- 1 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2005/12/17(土) 15:08:53 ID:GxaSj02M0]
- 文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎! 皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン ======================================================================= ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。 ※sage推奨。 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。 ※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。 ======================================================================= 前スレ FFの恋する小説スレPart4 game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101760588/ 記述の資料、関連スレ等は>>2-20にあるといいなと思います。
- 603 名前:DC後 【63】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/13(土) 14:27:08 ID:onyAmoyX0]
- 電力が回復していないのか薄暗く、床や柱には銃痕があり、
かつての賑やかさを知るシドは思わず溜め息を吐き、そして煙草に火を点けた。 「ま、こんな調子じゃ、禁煙だなんだ言う奴はいねぇだろ。」 そして突き当たりにあるエレベーターを見ると、見事なまでに破壊されている。 「で、エスカレータも動かないってかぁ?」 回廊の上の方見て、シドとバレットはあんぐりと口を開け、 何も言わずに階段を上り始めたクラウドの後にしぶしぶ続く。 「リーブの野郎、毎日この階段を上ってんのか?」 「ケット・シーはともかく、アイツ、俺らより年上だよな?」 半分上った所で、真っ先に音を上げたのがシドだった。 「俺みたいにタバコ吸う奴にゃ、キツイぜ、この階段。」 階段にどっかと腰掛けて、首にかけていたタオルで汗を拭う。 「おい、行くぞシド。」 バレットは容赦ない。 「うっせぇなぁ、ちょっと休ませろよ。」 シドはうんざりした口調で言うと、また煙草に火を点けた。 これはなかなか動きそうにない。 「悪いが俺はもっと長い階段を上った事があるんだよ。これくらいなんともねぇさ。」 バレットが言っているのは、神羅ビルのあの長い階段の事らしい。 あの時、さんざゴネてティファを困らせた事は ここでは黙っていた方ががいいな、とクラウドは思った。 かと言って先に行くと言うと、親父二人に文句を言われているのは目に見えてるし。 ポーカーフェイスのまま、うんざりとそんな事を考えていると、 書類の束を持った女性隊員が通りかかった。 3人の姿を見ると、直ちに敬礼すると、遠慮がちに、 「ところで…皆さんはこんな所で何をしておいでですか?」 「リーブの野郎にに呼ばれたんだ。」 「それで、この因果な階段を上ってる所だよ。」 女性隊員は言いにくそうに、 「あの…エレベーターが使えないので、局長室は2階に移ったのですが…」
- 604 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/13(土) 14:27:57 ID:onyAmoyX0]
- 短くてごめんなさい。
うまくいけば、今日明日には完結するかもです。
- 605 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/14(日) 00:46:30 ID:pScTXxYL0]
- > 「あの…エレベーターが使えないので、局長室は2階に移ったのですが…」
腹痛い、ホント腹痛いw リーブ(DC1章)という人物像をここまで的確に表現し、かつオチを着けてくれる作品を 拝見できる日がくるなんて!! おいリーブ早く言えよ!と、大クレーム勃発の予感!!に期待sage。 (しかもこの後2Fまで下ることも考えると、結局上まで行くのと同じ距離になるんだよな…w) いやもうホント幸せです。ありがとうありがとう。
- 606 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(17) mailto:sage [2006/05/14(日) 00:56:27 ID:pScTXxYL0]
- >>594-599より。
---------- *** 依然として出力低下の続く飛空艇シエラ号は、コントロールルームで必死に 操縦桿を握るクルーの操縦技術と努力の甲斐あって、辛うじて航行を維持していた。 「チッ、……やりすぎちまったか?」 目の前で倒れたリーブの身を起こしたが、気を失ったまま意識が戻ることは なかった。シドとしてはそれほど強い力で殴っちゃいないのだが、などと言い 訳じみたことを考えながら、通路の壁にリーブの上半身を凭せかけてから、 腕組みをして吐き捨てた。 「まったく世話の焼ける野郎だぜ」 さて、これからどうしてくれようか。ようやくシドが考え始めた。しかし彼が考えて いるよりもシエラ号を取り巻く事態の進行スピードは早く、そして向かう方向は 悪かった。 飛空艇全体に、けたたましい警告音が鳴り響いた。それから間もなく、艇(ふね)が 大きく傾きかける。シドはバランスを取るために壁に手をつき、なんとかその場に 踏みとどまる。幸い、飛空艇の方も体勢はすぐ持ち直したようだったが、警告音は 止まらなかった。 艇に迫る危機と、操縦桿を握るクルーの焦る顔が思い浮かび、シドは勢いよく 立ち上がり呼びかけた。 「……おいリーブ、ちょっと待ってろ!!」 意識のない彼から返答はないが、シドはリーブの身体を通路の隅に寄せた。完璧と は言えないが、こうして2面の壁で彼の身体を支えていれば、急激な揺れにも少しは 耐えられるだろう。間違っても、艇が揺れるたびに通路を転げ回る、なんて事には ならずに済むはずだ。 それからシドはコントロールルームへと駆け込むと、扉が開くと同時に叫んだ。 「おい、どうした!?」
- 607 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(18) mailto:sage [2006/05/14(日) 00:59:36 ID:pScTXxYL0]
- 「艦長……!!」
先ほどシドから操縦桿を託されたクルーが声をあげる。 「依然としてシエラ号の出力は低下中。それどころか、このままではじきに ……全てのコントロールを受け付けなくなります」 シドが階段を駆け上がる間にも、彼の状況報告は続く。コントロールルームに 設置された、おそらくはシエラ号全艦に設置されたディスプレイで、同じ現象が 起きていた。 “退避勧告”。画面には簡潔にその文字が表示されていた。階段を上りきって、 手近にあったディスプレイでそれを確認すると、シドは噛みしめるように呟いた。 「……オレ様に艇を捨てろってのか?」 クルーは一度シドから視線を外すと、黙って頷いた。シドの顔を見て、それは 言えなかったのだ。 「出力低下に伴い、既に高度調節の機能は使えなくなっています。このままの 軌道で進めば……ミッドガル中央塔付近……あるいは、六から八番魔晄炉 付近に……」 「おい待て! それじゃあ地上部隊が巻き添えになっちまうじゃねぇか!!」 シドはクルーが言い終える前に叫ぶと、今にも胸ぐらにつかみかかる勢いで 詰め寄る。無論、操縦桿を託されたクルーとてそれを望んで操縦している訳では ない。 しかし彼が口にしていたのは考えられる中で最悪の、同時に現段階で最も 起こりうる可能性の高いシナリオだった。確かにこのまま飛空艇が墜落すれば、 爆発の余波で魔晄炉のいくつかは破壊できるだろう。そうなれば当初の計画通り、 零番魔晄炉へのエネルギー供給を絶つことができる。 しかし、地上にいるクラウド達はどうなる? 仮に魔晄炉ではなく中央塔にでも 接触してみろ、中で交戦中であろうヴィンセントやユフィ、WRO隊員達を一気に 失うことになりかねない。 どこへ墜落したとしても、シエラ号に搭乗しているクルー全員が間違いなく……。 それは、なんとしてでも避けなければならなかった。
- 608 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(19) mailto:sage [2006/05/14(日) 01:05:06 ID:pScTXxYL0]
- 「ミッドガルに墜落……か」
口に出してから、さらに嫌なことを思い出した。 かつて神羅宇宙開発部門が作った試作ロケットが、ミッドガルに墜落した 時の話だ。当時、シドはまだ宇宙ロケットの正式パイロットにはなっていな かった頃の出来事で、あの当時ミッドガルスラム街付近に墜落したとされる ロケットは幸いにも爆発しなかったため事なきを得たのだと聞かされ、安堵 したことを覚えている。しかしそれ以降、宇宙開発への風当たりが社内で強 くなったことは間違いない。 宇宙開発事業からの撤退を最初に提言したのは、都市開発部門だった。シ ドは上官からそう聞いている。もっとも、今となってはどうでもいい話だ。 「……艦長」 再び操縦桿を受け取ったシドに、クルーは神妙な面持ちでこう告げた。 「既にプログラムの起動準備は整っています。あとは……」 それ以上は口にすることができなかった。飛空艇を放棄する選択を、シド に下せと言うのは、あまりにも酷なことだとクルーは思った。 しかし、それができるのはシド以外にはいなかった。 「このまま……ミッドガルに落ちる訳には行かねぇ……!」 操縦桿を握るシドの手に、力がこもった。 ---------- ・(場面が飛びまくって分かりづらいですが、一応)ネロ戦後のシエラ号。
- 609 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/14(日) 04:20:19 ID:kTYdcOO80]
- シエラ号の続きキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
気を失ったリーブに声を掛けているシーンが(・∀・)カコイイ!!
