[表示 : 全て 最新50 1-99 101- 201- 301- 401- 501- 601- bbspinkのread.cgiへ] 2chのread.cgiへ]
Update time : 12/11 12:40 / Filesize : 500 KB / Number-of Response : 672
[このスレッドの書き込みを削除する]
[+板 最近立ったスレ&熱いスレ一覧 : +板 最近立ったスレ/記者別一覧] [類似スレッド一覧]


↑キャッシュ検索、類似スレ動作を修正しました、ご迷惑をお掛けしました

ヤンデレの小説を書こう!Part4



1 名前:◆lPjs68q5PU mailto:sage [2007/02/25(日) 00:49:58 ID:S4t41Ekl]
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。
 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫
yandere.web.fc2.com/
■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part3
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171290223/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。


2 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/25(日) 00:58:03 ID:0X29IBbE]
1乙。そして2ゲット。

3 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/25(日) 01:00:33 ID:y9F5nFc4]
>>1乙。

関連スレ

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ この29●●!
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171699507/l50


4 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/25(日) 01:16:29 ID:1GScpdDl]
>>1


5 名前: ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/25(日) 01:42:13 ID:MlyMp9a6]
>>1
慎氏、乙です。

後、前スレに上書きの7話投下しましたんで。

6 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/25(日) 02:16:37 ID:QkuHneqi]
>>1

7 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/25(日) 12:35:02 ID:270zdDsb]
これはヤンデレでおk?
ttp://www.youtube.com/watch?v=qFA19tfP75A

8 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/25(日) 16:33:01 ID:mBPeoP3h]
これは微妙だな。途中経過がないから只のき○がいにも見える。

9 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:34:47 ID:h1BEVMqk]
遅まきながらこちらに投下させていただきます。

10 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:36:16 ID:h1BEVMqk]
 学校から1キロほど離れたところにある木造アパート。通称『まるわハイツ』
 築13年で二階建て部屋数は六つ。トイレ共同、風呂は一応あり、六畳一間で日当たりは若干悪い。俺はそんなアパートの二階の奥部屋に住んでいた。
錆びた鉄製の階段を一歩一歩昇ると、ぎしぎしと鳴る木の廊下を歩く。外に剥き出した廊下は外側にすこしだけ傾いてて、バランスを崩すと柵を乗り越えて下へ落ちそうだ。
母親が一人暮らしになる俺に当ててくれた部屋だが、もうすこしいい部屋にしてくれよと思う。いつ崩れるかと思うと、怖くて眠れん。家賃を払ってもらっている手前、贅沢もいえないがね。
 部屋の前までやってくると、ドアノブにビニール袋が引っかかっていた。中を見ると、俺のチェック柄の服とエドウィンのジーパンが入っていた。あれ、なんでこんなところに俺の服が……。
って思い出した。たしかお隣の藤枝さんに「ちょっと、和人くん! き、君、地肌が見えてるじゃないですか! 貸しなさいっ」と、着ていたところを強引に脱がされた服だ。
部屋の前で脱がされたから良かったものの、外で脱がされてたら俺はパンツ一丁になるところだった。おいはぎにあった人間か、俺は。
ビニール袋から取り出して確認してみると、ほつれていた脇の部分が破れた後も見えない程丁寧に塞がっていた。やっぱり藤枝さんの腕はすごい。手芸の先生だというだけある。
 ジーパンも取り出す。確かこれは右ひざの部分が摺れて穴が開いてんだったっけ……。俺は畳まれていたジーパンを開く。紺が強いジーパンの右ひざには可愛いミッフィーのアップリケが縫われていた。
「………」
 藤枝さんのミッフィーブームはまだ終わっていないらしい。俺は通算三枚目となったミッフィージーパンを畳むと、ビニール袋に押し込んだ。それを掴むと。学生ズボンの後ポケットから鍵を取り出す。
それを自分の部屋の木造ドアのノブの鍵穴につっこんだ。鍵がちょっと曲がっているため、途中まで入ったところでつっかえる。
「くそっ」
 いつものことだが、毎度毎度イラつく。俺は力任せに押し込むと、鍵をねじりこんだ。
 がきこんっと金属音がして全て飲み込まれた。かっちりとはめ込むと音を立てながら戸が開く。
「ふぅ。ただいまー」
 入り口脇に合ったサボテンにそう言うと、靴を脱いで部屋に上がる。
 俺の部屋は狭い上にボロっちいので、ほとんどモノがない。実家に居た頃はそれこそゲームや雑誌の束かなんかがいっぱい積み上げられた部屋で過ごしてたが、ここに引っ越してくるときにほとんど置いてきてしまった。
 この部屋に実家並みのモノを置くとなるとスペースがいくらあっても足りないし、あんまり重いものを置きすぎると床が抜ける可能性もある。
 そんなこんなで俺の部屋にあるものといえば備え付けの水道と流し台とコンロを除くと、ちっちゃい冷蔵庫と14インチの古いテレビ(リモコン無しの奴。地デジにはもちろん非対応)、それに本棚とクローゼットと勉強兼食卓用のちゃぶ台だけだ。
 さらに部屋が小さいため、掃除も楽だから必然的に俺の部屋は綺麗だった。
 本当にモノがねぇな。だがこの生活初めて二年になるが、あんまり不便だとは感じていなかった。
俺は藤枝さんに縫ってもらった服をクローゼットの箪笥にしまう。ミッフィーブランドになっていないジーパンはあと二枚。そろそろ買いに行かないとな。
 俺は部屋の真ん中に置いてあったちゃぶ台を端に寄せると、学生服のまま畳の上にごろりと寝っころがった。ふうと一息つく。夕方過ぎて外は暗くなり始めていたが、部屋の中はもっと暗く見上げた天井は黒く見えた。
 俺は腕を伸ばして蛍光灯の電気コード(糸をつないで延長したヤツ)を掴むと、軽く引っ張った。ぱちんと音を立てて蛍光灯が二・三度点滅するとグレー色の蛍光灯が白くなり俺の部屋を明るく照らした。
 白くて丸い光の束を俺はしばらくぼぅっと眺めていた。
「しっかしなぁ……」
 気分は憂鬱だった。原因はもちろん、過去最高なファーストコンタクトとなった二十八歳の元引きこもり高校生こと、榛原よづりのことだ。
「俺、あいつといい関係築いていく自信が無いぞ……」
 今日の榛原よづりの行動が脳の奥につらつらと再生される。
 いきなり、尋ねてきた俺を家に招きいれた彼女。コーヒーをつくって俺の横にぴっとりと寄り添うように座った彼女。
「まさか、あのコーヒーも何か入ってないだろうなっ!?」
 俺は起き上がって体をまさぐってみるが、今のところ異常はない。まぁ、唾液ぐらいならまだ生死の危機はないが。
俺は半信半疑ながら、もう一度寝転がる。あのあとあの女は……。俺にヘッドロックをかましてきたな。胸の感触はよだれものだったが、あのヘッドロックの意味はなんなのだろうか。




11 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:37:16 ID:h1BEVMqk]
ただ抱きしめていただけか? それともマジで息の根を止めるつもりだったのか。
 で、彼女は俺のために料理を作ると言い出して……自分の前髪を切り落とした。ばっさりと、一遍の躊躇も無く。
「アレには突然すぎてビビッたなぁ……」
 彼女はまるで当然というような顔で切り落としたのだ。いや、確かに料理をするときに前髪は不要だがあんなに長く伸びた髪を女の子はすぐに躊躇無く斬ってしまうものなのか? 普通バンダナつけるとかするだろ? 髪を切るほうが面倒くさいだろ?
 そして極めつけは。

 べとべとべとべとべとべとべと。

「……」
 いいのか。アレは。
 あいつ自分の唾液を混ぜながら笑っていたぞ?
 俺はどうやらあいつに気に入られたようだが……、いくら副委員長とはいえあんな女の相手はまっぴらごめんだ。
 だいいち、無理があるんだよ! カウンセラーでも保健の先生でも無い俺が元引きこもり高校生二十八歳という攻略高難易度キャラを相手にするなんて!
 あんなのが隣にいたら俺の心休まる日が無い。さすがに無理だ。
「……しゃあねぇ。今回も委員長頼みか」
 俺はズボンから携帯電話を取り出すと、いつものように短縮フォンを押す。見慣れた番号と名前がディスプレイに表示される。スピーカーを耳を近づけると、りぃん……ではなくとぅるるるといつもの発信音が鳴る。
 しかし何度も鳴らせるが一向に出ない。三十秒ほど鳴らしてようやく委員長が出た。
『なに? 森本くん』
「おう、委員長」
『珍しいわね、あなたから電話してくるなんて』
 そういえば、委員長から俺に学校連絡として電話してくることはあっても俺が電話したことは無かったな。面倒くさくて摺る必要も無かったんだが。
「んだな」
『で、どうしたの?』
「ちょっと話があってな」
『ごめん、後にしてくれないかしら? 今お風呂はいってたところなのよ』
 え、ちゅーことは今は風呂上り?
「委員長。もしかして今バスタオル一枚か?」
『それが話? 切るわよ』
 ああっ! 待て待て。ちょっと気になっただけなんだって。だってバスタオル一枚で電話に出るなんて、90年代のドラマでは屈指の名シーンじゃないか! 90年代ドラマ好きの俺としては萌え萌えなわけで……とととそんなこと言えねぇか。
「違う違う。すぐすむから」
『なぁに?』
 さすが委員長。バスタオル一枚(たぶん)でもちゃんと話は聞いてくれるようだ。
 俺は手短に今日のことの詳細を語ろうとしたが……、風呂上りでバスタオル一枚(たぶん)の委員長のことを考えると一分でも長いくらいだ。ここは結論から先に言うべきと判断する。すなわち。
「ごめん、俺明日無理だわ」
『どういうこと?』
「だから、明日急用ができて、榛原さんを迎えに行くのは無理になったんだ。悪いけど委員長が行ってくれないか?」
 俺がそう言うと委員長ははぁ? と聞き返す。あまり聞きたくないイラついた声だ。
『またサボり? いい加減にしてよっ。毎回毎回あたしに押し付けてばかりじゃない』
「違うって、本当に急用ができたんだって」
『なによ。急用って』
 え、えっと。俺はなにかいい言い訳を考えようとして、思いついたことを出任せに言った。
「明日な妹を幼稚園に連れて行かなきゃならなくなったんだよ。いつもは親が送ってるんだけど、明日はたまたま朝から仕事でさっ!」
 俺は一人暮らしだし実家にも妹なんて居ないが、居ることにした。
『あなた一人暮らしだし、一人っ子だって言ってたじゃない』
 あ、やべぇ。知ってたか。そういやいろいろサボる口実に「一人暮らしで忙しい」とか言った気がする。俺は冷や汗を流してなんとか言い訳を考える。
「ちげぇよ! 俺の妹じゃねぇよ。 藤枝さんだよ!」
 とっさに俺は藤枝さんに妹が居るという設定を作った。もちろん藤枝さんからそんな話は聞いていない。
『藤枝さんの?』
「俺のお隣の藤枝さん。あのひとには幼稚園の妹さんがいてさ、ほら、いつもお世話になってるし、その、な?」
 藤枝さんのことは委員長は多少なりとも知っている。何度か俺が話したこともあるし、たまに道で会ったりもしていた。
『藤枝さんに妹さんがいたんだ?』
「あ、うん。藤枝さんは一人暮らしだけど、実家に居るんだって。で、水・金は藤枝さんが送り迎えするんだけどさ。ちょうど明日は藤枝さんも用ができちゃったらしくて……で、俺が負かされたってわけ」
 嘘を重ねぬりするのはなかなか心苦しい。

12 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:37:57 ID:h1BEVMqk]
『ふぅーん……』
 委員長はあまり納得して無いようだった。
「だから明日は無理! お願いだよ、代わりに行ってくれよ」
『……へっくしっ』
「大丈夫か? やっぱりバスタオル一枚なんだろ。無理するなよ」
『うっさいわ! ……わかったわよ、じゃあ明日はあたしが迎えに行くわ。あなたも藤枝さんの妹さんの送り迎え頑張りなさいよ。じゃあねまた明日っ!』
 どうやら、委員長はバスタオル一枚だったようだ。寒くて早く電話を終わりたかったらしく、最後のほうは早口でいいまとめるとこちらの返事も聞かずに切った。
つーつーつーと耳から流れる音を聞きながら、俺は初めて委員長の関西弁が聞けたことに感動していた。
うっさいわ! うっさいわ! うっさいわ……(エコー)。ああー、もうちょっと長く関西弁を喋って欲しかったなぁ。できれば『うっさいわ!』より『なんでやねん!』の方がいいな。
なんつーか、ああいう普段は方言を使わない子がある特定のときに方言丸出しになるってなんかいいよなぁ。普段から方言だとうざいことこの上ないけど、たまに喋ったりするとなぁ……。
いやいや、それはともかく。
 なんとか、明日は榛原よづりを迎えに行くことはならなさそうだ。
 俺は安堵の息を吐いた。やっぱりややこしいことは委員長に任せるに限るなと、本人が聞いたら激怒しそうな独り言を呟いて、俺は目をつぶった。
 まだ夕方だというのに俺は暗い部屋のせいで眠気に襲われていった。落ちてゆく意識の中で、一瞬だけ俺のまぶたの裏に髪の毛を切って俺に笑った榛原よづりの顔が浮かんだが、俺は特に何も思わず学生服のまま眠りについた。

 翌日。
「おいっす」
 俺はいつもの登校時間に普通に教室に入った。
「おはよっ!」
「おー、おはようっ」
 ちょうど通りかかったロリ姉が挨拶を返してくれたので、俺はロリ姉のポニーテールをぐりぐりと撫でてやった。ロリ姉は憮然とした顔で「もう〜」といいながら教室を出て行った。かわゆいやつ。
 教室を見渡すと、委員長はまた来てないようだ。委員長の席は空席でカバンも何も置いていない。
 ちゃんと俺のお願いを聞いて迎えに言ってくれたんだな。結構結構、でも少し罪悪感が湧く。今度メロンパンでも奢ってやろう。
 そういえば無理矢理理由くっつけて委員長に行ってもらったが、あの後藤枝さんから「私にあることないこと付けて理由にするなです」としこたま怒られたんだよなぁ。壁が薄いから全部きこえてたようだ。あの人も美人なくせに怒ると怖いんだよ。
 そのくせ面倒見がいいから将来いいお母さんになれるよな。うんうん。ダンナは苦労しそうだが。
 俺は一人で納得しながら席に着いた。俺の席は窓側の中間ぐらい。冬場は日当たりが良くて古文の時間とかには昼寝のいいポジションだ。俺の籤運は素晴らしいな。
 教室は寒かったが、俺の席は暖かかった。朝の太陽の光を浴びながら俺は大きくあくびをする。こりゃ一時間目から寝てしまうなぁと考えながら。
「んっ」
 ぶるりとポケットが揺れる感覚。うぃーんうぃーんと振動音。マナーモードにしていた俺の携帯電話だ。
 出してみるとメール受信ではなく、音声着信。LEDライトが赤く点滅していた。光るサブウィンドウを見るとそこには榛原よづりを迎えに行った委員長の文字が躍っていた。
 どうしたんだ?
 まだ朝のHRまで10分ある。基本的に校内での携帯電話の利用は禁止だが、授業時間以外の使用は一応は黙認されている。まぁ、隣のクラスでは携帯電話で株取引やってるヤツもいるし、こんなに携帯電話が普及している時代、すべてを禁止するのは無理あるしな。
 しかし委員長がこの時間に電話してくるのは珍しいな。あいつも携帯電話は持っているが、校内や登下校の時は完全に電源を切っていてほとんど使うことは無かったのに……。
 俺は二つ折りの携帯を開くと緑色のボタンをおした。
「おっす。なんだ委員長」
『あ! 森本くん!? いまどこ!?』
 かけてきた委員長は声を荒げていて、切羽詰っていた。まるで俺を責めるときのような荒げ方。俺は一瞬、無視すればよかったかもと思った。
「ど、どうした? 今どこって……学校だよ」
『学校!? あなた藤枝さんの妹さんの迎えは?』
「え、ええっと。早く終わったから、学校にはいつもより早く着いたんだよ。妹さん意外と早起きで……」
『そんなことはどうでもいいわっ! ちょ、やめいっ! こら! やめんかワレ!!』
 電話越しの委員長は誰かと揉めているようだ。委員長の切羽詰った声となにかごとりごとりというワケのわからない擬音。ついには委員長が関西弁になっていた。
 俺は急激に嫌な予感が体の中に駆け上がる。

13 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:38:53 ID:h1BEVMqk]
「お、オイ! オマエ今どこだ!? おい!!」
 今度はこっちが声を荒げて質問を返した。俺の様子に俺の前の席で談笑していた鞠田早百合と兼森良樹が何事かと振り返る。
『榛原さん家や! 迎えに行ったらいきなり暴れだし……きゃぁっ な、なに持ってんねや! ちょっ!』
 サーと俺の頭から血の気が引いていく。修羅場中の修羅場。俺の頭の中に榛原よづりの姿が思い出された。
 あの依存的な瞳、壊れそうな体躯、そして、俺に対する歪んだ……

 べとべとべとべと。

 なにか。
 まてまてまてまて! やべぇ、やべぇよ! もしかして、俺はとんでもないことをしてしまったんじゃないか!? とんでもないところに委員長を送り込んでしまったんじゃないか!?
「お、おい! 逃げろ! どこでもいいから逃げろ!!」
 俺は慌てて電話越しの委員長に叫ぶ。俺の怒号に教室に居た全員が俺に注目していた。だが、俺は溢れる冷や汗にまみれながら携帯の向こうに居る委員長の状態が気がかりで、まったく気にしていなかった。
『に、逃げるゆーたって……どこに……』
 刹那。

 ガシャーンッッ!!

 電話越しからきこえる、大きな音。皿が割れたような、ガラス瓶が割れたような、鈍器が割れたような。
『キャァァ!』
 ぶちっ。
 つーつーつー。
 悲鳴とともに突然電話が切れた。
「……ホ、ホラー映画かよ……」
 カミングスーンってか?
 俺は額から冷や汗が止まらなかった。
「どうしたんだ、森本?」
 俺の前に居た兼森良樹が怪訝そうな顔で聞く。あんだけ電話越しに大声を出していたのだ。そりゃ聞いてくる。横に居た鞠田早百合も眼光鋭くこちらを見ていた。
「……今日の一時間目ってなんだったっけな……」
 目の前の二人に絞り出すような声で聞く。
「はぁ、古文だけど」
 よっしゃっ。俺は右手でガッツポーズを作った。古文ならいてもいなくても大した勉強にならんっ。ちょうどいい!
「わりぃ、俺サボるわ! 兼森、俺の名前が呼ばれたら返事しといて!」
「え、ちょっとそんな無茶なっ」
 俺は席から立ち上がり、カバンを置いたまま教室を飛び出す。俺の突然の行動にクラスメイトの何人かがぽかんとした顔で見ていたのが見えた。
 委員長を、助けに行かなければ。
 考えれば分かることじゃないか! あんな精神が不安定な元引きこもりがたまたま俺に懐いたからって、委員長に懐くわけねぇ。だいいち、料理がしづらいから自分の髪の毛を躊躇無く切り落とすヤツだぞ? 普通ではない!
 廊下へ飛び出ると教室に入ろうとした京太にぶつかる。京太は尻餅をついて倒れた。俺は「すまん」と一言だけ言うと、わき目も降らず昇降口に向かって走り出した。
 委員長を自分の怠惰で危険な目に合わせた自分に対する罪悪感と情けなさで俺は泣きそうだった。
 俺は溢れそうな涙をこらえ、その感情全ての力を両足に込めて走った。廊下を走り抜け、上靴のまま昇降口から外に飛び出し疾走する。
「おい、上靴のまま外に出るな」
 昇降口に飛び出した途端、教師としてはめちゃくちゃ遅めに登校してきた遅刻常習犯の養護教授の時ノ瀬が顔をしかめて注意してくる。
 うるせぇ、今は緊急事態なんだ。冬でもTシャツ白衣に裸足にサンダルで登校してくるお前に言われたくねぇ! 俺は無視して走り続けた。
 たぶん、体育祭の徒競走でもこんなに全速力で走ったこと無いだろう。委員長の最後の悲鳴が頭から離れない。
「頼むっ。無事で居てくれっ!」


14 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:39:57 ID:h1BEVMqk]
 ぜぇぜぇと俺は荒げる息をついて、榛原よづりの家の前までやってきた。
 門はきっちりと閉じられている。まるで魔王の城へ攻略する勇者になった気分だった。いや、勇者でも一度逃げたヘタレ勇者か。
 きぃと俺は門を開けて敷地内へと入った。植えられたパンジーの毒々しい色が俺の恐怖をいっそうに煽っている……気がする。
 玄関ドアの前までやってきた俺は、耳をドアに付けて中の様子を確認してみる。まだどかんどかんと音がしてたら何か鎮圧するための武器が必要になるかもしれない。
「……無音だな」
 恐ろしいくらいなにも聞こえない。休憩か? まぁ榛原よづりはスタミナ無さそうだしなぁ。
 俺はドアノブを掴むとゆっくりと回す。がちゃりと音を立ててドアが開いた。おそるおそる俺は中を覗く。
そこには……。
「な、なんだこりゃ……」
 俺は玄関で立ち尽くしてしまった。
 様子は酷いものだった。昨日お邪魔したときにはあんなに清潔に保たれていた玄関や廊下。見るも無残な状態だ。
玄関で飾られていたはずの花瓶や飾り皿はそこになく、床に叩きつけられたのか無残にも砕け散って散乱している。花瓶の中身なのか、足元にはばらばらと多種多様な花が散らばり、中の水があたりに飛び散っている。
醤油指しやソース、砂糖、塩のケースもひっくり返って、辺りに転がっている。辺りに散乱している見るも無残な料理に一部が溶け出して、不気味な色をかもし出していた。
電気ポットはコードごと引きちぎられ、ふたがへし折られて転がっている。沸騰したお湯があたりに広がり座り込むよづりの足元まで届いていた。
倒れたこけしの首がもげてひびが入った水槽に沈んでいてまるで死体のようだ。
高級そうな壁紙の一部は、何か硬い物がぶつかったのか見事に剥げ落ちていて、あちこちに赤い液体が飛び散っている。……まさか、血か? しかし、ちかづいてよく見るとただのケチャップだった。下にチューブが落ちている。
うわぁ、ビビった。ここらへんがライトなのか?
俺は恐る恐る廊下を歩く。委員長の安否が心配だ。靴を脱いで破片をよけて廊下を渡っていった。
委員長はどこに居るんだ? ちゃんと逃げたのだろうか。門が閉まっていたから外には出てないかもしれない。どこかに隠れているのかも……。
 何故か自分で音を立てないように歩く。廊下を抜けて、台所を覗こうとした瞬間。
「しくしくしく……」
 硬直した。女のすすり泣くような声。俺はサーっと血の気が引く。
 すすり泣く声。この声は確実に……。榛原よづり。なんでお前が泣いてんだよ。
 俺は台所をゆっくりと顔だけ出して覗く。すだれの間から女の後姿が見えた。
「しくしくしく……」
 黒いセーターに長い髪の毛。そして右手には『秋穂』と筆文字でかかれた日本酒のビン。
「しくしく……ぐびりっ」
 後姿の榛原よづりはすすり泣きながら、時折持っていた日本酒ビンの注ぎ口を口元にあてると、顔を上にあげてラッパ呑みをしていた。ごきゅりごきゅりと液体が喉を通っていく音がここまで聞こえる。
 明らかにやけ酒だ。あんな度の強そうな日本酒を一気飲みすると急性アルコール中毒になってしまう。
「ぐびりぅぐびりっ。ぷはぁ………ううう、かずくぅん……」
 うわぁ! 明らかに俺が原因かよ!
「お、おい! 榛原っ」
「んふうぇ?」
 俺は慌てて台所に入った。後姿の榛原よづりの肩を掴んで、日本酒を取り上げる。奪い取った日本酒は一本カラだった。全部飲んだのかコイツは。
 突然肩を掴まれた榛原よづりはびくりと体を震わせた。ぐるりとマネキン人形のように顔の向きだけぎこちなく振り向く。
 目が死んでいた。
長い髪の毛はくしゃくしゃに汚れていて、前髪の下に浮かんだ瞳は暗色の水彩絵の具を水で溶かしたように淀んだ色をしている。同じく、俺は台所の惨状にも驚いた。
台所の床にはぐちゃぐちゃになった料理が無残に散らばっていた。豚の角煮、牛ステーキ、アジの開き、焼いたホタテ……その盛り付けられていたはずの、どれもよだれもののうまそうな料理が、テーブルではなく床に散乱し、
砕け散った皿と区別が柄なった醤油指しやソース、砂糖、塩のケースもひっくり返って、辺りに転がっている。辺りに散乱している見るも無残な料理に一部が溶け出して、不気味な色をかもし出していた。
電気ポットはコードごと引きちぎられ、ふたがへし折られて転がっている。
沸騰したお湯があたりに広がりそのお湯と湯気、そして料理の臭いが台所に充満し、吐き気を覚えるにおいが立ち込めていた。幸いなのは、ガスコンロのガス栓が抜けていなかったことだろう。もしそうなら、それこそ大惨事になりかねない。

15 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:40:59 ID:h1BEVMqk]
 コップの取っ手は中ほどでへし折れ、見事に真っ二つに割れていた。ナイフは真ん中でへし曲がったり、フォークは一体同やたらこうなるのか、刃があらぬ方向にねじれていた。
 そのあちこちには、盛り付けて合ったはずの新鮮なトマトが中身をぶちまけてへしゃげ、散らばっている。みようによってはそれは、えぐられた人肉にも見えて、こみ上げ来るものを何とかこらえた。
 冷蔵庫は半開きになり、薄明かりを漏らしている。あとで出そうとしていたのか、そこにはケーキらしきものやら、プリンらしきもの、どれもうまそうだったはずのデザートが、奥のほうでつぶれていた。
 もとは、テーブルに並んでいたのだろう。全てが台無しになってしまっている。
 榛原よづりの目が俺の顔に定まる。しばらくの間固まっていた。しかし数刻、肩を掴んだのが俺だとわかると。
「か、か、か、か………」
 淀んでいた瞳に急に生気が蘇ってきた。アルコールで赤くなった顔もさらに赤みを増して、口元もわなわなと喜びに震える。そして、
「かずくぅぅんっっ!!」
 まるで飛びつくように抱きつかれた。俺は食い物が散乱した床に背中から押し倒される。
「かずくんかずくんかずくんかずきゅぅぅぅんっ!」
 まるで甘えん盛りの猫のようにぐりぐりと俺の胸に頭を押し付ける榛原よづり。ソプラノ調の高い泣き声で何度も俺の名前を叫び続けていた。
セーターで押し上げられた二十八歳の豊満な巨乳が臍あたりにぐりぐりと押し付けられた俺は思わず反応しそうになるが、さすがに状況が状況なのでなんとか自分を押し留める。
「おいおい、落ち着け!」
「なんで、なんで来てくれなかったのよぅ! なんでよぅ!!」
 榛原よづりは頭を押し付けながら俺を責めたてる言葉を吐いた。
「なんでよぅ! やっとわたしに会いに来てくれる人が居たと思ったのに! やっと、わたしを支えてくれる人だと思ったのにぃ!
 どうして、どうして、裏切ったのよう!! 裏切りものぉ! かずきゅぅん!」
 支離滅裂だ。俺はワケがわからないがなんとか落ち着かそうと開いた手で榛原よづりの頭を撫でていた。
「よろしくねって言ったじゃない。迎えにくるって行ったじゃない! だぁかぁらぁ、わたしかずくんの好きなもの考えていっぱい用意して待っていたのに……。
 そうしたら、そうしたら、なんか変な女の子がきてぇ、かずくんは来ないってうそついてぇ、嘘、嘘、嘘、嘘ついたの! あの女の子があ」
 委員長のことだ。そういえば委員長はどこ行ったんだ? 俺は榛原よづりの頭を撫でながらそちらも気になっていた。
「あの女の子が嘘ついてるとおもってぇ、あの女の子、あの女、私とかずくんの間を邪魔してるのよぉ! 邪魔してるのぉ! だぁかぁら、あたし言ったのぉ、かずくんは来るって、絶対来るって! だけど、あの女は来ないって言い張ってて……だからぁ……」
 やめてくれ、それから先は言わないでくれ。頼むから。お前が何か言うたびに俺は委員長を危険な目にあわせたという罪悪感が湧いて来るんだよ!
 俺は押し倒されたまま榛原よづりの頭を両手で抱きしめた。
「落ち着けっ。榛原! 榛原! よづり! よづりっ!」
 俺は、初めてこの女を名前で呼んだ。俺の声に反応したのか、よづりが言葉を止めた。押し付けられる頭を抱きしめて、さとすように俺はゆっくりとよづりに語りかける。
「この料理は俺のために作ってくれたのか?」
「う、うぅん。好きなもの知らないからぁ。冷蔵庫にあるもの使って、全部ぜぇんぶ……。でもぉ、あの女の子のせいで、あたぁしムカッとなって……」
「全部おシャカにしちゃったのか」
「うん……、気がついたらテェブルの全てを投げてた……」
「……そうか」
 俺は抱きしめながら、手のひらでよづりの頭を撫で続ける。
 そのたびに、よづりは気持ちよさそうに体を震わして吐き続ける嗚咽をなんとか収めていった。
「ありがとうな」
「ふえぇ?」
「料理だよ、料理。作ってくれてさ」
「う、うん……」

16 名前:真夜中のよづり4 ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:42:05 ID:h1BEVMqk]
 もぞりもぞりと抱きしめていたよづりが動き出す。俺が腕を放すと彼女は右手で体を支え起き上がった。
 ざんばらとなった髪の毛が顔の前まで垂れかかって、まるで昨日の前髪を切る前の姿のようだった。髪の毛の間から覗く顔つきはお酒のせいか、ほほが赤くとてつもなく緩んでいた。しかし、受け答えはなんとかはっきりしている。酒には強いのか。
 俺はそんなよづりを見上げながら、あることを心に決めた。
「台所がぐちゃぐちゃ……ごめんなさい……暴れちゃった……」
「オイオイ、俺に謝るなよ」
「だってぇ、来ないって聞いてぇ……。私、私……」
 大の大人がぽろぽろ泣く姿はとてもじゃないが正視できない。俺はよづりの寂しさがいたいほど伝わってくる。
「俺は来たじゃないか。だからもう自分を責めるなよ」
 俺は、ぽんぽんとよづりの頭を撫でるように叩くと、上半身を起き上がらせた。見上げていたよづりの顔が目の前までやってくる。
 さぁ、ここから俺の舞台だ。こんなことになってしまったのは俺の責任だ。さすがに、ここまでのことをして、ただ反省しただけではすまない。
 副委員長として、男として、けじめをつけないとならない。
「暴れなくてもお前のためなら俺はいつでも駆けつけるよ」
 恥ずかしいセリフだ。しかし、俺は真剣だった。
「ふぇ……?」
「これから、お前のために俺がついてってやる。だからさ、もう暴れんな。もう泣くな。もう……自分を責めるな」
 そう言って、俺はもう一度。今度は正面から、よづりの華奢で弱弱しい体躯を抱きしめた。ふにゅりと俺の胸で形を変えて圧縮される彼女の胸。しかし、それはもう気にならなかった。
「ふぅえ……」
 よづりはまるで何が分からないといったように体を硬くする。が、自分が俺に抱きしめられていると分かると、
「えへ、えへへへへへへへ……」
 よづりはいつもの笑い声をあげて、俺にもたれかかる様に背中に腕を回して、体を押し付けた。
「えへへへ、えへへへへへへ………だぁいすきぃ……かずくん」
 散乱した台所、床には脂や陶器の皿の破片、そんな異空間で抱き合う二人。なんじゃこりゃ。
肩に乗せられたよづりの顔から呟かれる言葉を聞きながら俺はこう思っていた。

 こいつを、かならず、普通の女に戻してやる。

 これまでなにもしてこなかった俺。副委員長という仕事を与えられながら何一つ満足にやろうとしなかった自分。この散乱した台所と泣きながら自暴自棄へ陥るよづり。これらはそんな自分が起こした悲劇の結果。
 俺は自分の怠惰やその場しのぎの感情で他人を傷つけることを今始めて実感したのだ。だからこそ、俺はこのすべてをリカバリーしたかったのだ。
 そうして生まれた決意。それがこのよづりを真人間に戻してやること。
 しかし、それはただの責任感や罪悪感から出てきた偽善じゃないのか? スカした自分が俺の脳内へ語りかける。
いや、偽善でもいい。 俺はスカしたいままでの自分、いままで何でも斜めに見ているだけで何もしようとしなかった自分を一喝した。偽善でもいい!
 それで、こいつを救うことができるなら。俺は偽善でも何でもやってやるさ!

 抱きしめたよづりの体は温かかった。
 そうだ、こいつは人間だ。ちゃんと血の通った人間なんだ!
 俺は自分にそう言いきかせるともういちど強くよづりを抱きしめた。強く、強く。
(続く)

17 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 17:43:12 ID:h1BEVMqk]
4スレに間に合いませんでした。真夜中のよづり第4話でした。
これで一応は第一章の終わりとなります。ここで一区切りです。なんだか28歳という年齢が議論になるようですが、まぁ新たな萌え要素としてお願いします。
これ、痛女か? とか不安な部分ありますがまだまだよろしくお願いします。次回はまたいつになるか分かりませんが、絶対続けますので。

保管庫BBSにて素晴らしくやらしいイラストを描いて下さった屍氏さんには感謝の嵐です。

(訂正)
藤枝さんを仮名のまま出してしまいました。
藤枝→鈴森に脳内変更してください。

18 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/25(日) 18:04:50 ID:AMJCUY6P]
>>1乙!

よづりキタ━━(゚∀゚)━━ヨ! これからの展開にwktk
いやいや28歳は全然おkですよー よづり可愛いよよづり(*´Д`)
…ところで委員長は?

19 名前:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg mailto:sage [2007/02/25(日) 19:53:26 ID:h1BEVMqk]
>18
委員長の安否は次回参照です。

20 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/25(日) 20:50:58 ID:tDVc7h/F]
鈴森さんがFAってことでおk?




21 名前:名無しさん@ピンキー [2007/02/25(日) 21:20:30 ID:n7hWN+Wo]
よづりタソめっさ楽しみにしてます
(*´Д`)

22 名前:名無しさん@ピンキー [2007/02/26(月) 00:12:09 ID:BHLj2vtS]
委員長フォーエバー

23 名前: ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/26(月) 00:49:09 ID:7vA5fpNJ]
>>17
赤いパパ氏、GJです!
よづりの可愛さに嫉妬ww

では上書き本ルート8話投下します。

24 名前: ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/26(月) 00:49:51 ID:7vA5fpNJ]
「だから、加奈とは小二の頃から付き合い始めたんだよ!」
「”加奈”だって!名前で呼んじゃって、いやらしいんだ!」
「今までだってそう呼んでただろ…」
 クラスの生徒のほとんどが一ヶ所に集まり円形に取り囲んだ中心の席に座りながら俺は皆から視線をそらそうとした。
 勿論360度包囲されているから嫌でも誰かとは視線が合ってしまう。
 上を向くのは格好的に間抜けだし、下を向いていると落ち込んでいるように思われそうだから必然的に正面を向かなければならない。
 加奈と体育館裏に行く前「後で」と言ってしまった手前、この質問攻めには応じる他ない。
 軽はずみな言動は避けようと肝に命じながら、腕時計の時間を目線だけで確認する、早く授業が始まって欲しいと思ったのは初めてかもしれない。

 加奈とのやり取りの後、去って行こうとした加奈と俺は放送で校長室に呼ばれた。
 当然”あの紙”について知っている事を少しでも聞く為だ。
 事実は知っているが口が裂けても言えないし、加奈が不利な状況に陥るような事を言う気もなかったので終始口篭っていただけだった。
 加奈はと言うと笑顔で”はっきりと”「知りません」と言ってのけた、罪悪感なんて欠片も感じてない様子だった。
 その事に意識が集中してしまいほとんど話を聞いていない俺の態度に気付いたのか、校長は”校内での異性交遊”について口を酸っぱくしてきた。
 何で学校に個人的な恋愛沙汰に首を突っ込まれなきゃならないのかと腹が立ったが反論をする気はなかった。
 校長の言い分、”恋にうつつをぬかしているだけでは将来後悔する”、というのは俺の意見と一致しているからだ。
 この事を言われた時だけ加奈がかなり険しい表情になっていたのを今でも覚えている。
 破れる直前の風船のような殺気漂わす加奈に背筋にミミズが這うような寒気を感じた俺は、ペコペコ頭を下げ早急に加奈と校長室を出た。
 緊迫感に押し潰されそうな空間からの解放に喜んでいる俺は勿論、加奈も元通りの笑顔になったので一安心して教室に戻った。
 そこからだ、今のように質問の嵐に巻き込まれるようになったのは。
 待ち構えていたようにドア付近に固まっいたクラスメイトたちは、俺が教室に入ると一斉に俺の前に群がってきた。
 クラスメイトの間をくぐり何とか席に着かせてもらえた俺は、その後皆からの好奇的な視線と似たような質問を浴びているという訳だ。
 その質問の内容に”あの紙”に関連する事はほとんどなく、俺と加奈の関係についてひたすら聞かれた。
 他人の恋愛話程聞いて面白いものはそうないし、俺は加奈との関係については黙秘していたから、当然といえば当然な事だ。
 俺はそれが煩わしかった、プライベートな話題は加奈とだけしたいし、加奈以外の人間にそういう事を言うのは面倒というか正直嫌だった。
 何だか俺と加奈とだけの間の”秘密の共有空間”に土足で踏み入れられた感じがするのだ。
 加奈に学校内で極力付き合いをしないように促すのは勿論加奈の将来を思ってというのが第一だが、それと同じ位俺が加奈を独占したいというのもあるんだと今更思う。
 加奈は俺を独占したくて皆に俺たちの関係を知らせた、俺も加奈を独占したいが皆に俺たちの関係を知らせたくはない、同じ目的のはずなのにその二つが交わる事はない、今日何度目か分からないがこれも”おかしな事”だなと思った。

 『キーン・コーン・カーン・コーン』
 きっと…俺がこうして苦悩している事なんて”運命”の壮大な輪廻に比べれば他愛ない事なんだろうなと柄にもない事を考えていると、学生生活11年目でもうお馴染の始業の鐘が鳴った。
 俺の視界を塞いでいた生徒の壁が名残惜しそうに崩れていく。
 とりあえずこれで助かった、安堵する暇もなくHRが始まった。


25 名前:上書き第8話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/26(月) 00:50:30 ID:7vA5fpNJ]
「まだかなぁ…」
 腕時計の時間を見て思わず呟いてしまった声は周りのざわめきにかき消される。
 いつものように数分の連絡事項だけで幕を閉じたHRの後は自習時間…という名目の自由時間になる。
 担任も終業時間になるまでは職員室に戻ってしまうから、喋り場と大して変わらない。
 当然勉強している奴なんかほぼ皆無で、皆周りの人間との会話に忙しそうだ。
 さっきの質問攻めで今日一日分喋ってしまったような気がして、そして何より考え事をしたくなかったので俺は腕枕を作り机に突っ伏した。
 疲れているが寝つけない、幾ら目を閉じても全然眠気は襲ってこない。
 こういう時だけ都合の良いものだと観念した俺は寝る事を諦め肘をついた。
 そして加奈の事を考える…加奈についての事はあり過ぎて頭が爆発しそうだ。
 その無駄に多過ぎる事柄に共通する一つのキーワード…”何故加奈がそこまでするのか?”ていう疑問にぶち当たりすぐにそれは壊れさる。
 奢りでも何でもなくその理由はただ一つ、”加奈が俺を好きだから”だ。
 そんな事は分かっている、加奈と俺が相思相愛な事も、加奈が俺を好き過ぎる故に”今日のような事”をしたのだって分かっている。
 分かっているから心配なのだ、加奈が確実に昔の純粋な面影をなくしていき、やがて更に純粋に”なり過ぎる”のが心配なんだ。
 今の加奈を見る限り、明らかに加奈は冷静でない、いや冷静過ぎる気がする。
 物事を深く考え過ぎて目の前の簡単な事を取り溢すのではないかと思う。
 もしそうなれば…具体的な想像は出来ないが、”ヤバイ事になる”のは間違いないと思う。
 そうなる前に加奈を正気にしないと………
 『キーン・コーン・カーン・コーン』
 そんな俺の決意を後押しするように終業のチャイムが鳴った。
 担任が適当に教室に戻ってきて適当に挨拶を済ませ適当に教室を出て行く。
 いつもの日常のリズムに微妙な満足感を覚えながら俺はトイレに行こうとして廊下を見た…そして驚いた。
「誠人くんっ、ヤッホー!」
 本来なら別に驚くべき場面じゃない。
 しかし普段学校内では極力会わないようにと言っているはずだから驚いてしまった、そこにいたのは加奈だ。
 廊下から手を振りながら教室にあたかもそこの住人のように当たり前に入って来た。
 突然の来訪者に俺だけでなく他のクラスメイトも加奈に注目する、その中にはニヤニヤしながら俺を見てくる奴もいた。
 その存在を気にしないで椅子から立ち上がり、歩いてくる加奈に歩み寄る。
「どうしたの、怖い顔して?」
 頭を45度傾ける加奈の眼前に立つ。
 少々険しい顔を作り、本当に心苦しいが結構キツ目に問い掛ける。
「どうしてここに来てんだよ?」
「え?”彼氏と彼女”が一緒にいるのは当然じゃない?」
 俺からの強めの口調での問いにあくまで淡々と答える加奈。
 いつもならすぐに謝ってくるのに、全く動揺した様子のない”静かな返答”が俺の背筋を冷たく貫いた。
「学校内では極力会わないって決めてたはずだろ?」
「誠人くん、そんなのおかしいと思う。過ごした時間だけ仲も深まっていくものでしょ?」
「それは…」
 何とか言い返したかったが、今の加奈には何を言っても勝てない気がする。
 加奈の言っている事は間違っていない、寧ろ俺がしている事の方が間違っているのではないか?
 誰がおかしいのか分からなくなり混乱する俺をよそに、周りは急に賑やかになっていくのを感じる。
 「沢崎、加奈ちゃんの言っている事は間違ってないぞ」、「お熱いねぇ!」、俺たちに野次が飛ぶ。
 こういう時だけは本当にお節介だなと言いかけたところを何とか堪える。
 他のクラスメイトが加奈を姫を扱うように丁寧に俺の席に座らせても、文句は言わなかった、言えなかった。
「加奈ちゃん、あたしたち応援してるからね!あんな”姑息な事”する奴なんかに負けないでね」
 女生徒の一人が試合前のボクシング選手に喝を入れるセコンドのように拳を力一杯握り締めている。
 それに笑顔で応える加奈。
 その女生徒が言った”姑息な事”とは今朝の”あの紙”の事を言っているのだろう…その事が分かった時俺は加奈の顔を反射的に見てしまった。
 周りからの冷やかしに困ったような笑顔を浮かべる加奈…この顔を見て限りなく確信に近い推測をした。
 加奈が”あの紙”の文面を他者がやったように見せたのには、周りからの同情や応援を受けるという付加目的もあったという推測を。
 果たして俺の目の前にいるのは、”本当に”加奈なのか…?
 教室内のざわめきに反し、俺は一人沈黙を守っていた。


26 名前:上書き第8話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/26(月) 00:51:04 ID:7vA5fpNJ]
「ふぅ…終わったか…」
 終業の鐘の音を聞き俺は溜め息をついた。
 結局あの後加奈は休み時間毎に俺の下へ訪れた。
 昼飯まで周りから冷やかしを受けながら一緒に食べた。
 生徒がどんどん俺と加奈をセットのように認識していく…俺にとっては悪い流れだ。
 このままではプライベートと学校生活が同化してしまう、最も避けたかった状況へと事態は進んでいっている。
 しかし、止める術は俺には見付けられない。
 加奈が笑顔だからそれでいいじゃないかと甘い考えにも逃げようとしたがそれは断じて認められない。
 今幸せなだけでは駄目なのだ、加奈には”ずっと”幸せでいて欲しい。
 だからこそここで俺が諦める訳にはいかない、決心だけは一人前の俺、その背中を誰かに叩かれる。
 振り向くとそこには島村がいた。
 相変わらずの大きな眼鏡の位置を慣れた手付きで直している。
「何だよ、島村?」
「不機嫌なのは分かりますが、私にやつ当たりというのは酷いと思いますよ」
 この女はやはり侮れない…。
 島村と昨日”あんな所”で会いさえしなければ…そんな筋違いな苛立ちをさりげなくぶつけたのを完璧に見抜かれてしまった。
 何も言えなくなる俺をよそに、島村は鞄を持ったまま腕を組み、俺の耳に向かって小声で話し掛けてくる。
「”昨日の場所”に一緒に来て下さい」
「”昨日”の場所?」
 俺が若干大きめの声で言うと、島村は顔を軽く赤くしながら口元に指を立てた、”昨日の命令”の時のように。
 しかしあの時と違って今の島村の指は震えている、実に女の子らしい反応だなと親父くさい事を考えてしまう。
 周りを心配そうに見渡す仕草から推測するに、どうやらクラスの他の奴には”本性”を見せたくないようだ。
 やけに可愛らしいところもあるじゃないかと思いながら重い腰を上げる。
 それを了承のサインと受け取ったのか、島村は踵を返し教室から出て行った、まぁ今は島村に服従している立場だから無理矢理にでも行かされていたんだろうけど。
 少々情けなく思いながら島村の後ろ姿を眺めていると、髪から僅かに覗く耳がまだ真っ赤になっていた。
 笑いそうになるのを堪えながら、俺は島村の後を追って行った。

 ”ここ”、体育館裏に女の子と来るのはこれで三度目だ。
 何も変わっていない、昨日島村の本性を垣間見た時と何も変わらない。
「ここは静かで落ち着きますね」
「そうだな」
 音はないが殺風景という訳ではないこの広々とした空間に浸っている島村。
 時折吹く風でなびく短髪を押さえる仕草はやはり”女の子らしい”。
 これで性格さえ治せばきっと彼氏の一人や二人幾らでも出来るんだろうな…って俺島村に彼氏がいるかなんて知らないな。
 興味はあるが聞く程の事じゃないし、万が一聞いて機嫌を損ねられたらまた面倒な事になるんで押し黙る。
「短刀直入に言います、”あの紙”の犯人は城井さんなんじゃないでしょうか?」
「なっ!?」
 しまった、そう思った。
 島村の不意打ちに反応してしまった自分が憎らしい。
 今笑ってとぼければ全てが丸く収まっただろうに、こんな露骨な反応をしてしまっては肯定しているようなものだ。
「そうなんですね?」
「あっ…その…」
「やっぱりそうでしたか、沢崎くんと違って城井さんが大して驚いていなかったんでもしやと思ったんですが…」
 どこで俺たちを見てたんだというどうでもいい疑問を頭の奥底に封じ込める。
 俺の様子を一瞬見た島村が納得したような表情を浮かべる。
 島村に…他人に、加奈が”やってしまった事”がバレてしまった。
 もしバラされたら…いつもならもっと考えて行動するのに、俺はひどく慌てていてすぐに島村の両肩を掴んだ。
「頼むっ!島村、この事は誰にも言わないでくれ!」
「え?」

27 名前:上書き第8話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/26(月) 00:52:16 ID:7vA5fpNJ]
 島村を何とか言いくるめなければ、そうしないと加奈が…。
 俺は必死に島村を説得した。
「加奈に悪気はなかったんだ、ちょっと俺との仲を自慢したかっただけなんだよ!ずっと奴隷でいいからこの事は誰にも…」
「”あの事”と引き替えに…と言ったら?」
「”あの事”って…!」
 島村が俺より低い位置から俺を見下ろす視線で問い掛けてきた。
 ”あの事”とは、俺が女子トイレから出てきた事を言っているんだと瞬時に理解する。
 いきなりの問いに戸惑う、だってもし”あの事”がバラされれば俺の高校生活が終わる。
 俺の青春に有終の美を飾れなくなる…。
「構わない、”あの事”をバラしていいから”この事”だけは言わないでくれ!」
 でも加奈の人生に比べれば自分の人生を捨てるなんて簡単だ。
 加奈が幸せじゃないなら俺はどんなに充実した日々を送れたとしても幸せにはなれない。
 加奈が幸せならそれでいいんだ、その一心を視線に乗せて島村に送る。
 視線が交錯する、お互いに相手の考えを読み取ろうとするように。
 しばらくして俺の顔を凝視していた島村が突然ニヤけた、無垢な少々のように。
「何真剣になっているんですか、私がそんな事するような人間に見えます?」
 思わず「見える」と言いそうになるのを何とか堪えた。
 そして考える、島村はどういうつもりなのかと。
「安心して下さい、どちらの事も始めから言う気なんてありませんよ」
 意外な言葉だった。
 まさか”あの”島村が…俺を縛っている”縄”の存在を切り捨てるような発言をするから。
 始めから言う気がないなんて言ってしまったら俺を”あの事”で縛る事はもう出来なくなるじゃないか…頭が混乱している俺に更に島村が追い討ちをかけてくる。
「いい機会ですし、もう”奴隷”から解放しますよ!」
「え、何でだよ!?」
「そちらこそ何ですか、まだ奴隷になっていたかったんですか?」
「そんな訳ないだろ!」
 思わずムキになってしまう俺を楽しそうに笑う島村。
 本当にこの女の考えは読めない、そのくせこちらの考えは全て見透かされている気がしてならない。
 島村の心中は分からないが、とりあえず半永久奴隷からの解放は素直に嬉しい。
 昨日は正直絶望したが、まさか一日で終わるとは。
 嬉しさついでに俺は何も考えずに素朴な質問をぶつける。
「なぁ、なんで加奈がやったって事を確認しようとしたんだ?言う気がないなら知ったところで意味がないだろ?」
「何言っているんですか、ライバルの性格を把握するのは略奪愛の基本ですよ」
 ………ん?
 今なんか明らかに変な事を言ったような気がした。
 気のせいかと思い聞き流そうとした俺、しかしそれを残酷に島村は拒んだ。
「まぁ”あんな事”して誠人くんを困らせているような女に負ける気なんてありませんがね」
「は?何を言ってんだお前は?」
 思った事がそのまま口から漏れた。
 だって本当に意味が分からない、突然俺の事名前で呼ぶし、”負ける気がしない”って誰に対して言っているんだ?
 次の瞬間、様々な俺の疑問を”一言で”島村は片付けてくれた。
「私あなたの事好きなんですよ?まさか気付いてなかったなんて事はないですよね?」

28 名前:上書き第8話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/26(月) 00:52:47 ID:7vA5fpNJ]
今島村は何と言った…”好き”?俺を?
 ”島村が俺の事を好き”?
 呆然とする俺に呆れ顔で島村は眼鏡の奥に隠した鋭い視線を向けてきた。
 俺を切り裂くように見つめてくる。
「本当に気付いていなかったんですか?好きな人でもないと相手を奴隷にしようだなんと思いませんよ」
 言われて何となく納得した。
 確かにその通りだ。
 指を舐めさせるなんて普通の人間にやらせる訳がない…。
 首元へのキスマークを含めて、今までの行動は全て俺への好意からだったのか?
 そう仮定した途端全てが噛み合った。
 まさかこんな意外なところに解答があったなんて…俺は愕然としながら改めて島村の顔を眺めた。
 その顔は言いたい事を吐き出せたからか、爽快感に満ち溢れていた。
「ま、という事で」
 そう言うと島村が俺に近付いてきた。
 俺は島村と真っ正面に向き合いながら硬直しているので距離差はどんどん縮まっていく。
 やがて靴一個分までに接近してきた島村、何の躊躇いもなく右手をするりと首元に回し、艶っぽい声で囁く。
「これから”よろしくね”、誠人くん?」
 あまりにも近過ぎる俺たちの顔、思わず紅潮させてしまうと島村が子供のようにクスクス笑った。
「本当に可愛いんだから…」
 そう言うと、島村の言葉の魔力に縛られた俺の口と島村の口が触れそうになる…”触れそうになった”。
「ハハ、誠人くん見ぃっつけた!あは」
 そして一気に魔法はとけ現実に引き戻された、目の色を失っている少女の小刻みに震えた声によって。
「か、加奈ッ!?」
 俺は一体どれだけ神に翻弄されればいいんだ…?
 目の前の最悪な状況を前にして、俺は運命を呪った。

29 名前: ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/26(月) 00:54:43 ID:7vA5fpNJ]
投下終了です。ちょっと短かったような気もしますがお許しを。
今回は修羅場スレ向けな気もしますが次からはしっかりヤンデレにしますんで。

30 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/26(月) 01:06:21 ID:DXwhBY6F]
上書きキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆
GJ! 島村さんも本格参戦でしょうか
しかし誠人は無意識に地雷踏みすぎだw



31 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/26(月) 01:06:28 ID:Jt4vtuqM]
とりあえず、長くなりそう&序章ですが投下します。

32 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/02/26(月) 01:10:29 ID:Jt4vtuqM]
10月12日 19時 竹宮邸 来栖凛(くるす りん)

私の体の中に無数の蟲が注入されていた。それは醜悪なる肉塊を通じて、何度も何度も私
に注がれ、その蟲どもはただ己の下種な本能に従って私の身体の「ある一部分」を目指す

その蟲どもの息吹に、かつて私はある種の歓楽を感じていた。無数の蟲どものただ一つの
欲望を叶えてやりたいとさえ願っていた。
しかし、今では私はこの私の体内で蠢く蟲に嫌悪しか抱かない。そう、私の中に注がれた
蟲はただ一匹を残して全てが息絶えたが、生き残った一匹はこうして今も私の身体の奥深
くで目覚めの時を待っているのだ。私はそのおぞましい感触に耐えられず、それを想像す
る度に込上げてくる嘔吐物を撒き散らした。
我慢出来ない程の屈辱だった。耐え難い陵辱だった。そして私の文字通りの「栄辱」の始
まりであった。
私にこの忌まわしい蟲を植え付けた秋月否命(あきつき いなめ)は、私の身体の事を知
ると、発情した雌犬の如き下卑た眼で私の蟲が宿った身体を舐め回し、物狂いのように甲
高く意味の無い声で唾を吐き散らした。もっとも、その時の私も恐らく否命と同様か、そ
れ以下の醜い喜悦の表情を浮かべていただろう。
蟲の轟きは日増しに強くなる。恐らく今日がその日なのだろう。
私の体の中で唯一生き残った蟲がこの世界に顕現する日だ。この日のために蟲は、私の五
臓六腑を飽く事無く、果てる事無く、貪り喰らい、そのことごとくを自身の血肉としてい
た。全ては今日、私の身体から這い出るためだけに。
その兆候は既に表れていた。
最初の兆候は私が部屋で物思いに耽っている時であった。その蟲がタイナイを駆け巡る痛
みに私は悲鳴を上げそうになった。悲鳴とは、自身の周りの人に自分の状況を伝え、助け
を求めるための信号とされているが、この事実は他に知られてはいけない。自分の状況を
他人に知られてはならないのだ。私の現在の状況が知られたら、すぐさま私は病院に移さ
れてしまうだろう。それを拒否する事も出来るが「何故か?」と問われたら、私は言葉に
詰まってしまうだろう。
私がしようとしている事は病院にいては不可能なことなのだ。しかしながら、その理由を
人様に説明する事がどうして出来よう?
詰まる所、今から私がしようとしている事はそういうことなのだ。

33 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/02/26(月) 01:12:15 ID:Jt4vtuqM]
幸いな事に、今まで私は自身の身体のことを否命を除けば誰にも知られずにいられた。そ
の否命だって、こんなに早く「その日」が来る事を予期してはいまい。
だが、竹宮源之助(たけみや げんのすけ)は何か気付いていることだろう。
ちなみに、源之助はこんな厳つい名でありながら女である。そして私の居候先の唯一の住
人にして、私の同級生だ。
彼女には感謝してもし尽くせぬものがある。
源之助は最初の兆候の日、私の腕に深い噛み傷を発見した。私は身体の奥底から湧き上が
ってくる悲鳴を殺すため、咄嗟に私の腕を口に入れたことにより出来た傷である。源之助
は何も言わず、ただ黙って私の傷の治療をしたが、何か感づいたとみて間違いはないだろ
う。
あの時は、私は気が動転していたのでそこまで配慮が回らなかったが、二回目以降はその
兆候の意味と周期を理解し、幾分かは冷静に兆候に対応することが出来た。
それでも、源之助は何か気付いているようだった。
だが、所詮はその程度だろう。源之助は私の現在の状況を今も尚、知らないままだ。故に
、源之助は今から私がしようとしていることは想像もつかないだろう。
そう、今、この時より始まるのだ。
これより否命の栄辱が幕を開けるのだ。
最後の兆候が始まった。

34 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/02/26(月) 01:13:32 ID:Jt4vtuqM]
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
次の日の明朝、朝食の支度を終えた源之助は通常どおり、凛を起こしに凛の部屋を開けた

瞬間、源之助は言葉を失った。
源之助の顔を見ると凛は、
「おはよう。フフン、どう、驚いた?私だってたまには早起きするのよ」
とニッコリと微笑みかけた。勿論、源之助が驚いているのは凛が早起きしたからではない
。そして凛のこの言葉は、それを分かっているからこそであった。
凛は待っているのだ、源之助がこの部屋の惨状を問いかけるのを…。
「どうしたの?固まっちゃって。早く、学校に行かないと遅刻するわよ」
説明するのが楽しみで仕方の無い、といった風情である。あまりの事に源之助は返す言葉
を失い、無言で凛の部屋の様子を見ていた。
床に溜まる血の跡、凛の血が付着しているパジャマ、乾いた血がこびり付いている凛の拳
、そして部屋に立ち込める獣臭。そして源之助の目はある一点に…凛の足元に転がってい
る物体に注がれた。
源之助の頭よりも先に身体が反応する。
源之助は凛の足元にゴミ屑みたいに転がるものの正体を理解した時には、既に怒りで凛を
殴り飛ばしていた。
「凛!貴方が!」
少し遅れて言葉が飛び出す。源之助は分かっていた、分かっていたが、叫ばずには言られ
なかった。これはお前のやったことかと。
「そう、私がやったの」
殴られた事も意に介さず、凛が笑って言う。
「殺してやったわ。あの色キチガイの…、否命の子よ」
そうして、凛は可、可、可と笑い声を上げた。

投下終わりです

35 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/26(月) 01:27:31 ID:JmkqAhOQ]
>>34 最初よくわかんなかったが2回読んでわかったぜ!
これからの展開に期待なんだぜ!

36 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/26(月) 01:45:13 ID:wFDH2Yl3]
>>34
タイトルを見て「しまっちゃうおじさん」を思い出したのはおれだけではないはず

37 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/26(月) 10:20:26 ID:q39byBT/]
>>29キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!GJ!
加奈タンがさらに病んだらどうなってしまうのかとガクブル&wktk
>>34いきなり惨劇((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
この先の展開に期待!

38 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/02/26(月) 17:36:11 ID:OmIerb7I]
投下します。
第三話目になります。

39 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/02/26(月) 17:37:19 ID:OmIerb7I]

眠り過ぎたせいか、頭に靄がかかっているようだった。

学校… 行きたくない…
午前7時。時計を見て最初に思ったのは、それだった。

行きたくない、というより、会いたくない。
昨日の視線を思い出しただけで、身体が震え頭がぐらぐらする。

今日は学校を休もう。
単なる逃げでしかないのは解っていたが、そう思うと少しは気が楽になった。
兄さんを起して、まだ具合が悪いって言おう。そう思った矢先、ノックの音が響いた。

「夏月、起きてる?」
朝が弱い兄さんがこの時間に起きているという事に驚いて、直に返事が出来なかった。
「…兄さん?」
「入るよ?」
わたしの小さな声に起きている事を確認した兄さんが、そっと部屋に入ってきた。

「どうしたの、兄さん? こんな朝早くに…」
「夏月の具合が悪いのに、ぐーぐー寝てられる訳ないだろ?
 それより、具合はどう?」
朝が弱い兄さんがわたしを心配してわたしの為だけに、無理して早起きしてくれた。
ぎゅうと胸が締め付けられるような喜びに、緩む頬を見られない様に俯いて小さく返事をする。
「ん… まだちょっと……」
兄さんに嘘を吐かなければならない事に、罪悪感で一杯になりながらも、
それでも今日は学校には行きたくなかった。

おでこに手を当ててきた兄さんは、熱はないみたいだね、と優しく言うと、
俯くわたしの頭を軽く撫で、横になるように促がす。
「昨日の今日だし、今日は学校休もっか」
にこりと微笑む兄さんに緩く頷く。
「ごめんね、兄さん」
迷惑かけて、ごめんなさい。心配かけて、ごめんなさい。嘘吐いて、ごめんなさい。

「夏月はそんな事、気にしなくていいから。朝ご飯作ってくるから、寝てな」
「あ、大丈夫、自分で出来るから。兄さんは自分の用意して? 学校遅れちゃう」
そこまで迷惑かけられないよ。
「だから、気にしなくていいって。どうせ金曜だし、僕も学校休むから」
「え?」
兄さんが学校を休む? わたしのために?

「夏月は何も心配しなくていいから、お兄ちゃんの言う事ちゃんと聞く事。解った?」
「…うん」
わざと怒ったような顔をしていた兄さんは、わたしが頷くとにっこりと笑って、
ご飯作ってくるからと部屋を後にした。

冷え切っていたわたしの心が、兄さんの笑顔に気遣いに幸せで温かくなった。


40 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/02/26(月) 17:38:03 ID:OmIerb7I]

学校を休んで兄さんと二人きりで家にいられるという事が、わたしを落ち着かせ、
昨晩あれだけ寝たというのに、午前中はずっと微睡んでいた。

どこもかしこも兄さんとわたしの気配しかしないこの家は、わたしにとって最後の砦だ。
ここに居れば大丈夫。何も怖い事なんて、ない。

余り物で作った雑炊で簡単にお昼を済ませると、枕元に座った兄さんに甘えて、
膝枕をねだった。兄さんは嫌な顔一つせず、あんまり寝心地いいとは思えないけど、
と言うと優しく笑って膝を貸してくれた。

兄さんの膝に甘え微睡みながら、ふと思い出す。
「ねぇ、兄さん。兄さんは憶えてる?」
「何を?」
どこまでも優しくわたしの髪を撫でる兄さんの手に、うっとりと目を閉じる。
「わたしが兄さんを、兄さんと呼ぶ事になった出来事を」



双子であるわたし達にも、勿論兄と妹という概念はある。
しかし歳が違う兄妹とは違い、双子にはその感覚は希薄であった。
兄さんとわたしも当初は兄妹という感覚は希薄で、名前で呼び合っていた程だ。

それは兄さんとわたしが5歳の頃だった。
初めて母方の本家の集まりに、一家で参加した時の事だった。

そこにいた同い年くらいの女の子に、わたしは目を奪われた。
艶やかな長い黒髪は流れる様に真っ直ぐで、長い睫毛に色彩られた大きな瞳は
宝石の様に黒く輝き、小さな唇は薔薇色にすっきりとした頬は桜色に染まっていた。
誰もが見蕩れてしまうような、神様が創ったようなお人形のような女の子。
わたしは、ただただ見蕩れてしまった。

するとその女の子は軽やかに、まるで羽根でも生えているかのようにふんわりと、
12・3歳くらいの少年の元に駆けていった。
「お兄ちゃま!」
その女の子が少年に呼びかけた事で、二人が兄妹だという事が解った。
その後、二人がどんな会話をしていたのか記憶にない。
しかし二人がとても仲睦まじく、兄の少年が妹であるあの女の子をとても大事そうに
していた事が、強烈に記憶に残った。

本家の集まりから家に帰る車の中、わたしは父さんと母さんにお兄ちゃんが欲しいと
泣いて駄々を捏ねた。
わたしはあの女の子に、憧れていたんだと思う。
あの女の子が羨ましくて、あの女の子になりたくて駄々を捏ねた。

泣きくれるわたしに、父さんと母さんはお手上げだったらしい。
家に着く頃にはわたしも大分泣き止んでいて、夜も遅い事から兄さんとわたしは
早く寝なさいと子供部屋に押し込められた。
しゃくりあげながらも寝ようとしたわたしを、兄さんの小さな掌が止め、
促がされるまま二人して兄さんのベッドに座った。




41 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/02/26(月) 17:38:51 ID:OmIerb7I]

「夏月は、お兄ちゃんが欲しいの?」
「うん。夏月、お兄ちゃんが欲しいの…」
兄さんに聞かれ、わたしはまた悲しくなった。
父さんも母さんも、お兄ちゃんはあげられないと言っていたのを思い出したからだ。

「ぼくじゃ、ダメ?」
「え?」

「ぼく、夏月のお兄ちゃんなんだよ?」
その時のわたしは、兄さんが言った事がよく解らなかった。

「ぼくと夏月は双子だけど、ぼくの方が先に生まれたから、
 ぼくは夏月のお兄ちゃんで、夏月はぼくの妹なんだよ」
「陽太が夏月のお兄ちゃん?」
「そうだよ。だから新しくお兄ちゃんなんて、いらないよ」
「陽太のこと、お兄ちゃんて呼んでいいの?」
「うん! 夏月のお兄ちゃんは、ぼくだけだよ?
 ぼくの妹も夏月だけだからね」
「うん! 夏月のお兄ちゃんは、お兄ちゃんだけだね!」

こうしてわたしは、兄さんを兄さんと呼ぶようになり、それ以来わたしの中で、
兄さんはもっともっと特別で唯一の存在になった。



「憶えてるよ」
わたしが記憶をなぞり終わると、兄さんもまた思い出していたのか、その分遅れた
返事が優しく降ってきた。
「夏月があんまり泣くから、困ってさ… それで、悔しくなった」
「え? 悔しい?」
意外な兄さんの言葉に、閉じていた目を開いて兄さんを見上げる。

「夏月には僕っていうお兄ちゃんがいるのに、欲しい欲しいって泣いてるから、
 夏月が欲しがってる居もしないお兄ちゃんに、嫉妬した」
「…わたしの兄さんは、兄さんだけよ」
兄さんの言葉に呆然としてしまったけれど、咄嗟に口から出た言葉は、
偽らざるわたしの本音だ。

「僕の妹も夏月だけだよ」
あの時の再現のような、言葉遊び。
悪戯っぽく笑う兄さんのその言葉は、揶揄いが含まれているとしても、
わたしを甘く、どこまでも陶酔させる。

「兄さんがいてくれれば、それだけでいい…
 兄さん以外、いらない…」
火照る身体の熱を逃がすように、吐いた息と共にそっと呟く。


42 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/02/26(月) 17:39:40 ID:OmIerb7I]

「珍しいね、夏月がこんなに甘えるなんて」
「ダメ? 兄さんはこういうの嫌?」
兄さんが嫌だったら、もうしない。甘えない。
「ダメじゃない、夏月だったらいいよ。だからそんな顔するなって」
そんな顔ってどんな顔だろう? と思いながらも、起き上がってしまったわたしを、
横になるように促がす兄さんに従って、膝枕に戻った。

「普段こんな風に甘えてくれないから驚いたけど、こういうのもいいね」
「ホント?」
「ホントにホント。夏月はさ、小さい頃からあんまり我侭とか言わないじゃないか。
 まあ、父さんも母さんも忙しいからって事もあるんだろうけどさ。
 いつも頑張ってるし、僕にだったら、もっと我侭言ってもいいんだよ?」
「兄さん… ありがとう…」

どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう…!
兄さんが好き、兄さんが好き、兄さんが好き!
誰よりも、兄さんが好き!


ピンポ―――ン……

「あれ? 誰か来たみたいだ。夏月、ちょっと待ってて」
「うん」
来客を告げるチャイムの音に、名残惜しく兄さんの膝の上からどくと、
兄さんは慰める様に、わたしの頭にぽんと手を置きひと撫ですると玄関に向かった。

東尉君かな? あ、でもそれにしては時間が早いか…
勧誘か何かかな? 平日のこんな時間に居た事が、あまりないから解らないなあ…

あれ? 兄さん、誰かと話してる?
二人分の足音が、この部屋に向かって来ている。
やっぱり、東尉君だったんだ。今日は学校早く終ったのかなあ?

がちゃりとドアが開いて、わたしの愛おしい兄さんが入って来る。
そして…

「夏月、お友達がお見舞いに来てくれたよ。
 どうぞ、伊藤さん」


どうして? どうして?
ここは安全じゃなかったの?

どうして? どうして?


「夏月、具合どお? 心配したんだよぉ」


怖いよ、怖いよ、怖いよ!
昨日の視線よりも、今目の前で笑ってる、好乃の笑顔が、怖い、よ…


−続−

43 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/02/26(月) 17:40:57 ID:OmIerb7I]

以上、続きます。

>>1 乙です。
保管庫管理人さん、いつもありがとうございます。お疲れ様です。
数々のレス、ありがとうございました。

44 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/26(月) 18:19:25 ID:q39byBT/]
>>43
GJ! 夏月のデレっぷりと好乃さんの忍び寄る病みが(・∀・)イイ!

