- 1 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/05/30(土) 01:29:39 ID:qIMycax4]
- 獣人ものの一次創作からアニメ、ゲーム等の二次創作までなんでもどうぞ。
ケモキャラ主体のSSや絵、造形物ならなんでもありありです。 なんでもかんでもごった煮なスレ!自重せずどんどん自分の創作物を投下していきましょう! ただし耳尻尾オンリーは禁止の方向で。 エロはエロの聖地エロパロ板で思う存分に。 獣人スレwiki(自由に編集可能)www19.atwiki.jp/jujin あぷろだ u6.getuploader.com/sousaku あぷろだ2 loda.jp/mitemite/ 避難所 jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1237288452/ 【過去スレ】 1:namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220293834/ 2:namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1224335168/ 3:namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227489989/ 4:namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1231750837/ 5:namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1236878746/
- 568 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 16:07:04 ID:oX6DbJyg]
- >>566-567
一応、毛皮のある動物でも汗腺は存在する、 けど、犬などの毛皮に存在する汗腺の殆どがアポクリン汗腺と呼ばれる物で 人間の汗腺の殆どを占めるエクリン汗腺と違ってその分泌量はかなり少なく、余り目立たない。 (犬猫等にもエクリン汗腺は存在するが、肉球にしか存在しない) 因みに、アポクリン汗腺はエクリン汗腺と違って臭いが強く、獣臭の原因となっている。 無論、人間にもアポクリン汗腺は脇などに存在し、いわゆるワキガの原因となっている。
- 569 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/16(木) 16:26:22 ID:tcLGJ/cv]
- 天候制御乙
- 570 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 17:26:43 ID:Dk8UB8EC]
- >>568
へぇ、そうなのか。知らなかった。 となると消臭デオドラントが流行るか、それとも欧米みたく個人の魅力の一部として あまり手を着けずそのままにしておくのかが気になるところ。 学校じゃフェロモン振りまいてる生徒は頭髪チェックよろしく見つかり次第消臭剤ぶっかけられそうだけどw
- 571 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 17:29:47 ID:POLWw6jr]
- そこで女子高生や若い女性に人気のブランド香水やらが出てくるんですね
- 572 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 18:15:07 ID:TX4MLG2m]
- そもそも人間は体臭が少ないからワキガを気にして香水やデオドラントを発達させた
臭わないことが人間の体質としてのスタンダードだからだ 獣はそもそも臭うものだからスタンダードが違うだろうと予想
- 573 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 18:23:37 ID:hY0wkvx2]
- 惚れ薬作りが容易だ
- 574 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 18:45:07 ID:QbRJ51fE]
- 鼻が利くから後付けの香りは嗅ぎ分けられてしまうかも
だから逆に難しいかも>香水や惚れ薬
- 575 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 18:50:11 ID:wlj75EtM]
- その鼻の良さを利用したピンポイントの麻薬のような惚れ薬
- 576 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 21:35:31 ID:KCnh3eUx]
- ふむ・・・・・・
・・・白先生!どうも私はお脳が病気なようです! エロパロ向けなイメージしか浮かびません!
- 577 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 21:39:25 ID:POLWw6jr]
- >>576
それはそれで、専用の所に投下してこっちに報告しても問題ないと思うけどねw
- 578 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/16(木) 23:52:52 ID:VjsGb0le]
- 「さて」
「は!はいっ!」 「それではセンセ、説明を聞きましょうか?」 「はい… えと、奥さんが子供らと御義両親とで連れ立って、 毎年恒例の『梅雨なんかだいっ嫌い!お日様サンサン旅行』に 行ってしまいました」 「今年はラベンダー畑を満喫してきました」 「僕は雨の日の送り迎えでサン先生と一緒に学校に行ったので、 概ね晩ご飯も一緒に食べのですけど、サン先生は安くて美味し くてその上とてつもなく量の多い店を沢山知っていてですね…」 「…気がついたらその有り様ですか?」 「はい… とても美味しそうに食べるのを見てると僕もついつい食べ過ぎて… 何故か僕より沢山食べていたのにサン先生はちっとも太らないし…」 「……」 「……」 「〜…(溜息)」 ttp://loda.jp/mitemite/?id=229.jpg
- 579 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 00:11:06 ID:+ICw1TbT]
- >>578
あ、案の定リバウンドしちゃったか、いのりんw こうなったら太り難い体質を作るべく筋肉をつけるんだ!
- 580 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 00:31:45 ID:Qaw7AaNH]
- 奥さん綺麗だのう
- 581 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 00:46:56 ID:En46a/kE]
- 自転車通勤から徒歩通勤になるというオチだと思ったら…
例の坂道を毎日歩けば確実に痩せるはずだが流石に酷かな
- 582 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 01:18:36 ID:h4HqUvY0]
- >>578
いのりんには悪いけどやっぱこっちのが落ち着くわw
- 583 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 08:04:12 ID:lClnu5b7]
- やはりここでもサン先生は常識外か……
- 584 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 11:07:40 ID:En46a/kE]
- 体小さいのに大食いなやつって以外にいるよな
- 585 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 11:13:24 ID:h4HqUvY0]
- 佐倉家にて。
人間友人の海外旅行のお土産に貰ったお香を早速薫いてみる母さん。 何故か変な気分になる姉、美希奈と妹、舞。 そのお香は実は、人間は気付かないが、嗅覚に優れるケモノには 催淫効果を発揮するという非常に嬉し…困った代物だったのだ! 我らがギャルゲ主人公康太の運命や如何に!? ※選択肢を誤ると父ルートに入ります
- 586 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 11:56:26 ID:ZPEgDhWY]
- 「とってもいい匂いのお香なんですよ、御堂さんもどうぞ!」
「あら、いいの? ありがとうございますー」
- 587 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 14:27:38 ID:1BRJHXNq]
- 正直ギャルゲネタはもうお腹いっぱいッス……
- 588 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/17(金) 19:29:41 ID:ZPEgDhWY]
- 検索用
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- 589 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 19:38:22 ID:uKF24erm]
- >>585
どう考えても父ルート一沢 >>584 超高速消化と伸縮自在胃袋か… サン先生のスペックどこまであがるんだ
- 590 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 20:05:58 ID:Di6zVVaw]
- >>578
いのりんの薬指見ながら思ったが結婚指輪何されても抜けなさそうだ
- 591 名前:通りすがり ◆/zsiCmwdl. mailto:sage [2009/07/17(金) 20:19:56 ID:+ICw1TbT]
- (>>586の数時間後……)
「ただいま―……って、あれ?」 色々あってようやく家に帰りついた俺を待っていたのは、不気味なまでに静まり返った玄関であった。 何時もならば、足音で俺が帰ってきた事に気付いた義母さんが出迎えてくれる筈なのだが、それが無い。 無論、何かをしているのならば、それなりの生活音がしていてもおかしくないのだが、今回はそれすらも無いのだ。 そして、親父も義母さんも出掛けている、にしてもおかしい話だ。 何せ、玄関の鍵は掛かってなかったし、更に言えば二人が出掛ける際に何時も履いている靴もそのまま置いてあった。 ……これは二人に何かあった、としか思えないだろう。 「……まさか、強盗?」 ―――最悪の予想が俺の脳裏を過ぎる。 そう言えば朝、学校へ行く前に見たテレビニュースで、ここの近くの質屋が強盗に襲われたとか言っていたような……。 まさか、その強盗が俺の家にも来たと言うのだろうか? ……有り得る話だ、俺の親父はそれなりに有名な小説家。結構稼いでいると思われても仕方ないだろう。 恐らく、何かしらの情報で親父の事を知った強盗が、次のターゲットに親父を選んで……。 「何をバカな事を! くそっ、そんな事あってたまるか……!」 浮かんでいた想像を振り切る様に乱暴に頭を振った後、俺は意を決して家の中を進み始める。 もし、何かが出ても直ぐに対応できる様に、心の準備をした上で。 「……なんだ? この匂い……?」 家の廊下を進み始めた所で、俺は鼻腔に嗅ぎ慣れない匂いを感じた。 何と言うか、線香などとは違う種類の香を焚いた様な、甘ったるい物が混じった匂い。 はて、この匂いは一体……? 義母さんが焚いた物なのだろうか? 嗅ぎ慣れぬ香の薫りに妙な物を感じつつも、俺は慎重に居間の方へと歩を進める。 「ん……あれは……?」 そして、居間に到着した所で、俺はソファとソファの間に転がる奇妙な物に気が付いた。 電気が点いてないから良く分からないが、それはまるで大きなボロ雑巾の様にも―――って、 「親父!?」 それはボロ雑巾ではなく、床へ力無く倒れ伏している親父だった! 全身の灰色の毛並みがヨレヨレになっている上に、着ている服もボロボロになっているからそう見えたのだろう。 むろんの事、俺は慌てて倒れている親父へ駆け寄り、身体をゆさゆさと揺り動かしながら呼び掛ける。 「おい、親父! 一体如何したんだ!? 何があったんだ?!」 「……す、卓…か?」 揺り動かされた事で意識を取り戻したのか、 親父は目をゆっくりと開き、弱弱しく尻尾を揺らしながら何処か億劫そうに口を開く。 「ああ、そうだよ、俺だよ! 親父、一体何があったんだ!?」 「……と、利枝が……」 「え? 義母さんが如何したんだ? おい、親父!?」 「…………」 しかし、俺の呼びかけも虚しく、親父は其処まで言った所で力尽きたらしく、揺らしていた尻尾をパタリと倒した。 見た所、規則正しく呼吸をしている所から、ただ単に気を失っただけで大した事は無さそうだが……。 しかし、親父がここまで衰弱するなんて、一体、親父の身に何があったんだ? それに義母さんの身に何が……? と、俺が様々な事に対して思考を巡らせていたその矢先―――
- 592 名前:通りすがり ◆/zsiCmwdl. mailto:sage [2009/07/17(金) 20:22:11 ID:+ICw1TbT]
- ごと、ごとん!
