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【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ4【マンガ】



1 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/20(木) 02:00:43 ID:C6uqpTOZ]
ニコとロボの恋愛話のSS(ショートストーリー)を楽しむスレです。

お約束
SSを投下してくださる神はできるだけエロ有り無しを先頭に記載願います。
SSを批判するのは禁止です。
感情的、挑戦的なレスは控えましょう。
煽り荒らしはスルー。
500KB近くになったら次スレを立てて下さい。
基本はsage進行でマターリ行きましょう。

前スレ【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ3【マンガ】
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1188146114/l50
前々スレ【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ2【マンガ】
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1185107840/l50
前々々スレ【ドラマ】セシーボイスアンドロボ【マンガ】
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1176268043/l50


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2 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/20(木) 03:25:59 ID:j3Diattl]
乙です。スレ立てありがとうございます!

3 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/20(木) 07:36:46 ID:iqZDJ7vC]
華麗なるスレたて乙です。

4 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/20(木) 17:14:57 ID:LOIVnrDK]
もしも…
三日坊主が死んで
私は地蔵堂の社長に
「もしも私があの時…」
って何度も聞いた
地蔵堂の社長が言ったことはまだ中学生の私にはよく分からなかった

それから2ヶ月がたって…私の生活はすっかり変わってしまってて…でもそれが今の私の当たり前の生活になっていて
そんなコト地蔵堂の社長に聞いた事すら忘れいた
だって今日も私の隣にはロボがバカな事してて
それを少し冷めた目でみてるのが私だった
「あ〜つまんないっ!ロボッッねぇ聞いてんのぉ〜」
ちゃぶ台で座ってるロボの肩を持って力いっぱい揺らす
「あ〜コラぁ!ロボット落としちゃうでしょっ」
「も〜私か・え・るっ」
ニコは怒ってるときはドタドタ歩きになる
「ちょっとニコ〜!何怒ってるの〜ねぇ」
俺の声を無視して部屋を出てったニコに窓から声をかける
「ニ〜コ〜!」
「何にもないっ!何にも起きなぃから…まぁまた来るね」
「なんだそれ!何にも起きなぃって事が幸せなのになぁあ。まぁ子供にはまだ分からなぃかぁ♪」
ニコの後ろ姿をみながら1人つぶやく
「も〜聞こえるってば
オタクに言わたくなぃっ」
私だって何でこんなにイライラするのか「??」だ
学校でも成績や恋愛の話でカズミチャンは相変わらす男運がなくて
ロボはやっぱオタクで
こんな世の中なんにも変わらないと思ってた。







プッチーニが現れるまでは…

ロボと昭子サンが出逢ぅまで私の中の世界そんなものだと思っていた…

つづく


5 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/20(木) 20:53:17 ID:LOIVnrDK]
それからすぐにプッチーニが現れた。

「ねぇロボ聞いてる?」
「ん〜聞いてるよぉ!最期の願いゴトを叶えくれるなんていい人じゃん。ニコだったら何にするぅ〜?」
「ん〜?…って、も〜!!でも殺人でもだょ?」
「でも何もおきてないし
別に頼まれてもないんでしょ?いいじゃ〜ん」
最近ロボがおかしい。
肩にヘンテコなオウムをのせてたり
冷蔵庫はソバだらけで微妙に太ってきてるし

「何か最近ロボ変だょ?」
「オタクだけケド変人ではな〜いっ!」いきなり立ち上がって片手をつきだす。
「やっぱ何か変だ!」
何でそんなにテンションが高いわけ?
「何隠してんのょ!」
「ニコ怖い〜鬼ババみたい〜」「誰かババアな訳あったまきた〜」
ヒェ〜とか情けない声出してロボが小さくなる

「ねぇ何このケータイ」
ロボの後ろに知らないケータイがあって
気付いたら玄関に知らない女の人がいて
私には向けられる事のナイ顔をしたロボその人を見つめてて


私の知らない世界がたくさんあって
私の世界にロボはちゃんといて、いるのに…
ロボの世界に私っているのかな?

たぶん時間にしたら一瞬のコトだった
でもそれは私の短い人生の中でとても長いコトのようで

胸が苦しくて
急いで部屋を飛びだした

「オバサンぢゃん!」
(何で私が鬼ババの訳?ロボのバカッッ)
ズキって胸が痛む
ロボのコトを考えると辛くて
何で痛いのか
私の心の声が聞こえればいいのにと思った。

つづく
何回も文字数オーバ-でやられました。
8・9話がこぅなって終わればよかったなぁと思って書いてます。

6 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/20(木) 21:29:08 ID:LOIVnrDK]
ロボの部屋を飛びだしてから、何だかロボには近ずかくなった。

もうこれ以上知らないロボを見たくなかったんだと思う。

何もしなくても毎日は過ぎてて


そんな時ひぃじいちゃんがなくなった
ひぃじいちゃんは玉枝に会いたいとプッチーニにお願いしていたケド。
天国に行ってばぁちゃんに怒られたりしないだろうか?
ばぁちゃんにはどうせ今から会えるからなのか

式の最中そんな事や、普通知ってる人の死と言うもの突き付けられたら
横にいるカズミちゃんみたいに泣くのが
たぶんロボの好きなタイプなんだろうなと不謹慎だけど考えていた。

そんな時プッチーニの話を聞いてしまって
ロボの部屋に来たあの人がそのイチミだってことも

誰かの願いは…
地蔵堂の社長と死にたいと書いてあった…

式の帰り「私行かなきゃ行けないトコがあるから」
走ったほうがロボの家に近い
「ロボがもしかしたら利用されてて…。ロボまで…そんなの絶対に嫌だッッ!」
-避けていたロボの部屋に着く-
鼻歌が聞こえる。急いでドアを開ける
「ロボッ!…」言葉を失う
こんな時に旅行バッグに荷物をつめてて

「何だぁニコか」…チラッとみたロボは私の知ってるロボの顔ぢゃなくて

「何で?」私は自分が今何言ってるのかもわからないぐらいロボを責めた


私がいつも見れるのは誰かを思ってるロボの背中だけだ

つづく


7 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/20(木) 22:08:41 ID:LOIVnrDK]
プッチーニについてあの女の人について
本当の事を教えてるのに知ろうともしないロボ
(私も一緒か…)私はロボに言いながら自分にも言ってて
何を話してたか覚えてない。
ロボは「苦しいっ」て言った。
「じゃあ!『だってしょうがないぢゃん好きなんだから…フィクションはもぅいいんだ』


苦しい…私だって


MAXロボが寂しくロボを見つめてて
「フィクションか〜!
これっ貰ってていい?」頷くロボ

私が買ってあげたMAXロボを結局何より大事にしてるのが嬉しかった
デモそれも全部…ロボにはもう必要なくて

「ねぇロボ…ロボの信じてるものって何かな?
私…地蔵堂の社長に死んでほしくない。
プッチーニは悪者だょ。
だから…これからは敵だね。ぢゃあね」

バイバイ…ロボ

結局ロボは何も答えなかった。



苦しい…。苦しいょ。
これが好きになるって事?MAXぅ〜




ロボの声を早く忘れたい
もぅ聞こえなくなればいいのに
じゃなきゃ…また探しちゃうよ


つづく

8 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/20(木) 22:54:10 ID:LOIVnrDK]
ロボが私の世界からいなくなった。

悲しむ事は出来るケド私にはそれを見せれたのは
ロボの前だけだった。

私はもうそんな場所を失ってしまった…
今は地蔵堂の社長の事だけ考えよう。
「助けなくちゃ」

地蔵堂に向かう途中よっちゃんに会った
「お〜ニコ〜」今知っているかぎりの情報ををよっちゃんに話す。

「さすがニコッ!じゃあ作戦練りますか〜」「うんッ!」
地蔵堂へ2人で歩く
「なぁニコ何かあったか?」
よっちゃんが急にタバコに火を着けながら言う
「何で?」素直にありましたとは言えない
「ん?まぁ大人だからな?なんとなくなっ」笑って歩きだす。
「何それ。また子供扱いして〜」

地蔵堂について社長と話をして、私の頭はごちゃごちゃになった。
あの鶴に名前を書いたのは地蔵堂の社長本人で…
よっちゃんの必死の説得にも社長は約束だからって言った
地蔵堂の帰り道

「MAXぅ私もう…
二度と約束なんてしないね。学校でも…家でも…」


地蔵堂ではロボの事は何も話さなかった。
きっとプッチーニを調べればロボの事もすぐに分かってしまうだろう。

案の定、後日あったよっちゃんはスパイとは思えないホドたどたどしくて
私に気を使っていた。

「よっちゃん。お参りして行こう!」
「えっ?何かそうゆーのに頼るのって『いいから。』
よっちゃんを引っ張って境内につれて行く

神様なんているのか分からない
でもみんな神様って思った事はあって
それとロボがヒーローを信じてるのって何が違うんだろうか?

私はまたロボを忘れられずにいた

つづく

9 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/21(金) 00:04:36 ID:oC/bPIut]
お祈りをして目をあけるとよっちゃんはまだ何かを祈ってて…

(よっちゃんもまだまだ子供だなぁ〜)

「よしっ。仕事行くわ
社長が嫌だって言ってても。はいそーですか?で終われっかっての。なぁ」
「うん。守りたい…ね」
いつものニコなら私が絶対守るって言うのに…
あの変態オタク…っ

-仕事帰りのロボを待ち伏せるよっちゃん-

細い路地からいきなり出てきてロボをはがい締めにする。
「よぉ変態。」「痛ててっ。ちょっと〜ビックリするでしょ〜。よっちゃ〜ん」
「気安く呼ぶなよ」
「何で友達だろ〜」
「お前が一緒に住んでる女。地蔵堂の社長やるきらし〜な」「そんな訳ないぢゃん!あれは」
「あれは?お前ニコの言う事信じてやれないのか?
まぁこんなに色ボケしてりゃ〜な」
変態がニコって言葉を聞いて固まる
「ニコ何か変わったよ。」
「何…が??」
「自分で確かめれば?まぁニコはもうこんなお前には会いたくないか。」
「・・・」
「何かお前と住んでる女に動きがあったら、連絡しろ。もし社長に…何か。
何かあったら俺間違いなくその女逹。殺るぞ。」
「ひぇ〜。そんな〜」
よっちゃんは最後に変態を思い切り殴った


ロボが家に着く。
「お帰り。どうしたのその顔」優しくロボの腫れた頬手当てする
「ち…痴漢に間違われてさっ!困っちゃうよねぇ!」 (こんなに優しいヒトが人を殺せる?違う。看護師なんだし。そうだ。)
「絶対な〜い!」
昭子さんが驚く。ケータイが鳴る。「仕事の子。ちょっとごめんね」席を外す。

「ゴメンね。明日のお休み仕事入ったの。担当の患者サン体調がよくなくて。」
「え〜明日かぁ。せっかくの週末だけど…いい!」
「ごめんね」

つづく

10 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/21(金) 00:54:03 ID:oC/bPIut]
朝起きると昭子さんはいなくて。
「久々にロボット逹に会いに行くか〜」
本当はどこかで疑っている自分を許せなくて。
前の家の前で部屋を見つめる。「はぁ〜。」
「ロボ…?」階段からニコが降りて来て「ニコ〜!…」
気まずい…
「MAXロボ返しにきたの。」ニコの指さす方には箱があって「ありがと」
ニコはもう歩き出してて…どんどん小さくなってくニコをただ見守る事しかできなくて。
結局部屋には入れなくてMAXロボの入った箱だけ持って新しい家に帰る
昭子さんはまだ帰ってきていない

『ロボの信じてるものって何?』
ニコに聞かれ言葉を思い出していた。
箱からMAXロボを取りだす
「MAXぅ。愛と勇気と正義があっても誰1人幸せにできてないじゃないか〜。」

「遅いな〜」昭子さんの帰りが遅い。やっぱり…
患者の容態がって言ってたし。…待てよ。
プッチーニって死が近い人の願いを叶えるなら
「今日だ!」卓上カレンダーを見る。
今日の日付の印は俺と過ごす休みだからだと思ってた。でも同じ印が前の月にも会って
よっちゃんに急いで電話をかける
状況を説明する『了解!!』よっちゃんのその言葉を聞いて安心する。
良かったぁ
「やっぱり繋がってたんだ?真木名マキと」
後ろから声がして振り返ると昭子さんがいて。
「私。本当に殺すからね。」そう言って部屋を出ていく

「こんなの嫌だ〜!だだんだんだんMAX!!復活☆」
地蔵堂へ急ぐ。
車に乗り込む「アレ??鍵がな〜い!くそ〜MAXダッシュだ〜」


誰も死なせない。


誰も傷つけないで生きて行くなんて無理な事で、
自分の何気なく言った一言に傷つく人がいる。
でも…それでもこの世界で生きなきゃいけなくて
生きててほしいから


待ってろ〜!正義は勝つんだ〜!

つづく



11 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/21(金) 01:46:38 ID:oC/bPIut]
=地蔵堂=
『社長隠れましょう?』ニコとよっちゃんの話に首を縦に振ってはくれない。

「真木名マキさんですね?」

プッチーニが銃やナイフや注射器を持っていて
「どれでも私はいいわ。好きに殺して頂戴」
「一瞬で楽に死ねるようにしますから」
社長の前にニコが立つ。
「何で?何で大人が簡単に死ぬとか殺すとか言う言葉使うの…?ねぇ何で」

「私が死んだって何も変わらないわ。みんなすぐに忘れていつもの生活に戻るの。私の代わりなんてよの中にたくさんいるわ」
ロボを私の前から奪った人が言う。
「変わるよ。みんないつもの生活をして考えないようにするだけだよ。
あなたがいなくなったら。ロボは…」
社長とよっちゃんが私の口から久々に聞くロボの名前に驚く。
「ロボは…あなたを選んで…あなたが犯罪なんか犯したら、死んだら。きっとそれはもう私の知ってるロボぢゃなくて
…だから死なないで…。」
「あなた本当にあの手下が大事なのね」
地蔵堂の社長がニコの震える肩を抱きしめる
「もしも私があの時…あの角を曲がらなかったら、よっちゃんに逢わなくて
もしもMAXロボと出逢わなかったらあたしはロボをロボと呼ぶこともなくて
もしもあのまま見なかったことにしてたら
地蔵堂に社長に出逢ってなくて…
でも今私にはどれもかけがえのないもので
私1人で生きてるんじゃないもんね。」社長を見つめる
「そうね。どうしようもなくこの世界に関わっているのよね」

「はい。あっ!どうしようもない奴がきそうです」
『え??』
「待った〜!この対決延期ねっ!てかな〜し」


つづく

12 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/21(金) 02:41:35 ID:oC/bPIut]
ロボの話をさえぎるように銃声が聞こえてその玉は社長をかばったニコに。
ニコだけが気付いていた引き金に手をかける小さな音。ロボは立ち尽くした。
『ニコ!』よっちゃんがかけよって抱きしめる。
プッチーニは「私…あの…!」
「社長の大切な人病院で意識を取り戻して…だから…ニコッ!『近寄んなっ!』

ロボを払い除ける。「社長。早く!目覚ましたんすよ!今しかないっすよ。
ニコは俺が病院に運びます。あんた逹の患者だろ?早くいけっ!」
「あの…」「うるせぇ!」よっちゃんの声にプッチーニと社長が病院へ走りだす。

「ニコ〜!ごめんなっ!俺守ってあげれなくて…。
楽しいとこいっぱい連れてってやるからさぁ。MAXロボ〜!ヒーロ-でしょ?ニコを助けてよ〜。」ニコに力いっぱい抱きつく。
「ゔっ…ん」「ニコ?」
「ぅ゙〜重ッ!ロボやめてょ!」血まみれのニコにつきとばされる。
「え〜ゾンビなの?よっちゃん恐いぃ!!」
「お前は馬鹿か?ゾンビな訳ないだろ?演技派なニコとナナシさんだよっ!!」
ニコとよっちゃんがハイタッチをする
「ばれなくて良かったぁ!さすがよっちゃん!」
ぇぇえ?
「まぁな?あのオバサん?私撃ってませんよって顔でさ!(笑)そりゃ血糊だし?」 『ええ〜!!!』
ロボが雄叫びをあげる
「うっるさいな〜。」
「えっコレ血糊なの?どうりでニコ胸おっきくなったなぁって最初思ったんだよねぇ。」

「…俺社長のトコ行くわ。じゃあな…変態」

「…ロボなんて最低!」
急に立ち上がったニコが倒れる。
「ニコッ!オーイ!病院連れてかなきゃ!」
やっぱりロボはバカで血糊だらけで私を連れて行ったから先生はロボを怪しんでた。と後でよっちゃんから聞いた。

つづく

13 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/21(金) 03:38:19 ID:oC/bPIut]
ニコは最近寝不足倒れたらしい。
点滴に繋がれたニコをみて心が痛む…いつのまにか大人になった寝顔。
「俺…」
大きなため息がでた。
MAXロボを枕元におく
「MAX。俺ニコの着替え取ってくるからね?ニコの事ちゃんと見てろよ〜!」
「なぁバカオタク?」「も〜許して。もぅ普通に呼んでロボって?」「お前の普通はロボか!?まぁ俺が見てるから取ってこいよ」
ニヤニヤのロボ「よっちゃんてさ〜ニコの事!『余計な事は言わないでさっさと行くっ!はぃ10分以内だぞ〜ッ!
はいい〜ち!」
「え〜!」
目覚めたら私は見覚えのない天井が見えて…匂いで病院なんだって気付いた。
ぼやけた視界で見渡すと私の隣でロホが椅子に座りながらベットに寄りかかって寝ていた。ガラ
扉があく音が小さくした
そこにはプッチーニの昭子さんがいて
私はロボの隠した。
「生きててよかったわ。
真木名さんの大切な人今朝亡くなったわ…。
心配しないで。もうあんなバカな事辞めたから。
よしっ!もう血圧も安定してるから。帰る準備しなさい。」
「ロボを連れて帰ってもいいですか?」
「(笑)そんな事聞かなくても、もう私のトコには帰ってこないわ。絶対ね」
「何で言い切れるんですか?ロボは『あなたに会って解ったの。荷物は宅配であの部屋に送るって言っておいて。じゃあね』
扉がしまる


「ロボいいの?起きてるんでしょ?」

「うん…これでいいんだ〜。ニコ…?ごめんな?
一番辛い時にそばに入れなくて。」
「…別に。よっちゃんとかMAXロボがいてくれたもん!…」「そっか…!ニコの生活は変わんなかったかぁ。
よかった…ってニコ泣いてんの?何?俺分かんないよ〜こういう状況〜
俺の胸でなきなッ!!」
両手を広げる。

つづく


14 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/21(金) 04:51:04 ID:oC/bPIut]
今までのニコなら
「うわっ!気持ち悪っ!とか何年前のドラマだよっ!親父くさっ…」とか言うのに
今日のニコはすんなり俺の胸で小さく震えた。
「ロボッ!私。ずっと怖かったょ?」
ニコの背中をポンポンしてあげることしかできなくて。
黙って聞く。
「変わったょ。私
変わったちゃったと思ってたからさ…。
もうロボは私の前にはいなくて、置いてかれたんだって思ってた。
ロボ〜…ロボがいたから私…何にでも強くいれたんだょ。」
内心…俺といたら、
ニコが影響されてひねくれた大人にならないか心配してた…。ニコには今のままでいてほしかった。

「ごめんな〜。俺…絶対!ニコのコトもう悲しませたりしないから。約束する」
ロボは小指をつきだす。

私は今回のことで大人を見て、絶対もう約束なんてするか!と思っていた。
それであ〜だこ〜だなるのは面倒だし。
何より裏切られて、傷つきたくなかった。
そう思っていたのに…
ロボの小指に自分の小指を重ねていた。
「ロボは大人ってゆ〜かオタクだしいっか…」
ロボは昔と変わらない笑顔で私を見ている
指切りげんまん♪を替え歌にして腕を思いっきり揺らす

ロボが帰ってきた。
ロボの胸には、ロボには誰も持っていなぃロボだけのパワーがあって。
そのパワーを私のものにできるうちは沢山
ロボといようと思った。


=廊下=

「よっちゃん。覗きなんて止めて帰るわよ。」
「いいんですか?もう…」
「許すって。私のこと…
生きてって言われたの。
さあ行くわょ。今日も仕事してもいい?私まだまだスパイでいたいの。よっちゃん!」
「はい社長〜!プロッ〜」



つづく

15 名前:名無しさん@ピンキー mailto:もしも… [2007/12/21(金) 05:39:20 ID:oC/bPIut]
「さぁロホ゛!帰るかっ」
「あ〜ニコそのまま外に出るのは」「何で?」自分の来ている服に恥ずかしくなる。「なんでロンパースな訳?ださっ!」「だってそれだとニコに着させやすかった……」

「ロボ!!あんた脱がせたわけ〜?スケベ〜」
「え〜。脱がせたって。いやらしい言い方だ〜!着替えさせてあげたのに〜」
「でも見たんだ?」
「え?ニコ重ね着ぢゃん。だからそんな見てないょ〜。下の服大丈夫だったし。」
「そ・ん・な?…」
ホラーより怖い顔をしたニコが睨んでくる
「ロホ゛…」
「ヒェ〜。やっぱり鬼ババだ〜…」
「鬼…?が何って」
(ニコの地獄耳…)
「鬼…ギリが食べたいんだなっ?」ロボのモノマネだ。

誰?」
「山下清…。僕はオニギリが好きなんだなっ。」
「はいはぃ。もう諦めた〜。勝手にして。」
「MAXロボはもっと好きなんだなっ」まだ続けてるロボにちょっと引きつつ…
「ちょっとロボそれ脱いで」 「え〜!すけべ〜ぇ!」
「バっカじゃない?どっちかと言えばロボの来てる服のほうがマシじゃん。」
「ん〜!断わる!!」
「何それっ!男としてど〜なの?ケチ〜!」
朝から騒ぎすぎて病院から追い出させられる

「私二度とこの病院にこれないよ〜。」
「いいじゃん!病気もしなくて健康って事だろ?」

「ロボは前向きだね〜!」
「全身あるのみ!ダーッシユ!!」ロボが走りだす。
「ちょっと!!」
こんなロンパース姿の私を置いてくな!

こうも思った。ロボはいつも違う誰かを目で追っていて、
私はいつもそのロボの後ろ姿ばかりをみてて、私を何で見てくれないのだろうと思っていた。
でも、私はこの何にでも前向きなロボが好きなんだと思った。
ロボは私の道を照らしてくれている。私はあの背中を見てればもう迷わない。
私の中のヒーローは世界で1人だけだ。

終わり

16 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 12:38:05 ID:bvaiv+QL]
ニコと変態はどうなりました?

17 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/21(金) 15:05:49 ID:oC/bPIut]
どうしましょうか?
先を迷って"おわり"
にしてしまいました。
純愛系でか
ガバッといくのとドチラが
いいっすか?意見求ム!

18 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 16:42:02 ID:cbuF7zp4]
>>17 おつかれさまでした。
ストーリは自分の思ったように好きに書くのがいいと思いますよ。

>意見求ム!
あなたの求める意見とは違うと思うけど、SS投下の基本を少し。
・書きながら?の一レスずつの投下
・SSの先の展開を住民にお伺いをたてる

この二点は、是非、改められた方がいいかと。
このスレやドラマの本スレで出てきた話題をヒントにSSを書くのは、
大歓迎です。


19 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/21(金) 19:00:17 ID:9uKPXYoJ]
文章的には慣れてない感じがあるけど、勢いと情熱があって面白かったです。

20 名前:クリスマス 1/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:44:15 ID:udrpkvbw]
原作第一話「セクシーボイスは14歳」がクリスマスの話なので、
高校生のニコでドラマ版の話にしてみました。かなり変えてしまっています…
スパイものでエロは無しです。
犯人の電話のやりとりはそのまま原作のセリフを引用させて貰いました。
あと、Wikiで見た松ケンの趣味を勝手にロボの趣味に使ってしまいました。
長いので連投規制に引っかかって時間かかるかもしれません、
途中で止まったら、他の方もネタあればどうか気にせず書き込みして下さい。

***************************

 クリスマスって、みんな浮かれてるけど、どんな意味があるんだろう。
私の家では一応クリスマスツリーやリースを飾ったりするけど、
別にイエス・キリストの誕生日だとか、聖なる日だなんて考えてない。
そもそも、私の家族はクリスチャンではないのだ。
(中学の時に亡くなったひいじいちゃんはクリスチャンだったけれど。)
神社やお寺に行けばお賽銭を投げて手を合わせるし、流行りのあやしげなお守りを買うこともある。
節操無いなと思うけど、友達の家も大概こんな感じらしい。
大人は本当は寂しがり屋だから、みなお祭り騒ぎがしたいのだろう。
お祭り騒ぎをする理由は一つでも多い方がいいと、昔の誰かが考えたのだ。

 ロボは理由なんか無くてもお祭り騒ぎをやっちゃう大人だけれど
彼にとってクリスマスは子供の頃から神聖な意味があったらしい。
それは、サンタのおじさんが年に一度、自分に大好きなロボットをくれる日だから。
この日のために一年間、どのロボットを頼むのか子供なりに悩み続け、選びに選んで
サンタクロースを待つ、ドキドキが止まらない日。
だけどサンタさんはうっかり者で、頼んだのと違うロボットを持ってくることも多かったそうだ。
 ロボットに一喜一憂する自分を見る両親の顔と、なぜか母親がやたらロボットの名前に詳しいことが
結びついたのは、中学に入ってからだとロボは言った。



21 名前:クリスマス 2/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:45:15 ID:udrpkvbw]
「クリスマスは、うちで一緒にパーティーしよ〜。ねー、ねーってばーニコー」
 ロボは甘ったれた口調でせがむ。
「もう一人寂しいクリスマスはヤダ。
 俺、ニコとばかり遊んでるからずっと独り身なんじゃん!責任取ってよ」
「はぁ? 別にロボがもてないのは私のせいじゃないし」
「ニコが来てくれなかったら病気になる!」
「何それ?」
「寂しくて心が寒ーくなって熱が出て、鼻水も出て咳も出て絶対病気になる!!
 どうするんだよぉ、全部ニコのせいだぞ」
「…はいはい、わかりました。行きますよ」
「本当?やった!実はもう三角帽子とかシャンパンとか買ってあってさ。
 シャンパンはちゃんとアルコール抜きのにしといたからねー。
 あとはさー 飾り付け用の折り紙でしょ、風船でしょ…
 デパートでチキンとサラダも予約したし、奮発したんだよ。
 一緒にアニソンカラオケしような!あ〜楽しみだなぁ!」
 …どこの子供のクリスマス会だよ。20代サラリーマンの発想じゃないだろう。
でも私は雑誌に出てるようなオシャレなクリスマスを思いつかないロボを、いいなと思う。

そんなわけで、今日はクリスマスイブ。高校は終業式で午前中に終わり、
(半ば強制的にせがまれて)私はロボんちにケーキを焼いて持っていくことになった。
一海ちゃんは彼氏とデート。お父さんとお母さんは日帰りの温泉旅行に出かけ、
好都合にも誰もいないキッチンで、なかなか泡立たないメレンゲと格闘していた。
オーブンでちょっとやけどしたりしつつも、なんとか無事に焼き上がって、
デコレーションが終わった時には、初めてにしてはなかなかじゃん、
私もしかしてケーキ作りのセンスあるかも?と満足した。
すると、どこからともなく矢が飛んできて、苦労して出来上がったばかりのケーキの中心に
グシャっと音を立てて刺さったのだ。

「うそーーーーーっ!! ありえない…」
 それが今回の事件の発端だった。


22 名前:クリスマス 3/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:46:09 ID:udrpkvbw]
「ちょっとこれ、どういうことですか!
 まともな方法で連絡してって、何度言えばわかるんですか!」
 私は怒りで震えながらクリームまみれの矢を持って地蔵堂に怒鳴りこんだ。
「あら〜ケーキに刺さっちゃったのー。ごめんなさいね。でも、あなたに刺さらなくて良かったじゃない」
「あ た り ま え で す!何考えてるんですか!」
「こっちも緊急事態だったのよ。小学生の男の子が誘拐されてね、脅迫電話がかかってきたから
 なんとかして欲しいって依頼が来たの」
「誘拐?」
 ケーキを台無しにされた怒りはまだ納まらなかったけど、穏やかでない話に私は言葉を飲み込んだ。
「よっちゃん、おねがい」
「はい」
よっちゃんは録音機材の再生ボタンを押す。

ーーー「もしもし?もしもし?」「お父さん?僕」「わたる、どこにいるんだ?」「わかんない」
  「息子の無事はわかったかな」「金か?いくらだ?」「金じゃないと言わなかったか」
  「どうして、」「要求を飲むか、わたるの葬式かだ。交渉はしない」「待て、なぜそんな」 
ブツッ ツーツーツー
ーーー「もしもし」「これが最後だ」「待ってくれ、わたるは無事か」「今はな」
 「要求に従う、しかし理由を教えてくれないか、もしも」「交渉はしないと言っただろう」
 「待て、要求通りにしたらどうやってわたるを」「交渉はしないのだ」
 「もしもし、待ってくれ、もしもしっ」
ブツッ ツーツーーーーーーーーーーー

「これって、警察に届けた方がいいんじゃないですか」
「警察に届けられない話だからうちに来たのよ」
「でも、そんなこと言ってる場合じゃ」
「目的はお金じゃないし、出来れば内密にすませたいんでしょう。
 平たく言うと依頼人、子供の父親はヤクザがらみの人間なのね。
 この録音の声を聞いて、分かることはない?」
 私はもう一度再生した声に耳を澄ませた。自分の記憶に残っているあらゆる声を検討して、
似た声、似た喋り方を思い出し、比較する。
「なんか…台本っぽいっていうか、わざとらしいって言うか、要求する自分に酔ってる感じがする。
 決めセリフを言いたくて、そのために話をしてるような。でも下手くそ」
「そうね。あらかじめセリフを用意しているようね」
「たぶん、年齢はまだ若いと思う。20代で、体型はちょっと小太りで…」
「なるほど」
「で?この犯人の要求は何なんですか?」
「原宿の俵参道のクリスマスイルミネーション。今夜6時に点灯する予定のそれを消せ、と」

23 名前:クリスマス 4/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:47:14 ID:udrpkvbw]
「はぁ? それだけ? そんなので子供を誘拐したんだ?」
「父親は俵参道商店会を仕切ってる顔役なの。とりあえず今のところは点灯中止の予定よ。
 遠くから来る見物客もいるからかなりの損害だけどね。犯人の動機は何かしら?」
「クリスマスが嫌いとか?過去にイヤな思い出があったとか? よくわからないな。
 でも……。この犯人、本当に要求どおりになったらどうするか考えてなさそうです。
 世間を騒がせてみたいだけで、手の引き方まで考えていない気がします。
 本当にイルミネーションを中止したとしても、子供の解放の方法とか、
 自分でもわかってないんじゃないかな」
「そうね。今は『誘拐犯』を演じるのに夢中だけど、舞台に幕が降りたらどうするつもりかしら」
 そしたら。この子供はどうなる? 
クリスマスイブまで変な事件に巻き込まれたくはない、ロボとの約束もある。でも。
私は観光客目当てのイルミネーションなんか正直どうでも良かったけれど
みんなが浮かれてるクリスマスにどこかの子供が人質になっていて、
暗くて怖くて、お腹をすかしてるかもしれなくて… そんなのはイヤだ。
もう一度録音テープを再生した。その時、ある「音」が耳に入った。
「あの。私、手がかり見つけたかもしれない」
「この仕事、頼んでもいいのね?ニコ」
「イルミネーションの点灯中止は発表しないで貰えますか。
 私が連絡するまで、うやむやにして引き延ばして下さい。
 それから、もし夜10時までに連絡出来なかったら、警察に行って下さい。
 よっちゃんを借りていきます。」
よっちゃんはそうこなくっちゃ、と言いたげにニヤっと笑った。

24 名前:クリスマス 5/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:49:17 ID:udrpkvbw]
『もしもしロボ?』
「ああ、ニコ? 何時ごろ来れる? まだ部屋の飾り付けが終わらないんだけど、
 料理はもう準備したから。あのさーニコはサンタ帽子トナカイ帽子、どっちがいい?」
『ごめん、パーティーは中止!ロボ出動だよ!今すぐおしり喫茶の前に車で来て、
 早く来て、大至急来て、待ってるから!』
「ええっ 中止って。なんでぇ〜? 俺すっごく楽しみにしてたのに〜わけわかんない〜」
『だからごめんってば。いいから来てよ!事件なの、ロボの手が必要なの』
「なにそれー。だってせっかく炊き込みごはんとかも作ったのに、
 美味しいんだよ俺の炊き込みごはん、昨日の夜からしいたけとか鶏肉とか下ごしらえしてさ、」
『お願い、誘拐されて可哀想なクリスマスを過ごしてる子がいるの!
 救えるのは宇宙で私だけなの!』
 ニコは一方的に言うと電話を切った。
「えー事件って。そんなぁ。だってずっとニコとクリスマスするの楽しみにしてたのに…」
 ロボはがっかりしながら、ニコへのプレゼントを手に取った。
(俺にとってクリスマスは子供の頃から奇跡の日だったから。
 きっと照れくさくて言えなかった言葉も素直に伝えられるって思った…)
一週間かけて作った針金細工の花の形のブローチ。中心には小さな翡翠をはめてある。
本当は五月の誕生石のエメラルドにしたかったけど、それは予算オーバーで無理で、
だけど作っている間中、幸せな気持ちでニヤニヤしてた。
「なんなんだよぉ、人の気も知らないで、あのじゃじゃ馬は!
 くそー、くそー、……宇宙とか言われるとときめくじゃないか!」
 ロボは名残り惜しそうにテーブルに並べた料理や、飾り立てた部屋を眺め、
意を決してブローチを肩掛け鞄に突っ込むと「ロボ、出動しまーす!」と叫びながら部屋から飛び出した。

 ロボの車で原宿方面に移動しつつ、私は気がついたことを二人に話した。
「1回目の脅迫電話は静かだけど、2回目は雑音が聞こえるでしょ。
 屋外で、近くにいる人が携帯電話で喋ってる声だと思う」
「なんか声は聞こえるけど内容まではわからないな」
「私わかる。『今俵参道のモリハナコビルの前なんだけど』って言ってる。
 犯人は、イルミネーション中止でがっかりする人達を見物に来てるんだよ」
「うげ、屈折してんなー、何が楽しいんだか」
「でもさ俺、なんとなく理解できる気がするなぁ。
 その人、街がキラキラしてみんな幸せそうなのに、自分は孤独で心が細ーくなって
 ポキッと折れて曲がっちゃったんだよ」
「誘拐犯に共感してんじゃねーよ」
「この人、まだモリハナコビル周辺をうろうろしてると思うんだ。
 私が耳で探すから、ロボとよっちゃんは取り押さえるの手伝って。
 ここまで場所を特定できれば、なんとかなると思う」
 何度か俵参道を車で往復し、特にモリハナコビル周辺をゆっくりぐるぐる廻った。
「ニコ、どう?」
「うーん、まだわかん…ない…」
 あまり俵参道なんて来たことなかったし、年末はこんなに人が多いなんて知らなかった。
ちょっと甘く考えていたかも。この人混みで本当に見つけられるのか。
でも、犯人の声しか手がかりが無い今、救えるのは宇宙で私だけ。
頑張れ林二湖、耳をすませろ、集中しろ。 頭の奥がズキズキしてくる。
自分の中に音が光と一緒に流れ込んでくるイメージを思い描き、
レーダーをひろげるようにその範囲を拡大させた。

25 名前:クリスマス 6/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:50:36 ID:udrpkvbw]
(……やっぱさー…昨日ね…例の店で…そういうわけ…)
あらゆる声が流れ込んで来る。
「ニコ?」
「黙って」
(…あのさぁ…)
一筋の音が頭の中で光った。
「…見つけた! 車停めて!」
 私は2CVのドアから転がり出るように飛び出すと、声の方角目指して走った。
すかさずよっちゃんが走って追ってくる。
ロボは、「こぉんなとこに停めたら駐車違反で減点だよーーー!」と
情けない声で文句を言いながらも、すぐに追いついてきた。
俵参道では、「イルミネーション点灯は予定より遅れます」というスピーカー放送が流れはじめた。
一斉に不満げな声を漏らす見物客のざわめきに掻き消され、私はまた声の方向を見失った。
ええい、いちかばちかだ。
「キャー、ごめんなさーーーい!」と言いながら、人混みに押されたふりをして周りの人を押す。
「痛っ」「なんだよ」「気をつけろっ」「危ねー」「やだぁ」
 ドミノのように人が次々によろけて周りに声が広がる。
どこ、どこにいる? あの声。いた!
「あの、すいませんすいません」私のかわりにロボが頭を下げて回る。
「おいどっちだ」
「あっち!」
 今度は後ろ姿をしっかり確認した、髪を結わえてちょっと小太りな男。
人をかき分けて、追跡を再開する。
男はラフォール前の交差点で、信号が点滅しかけた横断歩道を小走りで渡っていく。
私は赤信号に変わった道を強引に突っ切ろうとして、車にぶつかりそうになった。
「危ねぇ!なーにやってんだよ!」よっちゃんに慌てて腕を掴まれる。
「だって、また見失っちゃうよ!」
「あれ、あのバカは?」
振り返るとロボは、10mくらい離れたところに立ち止まって、何かを拾い上げていた。
「これ、あの犯人が落としてったんだけど…」
 街頭で配っている広告入りティッシュらしい。
ロボはニヤっと笑った。
「犯人を誘い出す方法、わかったーっ!」

26 名前:クリスマス 7/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:51:59 ID:udrpkvbw]
「おいロボ、あいつ、本当にそこ(テレクラ)にいるのかよ?」
「絶対いる。クリスマスのイルミネーションを消して、みんなががっかりするのを
 見に来る奴なんて、女の子にモテない奴に決まってるって!
 でもこの犯人、今は誘拐犯で悪い男気取りの自分に酔ってて、自信があるわけ。
 そーゆー時はね、誰かに特別な自分を見て欲しい、話を聞いて欲しいとか思うもんなの!」
「ふーん。さすがに元祖モテない奴の言うことには説得力があるねぇ」
「二人とも声が大きいよ。聞こえちゃうじゃん」
 私は広告のテレクラに何度目かのリダイヤルをして相手が受話器を取るのを待った。
声は普段と違うセクシーボイスを作る。
「もしもし?」
『もしもし』
 キタ。あの声だ。ロボの言ったとおり、あいつが出たよ! 
私は二人に親指を立ててガッツポーズをしてから、振り返って会話を続けた。
「良かったぁ。あたしぃ、あなたみたいな声の人とお話したかったのぉ」
『え、そう?彼女、今どこにいるの?』
「今俵参道にいるんだけどぉ、イルミネーション見に来たのにまだ点灯しないしぃ、
 なんか寂しくて、つまらなくなってぇ」
『俺もすぐ近くにいるんだ、ちょっと会わない?』
「ええーっ?少し怖いなぁ。あなた悪い人?」
『俺は…、ちょっと悪いかもね?』
「じゃあ、会おうかな〜。あたしぃ、悪い男が好きなのぉ」

私は犯人と原宿駅前で待ち合わせをする約束を取り付けた。
「人質がいるところまで案内させるから、後はお願いね」
「必ずや任務遂行しマックス」
「プロフェッショナルにまかせとけって」
 大丈夫かなあ。

「…あれ? なんか、若くない?」
 待ち合わせで会った犯人は予想通り20代前半のおとなしそうな男だった。
外見だけならそんなに見苦しいわけじゃないのに、変に卑屈な雰囲気があって、
同じもてない系でもロボとは違う。
ロボは傷ついても失敗しても自分を見捨てたりしないけど、こいつは周りのせいにして恨むタイプだと思った。
「カズミちゃん、本当にハタチ?15歳くらいに見えるんだけど…」
 失礼な。17だっつの。
「えーあたしぃ、ハタチの女子大生だよ?もっと若い方が良かった?」
「いやそういうわけじゃ…でもあんま若い子だといろいろ、さ」
 なーにがいろいろだよ。下心見え見えすぎる。
ってか、子供誘拐して、すでに自分は犯罪者だっていう自覚無いのかこいつは。

27 名前:クリスマス 8/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:53:01 ID:udrpkvbw]
「カズミ、たくさん歩いて疲れちゃったぁ。どこか静かなところでゆっくりしたいなー」
「じゃ、ほ、ホテル行く?」
 いきなりそれか…
「ホテルよりもぉ、あなたのおうちに行きたい。近いんでしょぉ?人の家って面白いからぁ」
「え、うちは駄目!あの、弟、弟が遊びに来ててさ」
 弟…やっぱ人質はこいつの家にいるんだ。
「わぁ、あたしぃ〜子供大好きなの〜!ぜひ弟さんに会いたいなー」
「駄目だって、ほら、うるさいし」
 私は上目使いに犯人を睨んだ。
「おうちに連れてってくれなかったら、もう帰っちゃうよぉ?」
「…しょうがないなー」
 犯人は私の腕をぐっと掴んだ。結構力が強い。腕力勝負になったらかなわないな。
そっと後ろを振り返る。ロボとよっちゃんの姿は見えない。
ちょっと心細くなる。ちゃんと付いてきてくれてるのかな…

犯人の家は一階がコンビニになった、小さなマンションの一室だった。
「お邪魔しまーす」
部屋には、ガムテープを口に貼られた男の子が、体を縛られて怯えて座り込んでいる。
…この子が、わたる君…
「えーっ、なんで弟さん縛ってるのー?えー!なんでぇ?」
「こいつ、いたずらしたからお仕置きで」
「可哀想。ほどいてあげて」
「いや、邪魔だから。おいお前、ちょっとここ入ってろ」
 犯人は男の子をクロゼットに閉じこめるなり、いきなり私を押し倒そうとした。
「ちょちょちょ、ちょっと待って!」
「部屋にまで来て何言ってんの」
「だってほらあの、少しおしゃべりとかしようよ、そんな焦らないでさ」
「男と女がいたら喋るより先にやることあるじゃん、勿体ぶんなよ」
 うわ何こいつ、ムカツク。女の子を何だと思ってるの。
「じゃあの、お酒、お酒とか飲もうよ、気分出るし、クリスマスイブだし」
「酒ー? ビールならあるけど?」
「ビールは嫌い、カクテルがいいな!買ってきて!お願い!
 えっとぉ、アタシぃ、お酒飲んだ時の方がサービスいいんだからぁ。ほら早く!」

28 名前:クリスマス 9/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:54:20 ID:udrpkvbw]
犯人を追い出すように外にやると、急いでクロゼットに駆け寄ってわたる君を出す。
縛っている縄をほどこうとするけど、緊張で手に汗をかいて、なかなか上手くいかない。
「絶対助けるから、もう少しがんばって!」
 わたる君は怯えながらも頷いた。
 部屋の外で音が聞こえる。うっわ早すぎ!もう戻ってきたよ!
そういえばすぐ下がコンビニだ。
私は咄嗟に子供を抱きかかえると、トイレに逃げ込んで鍵をかけた。
急いで携帯電話をかける。
「ロボ、すぐに来て!もう駄目、バレちゃう」
犯人は開いたクロゼットにわたる君がいないのに気づくと、私たちが隠れたトイレに近づいてきた。
「おい!おまえ、なにやってんの?」
 ドアをすごい勢いでガチャガチャやっている。鍵が開かないとわかると、ドンドン叩く。
「ロボ!」
『ニコ!!場所がわかんないんだよ〜!近くにいると思うんだけど、途中で見失って〜!!』
「なにやってんのよ、役立たず!一階がコンビニのマンションで部屋は203!」
『一階がコンビニ、わかった!』
「お願い早く来て!」
「おまえナニモノ? 声違うし、俺のこと騙したワケ?」
 犯人はトイレのドアを壊すほど勢いよく叩き始めた。
「誰と話してんだよ、開けろよ!!」
「あんたね!何考えてるのか知らないけど、誘拐なんてつまんないことやめなさいよ!」
「なんだと、おまえ誰だよ。何しに来たんだよ!」
「私はこの子を助けに来たスパイだよ、なんか文句ある!?
 無意味な悪意を振りまいてたら、自分が騙されても何も言えないでしょ!」
「出てこい、てめえ!」
「出るわけないじゃん、バカ!」
犯人の怒声が大きくなる。
私はわたる君を抱きしめながら、軋むドアを必死におさえていた。

「あたたたたたーっ!!」ロボが奇声を発しながら玄関ドアを蹴破る音がする。
 叫び声とドタバタした物音が聞こえて、静かになった。


29 名前:クリスマス 10/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:55:07 ID:udrpkvbw]
「はぁー、もう命が縮んだよ…。見失うなんてひどいよー」
「ごめん〜、よっちゃんが気づかれないようもっと離れろって言うからさ〜」
「お前が無駄にでかくてうるさくて目立つせいだろが!」
「ったく…助かったからいいけどさ。
 もしもし、社長? 人質の安全を確保しました。イルミネーション点灯してOKです」

 犯人は男二人が自室になだれ込んでくるのを見て、窓から飛び降りて逃げたそうだ。
「すっげぇ小心者だったな。ま、これを頂いていけばいつでも落とし前は付けられますけどね」
 よっちゃんは犯人の部屋から見つけ出した身分証明書をヒラヒラと掲げて見せた。
荒れた雰囲気の部屋を見て、ロボは呟いた。
「なんかさ、ちょっとカワイソウかも。きっと孤独な奴なんだよ」
「そう?全然可哀想だと思わないな」
 私は正直に言った。
「遊びで誘拐なんかして、他人を暇つぶしの道具みたいに扱っちゃ駄目だよ…
 だからきっと自分自身だって大事に出来ないんだと思う」

わたる君は、緊張が解けたのかしゃくり上げて泣いている。
「もう大丈夫だよ、泣かないで」
「がんばったね、すぐお父さんとお母さんのとこに帰れるからね」
 私とロボが交互になだめようとしたけど、わたる君の涙は乾きそうになかった。
「無理ねぇよ。この子にとっちゃ最悪のクリスマスだろ」
 最悪のクリスマス、か。
この子が成長して子供時代のクリスマスを思い出す時、記憶に残るのは不安と恐怖で。
誰かに不当に傷つけられた記憶は、また別の誰かを傷つけて、連鎖していくのかもしれない。
そんなの……ヤダな。
「わたる君!おねーちゃん、サンタクロースに頼まれたんだ。わたる君を助けて、
 プレゼント渡してくれって」
「…ほんと?」
「本当だよ。おねーちゃんはサンタクロースの友達なの、今、証拠見せてあげる」
 私は、自分のポシェットからロボットのフィギュアを取り出す。本当はロボへの
クリスマスプレゼントに買ったんだけど。ロボごめん…。
「サンタクロースにね、わたる君は強くてヒーローみたいだったって伝えておくね。はい」
「あ、ダイターン3じゃん!いいなぁわたる、こいつの持ってる槍は
 ダイターンジャベリンって言うんだけどさー」
 ロボはたちまち食いついてロボット談義をはじめた。わたる君は泣くのを忘れて、一生懸命聞いている。
新しいガンダムはどうだこうだとか、あのロボットのここがいいとか、二人で話が盛り上がる頃には
わたる君はすっかり笑顔になっていた。

30 名前:クリスマス 11/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:56:25 ID:udrpkvbw]
「よっちゃんはイルミネーション点灯するの、見ていかないの?」
「俺はこの子を依頼人に送り届けて、さくっと地蔵堂に戻るわ。
 社長が一人でクリスマスイブを過ごしてんの可哀想だろ。じゃ、おつかれさん」
なんだかんだ言って、よっちゃんは本当に社長が大事なんだなと思った。

 光の帯が、木々の間に一斉に広がる。周りから歓声が漏れる。
「正直、イルミネーションなんてどうでもいいと思ってたけど、やっぱキレイだなぁ」
「うん、なーんか幸せな気持ちになるね」
「あのね、さっきあの子にあげたフィギュア、本当はロボへのクリスマスプレゼントだった」
「あー、やっぱそうなんだ。そうじゃないかと思ったよ〜」
「ごめんね……」
「ちょっと残念だけどしょーがないな。あの場合は。うん」
「前にホビーショップに行った時、ロボずっとあれ見てたから」
「そうだっけ? そういうの覚えててくれて、俺のために選んでくれる人がいるだけで嬉しいかも」
 ロボは少し笑った。
「それにさ。やっぱ小さい子のクリスマスが、怖くて辛いだけになっちゃうってイヤじゃない。
 わたる君の思い出がさ、ダイターン3で少しでも救われるなら本望じゃん。
 自分が傷ついた記憶のせいで、別の誰かを傷つけてしまうことってあるでしょ。
 本当は傷ついた分優しくなれればいいんだけど、人間は弱いからさ…」
 思わずロボの顔を見た。私と同じことを考えている。
どうしてロボは何も言わなくてもわかってくれるんだろう。
「これは、俺からのプレゼント」
 ロボは私の手を取ると、何かを握らせた。そっと手を開くと、金属製の花が咲いている。
「わ、綺麗……」
「自分で作ったんだ。裏側見ると失敗してるとこ、分かっちゃうんだけど」
「すごいよ、ありがとう。本当の薔薇の花みたい」
「ううん、これニコだよ」
「えっ?」
「俺の中のニコのイメージを形にすると、こういう感じなの」
 もう一度、繊細に光る花を見る。何故か涙が出そうになる。
クリスマスなんて、どんな意味があるんだろうって思っていたけど、もしかしたら大事な
誰かの存在と、その人と出会った偶然に感謝するためにあるのかもしれない。



31 名前:クリスマス 12/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:57:22 ID:udrpkvbw]
「あれ?なんで泣くの?」
「泣いてないっ」
「だってさー」
「ロボ、やっぱもう一つプレゼントあったんだ。ちょっと目をつぶって」
「えー 何?」
「いいから早くつぶれってば」
 なになに〜?と言いながらロボは素直に目をつぶった。
私は背伸びをしてロボの頬の上に素早くキスする。
「メリークリスマス、ロボ」
 ロボがとてもビックリした顔をしたので、自分のしたことが急に恥ずかしくなって
下を向いて困っていたら、ロボはふいに私の肩を抱き寄せて身をかがめた。
そして、少し震えながら、私の唇に不器用なキスをした。
「メリークリスマス、ニコ」

「あの、俺…」
 ロボが何か言おうとした時に突然、携帯が鳴り出す。この着信音は…地蔵堂。
『ニコー、助けてくれぇぇ』
「よっちゃん?どうしたのっ?」
『社長がさぁ、暇だったらしくて、ローストチキンを5羽も作って待ってたんだよ〜。
 しかも全部真っ黒。おまえらこれ喰うの手伝ってくれよー もう鶏肉は見るのもイヤだ…』
「…だって。ロボどうする?」
 ロボは大げさに溜息をつく。
「しょーがないなぁー。黒焦げチキンのためにまた出動かー」
「だったら、私の穴あきケーキもあの二人に責任持って食べて貰おうかな」
「それじゃ、俺の炊き込みご飯も持っていこうっと。やった、今からクリスマスパーティー出来るじゃん!
 帽子とか風船も持っていこう!車で地蔵堂まで運べばいいよなー」
「あー!!ロボ、車は!?」
「うわっ 忘れてた!やばい、マックスダーッシュ!」

私たちは、聖夜の光に溢れる通りを笑いころげながら走った。
この街を、この世界を、醜くそしてとてつもなく美しい場所だと思いながら。
誰かと共に笑っている、その一つ一つが小さな奇跡だと思いながら。
この複雑な世界に住む全ての人々に、

 メリークリスマス。

32 名前:クリスマス 12/12 mailto:sage [2007/12/23(日) 00:58:34 ID:udrpkvbw]
****************
終わり

↑入れ忘れました。

長くてすみません。

33 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 01:18:09 ID:eIQ840oo]
グッドジョブ!
きっと楽しいクリスマスパーティなんだろうなぁ

34 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 13:14:28 ID:yd+nQ34D]
上手くまとめましたね
GJ!!
しかしニコはたくましいなぁ

35 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/23(日) 17:33:06 ID:fI1tIMXe]
>私たちは、聖夜の光に溢れる通りを笑いころげながら走った。

ドラマのオープニングの「あなたの隣に スパイがいる」っていうのを、
何か思い出した。
みーんな 知らないんだよな二人がスパイってことを、
しかもとても優しいスパイだってことを。
おもしろかったぜぇ〜

36 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/24(月) 01:00:12 ID:VU+69tSw]
メリクリ!
とりあえずロボは一人ぼっちのクリスマスじゃなくて
よかったね。GJでした!

37 名前:贈り物はサンタ 1/2 mailto:sage [2007/12/24(月) 19:53:22 ID:w1ASOYUS]
短いエロ無しです。
ニコ高校生。再会後のふたり。

* * * * * * *

《ニコside》

 イヴは誰と過ごすとかどう過ごすとか、どうして毎年この日になると皆誰かを
探そうと躍起になるんだろうと思ってた。そんなにも恋人達にとって特別な日に
なるために作られたというわけでもないのに。
 とは言え今年は私も人並みに?特別な誰かと過ごすクリスマスを迎えることと
なった。
 別に聖なる夜だから今日だけは一緒にいたいとか、贅沢したいとは思わないけど、
「一緒にいたい」
なんて言われたら、やっぱり何だか嬉しくて。

 イベント大事な姉に巻き込まれて、柄にもない事をやってしまった。さっきから
少し後悔して、やっぱりやめようかと悩んでいるうちに階段を忙しなく駆け上がる
足音がする。思わず慌てて灯を落として物陰に隠れてしまった。

「ただいま〜……ニコ、いないの?」
「いるよ。でもちょっと待って」
 待ちわびた筈の声に笑顔で迎えることが出来ない。


《ロボside》

「ニコ?」
 薄灯の中コートを脱ぎながらキョロキョロと部屋を見渡す。と、ベッドとの
仕切りの棚の陰から人影が覗いてる。
「どうしたの?暗いよ〜、電気点けていいでしょ?」
「わ、笑わない?」
 うん、ってとりあえず(いや本当にそんな気無いけど)返事すると少し悩んで
オッケーが出たので灯を点ける。と、そこからコソコソと登場したのは……。

「何!?ちょっとどうしたの!すっげ〜可愛いじゃ〜ん!!」
「ほ、本当に……?」
 いやあもう、鼻血が出そうな位テンションMAXな俺。
 だってさあ、部屋に帰ったらいるんだよ?

 自分だけの、可愛い可愛いサンタクロース。

「うわぁ、生きてて良かったあ〜!」
「な、何をオーバーな……」
「だってさあ、男の夢だよ、ロマンだよ!ニコがそんな事してくれるなんて……
 いやぁ、嬉しくて嬉しくて」
 多分俺は、これ以上ない位だらしない顔で見てるに違いない。ニコの顔から
最初の真っ赤な照れ臭さが消えて半分呆れ顔になってたから。


38 名前:贈り物はサンタ 2/2 mailto:sage [2007/12/24(月) 19:55:54 ID:w1ASOYUS]
《ニコside》

「でもどうしたのコレ?」
「一海ちゃんが……」
 自分が彼氏のために着るために買ったついでに、私の分まで気を利かせて(?)
買って来たらしい。
『男って……特にオタクなんかこういうの絶対好きだから』
 オタクは余計じゃない?って思ったけど、実際目の前のロボは鼻の下が倍くらい
伸びてる。さすが一海ちゃん……というか何というか。
 まあ喜んでくれたみたいだしいっか、と思いながらも問題はまだあった。
「ん?どうしたの?」
「あのさあ……」
 俯いたまま私は答える。
「肝心のプレゼント忘れて来ちゃったんだよね……ゴメン」
 一緒に持って来たつもりのロボへのクリスマスプレゼントを、家に置き忘れて
しまった。
 今夜の料理と、この恥かしーいコスプレと、初めての……お泊まりで頭の中が
正直イッパイイッパイになってた。恥かしくてロボにはそんな事言えないけど。
 

《ロボside》

「え〜っと……いいよ、そんなの気にしないでよ。今度のお楽しみにするから」
 いつもの勝ち気なニコも彼女らしくて好きだけど、柄にもない事をして恥ず
かしがってる(あくまでも普段とは違ってという意味で)ニコも可愛いと思う。
 だってそれって俺のためだし?

 そう思ったら益々たまらない気持ちになって、俯き加減のニコの肩を掴んで
顔を覗き込んだ。

「プレゼントならここにあるじゃん」
「え?」
 首を傾げて俺を見上げる恋人を抱き締める。

「…………今の俺の腕の中に、さ」
 言っておいて耳まで赤くなる。

 今夜はゆっくり時間が流れるといい。

 サンタのラッピングをもう少し堪能させて頂こう。


* * * * * * *終

39 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/25(火) 01:02:44 ID:3ENmWFrk]
ニコ+サンタコス。
イカンですよイカン、無敵じゃないですかぁ。
エロなしと言っておいて「サンタのラッピングをもう少し堪能させて頂こう」、もう少しって・・・。
なんとご無体な・・・、わたくしの脳内で妄想が暴走中。

40 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/25(火) 08:49:10 ID:WVQ95Apa]
と、と、当然…ミニスカだよね?
ヤベ!まじヤベ!鼻血が!
GJ!過ぎる!



41 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/25(火) 13:10:54 ID:5gvXWcAI]
GJ!
ミニスカサンタコスプレ!?のニコ、かーわいいだろうなあ


42 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/26(水) 14:23:12 ID:f5Ktvyl/]
保守age


43 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/26(水) 16:35:13 ID:yICo+I5K]
あげときます

44 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/26(水) 21:14:14 ID:ctLPujNV]
ヘンなスレ落としがいるのでage

45 名前:名無しさん@ピンキー [2007/12/29(土) 05:16:48 ID:5oBAyYyK]
保守あげ

46 名前:星に願いを 1/4 mailto:sage [2007/12/30(日) 05:01:35 ID:kbEPTIXo]
少し時期がずれた話になってしまいました。エロ無しです。

×××××××
人影もまばらな夜道を重い足取りでロボット達の待つ家へと歩いていた。

「ああ…疲れた……」
はあ〜、なんだってんだ。この忙しさは!
そりゃあリストラされるよりマシなんだろうけどさ。
この2ヶ月…そう!ニコと付きあい始めて2ヶ月、残業に休日出勤と
ニコとまともにデートもできていない。
ニコと夢のような楽しい日々が始まるはずだったのに幸せな俺に神様が嫉妬したのかぁー?
と、そのとき
「ロボ!やっぱりロボだ」
後ろから聞きなれた声がして振り返った。
「ニコ!?どうしたの。こんな遅くに女の子一人で危ないでしょ!」
「えーっ、明日は休みだから少し遅くなっても、ロボの家行くからってメールしたんだよ。見なかった?」
「そうなの?ゴメン。気づかなかった」
ニコは俺の背広の袖口をそっと掴みながら、心配そうに聞いてきた。
「ロボ、大丈夫?かなり疲れてるでしょ。ちゃんと睡眠とってる?」
「う〜ん、はっきり言って睡眠不足ではあるなぁ。まあ、明日は久々の休みだしゆっくりする。
それにニコの顔見たら、元気でた」
ほんとに〜?って、少しばかり怪訝な口振りのニコの手に自分の手を重ねる。
「ニコ、手が冷たい」
「ロボはあったかいね」
ギュっと俺の手を握り返してきて、ただもうそれだけで疲れがふっとんで全身が幸福感で満たされる。


「あのね、今日ロボと一緒に見たかったものがあるの」
「見たかったもの?え、なに」
「えっとね、星」
「星?」
「うん。流星群」
そう言って、夜空へ人差し指を向けた。

冬の空は空気が澄んで月の光りが一層と輝き、手をつないでゆっくりと歩く俺たちを家へと導く。


47 名前:星に願いを 2/4 mailto:sage [2007/12/30(日) 05:02:44 ID:kbEPTIXo]
食事の後、風呂に入った俺が出てくるとそこにニコの姿はなかった。

ニコはベットの上に座り、窓から夜空を見上げていた。
俺に気づくと来てと手招きをする。
「まだ、見えないんだよなぁ」
「さっき言ってた、流星群?」
「うん。ここからじゃ無理かなぁ、やっぱ山手のほうがいいのかなぁ」
どこからでも見えます。ってテレビで言ってたのにとニコは少し口を尖らす。
その様子が可愛くて、ニコに近寄って髪に軽くキスをする。
「わーもう、なにすんのよっ、スケベ!」
「なんだよー、それ」
でも、言葉とは裏腹に嫌がるそぶりはみせない。
「ロボは流星群のこと知ってると思ってた」
俺がそのことを知らなかったのがニコには意外だったらしい。
宇宙の神秘のことだったら、俺がどんな小さなことも見逃したりはしないと思っているから。
いや、知ってるんだけどね。
さすがにこの忙しさのせいで、最近は昼間の青い空も澄んだ夜空も見上げる余裕がなかった。
今日はニコにその余裕を与えてもらった。
「ありがと、ニコ」
「どうしたの?急に。……あっ!」
「え?」
驚いたように指さすほうへニコから外へ目を向けると1つ2つと星が流れていった。
「ねっ、見た?今の」
「うん、見た…」
それから、しばらく二人で時間がたつのも忘れて夜の空を眺めていた。
1つ流れたと思うと続けてたくさんの星が流れる。
言葉どおりの流星群。

「これをロボと見たかったんだ。よかった」
俺の隣で、小さく呟いたニコの横顔を見つめる。
月明かりに星の煌めきにその瞳が黄金色に照らされて、目を奪われる。


48 名前:星に願いを 3/4 mailto:sage [2007/12/30(日) 05:03:59 ID:kbEPTIXo]
「くしゅんっ」
「あ、寒い?って、当たりまえか」
冬なんだし、しかも夜だし、気温も低くなってきたみたいだ。
「やめとく?風邪ひいたらあれだし」
と、窓に手をかけて閉めようとしたけど
「うん…でも、もうちょっと見ていたいなぁ」
「えーっと、じゃあ…」
俺はそばにあった毛布を引っ張って、それにニコと二人でくるまった。
「これなら、ちょっとはマシだよね」
うん、とニコは少し恥ずかしそうに頷いて、また窓の外へ視線を移す。

外は完全に人の気配もなくなり静寂に包まれていて、二人の視界には流れていく多数の星が。

目の前でおきる壮大な宇宙のスペクタクルに感動しながらも
自分の身体に密着するニコの温もりに正直俺の体温は異常なくらい上がっていた。
この胸の昂ぶりをニコに悟られないように微妙に身体をずらしてみたりするのだが
いつのまにかまたその暖かい誘惑に負けてしまう。
そんな俺の葛藤を知ってか知らずか、ふいにニコが口を開いた。
「ねえ、ロボ。あんなにたくさん流れ星があったら、その分の願いごとしてもいいのかな」
「え、うーん、どうだろう。ニコ、そんなにたくさんあるの?」
「だってさ〜、一つの流れ星にたくさん願いごとしたら欲張りすぎてダメだろうけど、
数えきれないぐらい流れ星があるんだからに10ぐらいお願いしたって
バチはあたらないと思う。1つぐらい叶うかもしれないし」
「まあ、そりゃそうだけど」
「占いとか神様とか信じてるわけじゃないけど、願えば叶うことってあると思うんだ」
「ニコの願いごとって、どんなの?」
どんな答えが返ってくるのか、期待半分不安半分で聞いてみる。
俺の一番の願いごとは決まってるんだけどな…。
「なんだと思う?」
いたずらっぽく笑ったその表情が輝きを繰り返す星に負けないくらいに
綺麗で可愛くてドキッとしてしまった。


49 名前:星に願いを 4/4 mailto:sage [2007/12/30(日) 05:04:59 ID:kbEPTIXo]
「学校の試験がうまくいきますようにとか人気のケーキ屋さんの限定メニューが
食べられますようにとか家のゴキブリがいなくなりますようにとか…」
「はあぁ〜?」
予想しなかったセリフがニコの口から出て、思わず驚きのあとにプッと噴き出してしまった。
「笑うことないじゃん!」
「いや、そんな願いごとだと思わなかったからさ〜」
「小さな願いごとから大きなものまで色々あるのっ。一番強く思うことは……」
再び夜の空に視線を戻して、少しの沈黙のあと
「大切な大事な人たちが幸せでありますように」
まっすぐに星を見上げながら、ニコは言った。

「俺もニコと一緒かなぁ。みんなに幸せになってほしい。もちろんニコにも」
綺麗な瞳が俺を見つめる。
「あたしは今、幸せだよ。ロボと一緒にいることが物凄く……うれしい」
最後、消え入るように言った言葉が甘く響いて、愛おしさがこみ上げてきて
彼女の肩に手をまわすとグッと自分のほうへ引き寄せた。
「ねえ、ニコ。キスしてもいい…?」
「…なんで聞くの?」
「いや、一応」
「そんなこと聞かなくてもいいよ…」
そう囁くニコの柔らかい唇にキスをする。優しく、そして段々と深く。
長いようで短い、短いようで長い時間が流れて離れ難い口づけをようやく解くと
愛しい彼女を胸に収める。
俺の速まる心臓の音がニコの耳には届いているはずだ。
「ロボ、今度プラネタリウム見に行こう」
「うん、そうだね。行こう」
「ロボと一緒だったら、どこに行くのも楽しいし退屈しないよ。多分……」
しばらくして、静かになったニコの顔を覗き込むと可愛い寝息をたてていた。
「寝ちゃった?ニコ」
ひんやりした空気が身体を覆ってきて、二人して風邪をひいたら大変なので
起こさないようにそっと窓を閉めた。

彼女の髪に頬を寄せながら、俺は願う。
ずっとこの先もニコと一緒に二人で星を眺めていられますように。


終わり


50 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 18:02:36 ID:usxNUxgn]
二人で一枚の毛布にくるまって窓辺にいるニコとロボという図が、すごく似合っていて映像が浮かぶ。
GJ!



51 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/12/30(日) 22:16:01 ID:BqlrGy9H]
1人じゃなくて2人で一緒に星を眺めるって
シチュはいいなあ。GJ!

52 名前:年の瀬の或る日 1/4 mailto:sage [2008/01/03(木) 04:03:39 ID:uoKGug4t]
ちょっと時期がずれてしまいましたが季節小ネタです。
ニコ高校生、エロ無し

****************************************

「ロボいる〜?」
 今年最後の日曜日、ロボの家にいつものように遊びに行くと、ロボはバケツと
雑巾を手にして、大掃除の最中だった。
「あ、ニコ。もうすぐ終わるからテキトーに待ってて」
「手伝おっか?」
「いや、いい。フィギュアの棚は自分でやらないと駄目だからさ」

 あたしはお湯を沸かしながらロボの背中を見ていた。
「ロボってさー、男の人にしてはきれい好きだよね」
「だってせっかく買ったフィギュアが埃まみれになったら厭じゃん」
「ふーん。一海ちゃんなんかズボラで、拭き掃除なんて自分でしたことないよ。
 いつも埃が溜まってから、あたしが仕方なく掃除するの」
「一海ちゃんはズボラでもいいの。あんなに可愛いんだから」
 なにそれ?一海ちゃんだから?
あたしはちょっと(というかかなり)ムッとしてイヤミっぽく言った。
「へーえ。今でも一海ちゃんは特別なんだ、可愛いからなんでもOKなんだー。
 お気の毒ですね、可愛い一海ちゃんの代わりに妹と付き合うはめになっちゃって!」
「ちょ、ちょっとニコ、何怒ってんの?」
「怒ってなんかいないもん!」
「やっぱ怒ってる〜、あのさ、一海ちゃんは可愛いからズボラでいいってのは、
 そーゆー意味じゃなくて。綺麗な女の人なら、そのくらいの欠点も愛嬌で許されるってこと。
 でも俺みたいなオタク野郎が汚い部屋に住んでたら、洒落にならないでしょー」
 ロボは苦笑しながら言った。
「オタクはオタクなりに、自分の趣味に誇りを持ちたいからね〜」

53 名前:年の瀬の或る日 2/4 mailto:sage [2008/01/03(木) 04:04:36 ID:uoKGug4t]
 何気ないロボの言葉にはっとした。
ロボは周りの目を無視して好きなように生きてるわけじゃなくて、
どういう風に自分が見られているか知っていて。たぶん、ひどく傷つけられたこともあって。
それでもロボなりのプライドをちゃんと持ってるし、納得できるように努力してるんだ。
すぐに拗ねる子供っぽい自分が恥ずかしくなる。
「あの、でも、ロボのそーいうところ、あたしはいいと思う」
「そういうところって?オタクなところ?きれい好きなところ?」
「全部」
 思わずストレートに答えてしまい、また恥ずかしくなる。あたしってダサい…。
「ありがと」
 ロボは手を止めて振り向くと微笑んで、それから急に真顔になって言った。
「俺、ニコを一海ちゃんの代わりとか思ったことなんて一度も無いからね」
 ドキっとして、あたしは顔を見られないように下を向いた。
 ロボはニヤニヤしながらフィギュア棚の方に向き直って言った。
「だってさー、どう考えてもニコの方が凶暴だろー」
 うっわ、ムカつく!
「あっそ!おやつに肉まん持ってきたけどもう持って帰ろうっと」
「えーそんなぁ!今のナシ!取り消します!」
「一度言ったことは無かったことになんてならないからね!」

 でも、あたしは肉まんが今すぐ食べたかったので、勝手にお茶を淹れて
ここで食べることにした。ロボが欲しがったら分けてやらないこともないけど。
ロボはまだ掃除が終わってないくせに、
「待って!俺も一緒に食べるー」とか言いながらさっさと手を洗いに行って
卓袱台の前に座りこんでまたニヤニヤしながらあたしを見上げる。
犬が尻尾振って待ってるみたい…。
仕方がないからロボの分もお茶を淹れてあげた。

54 名前:年の瀬の或る日 3/4 mailto:sage [2008/01/03(木) 04:07:20 ID:uoKGug4t]
「ニコは掃除とかする方なの?」
 お茶を飲みながらロボは尋ねた。
「まあ普通に。一海ちゃんよりはマシかな」
「ふーん、良かった」
「なによ、どういう意味?」
「だってそういうのは近い方がいいじゃない、将来一緒に住む時に」
 この男、今さらっとトンデモナイことを言ったんだけど。
問いつめたらきっとアホな冗談でごまかすから、それ以上は聞かない。

「うーん、やっぱロボット達の輝きが違うなぁ〜
 綺麗なロボットを見ながら食べる肉まんはサイコーだっ!」
ロボはフィギュア達を見て満足そうに頷いた。
あたしの頬が熱くなっているのはきっと気づかれてない。

「ニコリン大佐、大晦日は年越マックスロボ全話鑑賞会を開催する予定であります!」
「ふーん良かったね」
「ふーん、って何。ニコもおいでよ」
「それはちょっと。あたしだって忙しいんだから」
「ちぇー、冷たいなぁ」
「オタク仲間で盛り上がればいいじゃん」
「そうだけどさぁ」
「女子高生は大人の会議に混ざれないでしょ」
 手を伸ばしてロボの鼻をぎゅ、とつまんでやった。
「ちょ、なにすんのっ」
「だってここに印がついてるよ、『つまんで下さい』って」
 笑いながらロボの鼻柱のホクロを指さすと、
まったく、こーゆーところはまだ子供なんだから、とロボはぶつぶつ言った。
「また遊びに来るよ。年が明けたら」
「じゃさ、初詣一緒に行こう」
「うん、神様と約束しにいく」
「何を約束するの?」
「内緒。ロボは?」
「俺も内緒」
「あー、なんかやーらしー」
「やらしくない!やらしーとか思う方がやらしーんですぅ」
 ロボは一呼吸置いて、小さな小さな声で呟く。
「俺の幸せとニコの幸せが同じになりますように、頑張りますって約束するんだよ…」

55 名前:年の瀬の或る日 4/4 mailto:sage [2008/01/03(木) 04:10:05 ID:uoKGug4t]
 あたしはゆっくり目を上げて、ロボを見つめた。
その約束、きっとかなうよ。ううん、何年も前から叶ってた。
密かなあたしの願い、あの頃、ダイヤモンドみたいに見えたロボが少し遠く感じて
一人で諦めてしまった願い。
 神様って本当に悪戯が好きなんだ。
少しだけ大人になって少しだけ強くなったあたしの手に、14歳の自分の夢が戻ってきて。
今の自分ならきっと守れるって思う。

「駄目駄目!そんなカワイイ顔してこっち見てもダメ〜。これはあげないからね!」
ロボが素っ頓狂な声を出した。
「はぁ?」
「俺の肉まん、狙ってるでしょ!これは俺の分だから!」
「……バーカ。つーか、元々あたしが買ってきたやつじゃん」
しょーもない会話を心地よく感じながら、頬杖をついた。
見つめる先の棚の上には一度壊れてつぎはぎだらけの、でもぴかぴかに磨かれた
マックスロボが得意気に立っている。再生した絆の証のように。
「…ニコが神様と約束したいことって、何だろなぁ」
 チラっとこっちを見て、少し目を伏せて、独り言みたいにまたロボが言い出した。
「内緒だってば」
「ふーん」
キラキラした目で問うように視線を投げかけるロボに、心の中で答えを告げる。

本当に大事な願いは言葉に出せない。
でも、耳を澄ませば早まる心臓の音が聞こえるはずよ。
二つの願いは、二つの鼓動と重なって
それはあたしの耳にいつまでも響く。

********************************
終わり

56 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/03(木) 10:36:03 ID:odx462KP]
>本当に大事な願いは言葉に出せない。

これってなんとなくわかる気がする。
でも、言葉にしなくても二人は気づいててわかってるんだね。きっと。
GJでした!