- 610 名前:DC後 【64】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:22:52 ID:kTYdcOO80]
- >>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577 >>602-603の続きです。
それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573) 「お呼びだてして申し訳ありません。」 局長室には書類が山積みになり、リーブの顔も疲労の色が濃い。 それでも仲間が訪ねて来てくれたのがうれしいのか、目を輝かせている。 が、すぐにシドとバレットが不機嫌そうなのに気付いた。 「…どうしました?」 「なんでもない。」 横からさらりと言ってのけたクラウドのせいで、リーブに文句を言う気満々だった シドとバレとは気勢をそがれ、腹立ち紛れに、どかりと乱暴に来客用のソファに座った。 クラウドもリーブに勧められ、空いている一人掛けのソファに座る。 「どうしてもここから離れられないので、わざわざ来て頂きましたが…話とは、ヴィンセントの事です。」 「ま、そうだろうな。」 階段の事をまだ根に持っているのか、シドが不機嫌そうに答える。 「何か分かったのか?」 クラウドはそれを無視し、リーブに尋ねる。 「それが…」 言いにくそうに言葉を濁すリーブに嫌な予感を覚え、シドとバレットは身を乗り出した。 「なんだよ、ヤツの身になんかあったのか?」 「もったいぶらずに早く言えよ!」 「私…考えたんですよ。」 また話をはぐらかされて、シドとバレットはあっさりキレてしまう。 「勿体ぶんなっつってんだろ?」 「結論から話せ、結論から!」
- 611 名前:DC後 【65】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:25:19 ID:kTYdcOO80]
- 二人の剣幕に目を丸くするリーブだが、簡単にペースを乱される彼ではない。
「順を追ってお話しますので…」 おだやかな口調で言われると、またもや二人のイライラのベクトルが乱されてしまう。 「わぁーったよ!」 「黙っててやるからさっさと話せ!」 「私…考えたんですよ。」 「そこからかよ!」 「クラウドさんとバレットさんが不眠不休で探しているのに、彼が見つからないのは何故かと。」 「その内の何日かは俺一人だったぜ。」 むすっとして、バレットが口を挟むが、リーブは無視して話を進める。 「私たちの誰もが彼の生存を信じています。なのに見つからないという事は、 彼はもうここには居ないのではないかと。」 3人は、ぽかん、とリーブを見つめる。 「じゃ…じゃあ、アレか?アイツは、無事なのにとっとと姿を眩ましやがったってのか?」 「おそらく。」 「俺たちが心配してるのを知ってか!?」 予想通りのリアクションに、リーブは考えに、考え抜いた返事をする。 「私が思うに…」 「おう、なんだ?」 「彼独特の奥ゆかしさではないかと。」 白けた空気が流れた。 シドとバレットは空いた口が塞がらず、クラウドは顔を手で覆ってしまう。 「随分と言葉を選んだな、リーブ。」 「皮肉ですか、クラウドさん?」リーブは肩を竦めた。「他に、どう言い様があるんです?」 口をぱくんと開いたまま呆然としていたシドとバレットだが、 すぐに目に光が戻り、ワナワナと震え始めた。 「二人とも、落ち着いて下さい。」 二人は同時に片足を応接セットの机の上にだん!と乗せると、 「落ち着けだとおおおおーっ!」 「これが落ち着いていられるかよ!」 「お二人とも、お願いですから座って下さい!」 リーブは必死で二人を宥める。
- 612 名前:DC後 【66】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:27:36 ID:kTYdcOO80]
- クラウドは、なんだか子どもの頃に見たサーカスの猛獣と猛獣使いの様だな、と
傍観していたが、さすがにリーブが気の毒になり、 「それで、ヴィンセントはどこに居るんだ?」 リーブに飛びかからんばかりの二人と、そしてリーブがクラウドを見る。 「リーブの事だ。もう居場所は分かっているんだろ?」 さすがに気恥ずかしくなったのか、親父3人はいそいそとソファに座り直した。 「おう、で、奴はどこに居るんだ?」 「私…考えたんですよ。」 「またそこからかよ!」 「だから結論から言え、結論から!」 「シド、バレット。」 クラウドは少し声を荒げる。 「とにかく、今はリーブの話を聞こう。ヴィンセントが無事ならいいじゃないか。」 「ったく、おめぇはどうしてこんな時でも冷静なんだよ。」 ブツブツ言いながらも、二人はとりあえず黙るが、 それでも眼光でリーブを威圧するのは忘れない。 それをさらりと受け流し、漸く話を続けられる状況にリーブは満足げだ。 「まず、命がけの戦いを終えた後、皆さんならどうします?」 この質問は効果的だった。 途端に二人は大人しくなり、誰かの顔を思い浮かべている様子だ。 「ま、仲間ん所に戻るかな。」 「そうだな。俺ならそれからマリンの所に駆けつけるな。」 そうでしょう、とリーブも大きく頷く。 「当然、皆さんを待っていてくれる人の所ですよね。でも…私の質問に真っ先に浮かんだのは、 それぞれの奥方だったり、恋人だったり、娘さんだったのではないですか?」 これはクラウドを含めて、3人とも図星だったので誰も言い返せない。 「待てよ、リーブ。けどヴィンセントにゃそんな相手は…」 言いかけたシドがあっ!と叫んだ。 「…あんの野郎!まさか!!」 「おい、シド、どういうことだ?」 まだ分からないバレットがシドに尋ねる。
- 613 名前:DC後 【67】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:30:55 ID:kTYdcOO80]
- 「ヴィンセントはんは“ルクレツィアの祠”に居はります。」
ぽてん、ぽてん、とまたもや不思議な足音をさせてケット・シーが部屋に入って来た。 「わいがこの目で見て来ましたから、間違いないですわ。」 ケット・シーはよいしょ、と飛び上がってリーブの隣に座る。 「じゃあ、あの野郎…!俺らの事を放っておいて思い出の場所に駆けつけたのか…?」 バレットが再びわなわなと震え始める。 「皆さんもご存知の通り、彼はああいった性格ですから。」 「単に照れくさくて、みんなの前によう顔出されへんだけでっせ〜。」 今度は1人と1匹での説得だ。 「あの野郎!俺等が心配しないとでも思ってるのかよ?」 「今すぐ洞窟から首根っこ引っ掴んで引きずり出してやる!」 ケット・シーが慌てて両手を振りながら、 「ま…待って下さい、バレットはん!ヴィンセントはんは悪気があったんとちゃいまっせ! きっと皆さんやったら分かってくれる、そう思うて…」 「いくら俺達だからって、分かんねーよ!」 「悪気があったらもっと許せるかよ!」 バレットとシドにコワい顔を突きつけられ、ケットシーは毛を逆立てて飛び上がった。 「俺は…少し分かるな。」 クラウドがボソッと呟く。それを聞き逃す親父二人ではない。 「どういう事だ?」 「みんなが待っているのは分かってる…1年前、俺はそれが分かって救われた。でも…」 その活躍のせいか、配達先の街で知らない人にいきなり 握手を求められたりして大変だったとクラウドは説明した。 「だから…出て来ないんだと思う。」 「せやから言うたでしょう?ヴィンセントはんは奥ゆかしいおヒトやって!」 我が意を得たり、とケットシーとリーブが同じタイミングで頷いている。 確かに、いくら気心の知れた仲間とは言え、ヴィンセントは仲間内でも特殊である。 常人とは違う身体の持ち主だ。 彼が出来るだけ人とは関わらない様に細心の注意を払って生きて来た事を思うと、 (さすがのお二人も、これで納得するでしょう…)
- 614 名前:DC後 【68】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:36:29 ID:kTYdcOO80]
- リーブにとって、口下手クラウドがヴィンセントの立場で発言してくれるかどうかは、賭けだったのだが、
(やはり、3人一緒に呼んでおいて良かったようですね。) 作戦成功に、リーブはまたもや満足気に頷いた。 「ですから…今は彼をそっとしておいてあげましょう。大丈夫ですよ。 落ち着いたらひょっこり顔を出してくれまよ。 その時は何事もなかったかの様に、彼を受け入れてあげればいいだけのことです。」 穏やかなリーブの声が、静まり返った局長室に響く。 「…まぁなぁ…」 「アイツの性格を考えるとなぁ…」 説得成功!リーブがそう確信した瞬間、 「でもよ。ちょっとおかしいんじゃねぇか?」 「電話だろうが、メールだろうが、なんでも知らせられたんじゃねーのか?」 「そ…それは…」 情に脆い二人のこと、このセリフで決まりだと確信していたリーブは 思いがけない反応のすっかり狼狽えてしまっている。 「なぁ、リーブ、俺たちはな…」 「飛空艇団員に頭下げて抜け出して何日もミッドガルを歩き回って。」 「マリンにも会えずで、おまけに足が棒になっちまったぜ。」 「シェルクの見舞いにも行けなかったなぁ…」 強面2人に詰め寄られ、リーブは縋る様にクラウドを見るが、黙って首を横に振るだけだ。 ケットシーはとっくに姿を眩ませている。逃げ場はない。 「お前の言い分はもっともだぜ、リーブ。」 「それにヤツの気持ちも分からないでもねぇしよ。」 「そ…そうでしょう?」 リーブは引きつった笑みを浮かべる。 シドもバレットも同じ様に笑っているが、目が笑っていない。 「そこでだ。俺様にいい考えがあるんだ。」 にやりとシドが笑う。 「もちろん、お前も協力してくれるよなぁ?」 つづく。
- 615 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/14(日) 04:37:22 ID:kTYdcOO80]
- すいません、やっぱ、もー少しかかっちゃいます。
もーしばらくお付き合い下さいませ。 >>605 >リーブ(DC1章)という人物像 普段はダンディで上司にしたい男性No.1の局長も、 旅の仲間にはお茶目な所を見せるところがうれしくって、 DC1章のあのシーンは何度も繰り返して見てしまいます。 それとも、普段からあんな感じなんでしょうかね。 神羅時代の都市管理課としての重責、そして、WRO局長としての責務で大変だけど、 心から許し合える仲間と一緒の時はリラックスして欲しいなぁ…と思って書きました。
- 616 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/14(日) 15:51:43 ID:1q0JoqH+0]
- 「彼独特の奥ゆかしさではないかと。いいww
おっさんらワロタw 保守。
- 617 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/15(月) 02:44:08 ID:1+1dlJ4e0]
- どちらの話も楽しんで読ませてもらってます。
- 618 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/16(火) 11:48:38 ID:I3ob+UGgO]
- イイヨイイヨー
このスレのリーブいい味出しすぎ
- 619 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/16(火) 21:10:52 ID:4/ci2G760]
- age
- 620 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/17(水) 22:05:01 ID:DyE+ffRk0]
- ほ
- 621 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/17(水) 22:25:43 ID:4fHRqUoxO]
- しゅ
- 622 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/18(木) 10:55:08 ID:mMqiugnQ0]
- しま
- 623 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/18(木) 22:55:00 ID:fZXkTGs/0]
- >>610-614
DC内のリーブ像が忠実に再現されているというか、微妙なお茶目さorおかしなオッサン という姿が上手く描かれているので読んでて楽しいです。(激しく個人的な趣味ですがw) ところで階段の件、シドならジャンプで一発解決できると思うのは自分だけだろうか?w みんなに合わせて歩いたシドの優しさにちょっと切なくなった。 しかしシドとバレットを窘めるリーブの姿は、重役会議から変わらない役回りなんだなと ちょっと思うw。小指ぐらい日常的に噛まれてそうな猛獣使いGJ!!
