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世界の神話でエロパロ創世



1 名前:名無しさん@ピンキー [2006/10/10(火) 00:03:07 ID:aRf15XEu]
やってみよう

296 名前:異説・国生み神話11 mailto:sage [2007/01/21(日) 20:52:10 ID:ltdYUwu+]
 伊耶那美は敏感な陰茎や玉袋だけでなく、陰部全体に舌を這わせ、私の股間をぬめぬめにしていく。
ああ、なんと淫らな光景であろうか。そして、何を思ったかそのまま私を引き起こして四つんばいに
したのである。
 「何をするんだ、ナミ?」
 淫らな悪女と化した妹は興味深げに私の股間を観察し、玉袋のわずかに後方、蟻の戸渡りと言われ
る部位を舌で押し、私を悶絶させる。そして、指で私の肛門を引き開いた。
 「ば、バカ! なんて所を見るんだよ!」
 これにはさすがの私も仰天してやめさせようとしたが、妹はまったく動じる気配がない。
 「いいじゃない。あたしはお兄ちゃんの妻になったのよ。だから、あなたのすべてを知る権利があ
るわ」
 「バカ、それとこれとは違うだろ!」
 「お兄ちゃんの恥ずかしい所も、あたしは知って受け入れたいわ。ほら、こんなことだってでき
る・・・」
 美貌の女神は小さく可愛らしい舌を伸ばして、あろうことか私の最も不浄な肛門をぺろりと舐めた。
 「こら、なんてことするんだ!」
 「どうして怒るの?」
 とむしろ伊耶那美は不思議そうな顔をする。
 「当たり前だろう。おまえみたいな可愛くて若い女の子が他人のケツの穴なんかなめたらダメだ」
 説教を受けているはずなのに、愚かな我が妹は嬉しそうに微笑んだ。
 「ありがとう、心配してくれたのね。でも、あたしとお兄ちゃんはもう他人じゃないんだよ」
 取り返しがつかないくらい深刻なブラザー・コンプレックスの妹はそう言ってなおも私の肛門に舌
を這わせるのだった。しかし、偉そうに説教している割りに私も快感に動けなくなっているのだから
何の説得力も威厳もあったものではない。美少女に肛門なめられてはぁはぁ言ってる男がどんな偉そ
うなことを口にしても鼻で笑われるだけだ。
 「ぷはっ・・・お兄ちゃん、可愛いね」
 初めての契りの時には私がこの女を支配していたはずだが、いつの間に支配構造が逆転したのか?
 まったくもって愛とは摩訶不思議なメビウスの輪だ。
 男の私が息も絶え絶えに喘いでいるのが我が妹のじゃじゃ馬魂を刺激したものか、四つ這いになっ
た私の後方から伊耶那美は私の陰部をしごきつつ、さらに舌による責めはますます激しさを増してい
った。ついには固く伸ばした舌先で勢いよく私の肛門を貫く。
 「はうっ」
 オカマを掘られるのってこういう気持ちかしら。ああ、いやだわ。私は快楽の中枢を打ち抜かれ、し
ごかれ続けていた陰茎から精液を勢いよく噴射した。これが思ったよりも量が多く、全国に散らばった
ために現在の小島、小豆島、屋代島、姫島、五島列島、男島女島になったというのは真っ赤な嘘だ。
在住の皆様ごめんなさい。

297 名前:異説・国生み神話12 mailto:sage [2007/01/21(日) 20:54:08 ID:ltdYUwu+]
 ともあれ、どれだけ信じる人がいるかは疑問だが、こうして日本列島は創造された。その後、大地
に続いて私達夫婦は多くの神々を生み出し、子孫たちの活躍を見守りながらいつまでも幸福に、毎日
喧嘩したり泣いたり笑ったりの日々を過ごした。エ!? 黄泉の国めぐり伝説!? ナンデスカソレ
ハ。僕が妻を見捨てるわけないじゃないですか。多分後年の歴史学者の捏造ですよ、捏造。秩父原人
とかと一緒です。
 いや、ゴッドハンドの話はさておき。何が言いたいかというと、時々妹に萌えてしまう気の毒な人
が生まれてくるのは多分私のせいである。正直すまんかった。

298 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/21(日) 20:55:35 ID:ltdYUwu+]
異説・国生み神話終了です。
読んでくださった方、これから読んでくださる方、ありがとうございます。

299 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/22(月) 00:00:56 ID:FUXG4OSA]
面白かったよー

300 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/22(月) 01:00:46 ID:uFiIJjhl]
>>298

読んでるうちにイザナミがロリ妹化してハァハァした俺\(^O^)/オワタ
妹萌属性ないはずなんだがなあ

あと最後のオチにわろた

301 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/22(月) 01:31:35 ID:d/NTKlrY]
>>298
GJ!
ゴッドハンドわろたwww

302 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/22(月) 22:42:45 ID:DFLZ1Vkf]
>>299 300 301

どうもありがとうございます。
オチは削ろうかな? とも思いましたが、残して良かったです。
また何かの投下の際にはよろしくお願いします。

303 名前:名無しさん@ピンキー [2007/01/23(火) 23:05:37 ID:1/Ict3wN]
そろそろ某マンガで有名な北欧神話の運命の3女神ノルン(ウルド・ベルダンディー・スクルド)のエロパロが見たいお( ^ω^)

304 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/24(水) 23:44:31 ID:zQiUgZM8]
モイライ三姉妹はお呼びじゃないと?



305 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/25(木) 01:24:54 ID:H270Ce1o]
アレは老婆じゃーん

306 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/25(木) 23:40:38 ID:o0DzxHuE]
真・女神転生では若かったけどな
アトラス系だとノルンは時計だから困る

307 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/26(金) 08:38:15 ID:cPLzRK4g]
ペルソナだと個別であった覚えがある

308 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/26(金) 18:16:51 ID:eHtEMrhd]
和泉郡の血淳上山寺に吉祥天女の像があった。
信濃国から来た男はこの像に激しくそそられ、
「どうか、この天女のように美しい女を私に得させて下さいまし」と明け暮れ願った。
するとある夜、夢の中、かの山寺で男は天女の像と交わった。
翌日寺へ行ってみて驚いた。像の裳裾に不浄の淫液が…

今昔のシメは以下の通り。

『ねんごろに心をこめて祈ったために、天女が仮に人間と化して
 交わって下さったのであろうか。まことに不思議なことである。』

『思うに、たとえ多淫な人がいて、好い女を見て愛欲の心を起こしたとしても、
 無理無態な思いをかけることはやめるべきである。
 そんなことはまことに無益なことだ、と語り伝えたとのことである。』

上の結論は「天女のご利益」、下の結論は「夢遊病」じゃねーのか。
おはなし全体はご利益説に沿ってるようだけど、書いてる人は
夢遊病説の支持者なんじゃなかろーか。と語り伝えたいとのことかも。

ちなみに題名が面白い。『吉祥天女のショウ像を犯し奉る人の語』
犯すときにも謙譲語。

今昔物語より




309 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/26(金) 21:39:28 ID:NIFtXgMi]
>>308
女神に懸想するなんてこの男はここの住人になれる素質があるなw

310 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/27(土) 03:09:30 ID:+FEaWSb1]
>>308
ワラタw
ところでその像には穴まであったのか、気になるところである。

311 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/27(土) 11:52:28 ID:NynxiDIe]
そういえば殷の紂王が国を滅ぼす元凶である妲己を送りつけられたのも
中国の女神ジョカの神像を見てそのあまりの美しさに「ジョカタン(;´Д`)ハァハァ」な詩を書いて
ジョカが「紂王きんもー☆ムカついたから国滅ぼすw」というのが原因なんだよな

312 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/27(土) 16:44:51 ID:0vRHsNOF]
長いんですが、投下してもいいですか。
国生み神話の1.5倍くらい。
流れをぶったぎる形になってしまいますが。
メドゥーサとアテナをテーマにした話です。

313 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/27(土) 21:54:46 ID:QNDO++AI]
投下お願いします。
期待してます。

314 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/27(土) 23:16:45 ID:MqW8+DWb]
以下に投下させていただきます。
エロは極少ですので、ご了承ください。



315 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ1 mailto:sage [2007/01/27(土) 23:17:52 ID:MqW8+DWb]
 遥か昔。
 まだ人間とともに神々が世界に君臨していた頃の話です。
 最高神ゼウスの神殿があるオリンポス山には、多くの神々が住んでいました。その中でも特に力を持っていた
とされるのがオリンポスの十二神という男女6柱ずつの神々で、ゼウスの娘である女神アテナもその中に名を連
ねていました。女神アテナは戦争の神でありながら、美の神アフロディーテやゼウスの妻ヘーラーに匹敵するオ
リンポス屈指の美女です。しかしながら、彼女は華やかに着飾ることはなく、常に鎧兜を身に纏い完全武装を崩
さないなど、他のふたりの女神に比べるとずっと男性的な性格の神なのでした。浮気者の父を持った影響でしょ
うか、恋に憧れを持つことはなく、むしろ男性に嫌悪感を持っているのです。戦場で凛々しい美しさを誇るアテ
ナに思い焦がれて、甘い言葉を囁く男神は絶えませんでしたが、アテナの返事はいつもにべもないのでした。
どれほどの神がどれほどの犠牲を払ってもアテナの心は動くことはなく、取りつく島もないのです。彼女に言い
寄った男神は、直情的で粗暴なアテナに罵られるか乱暴されるかが常でありました。
 そんな彼女が地上に降臨した時、そこで美しい少女と出逢ったことから、この物語は始まるのです。


