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かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その12】



1 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 04:20:18 ID:h0Jb9AN7]
ここは幽霊、妖怪、妖精、魔女っ子からはては異次元人まで 
オカルティックな存在の幼女、少女、娘、女性にハァハァするスレッドです。 
エロ&萌え〜なSS、画像を随時募集中! 
創作も収集もおかまいなし! 

前スレ
かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その11】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142074376/l50

関連サイト 
過去ログ&SS保管庫 
tsukinowa.s1.x-beat.com/occult/ 

関連スレ
【妖怪】人間以外の女の子とのお話20【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1163776989/
【亜人】人外の者達の絡み【異形】 
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ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1152198523/

201 名前:名無しさん@ピンキー [2007/05/05(土) 13:05:14 ID:Gnuddo2A]
【正義の人】天羽優子@山形大学【ニセ科学】
science6.2ch.net/test/read.cgi/bake/1178232652/

15 :あるケミストさん :2007/05/05(土) 12:50:23
i-foe.org, Freedom of Expression in the Internet

>会といっても、NPOでもないし法人でもない、同好会のようなものです。サイトの内容に関するお問い合わせは、
apj@cm.kj.yamagata-u.ac.jp へ連絡してください。適宜対応いたします。

www.i-foe.org/top.html

202 名前:名無しさん@ピンキー [2007/05/05(土) 17:30:45 ID:zKriw2le]
>>23の続きが読みたいよー!!

203 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/05(土) 18:55:10 ID:PI5jvSFk]
光の巨人、どう説得したんだろうw
うん、面白かったけど。やっぱ「特異体質」の一言で良いから説明欲しかった気が

というわけで、『湖のヒ・ミ・ツ』もよろしく

204 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/05(土) 19:26:30 ID:/drKMSRR]
>>203

巨人「ジュワ!」
博士「ジョァ!」
巨人「ヘァッ!」
博士「シュワッ!」

……と、適当に場を繋いで3分待った。

205 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/06(日) 01:15:41 ID:GgO3xbJq]
光の巨人は結構話のわかる奴だぜ?

……敵対すると20億でも迷わず虐殺するけど

206 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/06(日) 21:12:09 ID:nRaEF2pQ]
>>205
すでに動けない相手に小便ひっかけてトドメ刺すようなヒトは信頼できません。

207 名前:すみませんが [2007/05/08(火) 01:40:06 ID:EPgxfmxg]
ずっと前に見かけた『モーショボーたん』のシリーズ全部読みたいんですがどこにあるんでしょうか?

208 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/08(火) 03:12:54 ID:F7/Yvr8V]
>>207
18歳になったらまた来い。

209 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/08(火) 16:51:06 ID:mLVEn8Dd]
人間以外スレに吸血鬼ものが落とされたてたけど、このスレの173さんかな。
吸血鬼スレにいた自分としては、せめて圧縮がGW明けだったら思わずにはいられなかった。



210 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/12(土) 23:32:36 ID:WwAFIh8V]
そして誰もいなくなった

211 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/12(土) 23:36:51 ID:+Pax2/fP]
まあ、ちょっと細分化し過ぎたきらいもあったし、仕方ないかもな。

212 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/05/14(月) 02:54:27 ID:760VHSHH]
保守りますね

213 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/05/15(火) 22:58:12 ID:7jj7iOMH]
また職人が来ると信じつつ保守

214 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/16(水) 00:53:17 ID:CUSAQNfv]
もーじき、『蛇足』が投下できると思うんで、暇な人は覗きにきてやってください。

215 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/16(水) 20:04:28 ID:0R6+GikP]
いつもみてるよ…

216 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/20(日) 22:29:13 ID:h/60Ttb6]
ホシュ(´・ω・`)

217 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/20(日) 22:41:21 ID:0m0OxmcR]
エターナルフォース保守

218 名前:175 ◆dPbouk8tpE mailto:sage [2007/05/21(月) 02:10:32 ID:oK8CC9KD]
流れ仏契りで『蛇足』30kb投下いたします。
『蛇足』といっても、足のあるヘビ女ではありません、その筋が好みのお方、申し訳ない。
先に投下した、『謎の恐竜キチ』・・・エリマキ宇宙人さんのお話の、補足です。
本番行為の描写はありません。

前作が駄目な人は、NGワード『蛇足』で弾いてください。甘々が駄目な人も。
胸焼け誘発、くどい文章です。


219 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:13:33 ID:oK8CC9KD]


「うん、やはりいいな、地球の『牛』は。特にあの店で仕入れた肉は絶品だ」

しーしーと楊枝で歯をせせりながら、その女性、『二階堂縁(にかいどう ゆかり)』は満足げに言った。気の強そ
うな面差し、そしてそれに似合った尊大な口調で、本日の夕食であるすき焼きを評する。
季節は初夏、気温もずいぶんと暖かくなり、部屋の中で過ごす彼女の姿も、タンクトップにホットパンツとずいぶ
ん薄着になった。部屋にはクーラーも入り室温は快適に調節されているのだが、先ほどのすき焼きの熱分で、
心地よい汗をかいている。

「宇宙法を犯してまでこの星から略奪する奴らの気持ち、わからんでもない」

どうやらキャトルミューティレーションは、宇宙の法律で禁止されてるらしい。内蔵だけ持っていく奴らは、やはり
モツ鍋が好きなのだろうか、などと、彼女の言葉を聞きながら『二階堂博士(にかいどう ひろし)』は思った。

地球から牛を持ち帰る宇宙人さんは、是非醤油もセットでおもちいただきたい。牛肉には、一番合う調味料だ。
いやむしろ、醤油の味もわからん宇宙人は、地球から貴重な牛を持っていくな、といいたい。

「なにをしている、箸を握りしめて。まだ食い足りないのか」

宇宙と醤油の展望に想いを馳せている、そんな博士の様子を見て、縁(ゆかり)は呆れてつっこんだ。博士にし
てみれば、胃袋が満たされたため少し心に余裕が出来て、他宇宙人様(たにんさま)の食餌事情にまで口を挟
みたくなった、といったところか。

「全く、お前は浅ましいな。この広い宇宙銀河には、こんな上等の神戸牛を喰うことも出来ず、安手の金星ガニ
 で我慢している不憫な奴らも多いというのに。心して喰わんか馬鹿者」

言いたい放題だ。

二人が挟む食卓の中央にはカセットコンロの上に置かれたすき焼き鍋があり、ネギの一片、しらたきの一本す
ら残さず、すっかり綺麗にさらわれていた。ここまで綺麗に、美味しくいただかれてしまったのであれば、牛や
野菜達も本望というものだろう。彼女が言うまでもなく、二人とも十分心して喰っているのだ。




食事中はテレビを見ない主義を貫く博士は、一人でのんびりお茶を飲んで胃を休めながら、食後の今になって
ようやくテレビのスイッチを入れた。ガチャガチャとチャンネルをひねりながら番組をザッピングしていくと、とある
番組で、見慣れた光景が映し出された。

「お・・・ここって、あの湖だ」

夜遅く放映される旅番組で、レポーターの男女が散策する背後の風景は、博士にとって見知った景色だった。
久しぶりに見た故郷の景色に、少しばかりの郷愁が蘇る。

『この湖はですね、ここのところ頻繁にUFO目撃情報が報告される、最新オカルトスポットなんですよ〜!!』

レポーターが紹介するとおり、ここはその手のマニアが集まる名物スポットになってしまった。昼はもちろん、夜
遅くまでUFO目当ての人間がそこかしこに潜む、なんとも微妙な場所である。博士は昔、深夜の湖を散策する
趣味を持っていたのだが、今となってはそれも叶わないだろう。かつてのような孤独は、そこではもう楽しめない。
まぁそれも、博士がひろめた噂なので、自業自得といわれればそれまで。





220 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:16:27 ID:oK8CC9KD]

今も彼女の宇宙船は、湖の底の泥の中に隠してある。縁は、さっさと破壊しよう、と言ったのだが、宇宙船の中に
は医療設備もあったので、万が一のことも考えてそれは止めさせた。
普通の人間相手ならばそれでも十分隠し通せるのだが、相手が追手の宇宙人ともなればそう簡単な話ではない。
実際、博士と縁が出会ってからしばらくして、そこに捜索隊のUFOがやってきた。
そのときは、なんとかやり過ごすことが出来た。あらかじめ縁からいくつかの事情と宇宙人達の決まり事を教え
て貰っていた博士は、それらを上手く組み合わせ、状況を巧みに利用して、彼らを騙すことに成功した。
『ここに漂着した宇宙人は、政府組織に捕縛され、監禁されている』という偽情報を信じた彼らは、政府の秘密
機関と接触しようとしたようだ。結果、失敗に終わったらしいとそのことを博士が知るのは、とある伝(つて)によ
るものなのだが。

そんなわけで、博士はあの湖に噂を広め、人を集めることで、宇宙からの追手が近づき難いようにしているのだ。

「そんなに昔って訳でもないのに、なんだか懐かしいなぁ」

博士はテレビに映される湖を見ながら、当時のドタバタを回顧していた。
そんな彼の元に、先ほどまで台所で食器をかたしていた縁が戻ってくる。

「そら、杏仁豆腐だ、喰え」

口調こそぶっきらぼうではあるものの、食べ物を扱う仕草は繊細なものだ。その手には二つの器、涼やかに盛り
つけられた手作り杏仁豆腐。菱形にカットした杏仁豆腐、粒小豆、チェリー、みかんをさっぱりした甘味のシロップ
に浸した、夏らしい涼のある一品だ。その器を一つ、ことりと博士の前に置くと、縁は残る一つの器を持って、ちょ
こんと博士の隣に座った。

すき焼きをたらふく食べて重くなった腹には、この杏仁豆腐のさっぱりした甘みは非常にありがたい。
ひんやりちゅるり、と口の中に滑り込んでくる食感と、清涼感のある甘味が何とも心地よい。
博士は縁お手製のデザートを堪能しながらも、ちらりと彼女を見る。

彼女は博士と並んで座り、テレビを見ながらデザートスプーンを口に運んでいる。テレビを眺めながら、時折ちら
りと視線をこちらに向けようと動くものの、それを果たさずにまたテレビを捕らえ直す。それを数分周期で繰り返す
ルーチンマシーンと化していた。

縁との二人暮らしも早2年、それなりに心の通じ合った二人である。博士も、こういう流れは十分に経験し理解し
ているので、この後何をすればいいのか、なにがしたいのかはわかっている。

(あー、これは、『エッチしてほしい』の合図)

