[表示 : 全て 最新50 1-99 101- 201- 301- 401- 501- 601- 701- bbspinkのread.cgiへ] 2chのread.cgiへ]
Update time : 05/25 22:12 / Filesize : 464 KB / Number-of Response : 709
[このスレッドの書き込みを削除する]
[+板 最近立ったスレ&熱いスレ一覧 : +板 最近立ったスレ/記者別一覧] [類似スレッド一覧]


↑キャッシュ検索、類似スレ動作を修正しました、ご迷惑をお掛けしました

かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その12】



1 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 04:20:18 ID:h0Jb9AN7]
ここは幽霊、妖怪、妖精、魔女っ子からはては異次元人まで 
オカルティックな存在の幼女、少女、娘、女性にハァハァするスレッドです。 
エロ&萌え〜なSS、画像を随時募集中! 
創作も収集もおかまいなし! 

前スレ
かーいい幽霊、妖怪、オカルト娘でハァハァ【その11】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1142074376/l50

関連サイト 
過去ログ&SS保管庫 
tsukinowa.s1.x-beat.com/occult/ 

関連スレ
【妖怪】人間以外の女の子とのお話20【幽霊】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1163776989/
【亜人】人外の者達の絡み【異形】 
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1098260654/ 
【獣人】亜人の少年少女の絡み4【獣化】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1152198523/

2 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 04:37:16 ID:h0Jb9AN7]
微妙に関係あるのかないのかの関連スレ。
二次系。

ゴーストハント/悪霊シリーズでハァハァ
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161308766/
地獄先生ぬ〜べ〜のエロネタ☆★ 除霊2回目
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1156606621/
【夕闇の】地獄少女でエロパロ【彼方より】
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1152505089/
神無月の巫女 エロ総合4
ttp://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1163516375/

他にもいっぱいありそうだなぁ……。

3 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 06:41:04 ID:Ncx45J7Q]
>>1
乙!そしてGJ!

4 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 07:47:27 ID:a5uc0JYJ]
最初それをみたときは、ついに俺も焼きがまわったかと思ったよ。
何しろ、体つきや年齢まわりからして、俺の理想にマッチした女の子が
「俺の部屋」にいたんだもの。
こんなかわいい娘、声をかけた覚えねえつうの。
そんな娘が、いっちゃなんだが何のとりえもない20こえて
無職一人暮らしの俺んところに、何の前触れもなく来ようはずもない。
これは幻か、なるほど幻か、嗚呼ついに俺も焼きがまわったか、と。
しかしその娘、無邪気に微笑んで俺にどんどん近づいたかと思うと、
俺の胴体に腕を回し、顔を擦り付けてきた。
うわわわわわ・・・やわらか・・・いいにお・・・やば・・・この感触、幻じゃねえ・・・
「ねえお兄さん・・・抱いて・・・」いきなり何言い出すんだこの娘。ちょ、まて。
手出したら確実に犯罪なんですが、その年齢。
だが次の瞬間、少女は俺の顔に手を回し俺の顔をリードしたかと思うと、
唇を重ねてきた。ここで俺は「キレ」た。
あっという間に少女を組み伏せ、女を抱いたことがないなりに
つたない愛撫と口付けを少女に浴びせる俺、少女もそれに一生懸命応える。
「いくよ・・・」「うん・・・・」すっかり恋人のように互いに応対しあい、つながる俺達。
あまりの気持ちよさと感動で俺は少女と何度も戯れ、中に何度もその思いを吐いた。
「おにいさん、素敵だったよ」気づくと、目の前にいる少女は、
前よりも生気に満ち溢れていた。ように感じた。
「ご紹介が遅れたね、あたし、ここの家の住人です」
ちょ・・・まて・・・ここの家の住人は、俺のはず・・・ってまてよ・・・まさか・・・
「はい、正解です。『もと』住人です。これからもよろしくね」そういって少女は「にっ」とした。
とたんに背筋が凍ってくる俺。たは・・・格安アパートの「代償」がこれとはなあ・・・。

5 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 07:48:20 ID:a5uc0JYJ]
でもよくよく考えてみると、こんな理想の少女が、
女の子と縁がなかった俺に抱かれてくれるなんて、これは代償どころか特権・・・。
幽霊だろうが物の怪だろうがこのさいかまうこたあねえ。
「よ・・・よろしく・・・」と、この時は何も考えずにただ浮かれて返事を返したのであるが・・・。
翌日、俺の目の前にいたのは、昨日の子とは年齢もタイプも違ったが、
やっぱり美人な女の子。歳は昨日よりも上であろう。
それが、昨日にならい、やはり俺に抱きついてきて「ねえ・・抱いて。お願い・・・」
とおねだりしてきた・・・。
そして俺も本能どおりに応え、またしても何度も「吐き出し」てしまった。
それから、くるわくるわ、幼女、学生、大人と、次々年齢もタイプも違う女の子が
入れ替わり立ち代り、俺に求めてきて事に至る。
さすがにおれもちょっと限界を感じ始めたとき、「とどめ」がやってきた。
いままで相手してきた女たちが、一同に会してやってきたのだ。
「ねえ」「今日は」「いっぱいいっぱい」「しよ」「寝かせないよ」
一瞬ひるんだが、このハーレム的な状況に抗うことができず、
俺はルパンダイブで女達の肉布団に飛び込み、いままでにないくらい「がんばった」
もう立つことすらかなわない、まさに最後の一滴まで絞られた。
嗚呼俺は、ここで死ぬのか、そうか・・・
「何逃げようとしてるの」「そうよこのくらいじゃまだたらないわよ」
「死ぬだなんて甘い甘い」「このアパートの住人として、ずーっとずーっと」
な か よ く し て も ら い ま す か ら ね っ
とたんに精力がフルに戻ってきた。目の前の女達に再び狼になる俺。
うは・・・俺はもてあそばれているのか・・・だが・・・それでもかまうこと、あるものか!!!

俺は、このかーいい女の子たちを、愛で続けるのだ!!スレ住人の名にかけて!


6 名前:学園七不思議-1アフターケア mailto:sage [2006/11/28(火) 18:59:20 ID:cET1ae+J]
前スレ作品の続編です。容量が足りないのでこちらに投下させてください。

正直、テストケースなので受け入れられないかと思っていたのですが、
読んでレスをくださった方、スルーしてくださった方、ありがとうございます。

今回もやや特殊だと思いますので、注意書きを書いておきます。
苦手な方はNG指定をお願いします。

・やはり純愛ものではありません。
・今回エロはありません
・なぜかSMが少し入ってます

7 名前:学園七不思議-1アフターケア mailto:sage [2006/11/28(火) 19:00:16 ID:cET1ae+J]
 僕は暖かい空間でまどろんでいた。
 胎児のように膝を抱え、悪夢に魘される事もなく、心地よい空間に漂っていた。
 それが突然、左手に鋭利な痛みを感じて目を覚ました。
 僕は瞼を開けると、今まで包まれていた白い霧の様な空間から、いきなり弾き出された。

「いって〜! 指切ったぁ!」

 見覚えのある少女が包丁を片手に指を咥えているのが見える。どうやらここはキッチン
らしい。痛そうに指を咥えている少女を見て、僕の胸は弾んだ。
 あれは僕を優しく包んでくれた冴子さんだ!
 冴子は僕の気配に気づくと、ちょっと驚いたような顔をした。
「あれ? まだ覚醒には早いと思ってたのに、もう起きちゃったの?」
「う、うん。急に指に痛みを感じたらここにいた。……会いたかったよ! 冴子さん!」
 僕は冴子に再び会えたのが嬉しくて、思わず抱きつこうとした。

 だけど、冴子はいきなり手に持っていた包丁を僕に翳し、僕の接近を阻んだ。
「ストップ! ストップ! 悪いけど、あたしはアンタの冴子じゃないの。アンタの冴子
はそこにいる、淫乱女の事でしょ」
 冴子は包丁の矛先をくいっと横に向ける。その切っ先には白く光る色っぽいお姉さんが
揺れるように立っていた。
「いやぁ〜ん! 珠美ちゃんたらぁ〜! ママに向かって”淫乱”なんてひどいわっ!
 ママ、傷ついて泣いちゃうわよぅ〜!?」
「――勝手に泣いてろ。それより、コイツに説明してやれば? 起きちゃったみたいだし」

 ――え? え? 僕は混乱した。
 僕が意識をなくす前に抱きしめてくれた子は、この包丁を持ってる冴子じゃない?
 この色っぽいお姉さんの方が……僕の冴子!?

「ほれ。混乱してるみたいだから、早く教えてやらんか!」
「あらあら〜。まだ浄化しきってないのに、珠美ちゃんが怪我したショックで起きちゃっ
たのね。隆志クン。でもさすが珠美ちゃんねぇ〜。この短期間でだいぶ魂が綺麗になって
るわ! ね、隆志クン、あたしがわかる?」
 色っぽいお姉さんが僕に近寄ってきた。傍で見るとすごい美人だ。それに冴子に似てる。
 僕はお姉さんの色香にたじろぎながら後去ってしまった。

「え、え〜と……。お、お姉さんが冴子さん……? じゃ、そこにいる冴子さんは?」
 綺麗なお姉さんは微笑みながら近寄った。あの、非常階段の時の様に艶然とした微笑だ。
「いや〜ん! お姉さんだなんて! 隆志クンったらぁ! そう、冴子はあ・た・し。
 そこにいる粗忽な子は、あたしの娘の珠美ちゃんなの。びっくりした? 隆志クン?」
 包丁を握っている方の冴子は、不機嫌そうに振り向いた。
「……粗忽で悪かったね! それに、『びっくり』じゃなく『がっかり』って聞くべきじ
ゃないの? 何しろ、せっかくの初体験がおばさんだったんだからさ」

 ――包丁を握ってる冴子の方が、このお姉さんより怖そうだ……、と僕は思った。
「ひっどぉ〜い! 珠美ちゃんのバカッ! がっかりなんてしてないよね? 隆志クン」
「え、え〜と……? 冴子さんが珠美って子で、珠美って子が冴子さん……?」
「あたしもね、実はもう魂だけの存在なの。だからあの時は珠美ちゃんの体を借りて、隆
志クンに会いに行ったのよ。隆志クンは今迄、珠美ちゃんの中で眠っていたの。わかる?」
「さ、冴子さんは幽霊だったの!?」
「そ。あんたと同じね。自縛霊の隆志クン。あー! もうこの包丁剥きにくいったら!」
 包丁を持っている冴子……いや、珠美は不機嫌そうに包丁をまな板に突き刺した。
 僕はまな板の断末魔の叫びが聞こえた様で、ぎくっと体を竦めてしまった。

「珠美ちゃん! 隆志クンに失礼でしょっ! もう隆志クンは自縛霊じゃないし、包丁も
悪くないわよぅっ! 八つ当たりしちゃダメって、ママいつも言ってるでしょぉ〜」
 お姉さんの冴子が僕を庇うように前に立って、珠美という少女を叱った。
 ……全然迫力も、説得力も無かったけど……。
 珠美という少女は、冴子を睨んで僕らに迫ってきた。僕は思わず強張ってしまう。
 僕は目覚めてすぐ巻き込まれた緊迫した空気に、ただおろおろとするばかりだった。

8 名前:学園七不思議-1アフターケア mailto:sage [2006/11/28(火) 19:01:10 ID:cET1ae+J]
>>7
「ただいま〜。くそ〜! スンボリ・アドルフめ、最後の直線で抜かれやがって〜」
 緊張感を壊す様に、無精髭のおっさんが入ってきた。
 珠美の緊迫した視線が僕らからおっさんへと移る。……あ〜、怖かった……。

「……いないと思ったら、また競馬かよ!? クソ親父!」
「おかえりなさ〜い! ダ〜リン! ねえねぇ〜珠美ちゃんったらひどいのよぅ〜!」
 ――親父!? って事はこのおっさんが珠美の父さんで、冴子さんはこのおジンの……?

「おいおい、台所で刃傷沙汰か? な、なんだ!? この血染めのジャガイモはっ!?
 あ〜あ、珠美ちゃんは冴子に似て、料理が全くだめだなぁ……。さ。どいた、どいた」
 おっさんは珠美という少女の脇から水道をひねると、手とジャガイモを洗った。
 そしてまな板に突き刺された包丁を引き抜こうとして、『ぬんっ!』と唸る。

 包丁は抜けない様だった。……何しろ僕はまな板の”叫び”を聞いちゃったしなぁ。
「お〜い! 珠美ちゃん……、まな板は親の仇じゃないんだぞ? パパまだ生きてるし。
 って、あれ? そこにいるのはこないだの学園の少年じゃないのか?」
 おっさんは、やっと今僕に気づいたようだ。
「ど、ども……」
 なんだかよくわからないが、僕はとりあえずおっさんに挨拶してしまう。
「よぉ。早いお目覚めだな。よ〜し、待ってろ! 今俺がうまい夕飯作ってやるからな!」
 おっさんは驚いた様子もなく珠美にまな板から包丁を抜かせると、慣れた手付きで料理
を始めた。
 エプロンに”父入魂!”と書かれているのが、なんだか妙にアンバランスだ。

「よっしゃぁ! お待ち〜! 父入魂の手料理だぞ!」
 あっという間に料理を仕上げたおっさんは、手際よくテーブルに4人分の盛り付けした。
「きゃぁ〜! ダ〜リン、素敵ぃ! おいしそう〜」
「……遅いって、親父! 育ち盛りの娘を餓死させる気かよ!?」
 文句を言いながら珠美は椅子に座る。……やっぱり珠美って子は怖いと僕は思った。
「隆志クン、食事も久しぶりでしょ? さぁ、一緒に食べましょ?」
 優しい方の冴子が僕を食卓に誘う。料理の温かい湯気と香りに、僕はまた驚いていた。
 触覚と共に嗅覚も感じるなんて! ここは若干小悪魔がいるけど天国じゃないのか?
 感動しながら冴子と共に食卓に着いた僕は、瞬時に感動が消え、凍りついた。

 冴子と僕の食事には、盛り付けたご飯に箸が突き刺さっていた。
 ばぁちゃん達が仏様に御供えする時の、あのやり方だ。

 ――そうだ。虐められていた頃にも、よくこういう事をされてたっけ……。
 僕は生前の忌まわしい記憶が蘇り、一気に気分が悪くなって席を立った。
「ぼ、僕はいらない……! こ、こんな物食べるもんか!」
 思わず叫んでしまう。すると、辺りの空気が急に暗く、冷たく感じられて来た。
「あらあら……、嫌な事を思い出しちゃったのかしら? 隆志クン。『負』の”気”が戻
って来ちゃってるわ。珠美ちゃん、何とかしてあげて〜」
 配膳早々『いただきます』も言わずにご飯をかっ込んでいた珠美が、僕を横目で見る。
 こ、怖いけど、こんな少女に負けるもんか!

