- 778 名前:ある天使に捧ぐ子守唄 9 mailto:sage [2007/09/23(日) 21:57:47 ID:cS9UjJNJ]
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すべての反乱天使達は堕天し、地獄へと落ちていった。 総大将ルキフェルが地上に堕とされると、その激しい衝撃で地面は抉れ、地 獄の大穴が開いた。地球の対蹠点では、ルキフェルが墜落した衝撃により、煉 獄山が持ち上がった。 地獄の誕生である。 地獄は階層に分かれ、罪の重いものほど深層まで沈められていった。 愛欲、貪食、暴力、悪意……。 その最下層は、コキュートスと呼ばれる氷地獄となっている。同心の四円に 区切られ、最も重い罪、裏切を行った者が永遠に氷漬けとなっていた。 裏切者は首まで氷に漬かり、涙も凍る寒さに歯を鳴らす。 地獄の中心ジュデッカのさらに中心、地球の重力がすべて向かうところには、 神に叛逆した堕天使のなれの果てである魔王ルキフェルが氷の中に永遠に幽閉 されているという。 魔王はかつて光輝はなはだしく最も美しい天使であったが、今は醜悪な三面 の顔を持った姿となり、半身をコキュートスの氷の中に埋めている。 その身体は凍てつき、微動だにすることがない。 一見すると、死んでいるかのようにすら見える。 だが、彼の胸は熱く燃えたぎっていた。 ベリアルが、ベルゼバブが、アスモデウスが、アモンが……、 皆が彼を待っていた。 魔王となったルキフェルは、この世の終わりをじっと待っている。 地獄より復活し、再び誇りを賭して仲間達と戦うその日をじっと待っている。 ──これは、遥か遥か昔の物語。 そして、遥か未来の物語の序章。 そして、今この時も続く苦しみの物語。 ──そして、誰も知らない物語。 遥か遥か昔の物語。 おわり
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