タンクトップの部屋着は、無防備に彼女の首元を晒している。
縁の首に彩られた入れ墨のような文様。それは『洗脳電波』を放出する部分であると同時に、彼女たち種族にとっ
ては性感帯の一つ、すなわち彼女の『操』を示すものである。そんな大事な場所を彼女は、博士と二人きりの室
内では隠さないようになった。博士はその変化が、彼女が自分に心を開いてくれる証のようで、実に満足している。
そして、縁が博士の隣に座り、自分の首の文様を彼の手が伸ばせる範囲に持ってくると言うことは、そこを触って
欲しい、つまりはエッチがしたいという彼女のおねだりである。

(もちろん俺も、エッチしたい。・・・あとは、『タイミング』だけ・・・)

そう、タイミングだ。
求めあったからといって、すぐに性交開始、というわけではない。こうやって縁が求めてくるのも、彼女にとっては
それなりの心の準備が必要なようで、本人はあくまでも、さりげなくやってるつもりなのである。
だから、あからさまに反応すれば、がっつくな! といって縁は機嫌を損ねる。
しかし、いつまでも手を出さないでいると、この鈍感! と怒り出してしまう。
早すぎず、遅すぎず、ちょうどいいタイミングで応じてやらなければならないのだ。



221 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:18:05 ID:oK8CC9KD]

「・・・あっ、」

二人が杏仁豆腐を食べ終えてしばらく、縁が小さく呟いたのは、博士が彼女の肩を抱いたからだ。
自分の求めに博士が応じてくれたことが嬉しくもあり、恥ずかしくもあり。
そして、照れながらも幸せそうに表情を綻ばす彼女を抱き寄せた博士は、首に触れるよりもまず、そっとキスを
した。

「・・・ん・・・・・・」

言ってみれば、首に触れることは彼女のスイッチを押すようなもので、たったそれだけの行為で縁は腰砕けに
なってしまう。
もちろんそれは博士にとってもありがたい体質なのだが、博士は簡単に、そのスイッチを押したりしない。
エッチになって甘えてくる縁も可愛いが、普段の気が強い縁もまた、かなり可愛い。
そのどちらとも、たくさん可愛がってやりたいからだ。

「ゆかりのキス、甘いなぁ」

唇を重ねるだけの軽いキス、その感触を楽しんだ博士は、終えた後に感想報告。
デザート以上に甘く歯が浮くセリフに、一瞬言葉を失ってから慌てて、

「ば、馬鹿、それはシロップの味だろ!」

照れを誤魔化すように唇を押さえ、ぷい、と顔を逸らす。
嬉しいのか恥ずかしいのか喜んでいるのか困っているのか、本来は右と左の両極端に位置する感情が一気に
吹き出して、大慌てを通り越して何をどうしたらいいのかもわからない。
平たく言えば、これぞオーバーヒート。しゅう、と湯気を噴きだして、真っ赤になって押し黙る。
そんな反応もまた可愛い。博士の忍耐も一気に限界点突破。

「ンじゃ、そのゆかりをデザートにして喰っちゃいましょうか!!」

首の文様に触れるまでもなく、たったキスの一つだけでお互いがエッチなモードに入ってしまった。
もう我慢の限界だ、やったるぜ俺は! とばかりに博士が縁を抱きしめたその瞬間、

ぴんぽーん

と、ドアベルの音。
こんな時間にいったいなんだ、と、スタートダッシュの瞬間に足を引っかけられてつんのめった博士。

ここで博士は考えた。
無視だ、無視。可愛いハニーとのイチャイチャタイム開始だって時に、邪魔をするヤツなんか、ホットケ! そも
そもこんな時間に来る方が悪いのだ!!

博士はそんなふうにスルーすることに決めたのだがその瞬間、

ぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽんぴんぽん!!

と、ドアベル連打。

「じゃかーしい!!(『うるさい』の意)」

ばん、と勢いよく玄関ドアを開け、深夜の不躾な来訪者に怒鳴りつける博士。ドアの前でベルを押していた来訪
者は、博士の剣幕に僅か怯んだものの、にへら、と愛想笑いを浮かべて言った。

「すまん、味噌、分けてくれ」

その男は、見た感じ博士と同年代の二十歳前半、こざっぱりした風貌のイケメンだ。



222 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:20:23 ID:oK8CC9KD]

「地球人から深夜に味噌借りて、あの立派な親戚たちに顔向けできるのか?」
「あいつらはキレイ過ぎるよ、比べられても困るな」

自嘲気味に、ニヤニヤと笑ったこの隣人は宇宙人だ。しかも、何を隠そう、宇宙の平和を守る宇宙人の組織、
宇宙警備隊の隊員だ。
宇宙警備隊は、基本的にあの超有名な正義の宇宙人『光の巨人』たちで構成され、他星からの侵略に対して
抵抗力が弱い、文明レベルが劣る星や種族的に脆弱な星などを護ることを任務としている。
この男もその構成員であり、彼の親戚には『兄弟』という、地球で功名を立てたエリートに属するものまでいる。

この男と博士の出会い、それもあの湖での出来事だ。
博士が高校3年生の夏、縁とその追手達を調査するため、宇宙警備隊隊員がやってきた。その隊員というのが、
警備隊の下っ端であるこの男。
しかし、あろう事かこの男、地球降着の際に誤って地球人青年の命を奪ってしまったのだ。

その現場を、博士が押さえた。
縁のUFOからの警告で、何者かが接近していることを掴んだ彼。縁を護るためにも、先手を打つ必要があった
ための行動だ。
男は、本部に知られたら重大な服務規程違反になるこの失態、とりあえず目撃者を殺っとくか、と博士を手に掛
けようとしたのだが、博士だって黙って殺られるタマではない。縁の宇宙船設備を使えば宇宙警備隊本部に通報
出来ることを告げ、自分が死ねば、録画されたこの一部始終を送信する、と釘を差した。もちろん、縁の存在が
明らかにされ、追手に知られるようなことになっても同様の措置を執る、と。

そんなやりとりがあって。
アははは、ヌははは、と腹黒い笑いを浮かべながらとりあえず両者は手を組むことにした。

当初は、そのような顛末で、非常にギスギスした関係であったのだが。
当面この男、自分が殺した地球人の姿を借りて駐在し始めたのだが、街で出会ったとある地球人の女に、ぞっ
こん惚れてしまった。今ではその女との暮らしを失わないために、すっかり博士と友好的な協力関係を結ぶに
至ったのである。前述の、地球人政府関係者にコネを持つ協力者とは彼のこと。お互い、何かと都合もいいので、
彼らは博士の隣の部屋を借りた。

「いやぁ、唐突に豚汁が飲みたくなってな、作ってもらおうとしたら味噌が切れてて慌てたぜ〜」
「そんなようじでわざわざよなかにおしかけてくるんじゃねえええええええええ!!!!」

未開封の徳用味噌を彼の顔面に叩き付けて、博士は荒々しくドアを閉めた。





「ゆかり、お待たせ」

そういって博士はテレビのある居間に戻ってきた。
しかし、そこに縁はいなかった。
ひやり、と背筋に冷たい汗。

(・・・・・・・・・怒ってるなぁ)

居間にはいない、となれば、おそらくは奥のもう一部屋、寝室だろう。
だが、先に寝室に向かい、裸になってベッドに上がり布団の中から、ねぇ、はやく〜ん♪ などと甘えた声を出
して、布団の端をつまみ上げる、なんて事は・・・・・・ない。間違いなく、あり得ない。



223 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:23:34 ID:oK8CC9KD]

そっと、出来るだけ音を立てないように障子を引き、顔の幅ほどの隙間を開け、中を覗いてみる。明かりのない
部屋、ベッドの上に盛り上がる布団、そしてその中にいる縁。
こちらに背を向けて、眠った振り。

(・・・・・・・・・すげぇ、怒ってらっしゃる)

機嫌悪いオーラが部屋中に充満していて、覗くために割り込ませた顔の皮膚をちくちくと刺していく。

選択肢として、『ここでこのまま彼女を放置して、明日の朝に機嫌が直ってることを期待する』というものは存在
しないことが、彼の経験上、わかっている。

何とも扱いの難しい女の子だ。

しかし博士は、自分が縁にぞっこんなのを自覚しているので、こうやって怒って───拗ねている彼女ですら
可愛らしく思えてしまう。

そして博士は、良し、と小さく呟いて覚悟を決めた後、部屋に入った。

「ゆかりさーん、もしかして怒ってます?」

わかっているが訊いてみる。会話のとっかかりと言うところか。

「・・・怒ってない。今日はもう寝る」

あからさまな不機嫌ボイスでそう答える縁。間違いなく怒っている。間違いようがない、というか、この言葉面
(ことばづら)を素直に信じることが出来るヤツは、朴念仁の呪いにかかっているに違いない。
博士は、そのまま彼女の潜り込むベッドまで近づき、その背中を抱くように自分も横になる。

「まぁ、そう言わないで。つづき、やろう?」
「嫌だ」

彼女に腕をまわし、背中を抱いてやってみて気が付く。寝る、といってベッドに入った彼女だが、寝間着に着替え
たわけでもなく、さっきまでの部屋着のままなのだ。
着替えることも忘れて拗ねる彼女、何とも可愛らしい。博士は、このまま彼女を寝かせてしまうことは、意地でも
出来ないな、と思った。


「どうしても?」
「どうしてもだ。お前も、もう寝ろ!」

博士に背を向ける縁はかたくなだ。二人の雰囲気に水を差されてしまい、気恥ずかしさを我慢できずに、怒った
ふうに取り繕うしか出来ない不器用さ。
実に可愛い。
実にそそる。
博士は、俄然やる気を出した。

そして、当然その手段といえば、これしかない。

「仕方がない、奥の手、行きますよ?」
「っ! や!」

彼の言葉に、『何をされるのか』、を察した縁は、慌てて逃げようともがいた。しかし、端から身体に手を伸ばされ、
絡め取られていた縁に逃げることなど出来るはずもなく、あっさりと彼の片腕で御されてしまった。
そして博士は、残った片手で、ゆっくりと、彼女の首の文様に触れた。



224 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:25:49 ID:oK8CC9KD]

「ひん!!!」

そしてそのまま、指の腹で触れる触れないの力加減で、すうぅぅぅぅぅぅぅぅっ・・・と、

「ひああああぁぁあぁぁっっぁあぁぁああああぁぁぁあっぁぁっぁぁっ・・・」

震えるような声を彼女の喉から引き出しながら、文様をなぞりあげていく。
肺の空気を出し終えて息を詰まらせる縁が、博士の指が動きを止めたときにようやく息を吸い、そして感極まっ
たように、はぁっ、と甘い息を吐いた。

「・・・・・・ず、ずるい」

ゆっくりと振り向いた縁は、たったそれだけの愛撫で、すっかり惚(ほう)けた顔をしていた。
たったそれだけ、ではなく、彼女にとってはとても大切な場所への刺激。焦がれる気持ちが強くなり、余計な
逡巡や葛藤などが霞むように消えていく。
その場所への愛撫は、彼女の心をほぐす為の愛撫。