316 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ2 mailto:sage [2007/01/27(土) 23:18:28 ID:MqW8+DWb]
 アテナイでは知らぬ者のいない守護神、アテナに供物を捧げる巫女として、その少女はアテナの前に現れました。
本来は、じっとしているよりもいつも動いていたいアテナにとって、こうした儀式ばった行いは大の苦手です。早
く終わらぬものかと面倒くさげな態度をありありと浮かべていたのですが、少女の姿を見た瞬間にアテナはその姿
にたちまち目を奪われてしまいました。
 「アテナ様、私達の町で一番の織姫が精魂を傾けて作った織物にございます。どうぞお納めになってください」
 少女が恭しく捧げた織物を受け取る間にも、女神の目は少女に釘付けでした。
 「おまえ・・・、名はなんと言うのだ?」
 アテナがたまらずに問うと、予想外だったのか少女はきょとんとした顔をします。
 「おまえの名前を、私に教えるのだ」
 「は、はい。メドゥーサ、と申します」
 「メドゥーサ、か・・・」
 なんと美しい少女なのでしょう。芸術家が心身を削って創り上げた美女の彫刻のように繊細な顔立ちに、まるで地
中海の蒼さを写しこんだように澄んだ大きな瞳が輝いています。その姿は、まるで王女様のように気高く、彼女が立
っているだけで花が開いたかのようにその場が華やぐのでした。そして、もっとも人目を惹くのが腰まで伸びた長い
髪です。それは天上から流れる聖水のようにきらきらと光沢を放ち、金でできた絹糸のように肩を滑っていくのでし
た。
 「なぁ、メドゥーサ」
 「はい、なんでしょうか」
 「明日からこの神殿に通って来い。おまえの住む町のことを私に教えるのだ」
 「はい、ぜひよろしくお願いいたします!」
 美少女は顔をぱっと輝かせました。きっと女神に特別に声をかけられたことが嬉しかったのでしょう。アテナがメ
ドゥーサの町のことを聞くと言ったのは勿論方便に過ぎず、ただこの美少女とまた会って話をしてみたかったための
口実でした。アテナはこの少女が一度に気に入ってしまったのでした。

317 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ3 mailto:sage [2007/01/27(土) 23:19:19 ID:MqW8+DWb]
 次の日から、アテナとメドゥーサは毎日色々な話を交わしました。アテナは、共に時間を過ごせば過ごすほど、こ
の美少女を好ましく思うようになっていくのを感じていました。この少女は美しいだけでなく、何事にも控えめで、
しとやかな気質の持ち主でした。知性の神と呼ばれながら、実は単細胞で暴れん坊のアテナはそんなメドゥーサが新
鮮に感じられるのでした。本来は絶対的な存在として君臨する、女神という立場のアテナでしたが、この春の日のよ
うに穏やかな雰囲気をまとった美少女の前ではむしろ、彼女を女神のように感じる瞬間さえあるのです。神などと名
乗りながら、肉欲のためなら阿修羅にも盗人にもなり変わるオリンポスのろくでなし共に比べ、なんと気品のあるこ
とでしょう。戦の女神は、メドゥーサと語らう時間を何よりも楽しみにするようになりました。
 そんなある日、アテナは以前遠征中に眺めて感銘を受けた風景をどうしてもメドゥーサに見せたくなりました。
 そして、思い立ったらじっとしていられないアテナはすぐさまメドゥーサの手をとり、外へ連れ出しました。
 「め、女神様。わたくしをどこにお連れなさるおつもりですか?」
 「とても綺麗な景色だ。そう、おまえが一度も見たことがないような美しい景色を見せてやる!」
 アテナは、他の誰に見せたこともないような明るい笑顔で言いました。そして歴戦の友である白馬に彼女を乗せ、
遥か天空へと翔け昇ったのです。
 「わぁ、なんて見晴らしが良いのでしょう」
 メドゥーサは初めて体験する空への旅に興奮を抑え切れません。
 「まだまだだ。私がおまえに見せてやりたいのはこんなものじゃない」
 ふたりは馬を駆り、どこまでも飛び去ります。そして、馬は壮大な山脈にぶつかり、その山脈を登っていきます。
 「女神様、いったいどこまでいらっしゃるのですか」
 「もうすぐだ、もうすぐ・・・、この山を越えたら・・・」
 その時、白馬は山頂を越え、眼前に見渡す限りの視野が開けました。
 「・・・!」
 メドゥーサは息を呑みます。そこには延び続ける平野と、その先に横たわる海が極上の展望で広がっているのでし
た。白馬がゆっくりと天空に昇っていくと、彼方に地平線が弓なりの曲線を描きます。少女が普段見上げるように見
ている大きさのものが、ここから見下ろせばまるで小さな豆粒のように見えます。一本一本の木々は爪の先ほどの大
きさですが、それらが合わさって鬱蒼とした森を形成しています。草々は刈り上げられた芝のように生え揃い、彼方
の海原はさざ波を繰り返しているのです。まるで千人の熟練の工芸家たちがナイフの先ほどの細工を作って壮大な立
体芸術を創り上げたかのようなのです。そしてそれらが、沈みゆく夕陽に染められると息をのむほどに美しく、えも
言われぬセンチメンタルな気持ちを少女の胸に抱かせるのでした。
 「どうだ、美しいだろう」
 アテナは本当に嬉しそうに笑いました。彼女は、美しい光景も、好ましい相手とともに見つめればまるで別物のよ
うに魅力を増すのだと初めて知りました。
 「あまりにも美しくて・・・、私は何も申し上げることができません、女神様」
 メドゥーサは食い入るように彼方に視線をやっていました。景色も勿論綺麗でしたが、夕陽に染められる少女の感
傷的な横顔もアテナにとっては、胸が痛いほど美しいものに感じられました。
 「アテナ・・・と呼ぶが良い」
 とぽつりと女神は口にしていました。
 「え・・・?」
 「女神様、では誰のことかわからないだろう? 私のことはアテナと呼ぶが良い」
 アテナは自分でも何を言っているかよく理解できませんでした。ですが、にこりとしてメドゥーサは微笑むのです。
 「はい、アテナ様」
 その時アテナは、自分はこの少女に特別な目で見てもらいたいのだ、と思っていることに気づきました。


318 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ4 mailto:sage [2007/01/27(土) 23:19:49 ID:MqW8+DWb]
 さて、実はこのメドゥーサの美しさに惹かれていた神はアテナだけではありませんでした。最高神ゼウスに匹敵す
る力を持った海神、ポセイドンも彼女に目をつけていたのです。好色な彼は妻のいる身でありながらメドゥーサに一
目惚れしてしまい、彼女を熱心にかき口説きました。メドゥーサは頑として彼を受け入れませんでしたが、ポセイド
ンが神としての威光を嵩にきて、遂には彼女の故郷を大津波によって押し流すぞ、と脅迫するや、拒みきれずに彼の
寵愛を受け入れることになったのでした。そしてポセイドンは、風光明媚な神殿でメドゥーサを抱きたいと考え、こ
ともあろうにアテナの神殿で交わることを思いつきます。そして、強引なポセイドンはすぐさま白馬に姿を変え、メ
ドゥーサをアテナ神殿に連れ去り、彼女に挑みかかるのでした。そして、折悪しくその神殿の主アテナは、このふた
りの情事を目撃することになったのでした。

319 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ5 mailto:sage [2007/01/27(土) 23:20:19 ID:MqW8+DWb]
 その日、アテナはメドゥーサに贈るつもりでいた薔薇の花を、手ずから摘んできた所でした。最も香りがかぐわし
いと噂の高い薔薇を手に入れるために、朝から地中海を越えて北の国に行っていたのです。それをアテナは、不器用
な手つきで王冠の形に編んだのでした。女神は、それをアテナの頭に載せてあげる所を想像しました。普段から美し
い彼女のことですから、きっと桃色のこの薔薇が映えて、さらに神々しいまでの輝きを放つことでしょう。そして、
薔薇の放つ芳香と、少女が持ち合わせている甘い香りが絡み合ってきっとアテナを自失させてしまうほどの香りにな
るはずなのでした。
 そしてそんな甘く切ない想像を楽しんでいる時に、女神アテナはポセイドンとメドゥーサの姿を目にしたのでした。
 ポセイドンは美少女メドゥーサにのしかかるようにして腰を振っていました。彼は力強い海神らしく、荒波で鍛え
抜かれた漁師のように太い体躯をしていました。しかし、その肌からは若さが失われ、身体には怠惰な脂肪がまとわ
りつき、顎に生えた髭も張りを失って汚げに見えるのでした。それに反して、メドゥーサはほっそりとしていて瑞々
しく躍動感のある身体つきをしており、それでいてどこか硬さを残し成熟しきらない少女の面影を残しているのです。
ですから、初老の醜いポセイドンが力に任せてメドゥーサを犯す姿を目の当たりにした時、いささか潔癖症のきらい
があるアテナは嫌悪感のあまり吐き気を催しました。そしてその相手がメドゥーサであると気づくと、衝撃のあまり
薔薇の王冠を取り落としました。
 ポセイドンはまだ十分にふくらみきっていないメドゥーサの乳房に吸い付き、小ぶりの先端に歯を立てます。それ
は刺激が強すぎるのか、美少女は顔を歪めますが、自分の快楽を追うことに夢中のポセイドンはまるで気づいていま
せん。自分の欲望のみに忠実ですから、メドゥーサの秘められた場所へも自らの男の欲望を手前勝手にえぐり込むの
でした。真っ白な褥の上にはメドゥーサの自慢の髪が広がって、頭が動くたびにさらさらと光の清流のように流れる
のです。
 やがてポセイドンは快楽の閾値を越えそうになったのか、メドゥーサの秘部から己の欲望を引き抜いて、それを彼
女の美貌の前へ突きつけました。そして、自らの手で欲望をしごくと、快楽は閾値を越え、メドゥーサの彫刻のよう
に端正な顔におぞましく白濁した精液が勢いよく命中しました。一弾、二弾、三弾と彼女の顔を思うさま汚した後、
ポセイドンは汚れた陰茎をメドゥーサに押し付けました。
 アテナは、腰に佩いていた剣を抜きました。元々激情家の女神は、すでに見境を失っていました。
 「ポセイドン、貴様、我が神聖なる神殿でこのような淫らな行為をするとはどういう了見か!」
 戦の女神の突然の出現とあまりの剣幕に仰天したポセイドンは飛び上がりました。
 「待て、アテナ。これには理由があるのだ」
 「言い訳は冥府でハデスに言うが良い」
 怒りのあまりアテナの顔は赤くなることを通り越し、危険な蒼白色になっていました。
 取り付く島もないアテナに肝を冷やしたポセイドンは裸のまま神殿を飛び出し、海に身を躍らせて深海に身を隠し
てしまいました。