45 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/26(月) 21:57:04 ID:zyiHHZzN]
新スレが立ってるから来てみれば素晴らしい作品が投下されている…。
GJ!

46 名前:◆lPjs68q5PU mailto:sage [2007/02/27(火) 00:01:54 ID:TMZLf/lG]
おうっいっぱい投下されてる・・・職人さんがたGJです。
前スレ埋めました・・・今回のはさすがに反省・・・
でもちょっとまってほしい。病院編は頑張る気なんです。
「みんな病んでる」
「病んでるけどドジッ子」
の二つを主眼に書いていきます。保管庫の方、前スレ291を「淳、昼休みにて」
として、淳シリーズとしてまとめてください。前スレ>>291のときに名前をつけず申し訳ない。
後もう一つネタだけはあるんですがさすがに追いつかない・・・
とりあえず受難書き上げます。

47 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 12:49:20 ID:AIeNLagm]
新スレでの連続投下、全ての神々にGJを

>>46wktkして待ってます

48 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 13:34:03 ID:7lrNAGRh]
>>「夏月、具合どお? 心配したんだよぉ」
思わず勃起しますた!

しかしキモウトはいいねぇ
まだ病んでないかわいい状態だけど泥棒猫の攻撃でだんだん病んでくるのかwktk

49 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 15:17:31 ID:aBx8Gk3h]
ここに投稿しようと思うけど、結局ヤンデレSSと嫉妬SSの違いは何ですか

流血沙汰は必須なのかな・・

50 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 15:27:00 ID:TflrmxA/]
>>49
簡単に言えば、嫉妬SSスレは女性同士(単独もか?)のやきもちや嫉妬、
もしくはそれによって起こる修羅場を描く。

ヤンデレSSスレはヒロイン単独でも複数でも成り立つ。
ヒロインが病みつつ、狂うほどに主人公を愛しているのならば。

流血は行動によって起こる結果であって、目的ではない。
よって、必須とは言えない。



51 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 15:38:35 ID:TflrmxA/]
ごめん。追加。

嫉妬SSスレ=嫉妬が必須。嫉妬・修羅場に重点が置かれる。
ヤンデレSSスレ=嫉妬が無くてもいい。ヒロインの狂愛に重点が置かれる。

52 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 16:13:51 ID:LfItP5lF]
難しいなぁ・・
狂愛と来たか・・

難題を抱えて作品を書くのはちょっと困難だぁ

53 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 16:38:22 ID:TiFDd3k+]
深く考えるな>>55
『やっちゃいけないこと』をヒロインにさせればいいんだ。

54 名前:53 mailto:sage [2007/02/27(火) 16:39:40 ID:TiFDd3k+]
>>52だ、スマソ

55 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 16:45:16 ID:ciBdQby7]
俺!?     


ってやりたかっただけ。今は後悔してる。

56 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 17:16:56 ID:QKGh0bEG]
八百屋お七みたいのもヤンデレかね?

57 名前: ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/27(火) 18:20:17 ID:Quf4Ljbq]
>>43
夏月の今後にwktk
勿論好乃さんも好きですよw

では上書き投下します。

58 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/27(火) 18:21:19 ID:Quf4Ljbq]
 昨日のように、あるいは条件反射のように、加奈の視線を感じた瞬間俺は島村との距離を置いた。
 その一瞬の動作だけで俺の息は荒くなる、心臓の鼓動音が聞こえてくる、胸が破裂しそうになる。
 加奈の存在が、”いい意味”でも”悪い意味”でも俺の心をかき乱している。
 そんな俺の精神状態を覗き込むように加奈は笑顔を崩さないまま、相変わらずの光沢を失い黒々とした目を細めてくる。
「誠人くんのクラスの人に聞いたら”他の人と”どっかに行ったって言ってたから探したんだよ?勝手に行っちゃうなんて意地悪だなぁ」
「悪い加奈…」
「素直でよろしい!」
 表面上は何の変哲もないやり取り、いつもと違うところと言えば加奈の目が俺を凝視したまま笑っていないのと、加奈の笑顔が明らかに”貼り付けた”ものだという事だ。
 無理に笑顔を取り繕っているのが口元の僅かな痙攣から読み取れる、その動揺した様子が俺の中で一つの確信を生む。
 ”加奈が俺と島村の『距離』を見ていた”という確信を。
 そう、加奈はいつからかは分からないが少なくとも俺と島村が危うく”行為”に及びそうになったところは見ているはずだ、なのに…妙だ。
 加奈は昨日とは違って、偽りの笑顔を通したまま”その事”について一切言及してこないのだ。
 何事もなかったかのように、まるで、”自分が見た事”を全否定しその事実を直視しないかの如く。
 ”直視しない”と言えばもう一つ加奈には大きな異変があった事にようやく気付いた…加奈の奴、先程俺に話し掛けてきてからずっと島村の事を見てない。
 チラ見すらしない、視線は動かず真っ直ぐ俺の事だけを見つめてくる…恰も今この場にいるのは俺と自分だけで、”島村なんていない”と言い聞かせているように。
 そんな風に明らかに常軌を逸している加奈が足取り軽そうに、しかし地面をしっかり踏みしめるようにゆっくりと俺の下へと歩み寄ってくる。
「さっ、一緒に帰ろ!今日は誠人くんのお母さんいないからあたしの家に泊まっていかない?」
「ッ!な、何で加奈が俺の母さんの事を知ってるんだよ!?」
「さて何故でしょう?強いて言うなら、”恋人同士だから”かな?フフフ…」
 俺は露骨に動揺を示してしまった、それが加奈の怪しい含み笑いを引き起こす原因になってしまうと分かっていながら反応せずにはいられなかった。
 加奈の言う通り、母さんは今日何かの会のイベントで一泊の旅行に行っている。
 問題はその事を俺は一切口外していないのに何故加奈が知っているのかという事だ…まさか盗撮…って少し冷静になれ。
 俺が言わなくたって母さんは加奈の母さんである君代さんに言っているかもしれない、そこを通して加奈に伝わったと考えれば自然じゃないか。
 確かではないがそんな事は君代さんに尋ねればすぐ確認出来る、問題はそこじゃない。
 こんな単純な事を理解するのにこれ程の時間を有する今の”俺の精神状態こそが”問題なのだ。
 ただでさえ叫んで逃げ出したい状況なのに、加奈の巧みな言葉遣いに俺の思考は混乱させられている、正常な判断を下せずにいる。
 加奈を”元に戻す”と意気込んでおきながら、ミイラ捕りがミイラになってしまいましたじゃ話にならない。
 とにかく今は波を立てない、石橋は渡らない、それを肝に銘じなければ。
 加奈が”島村の存在”を直視していないという現状はかなりマズイが、幸い今はそれが非常に望ましい。
 加奈が島村への敵意を忘れているのならば”最悪の事態”には発展しない。
 このままこの場は潔く去って加奈を落ち着かせてからゆっくり心の緩和を進めて行けば良い。
「あたし、お母さんと最近お菓子作りを始めたから食べさせてあげるよ!」
「是非ともご馳走させて貰うよ」
 俺と視線を外さないまま俺との距離を詰め、さしのべてくる加奈の手を掴もうとする。
「人の事無視するなんて、結構な態度ですね」
「はい?」
 その手は空を切る、代わりに島村の言葉に踵を返した加奈の背中に触れる。
 その背中は少女のものとは思えない程俺には邪悪なまでに巨大に見えた。
 島村が…加奈に火を点けてしまった。


59 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/27(火) 18:22:21 ID:Quf4Ljbq]
 先程まで俺だけを見つめていた加奈の目が島村へと向けられる、俺の時と違いメラメラと苛立ちが溢れているのが揺れる眼球から見て取れる。
 加奈にとって”島村の存在を認める事”と”俺と島村の『行為』を認める事”は同意義だから、動揺するのも頷ける。
 何て風に冷静に場を解説している場合じゃない。
「あっ…島村さん、いたんですか?」
「えぇ、あなたがここに来るより前から”ずっと”誠人くんといますよ」
 はっきりと加奈は今下唇を噛んだ、その証拠に加奈の下唇から血が滲み出ているのが確認出来る。
 滲む血は加奈の島村に対する憎しみを顕著に示している。
 それを島村も分かっているからか、分かっていないからかは分からないが、いつものように腕を組み余裕そうに加奈を見下ろしている。
 こんな具体的に口で出さず相手の腹を探り心を絞ろうとする女同士の緊迫した状況に、俺は立ち尽くすしかなかった。
 自分の無力さの程を思い知らされ欠片程のプライドが切り捨てられてしまう。
「それともう一つ、盗み聞きは人としてどうかと思いますよ?」
「なっ…」
「盗み聞き!?」
 思わず叫んでしまった。
 加奈の方を向いて更に叫びそうになるのを何とか堪える、加奈が島村の言葉に動揺している。
 動揺しているという事は………
「その様子から見て図星ですね」
 その問いの答えを一足先に答える島村。
「そこの壁からあなたの長髪が風になびいているのが見えましたよ?」
 島村は加奈が出てきた方向を指差しながら嘲るようにクスクス笑う。
 俺は全く気付かなかった、逆の方向を向いていたからな…ってちょっと待てよ。
 という事は島村は、加奈が見ている事を”知っていた”上で見せ付けてやるようにしたという事か…。
 とんでもない女だ。
 島村の理不尽な一方的な攻撃に防戦一方の加奈、目と目の間に皺をつくり渾身の力で島村を睨みつけている。
 加奈がここまで怒っているのは初めて…いや、最早”怒っている”とかいう次元の話じゃない。
 こんなにいがみ合っている人間同士を俺は昼ドラのドロドロ恋愛劇でしか見た事がない。
「あたしの駄目出しばかりしていますが、島村さんこそどうなんですか?」
「何がですか?」
「あなただって”今朝の騒ぎ”は知っていますよね?”あたしと誠人くんが付き合っている事”知っているんですよね?」
「その発言は盗み聞きしていた事の自白と捉えてよろしいんですね?」
「黙れっ!!!」
 長い沈黙がはしった。
 今まで一度だって聞いた事のない、こんなに大声を張り上げる加奈を。
 既に断崖絶壁に追い詰められたように息苦しくしている、事実今の状況はその通りなのだと思う。
 島村が「やれやれ」と呆れた感じで呟きながら手慣れたように眼鏡の位置を直した。
「あたしたちの仲を知っておきながら”邪魔”するなんて、酷過ぎるっ!」
 加奈の言葉に余裕さは欠片も感じられない、焦りと緊張で喋り方も思った事をそのまま言っているような感じだ。
「何をそんなにムキになっているんです?別にあなたと誠人くんの関係が強国なものであるなら私の事なんて気にする必要はないはずですよ」
 対する島村は俄然冷静な態度を崩さない。
 相手の言葉全てに反論出来ると言いたげな自信たっぷりの目が眼鏡越しに光っている。
「あたしたちの仲は絶対にこわれないわよ!ねっ?誠人くん!」
「あぁ!」
 突然話を振られた俺は反射的にそう答えてしまった。
 まぁそう言うつもりだったから別に問題はないが、自分がここまで緊迫していたという事を再確認し改めて驚いた。
 頭の中で必死に二人の一挙一動を整理する俺をよそに、即答した事を満足に思ったのか、加奈は”俺にだけ”純粋に微笑みかけた。
 そしてすぐに島村へと視線を戻す。
「ほら!あんたなんかじゃあたしたちの仲は壊せないのよ!」
 俺からの援護に心から喜び、束の間の勝機に打ち震える加奈。
 しかし、やはり”俺たち”は島村を侮っていた。
「確認を要しなければならない関係なんて、”ない”に等しいですね」


60 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/27(火) 18:23:11 ID:Quf4Ljbq]
 多分”俺たち”は同時にキレた。
 島村に、”部外者”に自分たちの関係を否定された事にかつてない程に怒りが込み上げた。
 本来なら、俺は女である島村であろうと容赦なくその胸倉を掴み叫んでいただろう。
 しかし、加奈の素早く且つ不自然な動きに俺は見とれた。
 慣れたように胸ポケットから”何か”を取り出そうとしている加奈、そして、それの招待が分かった瞬間…
「誠人くん離してっ!」
 俺は加奈の腕を力一杯握り締めた。
 痛がっている加奈の様子に心を痛めながらも、俺は改めて加奈の手に握られている”物”が何かを確認し戦慄した。
 それは、何の変哲もない”カッター”、刃が出ていない為”今のところ”は殺傷能力ゼロだ。
 しかし、親指を数センチ上げるだけでそれは簡単に人を殺める凶器と化す。
 無我夢中で俺の腕を振りほどこうとする加奈を何とか押さえ付ける、もし今この手を離したら加奈は一体何をするというのだろうか…考えただけで背筋が凍る。
「こんな奴ッ!あたしたちの邪魔をするこんな人間をかばわないでっ!!!」
「落ち着け加奈!」
 俺が加奈を見るとその視線は別の方向、島村の方向を憎々しく見つめていた。
 俺もその方向に首を傾げると、俺たちのこんな様子をまるで楽しむように、滑稽に思うように島村はニヤついていた。
 その表情を見て理性を失いそうになるのを必死に抑える、今は加奈を何とかしなければならない。
「加奈、このカッターを離すんだ!」
「あたしは誠人くんがいればそれでいいのにっ!なのにこの女はっ!」
「やめろォ!!!」
 俺の声が響いた瞬間、加奈が視点が定まらない目をキョロキョロさせながら体だけ俺に向けてきた。
 「え?」という間の抜けた声と共にカッターが加奈の手から滑り落ちる。
 俺の発した大声によってより一層静けさが強調された体育館裏にカッターの落ちる音が響く。
 俺も、島村も、そして、加奈も、呆然とする中最初にこの沈黙を切り裂いたのは、
「あ…あ………あ…」
 加奈のうめき声だった。
 加奈が吐き気を催したように口に両手を当て、そこから加奈のうめき声が漏れる。
 俺だけを見ながらよろよろと後退りする加奈。
「加奈、どこ行く気だ?」
 俺への返答は依然変わらないうめき声だけだった。
 俺と徐々に距離を置いていく加奈、小刻みに全身を震わせながら、目に涙を溜め何か言いたげな様子だ。
 そんな加奈が発した言葉は、思わず意外と思ってしまうものだった。
「………ごめ…んなさ………い…」
 絞り出した言葉はかすれていた。
 その言葉を言い残すと、加奈は俺に背を向け走り出していった。
「加奈ッ!」
 呼び止めたがそんな俺の声を無視して加奈はどんどん先に行ってしまう。
 しばらく呆然とした後追い掛けてみたが、加奈が出てきた壁の分かれ道の左右どちらにも加奈の姿は確認出来なかった。
「加奈…」
 何度も呟く、そうすれば戻ってきてくれる気がして…。
「誠人くんはあの人のどこが好きなんですかね?」
 そんな俺の期待虚しく、背後から聞こえたのは島村の声だった。
 その透き通るような声で先程俺たちに”何を”言ったのか思い出して無性に腹が立った。
 島村の言葉を無視し、加奈が放置した加奈の鞄を拾い上げると、島村に俺自ら近寄る。
 ちょっと勢いをつければすぐに接触してしまう程近寄った、それ程の距離で行ってやらないと気が済まない。 「何か?」と言いたげなとぼけた表情の島村に俺は思い切りその想いをぶつけてやった。

「今度加奈を侮辱するような事言ったら殺すぞ」
 自分でも驚いた、まさか俺の口から”殺す”なんて言葉が出るとは。
 しかし、俺は軽はずみでそんな事は絶対言わない、だからこれは本心なんだろう。
 吐き捨ててやった後はさっさと島村に背を向ける、この女の顔を一秒でも見ているのはご免だった。

「加奈さんを侮辱してやった時のあなたの顔、格好良かったですよ」





61 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/27(火) 18:24:10 ID:Quf4Ljbq]
 昨日加奈と抱き合った時のように陽が僅かに覗く、そんな夕方の道を俺は一人で歩いている。
 周りには誰もいなく、小鳥のさえずりが聞こえてくる程静かだ。
 あましにも静か過ぎて自分の存在が一人浮き、より一層”孤独”である事を思い知らされる。
 今までは加奈と一緒にいたから、加奈と一緒に歩いたから、加奈と一緒に笑い合ったから、寂しさなんて感じなかった。
 しかし、こうして初めて加奈のいない帰路を踏みしめて俺は孤独感を痛感している。
 加奈の存在がこんなにも大切だと分かり切っていた事を再確認する、そして先程自分が加奈にしてしまった事を思い出し拳を握り締めた。
 ”あの状況”ではああするしかなかったとはいえ、加奈の気持ちも考慮したもっと上手い対応が出来なかったのかと反省と自問を同時に行う。
 加奈は俺が好きなだけだ、ただそれがいき過ぎているだけ…いや行き過ぎるなんてある訳ないかと一人で笑った。
 加奈からの愛情なら腹を壊してでも全て頂く、どんなに歪んでいても”加奈からのだから”構わない。
 こんなにも好きなのに、何が噛み合わないのだろう…?
 まぁその答え探しは今度に回そう、今は加奈に謝りたい思いで一杯だった。
 きっと家に寄っていったら喜ぶに違いない…俺は”この事態”を楽観視し過ぎていた。

 陽はとっくに沈み、街灯が灯り始めた頃、俺はようやく家に着きそうになった。
 自分の家と加奈の家と先にどっちに行くか迷いながら向かい合っている二軒を見渡すと、遠くからではっきりしないが人影を発見した。
 特に気にはしないつもりだったが、明らかにその人影がこちらの存在に気付くと手を降ってきたのを確認して気が変わった。
 少々足早に歩を進めていくと、次第に何か言っている声も聞こえてきた。
 その声と、その内容を理解した瞬間、同時にその人影の招待も分かった。
「誠人くーん!」
「君代さん!」
 まだ顔ははっきりとしないが、この声で俺を名前で呼ぶのは加奈の母さんである君代さんだけだ。
 君代さんとの遭遇で寂しさが紛れたなと安堵していると、君代さんが突然催促し出す。
「誠人くん、早く来てーっ!」
 あの穏やかな君代さんが俺を急かすというのは中々ない事だ。
 不思議に思い、近付いてみて驚いた、君代さんの顔が困惑と焦りに満ちていたからだ。
「君代さん、どうしたんですか?」
「誠人くん、それが加奈が!加奈がっ!」
 鬼気迫る君代さんの表情、それがこの周りで起こっている事態の深刻さを示している。
 普段の君代さんからは考えられない程の慌て様に俺にも緊張がはしり、冷や汗が頬につたわった。
「落ち着いて下せず!一体何があったんですか!?」
 そう言いながら君代さんの両肩を掴む、自分が思った以上に早口だったのは、俺自信も焦りを隠せないからだ。
 さっき君代さんが呼んだ名前…加奈に何が起こったのか、気にならない訳がない。
 ただでさえさっきまでなし崩し的に半ば喧嘩別れのようになって加奈を見失ってしまったのだ、責任を感じる。
「加奈が部屋に閉じ篭ったまま出てこないのよ!」
「!」
 俺は一瞬にして現実の残酷さを思い知らされた。
 俺は考えるよりも先に走り出した、多分本能的な行動だったと思う。
 鞄を放り投げて、君代さんが何か言っているのも全て無視して加奈の下へと急いだ。
 走りながら後悔や責任や使命感といった様々な感情が俺の中を渦巻く。
 どうして”こうなる事”を予期出来なかったのか、思慮の浅い自分をこれでもかという位呪った。


62 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/27(火) 18:25:07 ID:Quf4Ljbq]
 今日は朝から”異変”だらけだった、それこそ数え切れない位、日常がねじ曲がる位狂っていた。
 そんな限りなく非日常に近い日常に身を置いていたから、感覚が麻痺してしまっていたんだろう。
 それが、加奈がさっき小声でうめきながら去っていき”俺と一緒に帰ろうとしない”というのが”おかしい”事だという事に気付かせなくした原因なんだと理解した。
 しかし、”感覚が麻痺していた”事だけが今の事態への引き金になった訳ではない、それ以上にもう一つ最大の要因がある。
 あの時、加奈がうめきながら俺に何かを絶望したような視線を浴びせてきた時、その目には間違いなく”正気”が宿っていた。
 行き過ぎる事のない…まぁ繰り返し言うが”行き過ぎの愛”なんて存在しないが、そんな純粋に人を、俺を愛している時の目だった。
 俺に対して”上書き”しようとする時の目じゃない、鮮やかな色で彩られた美しい目をしていた、”だから”だ。
 そこだけが俺が微かに記憶の底にある”日常”の風景だったから気付けなかったのだ。
 つまり、俺が戻そうとしたのは”狂気に満ちた加奈”であって”正気の加奈”ではない、だからあの時の”正気の加奈”に対して危機感を感じなかったのだ。
 そして、ここまでに探り当てたピースを合わせて一つの結論が出た…”加奈は正気と狂気の間にいる”。
 正気と狂気が混合しているのだ、この状態の時は非常に危ない。
 正気だけなら純粋、狂気だけならそれもまた純粋、しかし”二つ”が混ざったらどうなる?
 単純にプラスにマイナスを乗法して”マイナス”という訳にはいかないだろう。
 ”相反する二つの明確な目的”が衝突した後の結末………これはあくまで推測でしかないが、”本来の目的”を見失う事になりかねないと思う。
 具体的に何が起こるのかは想像すら出来ないが、少なくとも”加奈の幸せ”が実現するとは思えない。
 それだけは防がなければ、加奈が誤った判断で自ら”幸せの可能性”を潰してしまったら何もかもが水泡にきしてしまう。

 何が起こるか分からないのに、目処さえつかない未来の未然防止の為だけに俺は加奈の下へと急ぐ。
 恐ろしい程思考が働く事に僅かに自分も”おかしく”なったなと失笑しながらひたすら走った。
 許可もなく加奈の家のドアを乱暴に開け、靴を乱雑に玄関に放り出した。
 昨日来たのにまるで別世界かのように暗い家屋内を徘徊し、加奈の部屋へと通じる階段を駆け上がる。
 焦れば焦る程息が絶え絶えになり、十数段上の二階が遥か彼方に感じる。
 焦れったくなる中二階へと到達し、すぐ横にある加奈の部屋のドアを躊躇なく開けようとする。
 しかし当然のようにそこには俺の侵入を拒む鍵がかかっている
「加奈っ、俺だ!」
 焦りが募り乱暴に部屋のドアを叩く、しかし返事は返ってこない。
 その事が俺の心を引き裂く、”加奈が俺を拒んでいる”ような気がして。
 しかし今の俺はかなり行動的になっていて、傷付いている暇なんてないと割り切りすぐさまドアに体ごとぶち当たる。
 さすがに一回じゃ開かないが高校男子の力だ、徐々に感触を掴みかけたと思った瞬間固く閉ざされたドアがとうとう開いた…そして、”その先”の光景を見て、初めて自分の加奈だけの為の躊躇ない行動に自画自賛したくなった。
「加奈ァー!」
 俺は幽閉されたように黙りこくって”ある事”をしようとしていた加奈の腕を掴んだ。
 その衝撃で、一糸纏わない加奈の腕から鋭く輝くカッターが”あの時”のように床に落ちた。
 落ちたカッターを瞬時に拾い上げ、刃をしまうと自らの懐にしまう。
 一時的な危機回避に一瞬の安息を得る、そしてその部屋の有り様を見て動悸が激しくなるのを感じた。
 昨日見た部屋とは比べようもない、本当に同じ場所なのか疑いたくなる。


63 名前:上書き第9話 ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/27(火) 18:25:51 ID:Quf4Ljbq]
 規則正しく並べられた書物は殆どが本棚から投げ出され床に散乱している、水玉の布団は無惨に引き裂かれ、机の棚は何かを漁られたかのように全開になっていた。
 そして最も驚くべき事は加奈の制服を俺が踏んでいるという事…そう、加奈は服を一枚も着ていないのだ。
 もしこんな荒れ果てた場でなければ、小さな膨らみの先にある更に小さな山を思わず見てしまうところだった。
 まだまだ幼い体に目を取られそうになるところで何とか煩悩を吹き払い、加奈の目を見る。
 加奈も俺を見つめている、いきなりの来訪者に驚いている様子だ。
 という事は俺が部屋に入ってきたところで俺の存在に気付いた、つまり俺が部屋を破ろうとしていた時には”加奈にはその音が聞こえていなかった”、それ程なまでに”一つの事”に熱中していたという事に恐怖を覚えながら加奈に問い掛ける。
「加奈、今何しようとしていた?」
「何って、”いらない物”を捨てようとしていたんだよ」
 加奈は微笑みながら自分の左腕を指差した。
 そう、俺が部屋に入った時見た光景とは…加奈が自らの左腕にカッターを添えているというシーンだった。
 今思い出すと身震いがした。
 俺を見上げ微笑む加奈の笑顔が、”俺の為に”必死に頑張って作っているものだという事に何となく気付き胸が苦しくなる。
「ごめんね…誠人くん」
「何で謝るんだよ?」
「だって、あたしが”欲張り”だから」
 加奈の笑顔がみるみる内に崩れていく、その事に罪悪感を感じつつ、加奈の言っている意味の解読に俺は必死になっていた。
 加奈が謝っているのは島村にカッターをつきつけた事か?
 しかしそれは俺に謝るべき事じゃない…考える俺をよそに、加奈は俺を見つめ続けている、その目は”正気”、しかししようとしていた事は”狂気”、俺の恐れた事態にやはりなっていた。
「あたし…”あの時”…誠人くんがあたしに怒鳴ってきた時分からなかったんだ…」
「分からないって、一体何がだよ?」
「島村さんには怒らないのに”あたしにだけ”怒った理由…」
 その言葉が深く、深く俺の心に突き刺さる。
 加奈に言われて思い出した、俺は”加奈にしか”怒らなかった、いや正確には加奈はそう思っている。
 島村の侮辱的な発言に俺はキレかけた、でも加奈も同時にキレたからそれを防ぐ為に俺は加奈に”自分が島村に怒っている”事を見せられなかった。
 加奈に”あんな顔”をさせたのは俺のせいじゃないかと理解し、この場から消えたくなった。
 何も言えない俺をよそに、加奈は続ける。
「でも部屋で考えて分かったんだ、あたしが”欲張り”だからいけなかったんだって。”誠人くんがいてくれれば”他に何もいらないとか言っておきながら、”誠人くんを独占する権利”まで欲していたあたしが悪かったんだよ…」
 加奈が言っているのはきっと今朝の”あの紙”の事だと思った。
 あれは加奈が俺を独占しようとした心の象徴だから。
「あたし”誠人くん以外のものは何もいらない”、本も服も友達も何もいらない!だから色々と”捨てた”けどまだ足りない気がして…」
 ここまできてようやくこの部屋の有り様と加奈の姿の理由を理解した。
「だから”あたし自身”も切り捨てようと思ったの…誠人くんがいればあたしは…誠人くんがいないと………”生きていけないよ”!何を捨てても構わない、だから誠人くんだけにはどうしてもいて欲しいの!好きなの!好きなんだよ!」
 目の前で必死に涙を堪えている加奈を前に、俺は抱き締めたい衝撃を抑えきれなかった。
 裸の加奈の小さな体を力一杯抱き締める、その体は柔らかくて、良い匂いがして、愛しくて………ここまで自分を愛している少女を危うく自滅させてしまうところだった自分自身への怒りで頭が爆発しそうになった。
 それを堪え、加奈に優しく囁きかける。
「ごめん…こんなになるまで………俺が…」
 俺の謝罪に、俺の胸に顔を埋めていた加奈が瞬時に顔を上げる。
 その顔は嬉しそうな悲しそうな…”人間味溢れる”ものだった。
「謝らないで!あたしが…」
「もう…思い詰めないでくれ…!」
 更に加奈を抱く力を強くし、加奈の言葉を封じる。
 驚きながらも加奈は、かつてない程安らいでいる表情をしていた。
 そんな加奈に俺は言い放った。
「加奈、”今日母さんいないから”、俺ん家来ないか?」
 俺はどういうつもりで言っているのだろうか…分からない。
 しかし少なくとも…
「うん…」
 一瞬驚きながらも加奈の面した小顔でこくんと頷いた様子を、俺は”了承”と受け取った。


64 名前: ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/02/27(火) 18:27:58 ID:Quf4Ljbq]
投下終了です。
とりあえず次回で最後になると思います。
最後なんでもう一度だけ選択肢つける予定です、では。

65 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/02/27(火) 18:58:47 ID:TiFDd3k+]
GJ!…って、えー!?
最後で選択肢ですか!?
つまりは三択で、
1:世間一般でいうハッピーエンド
2:このスレ的ハッピーエンド(心中)
3:ほのぼの純愛エンド(島村さんの復讐)
か!?

66 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 19:31:49 ID:LYIjrxYL]
>>64
GJ!とうとう自分さえも壊し始めた加奈可愛いよ加奈
二人がどんな結末を迎えるのか……
しかし島村さんの反撃も期待している俺ガイルw

67 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 20:55:45 ID:YYAdv7RY]
こんなにワクワクするなんて何年ぶりだろ・・・・それはそうとGJ!

68 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 21:10:50 ID:C2CowERc]
GJ!もう終りか…って選択肢アル━━(゚∀゚)━━ヨ!

69 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/27(火) 22:02:33 ID:PKuCcyJr]
GJ!!って微妙に誠人も狂ってきてね?

70 名前:名無しさん@ピンキー [2007/02/27(火) 23:59:55 ID:ZCsRHVK/]
加奈と誠人には幸せになってほしいです。島村はどーでもいい。



71 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/02/28(水) 00:34:34 ID:xK/FxZZe]
以前描いた絵を使ってちょっと実験
p.pita.st/?m=rprso3ha
VGA画像を携帯でうpして貼り付け。携帯では見れないサイズになってるんだが、PCだとどうなって見えるか教えてくれまいか。

72 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 00:35:10 ID:JAnAE6a4]
ぐっじょぶ(*´ρ`*)
個人的には、島村さんの恐ろしさをじっくりと堪能したいです。

73 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 00:36:32 ID:JAnAE6a4]
>>71
>作成者様がPCからの観覧を拒否しております。
>お手数ですがお手持ちの携帯端末でアクセスしてください。

こうなっちゃってて見れませんOTL

74 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 00:45:49 ID:ZQkXrt0l]
>>71
そういうロダに貼るとだいたい小さいサイズに変換される

75 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/02/28(水) 01:06:06 ID:xK/FxZZe]
重ね重ねすまない
こっちだとどうだろう?
imepita.jp/20070228/033710

76 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 01:08:07 ID:QyMZTwWI]
殺人だとかそういう血生臭いのもいいけど、別の方向に女の子が壊れていくのもよいかな
精神崩壊とか幼児化とか自傷とか

77 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 01:08:27 ID:GBft8iOs]
>>75
PCからだと大きく見える

78 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/02/28(水) 01:11:35 ID:xK/FxZZe]
>>77
おk。分かったありがとう。どうやら今まで使ってたので良かったらしい。
んじゃ次以降はVGAで画像うPします。

79 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 01:48:29 ID:GBft8iOs]
短編投下します

80 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs mailto:sage [2007/02/28(水) 01:49:30 ID:GBft8iOs]


 1851年現在、ユーリ・ハルフォードについて詳しく知る人物は、実のところただの三人しか
いなかった。
 即ち――
 彼の父、モーフィン・ハルフォード。
 彼の母、アリシア・ハルフォード。
 そして家事使用人のキャロルの三人だ。
 ハルフォード家は大きくもなく小さくもなかった。土地と、金と、権力と。必要なものは必
要なだけ持っていた。徐々に没落するものが目立ち始めた時期において、むしろ淡々と続くハ
ルフォード家は安定していたといってもいいのかもしれない。モーフィンは偏屈な人間で、偏
屈がゆえに古きも新しきも嫌っていた。そんな彼だからこそ、時代の流れについていけたとい
うのは皮肉としかいいようがないのだろう。
 モーフィンはメイドたちから陰口を叩かれようが、執事たちから疎まれようが一切気にしな
かった。それどころか、自身の妻が不義を働いていることを知りながら、放任している節さえ
あった。彼が何を思っていたのかは、彼自身しか知りえないし――ひょっとしたら、彼すらも
自身のことをよく分かっていなかったのかもしれない。
 が、それらは全て詮索に過ぎない。この物語の主人公は、彼のたった一人の子ども――ユー
リなのだから。
 ユーリ・ハルフォードについて知るのは、たったの、三人だけだ。
 なぜならば――妻にも使用人にも何一つ命令しなかったモーフィンが、ただ一人だけ命令に
よって縛ったのがユーリなのだから。自身の子供に対して、モーフィンは硬く命じた。
 部屋から出るな、と。
 彼が家族に対して望んだのは、それだけだった。
 望んだのはそれだけで――それが故に、広い部屋から一歩たりとも出ることなくユーリは育
ったのだった。部屋を訪れるのは、父と、母と、専属メイドのキャロルのみ。育つにつれてま
ず父が寄り付かなくなり、それから母が遠退いた。九つを迎えるころには、ユーリの元に訪れ
るのはキャロルだけになった。

 閉ざされたユーリの世界にいるのは――キャロルだけだった。





81 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs mailto:sage [2007/02/28(水) 01:50:02 ID:GBft8iOs]

「ユーリ様、失礼します」
 いつもと寸分変わらぬ時間に、ノックと共に木製の配膳台を押したキャロルがやってくる。
窓の外は昼間だというのに薄暗い。やむことのない雨が、雨樋にぶつかっては垂れていった。
分厚い灰色雲に切れ目はなく、どんよりと暗い空はどこまでも続いていた。
 晴れる気配のない、陰鬱な天気だった。
「…………」
 天蓋つきのベッドに横たわったまま、ユーリはその空を見ていた。雨の降り落ちる灰色の
空。見ても面白いものは何もないだろうに、それ以外に見るものはないかのように、ただ空
だけを見ている。部屋へと入ってきたキャロルを見向きもしない。
 視線の先にあるのは、雨の空。
 九年間そうしてきたように――じっと、窓の外だけを見ている。
 鳥の飛ばない、雨の空を。
「お食事をお持ちしました」
 配膳台を部屋の中にいれ、キャロルはきちんと振り返って扉を閉めた。丁寧に丁寧に閉め
られた扉が、それでもぎぃ、と幽かに音を立てた。雨で木が軋んでいるのかもしれない。部
屋よりも廊下の方が壁が薄いのか、雨の音が強く聞こえた。
 扉が閉まりきると同時に、雨音が僅かに薄まった。
 部屋の中にはユーリとキャロルしかいない。二人が何も喋らない以上、そこにはただ沈黙
があるのみだ。その沈黙を蝕むように、雨音が忍び寄ってくる。部屋の中に雨が降っている
かのように錯覚してしまう。
 それでも、ユーリは雨が好きだった。雨の音が好きだった。
『外』の音を、全て洗い流してくれるから。
 世界にはこの部屋しかないように思えるから――ユーリは、雨音が好きだった。
「…………、」
 音のないため息を吐く。何かに疲れているわけでも何かに呆れているわけでもない。ごく
自然に、癖のように吐息は漏れた。
 しいて言うのならば――生きるのに疲れているのかもしれない。
 音もなく絨毯の上を配膳台が進む。ユーリはようやく気だるそうな仕草で振り返った。ネ
グリジェのような薄く布を重ねた黒服が、ベッドの上でかすかに衣擦れの音を立てる。生ま
れてから一度もきったことのない黄金の髪が、白い毛布の上を滑る。
 振り返った先にいるのは、配膳台を運ぶキャロルだ。まだ若い、ぎりぎり少女と呼んでも
差し支えない顔立ち。短く切った黒髪は両脇に撥ね、ヘッドレスでまとめてある。フリルの
少なく裾の長い、観賞よりは実用を主としたメイド服。絹の手袋を嵌めた手で、配膳台をベ
ッドの脇まで運ぶ。


82 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs mailto:sage [2007/02/28(水) 01:51:00 ID:GBft8iOs]

「どうぞ」
 無表情のままに、キャロルは台の上に食事の用意を済ませる。その様を、ユーリはあくま
でもベッドに横になったまま、気垂い眼差しで見つめている。鎖骨がはっきりと見えるほど
に痩せているのは、満足に食事を取らしてもらえないからではなく――満足に食事を取る気
がないからだ。
 ゆっくりと朽ちていくことを選ぶように、ユーリは、積極的に生きようとはしない。
「……おなか、すいてない」
 いつものように、ユーリは食事を拒否した。身体を起こすことさえしない。冷めた目で、
冷めた料理を見遣るだけだ。
「困ります」
 いつものように、キャロルは率直に答えた。眉一つ動かすことはない。下腹の前で両手を
揃え、礼儀よく立ち尽くしている。
 どこまでも――いつもと変わらないやり取りだ。
「…………」
 ユーリは長い睫を伏せる。頭に浮かぶのは、『誰が困るのだろう』という問いだ。父が困
るのか。母が困るのか。それとも、キャロルが困るのだろうか。幾度となく疑問に思っても、
その問いが実際に口から出ることはなかった。
 そう、とだけ端的に答えて、ユーリはようやく身を起こす。ベッドの上をもぞもぞと動き、
膝から下だけをベッドから下ろした。身を起こしているにも関わらず、毛布の上に髪が届く。
服の乱れを直そうともせずに、ユーリはキャロルを見上げた。
「食べさせて」
「――はい、ユーリ様」
 彫像のように立ち尽くしていたキャロルは、ユーリの一言で動き出した。配膳台の二段目
から銀器を取り出す。ナイフ、フォーク、スプーン、それぞれが数種類ずつ。それらを全て
決められた手順通りに並べ、外側から使用していく。決して手を使おうとはしない。パンす
らもナイフで切り、ユーリの口元へと運ぶ。
「ん」
 食べる方であるユーリもまた、一切動こうとしなかった。口を開けて、閉じるだけ。身を
乗り出そうともしない。餌を待つ雛鳥のように口を開け――開いた口にキャロルが銀器をそ
っと差し込み、口を閉じる。その際にも会話は一切ない。無言のまま食事はつつがなく進み、
時折かちゃ、と銀器と皿が触れ合う音だけが響く。
 半分ほど食べた所で、
「もう、いい」
 とユーリが言い捨てた。初めからそれを知っていたかのように、滞ることなくキャロルは
銀器を片付ける。もう食べないんですか、とも、もう少し食べないんですか、とも言わない。
無表情のままに、ユーリの言うことをきくだけだ。
 拒否も、承諾もない。
 それが――全てだと、キャロルの態度が物語る。


83 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs mailto:sage [2007/02/28(水) 01:51:33 ID:GBft8iOs]

「歯、みがいて」
「はい」
 頷き、キャロルは配膳台の横をすり抜け、ユーリの前に膝立ちになる。ベッドに座るユーリ
と、床に膝立ちになるキャロルの目の高さが同一になる。ユーリの両脚の間を割って入るよう
に、キャロルは身体を寄せた。近寄る身体を、ユーリは手を伸ばして受け止める。キャロルの
脇の下に手を回し、細い腕で抱き寄せる。
 倒れないようにベッドに手を置き、キャロルはユーリへと身を寄せて――そのまま唇を重ね
た。粘液の触れ合う音が雨音に混じる。紅もひいていないのに、薄紅色に染まる唇が、キャロ
ルのそれに覆われる。
 ユーリは引かない。目を閉じることもすらしない。睫の触れそうなほどに間近にあるキャロ
ルの目を、じっと、じっと見つめている。
 目を逸らすように――視線から逃げるように――キャロルが瞼を閉じた。舌先で唇を押し分
け、ユーリの口内へと舌を侵入る。唾液を帯びた舌が、小さなユーリの口内を蛇のようにのた
うつ。
 舌先が求めるのはユーリの舌ではない。並びのいい、白く耀くユーリの歯だ。歯茎の奥から
なぞるようにして舐め上げる。食事でついた汚れを、キャロルは丹念に拭っていく。愛撫です
らない、ただの日常行為。
 ユーリは冷めた目で、感慨なくその行為を見つめている。自身の口内を蹂躙されても眉一つ
動かさない。ずっと続けてきた行為を、ただあるがままに受け止めている。
 退屈交じりに、ユーリは舌を動かした。歯を舐めるキャロルの舌を、自身の舌先で軽くつつ
く。
「、んん……」
 微かな、けれど確かな反応があった。抱きしめていたキャロルの身体がわずかに震える。無
表情であることに変わりはない。けれど、かすかに頬が紅潮しはじめていた。
 これからの行為を、楽しみに待つかのように。
「――――」
 その様を、瞼を閉じることなく見つめながら、ユーリはさらに舌を動かした。『歯を磨く』
という仕事をこなそうとするキャロルをからかうように、ユーリの舌先がつん、つん、とつつ
いていく。舌を絡めては仕事にならないと思っているのか、キャロルはそれに抗うこともでき
ず、なすがままに受け入れる。
「う……、ん、ぁ……」
 唇の端から押し切れない声が漏れる。キャロルは舌を絡ませまいとしているのに、ユーリの
舌はなおも大胆に絡んでくる。それから逃れ歯をなぞろうとするものの、その逃げる動きのせ
いで舌同士がこすれあい、雨のような水音をたてる。ぺちゃり、ぴちゃりと口から唾液が泡立
つ音が耳に響く。一筋の唾液が、糸を引いてベッドの上へと落ちた。


84 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs mailto:sage [2007/02/28(水) 01:52:58 ID:GBft8iOs]

「ユ、ユーリさま……」
 口を離したとき、キャロルの瞳はこれ以上なく潤んでいた。毎日毎日、一日三回これが行わ
れているのだ。パブロフの犬のように、条件反射を仕込まれてもおかしくはない。それでも無
表情たらんとするのは、彼女が、自身はメイドであると心がけているからなのだろう。
 そのことに対して、ユーリはいつも何も思わなかった。
 手を伸ばせばキャロルがそこにいる。呼べばいつでもくる。それで十分だった。
 けれど――この日は、違った。
 常ならばすぐに離す手を、ユーリは離さなかった。抱きしめたまま、キャロルの身体を離そ
うとしなかった。
「……ユーリ様?」
 そのことを怪訝に思ったのか――表情には出さないままに――キャロルが首を傾げる。それ
でもユーリはキャロルを話さない。
 手を伸ばせば届く。
 呼べば来る。
 それだけでは嫌だと、この日、初めてユーリは思ったのだ。手を伸ばさなくても触れ合って
いたいし、呼ばなくてもずっといてほしいと、そう思ったのだ。
 いや。
 ずっと――思っていたのだ。この日、初めてそれを実行しただけで。
「ねぇ、キャロル?」
 抱きしめたまま、間近で瞳をのぞき込みながら、ユーリは言う。教会の鈴のように高い声。
雨音に満ちた部屋の中に、その声は静かに響き通る。
 いつもと違う声色に、キャロルの顔がこわばった。
 数年間、ずっと『いつも』を続けてきた。それが今、ゆっくりと、音を立てて崩れようとし
ていた。
「キャロルは――」
 キャロルと自身の唾液に塗れて光る唇で、ユーリは言う。
「――ボクのものだよね」
 言って。
「あ、――」
 ユーリは、抱きしめていたキャロルの身体を引き寄せるようにして身体を後ろに倒した。捕
まれたままのキャロルの口から声が漏れ、そのままベッドになだれ込む。
 気付けば。
 薄布一枚を着る主人を――メイドが押し倒すような、図になっていた。
 実質は逆だった。下に組み伏せられているユーリが、組み伏せているキャロルを支配してい
る。下から覗き上げる瞳に見竦められて、キャロルは何もいえない。
 ユーリはそっと、キャロルの片手を上から握る。そのままそっと、スカートの中へと誘導さ
せる。スカートの下に、何もはいていないユーリの股間に、キャロルの手が添えられる。
 そこにある、幼くしてそそり立ったものを、キャロルに握らせて。

「ボクだけのものに、なってくれる?」

 微笑みと共に、そういった。


85 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs mailto:sage [2007/02/28(水) 01:53:38 ID:GBft8iOs]

「…………」
 キャロルは答えない。沈黙するキャロルの手は、それでもユーリからは離れない。それを確
認して、キャロルの手を誘導したユーリの手が、ゆっくりと上へとあがっていく。キャロルの
手を伝うようにして上へ昇り――メイド服のスカートの中へと侵入りこむ。丈の長いドロワー
ズは、布の上からでも分かるくらいにぐっしょりと濡れていた。
 汗――ではない。
 雨、でもないだろう。
 濡れていることを確認して、ユーリは少女のように微笑んだ。ゴムを押し分けてドロワーズ
の中へと手を入れ、濡れた秘所をユーリは指先でなぞる。組み伏せている側の身体が頼りなげ
に震える。
 満足げに笑って、ユーリは言う。
「嫌なら、やめる?」
 笑みの混じる問いかけに、キャロルは誰からも虚勢と分かる無表情を意地したままに――首
を、横に振った。
「そう」
 答えて。
 ユーリは、中指を――思い切り、差し込んだ。
「――――――ぅあ!!」
 無表情を割るようにして声が出た。嬌声よりも、悲鳴に近い声。九つの細く短い指とはいえ、
何の前触れもなく、勢いに任せて差し込まれたのだ。十分に濡れていたから痛みはないとはい
え――衝撃だけはあますことなく伝わっていた。
 身体を支えていた手から、力が抜ける。
 がくがくと震えながら、キャロルの身体がユーリに折り重なる。それでもユーリは指をひき
引き抜かない。第二間接まで差しこみ、先でぐりぐりと肉を押し分けながら、ユーリは言う。
「ね、キャロル。ボクだけのものに、なってくれる? 答えてよ」
「こ、こたえ、答えます、から――」
「早く」
 ぐい、と一際強く指が動かされる。ひぁ、とキャロルの口から吐息が漏れ、腰ががくがくと
震えた。まるで押し倒して腰を突き入れているように見えて、ユーリはくすりと笑ってしまう。
 のしかかるキャロルの体温を感じる。
「答えて、ね?」
 指を止めて、ユーリは問う。
 キャロルは、露に濡れる瞳で、ユーリの瞳を覗き込んで。

「はい――ご主人様」

 そう、頷いた。
 この日、初めて――ユーリはキャロルを抱いた。


 十歳の、誕生日だった。

 


86 名前:倫敦に雨は降る ◆msUmpMmFSs mailto:sage [2007/02/28(水) 01:54:39 ID:GBft8iOs]


 夜になっても雨はやむことはなく、むしろ一層その強さを増していた。遠くで時折雷が落ち、部屋の中を轟音と共に白く染めた。
 だから、気付かなかった。
 ノックの音にも、扉が開く音にも――ユーリは気付かなかった。
 気付いたのは、「ご主人様」とキャロルが声をかけてからだった。
「キャロル――」
 微かに喜びに染まる声と共に、ユーリは振り返る。
 そこに、キャロルはいた。
 開いた扉の向こうに、キャロルは、いた。薄明かりの中、キャロルは、立っていた。
 その姿を見て――ユーリは、言葉を失う。
 言葉を失うユーリの元へと、キャロルは一歩、また一歩と近寄る。ベッドの脇まで辿りつき、ようやくその脚が止まった。
 ユーリは、言葉もなくキャロルを見上げる。
 キャロルは、言葉もなくユーリを見つめる。
 見つめて、キャロルは言う。


「これで、貴方『だけ』の、キャロルです。貴方『だけ』が――私の主人です」


 近くに雷が落ちる。轟音と共に、白光が部屋の中を満ちる。
 雷に照らし出されたキャロルのメイド服は――返り血で真っ赤に染まっていて。
 この日、初めて――キャロルは、その無表情を崩して、ユーリに微笑みかけていた。


 幸せそうな、笑みだった。



(了)



87 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 01:56:07 ID:GBft8iOs]
メイドを書きたいと思って短編を書きなぐったら長編の一部みたいになってしまった
精進しないとなあ……

>>56
八百屋お七や「弔問客を待つ未亡人」もヤンデレだと思う

88 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/02/28(水) 02:26:00 ID:xK/FxZZe]
早速一枚
神無佐奈/虐げられるモノ
imepita.jp/20070228/084180
ぶっちゃけると佐奈さんが一番好き。

>>86
GJ!読み終わってからお茶会の人だと気付きました。

89 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 02:57:33 ID:6f+bLbU7]
>>86
>>88
お二方ともGJ!
つか確かに佐奈さん顔は幼いわw

90 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 08:48:46 ID:EiPoDCFh]
>>86GJ! 短篇もいいですね。でも二人のその後も読みたくなってしまう
>>88ママン可愛いよママン(*´Д`)ハァハァ



91 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 13:32:20 ID:sT/DhgTR]
非常に読みやすかった

92 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 18:29:22 ID:Gep1iBdr]
>>88
こらまたプリチーなママン。そしておっぱいおっぱい。

ぶっちゃけ自分がヤンデレ化して旦那さん取り戻してほしいが、
そんなキャラには見えないよなぁ・・・w

93 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 22:11:17 ID:9Dpto7j5]
>>88
ママン可愛いよ(*´д`*)

94 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/02/28(水) 23:33:58 ID:4cDItwUT]
では投下致します

95 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/02/28(水) 23:37:22 ID:4cDItwUT]

 目が覚めると古ぼけた屋内の中に僕はいた。
中古のアパートで建物の老朽化があちこちに目立ち、自分が住んでいる家とは全然違う。
田舎に帰った頃に感じられる懐かしいの樹木の匂いがする。余程、このアパートが建築されてから随分の歳月が経っているのであろう。 
それはともかく、僕は両足両腕をしっかりと縄で縛られていた。
いかにも、僕は一体どこの誰かわからない人間に拉致か誘拐をされてしまったのだろうか? 
恐らく、後者だろう。こんな高校生になったばかりのガキを拉致する変態よりも、誘拐して多額の金を両親に請求する誘拐犯の方が
この不景気の世の中では当たり前だと思ったのだ。
 狭い家に閉じこめられているが、犯人らしき姿はどこにも見当らない。両親に多額の身の代金を請求している最中だろうか。
見張りも置いていないし、単独犯による犯行なのだろうか? 僕は冷静に物事を考えていた。
今の状況に不安や怯えなど感じないと言えば嘘になるが、誘拐されたことを僕にとってはいい機会だと思っていた。
 両親同士は不仲であり、父と母は互いに口を合わせず、顔を合わせない日々が長い間ずっと続いていたからだ。
そんな間に生まれた息子は可愛いはずもなくて、愛情を注ぐどころか、名前さえ呼んでもらった記憶もなかった。
常に放任されて、自分はただ家族の中で孤独を背負って生きていたのだ。
 もし、誘拐されたことによって僕の事を想っていてくれるなら。助けだそうと身の代金を払うか、
それなりの行動を表に出してくれるはずであった。だから、今だけは誘拐犯に礼を述べよう。ありがとうと。

 意識を取り戻してから、しばらくすると。玄関のドアが開く音が確かに聞こえてきた。
僕を誘拐した犯人が襖で塞がれた間を躊躇なく開けた。
「ただいま……」
「あっ……」

 僕は自分が予想していた事が裏切れて茫然としていた。誘拐犯だと思っていた犯人は、若い女性であった。
黒い髪を長く伸ばしすぎて、陰気な印象を感じさせる。その白い肌は陽に焼けたこともなく、容貌は端正に整っていて美人だと言ってもいい。
ただ、彼女を包み込む暗い何かが全てを台無しにして、近寄りがたいオーラーを全身に発していた。
 その彼女はスーパーの袋を片手に持って、僕の方を嬉しそうに見つめていた。

「えへへ……今日から私は一人じゃあないんだね」

 その女はスーパーの袋をその場に置くと縄で縛られている僕の体を抱き締めた。
腕に強い力を込めながら、彼女の体は震えていた。温もりを求めるように、僕の体が望むように。
彼女は僕に何かを求めていたが、そんなことは知ったことじゃなかった。
誘拐犯だと思っていたが、実は全然違うようだ。これは誘拐ではなくて、拉致だったのだ。

「き、君の名前はなんていうの?」

 僕の顔を頬で擦り合いながら、首に腕を回した彼女が優しく微笑んで聞いてきた。
教えてやる義理もなかったが、今の自分に陥っている状況を理解していると彼女を邪険するしかなかった。

「僕は河野京介(こうの きょうすけ)って言います」

 礼儀正しく僕は拉致した彼女に挑むように刺々しく言ってやった。
気を悪くした様子が見えない彼女は僕の頭を撫でながら……可愛らしく媚びるように言った。

「お姉ちゃんの名前はね……。須藤 英津子(すどう えつこ)って言うんだよ。京介君。これから、ずっと私と一緒に暮らすんだよ。よろしくね!!」

 僕は全身に悪寒が走って行く。余りにも居心地の悪さに抱き締められているだけでこの場所から逃げ出したくなった。
年上の女性が舌足らずの口調で甘えてくる光景は年下の僕にとっては悪夢に近い。
まだ、これが同世代の女の子なら頬を赤面させて照れているだけで済むのだが。彼女はちょっとだけ痛い。

96 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/02/28(水) 23:40:31 ID:4cDItwUT]
「お姉ちゃんねぇ……ずっと一人で寂しかった。私は孤児院で育ったからお父さんもお母さんもいなくて……孤独だったの。
こんな暗い性格だったから親友と呼べる人もいなかった。孤児院を出てから社会人になっても、私は一人だった。
でもね、会社の仕事の帰りに一人で歩いている寂しそうな男の子を見つけたの。私と同じ、温もりに餓えている京介君を」
「だから、僕を拉致してきたというのか?」

 だんだんと意識を失う前の記憶が戻ってきた。そう、僕は拉致される当日はいつものように友人の家で陽が沈むまで遊びまくっていた。
それは僕にとっては日常茶飯事であり、あの家に戻りたくないという意志の表れであった。
その帰り道に僕の背後を歩く足音をはっきりと聞こえていた。そして、僕は……誰かに頭を何かで殴られた。

「うん。そうだよ」
 焦点の合わない虚ろな瞳で英津子さんは僕に微笑する。
「夕食のおかずにしようとした大根で京介君の頭をぽかんと殴ったんだよ。
幸い、私の家から近かったことだったし。私の家で監禁して調教すれば私のモノになってくれるはずだから。
だから、こうやって縄で両手両足を縛っているんだよ」

 殴った凶器は大根だったんですか……と僕は口から空気の読めない言葉を溢れだしそうになったのを必死に留めた。
 ただ、拉致を躊躇なく実行した英津子さんは狂ってる。
更に僕を監禁して調教するという言葉にさっきとは違う恐怖を覚えた。
自分の心の隙間を埋めるために同じ空気を持っている僕を利用する。僕の都合を考えずにだ……。

「う、嘘でしょう……本当の誘拐犯なんでしょう?」
「どうして、京介君を誘拐しなきゃいけないのかな。身の代金を要求する金額を貰ったとしても、
私の暗闇と底無しの絶望から解放されるはずがない。
独りぼっちの恐怖に打ち勝つことができないよ。でも、京介君が傍に居てくれるなら。私は救われるんだよ」
「僕は……帰りたい。昨日まであった僕の居場所に」

 確かに両親の仲は不仲で僕の居場所なんて存在していないかもしれない。
でも、僕の家以外の居場所はあったんだ。学校に通えば、心を許せる友人たちが居る。
笑い合ったり、喧嘩したりといろいろ友情を深め合った仲間たちがいる。
 英津子さんとは異なるのは僕にはまだ救われるモノがあるからだ。
それと反対の位置にいる英津子さんが居る場所は、完全なる破滅。
 独りぼっちの恐怖に負けて、孤独の辛さに我慢できずに手を出しては行けない禁断の果実を手にしてしまった。
それは、犯罪という甘い誘惑だ。
 一時の温もりが欲しかったために英津子さんは犯罪に手を染めてしまったのだ。

「だ、ダメっっ!! 京介君はお姉ちゃんとずっと一緒にいるんだよ。もし、京介君がここを出て行くと言うなら……私は死ぬんだからっっ!!」
 抱き締めていた僕の体から離れると台所から鋭利な刃物を取り出した。
それを英津子さんは自分の首に当てていた。少し力を入れているのか、血の雫が首筋を伝ってぽつりと零れ落ちて行く。
「あっつははっは……京介君京介君京介君っっっ!!」
 僕は弱かった。こんな電波女を突き放す言葉を言えば、勝手に自滅して死ぬかもしれない。
そうすれば、僕は助かって元の居場所に帰れるはずだった。
 でも、一人の女性の追い詰めようとするのは間接的に僕は殺人を犯したことになる。
僕のせいで誰かが死ぬのは到底耐え切れるものじゃなかった。
 抗うこともできずに、僕は全面降伏するしかなかった。
「ご、ごめんなさい。僕が悪かったです。だ、だ、だから、死ぬなんて言わないでください」
「き、京介君っっっ!!」
 凶器を力なく落として、泣きながら英津子さんは再び僕の体にしがみつく。身動きできない僕は彼女の温もりを感じていた……。
抜け出すことができない狂気に絶望することしかできなかった。



 これが、僕を拉致した電波女と全てを失った僕との奇妙な共同生活の始まりであった。


97 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/02/28(水) 23:43:39 ID:4cDItwUT]
ヤンデレスレには初めて投稿致します。どうか、よろしくお願いしますね。

短編で全3話の予定です。


98 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 23:46:06 ID:5rP1JExH]
>>97
トライデント神キタ━━(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)━━!!!
いきなりの監禁スタートテラGJ!


99 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 23:57:39 ID:EiPoDCFh]
GJ!
てか大根で拉致かよ!w
これからにwktk!

100 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/28(水) 23:59:47 ID:IVbMFwF6]
一応、有名人なのか?
俺は新たな新人がやってきたぐらいにしか思ってないが

作品の内容は
監禁から始まるヤンデレ・・イイw



101 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 00:22:57 ID:3tDAV0ge]
おお、このスレの趣旨をまさに具現化している内容!
続きが激しく気になりますな。

102 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 01:18:41 ID:pNN+HnOF]
大根はヒロインが美味しくいただきました^^

103 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 01:29:53 ID:LXdXh0b5]
京介の大根が使われることはあるのか
続きが気になる

104 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/01(木) 01:42:09 ID:UY0YWck8]
投下します ヤンがありませんが、後ほど出します

5月15日
「おはよう、沙紀さん。今日はいい天気だね」
秋月否命(あきつき いなめ)のこの何気ない一言に、浅原沙紀(あさはら さき)は何
か別の世界に引き込まれて、この世では無い物語を聞かされているような気になった。
時刻はまだ六時、沙紀は起きたばかりの胡乱な頭で自分の身に起きた事を必死に整理して
いた。とりあえず、沙紀は周りを見回した結果、ここが自分の部屋であることを確認した
。それでも、まだ沙紀の頭はこんがらがっている。
もっとも否命も沙紀のこの反応を予測していたのか、ニッコリと沙紀のベッドの傍らで得
意げな様子で微笑んでいた。否命は待っているのだ、沙紀がこの状況につっこみを入れる
のを。
「お嬢様…私は長らくお嬢様の使用人としてこの家、秋月家に仕えて参りましたが、未来
過去においてこのような事…お嬢様が早起きし、尚且つ私を起こして下さるなんてことは
ありませんでした。はい。未来過去に渡ってです!しかしながら、現在においてお嬢様が
私を起こして下さっているのはどうしたことでしょう?」
「どういうことだと思うの?」
「ありえません。はい。ですからこれは夢に違いないかと」
そう結論付けた沙紀は、もう一度ベッドに潜り込み寝ようとした。
「違うの、私だってたまには早起きすることだってあるんだもん!ほら沙紀さん起きて」
「バレバレの嘘ですよぉ、ゲンカクさん、あの鈍くて、ドジで、何処か抜けていて、それ
が魅力のお嬢様が…」
「だから、これは現実なんだってば!って沙紀さん、言っている傍からベッドで丸くなら
ないでよぅ。ねぇ、起きてったら」
否命は丸まっている沙紀の肩に手を添えると、それをユサユサと揺さぶった。
「うーん、なんだか夢にしてはこの振動は妙に生々しいですね、それにお嬢様の声が良く
耳に響いています」
「じゃあ、沙紀さんはこの状況をなんて説明するの?」
「はい。最近の夢は随分生々しくなったなぁ…と」
「違うの、私が早起きして沙紀さんを起こしているの。これは現実なんだってば」
否命は真っ赤になりながら腕をブンブンと振り回しながら熱弁する。
「沙紀さん…、お願いだから寝ぼけないでよぅ」
「寝ぼけている…、私がですか?」
「沙紀さんがッ!」
「そうですね、私としたことが寝ぼけている場合ではありませんでした」
やっと分かって貰えた…と否命は溜息をついた。
「色々考えましたけど…やはり、お嬢様がこんな朝早くに起きるはずはありません。はい
。とするならば、これは間違いなく夢。はい。そして夢の中なら何をやってもいいわけで
す。あぁ、お嬢様!」
そういって、沙紀がベッドから跳ね起きた瞬間、沙紀はシーツに足を引っ掛けて
ゴチンッ
っと、盛大に頭から転んでしまった。
「沙紀さん、大丈夫?」
「なんとか大丈夫です。うぅ、なんだ、本物のお嬢様ですか…、ガッカリです」
「当たり前だよ!もう、さっきからそう言っているのにぃ」
「すみません、私ったら最近よくお嬢様の夢を見ますので…てっきりその発展系かと」
「ところで、沙紀さん、もし私が夢だったらどうする気だったの?」
「知りたいですか?」
沙紀の目が妖しく光る。
「いや、遠慮しておきます」
「ガッカリです」
肩をわざと大げさにすくめてみせると、沙紀は時計を確認した。
時刻は六時十分。
沙紀はこれが現実だと理解しても尚、狐につままれたような顔をしていた。

105 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/01(木) 01:42:59 ID:UY0YWck8]
浅原沙紀は四歳の頃から、十七歳の現在に至るまで秋月家の奉公をしている。と、いって
も実際には秋月の家には否命しかいないから、沙紀は事実上、否命の専属の使用人である

元々、秋月家には否命とその姉「梓」が住んでいたが、梓は既に死んでいた。
その後、保護者のいなくなった否命は、親戚に引き取られる事となったが、親戚は否命の
身体の「ある一部分」とそれに伴う「奇行」を疎み、否命が元いた家に別居という形で住
まわせたのである。生計はその親戚の援助と梓の残した遺産で立てている。
「幼く、黄花女にして既に色狂いの気配。我が子に悪影響を与えるものと覚えたり」…、
否命が親戚に疎まれた理由であった。
沙紀は、一人暮らしをしている否命の補佐をするようにと、否命の親戚が雇った使用人の
娘であった。そして親に習って子である沙紀も、それが当然のように否命に奉公した。ち
なみに沙紀と否命は同い年である。学校も小中と一緒に通い、現在は否命と高校に通って
いる。使用人はこの二人を暖かく見守っていた。そうして、この日常がずっと続いていく
のだと否命は思っていた。
しかし、使用人・・・沙紀のお母さんはある日、突然失踪した。だが、その頃には既に一人
で家事を切り盛りするには十分な年齢になった沙紀がいたので、別段それに困る事は無か
った。それからは、こうして沙紀と否命は二人だけで暮らすようになったのである。
それにしても…と沙紀は思う。
自分はお嬢様を起こすために普段は六時五分に起きている。中途半端な時間のほうが、意
識しやすいからだ。そして、飯の支度を終えて、お嬢様を起こす時刻は七時半過ぎ。その
七時半過ぎでさえ、お嬢様が起きていた事もないのに、今日は普段より一時間半も早く起
きて私を起こしてくれた。
その事実が沙紀には未だに信じられなかった。

106 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/01(木) 01:43:53 ID:UY0YWck8]
「本当にどうなさったのですか?こんなに早く、ご起床なされて」
「なんだか、今日は新しい事が起こりそうな気がして」
「ワクワクして眠れなかったですか…」
「うん!」
「まるで小学生ですね」
「うぅ〜」
「いえいえ、まるで小学生のように可愛らしい…という意味ですよ」
「それって、褒められているのかなぁ?」
「はい。幼い=可愛い事だと猿渡哲也さんも申しておりました」
「へぇー、そうなんだ。沙紀さん、ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
ころころ表情を変える否命を見て、沙紀は一日が動き出したのを感じていた。
「おはようございます。お嬢様」
「おはよう、沙紀さん」
そういって、二人は挨拶を交しリビングへと降りていった。
しかし、新しい事が起こりそうでワクワクしている否命とは対象的に、沙紀の心境は複雑
だった。沙紀はこの日常が好きだった。この日常が変わる事なく、ずっと続いていけばい
いと思っていた。その沙紀にとって「新しい事」が起こりそうと、喜ぶ否命の姿は何処か
沙紀に寂しさを感じさせたのである。
「新しい事が起こりませんように」
沙紀は、リブングへ向う否命の姿を見ながら心の中でそう呟いた。

投下終わります

107 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 02:11:37 ID:m8ReScE/]
レズもの?

108 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 10:00:12 ID:6WodSekU]
英語版wikiのヤンデレの項、楓が載っててワラタw
ttp://en.wikipedia.org/wiki/Yandere

109 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 14:41:03 ID:UZcf3gJl]
ひぐらしが記されてるのは相変わらずだな。
奴のどこにデレがあるのかプレイしてない俺にはわからん。
もしかしたらどこかにキッツいデレ描写があるのか?教えてくれ。

あと、レズもの書くなら注意書きあった方がええよ。

110 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 14:45:39 ID:VXD84EcP]
レズは苦手ずら・・・・・



111 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 14:57:11 ID:bb9d9jAJ]
SS保管庫の管理人さんが実は「無口な女の子」のSSも保管されてることに気づいた。
yandere.web.fc2.com/mukuchi/index.html

112 名前:前スレ523 mailto:sage [2007/03/01(木) 15:08:46 ID:XJ16OTtm]
bbs11.fc2.com/bbs/img/_219000/218976/full/218976_1172727777.jpg

「上書き」壁紙作ってきました。
振り回されてる誠人はなんだかんだ言って幸せそうだなー。
ってことでゲージ3本使った加奈。

伊南屋氏のように素早くかわいく描けるようになりたい。

113 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 18:55:15 ID:jPMoDmc3]
>>112
これはイイ殺意の波動に目覚めたカナタンですね。

114 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/01(木) 19:27:34 ID:rk5Un/gm]
>>109
確かに苦手な人がいそうですね。予め、注意書きを入れておくべきでした。
次回から、冒頭に注意書きを入れておきます。


115 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 19:33:16 ID:/G5772A5]
>>>104-106
>猿渡哲也さんも申しておりました
コブラソード吹いたw このメイドさん何を読んでるんだw

>>112
何このツキノヨル オロチノチニ クルフ カナwww

116 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 19:56:57 ID:UZcf3gJl]
>>114
病んでるのは愛情だけでいい、性的倒錯までいらんって人は多いからね。


逆に、そこがいいって人もいそうだが。

117 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/01(木) 22:39:56 ID:UGBbX2QX]
では投下致します

118 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 22:41:35 ID:HjI1GnvV]
ttp://pikupiku.com/upload/src/pikupiku0570.jpg

うへぇ、これによるとヤンデレは「現状は二次創作のみ」って認識らしいぞ?

119 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/01(木) 22:42:36 ID:UGBbX2QX]

 僕が拉致されてから数日の月日が経っていた。縄で縛られて監禁状態はすでに卒業している。
英津子さんが導いた僕をこの家から抜け出さずに依存できる方法は常人では到底理解できない方法であった。
 そう、足を、骨を、折ってしまえば、逃げることは不可能だ。
 まさかと思った提案は発言直後に実行された。鈍い痛みの後に僕は気を失ってしまい、起きたら縄を解かれて、
逆に足にはギプスがはめられていた。右足が骨折して、英津子さんの診断によるとなんとなく全治3ヵ月だよてへ。
だそうだ。
もう、この女は狂っているとしか言いようがない。
 僕は肉体的な痛みよりも彼女に生活の全てを依存しなきゃいけないという精神的な苦痛に苦しんでいた。
骨折した後に嘘のような謝罪の言葉と治療が完了する頃には京介君の調教を完了しているよと有り難くもない予言していた。
 吐き気がする。
 英津子さんと同じ空気を吸っていることが、英津子さんが作ってくれた手料理も、
英津子さんの必死すぎる看病も。全てがうんざりしていた。
孤独を埋めるための手順。そして、僕の全てを奪っていた。
 憎いという一言だけでは片付けられない。
 僕は英津子さんに同情と憐れみを抱いていた。

120 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/01(木) 22:45:26 ID:UGBbX2QX]
 フリーターである英津子さんは夜8時頃になると家に帰宅する。
真っすぐに僕の様子を見て、部屋で大人している所を見ると彼女は安堵の息を漏らす。
それはそうだろう。僕が骨折の痛みをやせ我慢して助けを呼ばれることになれば、
英津子さんは間違いなく逮捕されるであろう。英津子さんは震えた体で僕を抱き締めると頭を撫でてくれた。
 僕は愛玩動物じゃないんだぞと言いたかったが、頭のおかしい英津子さんに何をされるのかわからない。恐すぎるっっ!!

