[表示 : 全て 最新50 1-99 101- 201- 301- 401- 2chのread.cgiへ]
Update time : 05/09 16:49 / Filesize : 501 KB / Number-of Response : 408
[このスレッドの書き込みを削除する]
[+板 最近立ったスレ&熱いスレ一覧 : +板 最近立ったスレ/記者別一覧] [類似スレッド一覧]


↑キャッシュ検索、類似スレ動作を修正しました、ご迷惑をお掛けしました

【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 7【一般】



1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2007/10/07(日) 18:08:08 ID:605h1ErK]
ここはローゼンメイデンの一般向けSS(小説)を投下するスレです。
SSを投下してくれる職人は神様です。文句があってもぐっとこらえ、笑顔でスルーしましょう。
18禁や虐待の要素のあるSSの投下は厳禁です。それらを投下したい場合は、エロパロ板なりの相応のスレに行きましょう。
次スレは>>950を踏んだ人が、またはスレ容量が500KBに近くなったら立てましょう。

前スレ
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 6【一般】
anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1184419565/
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 5【一般】
anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1178641673/
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 4【一般】
anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1171710619/
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 3【一般】
anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1156249254/
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 2【一般】
anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1146976611/
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】
anime.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1143018114/

関連スレ

Rozen Meiden ローゼンメイデン SS総合 8
anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara/1164813753/

薔薇乙女(ローゼンメイデン)のエロ小説 題15話
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1187101726/
薔薇乙女(ローゼンメイデン)のエロ小説 題14話
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1178325637/
薔薇乙女(ローゼンメイデン)のエロ小説 題13話
sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1173568505/

保管庫
保管庫
rozen.s151.xrea.com/
www.geocities.jp/rozenmaiden_hokanko/
rinrin.saiin.net/~library/cgi-bin/1106116340/

253 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:13:15 ID:TuU5GYkV]
127

雪華綺晶の世界である、水晶の城の階段を駆け上る翠星石に続く巴と雛苺の三人。

ある階に辿り着いたところで、ばったりと向こうから階段を下ってきたジュンと真紅に出くわした。「ジュン!」「翠星石!」
「真紅、無事だったですか!」
「ええ、なんとか。」
再会を喜ぶ彼女達の合間、さらにそこへ、外の世界から水晶の壁を突き破ってぶっ飛んできた雪華綺晶が、ガラス張りの床を派手に転げた。
その左手にはどういう訳か薔薇水晶の眼帯が握られいる。
「これを取ろうとしたら薔薇水晶がすごく怒った」雪華綺晶は頭いっぱいに水晶の破片をかぶっている。「蹴っ飛ばされました…」
「薔薇水晶…?」その言葉の中に異様な単語が含まれていることに気付く真紅が口を開いた。「なぜ薔薇水晶の名前が…?」
「実体を離れた霊魂がこのフィールドに戻ってきてるですぅ」翠星石が説明する。「幽霊同士白薔薇と喧嘩してるですよ」
「そんなことが…?」
真紅は顔を上げ、雪華綺晶が突き破ってきた穴を見つめた。
その穴から、宙に浮いた薔薇水晶がゆっくりと雪華綺晶を追うように下へ降りてきている。
眼帯を取られ、両目の瞳でこちらを覗いている。今まで隠されていたその左目から涙が止めどめなく出ていることにまだ薔薇乙女は
気付いていない。

実際の第七ドールの偽の第七ドールが改めて似ていることが分かると、真紅は事態が最悪になりつつあるのではと危惧した。
「薔薇水晶と雪華綺晶は、やはり何か関係が?」
もしこの2人が手を組んだりしたら私達の力ではもはや到底適わない。
以前水銀燈のフィールドで戦ったときも、ただでさえ雪華綺晶一人相手に大敗したばかりだ。
「いえ、大丈夫ですよ、真紅」翠星石がなだめる。「むしろ敵対してますから。この2人。どうも白薔薇の方が薔薇水晶を怒らせてる
みたいですよ」
「七体目がドールのマスター達を狙っていると聞いたわ」改めて真紅は問い掛ける。「マスター達はどこに…?」
「それが、見当たらないのですぅ。どうにも」翠星石はかぶりを振った。「私たちがこっちに来る前、ジュンの機会の箱の画面に
水晶の中に閉じ込められたマスター達が見えたのですが…」翠星石は自分たちがここまでやってきた経緯を真紅に話した。
いきなりジュンのPC画面に出てきたことから、槐が雪華綺晶のマスターに一方的にされてしまっている状況、そして七体目が
正確にはマスターの心を奪うことでアリスになろうとしていることなど。