57 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/03(木) 10:48:49 ID:vu+wdpLe]
ロボが的外れなことを言うのがロボらしいw
とても良かった
GJ!

58 名前:if〜涙の理由〜 1/8 mailto:sage [2008/01/07(月) 08:40:20 ID:sWxNgu+g]
高校生ニコとロボ。直接エロ内容は無しですが行為有りを示す描写は有りですので
そこだけ注意。


* * * * * * *

「何なんだよ……」
 たった今ニコは俺の前から消えた。
 撫でた髪の感触も、抱き締めた肌の温もりも、甘い香りも唇の味も全部まだこの
身体に残ってるのに。

『全部忘れていいからね』
 そう言ってニコは事を終えると淡々と服を着て、俺に一言も言わせまいとしてる
かのように間髪入れずに言い捨てて出て行った。

『サヨナラ、ロボ』

 まだ温かいシーツの皺を握り締め、今起きた出来事が夢ではなかった事を確かめる。
 混乱した頭で慌てて窓から顔を覗かせると、ニコが身体を強張らせて歩く後ろ
姿が遠くなるのが見えた。
「ニコ!!」
 呼び掛けた声に一瞬だけ足を止めて、またそのまま歩き出す。
 早く服を着て追い掛ければ良かったのに、体が重くて動けなかった。呆然と
しながら今起きた出来事を頭の中で再生する。


「ロボ、お願いがある」
 何だかいつもより元気のない気がして正直気になってた。だから
「いいよ、何?」
理由を聞く前に返事をした。
「あたしを……抱いて欲しい」
「はっ?」
 聞き間違いだと思って

59 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/07(月) 08:43:53 ID:sWxNgu+g]
すいません。改行の関係か分割失敗しそうなので投下やり直します。お見苦しくてごめんなさい。orz

60 名前:if〜涙の理由〜 1 mailto:sage [2008/01/07(月) 08:46:42 ID:sWxNgu+g]
「何なんだよ……」
 たった今ニコは俺の前から消えた。
 撫でた髪の感触も、抱き締めた肌の温もりも、甘い香りも唇の味も全部まだこの
身体に残ってるのに。

『全部忘れていいからね』
 そう言ってニコは事を終えると淡々と服を着て、俺に一言も言わせまいとしてる
かのように間髪入れずに言い捨てて出て行った。

『サヨナラ、ロボ』

 まだ温かいシーツの皺を握り締め、今起きた出来事が夢ではなかった事を確かめる。
 混乱した頭で慌てて窓から顔を覗かせると、ニコが身体を強張らせて歩く後ろ
姿が遠くなるのが見えた。
「ニコ!!」
 呼び掛けた声に一瞬だけ足を止めて、またそのまま歩き出す。
 早く服を着て追い掛ければ良かったのに、体が重くて動けなかった。呆然と
しながら今起きた出来事を頭の中で再生する。


「ロボ、お願いがある」
 何だかいつもより元気のない気がして正直気になってた。だから
「いいよ、何?」
理由を聞く前に返事をした。
「あたしを……抱いて欲しい」
「はっ?」
 聞き間違いだと思って外れた声で返してしまった。だけどニコはそんなの無視して
「お願い」
そう言って俺の前に回り込むと、胸に顔を埋めて来た。
「あの、ニコ。言ってる意味わかってる?」
「わかってるよ」
 確かにこんな冗談言う様な娘なんかじゃない。
「あの、俺は男だし、スケベだし悪い気はしないけど。ていうか正直嬉しいんだ
 けど。……ニコの事す、すっ好きだし!」
 俺の袖を摘んだニコの手がぴく、と震えた。
「そうなの?」
「うん。だけど、だからって今急にそんなどうこうしなくてもいいから。ただ、
 ニコの気持ちは知りたい」
「あたしは……」
 ニコはうっすらと涙を溜めて俺を見上げた。
「あたしもそう。だから……」
次の瞬間強い力でしがみついて来る。
「最初はロボがいいの!お願い……」
「ニコ?なん……」
顔を見下ろしてハッとした。一歩も引かないという瞳をしてた。




61 名前:if〜涙の理由〜 2  mailto:sage [2008/01/07(月) 08:48:21 ID:sWxNgu+g]
 後はもうそのまま、震えるニコをベッドまで抱き抱えて運んだ。ハッキリ言って
欲望に負けた。それにニコをそれ以上拒む理由もなかった。

 3ヶ月位前にニコと再会してから、まるで『また明日』と別れてしまったあの日の
続きみたいに自然に会う様になった。そしてそれはとても居心地の良い時間の始まり
で、ニコが自分にとってどれだけ大切な存在だったかという事を確認した。
 だから、俺がニコに友情や兄以上の感情を持つのにほとんど時間は掛からなかった
と思う。

 ニコを抱き締めて初めてキスした時夢みたいだと思った。
 何度もいいの?って聞いて頷いたニコの服を緊張と喜びで震える手で脱がせた。
慣れない動きに黙って身を任せてくれる彼女がただ愛しくて、夢中で身体中を愛撫した。
 何度も何度も名を呼んでキスをした。
 繋るのに苦労してやっと終わった後、どっちも泣いていた。俺は単に感激しての
事で、ずっと抱き締めていたかったのにニコは黙って身体を離した。
 ニコの涙は俺のそれとは意味が違っていたのだ。

「ニコ?」
「ロボごめん」
 わけがわからず困惑する俺に背を向けてさっさと服を着る。
「俺……なんかまずかった?」
 そういえば何の準備もしてなかったから、避妊してなかった!?迂闊だった。
「ごめん!……で、でもちゃんと責に」
「違うよ」
 俺の言葉は遮られ、そして信じられない言葉が続く。
「昭子さんが帰って来てる」
「…………は?」

 ニコが言うには、つい昨日学校帰りに偶然見掛けた彼女の後を思わずつけたらしい。
着いた先は多分場所や建物の様子からあのマンションだと思う。
「えっ……と、で?」
「今度は邪魔しないから」
 脳裏にゴミ箱を泣きそうな顔で漁る14歳のニコが浮かんだ。同じ瞳をして俺を振り
返り
「あたしもう思い残す事ないから」
だから行けと?
「全部忘れていいからね」
「ちょっとニコ!」
「……サヨナラ、ロボ」

 もうとっくに思い出の向こうにあった出来事が頭の中に蘇ってくる。

 わけがわからないまま戸惑っているうちにニコは俺が止めるのも聞かずに、消えた。


62 名前:if〜涙の理由〜 3 mailto:sage [2008/01/07(月) 08:49:57 ID:sWxNgu+g]
 何度電話しても拒否されて繋がらなかった。家まで押しかけるのもさすがに今の
出来事を思うと彼女の家族に気が引けて、後ろめたかった。

 昭子さん。
 あの時は本気で好きだった。初めてあんなに一途になれる事を知った。結果いろんな
物を失くしそうになったけど、あの時の俺自身は幸せだったのだろうと懐かしく思う。
 今思えば狂っていた。確かにどうかしてたんだろう。全てを敵にしてもただ側に
いられたら良かった。 結局それは俺のエゴで、昭子さんの気持ちも、仲間だった人達や必死でそれを
守ろうとしたニコの想いもわかろうとしないでみんな振り回してしまったに過ぎな
かった。

 ニコは俺を許してくれたけど、自分自身を未だ許せてはいなかったのだろうか?
『俺は許してるから。だって俺達友達だろ?』
 あの気持ちに嘘はなかったのに。勿論今も。

「ニコ……」
 一体お前何を考えてるんだよ。

 俺は今、苦しいよ…………。


 翌日の朝、思い切ってニコの家に向った。玄関の前で呼び鈴を押すのを何度となく
迷っては次こそ、と繰り返していると、いきなりドアが開いて一海ちゃんが出て来た。
「きゃああ!!び、びっくりした……あ、あなた、えっ?何してるんですか!?」
「い、いやあのおはようございマックス!決して怪しいわけは……」
 ああ〜、完全に不審者を見る目だよ。
「いやあの、ニコ!ニコにどうしても用があって」
「ああ、ニコね、ちょっと待って」
そう言って奥へ入って行くと呼ぶ声がする。そのまま戻って来ると自分は出かける
から、と出て行った。デートかな、可愛い格好して。でも何とも感じなかった。
その後にニコも出て来る。思い詰めた様な顔をして……。
「何?あたしも今から出るんだ」
「何って、ちょっとどこ行くの?俺との話より大事な事?」
 靴を履くと俺を押し退ける様にドアを閉めてスタスタと先を行くニコの腕を掴む。
「ニコってば!!」
 ちょっと苛ついて思わずキツい声をあげてしまった。一瞬驚いた顔で振向いたニコ
はまたすぐ目を伏せて呟いた。

「あたし今からデートだから」


63 名前:if〜涙の理由〜 4 mailto:sage [2008/01/07(月) 08:51:56 ID:sWxNgu+g]
 デートって……。

 昨日俺とあんな事しておいて他の男と!?何考えてんだよ!!
 頭の中では言いたい事が一杯ぐるぐる回ってたけど、痛々しい瞳をして俺を見る
ニコを見ていたら何も言えなくなった。その上
「来ないで!」
なんて拒絶されたらもうそれ以上追えなくて、走り去る姿を黙って見送った。

 …………わけないじゃないか!!!!
 伊達にスパイなんかやってませんでしたって!(ドジだとか役立たずとか言われて
たけどorz)
 勿論したよ、尾行。どんな男と会う気なのか気になるじゃないか。
 待ち合わせしていた男はニコと同じ位の奴だった。何だよ、あんなのが好きなの?
……はい、してますよ嫉妬。
 昨日ニコを触りまくった手に今は何とも言えない汗を握りながら、ただその姿を
見失うまいと看板の陰に身を潜めたり、ファミレスでは店員にひたすら黙れと合図を
する。

 ああ俺は今最高に変な奴なんだろうな。笑いたければ笑ってくれ。どう思われても
構うもんか!
 ニコをこのままはいそうですかと手放すなんてそんな事……できるわけ、ない。
 心じゃ勇ましい事を言ってても実際はどうしたらいいのやらさっぱりわからない。
 ただニコが何を考えてこんな事をしてるのか知りたかった。
 ターゲット(?)の2人は映画館に入った後公園を散歩していた。その後を少し
離れて付いて行くと、段々人の少ない場所の方へニコの手を引いていくのがわかった。
 あいつ何する気だ!?やな予感。
 やがて立ち止まると相手はニコをいきなり抱き寄せ何かを呟いた。
 ニコは必死に離れようともがいて顔を背けるが、その腕を掴んで更に側の樹に押
さえ付けようとする。
「ニコ!!」
「助けて……ロボ!!」
 俺が飛び出すのと同時にニコが俺を呼ぶ声が聞こえた。体ごと相手にぶつかって
ニコから引き剥がした。
「な、何だよあんた」
「ニコから離れろ!!」
 奴はじっと俺とニコを交互に見ては睨む。
「俺のニコに近付くな……」
 あの時は一海ちゃんに情けない所を見せて振られたけど、今度ばかりはそうもいか
ない。
 ニコを渡したくない。ただそれだけだった。


64 名前:if〜涙の理由〜 5 mailto:sage [2008/01/07(月) 08:53:43 ID:sWxNgu+g]
「林さん、俺はただ」
 言い訳がましく迫り続けようとする奴にニコが言った。
「ごめんなさい、あたしやっぱりどうしても付き合えない」
「まさかこのオッサン?」
 チラッと俺を睨んでまたニコに視線を戻すと、悔しげに唇を噛んで走り去った。
 ニコは俺と視線を合わせたくないかの様に背を向けたまま泣いていた。
「なんで?なんで行かなかったの?なんでついてくんの!?」
 なんでなんでって、俺が聞きたいよ。肩を掴みかけたが何となくためらわれて、
頭をそっと撫でた。
「じゃあ何でニコは俺を呼んだの?」
「……だって尾行下手なんだもん」
「は?」
 ゆっくり振向いて真っ赤な瞳で見上げながら
「ロボの足音、あたしがわからないと思う?」
もうその一言でニコを責めるまいと思ってしまった。
「思わない〜」
 こっちを向かせて思い切り抱き締めた。ああ今俺絶対ニヤけてる、こんな時に。
「だからちゃんと話をしよう?」
 腕の中で泣きながらニコはやっと頷いた。

 あの日の様にベンチに腰掛けてニコの話を聞く。違うのは端と端じゃなく並んで
座って、俺はニコの手を握り締めたままでいた。
「あの事ずっと気にしてたんだ?」
 俺の言葉に俯いたままニコは答えた。
「あの時あたしが手紙を渡してたら、ロボは昭子さんと離れずにすんだんじゃないか
 って思った。もし別れるとしても、最後に一目会えたとしたらその方が良かったん
 じゃないかって。あたしがあの時魔が差したせいでロボの人生狂わせちゃった」
「そんな事……」
「だからね、昭子さんを見つけた時、今度こそ黙って見過ごしたらフェアじゃない
 って思ったの。今度こそあたしは自分を絶対許せないって。だからロボには話そう
 って決めた。あとはロボの自由にして貰うつもりで」
「だったら何でその前にあんな事したの?俺の事……」
「好きだよ。ロボが好きだったから。だからあたしも後悔したくなかったの」
 やっと顔を上げて俺を見た。その顔はとても穏やかに見えて、綺麗だと思った。


65 名前:if〜涙の理由〜 6 mailto:sage [2008/01/07(月) 08:55:07 ID:sWxNgu+g]
「前に昭子さんのとこに行っちゃった時は辛かった。あの時まだあたしは子供だった
 から自覚はなかったけど、多分ロボの事好きだったんだと思う。だけどやっぱり
 叶わないんだってどこかでわかって諦めて、それでも悪足掻きしてのマックスロボ
 だったり一海ちゃんとのデートセッティングだったりしたんだよね。会えなく
 なるのは嫌だったんだ」
 聞いてて胸が苦しくなった。
「もし今度ロボがどっか行っちゃってもまた仕方ないのかもと思った。だけどあたし
 自分も後悔して引きずりたくなかったんだよね。だから悔いのないように1度位は
 自分に正直になって、きっぱりとケリつけたかったんだ」
 そんな気持ちにさせてニコを追い詰めた自分が俺は許せない気持ちになった。けど
ニコはそんな気持ちを見抜いたのか
「ロボは何にも悪くないからね。あたしが自分で考えて自分で出した答えだったの。
 やな想いさせてゴメン。だからもし責任とか感じてるとしたらそんなのいらないから」
「そんな事思ってない!」
 そりゃもしもの時には……とは思ったけど、自分の気持ちに嘘なんかついていない。
それではニコを傷付けるだけだという事位わかるよ。
「さっきの奴付き合うつもりだったの?俺と別れておいて」
「ううん……。友達から話があってちゃんと断ったんだけど、行き違いがあって
 向こうはその気になっちゃってて、友達も断りにくい状況だったみたい。だから
 とりあえず会うだけのつもりだったんだ。それで今日ハッキリ断ったら……」
「そっか。良かった」
 何かホッとした。ヤケになったわけでも、本気で他のとこにいくわけでもなくて。
「もし、もしね。あの人とか他の人と付き合う事にしたとしても、あんな事やっぱり
 考えられないと思っちゃった。ロボじゃなきゃ嫌だって……ごめんロボあたし」
「ニコ。忘れたからってなかった事にはならないんでしょ?」
 昔ニコが言った言葉だ。
「ニコが忘れてって言ったって、俺はそんなつもりなんかないからね」
「う……」
 ポロポロと涙を流しながらごめんなさいごめんなさい!と腕の中でニコは繰り返した。


66 名前:if〜涙の理由〜 7 mailto:sage [2008/01/07(月) 08:56:30 ID:sWxNgu+g]
 ひとしきり泣いて落ち着いたニコを抱きながら考えた。
 昭子さんの事はもう今更、あっちだって……。あの後しばらくはふと思い出す事は
あったけどすぐに忘れた。だから一海ちゃんとのデートなんかに浮れてたわけだし。
ニコには酷い事した気が今となってはするけども。
「ニコ。ニコの気が済むなら行って来ようと思うんだけど」
 しがみついたニコの手に一瞬力がこもった。
「え……」
「ただし元気なとこを見届けるだけだからね。ニコも一緒に」
 戸惑った顔を上げたニコを立たせて自分も立ち上がった。
「俺はもう二度とニコと離れる気はないからね」
 3年も経ってやっと実った恋なのに。


 部屋は既に片付けられた後だった。管理人に聞くともう引き払われたという。この
ために帰って来てたんだろう。
「ごめんロボ。またあたしのせいだ」
「もう言うなって!ニコのせいじゃないってば」
 また哀しそうにするニコの手を引いて
「帰ろ」
とロボット達の待つ部屋へと歩いた。


 もしあの時手紙が俺の手元に届いていたら、会いには行ったかもしれない。最後に
部屋を訪ねた時には、もしやり直せるならそうしたいと思ったし、その一方で続か
ないかもしれないという事も実は考えていた。
 どのみち昭子さんは俺を連れて行く気はなかったのだと思っている。
 あの時ニコに俺が言った様に、最後にどうにか連絡の1つも取ろうと思えば取れた
のだから。昭子さんは俺の気持ちを受け入れてはくれたけど、俺が抱いていた気持ち
とは違う物を抱いていたのかもしれない。
 ただ最後に俺の前から黙って消えた事が、俺に対する愛情の形だったのだろうと思う。
 今なら『時間が止まればいいと思う』と言ったあの人の気持ちもわかる気がする。
 だけど今の俺はニコに対して『続けばいい』ではなく『続く』という自信がある。

「ただいマックス!あ〜疲れたっ。やっぱりうちはいいなあ、うん」
 ことさら大きな声で喋ってみたがニコは黙って玄関に立ったまま。
「何してんの?ほらさっさと入る!ニコらしくないぞ〜」
 ようやく頬が弛んでニコは靴を脱いだ。


67 名前:if〜涙の理由〜 8 mailto:sage [2008/01/07(月) 08:57:57 ID:sWxNgu+g]
「お腹空いた。なんか作って」
「は?」
 いいじゃん、俺も手伝うからって流しに半ば強引に立たせた。
「もうー。冷蔵庫見ていい?」
成功。普段のニコに戻って来た。
 野菜を洗い始めた後ろ姿を見ていたら、とても小さく感じた背中がたまらなく
愛しくなって抱き締めた。
「ちょっと、何?……動けないとご飯出来ないよ」
「それは困るよ〜。けどもうちょっと」
「じゃあ離してよ……」
 ヤダヤダってやってたら我儘!って怒られた。
「そうだよ。なんかニコといたら俺欲張りになったみたい」
 あの時はただ何も見えなくて考えられなくなって、他の物なんかどうでもいいと
思ってた。決行の前だったら一緒に逃げようと言われたらそうしてたのかもしれない。
 でも今は、ずっと大事にしてきた物を手放さなくて良かったと思う。ロボット達も、
どっかいい加減にやって来た仕事も全部俺自身だから。

 今の俺には捨てたくない物がたくさんあるんだ。勿論その上で一番失いたくないと
思うのはニコだ。1秒でも長く触れていたい。
「あのさ、ロボ……言いにくいんだけど、背中何か感じる」
 あ、バレた。
「う……ごめん!でも昨日の今日だし、これ以上何もしないから」
 髪の匂いとか柔らかい身体の感触とか、そりゃ反応するよね。鎮まれ俺のカラダ!!
「えっと今度はちゃんと準備しとくから、そん時はお願いね」
「やっ、スケベ!!」
 それは愛だからです。
「ロボは正直すぎるんだよ」
 それが正義という物です。
「んもうー、手伝うの?手伝わないの!?」
「はいやります!ニコりん大佐ご命令をば」
 敬礼してみせると笑って皮剥きを命じられた。並んで話してると疲れも感じない。
 出来上がった料理はどんなものでも、きっと2人のお腹も心も満たすだろう。
 俺はニコをまるごと愛したいとますます想う。守りきる勇気を持とうと約束する。
だから安心して俺を信じて預けて欲しい。そのためなら何だって頑張れるから。
 一緒に笑える様にいつまでも側にいるから、だからもう黙って俺を置いて行かないで
欲しい。
 嬉し涙だけ流して欲しいから……。

* * * * * * *終


68 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/07(月) 08:59:44 ID:sWxNgu+g]
以上です。
長い上に早々にお目汚しすいませんでしたorz


69 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/07(月) 10:01:21 ID:Y57sGCtH]
昭子さん誰にも会わずに帰ったのか〜
昭子さんらしいかも
ニコも苦しかったんだね
GJ!

70 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/07(月) 21:24:40 ID:4D5OEKuX]
GJ!
ニコのためにも自分のためにも今のロボだったら強くなれる!

でも、完璧なスパイにはまだまだだ!w




71 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/07(月) 21:42:18 ID:1pTnPmPp]
なんかとってもニコらしい
案外ニコってイジケ虫?

72 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/08(火) 05:27:27 ID:oOBNB0jR]
>でも今は、ずっと大事にしてきた物を手放さなくて良かったと思う。
 ロボット達も、 どっかいい加減にやって来た仕事も全部俺自身だから。

本編の「全部捨てたら、違う自分になれるかな?」に対応していてイイ!と思う。
亡き友を忘れそうな自分を受け入れて自由になった昭子さん
「魔がさした」自分を受け入れて自由になったニコ、というのも
本編と繋がっていて自然でイイ。

73 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/14(月) 07:53:37 ID:/0oBwZr7]
ほす

74 名前:まだ恋は始まらない 1/4 mailto:sage [2008/01/15(火) 09:11:58 ID:2lfZWVly]
一海ちゃん視点短い話です。エロ無し。すみません。

××××××××××

「遅い!遅すぎる!」
今日は彼と久々のデート。楽しみにしてたのに、なかなか現れない。
はっきり言って好みのタイプじゃなかったんだけど、好きなんだって告白されて
涙を浮かべた瞳に見つめられて母性本能がくすぐられたっていうの?
私の運命の人かもしれないって思ったのよねぇ…。
なのに、最近どうもおかしい。ずっと忙しいって会ってくれなかったし、連絡が途絶えてて。
今だって電話もメールも全く応答なし。

苛々する私の視界に訳のわからない歌を唄いながら、明らかに周囲から浮いている男が
スキップをしてこちらへやって来るのが見えた。
もしかして……。
マーックス!とかなんとか言って、私の正面に立ち止まって顔を見たとたん驚きの声を上げた。
「ああ〜、か、一海ちゃん!!」
やっぱりそうだ。
「…どうも、こんにちは」
少し距離を保ちつつ、あたりさわりのない挨拶をした。
「どうしたのぉ〜、何してんのー?こんなところで」
「あなたこそ、どうしたんですか」
「えーっと、俺はねぇデートの待ち合わせ♪」
「あ、ここで?」
うん、そう!ってデレデレして答えたこの男が、今だに信じられないけど私の妹の彼氏なのだ。
17にもなって色っぽい話のひとつもない色気より食い気?な妹が、ここ二ヶ月程前から
休日の度に出掛けて家にいないことが多くなった。
そこは恋愛に関しては右に出る者はいないと自負する私はピンときてニコに問いただした。
最初はしらばっくれてたけど、しつこい姉の尋問に最後は白状した。
いつもの生意気っぷりが影がひそめて恥ずかしそうに彼と呼ぶ人ができたと。
それがこの須藤威一郎という男。
「一海ちゃんも待ち合わせ?」
「ええ、まあ。今日は映画にでも行くんですか」
「今日はですね、我が愛するマックスロボのDVD発売を記念して同士が集まってのイベントが
ありましてですね、そのパーティーに行くのであります!」
パ、パーティー?それはただ単にオタクの趣味全開の集まりでしょ。
ニコったら、そんなものに付き合うためにオシャレしてたわけ?
額のあたりに手をかざし、バシッと敬礼のポーズをして聞きもしないのに興奮してまくし立てる。
「マックスロボはですね〜〜」「桃山チャコが〜〜」「作者の直筆サインを〜〜」云々。
「ああ〜、もういいですからっ!」
…いい人なのはなんとなくわかってるんだけど、これはどうにかならないものかしら。

並んで立っている私たちの前をモデル風の美女が歩いていく。
ちらっと横目で見ると鼻の下を伸ばしてニヤニヤして目で追っている。
こういうとこはニコと付き合ってるからって変わったりはしないのね。
得てして男とはそういう生き物だけど。


75 名前:まだ恋は始まらない 2/4 mailto:sage [2008/01/15(火) 09:12:52 ID:2lfZWVly]
そういえば昔はウザイぐらいに私にモーションかけてたわよね。
ここは姉としてクギをさしておくべきだわ。
「あの、須藤さん。ちょっといいかしら」
「いやだなぁ、一海ちゃん。そんな他人行儀な。
須藤じゃなく、威一郎とでも呼んで下さいっ。将来、弟になる男ですから!」
「はああ〜??」
こいつ、もといこの男、今なんて言った!?
「だって俺とニコが結婚したら、
一海ちゃんはニコのお姉さんでしょ。すなわち俺のお姉さんにもなる訳ですっ!」
あのー、マジで言ってるの?
「ニコは私の可愛い妹。あなたを疑う訳じゃないけど歳も離れてるし、男の人と付き合うのも初めてだし、
だから、あのコの事弄んでポイッなんてマネしたら、承知しませんから」
このオタクに限って99%ないとは思うけどまさかの1%が起こらないとも限らない。
でも、首が折れるんじゃないかってぐらい振って
「愛と勇気と正義の使者の俺がそんな極悪非道な男に見えますか!!
絶対ありえないっ!!」
私の目の前で握りしめた拳を胸のあたりに掲げて、鬱陶しいオーバーアクションで
必死に否定するのを見て前言撤回。
やっぱりないでしょっ。ニコをソデにするほどモテまくるなんてあるわけないし取り越し苦労よ。

「将来の話とか、二人でしてるんですか」
「あ、いやこっちが勝手に思ってるだけで、俺達まだ始まったばかりだし、ニコには言った事ない。
俺こんなんだから、何年先になるかわからないけど自信がついたときにそうなれたらいいなぁて」
結構、真面目に考えてるんだ。
勘違いの暴走オタクかと思ってたのに。
ニコはこの人のこういうところをわかってて、惹かれたのかもしれない。
「だったら、その時がきたら大事にして下さいね」
「あたりまえです!」
「まあ、世間的にはあなたのようなサラリーマンが今はまだ高校生のニコに
手を出すなんてマズイかもなんだけど」
「まだ、出してませんっっ!!」
ああ、そうまだなの…。それはもう思いっきり力をこめて言うものだから
「いやっ、ほんとに!!」
慌てて口を塞いだ。
ほんとなんだよ、一海ちゃんって。何度も。もう、声が大きいってば!
普通に喋ってると思ったら、突然テンション変わるし
今度は未来を夢見て、本人にしかわからない妄想を語ってるし
当然、私の耳が拒否して、右から左へ軽く受け流しといてやった。


76 名前:まだ恋は始まらない 3/4 mailto:sage [2008/01/15(火) 09:13:59 ID:2lfZWVly]
うーん、何だかものすごく疲労感が……。
ああ私、彼氏を待ってるっていうのにこの寒空の下で何話してるんだろ。
隣にいる女の子の憐れみの視線が痛いわ…。
私、この人とは関係ない(ってこともないけど)ですから!彼氏でもなんでもないですから!
と、必死に目で訴える。

ニコは一緒にいて疲れることないのかしら。疲れる相手だったら一緒にいないんだろうけど。
口笛を吹いて、挙動不審ぶりがはなはなだしい彼の横顔をほんと無駄に元気よねぇて眺めてたら、
クルッと表情が変わって、満面の笑みになった。 待ち人来たるか。
「ニコ!」
「ロボ、はやーい。もう来てたんだ。ごめん!……って、あれ、一海ちゃん!?」
私がこの場所に居た事にびっくりした様子。
「俺もびっくりしたんだよ〜、一海ちゃんと待ち合わせ場所が同じなんて奇遇だよねぇ」
「う…ん、でも一海ちゃん、待ち合わせ時間もう過ぎてるんじゃ…」
「あー、なんか少し遅れるみたい」
「そうなの?」
ニコが少し表情を曇らせる。
「あの、じゃあ来るまで一緒にお茶でも…」
気つかちゃって。ほらほら、彼氏は早く行きたくウズウズしてるじゃない。
さっきから、私達姉妹の会話に聞き耳たてて様子を伺って落ち着かない。
「いいから、ロボットパーティー(だっけ?)とやらに行くんでしょ」
「うん…。じゃあ、行くね」
申し訳なさそうに呟いて、寒いから暖かいとこで待ってたら。だって。姉思いの妹だわ、あんたって。

「行こ、ロボ」
「じゃ、また!一海ちゃん!」
ロボと呼ばれた彼は親指で鼻を擦って突き出し変なポーズを得意げに決めて、
先を行くニコを追って駆けて行った。
「ニコ〜〜、待って〜。ねぇ、手つなごうよぉ、手っ」
「い・や・だ」
「いいじゃん、ちょっとぐらい!ねぇてば〜。ニコのけちぃ〜」
「はいはいっ。うるさいよ!ロボ」
賑やかな後ろ姿を見送りながら、深い溜息をついた。
ニコに言ったら、冗談でしょ!って怒られそうだけど
でもね、充分そう見えてしまったのよ。……バカップルに。



77 名前:まだ恋は始まらない 4/4 mailto:sage [2008/01/15(火) 09:15:01 ID:2lfZWVly]
「今日は最低な一日だったわ」
バッチリ決めたオシャレな服装からラフな格好にチェンジしてベットに転がった。
結局、あれからまた1時間待っていた。やっと繋がった電話に女が出た。
即効で振ってやった。
「一海ちゃん、帰ってたんだ」
「おかえりー」
「遅くなるとなると思ってたのに」
と、コートを脱ぐニコが私を見てもしかして?って顔をした。
「ま、いろいろあるのよ」
「ふーん」
それ以上、深くは聞いてこない。いつもそう。私に嫌の事思い出させないようにしてくれてるのか
何事もなかったように普通に接してくれる。
「ニコは楽しかった?」
「普通だよー。ロボみたいな人がいっぱいいてさ」
それは想像できるわ。
「それから家でご飯食べて送ってもらった」
清い関係はいつまで続くのかしら。
薄っぺらい氷の上を重い砂袋背負って歩くみたいに脆い理性を彼なりにセーブしてるのかも。
すぐカラダの関係持とうとする男が多いのに。
ニコが大切だからニコが自分を受け入れてくれるときまで、彼だったら待てるのかな…?

「あのさ、一海ちゃん」
呼ばれて見たニコの表情は何か言いたそうで目が合うと黙って俯いた。私はニコの次の言葉を待った。
「ロボと何話してたの…?」
「え?」
予想してなかった質問に一瞬戸惑ったけど、理解するまでに時間はかからなかった。
昔の事があるから気にしてるんだ。ヤキモチやいてるのかな。そう思ったら可愛くて微笑ましくなる。
「世間話よ。あれーなあに、ニコ気になるの?」
「ううん、別にっ」
からかうように言うと、かあっと頬に赤みがさして慌てて背中を向けて中断していた
着替えを乱暴に続けた。

恋をすると人は変わるというけれど、まさしく今のニコはそのとおりだ。眩しいほどに輝いていて。
心配しなくても大丈夫。
あなたが考えているよりずっと、あの人はあなたを大事に思ってる。
始まったばかりの恋は確実に共に歩く未来を描き始めている。
ちょっと羨ましい。
うわべだけの格好よさを相手に求めてうちは、まだ恋は始まらない。
私はまだお互いを必要とし必要とされる本当の恋をしていないのかもしれない。
だから
運命の人に出会ったとき、私の本当の恋は始まる。

「あーあ、早く現れないかな。私の運命の人」


終わり


78 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/15(火) 19:29:19 ID:q34t8wTk]
一海ちゃん(・∀・)イイ!!
なんとなく切なさを感じる前向きさが心に沁みた
照れるニコも可愛い
GJ!

79 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/15(火) 21:16:24 ID:rGmYjoDO]

一海ちゃんの、打算もぶりっこも含めた
普通の女の子っぽさって可愛い 
だからニコも自分と似てないけど、一海ちゃんのことが大好きなんだと思う
運命の人、早く見つかるといいね
よっちゃんいい男なんだけどなぁ〜
やっぱカタギじゃないと一海ちゃんは辛いだろうな〜
GJ!

80 名前:時間の悪戯 1/3 mailto:sage [2008/01/20(日) 17:52:55 ID:qtCpMcZT]
エロ無し。ちょっとSFチック?です。

* * * * * * *


「パパ」
 ん?と横を見ると、小さな女の子が俺を見ている。
「は?」
「パパ」
 ……え、えーっと?
「あの、ど、どちら様で?」
 何なんだ。俺は独身男だぞ。子供なんかいない!いや、いてもおかしくはないん
だけど彼女いないモテないオタク貧乏……ときたら悲しい事に覚えが全くない(泣)
「あのさ、俺は君のパパじゃないよ?本当のパパはどこ行っちゃったの?」
「パ〜パァ」
 え〜?だから違うって。
「ママは?」
「お買い物ぉ」
 え〜っと?つまり、俺がパパでこの子のお守りをしろと。
 辺りをキョロキョロ見渡すがそれらしき人はいない。いたらすぐわかるだろう。
だってここ、ファミレスの店内だし。
「とにかく困るよ〜」
 よし、店長さんに迷子だって言って何とかして貰おう!その子の手を引っ張って
立とうとすると、
「うっ……パパ、行っちゃやあだぁ。うっ、うわぁぁぁ〜ん」
女の子は泣き出してしまった。
 あわわわわ!
「わ、わかった、わかったから!行かないから、泣かないで。お願いだからぁ」
 まぁ、あんな小さい子泣かせてーなんて、井戸端会議風のオバサン達に睨まれ、
仕方なく横に座らせた。
 俺にどうしろと。
「ハイハイ、いい子だからもう泣かないで。あ、そうだ。ジュース、ジュース飲む?」
「うん」
 とりあえずドリンクバーでオレンジジュースを淹れてあげると、小さな手で
上手にコップを持って飲み始めた。
「おいしい?」
「うん」
 可愛いなぁ。俺も子供がいたらこんななのかなあ。
 ……なんだろうな?初めて会った子なのに、何だか懐かしい気がした。
 Σはっ、しかしっ!俺には今日のっぴきならない用が……。
 その時、店内に若い女性が1人入って来た。しかもスラリ系!もしやと期待に
胸を弾ませ、俺は目の前にマックスロボをどん!と置いた。




81 名前:時間の悪戯 2/3 mailto:sage [2008/01/20(日) 17:54:32 ID:qtCpMcZT]
 その女性はこっちを見ると、マックスに気付いたのかスタスタと近付いて来た。
や、やったあぁぁ!
「あの、須藤さ……?」
俺が頷く前に相手の顔が凍り付く。
 はっ!し、しまった、この状況……。
「パパァ、このオバチャンだあれ?」
「お、オバチャンですって!?」
 うわっ、何て事を。そう思った次の瞬間

バッチーーーーン!!!!

 ……目の前が真っ暗になった。ああ、頬が痛い。痛いのは生きてる証拠。生き
てるって素晴らしい……っておい!
「子連れでテレクラって、アンタ何考えてんの!?馬鹿にすんじゃないわよ。最低!!」
 彼女は怒りながら去って行った。
「ママには『シー』ね。怒るとこわぁいもんねぇ〜」
 そう言って女の子はマックスを撫でながら人さし指を立ててウンウンと頷いた。
『脱・独り身』の文字が虚しく浮かび上がっている。ああ、せっかく今年こそ
寂しい誕生日に別れを告げられると期待していたのに。
「俺が一体何をしたというんだぁ……orz」
 赤く腫れた頬を撫でながら、周りの視線を感じつつ小さくなって席に着くと、
耳元で聞き慣れたメロディが響く。
「つおいぜ、つおいぜ、む〜て〜きだぁぜ〜♪」
 女の子が何と、マックスを弄りながら可愛い声で歌ってる。
「えっ!?し、知ってるのぉ?」
 何でこんな小さな子供がマックスロボのテーマなんて歌えるんだ!?
「パパが教えてくれたんでちょ?」
「そう。へえ、ロボット好きなんだ?」
「おうちにいっぱいあるじゃない」
 ほほう、オタク仲間かぁ。もしかしたら気が合うかもしれないな。きっと俺に
似てるんだろうなと思った。ともかくそのパパとやらを探さなくてはならない。
「ねえ、そういえばお名前なんて言うの?幾つ?」
「あたし?つど〜たちこ、みっつ」
「は?」
 全くもってよくわからんのですが。
「えと、あのもう1回……」
 その時だった。
「あ、ママ!」
「えっ?」
 側の窓を見ると、信じられない事が起こった。だが、それ以上に驚く事が俺を
待っていた。


82 名前:時間の悪戯 3/3 mailto:sage [2008/01/20(日) 17:56:15 ID:qtCpMcZT]
「えっ、ええ〜〜〜〜!?」
 振向くと女の子は消えていた。跡形も無く……。
 俺は呆然としながら、側を通り掛かった店員に
「あの、ここにいた女の子は?」
と聞いてみた。が、
「え?お客様ずっとお1人様でしたよ」
はあ?という顔で気味悪そうに離れて行ってしまった。
 何だったんだ、と思いつつ窓の外に目をやると、そこにはまだあの娘がいた。
思い切って手招きしてみると、しばらくじっと俺の顔を見ていたが、入口に向って
歩き出した。
「それにしても、あの女の子は一体……?」
 つど〜たちこ?
 つど〜、つどう、……すどう!?
「ああっ!」
 まさか!いや、それなら話はわかる。いやそんな馬鹿な……?

「今日は無視しないんだ?」
 頭を抱えていたら、側にさっきの姿があった。
「今年もこの席で1人なんだね」
 3年ぶりの声は何故か心地よく俺の耳をくすぐった。
「うん。今年も1人」
 それはとっても寂しい事のはずなのに、何故かそれで良かった様な気がした。
勧めると、ちょっと戸惑いながら向かいに座る。その時さっきの懐かしさの理由
が何なのかわかった様な気がした。
「どうかした?」
「……ううん」
 俺は胸が高まっていくのがわかった。
「3年振りか……」
 ニコは呟きながらメニューを手にする。
「ねえ、元気かなあ?……ハンバーグさん」
「……うん」
 
 2010年5月22日。
 その日、2人は3年振りに誕生日を一緒に迎えた。


 あれはきっと運命からの誕生日プレゼントだったのだろうと思う。どうしても
寂しくてたまらなくなってまたテレクラに手を出してしまったあの日。
 人生で最も大事な相手には、いつかはきっと巡り会えると教えてくれたんだろう。

「さしすせそ」
「たちつせと」
「もう、やっぱりさ行が苦手だなぁ。お名前言ってごらん?」
 あれから7年。目の前には今、3歳の娘に一生懸命話しかけているニコがいる。
「す・ど・う・さ・ち・こ」
「つどうたちこ」
「もうー、ロボ、幸子大丈夫かなあ?もうすぐ幼稚園なのに」
 大丈夫だよって俺は笑いながら、膝に乗っかってマックスロボを撫でながら
歌う娘を抱き締める。

 あの時の不思議な時間の悪戯を思いながら。

* * * * * * * 終


83 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/21(月) 01:45:52 ID:ZILzn3AT]
幸子がいなかったらロボはテレクラレディとよろしくやっていて…
そんなことないかw
でも幸子は心配で未来からやって来たんだね
GJ!

84 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/21(月) 08:16:38 ID:6UBgkKUE]
かわいいなあ〜たちこ

2人を誕生日に再び巡り逢わせてくれたんだ
SFチックなお話GJでした

85 名前:ロボの悪夢 1/3 mailto:sage [2008/01/25(金) 21:10:46 ID:Yr/98CjM]
軽い小ネタです。エロなし。

××××××××××

骨董屋『地蔵堂』の前を一人の男が忙しなくうろついていた。
凸凹スパイの片割れ、ロボである。
頼りになる相棒ニコではなく、何故か先に自分に呼び出しがかかりここへやってきた。……はいいのだが
この摩訶不思議な館に一人で足を踏み入れることはロボにはかなり勇気を要することであった。
「はあ〜、どうしよう〜。ニコが来るまで待ってようかなぁ」
その時、ギイィ〜と正面のドアが開いた。
「うわあぁぁぁ!」
「いらっしゃい」
驚くロボをよそに『地蔵堂』の主、真境名マキは優美な表情を浮かべて出迎えた。

一時期、姿を消していた真境名と秘書兼護衛の名梨が再び街に舞い戻ってきたことで、
平穏な日々は終わりを告げ、何やら闇の裏社会と通じているらしい彼女に仕事を
またまた依頼(半分は押し付け)されて、名梨を巻き込みスパイ活動をしている。
ちなみにこの慌ただしい毎日のなか、ロボとニコは彼の言うところあまーい春を謳歌していた。

「どうぞ。かけてちょうだい」
「あ、はい。どうも」
こうして彼女と二人きりになるのはめずらしい。いや、じっくりとは多分初めてかもしれない。
ロボは真境名が少なからず苦手だった。嫌いではないのだが、どこからともなく現れる突拍子のなさ
掴みどころない雰囲気といい、一人で相手をするのにロボは身構えてしまう。
いつもの定位置に座る真境名から、自分に送られる視線が違うように感じ戸惑って
少々ビビリながらも努めて冷静に聞いた。
「あのー、よっちゃんの姿が見えないんですけど」
「あぁ、ちょっと野暮用でね…」
意味ありげに微笑む真境名に、また無理難題な用事を言いつけられたのだろうと
ロボは胸のうちで思っていた。
「えーっと、今日は仕事の依頼ですか?だったら、ニコが来てから一緒に…」
「今日は違うのよ。あなたに用があるの」
「え、俺ですかぁ?」
「そうよ」
そう言ってスッと立ち上がると流れるような仕種でロボの隣へと腰を下ろす。
「大事な話があるの。そのために私が直接連絡をとって、
よっちゃんには出かけてもらって。……だから、ニコも来ないわよ」
ええぇぇ!?ロボの背中になんともしれない妙な冷や汗が流れる。

「ねえ、あなた、今の仕事やめて、うちで働かない?」
「は!?いや〜でも、ここにはとても優秀な文句のつけようのない名梨秀吉様がいるじゃないですかー」
予期せぬ申し出に得体の知れない恐怖を感じて、ロボは必要以上に名梨を褒め称えた。
真境名はふぅと溜息をひとつついて
「よっちゃんね…。かれこれ何年の付き合いになるかしら。
あたしね、あの子を弄ぶことにもう飽きちゃったの」
弄ぶ?飽きた?ロボの脳内であらぬ妄想が広がる。


86 名前:ロボの悪夢 2/3 mailto:sage [2008/01/25(金) 21:11:39 ID:Yr/98CjM]
「私の元で仕事するのは嫌かしら?かなり大変だものね。
色々とややこしい問題があるから、護衛にも神経遣うらしいわ」
真境名は更にそばにすり寄ってくる。
「結構たくましい腕しているし、ガタイはいいし」
そのか細い小さな手がロボの二の腕を掴んだ。と、思ったらするりと胸板に伸びた。
「ちょっ、どこ触ってるんですかっ!」
「あら、いいじゃない。減るもんじゃなし。好きだわ…若くて男らしい身体」
ロボは手を払いのけて慌てて椅子ごと後ずさるが
本来のヘタレな性分のため強くでることもできず控えめにまくし立てた。
「あ、あの、俺…いえ僕はダメです!僕にはご存知でしょうが、林二湖という愛する女性がいます!!」
「ええ、知ってるわよ。雇い主としてスパイ二人の間柄ぐらい把握しておかないと。
で、ニコとはどこまで進んでるのかしら?」
怯えながら座っているロボの耳元に唇を寄せ囁く。
「もう、最後までしちゃった?」
し、しちゃ…?なんてことを聞くんだ、この人は!?
ロボは焦った。焦って焦りまくって頭が混乱し、見つめる真境名の鋭い眼差しに、蛇に睨まれた蛙状態。
呪いでもかけられるのではないかという強迫観念にとらわれ
「はい…、し…ま…した」
つい、口を割ってしまった。
「あら〜、そうなの〜!鈍感そうな顔してあなたもやることはやるのね。
ふーん、ニコも女になったのねぇ」
何だか感慨深げな彼女をよそに、ロボは心の中でひたすら自分の不甲斐なさを嘆いた。
自分で自分を殴ってやりたいぐらいだ。無論、そんなことできるはずもないが。
これをネタに今まで以上に厄介な仕事を問答無用に押し付けてられて逃れられないんだ。
きっと、そうだ。ああ……。
うなだれるロボの肩にまたもや真境名の手が置かれ、ねっとりと服の上から這う。
「でも、ニコもまだ男女の生業なんてよくわからないはず。
その点、私は粋も甘いも掻き分けてきた人間……」
「うわー、もうホントやめて下さい!勘弁して下さい…。他のことだったら何でもしますから!」
「大丈夫よ。私、これでも夜のテクニックには自信があるのよ。さあ、ぼうや」
「うわー、助けて〜。ニコぉ」
逃げようとするロボだったが脚がもつれて、身体も思うように動かない。
まさか、知らないうちに催眠術でもかけられたのか!?恐怖から金縛りに!?
パニックに陥るロボに真境名の真っ赤な唇が迫ってくる。

ロボに貞操の危機が迫る!


87 名前:ロボの悪夢 3/3 mailto:sage [2008/01/25(金) 21:12:35 ID:Yr/98CjM]
「う゛〜ん……う゛〜ん…」
「おい、ロボ!おいっ」
「こんちは〜。あれぇ、どうしたの?よっちゃん」
学校帰りなのか制服姿で入ってきたニコに名梨は目の前のテーブルに
もたれて寝ている男を自らの顎で指す。
「寝てるの、ロボ?なんか、うなされてるみたいだけど」
「俺がちょっと野暮用すまして戻ってきたら、こいつがいてさ。もうずっとこの調子だよ」
全く、と呆れた表情で呟く。
「助けて〜とか、ニコぉ〜とか、今にも殺されそうな声だしてうなされてやがんの。
どんな内容かさっぱりわかんねぇよ」
「ふ〜ん」
ニコは向かいに腰を下ろすと頬杖をついて、相変わらず唸り声を上げるロボを眺める。
「う゛〜食べられちゃう…よ、俺…や…めて…」
胸元のポケットから出した煙草に火をつけようとして、名梨ははっとひらめいたように言った。
「ああ、あれだ!案外、おまえに襲われてる夢でも見てんじゃねーの?」
「うーわ、よっちゃんっ。なにその言いがかり。だいたい襲われるのはあたしのほう……あっ」
「んん〜?今、なんて言った?」
ニコはしまった。と、ばかりに作り笑いで必死にその場を取り繕う。
「ははは……。そうだ!あたし、お母さんに帰りに買い物頼まれてたんだった。
忘れるなんて、あわてんぼうさんなんだから!さ、帰ろっと…」
自分の横を足早にすり抜けるニコを片手で制して
「ほほう〜、なになにもしかしてお二人さん……ヤッちゃったんですかぁ」
「ヤ、ヤッたなんて、セクハラ発言だよ。よっちゃん」
「何がセクハラだよっ。チクショー、このバカオタクうまいことやりやがって!
羨ましいったらありゃしないぜっ!」
「う゛〜ん゛」
二人のにぎやかな騒ぎにもロボは起きる気配はない。


「なあに、楽しそうね」
いつのまにやら姿を現していた真境名が声を掛けた。
「あ、社長。ただいま帰りました。どこかお出かけだったんですか」
「ちょっとお散歩にね。まあ、まだ寝てるの?この青年は」
「どうしたんすか?こいつ」
「よくわからないけど、あなた達を待ってる間、お話してたらうつううつらと寝ちゃたのよ」
顔を覗き込んだ真境名はロボの頬をスゥーと指先でひと撫でして、
あらあら、可愛い寝顔だこと。楽しい夢を見てるのね。きっと」
不敵な笑みを漏らすと奥の部屋へと消えていった。
ニコと名梨は何故か不気味な悪寒を覚え軽く身震いをした。

それからもうなされるロボの唸り声は続き、しばらくやむことはなかった。
ロボの悪夢がフィクションだったのかリアルであったのか定かではない。


終わり


88 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/26(土) 02:41:00 ID:M+NGV4p4]
夢だとしたらロボは潜在意識で望んでたのかw
うなされながらでも眠り続けるロボって…w
GJ!

89 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/27(日) 03:30:45 ID:78odmH2e]
本編でのマキナさんとロボの直接の絡みって少なかったけど
必ずなんともいえない妖しい雰囲気だった気がする。相手が戸惑うのを見て楽しんでるような。

おもしろかった、GJでした!



90 名前:天使が来た日 1/2 mailto:sage [2008/01/28(月) 19:38:04 ID:KJuCoR0K]
エロは無し(手前?)
本スレにあった書込みを文章にしたいのがあって勝手ながら
ヒントにさせて頂き新婚バカップル?の2人を想像しました。
あと出て来る話題はスレでしか知らないもので適当に想像で書いてます。

* * * * * * *

 ある日の2人。
 ロボがいつもの様にフィギュア弄りに専念していると、隣りでテレビを見ながら
呟く人がいた。
「あ、この人この人!!」
「何が?」
 映画か何かの宣伝でインタビューを受けてる若手イケメン俳優が映っている。
「この人ってさあ、ファンの子だか何だかに握手しただけで『妊娠しそう』って
 言われたんだって!凄いよねー」
「何ニコあんなのが好きなの?」
 ちょっと面白くなさそうに上目遣いでニコに目をやりながら、ロボは口を尖らす。
「えー、別に興味ないし。ていうか妬いてる?」
「……べっつにいぃぃ〜!!」
 ニヤニヤしながらステテコパジャマのロボを眺め、ニコは頬杖をつく。
「ま、確かにロボじゃ無理だよねー」
「ちょっと!俺だって健康な男なんだぞっ!?その気になれば妊娠の1回や2回っ!!」
「いやそれはただのスケベ根性からで、そういうのとは違うっしょ」
 持っていたフィギュアをちゃぶ台に置くと、おもむろにテレビを消す。
「あーーっ!見てるのに、ロボのバカ!あっ、リモコン返してよ」
「決めた!今からニコを妊娠させて見せる!!」
「はあぁぁぁーーーーっ!?」
 ガバッ!
「ちょっ、まだ昼間!!」
「何とでも言うがいい」
「やだどこ触って……やっぱりただのスケベじゃない!!」
 キスをせがみながらニコの身体にのしかかる。
「いいじゃん。だってニコはもう俺の奥さんでしょ〜?」
「そうだけど……」

 もう少し2人でいても良かったんだけどなぁ。

 ニコの心の呟きは、ロボの熱に流されてゆく。




91 名前:天使が来た日 2/2 mailto:sage [2008/01/28(月) 19:39:17 ID:KJuCoR0K]
 明るい光が差し込む部屋に、幸せそうに優しい笑顔が並ぶ。
 今朝父親になったばかりの夫と若いその妻。

「ニコ、よく頑張ったね。お疲れ様」
 ベッドの端に腰掛けて、労いの言葉を掛けながら優しく髪を撫でて肩を抱き寄せる。
「うーん。確かに凄く疲れたよ、痛かったし」
「でも、皆ああやって生まれて来たんだよね。うちの母ちゃんもニコのお母さんも、
 みんなああして俺達をこの世に出してくれたんだ。女の人って凄いよなあ」
 ロボは生まれたばかりの我が子を眺めて目を細めた。
「ニコ、ありがとう。俺幸せだ〜」
「あたしも、幸せ」
 ニコの胸に抱かれた幸子の姿を眺めながら、満面の笑みを浮かべるニコをそっと
ロボは抱き寄せ、優しくキスを……。

「ふわっ、ふわあぁぁぁ〜」
「あ、泣いちゃった」
「(ガクッ)幸子ぉ〜空気読もうよ……」
「……新生児に何言ってんのよ」
 呆れるニコ。
 オムツを換えて。
「はいはい、おっぱいだね」
 まだぎこちない手付きで世話をするニコを、ロボは側で微笑ましく見つめている。
「まだ出が悪いんだよねー、よしよし」
「ふうん、そうなんだあ、大変だなぁ」

 チュッ、チュッ、チュッ…………。

「はいはい良い子だねー」
「…………」
「ん?どしたのロボ」
「…………ごくっ」
「!!……ちょっと、何考えてんの?」
「いや、ちょっといいなあと」
 羨ましそうにニコの胸元を眺めること数秒。無視を決め込むニコ。
「ニコ〜」
「だめ!何考えてんの!?やらしいなー」
「なっ、何て事をっ!俺は断じてそんなつもりじゃないぞ!これは未知の物に対
 する純粋な探求心であって決してやましい……」
「じゃあ黙れ」
「だって俺のでもあったのに〜」イジケイジケ。
「やっぱりただのスケベじゃん!!」

 ま、何だかんだ言っても幸せな須藤家であったりして。

* * * * * * *終


92 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/28(月) 19:54:02 ID:kkMIi3kD]
同じ松ケンなのにこの違いってw
ロボが興味を持つ気持ちは良く分かるぞ
まったく同じだった
でも一回で懲りた<母乳
GJ!

93 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/29(火) 02:31:07 ID:VZmSizMT]
⊂⌒〜⊃。Д。)⊃

94 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/29(火) 05:45:18 ID:RkovhRiK]
ちょw
実践した人がいたとは・・・

男ってバカでかわいいな



95 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/30(水) 20:21:42 ID:uzUoIbzR]
きっとこの作者も実践者じゃないのかw
女性だったら実践された人w

96 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/01/31(木) 23:21:24 ID:9DbFzUUW]
鯖移転したみたいですね。なぜかあがっててびっくりした…

えっと今さらなのですが、SSの保管庫というかまとめサイトを作ったらまずいでしょうか?
諸々の事情もあると思いますし、住人の皆様のご意見(いる、いらない等)を
お聞かせ願えたら嬉しいです。

投下予定のある方はお気になさらずどうぞ。スルーして下さい。

97 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/01(金) 01:37:08 ID:b6YzhYcQ]
「SSの保管庫というかまとめサイト」とはどんな物ですか?
聞き慣れない言葉なもので疑問に思いました。

98 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/01(金) 01:46:00 ID:O/VZOfIa]
所謂、過去ログ置場のことじゃないの?

99 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/01(金) 18:20:53 ID:mlYqJ9jS]
>>96
過去の作品が読めるという事ですか?
それはありがたいですね。管理が大変そうなのとパソ知識があまりないので
よくわからないのですが…

100 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/01(金) 23:52:24 ID:Sn8zPJiV]
いいですね!そのチャレンジ精神!



101 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/02(土) 02:00:37 ID:7UKGjsxT]
>>96
2chにおけるSS(レス)とは、流れ落ちるモノ。
それを無理に拾い上げるのは無粋な事と思います。

102 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/02(土) 16:11:49 ID:S5B69aVW]
96です。いろいろご意見ありがとうございます。
保管庫があるスレは結構あるのでこのスレもいい作品がたくさんあるし
まとめたら楽しいかなと思ったもので。
他スレは他スレ、ここはここと言われるかもしれませんが…
もう少し考えてみます。

あまりこの話ばかりするのもアレなので、このあたりで失礼します。


103 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/02(土) 20:14:38 ID:v7ZmvrzD]
正直、保管庫のあるスレがうらやましいなーと思っていたので出来るなら嬉しいです。

104 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/04(月) 02:23:13 ID:gxPbtWCM]
>>96          自分も保管庫あったら良いなと思ってた。
作ってくれたら、うれしいです!
恋愛スレの作品も入れてくれるとさらにうれしい。

一応「超私的創作サイト」さんの作品は
作者さんが公開しるので確認取った方がいいかも? 

個人的には応援してるよ!

105 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/04(月) 15:08:50 ID:JwLTTDOC]
節分から始まる話で、今のところエロなしで。

*林家*

「ただいま〜。あっお父さん居たんだ。」
「ニコ、おかえり。」
 テーブルに山のように積まれた豆を必死に数えている父・竹男。
「あっ!そっか!今日節分かぁ!私も食べよう。」 私もイスに座り豆を手にとる。
『ただいま〜』お母さんと一海ちゃんが帰ってきた。 「ただいま〜。あら、二人して豆食べてるの?」
 「ただいま。あ〜私も食べよっ!」みんな席に着き、豆を数えはじめる。
「(17…18)よし!」
「えっ?一海ちゃん。18粒しか取ってないじゃん?この前誕生日…。何ごまかしてんの?」
「ニコやっぱ聞こえてた?あ〜!年は取りたくないな〜。節分って現実に戻らされるんだよね。」
遠い目をする一海ちゃんに思わず「何で?」って聞いてしまう。
「自分の歳を思いしらされるんだよね…。まぁニコにはまだ分かんないよ!」
 隣で深くうなずくお父さん。
「分かるな〜。お父さんくらいの歳になると豆だけでお腹いっぱいになってさ。もう歳なんだから無理すんなっ!って言われてるみたいなんだよな〜。」
「ふーん。」…何で大人はみんな今日を元気に迎えられたことを、素直に喜べないのだろう。まぁアタシも素直じゃないけど。

106 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/04(月) 15:16:16 ID:JwLTTDOC]



ボリボリ… 一人、話に交じることもなく豆をひたすら食べ続けている母・雪江。
「ちょっとお母さん食べ過ぎじゃない?数えてる?」 心配した一海ちゃんが話かける。
「え?だって沢山あるし残したらもったいないじゃない!」 山盛りの豆に指をさして一海ちゃんに反論するお母さん。
「え〜!ないない!」
「一海いいんだよ。母さんはもう三百歳くらいだから。」「プッ!もぅ(笑)シ〜!」 一海ちゃんもお父さんも、もう聞こえちゃってるよ…。
「何?お父さん!私のことそんなふうに思ってたの?」(ほらね…)
「嫌ぁぁ!なぁ…?」
「なぁって…ねぇニコ?」「えっ?アタシは…。(二人ともアタシにふってこないでょ〜)」
 お母さん泣きそうじゃん。あ〜ぁ。
「もっ!信じられないっ!」 豆をお父さんに投げつけ始めるお母さん。
「痛っ!いて〜よ。痛っ!ちょっと」
「あ〜あ始まっちゃった。」二人の夫婦ゲンに呆れる一海ちゃん。
「お父さんの鬼!!」
「鬼顔はどっちだよ!」

「あ゙〜!!」ニコの叫びにみんな手を止める。


107 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/04(月) 15:26:08 ID:JwLTTDOC]


「ちょ!ちょっとストップ!!待ってて。」
 そう言うと、ニコは急いで二階の部屋に上がっていく。 そして"あるもの"を手に取るとすぐに戻った。 「ニコ何よ〜!」まぁ見ててっ!

「!!じゃーん!!」 ニコは背中に隠していた"あるもの"をみんなの前に出す。
「お父さんが去年の誕生日にくれたお面だよ〜。鬼だよ!豆まきにぴったり!でしょ?」 お父さんに手渡すと早速顔につけ踊りだす。
「懐かしいな〜。」
 更に呆れる一海ちゃん。「ニコ〜。このお面部屋に飾るの、怖いからやめてよね。」「え〜?いい思い出だし。いいじゃ〜ん!」
 怒っていたお母さんも冷静に話だす。 「そうね。急に思い出しちゃた。あの時のこと。(グスッ…)あの時のみんな元気かしらね?」 お母さんが静かになり内心ホッとする竹男。
「母さん。このお面で色んなこと言ったよな〜。」 お母さんの背中をさする。 「よし…今年もあの店に家族で食べに行くか〜!?」「そうね〜。」「ニコ?そうしよ?」 お母さんを慰めるためだと思うけど、必死になるお父さんと一海ちゃんがかわいい。
「あれはさ〜、みんなで食べたから良くてさ。美味しかったんだよ〜。」 私は相変わらずかわいくない発言をする。

『ハンバーグさん、フランス人、地蔵堂の社長、よっちゃん、シェフ、そして ロボ 』

「ニコはみんながいいのか〜。そ〜いや、あの変わった青年!ニコと同じ誕生日の〜。えっと…」
「ロボ?…のこと?」
 ニコは久しぶりにその名前を口にした。

108 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/04(月) 15:35:31 ID:JwLTTDOC]


「そう!ロボだったなっ!アイツふざけてるケド何か憎めないやつだったよな!最近みてないな〜。一海はもうつきまとわれてないのか?」
「知らないよ〜。ニコ会ってないの?」
「…うん。」
「へぇ。何だかんだ言って仲良かったのにね。あんたたち」
 ロボを最後にみかけたて、あの後私はすぐ塾に通いだして、今までの道はあまり通らなくなったから…ロボとばったり会うこともなくなっていた。
話したい時も、何て用事で電話していいか分からなくて、ロボから電話を掛けてきたら会ってやろうとか、思ってて。ロボどうしてるかなぁ?

「ねぇ〜ニコ聞いてんの?お父さんの話!」
 一海ちゃんに言われてハッとする。「ごめん。聞いてなかった。何?」
「だからなっ。今年のニコの誕生日。ロボ君も誘ってあの店で皆でしよう!」
「え〜!!ロボも?何で?一海ちゃんいいの?」
「いいよ。私は!それにみんなでしたほうが楽しいでしょ?」
まぁアタシがみんなでって言ったから否定は出来ないな…
「じゃあ決まりだな!お母さん予約しておきなさい。」
「バカね!お父さんったら!まだ3ヶ月も先のことよ。早いわょ!」
アハハハッ て、その前にサラリーマンと友達ってところに心配しろよ!!ロボだから許されるのかなぁ。

109 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/04(月) 15:47:46 ID:JwLTTDOC]


私の誕生日はロボの誕生日でもあって、ロボも一緒に今年はハンバーグを食べようと何故か決まってしまった。
ノンキなお父さんとお母さんはさっきのケンカが嘘のように、楽しそうにあの日の思い出を語ってて。

私と一海ちゃんは部屋でテスト勉強をし始めた。
私はどうやってロボを誘おうか考えていて勉強はしているふりだった。

「ねぇ。ニコ?」
「何?一海ちゃん?」
「正直に答えてね。 ニコあのオタクのこと…好きだったでしょ?」
シーン…
「何言ってんの〜?」 ヤバイ動揺しちゃうよ。
「お姉様だよ〜!分かるよ。ニコの気持ちくらい。どうして会ってないの?」
「か、一海ちゃん反対してたじゃん!変だよ〜。」  焦るな私!!
「だってね〜。ニコには何にもしないまま諦めてほしくないからさ。」
「一海ちゃんも何かあった?」「私のことはいいの!まさかあのオタクにフラレたの?まぁニコが告白するタイプには見えないな〜。」
「フッ、フラレ…¥☆#※!とにかく、ロボとは忙しいから会ってないだけ!」
「フーン・・・ならいいケド!誕生日楽しみ〜」
 ははぁ〜ん!だから一海ちゃん、誕生日OKしたな…。アタシってダサい…。 もう勉強どころじゃないな…。一海ちゃんに色いろ聞かれる前に寝よう。よし!
「私さ。もう寝るね。」
 焦って教科書の山を崩してしまう。
「(笑) おやすみニコ」

 笑わないでよ。あ〜あ、とにかく、何とかは急げって言うし!明日ロボに電話してみよう!いや!?偶然を装おって会いに行くとか。
ロボのことを、ベッドの中で眠らずに、ずっと考えてた。

 ロボ番号代えてないよね? ちゃんとご飯買えるお金あるかな? まだテレクラ通ってて、彼女出来てたりして…

ロボに聞きたいことも、知りたいこともいっぱいあるよ。だからこのキッカケを大事にするから、
だからロボ。また私と一緒に時間を過ごして。


つづく… 予定


110 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/04(月) 23:50:24 ID:M7vs8bNI]
>>105-109
二人はどんな出会いをするんでしょうね。
また二人で冒険して欲しいです。
GJ

>>104
良く分からないので>>96さんのご判断にお任せします。
いちいち削除したりするの面倒と思われますし。
ただサイトのものと比べられると恥ずかしいかも。
誤字脱字だらけで。(^^;
他の作者さんのご意見はどうなんでしょうか?



