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【PSU】新ジャンル「パシリ」十七体目



1 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/09(月) 20:36:42 ID:OtBeaGGu]
合言葉は

  ( ゚д゚ )<倫理的におk      
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
  \/     /
     ̄ ̄ ̄
[ ´・ω・`]<創作能力がしょぼいんだけど投下していいの?
( ゚д゚)<倫理的におk 尋ねる暇があったら投下マジオヌヌメ

[ ´・ω・`]<凄く長くなったんだけどどうすればいい? あとパシリ関係ないのは?
( ゚д゚)<空気嫁ば倫理的におk 分割するなりうpろだに上げるなりするんだ

[*´・ω・`]<エロネタなんだけど…
( ゚д゚)<ライトエロなら倫理的におk あまりにエロエロならエロパロスレもあるよ
ファンタシースターユニバースのエロパロ 2周目
yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173107109/

[ ´;ω;`]<叩かれちゃった…
( ゚д゚)<叩きも批評の一つ。それを受け止めるかどうかはおまいの自由だ
m9(゚д゚)<でもお門違いの叩き・批評はスルーマジオヌヌメ するほうもそこを考えよう

[ ´・ω・`]<投稿する際に気をつけることは?
( ゚д゚)<複数レスに渡る量を書きながら投稿するのはオヌヌメできない。まずはメモ帳などで書こう。
m9(゚д゚)<あとは誤字脱字のチェックはできればしておいたほうがいいぞ

[ ´・ω・`]<過去の住人の作品を読みたいんだけど
( ゚д゚)<まとめサイトあるよ ttp://www.geocities.co.jp/nejitu3pachiri/
保管庫Wiki ttp://www21.atwiki.jp/nejitu3pachiri/

( ゚д゚)<前スレ
【PSU】新ジャンル「パシリ」十七体目
changi.2ch.net/test/read.cgi/ogame3/1217500708/
( ゚д゚)<次スレは容量が470kを超えるか、>>800を超えた辺りから警戒しつつ立てよう

28 名前:徹夜の裏事情 1/1 mailto:sage [2009/02/14(土) 22:27:22 ID:4OEitpSb]
何時の世も、被害者が存在する。

413 「これで、これでいいかしら!?」
412 「…いいんじゃないですかぁ?(ペロリ)」

これでもう何回目の確認になるか分かった物ではない。
この413、主人にプレゼントするチョコレートを作る事にしたらしいが…。

413 「そんな雑な確認方法じゃ自信が持てないわ!
     もっと、もっと念入りにお願い! 詳しく説明を!」
412 「だから、その他色々含めてこれでいいと思いますって…」

412も最初は丁寧に感想などを述べていた。
しかし、事ある毎に主人の味の好みを思い出したかと思えば作り直しが決定される。
そして完成すればまた振り出しに戻る…流石にこの終わらぬマラソンに飽き飽きしていた。

時計は既に夜明けを指している。
実はこの2人、もう既に昼頃からずっとこの調子だ。
突然413が訪れてきたかと思うと、貴方しか頼れる人がいないと412にすがり付いて来たのだ。
同居人が2人いるが、どちらもライバル。その上知人はほとんどいやしない。
ともなれば、既に別に意中の人アリの412が相談役として適任だったというわけだ。

413 「そ、そうかしら? そうよね、これだけ頑張ったんだから…」
412 「(…はぁ〜、ようやく終わるかなぁ? ふああ…)」

そう、412が何度目になるか分からない安堵の息をついたのも束の間。

413 「…ちょ、ちょっと待って!? もしかしたらあの450…私の知らないラスカルの好みを!?
     っく、そうなれば装飾で勝負するしか…ダメ、ダメよこんなシンプルな作りじゃ!
     誠意が篭ってないと思われてしまうわ! 急いでやり直さなきゃ!」

既に数十回にもなる炎の再発を他所に。

412 「………すぴ〜」

そう、被害者は何時の世も存在するのだ。

29 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/15(日) 06:31:51 ID:4GGKouCm]
GH-413「>>28にある様に私がこれだけの労力をかけたのよ、感謝なさいマイマスター(ラスカル)」
ヒュマオ「そういう裏話を自分で言っちゃいますかあなたは」
GH-413「ここは舞台裏だから良いのよ」
ヒュマオ「さいですか・・・しかし誰のPMなんだ?今度お礼にでも行かないとな」
GH-413「秘密よ」
ヒュマオ「なんでだよ」
GH-413「世の中には知らない方が良い事もあるのよ」
ヒュマオ「なんだそりゃ」

30 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/16(月) 01:22:20 ID:IzoZ1P8O]
誰か、16体目のログと箱の外伝をください……

31 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/16(月) 04:49:38 ID:wqmz0wwj]
>>30
十六体目のログなら、完全か分からんが516くらいまでならあるわ
必要ならテキストとかにコピってPSUアプロダにUPしとくぞー

あーネタが途切れた畜生

32 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/17(火) 04:20:49 ID:gSIUOYhZ]
ネタはあるんだけどシリアス系か…と尻込みしてたりする
ほぼPMが関係無かったり…
シリアスは嫌いじゃないけどコメディのが好きなんだよなあ
そんなヒュマオとGH-413作者の独り言

33 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/17(火) 18:33:23 ID:5DK76P12]
>>31
PSUロダを知らない自分は負け組

ここのロダがどこにあるのか。(画像ロダは見つけた)

34 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/18(水) 03:35:21 ID:2G6YHSTz]
>>33
そんなお前さんにPSUロダのアドレスごと十六体目のログを

ttp://www.psuxxx.info/uploader/upload.cgi?mode=dl&file=754

キーはpasiri、中に入ってるテキストの拡張子をそのままhtmlに変えればここと同じように見れる

35 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/18(水) 05:27:55 ID:1+KT6K/8]
>>35
すまないねぇ……。これで空白が埋められるよ。

36 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/18(水) 08:59:42 ID:vaWx1RLw]
>>34
gj
久し振りでつい一気に読んでしまった
これから寝ずに仕事行ってくる!!!!



37 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/18(水) 23:55:47 ID:PifNYrfi]
うほ、PSUに新ジャンルのスレがあったとは…
>>34ありがとう。前スレ見れて楽しかったよ。

38 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/19(木) 01:08:13 ID:ZjXBZ5Pk]
>>37
すまない、ここは本当は18スレ目なんだ

39 名前:名無しオンライン mailto:sage sega [2009/02/19(木) 01:44:47 ID:KukQjLvH]
>>38
あぁ、ホントだw
スレ立てミスか、まあ細かいことは気にしない。

40 名前:『進化』の力 前編 1/6 mailto:sage [2009/02/19(木) 04:49:22 ID:SunP2p87]
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。

特に何もない日、私はお洗濯や洗い物を済ませていました。
この後は食材の買出しに、お茶菓子の用意と、何もなくてもお仕事は一杯です。
お茶っ葉とお茶菓子の消費が早いせいで出費もかなり嵩んできているのが最近の悩み。
ほんっとにあの人達、少しは自分達の部屋で過ごそうと思わないのかな…?

そんな風に頭を痛めていると、ご主人様が出かける準備をしていました。

412 「ご主人様、お仕事ですか?」
主人「いや、ラガンの巣に行く」
412 「ラフォン草原に?」

ああ、何かあったのだと私はすぐに確信しました。
ご主人様にとって、ラガンの巣は何かあった際の修行の場でもあるんです。
スピニング、グラビティブレイク解禁時も、すぐに篭って即座に極める程です。
恐らくソード絡みで、ご主人様の身に何かあったのでしょう…。

こういう時は私もお手伝いに向かう事になっています。
勿論、道中までの雑魚散らしもありますが、修行中はキャンプ生活になります。
もしもの事がない為にも、私が同行してお食事の用意をしたりするのです。
…だって、そうでもしないと毎晩カップヌードルになりかねない環境ですよ?

412 「分かりました、私もすぐに用意しますね」
主人「留守にして平気か? ガサ入れは御免だぞ」
412 「多分いてもいなくても同じです」
主人「そんな何かを悟ったような諦め半分の遠い目をされてもな」

ああ、日頃の苦労が表情に出てしまう…。
私達の部屋は何時の間に、無料の喫茶店になってしまったんでしょう…。
キャンプ生活とはいえ、少しの間でもその状況から解放されると思うとほっとします。
けどその代わりにガサ入れの覚悟をしなきゃならないんですよね、全く。

私は身支度を整え、422さんへの書き置きも済ませ、既に部屋の外にいるご主人様に追いつこうとしました。
…おっと、その前に忘れちゃいけない事がありましたね。

412   「えい、留守の間の分の清め〜っと」
EX主人「わ、ちょっ、ちょっと! 痛! 痛い! やめなさい! やめてお願い!! お肌が!!!」
EX412 「こっ、こら! 悪霊みたいに扱うんじゃ…あいたたたた! 染みる!! かぶれる〜!!!」

41 名前:『進化』の力 前編 2/6 mailto:sage [2009/02/19(木) 04:50:24 ID:SunP2p87]
- シャトル内 -

それにしても、最近は大規模な変更もなかったのに、ご主人様はどうしたのでしょう?
最近ご主人様自身で変わった事といえば〜…ああそうだ、GPSに行ってました。
GPSと言うのはガーディアンズ・パーティースコアリングの略称です。
経営危機まっしぐらのガーディアンズの苦肉の策で、協力任務で好成績を収め続ければボーナスがもらえます。
そのボーナスとは今までと全く変わり映えのしない、エステ無料だとか粗品だとか高性能合成プログラム貸与とかです。
要するに、受諾するのが普通の任務から既存の協力任務に変わりました、と言うだけです!
何処の企業も経営が行き詰ると同じ事しかしないそうですが、見事にその末路を辿ってますね。

そういう催しに全く興味のないご主人様が何故GPSに参加したのか?
それは小ビス子さんのフウ・リン作りを手伝ったのが切欠で、また手伝ってほしいと頼まれたのです。
いざ行ってみれば最低難易度、その上あの無礼極まりない真・劣等種たるあのヒューマン。
あのボンクラめ、またご主人様に言いがかりをつけたのかしら!? それなら今度こそ仕留めなきゃ…。

うーん、でもその日はそこまで思い詰めた顔で帰って来てませんでしたね。
「カードを渡さん主義は説明が面倒だ」とは言ってましたが、カードとソードは全然関係ないですし。
430さんの監視カメラのおかげで、その後に新しくヒューマンの男性が入ってきてたのは知ってます。
でもその人は良くも悪くも目立たない人、何かを隠している感じこそしたけど揉め事はなかったような?
…むむ、さっぱり分かりません。やっぱりあのボンクラのせいなのかしら。

主人「何を拳に殺気込めてるんだ、まだ到着もしとらんぞ」
412 「え!? いや、これはその〜、ちょっと転んでばかりの時を思い出しまして!」
主人「あ〜…いい時代になったな」
412 「…そうですね、普通とは言い難い酷さですが、あの頃に比べれば…」

あの頃とは、ガーディアンズが本格的に人材募集を始めて新人達が溢れかえっていた頃です。
様々な不手際で最初の時点で5割の新人に辞表を叩きつけられたという、前代未聞の不祥事もありましたが
残った5割の新人ガーディアンズ達で、今よりももっともっと賑わっていました。
私達パートナーマシナリーも、仕組みが全く解明されておらず、色んな固体が生まれました。
思えばあの頃こそ、ガーディアンズの最盛期だったのかもしれません。
何せその後、契約金徴収開始でまた半分以上のガーディアンズが辞めてしまいましたから。
そして残されたパートナーマシナリーの数多くも、異動先が決まらず処分されていきました…。

412 「色んな事がありましたね、あの草原も」
主人「そうだな、まさか居候が出来るとは思わなかった」
412 「おかげで食費は上に伸びていく一方です」
主人「思えばあれ以来か、客人が増えていったのは」
412 「じゃあ、422さんは招き猫だったんでしょうか?」
主人「誰が上手い事を言えと言った」
412 「いたっ、いたたたた…強く撫ですぎですよぅ」

そんな楽しいお話の時間に、終わりを告げるアナウンスが機内に響きました。

「間もなく惑星パルムに到着します。シートベルトの着用、及び座席テーブルの収納を…」

42 名前:『進化』の力 前編 3/6 mailto:sage [2009/02/19(木) 04:52:01 ID:SunP2p87]
- ラフォン草原 野営基地 -

412 「おーばーえんど?」
主人「そうだ、そいつを会得するのが今回の目的だ」

皆さんもご存知だとは思いますが、オーバーエンドとは失われた大剣技術の1つです。
ガーディアンズ設立後、「ZERO」という文字が刻まれた映像ディスク、「ディスク・ZERO」がレリクスより発掘される様になりました。
ディスク・ZEROに写っている戦闘技術は、当時のガーディアンズにとってはとても衝撃的な物でした。
その技術をガーディアンズが独自に復元したのが、私達が今使っているフォトンアーツと呼ばれる物です。
最も、ディスク・ZEROの戦闘技術を完全復元させる事は不可能だったようで、大分劣化してしまっていると聞きます。
一部例外もあるそうですがね…ちなみに大剣で最初に復元されたのはお馴染みトルネードブレイク。
これはZERO文字、通称コード・ZEROで「ダイナモスピン」と書かれていたそうです。

今回ご主人様が会得しようとしているオーバーエンドは、グラビティブレイクの元となった物です。
限界までにフォトンリアクターの出力を上げ、過剰放出されたフォトンで一気に敵を薙ぎ払うとても豪快な技です。
言葉に書けばヨウメイ社なら出来そうな事ですが、流石のヨウメイでも過剰放出と威力の両立は不可能だったらしく
威力のみを再現させた劣化版、現在のグラビティブレイクとなったわけですね。

実際のオーバーエンドは、ヨウメイ社最新鋭技術のゲキツナアタよりも強大な刃を発生させて
グラビティブレイクの破壊力で複数の敵を一気に叩き斬ると言う、正にソード使いが待ち望んでいる技。
SUVウェポン、ギガス・エスパダでようやく再現が可能な物であり、会得はほぼ無理だと思われます…。
でも、ソードの事となれば黙ってはいないのが私のご主人様です。

主人「何かコツがあるはずだ。それを掴めば何とでもなる」
412 「普通の武器にSUVウェポンの真似って、無茶すぎませんか…?」
主人「それを何とかするのがソード使いとしての責務だろうが。
     マジャーラに出来て俺に出来ぬはずがない!」
412 「うーん、そう言われると可能な気がしなくも…」

そう、例外とは正にドゥース・マジャーラの事です。
これはコード・ZEROで「スピアライダー」と「スピードレイン」という2つの技を合体させた無茶なPAです。
威力と使い勝手は皆さんご存知の通りですが、あまりの無茶ぶりに完成がかなり遅れたそうです。
確かに、劣化ではなくむしろ改良されてしまったマジャーラの事を思えば出来なくもないかも…。
でも本当に出来ちゃったら、GRM涙目ですよね。開発部門が普通の人に負けちゃうんですから。

主人「そういうわけだ、手続きを終えたら早速ラガンの巣に向かうぞ」
412 「はい、それじゃあ私はベースキャンプの手続きをしますねー」

修行の際には必ず何か、事件みたいな物が起こります。
今度こそは何もない日でありますように…その私の願いは届くのでしょうか?

43 名前:『進化』の力 前編 4/6 mailto:sage [2009/02/19(木) 04:53:46 ID:SunP2p87]
*ぎゃおおおおおおおおおおおお!!*

主人「どぅえい!」

*ずがっ!! ぎぃぃぃっ!!*

猛々しく吼えるラガンも、ご主人様のグラビティブレイクの威力に顔を歪めるばかり。
私は寄ってくるコルトバを武器で威嚇し、他に追い払う役目をしながらそれを見つめてました。
…やっぱり、真剣な時のご主人様は誰よりもカッコイイなぁv

今回の会得までの作戦は以下の通りです。
オーバーエンドは大量のフォトンを発生させて叩き斬る攻撃、現存武器では連発はほぼ不可能です。
そこでご主人様は、グラビティブレイク命中の瞬間にカン・ウーのリミッターを解除させて
一気にフォトンを放出させ、擬似的なオーバーエンド状態にさせようと考えたのですね。
勿論PPが全て空になる上に、半端な出力(属性)の武器では過剰出力に耐えれなくなるという荒業。
フォトンチャージの大量消費も考えると、とてもではないですが実用的とは言い難いです。
…でも、ご主人様曰く「そこに浪漫がある限り、人は挑戦する」と。

主人「ええい! 命中の瞬間が毎度毎度ブレる…!」
412 「…武器の耐久も考えると、1秒以上の誤差も許されないみたいです」

私は調査用のノートパソコンをカタカタと鳴らしてました。
ご主人様も凄腕のソード使いとはいえ、やはりその時その時で剣を振る速度などはかなり変わってきます。
そしてエネミーの体格等を考えると、タイミングはその都度変わっていくという条件の厳しさ。
流石のご主人様も上手く行かず、疲労とストレスが溜まり始めて行きます。
私はそれを、ただ見守り応援するしかありません。これはもう、勘の世界なのですから。

次々とラガンが倒れていき、日が暮れ始めました。

412 「ご主人様! 今日はもう止めましょう!」
主人「ぜっ…まだまだ行ける! …ぜっ…」
412 「まだ初日ですし、焦る事はないです!
     明日に備えて、もうゆっくり休みましょう…」
主人「…ぜぇっ…全く、手強いな…」

私達は野営基地に戻ると、まず最初に売買仲介人の元に行きます。
ラガンの尻尾は珍味として有名なので、食品関係者にとっても高く売れるんです。
手数料を取られたとしても、今までのお茶菓子が原因による大量出費がチャラになるほど!
修行がしばらく続く事を考えると、少し下がり気味だった家計もようやく復活の目処が立ちます。
だからって、あの人達が毎日毎日たかりに来ていいわけじゃないんですけどね!