それから、七体目があひる座りをしたまま白い長髪に纏わりつく水晶の破片を地道に手で取り除いているのを翠星石は見やった。
「マスター達を見つけるには、もうあいつに自分から口を割らせるしかないですぅ」
「どうやって?」
「白薔薇のやつの身動きを完全に封じて拷問しちまうですよ!」翠星石の口調が強まる。生意気で迷惑な妹をとっとと払いたい
というような気持ちが滲み出てきているかのようだ。「拷問台にかけるです!泣いて許しを請いたってもう許さんですぅ!!」
「果たしてそんことができるかしら」一方、真紅の言動は慎重だ。
「そうですね…」翠星石も負けじと考える。「相手が幻なのですから、私の世界樹や雛苺の蔓で拘束してもまるで無駄ですぅ。
見た目では縛れていても、所詮はやっぱり幻なのですから。手ごたえがないですぅ」
「霊体同士なら触れ合えるのよね?」
真紅が念を押すように聞いてくる。「みたいですぅ。そんなSFのちゃちー辻褄が本当に私たちの世界でも通じるとは思っても
みませんでしたが!」
さらに真紅は一考した。どうやらこの状況の打開法を導きつつあるらしい。「なら、薔薇水晶の協力が得られれば…あの子の水晶
の力で七体目を封じ込めてしまえばいいのではないかしら。喋ることだけはできるように顔だけは出しておいて」
翠星石は、顔から下が完全に水晶に埋まった雪華綺晶を想像して思わず噴出しそうになった。「名案ですぅ真紅。でも、薔薇水晶
はきっと私たちをまだ敵視するでしょうね…」
真紅と翠星石が2人が議論しているさなか、薔薇水晶は剣で再び雪華綺晶に襲い掛かっていた。
雪華綺晶は床を転げながら自分の氷の剣を振るって相手の攻撃を弾き返す。若干歯を食いしばりながら氷の剣を扱っており、
余裕がやや失われているようにも見える。

254 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:15:06 ID:TuU5GYkV]
「雪華綺晶が薔薇水晶におされてる…?」戦い続ける二人を見つつ真紅がそう口にする。
だが、翠星石は確信に満ちているように首を横に振った。「いえ、あの白薔薇のことです…どうせ演技ですよ。
このままじゃ薔薇水晶が危ないですぅ!」
そう翠星石が言ったつぎの瞬間、薔薇水晶の紫の剣が力強く振り落とされた。雪華綺晶は床を転がってそれをよける。
的を外した薔薇水晶の剣が地面を叩くと、その剣に白の茨が伸びては絡まった。
「…!」しまったと薔薇水晶の表情に一瞬変化がでたかでないかのうちに、雪華綺晶が脚を持ち上げて薔薇水晶に蹴りを
入れた。薔薇水晶は後ろへとよろめき、一方茨に捕らえられたままの剣を手から落としてしまう。
雪華綺晶はその落ちた剣を左手に持った。右手に氷の剣、左手に紫の剣を突きたてて、薔薇水晶に迫る。
形勢が一瞬で逆転した。
薔薇水晶に恐れの暗い表情が入り、後ずさる。対して二本の剣を突きたてながら相手に迫り続ける雪華綺晶。

「翠星石、念のためもう一度確認するわ」離れたところで、真紅が再度翠星石に耳打ちする。「薔薇水晶と雪華綺晶は本当に
味方同士という訳でもなく、むしろ敵対しているのね。あれは芝居ではなくて」
「ですぅ。そもそも戦いバカの薔薇水晶に芝居なんかできっこないですよ」
「それはもしかして、薔薇水晶は私達と同じ敵を持ったと考えてもいいのかしら」
「そうですね。最悪それ以上はあるですぅ」

追い詰められた薔薇水晶の背中が水晶の壁にあたった。もう後が無い。
雪華綺晶はにじり寄る。
二本の剣の先端が接近してくる。
と、突然薔薇水晶は青みがかった髪から水晶の髪飾りを手に取った。形が変化して槍のように尖り、目にも留まらぬ速さで雪華綺晶に
迫る。が、予期していたように雪華綺晶はそれを水晶と氷の剣ではじいた。
秘密の武器まで軽くあしなわれ、いよいよ頬に冷や汗を流す薔薇水晶。
次の瞬間、彼女は顔面を膝でけられた。「うあ…っ!」壁際にしりもちをついて倒れる。
「もう終わりです」雪華綺晶は言う。悔し紛れに、薔薇水晶は下から相手を睨みあげる。だが左目からは止められない涙が流れ
暴力を振られて弱々しく泣く女の子のように見えてしまう。「かわいそうに。でもあなたはとうに踊り役を降ろされたの」