「んも〜! 今時の奴は箸も使えないんでしょ。しょ〜がね〜な〜、あったく!」
 面倒そうに茶碗を置き、珠美は僕の分の茶碗から箸を抜き取ると、代わりにフォークを
突き立てた。しかもキャラクター入りの女の子用フォークだ!
「ほら。これなら食べれるでしょ? まさか好き嫌いがど〜とか抜かす気じゃないわよね?
 手間かけさせるんじゃないわよ! さっさと座る! そして食え!」

 だから、僕が言いたいのはそういう意味じゃなくて……!
 そう言いたかったのだが、何故か僕は催眠術にかかった様に食卓に座り、震える手が、
意思に反して料理を口へと運ぶ。
 嫌だ! こんな風に出されたご飯なんか食べたくない! そう思うのに、僕は食べてし
まう。そして思わず声に出してしまった。

9 名前:学園七不思議-1アフターケア mailto:sage [2006/11/28(火) 19:01:54 ID:cET1ae+J]
>>8
「……お、おいしい……」
「うちのバカ親父の唯一の取り得だからね。冷めないうちに、さっさと食べな!」
 少女・珠美は『当たり前』とでも言うように、ご飯を頬張りながら茶碗を差し出した。
「お代わり!」
「ほいほい」
 おっさんは笑いながら珠美にご飯を装ってやっている。
「ごめんねぇ〜、隆志クン。乱暴な子で驚いちゃうでしょ。私の子なのに女の子らしくな
くて……。でもね、あれでいて珠美ちゃんって、”お金”と”情”には弱い子なのよ〜」
 珠美がじろっと冴子を睨んだ。冴子は肩をすくめて食事を再開する。
 冴子さん……今の発言は、さすがにフォローになってないと思う……、と僕は思った。
「大体ね〜。生前は虐めだろうけど、今は死んでるんだし。いちいち気にすんなっての!」
 お世辞にもお行儀がいいとは言えないマナーで、珠美は食事をがっついている。

 そうか……。言われてみれば、その通りだ。食事を食べる毎に、さっき冷えた体が再び
暖かく満たされてくる。これは一種の供養なのかもしれない。
 僕は何年ぶりかで暖かい食事を味わった。

 食事が済むと、僕と冴子さんは珠美に引っ張られるように、彼女の部屋へと移動する。
 霊力かなにかで、僕は珠美っていう子に引っ張られているのかもしれない。

 ちょっと待てよ? そうしたらお風呂やトイレも珠美と一緒に行くんだろうか!?
「それはないから。……やっぱりまだ浄化しきれずに、煩悩が出てきてるわね」
 珠美は僕の心を読んだように鋭く突っ込みを入れてきたので、僕はひやっと驚いた。

「……で? どうしたいの、隆志。あんたの遺書には恨みつらみが書かれてるけど、今も
あんたを虐めた奴等が憎いわけ? 自分と同じ目にあわせたいと思ってる?」
 珠美の手には、僕が書いて風邪で飛ばされ消えた筈の遺書があった。
「な、なんで君がそれを持ってるんだ!? き、君が拾って隠してたのか!?」
「はいはい、ストップ、ストップ。また邪念で浄化が遅れるわよ。これは”念写”みたい
なもん。実体はないの。あんたの残留思念からあたしが抜き取ってみただけ」
 珠美はすっと遺書を振ると、僕の遺書は手品のように消えてしまった。
 僕は目覚めてから驚いてばかりだったが、少し余裕を持って考えられる様になっていた。

 ――正直、憎くないといったら嘘だ。あの頃の孤独や屈辱は思い出したくもない。
 だけど、呪い殺したい程か?と考えると、なんだか違う。そんな勇気は元々ないんだ。
 ただ僕は、僕を思い出しもせずに今を暮らしてる奴らに、僕を思い出して欲しかった。
 虐められれば傷つくって事を知って欲しくて、あそこにずっと立っていたんだ。

「そっか、……わかった。んじゃ、早速いこっか」
 僕が何も口に出さないうちに、珠美はコートを羽織り出した。
「い、行くって……!? ど、どこへ……? ちょ、ちょっと! さ、冴子さ〜ん!?」
 僕は珠美に引きずられながら、なんだか怖くなって冴子さんを目で探した。
「あらぁ〜、珠美ちゃんったら。あなたはまだ中学生なんだから、補導されちゃダメよぅ」
 冴子さんがゆらゆらしながら珠美に声をかけるが、どうやら幽体離脱している時の冴子
さんには、僕の心の声が聞こえないらしい。
「そんなヘマするわけないでしょっ! あたしは誰かさんと違うんだから」
 僕の抵抗もむなしく、珠美は夜の街へと歩を早めてゆく。

「えっと、虐めの首謀者は『冴島』か。ふむふむ、平凡な名前だわね」
「だ、だろ……? どこにでもいる苗字だよ。どうやって見つけるのさ?」
 珠美はうるさそうに僕を振り返ると、こともなげに言う。
「あんたの頭の中にクラス名簿が残ってるじゃない。それとあたしのカンだわね。あのさ、
もっとしゃきっとしてなさいよ! 一応ついてるって事はもうわかってるんだからさ」
 僕はまるで生きていた頃の様に顔が熱くなって、思わず股間を隠してしまう。


10 名前:学園七不思議-1アフターケア mailto:sage [2006/11/28(火) 19:02:39 ID:cET1ae+J]
>>9
「あ、『冴島』み〜っけ!」
 珠美は繁華街を一直線に歩き出した。
「え、ええっ!? もう!?」
 驚く僕の後ろから、冴子さんが覗き込んだ。
「ふふっ! 隆志クン、珠美ちゃんは”本物”だもの。私の娘だしね〜?」
「……それが一番のあたしの不幸だけどね……」
「えぇ〜っ!? も〜う、珠美ちゃんのいじめっ子ぉ!」
「いいからちょっと黙っててよ。かーちゃん」

 珠美はすたすたと一人の中年男の前に立ち塞がる。僕は一体何度驚くんだろう!?
 この前髪前線が後退し始めてるおっさんが、あの『冴島』だって言うのか!?

 僕があの非常階段から動けないでいる間に、月日は冴島を確実に中年にしていた。
 同僚らしき男達と、ほろ酔い加減で歩く冴島が珠美を見下ろす。
 珠美はたじろぎもせず、明るく笑って冴島に声をかけた。
「こんばんはっ! おじさんっ! こないだは、楽しかったよ。今日も遊んでぇ〜?」
 連れの男達が驚いた様に冴島に突っかかる。
「おいおい! なんだよ冴島〜! お前、援交なんかしてたのか!?」
 冴島は、僕が見たことのない慌てぶりで、僕はちょっと可笑しかった。

「ば、馬鹿! んな訳ね〜だろっ! お嬢ちゃん、誰かと間違ってないか!?」
 珠美は焦る冴島に、けろっとして言う。
「やだなぁ、冴島のおじさんってば! こないだ夜明かしでカラオケ一緒にしたじゃん!
 また酔っ払って忘れてたんでしょ? 今日も行こうよ、ねっ!?」
 たじたじしていた冴島の鼻の下が伸びてくる。
「そ、そうだっけ……? しょ、しょうがね〜な〜! こ、今夜は俺、短時間で帰るぞ?」
「うんっ! いいよっ! おじさん、奥さんがこっわ〜いんだもんね〜?」
 珠美はしれっと言いながら冴島の腕にぶら下がり、引っ張り始める。
「お〜い、冴島! 奥さんにちくっちまうぞ! 今度は俺らも誘えよ!?」
 背後で冷やかす同僚に、冴島はやや自慢そうに言い返すと、珠美と一緒に歩き始めた。

 ラブホテルの前で立ち止まると、冴島は助平そうに笑う。
「こ、今夜はここでいいかな? お嬢ちゃん」
 いかにも下品そうな安ホテルだが、珠美は気にせずに言う。
「うんっ! さ、いこいこ! おじさん」
 二人がホテルに入っていくと、引っ張られながらも僕は心配になった。
 冴島は虐めっ子の中でも一番腕っ節が強くて乱暴だったんだ。珠美は大丈夫なのか……?
 僕が振り返ると、冴子さんは『心配ないわよ』と言う様にウィンクして見せた。

 ケバケバしいホテルの一室に入ると、珠美は早速カラオケマイクを探し始める。
 その背後から、スケベ心丸出しで冴島が珠美に抱きついてきた。
「ちょ、ちょっと! おじさん、重いってば! カラオケするんでしょっ!」
 押し倒されながら、珠美は冴島の下でもがき始める。冴島は中年太りで重量級だ。
「カラオケなんか後でいいよ。ホテルに来たらまずやる事があるだろ?」
 スケベ顔丸出しの冴島は、昔の面影を残していた。
「ちょ……っ! やだっ! おじさんってばっ! せめてお風呂入らせてよっ!」
 珠美は冴島を振り払おうとするが、脂ぎったオヤジの冴島はにたりと笑う。
「駄目だね。おじさんはお嬢ちゃんの汗の臭いをかぎながら、やらしい事がしたいんだ」

「さ、冴子さんっ! た、珠美ちゃんが危ないよっ!」
 ああいう顔をした時の冴島は、執拗な程残虐なんだ! 僕は冴子さんに縋りついた。



11 名前:学園七不思議-1アフターケア mailto:sage [2006/11/28(火) 19:03:33 ID:cET1ae+J]
>>10
 だが次の瞬間、冴島の巨体は宙に浮きダブルベッドの下へと投げ飛ばされた。

「典型的なガッツキ野郎ね。最低〜。弱いもの虐めが未だに楽しくて仕方ないみたいね」
 珠美は汚いものに触られたという様に、ベッドの上で衣服をはたいていた。
「こ、このアマ……! 優しくしてりゃ付け上がりやがって!」
 怒り狂った冴島は、まるで真っ赤な豚の様に見える。珠美はしれっとしている。
「どーこーが優しいんだっつの! このエロオヤジ! そうやって過去どの位弱い者虐め
をしてきたか、覚えてる?」
 珠美の眼が冴島を射すくめる様に見据えると、”あの”冴島が一瞬怯んだ。
「覚えてなんかいないよね? オジサン。あたしが見せてあげる。ほら、隆志出といで!」
 ――ぼ、僕!? 驚く間もなく、僕は冴島の前に実体化させられた。

「や、やあ……。冴島君。ひ、久しぶりだね。ぼ、僕を覚えてるかい?」
 む、無理だよ! 珠美! ぼ、僕はこいつが憎い以上に怖いんだ! 僕は情けなさそう
に、珠美の顔を振り返った。死んでまでこんな目にあうなんて、酷いよ! 冴子さん!
 だけど、せせら笑う様な冴島の一言で僕の中の何かが弾けた。

「……? 誰だよ、お前。いっちょ前に俺を間男扱いしようってのか? アホらしい」

 だ、誰だよ、だって……?
 こいつ、僕の顔さえ覚えてないのか!? 中学時代から散々虐めたこの僕を!?
 僕の奥底からどす黒いものが沸きあがってきた。

 横にいる珠美が静かな声で言う。
「この子はね。”内藤隆志”クンだよ、オジサン。中学時代からの同級生を覚えてない?」
 冴島が少しの間考え込む。そして一度首を振ると、またも馬鹿にする様に笑った。
「知らねぇな。あの頃は小虫何匹かで遊んでたし、いちいち覚えてるかよ! で?
 そいつはその内藤とやらの親戚か何かで、俺に嫌がらせでもしたいってのか?」

 僕はその言葉で体が煮えたぎった。体の細胞が沸騰し、体毛が逆立っていくのがわかる。
「ば、化け物!」
 冴島の僕を見る目が、嘲りから恐怖に変わってきた。僕は裂けてゆく口でにたっと笑う。
「はい、隆志。ストップ、ストップ! それ以上エレクトしたら戻れなくなるよ!」
 珠美が僕を制したが、僕の股間のどす黒いものは留まろうとせず、快感でいきり起った。
「止まれっちゅ〜てんだろが! 隆志! 霊静の印、緊縛!」
 そんな印は聞いた事がない。だが、珠美がそう叫ぶと僕の体は動けなくなり、次第に僕
を支配していた、どす黒く猛るものが萎み始める。
「かーちゃん、隆志を抱きしめてやって」
「おっけ〜! 珠美ちゃ〜ん」
 冴子が僕を抱きしめてくれると、体からす〜っと熱い怒りが和らいでゆく。


12 名前:学園七不思議-1アフターケア mailto:sage [2006/11/28(火) 19:04:59 ID:cET1ae+J]
>>11

 珠美は安ホテルのベッドに腰掛けると、腰を抜かした冴島を見下ろして話し始める。
「驚いた? 冴島のオジサン。調べによるとあんたはその図体で周りを従わせて、かなり
無茶やってきたみたいね。今の子は、あんたらの虐めで自殺した子の一人よ。
 あらら? 他にも何体か取り憑いてるね〜。その太り方もただの中年太りじゃないなぁ。
 オジサン、死相が出てるよ? なんかもう、すっかり運に見放されてる〜って感じ?」
 冴島は珠美の言葉に青ざめながらも、精一杯の虚勢を張った。
「お、脅かそうったってそうはいかねぇぞ! な、なんかの仕掛けがあるんだろっ!?」

 珠美はまるで悪魔の様に微笑んだ。
「仕掛けねぇ……。後ろの人に貰ったものはあるけど、これだけだよ」
 そう言うと、首にかけていたポシェットからポラロイドの様な物を床にばら撒いた。
 ――それは、冴島が珠美とこのホテルに入る場面の写真だった。
 ちゃっかり珠美の顔だけはうまく隠れて映っており、日時まで入っていた。
 これには冴島も度肝を抜かれたようだが、まだしぶとく喰らいつく。
「ど、どうやってこんな物……!? ついさっきなのに何でお前が持ってるんだ!」

 珠美は興味を失った様に、手に取った安ホテルのカラオケカタログをめくりながら言う。
「だからさぁ〜。言ったじゃん。オジサン、かなりの故人に恨まれてるよって。
 それってさ、念写っていうらしーんだよね。オジサンの背中に憑いてる人がくれたの。
 会社とか自宅にも届くかもね。こうやっていつの間にかバックに入ってたみたいにさ」

 さすがの冴島もこれがトドメとなったらしい。
「こ、困るよ! お嬢……いや、君! き、君なら何とかできないのか!?」
「なんとかって?」
「お、お払いとか。供養とかさ! さっきの化け物を消したみたいにで、出来るんだろ?」
 珠美はカラオケカタログからゆっくり視線を上げ、冴島を見下ろした。
「出来るけど。あたし、別にボランティアじゃないしな〜」
「か、金なら出すよ! た、頼む! い、今5万ならある!」
「……オジサン。相手が子供だからって嘘はよくないよ。財布には10万とカードあるよね。
 小銭も結構あるなぁ。図体の割に『しみったれ』ってやつ?」
 冴島はみっともない程狼狽し、財布の入っているポケット数箇所を無意識に押さえてい
た。

「オジサンさ。自分の命を値切る人? まぁ、今払ってもそういう心構えじゃね。
 また新たに取り憑かれるだろうから無駄だね。……さて。ここ、新曲無いし帰ろっかな」
 珠美はベッドにカラオケのカタログを放り投げると立ち上がった。
 冴島は慌ててあちこちから財布を取り出すと、珠美の前に差し出して懇願する。
「す、すまん! こ、これが今の全財産だ! 全部渡すから助けてくれ!」