320 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ6 mailto:sage [2007/01/27(土) 23:21:00 ID:MqW8+DWb]
 後には、ポセイドンに抱かれたままの姿のメドゥーサといつものように完全武装のアテナが残りました。
 「なぜ・・・・だ?」
 いつもは顔を上げて凛々しく話すアテナは俯いたまま少女に問いました。前髪が目にかかり、女神の表情は窺
い知れません。
 「わたくしは言い訳はいたしません」
 と、むしろ少女の方が顔を背けずに真っ直ぐ言いました。
 「なぜ・・・・だ?」
 アテナは白痴のようにもう一度つぶやきます。なぜ、の後に続く言葉が多すぎて彼女には言葉が選びきれませんで
した。ああ、まるで地面のことごとくが崩れ、世界が崩壊してどこまでも落下していくような錯覚を覚えます。ある
いは、胸に大きな穴が開いて、そこから風がひゅうひゅうと通り過ぎていくような感じがします。なぜ、こんな時に
あの日、夕陽に染まった少女の眩しいほどに美しい笑顔を思い出すのでしょう。
 どんな言い訳でも、してくれれば良いとアテナは思いました。この少女の言葉であるならそれがどれほど荒唐無稽
な言い訳であろうとアテナは喜んで信じたでしょう。世界のすべてが敵に回ろうとも、アテナだけは少女を信じるつ
もりでいました。ああ・・・・、それなのに。メドゥーサは決然とした表情で口をつぐんでしまうのでした。
 アテナが顔を上げると、その瞳からは涙がこぼれ落ちていました。いくつもいくつもそれらが光っては流れ落ちて
いきます。
 「ああ、どうかお泣きにならないでください。悪いのはわたくしなのですから。アテナ様は何もお悪くないのです」
 メドゥーサは哀しげな表情を浮かべました。
 そうではないのだ、とアテナは思いました。終わった行為が哀しいのではないのです。メドゥーサが言い訳をしな
いことは、アテナを本当に必要とはしていないからであるように思えたのでした。もしも今アテナが感じているほど
の喪失感をこの少女が感じているなら、きっとどんな事をしてでも許しを乞うに違いないはずです。
 アテナは自分のひとり相撲に対して、猛然と腹が立ってきました。それは自分自身に向けられるべきものでしたが、
怒りに我を忘れた女神はそれを暴力的な衝動としてメドゥーサにぶつけることにしたのです。
 「おまえの言いたいことはわかったぞ、メドゥーサ。望みどおり、おまえに恐ろしい刑罰を与えてくれる」
 アテナは鬼神のような表情になって剣を天に掲げました。世界に満ちるエーテルの力が剣に凝集していきます。
そして、剣を振り下ろすと、メドゥーサの身体にエネルギーの塊が炸裂しました。すると、みるみるメドゥーサの身
体に変化が起こりました。彼女の最も美しかった髪の一本一本が蛇と化してもぞもぞと不気味に蠢きだしたのです。
 メドゥーサは悲鳴を上げました。
 「以後、おまえの姿を見た者はすべて石と化す。もう、おまえに近づける者はいない。人目を忍んで生きていく
がいい」
 アテナは涙を流しながら少女を神殿から追いたてました。そして人目に触れることのできなくなったメドゥーサは
冥界にほど近い西の果て、オーケノアスの地へと追放されたのでした。

321 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/27(土) 23:23:18 ID:MqW8+DWb]
とりあえず、いったん終了です。
保守代わりということで。


322 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ7 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:04:15 ID:4BpcfqJj]
 女神アテナはさながら爆発寸前の炸薬のように苛立っていました。もしも何かの拍子に彼女の苛立ちが沸点を越え
れば、たちまち血の雨が降り世に災いが荒れ狂います。オリンポス山の誰もがアテナを避けて通りました。戦の女神
の八つ当たりの餌食になった例は枚挙に暇がなかったからです。文字通り触らぬ神に祟りはない、と言うことなので
した。
 そんなアテナの噂を聞きつけ、呼び出したのは他でもない全知全能の神にして彼女の父であるゼウスでした。
 「・・・なんの用ですか、父上」
 ゼウスの神殿に呼びつけられたアテナはひどく不機嫌そうに言いました。
 「アテナ、最近荒れているそうではないか。どうしたのか?」
 父ゼウスは優しく娘に問いました。
 「なんでもありません。私は元々短気で、皆に恐れられてきたでしょう。いつも通りです」
 戦の女神は硬い表情で言いました。
 「ふむ。だが、ここ最近は誰に対してもいつも穏やかな笑顔を浮かべていたではないか? とても幸せそうに父に
は見えたが」
 「・・・」
 さすがに父は、見ている所は見ているのでした。
 「これは私の勘に過ぎぬが、我が娘よ、おまえは恋をしたのではないか?」
 「なっ」
 と胸をつかれたようにアテナは目を見開きました。
 「これは断じて恋などではありませぬ。これはきっと、一時の気の迷い。そう、まるで麻疹のようなものなのです」
 純情な女神は、いよいよ自らが語るに落ちていることには気づいていません。
 「不器用な我が娘よ。私にはおまえの気持ちが痛いほどわかる。だが、おまえもオリンポスに住む女神であるなら、
この苦難も自分の力で乗り越えて見せよ」
 そしてゼウスは付け加えました。
 「・・・ただひとつ言えることは、おまえが自分の気持ちに素直になることで、変わるものがあるということなの
だ」
 アテナは憤然と身を翻し、神殿を立ち去りました。妻がありながら浮気を繰り返すあの男に自分の何がわかるとい
うのだ。馬鹿らしい。確かに、ゼウスがアテナの気持ちを本当に理解していたかどうかはわかりません。ですが、ア
テナ自身もまた、自分の気持ちを整理することができずにいるのでした。

323 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ8 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:06:39 ID:4BpcfqJj]
 神に仕える巫女であったメドゥーサにとってもまた、アテナへの想いはさらに複雑な要素を含んでいるのでした。
 メドゥーサは元々、朝起きてからと夜眠る前、そしてすべての収穫と喜びに対して女神アテナに感謝の祈りを捧
げる敬虔な巫女でした。ですから、女神アテナに目をかけられて多くを語らう日々はまるで夢のように幸せでした。
ですが彼女の胸の中は、アテナを女神として崇拝する気持ちと、対等の相手として慕う気持ちがないまぜになって、
まるで幾滴もの油絵の具が水に落ちたように不可思議な模様を描くのでした。年端もいかぬ少女は自らの中で絡み
合う気持ちの整理ができず、人知れず苦しんでいました。それが、相手が神々ですら避けて通る無敵の戦の女神で
あるなら、尚更のことなのです。
 メドゥーサは、自分の気持ちを崇高な神への信仰心なのだと、思うことにしたのでした。ですが、ああ、どこま
でも真っ直ぐな女神アテナは少女の瞳を覗き込み、メドゥーサが心の奥に押し込めた気持ちのドアを静かにノック
するのです。あの日、白馬の背に揺れながら女神に抱きついて、空の上から眺めた光景のどれだけ美しかったこと
でしょう。その時だけは、少女は誰の目も憚らずに美貌の女神に抱きつくことが許されていたのでした。そして自
分は、こうして女神様の好意を受けてそばにいられればそれで幸せなのだ、と思うのです。ですが、そう思おうと
することは、少女の胸に切ない痛みを生じさせるのでした。

324 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ9 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:08:36 ID:4BpcfqJj]
 メドゥーサは、誰もが恐れおののく怪物に化身させられ、西の果てでひっそりと暮らしていました。これは、ポ
セイドンに対して心ならずも不貞を働いた自分に対する罰でした。女神アテナの怒りを買って別れを告げることは
胸が張り裂けそうになるほど辛いことでしたが、それはおぞましくも穢れてしまった自分に対する罰なのでした。
 しかし、罪な女神はこの冥界にほど近い地までやってきて、少女の胸を揺さぶるのでした。
 「久しぶりだな、メドゥーサ」
 と、例の白馬に乗り、いつものような完全武装姿でアテナはこの地に降臨しました。
 「お久しぶりでございます」
 メドゥーサが顔を伏せてその場に平伏すると、女神はなぜか機嫌が悪そうになりました。
 「そのようなことはしなくとも良い。立て。くそっ、私が馬の上になど乗っているからか」
 アテナは苛立った様子で馬から飛び降り、メドゥーサを乱暴に引き起こしました。
 「ああ、乱暴はおやめください」
 「い、いや・・・すまなかった。そんなつもりはなかったのだ」
 女神は慌てて手を離します。
 「今日は、どのようなご用件でいらっしゃったのですか」
 とメドゥーサが恭しく訊ねると、この言葉がまたなぜか女神の神経を逆撫でした様子でした。
 「用がなければ、来てはいかんと言うのか? ・・・いや、待て。また感情的になったようだ」
 アテナの様子は変でした。まだお互いの仲が険悪になる前から時折見られたことのですが、これは女神がご機嫌で
話している時に、ある瞬間を境に現れる徴候でした。
 「・・・最近は、どうしているのだ?」
 「はい。このような姿ですし、見た方を石に変えても気の毒ですから、こうして人目を避けて暮らしています」
 「いや・・・、その、今のそなたも十分に美しいと思うぞ、私は」
 アテナはなんだかよそ見をしながら言いました。
 「・・・え?」
 「なんでもない。今日来たのは、おまえにもう一度釈明の機会を与えようと思ったからだ。この前は・・・、そ
の、私も興奮していたからな」
 女神は憂いのある表情でメドゥーサを見ました。アテナは結局、ひとり天界で少女のことを想ううちに矢も盾も
たまらなくなり、ついには彼女を許すきっかけを作ろうと西の果てまでやってきたのでした。
 「なぜ私の神殿であのような行いをした? おまえは貞淑な乙女だ。なにか理由があるのだろう。さぁ、私に話
してみるが良い」
 女神アテナは慈愛の微笑を浮かべました。メドゥーサの心は揺れます。よりにもよって女神様の神殿であのよう
な行為に及んだ少女を、なぜこのように優しく許そうとするのでしょう。巷ではアテナを、嵐を起こし雷を落とす
戦の神として恐れていますが、誰も知らないこんな優しさを持っているのです。しかし、メドゥーサは一度こうと
決めたら決して変えようとしない少女でした。それは、決意の固さと意志の強さでもありますが、悪い方へ働くと
頑固さになって自らを追い詰めるのです。
 「わたくしは、何も申し上げることはありません」
 「な、なんだと・・・」
 アテナは驚いた顔をしました。
 「理由を話せば許してやるんだぞ」
 「やったことはやったこと。わたくしは言い訳などしたくないのです」
 「な・・・っ」



