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ヤンデレの小説を書こう!Part4



1 名前:◆lPjs68q5PU mailto:sage [2007/02/25(日) 00:49:58 ID:S4t41Ekl]
ここは、ヤンデレの小説を書いて投稿するためのスレッドです。

○小説以外にも、ヤンデレ系のネタなら大歓迎。(プロット投下、ニュースネタなど)
○ぶつ切りでの作品投下もアリ。

■ヤンデレとは?
 ・主人公が好きだが(デレ)、愛するあまりに心を病んでしまった(ヤン)状態、またその状態のヒロインの事をさします。
  →(別名:黒化、黒姫化など)
 ・ヒロインは、ライバルがいてもいなくても主人公を思っていくうちに少しずつだが確実に病んでいく。
 ・トラウマ・精神の不安定さから覚醒することもある。

■関連サイト
ヤンデレの小説を書こう!SS保管庫
yandere.web.fc2.com/
■前スレ
ヤンデレの小説を書こう!Part3
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171290223/

■お約束
 ・sage進行でお願いします。
 ・荒らしはスルーしましょう。
  削除対象ですが、もし反応した場合削除人に「荒らしにかまっている」と判断され、
  削除されない場合があります。必ずスルーでお願いします。
 ・趣味嗜好に合わない作品は読み飛ばすようにしてください。
 ・作者さんへの意見は実になるものを。罵倒、バッシングはお門違いです。議論にならないよう、控えめに。

■投稿のお約束
 ・名前欄にはなるべく作品タイトルを。
 ・長編になる場合は見分けやすくするためトリップ使用推奨。
 ・投稿の前後には、「投稿します」「投稿終わりです」の一言をお願いします。(投稿への割り込み防止のため)
 ・苦手な人がいるかな、と思うような表現がある場合は、投稿のはじめに宣言してください。お願いします。
 ・作品はできるだけ完結させるようにしてください。


438 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:00:55 ID:usAZ35BY]
「は゛い゛っ?!」
「もっかい、あたしの前で、今すぐ、Hなさいといったの!」
「え〜!!」
「店長!それ横暴です!」
「えみるって、呼べって言ったでしょう?!」
「だっててんちょ・・・」
「次言ったら解雇します」
「え゛〜!!」
「そ、そこまで言いますか、笑留さん?!」
「だぁってぇ〜」
といって体をくねらす笑留。
「だってぇ、店長なんて、堅っ苦しい言われ方いやなんだもん♪それにね」
というや笑留はあずさの背後に回りこみ後ろからあずさを愛撫し始める。
「て・・・えみるさん・・・ちょっと・・・あ・・・」
「こんないいことしてて笑留だけ仲間はずれって、ずるいんじゃない?」
「え・・・えみるさん・・・うますぎ・・・」
笑留はついさっき耕治がやったように片手を胸、もう片方を股間にやり愛撫している。
しかしその手つきは、耕治よりはるかに巧い。
見る見るうちにあずさの股間からしずくが滴り落ち始める。
「さぁーてと、あずさちゃんの準備運動はおしまい♪耕治君、さぁ、始めて貰いましょうか?」
「あのー笑留さん?」
耕治が手を上げて質問する。
「なぁに?」
「笑留さんはどうするんですか?一人でするんですか?」
「いや〜ねぇ、そんなわけないじゃない。丁度いいエサがここにあるし」
「えさ?」
笑留は梓から離れると事務室の中にあるロッカーの扉に手をやる。
ロッカーは人間の身長ぐらいの高さ、無理すれば大の男一人でも納まりそうだ。
「ほぉら♪」
笑留はロッカーの扉を開ける。そこには・・・。
「み、みーな!」
「美衣奈ちゃん!!」
美衣奈は両手を股間にやった状態でロッカーに収まっていた。
「あ・・・お、おねぇちゃん・・・」
「アンタなにしてんのよ!閉店からいきなり姿を消したと思ってたら」
「だって・・・お姉ちゃんたちがここでHするの分かってたから・・・ここでずっと待ってたの・・・」
画面の向こうでは薫がキーボードに突っ伏している。
とき子は頬に手をやり、いつもの如く「あらあらまぁまぁ」。
「普通に出てきたらいいじゃないの!」
「だって・・・こっちのほうが興奮するし・・・」
「まぁ・・・姉妹そろって変態さんね♪」
あんたにだけは言われたくない。耕治は心の中で突っ込んだ。
「ということで、美衣奈ちゃんはあたしがいただきます。いいよね?」
断ったてもどーせやるだろうと思って笑留以外の全員がうなずく。
「では、いただきま〜す♪」
笑留はロッカーから美衣奈を取り出すと後ろに回って抱きしめた。
そして笑留は片手で器用にスカートのホックを外し、ミニタイトは下にすとんと落ちる。
笑留は上はスーツにブラウスのまま、下半身は丸出しの状態。
そして美衣奈は自分の腰に異様な感覚があることに気がついた。
何かが当たっているのだ。その感覚に近いものといえば、耕治の・・・。
「え、笑留さん・・・」
「なぁに?」
「腰に、なにか、当たってるんですが・・・」
「ああ、これ?」
笑留は美衣奈から離れ、自分の下半身を見せる。そこにあったのは・・・

ぱおーん。

439 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:03:00 ID:usAZ35BY]
「ででででで、でん゛ぢょ゛う゛!!!」
「なんですかその黒光りしたりっぱな象さんは!!」
「なにって・・・クリトリスだけど?」
「見えません!どう見ても男のアレです!!」
そこにあったのは耕治のソレとほぼ同サイズのペニス(?)があった。
「いやぁ〜ねぇ。間違いなくあずさちゃんや美衣奈ちゃんのモノと同じものよぉ?その証拠に・・・」
笑留は右手でおいでおいでの仕草をする。近づく3人。
「ここ・・・見て・・・」
笑留は3人に自分の一物を近くで見させる。
「あ・・・ほんと・・・ない・・・」
「穴が・・・ない・・・」
笑留の亀頭に相当する部分には、男にはあるはずの尿道口が存在しなかった。つるつるの巨大ルビー。
「この部分、整形でもしたんですか?」
「生まれつき」
耕治は自分がした質問が不用意なものであることに言ってから気がついた。案の定、禾森姉妹に睨まれる。
「こぉ〜じ〜」
「失礼ですよ・・・それは・・・」
「笑留さん・・・失礼なことを言ってすみません!」
すぐに自らの非礼をわびる耕治。
「いいの」
ため息をつきながら笑留は答える。
「コレのせいで小さい頃はいじめられてね・・・味方はおにいちゃんしかいなかったの」
(お兄ちゃんって、前の店長のことだよね)
3人は納得する。
「中学になって、女子校に入ったの。当然コレのせいでバケモノ呼ばわりされたわ。
けど、そこで出会った先輩に助けられたの」
笑留はそこで切り、再びため息をつく。
「入れるほうも入れられるほうも、その人が初めてだった。それから自分に自信がついて。
人付き合いも出来るようになって、高校卒業の頃にはちょっとしたハーレムだったわぁ〜」
言葉に陶酔の色が出だす笑留。3人は半ばあきれた表情でソレを聞いていた。
「その恩人には最後の最後で裏切られたんだけどね」
え?最後の言葉に驚きの声を上げる3人&画面の向こうの二人。
「はい、昔話はこれでおしまい。耕治君、さっさとしないと。
せっかくほぐしておいたあずさちゃんがまた硬くなっちゃうよ?」
「え・・・あ・・・はい」
「え〜、やっぱりするの?」
「あずさちゃん?お姉さんに『解雇』なんて言葉言わさないで、ね?」
「う゛・・・」
「あずさ・・・あきらめろ。入れるぞ」
「ちょ、ちょっと、心の準備が・・・あん!」
じゅるり。耕治の一物はあずさの後方から浸入した。
「あっちもはじめたし、こちらもはじめますか。ね、美衣奈ちゃん?」
「は・・・はい!」
笑留はパソコン前の椅子に腰を下ろした。
「美衣奈ちゃ〜ん?お姉さんの上に腰を下ろしてくれる?」
「はい・・・」
ぬちゃり。
笑留の一物を体の中に受け入れる美衣奈。笑留に言われずとも美衣奈は腰を動かしはじめる。
「うぁ・・・すごい気持ちいい・・・いいなぁ・・・毎日こんな気持ちいい事してるんだ耕治君は・・・」
「耕治さんはいつもお姉ちゃんか薫ちゃんとです。美衣奈はいつも見てるだけです・・・」
「そっか・・・それでこの気持ちよさは納得でき・・・って、耕治君!」
「はい!」
「かぁるちゃんといつもしてるデスって?!犯罪よ、ソレは!!」
「す、すいません!!」
「うらやましすぎ!!!」
がくっ。繋がったまま崩れ落ちる耕治&あずさ。


440 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:03:33 ID:usAZ35BY]
がくっ。繋がったまま崩れ落ちる耕治&あずさ。
「かぁるちゃぁぁぁぁん?おねえちゃんとしよぉぉぉぉ?!」
「い・・・いえにきてくれたらいつでもいいでつよ?」
同じくキーボードに突っ伏したまま答える薫。
「うん!ここで一回したら、すぅぐに、行きますからねぇ〜」
よだれをだらだら流しながら話す笑留。
「ところで・・・ええと、美衣奈ちゃんはお尻もOK?」
「え、え?あ・・・一応経験は・・・っ、って、あ゛あ゛っ!」
笑留は自らの一物を一度引き抜くと、今度は美衣奈の後ろの穴に前技もなしに入れた。
「え・・・笑留さん!前技もなしに入れるなんて無茶ですぅ!」
「けどはいっちゃったよ?う〜ん♪後ろも前並に、でりぃしゃぁす♪」
笑留は椅子を回転させて美衣奈の全身がカメラに映るようにする。
そして笑留は指で美衣奈のクレヴァスを開いた。画面の向こうで大写しになる美衣奈の秘所。
「きれい・・・」
うっとりとするとき子。笑留は画面の向こうに話しかける。
「あーあーとき子さん、でしたっけ?聞こえます?」
「ええ、聞こえますよ」
「美衣奈ちゃん、きれいでしょう?」
「ええ。下のお口から流れるよだれ、その上に赤く光る宝石、とても・・・」
「ねぇ、とき子さん?ここまでしたんですから、とき子さんもしなければいけないことがあると思うのですが?」
「え?なにを・・・ああ、そういうことですか」
ぽん。両手で拍手を一回する動作をしてからとき子は居間の後ろにある戸棚に行き、なにやら物色をはじめた。
「まま、なにちて・・・えぇっ!!」
とき子が薫のほうを振り向いたとき、とき子の股間にはりっぱな一物が生えていた。
こちらはもちろんイミテーション物、俗に言う『ペニスバンド』。
「まぁ、さすがとき子さん、わかってらっしゃる」
「さぁ・・・薫ちゃん・・・一緒に楽しみましょう?」
「ま、まま!!」
とき子は薫を片手で抱きかかえ、もう片方の手に持った小瓶からローションを人工の一物にたらす。
そしてとき子は薫の後ろを貫く。
「あ゛あ゛っ!」
とき子はテレビの画面のほうに向き、笑留が美衣奈にしたように指で薫の一本筋をこじ開ける。
「笑留さん・・・見えますか?我が家の、可愛い、薫の、みだらな、秘密・・・」
「ああ〜たまんなぁ〜い!!」
がしゅがしゅがしゅがしゅ!
急激に腰を振り出す笑留。
「ちょ・・・笑留さん!はげしすぎます・・・ああん!」
直腸に往復運動されながら指では膣と陰核に刺激をあたえられたもんだから、たまったもんではない。
「ああっ、美衣奈さん、素敵ですわぁぁぁ!!」
とき子も腰を振り出し、同じく薫にみだらな刺激を与える。
「まま、まま、おちっこ、おちっこでるでつぅぅぅぅ!!」
「笑留さん!もだめ、もだめですぅぅぅぅ!!」
「あ、あたしもぉぉぉ!」
ぷしゃぁぁぁぁぁ・・・。
4人はほぼ同時に失禁して果てた。
ずるっ。
笑留は美衣奈から一物を抜くと下の服をきちんと着なおした。
「さてと、耕治君、あずさちゃん?なに繋がったままでひっくり返ってんの?お店閉めて帰りますよ?」
「あ、はい。笑留さん、お帰りですか」
悪夢が終わったと思いほっとする二人。しかし。
「なに言ってるんですか?これから禾森邸に家庭訪問よ!?
こんなエッチな家庭とは一度訪問の上きちんと話しておかないといけません!」
止まらないよだれを手で拭きながら宣言する笑留。呆然とする二人。
「さぁて、いくわよぉぉん!」
「って、あたたたた!!服引っ張らないでください!せめてきちんと服着せてください!」
「せめてパンツぐらいはかせてぇ〜!!」