- 624 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(20) mailto:sage [2006/05/18(木) 23:29:19 ID:fZXkTGs/0]
- >>606-608より。
---------- *** ロケット墜落現場へ向かう車内でも、本社と携帯での通話が続いていた。 都市開発部門管理課には、ロケット墜落についての詳細なデータや各所の 被害状況等がリアルタイムに入る。それを、彼女が電話を通じてリーブに 伝えていた。 『こちらから総務部調査課へ救援要請も出しておいたわ。正式に受理されるかは 分からないけれど……』 つい先ほどまで一緒だった彼と別れる間際、あちらの携帯に入った連絡が それだったのだろうとリーブは思った。 しかし、そうなると不自然な事がある。 「主任、なぜ軍ではなくタークスなんですか? 万が一居住区画に影響が出ていれば、 救助活動には人手が……」 墜落したのが試作ロケットである事を考えても、現場の惨状は察するにあまりある。 救助活動の規模ももちろんだが、救助する側もそれなりの装備を整えて臨まなければ、 二次被害拡大のおそれがある。 それらの観点からも、救援要請を出すなら軍が妥当だとリーブは考えた。 なのになぜ、彼女がタークスに出動要請をしたのかが解らない。当然の疑問だった。 『…………』 「主任?」 呼びかけた声に、ようやく彼女が口を開いた。 『……スラム街に被害が及んだとしても、救助はないでしょう。その代わり ロケットの撤去作業が優先されるわ。被害状況の調査と報告までが私達の仕事。 軍の出動は、その後よ』 「なんですって!? なぜ……!」 『私たち都市開発部門としても、魔晄炉建設の工期を遅らせるわけにはいかないわ』 携帯電話を通して聞こえてくる彼女の声が、ひどく機械的な音に聞こえた。
- 625 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(21) mailto:sage [2006/05/18(木) 23:37:31 ID:fZXkTGs/0]
- ――「……それは我々にとって、無用の長物でしかありません。」
任務遂行のためには感情を切り捨てると言った、先ほどの男の言葉が脳 裏によぎる。彼の言葉もろとも否定するように、リーブは首を横に振った。 違う、これは感情の問題ではない。 「主任。……それは間違ってます」 『…………』 「都市開発は……都市はそこに住む人あっての都市でしょう?! なぜ、 そんな風に住民を軽んじる事ができるんです!?」 『…………』 返答はなかった。携帯から僅かなノイズは聞こえてくることから、通信が 途絶えたわけではなく、彼女からの返答がないのだと分かる。それでも リーブはさらに言い募った。 「確かに私は……魔晄炉建設計画で力に頼りました。しかし、それが正しかった とは思いません。利益を……豊かさを、住民に還元するのが、私の務めです。 ですから……」 『ご託は充分よ、リーブ君』 先を続けようとしたリーブの言葉を、彼女はいとも簡単に遮った。たった一言で、 全てを否定し、拒絶する。 『可能・不可能……結果は2つしかないわ。そして我々は“可能”を実現する以外の 選択肢はない。できもしない理屈だけなら、聞く価値も意味もないわ。……切ります』 そして事実、彼女は一方的に否定して通話を終えたのである。 「待ってください!」 叫んだところで返ってくるのは、通信切断を示すノイズだけだった。 リーブはやり場のない思いを携帯にぶつけるようにして叩きつけた。助手席に転がった 携帯のディスプレイに、リーブの顔が映し出される。 「みんな、間違っとるで」 視線を前に向け、ハンドルを握り直す。 「……なんや、間違っとるんは自分だけかいな?」 呟きながらリーブはアクセルを踏み込んだ。地上に真っ直ぐ延びた道路を、ひたすら進んだ。 この時、見上げることのなかった頭上の空は、とても穏やかだった。 ----------
- 626 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(21)[訂正] mailto:sage [2006/05/18(木) 23:42:22 ID:fZXkTGs/0]
- >>625
そして我々は“可能”を実現する以外の 選択肢はない。 ↓ そして我々には ---------- …気をつけます。 ・未プレイですが、きっとシムシティをやらせてもコマンド1つ1つに対してSS書くんだと思います。 ・念のため、現在投下中のSSはFF7です、…一応w
- 627 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/19(金) 21:27:07 ID:Es47DFMR0]
- 保守
- 628 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(22) mailto:sage [2006/05/20(土) 01:51:23 ID:acV9jEae0]
- >>624-625より。
---------- *** 受話器を左手に持ったまま、彼女はデスクの前で呆然としていた。自ら 切ると言って右手で通話を切断した、その体勢のままで。 それは機敏に動き回り部下に指示を飛ばす、ふだんの活発な彼女からは 考えられない姿だった。周囲の視線を気にしたのか、俯いてから自分の耳に すら、ようやく聞こえる程の小さな声を、絞り出すようにして呟いた。 「……分かってる……間違ってることは、分かってる……」 その言葉を最後に、ずるずると崩れ落ちるようにして机に突っ伏した。 震える手で受話器を置く。遠くの方でがちゃがちゃと騒がしい音を立てていた。 「……でも……!」 泣くことはしなかった。涙は出て来ない、この道を選んだのは自分自身 だったから。後悔もしていない、正しいと信じて選択したことだから。 ただ、ただ。 苦しかった。 「……主任」 呼ばれる声で顔を上げる。バレッタで束ねられた髪が表情を覆い隠して くれることはない。だから部下に向ける顔を、とっさに整えた。 「総務部調査課から、主任宛にお電話です」 「ありがとう」 そう言って彼女は再び受話器を取り上げた。左手に持った受話器がひどく 重たく感じた。ボタンを押した後、耳に当てたスピーカーから聞こえてきたのは、 聞き慣れた男の声だった。彼の声が聞こえてくることを期待していた。その通り かけて来てくれた男に、心の底で感謝した。 『……用件から簡潔に言うと、君の出してくれた要請は却下された。我々 タークスが、“救援活動”について出動することはない』 「そう……やっぱり」 それも予想はしていた。しかし、彼の口からその言葉を聞きたくなかったという 思いも、どこかにあったのだろう。隠しきれなかった落胆が声に現れている。
- 629 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(23) mailto:sage [2006/05/20(土) 02:04:27 ID:acV9jEae0]
- 『ただ』
だが彼女の予測を裏切るように、受話器から聞こえてくる声は続けた。 『個人的に、という条件付きですが協力はできます。あなた方の力になりたい』 「……珍しいこともあるのね」 彼からの申し出は嬉しかった。それでも、皮肉るような言葉しか出て来ない のは、仕事で染みついた習慣のせいなのか。そんなことを考えた。 少し間を置いてから、彼はこう答えた。 『……先ほど、あなたの部下に言われましてね。彼はいい人材ですよ』 その言葉に思い当たる顔が浮かんで、彼女は額に手を当てて苦笑した。 「そう。……実は私もね……叱られたばかりよ」 『良い部下を持ちましたね』 「ええ」 そう言って彼女は頷いた。相手に姿が見えないと分かっていても、深々と。 その姿は頷くと言うよりも、頭を下げているように見えた。 彼女は忙しなく社員の行き交うフロアに背を向け、窓から外を眺めながら 切り出した。 「……ねえ、あなたは知っているんでしょう? “例の計画”の事」 窓の中に広がる空の中に、受話器を持つ自身の姿が映っている。まるで 自分に語りかけているようで、少し不思議な心地がした。 『住民監視システム……』 「ええ」 僅かだが、答える彼女の声が震えている。
- 630 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(24) mailto:sage [2006/05/20(土) 02:08:25 ID:acV9jEae0]
- 『どうしたんですか? 貴女らしくないですね』
「……わたし……」 『待って下さい。お分かり思いますが、我々社員は常に監視されています』 男の言葉に分かっていると言って彼女は頷いた。監視とはもちろん、今この 瞬間も含まれているのだと。それを聞いた以上、男に発言を妨げる理由はなかった。 「……この計画を最後に、彼にすべてを引き継ごうと考えているの」 『今回の配置転換は、やはり?』 「彼には悪いことをしたと思っているわ。だけどこれが、結果的には彼にとって 最善の道だと思うの……私のわがままかしらね?」 『彼なら……リーブならきっと理解してくれます。そして貴女の期待にも応えてくれる でしょう。それについては私からも保証しておきます。ただ……』 「ただ?」 『まだまだ甘さが抜けません。仕方がないことだとは思いますが……』 そう言って受話器の向こうで男が小さく笑ったのが分かった。 その声を聞きながら彼女はふと目を細めて、振り返るとフロアを眺めやった。 (らしくない、か。確かにそうね……) ひとつの結論にたどり着いて、口元に小さな笑みを浮かべると、彼女はこう言った。 「あなたに部下を褒めてもらうのは、上司として嬉しいわ。でもね……。 そんな保証なら、ないのと同じ」
- 631 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(25) mailto:sage [2006/05/20(土) 02:13:33 ID:acV9jEae0]
- その言葉を聞いて、受話器の向こうで男が堪えきれずに吹き出した。
『やっといつもの調子が戻ってきましたね。安心しましたよ』 「あなたに心配される様ならお終いね。……ありがとう」 言いながら立ち上がると、机上の書類を手早く片付けて身支度を調える。 手前の引き出しに入れてあった茶封筒と、ふだんは鍵を掛けてある袖机を 開けて、さらにその奥にしまわれたディスクを何枚か取り出す。ラベルの 貼られていないそれらのディスクを確認して、ひとつ息を吐いた。 「これから私も現地へ向かうわ」 『分かりました。何かあればまた連絡を』 「ええ」 そう言って通話を終えると、彼女は鞄の中に茶封筒を投げ入れた。 フロアを去る際、先ほど自分に電話を取り次いでくれた社員に声を掛けられた。 「主任、どちらへ?」 「……ロケットの墜落現場よ。このまま戻らないと思うわ。後はお願いね」 「分かりました」 しかしその言葉が示す本当の意味を、彼女以外に知る者はいなかった。 ----------
- 632 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/20(土) 12:15:45 ID:1IKlcKb40]
- GJ!ロケットが刺さった教会、心配ですね。現場はどうなってるのかな。
- 633 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/21(日) 02:04:19 ID:6/FYzwLt0]
- 一日一保守
- 634 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/22(月) 01:04:01 ID:nTwcWFeA0]
- >>628-631
女性上司はもう戻られないのでしょうか・゚・(ノД`)・゚・。 2人ともとても辛い立場で読んでいる方も胸が痛いです。 続きが気になります…
