」 「うん。ほんに綺麗になったなぁ。…あー…電信柱はすまんかった。あの頃、ふみちゃん俺より背ぇ高かったけん。好きな子より小さいんは悔しくてなぁ…つい…」 「えっ…えええぇぇぇーーーーーー!しし知らんかったよ… えっと…そのぉ… すっかり東京の人みたい。最初全然なまっちょらんかったよ」 「おっ…うん…営業で外回るけん。頑張って直した。けんどふみちゃんに会ったらすっかり戻ったなぁ。あははっ。 今は?結婚しちょるの?」 「うっ、うん。子供もおるよ」 「そげか。会えて嬉しかった」 「うん。…あっ。じゃ、私こっち」 「おぅ!元気でな」 「タロちゃんも」
- 400 名前:蜜柑3 mailto:sage [2010/06/22(火) 02:05:53 ID:O5311a8s]
- 帰り道、太郎の言葉を反芻する
「知らんかったわータロちゃんが私を…あの頃は、ただ意地悪な子としかおもっちょらんかったなー背も伸びて、きっちりスーツ着て、かっこよくなっちょったなぁ」 「ただいま帰りましたー!藍子ただいま!ええ子にしちょった?」 「ええ子にしちょったなぁーおっ。藍子、土産があるようだ おぅ。よだれ垂らして。ははっ!わかっちょるな」 夕食後 藍子に果汁を飲ませると満足したのか、機嫌良く眠ったので2階に運んでベビーベッドに寝かせ布美枝は、1階に降りた 「あれっ?おとうちゃん、蜜柑食べんのですか?」 「食うけん。剥いてくれ」 普段はなんでも自分でこなす茂だが時折、布美枝に甘えたがるときがある。 この時も布美枝が2階に行ってる間に器用に蜜柑の皮を剥いてひとつペロリと平らげたのだが… 「はいはい♪いま剥きますね」
- 401 名前:蜜柑4 mailto:sage [2010/06/22(火) 02:07:05 ID:O5311a8s]
- 蜜柑の皮を剥きながら、ふと先程の太郎の事を思い出して笑ってしまった
「んっ。どげした?思い出し笑いか」 「いえ…さっき帰り道、男の人とぶつかったら…その人、小学校の時の同級生だったんです 私は全然気付かんかったんたんですが…向こうはすぐ私だと気付いてくれて 少しおしゃべりしちょったんです」 「ふーんそげか。」 蜜柑を剥いていて茂が少し不機嫌な顔になった事に気付かない布美枝 さらに話を続け 「あの頃は、丸坊主だったのに…髪も背も伸びて、かっこよくなって… それに…ふふふっ♪ …はい。おとうちゃん、お蜜柑むけましたよ………………んっ。おとうちゃん??」 布美枝が顔をあげた頃には茂は、すっかり臍を曲げてしまい布美枝に背を向けていた
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