「京介君は今日も家で大人しくしてくれていたから。お姉ちゃんとっても嬉しいんだよ。
夕食に京介君の大好きな物を作ってあげちゃうよ。何が好きなのかな?」
「もやし炒めでお願いします」
「も、も、もやし炒めねぇ……。もやしはお姉ちゃんは大嫌いだから。そうね。カレーライスにしましょう。うん。決定だよ」
 骨折している足をさっさと治療するために栄養のある食材を摂って、ここから抜け出したかったのに。
と、台所に向かって食材を鼻歌混じりで機嫌のいい英津子さんの後ろ姿を凍り付くような殺意に似た視線を僕は送っていた。

「今日も明日も〜10年後〜るるる〜〜ずっと〜〜京介君と〜〜一緒だよ」

 幸せの絶頂にいる英津子さんには全く気が付く様子もなくて僕は思わず嘆息した。
 しばらくすると部屋にはカレーの匂いが充満して、朝から何も食べてないせいか食欲が沸いてくる。
カレーが出来上がると笑顔で英津子さんは二つのお皿を持ってやってきた。
テーブルは僕が寝ているために片付けられているが、英津子さんは僕の隣にやってきて、右腕にしっかりと彼女の腕が絡み合うように組む。

「京介君は怪我人なんですから。お姉ちゃんがちゃんと食べさせてあげるね」
「僕は一人でも食べられますよ」
「ダメです。私が食べさせてあげるんだから。京介君。はい。あ〜ん」
 スプーンにカレーを僕の口に持ってきた。英津子さんを怒らせると
今度は臓器まで摘出される恐れがあるので僕は大人しく従った。
 口に入れると普通にカレーな味はするが、女の子から恋人らしいことをしてもらった経験のない
若造である僕は何らか感動を覚えてしまうのは無理はない。
「お姉ちゃんが作ったカレーは美味しい?」
「うんっ」
「じゃあ、いっぱいいっぱい私が食べさせてあげますよぉ。京介君もたくさん食べてね」 
英津子さんは喜んで僕にカレーを食べさせた。自分の手で食べることは全くさせてくれない。
最初はこの状況に文句の一つを言うと、英津子さんは目に涙を蓄めて潤んだ瞳で訴えるように僕を見つめてくる。
その仕草に参らない男性はいないだろう。
特に僕のような子供が大人の女性の魅力と泣き落としに勝ることができずに、忠犬のように従うことしか道は残っていない。
「えへへっ……。お姉ちゃんはねぇ。京介君が来てくれたから。会社のお仕事が終わってから家に帰るのはいつも寂しくして嫌だったけど。
今は誰か待ってくれている人がいると思うと嬉しくてたまらないの」
 英津子さんが無理矢理拉致してきたんだろうが!! と僕は笑顔を崩さずに心の中にツッコミを入れてしまう。
言ってしまえば、腕を骨折しそうで扱い難しい。



121 名前:黒の領域2 ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/01(木) 22:47:28 ID:UGBbX2QX]

 僕と英津子さんは食べ終わると食器を片付けると就寝までの時間はぼんやりと二人で部屋を過ごすだけ。
ただ、普通の同居人でない英津子さんは僕の手をしっかりと握り締めていた。指と指を絡め合う恋人握りってものです。
英津子さんの手は震えていた。何かに怯えるように震えていたが、僕はあえて彼女の暗闇に触れようとはしなかった。
所詮は、僕と英津子さんの関係は英津子さんが拉致した事による作られた偽りの関係に過ぎない。
彼女の寂しさや孤独を埋める義務は僕にはないのだから。
 これは僕が今までの生活を奪い取られた事に対する精一杯の抵抗であった。

「京介君? 寒くない。お姉ちゃんはとっても寒いから。今日も一緒に寝てあげるね」
「別に寒くはありませんし、年頃の男女が間違いを起こす可能性もありますし。丁重にお断わりします」
 だが、僕の拒否の意志をはっきりと示しているのにも関わらず、英津子さんは問答無用に僕の布団に入り込んできた。
まあ、一人暮らしの英津子さんが寝る場所は僕が奪っているから仕方はない。

「じゃあ、もう電気を消すね」

 繋がれた手を離さずに電気の明かりを消すと部屋は薄暗くなってきた。
再び入り込んだ英津子さんはさっきよりも僕の体にしがみつくように密着してくる。
女性特有の温もりを感じてしまうが僕はそれを感じる余裕はなかった。

「京介君の足は大丈夫? 痛くない」
「とっても……痛いです。当分、寝られそうにはありません」
「ごめんね。お姉ちゃん。こんなことしか京介君をここに閉じ込める方法を知らなかったから。ごめんなさい。だから、嫌いにならないでっっ!!」

 再び震える手が僕を求めるように痛みを感じるぐらいに強く握り締められた。
 一人という孤独と寂しさに耐えられる人間はいない。英津子さんは
それらの苦しみを抜け出すために僕を奈落に誘い込んだ。
同じ匂い、同じ空気、同じ境遇。僕と英津子さんを結ぶ接点はただそれだけ。
 この関係に愛情はなくて、互いの傷を舐め合うだけの関係なのだ。
 だから、僕は英津子さんに愛情は求めない。できることは、ただ同情だけ。

 答えが返ってこないことに不安になったのか、英津子さんは僕の顔を覗き込んでくる。

「き、き、京介君は、あ、あ、明日は何が食べたい?」
 会話の話題を変えるのに必至になっていた。だから、僕も英津子さんを安心させるように食べたい物を言った。

「もやし炒めで」



122 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/01(木) 22:51:06 ID:UGBbX2QX]
以上 黒の領域2話でした。

短編ですが一度書いてしまうと予定よりもお話の中に入れたいことを
少しだけ詰めたいために予定した短編3話の完結はちょっと難しいと思います。
もう少しだけ延びそうです。






123 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 23:03:35 ID:m8ReScE/]
>>122
折っといて謝るところがいいヤンデレ

124 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 23:09:13 ID:jPMoDmc3]
>>118
ヤンデレキャラ自体は昔から存在してたんだろうけどな。認識されなかっただけで。
あと、ミ(ry主催のイベントと高野三四と朝倉涼子はねーーよwww逝ってるだけじゃんwww
そしてカテ公が載っているのに、何故園崎詩音が載っていないのか。

>>122
俺は野菜炒め肉抜きで食べたくなってきたぜ……

125 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/01(木) 23:40:13 ID:nZKeo5aH]
>>112
GJ!誠人カワイソスw
>>122英津子さんのデレと京介君の醒めっぷりの差がwGJ

126 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/02(金) 00:53:01 ID:JAN0JkXr]

投下します。
第四話目になります。

127 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/02(金) 00:54:24 ID:JAN0JkXr]

目の前の展開に付いて行けない。

「ちょっと、お茶淹れてくるよ」
「あたし、やりますよ!」
「お客さんにそんな事させられないよ。座ってて」
「じゃあ、お手伝いします!」
「いや、でも…」
「陽太さん、キッチンどこですかぁ?」

兄さんと好乃が、笑顔で話している。

いいえ、兄さんは来客用の笑顔、本気で笑ってない。満面の笑顔なのは好乃だけ。
兄さんが困ってる。
あ、兄さんの腕に、好乃が自分の腕を絡めた! 大きな胸を押し付けてる!
…よかった、兄さん迷惑そうだ。

言いたい事が一杯あるのに、咽喉がひりついて声が出ない。

ぼんやりしていると、好乃が兄さんの腕を引っ張って部屋を出ていってしまった。
しばらくしてお茶の用意をして戻ってきて、訳も解らぬまま三人でお茶を飲んでる。

何だろう、これは? わたしは夢でも、悪夢でも見ているのかな?

兄さんの隣に強引に座った好乃は、じりじり距離を詰めて兄さんにくっつくほど
近付いて、兄さんだけを見て兄さんにだけ話しかけている。

「ええと、伊藤さんが来てくれてるから、ちょっと買い物に行って来ようかな!」
好乃の話しを半ば強引に遮って、兄さんがそう言って立ち上がった。
正直、好乃と二人きりになりたくなかったけど、兄さんの困っている顔を見ていると、
嫌だと言えない。
好乃は兄さんに付いて行くと言うだろうけど、兄さんのためには好乃を引き止めないと。
しかし、

「夏月の事、あたしがちゃーんと見てますから、陽太さんはお買い物行って下さい」

予想外の言葉だった。
笑顔でそう言った好乃の顔を、わたしはぽかんと凝視してしまった。

「伊藤さん、お願いします。じゃあ夏月、ちょっと行ってくるから」
「…う、うん」
「すぐ戻るから」
「陽太さーん、早く戻ってきて下さいね〜」
「あ、うん…」
心配げな顔で出て行く兄さんに、何とかぎこちない笑顔を返す事が出来たが、
とても心細くて本当は行って欲しくなかった。

ばたんと玄関のドアが閉まった音が、やけにはっきりと耳に届いて微かに身体が震えた。
眼の端で、好乃が紅茶を飲んでいるのが見える。
カップをソーサーに戻した音が響く。

「ねぇ夏月、協力してくれないかなぁ。
 あたしとぉ、陽太さんがぁ、上手くいくように〜♪」


128 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/02(金) 00:55:08 ID:JAN0JkXr]

「……っ!」

嫌、嫌、嫌、嫌! 絶対に、嫌っ!
兄さんが誰かと付き合う手助けなんて、わたしには出来ない。絶対無理。

…でも、そんな事、言えない。
協力するって言わなきゃ、協力出来ない理由を聞かれるだろうし、理由なんて
それこそ絶対に言えない。

「ねぇぇ、夏月ぃ?」
にたり、と好乃が笑い掛けてくる。
どうしよう… どうしたら…

「勿論、協力してくれるよねぇ? あたし達、ト・モ・ダ・チ、だもんねぇ?」
友達… 友達だったら、協力しないと、変、だよね?
でも、でも…

「それともぉ… 夏月にぃ、認められた人じゃないとぉ、だめって事ぉ?」
「違う!」
違う、そうじゃない。認めるとか、認めないとか、そんなんじゃない。
わたしは、わたしは、

わたしは、誰が、兄さんと、付き合うのも、嫌…

「じゃあ、協力ぅ、してくれるよねぇぇ」
にたああ、と好乃が笑う。でも、
「ごめん、好乃… やっぱり無理…」
出来ない。それだけは。

「どぉしてぇ? 何で協力してくれないのぉ? 何で無理なのぉ?」
笑顔のまま、好乃はわたしに詰め寄る。
「えぇと… わたし、そういう事に向いてないって言うか…」
「嘘」
「え?」

「嘘、嘘、嘘、嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘うそうそうそぉ!」
笑顔で吐き捨てる好乃。

「夏月ったら〜♪ 嘘ばっかり〜♪」

「本当の事〜♪ 言ったら〜?」

「アンタがぁ、陽太さんの事ぉ、好き、だってぇぇ!」

笑顔のまま、吐き捨てた好乃の言葉に、わたしは凍りついた。


129 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/02(金) 00:56:00 ID:JAN0JkXr]

「あたしが気付いてないとでも思ったのぉ? あんな顔しておきながらぁ」
あんな顔? 何の事だろう?
「陽太さんに向けるアンタの顔ったらぁ、まるで発情中の雌猫そのものよぉ」
「なっ…!」
何言ってるの? わたしそんな顔してない…
「あらぁ〜? アンタ自分で気付いてないワケぇ?
 あんな顔して陽太さんに擦り寄っていながらぁ、自覚ナシってコトぉ〜?」

どんな顔だかわたしには解らないけど、好乃が気付いてしまったのなら、
きっと顔に出してしまっていたんだろう。
わたしが兄さんを好きだという事が。

黙るしかなかった。好乃の言った事は当っていたから。

「反論しないのぉ? じゃぁ、認めるってコトねぇ?」

「アンタがぁ、実の兄をぉ、好きだってコトぉぉ!」

黙るわたし。この場での沈黙は、肯定と同じ意味だとしても、黙るしかない。
わたしが兄さんを好きだという事は、事実なのだから。

「はぁぁぁ… 陽太さんもぉ、可哀相よねぇぇ」
「…可哀相?」
突然、芝居掛かった好乃の台詞に、首を傾げる。

「アンタみたいなぁ! 変態のぉ! 妹がいてぇぇぇ!!」

変態…? 可哀相…? 兄さんが…? わたしが…?

「血の繋がった実の妹が兄の事を好きだなんて、変態じゃなくて何だって言うのよ!?
 盛りのついた雌猫なんて例えたけど、猫に失礼よね?
 猫もアンタみたいな変態と、一緒にされちゃあねぇぇ!?」

「アハハハハハハハハハハハハッ!!
 変態変態変態変態変態! このぉ変態ぃぃ!!!」

狂ったように笑う好乃。
わたしを罵り嘲笑う好乃。

やめてやめてやめて…

耳を塞いでいたらしいわたしの手を、間近に迫っていた好乃が痛いくらい強く掴むと、
引き剥がして、また笑う。

「でもぉ、安心していいわよぉ。そんな事ぉ、どーでもいいからぁ♪」
「陽太さんはぁ、あたしとぉ、付き合うからぁ、
 アンタの事なんてぇ、眼中になくなるのよぉぉ♪」

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハァッ♪」
塞ぐ事も出来ない私の耳に、好乃の言葉が注がれる。


130 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/02(金) 00:56:48 ID:JAN0JkXr]

「大丈夫ぅ。もしアンタが変態だって陽太さんにバレたりしてもぉ、
 あたしが陽太さんの事ぉ、慰めてあげるからぁ!」
「貧相なアンタの身体と違ってぇ、このあたしのぉ、カ・ラ・ダ、でぇぇぇ♪」

もう耳を塞ぐ気も起こらず、いつの間にかへたり込んでいたわたしの前で、
くるくると制服の裾を翻しながら回っている好乃。

「アンタさぁ、陽太さんの事思ってぇ、一人エッチしてるんでしょぉ。
 気持ち悪ぅ〜い! 本当に変態よねぇぇぇ!」

ぴたりと好乃は回るのを止めると、笑うのも笑顔も止める。
そしてわたしの髪を掴んで、無理矢理顔を上げさせられた。

「ねぇ、アンタ、実の兄に欲情するなんて、汚いと思わない?」

…きた、ない? 汚い? わたし、汚い…

「陽太さんが、汚れるじゃない。穢らわしいッ!!」

汚れる? 兄さんが、汚れる? わたしが、わたしが…


がちゃん…

「あ! 陽太さんがぁ、戻ってきたぁ♪」
途端に笑顔になって立ち上がると、好乃は歌う様に叫びながら玄関に駆けていった。

「ただいま、夏月…… 夏月? どうしたの? 夏月!?」
兄さんの声が、する。近いような遠いような。
近い訳ないよね。だってわたしと兄さんは違うもの。

兄さんは、綺麗。わたしは、汚い。

「夏月!? 夏月!?」

だめだよ、兄さん。わたしに触ると、兄さんが汚れちゃう。

「陽太さぁん、夏月なんかほっといてぇ、あたしと…」
「五月蠅いな、お前、帰れ」

好乃の声と東尉君の声だ。東尉君いつ来たのかな?

「前園君には関係ないでしょ?」
「お前が一番関係ない。いいから帰れ!」
「…伊藤さん、帰ってくれない」

あ、好乃が部屋を出ていく…

兄さんと東尉君の声が、段々遠く遠くなっていく…

でも、笑い声が、好乃の嗤う声が、ずっと耳の奥で、響いてるよ…


−続−




131 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/02(金) 00:57:38 ID:JAN0JkXr]

以上、続きます。

132 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 01:17:54 ID:7BLaByxe]

続きが気になります

133 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 02:51:40 ID:xvuJcKp1]
>>131
さーあ俺が大好物の空気になって来たwwwwwwwww

134 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 03:21:22 ID:n1aJazIV]
いきなり好乃が壊れてる!

だがそれがイイ!

135 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 08:09:19 ID:YrKL7l/U]
うおおい! スゲェコレ、キャラ濃すぎるぜ!
兄も妹も親友も友人も皆がスッゲェいいキャラしてるよ、とにもかくにもGJッス!

136 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 08:56:14 ID:XhfQbB7T]
≫131
GJでした!!
続きを楽しみにして松

137 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 15:30:05 ID:kjuaz4yk]
置いていきますね。

ツンデレのエロパロ4
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1172665361/

138 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 16:34:51 ID:3iFQZylS]
皆さん、病んでますか?

しかし、最近のエロパロSSは盛り上がってきたな

139 名前: ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/02(金) 18:17:51 ID:zDbIUDq8]
>>106
百合ものですか、個人的にストライクなんでwktkしていますw
にしても主従関係感じさせない会話に和みました。

>>112
523氏、保管庫掲示板でも書きましたが改めて御礼させて頂きます。
本当にありがとうございます。ネタ絵でだなんてとんでもありませんよ。
>振り回されてる誠人はなんだかんだ言って幸せそうだなー。
まぁ嫌がりながらも甘んじて受けていますからね。
多分軽いMなんだと思いますw

>>122
いきなり足折られるとはヤバイw
監禁の果てに京介がどうなるのか非常に楽しみ、GJ!

>>131
罵られる夏月に何故か悶えましたww
GJです!

次回の投下は前スレでの予定通り今月の11日になりそうです。
かなり間が空きますが、よろしくお願いします。

140 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 19:16:56 ID:EWZ75SwM]
足ぺっきりぽっきりと聞くといつも思わずマナマナを思い出すぜ



141 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/02(金) 22:58:04 ID:96pJgTHX]
では投下致します


142 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/02(金) 23:01:14 ID:96pJgTHX]

 今日は英津子さんが休日だったので僕と彼女はお互いの顔を睨めっこするように一日中飽きずに見ていた。
それしかやることがないのだ。骨折した足の具合はまだ悪くて、外に出掛けることは不可能。

監禁している状態で僕を外出すると問題なく他人に大声で助けを求めるであろう。
それに対して英津子さんは会社に行く事と買物する以外は僕の隣で手を握っていた。
 僕の温もりを感じるだけで安心するらしい。微笑ましい英津子さんの照れている顔にいい加減に飽きる。
 毎日毎日同じ事の繰り返しだ。そこに退屈を覚えても、新たな新鮮な出来事に遭遇するわけでもないし、
 電波女と慰めしかやる事がないのはいろいろと欲求不満になってくるわけだ。
 
ここで初めて僕はこの監禁されている場所から抜け出して、自分の家に帰りたいという気持ちが胸から溢れだしそうになった。
 さっさと僕の居場所に戻って、僕の世界へと回帰する。仲間達とまだまだ遊びたかったし、
 引き裂かれる寸前の家族を救うことも諦めていなかった。

 そろそろ、20過ぎの独身女性の心の隙間を埋めるボランティア活動は終了させてもらおうか。
 機会はある。
 英津子さんは今日は休日なので必ず買物に行く。その瞬間を狙って、ドアを叩き開けて周囲に助けを呼ぶ。
 その辺を歩いている通行人でもいい。助けを呼べば……僕は帰れるんだ。


 昼頃を過ぎると英津子さんは冷蔵庫の中を険しい顔をして覗いていた。
 普段は仕事で忙しい彼女は休日にいろいろと買い溜めをしておいて、休日になるまで食材や材料を切らさないように気を遣っていた。

 また、休日になると食料を補充するために買物に出掛ける。
 これが僕と英津子さんが同居している時に気付いた彼女の生活パターンである。

 もちろん、自宅に僕がいるから鍵を閉めるなんてことはしなかった。

「京介君。お姉ちゃんねぇ、ちょっと近所のスーパーまで買物をしてくるから。よい子で待ってくださいね」
「はい。わかりました」
 僕はいつものように笑顔で返事を返すと外に出掛ける英津子さんを注意深く観察する。
 バックを持って、英津子さんが玄関に行ってドアを開けて出掛けるところを確認すると。
 時計で5分ぐらい待ってから、作戦を実行に移す。


 寂しさと孤独を紛らわす生活に慣れていた英津子さんは油断していた。
 一緒にご飯を食べて、一緒に居る時間が長かったから
 英津子さんは僕が立派に調教されて大人しく従う愛玩動物になっていると……。

 現実はそう甘くない。帰る場所がある人間は揺るがない。
 擬似的に僕の寂しさと孤独が英津子さんによって癒されたとしても、
 捨て去ることができない物がある以上は優先順位に従って、人は行動する。

 だから、僕は動かせば激痛がする足を引き摺ってまで玄関のドアの方向へゆっくりと動いた。
 左足を軸にして、大根によって折られた右足を少しづつ動かす。
 1cm単位でも動かせば、感じたこともない痛みに苦渋の表情を浮かべるが。僕は我慢した。
 希望の扉まで後もう少し。ノブに手が届くと僕は最後の力を振り絞って。


 ドアを開けた。

143 名前:黒の領域 ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/02(金) 23:03:36 ID:96pJgTHX]
 ドアを開けた瞬間、僕に待っていた光景は久しぶりに見るはずの外の光景。
 のはずだった。
 開けた先には英津子さんがいつものように優しく微笑んでいる表情を浮かべて待ち伏せるように立っていた。
「京介君……、一体何をやっているのかな? かな?」
「あっっ……、いやぁぁ……」
 僕の顔色がどんどんと青くなっていくのがわかる。英津子さんは外見は笑顔を崩さずにいるが、
 目は全然笑っていなかった。女の子が怒っているのは、暴力や汚い罵声など
 頼らずにただひたすら冷笑するだけで男を怯えさせることができるのだ。
「お姉ちゃん。言ったよね? 京介君はよい子で待ってくださいね? どうして、私との約束を守れなかったの。
 そんな悪い子にはちゃんとしたおしおきが必要だよ」
「い、いやぁ……。や、やめて」
 英津子さんは僕を突き放すように押すと尻餅を着く。その間にドアを閉めて英津子さんは僕の方に近寄ってきた。
「京介君はもう私の物なんだよ。勝手に外に出掛けたらどうなるかわからないわけじゃあないでしょ。
 私と京介君だけの生活が終わちゃうんだよ。私は絶対にそんなの嫌っ!! もう、一人は嫌なんだよ」

 骨折している足の激痛に襲われて蹲っている僕を見下すように冷たい視線で英津子さんは睨んでいた。
 視線を合わせるのが恐くて、僕は思わず外した。

「京介君。今度はどこの体を痛め付けて欲しいの? 左足? 右腕と左腕。
 どちらが不自由だったら今度はもう私たちの楽園から逃げ出そうとしないはずだよね?」
「もう、やめてぇぇ……。謝るから。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
 だから、もうこれ以上は痛い目に遭わせないでください。お願いしますっっ!!」
「そんなに懇願しなくても……。まだまだ、大根はこんな時のためにたくさん買ってきたから大丈夫だよ」
「だ、だ、だ、だ、いこんいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」
 冷静な判断できずにあまりの恐怖に僕は精神の限界に耐え切れずに癇癪を起こす。
 あちこち身体を激しく動かし、首を左右に揺らす。口から溢れだす唾液は垂れ流していた。
「もう、こんなことはしないよね?」
「う、う、うん」

 僕は必至に首を下に振って頷いた。英津子さんの迫力に圧されて、僕の体は硬直していた。
 喉の奥深くから懇願するようにようやく声を搾り出して言うと、英津子さんは満足な表情を浮かべた。

「でもね……。ちゃんとおしおきするよ」
「えっ……?」
 唖然とした僕の隙を突いて、英津子さんは僕の唇を奪った。
 それはキスと呼ばれる行為だったかもしれない。
「んっ……ちゅうちゅ……あっ。京介くぅぅん」
 僕の唾液と英津子さんの唾液の交換し、僕の口から侵入してくる英津子さんの暖かい舌が僕の舌と絡み合う。
 初めての体験に脳に鋭い電撃が落ちたような感覚に陥る。
 英津子さんとの行為に没頭していると骨折した足の痛みもどこかへと飛んで行く。
「え、英津子さんっ……」
「お、お、お姉ちゃんの舌は気持ち良かった?」
 唇から離れると僕と英津子さんの間に唾液の糸がいやらしく繋がっていた。
 その光景に年頃の男性である僕は興奮を覚える。それは、快楽の表情を浮かべている英津子さんも動揺であった。
「き、気持ちよかった」
「京介君が私の初めてだよ。ファーストキスを貰ったのは……」
「僕も初めてだったよ」
「だったら、ちゃんと責任取ってくださいね。京介君」
「ええっ……!?」
「つ、次はお姉ちゃんのセカンドキスを奪って欲しいな」

 僕の返事を待たずに英津子さんはまた僕の唇を奪う。貪るように僕の唾液を飲み込む彼女を拒むことは僕の頭の中にない。

 もう、僕はこの監禁生活という現実をしっかりと受け止めてしまったから。


144 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/02(金) 23:05:37 ID:96pJgTHX]
一応、次で最終回の予定だが・・
最後はちゃんと纏めて終わらせることができるのかと
ちょっと不安が・・www

執筆していたら英津子さんというキャラクターが勝手に動いて暴走するしw
扱いには難しいです

145 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 23:24:29 ID:kAznxOhm]
>>144
GJ!
最終回をwktkして待ちます

てか京介君大根がトラウマにwww

146 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/03(土) 00:44:31 ID:nSDzYsFw]
京介おまえカルシウムとっとけwwwwwww

147 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/03(土) 02:25:26 ID:rdkRfA/B]
ヤンデレスレは!

148 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/03(土) 03:10:50 ID:zmLQ0ToO]
エロエロよー!

しまったつい思わずw

149 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/03(土) 20:27:05 ID:6+pMsIgz]
保管人様更新乙です
ところで「ヤンデレ」でぐぐったら保管庫がかなり上に出て来てビビったw

150 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/03(土) 20:27:57 ID:yiWw5kzz]
英津子さんに惚れた俺はどこで監禁されたらいいんですか!!




151 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 20:53:27 ID:TLFyhqD/]
? なんか呼ばれた気がする。

というわけで、投下します。第五話です。

152 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 20:55:23 ID:TLFyhqD/]
第五話〜親友と幼馴染〜

 俺は今、ちょっとした手違いで香織を押し倒している状態にある。
 ちょっとした、ただの友人同士のじゃれ合いをしているうちにこんな状態になってしまっただけだ。
決してわざとではない。
 だが今の光景だけを見た幼馴染がそれを理解しているわけがない。
 華には俺が女の子を部屋に連れ込んで今まさに襲い掛からんとしているようにしか見えないだろう。
 しかし、それは誤解である。大きな誤解である。
 決して俺は香織をどうにかしようとして押し倒しているわけではない。
 香織の腕が俺の背中に回っていて、抱きしめる力が弱らないのは俺のせいではない。
 「俺を抱きしめてくれないか」などと変態みたいなことを言った覚えは生まれてこの方一度も無い。
 ご先祖様に誓ってもいい。
 俺は変態では無い。
  
「まるで変態ですね。おにいさん」
 ……だから違うと言っているだろう。
「おにいさんがとうとう栄養失調で倒れてしまったのかと思って駆け込んだ私が馬鹿みたいですよ」
 そこまでお前は俺のことをダメな男だと思っているのか……。
「正社員からフリーターになって、この次はニートになるんだと思ってましたけど、
 さすがおにいさんは違いますね。まさか性犯罪者になるとは思いませんでした。
 たぶんムラムラきて、近所を歩いていた女性を無理やり連れ込んだんでしょう?
 前付き合っていた女性は普通の人でしたから、その人はおにいさんの趣味じゃなさそうですしね」
 この女。さっきから何言ってやがる。
 ――もう我慢ならん。今回ばかりは反論してやる。

「華。お前な――」
「華?」
 さっきまで黙ったままだった香織が口を挟んできた。
「もしかして、華ちゃん?」
「え?」
 華の視線が移動し、俺の下に居る女の顔を観察している。
 その顔が疑わしいものを見るものから驚愕の表情に変わるのはすぐだった。
 華がおそるおそる、といった感じで言葉を紡ぐ。
「まさか、香織さん……?」
「――やっぱり、華ちゃんだったんだ」
「…………ちっ」
「ふん…………」
 ぶつかり合っていた視線を一旦両者とも逸らし、黙り込んだ。
 華はその状態で、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
 香織は口を固く結んだまま歯軋りをした。ギリッ、という音がはっきりと聞こえてきた。
 ――またこの二人が再会してしまうとは。
 できれば華が大学卒業するまで会わせないつもりだったのに、
今日香織を家に入れてしまったせいでその予定が狂ってしまった。


153 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 20:58:08 ID:TLFyhqD/]
 香織と華。二人が知り合うきっかけは俺と香織が下校している最中に、
同じく下校していた華とばったり顔を合わせた、という簡単なものだった。
 だが、何故か顔を合わせた日から二人の犬猿の関係は始まった。
 二人は会うたびに俺を挟んだ状態で睨みあった。
 二人の目からビームが出ると想定した場合、性質の違う二つのエネルギーはぶつかり合った途端に
対消滅を起こし、その時に発生するエネルギーで中間地点に居る俺を消滅させているだろう。
 つまりはそれぐらいの激しさで睨みあうような関係なのだ。
 睨みあう姿を見たくないがために、二人を会わせたくない、と俺は毎日思っていた。
 二人のぶつかり合いは俺と香織が高校を卒業した時点で終息を向かえたわけだが、
再び、約五年ぶりに二人が再会したことでその光景が復活しようとしている。
 
 何かきっかけがあったわけではないだろう。
 だが、二人は同時に顔を向き合わせた。
「……お久しぶりですね香織さん。五年振りですか。あまりに長い間会わなかったものだから
 てっきりご臨終されたかと思っていました」
「うん、そうだね。本当に久しぶりだよ。ごめんね長く会えなくって。
 雄志君とセットになっていない華ちゃんと会う価値なんてなかったからさ」
 二人ともが――久しぶりだからかもしれないが――昔以上にトゲのある言葉を吐き出す。
 逃げたい。でも香織が手を離してくれない限りそれはできない。
 つまり、まだこのやりとりを見続けなければならないということだ。
「おにいさんを離してくれませんか? 香織さん」
「離すも何も。雄志君から押し倒してきたんだもん。
 どうしようもないよねこれ。いやん。私、どうしよう?」
「――ッ!! おにいさん! 本当ですか!」
 華の怒りの矛先が俺に向けられた。
「違う! 断じて違う!」
 首を振って全力で否定する。
「確かに傍から見れば香織の言うとおりかもしれないが、俺はそんなことはしない!
 俺はいたって普通の人間だ! 性犯罪嗜好は持ち合わせていない!」
「またまた雄志君ったら。さっきまでケダモノみたいな顔をしてたくせに」
 笑顔を浮かべながら香織が言う。何かおかしいぞ今のこいつは。
 ――もしかしてわざとやっているのか?

「……そうでしたか。やっぱりおにいさんは変態だったんですね。
 いえ、もはや犯罪者そのもの、と言ったほうがいいかもしれませんね。
 さすがです。もはや軽蔑の念さえ抱きますよ」
 華が俺を見下ろしながらそう言った。
「なんでそうなるんだよ! 香織とは知り合いだぞ!」
「知り合いだとか、知り合いじゃないとかは関係ないです。
 今、香織さんははっきりと『押し倒してきた』と言いました。
 それに、今まさに押し倒している人の発言を信じることなど出来ません」
 つまり、「女性がそう証言しているのだから、あなたの言葉は信じられません」ということか?
 華よ。いつからお前は女尊男卑の考えを持つようになったんだ?
 いつから俺の言うことを全く信じなくなったんだ?
 おにいさんは悲しいよ。
「よく聞け華。たしかにこの状況を見ればその言葉を信じてしまうのも無理は無い。
 だが真実はそうじゃないんだ。香織が俺にタックルを仕掛けてきて――」
「そう! 真実は違うんだよ華ちゃん!」
 香織が割り込んできた。
 そうだ。お前の口から華に真実を教えてやってくれ。
 俺は無実だと。
 俺がお前に対して邪な考えを抱いていないということを――
「本当は、雄志君が風呂上りのボクの姿を見てむらむら来て襲い掛かってきたんだよ!」


154 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 20:59:47 ID:TLFyhqD/]
 ……なに?
 お前はさっきから何で馬鹿なことばかり口にするんだ?
 そんなこと言ったら、また――
「なんですってぇええ?!」
 ほらな。華の怒りに燃料を注ぐ結果になった。
 香織の手が、わなわなと震えている。
 そして、その手が握り締められたときに、ゴキリ、という音がした。
(まずい。香織の口を塞がなければ、今度こそ俺の命が危うい!)
 香織の口を押さえようとして腕を持ち上げた。
 すると。
「んっ! 雄志君、だめ・・・・・・そこ、弱いから・・・・・・」
 香織が今までに聞いたことのない声――喘ぎ声を漏らした。
「何を言ってるんだ! 目を覚ませ香織!」
「ふぁんっ! だめぇ。そんな硬いもの当てちゃ……ボクおかしくなっちゃうよう……」
「ええい! さっきから悪ふざけがすぎるぞ!」
 それに体のどこも硬くなったりなんかしていない。……まだ。
「――さん……」
 俺が香織を黙らそうともがいていたら、華が俯きながら何かを呟いた。
 肩が震えて、手に持っている鍋の蓋がカタカタと音を立てる。
(――――鍋?)
 さっきまで持っていなかったはずだが、どこから取り出したんだ?それに何故鍋を持っている?
 その理由について考えていると、華がこちらに向かって歩いてきた。
 床に鍋を置く。立ち上がると同時に、右手で蓋の縁をつまんで持ち上げた。
 華が哀れなものを見つめる瞳をしたまま微笑む。

「おにいさん。さようなら。――永遠に」
 彼女は少しも別れを惜しんでいない決別の言葉を、涙を流さずに呟いた。右手を振りかぶって。
 下にいる俺からは肘しか見えていない。
 しかしその手にはおそらく、鍋蓋が握られているのだろう。

 一拍置いて、華の気が動いた。
 そこからは、見えるもの全てがスローモーションになった。
 振り下ろされる銀色の丸い金物を見つめながら、こう思った。

 ――理不尽だ。


155 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 21:01:47 ID:TLFyhqD/]

・ ・ ・ 

「おにいさん。女性を部屋に連れ込むのは構いません。
 しかし隣の部屋に住んでいる人のことも少しは考えて欲しいですね。
 壁の向こう側で大きな音がしたら誰でも迷惑だと思いますよ」
「……はい」
「隣に住んでいる私にも人の倒れる音が聞こえてきたんですから、
 たぶん一階に住んでいる人にも聞こえていたと思いますよ」
「ごめんなさい」
「私に謝られても意味が無いです。今度下に住んでいる人に謝ってください。いいですね?」
「わかりました」
 テーブルの前に正座させられながら、華の叱責を受ける。
 反論しないのはこっちが悪いと自覚しているからだ。
 ――決して華に対して頭が上がらないというわけではない。
 実際、大人二人が同時に倒れる音がしたらこの狭いアパート内の住人全員に聞こえているかもしれない。
 悪ふざけが過ぎたと確かに思う。華の叱責は当然のことである。
「反省しているのならそれでいいです。……それより頭は大丈夫ですか?」
「ああ、心配するな。たいしたことはない」
 華の鍋蓋による一撃は後頭部に直撃した。
 しかも縁の部分が当たったものだから平らな部分で殴られるより痛い。
 まだ脳に痺れるような痛みが残っている。
 まあ、それで華の怒りが収まってくれたのだからよしとしよう。

「じゃあ、晩御飯にしましょうおにいさん。あと、つ、い、で、に香織さんも」
 華が普段の調子に戻った。鍋を胸の前に持ってきている。
「晩御飯?」
「はい。私が作ってきました」
 そうか。何故鍋を持って隣の俺の部屋にやってきたのかと思っていたら、そういうことだったのか。
 ――いい話じゃないか。隣に住む生活苦のフリーターのために夕食を作って持ってきてくれる幼馴染。
 しかもその幼馴染はしばらく会わないうちに綺麗になっているというおまけ付き。
 夢のようなシチュエーションの話だな。
 本当に夢であってほしいと思うほど。
「……よし、三人で外に飯食いに行こうか」
「おにいさん? 外はどしゃぶりですよ」
「いや、それでも店は営業してるだろ。なんならコンビニでもいいし」
「おにいさん。もう八時過ぎです。買い物に行っていたら食べる時間が遅くなります」
「あ、そうだ。まだ部屋にカップラーメンのストックが――」
「おにいさん!」
 ドン! と大きくなく、頑丈でもない黒テーブルに鍋を叩きつけた。
「私の料理を食べたくないんですか……?」
 勢いとは裏腹に小さく、悲しげな声を漏らした。
 まずい。さすがに言い過ぎたか。少しだけ目に涙が浮かんでいるようにも――見えなくも無い。
 とはいえ、ここで譲るわけにもいかない。なぜなら、華は。
「だって、華ちゃん料理下手でしょ?」
「――――ッ!!!」


156 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 21:04:23 ID:TLFyhqD/]
 横合いから発せられた一言を聞いて、華が香織の顔を睨みつける。
 しかし、今の言葉に反論しようがなかったのだろう。すぐに目を逸らした。
 ――まあ、つまりはそういうことだ。香織の言ったとおり、華は料理が下手なのだ。
 壊滅的・殺人的に下手というわけではない。
 砂糖と塩を間違えるレベルの間違いをときどき犯すぐらいのものだ。
「今回は大丈夫です! 何度も何度も何度も確認しましたし、実家に住んでいる時に
 何回も何回も何回も何回も作ったことがあります!」
「それさ、昔ボクが食べたときにも言ってなかった?」
「う…………」
「あの時は嫌がらせかと思ったよ。
 砂糖と塩を間違って入れたケーキなんて漫画でしか食べられないと思ってたのに」
「今回は違います! 肉じゃがです!」
 そう言いながら華が鍋の蓋を開ける。
 その中には細切れの牛肉、オレンジ色のにんじん、糸こんにゃく、小さいジャガイモを
だしに浸してあるものが入っていた。たしかに、肉じゃがだ。
「見た目は普通だな。匂いも悪くは無い」
「――問題は味だけどね」
 鍋を覗き込みながら香織が言う。
「どうこう言う前に食べてみたらどうですか?」
 華が三人分の皿を取り出してテーブルの上に置いた。
「中学時代の私とは違う、ということを知るいい機会です。
 いつまでも子供のままでいると思ったら大間違いです」
「ふうん……中身は、成長しているってことだね。中身は。身体のほうは――成長してないみたいだけど」
 香織が胸を張る。ブラウスの胸の部分が突き出し、その存在が普段より強調される。
 その胸と自分の胸を交互に見た華は、注意深く見ないとわからない程度に歯噛みした。

「――――そういう香織さんは胸だけしか成長していませんね。身長は私より少しだけ低いですし。
 何より、頭がかわいそ……おっと、失礼」
 ……。
「ボ、ボクのどこが頭が可哀相で鈍くさくてノロマでドジっ子だって言うのさ!」
「昔からそうじゃありませんか。香織さん、『情けは人のためならず』の意味、分かりますか?」
 …………。
「え…………人に情けをかけるといつかお礼が返ってくるよ、って意味でしょ?」
「あ、ら、ら。あらあら。本当に、その答えでいいんですか?」
 ………………。
「え、え? ……ち、違うの?」
「違いません。その意味でほぼ正解です」
 ……………………。
「な! なんだよそれ! ボクをバカにしてるの?!」
「いいえ、試しただけです。……だいたい、これぐらいの問題の答えに自信を持てないなんておかしいですよ」
 …………………………はあ。
 相変わらずだな、この二人は。ある意味仲がいいのかもしれないが。 
 放っておいたらいつまでもやりあいそうな雰囲気になってきたし、ここは一つ……


157 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 21:07:04 ID:TLFyhqD/]
「んぬあああぁぁもう! もうボク怒ったからね! 華ちゃん、おもてに――」
「おい、香織」
「何さ! いくら雄志君でも今のボクを止めることなんかできないよ!」
「あーん」
 少し大きめのじゃがいもを箸で香織の口元へ運ぶ。
「へ? あ、ああ……あーん」
 差し出したじゃがいもを香織が口の中に入れた。
「もぐ、むぐ……」
 咀嚼をしている。口の中に入れたものの味を確かめているようだ。
 飲み込んだ後で俺の方から声をかけた。
「どうだ? 味の方は」
「んーー。まあ、華ちゃんが作ったにしては上出来だよね。美味しくは無いけど、変な味はしないし……っ!
 雄志君! 今あーん、て! いやそれよりも! なんでボクに毒見させるんだよ!」
「いや、いつまで経っても食べられなさそうだったんでな。つい」
 これは本当である。夜も八時を回っているから、俺の腹の虫は悲鳴を上げ始めている。
「あ、そっか。ごめん。……でも、いきなりあんなことしなくてもいいんじゃ、ないかな。
 こっちにも心の準備というものが……」
 香織が人差し指でテーブルに「の」の字を書きながら俯いた。何かぶつぶつと呟いている。
 ――とりあえず、険悪な状況は脱したようだ。
「……おにいさん」
 華が俺を呼んだ。
「なんだ? あ、悪い。勝手に食べさせちゃって」
「いいえ。別にそれはいいんですが。……それより、何か忘れてませんか?」
「何をだ? ――ああ、食事の前には手を洗えってことか?」
「違います! ほら、香織さんにしたことですよ。わかりますよね?」
 と言いながら顔を俺に近づけてくる。
「……? キス、か?」
 俺がそう言うと、華が顔をしかめた。
「――もういいです!」
 華はそう言うと、顔を引っ込めて元の位置に戻った。
 なんだ?何か不機嫌そうだな。キスをして欲しかったのか?俺に?
 ……それは無いか。


158 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 21:10:24 ID:TLFyhqD/]
 肉じゃがを三人で食べ終わったころには夜も九時を回っていた。
 雨はまだ降り続けている。
 アパートの天井と屋上の壁は薄いから雨音が良く聞こえるのだ。
「あーあ……どうしよう。こんなどしゃ降りじゃ帰れないよ」
 香織が窓の外を見ながらそう呟いた。
「帰ればいいじゃないですか」
 華が香織の背中に向かって声をかけた。
「香織さんは少しぐらいなら雨に濡れたって平気でしょう?」
「なに、それ? ひょっとしてボクが馬鹿だから風邪をひかないとでもいいたいのかな?
 なんなら華ちゃん、ボクの後ろに乗ってみる? 華ちゃんだったら風邪ひかないよね?」
「……それは遠まわしに私を罵倒しているんですか? 少なくとも、私は香織さんより馬鹿ではないです」
「知ってる? 馬鹿っていうほうが馬鹿なんだよ」
 ……本当にこの二人は口を開けば喧嘩ばかりするな。
 しかも華まで挑発に乗せられるほどに冷静さを失っているから、さっきより低レベルなやりとりになっている。
 仕方ない。ここは俺が一肌脱ぐしかないな。
「香織。もし良かったら、だけど。俺の部屋に泊まっていくか?」
 とりあえず提案してみた。
 返答は――
「「…………」」
 ――あれ?返事が返ってこないぞ。
 おかしいな、と思ったので二人を観察してみる。

 窓際に立っている香織は、俺の顔を見つめながら普段より多くまばたきを繰り返している。
 テーブルの前に座っている華は、口を半開きにしたまま固まっている。
 そのまま一分、二分、三分…………
 と、待っても返事が返ってこない。
「……どうしたんだ? 二人とも」
 その空気に耐えかねたので、二人に問いかけてみる。
 途端、二人が動き出した。
 香織が俺に向かって歩いてきた。ずんずんずん、と。
「うん! もちろんそれでボクはオッケーだよ! うん、寝よう。今すぐに!
 華ちゃん、そういうわけだから、早く出てって! しっし!」
 そう言いながら畳の上に折りたたまれている布団を敷き始めた。
 一方の華は、というと。
「おにいさん? 鍋蓋の一撃では目が覚めませんか? 
 何なら、このままおにいさんを『終わらせて』あげてもいいんですよ?」
 俺に近づくと、俺が着ているジャージの襟を掴んだ。
 目の前にいる幼馴染の目は、冗談が通じそうに無い本気の色をしている。
 なんだ?俺、変なこと言ったか?
「なあ、華。なんで怒ってるんだ? 困っている親友を泊めるのは当たり前だろ?」
「おにいさんはそう思っているんでしょうけど、香織さんはどう思っているんでしょうね?
 本当に何も起こらないと思っているんですか? おにいさん」
「起こるわけ無いだろ。俺は香織に手を出したりしないし」
「そうじゃなくて! 香織さんのほうから……」
 言葉を区切ると、華が襟から手を放した。
 それから、肩を落として嘆息した。
「――いえ、言ってもおにいさんには分かりませんよね。おにいさんはニブチンですから」
 ニブチンって言うな。そんな言葉使うもんじゃない。
 だいたい、香織が俺に襲い掛かってくるわけないだろ。
 昔も一緒に寝泊りしたときにも何もしてこなかったのに。
 
 しばらく頭を振っていた華は、顔を上げると俺の顔を見つめてきた。
 そして。
「仕方ありませんね。そういうことでしたら――私も、今夜ここで寝ます」
 有無を言わせぬ口調でそう言った。

159 名前: ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 21:12:46 ID:TLFyhqD/]
第五話、投下終了です。

160 名前:ことのはぐるま訂正 ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/03(土) 21:47:52 ID:TLFyhqD/]
>>153
> どうしようもないよねこれ。いやん。私、どうしよう?」
 どうしようもないよねこれ。いやん。ボク、どうしよう?」

でした。ごめんなさい。



161 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/03(土) 22:33:33 ID:6+pMsIgz]
ことのはぐるまキタ━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━━━!!
再開を待ってました!
香織と華の対決がどこまでの病みに進んでいくのかワクワクテカテカ

162 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/03(土) 23:04:30 ID:crBr10lR]
待っていた。あんたが来るのを本当に待っていたんだ。
嬉し過ぎて、涙も出ねぇや。

GJでした。

163 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/04(日) 01:05:00 ID:buPDkbjT]
ことのはぐるまが来てるー
この2人もなかなかだけど、今はなりを潜めているお嬢様が一番目に物見せてくれると期待してる

164 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/04(日) 01:05:50 ID:buPDkbjT]
(´・ω・`)ごみん、sage忘れた

165 名前:51 mailto:sage [2007/03/04(日) 01:23:36 ID:XnlPB2so]
久しぶりの投稿。
一応…前作の続き物になるよー


鬼葬譚 第二章 『篭女の社』

さいしょのおはなし
======================================
長きにわたる戦国の世も終わり、太平の時代になって早数十年。
その、長きに渡る平和な時代は、人々に平穏をもたらすと同時に、
その心根の根底に、怠惰と拭えぬ悪意を植えつけていく事になる。




青い空、流れる雲、さらさらと心地よい初夏のそよ風。
「平和ねぇ…」
あたしは境内の掃除の手を止め、はふ、と小さくため息をつく。
そして、境内から伸びる階段の下に広がる城下町を見下ろしながら大きくのびをした。
今日も良い天気だ。
あたしは昼下がりの心地よさに小さく微笑むと、境内の掃除を再開する。
それは、当たり前の一日の日のこと。

あたしの名前は、紗代(さよ)。
とある地方藩の城下町の近郊に居を構える小さな神社の神主である父の
娘であると同時に、この神社で巫女をしている。
先日ようやっと17になったばかりだ。
この年頃の娘といえば、総じて色々と誘惑も多いところではあるが…
巫女という仕事柄もあり、年頃の娘らしい生活とは少々無縁な生活を送っている。

「さてと、これで掃除はおしまいかな」

あたしは箒を納戸に片付けると、授与所へと急ぐ。
今日は御守りの奉製をしなくてはならない。


166 名前:51 mailto:sage [2007/03/04(日) 01:24:25 ID:XnlPB2so]
「…失礼いたします」

あたしが授与所へ入ると、そこには宮司様…あたしの父が、護符を書き上げているところだった。

「ああ、お掃除ご苦労様。こちらも丁度終わるところだよ」

宮司様は手にした筆を置くと、あたしに向かって微笑みかける。
あたしは、父の笑顔が好きだ。
幼い頃に母を亡くしたあたしにとって、父は唯一の肉親になる。
そのためか、父は母親に良く似ているというあたしを愛してくれたし、
あたしもまた宮司として、同時に父親として尊敬の念を抱いていた。

「すまないね。用意はもう出来ているから、後は仕上げをよろしく頼むよ」

そう言って立ち上がると、宮司様は本殿へと午後のご祈祷をあげに行かれる。
あたしはその後姿に一礼をすると、まずはぱしりと自分の頬を叩いて気合を入れなおした。
そして、宮司様の書かれた護符を丁寧に折りたたみ、一つ一つ丁寧に御守り袋へ詰めていく。
その一折に気を張り、念を篭めて袋に詰め、この御守りを持って行く人達の事を思った。
そうやって暫くした頃だろうか。
おおよそほとんどの御守りを仕上げ終わり、ほう、と一つため息をついていた時。

「「「おーねーちゃん、あーそびーましょー!」」」

外から聞こえてくる子供達の声。
あれ、もうそんな時間か。

「はーあーいー」

あたしは、手を止めて外の声に答える。
授与所の戸を開けると、外にはいつもの見慣れた3人の子の顔が並んでいた。

167 名前:51 mailto:sage [2007/03/04(日) 01:25:23 ID:XnlPB2so]
この子達は大体いつもこの時間、私が暇になってくる頃合を見計らってこの神社にやってくる。

「紗代おねーちゃん、今日は何して遊ぶー?」
「俺、鬼ごっこがいい!」
「昨日も鬼ごっこだったじゃんー今日は違うのにしようよー」
「鬼ごっこがいいー!」
「やだー!」
「はいはい、ケンカしない! ケンカしてると遊んであげないよ?」

口々に勝手なことを喋っている子供達に苦笑すると、あたしは三人の頭を撫ぜながら嗜める。
これも、あたしの日課の一つのようなものである。
最初は、神社の境内で遊ぶ子供達が怪我をしたり、物を壊したりしないように監視するのが
目的だったのだが…今となっては、私もちょうどいい息抜きにさせてもらっている。
結局、この日は鬼ごっこを遊ぼうとしていた子が折れる形で、かごめかごめで遊ぶことになった。

「じゃ、まずおねえちゃんが鬼ね!」

子供達が、笑いながらあたしの回りをぐるりと取り囲む。

「うっふっふ、絶対負けないからねー?」

あたしはにやりと笑いながらその場にしゃがみこんで顔を伏せる。
それを確認すると同時に、子供達の歌声が境内に響き渡った。

-かごめ かごめ-
-かごのなかの とりは-
-よあけの ばんに つるとかめが すべった-
-うしろのしょうめん だーれ?-

歌声がやむ。
あたしの背後に立つ誰かの気配。周囲の、笑いを堪えるような、楽しげな気配。

「あたしの後ろにいるのは…」

この気配は…あたしは良く知っている。

168 名前:51 mailto:sage [2007/03/04(日) 01:26:32 ID:XnlPB2so]
「儀介! あんたでしょ!」
「げ、何でわかるかな、気配殺してたのに」

聞こえてくる青年の声。
立ち上がり、顔をあげるあたしの目に映る皮肉げな笑みを浮かべた青年…
こいつは、儀介(ぎすけ)。
あたしの幼馴染で、元服したにもかかわらず、嫁を娶るわけでもなく、
城下町にある長屋でその日暮らしをしている。
あたしとは…まあ、腐れ縁という奴だ。

「紗代ねーちゃんすげー」
「よーくわかったねー! 黙ってたのに!」

口々に褒め称える子供達に、あたしは少し胸を張って見せた。

「いやー、しかしなんだ、ガキンチョどもの子守も大変だぁね。
 神社の仕事もこなしながら、てんだから、いやーホント頭が下がるね」

儀介はそういっていつもの皮肉げな笑みを浮かべて、子供の一人の頭をわしゃわしゃと撫で回した。
あたしは、そんな儀介の姿に小さくため息をつく。

「むしろ、あたしはあんたのその気の抜けっぷりのほうを注意したいところ。
 大体その年になったんだからそろそろしっかりと足場、固めるべきじゃないの?」

私の苦言にあいたたたと苦笑しながら、儀介は髪をかき上げふっと伊達男を気取って見せた。

「いやいやいや、才気溢れる俺様の器は安っぽい人生に埋もれさせてはいけないと思うのだな。
 もっと俺様に見合う生き方っていうの? そういうのがあるわけだ、うん」

あたしは儀介の言葉を聞きながら、こめかみに指を押し当てる。

「で、あんたに見合う生き方てのはこの際置いておくとして。今日は一体何の用事?」

儀介は、私の言葉に待ってましたとばかりに擦り寄ってきた。

169 名前:51 mailto:sage [2007/03/04(日) 01:29:16 ID:XnlPB2so]
「いやーその、なんだ。 ちょっと今懐が厳しくってさぁ…。
 悪ぃ、明後日には返すからちょっと金貸してくんない?」

両手を合わせ、拝むような仕草をとる儀介。
…この男は…。
あたしは、あんまりにもあんまりなこの男の発言に本気で頭痛を覚える。

「うん、わかったー…って言うと思ったかこンの甲斐性なしッ!」

ぱちこーんと小気味良い音を立てて私の張り手が儀介の頬を捉えた。
すっとぶ儀介。

「い、いきなりひっぱたくことないじゃないかよ!」

非難の声をあげる儀介。
そんな儀介にあたしは腰に手を当てながら叫ぶ。

「あたしが 『引っぱたく』と心の中でそう思ったなら!その時すでに行動は終わってるのよ!」
「まて、何だその遠い将来に義兄弟のアニキが言い出しそうな発言はッ!」
「問答無用ッ!みんな、儀介が鬼よ、みんなでやっつけちゃいなさーい!」
「「「はーーい!」」」
「待て、ガキんちょ使うのはお前そりゃ反則だろ! 痛ェ! 石投げるな!」

子供達に追いかけられ、逃げ惑う儀介。
その様を見て、あたしは堪えきれずに笑った。
子供達も笑っていた。儀介も笑っていた。


きっと、明日も、明後日も、明々後日も、この平和な日々が続くのだと。
あたしは、それを当たり前のように信じていた。
この時は、まだ。


======================================
というわけでまずは最初のお話。


>管理人さん
えー保管庫のほうで「戦巫女(仮)」となっているタイトル

鬼葬譚 第一章 『緋の詩』

に変更願いますです

170 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/04(日) 01:35:35 ID:Qo6U2frW]
「ことのはぐるま」を保管庫で第1話から読みました。
キャラがよく練られていて面白いです。
最初のお嬢様がまた出てきてほしいとwktk



171 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/04(日) 01:35:36 ID:ebyXowoD]
投下します
注意 フタナリものです

「お前たちも自覚があると思うが、もうセンターまで500日も残されていない。部活に精を出し、三年の夏に引退…そっから勉強をやるという奴のほうが多いと思うが、
はっきり云ってそれは少し厳しいぞ。受験の波は既にお前らに迫っている。乗り遅れたら終わりと思え!特に受験なんか、まだまだ先だと思っている奴は!後になって、絶
対後悔するぞ」
そう云って、否命のクラスの担任は朝のHRを打ち切った。五月の半ばに入ったと云うのに、未だにゴールデンウィーク気分の覚めない輩に渇をいれたのである。
「ねぇ、沙紀さん…」
先ほどの担任の話を聞いてゴールデンウィーク気分が一気に覚めた否命が、何処か心配げな声で同じクラスである沙紀に耳打ちした。
「やっぱり、今から勉強しないとまずいのかな?私、成績悪いから推薦も貰えないし、受験勉強だって全然やってこなかったし…」
「お嬢様なら、大丈夫ですよ」
沙紀は胸を張って、自信満々に答えた。
「無理をせずに自分のペースで頑張って、才能を信じて、秘められた力を信じて、奇跡を信じて、楽観的に考えながら前に進む限り成果は無くても、希望だけは見えてきますよ」
「うん、私頑張る!」
「そうです、お嬢様!その意気です!」
「浪人する奴の常套句じゃん、それって」
隣で話を聞いていた否命の親友である、竹宮源之助は苦笑交じりに呟いた。源之助はその男のように厳つい名前で誤解を受けやすいが、れきっとした女である。
「浪人もいいじゃないですか、源之助さん。きっと毎日が日曜日ですよ」
「沙紀さん…それってむしろ、曜日の感覚が無くなるんじゃ…」
「とにかく、私は浪人なんてごめんね」
そう言って、源之助は溜息をつく。
「私も浪人はちょっと…」
「だけど、否命は成績も悪いし、受験勉強も苦手なんでしょ?」
「じっ、自分のペースで頑張って、楽観的に前に進んでいけば、きっ、きっと希望は見えるもん!」
「だから、それだと浪人するって」
「はぅぅ…」
「あらあら…そういえばお嬢様はAO入試なるものをご存知ですか?」
「AO入試?」
聞きなれない単語に否命は眼を丸くした。


172 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/04(日) 01:36:38 ID:ebyXowoD]
「否命は知らないの、AO?」
「うん…」
「自己推薦方式って言って、自分で自分を推薦するの。論文と面接で入学の是非を判断するんだけど、論文は先生が書いてくれるから、実際は面接だけね」
「面接って、どういう事を聞かれるのかな?」
「自分が頑張ったこと。とりあえず、部活の事については聞かれるんじゃないの?」
「私、部活入ってない…源之助ちゃんも知ってるでしょ?」
「では、君は熱心に勉学に励んだのかね?」
源之助は腕を組み、不遜な態度で無駄にプレッシャーをかける面接官になりきって否命に迫った。
「私、成績も悪い…」
否命はビビリながらも、それに対応する。
「では、君は一体、高校生活で一体何を頑張ってきたのかね?ボランティア活動や研究活動や習い事でもしていたのかい?」
「してません…」
「本当に君は高校で何を頑張ってきたんだい?」
「え…その、とっ、とにかく頑張ってきました」
(言えない…、私が毎日頑張っていることは…誰にも)
否命は心の中で呟いた。
「とにかく頑張ってきた…か?普通に考えれば、成績も悪い、部活にも入ってない、校外活動もやってないとくれば、高校生活で頑張った事がないと思われても仕方が無いと思わないかい?」
「はぅぅ…」
「お嬢様、そういう時はこう言うんですよ。僕を普通の目で見ないで下さい!」
「では、私は君のことをどういう目で見たらいいのかね?」
そう問われれば否命は、
「その、あの…やっぱり、普通の目で」
と、答えるしか無かった。
「じゃあ、君は高校生活で頑張ったことが無い…ということでいいのかな?」
「沙紀さぁん…」
助けて…と、否命は沙紀に潤んだ瞳で訴えかけた。
「お嬢様、そんな顔をなさらないで下さい。大丈夫ですよ、こういう時は、「貴方に僕の何が分かるっていうんですか!!?」と言えばいいのです」
「面接の意味ないじゃん!」
そこで思わず源之助は沙紀につっこんだ。


173 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/04(日) 01:37:51 ID:ebyXowoD]
「はぁー、否命、本当にあんたどうするの?このままだと…」
「むっ、無理をせずに自分のペースで頑張って…」
「だーかーら、それだと浪人よ」
「はぅぅ…」
そんな否命と源之助のやりとりを、沙紀は何処か遠い瞳で見つめていた。
高二は既に自分の将来を選択する時期だ。その選択の一環としてある大学受験は、人生のゴールではないけど、やはり人生の関門の一つだろう。
その来たるべき関門をどう乗り越えるかを、否命と源之助は悩んでいる。それが、沙紀に時間の流れというものもひしひしと感じさせた。
この楽しい時間…、沙紀が大好きな日常はいつまでも続くはずは無い。沙紀だって、それぐらい分かっている。そして、次にまたもっと楽しい時間が待っている事も沙紀は分かっていた。
それでも、この日常が終わるのは寂しかった。
ただ、無性に寂しかった。
沙紀は理解していた。もう、日常が終わりかけている事を。この楽しい一時は終わっていく日常の中の、文字通り「一時」でしかないことを、沙紀は実感として理解していた。
「この偏安いつまで続く…」
言葉にしてみると、それは沙紀の胸によく響いた。

投下終わります

174 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/04(日) 02:05:49 ID:RKZn4nDD]
>>169
おお、待望の続編が!
第一章のときも思ったけど、文章の雰囲気がいいな。
落ち着いてて、「和」を感じさせる。

>>173
>、「貴方に僕の何が分かるっていうんですか!!?」
にワロスwコントかw
で。普通に読めたんだけど、これってフタナリなの?



175 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/04(日) 02:56:09 ID:RKZn4nDD]
続きレスごめん

>>154
> ほらな。華の怒りに燃料を注ぐ結果になった。
> 香織の手が、わなわなと震えている。
の’香織の手’って’華の手’じゃないかな?と思うんだけど。

え?このケーキを食え?いや、なんかあやしいからことわくぁwせdrftgyふじこlp;@:「」



176 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/04(日) 06:58:13 ID:DDilHmMV]
>>166
待望の続編ktkr!GJ!
>>173
ふたなり属性はなかったが期待します!

ところでお二方ともトリップつけたほうがよろしいかと

177 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/04(日) 14:21:14 ID:DikTk30a]
置いときますね
imepita.jp/20070304/515280
一応縦にしてご覧下さい

178 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/04(日) 15:11:44 ID:GG/5ruyi]
今日も投下ラッシュが来ていた。全ての神々に感謝(-人-)

>>169続編キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
前回に負けない病みクルー!?
>>173「はぅぅ…」 に萌えました(*´д`*)ハァハァ 
>>177いつもながらGJ! このアリスは可愛すぎる(*´д`*)ハァハァ  

179 名前: ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/05(月) 00:29:21 ID:PBOHHP2L]
>>175
その通りです。読み直したら、そこも修正箇所でした。

みなさん。ごめんなさい。

180 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/05(月) 09:48:16 ID:7bYfVHDz]
いない君といる誰かを待ち続ける



181 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/05(月) 12:11:49 ID:YarDc/SR]
それじゃ俺は真夜中のよづりを待ち続ける。
冒頭でDEAD ENDなのが気になりまくり。

182 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/05(月) 21:21:17 ID:fnlF47vt]
お久しぶりです。予告どおり『おにいたん2』投下します。

183 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/05(月) 21:22:11 ID:fnlF47vt]
<<<新店長でグランドオープン〜おにいたん、だいすき!2〜>>>

てっこら、てっこら。
昼間の大通り、幼稚園ぐらいの女の子が歩いている。
そばには自分と同じぐらいの大きな犬。犬には首輪こそついているが紐はついていない・・・、
もっとも、紐で引っ張っても犬のほうが女の子を引きづるだろうが。
犬と少女はやがて駅に着く。
少女は首から提げた大きなバッグからなにやら写真を取り出した。
待合室の中、少女は写真を手にきょろきょろ。やがて、目的であろう人物に声をかける。
「おぢたん!!」
おじさんと呼ばれた男は同じく写真を手ににっこりと笑い、少女に手を差し伸べる。
少女と男は握手をしたあと、男に声をかける。
「おちっこ・・・」
二人はトイレに入っていった。
10分後。トイレからは女の子だけが出てきた。首から提げたバッグは前より膨らんでいる。
女の子は入り口で待機していた犬の首に自分のバッグをくくりつける。
そして一人と一匹は駅をあとにする。『荷物』を届けるために。
少女は犬の背中にちょこんと座り、声をかけた。
「たてと(さてと)、かえるでつよ、ピオン」
犬は少女を背中にのせ、それでも普段と変わらない足取りで歩き去った。

「『えくつたちぃ』、もらってきたでつよ」
「おお、えらいぞ、かおるちゃん」
某『反社会的団体』の事務所。山那薫はピオンの首からバッグをはずし、中身を見せた。
中にはカラフルな錠剤−『エクスタシー』と呼ばれる麻薬がぎっしり。
「むこうのおぢたん、くみちょうたんにもらったおかねより、マルがひとつおおくくれなんていってきたでつ」
「またか、あいつは!」
「あたまにきたので、バチバチをくらわせてやったでつ」
薫は懐から黒い金属質のものを取り出す。俗に言う「スタンガン」。
「ああ、かまんよ。おい!」
組長と呼ばれた男は近くにいた自分より少し若いぐらいの男のほうにむき、首をしゃくる。
若い男は隣室へと出て行った。程なくして、「なめとんのか、ワレ!」などという声が聞こえる。
「いまごろあのおぢたんはけいちゃつ(警察)のおぢたんにいぢめられてまつね」
「・・・ここはばれねぇだろうな?」
「ようちえんぢにはんげきたれた(反撃された)なんて、ちんぢるひといるとおもいまつか?」
「ちげぇねぇ!!」
組長はげらげらと笑い出す。
「おかねはかえつでつよ」
「かまやしねえよ。今回の代金は薫ちゃんが全部取っときな」
「ありがとう、おぢたん!」
今回の代金は実は7桁に上る金額だったがそれを差し引いて余りある利がある。
誰も思うまい?「幼稚園児が麻薬の運び屋(しかも自覚あり)」などと。
「ではかえるでつ。あんまりおとくなると、ままがちんぱいつるでつ」
「おう、ママによろしくな!」
「あい!ピオン、かえるでつよ」
事務所の中で寝ていたピオンは起き上がると小さな主人についていった。そして事務所を出て行く一行。
「オヤジ、今回の代金はチャラということでナシつきましたぜ。あ、薫ちゃん帰ったっすか?」
「ああ、アレはいい女だ。あと20歳年くってりゃ愛人にするんだけどな」
「それよりもオヤジの後継がしたほうがいいですぜ。いい姐さんになるな、ありゃ」

がぁっはっはっはっはっ。

事務所の中にむさい男どもの笑い声が響き渡った。


184 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/05(月) 21:22:45 ID:fnlF47vt]
「ただいまでつ」
薫とピオンが帰ったのは禾森邸だった。前作の最後、耕治とあずさは山那邸に引っ越したのだが、
そのせいで山那一家は公営住宅を追い出されてしまったのだ。
実はどこでもそうだと思うが、公営住宅は一定年収以下の人間でないと基本的に入れない。
山那一家の場合、同居人の耕治とあずさの収入の合計が公営住宅の基準をオーバーしてしまい役所から退去勧告を受けた。
仕方ないのであずさは一度は出て行った自分の実家に山那一家と耕治を住まわせることにしたのである。
実家といってもあずさの両親は既に亡く、妹の美衣奈と飼い犬のピオンがいるだけだった。
美衣奈は最初は反対したのだが薫が小声で何かつぶやくと大賛成してくれた。
薫が何をつぶやいたのかは当人達しかわからない。
「かおるちゃん、おかえり〜」
出迎えたのは美衣奈だった。
「みなおねえたん、ただいまでつ」
薫はピオンの首につるしたバッグを取り出し美衣奈に預ける。
「またちょきん、おねがいちまつでつ」
「今回多いね〜危ない橋渡っちゃだめだよ?」
「バチバチもってまつち、ピオンもいるでつ」
ばぅっ
薫の返事に合わせてピオンが吼える。
「分かってるけど、気をつけてね」
「あい♪」
二人と一匹(ピオンは玄関にある専用マットで自分で足を拭いてから上がる)は居間に向かう。
「おにいたんとあづさおねえたんはまだかえってこないでつか?」
「もうすぐ帰ると思うよ?」
そういってたら玄関のチャイムが鳴る。
「あ、帰ってきた」
「きたでつ」
玄関には耕治、あずさ、そしてテュルパンでパートを始めたとき子が入ってきた。

「で、聞いてよ!耕治ったら新しい店長みて鼻の下伸ばしっぱなしなのよ!」
「おにいたん・・・うわきはバチバチのけいでつよ・・・?」
「い、いや、あれ、アレはしょうがないって!」
山那家改め禾森家の食卓。あずさは今度赴任する新しい店長の話をしていた。
前の店長の妹というその人物は相当の美人でスタイルがいいらしいのだ。
「ナイスバディってとこがちょっととき子さん似だけど、もっとすごいというか・・・
そう・・・トランジスタグラマーっていうか・・・とにかくボォン!キュッ!ぼぉぉぉぉん!!なんだよ」
「『みねふぢこたいけい』でつか?」
「そう、そんなかんじ・・・いててててて!!」
「彼女の前でそんな話するなぁ!」
「耕治さん・・・失礼ですよ・・・?」
美衣奈まで控えめではあるがクレームをいう。
「みてみたい、でつね」
「店長さんを?明日にでも見に行きゃいいじゃん」
「とうちまつ。あちたはアレちかけにいきたいでつち」
「あ、準備できたの?」
「あい♪」
「やっと薫ちゃんの許しが出てアレできるんだ・・・」
「ああ、やっとだな・・・」
「おまたてちまちたでつ」
といって座ったまま礼をする薫。ちゃぶ台にゴチンと額をぶつけるのがお約束。
「んじゃ、食い終わったら『食後の運動』だな。ん、ふっ、ふ〜」
「おにいたん、なにいってるでつか?おにいたんは『ばつげーむ』でつよ?」
「え、なんで?なんで?」
「こ、耕治さん・・・浮気の罪は重いと思うんですけど・・・」
「え?アレで浮気のうちに入るのかよ?!・・・って、まて、ピオン!なにをする!やめい!!」
ピオンは耕治の後ろに回りこむと後ろの首の襟口を噛み耕治を寝室までひきづっていくところだった。
「まて!俺はまだ食事中!ってやめろ!ズボン噛み千切るな!うわ〜」
「ばつげーむのひつようないでつね」
うんうんと頷く女ども。何か後ろではパンパンという腰を叩きつける音がするが気にしない。
そうして禾森家の夜はふけていく。

185 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/05(月) 21:24:54 ID:fnlF47vt]
すいません、続きます。次回、エロシーンだらけ。
冒頭のあのシーンですが、どうしても後半の伏線ですので外せませんでした。
実は今回のメインヒロイン、まだ出てきてません。
次回出てきます。モデルはもちろんあの人です。

186 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/05(月) 21:44:30 ID:IP7Gf7/V]
薫タンキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆
GJ!…てか、耕治カワイソスwww そして薫タンオソロシスwwwww

187 名前: ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/05(月) 23:05:25 ID:meHRPJLV]
>>185
GJ!!次回をwktkしております。

↓投下します。久しぶりになっちゃってごめんなさい。
バールのようなものを投げたりしないで下さい。


188 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/05(月) 23:07:11 ID:meHRPJLV]

 聖祐人は椅子に座ってぐったりしていた。昨日と違うのは椅子に拘束されていない
ことと右手から手足に繋がれた手錠と首輪が彼を拘束していることだ。祐人は何気なく
首輪に触れながら今朝の情景を思い出していた。

 朝はいきなり姫野真弓に叩き起こされることで始まった。起こされたは良いが
頭が重く、霞みがかかっているどころか脳が泥になったような感じがした。
上手く回転しない思考でも疲れただとか体調不良だとかそういったレベルの
何かではないことはわかった。

 薬……でも盛られたか。

 ここまで考えたところで着替えるからこっち向かないでだとか遅刻するだとか
騒ぎながらバタバタと用意をしていた真弓に朝ご飯だからとリビングに連れて行かれた。
 さすがに2人同時に食べると真弓の遅刻が本格的に確定するので真弓だけが食べ
祐人の分は今彼の目の前にあった。


「じゃ、祐人行ってきまーす」

 祐人の首輪から伸びた鎖を繋ぎ変えた真弓が振り返る。部屋の隅に繋がれた鎖は
かなり長い。真弓曰わくリビングと「真弓と祐人の部屋」とトイレをギリギリ
行き来できる長さにしてあるらしい。

「ああ……いってらっしゃい」

 ぐったりと祐人が応じると真弓は少し頬を膨らませて不服げな顔をした。

「恋人にするいってらっしゃいなんだからもっとなんか甘いこと言ってよ」



189 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/05(月) 23:08:55 ID:meHRPJLV]

 恋人。朝から何度この単語を聞いただろう。
 ことあるごとに真弓は祐人と自分の関係に名前を与えた。
 それは真弓から一方的に付けられた名前であるが。

「恋人恋人ってお前な……」
「恋人、でしょう?」
「そんな覚えは無い」
「……祐人、祐人私のこと嫌いなの?」

 真弓が瞳を潤ませて問い掛けてきた。祐人の目を真っ直ぐ見ながら彼女は続ける。

「私ね、祐人が私のこと好きだってちゃんと知ってるよ。でもやっぱりそんな態度
 取られると不安になるの。……お願い、学校行く前に一度でいいから好きって言って。
 気持ちを聞かせて」

 泣きそうな瞳で見つめながら真弓は繰り返す。
 お願い、好きって言って、気持ちを聞かせて……

 言うべきでは、無いのだろう。言えば何か自分の大切なモノを真弓に渡すことになる。
たとえ目の前の女の子を泣かせても渡すべきで無いものを。
 祐人にもそれは分かった。だが呪文のようにお願い、と繰り返すだけの意志の力を
今の祐人は持っていなかった。頭が泥のように重い。真弓の声がやけに響く。

「ああ……好きだよ」

 真弓の顔に光が差すように笑みが広がる。

「ありがとう祐人」

 祐人に向かって真弓は心からの笑顔を浮かべた。


■■■■■■



190 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/05(月) 23:09:49 ID:meHRPJLV]
■■■■■■


 陽もだいぶ高く上ったころ、亜弓が起きてきた。

「あら……おはよう祐人くん」
「おはよう亜弓さん」
「朝ご飯食べたのね……」
「はい。何か混ぜられてるとは思ってますけど、空腹で動けなくなっても困りますから」
「本当に適応力あるのね……」

 朝に比べれば祐人の頭はだいぶ回復していた。それでも重くぼんやりと、
まるで良くない夢の中にいるような感覚は拭いきれなかったが。
 その内助けが来る。必ず来る。水城やクラスメイトの連中に話を聞けば
姫野が疑われるのは必至だろう。
 祐人は意識してそのことだけを考えるようにしていた。
 それ以外のことを考えても無駄だと思った。

「開き直れるのは……生きる上でとても大事なことね」
「食べたことがそんなに意外ですか」
「それとも衰弱死さえ免れればなんとかなると思ってるのかしら……?」

 亜弓は興味が無さそうに言葉を継いだ。

「まぁその内何もかも普通になるわ」


■■■■■■





191 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/05(月) 23:10:51 ID:meHRPJLV]
■■■■■■


 結局その日はそのまま過ぎた。細かい思考を一切放棄した祐人は夕方帰宅した
真弓に再び手錠で繋がれると掃除や洗濯を手伝わされた。

「ちょっと下着を干したいのであちらを向いて下さい」
「はいはい」
「絶対こっち向かないでよ!?」
「向かないよ」
「向かないでよ!?絶対よ!?」
「そんな念押さなくても見ないから」

 普通に会話をして、普通に2人で家事をこなす。むしろ微笑ましくすらある
光景だった。ただ、祐人の行動を制限する手錠と2人を繋ぐ首輪と手錠を除けば。


■■■■■■
■■■■■■


 昨日と同じように食べづらい夕食のあと
昨日と同じように一緒であることに意味の無い風呂に入る。昨日と違う点は祐人の
着替えまできちんと用意されていた点だ。

「この服どうしたんだ?」
「買ってきたの」
「姫野がか?」

 途端に祐人の首が絞まって壁に体を叩きつけられた。
 真弓は変わらず笑みを浮かべているが、違う。空気の色が変わっている。
相変わらず回転の鈍かった頭も危険を感じとった。

「ねぇ祐人」

 引かれた鎖が息が詰まるほどでは無いが恐怖を伴った圧迫を作り出す。

「どうしてお姉ちゃんは『亜弓さん』で私が苗字なの?私のことも名前で呼んでよ」

 真弓が体を密着させて顔を近づけて来る。パジャマしか着ていないため彼女の
体のラインが祐人にも良くわかった。睫が触れるほど、息がかかるほど近づいて
薄い肩の少女は囁いた。



192 名前:恋人作り ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/05(月) 23:12:22 ID:meHRPJLV]

「祐人、私のこと好きだよね?」

 祐人はのろのろと至近距離にある真弓の瞳を見る。そこには純粋な少女の目に
宿るような光しか無かった。次に紡がれる言葉が自分を傷つけるなどとは
夢にも思わない少女の。

 純粋だ。純粋に違いない。真弓は真弓の世界で生きている。それ以外など存在しない。
真弓の世界では祐人は「自分を愛する人」でそうでないことなど有り得無い。
世界が違う。生きる上での前提がそもそも違う。
 彼女は自分の世界に「自分を愛する人」である祐人を引き込みたかった。
否、引き込まなければならなかった。そうしなければ世界が不完全になってしまうから。
自分を愛さない祐人など有り得無くとも今は自分と違う世界に彼がいることを
真弓は本能的に知っていた。だから彼女は自分のフィールドに祐人を連れてきて
首輪で繋いで自分の望む言葉を引き出す。

「ああ……好きだよ。『真弓』」

 否定することは祐人には出来なかった。
 彼が真弓の世界のモノにならない為には否定しなければならなかったのに。
 必死で真弓の全てに抗わなければならなかったのに。
 ゆっくりと祐人の中に真弓の世界が染み込んで行く。

「……ありがとう祐人」

 真弓は少し照れたように言って鎖を離した。


■■■■■■
■■■■■■



193 名前: ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/05(月) 23:13:22 ID:meHRPJLV]
今回はここまでです。

遅筆です。すいません。


194 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/05(月) 23:36:12 ID:M2fqlPzG]
恋人作り待ってました!GJです!
いよいよ祐人が堕ちそうですね。真弓の普通っぽい所が逆に怖くていいです!