- 635 名前:DC後 【69】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/22(月) 01:08:05 ID:nTwcWFeA0]
- >>508-509 >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577 >>602-603 >.610-614の続きです。
それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573) 二人の迫力に押されていたリーブだが、ここで諦めるようでは今の彼はなかっただろう。 「ちょっと待って下さい、艦長。」 「んだよ?」 「確かに私は彼を庇ってはいますが、別に彼の失踪に手を貸した訳ではありません。」 気丈に言い放つと、シドをぐい、と押しやる。 「あなたが何を考えているかは分かりませんが、手を貸す理由はありませんよ。」 「おい、シド、気付かれたぜ。」 「当たり前です。」 リーブはぴしゃりと言うと、改めて二人に向き合う。 「まぁ、そう言わずによぉ、協力しろよ。」 シドは脅しが効かないと分かると、今度は懐柔策に出た。 「別に俺だって本気で怒ってるワケじゃねぇよ。それっくらい分かるだろぉ?」 「さっきと言う事が随分変わってますが。」 懐柔されてなるものかと、リーブは冷たくそっぽを向く。 「そこでだ!」 「私の話を聞いてますか、艦長?」 「もちろん聞いてるぜ!」 「では改めてお願いします。どうか彼をそっとしておいてあげて下さい。」 「星を救った英雄を出迎えるパーティと行こうぜ!」 「ですから、私の話を聞いてますか?」 「もちろん聞いてるぜ。んで、場所はティファの店な。」 「勝手に決めるないでもらいたいな。」 クラウドが呟く。 どうせ聞いてはいないのは百も承知だが、一応言ってみる。
- 636 名前:DC後 【70】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/22(月) 01:12:06 ID:nTwcWFeA0]
- 「俺の作戦はこうだ。まず、ヤツを迎えに行くのはシェルクに頼む。」
「どうしてここで彼女の名前が出るんですか?」 「そりゃあ…」 「彼を油断させる為でしょう。」 「お前ってどうしてこう…もっと言い方ってもんがあるだろぉ?」 シドはは顔を、やれやれと頭を振る。 「いいか、よく聞けよ。俺たちが行くより、シェルクが行く方が ヴィンセントの野郎がびっくりして、おもしれぇじゃねぇか。」 「おもしろいとか、おもしろくないとかの問題ではないと思いますが。」 「ど〜せ俺たちが行ってもよ、“あぁ、久しぶりだな”で終わっちまうじゃねーかよ。」 2人の会話は平行線で一向に終わる気配がない。 いつまでこの不毛な会話が続くのだろうと クラウドが天井を仰ぎ見た時、シドが決然として言い放った。 「分かった!おめぇがそこまで言うなら俺にも考えがある!」 つづく。 =========================================================== 保守がてらです。短くてごめんなさい。 リーブとケット・シーでもう一度本編をプレイしたくて、 ついに5周目を始めてしまい、しかもついやりこんでしまいますたorz もうすぐ古代種の神殿。いつもの倍以上号泣しそうです。
- 637 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/22(月) 22:41:06 ID:V6FMiC8r0]
- 乙!
- 638 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/23(火) 09:42:00 ID:moUfoB5tO]
- >>635-636
なんかもう飽きた
- 639 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/23(火) 15:40:46 ID:1QBjM2EQO]
- 乙。楽しみにしてるから頑張ってくれ
- 640 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/23(火) 21:37:53 ID:zC8be+Dn0]
- >>635-636
いつも乙です。 読み手としてできる限り保守はするから 書く事に専念してくれて大丈夫ですよー 今回はちょっと展開を急いでる感じがしました。
- 641 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/05/24(水) 00:17:47 ID:/ysmsu5q0]
- >>637 >>639 >>640
うれしいお言葉ありがとうございます・゚・(ノД`)・゚・。 640さんの仰る通り、今回はかなりバタバタと投下しました。 また誤字あって、読み手さんに失礼でしたね、ごめんなさい。 >>639 だらだら続けてしまってごめんなさい。まだ少し続いちゃうんですよ。 でも、やっぱり完結させたいので、もし専ブラを お使いでしたら作品名やトリでスルーよろしこです。 【訂正】>>636 ×シドはは顔を、やれやれと頭を振る。 ○シドはやれやれと頭を振る。 きっちりお話練って、また週末に参りますノシ
- 642 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/24(水) 23:09:23 ID:bKlMhxnr0]
- 保守
- 643 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/25(木) 12:26:50 ID:rIlKLfq+0]
- 1日1回保守すればいいの?
保守
- 644 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/26(金) 08:44:10 ID:V/cra6+80]
- ほ
- 645 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/05/26(金) 20:50:25 ID:jJwWSq7x0]
- しゅ
- 646 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/27(土) 13:51:02 ID:Zie0B69RO]
- する
- 647 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/27(土) 14:02:40 ID:DwqnfsvZ0]
- くあ
- 648 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/28(日) 08:42:18 ID:Sq26fkd30]
- ら
- 649 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/28(日) 22:27:49 ID:sqkZlGc10]
- る
- 650 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/29(月) 03:23:45 ID:i8ygeqPX0]
- >>635-636
やっぱりリーブの姿がうまいなと思います。一見すると周囲に流されているようなんだ けど、折れることはない。最終的には元の位置に戻ってきてる、柳の枝みたいな。 上手く言えないけどそう言う面があるような気がする。一連の会話の中から、彼の そんな魅力がよく出てると… すいません、感想がリーブに偏ってるのは彼が良い味出し過ぎてて(ry。
- 651 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(26) mailto:sage [2006/05/29(月) 03:42:39 ID:i8ygeqPX0]
- >>628-631より。
---------- *** 墜落現場とされる地点はミッドガルの南西に位置する場所で、ちょうど プレート建設中の現場近くにあった。しかし、ここまで来てリーブは進む べき道を見失っていた。 「……どないしたんや?」 車を止めて、初めて気がつく。 空が、青いのだ。 運転席から降りて周囲を見回した。風は強かったが空は青く、建設現場 にも何ら異常は見られなかった。 「方向、間違えとるんか?」 自分で言っておきながら、即座にそんなはずはないと首を振って否定した。 試作ロケット墜落の一報を受けてから、ナビゲートに従ってここまでやって 来た。都市開発に関わる以上、ミッドガルの地理情報には相当程度の知識が あると自負しているリーブが、道を間違えるとは考えにくかった。さらに自分 以上の長年にわたってミッドガル都市開発に携わってきた彼女の案内が間違って いるとも思えない。 となれば、宇宙開発部門の軌道計算が間違っているか、そもそもロケットなど 墜落していない。というどちらかの可能性しか思いつかなかった。 もう一度本社へ確認を取ろうとして、リーブは胸ポケットを探った。 「んっ?」 そうして思い出した。携帯電話は助手席に投げ置いたままだったのだ。 「しもたなぁ」と呟きながら助手席のドアを開け、携帯電話を取り出す。 ところが携帯電話を取り上げた勢いで、助手席からある物が転げ落ちた。 履歴から本社を呼び出し通話ボタンを押そうとしたリーブは、視界の端に 車から投げ出されたそれの姿を捉えた。
- 652 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(27) mailto:sage [2006/05/29(月) 03:53:35 ID:i8ygeqPX0]
- 「……ああ、すまんな。痛ないか?」
屈んで地面に転がった猫のぬいぐるみを拾い上げると、そう声を掛けた。 別にぬいぐるみを集める趣味があるわけではないし、こんな可愛らしい 物を欲しがるような年齢の子どもが身近にいる訳でもない。 それでもリーブは、そのぬいぐるみを大事に持ち歩いていた。 ――それはミッドガルのある住民が、リーブに託したものだったからだ。 それは今回の配置転換から遡ること半年ほど前の出来事だった。 当時、魔晄炉建設予定地の住民達に向けて彼らは幾度も説明会を開いて いた。 それでも尚リーブは業務の合間を縫って、あるいは休日などの空き時間を 利用して、とにかく時間の許す限り該当地域にある一軒一軒を訪問し、彼らの 話に耳を傾け、時には頭を下げながらミッドガル中を歩いた。 そんな中で訪れた一軒の家。そこには初老の夫婦が住んでおり、生活水準も 決して高いとは言えない。このぬいぐるみは、彼らの家に置いてあったものだった。 子どもはいたが、既にミッドガルを出て各地を旅しているのだという。 「空が狭くなった」 最初にこの家を訪れた時、夫は突っ慳貪に言っていた。神羅がこの街の 再開発を初めてからというもの、年々空は狭くなり、空気は汚れて行った。 彼らの子どもはそれを嫌がり、この都市を離れたのだと言う。 ――自分とは逆だ。話を聞いた後でリーブはそう思った。 彼は故郷を出て、このミッドガルへやって来た。 住み慣れた地を離れ、親しんだ言葉を捨てたのは、彼の持つ理想を実現させる ために他ならない。
- 653 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(28) mailto:sage [2006/05/29(月) 04:01:46 ID:i8ygeqPX0]
-
