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【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 7【一般】



1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2007/10/07(日) 18:08:08 ID:605h1ErK]
ここはローゼンメイデンの一般向けSS(小説)を投下するスレです。
SSを投下してくれる職人は神様です。文句があってもぐっとこらえ、笑顔でスルーしましょう。
18禁や虐待の要素のあるSSの投下は厳禁です。それらを投下したい場合は、エロパロ板なりの相応のスレに行きましょう。
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保管庫
保管庫
rozen.s151.xrea.com/
www.geocities.jp/rozenmaiden_hokanko/
rinrin.saiin.net/~library/cgi-bin/1106116340/

160 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/28(日) 11:11:48 ID:3GddzHPV]
>>155
GJ!本当に続きが気になって仕方ないよ。

161 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/28(日) 11:22:32 ID:TIJtnZpm]
>>155
GJです!
ですが、テンプレの保管庫にはVまでしかないから話が分からないorz
誰か追加してくれませんか?お願いします。

162 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/28(日) 19:35:25 ID:3FLm5oR+]
           の         S         な                  
           か         S         ん                  
              し         が        で                  
              ら         少        カ                  
             . ・   .      く         ナ                  
           ・         な         の                  
           ・         い                          
                                             
                 , -────__-,、r z__                
          ,. -― - 、 /     r v´_ゝ- ,.=._、-、__フ              
       , '/ ´ ⌒7 ヽ   _r_ヽr' _ _f::rz::!:}´__}_}>             
       ,/      /   ' ヾ ゝ_ く {_{__ゞ:':_::ンヽフ、              
       /       '  /   ハ フ \___ |.ト、ヽノ>!ヽ             
       '        |:::     /  ヽ ヾレヽィv.j__Vノ ゝ  |             
            |:::.    /    \!`\ ゝ,ヽノ´!  ,ノ             
            ':::   /         \     ' /             
             ゝ、,./            \ヾ/ /_   べす・・・     
            l イ,|!!  --_‐'_     `_ー-- ヽ/、ヽ            
            ヽl |!|  ィt_:::_ォ     tr_:_,zr   ハノノ  べす・・・      
             /´ ̄ ヽ!ハ ` ´`´      `´ `´   j!::ヽ_,..--、          
         /    r ー- '.、     ,      ,.イ三!´   \        
         /_    ≧= 、_ゝ、._   ____   ,.へ_ 二ム,∠ _    )        
         jV´_ _VV_レL_  ≦ノ ミrrーrr彡  {二/l. _ ,-'、 /L_/        
  , ------ゝf | | r-、,-ア≡----' '--``----'-- / ハ fヽ,-、-------、   
  |       | | | | |                  ヽノ l _j j_ノ       |   
  ' ,       ` ゙ー`- `´                       `´         ,   
   ヽ                _       _     .__          /   
     '、     {ニ ヽ      / , - 、ヽ    / /  / , ― 、ヽ,       /    
      '.,      \\  ノ /   \\  l l   l (    ) |     /     
      ヽ        ゝ ニ ノ  ○   ー'  L.j  ゝ 二二ノ    /      

163 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/28(日) 21:13:49 ID:2XNrc4F0]
金糸雀信者死ね

>>155
GJ!

164 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/28(日) 21:31:46 ID:qTHFrfOZ]
>>155
投下乙です。
いよいよ最終章(?)
展開がますます楽しみになってまいりました。

165 名前:Jun(*^^*) mailto:sage [2007/10/29(月) 00:25:18 ID:qAm72WjI]
今日は近所に新しいショッピングモールが開店したのでそこへ行った☆一通り見てすぐ帰ってきた☆blog写真どれもいいよヽ(´ー`)

166 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/29(月) 01:15:45 ID:cjeSeWxP]
>>155
この毎週の更新が楽しみなんだ。GJ!
安部公房なんて、いつ知ったんだきらきー?
電波な雪華綺晶ぽいけどなw


167 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/29(月) 03:25:03 ID:Tfn8+SMQ]
>>155
もう終盤らしいので無粋かもしれないが、タイトルの意味が分からなかったので独語辞典を調べたところ、

"Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization"
「最後の」は、×Latzt → ○Letzt
Regierenは動詞だから、(そのまま名詞として使えなくもないが)Regierung 辺りの方がよいかも。
ただ、統治、支配、政治、管理、監督の意味があるらしいが、訳語が今一つしっくり来ないのであるが。

ローマ数字の後も、独語で通さないとやや興ざめ(die Zivilisation)。

168 名前:(*^^*) mailto:sage [2007/10/29(月) 23:30:31 ID:qAm72WjI]
では木曜日の夜、東京出かけるからね(*^^*)時刻と場所は当日書くことにするので☆
長旅お疲れさま☆(*^^*)



169 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/29(月) 23:32:16 ID:Uk0HwwAC]
金糸雀信者へ
vista.undo.jp/img/vi9363926650.jpg
ほれ

170 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/29(月) 23:40:42 ID:aVUaHtBP]
いらね

171 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/30(火) 00:39:39 ID:3IMdKOjN]
434 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 00:43:32 ID:gU1nWbAA
アニメ最萌も漫画最萌も上位者にはもれなくアンチ〇年分がプレゼントされるから
再開してもエントリーしないで欲しい
ちゅーか最萌止めてくれって切に願う

436 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 01:08:16 ID:AHRAXAzE
去年優勝してから沸いた翠アンチは一週間ぐらいしたら消えたけどな
仮に今年真紅が優勝してもそんな感じになると思うよ




叩かれるのは金糸雀みたいなクズ人形だけwwwwwwwww
人気最下位で信者の民度も最下位(笑)

502 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 23:54:23 ID:yaVJ1JBr
漫画最萌で金糸雀みたいなクズが優勝した時は最萌終わったなって思ったけど、
今日の真紅の試合は勝ち負け関係なしに感動した。

505 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 23:57:07 ID:AHRAXAzE
>>502
同意
金糸雀みたいなクズと違って真紅はやっぱローゼンの主役だなって思ったよ

508 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/29(月) 23:58:31 ID:wKCNEWIG
糞糸雀嫌われすぎだろwwwwwwww

513 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:14:06 ID:GeluJp0a
何で翠とか銀が負けて真紅が残ってんだよwwwww
最萌終わってんな

516 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:18:28 ID:ru0hnGBw
翠が金ごときに負けた漫萌の方が終わってる

517 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:19:20 ID:JAj7D3KD
>>516
俺もそれから金糸雀嫌いになった

518 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:19:54 ID:nZBOQIlo
キム死ね

520 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:22:00 ID:Ls+ord1B
おまえら実質最後のローゼン参戦なのに、ローゼン勢1人でも勝ち進めようって団結力無いのか
俺は水銀党員だったが真紅に入れたんだぞ。キムシジャンは死んでいいと思うが

521 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:22:18 ID:5rJA3iZt
今日の真紅の勝利>>>>>>>>>>キムシジャンの漫萌優勝

524 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:24:17 ID:vzTrNMyp
金糸雀が好きとかネタで言ってるとしか思えん

526 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:25:14 ID:6FKsmO8D
>>524
ネタでも言わねーよ

527 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2007/10/30(火) 00:26:11 ID:FCJ35TXv
とりあえず金糸雀と金糸雀信者が糞ってことはわかった

172 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/30(火) 19:33:49 ID:oFa39BUz]
  ,_-- 、       , -−…− /            
 i/   `\   /     ̄`¨,'   カナのSSが 
 |   !    ヽ'   ̄  − __ 〈|             
 l   i  / 〈` - 、   丶 く:!   少ないかしら……
 l!  i  /'´  ス \ 丶    く!             
 lヽ. !_ /'´  /\ \ 、 \ ム            
 !  \ | , ' /    \ 、  丶 込、           
:|も l:\,/ __    丶、  丶L ト..,,__, ィ_! r、 
: l: じ !: ∨  ̄´      丶、 `ヽ |:::| T |:::l__「 ̄  
: !: :   ,〈!  、_.,          ` ト、-l:::|/|/|::::l     
|   ,/i イ::;:::rY        _    `|:::|、l i::::| − _ 
:.!  r /'、 ', ゞZ::ソ       ィr'−'、 ヽ| l  ト:l    , 
:i /ゝ|, -ト、! ,,¨´      i::{:::::r'Y  /lj/     / 
:! ハ/`   ヽ    ,:     ゞ='シ / l|'_     /  
lL/     ' 、 i\   tっ    ''' ∠  ィ 丿    / / 
 {       _, -‐_>、 __. ィ´ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
 ハ    〈 r‐i'´_/lcl,〈¨ヽl  |∨            
 | \/ / ヽ二 イ/cl|ヽl l| / 誰か書いて      
f二ゝ ヽ  ハ //ーl|-l| l/               
l/|   l l_|/| lr: ュl| lL」   ほしいかしら…    
¨ −-  _くノ| l/ハ」|ヽ/¨|               
        ¨ −-  _ \________  

173 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/30(火) 22:23:25 ID:tfPg+jN5]
糞糸雀ヲタ消えろ

174 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/31(水) 00:58:32 ID:Law5dRv1]
ローツェンマイデンの終盤を読みたいですぅ。。

175 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2007/10/31(水) 01:05:40 ID:EYu9yv1I]
今日は…とくに変わったことはなかった(>ε<)あ?…それじゃ日記にならないか(^^ゞ
でもホントにいつも通りの平凡な日だった。またあした(*^^*)☆

176 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/10/31(水) 23:36:05 ID:h9znD2ZP]
もう来るな(*^^*)☆

177 名前:(*^^*) mailto:sage [2007/11/01(木) 00:05:29 ID:H7xSPRhC]
↑だれ?あと数日は使わせてくれ☆


178 名前:(*^^*) mailto:sage [2007/11/01(木) 00:09:17 ID:H7xSPRhC]
明日の夜行くので♪(^^)/▽☆▽\(^^)



179 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/01(木) 02:56:35 ID:v+xzFDH/]
>>177
数日なんて言わずにもっと使ってよ^^

180 名前:(*^^*) mailto:sage [2007/11/01(木) 14:44:57 ID:H7xSPRhC]
反応がないけど一応出かけるかな(*^^*)

181 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2007/11/01(木) 17:25:56 ID:H7xSPRhC]
反応がなさそうなのでまず中間まで行って下車するよ☆

182 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/01(木) 18:17:27 ID:H7xSPRhC]
今、「中間地点」の駅西口ケンタッキーにいるけど、8時になったら同駅カフェ店移動するよ☆

183 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/01(木) 19:04:19 ID:H7xSPRhC]
もうじき電源切れそうなので今日は中間駅までφ(..)8時から9時まで前回のスタバにいるよ(*^^*)

184 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/01(木) 21:24:52 ID:H7xSPRhC]
今22番線ホーム先端(*^^*)

185 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/01(木) 23:47:52 ID:H7xSPRhC]
今帰宅(-.-)Zzz
今日来た?