「薔薇水晶が泣いている…?」
真紅は、いままで眼帯に隠されていた彼女の左目から流れるそれに遂に気付いたのだった。「いままで左目を隠していた理由は、
それにあったというの?」
「思えばかわいそうなやつですぅ。ローゼンメイデンでもないのに私達のアリスゲームに巻き込まれ…」翠星石も口を揃える。
「本当は彼女だって、戦うことは辛く悲しい。その気持ちを、あの眼帯と一緒にきつく自分の中に封じて押し殺していたのかも
しれないわね」

雪華綺晶が両腕を持ち上げて上で二本の剣を交差させた。一気に薔薇水晶を切り刻もうとしているのだろう。
だがその表情は無感量で、楽しくも嬉しくも悲しくもないといった様子に見える。
薔薇水晶は逃げようとした。だが、恐怖が体から自由を奪っていた…こんな体験は生まれて初めてだった。
彼女は固く目を瞑る。せめて自分が切られる瞬間の光景から逃げるために − 目の当たりにしないために。
そして、まさか私がこんな自分に似たような姿の訳のわからないドールに負けるなんてことが未だに信じられない気持ちでいた。

金属の衝突音が高鳴る。
自分はあの白いドールに切られたのだろうか?薔薇水晶は目開ける。
まず一番そば見えたものは、水晶の剣でも氷の剣でもない、鉄の剣だった。混乱が頭を駆け巡る。なぜここに"水銀燈の剣"が
あって、それがまるで自分を護るように雪華綺晶に二本の剣と拮抗しているのだろうと。
その剣の持ち主へ薔薇水晶はゆっくり視線をずらした。剣の持ち主は第一ドールではなく、真っ赤なドレスの第五ドール、
真紅だった。薔薇水晶の目が見開かれる。「「これは一体どういうことなの…」なのです?」
薔薇水晶の台詞が雪華綺晶とはもった。

255 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:16:32 ID:TuU5GYkV]
真紅は、水銀燈の剣を伸ばして薔薇水晶を切りつけようとする二本の剣から彼女を庇っていた。
その第一ドールの形見である剣は、まだ以前人間を殺したときの返り血の色をまだ少し残している。

一見剣同士がせめぎあっているように見えるのも、これは七体目の幻だ。真紅はそれを理解していた。
雪華綺晶の背後から延びてきた翠星石の世界樹が、彼女の肩と首に絡まりつく。
「…真紅…」薔薇水晶があまり優しいとはいえない目でその真紅を見ると言った。「これはどういうつもりなのですか」
「薔薇水晶、」依然水銀燈の剣を握りしめて雪華綺晶と対抗しつつ真紅がそれに答えた。「あなたの力を借りたいの。お願いするわ…
いまあなたと私達は、敵同士ではないわ。私達はいまあなたと同様にこの雪華綺晶に用がある。そのはずよ」
「何をいってるの?」あまりの予想外の言葉に、薔薇水晶は笑い出しそうになった。「ローゼンメイデンは全て私の敵。あなた達なんて
みんな壊して差し上げることが、お父様のお望みにも応える、私の宿命」
そう言い返す彼女の左目から滴る涙が頬を伝って、紫のドレスまで濡らしつつある。金色の瞳からどうしようもなく流れ出る涙と、
真紅を睨み上げるその顔の表情がどうにも倒錯的だ。
「少なくとも、あなたのそのお父様は、このドールに心を奪われそうになっている。そうなのしょう?」真紅は説得を続ける。「私達も
同じような理由でこのドールには用事があるの。私達をもう一度壊したいならば、まずはこのドールから奪われた人たちの心を
取り戻すのが先では?」
「そんなこと…私一人でもできます…」バカにしないでというような目をする薔薇水晶。
すると、真紅は不適にもふっと笑って見せた。「そう。なら、私達も勝手それに参加させてもらうわ。ただし、思うに、
いまあの七体目を壊したりしたら、あなたののマスター達の心も勿論、あなたの人形師の心も一緒に吹き飛んでしまうわよ。
まずは動きを封じることね」
明らかに自分たちの作戦への参入を誘っているかのような真紅の言葉に甚だ薔薇水晶は憎たらしさを覚えたが、言っていることは
あながち間違っていないと思った。真紅達ならあとで壊してまえばいい。今はあの雪華綺晶という者を第一にどうにかしなければ
ならない。
あのドールの手からお父様を救うために。

「ああうっ!」一方、雪華綺晶は世界樹によって後ろ向きに強く引っ張られ、体を仰け反らせながらまたしても床に転げた。
甲高い奇声をあげながら。しかもそのときわざとらしく両手から剣を手から落とす。
床に伏した雪華綺晶へ、すかさず薔薇水晶が自分の剣を取り戻すと前に乗り出た。その横に真紅も乗り出す。
さらに後ろに翠星石、その翠星石の隣に雛苺が並んだ。全員して雪華綺晶を囲み、睨みつける。
「柴崎のしじいとみっちゃんをどこへやったですか!!」
「みんなを返してなのお!!」
「あなたをこれ以上ジュンには近づけさせないわ」
姉たちの降り注ぐ非難と要求を浴びるなかで雪華綺晶は起き上がり、壊れがちな笑顔を作ると口を開いた。
「4対1ですか?ふふ、1対1でも、何対何でも、私とあなたのアリスゲームは違っているのに」
「いいえ、5対1よ。雪華綺晶」真紅はそれに修正を加えた。「これを見なさい。これは水銀燈の剣。第一ドールもあなたには怒って
いるわ。"マスターを返しなさい"、とね」