女帝    「ぃっくし! …ヤキが回ったねェ、カゼかい?」
女帝主人「マシナリーは風邪を引きませんよ」
女帝    「相変わらず手痛いねェ。…ふむ、今夜は熱燗と洒落込むかィ」

413    「…っくしゅ!」
450    「あーら、風邪ですか? バカは風邪引かないって言いますのにねー#フフン」
413    「そんな嘘話を信じる貴方の方がよっぽどバカじゃない?#ハン」
450    「な、何ですってー!」
ヒュマオ「ほらほら、ケンカするな! またお隣さんに怒られる!」

44 名前:『進化』の力 前編 5/6 mailto:sage [2009/02/19(木) 04:55:03 ID:SunP2p87]
412 「ご主人様?」
主人「…何だ?」

暗い灯火の中、カン・ウーを磨きつつ難しい顔をしているご主人様。
あまり良い結果が出せなかった事が悔しいのでしょう…。
私はお茶を傍らに置き、恐る恐る尋ねてみました。

412 「どうして、オーバーエンド習得なんて無茶を?
     …また、ソードを使っている事を馬鹿にされたんですか?」
主人「そんな下らん理由じゃない、そもそもそんな機会もないしな」
412 「でも、こないだGPSに行っていたじゃないですか。
     あの失礼なヒューマンに、色々と悪口を言われたんじゃ…」
主人「ああ…小ビス子を気遣ってか、あの日は黙り続けてた」

そうなんだ…。
あの2人、仲が良いのかな? 430さんが喚くって事は仲が良さそうだけど。
少なくとも、プロポーズと婚約のコンボに辿り着くまでは進展してなさそうです。
そもそも、小ビス子さんが430さんの存在を差し引いても、その2つの文字と縁がありそうには見えません。

412 「…それじゃあ」
主人「ソード使いとしての意地を、俺も証明しようと思ってな」
412 「そんな、ご主人様は日頃から証明されてるじゃないですか!」
主人「…412、世の中は広くてな、様々なソード使いがいる。
     そういう奴等は無謀な挑戦に挑んで、勝って、不動の地位を手に入れてる。
     所詮どんなに自分で言おうと、形に残せなければ何も意味がない」

そう…今のガーディアンズにはごく少数の玄人と、物好きな新参者しかいません。
前者は退屈な日常に嫌気が差し、1つの武器だけでエネミーを撃破するという無茶な挑戦に挑みます。
あるいは、日の目を見ない不人気職業で無謀な挑戦に挑んだり…。
そしてその成功を収めた映像を、ネットワークを利用して閲覧サイトにアップロードしているのです。
勿論、その動きが素晴らしければ、他にどんな人がいても「○○職業、○○使いに××あり」と言われるのです。
今日で有名なのは職業はアクロファイター、ガンテクター、武器はツインセイバー使い、ソード使いもチラホラ…。

412 「でも…例え形に残せなくても、私にとってご主人様は誰にも負けないソード使いです」
主人「男のつまらん意地と見栄だ、深く考えない方がいいぞ」

ご主人様は笑いながらそう仰いますが、私はそれだけとは思いませんでした。
ソード使いの意地ならともかく、ご主人様は変に目立つ事をあまり好まない御方です。
きっと、私には言えない事情があるのでしょう…私はそれ以上の詮索を止める事にしました。
ご主人様がそれを望むなら、私はそれを叶える為にお手伝いをしたいから。

45 名前:『進化』の力 前編 6/6 mailto:sage [2009/02/19(木) 04:56:08 ID:SunP2p87]
- 数日後 -

主人「そりゃあ!」

*ぎゅええええええ…ずしぃぃぃぃぃん*

数十匹目のラガンが地面に倒れていきます。
あれから何度もご主人様はリミッター解除のタイミングを計り続けていますが…。
結果はどれも失敗、コンマ1秒の世界への到達は並大抵の難易度ではありません。

主人「くっそ…ここまで厳しいとはな!」

今日も既に何匹になるか分からないほどのラガンを倒しているご主人様、疲れが顔に出ています。

412 「ご主人様、そろそろ休憩にしませんか…?」
主人「…そうだな、一旦休むか」

私はお茶の入ったポットを手に取り、ご主人様に駆け寄りました。
何匹目か分からないと言っても、修行開始が早朝だったので実はまだお昼頃なんです。
私の腰元には、サンドイッチが入ったお弁当箱が。

主人「一度判明すれば、後はどうにでもなるんだがな…」
412 「ご主人様、カン・ウーの状態は大丈夫ですか?」
主人「それは問題ない、お前が自信作と言っただけのタフネスだからな」
412 「良かったぁ、壊れたら何時でも言ってくださいね」

えへへ、武器を褒められると作った甲斐ありですv
ご主人様はアギトが気に入らないという理由だけで、無数のカン・ウー基板を手に入れ続けてます。
スヴァルタスソードもあると言ってみた事がありますが、とてもゴルダニアが持たないと返されました。
その為、ご主人様のメイン武器はほぼ全ての属性で出力40%以上のカン・ウーなのです。

主人「ふぅ、腹減った」
412 「今日は疲れた時に効果がある物を使ったんですよ〜」
主人「どれどれ…」

*ぱくっ*

主人「ぬっ、キーンと来るな。何使ったんだ?」
412 「実は隠し味にマッド・トリュフを使ってあるんです」
主人「何を使ってるか! …しかしイケる」
412 「頭が冷えて、きっといい結果が出せるかもしれませんよ!」
主人「だといいがなぁ…」

お茶を飲みながら、ご主人様は空を仰いでました。
…もし、本当に星霊がいるなら、どうかご主人様に良い結果を。

46 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/19(木) 05:00:28 ID:SunP2p87]
長くなりそうなんでひとまずここまで
ZEROとか動画とか好き放題しちまってるが、後悔はしてない!
オーバーエンドいいよオーバーエンド、ミリアスブレイカーいいよ

>>35
>>36
役立ったようで何よりだわ

>>39
そこだけはほんとゴメン間違えた。見てると吐き気がしてくるなその間違い



47 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/19(木) 08:49:59 ID:PsgfusZk]
>>46
合言葉は倫理的におk
続き楽しみにしてるよん

412を借りようと思ったら修行に出かけちゃった!

48 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/19(木) 14:33:51 ID:QltUmSvw]
>>46
そんなんで吐くな、気にすんな
せっかくパシリが合成してくれたモノメイトがもったいないぜ

49 名前:アンケート 1/2 mailto:sage [2009/02/19(木) 15:08:02 ID:QltUmSvw]
野良で出会ったパシリから、こっそり主人についてアンケートとってみた。

●GH-410(主人:キャスト♂)
 呼び方:マスター
 呼ばれ方:おい
 扱い:ブロック開始時に支援4色、以降は戦闘不能時もほったらかし
 満足度:☆☆☆
 ひとこと:
  「そうですねー。頭を叩くのを止めてほしいです。
   他は概ね他ガーディアンと変わらない扱いだと思います。」

●GH-413(主人:キャスト♀)
 呼び方:お姉様
 呼ばれ方:名前、もしくはそのペット系アレンジ
 扱い:オプション
 満足度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 ひとこと:
  「あのおみ足でお蹴り頂ける瞬間がたまりません!
   私を見下ろすあの冷たい視線、私を罵倒するあの残酷な言葉、それなのに
   私を破壊しない様計算し尽くされた、優しさと心遣いに満ちたおしり蹴り!ああ!
   実際に宙を舞いながら、私ってば天にも昇る気持ちなのですわ!」

●GH-420(主人:ヒューマン♂)
 呼び方:おい
 呼ばれ方:ポコ
 扱い:対等な友達関係
 満足度:☆
 ひとこと:
  「終わったら呼ぶからブロック1の入り口で座ってろつうのに、何故かついてくるポコ。
   すぐ死ぬからミッション中はぶっちゃけ邪魔ポコ。安心して任せられるのは
   買い物と武器のPP補充くらいポコ。こないだなんかリニアラインに乗ってて
   揺れて転んだ拍子に死んだ時は、何が起きたか一瞬分からなかったポコ。」

50 名前:アンケート 2/2 mailto:sage [2009/02/19(木) 15:08:29 ID:QltUmSvw]
●GH-430(主人:ヒューマン♀)
 呼び方:ご主人さま
 呼ばれ方:型番の数字、ときどき名前
 扱い:子供?
 満足度:☆☆☆☆☆
 ひとこと:
  「いっつも優しくしてくれて、ありがとうございます!
   私、ごしじんさまのパートナーでよかったです!」

●GH-431(主人:ニューマン♂)
 呼び方:名前
 呼ばれ方:ご主人様
 扱い:お嬢様?
 満足度:☆☆☆☆☆
 ひとこと:
  「そうですね。大体何でもそつなくこなすので不満はありません。
   時折気の利かない事もありますが、指示してやればその通りに動きます。
   近頃は多少気遣いも覚えた様ですね。」

●GH-440(主人:キャスト♂)
 呼び方:呼んだ事がない
 呼ばれ方:お嬢様、??様
 扱い:女帝
 満足度:−
 ひとこと:
  「油断するとすぐ近付いてくるのでPPがもたない。」

450型を連れているガーディアンズには出会えなかった。
抜けている型、同型問わず報告あれば求む。

51 名前:最低の主人(前編) 1/3 mailto:sage [2009/02/19(木) 20:35:15 ID:+EYlDRSY]
「答えろ。武器ってぇのは、何のためにある」

またこの話か。
私に武器合成をさせてくれと言う度に、決まってそんな問いかけをしてくる。
私のデータベース内に格納されている、武器に関するどんな情報を引き出しても、
この最低の主人は「分かってねえ」の一点張りだった。

何も分かってないのは、この年老いたガーディアンの方ではないか。
私にPMとしての仕事を何一つさせず、ろくな戦果も上げてこない。
当然財政は常に火の車で、私に餌の一つも与える余裕すらない。
もっとも、余裕があったとしても同じことだろうが。

この、時代に取り残された古い頭の主人は、PMがPMなりの意思を持った、
ガーディアンのパートナーだということを理解していない。
彼の言う「けったいなカラクリ」が食事をする、という概念すら分かってないだろう。

そう。私はGH-101。
この最低の主人について以来、一度も食事をしたことのない、初期状態のままのPMだった。

この年老いた主人。ガーディアンの適齢期をとうに過ぎていたが、体つきはがっしりしたもので、
健康上の問題も特にない。
ただ、とにかく考え方が古めかしいというか、頭が固いのだ。

この間も、ビジフォンでGRMの新しいフォトン製の武器が紹介された途端に怒り出し、
こいつらは何も分かっちゃいねえ、と繰言を聞かせてくる。
そんな主人が何を使っているかというと、今や時代遅れになりかけている金属性の武器。
当然使う度に刃こぼれがするが、主人は何時間もかけて刃を研ぎなおし、使い続けているのだ。

GRM社がフォトン製の武器を発表して以来、武器の形態は急速に変化していった。
実体を持つ金属性の武器は刃こぼれもすれば、折れることすらある。
しかしフォトン製の武器は、エネルギーの供給さえ怠らなければ、いつまでも新品同様の切れ味を保つのだ。
ガーディアンがどちらを好んで使うかは、言うまでもないだろう。

大方、フォトン製の武器の取り扱い方法を習得できず、
今の武器に対する文句を並べ立てることで自己を保とうとしているのだろう。
そう考えると、時代に取り残された主人が哀れでもある。
もちろん、それに付き合わされる自分としては、哀れんでばかりもいられないのだが。

52 名前:最低の主人(前編) 2/3 mailto:sage [2009/02/19(木) 20:35:56 ID:+EYlDRSY]
「武器とは何か。あの主人の満足する答えとは、一体…」
主人のいないマイルームで、私は答えを探し続ける。
仕事を与えられない以上、私にはそれぐらいしかすることがないのだ。

もっとも、部屋にいるのは私一人ではなかった。

「ね〜、タマちゃん。おじいちゃん、まだ帰ってこないの?」
主人の、孫娘だった。
度々訪れるので、私ともすっかり顔なじみになっている。
なお、「タマちゃん」とは私が丸玉の形態であることからつけられたあだ名で、公式名ではない。

私の前では眉間に皺を寄せた気難しい顔ばかりの主人も、この孫娘には滅法甘い。
気持ち悪いほどの笑顔でいつも、自分の「戦果」を喜々として語り聞かせるのだ。
戦果といっても、あの民間人の護衛をやり遂げたとか、この民家の財産を取り戻したとか、
ともかく戦果と言うには余りにこじんまりとしたものであった。

普通の優秀なガーディアンであれば、名の知れた原生生物(例えばディラガン)をどのくらい討伐したかを
語れそうなものだが、古い武器しか使えない主人には当然そんな偉業は無理な話である。
それでも、この屈託の無い幼女は瞳を輝かせて主人の話に聞き入るのだ。

まだ年端もいかないから無理も無いが、落ち着きの無いことこの上ない。
マイルームのあちこちを走り回るので、私は自分の考えをまとめることもできない。
そろそろ注意の一つもしようかと近寄ろうとした、その時だった。

孫娘が勢い余って、武器の格納してある棚に体をぶつけていた。
その拍子に、槍やら斧やらの束が一斉に彼女目掛けて倒れかけてきたのだ。

大人ならともかく、幼子ではあの重量級の武器の束に押しつぶされかねない。
私は咄嗟に飛び込んで、彼女の盾になってやった。
初期状態のPMとはいえ、倒れ掛かる重量級の武器の何本かに押し潰されるほどヤワではない。
私の球状の体を左右に滑り、武器の束は彼女を避ける形でその左右の床に倒れていった。

「ありがと〜」
屈託ない笑顔でお礼を言う孫娘には、後一歩で大惨事になっていたことが分かっていると思えなかった。
それでも私は嬉しかった。
生まれてこの方仕事の一つもなかった私にも、人一人の命を救うことができたのだ。
例えそれが、倒れこむ武器を体で止めるといった、単純な内容でも…

そこまで考えた途端、私のデータベースに何かが引っかかった。
それが、主人の求めた答えであると推測されるのに、そう時間はかからなかった。

53 名前:最低の主人(前編) 3/3 mailto:sage [2009/02/19(木) 20:36:34 ID:+EYlDRSY]
「答えが、分かっただと」
いぶかしげな主人の鼻を明かす機会を得た楽しみを必死に抑え、私は説明を始めた。

「武器とは他でもありません。『武』の文字通り、『戈』を『止』めるための器です。
『戈』とはすなわち古代に使われた武器。それを『止』めるということは…。
他の武器から自分、或いは自分に近しい大切な存在を守ることを意味す」

そこまで言った私は、主人の無骨な手で思い切りはたかれていた。
「調子に乗るんじゃねえ、このポンコツ」
主人の口が悪いのは、今に始まったことではなかった。

「てめぇの言ったのはな、あくまで理想論だ。現実はそんなあまっちょろいもんじゃねえ。
それこそてめぇが前に答えたような『敵を切り刻むため』としか考えねえ輩がごまんといる。
そいつをしらねぇで軽々しく『守る』なんて口にする奴ぁ、すぐにおっ死んじまうもんだ」

では、どう答えればいいのかと、たまりかねて文句を言いそうになる私に対して、一言。
「だが、悪くねえ。考え方はな」

怒鳴る、文句を言う、こき下ろす。それ以外の言葉を私に対して放つのを、初めて聞いた。
主人に関するデータの更新が追いつかないほど、その変化は唐突だった。

「いいか。てめえは今、ようやく武器の何たるかの入口に立ったんだ。
厳しいのはここからだ。これからは、この俺がびしびし鍛えてやるから覚悟しとけ」
そう言って、いそいそと倉庫から鍛冶道具を取り出す主人の顔は楽しげだった。

「あの…私はそのような道具を使わずとも、素材さえあれば」
「馬鹿野郎っ手間暇かけて打ち込んだ武器でなしに、どうやって『守る』なんて口にできるもんかよ。
代々鍛冶屋だった俺が言うんだ、間違いねえ」

なんというか、もう呆れて口もきけなかった。
この最低の主人は、どこまで私の、PMとしての存在意義を否定すれば気が済むのだろう。
もっとも。

「おう、忘れてたぜ。…その、なんだ。……孫を助けてくれて、ありがとな」
この主人は、私をPMとしては完全否定していても、いわゆる『相棒』としては。
私の思っていたほど、認めていないわけでは無かったのかもしれない。

最低の主人。でも、どことなくほおっておけない主人。
そんな主人をようやく理解しかけ、好きになりかけてきた頃。
別れは、余りにも唐突にやってきた。

54 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/19(木) 20:45:32 ID:+EYlDRSY]
流れを読まない雰囲気の内容で申し訳ありませんが、
久しぶりに投下してみました。
お目汚しだったらごめんなさい。

55 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/20(金) 02:07:44 ID:Khj01IwK]
>>54
倫理的におk
職人気質なガーディアンも渋くて良いな

56 名前:『進化』の力 後編 1/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 03:50:37 ID:g7zzHE7e]
*ぎゃあおおおおおっ!*

主人「な、何だ!?」
412 「ご、ご主人様! 上を!」

憩いの時間を終わらせる突然の咆哮は空から。
今、崩れ落ちたラガンのそっくりさんが口元に大量の炎を帯びながら落ちてきてます!

主人「ちぃっ!」
412 「緊急収納! ハンゾウ、緊急射出!」

*ひゅばっ! どっしぃぃぃぃぃぃぃん!!!*

私達は何とかその場から離れるも、ラガンが巻き起こす地響きに転がり飛ばされてしまいました。
お互い、違う方向に飛んでいたので、離れる様に…。

412 「あ、あいたたた…」

私は射出されたハンゾウを杖に、何とか立ち上がりました。
幸いにも草原だったので、転げた事による擦り傷や石ころによる切り傷は何もなし。
服を払うのも後回しにしてすぐさま構えるも、私の前にラガンの巨大な身体はありません。
…どうやら、ラガンの狙いは私ではなかったようです。

私以外に、その場に存在するヒトは、ご主人様だけ。
ラガンは確実にご主人様を狙っている…! 間違いない!

412 「ご主人様!?」

すぐに周りを見回すと、奥の方にラガンと対峙するご主人様が。
ご主人様は疲労状態が祟り、まだ武器を構えてもいない状態です。
…致命傷は、避けられないかもしれない!

*ぐぅぉぉぉぉおおおおお!!*

ラガンが大きな口を開いて、既に漏れつつあった炎を一斉に吸い込み始める!
…倒されたラガンと何か関係を持っていたらしく、ラガンの瞳は怒り一色!

主人「くっそ…!」

ご主人様がカン・ウーを手に持つも、回避までには間に合わない!
間に合わないのは明白、だけど私の足は既に全力で走る事を始めていました。
精一杯走りながら、ハンゾウを真上に構えて…!

412 「(間に合え…! 間に合って…!)」



57 名前:『進化』の力 後編 2/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 03:52:09 ID:g7zzHE7e]
………。

Photon Arts Learning System
Ready for start.

私の頭の中に、突然見た事もない文字が浮かび上がりました。
…フォトンアーツ・ラーニングシステム?

Skill name..."OVER END"
Searching how to use...Please wait.

オーバーエンド…?
ご主人様が覚えようとしている名前が、何故私の頭の中に?
ラーニングって、私がこれを覚えようとしているの?

...done.
Spinning Break & Limitter release
Creating "OVER_END.exe"...complete.

…その瞬間、私の頭の中に様々な情報が流れ込んできました。
スピニングブレイク、フォトンリアクターのリミッター解除、解除タイミング、過剰出力用リアクター直結。
この情報の通りにやれば何が起こるかなんて、その時の私には想像もつきませんでした。
冷静になれば分かっていたでしょう。けど私は、ご主人様を助ける事が最優先!
無我夢中で、遠く離れたラガン目掛けて、届きもしないスピニングブレイクを放つ!

*ぐるぐるぐるっ*

身体がジャンプで到達できる最大地点に到達!
私は手から、私自身のリアクターとハンゾウのフォトンリアクターを直結させました。

412 「リミッター…解除ォッ!!」

その瞬間…。

*じゃきぃぃぃぃんっ!!*

手で持ち続けるのが厳しいほどの過剰フォトンがハンゾウから噴出されました!
その過剰フォトンはハンゾウの刀身を包み込む所か、更なる長い1つの強大な刃に変化!
後は…打ち下ろすのみっ!!

412 「ぐぅぅぅっ…!!」

かなり危険な状態にあるハンゾウは、持ち続けるのがやっとです。
スピニングブレイクを放つ為の出力向上状態よりも、遥かに多くのフォトンを噴出しています。
そして私は勢い任せの回転状態、もう手で抑え続けるしかないのです。
でも、やらなきゃご主人様が! 精一杯の力を振り絞り、私は刃を一気に叩きつけるっ!

412 「いっ…けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

58 名前:『進化』の力 後編 3/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 03:53:20 ID:g7zzHE7e]
*ずっぎゃああああああああああっ!!!!*

強大なフォトンの刃は、ラガンの皮膚に止まる事なく即座に下まで貫通!
ラガンは何が起こったのかを確認しようと首を回そうとしましたが、それが最後の行動でした。
即座にラガンの身体は真っ二つに分かれ、激しい血飛沫と共に支える力を失っていきました。

412 「…ご、ご主人様…っ!!」

私の身体は動きませんでした…。
リアクターをフル稼動させる程の無茶な攻撃が祟り、緊急出力抑制状態になってしまったのです。
必死に身体を起き上がらせながら、ご主人様がその場から離れている事を祈るばかり…。

そして、脇から脱出してくるご主人様の姿が!
辺りをキョロキョロと見回すと、震えながら必死に身体を抑え、倒れこんでいる私の元に駆けつけてくれました。

412 「…ごしゅじんさま、ごぶじで…よかった…!」
主人「412、お前…」

…その時のご主人様の表情は、安堵に満ちた物ではなく驚愕を表していました。
私はようやく、自分のしてしまった事を理解し始めました。
けど、それを考える暇もなく、無茶をした私に待っていたのは、強制スリープ…。

412 「…お……け…が………」

…おい! しっかりしろ! 412、おい!!
うっすらとご主人様の声が頭の中を木霊しながら、私は気を失ってしまいました。

「『進化』の力は見せない方がいい」

前に、450さんに言われた言葉が頭の中に響き、私は起き上がりました。
でもそこはベースキャンプでも、自室のベッドでも、メディカルセンターでもありません。
…私達がいた、ラフォン草原? そんなに時間が経ってないの?
辺りを見回すと、そこには1人の男性とGH-430がいました。

…先程のご主人様と同じように、その男性はラガンに倒されようとしています。
しかし、GH-430の放ったビームガンがそのラガンを一撃の下に粉砕してしまいました。
…もしかしてこれは、450さんに聞いた事のある出来事? まさかあれは、私のよく知る430さん?
でもどうして? 私は430さんの記憶なんて知らないのに、どうしてそれがこうして出てくるの?