その後もこの家には足繁く何度も通った。説得ももちろんだったが、そ れだけが理由ではないような気がしていた。通い続けている間に色んな話 をした。ミッドガルの昔の様子や、彼らの子どもの事。時にはリーブ自身 の家族や幼少の頃にまで話が及ぶこともあった。 やがて数週間が経った頃、リーブの熱意と誠実さに心を動かされ、夫妻 はこの土地を明け渡すことを承諾した。しかし彼らは、神羅の用意した場 所ではなく、ミッドガルから離れることを選んだ。 仕事とはいえ慣れ親しんだ人々と別れるのは、少し淋しい。リーブはそう 思っていた。願わくば、自分達の作った新しい都市で暮らして欲しいと、 そんなことさえ真剣に考えた。だが、最後まで口に出すことはしなかった。 退去の日、妻から渡されたのがこの人形だった。 無口な夫よりも、社交性のある妻が、それを差し出してこう言った。 「むかし、子どもが好んで読んでいた童話に出てくる妖精が、アンタとそっくりでねぇ……。 こんな老いぼれに付き合ってくれた、せめてものお礼だよ。今までどうもありがとう」 たくさんのしわを作りながら、彼女は微笑んだ。家財を積み終えたトラックに 乗り込む間際、最後に彼女はリーブを見上げながら語った。 「本当に、アンタもこの妖精もよう似とったよ……。 アンタはこの都市にとってケットシーと同じ存在なんだよ、きっと」 彼女の笑顔の裏にある、その思いが何であったのかをリーブが知るのは、 それからまだ先の事になる。
- 654 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(29) mailto:sage [2006/05/29(月) 04:19:14 ID:i8ygeqPX0]
- 彼女の言っていた童話はこうだった。
かつて世界を滅ぼそうとした狂者を倒すべく、世界各地に14人の英雄が 顕れた。しかし古の禁忌を破り“神”をよみがえらせた狂者は、引き替え に自らの心と世界を贄として差し出した。神のもたらす圧倒的な力の前に 一度は離散するものの、彼らは再び集い、“神”の復活によって蘇った古 の力を用いて、力に囚われた狂者を倒した。後の世で「14英雄」と呼ばれ る彼らは、同時に古の力を失った。 この童話に登場する妖精ケットシーは、自らの生命が失われる代わりに、 石に力を託した猫として描かれ、その姿は人々を惑わせる存在であったの だと言う。 その時になってようやく、彼女が口に出さなかった思いの一端に、初め て触れた様な気がした。 けれどリーブの手に握られた人形は、ただ愛くるしい笑顔を向けるだけで 何も語ってはくれなかった。 夫婦は、神羅都市開発部門の説得に応じ退去した、最後の住民となった。 ---------- ・魔石の頃から好きだったんだよケット・シーが! ・長い回想編もこれでようやく終わりに向かえます。今しばらくお付き合いいただければ幸いです。 ・>>632…しまった! 重大なこと見落としてたかも…。ありがとうございます。
- 655 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/30(火) 02:53:05 ID:0XQthXi20]
- ぬこぐるみキタ!童話と老夫婦のつなげ方が良いですね。GJ!
- 656 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/05/31(水) 07:51:20 ID:DPcWCuxqO]
- GJ!
- 657 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/01(木) 00:13:10 ID:6XvBxKtT0]
- 保守
- 658 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/01(木) 00:14:00 ID:xv7tA3fIO]
- ほーしゅー
- 659 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/02(金) 01:12:45 ID:7Ln4SDWt0]
- ほっしゅ
- 660 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/03(土) 01:19:10 ID:773PlVzP0]
- よし保守だ。
- 661 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/04(日) 04:09:52 ID:TEYE1tsO0]
- 保全
- 662 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/04(日) 18:15:39 ID:X5ehdxokO]
- そろそろ俺の出番か
- 663 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/05(月) 00:01:51 ID:pc5G+YAN0]
- >>662
who are you?
- 664 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/06(火) 04:40:33 ID:AyC2XNeb0]
- ほしゅほ
- 665 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/06(火) 13:56:52 ID:4gK/FQ8cO]
- >>663
いや、なんか書いてみようかと思って
- 666 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/06(火) 17:35:25 ID:TWHHBHJK0]
- DGDGDGDGDGDGDGDGGDGDGDGDGDGDGDGDGGDGDDG
- 667 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/06(火) 17:36:52 ID:TWHHBHJK0]
- まちがいさがしー ごめん
- 668 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/06(火) 20:36:58 ID:sf7+urMfO]
- >>662に期待age
- 669 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 00:22:25 ID:JtOHu/8wO]
- >>668
ありがとう だが何書けばいいかわからん もう7は職人がいらっしゃるしなあ
- 670 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 00:51:55 ID:phUzYnzk0]
- >>669
月並みだけど 自分が好きなものを好きなように書けば良いと思う。 7ばっかりになるからって憚る事はないぞ。あ、でも エログロネタはここじゃムリなんで該当スレになるけど。 期待sageそして保守。 >>666 つex13.2ch.net/test/read.cgi/gline/1130611531/
- 671 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 02:28:08 ID:rc0zO92i0]
- 669氏にワクテカ保守。
某スレに投下しようとして参加しそこねた、そんなネタを今更こっそり投下します。
- 672 名前:友達 1/10 白 ◆SIRO/4.i8M mailto:sage [2006/06/07(水) 02:31:17 ID:rc0zO92i0]
- 朝靄の遺跡に、雲間から光の帯が伝う。
若者は遺跡の前でカメラを構え、そのフレームに小さなモンスターが入った。 「あれー?」 おはよう。おにいちゃんたち、なにしてるの? 「これは人懐こいな、ラグナ」 「子供なんだよー。一緒に撮るか?」 これ、なあに? ぶきじゃないの? 「カメラが珍しーんだな。うむ。セクシーショット」 「……」 「そうともウォード君。我々は取材真っ最中だ」 おにいちゃんたち、おもしろい。 「ん? ついて来るのか。よし、俺のとっておきのギャグ、見せてやるぜー!」 若者達の横で、小さなモンスターが楽しげに遊ぶ。 むしろ若者達が遊ばれている。それもかなり。 彼等は後に、狩られたエルオーネを取り戻し、魔女アデルを封印した。 中心になったラグナは民に請われ、エスタを支えるようになる。
- 673 名前:友達 2/10 mailto:sage [2006/06/07(水) 02:33:20 ID:rc0zO92i0]
- 偉丈夫が、勢い良くドアを押し開く。
「大統領閣下! 就任おめでとうございます! 強国ガルバディア元軍人とは、頼もしい限り。 さあ、敵の屍を乗り越え、我が国に勝利を!」 「んー。そうだなあ。とりあえず大佐さん、戦況見してくれ」 「はっ!」 入れ替わりに補佐官二人が、エスタ新大統領の顔を見る。 「やあ、ラグナ君。忙しそうだな」 「キロスー! これ罰ゲーム?! 全っ然帰れねえ!! 大統領って何? ジャンケン負けるとなんの?」 静かな補佐官が、ゆっくりと頷く。 新大統領は補佐官の肩を抱え、盛大なため息をつく。 「そーなんだウォード。まず停戦させねーとどーしよもねえだろ、これは。 アデルいねーのに、まーだ戦う気満々だぜ!?」 「全くだ。これは金の……」 「そうそう、それだ。金の粒食べよう、だ。街が破壊され続けて、 人手がガンガン減って、どーやって経済力つけよう、って話だろ」 「正しくは『金の卵を産む鶏を殺す』だな」 「帰りたいよー。レインに会いてーよー」 「巻き込まれてる我々も帰りたい」 「そう。エルも戻ったし、速攻ウィンヒルに帰りたいんだけどさ。 俺達が今帰ったら、この国の人が大勢死ぬぞ? それは困るだろ」 新大統領は窓に噛り付き、大空を見上げた。 つづくよ
- 674 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 08:37:49 ID:aKHYAyk60]
- なんか楽しげな話だ、つづき期待
- 675 名前:遺跡 3/10 白 ◆SIRO/4.i8M mailto:sage [2006/06/07(水) 20:41:59 ID:W7xp3TOi0]
- やっちまった…タイトル重複につき変更。もうホントにすいません。orz
前話は>672-673です。 ----------------------------------------------------------- ふわり。ふわり。軽やかな羊の群れが、山羊の先導で戻ってゆく。 モンスターの子供は、羊に囲まれながら家路を急ぐ。 「モンスターじゃねえか」 「まあ見ておけ。このルートなら面白いものが見られるぜ」 兵士達がモンスターを嘲笑する。 かちり。 仔に乳をやろうと、急いでいた山羊。その足元で、轟音。 やぎさん? なに? なにがあったの?! 「おーし、踏んだ」 「地雷か。なあ、餓鬼も倒しちまおうぜ」 「経験値の足しにはなるか」 どうして撃つの? こっちはなにもしてないよ! 逃げ惑うモンスター。けたたましく笑う兵士。その先に―― 「きゃあ?!」 震える女性。夕日に照らされ、長く伸びた影。 「民間人か。どこから入りこんだんだ」 「遺跡に行こうとしていたんです」 「観光地じゃねーぞ? まあ、遺跡は向こうだ」 走り去るジープ。山羊の血が、大地に吸い込まれる。
- 676 名前:遺跡 4/10 mailto:sage [2006/06/07(水) 20:43:40 ID:W7xp3TOi0]
- そろりと、女性の影から小さな影が出てきた。
「もう大丈夫よ。出ておいで」 おねえちゃん、ありがとう。 「ねえ、小さなトンベリさん。セントラ遺跡を知ってる?」 しってるよ。じぶんのおうちだよ。 「私はレインよ。ラグナを探しているの。 ティンバーマニアックスに、セントラ遺跡の記事があったから。 もうラグナが居る筈はないんだけど、手がかりが欲しくてね」 こっちだよ。レインおねえちゃん、ついてきて。 ラグナはやさしかったよ。 「知らないか。そうよね」 どうしたの? レインおねえちゃん。 きこえないの? この声が。 「ごめんね。あなたの仕草しか分からない」 小さなモンスターはレインと手を繋ぎ、遺跡に向かう。 宵闇の中、柔らかい潮風に吹かれながら。
- 677 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 22:25:11 ID:UPSDUnx+0]
- 新人さんキタ━━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━━ッ!!