すると雪華綺晶は床の上をくるっと一回転廻ると自分を取り囲むドール達を見返した。「全てがここに集ったのですね。
歌と劇の終わるとき(ラスト・アリスゲーム)に − well come to the party,pal!」

256 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:19:03 ID:TuU5GYkV]
128

well come to the party , pal!

さあおいで。

ドール達に取り囲まれた中心で、雪華綺晶は左目の瞳を閉じた。首を垂らし、白い髪もそれに伴って降り下がる。
まるで自分の世界にどっぷり浸って夢見ているかのように、頭を揺れ動かしている。

これだけ沢山のドールにいっせいに狙われておきながら、なんて余裕なんだ。ジュンは思った。
「歌と劇の終わりに」彼女は目を閉じたまま言う。「さあ運命の糸車が速くなる。廻る廻る。速くなっていく…」

雪華綺晶の横に位置していた真紅の顔が強張る。後ろに位置するは翠星石、雛苺。そして正面には薔薇水晶。
その位置合いを目を瞑ったままで、雪華綺晶は完全に把握しているように思えた。そんな異質な気配を七体目は漂わせている。

と、そのとき薔薇水晶の足が動いた。彼女は右手に持つ剣とは別に、左手に数個水晶の髪飾りを取り出す。
次の刹那それに呼応したかのように真紅が動き出した。ほぼ同時にそれに続いて翠星石と雛苺が動ずる。

金色の左目がぱっと開かれた。もろとも片足で飛び跳ねる雪華綺晶。白い茨が体から伸びる。いってしまったような瞳で
遠く彼方を見つめながら、両手を別方向に挙げて歓呼する。「切れる、糸が切れる!」

その雪華綺晶の片足がガラス張りの床に強く着地すると、ガシャンと大きな音をたてて床が割れ、真紅達や薔薇水晶、ジュンの立つ
ところにまで蜘蛛の巣状のヒビが広まった。
その場の全員が瞬く間にそのヒビに巻き込まれる。そして、床がバラバラに砕け散って落ちた。
「うわぁ…!」「きゃあ!」
薔薇水晶も、真紅も、だれ一人雪華綺晶に触れる前に足場を失い、下へと落下していった。雪華綺晶本人もろとも、ジュンや巴までも。
雨あられと降るガラスの木っ端微塵の破片のなかにまみれる姉妹たち。

水晶城の内部を、落ちていく。底へと。

257 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:21:44 ID:TuU5GYkV]
129

ズシンと、落下音が鳴る。
「いたた…」
最初に体を起こしたのは、翠星石だった。
茶色の長髪が視界を覆って邪魔しているので、それを手でどける。すると地面が見えた。
はじめ落ちてきたとき、地面が意外にも柔らかいと思ったが、その謎が解けた。いま自分たちが立っている所は地面ではない。

植物。
そこらじゅう隙間なく埋め尽くされた白い茨の上に立っているのだ。言い換えれば、自分たちは茨同士が大量に絡まりあって
できた足場のようなところに立っていて、歩くにも立っているにも常に茨を踏み続けざるを得ないということだ。
はっきりいって、かなり気味が悪い。

空間そのもの自体は丸っぽい円柱のような形をしている。床は茨まみれだが、壁については分厚い冷たそうな水晶でできていた。
その壁際には四方それぞれに一つずつ、大きな縦長の絵画の額が計4つ飾られている。
だが、その絵画には何も映っていない。

ジュンは真紅に駆け寄っていた。
「真紅、大丈夫か?」
「ええ平気よ」彼女は応えつつ起き上がる。「それより、あなたは自分の心配をしなさい…!七体目はあなたを狙っているのよ」
ジュンは息を呑んだ。いままでただ彼女達のアリスゲームを端から力を分け与えるだけだったが、いまは違う。本格的に自分も
いまアリスゲームの犠牲者として有力な候補となっている。「その七体目はいまどこに…?」
「あそこよ!」真紅は指差した。だが、自分でも驚いているように若干その眼が見開かれている。「あれを見て!」