441 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:05:02 ID:usAZ35BY]
「おちっこ・・・」
薫が目が覚めたのは夜中だった。
禾森邸の居間。今薫以外5人の男女と一匹の犬がいる。
「うん・・・はん・・・」
薄明かりの中、一人だけ起きている人物がいる。
「えみる、おねえたん・・・?」
「はぁ・・はぁ・・・たりないのぉ・・・」
(まだやりたりないのでつか?)
薫はあきれながら薫の自慰を見ていた。体は伏せたまま。気づかれないように。
「こんなんじゃぁ・・・満足できないのぉ・・・」
(ぢぶんだけだからでちょう?)
他の人間は全員寝ている。但し、全員目を見開き、白目をむいたまま。失神しているとも言う。
「やっぱり・・・でないとぉ・・・だめなのぉ・・・」
(え、いまなんといったでつか?なんでないといけないのでつか?)
笑留の言葉に聞き耳を立てる薫。一字一句、聞き逃さないように。
「あの裏切り者・・・笑留の・・・大切なものを・・・うばって・・・かえしてよぉ・・・」
(うばった?)
「○○○○○○!」
「ええっ!?」
「え、うそっ!薫ちゃん?!」
「あ・・・」
笑留は薫を手招きして呼び寄せた。
「ごめんね?起こしちゃった?」
「あい・・・」
「今お姉ちゃんが言ったこと・・・聞こえた?」
「ひめい、ぢゃないのでつか?」
「ちがうよ・・・分からなかったら、いいの。ごめんね」
ちゅっ。笑留は薫のおでこにキスをした。
「あたしももう寝るね。かぁるちゃんもね」
「おちっこいってからねまつ」
「一人で行ける?何ならお姉ちゃんがのんであげるよ?」
「とのままねむれなくなるのでいいでつ。おねえたん、あちたも、ちごとでちょう?」
「そだね。ごめんね」
そういって笑留は横になった。すぐに寝息を立てだす。
(おねえたん・・・)
トイレに行く途中、薫は笑留の言葉を思い出していた。
(えみるおねえたん、たしかにいったでつね・・・とれがおねえたんの、ほんちんでつか・・・)
(おねえたんにとっては、みんな、とのかわりでちかないんでつね・・・)
ただのH好きなら薫も許した。しかしその言葉は薫に殺意に近いものを抱かせた。
(おねえたん・・・おちおきでつ・・・)
ちろろろろ・・・
便器に座って用を足しながら、薫はその頭脳をフル回転させていた。笑留の絶叫が頭を何回もよぎりながら。

「お兄ちゃぁん!」

442 名前:新店長でG.O. ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/16(金) 21:07:20 ID:usAZ35BY]
続きます。
・・・エロが度を過ぎた。今は反省している。だけど後悔はしていないw

次回。薫の逆襲。そして店長病化。

・・・ええ。
薫たんの復讐ですよ?
容赦ありませんよ?

443 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 21:16:05 ID:sL9Wn9E/]
GJ!



しかし、どんどんヤンデレとは違う方向に進んでいるような気がするのは気のせいか。

444 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 21:24:05 ID:odt0OjyU]
いや、たぶんこの話はたまたまエロが集中していたのだろう。
このスレで直接的なエロが濃いSSは数が少ない。エロいのはいいことだ。

次回の病みに期待。


あと、作者さんに一言。
地の文の前にはスペースを入れてもらえると読者としては読みやすいですよ。
もし、狙ってやっているのでなければ、考えてみてください。

445 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 21:44:00 ID:iIwhdpQ9]
“いない君”をバールのようなものを抱えながら期待。

446 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/16(金) 22:49:35 ID:WtSrGkIy]
>>442
このエロが前フリになってどんな病みになるのか期待!



447 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:24:58 ID:22hp4O8L]
投下します 
注意 ふたなりものです

「ねぇ、貴方…」
「財布、返して頂戴」
「聞こえないの?」
「大丈夫?」
「も〜し、も〜し?」
「………」
「ねぇ…、財布」
「………」
「私の…」
「ここって貴方の家?」
「ねぇ…」
「………」
「………」
「………」
「貴方…、犯し殺すわよ!!?」
幽鬼の如き足取りで否命は家に帰った。
「ただいま」
ドアを開け、声を掛けても応える人はいない。否命の唯一の同居人である沙紀は、部活で否命より遅く帰るのだ。
否命は明かりの付いていない暗い家の玄関を見ながら、いつから「おかえりなさい」と言ってくれる人がいなくなったのかが、唐突に頭に浮かんだ。


448 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:26:36 ID:22hp4O8L]
否命はおぼろげな記憶しかないが、お姉ちゃん(梓)と居た頃は「おかえりなさい」なんていう言葉を聞いた事がなかった。基本的に否命は外に出ることは無く、外に出たとしても大抵はお姉ちゃんが一緒だったからである。
それからお姉ちゃんが死んで親戚の家に引き取られたが、ここでも否命は「おかえりなさ
い」と言われることは無かった。否命は、どうしてもここが(親戚の家)自分の家だとい
う気になれず「ただいま」と言う事に抵抗があったのだ。勿論、幼いながら否命は自分は
これからずっとこの家で暮らす事になるのが分かっている。だから、否命は最初に親戚の
家に来た時、否命は咄嗟に「ただいま」と言おうとした。しかし、やはり否命の目に飛び
込んできたのは「知らない道」「知らない門」「知らない庭」「知らない玄関」そして「
知らない人達」であり、否命はここが自分の家と理解する反面、ここを自分の家と思っていいのかな…という遠慮にも似た感情が、「新しい家族」を見れば見るほど湧きあがっていく…。
結局、否命は無言で新しい母親に連れられて家に入った。
それからも否命はこの家のドアをくぐる度にあの感情が湧きあがり、否命は目を伏せ背を縮め、無言で家に入っていった。
この行動に否命の親戚が気まずい思いをしないはずはない。しかし、それでも親戚の人達は大人であり、それによって否命自身が一番気まずい思いをしているのを分かっていたので、それを理由に否命を疎んだりはしなかった。
否命が親戚の家から再び使用人を付けられて、自分の家に戻されたのは別の理由があっての事である。


449 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:27:32 ID:22hp4O8L]
否命が自分の家に戻ると聞いた時、否命は喜んだ。「自分の家」に帰れる事もあったが、なにより否命が嬉しかったのは、使用人の娘「浅原沙紀」という同年代の遊び相手が出来た事だった。
その頃は、使用人が沙紀と一緒に幼稚園から帰る度に「おかえりなさい」と優しく声を掛けてくれたし、人見知りの激しい否命も沙紀につられて「ただいま」と言う事が出来た。
その新しい環境に否命がすっかり馴染んだ時だった。
ある日、使用人が何の前触れもなく忽然と姿を消したのだ。否命が13才、沙紀は14才の誕生日を迎えたばかりの時である。
その日、否命は泣かなかった。自分に優しくしてくれて、10年近く世話をして貰った、言わば母親代わりのような人間がいなくなって哀しくないはずがない。ただ、否命はあまりに突然の事で実感が湧かなかったのである。
使用人が居なくなった事実は理解している。しかし否命はその事実が現実であると分かってはいても理解する事は出来なかったのだ。使用人が消えたのが、本当に唐突過ぎて…。
それから三日後、否命が沙紀と一緒に中学から家に帰ってきた時であった。


450 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:28:34 ID:22hp4O8L]
「ただいま」
いつものように否命は帰宅の挨拶をした。それからしばらくして、否命はその場で固まってしまった…。
「どうしたのですか?お嬢様…」
怪訝そうな顔で沙紀は否命の呆けた顔を覗きこむ。それでも否命は、口をポカンと開けたまま目を何処か遠くにやっていた。
「お・じょ・う・さ・ま」
少し強い口調で呼ばれ、否命は下から顔を覗き込んでいた沙紀と目が合い、ようやく否命は意識を取り戻した。
「お嬢様、どうなさられたのですか?」
「何かが足りない気がするの…」
明かりのついていないくらい玄関で否命はポツリと呟いた。
「………お嬢様?」
「そっか、そうだよね…ごめんなさい、沙紀さん。なんか、「おかえり」っていう声が聞こえそうな気がして」
言って、否命は泣き出した。
否命はようやく気付いたのだ、もう「おかえり」という声が聞こえるはずはない。そして明日も明後日も明々後日も「おかえり」という声は聞こえない。それを理解した否命の目から涙が留め止めもなく溢れてきた。使用人が消えてから初めて見せる涙であった。
泣きじゃくる否命を沙紀はその場でしばらく見守っていたが、やがて腰を屈めて否命と視線を合わせるとニッコリと笑って言った。
「お嬢様…、変顔選手権に出場されるおつもりですか?」


451 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:29:59 ID:22hp4O8L]
途端に否命の泣き声が止む。
「さっ、沙紀さん!!なにもこんな時…」
否命は顔を耳まで真っ赤にして沙紀を怒ろうとしたものの、どうしても口が緩んでしまい、とうとう吹きだしてしまった。
「やっぱり、お嬢様は泣き顔より笑っている顔のほうが似合いますよ」
「………」
「フフフ…照れてます?というか照れて下さい…、正直に申しますと私は今、とてもいたたまれない気持なのですから」
そういって沙紀も顔を真っ赤にする。
「もぅ、沙紀さん、臭すぎるよ」
否命と沙紀はそこで顔を見合わせると再び笑いあった。そして沙紀は、玄関の明かりを付けると否命の前に立って言った。
「おかえりなさいませ…、お嬢様」
否命の胸に、ほんのりと暖かい何かが宿る。否命はさっきまでの沈んだ気分が嘘みたいに、
無くなっているのに気付いた。否命はきっと今、自分は笑っているんだろうと思った。幸せそうに、楽しそうに…、
でも何故か否命は自分が涙を流している事に気づいた。
あれっ?っと思う間も無く、否命の口から同時に泣き声が飛び出す。
否命は泣いた。なんで泣いているのか自分でもよく分からなかったが、とにかく泣いた。
涙が泣いても泣いても尽きること無く流れ出てきた。その否命を沙紀がそっと胸元に抱き
寄せる。するとより一層、否命は激しく泣いてしまった。沙紀の背をがっちりと抱き、沙紀の制服を涙と鼻水で汚しながらたっぷり10分間、否命は泣いた。
それから沙紀は自宅に帰ると必ず否命より先に電気を付けて、「おかえりなさいませ、お嬢様」と否命を迎えるようになった。
その度に否命はホッとするような、肩の力が抜けるような、そんな気持になり「ただいま」と自然に口に出せるのだ。


452 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/17(土) 02:31:16 ID:22hp4O8L]
否命は、自分の家に帰る時のこの沙紀とのやりとりが好きだった。
しかし、否命は高校に入学するのをきっかけに沙紀を半ば強制的に部活にいれ、自分が沙紀より早く家につくようにした。当然、帰宅の挨拶は無い。
否命はどうして家で一人の時間が欲しかったのだ。
そこまで考えたとき否命はようやく白昼夢から覚め、慌てて玄関に立てかけてある時計を確認した。
あの少女と関わってしまったせいで、時計は17:30を指している。否命は慌てて玄関
の鍵を閉め、防犯ブザーのスイッチを入れた。この防犯ブザーはドアが開くと騒音が鳴り響くタイプである。
確かに、女二人だけの生活であるから防犯するに越したことはない。だが、否命が防犯ブザーを設置したのは防犯のためでは無かった。これから始まる毎日の日課のために取り付けたのである。
否命はちゃんと防犯ブザーにスイッチが入っているのを確認すると、靴を脱ぎリビングへ向って駆けていった。
リビングには沙紀と共有しているPCがある。
否命はそのパソコンの前に置いてある回転椅子に腰を下ろすと、直ぐにパソコンのスイッチを入れた。

投下終わります

453 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 09:05:07 ID:kr7pc7WG]
おもしろい、おもしろくない以前に読みづらい。
せっかくおもしろいSSなのにもったいないと思う。


454 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 13:52:20 ID:2Sn7VTqy]
>>452
GJ!
次にwktkして待ってるぜ!!