…その男性は、笑顔で駆け寄る430さんを驚愕の目で見つめていました。
ダメ、そんな目で見ないで。そんな風に思わないで!
それじゃあ、430さんは売り払われてしまう! そんな事はダメ!

…お願い、止めて! 私達をそんな風に切り捨てないで!

化け物扱いしないで…!!

主人「おい、412!」
412 「………はっ!?」

59 名前:『進化』の力 後編 4/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 03:54:50 ID:g7zzHE7e]
…私は飛び上がり、また辺りを見回しました。
そこは、私達が手続きをした野営基地にある、簡易休憩室でした。
休憩室とは言っても、簡易とある通りにキャンプの中に野戦ベッドが並べられているだけ。

今度こそ、私は本当に目を覚ましたようです。
あの光景は一体なんだったんだろう…どうして私はそんな物を見たのだろう?
分からない事ばかりですが、頭の中にまたあの一言が過ぎりました。

「『進化』の力は見せない方がいい」

私ははっとしてご主人様の方を向きました。
今は、飛び起きた私に少しびっくりしている感じですが、あの時は全然違いました。
まるで、強大なバケモノを見たような感じの驚愕の表情。

…私は、見せてしまった。
本意ではないし、自分でもよく分からないけど、『進化』の力なのは間違いない。
私がワンオブサウザンドと呼ばれる理由を、ご主人様に見せ付けてしまった。
あれだけ450さんに忠告されたのに、わざわざ忠告に来てくれたのに。
私は、やってはいけない事をしてしまったのです。
430さんと同じように、今でも普通なら絶対に成し遂げられないS2級ラガンを一撃で葬るという離れ業を。
私は、それをしてしまった。

412 「ご、ご主人様…」
主人「全く、随分な無茶をしてくれるな」

ご主人様はそう言って、私の頭を撫でてくれました。
でも私は、それを素直に喜べなかった…普段ならとっても嬉しい事なのに。

412 「ご主人様、私…」
主人「今はゆっくり休め、連日の修行でお前も疲れただろ」

私の言葉を遮り、ご主人様は私の身体をベッドに寝かし付けてくれました。
そして洗面器につけていたタオルを絞り、私の頭の上にそっと乗せてくれたのです。
ひんやりとした感触が、私の動揺を落ち着かせるように頭から身体に伝わっていく…。

…それからご主人様は休憩室を出て行かれました。
私は未だに低出力状態でしたが、眠れませんでした。
私はこれからどうなるのか、それを考え出すととても寝る気になれません。

見せてしまった物は仕方ない、全部ご主人様に話そう。
私が一体、何者になってしまったのか。
私が一体、どんな力をこの身体に秘める事になってしまったのか。
そして、私がそんなバケモノになっても、何を一番望んでいるかを。

長い葛藤の末に答えを見つけ出し、私はようやく目を瞑りました。
ぶら下げられた微かに灯るランプの明かりを、感じながら。

60 名前:『進化』の力 後編 5/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 03:58:32 ID:g7zzHE7e]
- 翌日 -

私が起きた頃には、すっかり次の日になってました。
リアクターも通常稼動状態に戻り、普通に動けるまでに私は回復していました。
私は意を決して、ご主人様がいるテントに行こうとしましたが、そうする前にご主人様が来ました。

主人「どうだ、疲れは取れたか?」
412 「はい、ご迷惑をおかけしました…」
主人「次はもう少し手間のかからない助け方をしてくれよ」

ご主人様は微笑みながら、私の顔をつんと突付きました。
…その優しさが、私に全てを話す決意を鈍らせます。
出来る事ならこのまま何も言わず、ご主人様と何も変わらない今までの生活に戻りたい。
でも、あんな力を見せてしまったら、もうこれ以上隠し続ける事は無理。
いずれ聞かれる。そして私はその時、同じように思い悩まなければいけない。
何より、ご主人様にそれまでの間に思い悩んでほしくない…!

412 「…はい、本当にごめんなさい。
     それともう1つ、私はご主人様に謝らなければならない事があります」
主人「例のアレか」

ご主人様は、真剣な顔になりました。
きっと、こうなる事が分かっていたのでしょう。私が全てを話す事を。

412 「…今まで隠し続けてきて、本当にごめんなさい。
     でも、私もよく分からなくて、人から聞いた話を伝える事しか出来ないんです…」
主人「なかなか複雑な事情みたいだな、説明してくれ」
412 「はい、全てをお話します…その前に、場所を移動させてください」
主人「回りに聞かれたらマズいか、それなら滅多に人が寄らない所に行くか」

私達は、結局ラガンの巣近辺に戻ってきました。
ここならば民間人は寄り付かないし、今時のガーディアンズもほぼ近寄りません。
PA訓練も、今はニューデイズに秘密の訓練場がありますから。

そして私は全てをご主人様にお話しました。
私がワンオブサウザンドと呼ばれる異常固体になってしまった事。
私がその異常固体として、どんな力を身に付けてしまったかという事。
私のその力が、どれだけ未知数で危険に思われているかという事。
…そして、私がそれでもご主人様のパートナーでありたいと思う事。
………ご主人様が望むなら、私は喜んで処分されたいと思っている事を。

ご主人様は途中で何かを言ったりせず、とても真剣な顔で聞いてくれました。
昨日のような、バケモノを見るような目をしたり、話の内容に驚いたりもせず。

主人「なるほどな…大体の事情は分かった」
412 「…私はご主人様の意思に従います。
     もし、私が邪魔だと思うなら、本部に返却してもらっても構いません。
     …でも、もし出来るなら、これからも私にパートナーをさせてください…!
     こんな、バケモノになってしまった私ですが…!」

61 名前:『進化』の力 後編 6/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 04:00:52 ID:g7zzHE7e]
主人「俺にとって重要なのはそこではないぞ」
412 「…え?」

私が予想していなかった言葉を返すと、ご主人様は急に私の肩を掴みました。
…やっぱり、ちょっと痛かったです。

主人「お前、あれはオーバーエンドだな?
     俺が習得しようとした物を先に覚えてくれたな?
     主人に対する嫌味か! 人が苦労する中で先を越すとはいい度胸だ!」
412 「そ、そんな! 私はそんなつもりじゃ…!」
主人「しかしこれで分かった事がある。
     パートナーマシナリーであるお前に出来て、俺に出来ん筈がない!
     何時か完成するという事実が判明したのは大きな報酬だな、うむ」
412 「…え?」
主人「だからと言ってやり方を教えるなよ?
     これは俺自身が達成せねばならん問題だ、いくらお前でも助け舟は無用だ!」

え? え?
頭の中がぐるぐるしてます…理解が全く追いついてません。
ええっと、私はワンオブサウザンドと呼ばれるとっても危険な存在で…。
その危険な力をご主人様の前で見せちゃって…ええっと、それで…。
そうだ! その事を今、ご主人様に教えたのでした! 捨てられるのを覚悟で。
でもご主人様は危険の「き」の字どころか、自分もオーバーエンドが必ず覚えられるって…。

ええええええええええ!!??

412 「ご、ご主人様!」
主人「何だ? 助言ならさっきも言ったがいらんぞ!」
412 「そ、そうじゃないです! 私は、とっても危険な存在なんですよ!?
     ライア総裁だって、彼女と親しい教官達だって私の事を危険だと言ってました!」
主人「…ほーう、それで?」
412 「そ、それでって…ご主人様は私が怖くないのですか!?
     だって、ラガンだって一撃で消し飛ばしちゃったんですよ!?
     それに、それに、これからもっと危ない事をしていくかも…!
     ご主人様だって、色んな人から監視される窮屈な思いをしてしまいます…!
     そんな私に、何とも思っていないはずが…!!」
主人「お前な、この間言った事をもう忘れたのか?
     ご主人様の発言を忘れるとは何事だ、ボケ頃か?」
412 「…ね、姉さんとは言われてるけどボケてなんかいません!」
主人「なら思い出してみろ。3、2、1、はい時間切れ」
412 「え、ええっと…って、時間切れ早すぎですよぉ!」
主人「気になる正解はー…」

ご主人様は、私の背中をばしんと叩きながら、笑顔でこう答えました。

主人「俺にとって危険ではないだろ、だ!」

62 名前:『進化』の力 後編 7/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 04:02:00 ID:g7zzHE7e]
主人「ライアにとって危険? 教官連中にとっても危険?
     だからどうした、そいつ等の言う事を聞いていれば世の中は平和なのか?
     現にこの世界はどうだ、エリートハムスターどもが好き勝手暴れ回るわ
     イルミナスは出るわ、日陰者がガーディアンズを裏切ってまた裏切り返す始末だ。
     そんな連中の言う事なぞ、俺には全く関係ない!」

それはとても、ご主人様らしい主張でした…。
その豪気さに、私は心奪われたんです…。

主人「それとも何か? お前はその危険とかいう能力で俺を殺す気か?」
412 「…そ、そんな事は絶対にしません!
     私は、何があってもご主人様のパートナーマシナリーです!」

ご主人様の暖かい手が、私の肩の上に乗りました。

主人「だったらそれでいい。力なんぞ関係ない。
     お前は今まで通りに、俺のパートナーマシナリーをしていればいい。
     それとも何か、まだ文句があるのか?」
412 「文句なんて…そんな…」
主人「何だ何だ、人がせっかくいい話をしているのに湿っぽくなるな」
412 「ご…ごめんなさい…でも、でも…」

涙が零れ落ちました。
私は、どんなに否定しても、ワンオブサウザンドと呼ばれる欠陥品。
その欠陥は、私の意思に関係なく危険と見なされる、いてはならない存在。
誰もが口を揃えて言う、「バケモノ」と言う言葉。

でもご主人様は、私をバケモノではなくパートナーマシナリーと言ってくれた。
私が例え、他の人にとってバケモノでも、ご主人様にとってパートナーマシナリーであればいいと。
私は、ご主人様の元にいていい…もう隠し事なんか、しなくてもいい!
だって、ご主人様はこんな私をパートナーマシナリーとして受け入れてくれたんだから!

私の顔はもう、くちゃくちゃです。
でもそんな事を気にしなくなるくらい涙を流しました。
緊張の糸がぷっつりと切れてしまい、回りに見られてもいいくらいに声を出しました。
ご主人様はそんな私を、半ば呆れつつ見つめ続けていました。

けど、流石にこの雰囲気を続けるのはご主人様にとっては良くなかったようです。
腕を組み、目を瞑りながら…。

主人「それにしてもお前は全く、俺に同じ屈辱を二度味合わせるとはな」
412 「え…? そ、そんな、私は屈辱なんて」
主人「戯け、お前が最初に人型になった頃の事を忘れたか」

63 名前:『進化』の力 後編 8/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 04:03:27 ID:g7zzHE7e]
…私が初めてGH-410になり、外に出た頃。
ご主人様と一緒に、ニューデイズのミズラキ保護区で、初めての紅葉。
でも、それ以上に私の記憶領域に残っている出来事。

当時、スピニングブレイクは一般ガーディアンズに販売される事のなかった試作型PAでした。
私達PMは、先行実験も兼ねてその試作型PAと、試作型A級武器を持たされたのです。
その頃から既に、ソード使いだったご主人様に、教えろとしつこく言われ続けた思い出…。

主人「人が待ち望んでる物を目の前でホイホイ使いおって」
412 「そ、そんなぁ…あの時も今回も不可抗力ですよぉ…」
主人「二度も味合わされたからには覚悟しておけ?
     お前が使った物より遥かに強力なオーバーエンドを、俺は会得してみせるぞ」

*ぺしっ*

ご主人様におでこを突付かれました。
ちょっと痛かったけど、私は真っ赤になった顔で精一杯に答えました。

412 「はいっ、ご主人様ならきっと出来ます!
     だって、ご主人様は私にとって最高のガーディアンズ! 最高のご主人様ですから!」
主人「よし、では一旦部屋に帰るとしよう」
412 「え? …でも、会得するんじゃないんですか?」
主人「お前のやり方を見て思った。今のままではダメだ。
     もっと別の方法があるかもしれないから、それをまずじっくり考えたい」
412 「…なるほど、準備期間ですね!」
主人「そういう事だ、荷物まとめて帰る支度するぞ」
412 「はーいっ!」

私は零れ続けていた涙を一生懸命拭いながら、ご主人様の後に続きました。
ワンオブサウザンドでもいい…その事が分かった解放感は、私の心の鎖を完全に解きました。
私はご主人様のパートナーマシナリーであればいいんだ。今までの様に、これからもずっと。

ご主人様、私は精一杯頑張ります。
そして、バケモノであっても、胸を張って生きていきます…。



- 自室の庭 -

帰って来てから久々に見上げるニューデイズの月夜。
リュクロスが英雄様のおかげで浄化された今、月見を邪魔する物は空にはない。

主人「知ってたのか、お前達は」

俺は庭にある樹に向かってそう告げた。
正確には樹ではない。樹の陰に隠れ続ける「モノ」に向かってだ…。

64 名前:『進化』の力 後編 9/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 04:05:46 ID:g7zzHE7e]
女帝    「…っへ、ご主人サンも勝手に気付くたァ野暮いこった」
主人    「悪いがビーストなんでな、礼儀とは無縁だ」

樹の裏から姿を現したのは、何時かスキヤキを共にした450だった。
俺は滅多に他のガーディアンズとの交流がない。マイルームショップも開いていない。
正確に言えば一度開いた事はあるが、ロクでもない事になったので、すぐ閉店した。
そんな俺の元で412に簡単に知り合いが出来るとは思えなかった。
そして俺はすぐに勘付いた、何かワケありの知り合いだろうと言う事に。
案の定、ビンゴだったわけだが…嫌な予想ってのは得てしてよく当たるもんだ。

女帝「アタシャ仮にも元最年長さ? 新しい妹が出来たと聞きゃ見てみたくもならァね。
     最も、今回は妹どころかどれくらいかわからないほどの姉サンだったんだがねェ」

隠さない所を見ると、俺の事を少しは信用しているようだ。
となれば、あの430も例外なく412の同類って所なんだろうな…。
類は友を呼ぶとは言うが、こんなに一気に呼ばれても部屋が狭くなるばかりだ。

主人    「何処まで知ってるんだ…あいつの事を」
女帝    「…それなんだがねェ、ちィと面倒な事態になっちまってるよ」
主人    「どういう事だ?」
女帝主人「私からご説明致します」

また、影から1つ出てきた。
450の主人らしいニューマンの女だ…只者とは思っていなかったが、やはり同じ穴のムジナか。

女帝主人「簡潔に申し上げますと、412さんは不明な点が多すぎます」
主人    「不明…?」
女帝    「このアタシ等の情報網を使っても、姉サンの事はさっぱりわかりゃしなかったンね」
女帝主人「かなり初期型のパートナーマシナリーだと思われますが…それ以上の事は何も。
         GRMは保有するデータバンクを検索しても、彼女らしきロールアウト情報が何1つ存在していません」
主人    「…何だ、俺のパートナーマシナリーは幽霊だとでも言うのか?」
女帝    「何にもわかんねェんだ、それさえも言えないねェ…」

っは、笑えない話だ。
ガーディアンズの恥晒しには、そういった謎のパートナーマシナリーがお似合いとでも言うのか?
つくづく星霊様ってのは、俺達の事が嫌いらしい。俺も宗教は大嫌いだがな。
食事制限だの、朝の礼拝だの、堅苦しい事ばかりで人生を楽しめないのは御免だ。

女帝    「ただ、アンタには驚かされたよ…アタシャ、アンタが姉サンを認めないと思ってた。
         腕に自信のある奴ってなァ、自分以上を認めたがらない厄介なモンだからねェ。
         凶暴で、生意気で、すぐに噛み付く、鎖に繋いでおく必要がある犬を捨てた奴の様にね」

450は静かに目を伏せた。
話し方で分かる、こいつはそんな風に捨てられたパートナーマシナリーの事を知っている。
そしてそれは、恐らくこいつとある意味で親しいのだろうな…。

主人    「フン…普通じゃないと言われるのは毎度の事なんでな」

65 名前:『進化』の力 後編 10/10 mailto:sage [2009/02/20(金) 04:07:57 ID:g7zzHE7e]
女帝    「ありがとさんよ…もう1人の『アタシ達』を救ってくれて」

450が煙管を吹かしながらそう呟いた。
俺はこの450の事をよく知らないが、実に似合わない台詞だ。
本人もそう思っているんだろう、伏せた目はその間はずっと開かないままだった。
大袈裟に吹かす煙管の煙は、その心情を表すように乱れながら空に消えていく。

女帝    「ただ、気を付けるんだね。姉サンは恐らく、タダもんじゃない。
         アタシ等とは全く違う、別物と言っていいワンオブサウザンドかもしれないよ。
         その事にGRMと調査部、諜報部のド汚ェ連中が気付けば…」
女帝主人「本部監視状態を無視して、裏工作を仕掛けてくるでしょうね」
女帝    「間違いないねェ…何度もドンパチかましたったんだ、連中のやり口はアタシはよく知ってる」

何処も彼処も、どんな正義振りかざそうと企業は汚い。
そんな事は前から分かっていた事だ、俺は別に動じる事もなく…。

主人    「なるようになるだろ…今まで通りな。
         お前達もそうやってきて、今無事なんだろ」

確信なんてあるわけがないが、俺はこう言いたかった。

主人    「お前達に出来て、俺達に出来んわけがない」

450は俺の言葉を呆れた様に聞いていたが、月を眺めながら続けた。

女帝    「そうだねェ…アタシ等みてぇなのがこうして今もやってけてんだ。
         神サマん中にも1人くれェ、捻くれたのがいたっておかしかねェさ。
         そうだろう、ご主人サン?」

女は表情を変える事はしなかったが、笑いながらこう答えていた。
何故笑っているか分かったかは、俺の勘だ。
女性相手だから通用していないかもしれないが、どうでもいいな…。

女帝主人「ええ、きっといると思います。
         言葉遣いは乱暴で、とても偉そうだけど、本当は面倒見がいい…そんな変な神様が」

ニューデイズから見上げる月は、今日も変わらず白く輝き続けていた。
やれやれ…とんだ修行になったもんだ。元はと言えば412に何かありそうだと思い
万が一の時の為に会得しようとしたと言うのに、先を越されるわ真実劇場のお時間になるわ。

…だが、悪い気はしない。
恐らく、忌々しい本部連中にとってのガン細胞の度合いがより酷くなったからだろうな。



- 終 -

66 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/20(金) 04:11:39 ID:g7zzHE7e]
というわけで、412達は無事帰宅
>>47の人、こんなやりたい放題でいいなら遠慮なく使ってやってくれ

>>54
渋いねぇ、こういう古臭い武器関連の話は好きなんだよな
GJと言わせてもらうッ!