「――――!?」 唐突に2階から響く物音、俺は咄嗟に身構えた。 音が聞えた位置から見て、音の出元はどうやら俺の部屋からの様である。まさかとは思うが……。 再び、嫌な想像が脳裏を過ぎる。―――くそっ、そんな事、あって欲しくは無いぞ! 「親父、俺はこれから二階に行って来る。だから其処で大人しくしてくれよ!」 長ソファのクッションの上に寝かせた親父へそれだけを言うと、俺は急ぐ様に二階へと向かう。 どうか、頼むから俺の想像通りの事態にはならないでくれよ! と、様々な存在に対して祈りながら。 自室へ到着した俺の前で、再び響く物音。 音の度合いからして、如何考えても部屋の中で人が暴れている様にしか聞えない! 「ちっ、間に合え――いや、まて」 俺は慌ててドアを蹴破ろうとして――その寸前で思い止まり、蹴り出そうとした足を止めた。 もし、ここでドアを蹴破ったら、その音で犯人を刺激してしまって事態を最悪な方向へ向けてしまう可能性がある。 ましてや、相手はあの親父を気絶するまでに追いやっている犯人だ。行動は慎重さを要する。 ここは先ず、犯人に気付かれない様に静かに、かつゆっくりとドアを開けて部屋の状況を確認するとしよう。 ……本当は今直ぐにも部屋に飛び込みたい所だが、義母さんの為を思うならここは我慢だ! 「……」 ドアノブへ手を掛けて、慎重に手に力を掛ける。 どうやら鍵は掛かってなかったらしく、ドアノブを捻ると同時に小さな金属音が響き、ドアがゆっくりと開いて行く。 その開いた隙間へ覗き込むように、俺は物音が鳴り続ける自室の状況を確認し始め―― バタン それを見た俺は何も言わず、ドアをそっと静かに閉めた。 ……えっと、この場合、義母さんが犯人に乱暴されていた方がまだマシだったかもしれない。 いや、まあ、確かに乱暴されている方もかなり大事言っちゃあ大事なのだが、、 少なくとも、先ほど俺が目にした物に比べれば、そのショックの度合いはまだ少ない筈だ。 ―――俺が見た物、それは義母さんが犯人に乱暴されている姿、では無く 「ああ、卓ちゃんの匂い、もう嗅いでいるだけで身体が火照ってきちゃう! あぁぁ、卓ちゃぁぁん!」 抱き枕の様に俺のベットの掛け布団へ抱き付き、恍惚とした表情で床をゴロゴロと転がる義母さんの姿だった。 しかも、その時の義母さんの格好は、薄手のネグリジェ一枚だけと言う何ともあられもない姿。 自室でそんな物を目にしてしまったら、何も言わずにドアをそっと閉めたくなるだろ、普通は! ――って、もしあの時、俺が思い止まらずそのままドアを蹴破ってたら、一体如何なってた事か? ……正直言って、考えたくも無い。 ……その後、意識を取り戻した親父の証言により、 義母さんの痴態の原因が、先程から焚かれているお香による物だと判明。 どうやら、そのお香には、人間には大した影響が無い代わり、 嗅覚に優れるケモノには、ある本能を暴走させる効果を発揮するという、はた迷惑な効果があるそうで、 その事を知った俺が直ぐ様、台所で焚かれていた原因であるお香を処分した上で部屋の換気を行うと、 それから程無くして、義母さんは正気を取り戻したのだった。 その後、義母さんに聞く所によると、お香を焚き始めてからの記憶が無いらしく、 その上、親父自身もまた、その間の事を決して喋ろうとはせず、 結局、そのお香によって暴走した義母さんはあの時、親父へ何をやったのか、 そして何故、俺が発見した時には親父が憔悴しきっていたのかは、最後まで判明しなかったのだった……。 ―――――――――――――――――――――終われ―――――――――――――――――――――
- 593 名前:通りすがり ◆/zsiCmwdl. mailto:sage [2009/07/17(金) 20:24:28 ID:+ICw1TbT]
- 以上です。
もし、卓が1時間早く帰宅していたらどうなっていたか……それは皆さんの想像にお任せします。
- 594 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 20:29:15 ID:Qaw7AaNH]
- すぐるんちは仲が良いなw
- 595 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/17(金) 21:17:10 ID:ZPEgDhWY]
- あーID変わってない、せっかく溶け込めると思ったのにやられた。
みんな荒れてしまえ
- 596 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/17(金) 21:18:07 ID:ZPEgDhWY]
- 172 名前:名無しさん@避難中 投稿日: 2009/07/13(月) 01:12:51 ID:5fEzPrro0
(´゜゜)左腕を怪我したら血が止まらなくて病院行ったしもー 173 名前:名無しさん@避難中 投稿日: 2009/07/13(月) 01:13:31 ID:5fEzPrro0 (´゜゜)包帯巻いて帰ってきたら、知人に邪気眼って言われたわん 174 名前:名無しさん@避難中 投稿日: 2009/07/13(月) 01:14:01 ID:5fEzPrro0 (´´`)厨二病なのは図星だ。包帯してる自分、ちょっとイイかもす。 175 名前:名無しさん@避難中 投稿日: 2009/07/13(月) 01:14:43 ID:5fEzPrro0 (´゜゜)愚痴ったらすっきりしたしもー。 ぐっない! ひょっひょっひょhっひょ呪いは効いたんだわ
- 597 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/17(金) 21:19:13 ID:ZPEgDhWY]
- >通りすがり
名前変えれば? じゃないと荒らされるよおまえのせいで。
- 598 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/17(金) 21:22:52 ID:ZPEgDhWY]
- さる
- 599 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 21:54:37 ID:lClnu5b7]
- どうやら雨の日に男友達と下校するとサブイベのフラグが立つようです
凄い久しぶりの投下になってしまった。無理かもしれないがいつかエンディングまで持って行きたいです
- 600 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 21:55:40 ID:lClnu5b7]
- 「うっわー……傘差してたのに靴下までグショグショだ」
「こんな土砂降り久しぶりだね。梅雨に入ったって実感するよ」 膝下をぐっしょり濡らしながらも商店街のアーケードへと辿り着いた俺と雅人は、傘を畳んで一息つく。 今朝から降り続けていた雨は、ぽつぽつと長時間続くだけの小雨だったのだが、俺達が学校から帰る途中、突如として土砂降りへと変じたのだ。 いくら傘を差していても大きな雨粒は地面に降り注ぐたびに跳ね、制服の膝下を濡らし、靴へと染み込み、その中の靴下さえも水浸しにしていた。 この状態の靴を玄関に放置してしまうと、鼻の敏感な狼の皆さんから翌朝苦情が来るのだ。 だが、俺は毛皮が無いだけマシだろう。雅人の方が全身の毛皮がじっとりと湿り、非常に居心地の悪そうな表情を浮かべている。 「今アーケードから出てもまた塗れるし、小雨に戻るまで時間つぶさね?」 「うん。そうしよう。またあの土砂降りの中へ飛び込む気にはなれないや」 一歩踏み出すたびに、ぐじゅぅ、と濡れた感触が靴の中から伝わってくる。 俺も雅人に負けず劣らず居心地の悪そうな表情を浮かべながら提案した。雅人も同意する。 俺達はすぐに互いの財布の中を確認し合うと、その軍資金に見合った店を探して、アーケードの中をぶらついた。 軍資金は、俺の財布に1000円、雅人の財布に1300円。ファーストフード店のセットぐらいなら充分に足りる。 となると、俺達が目指すのはただ一点。30メートル先に見える、『M』の文字の看板を掲げた二つの店だ。 アーケード中央の交差点には、二つの大手のファーストフード店が対立するように向かい合わせに店を開いていた。 「雅人はどっち行くつもりだ?」 「僕は特にこだわり無いし、康太に合わせるかな。 強いて言えば、同じ料金で多く食べたい……かも」 「ああ、俺と同じだな」 雅人は顎を右手の人差し指で掻きながら、思案顔で答えるが、それほど考え込むところでもないだろう。 近くで接していると分かるが、雅人は基本的に根の優しい良い奴だけど、底抜けに神経が図太いかと思えば、時にどうでもいい事に深く考え込んだりと、少し変わったところがある。 おっとりして物静かな印象に反して、友達として付き合っていて、あまり退屈をしない。 俺達は、黄色い『M』を掲げた店へと向けて、好きなバーガー談議に花を咲かせながら進んでいく。 他愛も無い会話を続けながら、店の入り口は目の前と迫った時に、不意に女性の声が俺達を呼び止めた。 「あら、雅人君」 透き通った良く響く声だ。雅人と同じように声のした方を見つめると、人間のお姉さんが立っていた。 金髪に染めたパーマをかけたロングヘアーに、露出が多く背中や胸のラインを強調した服装、ブランド物のバッグに綺麗なアクセサリーと、随分派手な格好をした人だ。 明るい色をした化粧は、素材の良さを引き立てていて、何だか凄い美人だ。 帰宅部で読書家。趣味はテレビゲームに映画鑑賞という、地味な男子の代名詞のような生活を送る雅人と、一体どんな接点があるのか不思議なほどである。 「知り合いか?」 「うん。うちのお得意様のトモエさん」
