- 1 名前:名前が無い@ただの名無しのようだ mailto:sage [2005/12/17(土) 15:08:53 ID:GxaSj02M0]
- 文章で遊べる小説スレです。
SS職人さん、名無しさんの御感想・ネタ振り・リクエスト歓迎! 皆様のボケ、ツッコミ、イッパツネタもщ(゚Д゚щ)カモーン ======================================================================= ※(*´Д`)ハァハァは有りですが、エロは無しでお願いします。 ※sage推奨。 ※己が萌えにかけて、煽り荒らしはスルー。(゚ε゚)キニシナイ!! マターリいきましょう。 ※職人がここに投稿するのは、読んで下さる「あなた」がいるからなんです。 ※職人が励みになる書き込みをお願いします。書き手が居なくなったら成り立ちません。 ※ちなみに、萌ゲージが満タンになったヤシから書き込みがあるATMシステム採用のスレです。 ======================================================================= 前スレ FFの恋する小説スレPart4 game10.2ch.net/test/read.cgi/ff/1101760588/ 記述の資料、関連スレ等は>>2-20にあるといいなと思います。
- 319 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(1) mailto:sage [2006/03/18(土) 02:47:09 ID:1H6BepRU0]
- 前話:>>289-293
舞台:DCFF7第9章@シエラ号艇内(回想はFF7/DCFF7第7章〜8章) 備考:DCFF7本編で描かれるシーンが前提で進みます、未プレイの方すみません。 シエラ号の構造に多少のねつ造があるのはご愛敬と言うことで。 ---------- ――「がんばって、ケット・シー」 そう言って微笑んでくれた彼女の笑顔を、今でも鮮明に覚えている。 彼女はスパイだった自分を信じてくれただけではなく、励まそうと微笑んでくれた。 (忘れへんで……絶対。忘れへん) だから今度は、わいが頑張らなアカン。先に壊れてしもた1号機のことも、わいの 事も。たまにでええ、思い出してくれたら嬉しい。 ケット・シーは来た道を振り返り、閑散としたフロアに向けて勢いよく手を振った。 見ている者もなければ、振り返してくれる者もいない。少しだけ淋しくなって振っていた 手をゆっくりと下ろした。 誰にも見送られることなく、ケット・シーはエンジンルームへと続く扉を静かに開けた。 ***
- 320 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(2) mailto:sage [2006/03/18(土) 02:51:06 ID:1H6BepRU0]
- それはつい数分前の出来事である。
『アカン! アカンで〜。戻るんや、戻らんかい!! コラ、聞いとるんか!? ……も・ど・ら・ん・か・い!!』 幅の狭い通路の先から、いまいち深刻さに欠ける叫び声が聞こえて来た。 巡回中だった隊員があわてて駆けつけてみれば。 「こらこら、離しなさい」 WRO局長が、珍しく困った顔で後ろを振り返り、視線を足下へ向けている。 つられて隊員も視線を下げてみれば。 『アカン、行ったらアカンのや!』 猫がいた。 「…………」 小さな猫――型の人形? ぬいぐるみ? ロボット?――が、必死に裾に しがみついて、リーブの歩行を阻害している。深刻さに欠けるどころか、滑稽。 いや、それはいっそ微笑ましい光景だった。 WRO<世界再生機構>の人間であれば、その猫を知らない者はいないだろう。 ケット・シー――それはジェノバ戦役の英雄のひとり、正確に言えば分身だった。 なぜこんな狭い通路で押し問答を繰り広げているのかと言えば、出力低下の 警報音を聞き駆けつけたリーブが、自分が操っているはずのケット・シーに進路を 阻まれ立ち往生していたのだ。考えてみれば奇妙な現象である。
- 321 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(3) mailto:sage [2006/03/18(土) 03:00:01 ID:1H6BepRU0]
- 『そこの兄ちゃん、ちょっと頼まれてくれへんか?』
ケット・シーは裾を引っ張る手を離さずに振り返ると、この光景を呆然と見つめて いる隊員に向けてこう言ったのだ。 『異常事態なんや。急いで助っ人……いや、シドはん呼んで来てくれへんか? ……このまま、このおっさん行かせるわけにはイカンのや』 地上部隊のクラウド達はもちろん、ユフィやヴィンセント、他の隊員達もミッドガルに 向けて降下している。先の本部戦で受けた被害もあり、今この飛空艇には最低限 必要な人数しか残っていない。ケット・シーが言わんとしている事の重大さは、彼にも 分かっている。 「はっ!」 律儀に敬礼する隊員に、ケット・シーは相変わらずおどけた口調で返した。 『……すんませんけど、頼んます』 隊員は背を向け、来た道を全速力で駆け出していった。 *** ミッドガル総攻撃開始を目前に控えたシエラ号艇内は、各所で隊員がせわしなく 行き来し、来るべき出撃に備えてに活気づいていた。 そんな飛空艇内で唯一、上層部の一番奥に設けられたメディカルルームだけは その喧噪から隔絶されていた。少女はここへ戻ってくることをほんの少しだけ、ためらって いた。しかしつい今し方、SNDを実装したばかりの専用端末はこの部屋にしかない。 だから戻って来ないわけには行かなかった。 今やめる訳にはいかない。自分の身に託された"彼女"の思いを……願いを、知って しまったから。 それに。 ――「それでは、シェルクさん。頼みましたよ。」 そう言って目の前を去っていったリーブ=トゥエスティは、笑顔だった。シェルク自身が 動く理由はないはずなのに、彼の申し出を拒めなかった。まんまとあの男の言いなりに なっている様で、そんな自分が腹立たしく思えた。