67 名前:自棄酒1/3 mailto:sage [2009/02/20(金) 05:56:27 ID:Khj01IwK]
私はGH-413、とあるヒュマオのパートナーマシナリーをしているわ
主人は只今本部から召集を受けて出掛けている
そして私は…
「ったく…やってらんないわ」
「飲み過ぎはよくありませんよ、まだ昼間なんだし・・・」
「うるさいわね、酔ってないんだから平気よ!」
「それ、酔っ払いの常套文句ですよ」
最近知り合ったGH-412の部屋でくだを巻いていた
態々カシスとオレンジジュースを持参して簡易カクテルを作りながら飲む
自室じゃGH-444とGH-450がいるからね
弱みは見せられないわ…特にGH-450には
カシス、カクテルによく使われる有名なお酒で私はここから名付けられた
本式はオレンジを絞って果汁を入れるらしいけどこの際気にしない
「今日はもう散々よ!」
「それは私が言いたいんですけど」
はあっ、とGH-412が溜息を吐くのが聞こえた

私はGH-412、とあるビス男のパートナーマシナリーです
今日は天気も良くご主人様もお休み
二人でのんびりすごそうと思っていたのに…
お昼手前頃最近お友達になったGH-413さんがいらっしゃいまして
その、普段と雰囲気が違ったので嫌な予感はしていたのです
そして現在カクテルを自作しながらくだを巻いています
ご主人様は「そんな酒の飲み方は気に入らん」と言って出掛けてしまいました
流石にGH-413さんを一人にする訳にもいかず、こうして絡まれています
折角ご主人様の修行が一段落したのに…
折角今日は女帝さんも狂犬さんも来てないのに…
折角二人きりの休日だったのに…
…ちょっとくらい恨んでもいいですよね?

68 名前:自棄酒2/3 mailto:sage [2009/02/20(金) 05:57:10 ID:Khj01IwK]
話は遡り朝、ヒュマオの自室
私はGH-413、主人は「今日はオフだ」と言ってぼけ〜っとしている
するとGH-444が主人に飛びついてはしゃいでいる
ピクッと片眉が上がるがそこは私、冷静にしているわ
ライバルとは言え可愛い妹分、年上の威厳で澄まし顔
今度はGH-450が主人に飛びついた
…なんであんたがそれをやるかな!
顔が引き攣ってる気がする、落ち着け、私
主人はコーヒーが飲みにくいようだ
…チャンス!
「あんた達、ラスカルがコーヒー飲みにくいでしょう、やめなさいよ」
「は〜い♪」
「仕方ありませんね」
素直に離れるGH-444、ああ、いい子よGH-444
そして主人の膝上に移動するGH-450、なんでよ!
そこはおとなしく離れなさいよ!
「マスター、コーヒーのお供にこのセレブケーキなど如何でしょうか?」
「そうだな、貰おうか」
何いきなりショコラ取り出してんの!?
さっき朝食だったじゃない!って言うか主人も断りなさいよ!
「マスター、はい、あ〜ん」
ケーキを一口サイズに切り主人の口に運ぶGH-450
そう、その為に膝の上に陣取ったのね…
「…ふんっ」
妙に冷静になった私はハルプセラフィを出力最大にして主人に投げつける
「うばくらだっ!?」
「マスター!?」
ハルプセラフィの刃は主人の額にクリティカルヒットし綺麗に突き刺さった
まあ、平気でしょ、いつもの如く
何度かこういったやりとりがあり私も手加減しなくなったのよ
「あなた!マスターになんて事を!」
「ふん、甘やかすとろくな事にならないわ」
「何度も何度もあなたは…やはりあなたにマスターは相応しくありませんこの暴力娘!」
「なっ、なんですってえ昔の女の癖に!」
GH-450とのこんなやりとりももう日常茶飯事、馴れたものね
…真のパートナーの座は私のものだけど!

69 名前:自棄酒3/3 mailto:sage [2009/02/20(金) 05:57:44 ID:Khj01IwK]
そんなやり取りの最中不意に主人が起き上がる
まったく、自分で言うのも何だけど何で無事なのかしら
額からハルプセラフィを引き抜きテーブルに置く主人…貫通してたのになぁ
そのまま玄関に向かうと丁度扉が開く
「お騒がしいですね」
「最近の日常だ」
入ってきたのはルウ、何故か主人はルウの入室前に察知するのよ
まだ私達が二人きりの時から時折見てきた光景だけど謎よね
そしてルウが来る時はいつも…
「ガーディアンズより召集が掛っています、至急私と同行願います」
「やれやれ…オフだったのに」
ふう、と溜息を吐く主人、そのままアイテムパックの確認に入る
「んじゃ、ちょっと行ってくる、騒ぐのも程々にな」
そう言って部屋を出る主人、その後ろから出ていくルウ
「…フ…」
去り際にルウが小馬鹿にした様に笑った気がする
今まで何度も見てきたから多分気のせいじゃない!
むっかあああああああ!!
何!?無機質鉄仮面の癖に嘲笑とかできんの!?
って言うか何で毎度毎度態々迎えに来る訳!?
連絡一つでいいじゃない!!
何だか随分と長い関係らしいけど!
主人のその…パートナーは私なんだからね!!
無性に腹立たしいので自棄酒をする事にした
でもここだとGH-450がいるのよね…そうだ!
そして、私はニューデイズに向かったのだった

70 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/20(金) 05:59:31 ID:Khj01IwK]
>>66
乙&無事に二人が帰ってきてよかったw
って訳で投下しちゃう

71 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/20(金) 06:05:54 ID:Khj01IwK]
>>68
×何いきなりショコラ取り出してんの!?
○何いきなりケーキ取り出してんの!?
GH-413「これはどういう事かしら?マイマスター(ラスカル)」
ヒュマオ「ヤッチマッター!

72 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/20(金) 22:32:06 ID:RBNvuWC2]
連携が盛んなようで何より。これこそパシリスレ。

どうでもいいけど、額にダガーが食い込んでも何ともないラスカルって何者だろうか。
うおてくだからタフなのか、それともSEED感染してるのが最近のうおてくクオリティなのか。

73 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/21(土) 10:10:28 ID:ALohyp/8]
このスレも廃れたなぁ

74 名前:最低の主人(後編) 1/7 mailto:sage [2009/02/21(土) 12:51:19 ID:bv5cAF5K]
ある日、主人は異様な風体で帰ってきた。
文字通り、片腕を失っていた。
肩の付け根からばっさりと斬られたらしく、血に染まった包帯が巻かれている。

一体何が、と問いかける私を無視し、主人は脇をすり抜ける。
部屋の中央あたりまでよろよろと進んだところで、どっかとその場にあぐらをかいた。

「……負けちまった、な」
そう呟いた主人の背中は、いつになく小さく見えた。

ぽつり、ぽつりと話し始めた主人の話をまとめると、以下のあらましとなる。

GRM社が、新しいフォトン製の武器に関するトライアルをガーディアンズにもちかけた。
既存の金属製の武器に比べて、如何に優れているか。
その、比較対象として主人と主人の愛用の武器が選ばれた。
対するは、GRMの誇る最新鋭のフォトンウェポンに、前途有望な若手のガーディアン。
誰が見ても、主人が噛ませ犬であることは明らかだった。

主人は、それを受けた。そして、勝つつもりでいた。
しかし、結果は多くの関係者の望むとおりとなった。
主人愛用の武器は、相手のフォトン製ウェポンによって持っていた腕ごと根元から断ち切られたのだ。

「うまくいきゃあ、今までの武器もそう捨てたもんじゃねぇって…証明できたんだがな」
ぼんやりと床を見つめる主人の顔は、一気に何年も老いたように見えた。

「仕方がありませんよ。これも、時代の流れというものかと」
あえて、主人の感情を逆撫でするような言葉を選んでみた。
時代の流れ、という言葉を口にすると、いつも主人は躍起になって否定したものだった。

私の思惑とは裏腹に、主人の声からはますます力が失われていた。
「時代の流れ…これが、そうだと言うのなら。仕方のねえことなのかもな」

利き腕を失って、すっかり弱気になっているのか。
怒鳴ってばかりでうるさいと思っていた主人だが、今の姿はもっと見たくなかった。

私がいくら背伸びをしようと、越えられそうに無い大きな背中。
私が何をぶつけようと、平然と跳ね返す頑強な身体と心。
それが、私の主人だ。
そうであるべきなのだ。

75 名前:最低の主人(後編) 2/7 mailto:sage [2009/02/21(土) 12:53:53 ID:bv5cAF5K]
「『ふぉとん』とやらが主流になるなら、それも仕方ねえ。実際大した代物だしな。ただ」
しばしの沈黙の後、ようやく主人が語り始めた。
「今の若ぇやつが、あんな武器を持っちまったら今後どうなるか…それだけが心配だぁな」

「どういう、ことでしょうか」
「人間ってぇのは、元々他人の痛みには鈍い生き物よ。自分が痛ぇ目にあって、初めてそれに気付く。
その辺、物事はうまくできてるもんでな。人様を痛めつける奴ぁ、そのうち同じぐらい自分が傷つく。必ずだ。
武器だって同じだ。今まではな」

「金属でできた武器ってぇのは、使えば当然傷む。刃こぼれもするし、無茶をすれば折れもする。
人様に与えた痛みが、ちゃあんと跳ね返ってくるのさ。
だから、武器を使う奴はよく考える。てめぇの武器を傷めつけてまで使う価値があるのかどうかをな。
だが…『ふぉとん』は傷まねえ」

それで、主人の言いたいことは全て分かった。
己に痛みが跳ね返らない武器を使い続けること。それが何を意味するのか。

「もちろん、痛みはいつか自分に返ってくる。取り返しのつかない大きさになってな。
今までは、そうなる前に武器が悲鳴を上げて教えてくれてたが…」

痛みの分かる人間であれ。
主人の今までの不可解な主張の全ては、それに根ざしていたのだ。
だから、武器は傷つけるためでなく守るためにあるのだと。
だから、敵を斬った数よりも助けた民間人の数を自慢していたのだと。

ようやく、主人のことが本当に理解できた。それなのに。

「おじいちゃん。もう、『がーであん』できないの?」
いつの間にか傍に立っていた、主人の孫娘の言葉が私の思考回路を激しく揺さぶる。

そうだ。私の主人はもう、ガーディアンを続けることはできない。
片腕を失っては、とてもガーディアンの激しい任務には耐えられないのだ。
つまり。

「…そうだぁ。じいちゃんの戦いはな。もう…終わっちまったんだよ」
そう。つまり。

私と主人の結びつきも、終わりだということになる。

76 名前:最低の主人(後編) 3/7 mailto:sage [2009/02/21(土) 12:56:04 ID:bv5cAF5K]
私に泣く機能があれば、間違いなく泣いていたろう。
せっかく、主人のことが理解できたのに。
私と主人の関係は、これから始まると言ってよかったのに。

主人はガーディアンズを脱退し、私は初期化されて別のガーディアンの元に配属される。
いくら私が嫌だと言っても、それは逆らえない運命なのだ。

彼女は心配そうな顔で、じっと主人のなくした腕の辺りを見つめている。
私の代わりに、さぞ大声で泣き叫ぶのかと思ったが、ぐっと結んだ口元を開いた最初の一言は。

「…なら、あたしが『がーであん』になる」

彼女は今、何と言ったのだろうか?
祖父の不幸を悲しむより、新しい話を聞けない不満を吐き出すより先に、彼女はこう言ったのだ。

「あたしが、『がーであん』になる。で、おじいちゃんの、つづきをやる。
みんなを、よわい人をまもれる『がーであん』になる!」

見ると、彼女は目に一杯涙をためていた。
彼女は、祖父を襲った不幸を理解している。
それだけでなく、祖父の今まで話していたことの本当の意味をも、とうに理解していたのだ。
私よりも、ずっと先に。

主人は、残った手で優しく彼女の頭を撫でながら、私に話しかけた。

「…こいつの父親。つまり、俺の息子だな。そいつは、古臭い鍛冶稼業を継ぐなあ真っ平って、
家を飛び出してな。今じゃあ立派なGRMのエリート科学者よ。
で、そこで知り合った女と結婚して、こいつをこさえたはよかったが。
二人とも、仕事が好きでしょうがねぇのか、こいつをほとんどほっぽらかしよ。
友達もできず、よりつくとこといやぁ、俺のとこぐれぇでな。
あんまり不憫で、ついつい構っちまってたのよ」

「俺の話せることといやぁ、ガーディアンの仕事と、あとはせいぜい家業のことぐれぇだ。
気がついたら、普通の女の子のやりたいことなんざ考えられねえ子になっちまった。
…俺も、世の中につまはじきにされてる僻みがあったのか。
この子の求めるまま、俺の全てを流しこんじまったんだなぁ…可愛そうなことよ。
本当は、この子には普通に女の子らしく育って欲しかったんだが」



77 名前:最低の主人(後編) 4/7 mailto:sage [2009/02/21(土) 12:57:28 ID:bv5cAF5K]
「…そうでしょうか?」
私は知らず、口に出していた。
不審気に片方の眉をあげる主人をよそに、私は続けた。

「この子を、まるで不幸な子であるようにおっしゃいますが。私の考えは逆です。
実の祖父に、自分の全てと思えるほどのものを与えられ、それを受け継ぐ権利を持つ。
とても、幸せなことのように私には感じられます。
与え、受け継ぐ。それを数限りなく繰り返すことこそ、人間の本領だと認識します」

「…おめぇ」
「私には、いっそ羨ましいくらいです。だって、私は…どんなに望んでも」
そうなのだ。
私は、これからどれだけ強く主人の意志を継ごうとしてもかなわないのだ。
初期化という、感情も愛着も全く無い無機質で思いやりのかけらもない処置一つのせいで。
それに比べればという嫉妬に近い感情を、私はこの幼女に抱いているのかも知れない。

主人はしばらく、ぽかんと開いた口もふさがないまま私を見ていたが。
やがて、思い切り腕を振り上げ、私の頭をはたいてきた。

「馬鹿野郎がっ。んっとにてめぇは…出来のわりぃ弟子だぜ」
「え、で、弟子って…私が、ですか?」
「あぁ?てめぇ、まさか自分で自分のことを出来のいい弟子だなんて思っちゃいねえよな?」

今日初めての、主人の怒鳴り声。妙に、懐かしさすら感じた。

「いえ、その…私が、ご主人の弟子だと言った箇所なのですが」
「弟子は弟子だ。どんなに出来が悪くともな。もっとも、出来の悪いほど何たら…とも言うがな」

一体、何がきっかけだったのか。主人はすっかりいつもの調子に戻っていた。

「いいか。てめぇにはな、この俺がじきじきに、武器とは何か、人の生き様とは何かを教え込んできたんだ。
それは言葉じゃねぇ。その、きっかいなからくりで出来た身体に直接教え込んだ。
そいつはな、インテリどものいけすかねえ命令一つで消えるほど、やわなもんじゃねえ」

今更だが、主人のこの方面に対する疎さには驚かされる。
上層部が初期化するといったら、初期化されるのだ。それまでに何を覚えたかなど関係ない。

「まだうたぐってんのか、てめぇは…いいか。
てめぇは確かにからくりだ。お偉方の都合のいいように造られたからくりだ。だがな。
どんな『はいてく』を駆使しようと、人の手じゃあ決して消せねえもんがある」

78 名前:最低の主人(後編) 5/7 mailto:sage [2009/02/21(土) 12:58:28 ID:bv5cAF5K]
「そ、それは…一体なんでしょうか」
「魂だ」
きっぱりと、科学的根拠も何もない精神論を言い切る。
呆れる一方で、不思議な心地よさも感じていた。

「てめぇには、俺の魂を注ぎ込んだ。鍛冶の業云々じゃなく、てめぇは俺の全てを受け継いでいる。
心ならずもそうしちまった、この孫娘と同じくらいにはな。
だから信じろ。この俺を、何よりてめぇ自身をな」

『魂』…言葉だけだと何とも非科学的で薄ら寒く響くが、
この主人が力を込めて口にすると、何となく信じられるような気がしてしまう。
そんな私の心境を知ってか知らずか、主人はぐっと顔を突き出し、こう言った。

「俺から言えるのは、それだけだ。後どうするかは、てめぇ次第だぁな」
それで、この話はおしまいだった。
今の私を、決して忘れない。そう信じるだけでよかった。

「それで…ご主人はこれから?」
「俺か?もちろん、実家で家業に専念するさ。片腕でも鍛冶はできる…やりようはある」
「これからも、金属の武器を?」
「そのつもりだ…と言いたいとこだがな。敵を理解する…ってのは言いすぎかもだが。
一本ぐらい、ふぉとんの武器も作ってみるか。
もちろん、作るからにはそこらの数打ち物なんざ目じゃねぇ魂のこもった物にするし、
人の痛みのわからねえ奴に使わせるつもりもねえがな」

「もし…それが出来たら。是非、私も使ってみたいです」
「かまわねえぜ。てめぇが俺の目にかなう奴になってたらな」
「次に会う時。私は今と似ても似つかぬ姿になっているでしょうけど」
「どんな姿になろうが、この俺が手塩にかけたんだ。てめぇの魂くらい見分けてみせらぁ」

あなたなら、本当に見分けるかも知れないですね。
口には出さず、主人に語りかける。

「もっとも、俺の孫娘が立派なガーディアンになっていたら。
そんときぁ、どっちが使うか決めてもらわにゃあならんかも、な」

79 名前:最低の主人(後編)XX年後 6/7 mailto:sage [2009/02/21(土) 13:00:38 ID:bv5cAF5K]
「よう。久しぶりじゃねぇか。元気だったか?」
私は、GH-412。
「護ること」こそガーディアンの本懐と信じて疑わない、誰より敬愛するマスターのPM。
彼女のルームの留守番をしているところに、この老人はやってきた。

隻腕だったことにまず目を引かれたが、それ以上に。
勝手知ったる様子で部屋の中を見て回る図々しさに、どう対応したものか考えあぐねていた。
「おうおう、この辺はあいつの趣味がでてやがるが…大体は変わってねえな。
この床のくぼみ…小さい頃押し潰されかけたのをてめぇに助けられたの、覚えてるのかねぇ」

「…ん?なんだぁ、もしかして俺のこと、忘れてやがるのか?
か〜っ、相変わらず出来の悪い弟子だぜ。せっかく俺の方で見分けてやったってのによ」

この老人が何を言っているのか、私には何一つ理解できなかった。
が、何故だろう。この男の声を、もっと聞いていたいと思うのは。

「今日はな、他でもねえ。てめぇら主従がガーディアンとして、そこそこ立派にやってると聞いてな。
この俺、入魂の一作をプレゼントしようと思ってやって来たのよ。
とりあえず、まずはてめぇにくれてやらぁ。
その後、どっちが使うかは成り行き次第だぁな」

「どうよ、この真紅の刃。振るうたんびに、綺麗な紅い羽が舞い散るだろう?
だがな、これの本当の意味が分かるのは、俺と、てめぇと、あとは俺の愛しい孫娘…今のてめぇの主人くらいだな。
この紅い羽…見ようによっちゃあ、人の血のようにも見えるだろ?
無闇やたらに振るったら、血生臭いことこの上ねぇ…ってのが、限られた奴には分かるようになってる」

「ふぉとん製の武器でありながら、人の痛みの分かる武器でもある…作るには苦労したぜ?
馴染みのいけすかねえマッドサイエンティストに頭下げたり、嫌〜な思い出も…おっと、長くなるからよしとくか。
さっさと、やるべきことをすまさねぇとな」

そう言って、老人は無遠慮に私の身体のあちこちをいじり始める。
「ん…ん〜、確か、こうやるんだったか…けぇっ、一月かけて覚えた筈なのに、もう忘れちまってる。
年は取りたくねえなぁ…。
てめぇもてめぇだ、勝手にそんな娘っ子の形になんざなるから、余計ややこしくなりやがる」

