- 66 名前:訂正です。 mailto:sage [2017/10/19(木) 22:52:38.59 ID:HEBGf5i8.net]
- 私は左足を前に出し、腰をやや落として、左掌で牽制をした。右拳は握って脇に引く。
そうして、巨大兎の出方を伺った。 巨大兎は軽やかに跳ねる。ボクシング、いや、高く掲げた両腕から見て、ムエタイスタイルか。 巨大兎の肩が、ぴくりとした。距離を詰められる。赤い目と私の目が合う。 「るあ!」 私は奴の白い眉間に正拳突きを放った。消えた。違う。白い毛が舞っている。上だ。 巨大兎は私を飛び越えた。後ろ踵蹴り。 高速の接近。狙いは延髄か。 前方に上体を倒し、勢いで右後ろ足を蹴り上げる。 が、それは奴の踵、肉球に触れただけだった。 私の後ろ蹴り上げをバネにして、奴はさらに高く跳躍し、時計に見入りながら、逃げさる。 向う先は森の向うか。 木陰から突き出ているのは、剣山の針のように煌くのは、トランプ兵の槍だろう。 逃げ込まれると厄介だ。 私は奥歯を噛み締め、全力で追い始める。 ダートのような柔らかい土。虹色の空から注ぐ陽に、わたしの体が紅茶色の影を作る。 異常な世界だ。くそ。 女子空手部、合宿初日、昼ごはんを食べてうとうとしていたら、時計を見ながら走る巨大な兎を見かけた。 追いかけるといつのまにか、こんな世界に来てしまった。 兎だ。あの兎を撲殺しないと、戻れない気がする。トランプ兵は槍が厄介だ。が、根性で乗り切る! 私は気合の雄たけびをあげた。
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