325 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ10 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:09:17 ID:4BpcfqJj]
 よもや、メドゥーサがこのような強硬な態度に出るとはアテナも予想していなかったに違いありません。意外に
も頑固な少女の態度に女神はしばらく絶句しました。そして、女神らしからぬ弱々しげな顔をしました。
 「よし、わかった。もう何も聞かぬ。ただ一言謝ればそれですべて水に流す」
 おそらくは、猛き女神の最大の譲歩だったに違いありません。それだけ、アテナはメドゥーサを許したかったの
です。ですが、一度決心した少女の心は動きません。
 「わたくしは、女神様に申し上げることは何もないのです」
 もはやこの問題は、神殿での一件にはとどまらないのでした。メドゥーサは、お願いだからそっとしておいて欲
しい、と思っていました。。女神アテナの顔を見るたびに心の一番奥に押し隠した切ない少女の気持ちが、外へ飛
び出そうと暴れだすのです。それは、決して誰にも悟られてはならない危険な想いです。
 「おまえは、ポセイドンを愛しているのか・・・?」
 アテナの口をついて出た言葉は、メドゥーサの思惑から離れていました。
 「だから、私には何も言えないと、そう言うのか?」
 戦の女神アテナは険しい表情をして、少女を睨みつけていました。
 「あのような男のどこが良いというのだ・・・」
 「アテナ様・・・」
 「ポセイドンのどこが良いというのだ。奴が、男だからか・・・?」
 「え?」
 「私なら・・・」
 とアテナは燃えた目で言いました。
 「もっと、おまえを優しく愛せる。あんな乱暴な・・・」
 後先考えずにそこまで口走って、女神は口をつぐみました。
「くそっ」
 アテナは身を翻し、白馬に飛び乗ってしまいます。今の言葉に驚いたメドゥーサは引きとめようとしましたが、
もはや空翔ける女神の耳には届きません。
 アテナの狂おしいほどの愛は、受け入れられないことで憎しみへと成り代わりました。元々が感情の制御が苦手
な女神ですから、愛していたのと同じだけの強さの憎しみがメドゥーサに向かいます。そして、アテナは衝動的に
思いました。メドゥーサを、亡き者にしてやる、と。


326 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ11 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:09:48 ID:4BpcfqJj]
 アテナは、メドゥーサを殺そうと図っていたセリーポス島のペルセウスという若者に、表面が鏡のように磨かれ
た青銅の盾、姿を隠す帽子、メドゥーサの首を入れる魔法の袋、青銅の鎌形刀、翼のあるサンダルを貸し与え、メ
ドゥーサの暗殺を援助しました。ペルセウスは、首尾よく眠っているメドゥーサの首を刎ねました。そして、その
首はアテナに献上されたのでした。

327 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ12 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:10:53 ID:4BpcfqJj]
 直情型で思慮の浅いアテナには一時の感情のままに行動に走り、そして落ち着いてみると後悔する、という悪癖
がありました。例えば、今回がまさにそうでした。アテナの前に鎮座したメドゥーサの首を見つめて、彼女は言い
ようのない後悔の念にさいなまれているのです。
 「メドゥーサ・・・」
 と、冷たくなって動かない少女の首にアテナは哀しげに話しかけました。
 「私は愚かだった。ああ、なんということをしてしまったのだろう。おまえを殺めてしまうなんて・・・。もう、
おまえに会う事はできないのか」
 戦の女神は打ちひしがれていました。例え何万の巨人たちを前にしようともひるむことのない勇敢な女神は、ま
るで小さな少女のように膝を抱えて俯いているのでした。アテナはあのしとやかで気品のある美少女の笑顔を見る
ことはできないのだと思うと、はっきりと自覚したのでした。自分はあの少女に恋をしていたのだと。アテナは、
色恋沙汰に忙しい他の神々を横目に見ながら、自分はきっと永遠に恋などしないだろうと思っていました。戦場で
駆けることに生き甲斐を感じ、およそ繊細さとは無縁な女神。カッとなるとすぐ頭に血が上ってしまい、粗暴な振
る舞いに出るアテナはいわゆる女らしさとはかけ離れた存在なのでした。それに何より、男というものが嫌いなの
です。アテナはきっとひとりで生きていくのだと思っていました。あの少女に会うまでは。
 愛し合い、慈しみ合うとは、なんと温かく素敵な心持ちなのでしょうか。厳しい冬から春が訪れて、積もった雪
が解けていくように、アテナの凍てついた心がほろほろと甘くとろけていくようでした。人々はアテナを女神と呼
びますが、アテナにとってはメドゥーサこそが女神だったのです。
 だからこそ、ポセイドンに抱かれる少女が許せなかったのかも知れません。初めての恋にのめりこんだアテナは、
メドゥーサのすべてが欲しかったのです。少女の時間も、笑顔も、言葉も、身体も。何もかもを自分のものにして、
初めからひとつのものとして生まれてきたかのように溶け合ってしまいたかったのです。そして、自分を押し付け
るあまりいつの間にかメドゥーサの気持ちを置き去りにしていたのかも知れないのでした。
 「ああ、メドゥーサ」
 と再びアテナは呼びかけました。
 「私はなんと子供だったのだろう。おまえに自分を押し付け、そして私は自分の気持ちすらわかっていなかった
のだ。すでにおまえがいなくなってしまった今なら、すべてを伝えることができるのに」
 女神は拳を握り締めます。ですが、生命の灯火を消した少女は表情もなく目を瞑ったままなのです。
 「私は、おまえを愛していたのだ。私は女神で、おまえは人間の少女に過ぎぬ。しかし、それがどうしたという
のだろう。私は人間よりも愚かで感情的で、自制ができぬ。おまえは私にとっては女神のようであったのだ。私達
の間に障害があるとしたなら、きっとそれは私とおまえが自ら作った幻の障壁なのだ。私が自分の気持ちを認めさ
えすれば、煙のように消えて失せる脆い壁に過ぎなかったのだ。
 私は女神としての誇りも名誉もすべて投げうてる。世界中すべての者達に嘲笑われてもかまわない。おまえを誰
よりも愛している。おまえにもう一度会いたい。おまえが人間の男を選ぶというなら、止めはしない。ただもう一
度だけ、あの夕陽を眺めた折、私の名を呼んでくれた時の笑顔を私に見せてくれるなら、それだけで私は満足なの
だ・・・」

328 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ13 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:11:25 ID:4BpcfqJj]
 アテナが物言わぬ相手に秘めたる想いを告げた時、そっと瞳から涙がこぼれ落ち、それは静かにメドゥーサの顔
に落ちました。それは、少女の頭をゆっくりと伝って、彼女の目に触れます。すると・・・、メドゥーサの目がぱ
ちりと開いたのでした。
 「わたくしも、世界で一番あなたを愛しておりますわ、アテナ様」
 メドゥーサは生気の戻ってきた顔にそっと微笑を浮かべました。ふわりと風が吹くと、七色の粒子がさざめいて
少女は全身を取り戻しました。驚いたことに、以前の美しい髪も取り戻しています。
 「な・・・、これはいったい・・・・」
 アテナが瞠目すると、あたりの空気が震えて、
 「今度だけだぞ、アテナ」
 という男神の声が響きました。アテナの父、最高神ゼウスでした。
 「おまえが自分の気持ちを伝えられた褒美に、ただ一度だけ奇跡を起こしてやる」
 あの無責任そうな父は、決して手出しすることなく陰ながら娘の恋の行方を見守っていたのでした。
 「父上・・・」
 女神がつぶやくと、その胸元にメドゥーサがそっと抱きついてきたのでした。
 「メ、メドゥーサ・・・」
 こんなに積極的な彼女は初めてです。
 「アテナ様。わたくしも、お慕いしています。アテナ様がいれば、他の誰をも必要とはいたしません。例え世界
中が敵に回っても、どこまでもお仕えいたします。だから、笑って・・・」
 アテナは、自分がぽろぽろと涙をこぼしていることに初めて気づきました。嬉しい時にも涙が出るなんて、アテ
ナにとっては思いもよらないことでした。もしかすると彼女は心から喜んだことがなかったのかも知れません。女
神は目を乱暴に手でこすってから、少しぎこちなく笑って見せました。でも、メドゥーサの笑顔を見ると、自然と
本当の笑顔がこぼれてくるのです。
 「おまえを、愛している」
 「わたくしもです、アテナ様」
 アテナはそっと少女にくちづけました。夢にまで見た甘いくちづけでした。女神は衝動を抑えきれずに、少女の
唇をさらに熱く求めます。これが夢じゃないと、確認したかったのかも知れません。
 「アテナ様、わたくしをあなたのものにしてください。わたくしのすべてを」
 潤んだ瞳でメドゥーサが言うと、アテナは彼女をお姫様のように抱き上げ、静々と寝室へと運んでいきました。

329 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ14 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:12:39 ID:4BpcfqJj]
 「ああ、アテナ様・・・」
 アテナはメドゥーサの着物を脱がせました。少女の身体は白く、とても柔らかでした。戦場を駆けるアテナの体
躯は女性にしては無骨ですが、メドゥーサの身体は触れると押し返してくる弾力があり、抱きしめるとなんとも言
えず心地が良いのでした。
 「おまえは柔らかいな」
 「アテナ様こそ、しなやかで素敵です」
 アテナは少女を抱きしめ、少女の身体のいたる所にキスの雨を降らせます。
 「ああ、うれしい・・・。こうして、女としてアテナ様に抱かれるなんて、夢のようです」
 メドゥーサは顔を赤らめて言いました。
 「私こそ、おまえをこうして愛せるなんて、まるで夢心地だ。もし夢なら、永遠にさめないで欲しい」
 「夢ではありません。その証に、ほら、こうして・・・」
 少女は自ら女神の頭を抱えてくちづけました。まるで愛のしるしを隙間なくつけていくように、ふたりは相手の
身体の隅々にまで唇を這わせていきました。もしかすると、お互いの身体のすべてを自分のものにする作業だった
のかも知れません。
 メドゥーサは、そっとアテナの秘められた渓谷に舌を這わせました。
 「っっっっ、そこは・・・ダメだ。汚い」
 女神は拒みますが、少女は譲りません。
 「アテナ様に汚い所などありません」
 「おまえは・・・、頑固だな」
 「ええ。わたくしはアテナ様に、わたくししか出来ないご奉仕をさせていただきたいのです。そのためなら、何
も譲るわけには参りませんわ」
 「・・・好きに、したらいい」
 メドゥーサはそっと舌を伸ばし、アテナの、誰も触れたことのない女の渓谷に侵入しました。そして最も敏感な
粒を刺激します。
 「うっっっ」
 アテナがぴくりと身体を震わせます。
 「うふふ、アテナ様、かわいいですわ」
 「っっっ」
 女神は余裕を失い、言葉を返すことができません。戦場での歴戦の勇士は、褥の上ではどうやら少女に押され気
味のようでした。