元ネタは分からんが、子供モンスターとの交流が ほのぼのしてて(・∀・)イイ 続きがんがれ! >>669も期待sage >>670に禿同だ。投下待ってる。
- 678 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/07(水) 22:58:39 ID:kb9lUqm80]
- >>675
ほのぼのしたストーリーなのでもしやと思ったら やっぱり白さんでしたかw
- 679 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/08(木) 04:02:16 ID:FWviigEY0]
- >>672-673,675-676
小さなトンベリのゆっくりとした、拙くも見える歩みに誘われるように 不思議と引き込まれる文章です。しかもほのぼのした中にも彼らを 取り巻く残酷な現実が垣間見えて、ちょっと哀愁を帯びてます。 そんな背景で「みんなのうらみ」だったらと思うと切なすぎる…。 続き待ってます。
- 680 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(30) mailto:sage [2006/06/08(木) 04:15:06 ID:FWviigEY0]
- >>651-654より。
---------- *** 回想を打ち切ったのは、無粋で無機質な携帯電話の呼び出し音だった。 我に返ったリーブは思わず携帯電話を取り落としそうになり、慌ててボタンを 押した。だから発信元にまで注意がいかなかった。 『リーブ君、今どこに?』 聞こえてきた声に一瞬ためらう。しかし通話を始めてしまった以上、無下に 切る訳にもいかない。同時に発信元を確認しなかった自分をひどく後悔したが、 後の祭りだ。 声の主は都市開発部門主任だった。回線を通して聞く彼女の声は、今や 当たり前の日常である様な気がするほど自然と耳に入ってくる。考えてみれば 彼女とはつい数日前、初めてまともに会話をしたばかりの筈だったのに、不思議 だと思った。 いずれにしても、リーブが今いちばん聞きたくない声だった事は間違いない。 「……第6建設現場、エリアF5-268付近です」 つとめて平静を装って、リーブは答えた。これは仕事なのだと、自分に言い 聞かせながら。そんな事情を知ってか知らずか、彼女は淡々と話を進める。 『ナビゲート通りね。……実はあの後、宇宙開発部門から修正データが送られて 来たの。それによると墜落現場と目される地点が当初と少しずれているわ。 場所はE3-282……』 「第5プレートですか?」 紙面に出力するなどとうてい不可能と言えるような膨大な量のミッドガルプレート 建設計画書のデータは、本社のコンピュータに記録されている。厳重なセキュリティ下で 管理されているそれは、むろん社外秘で持ち出しも複製もできない代物だ。しかし 完璧に複製したものが、彼らの頭の中には入っている。 このデータを元に、ふたりの会話は成り立っていた。おそらくは神羅都市開発部門内の 人間でも、参照なしに彼らの会話を理解することはできなかっただろう。 ところが彼らはそれを平然とやってのけている。あまりにも自然すぎるために、 本人達ですら指摘されない限りは異常さに気づかなかったのかも知れない。
- 681 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(31) mailto:sage [2006/06/08(木) 04:18:38 ID:FWviigEY0]
- 『そう』
「ではそちらに向かいます」 『……ちょっと待ってくれる? 今、ちょうど現地にいるの……プレートの下よ』 プレート下と聞いてリーブの脳裏にはある予測が立った。――ロケットが、 プレートを突き破ったのだと――立ってしまった予測から導き出された現場の 惨状を思うだけで、眉間に寄るしわの数が一気に増した。 『リーブ君、あなたはそのまま本社に向かってくれるかしら?』 「なぜです?」 『やってもらいたい事があるわ』 「何ですか?」 『まずは軍への出動要請。それから被害状況報告書の作成、破損部分の再建 工事の費用概算と計画書の提出……』 言葉を交わし聞く毎に、眉間のしわが深まっていくのを感じていた。 彼女が言っていることは分かる。言葉の中で省略されている宛先や方法まで 含めて、その一連の手続をリーブは理解した。が、一点だけどうしても理解でき ないことがある。 「ち、ちょっと待ってください! それは主任の仕事のはずで……」 『ええ、そうよ』 「だったら……」 言うよりも早く、彼女の声が耳に届いた。 『たった今から、主任はあなたよ。 ――都市開発部門管理課の主任に、リーブ。あなたを指名します』 自分の耳を疑うよりも先に、恐らくは開いたままだったであろう口を閉じようとした。 何か言わなければならないのだろうが、唐突で、しかも全く予想外の出来事に、 リーブは文字通り言葉を失った。
- 682 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(32) mailto:sage [2006/06/08(木) 04:25:45 ID:FWviigEY0]
- 電話からは何の応答もない。リーブからの返答を無言で待っているのだろう。
膠着状態を脱するためには、こちらが先に発言する必要があった。それは充分 すぎるほど分かっているのだが。 「……んなアホな」 情けないことに、口をついて出た言葉がこれだった。 開いた口をようやくふさぎ、次に込み上げてきたのは怒りにも似た感情だった。 「悪い冗談だ」と思うのと同時に、そんな冗談をためらいなく口にした相手に対する 怒り――心中で渦を巻く感情に、言葉が追いつかなかった。 しかし彼女は口調を変えないまま、リーブの言葉を肯定した。 『そうね、アホかも知れないわ』 沈黙が流れたのは一瞬だけだった。電話を通して聞く彼女の声からは、その心の 動きを読み取ることはできない。 『管理課内の人事権は私にあるわ。その権限を行使して、あなたに全権を委譲するわ。 すでに手続はこちらで進めてあるから心配しないで』 「ちょ……言うてる事おかしいで?」 『そうかしら?』 おかしいも何もない。リーブは電話を左手に持ち替えて、言い放った。これ以上黙って 聞いているのはごめんだ。 「……おたくさんがそう出るなら、こっちにも考えがある」 口元に笑みを浮かべ、思うままに言葉を並べた。ふだんは抑えているはずの訛りも、 この時ばかりは気にならなかった。
- 683 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(33) mailto:sage [2006/06/08(木) 04:35:34 ID:FWviigEY0]
- 「主任。人事異動に対して拒否権があんのは知っとるやろ?」
『ええ。だけど拒否権発動は依願退職と同義よ』 「そんなん百も承知や。喜んで辞めたるで、こんな会……」 『そう、投げ出すのね。あなたを信頼した人達を裏切って』 回線の向こうで彼女は溜め息を吐いた。それを聞いて、誰もいない建設現場で 思わずリーブは声を張り上げて叫んでいた。 「投げ出す?! 投げ出すんはどっちや! 電話一本で全権委譲って…… そんなん無責任な話やで」 『盛大に授与式でもやってもらいたいの? お望みなら手配してもいいわ。 ……そうねリーブ君、さっき私に言った言葉、あなたにお返しするわ』 しかし彼女の声に皮肉や侮蔑の類は含まれていない。ただある事実を、ありの ままに指摘していた。いっそ事務的にも思えるその口調は、一方で彼女の怒りと 落胆の表れだったのかも知れない。 『あなた、間違ってる』 電気信号として送られてきた声が、衝撃を伴って伝わる。リーブの肩を大きく 揺らす程の衝撃は、手にしていたぬいぐるみが足下に落ちるには充分な震度だった。 ---------- ・口論書くのが楽しくて仕方ない。突っ走ってすんません。 ・ミッドガルの地番(?)はテキトーです、見逃してください。
- 684 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/08(木) 19:47:22 ID:ewZd9pi30]
- 関西弁キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
リーブ都市開発部門管理課主任さんがんがれ、超がんがれ。
- 685 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/09(金) 00:42:24 ID:4LW+5PdS0]
