- 315 名前:見えないけどあるもの1 mailto:sage [2010/06/15(火) 01:18:53 ID:VctfIvgX]
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喧嘩、というわけではないけれど、 布美枝はその日一方的に茂と口を利かなかった。 その日の昼すぎ、茂が「金出してくれ」 と言って、さっさと財布ごと持って行ったかと思うと、 どっさり古本を抱えて戻ってきた。 戦記物の漫画を描くのに、もっとリアリティを追求すべく 資料用にと戦艦やら戦闘機やらの本を買ってきたのだという。 浦木から「少年戦記の会」の発足を促され、 その際に「お前の漫画は暗い」と言われたことに端を発していた。 それにしてもどうだ、 戻ってきた財布を開けてみればスッカラカン! その日暮らしでやっと食べているというのに、 日々の節約の努力をどうしてくれるのだ、と布美枝は憤った。 「夕食です」 「お風呂です」 それだけであとは無言を貫き通した。 風呂から出た茂と入れ替わって、急いで布美枝は風呂に閉じこもった。
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