330 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ15 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:13:09 ID:4BpcfqJj]
ですが、いつまでもそのままでは女神の面子に関わります。
 「あッ・・・、アテナ様、何をなされるのですか」
 「私もおまえの大切な所を愛するんだよ」
 アテナはくるりと身体の向きを替えると、メドゥーサに秘部を愛撫されながら、自らも少女の秘部を愛する体勢
になりました。
 「女神様が、そんな不浄な所をお口にされてはいけません」
 「ふふ、おまえにも汚い所なんてないんだよ。それに、今は私は女神ではない。ただの女だ」
 「ああ、アテナ様・・・」
 ふたりは激しく求め合うように、お互いの秘部を愛撫するのでした。お互いを慈しみながら、精神的な交歓をで
きるのは女同士だけなのかも知れません。ただ、純粋に相手を喜ばせ、幸せにしてあげたいという奉仕の精神だけ
が行為の拠り所なのです。女神はますます熱をこめて少女に愛を注ぐのでした。
 やがて、ふたりは愛の感情がゆっくりと高まっていくのとともに性感も上昇していきました。女神アテナも、自
ら自分を慰めた経験はありましたが、それはひどく無機的な感じがしたものでした。行為の後になんだかひどく虚
しい気持ちに支配され、二度とすることはありませんでした。
 それが、今こうしてメドゥーサに愛撫されることのなんと満たされることでしょう。とても胸が温かくて、気持
ちが良い。そして、ほんのひとつまみだけの切なさがあるのでした。
 ふたりはいつしか快楽の瀬戸際に立っていました。
 「メドゥーサ、もう・・・」
 「アテナ様、私も、もうダメです」
 「ん・・・」
 そして、お互いを最も愛しいと思った瞬間に、ふたりは同時に頂点に達したのでした。
 ふたりが快感の波濤に呑まれて、やがてその波が静かにひいていく時でした。メドゥーサの身体が首を残してみ
るみる消えていきます。
 「なっ、メドゥーサ!? どうした!?」
 「ああ、わかりません。なぜか力が抜けていきます・・・」
 アテナはメドゥーサの身体に起こった異変に慌てますが、どうすることもできません。
 「くそっ、どうすればいいのだ!?」
 「アテナ様・・・」
 メドゥーサは哀しげな目でアテナを見ます。
 「ゼウス様は、一度だけ奇跡を起こすと言われました。きっと、奇跡の時間は終わったのです」
 少女の身体は透き通り、もはや向こう側が見えているのでした。
 「やめろ、消えるなっ!! せっかく、愛し合えたのに・・・」
 アテナはメドゥーサの首をかき抱き、叫びます。
 「もう、おまえを失うなんて嫌なんだ。私は耐えられない。もう、ひとりは嫌なのだ」
 「わたくしもあなたとお別れするのは身を切られるように辛いですが・・・。お気を確かに持たれてください。
お強い女神様は、きっとひとりでも生きてけますから・・・」
 「やめろ、別れの言葉を言うなっ!! 私は別れの言葉など口にしないぞ。私とおまえは一心同体、もう離れる
ことなどないのだ!」
 アテナが絶叫します。
 「アテナ様・・・」
 メドゥーサが弱々しく笑みを浮かべました。
 「頼む、もうひとりに・・・・しないでくれ・・・・」
 アテナの言葉が涙にかき消えそうになった時、首だけの姿になった少女は、最愛の女の頬にキスをしました。

331 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ16 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:13:47 ID:4BpcfqJj]
 あれから、何年が経ったでしょうか。
 舞台はエーゲ海東部、トロイアに移ります。
 アガメムノンを大将とするギリシャ軍は総勢10万の世紀の大軍団で強国トロイアに攻め寄せていました。その陣
営にはこの戦いで勇名を馳せることになる英雄アキレウスの姿があります。対するトロイア陣営の大将は勇将ヘク
トル。さらには、オリンポスの神々もそれぞれの思惑によって両陣営に分かれます。ギリシャ軍にはヘーラー、ポ
セイドン、ヘパイストス。トロイア軍にはアフロディーテ、アポロン、アルテミス、アレス。きら星のごとき英雄
と神々が一同に会し、しのぎを削るギリシャ神話中屈指の大戦役、トロイア戦争です。
 そして、ギリシャ軍の幕下には戦争の神である女神アテナの姿もあったのです。
 アテナは戦いを待ちきれずに、準備運動のように槍を振り回しました。
 「さぁ、世紀の大戦争だ。手加減なし、腕が鳴るよ」
 「あら、アテナ様が戦いの時に手加減などされたことがあったかしら?」
 アテナの傍から鈴を転がすようなきれいな女性の声が聞こえてきます。アテナはくくっと笑って、
 「そうだな。でも、今回はスケールがまるで違う。相手側には錚々たる面子が揃っているのだ。私がどれほど本
気で戦っても相手に不足はない。安心して暴れられるというものさ」
 「そうですが、意外とあなたは抜けている所がありますから、十分にお気をつけてくださってね」
 傍らから聞こえてくる声に対して、少しアテナはむっとしました。
 「おまえも、昔は控えめだったものだが、今ではすっかり口さがなくなったな」
 「あら、わたくしがいるから、アテナ様も昔ほど暴走されることが少なくなったのではなくて?」
 まったくもって、口が立ちます。言い負かされたアテナは不機嫌そうに鼻を鳴らしました。
 「私が負けるはずなどない」
 「ええ、そうですわ。もしもアテナ様が傷つけられそうになる時があるなら、わたくしが身を呈してお守りいた
します」
 「そんなことはさせん。いかなる事があろうとも私はおまえを敵に近づけることはしない」
 「では、わたくしたちはきっと負けませんわね」
 声は楽しげに笑った。
 「そうさ。私たちがふたり揃ったら決して負けはしない」
 「あら、それは少し違いますわ」
 「ん? ああ、そうだったな」
 「わたくしたちは、ふたりでひとり」
 「永遠に別れることはない」
 アテナは左手に持った盾にそっと微笑みかけました。そこに入っているのは、メドゥーサ。首だけになって生命
を永らえた美少女なのでした。

332 名前:異説・ゴルゴンのメドゥーサ17 mailto:sage [2007/01/28(日) 10:14:21 ID:4BpcfqJj]
 「しかしおまえは、首だけになっても生きるなんて生命力が強い女だな」
 「うふふ」
 「てっきりあの時は、あのまま死んでしまうのかと思ったものだが」
 「あの時の女神様の顔は見ものでしたわ。きっとあんなに情けない顔のアテナ様を見たことがあるのはわたくし
だけですわね」
 「や、やめろよ。あの時の話は。まいったな」
 アテナが顔を赤くすると、メドゥーサは微笑むのでした。この頃のアテナは以前の粗暴さが身を潜め、心穏やか
な戦争と平和の神としてますます名声を高めていました。それも、常に盾としてメドゥーサがアテナの傍らにつき
従っていたからかも知れません。
 「きっと、ゼウス様のおはからいだと思いますわ」
 とメドゥーサは言いました。
 「あまりにも気性が激しすぎるアテナ様に手を焼かれたものですから、わたくしをお目付け役として生かしてく
ださることにしたのだと思います」
 いたずらっぽく笑う。
 「ふん、本当におまえは口が悪くなったものだな」
 そう言うアテナも本気で怒っているわけではありません。なぜなら、それは彼女が自分に気を許している何より
の証拠だからです。
 アテナはこのアイギスの盾を常に持ち歩き、手放すことはありません。ふたりが望んだように、いついかなる時
もふたりは一緒になったのでした。アテナはギリシャの女神としては珍しく処女を守り通した神ですが、それは決
して恋をしなかったということではありません。ただ一度の狂おしいほどの恋に落ち、そして永遠の愛を誓った処
女神、それがアテナなのでした。
 そこには、少しでも気に入らないことがあると暴れていたかつての彼女の姿はありません。思慮深く、どのよう
な身分の者にも等しく恵みを与える慈悲の神がそこにいました。なぜなら、苦しみの中から幸せを求めてもがく者
に対しての慈しみを知ったからです。アテナはまるで自分のことのように、苦しむ者に愛おしさを感じるのでした。
 「アテナ様」
 とメドゥーサは言いました。
 「アテナ様は、今や一枚の盾に過ぎないわたくしと一緒で、お幸せですの?」
 言うまでもなく女神アテナは幸せでした。なぜなら、最愛の人がいつもそばに、永遠にいてくれるのですから。
なんということのない軽口を毎日叩き合って、ふたりで生きていくこと。それはごく平凡なことかも知れません。
ですが、何よりも幸せなことだと女神アテナは誰よりも知っていたのです。

333 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/28(日) 10:16:22 ID:4BpcfqJj]
これで終わりです。
すっかり長くなってしまいました。
暇な方がいたら読んでくださったら嬉しいです。

334 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/28(日) 13:35:21 ID:Rp2XWxG+]
結構なお手前でした
ええもん読ませてもらいましたわ



335 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/28(日) 13:48:03 ID:r9ufwzVa]
うおお、素晴らしい。
最後まではらはらしながら読んでしまいましたよ。
新たな神話にGJ!

336 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/28(日) 14:32:23 ID:30Vqpyqf]
>>333
文体と文章が激しく好きだ
ひぐらしと同じくらい上手いな

337 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/28(日) 21:00:49 ID:63B+v+2V]
>>334,335,336
温かい感想をありがとうございます。
とても嬉しいです。書いた甲斐がありました。
ひぐらしはプレイしたことがありませんでしたが、興味が湧きました。
また、何かの投稿の際にはよろしくお願いします。

338 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/28(日) 21:26:44 ID:30G0VoSb]
アテナ&メドゥーサ小説GJ!!!!
やばい、アテナ様好きになって来た

339 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/28(日) 23:45:43 ID:GZUBYnDb]
GJ!
素晴らしいです。
文章上手すぎですよ、どうやったら書けるんですか?

340 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/29(月) 00:52:02 ID:gQKK09rs]
>>338,339
 ありがたい感想を頂き嬉しく思います。
途中で五回くらい投げそうになったけど、書き上げて良かったなぁ。
アテナ様が好きになって頂けたら、目的は達成です。
 僕は特別に文章が巧いわけではありませんので、なんにも言えませんが。
日常生活に支障をきたすくらい神様に本気で恋をしたら良い文章が書ける
ような気がしています。人間やめますか?

