- 917 名前:ワ受賞に寄せて
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 立川 裕二 山下真由子さんが『代数トポロジーと量子場の理論の研究』に関して今年度の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞なさったことに関して,物理側の共同研究者の一人である私から一言コメントを,というお声掛けを『数学通信』の皆様からいただいた.私自身が数学者でないため,山下さんの業績がこれまでの数学の流れの中でどう位置づけされ,どのような発展をもたらしたのか,ということについては申し訳ないながら解説することが出来ない.しかし,このような機会をいただいたのであるから,山下さんの仕事がどのように我々理論物理学者にとって有り難いのかということを皆さんにわかっていただくことは出来るのではないかと思って,この記事の執筆をお引き受けした次第である.また,山下さんは他にもいくつかの賞を受賞しており,複数の受賞記事がこの『数学通信』誌に掲載されているので,説明が重複してしまいがちであるが,なるべく異なる方面からの解説を心がけたいと思う. さて,場の理論には百年近い歴史があり,実験的結果もよく再現する.しかし,全般的な純粋数学的取り扱いが非常に困難であり,万人の納得する数学的枠組みは未だ無く,種々の部分的側面が定式化されているに留まる.考察する側面に応じて,必要になる数学的分野は異なるが,長らく代数トポロジーはそれほど目立った使われ方をしていなかった. これらの相の分類に代数トポロジーが有用であろうというのは15年ほど前から明らかになってきた.まず,トポロジカル絶縁体およびトポロジカル超伝導体と呼ばれるクラスの系のとりうる相がそれぞれ複素K理論および実K理論で分類されるということがわかってきた.これら分類が可能であった系には,1. 長距離相関を持たず,かつ,2. 励起をつくるのに系のサイズに寄らないノンゼロの最小エネルギーが必要であるという共通の性質がある.では,1. と2. の性質を持ち,かつ,対称性Gをもつような相を分類することは出来るだろうか.これがG-symmetry protected topological phase (G-SPT 相) の分類問題といって,2010年を過ぎたあたりから物性理論のなかで大きく取り上げられた問題である. つづく [] - [ここ壊れてます]
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