186 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/01(木) 23:51:12 ID:ThQwbwe9]
ここは日記やチャット書く場所じゃねっぞwww

187 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/02(金) 00:58:35 ID:Zj+nvWCo]
今日はまったく反応なかったから最初から無理だったのかな?
来れないなら来れないって一言、言ってほしいな(-.-)Zzz

188 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/02(金) 16:47:15 ID:+gwuyYEP]
>>187
ウホッいい男
や ら な い か



189 名前:(*^^*) [2007/11/03(土) 00:21:07 ID:s2fsenKs]
今日は…もう書く気力がなくなった…(-.-)Zzz読んでないことが分かったので☆

190 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/03(土) 08:39:15 ID:DVO9Elii]
             /ヽ       /ヽ
            /  ヽ      /  ヽ
  ______ /     ヽ__/     ヽ
  | ____ /           :::::::::::::::\
  | |       //       \  :::::::::::::::|
  | |       |  ●      ●    ::::::::::::::| 何このスレ・・・・・・・?
  | |      .|             :::::::::::::|
  | |       |   (__人__丿  .....:::::::::::::::::::/
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  \ \  \___       ::::::::::::::::::::::::|

191 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/03(土) 20:07:44 ID:QFjUy5I9]
糞糸雀信者(荒らし)の巣
anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1189254038/

これ以上、各地のローゼンスレを荒らされるのを防ぐためにも、
ここの監視を怠らないようにしましょう

192 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/03(土) 21:26:44 ID:WAJ07jo6]
過疎ってることだし俺の低レベルSSでも投稿しようかな

193 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/03(土) 21:51:57 ID:WAJ07jo6]
「欲しいの欲しいの!買って買ってぇー!」
私の一人娘、唯はまたいつものようにだだをこねだした。
ここ一週間はずっとこの調子だ。私が家のPCの電源を入れると同時に思い出したようにわめきだす。
原因は分かっている。先週ふと立ち寄った通販サイト。そこにかわいらしい女の子の人形が売られていたのだが、
横で一緒に画面を見ていた唯がそれに一目ぼれしたのだ。
金色の髪にピンク色のリボンとドレス。いかにも低年齢の女の子にうけそうなデザインだった。
「買って買ってーぇぇーーーえーーっ!」小さな子の喚き声というのは甲高くて耳に響く。
「あーわかった!わかったから!」しまった、つい口が滑った。
「ほんとぉ!」
唯は大きな目をキラキラと輝かせて私を見た。こ・・・こんなに可愛い顔されて・・・ダメだと言える筈が無い。
私は大人しく負けを認めた。
「もう!・・・わかった。買ってあげる。」「ほんとぉ!?やったぁー!」
唯は万歳して喜んだ。
「その代わり!ちゃんとママの言う事聞いて、おりこうさんにするのよ?」
「うん!おりこうさん!」
分かっている。甘やかしてはダメだ。母子家庭の我が家なら尚更だ。
頭で分かってはいるのだが、こんなに可愛いわが子。つい負けてしまう。もっと気を強く持たねば・・・

194 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/03(土) 21:53:38 ID:WAJ07jo6]
あれから三日後。
私が仕事から帰ってきたとき、ちょうどマンションの玄関で宅配便の人と鉢合わせになった。
「・・・さんですね?」「はい。」「ハンコお願いします。」「はいはい」
私は慣れた手つきでハンコを済ませた。
「ではこれ、大きくて重たいんで、気をつけてくださいね」
「は・・・はぁ・・・」
よく見たら凄く大きな荷物だ。何だろう。こんな大きなもの買った覚えは無い。
私は半分引きずりながら玄関から部屋に運ぼうとした。
すると唯が居間から走ってきた。
「ママー!おかえりー!」
「ただいま、おりこうさんにしてたー?」
「うん!それは?」
「あぁこれ?さっき宅配便で来たの。」
私は居間に運び入れた。
「何だろうね。開けてみよっか」
「うん!」
カッターナイフと鋏を駆使してダンボールを解体していく。
「なっ・・・なに・・これ・・・」大きな革製の鞄だ。
「うわぁーすごーい」唯はおおはしゃぎ。
「なにかの間違いかしら・・・でも伝票は確かに私の住所と名前が・・・」
「うわぁーお人形さんー!」気づけば唯は既に鞄を開けていた。
「こらぁ勝手に開けちゃ・・・って、あーこれ通販で買った人形じゃないの」
「ホント!うわぁー、大きいー!」
唯と大差ないほど巨大な人形だ。あの値段でこんなに立派な人形が届くとは思いもよらなかった。
とても良い買い物をしたのかもしれない。
「ちょっとママにもよく見せてよ、唯。」
私は人形を鞄から取り出した。ずしっと重い。そして人間のように柔らかく弾力がある。
「え、えらく・・・リアルね・・・」
「凄いでしょー!」
ていうかリアルとかいうレベルの話ではない。もはや人間の子供にしか見えない。
が、子供にしては小さすぎる頭が、なんとかこれが本物の人間ではないと言う事を保障している。
ここまでリアルだと不気味だ。
「大切にするのよ、唯。」
「うん!」唯は満面の笑みで答えた。
「ひっ」
「どうしたの?ママ?」
「ううん、なんでもない・・・」
大切にするのよと言った時、唯と同じ様に人形もニッと笑ったように見えた。
しかしもう一度見てみたら、なんでもなかった。私は少し疲れているのかもしれない。


まだこの時点では知る由も無かった。この後、あんなに恐ろしい出来事が起きようとは。

っていうB級ホラーとかありそう。ちなみに呪い人形は雛苺ね。

195 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/04(日) 08:58:11 ID:r0z8kIMp]
>>194
よし続きを頼む

196 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/04(日) 14:27:10 ID:PMssr2KY]
よし、見切った。
その後段々人形と子供の見分けが付かなくなってきて、
人形と子供が入れ替わるという妄想に憑りつかれて
人形を包丁でメッタ刺ししたら、実は自分の子だった

197 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/04(日) 16:19:53 ID:ZTHnTPAv]
>>196
怖えーよw

198 名前:さて、叩かれるか! mailto:sage [2007/11/04(日) 17:08:45 ID:UbFd0IR4]
ふっふっふっ♪今日こそローゼンメイデン一の頭脳派金糸雀が
楽してズルして真紅達のローザミスティカをGETかし…

『ぐ〜』

そ、その前に腹拵えかしら…

今日のお弁当はみっちゃん特製のあま〜い卵焼き♪
…って中に入ってるこの紙は何なのかしら?
「カナごめんなさい。私、仕事で転勤になってしまったの
その転勤先のマンションってペット不可だからあなたは連れて行けないのよ…
本当にごめんなさい!良い人に拾われてね?それじゃあ、お元気で。」

………

…グスッ……カナは…グスッ…泣かない…のかし…ら…
う、うえ〜ん!え〜ん!!


一体この先どうなるカナリア!?
絶対に続かない



199 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/04(日) 17:15:26 ID:hVagbJmU]
ドールはペットじゃないだろwww

200 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/04(日) 20:51:01 ID:Ez9Q4Nda]
>>194
ハ〜イ 私は雛苺 一緒に遊びましょう ハイディ〜ホ〜〜
って恐怖映画の「チャイルドプレイ」張りの展開を妄想

201 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/04(日) 21:14:21 ID:hVagbJmU]
暴走雛苺ならやりかねないな・・・
純粋故に恐ろしい

202 名前:Jun(*^^*) [2007/11/04(日) 22:46:34 ID:RMFbETbc]
いっぱい色んな人からプレゼント貰えて幸福そうだなぁ(>.<)y-~
こっちは自分の誕生日誰からもゼロだからな(-.-)Zzz今後は自分を中心に人生を考えることにしたよ☆(´・ω・`)こっちばかり痩せ細るばかりだからな…いつまでも一方的な貢ぐ君では(-.-)Zzz

203 名前:Jun(*^^*) [2007/11/05(月) 00:43:09 ID:x1hJaiJV]
もし仕事が原因で待ち合わせできないんだとしたら、そろそろ仕事辞めてくれないかな(-.-)Zzz
今まで待ち合わせ日の待ちぼうけ時間を合計すると100時間超えてるよ?(-.-)Zzz
もしきちんと連絡してくれればその時間、有意義に過ごせたはずなんだからさ(>.<)y-~
次は仕事休んででも来て欲しいな☆
ヽ(´ー`)ノ

204 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2007/11/05(月) 01:12:44 ID:x1hJaiJV]
…次はクリスマスあたりかな?(*^^*)メールくれればもっと早くてもいいけど☆
昨日は自転車パンクして家具店の前に一晩起きっぱなし…今日はそれを取りに行って自転車転がしながら帰ってきた☆
途中でとんこつラーメン食べた☆帰りにドトール寄ったらいつもの習慣からかそのまま徒歩で帰宅してしまい、また自転車取りにいくはめに…
疲れた。おやすみ☆(≧▽≦)/

205 名前:Jun(*^^*) [2007/11/05(月) 02:01:28 ID:PQ/LXw6d]
もうこの際だから正直に言うよ☆
お前、前からうざいと思ってたんだ(≧▽≦)/ だから死んでよヽ(´ー`)ノ


206 名前:Jun(*^^*) [2007/11/05(月) 09:19:44 ID:x1hJaiJV]
↑別人です。
まぎらわしいから、違う名前で書き込みしてくれる?(>ε<)

207 名前:(*^^*) [2007/11/05(月) 10:28:51 ID:x1hJaiJV]
ここ変な住人がいるのでコチラに移動です(´・ω・`)
姫専用
moon.ap.teacup.com/ginga/

208 名前:(*^^*) [2007/11/05(月) 10:40:04 ID:x1hJaiJV]
以後ここには書かないのでスレ住人さん、お騒がせしました(≧▽≦)/




209 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/05(月) 11:15:58 ID:sqQ9YPKk]
      ___    ━┓
    / ―\   ┏┛
  /ノ  (●)\  ・
. | (●)   ⌒)\
. |   (__ノ ̄  |
  \        /
    \     _ノ
    /´     `\
     |       |
     |       |

           ___   ━┓
         / ―  \  ┏┛
        /  (●)  \ヽ ・
       /   (⌒  (●) /
       /      ̄ヽ__) /
.    /´     ___/
    |        \
    |        |

210 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/05(月) 17:44:16 ID:nL29wPUm]
>>201
蒼星石でやったら、さしずめ「ナイトメア」のフレディと言ったところかw
巨大な鋏を持ったシルエットだけでも結構怖いかも

211 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/07(水) 22:32:26 ID:rZx3UePn]
  ,_-- 、       , -−…− /            
 i/   `\   /     ̄`¨,'   カナのSSが 
 |   !    ヽ'   ̄  − __ 〈|             
 l   i  / 〈` - 、   丶 く:!   少ないかしら……
 l!  i  /'´  ス \ 丶    く!             
 lヽ. !_ /'´  /\ \ 、 \ ム            
 !  \ | , ' /    \ 、  丶 込、           
:|も l:\,/ __    丶、  丶L ト..,,__, ィ_! r、 
: l: じ !: ∨  ̄´      丶、 `ヽ |:::| T |:::l__「 ̄  
: !: :   ,〈!  、_.,          ` ト、-l:::|/|/|::::l     
|   ,/i イ::;:::rY        _    `|:::|、l i::::| − _ 
:.!  r /'、 ', ゞZ::ソ       ィr'−'、 ヽ| l  ト:l    , 
:i /ゝ|, -ト、! ,,¨´      i::{:::::r'Y  /lj/     / 
:! ハ/`   ヽ    ,:     ゞ='シ / l|'_     /  
lL/     ' 、 i\   tっ    ''' ∠  ィ 丿    / / 
 {       _, -‐_>、 __. ィ´ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
 ハ    〈 r‐i'´_/lcl,〈¨ヽl  |∨            
 | \/ / ヽ二 イ/cl|ヽl l| / 誰か書いて      
f二ゝ ヽ  ハ //ーl|-l| l/               
l/|   l l_|/| lr: ュl| lL」   ほしいかしら…    
¨ −-  _くノ| l/ハ」|ヽ/¨|               
        ¨ −-  _ \________  

212 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/07(水) 22:43:15 ID:xXEGTnkb]
現在、金糸雀信者に荒らされているスレ

アニキャラ総合板のSSスレ(金糸雀関連のSSを催促するAA連投)
アニメ2板の総合スレ(容量潰しのAA連投)
VIPの総合スレ(ID切替えの自演)
VIPの絵スレ(金糸雀関連の画像を催促するAA連投)


糞糸雀信者(荒らし)の巣
anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1194433068/

これ以上、各地のローゼンスレを荒らされるのを防ぐためにも、
ここの監視を怠らないようにしましょう

213 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 03:59:32 ID:ZxcNgLAY]
112

ジュンは水晶の城の目前に立った。
入り口と思えるアーチの扉の前に立ち、水晶城を改めて見上げる。首を限界まで持ち上げないと頂を視界に収めることが叶わない。
遥かな高さにまで伸びていく水晶城のてっぺんは、鋭くとがっていてまるで剣山のようだ。
これが雪華綺晶の生きている世界だというのだろうか。