111 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/05(火) 00:02:31 ID:a+k/q1G0]
>>105
自分が覗いてるスレの中でココだけが節分ネタを投下していた。
ありがたいね〜。

ニコが家族の戯れに積極的に参加、
それにハンバーグさんのお面を使ってるのに嬉しくなったよ。


112 名前:続き… mailto:sage [2008/02/08(金) 02:40:11 ID:7gjcOhh+]
 節分の続きです。

 ロボと連絡をするキッカケが出来た。 本当はずっと連絡がとりたいって思っていた。
 地蔵堂の社長が言ってたように、別れないと新しい出会いはないのかもしれない。 でもロボは違う。私にとって取り替えのきかない存在なんだって離れて気付いた。
 学校帰り、そんな事を考えてたらいつの間にか家に着ていた。

「ただいまぁ」
 早く着替えてロボに会いに行こう。

 二階の部屋のドアを開ける 「あっ、一海ちゃんいたんだね〜。」 勉強机に何かにとりつかれたように昨日から向かっている。

「いたわよ。あ〜疲れた。ニコは?今日も塾?」
「ううん。今日は塾じゃないよ。違うよ。」
 鞄をおいて、制服を脱ぐ「"ロボ"に会いに行くんだ?」
「な!何で??」
「顔に書いてあるよ」 思わず顔を隠してしまう。
「(笑)ニコにも可愛いトコあるんだね〜。」
「うっるさいな〜。そんな事言ってると、一海ちゃんまたテストで赤点とっちゃうよ。」 「はいはい。私は勉強しますぅ!」

 タンスの奥からロボといた時着ていた服を取り出す。
 「うん。これにしよう!」 あれから、身体も成長したから似合わなくなってしまったけど、 この服のほうがロボが私だって気付いくれると思った。

「まぁ、あんまり可愛いくしてくとあの変態、怖いもんねぇ。」
「も〜!ロボはオタクだけど変態じゃないよ。」

 きっとそれは今も変わってないと思う。


「行ってらっしゃい。」
「うん。行ってきます」

 まずはいつもの公園に行った。次に駅前。耳でも探したけどいなくて、
 迷ったけど、テレクラにも行った。「来てないんだ。よかったぁ。でも、もう彼女とかいたりして。」
 すぐに不安になってしまう、弱気な自分が嫌になって、遠回りしてたけどロボの部屋に行こう。

『正々堂々正面からいってやろうじゃない!』



ロボの部屋の下まで来て、「いや、やっぱり電話してからにしよう。うん!それがイイ!」 自分と会話して納得した。

113 名前: mailto:sage [2008/02/08(金) 08:26:46 ID:7gjcOhh+]
「で、ロボさ、何で家の中入ってんの?」

「ひどい。電球切れたって言うから、かえてあげてたんでしょ?」
 あぁ、ウチの家族にいいように使われたのか…


「ちょっと、ニコ〜寒い。車入ろ?風邪引くぞ〜。」
「あぁ。うん。」



「ロボさ、ケータイどこで拾ってくれたの?」

「実はさ。照蔵の前で拾ったんだよね〜。中少し見たらニコのだったから。」
「まっ、まさかみんなに言ってないよね?」 テレクラなんてバレたら…
「言えないよ〜。だから忘れてったって言っといた。でもニコさ。あんなトコで何してたの?」

「えっ?たまたま通っただけだよ…。あ〜あの時か〜!!」 ロボに会いにって言ったら調子こくだろうし、黙っておこう。

「…て、ロボまだテレクラ行ってたんだね。」
 ロボがコクリと頷く。
「じゃあまだ1人なんだ〜。」
「まっ!まだチャンスはある!バレンタインだってもうすぐだしさっ!」 拳を高く掲げてるロボ
「ふ〜ん。貰えんの?」
「貰えMAX!!」
「誰に?」 自信満々に言うからムカつく。
「えっ?アパートの管理人さんでしょ。会社の掃除のおばちゃん。あとは…」
「ああ…。何か聞いちゃってごめん…。」
 ロボがうなだれる。

「そ〜だ!ねぇロボ!うちの家族からきいた?誕生日のこと。」

「聞いた〜!俺も交ぜてもらえるんだ〜。ありがとうニコ。」 私は何もしてないんだけど、
「空けておいてね。まっどーせ埋まらないかぁ。」
「反論できない自分が悲しい〜。」


 ロボがひとりのままで少し嬉しかった。

「可哀想だからさ。バレンタインも、一海ちゃんと作る分、余ったらロボにもあげるよ。」

 何にも答えないロボ

「ロボ〜?聞いてるの…て、何鼻血出してんの?ほら!」
 鞄の中から、ロボにハンカチを差し出す。

114 名前: mailto:sage [2008/02/08(金) 08:52:26 ID:7gjcOhh+]
「あ、恐縮です。」
 ハンカチを受け取り、鼻血をふくロボ

「も〜、一海ちゃんと作るだけでさ。私があげるのは、私が作るんだよ。」

「でも俺さ。チョコよりカレーがいいなぁ。ニコの作ったカレー。美味しかったな〜!」
 カレーって、まぁ茶色いけどさ…

「そんなの、カレーぐらいいつでも作って…あげるょ。」
 …いつでも会えるって思ってたのは、私か… ロボはどう思ってたんだろ…。
「あとっ、後ね。カレー以外も、ロボと会わなくなってから、結構作れるようになったんだ〜。
ロボはさ。あの時から何してたの?全然連絡なかったしさ。」

「俺は、ニコとスパイしてた時よく仕事休んだり、さぼったりしてたからさ〜。 課長にすっごい目つけられてたんだよね。だから必死に働いてたの!!」
「で、休みは癒されにテレクラに行ってたんだ〜。」
「うん。……じゃあニコは?塾行ってるって聞いたけど。」

「そう。塾くらいかな?私はそのくらいだょ。変わりたいって思ってるのに、何にも変わってないょ。」
 
 やっぱロボには弱いトコもみせられる

「無理して変わることない!」 ロボ…

「それに俺寂しかった〜。俺頼られた事なくてさ。 でも、ニコは俺みたいなオタク、いっつも頼ってくれてた。」
 私だって寂しかったょ。ロボに頼りたかったょ。

「私は、今でもロボのこと頼りにしてるよ。 ロボの呪文!あれさ、効くみたい。」

「そっか!離れても、俺ニコの役に立ってるのかぁ!良かったぁ〜!」

 ハンドルにアゴを乗せて夜空を嬉しそうに、眺めてるロボをみてると やっぱり、ロボといたいって思った。 いつか本当に離れてしまう時が来るのなら…


「ロボさ、携帯変えてないよね?」
「うん。だから変に遠慮すんなよ〜。」


「そっか。あ〜、私帰るね。何かまだうるさいみたいだしさ。」
家からお母さんがまだ、ギャーギャー言う声が聞こえてくる

115 名前: mailto:sage [2008/02/08(金) 09:50:50 ID:7gjcOhh+]
 クルマを降りたら、外は息が白くなるくらい寒い

「うわっ〜。さむ!」

「ニコ風邪ひくなよ〜。」「うん。じゃあまた今度!しょーがないからカレー作りに行くよ。」

「じゃあ、しょーがないから、2月14日開けといてやる…(笑)」
 久々に、本当に大笑いした。
「じゃあね、私行くね。」
「お〜!じゃあなニコ。MAXスタート!!」
 走り去ってくロボの車を見届けて、家に戻る。


 相変わらず騒がしい家
「はぁ…。一海ちゃん何で隠れてんの?」
 晩ごはんだと思うけど、カレーを持ってる

「ニコ〜。二階逃げよっ!」 背中を押されて階段を上がる。
「ちょっと待って!ロボのこと謝らないと…。」
「もういいの!!今はも〜別の話題の夫婦ゲンカなの。」
「え〜!訳わかんないよぉ。」
 本当に、ロボと一緒で飽きない家族だと思う。

「帰ったんだね。晩ごはん食べていけば良かったのに」
「でも、一海ちゃんも迷惑だったでしょ?ごめんね。」
「全然!お父さんのくだらない話に、相手してくれてたし お母さんの料理も手伝ってたし お陰様で私は勉強がはかどったし。」

カレーを食べながら、単語帳をめくる一海ちゃん。

 ロボ、だからカレ−がいいって言ったのかぁ。何だ〜。

「で、言ったの?ニコの気持ち。まさか告白されたとか…」
「も〜そんなわけないじゃん。それに、されるわけないしさ。」

 一海ちゃんみたいにがっつかないよ

「何だ〜。あのオタク、ニコの話ばっかりしてたからさ。 じゃあ今年のバレンタインはニコの人生初の本命チョコかぁ〜。」

「もう、チョコはあげないよ。今年もむ〜ちゃんと友チョコだよ。」
「チョコ『は!』ね」
 も〜!一海ちゃんには、絶対秘密にしよ。

116 名前: mailto:sage [2008/02/08(金) 10:03:51 ID:7gjcOhh+]
「私が中学生の時は、格好いい先生にあげてたけどな〜。 まぁ、もしロボとニコがそうなったら、オタクな上にロリコン!だもんね〜。きついな…」
 ロッロリ!ってちょっと!
「一海ちゃん!声が大きいよ。お父さん逹に聞こえちゃったらどうすんの。」

 も〜、何でロボ一海ちゃんみたいな子がよかったんだろ。

「そういえば、静かだよね。ケンカ終わったんだ。」
 全然気が付かなかった。落ち着いたのか、お腹も減ったし、ご飯食べよう。

「私、下行くね!」
 ガタガタ…パサッ 廊下で何か音がして、扉を開ける。「ぉ、お父さん?大丈夫!」 洗濯物をひっくり返してようで、カゴを頭からかぶっていた。

「お、お父さん!聞いちゃった?」
「な!何を?ほら…ニコご飯だぞ〜。一海も下で食べなさい。」 洗濯物を集める背中がいつもより小さくなっている
「本当は聞いてた?」
「聞いてない。」


その後お父さんは、分かりやすく一言も喋らなかった。 「やっぱり聞いてたんじゃん。」


 お風呂上がりに牛乳を飲みに台所に入る。薄い明かりの中で、お父さんが一人でお酒を飲んでいた。



「あの…お父さん。ごめんね。でもさ、勘違いしないでね。変わってるけどさ、ロボとはそんなんじゃないよ。 それだけ…おやすみなさい。」

「…おやすみ。」
 本当にごめんね。

117 名前: …end mailto:sage [2008/02/08(金) 11:10:56 ID:7gjcOhh+]
 その頃ロボは
「ハックシュン!誰かが俺の噂してる〜。ハッ…クシュッ!!風邪かな〜。」 ひどくなる前に布団に入って、窓から見える小さな夜空を見上げて思う
「ニコも風邪引いてないといいけどな〜。」


 ニコも、今日1日を思い出して寝れずに、星を眺めてぼぉ〜としてたら、お父さんの話が聞こえてきた。

「なぁ、お母さん。今年、一海とニコに貰えるかなぁ。バレンタイン。」
「何?お父さん。お返しが嫌だからって、昔辞めたんじゃない。忘れたの?」
「…そうだっけ?ありゃりゃ〜。何か、一海もニコもいつのまにか成長してんだもんな〜。」
「泣いてるの?あら嫌だ。も〜、須藤さん帰ってからお父さん変よ?」

「須藤…。その名前、言った?あ〜言っちゃったか〜。くっそ〜!!」

 静まりかえった、冬の夜空にお父さんの叫び声だけが、むなしく響いて聞こえた。


 今日の夜空は、星が儚く輝いていた。やっぱり、ロボに似ていて、眩しくて、まぶたを閉じた。

 きっと、空は色んな人の思いを知ってるんだろうな。




 お父さん…ごめんね。今年はお父さんにチョコ作るから、
 だからロボとのことも、信じて見守っててほしいんだ。 私も自分の気持ち、ちゃんと信じてあげるようと思う。 だって、私の心の中は私しか知らないんだから。
 だから、今度はちゃんと言うね。



 『好きだよ、ロボ』


おわり

下手ですみませんでした。

118 名前:が抜けてた!! mailto:sage [2008/02/08(金) 12:37:25 ID:7gjcOhh+]
続きのです


「ケータイで掛けてから……ない!ケータイがない!落とした?」 鞄の中を探してもなくて、来た道を戻る。


「ない!ない!な〜い!」 …絶対お母さんに怒られるよ。

「家に帰って一海ちゃんにケータイにかけてもらおう。」

 結局ロボにも会えなかった。(はぁ〜)

 ------------------

 家の前まで来ると、薄暗い電灯の下に、見覚えのある車が止まっていた。

「ん?この車って、やっぱり!…ロボの、だよな?」
 急いで玄関のドアを開ける。お父さんのとは違う大きな靴…ロボだ!
 「ただっ!ぃま…」 洗濯物をもったお母さんがいきなり出てきてからビックリする。
「あらお帰り。須藤サンにあがってもらってるわょ。ケータイ忘れていったから届けに来っ『ニコ〜!はいケータイ!』 久し振りのロボ。相変わらずダサイベストに斜めかけの鞄、変わらない笑顔で私をみてる。

「あ〜、ありがと。」

 二人の久々の再会を邪魔するお母さんの声。

 「ちょっと!ゆっくり出てきなさいよ!あ・ぶ・な・い〜!痛いじゃないのよ!」 どうやらロボがいきなり出てきてから、ドアにぶつかって飛ばされたらしい。
「お母さん大丈夫?」「すみません!」ロボも土下座をしながらずっと謝っている。
 でもそれが何だか懐かしくて、笑えてきて、
「何?何笑ってるの?」「母さん。はいはい。行くよ。」お父さんに連れられて部屋に入ってくお母さんを見とどける。

「ニコ私に似て可愛くなったでしょ?」一海ちゃんがロボに聞く。
「うんうん!ニコ大人になったな〜!」
 そう言って私の髪をクシャクャにする。
「やめてよ。ちょっとっ!」 (一海ちゃんがみてるのに) ロボのバカ

「ロボ。外で話そう!」 「え〜。寒い〜!」
「いいから来るの!!」

 ロボの鞄を引っ張って外にだす。



119 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/08(金) 23:20:37 ID:9wguZqzL]
途中、えらく話が飛んだなと思ってたら抜けてたのかw
ニコパパがいい味だしてるなー
またいいネタあったら書いてくださいね!

120 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/09(土) 23:47:05 ID:D0jIz1wE]
先日、保管庫の件でご意見いただいた96です。
一応まとめwikiという形でサイトたちあげました。

以後、興味ない方はスルーして下さい。
まとめwikiとは簡単に説明すると(詳しくはググって下さい。すいません)
みんなでまとめましょう!という他力本願なサイトです…
どなたでもSSを保管できて、誤字・脱字の修正ができるというものです。
その分、荒らしにもあいやすい危険性もありますがセクロボファンには
そういう人はいないと信じてすべての人に開放しています。
長々とすいませんがよろしくお願いします。

ttp://sexyvoice.matome-site.jp



121 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/10(日) 00:15:09 ID:NXcDwY1e]
>>120
SS保管庫の立ち上げ御苦労様です!
楽しみにしてたのでうれしいです。
またSSがんばって書きたいと思います。
みんなでこのスレ盛り上げていきましょう!

122 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/10(日) 08:26:04 ID:Es/I1EZI]
>>120
お疲れ様です。
ありがとうございました!
ついにって感じですね。嬉しいです。

123 名前:96 mailto:sage [2008/02/10(日) 16:25:58 ID:MLXgE97c]
何度も失礼します。
>>120のアドレスでは閲覧のみとなってしまいますので
↓こちらから入っていただけたら編集を行えます。

ttp://mywiki.jp/fiction/セクロボSS@まとめサイト/

スレ汚しすいませんorz

124 名前:甘い予感 1/5 mailto:sage [2008/02/11(月) 03:51:57 ID:qEic5X4n]
ニコロボ+むーちゃんのお話です。バレンタインネタ少々。エロなし。

××××××××××××

たくさんの人が行きかう休日の街へ俺は一人繰り出していた。
にぎやかな家族連れはもちろんのこと、あたりまえのように手を繋いですれ違う男女の姿も。
そういえば、もうすぐバレンタインか。どうせ自分には関係のないイベントだけど。
菓子メーカーが仕組んだ策略に踊らされる俺じゃないっ!!
…なんて勇ましいことを言ってはみても義理チョコぐらいは貰えるよなぁと、もう一人の自分が囁く。
俺って情けない。
まあいい、そんなことより今日の俺は、テンションMAXなのだ。
前々から欲しかった幻の限定フィギィアが、今自分の手にある。
いつもならムカつくイチャイチャベタベタカップルも、今日は寛大な気持ちで許してやろう。
ささっ、早く帰ってじっくり観賞しなくては!
浮かれ気分の俺に、ふいに耳に馴染む声が聞こえた。
「ロボ!」
振り返るとそこにはニコと少し後ろにもう一人女の子が立っていた。
「何、してんの。買い物?」
「うん、そう。二コも?」
うん、と頷いたニコからむーちゃんと呼ばれた女の子が
「こんにちは」
と、明るい笑顔でペコっと頭を下げた。


「須藤さんて、ほんとにおもしろい人ですね」
向かいに座る彼女が珍しいものでも見るように俺に言った。
「そうかな。自分ではそう思わないんだけど」
「ニコが言ってたとおりちょっと変わってる」
楽しそうにケラケラ笑う彼女はニコの一番の友達で
『お茶でも飲みませんか?』そう言って誘ってきたのは彼女のほう。
ニコは、はあ!?って、あからさまに迷惑そうな顔してたよな。全く可愛くない。
えーっとそういや名前なんて言ってたっけ?
前に親友なんだってニコが言ってて、フルネームを聞いたことあったけど思い出せない。
ニコはむーちゃんって呼んでたよな。確か。
さすがにあまりよく知らない子をいきなりむーちゃん呼ばわりするのは気が引ける
彼女も戸惑うだろうし。でも、名前がさっぱり浮かんでこない。
しかし、結構美人さんだよなぁ。彼女。
女の子と二人きりでお茶を飲むなんてニコの友達とはいえ妙な緊張感が漂う。


125 名前:甘い予感 2/5 mailto:sage [2008/02/11(月) 03:53:09 ID:qEic5X4n]
ニコは直前に寄ったお店に忘れ物をしたらしく、慌てて取りに戻ったきりまだ帰ってこない。
なんかニコがいないと落ち着かない。
「それにしもニコ遅いなぁー」
「うん、そうだね」
そんな俺を気にする素振りも見せず彼女は窓の外を気にしている。

しばらくして彼女が
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
口にしていたジュースのストローをはなすと俺に尋ねてきた。
「ん?なんなりとどうぞ。但し難しい問題提起はなしで」
はいって、にっこり微笑んで
「須藤さんて、ニコのこと好きですよね?」
直球ど真ん中な問いに飲みかけていたアイスミルクを思う存分、噴き出した。
「げほっ…ごほっ…っ!な、なに…を!」
「わー、大変!」
慌てた口調のわりには冷静にテーブルの上を拭いて
「見てたら、わかるんですよねー。ニコ本人は気づいてないみたいだけど
鈍感というか恋愛に対して奥手というか」
そう言いながら、またストローに口をつける。
「あのっ!俺は…その……」
しどろもどろで何かを言いかけたけど、すべて見透かされたような大きな瞳から逃れられなくて
結局何も言えなくなってしまう。
そんなにバレバレなのか?俺は心の中で溜息をついて
「むーちゃ……、えっと君は変だとか思わないの?俺みたいなのがさ年下のコを好きだなんて」
俯いたまま、今、感じている思いを素直にぶつけてみた。
むーちゃんでいいですよって、笑うと
「んー、少なくとも私はないです。
月並みなセリフだけど“愛があれば年の差なんて”ですよ。
恋愛なんて理屈でするものじゃないと思う。大切なのは二人の気持ち。それだけだと思います」
「はあ」
すごいなぁ…、この子。物凄く大人の答え。年上の自分が頼ってしまい気分になって
「ニコは俺のことどう思ってるのかなぁ……」
ずっと胸にあった疑問をついはずみで言葉にしてしまった。
言った後でやばいって、顔をした俺に
「ニコ、今年バレンタインにチョコ作ろうかなあって言ってたんですよー。
今までこういうイベントごとは全く興味なしだったのに、誰にあげるのかなぁ。ねぇ、須藤さん?」
「へっ?」
彼女はイタズラっぽい表情で、物凄い間抜けな顔をしているだろう俺を見ていた。


126 名前:甘い予感 3/5 mailto:sage [2008/02/11(月) 03:53:49 ID:qEic5X4n]
「もう、むーちゃんてば、今日は一日つきあってくれるって約束だったのに」
メニューを広げながら、ニコは少々不満げのようだ。

やっと戻ってきたニコに彼女に突然
「ごめん、ニコ。今彼氏から会いたいってメールが来たの。
この埋め合わせは必ずするからさっ。行っちゃダメかな?」
もう、しょうがないなあって口を尖らせながら、送り出す。
いつメールなんてあったんだ??一緒にいたのに気づかなかったんだけど。
展開がみえない俺に彼女は去り際、ニコにわからないようにウィンクで合図をした。
ああ、気使って二人にしてくれたんだ。
やっぱ、大人だわ彼女。ありがとう、むーちゃん。

「友情より恋愛か…」
ニコが独り言のようにポツリと呟いた。
「ロボもそう?」
いきなりな質問に戸惑いつつ
「時と場合によるかも。でも、むーちゃんはすごく友達思いじゃないかな」
「……………」
ん?なんだなんだ。急に黙って。
「むーちゃんって、美人でしょ?性格もいいし」
「え?あー、まあね」
しばし沈黙が続いて、ニコはメニューに視線を落としたままで
「案外ロボの好みのタイプなんじゃない?スラリ系でさ」
「まあ、そうだけど。俺、別に今はスラリ系とかごだわったりしないよ」
「…ふーん」
なんかニコの言い方に違和感を覚える。
あれ、もしかして……?
長い黒髪が首筋から肩へふわりと揺れるさまを眺めながら、
さっき彼女が言ったことを思いだしていた。


「ニコが好きなんだったら、早く捕まえとかないとダメですよ」
「…どうして??」
疑問符が飛びまくる俺に、仕方ないなあって顔をして
「ニコって、結構モテるんですよ。高校入学してからすぐ立て続けに二人から告白されてたし」
「そ、そうなんだ…」
「二年生になってからもあったし、ついこの間も私の彼氏の友達がニコのこと気に入って
付き合いたいって言うから、一応四人で出かけたんですけど…」
それって、いわゆるWデートってやつ!?ニコからそんな話聞いたことなかった…。
「もちろん、ニコにその気はないから断りましたけど」
だから、と彼女は続けて
「ほっといたら誰かに横からさらわれちゃいますから。もしもってこともあるし」
年下の先生に恋愛指導されてるみたいだな、俺。
「でも、ニコだったら大丈夫なのかな。ニコが自分からする男の人の話って、
唯一ただ一人だけなんですよね。……“ロボ”って名前の人」


127 名前:甘い予感 4/5 mailto:sage [2008/02/11(月) 03:54:24 ID:qEic5X4n]
「ミルクティー下さい」
ハイとにこやかに去っていく店員からちらっとニコに視線を向けて
アイスミルクじゃないんだ。なんてことを考えていた。
一緒飲んでくれる日はくるのかな?
今の微妙な距離が、つかず離れずな関係が心地よいなんて思ったりもするけど
ずっとこのままでいたら、俺のほうがハラハラドキドキしっぱなしでニコに置いてかれそうだよ。
むーちゃんの話を聞いたら、余計にそう思ってしまった。
そうだよなぁ。ニコがモテないわけないよな。俺と違うんだから。
なんで、そのことに今まで考えが及ばなかったんだろ。
ニコはずっと子供のままじゃないのに。
少しばかり生意気で意地っ張りだけど、とても魅力的な女の子の存在に自分の気持ちが
変わってきたように他の男が気づかないわけはないのだから。

「……ボ、ちょっとロボ!」
「え、あ、なに」
ぼーっとしたまま、生返事の俺に
「さっきから呼んでるのに、あたしの顔に何かついてるの?じーっと見てさ」
「いや、別に」
何、それって少しふくれっ面で。
ほっぺた膨らませた顔が可愛いなんて言ったら、ニコのことだから怒るだろうな。きっと。
今日はこんな顔ばっかり見ている気がする。
じゃあ、何よって首をひねったニコがああ!とばかりに手を打って、
「ロボ。心配しなくても大丈夫だよ。ロボの分も一緒に払ってあげるよ。
そのくらいはあたしもってるし、今日は特別におごってあげるから!」
見当違いすぎる。まあ、貧乏なのは年中だからニコがそう思ってしまうのは仕方ないけど。
「あーバカにして!、それぐらいあります〜」
「へー、ロボ、すっっごい!お金もちじゃん♪」
くっそー、憎まれ口ばっか聞いて。ったく!
少しぐらい色っぽい考えは思い浮かばないのかってーの!
……だけど、これが俺とニコのなんだよな。
たとえこの先二人の関係が変わったとしても、このバカバカしいやり取りは続いていくんだろうな。


128 名前:甘い予感 5/5 mailto:sage [2008/02/11(月) 03:55:03 ID:qEic5X4n]
「ねえ、ロボ。もう帰ろっか」
「えー、どうして?ニコ行きたいとこあるんじゃないの。俺、付き合うよ。どうせヒマだし」
「うん、でもさ…」
そう呟くと俺の隣に置いてあるものを指差して
「ロボの宝物でしょ。大事に抱えてたし、早く帰って家で待ってる皆に紹介したいんじゃないの?」
「なんで、わかっ…」
「ハイ、決まり。行こ」
有無を言わせずさっと椅子から立ち上がるとすたすたレジへと向かって行って俺は慌てて後を追う。
強引に決めたようにみえて、それはニコなりの優しさ。
「ほらっ、早く!」
「あ、待ってってば!支払いは俺がするからねっ」
それだけは譲らなかった。


さっきまでひとりぼっちだった通りを今はニコと一緒に歩いている。
何気ない会話をかわしながら。
「今日は晩御飯、何食べるの?パンの耳?」
俺の行動パターンはニコにはお見通しだ。
「はは…、まあね、コレにつぎ込んじゃたからね…」
「ロボは好き嫌いとかなかったよね?」
「うん。よく食べる子はよく育つ!子供のころから言われてたんだよね〜」
「甘いものも平気?ケーキとかお団子とかチョコとか」
「へーき、へーき」
「そっか」
素っ気無く言ったニコの口元がちょっとだけ綻んでいるのが見えて
俺もつられて、ニヤケそうになるのをバレないように顔を背けてMAXロボの歌を口ずさむ。
『なんでそんなこと聞くの?』なんて詮索はしなかった。する必要はないと思ったから。

他の人には言えるストレートな愛情表現がニコにはなかなかできないでいた。
ニコの俺に対する信頼を壊してしまいそうだったから。
でも、誰の手助けもMAXの力もかりず、自分自身の気持ちを信じてみようと思う。
一歩踏み出すのは俺から、そう決意して。

そう、すぐそこまで近づいている二人の距離が縮まる甘い予感。


終わり


129 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/11(月) 19:49:13 ID:LkpdyuRf]
幸せな二人の未来が見える話
良かったぁ
GJ!

130 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/11(月) 19:52:44 ID:9OIpkCVn]
GJ!バレンタインがくるねー
ニコははたして本気モードで渡せるんだろうか?誰もくれないだろうから、しかたないからあげるってなスタンスかな?



131 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/11(月) 20:08:54 ID:LLKzr9pb]
ニコの「誰も言ってくれないだろうからおめでとうって言ってやった」とか
可愛すぎる。
ツンデレの神が降りてきたかと思った
バレンタインデーもきっとそんな感じ(でも本当は徹夜でチョコ作ってたりしそう)

132 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/11(月) 22:34:37 ID:2VxmU8W3]
>>120
保管庫の立ち上げありがとうございました!

もうこのまま電子の海に消えゆくのだと思っていた
かなり初期に投下したSSが保管されてて嬉しはずかしです。

133 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/11(月) 22:49:48 ID:LkpdyuRf]
>>132
あ、追加されてる
遂に自分のも保管された
滅茶苦茶(/ω\)ハズカシーィ
>>120 GJ!

134 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/12(火) 20:48:12 ID:gtyzaPfH]
まとめサイトのBBSに書き込めない…(ノД`)シクシク

135 名前:96 mailto:sage [2008/02/13(水) 00:59:44 ID:5OR2/iGn]
書き込めませんか?あれ、どうしてだろう…
もしかして、書き込めているのは自分だけ?
どうしてもだめな場合は別の方法考えてみます。すみません。

136 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/13(水) 01:47:59 ID:pgGIETc0]
>>135
自分は書き込めたよ。
ちくしょう、保管庫なんてスルーしてやるって思ってたのに・・・
気になってしょうがないじゃないか!

137 名前:名無しさん@ピンキー [2008/02/13(水) 05:02:18 ID:fI/JIWSr]
自分も書き込めませんです。
お礼を書いたのに〜

138 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/13(水) 14:17:27 ID:vvS8qAiQ]
朝、書き込めましたよ。


普通にコメント書いて、表示されてる文字を入力とあったから、
それを入力して投稿ボタン押して無事okでしたよ。

139 名前:2月14日 mailto:sage [2008/02/13(水) 15:04:13 ID:uuStFdFc]
エロなし、バレンタインです



 明日は2月14日
 そうバレンタインだ

 今日は女の人たちがチョコを買ったり作ったりしていて 私はいつもの通りロボの部屋のベッドで
 朽ち果てそうな手すりに肘をかけて 町行くそんな人たちの姿を眺める。

「ニコ〜。窓しめて!寒いでしょ。」
 台所でミルクを温めているロボが怒る
「うん。でもさ、イイ匂いがしたんだ〜。チョコの匂い」
 窓をしめて、ベッドに座る
「あ〜、明日はバレンタインだからな〜。」

 バレンタインなんて今までのアタシには全く関係がなかった

「みんな、素直でいいよね〜。ちゃんとチョコっていう形にだしてさ。

 ホットミルクが出来上がったようで、ロボがちゃぶ台から私を手招きをする

「そうかな〜。素直じゃないから、形に頼る部分もあるんでしょ?」

 でも、何もしようとしない私よりマシだ と思いながら、ちゃぶ台に座ってホットミルクをみつめた

「まぁ…、ロボはさ。楽しみじゃないの?」
 男の人ってどう思ってるんだろう
「う〜ん。義理しかもらった事ないからな〜。」

 あ"ぁ…そうか。

「しょうがない!明日はロボにあげよう!」

「ブッ!義理ならもういいよ。お返しとか面倒だしさ〜。」
 ミルク吐きだすことないじゃん。…バカロボ



140 名前:2月14日 mailto:sage [2008/02/13(水) 15:09:30 ID:uuStFdFc]
 =次の日=

「今日も、何事もなく終わったな〜。」 MAXロボのビデオを見終わって1人部屋で頬杖をつく。

ガチャ
「ロボ〜いる?」
 ニコ〜??寒そうに首をすくめたニコが玄関にたっていた。
「どうしたの?こんな時間に、まぁ入りな。」

「ううん。すぐに帰るからここでいい。…チョコ作ったんだ。だから届けにきた。」
 そう言って綺麗にラッピングされた箱を取りだす

「いいって言ったのに…。でも、ありがと!頂きMAX!」

「じゃあ帰るね!」
「送ってく!危ないしさ。」

「いいよ〜。大丈夫!明日も仕事なんでしょ?本当にいいからさ。」

「うん…。ニコ気をつけてね?ちゃんと家着いたら連絡しろよ?」
 じゃあ階段の下までって言ったけど、つい追いかけてしまう
「ハイハイ。分かったから、ばいばい!」
 大きく手を降ってニコを見送る



 部屋に戻ってさっそくニコから貰ったチョコを、ちゃぶ台に置いて眺める

「やっぱり嬉しいもんだな〜。開けさせて頂きMAX」
 両手を合わせ、拝んでからラッピングを丁寧に外しフタを開ける

「ご拝見〜!」
 小さくて可愛いハート型のチョコと、たぶん俺だと思うけど、似顔絵のクッキーが入っていた。
「俺、こんなポッチャリだっけ〜?(笑)
ハート型かぁ。…ハッ、ハート!?」

 心臓がドキドキしてる
 これって、どういう意味だ? 初めてみるハート型の物体に怯える…





141 名前:2月14日 mailto:sage [2008/02/13(水) 15:12:38 ID:uuStFdFc]

「初めて作ったやつなんだ〜。似てるでしょ?」

「そんなの…俺なんかに、悪いよ。」

「ロボ…迷惑だった?」
 そんな訳ない。だけど、言えなくて

「好きなやつにさ、あげ 『だから!』…る」
 ニコの声が重なる

「だから…あげたんだよ!ロボのほうが、よっぽど素直じゃないし鈍感だよ…バカ!』 プップー・・
 切れてる・…


 ニコのくれたハート型のチョコを手にとり口に入れる
「あっ、意外にビターだ…けど、固いな〜!」

 まるでそのチョコは、可愛い見た目とは違って、しっかりしているニコみたいだった

 そのハート型のチョコに囲まれて、笑っている自分の顔のクッキーをみたら切なくなった。


 謝りたくて電話をかけ直す
 留守番電話になったけど、ニコにメッセージを残した

「ニコ?さっきはごめんね?…俺さ、本当に嬉しかったよ!初めて貰ったから、手作りとか本命…みたいなの。ニコ…
 俺ニコがす/ピ――」

 時間オーバーになって、後でその録音を聞いたニコは、大笑いしたらしい。


 =次の日=

 ロボの部屋で再生を押して聞かせる

 俺ニコがす/ピー―

「(笑)ねえロボ!プッ!この続きって何?」
 ベッドの上で笑い転げるニコをちゃぶ台から睨む。
「…大人をからかわないの!」
 昨日はチョコくれた時、あんなに可愛いかったのに…。ちゃぶ台に置かれたニコのチョコを食べる。

「ハイハイ!ねぇロボ窓の外みて。」
「ん?」 ニコの横に並んで座り、空を見る。
「そっちじゃなくて、下!みんなさ、幸せそうだよね〜。」
 前の道路を歩く人たちは、何か今日はカップルが多い気がする



142 名前:2月14日 mailto:sage [2008/02/13(水) 17:40:44 ID:uuStFdFc]
 羨ましそうに、目を輝かせてみるニコの横顔を見つめる


「ニコが、好きだよ。」

 ニコの肩を掴んで、自分のほうに向かせた。

「好きなんだ。」
 目が一瞬あったけど、すぐにニコは目をそらして下を向いた

 これってチュウ待ちなのか?そうだよな…。
 よしっ!俺行け!

 チュョ 前に聞いたことあるいやらしい音に前をむくニコ
 バチン! ロボの頬っぺたを叩く
「え〜!ニコ何でぇ?痛いぃ。」
「はぁ?今チュウしようとしてたでしょ?うわっ!すけべョ」
「違うの?今チュウでしょ!」
「違う!ロボは全然分かってない。」 まだアタシ何にも言ってないじゃん。

「プッ!恥ずかしいんだ?ニコは可愛くないとこが、かわいいんだからな〜!」
 それって褒めてんの?てかベッドで、はしゃぐな〜。



 =その頃=


 林家夫婦

「は〜。…何でドコの誰だか分かんない奴の顔。食わなきゃいけないのかね〜」
 クッキーを頬ばりながら、テーブルの上に山盛りになったバレンタインの残骸をまたつまむ。

「はい、お父さんお茶。」「ありがと。あ〜、今年は量が多いな。」

 まだまだあるお父さんへのバレンタインチョコと言う名の失敗作たち

「仕方ないでしょ?今年はニコも作ったのよ〜。」
「へ?ニコ作ったの?あ〜そう。ニコがね〜。」

 お母さんがニコの作ったクッキーを眺める
「それにしても、誰かしらね?コレ?」
「ん〜?あっ!何かピンとキタ!!え〜?あいつか!?」

「誰?ねぇお父さん分かったの?誰よ。」

「小遣い、あげてくれたらな。」

「何よそれ。じゃあ別に、知りたくないわよ!」

「あっそ!!
 ニコがなぁ。」

 意味深げにクッキーをまたみつめて、お父さんは、クッキーの顔を真っ二つに割った。


143 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/13(水) 18:48:32 ID:uuStFdFc]
続きが書き込めなくなりました。何回か挑戦したのですが…
中途半端ですみません。

144 名前:2月14日 mailto:sage [2008/02/13(水) 18:50:37 ID:uuStFdFc]
=ロボ部屋=

「ロボ、クッキー食べてないじゃん!」
「これはいいの!」
「何で?食べてよ!せっかく一海ちゃんと作ったんだから。」
「じゃあもっと食べれない!」
「は〜?何それ!バッカじゃないの?」
「バカじゃないですぅ。オタクです。」
「も〜!今日からスケベとバカも付けされたの!」
「いいです!そんなオタクでスケベでバカが好きなのは誰なんですかねぇ?」
「じゃあ、返してよ。」
「嫌!絶対ダメ!ニコにとって初だったかも知れないけどな!俺にとっても…初めてなんだよ?」
 ロボがちゃぶ台に小さくなって座る
「ごめん…。取っといていいよ?」
 ロボの大きな背中を擦ってあげながら、顔を覗きこむと、嬉しそうに笑っていて
 私もロボが笑うと嬉しくなる

チュョ

 『だから駄目だって言ってるでしょ!!』
「ニコのケチ〜。」




 何だかんだで、私達は付き合うことになった
 けど、別に何かが変わった訳ではない。

 ロボは私のあげた似顔絵クッキーを本当に食べずに MAXロボの隣にキレイに飾って、
 神棚のようにして、何かを毎日拝んでいるらしい。

 『今日こそ、チュョが出来ますように!』



 私は、ロボがいたからバレンタインが好きになれたよ。
 ありがと、ロボ


 大好きだよって、ちゃんと私から言える日まで、 チュウは我慢してね。


おわり

145 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/14(木) 02:07:34 ID:RIdN/7SU]
>>143
途中で謝ってるのが何か面白い。
前の節分ネタの時(2chの殆どの板が落ちた)といい、タイミングが悪いというか面白い。(笑ってごめん)
あと、1/5みたいに何レスあるか書いてくれたら、うれしいよ。

ニコ!ロボは我慢のできる子だ、チュウは許してあげて。
もし、調子にのったらニコパンチだ!

146 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/14(木) 02:16:45 ID:F8euECvG]
ニコロボもいいけど、幕間の林家がなんかすごくいいです!

147 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/14(木) 03:52:24 ID:dlSm/EcU]
失敗が多くてすみません
以後気を付けます。

節分ネタの続きを書くつもりだったのですが、
途中、面倒になって新しい楽な道を選んだら失敗してまいました。笑ってくださって全然いいっすよ

148 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/16(土) 03:51:04 ID:I/1GB0aw]
友達 1/2
エロなし、ロボとよっちゃんの話。

ガチャ
「よっちゃん、来たよ〜」
ロボが滅多に立ち寄ろうとしない地蔵堂に気の抜けた声と共に入ってきた。
事前に連絡をもらい、マキナの不在を知っての余裕。

「おお!来たか、待ってたぜ。
 これだよ、これぇ」
「ああ〜はいはい」
「どうだ、直せそうか?」
「だいじょーぶ、任せなさい!
 え? よっちゃんが、これ、こんなにバラバラにしたの?」

机の上には壁掛け時計とその部品が、
申し訳なさそうに、せめて作業のしやすいように部品がキレイに並べ置かれていた。

「機械の調子がおかしくなったら、まず叩く、それでダメなら分解だろ!
 分解は男のロマンなんだよ。
 なあ、ロボ、お前も男なら分かるだろ?」
「男のロマンは分かるけど、何をどうしたら・・・
 ゼンマイが余るの?」
「そりゃお前、ゼンマイって言やぁ時計の心臓部、大事に大事にとっておいたら
 最終的に余っちまったんだよ、・・・しょうがねーだろ」
「(なるほど)よっちゃんのロマン、しっかりと受け取ったよ」

ロボはそう言うと手際よく時計を更に分解し、組み立て修理を始めた。
ほんの数分ロボの作業を見ていた名梨だが、
直ぐに飽きてしまい下の台所に降り夕食の支度の続きをする。

20分後
「よっちゃーん、直ったよ〜」
「早いよ!」
ロボの言葉にカブせ気味に言う。
「お前は何でオレが半日がかりで出来なかった事を、こうもあっさりとやっちゃうワケ?」
エプロン姿で菜箸をブンブン振りながらやってくる。
「だから呼んだんでしょ?」
「そう、だけどよう」
「よっちゃんの機械イジリはロマン止まり。
 オレの場合はそれをちゃんと直す、つまりプロフェッショナルってコトかな〜」
『ロボのクセに』
「えっ何か言った?」
「何にも言ってねーよっ」
「じゃあ、思ったよりも早く用事も片付いたことだし、帰ろうかな」
ロボは優越感に浸ったまま帰ろうとする。

「おう、礼といってはなんだが、晩飯、ロボの分も作ったから持って帰れよ」
多少ムカつくが助かったのは事実。気をとり直して笑顔で言う。
「えっホント!? ご馳走してくれるの?」
「ああ、今日ハンバーグ作ったからよう。二人分も三人分も変わりゃしねーよ。
 ロボのは持って帰って直ぐに食べれるようにハンバーグサンドにしたから」

つづく 

149 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/16(土) 03:51:25 ID:I/1GB0aw]
2/2
「ハンバーグのサンドイッチ?もしかして できたて?」
「ああ、そうだよ」
「よっちゃん!ここで食べてってもいい?」
「ん? 別にかまわねーよ」
「じゃあ、オレ、コーヒー入れるよ!」
「あーいいよ、オレが入れてやるよ。
 ついでにオレも何か軽くつまむかな、社長はまだ帰ってこねーし。
 ロボはそのテーブルの上を片付けといてくれ」
「うん、分かった!」

・・・・・

ロボはハンバーグサンドを持って、
名梨は「コーヒーにキャベツの千切りはやっぱ合わねーかな」とつぶやきながら、
台所横のテーブルに着く。

「いただきマックス!」
「どうぞ、おつかれっ」
ロボは大きく口を開けサンドイッチをほおばる。
「ウマい!!」
「そうか」
「よっちゃん、スゴイ!ウマいウマいウマい〜美味しすぎる〜」
「おいおい!食べるか喋るかどっちかにしろよ、はははっ」

・・・・・

どっちなんだろう。
ロボは、
できたてのハンバーグサンドを冷めないうちに食べたかったのか、
それとも一人ではなく“お兄ちゃん”のような友達と一緒に食事をしたかったのか。
・・・多分、両方なんだろう。

そんなことより よっちゃんのハンバーグサンド、食べれないのならそんな話、
・・・聞きたくなかった。
「あれ!ニコ、なんか機嫌 悪そうだね?」 
「はああ」
「ええ!? なんでー」

おわり

150 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/16(土) 09:13:10 ID:LGOAASPH]
ニコの気持ち分かるぞー
よっちゃんのハンバーグサンド食べれないのならこの話読むんじゃなかったw
GJ!



151 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/17(日) 00:38:28 ID:1EjI6Noh]
そーいえばロボってサンドイッチ好きだよね
ハンバーグも好きだし。
そりゃ美味いだろうなー

ああ、腹減った
この話読むんじゃなかったw
gj!

152 名前:その花を摘む事なく 1/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:31:39 ID:DAsp50cn]
エロ無し。ニコ視点ですが途中一時視点変化も有ります。

* * * * * * *

「お帰り……ど、どうしたの!?」
 玄関で物凄い音がしたので二階から降りて見ると、一海ちゃんが息を切らして
へたりこんでいる。
「ハア、ハア……な、何かね、変な人に後をつけられたみたいなの」
「えー、気のせいじゃないの?」
「違う!絶対違う!!だって私が立ち止まると向こうも真似するし、振向くと誰も
 居ないけど電柱の陰とかに誰かいるのが見えるのよ」
「何だ痴漢か!?何もされなかったか?」
「だ、大丈夫……その辺まで来て何とか巻いたと思うから。それよりみ、水、水」
 お父さんが外を見て来る、と出て行ってお母さんが奥から水を持って来た。
 私は二階へ上がって窓をそっと開けて外を眺めた。誰も居ないけど……。
「ん?」
 近所の家の陰に誰か居る気配がする、と同時にカシャ、と音がした。カメラ?
誰か居る、間違いなく。私には聞こえた、ごく小さな溜め息と足音が。慌てて窓を
閉めると同時に
「誰も居ないぞー」
とお父さんの声がした。
「さっきの奴かしら?ヤダヤダ!!気持ち悪い……」
 部屋で落ち着いた一海ちゃんにさっきの話をすると、頭を振りながら肩をすぼめ
ている。当然だよね。
「尾けられて家までばれちゃったのかなぁ?ねえニコどうしようー!!」
「うーん。警察……って言っても証拠もないし相手してくんないよね?」
 2人で考えているとふいに一海ちゃんの携帯が鳴った。
「もしもし?」
 見る見るうちに顔色が変わってゆく。慌てて電話を切った後恐る恐る聞いてみた。
「どうしたの?」
 顔面が真っ青だ。まさか!
「……『見つけたよ』だって」
 ねえニコどうしよう!ってしがみつく一海ちゃんを慰めながら私は考えていた。
 こんな時、地蔵堂があれば。私がまだスパイだったら、一海ちゃんを守って
あげられるかもしれないのに。

 こんな時……そう、こんな時に。

「わかった。一海ちゃん、あたしも何か考えるよ!」

 もしかしたらもう……だけど、ほんの少しの希望を胸に、私はある決意をした。


153 名前:その花を摘む事なく 2/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:33:27 ID:DAsp50cn]
 あれから3年……いや、もうすぐ4年?季節は何度も変わって私は17歳になった。
久々に眺め見上げる部屋はまだ同じ主を迎えているのだろうか。
「留守、だよね?」
 真っ当な社会人ならきっと仕事中の時間、だから訪ねた所で居るはずは無い
んだけど……。
「あれぇ?ニコ、ニコじゃないの!?」
 突き抜けるようなハイテンション声に思わず驚いて振向いた。
「…………何してんの?ロボ」
 両手に大量の紙袋を提げて、どう見ても私服の彼は会社帰りのサラリーマンには
見えない。

「いやぁ、今日行きつけのフィギュア屋が店終いするってんで有給取って行って
 来たんだよね〜!!だってこれなんか7割引だよ!」
 相変わらずだなぁ。一緒にパン耳の大袋も並べて流しの横に置いてある。こんな
じゃ相変わらずモテないんだろうな……。
「はいお茶。ん?何がおかしいの?」
 慌ててありがと、と湯呑みを手にする。自然に弛んでいた頬を私は、軽く擦る。
 何喜んでんの?私。そうそれは多分、ロボが変わらず受け入れてくれたからだ、
きっと。
「で、どうしたの?何かあるから会いに来てくれたんでしょ?」
 ちゃぶ台にきちんと正座して待つロボに、私も慌てて姿勢を正すと改めて昨日
の話をした。
「ストーカーかぁ……一海ちゃん可愛いもんなあ。あんな娘を怖がらせるなんて
 許せない!!よし、愛と正義の心で俺が守ってやるとも!」
「え、ロボが?」
「ん?だって助けて欲しくて俺んとこ来たんじゃないの?」
 いや、そうなんだけど。
「だって随分久々に会ったんだよ。あたし……なのに、怒んないの?普通今更何
 言ってんだとか思わない?」
「え?だって俺達友達だろ?離れてたってそんなのずっと変わらないよ。それより
 ニコがちゃんと俺を覚えててくれた事の方が嬉しいよ」
 どうしてロボは私の不安を吹飛ばしてしまうんだろう。同じ気持ちでいてくれた、
それが嬉しくて切なくて泣きたい気持ちを押し殺しながら、湯呑みを口に押し付けた。
「ニコもうすぐ高3?大きくなったなぁ」
 屈託なく笑うロボが何故か眩しかった。


154 名前:その花を摘む事なく 3/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:35:24 ID:DAsp50cn]
 翌日からロボは一海ちゃんの駅からの尾行を開始した。勿論ボディガード兼である。

『えっ!何で私がまたあの人とデートしなくちゃならないのよ!?』
 まあ勝手に決めた私も悪かったけどさ、そんなに拒否らなくても……随分前の
話なんだし。
 そう、私がロボに持ち掛けた報酬が「一海ちゃんとの再デート」だったからだ。
まあそれがなくてもロボはやる気になってくれてたみたいだったんだけど、何故か
私の中に湧いていた不安がそうさせた。
 最終的には一海ちゃんも納得してくれたわけだけど……。

 * * * * 

 ロボと時間を決めて駅で落ち合い(と言っても直接接触はせず時間を決めて)
駅を出て家まで帰る、その間にロボ以外に尾行する人間がいたらそれが犯人だと
いう事である。
 始めてから3日間は怪しい人物は現れなかった。
 だが、4日目、ロボは一海との距離をはかりながら尾行する途中で怪しい人影が
彼女の背後にあるのに気付いた。
 自分と彼女の間にいるその人間を何とか捕まえられないものか、と緊張しながら
距離を縮めてゆく。幸い一海もそいつも気付いてはいない様だ。
 じりじりと息を、足音を殺して近付いてゆく。もう少し、もう少し……。

 その時。
 一海に向ってその影はいきなり走り出し背後から彼女の肩を掴むと、はがい締め
にしようとした。
「一海ちゃん!!」
 慌ててロボが駆け出すと同時に一海の悲鳴が辺りに響き渡った。

 * * * *

「何やってんのよ……」
「ゴメン」
 林家の居間で小さくなっているロボを睨みながら私は溜め息をついていた。
「まあまあ、仕方ないじゃないの。この人のお陰で危ない目に遭うまではいかな
 かったんだし」
「犯人は逃げちまったけどな」
「……スイマセン」
 宥めるお母さんと複雑な顔をしてロボを見ているお父さんの前で、大きな体を
縮めてロボは肩を落としていた。


155 名前:その花を摘む事なく 4/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:36:58 ID:DAsp50cn]
 一海ちゃんが悲鳴をあげた時丁度警官が通り掛かった……のは良かったんだけど、
その時背後にいたのはロボだったわけで。
 逃げ足の早い犯人は悲鳴を聞いた警官が駆け付けた時には既に姿がなく、パニクっ
た状態の一海ちゃんと慌てるロボの姿を見たもんだから、勘違いされたまま交番に
連行されてしまった。
 その後何とか落ち着いた一海ちゃんの説明と駆け付けた私達家族が必死で誤解を
解いたので、何とか釈放(?)されたというわけ。
「ニコ、それにしてもこれからどうする?一海ちゃんに俺がついてるのはバレ
 ちゃったし」
「あ、それなら堂々と一緒に並んで帰ってくればいいんじゃない?」
 私の言葉に一海ちゃん含めその場の人間はギョッとした。(ロボ以外は)
「えー、そんなの……」
 首を振り掛ける一海ちゃんに
「じゃあいい考えある?」
と聞くと面白くなさそうに膨れた。
 後ろでお父さんが
「送るだけ、それだけだぞっ!」
と釘を刺すのが聞こえる。
 その時携帯が鳴った。瞬間皆が息を呑んだ。空気が張り詰めるのを感じながら
緊張した面持ちで一海ちゃんが電話に出る。
「……もしもし?」
 耳を澄ますと相手の押し殺した声が聞こえて来る。

『今日はとんだ失敗しちゃったみたいだね。今度は間違いなく行くからね』
 
 そう言うと電話は切れた。勿論非通知で、どこからかわからない。しかも雑音が
酷くて場所もよく探れなかった。
「う〜ん、雑音……気になるなぁ。それよりまたやる気なんだね?よし、一海ちゃん
 は俺が守って見せるぞ!だから安心して下さい、お義父さん」
「だーーーーっ、俺をお義父さんと呼ぶなぁぁぁぁ!!」
「もう、そんな場合じゃないわよ!やだぁ、私が何たっていうの?」
 半ベソをかく一海ちゃんを慰めるお母さんを横目に、私は堂々と一海ちゃんと
夜道を歩けて浮れてるであろうロボを複雑な想いで見ていた。
「ん?何ニコ」
「別に」
 何か、ムカつくんですけど。


156 名前:その花を摘む事なく 5/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:38:32 ID:DAsp50cn]
 あれから更に数日が過ぎた。ロボ効果のお陰か一海ちゃんの帰宅は安全で、家族
も段々と気持ちが楽になってきた様だ。
 おまけに何となくロボはうちの人間に馴染んで来て、しょっちゅう夕飯まで
食べて行くようになった。最初はぶつぶつ言っていたお父さんも、ロボが上らずに
帰ってしまうと
「なんだ、また蓋コレクション自慢してやろうと思ったのに……」
なんてちょっと残念そうにしてる。(本人は否定してるけど)
 それはあの頃の私が心のどこかで望んでいた筈の事なのに、逆に今は何故か
心に風穴が開いてしまったみたいに感じてしまうのは何故なんだろう?
 近くにいて触れられる位側にいても、逆に私は見えない硝子の壁に阻まれて
それ以上近付けないでいる。
 そうしているのも感じているのも、多分私だけだと思うけど。

 だって、ロボは今でもダイヤモンドの輝きを失っていないように見えるのだから。


 今日は補習でいつもより帰りが遅くなってしまった。
「うわぁ寒っ!早く帰ろ」
 本当は良くないんだけど、近道したいから公園の方へと私は足を向けた。
「薄暗いけどまだ早い時間だし大丈夫だよね」
 一海ちゃんに比べりゃ安全なもんだ。
「今日もロボ来るのかな」
 一海ちゃんもだいぶ慣れてきたみたいだし、拒否反応(?)も薄れてきた感じ
がする。案外上手く行く、なんて事も……。
「あれ?」
 何故かふいに胸のどこかがキュウッと締付けられたきがした。何これ、変だよ。
何でロボの事、考えてるとこういう気持ちになるんだろう。まさかね。
「一海ちゃんじゃあるまいし……」
 その時携帯が鳴った。今頭に浮かんだまさにその相手から。
「もしもし?」
『ああ、ニコ!今どこ?変わった事無い!?』
「どうしたの?今公園の……」
『わかった!今すぐ一海ちゃんと行くから待ってて!!』
 慌てた様子のロボの声に私は背後に迫る足音に気付かずにいた。


157 名前:その花を摘む事なく 6/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:40:08 ID:DAsp50cn]
「何だろ?」
 只事では無さそうだ。まさか何か起きたの!?でも一海ちゃんと一緒にって言って
たから向こうも無事なんだろうけど……?
 とにかくこの場から動かない方が良さそうだ。そう思って足を止めたその時。
「きゃああっ!?……んっ!!」
 突然背後から誰かに口元を押さえられ、身体を抱えられたまま側の植え込みの
影に連れ込まれた。

「んっ、んーーーー!?」
 押し倒されて口を塞がれたまま仰向けにされた。灯り始めた外燈は逆光で顔が
良くわからない。
「やっと、やっと見つけたよ……」
 この声、この声なら聞いた事がある。
「とんだ手間かけてくれたね?でももう、君を離しはしないよ?」
 この声、一海ちゃんの電話の……。
 何で?何で私なの!?何で今ここにこいつがいるの!?
 何で私こんな事になってるの!?

 やだ、助けて、誰か……。
「絶対逃がしはしないからね?」
 そう言うと男はスカートの裾に片手を伸ばす。足の間にその身体を割込まれて
私は身動きが取れない。
 嫌だ!
 咄嗟に身体を捩って暴れようとした。
「無駄だよ?」
 怖くて動けない。必死になって震える腕を持ち上げて抵抗しようとした。だけど
虚しくそれは宙を切り、コートの前をはだけさせられる。
「静かにしなよ」
 そう言うと男は口に当てた手を離した。だが、私が大声を上げる間もなく
「ビリッ!!」
と胸元を破られる音がした。
「いやあぁぁっ!!」
 露になった胸元から下着が覗いている。私は逃げようと力一杯に身体を捩って
地面に這い付くばった。
「いや、いやぁ!」
「逃がさないって言ったよ?」
 背中からのしかかるようにはがい締めにされて、再びその手がスカートを探ろ
うとする。
「やだ……」
「君はもう僕のモノになるんだから」
 耳元で静かに笑いながら、しかし荒い息で聞こえて来る男の声が不快で悪寒が
走った。
「助けて……助けて、ロボ」
 私の頭に浮かんだのは屈託のない彼の笑顔だった。


158 名前:その花を摘む事なく 7/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:41:53 ID:DAsp50cn]
「ニコ!!」
 視界にガサガサと音を立てて大きな人影が飛び込んで来る。
 同時にそれは私にのしかかっていた身体を突き飛ばすと、その上に乗り上げた。
「な、何だよ、何で邪魔するんだよぉ?」
「うるさいっ!貴様よくも、よくもニコをっ……!!」
 その声は……。
「大丈夫!?ニコっ!」
 その後ろから一海ちゃんが私が落とした鞄を抱えてやって来た。
「やだ、ドロドロじゃない。怪我は?」
「うん、大丈夫……」
 大柄なロボにのしかかられて動けない間に一海ちゃんが呼んだ警察に、男は
連行されて行った。

 改めて事情を聞かれて明るい場所で顔を見ても、私はなかなか男の事を思い出
せずにいた。おまけに一海ちゃんの携帯から超小型の盗聴機が見つかって益々
私は混乱していた。
 が、ふとある出来事に思い当たっていた。それに気付いてロボの話を聞くと
バラバラだった断片が形を作っていった。


 一海ちゃんが最初にストーカーに遭ったと言った日の数日前に、姉妹で買い物
に出かけた。その時友達に電話する約束を思い出した私は、自分の携帯のバッテリー
をうっかり切らしてしまったので、一海ちゃんのを借りて喋っていたのを近くに
いたあの男が見たのだ。
 おまけにそれを一海ちゃんが席に置き忘れて会計に立ち、受け取ったのは私。
だから一海ちゃんの携帯を私の物だと思ったのだ。
 盗聴機に気付いたのは勿論ロボ。デコレーションに紛れて分らないような精巧な
物で、男はそっち方面に長けたマニアらしい。
 返す時にこっそり取り付けたのだろう。それを頼りに居場所を突き止めたのだ。
(地蔵堂なら犯罪者でなきゃ欲しがった人材
かもしれない)
 私が襲われる直前に一海ちゃんの携帯に掛けて来た電話は
『やっぱり君のじゃなかったんだ……彼女は僕の近くにいるからね』
そう喋って切れたとロボは言った。

 そう、最初から本当の目的は私の方だったのだ。


159 名前:その花を摘む事なく 8/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:43:34 ID:DAsp50cn]
 両親は揃って外出していてなかなか連絡が取れなくて、ドロドロでボロボロの
制服のまま仕方なく警察から家よりは近いから、ととりあえずロボの部屋に向った。
「私一旦帰って着替え取って来るからね」
 一海ちゃんはすぐにロボに私を預けて帰った。
 
 久々に来た部屋はまた増えたロボットで少し狭くなった気がした。
「暖房入れるからね」
 ヒーターを入れるとその前に私を座らせて、お風呂を沸かすと言って立った。
「え、いいよそこまで」
「何言ってんだよ。女の子が泥んこじゃ外歩けないでしょ〜?」
「でも……」
「それに色々聞かれて疲れたでしょ?ちょっとゆっくりしろよ」
 そう言って風呂場にお湯を張りに行った。
 そっか、1人にしてくれるつもりなんだ。確かにあんな事の後でかなり実は
疲労していた。
「すぐ沸くからな〜」
 貸してくれたコート汚しちゃったな、なんて思いながらつんとしてきた鼻を
こっそり擦った。

 気付かないだけで実は結構あちこち擦り傷があったみたいだ。洗っていたら
所々お湯がしみたりして痛かった。

 一海ちゃんが来るまで仕方が無いので、ロボのトレーナーとジャージを借りた。
「おっきいなー」
 男の人の匂いがする。お父さんの洗濯物とは違う匂い。
「ほら、こっちおいで」
 寒いからね、って毛布で身体を包まれてヒーターの前で座らされる。
 温風は暖かいけど、髪がまだ濡れているからなのか、今更あの恐怖を思い出して
しまうからなのか、
「何か、寒気する……」
少し震えてしまう。
「えっ?寒いの!?風邪かな、温度上げるよ。あとは……」
 毛布で縮こまる私をロボはしばらく見つめていたが、やがて
「ごめんニコ、ちょっと、暖まるまでだから我慢して」
って側に来ると、しゃがんだ姿勢で背中から膝の間に身体ごとすっぽりと包み
こまれた。
 ふいにやって来た温もりに私は息をするのも忘れた。心臓がドキドキと音を
速めてゆく気がする。


160 名前:その花を摘む事なく 9/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:45:11 ID:DAsp50cn]
 先程の男の不快な息遣いとは違って、時々掛かるロボの熱い息が逆に首筋に
当たるのは恥かしいけど嫌じゃなくて。
 毛布の下で体育座りした膝の辺りにある、ロボの繋がれた手首の抱き締める
力はちっとも怖く無くて、心強くさえ思えて。
 挟まれた膝の温もりはとても安心できた。
「怖かったよぉ……」
 改めて思い出すと、本当に自分がいた状況がとんでもない事だったのだと思う。
「ほんっとに怖かった。怖かったの!!」
 安心したら途端に涙腺が弛んで、もう止まらなかった。後から後からポロポロ
と涙は零れて、それはロボの手を伝う。抱き締められていてはそれを拭う事も
出来ずにただ私は泣き続けた。

 やがてしばらくしてロボが口を開いた。
「俺も、怖かった」
 手首を繋ぐために握り締めた両手に更に力がこもった。
「ニコにあれ以上、もしも間に合わなかったら……そう考えたら俺も凄く怖かった。
 だから見つかって良かった、良かったよ〜」
 私の肩の上で泣いているロボの声に、また私も泣きそうになる。
「もう絶対あんな目に遭いたくない……」
「うん、遭わせない!」
 そう言ってロボは私を抱く腕に力を込めた。

 その時思ったんだ。 ロボだったら、このまま……。

 正直、どうされてもいいとさえ思った。
 あんなふうに失くすのは絶対嫌だと思った。だったら、いっそ……。
「ロボ」
「ん?」
 まさか言えないよね……。

 そんな事を考えてるうちに階段を昇る一海ちゃんの足音が聞こえて来て、ロボは
慌てて私から身体を離した。
 そして何事もなかった(いや、実際無いけど)様にへらへらとしながらドアを
開けた。
「ニコ、お父さん達丁度帰ってた。凄く心配してるから早く帰ろ?」
「あ、じゃあ俺車取ってきマックス」
 明日からはまた普通の日常に戻るのだ。
 そしたらロボとはまた会わなくなってしまうのだろうか……。

 ロボの匂いを脱ぎ捨てながら、私はぼうっと明日を考えていた。




161 名前:その花を摘む事なく 10/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:46:44 ID:DAsp50cn]
 今日は土曜日。いよいよロボと一海ちゃんのリベンジ(?)デートの日だ。今度
ばかりは尾ける気にはなれなかった。
 ゴロゴロとベッドの上で転がっていると、
「あんた何してんのー!?」
とまだ普段着の一海ちゃんの怒声が飛んで来た。
「何って……一海ちゃんこそ仕度しないの?もうロボ下に来てんでしょ」
「だからよ!もー服貸してあげるから早くしなさいよ!!」
「はあ?ちょ……やだ、脱がさないでよ!?」
 わけがわからず一海ちゃんにされるがままに髪をセットされて、服も選ばれて
階下へ行くと玄関先でロボが待っていた。
「じゃあ、お嬢さんをお借りします。夕飯時には送りますから!!」
「今日も良かったら食べてらっしゃいよ。すき焼きするから(肉入りの)」
 お母さんってば、結構気に入ってる?
「はいっ須藤威一郎喜んでお邪魔させて頂きマックス!んじゃ行こっか……ニコ」
「は、はぁーーーーっ!?」
「行ってらっしゃ〜い」
 って、ちょっと一海ちゃん!?
 玄関を閉めて外に出ると奥からお父さんの声がするのがわかった。
「おい、何で一海じゃなくて二湖なんだ?」
「だってあの人がそう言ったんだもの。実際助けて貰ったのは私じゃなくてニコ
 だしね。まあ当然でしょ?」
「にしてもお母さん、また夕飯呼んだのか?ったく俺の取り分が減るじゃないか〜」
「あら、とか言いながらビール冷やす本数が増えてるじゃない」
 アハハ、とお母さんの笑う声を聞きながら、私はロボの顔を見上げた。
 普段通りの顔。昔から変わらない、幸せそうに浮かべた笑顔。
 だけど何考えてる?
 どうして私がここにいるの?

 何となくどこに行こうか?って聞かれて思い付かなくて、よく行った公園で
最近の話なんかしながら散歩した。
 初めは少し離れて歩いて、少しずつ近付いて、そのうちロボの右手は私の左手を
握っていた。私はそれを解かずに強く、強く握り返していた。
 きっと今日だけだから、そう言い訳しながら。


162 名前:その花を摘む事なく 11/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:48:06 ID:DAsp50cn]
 売店で軽いお昼を買って食べながら座ったベンチで、私は思い切って聞いた。
「ロボ、どうしてあたしなの?元々一海ちゃんとデート出来る約束だったじゃない」
 黙ってサンドイッチを食べていたロボはやっぱり黙って缶コーヒーを飲むと、
それをコトンとベンチの脇に置いて私を見た。
「ニコは嫌だったの?」
「ううん」
 ただ気になっただけ。昔も今もロボといるのを嫌だと思った事なんて1度だって無い。
「俺はニコが良かったの。そりゃ一海ちゃんは彼氏出来たみたいだし、だけど
 それで断られたからとか、諦めた代わりとかじゃなく俺自身がニコと一緒に
 いたかったの。だから一海ちゃんに頼んだんだよ」
 そういえば昨日ロボからの電話を受けてる一海ちゃん、
『そんなの気にしなくていいのよ、あなたの好きにしたらいいじゃない』
なんて言ってたっけ。 さすがに聞き耳立てるわけにはいかなくてロボは一体何言ってんのかと思ってた
けど、それは一海ちゃんを断って私を願った話だったんだ。
「俺の言う事が信じられない?」
 だって急にそんな事言われても、頭が混乱してどうしたらいいかわかんないよ。
 それって、それってさあ……?
「一海ちゃんより、あたしの方が上って事?」
 私の小さな呟きにロボは大きく頷いて答えた。
「わっ、な、何ニコ!?俺何かまずい事言ったあ〜?」
 ううん、と首を振って私はロボから目を逸らした。
「……ありがとう」
 だって、視界が滲んでロボの顔がまともに見られなくなってゆくのがわかったから。


「ニコは怒るかもしれないけどさ〜、俺にもあいつの気持ちが少しは解る気が
 するんだ」
 並木の歩道を歩きながら言うロボの言葉に思わず立ち止まった。
「何それ」
「あ、ごめん。やっぱりやだよね?」
 でも聞いて、って言うから黙っていた。ロボは私の不安を感じ取ったのか、静かに
そっと手を取って歩きながら続けた。


163 名前:その花を摘む事なく 12/12 mailto:sage [2008/02/19(火) 11:49:29 ID:DAsp50cn]
「やり方は間違ってたけどさ、あいつもニコの事好きで堪らなかったんだと思う
 んだよね。ただその気持ちが何故か歪んでいってあんな方向に曲ってっちゃった
 から、ニコを傷付ける事になった。好かれるのって本当は凄く嬉しい事の筈なのに」
 うん、そう。本当なら誰かに好きになって貰えるのはきっと素敵な事なんだよね。
 隠し撮った私の写真を大事にしまって持っていたと聞いた。(当然没収だけど)
「俺はニコを傷付けたりしたくない。だってそんな風に嫌な思い出としてニコの
 記憶に残るなんて悲しいじゃない。だからうんとニコを大事にしたい。……この間
 ニコを抱き締めた時にね、そう思ったんだ。野に咲く花は欲しくても無理に摘ん
 じゃいけないんだよ」
 優しくそれでいて切ない瞳で私を見下ろしながら話すロボの言葉を、私はきっと
一生忘れはしないと思った。
「ロボを思い出にする気なんかないよ、あたし」
「ニコ」
「だってあたしもずっと大切にしたいもん、ロボの事」
 ニッコリ笑ってロボは私の手を強く、強く握った。


「あーの子がほーしい♪」
 どこからか子供の歌う声が聞こえる。
「あ〜、懐かしいな。昔やったよ、ニコ知ってる?」
「知ってる。『花いちもんめ』だっけ?」

 勝って嬉しい花いちもんめ
 負けて悔しい花いちもんめ♪

 あいつもニコが欲しかったんだな、そう小さく呟いた後にロボは言った。
「俺はニコが欲しい♪」
「へっ?」
 あ、変な意味じゃないからね、って慌てて手と頭をブンブンする。誰もそんな事
言ってないって。
「あたしは嫌だ」
 歩きながらそう言ったら横を見ると顔面蒼白のロボがいた。
「え、ええ〜〜〜〜っ!?」
 顎外しそう、てか泣きそう?
 何だか意地悪しちゃった気がしてきて、でもその顔がおかしくて笑いそうになる
のを堪えながら私は囁いた。

「ロボでなくちゃ、い・や・だ」

 満面の笑みを浮かべて唇を突き出すロボの鼻を思い切り摘んだ後、私達は初めて
恋人同士の挨拶を交わした。

 ロボはニコが欲しい♪
 ニコはロボが欲しい♪


* * * * * * *終


164 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/19(火) 17:53:17 ID:spcPA9Zj]
ニコ、危機一髪。あぶなかったなー
現実にあるよねえ、こういうこと
トラウマになったりしないかな?ニコ
ロボが居てくれたら大丈夫かな
GJ!!

165 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/19(火) 21:25:14 ID:utDsNX85]
久々の大作
ちょっと衝撃的な事件だったけどお互いの大切さを知ったんだね
GJ!

166 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/20(水) 00:58:16 ID:3DzF6Ogf]
正直レイプはちょっと、
おまけにロボが「俺にもあいつの気持ちが少しは解る気がするんだ」と言うとは。

ごめんなさい、どうしても我慢できませんでした。

167 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/20(水) 02:09:24 ID:6n/prtvI]
ロボは「レイープしたい」のが分かるって言いたかったのではなく、
「好きで好きで本当に好きなのに、その気持ちを表現できないこと」に
「分かる」って言ったのだと思う。



168 名前:名無しさん@ピンキ192

戻192/194:先生…/5[sage]
戻193/194:先生…求^5[sage]

気のせいかな!
途中が飛んでない?
[]
[ここ壊れてます]

169 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/02/25(月) 19:50:29 ID:7mO/ZPkI]
>>183
>「もういいよ。今度はロボが気持ち良くなって…。」

今度はニコがロボの※※※をぉおぉおぉお、キャー
すみません勝手に想像し取り乱しました、ナイス エロ!

