- 1 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2007/11/27(火) 19:22:13 ID:???]
- 何年か前、まだ物心もついていなかった頃、ぼくはある本を読んだ。
その本の中の世界では、人間世界の裏に『犬』が独自に文明を築く世界があった。 猿ではなく、犬が発達し知恵を持った世界。 その物語の中で、人間同様知恵を持ったその犬は、こんな発言をしている。 『君達の世界では偶然猿が発達し知恵を持ったに過ぎない』 『そして、偶然犬が発達し知恵を持った世界が、僕達の世界なんだ』 しょせん物語……作り物の中のセリフでしかないと言えばそれまでだけれど、 ぼくはこの一節に、幼心ながらひどく感銘を受けた覚えがある。 人間以外の生き物が知恵を持ち、文明を築いている世界なんて存在するはずがない…… そうやって考える人は多いしそれが常識だけど、実際の所そんな根拠なんてどこにもありゃしないんだよね。 ポケモンは、高い知能を持っているものがたくさんいるってよく聞く。 人間に近いほどの、そしてそれ以上の知能を持っているものだっていると言うけれど…… だとしら、もしかするとぼく達の誰も知らない遠いところ……いや、もしかしたらすぐ近くにでも…… ポケモン達が言葉をしゃべり、文明を築いている。そんな世界があるのかもしれない。
- 501 名前:14/15 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2007/12/31(月) 19:26:04 ID:???]
- 「しかしまあ、改めて思うが……コウイチお前、育ちがお坊ちゃまのクセして、よく出来てるよな」
フライゴンを撫でていると、ひょっとジュカインがそんなことを聞いてきた。 確かにぼくのお父さんは企業の社長だから、ぼくの家柄は結構金持ちだけれど…… 「ん、そうかなあ? 普通だよこのくらいっ」 「いやあ、普通じゃないってー。金持ちの子供なんつーのはさ、 もっとこうホラ、生意気で高慢ちきな感じだろ?」 「何だって~~?」 聞き捨てならない発言にぼくは反応してしまい、気が付いたときにはぼくの舌は回り始めていた。 「違う違うっ! そんなのは勝手なイメージだよっ。イメージイメージっ! お金持ちってのはちゃんと躾が行き届いてるんだから、生意気で高慢ちきなんてそんなの逆だよっ、真逆っ。 そういう生意気な金持ちってのは、よっぽど親がバカなんだ。それでそんなバカなヤツが金持ちになれる例なんて稀だし、 だから高慢ちきなお坊ちゃまが出来上がるのも稀なんだよっ。分かるっ? 分かるっ!?」 「そ、そうなのか……?」 「そーなのっ!」 「ご、ごめんなさ~い……」 しゅんとして黙りこくってしまうジュカイン。……熱弁しすぎたかも。 でも、何で『お坊ちゃま』=『生意気』なんて勝手極まりない妄想じみたイメージが、こう浸透しちゃってるかな。 ジュカインに限っては、そういう類のお坊ちゃまに酷い目に合わされた経験が実際あったから別にいいにしても、 なーんでそーゆーイメージが一般的に広まっちゃってるかな、ぼくらの世の中はーっ!? ぼくみたいなまともな子が割を食うことをちゃんと考えてんのかな、一部の生意気なお坊ちゃんと、それを広める奴らはっ! 「ねっ、そー思うでしょ、フライゴンっ!」 「……は、はい……(な、なにが……?)」
- 502 名前:15/15 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2007/12/31(月) 19:28:39 ID:???]
- それから数分後、ひたすら前を見つめながら歩いていたジュカインが、ふと嬉しそうに声を上げた。
「あっ、ほらほらコウイチ、フライゴンっ! 見ろよ、見えてきたぜテレキシティがっ!」 「えっ!」 ジュカインが前方……地平線の奥を、指差す。 その指に従って、目を凝らして前方を見据えると…… かすかだが、見えた。 幾つものビルの頭。ビルの群れ。 ぼくらの世界に存在するものとほとんど変わらない『都会』の象徴が、 地平線の向こうからひょこりと顔を出しているんだ。 「わあ~っ、本当に見えてきたっ! すごいすごーい!」 「……」 はしゃぐフライゴンを傍目に、ぼくは言葉にならない衝撃を受けていた。 この世界に来てから今まで近代的な文明を一切目にしていなかったせいか、 族長さんから『大都会』と聞いたときも、ぼくは無意識下に『都会といってもたかがしれている』と思っていた。 だけども、ぼくら人間の世界でもまるっきし近代文明の象徴である『ビル』が、いま確かに風景の奥に幾つも存在している。 このポケモンの世界にも、確かに近代的な文明というものは存在していたんだ。 ……次第に衝撃は感動に変わっていき、どんどんと胸を満たしていく。 「カハハッ、驚いてるなコウイチ。あんな近代的なモンがあるなんて思ってもなかったかい?」 「うん、思ってもなかったよ。だから、スゴく楽しみ……!」 気が付けば、ぼくの口は自然と笑みの形を作っていた。 この世界に来てから、ぼくはいま一番ワクワクしているかもしれない。 エスパーポケモン達の住まう大都会、『テレキシティ』……さて、どれほどのものかなっ!? 第三話 「お坊ちゃま」
- 503 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2007/12/31(月) 19:33:16 ID:???]
- 投下終了です。
この後はしばらくはノリの軽い雰囲気で続くと思いますけど、よろしくお願いします。 続きは……いつになるか分かりませんけど、一週間以内には投下したいです。 では、また。
- 504 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2007/12/31(月) 19:34:22 ID:???]
- 乙、良い御年を~
- 505 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2007/12/31(月) 20:00:44 ID:???]
- 乙~
ってかピジョットはオスなのか?メスなのか?どっちなのか? ユンゲラーさんは何か可哀相な末路が見える・・・
- 506 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2007/12/31(月) 20:02:44 ID:???]
- ものすごくリアリティのある始まり方に吹きましたよw
- 507 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2007/12/31(月) 21:21:09 ID:???]
- 何かごく現代的な話になりそうだなw
ルージュラがグラビアアイドルやってたりするような街なんだろうなあ。
- 508 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/01(火) 02:45:04 ID:???]
- あけおめ
- 509 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/01(火) 03:15:16 ID:???]
- 乙明けまして、ピジョさんに惚れそうな件
エスパータイプというだけでドキドキしている 体大切に!心の奥底から支援!
- 510 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/01(火) 07:56:52 ID:???]
- コウイチのキャラが濃くなってきたなw
冒頭が現実的すぎて吹いた
- 511 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/01(火) 23:20:18 ID:???]
- あの小物くさいエアームドのほうがピジョットより格上ってのが腑に落ちない件
- 512 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/01(火) 23:51:11 ID:???]
- ヒント ワンピースのスパンダムとルッチ
- 513 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/03(木) 01:25:29 ID:???]
- ユンゲラーが俺過ぎて困る
- 514 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/04(金) 17:10:03 ID:???]
- 初めからパートナー:フライゴン
二番目に戻る:ジュカイン 初めに入った村:蓮 二番目に入った村:森トカゲ 飛行の偉いやつ:ネイティオ 緑好きだな作者、だいすき
- 515 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/04(金) 18:31:10 ID:???]
- そういえば緑だらけだな今んとこ。
最初のほうにサーナイトも出てたし緑フェチか。
- 516 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/05(土) 16:15:09 ID:???]
- 体大切にと言ってくださったばかりで大変申し上げにくいのですが、インフルエンザにかかってしまいまして…
投下は遅れてしまいそうです。ごめんなさい。 本当にすいません… >>514 緑色は一番好きな色ですね。目に優しいし。
- 517 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/05(土) 16:22:56 ID:???]
- >>516
どうかお大事にしてください 俺しばらく保守できなさそう、以後誰か頼んだぜ 5日間隔ぐらいで大丈夫だとは思うが スレの位置が500より下に来たらその時は浮上してくれ
- 518 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/05(土) 17:05:41 ID:???]
- >>517
下にいても大丈夫だぜ
- 519 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/05(土) 17:16:29 ID:???]
- >>518
最近スレが立つ頻度が上がってるみたいなんだ 保持数の限界が迫っている……あとは分かるな? そういや保管庫的なもの(wikiとか)は無いんだっけ ペース的にはまだ大丈夫だけど容量も迫ってきた 500KBがラインだったはずだから480KBあたりで次スレかな
- 520 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/05(土) 17:51:57 ID:???]
- >>516
お大事に!みかん食べてください ウィキつくるの? もう500以下だけど上げた方がいいのかな
- 521 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/05(土) 17:55:43 ID:???]
- まだ大丈夫
上げるときは深夜に上げた方がいいな
- 522 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/05(土) 19:28:00 ID:???]
- Wikiは欲しいな
携帯なら過去ログ読めるからいいが、モリタポを買うのは・・・
- 523 名前:名無しさん、君に決めた! [2008/01/06(日) 01:23:35 ID:kZ4+VJGi]
- 保守
- 524 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/06(日) 13:19:39 ID:???]