 全ての財布から金を抜き取り、ポシェットに入れた珠美は、空の財布を冴島に返した。
「しょうがないな。言っとくけど、オジサンが態度改めないとまたきっと憑くよ?」
「わかった。わかったから今憑いてるのだけでも何とかしてくれ!」
「了解。商談はスムーズかつ迅速にね。足元見てたら大成しないよ?」
 やけに大人ぶった口をきくと、珠美は医者がメスを求めるような手付きをした。

13 名前:学園七不思議-1アフターケア mailto:sage [2006/11/28(火) 19:06:00 ID:cET1ae+J]
>>12

 差し出した手には、赤いピンヒールが現れる。
 珠美はそれを見て『うげ。』と呟くと、冴島の背中を赤いピンヒールで叩き始めた。
 小声で何か呟いてるのは呪文だろうか……? 僕には聞こえてこなかった。
 ただ、ピンヒールで叩かれている冴島の顔は恍惚として、見たくない程醜悪だった。
 ――こんな奴にずっと脅えていたのか……。僕は自嘲気味な笑いが浮かんできた。

「はい、終わり。毎度あり〜。じゃーね、オジサン! さ、帰ろ。隆志、かーちゃん」
 放心した様に安ホテルのフローリングに正座した冴島を残し、珠美はホテルを後にした。
 勿論、くっついている僕と冴子さんも一緒だ。

「どお? 少しは気が晴れた? 隆志。やっぱりまだあたしの中で浄化した方がいいね」
 ポシェットの重さを楽しみながら、珠美は僕に話しかけた。
「き、気は済んだけどさ……。僕の他にも冴島になんか憑いてたの?」
 珠美は可笑しそうに声を上げた笑った。
「虐めは確かにしてたけどね。実際、自殺までしちゃったのは隆志だけ。後はハッタリ!」
 冴島よりひどくないか……? 珠美って……。
「そ、それと……。あ、あの赤いハイヒールは呪術の道具なの?」
 珠美は思い出したように眉をひそめ、舌を出して見せた。
「……んげ。んな筈ないでしょ! あれはあの冴島の潜在願望が産出したアイテムよ。
 あいつ、実はマゾだったみたい……。やな事思い出させないでよっ! さ、帰ろ!」
 とても冴子さんの娘とは思えない、ちゃっかり者の珠美は鼻歌混じりに歩き出した。

「ね? 言ったでしょぉ〜。隆志クン。珠美ちゃんは”お金”と”情”に弱いって」

 よ、弱いのかなぁ……? 僕はやっぱり、珠美は怖いよ、冴子さん……。
 でも、僕の思い出したくなかった記憶は、さっきの冴島の醜態に上書きされていた。
 溜飲が下がる、というより憎む気持ちが萎えてしまったのは確かだったんだ。

 僕は聞きそこなった質問を冴子さんにそっと聞いてみた。
「珠美ちゃんがハイヒールで殴ってる間呟いてた言葉は、除霊の呪文か何かなの?」
 すると、冴子さんはちょっと困ったような顔をして、僕の耳元で囁いた。
「珠美ちゃんって、印の呪とか暗記系が嫌いなのよぅ〜。不精な子でね。さっき呟いてた
のは、つまり、『メリーさんの羊』っていう歌なの。……力はある子なんだけどねぇ……」

 ――聞かなきゃよかった……。そういえば今歌ってるのも”それ”だ……。
 僕は僕を担当してくれたのが、冴子さんで良かった! と心から思いつつ珠美を追った。

            とりあえず fin


14 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/28(火) 19:51:15 ID:OgSKAlDx]
続編ktkr!
珠美ちゃん凄っす!
冴子ママカワイイ!
こ、この勢いでエロも・・
アフターケア強烈w
今回もGJ!

15 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/29(水) 00:48:06 ID:MhIVqrjr]
>>1
乙!!

>>6続編来てた!w
勢いのある文章とテンポのよさがいい!
今回は珠美ちゃん活躍かー
パパか隆志とのエチーもwktk

16 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/29(水) 13:37:03 ID:7KTPEL7X]
>>1乙!

>>6 スゲーワロス!GJ!
親子のやり取りがよかったw
前作もだが、無造作に書いてるみたいだが
文章構成が巧みでテンポが小気味いい!

いっそ親子どんぶりのエロも・・・w
今後の展開に期待してます!



17 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/29(水) 23:49:31 ID:C68Mp4ip]
>>6
今回もGJ!!
ややエロパロっぽくないが、リアルと二次元がうまく絡み合って、
下手したら欝になる話がブラックっぽいコメディで昇華されてる。
いいよ!
こんなの読んでみたかった!!


18 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/11/30(木) 07:03:43 ID:tJlJPOg8]
>>1 乙!

>>4 乙!

>>6  乙!
母娘の、続きを・・・続きを早く・・・
エロで頼みます!


19 名前:名無しさん@ピンキー [2006/12/01(金) 05:59:15 ID:stpkFtLU]
平沼赳夫信念に生きる
www.choujintairiku.com/keisho/shinnen.html

20 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/01(金) 23:59:21 ID:T9ZYVEwZ]
>1乙

>学園七不思議
前スレのも読んできたけど、テンポ良くて面白いすわ
鬱へ持っていき易い設定を、さくっと軽快にこなしちゃうのが美味



21 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/02(土) 22:48:38 ID:Lac1Khje]
保管庫の管理人様、そろそろ前スレの保管夜露屍喰〜。

22 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/03(日) 22:59:55 ID:nLepI2ZZ]
学園七不思議 様 と一部ネタが被ってますが投下したいと思います。

最初読んでダメだと思ったら題名でNGワードをお願いします。
エロがまだ無いのでごめんなさい。
誤字脱字、日本語がおかしい所があったらごめんなさい。

題名は「幽霊の恋捜し」 ……始まります。

23 名前:幽霊の恋捜し 1/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:00:28 ID:nLepI2ZZ]


 ――まだ、死にたくなんて無かった。
 やり残した事、並べれば掃いて捨てるほど。
 やりたい事、考えればそれこそ海の水の分子よりも多く。
 でも……本当にやりたい事、やり残した事は一つだけ。
 それは――



 交差点の信号が赤から青に変わり、待っていた色とりどりの車が走り出す。
「……」
 運悪く信号の変わり目に横断歩道の前に辿りついた俺は、黄色い歩行信号のボタンを押して変わるのを待つ。
 しかし……長い。
「あっつぅ」
 上を見れば太陽がちょうど真上。
 時間にして昼前だが、この暑さの所為か斜め向かいの所に見覚えのある制服を着た女の子が一人いるだけだ。
 ……って、夏休みだったか。
「このまま突っ切るか?」
 車が常時行きかう二車線の道路を突っ切ろうと考えるほど暑い上に長い。
 無論、そんな事をすれば回りにふわふわ浮いてる"ヤツラ"の仲間入りを果たす事になるだろうから、真っ平ごめんだが。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……」
 退屈しのぎに"ヤツラ"を数える。
 ……総計27体。こういう交差点としてはかなり大目。
 大抵は、遺族などが供養するためこういった交差点では"ヤツラ"は成仏して少ない。
 と、信号が黄色に変わったのか車の流れが途端に緩やかになる。
「やっとでか……」
 歩行者用信号機から流れるメロディを聞きながら白い白線の上をゆっくりと歩く。
「――っ」
 それがよほど気に触ったのか"ヤツラ"が猛然と俺へと突っ込んでくる。
 これも仕事……面倒極まりないが。
『祓い、清めたえ』
 刀を抜くわけでも札を使うわけでもない。
 俺は一言、そう呟くだけで"ヤツラ"を掻き消す。
 本当は、話を聞いてやったりしてやるべきだが雑霊程度はこれで十分。この程度が相手なら苦労が跳ね上がるだけで手間が
かかって仕方ない
「ん」
 俺が渡り終える頃にはさっきまで居た霊達は消えて、霊感のある人間にもただの青い空しか見えないことだろう。否、そのはずだった――

24 名前:幽霊の恋捜し 2/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:01:00 ID:nLepI2ZZ]
「……!?」
 唐突に聞こえたのは車が、なにか柔らかいモノにぶつかる音とその直後に何かが地面に落ちる湿った音。
 そちらを見てみれば、さっきまで信号待ちをしていたはずの女の子がぐったりと倒れている。
「――って、おいっ!」
 当然、轢いたと思わしき赤い乗用車の運転手がその子を介抱したり、救急車を呼ぶべきなのだろうがあろうことか猛スピードで
走り去った。
「ちっ」
 ごとん、と動かない人間を踏んで。
「――事故と事件の半々です。女の子が轢き逃げされました。救急車を――」
 ポケットから携帯を取り出し、119番へと掛けてこの場所へ来るように手早く言うとさっさと切る。
 俺が通報して間に他の運転手達が彼女を歩道へ寄せてなにやら介抱をしているが、おそらくはもうダメだろう。
 なぜなら――
「……」
 俺の横に彼女が浮いていたから。
 何処も見ていないような目でぼぉっとしたまま浮いて動かない。
 ……綺麗に整った横顔も背中の中ごろまで伸びた艶やかな髪も既に半透明。この状態を――幽霊という。
「くそっ、来いっ!」
「ぁ……!」
 こうなったのも俺の責任。
 俺がもっと、早く"ヤツラ"を祓っていれば。
 俺がもっと、上手に"ヤツラ"を祓っていれば。
 俺がもっと――!
 ……だから、この幽霊少女の手を強引に引っ張り、近くの公園へと連れてくる。
「?」
 言い方は悪いがこいつはいわば「死にたてほやほや」
 上手くすれば、このままこの世に恨み辛みを抱かずそのまま……逝ける。
「名前は?」
「……名城、雪」
「そっか」
 人間で言えば赤ん坊と同じ。殆ど幽霊としても白紙だ。
 だからこうやって素直に答えてくれる。
「お前の未練は、なんだ?」
 幽霊は総じて未練を持つ。
 でなければ、辛いこの世には居ない。
「みんなと、学園祭、したかった……」
「……違うだろ?」
 幽霊がこの世にとどまればとどまるほど未練は募る。
 それは、家族の安否とか、物欲などであるが、真なる未練はもっとエゴに凝り固まっている。
 こいつのは、まだ柔らか過ぎる。


25 名前:幽霊の恋捜し 3/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:01:34 ID:nLepI2ZZ]

「お前は、何をしたかった?」
「私は……」
 死んでいきなりにこういう事聞くのは酷なのは自分でも分かっている……けれど、せめてこいつには
幽霊の苦しみが分かる前に逝ってもらいたい。
「私は……!」
 がたがたと、周りのベンチが地震でもないのに微動し、音が鳴る。
 それだけじゃなくて、周りの木も風もないのにゆれ始める。
「私は――っ!!」
 近くに居た俺さえも軽く吹き飛ばす圧力――いわゆる、騒乱現象《ポルターガイスト》。
「ちっ!……『祓い、清めたまえ』」
 俺は舌打ちの後、簡単な祝詞を唱えてポルターガイストを引き起こしている幽霊少女へ近づき、
「……あ」
 軽く抱いてやる。
 頭を軽く撫でるオマケ付きで、だ。
「落ち着け、何も怖い事は無い。……俺が送ってやるから」
「……くっ、は……すん……」
 彼女は顔を俺の胸板に押し付け、泣いたような声を上げる。
 ……何も知らないまま、逝かせる事はもう不可能。できるのは未練の解決か、強制かの二択だ。
「私は、ぐす……恋が、したかったです……っ」
「……そうか、そうだよな……」
 この位の年頃になれば、当然ともいえる望み。
 いささか綺麗過ぎる気もするが、彼女の言霊は本気であると告げている。
「名前……」
「ん?」
 そう何分か泣いていたかと思うと、顔を上げてそんな事を訊いて来る。
「もしかして、俺のか?」
「はい……私は言いましたけど、貴方のは聞いてません」
 そういえばそうか。
「俺は、四倉……冬麻だ」
 何がうれしいのか、俺の名前を聞いた途端、顔を綻ばせる彼女。
 俺はこんな子を殺して、しまったのか……拝み屋、失格だな……。
「……」
 空は相変わらず蒼いまま。
 けれど、少し泣いているように見えるのは……考えすぎだろうか?





26 名前:幽霊の恋捜し 4/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:02:05 ID:nLepI2ZZ]



「と、とととトーマさんっ!」
「雪ちゃん、落ち着け」
 そんなこんなで2ヶ月。
 ナンバーを覚えていたヤツの協力により、轢き逃げした野郎は捕まり只今裁判中。……ではあるが、実は轢き逃げから逃げる途中で
雪ちゃんを轢いたのだからやるせない。
 これでは免許取り消しの上に、懲役刑は免れまい。
「ん……上手になったじゃないか」
「えへへへ」
 鍋からお玉で一口分味噌汁を取って吸うと、ちょうどいい感じの塩味がする。
 最初は下手だったが、流石は死んでも女の子。凄い勢いで上達し、今では自炊をしまくっていた俺よりも上手だ。
「それじゃ、用意しますね」
 そう言うと彼女半透明な腕を使い、味噌汁を食器へと注ぐ。
 何の因果か、この雪ちゃんはポルターガイストを精密に使えるらしくこういった事が得意らしい。
 生前には開花しなかった才能……といえば聞こえはいいがこんな能力、幽霊にでもならなければ意味が無い。
「はい、どうぞー」
 ニコニコと半透明の手で白いご飯がこんもりと入ったお茶碗や、味噌汁の入った食器をちゃぶ台へ並べていく。
 その手際は最初に比べると格段に早い。
「いただきますっ」
 両手を合わせ、最初はご飯から手を付ける……うん、炊飯器もちゃんと使えるな。
「……♪」
 尻尾があったら千切れんばかりに振るような人懐っこい笑顔で、俺の食べる様を見ている雪ちゃん。
 前に「なんでそんなに嬉しいんだ?」と聞いたら「男の人に私のを食べて貰ってるから」と聞き様によっては非常にマズイ
答え方をされたが、要は人の助けになる事が嬉しいらしい。
「ん……ご馳走様でした」
「お粗末様ですっ」
 そう雪ちゃんが言うは、かちゃかちゃと力で食器を重ねてシンクへ持っていく。
 他人から見ると、食器だけが宙に浮いてるだけに見えることだろう。
「それじゃ、学校行くけど雪ちゃんも来る?」
「えーと、行きますから待ってくださいー」
 何の因果か、クラスと学年こそ違うが彼女と俺は同じ学校であり、彼女の"恋"の相手を探すことになる。
 生前は、気立てのいいちょっとドジな子だったらしいがそこそこモテたようだが、彼女自身あまり相手にしていなかったらしい。
 それでなんで『恋をしたかったのか』なのかは全く分からないが。
 と、水の流れる音が止まると同時に、制服の上に着ていたエプロンを脱ぎ捨てる……落ちたエプロンが消えるのはご愛嬌。
「ほら、置いて行くよ」
 自転車通学の身としては出来るだけ余裕のある時間であちらに付きたい。
「ち、ちょっとぐらい待ってくだ……ぐゅにゅっ!」
 ……そう思って急がせると後ろから変なうめき声が聞こえる。