「いつもいつも、私がこれで許す訳じゃないんだからな・・・」

それでも最後の抵抗。
いや、それはすでに抵抗の言葉を借りた、男へのおもねりでしかない。

ころり、と彼女は博士の手前に転がされ、互いに向かい合う。縁は、ためらう仕草も見せずに唇を寄せた。
もちろん博士もそれに応じる。

ちゅ、

柔らかく触れた唇が、次第に強く押しつけられ、

ちゅ、

湿った唇が開かれ、お互いのその隙間を埋めるように塞ぎ合い、

くちゅ、

差し込まれたお互いの舌が絡み合い、互いの唾液を混ぜ合い、

こくり、

互いの唾液を飲み込んでいった。

それからしばらく二人は、唇をこすり合い、舌を絡ませ、唾液を交換しあうようにキスを交わした。時折出来る
唇の隙間から、悩ましげに漏れる縁の吐息と、泡立つような湿った音。
そして、長いキスの後、彼女はすっかり火照った顔を博士の胸に埋め、大きな吐息を吐いた。

「あふぅ・・・すきぃ・・・」

その吐息と共に、思わずこぼしてしまう、一言。
博士は、そんな甘い言葉に、単純にも感動してしまった。普段の、少しつれない態度や尊大な性格とは、全く
別人のような甘え具合。
最初は、こうやって自分に甘えてくるのも首の文様のせいだと思っていたのだが、最近になってようやくわかっ
てきたことがある。地道に首以外の愛撫でも、彼女が感極まれば、このように甘えまくるようになるのだ。
確かに、首への愛撫は、彼女の性感を引き出すのに手っ取り早いスイッチではあるが、特別な性格に変貌す
るためのスイッチではない。普段の彼女も、今の彼女も、どちらも本当の彼女なのである。



225 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:26:56 ID:oK8CC9KD]

ベッドの上に横たわり、博士に抱かれ身体を密着させながらも、縁の手はいつのまにやら彼の股間にあてがわ
れていた。ズボンの上からさわ、さわと撫でさすり、愛おしむ。

「・・・これ、舐めたい」

キスで荒げた息もまだ収まらぬまま、縁がおねだりをする。撫でる掌に熱がこもり、布越しにも強い刺激を送り
込みながらの、おねだり。

「おまえのこれ、だいすき・・・」

彼女の希望に対して、もちろん博士に異論あるはずもなく。しかし彼は、彼女に対して少しの意地悪。

「『これ』じゃわかりませんな。ちゃんとした言葉で、正直に言わないと駄目じゃないか」

焦らす、訳ではない。ただ、彼女が持つ恥じらいの枷を外し、淫らになるためのきっかけを与えてやるための
言葉だ。儀式、といっても良い。
彼のその言葉に、縁は少しの恥じらいの間をおいて、頷いた。

「うん、・・・お、おちんぽ・・・」

彼女がこの地球で覚えた言葉。こうやって博士と睦み合うときにしか口にしない淫らな言葉。
博士はその答えに満足し、ズボンを脱いでペニスを取りだした。

「じゃあ、お願いしようかな」

仰向けになって横たわった博士の股間に、縁がかがみ込んで顔を寄せる。
すでに十分充血して大きく勃起した青年の性器に、挨拶するように、キス。
ちゅ、ちゅ、と啄むようなキスの後、亀頭に鼻を寄せ、すぅ、と臭いを嗅いだ。

「このにおい、好き・・・かいだだけで、あそこ・・・おまんこが、じゅん、ってなっちゃう・・・」

博士の、男の性臭を、忌避することもなく吸い込んだ彼女は、甘えるようにそういった。その言葉に嘘はない
らしく、すん、すん、と可愛らしく鼻を鳴らした後、もじりと切なそうに腰をくねらせた。

「臭い、だけで良いのか?」

博士が、言う。それは縁への問いのようでいて、実のところ、焦れた博士が彼女を急かす言葉だ。
縁にしてもそのあたり、博士の性欲は程々理解できている。自分がしたいことと、相手がして欲しいことが重
なる時というのは、くすぐったいような嬉しさがあるものだ。縁は彼の問いに、小さく首を振った後、べろり、と
舌を出した。

「舐めたい」

そういって縁は、唾液で湿らせた舌の腹で博士のペニス、その裏筋を、べろーり、と大きく舐めあげた。
ぞくり、と背筋を怖気に似た痺れが走る。博士は息を呑み、かろうじて声を漏らすことなくその刺激を堪えた。

「味も、好き・・・たくさんよだれが出て、頭の中がしびれて来ちゃうの」

そうやって何度も舐めていく。舌先だけでちろちろと可愛らしく舐めるときもあれば、舌の腹を使って大きく
ぞろり、と淫らに舐める。そんな行為を何度も繰り返し、すっかり博士のペニスは唾液まみれになった。



226 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:29:56 ID:oK8CC9KD]

「んはぁ・・・・・・・ん、ちゅ、・・・・はぁ・・・」

べとべとになったペニスに、頬ずりするように顔を擦りつけ、伸ばした舌で新たな唾液をまぶしていく。
そして、両手で捧げ持った肉柱、その胴を、はむ、と横咥えにしてむしゃぶりついた。

「んんーー、ん、んん、んーーーーーっ」

サオの部分に唇をあてがい、ずちゅう・・・と湿った音を立てて吸い付く。そのまま、ハーモニカを吹くように何度も
往復し、じゅるじゅると擦り立てていった。

「この、ふといのがすき・・・わたしのおまんこ、裂けちゃうくらい拡げてくれるの、とっても気持ちいい・・・」

横咥えを中断し、サオに絡めた指でしごきあげながら、縁が言う。彼女の細い指が絡むと、青年のペニスの太さ
が妙に強調され、博士自身ですら彼女の言う言葉にそそられてその気になってしまう。博士の持ち物は確かに
かなり立派なものであるが、客観的に見て、異常といえるほどの巨根というわけではない。しかし、縁の唇という
パーツが小振りなことと、彼女のおもねる言葉により、過剰なほどの自信を男に与えてしまうのだ。
甘い吐息と共に囁いたその言葉の後、今度は大きく口を開け、縁は亀頭を深く飲み込んでいった。
顎が、どうにかなりそうなほど大きく唇を開き、男の醜悪なペニスを喉奥まで深く咥える。

「ん・・・・・・・・・んん、んんん、んむ、んんんんんんん・・・・・・」

苦しい呼吸を鼻からの息だけでまかない、彼女に出来る最大のストロークでペニスをしゃぶり立てる。苦しそうに
顔を真っ赤にして、ペニスが喉を犯すようなディープスロートを何度も繰り返す。

「うあっ、あああっ、す、すげぇ・・・」

博士は、その強烈な刺激に、堪えていた呻き声をとうとう漏らしてしまった。その声に機嫌を良くした縁は、ディー
プスロートをより激しいものにして博士を責め立てていく。

「うっ、ちょ、まず、やばいって!!」

じゅるじゅるじゅぱじゅぱと湿った音を立て、激しく吸い付きながら上下する彼女の頭。火照らせた表情を悩ましげ
に歪め、それでも懸命に男に尽くす縁。ただでさえペニスに強烈な刺激が加わっている最中だというのに、そん
な彼女の表情を見てしまうと、早々と精を漏らしてしまいそうになる。
本格的に限界を感じ始めたころ、ようやく刺激が中断された。
縁の顎にも限界が訪れ、苦しさの限界に来たのか、その長大なペニスをずるりと口から吐き出したのだ。

「ぷは、・・・・・・はぁ、・・・このながいのもすき・・・わたしのおく、いちばんふかいところ、つきやぶっちゃいそうな
 くらい、すごいの・・・」

その言葉は、男への媚びであると同時に、縁自身の願望でもある。彼女はドロドロにぬめったペニスに縋り付く
ように顔を寄せ、しゅこしゅことしごき立てることを止めない。ディープスロートの強い刺激は去ったものの、続け
られる指の刺激、荒く甘い呼吸、そしておもねる言葉、すべてが博士を捕らえ続けていた。
博士が、いつまで堪えることが出来るのか、いや待て無理して堪える必要があるのか、などと葛藤を繰り広げて
いる間にも、僅かに呼吸を整えた縁は容赦なく博士のペニスを責め続ける。

「おおきいカリのところもすきなの・・・わたしのなかの、えっちなおにくを、たくさんかき混ぜてくれるの、
 ・・・・・・ぐちょぐちょにかき回されたら、おかしくなっちゃう・・・・・・」

掌の中に納めた博士の亀頭を、ぬるぬるの唾液を纏わせたまま、にちゃにちゃと湿った音を立ててこね回す。怪
しくうごめく指がカリ首をなぞるようにまとわりつき、唾液のぬめりでくにゅくにゅと撫でさすっていく。その度に、亀頭
から電気に似た刺激がビリビリと走り、射精を我慢しようとする博士の意志を刈り取っていく。
自分だけが楽しむのではなく、彼女の性器にペニスを挿入し、思い切り突きまわして楽しませてあげよう、と我慢
していたのだが。
正直、もう博士は限界だった。
計画変更、ここで一度射精して、余裕を取り戻してからたっぷり彼女を可愛がってやろう、そう決めた。
そうとなったら、この苦痛とも言える忍耐を続ける必要はない。彼女の愛撫に身を任せ、思いっきり彼女の喉に
精を放ってやろう、と、腹を決めた。


227 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:32:05 ID:oK8CC9KD]

「なぁ、ゆかり、俺の精液、好きか?」

伸ばした指先で縁の頬を撫で、くすぐるように答えを引き出す。

「うん、せいえき、すきぃ・・・・・・こってりしたどろどろザーメン、好きなの・・・」

とろけるような笑顔で、甘えるような声で、悩ましい言葉で、縁は博士の問いに答えた。
ぞくぞくと背筋を振るわせる興奮、博士は縁の艶っぽい媚びの言葉を聞いて、ますます堪らなくなる。

「飲みたい?」

「・・・のみたい、のみたいよぅ・・・はやく、・・・はやく・・・おまえの美味しいザーメン、ごくごくのみたい・・・」

ちらりと赤い舌を覗かせて、飢えたように急かしてくる縁。
もう、絶対飲ませてやる、一滴残らず縁の喉に流し込んでやらねば、気が済まない。
博士は、限界まで勃起し、ビクビクと脈打つ自分のペニスを、早く解放してやりたかった。

「じゃあ、飲んでもらうよ」

博士がそういって、縁の頬にあてがった指を動かして唇をなぞってやると、彼女は素直に口を開いた。そして、
その唇の隙間に自分の亀頭をあてがい、ずぶずぶと押し込んでいく。