- 601 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 21:56:25 ID:lClnu5b7]
- 俺がそう尋ねると、雅人がすぐに説明してくれる。するとトモエさんは苦笑交じりに話しながら、こちらへと歩み寄ってきた。
「こーら。オフの時まで源氏名じゃ堅苦しいわよ」 「あ、すみませんユミさん……。今日こちらにいらしてるのは、やっぱり?」 「堅苦しいから敬語もいらないってーのー。 で、こっちに来た訳だけどそのとーり。いつも通り即転売してOKだから」 少々置いてきぼりをくらってしまったが、二人の会話を聞いていると、大体ユミさんがどういう人か分かってきた。 アーケードを抜けて信号3つほど先に行くと、雅人のじいちゃんが営む質屋がある。 こじんまりして目立たない店だけど、雅人曰く常連さんが多いそうで、食べていく事には困らないらしい。 そして派手な格好をして源氏名があって美人がユミさんが、見たところ二十代前半の歳なのに、質屋のお得意様だというのだから、一つしか思い浮かばない。 もっとも、それを堂々と言うきにもなれないのだが。そんな風に考えていると、笑顔で雅人と話していたユミさんが、不意に俺の方を向く。 「君は……雅人君の友達?」 「あ、はい。雅人のクラスメイトの康太です」 「うんうん……。いいねぇ、青春時代の友情! 中卒から速攻キャバ嬢になって6年以上も代わり映えしない日々を送ってきたきた身にしたら、 君達高校生が羨ましくて堪んないわよもう」 「ゆ、ユミさん、あんまりそう言う話するもんじゃないですって……!」 「いいのよいいのよ。ほら、これお近づきの印にどう? 雅人君とこれからも仲良くしてあげてね」 「えっ、えっ?」 ユミさんは思った以上に随分とさばさばした性格で、身の上に何も負い目を感じている様子もなく快活に笑っている。 かと思うと、ブランド物のポーチから箱に入った腕時計を取り出して俺に差し出してくる。 「30万円するんだって。馬鹿よねー。キャバ嬢に貢いでも転売されるだけなのに」 「さ、さんじゅ……!?」 俺が30万円の腕時計に眼を奪われている側で、雅人は複雑な表情で頭を抱えていた。 おっとりしていて、物事にあまり動じない雅人が、こうも焦ったりする姿もあまり見れる光景ではないな。 「ユミさん、人前でそう言う冗談は……!」 「冗談なんかじゃないわよー。純粋に二人の青春を祈って!」 雅人が慌てるほど、ユミさんは熟練した男のあしらい方を見せて雅人をおちょくっていく。 見ているこっちが同情したくなってくるが、案外と雅人もまんざらではなさそうに見える。 雅人は途中からツッコミを入れることにも疲れたのか、大きな溜め息を吐いて、俺へと愚痴をこぼした。 「ユミさんもだけど、貢物を転売しにキャバ嬢さんが結構来るんだよ。 だけどみんな僕を子供扱いして面白そうにからかってさー……」 心底疲れた様子で雅人がぼやく。確かに来る人来る人におちょくられ手玉に取られていては、雅人も疲れるだろう。 温厚なこいつの事だから、多少のからかいやおちょくりはスルー出来ても、相手は男を手玉に取ることで生計を立てている女性だ。健全な男子高校生が対峙するには分が悪すぎる。 「ま、まあさ、好意的な感じだしいいんじゃないか。雅人がいるから店に来てくれるかもしれないだろ」
- 602 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 21:57:22 ID:lClnu5b7]
- 「そうよー。仕事柄オヤジやチャラ男ばっか相手にしなきゃなんないからさー。
雅人君みたいな真面目な年下の男の子と接する機会がないのよね。私も雅人君をからかうの楽しみにしてるし」 「もう……ユミさんに康太まで……ハァ…」 悩むな雅人。真面目で気が優しくて太めで、おまえは弄られキャラの星の元生まれている。俺は哀れむような視線を雅人へと向けながら、心の中で呟いた。 弄ってくれる相手が綺麗なお姉さんなだけでも儲けもんだろう。俺だって伊織さんが男だったら速攻で陸上部を退部している。 俺は軽く笑いながら、雅人の方をポンッと叩いて、「頑張れよ」と呟いた。女性に振り回される苦労を知っている奴がこんなに身近にいたとは、友達として共感できる部分が増えたというものだ。 「あはは、康太君、私だってちゃんと気を使って弄るわ。雅人君に嫌われたら困るもの」 「じゃ、じゃあやめてくださいって!」 ユミさんは、少し背伸びをして雅人の耳に手を伸ばし、楽しそうに弄くっている。女性にしては長身だがが、熊らしく大柄な雅人ほどではない。 雅人は分かり易すぎる反応をして毛皮を逆立てながら照れるが、言葉の割りに強引にユミさんの手を振り払ったりはしない。 まあでも、こんな人通りの多い場所でそれは、確かに恥ずかしいかもしれない。俺は、一歩だけ後ろに下がり、この二人とは関係ありませんよ、と言う振りをしてみる。 雅人が“逃げるつもりなのか”と恨めしそうな視線を投げかけてきたが、俺の関与するところではない。 「ゆ、ユミさん……、もうやめてぇ……」 「ふふ、可愛いー。びっくりするぐらい純なんだから」 いや、純も何も、男子高校生と言うのはそんなものです。普段イケイケ装ってる奴だって、実際に美人のお姉さんにおちょくられたら、今の雅人みたくなっちゃうものです。 嘘だと思うなら塚本君辺りをおちょくってみてください。確実に物凄い勢いで慌てだして混乱し始めるはずですから。 強調された胸の谷間を雅人の背に押し付け、純な青年を弄びながら、ユミさんはとても楽しそうに笑っている。 やがて雅人も、いつまでもここにいたって、果て無きおちょくりがあるだけだと気付いたらしい、大きな溜め息をついて、心の底から疲れた様子を顔に出すと、ユミさんを連れて、商店街の向こうへと歩いていく。 俺も、そんな二人を邪魔する気はないので、少々雅人を不憫に思いながらも、笑顔で手を振って二人を見送った。 さあ、買い食いも未遂に終わって金も余ったし、晩飯のおかずでも買って帰るか。 ああいうのを見せられた後だと、一人の下校が妙に寂しく感じる。いつのまにやら雲間も晴れて、夕焼けに照らされる商店街を、俺は買い物袋を片手に、一人立ち去るのだった。 続く
- 603 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 21:58:10 ID:lClnu5b7]
- 短いですがこれで。このシリーズはイベントを消化する感じなので一つ一つの投下は短いかもです
- 604 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 22:05:27 ID:1BRJHXNq]
- もふもしながらでいいので、荒らしのレス削除依頼の協力もよろしく。
qb5.2ch.net/test/read.cgi/saku/1220329074/
- 605 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 22:06:51 ID:Qaw7AaNH]
- ひさぶーですね
投下乙です
- 606 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/17(金) 23:03:29 ID:Di6zVVaw]
- 康太、俺たち友達だろ?今日は一緒に帰ろうぜ
- 607 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/18(土) 01:20:37 ID:xGXGVNKP]