ジュンは氷で出来た扉を押してみた。驚くほど軽い。それこそ実体がないかのように。
開け切った扉から水晶城の中に入ると、無数に埋め尽くされたひし形の水晶群がジュンを迎えた。
水晶の四角い面が光を反射してクロス状の模様を床一面に映している。
美しい。素直なジュンの感想だった。これぞ氷でできた"守護の塔(ミナス・ティリス)"だ。
そんなことを心で呟いたジュンの背後で入り口の氷の扉が独りでに閉られた。
帰り道はもうない。この水晶の城のなかで、決着がつけられるのだろうか。

水晶でできた幻想的な階段をジュンは駆け上っていった。シンデレラに出てきたような透明のガラスの階段だ。
それをまさか自分が登る羽目になるとは。
階段は緩やかに曲がりカーブになっていて、水晶城の外側を回っているらしい。
何もかもが透明なものでできている。外の白い世界をこの水晶城の中から透過して見渡すことが出来るし、踏んでいるガラスの階段も
最下層の床が透けて見える。まるで自分が空中に浮いているかのように。少し怖いが、幻想的で綺麗な光景には魅入ってしまう。
エメラレドの光の筋が水晶から差し込んできては床や壁に直線の光のラインを作る。
何処までも水晶城の奥へ奥へと誘われていく気がした。こんな美しく魅惑的な世界見たことも想像したこともない…

突然外側の壁がなくなり、ジュンは危うく水晶城の外にはみ出して下界へと真っ逆さまに落下しそうになった。
おそらく水晶城の中層あたりにまで上り詰めてきたに違いない。
本当にあるのかないのかが判断しにくい透明なガラスの床を踏み外すのではないかびくびくしながら、
ジュンはその水晶城の上から世界を見渡してみた。
遥か遠くまで真っ白だ。彼方の地平線を線霧のような白い靄が覆い、それより先の世界は想像すらつかない。恐らく雪華綺晶で
すら知らないだろう。そんな気がした。
ドラッグに溺れて頭がくらくらする程の美しさを持つ、幻のような光景だった。
だれがこのような世界に足を踏み入れることができただろうか。

だが、しばらくしてジュンは自分の目的を思い出した。
下の階にいたときと違って、水晶城を上に昇っていくにつれて自分を取り巻く水晶が四角いものから三角っぽい角ばった攻撃的な形へと
変わってきている。まるで水晶がこれ以上近づくなと主張するかのようだ。誰も知らなかった世界への入り口がジュンを警告している。
その先に、ジュンはついに踏み入った。

そして、ジュンは見つけた。
二手も三手も先のところに、夢をみているかのようにおぼつかない足取りで水晶の洞窟の中を進んでいく真紅の姿を。
ガラス張りの透明な床の上を歩き、いままでの平静の中に燃えるような情熱を持っていた第五ドールの姿とは見違えてしまうほど
にその後姿は頼りない。
あれだけのことがあったのだから、仕方ない。ジュンはとにかく駆け出すと真紅を追いかけた。「真紅!」
声が届いてないらしい。彼女はどんどんふらふらと水晶城の奥へと進み、複雑な構造の水晶の反射する入り組んだ光と影の模様
が照らされた床の上を歩いていく。
「真紅!」ジュンはもう一度叫び、追いかけた。真紅の後姿が視界の中で近くなり、大きくなる。もう少しで手が届く。
後ろから抱きかかえ、ジュンは真紅を掴まえた。彼女は掴まえられた状態にも関わらず浮いた足を動かし続ける。
それこそ人形が如きの動きだった。「真紅!何処に行くつもりなんだよ?」
キコキコと首を動かし、ゆっくり真紅が振り返った。うっすら微笑み、瞳は虚ろだ。「水銀燈が…私を呼んでいるわ」

214 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:01:23 ID:ZxcNgLAY]
113

地面に寝転がったまま、雪華綺晶は目を覆い隠した自分の腕をそっと下にずらした。
スゥーウィーの放った白い閃光が強烈すぎて、自分の目にも悪影響を及ぼしかねた。
見ると、翠星石と雛苺の姿は前から消え去っていた。まるで面影もない。一体自分の人工精霊が2人の姉達に何をしでかしたのか、
どこへ消えたのかは、あまり雪華綺晶は気にならなかった。

翠星石と雛苺は消えたが、自分を縛る世界樹と苺の蔓は依然体に残されたままだ。
雪華綺晶は苛立ちをわずかに覚えながらもその世界樹と蔓をどうにか自力で振りほどき、最後腕に残った一本の蔓を投げ捨てて脱出する
と起き上がった。

アリスへの基盤が完成しつつある。
邪魔者は消え、ここに揃えられたのは必要な素材のみだ。第五ドールの真紅に、その契約者。

アリスの幻影が自分に近づいているのが感じられる。nの世界で、失われ思い出せないその姿が。

とはいえ、真紅の契約者の前に少し軽く片付けておくべきことが一つある。そう時間はかからないはずだ。
"彼"にはよく動いてもらった − もうそろそろ休ませてやってもいい頃だと思った。

彼の夢の中では、いま自分は雪華綺晶の姿をしていない。然るべき、誰に見えているかその魂はこの世界に置かれている。
偽物の、作り物の魂が。

「それが偽りだと分かっていても」

「またそれが私の嘘だと知っていても」

「もしあなたにそれを告げたのなら…より至高の夢を見れるというのに」

「さあ 来るのです 私の心を灯して ゲームの夜に明かりを」

215 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:05:13 ID:ZxcNgLAY]
114

翠星石は、視界一面に青っぽい水晶が広がっているのに気付いた。
一瞬、記憶が飛ぶ。「ここはどこです?」
まるで自分がいるのは異空間だ。時計の針が乱れ狂って激しくいったりきているように安定していない。
とにかく、落ち着かない。胸騒ぎがする。まるで近くに化け物でもいるような…

「出やがったですぅー!」
振り返りざま目の前に現れた雛苺の顔を見て、翠星石は断末魔の叫びを上げた。雛苺の顔が真っ青に染まっていたからだ。
「ぎゃああああああ!!」
一方目の前で悲鳴を上げられた雛苺もつられて驚き叫び声を出した。
時間が一瞬こおりつく。
「な、チビ苺ですか…脅かすなですぅ」翠星石は息を吐いた。どうやらいつの間にやら自分達は大きな水晶の中にいて、
その水晶が外の世界から差し込んでくる光を青色っぽくしているらしい。それに照らされている自分達もまた青っぽい訳だ。

なんでこんな所に?
少し前に振り返れば、あの白薔薇の − あのドイツ語表記の名前が到底予想不可能な − きらきしょう?の出してきた
人口精霊スープ?の発した光に巻き込まれ、視界を奪われたと思ったら、ここにいた。
翠星石は自分達が既に死の世界にいるのではないかと不安になった。
そう、いつか自分が薔薇バラの薔薇水晶に水晶に閉じ込められたときのように − 薔薇の…バラスイショ…

「出やがったですぅー!」
翠星石はもう一度同じ悲鳴を上げた。
あの偽第七ドール薔薇水晶が − ああ − 自分達と同じようにこの水晶の中にいて、外に出ようと青いガラスの壁と格闘している。

素手のまま、両手でグーを作って壁をガンガン叩いている。水晶の壁の面はびくともしない。
翠星石は、どういうわけかバラバラに砕けてしまったはずのあの薔薇水晶が、ずっとここに閉じ込められていたのだと察した。
そして自分達もそこへ同じく来てしまったということも同時に悟った。さしずめやはりあの白薔薇のせいか。

「誰かいるの…?」
壁叩きに夢中になっていた薔薇水晶が翠星石の出した声に気付いてこちらを向いた。「あなた…あなたは…ローゼンメイデンの…」
それから、急に感情を爆発させたように金切り声を上げた。「ここから出して!!」
彼女の耳を劈くようなその声に圧倒されながら、翠星石がどうにかいま理解したことは、ここは9秒前の白に限りなく近いところ
あるいはど真ん中 − 本来迷子になった魂が彷徨うところ − しっかりとした自我を持たなければたちまち自分の姿はおろか
名前すら思い出せなくなってしまう − そんなところのなかで、時間を止められたように水晶の中に入れられてしまっているという
ことだった。いま自分の前にいるあの薔薇水晶はその魂の姿そのものだ。恐らくこの空間においても、水晶の中に封じ込められる
という形で自分を失わずにいられる、いわば無理やり精神だけが生かされているような状態にあるということになる。
いまあのの薔薇水晶に、既に実体はない。

そして所詮実体のない体では到底自分の力ではこの水晶の外には出れない。魂のバリアーを前に、いくら足掻いても無駄という筋だ。
だが翠星石は、一体どうして薔薇水晶がこのように本来迷子となり彷徨うべき魂をここに封じ込められてしまっているのかその目的までは
予想することが出来ないでいた。

216 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:07:36 ID:ZxcNgLAY]
「ううっ!」薔薇水晶は心底悔しそうに唸ってもう一度水晶の壁を内側から叩いた。「外に − 外に…!お父様のところへ
行かなければならないのに…」
薔薇水晶は、ここから外に出たいと切望しているらしい。そしたら無意識の海に呑まれて自分を失ってもおかしくないというのに。
余程強い自我と意思を持っているのなら別として。「あれは、あの白いドールは、私じゃない!お父様は騙されている…!」
「白いドール?」翠星石が反応した。「白薔薇のことですか?」
すると薔薇水晶は今にも食って掛かりそうな瞳で翠星石をにらみつけた。「ローゼン…メイデン…あなたたちは、弱い!弱い!
私はローゼンメイデンなんかより、美しく、強い人形になったはずだった!私が…私が勝ったはずだった!なぜ…なぜ、取るに足らない
ようなあなた達がまだ生きていて、アリスゲームに勝った私がどうして − どうして!?」
薔薇水晶は翠星石に詰め寄ってくる。ローゼンメイデンのドール全てへの憎しみを顔全体に刻んで、紫色の水晶で形作られた剣
を手元に召喚する。
「きゃああ!」
翠星石は、薔薇水晶の水晶の剣が自分の首を通過するのを見た。当時の恐怖が蘇る。
それから数秒後自分が全くの無傷だと分かるまでの間、翠星石はぎゅっと目を閉じていた。「…あ…れ?」
薔薇水晶は翠星石の身体を通り抜け、後ろに立ち尽くしていた。自壊して実体を失った薔薇水晶はもうまともにローゼンメイデン
と戦いあえることはない。互いに触れ合うことすらできないからだ。

「うっ…くぅぅ…っ」
薔薇水晶は絶望したように嗚咽を漏らし、身体を震わせながら膝をつくと次に両手を落とすように地についた。
青みがかった髪が垂れ、手からこぼれ落ちた剣が地面をバウンドする。
「倒せない…あんな弱いドールも…戦う資格すら、もう私には奪われてしまった」
嘆き、薔薇水晶はそれ以降もう立ち上がろうとしない。

こうなると、彼女も哀れだ。翠星石は思った。
ローゼンメイデンを超える。その戦いの宿命を与えられ、偽者として − アリスゲームに参加して、戦い続けた薔薇水晶は、
本当は誰の一人として姉妹の居ない、一人っ子だった。たった一人で自分を創った人形師の為に。それはある意味、まだ仲間を
持っていた自分たちよりも辛いものがあったのかもしれない。

「外に…ここから外に出なければならないのに…!」
泣き崩れたように言う薔薇水晶はそれでも尚そとに出ることを望んだ。
翠星石は一考した。もしかしたら薔薇水晶と自分達はもう敵同士ではないのではないか?
いま実体のない彼女なら、そんなに恐れる事だってないはず…

