- 478 名前:名無しさん@1周年 [2019/01/16(水) 07:49:42.92 ID:TPfjZ2kT0.net]
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『空母ワスプ撃沈の凱歌』 渋谷郁男 木梨艦長はなおしばらく隠忍自重、肉薄をつづけ、今や彼我の距離900メートルとなった。 ついに最適の射程内に入った。今だ。方位角右50度、絶好の射点を得て、魚雷全射線(6本)が発射された。 満を持した必殺の魚雷である。時に11時45分。 日本が世界に誇る無航跡酸素魚雷は、われらの悲願をこめて、まっしぐらに突っ走ったに違いない。 一同かたずを飲んで待つうちに、ズシンという手ごたえがあって、まぎれもない命中音4発を聞いた。 当たった。よかった。なんという爽快さ。一同思わず万歳を叫ぼうとして、あわてて声を飲んだ。 敵に聴知されるかどうかわからないが、とにかく無音潜航である。 本艦は深度80メートルに潜航し、敵空母の航跡の下に隠れた。魚雷命中から6分後に敵爆雷1弾目の爆発音を聞いた。 つづいて第2弾、第3弾と本艦の各方向から爆発音が聞こえてきて、同時に震動を与える。 数隻の敵駆逐艦が本艦の周囲をぐるっと取り巻いて、いっせいに爆雷攻撃を行っていることがわかる。 艦内の防水扉は魚雷戦用意で厳重に密閉され、通風も停止されているので、 空気はしだいににごり、温度はますます上昇してくる。 40度の高温の中で、電動機室にじっと座って、爆雷1発受けるたびに隔壁に印をつけていった。 まったく敵の攻撃がやんだのは17時15分ごろであった。 隔壁に書いた正の字によれば、爆雷85発を受けたことになる。 『完本・太平洋戦争』より
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