- 人妻っていい響きだよね
- 608 名前:わんこ ◆TC02kfS2Q2 mailto:sage [2009/07/18(土) 13:08:14 ID:L1DrWfVw]
- 夏休みですねえ。 投下します。
- 609 名前:夏の途中 ◆TC02kfS2Q2 mailto:sage [2009/07/18(土) 13:10:35 ID:L1DrWfVw]
- 「ところで、なんでサンがいるのよ」
「ちょっとしたミナへのプレゼントかな…」 「いらないよ。どうせ、イタズラでも仕込んでるんでしょ?」 田舎道を走る軽トラックの窓から吹き込む風が、小さな身体のサン・スーシの毛並みを揺らす。 助手席でのんきにお菓子をぽりぽりとかじっているサンに、時々ちょっかいをだすのは大学の同級生・杉本ミナ。 ハンドルを片手に隙を見て、サンのイヌミミをちょこんと軽く爪立てると、サンは反射的に尻尾を丸める。 荷台のバイクを気にしながら、ネコの毛を風いっぱい受けてミナは、サンと同じように夏の光をガラス窓から感じる。 じっとしていることにしびれを切らしたのか、軽トラがカーブを曲がるとゆっくりとバイクは揺れて存在をアピールした。 ミナがちょっとしたバイクの旅をしている途中、相棒が急に駄々っ子をこねた。スロットルを回しても、うんともすんとも動かない。 幸い街からは遠くなく、軽トラックをよこすようにミナは自宅のバイク屋に連絡をして、日陰で到着を待っていた。 現れたのは店主・ミナの父親と、おまけのサン・スーシ。ヤツは「たまたまだよ」とお菓子を頬張りながら澄ましていると、ミナは眉を吊り上げた。 「オヤジさんさ、この近所の家で人に会う約束してるっていうから、帰りはミナが運転しなよ」 「うん、旅館のおじさんでしょ。サン・スーシ、わたしの運賃は高いから覚悟しなさいよ」 荷台にわがままを言っているバイクを載せる。オヤジさんが約束している人の家に着くまでは、荷台でサンがバイクと共にする。 やがて、オヤジさんを約束の家まで送ると、車内に戻ってきたサンとミナの二人きりになった。 「ミナのエストレヤはよく磨かれてるね。エンジンにぼくの顔が映るよ」 「そうね、しょっちゅ磨いてるしね。そういえば、何年コイツに乗ってるかなあ…」 「長いよね」 「マーキングしたくなっちゃうくらい、お付き合い長いよ」 サンはミナの被っていたヘルメットを抱えて、相変わらずお菓子を頬張っている。ミナに差し出すと、ぱくっと指ごと噛み付いた。 「食べかすをメットに落とすな」と憤るミナは、お菓子の袋から一口分失敬した。 Tシャツにジーンズ姿でさばさばとした口調のミナは、金色の髪の毛と白いネコの毛並みから甘い女の子の香りを風にのせる。 くんくんとサンがその香りを嗅ぎつけると、それを察知したミナはサンの濡れた鼻をぴしゃりと軽く小突く。 しかし、サンもミナもまんざらではないというのは、大学の同級生だから…だろうか。 サンは仕返しとして、軽トラが信号待ちをしている間、シートからはみ出したミナの尻尾を軽く掴もうと画策するが、 ミナはサンのことなら何でもお見通しなんだから、と言わんばかりに尻尾を反対側にするっと避難させた。 「サン・スーシ、まだまだだね。これはイヌの浅知恵って言うのかな…?」 「浅知恵言うなよ」 逆上したサンは、ミナのわき腹に優しく人差し指でつんと突付く。これでも教壇に立つ教師なんだぞ、と憤慨したからでもあるし、 身長のせいで自分には出来ないミナのアクセル捌きを羨ましく思うことも、子どもじみた仕返しの理由だった。 床に届かない足をバタつかせながら、サンは諸手を挙げて背伸びをし、一方慣れた手つきでギアを操るミナは、ペロリと手首を舐める。 ルームミラーに透き通った空色が広がり、白い雲が天に向かうようにそそり立つ。 「あの雲、サンにそっくりだよ。マヌケなところが」 流れの速い夏の雲は空飛ぶ鳥よりも早く、どこぞかへと流れていった。
- 610 名前:夏の途中 ◆TC02kfS2Q2 mailto:sage [2009/07/18(土) 13:12:22 ID:L1DrWfVw]
- 車が順調に彼らの街に向かっている中、サンは思い出したかのようにミナにナビゲートを始め、自分の足元のリュックを気にする。
そして、サンの荷物の横には一泊分の旅するミナのリュックが並んでいた。 「ミナ、次の交差点を左に曲がってくれる?」 「え?県道から外れるけど?」 「近道、近道。高性能の『サンナビ』はウソつきません」 空になったお菓子の袋に手を突っ込んでかき回すサンの指示で、ミナはハンドルを左に回す。 ミナは元々のルートから外れることにいぶかしげな顔をしながら、素直にサンの言うとおりに細い農道に軽トラを進める。 きちんと整備された県道から外れただけで、周りは畑ばかりの田舎の風景に変わっていた。 初めて来る土地だというのに、なぜか懐かしくもある風景にミナは飲み込まれ、そして今頃、父親は 昼まっから呑んだくれているのだろうか、とサンとは違う意味で心配していた。 車窓を眺めながら再び足を浮かせてバタつかせるサンを横目に、ミナはギアを上げると 荷台にバイクを載せた軽トラは、踏み込んだアクセルと共に気合を入れて音を上げた。 『サンナビ』は相変わらず、ミナの不思議そうな思いとは裏腹にマイペースな案内を続けている。 「ピンポーン。この先…まっすぐ、まっすぐ」 「この先って、坂道だよ…。ねえ、目的地はまだ?『サンナビ』ってポンコツじゃん」 「そんなことないよ。そのうち分かるって」 周りに畑ばっかりだった細い道を進むと、いつの間にか松林が道の両脇に生え揃う。 ギアを一段下ろし、ゆるい坂を登る軽トラはこの先の風景を知らない。無論、ミナもそうである。サンはイタズラを思い付いたような顔をして、 空になったお菓子の袋をくるくるっと丸めた。坂の頂までもう少し。細い道の両脇には松林が並ぶ。 「海だあぁ!」 窓から潮の香りがお邪魔する。天から太陽が笑い出す。波のざわめきも賑やかに、二人の五感に訴える。 坂の頂を過ぎると松林の隙間から、青い空と、白い波しぶき、そして砂浜が見え隠れし始めたのだ。 ここまで来ればあと一息。一気に軽トラは坂を下り始め荷台のバイクと共に、サンの待ちきれない気持ちと同じように二人を揺らしている。 「ふーん。そうゆうことね」 白い雲の変わりに、波が砕ける白い泡。まだ誰もいない、夏の始めの白い砂浜。星の丸さが嫌でも目に焼きつく水平線。 夏の香りがサンの目を輝かせる。彼のメガネにはきっと、ソフトクリームか何かが映っているのだろうか。 ゆっくりと軽トラは松林のトンネルを潜り抜け、砂浜の入り口で歩みを止めた。 真っ先に軽トラから小さい影が飛び降りた。 「ひゃっほー!いちばん乗りだ!!」 「海に行きたいのなら、はっきり言いなさいよ。サン・スーシ」 まだ何も知らない砂浜にイヌの足跡をつけて、一直線に波打ち際に駆けて行く一人のイヌ。 子どものような声をあたりに響き渡らせ、ミナが軽トラから降りたときには既にサンは浅瀬に立っていた。
- 611 名前:夏の途中 ◆TC02kfS2Q2 mailto:sage [2009/07/18(土) 13:13:33 ID:L1DrWfVw]
- 「ミナも来いよ!!」
「やだね」 「気持ちいいってば」 ゆっくりとサンの残した足跡を辿り、波と戯れるサン・スーシを羨ましそうに見つめるミナは海に入れない理由を言いたがらない。 ミナが三歩近づけば、サンは六歩遠ざかる。かごから逃げた小鳥のように、サンは体いっぱいに外の光を受ける。 両手で海水を掬い上げ、あたりにまき散らせるサン・スーシの姿はどう見ても子どもであった。 波打ち際まで近づいたミナは、尻尾を下ろして歩みを止める。尻尾の先が砂に線を描く。 ざざあ、ざざあ…と続けて緩くミナの足元まで波が来るものの、不意に大きめの波がミナの足に飛び掛る。 「もー!!濡れちゃったじゃないの」 ミナは白い毛並みから海の水が垂れる尻尾をニ、三度振りながら、必死に水気を振り飛ばす。 波が落ち着いた隙を狙って、浅瀬ではしゃぐサンに少しでも近づこうと、再び波打ち際まで近寄ると、 海原にからかわれているのか、またも大きめの波に不意打ちをされる。ミナは尻尾が海水にずっと浸っているのに気付かない。 「『なつ』い『あつ』には、海ではしゃぐに限るよね!」 「サン・スーシ!!こっちに戻って来なさい!!海に投げ飛ばしてやるんだからね」 「それじゃあ、ミナがこっちに来いよ」 海風に金色の髪をなびかせながら、ミナはぐっと両手を握り締め、流れ着いたイカの甲羅をサンに投げつけた。 サンの膝ほどの深さの浅瀬さえ、ミナは海に入ることが出来ない。 ミナなら脛ほどの浅さであろうものだが、海を拒む理由はただ一つ。 「わたしがネコだからって…サン・スーシのばかぁ!!」 「ん?聞こえないなあ、はは。ぼくの耳の元で言ってくれなきゃねっ」 砂の中に潜り込むシャコを捕まえながら、サンは尻尾をミナに向かって振る。 海に入ると、何もかも許され子どもに戻るような気がする。 それはまるで胎内に戻ったかのような錯覚を起すからだろうか。そんな小難しい理由はサン・スーシには通用しない。 行くところ訪ねるところ、場所を選ばず遊び場に変えてしまう小さなイヌを言葉で説明することなんか、誰もできやしない。 「うはあ!!海の水、しょっぱああ!!」 跳ねた海水がサンの口に入る。母なる海からのお説教なのだろうが、それでもサンは堪えない。 突如として、サンの足がひんやりと海風にさらされる。急に空に近づいたような気がする。 「ほら…。サンの耳元まで来たよ。脇に爪立てちゃおっかなあ」 海で足が濡れるのを覚悟で、ミナがサンの背後にやって来た。だが、声はいかにも「ガマンしてます」という響きである。 サンの両脇を抱え、ひょいと持ち上げるとイヌの表情は、水をやり忘れた朝顔のような顔になった。