空間のど真ん中には丘のように突然盛り上がってる所があり、そこに人間サイズの数倍はあるであろう大きさの巨大な白い薔薇
が咲いていた。
その薔薇の花びらの上に雪華綺晶が立っていて、しかもその隣、白薔薇の中心には茨に縛られたまま眠っている柿崎めぐがいる。
「水銀燈のマスターが!あんなところに!」
すると雪華綺晶は真紅に視線を送りながら眠っている柿崎めぐの頬を軽く持つように触ると、ふっと笑みを浮かべた。

「このような子が第一ドールのお姉さまのマスターになることは少し私に遠まわしをさせた。でもそれももう終わり。この子は
いま夢を見ている。永遠に眠り続ける眠り姫の夢を。死ばかりを望んでいた頃は私にとってその心は毒気でした。でもいまはそれも
偽りと嘘によって綺麗になり、私を補うのに相応しい養分となるのです」

彼女がそう言い終えると、ふと遥か上の天井からにょっともう一つの巨大な白い薔薇が下に伸びてきた。それはいま雪華綺晶の
乗っている白薔薇と相するように、上下に向き合う形で止まる。さながら接合部位を向き合わせる二つの脳神経のシナプスだ。
「その子に何をするつもり!?」
「"浄化"です紅薔薇のお姉さま」彼女は横向きになりつつそれに応える。「この子は綺麗になるの。するとそれに適った、
美しい薔薇の花が咲くのです」
上の方からしゅるっと下ってきた数本の蔓が柿崎めぐを絡めとり、吊り上げた。しっかりと強靭に巻きついて、それから彼女を
徐々に持ち上げていく。
直後に、真紅は雪華綺晶のいった浄化というものがろくでもないことを瞬時に理解した。
「いけない!やめなさい!」
なす術もなく柿崎めぐはどんどん上へと蔓に引っ張り上げられ、下向きに構える白い薔薇の中に吸い上げられた。
その薔薇はごっくんとめぐを飲み込んだとばかりに不気味な音を鳴らす。

人間が巨大な薔薇の中に呑まれた。
その恐ろしく気味の悪い光景にジュン、巴、真紅、翠星石、薔薇水晶が息を殺しながら果たしてその柿崎めぐがどこにいって
しまったのか目で追った。
天井に咲く巨大な薔薇より上にのびる、巨大な茎。いまごろ肉食動物に食われた生き物が食管を通っていくように、柿崎めぐも
あの茎の中を昇り詰めていっているに違いない。
その図太いホースのような茎は天井まで伸び…水晶にぶち当たると…

と、天井部に開いた小さな穴の先からメグが現れた。天井に付いていた小さな水晶の容器の中にすっぽり身体が収まってしまう。
さながら天井に吊るされた人間用のカプセルだ。
それを見上げているうち、その水晶のカプセルが他に幾つも天井にあることにジュンは気付いた。
そして、ついに見つけた。
草笛みつ、柴崎元治、…薔薇乙女のマスター達の姿を。一人残らず天井の水晶カプセルの中に収められて眠っている。

258 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:24:24 ID:TuU5GYkV]
その人間の扱いにジュンはX−ファイルや宇宙戦争などに登場するエイリアンの装置を思い出した。
恐らくここが雪華綺晶の持つ世界での心臓部ともいえるところなのだろう。
水晶城は外見は幻想的で美しいが、奥に潜む中身はえげつない。まさに雪華綺晶そのものだ。

真紅はわが目を疑っている様子だった。「マスター達になんてことを…!」

残るは僕と槐だけという訳か。ジュンは心の中で唸った。
その槐を助けるために、薔薇水晶もまた雪華綺晶と戦っている。

とはいえ、彼らを見つけられた以上、他のマスター達だって救う手段はゼロではないのかもしれない。ジュンは思った。
「私から…決して離れないで、ジュン」真紅は言い、手に持った水銀燈の剣をしかと構えなおす。
床は柔らかな茨の集合体のみでできているので、足場が安定しない。その床の茨は恐らく全て上向きに咲く方の白薔薇に繋がっている。

一方柿崎めぐを収めて、また一歩アリスへと近づいた雪華綺晶は次の獲物とばかりの瞳でジュンを見据えた。
それから急にびっくりするような金色の目に変わる。
「起きたままの人間がここへやって来るなんて、それは私の最も願ったことの逆だったのに!」
それはこの実態を目の当たりにした人間がどう考えても七体目に敬遠になるからに違いない。
「ふふ…まあよいでして!」そして彼女は右腕を挙げ、薔薇の花びらの上でまた狂ったように飛び上がった。「だってあなたはもう
ここから逃げられないのですもの!」

ぞっとする戦慄が稲妻のように背筋貫くのをジュンは痛いほどに感じ取った。
逃げられないだって?あたりを見回してみる。確かにそうだ。壁に囲まれて、何処にも逃げる所なんかない。
僕はこのまま水銀燈のマスターと同じように薔薇に呑まれ、あの水晶の中に収められるのか。