- >>522
つ「こっそりアンケート」 でも50モリタポを貯めるには最低1ヵ月はかかる
- 525 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/06(日) 20:26:52 ID:???]
- いまスレの容量何kbくらい?
- 526 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/07(月) 03:24:54 ID:???]
- >>525
500ぐらいぜよ
- 527 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/07(月) 13:45:49 ID:???]
- 違います
408です
- 528 名前:名無しさん、君に決めた! [2008/01/07(月) 19:26:36 ID:wJr3vM0J]
- 一応今投下されてる奴は保存しといたが、
これはどうするべきなんだろう。 wikiのこととかよく知らんからどうしようもない
- 529 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/09(水) 13:10:30 ID:???]
- 俺のコウイチの脳内イメージは何となくミツル
といってもコウイチは描写では黒髪でスーツ着用だから、 ミツルといっても黒髪でスーツ着用してるミツルだけどね
- 530 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 18:34:05 ID:???]
- ようやく治りました。みなさん保守ありがとうございます!
まだ本来書こうとしてた所までは書き終わっててないんですが、 あんまり投下しないで日を空けるのもアレなので、いま出来てる所まで投下します。 ちょっと区切り悪いですが、ご勘弁を……
- 531 名前:1/7 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 18:40:37 ID:???]
- テレキシティは、レンガ造りの『壁』に囲まれていた。
都市の内部と外界を隔てるその壁は、いわば『国境』のような役目を成しているんだろう。 高さはゆうに20メートル以上はあり、壁の両端は左右を見渡しても到底見えそうにない。 その壁には等間隔でいくつもの自動ドアが設けてあり、それぞれの自動ドアの上部には、 都市への入り口であることを指す『City Entrance』の文字がデカデカと刻み込まれていた。 壁の上には幾つもの蛍光灯(今は日が昇っているので飾り以外の役目は成していない)と、 不当に都市へと侵入してくる者を取り締まるための小さな監視カメラが常に回っている。 「ここがテレキシティーの入り口ですかねえ、コウイチくん!」 「うん、そうみたいだね。ドアの上にもそう書いてあるし。」 ぼくたち三人はその壁の目の前までやってきていた。 辺りを見渡せば、ぼくたちと同じくテレキシティへの観光者なのか、ちらほらとポケモンの影が見える。 そのほとんどが見たことのあるエスパータイプのポケモンなのだけれど、 中には、見た目エスパータイプには到底見えないようなポケモンも僅かながら存在する。 そんなエスパータイプ以外の者も、特に違和感なくエスパータイプの者達の中に紛れ込んでいるし、 今こうして壁の前にいるぼく達三人も、じろじろと周りの者達に見られたり声をかけられたりすることはない。 入り口に入る前ですらこうなんだから、テレキシティはあまり外見や種族にこだわらない都市なんだろう。 ……それが例え『人間に似ている者』であろうと、『人間そのもの』でない限りは。 「おいコウイチ。誰もお前が人間だってことに気づいてないみたいだぜっ。クケケッ」 「うん、そうみたいだねっ! ちょっと不安だったけど、よかったァ……変装した甲斐があったよ」 今ぼくは、自分が『人間』だということがこの都市の者達にバレないために、ある種の変装をしている。 そして、ここまで周りの者達がぼくに対して興味を示さないということは、この変装は大成功だったということだ。 ぼくは改めて、ホッと安堵のため息をついた。 これで気兼ねなくテレキシティの観光及びぼくのポケモン捜索が出来るってものだね。 ……ここに来る前に、ちゃんとみんなと相談しておいてよかった。
- 532 名前:2/7 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 18:43:39 ID:???]
- ――――――――――――――
時は20分程ばかり遡る。 テレキシティを囲む壁と、その周りにちらほらと存在するポケモン達がうっすら見えてきた頃、 ぼくはある重大な事実を思い出したんだ。 ……なぜ今まで忘れていたかも分からないほど、重大な事実。 ”あのさ、そういえばこの世界って……人間が神だとか宇宙人だとかと同じような存在なんだよね。 このままぼくが人間丸出しのまんま、あんな都市に入っちゃったらさ……すっごい騒ぎになっちゃわない?” ぼくは先ほどまで忘れていた事実とそれにより芽生えた不安を、ふたつ同時にフライゴンとジュカインに伝えた。 そしてそれを伝えたと同時に、それまでうかれていたフライゴンとジュカインの表情が瞬時に真剣な物に変わった。 そう、これはとてつもなく重大なことだ。 ぼくたちの世界でも、ちょっと外国のポケモンが姿を出したくらいでテレビも新聞も大騒ぎってなくらいだし、 ぼくらの世界とそう変わらないであろう近代都市のあのテレキシティに、 この世界では『神』と同等の存在(ちょっと誇張入ってるような気がしなくもないけど)であるという 『人間』が、つまりぼくが立ち入ってしまえば、もうどれほどの大騒ぎになるか想像もつかないし想像したくもない。 とりあえず、のんびりまったり都市観光……なんてことが出来なくなるってことくらいまでは分かる。 ゆったりなごやかに都市観光するためには、ぼくが『人間』であるということがバレてはいけない…… とりあえずぼく達は歩を止めて、その方法を考えることに専念することにしたんだ。
- 533 名前:3/7 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 18:49:28 ID:???]
- 胸ポケットには、トレーナーカードとポケモン図鑑。
ブレザーのポケットには、ハンカチとティッシュと手鏡。 ズボンのポケットには、ちょっとした腹ごしらえのためのチューイングガム。 腰に巻いてあるポシェットの中には、おサイフ、各種傷薬、3、4つくらいのモンスターボール、 そして、寒い場所に立ち入った時のためのマフラーと毛糸の帽子が入っている。 これだけの道具で、どうやって自分が人間だとバレないように変装すればいいんだろう。 マフラーで顔をぐるぐる巻きにするとか……? いやいや、それはちょっとイヤだよっ! 頭を抱えて悩んでいたとき、ふとジュカインが思い出したようにこう漏らしたんだ。 ”そういえば昨晩、お前と族長が二人でどっか行ってる間に、キモリ達に聞いたな…… 『人間を人間と区別する最大のポイント』……ってやつをさ” それを聞いた瞬間、ぼくの中にふとこういう疑問が芽生えた。 そういえば、ここのポケモン達はぼくの姿を見て瞬時に『人間』と勘付いているけど、 足が二本、腕が二本、頭が一つの生物なんてポケモンの世界でも特に珍しくはないのに、 ここのポケモン達は、どこを見て『あっ、こいつ人間だっ!』と把握しているんだろう。 ……それが分かれば、自分が人間だとバレないための効率のいい変装の完成に大きく近づけるかもっ……! ”ど、どうやって区別してるの? ここのポケモン達はっ! 教えてっ、ジュカイン!” ジュカインの答えは、こうだった。 ”ああ、これがおおまかに二つポイントがあるらしくてな…… なんでも、髪の毛と、指……らしいぜっ”
- 534 名前:4/7 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 18:54:41 ID:???]
- ”頭の下のほうや手はツルツルなのに、
上の方だけ毛を伸ばしに伸ばしてるその珍妙なスタイル。 そして、何でも器用に物を作れちゃう五本の指。 この二つが、『人間を人間と区別する最大のポイント』……らしいぜ” その言葉に、ぼくは深く納得する。 人間はふつう服を着ているし、ここは人間により文化が伝えられた世界なのだから、 服で覆われている部分は区別する対象にはならない。 つまり区別するポイントは、『露出している部分』のみということになる。 そしてその露出している部分で一番特徴的なのは、確かに髪の毛と指だ。 ということは、その二点をどうにかすれば、ぼくが『人間』として見られることはなくなる……! 人間だとバレないための効率のいい変装。 その方法が瞬時に頭の中で構築され、ぼくはすぐさまそれを実行した。 まず指を見せないために、手をブレザーの袖の内側に隠す。 これで最低限はOKなわけだけど、一片も怪しまれないためには隠すだけじゃあ物足りない。 つまり『新しい手』を作れば、より自分が人間ではないということをアピールできるはずだ。 そこでぼくは、『モンスターボール』を新しい手とすることにした。 袖の中にモンスターボールを入れ、その半分だけ袖からはみださせる。 こうするだけで、新しい手の完成だっ! モンスターボールの白い部分をはみ出させてるから、見た目は『ドラえもん』の手そっくりだねコレ。 で、髪の毛を隠すのは簡単。ただ毛糸の帽子をすっぽりと被るだけでオーケー! ……髪の毛をぜんぶ帽子の中に収めるわけだから暑いし蒸れるしで最悪だけど、 そこはフライゴンとジュカインのためにがまんがまんっ! 人間を人間と区別する二つのポイントを完全に覆い隠したこの変装。 完璧だとは思いつつも正直不安ではあったけど、その不安は杞憂に終わった。 そしてそれは同時に、ポケモンが作り出した近代都市への期待と興味を再び呼び起こす事となったんだ!