「ん、んんーーーー、ん・・・」

喉を犯され呻く縁だが、それは苦痛によるものではない。その証とばかり、縁は押し込まれる肉茎を招き入れ
るように吸い込んでいく。
そして、自分から顔を上下させ、熱のこもったフェラチオを再開した。

じゅぼっ、じゅぷ、じゅばっ、じゅちゅう、

喉奥、とまで深くは咥えないかわりに、亀頭部分を集中して責め立てた。サオの部分には指を絡め、激しく扱く
ことも忘れない。博士が限界近いことを縁も察しているので、早く楽にさせてやろうと懸命に愛撫していった。

「んんっ、んむっ、んんんんんん、んふっ、んじゅ、んんんんんん、ん、ん、んっ、んんっ、んんんんっ!!!」

縁はわざと。
はしたない音を立て、唾液に空気を混ぜるようにしてフェラチオを続ける。甘く悶えるように鼻を鳴らし、悩ましげな
上目遣いで時折博士の様子をうかがった。
緑はわざと、そんな風に媚びるように尽くす。
しかし、彼女が『わざと』『やろう』と意識した行為でも、純粋に彼女自身が『やりたいこと』とシンクロしているのだ。
その証拠に、縁自身も博士に奉仕することで快楽を得ている。唇を擦る刺激と、喉を突かれるマゾヒスティックな
喜び、鼻孔をくすぐる男の性臭、耳から入る激しい水音、そして、そういう、いやらしい奉仕をしている自分自身の
淫蕩さ。
それらの刺激すべてが縁のココロを性的に高め、淫らに燃え上がらせていく。
身体をくねらせ、太股をもじもじと寄り合わせながらも、頭を激しく振り博士を絶頂に押し上げていくのだ。
惚れた女の本気の愛撫に、高まらない男などいない。

「くっ、もう、だめだっ!!」

博士がそう叫び、腰の奥を爆発させた。一瞬だけ、ペニスを懸命に引き締めて吐精を引き延ばしたものの、
後から後から爆発する勢いに負けて、とうとうペニス先端から勢いよく迸らせてしまった。

びゅ、びゅううううううううううっっっっっっっ!!!!!!!
「うあああっっ!!」
「んんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!」


228 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:35:11 ID:oK8CC9KD]

博士は縁の頭を腰に引き寄せ、ペニスを喉に押しつけながら、次々と大量の精液を迸らせる。博士は、その
痺れるような射精の快楽に酔った。
どくん、どくんと何度も脈打ち、いつ果てるか心配になるほどの射精が続く。縁はその吐き出された精液を、
懸命に飲み干してく。

こく、こくり、こくり、こくん・・・

ずいぶんと大量の精液を流し込まれ、それを上手く喉に通していく縁。ようやく射精が終わり、口の中に堪った
残りの精液を飲み干した後、ぐちゅりとぬめった音をさせてペニスを口から抜いた。

「・・・・・・けほ、こふ、んん・・・、はぁ・・・すごくおいしかった・・・」

口とペニスとの間に何本もの白い糸を橋架け、酸欠に朦朧とした表情に笑みを浮かべて、縁は言った。

「・・・・・・・・・すてき・・・・・・」

口の中に残る精の残滓を味わい、うっとりと彼女は呟く。
縁は、その唇の動きで途切れた精液の糸を追いかけるように、博士の性器に再び舌を這わせ始める。射精後の
ペニスに対して新たに送られ始めた刺激ではあるが、そんなことをするまでもなく、一向に力を失った気配はない。
このまま次の行為に突入することだって可能だ。いや、むしろ、博士はそうしないと、収まりがつかない。

博士は、自分の性器にこれほど愛情を込めて奉仕してくれた上、自分の精液をこれほど喜んで嚥下する縁に対
して、愛おしさもより増した。
それと同時に、ますます高まる性欲で、これから思いっきり彼女を可愛がってやろうと、さらに意気を高めたの
だった。






朝、博士が起床するいつもの時間よりも僅か数分早く、目覚ましの音が鳴った。

目を覚まし、慌ててその音を止めようと辺りをまさぐり、ようやく博士はその音がいつもの目覚ましの音ではなく、
自分の携帯電話の着信音であることに気が付いた。
着信者を見ると、彼の知り合いの、とある宇宙人の少女。
彼女は博士の弟と付き合っており、二人の関係が上手く進めば、追々義妹にもなろうという人物だ。
音源が確認できたことで、ようやく博士も落ち着いて、携帯電話を開いた。

「もしもし、おはようさん」
『あっ、おはようございます。朝早く申し訳ありません・・・』

律儀に挨拶、そして謝罪の言葉。彼女、宇宙から来た少女エレはそういった、まじめな性格をしていることを
思い出すと同時に、そんな彼女がわざわざ早朝に電話をかけてきたことに、用件の緊急さを想定してみる。
ちらり、と自分の隣、抱き合って眠っていたはずの縁を捜すが、そこにはいない。風呂場からシャワーの水音が
することから察して、昨夜の汗を落としているのだろう。

『少し前から調べてた、博士さんと博之(ひろゆき)さんのDNAのことで、大変なことがわかっちゃったんです』

博之というのは、博士の弟の名前。宇宙人、厳密に言うと宇宙人によって作られたサイボーグであるこの少女と、
博士の弟である博之が付き合うきっかけの事件も、あの湖で起こった。
その事件も無事解決し、湖は野次馬で賑わうものの平穏を取り戻した。
それ以後この少女は、自分の電気能力が通じなかった二人の兄弟について興味を持ち、いろいろと調査をして
いたのだ。

「それで、博之にはもう話したの?」
『いえ、まだ彼には話してません。・・・彼、気が小さいから』



229 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:36:58 ID:oK8CC9KD]

がちゃ、と風呂場のドアが開いて、縁が出てきた。障子を開けたままにしてあったこの寝室からちょうど目に入る
位置だ。まだ水気も落としきっていないバスローブ姿で、心なしかわずかに前屈み。

『博士さんはその点、しっかりしてるというか、逞しいというか、落ち着いているというか、肝が据わってるというか、
 図太いというか、心臓に毛が生えて』
「フォローする気、ねぇだろ」

その声に、縁も博士が起きたことに気が付いたようで、視線が合った。彼女は、やや辛そうに腰をさすった後、
真っ赤な顔で『あかんべぇ』をした。どうやら昨夜、博士ががんばりすぎたせいで、彼女の腰にきているようだ。
そのまま彼女は、ふん、とそっぽを向いて、台所に消えていった。

縁が台所で朝食の支度をしている間、電話の相手との会話を再開した。彼女の話は、宇宙人の異能力が効
きにくかった兄弟の、DNA特質に関わることであった。

「んー、まぁ、そういうことなら、博之には話さない方がいいな。あいつは気が小さいから」
『そうですね。・・・それにしても博士さん、本当に落ち着いてらっしゃるのですね』
「そう? けっこう驚いてるけど」
『純粋な地球人・・・あなた達兄弟は別にして、この惑星に済んでいる人類がこのことを知ったら、壊滅的な
パニックが起こると思うんですけど。宇宙人の存在とかそういうのとはまた別にして』
「だろうねぇ。だから、このことはもう、知らなかったことにしようや」
『わかりました。データも消しておきます』





博士は、適度な挨拶で通話を終えた後、縁が消えたキッチンに向かった。
そこには、湯上がりのバスローブを脱ぎ捨て、全裸の素肌にエプロンで味噌汁を作っている。
あざとい。
あざといとは思うが、それも縁なりのサービスなのだろう。
博士が過去の経験を思い起こすに、朝っぱらからの裸エプロンは、彼女がよっぽど機嫌がいいときにしか
拝めない。昨夜、がんばった甲斐がある、と博士も嬉しい。
先ほどの『あかんべぇ』は、どうやら照れ隠しだったようだ。






230 名前:『蛇足』 mailto:sage [2007/05/21(月) 02:37:43 ID:oK8CC9KD]

「で、先ほどの電話は、誰からだったのだ?」

味噌汁をすすり、縁が問う。

「エレちゃん。俺や博之の、宇宙人からの異能力が効きにくい体質の謎がわかりました、とのことで」

博士が醤油に海苔を浸し、答える。

「重要なことか?」
「まぁそれなりに」

ことり、と味噌汁の椀を卓袱台に置き、縁が言う。

「私たちの生活に影響は?」

海苔をご飯の上に載せ、米と海苔を一緒に口に運ぶ。

「あまり、影響ない」

その答えを聞き縁は、ふん、と小さく鼻を鳴らした。

「だったら、私は聞く必要はないな」

どうして? 洗脳電波が俺に効かなかった理由、知らないで良いの? と念を押す博士に、食事を終えた縁は
ごちそうさま、と手を合わせた後。
気の強そうな表情にわずか朱を浮かべて。

「原因や過程はどうあれ、私はお前とこうなれて、幸せなのだ。だから今更、そんな当時の事情など知る必要がない」

そして彼女は言った。


そういうのを、蛇足というのだ、と。



END OF TEXT



231 名前:175 ◆dPbouk8tpE mailto:sage [2007/05/21(月) 02:38:37 ID:oK8CC9KD]
以上です。
前作、何か物足りないと思ったら、フェラシーンがなかったからだ、と理解し、書き足しました。
ようは、それだけなのです。
ちょっと、しつこい文章でしたか?