「ジュン!怖がらないで。七体目にそんなことさせはしないわ」
足のすくみそうなジュンを見た真紅が勇気付ける。それは真紅自身の勇気付けでもあった。「翠星石や雛苺もついているんですもの。
それに…」
みんなを助けるために意気込んでここまで来たのに自分が情けないが、自分を護ろうとしてくれるドールがいることが今ではジュンは
あまりにも頼もしく、ありがたさを感じた。同時に自分も最悪足を引っ張らないくらいの、出来ることをすべきだとも思った。

一方、雪華綺晶はひとしきりその場で踊り狂ったあとに大きな薔薇の花ひらの上に腰掛けた。真紅を − ジュンを庇うように側に
ついている真紅を上から見つめ、にっこり笑ってみせる。
それから両脚を振り子のようにブランコさせながら、挑発するように投げキスにも近い右手の動作をした。

続いて気付かれないように − それは雪華綺晶の得技でもあるが − 真紅達へと瞳を向けつつその実視線を壁際四方に
各々置かれた四つの絵画へと走らせた。それからこの場の素材たちを数える。真紅翠星石雛苺薔薇水晶それに自身に人間。
場違いなのは一人だけだ。

雪華綺晶は薔薇の花びらから飛び降りた。「紅薔薇に全てのお姉さま、今こそ迎えがやって来ました!もう一つの意識に目覚める境界に −
見えること触れるもの全てが − 新しくなるのです!」
それから軽快な足取りのステップで馴れ馴れしくも雛苺に駆け寄りだす。
そのときの横向きの状態が、顔からはみ出る右目の白薔薇をいやに目立せた。
「いけない、雛苺…!」危険を予感する真紅。
「偽と知っていても、嘘と分かっていても」雪華綺晶は言いながら雛苺の金髪を触る。「迎えに告げられたのなら、もっと素敵な
夢を見れるのに」彼女の身体から伸びる白い茨が、雛苺の目の前を蛇のように通過する。ぎょっと雛苺は目を血走らせた。

そこへ、急遽間に割ってきた真紅が遮った。「雛苺から離れなさい…!そしてみんなのマスター達を開放しなさい!」
驚きの反射神経で、雪華綺晶は真紅の胸倉を手に掴んだ。そのまま真紅に倒れ込むようにして寄りかかる。
真紅の顔に雪華綺晶の顔がぐっと接近する。
その彼女の丸っこい瞳はやはりいってしまっていた。真紅は気圧され、一瞬訳が分からず一緒になって後ろへ数歩ふらついた。
「そう、もっと私に触れて。見つけるのです。ふふ… − いまその手に真に望んだ終わりを!」
白の茨が伸びる。そのまま雪華綺晶は真紅を押し倒してしまうが如くだ。気味の悪くなった真紅は思いっ切り金髪のツインテールを
鞭のようにしならせて彼女を追い払った。「は、はなしなさい!」
金髪にぶたれた雪華綺晶はバランスを崩し、真紅から離れた。そのまま体をよろめきさせながら、今度は翠星石に近寄り始める

259 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:25:59 ID:TuU5GYkV]
雪華綺晶がどんどん狂ったようにこっちに迫ってくる。翠星石はあまりの薄気味悪さに身の毛をよだらせそこから逃げ出した。
「きゃぁぁぁ!来るなです白薔薇くるなですぅ!」
だが、いざ走ろうとすると茨だらけの足場ということもあり、その内一本の茨に足をとられて翠星石はずっこけた。「いぃゃぁっ!」

とそのとき、その雪華綺晶を蹴り出した横から飛んできた影があった。薔薇水晶だ。

「助かった…?」と翠星石。
「翠星石、無事なの…?」真紅と雛苺がすかさず駆け寄ってきた。「ええ…どうも薔薇水晶のおかげで…なんか喰われるかと
思ったほど怖かったですぅ…」
真紅は顔の向きを変えて薔薇水晶を見つめた。転げた雪華綺晶の喉元に自分の剣の先を突きつけている。
どうも七体目には踊ったり、逆さになったり、転げてのたうち廻ったりと奇矯な挙動が多い。
「さっきあの子にマスター達を解放しなさいと説得したのだけれど」真紅は口を開いて仲間の2人に話しだした。「それの返答が
まるで理解不能だったわ。触れて−とか、見つけて−とか…人の話しをまるで聞いてないわ。困ったものね!」
「あんなのとまともに意思伝達できるのはきっとE.Tかダークマター知性体でもない限り不可能ですぅ」
真紅は大きなため息をついた。天井を見上げる。ローゼンメイデンのマスター達ががっちりと閉じ込められてしまった天井の水晶を。
こんなことになってしまうなんて。
「薔薇水晶に続いて…雪華綺晶…七体目が現れたことで、私たちのアリスゲームのルールはもう完全に狂ってしまったのだわ。
いまのこのアリスゲームに、お父様はなにを望んでおられるのというのでしょう…?お父様…」