>>453
改善点も書かなければどうしようもないだろ・・・

455 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 16:19:59 ID:tfngQ5h3]
・シーン・場所の切り替わりや、強調したい部分で空白行を入れる。
・地の文の先頭にスペースを入れる。
・句読点や括弧の、適切な位置で改行する。

などかな。そうすると一話あたりの行・レス数が多くなるけど。

456 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 17:19:44 ID:aAIw/jZz]
エロパロのカテゴリーの掲示板なのに
読みにくいシステムを使っている運営者側に問題があるのでは
と言ってみるテスト

大体、エロパロスレに相応しい作品連載システムとコメント付きの
独特な掲示板をオーダーできるだろうにね



457 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 17:25:55 ID:uUtFVBGI]
ああ、くせぇくせぇ。
勢いが付いてくると、エセ批評家共が沸いて来るんだよな。

特にこの時期。

458 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 17:30:21 ID:waRfT1kk]
エセ批評家は作品の一つも書けないのかな・・
そんな相手に批評される側もうんざりするだろうにね・・
お互いを高めるような相手同士ではないと嫌がらせに等しい

459 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 18:19:24 ID:OF4Om5PA]
読みづらい云々って、読む側が慣れている環境とか形式によっていくらでも変わるわけで
文の最初にスペース、つまり段落を入れよーとかもっと細かく刻んで改行せよーとか、
そういうお前個人の主観的読みやすさ、みたいなのに対応するよう工夫しろなんて押し付けてもなあ

460 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 18:31:43 ID:1Rt50IEa]
とりあえず、読みづらいか読みやすいかで言えば
おれは「読みづらい」と思う

改行を増やすだけでも大分変わると思うんだよね

読みやすいか読みづらいかで、
本当なら読んでくれたかもしれない人まで
読んでくれなくなっちゃうのはもったいないと思うから


>>458
そうすると、書いてもいないのに
「GJ」とか「面白かった!」とか言ってる俺らもやばいな。

461 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 18:40:12 ID:OF4Om5PA]
「GJ!」「面白かった」って言ってもらえれば、書いた人は認められてうれしいと感じるし、作品を続けていくモチベーションのうpに繋がる。
でも、「読みづらいよー\(^0^)/もっといじってねー」とかだけ言われても、書いた人はそれに従うだろうけど、いくらか萎縮してしまう。

高めるっつっても、技量の話だけじゃあないってことっすよ

462 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 19:23:48 ID:4TxjHW5p]
自分が面白いものにはGJを!
自分が面白くないものにはスルーを!
我々ば読んでやってる゙訳ではないぞ。
゙読ませてもらってる゙のだから。
神々に感謝の気持ちを忘れてはいけない。


463 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 19:28:53 ID:i7TuP7m5]
批評したければ1レスでもSSを書けば良いのだろうか。

464 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 19:31:32 ID:i7TuP7m5]
すまん誤爆

465 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 20:54:06 ID:KDTooFVy]
SS書きの控え室スレ読んでると、GJだけじゃ逆にやる気なくすって言ってる書き手さんもいるんだよね。

だから具体的にここをこうしたらもっと良くなるみたいな指摘ならいいんじゃないかと思うんだけど。

466 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 20:59:20 ID:uw1OvWHa]
成虫化で死んだ人間の死因って脳死なのかなぁ



467 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 21:00:28 ID:uw1OvWHa]
スマン誤爆

468 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:35:00 ID:tfngQ5h3]
投下します。

469 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:35:33 ID:tfngQ5h3]
 彼の好物はお菓子である。

 どれぐらい好きなのかということの実例を挙げると、
朝昼晩の食事をせずに500円分のお菓子を食べることで済まそうとした、
ということがある。
 それを毎日繰り返していたわけではないが、週に一回、
土曜日になると近所のスーパーに出かけてお菓子を買う。
 そしてそのお菓子を当日の食事代わりにする。

 それでも彼の体は均整がとれていた。
 彼が20代で、まだ若いこともあったが、
彼は毎朝5時から行う体操を欠かさなかったことも原因だった。

 彼は自身の住む村の役所に勤務していた。
 近くにある高校に通い、卒業すると同時に勤務を始めた。
 役所での仕事は年に数回ある祭りや、盆と正月に役所の前を
時節のもので装うことと、書類整理と清掃作業ぐらいのものだった。
 退屈ではあったが、村の外にいる友人から聞かされる
中小企業の現状を聞いていると、自分は充足している、と思った。

 彼には大きな悩みが無かった。
 父親と同居している、愛着のある家もあった。
 母親とは死別していたが、十年以上昔のことを気にかけるほど
神経質な性格をしていたわけではなかった。

 彼が執着していることは、自分が興味のあるものだけだった。
 働き始めてからローンで購入した、通勤に使用する50ccのバイク。
 町の古本屋で購入した本と、それを読むための時間。
 毎週の楽しみである、カロリーを無視して食べるお菓子。
 そして、彼が愛する女性。 

 彼には、同じ職場に勤める同僚で、恋人でもある女性がいた。
 二人きりで村の外に出かけて夜を過ごし、翌日の朝に帰ってくる、
ということを何度も繰り返した。
 結婚指輪を送るために、彼は何ヶ月も貯金をしていた。
 彼女に対して結婚を匂わす発言をしたときも好意的な反応が返ってきた。

 ――きっと、上手くいく。

 そう彼は考えていた。

470 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:36:11 ID:tfngQ5h3]
 三月の第一週目の、土曜日。

 彼は朝の九時に、村に一つだけあるスーパーへ来ていた。
 いつものように彼はお菓子が陳列している棚へ向かい、
500円分の商品をカゴの中に入れた。
 そして、そのまま店員が立っているレジへ向かい、カゴを置いた。

「いらっしゃいませ!」

 レジに立っている女性の店員が挨拶をした。
 店員は頭を上げると、男に向かって挨拶をした。

 すべての商品のバーコードを読ませた後、店員はこう言った。
 
「504円になります」

 男がちょうどの金額を払い、店員が中身の詰まった買い物袋を手渡した。
 すると、女性店員が男に向かって声をかけた。

「いつも買い物をされてますよね? お菓子が好きなんですか?」

 そう店員に言われて、男は恥ずかしくなった。
 いい年をした男性が毎週のようにお菓子を買っていく。
 その行為は他人からすると奇特にしか見えないだろう。
 男がなんと答えようかと考えていると、店員が小さな箱を取り出した。

 これは何か、と聞くと女性店員からこのように言われた。

「私が作ったクッキーです。
 誰かに試食を頼もうかと思っていたんですけど、
 一人も食べてくれなかったんです。
 ですから、もしよろしければどうぞ」

 男に受け取らない理由は無かった。
 一言礼を言い、箱を受け取る。
 箱はとても軽かった。しかし軽く振るとコトコトと音がした。
 
「今度、ぜひ感想を聞かせてください」

 店員の言葉に対して頷くと、男は買い物袋と小さな箱を持って店を出た。

471 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:37:24 ID:tfngQ5h3]
 三月の第二週目の、土曜日。

 男は小さな箱を持って、スーパーに来ていた。
 先週、女性店員から受け取ったクッキーの箱だった。

 店内に入り、先週話をした店員を捜す。すぐに見つかった。
 先日と同じようにレジに立っている。

「いらっしゃいませ」

 と言って店員が頭を下げた。
 男が、ありがとう、と言って手に持っていた箱を店員に差し出すと、受け取ってくれた。
 
「あのクッキー、美味しかったですか?」

 美味しかったよ。また作って欲しい、と男が言うと、店員は満面の笑みをつくった。

 その日も先週のように男はお菓子が並んでいる棚の前に行って、
適当なものを選ぶことにしたが、あることに気がついた。

 クッキーの箱が一つも置かれていない。

 しかし、男は特に気にすることも無かった。
 もともと商品は多く並んでいたわけでもないし、売り切れということもある。
 棚に置かれていたものをカゴに入れる。
 店内を歩き、女性店員が立っているレジに買い物カゴを乗せる。

 女性店員がすべてのバーコードを読ませて、買い物袋に詰める。
 そして、男はちょうどの金額を女性店員に渡す。
 レジから吐き出されたレシートを受け取ると、店員が箱を取り出した。

「あの、またクッキーを作ったんです。
 もしよろしければ、どうぞ。
 また来週会えたら感想を聞かせてください」

 わかった、と男は頷いて、箱を受け取った。
 
「ありがとうございました」

 女性店員の声を聞きながら、男は自動ドアを通り抜けて、家路に着いた。

472 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:38:56 ID:tfngQ5h3]
 三月の第三週目の、土曜日。

 男はスーパーにバイクで乗りつけた。
 その手には、小さな箱が握られている。
 
 先週、女性店員に手渡されたクッキーは、とても美味だった。
 焼け具合、かおり、共に問題が無かった。
 一口に収まるほどの大きさのそれを頬張ると、バターのなめらかさ、
ほどよい甘さが口の中に広がった。
 気がつくと、四枚入っていたクッキーは全て男の胃の中に収まっていた。

 男が店内に入ろうとすると、後ろから声をかけられた。
 振り向くと、女性が立っていた。
 クッキーを作ってくれた女性だった。
 その日は、セーターにジーンズという格好をしていた。

 男は箱を女性に手渡した。
 美味しかった、と感想を言ったが、言葉足りない気がした。
 あれほどの美味しいものを作ってもらったのに、「美味しかった」の一言では味気ない。
 本当に美味しかった、と再び言った。

「そんなに美味しかったんですか。ありがとうございます」

 何かお礼をしたい、と女性に向かって男は言った。
 女性は数回まばたきをして、右手を下唇にあてた。
 数秒の沈黙のあと、彼女は口を開いた。

「それじゃあ、私の家に来てくださいませんか?
 またクッキーを作ったんです。
 今度は一味改良を加えたんですよ」

 また美味しくなったのか、と男が聞いたら女性は首を右に傾けた。

「それは、食べてみてからのお楽しみです」

 女性はほほえみを浮かべた。
 
 女性の自宅はスーパーからそう遠くない位置にあるという。
 男はバイクを駐輪場に置いたまま、女性と一緒に歩き出した。

473 名前:〜お菓子と、男と、女ふたり〜 mailto:sage [2007/03/17(土) 21:41:07 ID:tfngQ5h3]
 四月の第一週目の、土曜日。

 目の下にくまを張り付かせた女性が、駐輪場に何も停まっていないスーパーへとやってきた。
 あからさまな落胆の表情をして、女性はスーパーのドアをくぐった。

 店内を何周か見てまわったあと、その女性は女性店員の一人に声をかけた。
 人を捜しているんです、と言って女性は写真を店員に渡した。

 女性店員はその写真を一目見て、女性に写真を差し出した。

「すいません。私では、力になれません。
 先月の中旬にこのお店に来たことは覚えていますけど、
 それから『このお店の中』では見たことがありません」

 女性店員はすまなそうに頭を下げた。
 そうですか、と言って女性は表情を沈ませた。

 とぼとぼといった調子で立ち去る女性の姿を見ながら、女性店員は一言つぶやいた。


「もう、彼はあなたの前には現れません」


 女性店員は、下を向いた。
 
 そして、勝ち誇ったような、嬉しくてたまらないといった表情を浮かべて、わらった。


 終

ーーーー
変なことを言って、荒れる原因を作ってしまって申し訳ありませんでした。
今後、不用意な発言は慎むことにします。

474 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 21:48:25 ID:GntrcA5/]
>>473
GJ!
落ち込まないでまた作品読ませてくださいw
棚になぜかクッキーがない等のさりげない怖さが(・∀・)イイ!