195 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/05(月) 23:58:04 ID:IP7Gf7/V]
恋人作りもキタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!☆

これを純愛と見てしまった俺はもう駄目かも分からんね

196 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/06(火) 00:40:06 ID:DpdATVjZ]
それでは私も投下します。

197 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/06(火) 00:41:24 ID:DpdATVjZ]
       『俺の人生は素手で砂を掴むようなもんだった。あとからあとから砂はこぼれ落ちていっちまうのさ』
                               ──チャールズ・スタークウェザー「Rebellion」
朧の背中に張られた写し絵を彫菊は丁寧に剥がした。男のモノとは思えぬ白磁の透明感漂う艶ましい肌──指先を這わせれば蜜蝋のように滑らかだ。
興奮と渇きに喉が灼けるように痛んだ。極上の素材だ。美しい。彫菊は陶酔の面持ちで瞳を濡れ輝かせた。
彫り師をはじめて七年近くになるが、これほど素晴らしい肌の持ち主はお目にかかったことがなかった。
皮膚に入れた下絵を彫菊はマジマジと見つめた。背中には、黒い蠍が鮮血のしたたる男女の生首を両方の鋏で持ち上げ、貪り食らう絵が描かれていた。
凄惨だが、同時に冥い色香が感じられる絵柄だった。アルコールを染み込ませた脱脂綿で背中と尻を拭いていく。
こんな気分を味わうのは久々だ。心が躍った。全身に鳥肌が立った。
数十本の絹針を束ねたノミ(彫針)を右手で握り、彫菊は針先がぶれないように正中線を見定めた。
緊張が走る。唾を呑み込んだ。
「ではいきます」
彫菊の言葉に朧は黙って頷いた。斜めに構えた針先を皮膚に突き刺した。正確に素早く針が下絵を辿っていく。苦痛に、朧が秀麗な相貌を歪ませた。
静まり返った室内に、皮膚を突き破る針の鋭い音だけが鳴り響いた。彫菊の毛穴から汗が噴き出す。針が上下するほどに、少年の裸体が震えた。
肌に浮かんだ血と墨を、彫菊がガーゼで拭っていく。声帯から発せられる苦悶の呻き──針が肉を深く抉る度にどんどん高まっていく。
「ああ……ッ」
朱唇から洩れる苦痛の呻きは、サディスト嗜好の女であればそれだけで達してしまうだろう。
激しい劣情に彫菊は襲われた。鮮烈な欲望の疼き。押さえつけたはずの女の性が揺らめいた。朧とのまぐわいの幻想に女芯が痺れる。
理性が蕩けそうだった。
彫菊は悟った。いま、己は朧と交合を行っているのだと。男女の立場は入れ替わり、肌を食い破る針が男根と化した。
朧の肌を伝う幾筋もの血の糸は、彫菊にとって破瓜の証だった。涜聖をこの手で汚すような錯覚に囚われる。
誰にも蹂躙されることのなかった処女地を犯す淫らな空想──彫菊はサディスティックな歓びに、女の割れ目が肉迫する。
彫菊の込められた情念を針が朧の背に刻み付ける。激痛が伴った。歯を食いしばって朧は耐えた。
                 *  *  *  *  *  *
部屋の壁に背を預け、巴は宙に空ろな視線を泳がせた。ここ数日間、何もやる気が起きない。原因はわかっていた。
二週間前の東郷神社、深夜に散歩していた所を五人グループの暴漢に襲われそうになった。ひたすら走った。走り続けた。
心臓が急激な運動に胸壁を乱打した。恐怖に心拍数が跳ね上がった。頭が空白になりながら、必死の思いで足の筋肉を動かした。
捕まった。泣き叫んだ。冷や汗まみれになりながら、助けを求めた。白馬の王子様を信じたことはなかった。助けてくれるなら誰でも良かった。
暴漢の内のひとりが手を伸ばし、巴の髪を引っつかんだ。渾身の力で地面に引き倒す。これでもうおしまいだと巴は思った。
助け──現れた。どんな形であれ、それは助けだった。巴を犯そうと暴漢が手をかけた瞬間、鈍い音とともに暴漢は前のめりに倒れていた。
煌々と光る麝香猫の瞳が、暗闇から六人を睨んでいた。彼は何かに怒っている様子だった。さながら、己の縄張りを荒らされた獣のように。
巴は自分を睨みつける異様な瞳に戦慄した。暗がりから見える佳麗な少年の横顔。白皙の美貌だった。
秀でた富士額に、鼻筋が細く真っ直ぐ通っていた。形良く切れ上がった瞳になだらかな弧を描く眉。まるで凛々しい天使のように美しかった。


198 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/06(火) 00:42:31 ID:DpdATVjZ]
巴は一瞬、我を忘れた。それから起こった出来事は覚えていない。
空気を切り裂く音が聞こえた刹那、首筋に鋭い痛みを感じ、そこで記憶が途絶えている。
気がつくと血みどろになった暴漢達が、玉砂利の上に転がっていた。
五人とも無残な状態だった。
指を食い千切られた者、耳を切り落とされた者、顔面の皮を剥がされた者、両腕の関節が折れて骨片が肉を突き破っている者。
皮肉にも、わりとまともだったのは自分を最初に犯そうとした暴漢だった。リラの花の香りにも似た血臭が巴の鼻腔をくすぐった。
血の匂いに性的な気分に陥り、巴はその場でオナニーをした。男達の血をすくい、唇に血をぬりたくった。舌先で味わうように舐める。
鉄錆の味が口腔内に広がり、官能が昂ぶる。歪んだ自分の性癖に、何度も嫌気がさす事もしばしばだ。
(あの時は、頭がクラクラしてわけが分からなくなっちゃった……)
ベッドの横に置かれたティディベアのヌイグルミを抱き寄せる。わかっていた。
彼は別段、自分を助けてくれる為に暴漢者達を叩きのめしたわけではないことを。あるいは自分も暴漢者同様に──。
それでも、もう一度逢いたかった。自分と同じ匂いがしたあの少年に。これが恋というものなのだろうか。
心が切なかった。たまらなく切なかった。ため息をつく。
(あなたはいま、何をしているの……?もう一度……あなたに逢いたい……)
ヌイグルミに隠したアルコールが入ったのカプセルを取り出した。アルコール溶液に浮かぶ白い物体──人間の耳朶だった。
蓋を外して耳朶をくわえた。くわえながら指を自分のクリトリスに這わせる。自慰に耽るのは今日で何度目だろう。
彼を思い浮かべるたびに、したくなってしょうがない。摩擦を求めてクリトリスが勃つ。指腹で優しくいらった。
「ああぁ……」
微かな喘ぎが唇から洩れる。若い肢体が張り詰めた。耳朶を噛みながら快感の波に翻弄される。
快感の波が寄せては返し、愛液はとどまる事を知らずに分泌する。錯綜する感奮にまかせ、激しく指を使った。
「いい……もっと、もっと……ッ」
内奥が熱く火照る。アヌスにも指をいれて出し入れした。括約筋が中指の第二関節を強く噛んだ。
                 *  *  *  *  *  *
                   タイトル名『生き地獄じゃどいつもイカレてやがる』

199 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/06(火) 00:43:46 ID:DpdATVjZ]
雑司ヶ谷霊園の黒々とした木々に身を潜め、朧は少女を待ち続けた。冷たい空っ風が吹き荒む。夜のしじまに紛れ、雑草の掠れる足音が聞こえた。
「食べ物もってきたよ」
少女がアンパンとペッドボトルの紅茶を渡した。
「サンキュー」
朧は礼を言って少女──雪香から食料を受け取った。黙々とアンパンを咀嚼し、ペットボトルの紅茶で喉に流し込む。空になってボトルを放った。
雪香が朧のジーンズのボタンをはずし、チャックを下ろした。柔らかいままのペニスをしゃぶる。風呂には三日間ほどはいっていないから匂うだろう。
それがたまらなく愛しいと雪香は言う。無臭よりも匂いのあるほうが人間味があっていいそうだ。口ではどうこういっても、何のことはない。
不潔なことが好きなだけなのだろう。雪香が朧のペニスを根元まで咥え、喉を鳴らした。亀頭のくびれに付着した恥垢を舌でそぎ落とす。
頭をゆるやかに律動させた。鼻につく恥垢の臭気に雪香は恍惚の表情を浮かべた。
「ねえ、後ろ向いてお尻突き出して……」
ペニスをしゃぶりながら、雪香が上目遣いに朧の眼を見ながら静かな口調で言う。朧は何の感情の起伏も読み取れない瞳で雪香を一瞥した。
「そっちも汚れてるよ……いいの?」
「平気だよ。ううん、汚れてるほうが雪香は好きだよ」
身体を反転させ、膝の辺りまでジーンズを引きずりおろした。掌で己の臀肉をくつ拡げる。雪香がアヌスを嗅いだ。幽かに排泄物の匂いが感じられる。
「んん……っ」
鮮やかなピンク色のアヌスをちろりと舐めた。苦い。雪香はかまわずに舐め続けた。朧は身じろぎせずに雪香の好きにさせる。
拙い舌使いだった。それでも懸命さが窺えた。唾液で濡れた舌先がアヌスの内部にもぐりこんで来た。肛門をこじ開けながら舌が奥へ奥へと進む。
舌が引き抜かれ、代わりに二本の指先がアヌスを穿った。人差し指と中指が肛門粘膜を攪拌する。そこでストップさせた。
「今日はもうおしまいだよ」
「もうなの……もう少しいじれない?」
「駄目。早く指抜きなよ」
名残惜しそうに雪香が抜き出した。指にからみついた黄色い腸液が白い湯気をくゆらせた。雪香が指を舐め清める。
舐め清めながら雪香は薄い笑みを浮かべていた。
朧が最初に雪香と出会ったのは今から一ヶ月前だ。いま朧が立っているこの場所で、雪香は子猫を殺していた。
足元に縋り寄り、にゃおぉん、にゃおぉんと哀れっぽく鳴く二匹の黒い子猫。雪香は楽しそうに、本当に楽しそうに子猫を踏み殺していった。
                 *  *  *  *  *  *
『可哀想に。捨てられちゃったんだね。大丈夫だよ。お姉ちゃんが助けてあげるからね』
身を震わせる子猫に優しく語りかけながら、雪香は最初の一匹目に靴の踵を乗せた。頭に狙いを定めた。力を込める。
子猫の頭蓋骨を踏み砕けた。安物の陶器を壊すような感触が伝わった。真っ赤な液体と飛び散る。飛び出した眼球が靴底に張り付いた。
二匹目も同様に雪香は踏み潰した。わりと淡々とした作業だ。その行為にはある種の慈悲すら感じられた。
『これでもう、安心だね』

200 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/06(火) 00:45:28 ID:DpdATVjZ]
正気にては恋愛ならず。ヤンデレスレはキグルイなり。
今回の投稿分はここまでです。 

続く



201 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 09:50:41 ID:Sg9qkrMt]
昨夜は投下ラッシュだったのか。全ての神々に感謝
>>185薫がさらに病んできたのにまだヒロインが出るとは……GJ!
>>193真弓は実に可愛いですね(;´Д`)ハァハァ
>>200ヒロインは3人? それぞれステキに病んでますね(;´Д`)ハァハァ 

202 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 10:43:32 ID:w9JM9Aye]
>>200
痛くなければ覚えませぬ、と申したかw

203 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 10:48:26 ID:1FRywSzd]
ヤンデレスレはエロエロよー!

204 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 13:45:47 ID:NY4eAMS+]
誰かと思えばラックか………

205 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 18:06:26 ID:LCVZAlLr]
>>200
>ヤンデレスレはキグルイなり。

最初から狂ってたらそれはただの気違いだからね…
血見てオナニーしたり猫踏み殺して楽しんだりってのは
どうもヤンデレより狂人に近い気がする。
>>1にもあるけど、このスレでは
愛しすぎるあまり病んでいくってのが「ヤンデレ」ってことになってる。
まぁまだ始まったばかりだから何とも言えないけど
もし勘違いしてたらそこら辺考えてみて。

あと人物の名前かどうか分かりにくいときあるから最初に名前出す時は
そういうの分かりやすいように括弧付けしたりしてくれてると読みやすいと思う

206 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 18:32:10 ID:EjKNZAjm]
「恋患い」が本人の性格、環境により「重症化」して
「不治の病」となって心を蝕んでしまう、というのが基本ラインかな。

207 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 18:39:31 ID:TN7SzrWR]
まあ、定義付けは難しいけどね。

個人的には好きだけど、51氏の戦巫女も広義ではヤンデレだけど
狭義ではちがくなっちゃうし

208 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 20:00:44 ID:kBiLHBaf]
いや、戦巫女は ヤンデレ→(対象喪失)→狂 なわけだし、狂に至ったのは最終的なオチの部分だけだから
最初や最後はどうあれ、ヤンデレを主体に描いてればスレとしては全面おっけーだろ

209 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/06(火) 21:17:59 ID:9h7ihrTS]
>>186
ゴメソ、本編でも耕治はピオンの餌食にwww

>>187、恋人作りの作者様
お久しぶりでございます&GJ!
何かあっけなく祐人落ちそうですね(汗

>>195
どう見ても純愛です。このスレ的には。

>>196、ラック様
この場合、GJよりもこう言うべきなんだろうなw
「お美事、お美事にござりまする!」
・・・ていうかエロいっす。

>>201
スマソ、本ヒロイン出すの忘れてた←まて

>>205
>最初から狂ってたらそれはただの気違いだからね…
み、耳がいてぇorz


210 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 22:42:04 ID:ukQorpOi]
ヤンデレは病むだけでは成り立たない。異常なまでのデレが交じって初めてヤンデレといえるのだ・・・・・



211 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/06(火) 23:58:31 ID:9JXPWStO]
俺としては狂気からなる性倒錯を描いたものも美味そうに見えるけど。
ツンデレだって配分の違いでかなり様変わりするだろ?

212 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/07(水) 00:03:03 ID:kiMII5Zh]
投下します
注意 フタナリものです

「えっ、これって…」
放課後…、否命は自分の下駄箱に入っていた白い封筒を持って固まっていた。その封筒は団栗の代わりにハートを持った可愛らしいリスのシールで封されている。
何が書かれているかは明白であった。
その封筒を手に否命は嬉しいやら、恥ずかしいやらで頬を真っ赤にしていた。しかし、その表情はマンザラでもなさそうである。
(こういうの書く人、本当にいたんだ…。こんな方法をとってくるなんて、書いた人はロ
マンチストなのかな?うん、きっとロマンチスト!だって、このリス可愛いぃー!!あと
で、このリスのシールを何処で買ったか聞いとかなきゃ…て、えっ…こんなシールを使うなんて…もしかしてこの手紙を書いた人って女の子…なのかな?)
否命は辺りを見回し、人がいないのを確認するとリスのシールを破かないように丁寧に封を切った。否命の人生で始めての経験に、否応なく心臓の鼓動が高まっていく。
「「突然の、手紙で驚かしてしまったと思います」」
書き出しの文句を読んで、否命は思わず乾いた笑い声を上げた。
(やっぱり、この字って女の子の字だよね。だけど、なんか、見覚えがあるような…)
「「しかしながら、私の意を伝えるには最良の方法と思いましたので、このような手紙を書いた次第です」」
(恥ずかしがり屋さん…なのかな?)
「「大変申し訳ないのですが、今日の放課後、宜しければ…」」
(呼び出し?何処だろう…?体育館裏は汚いし、屋上は閉鎖されているし…)
「「スーパーで、
ジャガイモ200グラム
人参5本、
レバー500グラム
買ってきていただけませんか?本来ならば、私が行くべきなのですが、今日は大会前につき部活が長引きそうなので、お嬢様が行って下さらないでしょうか?
浅原沙紀」」
否命は拍子が抜けて、やはり乾いた笑い声を上げた。同時に自分がからかわれた事に気づいて少し不機嫌になる。



213 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/07(水) 00:05:06 ID:kiMII5Zh]
「もう、沙紀さんも…。はぁー、ビックリした」
否命は部活に入っていないが、沙紀は部活に入っている。
高校に入った時、沙紀はこれまで部活に入っていなかったのだが、幼い頃から剣道をやっ
ていた源之助に誘われて剣道部に入ったのである。その際に、勿論否命も誘われたが、否
命は自身の「ある事情」のため、源之助の誘いを断り「だったら、私も…」と断りそうになった沙紀を半ば強引に剣道部に入れたのであった。
否命の「ある事情」は、どうしても家に一人という状況でないと具合が悪いのだ。そのため、否命はどうしても一人になれる時間が欲しかったのである。
そういうわけで、否命は一人で沙紀よりも早く家に帰るのが日課になっている。
それにしても、このような手紙は心臓に悪い…と否命はもう一度、手紙を見直した。沙紀が確信犯であることは明らかであった。
っと、そこで否命は手紙の端っこに書かれてある文章に気付いた。
「「P・S 今夜はお嬢様の好きなカレーですよ♪」」
否命の頬は、既にニンマリとホッペが緩んでいた。沙紀にからかわれた不機嫌は何処へ行ったやら、否命は自然に足取りも軽く商店街へと向っていった。




214 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/07(水) 00:06:50 ID:kiMII5Zh]
スーパーでの買い物を終え、否命は商店街の道を鼻歌交じりに歩いていた。16時30分
という時刻なので、商店街は人のざわめきで賑わっている。しかし、その中でも一際、大
きなざわめきがあった。そのざわめきは自分のほうへ向ってくるように、大きくなっていく。否命は、なんだろう?…と、立ち止まり、後ろを振り返りざわめきを見ようとした。
その瞬間であった。
「どいて!!」
「えっ?」
否命がその声に気付いた時、否命は自分の身体に強い衝撃を感じた。否命はその声の主に弾き飛ばされる形で道端に尻餅をつく。
「悪いわね」
その声の主は早口でそういうと、後ろを振り返ることなく脱兎の如く走っていった。
どうやら、その声の主がざわめきの中心のようだった。
それから少し遅れて、二人組みの男が声の主を追うように走ってきた。
「待ちやがれ!」
「この餓鬼が!」
立ち上がった否命は、またもやその二人組に弾き飛ばされてしまった。
「悪いな」
その二人組みも、後ろを振り返ることなく先ほどの人物を追っていく。
「誰か、その餓鬼を捕まえてくれ!そいつは「スリ」だ!」
男の一人が叫んだ。
途端、ざわめきが大きくなる。
みるまに逃走する人間の前に人垣が出来上がり、もはや逃げ切れる雰囲気では無くなった。
しばらく、逃走していた人間は人垣の前をオロオロと廻っていたが、直ぐに二人組みの男に追いつかれてしまう。
前を歩いていた否命も、しばらくするとその光景に出くわした。
「さぁ、金を返して貰おうか?」
二人組みの男が、満足そうに言った。
「なんのことかしら?」
そういって、逃走していた人間は顔を上げた。その顔を見て、思わず周囲を囲んでいた野次馬の口から、おお!っと一斉に嘆声がこぼれ出る


215 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/07(水) 00:07:43 ID:kiMII5Zh]
それは女であるはずの否命も見とれてしまうほどの、美貌の少女であった。
年は丁度、否命と同じくらい・・・16、17に見える。肌は程よくうっすらと黄色がのって
おり、その背中までかかる長い髪はまるで濡れた黒檀の如く艶かしく輝いていた。それが
杏子のようにふくよかな頬と、桃のように品良く切れている顎、そして桜を含んだような朱色の唇を、一層際立たせている。
驚くほど、端正な顔立ちであった。
しかし、その少女の瞳は鳳凰のように凛としていながら、何処か濁っているような、鉛の如く鈍く光っているような、そんな汚さがあった。ただし、それを差し引いてもこの少女はこの世のものとは思えぬ美しさをたたえていた。
「とぼけるなよ、お前が俺から掏った財布のことだ!」
男の怒気を孕んだ声を受け流すように、少女はやれやれ…というように肩を竦めて見せた。少女の口元は、こんな状況に陥ったというのに薄く笑いが浮かんでいた。
「貴方が何を言っているのか分からないわ」
「俺は見たんだよ!お前が、俺の連れから財布を掏るのを…」
「貴方、それを本当に見たの?」
「だから、お前を追ったんだよ」
「そう…、それは困ったわね」
「だったら早く出しな」
「いえ、貴方を眼科に連れて行くべきか、精神科に連れて行くべきか…、この場合は、見えないものが見えたのだから、精神科のほうが適当かしら。いえ、やはりこの場合はむしろ眼科のほ…」
「この餓鬼!」
そう言って、男が少女の胸倉を掴もうとする。その男の手を、
「触らないで頂戴」
と、少女はバシッと払った。



216 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/07(水) 00:08:59 ID:kiMII5Zh]
男の顔が赤くなる。二人組みの男はどうみても堅気の風体ではなかった。恐らく地元の地回りなのだろう。顔には経験によって刻まれた凄みがある。
その男の、怒りに顔を歪めた表情は凄みが浮き上がり、他を本能的に怯えさせる何かがあった。しかし、その表情を見ても、少女は薄ら笑いを止めようとしない。
「お前は、自分の立場が分かっていないようだな」
「貴方は、自分の夢と現実の境界が分かっていないようね」
「ほぅ…」
呟くよりも早く、男は少女を殴った。
周りで成り行きを見ていた野次馬が息を呑む。
「金を出すんだよ、糞餓鬼!」
「だから、知らないって言っているでしょう?」
少女の顔から笑みが消えていた。代わりに冷たい刃物のようなものが、その顔に張り付いている。男も殴っても尚、口を割ろうとしない少女に苛立ちを募らせていく。
男と少女の間に窒息しそうな沈黙が流れていた。
「何やっているんですか!?」
その沈黙は、駆けつけてきた警官によって破られた。野次馬の誰かが通報したらしかった。
「どうしたんですか?」
警官が問うた。
「どうもこうもねぇ、この餓鬼が…」
「そこの男が!!!!」
言いかけた男の声を遮るように、少女は大声を出した。その大声に周りが水を打ったように静かになる。それを確認すると、少女は警官に向き直って言った。
「突然、奇声を上げたと思った次の瞬間には私に襲い掛かってきたの。そして、私が逃げたら追いかけてきた挙句に、私をスリといって詰ったのよ」
「この野郎、シャアシャアとぬかしやがって!」
「違う?」
「お前が、実際に俺の財布を盗んだ事がな!」
「丁度いいわ。お巡りさん、私のポケットの中を調べてくれる?」
「なっ…!?」
その言葉に男は少女の魂胆が分からず怪訝な顔をしたが、そう言われれば引き下がるほかなかった。
少女と男の会話で、事情を察した警官は、
「では、失礼します」
と言って、少女の前にしゃがみこんだ。
「しっかり、調べて頂戴」
少女の顔には再び、不敵な笑みが浮かんでいた。


217 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/07(水) 00:10:04 ID:kiMII5Zh]

警官は、少女の脇の下に手を入れると、ポンポンと少女の身体を叩きながら手を下ろしていく。別に、何も異変は無かった。
次に警官は少女に、ポケットをひっくり返すよう要求した。少女がポケットをひっくり返すと、そこから黒い財布が出てきた。
「これが…?」
男は無言で頭を振った。
そして、少女のポケットからはそれ以外のものは出てこなかった。少女は自分のシャツも捲ってみせる。やはりそこには何も無い。
「糞ッ!」
血を吐くように男が叫ぶ。
「盗まれたのは…?」
「盗んでいないわ」
少女が苦笑交じりに言う。
「財布だよ」
男が悔しげに言った。
その男と少女の会話を聞いて、警官は焦れたように言った。
「どうですか、一旦、交番までいって双方の話を…」
「「「交番」!!?」」」
その警官の提案を聞いた二人組みの男と少女の声が重なる。三人の表情は呆れる程、豹変していた。少女の顔からは笑みが消えうせ、男の顔からは凄みが消える。三人の目にはいずれも怯えの色が浮かんでいた。
「疑いが晴れたんだから、もう私から話すことなんてないわ」
「俺達も、金が掏られたぐらいで交番にいくほど暇じゃねぇんだよ」
「ああ、そういうこった。悪かったな、糞餓鬼…、俺の目が悪くてよ」
「耳も遠いのでしょう?」
「あっ?」
「だって、私が「やっていない」って言ったのが聞こえなかったものね」
「そうだよ!悪かったな耳も遠くて…」
「顔も汚くて…」
「顔も汚くて…」
「口も臭くて…」
「口も臭く…、こいつッ!舐めてるのかッ!!」
そういって少女を殴ろうとする男を、別の男が目で「止せ!」と合図する。
憤る男達を尻目に少女は悠々と、その場を離れていった。


218 名前:しまっちゃうメイドさん mailto:sage [2007/03/07(水) 00:10:37 ID:kiMII5Zh]
その成り行きを見物しながら、否命はある種の奇妙な感覚に囚われていた。どうも、さっきの少女は男に絡まれながらも、しきりに自分のほうをチラチラ見ていたような気がするのだ。それにどうも、身体の一部に違和感がある…。
気のせいかな?…と否命は自分に言い聞かせ、帰路を急いだ。
(はぁ、それにしてもすっかり遅くなっちゃった。早く家に帰って「アレ」をしないと沙紀さんが帰ってきちゃう。うん、そうだ、今日は近道を通ろう)
否命は不意に商店街を出ると、大通りを曲がり裏路地を通っていった。普段否命は、裏路地は汚いので通らないのだが、やはり時間は惜しかった。
っと、不意に否命は裏路地の半ばで違和感の原因に気がついた。自分の制服のポケットが異様に膨らんでいるのである。ポケットに入っているものはよっぽど分厚いらしく、その長方形の輪郭が布地越しにくっきりと浮かび上がっていた。
否命は恐る恐る、ポケットの中身を取り出しみた。
否命のポケットから出てきたのは、万札で今にもはちきれんばかりの茶色い札入れであった。
突如、否命の脳裏に少女が自分にぶつかってきた時の映像が流れる。
「これって…」
「そう、「私の」財布よ」
否命の振り向いた先には、あの少女がニッコリと笑って立っていた。

投下終わります

219 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/07(水) 00:27:13 ID:tEkPx5zr]
ヤクザ屋さん二人組がかわいそうです(´;ω;`)

220 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/07(水) 01:26:10 ID:nh5QuEj9]

投下します。
第五話目になります。



221 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/07(水) 01:27:01 ID:nh5QuEj9]

「伊藤は要注意だな」
「うん… でも何があったんだろう?」
「さぁな、何にせよ、伊藤はお前以外を敵と見做してる様だから、気を付けないと。
 特に夏月に対しては、かなり危険だな」
「危険…」
「ああ、目がヤバかった。危害を加えると思って、間違いないだろう」
「そっか…」
「お前は、夏月に付いててやれよ。俺が月曜まで泊まり込んでやるから、
 買い出しから家事まで、何でも扱き使え」
「悪い、東尉…」

兄さんと東尉君の声が聞こえる。

「……ぅ …んっ」
あれ? わたし、いつの間にベッドに寝たんだろう?
また気を失ってたの?

「夏月? 大丈夫? どう、気分は?」

兄さん… 兄さん…

「夏月!? どこか痛いの!?」

ごめんなさい… ごめんなさい…

「夏月…」

触らないで。兄さんが汚れてしまう。
けれど優しく撫でてくれる兄さんの手を拒めるほど、わたしは強くない。

ごめんね、兄さん。弱くて、猾くて、汚くて。
ホントに、ごめんなさい。兄さんを好きになって。
ごめんなさい。それでも、諦められなくて、ごめんなさい。

何も言わないわたしを呆れる訳でも怒る訳でもなく、ただ黙って兄さんは
頭を撫で続けてくれた。ただただ、優しく優しく、労わる様に。


「ごめんなさい… 食欲ないの…」
「夏月…」
兄さんと東尉君が作ってくれた折角の料理だけれど、少しも食欲が湧いてこない。
兄さんを困らせたい訳じゃないのに……

「ま、ダイエットになって、いいんじゃないか。
 けど、一口二口ぐらいは食え。体が持たないぞ」
「そうだよ夏月。夏月はダイエットなんかしなくても、スタイルいいんだし。
 無理はしなくていいから、食べられるだけ食べなよ」
わたしを気遣った兄さんと東尉君の軽口に、幾分救われたような気になる。
「うん… じゃあ少し食べるね」
兄さんがほっとしたように微笑むのを見て、どうしようもなく胸が苦しくなった。


222 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/07(水) 01:27:37 ID:nh5QuEj9]

静かな優しいピアノのCDの音と、兄さんと東尉君が捲る本の音。
時折ドアの開閉音と、内容は聞き取れないが二人の話し声。

「やっぱりあの女、また来てやがったぞ」
「え!? また?」
「あれはもうストーカーになりかけてるな」
「ホントに?」
「ああ、俺の事凄い目で睨みながら、俺と夏月が邪魔してるだのお前が可哀相だとか、
 訳の解らない事を捲くし立てて逃げてった」
「伊藤さん、一体どうしちゃったんだろう?」
「…お前に惚れてるんだろ」
「えぇ!? まさかぁ…」
「この状況でよくボケられるな、お前。要はお前とあの女の仲を、
 俺や夏月が邪魔してる、と、あの女は妄想して逆恨みしてるんだろ。
 多分、いや、絶対、無言電話はあの女の仕業だぞ」
「はー… 何で僕なんだろうね? 東尉の方がモテるのに…」
「俺が知るか。とにかく電話線は抜いたままにしておけよ?
 万が一、夏月が取ったら厄介だからな」
「うん。家の電話が使えないのは痛いけど、携帯があるしね。
 僕と東尉の携帯の番号は知られてないから、よかったよ」
「夏月のは?」
「夏月の携帯は電源切って、僕が持ってる。
 …それより伊藤さん、どう対処したらいいんだろう?」
「月曜に学校で本人と話してみるしかないだろう。
 それでダメなら、あの女の親に話すしかないだろうな」
「そっか… そうだよね」
「お前が気にする必要はない。下手な同情は、あの女を付け上がらせるだけだぞ」
「…………」
「陽太、間違えるなよ? お前の大事なものは何だ?」
「うん、解ってる。同情はしない」

優しいそれらに守られて、わたしはこの休日をほとんど寝て過ごした。



「夏月、絶対外に出ちゃダメだからね!」
「うん」
「絶対だよ!?」
「うん、解った。絶対に家から出ない」
「じゃあ、急いで帰ってくるから。僕が出たら直に鍵とチェーンかける事!」
「うん、解った。行ってらっしゃい、兄さん。気を付けてね」
「行ってきます」
兄さんの言い付け通りに、直に鍵とチェーンをかける。

好乃の様子がおかしい、と日曜の夜、兄さんと東尉君はわたしに言った。
具体的な事は何も言わなかったけれど、暫く距離を置いた方がいいとも言われた。
今のわたしは理由を聞くまでもなく、好乃とは関り合いたくなかったので、
素直に二人の言葉に頷くのに、ためらいはない。

223 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/07(水) 01:28:19 ID:nh5QuEj9]

色々考えなくてはいけない事があるのに、疲れて何も考えられない。
考えたくない。

リビングのソファーに座ると、寝過ぎている筈なのに目蓋が重くなり、
うつらうつらと睡魔に身を委ねる。


ピンポ―――ン……

ふとチャイムの音に目を覚ますと、兄さんが学校に行ってから三時間ほど経っていた。
少し迷ったけれど取敢えず玄関まで行き、ドアアイから来客の姿を覗いて見る事にした。

しかし恐れていた姿はなく、わたしよりも幾つか年上な男女二人が佇んでいた。
それも驚く程の美形。

好乃ではない事に安堵したわたしは、チェーンはそのままでドアを開けてみる。

「あの、どちら様でしょうか?」
「あら… ご機嫌よう。突然押しかけてしまって、ごめんなさいね。
 私は湖杜(こと)、こちらは射蔵(いぞう)。
 私達はあなたの親類に当る者で、本家から参りましたの」
湖杜さんは少し驚いた顔から一転して、女のわたしですらドキドキしてしまうほど、
艶やかな笑みを零してそう言った。
「あ、はじめまして。わたしは夏月っていいます。あの、立ち話も何ですからどうぞ」
湖杜さんの笑顔で一気に警戒心を無くしたわたしは、ドアを開け二人を招き入れた。

家にある一番いい紅茶を出し、湖杜さんと射蔵さんの向かいのソファーに落ち着くと、
湖杜さんが待っていたかのように、薔薇色の唇を開いた。
「実はあなたのお母様にお願いをして、手に入れていただいた物がありますの。
 伯母様は本家に送って下さると仰っていたのですが、こちらが無理にお願いをした
 ものですし、私達が取りに行くのが道理。
 それでお電話をしたのですけれど繋がらなくて、こうして来てしまいました。
 …夏月さん、何かお母様からお聞きになってないかしら?」
鈴を転がしたよりも綺麗な声で、湖杜さんが喋るのをうっとりと聞いていたわたしは
その問い掛けに慌ててしまう。
「え!? えぇっと… 母さんからは何も連絡きてなくて… えと……」
「そうですか。なら本家の方に届いているかもしれませんわね」

と、今まで黙っていた射蔵さんが、携帯を取り出すとわたしに向き直った。
「携帯、使ってもいいだろうか?」
うわー… 射蔵さんも、声まで美形だ。
「は、はい。どうぞ」
ありがとう、と微笑むと射蔵さんは携帯でどこかへ連絡を取り始めた。
その姿は携帯電話のCMのようで、隣で優雅に紅茶を飲む湖杜さんと共に、
有名人でも見るようなドキドキに、わたしは包まれていた。

そうして湖杜さんを見ていると、どこかで会った事があるような気がして首を捻る。
一度会ったら忘れられない容姿の湖杜さんと、一体どこで…?

224 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/07(水) 01:29:04 ID:nh5QuEj9]

「あ!」
思い出した!
「どうかしました?」
つい大声を出してしまったわたしに、湖杜さんは慌てる事無くにっこりと微笑みかける。
「あ、あの! 十年くらい前の本家の集まりに、湖杜さん来てましたか!?」
「十年前… ええ、居ましたわ」
「えぇと、お兄さんも一緒でしたよね!?」
「ええ、お兄様も一緒でしたわ」
不思議そうに首を傾げながらも湖杜さんは、わたしの質問にきちんと答えてくれた。

それからわたしは興奮しながら喋り続けた。

わたしが兄さんを、兄さんと呼ぶようになった事。
その切っ掛けになった女の子が、湖杜さんである事。
憧れの女の子が、湖杜さんで感激だという事。

湖杜さんも色々話してくれて、湖杜さんと射蔵さんがわたしと同い年だと解った。


二杯目の紅茶もなくなりかけた時、わたしの携帯がメールの着信を告げた。
わたしの携帯は兄さんが持っていたけれど、兄さんと東尉君以外からの着信は出ない
という約束で、出掛けに兄さんが返してくれたのだ。
画面を見ると東尉君の名前。二人に断ると、わたしは安心してメールを開いた。

――――――――――――――――――――――――
From:前園 東尉
Sub:あのさ
そっちの家に忘れ物して、今家の前まで来てるんだ。
カギ開けてくれない?
――――――――――――――――――――――――

いつものメールとは何かが違うような気もしたけれど、家の前まで来ている東尉君を
待たせる訳にはいかない。

「あの、知り合いが来るので、ちょっと席外します。
 すいませんが、待っていてもらえますか?」
兄さんにも湖杜さんと射蔵さんに会って貰いたくて、引き止めてしまった。
「ええ。こちらが押しかけているのですから、構いませんわ」
「すいません。すぐ戻りますね」
二人に軽くお辞儀をして、わたしは玄関に急いだ。


ピンポ――ン、ピンポ―――ン……

催促するようにチャイムが鳴る。
どうしたんだろう、東尉君? そんなに急に必要なものなのかな?

やけに響いた、がちゃりという鍵を開ける音に、どきりと心臓が跳ねる。
と、開けようとしたドアは外から急に開き、わたしは驚いてドアノブから手を離した。

「東尉…く……」

そこには、居るはずのない、好乃が嗤っていた。

−続−

225 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/07(水) 01:31:07 ID:nh5QuEj9]

以上、続きます。

226 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/07(水) 03:12:02 ID:WZFM4S60]
GJ!正直ここまで先が読めない話は始めてかもしれん。いい意味でな。
もはや好乃が何をしたいのか、誰を好きなのかもわからなくなってきた。

あと、すでに男衆が病みっぷりに感づいたり警戒する話も珍しいね。

227 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/07(水) 04:11:05 ID:qgEfrS+a]
GJ!!!!素晴らしい!!
凄く先の展開が気になりますな。

いよいよ湖社と射蔵がからんできた!
この二人は凄く好きなので活躍に期待。
好乃もいい感じに病んできましたね♪

次回も楽しみにしております。

228 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/07(水) 08:22:00 ID:I2EkBE7R]
GJッス! ヤベェ>>226じゃないけど先がよめねぇ! つかそれ以上に続きが気になる
つーか東尉サイコーw いや久しぶりに良い親友を魅させてもらいましたw
……だからこそ東尉の生死が気になるよ

229 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/07(水) 13:45:58 ID:tYawQ4Vo]
最近保管庫に動きないね。

管理人さん忙しいのかな

230 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/07(水) 14:39:10 ID:hTm/V+5s]
他のスレのSSも保管しているらしいからな。(>>111)
もしかしたらリアルで忙しいということも考えられるが。



231 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/07(水) 17:17:02 ID:/8lXnIgk]
>>225
GJ!好乃怖いよ好乃((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
あと東尉がいいヤツで泣けたw

232 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/08(木) 17:00:04 ID:53W0/tEB]
保守

233 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/08(木) 20:44:25 ID:wjPB/UdX]
へへ、まったくこのスレはマッタリしてやがるぜ!

234 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/09(金) 01:28:08 ID:wb9pdpD5]
投稿です。アブノーマルHネタ注意。
あとまとも?なヒロインをひとり登場させます。

235 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/09(金) 01:29:37 ID:wb9pdpD5]

ひっしゃげて肉の塊になった子猫を抱え、湿気を含んだ土の中に埋める。雪香が泥まみれになった両手を合わせた。
『お休みなさい』
その時、人の気配がした。さきほどとは打って変わり、雪香の背筋が硬直した。肩越しに振り返った。驚愕──死んだはずの母がこちらを見つめていた。
思考能力が低下した。目の前の人物を凝視しつづけた。間の抜けた声が雪香の唇から洩れた。
『マ……ママ』
『ママって誰だ』
                 *  *  *  *  *  *
雪香がベタベタと朧に甘えた。こうしているだけで幸せな気分に浸れた。死んだ母を雪香は思い浮かべる。優しい母だった。美しい母だった。
死んだはずの母──今、目の前にいる。もっと触りたかった。もっと甘えたかった。もっと抱きたかった。もっと──。
そこで理性が働いた。死人が蘇るはずなどない。第一、朧は母のような女ではなく正真正銘の男だ。朧が母と瓜二つなのはただの偶然の産物だろう。
雪香はそこで考えるのを中断した。どっちでもよかった。重要なのはふたりが今、こうやって一緒にいるという事だ。例え幻でもかまわない。
もし、これが夢ならば永遠に眼など覚ましたくはなかった。このまま朧を自分だけの物にしたい。強烈な独占欲が心の底からわき上がる。
嗅覚を駆使して朧の存在を確かめた。愛しい匂いがする。額を押し付けた。温かい。額、こめかみ、前腕の背、触覚の一番鋭い部分を使って楽しむ。
顔を引き寄せ、右瞼の上から朧の眼球を舐めた。目尻に沿りながら瞼に軽く舌をいれ、角膜の感触を味わった。
粘膜に傷がつかないように繊細な舌遣いで何度も味わった。眼球は完全な球体ではなかった。
角膜の部分が凹凸になっている。朧の涙腺が震えた。分泌される涙がしょっぱい。雪香は舌をはずした。冷たく乾いた風が肌寒かった。
「ねえ、雪香のおウチにこない。ここは凄く寒いよ。雪香のおウチは暖かいよ」
朧にも、さして断る理由は見当たらなかった。雪香が朧の袖を引っ張る。まるで駄々をこねる子供のようだ。
「おいでよ。それにあんなアンパンだけじゃ足りないでしょ。雪香、マ……朧にお料理つくってあげる」
「じゃあいってみようかな」
雪香の住まいは渋谷の裏──松濤の閑静な住宅街にあった。少し歩けば鍋島松濤公園が見える。奢侈な赤煉瓦作りの塀に囲まれた二階建ての邸宅だ。
敷地には一匹のドーベルマンが放し飼いにされていた。他の人間の気配は全く感じられない。
家の中にはいると雪香が急かすように朧を自室に連れ込んだ。清潔な室内だ。チリ一つない。窓際にはダブルベッドが置かれていた。
雪香がベッドに腰をおろした。朧を自分の左側に座らせた。物珍しそうに朧が室内を見回す。無邪気なものだ。
「じゃあちょっとまっててね。ご飯作ってあげるから」
朧を残して自室をあとにした。雪香がキッチンで料理を作り始める。
ベーコンと目玉焼きをトースターで焼いた食パンで挟み、コップにオレンジジュースを注いだ。サラダボールにレタスとトマトとチーズを盛り付ける。
自然に鼻歌がこぼれていた。顔の筋肉がほころぶ。雪香は至福に包まれながらオレンジジュースにギャバロンとロヒプノールを混入した。
朧にここから出て行ってほしくもない。それだけは絶対に避けたかった。逃がすくらいなら死んだほうがマシだ。
ではどうすればいいか。答えは単純だ。筋弛緩剤と睡眠薬を飲ませて動けなくすればいい。あとは手錠を嵌めようが縛ろうが自由だ。
出来れば自発的に留まって欲しかったがそれは無理な話だろう。ゆっくりと慣れさせていくしかない。
(食事も下の世話もセックスも全部お世話してあげる)

236 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/09(金) 01:31:00 ID:wb9pdpD5]
切なくも甘酸っぱい感覚が雪香を包み込んだ。食べ物をトレーの乗せて愛しい人の待つ自室に戻る。
「お待たせ。遠慮せずに食べてね」
サンドイッチとオレンジジュースを口に運ぶ朧の姿を横目で見つめながら、雪香はいつものように微笑む。聖母の如く。幼子の如く。
(朧。雪香は朧の事が大好きだよ。どんな事でもしてあげる。だから……お願いだから、雪香のママになってよ……)

藍色の闇が立ち込める空間。巴はいつものように東郷神社へと足を運んだ。もしかしたらまた逢えるかもしれない。
淡い想いを抱きながら玉砂利を見つめ続けた。確かに彼はここに居たのだ。言葉を交わすこともなく、ただその貌だけを一目見ただけの彼。
名前すらわからない彼。一目惚れだった。一度だけでいいから逢いたかった。
逢って──孤独を癒してほしかった。自分の物にしたかった。誰かに惹かれたその瞬間──人は愛に目覚める。
分かり合いたかった。彼と分かり合いたかった。血を飲みたかった。血を飲んでほしかった。人はその血によってのみ、お互いを理解し合える。
巴は幼い頃に血の快楽を知った。血の快楽に耽溺し、同時に自分が孤独である事を確信した。流れる血を想像しただけで疼く身体の芯。
身体中の細胞が発熱した。血液が沸騰する。切実だった。眩暈がした。もし逢えなかったら──巴の心に一抹の虚しさがよぎった。
(そんな事考えちゃ駄目。絶対に、絶対に見つけなきゃ)
雑念を頭から振り払う。夜空を見上げた。上弦の月が淡い光を放ち、星々がキラキラと華やかに輝いていた。瞳を閉じて、星に願い事をした。
(どうか逢えますように……)
                 *  *  *  *  *  *
全裸になった朧をベッドの上に仰向けに寝かせた。聖ドメニコの彫像のように眼を閉じて動かない朧──雪香は眠り続ける朧の頬にそっと唇を重ねた。
薄明に際立つその美しい横顔。胸元に指を這わせて擦る。雪香の相貌が妖艶に唇を歪ませた。
雪香の嫣然としたその姿は、類まれなる美貌の悪魔とすら錯覚してしまいそうだった。腋下に鼻を忍び込ませて嗅いだ。くすんだ汗の匂いがした。
(ママ……ママ……ッ)
母と過ごしたあの日の記憶が鮮明に蘇る。舌を窪みに絡ませ、上下に激しく動かす。唾液が地肌を濡らした。興奮に拍車がかかった。
腋から胸板へと舌を回遊させ、愛くるしい乳首を小鳥のようについばむ。母乳を求める赤ん坊のように吸った。ペニスに触れる。

237 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/09(金) 01:31:48 ID:wb9pdpD5]
萎えて柔らかかった。前歯で乳首を咥えながら、懸命に指を遣った。それでもペニスは硬くならない。眠っているからだろうか。
雪香はペニスを後回しにした。欲情の露に瞳を輝かせ、雪香は愛液にまみれて濡れ光るラビアを朧の太腿に塗りつける。
匂い付けだ。動物のマーキングに近い行為だった。雪香の唇から洩れる甘い歓喜の吐息が聴こえてくる。
「ああ……ママァッ、いいよ……ッッ」
よがり狂いながら腰を使い続けた。吐息が一層激しさを増す。激しい吐息に雪香は咽いだ。身体が火照りつく。
「ンァァッ……ンンッ」
包皮を被ったままの敏感になったクリトリスが肌に擦れて喜悦を与えた。素晴らしいエクスタシーだ。このまま永遠に肉欲の愛を貪りつづけたい。
それは雪香の痛切な願望だった。頬の筋肉をこわばらせ、熱い蜜汁をしたたりおとしていく。朧の太腿にこぼれる蜜汁がシーツに伝って染みをつけた。
激しい愉悦感に浸りながら、かぶりをふってセミロングの髪を振り乱した。毛穴から滲む珠の汗が宙に踊る。
「クハアァァ……ッッ」
情欲に上ずる声。雪香の脳裏に白い閃光が走った。痺れるような快感が背筋から這い上がる。
「い、嫌ッ、嫌ッ嫌ッ、まだいきたくないよォ……ッ」
叫んだ途端、雪香の子宮が痙攣した。身体が痙攣した。絶頂感に身体を支えきれなくなり、横様にベッドの上に崩れ落ちる。
雪香は大声で泣いた。れが哀哭なのか号哭なのかは、雪香自身にも分からなかった。意識が徐々に遷移する。
朧と同様に雪香はベッドの上にその身を横たえ、身じろぎもせずに薄目を開けたまま焦点の定まらぬ瞳で朧を凝視し続けた。

蕩けるような余韻から覚め、雪香は我に返った。心地よい倦怠感が身体を支配している。朧はまだ眠っている様子だ。壁に掲げられた時計を見る。
時刻は午前四時二十五分。どうやら六時間近く眠っていたらしい。窓を見やった。外はまだ暁闇だった。あと二時間もすれば朧も眼を覚ますだろう。
警察が使用する安全装置無しの硬化スチール製手錠を両手に嵌める。最初は後ろ手にしようかと思ったが可哀想なので止めた。
双腿をぐいっと開き、臀部を少しだけ突き出させる。全てが雪香の目前に曝け出された。ペニスを口腔内に埋め、蟻の門渡りを指で弄ぶ。
その雪香の様子を薄目を開いて朧は静かに観察していた。

238 名前:ラック ◆duFEwmuQ16 mailto:sage [2007/03/09(金) 01:34:19 ID:wb9pdpD5]
今回の投稿分終了。ちゅぱっちゅぱっ。

239 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/09(金) 02:43:52 ID:YHRXPdS2]
あらかじめ言っておきます。
各作者の方、無断で描いたものをうpする自分をお許し下さい。
というわけで詰め合わせセット。

imepita.jp/20070309/090680
これはあれだ、誰か塗って下さいっていう卑しい下心の現れだ。

imepita.jp/20070309/085460
鉛筆画。血とかカラーで描きたかったけど色鉛筆しかないので断念。

imepita.jp/20070309/084480
首輪がどんな感じか分からなかったので勝手にデザイン。しかしデカすぎる。

imepita.jp/20070309/081610
氷雨の口元とか手元を汚しているのはホワイトチョコレートだと言い張って止まない。

なおそれぞれのタイトルは「原作タイトル/絵のタイトル」の形になっています。

240 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/09(金) 02:45:21 ID:YHRXPdS2]
二番目と三番目の絵とコメントが逆になってました。すいません。



241 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 02:59:16 ID:4NxywN0g]
>>240
なんで氷雨はスク水なんて着てるんスか! 抱いて!

242 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 03:30:21 ID:jeUFwSZb]
>>235-237
乙です
なんか面白い病み方ですね。変種というか。期待してます

243 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 07:05:28 ID:4ACLCuan]
>>238
病みが性癖に繋がっているというヒロインも面白いです。
>>239
多作品の絵キタワァ(n‘∀‘)η
なぜスクール水着wハァハァ(*゚∀゚)=3

244 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 08:37:15 ID:hWSXdwnk]
>>235-237
もつかれさまですー。
なんか不思議な感じのする話だな。朧はママの代理かw

245 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/09(金) 11:22:34 ID:DjCAun4P]
保守age

246 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/09(金) 11:40:10 ID:n7JaJ+Ba]
allenemy.fc2web.com/novel/novel.html

247 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 11:52:41 ID:YHRXPdS2]
勝手に個人サイトのリンク張るなよ。

248 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 12:19:50 ID:GcP5HZnw]
志村ー!中身!中身!

249 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 12:27:38 ID:TQKj//QR]
個人のサイト張るのはマズイだろ…

250 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 12:32:22 ID:r1B9Kkpp]
どうして保管庫のリンクにそこが載ってないのか考えろっての。



251 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/09(金) 13:13:48 ID:n7JaJ+Ba]
すまん

252 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 13:18:20 ID:YHRXPdS2]
それとsageろ。

253 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 15:09:48 ID:n48HZTGQ]
>>239
俺の書いたSSでイラスト化をされたのは初めてです!!
マジでありがとうございます!!
抱えきれない程のGJ!!


さて、投下しますよ

254 名前:『首吊りラプソディア』Take5 mailto:sage [2007/03/09(金) 15:11:08 ID:n48HZTGQ]
「成程、そんな訳でござったか」
 俺に乳を洗われながら、感心したようにフジノは頷いた。
「それは災難でござったな」
「仕方ないけどな」
 ここは俺が宿泊している罪人専用のマンション、と言ってもSSランク専用のものなので
俺しか住んでいない。極秘の内容なので誰にも聞かれないように、と考えた結果の場所が
ここだった。最初は断られたらどうしようかと思っていたが、素直な彼女は相手が俺だと
いう理由もあるのだろうが、大人しく着いてきてくれた。そして今しがた、俺が不名誉な
扱いを受けている理由を説明し終わったところだ。
「すまんな、連絡してやれなくて」
 ボディソープを掌に垂らし、歩く泡立てて尻を撫でる。
「虎吉殿なら大丈夫だと信じていたでござるよ」
 軽く笑みを浮かべながら言ってくるが、それならば何故刀を抜いて斬りかかってきたの
だろうか。それを指摘すると一瞬言葉に詰まり、目を反らして乾いた笑いを響かせる。
 白々しいが、フジノらしくもある。
 腕や脚も洗っていると、また細かい傷が何箇所か出来ているのに気が付いた。細かい傷
なので注意をしないと見えないし、数も多くはないが、れっきとした傷だ。今回の刀集め
はかなり大変なものだったらしい。フジノが傷付く戦いをするということは、それ程凄惨
なものだったのだろう。自分のことでもないのに、その光景を想像して身震いをした。


255 名前:『首吊りラプソディア』Take5 mailto:sage [2007/03/09(金) 15:11:53 ID:n48HZTGQ]
 泡を全て洗い流し、体をバスタオルで拭うと細い体を抱え上げた。
「あ、ちょっと待って下され」
 そう言ってバンダナを取ると、顔に巻き付ける。
「これで良し」
「そうか」
 ベッドに降ろすと、突然唇を重ねてきた。いつもならば少し話をしてからなので驚くが、
俺もすぐにそれに応えるように舌を伸ばす。無骨と言うより真っ直ぐな彼女の性格が関係
があるのかは分からないが、あまりキスは上手くない。その代わりに丁寧なそれは、俺に
とっては可愛いものに思えてくる。技術よりも、気持ちの問題だ。
「けど、今日はやけに激しいな」
「それは」
 唇を離すと、フジノは少し不満そうな顔をして目を反らした。
「虎吉殿が何度も誉めていた人が居たから、気になったのでござるよ」
 こちらを上目遣いで睨み、
「浮気はしてないでござろうな?」
「しないさ」
 随分と可愛いことを言ってくれるが、そんなに信用が無いのだろうか。俺はこんなでも
フジノ一筋のつもりだし、余程の美女が現れて二択を迫られてもフジノを取るつもりだ。
と言うか過去に実際そんなことがあったのだが、信頼はまだ足りないらしい。いや、信頼
の問題ではなく、フジノの場合は嫉妬心の方が強いからだろうか。
「安心しろ、カオリは大切だが家族みたいなもんだ」
 安心させるように言う。少し過保護にしていたから、フジノも勘違いをしたのだろう。
だがカオリは何だかんだ言っても妹のようなものだし、多分カオリもそう思っている筈だ。


256 名前:『首吊りラプソディア』Take5 mailto:sage [2007/03/09(金) 15:13:38 ID:n48HZTGQ]
「かたじけない」
「いや、こっちこそ。すまんな、馬鹿な恋人で」
 軽く首を振り、再び唇を重ねてくる。
「それよりも、バンダナうっとおしくないか?」
「平気でござる。元々そんなに良い顔でもないのに、これ以上見せたら酷いでござるよ。
恋人と言っても、流石に醜女とするのは嫌でござろ?」
 フジノは見慣れた苦笑をするが、俺は構わずにバンダナを取った。
「や、駄目でござるよ」
 視界には大きな火傷の後が入ってくるが、それを拭うように舌を這わせる。当然だが熱
は残っておらず、硬化した皮膚の感触が舌に来るだけだ。フジノが火傷を気にしているの
ならば、と思い、冷ますように何度も舌を這わせてゆく。左右の手は豊かな胸と股間へと
滑り込ませ、ほぐすように手指の先を埋めていった。
「だ、駄目でござる。火傷の跡なんて、汚くて」
「傷も自分の行動の証だと言ったのはフジノだろ?」
「それは、そうだか」
 形の良い顎に舌を移動させ、耳を弄びながら首筋を吸う。全身を確かめるように、引き
締まった腰や太股を指でなぞって、掌で確かめる。時折長い髪を手櫛で鋤くと、胸板な頭
を寄せて熱い息を吐いてきた。初めてのときはそれこそ不感症かと思っていた程だったが
体は慣れてきたらしい。本人はどう思っているのか分からないが、俺は良いことだと思う。
恥ずかしがって斬りつけてくるので、口が裂けても言えないが。


257 名前:『首吊りラプソディア』Take5 mailto:sage [2007/03/09(金) 15:14:32 ID:n48HZTGQ]
 首に跡を付けた後で鎖骨に唇を滑らせ甘噛みをして、溝に沿って舌を滑らせる。性感帯
はここと臍、尻なので丹念に愛撫する。胸を揉みしだきながら臍を擽り、尻を撫で回すと、
子供のように身を丸めて耐える。涙で潤んだ瞳が何ともエロい。
 それに興奮して、より愛撫を激しいものにする。抗議をするような目を向けてくるが俺
は気にせず続行、それが俺とフジノのやり方だ。たまにフジノにも何かしてほしいと思う
ことはあるが、理性がそれを却下する。こいつは剣を振るのも上手いし頭も悪くはないが、
こと色事に関しては恐ろしい程に無器用なのだ。以前何度か口でするのを頼んでみたが、
毎回食い千切られそうになってしまい断念した程である。必死に舐める姿は良かったが、
それだけで済むのならどれだけ良かっただろうか。
 思い出して少し息子が萎みかけたが、フジノの必死な表情を見て股間に手を這わせると
すぐに元に戻った。既に大分濡れており、入れる準備は整っている。
「入れるぞ? 力抜いてろ」
 感じやすい癖に濡れにくいという厄介な体質なので、少しでも乱暴にすると痛いらしい。
こればかりは仕方がない話で、フジノは目を閉じて頷いた。
「何か、変に盛り上がるでござるな」
「何が?」
「リアルな小道具ありだと、何だか胸が高鳴るでござるよ。悪いことをしているみたいで」


258 名前:『首吊りラプソディア』Take5 mailto:sage [2007/03/09(金) 15:17:13 ID:n48HZTGQ]
 イメプレと言うか小道具と言うか、突っ込むところが多くて迷ってしまった。そもそも
俺の首輪は小道具ではない、作った技術者も草葉の陰で泣いているだろう。おまけに俺を、
仮にプレイの一貫だとしても性犯罪者の目で見てほしくなかった。元々性犯罪をする気は
毛頭無かったが、ここに入り酷い扱いを受けたことで余計にその意思が固まった。将来何
か特別な理由があったとしても、例えば命と引き替えにしても性犯罪だけは絶対にしない
だろう。もう蔑んだ目で見られたりするのはご免だ。
 一人で妙なテンションになっているフジノの割れ目に竿の先端を当てがい、ゆっくりと
埋めてゆく。ぬめりが少ない代わりに、ざらついたひだが絡み付き強い刺激を与えてくる。
「あぁ、史上No1の罪人ちんこが拙者の中に!!」
 だから、止めろと言うのに。
 始めはふざけていたものの、それはすぐに止まった。腰を動かし始めると余裕が消えた
らしく、口の端から唾液を溢して喘ぎ始める。目尻からは大粒の涙が溢れ、胸は俺が腰を
動かすリズムに合わせて上下に揺れた。
 頬を伝う雫を舐め取り、鎖骨を吸い、尻を揉むと締め付けが更に強いものになる。普段
の姿からは想像も出来ない乱れ様、何度見ても心に響くものがある。押さえるように胸を
掌で包み、手指を埋めていくと、俺を跳ね除ける程に身を反らす。鼓膜を震わせるのは、
部屋の外にまで聞こえるのではないかと思う程に大音量の喘ぎ声。首輪を着けていること
の理由を説明したときとは別の意味で、このマンションを選んで正解だったと思う。もし
これがサキやカオリに聞かれていたら、からかわれるどころか洒落にならなかった。


259 名前:『首吊りラプソディア』Take5 mailto:sage [2007/03/09(金) 15:18:45 ID:n48HZTGQ]
 絞り取るようにくねる、しなやかな腰。フジノは何度も達しているようだが、俺の限界
も近付いてきている。悪いと思ったが腰の動きを加速させ、奥まで何度も叩き付ける。
「今日は、大丈夫か?」
「中に、欲しい、で、ござる」
 その言葉が決め手となり、俺は一気に放出する。
 引き抜くと、フジノは肩で息をしながら自分の股間を見つめた。
「虎吉殿、いつもより、薄い気が、するのだが」
「気のせいだろ」
 そうだろうか、と首を傾げ、股間をタオルで拭いながら、俺の顔を向いた。
「それは後で聞くとして。虎吉殿、拙者は明日から暫く暇でござる故、手伝いたいのだが」
「かなり危険だぞ?」
 構わぬ、と真剣な表情で横を向く。視線の向けられた先は、壁に立掛けられた六本の刀。
彼女の存在意義とも言える武器の群れが薄暗い灯りを反射して、まるで意思でも持つかの
ように不気味に輝いている。鞘から抜かなければ効果も何もない筈なのに、恐ろしいもの
に見えた。今にも自ら動き、襲いかかってきそうな程に。単品でならば俺も持ち、使った
ことがある。それに『聖』を入手した後は、暫く俺が保管していたのだ。だが六悪刀全て
が揃った今は、以前とは全くの別物に見えた。
 しかしその雰囲気は、フジノの手が伸びたことで一気に霧散する。
「愛しい男を守る為なら、体の一つや二つは惜しくないでござる」
 そう言って、その内の一本を取ると笑みを見せた。


260 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig mailto:sage [2007/03/09(金) 15:20:25 ID:n48HZTGQ]
今回はこれで終わりです

何て言うか、その……
ござる娘って良いですよね!?



261 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 16:04:05 ID:rJN2mUPQ]
 ,.――――-、
 ヽ / ̄ ̄ ̄`ヽ、
  | |  (・)。(・)|  
  | |@_,.--、_,>  
  ヽヽ___ノ

262 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 16:16:18 ID:N6fXrfKo]
>>260
>>261には萌えないが、一途な女の子には萌えるな。
しかし、二行目から「乳」という文字が出てくるとは。おっぱいおっぱい。

管理人さん。更新乙でした。
首を長く長く長く長くして待っておりました。

263 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/09(金) 16:54:35 ID:YHRXPdS2]
>>260
顎が外れる程の大音声で同意。
>>262
おっぱい!おっぱい!

