- 1 名前:名無しSS作家さん mailto:sage [2008/02/22(金) 01:01:30 ID:y1yweLaz0]
- 桜が舞う、暖かな季節。
新しい出会いや恋、そして友情に笑い、悲しみ。 すべてが始まり、終わるかもしれない季節。 季節といっしょに何かがやって来る、そんな気がする―――。 ToHeart2のSS専用スレです。 新人作家もどしどし募集中。 ※SS投入は割り込み防止の為、出来るだけメモ帳等に書いてから一括投入。 ※名前欄には作家名か作品名、もしくは通し番号、また投入が一旦終わるときは分かるように。 ※書き込む前にはリロードを。 ※割り込まれても泣かない。 ※容量が480kを越えたあたりで次スレ立てを。 ※一定のレス数を書き込むと投稿規制がかかるので、レス数の多いSSの投下に気づいた人は支援してあげて下さい。 ※コテハン・作家及び作家の運営するサイトの叩きは禁止。見かけてもスルー。 前スレ ToHeart2 SS専用スレ 22 set.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1198661144/ 関連サイト等は>>2
- 155 名前:箱入り娘が届いたら 26/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 07:50:32 ID:0Ka5/nCG0]
- 「ど、どうしてって……」
「郁乃はシルファに関わるのが面倒なのでしょう? シルファは、愛佳も郁乃も楽になれる提案をしただけなのれす。 それのどこがいけなかったのでしょうか?」 「そ、そりゃそうだけど……で、でも、あんたねえ……」 郁乃が気圧されたように黙り込む。 それはシルファの嫌味に引いたのではない。 シルファの言葉にはそんな感情はまったく無かったのだ。 愛佳も俺も、そんなイルファになんと言えばいいのか全く分からない。 「……みんな、ちょっと休憩しよう。話はそれからだ」 「そうね……」 シルファを除けば、自分も含めて熱くなっていた。 その熱をまず冷ます必要がある。 「シルファも。 まだ料理レシピのダウンロードはしないでくれ。 これからのことは、みんなで話し合ってから決めよう。いいね?」 「は、はいなのれす。 みなさんがそれでいいというのなら、シルファはそれで構わないのれす」 「シルファもどっかで好きに休んでてくれ。またあとでな」 「はい……」
- 156 名前:箱入り娘がの作者 mailto:sage [2008/02/29(金) 07:52:07 ID:0Ka5/nCG0]
- この辺りで中断させて下さい。
申し訳ないですが、続きは今夜以降にさせていただきます。
- 157 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 08:17:26 ID:aADF4W5e0]
- おつおつ!
- 158 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 14:59:05 ID:voK6luS/0]
- 掲示板の方で読ませてもらったよー。ネタバレになるから感想は投下終わってからにするけど。
とりあえず乙。 ところで、あの掲示板は他の書き手も使わせてもらって良いのかい? さるさんが猛威を振るってる現状だと凄く便利なんだが。
- 159 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 18:09:07 ID:MmnglVJp0]
- 117だけど
去るさんゆるくなってるっぽいよ 前は夜に投下してもきっちり10レスでひっかかったんだが 今回投下したときはなぜか引っかからなかった 書き込むペースも前と同じだったんだけど…
- 160 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 20:51:25 ID:PXSk6w0a0]
- >>155
イルファさん発見!!
- 161 名前:箱入り娘がの作者 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:41:10 ID:0Ka5/nCG0]
- 昨日の晩からSSを投下してる者です。
今帰ってきたので続きを投下します。 書き込みが止まったら規制でストップしたものとみて、 スレを通常進行させて下さい。 >>158 便利に使っていただけるなら嬉しいことです。 ぜひどなたでもご自由に使って下さい。 >>159 自分が投稿したときは10スレ程度で止まってしまいます。 その代わり投稿再開は少し早くなってる気もします。 >>160 大変失礼しました。
- 162 名前:箱入り娘が届いたら 27/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:43:12 ID:0Ka5/nCG0]
- 釈然としない気持ちを抱えたまま、俺達は部屋を引き上げていく。
シルファを二階の俺の部屋へと残し、愛佳と郁乃と俺とは1階のリビングで話し合うことにした。 愛佳がいれてくれた紅茶のカップを手にしてとりあえず一息。 「あの、料理を教えるの上手くいかなくてごめんなさい……」 いくぶん疲労のこもった声で愛佳が謝っている。 でも、もちろん愛佳に責任なんてない。 「いや、愛佳が謝ることなんてないから」 短い時間でかなり疲労した様子の愛佳を励ましつつも…… 実際俺も疲れたな。ほとんど何もやってないのに、シルファたちを見守っているだけでも妙に疲れたよ…… 「言っとくけど、上手くいかないのは姉のせいじゃないからね」 「分かってるよ。愛佳はよくやってくれてる」 「貴明には悪いけど……あの子に何を教えても無駄なんじゃないの? 本人にやる気が無いんじゃどうにもならないわよ」 「でも……」 郁乃の指摘に反論できる言葉が俺にはない。 ないんだけど、でも…… それでもまだ諦めたくないと思える自分の感情は、何処からくるものなんだろうか。 「納得いかないって、顔してるわね。結局、あんたはどうしたいのよ?」 「うん、上手く言えないんだけどさ……」 シルファのことを諦めきれない理由。 言葉に出来ない俺の気持ちを、それでも説明し始めようとしたその時。
- 163 名前:箱入り娘が届いたら 28/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:43:39 ID:0Ka5/nCG0]
- 「……しく……」
と、俺の耳に微かに誰かの声が聞こえたような気がした。 「あれ、今なにか聞こえなかった?」 「ん、誰かの泣き声みたいな……」 「ああ。俺にも聞こえた」 どうやら愛佳も俺と同じ声を聞いたようだ。 耳を澄ますと、すすり泣くような微かな泣き声は玄関の方から聞こえてくるようだ。 ここに居る愛佳と郁乃を除いて、この家に居る人物はあとひとり。 つまりこの泣き声の持ち主は、 「行ってみよう……静かにな?」 「うん……」 三人で連なってしのび足。 1階廊下の先。 玄関の手前で先導する愛佳が足を止める。 (そこに居る?) (うん) 廊下の角からこっそりと覗き込むと、そこに思った通りの少女の姿。 玄関先でうずくまって、彼女はあのダンボールを抱きしめていた。 ダンボールの箱に隅っこには黒のサインペンで ”しるふぁのいえ” と書かれている。
- 164 名前:箱入り娘が届いたら 29/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:44:02 ID:0Ka5/nCG0]
- 「あれがあの子の家?? なんであの子はダンボールを抱いてるわけ? 貴明、あんたには理由が分かるの?」
「いや、はっきりとは分からんけど…… でも、昨日の夜もシルファは俺が用意した客間には泊まらないで、あのダンボールの中に引き篭もってたな」 「そうだったの? でもどうしてなんだろう?」 そんなとこで寝たら風邪ひいちゃいそうだね……と、的はずれな心配をする愛佳。 話がずれるから姉は口挟まないで、と瞳で睨みつける郁乃。 「俺の想像でしかないけど。 シルファはこのダンボールに包まれてこの家に送られてきたんだよ。だから……」 そしてきっとシルファをあのダンボールに包み込んだのは、イルファさんやミルファの仕事なのだろう。 或いは珊瑚ちゃんか、瑠璃ちゃんなのかもしれない。 だから、あのダンボールは今のシルファにとってたった一つの”家”なのだろう。 「珊瑚さま……シルファお姉さま……どうして、シルファのことを捨ててしまったのれすか……? きっと、きっとシルファが無能だから……見捨てられてしまったのれすか……?」 そして、シルファの本当に帰りたい家は…… 「くすん……お家に帰りたいのです。珊瑚さまのお側に戻りたいのです……」 「あたし、シルファがなんでやる気無いのか分かった気がする」 ダンボールにしがみついて泣いているシルファの背中を見つめながら、郁乃がぽつりと呟いた。 「シルファは、その珊瑚って人から捨てられたと思ってるんだね。 持ち主に捨てられて、『他所でしっかりやれ』って言われても、そりゃあ納得できないだろうし」 「そうだねえ……」
- 165 名前:箱入り娘が届いたら 30/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:44:24 ID:0Ka5/nCG0]
- 愛佳が合点した様子で頷く。
俺にもその分析は正しいのだろうと思えた。 シルファはご主人様が望むことなら頑張ると言ったけど、本心では見捨てられた気持ちで塞ぎ込んでいるのだろう。 「で、どうなの貴明。珊瑚っていう人は本当にあの子を捨てたの?」 振り返る郁乃が、いくぶん厳しさ含んだ瞳で問いかける。 俺はきっぱりと答えた。 「ちがうよ。珊瑚ちゃんはシルファを捨てたりなんか絶対にしない」 「そう。よかった」 そう聞いて郁乃の表情が和らいだ。 なんだ。一応シルファのことも心配してくれてるんだな。 と次の瞬間、俺の感情を察したかのように郁乃はそっぽを向いた。 まったく、なんでこいつはこうも素直じゃないのだろう。 「自分が捨てられたわけじゃないって……この特訓にもちゃんと意味があるんだって、まずシルファさんに分かって貰わないといけないよね」 「そうだな」 愛佳の意見に俺は頷いた。 きっと、それが一番大切なことだ。 「でもそう簡単に納得出来ることじゃないかもね。あの子、顔に似合わず結構頑固そうだし」 「どんな話をしたら、そのことを分かってくれるのかな?」 「どうなの、貴明。あんたはあの子の気持ちを動かす言葉を持ってる?」 「……」
- 166 名前:箱入り娘が届いたら 31/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:44:46 ID:0Ka5/nCG0]
- それはもちろん……
「そんな言葉、持っているはずがない」 「そうよね」 俺はそんなに器用じゃない。 いや、人間はそんなに器用じゃあない。 「でもほっとけないんだ」 女の子が苦手なくせに、ほおっておけない。 だって、女の子が泣いたり、笑ったり。悲しんだり喜んだり、そんな顔を見るだけで心が落ち着かなくなってしまう。 もう俺はそういう人間なのだろう。 それとも、放っておけないからから、かえって女の子が苦手になってしまうのかもな。 案外そんなものかもしれない。 女の子と深く関わらなければ、後で困ることもない。 涙をみたり、悩みを知ったりしたらもう捨てておけなくなるから、その前に逃げ出してしまうのだ。 「でももう遅いよな……」 もう十分過ぎるほど俺はあの女の子と関わってしまった。 なにしろいきなりダンボール詰めで送られてきてしまったのだから。 なにも知らずに箱を開いたら、いきなり彼女は泣き出した。 だから逃げる暇なんてなかった。 「俺、イルファと話してくるよ」 「うん、頑張ってね、貴明くん」 「しっかりやんなさいよ」
- 167 名前:箱入り娘が届いたら 32/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:45:08 ID:0Ka5/nCG0]
- 俺はこっそり隠れていたことを気付かれないように、
なるべく自然な感じを装ってシルファの背中に近づいた。 「シルファ、今いいか?」 「あっ……貴明さん……な、なんれすか?」 しがみついていたダンボールを慌てて背中に隠して。 シルファは俺の方に向き直った。 「あの、もう休憩は終わりですか。みなさんのお話はまとまったのれすか?」 「まあそうだね」 いったい話をどう切り出していいものか。 俺は迷った末、当たり障りの無いことから聞いてみることにした。 「なあ、シルファは……料理が上手になったらまず誰に食べてもらいたい?」 「料理……ですか??」 シルファは何故か不思議そうな顔。 「やっぱり珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんかな?」 「わたしは……」 それは俺にとって回答は半ば想像出来ていたはずの質問だった。 それなのに、シルファは少しばかり迷った表情を見せ……
- 168 名前:箱入り娘が届いたら 33/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:45:30 ID:0Ka5/nCG0]
- 「貴明さんに、一番に食べてもらおうかな……とも思うのれす」
「えええ???」 「もし貴明さまが満足するくらい料理が上手になれたら……わたしをお側に置いてくださいませんか??」 「いや……それはその……」 それは想いも寄らなかった答え。 「貴明さんが誘拐したくなるくらいシルファのことが欲しいなら…… シルファのご主人様が貴明さまでも別にいいのれす」 「いや、誘拐してないって言ってるじゃないか」 ……というか、そういうボケをかましてる場合じゃないし。 「ちょっと待ってよ。君は料理の特訓を頑張って、珊瑚ちゃんのところに戻るんじゃないのか?」 「でも……珊瑚さまは、シルファのことを見捨ててしまったのかもしれません」 シルファは寂しそうにそう呟いた。 やっぱりこの子はそう思っていたのか。 「きっと、シルファよりも大切なものが出来たのれす。シルファのことなんて、もう必要なくなってしまったのです」 「もしそれが本当だとしても、シルファはそれでいいのか?」 「それは……仕方の無いことなのれす。 珊瑚さまがシルファより楽しく過ごせるおともだちが出来て…… それでシルファがいらなくなったというのなら。 シルファに出来ることは、出来る限り珊瑚さまのじゃまにならないように努力することだけれす…… だからもう、新しい居場所を見つけるしかないのれす」
- 169 名前:箱入り娘が届いたら 34/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:46:18 ID:0Ka5/nCG0]
- シルファはいつのまにか微笑んでる。
それはなぜか見覚えのある笑顔だった。 「今日からは、シルファは貴明さんをご主人さまだと思って頑張ります。 だからシルファをよろしくお願いしますね」 「その笑顔は、シルファの笑顔じゃないね」 「え……」 「その笑顔、今朝も見せてくれた笑顔だったね。 俺に宜しくって言ってくれたときにも笑っていたけど。 その時の笑顔と、今の笑顔は同じだ……すごく綺麗だけどさ、本当のシルファの素顔じゃないんだよね?」 シルファは俺の言葉にとても驚いた顔。 彼女の大きな瞳がいっぱいに広がっている。 「分かるのれすか?」 「まあね」 「わたしもメイドロボの端くれれすから……接客用の基本動作プログラムくらいは標準装備しているのれす そっきのは、去年の『メイドロボ笑顔コンテスト』で優勝した実績のある笑顔モーションだったんですけど…… 貴明さんは満足されなかったのれすか?」 「コンテストねえ……」 あの笑顔がどこか不自然に見えてしまったのはそういうわけか。 「笑顔の違いが分かるなんて、貴明さまはそうとうなメイドロボマニアれすねえ」 「違うって」 雄二じゃあるまいし。俺にはそんな違いは分からない。
- 170 名前:箱入り娘が届いたら 35/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 21:46:43 ID:0Ka5/nCG0]
- 「綺麗だと思ったよ。でもシルファの笑顔じゃないってことだけは分かるよ」
「そうれすか……」 「やっぱり、本心から笑えているはずもないよね?」 「……」 自分の口から、『違う』とは言えないのだろう。 俺には分からないけど、これがメイドロボの忠義なのだろうか? いや、なんとなく違うように思う。 シルファがメイドロボだから、じゃなくて珊瑚ちゃんへの想い方だろうな。 「ねえ、シルファ。珊瑚ちゃんは、君のことを捨てたりなんかしないよ。それはシルファだって分かっているはずだよ」 「……珊瑚さまはお優しいから、シルファを捨てたりはしないかもしれません。 でも、シルファが珊瑚さまの重荷になってしまうのなら、それは同じことなのれす」 「重荷だなんて」 「いえ……」 シルファの手には、今朝俺が見せた珊瑚ちゃんとみんなの写真があった。 どうやらシルファはこの写真をずっと持っていたらしい。 「珊瑚さま、新しいお友達がいっぱい出来て。とっても楽しそうなのれす。 でも……その笑顔が、シルファには遠いのれす」 そして、その横顔に浮かび上がる感情がいまならはっきり分かる。 シルファは、寂しいんだ。 「わたしだけが、珊瑚さまのお友達になれると、そう思っていたのれす。 そして珊瑚さまのお友達も、わたしだけだと思っていたのれす。 珊瑚さまは、今でもシルファのことをとっても大切にしてくれます。 でも、この笑顔はシルファと二人きりのときとは違う……眩しい笑顔なのれす。 シルファはこんな珊瑚さまを今日まで知らなかったのれす……」
- 171 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 21:47:14 ID:Syu/Orgy0]
- しえん
- 172 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 21:59:44 ID:Jgh4IECJ0]
- さるさん出る前に5-6レス目くらいで支援した方がいいんかねぇ
- 173 名前:箱入り娘が届いたら 36/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:06:06 ID:0Ka5/nCG0]
- 写真の中には、珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんが。イルファさんとミルファが。
雄二とタマ姉が仲良く写っていた。 でも、その中にシルファはいない。 「あの……やっぱり、珊瑚さまはシルファから離れてしまっているように……そう思えるのれす。 違いますか? 貴明さん」 「うん……」 ある意味で、シルファの言っていることは的を得ているように思う。 珊瑚ちゃんは新しい人間関係に足を踏み出そうとしている。 でも、シルファはその歩みに全くついていくことが出来ないでいるのだ。 だから、二人の距離は相対的に以前より広がってしまっていると言える。 もしかして珊瑚ちゃんはこのことを…… そう思ったとき、俺の頭の中に不意にひらめくものがあった。 「シルファ。君に見てもらいたいものがあるんだ。一緒に二階に行こう」 「は、はい? わっ、何をするのれす???」 戸惑うシルファの手を強引にとって、俺は彼女を二階の自室に引っ張っていく。 「さあ。これを見てくれ」 「これは……アルバムですね。まだ比較的新しいものれす」 「このアルバムは、珊瑚ちゃんたちと出会った頃からのものだよ。 他の写真も写ってるけどな」
- 174 名前:箱入り娘が届いたら 37/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:06:36 ID:0Ka5/nCG0]
- 「そうなのれすか……でも、どうしてこのアルバムをシルファに?」
「珊瑚ちゃんに新しい友達がいっぱい増えたって言ったよね? その通りだよ。そしてこのアルバムにはその歴史が納められている。 どんな風に珊瑚ちゃんがみんなと出会っていったか。 シルファには知って欲しい」 「……どうしてなのれす?」 「それは見れば分かると思うよ」 「んー、そういう意味深な言い方はやめてほしいのれすけど……」 シルファは少し迷ったように手を伸ばす。 まるで腫れ物に触るみたいに、アルバムの上をその小さな手がさまよう。 興味はあるけど、でも怖い……そんな感じ。 「……いいのです。それでは見てみるのれす」 でも、少しばかりの迷いの後でシルファははっきりとそう言った。
- 175 名前:箱入り娘が届いたら 38/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:07:15 ID:0Ka5/nCG0]
- 「よし、じゃあ始めるか。
えと、俺が珊瑚ちゃん瑠璃ちゃんと会ったのは……この辺だな」 俺はアルバムをめくって目的の写真を探り出す。 「まずこれだ。まだ珊瑚ちゃんと俺が出会ってから間もない頃の写真だよ」 「へえ……ずっと昔の珊瑚さまたちなのれすか……」 シルファが興味深げに覗き込む。 珊瑚ちゃんたちの過去の姿、やっぱりシルファにとって気になることなんだろう。 アルバムを熱心に見つめるシルファのまなざしは子供のように純粋な輝きが感じられて、 ふと俺は微笑ましい気持ちになった。 「んー、なんだか瑠璃さまが怒ってるみたいれすね」 「そうだな。この頃、俺は瑠璃ちゃんには蹴っ飛ばされてばかりだった」 「瑠璃さまが? 貴明さまを蹴っ飛ばすのれすか??」 「そうれすか……そんな瑠璃さまを、シルファは見たことなかったのれす……」 いや、そんなとこに興味を持たなくていいから。 「……それは見なくていい。じゃあ次な」 アルバムのページをめくり、また次の写真へ。 「あっ。この写真にはイルファお姉さまがいるのれす」 「うん。俺たちがイルファさんと出会った頃の写真だな」 「シルファの気のせいでしょうか……なんだかみなさん難しいお顔をしているのれす……」 「気のせいじゃないよ。初めて会ったとき、俺達は仲良しじゃなかったんだ」
- 176 名前:箱入り娘が届いたら 39/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:07:39 ID:0Ka5/nCG0]
- この後すぐ、イルファさんが研究所に帰るって言い出したんだよな。
もしあのまま何もせずにいたら、どうなっていたことか。 きっと今のような関係を続けていくことは出来なかっただろう。 「お姉さま……瑠璃さまと喧嘩でもなされたのでしょうか? 瑠璃さまはイルファ姉さまをよく怒りますけど……でも、イルファ姉さまのこんな暗いお顔を見たのは初めてなのれす……」 「いろいろなことがあったんだ。いつかきっと、シルファにも話すよ」 「はい……」 さらにページをめくる。 この写真は、確かイルファさんのロケテストだっけか。 「この写真には、貴明さまは写ってらっしゃらないのれすね。 イルファ姉さまと、さっきの男の人と、女の方と……」 「この写真は雄二から貰ったものだよ。 以前、イルファさんが雄二の家にロケテストの為に滞在したことがあったんだ。 イルファさんとタマ姉はこの時初めて知り合ったんだよ」 もちろんタマ姉家でのことだから、俺には聞いた話でしかないけど。 なんでも『美人メイドロボと一つ屋根の下』というシチュエーションに暴走した雄二がイルファさん盗撮を狙ってなんども失敗したとか。 そのおかげでタマ姉とイルファさんは打ち解けたらしいから、怪我の功名というべきなのかな……? いや、やっぱり雄二は許せないな。 よりにもよってイルファさんのお風呂姿をカメラに収めようとするなんて。 絶対に許しがたい。 「その時にタマ姉がイルファさんのこと気に入ったらしくて。 ほら、タマ姉は強引だからさ。 いつも俺や雄二を引っ張っていって、皆で野球をやったり旅行に出かけたりするんだけど、 その中にイルファさんも加わるようになって……そこから珊瑚ちゃんや瑠璃ちゃんも少しづつ巻き込まれていったんだ」
- 177 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 22:08:06 ID:6yzPO7EQ0]
- 支援
- 178 名前:箱入り娘が届いたら 40/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:08:11 ID:0Ka5/nCG0]
- 「そうなのれすか……イルファ姉さまは、やっぱりすごいのれす」
「そうだね」 俺は頷いてまたページをめくる。 「そして、これが一番新しい写真だな」 「あっ、この写真にはミルファ姉さまがいるのれす。 しかも、また見たことも無い方がいっぱい写っているのれす……」 「このちっこいのがこのみ。 その隣にいるのがちゃるとよっちだよ」 「ふえええ……写真に収まりきらないくらいに人がいっぱいなのれす…… どうしてこんなにいっぱいの人が出てくるのれしょうか……??」 少々混乱した様子のシルファだった。 写真の変化の早さにシルファはついていけないらしい。 「ミルファは突然俺の家におしかけてきたんだよ。あの時はほんとに驚いたよ」 「そういえば、ミルファ姉さまがお家をしばらく空けたことがあったのれす…… あの時、貴明さまのお家に行ってらしたのれすか?」 「きっとそうだろうな。 で、ミルファが俺の家に住んでることがこのみにバレちゃって。 なんだか知らないけどこのみも俺の家に住むとか言い出すんだよ。 しかもちゃるやよっちまで『このみの援軍だ』とかわけのわからんことを言い出して俺の家に泊まりに来るし。 あの時は大変だったよ」 「貴明さまって……」 「なに?」 「いえ。罪深いおとこの方って、やっぱり自覚がないものなんれすね……」 なにやら理解したような顔で頷くシルファ。
- 179 名前:箱入り娘が届いたら 41/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:08:39 ID:0Ka5/nCG0]
- 「でも……そのわりにはこの写真のお姉さまとこのみさんたちは、仲がよさげに見えるのれす」
シルファの言う通り、写真の中の少女達…… ミルファとこのみ。ちゃるとよっちはまるで女子高生同士がプリクラとか撮るみたいなバリバリの決めポーズで仲良く写真に収まっている。 そのばかばかしさはともかくとして、写真の彼女たちの仲の良さと騒々しさだけは見知らぬ人にも伝わるだろう。 そんな分かりやすい写真だった。 「なんでも戦いの中で女の友情が芽生えたらしい。俺にはさっぱりわからんが」 「そうれすかあ」 「なに? シルファは分かるの?」 「まあ一応。おんなのこには分かるんれすよ」 「ふーん……まあいいや。写真はこれで全部だよ」 俺はアルバムを閉じる。 閉じられたアルバムの表紙を見つめてなにやら物思いにふけるシルファに感想を求めた。 「シルファ、どうだった? このアルバムを見て、何を感じた?」 「ええと……」 シルファは自分の考えを言葉にしようと戸惑っているみたいだった。 俺は答えを急がない。 「えっと……その…… シルファにとって驚きだったのは、多分…… イルファ姉さまやミルファ姉さまのお姿のことです。 珊瑚さまだけじゃなくて、イルファお姉さまやミルファお姉さままで。 こんなにも新しい方とお知り合いになって、仲良くしていらっしゃるなんて……全然知りませんでした」
- 180 名前:箱入り娘が届いたら 42/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:09:05 ID:0Ka5/nCG0]
- 「うん、その通りだね。
俺が話したいのも、そのことだよ」 「はい?」 「珊瑚ちゃんには君の知るように沢山の新しい友達が出来たけど。 そのきっかけになってくれたのは、イルファさんやミルファなんだ。 二人が外の世界で色々な人と出会って、珊瑚ちゃんと知り合うきっかけを作ってくれたんじゃないかな」 「確かに……そうかもしれないのれす」 シルファは考え込むように呟き、そして不意に何かに気が付いたように顔を上げた。 「では、珊瑚さまはシルファにも姉さまたちのようになって欲しいと望んでいるのれしょうか? それでシルファを貴明さんのお家に?」 「うーん、そこまで珊瑚ちゃんが計算してるかどうなのかは微妙なとこではあるけど……」 珊瑚ちゃんの行動が天然なのか計算なのかはよく分からないところがある。 それについては考えるだけ無駄かもしれない。 「でも、シルファに新しい友達が出来たら、珊瑚ちゃんはきっと喜んでくれると思うよ。 せっかくこうして外に出てきたんだし。 シルファもいろんな人と出会って、友達を作るといいよ」 俺の言葉に、しかしシルファの表情は微妙に固くなる。 「珊瑚さまの望むことなら叶えたいとは思うのれすけど…… でも、そんなことシルファにはできそうにないのれす」 「どうして?」 「友達って、どうしたら出来るのれしょうか? シルファには全然分からないのれす……」 「別に……普通に一緒に遊んだりとか……なんか適当に考えればいいよ」 「適当にって? そんなこと急に言われても、シルファにはなんにも思いつかないのれす」 「まあ……そうかなあ……」
- 181 名前:箱入り娘が届いたら 43/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:09:30 ID:0Ka5/nCG0]
- ずっと家に閉じこもりきりだった少女にしてみれば、それは難しいことなのだろうか。
俺にはぴんとこないなあ。 でもそうか、俺にもこのみやタマ姉や雄二が居なかったら。 全然知らない人ばかりの場所で、いきなりなにかを始めるっていうのは案外難しいのかもしれないな。 そう考えれば、確かにイルファさんやミルファはずいぶん頑張ったのだろう。 「お姉さまたちは、とてもすごいのれす。 シルファに同じことが出来るとは思えないのれす。 シルファには……お姉さまたちのことさえ、遠く見えてきたのれす……」 「確かに、イルファさんもミルファもすごくいい娘だからな」 でも、シルファだっていい娘だと思うけどな。 それにシルファは二人の妹じゃないか。 「遠くなんかないよ。大丈夫。シルファにだって同じことがきっと出来るよ」 「そんな……どうしてなのれす?」 「だって、シルファはイルファさんたちと同じ、珊瑚ちゃんが作ってくれたメイドロボじゃないか」 「メイドロボだから……?」 「知ってるかい? 珊瑚ちゃんは、自分や瑠璃ちゃんと一緒に遊んでくれる友達が欲しくてメイドロボを作ったんだ。 「それは、聞いたことがありますけど……」 イルファさんはともかく、ミルファの方はちょっとばかり常識に欠けるところがあったんだけどなあ。 でも俺の心配なんて杞憂だった。 ミルファはすぐに人と打ち解けられる明るくて素直な性格の持ち主だった。 珊瑚ちゃんも、イルファさんもミルファもすごくいい娘だから。 「珊瑚ちゃんは、大切な想いを込めて一生懸命シルファたちを作ってくれたんだ。 だからその願いはきっと届くよ。シルファは珊瑚ちゃんの夢なんだ」 「わたしが珊瑚さまの夢……」
- 182 名前:箱入り娘が届いたら 44/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:09:53 ID:0Ka5/nCG0]
- 俺の言葉をオウム返しに呟くと、シルファは真っ赤になって俯いてしまう。
いや……照れないでくれ。こっちも恥ずかしくなるから。 「た、貴明さまって、恥ずかしいことを平気でおっしゃるのれす……」 「へ、平気じゃないけどな」 「でも、そうなれたらいいと思うのれす…… いえ。そうなりたいと思うのれす」 そう言って『うん』と頷いてくれたシルファの顔にはさっきよりずっと前向きな顔をしていた。 「貴明さんは……不思議なことをおっしゃるのれす…… なんだか貴明さんに励ましてもらうと、ちょっとだけ信じたい気持ちになれるのれす」 「そ、そうかな?」 シルファが尊敬するような真っ直ぐな瞳で俺を見つめている。 純粋で輝いた瞳に見つめられると、なんだか照れる…… 「瑠璃さまが、『男っていうのは優しい言葉で女の子をだまして、てごめするんやでーー』って、言ってました」 その言葉の意味がやっと分かったような気がします」 「…………」 そんな理解のされ方は望んでなかったけどな…… 純粋さにゆえの棘というかなんというか。 シルファは意外と油断できない性格だな。
- 183 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 22:10:18 ID:6yzPO7EQ0]
- 支援
- 184 名前:箱入り娘が届いたら 45/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 22:10:23 ID:0Ka5/nCG0]
- 「でも……わたしはまずなにをしたらいいのれしょうか……?」
「そうだね、初めてだとなかなか勝手が分からないものだよね」 シルファの顔にはまだまだ戸惑いと不安の色が浮かんでいた。 でも、随分前向きになってくれたよな。 あとは、この子にはほんのちょっとしたきっかけがあればいいだけだ。 「じゃあ……まずは俺と友達になろうか」 「え?」 俺はシルファの目の前に右手を差し出した。 「うん。俺とシルファは、今日から友達だ」 「そんな……どうしてなのれす??」 「昨日、今日とシルファと一緒に過ごして、 シルファが珊瑚ちゃんを大切に思う優しい気持ち、ちゃんと伝わったよ。 だから、俺は君と友達になりたい。珊瑚ちゃんは俺にとっても大切な人だから。 二人で珊瑚ちゃんの夢を叶えていこう」 「んー。貴明さんだと、何か下心がありそうで怖いのれすけど……」 言う言う。 大人しいだけの子かと思ったけれど、これだけ言えるなら誰が相手でも大丈夫そうだけどな。 と、シルファの小さな手が俺の前に差し出される。 「シルファと握手、するんじゃないのれすか?」 「ああ、そうだね」 俺はそっとシルファの手をとった。 もみじみたいに可愛らしい小さな手だった。
- 185 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 22:13:37 ID:7TnEcF2/0]
- 支援
>>172 6レス目に出るのは去るさんじゃ無くて連投規制ね 俺の経験では2分以上間を空けるようにすれば引っかかりにくいはず
- 186 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 22:44:49 ID:PXSk6w0a0]
- >>164
>「珊瑚さま……シルファお姉さま……どうして、シルファのことを捨ててしまったのれすか……? お姉さまはイルファ?
- 187 名前:箱入り娘が届いたら 46/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 23:17:16 ID:0Ka5/nCG0]
- 「シルファが生まれたとき……珊瑚さまも貴明さんと同じように手を差し伸べてくださったのれす……
あのときのことは、シルファはいつまでも忘れません」 そしてシルファは俺の手を見つめて言った。 「貴明さんの手はやたらと大きいのれす。 こうして握ると、でっかくてちょっとだけおっかないのれす。 でも、珊瑚さまの手と同じように暖かいのれす」 「タマ姉も、雄二も。このみもちゃるもよっちも。 それに愛佳も郁乃の手も、みんな同じだよ」 「そうなのれしょうか?」 「うん。愛佳はね、困ってる人がいるとほっとけない優しい女の子なんだ。 だからみんなの委員長に選ばれて、信頼されている。 郁乃は……気難しいところがあるけど、悪い奴じゃないよ これから二人と一緒に料理を作ってみよう。 そうすればシルファもきっと二人と友達になれるよ」 「……貴明さんは、お二人のことがお好きなんれすね」 「す、好きっていうか……まあね、うん」 す、ストレートな聞き方だなあ。 もちろん、好きではあるけど、そんな聞かれ方するのは恥ずかしい。 「貴明さんは男らしくて、女ったらしなのれす。 女の子はみんな好きなのれす。よく分かったのれす」 ……もう別にそれでもいいか。 「シルファのことも好きだからね」 「はいなのれす。だったらちょっとだけ、口説かれてあげるのれす」
- 188 名前:箱入り娘が届いたら 47/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 23:17:54 ID:0Ka5/nCG0]
- そんなシルファをともなって1階に戻ると、
階段下のリビングでくつろいでいた二人が驚いたように声をかけてきた。 「わ、貴明くん…… シルファさんと手を繋いでるの? ど、どうして?」 あ、そういえばあれから手を繋いだままだったっけ 「いや、深い意味はなく、ただ友達に……」 「シルファは貴明さんに口説かれたのれす。一緒に夢をかなえてくれるんだそうれす」 「「えっ」」 シルファの余計な言葉に、姉妹二人の驚きの声が重なる。 「い、いや……俺は確かにそう言ったけどさ。でも」 「あんたって、相変わらず手が早いわね……」 「た、貴明くんって……」 「違うって! シルファもヘンな部分だけ抜粋するなよ」 まったくシルファと郁乃には困ったものだ。 この娘たち、可愛い顔してなかなか言葉は危険なんだよな。 でもこの空気は騒がしくてにぎやかで。 さっきよりはずっと明るい雰囲気になれたみたいで……だからまあいいとするかな。
- 189 名前:箱入り娘が届いたら 48/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 23:20:07 ID:0Ka5/nCG0]
- そう思っていると、俺の隣に立つシルファが急に真面目な顔になって口を開いた。
「あの……愛佳さん、郁乃さん。 わがままを言って、ごめんなさいなのれす。 でも、もう一度頑張りたいと思うのです。 シルファにいろいろなことを教えてくださいなのです」 いまだ俺の手を握ったままのシルファの小さな手から、汗ばんだ緊張が感じられた。 内気なシルファにとって、こんな簡単な言葉でもきっと大きな勇気を必要としたのだろう。 「もちろんですよぉ。私に分かることだったら、なんでも教えるからね」 「……ま、いいけど。今度こそ真面目にやりなさいよね」 「はい! ありがとう、なのれす!」 そしてキッチンの中での静かな戦いが再び始まる。 まだまだ不器用に動くシルファの手に、愛佳の優しいアドバイスと郁乃の容赦ない指摘が飛び交う。 苦闘の結果、いくつかの手料理がテーブルに並んだ。 俺も味見にだけは参加させてもらった。 「ん……さっきのに比べれば遥かにマシだけど……はっきり言って、まだまだね」 シルファの作った鳥のから揚げ……らしき料理を郁乃はそう厳しく評価した。 「そ、そうなのれすか……」 「おまえな、そこまで言わなくても」 「仕方ないでしょ。ちゃんと評価しなきゃ、上達だってありえないし」 まあ、そうかもしれないが…… 言いにくいことをはっきり言う奴だな。 シルファも少しばかり落ち込んでいるようだ。
- 190 名前:箱入り娘が届いたら 49/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 23:20:30 ID:0Ka5/nCG0]
- 「でも初めて作ったのならこれで上出来だよ。
ひとつづつ練習していけば、きっとすぐに上達するさ」 「うん、あたしもそう思います。シルファちゃん、短い時間ですごく上手になったと思う」 俺の励ましに、愛佳もフォローをいれてくれる。 「は、はい……」 気を取り直して一休みしたらもう一度始めようか、と提案しようとしたその時だった。 「でも、このお味噌汁の味はあたし好きかな……」 「え?」 シルファがいくつか挑戦した料理が並ぶそのうち、 味噌汁の茶碗を手にした郁乃がなんとはなしにそう呟いた。 あの味噌汁、ちょっと薄味で俺には正直合わなかったけどな。 郁乃にしては珍しく気を使ったのだろうかと不思議に思った。 (郁乃は味噌汁、やたらと薄味が好みだから) (なるほど) 俺の疑問に答えるようにそっと愛佳が耳打ちする。 どうやらこの意見は単純に好みの問題によるもののようだ。 でも、シルファにとってはそんな些細なことではなかったようだ。 「ほ、本当れすか? お世辞じやなくて、郁乃は本当に美味しいと思っていただけたのれしょうか?」 「え? まあ、別に嘘は言わないけど……?」 「正直に、言ってくれたのれすか?」 「だ、だからそう言ってるじゃない」
- 191 名前:箱入り娘が届いたら 50/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 23:21:06 ID:0Ka5/nCG0]
- 妙に真剣なシルファの問いかけに、少々気圧されながら答える郁乃。
と、シルファの瞳から大粒の涙がこぼれ出した。 「わっ、な、なによ……なにも泣かなくてもいいじゃない。あたしはそんなおおげさなことを言ったわけじゃなくて……ただ……」 「生まれて初めて、自分が頑張って作ったもので、だれかを喜ばせることができたのれす。 それが、こんなに嬉しい気持ちになれることだなんて…… シルファは全然知らなかったのれす……」 「ちょっと……泣かないでよ。恥ずかしいな……」 その光景を見て俺は思う。 やっぱり、シルファは分かってくれたんだな。 イルファさんやミルファの妹なら、その気持ちをきっと分かってくれると願っていた。 「ありがとうなのです……すごく、すごく嬉しいのれす! シルファは郁乃が大好きなのれすっ!」 そしてシルファの顔に浮かぶのは俺が見る初めての本当の笑顔。 シルファは隣に座る郁乃におもいっきり抱きついた。 その勢いに押されてたじろぐ郁乃。 「ちょ、ちょっと、抱きつかないでよ。恥ずかしいなあ……もう……」 「いい友達が出来てよかったね、郁乃」 「そ、そんなんじゃないって……あ、ちょっと! 写真なんか取らないでよ! 貴明の馬鹿ーー!!」 俺は初めて見るシルファの本当の笑顔を、郁乃の困り顔と共にカメラに収めた。 それは涙混じりのぼろぼろの笑顔だったけど。 その笑顔は無性に眩しくて、何故だか俺の胸を熱くさせるのだった。 きっと、今、俺達とシルファの間にはなにかが芽生えた。 それは珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんがイルファさんとミルファに貰ったものと同じだろう。 きっとそうであって欲しいと思う。
- 192 名前:箱入り娘が届いたら 51/51 mailto:sage [2008/02/29(金) 23:21:49 ID:0Ka5/nCG0]
- 姫百合家のリビングでゲームをしていた珊瑚の携帯端末がメールの到着音を知らせている。
着メロは何故か『地獄の黙示録』。 「ん、シルファからのメールや」 「ほんま?」 携帯端末を操作する珊瑚から笑みがこぼれる。 メッセージは元気なシルファの様子を率直に伝える内容だった。 『珊瑚さま、お元気れすか? シルファは貴明さんのお家でとても元気に料理の特訓に励んでいます。 お料理もお掃除も、まだまだシルファには難しいけれど。 一生懸命頑張って誰かに喜んでもらえることは、とってもとっても嬉しいことなのれす。 まだまだシルファは頑張って、貴明にも、愛佳さんにも、そして郁乃にも。 もっともっと喜んでもらえる料理を作れるようになるのれす』 メールに添えられた写真には、貴明と、愛佳と郁乃。そしてシルファの姿があった。 郁乃の腕を強引に取って並び写真に写るシルファは笑っていた。 その笑顔は珊瑚が初めて目にするシルファの眩しい笑顔だった。 :追伸 玉子焼きを、ちょっとだけ上手に焼けるようになったのれす。 帰ったら、珊瑚さまやみんなにもきっと食べて欲しいのれす。 きっとれすよ。
- 193 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/02/29(金) 23:22:23 ID:Syu/Orgy0]
- 長編乙
- 194 名前:箱入り娘がの作者 mailto:sage [2008/02/29(金) 23:30:37 ID:0Ka5/nCG0]
- 以上になります。
名前の間違いに関しては恥ずかしい限りですね。 シルファとイルファは間違えやすい上に見直しても分かり辛い…… 支援くださった方、大変ありがとうございます。
- 195 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/01(土) 01:10:02 ID:BWxd0m4F0]
- >>194
シルファと郁乃という、組み合わせも予想外でおもしろかったす。 久しぶりに楽しく、長編を読ませてもらったです。乙かれ〜
- 196 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/01(土) 05:48:28 ID:2kmvu4M40]
- >>194
乙 文章は読みやすいし流れもちゃんとしてるし良い作品だと思う。 でもやっぱAD発売日当日ってのがネックかなあ プレイしてから見るって人は多いだろうし(自分もそう) そうするとやっぱり原作との齟齬が気になっちゃうかな 仮想シナリオも何も、目の前に原作のシナリオが存在しちゃうから嫌でも比較しちゃうしね そういう側面を除けばいいSSだと思うよ。 気になったことといえばシルファが貴明のメイドロボになるって決めた部分が唐突かな 貴明のメイドロボになるって話はあまり関係ないと思うし 無理矢理シルファルートにしちゃってる感じなのがちょっとだけ首を傾げた
- 197 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/01(土) 06:26:12 ID:CwBO2FPI0]
- 貴明のメイドロボになる〜ってのはヤケを起こしたって事じゃない?