などと勝手なことを呟きながら、悪戦苦闘の末。
彼はどうにか、私の体内に件の武器を収めることに成功した。

80 名前:最低の主人(後編)XX年後 7/7 mailto:sage [2009/02/21(土) 13:02:05 ID:bv5cAF5K]
「これでよし、と。後は、てめぇが例の『合成』とやらと同じ要領で引っ張りだしゃあ完成だ。
孫の驚く顔が目に浮かぶぜ…まぁ、そん時驚くのはてめぇも一緒か」

そう言って背を向ける、老人の背中。
ふと、何かに弾かれたように、私は声をかけていた。
「あの…もう、行ってしまうのですか?」

老人は、背中を向けたまま僅かに顔だけをこちらに向ける。

「てめぇの今の主人は、俺じゃねえ。俺の、孫娘だ。
てめぇが今やるべきはな。俺の孫娘がガーディアンの真の務めを果たせるよう、全力で支えること。
そして、万にひとつ…あいつが道を誤ることがあったらな、てめぇの身体張ってでもそれを止めること…それだけだ。
俺のことなんざ、忘れて構いやしねぇ。時代についていけなかった、こんな最低の主人のことなんかな。
てめぇが魂をなくしてねえ。それが分かっただけで、十分さ」

「わ…私は…私は」
「あばよ。孫娘のこと…頼んだぜ」

その、最後の一言が何かの合図だったかのように。
私の記憶回路において、この一幕に関する情報は急速に白紙へと塗り替えられていくのを感じた。

次に意識を取り戻したのは、マスターが私に声をかけてきた時だった。

「…あら?412、あなたの合成リストに載っているこれ…ダガーオブセラフィ?
こんな貴重な品、私持っていたかしら」
「ええ?わ、私も、そんな貴重品の作成に関与した覚えは…」
「もう、完成しているようね。試しに取り出していい?」
「そ、それは構いませんけど…うう、これを失敗したら、さすがに怒りますよね?」

そして取り出されたものが、理論上最高のフォトンリアクター値である、ダガーオブセラフィ50%。
マスターも驚いたが、何より私が驚いた。
どうやって合成したかは全く覚えていないが、現にこうして存在する以上、私が作ったのだろう。
心のどこかに引っかかる所はあったが、結局はそう思うしかなかった。

−頼んだぜ−

一度だけ、頭の中に声が響いた気がした。

81 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/21(土) 13:06:06 ID:bv5cAF5K]
以上、「最低の主人」でした。

件の武器の真の作り主。
その願いどおりにこの双小剣が使われたか否か。
それは、>34氏のご提供下さった、十六体目のログをご確認いただければと思います。

82 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/21(土) 23:19:09 ID:9AthHyWh]
>>81
イイハナシダナー……

でも、最近のこの二人がネタキャラ化してるから困る。

83 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/22(日) 07:45:52 ID:3SAj+cJW]
>>81
良い話しだ…GJ!!
>>82
肉体と言う牢獄から魂を解き放ち過ぎた結果ですね><

84 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/22(日) 10:47:21 ID:xMXHj8UT]
GH-413「>>72うおてくだからタフなのか、それともSEED感染してるのが最近のうおてくクオリティなのか。
     という質問が来てるわよマシマスター(ラスカル)」
ヒュマオ「そりゃあれだコメディシーンでは誰も死なない法則ってのがだな…」
GH-413「ちゃんとコメディになってるかは疑問ね、それと人が死にまくるコメディもあるわよ?」
ヒュマオ「それは俺の腕次第なのがな…それとそんなブラックコメディは趣味じゃない」
GH-413「と、以上の様な理由なので深く考えずにお楽しみ頂けると」
ヒュマオ「ありがとう、ラスカル!」



一応理由はあるけれどそれは語るかも?程度なので悪しからず
それとSEED感染は結構ポピュラーな設定だと個人的には思ってますはい

85 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/22(日) 10:48:47 ID:xMXHj8UT]
何だマシマスターってorz

86 名前:継承 IV 光を継ぐ者 1 [2009/02/22(日) 21:40:20 ID:6I+ebGDa]
「うええええええ〜っ…」
わたくし、荒ぶる戦乙女のGH432は、青い顔をしながら床でうずくまっていました。
変なものでも食べたんでしょうか…と、考えてみればこちらにきてから変なもの
ばかり食べているので思い当たるふしがありすぎます。
パシリには通常病気はありえませんし、原因を考えてもどうしようもなさそうです。
出したらすっきりしそうなんですが…
「吐いていないからいいものの、その声は迷惑ですのでトイレにこもっていただけ
ませんか」
「もう何時間かこもりましたよ。でも吐き気はあっても吐けないんです…おええ〜」
クエスト受付カウンターのお姉さんに冷たくあしらわれている間に、後ろから鳴き声
がしました。振り向いてみると、わたくしの愛してやまない猫さんが心配そうに見て
います。
「だ、大丈夫なの?調子が悪いなら次はやめておくの?」
「大丈夫じゃないです…もふもふもふもふ…」
「にゃーッ!気持ち悪そうにしてるのにそういうとこだけは元気なのーっ!」
は〜、堪能しました…と、満足したところで。
「ところで、何か用事なのですか?こうされることがわかってても来るからには、
理由があるんでしょう?」
「本当はこれ以上は進んでほしくないの。次のステージはやり直しがきかないの」
少しうつむいて、猫さんはぽつりと漏らしました。
「はあ?かといってここで何もしないでいるわけにもいかないでしょう。わたくしは
異邦人なのですから…主のもとに帰りたいのです」
やり直しがきかないって、失敗したらどうなるんでしょうか?
どっちにしてもやらざるをえないわけですし、失敗しないようにするしかないので、
いつまでたってもおさまらない吐き気を我慢しつつ次ステージへの登録を行いました。
「…待って、これを持っていくといいの」
猫さんは器用にも金属の壺の中から木の実をとりだしてわたくしに手渡しました。
「この木の実は?」
「ラエルマベリーっていうの。食べれば勇気がわいてくるの。保存はきかないから
今すぐ食べるといいの」
「ありがとう…」
吐き気はしますがここで断るのもなんですので、無理矢理喉に押し込みました。
味はかなりのもののようでしたが、味わって食べられる余裕はありませんでした。



87 名前:継承 IV 光を継ぐ者 2 mailto:sage [2009/02/22(日) 21:41:45 ID:6I+ebGDa]
STAGE 4 -惑星ラグオル "大いなる陰"-

「…よって、これがパイオニア1ハンターズの最終決戦となる!ラグオルへの移民
成功は諸君らの働きにかかっている。私、リコ・タイレルに今一度力を貸していた
だきたい!」
転送された先は、なにやら眼鏡の女性が演説しているところでした。パイオニア1?
移民?移民船団があったなんて記録はありませんが、ガーディアンズの前身となった
のがハンターズのはずですから、グラールの昔なのでしょうか?
ラグオルって、聞いたことないですけど。
断片的に入ってきた情報から推測するに、どうやら移民船でラグオルという星に降り
立ったのはいいですけど、現地の遺跡の奥に危険なものが潜んでいたために生活でき
なかったようです。それを今から討伐しにいくようです。
愛用のフォトンセイバーに、クロスボウ、ウォンド、そして以前手にしたジリオン
まで。今回珍しくわたくしはフル装備です。これなら十分戦えます。
気持ち悪いので、全力は出せませんけど。うっぷ…
それでも、わたくしが全力を出そうとすることなく遺跡侵攻作戦は進んでいきました。
遺跡にはSEEDフォームとおぼしき亜生命体が大量にいたのですが、わたくしが手を出す
暇もないくらいに彼らハンターズの部隊行動は洗練されたもので、その装備は強力な
ものだったのです。
とがった浮遊生物の群れを槍の一閃が薙ぎ払い、キャリガインに似た大型生物には一人が
懐に飛び込んで動きを封じてマシンガン掃射。
これはもしかして何もしなくても楽勝だったりしませんか?ついていくだけでよさそう
ですし、やり直しがきかないなんて問題にもならない気がします。
少し気が楽になったので、ハンターズのみなさんとお話しながら暗い遺跡の中を進む
ことにしました。
中にはわたくしと同じくらいの身長しかない方もおり、わたくしはひさびさに溶け込んで
いられました。
「私ね、この作戦が成功したら結婚するんだぁ。彼、パイオニア2であとから来るん
だよ。軍人なんてやめて、家庭を作るの」
なんて人もいれば。
「こんな遺跡なんて楽勝だな。ぱっぱと終わらせて考古学に打ち込みたいぜ」
なんて人もいます。
「嬢ちゃん、マグつけてないのか?だったらこれでも使っときな」
渦巻きの描いてある白い合成樹脂の箱を手渡されました。なんでしょう、これ?
ええと…ドリームキャスト?
「わあ、これもらっていいんですか?」
「ああ、使っててくれ」
背負ってみると、どうやっているのか勝手に宙に浮きました。
128ビット、300万ポリゴン?なんだかけっこうな性能みたいです。
「ありがとうございます。わー、きっとすごい処理能力の外部接続デバイスですね!」
「おう、今世紀最強のマシンだぜ!」
いろいろくださる方やわたくしが気分が悪いのを心配してくれる方も多く、今まで異
邦人であることを感じざるを得なかったぶん、作戦行動中だというのにとても安らぐ
ことができました。
「気を抜くな。まだ作戦は終わっておらぬ」
「は〜い」「へいへい」
むっつり武人のゾークさんがたしなめてきました。このむっつりぶり、きっとこの人
はプライベートではえっちに違いないとか思っていました。

88 名前:継承 IV 光を継ぐ者 3 mailto:sage [2009/02/22(日) 21:43:24 ID:6I+ebGDa]
「これで終わるわ…」
と、リコさんが言った瞬間、遺跡が揺れ出しました。
パイオニア1ハンターズは、あのあとわたくしが以前見たものとはだいぶ違う姿を
したダークファルスと、オルガ・フロウというやたら大きなデルナディアンを倒し、
力を増大させつつ復活しようとしてくるその2体をぶつけあわせました。
2体はほぼ均衡した力をぶつけ合って見たところ消滅しましたし、リコさんとフロウ
ウェンさんによれば、これでもう復活してこないだろうという話だったのですが…
「異常フォトン、消滅していません!むしろ増大しています!」
「そ、そんな!ダークなんとかは二つともぶつけて対消滅させたはずよ!なぜ終わら
ないの!」
「何かおかしい、まずは脱出だ!崩れて生き埋めになるかもしれんぞ!」
あわてて元きた道を走ると、途中でいきなり日光がさす地表が見えました。
地下遺跡だったはずなのですが。
けっこうな高さですが、飛び降りられなくもないです。外から見てみると、遺跡の
一部がなぜか地上に突き出していました。
「あ…そ、空に、空に…!」
「え?…!!!」
動いた遺跡を見上げていた一人が声にならない声をあげました。空にあるものに気づ
いてしまったのです。
それははるか天空から、魂まで凍りつかせる冷たさをたたえた冒涜的でおぞましい
視線を目ではないどこかから向けて、こちらを見下ろしていました。
恐怖。それを見たものに去来する感情はそれだけでした。生物であれば全身の毛が
逆立つでしょう。
惑星や生物、まして人とその文明のことなど何とも思わない、フラクタルという名の
理不尽で完全な平等に則り動く絶対の真理。これが、『深遠なる闇』…。
悪夢はそれだけでは終わりませんでした。『深遠なる闇』が震えるように少し動きを
見せたと思うと、轟音を立てて埋まっていた遺跡が人の形に変形して起きあがった
のです。
目や鼻といった顔らしいものはなく、四肢と胴、頭があるからかろうじて人型と言える
機械の巨人でした。

-ミッション開始 『黒の巨人』を倒せ!-

89 名前:継承 IV 光を継ぐ者 4 mailto:sage [2009/02/22(日) 21:45:01 ID:6I+ebGDa]
------!!!WARNING!!!------
dark force became to the legendary giant"Surt".
ready to battle against the catastrophe!

突然、ガーディアンズシステムの大本になった部分…前身であったハンターズで用い
られていたデータがあるとされている領域からのアクセスがありました。
グラールで遠い昔生きていた人が残したメッセージ。この巨人は絶対に存在を許しては
ならないのだと、システムが警告を発していました。
倒すべきだというのはわかりましたし、臆したわけではありませんが、しかし…
もとが遺跡だからでしょうけど、大きすぎます!10000Rpはありませんか!?
「うろたえるなーっ!ハンターズはうろたえてはならぬっ!各自装備を再確認、
戦闘に備えよ!我らの復讐は成っておらんのだ!」
ゾークさんの一喝が、恐怖に固まってしまったハンターズに闘志を呼び戻しました。
さっきむっつりスケベだろうとか予測したのを心の中で謝りました。
しかし、復讐?変なことを言いますね…初めて見る様子ですのに。

蹴り一発で何人もの人が倒れていきます。リコさんとフロウウェンさんが指揮して散開
して攻めるよう指示しましたが、もはやそういう問題ではありませんでした。
あれだけの戦力だったパイオニア1ハンターズの攻撃にびくともしません。
さらに、巨人が作り出したバリアは、ジオが作ったナイトメアと同じく時間空間を歪ま
せることで障壁を作り出しています。あの閉鎖空間と同じように、通常の武器が通用し
なくなっているのです。
前にナイトメアはグランドクロスで破ったことがあります。これだけの人数がいれば、
ダークファルスよりはるかに大きいあの巨人だって…総指揮官のリコさんにそれを報告
しに、わたくしは走りました。
ところが、リコさんに活路を見いだせるかもしれない報告をしている最中に、巨人が
見た目に似合わず機敏な動きで身をかがめると、その腕や足から何千発というミサイルが
飛びました。しかも、セイバーやライフルで撃ち落として防ごうとした人が吹き飛ば
されたのが見えました。
武器が通用しない…ミサイルをバリアで覆っている!?
ただの飛び道具なら切って落としたりシールドラインで防ぐことも可能だったでしょ
うが、切ろうとしても弾かれ、防具はバリアのエネルギーで削られて無効化されてい
ます。
ミサイルは巨人の全周囲めがけて無数に発射され、誘導がかかっています。逃げ場
などどこにもありません。
「マァサーっ!うわぁぁぁっ!」
「みんな逃げて!逃げ…」
「逃げるって、どこへ…」
地面に小規模な爆発が何千と起こり、つい先ほどまで和気藹々と話していたハンターズの
みなさんが、ただの一瞬で消し炭と化し、地獄絵図がそこにできていました。
知った人の死に呆然としているわたくしのところにもミサイルは飛び、そして…
「危ない!」
リコさんがわたくしに覆い被さりました。

90 名前:継承 IV 光を継ぐ者 5 mailto:sage [2009/02/22(日) 21:49:45 ID:6I+ebGDa]
死。
『深遠なる闇』をもっとも体現せしめるもの。
誰もが避けえない、あらゆる生物のさだめ。
突然にやってきて、奪っていくもの。
パイオニア1のハンターズが、黒い空に引き寄せられていきます。手のように先が
分かれた長く黒いひものようなものが空から何千何万と伸び、体中に絡みついている
のです。
もがいて脱出しようとしている人もいますが、少しの間だけで、逃れられないとわか
るとおとなしくなって、空へ連れて行かれます。
わたくしには手は伸びておらず、ごく短い間ですが家族のように接してくれた人たち
を助けたくて、追いかけようとしました。
でも、重力という枷がわたくしを縛って離しません。
あんなに近いのに、手を伸ばしても届きません。
最後にかばってくれたリコさんの体にも手がいくつも絡みつき、『深遠なる闇』の待
つ空へと誘われています。
死。
それを前にすれば、誰もが口をつぐみ、身をすくませ、されるがままになるしかない?
猛禽が過ぎ去るのを待つ小動物のように?
あるいはすでにその爪にとらわれ、食いちぎられるのを待つように?
どれほど仲良くしていた人でもどうしようもないんだと、達観して諦めるしかないと?
みんなが諦めているから、自分もそうするんだと?
いやです…
いやです、いやです、いやです!いやです!!
そんなのは、いやです!!

91 名前:継承 IV 光を継ぐ者 6 mailto:sage [2009/02/22(日) 21:51:13 ID:6I+ebGDa]
背中に一瞬痛みを感じたと思ったその瞬間に、わたくしの出力をはるかに上回る膨大
な量のフォトンエネルギーを感じました。
ちらりと後ろを見ると、そのエネルギーは翼の形をとっていました。
子供の掌ほどの、実体のない光の翼。
それは羽ばたかずにわたくしを押し上げ、空へ連れて行かれようとしているリコさん
との距離を一気に縮め、手をつかむことができました。
「あなた、その翼は、まさか…」
「知りません!」
黒い手をセイバーで切ってリコさんを引き戻そうとしたそのとき、唐突に破損アラート
が響きました。
エラーではありません。壊されるようなエネルギーも質量もまったくセンサーにかから
なかったのに、気がつくと壊れていたのです。
「右下腿、左足、右腕部破損!?何をされ…」
右手がなくなってしまったため、持っていたセイバーも落としてしまいました。
それどころかリコさんを引っ張ると背中のエネルギー出力も急激に落ちてきました。
やろうと思ってもこれ以上はできそうにありません。
「遺跡調査で知ったものを目にすることができるとはね…それは貴方が『大いなる光』で
私を連れ戻そうとした結果だと思うわ」
『光』?何のことだかまったくわかりませんが、この翼のことをさしてリコさんは
そう言いました。そういえば、そんなことをセガタさんやサラ・リーマンのおじさんも
言っていたような…
「貴方は未来から来ているのね…身の上は知らないけど、おそらくここで私を引き戻
せば、貴方は消えてしまう」
「そんな馬鹿なことがありますか!この、もっと出力さえあれば…!」
「過去を変えれば未来は変わる。私にはそれだけの地位と影響力があるから…私が生
き残る、その結果として貴方が存在できなくなることは十分ありうることよ」
空へ連れ去られようとしているというのに、リコさんはふっと笑顔を浮かべました。
「『大いなる光』は強力すぎる力。その気になれば人ひとり消すことはおろか、この
宇宙の歴史をすべてなかったことにもできてしまう。『光』の使い手には大きな責任
が伴うこと、忘れないで」
わたくしの体は向こう側が透けて見えています。リコさんをここで引き戻せば、消滅
してしまうというのも嘘ではないのでしょう。
でも、いったいどこでそんな関連が?それがわからないだけに納得できません。
それだけでなく、わたくしのシステム領域にさえこんな機能があるとは書いていない、この翼。
明らかに小さすぎるうえ羽ばたきもせずわたくしを飛ばせた、グラールの科学では
説明できない力と、『大いなる光』という名称。
巨人の体をなしている遺跡にその記録があったこと。不可解なことが多すぎます。
苦い顔で黙っているわたくしを、リコさんは諭しました。
「ねえ、名前も教えてもらってない時の旅人さん。あなたは何のためにここへきたの?
わざわざ自分を消し去りにきたわけじゃないでしょう?目的を見失っては駄目よ。
さあ、手を離して。人はいつか死ぬ運命にあるし、だからこそ誰かに自分を伝えていく
んだから。死から目を背けていては、人は本当の意味で生きてはいけないの」
リコさんの手を掴んでいた左手も、まるで操られているかのように力が抜けていき、
傷だらけなのになおも滑らかな指の感触を残して、ゆっくりと離れていきました。
「わかるのよ、すべてが…本当は私たちはもうあのとき…ダークファルスにとりこま
れたときに死んでいるんだから…」

破損した腕から大きな何かが転げ落ちて、ようやくわたくしは気づきました。
リコさんはわたくしの腕の間にすでにいたことに。
そして、リコさんは…
首しかないのだということに。
「うわああぁ――――――っ!!」
こらえきれなくなって、意味もなく叫びながら天にジリオンを何発も何発も打ち込み
ましたが、弾は闇に飲み込まれ消えていき、深遠なる闇は何ら動じることもなくこち
らを見ているだけでした。
ほどなくして、唯一人生き残ったわたくしは、歪みから亜空間に飲み込まれていくのに
巻き込まれていきました。
落ちたリコさんの頭が一瞬で白骨になって崩れ去るほどの時間の歪み。
内蔵時計がありえないスピードで前後に回転し、一瞬の後に20年後をさしていました。
メモリと基本システムがエラーを起こし、修復と適合の作業が始まりました。