>>195
飛んでると言われれば飛んでいるように感じるし、
飛んでいないようにも感じるよ。

170 名前:ひな祭り@ mailto:sage [2008/03/03(月) 18:44:03 ID:n0FwsHL+]
季節ネタで短いの一つ。エロなし。

**********

今日は三月三日、ひな祭りの日だ。三月に入ってから
雛人形を出していないことに気付き、慌てて出したばっかりだ。
あまり広くないアパートでお内裏さまとお雛様しか出せないが、
飾っているだけでもお祝いしてる気分が出る。

ロボと結婚して四年目、私たちの娘幸子も四歳になり、
雛あられを食べながらお雛様の歌を嬉しそうに歌っている。

「すごいなあ〜幸子。お歌上手だね〜。」
「うん!幼稚園でならったの。先生にもほめられちゃった♪」

二人の会話がとても微笑ましい。自然と顔が緩む私に幸子が近づいてきた。

「ねぇお母さんとお父さんはどうやって出会ったの?」

ロボと私は思わずギクリとした。まさかテレクラがきっかけなんて言えないしなあ…。

「う〜んと、お母さんがすっごく困ってたときに、お父さんが来て助けてくれたの。
幸子が生まれるずっとずっと前のことなんだよ。」
「そおそお、お母さんのこと放っておけなかったんだ。」

慌てて説明する二人を不思議に見ながらも、
幸子は納得したようだ。

「ふぅ〜ん。そぉなんだ。じゃあお父さんはまっくすロボみたいだね♪」
「…へっ?」




171 名前:ひな祭りA mailto:sage [2008/03/03(月) 18:45:39 ID:n0FwsHL+]
「そうだよ幸子!お父さんはMAXロボみたいに颯爽と現れてお母さんを助けたのだ!」

だだんだんだーマーックス!とロボと幸子は大声で歌い始めてしまった。

普通の子どもならアンパンマンとかって言うだろ、
それに一海ちゃんの声に騙されて来たんだろ、
なんてのが次々と出てきたが、幸せそうに笑っている幸子とロボを見ていると
頬が緩んでしまう。

「あっ、思い出した。今日中にお雛様片付けないとお嫁に行くのが遅くなるんだって。」
「え〜!もぉかたづけるの?もったいないよお母さん!」
「そうだよニコ!それにぃ、幸子はお嫁さんに行かなくていいの!
幸子はお父さんと結婚するんだもんな〜♪」
「うん!お父さんとけっこんする〜♪」

また始まった…。でもこのやり取りが何よりも大切な時間なんだと、私は心から思う。

「じゃあもうちょっと出しておこっか。しまうときは幸子もお手伝いしてね。
来月にはお姉ちゃんになるんだからね。」
「わかった!お母さんもがんばってね!」

幸子はすっかり大きくなった私のお腹にさわりながら言った。
ロボもニコニコしながらお腹を触って言った。

「弟かな〜妹かな〜。名前もそろそろ決めなきゃね、ニコ。」
「あたしもきめるの!」
「わかったわかった。三人で名前つけようね。」

今日も家中に笑い声が響く。
タンスの上に飾られたお内裏さまとお雛様が暖かく見守ってくれている感じがした。

END


172 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/03(月) 19:02:33 ID:w/t/OPXu]
絵に描いたような幸せな家族
ウラヤマシー
幸子可愛い〜
ロボ、幸子がお嫁に行ったら大泣きするんだろうなぁ
GJ!

173 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/04(火) 09:11:26 ID:BtrM7RmB]
須藤一家、幸せそうだなあ
ほんわかするよ〜。GJ!

174 名前:あれから… 1/8 mailto:sage [2008/03/04(火) 13:45:20 ID:xM7mRGWZ]
ドラマが終わった所からです。テーマがないから変ですが…エロなしで

 【林家】
 部屋の勉強机に座わって、今日図書室で借りてきた地球の本を読む。

「ただいま〜」「お帰り、一海ちゃん。」
 振り返らずに返事をした。声で良いことがあったんだろうなって分かった。
「ねぇ、ニコ!このワンピースいいでしょう?」
 嬉しそうに喋りかけられて振り向く。値札のついたままのピンクのワンピ、また新しいの買ったんだ…
「うん。一海ちゃんに似合いそう。」
 私は絶対着ないような服だけど、こう言うのが一番いいんだって何かで聞いたことがある
「そうでしょう!ヘヘーん」 やっぱり、女なんて褒めると弱いし単純だ
「フフフ〜ン♪あっニコ何?最近真面目だね〜。勉強?」 アタシの机を覗きこんで難しそうな顔をする
「うん。地球を調べてるんだけどさ、一海ちゃん知ってる?地球ってさ、46億年前に誕生したんだって!すごいよね!」
「へ〜!何かニコ、そう言うトコあのオタクに似て来たね。」
 一海ちゃんは地球にまったく興味がないらしく、しかも嫌みまで…
「別に、ロボとは関係…ないよ。」
 ロボとは、ケンカした訳でも、引っ越した訳でもないのに会わなくなっていた…でも、家族はそんな事気付いてなくて。
「ニコ〜?お〜い。」 一海ちゃんに呼ばれてはっとする
「あ〜、ごめん。アタシ、少し外でてくるね。」 「うん…。気を付けてね。」
 上着を羽織って部屋を出て行ったニコを見届ける。 少し元気のないニコ。ルミちゃんのことといい、怪奇現象といい…ちょっと心配だな。

175 名前:あれから 2/8 mailto:sage [2008/03/04(火) 13:47:00 ID:xM7mRGWZ]
 外に出て、あてもなく夕日を背にして歩いた
「はぁ〜、ロボって名前が出てくると、何でこんなに苦しいんだろう。」
 ロボ、元気にかな?最近寒いから風邪とか引いてないといいけど…

 駅前まで来て最後にロボを見かけた所に、ロボのいた位置に自分も立って空を見上げた。
「何にも見えないや。」
 時間的にまだ早いから、空もオレンジからの黒のグラデーションになっているだけだったけど、しばらく空を見上げていた。

「ニコ〜?」 声だけで誰か分かって、ドキドキして声のするほうを見た
「…ロボ。」 「あっ!やっぱりニコだ〜。久しぶり〜」 少しも変わらない笑顔でどんどん近づいてきているロボの姿が見えて…
「ちょっとロボ、止まって!動かないで!」
 いきなりロボが目の前に現れてテンぱるニコ。

 動くなと言われて素直に固まったまま、ハテナ?がいっぱいの顔のロボ。
「ニコ〜どうした?誰かと待ち合わせしてるの?」
「ううん、してない!」
 多分真っ赤になってしまった顔を見られたくなくて下を向いて喋り返した。
「もう、動いてもいい?」 ロボに言われて、何度もウンって頷いた
「ふ〜、ねっ!ニコ?」
 アタシの前で来て顔を覗きこんでくるロボ
「ニコ頬っぺた真っ赤じゃん!寒いんだろ?ホイ」
 ロボがしていたマフラーを私に巻いてくれる
「ありがと…暖かい。」
 真っ赤なのは寒いからじゃないのに、やっぱり鈍感なロボだな。
 やっとで顔をあげて笑ってくれたニコにロボもニッと笑う。


176 名前:あれから 3/8 mailto:sage [2008/03/04(火) 13:48:19 ID:xM7mRGWZ]
「久々だな〜!」って言ってアタシの髪をくしゃくしゃに撫でるロボ
「も〜くしゃくしゃにするな。ロボのバカ!」
「バカッって言うな!」
「だってロボ、バカじゃん!」
 帰宅ラッシュの駅前で、楽しそうな二人。

『な〜んだぁ、心配して損した。』 実はニコの後をついて来ていた一海ちゃんも、嬉しそうに笑うニコの顔を見て安心する
『ニコの弱み掴んだり〜!っと、さぁ帰ろっと。』
 ニコの気持ちを確信してあやしく微笑む、やっぱり一枚上手な一海

 もう!とか言いながら離れるニコを追いかけながら、駅から離れて帰り道を並んで歩き出した。
「で、ニコは空見て何してたの?」
「あ〜、何となく。何か見えないかなって。」
 横を見ると、ロボは暗くなった空を見上げていてアタシもつい見上げた
「あっ、月だ。」 さっきは何にも見えなかったのに…
「綺麗だよな〜。でもさ、月から見た地球もさ、綺麗なんだろうな〜。」
 いつも見てる月のはずなのに、あまりに感動して言葉が出てこなかった。
「今じゃさ、宇宙旅行まで行ける時代だもんな〜。」「うん、凄いよね。だって聖徳太子とかさ、まさかそんな事になってるなんて思いもないだろうね。」
 バカな話しだけど、本当にそう思った。
「だよな〜。飛行機が飛んでるとか昔の人は、考えられない事だもんな〜。
 って事はさ!いつかMAXロボも本当に俺の前に現れる可能性もあるって事かな〜!」
 ロボが変なスキップをしながら、MAXのテーマ曲を歌いだした。
「(笑)地球ってやっぱおもしろいな。」 と、言うよりロボがを研究したいくらい、魅力的でおもしろいけど

177 名前:あれから 4/8 mailto:sage [2008/03/04(火) 13:51:47 ID:xM7mRGWZ]
「ニコじゃあさ。タイムマシーンも出来てるかな?」「出来てると思うよ。」
 だって、世の中には想像出来ない事がたくさん起こるから。
「やっぱりニコもそう思うか〜。」 まだスキップするロボに笑い返した

「ロボはさ、タイムマシーンがあったらいつに戻りたいの?」
 空を見上げながら口をぽっかり開けて考えている
「ん〜どうだろ。…あっ!この前お金足りなくて欲しいフィギュア買えなくてさ、次行ったらもうなくてさ〜あの時かな。 ニコは?ニコはどうする?」
 急にニコが首を重たそうに下げた
「アタシは…アタシは三日坊主を助けてあげる事ができなかったときとか、昭子さんの手紙捨てちゃったとき…ごめんねロボ。」 
「全然、謝ることないよ。」 ニコの顔が昭子さんと出てった頃のまだ幼いニコの顔と重なった。
 あの時の目がこんな悲しそうで、綺麗だったことに何で気付かなかったんだろう。
「ニコ?俺、後悔してないから。そりゃ三日坊主は助けたかったけど、昭子さんのことは気にしてないよ。」
 そんなの嘘だよ。
「本当に一緒にいなきゃいけない人は、生きてたらこうやってまた出逢わせてくれるはず、だろ?」
 そう言ってロボはマフラーに埋もれたアタシの顔を覗きこんだ。
「俺ニコに最近会ってないな、色んな事喋りたいな〜って思ってたら、逢えたんだぞ。それってタイムマシーン作るより凄いことなんだって思うな〜。」
 ニコが顔をあげて笑顔になって安心する
「そうだね。良いこと言うじゃん。」

178 名前:あれから 5/8 mailto:sage [2008/03/04(火) 13:54:03 ID:xM7mRGWZ]
 親指で鼻を擦って、私に向かって突きだそうとしていた手を両手で握った
「でもねロボ、アタシも逢いたいって思ってたから、逢えたんだからね。」
 ロボが空いていた片方の手でアタシの手を包んだ
「うん!ニコありがと〜。」
 アタシは恥ずかしくなって、すぐにロボの手を振りほどいた
「ロボの手!湿ってる」
 ロボが苦い顔をする
「ひどい〜。じゃあさ、ニコちゃんと会いに来いよな〜。地蔵堂がなくなったって、俺たちは変わらないだろ?」
 ニコは先に歩いていた足を止めた
「だよね。変わっちゃいけないものもあるよね?」
「うん!」 ロボがアタシの隣に来て大きく頷いた。
 誰かずっと、言って欲しいと思っていた。「そのままのニコでいいんだよ」って。
 溢れそうになる涙を、見せないように、上を向いた。本当に月が綺麗な日だった。

 そんなこんなで、ロボの家の前に着いていた。
「上がってく?寒いし、ホットミルクぐらいなら作るからさ。」
「うん!じゃあお邪魔しようかな。」
 階段を登りながらMAXが生き返ったことや、新しく仲間が増えたことを楽しそうにロボが教えてくれた


 【林家】
 その頃一海ちゃんは、ニコの尾行から帰って来て、居間のコタツにねっころがってるテレビを観ていた。
 お父さんが、一海ちゃんを邪魔するかのように縁側の窓を開けてお酒を飲みだす。
「寒いな〜、閉めてよね!」
「お父さんも寒いんだから"我慢"しなさい!最近の子供は我慢が足りないよな〜。」
 睨みつけるようにお父さんの顔を見上げる
「恐いな〜、母さんに似て来たな…」 更に怒った顔をする一海ちゃんだけど、お父さんの頭を照らす綺麗な月に気付いた。

179 名前:あれから 6/8 mailto:sage [2008/03/04(火) 13:57:04 ID:xM7mRGWZ]
「あ〜、満月だ。ニコこれ見てたのか。」
「ニコ?今日はまだだよな?」 余計なこと言っちゃったけどまぁいっか。
「さっきたまたまよ。たまたま駅前で見かけて、空見てたから。」
 あ、そう!って多分、お父さんは、今ニコが誰に会ってるかも気付いてて、少し寂しそうな目で月を見上げている。
「お父さんはさ、どう思ってる?ニコと…アイツのこと。」 お父さんの隣に腰をおろして返事を待った。
「…どうかな?不思議だよな。」
「心配?」 「ん〜信用してるけど、世間ってもんがあるからな。中学生とサラリーマンじゃいくら仲良くてもな。」
 そう言って、お父さんはお酒を一気に飲んだ。
「でも私ね、今日思った事があるの。」
 いつもそうだそうだ!って言ってた一海が、何か違う。
「その世間ってのにニコも苦しんで、暫く会ってなかったみたいなんだよね。 あのオタクもきっとニコのそうゆ〜気持ちとか気付いてたんだと思う。
 でもね、今日のニコの嬉しそうな顔みたらいいなって素直に思えたの。」
 ニコとアイツは運命なんだろうって思った。
 じっと空を見つめたままのお父さんの後ろ姿に話しかけた。
「ニコ今地球について勉強してはまっるてでしょ? 地球とか生命とかってね、誕生して何十億年らしいのね。
 ニコとアイツさ、そりゃ中学生とサラリーマンだけど、何十億年のうちのたった10年だよ?あの二人…。そう思ったんだよね。だから歳とか関係ないなって」 そう考えたら、アタシも恋愛対象ひろげようって思ったりして。

180 名前:あれから 7/8 mailto:sage [2008/03/04(火) 13:59:33 ID:xM7mRGWZ]
 お父さんは一海ちゃんの言葉ににゆっくり頷いた。「だよな〜。そう思えばいいよな。何かあったら家族が助けてやんなきゃな!それにアイツ悪い奴じゃないしな。」 助けてもらった事あったしな。
「何かあるわけないじゃん!お父さん涙目だよ〜?」 だよなって言ったお父さんは切なそうで
「そうだ!よし!今日はもう一本飲みなよ。お母さんには秘密にしといてあげる!」
「一海気がきく子になったな〜。」 「元からこうです〜(笑)」

 久しぶりに晩酌が始まった。けど、悪酔いしたのか、泣き上戸になって…お父さんはコタツで酔い潰れてしまった


 【ロボの部屋】
 ロボの右隣に座って、ベッドの上の窓から、また月を眺めていた。
「ねぇ、ロボ知ってた?地球って丸くてつながってるでしょ。今一番近くにいる人はロボでもあって、左からみたらロボは地球で一番遠い人でもあるんだよ。」 地球の本を読んでて、思ったの。
「そっかぁ。でも、何か切ない話だな〜。とっても淋しい。」
 薄暗い部屋の明かりのせいかロボの横顔が月に照されていて、何だか心がキューっとなってアタシも切なくなった。
「ニコがそうゆう気持ちな時は、俺はこうしてあげるね。ちょっとゴメン」
 って言ってロボはいきなり横から、アタシをギュって抱きしめた。
「こうしたら、地球のどこから見ても俺が一番近くにいるだろ?近くにいるのに分かってあげれないのは嫌だからさ。」
 昔だったら抱きつくなんて殴ってたかも知れないけど温かくて、素直に嬉しいと思った



181 名前:あれから 8/8 mailto:sage [2008/03/04(火) 14:04:32 ID:xM7mRGWZ]
「うん。ロボはさ、アタシの近くにいてよ。」
 アタシも両手をロボの背中に軽く置いた。ロボの体が一瞬ビクンとなった。
「も、もちろん!いるよ。」 少し大人になったニコにロボはドキドキしていた。
「よしっ!じゃあもとい!」 って言って、ニコは手を離したからロボも急いで離れた。
 ニコはそんなロボを見て笑った。ロボは色んな顔をするニコに翻弄されていた。

 その日、ニコが家に帰ったらお父さんはもう寝ていて、お母さんがカラの酒瓶を沢山みつけて1人怒っていた。
 一海ちゃんは部屋でアタシの借りてきた地球の本を読んでた。
「ただいま、あっ!面白いでしょ?その本。」
 興味がわいたみたいで嬉しかった。
「まぁね。って、そのマフラーって誰の?」 ニコが外したマフラーをオタクのだって本当は知ってるけど…
「これ?これは…友達の。」 ロボの部屋から帰る時、明日でいいからって貸してくれたもので。
「あっそう!"友達"は大事にしなよ。 ニコが最近無理してたのみると、私逹だって辛くなっちゃうから。」
 一海ちゃんがすべてを見透かしたように笑った
「うん。ありがと一海ちゃん!もう平気だから。」
 ニコの本物の笑顔に安心した。
「そう。じゃ、寝るわね。おやすみニコ」 「おやすみなさい。」


 ニコとあのオタクを見て、私もこの地球のどこかに運命の人がいるのかと思ったら、英語もフランス語ももっと勉強して、負けないでやろうって思った。

 次の日から、ニコロボを色んなとこで見掛けるようになった。
 ニコ、自分を助けられるのは宇宙で自分だけ?じゃないでしょ。 みんながアナタを支えてるから。

終わり

182 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/04(火) 20:40:37 ID:nxRor3eK]
二人の距離の表現比喩が素晴らしかったです
「ひどい〜。じゃあさ、ニコちゃんと会いに来いよな〜。
のあたりが???


183 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/05(水) 03:33:42 ID:kyXFormZ]
ニコロボはもちろんだけど、一海ちゃんとお父さんの
やりとりもいい味出してました!

>>209
そこは「ニコ、ちゃんと」と区切りをつけて読めば
いいと思いますよ。

184 名前:あるデートの出来事@ [2008/03/10(月) 00:46:30 ID:54BZTGS+]
微妙にエロ…?ベタですみません。
三年後辺りに再会してる設定で↓


「おーい須藤。これやるよ。」
「何ですか?…観覧車の無料チケット!?使わないんですか?」
「必要だったらやらないだろう。彼女と行って来いよ。」
「あ、ありがとうございます!」
やった!と心の中で盛大にMAXチャージした。
(いつものことだが)金欠で最近どこにも連れていけなかったからなぁ。すぐ終わるかも
知れないけどニコとならどこでも楽しいや。

うきうき気分でニコにメールする。
『観覧車のタダ券もらったんだ♪今夜行こう!』
ちょっと間があって返信が来る。
『良いけど歩くの嫌だ。ロボ送って。』
相変わらず可愛くないな〜と思いながらも愛しの姫のためなら構わない。
『了解!待ってて。』
仕事を終わらせてニコを迎えに行く。私服に着替えた彼女を車に乗せて目的の場所に向かった。

観覧車には割りと人がいた。っていうかほとんどカップルだらけ。前に並んでいる奴なんか人前
なのに抱き合ってチューしてるし。初めはうっとうしかったが、なんか悶々してきてしまった。
隣にいるニコは目のやりどころに困ってあちこちキョロキョロしてる。

よし俺も、って屈んで横を向いてるニコに顔を近づけた。が、急に
方向転換したニコが気付いてギュウっと俺のほっぺをつねった。
「痛ぁ…。そんなにつねることないじゃん…。」
「だったらタコみたいに唇つき出さないでよ、スケベ!」
「だってみんなチューしてるじゃん!」
「してないでしょー!妄想しすぎ!静かにしてよ。みんな見てるじゃん…。」
なんか周りが笑ってる気がする…。
「大きい声出してるのはニコの方でしょー?」
涙目でひりひりするほっぺをさすりながらブーブー言ってると順番が回ってきた。
ぷくっとふくれるニコをなだめて、俺たちは観覧車に乗り込んだ。



185 名前:あるデートの出来事A mailto:sage [2008/03/10(月) 00:47:36 ID:54BZTGS+]
「うわぁ…。綺麗だなぁ。私観覧車から夜景見るの初めてだ。」
「ホントだ。上から見るとまた格別だなあ…。」
「うん。あの灯り一個一個にそれぞれの生活があると思うとすごいよね…。
ロボもたまにはロマンチックなことするじゃん。」
ニコは俺の向かいに座って目を輝かせていた。

ニコの言葉にも納得していたが、俺はニコの真っ黒な瞳に外の景色が
キラキラ写っているのに夢中だった。
夜景を楽しむためなのか観覧車の中はほとんど明かりが点いていない。
窓に張り付いて外を眺めるニコは子供のようで、でもどこか大人びていて…。

夜景なんかよりもニコの方が輝いて見えるよ、って言いたかったが
今度は左ストレートが飛んできそうなので何とか呑み込んだ。
「あ〜あ、このまま時間が止まれば良いのになぁ。」
「そうだね…。わっ!?」
頂上付近でゴンドラがガタッと止まった。
「何?故障?暗いよー。
どうしよ。このまま落下とかしないよね?」
「多分そんなことないよ…。とりあえず落ち着こう。」

あれ?ヤバい。緊急事態のはずなのに妙に嬉しい…。
「ニコ、淋しいからこっち座りなよ。」
「え?…うん。」
ゴンドラが少し揺れる。
「まだ直んないのかなあ?」
ニコは窓を覗き込んでキョロキョロしている。

外の灯りだけに照らされてるのにニコはすごくキラキラして見えた。
「ニコ。」
「ん?」
俺は我慢できなくなって振り向いたニコの唇を塞いだ。
勢い余って押し付ける感じになってしまった。
「ちょっ、ロボ…。」
だが俺はいい感じにドキドキ
していたので再び唇を重ねた。



186 名前:あるデートの出来事3 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:49:05 ID:54BZTGS+]
こんなときなのに俺はナゼか冷静で、キスしたままニコのほっぺが赤く染まるのを
じっと見ていた。
右腕をニコの腰に回して更に引き寄せ、左手も首の後ろに回した。
舌先で唇をなぞってみる。微妙にリップの味がしたが、自分の唾液を塗るように擦り付けた。

ニコは俺の肩を掴んで少し抵抗していたが、
舌をゆっくり侵入させるとぎこちなくそれに合わせてきた。
「…ぁ、んっ…。」
だめだ。堪らなく可愛い。俺は更に深く進め、ニコの舌をすくい上げる。
ぷっくりした唇も味わうように包み込んだ。

くちゃくちゃいやらしい音がゴンドラの中に響く。
荒い息が互いにかかって変な感じだ。
ニコが苦しそうだったので、腕の力を緩めて唇を放した。
結構長かったのか離すときに少し糸を引いた。キラキラ光って見え、
だらりとニコのあごに落ちるのをじっと見ていた。

…無意識に吸い付いてしまった。ヘンタイだ…。
ニコもぼーっとしてるのか特に抵抗しなかった。
それを良いことに首に唇を這わせてしまっていた。

初めは口だけするつもりだったのに、雰囲気と欲望に負けてしまった自分が情けない…。

俺がニコに体重をかける度にゴンドラがキイキイ揺れた。
ニコの手が腰に回り、俺が首のほくろに触れた瞬間、『大変申し訳ありませんでした。電気系統の故障によりお客様に多大なご迷惑をお掛けしました。
只今より観覧車の操業を開始致します。』
電気がパッとついてゴンドラが動き始めた。
同時に俺はゴンドラが激しく揺れるほどニコに思いっきり突き飛ばされていた…。



187 名前:あるデートの出来事4 mailto:sage [2008/03/10(月) 00:50:06 ID:54BZTGS+]
「ロボのバカ!暗くなったからって襲わないでよー…。」
「うえぇっ…!?ニコ嫌って言わなかったじゃん…。
にしても頭痛いよお…。」
「それは謝るけど…。急にされたらどうしていいかわかんないじゃん!バカエロボ!」

ああ…。せっかくのデートだったのに…。
いつもみたいにけんかして残りの夜景を楽しまないで降りてきてしまった。

でもあのままやってたら収集つかなくなってたよなあ…
「っ!?痛っ!」
「また変なこと考えてたでしょ!?顔がにやけてるよ!
…ってか鼻血出てるし!」
「ご、ごめんなさい!」
ニコからティッシュをもらって血を拭いた。とことん俺って情けない…。

「今度はちゃんとしたのにしてよね!外に出たときくらいは
エッチなことしないで。」
「…わかりました。で、さっきの続き家に帰っt」
「残念ながら今日は宿題をやらなきゃいけないのでこれで帰らせていただきます。」
してやったりのニコとがっくりうなだれる俺。
でもこの関係が結構心地よかったりするんだよな。



以上です。お目汚し失礼しましたm(__)m

188 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/10(月) 07:36:30 ID:LFb+rYei]
よし俺も、とまわりの雰囲気にのせられるロボが単純で可愛くて笑えるw
観覧車ってなかなか萌えるシチュだよね〜
GJ!

189 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/11(火) 01:52:54 ID:Q7Q91Eda]
二コりん大佐!
またの機会にロボに優しくしてあげて下さい!w

夜の観覧車=ラブラブカポー、これはガチだよね


190 名前:かくれんぼ 1/3 mailto:sage [2008/03/14(金) 05:19:15 ID:W6dbZIXo]
ニコ中学生〜その後の話です。エロなし 

**********************
 子供の頃、かくれんぼが得意だったよ、とニコと話した。
俺はいつだって遊ぶ時には超本気で真剣だったから、他の子が思いもつかないような
隠れ場所を考え出して、絶対最後まで見つからなかった。

「どーせロボは本気出しすぎて誰にも見つけて貰えなくなって、
 みんなが帰った後も一人で隠れていたんじゃないの」
 ニコはコーヒーの湯気越しに、見透かしたように言い放つ。
うう、図星。俺は「遊びの時間はここまで」というお約束に気付かない空気の読めない子供で、
鬼以外の子が全員みつかって次の回が始まっても、一人で真剣に隠れ続けた。
 ある時、とうとう誰からも見つけて貰えず、「イイチロー君が消えちゃった」という
友達の言葉を聞いて、かーちゃんが心配して探しに来たのに、
まだ気づかずにずっと隠れ続けていたことがあった。
夕食時になって空腹に耐えられず、ついに自分からのこのこ出ていった時には、
近所中が騒ぎになっていて、それはもう、ものすごく叱られた。
それ以来、かくれんぼでは誰にも見つからなかったら自分から出て行くことにしたけど、
あいかわらず、俺は超本気の超やる気で真剣に遊ぶことをやめなかった。

「あたしは鬼になる方が好きだったな。探すのが得意だったから」
 そっか、ニコは耳がいいからな。
「どんなに上手く隠れた子でも見つけたよ。今でも絶対見つける自信ある」
「ふーーーーん、じゃあ勝負する?」
「勝負? あたしとロボでかくれんぼするっていうの?」
「そうだよ。自信あるんでしょ」
「……いいよ。」
 ニコは中学生の少女とは思えないような貫禄で、不敵に笑った。
「言っておくけど、負けないから」
 ほほぉ、なかなかの自信だな。だけど俺だって自信あるもんね。



191 名前:かくれんぼ 2/3 mailto:sage [2008/03/14(金) 05:20:19 ID:W6dbZIXo]
 会場は駅前商店街の真ん中。
「もういいかい、まあだだよ」の呼びかけはナシ。ニコは俺が行った2分後に探し始める。
俺は一分ごとに小声でいいからニコの名を呼ぶ。
10分以内に見つけたらニコの勝ちで、10分たっても見つからなかったら俺の勝ち。
3本勝負で、負けた方は勝った方に喫茶店で何かおごる。

 正直、これは負けるはずないと思った。いくらニコが耳がいいと言っても商店街の雑踏の中だし
俺は脚力はニコよりずっとあったから、子供の頃よりデカくなった点は不利だけど、
最初に遠くまで走って逃げて、どこかの店の中にでも入ったら見つかるわけがない。

 結果は……見事に三連敗だった。
一度などは、ショッピングセンターの男子トイレの中にまでニコはズカズカ入ってきた。
俺が潜んだ個室の前までまっすぐ来ると、ひるまずドアを叩いて
「トイレに隠れるなんて、ずるいじゃん!!」ってプンプン怒りながら言った。

喫茶店でチョコレートパフェを食べながら
「あたしに勝とうなんて100万年早いんだけど」とニコは言った。
「く〜〜〜 悔しい〜。まさか負けるなんて〜」
「だから負けないよって言ったのに」
「ニコ、すんげー真剣に探すんだもんなぁ」
「当たり前じゃん。そっちが本気で隠れるならこっちも本気で探さなきゃ失礼じゃん。
 それとも、ロボは本気じゃなかった?」
「…本気でした」
「よろしい。素直で結構」
得意気に微笑むニコは、生意気で憎たらしくて、でも、すごく可愛かった。
「でもさ、なんかちょっと嬉しかったんだよね」
「なにが」
「どんなに隠れてもニコには見つかっちゃうことがさ。
 子供の頃、誰にも見つけて貰えなかったとき、実はずっと寂しくて不安だったんだなって。
 早く見つけて欲しかったんだって、今わかったよ」
「なにそれ矛盾してるよ、困った奴だなー」
「そうだけどさー。まあ子供だったし。なんか甘えてたのかねぇ」
 ニコは自信ありげに言った。

「まあ、あたしはロボがどこにいたって探し出せると思うよ」

192 名前:かくれんぼ 3/3 mailto:sage [2008/03/14(金) 05:23:21 ID:W6dbZIXo]
 それからしばらくして、地蔵堂の社長とよっちゃんは、店を閉めて遊ぶことにしたらしい。
それに反比例するように、俺たちの遊びの時間はいつのまにか終わってしまった。
俺は空気の読めない奴なので、終わりの合図には気づかなかったけれど、
気がついたら日常だったはずの冒険は途切れてしまい、いつのまにか「思い出」になっていて、
生意気な少女は俺の生活から姿を消した。

 毎日会社に行って働いて、疲れて家に帰って、食事を作ってアニメ見て、寝る。
次の日になるとまた会社にいって働いて、疲れて家に帰って… その繰り返し。
たまに、合コンに誘われることもあったけど、最近はなぜか前ほど楽しくない。
 予定のない日曜日、誰かと話がしたくなるとテレクラに行く。デートの約束は
出来たためしがない。なんとなく話をするだけ。それでも少しは気晴らしになる。
 天気がいいと公園に散歩に行ったりもする。
ニコを待っているのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
公園に行くとなぜか子供達がなついてくるので一緒に遊ぶこともある。
そういう時が一番自分らしく生きてるって感じがする。

スパイじゃなくなった俺の日常はこんな感じに淡々と過ぎていく。
「いやだけど、なんとなく働いて、いやだけど、なんとなく生きてる」
そんな風にぼやいていた頃と何も変わらない日々が続く。
ニコと過ごした日々は夢だったのかもしれないと時々考える。

ーーいや違う、あれはまぎれもないリアルだったーーーー

だって俺は、ニコと共に世界の残酷さと美しさを覗き見して、確実に少し変わったんだ。
相変わらずビンボーでオタクで、もてない奴だけれども、
誰も分かってくれなくても、宇宙の片隅で小さく輝き続けていこうってちゃんと思えるんだ。

俺はたぶん信じているのだと思う。
いつかきっとあの娘が俺を見つけてくれることを。

雑踏ですれ違う、制服姿の少女達に時々はっとして立ち止まる。

 ニコ、君は今、頭を上げ前を向いて歩いているかい。

俺はたぶん何か足りなくて、一生大人になりきれない人間なんだけど、
そんな自分を自分だけは味方してやりたくて、今日も歌を歌いながら、胸を張って歩く。

*********おわり*********


193 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/14(金) 06:27:19 ID:3NND3e1W]
ロボォォオオオ!
。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
必ず見付けに来るよ
GJ!

194 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/14(金) 14:27:35 ID:7n1koqdT]
エピソードが本編とリンクしてて切なくなりました。
GJ!


195 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ前半1 mailto:sage [2008/03/15(土) 03:07:49 ID:I4fTwj+n]
「ねぇってば、ロボ?聞いてる?」
「んあ〜?なにぃ〜?ニコ〜」
ロボはテレビに顔を向けたままニコに返事をした。
一日中暇さえあればマックスロボを見ている。
「ちょっと、人が話してんだから顔ぐらい向けなさいよね〜」
「今、いいとこなんだよぉ!・・・マックスパーンっっっッチ!」
「もういい!死ぬまでずっとオタクやっとけば!?」
「そうだそうだ!死ぬまでオタクやっとけ〜!」
ロボは一人混じったおっさんの声にハッと後ろを振り返る。
ニコも驚きの顔で横を見つめる。
(二人同時に)「よっちゃん!?」
「あ、あんた、どこから入った!?」
変な動きで身構えるロボ
「んあ?普通に鍵あいてるだろうが」
あぐらをかいて無精ひげをさわりながら答えるよっちゃん。
ニコはなんだかいつもよりタバコくさいな、と思った。
「め、めんどうなことは嫌よ!」
ニコは心からそう思った。そして口にしていた。
「おいおい。そんな身構えんなって。今日は仕事の話じゃねぇよ」
(二人とも)「?」
「うちの社長がさ、もうすぐ誕生日なんだよ。だからさ、二人ともパーティーやらないかな?と思ってよ」
ロボは顔に満面の笑顔を浮かべ
「いいね!やろうやろう!俺たちもなにかとお世話になってるし!」
ニコは不思議そうにいった。
「あれ?ロボって、社長のこと苦手じゃなかったの?」
「いやぁ、それとこれとは別だよ〜。誕生日は祝うほうも祝われるほうも気持ちがいいもんでしょ!」
ニコに指を振りながらうれしそうにいう。
よっちゃんはガバッっと立ち上がり、大きく手を叩いていった。
「よし!決まりだ!んじゃ明日、午後6時くらいにここの下に迎えにくるから!じゃ!」
「はーい。んじゃ明日は残業できないな!」
なんでこんなに嬉しそうなんだろう。ニコはすこし不思議だった。
「あ!それから、明日はちゃんとした正装で来いよ!」
「あ、あたしは?」
「ニコは、そうだな・・。ドレスなんかいいんじゃないか?今日、二人で買い物して来いよ。」
よっちゃんはそういうと、ふところから10万くらいの札束をポサッとテーブルに置いた。
「え!悪いよ!こんなに!」
ニコは申し訳なく大きな声で言った。それにドレスなんかきたことないのにと思った。
ロボはまじまじと10万円をみつめて「本物かなぁ?本物?」などとつぶやいている。
「仮にも社長の誕生日パーティーだからよ、ちゃんとしててほしいじゃん?つーか、じゃねぇと俺が怒られんじゃん?」
ニコはなるほどと思い、すこし気の抜けた微笑みを浮かべた。
ロボはお札の匂いを確かめたりしている。
「そんじゃ。また明日な。」
「ばいば〜い。」
ロボは部屋から出て行くよっちゃんに大きく手を振り、今度はちゃんと扉の鍵を閉めた。
案外、抜け目ないな、ロボ。



196 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ前半2 mailto:sage [2008/03/15(土) 03:08:49 ID:I4fTwj+n]
ロボはニコと10万円を交互に見つめると二カッと笑い
「行くか!買い物!」
と言った。うーん、馬鹿みたいに嬉しそうだ。とニコは思った。

「ロボ、出動します!」
エンジンをかけ車を走らせる。
ガレージから出るとき入り口のシャッターで車が擦れている音をニコは聞き逃さなかった。
ニコはあえて何もいわなかったが。
「ねぇ。ロボ。あたしどんなドレスが似合うかな?」
「ん、そうだな〜。派手なのより地味なほうがいいんじゃないかな?」
「ちょっとそれどういう意味?」
ニコは素でカチンときた
「ニコ〜怒んないでよ〜。ようするにニコは飾りを付けなくても美人だってことだよ」
「へ?ば、ばっかじゃないの?そんなの言われなくても知ってるっつーの」
ニコは素で照れた。
「またニコはすぐ照れるんだから〜」
ロボはそういうと馬鹿にして笑った。
「うっさいなーロボのくせに!馬鹿、スケベ、変態!」
「ハイハイ、俺は馬鹿でスケベで変態のオタクですぅー」
ハンドルを右に曲げるロボ。
なんだか、太陽の光もあいまってか、ロボがかっこよく見えた。
「そ、それにしてもよっちゃんって本当に社長思いだよね。」
「うん、本当に二人はいい関係だよ。親子?というか恋人?というか・・・」
「そうね、家族みたいだよね。」
「俺にとってニコも家族みたいなもんだよ」
「そうだなぁ、私にとってもロボは家族、かなぁ?オタクだけど」
「一言多いの!ニコは!」
「ロボといると楽しいもん」
すこし感慨深そうにニコはつぶやいた
ロボは少しそれを汲み取って言った。
「俺もね〜、楽しいんだよね。ニコといると。なんか、楽っていうか、楽しいって「楽」って書くじゃない?だからかな〜」
ニコはすこし笑って
「私、ロボのこと好きかもしんない」
「そうだね、ニコは・・・ってえええええええええええええ!????」
車が縦横斜めに揺れて蛇行する。
「ちょ!ロボってば!あ、危ない、危ないよ!」
赤信号で急停車する車。つんざくようなブレーキ音が響く。
「ニ、ニニニニ、ニ、ニコぉ!びっくりするだろぉ!?」
「ロボ、あわてすぎ」
「だって、そんな、急に、え?好き、だ、え?なんて、ねぇー?」
窓に向かって誰かに同意を求めるような動作をすろるロボ。
「家族としてってこと!」
ニコは不満そうに付け加えた。
「そ、そそそ、そうだよねぇー。そうか、そうだよね。」
なに焦ってるんだろ?俺。とロボは思った。
「ばっかみたいwあわてちゃって。こんな若い子があんたみたいな中年オタク好きになるわけないでしょ!」
「お、お大人をからかわないの!」
「もういいから、前向いて運転してよ!ほら、青になったよ!」
ニコはロボに聞こえない声で「ロボの馬鹿」とつぶやいた。
ロボはぶつぶつと「そんなわけないか」などと小声でつぶやいていた。全部聞こえてるよ、ロボ。



197 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ前半3 mailto:sage [2008/03/15(土) 03:10:20 ID:I4fTwj+n]
車は街についた。
夕方過ぎだからだろうか?街がさびしそうに見えたのは。
ニコは一心不乱にドレスを試着していた。
あれでもない、これでもない、と探している。
というか、ドレスって高い。10万で足りるかなぁと不安そうな声をロボは発している。
でもニコに聞こえないように。だから、全部聞こえてるってロボ。
ニコは結局二時間ほど探し回り、値段も少し安めの8万の赤のドレスを購入した。
なにが決め手になったか?
ロボがそのドレスをみて鼻血を出したからだ。

試着室のカーテンからニコは顔だけ出し
「ロボ、ちょっとおいで。」といい
カーテンをガラッとあけた。
と同時にジェット噴射のような鼻血をロボが出したのだ。
「えっ!?ロボ!?なに!?」
ニコは戸惑ったが、実際爆笑した。
バンビのような動きでロボは足を震わせていた。
「ロボ、やらしー。」
「ニコ、違うんだ、これは。違うんだ。あれ?頭がくらくらする」
「血ぃ出しすぎ」
ニコは購入を即決した。

「あー。鼻血ってあんなに出るもんなんだね」
ロボはもう暗くなった夜空を車のフロントガラスから見つめながら言った。
「ちょっと、おなか痛いから笑わせないで」
ニコは終始笑い続けていた。
「ちょっとー。笑いすぎ!大人をからかうなって言ったでしょ!」
「だって、ロボ、なんで、あんな、はなぢ・・・」
「笑いすぎだって!」
「これ聞いたら一海ちゃん絶対爆笑するよ?」
「一海ちゃんにはいわないでってばー」
「言ーおうっと」
ニコは少しロボから顔を背けた。
「ロボはさ、なに?私の格好に興奮したわけ?」
蛇行する車。
「だ、だ、だだ、断じて違う!た、たまたま今朝ピーナッツとチョコ食ったから・・・」
「ふぅーん」
「本当だよ?あー。う、疑ってるな?」
「ううん、ロボの言うことは全部信じてるよ」
ニコは完全にロボからそっぽを向き、そう答えた。
「あれ?ニコ?あれ?怒ってる?」
「ううん、怒ってない」
「ニコ、今日、楽しかった?」
「うん。楽しかった」
「そう、よかった」
ニコは窓ガラスにうつったロボの顔がとても印象的だった。
とてもきらきらと目を輝かせ嬉しそうに笑っている。
「ロボ、好きよ」
そうニコは口を動かすだけだった。

続く。

198 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ中編2 mailto:sage [2008/03/15(土) 12:28:33 ID:I4fTwj+n]
ニコはベランダに腰掛け月夜を見ていた。
なんであんなこといったんだろう?
私、どうかしていた。
ロボが好きなんて、ああ、恥ずかしい。
私の独りよがりじゃない。
なんで、ロボは気づかない振りをするんだろう?
本当は全部わかってるはずなのに。
なんだか胸が痛い。というか苦しい。
私のロボに対する感情は間違いなくプッチーニ事件を境に変わった。
苦しいのも、メモを捨てたのも、マックスロボを持って帰ったのも
全部ロボのことが好きだからだ。
だから昭子さんに嫉妬もしていた。
ロボはやっぱりまだ昭子さんのことが好きなのだろうか?
一海ちゃんにも嫉妬していた。
それともロボは一海ちゃんが好きなのだろうか?
ロボは私のこと好きなのだろうか?
聞きたい。聞きたくてたまらない。
「そうだ、いつか・・」
いつかちゃんと聞こう。
ニコは月から顔を落とし、自分の足を眺めた。


199 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ中編1 mailto:sage [2008/03/15(土) 12:31:06 ID:I4fTwj+n]
ロボとはそれから他愛もない会話をした後、家まで送ってもらった。
「ロボ、ありがと」
「うん。明日は午後6時だからな。遅刻するなよ。」
「ロボこそね。」
「それじゃあね、ニコ」
「じゃあね、ロボ」
車に乗り込むロボ
ニコは思い出したように「アッ」と声を上げた。
「ロ、ロボ!そういえば、これ!おつりの2万円!」
「え〜、ニコぉ〜、それはよっちゃんに返しなよぉ〜」
「う〜ん。これは車の修理代にでも使って。」
むりやりロボの手をつかみ、お札をねじ込む
「へ?」
すっとんきょうな声をロボが上げた。
ニコは逃げるように家の中に入った。
家に入ってから3秒後くらいにロボの叫び声が聞こえてきた。
「まぁ、私は悪くないか。なに逃げてんだろ」
ニコは少し微笑んだ。
ロボは泣く泣く帰りに車を修理に出した。
気づいていたなら何故ニコは言ってくれなかったのだろう?
意地悪だ、ニコは。
ロボも少し微笑んだ。
そうか、だからニコは安いドレスを一生懸命探していたのか。
修理代が残るように買い物をしたのか。
いや、何にも考えてなかったのかもしれない。
そんなことを考えながらロボは変らない月夜を見てスキップで家に帰った。


200 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ中編1−2 mailto:sage [2008/03/15(土) 12:32:04 ID:I4fTwj+n]
「私、ロボのこと好きかもしんない」
とロボはふと自ら口にしていた。なんであんなことを言ったのだろう?と考えていたのだ。
ロボは正直、うれしかった。
ロボの中にニコを好きという気持ちが芽生えていたからである。
しかし、ロボ自身それには気づいていない。
「うれしいけど、戸惑うなぁ。なぁ、マックスロボぉ〜」
と青色のそれに語りかける。
本当は、本当は、変らない関係がよかったのかもしれない。
それは友情関係。
ニコと居ると楽しいもんな。それは昭子さんと一緒に暮らしたとき気づいた。
ロボは勝手に自分のなかで恋愛は苦しくなくてはいけないと決めていた。
だから、自分の気持ちに素直になれなかった。
それにまだニコは中学生じゃないか。
年齢は関係ないとは言い切れない年齢だ。
「そうだな、いつか、いつか・・・」
そんな関係が受け入れればいいな。
ロボは大人の顔をして、マックスロボを見つめた




201 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ中編 mailto:sage [2008/03/15(土) 12:33:23 ID:I4fTwj+n]
226→227→225の順に見てください。

202 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ中編3 mailto:sage [2008/03/15(土) 12:34:23 ID:I4fTwj+n]
すると後ろから声が
「ニコ、どうした?考え事か?」
お父さんだ。
ニコはあわてるように首を振った。
「ううん。なんでもない」
「恋の悩み事かぁ?ニコ」
「違うって」
できるだけ平静を保ちながらニコは答えた。
「そうか、まぁ、うん。」
お父さんはなんか悲しそうな表情で答えた。
ああ、やっぱり親にはわかるんだな。と感心した。
「あのな。ニコ。いつかお前が誰かと恋をするかもしれない。
そして、結婚もするかもしれない。というかするだろう。
そのときは必ず、自分の直感を信じろ。」
ニコの後ろに立っていった。
「お父さんは直感で結婚したの?」
「ああ、そうだよ。この人ならいい家庭が築ける。って思ったんだ」
「お父さんが付き合ったのはお母さんだけ?」
「いや、何人か、うん、何人か付き合ったよ」
「へぇ、やるね。お父さん」
「いやいや、でもね。やっぱり結婚しようって人は何か、違うんだな」
「何か、ね。それが分かれば苦労しないんだろうね」
「確かに」
お父さんは笑って答えた。
その何かをロボが持っててくれたらいいな、と切に願った。
「ニコ、これ食べる?」
振り返ると、お父さんは片手に梅酒、片手にチョコレートを持っていた。
「いいよ。鼻血出るし」
「へ?何のこと?」
「いや、なんでもない」
「ビターチョコレートは恋の味〜♪」
と鼻歌歌いだすお父さん。
「そんな歌あるの?」
「いや、ありそうだなと思って」
常々、変わった親父だと思っていたが本当に変な人だ。
「一個。一個だけ頂戴」
「ん」
ニコにチョコを手渡すお父さん。
苦い。苦いな。
そういえば「苦い」って「苦しい」と同じ漢字を書くんだ、なるほど。
これは恋の味だ。
妙にニコは納得した。


203 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ中編4 mailto:sage [2008/03/15(土) 12:35:33 ID:I4fTwj+n]
翌日
学校が終わると走ってでロボの家に行った。
むーちゃんにも気づかれた
「ニコ、なんか嬉しそうじゃん。彼氏?」
「いや、違うよ。違う。」
「そういえばニコって彼氏いるの?」
「手下ならいる」
「なにそれ」
むーちゃんは笑っていた。
ロボの家に着くと、ロボはマックスロボをいじっていた。
スーツを着ていた。
変な絵だな、とニコは思った。
「あのさ、スーツ着てるのに、ロボットいじりはどうかと思うよ〜」
「あっ!ニコ!チャイムぐらい鳴らしてよ!」
「だって鍵開いてるじゃん。学習してよね」
「でも普通チャイムぐらい鳴らすのが常識だろ!」
「うっさいな〜。いいでしょ。私なんだし」
「ん・・・まぁ、確かに」
「ロボこそちゃんと鍵かければいいじゃん」
「そ、そうだね、ごめん」
「なんで謝るの?」
「いや、なんか今日のニコ怖いから」
「なにそれ。普通じゃん、いつもと一緒だって」
ロボはやけにきらきらとした目でニコを見ていた。
怖かったのだ。
ロボはニコが怖かった。そして自分が。
ニコといると恋愛の感情がふつふつと湧き上がってくるから。
そして、ようやく自覚した。
俺はニコが好きなんだと。
でも言えない。そんなこと言えるはずない。
そんなこと言ったら、嫌われる。
「ロボ、私、ロボのこと嫌いになんかならないよ」
ロボはドキッとした。
「へ?」
「いや、言ってみただけ〜」
なんだか、手玉にとられているとロボは感じた。
ニコには全部お見通しなのか?
やっぱり、この子にはかなわないな。

204 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ中編5 mailto:sage [2008/03/15(土) 12:36:24 ID:I4fTwj+n]
「そうだ、ニコ!ドレスは?」
「あ、そうそう。今から着替えるね。」
「こ、ここ、こここ、ここで!?」
「やらしー。何想像してんの?」
というとニコはトイレの中に消えた。
「あ、ああ、なるほどね」
ロボの心臓はバクバクしていた。
トイレの壁越しにロボの「目の前で着替えると思った」という小言が聞こえてくる。
聞こえてるっつーの。
ニコはトイレから顔を出し、
「目の前で着替えるわけないでしょ!変態!」
「変態じゃないですぅー。スケベですぅー。」
「一緒じゃん」
そういうと、ニコはトイレから出てきた。
とても派手に思われたが、似合っていた。
そして、ロボはすでに鼻血を流していた。
「ロボまた鼻血ぃー?」
ニコは大爆笑した
「あ、あれ?なんで?」
「またチョコとピーナッツ?」
「う、うう、うん、そうそう。そうだって」
ニコは本当にロボは駄目なやつだなと思った。
こんな人でも大人なんだな。
ニコはすーっとロボのほうに寄って行き、くるりと回って見せた。
赤の綺麗な布がひらっと浮く。
「どう?」
「に、似合ってるよ」
ロボは鼻血を拭くことで精一杯だ。
「見てないじゃん、ロボ」
「見れないよ〜」
「ロボ、こっち見て」
「え〜。なんか大人すぎて見れないよ」
「いいから、見てよ」
ロボはチラッと見た。
「き、綺麗だね、ニコ」
照れ隠しのようにわざとダンディーな声をロボは出した。
そして、またとめどなく鼻血が流れ出した。
「亀仙人かお前は」
「あ、あれ?」
「ロボもう、病気だってそれは。ドリフじゃん、ドリフ」
ニコはずっと笑っていた。
やっぱりロボは変わらないんだ。
変わらない大人なんだ。
ロボ、好きよ。大好き。
「ねぇ?ロボ」
「なに?ニコ?」
ロボはこちらに顔を向けようとしない。
「私ね、前に思ったの。ロボと私の願う幸せが同じだったらって」
「え?」
「いつか、いつか私、ロボと結婚したいな」
「なななな、なに言ってんの?」
「本気よ?」
「そんなこといきなり言われても・・」
「ロボはどう?」
「そりゃ、俺も・・・・」
ロボがそういいかけた瞬間。
家の下からクラクションと大声が聞こえた。


205 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ中編6 mailto:sage [2008/03/15(土) 12:37:01 ID:I4fTwj+n]
「おーい!ニコアンドロボー!行くぞー!」
よっちゃんの声だ。
ロボは気づけばベランダから顔を出し返事をしていた。
「わかったー。今行くー」
ニコはよっちゃんとロボにイラッときた。
答えを聞かせてよ。
ちょっと勇気出していったんだから。
ロボはそれが分かった。ニコの気持ちが。
ニコは不満そうに部屋を出ようとしてた。
そして
ロボは無言でそんなニコを抱きしめた。
そして頭をなでた。
「ほら、行くよ?」
「うん」
ニコは抱きしめ返した。
ロボはちっちゃくてかわいいなと思った。
「ロボ、好きよ」
今度はちゃんと声を出していた。
ロボは答えることはできない代わりに
強くニコを抱きしめた。
離したくないなと思った。
ロボはニコの手を引いて、家を出た。

続く

206 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/16(日) 23:42:34 ID:+RyCf6Dy]
続きを期待してMAX!

207 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/16(日) 23:46:02 ID:JGfIoVSR]
ナチュラルな展開がとても(・∀・)イイ!!

208 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編1 mailto:sage [2008/03/17(月) 23:08:01 ID:KZHDfPVF]
下ではよっちゃんが黒塗りのキャデラックに乗り二人を出迎えていた。
「おせぇんだよ!早く乗れって!」
よっちゃんは唾を飛ばしながら大声で言う。
「そんな大声で言わなくても聞こえてるよ」
ニコはなだめるように言う。
ニコの心音は早くなっていた。
不意にロボに抱きしめられた感触を思い出しながら
ニコは車に乗り込んだ。
ロボはさっきから黙っている。
口をとんがらせ、大人の表情を浮かべている。
たまにみせるロボの大人の表情。
知らない人に見える。
ロボはいっつも子供のような笑顔を浮かべているのに。
わたしのせいだ。ニコは思った。
あんなこと、言わなきゃよかった。
言わなかったら後悔するくせに、言っても後悔する。
私って、なんなんだろ?
でも、ロボのあの行動は気持ちの表れだろうか?
それとも慰め?
なら、いらない。
「私は、ロボ、あなたがほしいの。」
少し、ニコはちょっと背伸びして心のなかでつぶやいた。


209 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編2 mailto:sage [2008/03/17(月) 23:08:31 ID:KZHDfPVF]

なんで、俺あんなことしちゃったんだろ?
ロボの頭の中は真っ白になっていた。
勢いで抱きついちゃった。
も、もちろん、好きだったから。
別に、後悔は・・・ちょっとだけしてる。
あ、よっちゃんがなんか言ってる。
早く車に乗らなきゃ。
ロボの心拍が加速度的に増して行くのに反比例して
周りの景色はスローになり、音が消えていった。
ニコ、好きなのに。好きだけど。
あれ?苦しくなってない、俺?
なんか、違う。ニコといるのに苦しい。
俺が待ってたのはこんなことじゃない。
やっぱり、俺がしたことは間違っていたのか?
友達のままのほうが楽しかったんじゃないのか?
楽しいから、ニコと居たいんじゃなかったのか?
いや、違う。
好きだからだ。
「ニコ、好きだよ」
ロボは口を少し動かすだけだった。

210 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編3 mailto:sage [2008/03/17(月) 23:09:02 ID:KZHDfPVF]
「ねぇ、よっちゃん」
「ん?なんだニコ?」
「なんか、ドレスありがとね」
「ああ、いいのいいの。」
よっちゃんはそういうとハンドルを右に切った。
運転が荒い。
後部座席のニコはそう感じた。
ニコは隣に目を向けた。
ロボはずっとまじめな顔をしている。
家を出てから一言もしゃべっていない。
私のせいだ。
自己嫌悪を感じながらニコは再びよっちゃんのほうに目を向けた。
いや、このときニコは目を向けただけではなかった。
意識せず、自然と耳を傾けていた。
そして、異変に気づいた。
思えば、さっきハンドルを右に切っていた。
地蔵堂に行くにはあの交差点は左に曲がらなくてはならない。
よっちゃんは地蔵堂とは別のところに向かおうとしている。
そして、さっきニコが聞いたもの。
よっちゃんの異常な心拍数。
前にこれと同じよっちゃんの心臓音を聞いたことがあることをニコは思い出した。
堪忍袋の爆弾を止めようとしたときだ。
よっちゃんは焦ってる?
何に?
よっちゃんがこうも焦ることはそうない。
社長だ。
ニコは瞬時に社長になにか危険が迫っていると理解した。



211 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編4 mailto:sage [2008/03/17(月) 23:10:22 ID:KZHDfPVF]
「ねぇ!」
「ぅお!なんだよニコ!いきなり大声出すなよ!」
「社長・・・危ないの?」
よっちゃんはバックミラーでニコの顔をのぞいた。
ニコもバックミラーでよっちゃんの顔を見た。
よっちゃんはとても驚いた顔をした。そしてこころなしか青ざめていた。
「し、心配なんだよ・・・」
「何?ちゃんと説明して!」
「今日の誕生日パーティーでよ、社長がおとりになってんだよ!」
「ど、どういうこと?」
ただならぬ雰囲気にロボも我を取り戻した。
「本当は俺はやりたくなかったんだけどよ・・。社長が・・」
「え?何?」
ロボはあわてるように聞いた。
「社長がさ、警察に頼まれたんだよ。おとり捜査してくれないかって。
依頼者の人が昔社長がスパイだったときに世話になった「警察のお偉いさん」で、
断るに断れなかったらしいんだよ。社長は仁義を重んじるから、恩を返そうとか思ってんだろうな」
「お、おとり捜査って、誰を捕まえるの?」


212 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編5 mailto:sage [2008/03/17(月) 23:10:42 ID:KZHDfPVF]
「殺し屋だよ。二人組の。ビターチョコレート&ピーナッツっていう」
「なにそれ?」
「俺もよく知らないんだけどよ、とにかく腕が立つらしいんだ。
三日坊主っていたろ?」
「うん。三日坊主がどうしたの?」
ニコはあわてて聞く。少し心の傷が痛む。
「ニコが、三日坊主止めてくれたおかげで結局社長は助かったんだ。
でも、どうやら三日坊主の雇い主だった奴にまた社長を殺すよう依頼が入ったらしいんだわ
その雇い主が社長を再び殺すために送り込んだのがビターチョコレート&ピーナッツだ。
前回、失敗してるだろ?もう失敗はできない。この世界で二度も失敗は許されない。
だから向こうも確実に殺す気できてる」
「その「警察の偉い人」は社長がビターチョコレート&ピーナッツに狙われてること知ってて、
おとり捜査を頼んだの?」
「おう、だって社長はその「警察の偉い奴」に聞いて初めて狙われていること知ったんだから。」
「社長は今どこにいるの?」
「おとり捜査の会場だ。クラブを貸しきってあって、そこで社長の誕生日パーティーをやる。
奴らが今日殺しにくるのは間違いない。大勢の人がいて、社長だけが壇上に上がっている。
こんなに殺しがしやすい環境はない。絶好のチャンスだ。」
「じゃあ、今日そいつらが来るのは間違いないのね。」
「ああ、それは間違いない。」
ロボは少し強い口調で言った。
「なんで俺たちにそのこと言ってくれなかったんだよ!」
「だって、お前らを危険に巻き込みたくなかったんだよ!」
「でも、結局連れてく気だったんでしょ?」
ニコは聞いた。
「いや、正直迷った。連れて行きたくないと思った。いつ言おうか迷ってた。」
ロボはみるからに怒って、言った。
「なんでだよ!俺たちのこと信用してないのかよ!」
ニコは驚いた。こんなに大声で怒ったロボを見るのが初めてだったからだ。
「信用してるさっ!信用してるけど・・・言うのが怖かったんだよ。
今日、本当にお前らを迎えに行くかどうか、迷った。
でも気づいたら迎えに行ってた。
不安をかき消すようにお前らの元に車を走らせてた。
で気づいたんだ。
やっぱり、俺は心の中で本当にお前らのこと仲間だと思ってたんだって。
だから、失いたくないって思ったんだ。
・・・ごめんな」
ロボはすごく泣きそうな表情を浮かべた。
ニコもうれしいような、泣きたいような気持ちで胸がいっぱいになった。
よっちゃんは目をウルウルさせていた。
その悲しさをかき消すようにロボは言った。
「俺たちでさ、社長を守ろう!それでさ、俺たちだけでちゃんと誕生日パーティーしよう!」
よっちゃんは完全に泣いていた。
こんなときのロボはなんだかとても頼もしい。
「そうだな・・」
よっちゃんは声を振り絞りながら言った。


213 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編6 mailto:sage [2008/03/17(月) 23:11:35 ID:KZHDfPVF]
「いいか、作戦はこうだ。」
よっちゃんが会場の前で車を止め、後部座席を向いてしゃべり始めた。
ロボとニコは真剣に耳を傾けた。
「俺がめぼしいやつをしょっ引いてくるからそいつを後はみんなで袋叩きだ」
ロボとニコはため息をついた
「ちょっと、真剣に考えてよ!」
「はぁ!?真剣だよ!!」
「どうやってそのめぼしい奴を見つけるのよ!?」
よっちゃんは声をつまらせてこういった
「っ・・・勘だよ、勘!」
「そんなんじゃ駄目。社長の命がかかってるのよ?」
ニコは諭すように言った。
黙って聞いていたロボが何か思いついた。そして、それを言った。
「ニコ?さっきどうしてよっちゃんが俺たちにこのこと隠してるって分かったの?」
「し、心拍数が早く・・・あっ!」
「そのとおり!ニコが会場に居る人の心拍数が早い奴を聞いて探すのさ!」
「なるほど、めぼしい奴は見つけられるな」
「でも、その人たち腕の立つ殺し屋なんでしょ?人を殺すぐらいで心拍数が早くなったりするのかな?」
ニコは疑問に思った。
ロボは少し考えていった。
「波紋を起こせばいいんだよ。」
「波紋?」よっちゃんとニコは同時に聞いた。
「予想外の行動を社長にとらせて、ビターチョコレートたちを焦らせればいいんだよ。
例えば、この中に殺し屋がいますか?とか壇上で言わせるの。そしたら、必ず何かしらの動きを見せるはず。」
今日のロボはすごく冴えているなと思った。まるで別人のようだった。
「それ、そうとう賭けだな」
よっちゃんは神妙なおももちで言った。
「でもただ、撃たれるのを待っているよりはリスクが低いよ?」
ニコは言った。
ロボは大きくうなずき、よっちゃんは冷や汗を拭きながら細かく顔を縦に振った。



214 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編7 mailto:sage [2008/03/18(火) 21:57:55 ID:AwnJZLZ0]
会場に入ると、一番に社長を見つけることができた。
社長は和やかに女性と談笑している。
命を懸けている人の顔には見えない。
パーティーは7時から始まるらしく、まだ人は社長たちとスタッフ数人しか居ない。
「ねぇ、ロボ?」
「なにニコ?」
「今日、ロボ、なんか違う人みたい。怒ったり、まじめな顔したり」
「えぇ?そうかな?いつも通りだって。マックスパーンッッッチ!!」
「あ、やっぱオタクだ」
「なんだよそれ〜。」
ニコは無理してるのがすぐに分かった。
ロボの笑顔がなんだか消え入りそうだった。
「ロボさ、思ったんだけど、ビターチョコレート&ピーナッツって、この前ロボが鼻血の言い訳したときと同じじゃない?」
『た、たまたま今朝ピーナッツとチョコ食ったから・・・』
ロボの真似をするニコ。
「馬鹿、俺が食べたのはミルクチョコだよ!」
手を大きく振りながらニコに指を指すロボ
「別にちょっとぐらいいいじゃん!馬鹿って何よ馬鹿!」
「あ〜馬鹿って言ったな、馬鹿馬鹿!」
「ロボのバカバカバカ!!」
大声で騒いでいると社長がこちらに気づいた。
驚いた顔をしている、と同時に複雑な表情を浮かべた。
「ニコ。ロボ。」
社長はできるだけ大きくはっきりと名前を呼んだ。
ロボはビクッとして「気を付け」の体勢になっている。
「全部、よっちゃんから話は聞いたみたいね。」
よっちゃんは後ろでこそこそ隠れている。
「よっちゃん。連れてきてくれてありがとう。私たち家族だもんね。」
よっちゃんはまた泣きそうな顔をしている。
社長は全部お見通しのようだ。
「あなたたちも本当に来てくれてありがとね」
「よっちゃんに騙されただけですよ〜」
ロボは嫌そうな顔をして言った。
「こら、ロボぉ!」
ニコは少し笑っていった
後ろからよっちゃんの嗚咽が聞こえる。
よっちゃんってこんな泣く人だったんだ。友情とかに弱いんだろうな、とニコは思った。
今日はみんな違う人に見える。みんな別の顔を持ってるんだ。
それが大人になるってこと?ニコは誰かに聞きたかった。


215 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編7 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:00:22 ID:AwnJZLZ0]
「紹介するわ。こちらが依頼人の敷島亜紀さん」
そこにいたのは社長と同い年くらいの女性だった。
「どうも敷島です。あなたたちがニコちゃんとロボくんね」
ロボは少し驚いていた。ニコも。
男だと思っていたからだ。
「あ、あの敷島さん?」
ニコはおそるおそる聞いた。
「亜紀でいいわよ」
「あの、亜紀さん?私たちもいいですか?捜査に参加させてもらっても」
「それは、私じゃなくてマキに聞くべきでしょ?」
ニコは社長の方をスッと向いた。
社長は黙ってコクリとうなずいた。
ニコはロボのほうを少し見た。ロボもニコのほうを少し見た。
「そろそろパーティーがはじまるわ。あなたたちはできるだけばれないようにして」
「亜紀さん。分かってます」
ロボは敬礼みたいな動きをした。
よっちゃんはまだ泣いている。
ニコは社長の元に近づき、耳元でさっきの作戦について説明した。
社長は、「いいわ。」と快諾した。
頭の回転の速い人だ。とニコは思った。


216 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編8 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:00:56 ID:AwnJZLZ0]
ぞくぞくと客が入ってきた。
社長の誕生日パーティーと銘打っただけでこんなに人が集まるのか。
とニコは変に感心してしまった。
やはり社長というべきか裏の社会に住んでそうな人たちばかりが客としてやってくる。
風貌だけでいえば全員殺し屋のような気がする。
「ニコぉ〜・・・怖いよ〜なんか怖いよ〜」
ロボはニコの赤いドレスをつかんでいる。
「ちょっと、男でしょ!しっかりしなさいよ!」
ニコはロボにあきれながら、入り口に目をやった。
よっちゃんは受付で客を見極めている。
よっちゃんはよっちゃんなりに調べているようだ。
30分ぐらいすると会場が満杯になった。
ニコは一応耳に神経を集中して全員の心音を聞いていた。
人が少し多すぎたせいか、ノイズのように聞こえたが、特に不審なものはなかった。ロボ以外は。
「ちょっと、ロボ。なんでそんなに心拍が早いの?」
ニコはロボの胸に手を当てた。
はやく鼓動を打ってる。
「だって、なんか怖いし、それに、ニコのそばにいると、なんか・・」
耳を真っ赤にしてうつむくロボ。
「この変態オタク!」
ニコはうれしかった。ロボを抱きしめたくなった。
だからニコはロボの目を見つめた。
ニコの耳まで赤くなっていた。
「ニコ・・」
ロボが目を閉じてニコに顔を近づけようとした瞬間
司会の声が響いた


217 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編9 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:08:28 ID:AwnJZLZ0]
「それでは本日の主役、真境名マキさん。ご登場ください!」
ざわついていた会場が水打ったように静まるや否や大きな拍手に包まれた。
舞台袖から出てくる社長。
満面の笑顔を浮かべている。
ロボはすごいなと思った。命を懸けているのになんでこんな表情ができるのだろう、と。
舞台の袖には亜紀さんが心配そうに見つめている。
やさしそうな人だとニコは感じた。
社長にキンキンとしたスポットライトが当たっている。
すると社長はいきなり
「この中に、殺し屋がいるでしょ?」
と言った。
これにはニコもびっくりした。
タイミングが早すぎると思ったからだ。
しかし社長も考えていた。不意打ちとはこうでなくては意味がない。
このタイミングは正解だったとしかいいようがないのだ。
そしてすぐにニコはタイムロスを起こさないように神経を集中した。
そして、ニコはすぐにこの作戦のケアレスミスに気づいた。
当たり前だ。
こんなことをしたら誰もが心拍数は早くなる。
波紋がすべての客に聞いてしまっては意味がないのだ。
しまった。ニコはそう思った。
ところが、不幸中の幸いというべきか。
ニコは絶対的な異変に気づいた。
舞台の上の人たちだけ心音が変わっていない。
社長、亜紀さん、司会の三人だ。
しかもこの発言をすることはこの三人の中では発言者、つまり社長しか知らなかった。
これで、平静を保っている二人。
おかしい。

218 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編9 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:08:56 ID:AwnJZLZ0]
しまった。やられた。
ニコは叫んだ。
「宇宙で社長を救えるのは私だけ!!!!」
同時に全速力で舞台にかけた。
ロボもそれに続いて走った。
「宇宙とか言われるとときめくって言ったろ!!!ニコ!!」
よっちゃんもすぐに走った。
「しゃちょぉぉおおおお!!!!」
司会はすぐに壇上から降りニコに拳銃を向けた。
「おい!動くな女ぁ!」
ニコとロボとよっちゃんの動きが止まる。
会場がざわつく
壇上では社長が亜紀さんに捕らえられている。
「あ、亜紀!?ど、どういうこと?」
亜紀さんはにったりと微笑むと映画のように首の根元からその顔の皮をはずした。
中からは20代前半の女性が出てきた。
「私、亜紀じゃないわよ。私、殺し屋。ビターチョコレート。」
うっすら微笑むと社長に拳銃を向けた。
司会も続くように言った
「同じく殺し屋。ピーナッツ」
ニコはまるで映画だと思った。

219 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編10 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:09:20 ID:AwnJZLZ0]
ニコはどうやってピーナッツから拳銃を奪うかを必死で考えていた。
壇上では社長がビターチョコレートに戸惑いながら尋ねている。
「あなたたち、いつから騙してたの?」
「はじめからよ。あなたに敷島として依頼をしたのも私。
本当なのは私たちがあなたを殺すように依頼されたことだけ。」
「なんでわざわざこんなことするの?いつだって殺すチャンスはあったはずよ?」
社長は冷静だ。ニコはそれを聞いて少し冷静さを取り戻した。
「私たち、派手なことが好きなの。ねぇ?ピーナッツ?」
「ああ、なんならここにいる奴ら全員殺してもいいんだぜ」
「殺すんなら、私だけにしなさい!」
社長は叫んだ。
「うるさいわね。あそこの部下三人を殺すとこを見せてあげようか!?」
「・・・あなた声も変えれるのね」
社長はビターチョコレートに言った。
「ええ、驚いた?変装は完璧なの。だから私たち殺しを失敗したことないの。みんな油断するからね」
社長はニコをちらっと見た。
ニコは社長の言いたいことが分かった。そんな気がした。
ニコはとっさの判断で声を出していた。
「私が本物の真境名マキよ!!!」
社長の声でニコが叫んだ瞬間、ビターチョコレート&ピーナッツはニコに釘付けになった。
その動きをよっちゃん、ニコ、そして社長は見逃さなかった。
よっちゃんとロボは最短距離でピーナッツに体当たりをかました。
そして社長はひじでビターチョコレートのはらを叩き、その腕の中から抜け出した。
ピーナッツの上に飛び乗るよっちゃんとロボ。
よっちゃんはピーナッツから拳銃を取り上げ入り口に向かって投げた。
ロボは必死に押さえ込んでいる。
ビターチョコレートは腹を押さえながらも拳銃だけは離していなかった。
うしろにすこしよろめいた時にビターチョコレートはニコと目があった。
ビターチョコレートは社長に拳銃を向けるよりも先にニコに拳銃を向けた。
「先に殺すべきはあんただったのね」
ビターチョコレートは亜紀の声で言った。


220 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編11 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:09:44 ID:AwnJZLZ0]
ニコに向かって拳銃を向けるビターチョコレート。
よっちゃんはスーツから自分の拳銃を取り出した。
そしてコンマ1秒くらいでそれを彼女に向けた。
よっちゃんの声が響いた
「撃ったら撃つぞぉ!!!」
ニコはその瞬間、生きたい、と思った。
感情の波がニコを襲い、彼女の体の自由を奪っていた。
足が動かなかった。いや、正確には動かせなかった。
ニコは逃げたい、生きたい、そう思うと
自然と涙を流していた。
そしてこの世で初めて愛した人の名をつぶやいていた
「ロボぉ・・」
ロボは頭で考えるより先に飛び出していた。
「ニコォおおおおお!!!」
ニコの前に立ちはだかるロボ。
社長はそのとき三日坊主のことを思い出していた。
私の前にニコは立ってくれた、そして今ニコの前にロボが立っている。
「二人とも死になさい。」
ビターチョコレートの声が冷たく響いた。




221 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編12 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:11:23 ID:AwnJZLZ0]
銃声音と乾いた匂いが会場をつつむ。
ライトに照らされた煙の発信源はよっちゃんの拳銃だった。
壇上には倒れるビターチョコレート。
手からボタボタと血を流している。
「痛いぃいいい!!このぉおおおおおおおお!!!」
壇上で暴れるビターチョコレート。
まだ拳銃をつかもうとしている。
ロボはすかさず拳銃を奪い投げ飛ばした。
社長とニコはその場にへたりと座り込んでしまった。
ピーナッツは怒りで周りが見えてなかった
「おいこらぁああああああ!!!」
しんとした会場に二人の叫び声だけが響いていた。


222 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編13 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:11:45 ID:AwnJZLZ0]
本当に疲れた。
そして心底怖かった。
生きたいと思った。
寿命が縮まるとはこのことなんだとニコは思った。
ロボは大人のくせにさっきから車の中で泣いている。
「ニコぉ!!生きててよかったね!!生きててよかったぁ!!」
ロボも相当怖かったのだろう。
私の前に立ちはだかってくれたロボ。
今、私の隣で泣いているロボは子供のようだ。
昔のロボだ。
「ニコ、本当にありがとな。お前スパイの素質あるよ。」
よっちゃんもほとほと疲れた声でニコに向かって言った。
「もう、あんなこと嫌。私、怖かった。ねぇ、ロボ?」
「ニゴぉおおお!怖かったよぉ!」
わんわん泣くロボの頭をなでるニコ。これじゃどっちが子供か分からない。
「でも、ロボは私の前に立って守ってくれようとしたじゃない。」
ニコはロボを慰めるように優しく言った。
社長は少し黙って口を開いた。
「あのね・・・。私、あの時三日坊主のこと思い出してたの。
ニコ、あなたが私の前に飛び出してくれたじゃない?
それとすごく似ているなって思ったの。
ロボとあなたとても似ているのかもね」
「私が?ロボと?」
「うん、本質的な部分が。案外結婚でもしたら上手くいくんじゃないかしら?」
ニコは黙ってしまった。
そういえばまだロボから答えを聞いてない。
ロボはまだわんわん泣いている。
まだ答えは聞けそうにない。
でも答えは分かってる。
あの時、飛び出してくれたロボ。
抱きしめてくれたロボ。
今、子供のように泣いているロボ。
大人のようなロボ。
全部、それら全部がロボなんだ。
ロボがロボであることは変わらない。
きっと何十年後も。
だからいつかきっと言える。
「ロボ。好きよ。ありがとう。」
ニコはロボの頬にキスをした
ロボは少しニコのほうを見ると、微笑んで少し強く抱きしめた。

223 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編14 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:12:09 ID:AwnJZLZ0]
誕生日パーティーが後日地蔵堂で開かれた。
ニコはまた赤いドレスを着てきた。
そしてロボはまた赤い鼻血をたらした。
変わらないロボ。
社長とよっちゃんも変わらず、まだ地蔵堂を続けている。
いつかこの日々が変わるかもしれない。
世界が変わるかも知れない。
プッチーニの時のように。
もしかしたら地蔵堂がなくなって
ロボとしゃべらなくなる日がいつか来るかもしれない。
でも私のこの気持ちだけはいつまでも本物だ。
ロボを愛してるというこの気持ちは。
そして抱きしめられたことも
少し苦かったあなたの頬へのキスも
全部本物だ。
だから、お願い、ロボ
もう少しだけ

 変わらないでいて  

Voice11に続く。

224 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編 mailto:sage [2008/03/18(火) 22:12:55 ID:AwnJZLZ0]
後編の7と9が二個あるのに関してはただのミスです。

225 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編 mailto:age [2008/03/18(火) 22:14:54 ID:AwnJZLZ0]
後編9の

すべての客に聞いてしまっては
効いてしまっての間違いです。すいません

226 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/19(水) 09:24:38 ID:UO+kxFEF]
長編乙です。
タイトルの由来がそこからきてるのかと面白く読ませてもらいました。

ところでこれで終わりですよね?
voice11に続くっていうのはTV版に続くという解釈でok?
すみません、変なこと聞いて

227 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/19(水) 10:58:15 ID:jhUGuY+X]
ほのぼの恋話が一転してスパイ物に変わるところがwkwkしていい!
ロボとニコが年齢とか表面上の性格は違うけど本質的な部分が似ているというのは
まさにその通りだと思いました。

228 名前:ビターチョコレート&ピーナッツ後編 mailto:age [2008/03/19(水) 14:42:50 ID:Zh7IHuQl]
>>253
うん。そうです。
まぁ、こんな恋の話があったんだよ的な感じで見てくれれば幸いです。
パラレルワールドだと思ってください。


229 名前:普通の日 1/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:04:38 ID:EN/JCXD6]
長めでロボとニコ家族の話です。エロなし。

ロボと会わなくなって半年たった頃、ハンバーグさんが私の家に訪ねて来た。
お世話になりました。と深々と頭を下げるハンバーグさんを家に招き入れて、お父さんはロボも呼び出し、それから三人はまるで、親友のような関係になっていた。
ハンバーグさんはしばらくして実家に帰ったけど、ロボは相変わらずで、よく家に来てはお父さんと飲んでいた。
お母さんと一海ちゃんも、あーだこーだいいつつ、皆ロボと仲良くしていた。


そんなある日

「ありがとう。気持ちは嬉しいけど」
「一海ちゃんには似合わないですよね。」
 土曜日、ゆっくり寝ていたアタシは、玄関から聞こえてくる話し声で目を覚ました

 間違いない。一海ちゃんとロボの声だった。
「俺の気持ちですから。」 気持ち?ロボってば、一海ちゃんにまた好きとか言ったのかな。
 ニコは、耳を澄まして二人の話しを聞いて、一海ちゃんの言葉に衝撃を受けた。
「私も、好きよ」
「本ト!?良かった〜」

 エョ!どうゆう事? 
気がついたらアタシは、部屋を飛びだして階段を転げるように降りていた。

「ちょっと!いつの間にそんゆ〜関係??てか、一海ちゃんロボだよ?いいの?」
 突然現れて喋りまくるアタシに、ロボと一海ちゃんは目を見合せて笑った。

「そうゆう関係って?」
「今!今、好きですって言ってたじゃん」

 何よ!また息ピッタリに吹き出しちゃってさ。
 あョ!どうなってるのよ!