- 535 名前:5/7 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 19:00:54 ID:???]
- ――――――――――――――
数分後、ぼくらはついにテレキシティへの入り口の中へと入っていた。 当然といえば当然だけれど、入り口を通ったらすぐに都市の中……というわけではなくて、 入街手続きを済ませるための審査所への待合室に繋がっていた。 待合室の中は、予想していたよりは居るポケモンが少なくて、 幾つか設置してあるソファにも、ぼくたち三人分が座れるようなスペースは幾つも空いている。 ぼくたちは入り口前で受付に渡された整理券を握り締めながら、遠慮なくソファへと腰を下ろした。 「うわー、ふかふかですねこのソファ~。いままで木の椅子やら地べたとかにばっか座ってたから気持ちいいや~」 フライゴンは顔をほくほくとさせながら、軽く飛び跳ねたりしてソファの弾力を楽しんでいる。 「この植物手入れが悪いなーっ! 土もからっからに乾いてるし、ちゃんと水やってんのかなァ~? 枯れるぜコレいつか」 ジュカインは、ソファのすぐ横においてある観葉植物を手でいじりながら、あれこれ文句を言っている。 ……まったくぅ、二人ともまるで田舎モノみたいだな。大勢いる場なんだから、もっとこう慎ましくさァ…… ……とは心の中で思っていても、このぼくもさっきから心がソワソワして落ち着かない。 ソファや観葉植物もモチロンそうだし、ぴかぴかでつるつるな床や天井、設置された公衆電話、 すべてが、この世界では今までになかった近代的なモノで、 そんな近代的な建物の中なのに、周りに存在する生物は『ポケモンだけ』だというこの違和感。 胸の奥にしまわれかけていた非現実的な感覚が、再び呼び起こされてきてしまう。 ……ただ、『非現実的な感覚』とは言っても、そこに不快感やら不安といったものはない。 むしろ、入り混じっているのはそれらとは全く真逆な意味のものたちだ。 例えるなら、はじめて動物園やら遊園地に行った時のような気分。 そんな夢のような感覚が、ぼく……いや、ぼくらの心を落ち着かせないでいるんだ。
- 536 名前:6/7 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 19:08:47 ID:???]
- そんなまったく落ち着かない待ち時間を過ごしている中、
フライゴンがふと立ち上がって、部屋の一端にあるテーブルに向かって歩いていく。 そこの棚からパンフレット状の紙を持ち帰ってくると、それをぼくに見せてきた。 「ねぇねぇコウイチくん。ホラ、『入街審査案内』ですってー」 「『入街審査案内』?」 フライゴンが持ってきたものは、入街審査の手順やら注意事項が書かれたものだった。 カラー印刷で文字も大きく、所々にイラストもあり、かなり見やすく作られている。 「へー、ずいぶん見やすいねーっ、コレ」 「イメージアイドルなんてのもいるぜ。『くちびる系アイドル・ムチュールちゃん』だってさ。 こーゆーアイドルとか乗せる意味あるのかなー!? たかだか審査案内の紙一枚にさ……」 いきなりジュカインが、所々に写っている髪の生えたペンギンのようなアイドルに対して文句をつけ始めた。 「まぁまぁ、オヤジじゃあないんだからそんな細かい所まで気にするなよジュカイン。 んじゃあー、せっかくだからボクが読み上げますねコウイチくん。えーと、なになに……」 「オ、オヤジって……」 不遜な表情を浮かべるジュカインを尻目に、 フライゴンは紙を目で追いながら、たどたどしい口調で読み上げ始めた。 「1・うけとった整理券の番号を呼ばれたら、指定された審査室へ入りますっ。 2・わたされた書類に種族名・氏名などの情報を記入し提出しますっ。 記入事項に従って……ええと、てーねーに記入してくださいっ。 3・手荷物検査とボディチェックを行いますっ。 4・SMJ……かっこS波による心の鑑定かっことじを行い、貴方の危険度を察知しますっ。 5・入街者リストへ貴方が登録されて審査は終了ですっ!」
- 537 名前:7/8 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 19:18:04 ID:???]
- 「注意……私物検査で危険物が出た場合ただちに没収のち処分となり、危険者リストに登録されます。
心の鑑定により危険度が70を超えた方は危険者リストに登録させていただき、 90を超えた方は、申し訳ありませんが入街を拒否させていただきます。ごりょーしょーください……」 読み終えたフライゴンは、苦い顔をしながら不安そうに呟いた。 「ですって。うわァ、大丈夫かなぁ」 「危険度を察知しますだってさっ。オレとお前はこれに引っかかるんじゃねぇの? クケケッ」 ジュカインは腕のリーフブレードを撫でながら、軽くため息をつく。 「ぜったい引っかかっちゃうよねー! ボクは爪や尻尾は凶器だし、熱いの口から吹けちゃうし…… ジュカインも、腕に刃物引っ付けてるしね。コウイチくんは穏やかで優しいから危険度0でしょうけど」 「90以上いっちまったらどうしような? っつかどういう方法で鑑定するんだろ……質疑応答?」 「そこはアレだよ。エスパータイプだけに超能力でも使うんじゃなーいの?」 「超能力でどんな風に検査するんだろうな? 器具とか使うのかな?」 「さァ? 分からないけど、なんだか楽しみだなぁ、ボク」 不安そうにしていたのはどこへやらだんだんと楽しそうに語り始めるフライゴンを脇目に、 ぼくは、少しばかり審査への不安で緊張していた。 人間に見えないように変装したはいいけど、ボディチェックとかのときにごまかせるかな……
- 538 名前:8/8 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 19:24:27 ID:???]
- 「うう、ぼくも何だか緊張してきたよ。……バレないまま審査抜けられるかなァ……」
不安のあまり、ぼくは二人に励ましてもらいたくてつい小声でそう漏らしてしまう。 それを聞いた二人は、同じく小声で期待通りぼくを励ましてくれた。 「きっと大丈夫ですってコウイチくん! コウイチくんなら何とかごまかせますって!」 「最悪ボディチェックのときバレたとしてもさ、内情を話して口止めすれば大丈夫だぜ。多分」 「そうかな……うん、ありがとう二人ともっ」 二人の意見は根拠のないものだし実際にはまったく頼りにならないものだけれど、 ぼくはとても勇気付けられて、次の瞬間には不安や緊張も驚くほどに和らいでいた。 そうだよね、何とかなる、大丈夫さ。別に悪いことしてるわけじゃあないんだし…… 『84番の方。84番の方、Dの審査室へお入りください』 48という数字にぼくはピクリと反応する。48……ぼくの整理券に記されている番号だ。 「呼ばれた。じゃあ行ってくるね、フライゴン、ジュカイン」 「はァーい。また奥で会いましょうねー」 「必死でごまかせよ。カハハッ」 ぼくは立ち上がり、まだ若干の不安を抱きながら指定された審査室へと入っていった。
- 539 名前:8/8ちょっと修正 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 19:25:30 ID:???]
- 「うう、ぼくも何だか緊張してきたよ。バレないまま審査抜けられるかなァ……」
不安のあまり、ぼくは二人に励ましてもらいたくてつい小声でそう漏らしてしまう。 それを聞いた二人は、同じく小声で期待通りぼくを励ましてくれた。 「きっと大丈夫ですってコウイチくん! コウイチくんなら何とかごまかせますって!」 「最悪ボディチェックのときバレたとしてもさ、内情を話して口止めすれば大丈夫だぜ。多分」 「そうかな……うん、ありがとう二人ともっ」 二人の意見は根拠のないものだし実際にはまったく頼りにならないものだけれど、 ぼくはとても勇気付けられて、次の瞬間には不安や緊張も驚くほどに和らいでいた。 そうだよね、何とかなる、大丈夫さ。別に悪いことしてるわけじゃあないんだし…… 『84番の方。84番の方、Dの審査室へお入りください』 84という数字にぼくはピクリと反応する。84……ぼくの整理券に記されている番号だ。 「呼ばれた。じゃあ行ってくるね、フライゴン、ジュカイン」 「はァーい。また奥で会いましょうねー」 「必死でごまかせよ。カハハッ」 ぼくは立ち上がり、まだ若干の不安を抱きながら指定された審査室へと入っていった。
- 540 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/10(木) 19:34:25 ID:???]
- wikiの件ですけど、自分的にも作ってくれると嬉しいですね。
自分の文を保管してくれるというのは色々な意味で励みになります。
- 541 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/10(木) 19:58:15 ID:???]
- お帰りなさい!
- 542 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/11(金) 01:45:30 ID:???]
- 84?48?
間違ってるよ~。
- 543 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/11(金) 10:16:49 ID:???]
- GJ!頑張って~
- 544 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/12(土) 17:47:08 ID:???]
- GJ!
ストーリーは決まってるの?
- 545 名前: ◆VgkZEoAoTg mailto:sage [2008/01/13(日) 02:16:30 ID:???]
