わたしは Ray の講演と、その後 Ray と John が参加したパネルディスカッションを 聞きのがしていた。そして彼らはいま、そのとき途中で終わった話のつづきを やりだしていた。Ray は技術革新の速度はわたしたちのロボット化 -- あるいは ロボットとの融合とかそんなようなもの -- を加速していると語った。これに対して John のほうはそんなことはありえない、なぜならロボットには意識がないからだと 反論していた。
こういう話はまえにも聞いたことがあった。でもわたしはつねづね意識をもったロボット なんてものは SF の世界にしかいないものだと思っていた。けれどもいま、わたしは 尊敬する人物から、それがそんなに遠くはない将来の可能性だという強力な議論を 聞いているのだ。とくにわたしは Ray の、その未来を予想し創りだす能力にあっけに とられていた。遺伝子工学やらナノテクやらが、世界をつくり変えるほどの力をわたしたちに 与えるであろうことはすでに知っていたが、わたしはいまや、知的なロボットの 現実的で切迫したシナリオに驚いていた。