つうわけで取り急ぎ描いてみた
imepita.jp/20070309/606820
満足のいく乳が描けたと思う。髪で隠れたけど。

264 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 19:25:04 ID:ZgrSWuqD]
>>239
自分の書いたキャラがイラストになるって嬉しいですね。イメージ固まるし
ありがとうございます

265 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/09(金) 20:37:57 ID:hzjoTyJX]

投下します。
第六話目になります。

266 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/09(金) 20:38:54 ID:hzjoTyJX]

「夏月ぃ、みぃつけたぁぁぁ♪」

あまりの事に、声が出ない。
どうして好乃が居るの? 東尉君は?

「ダ〜メじゃなぁぁいぃ♪ こんな所にぃ、隠れてちゃあぁぁあ♪」

メールは、確かに東尉君の携帯からだった。登録してるんだから、間違いない。

「あははぁぁあっ♪ 不思議そーな顔ぉ♪ 教えてあげよっかぁ〜」

好乃は後ろ手にしていた左だけ、わたしに差出す。その左手には見慣れた携帯…
東尉君の携帯電話!?

「これからメール出したんだぁ〜」

何で… 何で、好乃が東尉君の携帯を持ってるの!?

「何でかぁってぇ〜? あの男ぉ、邪魔ばっかりするのよねぇ!
 アンタを庇うしぃ、陽太さんに近付くなぁとかぁ、フザケた事抜かすからぁぁ…」

「頭ぁ殴ってぇ、階段からぁ突き落としてぇやったのぉぉ♪ あははっ!」

頭を… 殴った? 階段から、突き落とした?
嘘、嘘… じゃあ、東尉君は……

「あれぇぇぇ? 何でぇソコでぇ泣くワケぇぇぇぇ?」

どうしよう、どうしよう、どうしよう、東尉君が、東尉君が…!

「まぁ〜、これでぇ邪魔者がぁ一人減ったワケぇ♪」

わたしの所為だ… わたしの所為で、東尉君は………

「後はぁ、一番のぉ、邪魔者をぉ、始末すればぁ、いいのよねぇ♪」

ごめんなさい、ごめんなさい、東尉君、ごめんなさい。
わたしが、わたしが、わたしが……

「アンタが最大にして最高に邪魔なのよぉぉぉッ!!
 ムカツクのよぉ! 吐き気がするのよぉ! 汚らしいッ!
 アンタさえいなければアンタさえいなければアンタさえいなければァァッ!
 アンタがいけないのよォ!! アンタの所為よォォォッ!!
 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

「アンタなんかァァ死ねばいいィィィィィッ!!!!」

わたしが、居なかったら、こんな事に、ならな、かった……

267 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/09(金) 20:39:34 ID:hzjoTyJX]

思いの外、柔らかく優しく突き飛ばされて、訳が解らなくなる。

「あぁああぁあぁぁぁ… な、何で……」
好乃? 何が………

――――っ!!!!

どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、
どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうしてっ!?

「…っ…大丈夫? 夏月、怪我はない?」

どうして、どうして、兄さんが!? どうして!?

「なんでぇ? どうしてぇ? そんな女、庇うのぉ?
 なんでよぅぅぅぅっ! 陽太くぅぅんっっ!!」

手から、手から、手から、血、血、血、血が…!

「伊藤さん、落ち付いて… ナイフ、降ろして」

兄さんの、兄さんの、手、手、血、手から、手から、血が、血が、血、血血血……っ!

「陽太さんはァ、知らないからァ、そんな汚いィ女ァ庇うのよォ!」

やめて、やめて、言わないで! それだけは…
兄さんだけには、言わないでっ!!

「その女はねぇ… 陽太さんに恋しちゃってるんですってぇ!
 セックスしたいとかぁ、実の兄の陽太さんにぃ欲情してるぅ…
 浅ましくて卑らしくて穢らわしい変態なのよォォォ!!」

いやあ―――――――――――――――――――っ!!!!!!!!

「妹がぁ変態でぇ、陽太さん可哀相〜♪
 でもぉ、安心してぇ、あたしが慰めてぇあ・げ・るぅぅ♪
 あははははははははぁぁっ♪」

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
変態でごめんなさい妹でごめんなさい生まれてきてごめんなさい
汚しちゃってごめんなさい兄さん兄さんごめんなさいごめんなさい

「その前にィィ… その汚らしい穢らわしい目障りな女をぉぉ…
 殺してからねぇぇぇぇっ!!」


兄さん、ごめんなさい。
好きになって、ごめんなさい――――

268 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/09(金) 20:40:22 ID:hzjoTyJX]

  ***************************


四時限目が始まって東尉が居ない事に気付いた僕は、こっそり教室を抜け出し
人気のない屋上へ続く階段の下で、頭から血を流して倒れている東尉を見つけた。

慌てて駆け寄り、下手に動かすと危ないと思い、東尉の耳元で名前を呼び続けた。

「東尉!? どうしたの!? 東尉、東尉っ!?」
「…ぅっ……」
よかった… 息がある…
「東尉、今人を呼んでくるから、待ってろ!」

立ち上がり駆け出そうとする僕のズボンを東尉に掴まれ、慌ててしゃがんで
引き剥がそうとするが、逆に東尉に止められてしまう。
「東尉!?」
「…伊藤、だ… アイツ、に、やられた……
 俺の携帯、持ってかれた…… 夏月が… 危ない……」
「伊藤さんが!? 夏月…… いや、でも、お前の助けを…」

どこにそんな力が残っているのかと思うほど、東尉は僕の腕を強く掴んだ。
「ばっか… やろう…… 間違えるなって、言ったろ?
 陽太… お前の大事な、もの、は…… 何だ?」

僕の大事なもの―――

「ごめん、東尉。僕、行かなきゃ」
「当り、前だ… さっさと…… 行け」
「うん! ありがとう!」

踵を返し全速力で校内を走りながら、屋上近くに倒れてる人がいると叫び続け、
靴も替えずに校舎を飛び出すと、走ったまま携帯で救急車を呼んだ。

間に合え、間に合え、間に合え、間に合え!!
東尉、頑張れ! 夏月、無事でいてくれ!


走りながら思うのは、夏月の事。

ここ最近、情緒不安定だと思っていた。
特に酷かったのは、伊藤さんが家に来てからだ。
あれからずっと泣きっぱなしで、しかも声も出さずに、ぽろぽろと涙だけ零していた。
そして泣き止んだと思ったら、今度は食欲もなく寝てばかりいた。
伊藤さんに僕の事で何か言われたという事は、想像がつく。
しかし、ここ最近の夏月の情緒不安定さの原因が、それだけだとは思えない。
夏月とは、毎日一緒に行動していて、長く離れるのは授業中と家で寝る時くらいだ。
その間に何かあったとは、到底思えない。
それならなぜ? 夏月に一体、何があったんだろう?


解らない事だらけに苛立ちながらも、必死で走り続け、玄関に伊藤さんの姿が見えた。
その後ろ手に、鈍く光るナイフも。

269 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/09(金) 20:41:01 ID:hzjoTyJX]

心臓が嫌な音を立てる。
あのナイフを向ける先には、僕の大事なもの、夏月が居る筈だ。

間に合え、間に合え、間に合ってくれ!!


狂った様に捲くし立てる、伊藤さんの声が響く。
そして、

「アンタなんかァァ死ねばいいィィィィィッ!!!!」

振りかぶったナイフを左手で、右手はせめて傷つかない様にと優しく押し出した。

崩れ落ちる様に緩やかに倒れた夏月に安堵すると同時に、左手が燃える様に熱く、
遅れて痛みがやってきた。どうやら切られたらしい。

夏月じゃなくて、よかった…
流れ落ちる血を見ながら、そう思った。

「あぁああぁあぁぁぁ… な、何で……」
赤く染めたナイフを手に、伊藤さんは驚愕の表情で僕を見ていた。
しかし伊藤さんを気遣う余裕も理由も僕にはなく、倒れた夏月が起き上がり僕を見て
真っ青になってしまった事の方が気がかりで大事だった。
「…っ…大丈夫? 夏月、怪我はない?」
なるべく優しく押したつもりだったけど、どこかぶつけたりしてしまったんだろうか?
夏月はいよいよ真っ青を通り越して、顔の色が無くなってしまった。

「なんでぇ? どうしてぇ? そんな女、庇うのぉ?
 なんでよぅぅぅぅっ! 陽太くぅぅんっっ!!」
ああ、五月蠅いな。東尉の言う通りだよ。
でも今は、これ以上刺激しない方がいい。
「伊藤さん、落ち付いて… ナイフ、降ろして」
マズイな… 目がイっちゃってるよ…
さり気なく夏月を後ろに庇いながら、距離を計る。
と、急にこの場にそぐわない、いや、寧ろよく似合う笑みを浮べた伊藤さんに、
嫌悪感を覚え眉を顰めた。

「陽太さんはァ、知らないからァ、そんな汚いィ女ァ庇うのよォ!」
「その女はねぇ… 陽太さんに恋しちゃってるんですってぇ!
 セックスしたいとかぁ、実の兄の陽太さんにぃ欲情してるぅ…
 浅ましくて卑らしくて穢らわしい変態なのよォォォ!!」

伊藤さんが言った事は、きっとホントの事なんだろう。
けれど今の僕には、どうでもいい事だった。
そんな事より、目の前の夏月が心配だった。
自分の身体を掻き抱く様にしてがたがたと震え、その目は焦点が合っていない。


伊藤さんが、何かを捲くし立てているけど、どうだっていい
切られた左手や、振り上げられたナイフも、どうだっていい。


ただ、夏月の事が、心配で――――


−続−

270 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/09(金) 20:42:01 ID:hzjoTyJX]

以上、続きます。



271 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 20:53:47 ID:hWSXdwnk]
>>270
こえぇぇぇぇぇぇええええええ!!GJ!
ヒロインじゃなくてサブキャラがヤンデレって結構珍しいな。

しかし、よく考えれば好乃って別に東尉の事を好きだって言ったわけじゃないんだよな。
夏月がそう思っただけで。今更気がついたよ俺。

272 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/09(金) 21:13:12 ID:drinMGtk]
昨日一昨日の空白はなんだったんだというぐらいの大量投下が続いてますが、
いったい何があったのでしょうか?
とりあえずおにいたん2続編です。スマン、エロシーンまでいかんかった。


273 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/09(金) 21:14:08 ID:drinMGtk]
耕治がピオンの慰み者になった次の日。薫はとき子に連れられテュルパンに行った。
事務所に行くと前の店長と二人の若い女がいた。どちらかが問題の新店長らしい。
「てんちょうたん、こんにちわ♪」
「おや、かおるちゃんいらっしゃい」
前店長が薫に声をかけた。
「きゃ〜♪かわいい〜♪お兄ちゃん、この子どうしたの?」
お兄ちゃんと店長を呼んだ人物が問題の新店長なんだろう。癖の強い髪をポニーテールにしている・・・、
そういえば隣の女もポニーテールだ。こっちは癖のない直毛。
「ああ、こちらはうちの麻枝君と禾の森姉妹の下宿先の奥さん。この子はそこの一人娘なんだ」
「かぁる、でつ♪」
「うぁ〜かぁいいかぁいいかぁいいかぁいいかぁいいっ!!」
女は薫を抱きかかえると頬擦りしだした。すりすり。
「ほっぺぷにぷに〜たべちゃいたいぐらい〜」
「お、おねえたん、いたいでつ・・・」
「ああ〜もぉ〜こちらのおあじはどうかな〜♪」
女はなんと薫のスカートの中に手を突っ込み、パンツの中へ手を差し込んだ!
「ああ〜ん、ぷっくりしてすべすべでおいしそぉ〜♪」
「お、おねぇたん・・・」
「えみるちゃん!アンタって子は!公衆の面前でなにしてるの!」
ごんっ。
えみると呼ばれた女の後頭部に鈍い音が響き渡った・・・。


274 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/09(金) 21:15:10 ID:drinMGtk]
「みさとお姉ちゃん・・・いくら峰打ちでも鉈で殴るのは反則だよ・・・いたた」
「えみるちゃん!いくら愛しのえみるちゃんでも次やったら
この銘刀『義流餓座旨(ぎるがざむね)』の刃のサビにするからねっ」
「なんだその3機縦に並んだら照準が合わなくなるロボットみたいな名前は」
「あ、あたまわるいあてぢでつ・・・」
テュルパン事務室の応接セット。向かい合わせに山那親子と店長たちが座っている。
「では改めて」
店長は二人の女を紹介し始める。
「真ん中が今度からこの店の店長になる笑留(えみる)」
「樹元笑留です。よろしくお願いします」
先ほど薫にセクハラをはたらいた女が一礼する。
「そして端にいるのはテュルパン本部マネージャーの」
「樹元美里です。主人がいつもお世話になってます」
「あら、店長さん結婚されてたんですか?」
「二人は結婚したてほやほやなんですよ♪」
とき子の問いに対し笑留が答える。
「僕は今週一杯で新しく出来る店に転勤になるんです。後釜がこいつなんで、これからもよろしくやってください」
「それで耕治君は今までのマネージャーから店長代理兼マネージャーに昇格したんですよ」
コレは美里の言葉。
「おにいたん、えらくなったでつか?」
「そうよ。昨日そんなこと言ってなかったのに・・・」
「きのうはおにいたんのおちおきでいうどころぢゃなかったでつ」
「まぁ、耕治君何やったの?」
「えみるおねえたんにみとれてたでつ」
「うう〜ん♪あたしの美貌にみとれてたのねぇ〜えみる、こまっちゃう♪」
「やめろ、気持ち悪い」
「耕治君もいい線いってるんだけどな〜」
笑留は薫のほうを向き言ったあと、
「けど、あたしはかぁるちゃんのほうがいいな〜すりすり♪」
と、薫を抱きかかえてまたもやすりすり。
「ああんもうおもちかえりしたい〜」
「お、おねえたん・・・」
「なぁに?」
「あとでふたりだけのときおねがいするでつ」
「ああ!もう!我慢できない!!」
薫を抱きかかえたまま立ち上がる笑留。
「お兄ちゃん!ちょっと休憩!薫ちゃん、トイレと倉庫、どっちがいい?」
「落ち着かんかいこの性犯罪者!」
部屋から駆け出ようとした笑留の後頭部に、またも美里の銘刀義流餓座旨がヒットした。
「お、お姉ちゃん!薫ちゃん落っことしたらどうすんですか!」
「よくいうわ!片手で子供抱きかかえれる馬鹿力の持ち主が落っことすわけないじゃない!」
「この場合突っ込みどころはなぜ鉈が当たっても死なないのかという点だと思うんですが・・・」
「ああ、気にしないでください、いつものことですから」
口げんかを始めた笑留と美里の影でとき子と店長が話をしていた。
「いつもって・・・」

275 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/09(金) 21:16:20 ID:drinMGtk]
「もともとあの二人は同じ女子高の先輩後輩だったんですよ」
店長が自分とこの家庭の事情を説明し始める。
「実はあの二人・・・まぁ、女子高ではよくある話らしいんですが『一線を越えた』関係だったんですよ」
「レズビアン?」
「そうです。ところが美里が卒業後まぁ・・・いろいろありまして俺と付き合うようになりまして」
「まぁ・・・」
「それから口げんかが絶えなくなりまして・・・」
一方美里と笑留のほうは
「大体お姉ちゃんがえみるをこんなエッチな子にしたんでしょうが!」
「勤務中に発情するような教育をした記憶はありません!」
「失礼しまっす!」
修羅場の真っ只中、耕治が事務所の中に入ってきた。
「店長の二人とマネージャー!藍沢食肉の社長がお見えです。フロアのほうに顔を出してください」
「わかった。笑留、美里。挨拶行くぞ」
「はーい」「うん」
「山那さん達はもう少しここいてもかまいませんので」
部屋を出て行く際、店長は山那親子に声をかけた。
「はい。あとでお店のほうに入ってごはんいただきます」
「まつっ♪」
「う〜ん、かぁるちゃん、またね〜」
手を振りながら去る笑留。そして耕治は、
「んじゃ、薫ちゃん、後頼むね」
「あいでつ♪」
薫の手には、CD−Rらしき物体が握られていた。


276 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/09(金) 21:19:07 ID:drinMGtk]
まだ序盤だよorzやっと今回のヒロイン出たけど、ヤンデレモード突入はまだ先だなぁ・・・。
まぁ、既に病んでいるという気はするがw
早けりゃ明日に続きを。

277 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/09(金) 22:42:44 ID:4ACLCuan]
投下ラッシュキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!

>>260
>「あぁ、史上No1の罪人ちんこが拙者の中に!!」
吹いたw そしてなぜかとらとらの青海タンを思い出しました

>>270
好乃テラコワス
しかし夏月もかなり病んできているのか?

>>276
新ヒロインのあまりの変態っぷりにワロタw

とにかく全ての神々に感謝を(-人-)

278 名前:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs mailto:sage [2007/03/10(土) 01:07:27 ID:7iazo2nF]
管理人さんいつも乙です
諸事情でネットつなげず、もうちょっと投下遅れそうです。申し訳ありません

279 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 05:40:37 ID:NgPWeyDl]
待つさ、全裸で

280 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 12:44:22 ID:vJvlI5bV]
いじめっ子な女の子、新しい家族を受け入れられない姉妹、
そんな子が何かを切欠にその男を好きになったら。
大抵は、男が聖人君子のように優しくてそういう事を気にしない。

だが、もしここであまりにしつこい求愛に男が辟易しだし、
「あんな事しておいて今更蟲が良すぎるんだよボケェェ!!」って言ったら、
その子はどんな反応を示すだろうか。



281 名前:慎@携帯 mailto:sage [2007/03/10(土) 12:46:44 ID:tHytvgxB]
パソ壊れたorzというわけでしばらく消えてました。修理にどれくらい期間かかるかわからないですが、戻ってきたらまた投下します…申し訳ないです。

282 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 12:57:23 ID:OnfItCP2]
>>278>>281
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +

283 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 15:16:07 ID:0PoQcJ3E]
>>280
それは面白い展開になりそうだ。
つ〜かスゲー読みたいぞ!

よし!書きなさい!次の神は君だ!!

284 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 15:24:42 ID:jTUou5KW]
>>280
それなんてアニメ版SHUFFLE!の楓?
いや、あれは男が別の女を好きになっただけか

どっちにしろかなりその展開は良いな
とことん自分を追い詰めて壊れていって欲しいw

285 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 17:50:18 ID:YFgkeHdD]
>>280
そういうの好き。因果応報ざまぁwって思う。
そして病んでいくなんて素晴らしいね(゚∀゚)

ツン→デレ→ハァ?(゜Д゜)今まで酷いことしておいて何ソレ?→病ん→失せろ(゜Д゜)→重度ヤンデレ→ガクガクブルブル→拉致監禁陵辱等


物分りが良すぎる男が多すぎて、たまにはそんなのも見たい読みたい

286 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 18:38:35 ID:vJvlI5bV]
いやぁ、嫉妬スレの水燈の蒼い空とか転帰予報とか男の人が良すぎるだろって思ってなw

こういうのは、女が強引なアプローチをするまで男も過去を許して仲良くしていたのなら、
突き放した時のギャップで女に強いショックを与えられると思うんよ。

287 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 18:47:26 ID:346tozKB]
>>286
つまり、アニメ版SHUFFLE!の主人公が、
楓から告白された時に拒絶したらそれからどうなるか、と言いたいわけか?

288 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 18:58:48 ID:klYDtKZf]
いや、ここはツンしか見せてないツンデレ女を男が突き放したら
デレを見せるようになったけど「なにをいまさら」というほうが自然じゃないか?

男が女の家に借金あるとかひきとられたでいろいろ(性的な意味はあってもなくてもいいな。虐待はデフォか)されていて
宝くじとか働くとか遺産相続とかで借金を返しきって自由になって
女から男が離れていって
女が焦って「本当はあなたが好きだったけどあんなことでしかすきって表現できなかったの」とかいうけど
男が突き放す感じで「借金オワタ\(^o^)/俺始まったな」的に逃げ出して
女が病んで男を拉致監禁「人生オワタ/(^o^)\」みたいな

思いつきを並べただけなので良くわからんな

289 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 19:14:54 ID:346tozKB]
男に対して不器用な女が虐待(ツン)

男が女から離れていくときに思いを打ち明ける(デレ)

女、男に拒絶される。

「そんな……そんなこと言わないでよ!
 私、あなたのことが好きなの! あなたのためならなんでもするわ!
 そうだ! あなたをいじめてた母様と姉様を殺してあげる!
 だから私のことだけは信じて! お願い!」(ヤン)

ツンヤンデレ……?語呂が悪いな。

290 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 19:15:46 ID:vJvlI5bV]
だが、本当は好きだったのって言えばそれで女を受け入れる理由ができるからな。
いや、そういうのもいいかもしれんが。

そういえば>>286の例は両方とも姉と妹だな。
同じ条件のヒロインが複数だと、お互いに罪を擦り付け合ったりするのもいいかも。
「姉さんがあんな奴追い出そうっていうからいけないのよ!」
「何よ!あなたの方が私よりずっと男くんの事苛めてたじゃないの!!」



291 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 20:55:12 ID:cB3mdQ+B]
>>289
ツャンデレというのはどうだろう
発音は難しいが

292 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 20:56:48 ID:siP/H4Oi]
ツャンデレの誓い

293 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 20:58:40 ID:YFgkeHdD]
ツァンデレ\(^o^)/ハジマタ

294 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 20:59:52 ID:hUF2WUyA]
「ツン → デレ → ヤン」なら、
普通に「デレ → ヤン」の部分を取って

『ヤンデレ』

で良いんじゃないのか?


295 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 21:01:30 ID:LY0T5C1d]
TNDRYN

296 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 21:03:41 ID:346tozKB]
>>295
ツンドリャン?ツンドライン?

297 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 21:26:59 ID:Xj5OvZlj]
なんかチャンドラーみたいだな

298 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 21:30:12 ID:vJvlI5bV]
そういえば、本当は好きなのに意地悪するのがツンデレなら、
元々酷い態度を取っていたのに後に好きになるのもツンデレなんだよな。

299 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 21:51:16 ID:RsCrIV+4]
>>298
不思議だよな。
でも最初にツンツンして最後デレデレになるなら同じでいいんでね?

300 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 22:10:03 ID:vJvlI5bV]
いや、別物だろ。ツンが照れ隠しか本当に悪意が篭っているかで大きく差が出る。



301 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 22:12:31 ID:W+oljIgW]
流れd切るぜ

1週間ぶりにスレと保管庫にいけたんだけどすげー大量投下されてて驚いたぜ
管理人おつかれ!神々まじでGJ!
スレでリアルタイムでGJ言えないけど続きはどれも気になってる!がんがってくれ!
週末に保管庫のぞくのが楽しみで生き甲斐なんだぜ

読み手のお前ら雑談もいいけど作品の感想もな!俺の分まで頼むんだぜ!

302 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 22:20:49 ID:RsCrIV+4]
別物か。まぁ俺としては照れ隠しより本当に悪意があって、って方が好きかなww
>>301任せとけ!!作品書けないからせめて応援ぐらいしたいんだぜ!!

303 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 22:22:53 ID:346tozKB]
>>300
心底嫌いな男を突然好きになる、か……。ありえるのか?そんなこと。
あ、エロパロではあるのか。リアルではないだけで。

でも、ツン→デレ→ヤンは「ストーリー展開」でなるものだな。「属性」ではないか。


304 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 22:29:11 ID:vJvlI5bV]
>>303
水燈の蒼い空、転帰予報を読むべし。こういうときに便利なのがフラグだ。

305 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 22:36:24 ID:346tozKB]
>>304
トラさんのは読んだことがある。なるほど、ああいうのを言っていたわけか。納得納得。


しかし、フラグかあ……
俺の場合、「幼稚園からの幼馴染」っていうフラグがあったのに自分で潰しちまったからな……
いや、泣いてなんかないぞ。別にSSのキャラが羨ましいとか、そんなこと、無いんだからなあ…………

306 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 22:42:43 ID:ufpoBjt6]
>>304
>水燈の蒼い空、転帰予報を読むべし。こういうときに便利なのがフラグだ。

その二作品は面白いんですか?

ってか、皆が何に納得しているのかよくわからないんだけど

307 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 22:59:06 ID:hUF2WUyA]
面白いかどうかは個人個人によって違うし、荒れやすい話題だから省略。
納得したのは『ツン・デレ・ヤン』の三態変化がどういうものかという具体例が示されたからだとオモ。


308 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 23:16:32 ID:jTUou5KW]
>>306
その2作品はどちらも修羅場スレのもの、気になるなら修羅場スレ倉庫で
読める

どっちも未完っぽく 転帰予報はまだ修羅場の予兆しか見えない

共通点は最初、両親を失った主人公が養子に入る
家の姉妹に気に入られなかったところだな
で、なにかの事件を経て姉妹に好かれるようになると

309 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/10(土) 23:16:55 ID:NgPWeyDl]
デレ→軽いヤン→デレデレ→重度のヤン→崩壊

が理想

310 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 00:08:53 ID:GtqOAAXK]
ここはヤンデレスレですよっと

ここであっちの作品のことを延延語ってるのはスレ違いなことにいい加減気付こうや
あっちの作品のことはあっちでやってくれ



311 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 00:11:32 ID:kQkFMdZ9]
そもそも、嫉妬スレの作品を

どうして、ヤンデレスレの住人の人間が知っているのかと問い詰めたいもんだ

312 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 00:21:07 ID:Udv7kmz9]
嫉妬SSスレに浮気してると、ヤンデレスレに本当の意味で「釘」を打たれるぞ。
それはともかく、

ヤンデレスレは!

313 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 00:24:11 ID:IrR26brh]
向こうにもヤンデレは多いからね。単に参考の意でしょ。

314 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 00:27:44 ID:3f2K9cdf]
>>313
エロエロよー!って言ってやれよ…

315 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 01:31:59 ID:IrR26brh]
やなこった

316 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 01:56:45 ID:6VxX9yxI]
単純に住人がかぶりまくってるからでしょ。俺はこのふたつに加えほのぼの純愛も見ている。

317 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 02:14:52 ID:hk7vveW6]
そもそも複数のスレを見るなと言っているような気がしないでもない


……はっ!まさかリアルヤンデレか!

318 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/11(日) 04:46:28 ID:oNY2AiJ+]
一枚だけ置いときますね。
imepita.jp/20070311/169540
ラフ絵ばっかりですまぬ。

319 名前: ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:36:43 ID:+Tw/UoDg]
お久しぶりです。

>>318
戦巫女といい、着物は見ていて飽きないです、GJ!

それでは上書き10話投下します。

320 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:37:33 ID:+Tw/UoDg]
「今日一晩、加奈を俺ん家に泊めていいですか?」
 左隣にいる加奈の肩に左腕を回しながら、ほとんど有無を言わせない口調で訊いた俺と視線を合わせた君代さんは、
 一旦俺から自分の視線を加奈の方へと移し、加奈と数秒見つめ合った後僅かに口元を緩めながら静かに頷いた。
「ありがとうございます。明日の朝には帰しますんで、何か心配事あったらいつでも連絡下さい」
「ありがとう、お母さん。我侭言ってごめんなさい」
 俺と加奈は深々と頭を下げる、そんな俺たちを君代さんはただ笑顔で見送ってくれた。
 そんな気遣いに心から感謝した、正直今平常心でいられるだけでも凄いと思うのに。

 加奈の奇行を間一髪で止めた後俺は加奈を抱き締めていた、
 その光景は何秒か遅れて部屋までやってきた君代さんにしっかり見られていた。
 自分の娘が全裸で男に抱き締められているという見様によっては卒倒してしまう程の光景を目撃し、更にその後
 「一晩を共にさせてくれ」と追い討ちをかけられたにも拘らず憤慨しないのはかなりデキる人の証だと思う。
 それは勿論何年も自分の娘の幼馴染として接している俺を信用しての事だとは理解していたが、
 その『信用』というのが果たして”真の”了承の証なのかという事に強く疑問を抱いた。
 君代さんは俺と加奈の関係を知ってはいるが、実際の付き合いとしては高校生になってもキス止まりだった。
 だからそんな俺が”娘に『手』を出す訳がない”と解釈した上での了承であったとすれば、
 今夜俺が加奈にしようとしている事は君代さんに対する裏切りに為り得てしまう訳だ。

 確認したかったが、「”して”いいですか」なんてストレートに訊ける程俺の肝は据わっていない。
 この歳で尚且つ夜に娘を預けるんだからそれが”了承の証”じゃないかと勝手に話を進めようともしたが、
 今まで何度も世話を掛けてきて多大な感謝をしている君代さんに俺がそんな傲慢な態度を取れる筈もない。
 さっきから”『する』事しか考えてないんじゃ”と男が一度は抱く自己嫌悪に陥る中、
 顔を上げた俺と加奈に向かって君代さんが固い口を開いた。
「加奈を、よろしくね」
 一切屈折のない微笑を浮かべながら、君代さんは俺に向かってウィンクを投げ掛けてくる。
 少々刻まれている皺がいい具合に朗らかな印象を醸し出し、年齢よりも若く君代さんの顔を彩った。
 その表情が、俺にとっては”了承”という『”許可”の信頼』の何よりの証明だと理解してホッと胸を撫で下ろす。
 俺は「はい」と頷くと、傍らに置かれた加奈の荷物を持ち上げた後踵を返してドアを開ける。
「あっ、いいよ誠人くん、あたしが持つから!重たいでしょ?」
「すぐ向かい側までなんだから、気にすんなって」
 慌てた様子で荷物に手を掛けようとする加奈の手を軽く避けてみせ、包帯の巻かれた右腕で加奈の頭を軽く叩く。
 頬を膨らまして俺を睨む加奈を見て思わず笑いそうになるのを何とか堪えながら、俺はそのまま右腕を加奈の背中へと下ろす。
「失礼しました、君代さん」
「行って来ます、お母さん!」
 一旦君代さんの方を向いて一礼した後、再び踵を返し加奈は俺の後についていった。
 心の中で、もう一度君代さんにお礼を言った。



321 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:38:14 ID:+Tw/UoDg]
「誠人くんの家って、久しぶりで何かドキドキするなぁ!」
「確かに加奈の家に行く事がほとんどだったからな」
 先陣を切って自分の家のドアを開けた途端、加奈は俺とドアの間の隙間を縫うようにして家へと入り込んできた。
 辺りを見渡し驚嘆したような声を漏らしながら目を輝かせている加奈は、”初めて”ここに来たような感じだった。
 その様子を見て、幼き頃の懐かしい日々にタイムスリップしたような微笑ましさに満ち足りる一方で、
 加奈のその態度に俺との間の微妙な溝を感じ、荷物を下ろしながら項垂れてしまう。
 その初々しい仕草は、同時に『余所余所しさ』に繋がるようで、
 今までの俺と加奈で積み上げてきた年月や思い出を全否定されたような心地がしたから。
 そんな意気消沈中の俺とは対照的に、加奈は靴を脱いだ俺を手招きする。
「ねぇねぇ、誠人くんの部屋に行ってもいい?」
 ”部屋”という単語で思い切り卑猥な妄想が脳裏に過ぎったのは男の性だよなと先走りそうな自分を自制する。
 男ってのは『そういう事』に関しては一度決断すると頑なになるものなんだなと新たな自分を発見する。
「その前に飯食おう。こんな時間だし加奈も腹空いているだろ?」
 僅かに距離が置かれている加奈に左腕についた腕時計を見せつけ、現在時刻を確認させる。
「それもそうだね!」
 時計で時刻を確認すると、加奈は腹を擦りながら「えへへ」とはにかんだ。
 その動作が妊婦のように見え、慌てて頭の中でその像を払拭する。
 さっきから俺は自分の中で勝手に話を飛躍させ過ぎだな、自粛しないと嫌われるぞと肝に銘じながら加奈の下へと歩み寄る。
「そんじゃリビングで………あっ」
「ん?どうしたの誠人くん?」
 思わず情けない声を漏らした俺に加奈が下から覗き込むように問い掛けてきた。
 その顔が笑顔だからかなり罪悪感を感じてしまう、これからその笑顔を崩してしまうかもしれないから。
 言うのが引けたが、冷汗流し続けて突っ立っているだけでは事態は前に進まないので仕方なく加奈の目を見る。
「あのな、加奈………今日母さんいないじゃん?」
「そうだね」
「だからって訳じゃないんだが、その…なんだ………」
 言い渋っている俺を見つめる瞳に徐々に暗雲が垂れ込めているのが僅かに下がった眉毛から読み取れる。
 こんな不安そうな表情を向けられると余計に罪悪感が増す
 これ以上こんな表情を見るのは精神的に辛いので、思い切りをつけて真実を伝える。
「今日は俺一人の予定だったから、飯は”簡単な物”にしようとした訳であって…」
「家にカップ麺だけしかないとか?」
 先に結論を言われるとその悲惨な事実が生々しく突きつけられた気分になって黙り込むしかなかった。
 俺は後先考えない男だなと自分を責める事しか出来なかった…そもそも俺料理出来ないのによく女の子を家に誘えたな。
 頭の中で自虐的な発言を自らにぶつけている最中、加奈が俺の肩を掴んできた。
 その表情は妙に活気付いているというか非常に楽しそうなものだった。
「大丈夫だよ、あたしが作ってあげるから!」

322 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:38:58 ID:+Tw/UoDg]
「いやいや!俺から誘っといて飯作らすのはかなり気が引けるんだが…」
「でも作れないんでしょ?」
「うっ………」
 さらりと加奈に自尊心をズタボロにされた気がした。
 事実だから仕方ないとはいえ、これでは何だか母親の役割を加奈に押し付けているような感じがした。
 どうすればいいのかと思案している内に、加奈は鼻歌を歌いながら台所へと突き進もうとする。
「多分冷蔵庫に余り物位はあると思うから大丈夫だよ」
 軽くスキップ歩調の加奈の背中を見ながら、必死に俺にでも出来る事を探した。
 親がいなければ万年カップラーメン生活になるであろう男が料理で出来る事を考えながら早急に加奈に追いつく。
 俺とて男だ、いくら料理とはいえやはりそれを仮にも宿泊人である加奈に全てやらせるのは駄目だ、
 その一心でとりあえず今出来る最高の誠意を言葉に込める。
「そんじゃせめて、何か手伝わせて。俺が出来る範囲で何でもコキ使ってくれていいから」
 言った後自分でその言葉の意味を確認し、我ながら情けない譲歩案しか出せない事を嘆いた。
 沈んだ面持ちで加奈の表情を伺うと、先程から変わらない笑顔のままで応えてくれた。
「分かった、何でもコキ使ってあげるからっ!」
 どこにも捻くれたところのない真っ直ぐな視線を向けてくる加奈、だからかもしれないが、
 今の加奈の発言にまたもや脳内妄想が駆け巡りそうになった自分に酷く自己嫌悪した。
 加奈すまんな、君の彼氏は今現在どんな言動行動も自動的にエロに変換する中年親父みたいになってしまっている、
 加奈を横目で流し見ながらそう心の中で謝罪した。

「頂きますっ!」
 加奈は手を合わせながら意気揚々と叫んだ、しかし机に置かれているスプーンに手を伸ばそうとせず俺の表情を伺っている。
 どうやら目の前でいい匂いを漂わせている根源のオムライス、その味の評価を気にしているようだ。
 固い表情ではないが真剣味溢れる視線、これは失礼な事言えないなと思いながら俺も小さく「頂きます」を言った。
 結局このオムライスだってほとんど加奈が作った物だ、俺がした事といえば冷蔵庫から残り物の食材を取り出して、
 後は少々溜まっていた汚れ物の皿洗いをしただけだった。
 将来色々と料理出来ないと不便だなと今更気付き、これは明日以降母に料理を習わないといけないなと本気で思った。
 俺の決意はともかくとして…目の前の加奈と目線を合わせながら、加奈の成長ぶりに改めて感心させられた。
 小さい頃は二人共君代さんが料理を作る後姿を眺めていたのに、加奈の方はすっかりエプロン姿が様になっている。
 家庭的な事に関しては男はとことん女に置いていかれるなと女という存在の偉大さを噛み締めつつ、
 料理をしていた為長い黒髪を後ろで縛っている加奈に笑顔を向ける。
 さっきから料理に手をつけない俺を不審に思ったのか、「どうしたの?」と心配そうに尋ねてきた加奈をよそに俺はスプーンを取り
 恥ずかし気もなくケチャップで『MAKOTO』という文字を書きそれをハートマークで囲んでいるオムライスにスプーンを添える。
 割れた半熟卵の中から湯気の立つオムライスの欠片を意識的にではないが焦らすようにゆっくりと口に運んだ。
「美味っ」
 口に広がる絶妙な甘辛の風味に、加奈の顔を呆然と見つめながら思わず本音がそのまま漏れた。

323 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:39:34 ID:+Tw/UoDg]
「本当!?本当においしい?お世辞とかじゃなくて?」
「とんでもない!本当に美味いよ」
 加奈を称えながら俺は夢中でオムライスに食らいつく、そんな俺の様子を見ながら加奈は楽しそうに笑っている。
 そして俺の本音を聞いて満足したのか、加奈もようやくスプーンを手に取った。
「あっ、我ながら美味しい!」
 俺に笑顔を向けたまま”口に注ぎ込む”という表現がぴったりな汚い食べ方の俺と違って丁寧にスプーンを口に持っていった。
 そんな加奈を見ながら久しぶりに食べる彼女の手料理に俺は舌鼓を打った。
 しばらく夢中で食べる俺を加奈が嬉しそうに眺めるという奇妙な図式が静かなリビングの中で繰り広げられた。

「加奈、本当に悪いな」
 食事を終えた後、そう言いながら俺は二人分の食器を台所へと運んでいく。
 せめて自分に出来る事だけは加奈に迷惑をかけたくなかったので、食器に関しては俺の専売特許状態となった。
 食器を流し台に置き、蛇口を捻りながらどこか遠くの方を呆けるように見つめている加奈を盗み見する。
「結局自分の家で食うのと変わんなかっただろ?俺は本当の意味で美味しい思いしたけど、何か迷惑かけっぱなしだな」
「そんな事ないよ」
 ボーっとしていた加奈がいきなり表情を引き締めながらこちらを見てきたので少々驚いた。
 加奈はいつも抜けたような態度なのに妙なところでしっかりしているなと感心しながら、皿洗いを続ける。
「でも、いつもの味って何だか新鮮さに欠けたりしなかったか?」
「誠人くん平凡な味だなぁって思ったの…?」
「そんな訳ないだろ!」
 急に沈みそうになる加奈に慌ててフォローを入れる、事実本当に美味かったし、
 言葉では言えないが…”加奈と一緒に”食べれたんだから何でも美味いに決まっている。
 少々焦ったが俺の発言を受けすぐに元の笑顔に戻る加奈を見て一安心する。
「あたしはね…”誠人くんと一緒に”食べれるならずっと同じご飯でも飽きないよ」
 その言葉を聞いて思わず皿を落としそうになった、俺の心中でも読み取ったかのようなタイミングだったから。
 玄関先で感じた僅かな溝が静かに埋まっていく情景が自然と心の中で浮かんだ。
 言葉に表さずとも意思疎通の出来た感動を一杯に噛み締めつつ、加奈の方を向きほとんど勢いで伝える。
「お、俺もだよ!」
 言った後加奈の顔を見ると、その顔は沸騰するんじゃないかと思う位頬から耳まで真っ赤に染まっていた。
 つられて俺まで赤くなってしまう、そんな俺の顔を俺の言葉を受けた加奈が見てきて、お互いに可笑しく思った。
「あたしたち、客観的に見て、かなりバカップル…?」
「それでいいんじゃね?」
 そう言ってやると堰が切れたように加奈と一緒に笑ってしまった。
 スポンジでケチャップの痕を落としながらこの状況に多大な幸せを感じた。
 このまま今日何事もなかった事にしたかった、そんな俺を現実へ引き戻すように加奈が口を開いた。
「それじゃ…誠人くんの部屋、行っていい?」

324 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:41:01 ID:+Tw/UoDg]
 さっきまでの笑い声は突然途絶える、それは多分今神妙な面持ちであろう俺の表情が作り出した空気だ。
「あぁ…先行っててくれ。俺も食器片付けたらすぐ行くから」
「分かった」
 椅子から立ち上がった加奈が、静かにリビングから出て行った、途中俺の方を向いた気もするが今は顔を合わせたくない。
 水の流し音だけが響く台所内で、昨日から今日までの体験を頭の中で事細かに振り返る。
 『非日常』に更に『非日常』が食い込みかなり濃厚な二日間だった気がする。
 今は思い出したくない”あの女”との出会い、それによって加奈を泣かせてしまった事、
 加奈のあまりの変貌ぶりに驚いた事、そして先程危うく大切なものを失いかけた事………全て清算しなくてはならない。
 いつの間にか汚れが綺麗に落ちていた皿を乾燥機に入れながら、俺は決意を胸に加奈のいる部屋へと向かう。
 予行練習なしの恋人とのコミュニケーション、久しぶりの緊迫感に冷汗が流れながらも高鳴る心臓を何とか抑えつける。
 自分の部屋までの階段を一歩一歩上って行く、気のせいかやけに短く感じるのは、心の隅にある甘えが原因だろう。
 現状に甘んじていればいいじゃないかという俺の心の弱さ、意気地なさを露骨に感じ、それを払拭する。
 そして俺は部屋の扉の前に立つ、一つ間違えればまた加奈を悲しませるかもしれない、それでも開けなければならない。
 このままの関係ではいけないのだ、俺と加奈の二人にとって今のままでは今日のような事を繰り返しかねない。
 一度ここで積み上げてきた『互いの理解』というものを無視する覚悟がなければ常に崖っぷちにい続けなければならなくなる。
 そんな不安定な関係は御免だ、俺にとってもだが加奈に常時不安を感じさせるような事をするのは俺自身を許せなくなる。
 大丈夫だ、そう何度も言い聞かせながら俺は部屋の扉を開けた。
「お待たせ、加奈」
 俺が扉を開けた先、俺は部屋の中を見渡すがそこに加奈の姿は見当たらない………と思ったがすぐに見つかった。
 俺の部屋の中央に横たわっている皺だらけでくたくたの敷布団が変な形に盛り上がっている。
 しかも僅かに上下もしている、その幼稚且つ可愛らしい行動を見て本当に自分と加奈が同い年なのかと疑った。
 とりあえず、俺は敷布団のところまで歩み寄り、勢い良くそれを引っ剥がした。
「あっ!」
「何してるんだよ、加奈?」
 布団の中には加奈が猫のように丸まりながら横たわっていた。
 加奈は予想外だったのか一瞬驚きながらも、すぐに不機嫌そうな表情になった。
「見つけるの早過ぎだよ、誠人くん。もう少し慈悲の心というものはないの?」
「生憎、今はそれどころではないんでな」
 俺が少々鬼気迫る表情で加奈と顔を合わせると、自然と加奈の顔も引き締まった。
 俺の表情から何となくだが俺の真意を読み取ったようにも見えた。
 もう引き下がれない、覚悟を決めなければならない。
「加奈、話がある。何も言わず、聞いてくれ…」
 目線は外さない、外したら甘えが肥大化してこれ以上先の事を言えなくなると根拠のない確信を感じていたから。
 だが、加奈と目を合わせていれば無理矢理にでも言わなければならなくなる気がする、それは結局加奈に
 甘えているのかもしれない、それでもどうしても言いたいから、そこら辺の事は速やかに割り切った。
 そんな俺に、加奈は無言でただ頷いた。

325 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:41:47 ID:+Tw/UoDg]
「加奈、ごめん」
 まずどうしても改まってもう一度言いたかった事、この言葉なしにこれからを語るのは今の俺には無理だ。
 何も言わずただ俺を見つめ続ける加奈に、俺は話を続ける。
「今まで俺と加奈は上手くやってきていると思っていた。事実特に変な事もなかったし、このままでもいいと思った。
 でも、昨日今日の事を考えてやっぱ”このまま”じゃ駄目なんだと思った。俺たちは生まれた時からずっと一緒で、
 付き合いの長さで言えばお互い自分の親と同じ位だ。だからだったんと思う…俺いつの間にか加奈の事、
 全部分かり切った気でいた。加奈の為に今何をすべきなのかだとか勝手に解釈して自分の考えを押し付けてた。
 学校内では会わないようにしようだとか言ったのも、加奈の将来の事を考えての事だと言い聞かせて”分かった気でいる”
 自分に自己満足してたんじゃないかと思う。自分にとっての大切な事を加奈にとっても同じなんだってすり替えてしまって…。
 本当はどんなに付き合いの時間が長くたって、俺たちはまだまだ未熟なんだ。お互いを分かり切った気でいても、
 まだまだ言葉で意思を伝え合わなきゃやっていけない関係なんだ、離れちゃいけないんだと思う。こんな事言うのは
 俺たちの関係の程度を認めてしまうから本当に心苦しい…でも、俺は『妥協した幸せ』はいらない。手探りでも構わない、
 お互いに言いたい事を言い合って、嫌なら嫌ってはっきり言って、そういう高め合う関係を築いていきたい…。
 俺はこんな独り善がり甚だしい男だけど、それでも加奈を誰よりも好きだって自信を持って言える、お願いだ加奈。
 こんな俺でも、これからも付き合い続けて下さい」
 俺は一語一語噛み締めるように確認しながらその全てを加奈に伝え、頭を下げた。
 俺の話中、加奈は本当にただ黙って聞いてくれた、その心遣いに心に感動の波紋が広がる。
 いつだって加奈は俺の事を一番に考えてくれた、馬鹿な俺とは違い、常に俺の立場に立って尽くしてくれた。
 そんな掛け替えのない存在、失いたくない………俺には加奈しかいない、俺は加奈しか欲しくないんだ。
 必死に祈る中、耳に鼻を啜るような音が聞こえたので顔を見上げてみる、そして驚いた。
「加奈ッ!?どうしたんだよ!」
「だ、だって…まこ、誠人くんがそんな…そんな事言うから………嬉過ぎ、て………」
 加奈は顔を涙に濡らしていた、スカートの裾を握りながら必死に我慢するように下を俯きながら。
 また加奈の涙を見た、でも罪悪感は感じない、だって加奈は今”嬉しい”って言ってくれたから。
「な、何も泣く事…」
「誠人くん」
 不意に加奈は立ち上がり俺の首元に両手を巻き付けて抱きついてきた。
 いきなりの出来事に顔が赤くなりそうになるのを堪えるので精一杯だった。
 そんな俺の胸に顔を押し当てるようにしながら、嗚咽が漏れる口を必死に開く加奈。
「あたしだって…あたしだって誠人くんに………。誠人くんがあたしを好きだって分かってるのに、他の人に傷つけられた
 って分かると我慢が出来なくなって傷付けちゃった…。あたしの欲深さが、意地汚い独占欲で誠人くんを何度も…。
 本当なら嫌われて当然なのに、なのに誠人くんはこんなあたしでも受け入れてくれて…誠人くん…誠人くん………。
 こんな、こんなあたしでも、これからも付き合ってくれますか?」
 最後の方は聞き取るのがやっとな程小声だった、でも、想いは反比例するかのように俺の心に大きく響いた。
 俺は何も言わず、加奈のその体を強く抱き締めた。
 たとえ壊れてしまうと分かっていても離せなかったと思う、加奈が愛し過ぎたかたら…。

326 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:42:34 ID:+Tw/UoDg]
 俺は泣き止むまでずっと加奈を抱き締め続けていた、本当は泣き止んでも続けていたかったけど。
 俺の上着の胸の辺りが加奈の涙でびちょびちょになるまで濡れ切ったところでようやく加奈は泣き止んだ。
 泣き止んだ後は、床に座り込み加奈の黒髪を何度も何度も撫でてやった。
 そうしてやると加奈はくすぐったそうに笑う、やっと見れた加奈の笑顔に心中穏やかになる。
 いつの間にかずっと抱いていた不謹慎な感情は消え去っていた。
 加奈の笑顔さえ見れれば”そんな事”は取るに足らない事、俺は加奈に微笑みかけながら静かに問い掛ける。
「加奈、そろそろ風呂入って来いよ。もうこんな時間だし」
 机の上にある時計を指差す、すると加奈は何故か急に顔を真っ赤にした。
 自分の発言に何か変なところはなかったかを確認し、妙にもじもじしている加奈の顔色を伺う。
「加奈…?どうしたんだ、顔赤いぞ?」
「ひぇっ!?」
 すると突然素っ頓狂な奇声を発した。
 何だか瞳も妙に濡れていて、さっきまで泣き続けた子供のような姿とは違ってかなり大人びて見えた。
「ま、まま、誠人くん先に入ってきて!?」
「え?俺の後でいいのか?」
「だ、だだだ大丈夫だから!」
 全然大丈夫じゃないだろと言おうとしたが、何だか只ならぬ雰囲気なので突付くのは止める事にした。
 俺は立ち上がって箪笥の中から下着類を取り出すと、そのまま部屋の扉へと向かう。
「なるべく早めにあがるから、加奈も準備しといていいぞ」
「う、うん…分かったよ………」
 何故か俺と目線を合わせてくれない加奈、まぁその真意は風呂の後に聞こうと思い俺は部屋から出て行った。

     ―――――――――――――――――――――――――――――     

「ふぅ…」
 誠人くんの部屋に一人残されたあたし、とりあえず何考えてるのか読まれなくて良かった。
 それにしても、誠人くんがあそこまであたしを気遣ってくれていた事が本当に嬉しい。
 誠人くんは自分の事”どうしようもない男”だって言ってたけど全然そんな事ないよ。
 あたしを好きでいてくれないとあそこまで言えない、あそこまで想えないよ。
 やっぱりあたしと誠人くんの間には誰も割って入るなんて出来っこない、あたしたちは結ばれるべき二人なんだ。
 メルヘンチックな事を本気で信じながら、誠人くんが風呂からあがってきたらどうしようかと考えた。
 だって、この時間にお風呂って事は………”そういう事”があるって思っていいんだよね?
 誠人くんってキスまではしてくれるけどいつも”その先の事”はしてくれない、いいムードになった事も何度かあるけど、
 大抵はそこで終わってしまう。
 それはあたしを想っての事だって思う、友達に聞いたら男の人って”そういう事”に関してはかなり慎重なみたいだから。
 少し残念には思うけど、それがあたしを想っての事だとは分かってるから嬉しかったりもするんだよね。

327 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:55:00 ID:+Tw/UoDg]
 でも今のこの感じなら絶対………誠人くんだって”したい”って思ってると思う。
 こういう時になると自分の貧相な体に落胆する。
 牛乳飲んだりエクササイズしたりして色々と試したりはしたんだけど成長はほとんどしなくて、自分の体が恨めしくなる。
 そんなあたしでも誠人くんは愛してくれるだろう、だから見栄えのない分誠人くんの為に少しでも尽くさないと。
 あたしは頭の中で脳内イメージを膨らまそうとした、その瞬間突然何か音がした。
 それがバイブ音だと分かるのに数秒かかった。
 雰囲気が雰囲気なだけに一瞬その音に不埒な妄想をしてしまったのは誠人くんには内緒ね。
 それは置いといて、あたしはバイブ音の発信源である誠人くんの机の上に置かれている携帯電話を手に取る。
 ボタンを押しとりあえずバイブ音を止める、そして見てみるとメールが一通来ていた。
 誠人くんには悪いなとは思いながら、好奇心という小悪魔に勝てなかったあたしは携帯を操作する。
 ロックもかけていないところに自分への信頼を感じつつ、メールボックスを開き、そのメールの内容を確認した…。

     ―――――――――――――――――――――――――――――     

「加奈、もういいぞ」
 俺が部屋の扉を開けると、加奈は体育座りをしながら黙り込んでいた。
 その傍らには何故か俺の携帯電話が置かれている、何があったのか確認しようとした瞬間、加奈がすくっと立ち上がった。
 下を向き俺と目線を合わせないまま俺に近付いてくる。
 そして静かに口を開いた。
「誠人くん…”ちょっと”外行って来ていい?」
 下を向いたままだから表情は読み取れない、しかし、声色からして何となく嫌な予感がした。
 昨日の夕方、加奈に保健室での事を訊かれた時のような緊迫感を全身全霊で感じる。
 こんな加奈の様子を前にして、俺は………


 1・すぐに携帯電話を確認する
 2・そのまま行かせる
 3・止める



328 名前:上書き ◆kNPkZ2h.ro mailto:sage [2007/03/11(日) 05:57:33 ID:+Tw/UoDg]
投下終了です。最後の最後で連続投稿にひっかかって…orz
そして予告通りもう一回だけ選択肢をつけました。
後前の投下で次が最後と言いましたが、本ルートだけはもう少しだけ続けます。

329 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 09:04:40 ID:whD8sD7W]
>>328
いよいよクライマックスですかGJ!
加奈タンと誠人には幸せになってほしい
……と言いつつ島村さんとの決戦にもwktkしている俺w
( ´∀`)σ1

330 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 09:56:25 ID:IrR26brh]
今まで暴走していた二人の愛も、紆余曲折を経て幸せへと向かう。
これ、普通の純愛小説としても意外といけそうなところがいい。



331 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 11:02:42 ID:RkX+whuf]
GJ!
この後もっとグチャグチャになる展開を
予想して2で



332 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 11:45:42 ID:slVcKCdO]
いよいよクライマックスですか!
楽しみでもあり、寂しくもあり。何にしてもGJ!

情報が命。1で。

333 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 12:27:17 ID:4Nvtt4ck]
もちろん 2・そのまま行かせる 以外に選択肢はなーい!

334 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 12:52:54 ID:TXAO3X6Q]
>>327
3・止める

止めたらどうなるかなー?

335 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 17:00:28 ID:3f2K9cdf]
メールの内容が気になってしょうがない!!
だから1で!!

336 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 19:34:00 ID:ymj/Q6Tj]
2だろ!そして最終決戦。

337 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 19:48:43 ID:c6GNu5Dn]
みんなよく考えろ。ここは1.2.3の票数を同率一位にして3つ書いていただくべきだ!
それとも票数関係なしに3つとも書いてもらえるのかな?

まぁ、とゆーわけで3で

338 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/11(日) 23:21:10 ID:Ttj8iv5s]
まて、ただ止めるだけでは「面白くない」。
というわけで1だ。

339 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/11(日) 23:35:22 ID:3EkMifA6]
トリップつけますた。
間あきましたが第2話。


鬼葬譚 第二章 『篭女の社』

にばんめのおはなし
======================================

「そういえば、昼間儀介君が来ていた様だね」

夕餉を終えた父が、御膳を下げに来たあたしに不意にそんなことを言い出した。

「ええ。あいもかわらずのその日暮らしのようです。
 もう…もう少ししっかりして欲しいと常々思っているんですが…」

はぁ、とあたしは大きく嘆息する。
結局、あの後あたしはいくばくかの小遣いを儀介に包んでやった。
こういった甘やかしが良くないのだとはわかっているのだが…。

「はっはっは、確かにそこはいけないところでは在るけれど…儀介君は好人物だ。
 なかなか好感の持てる青年だよ」

苦笑しながらも儀介の肩を持つ父に、あたしは少しだけむすっとした顔をしてみせる。

「そんな事ありません。くだらない悪戯はするし、屁理屈ばかりいいますし、まるで子供です!」

思わず声を荒げるあたし。だが、父は小さく苦笑するだけだ。

「いやいや、男というのはいくつになっても子供のようなものだからねえ」

そして、そう言っておどけて見せる。


340 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/11(日) 23:35:53 ID:3EkMifA6]
「…随分とあいつの肩を持つんですね」

あたしは、そんな父の言葉にむすっとしながら、呟いた。
けれどそんなあたしを見て、父は優しく微笑むと優しく諭すような口調で続ける。

「彼は決して悪行には手を貸さない。
 天道に背を向けるような行動をしないということは、今の世の中なかなかできることじゃあないさ。

確かにここのところ、どこそこに盗人が入っただの、刃傷騒ぎがあっただのと、良くない話を聞く機会が増えた。
何かに、追い立てられるかのように生きていく人。それに押しつぶされてしまう人。
――あるいは、人という生き物は平穏に耐えられないのかもしれない。
だから、長く平穏が続くとそれを壊したくなるのかもしれない。

「…彼を信用してあげなさい。
 たとえ全ての人が彼を見捨てても、お前だけでも、彼を信じてやりなさい。…いいね?」

父は、最後の言葉は笑わずに、真面目な顔であたしに向かって諭す。
そんな父の姿に毒気を抜かれたあたしは、思わずはい、と答えていた。

======================================



341 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/11(日) 23:37:03 ID:3EkMifA6]
あたしは、小さく欠伸をしながら寝所へ続く廊下を歩いていた。
初夏の夜風が、青い草木の香をかすかに運んでくる。
つ、と見上げた空には、新円の月。
雲もなく、きっと明日もいい天気になるだろう。

「儀介…か」

父とあんな会話をした後のせいだろうか。
何故か儀介の顔が、声が思い返される。
月を見あげながら、あたしはあいつと始めて出会った日の事を思い返していた。

それは、昔まだあたしが小さかった頃の話だ。
小さい頃のあたしは、人見知りが激しいほうだった。
いつもいつも、人が来ると父の陰に隠れていた記憶がある。
そんなあたしにとって、祭事の日は、とても嫌なものだったのだ。

小さな神社ゆえ、父一人で祭事の全てをこなす事はどうしてもできない。
今でこそあたしという人手があるが、当時は知人や友人の手を借りて切り盛りをしていた。
祭事の日が近づけば近づくほど、普段はあたしと父しかいない神社に、人があふれてくる。
見知らぬ大人。
知らない顔、顔、顔、顔。
…その頃のあたしにとって、祭事の日ほど恐ろしいものはなかった。

ある時の事。
とうとう私はその環境に耐えられず、神社から泣きながら逃げ出した事があった。
怖くて泣いていたのか、一人ぼっちである事が寂しくて泣いていたのか…。
今となっては、良く思い出せない。
逃げだしたあたしは、社の近くの大樹の下で一人泣いていた。
泣いても泣いても、いや、泣けば泣くだけ悲しくなってしまう。
まるで、体中の全ての水を出し切ってしまうかのように、あたしは泣いていた。
そんな時の事。

『何泣いてんだよ、お前』

突然木の上から声がして、あたしは思わず泣き止んだ。

342 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/11(日) 23:38:30 ID:3EkMifA6]
顔をあげると、そこには木にぶら下がっている健康的に肌の焼けたやんちゃそうな男の子。
その男の子が、むすっとしながらあたしの顔を見下ろしていた。
あたしが、突然の出来事に泣く事も止め目を白黒させていると、その男の子はぴょいっと
あたしの隣へと飛び降りてきた。

『お前、ここは俺の隠れ家なんだぞ、みんなにばれたらどうするんだ』

詰め寄られ、どうしたものだろうかとおどおどしているあたしに向かって、
男の子はずいと手ぬぐいに包んだ飴をいくつか突き出した。

『一人で食べようと思ってたけど、お前が泣いてると美味くない。
 だから半分やる。その代わりにここの隠れ家の事、秘密にしろよ』

―――その時食べた飴が、甘く美味しかった事だけは、良く覚えている。


それが、あたしと儀介の出会い。
一人っ子で引っ込み思案だったあたしの手をとって、儀介はいろんな所へ連れて行ってくれた。
川で釣りを教えてもらった。
…暴れる魚に驚いて、思わず泣いてしまった。
木登りを教えてもらった。
…登ったきり降りれなくなって父に迷惑をかけた。
あたしが風邪をこじらした時、お見舞いといって花を持って来た。
…毒花で父が気付かなければ酷いことになるところだった。

儀介やその友達と遊ぶうちに、人見知りな性格も少しずつ良くなってきた。
…生来のおっちょこちょいの儀介と付き合ううちに、かわりにしっかりせねばと思い、
引っ込み思案だったあたしの性格も大分矯正された。

「…まったく、助けてもらってるのか、迷惑かけられてるんだか…」

苦笑しながらも、何故だか心の中があったかくなって頬が緩む。
その日あたしは、子供の頃儀介と遊んでいた頃の事を夢に見た。

======================================
あいも変わらずデレ描写が長いのは申し訳ないッス…


343 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:02:18 ID:jXgGt8Oy]
ここはやはり2を期待します

投下します 注意 フタナリものです

否命はその少女の笑顔に、鼓動の高鳴りを覚えていた。その少女の笑顔は深山に咲いた一輪の華の如き幽玄の美を持って、否命の心臓にまで迫る。
しかし少女の顔は圧倒的美を誇りながらも、瞳がその美を何処か歪なものに変えていた。まるで悠久の自然が作り上げた光景を、愚かな神が手を加えてしまったが故に、その無為の輝きを壊してしまったかのような…一言で言えば「不自然さ」があった。
「聞こえなかったの?財布よ」
その声に否命は現実に引き戻され、慌てて自分が手に持っているものを確認する。
「財布って……これのことだよね?」
少女は頷いた。
「そう、それよ。返して頂戴」
「返すって……あの男の人達に返すんだよね?」
「面白い子ね…」
言って、少女はスッと否命と顔が触れ合いそうな位置まで足を進めた。
「なッ、何?」
戸惑う否命に、少女は更に自分の顔を近づけるとニィーっと笑った。否命もつられて、口元がニィーっと歪む。
次の瞬間、少女は否命の額を指で弾いた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
声にならぬ悲鳴をあげ、否命は地面に蹲った。
少女のした行為は所謂デコピンというやつであった。それは単純に指で額を弾くという、暴行とは言えぬ、ある種の「戯れ」であるが、否命はそれによって額が爆発したような痛みに襲われていた。


344 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:03:31 ID:jXgGt8Oy]
「いい、良く聞きなさい!それは私が身体を張って、汗水流して、神経をすり減らして手に入れたもの。いうならば、私の努力の報酬なのよ!だから、私のもの…分かる?」
分かる筈ない。否命は地面に蹲ったまま、首を横に振った。
「さぁ、私に財布を…」
「駄目・・・だよ。それは、あの男の人のだから…、ちゃんと…返さないと」
「もう、返して済む問題じゃないんだよ、お嬢さん方」
その声に二人が振り向いた先には例の男二人組みと、その二人組みの仲間と思われる、これまた堅気の風体とは思えない一人の男が立っていた。
少女は咄嗟に逃げようとしたが、いつのまにかもう二人別の男が少女の前に回りこんでいた。
「チッ!」
計5人の男に囲まれ、少女は思わず舌打ちをする。しかし、それでいながら少女の顔はあくまで涼しげなままであった。
「さっ、俺の金を返して貰おうか。お嬢さん」
先ほどの事件がよほど金を盗まれた男にとって屈辱だったらしい。少女を追い詰めた男は嬉しくて、嬉しくてたまらない様である。
「もう、返して済む問題じゃないのでしょう?貴方の頭には、実は真っ赤なトサカが生えているようね」
「相変わらずの減らず口で…」
「貴方も相変わらずの臭い口で…」
少女の態度に男は苦笑を漏らす。余裕の笑みであった。
「で、そっちのお嬢さんは?」
「そう、私の「仲間」よ」
「ほぅ…」
「貴方たちは、運がいいわね。丁度今、「仲間」割れを起こしていたところよ」
「それは、それは」
そう言って、男は否命のほうに顔を向ける。
「成るほど。そいつが俺から盗んだ財布を、あんたが預かるっていう寸法だったんだな」
否命はしばらく、自分が何を言われているのか分からなかった。この状況に頭が追いついていないのだ。否命はこの男が自分に向けてくるプレッシャーに、ただ怯えていた。
「どうなんだ!えっ、そこの餓鬼とグルなんだろ!?」
「えっ?」
「その餓鬼と二人して、俺を嵌めやがったな!」


345 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:05:05 ID:MpTr3WJD]
そう言われてようやく否命は自分がこの男達に、少女と共謀したと思われていることを理解した。
「………、ちっ、違ッ、違いまっ、わッ、わッ、私は…そッ、その…あのの…」
緊張からか、否命の口調は滑稽な程たどたどしい。ここで動揺したり、焦ったりしたら、この男達に怪しまれるのではないか…そんな思いが逆に否命の口を不自由にしていた。
「私は…ポポポ、ポケッ、ケトに、その…さっ、財布を、いいい、入れられただけで…」
「哀しいわ。所詮、悪党同士の結びつきなんてこんなものだったのね」
否命とは違い、少女は声も顔も平常そのものであった。
少女はたとえ、否命のようなひ弱な女の子であっても、利用できるものは全て利用するつもりらしい。
しかし、その少女に目を付けられた否命は…。
「小便ちびりそうな顔しているぜ、嬢さん」
「漏らしちまいな。嬢ちゃんのなら、呑んでやるぜ」
口々に勝手な事をいいながら、前方の男は懐からナイフを取り出した。それは刃を折りたためば掌に収まるほどの大きさであった。不必要に殺さずに、相手を傷つけることを目的
としたものである。
少女は咄嗟に後方を振り向く。たとえ相手が三人でも、ナイフを持っていないのならば、逃げ道は後方にしようという魂胆である。
だが、後方の二人も懐から同様にナイフを取り出した。前方の三人と同じく、ナイフそのものは小さい。
「使うよ…、お嬢さん方」
最後に、少女に金を盗まれた男は懐から大きな登山ナイフを取り出した。
「最後通告だ。俺達にさんざんいたぶられた末に財布を渡すのと、財布を渡した後にいたぶられるのと、どっちがいい」
否命は力の限り首を横に振った。
哺乳類は刃物の光沢を見ると、本能的に恐怖する。それは本能的な故に例外のない事実である。しかし、少女の顔には未だに怯えの色はなかった。
恐らく、胆力で恐怖を顔に出さないようにしているのだろう…と男達は、少女の胆力に意外にも感心してしまった。
「なかなか、立派な面構えしてるな。だが、虚勢を張るだけで…」
「警察…」
少女がボソッと呟く。
「あっ?」
「集団で囲み、脅迫し、挙句に刃物…、もう警察は呼べないわね」
「ほぅ…」
前方の三人の内の一人が小さなナイフをちらつかせながら、少女に掴みかかる。
「触らないで頂戴」
っと、少女はその男の手をバシッと払いのけた。


346 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:20:09 ID:bHNY5Ni5]
「この餓鬼ッ!!」
叫ぶと同時に、男は少女の腹部を殴る。恐らく男は殴りなれているのだろう…男の拳はものの見事に少女の鳩尾に入っていた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
少女は腹部を押さえ、息を吸おうと口を死に掛けの金魚の如くパクパクと動かす。だが、激痛のあまり少女は息を吸えず、苦悶の表情を浮かべながら倒れるほうに男に近づいていった。遠目でも分かるほど、足元がふらついている。
「もう一発だ」
再び、少女の鳩尾に男の拳が抉りこまれた。少女の瞳の焦点が合わなくなっていく。少女は自分を殴った男に何かを求めるように、男の裾を掴んだ。
「さっきまでの威勢はどうしたのかな?」
と、男の口から嗜虐の笑みがこぼれた。同時に、周りで事の成り行きを見守っていた男達が一斉にその少女の無様な姿を見て笑い声を上げる。
っと、次の瞬間であった。
少女を殴った男の顔にベチャッと、何かが張り付いた。男はその物体に視界を遮られて、慌ててその物体を両手で払い落とそうとする。だが、ナイフを持った右手の手首は少女に捕まれ止まってしまった。
男の力ならば、少女の手を振り払うことは十分可能である。だが、視界を塞がれた男にとって自分の右手が動かない事態は、実際以上の脅威を持って男に迫った。咄嗟の事態で、男は軽く混乱しているのだ。
「こいつ…ゲロ吐きやがった」
誰かが呆然と呟いた。
その言葉が合図であったように、男の鼻孔に甘酸っぱいゲロ独特の匂いが広がる。そして、ようやく男は自分が顔にゲロを吐きかけられた事を理解した。
「こいつッ!!」
怒りに駆られ、男は全霊で持って少女を殴ろうとする。しかし、男は少女に右手首を掴まれているせいか、視界がゲロによって遮られているせいか、勢い余って体勢を崩しそのまま地面に倒れてしまった。
ぺきん!
という、枯れ枝を折るような音がした。
その音に、周りの全ての人間が呼吸を止める。男の顔はゲロにまみれても尚分かるほど、苦悶に顔を歪ませていた。
男の手首から先が消えていた。
切れたのではない。
男の右手は綺麗なアーチを描くように内側に折れ曲がっていた。掌が腕の腹にピッタリと張り付いている。何処か、冗談じみた奇妙な光景であった。


347 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:21:47 ID:bHNY5Ni5]
「ゴッ・・・・・・・・・アアアアアアアアアアアアァァァァァ〜〜〜〜!!」
男は倒れたまま、地面を転がる。
視界の遮られていた男には分からなかったが、男が少女を殴ろうとした時、少女は男の足
を払っていたのである。そして男が倒れるのと合わせるように、握っていた男の右手首を
内側に折り曲げたのだ。結果、男の手首は自分の体重分の衝撃を受け、ありえないぐらいに曲がってしまっていた。
確信犯であった。
少女は倒れた男の手からナイフを捥ぎ取ると、それを持って財布を盗すまれた男のほうへ近づいていく。
「おぃおぃ、俺達とやろうっていうのかい?」
男達は心臓が飛び出るほど驚いたものの、戦闘意欲を失うような人種ではなかった。既に、
咄嗟の事態に頭が追いついているらしく、ナイフを片手に少女を威嚇する。
しかし、少女はそれでも顔色一つ変えることなく無言で財布を盗まれた男に迫った。
「そんなチッポケなもので、これとやりあうってか?」
男は自分の大きな登山ナイフを振り回しながら、少女の持っている小さいナイフを笑う。
「………」
少女は既に財布を盗まれた男の眼前まで来ていた。その少女の首筋に財布を盗まれた男は、
登山ナイフをあてる。ツゥーっと、少女の首筋から赤い血が細く流れた。少女はそこで動きを止める。
「餓鬼、もう歩いて帰れな…」
次の瞬間、なんの躊躇いもなく、少女は財布を盗まれた男の顔をナイフで切りつけた。
周りが水を打ったように静かになる。それから、一拍おいて男の顔から血が噴出した。
「これで、トサカの生えている貴方の汚い顔も大分マシになったわ」
いつも変わらない調子で、いつもと変わらない顔で少女は言った。


348 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:22:58 ID:bHNY5Ni5]
「やってくれたな!もはや生きて帰さんぞ!!」
それでも、この男は戦意を失うことも、取り乱すことも無く、少女に登山ナイフを振るおうとする。
だが、財布を盗まれた男が少女にナ登山イフを振るうよりも早く、少女は男の登山ナイフを持っている右手の甲をナイフで突き刺していた。
「〜〜〜ッ!」
思わず、財布を盗まれた男は登山ナイフを取り落としてしまう。その登山ナイフを少女は驚くほどの素早さで拾い上げた。
「お前ッ、アアアアアアアアアアア!!」
男の顔が驚愕で見開かれる。少女は、まるでマウンドに立つピッチャーの如くその大きな登山ナイフを大きく振りかぶっていた。
脳天から顎まで一直線。まさか…と思う財布を盗まれた男の脳裏に、自分の頭が西瓜の如
く真っ二つになっている光景と、直前の何の躊躇いもなく自分の顔を切りつけた少女の顔が浮かんだ。
「ヒィッ…」
流石の男も限界であった。恥も外聞も無く、財布を盗まれた男は両手で頭をガードした。
少女の登山ナイフが半円を描いて男に迫る。
「―――――――――!!!!」
少女の登山ナイフは男の両手ギリギリのところで止まっていた。
目を閉じていた男は、自分が無事なのを確認すると安堵のあまり地面にヘナヘナと座り込
んだ。その男の股間を少女は蹴飛した。「ウッ」と短い呻き声を発して財布を盗んだ男はとうとう気絶する。
あまりの事に、少女の回りで声を発するものは誰もいなかった。


349 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:24:04 ID:bHNY5Ni5]
「クリーニング代……」
静寂を破るように少女が呟く。
「聞こえなかったの?クリーニング代よ」
「えっ?」
前方の三人組の残った一人に少女は声を掛けた。男はあまりの事に目を白黒させている。
「貴方達が汚したのよ。クリーニング代出してくれるわよね?」
そういって、少女は自分のシャツを摘んでみせる。
「あっ…ああ、はい」
男は少女の上着が返り血で紅くなっているのを見ると、これまた分厚い財布から一万円札を一枚取り出し少女に渡した。
「………」
少女は無言で男の手から財布をかっぱらうと、その中に入っていた札束を無造作に掴
み取る。その札束をポケットにしまうと、少女は半ば放心している男に薄くなった財布を投げて返した。
「それと、上着も貸して頂戴。このままじゃ、家に帰れないわ」
後ろで呆然としていた二人組みと、前方の残った一人が無言で目を交わす。そして、後方の男の一人が自分の上着を脱いで少女に渡した。
否命はもはや気が動転して歩くこともままなかなかったが、それでもフラフラと帰路を急ぐ。しばらくは何も考えられそうになかった。
「ありがとう。じゃあ私はこれで失礼するわ。あと、救急車ぐらい呼んであげなさい」
そういって、少女は否命の後を追った。
少女はまだ、否命に財布を渡したままであった。

投下終わります


350 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:26:25 ID:bHNY5Ni5]
>>51 ごめんなさい!!
書き込み、気付きませんでした。これからは、新着レスを確認してから
書き込むようにします。
本当に失礼しました!