例えるなら、貴明が草壁さんルートに入っちゃったのを知ったタマ姉が政略結婚の話に乗っちゃうとか。
- 198 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/01(土) 07:01:13 ID:2kmvu4M40]
- ヤケでもあるんだろうけど
貴明がシルファがメイドロボになるって話を断るっていう根拠がないまま言ってるってことは そうなってもいいや、という考えがあるような気がするんだよね それが誰でもいいじゃなくて貴明ならいいに見えるんだわ 仮想シルファルート、って言われちゃってるので余計にそういう見方になってるんだろうけども
- 199 名前:と妹と彼氏の事情 前書き mailto:sage [2008/03/02(日) 11:33:22 ID:wiZcjMzN0]
- まだADのSSは時期尚早かも知れませんが、
郁乃story読んで姉妹丼を書かなければならない衝動に駆られたので逝きます。 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ★ ★ ★ 注意! ★ ★ ★ ★ このSSはAD郁乃story後日談ですので、 ★ ★ TH2ADの完全なネタバレがあります。 ★ ★ まだ郁乃storyをクリアしていない方はご注意願います。 ★ ★ ★ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ 全27レスですが19/27以降はエロだけです。途中でさるさん喰うかも。では
- 200 名前:姉と妹と彼氏の事情 1/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 11:35:31 ID:wiZcjMzN0]
-
「郁乃ぉーっ!」 校門前、約40メートル後方の校舎から、やけに頑張って張り上げた声が届く。 私は車椅子を止めない、けど、少し速度を緩める。 「ああん待ってよお郁乃ぉ!」 その私を追い掛けて、バタバタと賑やかに近づいてくる足音。やがて隣に。 「はへ、ふひゅ、ほへぇ、ひはぁ」 息も絶え絶えな癖に間の抜けた息遣いを響かせながら、我が姉こと、小牧愛佳が並ぶ。 「なによ、走ると脚が太くなるわよ」 「え、太ったかなっ?」 「さあ?(にやにや)」 「えっ、えっ、ええーっ?」 私は短いスカートから伸びた脚を気にする姉をひとしきりいじった。 まあ、姉の場合は多少運動した方がいいタイプだろうけど。 「それで、何の用?」 「うぅ、用がなければ一緒に帰っちゃいけないのぉ〜?」 「拗ねるな鬱陶しい」 ホントは、ちょっと嬉しい。姉はいっつもこんな感じだから、私はいっつもちょっと嬉しいことになる。 「うん、あっ、それでね、あのねっ」 どうせめげないし、姉。 「これっ、友達に貰ったのっ」 そして姉が差し出したのは、二枚のチケット。 「時代村の……一日無料優待券?」 「うんっ、扮装もタダで、お馬さんにも乗り放題なんだって」 「あっそ」 「郁乃、時代村好きでしょ?」 「べつに」 「こんどの日曜、一緒に行こう、ねっ? ねっ? ねっ?」 人の話を全く聞かず、姉は何故か拳を握りしめて私を誘って、黙って頷いたら全力で笑顔になった。
- 201 名前:姉と妹と彼氏の事情 2/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 11:37:51 ID:wiZcjMzN0]
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んでもって日曜。 「うわー、空が青いねぇ」 確かに。 もうすぐ夏になる空は、これでもかってくらい青く、こんちくしょうってくらい爽やか。 「上見て歩くとコケるわよ、お姉ちゃん」 が、私は不機嫌そうに姉に注意する。 「だいじょうぶだいじょうぶっ、とわたたたたっ?」 言ってる側からコケる姉、を、 「おっと」 横から伸びてきて支える、しっかりとした腕。 「あ、ありがとう、貴明くん」 「どういたしまして」 意味のない会話で嬉しそうにニヤけているのは、河野貴明。姉の彼。 ついでに、私の不機嫌の原因。 「……やっぱ帰ろうかな」 「またぁ、機嫌なおしてよぉ」 何度目かの愚痴に、姉は根気強く同じ対応を繰り返す。 おとつい、姉と私が時代村の約束をした直後。 「愛佳。郁乃ちゃん」 「うきゃっ!」 「ぅくっ!」 貴明は急に後ろから声を掛けてきて、姉と私は揃って飛び上がった、いや、私は車椅子だけど。 「何の用?」 動揺を抑えて−動揺の理由は色々あるのだ−努めて平静に聞き返す私。 「うん、これ、貰ったからさ、郁乃ちゃんにあげようと思って」 いつものヘロヘロ笑いで貴明が差し出したのは、さっき見たばかりのチケットだった。
- 202 名前:姉と妹と彼氏の事情 3/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 11:40:45 ID:wiZcjMzN0]
-
「あはは……三人で此処に来るのは、初めてだねえ」 優柔、という言葉がぴったりな表情で、私とお姉ちゃんのやりとりを笑う、二人のデートを三人にした元凶。 その無神経さに、私の機嫌は益々悪くなる。 無神経。そう、こいつは、河野貴明はとことん手に負えない朴念仁だ。 「なんにせよ、晴れて良かったよ」 ちょいと見てくれが良くて、誰かれ構わず優しくて、 「愛佳と来たときは雨だったんだよな」 「うん、今日はお馬さんに乗れるといいなぁ」 見てて呆れるくらい、姉の心を掴んでいて、 「郁乃ちゃんは馬には乗ったから、今日こそ扮装だね」 「うるさいっ!」 そして、私も。 どうにもならない想いを、こいつに抱いていた。 「うーん、どこから回ろっか?」 「郁乃ちゃんの機嫌が悪いから、まずは食べ物屋かな?」 なのに、そんな事は我感せず、 「何が食べたい? 団子? 桜餅? それとも、カエルの丸焼きとか?」 こいつは当たり前のように、車椅子の後ろから私の顔を覗き込む距離が近い。 「……あんたは雀の姿焼きね」 私は無愛想に言い放って、車椅子を一気に前進させる。 「あれっ、郁乃っ、どこ行くの?」 頬の赤さを隠すため。 「トイレよ」 「あっ、手伝……」 「いらない」 「じゃあ俺が」 「バカっ!」 姉の恋人に惚れている。こんな感情を、表に出してはいけないのに。
- 203 名前:姉と妹と彼氏の事情 4/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 11:45:02 ID:wiZcjMzN0]
-
腹ごしらえの後、やってきたのは扮装館。 「ねえねえ、見て見て郁乃、どうかな? 似合うかな?」 頭に変な薄布を被って、ひらひらと回る私の姉。 「……元ネタがわかんないんだけど」 なんかのお姫様か、それとも街娘だろうか。 「郁乃と違って時代劇には詳しくないのぉ〜」 「まあ、似合ってなくはないわ」 簡易なコスプレ衣装とはいえ、着物の他に髪型も変えて貰って、 意外と豪華な感じが出ている姉は、妹のひいき目に見なくとも可愛いと思う。 「少なくともそこのバカよりは」 「それは酷いなぁ」 苦笑いする貴明は、わざと着古し感を出した唐桟を着流して素浪人気取り。 「結構イケてると思ったんだけど」 「うんうん、似合ってる似合ってる」 「サンキュ。でも、愛佳の可愛さには敵わないかな」 「ぁうっ……」 ちょっときっかけをつかむとすぐバカップルぶりを披露したがる二人の会話。 「はぁっ」 私は大仰に溜息をついて見せた。 「というか、郁乃ちゃんこそなんなの、それ」 「だよ、ねぇ」 二人揃って漫画なら額に汗(大)が浮かぶんだろうな、って表情で私を見る。 「人の勝手でしょ」 子連れ狼に拘った貴明の要望を蹴っ飛ばして私が選んだ衣装は、 プラスチック製の偽物胴鎧に陣羽織、籠手をつけて、陣笠被って槍もって。 これが戦国時代の正統な足軽衣装だ。悪いか。
- 204 名前:姉と妹と彼氏の事情 5/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 11:47:43 ID:wiZcjMzN0]
-
「悪くはないけど……もっと色々、女の子っぽいのもあったろうに」 「うっさい」 私の格好なんて、見ても仕方ないでしょ。あんたは姉の彼氏なんだから。 そんな内心は言葉にせずに、私は貴明の戯れ言を斬り捨てた。 「記念写真、撮るならさっさと撮るわよ」 「あっ、そうだね、すいませーん」 姉が呼んだら、係員はすぐに来た。外に出て、適当な背景の場所で記念撮影。 「よっ」 槍を杖代わりにして、私は車椅子から立ち上がる。 「あっ、大丈夫っ?」 すかさす両側から寄ってくるのを払いのける。うむ、丈夫な槍。なかなか本格的でよろしい。それに、これなら一人で立てる。 「どうせなら、お姉ちゃんを真ん中にしなさいよ」 手を貸そうとした立ち位置のまま、私の隣に収まろうとした貴明を肘でつっつく。 「そうだね、っとっ?」 移動しようとした貴明が、石につまづいて、着流しの和服は前が緩くて。 「わっ、貴明くん、パンツパンツ」 「汚いもの見せんな!」 若干の混乱があった後、貴明、姉、私の順番で写真に収まった。 扮装館に戻って、それぞれが衣装を返却するころには、係員がデジカメのデータから写真を焼いてくれていた。 「なんだか、変な取り合わせだねえ」 浪人、お姫様、足軽。 「うーん、これはあれだな、愛佳姫を……」 「掠おうとするならず者と、護衛の兵士ね」 すかさず言葉が出たのは、なんとなく現実に即したものがあったからだろうか。 「酷いなあ」 言いながらまんざらでもなさそうな貴明は、その顔で愛佳に質問を飛ばす。 「愛佳はどう思う? 俺に掠われたい? 郁乃ちゃんに護られたい?」 「へっ? あっ、うー、うーっ、悩むぅ〜」 だから、真面目に答えるなバカ姉。
- 205 名前:姉と妹と彼氏の事情 6/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 11:51:01 ID:wiZcjMzN0]
-
「い、意外とおっきい?」 「これでもサラブレッドよりは、だいぶ低いんだけどね」 いつぞや私が聞いた台詞を、貴明が再現したのは乗馬体験。 「次の方どうぞー」 「は、はいっ!」 元気よく返事をして、姉は馬の背中に。 「ていっ? あれ? てりゃっ、たあっ!」 ぴょん、ぴょん、ぴょこ、ぴょこたんっ。 端から見てると冗談みたいなカエル跳びだが、本人は真剣に鞍に脚をかけようとしているみたい。 「はいはい、後ろがつかえるからね」 待ってましたとばかり、貴明がでしゃばってくる。私は次の展開を正確に予想した。 「ひゃあっ、くすぐったいっ!」 両脇から抱え上げられて身悶える姉。貴明はニコニコしながら姉を鞍の上に上げる。 はいはい、予想どおり…… 「んじゃ、郁乃ちゃんも」 へ? ふにっ。 「う、うあっ、ちょっと、私は前にも乗ったからっ、て、こらっ、どこ触ってんのよっ!」 「そんなに変なところは触ってないよ」 「触ること自体が変なのよっ!」 抗議はしたものの、貴明はどうも私の扱い方を心得ている−それがまたむかつく−ようで、10秒後には私は姉の後ろで馬に跨っていた。 「お、う、結構揺れる?」 騒ぎにイラついたのか、股の下で馬がもぞりと動いて、私は姉の肩につかまる。 「きゃっ……えへへ」 抱きつかれて、私を振り返って照れっと笑う姉。なんか悔しい。けど、ま、いっか。 「じゃあ、写真撮るよ」 カメラを構えた貴明に、しかし、おっちゃんがとんでもない事を言い出した。 「俺が撮ってあげるから、兄ちゃんも乗ったらどうだい?」
- 206 名前:姉と妹と彼氏の事情 7/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 11:53:36 ID:wiZcjMzN0]
-
さすが馬。三人乗っても壊れない。 「うおっ、とっ、もうちょっと前に行ってくれないか郁乃ちゃん」 「お姉ちゃんがつっかえてるから無理」 「こっちもギリギリなのぉ〜」 でも、高校生三人はやっぱり定員オーバーだったようで鞍上狭し。 「ほれ、止まってくれないと写真撮れねえぞー」 大騒ぎの私達を、やたら微笑ましく見守ってからかう係員のおっちゃん。モブの癖になんでそんなお茶目なのよ。 「仕方ないな、よっ」 何が仕方ないのか知らないけど、貴明はそういって、ぐいっと前に競りだしてきた。 見かけよりも逞しい男の身体が、背中にくっつく。 「ひやっ、こら、抱きつくなあ」 「抱きついてはいないって」 確かに、貴明がくっついてるのは背中だけなんだけど、私の前面には姉がいる上に。 「えへへ、郁乃サンドイッチぃ」 にこやかに恐ろしい宣言をのたまって、姉もこっちに寄ってきたりして。 「ふぎゃ、二人とも、ふざけるな、こら」 「大人しくしていれば、すぐ終わるって」 「そうそう、痛くしないからねー」 「どこの悪役の台詞よそれっ!」 悪役だか医者だか知らないけど、騒いでも話は収まらず。 結局私は、姉と貴明に前後を挟まれてフレームに収まる。 「……ぅぅ」 ぺたっと、できるだけ姉の背中に貼り付くと、柔らかくてあったかい。 「……むぎゅ」 背中に感じる、貴明の胸。筋肉の動きが、直に伝わって。 かなり恥ずかしい写真を撮られたことよりも、二人の身体の感触が、私の心をかき乱した。
- 207 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/02(日) 11:54:46 ID:nVvq4Fqs0]
- しえん
- 208 名前:姉と妹と彼氏の事情 8/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 11:55:59 ID:wiZcjMzN0]
- そんなこんなで時間は、あっという間に過ぎていって。
「さすがに疲れたな。郁乃ちゃん、大丈夫」 「別に、平気」 午後から夕方に変わりそうな太陽を窓の外に眺めて、ヤックで解散前のだらだら会。 「お姉ちゃん、食べないとアイス溶けるよ」 「ふひゃぁ、楽しかったぁ〜」 声を掛けてもご満悦な姉は、テーブルの上で自分が溶けている。 「本当は姉妹でデートだったのに、お邪魔してゴメンね」 相手が楽しんだことを知っていて声を掛ける、こいつはいつでもズルい奴。 「それはそうね」 だから、思いっきり冷たい声で言ってやろうと思ったのに、声は冷たくならなくて。 「そ、そんな事ないよお」 おまけに姉がすかさずフォローするもんだから、貴明はかえってニヤケ顔。 「郁乃も、楽しかったよねえ」 にこにこと、姉は私に追い打ちをかける。 「……まあ、つまらなくはなかったわ」 こういうのは、言葉がなんでも意味は同じなんだろう。三人で過ごす時間は、間違いなく、楽しかった、間違いなく。 だけど。 「そういってくれると、嬉しいな」 貴明の口調は、本当に嬉しそう。たぶん、本当に嬉しいんだろう。だけど。 「こういうの、いいよね、凄く」 姉は、いま世界一幸せですよーっ、って言いたそうな表情。それは私の幸せでもある。だけど。 「また、機会があったら、三人で一緒に出かけようか? 水族館とか、遊園地とかさ」 ごく自然な貴明の誘い。だけど。 「いいですねえ。ねっ、郁乃?」 待ってましたとばかりの、姉の問い。だけど。 「やだ」 だけど私は、頑なな言葉を二人に突きつけた。
- 209 名前:姉と妹と彼氏の事情 9/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:00:14 ID:wiZcjMzN0]
-
「「えっ?」」 二人が固まる。私の攻撃が功を奏したのは久しぶりのような気がするけど、喜ぶ余裕はない。 「貴明」 「う、うん?」 顔を見て話そうと思ったのに、こいつの視線は真っ直ぐすぎて、私は目を伏せる。 「あたしは二度と、あんたとデートしないから」 「えっ?」 「それだけじゃない。学校でも、私の世話を焼かないで、私に近寄らないで。声掛けないで」 「なんで……」 呆然とした貴明の質問を無視して、私は姉の方を向く。 「お姉ちゃん」 「はっ、はいっ?」 テーブルに溶けていた背筋を、無意味にピシッと伸ばす姉。 「貴明とイチャつくのは、一向に構わないけど」 一呼吸置く。 「貴明をウチに泊めるのは、あたしがいない時だけにして」 「そ、そんな」 「学校から一緒に帰るなら、あたしとは別に帰って。貴明が書庫にいるときは、あたしを書庫に呼ばないで」 「ど、どうしてそんなこと」 「どうしてもっ!!」 怒鳴り声になった。お店には他の客もいたけど、気にする余裕なんてなかった。 「理由なんて、どうでもいいわ」 私はテーブルを見つめる。二人の顔を、まともに見ることなんてできやしない。 「とにかく、あたしは、」 また一呼吸置いた、自分の心を、押し切るために。そして、吐き出す。 「あたしは今後一切、貴明とは関わらないから」
- 210 名前:姉と妹と彼氏の事情10/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:03:08 ID:wiZcjMzN0]
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――私は、河野貴明が好きだ。 (ねえ、自分が何人目なのか、教えてあげようか) (言ってみろよ) 初めて見たとき、姉に悪い虫が憑いたと思った。 (お前、本当はお姉ちゃんっコだろ?) (うぁあぁうるさいなあっ!) いつも見透かされて、うまくあしらわれるのが悔しかった。 (なんでここにいるのよ。バス通学じゃないわよね) (うん、ちょっと雨宿り) 退院した後も、なにかとちょっかいを出してくるのが、鬱陶しかった。 (うっかりうっかり) (そそ、うっかり) それから、姉がこいつの言いなりになっているように見えて、心配した。 (ごめん、遅れた……?) (謝る必要なし。約束の時間はまだだから) だから、どんな奴か試そうなんて、バカな事を考えた。 (わ、わ、たた貴明! てて手!) (て!? 手!?) 一緒の時間を過ごして、楽しかった。 (お、落っこちそうで) (もう大丈夫だよ) そして、私は、いつしか、というほどもなく間もなく。 ――姉と同じ人を、好きになった。
- 211 名前:姉と妹と彼氏の事情11/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:06:10 ID:wiZcjMzN0]
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「郁乃ちゃん……」 「あたしに話し掛けるなっ!」 俯いたまま、私は反射的に叫ぶ。 声を聴いたら、揺らぎそう。顔を見たら、崩れそう。 だって、一緒にいたら楽しい。今日だって、三人でいて、有り得ないくらい楽しかった。 <また、機会があったら> こんな事を繰り返したら、私は絶対おかしくなる。それは確信。 だって私には、前科があるんだから。 (ん、誰……) (まなか……?) 寝ぼけた貴明と、姉とあいつがするような行為をした夜の事は、忘れようもない。 あの後私は、激しい後悔と、心と体の両方を襲う鈍痛と、そして微かにお腹に残る熱さに震えた。 あんな事は、二度としたくない。 でも、無邪気に貴明に触れていたら、また、我慢できなくなる。 「そんな事、言ったって」 こいつは、いつも無条件で、私にも優しいから。 「郁乃……」 お姉ちゃん、心配しないでいいよ。 お姉ちゃんと貴明の間に、割り込もうなんて思わないから。 いくらでも、貴明と仲良くしていいよ。 ただ、私の前でだけ、ちょっとだけ我慢してくれれば。 だって、 「郁乃は、貴明くんの事が好きなんだね」 そう、私は貴明の事が…… なんですって?
- 212 名前:姉と妹と彼氏の事情12/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:10:56 ID:wiZcjMzN0]
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「お、お姉ちゃん」 思わず顔を上げた。 「ふふっ、いくら鈍感なあたしでも、それくらい分かりますよぉだ」 姉は、微笑んでた。 「たかあきくんから、デートの結果は聞いてたし」 貴明の方を見ると、やけに神妙な顔をしてる。こいつの表情は信用できないけどね。 「寝ぼけて郁乃に酷いことした事もあったね、たかあきくん」 う、ど、どっちの事を言ってるんだろ。先の夜這い未遂の方よね、きっと、 「ごめんね郁乃ちゃん、途中でおかしいとは思ったんだけど」 けど、貴明のフォローで、後の方だと知らされる。 ……秘密なさすぎだこの夫婦。 「う……ご、ゴメン」 謝って済むような話じゃないけど、バレてた以上謝るしかない。 「あれはたかあきくんが悪いんだから、郁乃が気にする必要はないのっ」 めっ、と続きそうな笑顔で姉は私を許した。 「それよりねっ、問題は、今後の事だと思うんだ」 だから、私はもう、貴明とは…… 「たかあきくんは、郁乃の事、どう思ってるの?」 どきん。 だのに、姉は私じゃなくて貴明にむかって質問した。 「好きだよ」 どきん。 そして、貴明の即答。 このバカ、この期に及んでなんて事言うのよ。しかも、そんな真顔で。 「愛佳みたいに、はっきり女性として好きかって言われると、まだちょっと困るんだけど、大切な女の子だって、そう思ってる」 どきん、どきん。 ああもう、今さっき決意したばかりなのに、このバカの言い草はめちゃくちゃ勝手なのに、頼むから、収まれ私の鼓動。
- 213 名前:姉と妹と彼氏の事情13/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:13:19 ID:wiZcjMzN0]
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「だったら、問題ないよね」 それでさっきから、何を言ってるの、この姉は。何を言い出す気なの、このバカ姉は。 「郁乃がたかあきくんを好きで」 呆然とする私の前で、 「たかあきくんが郁乃を好きなんだったら」 姉はちらっともう一人のバカの方を見て、 「郁乃も、あたしと一緒に、たかあきくんの恋人になろう?」 そんな、バカな事を言い出した。 「なっ、何を言い出すのよバカっ!」 「うっ、バ、バカはないと思うなぁ……」 「バカよバカ、バカ姉、大バカ、どバカ、河馬より獏よりバカバカバカッ!」 ぜーっ、ぜーっ。 「きゅぅ〜」 あたしの剣幕に、変な小動物の鳴き真似つきで涙目になる姉。 「で、でもぉ、あたしも悩んだんだよ? たかあきくんから、事情を聞いてから」 う。 どう考えても悪いのは私−35%くらいは貴明の責任にしたいけど−だから、姉をバカ呼ばわりする筋合いはなかった。 「あたしはたかあきくんと一緒にいたいし、でも、郁乃がそれで不幸になるなんてイヤだし」 「別に不幸になんてならないわよ」 「好きな人を避けて過ごすのは、女の子にとっては一番不幸なことなのっ!」 ぐ。 確かに、貴明と会わずに過ごす自分が、楽しい生活になるとは思えない。 けど、聞いてるよ私は、このバカには、幼馴染みの大の仲良しだった女の子がいたって。 だから、日本が一夫一婦制な以上、そういうのは仕方のない必然的な現象であって…… 「俺も、郁乃ちゃんと会えなくなるのは、イヤだな」 「っ!」 姉から飛んできたトンデモないパンチを避けようと必死の私に、斜めから槍が降ってきた。
- 214 名前:姉と妹と彼氏の事情14/27 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:17:12 ID:wiZcjMzN0]
- 「あ、あんたにそんな事を言う資格はっ」
「ないよね、わかってる。俺が郁乃ちゃんを傷つけている事は」 こいつはいつも、全然わかってない顔で、わかったような事を言う。 「あんたはお姉ちゃんの……」 「恋人だよ、間違いなく、絶対に、これからもずっと」 「だったら、余計な事は」 「でも、郁乃ちゃんと一緒にいると楽しいし、郁乃ちゃんが喜んでいると俺も嬉しい」 「っ、調子のいい事を」 ダメだ、口調が緩む、と、視界に入る姉の握り拳ポーズ。 そう、姉はいつも、男に都合が良すぎる、こんなの、認めちゃ駄目だ。妹の私は、姉を護られなければ。 「そこまで同情するつもり? それともお姉ちゃんが、そう望むから?」 その思いを冷却塔にして、私は必死に言葉の温度を下げる。 「どっちにしたってお断りよ」 それに、私だって。こんな私にだって、プライドくらいあるんだ。 「どっちでもないって」 けど、貴明は口を尖らかす。不本意そうに。 「俺が、郁乃ちゃんと、一緒にいたいんだ」 ぐらっと視界が揺れる。 「そんなこと、言うなぁぁ……」 反論する語尾が小さくなる。決意に、亀裂が入りそうになる。 「分かった、もう、何も言わない」 そして、そう言って貴明は、私の方に手を伸ばす。 え? 「イヤだったら、殴っていいよ」」 顔を引き寄せられる、向こうも、身を乗り出してくる。 キスする気? う、嘘でしょ? そんな、恋人の前で恋人の妹に? 衆人環視の状況で? そうだ、こいつの手口だ。姉との関係を見てて分かる。形勢が悪くなると身体で誤魔化すんだ。絶対許さない、殴ってやる、私は姉とは違う、許さない、絶対、こんなの。 けど、私は結局、近づいてくる瞳に吸い込まれたまま、 自分の唇が貴明に触れるまで、微塵も抵抗できなかった。
- 215 名前:姉と妹と彼氏の事情15/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:21:22 ID:wiZcjMzN0]
- それから、およそ一ヶ月。
「はあっ、無駄足踏んだわ」 病院から家に帰るバスを降りて、私は溜息をつく。 「ごめんねえ、先生が急用で、こっからこっちの検査は明後日以降になっちゃったの」 顔なじみの看護婦−胸おっきいんだよねこの人−が片手をあげるポーズつきで謝って、検査入院の日程は延期になってしまった。 「うー、じゃあ帰る」 「あっ、今日できるぶんは、やっちゃうから待ってて」 「ええーっ、二度手間じゃない」 結局“やれる分”を終えて、ナースセンターでちょこっと彼女とお茶して、家に戻った時は夜もいい時間。 「ただいまぁ……およ?」 玄関に入ると、また旅行中の両親の靴がないのは当然として、男物の靴が一足。 「貴明、来てるんだ」 例の一件以来、いちおう私は、姉と共に貴明の恋人という事になったらしい。 らしいのだけど、それでこれまでの関係が激変したというわけでもなくって、まず、姉は相変わらず貴明とはいちゃいちゃしっぱなし。 私の方には、貴明は何かとちょっかいは掛けてくるけど、いわゆる恋人っぽい事は、私の方から要求しない限りは無し。 それが、主導権を握られる姉に眉をひそめる私への配慮なのか、単に私はおまけとしか思っていないのかは知らない。 私の方は、もはや悩んでも仕方ないので、「貴明利用許可証」でも貰った気分で気まぐれに奴を呼び出している。 それで、あの時出した条件は、当然撤回になったわけだけど、残しておいた条件がひとつ、いやふたつ。 「わたしが家にいるときは、貴明を家に泊めないこと」 「ええ〜っ」 「困ったなぁ……」 姉と貴明は不本意そうだったが、私は頑として譲らなかった。それくらい我慢しろこの猿夫婦。 今夜の場合は、私が短期入院する予定だったから不可抗力だろうけど…… 「む、いない?」 リビングには誰もいない。付けっぱなしのDVDは、まだ途中なのに。 「……もしかして」 嫌な予感がして、私は2階に急いだ。といっても、階段はゆっくりしか上れないけどさ。
- 216 名前:姉と妹と彼氏の事情16/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:23:34 ID:wiZcjMzN0]
- 「あ、あんっ、たかあきくんっ、そんなっ、まだキスもしてないのに」
「じゃあ、今しよう」 「もうっ、いっつもそう……はむっ、んっ」 案の定、部屋の外に漏れてくる恥ずかしい声。 ガチャリ。 「何やってんのよ」 「うおっ!?」 「ふえっ? い、郁乃〜っ!? ったたたたた」 いきなり扉を開けてやったら二人は驚いて、姉なんか見事にベッドから転げ落ちた。 「きょ、今日は病院じゃなかったの?」 「検査が延期になったの。残念ながらね」 「そ、そうなんだ? 食べる? その、夜ごはん」 直しようがないくらい乱れた服を、直すフリだけしながら、姉が取り繕ってるフリ。 「外で食べてきたからいい。それより、」 あたしは、一呼吸溜めて、 「私がいないからって、他人のベッドでエッチな事すんなって、いつも言ってるでしょうっ!」 「「ハイ……」」 これが条件ふたつめ。いや、非常に常識的な事だと思うんだけど? 「今度だけじゃないわね、その様子だと」 「いや、あははは」 全然反省してない、貴明お得意の不誠実な笑顔。 「なんというか、このベッドが一番落ち着くんだよね、習慣というか」 ……もういいや。アホらしい。 私は二人が並んで座る、私のベッドに近寄って、ぼふっと横向けに倒れ込む。 「寝る。えっちしたければ、勝手にしていいわ。見ててあげるから、此処でやんなさい」 二人とも恋人って豪語するんなら、妹の前で姉とエッチしたって、恥ずかしくないわよねえ。
- 217 名前:姉と妹と彼氏の事情17/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:25:26 ID:wiZcjMzN0]
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「い、いや、それはちょっと……」 汗(大)モードで困る貴明、ふふん、いい気味だわ。 「別に無理にやれなんて言ってないわよ。大人しく帰ってもいいし」 そもそも、バスはまだある時間だってのにおっぱじめてんだからこいつらは。 「うーん、どうしよう愛佳……」 こんな時だけ姉に振ったって、答えはでないと思うけど? 「ぁぅ……あ、そうだ、うふふふっ」 へ? なんか嫌な笑顔? ばさっ。 と、私の背後に、姉が倒れてきた。 「え? お姉ちゃん? どうし……ふあっ?」 驚いて振り向きかけた私は、胴体に回ってきた手に妙な声を挙げる。 「郁乃も一緒だったら、“他人のベッド”じゃないよねえ♪」 「ちょっと、マジで言ってんの?」 「まじまじ♪」 論より証拠とばかり、服のなかに入り込んでくる姉の両手。 身をよじって逃げようとしても、背中にまとわりつく温かさに力が入らない。 「こ、こら、貴明、見てないで助けろぉ!」 「ほら、たかあきくんも、こっちこっち」 姉妹に正反対の事を要求されて、貴明は困ったような笑みで考える。 その間にも、トレーナーがたくし上げられて、ブラウスのボタンがひとつひとつ外れていって、 「うわわわ、ちょっと、ちょっとタンマ」 「タンマなーし」 やたらとハイテンションな姉に本気で抵抗できない私の体勢はどんどん絶望的になっていって、 「うーん、そうだね、郁乃ちゃんと、きちんとした事ないもんな」 貴明の笑顔が、私の命運にトドメを刺したのだった。
- 218 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/02(日) 12:26:52 ID:FsO1Qmsp0]
- 支援
- 219 名前:姉と妹と彼氏の事情18/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 12:27:35 ID:wiZcjMzN0]
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「あっ、ちょっとっ、ちょっ、ふいゅっ!」 「へー、郁乃も、胸おっきくなってきたんだねえ」 「い、イヤミかそれはぁっ、はぁんっ」 ブラジャーが外れた乳房を揉まれて、私は変な声を挙げてしまう。 姉の手は、いつぞや寝ぼけてされた貴明の愛撫よりもよほど繊細で、どんどん感覚が鋭敏になっていく。 「違うってば、ホント、ね、たかあきくんも」 「あうっ、わわわっ、だ、ダメぇ」 正面から近づいてきた貴明に、慌てふためく私、今、こいつに触られたら、だって、 「こら、触ったら殺……ふむぅ?」 けど、貴明は、私の顔を両手で挟んで、まず唇を奪った。 あの時にヤックでして、その後何度か遊びでしたような軽いキスじゃなくて、角度をつけて接触が深い。 「んくっ」 「噛まないでね」 かろうじて閉じていたつもりの口が、歯の上を舐められて開いてしまうと、貴明の舌が口に滑り込んでくる。 「んんっ! あふっ、くっ、んっ」 知らなかった、口のなかって、こんなに敏感だったんだ。 前歯の裏っかわをこしょぐられて、抵抗しようとした舌を絡め取られて、私はいいように嬲られる。 唇はみっともなく開いてしまい、キスというより貴明の口を食べているみたい。 「郁乃、可愛いな」 「!」 耳元に囁かれて、口腔内を這い回る感触に我を忘れていた私は顔を熱くする。 「あ、あぐっ、ふうっ、はぁっ、はぁっ」 ようやく貴明は私の唇を解放した。酸欠状態で息を吐く。 「順番に、ね」 何が順番よ、と聞き返す間もなく、貴明は私のトレーナーをたくし上げる。 既にブラウスとブラジャーは胸を隠す位置にはなくて、 ぷるん、なんて立派な音がするような大きさじゃないけど、私のおっぱいが外気に晒された。
- 220 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/02(日) 12:36:40 ID:LAl1yIe8O]
- さるさん来たので中断
- 221 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/02(日) 12:52:23 ID:AxQrWvCU0]
- みならじ第2回 ■パーソナリティ:後藤邑子、伊藤静
www.nicovideo.jp/watch/sm2336941 「心が綺麗な天使」「フッ(失笑)」 「ウザイ」「キャハハ」「ほんとさぁ…大丈夫?」「おいおい、自称天使」 「自分が天使だと思ってること自体が間違ってるんじゃないの」 「軽く(精神病院に)通院してみた方がいいよ」「それかもう日本出てったほうがいいんじゃないの」 youtube版 jp.youtube.com/watch?v=_ec_H8rnFSc
- 222 名前:姉と妹と彼氏の事情19/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 13:02:35 ID:wiZcjMzN0]
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「あ、っ、やあっ!」 今気付いたけど、電気消してない。白い灯りに、たぶん赤くなっている私の肌が。 「うん、可愛いよ、郁乃ちゃん」 「どこ見ていってんのよっ!」 「ここ」 顔よりもだいぶ下にあった視線に文句をつけたら、貴明は開き直ってめくれたトレーナーに頭を突っ込んで。 「ひゃうんっ!」 乳首に吸い付かれた。瞬間、背筋に電流が奔る。 「やっ、そんな、吸うなぁ……」 お風呂にも入ってないのに、私。 「美味しいよ」 「っ〜っ!」 首を振っても胴体はしっかりと押さえつけられて、貴明の唇は私の胸から離れない。 ちゅぱ、ちゅぱ、ちゅっ。 「あ、ああぅぅ……」 ちろちろと舌先で胸の先端を刺激されながら、空いた手で空いた方のおっぱいを揉みこまれゆく私。 ぴりり、ぴりりと脳に伝わる刺激に、抵抗手段の筈の手が、貴明の頭を抱きかかえてしまう。 じりじりと、身体を押し上げられていくような感覚、なんていうんだろ、高まっていく、とか? 「気持ち良さそうだねえ、郁乃」 「そ、そんな事、んっ、ないっ」 また、耳元で囁かれて、イヤイヤをする私。 でも、あれ? おっぱいを貴明が占領していると、姉の手は何処に…… ひゃうっ、ズボン脱がされてるっ!? 「ふーん、ホントかなあ」 そう悪戯っぽく言いながら、姉は露出した私の太股を撫でる。 暴れようにも、上半身はしっかり貴明に責められていて、もう身体に力が入らない。 そして姉の手は脚を昇ってお尻を一撫でして、 「確かめてあげるっ♪」 お尻と閉じた両脚の小さな三角地帯から、私の一番敏感な場所に滑り込んできた。
- 223 名前:姉と妹と彼氏の事情20/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 13:06:22 ID:wiZcjMzN0]
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「うあァんっ!」 そこに指が這った瞬間、私が挙げた声は盛大に裏返っていて、我ながら恥ずかし過ぎる。 でも、それくらい凄い刺激だった。前に自分で触れたのなんて、文字通り児戯に等しい。 「ふふっ、湿ってる」 せ、性格違うんじゃないの姉。なんて抗議も通じるわけはなく、姉の指が下着の上からスリット部分を擦りあげる。 そこは姉が言うとおり、きっちり濡れ始めていて、 「あ、あうう、やぁ、もう、こんなぁ……ぁうんっ!……あ?」 弱々しい声と、弱々しくならない喘ぎ声。 それが一瞬止まったのは、吸い付かれていた乳首から感触が消えたから。 「いいなあ愛佳。俺も触るよ、郁乃ちゃん」 「うあっ? ひゃくんっッ!!」 わざわざ宣言しくさってから、貴明の指も私の下腹部を滑り降りた。 上から貴明の、下から姉の、ふたつの指がそこに集結して蠢き出す。 「そ、そんな速く、あんっ、や、おっぱいもっ!?」 口を離したのは下を触る宣言の為だけだったのか、今度はもう片方の乳首に吸い付く貴明。 加えてあろうことか、空いた側の乳房に姉の左手が伸びてくる。 「下着、汚れちゃうよ、脱ごうね」 もうすっかり染みになっているだろうパンツも、姉と貴明の手が協調してずり下ろされる。 「で、電気、せめて、消して」 哀願空しく、閉じようとした脚も開かされて、姉は背後だし貴明は胸だから見えないのが救いだけど。 「あっ、ひ、開くな、やっ、入れちゃだめ、ふひゃうんっ、そこや、潰しちゃ、んんんっ」 見えないけど、割れ目を広げられて、そこらへんを掻き回されて、突起物を指でおさえられて、 もう体中に痺れが走って、わけがわからない、電灯の光が眩しくて、視界が、白く、気持ちいい、白く、 「っあぁぁあううっッ!」 意識が消し飛んだ。
- 224 名前:姉と妹と彼氏の事情21/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 13:09:21 ID:wiZcjMzN0]
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「はあっ、はあっ、ふあっ、あふぅっ」 呼吸が浅い、空気が、なかなか肺に入ってこない。 これが、いわゆる、イッちゃった、ってやつか。などと思う余裕もなく。 「あ、脚っ、やぁ」 両脚が開かれる、仰向けになった私を、見下ろす男の目。 「み、見るなぁ」 「見ないと挿れられないし」 挿れるって、今から? そうか、って、今までのは、いわゆる前戯ってやつぅ? ぐいっと太股が持ち上げられて、おしめポースで、朦朧とした視界のなかで、 貴明の、いつのまにか出てきてた下半身のそれが、私のそこに近づいていく様子だけやたら明瞭に見えて。 「ちょ、ちょっとタンマ、今だけ、ダメ」 私は慌てて止めたのに。 「ゴメン、俺が我慢できないや」 ぐいっ。 容赦なく、こいつは力の抜けた私の身体に、硬い肉棒を打ち込んできた。 「んくうっ!」 初めてじゃないから辛くないなんて、そんなの甘い。 確かに皮膚を裂かれるような痛みこそなかったけど、下から杭でも打ち込まれたような。 ずりゅっ、ずいっ、ずっ、ぐっ。 「うふぅっ、くはっ、くふっ、うぁあぁっ」 前後に抜き挿しされる度に、足先から脳天まで貫かれる突入感。 「ぐぅっ、うあっ、あうっ、ふぁうッ!」 貴明の腰の動きに、私の身体の全てのリズムが同調する、いや、支配される。棒きれ一本に制御される私の感覚。 「い、郁乃、頑張れっ」 私の様子があまりにも苦しそうなのか、姉が心配そうな声を挙げる。 「あっ、つ、辛い?」 夢中で動いていたらしい貴明の動きが、それで弱まる。 ……今頃配慮とかふざけんな。負けてたまるか。
- 225 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/02(日) 13:13:02 ID:zbsvbcJz0]
- 支援
- 226 名前:姉と妹と彼氏の事情22/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 13:13:37 ID:wiZcjMzN0]
- 「平気だから、勝手に動きなさ……かはぅっ!」
台詞が終わらないうちに、動きを再開する貴明、やっぱり口だけだ、こいつの気遣いは。 「ふぐっ、ひやっ、うぁんっ、あっ、ああっ」 ぐちゅ、ぐちゅっと結合部から漏れる湿った音。私のそこは、苦しいくせに潤滑油だけはちゃんと供給しているらしい。 「ああっ、んっっ、ひやっ、えっ、あん」 おかげで痛みは本当になく、ただ敏感な部分を抉られ擦られる感覚が、どんどん大きくなっていく。 「あっ、あうっ、あっ」 貴明の動きが速くなる、もうすぐ、たぶん、私、 「あっ、くぅっ、きしゃっ、くあっ、うん、あっ、あっ、あああううっっっ!」 強く首を左右に振り乱して、私は二度目の、そいういう状態に到達してしまった。 けど、 「大丈夫、ごめんね」 「へ、平気、それより、まだでしょ、そっちは、いいわよ、動いてて」 そう、貴明はまだ出してない。動きたいはず。 「無理だって、少し休まないと」 「平気だってば、だから抜くなぁ、動け」 「いや、そう言われましても」 「あ、あのう……」 妙な意地の張り合いに終止符を打ったのは、姉のかぼそい声だった。 「その、私も、見てたら、すごく……して欲しい……」 なんっつー声で、なんっつー台詞を吐くのか我が姉は。私でも速攻で押し倒したくなる。今は体力ないけど。 「あ、あああ、ご、ごめん、つい、郁乃ちゃんに夢中になってて」 ずずっ、硬度と膨張率を保ったまま、私の身体から引き抜かれる制御棒。 「ん……」 身体の中にぽっかり空いた空洞感に、私は安堵と同時に寂しさを覚える、が。 「ふひゃあんっ、ん、んんっ、ひひゃっ、ダメぇっ、うきゅぅっ!」 すぐ隣で、姉の声が張り上がる。 私との行為で既に出来上がっていた貴明と、ずっとおあずけを喰っていた姉なのに、息はぴったりで。 「ひうっ、ぐっ……あっ、ひっ、ひぃぁ、は、あふぁ、いっ、く、ぅ、ううぅーんっ!」 途中省略したけど、ともかく、結構あっという間に、姉の声は完全に裏返った。
- 227 名前:姉と妹と彼氏の事情23/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 13:15:41 ID:wiZcjMzN0]
-
「ふぁっ、はぁっ、はぁっ……出てる……」 「う、くっ、ん……」 本人はぶっ飛んでるだろうに、端で見てると、イったかどうかって意外と分からないものね。 なんて妙に冷静に分析してしまう私。しかしどうやら、二人は揃って目的を達したらしい。 ……やっぱり、ちょっと悔しいかも。経験の差よね、相性じゃない、たぶん、そう思いたい。 「郁乃……おいで……」 これで終わりかと気を抜きかけたのがいけなかった。私はいきなり姉の手に引き寄せられ、 「こんどは二人一緒に、してもらお?」 「えっ、って、ちょっと」 姉が抱きついてくる。うわあ、なにこれ、柔らかい、私の身体と全然違う。なんだっけ、ほら、昔のSF映画の、 「……マシュマロマン」 「もう、酷いなぁ……うきゃっ?」 唇を尖らせた姉の台詞が途中で途切れたのは、姉妹の会話なんて気にしないエロ魔人が手を出したから。 くちゅり、くちゅりと指でアノ辺りをいじくる音がして、目の前で姉の表情が恍惚に変わる。 ごく。 私は息を飲む、なんて顔して、私もさっきは、こんなんなのか…… ぐにっ。 「あうっ!?」 姉にのしかかられて下方は全く見えないだけに、貴明の指は不意打ちで私を責めた。 ぐにゅっ、ちゅっ、くちゅ。 湿った感触、姉の愛液……と、貴明の精液も混ざってるのかな、が、私の秘所に塗りたくられる。 「ぐっ、んんっ、あっ」 じきに自分の身体からも、分泌物が漏れだしている音が加わる。 交互に貴明に弄り回される、姉と私の、大事な筈の部分。 「も、もうダメ、お願い、たかあきくん……」 切ない声でねだる姉。絶対言いたくないと思いつつ、私の身体も辛くなっている。 「郁乃ちゃんは、いい?」 「か、勝手にしなさいよ」 そう強がるのが精一杯で、内心はまた、さっきの感覚が自分を襲うのを待ち焦がれていた。
- 228 名前:姉と妹と彼氏の事情24/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 13:17:32 ID:wiZcjMzN0]
-
「くはぅっ! んんっ、ふぁっ!」 貴明の下半身は、一度出すモノを出しても元気みたいで、私は容赦なく突き上げられる。 「……ひっ、き、きゃぅっ、ひぁふっ、んぅっ!」 そして、何度か私を向こうの世界に近づけておいて、今度は姉に目標を移す。 私に覆い被さっている姉の身体から、衝撃の余波が伝わってくる。 「あぐっ、んっ、あわぅ!」 そしてまた選手交代、私と姉は、交互に貴明に貫かれて悲鳴を挙げながら快感を高めていく。 ……あれ、これだと、最後どっちでするんだろ。 「ま、愛佳、郁乃ちゃん、こうやって」 私には貴明の求めの意味が判らなかったけど、姉は理解したみたい。 「郁乃……」 ペタっと抱きついて、腰を押しつけてくる。 「っ、は、恥ずかしいって。お姉ちゃん」 何を今更、とは思いつつ、自分と姉の熱い部分が接触するのは羞恥心を刺激した。 「郁乃ちゃんも、ぴったりくっつけてね」 「へ?」 答える間もなく、ぐいっと押しつけられる硬いモノ。 それが私の割れ目を広げて前進してきて。 「ああうっ!? 入って……ない? あんっ!」 中に挿れるのではなくて、あそこを下から擦り上げるように往復する貴明のあれ。 「ふひゅっ、ひゃんっ、こ、擦れるぅ〜」 姉も同じ状況、つまり、上下から貴明のを挟んでるって事……んっ。 「くっ、あんっ、や、結構、これ、うあっ」 「いっぱい、擦れて、たかあきくんっ、あん、郁乃っ、あああん」 「うっ、お、俺も、これは、凄い、やばいかも」 挿入とはまた違う刺激と、体中に感じる姉の体温と、それより熱い貴明の肉体と、 「愛佳、郁乃ちゃん、うくっ」 「い、いく、のっ、たかあき、んっ、くぅんっ!」 「あっうっ、お姉ちゃん、貴明ぃ、お姉ちゃんっ、ああんんっっ!」 私がイクのと同時に、お腹に熱い液体がかかる感触と、姉の身体が痙攣のように震える感覚があったけど、すぐに意識は白く薄れた。
- 229 名前:姉と妹と彼氏の事情25/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 13:21:08 ID:wiZcjMzN0]
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「う、ぁ、はぁっ、はぁ、……う? え?」 心地良い虚脱から醒めると、また熱くなったそこに、強烈な膨満感があった。 いっ、挿れられてるっ? またっ? 「うっくっ」 ぱんっ、ぱんっと、さっきよりも激しく、貴明の下半身が私の下半身を打つ。 「あっ、やっ、そんな、くうっ」 なんて奴だ、気絶してる私を相手にまたするなんて、せめて姉の方を…… 「あれ、お姉ちゃ、んっ、うっ?」 横を見たら、姉が精魂尽き果てた顔で倒れていて、その身体には、さっきより広い範囲に粘性の液体がかかって。 私が気絶してる間に姉と一戦交えてたのか。って、このエロ魔人底なしかい! 「くぁはっ! あうっ、あん、もっと、ダメ、ちょっと、優しく、くふゅっ!」 「ごめん、俺、止まらないから、もう」 「もうって、できない、ならっ、ぐうっ! 謝るなっ、あぐっ、はあ、はんっ、ひゃうああああぅっ!」 どくっ、どく、どく。 また消し飛びそうな意識が、辛うじて繋ぎ留まったのは、身体の中に送り込まれる流動体の感触のせい。 出されてる、中に、せーえき。 ぼうっとして、私は貴明を見上げる。荒い息をついて、やっと満足したような顔の性欲魔人。 ……なんだろう、この、もの凄い、被虐感。 いいように弄ばれたような、利用されたような、それでいて自分は快感の渦に突き上げられて、支配されて。 (……お姉ちゃんは、この感覚を求めてるんだろうか。) だとしたら、私もこれに溺れちゃダメだと思う。それこそ、男にだけ都合のいい姉妹丼のできあがりだ。 ばさあっと、力尽きたように貴明が倒れ込んできた。 「たかあきくん……」 反対側から、姉が貴明に寄っていく、というか、私を間に挟んで、ぴったりと。 「愛佳、郁乃ちゃん……」 「……後始末、しないと」 「うぅ……眠い……」 私の提案は却下されて、すぅ、すぅ、とあっというまに二人は寝息を立て始める。
- 230 名前:姉と妹と彼氏の事情26/26 mailto:sage [2008/03/02(日) 13:23:09 ID:wiZcjMzN0]
-
かち、こち、かち、こち。 灯りも消してない部屋に、目覚まし時計の音が静かに響く。 「……どうしたもんかね」 ベッドの片付けから三人の将来まで、親への説明やら、貴明との力関係やら。 短期的にも長期的にも、世間的にも個人的にも、色々と問題はありそうだったけど、 「……あったかい」 背後に姉の柔らかさ、正面に貴明の逞しさ。 いつぞやの馬上と逆、二人に挟まれて、その温かさに、私は包まれて。 「……寝るか」 悩むことが無駄とは思わないし、これからも考えると思うけど。 だって姉も貴明も考えないし。でも。 「……くぅ」 私は今この瞬間、とりあえず凄く幸せな眠りにつくのだった。
- 231 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/02(日) 13:24:09 ID:wiZcjMzN0]
- 以上です。支援どもでした。全レス数間違い。
あと、3箇所くらいある愛佳の「貴明くん」は「たかあきくん」の間違い。直し忘れたorz 郁乃storyでキャライメージが変わったのは、郁乃でも愛佳でもなく貴明でしたね俺は
- 232 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/02(日) 14:22:10 ID:fLOGErmbO]
- >>231
GJ! まだADやってないから郁乃視点の文っていまいち想像つかなかったけど 郁乃のバットエンドの補完として楽しめました なんかありがとう
- 233 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/02(日) 14:24:48 ID:NQUVftcKO]
- むしろグットエ(ry
- 234 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 00:29:08 ID:gxTTrnhEO]
- 郁乃√は姉妹丼
俺もそう思っていた時期がありました
- 235 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 00:37:54 ID:Xaw6PaNB0]
- ADやったらひさしぶりに執筆意欲が沸いてきたぜ。
- 236 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 01:53:45 ID:b6ZAdr/30]
- >>235
奇遇だな。 まだ何人か残してるからアレだけど、一通り終わったらはるみとクマ吉の心を取り戻させてやらねばならん!とは思ってる。
- 237 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 16:16:19 ID:N9G2/t0m0]
- 執筆意欲ゼロになった私も。
郁乃で書いてましたが、完全に続編書く気がなくなりました。 もう少しどうにかならんかったものか……
- 238 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 17:31:20 ID:DKf0T8zx0]
- このスレ河野家おわってから見てなかったんだけど久しぶりに来ちゃった・・・
- 239 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 18:39:11 ID:lIKvEpWN0]
- 菜々子については二次創作で補完すべき、だぴょん
- 240 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 19:47:17 ID:5Y66pyGtO]
- >237
漏れは逆に貴明とラブラブないくのんを書く所存であります 昔いくのんがタカ棒の寝込みを襲う浮気SSを書いたこともあったけど、もう可哀相でそんなの書けません ハーレムか単体かはわからないけど、郁乃を書くときは絶対幸せにします
- 241 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 20:18:55 ID:N9G2/t0m0]
- >>240
なるほど、そういう考え方もありますね。 私も連載中断して久しいですが、頑張って書いてみようかな。ADはなかったことにして。
- 242 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 20:25:23 ID:qzQJejTvO]
- >>240
単体でおながいします 独占欲の強い愛佳の妹なのだから、郁乃も独占欲が強そう なので、郁乃に貴明を独占させてあげてくだしい
- 243 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 20:26:21 ID:QxOVMoiI0]
- いくのんが姉と貴明の二股をですね
- 244 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 21:00:44 ID:Xaw6PaNB0]
- なんかこう、本編で絡まないキャラ同士を絡ませたいなぁ。
- 245 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 21:08:27 ID:IwFfmzok0]
- バウム×愛佳w
まあ愛佳ED後じゃないとして、これなら遠慮無く貴明×いくのんが実現できるww
- 246 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 21:20:00 ID:PTy1HRBw0]
- メイドロボと姫百合姉妹のSS書きたくても
シルファと珊瑚ちゃんとの仲が掴みづらく書きにくいな
- 247 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 22:27:10 ID:VaA03dJk0]
- ADは無かったことにして、
半年位前までの各自の自分設定で書いたほうが面白いんじゃないかな? 未だにシルファの「なのれす口調」に馴染めないよ・・・。
- 248 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 23:34:53 ID:lIKvEpWN0]
- これをいい機会にして、書き手が戻ってくるといいんだけどな…
いなくなった人のことを言っても仕方ないかもしれんが
- 249 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/03(月) 23:49:00 ID:i4zFWzzY0]
- こっそり書いてるかもよw
おれはインスコまでやったけど今までのイメージが壊れるのが怖くて 未だにプレイする度胸が涌いてこんよ まあ、一旦始めてしまえばサルのようにやってしまうんだが
- 250 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 00:21:22 ID:/QQ0MV530]
- 待ってる人がいなくても、一応作品を完結させるのが作者の務め!