若干緊張しながら、翠星石は言った。「な…なんなら、おまえをここから出すのにちょっと…ちょっと手伝ってやってもいいですぅ」
薔薇水晶の顔が持ち上がった。「え…?」
「わわ、私も、どちらにせよこっから出なきゃならんですからね!」
自然と体の動作が喋りに合わせて入りつつ翠星石は言う。「まだ実体を持ったまま気付いたらここに入れられてた私達なら、
この水晶の壁を打ち壊せるはずですぅ」
「…」
いまだ信じられないという訝しげな目つきで薔薇水晶は翠星石を見つめていた。
「そ、そんな怖い目で見るなですぅ!…私達はお父様に作られた人形で、おまえはその弟子に作られた人形です。いわば私たちと
あなたは…義姉妹みたいなものじゃないですか…だ、だからちょっと手を貸してやろうって…だけですよ」
薔薇水晶は始めその言葉の意味をあまり意味していないようだった。「義姉妹…あなたが…義姉…あなたが…?」
「そういうことですぅ!もうお互い争ってる暇なんかあったら一緒に力を合わせて解決しやがれってことですぅ!」
水晶の壁に向かって乗り出し、翠星石は如雨露を手元に召喚した。「スィドリーム!」
金色の如雨露の中身が美しく光る若緑の液体に満たされていく。
「どうにも照れくさいですぅ!とっとと終わりにしてやるですぅ!」

217 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:09:09 ID:ZxcNgLAY]
数秒後、水晶の壁には世界樹が飛び出ると同時に大きな穴が開いた。その瞬間無意識の海の奔流が水晶の中に入り込んでくる。
「チビ苺つかまるですぅ!」翠星石は隣の雛苺を手で捕まえた。「薔薇水晶!おめーも気をつけてちゃんと海面を目指すですぅ!」
「まっ…まって…」薔薇水晶は、一足先に水晶から出て行く翠星石たちを追おうとしたが、直後押し寄せる無意識の海に瞬く間に
呑まれた。「…がっ…」呼吸が出来なくなる。口から空気の泡がもれる。

頭の先の水晶の髪飾りまですっぽり全身が無意識の海に包まれてしまう。
すると、自分の持つ様々な記憶が脳裏に流れてきた…

「偽りの仮面をかぶり、あなたは夜明けの前に目覚める…私の影として」

218 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:10:29 ID:ZxcNgLAY]
115
   

   これは…夢…

 それとも…幻

ここは…

   "起きるんだ"

誰かが…呼んでいる。

   "私の娘"

  私の…娘…? 私は…娘。
…眩しい。

   "ああ…やったぞ"

     なんだろう?光に包まれて…暖かくて。

  "私が見えるかい?"

優しい手。

  "そうだ、上手だ。薔薇水晶"

    おとう…さま…



219 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:12:09 ID:ZxcNgLAY]
116

「違う…これも違う…これも…これも駄目だ…」
「わが師よ、何を作ろうとしているのですか」
「ああ…ラウエフ…わが弟子…私はいま人形師として最後にして究極の目的を果たそうとしている…完璧な少女だ」
「少女?」
「その最初の試作品はもう製作に入っている。…。恐らく私が生まれ人形師となったのが必然であるように、私がその少女を
夢見るようになったことは偶然ではない。私自身を語らずに、その少女を語ることは出来ないだろう。少女は私に語りかける…
私は今後彼女とときを過ごすのだ」
「語る?暮らす?一体なんの話しです?」
「言葉の通りだ。その少女は歩きもする。そしてどんな乙女でも適わない美しさを誇っている…」
「…そんなまさか。生きている人形を作るというのですか。いくらあなたでもそんなこと…」
「最初の試作品はもう製作に入っていると言ったはずだ」
「バカな…冗談だとおっしゃってください」
「ローザミスティカ。それが私のローゼンメイデンシリーズに命を与えた」
「ローゼンメイデン?ローザミスティカ?本当に人形に命を与えることに成功したと?」
「ああ…成功した。私の長年の成果だった」
「本当に?…ならば私にも見せてください!それなら…私も、それなら命のある人形を創りたい!」
「いや…これはお前には不可能なことだ」
「そんな?何故です!?私にも人形に命を与える方法を!私はあなたの教えを全て受けてきました。にもかかわらず、私には
その権利がないと言うつもりなのですか!」
「これから私は究極の少女の完成の為に、ローゼンメイデンシリーズの続きを手掛けるだろう。それはお前の面倒を見つつ没頭できる
ものでは到底ない。お前は弟子を卒業だ…ラウエフ。もうお前に合うことはないだろう」
「ま、…待て、待て!ローゼン!」
「弟子よ。お前は人形師として私の最高の教えを受けた。これから私のなるものはそれとは違っているのだ」
「待ってくれ!本当に生きた人形なんてものが…!ローゼン!待て!ではせめて、せめて最後に顔を…あなたの顔を私に見せて
くれてもいいのではないのか!!ローゼン!!!」

220 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:14:26 ID:ZxcNgLAY]
117

「…うああああっっ!!」
お父様はまた深夜に魘され、ベッドから飛び起きた。最近…毎日のように。
「ローゼン…」
お父様はまた…独り言のように"ローゼン"と呟いた。私にはローゼンというものが何かまだ知らない。
「ローゼン…命を持つ人形は、私にだって作れるぞ…」
「お父様…」私はお父様に、堪えきれなくなって聞いた。「お父様…毎晩うなされています…一体ローゼンとは何者なのですか…」
「薔薇水晶…」お父様はコップに水をいれ、そを飲み干すと私の顔を見つめた。お父様は汗だくだった…。「お前は私の作った、
命を持つ私の全てを注いだ最高の人形で…娘だ。ローゼンとは人形師、私の師匠だった」
「…ししょう…」
「…やつは…人形に命を与える方法を見つけたとだけいい…私から…」そこでお父様は言うのを突然やめた。「いや、やめよう…
薔薇水晶、いまはお前がいるのだから…」
私は、それだけではお父様の心がまだ欠けていることを分かっていました。「…お父様。それではなぜ、お父様は毎日悪夢を
見られるのですか…?」
「…」
お父様は急に深刻の顔になり、手で頭を深々と抱えました。それは、私の見たことのないお父様の苦悶の表情でした。
「薔薇水晶、ずっとお前に言いたくてもいえなかったことがある…」
私はその言葉を聞いて喜びました。「はい。なんでしょう?お父様。なんでも私に言ってください」
「薔薇水晶…」
お父様はいまにも泣き崩れそうな顔で私を見つめます。一体どんな言葉がかけられるというのでしょうか…
「もう一度お前に言いたい。お前は私の最高傑作なんだ。私の、二つとない、最高の人形だ…」
「お父様。ありごとうございます…でも、ためらわずに、言いたいことを聞かせてください」
「ああ…」お父様はもう一度コップに水を入れて飲むと、私にそれを告げました。「薔薇水晶…私はお前に、ローゼンメイデン
シリーズのアリスゲームに参加させたいと思っている」
「ローゼンメイデン…?アリス…ゲーム?」聞いたことのない単語が並び、私はただ聞き返すだけでした。
お父様は答えます。「ローゼンメイデンシリーズとは、私の師が手掛けたローゼンの人形達だ。お前と同じように命を持っている。
だが命を授かった手段は恐らくお前と異なるだろう。アリスゲームとはそのローゼンメイデン達の中で行われる、究極の少女アリス
を目指して互いのローザミスティカを奪い合うというものだ。端的にいってしまうと…それは戦いだ」
「戦い…」でも何より、私には惹かれた言葉がありました。「究極の…少女…?」
「アリスゲームを制し、全てのローザミスティカを集めれば、その者は究極の少女アリスとなる。それは紛れもなく世界一、
どんな少女よりも美しい存在となるんだ」
「世界一…どんな少女よりも美しい…」その言葉の持つ魅惑に私は思わず自分の中で想像してしまい、少し気恥ずかしくて
自分の頬を両手で触れました。。
「究極の少女アリスにお前がなれば…」少しためらいがちにお父様は言います。「私は紛れもなくわが師ローゼンをも越える、
最高の人形師になったことになるだろう…同時にお前も、本当の意味で最高の人形になるんだ」
それは私にとってはまるで必然のように投げかけられた、願ってもないような話に思えました。
「はい。お父様。私、アリスゲームに参加します。ローゼンメイデンシリーズからローザミスティカを奪って…アリスゲームを
制してみせます。」
「薔薇水晶…!」お父様は感極まった様子になり、私を抱きしめました。「お前は負けない。絶対に負けない。私が保証しよう。
何度もいうが、お前は私の最高の人形なのだから…」
「はい。私、ローゼンメイデンたちと戦います。必ず勝ちます」
意気揚々と答えた私でしたが、そのとき、左目に違和感を感じました。何かが頬を伝っている…「お父様…?これは…」
「な、涙が…!」お父様は急に心配げな顔になりました。「薔薇水晶、やっぱり…辛いのか!?戦うことが?」
「いいえ…」しかし、私の意志とは裏腹に涙とよばれたそれは止まりません。止められないのです。「お父様、私、辛くなんか
ありません。戦わせてください。アリスゲームを」

それからというものの、私の左目の涙はずっと一晩中やみませんでした。
お父様はその場で、戦いで相手に涙を見せてはならない、それは弱みを見せるのと一緒だ、と言って、私に薔薇を象った眼帯を
左目につけ、涙をおさえました。

私はその眼帯を自分でよりきつく結んだ…これから、戦いが始まるのだから。

221 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:18:01 ID:ZxcNgLAY]
118

「君の勝ちだ、薔薇水晶…僕の人形が、勝ったんだ…」
「これで、ローゼンメイデンより強い人形になったのですね」
私はアリスゲームに勝った。第七ドールを称して、ローゼンメイデンを倒し、お父様がローゼンより人形師として優れて
いることを証明した。本当に…本当に嬉しかった。
これで、アリスという、いえきっとそれ以上の…最高の人形になれる。お父様のおっしゃった、どんな少女よりも美しいという
存在に。同時にお父様も最高の人形師となれる。師匠だったローゼンを超えて。
「ああ…この腕は直してあげる」
でも違った…私もお父様も忘れていた。何故かはわからない。
私にはまだ倒していない、もう一体のドールがいたことを。
「胸が…熱いっ…」
顔面にひびが入る。
私の体は崩れていく…究極の少女になるはずだったのに…まるでそれと正反対の事態に私の頭は真っ白になるばかりだった。
そして、もう自分の命が長くないことが分かると、ただお父様のことだけを考えていた。
「お父様…お父様…」
さいごお父様の胸の中に抱きかかえられ、私の意識は闇に落ちた。

でもそれで終わりじゃなかった。
私はそれからあの水晶の中にずっと閉じ込められていた。
恐る恐る...水晶の壁に近づいてみる..壁の先に反射された私の姿が映る..白い..私は白いドレスを纏っていた。
私はこんな、白い人形じゃない..
白い人形は水晶の向こうから私に微笑みかけ、水晶の向こうへと行った。その先にはお父様がいた。
長年の願いが打ち砕かれ、自分の全てを注いだ私という人形も壊れ、お父様は何もかもに絶望していた。
酒を飲み、店も開かず、裸にも近い状態のまま泥酔する…
私はお父様を呼んだけど、声は届かなかった。水晶の壁が私とお父様を何もかもの繋がりから切り離していた。
水晶に隔たれたまま、私はただお父様を見ていることしか出来ない…
生活部屋の中で酔いつぶれ、ベッドの脇に寄りかかるお父様を。
するとさっきのあの白い人形が…お父様の元へと駆け寄っていき、私の代わりに声を掛けた。
お父様は白い人形に応える。
違う。あれは私じゃない。お父様は騙されている。あの白い人形に、ずっと幻を見せられている。
あの白い人形は…だれ?
白い人形はお父様の心を食い物にし、日を追うごとにお父様は…自身を失っていく…もはや自分が誰なのかすら、記憶からこぼれ
落ちそうになっている…

あの白いドールのせいだ… 何もかも終わったのも、あなたのせいだ…そしていう…私は努力をしなかったと…もう元には戻れない…

終わりです、お姉さま…これで終わりです、たった一人のお姉さま。

でも私は、アリスゲームに勝った!

いいえそれは幻。窓を覗いて御覧なさい、あなたの倒したはずのドール達は今も動いています

あなたはだれなの!

あなたはだれ?私はだれ?