351 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/12(月) 00:28:36 ID:bHNY5Ni5]
って、冷静になって見てみれば重なってないか…。
ビックリした。
早とちり失礼しましたorz

352 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 12:55:57 ID:Dgpov0tf]
投下キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
二作品ともGJ! 
デレが長ければ後の病みが強調されるし気にしませんとも

353 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 17:53:41 ID:gcuACKeR]
>>342
なんという平穏な日々……
二人には幸せになってもらいたいが、そうはいかんのだろうなあ。

>>350
なんだかダークな展開になってきましたな。
三人組の男たち、カワイソス

354 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 20:27:07 ID:2YMSMgN8]
皆がヤンデレに目覚めた切欠は何?
俺はムヒョロジのパンジャ。

355 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 20:45:16 ID:IG/VrY4O]
ねーちん

356 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/12(月) 20:58:53 ID:hCnzUgw2]
>>355
同士よ…

357 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 20:59:54 ID:Dgpov0tf]
月島美夏

358 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 21:06:57 ID:E5F0wvDU]
言葉様

359 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 21:25:12 ID:WfnP6HgM]
我妻由乃

360 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 21:29:21 ID:SZzpJ4eZ]
心の奥底に眠ってて自然と・・・



361 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 21:34:18 ID:en5DgO3x]
黒楓

362 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 21:42:28 ID:IHbl50uK]
垣原

363 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 21:47:42 ID:bcfkV9ey]
新井素子の『ひとめあなたに』
小学生の頃にこれを読んで衝撃を受けた。


うろ覚えだが、作者はあとがきで
「追い詰められて追い詰められて狂う女の子の話を書くのが大好きだ!狂ってる女は皆きれいだ!!」
みたいな事を書いてたすごいひと。

364 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 22:05:52 ID:/jrXqHSw]
ヤマネ

365 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 22:12:45 ID:BxKK6zlp]
サロメ
聖書じゃなくて戯曲があるんだけどそれのあらすじをとある漫画で読んだ

366 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 22:20:34 ID:7eRA2nbk]
僕は、櫃内夜月ちゃん!

367 名前: ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/12(月) 22:21:56 ID:LtE7q71J]

>>354元々好きだった様で、このスレに辿り着いて覚醒しました。

流れ切ってすいませんが、投下します。
第七話目になります。

368 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/12(月) 22:23:03 ID:LtE7q71J]

カラ――ン…
「ィあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁッ!!」

ナイフの落ちる音と、伊藤さんの悲鳴。
それらが聞こえてきてから、何か頭上を掠めていった事に思い当たった。

伊藤さんが振り翳していたナイフは僕の足元に転がっていて、伊藤さんの右手には、
小刀が深々と刺さっていた。

そこで解ったのは、頭上を掠めていったのは伊藤さんの右手に刺さっている小刀で、
それによって僕は助かった、という事だけだった。

「危なかったですわね」

投げた人物は恐らく隣にいる男性の方だろうが、リビングの方から現れた二人組の
女性の方が、そう声を掛けてきたので、どうやら僕らの味方らしい事が解った。
男の方はそのまま無言で近付くと、顔色一つ変えずに、のたうち回る伊藤さんのお腹を
二・三度蹴り上げ、ぐったりした所で右腕に片足を乗せると、刺さった小刀を躊いもなく
引き抜く。と、その激痛に耐えられなかったのか、伊藤さんは気絶してしまった。

「夏月さんのお兄様ですわね?
 私は湖杜、こちらが射蔵。親類に当るもので、本家から来ましたの。
 そちらの倒れている女、どうなさいます?」
湖杜さんと名乗った女性は、射蔵さんという男性の傍まで行くとそう僕に言った。
「え? 伊藤さんを? どう、とは?」
「お見受けしたところ、その伊藤という女を、このまま帰す訳にもいきませんわよね?
 宜しければ本家で、この女を預かりますけれど、どう致します?」

確かに伊藤さんをどうするかが、一番の悩み所だ。
このまま帰しても、また何をするか解らないし、警察に届けるにしても、色々と
厄介な事には変わりがない。
何より東尉を傷付け、更に夏月を殺そうとした。

――――許せない。

伊藤さんは未成年だし、精神鑑定などで罪には問われないかもしれない。
でもそんな事は、到底許せる事じゃない。だから、

「お願いします。僕は伊藤さんを、許せない」

湖杜さんと射蔵さんに、本家の人間に任せる事にした。
どうやら一連の流れを見る限りでは、二人はやはり只者では無いようだ。
何せ、曰く付きの本家の人間なのだから。

369 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/12(月) 22:23:52 ID:LtE7q71J]

「解りました。その様に手配しますわね」
にっこりと湖杜さんは綺麗に微笑み、展開を見守っていた射蔵さんが携帯を取り出し、
手短にどこかへ連絡を取った。きっと本家にだろう。
伊藤さんの事はそれでいいとして、漸く僕は夏月の様子を落ち付いて見る事が出来る。

蒼褪めた夏月はがたがたと震えながらも、目を見開いて虚空を見つめている。
「夏月、怖かったよね。 でも大丈夫だよ。もう大丈夫だから」
当り前だ。殺意を向けられ、ナイフを振り翳されれば、誰だって怖いに決まってる。


どうして、こんな事になってしまったんだろう。

伊藤さんが僕を好きらしい、と東尉は言っていた。
でも伊藤さんの口からはっきり聞いた訳でもないし、もしそうだとしても、何故
夏月や東尉を敵視するのかも理解出来ない。
そもそも伊藤さんが僕を好きになった、という事自体が理解出来ない。
夏月のクラスメイトで友人。その位の認識しか僕には無いし、伊藤さんにしたって
同じ様なものだろう。まともに話しをした事だって、僕の記憶には無いんだから。


「……………ぃ…」
つい物思いに耽っていると、聞き逃してしまった。
「…え?」
夏月が何かを言ったようだった。
もう一度、と言おうとした所で、夏月はまた何かを言った。
しかし耳を澄ましても、夏月が何か言ったのか、声が小さすぎて聞き取れない。

「……め…さ…………わ…………せ」

「何? どうしたの、夏月?」
震える唇が痛々しくも、何かを呟いている。
ぐっと耳を夏月の口元に近付け、その微かな声を拾う。

「ご…め……さ…い……わ……しが………ごめ……」

まさか… 謝ってる?
「夏月、夏月。夏月の所為じゃないから。夏月は何も悪くないから」

夏月は被害者なのに。
何で何で、何でこんな事になってしまったんだ?


思わず夏月の肩を両手で掴み、正面から夏月と向き合った。
「夏月、もう大丈夫だから。夏月の所為じゃないから」

「兄…さ……ごめ…ごめん…さい……わた…わたし……ごめ…」
「夏月…」

見ているようで見ていないような、そんな夏月の視線がゆっくりと動く。
そして緩慢な動きで首を巡らした夏月の視線の先は、僕の左手だった。


370 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/12(月) 22:24:46 ID:LtE7q71J]

じっと左手を見られ、そういえば怪我をしていたなと思い出す。
夏月の所為では決してないけれど、庇ったという事から気にしているのだと思った。

「大丈夫だよ。血は出てるけど、そんなに深く切った訳じゃないし。
 もうそんなに痛く無いし、夏月が気にしなくていいんだから」
心配させないように、この場にはあまりそぐわない気もしたが、にっこりと夏月に
微笑んでみせた。
「それより、さっき突き飛ばしちゃったけど、どこか怪我しなかった?
 痛い所とかない? 顔色も悪いし、大丈夫?」
だけど夏月は全く反応せず、ぼんやりと僕の左手だけを見続けている。

「あの、夏月さんのお兄様?」
「あ、はい!」
存在自体もすっかり忘れていた湖杜さんに声を掛けられ、そういえばこの場には
僕と夏月以外にも人がいた事を思い出して、慌てて返事をした。

「迎えの車が参りましたので、射蔵とこの女を運んできますわ」
「お願いします。色々とすいません、迷惑かけてしまって…」
「いいえ、お気になさらないで。今日のところは、これで失礼しますわね。
 これは射蔵の携帯電話の番号ですわ。落ち付いたら、連絡頂けるかしら?」
「あ、はい。落ち付いたら、必ず連絡します。
 今日はホントに、ありがとうございます。
 湖杜さんと射蔵さんが居てくれなかったら、大変な事になっていました」
深々とお辞儀をしながら、僕はホントに感謝の気持ちで一杯だった。

「いいんですのよ。それでは、私達はこれで失礼しますわね。ご機嫌よう」
そう言うと湖杜さんは、まさしく優雅と言う言葉がぴったりな一礼をして、
これまた優雅に踵を返した。隣に居た射蔵さんも、僕に黙礼をすると
まだ気絶したままの伊藤さんを荷物の様に抱え、次いで出ていった。

射蔵さんの携帯の番号が書かれたメモをポケットにしまうと、僕は改めて夏月に
向き直った。

「夏月、立てる? 部屋に戻ろうか」
しかし夏月は無反応で、じっと、ただじっと、僕の左手を見ていた。
「夏月?」
いくら何でもこう無反応だと、心配が不安に変わってくる。
どうしようか?

「汚れ… ちゃった…」

「え? 汚れた?」
僕の左手を見たまま、夏月はぼんやりとそう言った。
「何が?」
何が汚れたんだろう?

「汚れちゃった、から… 綺麗に、しな、くちゃ…」

酷く、緩慢な動きだった。
僕の左手をそっと両手で包み込み持ち上げると、緩やかに顔を近付け、
舐めたのだった。




371 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/12(月) 22:25:32 ID:LtE7q71J]

夏月の小さな唇が開き白い歯がちらりと見え、赤い小さな舌が差出され、そして、
僕の左手の血を、真っ赤な血を、その舌で、舐めた。
丁寧に丁寧に、乾いた血も乾きかけた血も、全て舐め取っていく。
生温かい息が掛かり、滑った舌が何度もなぞり上げる左手に、全神経が集中する。

そして、真っ赤に染まった舌が、傷口をなぞった、その時、
背筋を駆け上がる、初めての感覚に、僕は―――

「…兄 …さん?」

夏月を、押し退けてしまった。

「ご、ごめん! 夏月、これは…」

「そ、だよ、ね… きた、汚い… わ、わた、わたしに…
 わたし、わたしが、触… たら、にい、に、兄さんが… 汚れ、汚れる… ね…」

「違う! 夏月は汚れてなんかない!」
違うんだ。そんな事ない。違うんだ、違うんだよ、夏月。
どうしたらいい? 夏月を拒絶したんじゃない。どうしたら解ってくれる?
「夏月、違う、そうじゃない。そうじゃないんだ!」

「わた、わた、わたし… きた、きた、きた、な…」
「夏月っ!」
治まりつつあった夏月の身体の震えは、また大きくなり、目で見て解るほどに
なってしまった。

「わ、わた、わわ、わた、し… せ、い… ごめ、ごめん、ごご、ごめ…」
「違う… 違う…」
首を振って否定した所で、夏月が納得するとも思えなかったが、それしか出来なかった。

頭を撫でてあげれば、いいのかもしれない。
抱き締めてあげれば、いいのかもしれない。
でも、出来ない。
今、夏月に触れる事は、出来ない。

「わわわ、わた、わたし… に、にい、に、さん… 好き… す、す…
 なった、か… ごご、ごめ、ごめ、ごめ」

夏月を押し退けてしまった事を、今更後悔しても遅い。
しかし悔やみきれない僕は、ぎゅっと目を瞑ってしまった。
今の夏月から、一瞬たりとも目を離すべきではなかったのに。

「わ、わたし、が、ぜん… ぜ、全部… 悪い、わ、わる… わ、わ」

目を開けた一瞬後には、夏月は落ちていたナイフを逆手に持ち、高く掲げていた。

「わ、わた… に、にい、さん… み、見た… 好き… み、す、き…」

「―――っ!!」

そして振り下ろすナイフが、夏月の綺麗な瞳を、適確に捕らえ、やけにゆっくりと、
ゆっくりと、吸い込まれていくのを、僕はただ呆然と見ていた。

−続−

372 名前:同族元素:回帰日蝕 ◆6PgigpU576 mailto:sage [2007/03/12(月) 22:26:12 ID:LtE7q71J]

以上、続きます。

373 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 22:39:38 ID:Dgpov0tf]
>>372
GJであります!
「伊藤さん退場?」とおもったら夏月の病みがとうとう…!
もはや完全壊れてしまったとしか見えないけどどうなるのかwkwktktk


374 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/12(月) 22:41:01 ID:fn6dVVI5]
ストーカー・誘う女ってドラマ

375 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 22:41:54 ID:gcuACKeR]
>>372
動け! 動いてよ! お兄ちゃん!
今動かないと、夏月が死んじゃうんだ!

376 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 22:57:02 ID:2YMSMgN8]
>>372
GJ!!

何とかしろ兄貴!!何ボサッとしてるんだ!!
ヒロインが病んでいいとは言ったが、ヒロインが壊れていいと入ってないぞ!!

377 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 23:20:54 ID:3fewbcw8]
GJ!
兄貴……もう夏月に手をだしてもいいから(もちろん性的な意味で

378 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/12(月) 23:23:48 ID:WfnP6HgM]
>>372
GJ!!
兄貴なんとかしろよ…

379 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/13(火) 16:43:01 ID:IfBwlTsy]
なぁに、概して世の中とは理不尽なものさ。
だが、俺は作者を信じてる!
だから、兄貴を何とかさせるんだ!

380 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/13(火) 21:09:57 ID:C03APs4A]
予告してだいぶ遅くなったな・・・やっと中盤戦突入だし。

>>277
貴殿の想像よりさらに変態です。多分。

>>354
俺はキモウト。あの壊れっぷりがたまらん。

では新店長でG.O.第3話です。



381 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/13(火) 21:10:51 ID:C03APs4A]
「薫ちゃん、これでいい?」
「もつこちみぎでつ・・・あい、『どあ』みえまつ」
深夜のテュルパン事務所内。耕治とあずさは事務所のパソコンをいじっていた。

店長達が事務所を去ったあと、薫は事務所のパソコンに細工を施した。
標準でWEBカメラがついているのに目をつけ、事務所のパソコンをカメラサーバー化したのだ。
といっても、別にパソコンをハッキングしてデータをライバル店に売りつけるなんて理由ではない。
そもそもの発端はテュルパンの社内規則にあった。問題の文章は、こう。
『理由の如何を問わず、制服を店外に持ち出してはならない』
テュルパンの制服は人気があり、店員が持ち出してネットオークションにかけるのが
多発したためこんな規則が生まれたのであるが、このおかげで(主に耕治の希望だったのだが)
『制服着たままH』をやろうとすれば店内でするしかないのである。
しかし、薫は「自分の見てない所でのH禁止」を3人に言い渡しており、制服Hは出来ずにいた。
閉店後に薫連れでやればいい気はするが、考えてみりゃそんな夜中に幼女を店の中に連れてくるのは不審極まりない。
で、苦肉の策が「事務所のカメラから実況生中継」だった・・・アホだ。

で、現在の状況。薫ととき子は禾森邸、あずさと耕治が事務所の状態・・・美衣奈は行方不明。
薫は禾森邸側のパソコンを操作しており、とき子は傍観(笑)。耕治は事務所側のパソコンをいじっている。
禾森邸には巨大なテレビ(50インチぐらい)があり、現在事務所を映している。つまりパソコンと接続。
薫は頭につけたインカムから事務所の二人にパソコンの操作を指示していた。当然事務所の二人もインカム装備。
「あい、ぴんともあいまちたち、はぢめていいでつよ」
「ん・・・んじゃはじめようか」
「うん・・・」
薫の言葉に二人はHを始める。
耕治はパソコンのほうにあずさを向かせ、パソコン側の壁に手をつかせる。
耕治はあずさの後ろに回り、制服のブラウスのボタンをはずし始める。
徐々にあらわになってくるあずさのブラジャー。フリルがついた少女趣味っぽい。
「こういうブラはアレだな・・・ミナちゃんのほうが似合うな」
「なによ・・・あたしは何が似合うって言うのよ?」
「スポーツブラとか、装飾のない系」
「どうせあたしは色気ないですよーだ!」
「あづさおねえたんは、いろけありまつでつよ?おにいたんがりかいできないだけでつ♪」
「うう・・・分かってくれるのは薫ちゃんだけだ・・・」
「いや・・・その・・・あれだ。シンプルな良さって奴もあるぞ?」
「ちょっとおにいたんは『ふぉろー』がおとかったでつ」
「ぐっ・・・」
「耕治、手を止めない!」
「あいよ!」
耕治はブラの上からあずさの胸をもむ。手にちょうどいい大きさの胸は非常に揉みやすいようだ。
「耕治・・・そろそろ直に・・・」
耕治はフロントホックを外し乳房に直接愛撫を始める。
乳房をボールをつかんで転がすように揉む。強すぎず、弱すぎず。
中指と薬指で乳首を愛撫することも忘れない。ただ、
「ちょっと・・・優しくしてよ・・・痛いんだから」
相手がいるなら分かるだろうが(風俗による経験でも可)、中指と薬指では力の加減が難しい。
耕治は薬指だけで乳首の周りをなぞるように愛撫をする。
「うん、そう・・・あ・・・」

382 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/13(火) 21:11:51 ID:C03APs4A]
そのとき、薫たちが覗いていた画面に異常が見受けられた。
二人の後ろにあるドアが半開きの状態になっていたのだ。
しかし時刻はこの時点で22時過ぎ。この店の場合、通常誰もいない時刻である。
いる可能性があるとすればマネージャーである耕治自身。そして・・・。
「薫ちゃん、あの二人やめさせる?」
「ほっといていいでつ。もち、てんちょうたんなら、もうとめにはいるはづでつ」
「・・・そうよね・・・美衣奈ちゃんかしら?」
「ほかのてんいんたんだとやっかいでつが・・・あ」
そうこういってるうちに扉が完全に開いた。
扉の向こうから出てきたのは若いスーツ姿の女。
しかし耕治たちはというと・・・。
「こ・・・こうじ〜そろそろ・・・」
「んじゃ、よっこいしょ」
「ちょっと!す・・・スキャンティぐらい脱がしてよ・・・」
「パンツ伸びるから別に入れるのに支障ないよ。それにここまで濡れてるともうゴミ箱行きだっつーの。
それともアレか、レイプみたいにはさみで下着切られるのが好みか?」
「ば、バカァッ!!」
後ろの女性は耕治の言葉にうんうんうなずくと耕治たちの真後ろに立った。
「なにつるつもりでつかね・・・え?」
「あらあらまぁまぁ♪」
なんと後ろの女はいきなりスーツはそのままでパンティだけ脱ぎ去り、
ミニタイトのスカートの中に自分の手を突っ込んだ!
そのまま片手は股間をまさぐり、もう片方の手はブラウスのボタンを外し胸に手を突っ込んだ。
そして壁にもたれてオナニーを始める。
「んじゃいれるぞ・・・」
「もうせっかちなんだから・・・あ・・・」
ずんずんずんずん!
ぱんぱんぱんぱん!
・・・まるでどっかの古道具屋経営ゲームのような擬音を発しつつ腰を振る耕治。
後ろでは例の女がオナニーの真っ最中。
「あのふたりまだきづかないでつね・・・」
「あ、そろそろかも」
「え?」
耕治たちはそろそろ限界のようだった。
「おい!あずさ!そろそろ出すぞ!」
「あ、あたしのほうがさきに・・・ん!!」
あずさの膣が急速に縮み、耕治の股間に更なる快感を与える。そして尿道を通過する粘体。
「うあっ!」
二人は同時に果てた。
「・・・おにいたん、おにいたん・・・」
「あ、薫ちゃん、うまいこと撮れた?」
「おにいたん、うちろうちろ!!」
「うしろ?まさか誰か覗いてた・・・って、ええ〜!」
「て、店長!!!」
「いやぁね、あずさちゃん?」
耕治たちの後ろにいた女は胸から手を離し、二人にひらひらと手を振る。
「えみる・・・って、呼んでって言ったでしょ?」
新店長・樹元笑留は口元だけで微笑み、舌なめずりした。


383 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/13(火) 21:12:55 ID:C03APs4A]
スマソ、今回短いorz
次回もまだHシーン続きます。ついに新店長の変態ぶりの全貌が・・・

384 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/13(火) 21:14:17 ID:o1WKr3z4]
GJ!



先生!あなたの作品のキャラはヤンデレというより変態性癖の持ち主のような気がするのは気のせいですかw?

385 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/13(火) 23:02:22 ID:GUkgBEcw]
>>383
GJ
てかこのノリで病んでいったらどうなってしまうんだw

386 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:04:16 ID:4i4yRZ/G]
投下します。第六話です。↓

第六話〜従妹とお嬢様〜

 今夜、俺の部屋に女の子が二人も泊まっていくことになった。
 なぜそんな状況になったかというと、
 一人は、今も降り続いている雨のせいで帰れなくなってしまったから。
 一人は、俺ともう一人の女の子が間違いを犯さないよう監視するために。

 一人暮らしの男の部屋に女の子が泊まる。と聞けば、大概の人間は
その夜に何が起こるかが予想できるであろう。
 俺も男だ。もちろんそんな状況下で女性から迫られたならば、やることはやる。
 とはいえどんな女でもいいわけではない。

 俺の理想のタイプの女性は年上で、穏やかな性格の人だ。
 だが、年上でなければ駄目というわけではない。そこは性格次第だ。
 髪型などの好みは特に無い。
 体つきは太っていなければ、スレンダーでもグラマーでも構わない。
 顔つきは――綺麗な感じよりは、可愛いほうが好みだ。
 俗物というなかれ。男など多少の違いはあれ、似たようなものである。
 さて、俺の両隣にいる女性はどうかというと。

 左で寝ている女の体型はスレンダー。
 そして、体型に合わせたかのように引き締まった顔つきをしている。
 普段は長めの黒髪をリボンを使いうなじの辺りでまとめているが、
さすがに寝るときはリボンを付けていない。
 縁無しの眼鏡も今は外している。それでも変わらず理知的に見えるのは、
彼女の本来の雰囲気がそうだからだろう。
 スーツでも着せたらその辺のOLよりデキる女に見えるかもしれない。
 彼女の年齢は19才。多少離れてはいるが、十分に許容範囲内だ。

 そして右で寝ている女。
 左に居るの女とは対照的に、なかなかグラマラスな体型をしている。
 ぱっちりと開いた瞳と血色のいい肌。どちらかと言えば可愛い顔立ちをしている。
 肩まで伸ばした髪の毛は、少しだけ茶色が入っている。本人曰く、地毛とのこと。
 年齢は俺と同じで24歳。
 しかし、俺よりも年下に見えるのは彼女の仕草や喋り方のせいだろう。
 当然ながら、彼女も年齢的には守備範囲内にいる。

 しかし、一人は従妹である。もう一人は親友である。
 二人には悪いが、手を出す気にはならない。
 ――まあ、手を出さない理由はそれだけではないのだが。

「ねえ、華ちゃん。狭いからそっち、詰めてくれない?」
「香織さんがそうしてくれませんか?――できれば布団の外に出てほしいものですけど」
 
 女二人が言い合いをしているという状況で手を出せる男は相当の大物か、ただの馬鹿だ。
 そして、俺はそのどちらでもないと自覚している。
 ただ、二人が眠るのを黙って待つしかないのである。

387 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:05:38 ID:4i4yRZ/G]
・ ・ ・

 ザァァァァァァ――

 雨音が聞こえる。
 現時刻は夜十時。七時ごろから降り始めているが、全く勢いが衰えない。
 天井から雨漏りなどはしていないが、ここまで降り続けるとさすがに不安になる。
 ――だが、今眠れないのはそれが原因ではないだろう。
「すぅぅぅ……」
「くぁーーー……」
 華と香織が隣にいる状態でいつも通りに寝られるわけがない。
 二人とも俺の方を向きながら寝ているので、寝息の音がよく聞こえる。
 なんだか、くすぐったい。

 それに加え、場所の問題もある。
 俺の部屋は六畳一間。
 部屋の中に置いてあるものはブラウン管のテレビ、最近は使っていないノートPC、
ハンガー掛けとプラスチック製の小さいタンス、本棚、その他の小物など。
 玄関の入り口に台所があるので、そこには冷蔵庫を置いている。
 一人で寝る分には十分な広さだ。
 しかし、三人が川の字になって眠るには狭すぎる。
 三人で密着しないととても寝られたものではない。
 スペースを確保するために俺は腕を組んでいる。
 この体勢を維持することに意識を向けているので眠れない、というのも原因の一つだ。

 やはり、香織を部屋に泊めてもらうように華に頼めばよかっただろうか?
 いや――それはやめたほうがいいな。
 二人っきりにしたら一体どんな結果になるかわからない。
 口喧嘩が過熱してもし素手での取っ組み合いになったりしたら、と思うと
とてもじゃないが二人きりになどできない。できるわけがない。
 二人ともそこまで無思慮ではないと思うが、用心するにこしたことはない。
「……ぉにぃ、さん……」
「ゆぅし、くぅん……」
 二人が寝言で俺の名前を呼んだ。
 今の二人を見ていると、仲が悪いようには見えないんだけどな……。

 そういえば、なんで二人とも喧嘩するんだろうな?
 初めてあった日からこんな調子だったけど。
 ――たしか、二人が出会ったあの日。
 俺と香織が一緒に居るところに華が来て……
 そのまま華が俺に抱きついてきて……
 それを見た香織が華に注意したら、なぜかにらみ合いになったんだよな。

 今考えてみても、なぜそんなことで仲が悪くなるのかわからない。
「なんで二人とも、仲が悪いんだよ……」
 舌と唇を動かして、小さな声で呟く。
 すると、左側から聞こえていた寝息が止まった。
 なんとなく、視線を感じる。

「――そんなこともわからないから、おにいさんはニブチンなんですよ」
 左で寝ている華が小さい声で喋りかけて来た。
 首を軽く曲げて、目を左にいる華の顔に向ける。
 暗闇に目は慣れてはいるものの、その表情ははっきり見えない。
「悪い。起こしちゃったか?」
「いいえ。偶然目が覚めただけです。
 それより今、なんで私と香織さんが仲悪いのかって言いましたよね?」
 さっきのひとり言はばっちり聞こえていたようだ。
 続けて華が喋りかけてくる。

388 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:06:27 ID:4i4yRZ/G]

「実は私、香織さんを嫌っているわけではないんです。
 ただ……おにいさんと香織さんが一緒に居ると、ついあんな態度をとってしまうんです。
 おにいさんには、ただ仲が悪いだけにしか見えないでしょうけど」
「……まあな」
 二人のやりとりを見ていると、お互いに嫌っているようにしか見えないからな。
 だが、華が香織に対して嫌悪感を持っていないということは、
いつか二人が仲良くなる可能性があるということだ。ぜひともそうなってほしい。

 ……しかし、意外だな。
 俺と香織が一緒にいると、華が不機嫌になるとは。
 もしかして、華は香織のことを?
「嫌っていないだけで、好きなわけではないですけど」
「あ、そうなのか? 俺はてっきり――」
「……おにいさん、わざとニブチンを演じていませんか?
 その鈍さは、もはや天然記念物レベルです。
 おにいさんのことを好きな女性がその鈍感さに腹を立てて、刺してくるかもしれませんよ?」
「ははは、まさかそんな……」
 さすがにそれは無いよな。俺が女性にそこまで好かれることなんてないだろう。
「本当にそう思いますか? 私と香織さんに挟まれているというのに?
 現におにいさんはそうなってもおかしくない状況にいるんですよ?」

 …………なに?
 今とんでもないことを言わなかったか?
 華と香織に挟まれている状況では、刺されてもおかしくない?
「まさか、お前……」
「刺したりなんかしませんよ。
 私は、そういう意味で言っているんじゃありません」

 そう言うと、華は息を吸って、吐いた。
 彼女の顔は部屋が暗いせいでよく見えない。
 それでも、俺を見つめているということは雰囲気で伝わってくる。
 華の手が俺の左腕を掴んだ。
 手の感触が伝わってくる。少し冷たいが、柔らかい。
 華はもう一度息を吸って、吐いた。
 そして。

「香織さんも私も、おにいさんのことを好きだから。
 そういう意味で、言っているんですよ」
 
 俺に向かって、自分と香織の気持ちを打ち明けた。

389 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:08:15 ID:4i4yRZ/G]
 
『ははは。冗談はよせよ』
 などと言おうものなら、本当に刺されるだろう。
 そう確信してしまうほどに、華の告白には真剣さが込められていた。
 つまり、さっきの告白は冗談ではないということだろう。
 本当の、華の気持ちだということだ。

 ――俺は今の告白に対してどう答えるべきなんだ?
 「華が好き」?
 「香織が好き」?
 いや、俺はどちらか一方が好きなわけじゃない。
 二人とも好きに決まっている。

 しかし、それは親愛の情とか、そういった類のものだ。
 彼女たちを大事な人だと思っているが、それは友人としてである。
 女として好きかと言われたら「違う」としか言えない。

 ――今の俺は、どちらか好きか選べない。

「華。俺は――」
「待ってください。答えるのはナシです」
 華の指が俺の唇に対して、垂直に当てられた。
「おにいさんがなんて答えようとしてるのか、わかりますよ。
 でも、今はその答えを聞きたくありません」
「? じゃあ、何であんなことを言ったんだよ」
「おにいさんに意識してほしかったからです。私の気持ちを。
 現状を維持し続けていたらいつまでも気付かれなかったでしょうし」
 ――お前の普段の態度を見ていたら気付くわけがないだろうが。

「あともう一つ。おにいさんに言っておくことがあります」
 華は手を引っ込めて自分の顔の前に持ってきた。人差し指を立てている。
「今度は何だ……?」
 またとんでもないことを言い出すんじゃないだろうな?
「今の話を忘れた振りをした場合……刺しますからね」
 ……今度は脅迫か。お前、本当に俺を好きなのか?
 なぜ俺の胃に穴を開けるようなことばかり言うんだ。
 おにいさん、辛くなってきたぞ。
「私の話は終わりです。おやすみなさい。……おにいさん」
「ああ。おやすみ」

 数秒間の沈黙の後で、華はゆっくりと寝息を立て始めた。

 ――ふう。

 華と、香織。二人ともが俺のことを好き、ねぇ……。
 華が俺のことを好きだというのは事実だろう。
 なにせ本人の口から告白されたのだから。

 しかし、香織はどうなんだろう?俺を好きだったりするんだろうか?
 香織は俺の右で寝ている。彼女の手は、弱い力で俺の右腕を掴んでいた。
「寝てるよな? …………まさか聞いてないよな?」
 香織に向かって問いかけた。…………しかし返事は返ってこない。

 代わりに、俺の右腕を掴んでいる手の力が一瞬だけ強くなった。――ような気がした。

390 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:09:57 ID:4i4yRZ/G]
・ ・ ・

「おにいさん。朝ですよ」
 …………。
「起きて下さい。もう香織さんは起きて、バイトに行っていますよ」
 ………………。
「……おにいさん。いつもバイトに行く時間を過ぎてますよ」
 ……?
 …………はっ!!!
「マジでか?! やばい!」
 がばっ! と布団を跳ね除けて身体を起こす。
 窓の外を見ると、空が晴れていた。太陽の光が部屋に注ぎ込まれている。
 明るい。明るいということは――

「今何時だよ!」
「朝の八時です。寝坊するだなんてだらしないですね」
 華がやれやれ、といった感じで首を横に振った。
 もとはと言えば、お前が変なこと言うのが悪いんだぞ。
 あの後色々考え込んでしまったからしばらく眠れなかったんだ。
 ちくしょう。時間を守るのが俺のポリシーだというのに!
「華。今から着替えるから出て行ってくれ」
「ええ。もちろん出て行きますが……その前にこれだけは聞いてください」
「なんだ!」
「香織さんが出て行く間際にこう言っていました。
 『今日、雄志君は四時から入ればいいからもう少し寝かせてあげてね』」

 …………なんですと?
 ――そういえば、今日は四時からバイトが入っていた気もする。
 ということは、まだ寝られるのか!
「じゃあ、おやすみ。華」
 華に一言告げて、布団をかぶる。
 ああ――まるで「遅刻だと思って飛び起きて、カレンダーを見たら日曜日だった」
と気づいたときみたいだ。寝坊して得した。幸せすぎる。
 今なら、空も飛べそうな気がする――
「そうはさせません」
 布団の向こうから華の声が聞こえてきた。
 残念だったな。今の俺は無敵なんだ。お前が何を言おうと無駄だぞ。

「――頭は、この辺ですか」

 布団を通して、何か固いものが押し当てられた。
 その途端、頭のどこかでカンカンカンカンカン! と音を立てて警鐘が打ち鳴らされた。
 目を瞑っていると言うのに、何故か目の前が赤い。
「すぅぅっ……」
 そして、華が息を吸う音が聞こえた。

 ――起きろ! 

 どこかから聞こえてきた声につられて、全力で上体を起こす。
 その、刹那。

「はっ!!!」
 ずん! という音が背中から聞こえてきた。
 振り返ると、足の裏が見えた。
 枕には、踵が突き刺さっている。

 なるほど。踵落としか……って!



391 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:11:37 ID:4i4yRZ/G]
「華! いきなり何をする!」
 彼女はさっき座っていた位置から一歩下がって、右足を突き出したまましゃがんでいた。
 今のは体重を乗せた一撃だったということか。
 ――刺される心配よりも、撲殺の心配をしたほうがいいのかもしれない。
「おばさんから頼まれたんです。
 『雄志がだらしない素振りを見せたら叩きなおしてやって』。
 今のおにいさんはだらしないと私に判定されました。だから叩き起こしました」
 ――母上。恨むぞ。

「実は、起こしたのにはもう一つ理由があるんですよ。お願いがあるんです」
 華が両手を胸の前に合わせてそう言った。
 なぜか嬉しそうな顔をしている。
「言ってみろ。聞くだけは聞いてやる。叶えてはやらないがな」
「今日、一緒に大学に行きましょう!」

 大学。
 おそらく、このアパートの近くにある大学のことだろう。
 聞いた話によると、偏差値が相当に高くないと受からないというハイレベルな大学らしい。
 驚いたことに、華はその大学に通っているという。
 そんなすごいところに通っているなんて、おにいさんは嬉しいぞ。
 ぜひこれからも学業に励んでくれ。

「俺には不似合いな場所だな。というわけで、断る」
「大丈夫ですよ。部外者がいても誰も気にしませんし。
 それに無理なお願いではないでしょう?
 ただ一緒に大学まで行って、お弁当を一緒に食べて帰ってくれたらいいんですから」
「いや、ただめんどくさいから行きたくないだけで…………ん?」
 お弁当?構内の食堂で頼むのなら弁当とは言わないよな。
 嫌な予感がする。
 いや――嫌な予感しかしない。
「弁当をどこかで買っていく、ってことだよな? 手作り弁当とか、言わないよな?」
「言いますよ。私が作りました」

 その言葉を聞いて、俺はすぐに行動を開始した。
 素早く立ち上がる。
 そして掛け布団を華の体に押し付けて、華を追い出すために玄関へ向けて押す。
 華が押し出されまい、と抵抗しているのが感じられる。
 しかし、パワーなら俺のほうが上だ。
 目を瞑り、全力で押す。容赦なく押す。全身全霊を込めて――

「おにいさん。壁を押してどうしたいんです?」
 後ろから、冷たい声が聞こえた。
 華の声だ。
「――馬鹿な。さっきまで目の前に居たのに」
 それに、何故俺は壁を押しているんだ?
「おにいさんに押されながら、抵抗しつつ壁に向かって後退しました。
 そして、壁に押し付けられる瞬間に体を入れ替えればこうなるんですよ」
 
「そんな、馬鹿な……」
 そんなに上手くいくなんて、ありえない――
「馬鹿なのはおにいさんですよ。さあ、一緒に大学へ行きましょうね」

 色々言いたいことはあるが、最初に思い浮かぶのはこれしかない。

 こんな現実は――理不尽だ。

392 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:12:30 ID:4i4yRZ/G]
・ ・ ・ ・ ・ ・
 
 落ち着かないな。大学の中庭にあるベンチに一人で座っているというのは。
 中庭に在る小さな時計台を見る。短針はほぼ真上、長針はそれより少し後ろを指している。
 時刻は11時55分。間もなく正午。
 間もなく、乗り越えなければならない時が訪れようとしている。

 なぜ、華の弁当を食べなければならないのだろうか。
 自分で金を出してパンでも買って食べた方がよほど体のためになるのに。
 昨晩食べた肉じゃがの味から考えると、華の料理の腕は上がっているのだろう。
 しかし、それでも昔の苦い記憶を塗り替えることはできない。

 洗剤の味がする白米など、想像するだけで吐き気がする。
 噛んだ途端に歯茎から出血しそうなほど硬いから揚げなど、思い出すだけで顔が歪む。
 ケチャップに浸してあるだけのスパゲッティなど、料理と呼ぶことすらおこがましい。
 華には悪いが――ここまで昼飯を食いたくないと思ったのは久方ぶりだ。

 逃げよう。
 それが一番だ。
 華に見つからないようにここから逃げ出すんだ。
 もし見つかったとしたら、それこそ地獄を見るかもしれないが……。
 いいや。弱気になるな。最後まで戦うんだ。俺の力で。

 ゴーン ゴーン ゴーン

 中庭に、正午を告げる音が響く。
「ようやく、12時か」
 何時に講義が終わるのかはわからないが、早く逃げるにこしたことはない。
 ベンチから立ち上がり、一歩踏み出そうとしたその時。

「君は今、12時だと言ったね」
 
 低い声――というより、低い声を無理矢理に出しているような声が後ろから聞こえた。
 振り向くと、ベンチの後ろに知らない人間が立っていた。
 そいつを見ての感想は――訳が分からない、というところだ。

 すらりとした体には、紺色の、男物のスーツを纏っている。
 が、胸の部分が丸く膨らんでいる。人間の筋肉ではあり得ない膨らみ方だ。
 白いシャツの襟の上には、やけに綺麗な顔があった。
 ただし、どう見ても女の顔である。
 黒髪をオールバックにしているが、性別は女だろう。多分。
 それなのに何故男の格好をしているのかが分からない。
 しかし、それ以上に訳が分からないのは。

「それは君の中の時間が12時、つまり昼飯時だからという意味で言ったのかい?
 それとも、あのアホ面の時計が12時を指したからかい?」

 そいつが言っている台詞の内容だ。
 左手を右肘に添えて、顎に右手を添えて、首をひねったりしている。
 何か考えこんでいるようだが、俺だって考えこみたい気分だ。
 ――なんなんだこいつは?

393 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:14:05 ID:4i4yRZ/G]

「えーっと……」
 言葉に詰まる。
 こんな得体の知れない男――じゃなくて、女に何を言えばいいんだ?
「……まず、俺がさっき12時だと言ったのは時計の針が12時を指したからだ。それ以外の理由は無い」
「ふむ。では、あの時計がアホ面に見えるのは何故なんだい?」
「知るか。そんなこと」
「時計がアホ面に見えるのには理由がある。と父は常々言っていた」
「……どんな親父さんだよ」
「父が言うには、昔時計を分解したときに呪いをかけられたのではないか。というのが有力な説だそうだよ」
「へえ」
「その次に有力なのが、人間が時計なのではないか。という説だ。同類相憐れむ、というやつだね」
「……それは無いだろう」

 つっこみどころが多すぎてそんな言葉しか口から出ない。
 ここまで電波なことを言う人間は今まで見たことが無い。
 こいつは何者だ?この大学の学生か?それとも教授か?
 ――どっちでも嫌だな。こんなやつが俺より学力において優れているなど認めたくない。

「とうっ!」
 俺がそんなことを考えている間に、変人はベンチを飛び越えて俺の前に立った。
 そして、さっきの顎に手を当てたポーズのまま顔を俺に近づけて、まじまじと見つめてきた。
「ふむ……君は私の知り合いではないし、父の知り合いでもないし、アホ面の時計台の知り合いですらないね?」
「……はっきり言うと、そのいずれかでもないし、この大学の学生ですらない」
「ではなぜこのベンチに座っているのかな? この特等席は私のために作られているんだ。
 もし君がこのベンチを作った人間――つまり父親だと言うのならば、
 父親を尊敬している私としては、君の子を思う気持ちに畏敬の念を覚えながら
 分速一メートルでこの場から立ち去らないでもない」
「俺はそのベンチの父親でも母親でも生き別れの兄でも恋人でも友達でもなんでもねえよ!
 たまたまそこに座って人を待ってただけだ!」
「なに!? ひと時だけでも父親で母親で兄で恋人で友人でありたいと思ったのか! この泥棒猫!」
 人の話など聞いちゃいない。

「我が友にして、最愛の特等席を奪おうとする者には――死を。しかし、いきなりは殺さない。
 じっくりしっくりゆっくりゆるゆると死を与えてあげよう」
 そう言うと、男装の変人が俺に対して戦闘態勢をとった。
 足を肩幅に開き、腰を落としている。両手は斜め下に向けてまっすぐ伸ばしている。
 そいつの目が俺の目を捉えた。その目は、明らかな攻撃の色をしている。
 一応、俺もボクシングの構えのようなものをとってみる。
 左手を前に、右手を胸元の辺りに近づける。
 ――しかしまったく緊張感が沸いてこない。
 相手が変な構えをとっているからか、相手が変人だからか。

 …………。
 
 そのままお互いに睨みあっていると、唐突に相手が構えを解いた。
 またしても顎に手を当てるポーズをとった。お前のホームポジションなのか?それは。
「――やめよう。こんなことで戦うだなんて馬鹿馬鹿しいよ。
 私は平和主義者。そしてベジタリアン。しかし肉食動物でもあるんだから」
「……お前の台詞は後半が全て無駄になっているな」
 というよりは、こいつの喋り自体が無駄そのものなのかもしれないが。
 
 腕を下ろすと、どっと疲れが押し寄せてきた。
 無駄に疲れた。横になりてえ。腹が減ったから立つのもめんどくさい。
 ――ああ、そういえば今は昼飯時だっけ。うまいもん食いてえなあ。

394 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:15:26 ID:4i4yRZ/G]

「おにいさーーーーん!!!」

 遠くから、女の声が聞こえてきた。
 聞こえてきた方向――建物の入り口に目をやると、華がいた。
 玄関の入り口に立っているということは、たった今講義が終わったということだろう。
 彼女の手には、四角形の箱のようなものが握られている。
 それが弁当箱だということはすぐに分かった。
 そして、次に俺がするべき行動もすぐに思いついた。
 
 大学の入り口に目を向ける。距離にして約200メートル。
 その距離を華に追いつかれる前に走り抜ければいい。
 おそらく大学の外までは追ってこないであろう。
「よし……!」
 手を強く握り締め、緊張感を体に思い出させる。
 そして、左足を勢いよく前に踏み出した。

 ――次の瞬間、俺が目にしたのは中庭に生えている芝生だった。

「ぎゃふ!」
 自覚するほどに変な声をあげて、顔面から倒れた。
 右の頬に痛みを感じる。鼻を打たなかったのは幸いだった。
「痛たた……。一体何が…………って!」
 倒れたまま自分の左足を見ると、人が掴まっていた。
 両腕で俺の脚をしっかりとホールドしている。
 さっきの状況でこんなことが出来る奴はこの場に一人しかいない。

「この変人! 何しやがる!」
「変人とはなんだ! 私には十本木あすかという立派な名前がある!
 それに、いきなり君が逃げ出すのが悪い! つい足を掴んでしまったじゃないか!
 こんなことは初めてなんだぞ! 責任をとって私と結婚するか、墓の中にいる母の面倒を見ろ!」
「お断りだ!」
 左足を振り、変人の腕から逃れる。
 まずい。予想外のタイムラグが発生してしまった。
 早く。早く逃げないと華が来る!
 立ち上がり、再度脱出口へと顔を向ける。

 ――顔を向けたら、女の顔が目の前にあった。
「そんなに急いでどこに行くんですか? せっかくお弁当を作ったんですから、一緒に食べましょうよ」
 ……遅かった。
 すでに華が俺の目の前に立って行く手を遮っていた。
 前には華。後ろには十本木あすかとかいう名前の変人。
 もう、逃げるのはあきらめるしか無いな……。

395 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:18:17 ID:4i4yRZ/G]

「十本木先輩。おにいさんを見張っていてくれてありがとうございました」
「いやいや。なかなか面白かったよ。まるでストーカー気分だった。
 しかし、真後ろに居てもなかなか気づかれないものだね。
 これからは華君の後ろに張り付くことにしよう。
 愛と憎悪は紙一重。探偵とストーカーは似たようなもの。そして華君と私は二人でひとつだ!」
「――さ。ベンチに座って下さいおにいさん。一緒にお弁当を食べましょう」
「あ…………」

 華が十本木を無視して俺に話しかけてきた。
 後ろにいる十本木は顎に手を当てたままの姿勢で立ち尽くしている。
 なんとなく、悲しそうな目をしているようにも見える。
「なあ、あいつ――」
「あの人に対してはあの対応でいいんです。相手をするとペースに引き込まれますよ」
 言われてみればそんな気もする。
 つっこみどころが多すぎるからつい返事をしてしまうし、返事をしたらまた電波な台詞が飛んでくるからな。
 ――ちょっとだけ会話をするのが楽しかったのも事実だけど。

 ベンチに腰掛けると、華が左に座ってきた。
 膝の上には弁当箱。大きいものと、小さいものの二つ。
 当然、中身の量は箱の大きさに比例しているのだろう。
「おにいさんの弁当箱は、こっちですよ」
 そう言って、大きい弁当箱を俺の膝に乗せた。
「なあ、華? 俺は食欲が無いんだ。だからその小さいほうに――」
「たっぷり食べてくださいね。おにいさん」
 ……俺の言うことだけは無視しないでくれないかな?
 まあ、言っても無駄なんだろうけどさ。
 仕方ない。まともな料理であることを祈るしかないか。

 弁当の包みを解いて蓋を開けようとしたら、突然華の手で止められた。
「待ってください。もう一人来ますから、その後で一緒に食べましょう」
「もう一人? 誰だ?」
「私が所属している料理研究会の先輩です。
 おにいさんの話をしたら、ぜひとも会ってみたいって言ってました。
 今日おにいさんを呼んだのは、その人に会わせるためでもあったんです」
「……その人の性別は?」
「もちろん、女性です」

 ――今日、ここに来てよかった。
 俺の話を聞いただけで「ぜひ会いたい」と言うということは、たぶん好感を持たれているのだろう。
 長い冬だった。何年ぶりかに俺にも彼女ができる――かもしれない。
 嬉しくて、涙が出そうだ。

396 名前:ことのはぐるま ◆Z.OmhTbrSo mailto:sage [2007/03/13(火) 23:25:16 ID:4i4yRZ/G]

 俺が喜びに打ち震えていると、スーツを着た変人が目の前に立ちはだかった。
 そして、俺の顔を指差した。
「最初に言っておくよ。私の婚約者に手を出したら、許さない」
「婚約者ぁ? ……お前、女だろ」
「その通り。正真正銘の女だよ」
「……日本じゃ合法的に結婚できないだろ」
「私の父は言っていた。そして私は毎日言っていた。そして今日もこの言葉を言うとしよう」
 十本木は両手を大きく広げ、天を仰いだ。
「愛とは! 時に相手に受け入れられないこともある! しかし――」
「『それでも相手に想いをぶつけるのが真実の愛だ』でございますか?」

 華の声でも、十本木の声でもない、別の声が聞こえてきた。
 静かな声なのに、どんな喧騒の中にあっても聞こえてきそうな声だった。

「あすかさん。想われるのは嬉しいのですが、
 誤解を招くことを言うのはやめていただけませんか?
 わたくしはあなたと婚約などしてはいません。
 ――特に、雄志さまの前では言わないでいただきたいのです」

 ベンチの左側、俺の位置からは華を挟んで向こう側に女性が立っていた。
 長い髪に、目が覚めるほどに綺麗な顔。
 直線を思わせるような、背筋を真っ直ぐにした姿勢。
 儚くも、どこか恐怖を思わせるような眼差し。

「お久しぶりでございます。雄志さま。
 ――やはり、またお会いできましたね。ふふ」

 淑やかな口調で喋りかけてきたのは菊川かなこさん。
 もう二度と会うことはないだろうと俺が思っていた女性がそこにいた。

ーーーー
第六話、投下終了です。


397 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/13(火) 23:29:40 ID:37Q3En/0]
す、すげぇ・・・・まさかここで出てくるとは思わなかった・・・・!
続きをwktkして待ってるぜ!!

398 名前: ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/13(火) 23:35:06 ID:HKxmrjwt]
>>383
店長は素敵な変態ですねw

>>396
お嬢様キターー(゜∀゜)ーー!!
十本木さんもいいキャラです。

↓投下します。恋人作りでは無くヴァレンタイン・ヴァレンタインBの続編です。
明日はホワイトデーなんですよ!!!


399 名前:ホワイトD ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/13(火) 23:37:02 ID:HKxmrjwt]

 ストーカー女、姫野亜弓から妹を通じて「チョコレート」を受け取ってから
1ヶ月と少しが過ぎた。結局俺は箱を開ける勇気などなく、朝ゴミ回収車が来るのを
見計らって直接清掃員に渡すと言う方法をとった。
 チョコレートの一件以来姫野亜弓からは接触が一切無かった。あれで満足したのだろうか。
俺に飽きたのだろうか。その2つの内のどちらかだと俺は結論づけた。
否、そう信じたかった。俺は心の隅で鳴る警鐘を無視して平和に過ごしていた。

 何も無い、何の変哲もない日常に俺がようやく慣れてきた頃そいつらは唐突に現れた。

 そう、今俺の目の前にいるこいつらが今日突然現れた。俺に無関係だと言い聞かせて
見なかったことにして立ち去ることは出来る。ごく普通のカップルが何故だか
知らないが俺のアパートの辺りを見上げて話しているだけだ。そう思って
とりあえず友達の家にでも逃げれば良い。
 だが、そんなことは出来そうに無かった。俺の中で鳴り続けた警鐘が強く反応していた。



400 名前:ホワイトD ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/13(火) 23:38:00 ID:HKxmrjwt]

 ごく普通のカップルは多分お揃いの首輪を鎖で繋いだりしない。手を繋ぐ以上に
手錠でも繋いだりしない。少なくとも制服の少女と普通の高校生に見える服装の
少年のすることでは無い。明らかに――明らかに異質な何かだ。上手くは言えないが
外見以上に異質な。そして、危険な。更に右側に立っている少女を俺は多分知っている。
薄茶色のツインテール、薄い肩、青っぽいブレザーとスカート……
振り返ればおそらく、ひまわりのように明るく無垢な笑顔。

 鼓動が早くなる。逃げたいのに身じろぎすら出来ない。そうだ。姫野亜弓は満足などしていない。手首まで差し出すような女が
突然満足して手を引くはずが無い。俺の世界のものさしで考えればそうだ。
では彼女らの世界では――?


A;同じだろう。姫野亜弓だって同じ人間だ。
  少なくともよりあきらめが良いなんてことは無いハズだ。


B;わからない。わからないわからないわからない。姫野真弓を見ればわかる。
  彼女らは……異質なモノだ。こちらの常識が通じるハズは無い。






401 名前: ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/13(火) 23:41:22 ID:HKxmrjwt]
投下は以上です。

イベントなんで調子のって選択肢です。AかBで多かった方の続きを明日の夜投下します。


恋人作りは近いうちに続きをorz


402 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/14(水) 00:08:22 ID:kjX/U3Rl]
>ことのはぐるま
お嬢様、菊川かなこさんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
再登場待ってた!wktk

>ホワイトD キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
真弓と祐人は外でも繋いだままなのか!その病みっぷりがいい
亜弓さんの突き抜けた病みもwktk
AもBも捨てがたい・・・ ここはB!

403 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/14(水) 06:25:14 ID:xLozzm10]
起きたらキテタ━━(゚∀゚)━━!!
GJ!
>>396華の告白、お嬢様再登場と物語も加速しそうでwktk
>>401ここはあえて
σA
「常識的な対応をとろうとする男VSヤンデレ」を見てみたい

404 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/14(水) 09:09:08 ID:jRQzkL46]
>>401
俺としては……Bを読みたいかな。

405 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/14(水) 11:41:35 ID:1I3ja9Ih]
>>401
Aだ!Aに挙手!

406 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/14(水) 16:51:50 ID:LYiizQi3]
>>396
お嬢様の登場に痺れた!

>>401
個人的にはAを希望。

407 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/14(水) 21:16:50 ID:8iCv6GBM]
>>401
つA
彼の悲惨な最後が見たい・・・。

エロシーンが書いても書いても終わりません。店長の暴走が止まりません・・・orz

408 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/14(水) 23:23:13 ID:JZOb7U8U]
>>401
2

409 名前: ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/14(水) 23:50:09 ID:KXW/9q8H]
ちょ……急に忙しくなって半分しか書けなかったorz

↓投下します。

410 名前:ホワイトD-A ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/14(水) 23:52:19 ID:KXW/9q8H]

 アパートを見上げていたツインテールが振り向く。やけにゆっくりと見える動き。
鎖が少しだけカチャリと音を立てる。その目が俺を捕らえて一瞬遅れて認識した
光が宿る。振り返った時揺れた髪が静止する。
 そして首輪をした少女は深い笑みを浮かべると口を開いた。

「お久しぶりです」

 続いて傍らの少年が振り向く。俺を一瞥して少女に何か囁く。と、少女は
安堵したような笑みを浮かべてありがとうと小さく呟き、少年の首もとに軽くキスした。

「お姉ちゃんが……いえ、姉が今夜伺うと思います」

 ツインテールは笑顔で言った。

「ちゃんと待っててあげて下さいね」

 それだけ告げると2人は去っていった。
 2人が見えなくなると俺ははじかれたように走り出した。
 階段を一気に登って部屋に入って鍵をかける。

 なんて言った。今あいつはなんて言ったんだ。

 「姉が今夜伺うと思います」

 姫野亜弓が……来る?

 来て……何をするんだ?

 とりあえず自分がすべきことが逃走だということは混乱した頭でも理解できた。





411 名前:ホワイトD-A ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/14(水) 23:54:02 ID:KXW/9q8H]

 ピンポーン

 チャイムの音に俺は固まる。今夜って言ったよな?今夜ってことは夜で今はまだ
午後3時でお世辞にも夜じゃないな??
 大きく深呼吸をして落ち着いてから応答するために鍵を開けようと手をかけ

 カチャリ

 鍵が独りでに回った。

「やめろ!!」

 反射的にノブを掴んで開かないように精一杯引く。祐人、私の力じゃ開かない
という声がしてドアを開けようとする力が消えた。
 と、一瞬すごい力で引かれてドアが開け放たれる。

「疑う訳じゃないですけど一応念の為逃げられ無いように祐人おいていきますね」

 立ちつくす俺の横をすり抜けて真弓と祐人が入って行く。逃げられ無い。動けない。

「鍵……どこで」
「鍵ですか?姉に借りました。じゃあ私はこれで失礼します。
 祐人に手を出したら許しませんからね」

 背後で金属音がしたあと俺を軽く睨むと真弓は帰っていった。


■■■■■■


412 名前:ホワイトD-A ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/14(水) 23:55:33 ID:KXW/9q8H]
■■■■■■


「祐人っていうのか」
「はい。身分は真弓の恋人です」

 することが無い、というよりは何をしたら良いかわからなかったので
首輪をした少年に話しかけた。今は彼の首輪から伸びる鎖はどこにも繋がっていない。

「俺はどうなる」
「多分殺されると思います。亜弓さんはあなたを永遠に手に入れる
 みたいなこと言ってたんで」
「絶対か」
「まあ、多分」
「逃がしてくれないか?頼む。同じ男だろ。
 いくら美人だってストーカーに殺されるのは嫌だ」
「気持ちは良くわかるんですがそうすると俺の身が危ないので。
 こんなになってまで生きてるんで死にたくは無いです」
「お前、ひょっとしてまともなのか?」

 首輪を示しながら言った祐人を見て尋ねて見た。
そういえばこいつ単体からは異質な空気は感じない。




413 名前:ホワイトD-A ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/14(水) 23:57:13 ID:KXW/9q8H]
「まともかまともで無いかって言えばまともじゃない側ですよ。
 まだ生きてるんですから。聖祐人って名前に聞き覚えはありませんか?」
「いや、全く」
「そうですか。だいぶ前の話ですからね」

 少年は少し自嘲気味な笑みを浮かべていた。

「お前、逃げたく無いか?一緒に逃げないか?」
「逃げ切れる見込みがあるんですか?俺が逃げれば亜弓さんだけじゃなくて
 真弓も追ってきますよ」
「たかだか女2人だぞ?」
「本気で言ってるんですか?亜弓さんも怖いですけど真弓の行動力は異常ですよ。
 敵に回さない方がいいです。それに俺は自分でこの状態を選びましたから」
「……なんで」
「死にたく無かったから」

「俺だって死にたく無い」

「俺だって死にたく無い!なんか方法は無いのか!?俺は何もしてないだろう?
 死ななきゃいけないようなことしたか!?俺のせいか!?違うだろ」
「落ち着いて下さい」
「落ち着いてられるか!!何が多分死にますだふざけんじゃねえ!
 たかが恋したぐらいで殺しに来るな!!!失恋なんざその辺に死ぬほど転がっ」

 ドスッ

「落ち着いて下さい」

 鳩尾を殴られて静かにせざるを得なくなった。



414 名前:ホワイトD-A ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/14(水) 23:58:28 ID:KXW/9q8H]
「落ち着いて下さい。生きたいですか?」

 呼吸はまだ戻らなかったが上からのぞき込んで来る祐人の目を睨みつけるように
見返して頷く。死にたくなんか無い。殺されてたまるか。生きる意味がはっきり
あるような大層な人生は送っていないがこんな訳のわからない幕切れは嫌だ。

「だったら受け入れて下さい」
「それは、お前みたいになれってことか」
「真弓と亜弓さんでは少し異なるので一概には言えませんが受け入れて下さい。
 彼女達は彼女達なりの常識かあります。それを見極めて下さい。
 そんなにかけ離れたものではありません」
「首輪してる奴が言っても説得力が無い」
「でも俺は生きてます。俺は彼女達が違うことに気付くのが遅すぎてこれしか
 選べませんでした。相手が真弓だったせいもありますが」
「……ヒントは」
「受け入れて下さい。慣れればこちらの生活も楽ですよ」

 祐人はそれしか言ってくれなかった。




415 名前: ◆5PfWpKIZI. mailto:sage [2007/03/14(水) 23:59:39 ID:KXW/9q8H]
ここまでですorz
亜弓が出て来てすらいないとか言わないで下さい。

続きは必ず近日中に……


416 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 00:24:34 ID:C0w8rqaw]
祐人……
なんてこったい/(^0^)\

417 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 00:48:38 ID:/mHoVB2d]
主人公死亡フラグ立った!?
亜弓さんの登場wktkして待ってる!
真弓とラブなのかと思ったけど祐人は諦めただけなのか?

418 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 01:35:28 ID:M2tX/VXn]
つまり祐人は壊れたというより疲れたんだな!?
いや、ある意味壊れたんだろうが。

419 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 02:41:20 ID:GKnciXaR]
まじホラーSSだなこれwwしかし面白い!GJ!

420 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 15:36:08 ID:4Rclk8yD]
今更ですが未来日記を読んでみた。由乃イイ!




421 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 19:52:53 ID:DGtrgNbi]
ヤンデレっていうのは例えば病気で余命くばくもないってのもヤンデレにはいるの?

422 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 19:59:42 ID:GKnciXaR]
>>421 それはセカチューデレだな。


423 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 22:17:06 ID:z75dQFET]
流れを切って投下しますよ

424 名前:『首吊りラプソディア』Side首吊り mailto:sage [2007/03/15(木) 22:18:02 ID:z75dQFET]
 今日も一日疲れたけれど、でも楽しかった。最近はとても調子が良い、いつでもあの人
の側に居ることが出来るから。それだけで活力が沸いてくる。沸きすぎて少しばかり悪戯
をしてしまうのは悪いとは思っているけれど、あの人は色んな雌豚に優しくして自分の心
を掻き乱してしまうからお互い様かもしれない。まぁ、一番悪いのは彼に色目を使い誘惑
しようとする雌豚共だけれど。今日も新しい雌豚がやって来た、それも馴れ馴れしい態度
であの人に接していた。思い出すだけでも、腸が煮えくり返ってくる。
 でも、もうすぐあの人に会える。今の時間に約束はしていなかったけれど、あの人なら
快く迎えてくれるだろう。少し苛々としたような表情を見せながらも、結局は笑って自分
を迎えてくれる。あの人はそんなタイプだ、だから惹かれたのだ。
 彼の部屋まで辿り着き、ドアノブに手を伸ばした直後、
 女の、叫ぶ声がした。
 苦痛ではなく悦びの色を多分に含んだ、浅ましい声。
「何ですか?」
 答える相手が居ないのに、それだけでは問いとしても成立していないのに、無意識の内
に問掛けた。きっと、あの人にも聞こえなかっただろう。部屋の外にまで聞こえてくる程
激しい喘ぎ声だ、自分の囁きが届く筈もない。
「黙れ、この腐れ豚」
 もう一度呟くが、それも掻き消された。
 あの侍め、あの人に、何てことを。


425 名前:『首吊りラプソディア』Side首吊り mailto:sage [2007/03/15(木) 22:19:02 ID:z75dQFET]
 部屋の中で行われている光景を想像し、黙ってドアを睨み付ける。口から漏れてくる声
は自分でも驚く程に冷たい、だが自覚をしているのに止めることが出来ない。頭の中は、
意外と冷静だ。漏れてくる呪阻の言葉を聞き、よくもこれだけの言葉を言えるなと自分で
感心してしまう。どうやら自分は怒りが限界を突破すると、冷静になるタイプらしい。
 つい指輪を起動しそうになり、ドアに背を向けた。
「まだ、まだ」
 侍に対する仕打ちを考えながら、部屋から遠ざかる。今はまだ行動するべきではない、
きちんと計画を終えてから改めて彼の元へ向かうことにしよう。溜めた分、喜びは大きな
ものになる。あの人が自分に教えてくれた、大切な言葉の一つ。それを思えば、今の彼の
部屋から離れることすらも楽しくなる。
 さて、時間が空いたけれど何をしようか。
 昨日から始めた雌豚狩りをするには、時間が早い。適当に殺して気分を晴らしたいが、
それでバレてしまっては本末転倒だ。でも殺したくて心がうずいてくる。これまではただ
殺すだけだったけれど、雌豚と目標を決めた今では本当に楽しくて仕方がない。あの人の
為になる、そんな意識が自分をそうさせているのだろう。
 目的もなく歩くと、いつもの広場に着いた。今もまだ管理局に保護をされているので、
一緒に星を見上げた子供達は居ない。声が無いことで生まれた静寂の中で、淡々と自分の
足音が響いている。見上げれば、雲のせいで星も見えなかった。


426 名前:『首吊りラプソディア』Side首吊り mailto:sage [2007/03/15(木) 22:20:46 ID:z75dQFET]
 苛々した。
 どうやら今日はついていないらしい、そっと溜息を吐く。
「嫌になるなぁ」
 早く時間が経ってほしいのに、時計を見ても彼の部屋から離れてから、まだ幾らも経過
していない。どうしようか、と考えながら壁に背中を預けて欠伸を一つ。
 不意に、額に冷たさが来た。
 雨が、落ちてくる。
 軽音。
 最初は小さな音だったものが連続し、それは鼓膜を震わせるオーケストラとなる。人に
よっては嫌いという人も居るかもしれない、音と関係なく雨自体を嫌う人も少なくない。
けれど自分は好きだ、全てを塗り潰してくれるこの雨が。
 大切な言葉をまた一つ思い出す。
 雨は心の中の塊を流してくれる、とあの人は言った。あの人のことは信じているし尊敬
もしているけれど、自分は少し違うと思う。流すのではなく塗り潰してしまうのだ、水の
持つ透明という色で。表面が透明という色で覆い尽くされて、心の中の塊は見えなくなる。
傍目には消えてしまったと思うだろうけれど、それは勘違いだ。見えなくなっているだけ、
たったそれだけのことだと思う。確かな質量を持って心の中にいつまでも存在し続けて、
いつかは雨のペンキが剥がれて塊が歪に顔を出す。
 今の自分のように。
 塊というのは人によって違うが、共通点がある。
 痛み。
 誰でも抱えている、あの人も例に漏れず持っている、誰にも見せたくない、隠しておき
たいと思うものだ。どんなに大切な人が相手でも、出来れば見せたくないと思う痛みの塊。


427 名前:『首吊りラプソディア』Side首吊り mailto:sage [2007/03/15(木) 22:22:11 ID:z75dQFET]
 自分のそれは、あまりにも大きすぎた。取り返しが付かない状態になればなる程にそれ
は肥大化をして、やがて隠すことが出来なくなる。醜く肥えた悪意の塊は、そうして他人
に痛みを与えながら益々肥大化をしてゆき、もう戻れなくなってしまう。
 それが、自分だ。
 自分の痛みは、過去と呼ばれるものだ。
 殺してしまった人はもう生き返ることは出来ない、それが痛みとなって心に残り続ける。
元より生きる価値のない豚ばかりだったけれど、それでも傷にはなる。
 あの人は、それを見てしまった。
 けれど、自分を否定もしなかった。
 雨は心の中の塊を流してくれる、と慰めてくれた。
 連鎖的に頭に浮かんでくる言葉や出来事に、心が軽くなってきた。同時に、雌豚狩りの
やる気もどんどん沸いてくる。あの人の顔を思い浮かべれば、それは尚更だ。加速度的に
増してゆく思いが冷えた体を熱くさせ、鼓動を強いものへと変化させる。
 見て下さい、その慰められた女は頑張っています。少しでも誉められたいと、あの時の
心を失わずに頑張っています。だから見て下さい、誉めて下さい。昔のように頭を撫でて、
その柔らかな笑みを自分だけに向けて下さい、見せて下さい。
 心の中であの人にメッセージを送り、足を踏み出した。考え事をしていた間に、時間も
それなりに経過していたらしい。丁度良い時間だし、雨ならば人通りも少なくなってきて
いるだろう。一歩踏み出す度にブーツが水を跳ねる音が響き、それが自分の心を鼓舞して
くれる。あの人の心臓の音のような気がして、気分が盛り上がる。


428 名前:『首吊りラプソディア』Side首吊り mailto:sage [2007/03/15(木) 22:23:41 ID:z75dQFET]
「待ってて」
 もう、あと少し。
 今の計画が完了すれば、あの侍なんか目に入らなくなる。
「誰の邪魔もさせない」
 あの人にまとわり付く馬鹿な泥棒猫や妙な喋り方の火傷女なんて、絶対に要らなくなる。
他の有像無像なんて論外、自分だけを見るようになるだろう。その光景を考えただけで、
足が軽くなってくる。いつまでもどこまでも進むことが出来るような、例えどんなに障害
があっても乗り越えることが出来るような、そんな気がする。
 歩いていると、仕事帰りなのかスーツ姿の若い女が歩いていた。
「やった」
 やっぱり全ては自分に味方をしてくれている、いや愛の力が幸運を呼んだのか。そちら
の方がロマンがあるし、そう思った方が力が沸いてくる。口の端を上げて、駆け出した。
「死ね、この腐れ豚が!!」
 ステップを踏むように体を運び、腕を振り上げる。どんなに大きな目的でも、進むのは
小さな一歩から。あの人がよく言っていた、大切な言葉だ。端女が相手でも、自分の計画
の足しにはになる。だから見逃すなんてことも絶対にしない。
 指輪を起動させ、振り下ろす。
 こちらを向いて驚いたのも一瞬のことだっただろう、雌豚は苦しむこともなく息絶えた
筈だ。もっと苦しませても良いかと思ったけれど、無関係な雌豚はそれ程苦しめなくても
問題ない。肝心なのはあの人に正体を明かすまで証拠を残さないだ、さぞ驚くことだろう。
 心の中であの人の名前を呟き、空を仰いだ。
「やり遂げてみせます」
 自分達だけの夢舞台を作り上げる為に、
「全力で」
 この、『首吊りラプソディア』が――


『"The Rhapsodea Of Neck Hanger"Starting Baby』 is END.