- >>544
3話はもう細かい流れは全部決まってますし、 10話くらいまでは大体おおまかな流れくらいまでは考えてありますねー。 暇があればストーリーを妄想してお話のストックを増やしていってます。
- 546 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/13(日) 02:18:04 ID:???]
- はいはいトリップ間違えてしまいましたよ。
- 547 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/13(日) 09:41:10 ID:???]
- >>545-546
ドジっ子1萌えw
- 548 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/13(日) 13:04:19 ID:???]
- なんという地味すぎる良スレ
ここだけは荒れないようにしたいものだ
- 549 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/13(日) 19:24:22 ID:???]
- >>548
切実に同意。1頑張って!
- 550 名前:名無しさん、君に決めた! [2008/01/13(日) 23:58:00 ID:dAzePhmk]
- 保守age
なんか絵でも描いてみようかな
- 551 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/14(月) 12:05:04 ID:???]
- wiki作ってみようと思う
見たいと思ったときにすぐに見れるのは読者としても嬉しい ただちょっと時間かかるかもしれないのであまり期待しないでくださいお願いします
- 552 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/14(月) 14:20:14 ID:???]
- 作者マジでこんなトコで才能を無駄に使ってないか?これ本にして出版したら絶対売れるよ…
- 553 名前:551 mailto:sage [2008/01/14(月) 14:33:49 ID:???]
- 話のタイトルは『ポケモン ドリームワールド』で宜しいですか?
- 554 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/14(月) 14:35:31 ID:???]
- おk
- 555 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/14(月) 18:28:01 ID:???]
- wiki期待してる
- 556 名前:551 mailto:sage [2008/01/15(火) 01:49:10 ID:???]
- wiki進行状況:第二話まで掲載完了
第一話と飛鳥部隊まで誤字脱字チェック完了 二番目のやつはこれどう考えても違和感あるというものを勝手にポチポチしちゃってます。すいません。 もうちょっとかかる予定ですが初心者の手ではシンプルってレベルじゃねーですご了承下さい。
- 557 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/15(火) 09:26:25 ID:???]
- 頑張って!
- 558 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/16(水) 01:21:49 ID:???]
- ここのフライゴンはためらいなく主人公に体捧げそうなくらい従順でつね
- 559 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/16(水) 15:43:45 ID:???]
- >>558
×「捧げそうな」 ○「捧げる」
- 560 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/17(木) 00:34:24 ID:???]
- 今日か明日には投下できるかもです。
投下間隔遅くてごめんなさい。 いざ書いてみるとつい筆が進んじゃって、分量が予定の二倍以上になってしまい…… 結果書き上がるのが遅れてしまうとか、そんなんばっかですいつも。 どうしようもない悪癖よのー、ですよね。こうして自覚はしてるんですけどもねー…… >>551 保存してくれるだけでも嬉しいですよー。ありがとうございます。
- 561 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/17(木) 18:16:39 ID:???]
- 10レス前後なら週一でも別に遅くはないべ
- 562 名前:551 mailto:sage [2008/01/18(金) 16:16:46 ID:???]
- 諸事情でこれで限界
www14.atwiki.jp/pokemon-dreamworld/pages/12.html >>560 待つ時間が長くてもより後で幸福になるのでまったく問題ないです。 wktkしてます。
- 563 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/18(金) 18:12:47 ID:???]
- wiki乙ー
- 564 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 18:41:08 ID:???]
- >>562
wikiありがとうございます。 これでいつでも確認できます。お疲れ様でしたー。 それでは投下しますね。
- 565 名前:1/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 18:44:46 ID:???]
- 通された審査室には、スーツを着こなした役人さんらしきユンゲラーが三体佇んでいた。
部屋の内装は存外大人しめで、何枚もの書類が置かれた丸いテーブルが中心にあり、 隅に用途の分からない大きな機械が一つと、コンピュータが何台か置かれているだけだ。 そのくせ間取りはムダに広いので、それがぼくの緊張を一層と煽る。 三体の役人ユンゲラーの内の一体が丸いテーブルを囲む椅子の一つに座ると、ぼくにこう指示した。 「こちらへお座りください」 「はい」 促されたとおり、役人ユンゲラーの座っている向かい側の椅子に腰を下ろすと、 役人ユンゲラーはすぐさまテーブルの上に置かれている書類とペンをボクに差し出した。 「では、こちらの書類にご記入願います」 淡々とした事務的な口調でそう指示する役人ユンゲラー。 ほぼ無機質なその口調は、毎日この仕事を飽きるほどに繰り返しているそれだ。 ……もしかしたら数分もしないうちに、この人の事務的でない口調が聞けるかもしれない。 ぼくが人間だとバレることによって…… ……って、何を後ろ向きなことを考えているんだ、ぼくは。 フライゴンも言っていたじゃあないか。そう、大丈夫。大丈夫さ。 ぼくは己自身を励ましながら、とりあえず目の前の書類に目を通した。 記入する欄は意外にも少ない。種族名、氏名、性別、年齢、健康状態、特技…… 『どこから来たのか』などを記入する欄は存在しないし、すべて適当に誤魔化せそうだ。 さぁ、怪しまれる前にさっさと書いてしまおう。 …………あっ。 しまったァーーー!! ぼくは大マヌケかっ!!?
- 566 名前:2/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 18:47:22 ID:???]
- 書けないっ! というかペンを持てないっ!
今のぼくのこの手……『モンスターボールの手』じゃあ、ペンを持てないっ! このモンスターボールの手である間、指を使うことは全てフライゴン達に任せればいいと思っていた。 だけど、こういう状況は一切想定しなかった。隔離された部屋でぼく一人、指を使わなければいけないこの状況…… なぜあの審査案内を見た時から、こういった状況に陥ってしまうだろうことへ思考が行き届かなかったんだろう。 そこへ思考が行き届いていれば、何かしら対策は打てたに違いないのに…… 書類とペンを見つめたまま、ぼくは動くことが出来ない。 テストの途中にシャーペンの芯を完全に切らしてしまったら多分こういう気分になるんだろう。 ……混乱のあまり、ぼくは次の瞬間こんなことを口走ってしまっていた。 「あ、あのう……あなたが代わりに記入していただけませんか?」 「は?」 「いや、あの……ぼ、ぼくが言った通りに書類に記入してほしいんです。 あの、その、何というか、ぼく……字とか書くのは、何ていうか……」 言ってる自分でも分かる。『何をむちゃらくちゃらな事を言っているんだぼくはっ!?』 自分自身が言っているのに、まるで他人の言葉を聞いているかのようだ。 そして、目の前の役人ユンゲラーの答えは当然…… 「直筆でお願いします」 相変わらず事務的な口調で対応された。当たり前だけど…… 役人ユンゲラーの左隣に立っている髭のない役人ユンゲラーは、さも退屈そうに目を細めている。 右隣に立っている髭の長い役人ユンゲラーは、怪しむようにぼくを鋭い目つきで見ている。 部屋の隅にあるコンピュータの駆動音が、やたらと耳に響く。 本当に、どうしよう。事態は深刻になってくばかりだよオォ~~~
- 567 名前:3/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 18:49:16 ID:???]
- ……
そういえばこの目の前の役人ユンゲラー、どうして何も言わないんだ? 『言葉を喋れるのならものを書けないわけがない』と高をくくってでもいるんだろうか。 ぼくのこの丸い手を見れば、ペンを持てそうにないとすぐに気づくだろうに…… ……待てよ。 そういえば指がなくても、ペンぐらい持とうとすれば持てるよね。 たとえば指や腕がない人は、口や足で筆記用具を持って文字を書くし、 本来ものを掴むための部位がなかったとしても、他の部位で代用すればいい話なんだ。 ……もしかしたらこの役人ユンゲラーは、ぼくが『そういう種族の者』だと思っているんじゃあ……? よおし、それならばこの役人さんの期待通りにやってあげようじゃあないか。 ぼくは、テーブルの上に転がっているペンに向かって顔を伸ばした。 普通なら指で持つ部分を……ぼくは唇で掬い上げ、そして挟み込む。 「……」 若干、辺りの空気が変わった気がする。 いや……逆だ。変わったのは辺りの空気ではなくて、ぼくの心情…… 隔離された静かな部屋で三体のポケモンに見守られながら、テーブルの上に転がるペンを唇で持ち上げる。 なんとも珍妙な状況だ。衆人監視のなか汚れた地面を舐めさせられる、昔の罪人みたいだ。 ……でもっ。 それとは違う。恥じゃあない。ぼくがペンを持つ方法はこれだけ……『これだけ』なんだから。 そう、ぼくはいま『そういう種族』なんだ。『ペンを唇で持って文字を書く種族』なんだ。 ぼくはしっかり唇でペンの先端を挟みながら、筆先を書類の記入欄へとくっつけた。
- 568 名前:4/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 18:52:45 ID:???]