475 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 21:52:19 ID:1Rt50IEa]
>>473
女の情念という者は怖いのう…
ていうか、なんかリアルでこれくらいのことならやってる人がいそうでgkbr

476 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 22:23:57 ID:ca7hXdnd]
こういうお菓子な空気は心がいい感じにお菓されるから大好きだw



477 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/17(土) 22:32:56 ID:+sk5+L74]
GJ!>>473

しかし、男はどこに行ったんだ?
1:女の家・建物内(監禁)
2:女の家・地面の下(satugai)
3:女の胃袋(かにばりずむ)

478 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 00:00:47 ID:tv1vZc10]
>>473
イヤhッホオオ!
ぐっじょぶ!

479 名前:慎PC故障中につき携帯から ◆lPjs68q5PU mailto:sage [2007/03/18(日) 00:12:43 ID:wc98nDi2]
おぉまたもや新たな職人さんが!>>473なんか恐いです…用意周到というか…クッキーを棚ごと消すなんて、そしてラスト…いいもの読ませていただきました。今回限りといわず次もぜひ。

480 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:01:47 ID:Ld8wUyk/]
投下します
本編とは関係のない短編ですが、読みやすさを意識して書いてみました

題名 否命

 あるところに貧しい農夫がいました。彼の田圃はとても荒れていて、しまいには作物が
すっかりとれなくなってしまいました。そこで仕方の無く、農夫は森にいき薪をとって市
場で売り、それで一日を食いなぐようになりました。

 ある時、いつものように農夫は薪をとりに森の中に出かけました。すると、まだ一度も
会った事の無い老人が歩み寄ってきて、
「なんだって、そんな憂鬱そうな顔をしているんだい?」
と農夫に声を掛けました。
「おお老人よ!」
 農夫は思わず嘆息しました。
「どうして楽しい気持になれましょうか?私は一日も休むことなく先祖代々つづく田圃を
耕してまいりました。それなのに田圃は荒れ果てていくばかりで、とうとう私は田圃を耕
すことを諦めてこうして森で薪をとっているのです。別に貧しい事は苦ではありません。
ただ、先祖様が守り抜いてきた田圃を私が駄目にしてしまったことを考えると、憂鬱にな
らざるを得ないのです」
 この言葉を聞くと、老人は農夫の畏祖の義にすっかり感心してしまいました。老人は実
は妖精でしたので、この農夫を幸せにしてやりたいと思い、ある提案をしました。
「もし貴方が私の欲しいものをくれるのなら、貴方の田圃をすっかり良くしてあげよう」
 すると農夫は農民にしては珍しく儒学を心得ていたので、自分の持っているモノのなか
で土地ほど大切なものは無いと考え、
「私が差し出せるモノなら何でも…」
 と答え、妖精に証文を書きました。
 妖精はニッコリと笑って、
「帰ってごらん。もう、貴方の土地はすっかり良くなっていますよ」
 と、言いました。


481 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:02:31 ID:Ld8wUyk/]
 さて、農夫が家に帰ると妻が飛び出して、
「あんた、どうしてうちの田圃に水がしっかり引かれて、稲が植えてあるんだい?急に、
どこもかしこもうちの田圃はすっかり良くなっちまったよ。まったく、どうしてだか分か
らないよ」
 と、言いました。
「それは私が森で出会った妖精のおかげだよ。彼が私に田圃をすっかり良くしてくれると
約束したのさ。その代わり、妖精の欲しいものを何でもあげると証文を書いたけどね」
 すると妻は、
「まぁ、一体うちに妖精が欲しがるようなものなんて、あるのかしら?」
 と、首を傾げました。農夫の家は本当に貧しくて人様にあげるものなんて、なんにも無
かったからです。

 それから一年後、農夫に娘が出来ました。
農夫の娘はとても美しく、働きものに育ちました。この娘が年頃になる頃には様々な男
から結婚を申し込まれるようになりました。しかし、娘は申込を悉く断っていました。そ
れも、実際に男に会いもせずに娘は結婚の申込を断ってしまうのです。
「ねぇ、おまえさん一体、何が不満なんだい?」
 農夫はとうとう、娘のあまりに男を寄せ付けない態度に呆れ、娘を呼び出して問いただ
しました。すると娘は
「心に決めた方がいるのです」
 と、一言いいました。
「それは誰なんだい?」
 と、農夫が聞くと娘は
「父さんの田圃を、すっかり良くしてくれた妖精さんです」
と、答えました。農夫はそれを聞くとすっかり魂消てしまいましたが、心の奥底では、
いつもあの妖精に恩返しをしたいと思っていましたので、
「妖精がおまえを欲しがるのなら…」
 と、納得しました。それを聞くと娘はニッコリと微笑みました。娘は農夫から妖精の話
を聞くたびに、密かにその父さんを助けてくれた妖精に恋焦がれていたのです。


482 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:03:05 ID:Ld8wUyk/]
次の日、農夫は森に行きました。すると妖精がまた老人の姿を借りて歩み寄ってきて、
「なんだって、そんな楽しそうな顔をしているんだい?」
と、農夫に声をかけました。
「おお妖精よ!」
 農夫は思わず嘆息しました。
「どうして憂鬱な気持になれましょうか?私の田圃はすっかり良くなってしまい、ずっと
豊作が続いています。蓄財は確かに楽ではありますが、それよりもこの田圃を先祖がご覧
になったらどんなに喜ぶことでしょう。それを考えると楽しくならざるをえないのです」
それを聞くと、またしても妖精はニッコリと笑い、
「どうかその畏祖の義をこれからも忘れずに…」
 と、言って農夫のもとから去ろうとしました。
「待ってください。話しはまだ終わりではありません。貴方は、私の田圃をすっかり良く
してくれたのに貴方は何も私にお求めになりません。だから、私は貴方に娘を差し上げた
いのです。そして娘のほうもそれを望んでいます」
 それを聞くと、途端に妖精は真っ青になりました。
「おお農夫よ!お心遣いはありがたいが、どうして私が娘を貰うことが出来ようか?私
はその昔、天帝の属官として五穀豊穣を司っていたのです。ところがある日、否命(孔
子によると可憐な少女の姿で人間に劣情を植え付ける神獣。本居宣長に麒麟の一種では
ないかと指摘されている)の誘いに乗り天界に不浄を持ち込んでしまったので天帝より
実の姿を正視に耐えない姿に変えられてしまったのです。そんな私がどうして娘の前に
姿を現すことが出来ましょう?」
 それを聞くと農夫は家にトボトボと帰っていきました。

さて、農夫が家に帰ると娘は恋歌を歌うのを止めて農夫を迎えました。娘は農夫の
元気のない姿を見ると、
「なんで、父さんはそんなにおちこんでいらっしゃるの?」
 と、尋ねました。そこで農夫は娘に、妖精が天帝の罰を受けその姿を正視に耐えない姿
に変えられてしまったことを話しました。娘は話を聞くと、
「父さん、哀しむ事はありません。でしたら、妖精の姿を見なければいいのです」
 と、言いました。農夫が、
「馬鹿なことをいうな。どうして、嫁にいくお前が妖精の姿を見ないでいることが出来
よう…」
 っと、言うと娘は少し考えていいました。
「だったら、私の眼を抉り取ればいいのです。そうすれば、私はもう妖精の姿を見ること
が出来ないでしょう」
「それもそうだ」
っと、農夫は娘の眼窩に竹筒を当て拳で叩くと眼球がポンッと飛び出しました。


483 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:03:57 ID:Ld8wUyk/]
次の日、農夫は森に行きました。すると妖精がまた老人の姿を借りて歩み寄ってきて、
「なんだって、そんなに嬉しそうな顔をしているんだい?」
と農夫に声を掛けました。
「おお妖精よ!」
思わず農夫は嘆息しました。
「どうして憂鬱な気持になれましょう?私の娘は貴方の嫁になるために、その眼を抉りぬ
いたのです。その娘が「これで妖精の嫁になれる」と歌う姿を見ていると、嬉しくならざ
るを得ないのです」
っと、農夫の言葉を聞くと妖精は真っ青になって言いました。
「おお農夫よ!お心遣いはありがたいが、どうして私が娘を貰うことが出来ようか?私は
その昔、天帝の属官として五穀豊穣を司っていたのです。ところがある日、否命(孔子に
よると可憐な少女の姿で人間に劣情を植え付ける神獣。ヒンドゥーでは子宝の神として祭
られている)の誘いに乗り天界に不浄を持ち込んでしまったので天帝より実の体臭を嗅ぐ
に絶えない臭いに変えられてしまったのです。そんな私がどうして娘の前に姿を現すこと
が出来ましょう?」
それを聞くと農夫はトボトボと家に帰っていきました。

さて、農夫が家に帰ると娘は恋歌を歌うのを止めて農夫を出迎えました。娘は農夫の
元気のない臭いを嗅ぐと、
「なんで、父さんはそんなにおちこんでいらっしゃるの?」
 と、尋ねました。そこで農夫は娘に、妖精が天帝の罰を受け実の体臭を嗅ぐに耐えない
臭いに変えられてしまったことを話しました。娘は話を聞くと、
「父さん、哀しむ事はありません。でしたら、妖精の体臭を嗅がなければいいのです」
 と、言いました。農夫が、
「馬鹿なことをいうな。どうして嫁にいくお前が妖精の臭いを嗅がないでいることが出来
よう」
 っと、言うと娘は少し考えていいました。
「だったら、私の鼻を切ればいいのです。そうすれば、私はもう妖精の臭いを嗅ぐことが
出来なくなるでしょう」
「それもそうだ」
っと、農夫は鉈を取り出すと娘の鼻をきれいに切りとりました。


484 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:04:31 ID:Ld8wUyk/]
次の日、農夫は森に行きました。すると妖精がまた老人の姿を借りて歩み寄ってきて、
「なんだって、そんなに嬉しそうな顔をしているんだい?」
と農夫に声を掛けました。
「おお妖精よ!」
思わず農夫は嘆息しました。
「どうして憂鬱な気持になれましょう?私の娘は貴方の嫁になるために、その鼻を切り落としたのです。その娘が「これで妖精の嫁になれる」と歌う姿を見ていると、嬉しくならざるを得ないのです」
っと、農夫の言葉を聞くと妖精は真っ青になって言いました。
「おお農夫よ!お心遣いはありがたいが、どうして私が娘を貰うことが出来ようか?私
はその昔、天帝の属官として五穀豊穣を司っていたのです。ところがある日、否命(孔
子によると可憐な少女の姿で人間に劣情を植え付ける神獣。一時期、真言宗においては
マラと混同されていた)の誘いに乗り天界に不浄を持ち込んでしまったので天帝より、
実の声を聞くに耐えない感触に変えられてしまったのです。そんな私がどうして娘の前
に姿を現すことが出来ましょう?」
それを聞くと農夫はトボトボと家に帰っていきました。