429 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig mailto:sage [2007/03/15(木) 22:26:25 ID:z75dQFET]
今回はこれで終わりです

取り敢えず第一章が終わりです
これは全四章の予定ですが、これだけでもヤンデレとして読めるかも


無理ですね

次からはフジノも本格参戦しての話になります
乞う御期待!!

430 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 22:26:31 ID:BleML2dL]
このスレワロスww
邪気眼スレに転載してもいいっすかw



431 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 22:36:01 ID:C0w8rqaw]
>>430
(;^ω^)うわあ……

432 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/15(木) 23:49:20 ID:/mHoVB2d]
第一章終了乙です!
首吊りはどっちなんだろー?

433 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 00:12:21 ID:odt0OjyU]
>>429
第一章終了、乙カレー。

俺的には同僚が『首吊り』だったら萌える。

434 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 07:21:33 ID:WtSrGkIy]
>>429
GJ!&第一章終了乙です
十分ヤンデレとして読めていた俺ガイル
ということはこの先はさらに…wktk

435 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 09:56:29 ID:GoZewXCQ]
>>430
春休み乙

436 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 20:59:00 ID:usAZ35BY]
>>384
チラシの裏レベルの話であることを承知の上でマジレスすると、
本来おにいたん1のラストは全員死亡オチだった。
けどソレだと救いがないしありきたりだな〜と思ったとき2のプロットを思いつき、
そのために全員(DVおやぢ除く)助かったほうがいいなと考えた末
全員変態エンドに至ったという経緯がある。

悲惨なラストのほうは2完結後にでも。

>>385
病みます。突然に。ていうか、『突然病む』っていうのを書きたかったんだ。

>>398
祐人はテュルパンでバイトしてもやっていける気がしますw

ということで「新店長でG.O.」第4話です。

警告:
これより先、以下の属性にたいし嫌悪感のある方はアボーンもしくはスルーでお願いします。
・ロリペド
・レズ
・放尿シチュ
・ふたなり

437 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:00:22 ID:usAZ35BY]
「店長・・・いえ、笑留さん、どうしてここに?」
耕治の問いに対し、笑留は両手を離しやれやれのポーズをとる。
「あのね・・・薫ちゃんたちと別れたときにね、薫ちゃんが持ってたCDが気になってね。
事務所のパソコンを二人が帰ったあと調べたのよ。そしたら何?得体の知れないファイルが入ってて」
うっ、とたじろぐ二人。
「ファイル調べたらなんかWEBテレビ電話みたいだったから安心はしたんだけど、一応ね。
耕治君たちが他社のスパイって線を疑っちゃったのよ。それで今日・・・
閉店後に耕治君たちは何か行動おこすかな〜、って思って店にもう一回来たのよ。
そしたら・・・うふふふふふふ。ま・さ・か、こんな用途に使うとはね?」
ぽたり。笑留の口元からしずくが落ちる。5,6滴。
「笑留さん・・・よだれ落ちてます」
「あ〜ら、失礼♪」
じゅるり。下品にも手でぬぐう。
「笑留さん・・・いったいいつから覗いてられてたんですか?」
「あずさちゃんがカメラいじってたぐらいから」
「て、てんちょう!んじゃ、最初っからみてたんじゃないですか!!」
「そぉ〜うよぉ〜」
じゅるり。よだれをまた手でぬぐう笑留。
「で、ずっと覗いてたんだけど、本番始めたでしょ?だから
『あー多分今入っていっても気づかないだろーなー』
って思って、中入って間近でじっくり見させてもらったの♪」
「じ、実際気がつかなかったわね・・・」
「ああ・・・」
「で、二人の処罰なんですが」
「え゛?!」
ハモる二人。
「会社内備品のパソコンに私的利用のプログラムをインストールすることは社内規定違反です」
「う゛っ・・・」
「さぁて・・・二人の処罰ですが・・・」
「おにいたん!」
「?、薫ちゃん?!」
「えみるおねえたんにかわってくだたい・・・」
薫の言葉に耕治は自分のインカムを笑留に渡す。
「あのね、えみるおねえたん。おにいたんとあづさおねえたんは、わるくないの。
ぜんぶね、かぁるがわるいの。かぁるが、おねがいちたの。だからね、おにいたんたちをゆるちてくだたい!」
「きゃ〜かぁるちゃぁん!!かぁいぃ〜!!」
笑留はパソコンのマウスを動かし、省電力モードになってるモニターを表示させる。
画面に現れたのは全裸(・・・)の薫ととき子。
「ん〜ちゅっ」
画面に向かって投げキッスを送る笑留。
「うんうん。かぁるちゃんの言うことなら何でも聞いてあげたい・・・んだけど!」
で、ここで言葉を切って耕治たちのほうを向く。
「コレとそれとは話が別!耕治君!あずさちゃん!」
「はぃ!」
「えみるおねえたん・・・おにいたんたち、『くび』なんでつか?」
「そんなことするわけないじゃなぁ〜い♪」
笑留の言葉にほっとする4人(画面の向こうの二人含む)。
「さて、二人に対する懲罰ですが」
真顔になる笑留。対して真剣な表情をするあずさと耕治。しかし笑留の口から出てきた言葉は。
「今ここでもう一回Hしなさい」

438 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:00:55 ID:usAZ35BY]
「は゛い゛っ?!」
「もっかい、あたしの前で、今すぐ、Hなさいといったの!」
「え〜!!」
「店長!それ横暴です!」
「えみるって、呼べって言ったでしょう?!」
「だっててんちょ・・・」
「次言ったら解雇します」
「え゛〜!!」
「そ、そこまで言いますか、笑留さん?!」
「だぁってぇ〜」
といって体をくねらす笑留。
「だってぇ、店長なんて、堅っ苦しい言われ方いやなんだもん♪それにね」
というや笑留はあずさの背後に回りこみ後ろからあずさを愛撫し始める。
「て・・・えみるさん・・・ちょっと・・・あ・・・」
「こんないいことしてて笑留だけ仲間はずれって、ずるいんじゃない?」
「え・・・えみるさん・・・うますぎ・・・」
笑留はついさっき耕治がやったように片手を胸、もう片方を股間にやり愛撫している。
しかしその手つきは、耕治よりはるかに巧い。
見る見るうちにあずさの股間からしずくが滴り落ち始める。
「さぁーてと、あずさちゃんの準備運動はおしまい♪耕治君、さぁ、始めて貰いましょうか?」
「あのー笑留さん?」
耕治が手を上げて質問する。
「なぁに?」
「笑留さんはどうするんですか?一人でするんですか?」
「いや〜ねぇ、そんなわけないじゃない。丁度いいエサがここにあるし」
「えさ?」
笑留は梓から離れると事務室の中にあるロッカーの扉に手をやる。
ロッカーは人間の身長ぐらいの高さ、無理すれば大の男一人でも納まりそうだ。
「ほぉら♪」
笑留はロッカーの扉を開ける。そこには・・・。
「み、みーな!」
「美衣奈ちゃん!!」
美衣奈は両手を股間にやった状態でロッカーに収まっていた。
「あ・・・お、おねぇちゃん・・・」
「アンタなにしてんのよ!閉店からいきなり姿を消したと思ってたら」
「だって・・・お姉ちゃんたちがここでHするの分かってたから・・・ここでずっと待ってたの・・・」
画面の向こうでは薫がキーボードに突っ伏している。
とき子は頬に手をやり、いつもの如く「あらあらまぁまぁ」。
「普通に出てきたらいいじゃないの!」
「だって・・・こっちのほうが興奮するし・・・」
「まぁ・・・姉妹そろって変態さんね♪」
あんたにだけは言われたくない。耕治は心の中で突っ込んだ。
「ということで、美衣奈ちゃんはあたしがいただきます。いいよね?」
断ったてもどーせやるだろうと思って笑留以外の全員がうなずく。
「では、いただきま〜す♪」
笑留はロッカーから美衣奈を取り出すと後ろに回って抱きしめた。
そして笑留は片手で器用にスカートのホックを外し、ミニタイトは下にすとんと落ちる。
笑留は上はスーツにブラウスのまま、下半身は丸出しの状態。
そして美衣奈は自分の腰に異様な感覚があることに気がついた。
何かが当たっているのだ。その感覚に近いものといえば、耕治の・・・。
「え、笑留さん・・・」
「なぁに?」
「腰に、なにか、当たってるんですが・・・」
「ああ、これ?」
笑留は美衣奈から離れ、自分の下半身を見せる。そこにあったのは・・・

ぱおーん。

439 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:03:00 ID:usAZ35BY]
「ででででで、でん゛ぢょ゛う゛!!!」
「なんですかその黒光りしたりっぱな象さんは!!」
「なにって・・・クリトリスだけど?」
「見えません!どう見ても男のアレです!!」
そこにあったのは耕治のソレとほぼ同サイズのペニス(?)があった。
「いやぁ〜ねぇ。間違いなくあずさちゃんや美衣奈ちゃんのモノと同じものよぉ?その証拠に・・・」
笑留は右手でおいでおいでの仕草をする。近づく3人。
「ここ・・・見て・・・」
笑留は3人に自分の一物を近くで見させる。
「あ・・・ほんと・・・ない・・・」
「穴が・・・ない・・・」
笑留の亀頭に相当する部分には、男にはあるはずの尿道口が存在しなかった。つるつるの巨大ルビー。
「この部分、整形でもしたんですか?」
「生まれつき」
耕治は自分がした質問が不用意なものであることに言ってから気がついた。案の定、禾森姉妹に睨まれる。
「こぉ〜じ〜」
「失礼ですよ・・・それは・・・」
「笑留さん・・・失礼なことを言ってすみません!」
すぐに自らの非礼をわびる耕治。
「いいの」
ため息をつきながら笑留は答える。
「コレのせいで小さい頃はいじめられてね・・・味方はおにいちゃんしかいなかったの」
(お兄ちゃんって、前の店長のことだよね)
3人は納得する。
「中学になって、女子校に入ったの。当然コレのせいでバケモノ呼ばわりされたわ。
けど、そこで出会った先輩に助けられたの」
笑留はそこで切り、再びため息をつく。
「入れるほうも入れられるほうも、その人が初めてだった。それから自分に自信がついて。
人付き合いも出来るようになって、高校卒業の頃にはちょっとしたハーレムだったわぁ〜」
言葉に陶酔の色が出だす笑留。3人は半ばあきれた表情でソレを聞いていた。
「その恩人には最後の最後で裏切られたんだけどね」
え?最後の言葉に驚きの声を上げる3人&画面の向こうの二人。
「はい、昔話はこれでおしまい。耕治君、さっさとしないと。
せっかくほぐしておいたあずさちゃんがまた硬くなっちゃうよ?」
「え・・・あ・・・はい」
「え〜、やっぱりするの?」
「あずさちゃん?お姉さんに『解雇』なんて言葉言わさないで、ね?」
「う゛・・・」
「あずさ・・・あきらめろ。入れるぞ」
「ちょ、ちょっと、心の準備が・・・あん!」
じゅるり。耕治の一物はあずさの後方から浸入した。
「あっちもはじめたし、こちらもはじめますか。ね、美衣奈ちゃん?」
「は・・・はい!」
笑留はパソコン前の椅子に腰を下ろした。
「美衣奈ちゃ〜ん?お姉さんの上に腰を下ろしてくれる?」
「はい・・・」
ぬちゃり。
笑留の一物を体の中に受け入れる美衣奈。笑留に言われずとも美衣奈は腰を動かしはじめる。
「うぁ・・・すごい気持ちいい・・・いいなぁ・・・毎日こんな気持ちいい事してるんだ耕治君は・・・」
「耕治さんはいつもお姉ちゃんか薫ちゃんとです。美衣奈はいつも見てるだけです・・・」
「そっか・・・それでこの気持ちよさは納得でき・・・って、耕治君!」
「はい!」
「かぁるちゃんといつもしてるデスって?!犯罪よ、ソレは!!」
「す、すいません!!」
「うらやましすぎ!!!」
がくっ。繋がったまま崩れ落ちる耕治&あずさ。


440 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:03:33 ID:usAZ35BY]
がくっ。繋がったまま崩れ落ちる耕治&あずさ。
「かぁるちゃぁぁぁぁん?おねえちゃんとしよぉぉぉぉ?!」
「い・・・いえにきてくれたらいつでもいいでつよ?」
同じくキーボードに突っ伏したまま答える薫。
「うん!ここで一回したら、すぅぐに、行きますからねぇ〜」
よだれをだらだら流しながら話す笑留。
「ところで・・・ええと、美衣奈ちゃんはお尻もOK?」
「え、え?あ・・・一応経験は・・・っ、って、あ゛あ゛っ!」
笑留は自らの一物を一度引き抜くと、今度は美衣奈の後ろの穴に前技もなしに入れた。
「え・・・笑留さん!前技もなしに入れるなんて無茶ですぅ!」
「けどはいっちゃったよ?う〜ん♪後ろも前並に、でりぃしゃぁす♪」
笑留は椅子を回転させて美衣奈の全身がカメラに映るようにする。
そして笑留は指で美衣奈のクレヴァスを開いた。画面の向こうで大写しになる美衣奈の秘所。
「きれい・・・」
うっとりとするとき子。笑留は画面の向こうに話しかける。
「あーあーとき子さん、でしたっけ?聞こえます?」
「ええ、聞こえますよ」
「美衣奈ちゃん、きれいでしょう?」
「ええ。下のお口から流れるよだれ、その上に赤く光る宝石、とても・・・」
「ねぇ、とき子さん?ここまでしたんですから、とき子さんもしなければいけないことがあると思うのですが?」
「え?なにを・・・ああ、そういうことですか」
ぽん。両手で拍手を一回する動作をしてからとき子は居間の後ろにある戸棚に行き、なにやら物色をはじめた。
「まま、なにちて・・・えぇっ!!」
とき子が薫のほうを振り向いたとき、とき子の股間にはりっぱな一物が生えていた。
こちらはもちろんイミテーション物、俗に言う『ペニスバンド』。
「まぁ、さすがとき子さん、わかってらっしゃる」
「さぁ・・・薫ちゃん・・・一緒に楽しみましょう?」
「ま、まま!!」
とき子は薫を片手で抱きかかえ、もう片方の手に持った小瓶からローションを人工の一物にたらす。
そしてとき子は薫の後ろを貫く。
「あ゛あ゛っ!」
とき子はテレビの画面のほうに向き、笑留が美衣奈にしたように指で薫の一本筋をこじ開ける。
「笑留さん・・・見えますか?我が家の、可愛い、薫の、みだらな、秘密・・・」
「ああ〜たまんなぁ〜い!!」
がしゅがしゅがしゅがしゅ!
急激に腰を振り出す笑留。
「ちょ・・・笑留さん!はげしすぎます・・・ああん!」
直腸に往復運動されながら指では膣と陰核に刺激をあたえられたもんだから、たまったもんではない。
「ああっ、美衣奈さん、素敵ですわぁぁぁ!!」
とき子も腰を振り出し、同じく薫にみだらな刺激を与える。
「まま、まま、おちっこ、おちっこでるでつぅぅぅぅ!!」
「笑留さん!もだめ、もだめですぅぅぅぅ!!」
「あ、あたしもぉぉぉ!」
ぷしゃぁぁぁぁぁ・・・。
4人はほぼ同時に失禁して果てた。
ずるっ。
笑留は美衣奈から一物を抜くと下の服をきちんと着なおした。
「さてと、耕治君、あずさちゃん?なに繋がったままでひっくり返ってんの?お店閉めて帰りますよ?」
「あ、はい。笑留さん、お帰りですか」
悪夢が終わったと思いほっとする二人。しかし。
「なに言ってるんですか?これから禾森邸に家庭訪問よ!?
こんなエッチな家庭とは一度訪問の上きちんと話しておかないといけません!」
止まらないよだれを手で拭きながら宣言する笑留。呆然とする二人。
「さぁて、いくわよぉぉん!」
「って、あたたたた!!服引っ張らないでください!せめてきちんと服着せてください!」
「せめてパンツぐらいはかせてぇ〜!!」



441 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:05:02 ID:usAZ35BY]
「おちっこ・・・」
薫が目が覚めたのは夜中だった。
禾森邸の居間。今薫以外5人の男女と一匹の犬がいる。
「うん・・・はん・・・」
薄明かりの中、一人だけ起きている人物がいる。
「えみる、おねえたん・・・?」
「はぁ・・はぁ・・・たりないのぉ・・・」
(まだやりたりないのでつか?)
薫はあきれながら薫の自慰を見ていた。体は伏せたまま。気づかれないように。
「こんなんじゃぁ・・・満足できないのぉ・・・」
(ぢぶんだけだからでちょう?)
他の人間は全員寝ている。但し、全員目を見開き、白目をむいたまま。失神しているとも言う。
「やっぱり・・・でないとぉ・・・だめなのぉ・・・」
(え、いまなんといったでつか?なんでないといけないのでつか?)
笑留の言葉に聞き耳を立てる薫。一字一句、聞き逃さないように。
「あの裏切り者・・・笑留の・・・大切なものを・・・うばって・・・かえしてよぉ・・・」
(うばった?)
「○○○○○○!」
「ええっ!?」
「え、うそっ!薫ちゃん?!」
「あ・・・」
笑留は薫を手招きして呼び寄せた。
「ごめんね?起こしちゃった?」
「あい・・・」
「今お姉ちゃんが言ったこと・・・聞こえた?」
「ひめい、ぢゃないのでつか?」
「ちがうよ・・・分からなかったら、いいの。ごめんね」
ちゅっ。笑留は薫のおでこにキスをした。
「あたしももう寝るね。かぁるちゃんもね」
「おちっこいってからねまつ」
「一人で行ける?何ならお姉ちゃんがのんであげるよ?」
「とのままねむれなくなるのでいいでつ。おねえたん、あちたも、ちごとでちょう?」
「そだね。ごめんね」
そういって笑留は横になった。すぐに寝息を立てだす。
(おねえたん・・・)
トイレに行く途中、薫は笑留の言葉を思い出していた。
(えみるおねえたん、たしかにいったでつね・・・とれがおねえたんの、ほんちんでつか・・・)
(おねえたんにとっては、みんな、とのかわりでちかないんでつね・・・)
ただのH好きなら薫も許した。しかしその言葉は薫に殺意に近いものを抱かせた。
(おねえたん・・・おちおきでつ・・・)
ちろろろろ・・・
便器に座って用を足しながら、薫はその頭脳をフル回転させていた。笑留の絶叫が頭を何回もよぎりながら。

「お兄ちゃぁん!」

442 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:07:20 ID:usAZ35BY]
続きます。
・・・エロが度を過ぎた。今は反省している。だけど後悔はしていないw

次回。薫の逆襲。そして店長病化。

・・・ええ。
薫たんの復讐ですよ?
容赦ありませんよ?

443 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 21:16:05 ID:sL9Wn9E/]
GJ!



しかし、どんどんヤンデレとは違う方向に進んでいるような気がするのは気のせいか。

444 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 21:24:05 ID:odt0OjyU]
いや、たぶんこの話はたまたまエロが集中していたのだろう。
このスレで直接的なエロが濃いSSは数が少ない。エロいのはいいことだ。

次回の病みに期待。


あと、作者さんに一言。
地の文の前にはスペースを入れてもらえると読者としては読みやすいですよ。
もし、狙ってやっているのでなければ、考えてみてください。

445 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 21:44:00 ID:iIwhdpQ9]
“いない君”をバールのようなものを抱えながら期待。

446 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 22:49:35 ID:WtSrGkIy]
>>442
このエロが前フリになってどんな病みになるのか期待!

447 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:24:58 ID:22hp4O8L]
投下します 
注意 ふたなりものです

「ねぇ、貴方…」
「財布、返して頂戴」
「聞こえないの?」
「大丈夫?」
「も〜し、も〜し?」
「………」
「ねぇ…、財布」
「………」
「私の…」
「ここって貴方の家?」
「ねぇ…」
「………」
「………」
「………」
「貴方…、犯し殺すわよ!!?」
幽鬼の如き足取りで否命は家に帰った。
「ただいま」
ドアを開け、声を掛けても応える人はいない。否命の唯一の同居人である沙紀は、部活で否命より遅く帰るのだ。
否命は明かりの付いていない暗い家の玄関を見ながら、いつから「おかえりなさい」と言ってくれる人がいなくなったのかが、唐突に頭に浮かんだ。


448 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:26:36 ID:22hp4O8L]
否命はおぼろげな記憶しかないが、お姉ちゃん(梓)と居た頃は「おかえりなさい」なんていう言葉を聞いた事がなかった。基本的に否命は外に出ることは無く、外に出たとしても大抵はお姉ちゃんが一緒だったからである。
それからお姉ちゃんが死んで親戚の家に引き取られたが、ここでも否命は「おかえりなさ
い」と言われることは無かった。否命は、どうしてもここが(親戚の家)自分の家だとい
う気になれず「ただいま」と言う事に抵抗があったのだ。勿論、幼いながら否命は自分は
これからずっとこの家で暮らす事になるのが分かっている。だから、否命は最初に親戚の
家に来た時、否命は咄嗟に「ただいま」と言おうとした。しかし、やはり否命の目に飛び
込んできたのは「知らない道」「知らない門」「知らない庭」「知らない玄関」そして「
知らない人達」であり、否命はここが自分の家と理解する反面、ここを自分の家と思っていいのかな…という遠慮にも似た感情が、「新しい家族」を見れば見るほど湧きあがっていく…。
結局、否命は無言で新しい母親に連れられて家に入った。
それからも否命はこの家のドアをくぐる度にあの感情が湧きあがり、否命は目を伏せ背を縮め、無言で家に入っていった。
この行動に否命の親戚が気まずい思いをしないはずはない。しかし、それでも親戚の人達は大人であり、それによって否命自身が一番気まずい思いをしているのを分かっていたので、それを理由に否命を疎んだりはしなかった。
否命が親戚の家から再び使用人を付けられて、自分の家に戻されたのは別の理由があっての事である。


449 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:27:32 ID:22hp4O8L]
否命が自分の家に戻ると聞いた時、否命は喜んだ。「自分の家」に帰れる事もあったが、なにより否命が嬉しかったのは、使用人の娘「浅原沙紀」という同年代の遊び相手が出来た事だった。
その頃は、使用人が沙紀と一緒に幼稚園から帰る度に「おかえりなさい」と優しく声を掛けてくれたし、人見知りの激しい否命も沙紀につられて「ただいま」と言う事が出来た。
その新しい環境に否命がすっかり馴染んだ時だった。
ある日、使用人が何の前触れもなく忽然と姿を消したのだ。否命が13才、沙紀は14才の誕生日を迎えたばかりの時である。
その日、否命は泣かなかった。自分に優しくしてくれて、10年近く世話をして貰った、言わば母親代わりのような人間がいなくなって哀しくないはずがない。ただ、否命はあまりに突然の事で実感が湧かなかったのである。
使用人が居なくなった事実は理解している。しかし否命はその事実が現実であると分かってはいても理解する事は出来なかったのだ。使用人が消えたのが、本当に唐突過ぎて…。
それから三日後、否命が沙紀と一緒に中学から家に帰ってきた時であった。


450 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:28:34 ID:22hp4O8L]
「ただいま」
いつものように否命は帰宅の挨拶をした。それからしばらくして、否命はその場で固まってしまった…。
「どうしたのですか?お嬢様…」
怪訝そうな顔で沙紀は否命の呆けた顔を覗きこむ。それでも否命は、口をポカンと開けたまま目を何処か遠くにやっていた。
「お・じょ・う・さ・ま」
少し強い口調で呼ばれ、否命は下から顔を覗き込んでいた沙紀と目が合い、ようやく否命は意識を取り戻した。
「お嬢様、どうなさられたのですか?」
「何かが足りない気がするの…」
明かりのついていないくらい玄関で否命はポツリと呟いた。
「………お嬢様?」
「そっか、そうだよね…ごめんなさい、沙紀さん。なんか、「おかえり」っていう声が聞こえそうな気がして」
言って、否命は泣き出した。
否命はようやく気付いたのだ、もう「おかえり」という声が聞こえるはずはない。そして明日も明後日も明々後日も「おかえり」という声は聞こえない。それを理解した否命の目から涙が留め止めもなく溢れてきた。使用人が消えてから初めて見せる涙であった。
泣きじゃくる否命を沙紀はその場でしばらく見守っていたが、やがて腰を屈めて否命と視線を合わせるとニッコリと笑って言った。
「お嬢様…、変顔選手権に出場されるおつもりですか?」




451 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:29:59 ID:22hp4O8L]
途端に否命の泣き声が止む。
「さっ、沙紀さん!!なにもこんな時…」
否命は顔を耳まで真っ赤にして沙紀を怒ろうとしたものの、どうしても口が緩んでしまい、とうとう吹きだしてしまった。
「やっぱり、お嬢様は泣き顔より笑っている顔のほうが似合いますよ」
「………」
「フフフ…照れてます?というか照れて下さい…、正直に申しますと私は今、とてもいたたまれない気持なのですから」
そういって沙紀も顔を真っ赤にする。
「もぅ、沙紀さん、臭すぎるよ」
否命と沙紀はそこで顔を見合わせると再び笑いあった。そして沙紀は、玄関の明かりを付けると否命の前に立って言った。
「おかえりなさいませ…、お嬢様」
否命の胸に、ほんのりと暖かい何かが宿る。否命はさっきまでの沈んだ気分が嘘みたいに、
無くなっているのに気付いた。否命はきっと今、自分は笑っているんだろうと思った。幸せそうに、楽しそうに…、
でも何故か否命は自分が涙を流している事に気づいた。
あれっ?っと思う間も無く、否命の口から同時に泣き声が飛び出す。
否命は泣いた。なんで泣いているのか自分でもよく分からなかったが、とにかく泣いた。
涙が泣いても泣いても尽きること無く流れ出てきた。その否命を沙紀がそっと胸元に抱き
寄せる。するとより一層、否命は激しく泣いてしまった。沙紀の背をがっちりと抱き、沙紀の制服を涙と鼻水で汚しながらたっぷり10分間、否命は泣いた。
それから沙紀は自宅に帰ると必ず否命より先に電気を付けて、「おかえりなさいませ、お嬢様」と否命を迎えるようになった。
その度に否命はホッとするような、肩の力が抜けるような、そんな気持になり「ただいま」と自然に口に出せるのだ。


452 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:31:16 ID:22hp4O8L]
否命は、自分の家に帰る時のこの沙紀とのやりとりが好きだった。
しかし、否命は高校に入学するのをきっかけに沙紀を半ば強制的に部活にいれ、自分が沙紀より早く家につくようにした。当然、帰宅の挨拶は無い。
否命はどうして家で一人の時間が欲しかったのだ。
そこまで考えたとき否命はようやく白昼夢から覚め、慌てて玄関に立てかけてある時計を確認した。
あの少女と関わってしまったせいで、時計は17:30を指している。否命は慌てて玄関
の鍵を閉め、防犯ブザーのスイッチを入れた。この防犯ブザーはドアが開くと騒音が鳴り響くタイプである。
確かに、女二人だけの生活であるから防犯するに越したことはない。だが、否命が防犯ブザーを設置したのは防犯のためでは無かった。これから始まる毎日の日課のために取り付けたのである。
否命はちゃんと防犯ブザーにスイッチが入っているのを確認すると、靴を脱ぎリビングへ向って駆けていった。
リビングには沙紀と共有しているPCがある。
否命はそのパソコンの前に置いてある回転椅子に腰を下ろすと、直ぐにパソコンのスイッチを入れた。

投下終わります

453 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 09:05:07 ID:kr7pc7WG]
おもしろい、おもしろくない以前に読みづらい。
せっかくおもしろいSSなのにもったいないと思う。


454 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 13:52:20 ID:2Sn7VTqy]
>>452
GJ!
次にwktkして待ってるぜ!!

>>453
改善点も書かなければどうしようもないだろ・・・

455 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 16:19:59 ID:tfngQ5h3]
・シーン・場所の切り替わりや、強調したい部分で空白行を入れる。
・地の文の先頭にスペースを入れる。
・句読点や括弧の、適切な位置で改行する。

などかな。そうすると一話あたりの行・レス数が多くなるけど。

456 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 17:19:44 ID:aAIw/jZz]
エロパロのカテゴリーの掲示板なのに
読みにくいシステムを使っている運営者側に問題があるのでは
と言ってみるテスト

大体、エロパロスレに相応しい作品連載システムとコメント付きの
独特な掲示板をオーダーできるだろうにね

457 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 17:25:55 ID:uUtFVBGI]
ああ、くせぇくせぇ。
勢いが付いてくると、エセ批評家共が沸いて来るんだよな。

特にこの時期。

458 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 17:30:21 ID:waRfT1kk]
エセ批評家は作品の一つも書けないのかな・・
そんな相手に批評される側もうんざりするだろうにね・・
お互いを高めるような相手同士ではないと嫌がらせに等しい

459 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 18:19:24 ID:OF4Om5PA]
読みづらい云々って、読む側が慣れている環境とか形式によっていくらでも変わるわけで
文の最初にスペース、つまり段落を入れよーとかもっと細かく刻んで改行せよーとか、
そういうお前個人の主観的読みやすさ、みたいなのに対応するよう工夫しろなんて押し付けてもなあ

460 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 18:31:43 ID:1Rt50IEa]
とりあえず、読みづらいか読みやすいかで言えば
おれは「読みづらい」と思う

改行を増やすだけでも大分変わると思うんだよね

読みやすいか読みづらいかで、
本当なら読んでくれたかもしれない人まで
読んでくれなくなっちゃうのはもったいないと思うから


>>458
そうすると、書いてもいないのに
「GJ」とか「面白かった!」とか言ってる俺らもやばいな。



461 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 18:40:12 ID:OF4Om5PA]
「GJ!」「面白かった」って言ってもらえれば、書いた人は認められてうれしいと感じるし、作品を続けていくモチベーションのうpに繋がる。
でも、「読みづらいよー\(^0^)/もっといじってねー」とかだけ言われても、書いた人はそれに従うだろうけど、いくらか萎縮してしまう。

高めるっつっても、技量の話だけじゃあないってことっすよ

462 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 19:23:48 ID:4TxjHW5p]
自分が面白いものにはGJを!
自分が面白くないものにはスルーを!
我々ば読んでやってる゙訳ではないぞ。
゙読ませてもらってる゙のだから。
神々に感謝の気持ちを忘れてはいけない。


463 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 19:28:53 ID:i7TuP7m5]
批評したければ1レスでもSSを書けば良いのだろうか。

464 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 19:31:32 ID:i7TuP7m5]
すまん誤爆

465 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 20:54:06 ID:KDTooFVy]
SS書きの控え室スレ読んでると、GJだけじゃ逆にやる気なくすって言ってる書き手さんもいるんだよね。

だから具体的にここをこうしたらもっと良くなるみたいな指摘ならいいんじゃないかと思うんだけど。

466 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 20:59:20 ID:uw1OvWHa]
成虫化で死んだ人間の死因って脳死なのかなぁ

467 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 21:00:28 ID:uw1OvWHa]
スマン誤爆

468 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:35:00 ID:tfngQ5h3]
投下します。

469 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:35:33 ID:tfngQ5h3]
 彼の好物はお菓子である。

 どれぐらい好きなのかということの実例を挙げると、
朝昼晩の食事をせずに500円分のお菓子を食べることで済まそうとした、
ということがある。
 それを毎日繰り返していたわけではないが、週に一回、
土曜日になると近所のスーパーに出かけてお菓子を買う。
 そしてそのお菓子を当日の食事代わりにする。

 それでも彼の体は均整がとれていた。
 彼が20代で、まだ若いこともあったが、
彼は毎朝5時から行う体操を欠かさなかったことも原因だった。

 彼は自身の住む村の役所に勤務していた。
 近くにある高校に通い、卒業すると同時に勤務を始めた。
 役所での仕事は年に数回ある祭りや、盆と正月に役所の前を
時節のもので装うことと、書類整理と清掃作業ぐらいのものだった。
 退屈ではあったが、村の外にいる友人から聞かされる
中小企業の現状を聞いていると、自分は充足している、と思った。

 彼には大きな悩みが無かった。
 父親と同居している、愛着のある家もあった。
 母親とは死別していたが、十年以上昔のことを気にかけるほど
神経質な性格をしていたわけではなかった。

 彼が執着していることは、自分が興味のあるものだけだった。
 働き始めてからローンで購入した、通勤に使用する50ccのバイク。
 町の古本屋で購入した本と、それを読むための時間。
 毎週の楽しみである、カロリーを無視して食べるお菓子。
 そして、彼が愛する女性。 

 彼には、同じ職場に勤める同僚で、恋人でもある女性がいた。
 二人きりで村の外に出かけて夜を過ごし、翌日の朝に帰ってくる、
ということを何度も繰り返した。
 結婚指輪を送るために、彼は何ヶ月も貯金をしていた。
 彼女に対して結婚を匂わす発言をしたときも好意的な反応が返ってきた。

 ――きっと、上手くいく。

 そう彼は考えていた。

470 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:36:11 ID:tfngQ5h3]
 三月の第一週目の、土曜日。

 彼は朝の九時に、村に一つだけあるスーパーへ来ていた。
 いつものように彼はお菓子が陳列している棚へ向かい、
500円分の商品をカゴの中に入れた。
 そして、そのまま店員が立っているレジへ向かい、カゴを置いた。

「いらっしゃいませ!」

 レジに立っている女性の店員が挨拶をした。
 店員は頭を上げると、男に向かって挨拶をした。

 すべての商品のバーコードを読ませた後、店員はこう言った。
 
「504円になります」

 男がちょうどの金額を払い、店員が中身の詰まった買い物袋を手渡した。
 すると、女性店員が男に向かって声をかけた。

「いつも買い物をされてますよね? お菓子が好きなんですか?」

 そう店員に言われて、男は恥ずかしくなった。
 いい年をした男性が毎週のようにお菓子を買っていく。
 その行為は他人からすると奇特にしか見えないだろう。
 男がなんと答えようかと考えていると、店員が小さな箱を取り出した。

 これは何か、と聞くと女性店員からこのように言われた。

「私が作ったクッキーです。
 誰かに試食を頼もうかと思っていたんですけど、
 一人も食べてくれなかったんです。
 ですから、もしよろしければどうぞ」

 男に受け取らない理由は無かった。
 一言礼を言い、箱を受け取る。
 箱はとても軽かった。しかし軽く振るとコトコトと音がした。
 
「今度、ぜひ感想を聞かせてください」

 店員の言葉に対して頷くと、男は買い物袋と小さな箱を持って店を出た。



471 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:37:24 ID:tfngQ5h3]
 三月の第二週目の、土曜日。

 男は小さな箱を持って、スーパーに来ていた。
 先週、女性店員から受け取ったクッキーの箱だった。

 店内に入り、先週話をした店員を捜す。すぐに見つかった。
 先日と同じようにレジに立っている。

「いらっしゃいませ」

 と言って店員が頭を下げた。
 男が、ありがとう、と言って手に持っていた箱を店員に差し出すと、受け取ってくれた。
 
「あのクッキー、美味しかったですか?」

 美味しかったよ。また作って欲しい、と男が言うと、店員は満面の笑みをつくった。

 その日も先週のように男はお菓子が並んでいる棚の前に行って、
適当なものを選ぶことにしたが、あることに気がついた。

 クッキーの箱が一つも置かれていない。

 しかし、男は特に気にすることも無かった。
 もともと商品は多く並んでいたわけでもないし、売り切れということもある。
 棚に置かれていたものをカゴに入れる。
 店内を歩き、女性店員が立っているレジに買い物カゴを乗せる。

 女性店員がすべてのバーコードを読ませて、買い物袋に詰める。
 そして、男はちょうどの金額を女性店員に渡す。
 レジから吐き出されたレシートを受け取ると、店員が箱を取り出した。

「あの、またクッキーを作ったんです。
 もしよろしければ、どうぞ。
 また来週会えたら感想を聞かせてください」

 わかった、と男は頷いて、箱を受け取った。
 
「ありがとうございました」

 女性店員の声を聞きながら、男は自動ドアを通り抜けて、家路に着いた。

472 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:38:56 ID:tfngQ5h3]
 三月の第三週目の、土曜日。

 男はスーパーにバイクで乗りつけた。
 その手には、小さな箱が握られている。
 
 先週、女性店員に手渡されたクッキーは、とても美味だった。
 焼け具合、かおり、共に問題が無かった。
 一口に収まるほどの大きさのそれを頬張ると、バターのなめらかさ、
ほどよい甘さが口の中に広がった。
 気がつくと、四枚入っていたクッキーは全て男の胃の中に収まっていた。

 男が店内に入ろうとすると、後ろから声をかけられた。
 振り向くと、女性が立っていた。
 クッキーを作ってくれた女性だった。
 その日は、セーターにジーンズという格好をしていた。

 男は箱を女性に手渡した。
 美味しかった、と感想を言ったが、言葉足りない気がした。
 あれほどの美味しいものを作ってもらったのに、「美味しかった」の一言では味気ない。
 本当に美味しかった、と再び言った。

「そんなに美味しかったんですか。ありがとうございます」

 何かお礼をしたい、と女性に向かって男は言った。
 女性は数回まばたきをして、右手を下唇にあてた。
 数秒の沈黙のあと、彼女は口を開いた。

「それじゃあ、私の家に来てくださいませんか?
 またクッキーを作ったんです。
 今度は一味改良を加えたんですよ」

 また美味しくなったのか、と男が聞いたら女性は首を右に傾けた。

「それは、食べてみてからのお楽しみです」

 女性はほほえみを浮かべた。
 
 女性の自宅はスーパーからそう遠くない位置にあるという。
 男はバイクを駐輪場に置いたまま、女性と一緒に歩き出した。

473 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:41:07 ID:tfngQ5h3]
 四月の第一週目の、土曜日。

 目の下にくまを張り付かせた女性が、駐輪場に何も停まっていないスーパーへとやってきた。
 あからさまな落胆の表情をして、女性はスーパーのドアをくぐった。

 店内を何周か見てまわったあと、その女性は女性店員の一人に声をかけた。
 人を捜しているんです、と言って女性は写真を店員に渡した。

 女性店員はその写真を一目見て、女性に写真を差し出した。

「すいません。私では、力になれません。
 先月の中旬にこのお店に来たことは覚えていますけど、
 それから『このお店の中』では見たことがありません」

 女性店員はすまなそうに頭を下げた。
 そうですか、と言って女性は表情を沈ませた。

 とぼとぼといった調子で立ち去る女性の姿を見ながら、女性店員は一言つぶやいた。


「もう、彼はあなたの前には現れません」


 女性店員は、下を向いた。
 
 そして、勝ち誇ったような、嬉しくてたまらないといった表情を浮かべて、わらった。


 終

ーーーー
変なことを言って、荒れる原因を作ってしまって申し訳ありませんでした。
今後、不用意な発言は慎むことにします。

474 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 21:48:25 ID:GntrcA5/]
>>473
GJ!
落ち込まないでまた作品読ませてくださいw
棚になぜかクッキーがない等のさりげない怖さが(・∀・)イイ!

475 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 21:52:19 ID:1Rt50IEa]
>>473
女の情念という者は怖いのう…
ていうか、なんかリアルでこれくらいのことならやってる人がいそうでgkbr

476 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 22:23:57 ID:ca7hXdnd]
こういうお菓子な空気は心がいい感じにお菓されるから大好きだw

477 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 22:32:56 ID:+sk5+L74]
GJ!>>473

しかし、男はどこに行ったんだ?
1:女の家・建物内(監禁)
2:女の家・地面の下(satugai)
3:女の胃袋(かにばりずむ)

478 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 00:00:47 ID:tv1vZc10]
>>473
イヤhッホオオ!
ぐっじょぶ!

479 名前:慎PC故障中につき携帯から ◆lPjs68q5PU mailto:sage [2007/03/18(日) 00:12:43 ID:wc98nDi2]
おぉまたもや新たな職人さんが!>>473なんか恐いです…用意周到というか…クッキーを棚ごと消すなんて、そしてラスト…いいもの読ませていただきました。今回限りといわず次もぜひ。

480 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:01:47 ID:Ld8wUyk/]
投下します
本編とは関係のない短編ですが、読みやすさを意識して書いてみました

題名 否命

 あるところに貧しい農夫がいました。彼の田圃はとても荒れていて、しまいには作物が
すっかりとれなくなってしまいました。そこで仕方の無く、農夫は森にいき薪をとって市
場で売り、それで一日を食いなぐようになりました。

 ある時、いつものように農夫は薪をとりに森の中に出かけました。すると、まだ一度も
会った事の無い老人が歩み寄ってきて、
「なんだって、そんな憂鬱そうな顔をしているんだい?」
と農夫に声を掛けました。
「おお老人よ!」
 農夫は思わず嘆息しました。
「どうして楽しい気持になれましょうか?私は一日も休むことなく先祖代々つづく田圃を
耕してまいりました。それなのに田圃は荒れ果てていくばかりで、とうとう私は田圃を耕
すことを諦めてこうして森で薪をとっているのです。別に貧しい事は苦ではありません。
ただ、先祖様が守り抜いてきた田圃を私が駄目にしてしまったことを考えると、憂鬱にな
らざるを得ないのです」
 この言葉を聞くと、老人は農夫の畏祖の義にすっかり感心してしまいました。老人は実
は妖精でしたので、この農夫を幸せにしてやりたいと思い、ある提案をしました。
「もし貴方が私の欲しいものをくれるのなら、貴方の田圃をすっかり良くしてあげよう」
 すると農夫は農民にしては珍しく儒学を心得ていたので、自分の持っているモノのなか
で土地ほど大切なものは無いと考え、
「私が差し出せるモノなら何でも…」
 と答え、妖精に証文を書きました。
 妖精はニッコリと笑って、
「帰ってごらん。もう、貴方の土地はすっかり良くなっていますよ」
 と、言いました。




481 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:02:31 ID:Ld8wUyk/]
 さて、農夫が家に帰ると妻が飛び出して、
「あんた、どうしてうちの田圃に水がしっかり引かれて、稲が植えてあるんだい?急に、
どこもかしこもうちの田圃はすっかり良くなっちまったよ。まったく、どうしてだか分か
らないよ」
 と、言いました。
「それは私が森で出会った妖精のおかげだよ。彼が私に田圃をすっかり良くしてくれると
約束したのさ。その代わり、妖精の欲しいものを何でもあげると証文を書いたけどね」
 すると妻は、
「まぁ、一体うちに妖精が欲しがるようなものなんて、あるのかしら?」
 と、首を傾げました。農夫の家は本当に貧しくて人様にあげるものなんて、なんにも無
かったからです。

 それから一年後、農夫に娘が出来ました。
農夫の娘はとても美しく、働きものに育ちました。この娘が年頃になる頃には様々な男
から結婚を申し込まれるようになりました。しかし、娘は申込を悉く断っていました。そ
れも、実際に男に会いもせずに娘は結婚の申込を断ってしまうのです。
「ねぇ、おまえさん一体、何が不満なんだい?」
 農夫はとうとう、娘のあまりに男を寄せ付けない態度に呆れ、娘を呼び出して問いただ
しました。すると娘は
「心に決めた方がいるのです」
 と、一言いいました。
「それは誰なんだい?」
 と、農夫が聞くと娘は
「父さんの田圃を、すっかり良くしてくれた妖精さんです」
と、答えました。農夫はそれを聞くとすっかり魂消てしまいましたが、心の奥底では、
いつもあの妖精に恩返しをしたいと思っていましたので、
「妖精がおまえを欲しがるのなら…」
 と、納得しました。それを聞くと娘はニッコリと微笑みました。娘は農夫から妖精の話
を聞くたびに、密かにその父さんを助けてくれた妖精に恋焦がれていたのです。


482 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:03:05 ID:Ld8wUyk/]
次の日、農夫は森に行きました。すると妖精がまた老人の姿を借りて歩み寄ってきて、
「なんだって、そんな楽しそうな顔をしているんだい?」
と、農夫に声をかけました。
「おお妖精よ!」
 農夫は思わず嘆息しました。
「どうして憂鬱な気持になれましょうか?私の田圃はすっかり良くなってしまい、ずっと
豊作が続いています。蓄財は確かに楽ではありますが、それよりもこの田圃を先祖がご覧
になったらどんなに喜ぶことでしょう。それを考えると楽しくならざるをえないのです」
それを聞くと、またしても妖精はニッコリと笑い、
「どうかその畏祖の義をこれからも忘れずに…」
 と、言って農夫のもとから去ろうとしました。
「待ってください。話しはまだ終わりではありません。貴方は、私の田圃をすっかり良く
してくれたのに貴方は何も私にお求めになりません。だから、私は貴方に娘を差し上げた
いのです。そして娘のほうもそれを望んでいます」
 それを聞くと、途端に妖精は真っ青になりました。
「おお農夫よ!お心遣いはありがたいが、どうして私が娘を貰うことが出来ようか?私
はその昔、天帝の属官として五穀豊穣を司っていたのです。ところがある日、否命(孔
子によると可憐な少女の姿で人間に劣情を植え付ける神獣。本居宣長に麒麟の一種では
ないかと指摘されている)の誘いに乗り天界に不浄を持ち込んでしまったので天帝より
実の姿を正視に耐えない姿に変えられてしまったのです。そんな私がどうして娘の前に
姿を現すことが出来ましょう?」
 それを聞くと農夫は家にトボトボと帰っていきました。

さて、農夫が家に帰ると娘は恋歌を歌うのを止めて農夫を迎えました。娘は農夫の
元気のない姿を見ると、
「なんで、父さんはそんなにおちこんでいらっしゃるの?」
 と、尋ねました。そこで農夫は娘に、妖精が天帝の罰を受けその姿を正視に耐えない姿
に変えられてしまったことを話しました。娘は話を聞くと、
「父さん、哀しむ事はありません。でしたら、妖精の姿を見なければいいのです」
 と、言いました。農夫が、
「馬鹿なことをいうな。どうして、嫁にいくお前が妖精の姿を見ないでいることが出来
よう…」
 っと、言うと娘は少し考えていいました。
「だったら、私の眼を抉り取ればいいのです。そうすれば、私はもう妖精の姿を見ること
が出来ないでしょう」
「それもそうだ」
っと、農夫は娘の眼窩に竹筒を当て拳で叩くと眼球がポンッと飛び出しました。


483 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:03:57 ID:Ld8wUyk/]
次の日、農夫は森に行きました。すると妖精がまた老人の姿を借りて歩み寄ってきて、
「なんだって、そんなに嬉しそうな顔をしているんだい?」
と農夫に声を掛けました。
「おお妖精よ!」
思わず農夫は嘆息しました。
「どうして憂鬱な気持になれましょう?私の娘は貴方の嫁になるために、その眼を抉りぬ
いたのです。その娘が「これで妖精の嫁になれる」と歌う姿を見ていると、嬉しくならざ
るを得ないのです」
っと、農夫の言葉を聞くと妖精は真っ青になって言いました。
「おお農夫よ!お心遣いはありがたいが、どうして私が娘を貰うことが出来ようか?私は
その昔、天帝の属官として五穀豊穣を司っていたのです。ところがある日、否命(孔子に
よると可憐な少女の姿で人間に劣情を植え付ける神獣。ヒンドゥーでは子宝の神として祭
られている)の誘いに乗り天界に不浄を持ち込んでしまったので天帝より実の体臭を嗅ぐ
に絶えない臭いに変えられてしまったのです。そんな私がどうして娘の前に姿を現すこと
が出来ましょう?」
それを聞くと農夫はトボトボと家に帰っていきました。

さて、農夫が家に帰ると娘は恋歌を歌うのを止めて農夫を出迎えました。娘は農夫の
元気のない臭いを嗅ぐと、
「なんで、父さんはそんなにおちこんでいらっしゃるの?」
 と、尋ねました。そこで農夫は娘に、妖精が天帝の罰を受け実の体臭を嗅ぐに耐えない
臭いに変えられてしまったことを話しました。娘は話を聞くと、
「父さん、哀しむ事はありません。でしたら、妖精の体臭を嗅がなければいいのです」
 と、言いました。農夫が、
「馬鹿なことをいうな。どうして嫁にいくお前が妖精の臭いを嗅がないでいることが出来
よう」
 っと、言うと娘は少し考えていいました。
「だったら、私の鼻を切ればいいのです。そうすれば、私はもう妖精の臭いを嗅ぐことが
出来なくなるでしょう」
「それもそうだ」
っと、農夫は鉈を取り出すと娘の鼻をきれいに切りとりました。


484 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:04:31 ID:Ld8wUyk/]
次の日、農夫は森に行きました。すると妖精がまた老人の姿を借りて歩み寄ってきて、
「なんだって、そんなに嬉しそうな顔をしているんだい?」
と農夫に声を掛けました。
「おお妖精よ!」
思わず農夫は嘆息しました。
「どうして憂鬱な気持になれましょう?私の娘は貴方の嫁になるために、その鼻を切り落としたのです。その娘が「これで妖精の嫁になれる」と歌う姿を見ていると、嬉しくならざるを得ないのです」
っと、農夫の言葉を聞くと妖精は真っ青になって言いました。
「おお農夫よ!お心遣いはありがたいが、どうして私が娘を貰うことが出来ようか?私
はその昔、天帝の属官として五穀豊穣を司っていたのです。ところがある日、否命(孔
子によると可憐な少女の姿で人間に劣情を植え付ける神獣。一時期、真言宗においては
マラと混同されていた)の誘いに乗り天界に不浄を持ち込んでしまったので天帝より、
実の声を聞くに耐えない感触に変えられてしまったのです。そんな私がどうして娘の前
に姿を現すことが出来ましょう?」
それを聞くと農夫はトボトボと家に帰っていきました。

さて、農夫が家に帰ると娘は恋歌を歌うのを止めて農夫を出迎えました。娘は農夫の
元気のない声を聞くと、
「なんで、父さんはそんなにおちこんでいらっしゃるの?」
 と、尋ねました。そこで農夫は娘に、妖精が天帝の罰を受け実の声を聞くに耐えない
声に変えられてしまったことを話しました。娘は話を聞くと、
「父さん、哀しむ事はありません。でしたら、妖精の声を聞かなければいいのです」
 と、言いました。農夫が、
「馬鹿なことをいうな。どうして、嫁にいくお前が妖精の声を聞かないでいることが出来
よう」
 っと、言うと娘は少し考えていいました。
「だったら、私の耳を削げばいいのです。そうすれば、私はもう妖精の声を聞くことが
出来なくなるでしょう」
「それもそうだ」
っと、農夫は鋸を取り出すと、娘の耳を削ぎ落としました。



485 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:05:26 ID:Ld8wUyk/]
次の日、農夫は森に行きました。すると妖精がまた老人の姿を借りて歩み寄ってきて、
「なんだって、そんなに嬉しそうな顔をしているんだい?」
と農夫に声を掛けました。
「おお妖精よ!」
思わず農夫は嘆息しました。
「どうして憂鬱な気持になれましょう?私の娘は貴方の嫁になるために、その耳を削ぎ落
としたのです。その娘が「これで妖精の嫁になれる」と歌う姿を見ていると、嬉しくなら
ざるを得ないのです」
 っと、農夫の言葉を聞くと妖精は真っ赤になって言いました。
「おお農夫よ!お心遣いは有難く、貴方の娘を頂戴しよう!!」
 それを聞くと農夫は嬉々として、家に帰りました。

 さて、農夫は家に帰りました。しかし、娘の出迎える姿はありません。
 娘はただ、農夫の吉報を信じて窓辺でずっと恋歌を口ずさんでいました。しかし、どう
やって娘は吉報を知ることが出来ましょう?農夫の帰還を示す臭いは嗅げず、農夫の嬉々
とした表情は見えず、農夫の吉報を告げる声を聞くことも出来ないからです。
 娘はただ農夫の吉報を信じて、ただひたすら恋歌を口ずさんでいました。

 次の日、農夫は妖精に娘を渡しました。

その後、この娘がどうなったかは誰にも分かりません。ただ気になるのは、娘は妖精と
式を挙げているときも、ずっと歌を口ずさんでいたことです。期待に満ち満ちた声で、式
が終わった後もずっと歌を口ずさんでいました。妖精が娘の手をとって、森に消えた時も
娘はずっと歌い続けていました。

 恐らく、娘は今も農夫の吉報を待ち続けていることでしょう。妖精に抱かれ、恋歌を
ただ口ずさみながら…。

投下終わります

486 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 05:25:29 ID:emUdaPDg]
GJ!し、しかしこれは怖い!
娘も脳天気に狂っている農夫と妖精も全員怖いよ((( ;゚Д゚)))ガクブル

487 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 08:08:10 ID:R8l21uSD]
>>485
なんかグリム童話みたいwこういうの大好きです。
オヤジさんも娘さんも病んでるな。


488 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 14:43:46 ID:R8l21uSD]
続きレスしてごめん。

読み返して気づいたんだけど、
>>480
>場で売り、それで一日を食いなぐようになりました。
は、

>場で売り、それで一日を食いつなぐようになりました。

じゃないかな?と思うんですが。作者さん、どうなんでしょう?


え?なんですかその竹筒は。いや、ちょ、ま……アッーー!


489 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 14:58:26 ID:ZIWvz3kq]
包帯かなにかで顔を覆った少女が、窓辺で歌いつづけるという情景はなかなか。
ググっとくるものが。GJです!

>>239
裁罪のアリス、色塗てきたアルヨー。
しかし携帯から見れないのかもしれない。
bbs11.fc2.com/bbs/img/_219000/218976/full/218976_1174196550.jpg

瞳に狂気を秘めたゴスロリ(ゴスパンク?)少女的なイメージで。

490 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/18(日) 20:11:14 ID:xN50ZBu7]
>>489
ゴスパンクは意識してたんでそれをイメージして貰えて凄い嬉しいッス!
本当に塗って貰えて僕、感涙で前が見えません。



491 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 23:11:53 ID:8L0MhwQW]
>>489
なんだか真っ先にユカたんを連想したよ
ゴア・スクリーミング・ショウのね

492 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 23:20:22 ID:gT1xWGIR]
伊南屋氏も>>489氏も、作画・色付け共に
GJデス。
しかし今、更紗分の切れた俺にこんないいモン見せられたら禁断症状が…再発…

493 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/19(月) 00:08:20 ID:AU1Hmgiv]
大分間が空きました。投下しますです

鬼葬譚 第二章 『篭女の社』

さんばんめのおはなし
======================================
それは、初夏も終わり、本格的に夏が始まり始めようとした頃。

「さて、それじゃあちょっと行ってくるよ」

旅装束に身を包んだ父は、額の汗を手ぬぐいで拭った。
流石に、この時期になると日差しが中々辛くなってくる。
旅をするには少々辛い時期ではあるのだが…少々理由があるのだ。

「毎年、お疲れ様です。代わることが出来ればよいのですけど」
「いやいや、流石に女子に旅をさせるわけには行かないからねえ、これも仕事だよ」

父はそう言って、爽やかに笑う。
この時期、神社では夏越の祓を行うのが通例だ。
月次祭程度なら、あたしと父の二人でも何とかこなす事ができるのだが、
流石に大祓となると人手が厳しい。
そこで、毎年大祓の時は氏子様に協力を願うために父が氏子様の
方々のお宅を回るのが通例になっている
残念な事ながらあたしの氏神様に氏子入りしている人達は余りいない。
おまけにこの城下から少々離れた里に居る方もおり、この時期は暫しの間
父が神社を空けることになるのだ。

「昔は出て行こうとするとわんわん泣いて大変だったんだけどねえ」

父は、そう言うと意地悪そうな笑顔をあたしに向けた。

「も、もう! それは昔のお話です!今はもう平気ですとも!」

父の言葉に、思わずあたしは声を荒げて赤面する。
今でもこうして父にからかわれるのは、恥ずかしいことこの上ない。

「ははは、まあ、2、3日で帰ってくるよ。その間に、できるだけの準備を進めておいておくれ」

そう言って、父は社の階段を下りて行った。
あたしはその背中が見えなくなるまで見送ると、1度ぺしりと自分の頬を叩く。
さあ、忙しくなるぞ!
見上げた空は、今日も晴れ渡っていた。


494 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/19(月) 00:09:11 ID:AU1Hmgiv]
======================================
そんなやり取りがあった日の午後の事。
力仕事を終えて一息ついていたあたしの前に、一人の男が現れた。

「よーっす、元気かー?」

…儀介である。

「元気は元気だけど、今日はいきなり何?」

あたしは、思わずむすっとした表情のまま儀介を睨んだ。
大概、儀介がやってくる時にろくな用事はない。
だが、今日の儀介はいつもと様子が少し違った。
なにやら妙にそわそわとしていて、落ち着きがない。

「あーっと、その、なんだ。今日は少し時間あるか? あー…ほれ、この間借りた金も返したいし」

儀介は頭を掻きながら、視線をあちこちに彷徨わせる。
どこか、心ここにあらずという感じだ。
一体どうしたのか、少し気になるが…とはいえ、今はそんな暇をしている時間はない。

「ダメダメ、今は大祓に向けて忙しいんだから。むしろ、こっちの仕事を手伝って欲しいぐらいよ」

そんなあたしの言葉に一瞬落ち込んだような顔を儀介は浮かべたが、
急に何かを吹っ切るように首を振る。

「…あー、いいから! ちょっと付き合え!」

そしてただ一言そう言い切ると、いきなりあたしの手をとって歩き出した。

「ちょ、ちょっとな、何なのよいきなり?! 痛いってば!」

振り払おうとするあたしの手を、離すまいとさらにしっかりと握り締める。
こんな儀介は初めてだ。
普段は、たとえふざけていてもあたしが嫌がるようなことは決してしない。
それが儀介のいいところの一つでもあった。
あたしは、儀介を見上げる。
儀介の顔には、焦燥のような、決意のような、なんとも言いがたい表情が浮かんでいた。

やがて、あたしと儀介はあの日…あたしと儀介が出会った大樹の下に辿り着く。
そこまで来たところで、ようやっと儀介はあたしの手を離した。


495 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/19(月) 00:09:48 ID:AU1Hmgiv]
「…もう、いきなりなんなのよ…内容によってはあたし、怒るよ」

あたしは、そういいながら儀介の出方を伺う。
儀介は、いかにもあたしに顔をあわせ辛そうに視線を彷徨わせていた。

「俺は…その、なんだ。 つまりだな…ええと、だ」

どうにも歯切れの悪い言葉を紡ぎ続ける儀介。

「あんたねぇ…男でしょ、言いたいことがあるならはっきりしなさいっての!」

そんな煮え切らない儀介の態度に、思わずあたしは腰に手を当てて激昂する。
その言葉に叱咤されたのか、ついに儀介は覚悟を決めた顔をして、あたしに視線をあわせた。
儀介の真摯な瞳。まっすぐにあたしを射抜かんばかりに見つめる視線。

…あ、こいつ…こんな顔も出来るんだ…

その視線を受けて、あたしの心臓がなにやら奇妙な鼓動を始める。

「あのさ…俺…覚悟決めたんだ。お前が…お前のためだったら、俺、きっと…」

覚悟を決め、あたしから視線を逸らすことなく儀介は言葉を紡ぐ。
――何を、何を言おうとしてるんだろうか。
心臓の鼓動はますます早まって、胸が締め付けられるような感じがして…

「紗代、お前さえ良かったら、俺と、俺と一緒に――――」
― た、大変だァ! 川に死体が、死体が上がったぞ! ―

儀介の言葉に重なるように聞こえてくる声。
あたしと儀介は、その声に思わず正気にかえる。

― ありゃぁ、神社の神主さんじゃあねえか! ―
「…え?」

続いて聞こえてきた声に、あたしの全身から血の気がさぁと引いて行くのを感じた。

「紗代?!」

思わず声の方向へ走り出すあたしの背に投げかけられる儀介の声。
だが、あたしはその声に耳を貸すこともなく、声のほうへと走る。


496 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/19(月) 00:10:52 ID:AU1Hmgiv]
走る。走る。走る。

林を抜け、見慣れた川沿いの街道に出る。
視線を左右に向けると、街道沿いの川原に人ごみが出来ている事に気がついた。
その、人ごみの中心にそれはあった。

―――川原に敷かれた筵の上に横たえられた、一人の男の亡骸。

あたしは、その男の服装を良く知っていた。
あたしは、その顔を良く知っていた。

「嘘…? そんな、嘘…こんなの違う…嘘だよ…?」

呆然と呟く。
夏も近いというのに、全身がかくかくと小さく震えている。
指先が、足の先がまるで氷の中にでも漬け込んだように冷たくなっていく。

「嫌ァァァァッ!! お父さん!? お父さんッ?!」

澄んだ初夏の青空の下に、あたしの叫び声が響いた。

======================================
第三話です。
そろそろ話がクライマックス入ってきた感じ

497 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 00:36:17 ID:IWI76tu/]
>>496
おとうさーーーーん!!!うっうっうっ……

>クライマックス入ってきた感じ
うぉう!
まだこれからかと思っていたりしたが、第一章と同じぐらいの早さなんですね。
でも面白いです。続きをwktkして待ってます。

498 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/19(月) 01:22:23 ID:zZ2+Tr4V]
>>492
ならばこちらを
imepita.jp/20070319/047070

……いや、自分的にはかなり反省点満載。それでもうPする僕を許して下さい。

499 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 01:35:05 ID:IWI76tu/]
>>498
うはwwwパンティキタコレwww
あとふともも!ふともも!

500 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 01:49:36 ID:fbJzBy86]
>>496
お父さん死んじゃったー!?
紗代ちゃんどうなるんだろうか?続きwktk!



501 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 02:22:19 ID:x1fv1e7I]
>>496
青天の霹靂って感じですな。儀介さっさと告白しとかねえか、ダメなやつめ!

>>498
全裸よりぱんつのほうが好きな俺

502 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 11:43:15 ID:4J/lvCUb]
このペースだと今週末にはこのスレも埋まることになるな。
2・3スレ目よりはスローペースだったが、
一ヶ月ならエロパロ板ではかなり早いほうだな。

503 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 00:04:25 ID:te4Gve8c]
投下しますよ

504 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:05:18 ID:XjUBHhrl]
投下します。おにいたん2、5話。

>>444
今回行頭にスペースかましたが読みやすさはぜんぜん変わってないと思う。
漏れは大抵1文を40字前後で終わらせて改行するスタイルだから
スペースはわざとかまさなかったんだ。



505 名前:『首吊りラプソディア』間幕 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:05:32 ID:te4Gve8c]
 それは唐突にやってきた。
 少女はいつも通りに暮らしていた、そのつもりだった。実際にその通りだった。しかし
突然、何かのスイッチが入ったかのように、思考に不安がよぎる。大切なあの人が、急に
去ってゆくかもしれない。自分の前から姿を消すかもしれない。
 そんな馬鹿な、と思う。
 そんなこと有り得る筈がない、そう思い直して再びペンを取り、ノートに文字を綴って
想い人への恋文を完成させてゆく。これを受け取ったときの反応はどのようなものだろう、
そんなことを考えながら、鼻唄を歌いながら、文字を綴ってゆく。
 きっと悪い結果にはならないだろう、と思う。彼と両想いなのは普段の生活でも充分に
分かっている。あと一歩、恋人となるのに必要なのは僅かな勇気だけだ。勇気を持ち一歩
を踏み出すことが出来るのならば、全てが上手くいくだろう。
 先程の悪い考えを振り払うように、少女はポジティブに考えを繋げてゆく。
 だがそれは、不安の裏返しだということだ。
 振り払うということは思考の中にネガティブな考えが残っているというこであり、それ
が少しずつ根を伸ばしているということでもある。気持ちというものを養分に成長し、心
の隙間を埋めるように肥大して、やがては全てを侵食して埋め尽くそうとする。
 その現象は、彼女の中で発生していた。
 胸の軋みを感じて、筆が止まる。
 彼は自分の気持ちを受け止めてくれるのか、肯定だった気持ちは猜疑心へと変わり始め、
否定の考えが幾つも浮かんできていた。もしかしたら他に好きな人が居るのではないか、
自分に向けられているのは愛情ではなく他のものではないのか。
 その理由は、何なのか。
 彼女は結論する。
 殺さなければ、奪われてしまう。
 少女は少しずつ、だが確かに狂ってゆく。

506 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:07:43 ID:XjUBHhrl]
ロボさーん?お先にどうぞー?