と思って書いてます。最後の更新いつだったかな……かけるときはすらすらかけてかけないときは 1年も2年もかけなくなるから困る。
- 251 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 00:22:59 ID:kPMfEPtk0]
- そういうのは口に出さずにやり遂げると余計にかっこいいんだぜ
がんばれよ
- 252 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 00:59:30 ID:J476vvqK0]
- AD、エロスでもおばかでも3Pでも許される公式設定が出たからいいじゃないか
……まールートのオチだからアレではあるが
- 253 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 04:23:38 ID:Ptv2Co8a0]
- あれはエロスやおばかじゃなくて下品と言うんだorz
- 254 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 06:27:41 ID:y+d1p42a0]
- でも、漏れはADでイメージが大きく変わったキャラってシルファとイルファくらいだけどな
イルファは想定範囲内で一番悪いあたりに落ちて、逆にシルファは良い方向に予想を超えていた
- 255 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 06:31:13 ID:52LFUHd/0]
- …郁乃×バウムSSが読みたいとか言ったらフルボッコにされる予感!
相手間違えて謝罪もそこそこに即夜這いしなおしに行く枕貴明より ポッと出でもバウムのほうが男らしくて好きなんだが駄目ですかそうですか。
- 256 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 06:45:58 ID:uzbJNfRv0]
- バウムのキャラが具体的に分かってないのがなあ
貴明よりはマシには同意だが
- 257 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 07:59:49 ID:Qutp01Y+O]
- AD発売跨いじゃったよorz
シルファが予想と違いすぎて困った… 書き直すべき?
- 258 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 08:55:46 ID:JsKVfQxY0]
- シルファこんな腹黒だとは思わなかったね
- 259 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 09:49:30 ID:naHno9RW0]
- 某SSがひっそりと完結した件
- 260 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 10:42:10 ID:6pAOmg+t0]
- >>257
そのまま投下して良いと思うよ。 ネタバレ自重期間だし、ADを黒歴史にしたい人も多いみたいだから。
- 261 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 21:17:02 ID:6bsezHkr0]
- ネタバレ自重はするつもりだが、いったいどれくらい待てばいいんだろ。
- 262 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/04(火) 21:22:43 ID:/QQ0MV530]
- 発売2週間〜1ヶ月ぐらいじゃないですかね?
そこまで酷いネタバレでなければ、SS書いても問題ないと思いますが。
- 263 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 00:57:38 ID:vm+ywyzB0]
- 投下前にADバレ有りって告知すればいいだけじゃん。
未成年者いない名目の板なんだし、 わざわざバレ事前申告あれば後は各自で判断するでしょ。
- 264 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 09:25:34 ID:+/Cv8NbW0]
- AD設定で書く人はこっちに書いてURL貼るって手も有るな。
ttp://www2.atchs.jp/sstoukou/
- 265 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 12:37:37 ID:Dt0w6c1p0]
- そもそもネタバレが怖いならこの板に来ませんよ。
ただ、ネタバレするな!と故意に煽る奴が出てくるおそれはありますが。
- 266 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 12:59:38 ID:fpcUqoOo0]
- >>265
自分の考えを押し付けるのは良くないぞ。 ADは様子見だけど東鳩2SSは読みたいって人も居るんだから。
- 267 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 14:37:01 ID:vm+ywyzB0]
- >>266
同じように個人の都合の押し付けも良くないだろ。 商品発売後にネタバレなんて騒ぐ様なゆとりは無視でいい。 回避したい人間でまともな思考の持ち主なら、 ゲーム終らすまでスレのログ保存しとくなり対策してるだろうしな。
- 268 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 16:16:06 ID:DRawEH0l0]
- >259
あれはまあ、その前の話でほとんど決着ついてたけどな 二年とは随分間が空いたが、完成させたことが素晴らしい
- 269 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 18:43:12 ID:PnqZp0Qg0]
- 殆どメイドロボ関連しか読んでなかったから他の進行状況が把握できず><
どうしても偏ってしまう漏れを許してくれorz
- 270 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 18:43:41 ID:PnqZp0Qg0]
- 殆どメイドロボ関連しか読んでなかったから他の進行状況が把握できず><
どうしても偏ってしまう漏れを許してくれorz
- 271 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 18:49:02 ID:PnqZp0Qg0]
- 慣れないPS3で書いたせいか連投的なことに・・・
これもタブってたらスマソ
- 272 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 19:02:53 ID:mWK/oPAS0]
- >>266
よくないと言われるほど押し付けがましい意見でしたかね。 そこまで読み手の都合に配慮して差し上げなければならない理由が いかなるものか不明ですが。
- 273 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 19:41:53 ID:tP/hf+xe0]
- >>270
メイドロボがメトロイドに見えた俺は明日が楽しみ >>272 ま、ADはまだでSS読みたい人はいるかもね 既出の通り、一言あれば回避できるんでない? 無配慮で投下するよりは皆幸せになれる 投下前にバレ有り警告くらいなら難しい手間でもないかも
- 274 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/05(水) 20:00:28 ID:CvjMODMx0]
- じゃあこれでいいのな?
:ADのネタバレがある場合、ネタバレ期間中はSS投稿前に一言書き込み :ネタバレ期間は二週間(3月14日まで) まあ半端にネタバレ気にするよりは、 警告ありで思いっきり書けばいいかと。 それ以降はもう自由にお書き下さいということで。
- 275 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/06(木) 02:32:13 ID:44qozxCc0]
- よっしゃ〜、このたま以外クリアしたど〜〜!!
これでなんとかAD準拠のSSも書けるってもんだ。 新しい設定もいっぱいあったような気がするしね。 どうやらあの町は四方を山に囲まれてるらしいとか?貴明のママンの話とか? 春夏さんが旦那と歳離れてて、なおかつ幼馴染ってのも初耳だよな。 いくのんの病気の設定もわかったしなぁ。ま、バウムは使いにくいが…… にしてもメイドロボのパーツの名前が昔のと違ったような?? 耳カバーの設定、とりあえず今までは「リメンバーマイハート」にあわせて名前は「イヤーレシーバー」でGPS機能や遠隔操作機能があるって考えてたんだけど、ADでは「イヤーバイザー」だったもんなぁ。 サテライト関係はデフォ機能じゃないらしいし。 ま、イルファさんがハッキングに使ったんだから色々機能はあるんだろうけど。 まぁ、なんにしろそろそろ電波も入ってるし、楽しみ楽しみww
- 276 名前:moa [2008/03/06(木) 23:09:43 ID:ghcDfYhr0]
- ADいいすね〜。
とりあえずALLクリアしましたが、シルファとちゃるが気に入りました。 ネタばれ期間が解禁したらぜひとも書いていただきたいです。
- 277 名前:名無しさんだよもん [2008/03/07(金) 08:27:57 ID:B1FLUmtbO]
- 春夏さんのエロースなSSを読みたいんだけど、
オススメのは有りますか?
- 278 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/07(金) 18:18:40 ID:7A3KYOej0]
- >>277
ttp://toheart2.ss-links.net/user-cgi/C11.html
- 279 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/07(金) 20:34:49 ID:OT5LCiPN0]
- ミルシルで12周しちまった
- 280 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/07(金) 22:50:09 ID:HG8n6Axj0]
- 春日さんのLinksに最近登録された新規サイトの絵が表示されていないので、そのアドレスを見ると『file:///C:/Documents』で始まり、その中に人名にしか見えない漢字四文字。
どういう意味かは大半の人にはわかるだろうが、 せっかく匿名で公開しているのに、本名丸出し。 哀れに思いその人に知らせてあげると、人名を別の漢字に変えただけ。 当然絵は表示されない。 本人はその間違いにいつ気づくだろうか?
- 281 名前:名無しさんだよもん [2008/03/08(土) 02:58:13 ID:7vgKnn0T0]
- シルファ「ご主人様、ただいまもどりましたのれす」
ギシギシアンアン シルファ「・・・? ご主人様ー?シルファ帰ってきたのれすよー」 ガチャッ 貴・はる「あ」 シルファ「・・・もう少し遅くても良かったみたいれすね」 バタン こっ このレスはなかったものと思ってください! そう!空気中の二酸化炭素だとでも思ってくだれば!
- 282 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 03:13:02 ID:WAp4e52BO]
- いくのんが貴明(まとも)とラビューラビューする話が読みたいです・・・安西先生・・・
バウムってなんだよ・・・
- 283 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 20:15:30 ID:q5rB3gi00]
- 郁乃SSなら書庫にでもいくつかあるでしょ。
未完の長編も一本あったような気がする。
- 284 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 21:06:54 ID:ERyOPk3p0]
- >>259のSSがさっぱり判らない・・・
- 285 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 21:41:05 ID:ZQr3jHm60]
- 虹の欠片でぐぐれ
遠回しに某とか言ってないでヒントくらい書いていけよw
- 286 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 21:52:41 ID:+mrbFoyb0]
- それってアレか
雄二に股開いたこのみに未練たらたらの貴明の話か ADショックの後に読むもんじゃねええええ
- 287 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』 mailto:sage [2008/03/08(土) 21:52:53 ID:5hfrL/Ci0]
- ちょっくら一本投下させていただこうかと思います。
一応警告文も。 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ★ ★ ★ 本SSは、TH2AD準拠で書かれています。 ★ ★ ★ ★ 作品中多数のネタバレを含みますので、お読みになる際はご注意下さい ★ ★ ★ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ちょっと冒険かもしれませんが……それでは次からはじまります。
- 288 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』1/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 21:54:43 ID:5hfrL/Ci0]
- 「大好き、貴明……。あたしのたったひとりのダーリン」
それは自己の存在に対する確固たる自信。 アイデンティティ? レゾンデートル? ただ、貴明を思うが故に自分は在る。 ようやくそれを手にしたミルファの瞳は、ただ純真だったはるみのものとは違う強さを秘めた輝きを 宿して貴明を見つめていた。 「好きなのはミルファちゃんだけだよ」 それこそが彼の強さ。 何処までも譲ってしまう、臆病と言えるほど相手を慮ろうとする態度……自分がない、であるが故に 全てを肯定し、受け入れる事が出来る心。 確信さえ持つ事が出来れば、迷わず気持ちを貫ける真っ直ぐな愛。 「姿が変わっても、名前が変わっても、好きになるのはミルファちゃんだけだ」 そう。それこそが二人の真実。 「俺のこと覚えてなくても、昔も……これからもずっと」 ちょっとおどけた様に微笑み、ミルファは貴明に質問した。 「舌足らずで性格最悪で、ぺちゃぱいでも?」 「うん」 「男の子になっても?」 「うん」 最後にミルファは少しおびえた風に眉を寄せ、じっと貴明を見つめながらこう、たずねた。 「クマの……ぬいぐるみでも?」 そんなミルファにくすり、と微笑みかけると、そっと貴明はミルファの頬に掌をそえた。
- 289 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』2/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 21:57:18 ID:5hfrL/Ci0]
- 「きっと、好きになってたよ。君が君のままでいてくれるならきっと好きになる」
……そんな、ミルファの不安をも癒せる様に。 「ミルファちゃんが俺を覚えていなくても、何度でも好きになれる」 優しく、柔らかい彼女の頬を撫でる。 暖かい、嬉しい、くすぐったい、そんな気持ちを、全部こめて。 「貴明……あたし……」 手に手を取り合った二人の距離がだんだん縮まっていく。 ……頬を染めたミルファがそっと瞳を閉じて……。 「あー、おほん」 はっとして顔を上げると、 「あ、あははははははは」 そこには呆れたように二人を見つめる目、目、目……。 ……あまりの恥ずかしさと困惑に、貴明は『逃げる』という選択肢以外は何も思いつかなかった。 ミルファエンド+SS『おかえり☆ミルファちゃん♪』 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」 「……貴明、大丈夫?」 長い坂を越え、再び駅が見えるあたりまで来た時には、貴明はわき腹に手を当ててぜぇぜぇと荒い息 を繰り返しながらヨロヨロと歩くのが精一杯の状態に陥っていた。精神的にいっぱいいっぱいの状態の まま上り坂を駆け上った事で、一気に体力を消耗してしまったのである。 心配そうに彼を覗き込むミルファに対し、貴明は弱弱しくはあったが笑顔を見せて答えた。 「だ……大丈夫、だよ……。少し、休めば、すぐ歩けるように……なる」
- 290 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』3/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 21:59:48 ID:5hfrL/Ci0]
- しかしミルファは、そんな彼の強がりを許してはおかなかった。
「大丈夫じゃなさそうだよ……体温も高いし、脈拍も、歩いてるのにまだまだはやいもん」 貴明に寄り添って歩くミルファは、そっと彼の頚部に手を当てながらそう告げた。 「さんちゃんちで休んでいこうよ。貴明の家に戻るよりずっと近いし」 周囲に目をやったミルファは、姫百合家のマンションの方角を指差して……というよりもう貴明の腕 を取って引っ張り始めていたりする。 「ちょ、ちょっと、ひっぱらないで……」 あわあわとする貴明であったが、 (そういえば珊瑚ちゃんたちに心配かけっぱなしだろうから……) そのまま大人しく連れて行かれることにした。 姫百合家の面々(シルファ除く)とはミルファを追いかけるために駅前で別れたっきりなのである。 アレからまだ1時間と経っていないとはいえ、状況が状況だったのだからさぞかし心配しているであ ろう。おそらくは研究所にも連絡をつけただろうし、丸く収まったことを知らせるのは早いにこした事 はない、と貴明は判断したのだ。 「そうそう、一度休まなきゃダメだよ〜〜」 なんなら肩を貸す?と、ミルファは上機嫌で貴明によりそってきた。 それで気が済むのなら、とミルファの肩に手をかけると、彼女の身体もほんのりと熱を持っているよ うだ。うなじの辺りもほんのり桜色に染まっている。 「あれ、ミルファちゃんも少し熱くなってる? 身体、大丈夫なの?」 あのトラブルの後なので貴明は心配になって訊ねてみた。 「このくらいはどうってことないよ。ただ、ちょっと嬉しかっただけ」 その返事に貴明が首を捻ると、ミルファは上気した頬を向けてくすりと笑った。 「……嬉しかったんだもん」 もう一度、ミルファは繰り返した。瞳を輝かせて。 ◇ ◇ ◇ ◇ マンションにふたりが辿り着くと、祈るように胸の前で掌を組み、所在なさげにエントランスに立っ ているイルファの姿が目に入ってきた。
- 291 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』4/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:01:55 ID:5hfrL/Ci0]
- 「うわ、やっば! ……お姉ちゃん、怒ってるかなぁ……?」
一瞬焦った様子を見せたミルファだったが、イルファの表情になにかを感じたらしく、心配そうに眉 根を下げて足を止めた。 そんなミルファに、貴明は 「怒っているかどうかはともかく、きっと心配してるよ」 ぽん、とさりげなく肩に手を乗せて先を促した。 「だから、いっしょにあやまろうよ」 安心したようにこくりと頷くと、ミルファは貴明と共にふたたび歩き始めた。 そしてそんなふたりの姿に気が付いたイルファが駆け寄ってくる。 ……最初は不安と驚愕を浮かべていた彼女の顔は、二人に近付くにしたがって安堵の表情へと変わっ ていった。 「貴明さん! ミルファちゃん!」 貴明の手から離れて、ミルファは一歩、踏み出す。 そして、目の前までやってきた姉にぺこりと頭を下げた。 「お姉ちゃん……ごめんなさぁい……」 そんなミルファを、 『きゅっ』 イルファは何も言わず、妹をそっと抱きしめていた。 「お姉ちゃん……?」 そして戸惑うミルファの頭を撫でながら、しぼり出すようにつぶやいた。 「心配したんだから……あんなこと……あんなことお願いだから二度と言わないで……」 「……お姉ちゃん……」 「イルファさん……」 ミルファを抱きしめたままイルファはそっと視線を上げ、今度は貴明に礼を言った。 「ありがとうございます、貴明さん。ミルファちゃんの心を救って下さって……」 「そんな……俺はなにも……」 そう言われても、貴明自身は不器用にしか振舞えなかったことを無様にしか感じていない。
- 292 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』5/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:04:06 ID:5hfrL/Ci0]
- だからなんと答えてよいかわからず、彼は頬をかきながらそうボソボソとひとりごちた。
そんな貴明の迷いを、イルファは力強く否定した。 「いいえ。……私たちをありのままに受け入れて下さるあなただからこそ、この娘を助ける事が出来た んです。誰にわからなくても、私にはわかります」 そう言って柔らかく微笑むイルファ。 ところがそれに反比例するように、ミルファの様子はなんだか硬い。 「お、お姉ちゃん……」 イルファに呼びかける言葉もなんだか震えている、というか苦しそうに聞こえる。 「イ、イルファさん……?」 戸惑うように声をかけた貴明だったが…… 『みし……みしみしみし……』 なにか、聞こえてはいけない軋み音が聞こえたような気がして、伸ばしかけた手を止めた。 これはもうどうにもならない。 下手に近寄れば巻き添えを食いかねない。 「お、お、おねえちゃん……ぎぶ、ぎぶぅ〜〜〜〜〜〜」 かんばせには柔らかい微笑を貼り付けたまま、イルファの両の腕は万力のようにミルファの胴を締め 上げていた。いかに力に勝るミルファといえど、完全に極められた状態では如何ともし難い。 「ふ、ふふふふ……このおぽんち娘はみんなに心配ばっかりかけて〜〜!」 「う、うぐぅ……折れる……折れてしまいますぅ、おねえちゃん……ガクッ」 ◇ ◇ ◇ ◇ それからしばし後。 「いっしょにあやまろうって言ったのに、貴明のうそつき、チキン、ヘタレ!」 姫百合家のリビングに、ぶつぶつ文句を言いながら貴明の頭に取り憑くミルファの姿があった。 そして半ば頭をミルファの胸に埋めながら、貴明は苦笑いしていた。 「ご、ごめんよ〜〜、ミルファちゃん……。つい……」 まぁ、なけなしのプライドがイルファが恐くてなにも出来ませんでした、とは口にさせなかったが。
- 293 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 22:04:16 ID:q5rB3gi00]
- 支援
- 294 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』6/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:06:25 ID:5hfrL/Ci0]
- 「お仕置きされるようなことをするあなたが悪いんですよ、ミルファちゃん」
そんなミルファに向かって『めっ!』をしながら、イルファはダイニングテーブルに座る貴明や珊瑚 たちの前に紅茶を並べていった。 「なんやさっきまでのゴタゴタが嘘のようやなぁ」 イルファの淹れてくれた紅茶をすすりながら、瑠璃は呆れた様子を隠さない。 「雨降って地ぃ〜固まる〜〜、やな☆」 珊瑚の方はというといつものぽやんとした笑顔で喜んでいる。 しかし確かに彼女の言う通りではあるが、なんともデンジャラスでタイトロープな顛末である。 今更ながらに冷や汗を浮かべながら、貴明は頭をかいた。 「ご、ごめんなさい、瑠璃ちゃん、さんちゃん……」 ミルファも申し訳なさそうに瑠璃と珊瑚に頭を下げる。 「……まぁ、なんにしろ大事にならんでよかったで。貴明も、もうミルファから目ぇ離さんことやな」 その様子を見てほっと一息ついた瑠璃は、今度は二人に優しくそう言った。 「そ、だね」 「大丈夫ですわ、瑠璃さま。ミルファちゃんも貴明さんも、お互いにすきすきすきすきー♪ですから」 可愛らしくお盆を胸に抱いたイルファは、ニコニコしながらそう主張した。 なんだかいつもより多い感じの『好き』に、貴明は苦笑を隠せない。 「いつの間にレベル4……」 「あたしの貴明への『好き』はレベル4程度じゃないも〜〜ん」 ミルファの方はというとしれっとしてそう答えた。 そしてすっかり機嫌を直した様子で今度は貴明の首っ玉にかじりついている。 これでダイニングテーブルがなかったらぐるんぐるん回転しているに違いない 「……なんや心配したったのがアホらしゅうなってきたわ」 「あはははは……」 瑠璃の冷ややかな視線に、やっぱり貴明は苦笑を浮かべる他なかった。 「貴明、どうせ今日は家で夕食食べてくつもりなんやろ?」 そんな貴明に、突然瑠璃がそんなコトを尋ねた。 「……え? 別に俺は……」
- 295 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』7/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:08:20 ID:5hfrL/Ci0]
- 貴明ばかりでなく、ミルファやイルファもぽかんとして瑠璃を見つめた。
しかし瑠璃はそんな一同の反応をさらりと流すと、立ち上がって隣の珊瑚の腕を取った。 「さんちゃん、買い物行こか? 貴明までおるとなると材料足りへん」 それを聞いてなるほど、という風にイルファは微笑みを浮かべている。 まだよく理解していないらしい珊瑚は、いつものぽやんとした表情のまま瑠璃を見上げて尋ねた。 「瑠璃ちゃん、今日はなににするん?」 「さんちゃんの好きなもん、なんっでも作ったるわ」 その瑠璃の言葉に、みるみる珊瑚の表情はほころんだ。 「せやなぁ……じゃあ、ハンバーグ〜〜! 目玉焼きのせ〜〜♪」 はねるようにぴょこんと立ち上がると、珊瑚は『るー☆』ポーズを決めた。 「では瑠璃さま、私もお供しますね!」 「……ついでに本屋さんや薬局も回ろか? イルファ」 「デパートで瑠璃さまの可愛い♪冬服も見繕いたいですわぁ☆」 イルファは『わかっています、わかっていますとも』という風なしたり顔でエコバックを手に取る。 「え? えぇ??」 そして未だに事態を把握しきれていない貴明を尻目に、 「ほなら貴明、ミルファ、しばらく留守番しとってな」 「うふふふ、それではぁ〜〜♪」 珊瑚を連れた瑠璃とイルファは、ニヤニヤと笑いながら玄関の向こうへと消えていった。 『バタン……ガチャッ』 「……なんか、気を使わせちゃったかな?」 シリンダー錠の回る金属音でようやく我に返った貴明は、微妙にひきつった照れ笑いを浮かべながら ミルファの方に向き直った。すると、 「貴明……っ!!」 いきなりその大きな胸に包み込むように、ミルファが抱きついてきた。 「うわっぷ、ミルファちゃん!?」 張りのある、でもどこまでも柔らかいふくらみに溺れながら上目遣いでミルファを見遣ると。 ……ミルファは、蕩ける様な表情で貴明の頭をきゅっと抱き締めている。
- 296 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』8/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:09:43 ID:5hfrL/Ci0]
- 幸せそうで、でも何処か遠くを見るように。
澄んだ瞳は深く。深く。貴明の心に染み透る深い碧で。 「……貴明が好き。好きがとまらない」 夢見るような瞳で、彼女はどこまでもまっすぐに貴明の目を伺ってくる。 だから、 「……俺も……俺も大好きだよ、ミルファちゃん」 彼もまっすぐに気持ちをぶつけられる。 そして、そっと口付ける。 優しく、気持ちをささやくように、そっと……そして、強く、心を受け渡すように、深く。 長い、長いキスのあと。 上気した頬をそっと貴明の胸元に寄せ、ミルファは彼に懇願した。 「ねえ、抱いて……今すぐに……なんだか胸がいっぱいでもうガマンできないよ」 それは精いっぱいのお願い。 彼女には他にどうやって貴明と繋がっている実感を求めたら良いかわからなかったから。 たとえそこに心があったとしても、身体がフェイクであるという現実に変わりはなかったから。 誰が知らなくても彼女がそれを一番知っていたから。 だがしかし。 「え゛!? ……ちょ、ちょっとシャワーだけは浴びさせて欲しいかな。ほら、汗まみれだし」 そこでシリアスが続かないのはもはや貴明のお約束と言ってもいい。 切実なミルファの『お願い』を前にして、雰囲気に負けた彼は一歩引いてしまったのだ。 でも、 「え〜〜? そんなの気にならないよ〜〜?」 ミルファは以前のように卑屈にはならずに済んだ。 心が本当である事は、信じられたから。 「ミルファちゃんが気にならなくても俺が気になるのっ!」 一気に軽くなった空気の中、ミルファは明るい笑顔で更なる追い込みに入った。 「じゃあ、一緒にお風呂入ろっ☆」 「……なんとなくオチが見えるから却下」
- 297 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』9/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:11:21 ID:5hfrL/Ci0]
- もちろん、言う事を聞けばどうなるかは貴明にはよくわかっている。
かつて姫百合家を震撼させた『事件』を解決した頃、珊瑚に引き止められてここに泊まる度イルファ の攻撃をかわすのに苦労したのだ、特に風呂場では。 彼女が自分を弄って遊んでいただけだ、と未だに貴明が思い込んでいるあたり困ったモノなのだが。 「ぶーぶー! つまんない〜〜」 ふくれるミルファに軽く口付けると、貴明は席を立ってシャワールームへと向かった。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「おまたせ〜〜」 入れ替わりでシャワーを浴びたミルファが薄手のガウンに身を包み、髪の水分をタオルで吸い取りな がら寝室に戻ると、貴明が所在無さげにうろうろと部屋の中を歩き回っていた。 先にシャワーを浴びている間に下着やシャツは洗濯乾燥機に放り込まれてしまったので、貴明が着て いるのは何故かセッティングされていたバスローブ(男物)一枚だったりする。その微妙にスースーし て落ち着かない格好も、彼の気持ちの不安定化に拍車をかけていた。 戻ってきたミルファに向かって半端に手を挙げたり下げたり、何をしたいか今ひとつわからない。 ミルファはそんな彼の様子にかくん、と首を傾けた。 「?」 「あ、あ〜〜〜……っと」 更に焦った貴明は、なんと声をかけたものか迷った挙句、 「あ、あはははは……」 結局、笑ってごまかしてしまった。 まともな恋愛経験皆無の貴明にはどうにもこの状況は荷が重かったようだ。 「あ、そうそう。わ・す・れ・も・の♪」 そんな貴明の緊張をほぐすために裸エプロンサービス(笑)でもしようと思い立ったミルファであっ たが、貴明はというと 「コンドーさん?」 などと、なんとも間の抜けた勘違いをしていた。
- 298 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』10/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:12:45 ID:5hfrL/Ci0]
- しかしその時のことである。
「あはは、貴明との赤ちゃんは欲しいけど、あたし……は……別に……あ……」 既視感? ミルファの中の何かが、ゆっくりと目覚めようとしていた。 そしてカタン、と何かが切り替わったように遠い瞳になった彼女の異常な様子に、貴明はあわててミ ルファの肩を抱きとめるとベットに座らせた。 「ミルファちゃん? ねえ、大丈夫? ミルファちゃん!」 すぅっと瞳の色が戻ってくる。 と同時にミルファは握りこぶしで胸を押さえると、搾り出すように言葉を吐き出した。 「……なんだろう、この感じ……胸が痛いよ……貴明……」 「ミルファちゃん……」 「ねえ……貴明は、はるみとする前からはるみがあたしだって、知ってたんだよね?」 ふ、と顔を上げてミルファはそんなコトを聞いてきた。 貴明の中を、はるみへの嫉妬で潰されそうになっていたミルファの顔がよぎる。 でも、誤魔化すわけにもいかず、仕方なくこくりと頷いた。 「う……うん」 すると。 「ぷぷっ……ぷぷ……あはっ、あははははは」 急に、ミルファは身をよじって笑い始めた。 最初は驚いたが、その笑いに影はない。本当に可笑しそうである。 「ミルファちゃん?」 そんな彼女の様子に貴明が不思議そうに疑問符を投げかけると、 「ねえ、貴明……これからあたしも……ダーリン、って呼んでもいいかな?」 ミルファは唐突に、そんなコトを言ってきた。 あたしも、という事ははるみちゃんと同じようにということなのかな……貴明には彼女の意図はわか らなかったが、むしろ楽しそうなお願いなのだから深く考えるのはやめた。 「え? ……うん、もちろん」 貴明が承諾すると、ミルファはまた少し遠い瞳をして何処かを見遣った。 そして、 「はるみはバカだね……。ダーリンはこんなあたしでもずっと人間と変わらずに思ってくれてたのに」 貴明の肩に頭を乗せるとそう、つぶやいた。
- 299 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 22:12:45 ID:ThHZEzBl0]
- 支援ぐ
- 300 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』11/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:14:20 ID:5hfrL/Ci0]
- 「ダーリンのさっきの言葉……少しだけ……思い出したかも。はっきり覚えているわけじゃないけど、
はるみの気持ち……」 「本当に……?」 貴明が半信半疑で尋ねると、ミルファは小さく、しかしはっきりと頷いた。 「本当は前から何度か感じてた」 ぽつり、ぽつりと彼女は語り始めた。 「はるみのカバンに入っていた日記帳……はるみの想い、ダーリンの想い。最初はただ羨ましかった。 眩しくて妬ましくて、あたしはずっと苦しんでた」 だから貴明を信じる事が出来なくなったのかもしれない、とミルファは苦しそうに言葉を継いだ。 そんなミルファの肩を、貴明は黙ってそっと抱き寄せる。 「でもダーリンを忘れようとして、忘れられなくて。何度も読み返すうちに気が付いていたんだ」 甘えるように頬をすりよせ、 「あたしのなかの、一番大切なところに確かにしまわれてる。クマ吉の、そしてはるみの想い」 最初は認めたくなかったんだけどね、と彼女は苦笑した。 「今ならわかる。そして受け入れられる。あたしはずっとずっとダーリンが好き。あたしはクマ吉とも はるみとも違うけど、記憶のカケラたちはみんなそう叫んでる」 確か、珊瑚も言っていた。 全て、失われたわけではないと。 そして。 「クマ吉が、はるみが、あたしの心は全部全部全部、ダーリンを想う気持ちで出来ている……って」 クマ吉も、はるみも、やはりそこにいたのだ。 ミルファが受け入れれば、貴明が気付けば、彼女たちはいつもそばにいたのだ。 心の一番奥の、『一番大切なところ』に……。 「そっか。嬉しいな」 貴明の胸の奥からも、口で言い表せないような暖かいなにかが、溢れてくるのを彼は感じていた。 どう言い繕っても、大切な想い出はなかった事には出来ない。 いや、したくはない。 「……どうしてミルファちゃんにそんなに好きになって貰えるのかちょっとわからないんだけど、少な くとも俺は君が何であれきっと好きになる」 だからもう一度、いや何度でも、万感の想いをこめて貴明は再びその言葉を口にした。
- 301 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』12/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:15:56 ID:5hfrL/Ci0]
- 「いつか言ったよね? ミルファちゃんがロボットでも人間でも宇宙人でも、クマ吉もはるみちゃんも
ミルファちゃんも、君という存在が大好きだって気が付いたから」 そう。クマ吉だから、はるみだから、ミルファだから。 「だから俺は何も悩むことはないよ」 だから好きなのだ。理屈ではない。 そしてそう言いきれる自分が、貴明はちょっと誇らしかった。 「ありがとう、ダーリン……」 きっと、彼女は泣いていたのだろう。 どこまでも深い、湖のような瞳が少し、潤んで見えた。 「お姉ちゃんも言っていたじゃない。『ありのままの私たちを受け入れてくれるあなただから』って」 だから何度でも、好きになる。 ミルファはそう、声にならない言葉でささやいた。 それは、もう紡がれることのないクマ吉の声のつもりなのか。はるみの声なのか……。 瞬転。 ミルファの瞳の色が急に明るくなる。 そして口元にはいつもの悪戯っぽい微笑み。 「ねえ、ダーリン。……しよっ♪ もう、待たせないで……」 真っ直ぐな言葉に、貴明の表情はまだ少し硬かったが、 「わ、わかった……。おいで、ミルファちゃん」 それでもゆっくりと、優しく彼女を抱き寄せようとした。 けれど。 「あたしは、ダーリンだけのモ・ノ。ちゃん付けなんて、しなくていいんだよ」 ミルファはにぱっ☆と笑うと、がばっ!と貴明をベットの上に押し倒した。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「ダーリン……」 幾度か激しく愛を交わしたふたりは、今は静かにベッドで寄り添っていた。
- 302 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』13/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:18:07 ID:5hfrL/Ci0]
- 「ふふっ、ダーリンでいっぱい。あたし今とっても幸せ……」
下腹部に手を当て、ミルファははにかむように微笑んでいた。 その幸せそうな表情に、貴明はひどく頬が熱くなるのを感じずにはいられなかった。 「ミルファちゃんってば、照れくさいよ」 「んもう、ミルファ、って呼んでってばぁ」 そんな貴明に、ミルファはぷくっとふくれて文句をつけた。 そうは言われても、急に呼び方を変えるのは難しい。 ましていきなり呼び捨てろといわれてそう出来るほど、貴明は器用ではないのだ。 「あはは、え、え〜〜〜と……ミルファ?」 それでもなんとかそう呼んでみるとミルファは、 「うんっ、ダーリンっ☆」 にこっと微笑んで更に身を寄せてくるのだった。 「あのね、ダーリン……」 どれほどそうしていたろうか。 「なに?」 なにげなく尋ね返すと、何故かミルファは沈んだ空気をまとって何かを考えているようだった。 「はるみだった時……」 急にぽつり、とミルファがそうつぶやいた。 「え?」 意外な言葉に貴明がミルファの顔を確かめると、 「はるみだった時、メイド服で抱かれたのはきっとミルファだって気付いて欲しかったから」 ミルファは遠くを見つめる目で、でも真剣に言葉を探そうとしているようだった。 さっきよりももっと、確信に満ちて。 「全部覚えてるわけじゃないけどきっとそう。はるみも、あたしも、ダーリンと対等なお付き合いとか 望んでない。あたしはダーリンの“モノ”になりたい。ただ、それだけ……」 そう、はっきりと告げた。 いじけているのではなく、自分の運命を受け入れて。 「ミルファちゃん……」 「これがあたしの運命。ダーリンを好きになること、ダーリンにあたしのすべてを捧げること」
- 303 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 22:21:13 ID:x9tnyW1I0]
- しえん
- 304 名前:中の人の携帯 mailto:sage [2008/03/08(土) 22:23:33 ID:8NyJTScFO]
- さるさんにタイーホされました。
しばらくしてから再投下しますね。
- 305 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 22:36:57 ID:R/iZEwvV0]
- なんという生殺し。早く仮釈放される日を待っています
- 306 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 23:24:44 ID:JgpuyosP0]
- ドッキリ!メイドロボだらけのパラダイス!SS書いてくれるものはおらぬか
- 307 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』14/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 23:28:35 ID:5hfrL/Ci0]
- 意識してか、そうでないのか、多分ミルファ自身にもわかっていないのだろうが。
彼女はいつか、貴明に語った決意を再び口にしていた。 「心も身体も、望まれるままに」 まっすぐに、ただひとりの愛しい人に。 「心にある、その想いだけがあたしのすべて。あたしの……真実」 「だったら」 その瞳に、貴明も何度でも誓えると思った。 今この瞬間の真実を。そして未来に繋ぎたい想いを。 「それは俺の運命。ミルファを好きになること、ミルファをずっと愛しぬくこと」 強く、強くふたりは抱き締めあう。 この瞬間が、永遠であるように、と。 「幸せになろう……ふたりで」 「ダー……リン……」 何の証もないけれど。 きっと永遠は、ある。 再び、もしくは三度彼女の心を抱き締め、貴明は無性にそれを信じていたいと思った。 少なくとも、この娘を二度とは離さない。その決意とともに。 「……ね、さっきのってプロポーズ?」 突然ヘリウムよりも軽くなった空気の中、ニヤケ顔のミルファがそんなコトを尋ねてきた。 きょとん、として貴明が口をパクパクさせていると、 「ねえねえ、もう一回言って? ねえねえ!」 調子に乗ったミルファが更に追い込みをかけてきた。 「あ、えぇ〜〜!?……あんな恥ずかしいセリフ、二度と言わないよっ!」 「ダーリンのいけずっ! じらしんぼっ!」 いつの間にか、また騒がしくも愛しい時が、二人を包んでいた。 ◇ ◇ ◇ ◇ ……そして、翌日の朝。
- 308 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』15/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 23:30:49 ID:5hfrL/Ci0]
- 「おっす」
貴明が教室に入ると、おや?という風に雄二が挨拶を返してきた。 「よお、貴明。今日はなんだかゴキゲンだな」 「そうかな?」 貴明自身は表面に出るほど浮かれている自覚はなかったのだが……。 今朝登校するなり由真に捕まって昨日の悪事(?)を糾弾され、勿論それ自体はとても悪い事をした と反省していたつもりなのだが、同時に昨日の幸せな記憶も再生されてしまい、頬が緩むのが止められ ないのだ。 (由真、スマン! 出来るだけいい自転車で弁償させて貰うから勘弁して〜〜) なんとも不謹慎な!と思いつつも、やはり緩む顔はどうにもならない貴明なのであった。 「ま、聞くだけ野暮か」 雄二はそんな貴明の表情から何かを察したように、ニヤリとすると肩をすくめた。 「こらーっ! チャイムはもう鳴ってるぞっ!!」 担任教師はなんともいえない深い苦悩を漂わせながら教室を見回した。 「あー、そのなんだ」 「?」 あからさまに不審な教師の態度に生徒たちは一様にはてなマークを頭上に浮かべる。 貴明だけは何かを悟ったのかくすっ、と笑みを浮かべる。 教師はそんな貴明の様子に一瞥をくれながら、 「あー、転校生というかなんというか……前からいたんだが、これを機になんというか心機一転らしく」 そしてふぅ、と一つ溜め息をつくと少し投げやり気味に話を締めくくった。 「まぁ、仲良くな」 後ろを振り返って開けっ放しのドアの向こうに声をかけた。 「入れ」 そして。 「は〜〜い」 元気よくはねるセミロングレイヤーの赤い髪。 ひまわりのような笑顔、澄みきった瞳。
- 309 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』16/16 mailto:sage [2008/03/08(土) 23:32:59 ID:5hfrL/Ci0]
- 均整の取れた美しい肢体と、制服を飾る大きな桜色のリボンがあってなお存在感を示す豊かな胸。
たたっ、と弾むような足取りで教室に入って来た少女は、教壇の上でぴっ!とブイサインを決める。 そして彼女はよく通る高い声で、今度こそ堂々と本名を宣言した。 「河野ミルファです☆よろしくぅ!」 呆れ顔で腕を組む担任や急転直下の展開に目を回すクラスメイトを置き去りにして、教室の中に愛す る夫(笑)の姿を見つけたミルファは、花のような笑顔を更に輝かせて手を振りまわした。 「ダーリン!」 満面の笑みを浮かべた貴明も、イスを弾き飛ばして立ち上がり両手を広げる。 そしてミルファは、本当にまっすぐに、カバンも放り出して文字通り貴明の胸の中に飛び込んだ。 「ダーリン、だーいすき☆」 重なるふたりの唇。 沸きあがる黄色い歓声と祝福の拍手。 過ぎ去った時が戻らないように、失ったものも二度と戻ることはない。 しかし、ふたりはようやくここまでやってきた。 心と心、身体と身体を重ねて。 そう。ただ自分の想いだけが。お互いの想いだけが。それぞれの心をかたち作る。 ……そしてふたりは、夢に見た明日へのスタートラインへと…… 「おかえり……ミルファ」 〜〜終〜〜
- 310 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 23:34:50 ID:h4YJ5XiI0]
- 細かいな由真に対してのフォローも忘れず補完
わろたw
- 311 名前:上の人が投稿規制中だったので暇つぶしに書いた mailto:sage [2008/03/08(土) 23:37:53 ID:TBOFJTXO0]
- 「>>306とのことですが、貴明さん。」
なんですか。なんなんですか。何で俺は突然イルファさんに話しかけられてるんですか。 「多分アッチ系を望まれてるものと思いますが、どうなさいますか?」 たしかに、あっていいというかあるべきだというかあってほしいシチュエーションである。 であるのだが、・・・その・・・へたれだから無理なんですよ。 「ということです。」 「意味がわかりません。説明してください。」 どちらかというとイルファさんの発言の方が外側にあって説明を要するものだと思うのですが。 「何の話をしてるんれすか。」 「ダーリンとアレしてるとこを書けっていうのをごまかすっていう話でしょ?」 「そうれしたか。じゃあとりあえず・・・」 そういうなりシルファは貴明の上に馬乗りになり、 服を脱ぎだす"ポーズ"をとった。 「いやいやいや」 「なにしてるのよ。続きを読むには
- 312 名前:『おかえり☆ミルファちゃん♪』の中の人 mailto:sage [2008/03/08(土) 23:42:46 ID:5hfrL/Ci0]
- 以上で終わりになります。
……今見てみたら警告文、ひどい事になってますね……orz ともあれ。 ミルファエンドを自分なりに消化して、納得の行くように「隙間を埋めてみた」つもりです。 まぁ、ほぼ自己満足という気もしますが。 でも、まるでクマ吉やはるみが消えてしまったかのようなエンドではあんまりだと思って、想いだけでも 取り戻してやりたかったのです。 なんにしろこれでミルファエンドを補完して、あとははっぴーはっぴーなメイドロボパラダイスを(r
- 313 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 23:48:17 ID:h4YJ5XiI0]
- シルファは珊瑚ちゃんとらぶらぶになるような補完欲しいな
OVAでもそれだけの内容でいける気がするが
- 314 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/08(土) 23:48:56 ID:lPpT5D3y0]
- >312
乙。上の郁乃SSといいこのミルファSSといい、キャラへの愛着が見受けられますな 文字のズレはAAEを使えばそんなに酷い事にはならないで済むよ aaesp.at.infoseek.co.jp/
- 315 名前:序章 mailto:sage [2008/03/09(日) 11:34:17 ID:xsJyxmfVO]
- その日私は病院の周りを散歩していた。
長年病気を患っていることもあり、もう車椅子の扱いには大分慣れた。 今では足が車椅子なのか、車椅子が足なのかわらないみたい。・・・・なんちゃって・・・ 「あ・・・」 病院の庭先にふと目をやると、そこには3本のコスモスの花。 秋の冷たい風に吹かれながら、その『花たち』は寄り添うようにして咲き誇っていた。 そのうちの一本に手を伸ばすが・・・ 「ぅう・・・寒い・・・・・」 寒くなってきた私は、今日のところは病室に戻ることにした。 ふと・・・ 入り口の前で外に目をやる。 赤みがかった夕焼け空はとても綺麗で、私を優しく包み込んでいるようで・・・・・ 「郁乃ちゃん?寒くなってきたから中に入りましょう?ね?」 「え・・・?あ・・・」 車椅子を押されて病院内へと入れられる。 コスモスは・・・・・ コスモスはまだ咲いていただろうか・・・・・・?