- 612 名前:夏の途中 ◆TC02kfS2Q2 mailto:sage [2009/07/18(土) 13:14:53 ID:L1DrWfVw]
- 「それっ!」
小さな体が青空に舞う。太陽の光を浴びてメガネが光る。逆光になって尻尾をくるんと丸めるサン・スーシ。 空は遥かに高く、下には冷たい海が広がる。海風に乗ってそのままどこかに飛んでいってしまおうか。 鳥たちに空を独り占めさせるなら、一口ぐらいは分けて欲しい。もしや、サンの背中に羽根が生えてしまうんじゃなかろうか。 そして、ひらりとどこぞへと飛んでゆき、地上だけならず、空をも征してしまうんじゃなかろうか。 いや、天下無敵のサン・スーシもさすがにそれは無理なこと。いちにのさんを数える前にもんどりうって、地上のケモノへ戻ろうか。 青い星の引力に誘われて、水しぶきの音を耳にしたサン。ところが、激しい音のわりには濡れているのは足元だけとは、これいかに。 「もう、最悪!!びしょびしょじゃないの!!」 「…ミナ、自分でコケたくせに」 髪から塩っ辛い水をたらして、しりもちをついたミナは半分海に体を沈め、不機嫌そうに尻尾を揺らす。 そのたびに水しぶきが飛び散り、男勝りなミナの隙をサンは垣間見た気になる。ニヤリと見つめるサンが気に食わなかったのか、 ミナは濡れたついでだからと手で海水をすくい上げ、えいっとサンに浴びせつけた。 ―――旅の途中ということもあって、余分にミナは下着の着替えを持っていたことがなによりも幸いであった。 「悪いけど、わたしの着替え…もうないよ。昨日着たのなんか、やだからね!」 「はいはい、ぼくのを貸してあげますよ。しっかし、さっきの着地はよかったなあ。おかげで服を濡らさず…」 「叩くよ」 浜辺近くの松林に建つお手洗いで全身を真水ですすぎ、ミナはタオルで拭きながらの陰から叫んだ。 ミナのまた水に濡れるのを嫌がる姿が、サンの脳裏に映るではないか。それを悟られたのか、 「覗いたら、ビンタをもれなくプレゼント」と、中からミナの低い声がしたが、サンは邪な考えは毛頭ない。 サンはミナと自分のリュックをお手洗い入り口まで運び、ミナが再び戻ってくるのを待っていた。 しばらくすると、濡れた自分の服をビニル袋に入れて手にし、サンの短パンとTシャツを借りたミナがサンに向かって跳んできた。 「あのさ…このシャツさ、丈が小さいんだけど」 「ぼくには丁度いい大きさだよ」 「そんなことを言ってるんじゃないの!わたしのおなかが見えてるじゃない!!尻尾もスースーするし」 「イヌ用の尻尾穴だからちょっと大きめなのかな」 サンより背の高いミナには、サンのTシャツはお子さま用のようである。 恥ずかしげにシャツの裾を延ばすミナの姿を見て、サンはニッと笑うが癪に触ったのか、げんこをサンの頭にぐりぐりとねじり込む。
- 613 名前:夏の途中 ◆TC02kfS2Q2 mailto:sage [2009/07/18(土) 13:16:24 ID:L1DrWfVw]
- 「サンはいっつもわたしの邪魔ばかりする!」
「そんなことしてません!」 「だって、わたしが教師になるのをあきらめたのは…。サンのせいだからね」 「…知らないよ」 一瞬、波の音だけが二人の間を通り抜ける。 風がミナの髪を揺らすが、甘い香りはそれほどしない。 照れ隠しにミナは手首を舐めるが、もはや遅い。 「サンと一緒に行った教育実習を見て思ったの。『わたし、この人にはかなわない』って。わたしが頑張っても、サン先生以上になれないって」 「そんなのやってみなきゃわかんないじゃん」 「同じぐらい…いや、それ以上頑張ったんだから、そう言ってるんじゃないの!理屈チビ!!」 「すーがく教師は理屈チビじゃなきゃ務まりません!!」 おなかから出した白い毛並みを揺らしながら、飛ぶように軽トラに駆け込んだミナ。エンジンを掛けるとUターンさせて砂煙を上げる。 残されまいと必死に追い駆けるサンは、海との別れをちょっと寂しく思うのであった。 「サン先生!置いて帰るぞー」 「ねー。もうちょっと、遊ぼうよ!」 ―――「サン先生、遊びに来たんじゃないんですよー」 「海だあぁ!ひゃっほー!いちばん乗り!!」 猪田先生の運転する車の中で、サン先生は歓喜の声をあげる。 泊瀬谷先生は少し困った顔で、無邪気なコドモな先生をやんわりとたしなめる。 松林を抜け、白い砂浜を見渡す夏の海。さんさんと輝く太陽は、つい先日と変わらない。 車が止まると、真っ先に飛び出したのはサン先生だった。 「サン先生の知り合いのお父さまの紹介の旅館、本当にありがたいです!」 「ええ、ロケーションもバッチリですな。うちの子どもたちにも見せてあげたいくらいの絶景だね」 「こんな素敵なところで林間学校ができるなんて、この夏が楽しみですね」 続いて猪田先生と泊瀬谷先生は周りを見渡しながら、夏風に吹かれていた。その頃、サン先生は既に浅瀬でシャコと戯れていた。 下見そっちのけであるサン先生が、海の中から大きな声で浜辺に向かって叫ぶ。 「ほら!泊瀬谷先生も早く!早く!」 「ええ?わたし…水が苦手なんですよお」 尻尾をたらし、眉を下げて泊瀬谷先生は手を振った。 その答えを聞いてニヤリとサン先生は笑うが突如として、サン先生の足がひんやりと海風にさらされる。急に空に近づいたような気がする。 「サン先生、ここまで来ましたよ。脇に爪立てちゃおっかなあ」 サン先生の背後には、ガマンしながら浅瀬に立っている泊瀬谷先生の姿があった。 泊瀬谷先生はサン先生を抱え上げ、ぽーんと放り投げる。小さな体が青空に舞う。太陽の光を浴びてメガネが光る。 逆光になって尻尾をくるんと…と、この間のような華麗な技は飛び出さなかった。なぜなら泊瀬谷先生、サン先生を投げ飛ばせなかったのだから。 その結果、サン先生はほとんど飛ばずに尻もちついて、水しぶきを上げて被害をこうむる。 「わーん!びしょ濡れだ!!」 ―――「早く乾かないかなー」 自宅の庭で青い空に並んでなびく洗濯物を杉本ミナは、自宅の畳の居間から眺めていた。 相変わらず太陽は青い星を照らし続け、地上のケモノたちにも夏をお裾分け。風鈴がチリンと小さな音を奏でる。 おかげで洗濯物は乾くのだが、ミナは暑い日差しに心なしか閉口していた。一方、父親はビール片手に夏を楽しんでいる。 庭と繋がっているガレージに止めたミナのバイクは、すっかり元気を取り戻し、ミラーは光を反射させている。 ちらと、ミナは相棒を見つめ呟いた。 「また、サンと海に行きたいな…」 おしまい。
- 614 名前:わんこ ◆TC02kfS2Q2 mailto:sage [2009/07/18(土) 13:19:40 ID:L1DrWfVw]
- 投下終了です。
- 615 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/18(土) 17:24:18 ID:Ux5hTk1B]
- あーもーかわいいなぁ、乙。
- 616 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/18(土) 17:53:52 ID:xGXGVNKP]
- やっぱなんか一味違う文章だよね
- 617 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/18(土) 21:01:57 ID:soKQoL3R]
- なんか、なんて褒めたら良いか分からんけど大好きだ!