27 名前:幽霊の恋捜し 5/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:02:37 ID:nLepI2ZZ]
「またか、雪ちゃん?」
「ご、ごめんなさい……」
 拝み屋の宿命としてこのアパートの部屋には霊的加護をある程度持たせているし、そういった物品がおいてある。
 そして幽霊は壁だろうが地面だろうが通り抜けて進むことが出来るが、その例外が、霊的加護の掛かっている物品である。
 つまるところ……幽霊がコケた、ということだろう。
 まぁ、俺が整理してない所為な訳だが。
「ほら、急ぐぞ」
 正直一秒一分も惜しいから転んだままの雪ちゃんをずるずる引っ張る。
「うわ、ぎゃ! どぁ!? た、立ちますから! ぶぅ?! 手を離してください〜!!」
「……そうか?」
 この前は立ち上がった瞬間、棚の中にあった符をポルターガイストで引っ張ってノックアウトされたばかりだというのに元気な事だ。
「ほらっ、立てました!」
「……立って当然だと思うぞ? ほれ行くぞ」
「あーん、トーマさんが優しくないー」
 そんな風にゴタゴタしながら、アパートを出て、
「えっと、私が鍵掛けますから先に自転車だしてくださいー」
「ん、分かった」
 最近雪ちゃんは習得したばかりのサムターン回しの完成度を上げるのがご執心らしく、毎朝これだ。
 ……金に困ったらやってもらうか? って、それは犯罪か。
「トーマさん、終わりましたー」
「早いな、いつもは五分くらい掛かるのに」
 だからこうやって急いでる訳だが。
「へへ、今日は一発です」
「……ん、良くやった良くやった」
 頭を撫でて! 撫でて! とばかりに俺の前に頭を突き出されたので、髪がくしゃくしゃになるくらい思いっきり撫でてやる。
「はふぅ〜〜♪」
 このまま成仏しかねないほど、ふやけた表情でそれを享受する雪ちゃん。
 やっぱり変わってるな。
「……さて、行くぞ」
「あ、はいっ!」
 俺は自転車に跨り、
『祓い、清めたまえ』
 祝詞ので自転車の穢れを祓う。
 本来なら必要の無い作業ではあるが、これにはちゃんと理由がある。
「ん、いいぞ」
「おじゃましまーす」
 そう雪ちゃんが言うと、自転車の荷台へふわりと腰掛ける。
 彼女に「恋するなら人らしく」と言われて、"人らしく"の一環としてこうやって通学している。
 別に重さがある訳でもないので楽なのだが……

28 名前:幽霊の恋捜し 6/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:03:21 ID:nLepI2ZZ]
「もうちょっと、離れてくれないか?」
「えー」
 二人乗りの基本として、後ろに乗る側は当然、前にしがみ付く体勢になる。
 それを雪ちゃんは、ぎゅぅとぬいぐるみか何かのように俺に抱きつく。それだけならまだしも、背中にふっくらとした物が
押し付けられるのだからたまらない。
 それを止めさせようといつも言っているのだが、こうして不平そうな声を上げて離れる事が朝の日課だ。
「行くぞっ」
 本当は一人だけなのに、思わず思いっきり力を込めてペダルを踏むと、結構な速さで自転車は走り出す。
 流石に10月、そろそろ寒くなってくる。
「今日は……そっちの教室行けませんか?」
「ダメ。『人らしく』って行ったのは君だろ? 授業はちゃんと受ける」
「……はぁい」
 元気のない返事と共に腰に回された腕の力が少しだけ強くなる。
 幽霊は霊感のない人間には見えない訳ではない。
 一応見る為の手段は無きにしもあらずで、幽霊と本人のどちらも強く思えば見る事が出来る。
 流石に見えない彼女をそこまで持っていくには、凄まじい苦労が必要だがその為の俺だ。
 部屋にある物品のいくつかを使えば、一時的に現実の物へと変化させる事が可能であり、その事はちゃんと伝えている。
「あの……もしかして私は、お邪魔ですか?」
 例の交差点を通り過ぎ、学校まであと十数分の距離になって雪ちゃんが、突然そんな事を言い出す。
 三日にいっぺんにある問いで、答えは当然決まっている。
「邪魔なら、即刻祓ってる」
「……もうちょっと違う答えが欲しいです」
 今日はいつにもましてワガママな日らしい。
「邪魔なら……飯炊いてもらったり、弁当作ってもらってない」
「あ……」
 ちょっとだけ驚いた声が風に流れる。
 それに満足しながら俺は続ける。
「だから、自信もって『恋』をしろ。ただ暇だからそんな事をしていた訳じゃないだろ? 好きな奴に食べてもらいたいから
こうやって勉強して練習したんだろ?」
「……はい」
 薄々と感じていたが、そういう理由だったのか。
 こういうところでしおらしいというかなんというか。
「だから、早く相手を見つけてその腕を振るってやれ」
「あ……はいっ!」
「いい返事だ――飛ばすぞ!」
 時計を見れば既に時間ギリギリ。
 話しながらだったもので思わず減速してしまった。
「あは、いい人探しますからもっと早く走ってくださいな。トーマさん♪」
「へいへいっ!」
 学校に近づくごとに、冬服に身を包んだ生徒がどんどん増えていく。
 俺ももちろんその一人だが……雪ちゃんだけは夏に死んだから夏服。
 本人でもないのに、それが何故か……無性に寂しかった。





29 名前:幽霊の恋捜し 7/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:03:53 ID:nLepI2ZZ]



「……! ……っ」
 聞く気のない英語が、私の右耳から左耳へ抜ける。
 既に二学期が始まって、学園祭を前にした妙な静けさや熱気で私からはみんながそわそわしているように見える。
「むー、つまんない」
 もともと苦手な英語だからやる気も少ない身としては正直聞いてたくないけど、仕方なく教室の後ろのカバン置き場に腰掛けて
授業を受けている私こと名城 雪。
 まぁ、こうなってしまった以上、勉強なんて意味無いけど。
「……」
 今朝、トーマさんの教室に行きたいと言われたら断られてしまったがそれにはちゃんと意味がある。
 実は昨日、席替えがあって、死んでしまった私の席はもう無い。
 本当はこの学級が卒業するまで置いておくつもりだったらしいけど、私の席に置いてあった花を見るたびに泣き出してしまう子が
続出して無くす事になったらしい。
 ……泣いてもらうのはありがたい事だけど、こうやって席が追い出されるととてつもなく寂しい。
「りっちゃん……こっち向いてよ……」
 一番の親友に近づいて声を掛けても、先生の書いた英文を一生懸命ノートへ書き写すだけ。
「ゆめちゃん……私、ここにいるよ?」
 小学校からの腐れ縁の友達に呼びかけても、彼女はシャーペン回しを止めない。
「先生っ!」
 退屈で居眠りしてしまった時に、教科書の端で叩かれ「寝過ぎはバカになるぞ」と言ってくれた先生は、私の声を無視して
板書を続ける。
 ……周りを見れば長袖の冬服で、私は、半袖の夏服。
 もう、この教室では過去の存在な私の居場所は、彼女達の記憶の中にしかない。
 それがとても寂しいと思う反面、ありがたく思っている自分が居るのも確か。
 「死んだ人間が生きた人間を縛っちゃいけない」とはトーマさんの台詞だけど、今になってその意味が良く分かる。
 もし、りっちゃんが私が死んだ事で引き篭もりになったら未練は一つ増えるだろうし、ゆめちゃんが元気なくなれば私だって苦しい。
 だから、幽霊は普通の人に見えないのかもしれない……でも私の未練を考えれば難しい事極まりない。
 そもそも『恋』の定義すら難しいのに、私はしてみたいと言ったらしい……その辺の記憶は曖昧で覚えていないけど。
 その前代未聞の未練解消の方法としてトーマさんが考えたのは、私を学校へと連れて行くこと。
 トーマさん曰く、私に「恋」をして会いたいと本気で願っている人がいれば私の姿が見えるらしいので、学校でその相手を
探すというある意味雲を掴む様な方法だ……結局誰も居ないみたいだけど。
「はぁ……」
 大きな溜息をつくと、気まで抜けてくる。
 大体、相手から見えないのに「恋をしろ、恋をしろ」と言ってくるトーマさんもちょっと問題アリだと思う……もしかして
私って魅力がないのだろうか?
 (私が見えているのは、トーマさんだけ)
 それが分かっていないのか、見合いを勧めてくる仲人さんのようにしつこく言ってくる姿は鈍感というかなんというか。

30 名前:幽霊の恋捜し 8/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:04:26 ID:nLepI2ZZ]
「ん……」
 この教室がとても寒くて、教室の天井を越えて真上の教室へ上る。
 配水管とかがある層を超えるとそこは三年生の教室。しかもトーマさんのいる所だ。
「あは、名城 雪、さんじょー♪」
 と、元気に声を上げてみるが、珍しくトーマさんの反応がない。
 あれれ? と思って窓際の一番後ろの席を見てみると、体を傾けてぐっすりとお休み中。黒板は……古文かな。確かに
つまらない授業なのは同意だけど、私だけ授業を受けろって言うのはヒドイと思う。・
 ……いつも私が先に寝てしまうから、寝顔なんてものは見た事無かったけど、これはこれでラッキーかな?
「う、んん……」
 寝苦しそうに頭の場所をずらして、また熟睡モードに入るトーマさん。
 起きてる時は目つきが凄く悪いけど、こうやって寝ていると日向で寝ている子猫のような顔をしていてちょっと可愛い。
 ……ここで起こすと勉強しろ! と怒られるので大人しくこのままで居ようかな?
 それにしても今朝のトーマさんはかなり優しかった。
 鍵掛けが一発で成功して撫でてもらいたいなぁと思ったら本当に撫でてもらえるし、いつもと違う答えが欲しいなぁと思っ
たらちゃんと考えて出してくれた。
 その上、寝顔まで見れたのだからもう一つくらい出来そうな気がする。
「っっ、く、ト、トーマさぁ、ん」
 思わず彼の机にすがり付いて泣いてしまう私。
 もしかしたらこの調子で誰かに見つけてもらえるかもしれない……一瞬そう思ったけどそれはさっき痛いほど無理だと思い知らされた。
 私が8月の初めに死んで、二ヶ月。
 家族は泣いているけど一生懸命生きていて。
 友達は、涙を堪えて勉強して。
 先生達は、生徒が泣かないように我慢して。
 そうなったらもう、私がここに居るなんていうのは害悪でしかない。だから私は――トーマさんの傍でしか存在できない。
「トーマさん……好きです」
 ふっ、と漏れたのは……多分本心。
 だから同棲を始めた時に「料理をやらせてください」と言った筈だ。
「トーマさん、大好きです……」
 そんな思いを、なぜ持ったのか、いつから持ったとも分からない。
 けれど、あえて考えるなら私が死んですぐに抱きしめられた時なのかもしれない。
 ……物凄く鈍感でちょっと乱暴だけど、私みたいな面倒事を絶対投げ出さないトーマさんは、凄く……大好きだ。
「それじゃ、屋上にお弁当持ってきてくださいね?」
 昼ご飯は私の作ったお弁当を食べてくれる。
 最初はヒドイ物だったけど文句を一つ二ついうだけで結局全部平らげるのだからトーマさんは凄い……私もちょっとくらい
お返しはした方がいいよね。
「……ん」
 トーマさんの頬に触れるだけの、キス。
 それでも寝こけるこの人が凄く可愛くて3回も同じ事を繰り返す。
「昼休みに会いましょ、トーマさん♪」
 少しだけ心の重みが取れて、体がいつもより軽く感じる。
 ……もうちょっと、大胆に攻めちゃってもイイかな?







31 名前:幽霊の恋捜し 9/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:04:58 ID:nLepI2ZZ]



 拝み屋をやる以上、古文なんてのは必修科目。
 ここでやらなくてもいろいろ勉強してあるから寝てても点数が取れてしまう
「ん、ん〜〜〜〜っ!」
 ……という訳で、授業が終わって思いっきり背筋を伸ばす。
 睡眠時間が足りない訳ではないが、休める時に休んでおく主義なのでこうやって寝ている。
 さて、と、雪ちゃんの作った弁当食べるとしますか。
「おい、冬麻!」
「あぁ?」
 そう思って屋上へ行こうと立ち上がると、野郎に声を掛けられる。
 正直、人付き合いは面倒なのだが。
「お前のその弁当……女の子が作ってるだろ!!」
「どうしてそう思う?」
 この前は雨だったので仕方なくここで食ってたらこの野郎が「女の弁当だ!」と騒ぎ出して、それ以来、俺に恋人がいる疑
惑が立っている。
 雪ちゃんが作っているのだから女の子が作ったという目測は当たってはいるが、それを認めるのは吝かではない。
「男の弁当ってのは結構適当にオカズを詰め込む傾向にある……が、だ、お前のは一つ一つ丁寧に詰め込んでいる――これが
俺の推理だっ!」
「……俺が几帳面だから。以上反証終了」
 「んなわけねー!」という叫びはこの際無視。
 雪ちゃんが待っている屋上へさっさと向かう。
「……あ」
「ん、待ったか?」
 この時期に屋上で食べる人間など皆無で、居たのは幽霊である雪ちゃん一人だけ。
 絵的には薄手の夏服でかなり寒そうだが幽霊である以上、外界の変化などとは無縁の存在だ。
「いえ、今来たところです……隣どうぞ〜」
 そう言われ、雪ちゃんの隣の冷たいアスファルトへ座り込む……お決まりの台詞を楽しそうに言って楽しむのはいいが、本
来の目的を分かっているのだろうか……?
「ささ、お弁当を開けてみてくださいなっ」
「はいはい」
 最初、お弁当を作る時はいくらか手伝ったがこの数週間の内に入る事を禁止されてしまった。
 空けてびっくりの玉手箱にでもなるんじゃないかと内心ビクビクしたものだが、それ以来及第点レベルまでになっていて驚いたものだ。
 という訳で、弁当箱を開けてみるとシンプルなもので、白いご飯にふりかけ。オカズの方は、卵焼きに唐揚げ、ホウレン草の胡麻和え
という中身だった。
「えーと、今日はシンプルイズベストでやってみました〜」
「確かにシンプルだが……良く出来てるんじゃないか?」
 こういったものは如実に実力がでる事が非常に多い。
 彼女の今の実力なら……大丈夫だとは思うが、初期の頃の味が舌に復活して気分が悪くなりかける。
「い、いただきます」
「はい、どうぞっ」