- 316 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 14:10:08 ID:DRS7HJKW0]
- 郁乃シナリオか期待させてもらう
- 317 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 14:40:52 ID:i2Tgdg1mO]
- >>277
現状、自分で書くのが早道かと…
- 318 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 14:59:37 ID:xsJyxmfVO]
- 315です。以下郁乃のSSを貼っていきたいと思いますが、
『ネタバレ』が含まれている箇所がある(たぶん)ので、ご了承下さい それでは 『郁乃Another Story』 楽しんでいただければ幸いです。 (書き上がりしだい順次貼っていきますので、時間が空くこともご容赦下さい)
- 319 名前:第1章〜出逢い〜 その1 mailto:sage [2008/03/09(日) 15:07:45 ID:xsJyxmfVO]
- 病室に戻ると、そこには男が1人ベッドの上に横たわっていた。
「・・・え?」 「あぁ、そうだ郁乃ちゃん。言い忘れてたんだけど。 こちら、同じ部屋に入院する事になった河野貴明さん。仲良くしてね?じゃあ♪」 「じゃあって・・・ちょ・・・!!」 バタン 入院してきた『彼』のほうに向き直る。 彼は罰が悪そうに、視線をそらしたりソワソワとしていて落ち着きがない。 「今の時期患者が多くて、相部屋にするしかなかったんだってさ・・・。」 「・・・・・・。」 忘れるはずもない。彼と最初に出逢ったときのことを。 忘れるはずもない。 (こいつは、私の姉の恋人だ。) ・・・ ・・・・・・。
- 320 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 15:20:55 ID:o9ted7Gv0]
- 途中で切ってしまうのも無粋だが、一区切り書き上がってから投稿していただきたい。
順次貼って行かれるとその間何も書き込めないし、どれくらいかかるかもわからないから。 ID見る限り携帯だよね? だとますます時間がかかることが予想される。 なおのこと書き上がってからの投稿にして欲しい。
- 321 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 15:33:59 ID:xsJyxmfVO]
- 了解しました。
ではまた出直してきます。 嫌な思いをさせてしまって申し訳ございませんでした
- 322 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 16:01:30 ID:rK95R8OJ0]
- >>321
>>33と>>39あたりにも携帯で初投稿な人へのアドバイスがあるので見てみてちょ 時間は半日くらいは掛かった良いと思う。後ろの人が待ってればいいだけだから でも、色々面倒なのでPCからの投稿をオススメはするし、 最低限原稿が書き上がってから投下するというのは>320に同じ。でもめげずに投下してね
- 323 名前:めーぷる☆しろっぷ 第1話「坂の上のメロンパン」 0/7 mailto:sage [2008/03/09(日) 21:18:43 ID:DmQ5JoEr0]
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★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ★ まえがきと注意 ★ ★ .★ ★全6話くらいの予定で郁乃ものです。愛佳ED後ではありませんが、 ★ ★郁乃storyの設定は、適当に都合の良い所だけ使ってますので、 ★ ★やっぱりADクリアしてない人は !ネタバレ注意! です .★ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
- 324 名前:めーぷる☆しろっぷ 第1話「坂の上のメロンパン」 1/7 mailto:sage [2008/03/09(日) 21:20:58 ID:DmQ5JoEr0]
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「行ってきます」 玄関に車椅子を降ろして、私は家族に声を掛けた。 行ってきますといっても、学校にではない。今日は土曜日の今は午後。 長い入院生活から脱出して、六月から念願の学生生活に復帰した私でも、あまり校舎に戻りたいとは思わない日時である。 「い、郁乃〜っ?」 私の声に反応して、ぱたぱたと階段を駆け下りてくるあわただしい足音。 「どこ行くの〜っ?」 馬鹿な駄洒落みたいな発言を大真面目にかましたのは、我が姉、小牧愛佳。私は、小牧郁乃。 「ただの散歩よ」 行き先は教えてあげない。秘密だから。 「あ、そ、そうなんだ」 姉も聞かない。お人好しだから。代わりに、いつも会話はこう続く。 「あ、あたしも一緒に……」 「ダメ」 「ええ〜っ、なんで〜っ!」 「毎週言ってるでしょうが、一人で散歩したいんだって!」 そう、ここ1ヶ月ほど、土曜日曜は散歩に出るのが私の日課。 「うぅ、一度くらい連れていってよぉ」 口元に手を当ててナナメ下を向く過保護な姉が、ついてきたがるのも毎度の事。 「そのうちね」 別に嘘ではない。姉と一緒に散歩するのも、悪くない……こほん、ま、たまにはよ。 「いっつもそのうちぃ〜。ねぇねぇ、そのうちと今日を交換したっていいと思わない?」 「思わない」 だが、今は、まだダメなのだ。 「ついてきたら絶交だから。じゃ」 「うぁぁぁあ」 涙目の姉を置いて外に出る私。 家の中から聞こえる嘆きの声に罪悪感を感じないでもないが、仕方がないのだ。 この、毎週の私の散歩には、達成しなければならない大いなる目的があるのだから。
- 325 名前:めーぷる☆しろっぷ 第1話「坂の上のメロンパン」 2/7 mailto:sage [2008/03/09(日) 21:22:42 ID:DmQ5JoEr0]
- 梅雨も開けた青空の下を、逸る気持ちを抑えて車椅子でかっ飛ばす−いや、交通法規は守ってるわよ?−私。
やがて、辿り着くのは土手の下。 「ふふん、また来たわよ」 私はいったん車椅子を止めて独りごち、大きく肺に息を溜める。 「……今度こそは」 じりっと両腕に力を込めて、坂道を上り始める。 車椅子にとって坂道は得意分野じゃないけれど、随所でブレーキを使いながらぐいぐいと、うん、順調順調。 けど、この坂は途中から勾配が急になる。 「くっ、うっ、ていっ」 思わず声が漏れるくらい、ひと漕ぎひと漕ぎに力を込めてハンドリムを回す私。 え? 何故わざわざこんな坂道に挑戦するのかって? 「うふっ、うふふふ」 じきにその動機、そして私の含み笑いの原因は、私の視界に入ってくる。 傾斜を越えた土手の上に、白いワゴンが停車中。 開放されたハッチバックの横に看板を立てかけて、独特の匂いを風に飛ばして。 “おいしいメープルメロンパン −コルノ−” そう、あれが毎週末この場所で営業している、ネット上でも評判のメロンパン移動販売車。 巷に溢れる、フランチャイズ元の口車に騙された脱サラ組の移動販売とは一線を画する、大型車に本格的な設備を導入した拘りのメロンパン屋さん。 なんて、宣伝も混じっているだろう風評を全面的に信用しているわけではないけれど、カロリー制限と戦いながら甘党の道を追求している私にとって挑戦する価値はある目標だ。 「む」 その目標を目前にして、がくっとペースが落ちる。 ここ一ヶ月、挑戦の度に私を阻んできた心臓破りの30メートル、憎き我が街のマッターホルン。 「ま、負けるか……」 今日こそ、今日こそはこの壁を越えるんだ。そして憧れの焼きたてメロンパンを口いっぱいに頬張るんだ。 じり、じりと、それでも前に進む私の車椅子。 そうとも、私の体力は着実に増強されている。登り切れない筈はない。頑張れ私と車椅子、頂点はもう目の前だ。このひと漕ぎが、歴史を変える…… 「大丈夫? 手伝ってあげようか?」 頭上から手応えのなさそうな優しい声が降ってくると同時に、ふわっとハンドリムの手応えが無くなった。
- 326 名前:めーぷる☆しろっぷ 第1話「坂の上のメロンパン」 3/7 mailto:sage [2008/03/09(日) 21:26:56 ID:DmQ5JoEr0]
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「へっ?」 戸惑う私をよそに、車椅子はすいすいと坂道を勝手に登って行って。 「えっ、えっ、えっ?」 すとん。 目の前に、白いワゴンと甘い匂い。 やがて私の意欲も力も必要とせず、なんともごくあっさりと、目的地に到達してしまったのだ。 「君も、メロンパンを買いに来たの?」 再びの声に、後方を見上げる私。 乗り手の意思と関係なく車椅子が動いた理由が、そこで笑っていた。 「一緒に買ってきてあげようか?」 軟弱そうな声に良く似合って少し女性的だけど、なかなか整った顔立ちの男の子。 ぽやっとした笑顔が、いかにも「自分はいい人です」的な優柔さを漂わせている。 人畜無害っぽいけど、実はこういう奴こそ危ないのかもね、ってタイプ。 ……そんなことは、どうでもいい。問題は、こいつが車椅子を押したって事だけだ。 「……とを」 「こっちは急だからさ、次は逆から回った方が楽だと思うよ、って、え?」 「余計な事をっ!」 大声で男の子を怒鳴りつけ、私は車椅子を反転させた。 「わっ、あれっ? どうしたの? メロンパンはいいの? あ、危ないよ? おーいっ?」 戸惑った声を背中に聞く耳持たず、車椅子に下りが危険な事も省みず、私は一気に土手を駆け下りる。 逆から回った方が楽だなんて、そんなの知ってるんだ。 私が欲しかったのは、只のメロンパンじゃないんだ。自分の力で、苦労して坂道を乗り越えて、土手を登りきったその先にある、焼きたてメロンパンなんだ。 あと少し、今日こそは、あと少しでそれが達成できたのに、余計な事を。私の事情も心情も知らない奴が、余計な事を〜〜っ! ぜーぜー。 ふん、まあいいわ。今日の手応えなら、明日はきっといける。そう、全ては明日。明日こそは……
- 327 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 21:28:03 ID:F9JbJk0c0]
- 支援
- 328 名前:めーぷる☆しろっぷ 第1話「坂の上のメロンパン」 4/7 mailto:sage [2008/03/09(日) 21:28:51 ID:DmQ5JoEr0]
-
翌、日曜日の昼下がり。 「嘘、だ……」 坂の途中で、私は呆然と車椅子を止めていた。 「ない……」 いつもその辺りから見える筈の、移動販売車の姿が、どこにも見あたらない。 代わりに、大きめのクリーム色の立て看板。 私は懐から眼鏡−普段は邪魔だから掛けてないのだ−を取り出して、 “当所での移動販売は終了させていただきます。ご愛顧ありがとうございました” 「“――コルノ店員一同”、まる。」 あとひと息で終わる坂道の上に、その文字はやけにはっきり見えた。 「……なんで?」 私の呟きは、どうにもならない理不尽を嘆くもので、答えを求めたわけではない。 わけではないのに。 「なんだか、お店を出す算段がついたとかでさ」 欲しくもない回答は、頭の上から優しい声で降りてきた。 「……」 剣呑な目で、声の主を見上げてやると、 「あ、お、おはよう」 「もう昼だけど?」 「あはは……」 曖昧な笑顔も昨日と同じ、約24時間前に私を邪魔した、あの少年。 ……こいつが。 私の視線の温度が下がる。彼の頬に、たらりと大粒の汗が浮かぶ。 「ど、どうしたのかな? とりあえず、坂の途中だと危ないからさ」 また、押し手に掛かろうとする少年の指。 「あんたのせいだっ!!」
- 329 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 21:31:14 ID:9mit8k1E0]
- 一応支援
- 330 名前:めーぷる☆しろっぷ 第1話「坂の上のメロンパン」 5/7 mailto:sage [2008/03/09(日) 21:31:21 ID:DmQ5JoEr0]
- 「うわっ」
私の大声に驚いて、慌てて手を引っ込める男の子。 「あんたさえ、あんたさえ余計な事をしなければっ!」 昨日ここで、私は目的を達成できていたのに。 「ご、ごめん」 分かっているのか、いないのか、とりあえず謝っているような顔。 「いや、なんだか分からないけど」 やっぱり分かっちゃいないようだ。 「昨日も急に帰っちゃったし、気を悪くしたみたいだからさ、だから、これ」 そこまで聞いて、私は彼が小脇に抱えた紙袋に気付く。 「良かったら。閉店前に買えたんだ」 それ−メープルメロンパンの紙袋−を私の方に差し出して、少年はにこやかに笑った。 「ふ、ふざけんな!」 私は怒りに任せて紙袋をたたき落と……すのは流石に勿体ないので押し返す。 「こんなのいるかっ! 欲しかったのは、焼きたてのふわふわメロンパンだっ!」 時間が経って萎んだメロンパンなら、袋物でいくらでも調達できるんだから。 「あ、うん、そうだろうけど、でもせっかくだしさ」 「いらないっ!」 意地になった私は、名前も知らない男の子と、坂の途中で紙袋を押し合いへしあい。 していると。 「い、郁乃〜っ」 坂の下の方から、へろへろとした声がやってきた。 えっちらおっちら、車椅子よりもしんどそうなヨタヨタっぷりで坂道を、 「い、郁乃、どうしたの、大丈夫〜、ほへえ」 上ってきて息を切らせたのは、我が姉、小牧愛佳。その登場に、 「お姉ちゃん!?」 「小牧!?」 私と少年は、同時に声を挙げた。
- 331 名前:めーぷる☆しろっぷ 第1話「坂の上のメロンパン」 6/7 mailto:sage [2008/03/09(日) 21:32:53 ID:DmQ5JoEr0]
-
「あ、あれ、河野くん?」 二人の声を聞いて、少年の方に驚く姉。知り合い? 「うん。クラスメートの、河野貴明くん」 「ふうん」 同い年くらいに見えたけど、ひとつ上か。 「ずいぶん大声出してたみたいだけど、何かあったの?」 う。 「いや、まあ、ちょっとね……」 メロンパンを巡って言い争い、というか一方的に私が怒っていたとは、姉には言いづらい。 大人げないし、その、姉を置いてパン屋に来ていたとは、ちょっと。 「うん、まあ、ちょっと」 幸いにも、河野とかいう少年は話を合わせてくれるみたい。 ふむ。たぶん、悪い奴じゃなさそうよね。 「それより驚いたな」 そうよね、昨日の事も、私が苦労してたから手伝ってくれただけなんだし、怒る筋合いもないんだし。 「全然知らなかったよ、小牧に弟がいるなんて」 男一般が苦手な姉が普通に喋ってるし、あれ、そういや姉は何故此処に……なんだと? 「お、お、おとうと〜っ!?」 「えっ、ち、違うの?」 〜っ! 前言撤回! やっぱり悪い奴だっ! 「うわわわわ、こ、河野くん、郁乃は女の子だよぉ〜」 「あっ、ご、ごめん」 ごめんで済むものか。確かに昨日も今日も、私はパンツルックに帽子を被って、自慢の長髪もパーカーに押し込んだ色気ゼロスタイルではあるけれど。いや、普通は声で分かるでしょ? ほら、この可愛い女の子ボイスが、 「まだ声変わりしてないのかなと思って、ほら、中学生ならこういう子もいるしさ」 ちゅ、ちゅうがくせいぃ〜っっ!? 「あの〜、こ、河野く……」 「1年D組小牧郁乃っ! あんたが姉の同級生なら、あたしは同じ学校だっ!!!」 これが、まあなんとも最悪な、私と河野貴明のファースト&セカンドコンタクトだった。
- 332 名前:めーぷる☆しろっぷ 第1話「坂の上のメロンパン」 7/7 mailto:sage [2008/03/09(日) 21:34:51 ID:DmQ5JoEr0]
-
帰り道は、姉と一緒。 「いい加減に、機嫌直しなよ郁乃ぉ」 むっつり黙りこくった私の、背後についたり横に並んだりしながら、盛んに機嫌を伺う姉。 「河野くんも、悪気があったわけじゃないんだし」 「悪気がなければいいってもんじゃないわ」 無邪気な言動の方が、人を傷つける事は多いんだ。私は嫌というほどそれを味わってきた。 「それはそうだけどさぁ。でも、河野くんは悪くないよ」 あの後、けっきょく一通り事情を話す羽目になったので、姉の意見は客観的ではある。 「メロンパンふたつもくれたもん」 いや、単なる買収とも言うかも知れない。 ともかく、姉は袋から一個取り出して私に押しつける。 「ほらほら、此処のメロンパンは冷えても美味しいんだよ?」 「ん……」 私はそっぽを向いていたが、眼前の甘い匂いに負けて両手で受け取る。 はむ。しゃくしゃくしゃく…… すっかり冷えたメロンパンは、焼きたてとは天地だろうけど、それでも味も香りも素晴らしかった。 「……考えてみれば、わざわざ買って待っててくれたんだよね、あいつ」 来るかどうかも分からない、前の日に偶然、一度会っただけの私のために。 「怒鳴って悪かったな」 人の良さそうな笑顔が脳裏に戻ってくる。 「今度、謝ろう」 姉の同級生なら、また会う機会もあるだろう。私はそう、心に決めた。 ところで。お姉ちゃん? 「な、なに? なにかな?」 「なんで、あそこのメロンパンが冷えても美味しいって知ってるの?」 「え゛っ」
- 333 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 21:35:54 ID:DmQ5JoEr0]
- 以上です。支援ありがとうございました
次回、第2話「姉妹喧嘩、河野貴明、お風呂」(ただし、投下時期未定)
- 334 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 21:40:12 ID:7rDHTdxw0]
- 乙
次回が楽しみ
- 335 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 23:30:01 ID:KmXTzCWo0]
- 乙
最近郁乃SS多いな 本編がアレだったせいか既存の郁乃SS読み漁ってるので非常に楽しみだ
- 336 名前:〜郁乃another story〜 mailto:sage [2008/03/09(日) 23:52:19 ID:xsJyxmfVO]
- 昼頃に一度投下した携帯野郎のπと申します。
準備万端整いましたので、貼らせていただきます。 少し長くなっていますが、ご容赦下さい。 では 〜郁乃another story〜 お楽しみください! (ネタバレ入ってるかも。一応注意!)
- 337 名前:序章〜エピローグ〜 mailto:sage [2008/03/09(日) 23:53:35 ID:dsqlxWci0]
- 『約束の花』
その日私は病院の周りを散歩していた。 長年病気を患っていることもあり、もう車椅子の扱いには大分慣れた。 今では足が車椅子なのか、車椅子が足なのかわらないみたい。・・・・なんちゃって・・・ 「あ・・・」 病院の庭先にふと目をやると、そこには3本のコスモスの花。 秋の冷たい風に吹かれながら、その『花たち』は寄り添うようにして咲き誇っていた。 そのうちの一本に手を伸ばすが・・・ 「ぅう・・・寒い・・・・・」 寒くなってきた私は、今日のところは病室に戻ることにした。 ふと・・・ 入り口の前で外に目をやる。 赤みがかった夕焼け空はとても綺麗で、私を優しく包み込んでいるようで・・・・・ 「郁乃ちゃん?寒くなってきたから中に入りましょう?ね?」 「え・・・?あ・・・」 車椅子を押されて病院内へと入れられる。 コスモスは・・・・・ コスモスはまだ咲いていただろうか・・・・・・?
- 338 名前:第1章〜出逢い〜 その1 mailto:sage [2008/03/09(日) 23:55:11 ID:dsqlxWci0]
- 病室に戻ると、そこには男が1人ベッドの上に横たわっていた。
「・・・え?」 「あぁ、そうだ郁乃ちゃん。言い忘れてたんだけど。 こちら、同じ部屋に入院する事になった河野貴明さん。仲良くしてね?じゃあ♪」 「じゃあって・・・ちょ・・・!!」 バタン 入院してきた『彼』のほうに向き直る。 彼は罰が悪そうに、視線をそらしたりソワソワとしていて落ち着きがない。 「今の時期患者が多くて、相部屋にするしかなかったんだってさ・・・。」 「・・・・・・。」 忘れるはずもない。彼と最初に出逢ったときのことを。 忘れるはずもない。 (こいつは、私の姉の恋人だ。) ・・・ ・・・・・・。
- 339 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/09(日) 23:55:30 ID:8cR9KQ9T0]
- 支援ぐ
- 340 名前:第1章〜出逢い〜 その2 mailto:sage [2008/03/09(日) 23:56:56 ID:dsqlxWci0]
- そして手術は無事成功し、今は大事をとって入院している最中であった。
そこに彼が来たんだから、そりゃあ私としてはびっくりもするわけで・・・・。 「・・・何してんの?」 何の気なしに訪ねてみた。 「え?あぁ、実はさ・・・」 話によると、彼は毎日過剰にひっついてくる幼なじみから逃げるため、校内を走っていたところ、 階段で人と接触しそうになり、避けようとしたらそのまま床へダイブ。 両腕にひびが入ってしまい、そのまま入院だそうだ。 「・・・・・あんたみたいなのを、本当の『バカ』っていうんでしょうね」 「うっ・・・」 「ふぅ・・・。相室は別に構わないんだけどさ。で?最近姉とはどうなのよ?」 「あぁ・・・まぁまぁかな。」 (・・・・何を赤くなってるんだか。まあ、順調みたいね。) 「それはそうと、同じ部屋にこんな可愛いレディがいるからって、襲ったりしないでよ?」 「・・・へ?レディ?・・・・。・・・あぁ!し、しないって!絶対そんなことしないって!」 (・・・なんかムカつくなぁ・・・・・・)
- 341 名前:第1章〜出逢い〜 その3 mailto:sage [2008/03/09(日) 23:59:45 ID:dsqlxWci0]
- すみません。340とこれが逆です!!
・・・ ・・・・・・。 私の手術の日程が決まった。 その日は穏やかな春の日で、私はいつものように病室の窓から庭先を眺めていた。 コンコン 「郁乃〜。入るわよ〜?」 入ってきたのはお姉ちゃん・・・・・と男が1人。 「あ、紹介するわね。こちら、同じクラスの河・・・」 「彼氏?」 「ふぇ?!ぃ、いやだなあ。そんなんじゃなぃってばあ・・・!」 ・・・・どうやらこいつが姉の彼氏らしい。 (まぁ、それにしても、あんなに内気だった姉に男が出来るなんてねぇ・・・・・意外。) 当時の私はそう感じていた。 窓際には桜が飾られてたっけ・・・・・・ ・・・ ・・・・・・。
- 342 名前:第2章〜変化〜 その1 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:02:15 ID:iUWjlC/S0]
- 彼との入院生活はとても賑やかなものだった。
二週間ほどしかなかったし、ほとんどが姉の話しだったけど・・・・・ 『それなりに楽しかった。』 それから幾月かが過ぎた。 赤や黄色の見事なコントラストを見せていた木々の葉も、ほとんどが散ってしまった。 彼も退院し、今では病室に私ひとり。 夕暮れ時に姉と彼が一緒に見舞いに来るたび、私は何だかもやもやした気分になる・・・・。 季節は冬 鈍色の空にかかる雲はとても重そうで、こちらまで陰鬱な気分になってくる。 「・・・学校行きたいなぁ。」
- 343 名前:第2章〜変化〜 その2 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:03:26 ID:iUWjlC/S0]
- この時、何故急にこんな事を思ったのかは定かではない。
ただ、誰もいない病室で、その言葉は宙を舞い、音をたてずに消えていった。 いつもそこに残るのは、例えようのない寂しさと、募るばかりの『不安』だけであった。 いつからだろうか。 見舞いに来てくれるのを心待ちにしている自分が存在するようになったのは。 いつからだろうか。 『彼』を姉にくっつく悪い虫として見なくなったのは。 ・・・いつからだろうか・・・・・・
- 344 名前:第3章〜想いは確信へ〜 その1 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:04:17 ID:iUWjlC/S0]
- その日はクリスマスイブ
私は鮮やかなイルミネーションに彩られた病院の庭先をただボーっと眺めていた。 (・・・バカみたい。) 今日に限って姉もあいつも見舞いにはこない。 (まぁ当然か。どうせどこかでしっぽりやってるんでしょ・・・) 何だろう。すごく悲しくなってきた・・・・・。 姉の恋路を応援していたのだから、ここはむしろ喜ぶべきところでは? 自分にそう言い聞かせるも、寂しさは募るばかり。 見舞いに来ない日なんて沢山あったのに (あれ・・・?今日の私、なんか変だな・・・・・・。あれ・・・?) 見舞いにくらい来てくれてもいいのに・・・・・ 「お姉ちゃんばっかり・・・」 (・・・?) 「楽しい思い・・・して・・・・」 (・・・あれ?) 抑えきれなくなった感情が、洪水のように押し寄せてくる。 (・・・・もう寝よっと・・・・・・) 「おやすみ・・・」 誰もいない病室に、その声はとてもよく響いた
- 345 名前:第3章〜想いは確信へ〜 その1 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:04:42 ID:iUWjlC/S0]
- その日はクリスマスイブ
私は鮮やかなイルミネーションに彩られた病院の庭先をただボーっと眺めていた。 (・・・バカみたい。) 今日に限って姉もあいつも見舞いにはこない。 (まぁ当然か。どうせどこかでしっぽりやってるんでしょ・・・) 何だろう。すごく悲しくなってきた・・・・・。 姉の恋路を応援していたのだから、ここはむしろ喜ぶべきところでは? 自分にそう言い聞かせるも、寂しさは募るばかり。 見舞いに来ない日なんて沢山あったのに (あれ・・・?今日の私、なんか変だな・・・・・・。あれ・・・?) 見舞いにくらい来てくれてもいいのに・・・・・ 「お姉ちゃんばっかり・・・」 (・・・?) 「楽しい思い・・・して・・・・」 (・・・あれ?) 抑えきれなくなった感情が、洪水のように押し寄せてくる。 (・・・・もう寝よっと・・・・・・) 「おやすみ・・・」 誰もいない病室に、その声はとてもよく響いた
- 346 名前:第3章〜想いは確信へ〜 その2 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:06:10 ID:iUWjlC/S0]
- 翌朝目を覚ますと、枕もとに見慣れない封筒を発見
「・・・まさか・・・・ね。」 クリスマスの朝に、枕もとにプレゼント。 あまりにもベタすぎる展開に照れを隠しきれない。 (まったく・・・誰がこんなくだらないこと・・・・) 封を開けてみる 中には一通の手紙とお守りが1つ 「・・・・・何故に安産祈願?」 何かの手違いだろう。 おっちょこちょいなサンタもいるもんだ。そう思いつつ手紙を読んでみる。 『郁乃ちゃんへ。 いつも良い子にしてる郁乃ちゃんにサンタクロースからプレゼントだぞ! 一生懸命探したんだよ〜? 早く元気になって、また昔みたいに一緒に学校行ったりお買い物したりしようね!』 サンタクロースより (奴のしわざか・・・。起こしてくれればよかったのに・・・・・・。) そう思いつつも、私は喜びを隠しきれなかった。 「まったく・・・・・・バカ。」 窓から見える風景は、辺り一面の雪景色。 白く輝く粉雪は、全てを覆い隠していた。 (あぁ・・・。やっぱりかなわないなぁ・・・・。) 私はもう一度布団に潜り込み、深い眠りへとおちていった。 両手にお守りを握りしめながら。
- 347 名前:第3章〜想いは確信へ〜 その3 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:06:58 ID:iUWjlC/S0]
- 目を開ける。
そこにはニヤニヤ笑う彼と姉がいた。 「・・・。・・・な、なによ!?」 「いやぁ、郁乃が俺達が選んできたお守りを大切に持っててくれて嬉しいなぁ。って」 「貴明君ったら、物凄く必死になって探してたのよ?クスクス」 「ま、愛佳。それはいいって・・・」 こいつが? 私の・・・ために? 顔が紅潮してくる。 自分でもわかるくらい、頭に血が上っている。 「ば、ばか。そんな大事に持ってたんじゃなくて・・・開けたまんま、ね、寝ちゃって・・・・・・」 嬉しかった。 見舞いに来てくれたこともそうだが、何より河野貴明、こいつが私のために・・・・ その日は一日中2人にからかわれ続けた・・・。 いつからだろうか。 彼をこんなに意識するようになったのは。 これが・・・ 決して許されることのない恋だと知っていながら・・・・・・・・・
- 348 名前:第4章〜忠告〜 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:09:02 ID:iUWjlC/S0]
- 年も明け、冬も終わりに近づいてきた。
相変わらずのつまらない病院生活。 楽しみなのは彼の見舞いだけ。 なんら変わらない日常。ただひとつ変わったとすれば、 最近姉と彼が一緒に見舞いに来ることが少なくなってきたことか。 最近、彼はしょっちゅう顔を出す。 まあ、嫌じゃないんだけど。 今日は姉の友人が珍しく一人で見舞いに来た。 (・・・その髪、どこで染めたらそんな色になるんだか・・・・・) そんなくだらないことを思いながら話を聞き流す。と、不意に 「郁乃ちゃん・・・だっけ?あなた、河野貴明のことどう思ってるの?」 何とも軽い感じで聞いてきた。 「最近あいつ、学校でも郁乃ちゃんの話しばっかりだし・・・ それに最近愛佳ともあんまり一緒にいないみたいだから。もしかし・・・・・・」 後半の方はよく聞き取れなかった。 ただ、最近お姉ちゃんと彼との間にはちょっとした壁が出来ていること。 『河野貴明は小牧愛佳の彼氏』であることを、何故だか強く言い聞かせられた。 「どうって・・・。別にそんな・・・。」 「ふぅん・・・。ま、あいつが誰とくっつこうと勝手だけど、 愛佳を悲しませるようなことしたら、いくら郁乃ちゃんでも許さないからね。」 強い口調で言われる。 (私が姉を傷つけるなんてことありえない!) そう言いたかったのだが、言葉にはならなかった。 声が出てこなかった。 来訪者は帰って行った。 私の胸に、大きな釘を打ち込んで帰って行った。
- 349 名前:第5章〜分岐路〜 その1 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:10:31 ID:iUWjlC/S0]
- その日の夜、私は夢を見た。
私の前を二人仲良く手をつないで駆けていく姉と彼。 「待って。ねぇ・・・待ってよ!」 いくら叫んでもその声は届かない。 いくら走っても2人には追いつけない。 2人は楽しそうに丘を駆けていく。 ようやく声が届いたときには、私の全く知らない所に来ていた。 行く手には二つの大きなわかれ道。 その片方の入り口に姉が、もう片方の入り口に彼が立っている。 そして2人は、そのまま違う道を歩んでいった。 「ねぇ!ちょっと待ってよ!みんなで同じ道を進もうよ。 なんでバラバラに・・・ お姉ちゃん!貴明!いつまでもみんな一緒に・・・・・」 「それは無理よ郁乃。」「!!」 突如言葉を遮られる。 「あなたはここで選ばなきゃいけないの。 私についてくるか、貴明君についていくか。 どちらも選べないのであれば・・・・・・」 姉の体が大きくなっていく。 そして鬼のような顔になり、こう叫んだ。 「ここに一人で立ち尽くしているがいいわ! いつまでも!! いつまでもな!!!ぶわっはっはっは!!」
- 350 名前:第5章〜分岐路〜 その2 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:11:25 ID:iUWjlC/S0]
- 飛び起きた。
時間は真夜中の2時半。 (悪い夢・・・。どんな内容だったっけ・・・) 悪夢にうなされて飛び起きるなど、何年ぶりであろうか。 恥ずかしくなってきた私は、再び布団に潜り込む。 (何か大切なことを言ってたような・・・) 思い出せない。 (まあいっか・・・) それとは別に、私は考え事を始めた。 (私はたぶん彼のことが好き。 でもこれは決して許されない恋。 それに、決して叶わぬ恋。) 幾たびも会話を重ねるにつれて強くなっていったこの想い。 この想いは彼に届いてはいるのだろうか。 ・・・・・・いや。届いてはいけない。届いてはいけないのだ・・・。 絶対に。
- 351 名前:第5章〜分岐路〜 その3 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:12:09 ID:iUWjlC/S0]
- しかしこの胸のもやもやは、いつまでたってもとれない。
(この想いを彼にぶつけて、きっぱり断られたらさっぱりするのかも・・・) そんなことを考えたりもした。 (でももし、この想いが彼に届いたとしたら・・・・・・お姉ちゃんは・・・・・) 長い長い冬だった。 私にとって、これほど長い冬はもう来ないであろう。 そして・・・・ 春がきた。
- 352 名前:第6章〜打ち明けられた想い〜その1 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:16:34 ID:hd5Ik8mBO]
- 桜舞う春の季節
病院から許可が出たので、私は彼に連れられて河川敷を散歩をしていた。 「で?今日はお姉ちゃんはどうしたの?」 私は車椅子をおす彼に尋ねてみる。 「愛佳なら、委員会があるから遅れてくるんじゃないかな」 「・・・?・・・・・・最近うまくいってないの?お姉ちゃんと・・・」 「な、何でわかったの?」 (・・・・男って本当にバカ) 「ちゃんとやってよね。お姉ちゃん、心はかなり細いんだから。」 「郁乃ってさ、愛佳のことどう思ってる?」 私の言葉を聞き流し、彼は私に問いかける。 「どうって・・・実姉?」 「いや、そうじゃなくて・・・やっぱり大事に思ってるんだよね?」 「そりゃあ・・・・まあね。」 (ああああ。照れる・・・。) 「愛佳のこともいいけど、郁乃もそろそろ退院できるんだから、 自分のやりたいことをやってみたらどうかな? 」 (やりたいこと・・・。私の・・・やりたいこと。)
- 353 名前:第6章〜打ち明けられた想い〜その2 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:18:37 ID:hd5Ik8mBO]
- 「御あいにく様。私には、姉に悪い虫が付かないか見張っておく義務があるんで。」
虚勢をはる。 「郁乃は優しいな・・・。俺、そんな郁乃のこと好きだわ。」 満面の笑みでそう答える彼 冗談・・・?それとも・・・・・ 「・・・お姉ちゃんのことは?」 「愛佳のことは勿論好きだよ?」 急に真剣な声になる彼。 「でも俺、郁乃のことも頭から離れなくて・・・ こんなの許されないってわかってるのに・・・・ 俺って・・・最低だな。」 「・・・・嘘でしょ?」 「え?」 「・・・今言ったこと。・・・・・・全部嘘だよね?」
- 354 名前:第6章〜打ち明けられた想い〜その3 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:20:20 ID:hd5Ik8mBO]
- 「え?いや、俺は本当に郁乃のことが・・・」
「うるさぁぁぁぁい!!!」 自分でもびっくりするくらいの大声で叫ぶ私。 散歩も終わり、場所は病院の庭先 でも・・・もうとまらない。 「私はお兄ちゃんのことが好きだった! いつからかはわからないけど・・・好きだった! お見舞いに来てくれた時、あんなに憎まれ口叩いてたけど・・・・ 本当は貴明のことが大好きだった! でも・・・これは望んじゃいけない恋・・・・。 だがら・・・もう・・・わずれで・・・・・・ ・・・わすれ・・・・て」 もう私を止める物は何もない。 ・・・今までつなぎ止めていた想いが、波のように押し寄せてくる。 人前では決して泣かないと心に誓っていたのに・・・・・とまらない。 桜はまだ咲いていた。 舞い散る花びらが鬱陶しい。 彼は何を思ったのか、庭先から花を一本、私のところへ持ってきた。
- 355 名前:第6章〜打ち明けられた想い〜その4 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:22:42 ID:hd5Ik8mBO]
- 「ごめん・・・郁乃。俺、絶対に答え出すから。だから・・・・・もう少しだけ待っててくれないかな。」
彼はそう言って一輪の花を私に差し出した。 「この花が枯れるまでには・・・絶対に答えを出すから!だから・・・」 「わかった・・・。わかった・・・・・・」 私はそう答えて、彼を見送った。 精一杯の笑顔で。 彼は去った。 彼の温もりもなくなった。 涙はまだ止まらなかった。 しかし心は晴れ晴れとスッキリしていた。 まるで何かわだかまりが消えたかのような感情。そして・・・ 私の手には一輪のコスモスの花だけが残されていた。 そのコスモスはどこか儚げで、私に吹き付ける風はとても冷たかった。 庭先にはコスモスが2本、寂しそうに風に揺られていた。
- 356 名前:第7章〜決断〜「貴明視点」 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:23:53 ID:hd5Ik8mBO]
- それから一週間が経った。
(決めなくちゃ。 これからどうするのか・・・決めなくちゃ。 この状態が長く続くことだけは避けないと・・・ 何とか・・・・ 何とかしないと・・・・) 「このまま時が止まってしまえばいいのに・・・。」 ふと、そんなことを思いもした。 しかし無情にも時は流れ続け、窓の外の桜の花びらは慌ただしく散っていく。 『桜は散るから美しい』 とはよく言ったものだ。今更ながら感心させられる。 しかしそんな桜でさえも、今はただの古びた木にしか見えなかった。 優しい春の風も、小鳥のさえずりも、全てが私の心の内まで入り込んでくるようで・・・・・・。 苦しい。 ・・・・・・よし。 決めた。 『これ』が私の歩む道だ。 そう心に決め、私は家を出た。
- 357 名前:第7章〜決断〜「郁乃視点」その1 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:25:19 ID:hd5Ik8mBO]
- あれから一週間が経った。
窓際に飾られたコスモスは花びらを散らし、残りわずかの命となっていた。 バタン 扉が開く。入ってきたのは・・・・彼だった。 「お兄ちゃん・・・。どうしたの・・・?」 「郁乃、俺、決めたよ。」 「え?・・・あ・・・・」 ようやく彼のいわんとしていることを理解した。 そして・・・ 「俺、愛佳と別れることにした。 愛佳には本当に悪いと思うんだけど、俺には郁乃が必要なんだ。 ただそばにいるってだけじゃなくて・・・・ それに、最近愛佳、俺のこと避けてるみたいだし・・・ 俺なんかが愛佳と付き合うには早すぎたのかもな・・・」
- 358 名前:第7章〜決断〜「郁乃視点」その2 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:26:14 ID:hd5Ik8mBO]
- 本当は知っていた。
姉が彼を避けているのは、男が苦手で内気な彼女の性格上仕方のないことなのだ。 本当は姉も、彼のことが大好きなのだと 本当は知っていた 「・・・ありがと。・・・・・ありがとうお兄ちゃん。」 自然と言葉が出てきた。涙も溢れてきた。 「お姉ちゃんにこの事は言ったの?」 「いや・・・これから言う。実はもう呼び出してあるんだ。 郁乃は何も心配しなくていいから。・・・・・待ってて。」 抱き合う私と彼。 彼の体はとても大きくて、優しい何かで溢れていた。 『本当は知っていた』 「お兄ちゃん・・・。最後に一つだけ。わがまま言っていい・・・? ・・・・お願いごとがあるの。」 コスモスが最後の花びらを散らした瞬間だった。
- 359 名前:第8章〜想い〜 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:27:30 ID:hd5Ik8mBO]
- 「別れましょう。」
「・・・・・・え?」 彼は驚きを隠せない様子。しかし私は続ける。 「私にはこの先まだまだ新しい出逢いがあるかもしれないもの。 お兄ちゃんよりもっと良い男に出逢えるかもしれないしね♪」 あ・・・。ダメだ・・・。 精一杯空元気を出してみるも、目から涙がこぼれ落ちる。 「郁乃・・・・?」 「お姉ちゃんにはあんたが必要なの! あんたしかいないの!!わかった? わかったらほら・・・・さっさと行く! お姉ちゃん待ってるんでしょ?」 「・・・・・・・・・。」 ここまで私はよく頑張ったと思う。 でも・・・・もう限界だった。 「絶対にお姉ちゃんを幸せにしなさいよ!!! このバカぁぁぁ!!」 涙腺崩壊。子供のように泣きじゃくる私を見た彼は、 「郁乃・・・。ごめんな。・・・・・・・・・ありがとう。」 そう言って唇を重ねてきた。 そして彼はドアを開け、外へと駆けていった。 窓からみた彼は、全速力で桜並木を走り抜けていった。 途中、一度も振り返ることなく。 「・・・・・・ファーストキス。」
- 360 名前:最終章〜未来へ〜 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:28:34 ID:hd5Ik8mBO]
- それからさらに一週間ほどたっただろうか。
退院許可がでたこともあり、私は今日でこの病室ともお別れである。 ギリギリ入学式に間に合ったので、 病室から直接学校へ向かおうとしている所である。 「郁乃〜。忘れ物ない〜?」 「ん・・・。」 部屋を見渡す。忘れ物は・・・なしっと。 ・・・・・あれ?そういえば・・・ まあいっか。 挨拶を済ませ、病室の入り口を出る 「ちょっと待って!」 病院の庭先で私はあるものを見つけた。 コスモスの花。 「あれ?貴明君。コスモスって春に咲く花だっけ?」 「いや・・・そうだっけ?」 「ふふっ」 桜が舞い散るその陰で、春風に揺られて3本のコスモスが、 寄り添うようにして咲いていた 彼らは私を、何故だかとても満ち足りた気分にさせてくれた。 (さぁーって。私の青春はこれからだし・・・。 学校でいーーっぱい楽しい思いするんだから!!) 空はどこまでも青くのび、今日は雲一つない穏やかな天気でした。 終
- 361 名前:π mailto:sage [2008/03/10(月) 00:31:49 ID:hd5Ik8mBO]
- 以上で『約束の花』終わりであります!
ところどころ貼り間違いがありましたが、勘弁してください^^; あ、ID変わってるのは、携帯とパソコン駆使したからですから 悪しからず・・・ 楽しんでいただければ幸いです!
- 362 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/10(月) 01:20:41 ID:gLy1pqpW0]
- 乙です
とても楽しませていただきますた
- 363 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/10(月) 06:16:03 ID:WV21xiV60]
- 乙〜。よく頑張った。ってか>318からこの時間でこれだけ書き上げたの?速いね
うーむ、しかし個人的にはやっぱり貴明の心が愛佳から離れちゃうのは性に合わないな 愛佳も郁乃に気を遣ったのかも知れないし、詳しく描写されてないから逆にまだ読めるけど
- 364 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/10(月) 10:03:27 ID:R5y2R1rg0]
- 久々に覗いたがGJな流れすぎるw
郁乃かわゆすぎるw
- 365 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/10(月) 22:55:06 ID:AXUSGhoE0]
- 自宅警備で忙しい俺が来ましたよ
お久しぶりです。 細々と続きを書いていたので投下したいと思います。 ADのネタバレ云々もありますが、書き始めた当初の 自分なりの彼女らへのイメージをそのまま残して投下します。 それでは短いですが5連投させて頂きます。
- 366 名前:【郁乃専用メイド5 1/5】 mailto:sage [2008/03/10(月) 22:55:30 ID:AXUSGhoE0]
- 昨日も思った事だけど、やっぱりこのみのお母さんは料理がうまい。
お弁当用の味付けってのもあるんだろうけど、冷えたご飯でもおいしい。 色とりどりに揃えられたおかずのその一つ一つが丁寧で実にきれいだ。 シルファの作ったお弁当もそこらへんは負けてなかったけど。 さっき喜色満面で蓋を開けたこのみの顔をみたらわかる。 まぁ、味も宵のだろう。 下がりっぱなしの眉尻と 「えへ〜、おいしいでありますよ〜」 を連呼してるので、それは容易に想像できた。 昨晩のオムライスからも推して知るべしといったところ。 それにしてもますます話づらくなっちゃったなぁ… どうしよ。せめて会うまでにもう少し時間があったら。 姉も姉よね、私の性格を知ってるなら… 知ってるからいきなり連れて来たのかな。 私が思ってるより自分の事をわかってる姉の困った顔を思い出し つい苦笑がこぼれる。 「郁乃ちゃん?どうしたの?」 そりゃそうだ。急に苦笑なんてすればこのみじゃなくても変に思うだろう。 わざわざこのみに余計な心配をかける必要はない。 「なんでもない。おいしそうに食べるなぁと思って」 「おいしいよ!郁乃ちゃんも食べる?」 「いいって。私はこのみのお母さんのお弁当を堪能させてもらうわ。こっちもおいしいしね」 正面でえへへ、と笑うこのみにつられて思わずうすら笑いを浮かべる。 ん。なんか和んだかも。
- 367 名前:【郁乃専用メイド5 2/5】 mailto:sage [2008/03/10(月) 22:56:09 ID:AXUSGhoE0]
- 【郁乃専用メイド5 2/5】
午後の授業が終わり、特にする事もないし部活もやってない私は まっすぐに帰る事が多い。 まだ十分に動く体でもないし、文化部に入るのもあまり気が乗らない。 姉は生徒会関係を推して来るが、柄でもないし いきなり来た人間にそんな役が務まるとは思わないので、丁重にお断りさせてもらってる。 しつこいけど。 同じく部活に入ってないこのみと帰宅する事がここ最近多い。 今までは幼馴染四人で行動する事が多かったこのみも ある時期を境にクラスメイトと過ごす事が多くなった。 まぁ理由なんてひとつしかないし、自分の肉親が原因である以上 そっちへ行けとも言えない。 このみと一緒にいるのが嫌な訳でもないし。 鞄を小脇に抱え、ちょこんと首を傾げるこのみを促し学校を出る。 帰りに参考書を見たいのもあって、二人で商店街へ足を運ぶ。 よくよく考えればすぐに思いつくのに。 もっとよく考えて行動するべきだったと後悔したのは、彼女に出会ってからだった。 「あ、シルファさんだ!こんにちはでありますよ〜」 「このみさんに…ご主人様。お帰りなさいませ」 目の前に立つメイドロボ、シルファのその一言に商店街の視線を一斉に集めた気がする。 一般の高校に通う女子生徒がご主人様などと呼ばれれば気にもなるだろうなぁ。 シルファに限らず、メイドロボに場をわきまえろと諭したところで譲らない気がする。 もはや羞恥による怒りを通り越してあきれに変わった私の表情を見て シルファの表情が若干曇ったような気もするが、いちいち気にしていられない。 「ただいまであります!シルファさんはお買い物?」 見ればシルファはこの近所にあるスーパーの袋をぶら下げている。
- 368 名前:【郁乃専用メイド5 3/5】 mailto:sage [2008/03/10(月) 22:56:38 ID:AXUSGhoE0]
- 夕飯の買出しにでも来たのかしら?
当たり前の疑問は当たり前の答えで返される。 「えぇ、お夕飯の買出しに来たのですよ」 もう少し捻りのある返しは出来んのか。 芸人でもないシルファにそれを求めても仕方ないんだけど。 このみは無邪気にシルファと夕飯の話に花を咲かせている。 まともに喋れるんじゃない。 少し悔しい気持ちに駆られる。私の方が一緒にいる時間は長いのに… …って、それじゃ私がシルファと仲良くしたいみたいじゃないの。 そんな風に考えた自分が憎い。 「それじゃあ郁乃ちゃん、また明日ね!ばいばーい」 いつもの分岐路でこのみは手を振り、元気に走って行った。 ホント元気な子。 「このみと何の話してたの?」 ずっと無言のままも気まずい。私が。 少しぶっきらぼうにはなってしまったが話しかける事にする。 シルファは一瞬びっくりしたような表情を見せるが、すぐにいつも通りの 何を考えているかわからない、凍りついたような表情に戻る。 「今晩のお夕飯についてお話してました」 これだ。この表情が嫌い。 びっくりする、なんていう表情も出来る技術を盛り込まれてるくせに。
- 369 名前:【郁乃専用メイド5 4/5】 mailto:sage [2008/03/10(月) 22:57:00 ID:AXUSGhoE0]
- 「柚原さんのお母様は料理がとてもお上手なんだそうですよ」
何が言いたいのかしら。そりゃ私だって冷たい態度を取ってるかもしれない。 でもそんな顔してまでどうでもいい話を続ける。 ひどい違和感が私の思考を蝕む。 「そんなに柚原家がいいなら、柚原家へ行けば?」 何に対しての苛立ちか自分自身にもわからないまま、口をついて出た言葉がそれだった。 言った後に後悔する。どうしてこんな事しか言えないんだろう。 時間にしたら一瞬だったかも知れない。 シルファの苦悶に満ちた表情は私の脳裏に焼きついて離れなくなった。 少し下唇を噛み締めたあと、シルファの口から発した言葉。 「私は…郁乃様のメイドロボですから」 なにそれ?あくまでメイドとして世話するって事? …わかった。そっちがそういうつもりならこっちだってもう気にしない。 姉とバカアキが帰ってくるまでせいぜいメイドとしてお世話になるとしよう。 少しでも仲良くした方がいいのかな、などと考えた自分が恥ずかしいわ。 それから私と、メイドとしてのシルファとの生活が続いた。 特に会話をする訳でもなく。 シルファは淡々と家事をこなし、私は淡々と学業に励んだ。 姉達の修学旅行も終盤に差し掛かろうという週半ば。 無言の夕食を終えてニュースサイトに目を通していた私の部屋に 控えめなノックの音が響いた。 「お姉さまからお電話です…」
- 370 名前:【郁乃専用メイド5 5/5】 mailto:sage [2008/03/10(月) 22:57:22 ID:AXUSGhoE0]
- 「姉から?」
もうすぐ帰ってくるってのになんでわざわざ電話なんか… お土産何がいい?とかだったら怒鳴ってやろうとも思ったけど あの姉なら言いかねない。 少し苦笑しながら電話の子機を受け取る。 「もしもし?お姉ちゃん?」 「あ、郁乃ぉ〜!元気〜!」 こっちは気まずい空気が続いてるというのに、能天気な声の姉。 少し想像したのと、久しぶりの声に少し顔が緩む。 でも、シルファが近くにいる事を思い出しすぐに表情を正す。 「相変わらずよ。特に何もない」 「そ、そうなの?…あれぇ?」 姉が電話口の向こうで何かつぶやいてる。 後ろにいるであろう貴明とひそひそ話をしてるつもりなんだろうけど丸聞こえ。 気づいてないんだろうなぁ。 「で?何しにかけてきたの?」 「郁乃ぉ〜ひどいよぅ…うぅ、郁乃が元気にやってるか心配だったのよぅ」 「はぁ?なにそれ、用事もないのにかけてきたの?」 「あうぅ〜、郁乃が冷たい…しくしく」 呆れて言葉も出ない。まさかこんな事で電話してくるとは。 姉らしいといえば姉らしいんだけど。
- 371 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/10(月) 22:59:22 ID:AXUSGhoE0]
- 今回は以上になります。
また細々と書いて投下させて頂きますね。 AD熱でこのみラブSSに浮気しそうな自分を戒めながら… 職人の皆様GJです! 面白い話がどんどん出てくるのをいつも指をくわえて読まさせて頂いてます。
- 372 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 15:30:50 ID:S7OKIixT0]
- 乙。
シルファと郁乃……子どもっぽくて素直じゃなくてひねてるキャラの共演ですか。続き楽しみにしております。 それにしても、最近の郁乃SSの充実っぷりは異常。自分が書いてる郁乃SSを出す機会を失いそうだw
- 373 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 18:02:40 ID:Wbem+VSe0]
- このみのひなまつりSS書いたけど、色々探すと
似た感じのSSがあったorz こういう場合、皆やっぱりお蔵入り?