507 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:08:11 ID:te4Gve8c]
「ほ、本当でござるか!?」
 フジノの叫びに、サキは頷いた。
 フジノの驚きはもっともだ、俺自身も報告書を読んで驚いた。俺の場合は驚きすぎて、
声が出なかっただけのこと。そこに記されていたのは、予想を遥かに越える結果だった。
 32人、それが昨日『首吊り』に殺された者の人数だ。
 一晩でそれだけ殺すなんて、幾ら何でもふざけている。中には模倣犯の犯行もあるかも
しれないと思ったが、共通点が幾らかあったらしい。殺された対照が全員女性だという事
の他に、結び目が特定のもの、ということだったらしい。多少のずれはあるものの、どれ
も同一人物の手で結ばれたもののようだった。角度や強さが一致するのは他人では有り得
ない、という判断からだ。
 しかし、疑問もある。
 今までは老若男女関係なく殺して回っていたのに、年齢の差こそあるものの被害者全て
が女性なんてことは実際に有り得るのだろうか。いや、有り得ると言うしかない。現実に
そんな状態なのだから、認めるしかないだろう。
 だとしたら、
「目的が変わったのか?」
「恐らく、決まったと言った方が正しいのでしょうね。何かのきっかけがあって、目的が
生まれたのでしょう。多分結び目を同じくしているのも、自己を表す為のものです」


508 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:09:26 ID:te4Gve8c]
 ということは、『首吊り』は俺達管理局員に向けて何かのメッセージを送ってきている
ということだろうか。他の人間に何かを示したいのなら『首吊り』をしていることくらい
しか伝えられないし、結び目が共通していることは、外部に漏らすような内容ではない。
そもそも事件が解決した後にならなければ犯行の詳しい内容は外に流れないし、そのこと
で伝えたいならば寧ろ自首をしてくる筈だ。だから、これは管理局員に向けたもので多分
間違いないだろう。
「問題は、奴の意識が誰に向いているのか、でござるな」
 管理局全体に向いたものか、それとも個人に向いたものか。
 個人的には、特定の誰かに向けられたものだと思う。管理局に対するものならば、今更
女ばかりを殺すということは何の意思表示にもならないからだ。弱いものを狙ったなんて
考えは、とうの昔に議論され尽くしている。一般人が確率システムを使うようになって、
女性が弱いなんて意識は無くなった。それに被害者の中には『月の魔女』の片割れも居た
らしいので、弱さなどは殆んど無縁のものになっている。だからと言って強い者が対照か
と言えば、それは絶対に違うだろう。殺された者の殆んどは、普通の人だからだ。つまり
女性であれば誰でも良く、それがメッセージになる誰か。
 さっぱり分からん。
「サキ、どんな意味があると思う?」
「女性に恨みがあるとか、その線では? 女なんて皆消えてしまえ、という」
「ならば犯人は男でござろうか?」
 全員で首を捻り、唸る。


509 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:12:25 ID:te4Gve8c]
 カオリは今日は仕事が入っているらしいので来れないとの話だったが、今のような事態
ならば寧ろ丁度良かった。サキは元よりフジノも捜査に協力してくれることになり、皆で
考えているのだが、カオリだけは居てはいけないからだ。そんな意味ではある程度自由に
なることが出来るから、申し訳ない話だが少しありがいと思った。
「しかし、性別か」
 これは意外と良い線かもしれない。俺の第一目的は表向きには『首吊り』の捜査、逮捕
となっているが、個人の考えとしては二番目だ。本当の目的はカオリにかかっている容疑
を外すことであり、『首吊り』が男であると証明が出来るならば、カオリの容疑は完全に
晴れることになる。全て確率システムを使っての犯行なので身体的特徴を掴めず、それ故
にカオリが容疑者となっている訳だが、逆に言えばそれだけなのだから。
「フジノはどっちだと思う?」
「ん? よく考えたら、女かもしれんでござるよ」
「どういうことだ?」
 出来れば男だと予想してほしかったが、何か考えがあるのだろう。尋ねると、フジノは
俺の腕を掴んで抱き寄せた。突然のことにバランスを崩して膝枕の世話になったが、これ
と『首吊り』が女であることと何の関係があるのだろうか。
「例えば、例えばの話でござるよ?」
 こちらに冷たい視線を向けるサキを見ると、念を押すように言い、
「拙者はこの虎吉殿と触れ合っているときが、一番幸せでござる。それがもし誰かが奪う
としたら、それはもう怒り心頭でござるよ。今のパターンで言えば、拙者を抜けば虎吉殿
に一番近いのはサキ殿でござるから、警戒すべきはそこでござるな」


510 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:13:55 ID:te4Gve8c]
 フジノが言いたいことは大体分かってきたが、果たしてそれは有り得るのだろうか。
「拙者は違うと思いたいが、嫉妬深い娘ならば他の女に注意が向いたら、それだけで気分
が悪くなる者も居るのでござる。疑ってしまえばキリが無く、疑いの視線はやがて全ての
女に向けられてゆき、積もりに積もった怨念やら何やらで……」
 ブスリ、でござる。
 そう言って、サキに軽く手刀を突き出した。
 無いことも無いかもしれない、ここに居るのは管理局員を除けば罪人ばかりだ。中には
嫉妬のあまり間女を殺して入ってきた者も居るだろうし、重度の者ならば連続しているの
も説明がつく。理屈は通るのだが、しかし人数がおかしいと思う。距離の問題は空間転移
を利用すれば解決出来るが、一晩で32人は無理がある。単独でそこまで殺すのは、まして
証拠を何も残さずに連続で続けるのは無理がある。複数での犯行、となればどうだろうか。
「それも無理か」
 そんな人間が集まればその場で即殺し合いになってしまうだろうし、人を殺してしまう
程に嫉妬深い人間がそうそう居るとは思えない。偶然に起こることも有り得ないだろう。
そうだと仮定しても、結び目の条件が同じなら『首吊り』の役目という人物が必要になる。
リスクを犯してまで、そんな必要があるとは思えない。あるとするならば自己を示す為で、
それならば他人は邪魔になってくる筈だ。
 思考が無限ループを起こしそうになり、考えることを一旦止めて体を起こす。フジノが
一瞬残念そうな顔をしていたが、サキの視線が毎秒ごとに冷たくなってきているような気
もするし、こうしている自分も何だか馬鹿みたいなので続けるのは駄目だ。
「気分転換にメシでも行くか」
「あ、私はパスです。やることがあるので」




511 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:15:29 ID:te4Gve8c]
 視線で尋ねると、サキは自分の首に首輪を填めた。色は透明、ランクの外。監獄都市で
生まれた二世が着けているもので、聞き込み調査などでよく使われるものでもある。サキ
は前者には当てはまらないから、どこか特別な場所に用事があるのだろう。
 珍しくスーツではない私服姿なのも、その為か。
「ん?」
 それを見て、何だか妙な感じを受けた。昔どこかで見たことがあるような気がしたが、
気のせいだろうか。記憶を辿ってみるが、思い出すことが出来ない。喉元まで上ってきて
いるのだが、他人の空似という可能性もあるし、全然違う人物かもしれない。
「そんなにジロジロ見ないで下さい、また罪を重ねるつもりですか?」
「いや、カオリは居ないから罪人扱いも無いだろ」
 それにしても気になる、何とも気持ち悪い。さっきまでは『首吊り』で一杯だったが、
今は別の意味で頭が一杯だ。尋ねれば一発で分かるのだろうが、人違いならば藪蛇で妙な
ことを言われかねない。こいつは何故か俺に対してだけは、そんなタイプだ。
「どうしたでござるか?」
「何でもない」
 不思議そうな目で見てくるフジノに答え、再びサキを見た。
「何ですか?」
 どこか不満そうな表情を浮かべているサキに首を振り、俺は部屋を出た。

512 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig mailto:sage [2007/03/20(火) 00:16:28 ID:te4Gve8c]
今回はこれで終わりです

第二章開始

513 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:17:15 ID:XjUBHhrl]
んじゃ、改めて投下開始

514 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:18:18 ID:XjUBHhrl]
 「ふくちう、でつ!」
 和室。座卓にはフルタワーサイズの巨大パソコンが2台・・・1台はRAIDサーバーのようだ。
 20インチはある大ディスプレイは贅沢にもSVGA。字が大きくて目には優しそうだ。
 部屋には巨大なページプリンターが鎮座。時折紙を吐き出している。
 OA用紙が詰まった段ボール箱が積み重なって壁を形成。まるでどっかの会社の事務所である。
 唯一、布団とそこにおいてある2、3のぬいぐるみがここの主がどういう人物かを表している。
 「復讐とはいうけどね、薫ちゃん」
 ここは禾森邸にある薫の部屋。ぬいぐるみがなかったらとても幼稚園児の部屋ではない。
 「どうするの?」
 この日、休みの耕治とあずさは薫と話し合っていた。
 6畳間はパソコンと関連機器、それとダンボールに囲まれ、座るところは薫の布団しかない。
 そこに3人は座り込んで話をしている。
 「あのおんなには、ちかるべきむくいをあたえるでつ!」
 その邪悪な(笑)正体を晒した後、笑留は禾森邸に入り浸っていた。
 もー毎日食いたい放題、ソドムやゴモラも裸足で逃げ出す痴態が繰り広げられていた。
 「ちょっと・・・薫ちゃん?まさかあの男みたいに・・・」
 旧山那邸の地下にねむる誰かさんを思い出し、あずさが不安を述べる。
 「みづからてをかけるなんて、ぐのこっちょうでつ!」
 エヘンと威張る薫。
 「てをよごちゃづ、つまーと(スマート)にいきまつ!」
 「て、手を汚さずって・・・」
 「とのためのきりふだは、もうちゅうもんづみでつ♪」
 「ちゅうもん?」
 
 ちゃちゃっ、ちゃちゃっ、ちゃららら〜♪
 
 薫の大好きなアニメのOP曲が流れる。薫の携帯の着信音だ。
 「あい、かぁる、でつ♪」
 「・・・」
 「あい!とどきまちたか?つぐとりにいきまつ♪」
 短い会話ですぐに電話を切る薫。
 「『だいがち』のおぢたんからでちた。かぁるのきりふだがとどいたらちいでつ」
 「『代貸』・・・って、・・・の事務所から?」
 「とうでつよ?」
 「まさか・・・拳銃じゃないでしょうね・・・?」
 あまりに物騒な薫の発言にまた不安の声を上げるあずさ。
 「ちゃっきもいいまちたよ?みづからてをかけるのは、げたく(下策)でつ」
 人指し指を一本だけ立てて、ちっちっちっ、の動作をする薫。
 「とれに、ぱんぱん(銃のことらしい)なんかつかったら、だいがちやくみちょうたんまでめいわくかかるでつ」
 「そりゃそうだけどな・・・」
 「ちょっと、『ぢむちょ』いってきまつ」
 よっこいしょ。薫は立ち上がり、愛用のバッグを首から提げる。
 「その荷物、重いの?ついていこうか?」
 場所が場所だけに気は進まないが、一応大人の耕治が薫に言ってはみる。
 「かぁるの、てのひらにのるぐらい、かるいでつ」
 「そっか」
 「あ、おにいたん?」
 「なんだい?」
 「おねがいがあるのでつが」
 「俺に出来ることなら・・・なぁに?」
 「おにいたんにちかできないことでつ」
 「?」
 薫は一度は出て行きかけたが、思い出したことがあり耕治に話しかける。

515 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:18:50 ID:XjUBHhrl]
 「でんわちてほちいとこがあるでつ」
 「電話?」
 「てれびきょくでつ」
 「TV局?フラムーン(薫の好きなアニメ)の放送を野球中継で中止するなとか?」
 「とんなことつるぐらいなら、『きゅうぢょうにばくだんをちかけた』といたづらでんわちたほうがはやいでつ」
 「おい・・・」
 「あのね、おにいたん、○○○○○○○○が、あちたのなんぢからながれるかきいてほちいのでつ」
 「え?○○の○○?明日は確か・・・・があるから、いつもなら10時半ぐらいじゃない?」
 「あちた、かくぢつに、ながれるよういってほちいでつ」
 「うーん?聞いてくれるかなぁ?」
 「みたとおねえたんのなまえをだつでつ。おねえたんはかいちゃのえらいちとでつから」
 「そうなの?」
 これはあずさの声。
 「おねえたん・・・みたとおねえたんは、『ちーえむ』とかもやってるでつよ?」
 「初めて知った・・・」
 「そういやうちの店にテレビ局の人連れてきて打ち合わせしてたっけ」
 「とうでつ。あと、だんぼーるに『ばつ』がついたのがあるのでつが」
 そういうと薫はダンボールの中の一つを指差す。黒マジックででっかく『×』が描かれてある。
 「とのなかのかみを『ちゅれっだー』にかけててほちいでつ」
 「わかった」
 「つぐかえってきまつからね♪」
 そして薫は出て行った。

 「おお、薫ちゃん」
 「あ、『くつりや』のおぢたん!おひたちぶりでつ♪」
 某『反社会的団体』事務所内。そこにいたのは代貸と呼ばれている人物と、もう一人。
 通称『薬屋』。めったに事務所に出てこない、この団体における麻薬のエキスパートである。
 「薫ちゃん、この前はえらい目にあったな」
 「へいきでちた」
 薫は事務所のソファーに座り、対面の2人と話し始める。
 「あそことはもう話し合いがついたからな。よく勉強させたし」
 というと代貸と薬屋はにやりと笑う。
 (たぶんかぁるがもらったおかねのばいいじょうをもらったか、げんぶつでもらうことにちたか、でつね)
 とは薫は思ったが、口には出さない。不用意な発言が命にかかわる世界である。
 「で、おぢたん、たのんでたのはできまちたか?」
 「おう、もちろんよ!」
 というと薬屋は懐から粉薬の袋を取り出した。全部で5つ。
 「薫ちゃんの注文どおりのもんだ。粉薬にして、服用後5分で効果開始、10分後に切れる。バックファイヤはなし」
 「ぱーふぇくと、でつね♪」
 「感謝の極み」
 おどけて紳士の礼をする薬屋。
 「普通効果は長いほうがいいんでな。失敗作の中に丁度いいレシピがあったんで作ったけど・・・」
 そこで言葉を切り、薫のほうを覗き込む薬屋。
 「しかし、なんに使うんだい?まさか、これで一服もって誰かを交通事故にするとか?」
 「とんなつかいかたはちまてん」
 薫は言い切る。
 「とれだと、くつりがからだにのこりまつ。そこからここにたどりつかれたらこまりまつ」
 「OK。それならいい」
 「言っただろ。この子は並みのガキじゃないって」
 これは代貸の言葉。
 「しかし、なんに使うんだ?俺にはそういう使い方しか思いつかなかったけどなぁ」
 「ひみつ、でつ♪」
 そういうと、薫はないしょ、のポーズをとる。そして立ち上がる。
 「では、かえるでつ。おかねは、いいんでちたね」
 「今日はサービスだ。とっときな」
 「ありがとでつ♪」

516 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:20:29 ID:XjUBHhrl]
 一方、主が一時不在の部屋ではシュレッダーがうなりをあげていた。
 「ちょっと、これ、ドイツ語よ?」
 「読めねぇ・・・いったい薫ちゃんはなにをやってたんだ?」
 薫に言われたとおり、耕治とあずさは『×』と書かれたダンボールの中身をシュレッダーにかけていた。
 中にあったのはコピー用紙の山。インターネットからプリントアウトしたものらしいが中身が何か全く検討つかない。
 「あ、これ日本語・・・、んん?『自白剤の歴史と効果』?」
 「これもだ・・・『MDHDの人体における効果時間と調整レシピ』?」
 「これは・・・は?『誘導尋問を行なう上での質問技術とミスリーディング』?」
 「麻薬と尋問・・・誰かの本音を聞きだすのかなぁ?」
 「あれだ。耕治が浮気してないか、一服もって拷問するんだ」
 「笑えねぇ・・・あ」
 「ただいま、でつ♪」
 部屋の主が帰ってきた。かばんをかけると寝床の布団にどっこいしょと座り込む。
 「かぁるちゃん、おかえり〜」
 「おねえたん、ごみとうじできてまつか?」
 「ごめんね、まだなの」
 「ゆっくりでいいでつ。ただ、かくぢつにつててくだたい!」
 「ヤバイの?中身見られたら捕まるとか」
 「よむだけならつみにならないとおもいまつが、これがよめるちとなら、あくようができるでつ」
 「悪用・・・」
 「ねぇねぇ、薫ちゃん?」
 麻薬の使い道が分からないあずさがもう一度聞く。
 「文章ちょっと読んだんだけどさ・・・これでさ・・・耕治を拷問するの?」
 「おにいたんに、でつか?」
 ケラケラと笑い出す薫。
 「おにいたんのことはちんじてまつから、とんなひつようないでつよ?」
 「あのさ・・・薫ちゃん。さっきから気になってたんだけど」
 と耕治はパソコンの画面を指差す。
 「この『おにいたん店で盗聴3/1.mp3』ってファイル、なに・・・?」
 「おとめのひみつ、でつ♪」
 そういうと薫はいそいそと問題のファイルをゴミ箱フォルダに移動した。
 (不用意な発言はできないな・・・)
 「あ、おにいたん。でんわのけんはどうなりまちたか?」
 「その件?間違いないよ。それは明日22:40ごろ放送だって」
 「よろちいでつ」
 「そういえばさっき薫ちゃん宛に荷物が届いたよ?」
 あずさは薫が出て行った直後に来た宅配便の荷物を取り出す。
 「送り主が『バラエティショップ防犯用品研究所』・・・だって」
 「あい。これでふくちうのどうぐ、でんぶとろいまちた♪」
 嬉しそうに言う薫。
 「バラエティショップって・・・中身はあれ?スタンガンとか?」
 「ちがいまつ。これは、えみるおねえたんへのぷれぜんと、でつ」
 「笑留さんの?あの人に護身グッズとかいらないんじゃない?」
 「逆に襲うほうだろうな」
 あははははは・・・と乾いた笑い声を上げる耕治とあずさ。
 「でさ、薫ちゃん。復讐って、いつするの?」
 「あちたでつ♪」
 「明日?!」「早っ!」
 あまりの急展開に驚く二人。
 「あちたでないとだめなのでつ。このきかいのがつと、つぎのらいげつではできないかもなのでつ」
 次の来月では出来ないかも?変な日本語に首をかしげる二人。
 「あちたは、えみるおねえたんが、こられないひでつ」
 そうなんだろうか?再び首を傾げる二人。
 「かくぢつにちたいので、おにいたんにおねがいがあるでつ」
 「なんだい?」
 「みたとおねえたんの、でんわばんごうをおちえてほちいでつ」

517 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:21:17 ID:XjUBHhrl]
 (かいわのないようは、おにいたんたちはちらないほうがいいでつ)
 そういって部屋を出て行った薫は、外に出て美里と話をしているようだ。
 「しかし、なに考えてんだろうな薫ちゃんは・・・?」
 「明日なんかあったっけ?」
 「確かグループ店長会議、19時から・・・そっか!明日は笑留さんは実家に確実に泊まるんだ」
 「そっか。本部からだとここより自宅のほうが近いからか。それを念を押しに言ったって事?」
 「だろうねぇ。何で聞かれたくないかわかんないけど」
 口を動かしながらも、二人は例の×印ダンボールの中から取り出した紙をシュレッダーに投入していく。
 やがて、箱の中から、1冊の本が出てきた。
 「これ・・・捨てたらヤバイんでしょうね・・・」
 「どした、あずさ?」
 ダンボールから出てきた文庫本を手に、首をかしげるあずさ。耕治はそれを取り上げる。
 「うーん、とき子さんの持ってる推理小説じゃない?」
 「あのひと、サスペンスドラマ好きだもんね」
 「これはとき子さんに聞いてから決めたほうがいいな」
 「そうね」
 耕治はこの本だけを薫の机のうえに置いた。
 「面白いんだったら、借りてみよ」
 「おもしろいんじゃない?なんかのミステリー大賞とったとか帯に書いてるし」
 「へー?!・・・タイトルなんていうんだったっけ?」
 「えっとな・・・」
 耕治は再び取り上げて題名を見る。
 「・・・?『魔術はささやく』・・・?」

「あ〜らかぁるちゃん、いらっしゃい」
 「こんにちわ、でつ♪」
 次の日の夕方、薫はテュルパンを訪れた。店の事務所にはフロアでの仕事を終えた笑留がパソコン相手に格闘していた。
 「おねえたん、おちごとでつか?」
 「今日会議でねぇ〜資料がまとまらないの〜」
 といいつつキーボードを叩く。
 「おねえたん、おつかれでつね」
 「おつかれなの〜だけど薫ちゃんが来てくれたら疲れも吹き飛ぶの〜」
 笑留は椅子を回転させて薫のほうを向き微笑む・・・涎を垂らしながら。
 「かぁるちゃんのおしっこ飲んだら元気出るの〜」
 「え、えみるおねえたん・・・」
 さすがにドン引きする薫。
 「お、おねえたん。だいどころにいってこーひーでも、もらってきまつ」
 「ああ〜ん、かぁるちゃんのほうがいいのに〜」

 薫は事務所から厨房に移動する。
 「おねえたん、てんちょうたんに、こーひーをいれてくだたい!」
 「うん、わかった!ちょっとまっててね」
 偶然食器を返しに来たあずさがいたので薫は笑留用のコーヒーを頼む。
 あずさは食器棚からコーヒーカップ一式を取り出す。
 「かぁるちゃんは牛乳でいい?」
 「あい!あいつでおねがいちまつ!」
 「はーい」
 あずさは大きな薬缶に入ったコーヒーを保温のため弱火にしていたコンロからとり、コーヒーに注ごうとする。
 「あ、おねえたん、ちょっとまってくだたい」
 「どうしたの?」
 薫はポケットから薬の入った包みを取り出すとそれを開け、中にある怪しげな粉をコーヒーカップにいれた。
 「か、薫ちゃん・・・それ、毒じゃないでしょうね?」
 「とんなわけないでつ!おみちぇがつぶれるでつ!」
 「な、ならいいんだけど・・・」
 といいながらあずさはその問題のカップにコーヒーを注いだ。
 そして冷蔵庫から牛乳パックを取り出し、グラスに注ぐ。
 あずさはカップとグラスを小さなお盆の上に置いた。
 「薫ちゃん、これ、持てる?」
 「あい!」
 薫はあずさから貰った盆を手に再び事務室に向かう。

518 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:22:00 ID:XjUBHhrl]
 「えみるおねえたん、ただいまでつ」
 「あん、かぁるちゃんありがと〜」
 笑留は席からたち薫の前に立つと盆からコーヒー一式を受け取った。
 薫は盆を地べたに置くとグラスだけ両手で持つ。
 「では、いただきます。んぐんぐんぐ・・・」
 笑留はホットをブラックのまま飲んだ。
 「おねえたん・・・にがくないでつか?」
 「これがいいのよ。このほうがコーヒーの味が分かるし」
 2、3口で飲み干すと笑留はまたパソコンの画面に向かう。
 「さーて、飲んだら気合入ったぞー!やるぞー!」
 笑留はまたキーボードを打ち始めた。
 「こっぷ、かえちてきまつね」
 薫は笑留のコップをのけ、厨房に持っていった。そして、帰ってきたとき。
 「えみるおねえたん、ちょうちはどうでつか?」
 「抜群抜群・・・って、あれ・・・あ・・・なんか目が回ってきた・・・なんで?」
 「おねえたんはつかれてるのでつよ・・・」

 がばっ!
 気がついたら笑留はキーボードの上に突っ伏して寝ていた。
 「え?あたし、なにしてた?」
 「おねえたん、つかれてねてたのでつよ」
 「え・・・そうなんだ。何分ぐらい?」
 「20ふんぐらい・・・でつね」
 「よかった〜」
 笑留は胸をなでおろす。
 「おねえたんがちんぱいでちたが、もうだいぢょうぶでつね?」
 「うん!だいじょうぶ!」
 笑留は薫に対し力こぶを作る動作をする。
 「じゃーやるぞー!あと30分!」
 「がんばってくだたい!かぁるは、これでかえるでつ」
 「うん!今日はおうちにいけないけど、またね〜」
 パソコンに体を向けてるので後ろを向いたまま笑留は手を振る。
 「あい!おねえたんも、がんばってくだたい!」
 そういって出て行った薫の瞳には月色の光がともっていたが、笑留はそれに気づけなかった。

519 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:23:01 ID:XjUBHhrl]
 その夜、22時過ぎ。禾森邸。薫は携帯で笑留に電話した。
 ぷるるるる〜、がちゃ。
 「あ、かぁるちゃんだ〜」
 「えみるおねえたん、かぁるでつ♪」
 「きゃ〜かぁいい〜♪」
 「おねえたんと、てれびでんわではなちたいでつ」
 「わかったぁ、ちょっと待っててね」
 薫は居間のパソコンを操作し、大画面のテレビをパソコン画面に切り替えテレビ電話を起動する。
 すると、画面にでっかく笑留の姿が映し出される。
 「あ〜かぁるちゃん映った〜♪あれ、耕治君にあずさちゃんたちもいるの?」
 「あい♪みんなでいまにいまつ」
 笑留は画面の中で手を振っている。ちなみに声はテレビのスピーカーから流れている。
 笑留は自室のパソコンからテレビ電話をしていた。後ろに部屋の風景が映っている。
 風景といっても、後ろに映っているのはベッドとその上に乗った笑留がいつも持っている鞄ぐらい。
 ちなみに彼女はスーツ姿のまま。もしかしたら今帰ったばかりかもしれない。
 「おねえたん、いまかえったとこでつか?」
 「そ〜なの〜、お兄ちゃんはもう帰ってきてるんだけど、お姉ちゃんがまだ帰ってきてないの」
 「おにいたん・・・ゆういちてんちょうたんでつか」
 「うん!でさー、せっかくみんないるんだしさ〜」
 そういうと笑留はいきなり服を脱ぎだそうとする。
 「お、おねえたん!ちょ、ちょっとまつでつ!」
 「えー?!どうしたの、かぁるちゃん?」
 「あのね、おねえたん。ゆういちてんちょうたんとおはなちちたいのでつ」
 「え〜!!」
 明らかに不満の声を上げる笑留。
 「てんちょうたんとおはなちがあるのでつ。かぁるのおねがい、だめでつか?」
 「うーん、ちょっとまっててね」
 そういうと笑留は画面から姿を消した。部屋の外に出たようだ。
 画面から小さく「おにーちゃーん!」って声が聞こえる。
 「おにいたん、いまなんぢでつか?」
 「10時半に少し前・・・25分」
 「ぎりぎりでつね・・・」

520 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:24:08 ID:XjUBHhrl]
 1〜2分して画面の前に元店長−樹元雄一が現れた。後ろには笑留がベッドの上に座っている。
 「はーい、おまたせー薫ちゃん♪」
 「ゆういちてんちょうたん、よびつけてごめんなたいでつ」
 「いいよ〜」
 そういって雄一は笑う。
 「いつも妹が迷惑をかけてるからね」
 「おにいたんからいちどきつくいってくだたい!」
 「うんうん、いっておくよ」
 後ろでは笑留が口を膨らましてプーと怒った表情。
 「でね、てんちょうたん」
 「なにかな、薫ちゃん?」
 「てんちょうたんたちのおへやに、てれびはありまつか?」
 「あるよ?」
 「ちょっとつけてくだたい」
 「テレビ?そういや今の時間帯だと・・・笑留、テレビつけて」
 「テレビねー、おっけい」
 笑留はベッドに転がっていたリモコンをとると画面から見て右にリモコンを向けた。この画面からはテレビは見えない。
 「あ、うちのCMやってる」
 「ほんとだ」
 『ぐるぐるきょうも〜♪』
 ウエイトレスが複数お盆に料理を載せてクルクル回転している。テュルパンのCMだ。

 ”きていぢぢつ、つくるでつよ・・・”

 「え?」
 「笑留、どうした?」

 ”おねえたんは、ゆめをみてたのでつ・・・”

 笑留はテレビを見たまま動かなくなる。
 「笑留、おい!」
 雄一は画面から離れると、その手を笑留の肩にかける。笑留は雄一の手を自らの手で払うと、その手首をつかんだ。

 ”いまは、あくむをみてるでつ・・・”
 ”ゆめは、ちゃめるでつ・・・”

 「うん・・・ゆめだから・・・さめるよね・・・」
 「笑留、どうしたんだ、おい!」
 笑留は雄一の手首をつかんだまま雄一のほうを振り向く。
 その瞳は月色の光を灯していた。明らかにヤバい瞳だ。
 「え・・・え・・・えみるさん?」
 「おにいちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 笑留は、雄一をベッドに押し倒した。  



521 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:25:46 ID:XjUBHhrl]
以上です。
次回、完結。またエロ。そして修羅場。
・・・新スレが起つまでに間に合えばいいが。

522 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:27:28 ID:XjUBHhrl]
・・・だめだ。もう450KB使い果たしてる・・・orz

523 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 04:47:06 ID:7yxgMxT1]
>>512第二章キタ━━(゚∀゚)━━!!GJ!
開始早々サキが嫉妬?
過去に虎吉と関わりがあったようだし今後の展開がますますwktk

>>521遂に病みが来るかと思ったら次で終わりとはw
大爆発に期待w

524 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 12:49:49 ID:0xGFv+j9]
サキが急に可愛く見えてきた俺ガイル
ロボ氏GJ!
◆dkVeUrgrhA氏もGJ!次回最終回?

450㎅越えたし次スレ立ててきていいのかな? 
問題ないようなら行って来ますね

525 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 13:29:22 ID:0xGFv+j9]
立ててきました

ヤンデレの小説を書こう!Part5
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174364890/

526 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 15:58:11 ID:+UBnlJRw]
埋めついでに愚痴を少々。

このスレでは雑談が少なめだった。
実にSSスレらしいのだが、少々寂しくもあった。
住人が減ってしまったのかな、と思ったりする俺ガイル

527 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 16:14:43 ID:7IMjvgJf]
SSスレで雑談を遠慮するのは当たり前のマナーだろ、常識的に考えて……
容量とか考えろよ

528 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 16:38:21 ID:lRPxiCOf]
いいものじゃないか、神光臨の頻度が増えたと思えば。

529 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 16:39:46 ID:+UBnlJRw]
それはそうなんだけどさ……なんだか、感想レスも最近減った気がするんだ。
覗きに来る人が減ってたりしたら、なんか悲しいわ……
みんな、居るのか?
うぅぅぅぅ…………

ヤンデレスレはエロエロよー!


orz

530 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:14:07 ID:5QfzGFlb]
覗いてるけど読んでないしな、俺の場合



531 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:15:31 ID:lRPxiCOf]
ふ ざ け る な
俺の常駐では控え室を除くとここが一番過密なんだぞっ!


_| ̄|○

532 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:53:56 ID:WNu2Za9q]
作品以外のレスで埋め尽くされた今の嫉妬スレを見ろ。あれは泣きたくなる。
作品が投げ出されたにも関わらず、ハチ公のように続きを待つ俺の気持ちも考えろ。

533 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:54:28 ID:XjUBHhrl]
ヤンデレスレは個人的には感想専用スレが欲しい

534 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:57:16 ID:XjUBHhrl]
>>532
逆レイプスレなどヴァカが暴れて職人全員逃亡、
新作投下がないまま次スレ移行だぞorz

535 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/20(火) 19:42:57 ID:LXxhQSKc]
神気取りの勘違いバカを潰すのは最高の娯楽だけどなw

536 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 19:57:34 ID:2DdENjVX]
嫉妬スレに飽き足らず、ヤンデレスレにまで来たか……

537 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 19:57:56 ID:3Ccti8Mu]
と、工作員が言ってましたw

538 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:04:47 ID:4PUniF5d]
>>535
お前、嫉妬スレで荒らしやっているバカだろ?

539 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:08:09 ID:Qr9CS35h]
>>538
嫉妬スレを荒らしておいてこっちだけ無傷でいようなんて虫が良すぎるんだよw
やられたぶんはキッチリやり返すからなw

540 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:09:57 ID:WNu2Za9q]
>>539
単発IDの荒らしはこっちにも来ているのか・・・。



541 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:13:14 ID:6c/a9RbQ]
荒らしは全力でスルーしろ

542 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:42:55 ID:fWZsslMS]
>>539
お前、彼女も友達もいないんだろうなぁ。
可哀相な人だねぇ…(つД`)
荒らし回る暇があったら、出会い系にでも登録しなよ。
あっ、ゴメン!ひきこもりのニート君には無理だったよな…本当にごめんな。

それから、君にはこれ以降一切、かまわないけど気を落とすなよ。
生きてれば、きっといつかいい事あるよ!
いいグロ画像拾うとかさ。
君、グロ好きだろ?

じゃあ元気でな!w( ´ー`)y━・~~
>>541
おもいっっっきり、かまっちまった。
コレ以降は全力でスルーする。

543 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:45:12 ID:z26hRunX]
以後、つっこみ禁止!!!


544 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:46:35 ID:lRRpX25M]
最近お茶会のご主人が来ないなあ。
確かに創作活動には波があるのは分かってるんだけど……

545 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/20(火) 20:47:49 ID:OjoOwn80]
>>542
殺すぞw

546 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:48:09 ID:WNu2Za9q]
とりあえず、ずっとお預けの生殺し状態なので、
慎太郎君の人のパソコンは早く直ってほしい。

547 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:52:20 ID:z26hRunX]
そういやさ、ミ(ry主催のイベントが明日あるな。

548 名前:うふ〜ん mailto:うふ〜ん [うふ〜ん ID:DELETED]
うふ〜ん

549 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:55:57 ID:qhPMkswl]
勝利云々のやつか・・・
相変わらず暇みたいだなw

550 名前:うふ〜ん mailto:うふ〜ん [うふ〜ん ID:DELETED]
うふ〜ん



551 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 21:00:35 ID:K5hDoGw/]
>>544
俺もお茶会と上書きの続きを待ち望んでる。
もちろん他のシリーズもだが。

552 名前:うふ〜ん mailto:うふ〜ん [うふ〜ん ID:DELETED]
うふ〜ん

553 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 21:13:31 ID:4PUniF5d]
ナナリーは知っている。自分一人では食事もままならないことを。
ナナリーは理解している。自分には自分の為に無償で奉仕してくれる人間が必要だと。
ナナリーは気づいている。そんな都合の良い人間は、兄を置いて他にはいないのだと。


ユフィお姉さまはもちろん、ミレイさんやシャーリーさんにも、
まして、最近お兄様の部屋に転がり込んできた雌猫なんかに
お兄様は決して渡しません。
お兄様は一生私のことだけ考えて、私のためだけに働いていればいいんですよ。
ねえお兄様。お兄様も幸せですよね?
こんな「絵に描いたような」儚げな妹の世話をできて。
クスクス。



皆が黒い黒い言うから、実はナナリーはこんなこと考えてるんじゃないかと
思ってしまうじゃないか(´・ω・`)


俺もこんな腹黒い妹が欲しいww

554 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 21:14:16 ID:qhPMkswl]


555 名前:名無しさん@ピンキー mailto:yuuki3090 [2007/03/20(火) 22:17:17 ID:dqDM3zAs]
>>553
ギアスの中でヤンデレといえばセシルさんを忘れてはいけないと思う。
でもそんなナナリーもいいと思うよ!

あっ、ニーナもヤンデレなのかな?

556 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 22:19:50 ID:NXnptOos]
セシ・・・え?

557 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 22:22:07 ID:qhPMkswl]
ナナリーはスザクだからねえ

558 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 23:04:16 ID:la/22RYP]
ところで明日の病み鍋PARTYに行く人いる?
俺行こうか迷ってるんだけど、ハルヒもひぐらしも未来日記も読んでないから
行っても買うものあるのかどうか不安で…

559 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 23:16:41 ID:WNu2Za9q]
ヤンデレの名を騙ったキチガイ系少女ぐらいしかなさそうだからいい。

そして、何度も言われているがひぐらしは邪悪ヒロインであってヤンデレではない。

560 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 23:26:12 ID:7IMjvgJf]
>>559
詩音は一応ヤンデレ。



561 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 23:33:35 ID:z26hRunX]
じゃぁぁあくをぉぉ かぁきぃぃけぇすは さぁぁけぇびあぁげぇるきょおぅぼぉうな 「嘘だっ!」

わかる奴はデモンベインをプレイしたことがあるやつ。

562 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/20(火) 23:36:32 ID:BZY/W1nG]


糞SS投下まだああああああああああ!?








































かも〜んなw

563 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 00:24:08 ID:rKpbPAHa]
>>553
 私は、自分ひとりの力ではベッドから下りることができない。
 生まれつき、足が不自由だったわけではない。
 ずっと昔、私が10歳の頃までは自分の足で歩くことができた。

 歩けなくなったのは、お兄様の11歳の誕生日。
 お母様に頼まれて、洋菓子店へケーキを受け取りに行ったときのこと。
 両手で胸の前にケーキを持ち、私はお兄様のことを考えていた。

 えへへ。お兄様はまたひとつ、大人になった。
 あと七年経てば、結婚できる。
 だってお兄様はお義父様の息子だもの。
 血が繋がっていなければ、結婚はできる。そんなこと、とっくの昔に知ってるわ。
 ――ああ、お兄様に早く、早く会いたい。
 ――そして、いつものように胸にうずくまって、匂いを嗅ぎたい。
 ――お兄様。お兄様。お兄様…………

 そんなことを考えていたら、突然足に痛みを感じた。
 そして、世界が一回転した。
 ごず、という音が聞こえてきた。耳を伝ってではなく、直接、音が脳に響いた。
 ぼんやりと目を開けると、自動車のタイヤが目の前にあった。
 人が駆け寄ってくるのが見える。その中の一人が声を出した。
 ――女の子が轢かれたぞ! 誰か救急車を呼べ!
 その言葉を聞いて、私は自分がどんな状態にあるのか、ようやく理解した。

 車にはねられたんだ、と。

 そのことを理解した瞬間、足が痛みを訴えだした。
 皮を引き剥がされた。肉を力づくで引き裂かれた。もっと深く、繊細な部分を破壊された。
 時間を遅らせて、痛みが少しずつ私の脳を冒していく。
 そのまま痛みが加速していくかと思ったら、痛みが引いていって、同時に力が抜けていった。
 今度は眠くなってきた。地面が黒くて、固くて、ちくちくするのに、恐ろしく眠い。
 ――眠るのなら、お兄様の腕の中が良かったな。
 最後にそう考えて、私は目を瞑った。

 目を覚ましたときに見えたのは、白。
 上手く開かない目をゆっくり開くと、視界の隅にお兄様の顔が見えた。
 たまらなくなり、お兄様の体に抱きつこうとしたら、脳を刃物で突き刺された――気がした。
 痛みに耐えられなくなり、再びベッドに身を任せる。
 そんな私に向かってお兄様が言った言葉。
 今でも忘れない。

「僕のせいだ。僕がお前についていっていれば、良かったんだ。
 そしたら、こんなことにならなかったんだ。
 ごめん。もう……お前を一人にはしない。絶対に」

 お兄様の泣き顔が可愛いとか、その涙を一滴残らず飲み干したいとか思うよりも先に、
その言葉が嬉しくて、私は泣き出してしまった。
 ――だって、お兄様のプロポーズだもの。これ以上、嬉しいことなんかこの世にはないわ。


564 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 00:24:49 ID:rKpbPAHa]
 それから、私とお兄様の甘い生活が始まった。
 もうかれこれ、8年は経つ。
 朝はお兄様が私を起こしてくれる。朝食を食べさせてくれる。
 昼には息を切らせて部屋に戻ってきて、昼食を食べさせてくれる。
 夕になっても、もちろん夕食を食べさせてくれる。
 そして、その後はずっと私の部屋に居てくれる。
 私はベッドに身を起こして、お兄様はベッドに腰掛けて、二人でお話をする。
 このときが、とても幸せ。
 心が暖かくなって、自然と笑みがこぼれる。
 でも、それ以上に幸せなときがある。
 それは、お兄様が私を抱いているとき。
 
 お兄様が私の肩を掴んでキスをする。そして無理矢理ベッドに押し付けて、首筋を舐め上げてくる。
 暖かい手が背中に回り、腰を撫でて、お腹に辿り着く。
パジャマのボタンを優しく脱がせて、下着の留め金を外して、強引にたくし上げる。
 お兄様の目が大きく開かれる。私の、むき出しになった乳房を凝視している。
そのまま獣のように乳首に吸い付き、舌で転がしてくる。右に左に、執拗に責め立てる。
 乳首にかみつきながら、私の履いているパジャマと下着をずらして、優しく足首から脱がせる。
お兄様は息を荒らげながら、ベルトに手をかけて、ジーンズ、トランクスの順に脱ぎ捨てる。
 大きくそそり立ったお兄様のいちもつを見ているだけで、私のアソコは疼く。
欲しい。あれを咥えたい。強く締め付けて、お兄様の吐き出すものを全て飲み込みたい。
何度も、荒々しく突いてほしい。奥の奥、子宮を浸すほどの精液を出してほしい。
 でも、私が何を言わなくてもお兄様は私の言うことを聞いてくれる。
慣れた手つきで私の足を広げる。壊れ物を扱うように優しく、ゆっくりとした動きで。
お兄様が一言、いれる、と告げた。私の中にお兄様のペニスがはいっていく。

 その瞬間、私の心は切なくなる。
 激しく腰を打ちつけられているというのに、まだ足りない気がする。
 もっと、もっと、もっと、もっと、もっと、もっと。
 奥――いや、心の臓に達するまで、突いてほしい。犯し尽くしてほしい。
 私の顔は、涙と、唾液と、汗でぐちゃぐちゃ。
 きっとひどい顔をしているだろう私に、お兄様はいつも言ってくれる。

「愛してる」

 そして、お兄様に熱いものを注がれて――ようやく私の心は満たされる。


565 名前:〜事故と、男と、妹と、女四人〜 mailto:sage [2007/03/21(水) 00:26:38 ID:rKpbPAHa]
 
 でも、体を重ねた後に見る夢は、最悪。
 私は腕を縛られていて床に転がされている。
 そうなったら、足が動かない私には何もできなくなる。

 そんな私には目もくれず、四人の女が、お兄様を犯している。
 姉だった女性。友達だった二人。誰だか知らない女。
 一人がお兄様の頭を股で挟んでいる。
 二人がそれぞれお兄様の腕を掴み、自分の股間に無理矢理押し当てている。
 最後の一人がお兄様の腰の上に跨り、上下に腰を振っている。
 憎い。憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。
 この足さえ動けば。そうしたらあの女どもを蹴り殺してやるのに。
 殺意をこめて女どもを睨む。
 歯を食いしばり、眉を上げ、目じりを吊り上げる。
 死ね。消えろ。滅べ。逝ってしまえ。
 そう強く念じる。

 すると、女の一人がこう言った。
『もう、わたしたちはしんでるの』
 別の一人も声をだした。
『あなたに、ころされたのよ』
 また、別の声がする。
『あなたは、さいていのおんなね』
 残る一人が、私を見つめる。
『じつのあにに、ひとごろしをさせるなんて』

 最後に、声が重なる。
『『『『貴女が死ねばよかったのに!!!!』』』』

 
 そして、私はベッドの上で目が覚める。
 こめかみに汗が伝う。額を拭うと、寝汗がびっしょりと手にはりついた。
 手をパジャマで拭う。なかなかとれない。
 いらいらする。また、あの女どもの夢を見てしまった。
 あいつらは死んでまで私の邪魔をするのか。
 そもそもあいつらが悪いのだ。お兄様と私の大事な日常を犯したのだから。

 でも、所詮は夢。あいつらの夢も、妄想どまり。
 私の現実は、こう。

「お兄様。おはようございます」
「……ああ。おはよう」

 お兄様の起きたばかりの顔を拝むことができるのは、この世界で私ひとり。

 そして、お兄様は私ひとりだけのもの。

 終

勢いで書いた。反省はしていない。
そもそも原作知らないし。


566 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 00:27:01 ID:axSnNLxl]

ヤンデレはキャッハハハッハハハハ!!
と笑いながら包丁を泥棒猫に突き刺すのが本来の主流ではない

本来のヤンデレというのは

好きな男性に声をかけられない程に人見知りが激しくて引っ込み思案で
バレンタインのチョコをひっそりと机の中に入れておくような大人しい女の子が


黒化して行く過程が本来のヤンデレじゃないのか?

ツンデレは単純にツンとして、恋人同士になればデレという単純な構造だが

ヤンデレはそこまで過程が複雑で痛々しい姿があるところがいいんだよ。


と、言ってみるテストw



567 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 00:33:00 ID:rKpbPAHa]
以下、つっこみ禁止


568 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 00:36:27 ID:axSnNLxl]
ヤンデレ論はどこですればいい?

ゼロは何も教えてくれない

569 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 00:44:15 ID:rKpbPAHa]
このスレ的には、
・ヒロインが、狂うほど(病的)に主人公を愛している。
ということで決着がついている……気がする。

主張じゃなくて、「こんなんどうだ?」というシチュの説明(プロット)なら歓迎だ。
ヤンデレ論を作って、ヤンデレのあり方を決め付けるのは可能性を狭くする。

570 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 01:02:16 ID:UmXH/Ari]
>>566
つムヒョロジ7巻



571 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 08:15:20 ID:B6OVAqRs]
>>565
これはGJ!
俺も原作知らないから素直に楽しめました

572 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 08:35:41 ID:ckeix0gM]
そろそろヤンデレも体系化の時期なのかも知れんな。

573 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 08:59:59 ID:VLtWfF9Z]
>>572
T-72神教くらい壮大なネタと割り切らないとまた荒れる予感。
別に体系化しなくてもいいんじゃない?もしくは枝分けせずに各自が○○派を名乗るとか。

オブイェークト

574 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 10:00:14 ID:wHi2ca1H]
自分の好きなヤンデレは、
多大なる葛藤の果てに自分の親友であった泥棒猫を突き刺し
(この時点ではまだ病んでいない)愛を得ようとするけど、
やはり因果応報というか、天命というかで自分の思い通りに
ならないことばかり起こって、その中で段々とヤンでいく娘
要は泥棒猫を刺すこと から 病んでいく娘


575 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 10:40:09 ID:SyNaLU9T]
世の中にはヤンデレと狂気系を混同する人が大杉る

576 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 10:49:22 ID:hW7+A4fq]
「ヤンデレ」って一件「ヤンキーのツンデレ」かとオモタ

表記としては
「病んデレ」のほうがいいかも知れないが
「やんでれ」とうまく読めない人もいるかな?
「ツンデレ」とのシャレでもあるだろうし。

577 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 10:56:12 ID:rKpbPAHa]
>>573
どんなヤンデレが好きかという雑談に過ぎないから、神経質にならなくてもいいとおもうぞ。
というわけで、俺も>>572に釣られてみる。

俺が好きなタイプ。

可愛さあまって憎さ百倍、愛憎型ヤンデレ。
例)
・主人公とは、前世で恋人だった。
・しかし、主人公に拒絶される。そして黒化。
・「私の思い通りにならないなら、いっそ殺してあげる。
 でも勘違いしないでね。憎いからじゃないの。
 誰よりもあなたを愛してるから、あなたを永遠に私のものにしたいから、『あなた自身』が欲しいのよ」
 ↓
 サクッ

>>575
狂気系ってひぐらしのレナみたいなデレてないヒロインのことか?
あれはただのヤンデルだな。

578 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 11:35:25 ID:TJoiUQVn]
デレが強いのが好きだ
デレが強ければ強いほどヤンが際立ってぞくぞくするし

579 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 12:07:30 ID:6sW0OSnS]
当方ド田舎につき『病み鍋PARTY』とやらの感想を希望。
今日やってんだよね?

580 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 12:07:30 ID:8RLiN9P/]
>>572
よし、じゃあ俺は元々は普通の娘だったのが
予期せぬ不運などで想いを阻まれそれが沈殿鬱屈していき
表面は正気を取り繕いつつも段々と狂気が現れていく
外圧後天的進行性ヤンデレ派を主張する。



581 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 12:43:31 ID:XRzno3ep]
それなんて空鍋?

582 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 15:28:36 ID:MrQwIGlG]
前スレで話せといわれたので前スレで。

GS美神に出てきた乙姫様はいいヤンデレだった。地雷女と評されてたが。
もしモノホンの浦島太郎がやってきたのならどうなってただろうか。

583 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/21(水) 16:28:03 ID:d3l8hkRD]
>>582
乙姫が地雷なのは主に年齢のせいかとwww

ていうか横島に惚れる女(妖怪含む)は大抵ヤンデレだった気がw

584 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 17:31:46 ID:VLtWfF9Z]
>>579
病み鍋PARTY行ってきたよ。
落書きブースに「静岡から来た」とか「富山から来た」とか、
果ては「福岡から来たけど辛いので次回はもう少し西で」みたいなことも書いてあったよw

んで、参加者はだいたい100人前後かな?11時に行って1時ごろには出ちゃったけど、
12時半ごろにはもう新規入場者はほとんどいなかったな。

サークルさんはカタログ上では30あったけど、実際は来てない空机や新刊落として
出品なしなサークルさんが結構あった。
内容は10円の2Pくらいしかないほとんどただのチラシから200円前後で10P前後の
コピー本が多く、500円前後のオフセット本が2〜3サークルだった。
ジャンルはカタログの申し込みジャンル統計によれば、オリジナル41%ハルヒ14%
未来日記とひぐらしが10%ずつあとその他ちょこちょこ。

実際行ってみた感想はスタッフさんや他の参加者には悪いけど、
「暇潰し&物見遊山にはなったかな」てのが正直なところ。

他に知りたいことある?一応11/11に病み鍋PARTY2が開催予定らしいが。

585 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 17:38:07 ID:yaTD/2fl]
病み鍋の会場に空鍋が置いてあった…

586 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 17:43:09 ID:VLtWfF9Z]
>>585
「ご自由におかき混ぜください」ってアナウンスもあったよ。
スタッフさんがわざわざ家からコンロ、お玉、鍋の三点セットを持ってきたみたいw

587 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 17:58:43 ID:yaTD/2fl]
開始からしばらくは「ねこうさプリン」さんに集中してたなぁ

588 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 18:49:03 ID:SyNaLU9T]
>>587
あーやっぱなあ
某長門小説の人とかは?

微妙にスレ違いの話題だが

589 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 18:58:36 ID:OnQthCXe]
狂気系でもデレがあればヤンデレなんじゃねーかな?
お茶会シリーズとかそんな感じだし

590 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 19:25:44 ID:SyNaLU9T]
ヤンデレと狂気系は似ててもやっぱり別ジャンルだと思うんだ……。
・狂気系デレ=病んでいてデレ
・ヤンデレ=病むほどにデレデレ
マッドラブとシックラブの違い、みたいな。

いない君〜の如月更紗と神無士乃が分かりやすい例。前者は狂気系デレ、後者がヤンデレ。
(これからの展開でどうなるかわからんけど)

お茶会は「狂気の中のヤンデレ」メインだからいいんだけどね。両者兼用的な。
ヤマネとかグリムとか妹とか。
狂気系ヤンデレとでも言うべきハイブリッドデレ。自分で言ってて意味わかんね。



591 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 20:11:12 ID:9I1IM2Bw]
正直な話狂気系もOKにして欲しいなあ。ネタがあることはあるんで。

592 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 20:46:17 ID:enNVI4x2]
そういやぁ病み鍋にノベゲーだすとか言ってなかったけ?

593 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 20:58:39 ID:SyNaLU9T]
>>591
狂気系でスレ立ててみてはどうか、と思う
それとも俺みたいなのがほのぼの純愛にでも移るべきなのか

594 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 21:30:27 ID:rKpbPAHa]
園崎詩音は狂気系ヤンデレヒロインだろう。
彼女をヤンデレヒロインと認めるならば、このスレで狂気系ヤンデレが受け入れられない理由は無い。

というわけで、>>591! Come on! 準備はOK! ゴングを鳴ら(ry

595 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 22:23:50 ID:MrQwIGlG]
そのザキとやらはヤンデレなのか?誰に惚れて狂うんだ?

596 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 23:12:33 ID:6sW0OSnS]
VLtWfF9Zさん、感想ありがとう♪

なんとなく微妙な感じが伝わってきたよ。
でも空鍋が用意されてるあたりに、スタッフの心意気を感じてしまった。
福岡で開催なら行ってみたいな。

最後に一つ、次回も行くかな?かな?


597 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 23:18:40 ID:6sW0OSnS]
スマソ書き忘れ。
yaTD/2flさんにも感謝を。
ありがとう。

598 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/21(水) 23:18:53 ID:ymo3Ey0M]
狂気系ヤンデレ…
 恋愛対象の喪失などにより、絶望から狂気に至るヤンデレ

というのだと思う

599 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 01:08:57 ID:GnpXbvy+]
>>590
俺にとっては「鶏が先か卵が先か」と同じにしか見えない。

600 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 01:18:15 ID:gLOMFaMi]
愛ゆえに狂っていくのがヤンデレ
既に狂ってた人が人を好きになりましたーじゃ違うんだ、そこから執愛に派生していくならともかく



601 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 01:42:32 ID:2dhwRX7h]
みんなそれぞれ、これっていうヤンデレがあるんだな
ヤンデレにも色々だって、冗談ヌキで勉強になった

602 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 02:45:55 ID:07MahryA]
なんでわざわざそんなハードルの高い条件のとこに投下しなければならないのか…プロじゃあるまいし
誰も気軽に投下出きる環境が欲しいってだけなのがわかってないみたいだな…
そ―ゆーナチュラルに傲慢なところが書き手の立場の人間には我慢ならないってのが理解できないのか?
…やはり根本的に相容れないみたいだ。

603 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 05:34:39 ID:5rzVUOvC]
喚くな、自分でスレ作れ

604 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 05:35:49 ID:QXed479+]
まあ一度肥えた舌は元には戻らないってものだし

605 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 05:36:50 ID:uSxsqvB2]
んー、難しいね、ヤンデレ。奥が深い。
俺は病んでる人〜ってのもアリだと思うよ。というかそっちの方が自分は好きだし、個人的にわかりやすい。
まあけど好きな余りに病むのもばっちこい。けどこっちの方が病む過程も表現しないといけないから、書くのが難しそう。
まあ、なんにしろ、物語中に病みさえすれば何だってGJ出しますよ。病むのが最初からでも後半でも。

606 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 06:56:18 ID:c/SrAEaW]
その”病んでいく過程”とやらを描いてあるSSはまとめサイトでいうとどれにあたるんだ?

607 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 08:00:22 ID:gLOMFaMi]
病的な愛≒病人の愛

いや、もういいわ。
変なこと言ってすまんかった。

608 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 08:22:55 ID:5ArBZU46]
>>606
「彼が望むな死んでもいい」は?

609 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 08:32:56 ID:5ArBZU46]
「彼が望むなら死んでもいい」だった。スマソorz

610 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 14:05:16 ID:4fLIHgKV]
スレの繁栄を考えるとどっちもありでいいんじゃないか?
微妙な違いを細分化して新スレ立ててもいいことないと思うよ、経験上



611 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 17:47:08 ID:to05I7ZD]
>>608-609
そして、その言葉のとおりに
「貴方のためだから…その為に死ねるなんて、嬉しい…」
と、笑いながら自分の首を掻っ切ったり毒盃を飲んだり出来ればそれはヤンデレ。

612 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 21:12:47 ID:c/SrAEaW]
>>611
…やっぱこのスレではそういうオチがデフォルトなのか?
そういうのが好かれているのか?

ハッピーエンドが好きな奴!手ぇ上げろ! ノ

613 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/22(木) 21:29:27 ID:9nHI0JrG]



614 名前:名無しさん@ピンキー mailto:yuuki3090 [2007/03/22(木) 21:33:16 ID:GP0tKLlJ]


615 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 21:33:44 ID:MCgmcbfK]


616 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 21:39:54 ID:kx2z9wc4]


時に、ハッピーエンドとは何だろう?

617 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/22(木) 21:50:42 ID:c/SrAEaW]
俺が言うハッピーエンドは、主人公とヒロインが生存していて、
二人が結ばれて、周りの環境もそれなりに幸せという、よくあるタイプのエンディング。
いわゆる生存END。

このスレ的なハッピーエンドとは違うとわかっているけどね……

618 名前:慎@携帯 ◆lPjs68q5PU mailto:sage [2007/03/22(木) 21:55:19 ID:c33AD0ja]

>>616同感。何をもってハッピーエンドとするのか、というのはプロット考えてたりするとよく思う。個人によって変わってくるのかな…自分は、登場人物がどんな形であれ幸せになるならばハッピーエンドになると思いますが。

619 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 00:44:48 ID:uLPF6L7t]
トゥルーエンドって区分もあるからややこしい……。
俺は名前しか知らないけど、誰か明確な区分って知らない?

620 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 00:52:04 ID:K1JbsCOM]
高橋葉介の文庫版で「お気に召すまま」って作品のヒロインがなかなかのヤンデレ

>ハッピーエンド
ヤンデレ的には一緒に心中するか、主人公の体の一部を切り取って保存する
くらいしか思いつかない。

失明や手足切断させられた主人公が、ヒロインの助けを借りて二人一緒に
生涯を共にするくらいかな。まぁ、俺だとこのハッピーエンドだが。
全然ハッピーじゃねぇな。



621 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 02:15:12 ID:WQMy9EOp]
俺は惚れた女に殺されるならてんで構わないけどなあ
ただしジワジワなぶり殺すのは痛いので、ナタなんかで、こう、スパッと、一気になら

622 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 02:42:23 ID:nVT1FjUG]
ヒロインの執拗なヤン攻めに主人公の精神が崩壊して人形化
従順になった主人公と二人で幸せに暮らす
みたいなのがハッピーエンドじゃね?

623 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 02:48:07 ID:79PH3+n7]
>>622
それなんてマナマナエンド(w



そういや本スレの方何が起きたんだ?

…確かにあれは感想書きにくいが

624 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 06:37:52 ID:Am0zAZSp]
嫉妬スレは雑談ばかり。ヤンデレスレはSSばかり。
嫉妬スレとは正反対の状況だ……

悪いことでは、ないんだけどさ。

625 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 09:48:10 ID:U6qYWsDk]
不満ありげな理由がさっぱりわからん。最近別になんら悪いこともないのにやたらと「憂慮」しまくる奴が多すぎ。

626 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 12:35:39 ID:AQy9hT8q]
>>625
ヤンデレはどれだけ幸せでも不安なのさ

627 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 12:40:52 ID:1qNt958Q]
個人的にヤンデレは
「主観的にはハッピー、客観的にはバッド」だとおもう。

628 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/23(金) 16:18:27 ID:39MPvq61]
R.D. レインの「Do you love me?」ってヤンデレっぽいよな?
何か二人とも壊れてる感じがして好き。


629 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 16:19:04 ID:39MPvq61]
ごめん、さげ忘れた…

630 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 16:27:27 ID:IKuwm1G7]
皆の衆!待ちに待った保管庫の更新が来たぞ!



631 名前:トライデント ◆mxSuEoo52c mailto:sage [2007/03/23(金) 22:39:05 ID:UefKDqeo]
皆さん、すいません
黒の領域は未完とさせていただきます。


632 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 22:39:45 ID:4q2dMHO/]
なっ・・・・・・・・・・・・

633 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 22:42:32 ID:IklbAATP]
>>631
なんで・・・、なんでそんな人を絶望させるような事を言うんだよorz

634 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 22:51:26 ID:U6qYWsDk]
    ∩___∩   、、
    | ノ      ヽ  ( っ )))
   /  ●   ● | / / >>631
   |    ( _●_)  |ノ /   こいつすげえアホ
  彡、   |∪|    ,/
  /__  ヽノ   /´
 (___)     /


トライデント氏はトリップ割れしたみたい。
本物は普通に嫉妬スレに投下して、トリ変更で対応してる。

635 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/23(金) 22:59:26 ID:Am0zAZSp]
471 名前: トライデントd123 [sage] 投稿日: 2007/03/23(金) 22:32:50 ID:avr619Mt
以上 投下終了です。
472 名前: トライデント ◆mxSuEoo52c [sage] 投稿日: 2007/03/23(金) 22:36:14 ID:N2859HjO
以上 投下終了です。

473 名前: トライデント ◆J7GMgIOEyA [sage] 投稿日: 2007/03/23(金) 22:37:07 ID:avr619Mt
とりあえず、トリップ変更しておきます。


記号の前に"#"を付け忘れたみたいだな。
これからは ◆J7GMgIOEyA このトリップだということか。

>>634。お前さんの親切さに感動した!結婚してくれ!……いやごめんうそ。

636 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 12:19:27 ID:1wyffFHU]
ネタみたいなものは思いつくんだが文才が無いっつー現実に打ちのめされたOTL
なのでここに思いついたネタとか書いてみても良いだろうか?
まぁ病んでるかどうかは自信がいまいち無いが。

637 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 12:54:47 ID:kq72ybrI]
>>636
男は度胸!何でも試してみるもんさ!

638 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 13:33:45 ID:OjrMk0cJ]
>>637
ならばお言葉に甘えて。

舞台としてはファンタジーかそれに属したもので
人間ではない魔法使いの少女(以下A)が人間の少女(以下B)に惚れる(まぁ性別はどうでも良いけど)
付き合い始めてしばらくして「寿命の違い」に悩み始める。
元々他人との付き合いが少ないAは一人で考えてるうちに病み始め
「だったらBを人形にしてしまえばいい」という結論に至る。
それからAは始めに薬を使ってBを「憶えている事が出来ない」ようにし(薬は少しずつ盛って徐々に物忘れが酷くなったように思わせ)
BをAの館に同棲する。
それからAはBに「治療できるかも知れない」と言って術を施す、それは対象の精神を幼児にまで退化させるもので
これも薬と同様に少しずつ施していく。(術には副作用なものとして術者に異常な独占欲が発生する)
その後、AはBの人格とかを用意していた人形に移植し、Bの本来の肉体は地下に保存する。(人形の動力はAの力)
それと同時に館の周囲を結界か何かで完全に隔離し、更に「二度と離れる事が出来ないように」
とお互いの魂を同化させる。

思いついたのはこんな感じ、グダグダな感がしないでもないが・・・・
しかもベースにしたのが某弾幕STGな辺り、厨臭さ満載な俺・・・ちょっとヤマネに解体されてくるorz

639 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 14:29:59 ID:qZR9C9Ya]
>>638
そのあとで「B」の肉体にさまよう死者(女)の魂が宿る。

「B(女)」は生前に恋人だった「C(男)」を捜しはじめる。

復活した「B」の肉体を求めて「A(女魔法使い)」が動き出す。

これならさらにややこしくなる。

640 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 16:50:20 ID:srpR2hK9]
>>638
俺はBの肉体に宿った残留思念が人格を形成してBが2人いるような状態を付加したい。
まぁどっかでみた設定だが。

流れとんぎって梅


幼馴染みだったあいつは、中学の頃から少しよそよそしくなった。俺も理由がわからず
避けるようになった。進学する高校が別になったことがわかった時俺は賭けに出た。
卒業式のあと体育館裏でキスをして好きだったと告げた。

最初の頃は普通だった。最寄り駅までの登校とたまの休日デート。だがある日あいつは言った。

「最近メールの返信遅くない?」

そんなつもりは無かった。確かに新しい友人も増えたがおろそかにした記憶は無かった。

「だって2、3時間開く時あるじゃん。私、不安で……」

この時点で気づけば良かったのだろう。まる1日放置したのならともかく。
だが次の日からはもっとエスカレートした。

「昨日も7時までメールくれなかった……私とメールするの嫌になっちゃった?」
「ねぇメール打つのに30分もかからないよね?どうして間開けちゃうの?」
「友達とカラオケって……ねぇ私のこと嫌い?メールとか面倒になっちゃった?」
「午前中ほとんどメールくれないよね。授業と私どっちが大事?」
「私以外の人とメールする暇はあるのに私にはくれないの?」
「一番多いとか量の問題じゃないよ。その人とメールしてる時は私のこと考えて無いでしょう?」
「直接会える時間が短いからメールに頼るしかないのに、メールまで返してくれないの?」

メール依存症だった。今では30分携帯を放置しておけばあいつからのメールが10件は入る。
1時間すれば30件は超える。




641 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 16:51:21 ID:srpR2hK9]

15:31
message;
何してるの?私は今掃除中(-_-メ
当番なんだぁ

15:37
message;
忙しかった?ごめんね。

15:40
message;
やっぱり気になるよ…

15:44
message;
ねぇ本当に何してるの?

15:45
message;
ごめんね。メール邪魔だよね。
でも寂しぃよ。。。

15:47
message;
どうして返事くれないの?

15:48
message;
メールしすぎだょね。
本当にごめん。

15:50
message;
嫌いになっちゃった?
ごめん。本当にごめん。
でも寂しぃの。。

15:52
message;
本当にどうしたの?
何かあった?

15:55
message;
お願い、嫌いじゃなかったら
返事、して。
寂しぃ

大量のメールを前にして俺は途方にくれる。どうしたら良いのか誰か教えて欲しい。
だが誰も答えなど知らず、今日も俺はメールを返す。きっと俺まで狂う日は近い。


642 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 16:52:42 ID:srpR2hK9]
5スレも素敵にヤンデレスレはエロエロよー!!

643 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 17:19:58 ID:qZR9C9Ya]
ちょwwwおまwww仕事中にニヤけさせんなよwww軽くゾクゾクしたわwww

644 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/24(土) 18:02:33 ID:Kc6v2acH]
メールで縛る子はリアルに結構いるから困る

645 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/24(土) 23:32:45 ID:kq72ybrI]
メール返すのが遅くてよくワンコがきたな
だったら電話でいいじゃんってよく笑ってたっけ…
どこで間違えたんだか俺…

646 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 00:32:03 ID:SBtrjBGT]
頻度はともかく内容が同じようなメールなら彼女から来るんだが

647 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 00:39:27 ID:vlsTT9cd]
>>646
どれと似てるのかにもよるがフラグだな。
何のフラグかは言えないな。

648 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 01:06:23 ID:qmoDUzaH]
>「ねぇメール打つのに30分もかからないよね?どうして間開けちゃうの?」

そうか俺はヤンデレだったのかww

649 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 01:55:23 ID:JG5osZPT]
おかしいよね、送る相手なんていないのに

650 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 02:38:59 ID:3apb/ark]
それ携帯じゃなくて靴だしね。



651 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 02:49:16 ID:FjzecZD9]
コーラ、おいしいです

652 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 08:48:21 ID:LHg0vcsg]
それは、しょうゆです

653 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 09:04:48 ID:/7rDjX3q]
しょうゆ、おいしいです。

654 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 09:12:33 ID:AGT+yq8d]
それは、焼肉のタレです

655 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 12:35:50 ID:OOm+/ddn]
焼肉のタレ、おいしいです

656 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 13:30:50 ID:zL7t2ae/]
何打この流れ

657 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 14:10:07 ID:vlsTT9cd]
しまった。やってしまった。

「へぇ、このタレ美味しいな」

何気ない日常の一言だが俺の場合は死亡フラグだ。うっかり言ってしまったものの、後の祭。

「ぅん美味しいね。私とこれとどっちが好き?私以外のものに興味持たないでって
 言ってるじゃない!!どうして?私の存在はタレ以下なの?もう私に飽きちゃった?
 一生懸命料理してるのに……一緒に食べてる私でも私が作った料理でも無くタレが
 大事なの?なんで?私のこと好きって言ってくれたじゃない。嘘だったの?
 私だけを見てよ!!他のものなんて見ないで。タレなんてどうでもいいでしょう?
 大事なのは私でしょう?違うの?タレなの?」

目の前で彼女が暴走し始める。今夜も長くなりそうだ。





勢いでやった。後悔している。



658 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 17:02:41 ID:W2NnIHKf]
>>657
うむ。なかなかいい味をだしてるじゃないか。


ヤンデレ本を発見したのでカキコ。
吉村達也著作「初恋」。
16年前に一度だけキスをした相手に迫られるというホラー作品。ぞくぞくするぜぇ


659 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 18:47:28 ID:yzL+wX+t]
>>658
詳しく教えてもらおうじゃないか

660 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 18:57:58 ID:W2NnIHKf]
それじゃ箇条書きでその女の行動を記そう。

・弁当の材料で男の似顔絵を作り、弁当箱を男の会社に届ける。
 弁当を作っているときに、「上手く作れない」という理由で涙をこぼす。涙は具の中に吸い込まれる。
・望遠カメラで男の写真を撮る。上手く撮れた写真は畳二枚分の大きさに引き伸ばす。
・ベッドに引き伸ばした写真を敷いて眠る。それにくちづけたり、乳を擦り付けたりする。 

こんなシーンが他にも大量にでてくる。
俺の頬から笑い皺が浮かんだまま消えないぜw
この作品は俺らのツボを上手くついている!



661 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 20:46:13 ID:uOljji8w]
ヤッベェなソレ、狂ってるな
もちろん誉め言葉ですが何か?

662 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 21:10:05 ID:95QR7z47]
>>660
独身男性?

これが男性に伴侶がいれば修羅場スレ向けにもなるぜww

663 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 21:25:57 ID:W2NnIHKf]
ヒント:主人公は左手の薬指に銀色のわっかをつけている。

ついさっき読み終わったわけだが……これ、嫉妬スレ・ヤンデレスレ・純愛スレのどれでも通用する。

664 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 23:01:12 ID:9wmp7HhK]
じゅ、純愛い?

665 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 23:06:58 ID:uOljji8w]
ほのぼの純愛な


666 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/25(日) 23:10:57 ID:W2NnIHKf]
んにゃ、純愛スレ。ほのぼのしないから、ほの純とはちょっとだけ違う。
ラストを見ればわかる。

667 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/26(月) 07:39:47 ID:SXLCg+fo]
俺がこのスレにとどめをさしてやるぜ!
                                  
                                  
                                  
                                  
                                  
                                  
                                  
ヤンデレスレはエロエロよー!

668 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/26(月) 08:36:15 ID:kVerkYes]
まだだっまだ終わらない!!!!力を貸してくれーっ!!ヤンデレスレはーっ

669 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/26(月) 09:18:49 ID:r2vbyj0s]
   エ   ロ   エ   ロ   よ   ――――――――――   !   !   !   !

670 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/26(月) 09:29:11 ID:fqEqVeuq]
ヤンデレスレに止めを刺すわ



671 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/26(月) 10:35:54 ID:jBNwuPMV]
名無し君… 私と一緒に… 一緒に埋まろう?
これで、ずっとずっと一緒だよ






[ 新着レスの取得/表示 (agate) ] / [ 携帯版 ]

前100 次100 最新50 [ このスレをブックマーク! 携帯に送る ] 2chのread.cgiへ
[+板 最近立ったスレ&熱いスレ一覧 : +板 最近立ったスレ/記者別一覧](;´∀`)<500KB

read.cgi ver5.27 [feat.BBS2 +1.6] / e.0.2 (02/09/03) / eucaly.net products.
担当:undef