232 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/21(月) 03:51:49 ID:DyN+ZbY/]
いやいや全然気にならないよ。
気になるのはひろしの体質の謎だよ。
気になってしようがない。
どーなってんだこんにゃろめ。

233 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/21(月) 20:42:57 ID:VqL8UJEQ]
兄弟の体質の謎が凄く気になるwww
本番はなくとも充分エロエロでGJでした

博之とエレちゃんの話も出来れば書いて頂きたいものです

234 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/22(火) 07:58:02 ID:UhB2cp1O]
激甘だ……
思わず転げ回っちまったぜ……

俺もこんな嫁が欲しい……

とにかくグッジョブ。


湖の秘密でエレちゃんということは、エレキング少女ですか。

235 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/05/23(水) 03:02:34 ID:s4mkYxbN]
保守

236 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/23(水) 08:55:50 ID:2rL5cKzy]
読んでくれた方、コメントくれた方、ありがとうございました。


体質の謎は、読んだひとが好きに想像できるように、遊びの部分として残しました。

ずいぶん昔から地球には宇宙からの移民が来ていて混血化が進み、博士と博之は絶滅寸前の純血種地球人なのだ、とか、
実はノンマルトの生き残りだとか、
超古代文明の守護神、地球生まれの光の巨人の血を引いているため、スパークレンスさえあれば変身できてしまう、とか、
てきとーに補填してくだされば幸い。


甘さは、今回、中甘くらいかな。自己評価ですが、激甘とまではいかないと思います。
プレジャーガウストの時よりも、自己悶絶度合いが少なめでしたし。
それとも、一年で耐性が出来てしまったのか……。


それでは、これにて失礼します。
次はもう少し、スレの趣旨に沿ったものを用意してきますので。

237 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/23(水) 09:01:01 ID:+aJnkdxi]
>>236
プレジャーガウストの社員様だったかぁぁぁ

238 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 12:15:51 ID:5wRsj/Xi]
>>236
プレジャーガウスト&蛇足神GJ−−


239 名前:刑事と死んだことに気付かない少女の物語 [2007/05/24(木) 16:28:13 ID:mPW2dC0e]
亀山刑事は幽霊が見えることから署内では心霊刑事と呼ばれている 彼が最初に幽霊を見掛けた事件は数十年前の少女集団暴行殺人事件からだ 当時新米刑事の彼はみんなが帰る中一人残って操作を続けていた 夜中の二時くらいだろうか女の子の泣き声みたいなのが聞こえてきたのだ
「うぅ…もうやめてよぉ…ひどいよ…ひっく…うぅ…」
泣き声に気付いた亀山はその少女に優しく話し掛けた
「おにいちゃんになにがあったか話してもらえるかな?」
「ひっ!?」突然話し掛けられ少女は驚き恐怖を抱き後ずさる
「怖がらなくても大丈夫だよ ぼくは正義の味方だ 悪い者をやっつけるね ぼくの名前は亀山カオル お嬢ちゃんのお名前は?」



240 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 16:30:49 ID:mPW2dC0e]
書いてて気付いたんだけど 事件解決→少女成仏→終わりって感じでエロがないことに気付いた…

241 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 16:34:51 ID:jHBnwvmX]
>>240
それに何か問題が?
エロ無くても面白ければ良い。
あと、sageと句読点に注意。

242 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 17:55:51 ID:XaNfnOg2]
相棒?

243 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 20:53:44 ID:6Zjcb0jU]
続き投下しないと逮捕

244 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 22:39:24 ID:POZcyeL0]
「私メリーさん。 今貴方のマンションに居るの。」

俺は夢遊病にかかったように、呆然と受話器を置いた。 体の震えが止まらない……。
そんな俺を無視するように、電話の音が部屋に鳴り響いた。そっと受話器をとり、耳に当てる。

「私メリーさん。 今、貴方の家の前に居るの。」

心臓がつかまれるような感覚。どくどくと自分の心臓が高鳴るのを感じた。
そんな俺をあざ笑うかのように、再び電話が鳴り響いた。

「私メリーさん。 な、なんで裸なんですか! そういうのやめたほうが良いと思います!」
「君は今、俺の後ろに居るの?」
「い、いません! わたし帰ります!」
「後ろから気配を感じるんだけど。 そこだな。」

「や、やめてください! 何で腕を掴むんですか! 警察呼びます! 呼びますよ!」
「不法侵入は君の方だろ? どっちが捕まるのかなぁ?」
「ひっ!」
「ふひひ、さーせん……。」

……夜はまだ始まったばかりだ。 

245 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 22:42:08 ID:6Zjcb0jU]
おっきしたので、続き書かないと逮捕するぉ

246 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 23:08:25 ID:POZcyeL0]
>245
逮捕好きだなw


俺はメリーさんの腕を引っ張り、いろんなところを触ってみた。彼女は幽霊の類らしく、
姿は見えない。 だが、腕さえ掴んでしまえば後はどうにでもなるものだ。

「!? どこ触ってるんですか! 変態! 変態!」
「いや、俺には見えないしなぁ。 ! 何か不振な感触があるな。要チェックだな。」
「やぁ、そこ胸だから! 立派なセクハラだか……ら。」
「そうか、胸なのか。 随分と小さいな。 ……形は良いみたいだな。」

俺は腕の中で暴れる、見えないその子を愛撫し続ける。ふと鏡を見た。
やせぎすで可愛い少女の姿が浮かんでいる。 髪型はロングで、まだあどけない。
俺が指を動かすたびに体を反応させる。 随分と敏感なものだ。恐らく処女だな。

「ゆる……してくださ……い。 もうおどろかせませんから!」
「先に悪戯を始めたのは君だろ? 目には目を、ってね。」
「いたずらの意味が違う〜!!」

終わっとく

247 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/24(木) 23:26:33 ID:75GmVVSg]
いたずらされてるメリーさんにおっきしたww
GJ!

248 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/25(金) 08:39:42 ID:1e1zTaXH]
何この素敵な流れ。

こういうのがかーいいスレの醍醐味なんだよなあwww

249 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/28(月) 00:04:25 ID:D65yjbuu]
だが一度止まったらなかなか動き出さないのもこのスレの空気。




250 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2007/05/28(月) 01:25:21 ID:vCtDlt3H]
あげて投下待ち

251 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/28(月) 03:56:37 ID:NG15+aH/]
風樹の嘆のまつろわぬ者って既出?
最新話がUPされていました。

252 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/05/30(水) 04:45:51 ID:+4HIAtAP]
>>251
あれ、いつのまにかタイトルついたんだね。

つか「サトリの化け物」の続きが読みたいです・・・

253 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/02(土) 10:39:56 ID:WWE6nZTo]
>>251
自分はあの作者がサイト持ってる事すら知らんかったw
誰だか知らんが感謝。

254 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:31:54 ID:oppAFp4Q]
1本投下します。
今回はとりあえずプロローグ的な部分だけで、一応続く予定です。
エロは最終的には入れるつもりですが、
分量的に多くはならないと思いますので苦手な方はトリをNG指定してください。

255 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:33:20 ID:oppAFp4Q]
「ったく、軽い冗談だっつーの……」
病院の屋上から町全体を見渡しながら、俺は誰にともなく愚痴をこぼす。
ここはこの町では一番大きな建物で、だから他の何に視界をさえぎられることもなく景色を一望できる場所だ。
だが、いかんせん腹の辺りに鈍い痛みがまだ残っているこの状態では、せっかくの風景もまさに台無しというものだった。
繰り返しになるがここは病院で、といっても別に俺は入院患者じゃない。
腹は痛いが、これは待っていればその内治まる類のもので、医者がどうこうできるものではないはずだった。
というか、そう信じたい。
「にしても、あれはもう女の拳じゃねぇな……」
思い出すだけで徐々に遠ざかりつつあった痛みがぶり返す。
俺が腹に一撃を受けたのは、今からほんの15分ほど前のことだった。
来栖幸。
通称さっち。
だがそんなかわいらしい呼び方は、俺には到底口にはできない。
あいつこそ現在の属性は入院患者なはずなのだが、その拳のキレは鈍るどころかますます鋭さを増していた。
「このままだと、マジで俺に入院属性がつきかねん」
ちなみに甚だ不本意ではあるものの、俺たち2人は結構長い付き合いだ。
だから急所は外せる自信はあったんだが、結果を振り返ってみれば甘い考えだったといわざるを得ない。
悔しい限りだが、普段はよほど手加減されていたということなんだろう。
時間つぶしにそんなことをつらつらと考えながら、俺は何を見るということもなくただぼんやりと屋上からの景色を眺めていた。
あいつが盲腸でこの病院に担ぎ込まれたのは,、夏休みに入ってすぐのことだ。
最初こそ、貴重な夏休みを1週間以上病院で過ごす羽目になった幼馴染に対し、ざまーみろ程度の気持ちでいた。
まあ、もちろん長い付き合いだから、多少は同情していたことも嘘じゃない。
本当にちょっとだけ、だが。
とにかく、あいつがいなくなってせいせいすらぁ程度に思っていた俺は、すぐにそれがこれもまた甘すぎる考えだったと思い知らされることになってしまった。

俺とあいつの家は家族ぐるみの付き合い+あいつの両親は共働き+俺達は現在夏休み=あいつの身の回りのものを届ける係は俺

今にしてみればこの展開を予想できなかった自らの不明を恥じるばかりだが、そんなこんなで俺は別に病気になったわけでもないのに2日に1度病院まで足を運ぶ羽目になったというわけなのだった。
こうして振り返ってみると、俺はちょっと楽観的過ぎるというか甘い考えを持ちすぎなのかもしれないなと、ふとそんなことを考えてしまう。

256 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:34:16 ID:oppAFp4Q]
「さて、そろそろ戻ってもいいか」
痛みもだいぶ引いてきたし、真夏の直射日光浴び続けるのは若干辛くなってきた。
それにこれだけ待てば、こっちの腹の痛みと同じように、あいつの怒りもそろそろ落ち着いてきているはずだ。
一瞬で沸騰する代わりにすぐに冷める。
さっぱりしていると言えば聞こえはいいが、沸騰するたびに殴られる俺としてはもう少しその沸点を上げてほしいのが正直なところ。
だいたい最初の日は荷物渡したとたんキレられてわけわからんし、今日の一件だって盲腸の手術を終えた相手に対してはお約束の台詞だったじゃないか。
それを、いくらここが病院だからって手加減がなさすぎるっつーの。
そんなことを考えながら振り返ろうとした、ちょうどその瞬間だった。
「何、してるんですか?」
まるで狙い澄ましたかのようなタイミングで背後から投げかけられた声。
振り返ると、屋上に出るための扉の前に1人の見知らぬ女の子がいた。
あいつと同じでここに入院しているんだろう、着ているのは清潔感のある水色のパジャマ。
年は、たぶん俺たちより少し下ぐらい……中学生だろうか。
半そでの上着から出た細い腕や、遠目でもわかるほど白い肌。
そんな、ひどく儚い感じのする女の子が1人、肩にかかるくらいの髪をなびかせながらこちらを見つめている。
一瞬、俺はここが病院ということもあってその子のことを生きた人間ではなく――。
「あの……?」
少し困ったように眉をひそめた彼女に、俺ははっと我に返る。
「え、あ、ごめん」
反射的に口を突いて出たのはそんな言葉だった。
何がごめんなのか自分でもよくわからないまま口にした謝罪の言葉。
それは言われた彼女にとっても不思議だったのか、くすくすと小さく笑い始める姿まで、どこか現実離れした雰囲気を持っている。
そんな気がした。
「あ、ごめんなさい、つい。
 初めまして、わたし、綾瀬春奈って言います」
改めて聞くと、彼女の声はひどく透明感のある澄んだ音色で、ますます目の前の光景が現実味を失っていく。
――って、おかしいぞ。
日射病にでもなってしまったのか、うまく頭がはたらかない。
なんだか妙なことばかり考えてしまって、今はそんなことを考えるより前にすることがあるはずだった。
そうだ、名乗られた以上、こちらも名乗り返すのが最低限の礼儀というものだろう。
「俺は――」
「あ、ちょっと待ってください」
そう考えて何とか口を動かしたものの、それは彼女の声で遮られてしまう。
ご丁寧に手のひらをこちらに向けるジェスチャー付きとなれば、俺もそこで止めないわけにはいかなかった。
彼女はそのまま何か考え込むように目を閉じて、眉間に皺を寄せて数秒の間黙り込む。