32 名前:幽霊の恋捜し 10/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:05:33 ID:nLepI2ZZ]
 ニコニコと自慢ありげな表情で見守られながら、覚悟を決めて卵焼きを一つ口へと運ぶ。
 噛んでみると、卵のカラが入ってるわけでも、溶け切れなかった砂糖が入ってるわけでもない……ただひたすら柔らかい。
 味の方も苦くもないし、塩辛くも無い。多少甘すぎな感じはするが十分許容範囲内だ。
「えっと、どうですか?」
「ん……美味い」
 色々褒める台詞を考えたが、そんな事しなくても通じるだろうと思いとりあえず三文字で済ませる。
 それでも嬉しいのか、素直に顔を微かに赤らめている姿を見てると、かなりいい環境に育ったのが見て取れる。
 ……あぁそうだ。
「雪ちゃん、ちょっと注意事項あるんだけどいいか?」
「え、あ、はいっ」
 そう声を掛けると、ふわふわ浮いていた雪ちゃんは俺の隣へちょこんと座る。
 ちょっといいづらい事だが仕方あるまい。
「――鬼切り役が来てる」
 目と口をぽっかりと空けて呆然とする表情はとっても面白いがいつまでも見ている訳にはいかない。
「鬼切り役ってのは、本物の幽霊殺しの人達の事だ」
「ゆ、幽霊殺し?」
 ちょっと怯えた表情をしている雪ちゃんだが、同時になぜ自分が怯えているのか分からないといった感じだ。。
 幽霊は飲まず食わずでも十分存在できる。しかし、霊的加護を受けた物品での衝撃や斬撃を食らった場合、
幽霊でありながら"即死"する。
 それが幽霊の本能でも分かるらしい。
「え、ええとトーマさんは違うんですか?」
 当然、鬼切り役に関しての質問が飛んでくると思ったが、何故か俺。
「うーん、鬼切り役ってのは忙しいから、細かい仕事は俺みたいな末端に回ってくるわけだ」
「つまり……トーマさんは鬼切り役未満?」
 まぁ、鬼切り役に成れなかった俺にはぴったりだな
 ……そんな考えが顔に出ないようにしながら、
「うん、上手な言い方だね……という訳であんまり一人で出歩かないように。さくっと殺されちゃうから」
「は、はい!」
 そんな俺の脅しに素直に何度も頷く。
 ここまで真っ直ぐだと将来が心配になってくる……それはともかくさっさと弁当食っちまおう。
「寒いのでお茶どうぞっ」
「んぅ?」
 白いご飯を大きめに取って口の中に放り込むと、湯気を立てる緑茶を並々と注がれたコップを差し出される。。
 雪ちゃんの足元を見ると、家にあった青い水筒がが見える。
 祓う為の物品は幾つか持ってきているが、少なくともこんな水筒をバックの中に入れた覚えは無いが、
風が冷たくてそのコップを受け取り中身を喉へと流し込む。……何故か見事にちょうどいい温度だったのが不思議でたまらない。
「……茶は美味いんだがこの水筒、持ってきたのか?」
 良く聞いてくれましたっ! と言わんばかりに目を細める雪ちゃん。
「トーマさんが来るまでの間に家まで戻って淹れて来ました!」
「あー、うん、良くやった良くやった」

33 名前:幽霊の恋捜し 11/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:06:16 ID:nLepI2ZZ]
 毎度恒例な気もするが、犬か何かのように頭を差し出す彼女に俺は荒っぽく撫でて返す。
 それだけで幸せそうな表情をするのだから、この子の底が全く読めない。
「あのーそれで、練習してみたいんですけどいいですか?」
「別にいいが……?」
 前に、「『恋』に繋がる事なら何でも手伝う」と言った以上ある程度までは付き合わねばならんだろう。
 それ言った直後に、「キ、キスの練習を――」とかほざいたので即、叩いたが。
「ん、と、お箸借りますね?」
 そう言うと俺の持っていた弁当用の箸を素早く奪い取り、半透明の指で器用に動かす……というか、
ポルターガイストで箸まで使えるのかよ。
「えーと…………うん、あーんっ♪」
 一見器用に見えても、意外に難しく何度か唐揚げを転がしていたが、4度目くらいで拾って俺の顔の前へと持ってくる。
「……どうしろと?」
「見て分からないんですか? お箸で食べさせるアレです」
 思わず手の平を額に当てて、大きな溜息をついてしまう俺。
 見て分かるし、知識としても無いことは無い……だが実行するのは別問題だ! と、言っても恐らく通じない。
 つまるところ、何とか宥めるしか方法が無い。
「いいか、雪ちゃん」
「は、はい?」
 俺の目の前に唐揚げを掲げたままの姿勢で不思議そうな声を上げる。
 ……こいつは頑固そうだ。
「こういうのは、俺なんかより君を見つけてもらった人にやってあげるべきで、練習なんてする必要なんてないだろ?」
「……むぅ」
 柔らかそうな頬を軽く膨らませて不満感を表現する雪ちゃん。
 何とか理詰めで諦めてもらおう。
「大体、男ってのは何でも『初めて』にめちゃくちゃ弱い。そういう時の為に取って置きなさい」
「そうかも……しれませんけど……」
 意気が落ちたのか、箸の高度がずるずると下がっていく……もう一押しかな?
「言い方が悪いかもしれないけど、もしもの時にその『初めて』を切り札で取っておくの、おーけー?」
「……で、でもっ!」
「うぉっ!?」
 雪ちゃんが前にいきなり身を乗り出し、それに合わせて上体を反らそうとするが、後ろのフェンスに頭をぶつけて、
ガシャガシャと耳障りな音を立てる。
「私は、トーマさんに殆ど何もお返しできてないです! だから……」
「だから……?」
 彼女の気迫に思わず鸚鵡返しをしてしまう俺。
 切羽詰っているというか、猫に追い詰められた鼠も良く似ている気迫だ。。
「……トトーマさんに、この初めてを……も、貰って欲しいんで――「アホ」」
 何かヤバげな台詞を吐こうとした雪ちゃんの頭を一発だけ叩く。
 「あいたー!?」と、声を上げるが、この際無視。
「いいか? 俺は見返りが欲しくて雪ちゃんに付き合ってる訳じゃない。100パーセント慈善事業だ……だから礼などいらん」
「私の気が済みません!!」
 自分の考えをぶつけて見るが、光よりも早い即答で返される。
 ……これ以上は無駄っぽいかな。雪ちゃん物凄く強情だから休み時間が終わろうとも絶対に曲げないだろう。
 これも俺の責任……かな?

34 名前:幽霊の恋捜し 12/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:06:50 ID:nLepI2ZZ]
「分かった……好きにしなさい、はぁ」
「はいっ! ……という訳であーん♪」
 これは練習、と思っていても心臓の脈のスピードが跳ね上がり、この場から逃げ出したくなる。
 けれど……これが彼女の未練解消になるなら、俺は、頑張るしかない。
「ん……」
 唐揚げの味は絶品な筈なのに何処か塩辛く感じるのは気のせいなのだろうか。
「あは、それじゃ、毎日私がお弁当を食べさせてあげますね?」
「ちょ、待て! それは認めないぞ!?」
 流石にそれは……恥ずかしさで俺が憤死する。
「……私の『初めて』貰ったんですから、責任、取ってくださいね?」
 何で男ってのはこうも『初めて』って言葉に弱いのだろうか……?
 論文にすればノーベル賞くらいは貰えそうな事を考えつつ、彼女の半透明な手から弁当を食べていた……。



「今日はスーパーの特売日ですっ!」
「……それじゃ、帰りに寄るか」
 授業も終わり、10月ともなれば日も短い。
 俺達は夕日の差す駐輪場から、自転車を取り出しながらそんな会話をする。
「あーそうだ、他に欲しいものあるか、本とか?」
「んー特に無いです。幽霊ですから服は着れませんし、ねぇ?」
 自嘲気味に笑うが、痛々しさが微かに見て取れるが、俺には何も出来ない。
「今月余裕あるし……携帯でも変えようかね」
「いいですねそれっ」
 他人から見ればどうでもいいと切り捨てられそうな話をしながら俺達は、自転車を曳きながら話す。
 正直に言えば……楽しかった。
 分け隔てなく話せる間柄になった女の子も居なかった俺にはとても貴重な体験で、何もかもが新鮮だった。
「雪ちゃん、家帰ったら――っ」
「……?」
 校門を出たところでの、強烈なプレッシャー。
 俺がいきなり黙った事で、不思議そうな視線と向けてくる雪ちゃんを俺の後ろに回しながら正面に立っている根源を見据え

 そこに居るのは夕日に良く似た色の赤袴と綺麗な千早を羽織った巫女装束の女の子……しかも見覚えのある顔だ。相変わらず、
目つきが悪い。
「さて……巫女さんが俺に何の用かな?」
 挑発の意を込めてあえて、軽く言い放つ。
 けれど、その眉は微動だにしない。
「……鬼切り役が石倉 佐奈。……兄様、幽霊となにしてはるんどすか?」
 懐かしい京言葉で、そんな事を尋ねてきた。
 さて、どうしようかな――?


35 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/03(日) 23:07:22 ID:nLepI2ZZ]
以上、投下終了。

一応前編になりますが、ちょっと忙しかったりするので続きは遅れてしまうのでごめんなさい。


36 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/03(日) 23:21:17 ID:/oDTCO3s]
とても読みやすくていいな
続きを切望して待つ

37 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/03(日) 23:28:36 ID:yZXVaDYO]
…普通に読んで面白い話だよ。GJ

38 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/03(日) 23:37:29 ID:mF92SESM]
後半のエロスに期待。
すらっと読める感じがいいね。
次回へのヒキもバッチりで。

39 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/05(火) 22:29:31 ID:rw5ZbI44]
保管庫管理人さん、ちゃんと前スレのログ取れてるかなぁ。

40 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/05(火) 23:19:58 ID:s5u9/zuP]
面白いすわ。本当、気になるとこでの「続」ですね
妹絡んでの修羅場か、奴はプロなのかが楽しみ



41 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/11(月) 02:57:30 ID:x3rubEi3]
とりあえず、ほっしゅ

>23
ちょい遅いけど、GJ!

42 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/17(日) 01:32:11 ID:QSqlSyko]
ほしゅー

43 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/18(月) 14:07:46 ID:FNtXPLwK]
>>23 GJ続きwktk

今ごろ気がついたんだけど、学園七不思議-1ってマイナス1って意味だったのか!?
いや面白かったすわ。
小気味いいテンポで一気に読める作品です。
ぜひ続編かシリーズ化を希望します!

44 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/24(日) 18:09:33 ID:0vEK//e7]
最初読んだ時は、「七不思議の一番目」の意味だと思っていた俺ガイル。

45 名前:名無しさん@ピンキー mailto:過疎age [2006/12/27(水) 21:13:50 ID:iofNBKpX]
相棒の鬼娘に来週の予定を聞いたら鼻で笑われた。
曰く、来年の話はするな、らしい。

46 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/30(土) 00:22:58 ID:FJwPWcHv]
前スレ、落ちたようです。
ちょっと締まらない最後だったなか?

47 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/30(土) 14:29:01 ID:omhfMYPr]
つか、保管が……

48 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/31(日) 02:15:28 ID:+82Povgz]
>46
埋めネタ書いてたんだけど、間に合わなかった
10kb以上残ってたもんだから

49 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2006/12/31(日) 21:37:10 ID:e6P9Iph5]
>>48
今すぐそれを投下するんだ!!

50 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/01(月) 11:02:44 ID:xoP51HPW]
おまいらあけおめ
新年ほしゅ



51 名前:くなさん ◆DAYgAM2ISM mailto:sage [2007/01/02(火) 23:10:10 ID:3eblwPw3]
6レス使用で投下します
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ゆきゆきてスコップあり』


 噛み合わせた歯が、ガチガチと音を立てる。上田秀一は体を縮めて、可能な限
り熱を逃さないようにしていたものの。山小屋の窓から覗く吹雪は、時間と共に
激しさを増すばかりだった。
 隣で体を寄せ合う遠藤礼子が、床を削っていたスキースティックを放り出す。
転がる音に目を上げ、秀一は作業の結果に口を挟んだ。
「相合い傘が足りないぞ」
「馬鹿ね。二人揃って、身元を示す物を何も持ってないからでしょ」
 礼子は青い顔をしながらも、平常心を取り繕ってみせた。
 スキー中に遭難してから、そろそろ半日が経とうとしていた。学校行事で来て
いるので、捜索は行われているだろうが。既に日は暮れており、ここで一夜を明
かさなくてはならない。
 なんとか逃げ込んだ山小屋には、食料どころか薪すら無く。辿り着くまでに体
力も体温も失った二人が、夜を越せる望みは少なかった。
「こうしておけば、誰だか分かるじゃない」
「違うだろ!」
 返ってきた強い声に、弾かれたように礼子は隣を見た。じっと睨み返す秀一の
瞳は、哀しむような怒りを漲らせていた。
 俺は死にたくない、お前も諦めるな。
 何も言わない顔から読み取れた想いが、彼女の胸に突き刺さった。諦めていた
自分が恥ずかしくなり、同時に生きる意欲が沸いてくる。礼子は精一杯の感謝を
込め、晴れやかな笑顔で頭を下げた。
「ごめん」
「謝るなよ」
 照れたような、それでいて深みのある苦笑が返ってきた。男臭い表情、とでも
言うのだろうか。
 さっきまでの礼子なら、ただのクラスメートだと秀一を表現したはずだ。しか
し今の彼女は、高鳴る胸と熱くなる頬に、はっきりとした予感を覚えていた。
 急に密着している事が意識され、緊張が募ってくる。それでいて、彼の肩に触
れられる自分の髪の長さに心安らぐ。自然と体重を預けかけた礼子は、立ち上が
った秀一を少し恨めしそうに見上げた。
「薪が無いか見てくる」
 続こうとした彼女を手振りで止めて、秀一が小屋を後にする。送り出した瞳に
は信頼と、確かな恋心が込められていた。

 表に出た秀一は、外気の寒さに悲鳴を上げ、一歩目で雪に埋まった。もがく彼
の上へ、狙っていたように雪が屋根から落ちてくる。
 連打する不幸に、しばらく彼は倒れたまま震えていたのだが。苛立ちを雪にぶ
つけて振り払うと、猛然と歩き始めながら、泣きそうな声で叫んだ。
「神様のバカヤロー!」
 しかし吹き荒れる冷たい風は、精一杯の嘆きも掻き消してしまう。何もかもを
吸い込んでしまいそうな白い闇に、秀一の体から力が抜けかけた。
 わりと好みな女の子と一緒に遭難し、これで死ぬかもしれない。
 せめて最後に一発。等というのは、しょせん童貞の妄想に過ぎないと思い知ら
された。アプローチは軽く躱され、トドメに謝られてしまったのだ。逃げるよう
に出てきたものの、今頃は同情されている事だろう。
「ちくしょう、絶対に死なねえ。死んでたまるか」
 礼子より可愛い彼女を作るまで、何がなんでも生き延びる。少年は滲んだ涙を
拭って、強い意志を胸に足を踏み出した。
 どうすればモテるのか、真剣な検討を重ねながら山小屋の周りを進んでいく。
まずは手段よりも、覚悟の問題だ。漠然とモテたいと思うだけで、これまで秀一
は努力などしてこなかった。
「血の滲むような努力を繰り返した先にこそ、栄光はある。死を前にしてすらコ
トに臨めないなんて、悲し過ぎるじゃないか」
 彼の決意、いや魂の慟哭に呼応するかのように、突風が吹き抜けた。