さて、農夫が家に帰ると娘は恋歌を歌うのを止めて農夫を出迎えました。娘は農夫の
元気のない声を聞くと、
「なんで、父さんはそんなにおちこんでいらっしゃるの?」
 と、尋ねました。そこで農夫は娘に、妖精が天帝の罰を受け実の声を聞くに耐えない
声に変えられてしまったことを話しました。娘は話を聞くと、
「父さん、哀しむ事はありません。でしたら、妖精の声を聞かなければいいのです」
 と、言いました。農夫が、
「馬鹿なことをいうな。どうして、嫁にいくお前が妖精の声を聞かないでいることが出来
よう」
 っと、言うと娘は少し考えていいました。
「だったら、私の耳を削げばいいのです。そうすれば、私はもう妖精の声を聞くことが
出来なくなるでしょう」
「それもそうだ」
っと、農夫は鋸を取り出すと、娘の耳を削ぎ落としました。



485 名前:しまっちゃうメイドさん ◆HrLD.UhKwA mailto:sage [2007/03/18(日) 02:05:26 ID:Ld8wUyk/]
次の日、農夫は森に行きました。すると妖精がまた老人の姿を借りて歩み寄ってきて、
「なんだって、そんなに嬉しそうな顔をしているんだい?」
と農夫に声を掛けました。
「おお妖精よ!」
思わず農夫は嘆息しました。
「どうして憂鬱な気持になれましょう?私の娘は貴方の嫁になるために、その耳を削ぎ落
としたのです。その娘が「これで妖精の嫁になれる」と歌う姿を見ていると、嬉しくなら
ざるを得ないのです」
 っと、農夫の言葉を聞くと妖精は真っ赤になって言いました。
「おお農夫よ!お心遣いは有難く、貴方の娘を頂戴しよう!!」
 それを聞くと農夫は嬉々として、家に帰りました。

 さて、農夫は家に帰りました。しかし、娘の出迎える姿はありません。
 娘はただ、農夫の吉報を信じて窓辺でずっと恋歌を口ずさんでいました。しかし、どう
やって娘は吉報を知ることが出来ましょう?農夫の帰還を示す臭いは嗅げず、農夫の嬉々
とした表情は見えず、農夫の吉報を告げる声を聞くことも出来ないからです。
 娘はただ農夫の吉報を信じて、ただひたすら恋歌を口ずさんでいました。

 次の日、農夫は妖精に娘を渡しました。

その後、この娘がどうなったかは誰にも分かりません。ただ気になるのは、娘は妖精と
式を挙げているときも、ずっと歌を口ずさんでいたことです。期待に満ち満ちた声で、式
が終わった後もずっと歌を口ずさんでいました。妖精が娘の手をとって、森に消えた時も
娘はずっと歌い続けていました。

 恐らく、娘は今も農夫の吉報を待ち続けていることでしょう。妖精に抱かれ、恋歌を
ただ口ずさみながら…。

投下終わります

486 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 05:25:29 ID:emUdaPDg]
GJ!し、しかしこれは怖い!
娘も脳天気に狂っている農夫と妖精も全員怖いよ((( ;゚Д゚)))ガクブル



487 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 08:08:10 ID:R8l21uSD]
>>485
なんかグリム童話みたいwこういうの大好きです。
オヤジさんも娘さんも病んでるな。


488 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 14:43:46 ID:R8l21uSD]
続きレスしてごめん。

読み返して気づいたんだけど、
>>480
>場で売り、それで一日を食いなぐようになりました。
は、

>場で売り、それで一日を食いつなぐようになりました。

じゃないかな?と思うんですが。作者さん、どうなんでしょう?


え?なんですかその竹筒は。いや、ちょ、ま……アッーー!


489 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 14:58:26 ID:ZIWvz3kq]
包帯かなにかで顔を覆った少女が、窓辺で歌いつづけるという情景はなかなか。
ググっとくるものが。GJです!

>>239
裁罪のアリス、色塗てきたアルヨー。
しかし携帯から見れないのかもしれない。
bbs11.fc2.com/bbs/img/_219000/218976/full/218976_1174196550.jpg

瞳に狂気を秘めたゴスロリ(ゴスパンク?)少女的なイメージで。

490 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/18(日) 20:11:14 ID:xN50ZBu7]
>>489
ゴスパンクは意識してたんでそれをイメージして貰えて凄い嬉しいッス!
本当に塗って貰えて僕、感涙で前が見えません。

491 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 23:11:53 ID:8L0MhwQW]
>>489
なんだか真っ先にユカたんを連想したよ
ゴア・スクリーミング・ショウのね

492 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/18(日) 23:20:22 ID:gT1xWGIR]
伊南屋氏も>>489氏も、作画・色付け共に
GJデス。
しかし今、更紗分の切れた俺にこんないいモン見せられたら禁断症状が…再発…

493 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/19(月) 00:08:20 ID:AU1Hmgiv]
大分間が空きました。投下しますです

鬼葬譚 第二章 『篭女の社』

さんばんめのおはなし
======================================
それは、初夏も終わり、本格的に夏が始まり始めようとした頃。

「さて、それじゃあちょっと行ってくるよ」

旅装束に身を包んだ父は、額の汗を手ぬぐいで拭った。
流石に、この時期になると日差しが中々辛くなってくる。
旅をするには少々辛い時期ではあるのだが…少々理由があるのだ。

「毎年、お疲れ様です。代わることが出来ればよいのですけど」
「いやいや、流石に女子に旅をさせるわけには行かないからねえ、これも仕事だよ」

父はそう言って、爽やかに笑う。
この時期、神社では夏越の祓を行うのが通例だ。
月次祭程度なら、あたしと父の二人でも何とかこなす事ができるのだが、
流石に大祓となると人手が厳しい。
そこで、毎年大祓の時は氏子様に協力を願うために父が氏子様の
方々のお宅を回るのが通例になっている
残念な事ながらあたしの氏神様に氏子入りしている人達は余りいない。
おまけにこの城下から少々離れた里に居る方もおり、この時期は暫しの間
父が神社を空けることになるのだ。

「昔は出て行こうとするとわんわん泣いて大変だったんだけどねえ」

父は、そう言うと意地悪そうな笑顔をあたしに向けた。

「も、もう! それは昔のお話です!今はもう平気ですとも!」

父の言葉に、思わずあたしは声を荒げて赤面する。
今でもこうして父にからかわれるのは、恥ずかしいことこの上ない。

「ははは、まあ、2、3日で帰ってくるよ。その間に、できるだけの準備を進めておいておくれ」

そう言って、父は社の階段を下りて行った。
あたしはその背中が見えなくなるまで見送ると、1度ぺしりと自分の頬を叩く。
さあ、忙しくなるぞ!
見上げた空は、今日も晴れ渡っていた。


494 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/19(月) 00:09:11 ID:AU1Hmgiv]
======================================
そんなやり取りがあった日の午後の事。
力仕事を終えて一息ついていたあたしの前に、一人の男が現れた。

「よーっす、元気かー?」

…儀介である。

「元気は元気だけど、今日はいきなり何?」

あたしは、思わずむすっとした表情のまま儀介を睨んだ。
大概、儀介がやってくる時にろくな用事はない。
だが、今日の儀介はいつもと様子が少し違った。
なにやら妙にそわそわとしていて、落ち着きがない。

「あーっと、その、なんだ。今日は少し時間あるか? あー…ほれ、この間借りた金も返したいし」

儀介は頭を掻きながら、視線をあちこちに彷徨わせる。
どこか、心ここにあらずという感じだ。
一体どうしたのか、少し気になるが…とはいえ、今はそんな暇をしている時間はない。

「ダメダメ、今は大祓に向けて忙しいんだから。むしろ、こっちの仕事を手伝って欲しいぐらいよ」

そんなあたしの言葉に一瞬落ち込んだような顔を儀介は浮かべたが、
急に何かを吹っ切るように首を振る。

「…あー、いいから! ちょっと付き合え!」

そしてただ一言そう言い切ると、いきなりあたしの手をとって歩き出した。

「ちょ、ちょっとな、何なのよいきなり?! 痛いってば!」

振り払おうとするあたしの手を、離すまいとさらにしっかりと握り締める。
こんな儀介は初めてだ。
普段は、たとえふざけていてもあたしが嫌がるようなことは決してしない。
それが儀介のいいところの一つでもあった。
あたしは、儀介を見上げる。
儀介の顔には、焦燥のような、決意のような、なんとも言いがたい表情が浮かんでいた。

やがて、あたしと儀介はあの日…あたしと儀介が出会った大樹の下に辿り着く。
そこまで来たところで、ようやっと儀介はあたしの手を離した。


495 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/19(月) 00:09:48 ID:AU1Hmgiv]
「…もう、いきなりなんなのよ…内容によってはあたし、怒るよ」

あたしは、そういいながら儀介の出方を伺う。
儀介は、いかにもあたしに顔をあわせ辛そうに視線を彷徨わせていた。

「俺は…その、なんだ。 つまりだな…ええと、だ」

どうにも歯切れの悪い言葉を紡ぎ続ける儀介。

「あんたねぇ…男でしょ、言いたいことがあるならはっきりしなさいっての!」

そんな煮え切らない儀介の態度に、思わずあたしは腰に手を当てて激昂する。
その言葉に叱咤されたのか、ついに儀介は覚悟を決めた顔をして、あたしに視線をあわせた。
儀介の真摯な瞳。まっすぐにあたしを射抜かんばかりに見つめる視線。

…あ、こいつ…こんな顔も出来るんだ…

その視線を受けて、あたしの心臓がなにやら奇妙な鼓動を始める。

「あのさ…俺…覚悟決めたんだ。お前が…お前のためだったら、俺、きっと…」

覚悟を決め、あたしから視線を逸らすことなく儀介は言葉を紡ぐ。
――何を、何を言おうとしてるんだろうか。
心臓の鼓動はますます早まって、胸が締め付けられるような感じがして…

「紗代、お前さえ良かったら、俺と、俺と一緒に――――」
― た、大変だァ! 川に死体が、死体が上がったぞ! ―

儀介の言葉に重なるように聞こえてくる声。
あたしと儀介は、その声に思わず正気にかえる。

― ありゃぁ、神社の神主さんじゃあねえか! ―
「…え?」

続いて聞こえてきた声に、あたしの全身から血の気がさぁと引いて行くのを感じた。

「紗代?!」

思わず声の方向へ走り出すあたしの背に投げかけられる儀介の声。
だが、あたしはその声に耳を貸すこともなく、声のほうへと走る。


496 名前:51 ◆dD8jXK7lpE mailto:sage [2007/03/19(月) 00:10:52 ID:AU1Hmgiv]
走る。走る。走る。

林を抜け、見慣れた川沿いの街道に出る。
視線を左右に向けると、街道沿いの川原に人ごみが出来ている事に気がついた。
その、人ごみの中心にそれはあった。

―――川原に敷かれた筵の上に横たえられた、一人の男の亡骸。

あたしは、その男の服装を良く知っていた。
あたしは、その顔を良く知っていた。

「嘘…? そんな、嘘…こんなの違う…嘘だよ…?」

呆然と呟く。
夏も近いというのに、全身がかくかくと小さく震えている。
指先が、足の先がまるで氷の中にでも漬け込んだように冷たくなっていく。

「嫌ァァァァッ!! お父さん!? お父さんッ?!」

澄んだ初夏の青空の下に、あたしの叫び声が響いた。

======================================
第三話です。
そろそろ話がクライマックス入ってきた感じ



497 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 00:36:17 ID:IWI76tu/]
>>496
おとうさーーーーん!!!うっうっうっ……

>クライマックス入ってきた感じ
うぉう!
まだこれからかと思っていたりしたが、第一章と同じぐらいの早さなんですね。
でも面白いです。続きをwktkして待ってます。

498 名前:伊南屋 ◆WsILX6i4pM mailto:sage [2007/03/19(月) 01:22:23 ID:zZ2+Tr4V]
>>492
ならばこちらを
imepita.jp/20070319/047070

……いや、自分的にはかなり反省点満載。それでもうPする僕を許して下さい。

499 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 01:35:05 ID:IWI76tu/]
>>498
うはwwwパンティキタコレwww
あとふともも!ふともも!