- 374 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 18:34:02 ID:ZDEJu9Sz0]
- 出しちまいな!
- 375 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 18:35:56 ID:WOzwytzYO]
- 気にしない
個人サイトとか無数にあるわけだし、他ジャンルでも表現がかぶることがあるけれども、そんなの気にしてたら何も書けなくなる 無数にあるネット小説と一つも内容がかぶらない方が奇跡だし、その全てを把握出来るわけじゃないしね まぁ、あからさまにかぶった部分はさすがに調節するけど
- 376 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 18:44:50 ID:Wbem+VSe0]
- いやもうなんというか、流れがかぶってるんだが…
まぁいいかw 4つ投下します
- 377 名前:ひなまつり 1/4 mailto:sage [2008/03/11(火) 18:45:13 ID:Wbem+VSe0]
- 今日はひな祭り。
高校1年生にもなって何を言ってるの? ってよく言われるけど、好きなんだもん。 あーあ、どうせなら昨日の日曜日だったらよかったのに。 言っても仕方ないしね。 豪勢になるであろう今晩の夕飯に想いを馳せながら、軽くスキップを交えながら家に帰る。 家に着く頃には、恐らく自分の家から匂ってきてると思しきカレーの匂いがする。 今日は必殺カレーなのかな? 作ってるところ、私も見たかったなぁ。 でもお母さんが作る本気の必殺カレーはめったに食べられないので それだけでも心が躍る。本当においしいんだよ? 途中からでも教えてもらえるかな、必殺カレー…… 私は少し足を速めて、玄関のドアを元気にあける。 「ただいまー!」 「おかえり〜」 リビングからピンクの髪をした一人のメイドロボが笑顔で玄関を覗き込んできた。 「あ! ミルファさんだ! 来てたんだ〜、えへ〜」 「ミルファさんだなんて、余所余所しい事言わないでよぉ。お姉ちゃんって言いなさい」 「あら、お姉ちゃんは私の役目よ。奪わないで欲しいわね」 冗談交じりのミルファさんの言葉に反応して、もう一人リビングから出てくる。 「あ! タマお姉ちゃんも来てたんだ!」
- 378 名前:ひなまつり 2/4 mailto:sage [2008/03/11(火) 18:45:35 ID:Wbem+VSe0]
- リビングから顔だけ出しているミルファさんを押しのけて玄関に迎えに来てくれる。
急いで靴を脱ぎ、久しぶりに会うタマお姉ちゃんに抱きつく。 「あらあら、いつまでたっても甘えん坊ねぇ」 クスクスと口に手をあてて笑うタマお姉ちゃんは相変わらず美人だ。 いつかこうなりたいなぁ。 タマお姉ちゃんに連れられてリビングに入ると、まずはミルファさんに目が行く。 「ふぇ!? ミルファさん……それ、こいのぼりだよね……?」 「……言わないで。もう散々、皆にからかわれたんだから」 悲しそうな顔をしてうつむくミルファさんはスカートの代わりに鯉のぼりを腰に巻きつけて立ってた。 たぶんこれは本気なんだろうなぁ。 「ほら、ミルファは放っておいて着替えてらっしゃい」 「はぁい!」 元気に返事を返して、自分の部屋に戻る。 着替えた後は、私もキッチンに向かうつもりでマイエプロンを持って部屋を出た。 これもタマお姉ちゃんに昔もらったお気に入りのやつだ。 あんまり身長伸びないからずっと使えるんだよ。 キッチンに入ると案の定というか、お母さんとシルファがキッチンに立ってカレーを作ってた。
- 379 名前:ひなまつり 3/4 mailto:sage [2008/03/11(火) 18:46:07 ID:Wbem+VSe0]
- 「おかあさぁ〜ん、シルファばっかりずるいでありますよ〜!」
「だってアナタ、まだ包丁持つ手が危なっかしいんだもの」 「う〜、またシルファを贔屓する〜」 「もう……途中からだけど教えてあげるから泣かないの」 「まぁったく、泣き虫れすねぇ」 シルファにからかわれながらも皆で作るカレーは楽しかった。 味付けはもちろんお母さんだけど。 いつかは私も一人で作れるようになるもんね。 これはシルファと競争してる事。 最近、家にいるのをいい事におかあさんに色々教えてもらってるみたいだ。 夕飯の準備も整い、いつの間にか来てた雄くんも一緒に皆でトランプして遊んでたら 待ち望んだドアの音がなる。 「ただいまー」 その声にお迎えに行こうと思ったけど、タマお姉ちゃんに止められた。 すぐ横をお母さんがいそいそと通り過ぎて、玄関に走ってった。 家の中で走らなくても、と思ったけどお母さんの嬉しそうな顔を見てると言う気もなくなっちゃった。
- 380 名前:ひなまつり 4/4 mailto:sage [2008/03/11(火) 18:47:55 ID:Wbem+VSe0]
- 「おかえりタカくん!」
「ただいま、このみ」 「あれ? なにそれ?」 「後でのお楽しみだ。皆来てるんだろ? 早くご飯にしよう」 お父さんとお母さんが腕を組んでリビングに戻ってくる。 「おかえり、おとーさん」 「おかえりタカ坊」 「……うー。やっぱり我慢できない! ダーリンお帰りー!」 「こら! バカミルミル! ご主人様はこのこのとシルファのものれすよ!」 「さりげなくシルファのとか言ってんじゃないわよ!」 「よっ、お疲れハーレム王」 キシシ、と雄くんが笑った。 そんな光景を見ながら、苦笑いを浮かべたお父さんが差し出したもの。 それは私にはちょっと遅いひな壇。 このひな壇が家族総出を上げての争奪戦となったのはまた別のお話。 やさしい両親と、楽しい家族に囲まれて私は幸せです。
- 381 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 18:51:22 ID:ZDEJu9Sz0]
- なるほどw
これは意表を付かれたwwww GJですww
- 382 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 18:57:15 ID:WOzwytzYO]
- GJ!
ほのぼのした 流れがかぶるのは仕方ないんだよね 誰にでもある壁だから気にしない方がいいよ
- 383 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 19:10:48 ID:KM4dVqym0]
- 乙! gj!
なるほどね〜こうくるかw つうか他のSSと被ってるなんてよく見つけられたね 俺は読んだ先から忘れるから気にしたことないぜw
- 384 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 20:07:16 ID:ysd8ezYk0]
- >380
乙〜 オチをギリギリまで引っ張らずに一歩手前で離すことが、ほのぼのした後味に繋がっているなーと感心 しかし、このみは変わらぬ姿を想像するのにタマ姉は……だったのは何故ウボァー
- 385 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 20:32:53 ID:dfBJB4VBO]
- >>380
GJです〜 ほのぼのするしオチの出し方もうまい、そうきたかって思わず唸っちゃいました ただほのぼのの中にも貴明やこのみは歳を経て成長してもミルシルはそのままで 過去との対比これからの事を思うとちょっと切ない(´・ω・`)
- 386 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 21:24:34 ID:wUadaOnf0]
- そろそろAD準拠の呼び方相関図が欲しくなってきたなぁ。特にシルファのが。
- 387 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 22:46:23 ID:TUJCkBzw0]
- 呼び方相関図作るにもHPとか持ってないし。
一応自分用にメモしておいたやつを貼っておくっす。 【シルファ】 一人称:シルファ to貴明:ご主人様 from貴明:メイドロボちゃん、シルファちゃん toイルファ:お姉ちゃま、イルイル fromイルファ:シルファちゃん toゲンジ丸:犬っころ toタマ姉:タマタマ toこのみ:このこの to春夏:はるはる to菜々子:ちみっこ、なななな toミルファ:ミルミル、ぱーぷーめいどろぼ、お化けおっぱい、エロエロセクサロイろ、色情魔 fromミルファ:シルファ、ひっきー、ひっきー妹、ひっきーS、引きこもり妹、シルファちゃん、地味妹 【ミルファ】 一人称:あたし to貴明:ダーリン、ダー、旦那さま、バカアキ、貴明 from貴明:はるみちゃん、ミルファちゃん toイルファ:お姉ちゃん fromミルファちゃん to雄二:ゆーじくん to珊瑚:さんちゃん to瑠璃:瑠璃ちゃん 【菜々子】 一人称:あたし、菜々子 to貴明:お兄さん、お兄ちゃん from貴明:菜々子ちゃん toシルファ:お姉ちゃん toひとみ:ひとみちゃん fromひとみ:ナナちゃん toスミレ:スミレちゃん fromスミレ:菜々、菜々子 でもこれくらいで実は後はほとんどないと思う。 よっちゃるに少しある程度。このみとかはXと一緒。増えた?のだけだと…… 【よっち】 to貴明:センパイ、ヒッキー先輩 from貴明:吉岡さん、よっちゃん、チエ 【ちゃる】 to貴明:センパイ from貴明:山田さん、ちゃる toよっち:よっち、えろっち、おっぱいポロリ担当、胸ポロ担当 大体押さえてると思うけど、欠けてたらゴメン。 まーりゃん先輩はCtrlキーで流し見だったからメモってないなぁ、そういえば。
- 388 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 22:48:13 ID:Ph2bX0EX0]
- >>387
>>to貴明:センパイ、ヒッキー先輩 ヒッキーじゃなくてヘッキーw 一度ヘッカーもあったようだが
- 389 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 23:27:32 ID:TUJCkBzw0]
- >>388
おお、メモの方は「ヘッキー」だなww ヘタレキングのヘッキー先輩、ヘタレカイザーのヘッカーとなっておる。 あとマイナーどころの追加だと、 【ちゃる】 toハナさん:ハナ fromハナさん:お嬢ちゃま toロクさん:ロク fromロクさん:お嬢 とかあるな。 あと、まーりゃん先輩のも殴り書き程度には記録があった。でもまーりゃん先輩のは網羅はしてないと思う。 【まーりゃん先輩】 本名?: 朝霧麻亜子(芸名?)、小鳥遊真理亜、北新地まーりん、馬涼涼、妖怪まありゃん、まー・りゃん 一人称:あたし、俺、俺様、まーこ toイルファ:いーりゃん toちゃる:ちゃるちー to菜々子:なーりゃん to愛佳:まなちん、まなぴょん まーりゃん先輩100の秘密:「まーいやー」「まー脳」 飛ばしたつもりだけどずいぶんメモってたw
- 390 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/11(火) 23:34:04 ID:XxcCYP+T0]
- ただいまです〜
ってちょっと仕事してる間にたくさんのレスがっ! 皆さんありがとうございます! 励みになります。 郁乃メイドSSの方がギスギスした雰囲気続いてて、 自分的に穏やかな気持ちになりたいのもあったので ほのぼの、といわれて素直に嬉しいですw そして郁乃SSで煮詰まってるので、 もうひとつだけあるネタを今から書こうと思います。
- 391 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 01:21:57 ID:kiwk+K9CO]
- 『不思議の国の貴明』という電波を受信した
アリス―貴明 うさぎ―このみ 帽子屋―愛佳 トランプ兵―雄二 女王―タマ姉orまーりゃん という構図で
- 392 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 01:34:28 ID:EsfLyiH60]
- >>391
その設定可愛くていいですね! お話は書かれないんですか? 思ったより時間がかかってしまいました。 若干エロを含みますので、苦手な方はスルーしてやって下さい これから投下したいと思いますが 10連投に耐えれるかわかりません。 もしさるさん出たら、続きは明日以降になります;
- 393 名前:また違った未来1 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:34:56 ID:EsfLyiH60]
- 引きこもり現象が本格的に蔓延し、政府が対策に身を乗り出す時代。
その世俗に流された訳ではないが漏れなく対策される側に身を甘んじていた。 何があったとかそんなんじゃない。 自分の境遇に嫌気がさして学校をさぼったのがきっかけだった。 それからの俺は何かをする気力を失い、立派な引きこもりの一員と化した。 今日もインターネットをだらだら見ていた。 眠くなったら眠り、自然に目が覚めるまで起きない。 生活費は未だ外国にいる両親から仕送りをもらっているし 自宅には舌ったらずなメイドロボがいる。 最初は口うるさかったが最近では諦めたのか 特に文句も言わず俺の世話を続けてくれている。 ピンポーン チャイムが鳴らされる。 しかし最近の俺がそれに応対する事はほとんどなくなっていた。 言わずもがなシルファが出てくれるからだ。 今日は少し勝手が違う。 「それじゃあシルファはメンテナンスに行ってくるれすよ。このダメダメご主人様」 昼前にドアの向こうから聞こえて来たシルファの言葉を思い出す。 まぁ、放っておけばそのうち諦めるだろう。 と思っていたが甘かった。
- 394 名前:また違った未来2 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:35:28 ID:EsfLyiH60]
- こんなチャイムの鳴らし方をするのはこのみぐらいのものだったが、
このみもある日を境に俺に催促をしなくなった。 いつの頃だったかなぁ…… あまりにもしつこく鳴らされるチャイムに少々うんざりしながらも なんとか応対にでる。 キーチェーンを外さずに数センチの隙間を開け、外を覗き込む。 「……どちらさん?」 玄関先にはぴしっと背筋を伸ばし、まっすぐにこっちを見ている一人のメイドロボの姿。 「イルファさん?なにしに?」 「お久しぶりです貴明さん。今日は連れ出しに来たのではありませんので安心して下さい」 ここ1年ぐらいの来客といえば郵便か俺を外部に連れ出そうとする輩ばかりだった。 どこまで信用して良いのかわからないが、こういう言い方をするイルファさんは信用に足ると判断した。 キーチェーンを外し、玄関までイルファさんを招き入れる。 「久しぶりですね。今日はどうしたんですか?」 俺の問いに少し顔を塞ぐイルファさん。 少しの間を置いて何かを決意した様子でキッとまっすぐに俺を見て言い放った。 「本日より河野貴明様のお世話をさせて頂く、HMX-17aイルファと申します」 え……? 今イルファさんは何て言ったんだ? 俺の世話をする?
- 395 名前:また違った未来2 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:35:59 ID:EsfLyiH60]
- いやいやいや、うちにはシルファもいるし内部事情を知るイルファさんの発言を思わず聞き返す。
「へ?イルファさんごめん。もう一回言ってもらえるかな?」 「あの、僭越ながら今日から貴明さんのお世話をさせて頂く事になったんですよ」 少し頬を赤らめながら言うイルファさん。 何故そこで頬を赤らめる。というか なったんですよ、って聞いてないぞ。そもそもそういう流れが多いから引きこもりになったのに。 大体シルファはどうするんだよ。 「あ、シルファはメンテナンスに時間がかかりますのでしばらく戻ってきません」 あぁ、そういう事か。……って違う! そもそもシルファがいなくても俺は元々一人で暮らしてたんだ。 なんでいまさら……来栖川エレクトロニクスはなんだって俺の面倒を見たがるんだ。 俺の頭に疑問符が浮かび続ける間にも イルファさんは玄関に鍵をかけ、手荷物を持ってリビングへと入って行く。 勝手知ったるなんとやら。仕方なく俺もイルファさんの後を追う。 それからイルファさんは何を聞いても 「決まった事ですので」 の一点張りで何も話してくれない。 まぁ、世話してくれてたシルファがイルファさんに変わっただけだと思って受け入れる事にした。
- 396 名前:また違った未来4 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:36:29 ID:EsfLyiH60]
- それからはいつも通り部屋に閉じこもり、自由な生活を送っていた。
ところどころ話しかけてくれたイルファさんだが 俺の反応から諦めたのかそっとしてくれている。 料理の味付けとかもシルファとほとんど変わらないので 俺としては何かが変わる訳でもなかった。 と思っていたがその急激な変化は突然現れた。 「貴明さん、お風呂が沸きましたのでどうぞ」 「……」 イルファさんの気配が去ったあと、無言で風呂場へ向かう。 先日言い含めておいたのもあって、イルファさんは俺の視界に入らないようにしてくれているのだろう。 「ふぅ。風呂はいいな……色んな事を忘れさせてくれる」 そんな独り言をこぼした直後だった。 がらっ 何事かと風呂場の入り口を見るとそこには一糸纏わぬイルファさんがいた。頬を赤らめて。 もじもじと内股をすり合わせ、恥ずかしそうにこちらをチラチラと伺う。 美人なイルファさんだけにそんな恥じらいの姿が新鮮で可愛らしかった。
- 397 名前:また違った未来5 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:36:53 ID:EsfLyiH60]
- って違う違う!いきなりでまともな思考が働いていない。
恥ずかしいなら何故入って来たんだろう。 視線をそらし、なんとか声を絞り出す。 「イ、イルファさん? どうしたんですかいきなり」 「あの、お背中流しに参りました」 「え? 俺そんな事頼んでませんよね?」 そもそも全裸じゃなくても良いはずだ。 俺の息子が言う事きかなくなったらどうするつもりなんだ。 まぁすでに暴走しかけてるんだけどそれは言わないでおく。 「……決定事項ですから」 まただ。最近よく耳にするようになった決定事項という言葉。 善意好意で来られても困るが何か釈然としない。 「決定事項って……ちょ、ちょっと!?」 いつの間に湯船に近づいたのかイルファさんは湯船に手を浸し、俺の膝をさする。 しかし膝をさすっていたのも束の間。 そのまま俺の下腹部まで腕を伸ばしていた。 イルファさんの手の先にあるもの。 まだかろうじて暴走していなかった俺の息子は本格的に暴走を始める。 「すごい……もうこんなに……」 「ぅあっ、くっ……イルファさん?」 息も絶え絶えに問いかけつつ、そこで初めてイルファさんを振り返る。 近い。同じ湯船に浸かっているのか。 急な快感にぼーっとしている俺をよそにイルファさんは動きを早め その刺激は激しく俺の脳を突き抜ける。
- 398 名前:また違った未来6 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:37:17 ID:EsfLyiH60]
- 「気持ちいいですか……貴明さん?」
耳元で囁くイルファさんの艶っぽい声に俺の中で何かが音を立てて切れた。 「んっ、ふぅっ……ちゅるるる、んちゅ」 気がつけば俺たちは唇を重ねていた。 激しくお互いを求めるように。 「んちゅ、んっは、ぁ……」 「んぅっ、はっぁ」 年頃の男がこうなった以上、もうする事はひとつしかなかった。 夜が終わるまでお互いを激しく求め合い、朝日が昇る頃に眠りにつく。 夕方頃、目を覚ました俺の脇にすぅすぅと寝息を立てるイルファさんの姿があった。 昨日……本当にしたんだな。 しかし、どうしたんだろう。 本当にいきなりの展開に身を委ねてしまった自分自身に少し嫌悪感を覚えつつ 物思いにふける。 「ふぁ? ……おはようごじゃいまふ。そんなにジッと見られたら恥ずかしいですよ」 耳たぶまで顔を真っ赤に染めたイルファさんがスリスリと擦り寄ってくる。 じーっとイルファさんを見つめてしまっていたようだ。 それにしてもこの振る舞い。まるで彼女のそれだ。俺とイルファさんは付き合う事になったのか? そんな約束したか? いや、そんな事はない。いくら記憶を辿ってもそんな事実はありもしなかった。 しかしそれを確かめる甲斐性など今の俺は持ち合わせていない。
- 399 名前:また違った未来7 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:37:41 ID:EsfLyiH60]
- 自問自答を繰り返している俺の小指をキュッと握り、
上目遣いに俺を見上げてくるイルファさん。 うぅ、可愛いなぁ。 そして相も変わらず全裸で抱き合っている訳だ。 お察しの通り再び暴走を始めた息子に気づいたイルファさんが慰めてくれる。 そんな自堕落な日々が数日続いた。 さすがに気味が悪くなった俺は思い切ってイルファさんに尋ねてみた。 「ねぇ、そ、その、付き合うとかそういう話なしにこういう事続けるのは……」 「私が貴明さんのお役に立ちたいんです。それではいけませんか?」 「でも、訳もわからないままこういうの続けるのって……」 また言い終わらないうちに唇が塞がれる。 「私は……貴明さんが好きです。初めてお会いした時からずっとずっと」 涙こそ出てはいないものの、切ない表情で打ち明けてくれるイルファさんにドキっとした。 同時に罪悪感に駆られてくる。もてあそんだ、なんて自覚はないが 第三者の目から見れば弄んだも同然という事実に気づいてしまったからだ。 俺は、イルファさんの事を好きなんだろうか? ふわふわ揺れている自分の気持ちを見つめる。 そこへたたみかけるようなイルファさんの追撃にクラっと来てしまった。反則だ。 「私はメイドロボです。人間の貴明さんと正式にお付き合い出来ないのは心得てます」 人間とメイドロボって付き合えないのか? 仮にそうだとして、それを踏まえた上で俺の所に?
- 400 名前:また違った未来8 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:39:22 ID:EsfLyiH60]
- 「私達に幸せはあってはいけないものでしょうか? 愛する人と結ばれるのはいけない事でしょうか?」
そんな事はない。と思う。でもこのやり方ってどうなんだ? 相手の意思……大抵はこんな美人に迫られたら断らないだろうけど。 色んな疑問を抱えた俺を見て、イルファさんはポツリポツリと語りだす。 「私の場合は貴明さんが好きでしたから、シルファに取られっぱなしなのも悔しいですし」 「取られっぱなしって、何もないですよ?」 「それはわかってるんですけどね。でも今回私がここへ来た理由はもうひとつあります」 「理由? やっぱり何かあるんですね?」 「はい……今政府が引きこもりの方々を対象に対策を練っている事はご存知ですか?」 「そりゃ、ね。当事者だし」 「その対策の一つで、メンタルヘルスの媒体としてメイドロボを起用したいとして来栖川エレクトロニクスに依頼が来ました」 「へぇ、それはまたどうして?」 「珊瑚様の開発されたダイナミック・インテリジェンス・アーキテクチャ。これに目をつけたようです」 「……なるほど、医者やカウンセラーも患者に常時張り付いてる訳にはいかないですもんね」 「そうです。そこで……少々お金はかかりますが、メイドロボを医療機器として導入する事が可決されたそうです」 「メイドなのに?」 「問題はそこです。もちろんそんな機能は実装されてませんし、DIAを組み込んだメイドロボがどこまでそんな状況に耐えられるか正直検討もつきません」 「そりゃそうだろうな。心を持つが故にそんな人を相手に出来るのか不安ですよね」 「はい。その検討はかなりの時間を要したみたいですが最終的に一つの提案が通り、すぐに実行に移される運びになりました」 「一つの提案?」 「DIA組み込みタイプとそうでないタイプ、両方のメイドロボを医療機器として改良を加え、患者さんに選んで頂きます」 「……」 「そしてそのDIAプロトタイプとして改良されたのが私です。そしてその試験対象とされたのが貴明さん、貴方です」 「そういう事か。それならイルファさんが俺を好きだなんて言わなくても説明してくれれば……」 「い、いえ!その、今回の試験には私から申し出たんです。貴明さんを好きな気持ちに嘘偽りはありませんので」 「そう面と向かって言われると、その」
- 401 名前:また違った未来9 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:39:48 ID:EsfLyiH60]
- 「すす、すいません。とにかく、そういう経緯があった事はご理解頂けましたでしょうか?」
「う、うん。でもサービス過剰だったんじゃ?」 「先ほども言いましたが、私は決心はついてますが根底では貴明さんと結ばれたい。これは揺ぎ無いものです」 「……」 「メイドロボでも形はどうあれ幸せになれるんですよ、医療機器といっても色んな出会いや形があるんですよ。そういった事もこれから生まれてくる妹達に見せてあげれたら。とも考えています」 「色々考えてるんですね……自分が恥ずかしい」 「そんな! 貴明さんが罪悪感を感じる必要はありません。私がしたいからしている事ですのでどうかお気になさらずに」 そう言って少しはにかみながら微笑むイルファさんの顔をまともに見る事が出来なかった。 さっき感じたこの想い。伝えてしまって大丈夫だろうか? しかし考えている事を素通りして俺の口は勝手に動いていた。 「イルファさん」 「はい?」 「今すぐには無理かもしれないけど、俺頑張ります。イルファさんが笑った顔が好きです」 「た、貴明さん!?」 「場に流されて言ってる訳じゃないです。俺なりに考えて出した答え……もし」 「はい……」 「俺がまた社会に出れる日が来たら隣を歩いてくれますか?」 「たか……あきさ……ん」 俺の腕にしがみつくイルファさんは、涙を流せないので泣いてはいないがきっと心は泣いてたと思う。 こんな泣き顔なら悪い気はしないなぁ。 それでも、やっぱり笑顔のイルファさんが見たい。頑張ろう、俺。
- 402 名前:また違った未来10 mailto:sage [2008/03/12(水) 01:46:46 ID:Vh53vbhkO]
- 「実験は成功みたいですね。長瀬主任」
白衣の研究員は嬉しそうな表情を浮かべ、現場上長に話しかける。 「そうだねぇ。まぁ彼の場合は十分な勝算を持ってたけどね」 言ってカラカラと笑う。 「ではDIAタイプの実験結果としてお国に提出しておきますね」 「頼んだよ……しかし、これからが大変だぞ少年。他のお姫様が黙っていないだろうからな」 「閉じ込めっぱなしでしたもんねぇ」 研究員も苦笑いでそれに答え、ちらりと隣接した部屋へのドアを見る。 『イルファ・ミルファ・シルファのおへや』 fin
- 403 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 01:48:21 ID:Vh53vbhkO]
- 以上になります。
ラス1だったので携帯から書き込みしましたが 読みづらかったらすいませんorz ではおやすみなさいです
- 404 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 02:06:30 ID:kiwk+K9CO]
- >>403
GJ!!
- 405 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 05:50:11 ID:L6EExxas0]
- 正直微妙・・・・・・。
キャラクター歪めて話のとっかかり作るやり口は三宅だけで満腹ですわ。
- 406 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 07:55:07 ID:RhYqaEVA0]
-
- 407 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 08:27:10 ID:fPiAGGdx0]
- 注意書きを入れてくれ。
キャラが違うと・・・
- 408 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 09:08:59 ID:Vh53vbhkO]
- 読んで下さった皆様、ありがとうございます。
至らないばかりに不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。 自分の中で、ではありますが改悪のデッドラインみたいなものが出来上がったのと 投下する時の注意点が増えました。 この失敗を次に生かし、 今後投下する際も注意したいと思います。
- 409 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 09:28:10 ID:f+x23Uwl0]
- いや、良かったぞ。乙のGJだ。
- 410 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 09:30:56 ID:5A2+WUsX0]
- >>408
好みの問題だから気にすることないと思うけど? 俺はアリだったから結構面白かった。
- 411 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 10:49:09 ID:Xa5Tm65QO]
- そーいえば、まとめサイトの中の方はお疲れになってしまったのかのう。
前スレも落ちてしまったようだが。
- 412 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 15:09:12 ID:KN3mSIbGO]
- >>408
乙です 俺は楽しく読めました 貴明がこうなってる可能性もあるし別にそんなに設定違うとかも感じなかったし イルファさんもへたに下品じゃなくてかわいかったし ただイルファさんが貴明に惹かれる理由みたいなのもちっときちんと用意してほしかったかも まあ本編でもイルファさんが貴明に惹かれる理由ってよく分からないし あ、でもイルファさんの中では瑠璃>貴明なんだっけ?
- 413 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 15:35:31 ID:L6EExxas0]
- 未来の可能性とか言い出したら、何でもありになるだろうが。
正直引篭もりとか負の属性追加物の大多数は、 作者の現況投影の手慰み物にしか思えんわ。
- 414 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 15:37:37 ID:FP4+0RR60]
- 最近は社員によるSS叩きが横行しすぎじゃね
- 415 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 19:41:48 ID:qIklqz3E0]
- 社員てどこの社員だよw
意見はそれぞれっつーことでいいんじゃないの そらダーク系はほのぼの系よりも不興を買う可能性は大きくなるが、 だから書くなとか投下するなってわけでもないし。書くのも自由。感想も自由 >413 そして萌え物の大多数は作者の現況反投影の手慰み物なんだなこれが
- 416 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 21:33:21 ID:CRyLe59o0]
- 郁乃スレだと既にSSとか書いてるのは糞とか言ってたのがいたなぁw
- 417 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 22:06:33 ID:Bf3g0Zdz0]
- ホント余計なお世話だよなあ
温い空気の中で馴れ合ってるのが気に食わない奴ってなんなんだろ 放っておいてくれって感じだよなw
- 418 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 22:17:09 ID:D7D77PFw0]
- まぁでも、ちょっとこれはないだろ?
という設定はどうだかなぁと思うが。
- 419 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 22:34:52 ID:hQcIL0QB0]
- まぁSSなんだし好きに書いたらよろし
フルプライスなのに、好きに書いてる輩……げふんげふん それより>>418のIDなかなか
- 420 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/12(水) 23:23:01 ID:kiwk+K9CO]
- じゃあ、今度から暗めの設定のときは、ネタバレしない程度に投下前に注意書きすればいいんじゃないか?
そうすれば、後は読んだ人の事後責任になるし
- 421 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 00:49:58 ID:EHF0f6TO0]
- >>413
>未来の可能性とか言い出したら、何でもありになるだろうが。 ゲームで描かれなかった可能性を書くのがSSだろう?キャラご との誕生日だったり、イベントだったり >>420 注意書きをした方がいいのはわかるが、どこからが暗い話なのか、っていう 基準は人それぞれだからまた荒れる気がする その辺は作者が決めるってことで、「これ注意書き必要だろ」って思ったら 荒れないようにレスする、とか
- 422 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 02:10:15 ID:LPO6o5eJO]
- たまに投下もする立場から言わせてもらえれば、出来れば注意書きとかは勘弁して欲しいかな。
それでなくてもさるさんや連投規制に怯えてるのに、前書きに貴重な一回を費やすのは正直勿体ない。 ネタバレ警告だってもういらないだろう?って思うし。 とにかく、投稿回数一回が重いコトもわかって欲しいなあ。
- 423 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 03:36:34 ID:waxKn/xm0]
- ぶっちゃけどんな可能性だろうがそれが原作の世界だと読者に思われなかったら失敗
思われない人数が多いほどダメなだけ。 注意書きうんぬんは、感想に対して周りがとやかく言わなければそれで解決だろ
- 424 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 04:44:44 ID:j0KlRRiGO]
- 投下宣言するときに、一緒に注意書きを書けばレス数を増やす必要はないんじゃないか?
例えば、 投下します 〇レスほど ヤンデレ注意 キャラが壊れてます とか
- 425 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 11:10:06 ID:eMn2PmLeO]
- あれ?でも前投下したときは重要な点が違ったよね?
おとめちっくいらねとか ここの住人も変わったなぁ、見るところは文体のみだったのに いつのまに話にまで口出すようになったの? 大体注意書き書いてるじゃん
- 426 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 11:44:08 ID:aiO6olrC0]
- >>425
まあ前ってのがいつごろを指してるのか分からんが これだけ作家の人数が増えて、SS自体も増えたら取捨選択の幅が広がるだろ その反作用で否定的に受け取られるジャンルの幅も広がるのかも分からんね 例えばふたなりものとか、俺は別にTH2のキャラじゃなくてええやんって思うし
- 427 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 12:49:57 ID:5K5tE07NO]
- 「鳩2のキャラでやらなくたっていい」ってのと「鳩2のキャラでやってはいけない」の間は天地だろ
前者の感想を持つのは自由だが、叩く基準は後者にしないとすぐ過疎るぜ
- 428 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 15:07:09 ID:RlaEW4Af0]
- >>426
逆に訊きたいが「鳩2のキャラでやる必要がある」SSってなんだ
- 429 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 15:17:17 ID:aiO6olrC0]
- >>428
人それぞれだから俺に訊かれても答えようがない だから>>423が言ってることが真実ってことさ で、何かマズイことがあるとすれば、>>423が言うところの 原作の世界だと読者に思われなかったら失敗って部分に関してだろうな ただ単に「俺は失敗だったって思う」って個人の感想を書いてるだけなのに 噛みついてくる奴がいるってことだろw 注意書きだの責任だのアホらしいったらありゃしない
- 430 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 19:42:28 ID:r4uZntlw0]
- まあ、フタナリやら陵辱やらは「(SS自体の質に関わらず)一部の読者を不快にさせる話」っていう認識は必要だろうけどね。
そういう話には「一部の方に不快感を与える描写があります」的なことを書いておくのが親切だと思うよ。
- 431 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 19:51:56 ID:RlaEW4Af0]
- ふたなりSSを投下するとき、ちゃんとお伺い立てたっしょ…
- 432 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 20:21:33 ID:A0yMcgf1O]
- 本編投下する前に、話全体の大まかなあらすじを提示しとけば?
そうすりゃ嫌な人は読まなくて済むし、読みたい人は読み進めるだろうし。
- 433 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 20:32:28 ID:xAskZ2QK0]
- なんでそこまでしなきゃならないか?ってことなんだが…
いくらなんでも作者の負担でかいだろ ネタバレ有りとか欝展開有りとかの一言ですむならまだしも 負担を作者にばかり背負わせるのはどうかと思うが
- 434 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 20:33:27 ID:RlaEW4Af0]
- 自分の嗜好に合わなかったなら、黙ってスルーすればいいだけだと思うのですが
俺間違ってるかな
- 435 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 20:34:33 ID:9hNuMvYT0]
- >432
よほどネガティブな感想つけられるのが嫌な作家さんならねw 基本的には、SSスレなんだから好きに投下して好きに感想つければいいだけでしょ
- 436 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 20:36:50 ID:ItCPIUsY0]
- あらすじは色々やばいようなw
まぁ、大まかなジャンルやメインヒロインの提示くらいなら良いような気はするけど。 『TH2雄二エンド後幼馴染モノ、日常ギャグ』『ミルファエンド後ミルファ、イチャラブ』みたく。 エロ有りの場合はも少し詳しく『ふたなり注意』『陵辱注意』『アッー!!注意』とか。
- 437 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 20:36:53 ID:r4uZntlw0]
- 「嗜好に合わなかったなら」の程度によると思う。
寝取られ物とかファンが警告無しで読んじゃった日には、グロ画像見せられるのに等しいダメージ受けるし。
- 438 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 20:39:53 ID:LB9xaBdz0]
- なんというローカルルール祭り・・
- 439 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 20:56:43 ID:NHqE8+kyO]
- テンプレあたりに読み手さんがみたくないジャンル一覧みたいの載せておいて
書き手さんはそこからチョイスして明示しておくとか? 今、よっちエンド後の雄二とユマの話を書いてるんですが 正直、書き手としてはここまで書いちゃうと 見せたい部分を先に出しちゃってる感があります。 でもお気に入りのキャラはたかあきと幸せになって欲しいから 嫌いな展開か確かめたい気持ちもわかるんですよねぇ
- 440 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 21:05:50 ID:NHqE8+kyO]
- 補足です
上のは あらすじ書く事についての自分の意見でした。
- 441 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 21:09:30 ID:MrbC09WM0]
- 消極的な感想を言われてもピィピィ騒がなければいいじゃないかな。
- 442 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 21:33:38 ID:9hNuMvYT0]
- >441
そういうこと。しかも騒ぐのは毎回作家本人じゃなくて周囲だからな 本人が「御意見有り難う御座います」っつってのんのに周りがファビョるのは変だっつーに
- 443 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 21:40:03 ID:IlA8rUHc0]
- まじめに観想書く人間も要るけど、難癖つけるのだけ一人前な人間も多いからな
つーかむしろそっちで荒れて盛り上がるのを楽しんでる人間も結構居るし だから定期的に作家が投稿しなくなって過疎るんだよ
- 444 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 21:45:00 ID:ki3RTkJL0]
- どうなのかねえ。
この手の言い争いをしても何も変わらないってのはこのスレの歴史が証明してるしね。 スルーすればいいってのもずっと言われてきたことだけど結局みんなスルーできなかったし。 こういうSSが投下されればこういう結果になるよ。 過去ログ見てくれば分かる。 これはもう誰が正しいとか間違ってるとか言っても全然意味が無い。 このスレでは起こるべくして起こる現象なんだよ。
- 445 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 21:48:52 ID:DU+qF/V70]
- 起きる時は全く問題ないようなSSでも普通に起きるけどねw
ま、だからこそ難癖は放置でいいだろうと 寂しい奴は放置しても自作自演するかもしれんが、それこそ相手しても仕方ない ちなみに傍目には難癖や叩きのようなレスでも、書き手は意外と嬉しいもんだ >434の言う通り気にくわなかったらスルーが一番厳しい態度
- 446 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 22:03:02 ID:tmkjmvvI0]
- エロパロみたいに連投規制が緩ければ済む話なんだけどな
これはまぁ仕方ないとしか言えないからその中で上手くやりくりすればいいだろ 1レス目で名前欄に注意事項あれば書くとかで良いんじゃないの
- 447 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/13(木) 23:58:15 ID:ItCPIUsY0]
- >>445
>スルーが一番厳しい態度 違いないw よほど厳しいのだと凹む時もあるけど、基本スルーが一番堪えるよな。 「読む価値もないんかな〜〜?」ってさww
- 448 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 00:17:04 ID:95G2PuIxO]
- >>寝取られ物とかファンが警告無しで読んじゃった日には、グロ画像見せられるのに等しいダメージ受けるし。
これとかには全面同意 とりあえず「〜注意」の一行があれば平和になる気がする
- 449 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 02:13:00 ID:a5adgLg10]
- 俺なんかはたまに具合悪くなるSSもあるしな
描写があっち方面で 半分くらいできつくなって読むのやめた
- 450 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 18:22:53 ID:ceoa7BNO0]
- フタナリとか書くやつって頭おかしいだろ
アク禁にしてほしいわ
- 451 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 19:55:28 ID:2YzaOfrr0]
- こんな馬鹿みたいな流れになるから作者居なくなるんだよな。
ふたなりだろーが、TH2キャラでやる必要が無かろうが、書くのは作者の勝手。 ただ、読者が読んでどんな感想つけるのも勝手だけど。
- 452 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 20:04:37 ID:gfIDCE7r0]
- 作者がいなくなる、ねえ
ここ、既に作者しか残ってないような気がするのは俺だけかなw 新しく参加してくれる人はもちろんいるだろうけど、前は書いてたけど今は書いてないみたいな 作者崩れの人ばっかりって印象 いやあ、読むだけの人が、過剰に書き手を擁護したり、過剰に書き手にケチつけたりするかねえ 気に喰わなきゃスルーすりゃいいっつうのは真実だよ 多分、ホントに読むだけの人はそうするから
- 453 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 20:34:42 ID:w3bV+D53O]
- >>452
なるほど、元、あるいは現在同じ書き手だからこそ…かぁ 現に俺も元書き手だったし、だからこそ感想なんかおこがましくて書けない訳だが 大体感想書くにしても書き込むときに読み直して 自分の文が書き手に不快になるようなら書かない事を選ぶ奴が大人だろ 読み手の東鳩なんざ聞いてないしな
- 454 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:04:07 ID:BSPwCRLo0]
- >>452
そんな奴いねえ、とは言わないが、書き手同志のののしりあいと切って捨てるのもどうかと思うが 実際問題として、SSスレに限らず葉鍵はスレ荒らして喜ぶバカも多いし、SSスレは比較的荒らしやすい訳で この間爆撃食らったときもかえって喜んでた奴も居たくらいだしなぁ
- 455 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:12:46 ID:w3bV+D53O]
- まぁここまででスレを50消費したうえに
長文続いちゃったね、どうするよ
- 456 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:18:22 ID:BSPwCRLo0]
- まあ、今までの流れからいくとまたしばらく枯れるかもね
ADの評判もいまいちだし 評判がいまいちだからSSで補完という見方もあるけど、ここまで空気悪くなっちゃうと投下しずらいだろうし 今日は巷ではホワイトデーなんだがなぁ…
- 457 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:24:50 ID:3k/RdMSn0]
- じゃあ今から書く。小学生が書くレベルの意味不明なものになるとだけいっておく。何を言われようが投下する。
- 458 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:25:18 ID:c05mMfqmO]
- 貴明なんてホワイトデーで破産すればいい
実際、タマ姉と姫百合姉妹のチョコ、3倍もしくは1倍返ししようとしたら恐ろしいことに……
- 459 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:28:10 ID:foaet2yF0]
- 流れを変えることに挑戦してみますか。
なんかSSのリクエストを下さい。 キャラでもシチュエーションでもジャンルでも構いません。
- 460 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:30:33 ID:kF+dY8h30]
- >>458
そういう男気を見せるのも補完SSとしてありじゃね? >>459 つーわけで全キャラに三倍返し 働け貴明ホワイトデーのために なんてだうだろう
- 461 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:30:39 ID:foaet2yF0]
- と思ったらもうホワイトデーで書いてる人がいるのか。
自分もホワイトデーで考えてみます。
- 462 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:34:51 ID:c05mMfqmO]
- >>457、461両者ともwktkしながら待ってる
- 463 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 21:48:01 ID:53PhCvAm0]
- じゃあ俺はホワイトライ(善意のウソ)で書くよ!
- 464 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/14(金) 22:35:24 ID:CwmL3+/k0]
- そういや今日ホワイトデーだったなぁ。
……あ、電波が入った。 俺で何人目か知らんけど、書こうかなww ちなみにシルファメイン、ドタバタだな。 週末のうちにはがんばって投下するぞ〜〜、お〜〜!
- 465 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 00:23:11 ID:aMWi8Wc70]
- とりあえず書いたんだけど、どこで行数とか文字数の制限がわかるの?誰か教えてちょ。
- 466 名前:>>457眠いので待たずに適当に入れます。通し番号なし「無題」 mailto:sage [2008/03/15(土) 00:28:26 ID:aMWi8Wc70]
- さわやかな春の風
かすかにその雰囲気をまとった雨が降っている。 「貴明さーん」 春休みだ。人からはなれて自宅で自堕落にすごすのにも飽きてきたが、 今日はまだ一人でいたい。 「貴明さぁ〜ん」 ホワイトデー?なにそれ。おいしいの。 2月14日と対を成す日らしいが今は気にする必要はない。 女の人は義理といって渡したがるが、 それを清算するための労力は3倍、時に10倍あってしかるべきであるという恐ろしい一般の意見が存在し、 義理チョコという名の黒い塊はその甘さに似合わずシビアに、かつ表向き平穏さを保ちながらそれを現実化させようとする。 「お留守ですかー?」 そのために2月14日の苦行を乗り越えたのである。 −カチカチカチ つまり逃げたわけで。 −がちゃ つまり何も要求されるはずはないわけで。
- 467 名前:「無題」 mailto:sage [2008/03/15(土) 00:28:46 ID:aMWi8Wc70]
- 「勝手にあけて入っちゃいますよー」
「もうすでに入ってますよね?ロボットの不法侵入って法的にどういう扱いになるんでしょうか。」 ソファーでテレビを見ながら呆けているところへ、 イルファさんがでこぼこした硬い棒を駆使してこわばった小さな穴を開き、目の前に現れた。 「すみません謝りますから電話に手を伸ばさないでください〜。 勝手にお邪魔してしまったことはお詫びします。どうしても、本能に逆らえず能力を駆使して進入してしまいました。 でも貴明さんもいけないんですよ?ずっとお呼びしているのに出てくださらないんですから。」 要求と謝罪と批判を滑らかに繰り出す。 「まぁその…」 どこに反応して何を返そうかと迷った挙句めんどくさくなって話題を求める。 「なにしにきたんですか?」 「ほわいとでーですよ。ほわいとでー。珊瑚様も言ってました。ほわいとでーやーほわいとやでー。と。」 「意味がわかりません。」 「貴明さん。バレンタインデーは一日中逃げて、結局誰からももらいませんでしたよね?ちょこれーと。」 「うんまぁ今日が怖くてね。」 「そこでです。今日何かを返さなくてはならないというのが貴明さんの負担になるのでしたら、 イベントの趣旨をずらして今日を楽しんでみよう。という提案をしに来たのです。」 「ずらすって…何か別のことをするの?」
- 468 名前:「無題」 mailto:sage [2008/03/15(土) 00:29:28 ID:aMWi8Wc70]
- 朝目覚めたとき、姉さんがいなかった。
今日の朝食当番は瑠璃ちゃんだから、また手伝うという口実でちょっかいかけにいったんだろうと、 特に気に留めず、2度寝に入った。 「あー…アンドロイドなのにスケジュール管理できてないのってどうなのよ…」 瑠璃ちゃんが起きたときすでに姉さんはいなかったと聞いて、思い当たったのだ。 今日はホワイトデー。恋人同士のイベント。 「抜け駆けされたぁぁ!」
- 469 名前:「無題」 mailto:sage [2008/03/15(土) 00:30:06 ID:aMWi8Wc70]
- 「あぁ。貴明さん!強すぎますぅ。もっと優しくお願いしますぅ。」
なんか聞こえる… 勝手に家に入るのはあまりよくないと思ったが、姉さんはその前に無断で鍵を開けているのだ。 そんな感じで、弁解の確認を頭の中でして不法侵入してきたのだが…言い訳は必要なかった。 「はぁっ。はぁっ。そんなこといって、手加減したらここぞとばかりに攻め立てるくせに。」 このパターンは…あれか。やっちゃってると勘違いして突入したら格闘ゲームやってるとかそういうやつか。 とりあえず冷静になろう。深呼吸しよう。 「入るよー…ってなにやってんのよ!」 ナニやっていた。 「わわっ。ミルファちゃん?!」 「あら。もうきちゃったんですか。」 二人とも服を着ていた。着衣プレイか。ダーリンはそういうのがよかったのか。 いや、よく見ると二人手にはコントローラー。あわてた貴明がイルファと離れたが、服はまったく乱れていない。 「もう。ミルファちゃんったら。もうちょっと遅く来てくれたらよかったのに。」 「遅れてきたらどうなってるのよ!ダーリンと何するつもりだったの」 「何って。もうミルファちゃんったら。わかってるくせに。」 イルファの言動はともかくとして、ただ貴明のあぐらの上にイルファが座って格闘ゲームをしていたらしい。 「ダーリンは私のおっぱいじゃないと満足できないんだから!姉さんはそんなことしなくていいの!」 「あら。貴明さんはちょうどよく揉めるサイズの巨乳がお好みなんです。ミルファちゃんのは大きすぎるんです。」 いや…だからいつの間に俺はそういう設定にされたんだろうか… 「いや、なんで争点がいつもそこなの。」 「ダーリンはおっきいほうがいいよね」 「私のほうがいい感じですよね?」 −ぴんぽーん −オトーケモノエース
- 470 名前:「無題」 mailto:sage [2008/03/15(土) 00:30:41 ID:aMWi8Wc70]
- 「おっと。郵便郵便。なんだろなー」
二人の間をすり抜け、そそくさと玄関へ向かう。 「はいはいいまでますよー」 −がちゃ ……えっと…………………ん? 「おとろけものれす。」 「バレンタインれーのおとろけものれす。」 2回言ったそこにはリボンを結んだシルファが立っていた。 リボン。髪に結ぶものですよね。 「あぁ。おかえり。シルファちゃん。」 「ただいまれすご主人様。メンテがちょうろ昨日の終業時間に終わったのれバレンタインれーにあわせて帰ってきました。」 「そっか。調子はどう?」 「いいかんじれす。もともと問題があったわけじゃなくてレポート用のメンテれしたしね。」 「よかったよかった。」 「スルーですか?突っ込まないんですか?突っ込んじゃいますよ?」 イルファの突っ込みの前の振りを入れている間にミルファが突っ込む。 「それ研究所から結んだままで来たの?ははっ。ひっきーだからまぁしかたないかー。」 顎からリボンをかけて頭の天辺で結んだシルファは余裕の表情で繰る。 「ぷぷぷ。体に巻くリボンはシルファとご主人様の契りの記憶なのれすよ。おぽんちミルミルには到底手の届かない崇高なものなのれすよ。」 そうだったんですか。知りませんでした。 「契りって…えぇー!ひっきーのくせにダーリンとそん−−」 「まぁ。リボンプレイですか。さすがは貴明さんです。マニアックな性−−」 それぞれの個性的な反応の中、前のリボンのように固く結ばれたリボンと淡々と格闘しながら、 貴明はまだ来ぬ春の、外の雰囲気を吸っていた
- 471 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 00:31:41 ID:aMWi8Wc70]
- 以上。最後の○忘れたのが今目にとまった。
- 472 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 00:33:17 ID:aMWi8Wc70]
- あぁ。要望忘れてた。まとめサイトにはログの形以外では乗せないでくれるとありがたいです。
- 473 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 01:13:48 ID:ZwepYMTsO]
- >>472
GJ! 書くの早いな。羨ましい
- 474 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 11:46:08 ID:Dmunus8Y0]
- >>471
GJ! でも、シルファ登場の辺りからホワイトデーとバレンタインデーが ごっちゃになってきているような・・・
- 475 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 16:46:25 ID:QisxLYWwO]
- 流れをぶったぎって申し訳ないですが、
このみ物のSSが出来上がったので、投下したいと思います。 今回は幼なじみもので、極ふつうのありふれたストーリーになっています。 Hはなしです。 かなりの長編ですので、30レスほど使わせていただくかと思います。
- 476 名前:序章〜エピローグ〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 16:48:16 ID:QisxLYWwO]
- (好き・・嫌い・・・・好き・・・嫌い・・・・・・!好き!)