341 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/29(月) 00:59:35 ID:6uMIrD9a]
>>340
とても素直な文章で良かったです。GJ!
登場人物の気持ちを良く研究してるなと思います。
折角良い文章を書いておられるので、次回は「・・・」中黒ではなく
三点リーダを使った方が良いのではないでしょうか→「……」
より、文章が綺麗になると思いますよ(読み手側のこだわりですが)
次回も期待してます。

342 名前:339 mailto:sage [2007/01/29(月) 17:33:44 ID:tjkq8L2/]
>>340
メドゥーサを生き返らしたのは貴方の創作ですよね?
ゼウスはハデスに承認を得たのでしょうか?
そこらへんが気になりました。

343 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/29(月) 19:10:54 ID:9v3d35yC]
>>341,342
ご指導ありがとうございます。大変勉強になります。
 3点リーダーについて教えていただきありがとうございました。
今後はこちらを使わせていただきたいと思います。
 メドゥーサを生き返らせたのは僕の創作です。もっともなご指摘です。
もっと無理のないストーリー展開を心がけるよう、今後の糧とさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。


344 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/29(月) 23:51:56 ID:S0dEJ1YQ]
本当に乙
次回作も期待するよ

できればいろいろな神話に挑戦してほしい



345 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/30(火) 12:43:22 ID:c/DSkc5V]
アテナと聞くとどうしてもサイコボールとか言いたくなる

346 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/30(火) 19:07:10 ID:cggIfOG7]
いっきま〜す☆ミ

347 名前:333 mailto:sage [2007/01/30(火) 23:59:56 ID:yArGI+/M]
ありがとうございます。
また何かの投稿の折にはよろしくお願いいたします。

348 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/01(木) 04:38:40 ID:rFThmC6b]
今日初めてこのスレをみた。

クシナダに激しく萌えた(´Д`*)ハアハア

続きが投下されるまで裸で待ちます。

349 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/01(木) 08:28:14 ID:blyVUSry]
ケルト神話のクー・フーリン×スカアハとか見てみたい
教え子×師匠萌え

350 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/02(金) 01:33:35 ID:pKi9aGZP]
つ鳩の戦記

351 名前:スサノオ書いてる奴 mailto:sage [2007/02/02(金) 21:12:40 ID:Temnbvoq]
>>348
ありがとうございます。単純なんで忘れた頃にレスを頂いてやる気出ました。
まだうまくまとまらないんですが近々投下したいと思ってます。
ノロくてすいません。

352 名前:名無しさん@ピンキー [2007/02/04(日) 02:30:00 ID:H7GleUAL]
上から全部のSS読んでみたらチンコ勃った
俺のマグナムどうしてくれる

353 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/04(日) 02:34:04 ID:8JHqtX3m]
兵士「隊長〜っ!敵のマグナムとやらは見当たりませんが」
隊長「よく探してみろ。竹やりが落ちてるだろう?」



354 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/04(日) 06:37:59 ID:MHs4X2Q8]
兵士「隊長〜っ!敵のマグナムとやらは見当たりませんが」
隊長「よく探してみろ。爪楊枝が落ちてるだろう?」



355 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/04(日) 18:40:08 ID:m0caPQ1o]
ペルセポネはツンデレだと思うんよ。

356 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/04(日) 23:06:12 ID:yqtZAbt4]
ペルセポネは、ハデスが浮気したとき
相手を殺したらしいからな。
確かにツンデレ

357 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/04(日) 23:29:49 ID:amXbvJrr]
殺したんだっけ?
確か踏み潰して植物に変えたんじゃ?
しかし、植物に変えるあたり、ペルセポネはデメテルの娘だよなぁ。


358 名前:356 mailto:sage [2007/02/05(月) 00:11:43 ID:5sR4D9l7]
>>357
ミントな。
漏れ的に殺したと脳内置換していた。スマソ

359 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 05:33:23 ID:6P7FNUR5]
>>358
死体をハデスが草に変えたっていうからあながち間違いじゃないかも。


無理矢理浚われた頃は必死に嫌がってたけど、
次第に堅物で優しいハデスに惚れていくツンデレペルセポネをきぼんぬしてみる。

360 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 12:32:27 ID:o0DzxHuE]
まとめサイト見てきたが良作ばっかだな

ところで気になったんだが帝釈天の奥さんって中国の方で摩利支天じゃなかったか?

361 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 13:34:18 ID:IqH6W2Ur]
ミノタウロス誕生話の背徳的エロさにハァハァしてる変態は俺だけでしょうか?

362 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/05(月) 14:57:17 ID:Nmofj8BE]
 堅物だとか色々言われるものの、気が進まないのだからどうしようもないのではないか、
と思う。たしかに誰とでも睦言を交わせるようになればある意味で楽になるのかもしれない。
しかしもって生まれたこの性格だけは、たとえ神の末席に名を連ねるとはいってもなかなか
御しがたいものなのだ。
 母デメテルの性格を色濃く受け継いだのかもしれないなとペルセポネはぼんやり考える。
それもそうだろう、実父は多くの女神どころかはたまた男神とまで浮名をながしたゼウスな
のだから、やはり自分は母に似ているのだ。
 「……だから余計に腹も立つ」
 地中というものは美しい石が眠る宝物庫だ。人間だって、地面を掘ればきらびやかな宝石
や貴重な鉱石がとれることを知っている。ましてやその地中を支配する王の宮ともなれば
どれだけ豪奢なものを望んだところで意のままだろう。
 しかし拳ほどもある大きさの金剛石とてそれを輝かせる光の源がなければただの透き
通った石に過ぎない。
 点々と高い位置に据えられた灯かりの台をながめてペルセポネはため息をつく。
 その灯かりにぼんやりと照らされた彼女のための長椅子は、色とりどりの宝石で飾られ
たなんとも美しくかつ趣味のよい品物であったが、いかんせん本来の輝きを放つには光が
足りなさすぎた。

 こんな長椅子で自分の気をひこうとしても無駄だと言い放った時のことはよく覚えている。
 「私もよくよく見下げられたらしい。宝石の輝きなど地上の春の彩りに比べればなんともま
あ冷たいことよ」

363 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/05(月) 14:58:09 ID:Nmofj8BE]
 冥府の王らしく墨染めの衣を目深く被(かづ)いたハデスは即答を避けたようだった。
 王の立場にふさわしく宮殿は贅を尽くした造りであるにもかからわず、ハデスがまとうも
のは漆黒に染めぬいた簡素な衣一枚のみ。冥界にさらわれてきてかなりの時間が過ぎて
はいたが、ペルセポネはまだその顔を見たためしがない。光に乏しい冥界であることもさる
ことながら、ハデス自身が顔を見られることを忌避しているのか、真っ黒い衣の上部を長く
ひいて顔に影を作っているのだ。
 「機嫌を損ねてしまったのならば謝ろう」
 ややもするともしかして彼には顔というものが存在しないのではないか、と思うほどその影
は深い。
 しかしこうして声を発すると吐息で衣の縁がかすかに揺れるのがわかるので、最低でも口
くらいはあるのだろう。
 「地上の絢爛はここ冥府でも噂に聞く。張り合おうなどとは毛頭思っていない」
 穏やかで静かな口調から、虚勢でも意地を張っているわけでもないことがうかがい知れ
る。そらしたままだった顎を引いてペルセポネはそっと暗い影の内側を覗こうとしてみた。
 首すじのような、黒とは違うような気がする部分がちらりと見えたところでハデスが長椅子
へ向かって歩きだしてしまい、残念ながらそれ以上は何もわからなかった。わずかに指先
が出るくらいの長い袖を引き、金で縁取られた肘かけへそっと触れる。
 「知っての通りここでは太陽の光は望めない」
 死人の場所にふさわしく土色に痩せた指をペルセポネは想像していたが、肘かけを撫で
るでもなくただ添えられただけの指は存外、健康的な指をしていた。

364 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/05(月) 14:59:00 ID:Nmofj8BE]
 「なにより冥い場所だ。彩りといえば宝石と鉱石しかない。少しでも慰めになればと考えた
のだ」
 「さらってきておいて慰めという言葉を口にするなど、傲慢も甚だしい」
 「すまない」
 さらりと衣が揺れて指先が隠れる。頭があるであろう部分がペルセポネのほうを向いた。
 「言い訳にすぎぬと自分でも思う、情けない話だが矢に射抜かれた時にそこまで頭が回ら
なんだ」 
 仮にも冥府の王なのだからもう少しふんぞり返って偉そうにしてくれても良さそうなものだ
が、どういうわけかハデスはペルセポネの予想と期待をことごとく裏切ってくれる。手荒な方
法で連れ去られただけにどんな仕打ちが待ち受けているのか心底震え上がったというのに、
王宮に到着するなり賓客そのものの待遇をうけハデス自身が陳謝するという事態になった。
 どうやらハデスはエロスに射抜かれ自分を見初めたらしい、ということも理解した。そこで
順序正しく求愛していればこのような事にはならなかったのにと思うのだが、そこで助言を
求めたのが自らいらぬ事件を引き起こす天才のゼウスで、手段が拉致監禁だったにも関
わらず疑問すら抱かずハデスに実行させてしまうのがさすがはエロスの矢、といった所だ
ろう。
 突然ふってわいたまさしく災難としか言い様がなかったが、みずから丁重な待遇を事細か
に指示し謝罪してくるハデスの姿を見ていると、この人にとってもある意味災難だったのだ
と思うしかない。
 「あのいまいましいエロスの矢が原因であるとわかったのならもう理由はないはず」
 きりきりと唇を噛んでハデスをにらみつける。
 「こんな暗い場所、息が詰まって今にも窒息しそう」
 「……」
 「母の所へ帰しなさい、今すぐに」



365 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/05(月) 14:59:45 ID:Nmofj8BE]
 いつもの展開ならばここでハデスは何も返答せずに、今日はもうお休みになられるがよ
いとだけ穏やかに呟いて座を辞してしまう。
 「……かような手段でここまで連れてきてしまったことは、心から申し訳ないと思っている」
 しかし今日だけは続きがあった。ペルセポネは自分の喉がかすかに鳴ったのを自覚する。
 「すまないと思っているのならばなぜ非礼をそそぐ手段を実行しないのか」
 「地の実りの娘、ペルセポネ」
 喉の下の深いところで何かが鳴り響いた。
 それが心臓の鼓動であったことになかば驚愕する。
 「たしかにこの暗い地中は息も苦しかろう、花もなければ樹木も草も風もない。食べ物は
あるが地上のそれとは甘さも比べ物にはなるまい」
 いつのまにかハデスの右手には、真っ赤に熟れたざくろの実が顕現していた。
 太陽も豊穣の恵みもない冥府では食べ物は神々の奇跡によって生み出される。だがどう
いう理屈なのか、神の手による作品だというのにそれらはひどく滋味に乏しい。ハデスもそ
れは死者の口から知らされてはいるのだろう、生きているあいだに口にしたあれはもっと美
味であった、と。
 「だが」
 弱い灯かりをうけてきらりと光ったざくろを目にしてペルセポネは唐突に知った。名前を。
 「もしほんの少しでもこの暗き場所に住むものを哀れと思うのならば、地の実りの絢爛で
ここを照らしてはくれまいか」
 口の中が乾いてくる。
 「……それは、太陽……」