92 名前:継承 IV 光を継ぐ者 7 mailto:sage [2009/02/22(日) 21:57:35 ID:6I+ebGDa]
「おい、大丈夫なのか!なんでこんな子供がいるんだ…」
「クランツ、子供じゃないわ。よく見て、小さいけどヒューマノイドよ。壊れてるのかも」

二人分の足音が去っていくところで適合作業が終わり、ようやくわたくしは体を動か
せるようになりました。
左手だけでなんとか体を起こして顔をあげてみましたが、すぐにバランスを崩して地面に
顔からつっこみました。
「…痛い…」
透けていた体はなんとか戻ったようですが、破損はそのままでした。
ぐるぐると結論の出ない思考が駆けめぐり、頭を中からかきむしられるような痛みと、
今まで経験したことのないめまいで目の前がぐらぐらします。
「死んだ…みんな死んでしまって…何もできなくて…う…うっ、ぐすっ…」
自覚はありませんでしたが、わたくしは死に対してアレルギーともいえるほどの嫌悪感
を持っていたようです。
巨人はまた一度埋まっていたようで、腕だけが出ていたのが、先ほどの二人が近づいた
ことで体を起こして大地を割って起きあがったようです。そびえ立つ姿がいやがおうにも
現実を思い出させてくれました。パイオニア1ハンターズともども、あっという間に
蹴散らされたという現実を。
逃げたいのに逃げられない、助けてほしいのに誰も助けてくれない。主でも戦えるか
どうかわからないくらいですが、わたくしが破壊されても助けには来ないような気が
します。
「助けて…誰か助けてよぅ…う…ぅ、おえっ、おええええっ…」
誰に言うでもなく繰り返していると、高ぶった感情で気持ち悪くなり、恥も外聞もなく
その場で思い切り吐いてしまいました。
「………」
やっと出るものが出て気持ち悪さがだいぶおさまったところで、目の前に人影があり
ました。見たことのある人影、それも一番会いたくない人の。
「あなたは…ラシーク!?」
赤い目がこちらを見下ろしました。ステージ1で躊躇なくわたくしを屠ったあの目です。
最悪です。それでなくても巨人だけでもどうにもならない状況なのに、ラシークまで
加わられては勝ち目がまったくありません。もはやこれまでなのでしょうか…

「そんな顔をするな。このラシークを前に諦めなかったおまえが」
「は?」
にっと笑ってみせたラシークは、よくよく見ると以前見たような異様な熱を持った目
ではありませんでした。
「このラシークは目覚めたのだ…何千年も前に失った人の心に。おまえが食べた黒い
剣、それが死せども逃れられぬ闇の呪縛より魂魄を解放してくれた。
礼を言うぞ、人に作られしものよ!今こそランディールへの恩義、返してくれよう!」
ついかっとなって食べたオラキオの剣。
あれが今になってきれいなラシークを合成する結果になったというんですか!?
「て、敵じゃなく味方…ラシークが…冗談でしょう?信じられない、夢じゃないで
しょうね…あいたっ」
無言でわたくしの頬をつねると、ラシークは転がっていたドリームキャストを拾い
上げました。
「この白い箱も活用するがいい。必ず役に立つだろう。あとはおまえの翼次第であろうな」
「翼?『大いなる光』とか言われたものですか?」
「そうだ。おまえのそれは翼にあらざる翼。この世界の法則すべてを越えた力、『光』なのだ」
「あんなちっぽけな翼がですか?飛べただけで何もできなかったし、リコさん一人だって
助けられなかったじゃないですか。わたくしは負けたんです…どうしろっていうんですか」
「悔やんでも人はかえらぬ。死を無駄にせぬよう、これから助けられるものに使うのだ。
あの二人を捨て置き、死なせるつもりか?」
言うなり、ラシークはラゾンデに似たマジック…タンドレと言っているそれを使い、
巨人の頭に直撃させました。
巨人の向いている先には、先ほど動けなかったわたくしのところを通りかかった二人が
いました。さほど効いているようには思えませんが、巨人の注意をこちらに向けさせたようです。
ラシークの言う通りです。ガーディアンズの心得にもあります、今守れるものを守る
ことが肝要なのです。でも…
なぜでしょう?それが理性的で適切な判断なのはわかっているのに、わたくしの心の奥で
何かがくすぶっているのです。今までできていたはずのことなのに…

93 名前:継承 IV 光を継ぐ者 8 mailto:sage [2009/02/22(日) 21:58:29 ID:6I+ebGDa]
「ゴールドドラゴンよ!」
ラシークが呼ぶと、歪んだ空に浮遊する城が出現し、そこから鈍く輝く鱗を体一面に
並べた金色の竜が飛んできました。ラシークはその背に飛び乗り、空へ。
巨人の体の表面にまるで流星のように幾筋もの光が走りました。何を考えているのかは
とうていわかりませんが、地揺れを立てて歩み寄ってくるのを見るに、ラシークと
ゴールドドラゴンへと標的を変えたようでした。
「今はまだ『光』は理解できぬかもしれぬ。使いながら覚えていくがよかろう。
まずはもう一度出してみよ」
言い残して、ラシークは戦場の人となりました。
「ま、待って!あ…」
向こうで怪獣大戦争が始まって、わたくしは一人取り残されてしまいました。

巨人を見て、初めて戦いを怖いと感じました。パシリはもともと戦闘型にまでなる
ようにできているので、本来はそんな思考はないはずなのですが。
巨人とわたくしは、ざっと100倍の体格差。加えてわたくしは中破しています。普通に
考えて勝ち目がないのは明白です。
でも、敵であったはずのラシークが味方として戦ってくれているのに…
人が死ぬのを見るのはもう二度とごめんでした。リコさんの頭が転がるところの
フラッシュバックに背筋が凍えるような感覚を感じながらも必死で気を奮い立たせ、
ない知恵を絞ってさっき出てきた翼を再現してみることにしました。
「届かないところに行くのを強く願って…んっ!」
主の使う黄金鷹の翼を思い描いてそれっぽくやってみると、背中のフォトンジェネレータ
のあたりからぴょこっと小さな光の翼が顔をのぞかせました。
なんか、さっきより小さくなってませんか、これ…
体中からミサイルを乱射し、巨大な拳を振り回して、ラシークと金竜をも圧倒している
あの巨人に対してこれがどのように対抗できるというのか、全然想像がつきませんでした。


-続く-

94 名前:継承 IV 光を継ぐ者(前編) 解説 mailto:sage [2009/02/22(日) 22:05:16 ID:6I+ebGDa]
ずいぶん長くなってしまいましたが、20周年記念PSO編の前編完成です。
って、題名に(前編)つけるの忘れてることに今気づいた…
例によって(たぶん多くの人が知ってるでしょうが)解説をw

「リコ・タイレル」
PSOEP1より。みなさんおなじみ、パイオニア1の科学者兼ハンターズ。業績は
語られていないので、何がすごいのかはいまいちわからないがたぶんすごい人。
パイオニア2総督コリン・タイレルの娘であり、パイオニア1ではトップのハンター。
常に赤い腕輪を身につけていたことより「赤い輪のリコ」として名を馳せた。
ダークファルスの力が暴走し、パイオニア1の住人を取り込んだ「セントラル
ドームの爆発」事件ではラグオル地表に出ていたため難を逃れたが、一人取り残された
彼女はプレイヤーにさきがけてダークファルスの封印されていた遺跡を進み、
ダークファルスと戦おうとする。
徐々に追いつめられていく様子を記録したメッセージパックに託された想いを
受け取りながらパイオニア2のハンターズであるプレイヤーは進むことになるが、
最終的にラグオルの遺跡に封印されていたダークファルスは彼女をよりしろとして
復活することになってしまう。
なお、PSOEP3ではヒースクリフ・フロウウェンともども最後の意志で何度でも復活する
ダークファルスとオルガ・フロウをぶつけて消滅させたことになっている。

「ヒースクリフ・フロウウェン」
PSOEP2より。リコの師匠であり、パイオニア1に乗り込んでいた高名な軍人。
これまた業績は語られていないが、かなり有名なのは間違いない。たぶん。
死んだと記録されているフロウウェンからの通信があったことがEP2の発端である。
パイオニア1はラグオルが移民可能かを確かめるため科学者や軍人の乗り込んだ
船であり、ラグオル探索中にダーク系エネミーと交戦したフロウウェンは、
負傷から闇の生物に変化していく感染を起こし、科学者たちはそれを利用しようと
彼を幽閉して実験を繰り返し、オルガ・フロウという人工ダークファルスを作り上げた。
リコと一緒にダークファルスとオルガ・フロウをぶつけて消滅させようとしたのは
いいが、両方は消滅したのにアンプラム・アンブラという木のようなものが残っていた。
これを巡って利権を求める総督府に従うハンターズ(ただし、最終的にハンターズは
総督府を裏切ることになる)と、真実を知る反政府組織アークズが攻防戦を繰り広げる
のがEP3のストーリー。
本作ではそのアンプラム・アンブラを100メートル級の巨人の腕として話を進めてます
(EP3ではそれを倒せば終わりになっていましたが、ここではEP3のキャラが倒したあと
巨人の本体が出てくるという形にしています)。

「ヒューマノイド」
PSOEP3でいうアンドロイドのこと。
EP3の時代の少し前に差別主義者である新総督ドル・グリセンのもとに人口調節を口実と
してアンドロイドの虐殺が行われたという事件があり、アンドロイドにも人権をという
動きのもと、呼称がヒューマノイドと改められた。
もちろんそんなもので差別意識が改善するわけはないのだが、人権屋がアレな人々なのは
パイオニア2でも同じようである。

95 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/23(月) 01:39:20 ID:g/DJjSI3]
初めまして。そして投下です。

完全に勢いだけで書いた。後悔はしていない。

      ***   ***

初めまして。僕はGH470、固体識別用の名前はエルヴィアです。……え、女の子っぽい名前だって?仕方ないじゃないですか。面倒くさがりなマスターがずっと変えないんですから。
「……何か言った?」
「あ、いえ。別に何も……」
……モノローグに反応するとは、さすがマスター……。実際の所、僕自身が気に入ってますからね。というか慣れました。
「ほら、ボサッとしてないで戦闘参加!あんたが戦わなきゃ意味がないじゃないの!」
マスターがヴィッシ・グルッダでエネミーを吹き飛ばしながら怒鳴ります。……はぁーい。
今日はラフォン草原で僕の戦闘値上げです。そのついでに、マスターはマスターで素材拾いとかPA上げとかをやっています。
「こんのアホウドリ!いちいち上にあがるんじゃ無いわよ!」
マスターが悪態をつきながらロングボウで空中に飛んでしまったシャグリースを打ち落としています。その後、瞬時にウォンドに持ち替え……
「ラ・ディーガっ!」
打ち落として這い蹲ったシャグリースにテクニックでとどめを刺しました。一息つくマスターの近くにはヴァーラ達が迫っています。
「……で、あんたらはあんたらで……」
今度はソードに持ち替えて、一度横に振った後……
「集団で襲ってくんじゃ、ないわよ!」
その反動を利用して、いつもより鋭いトルネードブレイクでヴァーラ達をなぎ払いました。……はい。今更でなんですが、僕のマスターの職業はウォーテクターです。
最初はフォルテファイターを目指していたようなのですが、愛読している『月刊ディ・ラガンマガジン』の連載小説、『Ep:X 語られぬ英雄』を読んでから心変わりをしたようです。
前衛、後衛の区別なく、敵にも味方にも合わせられる職業。……多少の誇張は含まれているかもしれませんが、その通りと言えばその通りの職業です。

『しかしマスター……マスターって、テクニック苦手なはずなんじゃ?』
『ん?……ああ、気合で何とかするわよ、気合で』
『そ、そういう物で何とかなるとは思えないんですが……』

……とまあ、最初に聞いた時の僕には心配していた事がありました。マスターはビーストなので、テクニックは苦手なのでは?と思っていたんです。
最終的には『ウィッコに出来てあたしに出来ないはずがない!』とまで言ってしまいまして……現在に至ります。
「ふぅ。……結局、あたしがほとんど倒したんだけど……」
「あ、すみません!」
僕がモノローグをしている間に戦闘は終了してしまったようで、フォトンや素材を両手に抱えたマスターが数字の3のような口をしながら僕を睨んでいます。
「まあいいわ。こっちもいい感じにPAレベルを上げられたし。……しばらくの間、あんたのご飯は塩スープだけね」
「な、何でですか……!?それは酷すぎますよ!」
「冗談よ、冗談。ペロメ一個で勘弁してあげるわ。……もっと欲しかったら、この先がんばりなさーい」
腰に手を当てカッカッカ、と笑うマスター。……あなたは女性なんですから、もうちょっと、こう……という突っ込みは心の中にしまっておきます。……言っても無駄だからです。
これもある意味、教官の影響なんでしょうね……と、僕はマスターの元教官であり現ガーディアンズ総裁のライアさんに軽い恨みの念を送っておきました。

      ***   ***

あれ、ウィッコってビーストだよね?

というわけで、勢いだけの初投稿でした。それと、勝手に作品名を(改変して)借り、成り行きとはいえ本編に対する批判的文章を書いてしまったEPX作者様に深くお詫び申し上げます。

96 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/24(火) 00:24:38 ID:aB2qjMHA]
>94
PSO編キタキタw
予想以上に厳しい展開だけど、戦乙女の大逆転劇に期待。
後編も楽しみにしてますよ〜

>95
基本的にここは転用自由なので余り気にすることないかと。
今後の活躍を期待してるぜ!



97 名前:名無しオンライン [2009/02/24(火) 20:51:29 ID:MJvvAjsP]
>>95
沼男「(・3・)」
GH-431「パルジー・トリュフを両手に抱えて数字の3のような口をしてどうしたんです?マスター」
沼男「ウォルナが出ないYO」
GH-431「トリュフは貴重品ですよ?」
沼男「俺は味王じゃないんだYO。食材集める為にガーディアンズしてるんじゃないんだYO。」
GH-431「では今日もまた塩スープですね。」
沼男「あ、このセバラ美味しそう…(名前が)」
GH-431「口切りますよ」

98 名前:裏側1/3 mailto:sage [2009/02/25(水) 09:08:49 ID:3iwTHOsT]
俺はヒュマオ、民間警護会社ガーディアンズに所属するガーディアンだ
現在本部から召集を受けてMTGルームに向かっている
ルウに先導される形だが別段必要は無い
流石に手馴れた本部で迷う心配をされる程では無い筈だが
これもこのルウの存在意義なのだろうか?
このルウは通常のルウシリーズと異なりパートナールウと呼ばれるもので
特定個人(この場合は俺)のサポート用に作られている
しかも扱いは俺の備品、キャストの人権とやらはどうなっているのか
そんな事を何となく考えながら通路を歩く、まあ、暇なんだな
仕事内容はMTGルームで直接聞けるし、さりとて他に話題も無し
黙々と歩いてると色々と思考が飛散するのは精神衛生上の防衛行動だ
「おお、よく来たのう」
MTGルームで俺を迎えたのはネーブ、すると総裁室絡みの任務だろうか?
「召集しといてよく言う」
「ホッホッ、まあそう言うでない」
ネーブとはいつもこんな感じで軽口を言い合う
付き合いが長い上にお互い肩書きに拘る性格でもないのでいつの間にか打ち解けていた
「それで内容は?」
「うむ、ちょいとニューデイズに行って欲しいんじゃ」
「ニューデイズに?」
「そうじゃ、素行調査にな」
「は?」
思わず聞き返した
俺は表向きは機動警護部、実際は調査部特務隊「強行調査部」の所属
表側なら部署違い、裏側なら役不足だ
強行調査隊の任務はガーディアンズの敵を抹殺する事
それこそモトゥブにSEEDウィルスがばら撒かれようがパルムにコロニーが落下しようが
極端に言えばグラール文明が消滅しようが関係無い
ガーディアンズという組織の敵を抹殺する事「だけ」が任務なのだ
必要なら総裁でも抹殺する部隊なのは伊達じゃない
「いやいや早合点はいかんぞ?」
「それなら最初から説明すれば良いだろう」
いつもながらわざと誤解させようとしてないか?
そんな俺の疑問を他所にネーブはガーディアン登録簿を見せる
「このガーディアンなんじゃがのう、実はイルミナスと繋がっておった様でな
 グラール教団の情報を流していた疑いがあるのじゃ
 お主にはその真偽を調査してもらいたい
 事実ならこれは重大な事件じゃのう…何処ぞに雲隠れされたらやっかいじゃ」
強行調査隊として調査する、早い話が暗殺か


99 名前:裏側2/3 mailto:sage [2009/02/25(水) 09:09:37 ID:3iwTHOsT]
大体事情は解った
ガーディアンズにはイルミナスのスパイが存在する
それも、ガーディアンズが用意した、スパイだ
要するに連絡要員、ガーディアンズとイルミナスは仲が良い
表向き対立してようがその実とても仲好しこよし
何せイルミナスという敵が存在する事でガーディアンズの立場が強化されたのだ
これは偶然でも何でもない、仕組まれた事なのだから
あの総裁はこんな事実知りもしない、正に道化
そのイルミナスも消滅した今、スパイの存在は邪魔、という事だ
やれやれだぜ…
「了解、これよりニューデイズに向かう」
「ああ、待っとくれい」
任務に向かおうとする俺をネーブが引きとめる
「ん?」
「こっちはちょっとした頼み事なんじゃがな」
そう言って登録簿の新たなページを開く
「ついでと言ってはなんじゃが、このガーディアンの様子を見てきてくれんか?」
表示されているのはニューデイズ在住のビーストの男性
主兵装はソード、勤務態度は劣悪
…あれ?どっかで見た様な?…気のせいか?
「で、こっちも任務と?」
首を傾げながらネーブに問う
「いやいや、仕事とは無関係じゃ、機会があれば様子を探って欲しいだけじゃよ」
「なんでまた、普通の素行調査なら一般調査部の分野だろう?」
「ワンオブサウザンド」
ネーブの一言で心拍数が跳ね上がる
「このガーディアンのPMがどうもその様でな
 詳しい事は何も解っておらんが、間違いないじゃろう
 どうも他のワンオブサウザンド…かの女帝とも繋がりが有るようでな
 主共々要注意という訳じゃ」
まだ強行調査隊を動かす明確な理由はないから直接会え
つまり必要なら現場判断で抹殺か
「ま、機会が有ったらな」
気のない返事をしながら退室した
ワンオブサウザンド、確かに戦闘能力で言えば危険だろう
諜報部では戦闘能力に限らず能力優秀なPMを多数起用していると聞く
その中にはワンオブサウザンドもいるとか、先進的なものだ
強行調査隊なら危険な猛獣として絶対受け入れないだろうな