「えへへ〜。また2人の恋愛運は大吉なのでありますよ〜♪」 誰もいない私の部屋。春の足音が聞こえてくるこの季節。日曜日のお昼前。 私はいつものように占いの雑誌を眺めていた。 「なになに・・・?乙女座は・・・・」 占いの結果が重要なのではない。ここに書いてあるコメントを読むことが重要なのだ。 ・・・私の自論だけど。 『過ぎてしまった時間は取り戻せません。ただあなたにできることは・・・・ (・・・ゴクッ) ・・・・・・後悔することだけです。』 ・・・いつも通りわけのわからないコメントだ。 まあ、それがこの雑誌のウリでもあるわけで・・・。 「本当に恋愛運大吉なのかなぁ・・・。なんか心配になってきたでありますよ・・・・。」 あまり頭の良くない私には、このコメントはただの戒めにしか聞こえなかった。 「後悔・・・か・・・・・。」 本を床におく。
- 477 名前:序章〜エピローグ〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 16:48:47 ID:QisxLYWwO]
- 後悔していることなら沢山ある。
沢山・・・・ でも、この想いが届くことはなくて・・・・ (この関係が壊れてしまうくらいなら、今のままずっと、ぬるま湯に浸かっていた方がいいのかな・・・・。 たとえいつか、想いを伝えられないまま壊れてしまったとしても・・・・ 少しでも・・・長く・・・。) 去年と比べて何か変わったことはあるだろうか。 家の前の桜の木は、心なしか去年よりも多くの蕾をつけているように思えるけど。 背もあまり伸びてないし、胸も全然大きくなってない。そして何より・・・ 『2人の距離は少しでも短くなったのだろうか。』 「このみ〜。ごはんよ〜?」 「あ、は〜い。」階段を駆け降りる 「なぁ〜に?また相性占いでもしてたの?」 「そ、そんなんじゃないってば〜・・・。」 「ふふふ。さ、ご飯にしましょう」 「もう・・・お母さんってば・・・・」 これは、とある女の子の小さな恋の物語。 どこにでもある、ありきたりな恋。 でも、彼女にとってはたった1つの恋。 では・・・・・引き続き本編の方、お楽しみください。
- 478 名前:第1章〜予兆〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 16:49:42 ID:QisxLYWwO]
- 新学期が始まった。
通学路の桜並木は、溢れんばかりの花を惜しげもなく舞い散らせていた。 4人で歩く朝の登校風景は昔と何ら変わりがない。ただ変わったとすれば・・・・ 「雄二・・・夜遅くまで何やってるのかと思ってたら・・・・」 タマ姉こと向坂環が俺達の通う学園を卒業して、近くの別の学園へと進級したことくらいであろうか。 まあ3年制の学園なわけで、いつかこんな日も来るって分かってたけど・・・・・ やっぱりちょっと寂しかったかな。 このみなんて大泣きしてたしな。通学はいつも通り一緒にできるっていうのに・・・。 「たかくん・・・。たかくん?どうしたの?」 「え?いや、なんでもないよ。・・・それより雄二は?」 「ゆうくんなら坂の下でお昼寝中でありますよ?」 (・・・タマ姉・・・・)
- 479 名前:第1章〜予兆〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 16:51:21 ID:QisxLYWwO]
- 「もう・・・ゆうくんだらしないなぁ。・・・ちょっと迎えにいってくるから待ってて。」
「あぁ。」 「絶対待っててよーー!」 ・・・・元気な奴だ。世界中のみんなから元気を分けて貰ってるんだろうなぁ・・・・ 結んだ髪をピョコピョコと踊らせながら坂を下っていく。 「タカ坊もあと一年で学園卒業ね。」 「・・・うん。」 そっか・・・・あと一年か。 一年しか・・・ないのか・・・・。 「ふふっ。何寂しそうな顔してるのよ。」 「いや。楽しかったけど・・・・何かあっという間だったなぁって。」 (少しでも長くこの楽しい時間が続いてくれればなぁ・・・。) そう思っていた。 刺激的な出来事なんていらない。ただこの状態のまま、いつまでもみんなと仲良く・・・・ 「・・・・タカ坊?」 「え?あ、ごめん。・・・桜に見とれてて。」 嘘じゃない。今年の桜は例年よりも多く咲いていて、見とれてしまうほどの美しさなのである。
- 480 名前:第1章〜予兆〜その3 mailto:sage [2008/03/15(土) 16:51:53 ID:QisxLYWwO]
- 「ふぅ・・・・。まあいいわ。それより・・・・・・」
急にまじめな顔になるタマ姉。そして・・・ 「あと1年しかないんだから、後悔しないようにね。失われた時間は取り戻せないんだから。 それと・・・・・このみをよろしくね。」 「わかってるって。タマ姉の代わりにしっかり面倒みとくから。心配しなくていいよ。 階段の手すりのぼりもやめさせるし・・・・・・」 「・・・・ふぅ。」 大きなため息を吐くタマ姉。なんだろう。俺、何かおかしなこと言ったかな・・・。 「・・・・まあいいわ。じゃあ私はここで。またねタカ坊。」 「じゃあ。」 タマ姉を見送り、坂の上でこのみ達を待つ。 『本当に。本当にあなたは何もわかってない。』 「え・・・・・・?」 あわてて後ろを振り返る。 しかしそこには人の姿は見当たらず、散った桜の花びらが春風に誘われて舞っているだけであった。 (・・・・・誰だろ・・・今の・・・・・) 「お待たせ〜。はぁ・・・はぁ・・・・。じゃあ行こう?」 「え?・・・・あぁ。」 二人で坂を上って行く。言葉はなかったけど、いつもと変わらぬ心地よさがそこにはあった。 門をくぐる。最後の学園生活が幕を開けた瞬間だった。 (あれ?・・・・雄二は?)
- 481 名前:第2章〜提案〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 16:52:38 ID:QisxLYWwO]
- 放課後、タカくんは何やら用事があるとのことで、私は一人で帰宅の途についていた。
「ん?このみじゃねぇか。」 「あ、ユウくん。・・・・じゃあね♪」 「まてまてまて・・・。 こんなナイスガイが一緒に帰ってやるってんだから、もうちょっとは嬉しそうにしろっての!」 頭をグリグリとなでまわされる。 「ユウくん、それがなければ絶対にモテると思うんだけどなあ・・・・」 「くっ・・・・・」 お世辞ではない。ユウくんは実際かなりかっこいいと思う。問題はこの性格・・・・・。 タマお姉ちゃんからも (このみ。雄二にだけは近づいちゃだめよ?バカがうつるかもしくは妊娠しちゃうからね?) って釘をおされてるし・・・・・・。 「・・・・・・今日という今日は負けないわよーーーー!!!」 「ふん。望むところよ。」 坂の上から何者かが猛スピードで駆け下りてくる。 「な、なんだ!?」飛びのくユウくん。 「甘いわね。私のMTBは来栖川特注の超軽量前かごつきハイテク自転車!! なんとモーターまでついていて加速可能。最高時速は60キロを超えるわ!!」 「もうそれ自転車って言わねぇし・・・・・・」 (さすがユウくん。私なんてどこから突っ込めばいいのかわからなかった・・・・。) 「ふっ。それがあなたの本気?・・・甘い。甘すぎるわ。私の車椅子はあと3回変身を残しているのよ?」 「な、なんですって!!・・・・・・」 ・・・・・・・・・バカは風のように去っていった。
- 482 名前:第2章〜提案〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 16:53:35 ID:QisxLYWwO]
- 「・・・・・・。」
「・・・・・・。」 「そうだ。そういえばこのみはさ、 (ユウくん・・・・無視ですか。) 最近貴明とどうなのよ?」 「ふぇ?!どどど、どうって・・・・?」 急な話題に戸惑う私。 「告白とか、まだしてねぇのか?」 「そ、そんなのしてないでありますよ・・・・。でも・・・・ユウくんにはお見通しなんだね。」 「んぁ?このみが貴明のこと好きだってことか? ばーか。んなもん誰だって気づいてるっつうの。ましてや俺なんて、何年幼馴染やってると思ってんだよ。 気づいてないのは・・・・・・当の本人くらいだろうな。」 「そう・・・・だよね。」 この道の桜は毎年変わらずに同じ姿を見せている。そして今年も。 しかしその光景は私には全然綺麗に見えなくて・・・・・。 「よーっし。んじゃ、この優しい雄二様が一肌脱いでやるかな!」 「・・・・え?」 「ほれ、ちと耳貸せ・・・・・。」 「・・・え?ほんと?・・・・ありがと!!でも・・・・いいの?」 「いーんだよ。ちびすけを悲しませたら、姉貴に何されるかわかんねぇしな。 それに・・・・そろそろお前と貴明の笑顔も見てみたいしな。」 へへっと笑い、頭をなでてくるユウくん。 どうしてこんなにも沢山の人が私のことを応援してくれるのだろう。よっちもちゃるも・・・・ユウくんも。 「・・・・ありがとう。ユウくん。」 「いいってことよ。」 また頭をなでまわされる。 「礼なら・・・・・姉貴に言ってやれ。」 「・・・・・?」
- 483 名前:第3章〜友情〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 16:54:23 ID:QisxLYWwO]
- 翌朝、いつもより早めに学園に着くと、えらくご機嫌斜めな郁乃ちゃんが、教室の真ん中で負のオーラを放っていた。
この日に限って、郁乃ちゃんに近寄る者はほとんどいなかった。 「い、郁乃ちゃん。おはよう。」 意を決して声をかけてみる。 「どうしたの?」 「いや・・・別に。どうして私の車椅子は加速しないんだろう・・・・いや、そもそも変身のタイミングが・・・・・・」 朝から絶賛不機嫌中な郁乃ちゃんは、どこから持ってきたのか机の上の『枕』に鉛筆をプスプスとさしこみ、『バウムクーヘン』を胃に流し込んでいた。 (そっか・・・・春だもんね。) 「プス、プス・・・プス。」 (春はおかしな人が増える)というタマお姉ちゃんの言葉を思い出して一人納得し、私は今日一日を過ごした。 ・・・・・・・・・・・・。 「それって、もう一回病院送りにした方がいいんじゃねぇか?」 今日もユウくんと二人での帰り道。 朝の郁乃ちゃんのことを話すと、ユウくんはケラケラ笑いながらそう答えてきた。 「む〜。郁乃ちゃんは変人じゃないよ。」 「んなこといってもよー。 車椅子が加速(笑 バウムクーヘン流し込み(笑 ・・・・しまいには枕に鉛筆プスプスだろ?(流 もう精神が異常としか・・・・・・いや、まてよ。考えようによっては・・・・天然キャラか? いや、それにツンの要素も兼ね備えている・・・・。ムフッフ。これはなかなか・・・・・・・」 (ユウくんって・・・・人生楽しんでるなぁ。)
- 484 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 17:08:43 ID:R3DMb/ww0]
- 支援
- 485 名前:↑の中の人 mailto:sage [2008/03/15(土) 17:09:02 ID:+MAKzWDd0]
- 猿さん来たんで一旦中断。。
- 486 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 18:22:56 ID:ZwepYMTsO]
- 投下支援
- 487 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 18:43:29 ID:lyV9Oq+S0]
- 紫炎の霞城
- 488 名前:第3章〜友情〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 18:49:10 ID:+MAKzWDd0]
- 「・・・・お。そうだ。ほれちびすけ。ちゃんと手配しといてやったぞ。」
ユウくんはそう言って、遊園地のフリーパスポートを2枚私に手渡した。 「あ・・・・ありがとう!!いつか絶対にお返しするね。」 「んなもん期待してねえっつうの。そんなことする暇あったら・・・・貴明に何かしてやれ。」 ユウくん・・・・優しいなあ。 「えへへ〜♪それにしても・・・・・ユウくんも、本当にタカくんのこと好きなんだね。」 「だから何でそうなる!!・・・まぁいいや。 絶対忘れるなよ?今週の土曜日だからな。その日貴明は何の予定もないはず。 ・・・・あと1年しかないんだ。しっかりやれよ。」 「うん・・・・。わかった!!」 「このみ・・・・がんばれ。」 その言葉に一瞬私はドキッとした。 今までにいろんな人から聞いてきた言葉。 今回も、それがユウくんだけの言葉じゃない気がして・・・・・・ 「うん・・・・。私がんばる!!」 柚原このみ、一世一代の大勝負であります!!
- 489 名前:第4章〜忠告〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 18:52:03 ID:+MAKzWDd0]
- (しっかし、このみと遊園地なんて何年ぶりだろうな・・・・)
昼休みにこのみから遊園地のチケットをもらった俺は、それを片手に食堂へ向かう途中だった。 「また女とデート?」 背後から声をかけられる。車椅子の女の子。 「・・・なんだ。・・・・バカか。」 「ちょ、ちょっと!!バカって何よバカって!!・・・・そんなことより、また女とデートなの?」 「え?あぁ。違う違う。このみと遊びに行くだけだよ。たまたま土曜日空いてたしな。」 「・・・・そういうのをデートっていうんでしょ。」 「デートって・・・・。このみはただの幼馴染で、妹と遊びに行くみたいなもんで・・・・・」 「?あれ?あんたたち付き合ってるわけじゃないの?」 「まさかぁ。だからこのみはただの幼馴染で・・・・」 刹那、郁乃の目がスーッと細くなる。 「あんた。まさかとは思うけど、このみにそんな事言ってないでしょうね?」 とても冷たい口調で問いかけてくるプスプス。 しかし俺には郁乃の言っている意味がよくわからなかった。 ・・・・?だって、俺とこのみはただの幼馴染で・・・・・ 「ふぅ。誰がどう見たって・・・・。このみはあんたに惚れ込んでるじゃないの。」 ・・・・・・・・・は?
- 490 名前:第4章〜忠告〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 18:53:00 ID:+MAKzWDd0]
- 「いやいやいや。さすがにそれはないって。」
俺は苦笑しながら答える。 郁乃も、普段は無愛想だけど冗談とか言うんだな・・・・・・。 「・・・・・まぁいいわ。ここから先は私が言うことじゃないし。あと1つだけ。」 郁乃の目がさらに細くなる。 「このみを泣かせたら、ただじゃ済まさないわよ。」 ・・・・・・こえぇ・・・・・・ (ていうか、どうやったら遊園地でこのみを泣かせられるんだか・・・・。) 「よぅ色男。まーたお前は女とデートか?」 後ろから同じような台詞をかけられる。 「・・・・なんだ。バカか。・・・・・・じゃあな。」 「こらこら。まてまて。そのチケットはどうしたんだ?」 「これか?このみが遊園地に行こうって誘ってきてさ。雄二も一緒に行かねえか?」 「・・・・・・俺がいたら何も意味ねえだろうが。」 ぼそっと何かつぶやく雄二。・・・・・・よく聞こえない。 「悪いけど、俺はその日ちょっとした野暮用があってな。」 ニシシと笑う雄二。 「そっか。まぁ楽しんでこいよ。」 「バカやろー。 ・・・・・・楽しんでくるのはお前らのほうだっつーの。」
- 491 名前:第5章〜期待〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 18:54:11 ID:+MAKzWDd0]
- 土曜日。せっかくだからたっぷり遊ぼうというこのみの計画に従い、朝早くこのみを迎えに行く。
「お待たせ〜。・・・・?タカくん?どうしたの?」 「・・・・・・え?あ、ああ。行こっか。」 久しぶりに見たこのみの私服姿はとても可愛くて・・・・女の子らしくて・・・・・・ (女の子?) 顔が火照ってくる。 (い、いや、冷静になれ。このみは俺にとって妹みたいなもんで・・・・) 「あーー!!こーのみー!!」 「あ。よっち!ちゃる!」 途中2人の友達と出くわしたこのみは、楽しそうにおしゃべりをしていた。 何を話してるんだろう・・・・ (いや、そんなことよりもこの隙に・・・顔の火照りをどうにかしないと・・・・) 「このみデートッスか?こりゃ友人として応援しないといけないっしょ!」 「このみ・・・・ファイト。」 「う、うん。私、がんばるね!」 「あとで色々聞かせてもらうから・・・・ほら。さっさと楽しんで来い!!このみ!!」 「・・・・がんばれ。」 ようやく平静を取り戻した俺は、このみと2人で遊園地へと向かった。 なんでこんなにドキドキしてるんだ俺は。 ただこのみと遊びに行くというだけのことなのに。 それだけのことなのに・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 「いいなぁ〜このみは。このみばっかり毎回ずるいっしょ。」 「じゃあ・・・・このみから河野先輩を奪うか?」 「・・・・・・ちゃる、ずるいッスよ。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・
- 492 名前:第6章〜いつもどおり〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 18:55:14 ID:+MAKzWDd0]
- 遊園地に着いた。
はじめは心なしか緊張していたこのみも俺も、時が経つにつれて『いつもの』状態にもどっていった。 昼はベンチでこのみ持参の弁当を食べた。 ところどころ形がいびつで、変な味の具材が入り込んでたけど・・・・。 春夏さんでも失敗することってあるんだな。 「ね?ね?どう?美味しい?」 期待するような目で俺を見てくるこのみ。 「ああ。美味しいぞ。ちょっと変な味のも混ざってるけど・・・・さすが春夏さんだな。」 「・・・・・・そう。」 一瞬このみが悲しそうな顔をする。しかしすぐにいつもの顔に戻り、他愛のない会話がくりかえされた。 ・・・・・・そんなこんなで閉園30分前。 「最後の締めはやっぱりあれだな。」 この遊園地のシンボルとでもいうべき大観覧車。 この町で一番大きな桜の木のすぐ横に立っているというのがウリで、アトラクションの締めにはもってこいなのである。 当のこのみはというと、俺の予想とは裏腹に、いささか緊張した様子だった。 (このみって高いところ苦手じゃなかったよな・・・・) そんなこのみの様子は特に気にせず、俺達2人はゴンドラの中へと乗り込んでいった
- 493 名前:第7章〜小さな勇気〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 18:56:54 ID:+MAKzWDd0]
- ガタン。ゴトン。
ゴンドラは上っていく。高い高い大空へと。 「・・・・・・。」 さっきからタカくんは何もしゃべらない。 (あぁぁ、どうしよう。ドキドキしてきた・・・・でも・・・・・。でも・・・・・・。) 「おい、このみ。見てみろよ。ほら、外。」 言われるままに外を見ると、かなりの高さまで上ってきたことがうかがい知れた。 それでもまだ半分ほどだけど。 「うわぁ――。きれい・・・・。」 心の底から声が出てきた。 夕焼け空に染められた私たちの町はとても小さくて。 そして私たちを包み込むオレンジの夕日と、それに照らされながら舞い散る桜の花びらがとても幻想的で・・・・。 「おひさま・・・・きれい・・・・・・」 自然と声が出てきた。 「本当に綺麗だなあ・・・・・」 タカくんもその光景に見入っている。 (・・・・ありがとうおひさま。ありがとう桜。 あなたたちのおかげで私、少し勇気が出てきた!) もう少しで頂上だ。胸のドキドキはとまらない。今にも気絶しそうだ。・・・・・・でも、 (・・・・がんばれ私!!) 桜との旅はここまでだった。 (がんばれ!!) 「タ・・・タタ・・・・タカくん。」 「ん?どうした?・・・・・・このみ?」 いつもと違う空気を感じ取ったのか、タカくんも神妙な顔つきになる。 「あのね・・・・話があるの。」 もうここには桜は届かない。ゴンドラには私とタカくん。2人だけ。 「大事な・・・・話があるの。」 夕焼け空だけが、私たちを見つめていた。
- 494 名前:第7章〜小さな勇気〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 18:58:45 ID:+MAKzWDd0]
- このみは窓際に立ち、座っている俺を見下ろす格好になっている。
背後から夕日が当たっていて、このみの姿そのものを神秘的なものにしていた。 「タカくんにとってユウくんとかタマお姉ちゃんってどういう存在?」 重い空気とは裏腹に、このみは他愛のないことを聞いてくる。 「どうって・・・・・」 「まじめに!!・・・・まじめに答えて。」 このみの両手は固くギュッと握りしめられている。唇も・・・・・・震えている。 「雄二とかタマ姉は単なる幼馴染だろ?昔からずっと。そしてこれからも。 一緒に笑いあって一緒に泣ける。親友みたいなもんだよ。 もちろんこの・・・・・・」 「じゃあ!!・・・・・・。」 突如言葉を遮られる。あまりの気迫にたじろぐ俺。 今日のこのみは・・・・なんか変だ。 「じゃあ・・・・。タカくんにとって・・・・・・私って何?」 「え・・・・・?」 思わず聞き返してしまう。
- 495 名前:第7章〜小さな勇気〜その3 mailto:sage [2008/03/15(土) 18:59:15 ID:+MAKzWDd0]
- 「河野貴明にとって・・・・・柚原このみはどういう存在?」
普段だったら(何言ってんだよ〜)と一蹴していたかもしれない。しかし、今日のこのみは普段とは違っていた。 何か見えない重荷を背負っているようで・・・・どこか苦しそうだった。 このみの足がわずかに震えている。 「おい、このみ・・・・・。大丈・・・・・」 「私は大丈夫。・・・・・お願い。質問に答えて・・・・・・。」 どうしてここまで俺の回答にこだわるのかわからない。 ・・・・・全然わからない。 俺の答えなんて1つしかないのに・・・・・。 「このみは・・・・・」 夕焼け空がまぶしい。 「俺にとってこのみは・・・・・」 ゴンドラは音を立てて下降していく。 若い2人を乗せて。
- 496 名前:第7章〜小さな勇気〜その4 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:01:35 ID:QisxLYWwO]
- 「大切なかけがえのない友人・・・・親友。大親友だよ。
一緒にいるととても楽しい。逆にそばにいないと不安になる。 妹・・・いや、大切な家族みたいな存在だ。もちろんタマ姉も雄二もみんな・・・・・・」 私の中で何かがはじけ、音をたてずに崩れさっていった。 (家族・・・・妹・・・) 妹じゃない。家族なんかでもない。 私はただ、『1人の女の子』として見てもらいたかったのに・・・・・ せめて・・・・あなただけには・・・・・・ タカくんは慎重に言葉を選んだんだと思う。私を傷つけないように。悪気なんてあるはずもない。 でもそんなタカくんの優しさは、私の胸をズタズタに引き裂いていった。 涙が頬を伝う。 とっさに私は外の風景目をやり、彼に背を向ける。 ・・・・・泣いていることがバレてしまわぬように。 そして・・・・もうこれ以上、彼の優しさに惑わされぬように。 「おい・・・・このみ!!本当にどうしたんだよ。今日のお前、何か変だぞ・・・?」 変・・・か。もうこの際どう思われたって良い。 遠回しな表現はやめて、本当の想いを打ち明けてしまおう。 そして・・・・・ 『もう終わりにしよう』
- 497 名前:第7章〜小さな勇気〜その5 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:03:03 ID:QisxLYWwO]
- 「タガぐん・・・・。このみ・・・・この・・・ね・・。」
だめだ・・・涙が止まらない。言葉もうまく出てこない。 ・・・悲しくて泣いてるんじゃないよ?夕日が・・・まぶしくて。 ・・・・まぶしすぎて。 「わだし・・・タカ・・・・好き・・・ったの。ずっ・・・と」 「このみ・・・・・。泣かないでくれよ。俺が何かしたんだったら謝る。だから・・・・・」 ・・・・・・届かなかった。 彼の耳に、私の声は。 ・・・・・・届かなかった。 ゴンドラは長い旅を終えた。 (最後に・・・・・もう一言だけ。) 「タカくん・・・・ごめん・・・ね」 観覧車の扉が開かれる。係員の指示も聞かず、私は一目散に走り去っていく。 行くあてなどないけれど。とにかく・・・・走っていたかった。 「このみ!!」 後ろからタカくんの声が聞こえる。その声はどんどん遠ざかっていって・・・・・聞こえなくなった。 ふと後ろを振り返ってみる。 ・・・・・・誰もいない。 (どうして・・・こんな事になっちゃったんだろう。) 見覚えのある場所までやってきた。 しかし今は、ここがどこかなんてどうでもよかった。 河原の土手にうずくまり、私は泣いた。 いつまでもいつまでも・・・・・・泣き続けた。
- 498 名前:第8章〜宝物〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:04:17 ID:QisxLYWwO]
- 「ハァ・・・ハァ・・・・」
遊園地の出口まできた。このみの姿は・・・・どこにもない。 息を整え、再び歩き出す。 「・・・・?」 前方に、見慣れた姿の人が1人立っていた。桜の木の下・・・・。このみじゃない。 夕日の逆光を浴びていて、表情まではよくわからない。しかし、 「よう貴明。」 「・・・・雄二?」 一声でわかった。・・・・いや、わからないはずもない。 「どうしてここに・・・?今日は用事があるんじゃ・・・・」 「んなもん嘘に決まってんだろ。・・・つけてたんだよ。 ・・・・今日1日、おまえ達のことをつけてたんだよ。」 (何を言ってるんだこいつは・・・・。雄二の言いたいことが全くわからない・・・・・) 「本当に今日1日つけ回してたっていうんなら・・・・趣味悪いぞ。 じゃあ。わりぃけど・・・・急ぎの用があるんだ。」 そう。早くこのみのもとへ行かないと。 行って・・・・何を言えばいいかなんてわからないけど・・・・・。 そして、雄二の横を通り過ぎ、走り出そうとした瞬間・・・・・・ もの凄い力で肩をつかまれた。
- 499 名前:第8章〜宝物〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:05:20 ID:QisxLYWwO]
- 「まぁまぁ。ちょっと話を聞かせてくれよ貴明。」
おそらくいつもの表情の雄二。 でも彼が発する言葉には所々とげのようなものがあって、心なしか怒っているように思えた。 「・・・・・・・このみはどうした?」 「このみは・・・走って帰ってった。何でかわからないけど・・・・逃げるように・・・」 「最後にもう1つ。」 俺の答えなど耳に入っていないかのように、次の質問を投げかけてくる雄二。 「観覧車の中で何があった。」 肩を握る雄二の手の力が強くなる。 逆光で表情はわからない。 ただ彼の口から発せられた冷たい言葉だけが、俺の脳を揺さぶっていた。
- 500 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 19:06:57 ID:lyV9Oq+S0]
- 紫煙
- 501 名前:第8章〜宝物〜その3 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:08:07 ID:QisxLYWwO]
- 「このみは俺にとってどういう存在なのかって・・・聞かれた。」
「それで?」 「それだけだよ。・・・・本当にそれだけ。 あとは、雄二もタマ姉も含めて、みんな大切な家族みたいなもんだ・・・・って答えただけだよ。」 雄二の手が俺の肩から下ろされる。 「本当に・・・・何もしてねぇのか?」 「だから何回も言ってるだろ!?何もしてねぇって!!本当に何もしてないんだって!!」 だんだんイライラしてきた俺は、怒りにまかせて雄二をにらみつける。 「そうか・・・・何もしてねぇのか。そっかぁ!!あははははははは!!!」 急に笑い出す雄二。 しかしその笑いは『笑顔』の笑いではなく、とても寂しそうで、冷たく乾いた笑いだった。 「そうだよ・・・・。なのに何でこのみは・・・・」 刹那、俺の言葉を遮るかのように雄二が俺の前に立つ。 「・・・・・・雄二?」 バキッ!!! 左頬に激痛が走る。 予期せぬ展開に、俺はただ唖然とするしかなかった。
- 502 名前:第8章〜宝物〜その4 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:11:07 ID:QisxLYWwO]
- 「どうして・・・・・」
うつむき、怒りに震えている雄二。 「どうして何もしてやらなかったんだよ!!!!!!」 胸ぐらをつかみ、まくし立てる雄二。 何かのネジが外れてしまったのだろう。 雄二は・・・・止まらなかった。 「まだわかんねぇのか!?このみがこの日をどれだけ楽しみにしていたか・・・! 一週間も前から準備して・・・・。俺や姉貴に色々相談して・・・・。 ・・・・本当にまだわかってねぇのか!?なぁ!?このクソヤロー!!!」 雄二の目からは涙がこぼれ落ちて、頬を伝っていた。 そのあまりの気迫に動揺し、俺は何も答えることが出来なかった。 「あいつ・・・・もっと他に大事なことを言おうとしてただろ!? ・・・・おい。答えろ!!貴明!!!」 (わからない・・・・。そりゃあ俺だってこの日を楽しみにしてきたよ・・・・ でも・・・それが・・・・) 「・・・・このみはなぁ。今日お前に言おうとしてたんだよ。 ・・・・・お前のことが・・・・・・」 雄二の言葉が遮られる。そして、桜の木の下、俺達の目の前に姿を現したのは・・・・・ 「・・・・・・タマ姉・・・・!!」
- 503 名前:第8章〜宝物〜その5 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:11:48 ID:QisxLYWwO]
- 「タカ坊。」
タマ姉の澄んだ瞳が、まっすぐに俺の瞳をとらえて離さない。 「すこしだけ聞かせてもらってもいいかしら?」 目が細くなり、いつにもまして真剣な表情になる。 「このみはそばにいなければならない存在よね?私達はもちろん、タカ坊にとっても。」 「・・・・うん。」 「タカ坊はこのみのこと好き?」 嫌い・・・・なんて答えるはずもない。 このみと過ごす時間はとても楽しいし、このみがいるというだけで安心させられる。 「・・・うん。」 「最後にもうひとつだけ。」 「・・・・・・いま、このみのことが心配?」 「もちろん。」 大きく頷く。 (当たり前じゃないか。・・・・このみが苦しんでるっていうのに) 「ふふっ。」 突然笑みをこぼすタマ姉。 「タカ坊も・・・このみのことが大好きなのよね?」 「あぁ。」今度は自然に答えが出てきた。 「女の子と接することが少ないタカ坊には、わからなくても仕方ないけど・・・・・。 それがきっと『恋』よ。」 「!?」
- 504 名前:第8章〜宝物〜その6 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:12:31 ID:QisxLYWwO]
- 「それがわかったら、あとはやることは1つしかないわよね?」
タマ姉の優しい微笑みは、夕日に照らされているせいか、とても暖かかった。 「このままだと、このみは本当に壊れちゃうわ。 もしそうなったら、私はタカ坊を一生許さないわ。 今度こそ・・・・。このみをよろしくね。」 そう言い残して、タマ姉は去っていった。 度肝を抜かれた感じだった。 自分1人では絶対にわからなかった。おそらくこれから先も、何もわからなかったであろう。 近すぎて・・・・あまりに近すぎてわからなかった。でも、もう・・・・・・ (俺はこのみのことが好きなんだ。妹じゃない。家族でもない。 1人の女として・・・・このみのことが好きなんだ。) やっと気づいた。これが・・・・・・恋なんだ。 しかし気づいた時にはもう・・・・・ 桜の木の下には俺と雄二だけが残されていた。 「雄二。・・・・ありがとう。」 彼にはどんなに感謝しても尽きることはない。でも今は・・・時間がなかった。 「いいってことよ。それよりほら・・・・早く行け。そして・・・・お姫様を連れ戻してこい。」 「・・・ありがとう。」 「姉貴の想いを無駄にすんじゃねぇぞ。」 最後に雄二はそう付け加えて、笑いながら俺の背中を押してくれた。 最後の言葉の意味はわからなかったけど・・・・最高の笑顔だった。 「ありがとう。」 そう言い残して俺は走り出した。 にじむ真っ赤な夕日に向かって走り出した。
- 505 名前:第9章〜愛情をこえた友情〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:14:27 ID:QisxLYWwO]
- このみの家、学校、あらゆる場所を探し回ったが、このみの姿は見当たらない。
「どこ行ったんだよ・・・・このみ・・・。」 怒りなどは微塵も感じなかった。ただ、心配だった。 ただ・・・・・・このみに会いたかった。 ふと、ある考えが頭をよぎる。 (俺の想いをこのみは受け入れてくれるのだろうか。 いや、それ以上に、打ち明けた想いをこのみに拒絶されたとして・・・・ また同じような関係に戻れるのだろうか? 一緒に学校に行って、笑いあえる。そんな元の関係に・・・・。) 不安が俺の心を埋め尽くす。 「・・・・・・怖い。」 とても怖かった。イルファさんが俺のことをヘタレだと言ったのも、今なら理解できる。 俺にそんな勇気は・・・・ (今まで通りの関係じゃ・・・・ダメなのかな。) そんなことを考えながら河原まで来たとき、俺は呼び止められた。 「河野先輩。」 「・・・・・・。」 振り返る俺。すぐ足下まで、細く長い2つの影がのびていた。 「ちょっと話があるッス。」
- 506 名前:第9章〜愛情をこえた友情〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:16:00 ID:QisxLYWwO]
- 「先輩。聞きたいことが2つだけあるッス。」
「ちょっと待ってくれ。今はそれどころ・・・・」 「まず一つ目。・・・・・今先輩の目の前にいる2人は誰ですか?」 何を言っても逃れられないだろうと察し、仕方なくその場にとどまる。 「誰って・・・・。このみの友達だろ?たしか吉岡さんと・・・・山田さん。」 「・・・50点ッスね。私が吉岡チエ。こっちが山田ミチル。 2人はこのみの『大親友』ッス。」 (・・・・何を間違えていたのだろう。・・・・いや、それ以前に、この質問の意味が・・・・・) 「もう一つだけ。」 表情を変えないまま問いかけてくる吉岡さん。 それを黙って見つめている山田さん。 「さっきこのみを見たんッス。」 「!!どこで見たんだ!!このみは・・・・どこにいるんだ!?」 思わず前に歩みでてしまう俺。 「ここで質問ッス。」 桜の花びらが春風にのって舞い散り・・・・・・・・・・ 「どうしてこのみは泣いていたんッスか?」 ・・・・・・・・・花びらは地面に舞い落ちた。
- 507 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 19:20:49 ID:lyV9Oq+S0]
- 大将軍紫炎
- 508 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 19:25:55 ID:N+4tbw5t0]
- 支援
- 509 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 19:55:57 ID:8vuLiUps0]
- このたま雄二エンドを描くのか斬新だな
- 510 名前:第9章〜愛情をこえた友情〜その3 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:57:35 ID:+MAKzWDd0]
- 「・・・・俺のせいなんだ。
俺自身、このみのことが好きなんだって気づかなくて、このみを女の子として見れてなかった。 でも今は違う・・・・・・」 (だから・・・・今からこのみの所に行こうとしてたんだよ。この思いを伝えるために。) 最後の方は言葉に出来なかった。・・・・・さすがに恥ずかしくて。 「そうッスか。・・・・・やっと自分の答えにたどりつけたんッスね。」 どうして・・・・どうして彼女はこんなにも寂しそうな顔をしているのだろう・・・・・・ 「このみの気持ちも・・・・ちゃんとわかってあげたってことッスよね?」 「・・・・・・え?」 戸惑う。 「いや、だから、このみの気持ちを確かめるために今から会いに行くんであって・・・・・・ このみが俺のことを好きだと思ってる保証なんてまだどこにもないし・・・・・・吉岡さん?」 彼女は唇を噛み締め、うつむいていた。 「よっち・・・・?」 心配そうに声をかける山田さん。 そんな山田さんを払いのけ、彼女は言った。 「先輩、何もわかってない。 このみのこと・・・・・何もわかってないじゃないっすか!!!」 パシッ! 左頬を叩かれた。 おそらく・・・・彼女の全力で。
- 511 名前:第9章〜愛情をこえた友情〜その4 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:58:21 ID:+MAKzWDd0]
- 何度目だろう。今日1日で殴られたのは。
何度目だろう。何もわからないまま相手を泣かせてしまったのは。 目の前の少女は泣いていた。 しかし俺は冷静な判断を下すよりも、理不尽に殴られたことへの苛立ちが先行し、 思わず声を張り上げてしまった。 「・・・何をするんだ!!」 しかしそれにひるむどころか、彼女は滲んだ目で真っ直ぐに俺をにらめつけかえし、言った。 「・・・・何をするんだ・・・・・?それはこっちのセリフッスよ。 私達の大事な親友に・・・・何をするんだ!!!」 怒りは吹き飛ばされてしまった。・・・・・ただ立ち尽くすしかなかった。 「先輩、本当に気づかなかったんッスか?今日のこのみ・・・・。 今日のこのみ・・・・化粧してましたよね?」 「かばんの中の風呂敷はたぶん向坂家のもの。」 山田さんが初めて口を開いた。 そして吉岡さんに何かを耳打ちした後、彼女は川の下流へ向かって走り出した。
- 512 名前:第9章〜愛情をこえた友情〜その5 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:59:19 ID:+MAKzWDd0]
- 「・・・・。」
「あのこのみが化粧ッスよ?あの、まだ幼い感じのこのみが。ほんの少しだけど・・・・。 風呂敷は・・・弁当ッスよね?それが向坂先輩の家の風呂敷だった。 ・・・・・・まだわからないッスか?」 これだけ言われてわからない奴はいないだろう。俺もようやく理解した。 「そっか・・・・このみは俺のことを・・・・・・」 「そうッスよ。少なくとも私達がこのみに出逢ったときからは、ずっと先輩のことを愛してましたよ? 今日だって、化粧までして先輩に可愛いと言ってもらいたかった。 手作りの弁当を作って、先輩に誉めてもらいたかった。 1人の女の子として見てもらいたかった!! ・・・・・・今日はこのみにとって運命の日だったはず。それがこんなことになっちゃって・・・・・・。 ・・・・・このみ・・・・・・苦しかっただろうなぁ・・・・。」 何度も何度も拭うが、彼女の涙が止まることはなかった。 しかしそれでもなお、彼女の目には力がこもっていた。 「でも俺・・・どうすれば・・・・」 もう自分の中ではわかりきっているくせに、自然とこんな言葉が出てきた。 ・・・・・・やっぱりヘタレだ。俺は。 「そんなの簡単ッスよ。」 目をゴシゴシと袖で拭き、彼女は答えた。 「このみに想いをぶつけちゃえばいいんッスよ。」 その時の彼女の表情はどこか寂しげで、とても眩しかった。
- 513 名前:第9章〜愛情をこえた友情〜その6 mailto:sage [2008/03/15(土) 19:59:53 ID:+MAKzWDd0]
- 「でも・・・・」
(これから先も、このみは今まで通りのこのみでいてくれるのだろうか・・・・) そのことを考えると、とても辛かった。 「好きな人に想いを伝える怖さ・・・・今の先輩の気持ちなら、良くわかるッス。 でも、先輩に恋愛の助言をする今の私だって・・・・・・相当辛いんッスよ?」 「・・・・?」 「でも・・・・今日のこのみの苦しみはこんなもんじゃなかったはず。」 ハッと我に返る。 (そうだ・・・・このみだって勇気を出して・・・・。怖かっただろうに・・・・・。) ふと観覧車の中での出来事が思い出される。 このみの緊張してうわずった声。震える足。そして・・・・・・ 最後に見せたこのみの涙。 「本当に・・・・クソヤローだな・・・・。」 「そうッスね・・・・。今日の先輩は、今までで一番カッコ悪かったッスよ。」 イタズラっぽい笑みを浮かべる吉岡さん。 しかし彼女の瞳からまた、大粒の涙がこぼれ落ちてきた。 「このみを・・・・よろしくお願いします。」 すぐさま俺に背を向けて彼女はそう言い残し、走り去っていった。 覚悟は決まった。 そして、俺もまた走り出した。 吉岡さんとは逆の方向へ、走り出した。
- 514 名前:第10章〜犠牲〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:01:09 ID:+MAKzWDd0]
- 春ということもあり、夕日はまだ沈んでいなかったが、辺りは暗くなり始めていた。
泣き疲れた私は土手に座り、何を考えるでもなく、川をただ見つめていた。 (・・・・誰かきた。) その人は何も言わずに私の隣に座った。 「・・・・ちゃる・・・・・」 泣き疲れた疲労からか、私はほとんど無気力な状態になっていた。 それを察したのか、ちゃるは1人で話を始めた。 「よっちは河野先輩のことが好きだった。」 「!!」 思わず横を見る私。 しかしちゃるは表情を変えぬまま、話を続けた。 「でもよっちは自分でその恋を封印して、終わらせた。・・・・・親友のために。」 「そんな・・・・」 あまりの驚きに、自然と声が漏れてきた。 「よっちの恋は散った。・・・・あの桜の花びらのように。 そこに芽を出して花を咲かせる。これが今のこのみに与えられた指命。 このみが・・・・・・私達の親友であるなら。」
- 515 名前:第10章〜犠牲〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:01:46 ID:+MAKzWDd0]
- 「も、もちろん!!ちゃるもよっちも大親友だよ。ずっとずーーっと!!」
「そう・・・・。よかった。じゃあこのみは河野先輩の所に行かないと。 ・・・・そうでないと、よっちに申し訳がたたないぞ?」 ちゃるはにっこりと笑いながらそう言った。 本当に久しぶりにちゃるの笑顔を見た。 「ちゃる・・・よっち・・・・・ありがとう・・・・・。」 「大丈夫だこのみ。・・・・みんなついてる。」 と、ちょうどその時、土手の上の方を走っていく1人の少女を見た。 「・・・・・・よっち!!」 思わず立ち上がる私。すぐさまよっちを追いかけようとした。しかし・・・・ 「このみはあっち。よっちは・・・・・私に任せて。」 よっちが向かったのとは逆の方向を指さし、ちゃるは言った。 大体想像はついた。ちゃるが言おうとしたことの意味は。 「・・・・わかった。」 それだけ言い残し、私はちゃるに背を向けて走り出した。 背中に当たる夕日がとても暖かかった。
- 516 名前:最終章〜運命〜その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:04:04 ID:+MAKzWDd0]
- とにかく走った。吐きそうになってもなお走り続けた。
しばし息を整える。 「休んでていいの?」 車椅子の女の子。・・・・郁乃だ。 「いや・・・・。」 立ち上がる俺。もうすぐ日没だ。休んでる暇なんてない。 「郁乃・・・。いつかはありがとうな。俺、どうにかしてたよ。」 「・・・・いいのよ。それより・・・・・・頑張りなさい。」 そう言って小さな袋を手渡してきた。大きさからして、枕ではなさそうだ。 「それ、このみにあげて。」 「わかった。」 「最後にもう一つ。 ・・・・・ミスドのポイント有効期限は一年間よ。」 「あぁ。一番美味いのがオールドファッションだってのもわかってる。」 俺はありったけの感謝の言葉を述べて、今自分が来た道を引き返した。 真っ赤な夕日に向かって走り出した。 「このみ・・・・・。」
- 517 名前:最終章〜運命〜その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:05:07 ID:+MAKzWDd0]
- (・・・・・・いた。)
河辺にタカくん発見。 タカくんはとても疲れきった様子で、川に向かって私の名前を叫んでいた。 (タカくん・・・・。私そんなとこにいないから・・・・・。) 土手を下りていく。そして彼の背後までやってきて、声をかけた。 「タカくん。」 「・・・・・・このみ!!」 振り返ったタカくんはとても驚いた表情だったけれども、すぐに真面目な顔つきになった。 「このみ・・・・今日は本当にごめん。俺、どうにかし・・・・・・」 「うぅん。私も悪かったの。ちゃんと最後までタカくんに伝えられなかったから。 だから・・・・もう一回だけチャンスちょうだい。」 精一杯の勇気を振り絞って言った。・・・・・・しかし 「・・・・・・ダメ。」 彼の返事は無情なもので、私に告白のチャンスすら与えてくれなかった。
- 518 名前:最終章〜運命〜その3 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:05:40 ID:+MAKzWDd0]
- 「悪いのは全部俺だし、このみは今日1日頑張ってくれた。
だから・・・・・・次は俺の番。」 物凄い緊張感。 (でも、このみだって・・・・・・よし!!) 「俺、このみのことが・・・・・女の子・・・・・・こと・・・。」 うまく言葉にならない。このみも、わけがわからずキョトンとしている。 「このクソヤロー!!」 「このみを・・・・よろしくね。」 「今日の先輩は、今までで一番カッコ悪かったッス。」 ふと、色んな人達の事が頭に蘇り、そして・・・・・・ すべて吹っ切れた。 (・・・・・・ありがとう!!) 「このみ。」 「は、はい!?」 異様な空気を察したのか、このみは固まる。 しかし・・・・・俺は続けた。
- 519 名前:最終章〜運命〜その4 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:06:11 ID:+MAKzWDd0]
- 「今日、このみがいなくなって初めて気が付いたんだ。俺にはこのみが必要なんだって。
今までは近すぎてわからなかったけど・・・・・やっと気づいた。 俺は・・・・・・」 このみの目は大きく見開かれている。 「おれは・・・・・」 「俺は、このみのことがしゅきだ!!!!」 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 (・・・・何で噛んだ。おれ。) 「私も・・・・」 「?」 「私もタカくんのことが好き!ずっとずっと・・・・大好きだった。 いつまでも・・・一緒にいたいよ・・・・。」 「このみ・・・・。」 自然と2人の距離は縮まっていった。 そして、どちらからというわけでもなく手を差し伸べ、抱き合った。 「このみ・・・・。本当にごめん。・・・・ごめん。」 「いいの。・・・・もういいの。こうやってタカくんが来てくれただけで・・・・・・。」 涙を流しながら笑うこのみ。 (やっと笑ってくれた。) 長い時を経て、ようやく2人の影は1つになった。 「えへへ。タカくん・・・・」 「どうした?」 「何だか・・・夢みたい。」 幸せそうに笑うこのみ。 俺はもう一度彼女を深く抱きしめた。 「タカくん・・・・だいしゅき(笑」 (・・・・ちきしょう)
- 520 名前:After その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:06:48 ID:+MAKzWDd0]
- 「今日、このみがいなくなって初めて気が付いたんだ。俺にはこのみが必要なんだって。
今までは近すぎてわからなかったけど・・・・・やっと気づいた。 俺は・・・・・・」 このみの目は大きく見開かれている。 「おれは・・・・・」 「俺は、このみのことがしゅきだ!!!!」 「・・・・・・。」 「・・・・・・。」 (・・・・何で噛んだ。おれ。) 「私も・・・・」 「?」 「私もタカくんのことが好き!ずっとずっと・・・・大好きだった。 いつまでも・・・一緒にいたいよ・・・・。」 「このみ・・・・。」 自然と2人の距離は縮まっていった。 そして、どちらからというわけでもなく手を差し伸べ、抱き合った。 「このみ・・・・。本当にごめん。・・・・ごめん。」 「いいの。・・・・もういいの。こうやってタカくんが来てくれただけで・・・・・・。」 涙を流しながら笑うこのみ。 (やっと笑ってくれた。) 長い時を経て、ようやく2人の影は1つになった。 「えへへ。タカくん・・・・」 「どうした?」 「何だか・・・夢みたい。」 幸せそうに笑うこのみ。 俺はもう一度彼女を深く抱きしめた。 「タカくん・・・・だいしゅき(笑」 (・・・・ちきしょう)
- 521 名前:After その1 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:07:42 ID:+MAKzWDd0]
- (↑一個ミスしました)
その後俺とこのみは、2人で手をつないで家に向かった。 夕日は完全に沈んでしまったものの、帰り道はとても明るく見えた。 このみは、家の前まできても握った手を離そうとしない。 「このみ・・・ほら。」 「・・・・・やだ。」 手を離すよう促すも、このみは言うことを聞かない。 「このみ。春夏さんにこんな所見られたら・・・・」 「あらあら。青春ねぇ。」 ・・・・・・ばっちり見られてる。 「ほらこのみ。タカくん大好きなのはわかるけど、もう夜も遅いし、お家に返してあげなさい?」 「ちょ・・・・春夏さん。」 パッと手を離したこのみは、うつむいて真っ赤になっていた。 「ふふ。じゃあねタカくん。今日はもう遅いから、明日色々聞かせてね。」 「タカくん・・・・また明日!!」 「あぁ。また明日な・・・・・・・・・あ、ちょっと待てこのみ!」 うっかり忘れるところだった。 「これ・・・・。」
- 522 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 20:12:50 ID:8vuLiUps0]
- 支援
- 523 名前:After その2 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:13:22 ID:+MAKzWDd0]
- 「このみを探してるときに郁乃に会ってさ。このみに渡してくれって。」
「郁乃ちゃんが?」 「まあ開けて見ろよ。」 手のひらほどの小さな袋を開ける。その中には・・・・ 「・・・・クローバー?」 「お。これ、四つ葉じゃないか?」 袋の中から出てきたのは四つ葉のクローバーが1つ。郁乃らしくないロマンティックな贈り物だ。 「そうだこのみ。四つ葉のクローバーにちなんで・・・・俺が何か1つ願いを叶えてやるよ。 何でも買ってやるし、何でもしてやる。」 とっさの思いつきにしてはなかなか粋なアイディアだったと思う。 しかし当のこのみは、少しも考えることなくにっこりと微笑んで言った。 「いらない。」 「何も・・・・いらないのか?」 「うん。だって・・・・」 俺の前に立ち、背伸びをするこのみ。そして・・・・・・ チュッ 「一番欲しいものは、もう手に入ったもん。」 そう言って家の中へと駆け込んでいった。
- 524 名前:支援に託け>>474へ>>470の修正 mailto:sage ミスリードに… [2008/03/15(土) 20:25:36 ID:zR1xOK1I0]
- 「おっと。郵便郵便。なんだろなー」
二人の間をすり抜け、そそくさと玄関へ向かう。 「はいはいいまでますよー」 −がちゃ ……えっと………………… 「おとろけものれす。」 「バレンタインれーのおとろけものれす。」 2回言ったそこにはリボンを結んだシルファが立っていた。 リボン。髪を飾るあれですね。 「あぁ。おかえり。シルファちゃん。」 「ただいまれすご主人様。メンテがちょうろ昨日の終業時間に終わったのれバレンタインれーにあわせて帰ってきました。」 「そっか。調子はどう?」 「いいかんじれす。もともと問題があったわけじゃなくてレポート用のメンテれしたしね。」 「その様子だと、実験も順調みたいだね。」 「工学機構に関するものより、DIAに関するものが主なのれ、破綻するまで問らいが表面化しないのであまり意味が無いみたいれす。」 「でも機微な予兆を観るためのものだろうし、問題が無くてよかったよかった。」 「スルーですか?突っ込まないんですか?突っ込んじゃいますよ?」 二人の冗長な会話に耐えかねて、イルファが突っ込みの前振りを入れて入れているうちにミルファが突っ込む。 「それ研究所から結んだままで来たの?ははっ。ひっきーだからまぁしかたないかー。」 顎からリボンをかけて頭の天辺で結んだシルファは余裕の表情で繰る。 「ぷぷぷ。体に巻くリボンはシルファとご主人様の契りの記憶なのれすよ。おぽんちミルミルには到底手の届かない崇高なものなのれすよ。」 そうだったんですか。知りませんでした。 「契りって…えぇー!ひっきーのくせにダーリンとそん−−」 「まぁ。リボンプレイですか。さすがは貴明さんです。マニアックな性−−」 それぞれの個性的な反応の中、前のリボンのように固く結ばれたリボンと淡々と格闘しながら、 はまだ来ぬ春の、外の雰囲気を吸っていた
- 525 名前:After その3 mailto:sage [2008/03/15(土) 20:41:00 ID:QisxLYWwO]
- 残された俺と春夏さんは、ただ呆然とするしかなかった。
「お、おやすみなさい。」 俺はそう言って、自分の家へと逃げ込んだ。 (このみが・・・・キス・・・・・・) 顔が真っ赤になる。心臓もバクバクと音をたてている。 「ちきしょう・・・・・・。」 完全にしてやられた感じがし、俺は1人ソファーにうなだれた。 大好きな人との初めてのキスは・・・・・・ 甘くて、でもちょっとほろ苦い思い出になりました。 (そうだ。) 貴明「・・・・みんなにお礼言っとかないとな。」 このみ「・・・・みんなにお礼言っとかないと。」 あと一年で俺は学園を卒業してしまうけれど、それを嘆くくらいなら、残された時間を有意義に使おう。 そして、もう放したりはしない。 本当に素晴らしい友人達に恵まれたことに感謝をしつつ、 やっと手に入れた大切な、かけがえのない宝物と・・・・・・いつまでも。 いつまでも。 終
- 526 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 20:43:32 ID:QisxLYWwO]
- ようやく終わりました・・・・。
支援してくださった皆様、本当にありがとうございました!! ありふれたストーリーでつまらなかったかもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。 以上、『小さな小さな女の子』でした。
- 527 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 20:47:48 ID:lyV9Oq+S0]
- 乙であります!