257 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:35:07 ID:oppAFp4Q]
なんともいえない緊張感。
俺がそれに居心地の悪さを感じ始めたのと、彼女が再び口を開いたのはほとんど同時だったと思う。
「……拓也さん、じゃありませんか?」
「――!?」
恐る恐ると言った感じで告げられた『拓也』という単語に、胸の中で心臓が跳ねあがる。
なぜなら、確かに俺の名前は拓也だったからだ。
ありふれた名前といえば名前だが、だからといってこんなものあてずっぽうで当たるものでも当然ない。
それとも俺はそんなに拓也っぽいのか。
いや違う、きっとどこかに名前の入ったものが――、って今俺は手ぶらだし、学生服ならともかくさすがに私服にネームプレート付ける趣味なんてないぞ。
「あ、その様子だと当たったみたいですね」
混乱する俺の前で、それとは対照的に彼女はパッと表情を輝かせる。
花が咲いた、まさにそう表現したくなる表情に俺はまたしても一瞬引き込まれてしまう。
――って、本当に今の俺はどうかしてるな。
けれど、ここまでのことすら、次の彼女の一言による衝撃に比べれば前菜のようなものだった。
「実はわたし、超能力者なんですよ」
とっておきの手品のタネを明かすときのような口調で、彼女が言う。
ここまでくると、もう何がなんだかわからなかった。
目の前の女の子――春奈が使っているのが俺と同じ日本語だとはとても思えなくなってくる。
それくらい、彼女の存在に俺は混乱させられていた。
「あれ、やっぱり信じてもらえませんか?」
春奈が近づいてくる。
「いや、それは……」
普通ならいきなり超能力者を自称する人間がいたとしても信じられるわけがない。
だけど春奈の場合、確かに俺の名前を言い当てたのだ。
必死に記憶を探ってみても今までに会った覚えはない。
だいたい向こうだって初めましてって言ってたじゃないか。
そんなことを考えている内に春奈はすぐそばまで歩いてくる。
後ろは高いフェンス。
目の前には超能力者を名乗る初対面の女の子。
逃げ場はない……って、俺はまたいったい何を考えて――。
「この病院、実は病気の治療とは別に、そっちの研究もしてるんですよ。
 で、わたしはそっちの人というわけなんです」
そう言っていたずらっぽく笑い、秘密ですよと人差し指を口元に当てる。

258 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:35:59 ID:oppAFp4Q]
「むー、やっぱりまだ信じてもらえないみたいですね」
不満げに唇を尖らせて至近距離から見上げてくる春奈。
その仕草だけ見れば外見相応の普通の子っぽいのに、俺は棒立ちになったまま顔を背けることもできずに向かい合ってしまう。
距離を詰められたことでかすかに感じるようになった消毒の匂い。
それにここが病院だということを改めて思い出させられ、そっちの研究とやらが徐々に真実味を帯びていく。
そこへ、駄目押しのように春奈は言葉と行動を重ねてきた。
「なら、もう一回証拠を見せてあげます。
 ちょっと失礼しますね」
瞬間、ひんやりとした何かが俺の手に触れる。
その何かは春奈の両手で、その冷たさに心臓まで凍り付いてしまうんじゃないかと思うほど俺は驚いていた。
そんな俺の内心などお構いなしで、彼女は名前を言い当てたときと同じように目を閉じる。
こうして間近で見ると、こちらが見下ろしているせいもあってまつげの長さが印象的だった。
と、またしても引き込まれそうになっていた俺の目の前で、彼女の表情が段々と曇っていく。
それはまるで静まっていた水面に小石でも投げ込んだかのような変化で、嫌な予感がちょうど遠くの空に見える入道雲のように心の中で育っていく。
次に彼女が目を開けた時、いったい何を告げられるのか。
さっきは名前だった。
それは確かに驚きはしたが、かといって別に何か実害があることを言われたというわけではない。
だけど次は。
こんなにも表情を曇らせている春奈が何を感じ取っているのか、俺は怖くて仕方がなかった。
自分より年下の女の子に手を握られて、その場で崩れ落ちていしまいそうなほどの恐怖を感じている。
それを滑稽に感じている自分も確かにいたが、それ以上に――。
「――ふぅ」
やがて春奈が長いまつげを震わせながらゆっくりとまぶたを上げた。
その大きな瞳がかすかに潤んでいるのが、俺の不安に拍車をかける。

259 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:36:47 ID:oppAFp4Q]
またしても訪れる奇妙な間。
ただ、今回は前回以上に重苦しい雰囲気に包まれているように感じたのは俺の気のせいじゃないだろう。
今まではずっと、まっすぐ俺の方に向けられていた春奈の瞳が不意に揺れる。
それが俺には、思わず逸らしてしまいそうになる視線を懸命に引きとめている、そんな風に感じられた。
そして、何度か何かを言いかけて止めたのだろう小さな唇の震えを繰り返してから、ようやく彼女は言葉を紡ぐ。
「……あの、落ち着いて、聞いてくださいね」
最悪な前置きだった。
「拓也さんの、未来を見ました」
詰まりかけのチューブから無理やり中身を絞り出したような沈痛な声。
さっき感じた透明感のようなものはどこにも感じられないその声音に、俺はなす術もなく戦慄する。
その言葉からは、本来『未来』という言葉が持つはずの希望のようなものは一切感じ取ることができなかった。
あるのは圧倒的なまでの閉塞感だけ。
「最初に言っておきますけど、わたしの見る未来は決して確定的なものじゃありません。
 事前に知って対策をすれば、それを回避することは十分可能なものなんです。
 これだけは忘れないでください」
これでは中身を聞くまでもなく、回避しなくてはいけない未来が見えたと言われているようなものだった。
聞きたくない。
だけど聞かないと対策なんてできるはずがない。
それならちゃんと聞いて、きちんと回避できるように対策をするのが最善だろう。
そう頭では理解しているのだが、それでもやっぱり怖いものは怖い。
できることなら、このまま一目散に逃げ去りたかった。
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、ああ、大丈夫だ。
 聞かせてくれ」
それでもなけなしのプライドを総動員して春奈を促すと、彼女は一瞬の逡巡を見せた後、ひどく苦しげに俺の"未来”を教えてくれる。
「このままだと、拓也さんは近い未来……たぶん、あと1時間もないと思います……とにかく近い未来に、ええと……」
途中で言葉を選ぶように言い淀み、そして今度こそ春奈は俺から目を逸らした。
代わりとでも言うように、繋いだままだった手にきゅっと力が込められる。
それが俺を勇気付けようとしての行為なのか、それとも春奈自身もそれを口にするのが怖かったからなのか、俺にはわからなかった。
そして――、
「――命を、落とします」
告げられた言葉に、俺は足元にぽっかり穴が開いてそこに吸い込まれたような錯覚に陥ったのだった。



260 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:37:30 ID:oppAFp4Q]
ガシャン、と耳障りな音が鼓膜を揺らす。
それで我に返った俺は、自分がフェンスに寄りかかっていることに気がついた。
目の前には今俺に死の宣告をした春奈が立っている。
その姿は初めて見た時以上に、それはもう超能力者なんてものじゃなく死神とでも言われた方が納得してしまいそうなほどに現実離れして俺には見えた。
いつの間にか手は離されている。
それでもあの冷たい手の感触は心にこびりついたかのように拭い去れないものとして残っていた。
それはまるで心臓に直接氷でできた鎖を巻きつけられているような、そんな息苦しさを伴った感覚だ。
「さっきも言いましたけど、この未来は決して確定したものではありません」
繰り返されたその言葉に、俺は今自分がしなければいけないことに気づかされる。
そう、もう1秒だって時間を無駄にはできなかった。
「いったいどうして俺が……。
 事故か、それとも病気……」
1時間というタイムリミットを考えると病気というのはあまり考えられない。
もちろん突然死を引き起こす病気がないわけじゃないだろうが、ここまで突然となるとやっぱり事故――。
「うわっ!?」
俺は慌ててフェンスから飛びのいた。
弱くなっていた支柱が寄りかかったせいで折れて、そのままフェンスごと落下という可能性に思い至ったからだ。
けれど――、
「事故じゃ、ないと思います」
ぼそりと、今にも泣き出しそうな声で春奈が言う。
「じゃあ、やっぱり病気……?」
今度は言葉ではなく首を振ることで答えを返される。
その動きは縦ではなく横。
つまり、否定。
事故じゃなく、病気でもない。
だったら他に残るのは――。
逃げ道を次々に塞がれて、考えまいとしていた答えにどんどん追い詰められていく。
「……身近な人。
 その人は今、とても深く傷ついていて、そしてそれと同じくらい怒っています」
その条件に当てはまる相手なんて、たった1人しか思いつかなかった。
だけど――。

261 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:38:39 ID:oppAFp4Q]
「……心当たりが、あるんですね?」
「だ、だけど、あんなの軽い冗談で……そんな、ころ……」
言葉にしたら本当になってしまいそうで、言いかけた言葉をぎりぎりで飲み込んだ。
そんな俺を哀しそうな瞳で見つめる春奈。
「拓也さんにとっては軽い冗談だったのかもしれません。
 けれど、その人にとってはそうではなかった。
 たぶん、そういうことなんだと思います」
「なら、どうすれば……」
最初に思いついたのは当然謝ることだ。
普通に考えればそれしかない。
だけど、謝るためには直接顔を合わせなければいけない。
普段なら多少不誠実でも電話という手段もないではないが、病院内では携帯は使えない。
俺は外に出れば使えるが、当のあいつの携帯が使えないのでは全く意味がなかった。
なら、逃げるか。
あいつはまだ手術から間がない。
病院から遠く離れてしまえば追ってはこれないだろう。
とにかく今は1時間以内の死という最悪の事態だけ回避して、そこから先は時間をかけて――。
「最後に一つだけ言わせてください。
 直接的なきっかけは、あなたが思っているその『軽い冗談』なのかもしれません。
 けれど、それが全てではないんだと思います。
 ずっと雪の重みに耐えていた家が、限界を超えた瞬間一気に崩れ落ちるように、長い間降り積もっていたもの、それがきっとわたしの見た"未来"へと繋がる本当の原因――」
それだけ言って春奈は踵を返して去っていく。
走っているわけでもないのに急速に遠ざかっていく小さな背中。
俺はそれが扉の向こうに消えるまで、指一本動かすことができなかった。
「――って、ちょっと待ってくれよ」
耳障りな軋みをともなって扉が閉まった瞬間、呪縛から解き放たれたように俺もまた扉を目指した。
まだ聞きたいことがある。
今はどんなささいな情報でも喉から手が出るほど欲しかった。
だが走り出して数歩のところで、再び開き始めた扉に気づいて足を止める。
タイミングからして当然、俺は春奈が戻ってきたんだと思った。
「――!?」
だがその扉の奥から現れたのは自称超能力者の少女綾瀬春奈ではなく――、
「なんだ、こんなとこにいたんだ」
俺の幼馴染――来栖幸、だった。
飽きるほどに見続けてきたその顔。
飽きるほどに聞き続けてきたその声。
なのに、今はそれらが全て別人のもののように感じられていた。