私は…ふと行き詰る。私はだれ?突然、名前が思い出せなくなってしまった。

私は…薔薇乙女第七ドール…

222 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:20:08 ID:ZxcNgLAY]
苦しむお父様の顔が目に入る。お父様の顔が…でも、私は自分がだれなのかがでてこない。どうして!?

物質世界に存在を縛られる事自体がアリスへの枷になってしまう不要の形骸なのか

違う…

ふと、さっきであった、別のドールの顔が記憶に浮かんできた…

もうお互い争ってる暇なんかあったら一緒に力を合わせて解決しやがれってことですぅ

あなたは、どうして…

だから薔薇水晶、おめーも気をつけてちゃんと海面を目指すですぅ

私は…私の名は…

223 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:21:56 ID:ZxcNgLAY]
119

「っふはぁっ!…」
薔薇水晶は、無意識の海の海面から顔が外の世界に出たのを感じた。
陸地が見つからない。視界に映るのは水色がかった異世界の空と白い水晶だけだ。
頭のなかが混乱したままとりあえず漕ぐ。「お父様…!」

と、海面でもがく薔薇水晶の腕を緑色の腕が掴まえた。
引っ張られる…

「けほ…!…けほ…!」
薔薇水晶は陸地についた。一歩先にそこへ到着していた翠星石が引き上げてやったのだった。
「初めて無意識の海に飲まれたやつにしては、上出来ですぅ」

「ここは…どこ?」
陸地に着いた薔薇水晶は地べたに手をついてむせつつ聞いた。
「どうやら」翠星石は後ろに聳え立つ巨大な水晶の城を指差した。「あの白薔薇の世界から遠く離れていないみたいですよ。
むしろ近づいているですぅ」
「白薔薇とは…」その人物名に薔薇水晶は過敏に反応した。「白薔薇とは、何者なの…ですか」
「えっ知らないのですか」翠星石はかなり以外そうな顔をした。「姿似てるからなんか関係あると思ってたですぅ。お前がそのまま
真っ白になって右目に白薔薇つけたような頭の飛んだやつですよ」
「そんなドール知らない!」薔薇水晶は再び翠星石に食って掛かるように睨みつけた。「私は私!他の誰でもありません…!」
「わわわわわ分かったですぅ」翠星石は降参の動作をした。
「その白薔薇というのは一体いまどこに!?」薔薇水晶は語調を荒げてさらに翠星石に迫る。「その者はいま何処にいるの!?」
彼女は翠星石のドレスを掴み上げようとするが、触れることかなわず体が透ける。「何処なの!?」
翠星石は困惑気味に答えた。「え、そんなこと聞かれてもはっきりわからんです…、」しかし自分を見澄ます薔薇水晶の顔が
これ以上険悪になるのを恐れるととにかく何処かを挙げなければならないと思った。「多分、…あの水晶の城あたりにいると
思うですぅ」
薔薇水晶の顔の向きが水晶城へと移った。巨大なその姿を見上げる。
それから急に意を決したように飛び上がると、水晶城を目指して猛スピードで飛行しだした。
かつて仮にも真紅を倒し、アリスゲームを制したあの薔薇水晶がかつての力の一端を再び発揮した瞬間にもそれは思えた。
「ああ、」翠星石と雛苺が彼女を追う。「待つですぅ!」
速い。翠星石は思った。薔薇水晶の姿がどんどん遠ざかっていく。
それから、あの似たもの同士の第七ドールと薔薇水晶がこれから衝突するのだろかとも思案した。
最も、それは見た目の話しであって、性格はまるで対極をなしているが。

224 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/10(土) 04:24:52 ID:ZxcNgLAY]
20

雪華綺晶は一人、無意識の海に浮かぶ水晶の舟の上に乗り、ある目的を果たすべく水晶城を目指していた。
彼女の意思に従って、水晶の舟は海の上を進む。スピートばぼちぼちだ。
「クリスタルの舟は、満たされて」その舟の上から独り言を呟く雪華綺晶は、何処かで薔薇水晶の魂が再びここへ舞い戻って
きたことにはまだ気付いていない。「千の少女たちと、千の子たち。ときは百万通りあるのだから、戻ってくるときには」
目的地まで舟が辿りついた。雪華綺晶は水晶でできた縁を乗り越える。「すぐに私は列を降りましょう」そして陸地に着地した。
すぐに、目的のものが見つかった。

「あれは…?」
クリスタルで出来た美しい大きな舟の上から飛び降りてきた一体の真っ白いドールの姿を巴は発見した。
その現れた方は夢を見ているかのようにあまりに魅惑的で思わず目を奪われる。

自分を見つめてくる巴を雪華綺晶は見返した。彼女は真紅のマスターをおびき寄せるのに使ったが、もう彼はここに来ているので
用済みだ。少なくとも雛苺のマスターでなくなった今は。
「あなたは…だれなの?」
巴はそう聞いてきた。「ローゼンメイデンの一人…?」

雪華綺晶は巴のような存在には今や全く興味が沸かなかった。
アリスゲーム終焉の場に最も相応しくない者といえば彼女に違いない。
いま用のあるのは槐の方だ。

「ねぇあなた、一体、槐さんに何があったのか、知ってる?」巴は口を開いて再度問い掛けてきた。
そんなことはどうでもいいのです!
しかし雪華綺晶はアリスゲームに関わる話しの問いかけになると必ず答えてしまう癖がある。それも、謎めいた台詞で返す癖が。
「影に映る破滅…光すら絶えたとき。マスターは壊れました」
雪華綺晶がマスターと称した槐は、まさに彼女がいったように壊れているという表現が不気味なほど似合っていた。
幻想的な輝きを持つ水晶城を見上げ、散乱した目で薔薇水晶の名を連呼している。まるでその水晶城の中に薔薇水晶が見えている
かのように。とうぜん、水晶城の中にはクリスタルが敷き詰められているだけで、何も映ってはいない。少なくとも自分の目には。
「マスターって…」
巴は白いドールの言葉からある事実を導き出そうとしていた。「じゃああなたは…槐さんの契約したドールなの…?」
今度こそ雪華綺晶はそれを無視した。
彼女を尻目に、無機を変えて左手のひらを前に出すと後ろから槐に近づいていく。
「な、何をするの…?」にわかに胸騒ぎを覚えつつ巴を襲った感覚は、突然の電撃だった。
この白いドール…!私は見たことがある。この水晶の城も!
ずっと忘れていた。なんで思い出せなかったんだろう。
いつか雛苺のマスターであった頃、雛苺に鏡から彼女の世界に連れられた時に、ふと見たことがあった。

雪華綺晶は槐の背中へと迫っていった。あなたの役目もまたもう終わり。自然と顔が綻ぶ。偽りの夢に抱かれてお休みなさい。
だがその刹那、テレポートしてきたが如く彼女の前に現れた薔薇水晶が、槐への行路を絶った。すでに戦いの構えをとっている。
左目を雪華綺晶は丸くさせた。

225 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/10(土) 04:56:05 ID:jEjQ1OE/]
いつも良作を読ませていただきありがとうございます

226 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/10(土) 07:11:10 ID:PrqlU3ko]
  ,_-- 、       , -−…− /            
 i/   `\   /     ̄`¨,'   カナのSSが 
 |   !    ヽ'   ̄  − __ 〈|             
 l   i  / 〈` - 、   丶 く:!   少ないかしら……
 l!  i  /'´  ス \ 丶    く!             
 lヽ. !_ /'´  /\ \ 、 \ ム            
 !  \ | , ' /    \ 、  丶 込、           
:|も l:\,/ __    丶、  丶L ト..,,__, ィ_! r、 
: l: じ !: ∨  ̄´      丶、 `ヽ |:::| T |:::l__「 ̄  
: !: :   ,〈!  、_.,          ` ト、-l:::|/|/|::::l     
|   ,/i イ::;:::rY        _    `|:::|、l i::::| − _ 
:.!  r /'、 ', ゞZ::ソ       ィr'−'、 ヽ| l  ト:l    , 
:i /ゝ|, -ト、! ,,¨´      i::{:::::r'Y  /lj/     / 
:! ハ/`   ヽ    ,:     ゞ='シ / l|'_     /  
lL/     ' 、 i\   tっ    ''' ∠  ィ 丿    / / 
 {       _, -‐_>、 __. ィ´ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
 ハ    〈 r‐i'´_/lcl,〈¨ヽl  |∨            
 | \/ / ヽ二 イ/cl|ヽl l| / 誰か書いて      
f二ゝ ヽ  ハ //ーl|-l| l/               
l/|   l l_|/| lr: ュl| lL」   ほしいかしら…    
¨ −-  _くノ| l/ハ」|ヽ/¨|               
        ¨ −-  _ \________  

227 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/10(土) 08:08:11 ID:jufcplJT]
>>213-224
久々の投下GJ!
これから仕事なんで帰ったらじっくり読ませてもらいます。

228 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/10(土) 19:25:02 ID:+zZuBy58]
    , .-=- ,、
 ヽr'._ rノ.'   ',
 //`Y. , '´ ̄`ヽ
 i | 丿. i ノ '\@
 ヽ>,/! ヾ(i.゚ ヮ゚ノ  かしらっら
  `ー -(kOi∞iミフ
      (,,( ),,)
       じ'ノ'
          ぽいんっ
      川
     ( (  ) )



229 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/10(土) 22:41:10 ID:SsW+hd4B]
久々に来た、荒らされて中止なんてことになってなくて安心した
大詰め?みたいだけど最後まで頑張って
しかしすごいな、きらきのキャラ付けとかもまるでオリジナルみたいだ

230 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2007/11/11(日) 00:27:42 ID:Vr64cMl2]
            , -―- 、_
             /    , -、_ ヽ
         _厶、_-、 {, r 、こn、i
          / { /, -  ̄{ L」水j」Y
        l  l lj  _   _ゝ|二|イ|
       _ゝ Yハz=゙  ゙=、y}  V
      ハ   l〕 ムヘ. r'┐  六イ'「l 「l r,
      ゝー'´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄lソ | l_l !//
     く:|               |〈ヽ.j    'ー_っ
     {」|  保守かしら   |〈ゝー冖L/」
     {: |               | Y¬イ
     |: |________.」  l    |
     ヽ_/ , '  r/  \_〕   \__,丿
         /   「/!: :: :〈|j      \
     /    r」|┘: : : :|L_      \
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    厶 」_工r‐:┘: : : : : : : : └L. 'ーt.¬r冖Lスヽ

231 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/11(日) 03:42:10 ID:B/OXP36z]
121

「また新しいドールが!?」
新たなドールの出現に、巴は驚きの声を出した。この人形もまたローゼンメイデンの一人だというのだろうか。
紫色のドレスに青みがかった髪を持ったドールだが、さっきの白い人形と顔も形もそっくりだ。一見するとまるで双子のような − 
それはあの蒼星石と翠星石以上に、いま向き合っているあの2人は服の細部まで似ていた。

薔薇水晶は、右手に紫色の水晶の剣を握りしめ、自分に似た白いドールに敵意むき出しで言った。「あなたにお父様は喰わせない…!」

その薔薇水晶の背後からは、ほどなくして追ってきた翠星石と雛苺がこちらへやってくる。
翠星石は息を切らしながら頭の上に雛苺を乗せていた。
「はぁ…あー…疲れだですぅ…」
「翠星石がんばったなのー!」
頭上の雛苺を翠星石は憎たらしげに見上げる。「人事だと思いやがってですチビ苺…!」
そんな言葉を雛苺は無視した。既に興味が次の対象へと移っていた。「あー!巴!」
「雛苺!」胸元へと飛び込んできた雛苺を、巴はうまくキャッチして抱きかかえた。
初めて見るドールが二体に、翠星石と雛苺までこの水晶城の世界にいる。
するともしかして。巴はふと思った。
ローゼンメイデンの全員がここに集っているとでも?