GJ様!
- 618 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/18(土) 22:31:01 ID:bYuUP1Yg]
- おぉ、ミナ視点だ。本当に水ダメなんだな。そしてやっぱ好きなんだなぁ、サン先生のこと。
しかし相変わらず描写能力すげー。読んでるだけで海行って気持ちいい気分になったわ。
- 619 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/18(土) 22:43:28 ID:KWTp544F]
- サン先生、シャコと戯れるのは良いけど、シャコはカニ以上に危ないから気をつけるんだぜ?
何せ、シャコの爪から放たれるシャコパンチは二枚貝の殻を簡単に叩き割る威力があるからな。 高校の頃、修学旅行先の海岸で見つけたシャコを捕まえようとしたら、 シャコパンチの一撃で指の爪が割れて悲鳴を上げる事になった俺からのアドバイスだ。
- 620 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/18(土) 23:41:24 ID:mibupRP8]
- ttp://loda.jp/mitemite/?id=238.jpg
- 621 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/19(日) 00:26:03 ID:/aw6x8Jh]
- >>620
綺麗な景色だなぁ……去年辺りに住んでた家近くの海を思い出すよ。 それとサン先生、海で遊ぶのは良いけど後でシャワーを浴びるのは忘れないでね? 毛皮に付いた塩水が乾燥してとっても痒い事になるから
- 622 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/19(日) 09:26:33 ID:bLiSNc/d]
- おかしい、なぜグロを書かない?
- 623 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/19(日) 10:44:49 ID:9intH1PG]
- 出来たよ(+o+)
俺の名前は佐藤。狼獣人だ。 俺はギルドの仕事を終え歩いていた。腰にはダガー「赤の血飛沫」。 その時地面が揺れ触手が飛びだしてきた。 俺は赤の血飛沫を構え斬撃を加える・・・手ごたえが無い。 切っても切っても即座に復活しているのだ。 いつの間にか俺は全裸にされ犯されてしまった。 尻がうずいて仕方がない。そこに人間の男が現れる。 「この実験生物はどうだった?淫乱な冒険者さん」 「うう・・・もっと犯してくれ」 「この口調で言う事かな?奴隷は奴隷らしい口調で言ってごらんよあはは♪」 「犯して下さい」 俺の尻に男の肉棒が入れられた。 こうして俺は男の奴隷となってしまった、快楽で俺は気が狂った。肉奴隷(笑)
- 624 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/19(日) 11:29:41 ID:hPCM/i1R]
- >>620
サン先生はアウトドアが似合うねぇ
- 625 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/19(日) 19:03:51 ID:a1Fec8Ii]
- うざいねえ
- 626 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/19(日) 19:31:34 ID:a1Fec8Ii]
- 623は私ではありませんよ
- 627 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/19(日) 20:01:58 ID:a1Fec8Ii]
- このスレは滅びなければならないのです。
悪いのはあいつ。
- 628 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/19(日) 20:23:45 ID:Fq8kv3eq]
- 削除依頼してきました。
- 629 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/19(日) 21:29:09 ID:pAv0l2/f]
- 依頼乙。
>>613 林間学校が出てくるとは思わなかった!またネタが広がっていきそうだ。
- 630 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/19(日) 21:54:19 ID:scgqf9VN]
- 依頼おつん
なんか読んでると林間学校ってより臨海学校って感じだなw この調子で林間学校ネタも書いてくれるんなら楽しみにしてようかな
- 631 名前: ◆/zsiCmwdl. mailto:コテ無しで失礼 sage [2009/07/20(月) 01:00:29 ID:iIHrBw4j]
- 明日は家の近くで夏祭りがあるんだなあ、と思いつつ俺が通りますよ……
これより>>613からリレー?した話を投下します。
- 632 名前: ◆/zsiCmwdl. mailto:sage [2009/07/20(月) 01:01:40 ID:iIHrBw4j]
- 「ひゃっほ―、海だぁぁぁ!」
空に真夏の日差し煌く白亜の海岸、子供の様にはしゃぐサン先生の声が波音を一瞬だけ打ち消す。 その後に少し困り顔で付いて来るのは泊瀬谷先生、そして猪田先生。 そして更にその後には、ビーチマットとビーチパラソルを両脇に抱えた獅子宮先生の姿があった。 今日は佳望学園高等部の臨海学校の下見。海に危険が無いかを確める為に彼らはここに訪れたのだ。 「ほら! 泊瀬谷先生も早く! 早く!」 「ええ? わたし…水が苦手なんですよお」 早速波打ち際で遊んでいるサン先生と泊瀬谷先生を横目に、 獅子宮先生は波打ち際から少し離れた場所にビーチマットを敷いて、その側にビーチパラソルをしっかり立てると、 パラソルを開いてその影にビーチマットが入っているのを確認し、ビーチマットへごろりと横になる。 そして、咥え煙草へ火をつけた獅子宮先生は、空の青と海の蒼の触れ合う水平線を眺めて心地良さ気に呟く。 「……こう言う所で吸う煙草も、一興だな」 「おや? 獅子宮先生も海に入らないのですか?」 「いや、私は結構だ。私は海に入ってキャイキャイと遊ぶ様なガラじゃあないんだ」 隣に座った猪田先生へ言って獅子宮先生は煙草をプカリ。煙は夏風に吹かれて消えていった。 目の前では、勇気を振り絞って海に入った泊瀬谷先生の逆襲によって浅瀬へ尻餅を付いたサン先生が喚く姿。 相当派手に水飛沫を上げたらしく、サン先生は服はおろか尻尾も耳の先もずぶ濡れ。 それを目にした獅子宮先生と猪田先生の顔に、自然と笑みが零れる。 と、其処へ一旦海遊びを切り上げたサン先生と泊瀬谷先生が談話しつつ戻ってきた。 「あーもう、酷い目にあったよ……」 「つまらない事をするからそうなるんですよ? サン先生」 「ふふ、濡れ鼠ならぬ濡れ犬か。中々似合ってるじゃないか、とっつあんぼうや」 「もう、獅子宮先生まで! ちょっと着替えてくる!」 獅子宮先生にからかわれてぷうっと頬を膨らませたサン先生は、 着替えの服でも取りに行くのか浜辺へ止めた猪田先生の車へ一直線。 夏風の様に去り行くサンの尻尾を見送った獅子宮先生はクスリ、とだけ笑うと、再び煙草をぷかぷかと吸い始める。 その横に座っているのはかつての恩師。高校生の頃だったら煙草を咥えるなり即座に注意をされて居た事だろう。 しかし、今の獅子宮先生は毛並みもそろった立派な大人、煙草を吸うかつての教え子に猪田先生も苦笑いを浮べるしかない。 「獅子宮先生、煙草を吸うのも良いですけど、程々にしておいてくださいね?」 「分かってるさ、泊瀬谷。…だが、こう言う時、こう言う場所じゃないとのびのびと煙草を吸えなくてな」 悪く思わないでくれよ? と笑う獅子宮先生に、泊瀬谷先生も仕方ないですねと返す。 近頃、健康増進法のお陰で煙草が吸える場所が減ったと、獅子宮先生は至極残念そうにぼやいていた。 そんな姿を目にしていたら、たまには思いっきり煙草を味あわせてやっても良いかな、と泊瀬谷先生が思うのも無理も無い。 「やはり、こう言う場所で吸う煙草もいい物だな」 純白の言葉をそのまま体現したような白亜の砂浜。 波と共に涼しく優しい海風を送り続ける母なる青い海 眺め続けていたらそのまま吸い込まれてしまいそうな蒼い空。 一つまみして口に入れたら甘い味が広がりそうな白く大きな入道雲 こんな爽快な環境の中でのびのびと吸う煙草は、何時もの肩身の狭い想いをして吸う煙草とは一味も二味も違う。 そう、心地良い気分を味わいながら、獅子宮先生がもう一息煙を吸おうとした矢先。 ばしゃ ―――その顔へ不意に掛かる水飛沫。 獅子宮先生は何が起きたのかも分からないまま、咥えている煙草へ目を移すと すっかり濡れてしまった煙草が途中からボロリと崩れ落ちる様子が見えた。
- 633 名前: ◆/zsiCmwdl. mailto:sage [2009/07/20(月) 01:02:56 ID:iIHrBw4j]