500 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 01:49:36 ID:fbJzBy86]
>>496
お父さん死んじゃったー!?
紗代ちゃんどうなるんだろうか?続きwktk!

501 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 02:22:19 ID:x1fv1e7I]
>>496
青天の霹靂って感じですな。儀介さっさと告白しとかねえか、ダメなやつめ!

>>498
全裸よりぱんつのほうが好きな俺

502 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/19(月) 11:43:15 ID:4J/lvCUb]
このペースだと今週末にはこのスレも埋まることになるな。
2・3スレ目よりはスローペースだったが、
一ヶ月ならエロパロ板ではかなり早いほうだな。

503 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 00:04:25 ID:te4Gve8c]
投下しますよ

504 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:05:18 ID:XjUBHhrl]
投下します。おにいたん2、5話。

>>444
今回行頭にスペースかましたが読みやすさはぜんぜん変わってないと思う。
漏れは大抵1文を40字前後で終わらせて改行するスタイルだから
スペースはわざとかまさなかったんだ。



505 名前:『首吊りラプソディア』間幕 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:05:32 ID:te4Gve8c]
 それは唐突にやってきた。
 少女はいつも通りに暮らしていた、そのつもりだった。実際にその通りだった。しかし
突然、何かのスイッチが入ったかのように、思考に不安がよぎる。大切なあの人が、急に
去ってゆくかもしれない。自分の前から姿を消すかもしれない。
 そんな馬鹿な、と思う。
 そんなこと有り得る筈がない、そう思い直して再びペンを取り、ノートに文字を綴って
想い人への恋文を完成させてゆく。これを受け取ったときの反応はどのようなものだろう、
そんなことを考えながら、鼻唄を歌いながら、文字を綴ってゆく。
 きっと悪い結果にはならないだろう、と思う。彼と両想いなのは普段の生活でも充分に
分かっている。あと一歩、恋人となるのに必要なのは僅かな勇気だけだ。勇気を持ち一歩
を踏み出すことが出来るのならば、全てが上手くいくだろう。
 先程の悪い考えを振り払うように、少女はポジティブに考えを繋げてゆく。
 だがそれは、不安の裏返しだということだ。
 振り払うということは思考の中にネガティブな考えが残っているというこであり、それ
が少しずつ根を伸ばしているということでもある。気持ちというものを養分に成長し、心
の隙間を埋めるように肥大して、やがては全てを侵食して埋め尽くそうとする。
 その現象は、彼女の中で発生していた。
 胸の軋みを感じて、筆が止まる。
 彼は自分の気持ちを受け止めてくれるのか、肯定だった気持ちは猜疑心へと変わり始め、
否定の考えが幾つも浮かんできていた。もしかしたら他に好きな人が居るのではないか、
自分に向けられているのは愛情ではなく他のものではないのか。
 その理由は、何なのか。
 彼女は結論する。
 殺さなければ、奪われてしまう。
 少女は少しずつ、だが確かに狂ってゆく。

506 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:07:43 ID:XjUBHhrl]
ロボさーん?お先にどうぞー?



507 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:08:11 ID:te4Gve8c]
「ほ、本当でござるか!?」
 フジノの叫びに、サキは頷いた。
 フジノの驚きはもっともだ、俺自身も報告書を読んで驚いた。俺の場合は驚きすぎて、
声が出なかっただけのこと。そこに記されていたのは、予想を遥かに越える結果だった。
 32人、それが昨日『首吊り』に殺された者の人数だ。
 一晩でそれだけ殺すなんて、幾ら何でもふざけている。中には模倣犯の犯行もあるかも
しれないと思ったが、共通点が幾らかあったらしい。殺された対照が全員女性だという事
の他に、結び目が特定のもの、ということだったらしい。多少のずれはあるものの、どれ
も同一人物の手で結ばれたもののようだった。角度や強さが一致するのは他人では有り得
ない、という判断からだ。
 しかし、疑問もある。
 今までは老若男女関係なく殺して回っていたのに、年齢の差こそあるものの被害者全て
が女性なんてことは実際に有り得るのだろうか。いや、有り得ると言うしかない。現実に
そんな状態なのだから、認めるしかないだろう。
 だとしたら、
「目的が変わったのか?」
「恐らく、決まったと言った方が正しいのでしょうね。何かのきっかけがあって、目的が
生まれたのでしょう。多分結び目を同じくしているのも、自己を表す為のものです」


508 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:09:26 ID:te4Gve8c]
 ということは、『首吊り』は俺達管理局員に向けて何かのメッセージを送ってきている
ということだろうか。他の人間に何かを示したいのなら『首吊り』をしていることくらい
しか伝えられないし、結び目が共通していることは、外部に漏らすような内容ではない。
そもそも事件が解決した後にならなければ犯行の詳しい内容は外に流れないし、そのこと
で伝えたいならば寧ろ自首をしてくる筈だ。だから、これは管理局員に向けたもので多分
間違いないだろう。
「問題は、奴の意識が誰に向いているのか、でござるな」
 管理局全体に向いたものか、それとも個人に向いたものか。
 個人的には、特定の誰かに向けられたものだと思う。管理局に対するものならば、今更
女ばかりを殺すということは何の意思表示にもならないからだ。弱いものを狙ったなんて
考えは、とうの昔に議論され尽くしている。一般人が確率システムを使うようになって、
女性が弱いなんて意識は無くなった。それに被害者の中には『月の魔女』の片割れも居た
らしいので、弱さなどは殆んど無縁のものになっている。だからと言って強い者が対照か
と言えば、それは絶対に違うだろう。殺された者の殆んどは、普通の人だからだ。つまり
女性であれば誰でも良く、それがメッセージになる誰か。
 さっぱり分からん。
「サキ、どんな意味があると思う?」
「女性に恨みがあるとか、その線では? 女なんて皆消えてしまえ、という」
「ならば犯人は男でござろうか?」
 全員で首を捻り、唸る。


509 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:12:25 ID:te4Gve8c]
 カオリは今日は仕事が入っているらしいので来れないとの話だったが、今のような事態
ならば寧ろ丁度良かった。サキは元よりフジノも捜査に協力してくれることになり、皆で
考えているのだが、カオリだけは居てはいけないからだ。そんな意味ではある程度自由に
なることが出来るから、申し訳ない話だが少しありがいと思った。
「しかし、性別か」
 これは意外と良い線かもしれない。俺の第一目的は表向きには『首吊り』の捜査、逮捕
となっているが、個人の考えとしては二番目だ。本当の目的はカオリにかかっている容疑
を外すことであり、『首吊り』が男であると証明が出来るならば、カオリの容疑は完全に
晴れることになる。全て確率システムを使っての犯行なので身体的特徴を掴めず、それ故
にカオリが容疑者となっている訳だが、逆に言えばそれだけなのだから。
「フジノはどっちだと思う?」
「ん? よく考えたら、女かもしれんでござるよ」
「どういうことだ?」
 出来れば男だと予想してほしかったが、何か考えがあるのだろう。尋ねると、フジノは
俺の腕を掴んで抱き寄せた。突然のことにバランスを崩して膝枕の世話になったが、これ
と『首吊り』が女であることと何の関係があるのだろうか。
「例えば、例えばの話でござるよ?」
 こちらに冷たい視線を向けるサキを見ると、念を押すように言い、
「拙者はこの虎吉殿と触れ合っているときが、一番幸せでござる。それがもし誰かが奪う
としたら、それはもう怒り心頭でござるよ。今のパターンで言えば、拙者を抜けば虎吉殿
に一番近いのはサキ殿でござるから、警戒すべきはそこでござるな」


510 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:13:55 ID:te4Gve8c]
 フジノが言いたいことは大体分かってきたが、果たしてそれは有り得るのだろうか。
「拙者は違うと思いたいが、嫉妬深い娘ならば他の女に注意が向いたら、それだけで気分
が悪くなる者も居るのでござる。疑ってしまえばキリが無く、疑いの視線はやがて全ての
女に向けられてゆき、積もりに積もった怨念やら何やらで……」
 ブスリ、でござる。
 そう言って、サキに軽く手刀を突き出した。
 無いことも無いかもしれない、ここに居るのは管理局員を除けば罪人ばかりだ。中には
嫉妬のあまり間女を殺して入ってきた者も居るだろうし、重度の者ならば連続しているの
も説明がつく。理屈は通るのだが、しかし人数がおかしいと思う。距離の問題は空間転移
を利用すれば解決出来るが、一晩で32人は無理がある。単独でそこまで殺すのは、まして
証拠を何も残さずに連続で続けるのは無理がある。複数での犯行、となればどうだろうか。
「それも無理か」
 そんな人間が集まればその場で即殺し合いになってしまうだろうし、人を殺してしまう
程に嫉妬深い人間がそうそう居るとは思えない。偶然に起こることも有り得ないだろう。
そうだと仮定しても、結び目の条件が同じなら『首吊り』の役目という人物が必要になる。
リスクを犯してまで、そんな必要があるとは思えない。あるとするならば自己を示す為で、
それならば他人は邪魔になってくる筈だ。
 思考が無限ループを起こしそうになり、考えることを一旦止めて体を起こす。フジノが
一瞬残念そうな顔をしていたが、サキの視線が毎秒ごとに冷たくなってきているような気
もするし、こうしている自分も何だか馬鹿みたいなので続けるのは駄目だ。
「気分転換にメシでも行くか」
「あ、私はパスです。やることがあるので」


511 名前:『首吊りラプソディア』Take6 mailto:sage [2007/03/20(火) 00:15:29 ID:te4Gve8c]
 視線で尋ねると、サキは自分の首に首輪を填めた。色は透明、ランクの外。監獄都市で
生まれた二世が着けているもので、聞き込み調査などでよく使われるものでもある。サキ
は前者には当てはまらないから、どこか特別な場所に用事があるのだろう。
 珍しくスーツではない私服姿なのも、その為か。
「ん?」
 それを見て、何だか妙な感じを受けた。昔どこかで見たことがあるような気がしたが、
気のせいだろうか。記憶を辿ってみるが、思い出すことが出来ない。喉元まで上ってきて
いるのだが、他人の空似という可能性もあるし、全然違う人物かもしれない。
「そんなにジロジロ見ないで下さい、また罪を重ねるつもりですか?」
「いや、カオリは居ないから罪人扱いも無いだろ」
 それにしても気になる、何とも気持ち悪い。さっきまでは『首吊り』で一杯だったが、
今は別の意味で頭が一杯だ。尋ねれば一発で分かるのだろうが、人違いならば藪蛇で妙な
ことを言われかねない。こいつは何故か俺に対してだけは、そんなタイプだ。
「どうしたでござるか?」
「何でもない」
 不思議そうな目で見てくるフジノに答え、再びサキを見た。
「何ですか?」
 どこか不満そうな表情を浮かべているサキに首を振り、俺は部屋を出た。

512 名前:ロボ ◆JypZpjo0ig mailto:sage [2007/03/20(火) 00:16:28 ID:te4Gve8c]
今回はこれで終わりです

第二章開始

513 名前: ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:17:15 ID:XjUBHhrl]
んじゃ、改めて投下開始

