- 50 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2010/12/17(金) 11:01:24 ID:vV1l9adO0]
- 目が覚めるとそこは暗闇だった。目を開けているのに何も見えない。
しばらく夢の続きかと思った。まだ自分は寝ているのだと思った。 そのまま時間に身を任せたが、何も状況は変わらなかった。 そして意識が覚醒し、夢ではないと気づいた。 体に力を入れてみた。とりあえず起きようと思った。 しかし何も出来なかった。腕だけでなく、足の指先までなにも動かせないと気がついた。 気づけば口も動かなかった。口を意識しだすと、嘔吐感が襲ってきた。 何かを喉の奥に感じる。喉の奥だけでなく、口の中全部に何かが押し込まれているようだ。 舌は何かで覆われている。少しも動かせない。 歯は元から固定されているかのように力を入れてもグラリともしない。 口の現状を認識すると体のあらゆる部位が異常な感覚を伝えている。 息は苦しくない。が、何か臭いを感じる。鼻の奥になにかが差し込まれているような感覚。 手は閉じた状態から開くことが出来ない。開こうにも何かで握りこぶしが覆われている様だ。 閉じた状態で感じるはずの指同士の感触が無い。指の一本一本も何かで覆われている感触。 ありとあらゆる部位に力を入れてみるが、自分の体を自分で触ることすら出来なくなっている。 全身を何かで覆われている。感じたことの無い素材。自分の服にこのような感触の物は無かったはずだ。 何かがおかしい。自分は今どうなっているのだろうか。自分に何が起こったのか。 命の危険を心配しなくてはいけない状況になっているのであろうか。 「!・・・・・」 何も聞こえなかった。耳が塞がれていたとしても、体を伝わって多少は聞こえるはずだ。 それすら聞こえず、ただ息を吐き出すだけに終わった。 今までは何も考える事無く出せた声。今までと同じ事をしているのに出ない声。 動きと声を封じられた俺は、何が出来るのだろう? 冷や汗が流れた 気がした。何かで覆われているこの体に汗が流れる空間など無いが。 体に力を入れる。とにかく体を動かしたかった。何も出来ない自分の状況が怖かった。 この覆っている何かを引き剥がしたかった。口の中のこの不快な固形物を引きぬきたかった。 そうすれば自然に声も出る。そう思いたかった。 今俺の頭の中には、自分の状況は明らかに異常でありこのままではいけないという事しか無かった。
|
|