- >鼓吹士、リーブ=トゥエスティY
場所を聞いただけで、破壊状況を把握する都市開発部門の人々がかっこいい! 真摯な会話の合間に顔をのぞかせる、ぬこぐるみが素敵です。 レス下さった方、ありがとうございます。次回で終了予定です。 そして>669さん期待sage。
- 686 名前:遺跡 5/10 ◆SIRO/4.i8M mailto:sage [2006/06/09(金) 00:45:29 ID:4LW+5PdS0]
- 前話は>675-676です。
---------------------------------------------------------------- 澄み渡る空。セントラ遺跡がそびえる。 レインは遺跡の入り口で、モンスターの子供と羊を見ている。 ちょっとまっててね。 オーディンに入れるよう、おねがいしてくる。 トンベリの子供が魔方陣を描くと、するりと遺跡にレインが入った。 星霜を重ねた遺跡が、人間を迎え入れる。 「凄い。あなた、こんな事が出来るんだ」 おねえちゃんはお客さんだから。たすけてくれたでしょ? みんなもレインは刺さないよ。あんしんしていいよ。 「素晴らしいわ。ここにラグナがいたのね。ん?」 おなかがおおきいね。おかあさんになるんだね。 「撫でてくれるの? そう、ここに赤ちゃんがいるのよ。 だから父親に、ラグナに見せたいの。勝手に行っちゃって、本当にもう!」 ぷっ。しかられそうだね、ラグナおにいちゃん。 こっちだよ。とってもきれいなの。 「わあ……!」 遺跡の合間を埋め尽くす、色とりどりの花々。 雨季と乾季の合間に出ずる、束の間の花園。 今だけ、ここはお花でいっぱいになるんだよ。
- 687 名前:遺跡 6/10 mailto:sage [2006/06/09(金) 00:47:24 ID:4LW+5PdS0]
- 「はい、これ。綺麗だから、作っちゃった。
これは、ウィンヒルのお祭りで使うのよ」 花かんむり? いいの? きれいだね。かわいいね。 「これは? 近くに海があるのね」 ――おねえちゃん、そっちは駄目。行かないで! エスタの大佐が、僧侶と酌み交わす。 「新大統領は傀儡にならない」 「停戦などど。小賢しい」 僧侶が口の端を上げ、ぼそりと続ける。 「大統領には妻がいるようですぞ」 「ほう?」 「これは、使えます。我々の人質にすれば……」 と思ったら、レインはウィンヒルに居なかった訳で。 それはもう、何や知らん悪そうっぽい人達が大騒ぎしたのはさておき。 海辺の基地に、通信が入った。 「大統領夫人、ですか? そうです。遺跡に向かった女です」 「捕らえよ。手荒な手段を使って構わぬ。生きてさえいれば良い」 肩で息をつく大佐の極秘指令を、紆余曲折して取り次いだ そんな密偵の人が、僻地の兵士共に連絡中。 荒地しかないセントラに飛ばされてる時点で、頼りにならない部下の予感。 それでいいのか、大佐と坊さん。
- 688 名前:遺跡 7/10 ◆SIRO/4.i8M mailto:sage [2006/06/10(土) 02:17:52 ID:piZWgfBE0]
- 山羊の時と同じ鈍い音が、レインの足元で鳴った。
「あ!」 おねえちゃん。うごかないで。 そう。そうだよ。じっとして。 それで、この岩をそーっと、上に。 ゆっくり、足をはなして。ゆっくりとね。 これでだいじょうぶ。 「ありがとう……トンベリさん」 おぼえたの。 にんげんが、ばくだんをいっぱいうめたから。 ここはオーディンがまもってるけど、そとはあぶないの。 おもちゃの形をしてたりするんだよ。 それで、おおぜいの仲間がひろったんだ。 山羊をね。先に歩かせるんだよ。 そうすれば、仲間はふまないから。 銃弾の音。撃ち抜かれる地雷。そして炸裂音。 レインは声を上げることも出来ずに、倒れる。 どうして?! おねえちゃん、おきて。 血をとめなきゃ。あかちゃんがしんじゃうよ! ねえ。おねえちゃんの足は……どこ?
- 689 名前:遺跡 8/10 ※グロ注意 mailto:sage [2006/06/10(土) 02:19:12 ID:piZWgfBE0]
- 「よし、捕らえろ!!」
エスタ兵の一団が、大統領夫人を囲む。 おまえたち。 オマエタチガ……。 我が友から、足を奪ったのか。 ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。ゆるさない。 決して許しはしない。 トンベリの呪文。デジョネーターが、標的である大統領夫人を村に送った。 モンスターは、ずるりずるりと一団に向かう。銃弾を全身に浴びながら。 鮮やかな軌跡が。兵達の肺腑をたちどころに潰す。 そして。まだ生きている兵士を押さえ込み、刃を、太股に突き立てる。 ごりりっ。ごきっ。ごとん。 一本一本。兵の骨を切断してゆく。脈拍に合わせて、血が吹き上がる。 滴り落ちる髄液。痙攣し、やがて動かなくなる兵士達。 生き残った兵士が、走り去ろうとする。その足に喰い込む包丁。 「うっ……うわあああ!」 言葉が通じない事を知ったトンベリは、地面に文字を綴る。 どこだ? どこにいる? おまえに命じたやつは、どこに。
- 690 名前:遺跡 9/10 mailto:sage [2006/06/10(土) 02:21:33 ID:piZWgfBE0]
- 「大統領! 大佐と大僧正が亡くなりました!」
まずいな、とキロスが厳しい表情をした。 「つーか国葬じゃーねえか!! まーず大統領の俺が疑われっだろ? なんせほら、二人共バリバリの親アデル派だったしよ。 疑いを晴らすべく、徹底した科学捜査だなー、こりゃ」 「ほう。あんたにそれを理解する頭脳があったのか」 「お二方とも、両足を切断されております。それと……」 小太りの文官が、汗を拭きながら耳打ちする。 「マジで? レインが重傷!?」 電光石火でラグナが駆け出した。状況が分かってるのか? みたいな顔のウォード。 「わーかってるぜえ! F.H.に行けば娑婆だって事だ!」 「無理です。既に大塩湖は閉鎖されております!」 これ以上軍を暴走させない為に。敵を迎え撃つ事が無いように。 視覚的にも物理的にも、幾重にも閉じられたゲート。補佐官が、淡々と告げる。 「ラグナ大統領。和平交渉の時間ですが」 「……レイン!!」 血を吐くような思いで停戦協定が締結した。しかし。一体誰が和平を命じたのか。 全ては謎のまま、エスタは国交を遮断する。平和と静けさを願いながら。 停戦後。天衣無縫な大統領は、勢い良くゲートを突破した。 「おーし。いってみよう! エルも待ってるぜー!」 「間に合うのか?」 ウォードは、いや無理だろうと思う。 「あーッ! 無理は承知だ! けどこれは愛だ、愛なんだよー!!!」 キロスが苦笑し、そしてラグナに振り返る。 「そう来なくてはな。さて、行こうか」
- 691 名前:遺跡 10/10 mailto:sage [2006/06/10(土) 02:24:06 ID:piZWgfBE0]
- 窓の外の村人達。眉をひそめ、噂話を繰り返す。
「ラグナを追って地雷を踏むなんて」 「あいつのせいだ。あいつのせいでレインは!」 車椅子を囲む花冠。横に眠る赤子。部屋を埋め尽くす白い花。 優しい手が、幾つもの花冠を作り出す。 「レイン、無理しないで」 「今日は気分がいいのよ、エルオーネ」 「ラグナが起きたね」 「いい子ね。大好きよ、ラグナ」 生まれたばかりのスコールは、ラグナと呼ばれた。 「ラグナ……ずっとあなたの側にいたかった」 祭りの音楽が、村に溢れる。優美な花冠が、村の娘達を彩る。 ウィンヒルの花畑に倒れ臥す、足無き刺客の群れ。 命じた者も既に亡く、国を閉ざされて。それでも愚かしく任務を遂行する者達。 ――人に聞こえぬ音域で、幼いトンベリが呟く。 おねえちゃん。 おねえちゃんは、もうすぐ遠くに行くんだね。 あのね。お手伝い、するから。 レインの子供をまもるから。 それで、ラグナ直伝のギャグをやるんだよ。 大好きだから。 レインも、ラグナも、みんなみんな大切だから。 END
- 692 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/11(日) 04:27:13 ID:/EEyX0u80]
- >>686-691
セントラ遺跡でトンベリキングに手こずった事を今でもよく覚えていますが これを読んだ後だと憎たらしいどころか愛着が沸きそうで困りますw。GJ! 全体的にもの悲しい雰囲気だけど、レインもラグナもトンベリも優しさに 溢れてるから、読んでる方は温かい気分になってます。新作も待てます!!