- とても書きにくいし字は下手になってしまうけれど、書けないわけじゃない。
とりあえずは書ける。そう、それで十分だ。 字が下手だろうが、記入欄を全て埋められればそれでいい。 記入欄が半分ほど埋まってから、ぼくは念のため上目遣いで役人ユンゲラー達の様子を確認してみた。 向かい側の役人ユンゲラーは、別段何事もなかったかのように表情は一切変えていない。 左隣の髭なしユンゲラーも相変わらず退屈そうにしているだけだ。 だけど右隣の髭長ユンゲラーは、変わらずぼくに刺すような視線を送っている。 ……くそう、何を怪しんでいるんだ。『ぼくはこういう種族なんだ』! 『こういう種族なんだよっ』! 「……書き終わりました。ペン、よごしちゃってごめんなさい……」 なんとか記入欄を全て埋め終わり、謝罪も添えてぼくはペンを口から離した。 達成感とか満足感なんかよりも、なにかひどく無駄なことをしたような気分でいっぱいだ。 ……口でペンを持って物を書くなんて、もう生涯ないかもね。希有な体験したなあ。 「お疲れ様でした。それでは次の部屋でボディチェックとSMJをお受けください」 役人ユンゲラーはそう言って席を立つと、その書類を持ってコンピューターの方へ向かい何かの作業を始め出した。 それと同時に髭なしユンゲラーと髭長ユンゲラーがぼくの隣へやってきて、こう指示を出した。 「では、こちらへ。検査室へご案内します」 そう言って、二体の役人ユンゲラーはぼくが立ち上がるのを確認すると、 出口の方の扉を開けて、髭長はぼくの隣に、髭なしはぼくの前に立って、検査室への歩を進めはじめた。 ボディチェック……たぶん、これが一番の関門となるだろう。さて、バレずに抜けられるだろうか……? 再び、緊張がぼくの胃をきりきりと緩く締め付け始めた。
- 569 名前:5/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 18:54:15 ID:???]
- 不自然に長い通路を挟んだ後、ぼくは検査室へと辿り着いた。
そして、その部屋の驚くほど質素な内装に、ぼくはちょっとした驚きを覚える。 先ほどの部屋もかなり質素だったけど、この部屋は質素というよりは……もはや何もない。 たぶん没収したものを入れるためのカゴと、鉄か何かで出来たようなメットが幾つか壁にかけてあるだけだ。 それほど質素なのにやはり間取りだけはやたらと広くて、不気味さすらも醸し出している。 「あのう。この部屋ってなんでこんな質素なんですか? 部屋もやたら広いし……」 たまらず、ぼくは役人さんに向かってそう質問してみる。 その質問に、髭長ユンゲラーが即座に答えを返した。 「これからボディチェックの後に始める『SMJ』と呼ばれる検査は、超能力を使う検査です。 そして超能力を発した際に生じる『S波』という振動は、精密機器などに影響を及ぼします。 ですから無駄なものは置かないのです。部屋が広いのは、S波の振動を部屋の外に漏らさぬためです」 「へぇ、なるほどォ……ありがとうございます」 部屋の質素さと間取りの広さにはやはりちゃんとした理由があったんだ。 そしてエスパータイプというだけあって、自分たちの特性を生かした検査方法を作り出している。 感心すると同時に不安も芽生える。超能力というと万能なイメージがある。隠し事くらいなんでも見破れそうなイメージが…… ますます不安が深まっていく中、ふと髭長ユンゲラーが…… 「……あなたの場合は……たっぷりとそのS波の振動を体感する羽目になるかも……」 「えっ?」 髭長ユンゲラーが何か意味深なことを呟いたのを、ぼくは聞き逃さなかった。 いま確実に、『ぼくが隠し事をしている』ことを見破っているかのような言葉を…… 「はいはいはいはい、サァサァさっさとボディチェックを始めちゃいましょうね!! ムダ話はあとあと、他のお客さんが突っかかっちまう前に、検査を早く済ませちまいましょう!」 しびれを切らしたのか髭なしユンゲラーのほうがいきなりそう叫び出し、ぼくのポシェットの中をさっさと確認し始めた。 この人は、面倒なことは早く済ませたい性格なのだろう。ということは、多少はぐらかしても無視してくれるかも…… 多少だが光明が増してきた。問題はあの髭長ユンゲラーか……
- 570 名前:6/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 18:57:57 ID:???]
- 「ええと、財布にマフラー、と……ん、このガラス瓶に入ってるのは何ですかー?」
髭なしユンゲラーは、ポシェットの中の各種傷薬を指差している。 「ああ、それお薬です。ピンク色のやつとオレンジ色のやつは傷薬で、 金色のヤツはなんでもなおし……あの、万能薬みたいなものです。 怪しく感じるなら没収してもいいですよっ。都市の中で同じようなの買いますし」 いらない誤解をかけられるのを危惧して、没収してもよいと言っておく。 でもその配慮は必要なかったようで、髭なしユンゲラーは照れ笑いしながらすぐ傷薬から指を離した。 「ああ、傷薬ですか。分かりました、それならOKで……あっ!」 しかしその瞬間、髭長ユンゲラーの方が代わりにポシェットに手を突っ込み…… 「これは没収ですね」 そして、各種傷薬をすべて籠の中に突っ込んでしまったのだ。 その光景に、髭なしユンゲラーはおろおろとうろたえている。 「えっ、あっあっ。おいルンゲラ、それはただの傷薬だってこの子が言って……」 「お前はアホかユルグ、確証がないだろうが! こういうものは基本的に没収なのだ、アホめっ」 髭長ユンゲラーもといルンゲラさんは、髭なしユンゲラーもといユルグさんを乱雑な口調で罵倒しながら、 ぼくのポシェットの中をじっと見つめた後、ぼくのスーツのポケットをまさぐり始めた。 「ハンカチにティッシュにガムに手鏡……と。……この機械は何ですか?」 ルンゲラさんは胸ポケットからポケモン図鑑を取ると、まじまじと観察し始めた。 「えっ! それはっ……」 ぼくは咄嗟の返答に困る。『ポケモン図鑑』なんて直接言って大丈夫だろうか? でもさすがにポケモン図鑑は没収されるわけにはいかない。ぼくは適当な嘘を交えてこう答えた。 「それは、『モンスター図鑑』です。ぼく全国を回ってモンスター達をこの図鑑に記録しているんです。 それを没収されたら、ぼく困りますっ! その図鑑を埋めていくのがぼくの仕事なのに……」 「ふうん……まぁ害はなさそうですし、これはいいでしょう」 ルンゲラさんは一通り図鑑を観察した後、ぼくの胸ポケットに図鑑を戻してくれた。よかった…… 「それでは、上着と帽子の下も見せてください」
- 571 名前:7/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:01:53 ID:???]
- 「えっ!?」
安堵したのも束の間、ルンゲラさんのその指示にぼくは胸を跳ね上がらせる。 ……上着と帽子の下を見せろだって!? そんなことしたら、 人間であることの証明である髪の毛と五本の指が丸出しになっちゃって、一発で人間とバレるじゃあないか! 従うわけにはいかない。どうにかはぐらかさなきゃ…… 「あ、あの、見せなきゃダメですか? 手で触って確認とか、それだけじゃあダメなんですか?」 「当然でしょう。裸まで見せろとは言いませんが、見せれるところまでは見せていただかないと…… それにしても、何か様子がおかしいですね? 上着あるいは帽子の下に『危険物』でも隠してるとか…… そういった事情でもあるような……そんな様子ですね、今のあなた……ふふふふ」 「うぐっ……」 ルンゲラさんの嘲笑の混じったその口調は、まるで『すべてお見通し』でも言っているようだ。 答えがずれてはいるものの、ぼくの醸し出している怪しさを彼は敏感に感じ取っている。 ……一度疑われてしまえば、その疑いが完全に間違いでない限り、晴らすのはとても難しい。 上手くはぐらかしきれるだろうか……いいや、どのみちぼくには何とかはぐらかすしか道はないんだ。 「イヤだな~! ぼく危険物なんて隠し持ってませんよォ。 いまあなた、『見せれるところまでは見せていただく』って言いましたね?」 「はあ……言いましたがそれがなにか?」 冷徹な視線をボクに投げかけるルンゲラさん。構わずぼくは言い訳を続ける。 「『見せれない』んですよっ! 危険物だとかなんだとかそういう理由じゃなくて、 ぼくらの種族じゃあ帽子や上着の下を見られるのは、裸を見せるのと同じくらい恥ずかしいことなんです。 あなた達の常識じゃあ考えられないことでしょうけど……ホラ、世界って広いでしょ」 「……へえ」 「……!」 ルンゲラさんの目つきは、ぼくが言い訳を始めてから一層鋭さを増している。 まるで射抜くような視線。疑っているというよりは、もはや怒っているかのような…… ……もしかして、ぼくの言い訳……逆効果だったんじゃあ…… 「……嘗めるなよ、小僧」
- 572 名前:8/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:05:36 ID:???]