262 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:39:22 ID:oppAFp4Q]
「こんなとこで、1人で何やってたの?」
ぐるりと屋上を見渡して幸が言う。
そのいつも通りの口調が、今の俺には怖かった。
いくら前のことを根に持つタイプじゃないと言っても、ここまで何事もなかったように振舞うのもおかしいと、長い付き合いに裏打ちされた勘が告げている。
「べ、別に……ただ、ちょっと人と話してただけだよ。
 そこで擦れ違っただろ?
 なんか不思議な感じのする子で……」
本当にあれは人だったんだろうか。
そんなことを考えながら口にした言葉。
けれど次の瞬間、その考えは一気に疑問なんてレベルを飛び越えてしまうことになった。
「……? 別に誰とも擦れ違ってないけど?」
「な――!? そんなはず……」
あのタイミングで擦れ違っていないはずがない。
それこそ扉をくぐった瞬間、あの子が煙のように消えでもしない限り……。
「本当に、消えた、のか……?」
「あはは、日射病で白昼夢でも見てたんじゃないの?」
愕然とする俺とは対照的に、楽しそうに笑いながら幸が近づいてくる。
おかしい。
今のこいつは明らかにいつもと違っていた。
思わず後ずさった俺に、幸が不意に足を止める。
「なに? ああ、さっきのことなら、もう気にしてないって。
 ていうか、ごめん、あたしの方が大人気なかったよね」
その言葉に、俺の中で目の前の相手に対する違和感がますます膨れあがり――、
「――あんなの、軽い冗談、だったのにね」
それが、決定打になった。
「悪かった!」
恥も外聞もなく地面に這いつくばる。
今はあの子の正体について、考えを巡らせている場合じゃなかった。
「さっきのことも、今までのことも全部謝る! だから――」
「――もう、遅いよ」
殺さないでくれ、と叫ぼうとしたところに告げられた静かな言葉に全身が竦みあがった。
思わず顔を上げると、幸の手元で何かがぎらりと光を放つ。
「――!?」
それは、幸の病室にあった果物ナイフだった。
刃渡りなんてせいぜい10センチにも満たない程度の小さな刃物。
それでも、狙いどころさえ間違わなければ、十分人の命を奪える凶器。
拳なんかとは、わけが違う。
頭の中が真っ白になる。
「――じゃあね」
それは、いつもと何も変わらない、別れの挨拶だった。

263 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/03(日) 04:40:45 ID:oppAFp4Q]
今回はここまでです。

264 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/03(日) 05:05:07 ID:6Lr3OpGm]
>263
乙です。
えらい引きで終わりましたなw
ともかく続きに期待。

265 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/05(火) 02:41:08 ID:xCO3VkLZ]
気になる

266 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/05(火) 03:29:56 ID:Yc4qoYa6]

名前も知らない木ですから

267 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/05(火) 05:15:20 ID:/5bEvwnd]
むっはー!続きが気になる!

268 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/05(火) 11:27:55 ID:pCgVJkoZ]
もしかしてこう来ると見せ掛けてああなるのか?
と色々展開を想像しながら続きwktk

269 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/05(火) 22:14:25 ID:lLYHLAfk]
続きが気になりすぎる



270 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/09(土) 00:40:33 ID:CXQkoYI1]
気になる、つまりwktkついでのホシュ

271 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 16:12:38 ID:9qQP0fN1]
俺には待つ事しか…

272 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 20:30:07 ID:6Ji+70vp]
つづきwktkほっしゅ!


>>23読んだらツボだったんで特にwktk

273 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/12(火) 22:02:08 ID:meyrDeN+]
>>244
あれ?
これってvipのやつの元ねたか?w

274 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/16(土) 01:06:18 ID:4yrHXeaM]
>273
VIPにそんなスレ立ったのか。 規制中で知らなかったwww

275 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:05:14 ID:OSAV6arC]
>>262の続きを投下します。

276 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:06:21 ID:OSAV6arC]
「……夢、か」
目を開けるとそこはあの病院の屋上ではなく、進学を理由に上京してから住み始めたアパートの一室だった。
直前まで見ていた夢のせいだろう、全身がガチガチに強張っている。
けれどその体以上に――、
「くっ……」
心が軋みをあげていた。
じわりと熱を持った目元を押さえて、歯を食いしばる。
あの夢の中の出来事から、もう実際には2年近くがたとうとしていた。
なのに、いまだにこうして何かのきっかけで思い出しすと涙がこぼれそうになってしまう。
情けないと自分でも思う。
だけどその一方で、そのことに安心している自分もいた。
もし春奈のことを思い出しても何も感じられなくなってしまったら。
それこそが、俺が一番恐れている事態だった。
とはいえ、一時期は毎晩のように見ていたはずの彼女の夢も、今では月に一度あるかないか。
このままではいつか本当に忘れてしまうんじゃないか。
その不安から、俺は改めて春奈の姿を脳裏に思い浮かべた。
一緒にいられた期間なんて1年もない。
それでも、俺にとっては最も大切な女の子のことを。

277 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:07:15 ID:OSAV6arC]
結局、あの屋上での一件は全て幸と春奈による狂言だった。
いや、春奈は半ばむりやりつき合わされていたのだから、実質幸1人によるものだったというべきか。
もちろんあの病院はそっち系の研究機関でもなんでもなく、春奈は普通に入院していただけだった。
手術からまだ間もないくせに、抜けるような青空をバックに馬鹿みたいな大笑いをする幸と、その背後から申し訳なさそうな顔をして再び姿を現した春奈。
それを尻餅をついた状態で呆然と見上げる俺というのが、あの出来事の顛末だったんだ。
そしてその衝撃的過ぎる出会いを経て、俺は春奈に恋をした。
といっても、それを自覚したのはもうすぐ年も変わろうかという頃。
けれど、俺は自分の気持ちに気づいてからも、決してそれを表に出さなかった。
少なくとも、自分ではそのつもりだ。
それはただ単純に、それまでの半年で築きあげた3人の関係を崩したくなかったから。
正直言えば、たとえばクリスマスを春奈と2人だけで過ごしたいという気持ちがなかったと言えば嘘になる。
けれど、仮に幸を除け者にして2人だけになったとしても、春奈も俺も心からその時間を楽しめるとも思えなかった。
だいたい、それ以前に俺が告白して春奈が受け入れてくれたかもどうかわからない。
嫌われてはいなかったと思う。
けれど俺と同じ意味で彼女が俺を好きだったかと聞かれれば、正直自信がなかった。
だから今はこのままで。
そう、思っていた。
今にして思い返してみれば、その頃が一番幸せな時期だったのかもしれない。
ただただ春奈と共にいられる幸せに、肩まで浸かっていられたのだから。
終わりが始まったのは出会いからちょうど1年、新しい夏を迎えた頃だった。
突然告げられた彼女の転院。
それからは主に幸と春奈の間で手紙のやり取りが続き、それも秋が終わるころには途絶えてしまった。
そしてそれからまた一月程がたった頃、俺と幸、両方に一通の手紙が届いたのだ。
差出人は春奈の母親。
封を開けるまでもなく、中に書かれているだろうことには予想がついた。

278 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:08:02 ID:OSAV6arC]
しばらくそのまま待っていると、徐々に心が落ち着いてくる。
それと同時に昨日のこともようやく思い出せるようになってきた。
講義とバイトを終えて帰ってきた頃にはもう日付が変わっていて、とりあえずシャワーだけ浴びてテレビを見ていたところまでは何とか記憶をさかのぼることができる。
つまるところ、テレビを見ながらそのまま眠ってしまったという金曜日としてはいつもの流れだと思われるのだが――、
「いつ消しったっけ……」
明かりもテレビもちゃんと消えている。
カーテン越しに差し込んでくる朝の光と鳥の鳴き声に、狭い部屋の中は満たされていた。
まあ、消えている以上は俺が消したということなんだろう。
そのまますぐ二度寝してしまったから記憶に残っていないだけ。
「よっと……」
気分を一新するためにも、勢いをつけて上半身を跳ね上げる。
今日は土曜日だから講義はないが、その分昼からバイトを入れているんだ。
いつまでも布団のなかでうだうだしているわけにもいかない。
「えっと、今何時だ?」
とりあえず時間を確認するために枕元に置いた携帯をとろうと身を捻る。
「な、ぁっ!?」
その瞬間、目に飛び込んできたものに、俺は言葉を失ってしまった。

279 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:08:50 ID:OSAV6arC]
布団のすぐ横、畳の上に直に横たわる1人の少女。
それだけでも異常な光景。
ましてその子が俺の通っていた高校の制服を着ていて、しかも安らかに寝息を立てているその顔が――、
「は、春奈……?」
もう写真の中でしか見ることができないと思っていたものだったんだから、驚くなという方が無理な注文だ。
一瞬、まだ夢を見ているのかと思った。
だけど夢の中で、これが夢じゃないかと思うことなんてまずありえない。
中には夢を夢と認識できる人もいるらしいが、俺にそんな特技はなかった。
なら、これは現実なのか。
だけどそんなはずがない。
春奈はもう、この世にいないはずなんだ。
ただでさえあんな夢を見ていた直後にこの状況。
混乱に混乱が重なって、まともな思考が働かない。
その中で、俺の頭の中にまた1つ、春奈との思い出が浮かび上がってくる。
もう何十年もたってしまったかのように遠く遠く、それでいてまるで昨日のことのように鮮明でもあるあの日の記憶。
第一印象では俺達より2つか3つは下だと思った春奈の年齢は、実際には俺達と同じ、普通なら高校に通っているはずのそれだった。
実年齢より幼く見える理由が、長く患っている病気によって成長が遅れているせいなのか、それとも元々遺伝的にそういうものだったのかはわからない。
ともあれ、年齢的にはそうだと言っても、1年のほとんどをずっと病院で過ごしていたから実際に高校に通っていたというわけではなかった。
それでも、、春奈のこの制服姿を俺は知っていた。