「ワットザ − どうやってあの水晶から?」
食い掛かるように睨み付ける薔薇水晶を見やりながら、雪華綺晶はひどく混乱した。「いいえ、いいえ、…口を開かないで!
たとえばあなたが−そうあなたが−あなたは、だぁれといったら?あなたは口を開かないで。言葉が回転するだけだから − 
まだ"if"という単語が"life"の真ん中にあることを知っているかとか話していた方がまし…」
「落ち着けです白薔薇」
「スゥーウィー!さっき第三と第六を何処に?邪魔っぽそうだから水晶城の真下の9秒前の白の底に吹き飛ばした?なんて
役立たずな、愚にも付かない人工精霊!」
雪華綺晶はスゥーウィーに向かってそう言い放った。「あなたは取るに足らないイエバトです…私から離れておいき!
遇劣なイエバト…あなたはただ上から西を見つめているだけのイエバトです…絶えて迷子になってしまえ!」

水晶城の下の無意識の海には薔薇水晶の魂を封じ込めていたというのに。そのせいで出てきたのか。
翠星石なら9秒前の白から簡単に抜け出す道筋を知っている。

232 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/11(日) 03:44:02 ID:B/OXP36z]
薔薇水晶は水晶の剣を握りしめ、言った。「あなたに私のお父様へ手出しはさせません…!」
「あー!やめてください…口を開かないで…それにここまでやってきてまだ暴力の世界に走るつもりなのかしら?」
「ずっとお父様の心を食い物にしていたのですね!」
「それはまだこれから。いま眠らせて差し上げようとしていたのに − あなたには止めることは出来ない。あなたはもう実体を
失くした、かわいそうな偽のゲームを支配して最後に崩れた踊り子。いまのあなたはただの魂の残像。私に触れられることすら
叶わない。ふふ…かわいそうな霊た…!!!」
雪華綺晶の長々しいしゃべりの終わりを待ちきれないといった様子で、薔薇水晶は前に踏み込むと水晶の剣を振るった。
一瞬、本当に雪華綺晶が言ったとおり、その剣身は相手にあたることすらなく透けていってしまうように思えた。
ところが次の瞬間、ガーンと鈍い音がなり、雪華綺晶の頭にそれがあたった。
雪華綺晶は三回ほどふらふらと地面の上を回転し、やがてバタと転んだ。それを薔薇水晶は上から見下ろした。
「…実体のない者どうしならどうやら触れ合えるようですぅ」
翠星石はさっき薔薇水晶の剣が自分の体を透けていったのを思い出しながら、そういった。七体目の白薔薇は元からアストラル体。
「どこか…どこかで糸車の動きが狂いだした気がする」地べたに頬をつけたまま雪華綺晶は呟く。

一方の薔薇水晶は、雪華綺晶を一端放ってその場から離れると槐の元に急いだ。「お父様!」
パンツ一枚しか纏っていない槐を後ろから呼びかけ、太ももにしがみつこうとする。
だが、身体を失って意識の霊魂 − 幻となったいまでは彼に触れられない。「お父様!私…」
「美しい!美しいぞ!」槐はまるで薔薇水晶には気付かず水晶城を見上げたまま叫び続けている。「僕はローゼン以上の存在さ!」
「お父様…ここです!…私はここにいます!」
切り詰められるような恐怖を覚えながら、薔薇水晶は必死に槐を呼んだ。
気付いてもらえない。どうして?

「ふふふ…ふっふふふふ…かわいそうな薔薇水晶…」
すると、薔薇水晶の後ろで雪華綺晶の静かなな笑い声が不快に響いてきた。「あなたがもう彼の目にとまることはない…かわいそうに」
「ど…どういうことです?」背中で聞き返しながら薔薇水晶は平静を装うとしたが、槐に関わることではどうにも動揺してしまう。
「ふふ…」雪華綺晶は寝転んだ状態のまま左手を持ち上げた。「少なくともこれがあるのだから」
雪華綺晶が薔薇水晶に見るように意図したものは、指輪だった。白い光を放っている。
「まさか…!」釣られて槐の左手へと視線を移したのは、薔薇水晶だけではなく翠星石や雛苺まで顔の向きを変えた。
槐の左手に嵌められた指輪。雪華綺晶のと同じく白色の煌きを放っている。
「あの弟子の人形師が白薔薇のマスター!?」
ゆっくりと、雪華綺晶は白い地面から起き上がった。白い髪がふわふわとしながら垂れ下がる。「夢の始まり」

233 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/11(日) 03:45:58 ID:B/OXP36z]
122

雪華綺晶と薔薇水晶。
この2人が似ていることは雪華綺晶本人にとってもあまり本意的とはいえなかった。
そもそも第七ドールの雪華綺晶は、ドールの契約者の心を奪い、その力を以ってアリスになろうとするドールだ。
この日本という国でアリスゲームが始まったとき、既に雪華綺晶は絶望的な状況にあった。
生まれたて未完成品だったあの水銀燈が、どの人間とも契約することなくゲームを戦いだすのだ。
雪華綺晶にとってドールの契約者とい存在は必要不可欠だ。もしドールがどの人間とも契約しないまま壊れたり、
アリスゲームの敗者になったりすれば雪華綺晶は永遠にアリスへの道を絶たれることになる。

そして、事実その事態になってしまった。
第一ドール水銀燈は、どの人間とも契約しないまま真紅の前に破れ、燃やされた。壊された。
このままだと、水銀燈の契約者が以降出ることはない。
雪華綺晶がアリスになる為には、何が何でも水銀燈には復活してもらう必要があった。

お父様が水銀燈を直すか?
どうもそうにも見えない。そもそも水銀燈は元から薔薇乙女あらざるべきドールだったのだから。
ということはつまり、お父様以外に水銀燈を直せるような技術を持つ存在を探さなければならないことを意味していた。

そして、いた。
お父様の弟子。槐。
雪華綺晶は彼に目をつけた。幸運にも、槐の方としても19世紀より薔薇乙女を探し続けていて、それを元に自分も薔薇乙女、
いやそれすら超えるような人形を作ることを切望していた。
槐の心につけ込むには、あまりにも簡単だった。
夢の中で雪華綺晶は槐の前ら現れた。あえて何体目かは告げず、私は薔薇乙女とだけ言った。

次の週から、槐は憑かれたように人形創りに励みだした。薔薇乙女をも超える、命を持った人形を求めて。
槐が一日一日寝るたび、雪華綺晶は彼の夢に現れ、少しずつ心を蝕んでいった。
この時点で、雪華綺晶は槐と実質上一方的に契約を結んでいた。契約さえすれば…マスターの心など想いのままのひばりも同然だ。
こうして、マスターの心を薔薇乙女より素晴らしい人形を創ろうというだけでなく、本当に薔薇乙女を倒せるようなドールを作る
ように徐々に操作していき、最終的には自分の人形をアリスゲームに参加させるようにマインドコントロールした。

234 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/11(日) 03:47:32 ID:B/OXP36z]
槐本人が知らない内に、心は雪華綺晶に啄ばまれ、作る人形も気付けば雪華綺晶ばかりを参考にした、雪華綺晶そっくりなドールへと
完成していった。槐をそれを薔薇水晶と名づけた。薔薇水晶はローザミスティカのない人形だったが、彼女には雪華綺晶が命を
吹き込んだ。いつか自分が水銀燈にしたように、精神で活動する自分の命の一部を分け与えたのだった。
これはローザミスティカがなくとも生けることのできる、神秘の魂だ。
つまり…かの槐は自分の実力で薔薇水晶に命を与えたと思っているが、その実そうではない。
そこまでくると、雪華綺晶は警戒を恐れ槐の記憶の領海からは姿を消した。槐から自分の作った薔薇水晶が雪華綺晶のコピー品にも
近い状態であるという意識はこれで完全に消えた。

実際…あとは放っておくだけで槐は見事に雪華綺晶の思い通りに動いてくれた。
薔薇水晶をアリスゲームに参加させるためまず彼がしたことは水銀燈の修理だった。
真紅に倒された水銀燈は、ローザミスティカを奪われることなくそこに放置されていたからだ。これではアリスゲームの続行が出来ない。
そう考えた槐はそのローザミスティカを使い、水銀燈を直すと同時に、その水銀燈を薔薇水晶の比べ台にしようとも考えた。
裏で雪華綺晶が思惑通りに動いたと笑っているとも知らずに。
直した水銀燈を鞄に入れ、薔薇水晶に持たせる。そして柿崎めぐの通う教会で待機し、彼女が来たところをタイミングよく鞄を
教会の中に落とし、めぐに気付かせた。あとはめぐが一方的に水銀燈と契約を結ぶ。知っての通りだ。

この瞬間、雪華綺晶がずっと望んでいたこと − 水銀燈を復活させ、かつ人間と契約させる目論見は遂に成功したわけだ。
これでマスターの力を狙える。
第二ドールも目覚め、彼女がアリスゲームに躍り出る条件は既に揃った。

だが、次にどうにでもなるだろうと高をくくっていた薔薇水晶が思ったより他のドールを圧倒した戦闘力を持っていることに
気付くと、まだ雪華綺晶は表に出ることを拒んだ。たかが自分の能力の一部である水晶の能力を与えただけなのに、それだけでも
こんなにも他の姉妹達を倒してしまうとは。雪華綺晶は、自分に与えられた能力があまりにも強大すぎてゲームのバランスなど
とうに崩壊していたことをただ一人悟った。

薔薇水晶は真紅をも倒し、六つのローザミスティカを集めた瞬間崩れ出した。これは偶然ではない。所詮薔薇水晶の器の命など
最初から雪華綺晶の手の内にあったのだ。自分が与えたのだから。器を失い、魂として無意識の海を彷徨い出した薔薇水晶を
雪華綺晶は捕まえ、水晶の中に封じ込めた。まだこの魂には利用する道がある。

薔薇水晶の魂を自分の世界に取り入れ、かつ槐と契約している状況を利用して、雪華綺晶は槐の夢の中では薔薇水晶の姿をする
という幻を造り上げた。槐を操り尽くし、三度目復活した水銀燈に人の命を延ばせる夢の樹の方法をそそのかした。水銀燈は
それにのってめぐの父親を殺した。そこから遂に、真紅と水銀燈のあの因縁の決闘が始まったのだった…
雪華綺晶を前にめぐを置いてきぼりにして。

235 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/11(日) 03:49:54 ID:B/OXP36z]
123

「一体どの洋物推理小説の真犯人の回想ですか!」
翠星石はもう聞いてられないとばかりにまくしたてた。「いまどきくんくん探偵の犯人役もそんな回想しませんよ!」

「あなたの人形師は心を壊し、私の知る域をも超えかけている」
雪華綺晶は薔薇水晶を見やりつつ言った。「自分の人形が壊れたことも覚えてはいない。そしてそれは私には丁度いい…」

対面する2人の後ろで、槐は今も変わらず水晶城に向かって吸い込まれるように歩いていく。
追い討ちをかけるように雪華綺晶はさらに言った。「あの水晶の城は私そのもの。あの中に入れば彼の魂は私の養分となる。
眠る彼に根を張り巡らて」

それはまるで死刑宣告のように薔薇水晶の耳へと響いた。「そんな…お父様!」
とっさにまわれ右するように振り返り、槐の後姿を見る。彼はどんどん水晶城へと飲み込まれるが如くに近づいていく。
薔薇水晶は一端顔の向きを直し、雪華綺晶に怒りの視線を一瞬ぶつけると、踵を返して一直線に槐のほうへと飛んだ。

「お父様!」
もはや触れ合えないのも声も届かないのも承知で、槐の横につく。
以前には見受けられなかった彼の左手の指輪を確かに薔薇水晶は見つけた。それが、あの白いドールとの何かの結びつきを築いている
ことはほぼ疑いようがない。あの白いドールの話は本当らしい。だとすれば、お父様のかけられた偽りの夢を解く方法はただ一つ。
「少しだけ、あと少しだけ待っていて下さい…お父様。すぐに私が、幻を解いてみせますから…」
もはや以前とは変わり果ててしまった槐の傍で、薔薇水晶は自分という存在を生み出してくれた主にそう言葉を掛けた。