514 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:18:18 ID:XjUBHhrl]
 「ふくちう、でつ!」
 和室。座卓にはフルタワーサイズの巨大パソコンが2台・・・1台はRAIDサーバーのようだ。
 20インチはある大ディスプレイは贅沢にもSVGA。字が大きくて目には優しそうだ。
 部屋には巨大なページプリンターが鎮座。時折紙を吐き出している。
 OA用紙が詰まった段ボール箱が積み重なって壁を形成。まるでどっかの会社の事務所である。
 唯一、布団とそこにおいてある2、3のぬいぐるみがここの主がどういう人物かを表している。
 「復讐とはいうけどね、薫ちゃん」
 ここは禾森邸にある薫の部屋。ぬいぐるみがなかったらとても幼稚園児の部屋ではない。
 「どうするの?」
 この日、休みの耕治とあずさは薫と話し合っていた。
 6畳間はパソコンと関連機器、それとダンボールに囲まれ、座るところは薫の布団しかない。
 そこに3人は座り込んで話をしている。
 「あのおんなには、ちかるべきむくいをあたえるでつ!」
 その邪悪な(笑)正体を晒した後、笑留は禾森邸に入り浸っていた。
 もー毎日食いたい放題、ソドムやゴモラも裸足で逃げ出す痴態が繰り広げられていた。
 「ちょっと・・・薫ちゃん?まさかあの男みたいに・・・」
 旧山那邸の地下にねむる誰かさんを思い出し、あずさが不安を述べる。
 「みづからてをかけるなんて、ぐのこっちょうでつ!」
 エヘンと威張る薫。
 「てをよごちゃづ、つまーと(スマート)にいきまつ!」
 「て、手を汚さずって・・・」
 「とのためのきりふだは、もうちゅうもんづみでつ♪」
 「ちゅうもん?」
 
 ちゃちゃっ、ちゃちゃっ、ちゃららら〜♪
 
 薫の大好きなアニメのOP曲が流れる。薫の携帯の着信音だ。
 「あい、かぁる、でつ♪」
 「・・・」
 「あい!とどきまちたか?つぐとりにいきまつ♪」
 短い会話ですぐに電話を切る薫。
 「『だいがち』のおぢたんからでちた。かぁるのきりふだがとどいたらちいでつ」
 「『代貸』・・・って、・・・の事務所から?」
 「とうでつよ?」
 「まさか・・・拳銃じゃないでしょうね・・・?」
 あまりに物騒な薫の発言にまた不安の声を上げるあずさ。
 「ちゃっきもいいまちたよ?みづからてをかけるのは、げたく(下策)でつ」
 人指し指を一本だけ立てて、ちっちっちっ、の動作をする薫。
 「とれに、ぱんぱん(銃のことらしい)なんかつかったら、だいがちやくみちょうたんまでめいわくかかるでつ」
 「そりゃそうだけどな・・・」
 「ちょっと、『ぢむちょ』いってきまつ」
 よっこいしょ。薫は立ち上がり、愛用のバッグを首から提げる。
 「その荷物、重いの?ついていこうか?」
 場所が場所だけに気は進まないが、一応大人の耕治が薫に言ってはみる。
 「かぁるの、てのひらにのるぐらい、かるいでつ」
 「そっか」
 「あ、おにいたん?」
 「なんだい?」
 「おねがいがあるのでつが」
 「俺に出来ることなら・・・なぁに?」
 「おにいたんにちかできないことでつ」
 「?」
 薫は一度は出て行きかけたが、思い出したことがあり耕治に話しかける。

515 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:18:50 ID:XjUBHhrl]
 「でんわちてほちいとこがあるでつ」
 「電話?」
 「てれびきょくでつ」
 「TV局?フラムーン(薫の好きなアニメ)の放送を野球中継で中止するなとか?」
 「とんなことつるぐらいなら、『きゅうぢょうにばくだんをちかけた』といたづらでんわちたほうがはやいでつ」
 「おい・・・」
 「あのね、おにいたん、○○○○○○○○が、あちたのなんぢからながれるかきいてほちいのでつ」
 「え?○○の○○?明日は確か・・・・があるから、いつもなら10時半ぐらいじゃない?」
 「あちた、かくぢつに、ながれるよういってほちいでつ」
 「うーん?聞いてくれるかなぁ?」
 「みたとおねえたんのなまえをだつでつ。おねえたんはかいちゃのえらいちとでつから」
 「そうなの?」
 これはあずさの声。
 「おねえたん・・・みたとおねえたんは、『ちーえむ』とかもやってるでつよ?」
 「初めて知った・・・」
 「そういやうちの店にテレビ局の人連れてきて打ち合わせしてたっけ」
 「とうでつ。あと、だんぼーるに『ばつ』がついたのがあるのでつが」
 そういうと薫はダンボールの中の一つを指差す。黒マジックででっかく『×』が描かれてある。
 「とのなかのかみを『ちゅれっだー』にかけててほちいでつ」
 「わかった」
 「つぐかえってきまつからね♪」
 そして薫は出て行った。

 「おお、薫ちゃん」
 「あ、『くつりや』のおぢたん!おひたちぶりでつ♪」
 某『反社会的団体』事務所内。そこにいたのは代貸と呼ばれている人物と、もう一人。
 通称『薬屋』。めったに事務所に出てこない、この団体における麻薬のエキスパートである。
 「薫ちゃん、この前はえらい目にあったな」
 「へいきでちた」
 薫は事務所のソファーに座り、対面の2人と話し始める。
 「あそことはもう話し合いがついたからな。よく勉強させたし」
 というと代貸と薬屋はにやりと笑う。
 (たぶんかぁるがもらったおかねのばいいじょうをもらったか、げんぶつでもらうことにちたか、でつね)
 とは薫は思ったが、口には出さない。不用意な発言が命にかかわる世界である。
 「で、おぢたん、たのんでたのはできまちたか?」
 「おう、もちろんよ!」
 というと薬屋は懐から粉薬の袋を取り出した。全部で5つ。
 「薫ちゃんの注文どおりのもんだ。粉薬にして、服用後5分で効果開始、10分後に切れる。バックファイヤはなし」
 「ぱーふぇくと、でつね♪」
 「感謝の極み」
 おどけて紳士の礼をする薬屋。
 「普通効果は長いほうがいいんでな。失敗作の中に丁度いいレシピがあったんで作ったけど・・・」
 そこで言葉を切り、薫のほうを覗き込む薬屋。
 「しかし、なんに使うんだい?まさか、これで一服もって誰かを交通事故にするとか?」
 「とんなつかいかたはちまてん」
 薫は言い切る。
 「とれだと、くつりがからだにのこりまつ。そこからここにたどりつかれたらこまりまつ」
 「OK。それならいい」
 「言っただろ。この子は並みのガキじゃないって」
 これは代貸の言葉。
 「しかし、なんに使うんだ?俺にはそういう使い方しか思いつかなかったけどなぁ」
 「ひみつ、でつ♪」
 そういうと、薫はないしょ、のポーズをとる。そして立ち上がる。
 「では、かえるでつ。おかねは、いいんでちたね」
 「今日はサービスだ。とっときな」
 「ありがとでつ♪」

516 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:20:29 ID:XjUBHhrl]
 一方、主が一時不在の部屋ではシュレッダーがうなりをあげていた。
 「ちょっと、これ、ドイツ語よ?」
 「読めねぇ・・・いったい薫ちゃんはなにをやってたんだ?」
 薫に言われたとおり、耕治とあずさは『×』と書かれたダンボールの中身をシュレッダーにかけていた。
 中にあったのはコピー用紙の山。インターネットからプリントアウトしたものらしいが中身が何か全く検討つかない。
 「あ、これ日本語・・・、んん?『自白剤の歴史と効果』?」
 「これもだ・・・『MDHDの人体における効果時間と調整レシピ』?」
 「これは・・・は?『誘導尋問を行なう上での質問技術とミスリーディング』?」
 「麻薬と尋問・・・誰かの本音を聞きだすのかなぁ?」
 「あれだ。耕治が浮気してないか、一服もって拷問するんだ」
 「笑えねぇ・・・あ」
 「ただいま、でつ♪」
 部屋の主が帰ってきた。かばんをかけると寝床の布団にどっこいしょと座り込む。
 「かぁるちゃん、おかえり〜」
 「おねえたん、ごみとうじできてまつか?」
 「ごめんね、まだなの」
 「ゆっくりでいいでつ。ただ、かくぢつにつててくだたい!」
 「ヤバイの?中身見られたら捕まるとか」
 「よむだけならつみにならないとおもいまつが、これがよめるちとなら、あくようができるでつ」
 「悪用・・・」
 「ねぇねぇ、薫ちゃん?」
 麻薬の使い道が分からないあずさがもう一度聞く。
 「文章ちょっと読んだんだけどさ・・・これでさ・・・耕治を拷問するの?」
 「おにいたんに、でつか?」
 ケラケラと笑い出す薫。
 「おにいたんのことはちんじてまつから、とんなひつようないでつよ?」
 「あのさ・・・薫ちゃん。さっきから気になってたんだけど」
 と耕治はパソコンの画面を指差す。
 「この『おにいたん店で盗聴3/1.mp3』ってファイル、なに・・・?」
 「おとめのひみつ、でつ♪」
 そういうと薫はいそいそと問題のファイルをゴミ箱フォルダに移動した。
 (不用意な発言はできないな・・・)
 「あ、おにいたん。でんわのけんはどうなりまちたか?」
 「その件?間違いないよ。それは明日22:40ごろ放送だって」
 「よろちいでつ」
 「そういえばさっき薫ちゃん宛に荷物が届いたよ?」
 あずさは薫が出て行った直後に来た宅配便の荷物を取り出す。
 「送り主が『バラエティショップ防犯用品研究所』・・・だって」
 「あい。これでふくちうのどうぐ、でんぶとろいまちた♪」
 嬉しそうに言う薫。
 「バラエティショップって・・・中身はあれ?スタンガンとか?」
 「ちがいまつ。これは、えみるおねえたんへのぷれぜんと、でつ」
 「笑留さんの?あの人に護身グッズとかいらないんじゃない?」
 「逆に襲うほうだろうな」
 あははははは・・・と乾いた笑い声を上げる耕治とあずさ。
 「でさ、薫ちゃん。復讐って、いつするの?」
 「あちたでつ♪」
 「明日?!」「早っ!」
 あまりの急展開に驚く二人。
 「あちたでないとだめなのでつ。このきかいのがつと、つぎのらいげつではできないかもなのでつ」
 次の来月では出来ないかも?変な日本語に首をかしげる二人。
 「あちたは、えみるおねえたんが、こられないひでつ」
 そうなんだろうか?再び首を傾げる二人。
 「かくぢつにちたいので、おにいたんにおねがいがあるでつ」
 「なんだい?」
 「みたとおねえたんの、でんわばんごうをおちえてほちいでつ」



517 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:21:17 ID:XjUBHhrl]
 (かいわのないようは、おにいたんたちはちらないほうがいいでつ)
 そういって部屋を出て行った薫は、外に出て美里と話をしているようだ。
 「しかし、なに考えてんだろうな薫ちゃんは・・・?」
 「明日なんかあったっけ?」
 「確かグループ店長会議、19時から・・・そっか!明日は笑留さんは実家に確実に泊まるんだ」
 「そっか。本部からだとここより自宅のほうが近いからか。それを念を押しに言ったって事?」
 「だろうねぇ。何で聞かれたくないかわかんないけど」
 口を動かしながらも、二人は例の×印ダンボールの中から取り出した紙をシュレッダーに投入していく。
 やがて、箱の中から、1冊の本が出てきた。
 「これ・・・捨てたらヤバイんでしょうね・・・」
 「どした、あずさ?」
 ダンボールから出てきた文庫本を手に、首をかしげるあずさ。耕治はそれを取り上げる。
 「うーん、とき子さんの持ってる推理小説じゃない?」
 「あのひと、サスペンスドラマ好きだもんね」
 「これはとき子さんに聞いてから決めたほうがいいな」
 「そうね」
 耕治はこの本だけを薫の机のうえに置いた。
 「面白いんだったら、借りてみよ」
 「おもしろいんじゃない?なんかのミステリー大賞とったとか帯に書いてるし」
 「へー?!・・・タイトルなんていうんだったっけ?」
 「えっとな・・・」
 耕治は再び取り上げて題名を見る。
 「・・・?『魔術はささやく』・・・?」