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「やったぁ! 命中ど真ん中!」 「…………」 突然の事で猪田先生と泊瀬谷先生が硬直する中、 獅子宮先生がぎぎぎっ、とまるで長い間手入れされていないブリキ人形の様に水が飛んで来た先へ振り向く。 其処には、肉球のアップリケをあしらった水着に水玉模様の浮き輪、そして片手に水鉄砲と言うフル装備のサン先生の姿。 どうやら、着替えに行ったと見せかけて、猪田先生の車の中で水遊び装備へフォームチェンジを行い、 そして、こっそりと獅子宮先生の死角へと接近し、その手にした水鉄砲で咥え煙草をスナイプした、と言った所だろうか。 心地良くなっている所で文字通り水を差され、呆然とする獅子宮先生へサン先生は尻尾を振りながら勝ち誇った様に 「へっへん、ボクの事をバカにしたお返しだよ! 獅子宮センセ」 「……やってくれたな、とっつあんぼうや」 「うわ、怒った! やっベー、逃げろー!」 ようやく自分に起きた事を理解した獅子宮先生が、全身に怒気を纏わせつつゆっくりと立ち上がった頃には、 サン先生は子供の様にふざけながらくるりと踵を返し海の方へダッシュ。そのままざぶざぶと海の中へと入る。 そして、浮き輪でぷかぷかと海面に浮かびながら、サン先生は波打ち際で尻尾を振りまわす獅子宮先生へ囃し立てる。 「ほらほら、獅子宮センセ! 悔しかったらこっちまでおいで!」 「……」 しかし、獅子宮先生は隻眼の瞳で睨むだけで海に入ろうとしない。 そう、獅子宮先生の種族である獅子族はネコ族の親類だけあって、水が苦手。 その上、今、サン先生が居る浅瀬は獅子宮先生の胸の辺りの深さがある。 これならば、幾ら獅子宮先生といえど追ってくる事は出来ない。……そう、サン先生は考えていた。 「サン先生、悪い事は言いませんから今直ぐ獅子宮先生へ謝った方が良いですよー?」 「そ、そうですよう? 早く謝らないとこの前みたいに髭を全部抜かれちゃいますよー?」 砂浜の方から必死にサン先生へ呼び掛ける猪田先生と泊瀬谷先生。 むろんの事、トリックスターなイヌの教師は全くもって聞く耳持たず、更に獅子宮先生へ囃し立てる。 「ほらほら、海に入ったら気持ち良いよ―? まあ、獅子宮センセには無理だと…思う…けど…?」 しかし、そのサン先生の言葉は途中から波の音にかき消される事になる。 全く躊躇する事無く、ざぶざぶと海中へ入って行く獅子宮先生の姿を前にした事によって。
- 634 名前: ◆/zsiCmwdl. mailto:sage [2009/07/20(月) 01:04:07 ID:iIHrBw4j]
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「あ、あれ? 嘘でしょ? 獅子宮センセ、無理しちゃダメだって、ねえ?」 サン先生の言葉を耳にも止めず、海中を行く大魔神の如くサン先生へ迫ってくる獅子宮先生、 当然、激しく狼狽したサン先生は慌てて沖の方へと逃げようとするが、 海は悪戯者の味方にはなってくれず、押し寄せる波は必死に泳ぐ小さなイヌを海岸の方へぐいぐいと押し流す。 それでもサン先生は必死に泳ごうとした所で、手足に感じていた海水の手応えが急に消えたのを感じた。 「よう、とっつあんぼうや。ずいぶんとご機嫌な様だったな?」 直ぐ後にいた獅子宮先生が片手でサン先生の頭を掴み、天高く持ち上げていた。手足が空を切るのも当然である。 その声はどちらかといえば我慢していると言うより、身体の内で煮え滾った怒りを堪えている様な響き。 ポタリ、ポタリ、とサン先生の身体から落ちる水滴の中に、彼の冷や汗が混じっていてもおかしくはない。 「さては、私が水の中に入ってこれないとかハッピーな事を考えていたんだろうな?」 獅子宮先生は掴んでいるサン先生を自分の方向へ向けると、ギタリと牙を見せて笑って見せる。 その時、サン先生の背筋に走った寒気は、決して海水の冷たさだけの物ではないだろう。 ふと海岸の方を見れば、其処には指で十字を切っている猪田先生と、何かに祈る泊瀬谷先生の姿が見えた。 「そんなハッピーな思考のお前に一つだけいい事を教えておいてやる」 「え、えっと、それってナにかな?」 ようやく喉から搾り出したサン先生の問い掛けに、獅子宮先生は「それはな…」と呟くと、 「私は中学の頃に、水は克服済みだ!!」 吼える様に叫びながらサン先生を沖の方へブン投げた! 乱暴な子供に投げられた玩具の様に宙を舞うサン先生、太陽の光を浴びてメガネが煌く。 逆光になって尻尾をくるんと…と、其処までした所でサン先生はふと気付いた。 (あ……そう言えば、海のど真ん中で着地なんて出来っこないじゃん!?) ざぽばーん!! しかし、其処まで考えた所で、サン先生は派手な水音と共に意識を失った。
- 635 名前: ◆/zsiCmwdl. mailto:sage [2009/07/20(月) 01:05:23 ID:iIHrBw4j]
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「ん……あれ、ここは?」 「あ、サン先生、大丈夫ですか? 体の具合は如何ですか?」 「あ、うん、何とか大丈夫…」 ――次にサン先生が意識を取り戻した時、 サン先生は海岸のビーチマットの上で泊瀬谷先生に介抱されている所であった。 どうやら、溺れてしまう寸での所で誰かに救助されたらしい。 「全く、獅子宮くん…幾ら頭に来たからってあそこまでする必要はないだろう?」 「………」 ふと、サン先生が横を見ると、其処には猪田先生に正座で説教される獅子宮先生の姿があった。 その様子の余りの滑稽さに、サン先生が思わず笑いを漏らそうとした矢先。猪田先生は衝撃的な事を言った。 「僕が人工呼吸しなければ、危うくサン先生は死ぬ所だったんですよ? 分かってるんですか?」 「…す、すまない…」 (……え゛? じ…じんこうこきゅう? い、猪田先生が、ボクに?) この時、サン先生は自分の心にピシリと大きな亀裂が入るのを感じていた。 つうこんのいちげき サンの心に875のダメージ、サンは力尽きた。 と言う声が心の何処かで響くと共に、サン先生は再び意識を失った。 「――――」 「ちょ、サン先生? 何でまた気絶するんですか? サン先生!? サン先生!?」 「敬語を使いなさい! 獅子宮くん。今、君は教師じゃなくて生徒として僕に叱られている事、分かってるね?」 「ご、ごめんなさい……」 ―――そして、真夏の太陽が輝く海岸にて。 かつての恩師に叱られる獅子の教師と、衝撃的事実を知って気を失ったイヌの教師の間を 何時もの様に夏の海風が静かに吹き抜けるのであった。
- 636 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 01:06:06 ID:+zKU0Aqa]
- JTの挿絵希望
- 637 名前: ◆/zsiCmwdl. mailto:sage [2009/07/20(月) 01:06:47 ID:iIHrBw4j]
- 以上です。
ここ最近は海に行ってないなぁ(´・ω・`)
- 638 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 01:07:27 ID:VSht3lz8]
- いのりんテラ命の恩人
- 639 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/20(月) 01:14:58 ID:QmNiB6xB]
- いえいえ天候制御の絵が見たいです
- 640 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 04:31:52 ID:os/7Vy86]
- 更に>>635を勝手にリレーするの巻
- 641 名前:携帯 ◆4c4pP9RpKE mailto:sage [2009/07/20(月) 04:36:36 ID:os/7Vy86]
- 「うーむ、完全に挨拶するタイミングを逸してしまった」
