- 23 名前:幽霊の恋捜し 1/12 mailto:sage [2006/12/03(日) 23:00:28 ID:nLepI2ZZ]
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――まだ、死にたくなんて無かった。 やり残した事、並べれば掃いて捨てるほど。 やりたい事、考えればそれこそ海の水の分子よりも多く。 でも……本当にやりたい事、やり残した事は一つだけ。 それは―― 交差点の信号が赤から青に変わり、待っていた色とりどりの車が走り出す。 「……」 運悪く信号の変わり目に横断歩道の前に辿りついた俺は、黄色い歩行信号のボタンを押して変わるのを待つ。 しかし……長い。 「あっつぅ」 上を見れば太陽がちょうど真上。 時間にして昼前だが、この暑さの所為か斜め向かいの所に見覚えのある制服を着た女の子が一人いるだけだ。 ……って、夏休みだったか。 「このまま突っ切るか?」 車が常時行きかう二車線の道路を突っ切ろうと考えるほど暑い上に長い。 無論、そんな事をすれば回りにふわふわ浮いてる"ヤツラ"の仲間入りを果たす事になるだろうから、真っ平ごめんだが。 「ひぃ、ふぅ、みぃ……」 退屈しのぎに"ヤツラ"を数える。 ……総計27体。こういう交差点としてはかなり大目。 大抵は、遺族などが供養するためこういった交差点では"ヤツラ"は成仏して少ない。 と、信号が黄色に変わったのか車の流れが途端に緩やかになる。 「やっとでか……」 歩行者用信号機から流れるメロディを聞きながら白い白線の上をゆっくりと歩く。 「――っ」 それがよほど気に触ったのか"ヤツラ"が猛然と俺へと突っ込んでくる。 これも仕事……面倒極まりないが。 『祓い、清めたえ』 刀を抜くわけでも札を使うわけでもない。 俺は一言、そう呟くだけで"ヤツラ"を掻き消す。 本当は、話を聞いてやったりしてやるべきだが雑霊程度はこれで十分。この程度が相手なら苦労が跳ね上がるだけで手間が かかって仕方ない 「ん」 俺が渡り終える頃にはさっきまで居た霊達は消えて、霊感のある人間にもただの青い空しか見えないことだろう。否、そのはずだった――
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