100 名前:裏側3/3 mailto:sage [2009/02/25(水) 09:10:15 ID:3iwTHOsT]
しかしあのビス男何処かで見た様な?
んー、思い出せん
元々人の顔や名を覚えるのは得意じゃないしなぁ
しかし何かが引っかかるんだよな…
「あの…」
「ん?」
取り留めの無い事を考えながら来た道を引き返しているとルウが躊躇いがちに声をかけてきた
実に珍しい
裏の任務では何故か本部まで送り迎えをするし、MTGにも同席する
先程も同席していたが一言も発さなかった
普段からそんな調子だから実に珍しい事だ
…普段からと言っても別に普段から侍らせている訳ではない
俺にそんな趣味はないし、ソロの時にPMと一緒に呼んだりする程度だ
…因みに何故かGH-413はルウがいると不機嫌になる、最近だとGH-450もか
「立ち入った事をお聞きしますが、よろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「何故、あなたはこの仕事を続けているのですか?」
唐突な質問だ
「あなたの個人データと照合した結果、あなたはこの仕事を快く思っていません
 フリーミッション時との比較ですが、データはあなたが不快と感じている事を示しています
 これは強行調査隊の任務全般に見受けられる傾向です」
何をいきなり…
そう言えば以前パートナールウをガーディアンズ独自開発のPM、と言った事があった
あくまで俺にとっての概念としてそう言っただけだが
先程PMの話題が出て何か思う所があったのだろうか
パートナールウはルウ・ネットワークでの情報共有に規制がかかる
ガーディアン個人に対応する為個体毎に情報蓄積を行うのだ
強行調査隊の任務などはルウ・ネットワークにも存在しない機密事項扱いだしな
…俺がいなくなれば記憶の全消去か、或いは抹消か
「仲間がいるからだ」
俺は簡潔に答え、そのままさっさと歩きだす
理解するには不十分な返答だろうが関係無い
理由なんてわざわざ語る程のものでもないさ

そして俺はニューデイズ行きのシャトルに乗り込んだ

101 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/25(水) 09:22:04 ID:3iwTHOsT]
GH-413「懲りもせずにPMの出ない話とは成長がないわねマイマスター(ラスカル)」
ヒュマオ「自棄酒の裏側を書いたんだからPMがいないのは当然だ」
GH-413「とうとう悪びれる事すら放棄したのね」
ヒュマオ「いや投稿するか迷ったけどね…」
GH-413「それについてはこの後書きと言う名の謝罪場で好きなだけ言いなさい」
ヒュマオ「今更言っても変わらんしな、ビス男と412氏女帝氏懲りずに勝手にお借りしました
      と言うかまだ一回借りる予定です。ご理解とご協力を(ry
      一応今回は自棄酒の裏話兼ガーディアンズの裏側として書いてますが
      全て脳内設定であり実在する団体・個人とは無関係です!」
GH-413「気は済んだかしら?」
ヒュマオ「まあ、取り敢えずは」

ザザーッ(音声は此処で途切れている)

102 名前:Partner Crisis 1 mailto:sage [2009/02/25(水) 19:02:06 ID:8n87IMwZ]
- ガーディアンズコロニー ミーティングルーム -

物々しい空気が部屋中を漂っている…。
今、この部屋にはガーディアンズの暗部と言われる者達が集まっていた。
ガーディアンズの治安を護る…言葉はいいが、要は不安分子、邪魔者の排除を受け持つ汚れ役。
ガーディアンズに一度でも接触した事がある人物なら、調査部、諜報部、公安部のどれかの名前を真っ先に挙げる。
今正に、その嫌われ部署3つが一堂に集い、この部屋でミーティングの真っ最中だった。
その3部署が集まる事は、内容が「次に排除するモノの選別」に限られる…。

「今回の目標は皆さんご存知の通り、この固体です」

司会進行役がディスプレイに1つの人物を映し出し、説明を開始した。
そこにあるのは1つの少女…否、1つのパートナーマシナリーだった。

「GH-412、最近発見されたワンオブサウザンドです。
 欠陥詳細は詳しくは不明、少なくともディスク・ZEROにあったフォトンアーツを自分自身で習得可能」

その一言で、会議室の空気は更に重くなった。
レリクスより発掘された、過去の戦闘技術が記録された遺産、「ディスク・ZERO」。
そこから復旧可能な部分をガーディアンズ、各企業が協力体制で作り上げてきた。
それが今日で知られるフォトンアーツであり、その作成にはかなりの労力が必要だった。
ただのパートナーマシナリーが自力で原点まで近付けたと言う時点で、それは見逃し難い話だった。

「ならば最早このような会議は必要あるまい! 即刻排除すべきだ!」

声を荒げたのは公安部の男。
生粋の武道派らしく、この会議室内では一二を争う程の体躯を小さすぎる椅子に収めていた。

「貴方はいつもせっかちですねぇ…それならこのような会議は必要ないでしょう?」
「ふん、料理の仕方に難癖をつける調査部とは違うのだ!」
「…お静かに、話はまだ終わってません」

茶々を入れる調査部からの出席者を、諜報部の女性が諌める。
声を荒げた所で話の進行を止めていた司会役が、再び話を進め始めた。

「厄介な事に、この固体を最初に発見したのはマヤ・シドウです。
 彼女の発見により、ガーディアンズ本部が監視体制を取っており、我々の介入は困難を極めます。
 ライア総裁の性格を考えると、余計な手出しをすれば我々の今後も保障されないでしょう」

*どん!*

先程の公安部の男がテーブルを力一杯に叩きつける。

「だから私はあの女には反対だったのだ…!
 感情論に振り回される青二才に、どうしてガーディアンズの総裁が務まろうか!」
「今更人選に文句を言っても仕方ないでしょう? 本当にせっかちですね」

調査部は諌めながらも、ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら余計な一言も付け加えた。

「最も、私もモルモット達のコバンザメには部不相応だと思いますけど」

103 名前:Partner Crisis 2 mailto:sage [2009/02/25(水) 19:04:03 ID:8n87IMwZ]
「…で、我々の目的は?」

調査部、公安部の口喧嘩を他所に、諜報部の出席者は静かに尋ねた。

「今回はGRMと協力体制で、このPMの捕獲ないしは破壊が目的です。
 限られた能力値でしか活動出来ないPMが、未知数の力を見せ付けている…。
 その力を解明し、今後の軍事開発に利用すれば、我々はSEEDを越える兵器を生み出せます」
「捕獲では甘い! 破壊が一番容易いならば、そうすべきだろう!」
「現在、ガーディアンズは慢性的な人材不足に陥っています。
 様々な方面で新人獲得の為に動いていますが、焼け石に水程度の成果しか出せていません。
 数がいないならば質で勝負するしかない。その為にもこれが必要なのです」

進行役は手に持っていた棒でぱんぱんと、映し出されるPMを叩いた。
公安部の男が面白くなさそうに大袈裟に椅子に寄りかかると、今度は調査部が続けた。

「新しい玩具を作るのはいいとして…捕獲したワンオブサウザンドをそのままに出来る保障は?
 どんな餌で手懐けても、どんな頑丈な鎖で縛っても、脱出され、裏切られたじゃないですか?
 何処かの『狂犬』や『不死身』とか言われた、出来損ないみたいに?」

ちらりと、不敵な笑みを浮かべつつ諜報部の出席者を横目に見ながら男は続けた。

「そういう失敗例がある以上、私も破壊が一番良いと思いますけどねぇ?」
「…任務に捕獲とあるなら、我々は正義の名の下にそれに従うだけです」

諜報部からの出席者…女性は淡々と答えた。
チッ、と面白くなさそうに男は吐き捨てながら、進行役を睨みつけた。

「未知数と言ってましたけど、一体そいつはどれくらい強いかの情報はないんですかね?
 度合い次第で、捕獲が容易く行くかどうかが決まってきますよ」
「最初のワンオブサウザンド、『女帝』を打ち倒した、と言えばお分かり頂けるでしょうか?」

進行役の返答に、調査部の男は突然目を見開いた。
『女帝』…現在の裏組織の頂点に立つ、最初に発見されたワンオブサウザンド。
最近では大袈裟に動いたと言う記録こそないが、その戦闘力は『狂犬』と互角あるいはそれ以上。
更に言えば、『狂犬』は諜報部の精鋭である戦闘処理課をたった1人で壊滅させた記録もある。
その固体を打ち負かした…偶然であるかもしれないが、最悪の事態を想定するならば答えは自然とこう繋がる。
このGH-412は、その2つよりも強い、と。

「ハッハ…全く、何処まで人間様を馬鹿にすれば気が済むんでしょうねぇ」
「そんな個体を捕獲など、何を考えている…!」

引き攣った笑みを浮かべながら、調査部の男がぎりりと鳴らす歯の音が静かな部屋に響いた。
公安部の男からも、先程までの勢いが失われていた。それまでにその2つの固体が残した恐れは大きかった。
対ワンオブサウザンド編成部隊、諜報部戦闘処理課…その対抗策を打ち破った固体よりも強い可能性。
現在も女帝に好き放題動かれているのは、そのワンオブサウザンドを確実に仕留める手段が確立されていないせいだ。
覚醒する前の固体ならばいくらでも処理は効くが、ディスク・ZEROの技術復元と言う離れ業をやってのけている。
覚醒前、覚醒後、どちらであろうと余裕のない状況である事に変わりはなかった。

104 名前:Partner Crisis 3 mailto:sage [2009/02/25(水) 19:05:22 ID:8n87IMwZ]
「そうなると諜報部さん、御宅の飼い犬をぶつけるのが一番なんじゃないんですか?」

まず最初に矢を当てられたのは諜報部だった。
無理もない、そんな大それた不穏分子の排除にはそれ相応の人材と武器が必要だ。
人材不足がガーディアンズ全体を悩ませる中、大量の人員を危険に晒すのは何としても避けたい。
ともなれば…少数精鋭で一気に叩くしか手段は無くなるのだ。

「…狂犬をけしかけるには不安要素が多すぎます。
 何よりこのGH-412と顔見知りの様で、下手をすればB-218号任務の失敗を繰り返します」
「おやおや、そんな役立たない物が最終兵器とは…諜報部も落魄れましたねぇ?」
「随分と好き放題言っているが、貴様の番犬の事も忘れないでもらおうか?」

調査部の皮肉を、公安部の荒い息が遮った。

「そうですねぇ、今の所では一番不安要素がないのは私の所でしょうか?
 公安部も、デスクワークばかりで鈍っているでしょうから…」
「奢るな小僧、貴様等は我々の用意した揺り籠で意気揚々と獲物狩りをしていられるに過ぎん!」

又しても口喧嘩が始まる。

「皆様、今日はこの様な…」

*ばんっ!!*

進行役の諌めの声も、開かれる筈がないドアの音によって止められた。
そのドアを開いたのは…紛れもなく、豪華な装飾を施された儀礼服を身に纏った現ガーディアンズ総裁。

「随分物々しいじゃないか、季節外れの怪談かい?」

ライア・マルチネスその人だった。
決して見られてはならない人物の登場に、出席者達は全員身体を凍らせてしまった。
総裁の意思を無視した密談を行った時点で、処罰はほぼ免れられないからだ。
仮に見逃されたとしても、今まで以上に警戒を強められる…誰もが終わりを確信していた。

「アンタ達がコソコソと何かやってたのは勘付いてたよ。
 断りもなしに密談とはいい度胸じゃないか、覚悟は…ん?」

ライアはスクリーンに映し出されたGH-412を見るや否や、険しい表情に変化した。
自分と、父親が作り上げたガーディアンズを全て否定してきた、厄介者が抱える厄介者。
ワンオブターザンだったか、正確な名前は忘れたが、忌々しい出来事が頭の中で蘇っていく。
アンタの方がよっぽどイルミナスよ! という最大の屈辱の言葉が、顔を歪めさせていった。

「アンタ達!」

ライアは進行役の傍に設置されている上座にどっかりと座り込んだ。
全員が覚悟を決める中、ライアは険しい顔でスクリーンを指差しながら叫んだ。

「ここで、こいつの事に関して、一体何を話していたかを聞かせてもらうよ。
 少しでも誤魔化したりしたらブッ飛ばすよ! いいね!?」

105 名前:Partner Crisis 4 mailto:sage [2009/02/25(水) 19:06:54 ID:8n87IMwZ]
- ニューデイズ支部 ガーディアンズ宿舎 -

「ふぅ…キリがないなぁ」

皆さん今日は。
私はGH-412、とあるガーディアンのパートナーマシナリーをしています。
今日は3日振りに晴れたので、お洗濯とお庭の掃除でてんてこ舞いです。
3日も掃除が出来なかった庭は、雨で好き放題落とされた木の葉がびっしり…。

「湿ってなければヤキイモも出来るんだけどなぁ」

ホウキでいくら掃いても、びったりと石に張り付いた木の葉は動いてくれません。
でも意地でも…このこのっ! 掃きたく…なりますよねっ!? こんのぉ〜っ!
…ダメだ、意地張ってないで手で取ろうっと。お買い物の時間まで間に合うかな…。

ああ、でもお買い物に無事に行ける保証もないんですよね。
タダ飯食らい集団が来てしまえば、それこそ限界まで居座られます。
特に女帝さんなんか、最近ご主人様がいても構わず居座り続けるし…!
更に言えば、そこに413さんがいたら酒が進んじゃって酔い潰れられるんですよ!
事情が事情だから迎えに来てもらう訳にもいかない…叩き起こして帰すしかないんです。
ああ…もう! 思い出すだけで腹が立ってきちゃう!

「休憩、休憩!」

私はホウキを片付けて、部屋の中に戻りました。
多分明日まで掃除をやる気にはならないだろうけど、それはそれで!

「ふぅ…」

コタツに入りながら、私は物思いに耽り始めました。
この数ヶ月、本当に色んな事がありました…多すぎて今でも把握し切れてないかも。
私が異常なバケモノ、ワンオブサウザンドと分かって、女帝さん達と出会う。
その繋がりで430さんと出会って、そこから413さん達に繋がっていく。
そして、ご主人様に、私はパートナーマシナリーであればいいと言ってもらった。

…私は幸せ者です。
ワンオブサウザンドである事を告げられた日には、もうどうしていいか分からなかった。
女帝さんに突然襲われて、私以外にも同じようなPMがたくさんいると言われても、安心できなかった。
だって、同じであっても女帝さんは裏社会でしか生きられない身になってしまったんです。
私がご主人様と一緒にいてもいいのか、その時は不安で不安で仕方なかった。

でも私は、いてもいいと言われた。
そして普通ではないのでしょうけど、何もない日々を静かに過ごしています。
ご主人様は相変わらず、GPSにすら参加せず気の赴くままに動いています。
そんな日常が、これ程にありがたいものだなんて、思い知るのはこれで2回目です。
1回目は、GH-450騒動でたくさんのPMが犠牲となってしまったあの時…。

「…今夜のおかず、何にしようかなぁ」

気を紛らわせようと、ビジフォンのスイッチを押しかけたその時でした。

106 名前:Partner Crisis 5 mailto:sage [2009/02/25(水) 19:09:07 ID:8n87IMwZ]
「たっだいまぁ〜!!!!」

凄い大きな声で玄関を開いて入ってきたのは、居候の422さんでした。

「422さん!? 最近帰って来なかったから心配したんですよ!?」
「そんな事より聞いて聞いて!」

422さんは凄い荒い息使いで私の両手を握ってきました。
すっごい笑顔…もしかして、作ってほしい旬のお魚の話でも嗅ぎ付けたかな?

「私ね、遂に強化措置申請が通ったの!」
「えっ!?」

PM強化措置。
私達PMが、キャストと同等の存在となるという人権の侵害にもなりかねない特例。
422さんはマスターに捨てられた悲劇を忘れる事を拒み、後世に伝える為に申請を出し続けていました。
今まで全く返答がなかったようですが…。

「す、凄いじゃないですか! おめでとうございます!」
「やったよ! 遂にやったよ、私!」

…私は心の奥底で、違和感を感じていました。
いくらこの手の話に弱い人達に話が伝わるまで時間がかかるとはいえ、不自然すぎる。
今まで何の返答もよこさなかったのに、何故今になって急に強化措置申請が通ったのか?
…いや、考えすぎですね。422さんがこんなに喜んでいるんだし、水を注すのも悪いかな。

「…これでようやく1人立ちできるよ」

422さんの手を握る力が強くなっていきました。

「今まで、本当にありがとうね。私の我侭に付き合ってくれて。
 大変な立場だったのに、私を置いてくれてありがとう。何度感謝しても足りないよ」
「そ、そんな…あの頃はそこまで大変じゃなかったし…」
「412ちゃん、隠さなくていいんだ。私、知ってるんだ」

422さんは手をぱっと離し、私をまっすぐに見つめてきました。
私はその真剣なまなざしに、少しだけ気圧されてしまいました。

「私、聞いちゃったんだ。412ちゃんが普通じゃないって。
 そして色んな人に狙われる、大変な状況にあるって、あの450と話してるのを聞いたの。
 最初はあまりにスケールでっかくてよく分かんなかったけど、私なりに考えたんだ。
 そんな大変な412ちゃんにこれ以上迷惑をかけられないって…だから野宿を始めたの」
「それで帰って来なかったんですか!? 何処か壊れたりしたらどうするんですか!」

422さんの顔は再び笑顔に戻りました。

「いいのよ! だって412ちゃんは私の命の恩人よ!?
 そんな人に異常も何もない! こうして再スタートできるのも2人のおかげ!
 これは私の恩返しの最初の一部なんだから、気にしちゃダメよ!」

そう言うと422さんは、背中に背負っていた袋をどさっと床に置きました。



107 名前:Partner Crisis 6 mailto:sage [2009/02/25(水) 19:10:14 ID:8n87IMwZ]
「じゃ〜ん!! お祝いにホンガツオを持ってきちゃいました〜!」

ホンガツオ…また季節を無視した物が登場しました。

「これでさ、ぱーっとやっちゃおうよ!」
「…何処から買ってきたんですか、これ?」
「買う? そんなお金のかかる事はしないわよー。
 こうほら、根性でちょちょいのちょいっと!」

…まさか熊の如く、手で取って来たとか言うつもりでしょうか。
その方が渡航費とかで余計にお金かかるし、絶対無理だと思う…。
うん、考えるの止めた方がよさそうです。せっかくの好意に対して野暮いし。

「うーん…出所はともかくとしてかなり立派なホンガツオですね。
 これは調理のし甲斐がありすぎて、どうやろうか迷うなぁ」
「そーりゃそうでしょ、私が身を削る思いで取ってきたんだから!
 そう! 始まりは闇ルートがどうやって出回っているかを調べ尽くし…」

盛り上がる422さんを他所に、私は悩みました。
そうだ、お魚といえば小ビス子さんが大好きなんだっけ。
大好きなら、それはもう調理方法は全網羅してるはず。何か聞いてみようっと。
確かご主人様が、GPSの際にもらった(押し付けられたとも言います)カードがあるはず。

「よーし、それじゃあ色々と準備しなくちゃ!」
「ほいさー、私も手伝うよーん!」
「おやぁ? 珍しいですね、422さんが手伝ってくれるなんて?」
「何よそれー! せっかく人がいい話をしてあげたってのに!
 あたしだってこういう場面での空気の読み方くらい分かるわーいッ!」

そんな風に騒ぎながら、私達はお祝いの準備を始めました。
ご主人様が戻り、422さんの申請受理を聞いた時は、「そうかやっと食費が浮くか」という
如何にもご主人様らしい皮肉たっぷりなお祝いの言葉が、またその場を盛り上げました。
途中でまた413さんがクダを巻きに来たり…その時はもう既にかなり酔っ払っていました。
多分450さんとまたケンカをしたんでしょうね。他にお友達、いないのかなー?
また叩き起こして帰さないといけない…と、私はその時は溜息ばかりついてました。

…そんな幸せな出来事があると、必ず裏返しの不幸がやってくるのがこの世の理。
私達も例外ではありません。その時は、とんでもない出来事に巻き込まれていくなんて思ってもいませんでした。

そう、これは人間の誰もが持つちっぽけな感情が生み出した騒動…。

Last Episode "Partner Crisis"

108 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/25(水) 19:12:41 ID:8n87IMwZ]
とりあえず今回はここまで
最後のお目汚し、少しでも楽しんでもらえれば幸い也

109 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/25(水) 19:16:04 ID:tTei8vsB]
ようやく最後か…

110 名前:帰って来た御主人 mailto:sage [2009/02/26(木) 00:14:07 ID:tWuwFlkE]
もう帰って来ないと思っていた御主人が、
339日と3時間ぶりに帰って来ました。

でも…不思議な事に御主人はマイルームに入ってきません。
会いたい…御主人に会いたい。
このドアの向こうに御主人がいるのに。
距離にしてたったの数センチなのに。

どうしてですか?私が嫌いなのですか?
私が悪いなら言って下さい。

御主人「…すまないパシリ…」
パシリ「え…ご、御主人…?」















御主人「…実はオレ、コミュニティーコースなんだよねー!」
パシリ「早く課金しろやゴラァ!」

どっとはらい。噂の無料コースだとPMはどうなるのかなぁ。

111 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/26(木) 16:36:32 ID:E7b9keWD]
……とりあえず、パシリ抹消の心配はなくなったと考えていいんだろうか?
無料でもインできる以上、突然キャラが消えたらブーイングかかるだろうし。

まあ、あくまでもチャット専用だからパシリに会えないのが難点。

112 名前:名無しオンライン [2009/02/26(木) 19:05:19 ID:qX4exsP8]
倉庫は使えないがパーティーに参加させればいいじゃない

113 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/26(木) 19:15:39 ID:XoxFpLqY]
コミュコースでパシリといっしょにのんびり通路でも回ってみるか・・・

=ミッション開始=

パシリ「ご主人様、ガーディアンズには戻らないのですか?」
パシリ「ライセンスがなくても私はいっしょです」
パシリ「マイルームでいっしょにのんびりしたいな」
パシリ「ガーディアンズライセンスはいつでも発行できるそうですよ」

よしっ!!