52 名前:くなさん ◆DAYgAM2ISM mailto:sage [2007/01/02(火) 23:10:59 ID:3eblwPw3]
 敢然と立ち向かう秀一にとっては、ぬるい試練に過ぎなかったが。木々は枝を
揺らし、あちこちから雪が滑り落ちた。ニヒルに笑った彼は、歩みを再開しよう
として、山小屋に隣接する建物を見つけた。
 倉庫か何からしい。木製の扉が、半ばほど雪に埋もれている。小屋へ入る時に
気付かなかったのは、そのせいだろう。
「天は自ら助くる者を助く、だな」
 確信を得た秀一は、猛然と手袋で雪を抉りにかかった。
 一つ掻いてはモテる為、二つ掻いてはモテる為。彼の執念の成せる技か、単に
雪質のせいか。量の割に短時間で雪を退けると、躊躇無く中に飛び込んだ。
 室内の様子は、雪明かりで輪郭が分かる程度だった。迷わず手探りで調べ始め
た秀一の頬に、紐のような物が当たる。引っ張ってみると、カチッという音と共
に裸電球が点いた。
 よく分からない袋や、スコップにロープなど。
 オレンジ色の光の下で物色するうちに、秀一は錆びた缶の中からマッチを手に
入れた。燃やせる物は無いかと見回し、屈んだところで棚の陰に古新聞の束を見
つけた。
「すみません」
「あ、はい」
 後ろから呼ばれて思わず振り返った秀一は、完全に思考が停止した。
 自分達以外の誰かがいる、からではない。礼子だと思っていて別人だったから
でもないし、そもそも彼女にしては他人行儀過ぎる。しかし、こんな寒さの中に
いる相手が、白い着物一枚の恰好だからでも無かった。
 美少女。
 こういう存在を一言で表現する為に、生み出された言葉だろう。
 しっとりとした黒髪が、とても白い肌によく映えている。触り心地の良さそう
な生地が包むのは、もっと素晴らしい感触に違いない小柄な体。
 何よりも秀一を捕らえて離さないのは、その顔だ。大きな目の輝きや、周りを
彩る睫毛なども魅力的だが。均整の取れた配置は、自然の完璧な造形美を感じさ
せるものだった。
「えっと、どうかなさいましたか?」
「その、ごめん。君みたいに綺麗な人、今まで見たことが無くって」
 ついでに、ここまで安っぽい台詞を吐く野郎も、秀一は初めて知っただろう。
 モテるまでの道程の遠さを彼は嘆いたが、少女は首筋まで赤くなって口元を押
えた。何か言いたそうなものの、狼狽しきって言葉にならずにいる。頻りに足場
を変えた彼女は、どこかに蹴躓いて倒れかかった。
 考えるより先に体が動き、秀一が彼女を抱き留める。間近で顔を見る羽目にな
り、彼の頭にどっと血が昇ってきた。
「大丈夫?」
 彼女は無言のまま、じっと一点を凝視している。視線の先を追った秀一が、慌
てて胸を掴んでいた手を離し、平謝りに謝る。心底申し訳無いと思いつつも。あ
まりのべたさに、こんな事あるんだ、と頭の一部が妙な感心をしていた。
 しばらく秀一を見ていた彼女は、姿勢を正して向き直り。深い一礼に続いて、
淡々と自己紹介を始めた。
「私の名前は、美雪と申します」
 言葉を切った沈黙に、少ししてから秀一は待たれているのだと気付いた。
「上田秀一です」
「秀一様。あのような真似をされては、私はもうお嫁にいけません。かくなる上
は、責任を取って下さいますね?」
 ずいっと一歩近付いた美雪が、彼の胸元に手を当てた。伏せられた睫毛が恥じ
らいに震え、染まった頬と共に艶を増していく。うなじから覗く肌など、唾を飲
むほどの色気を放っている。
 瞬きも惜しむ彼に微笑み、美雪が帯を脱ぎ捨てる。着物も肩から落とそうとし
たところで、我に返った秀一に止められた。
「まさか、知らぬ存ぜぬ、と仰られるおつもりですか」
「そうじゃなくって。いや確かに、話が急過ぎるとも思ってるけどさ。この寒さ
の中で服を脱いだら、風邪じゃ済まないだろ」
「御心配要りませんわ。私は雪女ですから」
 小さく笑う美雪は、あまりにも美しく。人だと言われた方が、秀一には信じら
れそうに無かった。

53 名前:くなさん ◆DAYgAM2ISM mailto:sage [2007/01/02(火) 23:12:02 ID:3eblwPw3]
 雪女には女しか生まれない。
 だから年頃になった雪女は人の里へ出向き、良人を捜すのだという。美雪は途
中で道を聞こうとして、情熱的に乳房を揉みしだかれ。自分の夫となるのは、こ
の男しかいないと心に決めたのだそうだ。
「話は分かったんだけど。君は大丈夫でも、俺が凍死する」
「私の口を、お吸い下さいませ。雪女と接吻を交わした人間は、寒さに強くなれ
ますの。本来は、人間と接吻を交わした雪女が、暑さに強くなる為の力ですけれ
ど」
 ただし、と怜悧な眼差しで美雪は忠告を与えた。
「相手の雪女を孕ませる気が無い者は、口を合わせた途端に凍りつ、んんっ」
 話の途中でキスに遮られたものの、美雪は残忍な愉しみを待つように目を細め
る。秀一が凍らないのを見て、視線を和らげたのだが。口の中へ入ってきた舌に
驚き、夢中で舌同士を絡めると、彼女の瞳は蕩けていった。

 着物の前を開いた秀一が、差し入れた手で小振りな乳房を撫で上げた。すべす
べとした肌と、瑞々しい弾力を存分に味わう。
 掌と指の全てで揉み込む度に、彼女の鼻息が甘くなっていく。美雪が淫らにな
るのに合わせ、舌を伝う唾液も増え続け。互いの口が少し離れようとも、糸を引
きながら繋げてくれた。
 美雪は息を荒げつつも、秀一の着込んだスキーウェアに手を伸ばす。
 脱がし方が分からないのか、しばらく表面を探っていたが。とうとう、乳首を
弄る彼の手に自分の手を重ね、切なそうに訴えた。
「秀一さ、あんっ」
 蜘蛛の糸のように間を渡す唾液を啜りながら、秀一はキスを続けさせた。同時
に脱ぎ始めた彼を見て、美雪が嬉しそうに着物を床へ落とした。
 美雪とキスしてから寒さが苦にならなくなっていたので、心配はしていなかっ
たが。いざボタンに手をかけた秀一には、やはり不安が過ぎった。しかし、いや
らしい舌と、擦り寄る裸の威力は大きいものだ。
 そして多分、他の何よりも。
 トレーナーやTシャツを脱げば、どうしてもキスを中断しなければならないが。
待つ間は不満そうな顔が、彼が見えた途端、ぱっと輝く様子が強力だった。
「本当に、あっ、寒く無いのですね」
 裸になった秀一の上半身に手を這わせ、鳥肌が無いか美雪が確かめる。むしろ
汗ばんでいる様子に、唇を触れ合わせたまま何か呟いたものの。ぴったりと押し
当てられた乳房のせいで、彼は聴覚など忘れていた。
「悪い、聞こえなかった。今の、もう一回言ってくれないか」
 美雪は羞恥に耳まで赤くしながら、秀一を覗き込んだ。
 ごちゃごちゃと置かれた棚の道具を、脱ぎ捨てたTシャツが動かしたらしい。
小屋の中の静けさを教えるように、うるさく騒ぎ立てる。外では風が唸り、ズボ
ンのファスナーもわりと大きな音を出していた。
 とはいえ、鼓動も伝わる距離であれば、囁きでも充分に聞こえるだろう。だが、
媚びを目に含ませた美雪は、大きな声ではっきりと語りかけた。
「最初に出会った人が、んんっ、秀一様で本当に良かった。接吻しても凍りつか
ないのは、私を本気で孕ませたい証。それを感じた私の子宮が、さっきから、あ
ふっ、疼いて仕方ありません」
 口の中に溜まった秀一の唾液を飲み干して、美雪が淫らに囁いた。
「秀一様の子種が欲し、ひあっ」
 美雪の陰核を擦り、零れた吐息を吸い上げる。涎は口に流れ込む分よりも、指
から掌へ伝う方が多いほどだ。
 切なげに脈打つ陰唇を撫でるうち、膝に力が入らなくなった美雪が崩れていく。
両腕を秀一の首へ回し、必死にしがみつく彼女が愛しくて。細い背中を抱き寄せ
た秀一は、床に広がる着物の上へ押し倒した。
 下着ごと二枚重ねたズボンを脱いで、飛び出た陰茎を力尽くで押し下げる。な
んとか膣口に触れさせると、美雪が淫靡に微笑んだ。
 たまらず突っ込んだ秀一は、大きな苦悶に動きを止めた。
 みっちりと肉の詰まった膣内が、きつく狭く締め付けてくる。処女を奪ってい
ると気付き、秀一に二つの感情が湧いた。綺麗で汚れの無い初雪を踏む罪悪感と、
それを自分がしているという満足感。
「安心しろ、俺も初めてだ」

54 名前:くなさん ◆DAYgAM2ISM mailto:sage [2007/01/02(火) 23:12:41 ID:3eblwPw3]
 秀一は労ろうとしたが、かえって不安になるような台詞を吐いていた。あまり
の馬鹿さに落ち込む彼へ、何故か美雪は安心したように笑いかけた。
「……嬉しいです」
 暴走気味の掘削機械を必死で制御しながら、秀一はトンネルを掘り進む。壊さ
ないよう慎重にしつつ、長引かせないよう工事を急ぐ。
 欲望にのみ生きる馬鹿息子に、工期の遅れを責められながらも。奥まで開通し、
未来への架け橋が完成した。
 美雪は本当に、雪女なのだろう。
 埋まりきった陰茎を、とても温かく包み込んでくれる。人の手が触れた部分は
素直に形を変え、表面で光る水滴が彼女の美しさを増す。華奢な体や、絡みつく
襞から抜けられそうに無いのは、妖の本性に違いない。
「美雪。お前、すっげえ可愛いよ」
 潤んだ瞳で声を殺す美雪に口付けたまま、秀一は腰を揺らし続けた。
 ぎちぎちに圧迫していた膣内は、往復する度に少しづつ馴染んできた。それは
まるで、彼の陰茎に合わせて形を変えているようだ。
 手足を伸ばせば物に当たり、外では吹雪が激しくなり続ける。しかし今の秀一
には、美雪しか見えていない。もっと彼女の心も体も、味わい尽くしたかったの
だが。やっぱり馬鹿息子は言うことを聞かず、限界だと訴えた。
「秀一様の御胤を下さ、ああっ」
 それを感じた美雪に、潤んだ瞳で頼まれるまでもない。ぐいっと奥まで押し込
んだ秀一を、体全部を使って彼女は迎え入れた。
 どくんっ、どくどくっ
 秀一は膣内へ精液を迸らせきると、美雪に覆い被さって息を整え始めた。身じ
ろぎして先端の位置を変えた彼女も、安堵の吐息と共に力を抜く。こりこりとし
た感触を尋ねた彼は、子宮口という返事を聞いて、最後の一滴まで注ぎ込んでい
った。

 しばらく繋がったまま、互いの舌を味わっていたのだが。陰茎が萎えてしまっ
たので、回復するまで待つ事にした。
 服装を整えた二人が壁に背中を預け、寄り添いながら座り込む。裸電球の届か
ない外から聞こえる風は、寂寥感を響かせていたものの。隣にいる相手を、かけ
がえの無い存在だと強く思わせてくれた。
「きちんと孕ませて頂けるのでしたら、何でも一つ望みを叶えて差し上げます」
「産め」
 私に出来る範囲であれば、と続ける前に言われて。美雪は、本当に嬉しそうに
頷き返した。
 頬を摺り合わせるうちに唇が触れ、しっかりと重なる。残滓を舐め取りながら
離れると、からかうように彼女が笑った。
「てっきり私は、無事な下山を望まれるものかと」
「そんなの、吹雪が収まってからで良いだろ。美雪のおかげで、俺は寒さなんか
平気だからな。邪魔の入らないここで、お前と思う存分いちゃいちゃしたい」
「邪魔者で悪かったわね」
 扉から聞こえた声に顔を向け、秀一は瞬時に凍り付いた。
 スキーウェアを雪まみれにした礼子が、にこにこと笑いながら入ってくる。欠
片も好意の感じられない目へ、愛想笑いすら彼はまともに返せなかった。
「あんまりにも遅いもんだから、くたばったかと思ったけど。まさか、一緒に遭
難したクラスメートを忘れて、ナンパしてるとは思わなかったな」
「待て、落ち着け」
 うふふ、と素敵に微笑む礼子は、美雪よりも妖怪じみていた。
 秀一が美雪を促し、辺りの物を物色し始めた礼子から、じりじりと距離を取る。
修羅場の冷気を感じた美雪が、半ば呆れつつ秀一に尋ねた。
「恋人がいたんですか」
「すぐ近くの山小屋にそんなのがいるなら、彼女とヤってるだろ。友達だよ」
「あれあれ? 友達って、命の危機に陥ったら助け合うもんだよねえ。すっかり
存在を忘れた上、見知らぬ女とシケ込むとかさ……」
 小声を拾う地獄耳や、それこそ地の底から響くような声の調子もだが。彼女が
スコップを手にした事に、秀一は総毛立った。
「そんな友達はいらんなあ」

55 名前:くなさん ◆DAYgAM2ISM mailto:sage [2007/01/02(火) 23:13:14 ID:3eblwPw3]
 美雪を抱えて伏せた秀一の上を、凶悪な風が通り抜ける。鈍い音を立てて木製
の棚に食い込んだスコップへ、忌々しそうに舌を打ち。付近を蹴りつけた礼子が、
体重をかけて抜き始めた。
「洒落になってねえぞ!」
「当たり前でしょ。冗談じゃないんだから」
「寒さで錯乱したようですね」
 冷静に分析する美雪を掴んで、秀一が走り出す。少し先行したものの、一歩ご
とに埋まる秀一と違い、スキーを履いた礼子は軽快に追ってきた。
「待ちなさいよ。くたばってた方が良かった、と思わせてあげるから」
「いらん! 正気になれ!」
 なんだか楽しそうな声に追いかけられ、彼は痛切に命の危機を感じた。放って
おいたというだけなら、すぐに収まりそうな気もしたが。何故か、根深いところ
で怒りを買ったという直感があった。
 その鋭さが少し前にあれば、こうはならなかっただろう。
 自分が囮になって、美雪を逃がす。そんな考えを過ぎらせながら隣を見た秀一
は、涼しい顔に見つめ返されて戸惑った。
「秀一様、これは脅迫なのですが。私の願いを聞いて下さるなら、お助けしま
しょう」
「あいつに殺されるのと、お前に脅迫されるのなんて、選ぶまでも無いだろ」
 早く言え、と迫る秀一に、彼女は悠長に恥じらいつつ答えた。
「もし、一人ではなく、この先ずっと秀一様の子供を産ませて頂けるのでしたら。
ええと、つまりですね。いずれ私と、その、祝言を挙げても構わなければ、安全
に逃がして差し上げます」
「最初からそのつもりだけど?」
 きょとんとした彼は首を捻り、祝言とは結婚だよなと確かめる。呆然と頷く美
雪に、ごく簡単だという顔で承諾した。
「というか、プロポーズは俺の方からさせてくれよ」
「だって、お分かりですか。私は雪女であり、人間では無いんですよ。種族が違
えば、色々と葛藤があって然るべきかと」
「そんなこと言われても。世界中探そうが、お前みたいな美人は他にいないだろ」
 だんだん実感が沸いてきたのか、美雪の顔が火照ってくる。溶けてしまうん
じゃないかと心配になり、秀一が肩を揺さ振っていると。正気づいた彼女は、今
まで以上に幸せそうな顔で彼に抱きついた。
 秀一がニヤける間など与えず、吹雪をスコップで切り裂いた礼子が現れた。
 怯える彼との密着を強めて、美雪が地面に息を吹きかける。凍り付いた雪へ飛
び乗った二人は、唸るスコップを躱して斜面を滑走していった。
「ちょっと待ってくれ。あいつも何とかしなきゃ、こんなとこで遭難したら助か
りっこない」
 氷のソリの上から、秀一が背後を振り返る。体中に吹き付け、辺りを踊り狂う
吹雪の中に、次第に遠くなる礼子の姿が見えた。
「本当に恋人ではありませんね?」
「くどいな。今はああだし、ただのクラスメートに過ぎないけどさ。知り合いが
死ぬ、それも俺が見捨ててというのは、出来れば遠慮したい」
「それでしたら、麓まで御案内しましょう」
「美雪は優しいな」
 照れる彼女の肩を抱き、軽く口付けた。続きをねだる美雪に、彼は想いを込め
て舌を絡める。挑発されていると感じたのか、スキーが滑りやすいコースに入っ
たからか。スコップを振り回しながらも、礼子は遅れずについていった。
 しばらくすると木々が途切れ、なだらかな斜面に出て視界が開けた。
 ロッジの付近は明るくなっており、伝わる人の気配が心を落ち着かせる。初心
者用スキーコースを下って来る、彼らが見えたのだろう。建物から人が飛び出し、
その数がどんどん増えてきた。
 顔一杯に安堵を浮かべた教師や友人達が、大きく手を振っている。足でブレー
キをかけようとした秀一に、もう少し二人だけでいたいと美雪が甘えた。
 結局、出迎えの彼らの間を、手を振り返しながら二人は通り抜けていった。
「結婚しました!」
 そんな言葉を残して。
 わけのわからない一同の元へと、何故かスコップを手にした礼子が辿り着く。
疲労困憊していた彼女は、人心地着いた事もあって倒れ伏す。極限状態から解放
されたおかげか、憑き物が落ちたように晴れやかな顔になっていた。