サン先生が水際で獅子宮先生を挑発し始めた頃、美術教師水島は少し沖の海に居た。 立ち泳ぎで頭だけ出して浜を観察する姿はさながら海坊主である。 彼はサン先生率いる臨海合宿の前調査とは全く別の目的で、偶然同じ浜を訪れていた。 《夏期休暇限定、黒潮に乗って北上部》の前調査である。 水棲生物な生徒達からは通称《くろのり》で知られる恋の芽生えるチャンス多き人気の 部活だ。 だが水島が実際に泳いでみた結果、一昨年にも増して巨大クラゲが多いため、やむなく 中止を決定したところであった。 夏休みに愛しい生徒達(主に女子)に会えない事を残念に思いながら浜に向かう折、サン 先生一行を見つけた次第である。 水島が浜を見やると、サン先生が獅子宮先生に水を掛けた。 獅子宮先生の毛並みが濡れ、服が濡れ、テラテラと輝く。 「ほほう……」 意味深に呟く水島。 水面下で鼻の下はのびていた。 エロ海坊主である。 サン先生が海へ駆け、挑発する。 獅子宮先生が憤怒し、海へ駆ける。 そして目にも止まらぬうちにキャッチ&スロー。 片腕をぐるりと回した男勝りなピッチングであった。 水島は、外野に高く上がったフライをキャッチするような心持ちで、サン先生の放物線 を眺めていた。 「おー、よく飛んどるのぅ……オーライオーライ」 ──ドバチャーーン! 「ぐえっ!」 見事、回転のついた白球(サン先生)が水島にミートした。 ランナーアウト。 ランナーのシャコが悔しがったかは判然としない。 (いててっ!マジ洒落にならんくらい痛かった!) 水島は水中に潜ってサン先生と距離を取った。 が、打ち所が悪かったのか、サン先生は白目を剥いて沈んで来た。 (ちょっ……!起きろ!起きろサン先生!傷は深いか?浅井カー!) 水島はテンパって親父ギャグを飛ばしたが、アザラシの水中話法を犬が解するはずも無 い。 水面に浮上して、サン先生の口をしっかり押さえる。 (戻ってこーい!) 水島はサン先生の口をしっかり押さえたまま、サン先生の鼻先に空気を吹き込んだ。 「ぶはっ!げほっ!し、死ぬかと思った」 サン先生が水を吐いて気を取り戻した。 「大丈夫ですかサン先生?ワシが人工呼吸しなきゃ死んでましたぞ」 「あれ、水島先生?なんでここに……ていうかじ人工呼吸ぅぅ?!せ、先生がやったの?」 「当たり前でしょうが」 「うーん……」 がくっ。 サン先生はまたもや気絶し、水中に沈んでしまった。 水島は慌ててサン先生を引き上げようとしたが、「大丈夫ですかサン先生!今助けます!」 と叫ぶいのりんが猛然とクロールで近付いて来たので、水島はいのりんにサン先生を任せ て、見つかる前にその場を去ったのだった。 サン先生が獣同士の人工呼吸がマウストゥマウスでは構造的に成立しないのに気付いた のは、浜辺から帰って口を濯いだ時だったとさ。 お終い
- 642 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 10:00:02 ID:bvO/gaKB]
- 黒幕がいたのかw
- 643 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 10:29:41 ID:tkB8bgK6]
- 猫とか小犬が溺れて水飲んでた場合、脚掴んで思い切り振り回して吐き出させろ、って聞いたことがある
- 644 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 16:12:55 ID:L28ILkzW]
- 話しの流れをぶった切りつつ…
ttp://loda.jp/mitemite/?id=257.jpg
- 645 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 16:13:52 ID:TNM7UEva]
- ふたば@オスケモ三次会やってるよー!!
jun.2chan.net/b/res/11277715.htm
- 646 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 16:22:52 ID:Y4orn+fT]
- 水島先生って使いづらいんだよね
作者のトリが某氏だから・・・
- 647 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 22:20:43 ID:vpmDUkb7]
- 黒い毛の獣人は日光を吸収しまくって暑そう
- 648 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 22:22:25 ID:BvPLfVUZ]
- 黒豹とかどうするんだろう……
- 649 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/20(月) 22:28:48 ID:221KUxE2]
- 焼けただれて苦しんで死ぬ
- 650 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/20(月) 22:31:06 ID:221KUxE2]
- こんなに登場キャラが居るんだから一人ぐらい死者が出ても可笑しくないわね。
私も小説書こうかしら。
- 651 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/20(月) 22:33:32 ID:221KUxE2]
- 誰からも相手にされなくても良い
復讐しなければならないのです。
- 652 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/20(月) 22:35:07 ID:221KUxE2]
- ここのスレ民がバトロワスレも見ていることはわかっている。
私に喧嘩を売っていることもな!
- 653 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 22:47:08 ID:rArjs8dh]
- なにこれ・・・
- 654 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/20(月) 22:48:39 ID:VSht3lz8]
- 荒らしに構うのも荒らしと同じだよ。
あとでレスまとめて削除依頼出してくる。
- 655 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 00:02:50 ID:bvO/gaKB]
- 修行を積み、心を無にすれば、自ずともふもふ感漂うレス以外は見えなくなるのじゃ
- 656 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 00:10:50 ID:7EaneUJk]
- >>655
スフィンクスの猫人「あの……それだともふもふじゃない僕は見えないって事ですか?」
- 657 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 00:12:09 ID:IY5irEzs]
- ここのスレは荒らしに対するスルースキルかなり良い方で、心強いよw
>>656 すべすべに触られるんですね、わかります。 海ネタで思い出したけど、花火大会や夏祭りネタもまだまだあるよね。 あとは夏休み中の、学校での講習とかもあるなー。
- 658 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 01:30:43 ID:Cj8+U4eJ]
- >>656見てくれに惑わされるでない、もふもふ感とは心で感じるものなのじゃ
- 659 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 03:07:43 ID:D12MHvzz]
- 利里「もふもふだぜ!」
堅吾「おう!」 猛「……」 鎌田「ゴツゴツだね」
- 660 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 03:53:14 ID:r8uGdcaD]
- 奥さん 「ぶよぶよだねー」
お子さん「だねー」 いのりん「……ごめんなさい」
- 661 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 14:17:29 ID:RXFdGP9L]
- このスレも股間同盟です
▼・ェ・▼
- 662 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 18:26:20 ID:qJRQO7q5]
- >>660
いのりんのお腹は一年を通して周期的に増減します しかし歳を重ねるごとに少しずつその総量が増しています
- 663 名前:創る名無しに見る名無し [2009/07/21(火) 18:29:37 ID:ZAYDYmJQ]
- 地球温暖化の気温変化のグラフのようにな
- 664 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 21:12:11 ID:uasPwyG5]
- 歳の割に少女趣味かしら?
ttp://loda.jp/mitemite/?id=261.jpg
- 665 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 21:56:53 ID:7EaneUJk]
- >>664
相変わらず利枝さんは美人だなぁ…… これで英先生と同い年とは到底信じられnウワナニ
- 666 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 22:11:48 ID:+KYYwkbt]
- >>664
むしろけしからん、実にけしからん
- 667 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 22:14:43 ID:0JOO0yGV]
- 花屋「そろそろ、……結婚したい」
- 668 名前:創る名無しに見る名無し mailto:sage [2009/07/21(火) 22:22:18 ID:eQtac7GJ]
- そういえば花屋の枯れてる店長も黒豹だっけか
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