- 322 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(4) mailto:sage [2006/03/18(土) 03:13:27 ID:1H6BepRU0]
- 『シェルクはん』
扉の前で名前を呼ばれた時、我に返った。通路脇に備え付けられた小型 ディスプレイに表示された数字は刻々と減少を続けている。ミッドガル総攻撃 開始までのカウントダウンは既に始まっていた。WROの侵攻部隊降下と 合わせて、シェルクもSNDで援護する手はずになっている。それは彼女自身の 提案により、急きょ決まったことだった。そのための最終調整をしていたはず なのだが、どうやら別のところに気をとられていたようだ。気を取り直してパネルを 操作すると、室内へ通じる1つ目の扉を開いた。 考えてみればケット・シーはリーブが操縦しているロボットのはずなのに、なぜか これには腹立たしさを感じない。なぜだろう? 考えても答えは出て来そうにも なかった。2つ目の扉の前で立ち止まったシェルクは、ちらりと視線だけを動かして 足元を見た。 「なにか?」 ケット・シーはじっとこちらを見つめている。シェルクは視界の隅でその姿を確認 すると、視線を前方の扉へと戻した。 『さっきは……すんません』 2つ目の扉はすでに自動で開いていたが中へは入らずに、シェルク横についた 小型ディスプレイを見つめていた。画面の中ではカウントダウンが続いている。一方で 耳ではケット・シーの話す言葉を正確にとらえていた。 しかし唐突に謝られたのはいいが、何に対して謝られているのか心当たりがまるでない。 「なぜ謝るのですか?」 画面に触れ、何度か表示を切り替えながら、シェルクは短く言葉を発した。別に見なくても いいはずの飛行航路表示を呼び出して、すぐその画面を閉じる。 『……その。えらそうな事、言ってしもて』 「気にしていません」 シェルクにしてみれば、ケット・シーに偉そうな事を言われた覚えがなかった。だから そう返答したのだ。
- 323 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(5) mailto:sage [2006/03/18(土) 03:16:43 ID:1H6BepRU0]
- ここで会話が途切れた。画面上で確認できる情報には一通り目を通してしまった
シェルクは、仕方なしにメディカルルームへと足を踏み入れた。相変わらず整然と 並んだ機械類は、呼吸でもするように僅かなノイズ音を規則的に発していた。 姉が横たえられているカプセルに視線を向けることはせずに、そのまま奥の席に 座ろうとしたシェルクは、いつもは自動で閉まるはずの扉が閉まらないのを不審に 思って振り返った。 だが、異常は見られない。 視線を下へ向けると、ケット・シーが入り口で立ったまま俯いている事にはじめて 気がついた。 「…………」 落ち込んでいるような姿に、なんと声をかければ良いのかが分からずシェルクは 戸惑う。そのまま放っておけば良いような気はするのだが、そこにも妥当性を見い だせずにまた戸惑った。とりあえず、ケット・シーの傍まで歩み寄る。 しかし、けっきょく見下ろすだけで何もできなかった。 『3年前の、話なんやけど……』 そんなシェルクに助け船でも出すように、ケット・シーがおずおずと顔を上げて 語り始める。
- 324 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(6) mailto:sage [2006/03/18(土) 03:23:34 ID:1H6BepRU0]
- 『わいな、最初はスパイやったんや。知っての通り神羅の人間やったから……。
せやけど、みんなと一緒におったら考え方、変わってしもたんや』 最初は戸惑ったと言う。自分が派遣された本来の目的は監視、内偵、そして ある物を神羅に渡す事だったから。しかし、それを決定的に覆したのが彼女の 言葉だった。 『……“がんばって”ってな……そう言って、わいの名前呼んでくれたんや。なんや、 アホくさい思うかもしれへんけど、ホンマに嬉しかったんや……』 誰かに頼ってもらえること。 誰かが必要としてくれること。 それは、自分と同じボディの1号機の記憶だったけれど。 『せやから……“言葉で伝える”っちゅーことも大切なんやて……思うんや』 照れたように頭に手をやって、いつものように戯けて見せようとした。けれど 上手くいかなかったのか、またすぐに俯いてしまう。 一方それを聞いてシェルクは、出ないと思っていた答えの一部分が見えた様な 気がしたのだった。 ――「それでは、シェルクさん。頼みましたよ。」 なぜ、あの男の申し出を拒めなかったのか。その答えが。 「私も、同じ……ような気がします」 そう言って、シェルクはひとつ息を吐き出した。「呆れました」とでも言いたげな 表情で。 「よく……分かりませんが、誰かに何かを依頼されるという行為には……慣れて いません」 シェルクはぎこちない動作で膝を少しだけ曲げると、前屈みになってケット・シーに 顔を近づけようとした。
- 325 名前:鼓吹士、リーブ=トゥエスティX(7) mailto:sage [2006/03/18(土) 03:26:12 ID:1H6BepRU0]
- するとケット・シーは突然、シェルクの視線の高さまで高く飛び上がると、こう言い
放った。驚いたシェルクは呆然とその様子を眺めていた。 『よっしゃ! そんじゃもう一踏ん張りや! わいもサポートさせてもらいまっせ〜。 一緒にがんばりましょ』 ぴょんぴょんと、やけに嬉しそうに飛び上がるケット・シーを見ていると、シェルクは これまでに見せたことのない表情を浮かべた。戸惑っているような困ったよな、そんな 小さな笑顔。 「……そうですね」 そう言って、彼女は再び扉の横に設置された小型ディスプレイに視線を落とした。 画面端の表示は、残り3分を切っていた。 シェルクはキーボードをたたいて画面を操作し、SNDの態勢へと移行する。 かつての都ミッドガル――地上と空とを舞台にしたディープグラウンドとの激戦が幕を開ける前、 それはつかの間の平穏であった。 ---------- 分割もクソも行数規制で結局同じでした…orz
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