56 名前:くなさん ◆DAYgAM2ISM mailto:sage [2007/01/02(火) 23:13:47 ID:3eblwPw3]
 もっとも、周囲から秀一の謎の言葉を聞いて、最後の欠片が零れ落ちたのだが。
「埋めてやろうかしら」
 深々と突き立てられたスコップに、雪と沈黙が静かに積もり続けた。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――
いくらなんでも早過ぎるんで、小説に改訂

57 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/03(水) 00:46:18 ID:w+kXzotI]
雪女っていいね…

58 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/03(水) 03:09:30 ID:LAY2Ry3z]
> 一つ掻いてはモテる為、二つ掻いてはモテる為

わろた。

59 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/03(水) 17:12:35 ID:1oKojE/+]
ま〜た、HRですか。






ありがとう、本当にありがとうございます。

60 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/04(木) 02:15:45 ID:+k2kWiAH]
個人的には礼子を交え3Pだとさらによかった
GJです



61 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/08(月) 01:25:39 ID:5sgoJx3l]
「そんな友達はいらんなあ」吹いたw

62 名前:名無しさん@ピンキー [2007/01/09(火) 13:12:33 ID:1owLsBfa]
あげ

63 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/13(土) 07:45:21 ID:52Nv+zIl]
保管庫はもう更新されないのかね。

64 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/14(日) 06:33:04 ID:5NVVIuCE]
遅くなってごめんね。
その11のログ保管しておきました。

65 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/14(日) 11:56:41 ID:1woDgBcU]
学園七不思議はシリーズ化してくれないのかなー?

久しぶりに新星現わる!とwktkなんだけど・・

66 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/15(月) 02:11:23 ID:U3wK3J3c]
焦るな危険!

67 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/16(火) 17:48:51 ID:DBO6wRqL]
保管庫更新乙です。
でもずいぶん簡略版に……

68 名前:某880 ◆/Mgq/8agL6 mailto:sage [2007/01/18(木) 23:04:47 ID:JSM2roXx]
新星じゃなくて申し訳ないが、投下。
注意事項は特にないと思う。

69 名前:某880 女王様のメイド mailto:sage [2007/01/18(木) 23:06:15 ID:JSM2roXx]
「間違ってる、世の中が間違ってるんです!」
声を荒げ、対面に座る男性が突然僕へ熱弁を振るい始めた。
「いいですか、ツンデレとは本来そのような軽いものなんかじゃないんです!
顔を赤らめながらちょっとどもりがちに突き放した言い方をする、
それだけでツンデレなどとは笑止千万!
そんなね、形式張ったものでツンデレを語って欲しくないんですよ。
本物のツンデレというのは、もっと殺伐とした、そんな中でも愛……」
「店内で騒ぐな!」
テーブルに片手を着き僕の方へ身を乗り出しながら興奮していた彼の後頭部に、
パコンと軽快な音を立て銀トレイが見事にヒットした。
「何を話しても構わんが、他の客に迷惑だろうが。まったく……」
叩いた銀トレイを持ったまま腰に両手を当て睨みつける少女が一人。
よほど強く叩かれたのか、叩かれた男性は僅かに涙目となりながら後ろを振り向いた。
「じょ、女王たん……」
とても少女に向ける言葉ではないが、しかし二人の関係を考えると間違いではない。
少女が女王、男性が奴隷1号。そういう関係なのだ。端からはとてもそうは見えないが。
しかも女王は今メイド服を着ている。尚更二人の関係に説得力がない。
しかしそれよりももっと信じられないのは、僕と少女の関係性だろう。
「あっ、ゴメンお姉ちゃん……」
何処をどう見ても、僕と少女には二桁以上の年齢差があるように見える。
それでも少女は僕の姉であった。
彼女はモーショボーという妖怪。僕の姉が生まれ変わった姿。
「まったく、何しに来ているんだお前達は。騒ぐならとっとと出ていけ」
僕たちは今、秋葉原のメイド喫茶にいる。ここで今、姉が臨時のバイトをしているその姿を見るために。
このお店は姉がお世話になっている「オーナー」が経営する店の一つだそうで、
普段は12人の従業員が入れ替わり立ち替わり働いているそうです。
ところがその従業員の何人かが、オーナーの経営する別のお店……同系列のお店とは限らないそうだけど……そちらへ執行することになったために、一時的な人手不足になっている。
そこで臨時に姉がオーナーに頼まれ雇われた、という事らしい。
それを聞きつけた姉の奴隷……と、自ら名乗っている……1号さんに誘われて僕も付いてきた。
彼は姉のメイド姿は何度も「拝ませてもらっている」と言っていましたが、
姉が「働いている」メイド姿というのが非常に貴重だから、というのがどうしても見たい理由らしい。
「すみません女王たん……でも弟たんがツンデレを理解してなかったのでつい……」
最近は「ツンデレ喫茶」というのもあるらしいですね、という話を切り出しただけなんですけどね。
というか、会話はとぎれたけど、彼が言いたいのは「ツンデレ」ではなく「理想のご主人様」な気がしないでも……。
彼と初めてあったときには、「女王たん」に特別扱いされている僕を嫉妬していましたが
最近ではこうして一緒に出かけるくらいの付き合いをさせてもらってます。
非常に「濃い」人ですが、根はいい人なので、なんか自然にうち解けてました。
その、「弟たん」って呼び名以外は。
「ついじゃないでしょ。いい? ここは他の店と違って騒げる店じゃないんだから」
まあ、彼の場合情事何処でもハイテンションなのは姉も承知しているので、説教もトーンダウンしていた。
姉の言うとおり、ここは昨今乱立しているメイド喫茶とは異なり、
過剰な、風俗店まがいなサービスは一切行っていない。
雰囲気は街の喫茶店のようにアットホームな感じなので、気軽に客と従業員が会話をするくらいはありますが
あくまでただ従業員がメイド服を着ているだけ、という喫茶店。
1号さんは、「むしろこれくらいがベスト、ここのオーナーはメイドというものをよく判っている!」と力説してましたっけ。
「……なに、その目は」
じっと姉を見つめる1号さんの目に、なにやら不満があるのか、姉が問い詰め始める。
「不服そうね」
その一言に、1号さんがピクリと反応する。あっ、この人もしかして……
「……って、「ここ」で何を期待してるのよ……なによ、文句あるの? 気に入らないわね、あんた当分「お預け」ね」
言い残し、業務へと戻る姉。その後ろ姿をしばし見送った後、あからさまにガックリと肩から頭からだらりと落とす1号さん。
あーあ、この後僕1号さんの愚痴らやら色々付き合うことになるんだろうなぁ……自分でも判るほど顔を引きつらせ、僕はこの後小一時間は我慢を強いられる事を予感していた。

*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*:..:*

70 名前:某880 女王様のメイド mailto:sage [2007/01/18(木) 23:07:07 ID:JSM2roXx]
「あー疲れた。もー、オーナーの頼みじゃなかったらこんな仕事やってないわよぉ」
こんな仕事というか、そもそも働くとか人に使われるとか、そのような行動全般を嫌う姉は
家に帰り着くなりベッドに身体を預け足を投げ出した。
「……それは僕の台詞だよぉ」
我ながら情けない声を上げ、僕はやっと家にたどり着けた安堵感から大きく息を吐き出しながら答えた。
本当に疲れた。肉体的にではなく、精神的に。
「あら、何が不満なの?」
「……お姉ちゃんの意地悪」
あれから僕は、姉のバイトが終わるまで1号さんの相手をさせられ、折角だからと姉と帰ってきたわけだが……
着替えるのが面倒、というあからさまに怪しい理由で、店から家まで姉はメイド服を着たままでいた。
しかも僕の腕にしがみつくようにして。普段ならこんな事絶対にしない癖に。
当然、僕たちは好奇の目に晒されることになった。
まだ店を出た直後、秋葉原にいるときは良かった。視線はむしろ羨望に近かったから。
だけど一歩秋葉原を出てしまえば、幼女にメイド服を着せ歩かせている変態、という目で見られるのは当然。
間違いなく羞恥プレイです、これは。姉は恥ずかしがる僕を見ておもしろがっていたのだ。
「知り合いに見つかったらどうするつもりだったんだよ、もぉ」
幸い、知り合いとすれ違うことはなかった。
更に幸運だったのは、交番の前を通り過ぎたときお巡りさんに呼び止められなかったことかな。
よく見逃してくれたよなぁ。普通なら職務質問するよね。あからさまに怪しいもん。
「見つからないわよ。というか、見えないわよ」
ん? 僕は姉の言っている意味が全く理解できない。
「私を誰だと思ってる? あんたの可愛い可愛いお姉さんは、どんなお姉さんだったかな?」
……ああ、何となく理解した。
姉の力か、それとも何か道具を使ったか、
どんな手を使ったかはよく判らないけど……姉と僕の姿を人目から避ける方法を用いることは、姉にとって不可能ではない。
姉は妖怪だから。故に「その手」の道具などを用意する手だても知っているから。
「可愛かったわねー、ずぅっと下向いちゃって、顔真っ赤にしちゃってさぁ」
「酷いよぉ……」
本当にプレイだったよ。そうだよ、僕の姉はこういう人……サド妖怪ですよ。
「でも嬉しかったでしょ?」
うっ……
「お姉ちゃんがだぁい好きな君は、とぉっても嬉しかったでしょお?」
……僕はまた顔を赤くしながら、黙ってうなずくしか手がありません。
ええ、大好きですよ、本当は嬉しかったですよ。幼いままの姉が大好きな変態ですよ僕は。
でもだからって、ちょっと今日の仕打ちは酷すぎるよ。
僕は1号さん達みたいなMじゃないんだし。
それとも姉は、僕をMにしたいのかな……それはちょっと勘弁して欲しい。



71 名前:某880 女王様のメイド mailto:sage [2007/01/18(木) 23:09:07 ID:JSM2roXx]
「まあまあ、そんな顔しないの。お詫びに、いーことしてあげるから。ね?」
……それは結局、姉もしたいことなんじゃないの?
とはもちろん口にすることはなく、僕は黙って姉に近づいた。
「裸になって横になりなさい……あ、そうだ」
いつものように命令口調で僕に指示を出した姉が、何かを思いついたらしい。
絶対に悪巧みだ。僕は確信していた。
「裸になって横になってください、ご主人様」
はい?
内容は同じだが、口調が変わった。
「メイドの私が、ご奉仕いたしますわ」
ああ、そういう「プレイ」ですか。
自分がまだメイド服を着たままということを思い出した姉が、思いつきでプレイへと結びつけた。
普段は「女王たん」な姉がメイド役を買って出るのは新鮮ではあるが、続くのかな……
疑問はあるものの、姉の姿と口調に少々胸が高鳴っているのも事実だった。
「まあ、ご主人様ったらもうこんなに……」
あう、僕の息子はとても正直です。
メイドの姿はしてますが、姉の顔はいつも通り。口元をつり上げ嬉しそうです。
やはりまねごとはしても根本は変わらないんですね。
「ではご主人様、ご奉仕させていただきます」
いうなり、姉は僕に近づき……僕の息子に触れる。
足で。
「ちょっ、お姉ちゃん」
「丹誠込めて「足コキ」させてもらいます」
姉は腰を下ろしたまま僕の息子に足を踏むように乗せ、そしてゆっくりと動かし始めた。
これってご奉仕ですか?
とはいえ……編み目の粗い黒のニーソックスをはいたままされる足コキは、素手とは違う感触を僕の息子に与えてくれる。
こそばゆい肌触りと、微妙な足の圧迫。上下にゆっくりとこすられ、先ほどよりも息子はすくすくと成長を始めている。
「あらあら、ご主人様はとっても感じやすいんですね。もうこんなに大きくして……ご主人様は恥ずかしくないんですか?」
口調は優しいけど、ニヤニヤと笑いながら言い放たれる言葉はその口調と釣り合ってませんよ。
「ではもっとご奉仕してあげますね」
姉は両足で息子をはさみ、不規則に足をこすり合わせる。
とても足でやっているとは思えない、絶妙な摩擦と圧迫。
時折親指でカリを刺激するなどのテクニックも織り交ぜられては、もう我慢も限界……。
「このくらいでよろしいですか?」
突然、姉が足を止める。あと僅か、刹那もあれば爆発するという直前になって。
よろしいですかって、それを聞くんですか? 言わせたいんですか?
うう、やっぱり意地悪だ。やってることは普段の姉と変わらないよ。
「も、もうちょっと続……」
「ではご主人様、次はわたくしめにご褒美をくださいませ」
……酷い。
僕の言葉を遮り、姉は手早く僕の顔をまたぎ、スカートをまくり、腰を僅かに落とす。