260 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:29:22 ID:TuU5GYkV]
130

喉元に剣を突きつけられた雪華綺晶は動きを止めはしたが、顔に浮かべる笑みを止めはしなかった。
「ふふ…いいのですか?私をここで壊してしまって?」
薔薇水晶はきついで雪華綺晶を見下し、目剣を握る手に力を込める。「私のお父様から手を引きなさい。そうでなければ
どの道あなたを壊すしかないのですから」
「かわいそうな薔薇水晶…」
そう静かに呟き、雪華綺晶は茨まみれの地面に一瞬だけ目を移すとすぐに薔薇水晶の目を見上げなおした。
「かわいそうな薔薇水晶…」もう一度繰り返す。
「手を引くの!?引かないの!?」薔薇水晶は苛立ち始め、口調を突然荒げた。呼吸が乱れ始める。
剣先が動き雪華綺晶の喉元にヒタと触れた。薔薇水晶は続ける。「これが最後です!!さあどうするの!?」
ほどなくして雪華綺晶に出した答えは、きしくも薔薇水晶の言葉を真似たものだった。「これが最後です」顔が残酷に笑う。

突然、薔薇水晶の足元がガクンと沈んだ。「な…っ!!」床の白い茨が動き出して彼女の脚を絡めとリ、下へ引きずり込もうとしている。
驚いている間もなく付近一帯から無数の茨が取り巻くように伸び、薔薇水晶の両手にも首にも腰にも、これ以上ないほど
絡め取られてたちどころに全身を拘束された。必死にもがいたが、右手から剣もこぼれ落としてしまう。「ああ…いや!」
再び身体がガクンと落ち、腰の辺りまで体が茨の中に沈む。彼女はすると床の茨にしがみついて懸命に抵抗する。「あっ…!」

この茨の床全てが罠だったのか!
その恐るべき光景を目の当たりにして、ジュンは昔に読んだ"ハリー・ポッターと賢者の石"の後半にでてきた、
"悪魔の罠" − 人を絡めとる植物に満たされた落とし穴を思い出した。三面犬を潜り抜けたあとのあの罠だ。
その雪華綺晶バージョンにいま自分が直面しているのか。あの小説と違って、今回は大人しく白い茨に絡められていれば無事で
済むようには無論、思えない。

薔薇乙女たちも自分の立たされた危険すぎる状況に気付いたのか、足元の茨を気にしながら慌てふためいた。
だが床は一面全て白い茨に満たされており、避難できそうなところは何処にもない。

「いやあああああ!!」幼い雛苺は恐怖のあまり絶叫しながら茨の床を走り抜け、水晶の壁にぶち当たると死に物狂いでよじ登ろう
と壁を引っ掻き始めた。当然登れるはずもない。壁は90度で、しかももっと上になるとねずみ返しの構造になっている。
むなしく罠のなかであがく雛苺その姿は、アリ地獄にはまったアリが必死に這い出そうとする姿に似ている、とジュンは思って
しまった。もう僕達は誰一人雪華綺晶のこの罠から逃れられない。

「"For the music is your special friend! Dance on fire as it intends!"」
沈んでいく薔薇水晶を放置して雪華綺晶は立ち上がり、奇妙な英語を口走りながら茨の床の上をスキップする。
床の茨は彼女に従って動くので、やはり雪華綺晶自身を絡めとることはない。

「薔薇水晶…!」自分まで茨に絡められてしまう前に、真紅は下へ引きずり込まれつつある薔薇水晶の元へと駆け寄った。
もう肩近くまで下に沈んでいる。「う…真紅…」薔薇水晶は真紅を睨みつける。「私を笑いにきたの…!」
「私たちもいずれ同じ運命にあるのかもしれない。だから笑えないわ」答え、真紅は薔薇水晶の前に座り込む。「残念だわ。仲間を
一人失ってしまって」ぐいぐい薔薇水晶は下へと引っ張られていく。いまや顔と手だけが茨の外にでている。「あなたは…私の仲間
なんかじゃ…な…い…!」自由の効く顔だけ動かして真紅を噛み付こうとする。「あなたは弱い!お父様はローゼンより、最高の
人形師…!」だが、その槐も雪華綺晶によって心を吸収されつつある。薔薇水晶は泣いた。初めて、左目ではなく右目から
も涙が出た。もう本当にこれでおしまいだ。私も、お父様も。