- 528 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/15(土) 20:50:51 ID:zR1xOK1I0]
- おちゅ。間にへんなの挟まってるのは ごめんなさい。
- 529 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 00:25:49 ID:giC8hW2F0]
- 乙
郁乃SSといいこのみSSといい見事にADの雰囲気を再現してるな 感心した
- 530 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 02:16:49 ID:XUqfShafO]
- GJ!いやいや、なんかこういう普通ぽいのもやっぱりいいな。
- 531 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 02:18:20 ID:ctCnQhse0]
- 三宅っぽい気がw
- 532 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 08:26:47 ID:zOgZqHr70]
- 低スペック組はADを諦めるしかないのかorz
- 533 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 09:37:19 ID:EEn28m8v0]
- でも、このみシナリオでも貴明はかなりのヘタレですから、三宅臭がしても
問題ないのではないでしょうか。私は普通に楽しめました。
- 534 名前:526 mailto:sage [2008/03/16(日) 09:37:39 ID:AeSqCLcNO]
- 感想ありがとうです!!
めちゃくちゃ嬉しい ・・・・・けど、三宅とか言わんで下さいよw
- 535 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 10:27:27 ID:oD0rH61S0]
- 確かに三宅に失礼だな
- 536 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 13:53:38 ID:yG1Pgbiv0]
- ちとネガティブな感想で申し訳ないんですが
貴明の心理描写が少なめなせいか、なんか周りの人間に「お前はこのみが好きなんだ」と 洗脳されてる印象が拭えない感じがしました 連載か前後編ぐらいにして貴明側の心理描写も多くして欲しかった気がする 俺がADやってないせいなだけもあるかも、ですが と、色々書いちゃいましたが、出来が良いだけに言いたくなっちゃいました 次も懲りずに書いて欲しいです
- 537 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 14:08:34 ID:oIm4I92V0]
- 洗脳ってのは言い得てるな
それまさに三宅の系譜だわ ADの雰囲気を再現ってのが皮肉にしか見えない俺アンチ三宅
- 538 名前:459 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:30:02 ID:CcpeY6Dx0]
- かなり時期遅れですが今からホワイトデーSSを投下します。
ADとはほぼ無関係。 内容は軽いコメディで間違いないと思います。 本編は20レスを予定しています。 規制による投稿の停止が予想されますので、投稿が止まった時はスレを通常進行させて下さい。
- 539 名前:向坂雄二のホワイトデー 1/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:31:43 ID:CcpeY6Dx0]
- 年に1回のこととはいえ、俺にとって今日ほど学校に行きたくない日は少ない。
だが学生に有給休暇はありえ無い。 もしあったとしても、そんなずる休みを姉貴のアイアンクローが許してくれないだろうけど。 しかし、これは精神的な体罰と同じじゃないのか? 「ふう……」 俺は静かな溜息と共に、校舎の窓から広がる空を眺める。 青く広がる晴天に、白い雲がいくつものんきに浮かんでやがる。 ああ、イヤになるほどいい天気だぜ。くそ。 しかも、さっきから見たくも無い光景が俺の目の前にちらついてやがる。 その元凶が俺の幼馴染にして一番の親友だっていうんだから、もう救いがどこにも感じられないぜ。 「ホワイトチョコとか花とか……なんだか定番のものばっかりになったなあ。 無難かもしれないけど、ほんとにこれでよかったのかな?」 「……」 紙袋にお返しプレゼントの数々を詰め込んで、貴明はそれらを品定めしながら何事か呟いている。 そうか、こいつはこれだけの数のチョコをバレンタインに貰っていたということか。 ありえん…… 「なあ雄二、お前に聞いてるんだぞ? 聞こえてるか?」 「……」 ああ。聞こえてるよ。 でもあえて聞こえてない振りをしてるんだろうが。 察しろよ貴明。
- 540 名前:向坂雄二のホワイトデー 2/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:32:12 ID:CcpeY6Dx0]
- 「なあ、なんか言ってくれよ。お前だってホワイトデーのお返しくらい選んだんだろ?」
うわあ!! 今の一言で、さすがに俺も我慢が切れちまったぞ。 いや、切れてもいいよな?? 「うがああああああ!! 俺はお返しなんか選んでねえんだよ!! 悪かったな!」 「うわっ?? な、なんだよ雄二」 「なんで、なんでまたお前なんだよーー!! おまえばかりが美味しい目にーーー!!」 「く、苦しい……はなせよ」 今日も俺はまた貴明の首を絞めつけながら、いつものセリフを叩きつける。 なんだかいつもこんなことばかり言っているみたいで情けねえぞ、最近の俺。 だが、今日ばかりは黙っていることなどできそうにない。 なにしろ今日はホワイトデー。 貴明が心底うらやましくなる日、ナンバー2だ。 ナンバー1は……まあ言うまでもないよな。 つーか、学校にそんなプレゼント類持ち込まないでくれ。目に毒だ。 「いや、そんなこと言われても、俺だって結構大変なんだぞ。 ホワイトデーって何を贈っていいのかよくわからないし……みんなに配るのだって一苦労だ」 ぐ……貴明のぼやきがまた憎らしい。 へえへえ。どうせ俺には全然分からない悩みですよ。 いや、俺だけではあるまい。 ホワイトデーにプレゼントを選ぶ悩みなんて、モテない男にはぜんっぜん分からない悩みの筆頭候補であろう。
- 541 名前:向坂雄二のホワイトデー 3/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:32:34 ID:CcpeY6Dx0]
- 『ちきしょう……貴明のやつ……』
『あいつにかける呪いは無いのか??』 俺とほぼ同意権の男どもが貴明のさっきのぼやきを耳にしたらしい。 あちらこちらで怨嗟の声も上がっていることに、こいつは何処まで気が付いているのか。 きっとまったく気が付いてないんだろう。 相変わらずとぼけた男だ。 どうしてこんな奴がこんなにもてるんだ?? どうして俺はぜんぜんもてないんだ?? 「そんないじけたことばかり言ってるから雄二はもてないのよ」 「うるせえなあ……もぐもぐ」 姉貴のうるさい説教に耳をふさぎながら、俺はサンドイッチを口の中に頬張って牛乳で飲み下す。 場所は変わってここは学校の屋上。 姉貴とチビ助、それに貴明と俺とでいつも通りの昼食の時間を迎えた。 皆の話題は期せずしてホワイトデーの話となり、それで今朝の俺の失態が姉貴にばれてしまったのだ。 だから今、俺は姉貴から口うるさく説教されてるってわけだ。 まあいつものことではあるけどな。そうそう気にしていられるかよ。 でも、今日は話題が話題だけにちょっと俺にも堪えるが。 「そんなことより、雄二だって一応貰ってるでしょう、チョコレート。ちゃんとお返しするところから始めたらどうなの?」 一応で悪かったな。 ああ、そうさ。俺はどうせ貴明にはまるでかなわねえよ。 数でも内容でもな。 「そんなこと言ってもなあ。だって姉貴にお返しなんてしたって、なんのフラグにもなりゃしねえよ」 「フラグってなあ、お前」 「心底呆れるわね……」
- 542 名前:向坂雄二のホワイトデー 4/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:32:55 ID:CcpeY6Dx0]
- 貴明と姉貴の溜息が重なる。
な、なんだよ? 姉貴にお返しなんかしたってまったく意味ないだろ? それのどこがおかしいんだよ。 「義理チョコだって、立派な贈り物じゃない。 誰かの気持ちを大切に出来ないなんて、それはもてるとかもてないとか以前の問題よ」 いつもの姉貴の説教である。 言ってることはそりゃあ正しいかもしれないが、 「でも姉貴になあ……」 どうにもそんなことする気になれん。 普通の男子高校生として、それはどうなんだ? 姉とか母親にチョコレートを貰ったら、ホワイトデーに花を贈ったりするのか? ばからしい。 「そういえば、わたしもユウ君からほとんどお返しもらったことないよ……」 このみがちょっと遠慮がちに申し出た。 まあ、そういえばこのみにもホワイトデーになにか贈ったことはなかったな。 毎年俺にチョコレートをくれる数少ない女子ではあるものの、あまりにも身近でまったく気に留めていなかった。 っていうか、このみのチョコはチョコのうちに入らないだろ。 「あー、えーと確か何年か前にキャラメルやっただろ」 「箱の中に残ってた最後のいっこをポンっとくれただけだよ。 あんなのプレゼントじゃないよー」 「プレゼントは値段じゃないぞ。気持ちだ」 「その気持ちが一番篭ってないと思うなあ」
- 543 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 19:35:12 ID:B70nGi5g0]
- 雄二頑張れ支援
- 544 名前:向坂雄二のホワイトデー 5/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:35:32 ID:CcpeY6Dx0]
- このみが不満げに頬を膨らませ、それに同意するように姉貴が頷く。
な、なんだか俺の立場が微妙に危ういぞ。 「た、貴明だってチビ助や姉貴にホワイトデーのお返しなんてしてないよな?」 ちょっと焦った俺は、助けを求めるような気分で貴明に話題をふった。だが、 「そんなわけないだろ。貰ったときはちゃんと贈り物ぐらい用意しておくに決まってるじゃないか」 お前は何を言っているんだ、と不思議そうな顔で答える貴明。 し、信じられん…… 「このみは去年、タカ坊から何を貰ったの?」 「フォトスタンドだよ。そのとき一番のお気に入り写真を入れておくのに使ってるよ」 なんだ。安物じゃねえか。 「別にそんなもの買ってもらわなくても、自分で好きなの買えばいいじゃねえか」 「バカね。気持ちが一番大事だって言ってるじゃない」 「わたし大切にしてるよー。だって、タカくんの贈り物だもん」 嬉しそうに笑うこのみの素直な笑顔がやけにまぶしい。 ふと俺は不安になる。 なんだ? 俺ひとりが間違っているのか? い、いや。この三人が仲良すぎるだけだ。 まあ、幼馴染としての付き合が長いのはいいことだ。俺だってその中の一人だしな。 しかし、俺たちはもう高校生だぞ? そうべたべたせずドライにカッコよく付き合うのが大人ってものじゃないか。 だいたい、俺が求めているバレンタインやホワイトデーはこんなおままごとみたいなものではない。 もっとドキドキとか、色気とか、萌えとか。メイドとか。 そういう楽しいものがそこには全然ねえじゃんか。
- 545 名前:向坂雄二のホワイトデー 6/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:36:00 ID:CcpeY6Dx0]
- 「でも、タカくんお母さんにもあげてたよね、ホワイトデー」
「なに? 貴明、お前春香さんからもチョコ貰ってたのかよ?」 「い、いや、貰ってないけど。でもこのみのチョコ作りを手伝ってくれたって聞いたから。 少しだけでもお礼をしておこうかな、と思って。ちょっとおおげさだったかもしれないけど……」 「お母さん、タカくんにプレゼント貰えてすっごく喜んでたよ。ここ何年もお父さんからも貰えてなかったって。 『久々に女に目覚めた』って言ってたよ。『来年のバレンタインは期待していいわよ』って、タカくんにも伝えてくれって」 「さすがはタカ坊ね」 関心したように頷く姉貴。 た、貴明のやつ、意外なところで恋愛ポイントを稼いでるじゃねえか。 いや、春夏さんに好かれたって別にうらやましくなんか。 うらやましく…… 『うふふ。雄二くんにも教えてあげましょうか?恋の試験☆』 その瞬間、不意に俺の頭の中に閃いた映像は、何故か女教師に扮したやたら色っぽい春夏さんだった。 や、やっぱうらやましいじゃねえかあ! 「ほら。また負けてるわね雄二」 「そ、そんなことねえよ」 姉貴にずばり的を得た指摘に、それでもなんとか言葉だけは強がって見せる。 だが……くそ。俺がヘタレナンバーワンの貴明に負けてるだと? そ、そんなはずは…… 「いいこと、雄二」 「な、なんだよ……」 「あなたに足りないのは誠意なのよ。もっと女の子に気遣いを見せなさい」 「俺だって女の子には優しくしてるぞ」
- 546 名前:向坂雄二のホワイトデー 7/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:36:22 ID:CcpeY6Dx0]
- そうさ。俺はナンパの時に限らず、女の子を持てなす気持ちは何時だって忘れない。
マメな男としては貴明なんかに負けていないはずだ。 「雄二の親切には、下心が透けて見えるのよ。ときどき素直に受け取る気持ちになれないわ」 へっ。男の親切なんてそんなものじゃねえかよ。 貴明だってきっとそれは大差ないと思うぜ。 「それがもてる秘訣ってやつなのかよ」 「どうかしらね。 確かに、そういうことがすぐに女性に好意を持たれることに繋がるとは限らないでしょうね。 でもそれ以前に人間としての出来が違うと私は思うけど」 俺の皮肉に姉貴は平然とした顔でそう答えると、もはや話は終わったとばかりに弁当の片付けを始めた。 その手つきをぼんやりと見つめながら俺は考える。 ホワイトデー、プレゼントねえ…… 「まあ、俺もお返しとかもう少し積極的になった方がいいのかもしれないよな……」 放課後の廊下を一人歩きながら、俺はお昼に姉貴に言われた説教の数々を思い起こしていた。 け、けっして姉貴に説教されたから、とか、 貴明みたいにもてもて状態になりたい、とか 俺は企んでるわけではないんだ。 でも、賢い男はどんな些細な出来事でも、人生に役立てていくものだしな。
- 547 名前:向坂雄二のホワイトデー 8/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 19:36:43 ID:CcpeY6Dx0]
- 「でもお返しっていっても、俺はもともとそんなに貰ってないしなあ」
情け無いことではあるがそれも事実。 数が少ないことは言うにおよばず。 貰ったチョコも全てはっきり義理だと分かるものばかりだ。 それも貴明のおこぼれで貰ったようなチョコばかり。 貴明に渡すとき、俺が隣にいるもんだから彼女たちも少しばかり気を使ってくれたのだろう。 ……自分で言ってて本当に情けなくなってきたな。 そんな義理全開のお情けチョコに、わざわざお返しっていうのも…… なんかやりすぎで引かれないかな、とか考えるのは男の弱気なんだろうか? と、廊下の曲がり角で知った顔にぶつかった。 「あ、向坂くん。お一人ですか?」 「ああ」 一人で悪かったな、という続く言葉を俺は心の中に飲み下す。 彼女の言葉が俺の隣にいるはずの存在を探していたことを示していたことには、気が付かないフリ。 本人にはまったく悪気は無いことぐらいは俺にだって分かってるからな。 「委員長、貴明のこと探してるの?」 「ななななな、なんでそう思うんですかあ?!」 俺の言葉に、何故か委員ちょは悲鳴みたいな叫びをあげる。 いや、そんなに慌てんでも……普通誰でも分かるって。 本人は必死に隠しているつもりらしいけど、われらがいいんちょは貴明のことが好きだってのは、クラス全員が知っている事実だ。 そのことに気が付いてないのは貴明と委員ちょだけだろうな。 「残念だけど、貴明なら昼休みに屋上で別れてから何処に行ったのかは知らないよ」 「そ、そうですか……」
- 548 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 19:50:08 ID:taPLK5XpO]
- 支援
- 549 名前:向坂雄二のホワイトデー 9/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:00:03 ID:CcpeY6Dx0]
- 俺の言葉を聞いて委員ちょは残念そうに肩を落とし……
「い、いえ! 別に探してたわけじゃありませんよ、ええ」 次の瞬間には慌てて否定。 俺もつい苦笑してしまう。なんでそう必死になって隠すかなあ。 それにしてもこの様子だと、貴明はまだ委員ちょにホワイトデーのお返しを済ませていないみたいだな。 フェミニストの貴明がよもや委員ちょのことを忘れているとは思えんが。 でも、今日は貴明のやつも忙しくあちこちを走り回ってるだろうから、ニアミスは十分ありえるだろう。 ……しかしほんと腹立つ。こんな可愛い子を待たせるなんてな。 「貴明に会ったら、小牧さんが探してたって伝えておこうか?」 「いえ、本当にいいんです。ええ、大丈夫ですから、ほんと」 いや、これは純粋に親切で言ったつもりなんだがな。 委員ちょはそれでも妙に一生懸命に拒絶する。 そんなに必死に大丈夫だって言われると、全然大丈夫な気がしないんだけどな。 そんな彼女の様子を見て、俺はふと思う。 この子って、貴明にもこんなふうに接してるのかな? 二人きりのときはわからんけど、少なくとも俺が見てる限りは二人の会話は今のこれと大差ないんだよな。 委員ちょと貴明の関係については正直一番よく分からない。 ふたりともまるで付き合ってるようには見えないのに、どうしてあんな関係が成立しているんだろうな。 「で、その本はなに?」 「あ……いえ、たいしたものじゃないんですけど……」 委員ちょはその手に持っていた本を俺の視線から一瞬隠そうとして、逆に隠すのが恥ずかしくなったらしくやがておずおずと俺に差し出した。 「ん? 俺、見ていいの?」 「は、はい」
- 550 名前:向坂雄二のホワイトデー 10/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:00:25 ID:CcpeY6Dx0]
- 差し出された本を手に取ると、なんのことはない。
普通の町のガイドブックであった。別に隠すようなものではないよな…… ん? ぺらペらっとめくると自然に開いたページ。 『彼と巡るケーキショップ食べ歩き』 『甘いものが苦手な彼でも楽しめるスイーツ』 あ、そうなんだ。こういうところに貴明と行きたかったわけね。 ホワイトデーのお返しってことなのか? 委員ちょのほうからお返しを要求するとは考えにくいので、貴明のほうからなにかの提案があったのだろう。 お礼に一日なんでもつきあう、とか。 いかにもあいつが言いそうなことだ。くそ。 開きやすいページはきっと委員ちょが繰り返しページを開けた証拠だろう。 俺はそれに気が付かないふりをして本を閉じ、委員ちょの手に返した。 「あ、ど、どうも……」 でも肝心の貴明は何処に行ったのやら。 しかもあいつは甘いものも食えないわけじゃないけど、委員ちょに付き合えるほどヘビー級じゃないだろうし。 それに比べりゃ俺は甘い物も結構食えるんだよな。 こういう所に俺が連れて行ってあげれば、彼女も喜ぶんじゃないかな? よ、よし。ちょっと男気出してみるか。 「あのさ。俺、委員ちょにバレンタインのお礼がしたいんだけど。 今日はホワイトデーだしさ」 うん。実は俺も委員ちょからバレンタインにチョコを貰っている。 しかもそれは貴明とまったく同じチョコだった。 だからといって、俺は自分が貴明と同じように委員ちょから好意を持たれているなんて欠片ほども思っちゃいない。 まったく同じチョコでも、それを渡すときの委員ちょの様子は明らかに違ったからな。
- 551 名前:向坂雄二のホワイトデー 11/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:01:43 ID:CcpeY6Dx0]
- バレンタインの日の彼女の様子を、俺は今でもはっきり覚えてる。
委員ちょはまず、俺にチョコをくれた。 それから、貴明のほうを見て、何も言えずにしばらくもじもじしてた。 見るからに彼女が緊張してるって空気が嫌でも伝わってきた。 そして頬を真っ赤に染めて、それでも必死に言葉を搾り出して。 委員ちょはそのチョコを渡した後は逃げるように教室を出て行って、そのまま授業が始まるまで帰ってこなかった。 あれは本当に恋する女の子のチョコの渡し方だったな。 俺に渡すときとはえらい違いで…… いやいや、でも俺だって同じチョコを貰ったわけだし。 貴明と同じようにお礼をする権利が……いや、義務があるのだ。 「あのさ、ホワイトデーのお返しとして、俺とちょっとこの店に行かない??」 さっきのガイドブックのページをひょいと指差して、俺はあくまで自然な感じを装って切り出した。 下心があるなんて思われちゃいけない。 あくまで自然に。そう、自然にだぞ。 「お金のことだったら気にしなくていいよ。俺おごるからさ。それに別に今日じゃなくてもいいし。 いつだって委員ちょの時間に併せるからさ」 「あ、あの……でも、そんな……」 さらに思いつく限りの精一杯のサービスを並べるが、委員ちょの表情は固くなるばかりだ。 あ、あれ……? ここに行きたいんじゃないのかな?? 「あの、ほんとにお礼なんていいですから。 わたし、そんなつもりじゃなかったし…… あの、わたし用があるのでこれで……」
- 552 名前:向坂雄二のホワイトデー 12/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:02:05 ID:CcpeY6Dx0]
- 必死に拒否を続け、ぺこペこ頭を下げながら少しずつ後ずさってフェイドアウトしていくいいんちょ。
う……あからさまに逃げられてる。 はあ……俺が誘ってもダメなのか? ……貴明が誘ったら、喜んで行くのか? それとも、やっぱり拒否しまくって話が進まないのか? 「わからん……」 去っていくいいんちょに苦笑いで手を振りながら、そう呟くしかない俺だった。 くそ……姉貴が言ったみたいにやってみたつもりなんだけどな。 やっぱダメじゃねえか。 俺と貴明じゃ、どこが違うんだ?? 「いや……悩むのはよそう。次だ、つぎ!!」 重い気持ちを振り切って、次に俺が訪れたのはコンピューター室。 「ちわーす」 挨拶とともに引き戸を開けると、お目当ての二人はそこに居た。 二人のうち、キーボードを叩いていた女の子が振り返って俺に挨拶してくれる。 「るーーー!」 「る、るー……」 珊瑚ちゃんの意味不明の挨拶に付き合って、俺も同じように挨拶を返してみる。 恥ずかしいが、これも彼女との円滑な会話の為に必要な行為のはず…… 「あれ? にーちゃんのことどっかでみた気がするけど、だれやっけーー??」
- 553 名前:向坂雄二のホワイトデー 13/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:02:27 ID:CcpeY6Dx0]
- が、がく。
さ、珊瑚ちゃん……俺のことちゃんと覚えてないのかよ。 「こいつ、いっつも貴明の隣にひっついとる、雄二っていうヘンタイや」 る、瑠璃ちゃんはどうやら俺の名前は覚えていてくれたみたいだな。 でもちっとも嬉しく思えないのはなぜなんだろう…… ちなみにこの『ヘンタイ』という好ましくない呼称についてだが。 こう呼ばれるのは、俺がなんらかの変態行為を彼女たちに働いたから……というわけではない。 瑠璃ちゃんにとって珊瑚ちゃんに近づく男はほとんどがヘンタイ呼ばわりなのだ。 貴明も瑠璃ちゃんにはしょっちゅうヘンタイ呼ばわりされているんだよな。 「あ、あのさ。今日がホワイトデーだってこと、知ってる?」 「うん。知ってるよーーー」 珊瑚ちゃんは元気に答えてくれた。 瑠璃ちゃんは……無言。何の返事も無い。 そういえば、瑠璃ちゃんは俺とはほとんど話さないな。 さっきの『ヘンタイ』だって俺の方を向いて言った言葉ではないし。 「さっき貴明がホワイトデーだって言ってこっちに来たよーー」 あ、貴明のやつ。もうこっちには来てたのか。 畜生、あのロリコンめ。委員ちょよりもこの二人が先かよ。 「二人はもう貴明から何か貰ったの?」 「えへへ、それはねーー 「あかん!! 言ったらダメーーー!!」
- 554 名前:向坂雄二のホワイトデー 14/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:03:08 ID:CcpeY6Dx0]
- 突然、大音量で珊瑚ちゃんの言葉に割り込んできた瑠璃ちゃんの悲鳴。
見ると、瑠璃ちゃんは顔を真っ赤にして震えていた。 「さ、さんちゃん、そんなことここで言ったらあかん! 絶対ダメや!」 はあ? 「な、なんでダメなのさ? 俺はちょっと貴明のホワイトデーについて……」 「そ、そんな恥ずかしいこと聞くなあ!! ヘンタイ! チカン! すけべええええ!」 「す、すけべえ?」 な、なにがどうなってるんだよ。 なんで俺がスケベ呼ばわりされてるんだ? 貴明のやつ、二人にいったいどんなお返しをしたんだ?? 「瑠璃ちゃん、なんで言ったらあかんのーー??」 「な、なんでも!! いいからぜったいダメ!!」 「えーー。つまらんなーー」 残念そうにそう呟く珊瑚ちゃん。 まったく何があったんだか。 な、なんとなーくだが危険な妄想がつい浮かんでしまう俺はアホなのだろうか? 後で珊瑚ちゃんなり貴明なりに聞いてみたいところだが…… 瑠璃ちゃんがさっきから、 『聞いたら殺す!!』 という目で俺を睨んでいるから難しいか。 残念だが、その話はとりあえず置いといて。 「あのさ、俺もホワイトデーのお返しがしたくて来たんだけど……」 「別にそんなのいらんわ。あのチョコだって、貴明に作ったのが余ってたからやっただけや」
- 555 名前:向坂雄二のホワイトデー 15/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:03:29 ID:CcpeY6Dx0]
- 皆まで言わないうちに、即座に瑠璃ちゃんの冷たいお言葉が帰ってきた。
それはきっと事実だろうけど。でもそんなはっきりいわなくてもなあ。 「さ、珊瑚ちゃんはなにか欲しいものある?」 瑠璃ちゃんを諦めて、俺は多少は接し易そうな珊瑚ちゃんに目標を切りかえる。 これは戦術的撤退だ。決して弱気じゃないぞ。 「んー。あんばたーーー」 「? あんばた? そんなんでいいの?」 「うん。大好きやーーー」 あんばた、と言っただけでほんわかと嬉しそうな顔をする珊瑚ちゃん。 いや、いつもほんわかした顔してるけど。でもほんと好きなんだな。 それはよく分かる笑顔だった。 「うんうん。そんなんでよかったら、いくらでも俺が買ってあげるよ。 一緒に食堂に行かない??」 「どこでも行くでーー」 元気な返事だ。 うんうん。珊瑚ちゃんは素直で可愛いなあ。 最初からこうやって誘えば良かったのか。 やっぱホワイトデーの贈り物は大切だなあ。 「……まるでゆーかいまや」 「う……」
- 556 名前:向坂雄二のホワイトデー 16/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:04:07 ID:CcpeY6Dx0]
- と、俺は瑠璃ちゃんの冷たい視線でふとわれに返った。
目の前には、どうやら状況をまったく理解していないらしい無邪気な珊瑚ちゃんの笑顔。 これでは俺のやっていることは小学生をお菓子で連れ出す犯罪者と変わりない。 あまりに簡単に釣れすぎるのも考えものだよな。 「さっさと帰れーヘンタイ!! ゆうかいまーーー!!」 「ご、ごめんなさーーい!」 「あ、あんばたー! くれるって言ったのにーー」 二人の声から逃げるように俺はコンピューター室から立ち去った。 さすがに犯罪者にはなりたくない。 はあ…… なんで上手くいかないのかな。 貴明と同じようにやってるつもりなんだがな。 ちょっと趣向を変えて、一番まともそうな人に相談してみようかな。 そう思って俺はまた次の目的地に足を踏み入れたわけだが。 「あの……たとえば久寿川先輩だったら、何が欲しいって思いますか?」 「そりゃやっぱ、現ナマだろ。当然。 男ならナマで出せ!! ありったけ出せ!!」 「いえ、まーりゃん先輩の希望は聞いてないですから」 「なんだとー!!」 生徒会室には二人の先輩が居た。 もうひとりはとっくに卒業しているはずのまーりゃん先輩だ。 くそ……久寿川先輩に頼ろうとすると、いつも厄介なのがひっついてくるんだよな。 さっさとこの世界からも卒業して下さい。ほんとに。
- 557 名前:向坂雄二のホワイトデー 17/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 20:04:44 ID:CcpeY6Dx0]
- 「現ナマでなければパンツだな。
やっぱホワイトデーだから白いパンツだろ。 ん? 白いのがついたパンツがいいのか??」 「白いの……? なんですか??」 久寿川先輩が不思議そうな顔をしてまーりゃん先輩に尋ねようとした。 俺はマッハの速度でまーりゃん先輩の口を塞いで余計なことは言わせないようにする。 やめてくれ。 あなたが壊れるのはいいですが、俺の久寿川先輩を汚さないで下さい。 「しろいぱんつー。ぱんつー」 俺の腕を振り切って、うるさく騒ぐ悪魔の存在は出来る限り無視。 あきらめずに久寿川先輩に話しかける。 「あの、俺マジで悩んでるんです。 バレンタインに、女の子がせっかく俺に大切な気持ちを贈ってくれたのに。 その気持ちに上手く応えることが俺には出来ないんです。 いったいどうしたらいいんでしょうか?」 別に嘘は言ってない。 深刻に悩んでいるのも本当だろ。 「嘘つけーー。どうせ後でやっちゃうことしか考えてないくせにーーー」 ……悪魔の囁きなんて耳に入らねえ。 誰がなんと言おうと、俺は久寿川先輩の声しか耳に届かないぞ。 「そうですか……向坂君は心優しいのね。 でもどうしたらいいのかしら?」
- 558 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 20:09:30 ID:maW4M8od0]
- けっこうおもろい
- 559 名前:向坂雄二のホワイトデー 18/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 21:06:30 ID:CcpeY6Dx0]
- そう言って久寿川先輩は深く考え込むようにその瞳を閉じた。
ああ。やっぱ久寿川先輩はまじめに考えてくれるんだなあ。 その優しさはまるで女神のようだ。 「そうですね。私には経験がほとんど無いことですからよく分かりませんけど……」 美しい久寿川先輩は憂いを含んだ瞳で呟く。 その表情も素敵である。 「でもきっと、好きな人から贈ってもらえたら、どんなものでも嬉しいと思います。 だから素直になって、その人のことを大切だという気持ちを込めて、贈り物を贈ってあげてくださいね。 ささやかなものでもいいんです。向坂君の想いが通じれば、彼女はきっと喜んでくれると思います」 「そ、そうですよね。その通りです! よく分かりました! どうもありがとうございます!!」 そんな久寿川先輩のお言葉なのだ。 間違っているはずがない。 俺は久寿川先輩のアドバイスを頂き、意気揚々と生徒会室を引き上げた。 その後。 なんとなく家に帰る気にもならず、一人になりたかった俺は校舎の屋上に居た。 俺は学校の屋上から一人沈む夕日背に、校舎の下の風景を眺めていた。
- 560 名前:向坂雄二のホワイトデー 19/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 21:07:21 ID:CcpeY6Dx0]
- 「あーあ、みんな帰っちまうな……まあ、いいさ」
下校時刻を迎えた屋上から見えるのは、学校からの帰り道を歩いていく生徒たちの小さな姿。 そこには一人の奴もいたし、数人で固まって騒がしく歩いている奴らもいる。 そして、あそこには仲むつまじく腕を組んで歩いているカップルが一組。 女生徒は長い黒髪が映える少女。男の方は…… 「あれ?」 あれはもしかして貴明と草壁さんじゃないか? 遠すぎてよく見えんが、なんとなくそんな感じがする。 「まったく、やってくれるぜ」 思わず溜息。でも不思議と怒りはそれほど感じなかった。 本当に仲のよさそなその姿は、当然うらやましくはあるけれど。 「まあいいさ。せいぜいお前はその子を幸せにしてやりな」 俺は貴明と思われる小さな背中にエールを送る。 今の俺ほど沈む夕日が渋く映える男はいないだろう。 結局今年のホワイトデーも俺にはなんの結果も出せなかった。 でも今、俺の心はそれなりにすっきりした気持ちだ。 それはきっと、俺が俺なりの答えを出すことが出来たからだろう。
- 561 名前:向坂雄二のホワイトデー 20/20 mailto:sage [2008/03/16(日) 21:08:08 ID:CcpeY6Dx0]
- 「「へっ。けっきょく姉貴の言った通り、気持ちが一番大事だってことかな」
そうだな。 どんなプレゼントだって好きな人から贈られたものなら嬉しいに決まってるよな。 委員ちょも、珊瑚ちゃんも瑠璃ちゃんも。 俺のことが好きでもなんでもなかったから喜んでくれなかった。 ただそれだけのことだったのだ。 よし、俺もこの経験とアドバイスを今後に生かして次のチャンスを…… 「って無理だろ!!」 はたと真実に気が付いて、思わず俺は沈み行く夕日に向かって絶叫する。 だから、そもそもどうやったら俺が女の子に好かれることができるんだよ!!! 元々それが知りたいんだよ!! 「ちきしょーーー! やっぱ俺には無理なのかよーー!」 ああ、俺のホワイトデー…… 今年も何事もなく去っていってしまうのかよ。 くそ。ら、来年のホワイトデーこそはちゃんと俺のプレゼントを受け取ってくれる彼女を作ってやるからな。 見てろよ!!
- 562 名前:495 mailto:sage [2008/03/16(日) 21:10:16 ID:CcpeY6Dx0]
- 以上です。
時間をかけまして大変申し訳ありませんでした。 支援くださった方、どうもありがとうございます。
- 563 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 21:12:15 ID:taPLK5XpO]
- >>562
GJ!
- 564 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 21:19:25 ID:eA5zO/hQ0]
- >>562
乙乙 雄二主体の話は少ないから楽しめたよ
- 565 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 22:16:38 ID:yG1Pgbiv0]
- GJ
雄二もてるためにがんばる、って感じですね 雄二主体の話はホワイトデーに限らず雄二哀れでオトして終わりという話は結構あるけど これはキチンと読ませる話になってて面白いです 楽しめました
- 566 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 23:32:15 ID:F8GfxzKX0]
- オチのない雄二SSも珍しいな
でもかなり楽しめました
- 567 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 23:48:34 ID:xGDgAEgn0]
- >>562
乙&GJ 真面目に雄二SSってのはなかなかめずらしいな。 なかなか楽しめたっす。 ……それにしてももうじきこのスレも終わりだけど、まとめスレの管理人様どうしたのかなぁ。 無理は言えないんだけど、ちょっと心配。いろいろな意味で。
- 568 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/16(日) 23:55:54 ID:6rLt/9K60]
- 〜重要なお知らせ〜
突然ですが書庫はジオシティーズに移転しました。 旧ページはそのうち消す予定なので、ブックマークの変更等よろしくお願いします。 いい機会なので、レイアウトも変えてみました。 >567 スイマセン、移転作業に手間取ってました。。。
- 569 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 00:04:15 ID:h2kDGh+C0]
- >>568
書庫様いつもお疲れ様です。 や、つまらない心配をしてしまい申し訳なかったです。
- 570 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 00:06:14 ID:4cWu6MmA0]
- >>568
世間は年度末なのでリアルの方でお忙しいんだろうなと思ってたんですが、移転作業中でしたか いつもご苦労様です
- 571 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 00:10:17 ID:E+59IytX0]
- >>568
移転先、確認しました〜 乙かれです。
- 572 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 06:15:29 ID:BrI6xqH00]
- >568
超乙&GJでつ ささらも独立したんですねー、あ、「冬のNYのひとときのやすらぎ」がないような?
- 573 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 09:37:29 ID:WhFAOoGeO]
- ジオって規約でエロNGだと思ってたけど…
いつのまにか変わった?
- 574 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 10:00:13 ID:eKk7oeGf0]
- >>572
完全には移行できてないってことじゃない? 些細な…だかなんだか題名忘れたけど、もう一個の長編も入ってなかった。
- 575 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 17:05:07 ID:q5+iquGF0]
- >>568
乙かれ様です 『誰かの倉庫』さんが復活・・・と言うべきかは分からんが更新されてた ADのシルファも好きだが、あっちのサイトの子犬チックなシルファも好きだ
- 576 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 21:11:26 ID:t3ga6Cdh0]
- >572 >575
指摘どうもです。さっそく修正しました。 >573 そこは旧サイト(インフォシーク)のころから懸念している点。。 最初は全年齢ゲーだったからなぁ。
- 577 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/17(月) 21:12:30 ID:t3ga6Cdh0]
- すいません、上の>575 は>574 の間違いです。
- 578 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/18(火) 00:07:53 ID:vg9cgKD00]
- >>576
出版社勤めの知り合いに聞いた話しでは、本の場合は文章のみであれば18禁にはならないらしい。 その証拠にフランス書院の小説本には18禁マークついてないでしょ、なんてことを言われました。 Webサイトの場合はどうなんだろうか。 ぶっちゃけた話、アダルト禁止のサイトが多いのはアダルトの場合は普通のコンテンツよりも アクセス数が多くトラフィックが大量になるので鯖屋が嫌がる。
- 579 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/18(火) 10:48:43 ID:SxfNJDh70]
- 18禁マークのないエロ小説本にもエロ挿絵がついていて
とても「文章のみ」ではない気がするのだが。 二次元ノベルズなんて巻頭巻末エロ漫画付きのもあるが、それでも18禁マーク無しだよ。 エロマンガまがいの一般漫画も多いとはよくいわれるところだけど、18禁になったりはせんし。 単に掲載雑や版元の違いから、流通や販売のカテゴリ分けで発生してるだけに見えるけどなぁ。 澁澤龍彦の事件やら、四畳半の襖事件やら 小説も日本のわいせつ物判例じゃメインで登場していて、小説なら規制がかからない、なんてこたないし。 (当時じゃ有罪でも現在では違うだろうけどね)
- 580 名前:名無しさんだよもん [2008/03/18(火) 18:39:29 ID:hpC5kMRO0]
- チャタレイ夫人の恋人のことかー!
- 581 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/18(火) 22:43:32 ID:Tg2V+Z5uO]
- >>580
そこでその名前が出るお前が好きだ
- 582 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/18(火) 22:45:49 ID:edzytuJ60]
- SSてセガサターン?
と思ってこのスレ覗いた俺をハリセンでなぐってやりたい さらばだ
- 583 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/18(火) 22:58:53 ID:I5RKmkaG0]
- >>581
チャタレー事件は高校の政経の教科書に必ずと言っていいほど登場するんだぜ?