280 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:10:10 ID:OSAV6arC]
その日、俺は放課後に少し用事があって幸より遅れて病院に向かうことになった。
いつものようにドアをノックしてから返事を待つ。
一度ノックをせずにドアを開けて、大変な場面に遭遇してしまったというのは幸には絶対秘密だった。
知られたら、半殺し程度じゃすまないだろう。
ともかく、それ以来俺はきちんと中の反応を待ってから開けるように心がけていた。
まあ、最初からそうしろと言われたら返す言葉もないわけなんだが。
待つこと数秒、中から帰ってきたのは――、
「拓也でしょ? 入っていいよー」
妙に楽しそうな幸の声と――、
「だ、ダメです! 今入っちゃダメです!」
珍しく慌てたような春奈の声。
入って良いのか悪いのか、どっちだよ……なんて考えるまでもなかった。
幸があんな声出すときは、たいてい他の人間にとってはロクでもないことを企んでいるときだ。
「あー、じゃ、俺適当に時間潰してくるから」
そう宣言して立ち去ろうとすると――、
「あー、いいのかなー? これ見逃したら一生後悔すると思うけど」
「さっち!」
「いいじゃない、似合ってるんだから」
「で、でも、やっぱり恥ずかしいし……」
そんなやり取りが聞こえてきて、思わず出しかけた足を止めてしまう。
見逃すと後悔する、似合ってる、恥ずかしい。
この辺の言葉を総合すると、どうやら中では今、春奈が何やら珍しい格好をしているらしい。
俺の中で好奇心がむくりと鎌首をもたげていく。
なにせ普段はパジャマ姿しか見ていないのだ。
正直、見たい。
めちゃくちゃ見たい。
いったいどんな格好をしているのか、頭の中で妄想だけが膨らんでいく。
だけど当の春奈が嫌がっている以上、このドアを開けるわけには……。
「もう、なにグズグズしてんのよ」
「さ、さっち!」
好奇心と良心に挟まれて動けなくなった俺に業を煮やしたように、幸の声が大きくなる。
そして、目の前のドアが中から勢いよく開け放たれた。

281 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:11:05 ID:OSAV6arC]
「……はぁ?」
どうだと言わんばかりに胸を張る幸と、その向こう側の人間サイズにシーツがこんもり盛り上がったベッド。
期待していた分、肩透かしを食らって思わずそんな気の抜けた反応をしてしまう。
「な、なによ、そのリアクションは?」
「いや、だって、あれ」
不満そうな幼馴染の声に、その背後を指し示してやる。
その指に導かれるように振り返った幸は――、
「あー、もう往生際悪いなぁ!」
つかつかつかとベッドの向こう側に回り込むと、シーツの端をしっかり掴む。
「ふふふ、目ん玉かっぽじてよーく見なさい!」
こちらを見て、不適な表情を浮かべる幸。
目ん玉かっぽじったら確実に失明するぞ、なんて突っ込む暇も余裕もなかった。
「じゃっじゃーん!」
次の瞬間、真っ白なシーツが勢いよく取り去られたそこに現れたのは、一言で表現するなら――白、だった。

282 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:12:55 ID:OSAV6arC]
それから10分ほど経って、俺達は3人が3人とも揃って気まずい空気を漂わせながら顔をつき合わせていた。
幸は幸でバツの悪そうな顔をしているし、春奈はまだ顔を真っ赤にして俯いている。
そして俺はと言えば、全身を苛む痛みのせいでとても普通の表情にはなっていないだろう。
特に頭と首のあたりのダメージが甚大だった。
「ま、まあ、不幸な事故だったってことで」
学校指定のジャージに身を包んだ幼馴染が変に明るい声を出す。
けれどそんなことで場の空気が改善されるわけもなかった。
「事故じゃなくて人災だろ。
 100%お前のせいで」
「な、なに言ってのよ。
 あんただっていい思いしたじゃない」
俺のまっとうな指摘に幸が誤魔化すようにそんなことを言い、春奈の顔がますます赤くなる。
艶やかな黒髪から覗く耳の先まで、茹でられたタコのように真っ赤だった。
そんな春奈が着ているのは、俺達の学校の制服、いわゆるひとつのセーラー服。
つまりは一足早く病院に来た幸から借りたということなんだろう。
サイズが合っていないので、手は指の付け根辺りまで隠れている。
ちなみにいつもこうして3人で話すときは、俺と幸は備え付けの椅子に、そして春奈はベッドに腰掛けて向かい合うのが普通だった。
だけど今は上半身だけ起こして下半身はシーツの中だ。
そのことは俺にとっては残念半分安心半分と言ったところだった。
制服を着ているということは、当然下はスカートなわけで、さすがに今それを見たらまともにこの場にいられなくなってしまう。
さっき幸がむりやりシーツをはいだ時、その勢いでスカートまでもがめくれ上がってしまったのだ。
一瞬だけ見えた細いけれど柔らかそうな太ももと、シーツと比べてごくごく小さい真っ白な布地。
さすがにそれは予想外だったのか、幸は一瞬動きを凍りつかせた後、ものすごい勢いで俺に詰め寄ってきた。
そして俺の鞄をひったくると、今すぐ忘れろこのバカと叫びながら俺の頭部を連打し始めた。
もぐら叩きのもぐらだってあんなに殴られないってほど殴られ続けた頃、ようやく騒ぎを聞いて駆けつけてきた看護婦さんによって幸の凶行は止められたわけだが、どう考えても俺は悪くない気がするんだがそこんとこどうよ。
そんなことを考えていると――、
「どこ見てんのよ、あんた」
「バ、バカ、何言ってんだ!」
幸の指摘に慌てる俺の視界の隅で、春奈がシーツをかき寄せる。
非常にマズイ。
「は、春奈、違うぞ、俺は別に……」

283 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:13:54 ID:OSAV6arC]
「――ッ!?」
突然鳴り響いた電子音に、俺の意識が過去から現在へと引き戻される。
それは目覚まし用にセットしておいた携帯のアラームだった。
「……ん」
その音に、春奈そっくりの女の子が小さく吐息を漏らすのが聞こえた。
「マズイ!」
とっさに飛びついてアラームを解除すしたが、そこから数秒、彼女の寝息がまた規則正しいそれになるまで、生きた心地がしなかった。
この子の正体が何なのか全く想像もつかないが、まだ直接向かい合うには心の準備ができていない。
とりあえず心を落ち着けて……。
「そうだ、バイト……って休むしかないか」
いくらなんでもこの子をほっといてというわけにはいかないだろう。
となれば連絡だけはしておかないと……。
ちょうど手の中にある携帯を操作して、バイト先の番号を呼び出そうとする。
そこで、不意に指が止まった。
この状況を相談できる、唯一と言ってもいい相手のことが頭に過ぎったからだ。
春奈との思い出を共有している幼馴染。
あいつも大学は違うもののこっちの学校に進学したから、会おうと思えば会えるはずだった。
「連絡、してみるか……?」
思わず声に出して自問してみる。
以前なら、何か用があればすぐに連絡していたはずだ。
ましてそれが春奈に関することであればなおのこと。
けれど今は違う。
最後に電話をしたのがいつだったか、もう覚えていない。
直接顔を合わせたのも、高校の卒業式の日が最後だった。
しかも顔を合わせたといっても、あくまでそれは同じ空間にいたからというだけで、言葉どころかまともに視線すら交わしていない。
そう、今の俺達はあの頃とは違い、かなり疎遠になってしまっていた。

284 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:14:56 ID:OSAV6arC]
その原因は全て俺にある。
春奈の死に塞ぎこんだ俺を、幸は自分だってショックを受けているだろうに気遣ってくれたんだ。
ただ、当時の俺はそれがかえって許せなかった。
春奈が死んでしまったというのに、他人を気遣えるだけの余裕が幸にあるのが許せなかったんだ。
だから俺は、決して言ってはいけないような最悪の言葉をあいつにぶつけてしまって……。
今なら俺が全面的に悪かったと理解できる。
謝ろうと何度も思った。
けれど、あんなことを言っておいて、どの面下げて謝ればいいのか。
そんなことを考えて先延ばし先延ばしにしているうちに高校生活は終わり、顔を合わせる機会を完全に失ってしまっていた。
「……くっ」
液晶に表示された11桁の数字。
あとは通話ボタンを押すだけで、あいつの携帯に繋がるはずだ。
正直、この状況は俺一人の手には到底余る。
それでも、あいつがいてくれれば。
だけど、俺のほうから一方的に拒絶しておいて、そのくせ困ったら助けを求めるなんてそんなムシのいい話……。
「くそっ……」
親指をわずかに動かしてボタンを押す。
けれど押したのは通話ボタンじゃない。
表示されていた数字が消え、画面が待ち受け用に切り替わる。
「くそっ……」
自分の情けなさに涙が出そうだった。

285 名前: ◆B7ddJTHdWw mailto:sage [2007/06/16(土) 22:15:59 ID:OSAV6arC]
今回はここまでです。

286 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/17(日) 01:06:01 ID:D+R80MPS]
読んだぜ。乙だぜ。

287 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/17(日) 01:22:03 ID:xlLbXZcR]
おお意外な展開と共に期待

288 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/17(日) 01:38:59 ID:gglIX+XB]
何この肩透かしな展開、と思ってたら今までのは前フリでまだ始まってもいなかったのか
続きにwktkしております

289 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/21(木) 05:20:40 ID:DN5jK3wD]
仕事前にほしゅ



290 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/26(火) 03:05:47 ID:lWylNqbE]
首を長くして待ってるうちに

291 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/26(火) 12:54:35 ID:EP2Aoe7h]
圧縮?

292 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/06/28(木) 05:05:32 ID:JOPQLJjV]
落としはしない

293 名前:名無しさん@ピンキー [2007/06/30(土) 23:06:51 ID:0U/8bc0m]
保守

294 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/01(日) 13:03:36 ID:X8lvyq3T]
》231の

295 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/01(日) 13:05:17 ID:X8lvyq3T]
》231のエリマキ娘の続きィィィィ

プレジャーガウストってドコで見れる?

296 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/01(日) 13:46:10 ID:1i+RMCUN]
保管庫

後アンカーはきちんと付けような
×≫295
 ↓
>>295

297 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/01(日) 14:36:52 ID:X8lvyq3T]
アリガタス( ^_^)/

298 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/05(木) 04:24:28 ID:2zjAuupm]
ほっしゅっしゅ

299 名前: ◆fO8BiNEwpA mailto:sage [2007/07/07(土) 15:33:52 ID:8FRyYDQj]
てすと



300 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/07/09(月) 07:37:37 ID:yXY+SeuL]
ほしゅ






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