- 166 名前:51 mailto:sage [2007/03/04(日) 01:24:25 ID:XnlPB2so]
- 「…失礼いたします」
あたしが授与所へ入ると、そこには宮司様…あたしの父が、護符を書き上げているところだった。 「ああ、お掃除ご苦労様。こちらも丁度終わるところだよ」 宮司様は手にした筆を置くと、あたしに向かって微笑みかける。 あたしは、父の笑顔が好きだ。 幼い頃に母を亡くしたあたしにとって、父は唯一の肉親になる。 そのためか、父は母親に良く似ているというあたしを愛してくれたし、 あたしもまた宮司として、同時に父親として尊敬の念を抱いていた。 「すまないね。用意はもう出来ているから、後は仕上げをよろしく頼むよ」 そう言って立ち上がると、宮司様は本殿へと午後のご祈祷をあげに行かれる。 あたしはその後姿に一礼をすると、まずはぱしりと自分の頬を叩いて気合を入れなおした。 そして、宮司様の書かれた護符を丁寧に折りたたみ、一つ一つ丁寧に御守り袋へ詰めていく。 その一折に気を張り、念を篭めて袋に詰め、この御守りを持って行く人達の事を思った。 そうやって暫くした頃だろうか。 おおよそほとんどの御守りを仕上げ終わり、ほう、と一つため息をついていた時。 「「「おーねーちゃん、あーそびーましょー!」」」 外から聞こえてくる子供達の声。 あれ、もうそんな時間か。 「はーあーいー」 あたしは、手を止めて外の声に答える。 授与所の戸を開けると、外にはいつもの見慣れた3人の子の顔が並んでいた。
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