- 「!?」
突如、胸にズシリと響くような低く重い声が、部屋に響き渡った。 そしてその低く重い声が紡いでいたのは、この場では全く場違いともいえる乱暴な言葉。 それを発した声の主は……もちろんぼくじゃあなくて……はしっこで小さくなっているユルグさんでもなくて…… 残るもう一人の…… 「嘗めるなよ小僧ッ!! そんなバレバレの言い訳にこの私が乗せられるかァッ!! ヌケヌケと都市に入れると思ったのか? そんな子供すら騙せないような稚拙な言い訳でッ!! 侮辱された気分だ、ああ胸糞悪い!! この仕事に就いてから滅多にないぞこんな気分になったのはッ!!」 一変して粗暴な口調になったルンゲラさんは、血走らせた目をかっ開いてぼくを睨み付けている。 ぼくは一瞬で感じ取った。怒りに触れた……社会人の怒りに触れちゃったよォ~~…… 即刻あやまりたいけど、そうさせてくれる暇もなくルンゲラさんはぼくに言葉を投げつけ続ける。 「思えば、貴様が審査室に入ってきたときから私は貴様を怪しいと思っていた…… 超能力ではない。私が長年この仕事をやってきて培った『勘』だっ! その『勘』が、貴様の胸の内にある薄汚れた野望を感じ取ったのだっ!! このクサレ小僧め、バレバレに露呈してんだよ貴様の小悪党精神……」 「お、おいおォ~いルンゲラー。声を荒げるのはやめようぜェ~~……」 この状況を見かねたのか、ふとユルグさんがかなり控えめな口調でそう言う。しかし…… 「黙らんかユルグッ!! 貴様はトイレでも行って顔でも洗っていろッ!!」 「ひえぇっ! ご、ごめんなしゃ~~い……」 ルンゲラさんのプレッシャーに押されて、ユルグさんはまたすぐに縮こまってしまった。頼りにならない人だなぁ…… 「ふんっ……さて……」 「……?」 ルンゲラさんは鼻息を荒げながら、ひょっとぼくから視線を外し壁の方に歩いていった。 そして、その壁にかけられているメットを手に取ると、こちらに戻ってきてぼくに手渡してきた。 鉄でもなければプラスチックでもない、何とも言えない感触のヘルメット。 「……こ、これは……?」
- 573 名前:9/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:09:47 ID:???]
- 「貴様の嘘はバレバレだが、それでも確証をなしにひっとらえるのもいけないことだ……
貴様の嘘を嘘だと完全に証明し、後味よく最高に気持っちよくひっとらえてやるっ!! さぁ、それを被れ小僧ッ! 今から『サイコキネシス』を使い、貴様の『心の揺れ幅』を観察してやるッ!!」 「心の……揺れ幅……?」 ルンゲラさんはこれから、テレビとかで見る『嘘発見機』みたいなことを超能力でするってことだろうか。 じゃあ、何でこのメットを被る必要があるんだろう。 これが機械だったとして、超能力を使ったら精密機器に影響が出るはずなのに…… ……あっ、そうか。超能力を使った際に『ぼくの脳みそ』に影響が出るのを防ぐために、このメットを被るってわけね。 ……そんな風にゆっくりと考えていたら…… 「さっさと被れッ!!」 「あっ、は、ハイっ!」 ルンゲラさんの剣幕に押され、ぼくはすぐさまそのメットを頭にはめ込んだ。 ちょいとメットのサイズが大きすぎる。ブカブカだ。こんなんで、『S波』とやらから脳みそを守ってくれるのかな。 ……違う。そんなことよりも、嘘を見破られて人間だとバレてしまうことのほうが、よっぽど心配だ。 相手は超能力だぞっ、超能力。サイコキネシスだぞォ……! 『バレない』なんてこと有り得るの……? ……バレる。バレちゃうのかっ、ついに……!? 嘘でしょォ~~……!? 「今から質問をする。『YES』か『NO』で答えろッ!! 分かったなッ!?」 「……はい」 素直に返事をするしか、ぼくに道は残されていない。 ルンゲラさんはぼくがそう返事をしたのを確認すると、一度勝ち誇ったような笑みを浮かべた後、こう問いかけた。 「その毛糸の帽子、あるいは上着の下に……『我々に見られたらマズいもの』は入っているか?」
- 574 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/18(金) 19:10:14 ID:???]
- 支援だぜ
- 575 名前:10/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:11:47 ID:???]
- 「……!」
ぼくが人間だとバレるのはマズいことだから答えはYESだけど、 YESと答えたところで正直者だと褒められ、人間であることがバレて都市中に広まるだけ。 逆にNOと答えても、それが嘘だと見破られる。 どう答えても、『心の揺れ幅』とやらのせいでそれは全て自供となってしまう…… いわゆる、詰むしかない将棋っていうやつだ。もうどうしようもない…… ……こうなったらもう、相手の超能力とやらがどうにか外れてくれることを祈るしかない……! 「『NO』……です」 超能力以前に、答え方とその表情で悟られてしまわないように、あくまで平静を装いそう答える。 「……クッククク、まぁ当然の答えだな。さて、それが嘘かはたまた真か…… 十中十ウソであるということは分かっているが……見せてもらおうかァ、貴様の心の揺れ幅ッ!!」 ルンゲラさんはそう言うと、思い切り目をかっ開き、全身を硬直させるように力を入れ始めた。 超能力を発動させたんだ。ぼくの心の揺れ幅を見るための、超能力……エスパータイプの特権! 次第に辺りの空気が明らかに変わってくる。空気がかすかにうねっているような感覚…… 頭に被っているメットのおかげなのか頭痛などの症状は起きないけど、軽い耳鳴りが響いてきた。 ……実感はないけど、いま確かに探られているんだ。ぼくの心の揺れ幅……動揺を…… ……動揺……そうだ。この動揺が、『ぼくはウソをついています』というメッセージを送っているんだ。 多分だけれど、心を読まれているってわけじゃあない。ルンゲラさんが読んでいるのは、あくまで『動揺の具合』だけ。 だから、心を鎮めれば……この渦巻く動揺をどうにか収めれば……ぼくの『NO』は『NO』のままだ。 そうだ、抑えろ。鎮まれ、ぼくのこの動揺……鎮まれっ、鎮まるんだっ。 フライゴンやジュカインとの楽しい都市観光のために! 鎮まるんだっ!! 「……ククックク。ふふははは……」
- 576 名前:11/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:17:20 ID:???]
- 「ハハハハーーーッ!! 嘘をついてるなァーーーーー貴様ァーーーーー!!
貴様の心がビンビンに揺れているぞッ!! 『ぼくちんはウソをついています』と自白しているぞォッ!!」 「!!」 ルンゲラさんの歓喜の叫び声。 瞬間、ぼくの胸中に何か重いものが覆いかぶさった。 ウソだと、バレた。バレたっ、バレたっ 言いわけをする暇も、それを考える暇もなかった。 「このテレキシティで何を仕出かそうと企んでいたかは知れぬが、貴様のその計画は適わんぞッ!! 確かな証明が出来たんだからなァーーー即効見せてもらおうネェーーーまず貴様のその帽子の下ァッ!!」 ルンゲラさんは興奮したようにそう叫びながら、ビッと勢いよく人差し指をこちらに向けた。 「あっ!」 突然頭上のメットが弾け飛び、その下の毛糸の帽子も、見えない力でずるずると脱がされていく。 同時に急に耳鳴りが増し、頭に割れそうなほどの痛みがのしかかってくる。 サイコキネシスだ……ルンゲラさんは、サイコキネシスでぼくの帽子を脱がそうとしている……! ぼくは咄嗟にモンスターボールの手で頭を押さえる。しかし、見えない力はぼくの手ごと帽子を脱がそうとしてくる。 「お、おいルンゲラ! 耐波メットをしてないやつにそんな強いサイコキネシスを浴びせるのは法律違反……」 「うっとうしいぞユルグっ!! そのヒゲぶち抜かれたくなったら黙って見てろゴミカスッ!!」 ルンゲラさんの叫び声が聞こえると同時に、見えない力は一層その強さを増してきた。 脱がされていく帽子の下から、黒髪がぱらぱらと垂れてくる。も……もう……! 毛糸の帽子が、ぼくの頭からずり落ちた。 その下から現れる髪の毛。二体の役人ユンゲラーの前に、ぼくの髪の毛が晒された。 「えっ……!?」 「あっ……!!」
- 577 名前:12/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:23:10 ID:???]
- 空気のうねりが収まり、同時に激しい耳鳴りと頭痛から開放される。
そして代わりに、重油を流し込んだかのような重い沈黙が辺りを包み込んだ。 吃驚したまま表情を固まらせてぼくを凝視する、二体のユンゲラー。 その表情は、彼らの心の中の言葉をそのままぼくに伝えている。 『こいつはまさか!?』『そのまさかさ、まさかのまさかだよ』『人間だっ! 間違いない、人間だ!』 ぼくの中を、ずっと同じ単語がリフレインし続ける。 バレたっ バレたっ バレたっ バレたっ 「……髪の毛……それも、一本一本がシャーペンの芯よりもずっと細い…… ムチュール族やキルリア族の頭の毛とは違う、本物の……『髪の毛』」 先程の勢いを感じさせない、震えた声でそう呟くルンゲラさん。 続けてユルグさんが、ぼくの絶望を確実なものへとする言葉を放った。 「マジかよ……嘘だろォ……めちゃくちゃな大ニュースじゃあねえか、このテレキシティに……」 「『人間様』がやってきたなんて……!」 「…………」 再び沈黙が訪れた。二体のユンゲラーの表情は相変わらず驚きのまま固まっている。 …………………… ……このまま帰ろうか……? ……それとも、このことを都市の内部の者に報告されると分かっていて、入街するか……? ……いや……まだ打つ手は、あるっ。 「あ~あ……困ったな。ぼくのこれ、見られちゃうなんて……」
- 578 名前:13/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:26:23 ID:???]
