- 257 名前:現代数学の系譜11 ガロア理論を読む [2012/11/04(日) 22:08:38.55 ]
- >>256
つづき 南部理論の限界 しかし、1961年に提唱された南部理論は絶対温度零度の真空中で素粒子が反応することを想定して作られたので、そのままでは温度を持ち、密度がある場合には当てはめられません。 先程の結晶を伝わる音の場合は問題がないように思えますが、実際南部理論を無理に当てはめると間違った答えがでることも多くあり、南部理論をどう拡張すれば良いのかは50年来いろいろと研究されてきましたが、謎のままでした。 例えば、身近にある磁石は、電子一つ一つのもつ小さな磁石(スピン)が揃ったときにできます。 この場合、一つ一つのスピンはどの向きを向いてもよいはずなのに(回転対称性)、ある特定の方向を向いてしまった訳ですから、回転対称性が自発的に破れています。 南部理論をそのまま適用すると、左右に傾けたり、前後に傾けたりすると、やはり波が出来るはずですから、二つの波があるはずです。 しかし、理論的にも実験的にも、磁石を伝わる波は一種類しかないことが知られています。これが南部理論を温度や密度をもつ場合に無理に当てはめると、間違った答えが出る例の一つです。 今回の研究成果 今回、渡辺悠樹(わたなべ はるき:カリフォルニア大学バークレー校 大学院生)と村山斉(むらやま ひとし:東京大学国際研究所カブリ数物連携宇宙研究機構 機構長)は、どのような場合にも正しく答えが出るように南部理論を拡張しました。 先程のスピンを左右に振らすと、左右だけでなく前後にも触れてぐるぐる回り出し、左右の動きと前後の動きが分けられなくなり、一種類の波しかないことがわかりました。 このように、二つの破れた対称性が一緒になって一つの波を作るため、思った数の半分しか波が生まれないのです。 実際にはスピンを振らす波は左右、前後両方の動きを伴う一種類しかない。 また、二つの対称性が一緒になって生み出す波(=南部・ゴールドストーン粒子)は、元々の南部理論で予言されるものと全く異なる性質を示すことが分かりました。この違いは物質の比熱などの性質を大きく左右します。
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