366 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/05(月) 15:00:21 ID:Nmofj8BE]
 「光であればなんでもよい、と言っているのではない」
 ペルセポネの思考を読んだかのように素早くハデスが先を制した。いつも穏やかでゆる
やかな言葉を発する彼らしくない物言いだった。
 「ペルセポネ」
 名を呼ばれて身が震えた。
 この冥府の王がさきほど初めて自分の名を呼んだという事実を、やっと飲み込む。
 「矢に射抜かれた結果の戯れ言と考えるもよかろう。だが」
 「なりません」
 窒息しそうだと言いはしたが当然のことながら吸う空気など無尽蔵にある。それにもかか
わらずペルセポネは肩で喘いだ。急速に息苦しくなってきて考えがまとまらない。
 「帰して。母のところへ」
 「冥府の王とて地上に焦がれぬわけではない」
 「いやです。こんな所はいや。帰して」
 たしかに射抜かれはしただろう。しかしハデスはそれが理由で長いこと冥府へペルセポネ
を留め置いたのではなかった。
 「后としてここに留まってはもらえまいか、ペルセポネ」
 両耳をかたく塞いでうずくまる。
 胸がどきどきしてうまく呼吸ができない。支えようとでもしたのだろうか、狭い視界に黒い衣
の裾が近寄ってくるのが見えたがペルセポネは全身で拒否した。
 耳が熱い。頬が燃えているような気がする。

367 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/05(月) 15:01:27 ID:Nmofj8BE]
 そういえば自分は求愛されるのは初めてだった、とペルセポネは混乱したままそんなこと
を思った。エロスの矢のせいだと鼻で笑うこともできただろう。しかし伝聞に聞くエロスの矢
は連れ去ったことを陳謝するような展開など一つもなかった気がする。
 耳を塞いで目を閉じていると、これ以上何か言っても刺激するだけだといつものように賢
明な判断をしたらしくハデスの気配が遠ざかっていくのがわかった。時間をかけてもう戻っ
てこないのを確認して、ペルセポネはふらふらと立ち上がる。
 目を落とせばすぐそこに宝石で飾られた長椅子があった。
 薄暗くとも、目をこらすまでもなく明らかだった。宝石による装飾はただ見事と言うしかな
いすばらしいもので、たわわに実をつけた樹木や朝露がしたたりそうな花が表現されてい
た。胸がつまり、理由のわからない涙を飲みこむのが信じられないくらいに辛かった。

368 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/05(月) 15:02:47 ID:Nmofj8BE]
↑前置きすっかり忘れてた。ごめん……
とりあえずキリのいいところまで投下しておく。

369 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 15:27:31 ID:o+5QfIU3]
Gooooooooooooood
Joooooooooooooooooob!!!!

370 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 17:33:35 ID:o0DzxHuE]
ktkr!!!!!!!!!!!!

371 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 19:29:20 ID:l5ILrCPT]
おお、続きwktk

372 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 20:54:03 ID:kwgq3gjz]
格調高い文章に引き込まれた。GJ!
続きの投下を正座して待ってます。

373 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 22:07:40 ID:vw7e5/5N]
GJ!!!
この夫婦大好きだ!

374 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/05(月) 23:27:57 ID:0PQfcscC]
ハデスいい人だよハデス



375 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/06(火) 00:06:41 ID:RHf2Rjzm]
┣¨‡┣¨‡ ┣¨‡┣¨‡

アリーズちゅうヌンゲー昔の少女漫画思い出しちまったんだぜ

376 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/06(火) 00:26:08 ID:2HcDleSB]
これは素晴らしい。
続きを楽しみにしてます。

377 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/06(火) 10:26:31 ID:kZ84vsPR]
ハデスに胸キュンしてしまったではないか・・・
続きをwktkして待っております。

378 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/06(火) 13:51:21 ID:7WQNyNB1]
ハデスがペルセポネに惚れた切欠はエロス。
誘拐という手段を用いたのは父であるゼウスの助言。


そこまで知ってるとは、御主侮れぬな。

379 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/07(水) 01:37:59 ID:APoPddqR]
推敲がちょっと追いついてない気がするので誤字とかおかしい所あったらすまん。
これまた言い忘れていたがまだちょっと続くので何日か間あけつつ投下しに来ます。

ではドウゾ

380 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/07(水) 01:38:49 ID:APoPddqR]
 針のように細く撚った銀で編まれたたくさんの籠の中には、およそペルセポネが思いつくす
べての果物が揃っている。ただ林檎と言っても赤いもの黄色のもの青いもの、手の平に握
りこんで隠せるような小さなものから両手で支えなければならないほど大きなものまで、文
字通りに何でも揃っていた。
 単なる楽しみのためやコミュニケーションを円滑に進めるための手段のひとつとして飲食
することは神々の間でも決して珍しくはないとはいえ、人間とは違いそれを摂取しなければ
死んでしまうということはない。だから毎日決まった時間に出されるそうした果物をすげなく
断ったとしても、ペルセポネは何一つ困らない。言ってしまえばこれらを用意するハデスの
ほうにも、用意しなければならない責任も義務もない。
 給仕によこされてきた女官がなんだか苛々しているような気がするのは、自分の考えすぎ
というわけでもないだろう。
 「……」
 色つやの良い葡萄を手にとってしばらく眺め、眺めただけでペルセポネは無造作に籠へも
どした。
 「あの、差し出がましいこととは思いますが」
 「なに?」
 「何がご不満なのでしょうか。王に供される果物でもお口に合わぬということでしょうか」
 「そういう問題ではない」
 神に空腹というものはないが食欲ならばある。神とて美食を快いと思うのは当然のことだ。
現にデュオニュソスときたら酒の守護者であるのをいいことに、葡萄酒の風呂に浸かったほ
うが手っ取り早くて都合がいいのではないかと思うほどよく飲む。
 「単純に、気が進まないだけ」
 「左様ですか」

381 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/07(水) 01:40:27 ID:APoPddqR]
 では、と言い置いて女官はさっさと籠を片付けはじめる。客への対応にしてはなんだか無
礼が過ぎる気がしたが、別に賓客扱いされることに喜んでいるわけでもないのでかまわない。
 冥界に連れ去られてこのかた、とうに一ヶ月は過ぎているはずだ。太陽が昇らないせいで
昼夜がまったくわからないため想像するしかないが、人間の食習慣の通り一日三回で果物
や食事が運ばれてきたのだとしたらそのくらいの計算になる。
 別に母とべったりの生活をしていたわけではないが、何の知らせもなく行方をくらましただ
けにきっと今頃心配しているだろう。それこそ拉致という単語がふさわしい連れ去られ方はし
たものの、暴力を受けるどころか帰ることができないくらいで生活そのものには不便がない。
せめて無傷で無事でいることくらいは知らせたいのだが、果たしてそれができるかどうか。
 金と宝石で装飾された大理石の長椅子の上へ体を横たえながら考えを練る。
 ペルセポネに与えられた部屋は丸く、天井もドーム状になっていて瑠璃の巨大な岩盤が
むきだしになっている。灯かりを弱めればそこへ含まれた金紗が光をはじいて、ちょうど濃
紺の星空のように見えて美しかった。これで月でもあれば地中の夜空にも興を添えてくれる
のだろうが、残念ながら石英や金剛石の結晶を含む岩盤はこの部屋の近くにはないらしい。
 認めたくない事であったが、ハデスは賢明でものの道理をわきまえている。これで他の男
神であったなら今頃自分がどうなっていたかなどすぐに想像できようというものだ。それだけ
に、いくらエロスの矢のせいであったとは言ってもあんな手段を使われたことが腹立たしく
てならない。
 これまた認めたくないがハデスが自分のために作らせたこの長椅子ときたら、細工や造り
の麗しさもさることながら高さも広さも背もたれのカーブも絶妙で居心地いいことこの上なく、
頭ごなしに罵倒してしまったことを心底後悔した。単に自分のものにしたいだけなら、連れ
去ったその足で獲物を寝所に放り込んでやるべき事をやってしまえばそれで済む。手間を
かけてこんな椅子など作らせる必要も、時間をかけて心境が変わるのを待つ必要もないの
だ。
 それだけペルセポネ自身を尊重しているということであり、多少順序や手段がおかしかっ
たとはいえ同意の上での婚姻を望んでいる事にはもう疑いようがない。本当になぜ拉致で
なければいけなかったのか、もしこの場に父ゼウスがいたとしたらかなりの勢いで罵ってし
まいそうだ。

382 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/07(水) 01:42:00 ID:APoPddqR]
 頭からつま先まで黒い布で覆い隠した、ハデスの姿を思い出してペルセポネはため息を
つく。
 まだ一度も顔を見たことがない不可思議な求婚者。オリュンポスやアテナイ周辺の土地は
温暖なので、衣といっても腕や足を露出させるものは多い。両腕を露出させる形式の衣服を
身に着けた今のペルセポネが寒い思いをしているわけでもないので、冥界がとりたてて寒
冷なわけでもないことを思うとハデスのいでたちはどう考えても異様だ。
 黒衣の死者の王。突如地面を裂いて現れでた漆黒の馬の襲撃者に、心臓が握りつぶさ
れるような恐怖を覚えたことはまだ生々しい記憶だ。
 生きた心地がしない、とはきっとあんな気分のことを言うのだろう。
 死ぬこともできないまま切り刻まれるか、あるいは亡者の贄にでもされるのか。そんな結
末を想像していたのに薄暗い世界に連れられてきてから待っていたのは賓客の待遇で、と
うの拉致犯が折り目正しく腰を折って冥界の王妃となってほしいと要求してきたのだからた
まらない。
 「本当に、腹が立つ」
 苛々と爪を噛みながらペルセポネは呟く。
 全身真っ黒で顔すらまともに見えない。正直なところハデスそのものは不気味以外のな
にものでもなかった。でも折にふれて発せられる声と言葉は驚くほどに穏やかで、力や権
力にあかせて屈服させようなどという陳腐な手段など決して使わないだろうという安心感が
持てた。常に細やかな気配りを忘れず先を急がない。目深くおろした布のせいで著しく視界
が制限されているはずだが、それでも所作には迷いがなく足の運びにも不安げな所はな
い。
 勤勉に冥界を管理するためオリュンポス十二神の座を自ら辞したとも聞く。悪い噂もない
ので有能な施政者なのだろうという想像も容易にできた。
 「本当に、『あれ』さえなければ……」
 だからそこでペルセポネの思考は堂々巡りになってしまう。
 ハデス自身が人格的に何ら申し分のない相手であることなど、冥界に連れて来られて数
日で嫌でもわかった。あの黒衣の王に抱いた嫌悪感がすでに遠い場所へ去っていることも
認めざるを得ない。まださすがに彼の求め通り結婚してもよいとは思えないし考えるつもり
もないが、好意の比重が大きくなりつつあることも認めざるを得なかった。
 どうしてもっとこう普通の、どこかに設けた宴席でだとか、そういう手段ではなかったのだ
ろう。
 「……」
 しかし、ふとペルセポネは我に返った。
 あれだけ道理をわきまえた王なのだから、こちらがきちんと嘆願すれば、ここから出ること
はすぐにできずとも母に知らせを送ることくらいはできるのではないだろうか。

383 名前:ハデス+ペルセポネ mailto:sage [2007/02/07(水) 01:45:21 ID:APoPddqR]
とりあえず今晩はここまでに。

あと>>378
書きだす前にwikiでざっと調べたら出てきただけなんだ、知っていたわけではないよ。
ペルソナとかメガテン系は好きなので広く浅く、な自覚はあるんだが。

384 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/07(水) 21:58:32 ID:SivB/Mdq]
そういやペルソナにハデスいるよね



385 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/07(水) 22:48:38 ID:q+5lvD51]
メガテンではよくカロンのお世話になりました

386 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/08(木) 00:37:55 ID:70QnLJ4Z]
GJ。
ペルセポネの心理描写だけなのに引き込まれたよ。
次回で急展開かな?