- 「!」
急にぼくが喋りだしたのに反応して、ハッとする二体のユンゲラー。 ぼくは深く俯き、二体にちゃんと聞こえるように大きくため息をつきながら、こう言った。 「行く先々で……みんなこれ見るとそう言います。そして、騒ぐんです。 ぼくにかかる迷惑も顧みず、人間様だ人間様だと好き勝手に騒いで纏わりつくんです。 とっても迷惑でした。ぼくが人間様だなんてそんなの……とんでもない『勘違い』なのに」 「えっ……!?」 「か、勘違い……!?」 予想通り、驚きそう反応する二体のユンゲラー。 ぼくは上目遣い気味に二体の顔を見ながら、話を続ける。 「ぼくはこの通り人間様に似ているだけで、人間様とは何の関係もない種族なんです。 ……ぼくはぼくだっ。それ以外の何者でもない……もちろん、人間様なんかじゃあない。 なのに、誰もそれを聞き入れてくれない……騒ぎ続けて、ぼくの平穏を奪っていく……!」 わざと語尾に力を込めて、さらに下唇を強く噛み締める。 二体のユンゲラーの顔色が変わってきた……ぼくを憂うような顔色へ。 ぼくは顔をあげて、畳み掛けるように声量を強くしてこう言った。 「平穏が欲しい! 平穏な生活がしたい! ただそれだけなんだっ! だからぼくは故郷を飛び出し、種族にはこだわらないと評判のこの街へと来たんだっ! 誰にも騒がれない、そんな落ち着いた生活……それだけを……夢見て……」 今度は語尾を弱めて、ふたたび顔を俯かせる。 そうすると、ふとユルグさんがこう口にした。 「……そういう……ことだったんだ……」 ユルグさんはぼくの言葉に感化されたのか、感傷的な視線をぼくに落としている。 よおしっ、伝わっているぞっ……ぼくの『架空の過去』っ……『迫真の演技』……!
- 579 名前:14/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:30:07 ID:???]
- ぼくはいま、架空の過去をこの瞬間だけ自分の過去と思い込み、伝えている。
要するに単なるでっち上げさ。この窮地を抜け切るために、咄嗟に思いついたでっち上げだ。 もともと人間が何食わぬ顔をしてこの世界の都市観光にやってくるなんて、彼らにとっては『ありえないこと』なんだから、 『人間に似ているだけの違う種族』とした方がリアリティがあり、信じてもらえやすいはず。 彼らポケモンだって、わざわざ目の前の発言を疑ってまで非現実的な方を信じようとしたりはしないだろう。 ……でっち上げを大人に信じ込ませて感傷に浸らせるなんて何だか気が引けるけど、 まぁ『平穏な観光がしたい』という所は変わらないし、別にいいよね。うん、うん。 「ぼくは平穏を求めて、故郷を飛び出してまでこの都市にやってきたのに…… ここでも……ぼくはぼくとして、受け入れてもらえないんですか……?」 そう言いながらまた上目遣いでユンゲラー達を見やると、驚いたことにぼくの目の奥から、自然と涙が滲み出てきた。 虚構と現実の区別が曖昧になってくる。まるで、たった今作り出したばかりの架空の過去が、本当の過去であるかのように。 気分も高揚してきた。今ならば、どんなクサい台詞だって吐けそうだ。ノってきた。演技がノってきたぞっ! 舞台役者とかって、演技がノってくるとこういう気持ちになるんだろうなぁ。 そして、そんなぼくの真に迫った演技が心に響いたのか、ユルグさんが…… 「おい、ルンゲラっ!! 聞いたか、この子にはこんな事情があったんだっ! この子は、ただ平穏な暮らしがしたいだけだったんだぞっ!」 「うぐっ……!」 ルンゲラさんは返答に詰まる。彼のこめかみには、一筋の汗が伝っている。 長年の勘ってやつが外れたんだ。さぞや悔しいことだろうね、ルンゲラさんめっ。 「ルンゲラ、お前はなぁー、健気なこの子の心を踏みにじり傷つけたんだ! 反省しろっ、オラっ!」 「…………」 ユルグさんはここぞとばかりにルンゲラさんを責めたてている。急に頼りがいのある人に大変貌だ。 やっと、事態が好転してきたぞ。いいぞっ、この調子だっ……!
- 580 名前:15/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:34:41 ID:???]
- 「黙れ、ユルグッ!!」
「ひっ」 急に、ルンゲラさんが、ユルグさんへ一喝を入れた。 ユルグさんはその迫力に押されて、あっさりと縮こまってしまう。 「もしかしたら……この『人間に似ている』ってのはカムフラージュで…… 本当は、別の場所に危険物を隠し持っているのかも……」 ルンゲラさんはもはや意地になっているのか、そんなことを言い出した。 長年の勘が外れ、しかも一瞬とはいえユルグさんに責められたのがよっぽど悔しかったんだろう。 「そもそも、私たちの前であんな大立ち回りをすること自体違和感があるのだ…… ……もう一度メットを被れ小僧ッ! その化けの皮を、ふたたび剥がしてやるぞっ」 先ほどの勢いを取り戻し、床へ落ちているメットを被るように促すルンゲラさん。 しつこいな、この人も。どうにか自分の思い通りにしたくてたまらない気持ちは分からないでもないけど…… まぁ、何にせよ危険物を持っていないのは事実なのだ。そこの所は幾ら探られようが一向に構わない。 「いいでしょう、被ります……その代わり、『危険物を持っているかどうか』という質問しか受け付けませんよ、ぼくは……」 「……ダメだ。貴様が本当に人間でないのかどうかも、探らせてもらう」 「えっ!?」 予想だにしなかったルンゲラさんのその言葉に、ぼくは疑問符を飛び出させてしまった。 「な、なんで……!?」 「黙れっ、もしかしたら貴様が種族を偽っている可能性もある! とりあえず、念のためにそこの所をハッキリさせておく必要がある……」 「そ、そんな……」 いきなり何を言い出すんだ『コイツ』はっ!? 冗談じゃあない、今のぼくの演技まで無駄にしてしまうつもりか……!? 今の彼にはメリットとかデメリットとか、そんなものは頭にない。ただぼくをひたすら探り追い詰めたくて必死なんだ。 ユルグさんもすっかり縮こまり、成り行きを観察するモードに入ってしまっている。 ……くそう、ここまで来てまたピンチかよ……事態は好転したと思ったのに……! 「お待ちなさい!!」
- 581 名前:16/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:43:44 ID:???]
- 「!」
突如、ぼくのものでも二体のユンゲラーのものでもない声が部屋に響いた。 それでいて、ほんの少しだが聞き覚えのある声…… ぼくらは一斉に、その声が聞こえた方へと顔を向けた。 そこにいたのは、先程の審査室に残っていたはずのもう一体の役人ユンゲラーだった。 「……あのね-、後がつかえてるんですよ。意味のない探りを入れて、流れを止めないで下さいルンゲラ」 役人ユンゲラーは溜め息混じりにそう言いながら、冷たい目つきでルンゲラさんを睨み付けた。 「ちょ、ちょっと待てユゲーラ。私は、こいつが危険物を持っていないかどうかを……」 「状況は把握してますよ。言っておきますけど、その耐波メットは尋問用じゃあないんですよ。 あくまで、あれはSMJ用のもので……本来の使い道ではない使い方をするのは違反ですよ違反」 「あ、あのなァー、元はと言えばあいつがボディチェックを拒否ったのが……」 「彼の種族は帽子の下とか見られるのが恥ずかしい種族なんでしょ? それなら、上から触るだけでいいじゃないですか。 どうせ危険物だとか何だとかなんて、ボディチェックの後のSMJで明らかになるんだし。 変に邪推するアナタがいけないんですよ。何にでも首突っ込むテレビアニメの名探偵じゃあないんですから」 「うぐぐっ……」 役人ユンゲラーさんことユゲーラさんの淡々とした説教に、ルンゲラさんは相当参っている。 そしてついには、ルンゲラさんは俯いて完全に言葉を失ってしまった。 ……あれれ、もしかしてぼく、助かったんじゃあ……? 状況が一気に好転していくのを完全に理解するより先に、 ユゲーラさんはさっさと耐波メットを拾い上げぼくに被せて、こう言った。 「さぁボディチェックはお終いですよ、コウイチさん。 今から貴方の『心の危険度』を探るSMJを開始します。心を落ち着けてください」 「え? あ、はい……」 最大の障壁であり今の今までずっとつっかえていたボディチェックが急に終了し、さっさと次の段階へと進んでしまった。 ルンゲラさんも、俯いて黙りこくっている。次の段階へと進むのを邪魔するつもりは一切なさそうだ。 ……なんだか喜びにくいけど、助かった……んだよね?