230 名前:普通の日 2/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:10:45 ID:EN/JCXD6]
「ニコはバカだな〜」
「バカ?バカって言った〜!」
 バカバカ言いあう二人を、一海ちゃんが止める
「コラ!ケンカしないの。ニコ、ロボはね。お土産くれたんだよ。」
 そう言われて、差しだされた紙袋を覗くとロボが説明を始めた。
「おでん缶と、ラーメン缶。ニコのお父さんが食べてみたいって言ってたから。」
 確かに一昨日、秋葉原で働くロボから、コレが自販機で売ってるって話しを聞いて、興味を持っていたっけ。

 =イコール アタシの勘違い…?

「私も好きって、コレの事なんだけど、ニコってば、何焦ってんの?」

「アタシはてっきり…」
 ロボと一海ちゃんがうまくいったのかと
 またロボと一海ちゃんが笑って、アタシは無言でロボを睨み付けた
「ヒィ!恐いッッ」
 アタシから隠れるように、ロボは一海ちゃんの後ろに逃げ込んだ
「(笑) 可哀想でしょ?も〜!ロボも寒いから中、入りなよ。
 ニコは早く着替えてきたら?」
 一海ちゃんに言われて、自分がパジャマ姿だった事に気付いて、逃げるように階段を上がった。
「アタシってダサイ…」

 着替えを済まして、顔を洗ってから、ロボと一海ちゃんがいる台所の扉の前でで深呼吸した。
「平常心、平常心っと」
ガチャ
 扉がいきなり開いた
「ぅわっ!ビックリさせないでよ。」
「ゴメン、一海ちゃん…」  アタシだって、一海ちゃんが目の前にいてビビったよ。
「ニコ、私今からデートなの。あと、お願いね?」
「エョ!?そうなんだ。行ってらっしゃい…」
「じゃあ、晩御飯は外で食べて来るから。」
 一海ちゃんは、それだけ言い残すと、急いで出掛けた。



231 名前:普通の日 3/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:20:11 ID:EN/JCXD6]
「ニコ。寒い〜!扉閉めてよ〜」
 後ろから声が聞こえて、思いだした。そうだった…ロボがいたんだ。

 台所の四人掛けのテーブルに、キャンプ用の折り畳みイスを無理矢理配置してあって、そこにロボはいつも座っていた。
 アタシも冷蔵庫から、牛乳瓶を取り出して、自分の定位置に座った。
「てかさ、ロボは何でいるわけ?」
 今日は、お父さんとお母さんで、蟹と苺の食べ放題のバスツアーに行ってていないし

「失礼だな〜。ゆっくりしてってね(ハート)!って、一海ちゃんが言ったの!」
「ロボ…それってさ、社交じれいだよ。括弧ハートもね!」
 ロボが口をパクパクさせて怒る
「フン!失礼だな〜。たまにはニコと2人もいいかな〜って思ってたの!」
「あ、そう!」 そっけない態度をとったけど、内心嬉かった。
いつも誰かがいて、本当に2人でいるなんて久々だったから。
 今日は夜まで、誰も帰って来ないし。
「ニコ?もしかして今日予定あった?」
「ないけど」
「良かった〜。じゃあ今日は、ニコといる!」
 椅子に座って子供のように、はしゃぐロボに思わず、アタシも笑った。

 取り敢えず昼食に、ロボのお土産を食べて、とりとめのない話をした。 でも、二人の時しか出来ない話で、ニコは本当に楽しかった。

232 名前:普通の日 4/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:22:21 ID:EN/JCXD6]
 それからロボが持って来たWii(これもお父さんリクエスト)をする事になって、居間のテレビの前に移動した。

 Wiiで、ロボがアタシだと思われる似顔絵を作り始めた。
「ロボそれ!それアタシ?」 顔も丸っこくて、頬っぺたも真っ赤で、かなり幼く見える。ロボには、こう見えてるのか…
「うん!ニコだケド。で、これが俺ね!」
目が切れ長で、鼻が高くて、口が大きくて、間違ってはないんだけど、何かデフォルメされてる気が…
「何かロボの、かっこいいじゃん。」
 自分の作った似顔絵の真似をして格好つけるロボ
「うん。似てる…」
  投げやりな感じでアタシが言ったのに、ロボは嬉しそうにニンマリ笑った。

 それから皆の似顔絵も作った。
「ちよっとロボ、リアルすぎ!」 お父さんはオデコが広いし、お母さんも…絶対怒られるよ。
 なのに、一海ちゃんの似顔絵は実物より可愛かった。
 ニコは少し、朝の勘違いを思い出して落ち込んだ。
 そんなアタシを心配をして、ロボが何事かと、顔を覗きこむ。
「ニコ、どうしたの?楽しくない?」
「ううん。楽しいよ。ゲームしよっか!」

 ゾンビが襲ってくるのをコントローラ-を振り回しながら、倒してくようなゲームだった。
 ニコはゾンビをバダバタ倒してく。
「ロボ後ろ!」「ヒィッ!!」 何回挑戦しても、ロボが敵にやられて、画面にケームオーバーの文字がでて、ついに疲れてゲームをやめた。
「ロボさ、恐がり過ぎだよ〜」
「俺、恐いのダメなんだから仕方ないでしょ?」
「じゃ、何で買うのよ!」 意味わかんない。

233 名前:普通の日 5/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:24:56 ID:EN/JCXD6]
 台所の定位置に座って、ジュースをせがむロボにも、更にあきれた。
「だって、ニコとしたら、楽しいんじゃないかなって思ったの!」
「アタシと?…」 ロボは小さく頷いて、ジュースのコップを受け取った。
「だって、地蔵堂でスパイしてた頃は、毎日恐い思いしてたケド、ニコがいたら楽しめた。何してても、楽しかった〜」
「アタシも、ロボがいると楽しいよ。」
誰かに貴方と居ると、楽しい!って言われるのって、嬉しい。特にそれがロボだと、なお!
 顔がほころぶのを、ニコはジュースを飲んで隠した。
「ホラーとか、昭子さんといた時は怖くて、全然見られなかったのにな〜」
 夕日のオレンジ色の光りに照らされて、物思いにふけってるロボ。きっと、その人の事を考えてる。
「ふーん。そうなんだ…」 アタシは、ジュースのコップが割れるんじゃないかってくらいに、手に力がこもった。 どっと気分が重くなった。
「ニコはまだ子供だし、守らなきゃって思ってたからかな〜!」
「ロボさ、普通は彼女を守らないといけないんじゃないの?」
 あョ苛々する。
「ニコは、世界を守る仲間… 『いい加減なこと!言わないでよ!』
 アタシの怒鳴り声に、ロボが持っていたジュースをひっくり返した
「そんなこと言って、ロボ。アタシや社長やよっちゃん見捨てて、あの人のこと守ろうとしたじゃない!」
 昭子サンの名前は、口に出すのも嫌だった。
 あの時を思い出したら、イライラして悲しくて、涙が出そうになるのを歯をくいしばって止めた。
 ロボはオロオロして、とりあえず布巾を手に取った。
「ゴメンね、ニコ…昭子さんの話なんて、俺が出したから、もうしないから。
あの時の事は、本当にごめんって思ってるから。俺…。」
 元気がなくなっていくロボの声にハッとして前を向いた。

234 名前:普通の日 6/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:28:43 ID:EN/JCXD6]
 台所の定位置に座って、ジュースをせがむロボにも、更にあきれた。
「だって、ニコとしたら、楽しいんじゃないかなって思ったの!」
「アタシと?…」 ロボは小さく頷いて、ジュースのコップを受け取った。
「だって、地蔵堂でスパイしてた頃は、毎日恐い思いしてたケド、ニコがいたら楽しめた。何してても、楽しかった〜」
「アタシも、ロボがいると楽しいよ。」
誰かに貴方と居ると、楽しい!って言われるのって、嬉しい。特にそれがロボだと、なお!
 顔がほころぶのを、ニコはジュースを飲んで隠した。
「ホラーとか、昭子さんといた時は怖くて、全然見られなかったのにな〜」
 夕日のオレンジ色の光りに照らされて、物思いにふけってるロボ。きっと、その人の事を考えてる。
「ふーん。そうなんだ…」 アタシは、ジュースのコップが割れるんじゃないかってくらいに、手に力がこもった。 どっと気分が重くなった。
「ニコはまだ子供だし、守らなきゃって思ってたからかな〜!」
「ロボさ、普通は彼女を守らないといけないんじゃないの?」
「ニコは、世界を守る仲間… 『いい加減なこと!言わないでよ!』
 アタシの怒鳴り声に、ロボが持っていたジュースをひっくり返した
「そんなこと言って、ロボ。アタシや社長やよっちゃん見捨てて、あの人のこと守ろうとしたじゃない!」
 昭子サンの名前は、口に出すのも嫌だった。
 あの時を思い出したら、イライラして悲しくて、涙が出そうになるのを歯をくいしばって止めた。
 ロボはオロオロして、とりあえず布巾を手に取った。
「ゴメンね、ニコ…昭子さんの話なんて、俺が出したから、もうしないから。
あの時の事は、本当にごめんって思ってるから。俺…。」
 元気がなくなっていくロボの声にハッとして前を向いた。

235 名前:普通の日 6/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:35:23 ID:EN/JCXD6]
↑間違えて同じの2つあります。すみません。


 ロボはジュースを拭いた布巾を、力いっぱい握ってコッチを見ていた。
 今までだって、ロボに何回もゴメンって謝ってもらったのに。むし返して、アタシって最低な女だ…
「ごめん、ごめんね、ロボ。」
 冷蔵庫にもたれかかって泣きそうな、か細い声で謝るニコみて、ロボは自分の胸を貸そうと近づいて、両手を広げた。

 ニコを見るロボの顔は、ロボが破って半分捨てた、あの写真の顔に似ていた。 不安そうな顔。
「ゴメンね、ロボ。」
「何でニコが謝るんだよ。俺だから…。ほら、おいで?」
 ロボが手招きをする

「…嫌だ。だってロボ、絶対汗くさいもん。」
 急いで自分の身体を嗅ぎ出すロボに笑った
「え〜!匂う?俺〜。」
 臭いのか、本当に心配だった。でも、ニコが笑ってくれたから良かったと思った。
「ウッソ〜!嘘だよ。アタシもう平気だから…ごめんね。」
 ニコ、絶対平気じゃない顔をしてるのに。
 ニコが俺の横をすり抜けて離れてた。 また不安になった。

「何よ。その顔は、許してくれないの?
 ロボ、身体動かしたから、お風呂入りなよ。沸かしてくるね。」

 ニコが台所を出ていった

236 名前:普通の日 7/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:37:13 ID:EN/JCXD6]
 ロボは、ニコに言われるがまま、お風呂に入った。
 静かに湯船に浸かったのに、勢いよく溢れるお湯を見つめた。
「俺何してるんだろ…」
 今日の朝の対応といい、日頃からニコの嫉妬みたいなものは、なんとなく感じていた。
 なのに俺は面白がるように、ニコの家族の前で、あの人が好きだとか、昭子さんのこととか、ニコに聞こえるように話してた。
 きっと、我慢の限界だったんだ…


「いいお湯だった〜!」
 お風呂を上がって、家の中が真っ暗な事に気付いた。
「ん?ニコ〜?」
 台所を開けると、繋がっている居間に、テレビの明かりだけが付いていた。
 そこにニコが居て、ストーブの前で小さく丸まって寝ていた。

「ネコみたい。」
 ニコに毛布を掛けて、ストーブを少し離した。
 ニコの横に座って、寝顔を覗きこんだ。頬にかかる髪が邪魔で、そっと髪をかきあげた。
 少し触れたニコの頬は、哀しいくらいに冷たかった。
「やっぱり…泣いてたんだ。強がっちゃって。」
 泣き疲れて寝たんだと思うと、心がキュッとなった。

 お風呂に長居し過ぎたから、のぼせて眠いのか何だか、顔がポーっとした。
 ロボも寝そべって、自分の片手を枕にして目を閉じた。
「おやすみ、ニコ。」

 ニコ、ニコのことはもちろん好きだよ。
 でも昭子さんっていう、異性っていう部類の人と初めてお付き合いしたことで、色んな事に気が付けたんだ。
 昭子さんは、俺といた時、時間が止まればいいって言った。俺は言ってる意味が、さっぱり分からなかった。
 でもさ、今なら分かるんだ。ニコといると、時間が止まればいいって思う。

 ニコ、ずっと俺たちは続くよな?


ロボも、いつの間にか眠りについていた。

237 名前:普通の日 8/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:38:38 ID:EN/JCXD6]
「あれ?ニコもロボも、出掛けたのか。」
 真っ暗な家に、一海ちゃんが帰宅する

 玄関でブーツを脱いでいると、台所から誰かが喋る声が聞こえた。
「何だ、誰かいたんだ。」
 台所のドアを、ただいまって言いながら開けた。

「??何だ〜。テレビか。も〜ニコってば、つけっぱなし!」
 暗い台所の電気をつけた。
 …部屋、暖かいな。 ストーブに視線を向けると、ニコとロボの寝ている姿を見て、目を真ん丸にした一海ちゃんは、やっぱりと呟いた。
 何だか、二人が微笑ましくて。

「「ただいま〜!」」
 相当楽しかったのだろう。大きな声を上げて、帰って来たお父さんとお母さん。
「し〜(怒)!お帰り。」
「何だよ〜。一海、し〜!ってのは。」
 両手いっぱいにお土産を持って、不満そうにお父さんが言う。

「あら?須藤君の靴じゃない。いらしてるの?」
そういえばロボの靴なんて、毎日玄関にあるから忘れてた。
「うん!お父さんに、お土産持って、来てるんだけど…寝てる…。」

「あそ!待たせちゃったかな〜。すみませんね。帰ったぞ〜。」
 靴もだらしなく脱いで、台所に入ったお父さんは固まっていた。
「だから、言ったのに。」「何?何よ。あら!カメラ!」
 旅行鞄からデジカメを取り出す。
 ロボはニコに掛けた毛布に少しずつ、寝ている間に侵入していた。
 ロボに取られまいと、ニコも少しずつロボに近いていた。
 そして今、一枚の毛布のにロボに腕枕されながら、ニコは寝ていた。

238 名前:普通の日 9/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:40:18 ID:EN/JCXD6]
ピッ ピッ
 たかれるフラッシュにロボが先に目を覚ます

「ん〜?カメラ?」
 はっきりしてくる視界と、動かない左手に違和感を感じた。
「えョ!!ニコョ!?」
 ニコの顔が目の前にあって、ロボの左腕で寝ている。
 しかも、眉を寄せて今、ニコは目覚めようとしている。
「ん゛〜、うるさいなぁ〜あり?アタシ寝てた!?」
 まだ寝ぼけ気味のニコが、フラッシュと幾つもの視線を感じて、しっかり目を開けた。
 ロボは隣で、左腕を押さえてアタシを怯えながら見ていて、
 お母さんは目の前で、カメラを構えてて、
 一海ちゃんは台所で土産袋をあさってて、
 お父さんは少し離れたところで呆れた顔をして、ロボを見ていた。
「須藤君。君ってやつは…」
「ちょっと、お父さん酷いですよ!僕がニコに何かするような男に見えますか?」
「見えるな〜。少なくとも今は!」
「ちょっとロボ!アタシに何かしたの?」
 一枚の毛布に入ったアタシとロボの足をみて、隣にいたロボの肩を揺すった
「何もしてない!大体ニコが俺に〜…その、@※#%"…」
「何よ!」
「腕まくら!でしょ?」
 一海ちゃんが、間髪入れずに言った。
 皆が含み笑いをして、アタシの顔は真っ赤になった。
「あり得ない!!ちょっと、何よ。みんなのその目!」
 ロボがアタシの隣で、皆に土下座をした。
「ニコも俺も、誓って言います!俺達は、そんなに自分を安売りするような人間じゃありません!
 だからってニコのこと、何とも思ってない訳ではないです。可愛いし、タイプはタイプです。
 でも、何もありません!!ただ皆さんの帰りまってて、寝てしまっていただけで…」
 何か、的を得ていないようなロボの話に、皆呆然とした。

239 名前:普通の日 10/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:44:13 ID:EN/JCXD6]
けど
 お母さんは優しく微笑んで、ロボの肩をさすった。
「心配しないでも分かってるわよ。お母さんも須藤君が好きだし、お父さんもそうでしょ?」
 お父さんも、こっちに近づいてきた。
「自分の娘が…、そんな訳ないか!いや〜勘違いだな。」
 お父さんも、ようやく笑った。
「そうだ!今日の朝ね、ロボが来て、ほら!お父さんにお土産!」
 一海ちゃんが、おでん缶とラーメン缶を出す。
「お〜、有り難いね。悪かった。許してな!」
 喜ぶお父さんに、またロボは土下座した。
「お許し、有り難うございます。」
「いいの?ロボ、お土産に釣られてるんだよ。ウチの家族さ。」
「いいの!!」 ロボの笑った目線の先には、台所のテーブルで喋ってるアタシの家族の姿があった。
「ま、いっか〜。」 ニコも笑った

「でね!ニコったら可笑しいのよ。私が、コレみて好きですって言ったの〜。」 一海ちゃんが、朝のアタシの勘違いの話を、お父さんとお母さんに楽しそうに聞かせている。

「ロボ、アタシたちも混ざろっ!!あ〜お腹空いた」
 ロボもアタシも、テーブルの定位置に座って、お父さんのお土産の袋を覗いた。
「何だ〜、蟹は?莓は?お酒ばっかりじゃん。」
 どの袋も、ご当地酒だらけ。
「だって、試飲したら美味しかったんだも〜ん!」
「本当!お父さん須藤君のせいにしてこんなに買うのよ〜。」
 お母さんが呆れ半分で、笑った。

「だって、飲まなきゃやってられないんだも〜ん!」「「何それ〜!(笑)」」

 お土産話と、お土産のお酒と、雰囲気が楽しくて、たくさん笑った。

240 名前:普通の日 11/12 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:46:46 ID:EN/JCXD6]
 それからお父さんとロボは、居間のテレビでwiiを始めた。
「初めてのwiiスポーツ入りま〜す!」
「あれ、昼にロボと作ったんだよ。」 お父さんの似顔絵のキャラを指差し説明した。
「何、これ俺!?頭皮がリアル過ぎるだろう。」
「すみません。ゲームの中に、少しリアリティーを感じさせたんですが、やっぱり、ゲームだし幻想がいいですよね!」
 嫌みなのか…
 考えるお父さんはロボの似顔絵キャラを発見した
「何?それお前?詐欺だろ〜!リ・ア・ル・現実を見なさい!」
「はい!お父さん!」
 アタシと一海ちゃんは目を合わせて笑った。


「じゃあ〜ん!今日の写真プリントしましょっか?」 そう言えば居なかったお母さんが、プリンターを持って来た。
「これ、買ったの?」
「あら?言ってない?デジカメとセットで買ったのよ。」
 お父さんも、二度見してこっちをチラチラみてる
「ちょ!余そ見は禁物ですよ〜!」
 ロボに怒られてるし、お母さんってば、またヘソクリで買ったのか…

 どんどんプリントされていく写真。
 ニコとロボの寝ている写真。ロボが驚いている写真。ニコが驚いている写真。
 本当にロボに腕枕されて、幸せそうに眠ってる。

「自分の寝顔って恥ずかしいね…」
「見てるこっちが恥ずかしいわよ。」 一海ちゃんに言われてアタシの顔は、また赤くなった。



241 名前:普通の日 12/13 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:48:51 ID:EN/JCXD6]
/13になってしまいました。

「ねえ、お父さん見てよ!」 お母さんが喜んで、見せに行く
「今、ゲーム中なの!」
「じゃあ、お母さんが代わるわ。どいて!」
 お父さんのコントローラーを奪って、ロボに1から説明させている

「酷いよな〜!お母さんって。」 お父さんは愚痴りながら台所で、次々に出てくる写真を見つめた。
「何が楽しくて、娘のこんな写真みないといけないのかね。この写真は何か?デジャブってやつか?」
「現実よ!ほら、お父さんの蟹食べてる写真もあるよ!」
 真面目な顔して、蟹の足を食べている
「プッ!ァハハハッ!」 一海ちゃんとアタシは目を合わせて笑った。

「ニコ〜、助けて!」
 ゲームをしていたはずのロボが、小走りで逃げて来た。
「何?どうしたの?」
 お母さんが恐い顔をして怒っている。
「何で!アタシが"あれ"なの?」
 ゲーム画面を指差しwiiで作ったお母さんの似顔絵を見て、余りの不出来さに怒っているらしい。
 だから怒られるって言ったのに…
「あれは…可愛いじゃん!ね?お父さん!」
「おう…(笑)ちゃんと現実、見えてるじゃないか。」 みんなが笑いを堪えきれずに吹き出すと、お母さんはもっと怒った。

 お母さんの怒りは、ゾンビを殺していくゲームソフトに向けられていた。
「う、巧い…。」
 ゾンビをどんどん倒してくお母さんは、頼もしくて恐かった。
「主婦をなめんじゃないわよ!」


「ねぇ、お父さん。お母さんの事止めてよ。夫婦でしょ?」 ニコが暴れまわるお母さんに、怯えながらお父さんに訴える。
「嫌だよ。そんな事言ったら、お前逹も娘だろ?」
 役立たず…あ〜言えば、こ〜言うだし。

242 名前:普通の日 13/13 mailto:sage [2008/03/22(土) 22:53:49 ID:EN/JCXD6]
 ロボがみかねて間に入って来た。
「まあまあ、こうゆう時は、ほら!トマトを食べさせて。リコピン、リコピン!」
「うるさいの!元は、ロボが悪いんでしょ!?ロボのバカ!」
 朝とは別人のような顔で、一海ちゃんが怒った。
「そんな、一海ちゃんまで…お父さん、助けて下さいよ〜。」
 ロボは、今にも泣きそうな顔をしてお父さんの肩を揺すっている。
「耐えろ…。それが、女が強い家族の中の、男ってもんだ。」
「そんな〜!」 アタシと一海ちゃんは、また笑った。

 アタシ逹はあれから、こんな日々を過ごしている。
 誰にでもある普通の毎日で、普通に怒ったり、泣いたり、笑ったりしてる。

 後日、台所の写真立てには、アタシとロボの寝ている写真が、家族の写真と並んで飾られていて、お父さんは、ロボへの戒めだと言っている。
 ロボも何だか、妙にアタシに優しくなった。

 あの頃に比べたら、こんな普通の毎日になったけど、これはこれで、今すごく幸せで。



「ロボ、今日も来たんだ。まだ誰も帰って来てないよ〜。」
「いいんだ。ニコに逢いに来たから。」
 ニコもロボも、満足げに笑った。

 終わり


243 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/23(日) 02:36:51 ID:ROD2K5zq]
ぬ〜!ほのぼのしててくすっと笑える中にもほんのり切なさがありました。
長編GJ!

244 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/23(日) 05:18:18 ID:UbxzL487]
お!ロボがニコの家に通ってんのか
微笑ましい&ちょい切ない話
グッジョブ!

245 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/24(月) 23:45:07 ID:spUMqS9g]
SS保管庫管理人様 なぜかBBSに書き込めないのでこちらでお礼を言います。
いつもありがとうございます。

246 名前:桜吹雪の君 1/3 mailto:sage [2008/03/27(木) 18:35:02 ID:2Z4nphoO]
エロ無し。再会話

* * * * * * *

 満開の桜の樹の下にお前を見つけた。
 暖かな陽射しの中で、頬をそれこそ桜色に染めて愛しそうに花を眺める姿は
今の俺には眩しすぎて、どうしても声を掛ける事が出来なかった。

 2人で過ごしたあの日々は当たり前の様に続くもんだと思ってた。だけどいつしか
ちょっとしたすれ違いが重なり続けて、今度は互いの時間が溶け合う事なく過ぎて
ゆくのが現実となっていった。

 あの後次の桜の季節を迎えて真っ先に思い出したのは、ひょんな事から花が咲き
乱れる樹々の下を遠くまでひたすら車を走らせたあの時。元気でいるだろうか?と
彼を思い出す時、その側で一緒に笑ってた大人ぶった生意気なお前を想っては
何故か胸が締付けられた。
 あの時の様にばったり出会う事を心のどこかで望んでいたその事実に今更気付いて
しまったみたいだ。あれからまた再びやって来たこの季節、瞳に映るお前は真新しい
制服と伸びた背丈と肩までの髪……。対して俺は少々くたびれたスーツ姿。そんな
どうでもいい事がちょっと気になって、益々ためらってしまった。
 ずうっときらきらした瞳で桜を眺めるお前が眩しくて、その姿が愛しくて

247 名前:桜吹雪の君 2/3 mailto:sage [2008/03/27(木) 18:38:27 ID:2Z4nphoO]
 邪魔をしてはいけない気がして、黙って踵を返した。
 何か、俺らしくないかも。だけど俺みたいのがあんなまだ子供の女の子周りを
うろついてたらやっぱり良くないから……いや、本当はそんなの言い訳で、怖いの
かもしれない。
 また出会っても、またあの時の様に離れてしまう日が来るかも……。そしたら
今度こそ二度と2人の運命が重なり合う時間は戻って来ないかもしれない。
 俺は、それがちょっと怖いんだ。今でも部屋にいたら階段を昇る足音が聞こえて、
ドアを開けてお前が飛び込んで来るのを心のどこかで待っていたんだ。
 それがなくなってしまった今、あの地蔵堂の店もあの2人も、2人で走り回った
あの日々も、そして……お前すらも夢だったんじゃないかと、1人の部屋で切なく
想う日々を過ごしてる。
 多分、これは恋じゃない。もしそうならあの人の時の様になりふり構わずお前に
会いに行っただろう。今だって声を掛けただろう。俺はそういう奴だから。
 好きならそれでいい。その気持ちが一番大切な筈じゃないか……。そうだ、そうだよ。
 でも、なんかすっきりしないような、もやもやした胸焼けがするような感じに似た
この気持ちは何なんだろう。

「きゃあっ!」
 背中を向けて歩き出した途端、ぶわあっ!と強い風が舞った。それと同時に小さな
悲鳴が上がった。
 思わず振向いてそこに見えたものは、舞い上がる花びらに彩られた白いセーラー服。
 俺の姿に気付かずスカートの裾を押さえながら反対側へ立ち去ろうとしたのを見た
瞬間、

「……ニコーー!!」

 お前が驚いて振向くのと同時に、思わず叫んで俺は走り出していた。


248 名前:3/3 mailto:sage [2008/03/27(木) 18:46:28 ID:2Z4nphoO]
 あれからずっと2年前のドラマの録画を今でも時々観ていた。何度も何度も、
同じシーンばかりを。
 あの日々を忘れてしまうのが怖くて、心のどこかで終わった遊びの時間を……
ニコを取り戻したくて、何度も、何度もその姿を頭の中で、心の奥のデッキで再生
し続けて来た。

「ニコ……」
 舞い散る花吹雪の中で、まるでそのまま吸い込まれて消えてしまうんじゃないかと、
そこにいるのが幻じゃないのを確かめる様にひたすら名前を呼んだ。

 多分、恋なんかじゃない……事はないのかもしれないけど、今はまだ答えを急がない。
現実に追い付くのが精一杯で、そこに存在するお前が俺にとって何事にも替え難い
胸の奥で咲き続ける大輪の花である事実を認めるのがやっと
出来そうだから。
 もしかしたら今が、2人の時間が再び重なり合う運命の瞬間かもしれない。それは
考えていたよりずっと早くにやって来たけど、戸惑っている暇はないんだ。
 あの時のお前の姿をテレビの中に閉じ込めて、眺めては過ぎた日をまた密かに
夢見ていた。

『続かないって知ってるから』
『時間が止まればいいと思う』

 あの時の俺にはわからなかったあの人の言葉の意味が、今の自分には痛い程わかる。
 もしもうずっと出会えずにこれからの日々を過ごすのなら、こうしてあの時のあの
瞬間を止めておいておけるなら、と、テレビの明かりだけが光る暗い部屋で1人
リモコンの一時停止ボタンを眺めながら、それでも毎日仕事して、ご飯を食べて、
ロボットと一緒の生活を繰り返す。生きて行くために。
 いつかきっと、自分らしく堂々と生きていれば、何年掛かってもまたお前が俺を
見つけてくれるだろうか?
 そう……思いながら。
「見つけた……」
 画面の中の、俺の思い出の中の女の子の面影はそのままに、確実に大人になりつつ
ある。
 今手放したら、二度とこの次という時はないかもしれない。後になって後悔する
のは嫌だと思った正直な気持ち。それが俺を走らせる。
「ニコ……」
 その手を今度こそ強く握り締めて、離さないようにしたいと強く想う。

 きっと今が、運命の瞬間。

「……ロボ!?」
 戸惑いながらも笑顔を返してくれる、お前がそこにいるから。

**終**


249 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/28(金) 02:02:29 ID:8lvtMCSg]
満開の桜の樹の下で再会した二人の笑顔が目に浮かぶな〜
どんな挨拶交わすんでしょうね
GJ!

250 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/28(金) 17:17:33 ID:SMbhVk9v]
また巡ってきた季節に運命の再会かぁ。
いいね〜。GJ!



251 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/29(土) 20:16:12 ID:uIXLbiGJ]
そっか、あのドラマの録画にはニコも映っているんだよね。
三日坊主の新聞記事を取っているロボなら、録画も大事に取っておくだろうね…

252 名前:オトナとコドモ…1/6 mailto:sage [2008/03/31(月) 18:23:23 ID:oXvyCOko]
初エロ有りです。ニコロボの視点が交互してます。

 * * * * *

 去年より遅めの開花になった桜の下で、1年振りにロボに逢った。
 アタシは高校のセーラー服だったけど、ロボはすぐに気付いてくれた。

 高いビルばかりの街並の中に、1本だけ満開の桜の木があった。太陽の光りを目指して立派に咲いている桜の下で、何となくニコを思いだしていた。
 そしたら目の前にニコが現れて、その成長した姿に一瞬で俺は恋した。


 それから2ヶ月、ニコから直接返事はないけど、付き合うってカタチになってると思う。(キスもしたし、初エッチだって誕生日に済ませた)
 それでもニコは、未だに俺を子供扱いする。


ロボは昔と一緒、相変わらず子供っぽい。良くいえば、大人と子供の両方の顔を持っている。
 ある時は強引で男らしくて、またある時は駄々をこねたりする。
 付き合い初めてアタシはまんまと、そんなロボにハマッていた(ロボには秘密だけど)

 ロボが次の日仕事が休みの日は、直接制服のままロボの部屋に行く。
 面倒だからって言ってるケド、本当はロボと一秒でもながく居たいから。


 そんな日

「ピーマンだけは食べれないの!」
 ロボは、晩御飯のナポリタンに入れたピーマンを、皿の隅っこに追いやった。
「ダメ!せっかく作ったんだよ〜。好き嫌いはよくないんだから、食べてよ。」「食べれない!」
「食べて!」
 嫌がるロボの口元を掴んで、ピーマンを無理やり口にねじ込んだ。
「ブッ!無理〜。」 ロボは泣きそうな顔で、ピーマンを口から出した。
 今日初めて知った。ロボはピーマンが嫌いか、やっぱり子供だな〜。

「じゃあ、食べないなら食後のアイスは無しね!先食べよ〜っと!」
 アタシは冷凍庫からバニラアイスを取り出し、ロボの目の前で食べた。

253 名前:オトナとコドモ…2/6 mailto:sage [2008/03/31(月) 18:26:28 ID:oXvyCOko]
「ニコの意地悪!人でなし!」
 ロボが泣きそうな顔をして見ている。ごめんねロボ、優越感でいっぱいなの。

「じゃあさ、ピーマン食べたら1つだけお願い聞いてよ。」 ロボがアタシの目をジッとみた。
「何?小さいお願いならいいよ。」 アイスだけじゃ不満なのか?態度が大きい子供だな〜。
「いい?じゃあ食べMAX!!」 ロボはフォークを持つ手を震わせながら、ピーマンを口に運んだ。
「食べれんじゃん!偉いぞ〜。ロボ」 アタシは、ロボの頭をポンポンと撫でた。
「ヴ…約束のおかげ。」
 涙を流しながしてるロボ、本当可愛い。

「で?何して欲しいのよ。」 少しお母さんのような気持ちでロボに言った。
「じゃあ、チュ〜で!」
「はぁ?」 マヂで呆れる…
「ピーマン!食べたんだぞ!頬っぺに、チューで許してやる。」 早く早く〜と、ロボは頬を近づけてくる。仕方ない。
 ロボの膝に手を置いて、迫ってくるロボの綺麗な横顔を見つめた。何だか恥ずかしくて、アタシは目を閉じた。
チュ…
 当たった感じは何か頬っぺたじゃないような…
 目をうっすら開けると、頬っぺじゃなくて、ロボの唇だった。ロボの膝を叩いて、唇を離した。
「ちょ!ロボのすけべ」
 アタシは舌を出してあっかんべーをした。
「分かってたくせに」
 ロボの声は、さっきとは違って大人の声で言った。 ロボはアタシの出していた舌ごと口に含むように、ま唇を重ねてきた。
「ニコの唇、冷たい。」
「んっ…」
 アイスを食べたアタシとロボの唇の温度さは、いつものキスと違って未体験な気持ちよさで、 アタシは何か恐くてロボの背中に両手を回して、力強くギュッと抱きついた。

それが合図のように、ロボが舌を入れて来る。

−んッッ…ろッ−

 舌を入れられるキスは、やっぱりなれなくて上手く息もできない。

254 名前:オトナとコドモ…3/6 mailto:sage [2008/03/31(月) 18:42:20 ID:oXvyCOko]
 ロボの舌の動きに翻弄されてる。
 ロボがアタシのから唇を離したから、やっとで息を整えれた。
「バニラの味。」 アタシの唇をロボが指で撫でて言った。アタシは恥ずかしくて下を向いた。

「ニコ、いい?」
 ロボがアタシの顔を覗いた。それって、続きしたいって事?だよね…
「…ダメだよ!まだ洗い物もしてないし。」

 ロボが首を傾げる。
「えョ?アイス食べていいんじゃないの〜!」
「へ?ぁ〜!アイスねっ!」 ロボは立ち上がって、冷凍庫を開けた。
「チョコか〜。ニコ交換してね!」
 アタシの食べかけのバニラアイスを奪って、ロボがアタシにチョコアイスを渡した。
「うん…」
 ロボはクスクス笑いながらまたアタシの隣に座り、バニラアイスを食べている。
 ロボにバレてる…恥ずかしすぎる。ロボに触れられると、アタシの調子が狂う。
「チョコ味も、頂戴」
 ロボがアタシの唇に近づいてくる
「アタシはニコだよ。」 真面目な顔を装ったニコが言う。
「(笑)じゃあ、チョコ味のニコが欲しい。」
 ニコはゆっくり、後ろに倒されていく。

 床に制服から出た背中がつくと、思ったより床がヒンヤリしていて、思わずニコはロボに抱きついた。

「ベット行こ。」
 小さく頷くニコの体を、ロボは軽々と持ち上げてベットに寝かせて、体重をかけないようにニコに覆い被さると、ニコの髪を愛おしそうに撫でた。
「何か、ロボにあやされてるみたい。」
「うん、あやしてる。」
 ロボがニコのお腹をポンポンと叩いた。
「寝ちゃうよ?」
「寝れるもんなら!ご自由に。」
 そう言ってロボはまた唇を激しく求めてきた。

 アタシの唇を食べるように唇を合わせて、舌を滑りこませてくる。
「んッッ−−ん」
 同時進行で、お腹にあったロボの手は制服とブラジャーをの鎖骨辺りまで託しあげていた。

255 名前:オトナとコドモ…4/6 mailto:sage [2008/03/31(月) 18:47:09 ID:oXvyCOko]
 ロボはそのまま露になったニコの胸の膨らみを手のひらで包んで、ゆっくり揉みはじめる。
「あッッ…ん…」
 唇がゆっくり離れるとロボが『寝れそう?』って言った。
 アタシは呼吸を整えながら、『無理ッッ!』って首を横にふって答えた。
 顔を赤らめて答えるニコの姿に、普段のニコはもういなくて。
「ニコ可愛いよ。大好き。」
 ロボの舌は唇から首筋に移動して、ニコの胸の先端を口に含んだ。
 触っていた時より固さを増して、舌先でペロッと弾くとニコは整わない息の中、声を洩らした。
「んっ…ぁ、あ」
 ニコは我慢しても、自分口から出てくる声が恥ずかしくて、口を手のひらで塞いだ。
 もう片方の手の置き場もまだわからなくて、押すようにロボの肩に置くと、胸に吸い付いていたロボが、ニコの顔をチラっと見た。
 ニコはとっさに目を反らすと、ロボが顔の前まで上がってきて、見ろと言わんばかりに顎を持ってキスをした。
 ロボの手は胸から、ニコのスカートの中に入っていた。
 ニコは自分でわかるほど、その先が熱く湿っているのを感じていた。ロボがパンツの上から割れ目をなぞると、ニコはビクンと身体を反らす。
「ぁっ!ダメぇぇ」
 ロボの指の腹で湿った部分を押すように触り、往復すると、その度にニコは声を上げて、ロボに抱きついた。
 我慢ならない感じで息を荒くしてニコのパンツを下げソコに顔を埋めた。
「アッッ いやぁぁ」
 舌全体で濡れている部分を舐めるられるとアタシはまた、自分じゃないような声を出していた。

 ロボの顔は制服のスカートに隠れて見えなくて、アタシは不安になって何度もロボの名前を呼んでた。
 ロボは顔を上げて、子供みたいに少し笑ってアタシをあやすと、自分の服を脱ぎ始めた。
 アタシは脱ごうにも身体から力が入らなくて動けないでいた。

256 名前:オトナとコドモ 5/6 mailto:sage [2008/03/31(月) 18:55:28 ID:oXvyCOko]
 ロボは自身のモノをゴムを被せて、ニコのほうに向いた。
 何だかアタシは、そのままの体制で待っていた自分にすごく恥ずかくなった。
 ロボはアタシの両膝持ってを広げると、制服を着たままのアタシに、ソレをあてがった。
「ちょっと待って、制服ッッ!ぁッッ、んっ…!」
 喋ってる途中なのに、ロボがゆっくりとアタシの中に入ってきた。
「くっ、ニコの制服姿可愛いから。 んッッ」 
 ロボが息を荒くしながら、ゆっくり腰を動かしてきて、アタシは何度もロボの名前を呼んだ。
 自分が自分じゃないような気がして、ロボがニコって返してくれる度、アタシは安心した。
 激しさを増してくロボの動きに、ベットのスプリンクラーもキシギシと音を立てて、アタシは激しく上下するロボの胸に抱きついた。
 パンパンって肌がぶつかる音と、ロボの口から洩れるあらい息使いが更にニコを震わさせる。
 ロボがアタシの膝裏を持って、足首をロボの肩に乗せる。
 初めての体位にニコはロボにされるがままだったけど、更にロボとの距離が縮まった感じがした。
 アタシのスカートが捲れてロボと繋がっている部分が、アタシから丸見えになった
「イヤ!…だめぇ、ァッッ」
 恥ずかしくて手を伸ばして隠してみても、その手をロボに捕られた。
「フッ!ンッ!」「ア…」
 声にならない声をあげて、何だか普段のアタシ達にはない光景に目を反らしても、すぐにロボが『ニコ』ってアタシの名前を呼んで、ロボのはうに向かせた。
「ハァ、…ロボォ」
 額に汗をかいているロボが、すごく大人な顔でをしていて格好よくて、アタシは首を伸ばしてロボの唇を求めていた。
−チュッッ…ン、チュパ−
 唇が重ねあってもロボの動きで、すぐに離れてしまう。

 更にロボは深く、大きく腰を打ちつけてきた。
「ニコォ…んっ、俺もうイクね!」
「ウンッッ!ぁっあっ」

257 名前:オトナとコドモ 6/6 mailto:sage [2008/03/31(月) 19:01:25 ID:oXvyCOko]
 ァッ−−ー

 ロボは大きく息をはいてアタシの上に崩れ落ちてきた。重たいけどそんなロボがかわいく思えて、アタシはロボの髪の毛をクシャグシャに撫でた。
「コラ〜!今は、この余韻に浸って…愛の言葉とか囁く所でしょ?気分台無しじゃ〜ん!」
 ロボは起き上がってベットに座ると、色々後処理して服を着始めた。
 ロボの後ろ姿が何だか大きく見えた。
「ロボ、何か格好いいね。大人なロボも、アタシ結構好きかも…」 ロボが驚いた顔で振り向いた。
「好き?」 目をウルウルさせて、子供なロボの顔をしていた。
「うん!今みたいな表情するロボも、大人なロボもドッチもだよ!両方好きだし、もっと知りたい。」
 ロボは優しい目をして、アタシの頭を優しく撫でた
「俺も、普段の大人ぶっててSっぽいニコも、エッチの時のいちいちする事、カッワイイMなニコも両方大好きだぞ!」
 ロボがニマ〜ッと嬉しそうに笑った。ったくスケベなんだから。
「仕方ない。ロボだけには見せてやるか〜?」 ニコが恥ずかしそうに、俺を見てハニかんだ。

「ん?あ゙ョョ!それ着ちゃダメでしょ!?」
 ニコがいつの間にやら、壁に掛けてあったザクのTシャツを着ていた。
「だって、ロボのせいでスカート汚れちゃったんだよ。」 脱がさせてくれないからさ。
「俺ぇ?ニコが、濡れてたからでしょ〜!」
「うっるさいな〜!洗濯機、借りるよ。」
 ニコがベッドから降りて、ザクT一枚の姿で歩きまわる。ニコが着るとワンピースみたいで何とも可愛い。
「ニコ、似合ってるよ。そのTシャツ!」 褒めたのにニコが複雑な顔をした。
「あんま嬉しくないな…でも、ありがと。」
 ニコが笑った

16才の母ちゃんみたいなトコロがあるニコ
26才なのにまだまだ子供な俺
 やーやー言い合ってて、これで結構良いバランスなのかもな。

終わり

258 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/03/31(月) 20:19:43 ID:tYRKfhVJ]
今までにないエロさだ!!
GJ!

259 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/01(火) 03:35:24 ID:xCRqbld5]
リアルでドキドキした。
GJ!

260 名前:ねずみ男(セクシーボイスアンドロボ2) mailto:sage [2008/04/02(水) 23:27:53 ID:12H+tngi]
ビターチョコレート&ピーナッツの事件があったという前提でのセクシーボイスアンドロボ2です。
ちょっと、本物の脚本っぽくやったので読みづらいかもしれませんが、あしからず。

○ニコの家

○屋根
ニコ「ああ・・・そらが青い」
空(から)の鳥籠を隣に置いて、空を見上げるニコ。
ニコNa「私がスパイ活動・・?をやめて約1年経つ。私の相方、ロボともそれくらい会ってない。」

○ロボの家
ロボ「くぁあああ・・・」
ベッドの上でアクビをするロボ。
寝起きのまま、テレビのリモコンをとろうとした拍子に通帳が落ちる。
開いた通帳には残金が「2円」と書かれている。
ニコNa「きっと、相変わらずなんだろう。ロボは変わらない大人なのだから。
今ごろロボットいじりでもしているのであろうことが簡単に想像がつく」
テレビのスイッチを入れ、起き上がる。
ロボ「マーックス!!!」

○地蔵堂
社長「ちょっと、よっちゃーん?お好み焼きまだぁ〜?」
よっちゃん「はいはーい、できましたよー」
キッチンからエプロン姿で出てくるよっちゃん
ニコNa「地蔵堂の二人、社長とよっちゃんは旅に出るといってそれから半年ぐらいで戻ってきた。
全国を旅したらしい。結局、この地に骨をうずめるのが一番だということで笑顔で帰ってきた。
私は今でもあっている。まったく依頼は受けないようにしているが。
ロボも知らないはずはないのだが、きっと、怖くて近づけないんだろう」
お皿からお好み焼きをこぼすよっちゃん
よっちゃん「あっちぃ!!!!」




261 名前:ねずみ男2 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:28:51 ID:12H+tngi]
○ニコの家:リビング
ニコの母「ちょっとーニコぉー!!朝ごはんよー!!」
ニコの父「いっただきまーす」
一海「ちょっとお父さん!手ぇ洗った?」
ニコの母「やだ、汚い、お父さん」
ニコNa「うちも相変わらずだ。いつかは変わるはず、そう思っていたにも関わらず、
結局、あの角を曲がって以来、私の生活に変化はない。
ただ、唯一変わったとすればロボに会っていないぐらいのものだ。」

○屋根
ニコ、空をボーっと眺めながら
ニコ「どうしてロボに会わなくなったんだっけ・・?」
過去の映像フラッシュバック
Voice11の公園でのロボとの会話の映像。
ニコ「ごめん、用事が・・」
ロボ「んじゃ、また明日ねー」
映像がストップする
ニコNa「そうだ。思い出した。最後はこんな会話だった」
ニコ「・・ロボか・・・・、会いたいな」

○高校
むーちゃん「ねぇ、ニコ。この前のテスト何点だった?」
ニコ「んー。いいたくない。いいたくないぐらい悪かったもん」
ニコNa「私はといえば、普通の高校生活を送っている。別にとくに変わったこともなく生きている。
思えば、あの3ヶ月間が刺激的すぎたのだ。普通のおんなのこに戻っただけ。それだけなのだ。
なのに、なんでこうも寂しいのだろう。地蔵堂から依頼を受けなくなったから?
恋をしてないから?どれも考えるけど全部違う気がする。」

○街の全体図
爆発音。とともにあがる煙。

○高校
ニコ「え?爆発?」
ざわめくクラス。
みんな窓辺?に集まる。
遠くで上がる煙。
ニコNa「答えはとっくに分かっているのに、怖くてロボに会いにいけない自分がいた。
いつも青かった空には黒く細長い不気味な煙が昇っていた」

オープニングタイトル
「セクシーボイスアンドロボ2」



262 名前:ねずみ男3 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:29:28 ID:12H+tngi]
○街
ロボ「ゲッ!やっば、遅刻じゃん!」
腕時計を見ながら、赤信号にいらつくロボ。
ロボ「もーう!遅いな!!」
信号の近くにある歩道橋へと走るロボ。半分ぐらい登ったところで信号が青になった。
ロボ「なんだよ!」
ロボは急いで駆け下り、信号を渡ろうとした。
すると横から急に車が。
ロボ「うわあああああああああああ!!!」
車の中から声が
「あぶねぇじゃねえか!馬鹿野郎!!!」
ロボ「そっちこそ、危ないだろ!!気をつけて運転しろっ!!!!」
車から降りてきたグラサンの男。
ロボ「げ・・・・よ、よっちゃん?」
よっちゃん「あ、ロボじゃん!!!」
ロボの後ろで大量の車がクラクションを鳴らしている。

○車内
よっちゃん「しっかし、ひっさしぶりだな〜。」
ロボ「うん。え?って、いうか、え?俺、仕事・・」
よっちゃん「いやいや、こんな広い世界でたまたま今日って言う日に再び会えたのも何かの縁だ。
ちょっと地蔵堂寄って来いよ。」
ロボ「広い世界ね。うん、なるほど。でも仕事も大切・・」
よっちゃん「ごたごたうるせぇなあ!いいじゃねぇかよ!減るもんじゃないし!」
ロボ「給料が減るでしょ!」

○高校
ニコ「あーあ。暇だなぁ」
むーちゃん「どうする?今日の放課後。ミスド寄ってく?」
ニコ「うーん。今日はいいや。なんか早く帰りたいし」
むーちゃん「さっきの爆発さ、なんだったんだろうね」
ニコ「さぁ?テレビでやるんじゃない?」
むーちゃん「・・・・・ニコさ、最近暇そうだね。」
ニコ「だってさ、高校なんてすること勉強だけじゃない。」
むーちゃん「なら、部活入ればよかったのに。」
ニコ「なんか、私部活ってガラじゃないでしょ?」
むーちゃん「確かに。なんか、ね。マネージャーでもやれば?」
ニコ「それは絶対無い。」
むーちゃん「なんでよ。ニコなんかかわいいんだから憧れの先輩と恋にでも落ちるんじゃない?」
ニコ「憧れの先輩がいないもん」
むーちゃん「ってゆーか、ニコってさ、恋愛とか・・・したことあるの?」
ニコ「へ?」
むーちゃん「ニコってそういう噂聞かないじゃん。だから気になって。」
ニコ「あ、あるよ?もちろん」
むーちゃん「じゃあさ、キスは?」
ニコ「へ?」
むーちゃん「いや、だからキスは?」
フラッシュバック
社長の誕生日パーティー事件の時にロボの頬にキスした映像
ニコNa「あれは・・キスと呼べるのだろうか?」
むーちゃん「おーい、ニコ〜?」
ニコ「あ、あるよ。一応ね。」
むーちゃん「へ〜!意外だな〜!」
ニコ遠くを眺めながら
ニコ「うん。恋したね〜」


263 名前:ねずみ男4 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:29:58 ID:12H+tngi]
○地蔵堂
ロボ「はっ・・・」
よっちゃん「は?」
ロボ「はっ・・・」
社長「は?」
ロボ「クッショォオオオオオオオオオン」エコーかかる

○街の全体が震える

○地蔵堂
よっちゃん「うるせぇし、きったねぇな」
ロボ鼻をすすりながら
ロボ「噂かなぁ」
社長「あなたを噂する人なんているのかしら?」
よっちゃん「あ、いるな、一人」
ロボ「え?だれだれ?」
社長「あ、本当。いるわね。そういえば」
ロボ「だから、誰ぇ?」

○高校
ニコ「・・・ロボ?」
チャイムが鳴る
先生が入ってくるのと入れ替わりに出て行くニコ
先生「あれ?え?林。どこ行くんだ?」
ニコ「そ、早退、早退します!」

○路地
かけていく足。
電柱にテレクラの紙が張ってある所に差し掛かったところで
はじめて出会ったときの映像が流れる。

○公園
かけていく足。
プッチーニ事件でもらったメモを捨てたときの映像

○地蔵堂の外観
とまる足。
過去の事件の映像がフラッシュバックのように点滅する。
ニコ目を閉じて
ニコ「ロボ・・」


264 名前:ねずみ男5 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:30:30 ID:12H+tngi]
○地蔵堂
ロボ「ねぇ、誰ぇ?」
社長「噂をすれば、ってやつね」
指を指す社長
ロボ「へ?」
振り返るとそこには息を切らしたニコが立っている。
ロボ「ニ、ニ、ニ、ニコぉ!?!」
ニコ「・・はぁ・・はぁ・・・ロボ・・!」
よっちゃん「役者はそろいましたね。社長。」
社長「そうね。・・二人とも!
感動の再会中悪いんだけど・・」
ロボ「感動なんかしてないですよ!」
ニコ「は〜!?なにそれ!久々に会って言う言葉がそれ!?
会いたかった、とか言うのが礼儀じゃない!?」
ロボ、かっこつけた声で
ロボ「会いたかったよ」
ニコ「・・キモい。」
ロボ「なんだよそれ!?言わせといてなんだよそれ!?」
ニコ「だって、全然変わってないんだもん」
ロボ「それはあれか?前からキモかったってことか?もー、怒った!」
社長「二人とも。ちょっと聞いて。」
ロボとニコが顔を見あわす。
社長「依頼なんだけど・・・」
ロボ&ニコ「嫌です!!」
よっちゃん「おい、久々なのに息ぴったしじゃねぇか。名コンビ!」
ロボ&ニコ「コンビじゃないです!」
社長「じゃ、内容言うわね」
ニコ「聞いてないし・・」
勝手に喋りだす社長

○街の全体図
爆発音。とともにあがる煙。
社長Na「今朝、大きな爆発あったじゃない?」

○地蔵堂
ロボ「爆弾魔をつかまえろ?とかいうんじゃないんでしょうね?」
よっちゃん「いいから、聞けって」

○街の全体図
煙の上がったところにズームアップする。
社長「実は爆発のあったところね、怖い人たちの事務所なの。」

○事務所
看板から上がる大量の煙
下でヤクザが騒いでいる
事務所からゆっくり出てくる親分らしき人物
親分「マジかよ・・」
社長Na「どうやら、その怖い人たちは自分たちと縄張り争いをしてる
長谷川組の仕業だとおもっているらしいの。
でもね、それは違う。
真相は、実に簡単。ただの愉快犯よ。
しかも、かなり短絡的な考えを持った幼稚な犯人。
ねずみ小僧、とでも呼びましょうか?
とんでもない悪党のくせに偽善者ぶってる野郎よ。」

265 名前:ねずみ男6 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:31:27 ID:12H+tngi]
○地蔵堂
ニコ「偽善者?どうして?それになんで愉快犯ってわかるんですか?」
社長「ちょうど3年ぐらい前かしらね。よっちゃん?」
よっちゃん「ええ。前にも似たような事件があったんだ。」

○市役所前
社長Na「前の市長のころ、この町の負債が積もり積もっていて、同時に市民の不満も溜まっていた。
そんなとき、事件はおきたの」
市役所の前のゴミ箱が爆発。
市長の乗っていた車にゴミが散乱。
社長Na「話題になったけど、市民は別に市長に同情なんてしなかった。むしろ、いい気味だと思った」

○大企業の会社前
社長Na「それから一ヵ月後、この街の海を埋め立てていた建設会社に環境団体がその会社に抗議しに来たの。
そのデモの最中・・」
会社の屋上から爆発
煙が上がる
ざわつく環境団体。
カメラアングルはさっきのヤクザのと同じように。
社長Na「このときは環境団体全員が取調べを受けた。そして、そいつはいたの。」

○地蔵堂
ニコ「ねずみ小僧・・?」
社長「そう。このときはただの、といっても爆発さたんだもの。立派な罪よ。でも
ただの行き過ぎた抗議活動としか世間に認知されなかった。
しかし、調べていくと、市役所前の爆破事件もねずみ小僧の仕業だって分かったの。
その犯行理由が

○取調室
ねずみ男「俺さ、みんなの迷惑なってる奴が嫌いなんだよ。
だからさ、爆発させてやったの。
おれさ、いい奴だろ?
な?みんな俺のこと認めてくれてんだろ?な?
アハハハっ!」

○地蔵堂
社長「救えない奴よ。
今回の爆発もきっと、奴で決まり。だってたしかあの爆発のあった河島組は結構町の迷惑になってたからね。」

○街
チンピラを大量につれて歩く河島組


266 名前:ねずみ男7 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:31:59 ID:12H+tngi]
○地蔵堂
社長「動機は十分にあるわ。」
ロボ「そ、そいつは捕まったんでしょ?」
よっちゃん「ああ。でもな、仮出所の日が今日なんだよ。」
ニコ「え?それって・・早いんじゃないの?早すぎる。」
社長「やつの強みはそこなの。ねずみ小僧の父親がじつは警察の官僚。何でも融通が利くらしいの。
下手にねずみ男に手を出したら、警察にいちゃもんつけられてしょっぴかれるかもしれないわ」
ニコ「そんな、捕まえろなんて依頼、嫌です。私。大体、誰がそんなこと社長に頼んだんですか?」
社長「あら、捕まえろなんて誰が言ったかしら。私があなたたちに頼みたいのは、
ねずみ男の警護よ。」
ロボ&ニコ「え、えー!?ど、どうして!?」
社長「どうしても何も、頼まれたの。ねずみ男の父親に。それだけよ。ねずみ男はいろいろなところに迷惑をかけてるから
敵も多いわ。ヤクザにだってねらわれるかもしれないしね。
だから、ねずみ男のお父さんから依頼が来たの。」
ニコ「な、なんでそんな奴の警護の依頼、引き受けるんですか?!」
社長「だって頼まれたんだもん。それに、だれだって、子供を心配するのが親の役目でしょ?
依頼には十分に正当な理由じゃない。断る材料が見つからないわ」
ロボ「社長!見損ないましたよ!!なんでそんな爆弾魔を!」
よっちゃん「・・・」
社長「別にあなたたちが引き受けてくれないんなら、毎日、あなたたちの家に矢文を送りつけてもいいのよ?」
ロボ(絶句)
ニコ「いいかげんにしてください!」
社長「あのね、あなたたちきっと、この仕事をやる運命なのよ」
ニコ「運命?」
社長「ええ、そうよ。運命。自分たちのことは自分たちでケリをつけるのがスジってものよ」
ニコ「え?よく話がつかめないんですけど・・。」
社長「いいから、引き受けなさい。悪いことは言わないわ。ほら、これ」
社長、机の中から札束を取り出す
ニコ「え・・ま、また、そんなお金で・・、お金でつられるわけないでしょ!」
社長「あら、そっちの大きいのはやる気みたいよ?」
ロボ「ロボ、出動しますっ!!」
ニコ「もう・・ロボぉ・・・」

○ロボの車の中
ニコ「ロボの馬鹿っ!!!見損なった!!」
ロボ「あ〜、馬鹿ってなんだよ!!だってしょうがないだろ!!」
ニコ「なにが、しょうがないのよ!?」
ロボ「お か ね が な い ん だ よ !!!」
ニコ「もー、うるさいなー。聞こえてるって!」
ロボ「俺だって、ちゃんと普通に暮らせてればあんな仕事引き受けてないよ?
でもさ、食べるためだもん。しょうがないじゃん」
ニコ「ロボがロボットばっか買うからいけないんでしょ!!」
ロボ「買ってませんー!」
ニコ「んじゃ、何買ったのよ!!!」
ロボ「・・・うっ」
ニコ「やっぱ、おもちゃじゃん」
カメラがそのまま地蔵堂の方に移る。入り口に立っている社長とよっちゃん

○地蔵堂入り口
よっちゃん「いわなくてよかったんですか?」
社長「いいの、いずれ分かることだわ。それに私から聞いても意味がないもの。
二人がちゃんと、自分で考えてケリをつけなきゃならないの。
それがスジを通すってことじゃない?」
よっちゃん「うーん・・・なるほど、ね。」
社長「それより、よっちゃん、仕事よ!仕事!」
よっちゃん「はいはーい」
そそくさと地蔵堂の中に入っていくよっちゃんと社長
数秒後
一台のパトカーが入り口で止まった

267 名前:ねずみ男8 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:33:08 ID:12H+tngi]
○ロボの家
ロボ「ニコぉ。怒ってんの?」
ニコ「怒ってない」
ロボ「怒ってるじゃん」
ニコ「怒ってない」
ロボ「ニコぉごめん〜!」
ニコ「・・・・」
ロボ「ごめんってばぁ〜!」
ニコ「・・・・なにか聞こえる」
ロボ「何かって、何?」
ニコ「・・・・なんか、電子音、みたいな?」
(ピッ、ピッ、ピッ・・一定リズムで聞こえる電子音)
ロボ「電子音って、どんな?」
ニコ「ピッ、ピッ、ピッ・・・って」
ロボ「ピッ、ピッ、ピッ・・・って、それ何?爆弾?」
ニコ「爆弾?」
ロボ「爆弾?」
(空気固まる)
ロボ&ニコ「爆弾だぁああ!!!!!」

○路地
全速力でかけるロボとニコ
ロボ「どっちのほう!?」
ニコ「こっち!」
ロボ「マックスダーッシュっ!!!!」

○長谷川組の事務所
車に乗り込もうとする長谷川組の親分
ロボ「うああああああああああ!!ああ、あ、あ、危ないっ!!!!!」
ヤクザ「んあ?なんかきた」
ロボ「逃げて逃げて逃げて逃げてぇええええ!!!」
ニコ「早くぅ!!!!」
(止まる電子音)
ニコ「ロボ伏せて!」
爆発音

○街の全体図
初めの爆発とは反対の方向から煙が上がっている

268 名前:ねずみ男9 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:33:52 ID:12H+tngi]
○長谷川組の事務所
親分「なんだぁ、こりゃあ!?」
ヤクザ「まじかよ!?え?まじかよ!?」
長谷川組の看板から煙が上がっている
親分「おいてめぇら!てめぇらの仕業かぁ!?あぁ?」
ニコ「違うの!ねぇ、ロボ、説明して」
ロボ「いや、だからですね、あの、爆弾魔のぉ、あの・・・」
ヤクザ「なんだぁ?てめぇがやったのかって聞いてんだよ」
ニコ「いや、だから、私たちは爆弾魔を追ってて・・・・あれ?・・・・え?」
集まってくる野次馬と明らかに反対方向に動く人影
ロボ「要するに、僕たちは、爆弾魔の警護を、ね?ニコ?あれ?ニコいない」
人影に向かって猛ダッシュするニコ
ヤクザ「てめぇ、爆弾魔の味方じゃねぇか!!」
ロボに向かって猛ダッシュするヤクザ
人影に向かって猛ダッシュするニコ
ロボに向かって猛ダッシュするヤクザ
人影に向かって猛ダッシュするニコ
同時に取り押さえられる。
ニコ「はぁ。はぁ。つ、捕まえた」
ねずみ男「あ?な、なにが?」
ニコ「あなた、ねずみ男でしょ?」
ねずみ男「は?なにが?ねずみ男?なんだそりゃ?」
ニコ「こういったほうが分かりやすい・・・?
・・・・爆弾魔さん」
ねずみ男「はぁ、やってねぇよっ!!!なにがっ!はぁ!?」
ニコ「私たち、あなたの警護担当者です。」
ピントが奥にずれて、ヤクザに取り押さえられているロボにピントが合う。
ロボ「ニコぉ!助けてぇ!!・・!」
ねずみ男「は?」


269 名前:ねずみ男10 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:34:14 ID:12H+tngi]
○ロボの家
ロボ「ニコぉ!怖かったよぉ!!」
ニコ「はいはい」
ねずみ男「なに?あんたたちが俺の警護?ったっよりねぇなぁ!親父も血迷ったか」
ロボ「なにぃ!?俺はなやるときはやるんだぞ!!」
ねずみ男「さっき、取り押さえられてたじゃねぇか」
ロボ「あ、あれは・・・・・油断?」
ニコ「(小声で)ちょっとロボ、口挟まないで!」
ロボ「なんだよそれ!?だいたい・・」
ニコ「ねぇ、ねずみ男さん」
ねずみ男「はぁ?なんだよ?ってか、なんだよねずみ男ってよぉ」
ロボ「あだ名?かな」
ニコ「単刀直入に聞くけど、なんで・・爆破なんかするの?」
ねずみ男「はぁ?してねぇよ」
ロボ「君!しらばっくれるのはよさないか!」
ねずみ男「だからしてねぇって」
ニコ「全部、社長から聞かせてもらったわ。」
ねずみ男「社長・・・?ああ、地蔵堂の?お前ら、何?あそこの社員?」
ロボ「まぁ、そういうことになるね」
ねずみ男「なんかあそこも落ちぶれちまったな。」
ニコ「なにが?」
ねずみ男「あんたたちみたいな無能な奴らを雇うようじゃあよお」
ロボ「なにぃい!?いい加減にしろよっ!!
別にな、俺は無能かも知れないけどさ、ニコは違う!!断じて違う!!」
ねずみ男「はぁ?なに必死になってんだよ、だせぇな。ってかここ、お前ん家?
オタクじゃん」
ロボットを触ろうとするねずみ男
ロボ「触るな!!」
ニコ「ねずみ男さん、あなたがしたことは聞いているんです。
その上で、私たちはあなたを守ると言っているの」
ねずみ男「ああ、そう。ありがとよ」
ニコ「でも、一つ約束があります」
ねずみ男「はぁ?」
ニコ「私たちが警護をしている間だけは爆破を止めてください
ってゆうかもうしないで。」
ねずみ男「なんでだよ」
ニコ立ち上がって、ねずみ男をビンタする
ニコ「あたりまえでしょ!あなたがしていることは立派な犯罪よ!いい加減にしなさい!」
ねずみ男「・・・ったあ・・・なにすんだよ、ガキぃ!」
ニコ「私たちが警護している間に考えを直して!お願い!」
ねずみ男「・・・・」
ロボ「・・・ニコ」

