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【野球】「ヒット・エンド・ラン」を知らない子供たち 視聴率低下と放送激減で子供はルール知らず、中高年の使っている言葉が無効化★2



1 名前:絶望φ ★ mailto:sage [2009/08/24(月) 16:59:52 ID:???0]
 「全員野球で」

 と、鳩山由起夫氏は、党代表に就任した折、第一声で、確か、そう言っていた。

 その時、テレビの画面を見ながら、わりと簡単に納得した気分になったのは、たぶん私が
オッサンだからだと思う。

 男でも中高年でもない、日本人のうちの四分の一ほどを占めるヤングでフレッシュな人々は、
鳩山代表の発言をうまく理解することができなかったはずだ。

「なぜ野球?」
「野球って、もともと全員でやるもんじゃないのか?」
「メンバー制の秘密地下野球とか、そういう歴史があるんだろうか」
「それよりどうして政治家が野球なんかやるの?」
「党首が投手で捕手が保守とか、そういうシャレみたいなことか?」

 まるで違う。
 そんな話ではない。 

 (中略)

 われわれオッサンは、政治であれ人事であれ、M&Aやシェア争いであれ、いずれにしても
勝敗のからんだ話は、野球になぞらえて考えることになっている。
 だから、これまで長い間、わたくしどもニッポンの中枢にいる男たちは、政治を野球の
メタファーで観察し、説明し、論評してきた。

 もっと言えば、われわれにとって、政治は、野球の一変種に過ぎなかったのかもしれない。
爺さんの甲子園みたいな。

(つづく)

ソース(非常に長い記事なので一部を省略しています、全文はソースをご覧ください。)
business.nikkeibp.co.jp/article/life/20090821/203136/

前スレ (★1の立った時間 2009/08/24(月) 12:05:51)
yutori7.2ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1251090878/l50

2 名前:絶望φ ★ mailto:sage [2009/08/24(月) 17:00:05 ID:???0]
(つづき)

 その野球が、五輪の正式競技から外れて3年、復活の道もまた消滅することが、この度、
正式に決定した。つまり、わが野球は、この先、ほぼ永久に、国際競技たるべき未来への
道筋を断たれたのである。

 これは、もしかして、うちの国に大きな変化をもたらす出来事であるのかもしれない。
 ニュースを聞いた時、反射的にそう思った。

「これは大変なことになるぞ」 と。

 ともあれ、第一報の余韻は重かった。

「そうですか……」

 と言ったきり、アナウンサーは黙った。解説者も多くを語らなかった。

「……残念ですね」
「ええ……」

 本当にショックを受けた時、人は言葉を失う。そのことがよくわかる瞬間だった。

 野球落選のニュースは、放送現場に、この半年間に届いたどんな訃報よりも、
深い沈黙をもたらした。それだけ関係者の受けた衝撃が深かったということだ。

 野球の落選と、生身の人間の訃報を同列に並べて論じるのは不謹慎かもしれない。 
 でも、メディアにとってみれば、訃報は、あれでメシのタネにもなる。まるっきり悲しいだけのものではない。

 が、落選や敗北は、商売にならない。
 落選記念でCDの売り上げが伸びたり、DVDが再発されることもない。
 とすれば、口数が少なくなるのも当然ではないか。

(つづく)

3 名前:絶望φ ★ mailto:sage [2009/08/24(月) 17:00:20 ID:???0]
(つづき)

 ついに野球も終わりか、と、私自身、かなり気落ちした。

 単に野球のためにではない。
 野球とともに、野球が代表していた何かが失われていく予感を覚えたのだ。

 野球は、ただのスポーツではない。
 サッカーネーションにとってのサッカーがそうであるように、野球文化圏の国々にとっての
野球は、その国の人々のものの考え方の骨格を形成するものだ。

 文化なら、簡単には失われないのではないかと、そう考えることも可能だ。
 無論、野球は5年や10年で消滅しない。
 100年かかって定着した文化は、たぶん、あと100年ぐらいは生き残るだろう。

 でも、文化である以上、伝承が途絶えはじめると、後戻りがきかなくなる。のみならず、文化は、
文化であるからこそ、一度失われたが最後、決して復活しない。

 たとえば、プロ野球中継の視聴率が低下し、放送の頻度が激減した結果、野球のルールを
知らない子供たちが増えている。というよりも、21世紀の平均的な小学校5年生は、
ヒットエンドランの意味を正しく理解していない。

 で、その、ルールを知らない子供たちは、野球に興味を持たない。
 と、野球に興味を持たない世代が多数派を占めるようになった結果、ますます野球中継の
視聴率は低下していく。で、野球の放送頻度はますます低くなり、以下、冒頭に戻ってループ……
 深刻な状況だ。

(つづく)

4 名前:絶望φ ★ mailto:sage [2009/08/24(月) 17:00:30 ID:???0]
(つづき)

 前にもちょっと書いたことがある(「本田△」の回)が、野球は、意外なほど複雑なルールの上に
成立している競技で、その意味では、初心者には非常にハードルが高い。

 その高いハードルを、われわれの文化は父子相伝の伝承によってなんとか超えてきた。
そういう伝統があったのだ。

 より具体的に言うと、父親が見ているナイター中継を、息子は一緒に観戦せざるを得なかった
ということだ。昭和の茶の間におけるテレビの位置づけはそういうものだった。すなわち、
ゴールデンタイムの番組選択権は一家の長たる父親の手の内にあり、女子供はそれに
従わざるを得なかったのである。