114 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/26(木) 21:43:40 ID:krYVkOPN]
>>113
なんてソニチの罠。
でも本当にパシリが言ったら課金しちゃうぜ!

115 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/26(木) 22:04:09 ID:wNiUAHpn]
ご主人様は野宿なのにパシリはマイルームで悠々自適か

116 名前:名無しオンライン [2009/02/26(木) 22:07:49 ID:yDtH9Mo2]
ロビーでもPMを連れまわせる様にしろよ



117 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/02/26(木) 22:22:35 ID:E7b9keWD]
>>115
まあ、言い方を変えれば『課金しないのが悪い』ワケだが。

エル「マスター?」
マスター「何だねエルヴィア君」
エル「マスターは課金しますよね?」
マスター「んー……ごめん、それ無理(にこやかに」
エル「そんなナイフ持っていて『馬鹿な事はやめろ』と言われた後みたいに笑顔で言われても……」
マスター「いやね。リアルが金欠だからさ、もし無料モードがあるんだったら便乗しようかと」
エル「じゃあさっさと働いてくださいよ!」
マスター「うん、それ無理」
エル「即答しないでください!」

118 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/03/03(火) 01:45:34 ID:oDeqyHwQ]
保守

119 名前:戦え僕らのXXX verヒュマオ mailto:sage [2009/03/04(水) 19:51:50 ID:oYwdZSLg]

黒い ラスカル ヒュマオとPMが

一つになれば 話が生まれる〜

偶に(?)はセラフィ刺すけれど

ニッコリ 笑ってバイバイビー(go to hell!)

今だ 必殺 ぶてんしゅんれんざ〜ん!(アッー!!)

SEED フォーム 打倒せ!

勝利を掴め 英雄だ〜

雄々しき その名は! その名は! その名は!

120 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/03/04(水) 19:53:13 ID:oYwdZSLg]
話をちびち書いてた筈なんだが何かが舞い降りた
反省はしていない…

121 名前:ある日の出来事 mailto:sage [2009/03/08(日) 09:01:33 ID:TMLkPPD2]
今日、一年ぶりにお客がきました。
ガーディアンズ体験(トライイルミナス)のライセンスなんだそうです。


・・・・・それにしても。
つるぺた好みは治っていませんね。 ご主人様。



122 名前:不良品の役目(前編) 1/3 mailto:sage [2009/03/08(日) 22:46:21 ID:r/AUROfo]
「好きです。結婚してください」

ご主人様のこの言葉は、当然この私、GH-421に向けられたものではありませんでした。

私が彼に、いわゆる「想い」を寄せるようになったのは、いつからだったでしょうか。
覚えているのは、昔ご主人様の友人がからかい半分でかけた一言。

「そうして並んでると、まるで恋人同士みたいだな」

小ビーストであるご主人様は、PMである私とそれ程背丈の隔たりがありません。
それをからかう意味だったのでしょうが、私には別の、もっと大きな意味がありました。
「恋人」の意味を調べ、その定義する所のサンプルを参照するうちにいつしか、
私にはPMらしからぬ願望が根付いていったのだと思います。

ご主人様はビーストでありながら非常に穏やかな気性の人物で、私にも優しく接してくれます。
もちろん、ガーディアンとしてPMを正しく扱うという意味で、なのだとは理解しています。
しかし「恋人」の様々なサンプルを参照した私はつい、彼の行為をそれらに重ね合わせてしまいます。

どう考えても、私は不良品です。
任務上のパートナーたるガーディアンを異性として意識するなど、許されるものではありません。
上層部に知られたら、当然処分の対象となるに違いありません。
ご主人様も、自分のPMが不良品であることを知ったら悲しむでしょう。

私が「想い」を伝えないのは、そういったやむを得ない理由があったのです。
ですから、今日この日を迎えたのも、来るべき時が来ただけと、覚悟していたつもりでした。

お相手は、同じく小ビーストの女性。
モトゥブでもかなりの有力者のご令嬢との話です。
ガーディアンズのモトゥブ支部とも密接な関係があるようで、彼女と結ばれることはつまり、
ご主人様の洋々たる未来にもつながります。

PMとして、ご主人様の出世は喜ぶべきことです。
それなのに、今私が考えていることは、本来あるべき思考とは真逆のものでした。

やはり、私は不良品なのでしょう。
そんな私に罰が下されたのは、二人の婚約後間もない頃。

彼女が不治の病に倒れたと聞いたとき、私はどんな顔をしていたでしょうか。
「願いが叶った気分はどうだ」
誰かが心の中で囁く皮肉にどう答えてよいか、私には分かりませんでした。

123 名前:不良品の役目(前編) 2/3 mailto:sage [2009/03/08(日) 22:49:01 ID:r/AUROfo]
かつて、モトゥブが今よりもっと厳しい環境だった頃に流行った病。
環境の改善が進むうちに発症者は減っていき、今ではほとんど確認されない病。
そんな病に彼女が侵されたのは、何かの皮肉としか言いようがありませんでした。

というのも、彼女の父親はモトゥブの自然環境保護団体の幹部だったのです。
モトゥブの開拓に伴い失われていく自然の保護を訴えていた彼とその家族が、
その自然に裏切られた形になったというのは、何かの悪意すら感じます。

ご主人様は、日々懸命に看病をしています。
もちろん私も、内心はともかく精一杯そのお手伝いをしておりますが、
彼女の容態は悪くなる一方です。

端で見ていて辛くなるほどに、ご主人様の憔悴はひどいものでした。
それは、単に彼女を心配する気持ちだけではないことを、私は知っています。

一つだけ、彼女の病を癒す方法が、ないわけではないのです。
しかしそれは、彼女の家族にも、ご主人様にも、選べと言うには余りに酷な難題。

モトゥブ自然環境保護団体より保護指定を受けている、絶滅危惧種。
【渡りラプチャ】の雛のクチバシを煎じて作った薬が、唯一の特効薬なのです。

【渡りラプチャ】は普通のラプチャと違い、潜行能力を持っていません。
その代わりに長時間の飛行が可能で、モトゥブの気候の変化に対応して生息地を変えています。
幸い彼女の父親の仕事柄、渡りラプチャが巣を構えている場所の見当はついています。
ですが、保護指定を受けている渡りラプチャを狩ることが、何を意味するのか。

そもそも渡りラプチャが絶滅危惧種となった原因も、
昔流行った病の特効薬ということで乱獲されたことにあります。
彼女の父親はその経緯を良く知っているだけに、同じ過ちを繰り返す選択はできないでしょう。

ご主人様にしても同様のことが言えます。
まず、禁忌を侵した時点で彼女との婚約が解消されることは明らかであること。
そして、自然環境保護団体と深く結びついているガーディアンズのモトゥブ支部としても、
ご主人様が罪を犯した場合、そのままでは済まさないということ。

しかし、それよりも何よりも。
ご主人様自身、私情のために幼い生命を犠牲に出来る性格ではなかったのです。

124 名前:不良品の役目(前編) 3/3 mailto:sage [2009/03/08(日) 22:50:21 ID:r/AUROfo]
ご主人様は決して臆病なのではなく、犯罪者相手には敢然と立ち向かう強さを持ってはいます。
でも、無辜の命を奪うことに強い抵抗を感じているのか、ほとんどの原生生物討伐に参加していません。
ために実行部では戦果があげられず、選んだ道がガーディアンズでも特に枠組みの少ない、医療研究部。
ご主人様は猛勉強の末、ビーストでありながらその狭き門を潜り抜けたのです。

そんなご主人様ですから、当然彼女の容態も、どうすれば治るのかも知ってはいます。
知っていて、決して選んではいけない手段を採ろうとする感情と必死に戦っている、その葛藤。
ご主人様の憔悴には、そんな一因もあったのだと思います。

いつか、ご主人様は禁忌を破ってしまうかも知れません。
それは、ガーディアン付きのPMとして、止めなければならないこと。
でも、私はその時、どんな気持ちでご主人様を止めればいいのでしょうか?

いわゆる「恋敵」である、彼女の死を望む気持ちが混じらないという自信がありません。
万に一つ、それをご主人様に悟られるようなことがあったら。
最初はそんな、ご主人様に嫌われたくないという気持ちが強かったと思います。

ですが、ご主人様の無力感に打ちひしがれた背中を見ているうちに、別の感情が芽生えてきました。
「何とかしてあげたい」
単純にして純粋なその気持ちは、やがて一つの可能性を見出しました。
ご主人様が以前の優しい笑顔を取り戻す、ただ一つの可能性を。

私は、不良品です。
ご主人様と離れたくないばかりにその事実を覆い隠してきました。
しかし、不良品なら不良品なりに、果たせる役目というものがある筈です。

ご主人様によってでも、彼女の家族によってでもない。
一体の、壊れたPMの勝手な行動によってなされたことならば。

上層部の調査によって、私が故障しているということさえ明らかになれば。
私の犯した罪は、ご主人様に及ぶことはありません。

ある夜、看病疲れでうたた寝をしているご主人様の背中に毛布をかけてから、私は出かけました。
次に会う時、ご主人様はどんな顔をして私を見るでしょうか?
優しいご主人様は、だからこそ怒るかも知れません。
自らを思って犯した罪によって無残に処分される、私の未来を慮って。

「でも、許してくださいね、ご主人様。私は…不良品ですから」

125 名前:名無しオンライン mailto:sage [2009/03/08(日) 22:59:22 ID:r/AUROfo]
「最低の主人」に続き、英雄になれなかった者たちの物語第2弾(EPX本編を含めると3弾)です。

自らを不良品と断じた、一体のPMの最後の奉公は成るのか。
後編に続きます。

>95
転用については光栄に思いこそすれ迷惑などと思ってはいないので、気にしないで下さい。
自分の物語がきっかけでWTになった彼女の活躍、ひそかに期待しています。

126 名前:Partner Crisis 7 mailto:sage [2009/03/09(月) 00:47:16 ID:I0z7IQtU]
数十年前のある日、1人の女性が交通事故で死んだ。
即死という、あまりにあっけなさ過ぎる人間の命の小ささを表すような最後。
その女性は一児の母であると共に、GRMの技術『元』主任だった。
今、早くから『元』と付けるのは、彼女はとっくに主任としての仕事を出来る身ではなかった。
――彼女は精神を患っていたのだ。

当時、PMの感情回路導入に関して上層部と開発研究チームの意見が分かれていた。
最も、研究チーム全体と括るよりも彼女個人と上層部、と言った方が正しいだろう。

GRMがPMに求めた物は支援などではない。戦争に使う為の人型汎用兵器の攻撃力だった。
普通、殺人兵器に感情は余計な物だが、そんな定義を忘れさせる記録が当時には存在した。
研究チームのお遊びによる感情回路導入が、目を反らす事が出来ないほどの性能向上を測定したのだ。
最も、そのお遊びを単なるお遊びとして流せる状況だったなら、彼女が争う事もなかった。

GRMは独占し続けてきたガーディアンズへのマシナリーのシェアを失う事になる危機に直面していた。
シェア強奪の為に、テノラ・ワークスが実用性、耐久性、共に優れた最新型高性能マシナリーの完成を発表してきたのだ。
同時にヨウメイ社も最新型マシナリーを発表したが、外見と性能の両立に悪戦苦闘し、GRMに及ばない趣味の領域の産物だった。
既に完成形態にまで辿り着いていたPMは、これ以上の性能向上は見込めない程までになっていた。
先が見込めない状態での他社の遥かに高性能なマシナリーの発表に、GRM上層部は焦り始めた。
追い討ちをかけるように、ガーディアンズからの納期無期限延期の申し出。
GRM上層部は藁にも縋る思いで、性能向上の為の策を我武者羅に探し続けた。
そして……上記のお遊びのデータが発見されてしまった。

当然、これを上層部が見逃すはずがないが、主任の女性は唯一反対し続けた。
研究者にとって、自分達が生み出した物の性能向上は何よりも優先すべき事項だ。
それが例え、未来に破滅を呼び寄せる引き金だとしても、研究者達は全力を尽くす。
自分達の開発した物なら大丈夫だと言う、何の根拠もない自信に満ち溢れているから……。
しかし彼女だけは違った。迷う事無く、上層部の命令に反抗していった。
そんなたかだか性能向上の為だけに、彼女の『娘』とも言える存在に心を与えたくなかったから。
突きつけられる厳しい条件――三ヶ月内にテノラ・ワークスを越えるマシナリー開発の為に、彼女は奮闘した。
家庭を省みずに、ただひたすらに1人だけになろうと戦い続け、そして、壊れていった。

そして彼女が死に、感情回路導入の障害となる物は何もいなくなった。
1つの悲劇が生み出した連鎖はワンオブサウザンドの誕生に繋がっていった。

しかし、それだけではなかった。
悲劇は、知られざる影の舞台でも連鎖を続けて行っていたのだ。



127 名前:Partner Crisis 8 mailto:sage [2009/03/09(月) 00:49:07 ID:I0z7IQtU]
「……ックククク、上層部連中の慌てる顔が見れないのは残念だなぁ」

真っ暗な部屋の中、コンソールパネルを狂ったように操作する男が1人いた。
彼は研究開発チームの一員であり、主任を心から尊敬していた純粋な若者だった。
しかし、今の彼の表情は純粋とは言い難いほどに歪められている。

「……おい、誰だ? 何してんだ?」

もう1人、研究員が薄暗く光る部屋に気味の悪さを感じて覗き込んできた。
感情回路導入が齎した性能向上により、ガーディアンズへのマシナリーのシェアは確固たる物となった。
主任の無駄な争いに付き合わされた研究員達をねぎらい、上層部は僅かな休日を与えたのだ。
次の兵器を作る為の、英気を養わせる為に。
だから、ここには誰もいないはずだったのだ。気味悪がって当然だ。

男は光を発しているモニタの方に少しずつ近付いていく。

「うわっ!?」

モニタの蛍光色で薄暗く輝く元同僚の顔に、彼は大袈裟に後ろに転げ落ちた。
……しかし、椅子に座る仲間は少しも動じなかった。気にかけてもいないようだ。
慌てつつも、不気味に光るそれが若い同僚だと分かると、男は胸を撫で下ろしながら立ち上がった。

「な、何だお前か。――せっかくの休日に、何してんだ?」

自分の事を言えないか、と男は心の中で呟いた。
何て事はない、休日を生かしてこれまでのデータを整理しようと思っていたが
肝心のデータディスクを忘れてしまい、取りに来る為に出社しただけに過ぎない。

男が興味本位にモニタを覗き込むと、そこには信じ難い物が映されていた。
普通に考えれば有り得ない計算式によって構築された、危険すぎる骨格フレーム。
素人が見ても不自然だと分かる、無茶苦茶な図面が生み出した狂気の構造。
――そう、それは精神を患った主任が最後に持ち込んだ、狂った設計図だった!
それが何故、今ここにある!? 男は操作する若い同僚の顔を見ると、おぞましい笑みを浮かべている。
そして急いで辺りを見回すと、狂った設計図により構築された、1つの人型が寝ていた。

「お、お前! 何してんだよ!?」

若い同僚は答えない。
男は思いっきり胸倉を掴み、無理矢理にでも自分の顔をその瞳に映させた。

「何してんだって聞いてんだよォッ!!」

*ばばっ!!*

男は即座に振り解かれ、反動で隣のデスクにもたれかかった。
――こいつ、こんなに力がある奴じゃなかったぞ!?
若い同僚はゆらりと身体を曲げながら正面に立つと、歪んだ声で答えた。

「……復讐さ」

128 名前:Partner Crisis 9 mailto:sage [2009/03/09(月) 00:50:54 ID:I0z7IQtU]
「ふ、復讐……!?」
「そうさ。僕は主任に代わって、上層部に復讐するんだよ」
「な、何バカな事言ってやがんだ!?」
「バカなのは君達だろう?
 僕だって本当は主任と同じように、感情回路の導入は反対だったんだ。
 尊敬する主任がそう言うんだ、間違いないと思っていたんだ」

若者は手を大きく広げ、男に迫っていった。
男はただ、慌てて椅子につまづき、椅子を蹴り飛ばしながら後ろに下がるしかなかった。

「でも、君達が反対だと言えと言ってきた。
 主任はもうとっくに狂ってる、止める為に協力してくれと言ってきたよね?
 ――その結果! 主任は死んでしまった!
 僕は主任に死んでほしくて反対したわけじゃないのに!
 元の主任に戻ってほしかったから、現場から離れられるように仕向けたのに!
 そうだ、僕達が殺したんだ! 僕達が不甲斐ないから主任が死んじまったんだ!」

狂気に満ちつつ、途端に怒りを露わにした若者の怒号は、尚も続いた。

「だから僕は、主任に代わって復讐するんだ!
 主任が残してくれたこの図面で、主任が正しかった事を証明する!
 主任が反対し続けた感情回路が、どんな悲劇を齎すかを上層部に見せ付けてやるのさ!」
「ふ、ふざけんのもいい加減にしろ!
 そんな狂ったモンで作ったって、結局稼動せず終わるだけだろうが!
 忘れたわけじゃないだろ、主任の設計図で稼動させていたラインが欠陥ばかりを生み出していたのを!」
「……ックック、それがさぁ、星霊様も僕の事が正しいと言ってくれてるみたいでね。
 いざやってみたら、偶然にも全て安定値になってくれたんだよ。
 主任は凄いね、きっとこうなる事を予測してこの図面を書いたんだ」

男は急いで、道を開けるように横に動く若者を押しのけてモニタに被りついた。
狂いすぎた計算式、図面、それによって構築されているPMはやはり狂っていた。
だがしかし、リアクター出力は安定、AIの情報処理能力は全く問題なく、正常稼動が可能な状態だったのだ。
今が正常であっても、狂った設計で作られた物、今後何が起こるかは全くの未知数。
偶然が生み出した狂気の産物が、正にそこで眠りについている。

「お、お前、こんなモン作って、どうするつもりだ!?」
「だから、復讐するって言っただろう……?
 今は良くても、何れは崩壊するかもしれないのは分かってるんだ。
 そんな事は分かった上で僕はこれを作ったんだ。途中で壊れる為にね」
「途中で壊れる為、だと!?」
「そうさ、これをガーディアンズに配備する1つと取り替えたらどうなるだろうね?
 もうその配備先も大体考えてあるんだ。――いわゆる不良、ってね。
 ただでさえ問題のあるガーディアンズのPMが問題を起こせば、後は分かるだろう?」

問題を起こした結果――ガーディアンズは、PMその物の配備に対して不信感を抱き、GRMは1つの収入源を失う。






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