270 名前:ねずみ男11 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:34:36 ID:12H+tngi]
○街
ねずみ男「おふくろ以来だよ、あんなビンタ」
ニコ「え?」
ねずみ男「いや、だから、あんな強烈なビンタ、おふくろ以来だって」
ニコ「・・ごめんなさい」
ねずみ男「いいよ、別によ」
ロボ「君はさ、ただ、目立ちたいからあんなことをしてたの?」
ねずみ男「はぁ?誰だよ?そんなこと言った奴」
ロボ「社長が言ってた。」
ねずみ男「なんだぁ、あのババァ。好き勝手言いやがって」
ニコ「・・え?社長と知り合いなの?」
ねずみ男「ああ、知り合いも何も、育ての親?的なもんだ」
ロボ&ニコ「え!?ええええええ!?」

○地蔵堂(数時間前)
社長「子供を心配するのが親の役目でしょ?」

○喫茶店
ねずみ男「・・俺が幼稚園の年長だったから、8歳?そんぐらいんときにおふくろが死んで
親父が一人で育ててくれた」
ニコ「社長とはどこで?」
ねずみ男「うちの親父ともともと知り合いで、おふくろとは友達だったらしいんだよ。
それで、よくあの店に行ってた。」
ロボ「よっちゃんはいたの?」
ねずみ男「ああ、いたよ。元気にしてる?」
ニコ「え?あなた今何歳?」
ねずみ男「はぁ?21だけど?」
ニコ「ってことは15年前からいたんだ、よっちゃん」
ロボ「何歳なんだ・・・あの人?俺よりちょい上だとばかり思っていた」
ねずみ男「それから5年くらいかな、結構世話してもらったぜ?あの人には」

○地蔵堂(15年前)
遊んでるねずみ男をやさしく見守る社長



271 名前:ねずみ男12 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:34:56 ID:12H+tngi]
○喫茶店
ねずみ男「俺の基礎って言うか、基本って言うか、だいたいのことは親父よりあの人に教わったな」

○地蔵堂(15年前)
社長「いい?たっくん。よぉく聞いて。
人はね、この世界に深くかかわってるの。嫌でもね」

○喫茶店
ニコ「それ、私も言われた」
ねずみ男「はぁ?マジかよ。あのババァ誰にでも言ってんのな。
まぁ、いいや。
(少し黙って)この言葉続きあんだよ」

○地蔵堂(15年前)
社長「だから、人の迷惑になるようなことしちゃだめよ。たっくん。
迷惑なら、私にたくさんかけていいから、だから、それだけは守りなさい」
じっと社長の顔を見つめる幼きねずみ男

○喫茶店
ロボ「なんか社長らしからぬ言葉だなぁ」
ニコ「・・・だから、爆破するんだ?」
ねずみ男「はぁ?だったらなんだよ。迷惑かけてるやつが許せねぇだけだ
いいことしてんじゃねぇかよ」
ニコ「あなた、間違ってる。それは違う。
迷惑をかけている人に制裁を加えてるつもり?
違う。あなたは、そうやって理由付けて、ただ自分が目立ちたいだけじゃない!」
テーブルを叩くニコ
喫茶店の空気が凍る
ねずみ男「・・・・るせぇよ」


272 名前:ねずみ男13 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:35:16 ID:12H+tngi]
○地蔵堂の正面
止まっていたパトカーが動き出す。
それと入れ違いのようにニコとロボがねずみ男を引っ張りながら地蔵堂に入ろうとする
ねずみ男「なんで俺が!おい!止めろよ!」

○地蔵堂
(壷みたいなものを拭いている社長)
社長「・・・?なにか来る?・・」
よっちゃん「やめてくださいよ〜霊感ですか?」
入り口からねずみ男の叫び声が聞こえてくる
よっちゃん「へ?」
社長「自分から連れてくるなんてあなたたちヤル気満々じゃない」
(どかどかとねずみ男を引っ張りながら入ってくるニコとロボ)
ニコ「違います!」
ロボ「引き取ってください!もともとあなたの子なんでしょ!?」
ねずみ男「や、やめろてめぇら!」
(ねずみ男を放り投げる)
社長「あら?もう全部話は聞いたのね?仕事が速いこと」
ねずみ男「痛ってぇー・・・なにすんだてめぇら」
ロボ「こっちの台詞だよ!」

○喫茶店(数十分前)
ねずみ男「・・・・るせぇよ」
ロボ「君ね!だいたい迷惑をかける人を許せないにしても
やり方があるでしょ!」
ねずみ男「・・・・」
ロボ「たとえばさ、注意するとか、警察に言うとか、
そりゃその気持ちは大事だよ。でも、君のしていることが
周りからしたら一番迷惑になってるんだよ」
ねずみ男「・・・・ごちゃ・・・・」
ロボ「あえ?なに?おもちゃ?」
ねずみ男「・・・ごちゃごちゃごちゃごちゃ、うっせぇんだよ!!!」
突然立ち上がり暴れだすねずみ男
ねずみ男「知ったこっちゃねぇんだよ!!!」
ニコ「ちょ、ロボとめて!」
ロボ「ええ!?え!?俺のせい!?」
ロボがおろおろしているとねずみ男の投げた皿がロボに当たった


273 名前:ねずみ男14 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:35:41 ID:12H+tngi]
○地蔵堂
ニコ「無理です。私たちに警護なんて!だって警護される人が暴れるんだもん」
ロボ「俺なんか頭、たんこぶできたんですよ!」
社長「あらあら、それは可哀想ね」
ロボ「他人事じゃないでしょ!」
ねずみ男「・・・・おい、マキさん。」
社長「なに?たっくん」
ねずみ男「久しぶりだな。それによっちゃんも」
よっちゃん「そうですね」
ねずみ男「・・・俺はさ、別に、マキさんの言いつけ守っただけだぜ?
なんで、なんで俺がこんな目に会うのかが分からねぇよ」
社長「それはたっくん。あなたが周りを見てないからよ」
ねずみ男「周り?」
社長「私の何年も昔に言った言いつけを守ってくれるのはうれしい。
でもね、もう少し大人になりなさい。
昔の、あなたが子供だったときの環境とはもう違うの。
周りを見回してご覧なさい。
誰も、あなたの世話もしないし、責任もあなたが負うの。
子供のときなら私が責任を負ってたわ。
今は違う。全部、あなた自身に行ったことの責任が返ってくる。
体はもう立派な大人なんだから、精神的にも大人になりなさい。
そして、自分の未来をちゃんと見てちょうだい。
それが私からの最後のいいつけよ」
ねずみ男「・・・別によ?俺だって馬鹿じゃねぇ。
分かってたよ。俺が悪いって事ぐらい」
社長「そうよ、あなたが全部悪いわ」
ねずみ男「・・・そうか、あんたもそうか、そう思ってんだよな。
俺は悪者なんだよな、
誰も、俺のことなんか認めてくんないんだよな」
社長「今のあなたじゃ、誰も認めてくれない。
私だって認めないわ」
ねずみ男「・・・分かってんだ、分かってたんだよ、そんなことぐらい。
もういい。もういい。」
立ち上がってかけだすねずみ男
ロボ「おいっ!」
それを追いかけようとするロボ
社長「追いかけないで!
ロボの動きが止まる
社長「きっと、
きっとすぐ戻ってくるわ」

274 名前:ねずみ男15 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:36:32 ID:12H+tngi]
○路地
ねずみ男「だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない」
全速力で街をかけていくねずみ男



275 名前:ねずみ男15 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:37:11 ID:12H+tngi]
○路地
ねずみ男「だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない」
全速力で街をかけていくねずみ男


276 名前:ねずみ男15 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:37:44 ID:12H+tngi]
○路地
ねずみ男「だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない」
全速力で街をかけていくねずみ男


277 名前:ねずみ男15 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:39:11 ID:12H+tngi]
○路地
ねずみ男「だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない」
全速力で街をかけていくねずみ男

○ロボの家
ニコ「あぁ、私なんか今日、ピリピリしちゃって疲れた」
ロボのベッドで横になるニコ
ロボ「俺は頭が痛いよ、たんこぶできたし」
笑うニコ
ニコ「なんか、久しぶりに会った気がしないね」
ロボ「そう、だね。何年前だっけ?会わなくなったの」
ニコ「2年くらい前かな、うん、そのくらい」
ロボ「なんか最後も普通の会話したよね」
ニコ「そうそう。なんで会わなくなっちゃったんだろう?」
ロボ「うーん。自分の未来を見つけたからじゃない?」
ニコ「未来?」
ロボ「さっき社長が言ってたじゃん。ねずみ男に向かってさ、自分の未来を見つけて頂戴って。
ニコはきっと自分の未来を知らず知らずのうちに探していたんだよ。
そんなときに俺や社長やよっちゃんやいろんな人たちに会って、いろんな経験をする中でニコは自分の未来を見つけた。
だから、無意識のうちに俺と会う必要もないと感じていたのかもね」
ニコ「でも、私自分の未来がどんなものか、まだ分かってないよ?」
ロボ「また見失っちゃったんじゃないの?
だから、また俺や社長やよっちゃんにあったんだよ、きっと」
ニコ「ふーん。そんなものかなぁ・・・
ロボはさ、私のことが必要とか感じなかったの?」
ロボ「ニコのことぉ?
そうだなぁ、必要、必要かぁ・・・。
なんか寂しかったな。ニコがいなくて。
自分の一部が欠けたような気持ちにはなってた。
いつか、会いにいこうと思ってたんだ」
ニコのことをまっすぐ見つめるロボ
ニコ「や、やめてよ。そんなみないでよ・・!」
ロボ「ニコさ、誰かと付き合ったりとかしてんの?」
ニコ「・・・べ、別にぃ?してない、興味ないもん」
ロボ「そうかぁ。ふーん。」
ニコ「なにそれ。その気の抜けた返事は」
窓から入ってくる夕日でロボの机にあった何かが光る

278 名前:ねずみ男15 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:40:04 ID:12H+tngi]
○路地
ねずみ男「だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない。だれも分かっちゃくれない」
全速力で街をかけていくねずみ男

○ロボの家
ニコ「あぁ、私なんか今日、ピリピリしちゃって疲れた」
ロボのベッドで横になるニコ
ロボ「俺は頭が痛いよ、たんこぶできたし」
笑うニコ
ニコ「なんか、久しぶりに会った気がしないね」
ロボ「そう、だね。何年前だっけ?会わなくなったの」
ニコ「2年くらい前かな、うん、そのくらい」
ロボ「なんか最後も普通の会話したよね」
ニコ「そうそう。なんで会わなくなっちゃったんだろう?」
ロボ「うーん。自分の未来を見つけたからじゃない?」
ニコ「未来?」
ロボ「さっき社長が言ってたじゃん。ねずみ男に向かってさ、自分の未来を見つけて頂戴って。
ニコはきっと自分の未来を知らず知らずのうちに探していたんだよ。
そんなときに俺や社長やよっちゃんやいろんな人たちに会って、いろんな経験をする中でニコは自分の未来を見つけた。
だから、無意識のうちに俺と会う必要もないと感じていたのかもね」
ニコ「でも、私自分の未来がどんなものか、まだ分かってないよ?」
ロボ「また見失っちゃったんじゃないの?
だから、また俺や社長やよっちゃんにあったんだよ、きっと」
ニコ「ふーん。そんなものかなぁ・・・
ロボはさ、私のことが必要とか感じなかったの?」
ロボ「ニコのことぉ?
そうだなぁ、必要、必要かぁ・・・。
なんか寂しかったな。ニコがいなくて。
自分の一部が欠けたような気持ちにはなってた。
いつか、会いにいこうと思ってたんだ」
ニコのことをまっすぐ見つめるロボ
ニコ「や、やめてよ。そんなみないでよ・・!」
ロボ「ニコさ、誰かと付き合ったりとかしてんの?」
ニコ「・・・べ、別にぃ?してない、興味ないもん」
ロボ「そうかぁ。ふーん。」
ニコ「なにそれ。その気の抜けた返事は」
窓から入ってくる夕日でロボの机にあった何かが光る

279 名前:ねずみ男17 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:42:24 ID:12H+tngi]
○ロボの家
ニコ「覚えててくれたんだ」
ロボ「だって、ニコのこと、好きだったもん」
ニコ「え?本当に?」
ロボ「うん。本当に」
ニコ「でも、・・・言ってくれなかったじゃん」
ロボ「だってさ、俺さ、ニコのこと本気で好きになっちゃたら困るのはニコのほうかなって」
ニコ「なんで?困らないよ?私、正直に言うと、・・私ずっとロボに会いたかった。
ずっと好きだったよ」
ロボ「ニコあのとき中学生だったじゃん。もし、俺があの時ニコに好きって言ってたら
多分付き合うことにもなったかもしれない。でもさ、俺は普通のサラリーマンでニコは普通の中学生じゃん。
それで付き合ってたらニコも周りの友達とかになんか言われるんじゃないかと思ったし、それに俺も
世間からなにか言われるのが怖かった。
本当はちゃんと伝えるべきだったんだけど」
ニコ「・・・ロボが言ってくれたんだよ。自分を最後まで味方するって」
ロボ「・・・ごめん」
ニコ「ロボ、私のこと、まだ、好き?」
沈黙が空間を包む
ロボ「うん。好き」
ニコ「マックスロボよりも?」
ロボ「うーん・・・。うん。ニコのほうが好き」
ニコ「ほんと?」
ロボ「ニコのことずっと考えてたもん。ずっと」
ニコ「私も。ロボのことこの2年間、1日も忘れなかった」
ロボ「ニコちょっと来て」
手招きをするロボ。近づくニコ
ニコの手をとるとロボはニコの手から指輪を抜いた。
ニコ「?なんでとるの?」
ロボ「ちゃんとさ、プロポーズぐらいさせてよ」
そっと左手の薬指に指輪を差し込むロボ
片ひざをつくロボ
ロボ「林ニ湖さま。どうか、結婚を前提にお付き合い願えませんか?」
ニコ「うーん。どうしよっかな」
ロボ「えー”」
ニコ「うそよ、うそ。ロボ、大好きっ!」
ロボに抱きつくニコ
顔が近づき、唇が触れそうになる
ロボ「ニコ・・・・」
ニコ「ロボ・・・・」
(ピッ、ピッ、ピッ・・・・)
ニコ「ピッ、ピッ、ピッ?」
ロボ「ピッ、ピッ、ピッ?」
ニコ「・・・!!ねずみ男だ!」
立ち上がり家を出て行くニコ
立ち上がったときロボの股間を蹴ってしまう
ロボ「ぎゃ!
ま、まって・・・」


280 名前:ねずみ男18 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:47:31 ID:12H+tngi]
○路地
駆けてくるニコと遅れてくるロボ
長谷川組の時と同じカメラワークで。
立ち止まるニコ
ニコ「ちょ、ちょっと待ってロボ」
ロボ「な、なに?ニコ」
目を閉じて、耳を澄ますニコ
ニコ「ちょっと待って・・・
3、いや4、・・・5?」
ロボ「5?なんのこと?」
ニコ「・・・・爆弾の数」
ロボ「え!?」
ニコ再び目を閉じ、今度はねずみ男の声を聞き取ろうとする
ニコ「・・・・
いた。」
ロボ「どっち!?どっちの方?」
ニコ「・・・・・・・地蔵堂のほう」

○長谷川事務所の前
第一の爆発のあったヤクザの組と長谷川組が喧嘩をしている
その横を駆けていくニコとロボ
ニコ「だからいったじゃない!迷惑かけてるって!!」




281 名前:ねずみ男19 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:48:07 ID:12H+tngi]
○地蔵堂の正面
既に数台のパトカーが集まっている
ロボ「え?ど、どういうこと?」
ニコ「ロボ、早く!正面突破よ!」
ロボを盾にして前に進むニコ
ロボ「え−”!?無理無理無理無理!!!無理だって!!」
警察官が拳銃をもち立ち並んでいる。
ニコ「私のこと好きなんでしょ?」
ロボ「いや、それ今関係ないと思うけどなぁ・・」
ニコ「いいから早く!」
ロボを盾にして走るニコ
それを止めようとする警察官
ロボ「マックスー愛情パワーっ!!!!」
無理矢理入り口にねじり込むニコ・ロボ


282 名前:ねずみ男20 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:48:51 ID:12H+tngi]
○地蔵堂
爆弾のスイッチらしきものをもったねずみ男が社長の机の上に立っている
よっちゃんは壁に沿って突っ立っている。
ニコとロボが転がるように入ってくる
ニコ&ロボ「!!ねずみ男!!」
ねずみ男「あぁ?てめぇら勝手に入ってくんじゃねぇ!!!」
社長「ね?言ったでしょ?戻ってくるって」
ロボ「ね?じゃないでしょ!ちょ、それ、起爆装置!?」
ねずみ男「ああ!そうだよ!!死んでやるよ!
マキさんにも親父にも世間にも認められねぇ。
認めてくれたのはおふくろだけ。
そんなおふくろも今はいねぇ。
誰も認めてくれねぇんなら死んでやるよ
俺なんてな死んで初めて価値が残る男なんだよ!!」
ニコ「そんな人いない!!あなたが死んだら悲しむ人が残るだけよ!!」
ねずみ男「黙れ黙れ黙れ!!お前に何が分かるんだよ!!?あぁ?
俺なんかな、人殺したって褒められねぇんだよ!!!」
ロボ「え・・・?君、人殺したの?」
ねずみ男「ああ殺したよ!!聞けば、誰もが答えるさ
金よりなにより一番重いものは命だってな!
だから迷惑かけてる奴の命奪ってやったんだよ!
迷惑かけてるやつの命が一番邪魔なんだよ!!!」


283 名前:ねずみ男21 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:49:48 ID:12H+tngi]
社長「・・・(絶句)」
ニコ「・・・(絶句)」
ロボ「・・・(絶句)」
よっちゃん「・・・・てめぇな、いい加減しろよ
お前が人の命計れる立場か?あぁ?
社長がどんだけてめぇのこと心配してるのか考えたことあんのかよ!?」
ねずみ男「はぁ?しらねぇよ!そんなことよ!
俺だってな、殺していい奴か悪い奴かぐらい考えてやってんだよ!
俺が殺したのはな、殺人犯だよ!何人も人殺して金もらってんだ!
そいつ殺した奴の顔なんか覚えちゃいないんだぜ!?
3日経ったら全部忘れちまうんだ。人間のくずだ!あんな野郎死んで正解なんだよっ!!」
一同絶句
ニコ「・・・あなたが・・・あなたが」
ポロポロと涙をながすニコ
ロボ「・・っお前!!!お前が、お前が三日坊主殺したのか!?!!!」
ねずみ男「はぁ?だったらなんだょ!!?死んで正解だろうが!あぁ?
俺が作った爆弾あいつ自分で爆発させちまったらしいぜ?馬鹿な野郎だ!」
ロボ「お前!この・・・」
ロボが飛び掛ろうとした瞬間
よっちゃんがねずみ男に飛びかかり、顔面にパンチを入れる。
さらにマウントになり、顔に何度もパンチを入れる
よっちゃん「お前が、人を、殺して、いいと、思ってんのか!?
お前が、命を、計って、いいと、思ってんのか!?」
涙を流すよっちゃん
そっと横に来て殴る腕をつかむロボ
ロボ「よっちゃん、もういいって。もういい。」
顔を腫らして泣いているねずみ男
ねずみ男「な・・んだ・・・よ・・。みんな・・して・・殺し屋の・・・味方かよ」
ニコ「ねずみ男さん・・。三日坊主はね、確かに人を殺した。殺し屋だった。
でもね、彼は悩んでいたの。ずっと、彼は、自分の、病気のせいにして、人を、殺して。
命の重さ。そんなもの誰でも知ってる。重い。当たり前よ。それに、平等。
でもね、価値のない人なんていないの!!みんな平等に価値があるの!
そうやって、価値が歯車になって世界は回ってるの!!
誰も認めてくれないんなら、私があなたを味方してあげる!!
だから、だから、人を殺さないで。あなたも、あなた自身も、死なないで」
ねずみ男「・・そ・・うかい・・。もっ・・とは・・やく・・あんたに・・会っときたかったな。
あん・・・た・・・・やっぱり・・・・おふく・・・ろ・・そっくりだ」
スイッチに手をかけるねずみ男
社長「!!!ダメよっッ!!!」


284 名前:ねずみ男22 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:50:23 ID:12H+tngi]
○街の全体図
街は
静かなまま

○地蔵堂
目をつぶっている
よっちゃん、社長、ニコ、ロボ
ねずみ男「・・ばーん」
ねずみ男がそう言うと同時に
社長の壷が軽く爆発する。
中から紙ふぶきと一緒にカーネーションの花が出てきた。

○街
いたるところで紙ふぶきが舞っている。
ヤクザたちもあっけに取られている。

○地蔵堂
社長「・・・・馬鹿」
泣き崩れる社長
と同時に警察が中に入ってくる。
いっせいに拳銃を構える。



285 名前:ねずみ男23 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:50:56 ID:12H+tngi]
○地蔵堂正面
たくさんのパトカーがいなくなると
地蔵堂の入り口にニコ、ロボ、社長、よっちゃん、そしてもう一人男が立っている
ねずみ男の父親「どうも、うちの息子が迷惑をかけました。」
社長「・・甘やかすだけが、親の役目じゃないの。
甘やかすな、って言ってるわけじゃないの。時にはムチが必要なの」
ニコ「どうか、どうか。彼のこと認めてあげてください。
彼のこと、叱ってあげてください」
父親「・・・マキさん。すいません」

○地蔵堂
花瓶にカーネーションを刺す社長
社長「二重尾行だったの」
ロボ「へ?」
社長「まぁ、あなたたちを警護って言う名目でずっとねずみ男を監視させていた。
だから、警察の対応も早かったの」
ロボ「おとりみたいなものですか?」
社長「ごめんなさい。本当に今回はあなたたちに迷惑しかかけなかった」
ニコ「・・・今回はつらかった。ねぇ、ロボ?」
ロボ「うん、強烈に長い一日だった」
よっちゃん「俺が、あの時ロボに会わなかったら、こうなってなかったのかもな」
ロボ「いや、俺があの時くしゃみをしてなかったら」
社長「偶然か、必然か、そんなものは私たちには分からないけど、でも
こうして私たちは再び出会って、こうして生きてる。それだけは分かってる。
せっかくの出会いだもの。大切にしましょ」
ニコがロボのほうを見て笑う
よっちゃん「二人とも、仲・・・いいな?」
ニコ「へ?」
社長「左手にいいものつけちゃって。再会初日でもう結婚?」
ニコ「あ!」
慌てて隠すニコ
急に改まるロボ
ロボ「私、須藤は林ニ湖さんと結婚することになったのです!!
ねぇ〜ニコ」
ニコ「ちょ、ちょっと、やめてよ!!これ返す!!」
ロボ「そりゃないでしょ〜」


286 名前:ねずみ男24 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:51:25 ID:12H+tngi]
○ニコの家
帰宅するニコ
ニコの母「あら、おそいじゃない?なにかしてたの?」
ニコ「ちょっとね」
一海「あ〜。まさか。おとこ?」
ニコ「そ、そんなわけないじゃん!なに言ってるの一海ちゃん!」
一海「ムキになって、ますます怪しい」
ニコの父「え?そうなのか?ニコ?そうなのか?」
ニコ「違うって〜!」
そういいながらニコは指輪をそっとポッケに隠す

○ロボの家
ロボ「あ〜疲れた。今日、結局会社無断で休んじゃったし。怒られるかな」
ロボのベッドの上にニコの携帯が落ちている。
ロボ「あれ?」

○ニコの家の前
ロボ「ニコ〜!!」
ニコ「え?ロボ?」
ロボ「これ、落し物!」


287 名前:ねずみ男25 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:51:59 ID:12H+tngi]
○神社
ニコ「ロボさ〜、覚えてる?」
ロボ「なにが?」
ニコ「三日坊主の事件のあと、ロボがここにきて、私のこと叱ってくれたの」
ロボ「あ〜。あった気がする」
ニコ「わたしね、あの時ね、はじめて大人を信用できたの。
親の言うこともまともに聞いてなかったのに、でも、ロボは会ってすぐに信用できた。
それだけ、ロボは心がきれいだったの」
ロボ「なんか、照れるね」
ニコ「その日から、きっと、自分の未来はロボにつながってたのかもしれない。
今日、ロボに久しぶりにあったけど、全然変わってなかった。
ロボみたいに、ずっと変わらない心の持ち主の大人になりたいと思ってたんだなって今日気づいた。
偶然か必然か、分からないけど、でも、ここにいること、生きていること、それは分かってる。
それに、ロボを好きだってことも」
ロボ「ニコ・・・」
ロボがニコの肩を抱きしめ、軽いキスをする
ロボ「好きだよ、ニコ」
ニコは照れ笑いを浮かべる

○学校
むーちゃん「昨日、急にいなくなるからびっくりしたよ」
ニコ「ちょっと、お腹痛くなってさ」
むーちゃん「・・・・・
うそでしょ?」
ニコ「・・やっぱ、分かる?」
むーちゃん「なんか、今日のニコ違うもん。うれしそう。なんかあったの?」
ニコ「うーん。想いが実ったっていうか、うん。」
むーちゃん「彼氏できたの!?」
ニコ「まぁ、一応彼氏。だと思う・・・」
むーちゃん「ほんとに!?」
ニコ「でも、むーちゃんには絶対紹介しない!」
むーちゃん「なんでよぉ!」
笑う二人
ニコNa「私は、再び刺激的で素晴らしい日々を手に入れた気がした。」


288 名前:ねずみ男26 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:52:33 ID:12H+tngi]
○面談所
ねずみ男の父親とねずみ男がガラスごしにしゃべっている
ねずみ男「俺よぉ、もう少し、ましな生き方すりゃよかった」
父親「たっくん。今からでも、遅くない。
俺にも責任がある。二人で、いつか、一緒に・・・」
泣く父親
ねずみ男「自分の未来か・・」
ニコNa「代わりに失ったものも色々ある気がする」

○ロボの家
目覚ましを止めるロボ
ロボ「んあ?
げ!遅刻!?」
ニコNa「何を失ったか何を手に入れたかなんて、誰も分からない。
いつかまた失うかもしれない」

○地蔵堂
社長「よっちゃん、この前のよっちゃん、かっこよかったわよ」
よっちゃん「あ、ありがとうございます!」
社長「・・・このカーネーション、きれいね」
よっちゃん「それ、造花ですよ」
社長「一生、枯れないわ。
よっちゃんもこの造花みたいにここで一生はたらいて頂戴!」
よっちゃん「え〜」
社長「別にいいのよ?辞めさせても」
よっちゃん「おー、こわ。
仕事仕事と。
プロフェッショナルな〜仕事をしよう〜」
ニコNa「でも、今が私にとって幸せで、楽しいって事実はこれからも変わらない。
それは、未来の自分から見ても変わらない筈だ」


289 名前:ねずみ男27 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:53:06 ID:12H+tngi]
○ロボの家
付けっぱなしにしているテレビの画面
ニュースの映像が流れている
ニュースキャスター「では、続いてのニュースです。
昨夜未明、都内のパチンコ店で、男が押し入り現金約300万円を奪い
現在逃走中とのことです。男はパンダの柄の入ったTシャツを着ており、
そこには愛ラブパンダと書いてあるそうです。」
ニコNa「でも、それは私にとっての幸せで、世界の幸せとは繋がっていない。
でも、こういう小さな幸せが重なって、幸せな世界が構築されるのだろう。
なら、私はもっともっと幸せになりたいと思う。」

○街の全体図
青い空が広がっている
ニコNa「ロボと二人で、いろんな経験をして、大人になって」

○サブタイトル
VOICE1「ねずみ男」
ニコNa「自分の未来を見つけたい」

Voice2に続く・・

290 名前:ねずみ男 mailto:sage [2008/04/02(水) 23:56:14 ID:12H+tngi]
アホみたいに長くなってしまってごめん。
なぜか15だけ連発しちゃってごめん。
16がなぜか投稿できなくてごめん。
ごめんがいっぱいあって、思い出せなくてごめん。
いや、本当にすいません。



291 名前:ねずみ男 mailto:sage [2008/04/03(木) 00:00:00 ID:BFEzRkzf]
16の部分

ニコ「ん?」
ロボ「え?」
ニコ「なんか光った」
ロボ「あ、ちょ、まっ」
ニコ「え?なに?」
ニコがそれを取りに行こうとすると慌てて止めるロボ
ニコ「なんか隠し物?」
ロボ「い、いや、別に」
ニコ「んじゃ、いいじゃん見せてよ」
ロボ「・・だって、はずいんだもん」
ニコ「何?えっちなもの?」
ロボ「いやいやいやいや、そんなものじゃないけど」
ニコ「じゃ、見せてよ」
ロボ「笑わないって約束する?」
ニコ「うん。約束する。で、なに?それは」
ロボ「これ・・・なんだけど」
ロボがニコに見せたものはあきらかに女性用の指輪
ニコ「え!?ロ、ロボ結婚するの!?」
ロボ「俺ができると思ってんの?」
ニコ「じゃしないの??」
ロボ「これは、まぁ、保険じゃないけど、いつか、結婚、したい人ができたらその人に渡すんだ。
これ高かったし、こういうのあるほうが結婚しようって気に・・・」
ニコ(爆笑)
ロボ「笑うなって言ったろう!!」
ニコ「あー。お金がないってこれ買ったからか。ロボ、ロマンチックだね。
てゆーか、それ、運命の人の指のサイズにあってるかどうかもわかんないじゃん」
ロボ「げ」
ニコ(爆笑)
ニコ「それ、貸して」
ロボ「なに?すてないでよ?」
ニコ「捨てるわけないでしょ」
指輪をはめてみるニコ
ニコ「どう?ピッタシじゃん!」
ロボに指輪を見せつけるニコ
顔を気まずそうにそむけるロボ
ロボ「うん・・・ピッタリ・・・
だって、それニコのサイズに合わせたから、当たり前なんだよね」
驚くニコ
ニコ「ど、どゆこと!?」
ロボ「前さ、ニコが俺と本気で結婚したいって言ってくれたじゃない?」

○ビターチョコレート&ピーナッツの時の回想
ニコ「いつか、いつか私、ロボと結婚したいな」
ロボ「なななな、なに言ってんの?」
ニコ「本気よ?」


292 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/03(木) 01:45:55 ID:hxYBI5dD]
16が最後になった件
かえってその方が印象的でした
GJ

293 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/03(木) 11:35:39 ID:moTlc7PR]
何気に三日坊主とも話がリンクしてて、おお〜!って思ってしまった。
ニコロボもうまくいって良かった。
長編お疲れさま〜。GJ!




294 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2008/04/11(金) 06:53:01 ID:6g05WBKw]
保守ですよ

295 名前:名無しさん@ピンキー [2008/04/11(金) 21:40:56 ID:fGBBAvpn]
おお〜まだここ残ってたんだ!
本スレしか見てなかったw


296 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/11(金) 23:39:56 ID:KdAxjL1O]
保管庫もあるよ

ttp://sexyvoice.matome-site.jp

297 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/13(日) 14:07:24 ID:OsxWcmKy]
保管庫管理人です。
職人の皆様、良作品いつもありがとうございます。

>>287のSSについて職人さまにお聞きしたいことがあるのですが
これは「ビターチョコレート&ピーナッツ」の続編という形で保管させて
もらってもよろしいのでしょうか?
このレスに目を通していただけたら、こちらかまとめのほうにいつでも構いませんので
連絡いただけたらありがたいです。

長文レス失礼しました。




298 名前:ビターチョコレート mailto:sage [2008/04/14(月) 00:01:46 ID:t3JU5efU]
>>324
はい。
そういう形でお願いします。

保管してくださっていつもありがとうございます。
自分の作品が保管されるのは少し照れますがうれしいです。
どうぞこれからも保管し続けてください。

299 名前:キラキラ mailto:sage [2008/04/15(火) 23:59:50 ID:CJfhXu9N]
高校生ニコとロボ。短編です。エロなし

×××××××××××××××
土曜日。今日はニコと付き合いだして初めてのデートだ。
待っている間のこのふわふわした高揚感って、なんて表現したらいいんだろう。
約束の場所で浮かれ気分で待つ俺は背後から突然声をかけられた。
「あの〜、すみません」
思わず振り向いた先には二人の綺麗な女性が立っていて
「はい?な、なんでしょうか…?」
「おひまだったら、私達とお茶でもどうですか?」
「はあ〜??」
な、何?誰に言ってんの?
キョロキョロとあたりを見渡すけれども、該当者はなし。
「えーっと、もしかして俺…ですか?」
信じられなくて自分で自分を指差す。
「私達、さっきから近くにいたんですけど、ずっと一人だったから、
もしかして、約束すっぽかされたのかなぁと思って
よかったら一緒に楽しみませんか?」
ええぇぇぇ??逆ナン?嘘だろ!?何これ、どっきり?
「だめですかぁ?」
女の人に誘われるという経験したことのない出来事に
ニヤけそうになる顔を必死で取り繕いながら
「いや、人を待っているのでごめんなさい」
「えーっ、ほんとですかぁ?」
何故かしつこく誘ってくる彼女達を丁重にお断りした。
以前の俺だったら、こんな状況、舞い上がって尻尾振って着いていっただろうに。

今は、ニコだけを待っているから。


「へぇ、ロボ。断るなんてすごいじゃん」
去っていく彼女達に後姿に視線を送りながらニコが現れた。
「ニコ、見てたの?」
「うん。また痴漢にでも間違われてんのかと思ったんだけど…
あの人達、ロボを騙して高価な物売りつけようとしていたみたいだね。
引っかかりそうな男だったのにって、ブツブツ言ってるのが聞こえた」
「うわぁ、危なかったんだ、俺」
「そうだよ。スケベ心が勝たなくてよかったねぇ」
うんうんと頷いているニコの手を握り締めて
「ニコへの愛の力が勝ったんだよ」
一瞬面食らったニコは、すぐに表情を変えると
「もう、ロボのバカ」
って、いつもの口調で半ば呆れたように、でも甘く囁いて
その瞳は優しくて俺はそれだけで安心して物凄く幸せな気持ちになれるんだ。

だって
キラキラと輝いて俺を捕らえてやまない彼女の綺麗な瞳から
逃れることなんてできやしないのだから。


終わり


300 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/16(水) 11:03:40 ID:q2kM/F/v]
ごちそうさま!



301 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/16(水) 16:40:34 ID:9DvYhAir]
短いのにキャラの能力や性格が生きてていい!
GJ

302 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/17(木) 13:59:48 ID:NvnroHYn]
dです!・・うまいっすね・・・・・

303 名前:おかあさんのゆび 1/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 16:54:35 ID:Wd86G7Ga]
エロ無しで長いのでごめんなさい。ニコのにわかママ体験?


* * * * * * *

 ロボの部屋へ向かうととんでもない光景を目にしてしまった。
「ああニコ!た、助けてぇ〜〜!!」
 散乱した紙オムツ、転がる哺乳瓶、憔悴しきったロボの目にはクマ。そして……。
「ほぎゃあああ〜〜〜〜!!」

 ……あたしは悪夢を見てるの?

「何なの?これってどういう事!?」
 数十分前にロボから慌てた声で
『ニコ!助けて!!』
と電話があって、何事かと思ってやって来てみれば。
「もうどうしたらいいかわかんないよ。俺じゃ赤ちゃんの世話なんて無理だし〜。
 ニコお願い、ちょっと手伝って」
 は?今何て言った?
「ニコ?」
 えーっと、これってだからどういう事なんですかね?
「ロボ……」
「はい?」
「……ちょっと!何なのよこの子は!?誰の子なの!?」
「へっ?」
「もう知らない!そんな奴だなんて思わなかった!!いつの間に子供なんて作ってたの!?
 しかもあたしに隠してたなんて、最っ低ーーーー!!」
 

304 名前:おかあさんのゆび 2/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 16:55:47 ID:Wd86G7Ga]
「う、うわっニコ!?違う、勘違い勘違い!!」
「何が違うの!じゃあこの子は誰の子なのよ!!これは何なのよーーーーっ!?」
 足下に落ちていた1枚の紙切れをロボの鼻先に突き付ける。
『この子をよろしくお願いします。勝手なことしてごめんなさい』
 確かクーファン?とかいう籠の中で泣いてる赤ちゃん、慌てたロボの顔、そして置き手紙。
 これだけ揃って一体何がどうなんだか……。
「ニコ、誤解なんだってばあ〜。だからこれはね……」
「問答無用!!」
 頭に来た私はついに黄金の左ストレートをその顔に向けて思いっ切り繰り出した。
 Σボカッ!!
 ドサッと音を立てて大きなロボの体が床に倒れ込んだ。
 ……筈なんだけど????
「痛〜……くない、あ、あれっ?」
 当のロボは目をぱちくりさせて相変わらずポーっとつっ立ってる。ふと2人して音の
した辺りに視線を落とすと……。
「よ、よっちゃん!?」
 それは3年前に私達の前から消えたまま音沙汰の無かった地蔵堂の名梨秀吉こと「よっ
ちゃん」だったのだ。

「一体どうしたの?」
 腫れた顎を冷やしながらよっちゃんは私達を交互に眺めて話し始めた。
「旅先でさ、社長の知り合いに会ったりする事が良くあんだよ。でな、3日程前に娘が
 妊娠したまま駆け落ちしてもう半年以上経つのに見つかんないから捜してくんねえ
 かって頼まれて、社長が久々に地蔵堂に帰って来たら……店の前にさ」
 とクーファンで眠る赤ちゃんを顎でしゃくった。
「えっ!じゃあよっちゃんが置いてったの、この子!?」
「え。ちょっとロボどういう事!?」
 夕方会社から帰宅したロボが玄関を開けると部屋の真ん中にいたそうだ。この子が。
「俺達は、この子の母親捜さなきゃなんねえから。とりあえずここ鍵開いてんじゃん?」
 いや、そういう問題か?ってロボも「ああそっか」なんて頷いてんじゃない!
 久しぶりに会ったと思ったら。やっぱり関わるとろくな事ないじゃん!


305 名前:おかあさんのゆび 3/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 16:56:58 ID:Wd86G7Ga]
「だからって何であたし達が子守しなくちゃならないわけ?スパイならともかくベビー
 シッターじゃないんだから!!社長が見ればいいじゃん」
「あの人が赤ん坊の面倒見られると思うのか?」
 ロボと2人大きく首を左右に振る。赤ちゃんより手がかかるっつーの、忘れてたわ。
「だろ?だから頼むわ。なるべく早く捜すからよ」
「えーっ、あたし達じゃ無理!絶対ムリッ!!どうすりゃいいかわかんないよ」
「そうだよよっちゃん!俺は明日も会社が……」
「まあまあ、予行練習だと思えばいいじゃん」
 お前らそうなんだろ?とニヤリと笑いながらよっちゃんはあたし達を見た。
「ええ〜!?でも俺達まだちゃんと避に……」
「ちょ、バカ!」
 余計なことを口走ろうとするロボを思い切りはたいて黙らせてる間に、よっちゃんは
赤ちゃんを残してさっさと消えてしまっていた。
「マジで?」
 勘弁してよー。散乱したロボの部屋を見渡して溜め息をついた。


 仕方なくあたしも泊り込んで子守をする事にした。ていうかそうするしかないし。
「ごめんね。せっかくの週末なのにさ〜、今会社すっげえ忙しいんだよね。休みなのに
 ほんっとにニコ、ごめん!!」
 会社から帰ったまんま、スーツも脱がないでくたくたの様子のロボに怒れるわけもなく
、とにかく慌てて買いに行った育児書片手に悪戦苦闘する。

「ニコ、オムツ替えらんない」
「何でよ!」
「だって女の子だよ〜、無理だよ〜」
「…………」
 どうやって替えるの?ミルクの作り方は?量は?抱っこはどうやんの?これって首座ってる?
 今までやった事ないんだからわかるわけないよね。とにかく必死で動くしかなかった。
 一晩じゅう泣き続けられて、やっと赤ちゃんが眠った頃にはもう夜が明けていた。
「ああもう、あたし赤ちゃんいらない!」
 こんなに大変だなんて思いもしなかった。


306 名前:おかあさんのゆび 4/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 16:58:17 ID:Wd86G7Ga]
「え〜、ニコ幸子に会いたくないの?」
 寝不足の目をこすりながらロボは会社へ行くために身支度を整えながら言う。
「だって、絶対無理だよ!1日だけでこれだよ?こんな事ずっとやんなきゃなんない
 なんてあたし、自信ないよ。できないよ……」
 可愛い〜なんて、街中で赤ちゃんを見てキャアキャア言ってた今までの自分がなんか
凄く無責任な気がした。実際可愛いだけじゃやってらんないと思う。マジで。
「でもさ、うちの母ちゃんもニコのお母さんもこんな事ずっとやってくれたんだよね。
 それって凄い大変なことだったんだなあって思ったら、今度は自分が誰かにそれを
 してあげたいって気持ちになったよ。そうやって皆誰かに愛情を与えていくんだなあ
 って。親になるってそういう事かなあ、って考えちゃったな」
 スウスウ寝息を立てる名前も知らない赤ちゃんを眺めながら話すロボの言葉を聞きな
がら、そういうものなのかなあ、とあたしも考える。
 だったら何故、あなたのお母さんは地蔵堂にあなたを託したのだろうね?
 なるべく早く帰るよう頑張るからね、ごめんね、って何度も言いながら眠そうに出て
いったロボを見送りながら、あたしは赤ちゃんを見つめて思っていた。
 一緒に置いてあったバッグの中身を見ると、何か手掛かりはないもんかと一通り荷物を
解いて並べてみる。
 紙オムツ、哺乳瓶、数着ある服、ガーゼのハンカチ……そして1冊のノートがあった。
『今日私は母になりました。無事にこの世に生まれて来てくれてありがとう』
 いわゆる育児日記と思われるそのノートには、1ページ目のその書き出しから始まり
その日のミルクの量や赤ちゃんの様子からこと細かに書き記してあった。
 ただなんとなくページを捲っていた私は、ふとある書込みに目を留めてしまっていた。
『ただ幸せになってほしいから――幸――』
「ゆき?それとも……さち?」
 小さな寝顔を覗きながら呟いた。


307 名前:おかあさんのゆび 5/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 17:00:01 ID:Wd86G7Ga]
 もしかしたらあなたに思いを込めて付けた名前なのだろうか?きっとこれは精一杯の
あなたへの……。

 何気にぎゅっとグーにした小さな手をつついてみた。私の指が触れるとピクッ、と
小さく震える。と思うと――――、
「…………あっ」
一瞬ぱっ、と開くとその手は私の人差し指を掴んでぎゅっとまた閉じた。
 小さな紅葉のような弱々しい手から想像もつかない強い力で温もりを注ぎ込んで来る。
「えーどうしよう、離れない……」
 無理に解くと起きちゃうなー、なんて思いながらも人差し指の不思議な感触に何故か
胸がキュンとなった。
 あたしの事お母さんと間違えてるのかな?……早く会いたいよね?
「ゆきちゃん?それとも……さっちゃんかな?」
 声に出してちょっと呼んでみたら、気のせいか眠りながら口元が笑った気がした。
「さっちゃん」
 何となくもう1度呼んでみる。
 いつかこんなふうに当たり前に結婚して、当たり前に赤ちゃんを授かって、当たり前
にお母さんになる日が来るのかな?今まで漠然と思い描いていたけど、それって当たり前
に見えて実は凄い事なんじゃないかなあ?
 新しい命を授かるために星の数ほどの中から運命の相手を探し当てて、愛し合って、
この世に生まれて来るその小さな体で懸命に生きる命を守り育てて、そしてまたそれは
続いて繋ってゆく。永遠に繰り返されて。
 それがもし、その相手が……そうだったらいいなあ、と思う。私が願う幸せが、必ず
同じであるとは限らなくても、願わずにはいられない。

 きゅっきゅっと時々強く握り返して来る手の力強さに、時間の経つのも忘れてずっと
その寝顔を眺めながら、私も浅い眠りについていった。

 少しだけ夢を見た。
 暖かな新緑の下で満面の笑みを浮かべる私と繋がれた小さな手。そして反対側のその
手に繋がれて笑う誰かは……。

 ロボ。
 あなたの幸せと私の幸せが同じならいいのに。


308 名前:おかあさんのゆび 7/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 17:01:17 ID:Wd86G7Ga]
 夕方になりロボが帰宅した。
「ご飯お惣菜買って来たから。ニコ大変だったろ?」
 自分も疲れてボロボロだったろうに、ロボは上がると真っ先に私を労ってキスをした。
「大丈夫だよ、何とか。まあさすがにちょっと疲れてきたけどね」
 ロボの顔を見た途端何故かホッとして、その胸に顔を埋めた。
「何?なんか今日のニコ積極的〜」
「バカ!そんなんじゃないのっ」
 本当は早くロボが帰って来るのを心待ちにしていた。会いたくて仕方なかった。改めて
私はロボのことが本心から好きなんだと思ったから。
 先はどうなるのかなんて多分誰にもわからない。だけど今のこの気持ちは何よりも大切
に自分に正直にいたいと思う。

 眠りから覚めた彼女はまた泣き声をあげた。にわかに焦り出したロボを余所に私は
抱き上げて軽くあやすと少し落ち着いてきた。
「……ニコ、上手くなってない?」
「1日抱っこしたら慣れて来たみたい」
 ミルクを飲んでまた一眠り。
「なあに?」
 赤ちゃんを眺める私をロボが眺めながら、小さく微笑んでいる。
「ん?……なんかね、ニコ、お母さんみたいに見える」
「えっ?」
 やだなあもう、って目を逸らした私をロボがぎゅうっとその胸に抱き締めた。
「ちょっと苦しいよ」
「うん。でももうちょい我慢して。俺もニコを抱っこしたいの」
 あたしは赤ちゃんじゃないっての!って思ったけど、ロボの胸は安心できて暖かくて
好きだから、そのまま黙って目を閉じた。
「ニコ、あのさあ……もしこの先ずっと一緒にいられたら、俺の幸せがニコの幸せと同じ
 になったらいいのになって思うんだ」
「……えっ?」
 思わず見上げるロボの顔はとても優しいのにどこか切なげでどことなく不安に見えた。
「あたしの幸せは……」
 ワイシャツの胸元を掴みながらロボの瞳を見上げ口を開いたその時、
「おい!お前ら、母親見つかったぞー」
玄関を勢い良く開けてよっちゃんが乱入して来ると同時に、また泣き声が部屋に響いた。


309 名前:おかあさんのゆび 8/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 17:03:01 ID:Wd86G7Ga]
「あなただったの」
 地蔵堂に向った私とロボの前で、社長が若い女性に話しかけている。
「誰?」
「例の駆け落ちした娘さんだったんだよ」
 小声で聞いた私によっちゃんがそっとまた小声で返す。
「どうしてここに置いて行ったの?」
 社長の言葉にその人は俯きながら答えた。
「父に反対されて2人で逃げて、さあこれからって時にあの人が事故で……。その時には
 既にお腹にこの子がいたんです。1人で育てるつもりで産みました。だけど、現実は
 私が考えてたよりもずっとずっと厳しくて、辛くて……。真境名のおばさまならきっと
 この子のことうまくやって下さると思って……」
 まだ若いのに随分疲れた印象を受けた。相当苦労したのに違いない、と女性を見て思った。

「あなた、死ぬつもりだったのね」
 社長の言葉にその場にいた皆がギョッとした。ただ1人、スウスウ眠る赤ちゃんを除いて。
 そしてその母親は急に涙をぼろぼろ零してその場に泣き崩れた。

「このままだときっと満足に育てるなんて出来ないって思って……だから、こんな私と
 居るよりもいっそ真境名のおばさまに託してどこかいい人を探して貰った方が、この子
 のためになると思ったんです」

 掛ける言葉が見つからないのかよっちゃんもロボも押し黙ったままだった。そんな中
社長が沈黙を破る。
「この娘が面倒を見てくれたのよ」
 彼女は社長に促されて私を見ると、黙って頭を下げた。

「あの……」
「はい」
「死ぬなんて簡単に言わないで下さい。あの子、小さい身体で一生懸命生きてる。それは
 あなたがこの世に生み出したからで、それはあなたが生きる事を選んだからで……。
 だってじゃなきゃ恋人が死んだ時一緒に死んでも同じだった筈じゃない」
 私は彼女の悲痛な心の叫びを聞いた気がして、気付けば目の前で語りかけていた。


310 名前:おかあさんのゆび 9/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 17:04:45 ID:Wd86G7Ga]
「誰かが死んでそれで幸せになる人なんているわけない。まして一番愛して欲しい家族が
 いなくなってしまったら……きっと心に穴が開いて、誰もその代わりになんてなれ
 なくて。死んで良い人なんてこの世にいるわけないじゃない!いなくなった方がいい
 なんてそんなの言い訳だよ!!子供が親にそんな事望むわけないじゃない」
 時間が止まった様に誰も動かなかった。私の声だけが震えて響いていた。
「あの子は幸せになるために産まれて来たんでしょう?だったらそれができるのはあなた
 だけだと思います。だから逃げたりしないで!……そうしたくてもできなかった人
 だっていっぱいいるんだから……」

 誰かの中で代りにその命を繋いでいる人。
 尽きる命にその代償としての喜びを与えようとする人。
 生きるために大切な人の手を離してばらばらに解かなければならなかった人。
 そして、明日への希望さえ夢見る事を許されず罪だけを抱えて散っていった人……。

  もうたくさんだ。この世には多くの生死が溢れてる。
 どんなに歳を重ねて大人になっても、それを忘れてしまうのだけは嫌だ。絶対嫌だ。
「あなたがいなくなったら、あなたの代りなんていないんだから」
 私は泣いていた。ずっと忘れた事のなかったこの世との関わりを思い出しながら。
「そう。あなたのお父様にとって大事な娘と孫の代りになる人なんてどこにもいないわ」
 突然立上がって社長が彼女に向けて口を開いた。
「でも父は、私達を許してはくれないと……」
「ええ、そうね。勝手なことしたんだもの」
 その言葉にがくんと肩を落とす彼女を見て
「ちょっと言い過ぎなんじゃないの?……」
さすがにロボが口を挟む。
「勝手なことした罰に当分外出禁止を言い渡すそうよ」
「えっ?」
 その場にいた全員が顔を見合わせた。
「子は幾つになっても親にとっては子よ。孫となれば尚更。悪いと思うなら黙って帰って
 こい、ですってよ」
 涙が乾く暇がない程彼女はただ泣きつづけていた。




311 名前:おかあさんのゆび 10/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 17:06:12 ID:Wd86G7Ga]
「お世話になりました」
 安心したように眠った赤ちゃんを抱いて、彼女は私達に頭を下げた。
 迎えの車に乗り込もうとした時、思わず私は口走ってしまった。
「あの、もう1回抱かせてくれませんか?」
 ロボもよっちゃんも彼女も驚いたけど、黙って
「どうぞ。抱いてあげて下さい」
とおくるみに包まれた赤ちゃんを渡してくれた。
 腕の中に納まった小さくて重い命の温もりに、また私は胸のどこかがキュンとなる。
そっと握られた手をつつくと、またゆっくりとその手を開いた。だがまたすぐにきゅっと
小さく握り締める。
「……ありがとうございました」
 お母さんに返すと、一瞬だけ閉じていた目をぱっちり開いた。そこに映っていたのは
 私の顔……?
「あら、あなたを見て笑ったわね」
 少しだけその口元が弛んだのを感じたのは錯覚ではなかったのか?またすぐに眠りに
ついた赤ちゃんを抱き締めて彼女は車に乗り込んだ。
 走り去る車が見えなくなるまで見送ると、旅仕度をした社長が店を後にしようとしていた。
 扉に鍵を掛け、よっちゃんがバイクへ寄り掛かって待つ方にと向う。
「もう行っちゃうんですかぁ?」
 何だか寂しげな気持ちを含んだ様な声でロボが問う。
「ええ、頼まれ事のために寄っただけだから。また遊びに行って来るわ」
 そう言って社長はメットを受け取る。
「また帰って来るんですよね?」
 私の言葉にちょっと意地悪ないつもの笑みを浮かべて
「さあ?どうかしらね」
と笑う。
「まだまだ遊び足りないのよね。だから本当は他人のお世話なんてしてる暇ないんだ
 けど」
 話しながらよっちゃんの後ろに跨る。
「でも遊んでばかりじゃ飽きちゃうのよね。気が向いたらまた足突っ込んじゃうかも
 しれないわね。……血が騒ぐのかしら?」
 最後は小声で呟きながら、ニヤリとまた小さく微笑んだ。
「生きてる限り、またどこかで会う事もできるわ」
 だから、サヨナラはいらないの。
 そう言うとまた2人は私達の前から消えてしまった。楽しそうに笑いながら。


312 名前:おかあさんのゆび 11/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 17:09:49 ID:Wd86G7Ga]
「よっちゃんはまた付き合ってくれなくても良かったのよ?あの店に残っても良かった
 のに」
「社長ー、まだ言うんですか?俺は社長について行くって決めてんッすよ」
 町を一望出来る峠にバイクを停めてタバコを吹かしながら、語り合うふたり。
「社長言ったじゃないですか。……家族だからって」
「……あたしはお母さんかしら?それともまさかお婆ちゃんじゃないわよね?」
「ち、違いますよ!(そんな恐ろしい事考えるのも怖ぇよ‐‐;)……お姉様で結構です」
 横目で睨みながらもフフン、と笑ってタバコをしまう真境名。
「さて、次はどこで遊ぼうかしら?」
「どこへでも。地の果てまで御一緒しますよ」
 いつかは解けてばらばらになる。
 だけど今はまだ共にいる事を望んでいるのなら、その時まで付き合って貰おう。
「じゃあ行きましょうか」
 嵌まるのも悪くはないわね、家族ってやつに。
「何か言いましたか?」
「ううん別に」
 名梨の背中に掴まりながら、安らいだ笑顔で真境名は呟いた。


 ロボの部屋へ帰って来てちゃぶ台に落ち着いた。
 台についた手を何気に眺めていると、ロボがひっきりなしに話しかけて来る。
「あ〜疲れたなぁ。ニコも大変だったね」
「そうだね」
「けど可愛かったね。何かちょっとだけ子供欲しくなっちゃったなあなんて……」
「ふうん」
「あ〜、でもそれにしても社長達次はどこに行くのかな?でまたひょっこり戻って来たり
 して」
「………………」
「ニコ?」
「…………ふっ……」
「…………おいで」
 気が付くと、俯いたまま涙が溢れて来て止まらなくなっていた。拭っても拭っても掌
を濡らす雫はとめどなく溢れてくる。
「元気でいればいつかきっと会えるよ。よっちゃん達にも、……あの子にも」
 私をぎゅっと抱き締めて頭をよしよしとするロボは赤ちゃんをあやすお父さんみたい。
「あたしは赤ちゃんじゃないってば……」
「はいはい」
 だけどそのままその優しさに私は甘えていた。


313 名前:おかあさんのゆび 12/12 mailto:sage [2008/04/19(土) 17:11:10 ID:Wd86G7Ga]
 あの人差し指の温もりを思い出しては、また切なくなった。小さくてか細い指。でも
確実にそこには生きている証しがあった。
 誰かが言っていたっけ。人は生まれて来た時に両手に幸せを握り締めてやって来るん
だって。
 あの子は家族という幸せを取り戻したから、あの時私の指を掴まなくても良かったの
かなあ?きっともう大丈夫だよ。あなたの名前は最後までわからなかったけど、きっと
それにはあなたの両親の願いが詰っているはず。

 この指お母さん指って言うんだよね。ロボのシャツを掴みながらその手を眺めて思う。
 いつか私もお母さんと呼ばれる日が来るのだろうか?まだ見ぬ生命の温もりを想い
ながら漠然と未来を夢見て思い描く。そして命を繋ぐ尊さを。

「ニコ、愛してるよ」
「な、何?いきなり」
 唐突に言い出すロボの愛の言葉に私は驚いてしまった。
 思わず笑ってしまいそうになったけど、見上げたロボの顔は真剣で私は口を噤んでしまった。
「これから先生きてくなら、俺はずっと一緒にいるならニコがいいって思う。いつか
 子供とか出来て家族になって親になって、一緒に生きていけたらなって。ニコの未来が
 俺の幸せと重なれば嬉しいなって思う」
「ロボ……」
 私の幸せがロボの幸せならいい。そう思ってた、そう願ってた。
「同じだよ。あたしも……ずっとそう思ってた。だけど違うんじゃないかって怖かった」
「ニコ」
 少し体を離して私の両手を握り締めると、じいっと瞳を見つめて呟いた。
「いつか、ニコがもう少し大人になったら。俺達の時間がもう少し同じに流れるように
 なったら、その時は……俺と一緒になって、俺と生きて欲しい」
「あたしを須藤二湖にしてくれるの?」
「うん。なって欲しい。……いや、林威一郎でも構わないんだけど〜」
「あははっ」
 ふたりの幸せが、同じだったら、それはどんなに幸せな未来になるのだろう。


314 名前:おかあさんのゆび(終) mailto:sage [2008/04/19(土) 17:14:30 ID:Wd86G7Ga]
「あ〜、俺なんか待ち遠しくなってきちゃったな」
「何が?」
「早く結婚して、幸子にも会いたいなぁ〜とか」
「気が早いよ……」
「え?ニコ会いたくないの?」
「そりゃ、いつかはね」
 誰かと恋をして、愛し合って、家族になって、生命という幸せを
繋いでいく。
 思い描いていたそれがロボとだったら……そう願った気持ちが夢ではなく本当に叶う
日が来るのだろうか。
 それを叶えるために私は生きていこうと思う。夢がそれだけで終わらない奇跡を見る
ために。
「ねえニコ」
「何?」
「あの、幸子に会うための練習しない?ここんとこご無沙汰……」
 Σボカッ!!
「……ちょ、マヂで殴らなくても……(ピクピク)」バタッ。
「黙れエロボ!……しかしイキのいい跳ね具合だこと」
「お、俺はマグロじゃないぞ……(ガクッ)」
 左マックスパンチを食らわせた手をさすりながらロボを眺めて笑った。

 ただ幸せになってほしいから……
 この手に温もりを教えてくれたあなたも、まだ見ぬ未来のあなたも。

 皆幸せになるために、きっと生まれて来る筈だから。


* * * * * * *終


分割数字を入れ間違えました(6がない)
エピソードはそのままですので抜けはないですが変なミスばっかり本当すいませんorz



315 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/20(日) 00:22:33 ID:An792nbt]
ニコのにわかママぶりが目に浮かぶよう
きっといいお母さんになるね!
GJ!

316 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/20(日) 01:12:58 ID:J4iVQKAd]
>>341
いえいえ大丈夫でしたよ。
命の尊さを感じました。
GJ!

317 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/04/20(日) 09:08:03 ID:dLeNa+2M]
>あの人差し指の温もりを思い出しては、また切なくなった。
娘が赤ちゃんの頃を思い出してナイタ
GJ!

318 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/01(木) 05:50:32 ID:KdlGKBTy]
通りすがりに保守

319 名前:名無しさん@ピンキー [2008/05/06(火) 22:23:06 ID:soBZ5jRk]
ねずみ男がセクロボ2のVoice1なんでしょ?

Voice2も待ってますww

あれから一年たつけどまだここが残っててうれしい限りです!

320 名前:名無しさん@ピンキー [2008/05/08(木) 23:43:30 ID:wjuIGALQ]
まとめサイトに何故か繋がらない



321 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/09(金) 00:30:05 ID:v0D8PeAq]
ほんとだ、落ちてるのかな
明日、またアクセスしてみよう

322 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/09(金) 19:30:23 ID:oXxR+Fcb]
繋がったよ
原因は何だったんだろう

323 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/09(金) 23:11:24 ID:gCNE9c93]
保管庫管理人です。
ご迷惑かけてすみません。今は無事繋がっています。
超不安定なサーバーが原因だと思うのですが…

それで近々サーバー移転をしようと思っていまして
その際はまた、こららでお知らせさせていただきます。



324 名前:名無しさん@ピンキー [2008/05/10(土) 17:06:23 ID:pD8n6wu4]
恋愛スレで清貧シリーズを書いていた者ですがあっちは落ちちゃったのかな?
清貧もセクロボも永遠です。記念あげ

325 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/11(日) 01:18:48 ID:OxmijIG3]
恋愛スレは落ちちゃったけど、管理人さんが一緒に保管してくださってるよ。

326 名前:ニコの耳 1/9 mailto:sage [2008/05/12(月) 17:39:31 ID:8lJuOgHS]
地蔵堂でまだ働いている。ニコ高1で、一昨日の伊豆の泊まりがけの任務で、ロボと成り行きでしてしまった。エロなし

 **** ****

 そして今日、ロボは激しい雨の音と騒がしく階段を駆け上がってくる足音で目を覚ました。

[AM8時]

ガチャ
「ロボ?まだ寝てんの〜?」
 制服姿のニコが呆れた顔をしながら玄関に立っていた。
「いいだろ〜。休みなんだから…ん〜」
 下がってくる瞼に負け、またベッドに顔を沈めた。
「ちょっと寝ないでよ〜、大変なんだってば!ロボッ!」
 ニコに肩を揺らされ、仕方なく起きた。
「どうしたのぉ?今日学校でしょ?」
「学校なんて、行ってる場合じゃないの!そんな事より大変なんだって!」
 怒鳴るようなニコの声に思わずロボもイラっとしてしまう。
「だから何だよ〜?」
 ニコが急に声を小さくして喋りだした。
「耳が…耳がね。聞こえなくなったの。普通には、聞こえるんだけど。前みたいに、聞こえないの。ねぇどうしよう!ロボ〜」
「え!?いつから?だって仕事の時は…」
 一昨日の仕事の時は、聞こえてたんじゃなかったっけ?
「分かんない。ただ今日起きたら、一階のテレビの声とか、トーストが焼き上がった音とか全然聞こえなくて…おかしいなって思って」
 正直、昨日はロボとしたゃったって事で頭がいっぱいだったし。

「病院、病院は?」
 ニコが首を振る。
「無理だよ。分かってもらえる訳ないよ」
 それもそうか…。

「取り敢えず、地蔵堂にも知らせなきゃ。ロボ行くよ!」
 ニコがロボの腕を掴んで、引っ張る。
「行くって、俺も?」
「当たり前でしょ?仕事を続けられるかの、ピンチなんだからね?」
「はいはい。」

327 名前:ニコの耳 2/9 mailto:sage [2008/05/12(月) 17:44:00 ID:8lJuOgHS]
 ロボに触れて、ロボの着替える姿をみると顔が紅くなるのが自分でもわかった。
「ニコ?もう出れるけど…ニコ〜?」
 ニコの顔を覗き込むと顔を真っ赤にしたニコがいた。
「あっ!ロボ、雨凄いから車出してね。」
 ロボがクスッッと笑った。
「は〜い。」



【地蔵堂】

「そう、聞こえなくなっちゃったのね。」
「はい…」
「何で、っすかね〜?」
 コーヒーを運んできたよっちゃんが言う
「昨日の任務で疲れたんじゃないかしら?泊まり掛けにさせちゃったし。」
「はい…」 昨日の事を聞かれると、何でか顔が紅くなる。
「ココのトコロ立て続けにニコに任せちゃってましたからね。」
「ニコ、疲れてたんだよ。」 ロボも、隣で言ってくれる。
「うん。戻るといいんだけど…。」
 もし戻らなかったら、もう此処でこうやっていられないのかな…。

 社長が思い出したようにハッと目を開けた。
「そう言えば………でもねぇ〜…」
 アタシの顔を何度も見ては、また煙草をふかす。
「気になるじゃないですか!教えて下さい。」
 ニコの真っ直ぐな瞳に負け、社長が煙草の火を消しゆっくり喋り出した。
「それじゃあ、言うわね。前に聞いた事があるの。
ニコのように特別な力を持った子は、その力をずっと持ち続けるために、異性と結婚も付き合う事もしないの。
女になる事で、その力を無くしてしまうって言われてるのよ。」

「……社長〜、難しいっす。」
 よっちゃんがツッコミを入れる。よく言ってる意味が分からない。

「フゥ…つまりね、ずっと処女でいるって事よ。その能力が欲しければね。」
シーン
 えっ…
「…エェョ!?」 固まってしまったアタシとは正反対に、ロボが叫ぶ。


328 名前:ニコの耳 3/9 mailto:sage [2008/05/12(月) 17:51:28 ID:8lJuOgHS]
 いきなり大声を出したから、ロボはよっちゃんに怒られてる。
「ったくうるせぇなお前は!?何だ、そんな事っすかぁ〜?ニコにはな〜」
 アタシにはまだ早い…話じゃないんだよぉ、よっちゃん…ゴメン。
「そ、そうだよ。アタシにはまだ、関係ない話だね。えへへへ」
 何だか一気に緊張して、アタシはコーヒーを一気に飲んだ。
「ニコ、喉渇いてたのか?ジュース持って来てやるよ。」
 よっちゃんが台所に入って行ったのを、横目で社長が確認した。
「しちゃったの?」
 社長は、明らさまに挙動不審なロボの顔を見て言った。
「なんで、ロボを見て言うんですか?」
 社長がアタシに顔を寄せて小声で
「私に嘘は通用しないのよ。」って言った。
 社長……もぅ、ロボもしっかりしてよ。

「はい、オレンジジュースな。」
 よっちゃんが戻ってくると、社長は話をかえた。

「ニコ、仕事のことは気にしなくていいのよ。暫く休みなさい。よっちゃんがその間うんと働くって!」
「俺っすか〜?」
「そうよ。この前よっちゃんが割ったお皿、あれ高いのよ〜。」
 よっちゃんが泣きそうな顔をしてる。
「分かりました!働きますよ。」
 ゴメンねよっちゃん、アタシが役に立たなくなったからだね…

「ニコ、暫くはゆっくりして、また何かあったら連絡して頂戴。」
 社長が優しい目をして、アタシに喋る。それが、また辛かった。
「…じゃあ失礼します。ロボ行くよ?ロボ〜!」
 固まったままのロボを引っ張って地蔵堂を後にした。

「分かりやすい子…」
「社長、なんか言いました?」
「別に〜。」

 よっちゃんは、知らないほうがいいわ。手下をどうするか分からないものね。


329 名前:ニコの耳 4/9 mailto:sage [2008/05/12(月) 17:53:24 ID:8lJuOgHS]
【車内】

 地蔵堂からの帰り道、朝より勢いを増した雨音と、ワイパーがせっせと働く音だけが車内に響いていた。

「アタシ、もう地蔵堂で働けないのかな…?」
 ロボに話すためにじゃなくて、独り言みたいに出てきた言葉だった。
「ニコ、ゴメンな。」
 ロボが申し訳なさそうに謝ってくる
「何で、ロボが謝るのよ。」
「だって、社長の話が、もし当たってたら、そしたら俺のせいでしょ?」
「違うよ。」
 ニコが下を向いてうつむく。
「でも…」
「違うってば!それにもし、社長の話通りロボと…そそうゆう事したからだったとしたら、アタシは逆に納得できるの。…アタシは後悔してないからさ。
だから、ロボが謝る事なんて何にもないよ。」
 顔を真っ赤にしながら、ニコが笑った。
 無理して作ったニコの笑顔に、ニコはずっとスパイを続けたかったんだろうという思いがヒシヒシと伝わってきてた。
 ただ、うんって頷いて笑い返す事しか出来なかった。
「それに、そうって決まった訳じゃないし、暫く休んだら元に戻るかもしれないしさ。」
 ニコに、何をしてあげれるんだろ。俺なんてニコを苦しめてばっかで…

「…そうだよな。ニコも暫くは、普通の高校生らしく、学校行って遊んでみなよ。」
「……ぅん」
 ロボ…、それって、暫く会わないでいようって意味なの?