 私は、善し悪しの話をしているのではない。当時はそういうならわしだったという、事実だけを
受け止めてほしい。その事実についてどういう感想を抱くのかは皆さんの勝手だ。封建的であると
思うのか、あるいはケジメがあってよろしいと考えるのか、激しく男根主義的だと感じるのか、
各自判断してほしい。私は干渉しない。好きにしてください。

 父親が夢中になって見ている野球を眺めながら、子供たちは、意味のわからない場面に
遭遇する度に質問をした。

(つづく)

5 名前:絶望φ ★ mailto:sage [2009/08/24(月) 17:00:41 ID:???0]
(つづき)

「あれれ? 今のはアウトじゃないの? 三振したのに」
「あれは、振り逃げ。特別なルールだよ。キャッチャーがボールをこぼしたら、その間に、
三振したバッターは、一塁まで走ることができる。で、キャッチャーがボールを拾って一塁に投げて、
間に合わなかったらセーフなんだよ」

 「振り逃げ」や「ヒットエンドラン」や「犠牲フライ」や「ボーク」など、それぞれに難解で、
実戦の中でないと説明不能な様々の例外則を、一通りアタマに入れないと、野球はわからない。
で、その、野球のヤマほどある例外則のいちいちを、父は子に伝えたのである。野球中継の
こちら側にはそういう言葉のやり取りがあり、また、父と子のキャッチボールでは、言葉以上の
何かが交換されていたものだ。

 が、平成の父親であるわれわれは、もはや、子供にルールを説明しない。
 というよりも、できない。そもそもリビングルームのテレビが、野球を映していないからだ。

 野球は、パパの書斎(っていうか、「巣」だが)の小型テレビの画面に追いやられている。
そういうふうに各自が思い思いの番組を見るのが現代の風潮で、この図こそが
平成の家族の肖像なのである。

 私は良い悪いの話をしているのではない。映らないものは映らないのだし、できない話はできない。
 それに、今の時代、いったい誰が子供にナイター観戦を強要できる? できないだろ? 
だってテキは毛嫌いしてるんだから。
 仮に強要みたいなことができるのだとしても、それは小学校低学年までだ。
つまり、小学校の5年生に上がる前にきちんと洗脳しておかないと、子供を正しい野球ファンに
することはできない。そういうことだ。

(つづく)

6 名前:絶望φ ★ mailto:sage [2009/08/24(月) 17:00:57 ID:???0]
(つづき)

 小学校低学年の子供を持つ父親(ってことは、30代か?)が、午後7時に帰宅しているという
こと自体、かなりヤバい事態だという見方もある。なるほど。そうかもしれない。

 午後7時に帰宅しているパパは、テレビを買えないパパかもしれない。というよりも、パパになる
ためのハードルを越えるためには、そもそも、それ以前に、7時に帰宅するような仕事ぶりを
改めていなければならないのかもしれない。とすると、この婚活と球活のダブルバインドは容易には
解消できない。ゴールデンにナイター見てるみたいな男と結婚したいと思う女を見つけてくるためには、
まずタイムマシンを開発せねばならない。おそらくそういう次第になる。 

 パパがニートであると否とにかかわらず、子供が野球を面白い競技だと思うようになるまでには、
それなりの時間がかかる。単にルールを把握しているだけでは足りない。

 たとえば、同点で迎えた七回裏一死カウント1−2の状況で、一塁ランナーが俊足である時、
次に投じられるべき投球がどんな種類のボールであるのかについて、観戦者の脳裏に戦術的な
常識が備わっているのでなければ、そもそも推理が発生しない。と、推理と観察のゲームである
野球の醍醐味は、彼には味わうことができない。ことほどさように、野球には教養が要る。

「ん? ヤバい。これは打たれる」
「どうしてさ」
「見ろ。マキハラの顔がラクダになってる」
「確かに。クチがモゴモゴしてるな」
「ラクダ化したマキハラは打たれる。これはオレが長年の観察から得た真理だ」
「ほら打たれた。無駄に唾を飲むのはこれすなわち棒ダマの前兆。覚えとけよ」

(つづく)

7 名前:名無しさん@恐縮です mailto:sage [2009/08/24(月) 17:01:06 ID:uq24GNVe0]
鳥居みゆき涙目

8 名前:名無しさん@恐縮です mailto:sage [2009/08/24(月) 17:01:14 ID:fiz61EmPO]
鳥居みゆきを知ってる餓鬼97%

9 名前:絶望φ ★ mailto:sage [2009/08/24(月) 17:01:23 ID:???0]
(つづき)

 と、このような会話は、少なくとも10年の観戦経験を積んだ男同士の間でないと成立しない。

 野球がこの世の中から消えるということになると、私たちの言葉のかなりの部分は、そもそも
同世代のオッサンにしか通じなくなる。
 と、われわれは、いつしか浪花節を唸って迷惑がられる爺さんみたいなものになって行く。

「お前はヒロサワトラゾーも知らないのか?」
「何それ? ヒロポンの語源?」

 淋しい展開だ。

 でなくても「全員野球」みたいな比喩表現が伝わらなくなるということは、われわれ中高年の人間が
使っている言葉の、かなりの部分が無効化することを意味している。

 これは、キツいことだ。

(後略)






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