- 34 名前:1/3 mailto:sage [2017/10/18(水) 22:09:57.32 ID:YiCIXlCS.net]
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■タイトル:魔物たちのハロウィン ――魔王城にて。 「魔王様、朝礼の時間でございます」 竜の頭をした魔大臣の言葉に、重いまぶたをこすりながら、魔王は頷いた。 「ふわあ……、低血圧な我には辛いものがあるな」 ゆっくりと自室の扉を開け、バルコニーを目指す。 魔王軍では毎朝、広場に城内の全軍を集め、朝礼を行う習慣がある。 魔王はバルコニーから毎朝小話をしている。 「今日の話のネタは何にするか…… そうだ、プレミアムサタンデーだから早く帰るように、とかそういった話にしよう」 バルコニーに辿り着いた魔王は、魔イクを手に取り、階下を見下ろした。 「えー、本日はお日柄もよく……ええっ! 何だこれは!」 魔王は驚愕した。 それもそのはず、いつもなら広間を埋め尽くす魔物が一匹もおらず、 代わりにいたのは、広間を埋め尽くす人間たち――それも、 勇者、戦士、魔法使い、僧侶といった勇者パーティーの面々だったからだ。 「ま、魔大臣! これはどういうことだ! 大量の勇者に魔王城が攻め入られているぞ!」 魔王の言葉に、側にいた魔大臣が笑って答える。 「ハハ、落ち着いてください、魔王様。今日が何の日かお忘れで?」 「何の日だと? 10月31日だが、何の日でもないだろうが」 「まーた、魔王様ったら。10月31日といえばハロウィンですよ、ハロウィン」 「ハロウィンだと?」 魔王も言葉は聞いたことがあった。 確か、人間どもの祭りか何かだったはず。 子供が化け物の仮装をして街を歩き、大人に『お菓子くれなきゃ、いたずらするぞ』と尋ね回る理解に苦しむ祭りだ。 「それは人間どもの習慣だろうが。それにハロウィンとこの勇者の集団が何の関係がある」 「かねてより魔王軍は娯楽が少ないと不評でして。人間どもの祭りを魔王軍にも取り入れることにしたのです」 「我に黙って決めるなよ……で、あの勇者集団は」 「人間たちは化け物に仮装しますが、我々は元から化け物なので。我らにとって化け物といったら何か、と 考えたら、勇者の一団かなあ、と」 「なるほど……そういうことか。合点が行ったぞ」 魔王は落ち着いて勇者の集団を良く見てみる。 仮装と聞いたが、そこにいるのは勇者パーティーそのものに見える。 人間にしか見えない。 「いったいどういう仮装の技術なのだ? 魔物が化けているとは思えんぞ」 「それはこの、」 魔大臣が豪華な装飾の杖を取り出す。 「魔界の秘法の変化の杖で変身させました」 「秘法をこんなくだらんことに使うなよ!」
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