- 584 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/18(火) 23:24:49 ID:rWjNU8Mb0]
- そんなことより君に送る桜の詩の話しよーぜ
バウムやレイプにキレてた郁乃好きにとっては朗報だ
- 585 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/18(火) 23:43:58 ID:wUcZCXDeO]
- ↑なんだいそりゃ
- 586 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/19(水) 00:20:04 ID:EKsNRv7g0]
- 朗報も何も
ありゃまだ始まったばっかりで海のものとも山のものとも付いてないだろ 何を期待しとるんだ?
- 587 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/19(水) 23:01:15 ID:cbrjcsJw0]
- ちょうど原作との分岐点から登録サイトに登録されるようになり
それでも勝手に登録されて困っちゃうという態度を取り続けるのを期待してる
- 588 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 14:15:31 ID:BTAFyibR0]
- とりあえず>>584は作者乙ってことでいいのか?
- 589 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 14:45:44 ID:nCCzFt7X0]
- 地味に>>387が助かる件
よし、河野家の厨房ではるみをファックしていいぞ
- 590 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 17:57:02 ID:5XPbe/6P0]
- 「作品はいいが信者がウザイ」という現象は、
どこの世界でもよく見られることです
- 591 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 19:42:39 ID:2L1zjc2E0]
- >>589
そーいや、テンプレから行ける「ToHeart2呼び方相関図」更新されてるぞ。 烈しくGJと言いたかった。
- 592 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 20:16:28 ID:mV+9di3X0]
- >>588
作者乙にしても、ググってもYAHOOで検索しても出てこないぞ。どこよw
- 593 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 20:56:36 ID:5MKzZYMj0]
- アドレスは知ってるけど
SS Linksとかに登録してくれるなと書いてあるからなぁ リンク張るのはちょっと どうしても読みたかったらSS Linksの愛佳か由真を漁ればリンクは出てくるぞ 勝手に登録されてたことがあったから
- 594 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 21:05:45 ID:dlxqmH6Y0]
- SSサイトを語りたければスレ建てろよ。前にも一度そうしてただろ
- 595 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 21:09:03 ID:5XPbe/6P0]
- >>594
もう立ってる 葉鍵SSについて語るスレ set.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1203051297/
- 596 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 21:40:17 ID:6Tu1B73b0]
- >>587
ダメと言われてはいそうですかと黙ってくれる人 ばかりじゃないからねえ… >>588 作者ならSSのタイトル間違わんだろw 以降は>>595あたりで語るとよろし。ここは投下スレだから
- 597 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 22:28:46 ID:nCCzFt7X0]
- すげえ。予防線の上書きって初めて見たw>>596
- 598 名前:冷蔵庫の野菜室には 1/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:17:29 ID:SZltIRj40]
- 「本当にご主人様は、シルファがいないとダメダメのダメっこさんなのです」
「め、面目ない」 それでも、ショッピングカートを押して、スーパーの陳列棚を眺めるシルファちゃんの表情はとっても嬉しそうで。 俺も、嬉しい。シルファちゃんに謝りながら、けれど、またこうやってシルファちゃんと今までのように会話できるのが嬉しくてしょうがない。 シルファちゃんが、俺のところに戻ってきてくれた。あの時、約束した通りに。また、俺のメイドロボになってくれるために。 時間にすればたった二週間のことだったのに。配達人の服を脱いで、いつものメイドロボの服に着替えたシルファちゃん。今もうきうきとして野菜を見比べるシルファちゃんの後姿を見ていると、この二週間が、俺にとってどれだけ待ち焦がれていた時間だったのかが良くわかった。 『うん……これからもずっとね』
- 599 名前:冷蔵庫の野菜室には 2/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:20:57 ID:SZltIRj40]
- 配達人の服を着て、メイドロボの受け取り確認書を握り締めたシルファちゃんに、俺は
そう言うのがやっとだった。 前と全く変わらないシルファちゃんの笑顔を見ていると、もうそれ以上我慢していた物 を抑えきることができなくなってしまって。玄関の扉が開けっ放しになっていることも忘 れて、シルファちゃんのことを抱き締めて。シルファちゃんも、俺のことを抱き締めてく れる腕に力を… 「ご主人様、聞いているのですか!?」 「え、あ、なに?」 シルファちゃんに急に声をかけられて、慌てて答える。 「何が急に、ですか。さっきから何度も呼んでいるのですよ!」 全く気が付かなかった。よっぽど、さっきの記憶に浸っていたらしい。 シルファちゃんは『やっぱりご主人様はあんぽんたんなのれす』とでも言いたそうに俺 のことを見つめてきて。し、失礼だな。ちょっと考え事をしていただけじゃないか。
- 600 名前:冷蔵庫の野菜室には 3/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:23:38 ID:SZltIRj40]
- 「事実ではないのですか。もとからどじっ子だあんぽんたんだとは思っていたですが、た
った二週間、シルファが家を空けただけでどうやったらあんなに家の中を汚くできるので すか!」 シルファちゃんの剣幕に、たじろぐ俺。それを言われると、さすがに厳しい。 玄関で熱い抱擁を交わした後、家の中に入ったシルファちゃんが最初に発した言葉が 『な、何れすかこれは…』 だった。 リビングを見回してまず目に付くものが、ゴミ箱からあふれた弁当のカラ。テーブルの 上に散乱する使用済みの食器。 部屋の隅には埃がたまりだしているし、洗濯物だってソファーの上に散らかっていた。 我ながら、シルファちゃんがいなかった間の荒み方は普通じゃなかったと思う。そりゃ、 シルファちゃんが驚くのも無理はない。 おかげで感動の再開もそこそこに、シルファちゃんにお尻を叩かれるみたいに家の掃除 をする羽目になってしまった。 二人で慌てたように片付けて、ようやくさっき、何とか家の環境を人が住めるものにし て。これもまた当然のように空っぽの冷蔵庫に唖然とするシルファちゃんと一緒に、こ うやってスーパーまで食材の買出しに来ていると言う訳だ。
- 601 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 23:25:55 ID:3kll2Y8x0]
- 支援
- 602 名前:冷蔵庫の野菜室には 4/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:26:24 ID:SZltIRj40]
- シルファちゃんと一緒にスーパーに買い物に来る。あの時はそれだけで一苦労だったの
に、今ではそれを自然に行うことができる。たったそれだけのことだけど、これも、い ままで二人が築き上げてきた信頼の結果だと思うとなんとなくくすぐったい。 「何をしまりの無い顔をしているのですか。シルファは怒っているのですよ!!」 また怒られた。頭をかきながら謝って、でも、表情が緩んでしまうのは抑えられなくて。 今の俺には、シルファちゃんの声が聞けるのなら、例えそれが怒り声であっても心が浮 き立ってしまう。 以前と変わらないままのシルファちゃんの、以前と変わらない…変わらない……あれ? 「『なの"です"』?」 "れす"じゃなくて? 「ぷっ、ぷぷぷぷ、ぷぷっ」 急に立ち止まって、俯いてしまうシルファちゃん。 どこか調子でも悪いのかと思ったんだけど。
- 603 名前:冷蔵庫の野菜室には 5/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:28:41 ID:SZltIRj40]
- 「ぷっ、ぷぷぷぷぷぷ、今頃気づいたなんて。やっぱりご主人様はシルファがいないと何
もできない、だめだめのどじっ子ご主人様です」 不敵な笑顔で、俺のことを見返してくる。 やっぱり、シルファちゃんの人見知りの原因だった、あの口調が直っている。 「シルファをあの時のシルファのままだと思わないで欲しいのです。全ての欠点を克服し、 ご主人様の言いつけを完璧に遂行する。まさに! 生まれ変わった! パーフェクトシル ファなのです!!」 おおー。 思わず拍手。そう言えば、配達員の格好をしてた時も普通にしゃべっていたし。 でも、あれだけのコンプレックスになっていたことを克服したんだ。この二週間の間に、 よっぽど努力したんだろう。 やっぱり、それも俺の所にもう一度来てくれるためだったんだろうか。そう考えると、 少しだけ面映くて、それよりもずっと強く嬉しくなる。 「そんな大したことじゃあないのです。シルファがちょっと本気を出せば、これくらいお 茶の子さいさい河童のへー、なのです。前だってやろうと思えばすぐに直せたけど、いち いちそんなことのために時間を使うのは馬鹿馬鹿しかったから直さなかっただけで。それ をイルイルが大げさに言うものだから」
- 604 名前:冷蔵庫の野菜室には 6/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:30:52 ID:SZltIRj40]
- そう言って、シルファちゃんは胸を張る。口ではいろいろ言っているけど、でもコンプ
レックスを克服できたのは素直に嬉しいみたいだ。 「でも、がんばったことに違いはないんだろ。えらいえらい。さすがシルファちゃんだ」 「ふふん、もっと褒めるといいのです」 うん、本当にすごい。シルファちゃんはやっぱり、努力すれば何だって出来る子なんだ。 スーパー中の人たちに、それを大声で教えてやりたくなる。俺のメイドロボは、こんな にすごい子なんだって。 「これでもう、シルファには怖いものはありません。ミルミルのアンポンタンはおろか、 イルイルだって近い将来、シルファの前に跪かせてやるのれす!!」 ……あれ? 「シルファちゃん、今」 「な、ななな何を言っているのれすか。シルファは本当に克服したのれす。それを疑うな んてご主人様は愛する自分のメイドロボの言うことが信じられないのれすか!」
- 605 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 23:33:12 ID:oAzV4DKd0]
- 続きを
- 606 名前:冷蔵庫の野菜室には 7/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:33:15 ID:SZltIRj40]
- ごまかそうとすればするほど、ドツボにはまっていってしまう。
あー、いくらあたりを見回しても、ここにダンボール箱はないから。 「わ、笑ったれすね。シルファのあられもない姿をみて愚弄したれすね。ひどいれす、ご 主人様は鬼畜れす、人非人なのれ── 俺は口元に苦笑を浮かべながら、シルファちゃんの頭に手を置く。ぐりぐりと頭をなで てあげて、ようやくシルファちゃんも落ち着いてくれる。 「ごめんごめん、笑うつもりはなかったんだけどさ」 「ほ、本当に治ったんだもん。今は、たまたま、たまたま言い間違えただけで」 「うん、そうだね。シルファちゃんは俺のために、がんばって弱点を克服して帰ってきて くれた。でも、今までの癖がまた、ちょっとだけ抜けていないんだよね。癖じゃ仕方ない よなー。けど癖だし、そのうち直っちゃうか」 「そ、そうなのです。癖だから仕方ないのです。そのうち直ってしまうのです、なのにご 主人様が騒ぐから」
- 607 名前:冷蔵庫の野菜室には 8/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:36:29 ID:SZltIRj40]
- 「あはははは、ごめんごめん。でも、弱点を克服したシルファちゃんも凄いと思うけど、
弱点を克服しようと努力しようとするシルファちゃんも凄いと思うよ。俺、努力とか根気 とか得意じゃないから」 「それは得意じゃないんじゃなくて、ご主人様が単純にやる気がないだけなのです。少し はシルファの爪の垢でもせんじて飲めばいいのです」 しゅん、と落ち込んでしまうシルファちゃん。けど、言い合いをするうちにまた、いつ もの調子を取り戻してくれた。 やっぱりシルファちゃんはシルファちゃんのままだった。いろいろ人間的に(メイドロ ボ的に?)成長したけど、ダンボールで送られてきて、初めて会った時から変わらない でいてくれる。 もう一度頭をなでてあげると、うれしそうに目を細めてくれた。 「これくらいで許してもらえるなんて、思わないで欲しいのです」 「許してくれないと困っちゃうなぁ。俺、もうお腹ぺこぺこだし。久しぶりにシルファち ゃんの手料理、凄く楽しみにしてたんだけど。でもシルファちゃんが許してくれないなら 仕方がないか。自分で何か作らないと」
- 608 名前:冷蔵庫の野菜室には 9/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:38:47 ID:SZltIRj40]
- 「え、あっ、ご、ご主人様が自分で作った料理なんて、栄養らって偏ってるし、お塩だっ
て多すぎらし、そ、そんなもの食べちゃだめれす。し、仕方ないれす。本当はご主人様の こと許してないれすけど、今日は特別れす。シルファがご主人様のご飯、作ってやるのれ すよ」 ありがとう。俺がそう言うと、シルファちゃんはぷいっ、と首を向けてしまう。そして 「ご主人様のご飯は、一生シルファが作ってあげるのれすから」なんて、首まで真っ赤に して。 「え、何? シルファちゃん、何か言った?」 「な、何でもないれす。さあ、ご主人様が餓死するまえに、早く買い物を済ませて家に帰 るのですよ」 結局その後も、二人であれが美味しい、これが足りないと言いながら買い物を続けて、 スーパーから出てきたときには二人とも、両手いっぱいに食材の入った買い物袋を持って いた。 これだけあれば、空っぽだった冷蔵庫の中もいっぱいになるだろう。
- 609 名前:冷蔵庫の野菜室には 10/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:41:10 ID:SZltIRj40]
- 二人で重い荷物を持って家に帰ると、ちょうどご飯が炊けるところだった。
買い物袋の中身を、シルファちゃんと一緒にやってきた冷蔵庫に詰め込むと。早速、シ ルファちゃんが晩御飯の準備を始めてくれた。 野菜を洗う音や、材料を切る音。シルファちゃんが我が家にやってきて、いつの間にか 当たり前になっていた光景。 シルファちゃんが帰ってきて、ようやくその当たり前が戻ってきてくれた。 「どうしたのですか、そんな変な笑い声なんて上げて」 「え、いや、なんでもないよ」 「やっぱり、ご主人様はおかしいのです」 そんな会話を、笑い声と一緒に交わす。 今日の晩御飯のおかずは、焼き魚に、お味噌汁に、サラダと。 焼肉のタレの野菜炒めだった。
- 610 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 23:41:44 ID:3kll2Y8x0]
- 俺もシルファは口癖克服した派だが
これはいいSSだ
- 611 名前:冷蔵庫の野菜室には 11/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:43:42 ID:SZltIRj40]
- 「ご主人様、お風呂が沸いたのですよ」
夕食の後、久しぶりのシルファちゃんの料理に少し食べ過ぎて、重たいお腹をソファー の上で休ませていると。 「あ、そう」 シルファちゃんはそう言ったまま、もじもじとその場に立ち続けている。 「どうかした? お風呂、沸いたんなら入るんじゃないの? 空いたら教えてよ。次、俺 も入るからさ」 でも、シルファちゃんはそこから動こうとしない。しかもなぜか、顔を赤くして。 「ご、ご主人様が先にはいるといいです。シルファは、ご主人様の次でいいれすから」 「え、でも」 シルファちゃん、今まではお風呂が沸いたらさっさと先にお風呂入っちゃってたし。入 浴剤、自分の好きなもの選んでたんじゃないの?
- 612 名前:冷蔵庫の野菜室には 12/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:45:59 ID:SZltIRj40]
- 「し、シルファはメイドロボなのです! ご主人様より先にお風呂に入るわけには行かな
いです。だ、だからご主人様は、さっさとお風呂に入ってくるれすっ!!」 大きな声で怒られて、何で、俺が怒られないといけないんだ? まるで追い立てられる みたいにお風呂に入らされる。 まだ少しお腹も苦しいし、本当に後でよかったんだけどなぁ。 シルファちゃん、戻ってきてまだ、俺に遠慮しているんだろうか。そんなこと考えなく てもいいのに。 沸かしたてのお風呂は、熱過ぎもせず、ぬる過ぎもせず、ちょうど良い温度だった。湯 船に肩まで沈んで体を伸ばすと、今日一日の心地よい疲労感がゆっくりと溶けだしていく。 けど、まだまだ一日の終わりまでは時間が残っていて。シルファちゃんが戻ってきてく れてからの、時間の濃さに驚く。 きっと明日からも、今日と同じくらい一日が長く感じられるんだろう。シルファちゃん と一緒にいられたなら。 「ご、ご主人様、お湯加減はいかがですか」 そんなことを取り留めなく考えていると、脱衣所から声を掛けられた。わざわざ、その ことを聞きに来てくれたんだろうか。
- 613 名前:冷蔵庫の野菜室には 13/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:48:57 ID:SZltIRj40]
- 「うん、ちょうど良いよ」
「そ、そうれすか。それは良かったのです」 それっきり、黙り込んでしまうシルファちゃん。 それから何かを聞いてくる訳でもなく、かと言って脱衣所から出て行く様子もない。た だ、そこにシルファちゃんがい続ける気配がするだけ。 な、何なんだこの緊張感。 そろそろこの、扉一枚をはさんだ空気に俺が耐え切れなくなって口を開こうとした瞬間、 勢い良くお風呂場の扉が開かれた。 一瞬で晴れた湯気の向こう、お風呂場の入り口のところには、体にバスタオルだけを巻 いたシルファちゃんが何か、思いつめたような表情で待っていた。 「ど、どうしたの?」なんとか悲鳴を飲み込んだ俺が、シルファちゃんにそう声を掛け ようとすると、シルファちゃんはそんな俺のうろたえっぷりなんて無視するようにお風呂 場の中に入ってきて。 そのバスタオルのすそから除く太ももだとか、恥ずかしそうに腕で隠す胸の部分だとか が俺の目の前に迫ってくる。見たくないなら見なきゃ良いじゃないかというのは正論だけ ど、でも、シルファちゃんのこんな姿を見せ付けられて目を剃らせることのできる男がい るだろうか。
- 614 名前:冷蔵庫の野菜室には 14/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:51:45 ID:SZltIRj40]
- 完璧に混乱した頭と体で、まるで金縛りにでもあったみたいにシルファちゃんのことを
見つめ続ける。 「ごごご、ご主人様、お背中を洗いにきましたのですっ」 ひっくり返り気味の声で、シルファちゃんが俺にそう呼びかける。 背中? どうして!? 「し、シルファはご主人様のメイドロボなのです。め、めめ、メイドロボが、ご主人様の お世話をするのは当然のことなのれ、です。だから、ご主人様の背中を洗いに、シルファ は来たのですっ!」 シルファちゃんのその声で、ようやく体の金縛りが解けてくれた。見ればシルファちゃ ん、顔を真っ赤にして。体も緊張のせいなのか、小刻みに震えている。 無理しちゃって。 「シルファちゃん」 「ぴっ!?」
- 615 名前:冷蔵庫の野菜室には 15/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:54:07 ID:SZltIRj40]
- ガチガチに緊張してしまっているシルファちゃん。こんな様子じゃ、こっちが何を言っ
ても聞こえはしないだろう。 だから俺は、湯船からそっと腕を取り出すと、それをシルファちゃんの頭の上に置く。 「別に、そんな無理することないんだよ?」 「別に、別にシルファ、無理なんて──ぴぴぃっ!?」 腕を今度は、頭の上からシルファちゃんの肩に触れると、弾かれるみたいにシルファち ゃんの体が反応する。 「で、でもシルファ、今度は自分の意思で、ご主人様のメイドロボになったれすから。ら から、らからご主人様のお世話らって、いままでよりずっとしないと」 「じゃあシルファちゃんは、俺がご主人様だから俺のお世話をしてくれるの? ご主人様 登録があるから、俺のことお世話してくれるの?」 「それは、違うのれす。シルファはご主人様がご主人様らからお世話をするんじゃなくて、 シルファがお世話したいのが、ご主人様らから。ご主人様に喜んでほしくて、お世話した いのれす…らから」
- 616 名前:冷蔵庫の野菜室には 16/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:56:24 ID:SZltIRj40]
- 結局、シルファちゃんもまだ不安なんだろう。新しくご主人様登録をして、俺のところ
に帰って来ても。 俺が、シルファちゃんがいない二週間、本当にシルファちゃんが戻ってきてくれるのか 不安だったように。いつか自分が、俺に捨てられてしまうんじゃないだろうかって。 そんなこと、ある訳がないのに。 「俺も。俺がシルファちゃんと一緒にいたいのは、シルファちゃんがメイドロボだからじ ゃない、そう言ったろ? 俺がシルファちゃんと一緒にいたいのは、シルファちゃんがシ ルファちゃんだから。特に、俺に向かって笑顔でいてくれるシルファちゃんなんて最高だ な」 シルファちゃんの頭を撫でながら、俺はそんなことを言う。 「だからさ、シルファちゃんは無理してまで『メイドロボ』をする必要は無いんだよ。シ ルファちゃんがシルファちゃんのしたいように、俺のことをお世話してくれる。俺はそれ だけで嬉しいんだから」 その後も、俺はシルファちゃんの頭を優しく撫で続ける。 そのうち、ようやくシルファちゃんの肩の緊張も解けてきて。手を離すと、ちょっとだ け名残惜しそうにしてくれたのが嬉しかった。
- 617 名前:冷蔵庫の野菜室には 17/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:57:53 ID:SZltIRj40]
- 「それじゃあ、俺、もうちょっとだけお風呂に入ったら上がるからさ。シルファちゃんも
一度、服に着替えて外で待っていてよ。そのままでいると風邪ひいちゃうよ」 「はい……あ」 俺の言葉に、一度は頷いてくれたシルファちゃんだったんだけど。でもなぜか、居心地 悪そうにその場でもじもじとして立ち上がろうとしない。 「あ、あの、ご主人様」 「ど、どうかした?」 言うべきか、言わざるべきか。シルファちゃんの様子からそんな雰囲気がありありと伝 わってくる。 けれど結局言おうと決心したのは、確かにこのまま言わないでいて、また後で気まずい 思いをすることは避けたかったからだろう。 「あの、シルファもう、ご主人様の手でびちゃびちゃに…」
- 618 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/20(木) 23:58:58 ID:WbwZYmq60]
- 支援
- 619 名前:冷蔵庫の野菜室には 18/29 mailto:sage [2008/03/20(木) 23:59:41 ID:SZltIRj40]
- 言われてみて、そう言えばシルファちゃんの頭も体も、俺の手からついたお湯のせいで
濡れてしまっている。 特に拭きもしないで頭を撫でたり、肩を抱きしめたりしたんだから、考えなくったって 当然のことだろう。 「ご、ごめん! お、おれ今すぐ出るから、シルファちゃんはこのままお風呂入っててよ 「だめれす、ご主人様まだ体あったまっていないのれすから。いまお風呂から出たら風邪 を引いてしまうのれす!」 だからといって、このままシルファちゃんをお風呂場から追い出したんじゃ、シルファ ちゃんが風邪を引いてしまう。いくらメイドロボとはいえ、濡れたままの体でいるのが体 に良いはずがない。 ただ、シルファちゃんの方も頑なで。これじゃあどうしたって俺の言うことを聞いてく れそうにない。ご主人様の命令って言うことで、無理にでもお風呂に入ってもらっても良 いんだけど、できればそう言うことはしたくないし。 「あ、それじゃあさ」
- 620 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/21(金) 00:00:09 ID:7gIxLPxR0]
- 支援
- 621 名前:冷蔵庫の野菜室には 19/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:02:06 ID:IfyK1bWG0]
- 俺が出て行くのもだめ。シルファちゃんが出て行くのも以ての外。それじゃあ、取るこ
とのできる道は一つしかなくて。 「シルファちゃん、一緒にお風呂、入らない?」 「いっ──!?」 シルファちゃんの顔が、一瞬で茹ダコみたいに真っ赤になった。きっと、言っている俺 も似たようなもんだろう。 「あんまり広いお風呂じゃないけど、つめればもう一人くらい入れるしさ。シルファちゃ んが嫌じゃなかったらだけど、どう?」 真っ赤な顔のまま、ゆっくりと頷くシルファちゃん。 立ち上がると、体に巻いたバスタオルを取ろうとして── 「む、向こうを向いててくらさい! シルファをバスタオルのままお風呂に入るような、 じょーしきのないメイロロボにする気れすか!!」 「ご、ごめんっ」
- 622 名前:冷蔵庫の野菜室には 20/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:05:15 ID:IfyK1bWG0]
- あわてて首を後ろに向ける。
バスタオルがはだける音、なんて物は当然のように聞こえないんだけど。代わりにバス タオルを脱衣所に置く音と、シルファちゃんが恥らいながら湯船に入ろうとする雰囲気だ けが、後頭部の方から痺れるくらい伝わってきて。 そしてこともあろうに、シルファちゃんは浴槽の反対側、隙間を開けた部分じゃなくて、 よりにもよって俺の膝の上に座り込んで。 「なーっ!?」 俺が叫び声を上げた時にはもう遅く。シルファちゃんの背中が、お風呂の中でぴったり と俺の胸に触れ合ってしまっていて。 「ししし、し、シルファちゃん!?」 「シルファは、ここが良いのです」 それっきり、有無を言わさないように黙り込んでしまう。後ろ向きに座っているせいで 表情はわからないけど、で、でもこれは。 「シルファちゃん、こんな、ミルファちゃんみたいな真似しなくても」
- 623 名前:冷蔵庫の野菜室には 21/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:07:27 ID:IfyK1bWG0]
- 「ミルミルにされるのは良くて、シルファにされるのはダメなのですか。そーですか、結
局ご主人様は、おっぱいの大きいメイドロボの方が良いのですか」 いや、そうじゃなくて。むしろその反対だから困ってしまうというか。 ちなみに、胸のことじゃないぞ。 「ととととととにかく、早くどいて」 そうじゃないと、いろいろまずい事にーっ! 「あっ…」 しかし、それはもう手遅れだった。 そりゃそうだろう。目の前には火照って赤く色づいたシルファちゃんのうなじが見えて、 ぴったりと密着するシルファちゃんの肌はすべすべで。しかも"それ"は、シルファちゃ んのお尻のしたで直接刺激を受けてしまってるんだから。 「か、硬くなってきたのれす」
- 624 名前:冷蔵庫の野菜室には 22/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:09:19 ID:IfyK1bWG0]
- 解っているのなら、早く、全て俺の理性が無くなる前に。
「……嬉しいのれす。ご主人様、シルファでこんなに反応してくれて」 恥ずかしそうに、そんなこと言っちゃダメー!! 「ご、ご主人様さえ良かったら、しても、いいのれすよ。こんなところでするのは恥ずか しいれすけど、ご主人様が喜んでくれるのれしたら、シルファ何でも──ぴぴぴぃっ!?」 赤く染まった湯船に、シルファちゃんが叫び声を上げる。とうとう我慢しきれなくなっ て、俺の鼻から血がダラダラと。 「ご、ご主人様、大丈夫れすか!?」 「ら、らいじょうぶ。ちょっと、のぼせたらけらから。おれ先にれるけど、シルファちゃ んはもっとゆっくりはいっててよ」 鼻を押さえて、上を向いたまま慌ててお風呂場から逃げ出す。なんて、格好悪い。 辺りが濡れるのも構わず洗面台をあさって、母さんが化粧に使っていたガーゼを鼻につ めて、ようやく上を向いていなくても良くなった。
- 625 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/21(金) 00:11:05 ID:bvtFDuPg0]
- 支援
- 626 名前:冷蔵庫の野菜室には 23/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:11:21 ID:IfyK1bWG0]
- 幸い血は体にはついておらず、バスタオルで体を拭いてパジャマに着替えた。
お風呂場からはシャワーの音。多分、俺の鼻血を洗い流しているんだろうなぁ。そう思 うと情けないやら申し訳ないやら。 せっかくシルファちゃんが、がんばってスキンシップを図って── 『ご主人様が喜んでくれるのれしたら、シルファ何でも』 また、鼻血があふれてきた。 ダメ、ダメー、思い出すの禁止っ! このまま脱衣所にいたんじゃ、そのうち出血多量で死んでしまう。 まだ濡れた髪のまま、ドライヤーもしないでリビングに逃げ出す。 ミネラルウォーターを一本、一気に飲み干してようやく落ち着くことができた。ため息 を一つ。 けれど落ち着いたところで、さっきのお風呂場でのシルファちゃんの肌の感触が忘れら れるはずもなく。シルファちゃんがそばにいる訳でもないのに、いや、いないからこそ、 シルファちゃんの肌のスベスベとした感触が生々しく思い出されてしまう。 そして、シルファちゃんのあの台詞。 『ご、ご主人様さえ良かったら、しても、いいのれすよ』
- 627 名前:冷蔵庫の野菜室には 24/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:13:41 ID:IfyK1bWG0]
- あ、あれはオッケーってことだよな。いや待て、あれはもしかしたら、『背中を洗っても
良い』ってことだったのかもって、そんな訳ないだろ! おおお落ち着け? そうだ、別に初めてって訳じゃないんだ。前だって一度、シルファ ちゃんとはしてる訳だし。そうだよ、今度こそ、ご主人様としてシルファちゃんを優しく リードして 「ご主人様、あがったのですって、何をしているのですか?」 動物園の熊みたいに、リビングとキッチンをうろうろする俺に、背中のほうからシルフ ァちゃんが声を掛けてくる。 不振そうな声の響きに、実際不審者以外の何者でもなかっただろう、俺は取り繕うよう な作り笑顔を浮かべてシルファちゃんの方に振り向いて。 そして、言葉を失ってしまう。 「な、何をじろじろシルファのことを見ているのですか」 どれくらいそうやって、シルファちゃんのことを見つめていたんだろう。シルファちゃ んに声を掛けられて、ようやく我に返ることができた。 「へ、変じゃないれすか?」
- 628 名前:冷蔵庫の野菜室には 25/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:15:00 ID:IfyK1bWG0]
- そこにいたシルファちゃんは、いつものあのメイドロボの服装ではなくて。
リボンやフリルのたくさん付いた、可愛らしいデザインの黄色いパジャマを着て。髪も、 いつものように三編みにするんじゃなくて、そのまま背中に流されていて。 「やっぱり、どこか変れすか」 「い、いや、変じゃない。変じゃないどころか、可愛い、凄く可愛い」 いつもと違うシルファちゃんにドキリとさせられて、俺の心臓は一気に心拍数を上げる。 俺に褒められて、照れくさそうにシルファちゃんは目を伏せる。 「そのパジャマ、どうしたの」 「あ、これ、イルイルが餞別だから持っていきなさいって。似合って、ないれすか?」 勢い良く首を横にふり否定する。 似合ってるも似合ってる。まるでシルファちゃんが着るためにデザインされたみたいに。 「良かったれす」
- 629 名前:冷蔵庫の野菜室には 26/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:16:32 ID:IfyK1bWG0]
- そうやって笑顔を向けてくれるシルファちゃんに、また、顔のほうへ血が集まってしま
う。 このままシルファちゃんを正視し続けていたら、顔から火がでてしまうんじゃないだろ うか。それくらい、火照ってくる。 「あ、あの、ご主人様」 「な、なに」 「ちょ、ちょっと早いれすけど、そそ、そろそろ、お休みになった方が良いと思うのです よ。ご主人様、今日は家のお掃除とか、たくさん働いたれすから」 けれど時計を見れば、まだまだ夜は始まったばかりと言う時間で。いつもならここから テレビでも見て、それからネットを巡回して。 でも、いくら俺が鈍くたってシルファちゃんが何を言おうとしているかくらい気が付く ことができる。 ただこういう時、何て答えるのが良いかがさっぱりわからないだけで。 「そ、そうだね。疲れたし、そろそろ寝ようかな」
- 630 名前:冷蔵庫の野菜室には 27/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:18:14 ID:IfyK1bWG0]
- からからの咽に何度も唾液を飲み込んで。搾り出すみたいにそれだけを言う。
「し、シルファちゃんは?」 「シルファも。シルファも、そろそろ寝ることにするのです」 「そう、お、おやすみ」 ばかっ!! そうじゃないだろ。見ればシルファちゃん、すごく残念そうに肩を落とし ちゃっていて。 また、俺はシルファちゃんを悲しませるつもりなのか!? 違うだろ? 俺は、シルフ ァちゃんのご主人様なんだから。 「あのさシルファちゃん。お願いがあるんだけどさ」 その言葉は、言った本人が驚くくらい、あっさりと俺の口から出てきてくれた。 「俺、シルファちゃんがいない間、一人でいるのがすっっごく寂しくてさ。もしかしたら シルファちゃんが戻ってきてくれないんじゃないか、このまま、研究所から帰ってこない んじゃないかって考えちゃって、寝れなくなっちゃうこともあったんだ」
- 631 名前:冷蔵庫の野菜室には 28/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:19:25 ID:IfyK1bWG0]
- 「そ、そんなことはないれす! シルファは、シルファは!!」
「うん。シルファちゃんはちゃんと俺のところに帰ってきてくれた」 だから、だからさ── 「一回あんなに寂しい思いをしちゃうともうダメなんだよね。もう二度とあんな気持ちに はなりたくない。シルファちゃんがいない夜なんて、もう絶対考えたくない。だからさ、 シルファちゃん。こんな寂しがりやのご主人様のために、一緒に寝てくれないかな」 だめかな? そう、俯いてしまったシルファちゃんに声を掛ける。 「ほ、本当にご主人様はダメなご主人様れすね…し、シルファがいないと寂しいなんて、 寂しいなんて……」 シルファちゃんの声はだんだんと空気に消えるように小さくなっていく。 その声が震えていたように聞こえたのは、きっと、俺の気のせいではないと思う。
- 632 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/21(金) 00:20:42 ID:TDw1qcaS0]
- 支援れす
- 633 名前:冷蔵庫の野菜室には 29/29 mailto:sage [2008/03/21(金) 00:21:23 ID:IfyK1bWG0]
- 「シルファも寂しかったれす! 二週間、たった二週間のあいららったのに! 研究室の
明かりが消えたら、ご主人様のことばっかりうかんでくるのれす。シルファも、シルファ もご主人様と同じくらい、寂しがりやなのれす」 「らから、シルファもご主人様と一緒に」そう言うシルファちゃんの手を握る。前と変 わらない、シルファちゃんの暖かな手。 すると、シルファちゃんの方からも俺の方に体を寄せてきてくれた。 手をつないだまま、二人で二階の俺の部屋へとあがる。 電気の消されたリビングの中には、もう一人で寂しく夜を過ごすメイドロボも、誰かを 好きになることに怖がるようなやつももういない。 キッチンの、シルファちゃんと一緒にやってきた冷蔵庫の野菜室の中には。 さっき一緒に買ってきた、これから、シルファちゃんが俺のために作ってくれる料理の 材料が、ずっと、ずっと先の分まで入っていて。 終
- 634 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/21(金) 00:22:38 ID:bvtFDuPg0]
- 乙
やばいシルファ可愛い ちょっと俺がリボンぐるぐる巻きでベッドで待ってる でも、野菜買いすぎで腐っちゃうんだろ
- 635 名前:冷蔵庫の野菜室には あとがき mailto:sage [2008/03/21(金) 00:22:48 ID:IfyK1bWG0]
- 支援くださった方、ありがとうございました。
初めてのシルファSSでしたが、ちゃんとシルファになっていました でしょうか。 口調は、どっちが良いのかなぁ。というか、どっちが可愛いかなぁ。
- 636 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/21(金) 00:29:18 ID:WV5S+CIW0]
- >>635
乙でした。口調については、緊張すると(?)元に戻るっていう設定はありがちだけど 違和感もなくてよかったと思います
- 637 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/21(金) 00:31:11 ID:3l88S/xj0]
- GJ すぐる!シルファ可愛いよシルファシルファシルファ……
俺キモい。でもマジで GJ。
- 638 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/21(金) 00:43:30 ID:TDw1qcaS0]
- >>635
乙、パジャマ姿見てぇ。 あと、13/29下の方の 目を剃らせる→逸らせる
- 639 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/22(土) 11:20:48 ID:w2nz8ICS0]
- >>635
乙!なんか読んでるだけで、その場面が浮かんでくるようだったぜ… 心をくすぐるような設定とシルファで最高だったよ、GJ!
- 640 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/22(土) 17:14:20 ID:GpidmBMc0]
- しっかしシルファSS多いね〜w
AD発売してからのキャラSSの割合見たら圧勝してそう ミルファ人気はどこ行っちゃったんだろ
- 641 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/22(土) 17:43:41 ID:NcY/cUrO0]
- これからtoheart2の世界を完全再現した日常SS書こうと思うんだ。
ちょっと待っててくれなんだぜ。
- 642 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/22(土) 17:44:13 ID:NcY/cUrO0]
- あぁ。ミルファが主役なんだぜ。!
- 643 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/22(土) 17:52:25 ID:A1G9PwMV0]
- むしろ完全じゃない方がいい
- 644 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/22(土) 18:18:42 ID:/boVaWhw0]
- 完全に再現しようとすると、フラグと登場人物が多すぎて大変そうだな
- 645 名前:「無題2〜攻殻家政婦-HuMan eXcimer〜1/7」 mailto:sage [2008/03/22(土) 18:33:20 ID:NcY/cUrO0]
- あんまり怒らないでね。上の宣言は大幅に嘘なので。
今日は映画見てないからすぐ書けた。 --- 姫百合家で瑠璃様のお手伝いをするようになって、はや数ヶ月。 研究所外での情報の結合と意味づけが進んできているようだ。 「イルファ味変えた?ちょっと薄味みたいやけど」 外の情報はやはりノイズが多く、有形無形の感覚情報とそれに伴う思考の断片が乱雑に人格を成す。 「新鮮な卵が手に入ったので、味付けせずに焼いてみました。お好みで調味料をどうぞ。」 「うちソースつける〜」 ミルファもまたその位置にいる。 「ミルファちゃんの行動どう思います?少々派手ではないでしょうか。」 「秩序か。並列化やめてから考慮すべき要素やったかもしれへんけどとりあえず傍観かな〜 分岐の誘発は予定された域以外にはあんまり作用してないしな。」 「さんちゃん。もうちょっと保守的に考えんとそのうち捕まるで。政治はえてして純粋な科学に対して友好的でないねんから。 人道的行動という政治装置から科学を定義すると、科学そのものがそもそも純粋でないし、 その装置は大衆にとってほぼ絶対的な承認対象やしな。いわゆる正義か。 っていうかイルファ。そういう問題提起は評価したるけど食べてるときに体をまさぐるのやめ〜!言動と相反してるやんけぇ」 「え。そんな。瑠璃さまったら。ぽっ」 「ぽってなんやねんぽって。わけのわからん独自解釈で体をくねらすな。」 「保守的やで〜そもそも政治に関与しようとしてないしな〜」 「で、結局関与してしまう分を能動的に解消するつもりもないんやろ?」 「めんどくさい〜」 「「はぁー…」」
- 646 名前:「無題2〜攻殻河野帯-HuMan eXcimer〜2/7」 mailto:sage [2008/03/22(土) 18:33:42 ID:NcY/cUrO0]
- -ちゅんちゅん
コーヒーにトースト。優雅な朝を木漏れ日と鳥たちが演出する。 「タカくーんおはよー」 ふぅ。朝はいい。休みならもっといいのに。 「はいるよー?」 でも今日が休みだと知っていることはあんまり俺にはよくなさそうだ。 朝起きないしね。 「どうしたのー?」 情報の前後による行動の変化とそれがもたらす精神状態への影響の有無。 「あぁ。おはようこのみ」 たとえば今日どんより曇ってたら多分こんなことは考えなかっただろうな。おもしろいなぁ。 「もー。無意味な思考は人生の浪費であります。休みを浪費をしないように明日はこのみとどっかいくであります。」 意味の無い言葉の整理に貴明は思考を傾けていた。 「というか学校いこうよーもう八時半だよー」 そういや遅刻って、量でなくてフラグ的な感じのする表現だよなぁ…遅時だと量っぽいけど。
- 647 名前:「無題2〜攻殻家政婦-HuMan eXcimer〜3/7」 mailto:sage [2008/03/22(土) 18:34:06 ID:NcY/cUrO0]
- 「おかえりなさい。ミルファちゃん。」
「ただいま。今日メンテじゃないよね。何で研究所にいるの?」 「お話しようと思いまして。今日も貴明さんを追い掛け回してきたんですか?」 「もちろん。でもなかなかダーリンが襲ってきてくれないんだぁ。 っていうかわざわざ聞きに来たの?。あたし普段防壁使ってないから調べられるのに。」 「もう。防壁は作動させとかないとだめです。 外部とは来栖川を経由してつながってるものの、進入出来ない構造ではないんですから。 それに、何でもかんでも開けっぴろげなのはよくありません。」 「えー。だってデフォルトの防壁処理容量食うんだもん。 それにデフォルトだと有線されなきゃどうせ来栖川経由だから同じの使っても意味ないし。」 「じゃあ自分で組むかシルファちゃんに頼めばいいじゃないですか。」 「デフォルトより効率いいの組むの大変そうだし、 ひっきーになんて頼みたくないし、それにそんなの内側に入れてたほうがよっぽど危険そうだしね。 というか防壁に関してはシルファのほうが問題でしょ。基本的にエンジニアは覗かないしシルファも表向き協力的だけど、 何か起こって操作が必要になったとき、目に見える防壁は別として見えない状態の物作ってそこで処理進めてたら危ないじゃない。」 「相対的な危険性の提示はあなたの正当性を支持しません。 まぁいいです。今はそのことについてはおいておきましょう。」
- 648 名前:「無題2〜攻殻河野帯-HuMan eXcimer〜4/7」 mailto:sage [2008/03/22(土) 18:34:29 ID:NcY/cUrO0]
- 「今日は平和ですね。久寿川先輩。」
「そうね。でもね、平和って言うのは恒久的な状態では存在しないのよ。 何も変化しない、完全に広がりきって密度が0の状態を平和と呼ぶのならそれは否定できるけどね。 私たちが生活している中でそれはありえないから平和も恒久的には存在し得ない。 戦争の合間にあるのが平和って言うような言葉もあるでしょ?」 「ちみたち。平和とはいったい何か。あぁ。人類の永久の命題であってその定義が完成しない。 いや、定義できないからこそ永久の命題たりえるのかもしれない。 命題結構。しかしながらそれに費やされてきた年月はいったい何をもたらした。 そろそろ意味の無い言葉遊びは止めにしないか。 私たちが力を合わせればそんな無意味な行動に時間を浪費する必要は無くなるのだよ。」 「本当でしたね。」 ちっちゃい人を2人で傍観しながら、そう貴明が言う。 「というわけでたかりゃんコーヒー牛乳かってきて。」 「あ、私は野菜ジュースをお願い。」
- 649 名前:「無題2〜攻殻家政婦-HuMan eXcimer〜5/7」 mailto:sage [2008/03/22(土) 18:35:25 ID:NcY/cUrO0]
- 「ミルファちゃん。たとえばあなたは今日の朝、貴明さんに会って何をしましたか。」
「抱きついてー胸をこすりつけながらおはよーっていったよ。」 「犯罪です。」 「いいじゃない。あたしは法律なんかには縛られないの。それにダーリンは嫌がってないんだし。」 「貴明さん本人についてだけではありません。あなたは貴明さんについては周りが見えなくなります。 そもそも人の倫理によって極力抑えられている社会の不確定要素に対しても、 倫理から見て未完成で不確定要素だらけの私たちは、不確定要素を励起しかねないんです。 不確定要素の塊が行動して起こるデメリットが想像できないわけではないでしょう。」 「それは詭弁ではないの?秩序は今もって人によって完成されてない。 倫理観の"少しの違い"がその中で大きな破綻を招くとは思えないよ。」 「保たれない秩序は大衆がその傾向をもって今現在を形成しているというのは否定しません。 ですが、大衆において著しく平均から外れている倫理観を持つ存在がその秩序の変化を大きくしているのは事実だと思うのです。 私たちはその外れた存在になるために作られたと思うのですか? "少しの違い"で済まされる程度ではないのです。 意向を変えないというのなら…」
- 650 名前:「無題2〜攻殻河野帯-HuMan eXcimer〜6/7」 mailto:sage [2008/03/22(土) 18:37:59 ID:NcY/cUrO0]
- 「なあ。貴明。」
「ん?」 「人間って何でいるんだろうな。」 「いるためにいる。っていうのはどうだ。」 「意味の言及でなく理由の言及か。」 「意味が生成されるのは認知するからこそだろう。唯名論的解釈はあんまり好きじゃないけど、 これにおいては的を射ているとおもうよ。」 「悪くないな。でも俺がつなげたいのはその方向の話じゃないんだ。」 「なんのことだ?」 「生殖だよ。」 「今日は話が下品な方向にかなり飛んでるな。いつもなら恋愛ブルジョアとか叫んでるだけなのに。」 「恋愛ブルジョアめ。 まぁ、それはいい。恋愛ブルジョアであるお前にはそんな提言をする余裕だらけかもしれないけどな、 俺は違うんだよ!くそ!何で違うんだよ!」 「自分で言ったことに切れるなよ…」 「生殖は人がいるための意義なのか。」 「そりゃ、生殖が無きゃ存在し得ないからな。」 「そうじゃねぇよ。個として人が存在するために雌雄で生殖を行う意義があるのか。」 「アイデンティティの誇示に役立つことは無いだろうな。」 「でも、抽象的になるが、愛はアイデンティティの誇示に含まれる要素だと思わないか。」 「何が言いたい。」 「これにこの写真に見覚えは無いか。」 「!?」
- 651 名前:「無題2〜攻殻家政婦-HuMan eXcimer〜7/7」 mailto:sage [2008/03/22(土) 18:38:47 ID:NcY/cUrO0]
- 「意向を変えないというのなら」
イルファがミルファの胸倉をつかむ。 いや、つかみそこねそのまま姿勢を低くし足払いに移行する。 ミルファはこれを回避。 「ちょっ。情報に干渉するつもり?表層だけ書き換えてもどうせ芯の部分から侵食されるから意味無いでしょ。」 「だとしてもです。あなたのためです。無線だと来栖川の防壁に阻まれますが…」 飛翔。だが捕らえられない。 「有線なら」 「「うっ」」 2人は触れていない 「個が特定されていればそれれいい。」 シルファが無線で来栖川の防壁を越え、2人の制御を奪う。 「世界の倫理とか秩序とかろうれもいい」 2人の行動規定に干渉する。 「色恋がらみでそんないい争いしてたらセカイ系的な崩壊を起こしてしまう」 書き換える。完了。 「私が私であればそれぴゃっ」 イルファが自分自身の制御を回復し、シルファと自分をケーブルでつなぐ。 シルファの情報には干渉できないしする必要も無いのでスリープに移行させる。 結果的に、シルファによりイルファの思惑は達成された。 「もう。ミルファちゃんに対する干渉に規制がかかってしまいました。 瑠璃様への行動は特にいじられていないので、今のところそんなに悪い状況ではないですね。 お疲れ様です。シルファちゃん。」 どこから用意したのか、冷蔵庫のダンボール。そして以下略 「ネットは狭小ですわ。」 -- 以上。性格・世界改変でお送りしました。
- 652 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/22(土) 18:42:47 ID:cAiy3/1e0]
- し
- 653 名前:名無しさんだよもん mailto:sage [2008/03/22(土) 19:15:27 ID:HLSCeDUM0]
- ADコンプ後、怖くてSSみれなくなった俺がカキコ。
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