「あ〜らかぁるちゃん、いらっしゃい」
 「こんにちわ、でつ♪」
 次の日の夕方、薫はテュルパンを訪れた。店の事務所にはフロアでの仕事を終えた笑留がパソコン相手に格闘していた。
 「おねえたん、おちごとでつか?」
 「今日会議でねぇ〜資料がまとまらないの〜」
 といいつつキーボードを叩く。
 「おねえたん、おつかれでつね」
 「おつかれなの〜だけど薫ちゃんが来てくれたら疲れも吹き飛ぶの〜」
 笑留は椅子を回転させて薫のほうを向き微笑む・・・涎を垂らしながら。
 「かぁるちゃんのおしっこ飲んだら元気出るの〜」
 「え、えみるおねえたん・・・」
 さすがにドン引きする薫。
 「お、おねえたん。だいどころにいってこーひーでも、もらってきまつ」
 「ああ〜ん、かぁるちゃんのほうがいいのに〜」

 薫は事務所から厨房に移動する。
 「おねえたん、てんちょうたんに、こーひーをいれてくだたい!」
 「うん、わかった!ちょっとまっててね」
 偶然食器を返しに来たあずさがいたので薫は笑留用のコーヒーを頼む。
 あずさは食器棚からコーヒーカップ一式を取り出す。
 「かぁるちゃんは牛乳でいい?」
 「あい!あいつでおねがいちまつ!」
 「はーい」
 あずさは大きな薬缶に入ったコーヒーを保温のため弱火にしていたコンロからとり、コーヒーに注ごうとする。
 「あ、おねえたん、ちょっとまってくだたい」
 「どうしたの?」
 薫はポケットから薬の入った包みを取り出すとそれを開け、中にある怪しげな粉をコーヒーカップにいれた。
 「か、薫ちゃん・・・それ、毒じゃないでしょうね?」
 「とんなわけないでつ!おみちぇがつぶれるでつ!」
 「な、ならいいんだけど・・・」
 といいながらあずさはその問題のカップにコーヒーを注いだ。
 そして冷蔵庫から牛乳パックを取り出し、グラスに注ぐ。
 あずさはカップとグラスを小さなお盆の上に置いた。
 「薫ちゃん、これ、持てる?」
 「あい!」
 薫はあずさから貰った盆を手に再び事務室に向かう。

518 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:22:00 ID:XjUBHhrl]
 「えみるおねえたん、ただいまでつ」
 「あん、かぁるちゃんありがと〜」
 笑留は席からたち薫の前に立つと盆からコーヒー一式を受け取った。
 薫は盆を地べたに置くとグラスだけ両手で持つ。
 「では、いただきます。んぐんぐんぐ・・・」
 笑留はホットをブラックのまま飲んだ。
 「おねえたん・・・にがくないでつか?」
 「これがいいのよ。このほうがコーヒーの味が分かるし」
 2、3口で飲み干すと笑留はまたパソコンの画面に向かう。
 「さーて、飲んだら気合入ったぞー!やるぞー!」
 笑留はまたキーボードを打ち始めた。
 「こっぷ、かえちてきまつね」
 薫は笑留のコップをのけ、厨房に持っていった。そして、帰ってきたとき。
 「えみるおねえたん、ちょうちはどうでつか?」
 「抜群抜群・・・って、あれ・・・あ・・・なんか目が回ってきた・・・なんで?」
 「おねえたんはつかれてるのでつよ・・・」

 がばっ!
 気がついたら笑留はキーボードの上に突っ伏して寝ていた。
 「え?あたし、なにしてた?」
 「おねえたん、つかれてねてたのでつよ」
 「え・・・そうなんだ。何分ぐらい?」
 「20ふんぐらい・・・でつね」
 「よかった〜」
 笑留は胸をなでおろす。
 「おねえたんがちんぱいでちたが、もうだいぢょうぶでつね?」
 「うん!だいじょうぶ!」
 笑留は薫に対し力こぶを作る動作をする。
 「じゃーやるぞー!あと30分!」
 「がんばってくだたい!かぁるは、これでかえるでつ」
 「うん!今日はおうちにいけないけど、またね〜」
 パソコンに体を向けてるので後ろを向いたまま笑留は手を振る。
 「あい!おねえたんも、がんばってくだたい!」
 そういって出て行った薫の瞳には月色の光がともっていたが、笑留はそれに気づけなかった。

519 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:23:01 ID:XjUBHhrl]
 その夜、22時過ぎ。禾森邸。薫は携帯で笑留に電話した。
 ぷるるるる〜、がちゃ。
 「あ、かぁるちゃんだ〜」
 「えみるおねえたん、かぁるでつ♪」
 「きゃ〜かぁいい〜♪」
 「おねえたんと、てれびでんわではなちたいでつ」
 「わかったぁ、ちょっと待っててね」
 薫は居間のパソコンを操作し、大画面のテレビをパソコン画面に切り替えテレビ電話を起動する。
 すると、画面にでっかく笑留の姿が映し出される。
 「あ〜かぁるちゃん映った〜♪あれ、耕治君にあずさちゃんたちもいるの?」
 「あい♪みんなでいまにいまつ」
 笑留は画面の中で手を振っている。ちなみに声はテレビのスピーカーから流れている。
 笑留は自室のパソコンからテレビ電話をしていた。後ろに部屋の風景が映っている。
 風景といっても、後ろに映っているのはベッドとその上に乗った笑留がいつも持っている鞄ぐらい。
 ちなみに彼女はスーツ姿のまま。もしかしたら今帰ったばかりかもしれない。
 「おねえたん、いまかえったとこでつか?」
 「そ〜なの〜、お兄ちゃんはもう帰ってきてるんだけど、お姉ちゃんがまだ帰ってきてないの」
 「おにいたん・・・ゆういちてんちょうたんでつか」
 「うん!でさー、せっかくみんないるんだしさ〜」
 そういうと笑留はいきなり服を脱ぎだそうとする。
 「お、おねえたん!ちょ、ちょっとまつでつ!」
 「えー?!どうしたの、かぁるちゃん?」
 「あのね、おねえたん。ゆういちてんちょうたんとおはなちちたいのでつ」
 「え〜!!」
 明らかに不満の声を上げる笑留。
 「てんちょうたんとおはなちがあるのでつ。かぁるのおねがい、だめでつか?」
 「うーん、ちょっとまっててね」
 そういうと笑留は画面から姿を消した。部屋の外に出たようだ。
 画面から小さく「おにーちゃーん!」って声が聞こえる。
 「おにいたん、いまなんぢでつか?」
 「10時半に少し前・・・25分」
 「ぎりぎりでつね・・・」

520 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:24:08 ID:XjUBHhrl]
 1〜2分して画面の前に元店長−樹元雄一が現れた。後ろには笑留がベッドの上に座っている。
 「はーい、おまたせー薫ちゃん♪」
 「ゆういちてんちょうたん、よびつけてごめんなたいでつ」
 「いいよ〜」
 そういって雄一は笑う。
 「いつも妹が迷惑をかけてるからね」
 「おにいたんからいちどきつくいってくだたい!」
 「うんうん、いっておくよ」
 後ろでは笑留が口を膨らましてプーと怒った表情。
 「でね、てんちょうたん」
 「なにかな、薫ちゃん?」
 「てんちょうたんたちのおへやに、てれびはありまつか?」
 「あるよ?」
 「ちょっとつけてくだたい」
 「テレビ?そういや今の時間帯だと・・・笑留、テレビつけて」
 「テレビねー、おっけい」
 笑留はベッドに転がっていたリモコンをとると画面から見て右にリモコンを向けた。この画面からはテレビは見えない。
 「あ、うちのCMやってる」
 「ほんとだ」
 『ぐるぐるきょうも〜♪』
 ウエイトレスが複数お盆に料理を載せてクルクル回転している。テュルパンのCMだ。

 ”きていぢぢつ、つくるでつよ・・・”

 「え?」
 「笑留、どうした?」

 ”おねえたんは、ゆめをみてたのでつ・・・”

 笑留はテレビを見たまま動かなくなる。
 「笑留、おい!」
 雄一は画面から離れると、その手を笑留の肩にかける。笑留は雄一の手を自らの手で払うと、その手首をつかんだ。

 ”いまは、あくむをみてるでつ・・・”
 ”ゆめは、ちゃめるでつ・・・”

 「うん・・・ゆめだから・・・さめるよね・・・」
 「笑留、どうしたんだ、おい!」
 笑留は雄一の手首をつかんだまま雄一のほうを振り向く。
 その瞳は月色の光を灯していた。明らかにヤバい瞳だ。
 「え・・・え・・・えみるさん?」
 「おにいちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!」
 笑留は、雄一をベッドに押し倒した。  

521 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:25:46 ID:XjUBHhrl]
以上です。
次回、完結。またエロ。そして修羅場。
・・・新スレが起つまでに間に合えばいいが。

522 名前:新店長でG.O.  ◆dkVeUrgrhA mailto:sage [2007/03/20(火) 00:27:28 ID:XjUBHhrl]
・・・だめだ。もう450KB使い果たしてる・・・orz

523 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 04:47:06 ID:7yxgMxT1]
>>512第二章キタ━━(゚∀゚)━━!!GJ!
開始早々サキが嫉妬?
過去に虎吉と関わりがあったようだし今後の展開がますますwktk

>>521遂に病みが来るかと思ったら次で終わりとはw
大爆発に期待w

524 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 12:49:49 ID:0xGFv+j9]
サキが急に可愛く見えてきた俺ガイル
ロボ氏GJ!
◆dkVeUrgrhA氏もGJ!次回最終回?

450㎅越えたし次スレ立ててきていいのかな? 
問題ないようなら行って来ますね

525 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 13:29:22 ID:0xGFv+j9]
立ててきました

ヤンデレの小説を書こう!Part5
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1174364890/

526 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 15:58:11 ID:+UBnlJRw]
埋めついでに愚痴を少々。

このスレでは雑談が少なめだった。
実にSSスレらしいのだが、少々寂しくもあった。
住人が減ってしまったのかな、と思ったりする俺ガイル



527 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 16:14:43 ID:7IMjvgJf]
SSスレで雑談を遠慮するのは当たり前のマナーだろ、常識的に考えて……
容量とか考えろよ

528 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 16:38:21 ID:lRPxiCOf]
いいものじゃないか、神光臨の頻度が増えたと思えば。

529 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 16:39:46 ID:+UBnlJRw]
それはそうなんだけどさ……なんだか、感想レスも最近減った気がするんだ。
覗きに来る人が減ってたりしたら、なんか悲しいわ……
みんな、居るのか?
うぅぅぅぅ…………

ヤンデレスレはエロエロよー!


orz

530 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:14:07 ID:5QfzGFlb]
覗いてるけど読んでないしな、俺の場合

531 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:15:31 ID:lRPxiCOf]
ふ ざ け る な
俺の常駐では控え室を除くとここが一番過密なんだぞっ!


_| ̄|○

532 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:53:56 ID:WNu2Za9q]
作品以外のレスで埋め尽くされた今の嫉妬スレを見ろ。あれは泣きたくなる。
作品が投げ出されたにも関わらず、ハチ公のように続きを待つ俺の気持ちも考えろ。

533 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:54:28 ID:XjUBHhrl]
ヤンデレスレは個人的には感想専用スレが欲しい

534 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 17:57:16 ID:XjUBHhrl]
>>532
逆レイプスレなどヴァカが暴れて職人全員逃亡、
新作投下がないまま次スレ移行だぞorz

535 名前:名無しさん@ピンキー [2007/03/20(火) 19:42:57 ID:LXxhQSKc]
神気取りの勘違いバカを潰すのは最高の娯楽だけどなw

536 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 19:57:34 ID:2DdENjVX]
嫉妬スレに飽き足らず、ヤンデレスレにまで来たか……



537 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 19:57:56 ID:3Ccti8Mu]
と、工作員が言ってましたw

538 名前:名無しさん@ピンキー mailto:sage [2007/03/20(火) 20:04:47 ID:4PUniF5d]
>>535
お前、嫉妬スレで荒らしやっているバカだろ?






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