- 582 名前:17/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 19:49:23 ID:???]
- SMJと呼ばれる超能力での心の検査には、何の障害もなかった。
ユゲーラさんがぼくに向かって超能力を使いながら、なにやら手元の書類にペンを走らせ、 その間ぼくはただ突っ立っているだけ。何かをする必要は一つもない。 検査の時間もたった二、三分ほどで、出された結果もぼくの心を落胆させるには程遠いものだった。 「危険度は『10』……少々心の強度が脆いくらいで、特には心配なしですね」 ユゲーラさんは相変わらず淡々とした口調でそう言いながら、 検査室の出口を開けて、続けてこう言った。 「以上で審査は終了です、お疲れ様でした」 ユゲーラさんのその一言が終わると、また部屋に沈黙が流れ始めた。 誰も何も言わない。今まで散々ここでつっかかっていたせいか、 このままこの部屋を出ていいのかどうかと、無意味な不安を抱いてしまう。 「あ、あのう、先に進んでいいんですか?」 「もちろんですよ」 「審査終了ってことは、テレキシティに入っていいってことですか? 入街者リストっていうのに登録されたんですか?」 「入街許可は実質下りているも同然です。登録はこの先の受付で行ってください」 ごく淡々とした口調。……その淡々とした口調のせいで、急には実感が沸かないけど、 徐々に、じわじわと、その『実感』は胸の底から沸き立ってくる。数秒後、ついにぼくは完全に理解した。 ……ヒャッホー、人間だとバレないで審査を抜けられたんだっ、ぼくっ! 「じゃ、じゃあ失礼します……えへへ」 照れ笑いを隠せずそれを顔に出しながら、忘れず毛糸の帽子を被りなおして出口を潜ろうとすると、 横に立っていたユゲーラさんが、なんと言葉尻に笑みを含ませながらこう言った。 「ふふ……おめでとうございます、コウイチさん」 今までの事務的な口調とは全く違う、あたたかい声。 「あ、ありがとうございますっ! じゃあ!」 後味良い気分に包まれながら、ぼくは出口を抜けていき先へと進んだ。
- 583 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/18(金) 19:50:57 ID:???]
- (;´Д`)
- 584 名前:18/18 ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 20:00:49 ID:???]
- 受付での入街者リストへの登録は何のトラブルもなく済み、
今ぼくは待合室に座って、フライゴンとジュカインが審査を終えやってくるのを待っている。 色々トラブルはあったものの結果的にバレずに審査を抜けられた、この嬉しさを伝えたいという気持ちと、 彼らが果たして審査を無事に抜けられるだろうかという不安がぼくの胸に混在していて、 そのせいで今まで以上にソワソワしてしまって落ち着かない。 そして数分後、ついにフライゴンがこちらへ姿を現した。 「コウイチくぅん……ボク、疲れましたよォ……」 フライゴンはなぜだかへとへとに疲れていて、ぼくの隣に力なくドスンと腰を下ろした。 「ど、どうしたの? 審査で何かあったの?」 「いや……SMJとか呼ばれる検査で危険度が85とかなっちゃいまして。 色々な警告やら手続きやらが凄くメンドくさかったんですよォー! なんか探知機みたいなモノも飲み込まされたし! もォー!」 「あぁ、お疲れ様だったねフライゴン……あはは……」 フライゴンもぼくと同じく、ずいぶんと苦労したんだなぁ。ってことは、ジュカインも…… 「――でさー、探知機みたいなものも飲み込まされるし、ホント最悪だったぜっ!!」 「だよねー、もうホントいやになっちゃったよボクもっ! 吐き出せないかな、うげーっ」 ……予想通り、ジュカインもずいぶんと苦労したみたいでした。 「まぁ、とにかくっ! こうして無事に審査を抜けられて良かったじゃない。 結果オーライってことでさ、ストレス溜まった分は観光で晴らそうよ!」 ぼくは立ち上がり、愚痴を零しあっている二人を励ますようにそう言った。 その言葉に二人はすぐ笑みを取り戻すと、元気よく立ち上がった。 「そうですねっ! よーし、このストレスはレストランでたくさん食事して発散だっ!」 「じゃあ行こうぜっ! オレはフラワーショップに行ってみたいなァー」 「ぼくは図書館に行きたいや。どんな本があるんだろ?」 かくしてぼくらは無事に審査を通り抜け、ようやくテレキシティの観光が始まったのだった。 つづく
- 585 名前: ◆8z/U87HgHc mailto:sage [2008/01/18(金) 20:03:27 ID:???]
- 本当は10レスくらいで終わらしたかったのですけども。
次回は一週間以内には投下したいです。では。
- 586 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/18(金) 20:36:51 ID:???]
- なんだろう…三人目の敬語ユンゲラーにすごい萌えを感じる…
- 587 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/18(金) 21:58:03 ID:???]
- GJ!
- 588 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/18(金) 23:14:48 ID:???]
- 乙です!
- 589 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/19(土) 00:17:36 ID:???]
- 乙
このユンゲラー三人は、ここのみの一発キャラにするには惜しいキャラ達だ
- 590 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/19(土) 03:15:57 ID:???]
- 危険度85ww
- 591 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/19(土) 10:32:40 ID:???]
- さりげなく植物に優しいジュカインに萌えた…ってくさタイプだったなそういえば
- 592 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/19(土) 17:25:04 ID:???]
- フライゴンとかその気になれば破壊光線とかで街を破壊できるだろうしな。
- 593 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/20(日) 00:48:42 ID:???]
- いじっぱりでプライド高いのに、本当は心が弱くて主人思いで植物大好きなジュカインたん…
ああジュカインたんに過剰に挑発されたい、リーフブレードで切り裂かれたい
- 594 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/20(日) 08:52:29 ID:???]
- ユゲーラさんイイッ!
- 595 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/21(月) 00:00:37 ID:???]
- この先どういった展開になるんだろうな?
街観光に何回も費やすか、それともさっさとピジョットと戦うか。
- 596 名前:名無しさん、君に決めた! [2008/01/21(月) 21:19:55 ID:K9ghO/1g]
- 保守
- 597 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/22(火) 22:03:47 ID:???]
- 最終話 希望を胸に すべてを終わらせる時…!
ポケモン・ドリームワールド第1巻は、発売未定です。 48 フライゴン「チクショオオオオ!くらえピジョット!新必殺流星群!」 ピジョット「さあ来いフライゴンンンン!オレは実は一回攻撃されただけで死ぬぞオオ!」 (ザン) ピジョット「グアアアア!こ このザ・理性と呼ばれる三幹部のピジョットが…こんな小僧に…バ…バカなアアアア」 (ドドドドド) ピジョット「グアアアア」 オニドリル「ピジョットがやられたようですね…」 ムクホーク「ククク…奴は三幹部の中でも最弱…」 エアームド「竜ごときに負けるとは魔王軍の面汚しよ…」 フライゴン「くらえええ!」 (ズサ) 3人「グアアアアアアア」 フライゴン「やった…ついに三幹部を倒したぞ…これでネイティオのいる飛鳥城の扉が開かれる!!」 ネイティオ「よく来たなソードマスターフライゴン…待っていたぞ…」 (ギイイイイイイ) フライゴン「こ…ここが飛鳥城だったのか…!感じる…ネイティオの魔力を…」 ネイティオ「フライゴンよ…戦う前に一つ言っておくことがある お前は私を倒すのに『仲間』が必要だと思っているようだが…別になくても倒せる」 フライゴン「な 何だって!?」 ネイティオ「そしてお前のご主人様はやせてきたので最寄りの町へ解放しておいた あとは私を倒すだけだなクックック…」 (ゴゴゴゴ) フライゴン「フ…上等だ…ボクも一つ言っておくことがある このボクに生き別れた仲間がいるような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ!」 ネイティオ「そうか」 フライゴン「ウオオオいくぞオオオ!」 ネイティオ「さあ来いヤマト!」 フライゴンの勇気が世界を救うと信じて…! ご愛読ありがとうございました! こんな結末になりませんように
- 598 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/23(水) 07:40:14 ID:???]
- まず、ト書きの時点で有り得ないから安心するんだ。>>1は頑張ってくれてるんだから、あまり茶々出さない方がいいぜ。
- 599 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/23(水) 18:14:32 ID:???]
- 真のネ申、>>1に賛辞を。
- 600 名前:名無しさん、君に決めた! mailto:sage [2008/01/23(水) 19:07:44 ID:???]
- >>597に色々突っ込みたいと思いつつスレ容量を心配しながら600
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