72 名前:某880 女王様のメイド mailto:sage [2007/01/18(木) 23:11:10 ID:JSM2roXx]
「さぁご主人様、早く舐めてください」
まだはいたままだった下着は、見ただけで判るほどぐっしょりと濡れていた。
もしかしたら、姉も興奮していたのだろうか? メイド服を着たままでの帰宅や、このメイドになりきれていないプレイに。
だとしたら……なんだか僕は「楽しい」気分になり、折角のご主人様役をやってみようと思いついた。
「なんだ、もうこんなに濡らして。お前は本当にいやらしいメイドだな」
ここからでは姉の顔を見ることは出来ない。しかし真っ赤になっているに違いないと確信した。
何も言わず腰を急に落とし、無理矢理顔に押しつけてきたから。
照れ隠しに違いない。そう思うと、なんだか姉が可愛く思えて仕方なかった。
しかしこれ以上何か言えばすねてしまうだろう。そうなっては元も子もない。僕は黙って下着の上から舌を這わせ、もぞもぞと動かし始めた。
「んっ、そ、いいわ、ご主人様……」
人のこと言えないな。姉もずいぶんと敏感になってる。
僕は舌を動かしながら手を姉の尻へと回し、軽くなで回す。
「あっ、それ……もっと強く」
自分から腰をもぞもぞと少し動かしながら、ねだってくる。
僕はそんな姉にちょっと「いたずら」心をくすぐられ、姉の下着を手で掴み、ぐいと引っ張ってみた。
「ちょっ! も、食い込む……んっ!」
細くなった布が姉の淫唇に、さも猿ぐつわのように食い込んでいる。
僕は手をゆるめることなく、そこをなで回すように舐め続けた。
「やっ、やるようになったわね……いい、そこ、もうちょっと上……」
言われるまま、僕は少し上……ぷっくりとふくれながら下着で押しつぶされている淫唇へと舌を這わせる。
はみ出る淫唇を舌で突き、時折ぐいぐいと下着を引っ張り刺激を与える。その度に上の口からは喘ぎ声、舌の口からはよだれが漏れだしていく。
「んっ、も、もう、そろそろ……」
言うなり、姉は腰を浮かせた。
よほど待てないのか、姉は下着を片足だけ脱いだ状態で腰の位置を顔から僕の腰へと移動させ、
まだ天に向けいきり立っていた息子を荒々しく掴む。そして慣れた手つきで自分の陰部へと向けさせ、すんなりと腰を下ろした。
「んんっ! なに、まだこんなに大きくさせてたの……本当にいやらしいんだから……ご主人様は」
罵りながら、まだ忘れていなかったシチュエーションを付け加える。
そして姉は前後に腰を動かしながら身体を上下に揺り動かす。
「ん、はっ、はぁ……なんか、いつもより、大きくない? ん、んっ!」
そういう姉も、いつも以上に締め付けがキツイ。
小さな身体同様に膣も小さいく、それだけでも当然キツイ。しかしそれでも僕の息子をすんなりと受け入れている。
「ね、ご主人様も、動いて、下から、突き上げ、て」
もちろん。僕は姉に合わせ腰をしたから打ち付け、いつも以上に僕たちの結合部からはグチュグチュといやらしい音が聞こえてくる。
「ひあっ、ん、なん、か、ちがう、いつもと、んっ! い、いいかも……どう、きもち、いいの? ごしゅじん、さま、は」
手を僕のお腹に着きながら、姉が途切れ途切れに尋ねてくる。僕は答える代わりに、より激しく腰を振る。
「ちょっ、も、とつぜ、んっ! や、ちょっ、いつも、ん、ちがっ、てっ、なん、んっ! やっ、あっ、あん、あはぁ、んっ、んん!」
ついに姉は僕の上へと倒れ込む。しかしそれでも姉の腰は止まらない。当然僕のも。
小さな姉の身体を僕はギュッと抱きしめる。姉は僕の胸、乳首に唇を這わせ舐め始めた。
こんな時でも攻めることを忘れない姉はさすがだ。
負けてられない。僕はベッドのきしみをより大きくさせていく。

73 名前:某880 女王様のメイド mailto:sage [2007/01/18(木) 23:11:42 ID:JSM2roXx]
「んっ、ちゅ、ん、んん! くちゅ……ん、んあ! やっ、ん、ちゅぱ……」
もしかしたら、姉はいつもより感じているのをごまかしたいのか?
なんだか、今日の姉はとても可愛い。
メイド服が僕たちをこんなにさせるのかな。
普段のSキャラを死守したい姉は、自ら来たメイド服でそれを崩しかけている。必死になって取り戻そうとしているのが、かえって可愛い。
「んっ、も、ちょ、ダメ、んっ、ちゅ、ん、んっ! いっ、ちゃ、め、ダメ、んは、ん、んはぁあ!」
必死になっている姉は可愛いが、このままだとちょっと可愛そうかな。
それに僕も……。
「そろそろ、いく、いくから……」
「え、ええ、いって、いき、いきなさい、よ……いっ、いっしょに、いって、あげる、から、んっ、ね、ほら、はや、くっ! んっ、あ、あぁっ!」
僕から根を上げると、姉は堰を切ったように行くことを強制する。姉ももう限界のようだ。
「はやく、はやく! ほら、ちょっ、いっ、いって、ん、あっ! きた、しろいの、わた、わたしも、あっ、ん、んん!」
プライドを死守した姉は、根本から吸い上げようとぎゅっと膣を締め付ける。
僕は息を荒げながらまだ姉を抱きしめていたが、姉は半身を起こし僕の腕をほどいてしまう。
「ご主人様にしては上出来だったんじゃない? 気持ちよかったわよ」
メイドの女王様からお褒めの言葉をいただき、ご主人様としてはとても満足ですよ。
なんか立場がおかしいけど、それはそれで、たまにはいいかな。
「ところでご主人様?」
くちゅくちゅと音がする。姉が腰を回しているからだ。もちろん僕たちはまだ繋がったまま。
「次はアナルなどいかがですか?」
そうだね、姉が一回で満足するはずがないもんね。僕は合意のために軽く頷いた。
「ふふ、ご主人様のエッチ。では「この次」はアナルで……」
そう言いながら、姉の腰は止まらない。
あの、次って……。
「ん、もう堅くなってる……本当にご主人様は、スケベなんですね」
ああ、「これ」の次なのね。だったら、このまま同じ体位は面白くない。僕も半身を起こし、また姉を抱きしめる。
「ご主人様?」
「舐め……るんだ、この淫乱メイドめ。僕の乳首を舐めろ」
「ふふ、この変態主人。たっぷりと舐めてあげるわ」
もしかしたら……僕はふと思った。
ツンデレって姉のような人のことを言うのだろうか?
まあ、「デレ」があるとするのは僕の自惚れかもしれないけど
確かに、世間で言うツンデレというのとはちょっと違う気がした。
それは単純に僕たちの関係が特別過ぎるからだろうか?
姉と弟。メイドと主人。妖怪と人間。確かに、僕たちの関係は複雑だ。世間一般とは違いすぎる。
それでも、僕にとって姉がちょっと意地悪でとっても可愛らしいのに代わりはない。
ツンデレとかそういう定義は、本当のところどうでも良い。
どうせ僕たちはどんな定義にも当てはまらないから。
「んっ、ご主人様……気持ちいい? 良いなら声を出して」
「きっ、気持ちいいよ……もっと、もっと舐めて、腰をもっと、動かして……」
「うふふ……ええ、ご主人様がお望みなら。たっぷり、可愛がってあげる」
当てはまるとすれば、変態か。でもそれでいいや。
僕は姉を愛してる。姉は……愛を知らないと言うけど、たぶん愛してくれていると思う。
それでいいや。夜はまだこれからだし。
僕たちはまだまだこれからだし。

74 名前:某880 女王様のメイド mailto:sage [2007/01/18(木) 23:15:14 ID:JSM2roXx]
以上です

べっ、別にあなたたちのために投下したんじゃないんだから!
おひさしぶりです、とか全然思ってないんだらかね!
久しぶりのモーショボーはどうだったかなぁとか、
初めて読む人は設定とか判らなくて大丈夫かなとか、
そんなこといちいち考えたりしてないから!
わっ、判らない人は勝手に保管庫なり見ればいいでしょ!
そうよ、勝手にすれば?
またそのうち投下するからとか思ってないし、勝手に期待して待ってれば良いんだわ!

ツンデレってこうですか?わかりません

75 名前:名無しさん@ピンキー [2007/01/18(木) 23:15:47 ID:rQlhkAi3]
827 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/01/17(水) 23:58:23 ID:i36M1cXM
コレを見たア・ナ・タ♪超超幸せ者ダネ****

この文を読んだからには、あなたには幸せなコト

が起きますよ・・・★本当です☆この文を読んだ、

私の、2人の友達が恋を成功させました☆☆

さぁ、あなたも恋を成功させましょう♪それには

そうすればいいのかと言うと・・・☆


    ↓↓↓↓↓↓コレでOK↓↓↓↓↓↓

* この文を読んで3時間以内に、どこかへ貼る♪

*貼る数は、あなたの自由ですよ☆彡
 
      *****アドバイス*****


  多く貼り付けるほど、幸せがたぁっくさん

  舞い込んでくるはずだよ☆がんばってね♪


     ※※※※※注意事項※※※※※



 どこに、どれだけ貼っても大丈夫です★

 貼り付けなかった場合、特になにも起こりませんが

 運が悪ければ、近々あなたに不吉なことが

 起こること間違いなしです!!!



   ☆☆あなたの恋が実るチャンスです★★
   (今私はこれ↑をやっている途中です




76 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/19(金) 00:20:22 ID:U3Nlc31o]
某880氏……
あんたはやっぱ最高だ!!!!!!!!111
GJ!!
でもツンデレの至上は海原先生だと思う

77 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/19(金) 03:28:47 ID:24BgXAb+]
>74
キターーAAry
モーショボーの新境地燃えますた。すっげえカワイイです。
GJ!!!

78 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/19(金) 16:03:26 ID:Q7oqI33Z]
>>74
久しぶりにウザかった
期待はしてないから安心して隠居してくれ

79 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/19(金) 19:16:04 ID:b376jCtm]
880さんお久しぶりアンドGJ~~
久々にイイの見させてもらいました。ツンデレはそれでいいと思われw

80 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/19(金) 21:48:50 ID:HtpSHKFf]
関係を説明する中で、ナチュラルに「メイドと主人」を組み込んでる弟君に吹いたw

しかし、1号はメイドを分かってない
喫茶店に立ってる時点でウェイトレスであり、メイドでは無いのですよw



81 名前:某880 ◆/Mgq/8agL6 mailto:sage [2007/01/20(土) 01:21:22 ID:onvDuojF]
GJくださった皆様ありがとうございました。

>でもツンデレの至上は海原先生だと思う
では究極のツンデレを求めに行ってきますw

>喫茶店に立ってる時点でウェイトレスであり、メイドでは無いのですよw
まあ、1号は女王様(たん)がいればそれでいいらしいのでw

82 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/20(土) 03:54:32 ID:D8Z+oF3E]
晒しと荒らしの発生条件

1.複数のスレにまたがり、同じコテを流用通用 
2.それで2〜3のスレに留まるならまだしも、あちこち顔出しすぎ 
3.過度の自己顕示や自己主張がウザい(全レス、自分語りや後書き、宣伝広告) 
4.発言内容や主義主張が厨房臭い、メンヘル臭い、自己中臭い 

叩かれやすさの発展度合い 1→2→3→4 

作品の内容やレベルは、実はあまり関係ない 
ネット上のダメな〜スレで語られるところの邪神クラスの酷さでもない限り 
作品内容単体で槍玉に挙げられて問題になるケースは少ない 
ぶっちゃけSS自体はB級C級だろうと、一切自己主張せず淡々と作品だけ投下するに留まれば 
荒れる事はないし、むしろお義理お情けで二、三個の乙は貰える 
まあ荒れないだけで評価もされないんだが、それでも台風の目になるよりはマシだろ? 

1&2→ 叩かれ易くなる要素であって、あくまで間接的原因 
       これをやってても一切自己主張ナシのSS自動販売機に徹してる限りでは 
       案外荒れや叩きを回避できる、できてる場合が多い 
       ただ本人が幾らストイックでも、信者や取り巻きがウザ化した場合は結局叩き要因になる 
       残念だけど、信者取り巻きの不始末が作者本人の悪徳に還元されるのが2ch 
       嫌ならコテつけるのやめるか、せめてスレ変えるごとにコテ使い分けろ 
       てか複数スレまたいでのコテ流用自体、どれだけ取り繕っても結局は名誉名声への執着だ 
       これまで蓄積された評判をリセットしたくねーっていう、女々しい未練がましさだ 
       そんなに評価賞賛が欲しいなら、エロパロ板でなくブログかサイトでも作ってそっちでやれ 
       めんどくさいからとか、個人サイトじゃ人が来ないからとか、寝言ほざいてんじゃねーぞ 

3&4→ 論外。今更言う間でもねーや。名無しでも(多少叩かれにくくなるだけで)大抵叩かれる 
       もちろん1&2の要素と複合した場合は、火に油のごとくに更に叩かれやすく 

83 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/20(土) 10:48:54 ID:SIVFBXxL]
晒しと荒らしの発生条件
自治厨
追跡厨
批評厨

84 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/21(日) 09:38:29 ID:W0p8isAy]
アレな1号さん他のいる環境にもなんとなく慣れている弟に萌えた
なんだかんだで皆、楽しそうだなw

85 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/23(火) 21:50:15 ID:PeKP1Zgs]
その11以降のSSは、どこに保存されているのですか?

86 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/23(火) 22:46:07 ID:LcL+Wl85]
保管庫のところちゃんと読め。

87 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/26(金) 01:13:40 ID:Zq5Z/z/l]
正直、11以降のログ読みづらい。

88 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/27(土) 09:43:39 ID:qjkG2GCZ]
ハゲド。まとめるの面倒ならエロパロ板保管庫に任したら?

89 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/27(土) 19:25:01 ID:qMciFfZb]
保管庫のログで、『プレジャーガウスト』を読み返してたんだけど、なんかレス番号が飛んで、一部抜けがあるようなのです。
全部読み返したわけではありませんが、>>150とか。
どなたか、確認できますか?

90 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/01/28(日) 12:04:44 ID:0AnQ3LCp]
>>89
すみませんミスってたので直しておきました。



91 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/06(火) 01:05:15 ID:+fM1yv5c]
保守

92 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/06(火) 08:33:50 ID:maRBfJrx]
プレガウ神きてくれないかな

93 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/11(日) 23:53:38 ID:/sqDtGAd]
もう駄目か……保守

94 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/16(金) 09:47:24 ID:UW3bptHr]
プレジャーガウストDSで出るぞおまいら

95 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/18(日) 21:44:42 ID:Atj4y3jv]
いやまて、出るのは「トレジャーガウストDS」だからな!?
確かに俺も、最近あれのCM見るたびに、ここのSS思い出すけどさ。

96 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/20(火) 00:13:40 ID:tUils8Bm]
>>94-95
期待して損した。
罪なので罰として何かSSを書け。

97 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/02/24(土) 03:03:03 ID:qC1b5tbj]
保守

98 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/02(金) 03:10:55 ID:VoAB59+I]
保守。

99 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sagr [2007/03/10(土) 02:39:30 ID:Xp5pfnEc]
保守

100 名前:名無しさん@ピンキー mailto:saga [2007/03/18(日) 22:46:06 ID:mFfRmK7s]
これはもうだめかもわからんね。








[ 続きを読む ] / [ 携帯版 ]

次100 最新50 [ このスレをブックマーク! 携帯に送る ] 2chのread.cgiへ
[+板 最近立ったスレ&熱いスレ一覧 : +板 最近立ったスレ/記者別一覧](;´∀`)<464KB

read.cgi ver5.27 [feat.BBS2 +1.6] / e.0.2 (02/09/03) / eucaly.net products.
担当:undef