387 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/09(金) 18:19:55 ID:JBQv32Q9]
わくわくてかてか

388 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/09(金) 21:13:46 ID:Iky/piJC]
やばい・・・ハデスいいよハデス

389 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/10(土) 04:05:18 ID:jaiMNk+H]
普通に話おもすれー
メガテンから神話に興味持ったクチ多そうだな

390 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/14(水) 12:49:32 ID:c2SqMYq3]
ほっしゅしゅ

391 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/15(木) 20:42:59 ID:ZF5bLrb4]
ハデペル続きマダー!?

392 名前:ハデス+ペルセポネ  ◆b3FXA9o6yY mailto:sage [2007/02/16(金) 00:45:07 ID:JqBc74qv]
不覚にもインフルエンザにかかってしまい予定より遅くなってしまった。
申し訳ない。

393 名前:ハデス+ペルセポネ  ◆b3FXA9o6yY mailto:sage [2007/02/16(金) 00:47:18 ID:JqBc74qv]
 冥界という場所はどうしても客人のほうが圧倒的多数になるので、そこから出て行く者は
希少だ。さらに、出入りする者、ともなるとさらに希少だ。そんな人物は冥界王ハデスでも両
手で足りる程度の人物しか知らない。
 黒曜石の床に杖を立て、帽子と脚部の装具へそれぞれ一対の翼を飾った伝令使を視界に
いれてハデスはふと考えた。
 「つかぬ事を訊くが」
 聡明そうな目でハデスに言葉の先を無言で促したのはゼウスに使える伝令使ヘルメスだっ
た。伝令使として神々からの伝言をハデスに伝えにくることもあれば、彼自身英雄の魂を冥
界へ導く案内人としての役職も持つため、そちらの任務でも冥界へは頻繁に出入りする。もっ
とも、後者の場合は冥界のさらに下部に位置する奈落タルタロスからタナトスとヒュプノスを
呼び出して伴っているものなので、ヘルメス一人でいるか、はたまた同行者がいるかですぐ
に目的が知れる。
 「『あれ』からどれほど過ぎたのだったか」
 「さあ。私は正確な日付は存じ上げぬので」
 「左様か」
 「なにか問題でも?」
 「……デメテルがあれをそう易々と渡すことはあるまい、と言ったのはゼウスだが」
 思わず深い溜め息が漏れた。どうも長いこと冥界で暮らしているせいか自分は行動を起こ
すまでの時間が、地上やオリュンポスにいる彼らよりずいぶん遅いのかもしれない。
 「地上の民に八つ当たりするくらいならば直接ここへ乗り込んでくれて良かったのだがな」
 デメテルがそんな自棄を起こす前に自分から何かしら接触を持っていれば良かったのか
もしれないな、と考える。
 「それにしても実りを与える職務を放棄、か。ゼウスが何を言ったのかは知らんが、
賢(さか)しいあれのことだ、よほど短慮な事を言ったとみえる」
 「これは又聞きの話ですが」
 伝令使という役職を仰せつかるだけあってヘルメスは噂話や大っぴらにはできない秘密な
どにも通じる。

394 名前:ハデス+ペルセポネ  ◆b3FXA9o6yY mailto:sage [2007/02/16(金) 00:49:05 ID:JqBc74qv]
 「なんでも今回の件をたきつけたのが我が主人であるを知るや、その足で事の次第を問い
ただしにお越しになられた様子」
 ある日突然愛娘が姿を消したのだ、人間の母親でも死に物狂いになって探すであろうこと
は簡単に想像できる。農耕を司る愛情深いデメテルのことだ、それがペルセポネともなれば
それこそ地上のおよそ思いつく場所を隅から隅まで探しまわることだろう。つくづくデメテルに
も悪いことをしてしまった、とハデスはもう一度溜め息をついた。
 「それはそれは大変な剣幕だったそうで」
 「……で、ゼウスはあれに何と?」
 「我が主人なりになだめようとされたのかもしれません。『冥界王ならば充分夫として釣り
あうだろう』と仰られたようですが、それを聞くなり来た時よりももっと凄い剣幕で農耕神とし
ての役目を放棄すると宣言して地に下られたとか」
 何ともお粗末なオリュンポス最高神の返答にさすがに額を覆ってしまう。デメテルが訊きた
かったのはそういう事ではないだろうし、いやむしろデメテルにとってはそんな事などどうだっ
て良かっただろう。最高神としてオリュンポスの頂点に君臨しているくらいなのだからそう頭は
悪くないはずだが、どうもハデスは時折弟神の軽率な言動に不安なものを感じずにいられ
ない。
 「単になぜあのような手段で連れ去ったのかを尋ねたかっただけだろうに……ゼウスもなぜ
その程度の事に気付かぬのか」
 「さて、過ぎてしまった事ゆえ。今更嘆いたところでどうにもなりはしますまい」
 「確かに」
 ヘルメスの言った通りだ。
 無体な手段でペルセポネを連れ去ったのはどう足掻いてもこの自分であり、デメテルがゼ
ウスの言動に激怒して農耕神の職務を放棄してしまったのももう変えられない。
 デメテルの加護なくば地上に実りは訪れない。冥界と地上の時間の流れが違うことなど誰
でも知っているが、早急にペルセポネをデメテルのもとへ送り返すように、とゼウスがこうして
ヘルメスを寄越してきたことを考えると地上はのっぴきならない状態なのかもしれない。
 冥界の王としてもいたずらに死人を増やすような真似はいくら神とは言っても理に反する。
何よりハデスは冥界を治める王なのであって、人を殺して楽しみとする悪鬼などではない。



395 名前:ハデス+ペルセポネ  ◆b3FXA9o6yY mailto:sage [2007/02/16(金) 00:50:31 ID:JqBc74qv]
 それに、いくら死が等しく誰にでもに訪れるものであるとは言っても、心楽しくいられる地上
にあったほうが人が幸せなのはどう考えても揺るがない。冥界に来るのが早まるのが、人に
とって幸せであるはずがない。
 「……」
 なぜかそこでペルセポネのことを思い出してハデスは胸を突かれたような気分になった。
 別に命を奪うつもりもなければ危害を加えることなど考えもつかなかったので、失念してい
た。まともな思考を持っていれば、冥界に行くということは死と同意だ。ヘルメスや自分のよう
に冥界に関わる職務を持つならば話は別だが、縁のない者にとってはそうだろう。
 死地に愛娘を連れ去られた心痛。話に聞くかぎりデメテルの怒りそのものは自分ではなく
失言をしたゼウスに向けられているようだが、愛娘を突然奪われた心痛は当然自分に責任
がある。
 しかもその先は死人の場所だ、神の眷属ゆえ文字通りに踏み込んだら最後生きては戻れ
ないということはないが、それでも生命の保証はされているのかと心を痛めるのが普通だろ
う。
 かえすがえすも無思慮な行動であったことが悔やまれる。
 「可能な限り早く要請にお応えする、と伝えておいてほしい。問題はあれがまたゼウスの言
うことを聞いてくれるかどうかだが」
 「別に我が主人が使者に立たねばならぬ道理はないでしょう。冥界王から直接言葉を賜っ
た自分が出向いた、とさえ申し上げればそれで事足りる」
 「なるほど」
 伝令使の杖ケリュケイオンを取り上げ、ヘルメスは軽く一礼してから執務の間を辞していっ
た。
 被(かづ)いた衣の下でハデスは考えに沈む。ゼウスに間違いなく約束は守ると返事をした
以上、一日も早くペルセポネを地上へ送り返す算段を整えなければならない。
 あれだけ帰りたがっていたのだ、戻れると知ればきっと喜ぶだろう。

396 名前:ハデス+ペルセポネ  ◆b3FXA9o6yY mailto:sage [2007/02/16(金) 00:51:32 ID:JqBc74qv]
 残念なのは、ペルセポネの顔を恐らくはもう二度と見ることはないという事か。喜ぶ笑顔を
見ることができるであろうことは密かに楽しみなことではあったが、冥界を離れることができ
るという理由の笑顔というのも寂しいものだと思う。
 手段が手段だっただけそう簡単にペルセポネの心が手に入るなどと、はなから考えてはい
なかったとは言え、時間を惜しまず話し合ったり長くかかっても心が変わるのを待つつもりで
はいた。
 やはり冥界という領域を統治することを決めた時から、永久の伴侶としては孤独の他には
いっさい望んではならなかったのかもしれない。
 「決まった以上、長く引き留めるのは良くはなかろうな」
 誰に言うとでもなく呟いて椅子から立ち上がり、ハデスは人影を求めて執務の間を出た。す
ぐ右手にある通路の角を曲がったところで、死角になる位置に立っていた人物と危うく接触し
そうになる。慌てることなくすぐに脚を後ろへ引くと、何かおびえたような様子でその人物が顔
を上げた。
 「ごめんなさい」
 自分の体を抱きかかえるようにしてペルセポネが立っていた。
 「立ち聞きするつもりはなかったのです」
 その言葉で、自分とヘルメスのやりとりをペルセポネが聞いていたことが知れた。






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