やがてゆっくりと彼から離れる薔薇水晶。
物静かな様子でこちらへ戻ってくるかと思えば、突然酷烈とした目をして雪華綺晶を睨みつける。
思わず翠星石は身震いした。以前見てきた薔薇水晶のどの顔よりもいまの視線は恐ろしい。
水晶の剣の剣先を雪華綺晶へと伸ばし、薔薇水晶は言った。「…あなたを壊す。それは避けて通れない道のようです」

ところが雪華綺晶はあまり薔薇水晶を相手にしようとはしていないようだった。
「実体のないドール同士で戦っても意味なんてないのに。ただ暴力が巡るだけ」
薔薇水晶はそれを無視した。
決意に満ちた戦士の如くまっすぐ雪華綺晶へと近づいていく。そしていきなり歯を食いしばると力を込めて剣を上から振り落とした。
雪華綺晶は飛び上がり、高く地面より離れた。剣は空ぶる。すぐに相手についていくように薔薇水晶も飛び上がり、雪華綺晶の
目の前まで迫って宙で対峙した。
これ以上ないほどに2人の距離が縮まる。

雪華綺晶は左目で薔薇水晶の右目を見つめた。「器を失った迷子の魂と、イデアのアストラル。分かってるのでしょう?勝てないと」
薔薇水晶の右目が雪華綺晶の左目を見返した。「そうは思いません」

先手を仕掛けたのは薔薇水晶だった。左肩を引いてから勢いよく手を前に突き出すと、そこから衝撃派が発生して雪華綺晶を
吹き飛ばした。
雪華綺晶は打ち上げられた砲弾のように空高く舞い上がっていきつつ、手元に氷の長剣を取り出す。
「こんなものもう使わないと思っていたのに。でもこれはきっとアリス誕生という大きな波紋の前の些細な波。七体目は
それに身を委ねましょう!」

対する薔薇水晶は、空中で剣を構え持つ雪華綺晶を目にしかと捉えると、戦闘態勢を取った。
「最高の人形師、槐の名にかけて!」
薔薇水晶はそう叫び、飛翔する鷲の如く突っ込んでいった。

236 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/11(日) 03:51:44 ID:B/OXP36z]
124

聳え立つ水晶城の中層ほどのところで、ジュンはさらに奥へ上へと進もうとする真紅を必死に抑えている。
「真紅、それ以上いくな!」
ジュンの声は真紅に恐らく届いていない。「水銀燈が…呼んでいるわ」
「水銀燈はもういない!もういないんだ!もう…!それ以上前にいっちゃだめだ!真紅!」
「彼女ならいるわ。あなたには分からないのよ!私は聞いているわ − 水銀燈、まって…いまいくわ…」
真紅が進もうとする先には、ガラスの床が割れて大きな穴が開いている。
それ以上進むと下へとまっ逆さまに転落してしまう構造だ。
「だめだ!いくな!七体目の罠だよ!真紅!僕はいかせないぞ!お前まで水銀燈のところなんかへ − 僕は力づくでも止めるぞ!」
そして、ジュンは真紅を羽交絞めするように抱きかかえると、力いっぱい後ろへ引き倒した。
2人して地面に転げる。「いかせない!目を覚ませ!」
「いやあああああ!!」
すると彼女はジュンの胸の上で大暴れした。瞬く間にジュンの胸から脱出し、発狂したように奇声を張り上げると、
手に持っていた水銀燈の剣先を握ってジュンの喉元に上から突きつけた。
激しく息を切らしながら、ジュンを殺すような青い瞳を向けている。
ジュンはしばし言葉を失った。真紅のこんな目を見るのも初めてだったし、剣を喉元ぎりぎりのところまで伸ばされれば恐怖心
に身体も硬直してしまう。

「…」慎重に、出来るだけ彼女を刺激しないように、ジュンはゆっくりと両手を上げて口を開いた。「…真紅…?ぼ、僕だよ…」
真紅の瞳に変化はない。ジュンにのしかかって剣を喉に突きたてたままだ。
ジュンはもう一度静かな口調で言った。「…真紅…僕が…分からないのか…?ジュンだよ…お前の契約した…」
真紅の瞳がピクリと動いた。殺気が次第に引いていき、やがて驚いたような顔つきにかわると、次に絶望したようにジュンから
離れ水銀燈の剣を手元から落とした。剣が地面に当たって音を鳴らす。
真紅はその場にへたれ込むように座り、後ろの水晶に寄りかかると呟くように声を出した。「私はもうダメだわ…ジュン」
「ああ…分かってる」ジュンは答え、ゆっくりと水晶城の中を起き上がった。「こんな所まで来てしまって…」
水晶城の上から外の世界を見つめる。
「こんな辛い事ばかりが立て続けに起こるアリスゲームってなんなんだろうと思うよ」
ジュンは言う。「でも不思議だよな。アリスゲームがなければ僕は真紅にも翠星石にも出会わなかった。アリスゲームの辛い運命を
みんなと一緒に − 僕もそれに巻き込まれるというか、…脇役でもアリスゲームの一部となることが」
ジュンは自分でも何言っているんだろうと思った。「それが、すごく生きている、って実感するときがあるんだ」
朦朧と座り込んだまま真紅は受け答えした。「アリスゲームは殺しあうものなのに?」
「真紅、」ジュンは真紅の前に再び座り、肩に手を添えるとその青い瞳をまじまじと見つめた。「僕はお前達のアリスゲームに
巻き込んできたことを、とても感謝したい気持ちで思っている」
肩に触れてきたジュンの手の上に真紅は自分の手を乗せた。「…愚かな下僕ね。そこまで成り下がってしまっては私の手に負えないわ」
「手に負えないのはお前の方だろ。らしくないな。さあ、真紅。」
ジュンは真紅の肩を掴み、立ち上がるように促す。「いこう。みんなを助けに。」
「みんなを…助けに?」ジュンにせかされるままに立ち上がった真紅は不思議そうに聞く。
「七体目のドールがみんなのマスターを狙っている」
「そう…」青い瞳を悲しげに落とす。「それで…」
一度ジュンから真紅は離れた。ガラスの床に落ちた水銀燈の剣をもう一度拾い上げる。
「ジュン…」
それからジュンに背を向けたまま、重々しい、深刻な語調で語りだした。
「翠星石や雛苺と一緒に飲んだ紅茶はどこへいってしまったの? − 姉妹で見たくんくん探偵はどこに? − 全ては過ぎ去ったわ。
山に降る雨のように…草原を吹く風のように…」
真紅は恐らく水銀燈の剣を武器にこれからを戦うつもりなのだろう。それが一体何の決意の表れであるか、それは真紅だけが
知る水銀燈の何かだとジュンは思った。「私達の幸せな日々は海の彼方へと過ぎ去っていったのね……扉の後ろ、影の中へ…」
溶岩地帯での水銀燈との死闘を戦いぬいて身も心もボロボロの真紅から放たれるその言葉は、まるで自分の死を予言しているかの
ようだった。「…すべてはアリスのために…」
ジュンは真紅の前に座ると、乱れた彼女のドレスを手で直してやった。「いこう、真紅」

237 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/11(日) 03:53:19 ID:B/OXP36z]
125

空中で繰り広げられる雪華綺晶と薔薇水晶の戦いは、奇怪さを極めたものとなっていた。
水晶で出来た剣を振り翳す薔薇水晶に対して、雪華綺晶は全く予想不可能なフォームて氷の剣を扱っている。その彼女の身体
からは白い茨が生き物のように伸びる。
薔薇水晶の顔にはにわかには信じ難いというような困惑が浮かんでいた。自分の剣術がまるでこの白いドールには通用しない。
突きをしてみる。すると相手の白いドールは宙返りしてかわしたかと思うと、次の瞬間思わぬところから相手の剣先が伸びてくる。
「くっ!」
その突きを薔薇水晶は頭を仰け反らせて辛うじで避ける。いや…たとえこの剣先が当たったとしても、霊魂となったいまなら
彼女にダメージはないはずだった。だが、先に攻撃を受けてしまうことは薔薇水晶にとってはドールとしての誇りの面で負けを
意味している。
なぜなら自分はローゼンメイデンに勝ったはずのドールなのだから。例え後に第七ドールが新たな敵として出てきても技で
負けてはならない。
お父様に応えるため。
薔薇水晶は前に出た。白いドールの剣を持つ右手に切りかかる。「ほっ!」すると相手は右手を引っ込めると同時に
氷の剣を左手へとお手玉のように投げ渡し、薔薇水晶の剣は空ぶった。「くっ…」気を取り直して次は左手へ向けて攻撃をする。
すると白いドールは左手からも剣を放り投げ、体を丸くして前回りした。予想できない動き。急に目の前に現れてきた編み上げ
のブーツのヒールに薔薇水晶は顔面をけられた。
「あっ…!」
一度手放して宙を舞った氷の剣を、雪華綺晶は逆立ち状態から再びキャッチする。人間にはまず出来ない動きだ。
「憎たらしい曲芸師…!」薔薇水晶は相手をそう皮肉った。
「尖り物の戯れはもう十分でしょう?」
雪華綺晶は逆さのまま剣を持った右手を軸に、一回転して喋る。「少なくとも私のお父様が求めているのはジャンヌダルクの
ようなものの再現ではないのだから」
自分の戦いを戯れと称されたことが勘に触ったが、薔薇水晶はそれ以上に槐のことが気がかりで仕方なかった。
もういっぺんだけ下を歩く槐に向き直る。まだ水晶城の側を歩き回っているようだ。
お父様はまだ大丈夫なのだろうか。その心配が薔薇水晶を焦燥に駆り立てる。
急がなければならない。薔薇水晶はもう一度雪華綺晶へと迫り、剣を水平に振った。すると相手の白いドールは倒立状態から
上に飛び上がり、視界から消えた。
「後ろ…!?」
とっさに振り返ろうとする薔薇水晶。
だが、相手を見出すより先に彼女の首に雪華綺晶の白い茨が絡まった。「う!」薔薇水晶は反射的に首もとの茨を掴んで解こうとする。
「だから…」彼女の背後からぬっと寄ってきた雪華綺晶が薔薇水晶の顎を後ろから撫で上げた。「私達にしかできない、もっと
楽しいことをしましょうか?さあ…私の魂を火に灯して」

238 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/11(日) 03:55:23 ID:B/OXP36z]
126

「薔薇水晶と白薔薇が戦ってるです…」
翠星石は上空で戦いを繰り広げる2人を見上げた。雪華綺晶と薔薇水晶。
薔薇水晶の方がローゼンメイデンでないと分かったいまでは、その2人の戦いはアリスゲームを超えた何かの戦いに思えた。
「…いや!」
そんなことは余計な考えだとばかりに翠星石はそれを頭から掻き消すと、巴と雛苺の方に向き直った。
「いまです!薔薇水晶には悪いですが、あいつには白薔薇のひきつけ役をやってもらうこととするです!いまがチャンスです!
ジュン達と合流しにいくです!」
「え…!?」もしかしてとは思っていたが、巴にはやはり一驚を隠しきれなかった。「やっぱり桜田君もここにいるんだ…」
「急ぐです!ジュンならきっとあの水晶の城を登っていったはずです!真紅が見えていましたから!」
翠星石がせかす。時間はそう多くないことを、その場では翠星石だけが知っていた。「こっちです!」
彼女に導かれるまま、巴は雛苺を抱えたまま水晶城の中へと入った。その時水晶によって作られたお城の内部のあまりの美しさに
しばし目を奪われたが、再び翠星石の呼ぶ声にわれを取り戻すと階段を登る。

ジュンと真紅とは早く合流しなければならない。翠星石は思った。いまあの白薔薇の気を薔薇水晶が引いているが、長く持たない。
翠星石はそれを知っていた。一度器を失い、本来迷子となるべき霊体は、たとえ例外的に自我を取り戻して無意識の海から抜けだせ
ても、もって30分で再び魂は迷子になってしまうだろう。薔薇水晶…気の毒に。だから哀しいかな時間はあまりない。

