- 169 名前:人食い怪物vs巫女 ◆gRbg2o77yE mailto:sage [2010/05/23(日) 11:56:08 ID:FI+mydYE]
- 飢えのこと、蟲のこと、怪物のこと、あまりに過酷な状況が続いていた今、空から降ってきた甘い雨に
彼女たちが飛びついてしまうのは無理のないことだった。 (ああ、生きていて良かったです……!) 肢体を蜜色の唾液で濡らした弥生は、身体の奥が熱くなるのを感じながら、顔を赤くして涙を流す。 そして、もう手だけは足りないとばかりに地面に這いつくばり、水溜りになっていた魔物の唾液と酒の 混合物に顔を突っ込み、口に土が入るのも気にせずにずるずると啜り始める。 「きゃっはあっはは」「えへへへっひぇへひぇ」「ひゃひゃははひゃ」 ごろごろと地面を転がる者、お互いに抱き合う者、落ちていた樹の枝を振り回し始める者。 他の少女たちも、唾液に塗れながら、大声で笑ったり、奇声を上げたりと騒がしい。 「……お、美味しいね……この雨……」 件の四散した少女も、地面を這いながら甘い唾液を飲み、割れた頭から脳漿を垂らしながら微笑む。 そして身体の半分が潰れた少女や、両足が無い少女と唇を合わせるように、一ヶ所の唾液溜まりを ぴちゃぴちゃと舐め合い、得られる潤いと甘味と、そして奇妙な浮遊感に酔いしれていく。 「……ん? あれ?」 轟轟という音が聞こえるのに気付いて、弥生が顔を上げた瞬間。 まるで津波のように、琥珀色の水壁が原生林を呑み込みながら押し寄せてきていた。四方から押し寄 せた蜜味の唾液は、集団が逃げる暇を与えず――濁流と化してその場所を一気に呑み込んだ。
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