261 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:30:51 ID:TuU5GYkV]
真紅はしばしなくなった薔薇水晶を想うように目を閉じ、両手を胸の前で組み合わせていた。
ほどなくしてぱっと決意に満ちた青い瞳を開き、立ち上がる。後ろに振り返る。姉妹たちを罠にまんまと嵌めたことを
喜んだに雪華綺晶が茨の床の上を片足で踊りまわっている。

ついに薔薇水晶に引き続き、真紅達も狙って床の茨が動き出した。
「いやぁぁ!」翠星石は、狂乱したようにそこらじゅうから伸びてくる茨を如雨露で追っ払っていた。だが、どう考えても数が
多すぎる。「くるなですぅ!触るなですぅ!」相手は無量大数だ。
茨の床の上を、真紅は襲ってくる蔓を水銀燈の剣で次々に断ち切りながら駆け抜けた。出来るだけ床の茨を避けるために、
ときどき大きくジャンプしながら走る。
「翠星石、こっちに!」彼女は姉妹たちに呼びかけた。「雛苺も!はやく!」
「真紅、これから私たちどうすればいいのですか!?」翠星石の足首は既に絡め取られている。
雛苺ももう身動きできそうにない。顔を真っ赤にして泣いている。「真紅ぅー!いやなの死にたくないのぉォオ」
その場ではジュンだけが、この罠に掛けられず自由なままでいられた。雪華綺晶にとってジュンはまだ特別扱いなのだろう。
だが、その"特別扱い"がはっきりいってこの罠の下に沈むよりもっとひどい扱いである気がしてならなかった。
とにかく、自由なのは自分だけなのだから、僕が真紅達を助けなれば。

真紅と翠星石は2人で背中を合わせ、のびてくる白の茨や蔓を協力しあって跳ね除けていた。
だがそれが長持ちするはずもなく、次第に彼女たちは茨みまれとなってきた。
このままでは手の動きまで封じられてしまうことは目に見えている。
「翠星石、沈められてしまう前にこれだけ確認したいわ」真紅の死を目前にしたその声には、何か恐ろしい覚悟に満ちたような
響きがあった。「もう率直に言うけれど、私たちはもう助からないわ。けれど、雪華綺晶にこれ以上マスターを狙わせない方法なら、
たった一つだけある」
「それはたとえ成功しても私たちは助からない方法ですか…!」翠星石もまた察しつつあった。「ジュンは助かっても?」
「ええ、そう。ジュンも薔薇水晶の人形師も助かる。それだけは絶対に保障する。"それだけ"はね…」
「一体どのような方法ですか?」
「それは…」突如、真紅の顔が暗さを増して目が髪に隠れ、怪しく口元だけ動くのが翠星石には見えた。「…翠星石、これから
何があっても、あなたは私を信じてくれていると…そう願うわ」
ありもしないはずの、嫌な予感を翠星石は覚える。「何を、何を言ってるです?真紅、時間がないです。何かするなら、急いだ方が
いいですよ」
場違いであまりにも重過ぎる真紅の口調が轟いた。「そうね…そうするわ。…ごめんなさい。ホーリエ」
真紅の手元が赤色に輝き、その手が動き出したかと思うと翠星石の胸元をタッチした。ゆっくり、優しく。
「…え…?」何が起こったのか一番わからなかったのは、もちろん翠星石本人だった。そして結局それが本当に何なのか理解する
よりも先に、ローザミスティカが彼女の身体から出た。

「な…!!」ジュンはわが目を疑った。

「え…?」一方雪華綺晶も体の動きをピタと止めて真紅達を見つめる。

翠星石の身体から出てきたローザミスティカを手に持つ真紅の瞳はまるで死んでいるようだった。
それでも体の動きはしっかりと意思をもって、翠星石のそれを飲み込む。真紅の身体が暖かな光に包まれる。

完全にジュンは言葉を失った。真紅、何を考えているんだ!この場に来て気がおかしくなってしまったのか?

抜け殻となった翠星石の体がずり落ちる。真紅はそれをしかと抱きかかえ、緑色のドレスに自分の額をしばらく当て続けると、
やがて放した。茨の床に翠星石の体が寝かされ、あっという間に茨に体が何重巻きにもされて下へと沈んでいく。

「雪華綺晶…これで終わりよ」
真紅はなんと唯一の武器であるはずの水銀燈の剣まで丁寧に床に置き捨てた。「あなたはアリスになれない!私は私のやり方で、
アリスゲームを終わらせるのだから!」








[ 続きを読む ] / [ 携帯版 ]

前100 次100 最新50 [ このスレをブックマーク! 携帯に送る ] 2chのread.cgiへ
[+板 最近立ったスレ&熱いスレ一覧 : +板 最近立ったスレ/記者別一覧](;´Д`)<501KB

read.cgi ver5.27 [feat.BBS2 +1.6] / e.0.2 (02/09/03) / eucaly.net products.
担当:undef