 それから、2週間が経った。ゆっくり休んでも、ニコの耳は治らなかった。
 ロボとはずっと連絡をとってなかった。ロボは、アタシを避けてるみたいだった。


【ロボの部屋】

 今日は部屋に上がって、ロボが帰って来るのを待つ事にした。
「汚なっ!」 ロボにしては、掃除も洗濯も全然出来てなかった。

「しょうがない。してやるか〜。」
 洗濯物も、子供の服みたいに汚れてるし…毎日何してんだか。

330 名前:ニコの耳 5/9 mailto:sage [2008/05/12(月) 17:55:08 ID:8lJuOgHS]
[PM6時]

ガチャ
「ロボ、お帰り〜」
 久々に会ったロボは、疲れた顔をしていた。
「あ〜、ニコ〜!来てたんだぁ。」
「うん。今日暇だったしさ。夜ご飯一緒に食べようかなって思って。」
 鍋いっぱいに作ったカレーを見せると、ロボは鼻の頭にカレーが付きそうなほど近づいて匂いを嗅いでいる。
「旨そうな匂い〜。でも、俺これから出掛けなきゃいけなくて…ゴメン。」

 ロボがネクタイを外すと、後ろを向いて着替え出す。
「そっか!…アタシこそ、いきなり来てゴメンね」
 どこに行くの?なんて聞けなくて
「ニコは、ゆっくりしてってよ。あっ?洗濯してくれた?」
 ベッドの上に干された服に、ロボが指をさしていた。
「うん。しといた。」
「有りがと〜。」
 何だかテンションの高いロボにイラッとする。
「ニコ、耳はどう?」
 軽く聞くのが、またアタシをイラッとさせた。
「変わんないよ。…アタシもう帰るね。」
 サラダを冷蔵庫に入れ、勢いよく扉をしめた。

「ニコ、怒ってる?後でちゃんと食べるよ?」
「違うよ。そんな事で怒ってるんじゃないよ。ロボ…アタシの事避けてる?」
 ニコがウルウルした瞳で、ロボを見た。
「避けてないよ〜。」
 子供をあやすような声を出すロボが、またニコを怒らせた。
「嘘…2週間、全然連絡してくれないしさ。ロボは後悔してるんでしょ?アタシとした事、ロボはできれば良かっただけなんでしょ?!誰でも良かったんでしょ?」
「ニコ、違うんだって。」 ロボがアタシの肩を掴んだ手を振りほどいた。
「触んないで!ロボとなんかしなきゃよかった…。返してよ。アタシの自慢!アタシの居場所…ロボなんて、最低だよ。」
 やっぱり、俺のせいかもな…
カンカンカン
 ニコが階段を勢いよく降りて行く足音が響いて、ロボはハッとした。



331 名前:ニコの耳 6/9 mailto:sage [2008/05/12(月) 17:57:50 ID:8lJuOgHS]
 ロボはベッドの上の洗濯をまくって、窓から顔を出して、ニコを呼び止めた。
「ニコ〜!!俺ちゃんと話すから。明日、明日来て?待ってるからな〜。」
「……バカ」
 バカバカ、ロボの自己中。


【次の日】
 真っ直ぐロボに部屋に行く気になれなくて、地蔵堂に寄ってみる事にした。

地蔵堂

「あら〜、ニコじゃない。来たのね。」 
社長1人で、よっちゃんは外出中のようだ。
「お久しぶりです、社長。」
「座って頂戴。久しぶりね。調子はどうなの?」
 社長に誘導され、ソファーに腰を下ろした。
「まだ…。やっぱり治らなくて、ゴメンなさい」
 ニコが頭を下げて謝る。
「謝らなくていいのよ。」「…でも」
 現によっちゃんは働きに出てるみたいだし…


「社長〜、オタクの野郎今日は休ませろとか言って…! おぉ、ニコ来てたのか。」
 そこに丁度よっちゃんが帰ってきた。
 アタシが居た事に気づかず、喋ってしまった事に口を抑えている。
「よっちゃん!オタクって、ロボと何かあったの?」
「ぁ〜の〜、それは…ねぇ、社長?」
 よっちゃんが社長に助けを求める。
「ニコ、何も聞いてないのよね?」 急に社長がキリッとした顔になった。
「はい、聞いてません。教えて下さい!」
 社長が煙草に火を付けると話し出した。

「あの子、ニコの手下は、ニコの耳がもし戻らなくても、自分がその分頑張るから、ずっとニコに仕事をさせてあげたいって言ってたのよ。何でもするからって。」
 ロボ…アタシのために。

「だから、何でもいいから働かせろってさ。」
 よっちゃんも半分笑いながら話してくれた。
 雑用だけど、ここ最近は毎日仕事させてたらしい。
「アタシ…」 一方的に勘違いして、ロボを責めて、最低なのはアタシだ。

332 名前:ニコの耳 7/9 mailto:sage [2008/05/12(月) 18:01:17 ID:8lJuOgHS]
「ニコ、あなたの耳は確かに役に立っていたわ。でも、ニコと手下が初めて二人で此処に来た日。私はあなたが耳がいいなんて、知らなかった。だけれど、スパイになって欲しいと思ったの。
 ニコ、あなたはどう?まだ続けたいの?」
 アタシだったんだ。だめなのは…
「アタシは、続けたいです。」
「そう…それなら決まりね。これからも宜しくね。ニコ」
 社長が左手を差しだし、私も手を出して、しっかり握手をした。

「そうと決まったら忙しくなるぞ〜!」
 よっちゃんも、満面の笑みではしゃいでいる。
「でも、今日はもう帰れ。なっ?」 ロボの所に行かなきゃ、全部謝らなきゃ。
「じゃあ、また来るから。」
 ニコは急いで地蔵堂を後にした。

 ニコの久しぶりにみた笑顔を見送った。

「よっちゃんも気を使えるのね。ニコとロボの事反対すると思ってた。」
 社長が関心したように、よっちゃんを見つめた。 
「あの〜?なんの事っすか?」 とぼけた顔をしたよっちゃん。
「なんの事って、よっちゃん知ってたんじゃないの?よっちゃんって鈍感ね〜。」
 頭の中のパズルを一つ一つ照らし合わせ、よっちゃんも気付く。
「えョ!?マジで?知らないっすよ〜。」
 よっちゃんはその場に、倒れこんだ。

「よっちゃんも、恋のお勉強頑張りなさいね。」



【ロボの部屋】

 走って、走って、ロボの部屋の前に着いて、そっと扉を開けた。

「ロボ〜?…寝てる」
 ちゃぶ台で、カレーのお皿を抱えて寝ていた。
「カレーちゃんと食べたんだ。」
 あんなにたくさん作ったカレーは、綺麗に無くなっていた。

333 名前:ニコの耳 8/9 mailto:sage [2008/05/12(月) 18:03:27 ID:8lJuOgHS]

「ん〜…ニコ?」
 ロボが目を覚ます。
「来てくれないかと思った。」
「ゴメン。遅くなっちゃった。本当にゴメンね?」
 ちゃぶ台に座っているロボに抱きついた。
「ん?ニコ、急にどうした?」
「何にも知らないくせに、ロボの事、勝手に責めちゃってゴメン。いっぱいゴメンね。」
「ニコ、謝ってばっかり。」
 ロボがアタシの背中をトントンと叩く。

「さっきね、地蔵堂に行ってきたの。ロボの事も聞いた。アタシね、社長にスパイを続けさせて欲しいって、頼んで来た。
 ロボ…アタシとまた仕事してくれる?」
 ロボが大きく頷いた。
「うん!する。仕事しよう?俺が手伝うから。」
 近くで見たロボは、傷だらけだった。頑張り過ぎだよ。
「仕事のことも、ありがとう。ロボが毎日働いてくれてたのに、昨日はアタシ、勝手に怒ってゴメン。」
 アタシって自分勝手で、まだまだ子供なんだ。
「俺こそゴメンな。不安にさせちゃって。」
「だって、あの時だけだよ?ロボが…好きって言ってくれたの。」
「ニコだって言ってくれてないだろ?
 でも、ニコって毎日好きとか言われたいタイプだったのか〜。」
 ロボのバカッッ
「ちゃかさないでよ。」
「茶化してないよ。
 ニコが好きだよ。これからはちゃんと言う。毎日!ん〜、いつも!好きだ〜!!!」
 そんなに叫ばれてもねぇ…
「あのねぇ、本当にバカ(笑)第一さ、付き合おうとも言われてないのに、毎日好きなんておか「付きあおう!!ニコ。」
 話し途中だし、なんかこうもっと大人な雰囲気が良かったんだけど…
「はいはい。宜しくね。」
 ロボは力いっぱいニコを抱き締めた。
「無くしたものは、戻ってこなくても、その分俺が埋めてあげるから。だからもっと、気楽にいて。」
「うん!」
 ロボ、ありがとう。

334 名前:ニコの耳 9/9 ラスト mailto:sage [2008/05/12(月) 18:13:47 ID:8lJuOgHS]

【地蔵堂】

「ニコ、元気になって良かったですね〜。」
「そうね。ニコには借りがあるもの。笑っててもらわないとね。」
 社長が煙草に火をつける。たぶんプッチーニの時だろう。
「社長〜!煙草は控えて下さいよ。長生きしてくれなきゃ、困りますよ。」
「あら、よっちゃん心配してくれてるの?」
 乙女みたいな顔でよっちゃんの顔を覗き込む。
「そりゃ…そうですよ!とにかく生きてて下さい。嫌ですよ、毎日社長の墓掃除なんて。」
 社長はクスッと笑うと、吸い始めたばかりの煙草の火を消した。
「そうね。そうだったわね。何で忘れちゃうのかしらね…、大事なこと。」

 皆、一人で生きてるんじゃないのに、ニコに教えてるつもりだったのにね。

 まだまだ生きて、よっちゃんの結婚相手を探さないと…

「ねぇ、よっちゃん?一週間休みあげるから、彼女作ってきて頂戴。」
 よっちゃんは仰け反って驚いた。
「え!?んなの、無理ですて!」 無理ムリって、顔の前で手を振っている。
「よっちゃぁん…お願い。」 上目遣いで近寄ってくる社長。
 壁に追いやられる。

「社長、あの〜近づきすぎですって!」
「お・願・い」
 よっちゃんにピタッッとくっつく
「嫌・だョ!ギャー!!」

【ニコとロボ】

「あ、今よっちゃんの叫び声が聞こえた気がした。」 ニコがゾッとした表情をする。
「俺もした…。」
 社長、またイジメてるな…?
「よっちゃんの女嫌いってさ、絶対社長のせいだよね〜。」 女嫌いというか、何というか。
「いいんじゃない?アレもアレで幸せなんだよ。」
 よっちゃんと社長、お似合いだよねぇ。
「そうだよね。(笑)ま、いっか。」
 ニコとロボは目を合わせて笑った。



(よっちゃん「助け合いじゃねぇのかよ…」)


終わり

335 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/13(火) 08:49:29 ID:Ilxflia+]
耳が聞こえなくなったのもニコが一歩大人になったってことなのかな

それにしても、よっちゃん!鈍感すぎていい味だしてるw
マキマキもあいかわらずだw


336 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/14(水) 00:07:15 ID:eoZzTsU7]
処女は特別な力を持つっていうのは神話的だね。
でも最後によっちゃんの叫びが聞こえてるのはまた聴力戻ったのかな?

ニコの聴力には、物理的な能力だけじゃなくて
「世間が耳を傾けないはみ出し者の心の声を聞き取る力」という象徴的な意味も
含まれている気がするので(特に二話、三話、七話あたり)
個人的には大人になっても持ってるといいな・・・

337 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/18(日) 23:49:49 ID:6IMHsV9C]
たびたびすみません、保管庫管理人です。

サイトの移転を行いましてアドレスが
ttp://sexyvoice.matome-site.jp/からttp://www11.atwiki.jp/sexyvoice/
へと変わります。
お手数おかけして申し訳ありませんが、ご報告まで。

338 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/19(月) 02:34:09 ID:i3BMHNGQ]
了解です。いつも保管庫管理ご苦労様です。
前のビビエスにどうしても書き込みが出来なかったのですがいつもありがたく読ませて貰ってます。

339 名前:恋心 1/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:16:10 ID:aVzUdosq]
エロ無し。
もしニコの気持ちが片想いだとしたら…

* * * * * * *

 ニコとまた出会ったのは、4ヶ月位前の冬の日だった。
 その日も破れた堪忍袋を手にしょんぼり肩を落として照蔵から出て来た俺の目に、
路駐してあった愛車をじっと眺めている女の子が映った。
 サラサラの黒い髪が肩に流れて綺麗だった。首を軽く傾げたいかにも「愛らしい」
後ろ姿に思わず声を掛けてしまった。
「あ、あのその車僕のなんですけどっ、興味あります?……その。もし良かったら
 お乗りになりませんか、なんて……って、うわ、えっ、うっそ、なんでっ!?」
「こっちが聞きたいよ」
「なぁんだよぉ〜。ニコかよ〜」
 まさかこんな形で出会うとは思わなかった。振向いたその娘は16歳になったニコ。
「あたしそんなに変わったかなあ?」
「う〜ん……そうでもない」
「はあ!?」
 つくづくテレクラに縁のある2人だと思った。


340 名前:恋心 2/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:17:20 ID:aVzUdosq]
 花はすっかり散ってしまって葉桜になった道を歩きながらふと呟いた。
「暖かくなったなぁ」
 早いもんで、ニコとまたつるみ始めてから4ヶ月位になるのか。
 最後に話して別れた日から3年……。遊びの時間を終えた俺達はしばしの休み時間を
経てまた一緒にいる事が当たり前の様になっていた。
 ニコは高校生になったけど、あの頃と変わりなく生意気でちょっとクールで大人の
俺より時には大人で。何も変わってないように思えた。
 だから、これから先も俺達はずっとこんなふうに続いていくもんだと思っていた。
 なのに……。
「なんでこんな事になっちゃったんだろう、俺達」
 強い風が頬を撫でてゆく。暖かい陽射しとはうらはらにそれが俺の心を凍えさせて
いく。
「俺どうすれば良かったんだろう……」
 1人頭を抱えてしゃがみ込む。

 俺、ニコを振ったんだ。


 * * *

「あ〜、全敗だあ!今年も1人身だよ……」
 ちゃぶ台の上に照蔵の会員証を放り出して突っ伏していた俺に、容赦ない声が飛ぶ。
「こんな日まで行くんだ?懲りないよね」
「こんな日だからじゃん!」
 毎年誕生日には必ず通っていた。
「だって合コンも最近はそうそうないしさ、普通に待ってたってなかなか出会いの
 チャンスなんてあるわけないじゃん。だったらたとえ1%の可能性だとしても何も
 しないよりはましだよ、そう思わない?……思わないか〜」
 ニコの呆れたーって視線が、イタイ。
「どんな娘かもわかんないのにさ。全然顔も知らないような相手だよ!?好きになるか
 どうかもわかんないじゃん」
「そんなの会ってみなきゃもっとわかんないだろ?」




341 名前:恋心 3/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:18:38 ID:aVzUdosq]
「そりゃそうかもしんないけどさ、会うどころかろくに喋れもしないで撃沈してんじゃ
 ん。それってどうしようもないよね……スケベ!!」
「な、何をぉ〜〜!?」
 さすがに言いたい放題言われてカチンと来たのでやり返してやった。
「何だよ、自分だってこんな日にスケベなオタクに付き合ってるって事は祝ってくれる
 誰かさんもいないんだろ〜?寂しいね。高校生にもなって彼氏の1人もいやしないん
 だって、っか〜、切ないよなぁ」
「あたしはいないんじゃなくて興味ないだけ。誰かさんなんかと一緒にしないでよ」
 あかんべーされてそっぽ向かれた。
「ああ、そうですか。そりゃスミマセンね〜」
 くっそ〜。可愛くない!!ほんっと生意気だな。せっかくの誕生日になんで俺達こんな
事やってんだろ。なんか虚しくなってきた。
「ねえロボせっかくだからさ、2人でなんかやろ?」
「え〜……いいけど」
 ニコとかぁ。ま、久しぶりだしなあ。それもいいかな……。
「どうせ誰も祝ってくれないんだし。誰とでもいいんでしょ?」
「……なんだよ、それ」
 さらにムッときた。
「別に嫌々一緒にいてくれなくて結構ですぅ!あ〜あ、なんでこんな日にニコとなんか
 過ごさなくちゃいけないんだよ。別に好きで同じ日に生まれたわけじゃないし。
 あ〜あ、どうせなら一海ちゃんみたいな娘なら良かったのにな」
 あ、やばい。さすがにやり過ぎたかな……。ニコが俯いたまま動かなくなった。
「……やっぱ一海ちゃんがいい?」
「ん?んん〜、まあ相変わらず可愛いもんな〜」
 彼氏いるけど。ていうかたまたま見掛けただけでまともに喋ったりしてないし、
ニコから話聞くだけで直接会ってもないけど。


342 名前:恋心 4/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:20:13 ID:aVzUdosq]
「でも、それがダメならテレクラでもいいんだ?」
「……まあ、見つかればね。っていうかどこで運命の相手が見つかるかなんて関係
 ないじゃん」
「……でも、……なんだ」
 なんだ?聞こえないよ。俺ニコみたく耳良くないからなんて思ってたら次の言葉に
面食らった。
「あたしじゃダメなんだ」
 ん、な、な?何だって!?
「あたしじゃ一緒にいても満足できないの?……ロボが思ってる程、あたしもう子供
 じゃないんだよ?」
 ええええっ?
「もう17だよ。ちゃんとあたしを見てよ……」
 いきなりそんな事言われて頭がパニック起こした。
「えっ、俺、ニコの事そんな風に見た事ない……ていうか考えもしなかった」
 思い浮かんだ言葉そのままに口に出してしまっていた。そしてそれを聞いたニコは
壊れそうな瞳で俺を見た。でも俺はその時自分の事でいっぱいいっぱいだった。
「あたしじゃ1%の可能性もないの……?」
「いや、えっと」
「……自分の気持ちに気付くのがこんなに苦しいんなら、またロボと出会いたくなんて
 なかったな」
 そう言われてニコの顔をやっとまともに見ると、哀しそうな表情で俺を見てた。
 俺この顔前にも見た気がする。いつだ?いつだったっけ!?
「ずっと友達でいられたら良かったのに……」
「……」
「ごめん。気にしないで、ね。あたし大丈夫だから」
 俺が答えに困ってるうちにニコは出て行ってしまった。
「えっ?ちょっと待てよ、これってニコが俺を……?えええっ!嘘、嘘だろ!?」
 頭を掻きむしりながらうろたえるが混乱した気持ちはなかなか治まらない。って、
こんな事してる場合じゃない!!
 慌てて追い掛けたけどもうどこにも姿が見えなくて……。
 それでやっと思い出したんだ。

 俺がニコを突き放してあの人の元へ走った時の、あの時と同じ表情だった事に。

 * * *


343 名前:恋心 5/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:21:38 ID:aVzUdosq]
「うっそ〜〜〜〜!?」
 ないっ!家がないっっ!!
 久々にニコの家まで思い切って来てみたら跡形も無く建物が消えていて、代わりに
マンションが建っていた。
 聞いてないよ〜!?
 携帯は繋がらない。メールは返って来ない。どこにいるかもわからない。
「そんなあ……」
 学校もどこに通っているのか聞いた事がない。休みの日にしか会わなかったから、
制服姿も見た事がなかったし。
 手掛かりがまるで無くてどうすれば会えるんだろう、どこに行けばいるんだろう、
そればっかり考えてた。


「何だよ有り得ないっての!なあ二……」
 テレビを見ながら側にいるニコに話し掛けようとして振向いた。
「あ……ああ、いるわけないじゃん。俺何やってんだろ、なあマックス」
 座布団に寝かせてあったマックスを手に取りながら話し掛ける。
「夕飯はカレーにしよう」
 この前食べた時はニコと2人だったっけ。
「あいつ、怒ってるのかな?……お前がここにあるのもニコのお陰なんだよなぁ」
『5・2・2』
 運命的とも言えるシリアルナンバーを指でそっと撫でる。
 あの日一番一緒に祝うべき相手は半ば無理やり見つける様などこかの誰かなんか
じゃなく一海ちゃんでもなくて、そうするべき人がいた筈なのに。
 どうして俺はそんな当たり前の事を忘れていたんだろう。自分の事しか頭に無かっ
たんだ。その日『おめでとう』って言葉を貰えるのは俺だけじゃなかったのに。
 初めて一緒に誕生日を迎えたあの頃14歳だったニコ。色々あったけど、東京に妹が
出来たみたいで嬉しかったなぁ。

 そう思い浮かべた途端、いきなりサッと背中に冷たい氷を滑らされた様に強張って
身体が力を失った。

 い も う と

 女の子じゃなくて妹だったら、いつかは俺が今までしてきたように他の女の人ばかり
に目を向けてるうちに違う男と恋に落ちる日が来るだろうし、その時には祝福して
やれる。その筈なのに、何でこんなに苦しいんだ?
 胸に針が食い込んだみたいに息が出来なくなった。


344 名前:恋心 6/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:23:00 ID:aVzUdosq]
 震える掌から落としたマックスロボを床から拾い上げると、その青い躯にぽとりと
雫が落ちた。それは1つ、また1つとナンバーを濡らせてゆく。
 歪む視界の中捜しているのはただ1人、失くしてしまった大切な友達、そして……。

 どれ位そうしていただろうか。
「明日会社だ……」
 目が痛い。顔を洗ってもう寝よう。
 何もかも俺がそういう流れに仕向けてしまったこと。自分の事で精一杯で、ニコを
追い詰めて、なんにも考えず不用意な言葉でニコの気持ちを傷付けた。あげく、
大切な存在を失った。
 それに気付くのが遅すぎた。

 冷たい水で顔を洗って鏡を見ると、そこにあの時のニコと同じ顔をした俺がいた。
「……いや、何事も遅すぎるという事はない」
 気合いを入れるため思いっ切り両手で頬を叩いた。
「いってえぇぇぇぇ〜〜〜〜っ!!」
 諦めきれないものだって、この世にはあるんだ。


「ニコーー!お前どこにいるんだよーー!!」
 三日坊主を送ったあの原っぱで俺は1人ニコを待ち続けている。
 会えなくなって半月、もう限界だった。
 謝らなきゃとか、心配だからとか理由と呼べるものは色々あるけどそんなの本当は
どうだっていい。ただニコに会いたい。顔が見たい。どんなに叱られたっていい、声が
聞きたいよ。

「俺の声、お前なら聞こえてるんだろ?返事してくれよーー!」

 こうして会社帰りの夕暮れにここへ立ち寄ってニコを呼び始めて、もう5日目になる。
 声を掛けたあの日、「変わってない」なんて言ったけど本当は全然わかんなかった。
背だって髪だって伸びて、あの頃よりも大人びた後ろ姿じゃニコだなんて思わなかった。
 もし知ってたら、あんなふうに声を掛けたりなんか出来なかったと今なら思う。
 俺に対する態度は昔と変わりなかったけど、最初に見た時は正直ドキドキしなかった
なんて言ったら嘘になる。


345 名前:恋心 7/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:24:32 ID:aVzUdosq]
 なんでこうなるまで自分の本当の気持ちに気付かなかったんだろう。ニコの事だって
知ろうとも解ろうともしなかった。今ならきっと聞きたい事がいっぱいあるのに。

 ニコに俺の声が届かない事がこんなに苦しいなんて……。

 いつもこんなふうにニコに哀しい想いさせてたんだ……俺って本当にバカだよな。
「ごめんな……」

 さわさわと風に吹かれて草が揺れる音がする。それと共に待ち侘びた気配を感じて
振り返った。

「何やってんのよ……」
 初めて見る制服。
「……待ってたから。ニコを」
 もう髪は結わえてないんだ。
「だからって……しまいに通報されるよ?」
「おお、それはまずい!!」
「じゃ何でやめないの」
「……会いたかったから」
「……来なかったらどうすんのよ?」
「何か別の方法考える。ていうか、来てくれたじゃない。俺の声聞いてくれたじゃん」
 届いたんだ、俺の声はニコに。
「ダメ!こっち来ないで!!」
 ニコに近付こうとしてそれを阻まれた。
「……何で今頃あたしの名前なんか呼ぶの?あたしなんかロボにとってはいくらでも
 替りのきく相手じゃない。側にいてもいなくても同じような人間じゃない!」
「そんな事ないよ。ニコみたいな友達なんか俺には他にいないよ」
「友達でももう無理だよ。笑って無かった事にしてまた一緒にいられる程あたしは
 強くなんかない。なれないよ……」
 ずっと背中を向けたままで、ニコは俺を見てはくれなかった。
「いいよ。強くなんかならなくても」
「……」
「強がらなくたっていいよ。俺の前ではもっと泣いたり我が儘言ってもいい。言えよ」
「何言って……」
「自分でカレー作ったら、2日目は美味しいのにニコのみたいに美味しくなかった。
 狭い狭いってニコに文句言われた部屋はすごく広くて、マックスだって他の皆も寂しそうだった」



346 名前:恋心 8/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:26:35 ID:aVzUdosq]
「……それで?」
「いないってわかってても、すぐ後ろ振り返っちゃうんだ。1人ぶんのお茶、いつも
 淹れ過ぎちゃうんだ。でもさ、飲んでも味がしなくて、テレビ見ててもつまんなくて」
 一海ちゃんの顔だって思い出せなくなった。
「……何もかも色あせていくんだ。ニコがいないってだけで俺の世界がまるで変わっ
 ちゃうんだ。そんな事が当たり前になってた。近くに居過ぎてわからなかったんだ」
 すくってもすくっても指の間から零れる砂の様に、虚しく過ぎてゆく日常が辛くて。
「側にいて欲しいんだ。ニコに」
「……どういう意味?」
 ニコにゆっくり近付きながら話し掛けた。
「……友達でいるのは、やめないで欲しいんだ。ニコは1番の友達だと思ってるから」
「な……!無理って言ったじゃん」
 構わず肩を掴んで振り向かせて、俺はニコの顔を見た。泣きそうな顔がそこにあった。
「友達で、相棒で、妹みたいに思ってる。でもそれだけじゃないってわかったんだ俺。
 ニコの替りになる人なんていないよ……」
 ニコの瞳から小さな涙の粒が零れた。

「また一緒にいて。俺の声聞いてくれよ」
 唇を震わせながら、俺を見上げるニコが愛しくて仕方なかった。なんでこんな大切な
もの失おうとしたんだろう。
「……一生懸命スイッチ切ろうとしたの。ロボの声を聞かないですむように耳塞いで。
 でもだめなの。どこにいたって拾っちゃうの。他の音は無視出来てもロボの声だけは
 絶対聞こえちゃうんだ……」
「聞いてよ。ニコを呼ぶの絶対やめないから。戻って来てくれるまでやめないから。
 何度だって言ってやる。好きだ!だぁ〜い好きだぁ〜〜〜っ!!」
 大声で空を仰いで叫びまくった。
「……うるさいし。嫌でも聞こえるっつーの!それでなくてもあたし耳いいんだよ?」
 言い足りないよ、何度繰り返しても。


347 名前:恋心 9/9 mailto:sage [2008/05/21(水) 17:28:41 ID:aVzUdosq]
 あっという間に俺の心はニコへの想いでいっぱいになっていった。友情だとしか意識
していなかった気持ちが恋に変わった瞬間は、一体いつだったんだろう?
「ニコ、泣かせてごめん。それから……ありがとう」

 気が付いたら走り出してる。どうしようもなく伴う痛みはリアルに苦しいけれど、
愛されていると知った時の喜びはこの上なく幸せに溢れて、世界が光に満ちてゆく気が
する。
『恋愛ってこんな感じ?』
 走り出して加速してゆく想い、それを思い出させてくれたのはニコ、お前だから。


「そっか〜、前の家取り壊しになっちゃったんだ?」
「うん。何か言いそびれて、連絡なら携帯あるしいいかなって。……それに、今度
 こそもう会う事なくなるって思ってたから」
「えっ、困るよそんなの!俺ニコのカレー食べらんなくなるじゃん」
「何それ。心配なのはカレーかあ……」
 なんだよもう。わかってるくせにさ。
「まだ出会いたくなかったって思ってる?」
 俺の問いにニコは首を軽く振る。
「ずっとこのまま自分の気持ちを殺さなきゃなんないなら、って思ってたけど。でも
 ロボに出会わなかったら今のあたしはないんだよね。自分で自分を好きにもなれな
 かったかもしれないし、そしたら自分以外の人の事なんか尚更……恋なんか出来なか
 ったかもしれない。だからロボに会えた事やっぱり良かったって思ってるよ」
 結局俺の運命の相手はテレクラで見つけた事になるのか。
「俺にもニコの声がもっと聞こえたらいいのにな。そしたらいつだってすっ飛んでいけ
 るのに」
「いつだってロボは、あたしが呼んだら理由も聞かずに来てくれたじゃない。それで
 いいよ。それで充分。だからこれからも呼んだらすぐ来てよね」
「うん。マックスダッシュで駆け付けてやるから!……だからまたカレー作って。
 もう見たくなくなるまで食べるから!」
「なにそれ。無理して食べても嬉しくないって」

 どこにだって飛んでくよ、ニコの声が届いたら。
 だからこれからも俺の声を……聞いて。

* * * * * * *終


348 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/21(水) 20:26:42 ID:/YCFwLy2]
ニコの恋心とロボの恋心、ひとつになってよかった
これからはずっと誕生日を一緒に迎えてね!
GJ!

349 名前:ぴんき〜 mailto:sage [2008/05/21(水) 23:09:10 ID:HJ/N4UzV]
懐スレで俺が問いかけたことがストーリーに..
って考え過ぎかもだけど
「私じゃだめ?」
「走ってる恋」
GJ!!!

350 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/22(木) 01:51:39 ID:k+NISBl/]
泣いた

二人の誕生日にいい話が読めて嬉しい!!



351 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/05/22(木) 15:16:18 ID:rZCPSm4J]
ハッピーブースデー
ニコ&ロボ!

352 名前:名無しさん@ピンキー [2008/05/31(土) 23:10:50 ID:ZXVBArm9]
ホシュ

353 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/06/06(金) 23:57:11 ID:dnEWcIPW]
保守

354 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/06/12(木) 00:12:11 ID:qEd/Iy3w]
保守sage

355 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/06/12(木) 23:01:16 ID:iC4OiOgP]
最近忙しくてずっとネタ書けてないけど
セクロボのことは忘れてないよ!

356 名前:竹男パパの一番長い日 mailto:sage [2008/06/15(日) 00:06:25 ID:ArwFWr1d]
父の日ということで短いエロ無しですがパパ話を1つ

保守がわりのつもりなので予定のある書き手様はどうぞ遠慮なく投下してください

というか是非。


* * * * * * *

『おおきくなったら、おとうさんのおよめさんになるの』
 なんて言ってたっけなあ……。


「お父さーん、ちょっといい?」
 バサッ!ガタガタッ!
 ザザザーーーーッ……
「うわっ!何してんの」
「何って、整理してんだよ」
 床一面に広がった自慢の牛乳瓶の蓋たち。
「なにも今やらなくたって……」
「こういうのは思い付いた時にやらないと駄目なんだよ」
「そりゃそうかもしれないけどー……お父さん、あのね」
「ん、何だ?お前はもう寝なさい。寝坊でもしたら明日須藤君に迷惑掛けるぞ」
「うん……おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
 遠ざかる足音とドアの開閉の音を聞くと蓋をかき集め、その下に埋もれていた物を
そっと取り出す。
『アルバム:二湖0歳〜』


 * * *

「お父さんと腕なんか組むの初めてだね」
「ああ、そうだなぁ」
 重い扉が音を立てて開いてゆく。
「ねえお父さん。あたし達幸せになるからね」
「……ああ」
「今まで……ありがとう」
「…………」
 真っ赤な絨毯の上をゆっくりと前へ向って足を踏み出す。
 その先には、俺の隣りで純白のドレスに身を纏った花嫁を待つ心優しい花婿がいる。
 ニッコリ微笑んで待つその手に花嫁を託すと、そそくさと席に着いた。

「お父さん。これであたし達親の役目は終わっちゃったわね」
「そうだな」
 パイプオルガンの音に乗せて誓いの言葉が交わされてゆく。
「……家族が増えると思えば寂しくなんかないわよ、ね、お父さん」
「ああ、まあ、そうか。そうだな」
 運命を共に生きると誓った相手と口づけを交わそうとしている娘を、心から美しいと思う。

『幸せになれ。……二湖』

 妻が差し出したハンカチを濡らしながら、言葉に出来ない想いを心に呟いた。

   * *終わり* *


357 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/06/15(日) 00:17:41 ID:Ku0XntC4]
こんな夜中に…泣いたじゃないか!
。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
GJ!
ニコロボに幸あれ!

358 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/06/15(日) 18:44:54 ID:RdEPdh/E]
超短編なのにキャラが生きてていいね
牛乳の蓋からアルバム取り出すお父さんが自然に脳内に浮かぶよ。

359 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/06/23(月) 02:41:39 ID:byIlNESl]
保守

360 名前:1/4 mailto:sage [2008/06/23(月) 21:39:45 ID:52eUjLj+]
創作と言うよりは解釈(妄想?)
以前本スレで語ったことを纏めた
エロなし。タイトル「あの時、」

--------------------------------------------------------------
校庭を走る三つの影。
そしてそれを追うかのような三つの影が見えた。
私は教室の窓からそれら二組の影を見つめていた。
最初の三つはプッチーニ。
次の影は社長、よっちゃん、ロボのものだった。

「どうして、私はここにいるの?」
と呟いてから彼らが向かう病院に目を向けた。
消灯した病院を見ながら私はさっき自分が言った言葉を思い出していた。

「もしあなたが死んだら…、
ロボは悲しんで…、
もう誰とも話さなくなるかもしれない。」

『私は認めたくないことを認めたんだ。
ロボにとってあの人はとても大切な人なんだということを。
今日、ロボが来てくれたのは私のためじゃない…。
ロボはあの人に人を殺してほしくなかったから…。
だからあんなに一生懸命だったんだ。』

私はしばらく病院を見つめてから
「帰ろう…。」
と小さく呟いた。

『もうロボには会えない。会っちゃいけない。』
私はそんな思いで教室を出た。



361 名前:21/4 mailto:sage [2008/06/23(月) 21:41:03 ID:52eUjLj+]
あれから一週間近く経とうとしていた。
机の上の隅に置かれたMAXロボを見る度に私は胸が締め付けられる思いがした。
ロボは私とのことをフィクションだと言った。
そうなのかもしれない。
私は生まれて初めてだった。
本来の私でいられることが許された夢のような空間と日々。
私はMAXロボを手に取り見つめ、しばらく呆然としていた。

「ううん、違う!
フィクションなんかじゃない!」
私は首を振りながら力強く言った。

「だって…。このMAXロボがその証拠。
そう!証拠なんだ!」
私は力強く頷いた。

「返そう。ロボに返そう!
もうロボとは会わないかもしれない。
でも、忘れて欲しくない。
私とのこともリアルだったってことを。
忘れてなんか欲しくない!」

私は着替えもせずMAXロボを鞄に入れ足早にロボの部屋に向かった。

362 名前:3/4 mailto:sage [2008/06/23(月) 21:42:02 ID:52eUjLj+]
ロボの部屋は鍵が掛かっていたため、私は階下の大家さんを訪ねた。
「すみません、須藤威一郎の従姉妹なんですが、
今お兄ちゃん旅行に出ていて留守にしてるんですけど、
今朝忘れ物したから送って欲しいと電話があったんです。」
「あらあら、そうなの。それは大変ねぇ。」
初老の感じの良い女性の大家さんだった。
そして
「須藤さんにこんな可愛い従姉妹さんがいたなんてねぇ。」
と言いながら鍵を渡してくれた。

玄関から私は部屋の中をグルッと眺め
「もう来ることないんだろうなぁ。」
と小さく呟いた。

私は靴を脱いで上がりテーブルの前に座り棚に飾られたロボット達を見回した。
「ふー。」と軽く溜息をついて鞄からMAXロボを取り出しテーブルの真ん中に置いた。
「さよなら、ロボ。元気でね。」
とMAXロボに言ってロボの部屋を出た。
玄関でもう一度部屋の中を見回した。
うっすらと目に涙が滲んだ。
「さよなら…。」

そして私は遠回りをして公園を物思いにふけながら歩いた。
これまでのことを、ロボとのことを思い出しながら
ゆっくり歩いていた。

363 名前:4/4 mailto:sage [2008/06/23(月) 21:43:11 ID:52eUjLj+]
6時発の南に向かう機内の中、昭子は窓から空港の様子を眺めていた。
到着した便をゲートへ誘導する人々の真剣な眼差しを見て
さっき会ったニコのことを思い出していた。

『真剣な目。』
敵意を隠さない目だった。
昭子は微笑んだ。

「あのメモ、渡してくれたかしら?」
と小さく言うと直ぐに
「ううん、渡してないわね。きっと。」
と首を振って否定した。

「私にもあったんだよね。
あんな風に一途に真っ直ぐだった時が。」
そして窓の外を見つめながら、昭子はあのメモに書いた言葉を思い出していた。
前山が書いた最後の願いと同じ言葉を。

昭子の目には笑顔のロボとニコが映っていた。

おわり
------------------------------------------------------------------
2つ目が21/4に orz
スマソ

364 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/06/24(火) 00:06:02 ID:+03TTGaM]
昭子さんカッコいい。惚れる。

365 名前:名無しさん@ピンキー [2008/06/25(水) 11:11:43 ID:K1qwPpSk]
gj!

366 名前:名無しさん@ピンキー [2008/07/02(水) 16:44:48 ID:lTTabeL3]
保守

367 名前:ひみつなはちみつ 1/8 mailto:sage [2008/07/04(金) 02:59:10 ID:NQEfszk+]
ある事柄を巡るロボと鈍感ニコの話です。
微妙に甘い?少々マニアックネタでしょうか。エロ無し

××××××

「じゃ、ロボ。ごめん、あとよろしくね」
「うん、まかせといて。ニコも頑張れよ。うまくいくようにマックスパワーで祈っとくから」

最近の俺達が長く一緒にいられる時間といえばスパイ活動している
限られた空間だけということが多い。
今日もすべてが終わるとニコと別れて依頼が無事終了した報告に地蔵堂へと向かう。
俺一人なのが妙に不安を覚えるとニコはこぼす。
頼りないのは自分でもわかっているけどそれくらいのことは誰だってできるよ、心配ご無用。

「ロボ、喉の調子悪いんだったら、早めに休んでね。
この時期に風邪ひいたら、つらいから気をつけて。早寝早起き!わかった?」
地蔵堂からの依頼といつもより立て込んでいた普段の日常の仕事が重なって、
それでも無断欠勤なし(あたりまえのことだけど)で働き、さすがの俺も疲労困憊で
季節はずれの風邪気味のようだ。
「わかってます。ありがと」
まるで母親が子供に言い聞かせているみたいな光景だが
その言葉の裏には俺を心配してくれているのが伝わってくる。
ニコだって勉強との両立は大変だったはずなのに。

「テストが終わったらさ、何かおいしいもの作ってあげる。ロボ、何が食べたい?」
「えーっ、そうだなあ」
何でもいいよとニコがいうので
「ニコがいい」って、半分冗談半分本気で言ってみたら
口調だけはいつものニコで、
「ば、ばっか!そんなこという人はもう知りませんッ」
でも照れているのはバレバレで俺に顔を見られたくないのか、隠すようにそっぽ向いてしまった。
スパイのときは生意気に指図して、手下扱いの俺なんか足元にも及ばないくらいカッコいいのに。
そのギャップも可愛いんだけどさ。


368 名前:ひみつなはちみつ 2/8 mailto:sage [2008/07/04(金) 03:00:32 ID:NQEfszk+]
「ごめんってば。けどほんとにニコの作ったものだったら、何でもいいよ
どんなものでもおいしい」
ポンポンとあやすように頭を撫でながら、肩越しにニコを覗き込むと
ゆっくりとぎこちなく俺のほうへ姿勢を直して
「じゃあ、それまでに考えとく」
「うん」
「何にしようかなあ。疲れてるときには甘いものもいいよね。デザートも作ろうかな」
小さく微笑んで控えめに自分の指を俺の指に絡める。
恋愛の直球勝負はカラッきしダメなニコだけど、たまにこうして甘える素振りを見せる
彼女の仕草に俺はたまらなく弱い。
実のところキスのひとつでもして別れたかったけど、まだまだ日も高い白昼。
ニコに拒否られるのは目にみえているのでおとなしく次の機会を待つとしますか。

「大声上げてマックスパーンチッ!とか叫びまくりもナシね」
「はい、ニコリン大佐の仰せのとおりに」
繋いだ手を離したくはないけどそろそろ解放してあげないと。
「ロボ、ほんと不摂生はよくないからね。とにかく睡眠はしっかりとること!」
最後に念押しして、じゃあねと何度も手を振り去っていくニコの後姿が遠くに消えるまで見送っていた。

「さて、行きますか」

しかし、あれだな。ニコの言うとおり喉気をつけないとマズイな。埃っぽくて不快だし
それに鼻もムズムズしてきて、
…ハ、ハ……
「ハックショーン!」
「ちょっ、おまえ、きたねえなあ。さっきから何度も!風邪かぁ?」

俺の目の前に座るグレーのスーツに黄色いカラーシャツ、派手な趣きのネクタイをした男は
この日何度目かの派手なくしゃみを撒き散らかされ、眉間に皺をよせ、
あからさまに迷惑そうな顔をしている。
「えーっ、いや、ごめん。やっはりそうかなあ」
高価そうな骨董の手入れをくしゃみの飛沫から庇うように腕でガードして慎重に行いつつ、
「だったら早いとこ帰って寝てろよ。ったく。……何とかは風邪ひかねーっていうのにな」
ぼそっとよっちゃんが漏らした。聞こえてるってばッ!バカってこと言いたいんでしょう!?
「あ〜、ひどいなあ。何その言い草。俺は仕事のことで来てるのにさあ」
「ああ〜!仕事の話なんて、ものの5分で済んだだろ。
あとはおまえが暇つぶしに勝手にだべってるだけじゃねえか」

要するにあれだろ?と言ったかと思うといきなり今にも泣き出しそうな情けない顔をして
「ニコが相手してくれなくて振られそうで、俺寂しくて一人になりたくないッ」 
それ誰の真似?あ、俺の真似?
うんうん、そうそう。ニコにたまにしか会えなくて俺達そろそろヤバいかも……って
「ちがーう!」
「つらいのはわかるが現実を直視しろよ」
違うってば、なんでそうなるの!?


369 名前:ひみつなはちみつ 3/8 mailto:sage [2008/07/04(金) 03:01:30 ID:NQEfszk+]
「あのさ〜、随分まえから言ってるでしょ。さっきからも何度も!
ニコはもうすぐテストだから勉強しなくちゃいけないんだよ。
受験生なのにスパイもやらなきゃいけないし、依頼のない時は勉強に集中させてあげたいわけ。
だーかーら、断じて振られるなんてことはないぃッ!!」
掌が痛いぐらいにテーブルを叩きつけ力説する俺に、念入りな手入れを止めることなくちらっと
視線をよこしたかと思うとすぐに戻して、超ムカつくセリフを吐いた。
「破局が近いんじゃね?」
顎に蓄えた無精ひげをさすりながら。
その顔つきがふふんと半笑いしているように見えて、いや確実にそうであって。
チクショー。
「あのねぇ、よっちゃん。ニコはね〜、表面上はクールだけど、俺にぞっこんなんだよ〜。
信じられないかもしれないけど、これ事実だから!」
「おまえの妄想だろ」
間髪入れずに毒づく。
「も、ももも妄想〜〜〜!?」
「ニコも見た目はフツーの女子高生だが、中身は只者じゃねえからな。
かなり変わってるつーか。他と比べたらズレてるというか。
そのうち自分の趣味の悪さに気付いて目が覚めたら、おまえなんて、ハイサヨナラだな」
くぅ〜〜!その減らず口をどうしてくれよう!!

いや、いかんいかん。熱くなったら終わりだ。相手の思うつぼ。ここは冷静にいかないと。
「別に何言われてもいいもんねー。俺達、人も羨むラブラブカップルだから、破局なんてありえないし。
俺がもしも風邪こじらせて寝込んでも、ニコが看病してくれるだろうしー」
一息つくことなく続けざまに
「あ、ごめんね〜。よっちゃんは彼女がいない独り身だったよね〜」
強調して言ってやった。それはもうわざとらしく。
「プロフェッショナルな仕事に女は邪魔なんだよ」
「へ〜、硬派だねえ」
そんなかっこいいことを言ってはいても、骨董を拭く手がなぜかそれまでより落ち着きなく
変化するのを俺は見逃さなかった。
それがよっちゃんの心のうちを表しているようで、俺はニヤリとしてじわじわと詰め寄ると
「俺とニコはねえ、とろけるアイスというかハチミツみたいにベッタベタに甘すぎるほどに
スウィートな二人だからぁ、これからも離れるなんてことないのっ」
忙しなく動いていた腕がピタリと止まる。
「ねえねえよっちゃんはずーーっと独身でいるの?一人でこの先、生きていくなんてさびしいよ〜」
耳元近くでそう囁くとチッと少し苛立ちまぎれに舌打ちする音が聞こえて
「なんなんだよ。気持ちわりーからくっ付くな。風邪ひいてるんだったら今すぐここから出てけ。
おまえのバカまで一緒にうつされたら、たまんねーからな」
口の端をつり上げてあきらかに面白くないといった形相で、俺を追い払う。


370 名前:ひみつなはちみつ 4/8 mailto:sage [2008/07/04(金) 03:02:41 ID:NQEfszk+]
ついさっきバカは風邪ひかないって言ってたじゃん。忘れたわけー?
「言われなくても只今そうさせていただきます。
では優秀なよっちゃんのためにプレゼントに風邪のウィルスを置いていってさしあげましょう」
と目標めがけてヤケクソ気味にくしゃみを飛ばしてやった。
「なにやってんだよ、くそロボ!ガキかてめえは!?
おまえの相手なんか、ロボットで充分だ。さっさとニコに捨てられちまえッ」
怒り心頭でガタンと立ち上がった拍子に何かが転がって割れた音がした。
「げえぇ、やば!」
「あーらら、高いだろうなあ、あの壷」
社長に絞られるね。言い訳できない状況だよ。理屈が通じる相手じゃないもんねー。
「じゃ、俺帰りまーす」
「ちょっと、待てッ!どーすんだよ、コレ」
立ち去ろうとする俺をよっちゃんが引き止める。なんだよ、今すぐ帰れって言っといて。
「割ったのはよっちゃんでしょ。俺のせいじゃないじゃん」
しーらないと無視して置き去りにした怒鳴り声が扉に反射して向かい合う俺の耳に響く。
「バカオタクッ、覚えてろよ!」
ふふーんだ。なんとでも。


数日後。
「ロボいるー?」
「んあ〜、ニコぉ?おはよう〜」
「おはよう…って、もう昼だよ。今、起きたの?」
しかたがないなあって呆れたように呟いたけどその表情は柔らかい。

「ニコ、テストどうだった?」
「うん?まあ、なんとか。後は神のみぞ知るってとこかな。
ロボは調子どう?喉はまだ痛いって言ってたけど」
「んー、だいぶマシかな」
熱は微熱程度で済んで大事には至らなかったけど、なんとなくまだスッキリしない。
「大丈夫?まだ無理は禁物だよね。
そっか、だったら仕事の依頼じゃなくてよかったかな?」
そう言いながら、ニコは提げていた袋から何かを取り出すと台所に並べて置いている。
「何、それ?」
不思議に思った俺が声をかけると何だと思う?ともったいぶった様子で
久々に会ったニコは優しい笑みを浮かべている。

「ハチミツ、だよ」

その二つの瓶を大切そうに抱えてそう答えた。




371 名前:ひみつなはちみつ 5/8 mailto:sage [2008/07/04(金) 03:04:02 ID:NQEfszk+]
「よっちゃんが?」
「うん。ロボはどうだ?って聞かれたからまだ本調子じゃないみたいだって話をしたら、
持って行ってやれって渡してくれたの」
「ふーん」
二コの話によると、地蔵堂というか正しくはよっちゃんに呼び出されここへ来る途中に寄ったらしい。
ちなみによっちゃんは俺からのプレゼントを受け取ることなく元気でピンピンしていたようだが
社長の「よっちゃんの焼いた壷を眺めながら、つぼ焼きカレーが食べたいわ」という鶴の一言で
プロフェショナルな仕事に日々よどみなく取り組んでいるとか。
あたしの目には渋々に映ったんだけどさとニコは笑う。
「あの二人にしかわからない謎めいた遊びだよね」
「そうだな」
あの時見るも無残に砕け散った壷の代償か。災難だねー。
まあ、俺には関係ないけれど。

「でもさ、よっちゃんも口は悪いけど優しいよね。ハチミツって喉にいいんだよ。よく言うでしょ?
それにこれ、このへんじゃ手に入らないいいハチミツなんだって」
「うん知ってる。聞いたことあるよ。でも……」
あのよっちゃんがただで物をくれるなんて、しかもなんとなく恩着せがましいし
なんか魂胆があるんじゃないのか?疑ったらキリがないけど。
疑心暗鬼の俺をよそにニコは瓶を手にして楽しそうに眺めている。
「さーて、こんなにたくさんどうしようかなあ」
「あ、ちょっと待って!」
どう調理しようと考えあぐねているニコのそばに跳んで行くとそれを奪いとった。
「大丈夫なの?妙な薬とか混ざってないよね?ハチミツに見えて実はもの凄く辛いとか?
ここは慎重にいくべきでしょ。もしかしたら罠かも知れない!」
「もう心配性だな、ロボは」
貸してと、今度は俺の手から取り上げて蓋をあけると甘いいい香りがして
綺麗な琥珀色に輝いている。
「ほら、今始めて開けたんだし。へーきへーき。ロボ舐めてみる?」
「ええっ」
俺はいいからと丁重にお断りすると
「よっちゃんはねロボの身体のこと心配してるんだよ。労わってくれてるの。
あわてんぼうでおっちょこちょいで、ときに空気読めなくて失敗多くて頼りないとこあるし
外見はうさんくさいけど、いい人なのはロボもわかってるでしょ?」
そりゃ根は心優しい男だってわかってるよ。だけどね…。
「悪いように言ったらダメじゃん」
ニコのほうがよっほどえらい言いようだと思うんだが。俺、そこまで言ってないよ……。
言い返そうかと口を開きかけたが、おいしそうなハチミツにニコはすこぶるご機嫌だ。
ま、いっか。


372 名前:ひみつなはちみつ 6/8 mailto:sage [2008/07/04(金) 03:05:11 ID:NQEfszk+]
「じゃあ、味見してみよっかな。えーっとスプーンは…」
とあたりを見渡したと思ったら、結局そのまま指ですくい取って舐めた。
「うん、甘くておいしいよ。ロボもはいっ」
「え、じゃあ…」
正直どこかで気が進まないところもあったが、少しだけよっちゃんを信じてみようかとの思いと
笑顔のニコに押されるようにほんの僅かだけ唇に馴染ませた。
「うまい…」
「でしょ!?だから言ったじゃない?やっぱりよっちゃんはいいヤツだよ」
ニコは満足そうにうんうんと頷いて、二度三度とまた指先を持っていく。
「美味しそうに舐めるよねえ、ニコ」
「だって、止まらなくならない?……さすがに口の中が甘い物に征服されてて、
くまのプーさんになったみたいな気分になってるけど。
ロボはもういいの?」
「そうだなあ、もう少しだけ貰おうかな」
そう呟いて身をかがめるとニコにキスをした。
一瞬、ニコの身体がビクッと揺れたが抵抗することもなく、唇の、舌の動きに従う。
「ん、甘い。ごちそうさま」
「いきなりびっくりするじゃん。もう〜!」
口づけを解くと頬をほんのり紅くしてニコは戸惑ったように俯いてしまった。
「俺もプーさんかなあ。ハチミツに飢えてるみたい」
「…バカ。さっきは勧めたらものすごーく嫌がってたのはどこのだあれ?」
少し意地の悪い発言をするニコを腕の中におさめて
「はてさて誰だったかなあ?」
おどけてとぼけてみせると、プッと吹き出したニコの肩が揺れる。
「あ、よっちゃんに渡せなかった風邪、ニコにうつっちゃうかな?」
「そもそも、キスで風邪はうつるの?」
首を傾げて自分を見上げる姿がとても可愛い。
「確かめてみようか?」
そう問いかけて、もう一度その感触を味わった。

とびきりの甘い時間、至福のひととき。
今回ばかりはよっちゃんに素直に感謝してもいいかも?


今日はゆっくりできるからとニコが特製のハチミツレモンを作ってくれて、まったりと過ごす。
他愛もない会話が途切れところで、ニコが
「ねえ、ロボ。ひとつ聞きたいことがあるんだけど」
「んー、何?」
意識の半分はテレビの中のマックスロボにあって、グラスを片手に俺は油断していた。

「ハチミツプレイって、何?」



373 名前:ひみつなはちみつ 7/8 mailto:sage [2008/07/04(金) 03:06:19 ID:NQEfszk+]
はい?今、なんて?……ゴックン。
「ッ!?…げほっ!…ごほっ……うげぇ……」
うまく喉を滑り落ちていかず思わずむせてしまい悶えるはめに。
驚いたニコが慌てて背中をさすってくれて
「大丈夫?ロボ」
はあ〜。苦しかったあ。
「えっ、と、ニコ?…もう一度言ってくれるかな?」
「だからぁ、ハチミツプレイってなんなの?」
どうやら聞き間違いではなかったらしい。
えーっと……。
「は ち み つ で あ そ ぶ」
「直訳しただけじゃん。ダッサ」
当然のごとく、ばっさりと切り捨てられた。はい、すみません。

内心の焦りをニコに悟られないように取り繕いながら、ふう〜と深呼吸。
「あのさ、ニコ。どこでそんなことを?」
ハチミツプレイ。まず俺の考えていることと一致するならば、多分あれのことで。なぜニコがその事を。
「よっちゃんがコレくれたときにね、あたしに色々なハチミツを使ったレシピを伝授してくれて
それで、最後に隠れた大人の秘密の嗜好品だって教えてくれたの」
よ、よ、よっちゃ〜ん??よけいなことを……ッ!何が狙いなんだー。
「言葉から想像すると楽しく作って楽しく食べる味のバリエーションが満載のハチミツフード!
違う?って、ワクワクしながら質問したら、詳しいことはロボに聞けって言うからさ」
どうして俺に話を持ってくるんだよー。
「ノーマルなものを好む人には、NGみたいなことも言ってたなあ。
かなりマニア向けかもしれないけど一回試してみたらいいんじゃないかって」
「あ、そう…」
つい数分前の苦しみも忘れ、急激な喉の渇きに一気にグラスがカラになった。
「甘いんだけど結構刺激的でもあるし、いつも同じ味ばかりじゃマンネリで飽きてくるでしょ。
恋人同士にはある意味ぴったりなもんだぞってよっちゃんは言うんだけど、
結局最後まで秘密だって教えてくれなかったの」
秘密だなんていわれると知りたくなるのが人間というもので。
まだ見ぬ謎の正体がニコの好奇心を倍増させていることが、その表情から伺いしれる。

「よし、ロボ。ハチミツプレイについて三行以内で述べよ」
「え…あははは」
よっちゃんのヤツ〜!なんて罪作りなんだ。あわてんぼうのくせしてッ。
ニコが本当の意味を知らないのをいいことにわざとさも美味しい特別な食べ物らしく煽ってさ!
完全に勘違いしてるじゃないかぁ。
真実を知ったら、ニコがどうするか。俺がどんな目にあうか、よっちゃんには多分承知のうえで。
このあいだの仕返しか?これは。そうなのか?そうだよ、絶対!
今頃フライパン片手にエプロン姿で鼻歌まじりにせせら笑っているであろう男に思いをめぐらす。
くそー、どっちがガキなんだよーっ。


374 名前:ひみつなはちみつ 8/8 mailto:sage [2008/07/04(金) 03:09:46 ID:NQEfszk+]
「何、一人でブツブツ言ってるの?
ねえ、隠さないで教えてよ。あたしだけのけ者にされてるみたいじゃん」
そう言って、ニコは視線をそらさずじっと俺を見つめたまま。
「ひ、ひみつ」
「秘密なんてズルイ。あたしとロボのあいだで内緒事はヤダ。ねえ、いいでしょ?」
上目遣いに俺を見て、可愛い顔してしつこく食い下がる。

言ってみる?案外予想に反して受け入れてくれたりして…。
って、何考えてんだよ、やってみたいのかよ!?俺はッ!
自分で自分にツッコミながら、激しく首を振る。
いやいやいや!ダメでしょ!そう簡単にことは進まない。だってニコだよ!?
冷めた目で変態扱いされて、あの黄金の左ストレートが炸裂!威一郎撃沈!
……てな、誰かさんの思惑通りに恐ろしい展開が用意されているんだ。絶対ッ。
うわ〜、やっぱムリムリ!頭を抱える俺にニコが更なる追い討ちをかける。
「そうだ!今夜早速、実践してみよう!ロボ、マックスロボが終わってからでいいから、
秘密のハチミツの作り方詳しく教えて。あたし知りたい」
「え!?いやっ、きょ今日はもういいんじゃない?ニコも勉強で疲れてるだろ?ゆっくりしてたらいいさ。
俺もなんか熱がぶり返してきたような気が……」
「あれーそういえば、顔がちょっと赤いかな?こころなしか汗も少し掻いているような」
自分と俺の額に手を当て比べながら、
「だからこそ、こういうときにはハチミツプレイ!でしょ。疲れた身体を癒すために必要なんだよ。
ロボもいいかげん観念しなさい。
教えてくれなかったら、マックスロボを人質にしてあたしの家に無期限で監禁するから」
それって脅迫?悠然と構えるニコに引きつった顔で力なく応える、俺。
ロボは寝ていてと有無を言わさず半ば無理やり奥の部屋へと放り込まれて、
ベッドに押し付けられた。


「さーて、そうと決まれば買い物に行くとしますか。
それで、ハチミツ以外になにがいるの?」
いえ、ハチミツだけで結構です……。
「ロボに元気になってもらわなきゃ。それもこれもあたしの腕しだいだよね。
頑張ろっと。大人の味かあ、楽しみ〜」

転がされたベッドの上で溜息とともに枕をきつく抱きしめ、瞼を落とす。
「ロボー、寝ちゃうまでに二行以内でよろしくね〜」
目をあければ、すぐそこにひみつの答えを待ち望むニコがいる。
いっそこのまま眠ってしまいたい。
どーすんの!?どうしよう?いったいどうしたらいいんだッ!!

ひみつなはちみつは罪な味?

ああ、もう容易く信用なんてするもんじゃない。
……よっちゃんのバカ。



終わり


375 名前:4/4 mailto:sage [2008/07/04(金) 07:17:29 ID:bHx4S616]
GJ!
で、ハチミツプレイって何?
三行以内でオセーテ

376 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/05(土) 01:01:09 ID:TUqUqpLD]
ロボもよっちゃんもある意味マニアックだなぁw
で、ハチミツプレイって何?
gj!


377 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/05(土) 10:28:24 ID:FX3Eml6B]
甘い甘い甘い甘い甘い甘い甘い、いいお話しGJ!
で、ハチミツプレイって何?

378 名前:七夕の出来事… 1/5 mailto:sage [2008/07/06(日) 12:40:15 ID:H2o7cFHz]
gjです。

久書きます。再会して、また仲良しなニコロボです。最後にスピンオフをつけました。エロなしです。


**7月7日 七夕**


 ロボの部屋に向かう階段をいつもより早足で登る。
 この足音はニコだな?今日のニコは機嫌が良さそうだ。

「ロボいるぅ?」
「お〜、ニコか〜。」
 いつものお決まりの会話でいつも始まる。

「じゃあ〜ん!笹持って来たから願い事書こう?」
 そう言ってニコは、大きめの鞄から二人用の大きさの笹を取り出した。
「笹?どこから持ってきたの?本物だ〜。」
 ニコから笹を渡されるとロボは懐かしいそうに見て、目をキラキラさせた。
「学校で飾ったのよ。それを少し貰って来たの。」
 その言葉に、ロボは笹をテーブルに投げる。
「盗んだのニコ?何か御利益減りそう。」
 飾る時に落ちてきた部分で、盗んだなんて!言い訳も面倒だよ。
「じゃあ、ロボは書かなきゃいいでしょ?」
 ニコは口をヘの字に曲げると、短冊やペンをテーブルに大きく音をたてて置いた。



…シーン


「…俺も、書きます〜!」
「やっぱり書くんじゃん。」



379 名前:七夕の出来事… 2/5 mailto:sage [2008/07/06(日) 12:44:19 ID:H2o7cFHz]


「ロボ〜…まだぁ?」

「まだっ!」
 ロボはもう、一時間以上は悩んでる。

「ロボさ、もう6時だよ?織姫と彦星、もうすぐ再会しちゃうってば。」
 ニコは頬杖をつきながら呆れ気味に言った。
「だって、どれが一番叶えて欲しいか決めれないんだもん。」
 ロボの叶えてほしい事は、MAXロボの続編を作ってほしいとか…MAXロボを知ってんのかな。
「じゃあ、とりあえず全部つ・け・れ・ば?」
「それじゃ、織姫と彦星に悪いでしょ?」

 へんな所に気使うんだから
「…分かった。じゃあ、もう少しだけ待つね。」


 結局、ロボは最後まで絞りきれず、短冊だらけになった笹を階段の手すりに飾った。

「ニコ、階段とこに飾ったよ〜。」
 ガチャ ひと仕事を終えて麦茶を飲む
「ご苦労ご苦労、さぁ素麺茹でたから食べよう。」

 ロボがひたすら悩んでいる間に、ニコは晩御飯を作っていた。

『いただきま〜す』
 晩御飯をロボのうちで食べるのも、最近は週の半分を閉めている。

ズルズルズル

「うま〜い!」

 お陰でニコの料理の腕はどんどん上がっている。


380 名前:七夕の出来事… 3/5 mailto:sage [2008/07/06(日) 12:54:21 ID:H2o7cFHz]
食後に、ロボはフィギュア作り。
ニコは、洗い物に洗濯もの。
喋らなくて、1つの部屋にいても心地いい関係になっていた。

 ポツ…ザー

「雨?」 洗濯を干し終えたニコが、ベッドの上の窓を開けた。

ザー やっぱり雨

「本当だね。雨だ…あ!笹!?中に入れないと濡れちゃうかも。」
 ロボは急いで階段から笹を取った。

 ニコはそんなのお構い無しでベッドの上で空を見ていた。
「あ〜あ、織姫と彦星、会えなくなっちゃったね。」
「へぇ何で分かるの?」
 ニコには織姫達の会話が聴こえんのかな。
「ロボ知らないの?雨が降ると天の川が増水しちゃって二人は会えなくなるんだよ。」
 ニコは雨で全く見えない夜空を見上げて言った。
「へぇ〜そうなんだ。何だか現実的な話だな。」

 ロボもいつのまにかニコの横にいて、空を見ていた。
「そう言われれば、そうだけど。ロボ知らないんだね?意外。」
 アニメとか夢物語みたいなのいっつも詳しいのに。
「知らな〜い。何か女の子の行事って感じだったから。」
 それにしては、さっき悩み過ぎでしょ〜?
「ねぇニコ、織姫と彦星は遠距離恋愛みたいなもの?」
 アタシもよくは知らないけど、ロボに説明をはじめた
「ん〜、近すぎて見えなかったんじゃないかな?
確かね、織姫はいいところの子だったの。で、彦星は手下みたいな感じだったけど、働き者だったから織姫のお父さんは結婚を許したの。
でも、結婚したとたん二人とも遊んで暮らして、働ななくなっちゃって、それをみかねた織姫の父親に引き離されて、七夕の日だけ会えるって話らしいよ。」

「へぇ〜、なんか哀しい話。」
 ロボは、ちょっと前の自分達に織姫と彦星を重ねていた。





381 名前:七夕の出来事…4/5 mailto:sage [2008/07/06(日) 12:58:05 ID:H2o7cFHz]

 雨の音がやけに遠くに聴こえていた。

「よし!!じゃあ、短冊外すそう。」
 ロボは机に置いた笹に手を伸ばした。
「何で?」
 ニコはとっさにロボの伸ばした腕をつかむ。
「だってニコ、可哀想だと思わない?
 織姫も彦星も、今日をすっごい楽しみにしてたはずでしょ?
 なのに雨だよ?また来年まで会えないんだよ?
 凹んでるよ。絶対…なのに、お願いなんて出来ないよ。」
 ロボは何でも自分の事みたいに考える。本当に優しい。

「そうだね。アタシも外すよ。」
 ニコはロボの腕を離すと、笹を手に取って短冊を丁寧に外した。
 ロボは、ニコの横顔を見つめて考えていた。

 今までの事、これからの事、あとどれだけニコといれるんだろう。
 次はいつ会えるんだろう。
 またいつか、近すぎて見えなくなる時が訪れるのかな。
 駄目だ!悲しすぎるぅ〜。
「ニコ〜ォ!」
ガバッ
 ロボは短冊を取るニコを横から、力強く抱き締めた。

「−−え?」

 胸にすっぽりと収まった小さなニコは、今まで抱き締めたどんなモノよりも温っかくて、
 そのぬくもりが伝わってくるほど、1人になるのが恐くなった。


382 名前:七夕の出来事… 5/ラスト mailto:sage [2008/07/06(日) 13:00:46 ID:H2o7cFHz]
「ロッ、ロボ?」
 アタシはどうしていいか分からず、ただ体が固まっていくような気持ちで。

「ビックリするな〜。…短冊グシャグシャになっちゃったじゃん。」
 本当はこんな事が言いたい訳じゃないのに


「もう絶対、離さないから。」
 ドキッとするような大人の声だったのに、ロボが手はプルプル震えてて、
 アタシはロボの肩に顔を乗せて力いっぱい抱きしめ返した。

「いいよ?ず〜っと一緒にいてあげてもさ。」

「ニコぉぉ〜…ありがどっ!−−グスッ」
 ヨシヨシってロボの背中を撫でた。

 ロボの肩越しにみえた夜空は雨は止んでいたみたいで。

『何だ〜。通り雨だったの?これで織姫も彦星もうまく行くといいな』
 なんて、気が動転してそんな事を思って、自分を落ち着かせた。

「安心した〜!!」
 って泣き笑うロボの表情は、アタシを一瞬で幸せにしてくれる魔法。
 出逢った時から、ずっととけてないよ。


七夕に短冊でお願いしたり、
神社で神様にお願いしたり、
MAXロボにお願いしなくても、
私達は変われるよね?

変えられるよね?


ロボといれば

あなたといれば


終わり(仮)



***スピンオフ***

 同じ時間帯、ロボの部屋の近所の大通りに止まっている黒塗りの車に、派手なスーツ姿の男が乗り込む。
「社長、雨降らし終わりました。」
 後部座席には黒づくめの女がタバコをふかし待っていた。

「ご苦労様。」 と、言うと意味深げに笑った。



終わり


383 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/06(日) 13:42:38 ID:SjXhegLJ]
よっちゃんは何でも出来るんだ!w
GJ!
二人に幸あれ

384 名前:シーソーゲーム 1/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:10:59 ID:C/waYRQc]
久々のエロ有り注意
ちょっと嫉妬してSなロボ?
※ロボのスケベは元々ですが、ちと強調気味にしてます
エッチが嫌な方はスルーで


* * * * * * *

「もう、ロボなんか大ッキライ!!」
「いや、ニコ今のは別にその、違うんだってばぁ〜」
「なーにーが違うのよ?今胸のおっきなお姉さん見て鼻の下伸ばしてたクセに」
「見てない!むしろ脚……」
 しまった!と思ったら時既に遅し。怒ったニコは背中を向けて行ってしまった。
「ニコってばぁ〜待ってよ!嘘ウソ、俺にはニコしかいないってわかってるでしょ?
 愛してるってばぁ〜」
 そういうのとは別です。男のサガってやつですよ。
「こんな所で何言ってんの!?バカじゃないの!!」
「バカじゃないです、オタクですぅ〜」
 人の多い商店街で周りを気にしながら真っ赤になってるニコ。
「照れなくてもいいじゃ〜ん」
 次の瞬間目の前に星が見えた。
「ひっ、ヒドいっ!なんでぶつの!!俺はニコの彼氏じゃないのっ!?」
「うるっさいなぁ!やっぱわかってない。最低っ!!」
 照れてるんじゃなくて怒ってんのか……。
 何だよ、人の気も知らないでさ。

 明日からニコは修学旅行で、当分会えないわけで。
「寂しいんだよ、俺だってさ……」
 なのにニコって冷たくない?
「もう、早くしないと置いてくよ」
 やれやれ。でもお姫様には逆らえない。
 付き合ってって言ったの俺だし、惚れた弱みってこういうことかなぁ……。


385 名前:シーソーゲーム 2/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:12:09 ID:C/waYRQc]
 俺の部屋へ着くとニコを抱きかかえてベッドへ運び、押し倒した。
 そのまま唇を重ねて体重を掛ける。僅かに抵抗する腕を押さえてより強く唇を
合わせる。
「ロボ、だめ、……んっ」
 キスを首筋にずらして浴びせると、ニコは身を捩って甘い声を洩らす。
 それに構わず左手首から離した右手を胸の膨らみに移動させ、ボタンを素早く1つ
2つ外すと滑り込ませた指でその先端部を撫でまわす。
「いやぁ……あっ、やめてっ……」
 朱く染まりつつあるほっぺが可愛くて軽くキスしてみる。
 やわらかい胸の先っぽはどんどん堅くなる。それにあわせてニコの声が高く響く。
「やぁん、やめてぇっ……」
 嘘ばっかり。
「だめだってば、ん」
 色っぽいよ〜。それじゃ余計やめらんないじゃん。
「やめ、てよぉ……」
 もう我慢できません。
 スカートを捲って膝から太ももへ掌を這わせて撫で回し、下着に触れようと
したその瞬間、
「やめてってば、もう!!」
思いっ切り左ストレートを顎にモロくらってしまった。
「バカバカバカッ!ロボのスケベ、エロ、変態ーっ!!」
 そこまで言うか。
「イテテ、だって明日っから何日も会えないんだよ?携帯だって場所によっては
 繋がらないかもしれないし、寂しいじゃん」
「仕方ないでしょ!?行事なんだから。それに今あたし、アレだし……」
「そっか……だからってせめて途中まではいいじゃん。俺は我慢するしさ、
 それならいいでしょ〜?」
「何それっ?やっぱわかってない。ロボのバカ!最低」
 真っ赤な顔を更に真っ赤にしてまくし立てるニコにさすがにちょっと腹が
立ったけど、うっすら浮かんだ涙を見たら何か怒れなくなった。
「だって仕方ないじゃん、好きなんだからさぁ〜。ね、ニコ、ごめんよ。だから
 仲直りしよ?……愛してるよ〜♪」
「ほらまた、そうやって!もう大嫌い、ロボのばか!!」
 最悪だ。
 そのままニコはぷいと部屋を出てってしまった。

 自業自得とは言え、それから何日もどんよりした気持ちのまま俺はニコに
会えない日をやり過ごさなければならなかった。


386 名前:シーソーゲーム 3/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:13:18 ID:C/waYRQc]
 ニコのいない数日間は本当に寂しかった。
 携帯だって掛けてはみたがなかなか通じなかったし、メールだって殆ど返って
来なかった。移動とか多いし仕方がないのはわかってるんだけど、喧嘩したまんま
だからまだ怒ってるのか気になってしょうがなかった。
 原因は俺だけどさ……。
 明日は多分会えるだろうけど、少しでも早く顔が見たくて駅まで迎えに来てみた。
「もうそろそろだと思うけど……」
 改札口で待っていたら荷物を持って歩いてくるニコを見つけて、思わず走り出した。
だけどすぐにその足は動かなくなった。
 ニコのそばに同じように荷物を持った男子が一緒だったからだ。ニコはそいつ
から紙袋を受け取ると、またホームへ引き返す奴を見送ってこっちへ歩いてきた。
「ロボ?」
 俺はその場で手を上げて返した。
「迎えに来てくれたの?」
「……うん」
 重そうなボストンを受け取ると、反対側の空いた手でニコの手を握った。
「ロボ、痛い」
「あっ、ごめん」
 思わずきつく握りしめてしまった。もう、ってちょっと膨れながらゆっくり
その手を握り返してくるニコの温もりにドキドキした。

 公園に差し掛かってひと休みしようとベンチに座った。自販機でコーヒーを買って渡す。
「えっ奢ってくれんの?珍しー」
「あのねっ、何それっ!俺がケチみたいでしょ〜!?」
 うう、久々に会った恋人にこれかよ。可愛くない!
「わかってるよ。ロボはケチじゃなくて貧乏だもんね?……ありがと」
 そう言って嬉しそうに口をつけた。うーん……前言取り消します。やっぱり
俺の彼女は可愛いです。
 なんて思ってたらニヤけてきた。そのまま幸せな気分に浸りながら目線を移すと
2人連れの女の人の1人と目が合った。彼女は俺に軽く会釈して友達らしいもう
1人と歩いていった。
「ほらまた!!やっぱりじゃん」
 振り向いたらニコがこの間のように、目をつり上げて睨んでた。


387 名前:シーソーゲーム 4/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:14:47 ID:C/waYRQc]
「えっ、ち、違うよ!そんなんじゃないよ。さっき……」
 駅で待ち合わせ場所がわかんないみたいで、道教えてあげたんだ。多分さっきの人と会えたんだろう。
「そんな言い訳聞かないよ。いっつもそうじゃん」
 何だよ。もう頭来た。
「ニコこそなんだよ。わざわざ同じ駅でもないのに送って貰ったりしてたじゃん。
 荷物まで持たせてさ」
「見てたの?」
 ちょっと驚いてる。俺は返事しなかった。
「2駅先だから一緒だっただけだよ。それに荷物持ってくれる男の子なんて
 珍しくもないじゃん。ロボだってそれ位するでしょ?」
「そりゃ……けどどんな下心があるかわかんないじゃない」
「何それ?ロボってそうなんだ……最低っ!」
 飲みかけの缶を置いてニコは行っちゃった。
 何だよニコの奴。俺の気も知らないで!
 ……でもまた怒らせちゃったな。俺ってやっぱり馬鹿なのか?