- 693 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/11(日) 22:50:11 ID:piV59owf0]
- >>680-683
やはり女性上司は去ってしまわれるのですね。 イラストしか見た事ないのですが、BCの散弾銃の彼女を キャリアっぽくした感じかなぁ…と勝手に妄想しておりました。 思わず関西弁が出る局長が(´∀`*) 上司が去る理由、リーブのこれからの奮戦ぶりに期待sage >>686-691 8は未プレイですが、ほのぼのシーンが一転する所をドキドキしながら読んでました。 次回作も期待してます。
- 694 名前:DC後 【71】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/06/11(日) 23:00:20 ID:piV59owf0]
- >>514 >>510-512 >>515-518 >>535-538 >>573-577 >>602-603 >>610-614 >>635-636
の続きです。 それ以前は >>508から辿って下さい。(理由は>>573) ※作中のマテリアに関する表記は投稿人の勝手な思い込みです。 間違ってたらごめんなさいよ。 「どんな考えか伺ってみましょう。」 リーブは余裕の微笑みだ。 「俺様が今喉から手が出る程欲しいもんをよ、涙を飲んでおめぇに譲ってやるぜ。」 芝居のかかった、もったいぶった物言いに、リーブは思わず首を傾げてしまう。 (艦長と私が喉から手が出る程欲しい物…?) 「そんなものありましたか?、もし飛空艇団のことでしたら…」 「そうじゃねぇよ、俺が言いてぇのはな…」 ここでシドは自信ありげに一同を見渡すと、 「ドラフト権だ。」 またもや白けた空気が流れた。 「あの…艦長?」 遠慮がちにリーブが尋ねる。 「その…ドラフト権というのは?」 白けた空気に気付いていないのはシドだけだ。意気揚々と、 「ま、平たく言やぁ、交渉権ってとこかな。」 「…誰の?」 クラウドが冷たく尋ねる。 あの頃は星の危機だったとは言え、よくこのメンバーをまとめていたものだと クラウドは自分で自分に感心してしまう。 「もちろん、シェルクだよ!あのコがWROに入るよう説得すんのに、力貸してやるってんだよ!」 「説得も何も彼女が決めることだ。そうだろ、リーブ?」 よもやこんなバカげた話にリーブが乗るはずはない、そう確信してクラウドはリーブを見る。 が、リーブは何やら考え込んでいる様子だ。 それがやがて顔を上げると、シドの顔を正面から見据え、 「本当に、力を貸してくれるのですか?」
- 695 名前:DC後 【72】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/06/11(日) 23:01:30 ID:piV59owf0]
- 「おい、リーブ?」
「おう!俺様が頼めばイチコロよ!」 「そうですねぇ…」 鉄壁の要塞がこんなバカげた理由で綻ぶとはクラウドは信じたくなかったが、 「リーブ!」 「まぁ…あまり騒がなければ、大丈夫かと…」 あまりものバカバカしさに、付き合いきれないと、 席を立とうとしたクラウドをバレットが声を掛ける。 「どこ行くんだ、クラウド?」 「帰るんだ。」 「だとよ、シド!」 シドは立ち上がると、今度はクラウドの肩に馴れ馴れしく手を回す。 「まぁ、もうちょっと待てよ。」 「あんた達が何をする気か知らないが、俺には関係ないね。」 「関係なくてもいいから、家に帰るのはちょっと待てよ。」 「断る。」 俺の家で勝手をされてなるものかと、クラウドはすげなくシドの手を払い、ドアに向って歩き出す。 それを慌ててリーブが追いかける。 「待って下さい、クラウドさん。」 クラウドは振り返り、自分の腕を掴んだリーブに何か言おうとして、不意にがくんと膝をついた。 リーブがぼんやりとした緑の光に包まれているように見えた。 (…しまった…) なんとか立ち上がろうとするが、急激に意識が遠のき、 クラウドはその場に倒れてしまった。 「すいません、クラウドさん…」 リーブは倒れたクラウドの傍に屈むと、聞こえるはずのない彼に謝る。 バレットは驚いて倒れたクラウドを助け起こす。
- 696 名前:DC後 【73】 ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/06/11(日) 23:02:05 ID:piV59owf0]
- 「リーブ、一体どうやったんだ?今のはまさか…」
クラウドは穏やかな寝息を立てて、すぅすぅと眠っている。 「これですよ。」 リーブはポケットから小さなブルーのマテリアを取り出した。 「“ふうじる”のマテリアですよ。今はこれくらいしか残ってませんがね。」 「おめぇ…なんでそんなもん持ってんだよ。」 さすがのシドも呆れ顔だ。 3年前とは違い、今ではマテリアの数自体がかなり減っていて、 最近では見かける事すらなくなっているのだ。 リーブはマテリアをポケットに戻すと、 「ボディガードなんか必要ないと言ったら、スタッフが護身用にと持たせてくれたんですよ。 もっとも、クラウドさんに効果があるかどうかは疑問でしたが…」 シドとバレットは同時に吹き出した。 「おまえ、貴重なモンをなんてことに使うんだよ。」 「しかも、使ったのはこれが初めてですがね。」 疲れていたんですねぇ、彼も…と呟きながらリーブは申し訳なさそうにクラウドを見る。 「んだよ、おめぇもやっぱヴィンセントのヤツが気になってたんだろ?」 「艦長があかんねんで!リーブのオッサンも我慢してたのに、 おもろそうな話ばっかりするから。」 いつの間にか姿を現したケットシーが横でぴょんぴょんと跳ねる。 「よし!じゃあ、邪魔者が寝てる間に作戦会議と行こうぜ!」 意気揚々とシドが叫ぶのを、リーブがクラウドさんが起きてしまいますよ、とたしなめ、 バレットは丸太を扱う様にしてクラウドをソファに放り投げ、 ケットシーは申し訳なさそうに上着を毛布代わりにかけてやり、 そうして親父三人は何やら相談を始めたのだった。
- 697 名前: ◆BLWP4Wh4Oo mailto:sage [2006/06/11(日) 23:06:56 ID:piV59owf0]
- お久しぶりの◆BLWP4Wh4Oo でございます。
親父話、引っ張りましたがここまでです。 次からは場面変わります。長らくのお付き合いありがとうございますた。 最初シリアスだったのが、だんだんおちゃらけてしまってごめんなさいよ。 仕事忙しいのですが、新しい投稿人さん達がが増えてるのを見て 自分も頑張らないと、な気持ちになり少しですが投下です。 ペース遅くなりますが、完結するまでまたお付き合いよろしくです。
- 698 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ [2006/06/12(月) 02:29:44 ID:0f0x2FZrO]
- あっ
- 699 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/12(月) 20:46:56 ID:IjN3p6uf0]
- 密かに楽しみにしてるよ
- 700 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2006/06/13(火) 04:11:15 ID:ExNTDCHB0]
- >>694-696
各人の個性が行動によく出てると感心させられます。 って言うか楽しそうな親父連中がイイ! リーブが持っていたのがケット・シーの初期装備「へんしん」のマテリアじゃなくて ホントに良かったと思う今日この頃ではありますがw、続きも楽しみにしてます。
- 701 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(34) mailto:sage [2006/06/13(火) 04:20:06 ID:ExNTDCHB0]
- >>680-683より。
---------- ――ミッドガルの住民達に対する最低限の責務であり、最高の仕事。 説得と視察のために、何度も歩いたミッドガルの雑然とした街並みが。 自分に向けられた多くの住民達の表情や、声が。 そして、この都市を去っていったあの老夫婦の笑顔と、後ろ姿が。 彼女の言葉から一瞬にして思い起こされたそれらの記憶に、リーブは 言葉を止め、足下を見つめた。 ――願わくば、自分達の作った新しい都市で暮らして欲しい。 地面に転がったぬいぐるみを今一度拾い上げれば、懲りもせずに愛くる しい笑顔を向けてくれる。「何度もすまんな」と呟くかわりに、優しくその額を 撫でてやる。 こうして幾分か落ち着きを取り戻したリーブは、改めて問うのだった。 「……なら聞かせてくれへんか? 今回の配置転換の意図は何やったんか」 今さら引く気はない。この後事態がどう展開しても後悔はしないだろう。 ただ、納得のいく回答を聞くまでは、追及の手をゆるめるつもりはなかったし、 とうに覚悟はできている。 ひときわ強い風がリーブの背を叩いた。飛ばされてしまわないようにと、 ぬいぐるみを脇に抱え直す。 そうして、彼女からの返答を待った。
- 702 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(35) mailto:sage [2006/06/13(火) 04:24:59 ID:ExNTDCHB0]
-
電話を手にしたまま、本来ならこの場所からは見えないはずの空を見上げて 息を吐き出す。それからゆっくりと、彼女は語り始めた。 しかし残念ながらそれは、リーブの問いに対する返答ではなかった。 「……リーブ君。あなた……神の存在を信じる?」 通信の向こうにいる男に向けて問いかける。ロケットが墜落した地点から プレートを挟んでちょうど真下に位置する五番街の一角に、彼女は立っていた。 『いきなり何ですか?』 「私、神なんて存在を信じてなかったわ。いいえ、今でも信じてない」 『はあ……』 電話の向こうでリーブが呆れ声になっているのは気にせず、彼女は話を 続ける。 「でもね……。今は、今だけなら信じても良いかもしれない。そう、思っているわ」 『そう思わせる根拠が……あるんですか?』 リーブの問いかけに応じるようにして、彼女は背後にそびえる建物に向き直ると、 それを見上げた。 「ええ。今、私の目の前に」 彼女の前には、教会があった。 その頂に、ロケットが突き刺さったまか不思議な教会が。
- 703 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティY(36) mailto:sage [2006/06/13(火) 04:58:41 ID:ExNTDCHB0]
-
*** リーブがその光景を目にする頃には、頭上高くで輝いていた太陽は姿を消し、 すでに月が顔を出していた。 結局、あれから一旦は本社に戻ったリーブは、軍への出動要請や関係各所への 手続をひとまず「主任不在」として済ませ、それから現地へ向かったからだった。 実際に現場を目の当たりにした今でも、目の前の光景を信じられずにいた。 ロケットの推進剤として用いられる燃料は可燃性が高く、一般的には打ち上げ後、 燃焼は制御できないはずだ。墜落したとなれば機体は破壊され、爆発は避けられ ない。そう考えるのが自然だった。 だがプレートを突き破ったロケットは、教会の屋根に突き刺さった状態で原形を とどめていた。機体に加わる衝撃を、プレートと教会の屋根が吸収してくれたのだろうと 漠然と考えたが、それはあまりにも不自然で、まさに「奇跡」としか言いようのない 現象だった。 「……神は、おるのかも知れんな」 日中、電話での会話を思い出したリーブは思わず零すのだった。 いっそ滑稽にも映るその光景を見やりながら、どこか他人事のような気になったのは、 確率にして考えるには途方もなく低い上に、およそ人間の意志が関与できる範囲の外で 起きた出来事だと結論づけたからだった。 前代未聞の大事故ではあったが、落下した教会の外壁やプレートの破片などによる 負傷者を出した程度の被害で済んだのは、不幸中の幸いと言えた。 すでに教会周辺の現場は警戒域として神羅軍の監視下に置かれ、部外者の立入が 規制されていた。住民達がこの光景を目にすることは殆どなかったが、起こった事実 までもを全て隠すことはできなかった。一部の住民の間では、このロケット墜落に関して いくつもの噂がささやかれる様になった。神羅内部の権力抗争だとか、新兵器の実験 だった、などが主な物だったが、どれも真相にたどり着けたとは言い難い。 しかしそれもすぐに立ち消えてしまい、やがてはロケット墜落の事実そのものが人々の 記憶から薄れ、ついには話題に上る事さえもなくなることになるのだが、それはずいぶん 先の話だった。
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