 追っかけても振り切られるのが怖くて、置かれていったコーヒーの中身を
飲み干そうと口をつけた。
「甘っ!MAX……やっぱこれ甘いよ」
 勿体ない、なんてこんな時に思ってる俺はやっぱみみっちい。

 『会いたいよ』
 翌日そうメールして時間に合わせて迎えに行った。やっぱりまだ少し不機嫌だけど
ちゃんと準備して待っててくれた。

「お土産あるからね」
 昨日の紙袋を持ってる。
「うん、ありがと。忘れないでいてくれたんだ」
「当たり前でしょ。もう!……まだ怒ってるの?」
 ううん、悪いの俺だし。
「本当はさ、旅行中ちょっと告白みたいのされたんだ。多分班が一緒だったし、
 そんな気になったんだと思うんだけどね。だからちゃんと断りました!」
「……ふーん」
 前から綺麗なお姉さんが歩いてくる。ニコがチラッと俺を見たけど、えっ?と
いう顔をして視線を戻した。
 いつもなら天然スケベな俺はこんな時鼻の下伸ばしてる。でも今そんなのどうでもいいよ。


 部屋に着いてドアを閉めると同時にニコを抱き締めた。


388 名前:シーソーゲーム 5/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:16:21 ID:C/waYRQc]
「ちょ、ロボ、待って」
「待たない」
 靴を脱ぐのももどかしく、揃えるのも待たずに部屋に引き入れ、腕を掴んで
胸の中に包み込んだニコに数日振りのキスをする。
「会いたかった……」
「ん、あたしも」
「ホントに?」
 ん、と頷いたそのおでこ、頬にキスすると唇を重ねる。最初は軽く、段々強く。
 柔らかいその感触に理性が侵されていく。思わず隙間から舌を差し込み、幾度も絡ませる。
 ニコは必死に背中に回した手で俺にしがみつき、応えるように唇を舐め返す。
 震え始めた膝は立っているのがやっとのようだ。ニコの身体を支えると床に
座らせる。
「ロボ?」
 困惑した表情のニコをよそにそのまま横たえると、キスしながら少し強引にTシャツを捲った。
「ロボ、ねえ、ここじゃなくてあっち行こ?」
「駄目だよ」
 1秒だって待てない。
 ニコの頼みを遮りまたキスをし、更に激しく口内を弄ぶ。開かれた唇からは
舌の絡まるぴちゃぴちゃという音と共に、愛しいニコの吐息が漏れる。
 ホックを外したブラをたくし上げて胸を掴むと唇を離した。つっと糸を引きながら
そのままの舌で首筋をなぞる。
「う、あっ……」
 その声が俺に火を点けた。どうにかしてやりたい欲望が急速に高まってく。
スカートの中の下着に手を掛けた。
「あっ、まって。やっぱりここじゃダメ」
 ごめん、聞けない。
「やめて……お願い」
 やめらんない。
 上からなぞるとビクッと跳ねた。うっすら湿っているそこに
指を忍ばせ、触れる。
「あああっ!いや、やめっ……」
 ニコの手が俺の右手を掴んで止めた。
「ねえ……あたしのこと本当に好きなの?」
「うん」
 わかってるじゃん。何でそんな当たり前のこと聞くんだよ。


389 名前:シーソーゲーム 6/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:20:15 ID:C/waYRQc]
 ニコの腕を振り解いて一番敏感な部分を布越しに擦ると、身を捩って喘ぐ。
 涙を浮かべながら唇を噛む仕草にたまらず胸に吸いつきながら、下着の脇から
指を差し入れて直に音を立ててやると、
「ここじゃ嫌……あっ!」
呻くように仰け反って身体を震わせた。
「……っく、う……」
 もうイった?指を少し動かすだけでびくびくと跳ねる。いいかな?とベルトに
手を掛けながらニコの顔を見て……初めてハッとした。
「ここじゃ嫌って言ったのに……」
 バカ!と言いながらうっすら涙を浮かべて捲れた服を引き下ろすニコを見て、
やっと自分がした事がわかった。
「ごめん、ごめんね!本当にごめん」
 俺ニコを抱きたくてそれで頭が一杯になってた。酷い事した……。
「今日のロボ変だよ。どうして?……ちゃんとあたしを見てる?」
 身体を起こすと不安そうな表情で俺を抱き締めてくる。
「……泣かないでよ、ロボ」
 怒られる方が気が楽だよ。こんな時優しいんだ、ニコは。
「俺自分勝手だなって。ニコの事大切に思ってんのに、どうしても我慢できない」
「うんそうだよね。いっつもそう。あたしも時々ロボがわかんなくなる。すぐに
 よそ見するし」
「ごめん。でもそれは」
「わかってるよ、そんなの男なら普通でしょ?ましてロボはスケベの女好きだし
 さー……モテないけど」
 うう、当たってるだけに何も言えない。(最後の一言はアレだけど)
「ただあたしの事本当に好きなのかわからなくなる。すぐヤらしい事考えるし!」
「……そんなに嫌なの?ならやめるよ」
 ニコに嫌われる?それ位なら我慢する。……できるのか?俺。
「嫌じゃないよ、でもロボ『好き』とか『愛してるー』ってすごく簡単に言う
 んだもん。軽すぎてついていけなくなる……」
 言葉にすれば伝わるわけじゃないのか?ニコの顔はどこか不安げで、俺は何だか
掛け違えたままのボタンを満足げに自慢してた気分になった。


390 名前:シーソーゲーム 7/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:21:38 ID:C/waYRQc]
「俺さ、好きな人が……ニコがいっつも一緒にいてくれるのが嬉しくて、だから
 好きだって言葉が届くのが本当に嬉しくて、言いたくて仕方ないんだ。その
 割に照れ隠しにふざけたりもしたけど……それが愛の大安売りになったんなら
 俺の一人よがりだ。でも本当だよ!俺はニコが」
「わかってる。ロボはズルい事出来ない奴だもんね。でも、やっぱりデリカシー
 ない。今日なんかちょっと怖かったし……」
「ごめん。だって、ニコに他の……やだったんだ。そう思ったらカッときて、その」
「妬いたんだ?」
 ちょっと意外って表情して笑った。
「あたしばっかり腹立てて、ってちょっとムカついてたんだよね。けどそっか、
 ふーん」
「嬉しい?」
「どうかなー?」
 ニコが手渡してくれたティッシュで鼻をかむと、頭をよしよしされた。俺情けねぇ。
「ニコ、もっかい、優しくするから。しちゃダメ?」
「バッ……もう、すぐそれじゃん!!」
 けどそれでも小さくイイヨって呟くのを聞き逃しはしなかった。早速抱き上げて
ゆっくりとニコをベッドに運んだ。

 丁寧に服を脱がせてブラまで取ると、最後の1枚を残して悪戯心が湧いてしまった。
自分は脱がずにニコだけ肌を晒した状態でキスをし、胸を弄び始めた。
「えっ、ちょっと!ズル……」
 抗議の声を上げる唇は絡めた舌に塞がれて既にオチた。それを確認すると、
キスしたまま指先でじらす様にほんの少しだけピンと反応している乳首の先を
撫でる。ゆっくりと軽く、何度も何度も。
「んんっ」
 我慢出来なそうに胸を徐々に突き出すように反らした。
「何?」
 困ったように瞳を潤ませて俺を見るニコに問いかけるけど、開きかけた唇は
すぐに閉じられる。
「ふうん、いいんだ?じゃ、やめちゃおっかな……」
「えっ」
 言ったとたん『しまった』って顔でニコは瞳を逸らした。
「嘘だよ」
 俺も我慢がきかなくて身体を起こすと、ベストとシャツを脱ぎ捨てニコに覆い被さった。




391 名前:シーソーゲーム 8/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:22:29 ID:C/waYRQc]
 ちゅっちゅっとわざと音を立てて胸を吸うと、ニコは声を我慢しようと手の甲で口を塞いだ。
「ダメでしょ?悪い手だね」
「えっちょっと!や。やあぁ……あっ、やぁんっ」
 両手でそれぞれの手首を押さえてさっきの続き。柔らかな感触を味わいながら
震え漏らす声に思わずニヤリとしてしまう。
「こっちはどうかな?」
「……あ」
 左手だけ解放すると右手を下着に滑り込ませ、その感触を確認すると、ニコの
一番乱れる場所を刺激しながら胸を攻めた。
 もう我慢するのを忘れて開きっぱなしになった唇に引く糸を身体を起こして
吸い付き舐めた。
 荒くなり速くなる呼吸と乱れた姿に俺もそろそろ限界かも、と思い始めた頃、
一層高くなった声に指の動きを止めた。
「……えっ?」
 戸惑いながら絶頂の手前でビクつきかけた身体を持て余し、ニコは俺をただ黙ったまま見つめた。
「ん?なぁに」
 わざとゆっくり質問する。
「え、なん、で……?」
「何が?」
 秘所を押さえたまま動かない指に、身悶えしながら俺の手首に触れてくる。
「言ってくんなきゃわかんないよ?」
 泣きそうに崩れた表情で哀願するように俺を見て、何度も口を開きかけてはやめる。
その度に少しだけ動きを再開しかけては止め、ニコは切なそうに呻く。
「イキたい?」
「……ん……あっ、あ、あ……!!」
 最後まで聞かずに俺はニコを攻め落とした。

「ロボ……?」
 弱々しい呼びかけに微笑みかけながらパンツを脱いでゴムの準備を済ませ、
ニコを抱き起こした。
「え、何?……っ」
 向かい合わせに膝に乗せ、その裸身を貫いた。
「あっ、はぁんっ、は、う……」
 深く、深く。
「あ、すっごく気持ちいいよ。エッチだね……ニコの動き方」
「や、そん……んんっ」
 朱に染まる頬に当てたキスをそのまま、仰け反るニコの胸に落として吸いついた。


392 名前:シーソーゲーム 9/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:24:11 ID:C/waYRQc]
 俺の大切なヒト、俺だけのニコ。こんな姿は誰も知らない。誰にも見せる事の
ない俺だけのモノ。
「愛してるよ」
「本当?」
「好きだっ……」
 満足げに頷きながらも言葉すら発せないその唇は、なんの抵抗もなく俺を受け入れる。
舌の絡み合いと愛液の溶け合う音が益々俺を狂わせる。
「ニコ。俺を見て」
 ちゃんと瞳を開いてそこに俺を閉じ込めて。
「じゃなきゃ、やめちゃうよ?」
 嘘だ。本当は出来っこない癖に、ニコの戸惑う顔が見たくなってつまらない意地を張る。
「応えて……」
 愛してるよと言って欲しい。
「好きよロボ。あたしもっ……あっ!?」
 もう我慢出来ない。振り落とされまいとしがみつくニコの腰を掴んで突き上げた。
 頭が真っ白になる中、いつもの耳障りな古いベッドの規則正しい軋みが加速しては
鎮まっていくのを心地良く感じていた。

 肩で息をしながら並んで横になる。
 紅潮した頬と長い髪を撫でながら、また違う顔をみたいと思う。
 知らなかった。俺って結構Sなんだ?
 普段のニコとの関係からはとても考えらんないのに。
 でも乱れに乱れて色香を漂わせたニコを見てるとそれも悪くない……どころか、
今までにない征服欲が俺を満たしてる気がする。
「ロボ……」
 ゆっくりと潤んだ瞳で俺を見上げながら寄り添ってくる。
「ん、なに……?」
 心地良い疲れにまどろみながら愛しいものを見つめ返す。
 俺の頬に白い指をあてがいそっと撫でる。
「愛してるよ、ニコ」
 そのままゆっくり目を閉じて……。
「ねえ、ロボ」
 ん?何だか声のトーンが跳ね上がったような?
「ん、なぁに……ぶはっ!?」

 あれっ?今俺何しようとしてたんだっけ。
 あっ、そうだチューだ、ニコと熱々な時間の真っ最中、まさに幸せ絶好調の筈なんだけど。

 なんで俺の目の前は花火大会なんだろうか……?


393 名前:シーソーゲーム 10/10 mailto:sage [2008/07/12(土) 21:25:53 ID:C/waYRQc]
「何か言うことは?」
「特にありません。あ、いえ、……ごめんなさい」orz
 思いっきり食らったビンタの跡の痛さに俺涙目。
「ほんっとそういう時だけ性格変わるよね!?特に今日なんか、は……激しかったしっ。
 この……スケベ、変態!」
 いやスケベなのは重々承知な筈ですが?にしても変態って酷くね!?
「いつもより感じてたみたいだったんだけどな〜……」ボソッ
「もう1回どつこうか?」
「いや、いいです」
 今度は花火どころかビッグバンが起こるに違いない。おお怖っ!
 ったく、とかブツブツ言いながら服を着るニコを見ながら『後でまた脱がしたら無駄なのに……』
なんてニコが聞いたらまた殴られるだろうな〜なんて性懲りもなく考えた。
「さつ、お土産お土産。でもロボはいらないのね?」
「えっ何で!?」
「全裸でお菓子食べる気?」
「あっ着る、着るからっ。待って!」
 そこまで変じゃありません。

 お茶を淹れに立ったニコに後ろからぎゅ〜っと抱きつく。
「危なっ。火傷する」
「もうニコに火傷させられてますぅ。寂しかった!あーやっぱり好きだ!愛してるぞ!!」
「だからっ!それが……もういい」
 諦めたか。呆れたのかな?
「だって本当なんだもん」
「わかってるよ。でもこっちが恥ずかしいのっ」
 おっ、この頬の赤みはマジ照れらしい、今度こそ。可愛いヤツ。
「ほら入ったから運んで」
「は〜ぁい」
 台の上にお茶を並べながら『時間はあるしまた後で……ふっふっふ』なんて
考えてたら、今度は頬をつねられた。
「何考えてるの?ん!?」
「いえ別に」
 ああ、ニコにはお見通しなわけか。姫というより女王様……なんて言ったら
多分鼻血噴かされるな。
 お土産の新しいペアの湯呑みとお菓子に幸せを文字通り噛みしめながら、
想い想われゆらゆら揺れるこのやり取りが永久に続くことを祈る。

* * * * * * * * 終わり


394 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/13(日) 01:10:06 ID:2Kp+6LV/]
いや〜エロGj!
勝手な想像だけど、ロボはアブノーマルなのが好きな気がするw

395 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/13(日) 02:00:59 ID:GwYy60FW]
gj!プッチーニ編を見て、
ロボはいざとなると、イニシアチブを取って突き進むタイプ
ニコは戸惑って弱気になるタイプに思えたので、
恋愛の場面だとロボが急に強気な行動を取るのはありそうだと思った。


396 名前:名無しさん@ピンキー [2008/07/15(火) 03:39:09 ID:5YNKPbFF]
エロGj!!!!!
もっと、もっと〜〜〜

397 名前:名無しさん@ピンキー [2008/07/15(火) 15:06:16 ID:Eusz2M8N]
アニメ声のコスプレエロギャル!
ヒナタのスレッドはこちらです。
same.ula.cc/test/r.so/venus.bbspink.com/megami/1215439103/l10?guid=ON
貴方の妄想セリフを文章にしてリクエスト→ヒナタがボイスうpします。ヒナタ不在でも、リクエストを置いておけばヒナタは必ずボイスうpします!
さあ!妄想大爆発!エロ、下品ネタなんでもOK!お待ちしています!
ヒナタ

398 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/21(月) 06:53:58 ID:aB5bunPq]
ほしゅ

399 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/28(月) 23:21:47 ID:9JzI20p7]
圧縮来るかも?
やばそうなので保守

400 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/28(月) 23:35:10 ID:vHZJxH34]
ネタがまとまらないよー・・・
圧縮よけにほしゅ



401 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/28(月) 23:36:29 ID:VXhYx8IQ]
なに?圧縮って

402 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/29(火) 01:02:28 ID:vbY+UTwq]
この板のスレ数が800超えたら最新の書き込みが古い順かな?(このへんはあいまいですが)
自動的に100スレ近く落ちるはず。もうすぐ800に到達。


403 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/29(火) 13:17:05 ID:NdOQYc7R]
なんだって!そんなルールがあるのか!知らなんだ!みんな詳しいね
ま、とりあえず保守

404 名前:甘いお願い 1/3 mailto:sage [2008/07/29(火) 14:54:02 ID:qMtKsMVd]
スレチなんで詳しくは控えますが某作品をチェックしていた所、ちょっと出来心を
起こしてしまいました。
マニアックな上ちょっと微々エロ風味?
圧縮が近いというので速攻書いたものですが投下します。まあ、箸休めに…

* * * * * * *

「えーーーーっ!ヤダ、絶対ダメ!!」
「どうして?何でもいうこと聞くって言ったじゃん!」
「だからって出来る事と出来ない事があるの!絶対イヤだ!!」
「約束が違ーう!」

 休日の昼下がり、床に置かれたゲーム機と差し出された紙袋を挟んで向かい合う2人。
「ニコが言い出したんだぞ?負けた方が勝った方のいうこと何でも聞くって」
「そりゃ言ったけどさー……だからってそんな事出来ない!」
「だぁめ!はい」
 しばらくの間頬を膨らませてロボを睨みつけてはいたものの、
「しょうがないなぁ。今回だけだからねっ!?」
と引ったくるようにして袋を受け取ると家具の陰に隠れた。
「わぁ〜い♪ありがとうニコ」
 勝利者の喜びに浸りながらうんうん、と満足げに頷くロボの姿をこっそり覗きながら、
「あーあ、あんな賭けしなきゃ良かったよ……」
とニコは自分の置かれた状況に泣きたくなった。
 よくよく考えたら、自分がロボにゲームでなんて勝てるわけがないのだ。普段は冷静に
あしらう術を知っているくせに
『あ〜、そっか自信ないんだ、だからやりたくないんだ。いいよ、じゃあ戦わずしてニコの
 負けねっ!?』
 その憎ったらしい言い方にカチンときて、ついつい挑発に乗せられてしまった自分が情けない。
 ロボといるといつもこうなのだ、とニコも半ば諦めてはいるのだが……。
 それにしても。
「何でこんな物があるの……?」

 ロボはロボで、今か今かと準備万端でワクワクしながら落ち着かない様子でウロウロしている。
「覗かないっ!!」
「はいっ!」
 時々ニコに怒られて。
「まぁ〜だ?」
「……本当にやんなきゃダメ?」
「ダメですぅ〜!約束は守りましょう」
 わかったよ、とやる気のない声があがると、ニコはその姿を表した。
「笑ったらソッコーやめるからね」



405 名前:甘いお願い 2/3 mailto:sage [2008/07/29(火) 14:55:38 ID:qMtKsMVd]
 現れたニコの姿に思わず鼻を押さえてティッシュを取りに走るロボ。
「か、かぁわいい〜っ!!」
「そん……ちょっ、何!?」
 首から提げたデジカメと携帯のフラッシュが遠慮なく、ニコの体に浴びせられる。
「え?何って撮影会」
「ここはアキバじゃありませんー!」
「いいじゃん!ケチ」
 デレデレと鼻の下を伸ばして目も当てられないほどニヤけたロボの目の前には、

 白いレースのエプロン。

 モノトーンのヒラヒラミニスカート。

「ご主人様って言ってみて、ねえねぇ〜っ!」
「勘弁してよー……」

 そう、メイドさん。

「もういいでしょ?着替えさせて!」
「え〜!?まだダメですぅ〜。今日はこれで1日過ごしていただきます」
「はぁ!?」
「や・く・そ・く」
 そう言われると負けた身としては黙るしかない。
 がしかし。
「調子に乗るんじゃないのっ!!」
 怒り心頭のニコにさすがにビビったロボは慌てて方針転換に走った。
「あっ嘘、ウソです冗談です!あ、そうだ、お茶、その格好でお茶入れて。それで終わりに
 するから〜」
 お願いっと頭を下げて両手を合わせられては仕方ない。
「……わかったよ。
お茶だけだからね。コーヒーでいい?(プライドないのかよ)」
「うんっ♪」
 満面の笑みを浮かべられては折れないわけにもいかない。ロボのこういう所に弱いのだ、
と自分の甘さを嘆きながら流しに立ったニコを見ながら、当のロボは嬉しさを隠せない様子で
撮ったばかりの画像を確認して眺めていた。
 実のところ前々から1度はお願いしたい、と思いながらもニコの性格からしてなかなか
口にする事ができなかったのだが、ついにその夢が叶ったのだ!
『昨日思い切って買ってみて良かったよ…』
 あとはニコが意外と単純で負けず嫌いな事も勝因の1つ、ロボにとってはしてやったり、
てなもんである。


406 名前:甘いお願い 3/3 mailto:sage [2008/07/29(火) 14:57:41 ID:qMtKsMVd]
「はい、コーヒー入ったよー」
「あの、あれもお願いしマックス」
「…………おまたせ致しました。『ご・主・人・様』!これでいい?」
「いい、いい、いい〜っ!!くうぅ、日本に生まれて良かった〜っ!」
 バカ、と口パクで睨むニコの冷たい視線にもめげずにコーヒーに口を付ける。
 それにしても、と眺めるニコのメイドさんは本当に可愛い、と改めて思う。

 結び目の具合で普段より強調された胸の膨らみや、白いレースの付いたオーバーニーと
ミニスカートの間に見えるいわゆる『絶対領域』と呼ばれる肌の部分が、ニコの肌の白さを
一層引き立てて色っぽい。
 これに猫耳が付いたら……などと更によからぬ(?)想像を働かせながら、コーヒーに
紛れた生唾をゴクン、と飲み干した。

「ねえもう脱いでもいい?」
 着替えてくるね、と膝を立てたニコを
「まっ……待って、もう少し」
と慌ててロボは腕を掴んで引き止めた。
「なっ、何よう、もういいでしょ?いい加減恥ずかしいしー」
「そんな勿体無い!可愛いのに。もう少しだけ、ねっ!?だから、だからっ……」
 肩を引き寄せニコにキスをすると、その勢いで服の上から体を撫で回した。
「んっ、だめ、だってば」
「ん〜、俺もう無理……。理性が限界突破であります!ていうか可愛い過ぎる〜っ。ああもう
 脱がなくてもイケる!」
「え、あの、でもほら、服だめになっちゃうよ?って、ボタン外さないで。スカート捲るな!」
 押し倒した体の上で動きを止めたロボにニコがホッとしたのも束の間。
「じゃ、脱がせばいいんだな?」
「は?あの、えっと……ひゃあぁっ!?」
 後はもう、突き進むのみ?



 それから数十分後、変態!と罵りながらオーバーニーを脱ぎ捨てるニコと、側で赤い手形の
ついた頬を撫でながらも満足感から笑いが止まらないロボ。
『今度は横にあったチャイナドレスに挑戦してみよう』
などと懲りずにどうしたら着て貰えるか、と頭を巡らせていた。

* * * * * * *終わり


407 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/29(火) 15:06:51 ID:NdOQYc7R]
Good Joooob!
来週の放送が益々楽しみになったw

408 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/07/30(水) 12:32:00 ID:QXfbUh7o]
メイドコスニコ!萌えの境地!
ロボの考えそうなことだw
GJ!

409 名前:名無しさん@ピンキー [2008/08/03(日) 00:42:58 ID:Tyz3XNvt]
数十分後ってのは、SEX終了後って意味なんでしょうか?
2人のその辺の設定の前提をおしえて〜

410 名前:名無しさん@ピンキー [2008/08/03(日) 00:43:22 ID:Tyz3XNvt]
書き忘れました
GJです!!!!



411 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/08/04(月) 22:45:04 ID:sCStQWjD]
取り敢えず保守
職人さんGJ!

412 名前:名無しさん@ピンキー [2008/08/09(土) 03:11:42 ID:jHCUjlfw]
GJ!!!!得ろ万歳!

413 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/08/15(金) 05:39:54 ID:Efc9O+qL]
星ゅ

414 名前:名無しさん@ピンキー [2008/08/16(土) 17:54:21 ID:nn4RBzrp]
ss作者もお盆休み?

415 名前:夏色 1/5 mailto:sage [2008/08/22(金) 07:50:27 ID:h2CuM/xm]
ある夏の一日のお話。微エロまでもいかないでしょうか…

××××××××××××

一緒に行こうとロボと約束をした夏祭りの日。
朝から爽やかさとは程遠い生暖かい風が頬に纏わりつく。
夏の暑さを主張する蝉の合唱にうんざりしながら、着慣れない浴衣に履きなれない下駄で
いつもと違うリズムを足音に刻んでようやくロボの家へとたどり着いた。

「ロボいるー?」
お決まりの文句で勝手知ったる部屋に上がりこみ、ロボは…と姿の見えない主を捜して
あたりを伺うと気持ちよさそうに寝息をたてて熟睡中のよう。
「ロボー、寝てるの?」
「…あと30分だけ〜……」
気だるそうに返事をかえして大きな身体が寝返りを打つ。
そばにあるテレビの前にはロボットアニメのビデオが整然と置かれている。
どうやら昨日は夜更かしをしたらしい。
「また観てたんだ。ほんと、飽きないよなぁ。感心するわ」
意味無く頷きながら、冷蔵庫から麦茶を取り出した。
「まだ時間は充分あるし、あと少しだけこのままにしといてあげるか」


ニコ様専用のコップと一緒に卓袱台に運んだマックスロボを相手に時間をつぶす。
「ねえ、マックス。あたしの浴衣姿、どうかな?似合ってる?」
澄みきった夏の空を思わせる青色にひまわり柄の浴衣。
「あのねぇ、お母さんが作ってくれたんだよ。意外でしょ?
ああ見えてもうちのお母さん、こういうの結構得意なんだよ」
決して高価の物ではないけれど、あたしには素敵な贈り物。
小さい頃もあたしと一海ちゃんの浴衣を仕立ててくれたんだよねぇ。ついでにお父さんの分も。
それで家族揃って夏祭りに行ってさ。懐かしい。
今は皆で出かけることもなくなっちゃったな。
いつからだっけ?
まず彼氏ができた一海ちゃんがそっちを優先するようになって、
あたしはあたしでむーちゃんや他の友達と遊ぶことが多くなっていた。
そして今年はロボと一緒に過ごす始めての夏をときめきと愛しさとほんの少しの切なさを
胸の奥に新しい一ページとして積み重ねている。
でも、だからといって遠い昔の思い出がなかったことになったりはしないんだ。


416 名前:夏色 2/5 mailto:sage [2008/08/22(金) 07:51:40 ID:h2CuM/xm]
ある日の食事時、唐突に『ニコに似合う浴衣を作ってあげるわ』なんて言い出したお母さんが
頼みもしないのに取り付かれたようにミシンに向かう姿が不思議で仕方が無かった。
けど、なんのことはない、あたしが一海ちゃんにポロッと漏らした一言をお母さんに伝えたらしい。
『ニコってば、夏祭りに浴衣で行きたいらしいよ』
ただロボと行くんだって喋っただけなのに、恐るべし一海ちゃん。

そんな一海ちゃんでも、時として優しい?お姉様に変わる。
「この髪型結構可愛いでしょ。一海ちゃんがやってくれたんだよー。
それに誰も何も言わないのにお化粧までしてくれてさ」
そこまではいいって拒むあたしを強引に説き伏せて
「好きな人のために綺麗に見せるのは当然のことよ。
夏の暑さは人を積極的にさせて、恋人達を燃え上がらせるの」
恋愛のプロセスにおいて手を抜くなんて一海ちゃんのセオリーに反するらしく、
故にあたしの意見なんて聞いちゃいない。
「素顔もいいけど少し手を加えるだけで女の子は変わるものよ。
見た目だけじゃなくて気持ちも華やいで内面も美しくなるの。
二コは綺麗な肌してるし、メイクはナチュラルでいいかな。
安心してこの私にまかせなさい!」
おもちゃにされている気がしないでもなかったけど一海ちゃんのセンスの賜物か鏡に映る自分に
わけもなくドギドギした。

夏の始まりに街で見かけた色っぽい浴衣姿の美人なお姉さんに例のごとく鼻の下のばして
いつまでも後姿を追いかけていたロボがおもしろくなくて
『ニコも夏祭りに浴衣着てきてほしいな〜』って、しつこい願いを
『めんどくさい。第一浴衣なんて持ってない』なんてつれない態度をとって
ロボの望みどおりになんてしてやるもんかって思っていたのに。
あたしときたらどうやら自分で想像している以上にテンションがMAXのようだ。
これも夏のせい?


手持ち無沙汰に本が並ぶ棚のほとんどを占めているロボット関係の雑誌を
適当に抜き取ってめくっていると
「あ、いいな…この音」
軒下で涼しげな音色を奏でて風鈴が揺れている。
一週間程前に買い物帰りにたまたま立ち寄った縁日であたしとロボがお揃いで買った風鈴。
耳に心地よく響く夏の音に心癒される。
二人で交互に飲み干したひとつだけのラムネの瓶はなぜか捨てられることなく窓辺で碧く透き通る。


417 名前:夏色 3/5 mailto:sage [2008/08/22(金) 07:52:41 ID:h2CuM/xm]
「あれ、もうこんな時間だ」
静かに時を過ごし、気付いたらすでに二時間は過ぎようとしていた。
だけど当のロボは一向に目を開く気配はなくてあたしは段々と苛立ちを深めていく。
「ねえ、ロボぉ。そろそろ起きようよー」
タオルケットに隠れた身体を揺らしてみたが、反応はまるでなし。
だったらセクシーボイスを駆使して色っぽく囁いてみる?って話なんだけど
そうそういつも使っていたら効果も薄くなってくるわけで
始めの頃は簡単にひっかかってMAXな早さで跳ねるように飛び起きて、正体があたしだってわかると
『また騙したなあ〜』って、ブツクサぼやいていたのに。
最近はフツーに目覚めて、ふにゃと表情を崩して、『おはよ〜二コ』と寝ぼけ眼で大きなあくびを繰り返す。
フツーすぎてなんかつまんない。
ま、ロボもそこまで間抜けじゃないってことか。

「う〜ん……ムニャムニャ」
「いつまで寝てるの。もうお昼すぎてるよー」
「まだいいだろ〜」
そう言ってまた無駄にデカイ図体を回転させて足を投げ出す。
まったく寝ぞうが悪いんだから。
「ダメだよ!」
「や〜だ」
ロボットの柄がプリントされたタオルケットをめくろうとするあたしとめくられまいと必死のロボ。
このままでは埒が明かないと踏んだあたしは
「起きなさい〜〜!」
「あ゛!?いててッ、いひゃいぃ!」
だらしなく横たわるロボの左右の頬をつまんで無理やり引っぱりあげた。

「……グズッ。酷いよ、あんまりだ」
鼻声まじりに涙目で頬をさするロボ。
しばらくして
「あれ、ニコ」
「え?」
落ち着きを取り戻した声に振り向くとロボがじっとあたしを見ていた。
「ニコ、その格好…」
沈黙が空間を包み、あたしは魅入られたように動けない。
何か言ってよ、ロボ。
「あれだな……馬子にも衣装ってヤツ?」
「はあ〜!?」
予期していなかった言葉に思わずカチンときた。
「何それ、サイアク!ロボのバカッ。あたし帰る!」
「うわぁ、ちょっと待って!違うって、ニコッ」
怒りに任せて身を翻すと慌てたロボに腕を掴まれて、突然の引力にあたしは
なすすべなくロボの腕の中に倒れた。
「大丈夫、ニコ?」
心配そうに見下ろすロボを押しのけて起き上がり
「もう、やだ〜。せっかく綺麗にしてきたのにぐちゃぐちゃになっちゃうよー」
髪に触れながら声を尖らせるあたしをロボは身体をずらしてベッドに端に腰掛け曲げた膝で
囲むようにして両手を優しく重ねる。
ロボの暖かい手は男の人と思えないくらいに柔らかい。ほのかにラムネの甘い味がした
あの日の唇と同じように。


418 名前:夏色 4/5 mailto:sage [2008/08/22(金) 07:53:29 ID:h2CuM/xm]
「ごめん。さっきのは冗談だからね!今日の二コは可愛いよ。
いつも可愛いけど、今、俺の目の前にいるニコは特別綺麗だ」
「ほんとに?変じゃない…?」
伏し目がちに問い返すあたしに
「うん、よく似合ってる。嬉しいな、俺」
よかった喜んでくれて。どうしよう照れちゃうよ。恥ずかしい。
「ありがと。 あ、ご飯食べる?」
と、ロボからすり抜けようとしたあたしの手首を掴んでそこから離れることを許さない。
「ロボ?」
ニヤニヤしたかと思ったら、えーっとね、と目を閉じ唇を突き出す。
「何、それ」
「おはようのキス」
「はあ?今、何時だと思ってんの」
「チューしてくれたら起きる〜」
「マジで言ってるんだ…」
「うん♪」
いい歳して甘えるロボに大きな子供が駄々こねるみたいだと思いつつ
じっと自分からのキスを待つロボにふとあることを閃いた。
よし、ちょっと驚かせてやれ。
肩に手を置いて軽くチュッと音をならすと嬉しそうに瞼を開きかけたロボの唇を再び塞ぐ。
首に両腕を絡ませて口内へ大胆に忍び込む。
「んっ…ニ…」
強く押し付けた唇の隙間から息遣いにまぎれて漏らす声に抗う様子は感じられない。
だって、あたしからのキスを拒む理由なんてないでしょ?
ねえ、ロボ。

やがてロボの長い腕が撫でるように背中から腰へとすべり、ぎゅっときつく抱きしめられて
より密着する二人の体温。
途切れ途切れにお互いの吐息が熱く零れて、長い口づけが終わりをつげると
唇から名残惜しそうにひいた糸が口元を濡らして白く光らせ、あたしはゆっくりそれを舌で掬い舐めた。
「少し付いちゃったね…」
あたしの色に薄っすら染まるロボの唇を指先で拭い、輪郭をなぞりながら
ぼうっと虚ろなロボの漆黒の瞳に自分の姿を映す。
「完全に目が覚めたでしょ?」
「…うん。俺、ヤバイかも……」
「ヤバイって、何が?どういうこと」
更に距離を縮めるあたしにハッとして未だ自分の頬に添えられたままの腕を振りほどく。
「その…だから、色々とヤバイんだよッ。
こんなキスされたら、それだけでも溶けそうなぐらい気持ちいいのに
昼間から押し倒したくなるだろ〜」
額に汗を滲ませ、ロボは堪りかねたように焦りの色を見せる。
…ああ、そういうことか。
そんなに刺激強すぎたかな?


419 名前:夏色 5/5 mailto:sage [2008/08/22(金) 07:54:19 ID:h2CuM/xm]
「やだー、何考えてんの、ロボ」
「しょうがないでしょー、男の生理的現象というか…。
それもこれも全部ニコのせいだよ!どうしてくれるの?」
「知らなーい」
って、とぼける振りして、ロボの耳に唇を寄せ甘く囁く。
「もう一回してあげようか?」
ふぅと息を吹きかけると
「ちょっ、それが危険なんだって!」
赤く色づいていく耳を押さえて後ずさり窓ガラスに勢いよくロボは頭をぶつけた。
バッカだなぁ。
「いってー!」
いつになくキョドっている様が可愛く思えて実におもしろい。
もう少し苛めてやりたい気もするけど。

「はい。じゃあこれで終了〜」
「え」
「なあに、何かご不満でも?」
あ、いやとちょっぴり残念そうな本音を覗かせて、
「まあ、いっか。ニコが俺のために着て来てくれたものをすぐに脱がせるのは悪いから、
今夜までは浴衣美人を存分に堪能して、楽しみはその後にとっておくことにしよう。うん、それがいい」
ひとり納得顔で言うとさっとうなじにキスして素早く離れた。
「こらッ」
「お返し〜」
ふいに襲ったくすぐったさに手を当てて小さく睨んで
もう!と背中を小突いて、その場から追い立てる。
触れた首筋が熱い。
あたしの手中にあった甘い果実はあっというまにロボの掌へと転がり落ちていく。
どうしても物事の結末はロボに軍配があがってしまう。
恋の神様は気まぐれだ。ずるいなぁ。

「どうしたの、ニコ。難しい顔して」
「ううん、別に。ロボ、さっさと着替えなよ」
ロボの肩越しに吸い込まれそうな青が一面に広がって遠くの空には真っ白な入道雲が立ち昇っている。
「あの入道雲、綿菓子みたいでおいしそう」
「え〜、どこがだよ〜」
真新しい洗い立てのシャツに袖をとおしながら、ロボが呟く。
「……なんて、実は俺も昔から夏の空を見るたび全く同じこと考えてた。
ソフトクリームにも見えない?」
「見える!あ〜なんか、イヤシイよねぇ、あたし達って」
「え、イヤラシイ?」
「バカ」
「バカじゃないです〜。オタクです〜」
おどけて笑うロボの顔はとても眩しくて真夏の太陽にも負けやしないと思う。
その笑顔は反則だ。

「今日も暑そうだなぁ」
「そうだね」
チリンと風にそよぐ音色に交じり、にぎやかな子供達の声が窓の外で弾けて
二人の肌を射す夏色の風景とともにその眩しい煌めきをそっと瞼の奥に閉じ込めた。


終わり


420 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/08/22(金) 08:26:58 ID:beNggZMo]
あ〜いい!
心に沁みた
GJ!



421 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/08/22(金) 21:08:45 ID:BsbTV42O]
>あたしの手中にあった甘い果実はあっというまにロボの掌へと転がり落ちていく

わかる気がする〜
何だかんだ言ってもロボのペースに巻き込まれるニコが可愛いw
詩的な文章が素敵だとおもいました
GJでした!


422 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/08/23(土) 04:39:33 ID:+tcA3M0M]
積極的に迫ってみるニコいいな〜
gj!

423 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/08/31(日) 00:22:48 ID:8U5uDDQH]
保守

424 名前:名無しさん@ピンキー mailto:age [2008/09/04(木) 07:11:18 ID:G2qQkof3]
とりあえずほしゅ

425 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/05(金) 04:02:17 ID:6GZyIJMt]
何ヶ月ぶりかにここのぞいたよ!
職人さん方マジGJ!

次スレものんびり続いてくれたらうれしいな

426 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/11(木) 22:25:45 ID:aSNqWxeh]
本スレで続編書いてた人、こっちくればいいのに・・・
全年齢板じゃないからやっぱ誘導はまずい?

427 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/12(金) 07:57:22 ID:LJTPgmgj]
>>453
このスレの存在を知らないのかな?どうなんだろう?
もしそうならテンプレやSSスレってカキコから
気付いてくれるのを待つしかないかなー






428 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/12(金) 13:48:54 ID:1+HsLuBe]
あのまま流れてしまうのももったいない気がするね

429 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/14(日) 17:19:13 ID:y7eqA4BU]
そろそろ作品が読みたい…

430 名前:僕の好きな花 1/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 13:57:37 ID:SFb3SI6E]
残り容量埋まるかな?位のがあったので投下します。一海ちゃん絡みでエロ無し、ベタな話です。


* * * * * * *

「ロボあたしに隠し事ない?」
「えっ、べ、別にっ。何にもないよっ!なんでっ!?」
「別に……ただ言ってみただけ」
 その時ふとテレビから流れて来る流行の曲が耳に届いた。
 今上映中の恋愛映画の宣伝が画面いっぱいに映っていた。私はそれについて大した興味は
なかったんだけど、ロボはというと普段アニメを食い入るように見てるのと同じ顔して
画面に釘付けになっていた。
 話題になっている熱烈とも言える激しいキスシーンを、それこそ穴が開くのではないか
と思える程眺めてゴクリと生唾を飲んだ。(多分聞き取れたのは私だから)
「ロボ、この映画観たいの?」
「えっ?……いや、何かヒットしてるみたいだから面白いのかなって……ていうか
 こういうのは恋人同士で観るもんでしょ!?」
「まあね。ロボには関係ないか」
「あ、まあ、うん……って悪かったな!」
「はいはいゴメンゴメン」
「心がこもってなーーーーい!!」

 いつもの通りの私と、そしてロボ。一見そんな風に見えるけど、多分何かが変わろうとしている。

 ロボ、嘘つくの下手だね。

 あれは数日前。
「あ、一海ちゃんだ」
 学校の帰りにカフェで窓際に座る一海ちゃんを見つけた。
 1人だったから珍しいと思って見ていたら、どうやら誰かと待ち合わせしていたようで
出入口の方へ軽く手をあげた。
「また新しい彼氏ー?」
 そんなのいつもの事で大して驚きもしなかったんだけど、暇だしまあ今度はどんな相手か
見てやれ、なんて私にしては珍しくその日に限ってちょっとした好奇心が働いた。
 今にして思えば、それは虫の知らせというのか第六感?というものだったのかもしれない。
 何故ならその時一海ちゃんの前に笑顔で座った相手とは。
「……うそっ……!?」
 それは間違いなく、


 ロボだった。





431 名前:僕の好きな花 2/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 13:59:19 ID:SFb3SI6E]
 あれだけ昔はロボの事嫌がってたのにな。だけどいつの間に……。
 昨日の事を思い出しながら目の前のロボを見る。いつもと同じ。部屋でグダグダしている私達。
「ねえ、あたし邪魔じゃない?」
「ん?別にいつもの事じゃん。なに今更」
「いやだってさ、出掛けたり誰か来たりとかしないのかなーって。……その、デートとか、さ」
 そう言うとロボは肩をビクッとさせてこっちを見た。
「……何だ!それは俺に対するイヤミか、あてつけか、それともイジメか!?」
「ああもう、いいや。ハイハイ悪かったよ」
「だあ〜か〜ら、心がこもってないっての!!」
 本当に普段通り、表面的には何ら変わりなく私達は重なり合う時間を過ごしている。
 それはあの頃とまるで同じ感情を互いが持ち合わせているから。
 そう、何ら変わりなく。
 頭は下げて手元のロボットを見てるように見えたけど、ちらりとロボがテレビに目線
だけをこそっと向けたのがわかった。
 またあの映画のCM。
 ああそうか、もしかしたらそうなのかもな。
 バッグを手にすると私は立ち上がり、玄関に向かった。
「どこ行くの?」
「帰る」
「えっ、来たばっかりじゃん!何で?」
「ん、来週からテスト。勉強しないとね」
 ロボの顔を何となく見ないようにしながら靴を履くと
「んじゃ」
と軽く背を向けたまま手を挙げてドアを開けた。
「そっかぁ〜……頑張れよ!!」
「うん」
 そのままできるだけ普通に部屋を出たけど、階段を降りる足はもつれそうで、このまま
転がり落ちてしまうのではないかという変な恐怖に駆られながら、半ば逃げるように
家へ帰った。

 どうしちゃったんだろう私?
 急にあの部屋に居るのが……

 ロボの顔を見てるのが、嫌になってしまったのだ。


432 名前:僕の好きな花 3/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 14:01:17 ID:SFb3SI6E]
 翌日の日曜もロボには会わず、テストと言った手前(本当にそうなのだが)部屋で
教科書を開いてはいた。中身はというと全然理解などできていないんだけど。
 1日そんなふうに無駄に過ごしたところであっという間に外は暗くなった頃、
「ただいま。あ、二湖いたんだ!?」
朝から張り切って出掛けていた一海ちゃんが帰ってきた。
 何よ、いたら悪いの?少しムッときた。
「……お帰り。一海ちゃんデートどうだった?」
「ん〜まあまあね。珍しいね?二湖がそんな事聞くなんて……まさかついに恋でもしたの?」
「違っ」
「照れなくていいじゃない。もしそうならい・つ・で・も相談に乗るからね♪」
「もう違うってば!放っといてよ!!」
 しまった!ハッとした時には一海ちゃんの驚いた顔が目の前にあった。
「あ、ゴメン……ちょっと試験前で苛ついててさ」
「あ、そっか、私こそ邪魔してごめんね。階下に行ってるから」
 私何を苛々してるんだろう。何も悪くないのに、一海ちゃん……ごめんね。


 試験は散々だった。
 多分辛うじて赤点は免れたって所かな?
 終わったものは仕方がないと開き直って、気分転換にちょっと商店街をぶらついて
帰ろうとしていて、ふとある場所で懐かしさに立ち止まった。
「また花屋になったんだ……」
 そこは以前『NH』の看板のあった花屋。
 店先に並んだ花を眺めながら、過ぎてしまったあの刺激的な日々を思い出す。
 もう戻ってなど来ないあの頃の私達。
「あれぇ、ニコ今帰り?」
「ロボ」
「花なんか見て……どうすんの?買うの?」
「あ、いや別に」
 その時店員さんと目が合ってしまって、何となくその場を離れにくくなってしまった。
「えっと……じゃ、これ1本下さい」
 適当に目に付いたピンクの薔薇を指差した。
「それにするんだ?ふーん。綺麗だね」
 バケツから引き抜かれた1本の薔薇を眺めながらロボは言った。
「そうだね」
 私の返事に頷きながら嬉しそうに花を見つめる瞳はきらきらして、その眩しさに思わず
目を逸らした。


433 名前:僕の好きな花  4/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 14:03:02 ID:SFb3SI6E]
「なんていうの?それ」
 帰り道、ロボがラッピングされた薔薇にサービスで添えてくれたかすみ草を指差した。
「かすみ草って言うんだよ。知らないの?ま、花なんか縁がなさそうだもんねー」
「し、失礼だな!!……でも不思議だな。1本でも綺麗なのに、これを添えるだけで薔薇が
 一層際立つんだね」
 確かに、そのままでも綺麗な花がかすみ草ひとつでさらにその姿を引き立たせているみたい。
「あ、ねえニコ、その、一海ちゃん、何か言ってた?」
「え、別に。何で?……会ったりでもしてるの?」
「い、いやべっ別にっ!?会ってないよ、全然会ってない!会うわけないじゃん」
 あ、そう。別に力一杯否定しなくてもいいのに。
 ……バカみたい。
「ああ、あのさ、この前言ってた恋愛映画ってさ〜、好きかな?」
 見上げたロボの顔は、耳まで真っ赤だった。
「……知らない」
 その顔を見てしまった私は、なんだかわからない苛立ちに襲われかけていた。
「ん、ニコ何怒ってんの?俺なんか悪い事言った〜?」
 いつもの脳天気なイントネーションが、私の苛々を益々刺激する。
「そんなの自分で聞けばいいじゃん!!バカじゃないの?」
「えっ、ちょ、何だよそれ!?ニコ何怒ってんの?」
「怒ってなんか……」
「怒ってんじゃん!!」
 バカ。私が何も知らないと思ってるんだ。
「……あたし、もう帰んなきゃ。明日もテストまだあるんだ」
 持ってた花をロボの胸に押し付けた。
「あげる」
「ちょ、ニコ待てよ」
「一海ちゃん、ああいうの好きだよ。多分観たがってるんじゃないかな?」
 わけがわからない といった顔でその花をロボが掴むのを確認すると、私は背を向けて
駆け出した。
 ロボが何か言いながら追ってきたけど、聞かないように必死で走った。やがて振り向くと
夕方の人ごみに紛れてその姿は見えなくなった。
「あたし、どうしちゃったんだろう……?」

 ロボの顔がまともに見られなかったんだ。


434 名前:僕の好きな花 5/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 14:04:13 ID:SFb3SI6E]
 その日の夜、ロボから電話があった。正直出る気が何故かおきなかったけど、出ない
理由を見つける方が面倒な気がした。
『もしもし、ニコ?俺だけど……まだ何か怒ってる?』
「別に何でもないってば。テストでちょっと苛ついてんだ、ゴメン、何?」
『ならいいけど……あのさ、今週の土日どっちか暇?』
「は?……何で」
『いや、何でってその、あの、ちょっと付き合ってほしいなと』
「……一海ちゃんに言えばいいじゃん」
『えっ?もうそっちから聞いちゃったの!?』
 電話の向こうでうわぁ!とかマジで!?とか喚いて慌てふためいた声が聞こえた。
『ん〜仕方ない……じゃ、そういうわけで、ニコもどう、かな?』
 仕方ないって、じゃ、って。
「……無理。その日、用事あるから」
『あ、そうなんだ。じゃ仕方ないな〜……』
「ごめんね」
 嘘、ついちゃった。
『いいよ。あ、テスト頑張って』
「うん」
『花ありがと。これ綺麗だよな』
「そう?」
『うん。なんかさ、このかすみ草?っての、ニ、ニコみたいだよね』
 携帯を持つ手が、向こうから聞こえるロボの声に一瞬にして凍りついた気がした。
「……そうかな」
『うん。似てるよ。ニコに』
 明るく言い放つ声に私の目の前は少しずつ影を落としてゆく。
「じゃあ、薔薇は一海ちゃんだね」
『え〜?そうかなぁ』
「似合うと思うよ。ロボ、プレゼントしてあげたら?じゃ、勉強するから切るね」
『へ?あ、うんバイバ』
 言い終わらないうちに電話を切った。
 これでいい。
 今度こそロボは好きな人を諦めたりはしないだろう。
 以前のように、いつか来るかもしれない別れの日々に脅える事はもうないのだ。


435 名前:僕の好きな花 6/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 14:05:48 ID:SFb3SI6E]
 なのに、私は一体どうすれば良かったんだろう。叶ったはずの願いも、ずっと本心から
願ったロボの幸せも、何故か笑顔で喜ぶ事を躊躇っている。

 一海ちゃんはあのピンクの薔薇みたい。1本だけでもとても綺麗で、その存在感を
示して立っていられるんだ。
 でも私は。
「かすみ草かぁ……」
 誰かに寄りかかってひっそりと、まるで引き立て役みたいに咲いている。
 薔薇がある限り決して主役にはなれない。
 そしてそれは当然の事で、誰からも責められるものではない筈なのに、微笑むロボと
一海ちゃんの顔を重ね見る事ができない。
 苦しくてたまらない。
 なんで話してくれないんだろう?
 何を隠してるの?
 ううん、違う。そうじゃないんだ。それだけじゃないんだ。
 この痛みは私が今まで経験した事のない……ううん、多分1度だけ。そう、1度だけ
同じものを味わった事がある筈……。

 薔薇の一海ちゃんとかすみ草の私。

 私は今日ほど一海ちゃんを羨ましく思ったことはなかったかもしれない。



 試験と言っておいたからか、あれから数日経つが電話は掛かってきていない。
 まあ掛かってきてもどうかと思うんだけどね。
「ねえ二湖、この服どう?」
 お風呂に入って部屋に戻ると、一海ちゃんが明らかにデートモードに入ってる。
 今着てるワンピはこの前給料日に買ったばかりのやつだし。
「うん、いいんじゃない」
 当たり障りのない返事をして何気にテーブルを見ると、ある物が目にとまった。
 それはチケットだった。あの映画の。
「一海ちゃん……これ、行くの?」
「え、あ、うん2枚あるからって貰ったのよ。だから行こっかなって」
「へえー……彼氏と?いいね」
「うん。……やっぱり珍しい。二湖がそんな事言うなんて」
「えっ?そ、そっかなー」
「ああ、さてはやっぱり好きな人出来たんだっ!?」
 いきなり何なんだ!一海ちゃんは私の顔をのぞき込むとニヤニヤしてる。


436 名前:僕の好きな花 7/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 14:07:39 ID:SFb3SI6E]
「二湖も行くんでしょ?」
「行かないよ」
「嘘、だって誘うって言ってたのに……」
 そこまで言っといて「しまった!」という顔で慌てて口をつぐんだ。
「誘うって誰が?」
「え、えっと、何でもないのよ。何でも」
 ふざけてるの?何だか本当にいい気がしない。
「……ねえ、一海ちゃんの彼氏ってどんな人?」
「え?どんなって……あ、やっぱり二湖何かあったんでしょ?」
「ないよ」
「もう、隠さなくっていいよ?お姉ちゃんが聞いてあげるってば」
「もう、いいってば!」
 私の苛立ちはついにピークを迎えてしまった。
「何なのよ2人して、はっきり言ったらいいじゃない!?あたしになんかコソコソ
 しちゃってさ!今更隠すことないじゃない。おかしいよ、一海ちゃんも……」
 ロボも。
「二湖!?ちょっとどうしちゃったのよ。本当に何かあったの?」
 何もないから怒ってるんじゃない。頭にきちゃってるんだよ。
「ね、もしかしてあの……オタクと何かあったの?」
「何も。何もないよ。言ってくれない。あたしには……」
 打ち明けてはくれない、何も。
「そう、そうなのね。わかった」
 そう言うと一海ちゃんは携帯を取り出してどこかへ掛けた。
「もしもし、一海です。ちょっとどういう事なんですか?話が違うでしょう!?」
『えっ、一海ちゃん?違うって……いや、それはその』
 ロボだ!そっか携帯知ってるんだ。って何で一海ちゃんが怒ってるの?
「私ちゃんと言いましたよね?二湖にはちゃんとあなたから伝えて下さいねって」
 あー、ロボから私に言うはずだったのか。
『いやそれがその、言う前に斬られたと言うかその……』
 はっきりしない奴だなぁ。だったらさっさと言やいいのに。また振られちゃうよ?
「そんなだったら私、姉としては大事な妹預けるわけにはいきませんから!!」
 ほらいわんこっちゃない……。

……………は?

「えっ!?」
 何でそこで私が出てくんの!?
 向こうで『ごめんなさい』というのを最後に電話は終わっていた。




437 名前:僕の好きな花 8/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 14:09:17 ID:SFb3SI6E]
 マーックス!の歌声と共にガサガサと袋の揺れる音が聞こえる。それからゆっくり
階段を昇る足音、そして……
「ただいまっくす〜……って、あれっ!えっ、いたのっ!?」
「お帰り。いちゃ悪い?」
 ううん、と言いながらパン耳のいっぱい入った袋を流しに置く。さっきの音はコレか。
ていうかいつも挨拶してんのか?誰にだ。……ああ、ロボット達か。
「ニコ、テスト終わったの?」
「うん」
 そっかぁ〜って言いながら奥に着替えに行くロボを目で追うと、ちゃぶ台の上の牛乳瓶に
挿した薔薇とかすみ草があった。
「ああ、それもう元気なくなってきちゃったんだよね……ごめんな、せっかく
 くれたのに」
 ちゃんと飾ってくれてたみたい。水も綺麗だし、大事に手入れしてくれて。
「いいよ、仕方ないもん。それよりちゃんとあたしにも話してくれないかな?……一海ちゃん、
 ロボに聞けって教えてくれないんだもん」
 2人で何を隠してるの?
 一体何がしたいのよ。
 気になるよ、とても。
 上着とネクタイを掛けるとロボは私の目の前に座り、あるものを取り出した。
「これ、さ、行かない?」
「誰と?」
「俺と」
「誰が?」
「ニコ」
 …………は?
「えっ?チケット2枚あるけど」
「だから俺とニコ」
「一海ちゃんも2枚持ってたけど?」
「うん俺があげたの。2枚あるから彼氏とどうぞって。得意先から貰っちゃって
 余るのも何だし、一海ちゃん相談に乗ってくれたからさ、お礼というか何というか」
 2枚あるからって、どうぞって……ああ、『2組』あったわけね。それでか。って、あれ?この展開は。
「ロボが一海ちゃんと行くんじゃなかったの!?」
「へ?何で俺がっ!?一海ちゃんにはちゃんと彼氏がいるでしょ。あれ、ニコ
 知らなかったの?」
「知らない。じゃあ何でロボと一海ちゃんが会ってたの?あたし見たんだよ」
 カフェでの目撃談を明かした。


438 名前:僕の好きな花 9/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 14:11:16 ID:SFb3SI6E]
「見たのっ?じゃあ話とか全部聞いちゃったの!?」
「聞いてないからわけわかんなくて、こうなってるんじゃん」
 そっか、って呟いたきりしばらくの間黙り込んでいたが、やがて顔をあげた。
「……あのさ、うまく言えないんだけど、例えばこの薔薇ってさ、かすみ草が無くても凄く
 綺麗なんだけど、添えられることでもっと魅力的に見えるんだよね」
 それってやっぱ、引き立て役って事じゃん。
「つまりさ、その花の良い所をちゃんと見せてくれるんだよね。……俺さ、ニコといる時の
自分が凄く好きなんだ。無理して飾らなくてもニコは変わらず見てくれる。他の女の子じゃ
 きっとこうはいかないよ。ニコと出会って色んな経験したから自分を好きになれて認める
 事が出来たんだと思う。だから俺は今はどんな花よりかすみ草……好きなんだ」
「で、一海ちゃんとは何を……」
「!?……ニコって……案外鈍いよな……」
 ロボはちらと飾った花を見て、それから私を見た。
「映画館の前で広告見ながら悩んでたら偶然一海ちゃんに会って、思い切って相談したんだ。
 最初気に入らないみたいだったけど真面目に話したらわかってくれて、それとなく
 ニコの気持ちとか聞いてくれるって。時々会って話してた。黙っててごめんね?」
 そうなのか。一海ちゃんロボと……私のために。悪いことしちゃったな。

 って、えっ?

「あたしの気持ち?」
「ニコ、俺のことどう思う?」
「へっ!?ど、どうって」
「友達とか、バカな奴だなぁとか、下手すりゃキモイとか……じゃなくって!
 その、す、好きとか嫌いとか」
「あたし?」
 私はロボのこと……。
「俺は、すっ好き……!」
 ………………えっ?
「だから。ニコの事好きみたいなんだけどっ!」
 この前花屋で会った時みたく耳まで真っ赤な顔をして、私の正面で正座したまま
固まっている。


439 名前:僕の好きな花 10/10 mailto:sage [2008/09/16(火) 14:13:56 ID:SFb3SI6E]
「え、あの、あたし!?あたしはてっきり、ロボは一海ちゃんと……」
「はあ?」
 付き合ってると思ってた。ロボはついに想いを遂げる事が出来たのだと。
「俺が好きなのはかすみ草だって言ったじゃん。ニコはそうやって誰かを……俺を
 幸せにしてくれてるんだよ」
 ちょっと恥ずかしくなった。私そんなに凄くないよ?1人で勝手に陰に隠れていじけてた。
 けどそんな風に感じてくれてたと思うと素直に嬉しかった。ロボにそう想って貰えたのが、
嬉しい。自分でわからない自分の姿を見出して好きになってくれるなんて。
「映画観に行きたいな」
「ああ、じゃ行く?……って、えっ!?」
「だから行くってば。付き合うよ、映画」
「……映画だけ?」
 やっぱり言わなきゃダメ?なんか私柄じゃないんだけど。……すっごく恥ずかしい
んですけど!?
「だからっ!付き合うよ。映画も……ロボとも」
「……顔、赤いね?」
「そっちもじゃん」
「妬いてた?一海ちゃ」
「うるさい!」
 真っ赤な顔しながらニヤニヤしてるロボがなんか腹立たしくなってきた。
「やっぱやめよっかな……」
「えーーーーーーっ!?」
 一瞬にして赤い顔がまた青くなった。やっぱりやめるのやめるか。面白いし。


 でもせっかくの映画はちっとも頭に入らなかった。
「ロボ寝ちゃうんだもん!バカ」
「ごめん……けどニコは起きてたんだろ!?」
 だって、寄りかかるロボの体に私の左肩は全神経が集中しちゃって、それどころじゃなかった。
「よし!DVD出たら真っ先に買おう。そんで一緒に観よう!……今度こそ寝ないぞ」
「本当は退屈なんじゃないの?普段ロボットアニメしか観ないくせに」
「だってデート、だし、か、彼女と映画なんて緊張と楽しみで夕べ……ん、ニコ?」
 耳まで朱くなりそうなのがわかる。
「照れてる?」
 ロボは可愛いねえ〜って私の頭をよしよしと撫でる。
「子供じゃないのっ!」
 なんて言いながら私の頬は自然と弛む。

 だって幸せなのは私の方もだからね。

* * * * * * *終り


うわぁぁぁうまく埋まらんかったorz
残り中途半端でごめんなさいごめんなさい!


440 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/16(火) 15:58:47 ID:SFb3SI6E]
次スレは保管庫も入れるんですか?>テンプレ



441 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/16(火) 23:46:41 ID:Eiqgzupc]
>ニコといる時の自分が凄く好きなんだ

これを素直に言えるロボが自分は物凄く好きw
一海ちゃんもいいお姉ちゃんだ
GJ!


保管庫ですが次スレのテンプレに入れてもいいと思う
たてるのはまだ早いっすかね?


442 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/17(水) 03:38:41 ID:M6C3+jUJ]
ニコはロボに出会うことで自分で自分の味方出来るようになったけど
その変化はロボも同じだと思っていたので(1話では違っていたし)
こういう話はめっちゃいいなーと思います。GJ!

443 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/19(金) 03:25:19 ID:cqu9g135]
とりあえず次スレ立てました

【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ5【マンガ】
yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1221761797/

スレが立ってまもなく何日もレスがないと即死して落ちてしまうことが
あるようなのでよろしければ支援カキコお願いします

444 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/19(金) 04:13:32 ID:FMBLUhEa]
>>1
スレ立て乙&ありがとうございます。
5スレ目まで来ましたか…

445 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/19(金) 04:15:35 ID:FMBLUhEa]
>>471だったorz

446 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/19(金) 04:16:57 ID:FMBLUhEa]
とおもったらまた安価間違い
なんだこれorz
とりあえずあっちにも書いてきます

447 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/19(金) 16:53:43 ID:WBVpT8/g]
残り容量埋めてみる。 よっちゃん新婚ロボ家にお呼ばれされるの巻。


「ロボー、できたよー」
「おっ、やった!ニコのカレーだぁ〜。よっちゃん、たくさん食べてよ〜。
ニコのカレーは世界…いや、宇宙で一番おいしいんだから!」
おまたせーと、ニコが卓袱台に置いたカレーの食欲をそそる匂いに
待ってましたとばかりにロボは皿まで食べ尽くしそうな勢いで口に運ぶ。

「ねえねえ、よっちゃん。このサラダに使ってるきゅうりとトマトはね家庭菜園で
あたしが育てたんだよ」
「家庭菜園?おまえが?」
マジかよと言いたげなその表情がすべてを物語っている名梨にニコは淡々と
「今の世の中、物価高じゃない?ただでさえ苦しい家計を圧迫されて、
色々と大変だからさぁ、少しでも負担が解消されれば思ってね。実家の庭で作ってたの」
「結構、涙ぐましい努力してんだな、ここの新妻は。ま、節約するのもいいことだ」
「でも、ちっちゃいとこだから、作るものも限られてくるんだけどね」
感心だ、偉いと誉めそやす名梨と肩をすぼめて笑うニコの会話に
人知れず耳を傾けていたロボの顔がみるみる暗く沈んでいく。
「やだ、どうしたの!?」
「なんだぁ?」
「ごめんよ、二コ…。俺が安月給なばっかりに。そのくせ趣味にもお金つぎ込んで…
本当はもっといいものも食べさせてあげたいのに」
自分の不甲斐なさを憂い嘆くロボに世話が焼けるなぁとニコは頬を緩ませて
「ほら泣かない!男でしょ。ロボがオタク貧乏なのは昔からよーくわかってますって。
あたしはあたしなりにこれでも楽しんでやってるんだから。変な気まわさないの、ね?」
「…ニコ」
「それにロボが一生懸命汗水流して働いてくれてるから、あたしも頑張れるんだよ。
なんてことない普通のカレーもこうして仲良く卵をかき混ぜて食べれば
どんな豪華な料理にも負けないんだから」
「ありがとう…。俺、ニコと結婚して本当によかったぁ」
「あたしもだよ、ロボ」
二コの手を固く握り締めて見つめ合い、瞳に映るのは目の前の相手だけ。

「…おい、おまえら、俺は無視かよ」
何ともいえず漂う空気に居心地悪そうな名梨の困惑気味の声も届くはずもなく。

「ね、ニコ。今夜は一緒にお風呂入らない?」
「え〜、やだ…どうしようかなぁ。やっぱなんか恥ずかしいよ」
渋るニコに甘えた口調でせがむ。
「いいでしょ?このお願いだけはまだ一度も叶えてもらってないもん。
俺達、新婚さんなんだよ〜。恥ずかしがることなんてないよ!」
期待に胸膨らませるロボは一歩も退かない食いつきぶりで。

「いつまで続くんだよ…。この色ボケ茶番劇は」
新婚に関わるとろくなもんじゃねえなと終わりのみえない熱烈ぶりに呆れ返り
辟易しながらもカレーだけはおいしく平らげて、律儀に皿を洗い後片付けをすると
「勝手にやってろ」
と、なおもイチャつく二人を尻目に腹におさまったものとは別の胸焼けを起こしそうな部屋を後にした。




448 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/20(土) 02:37:53 ID:OtKxHiDF]
よっちゃんww
プロフェショナルな男も新婚さんの前では空気も同然?w

449 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/20(土) 11:13:35 ID:ihWMRA3M]
つうかエロボの願いは叶ったのかな?
気になるw

450 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/21(日) 07:47:02 ID:XVEZ07vR]
埋め埋め


((<(・∀・)> <バテレン

<(・∀・)>)) <レンコン

<(・∀・)>  <トマトハ

\(・∀・)  <マーックス!




451 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/21(日) 07:50:43 ID:XVEZ07vR]
埋め埋め


(((((;`Д´)ノニコーーーーーー!!!

           ・・・・・(´Д` )

 ごめん・・   
 
俺行くね♪ヾ(*´∀`)ノ⌒Y⌒Y⌒Y⌒


           ハァぁぁッ━━━(゚Д゚ )━━(゚Д゚)━━( ゚Д゚)━━━━!!!???? 



(・∀・)ゴメンネー♪


452 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/21(日) 07:53:47 ID:XVEZ07vR]
埋め埋め


   ___
   /:::::::::::::::::::ヽ
   l/^_,ヽ,_:::::::::::)
  从 ・ω・) ̄´   < ぬ〜すんだバ〜イクでは〜しりだっすぅ〜
   ( O┬O
≡◎-ヽJ┴◎


行くっ先は…そこだぁーーーーー!


453 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/21(日) 07:56:07 ID:XVEZ07vR]
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【ドラマ】セクシーボイスアンドロボ5【マンガ】
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埋ったかな?


454 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2008/09/21(日) 11:00:19 ID:iCQehxS8]
まだいけるんじゃね?
便乗ウメ


。          o
   。     。
 。    
       o   ○    。
    。  
 ○       。
             o      。
。      。

              o
    o           
。 ∧∧ヘヘ       ふたりでいると     。
  (  ノ  )    o あったかいネ・・・
  ./  |  \   
 (___ノ(___ノ    一緒に次スレに旅をしよう・・・   ○
/       \







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