水晶城の上へ上へと目指してゆきながら、翠星石は果たして今日という日を生き延びられるかどうかを考えた。



239 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/11(日) 07:35:20 ID:ne2rSA8s]
  ,_-- 、       , -−…− /            
 i/   `\   /     ̄`¨,'   カナのSSが 
 |   !    ヽ'   ̄  − __ 〈|             
 l   i  / 〈` - 、   丶 く:!   少ないかしら……
 l!  i  /'´  ス \ 丶    く!             
 lヽ. !_ /'´  /\ \ 、 \ ム            
 !  \ | , ' /    \ 、  丶 込、           
:|も l:\,/ __    丶、  丶L ト..,,__, ィ_! r、 
: l: じ !: ∨  ̄´      丶、 `ヽ |:::| T |:::l__「 ̄  
: !: :   ,〈!  、_.,          ` ト、-l:::|/|/|::::l     
|   ,/i イ::;:::rY        _    `|:::|、l i::::| − _ 
:.!  r /'、 ', ゞZ::ソ       ィr'−'、 ヽ| l  ト:l    , 
:i /ゝ|, -ト、! ,,¨´      i::{:::::r'Y  /lj/     / 
:! ハ/`   ヽ    ,:     ゞ='シ / l|'_     /  
lL/     ' 、 i\   tっ    ''' ∠  ィ 丿    / / 
 {       _, -‐_>、 __. ィ´ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
 ハ    〈 r‐i'´_/lcl,〈¨ヽl  |∨            
 | \/ / ヽ二 イ/cl|ヽl l| / 誰か書いて      
f二ゝ ヽ  ハ //ーl|-l| l/               
l/|   l l_|/| lr: ュl| lL」   ほしいかしら…    
¨ −-  _くノ| l/ハ」|ヽ/¨|               
        ¨ −-  _ \________  

240 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/11(日) 12:28:40 ID:u0MeG/hk]
    , .-=- ,、
 ヽr'._ rノ.'   ',
 //`Y. , '´ ̄`ヽ
 i | 丿. i ノ '\@
 ヽ>,/! ヾ(i.゚ ヮ゚ノ  かしらっら
  `ー -(kOi∞iミフ
      (,,( ),,)
       じ'ノ'
          ぽいんっ
      川
     ( (  ) )

241 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/11(日) 16:32:04 ID:KzIft8Tt]
>>213-224 >>231-238
GJ!
連続で投下お疲れ様です。

242 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/11(日) 20:59:29 ID:0aZJM3L4]
現在、金糸雀信者に荒らされているスレ

アニキャラ総合板のSSスレ(金糸雀関連のSSを催促するAA連投)
アニメ2板の総合スレ(容量潰しのAA連投)
懐漫板の原作スレ(金糸雀関連の話題を催促するAA連投)
VIPの総合スレ(ID切替えの自演)
VIPの絵スレ(金糸雀関連の画像を催促するAA連投)
VIPの陰陽師スレ(金糸雀の出番を催促するAA連投)


各地のローゼンスレへの荒らしをもう放置してはおけません。
皆で協力して↓のスレを潰し、ローゼンスレに平和を取り戻しましょう。

糞糸雀信者(荒らし)の巣
anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1194433068/

243 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/11(日) 22:07:13 ID:3T+g15DB]
>>213-224 >>231-238
    ___
  く/',二二ヽ>
   |l |ノノイハ))
   |l |.リ゚ ー゚ノl|   リサーチの合間に執筆お疲れ様ですぅ、そこの人間。
  ノl_|(l_介」).|   翠星石もじきに迷子にされそうですが、とりあえず感謝するですよ。
  ≦ノ`ヽノヘ≧
 .ミく二二二〉ミ

244 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/12(月) 00:11:48 ID:dVtX7J8v]
書くテンションをここまで維持し続けてるのは凄い
大抵の奴はある程度進むと筆が止まってしまうことが殆どだ
はじめはガンガン書けるんだけどいきなり書けなくなるんだよ

245 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/12(月) 17:35:25 ID:CY5YtnXj]
実装石のSSはどこに投下したら良いんだ?

246 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/12(月) 20:21:28 ID:o6EZFTA/]
  ,_-- 、       , -−…− /            
 i/   `\   /     ̄`¨,'   もうカナのSSは  
 |   !    ヽ'   ̄  − __ 〈|             
 l   i  / 〈` - 、   丶 く:!   書いてくれなくていいかしら……
 l!  i  /'´  ス \ 丶    く!             
 lヽ. !_ /'´  /\ \ 、 \ ム            
 !  \ | , ' /    \ 、  丶 込、           
:|も l:\,/ __    丶、  丶L ト..,,__, ィ_! r、 
: l: じ !: ∨  ̄´      丶、 `ヽ |:::| T |:::l__「 ̄  
: !: :   ,〈!  、_.,          ` ト、-l:::|/|/|::::l     
|   ,/i イ::;:::rY        _    `|:::|、l i::::| − _ 
:.!  r /'、 ', ゞZ::ソ       ィr'−'、 ヽ| l  ト:l    , 
:i /ゝ|, -ト、! ,,¨´      i::{:::::r'Y  /lj/     / 
:! ハ/`   ヽ    ,:     ゞ='シ / l|'_     /  
lL/     ' 、 i\   tっ    ''' ∠  ィ 丿    / / 
 {       _, -‐_>、 __. ィ´ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
 ハ    〈 r‐i'´_/lcl,〈¨ヽl  |∨            
 | \/ / ヽ二 イ/cl|ヽl l| / どうせカナは 
f二ゝ ヽ  ハ //ーl|-l| l/               
l/|   l l_|/| lr: ュl| lL」   嫌われ者かしら…  
¨ −-  _くノ| l/ハ」|ヽ/¨|               
        ¨ −-  _ \________  

247 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/16(金) 19:50:17 ID:+kr6mqF4]
今投稿されてる大作が終わったらここも終わりだな

248 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2007/11/17(土) 19:37:28 ID:2giGF7d8]
保守



249 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/18(日) 12:49:12 ID:ReUnCSDq]
                                                                      
                                                                      
                                                                      
                                                                      
   /       ヽ ヽ     \、 _                                                
  /        /\ \  、  ノr、L,                                               
. /      _  ´ .::ノ`ヽ、.... \..フ  ハュ、                                              
∧.    / ./::;;- ´     `丶、.. ゝヘ」八}   カナのSSが少ない糞スレなんてなくなっちゃえばいいのかしら!!!  
{::i::::. / .:::/"´  - 、      \「 「ヽ「                                              
'、:、:::/.  .::::/   、、、.._\__,     トV「 /〉                                              
.ヘ::V::::r'⌒i{   ´r弋い    -‐ v:::コ/V                                               
. \::::ゝr/__    弋フ    ,rぃ//ヒソ                                               
  _.>‐i{ _>┐``    , ヒ/´                 __                                 
. ヽ_ ‐ "´  `ヽ   , ‐、_ ´ "ハ \             〈V'´ ` ― ___                           
. /       、 ヽ ゝ_ノ .∠. `ヽj}             _/_     └─┘ ̄ ̄                       
/         ┴- ∠て三>┴ … ―――ッッ-zて__  ̄  ─ ___                         
        . :      ̄ ̄             , ', ' ∠`´  、_`丶、__└──                         
: .     . : : : : : . .               /:/ -、__ゝ  、`rr、 ̄て」」                              
、: -‐、: : : : : : :/て> ‐、: i:\  : . . . . .    j i 、 ヽ   ゝ 、>ヘ. ̄ ̄                               
..〉_/ ` ---‐'ヽヽ:`='o_ヘ:、: : : .    : : : : // \下 `  ̄jヽノ\i                                 
j      : : : : : :` ミ 、__ノヘ: : : : : : .      //  、 └、 \/不 、i                                  
   __     : /:::::水`ヽ\: : : : : : . . . l:l  ゝ/  下.i / 、 |                                  
-‐ . ._. -―  .ゝ::::::/人ヽ::::> \: : : : : : : .i:i 、 |  ト、i ∧、jヽノ                                  
: -‐:    . : / `彡'__」 _弋_ \ 丶、: : : : i:|  ト、i\| }ノ、 ノ                                    
                                                                      
                                                                      
                                                                      
                                                                      

250 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/19(月) 21:07:21 ID:HPQhh23M]
おとさせはしない!

251 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/19(月) 22:14:29 ID:TZ20hbsP]
    , .-=- ,、              , .-=- ,、              , .-=- ,、                     
 ヽr'._ rノ.'   ',           ヽr'._ rノ.'   ',           ヽr'._ rノ.'   ',                     
 //`Y. , '´ ̄`ヽ             //`Y. , '´ ̄`ヽ         //`Y. , '´ ̄`ヽ                    
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       じ'ノ'                じ'ノ'                じ'ノ'                    
          ぽいんっ             ぽいんっ             ぽいんっ             
      川                  川                  川                     
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          ぽいんっ             ぽいんっ             ぽいんっ             
      川                  川                  川                     
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       じ'ノ'                じ'ノ'                じ'ノ'                     

252 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2007/11/19(月) 22:27:16 ID:JW/Mpdym]
シコシコッ・・・ ウッ

253 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:13:15 ID:TuU5GYkV]
127

雪華綺晶の世界である、水晶の城の階段を駆け上る翠星石に続く巴と雛苺の三人。

ある階に辿り着いたところで、ばったりと向こうから階段を下ってきたジュンと真紅に出くわした。「ジュン!」「翠星石!」
「真紅、無事だったですか!」
「ええ、なんとか。」
再会を喜ぶ彼女達の合間、さらにそこへ、外の世界から水晶の壁を突き破ってぶっ飛んできた雪華綺晶が、ガラス張りの床を派手に転げた。
その左手にはどういう訳か薔薇水晶の眼帯が握られいる。
「これを取ろうとしたら薔薇水晶がすごく怒った」雪華綺晶は頭いっぱいに水晶の破片をかぶっている。「蹴っ飛ばされました…」
「薔薇水晶…?」その言葉の中に異様な単語が含まれていることに気付く真紅が口を開いた。「なぜ薔薇水晶の名前が…?」
「実体を離れた霊魂がこのフィールドに戻ってきてるですぅ」翠星石が説明する。「幽霊同士白薔薇と喧嘩してるですよ」
「そんなことが…?」
真紅は顔を上げ、雪華綺晶が突き破ってきた穴を見つめた。
その穴から、宙に浮いた薔薇水晶がゆっくりと雪華綺晶を追うように下へ降りてきている。
眼帯を取られ、両目の瞳でこちらを覗いている。今まで隠されていたその左目から涙が止めどめなく出ていることにまだ薔薇乙女は
気付いていない。

実際の第七ドールの偽の第七ドールが改めて似ていることが分かると、真紅は事態が最悪になりつつあるのではと危惧した。
「薔薇水晶と雪華綺晶は、やはり何か関係が?」
もしこの2人が手を組んだりしたら私達の力ではもはや到底適わない。
以前水銀燈のフィールドで戦ったときも、ただでさえ雪華綺晶一人相手に大敗したばかりだ。
「いえ、大丈夫ですよ、真紅」翠星石がなだめる。「むしろ敵対してますから。この2人。どうも白薔薇の方が薔薇水晶を怒らせてる
みたいですよ」
「七体目がドールのマスター達を狙っていると聞いたわ」改めて真紅は問い掛ける。「マスター達はどこに…?」
「それが、見当たらないのですぅ。どうにも」翠星石はかぶりを振った。「私たちがこっちに来る前、ジュンの機会の箱の画面に
水晶の中に閉じ込められたマスター達が見えたのですが…」翠星石は自分たちがここまでやってきた経緯を真紅に話した。
いきなりジュンのPC画面に出てきたことから、槐が雪華綺晶のマスターに一方的にされてしまっている状況、そして七体目が
正確にはマスターの心を奪うことでアリスになろうとしていることなど。

それから、七体目があひる座りをしたまま白い長髪に纏わりつく水晶の破片を地道に手で取り除いているのを翠星石は見やった。
「マスター達を見つけるには、もうあいつに自分から口を割らせるしかないですぅ」
「どうやって?」
「白薔薇のやつの身動きを完全に封じて拷問しちまうですよ!」翠星石の口調が強まる。生意気で迷惑な妹をとっとと払いたい
というような気持ちが滲み出てきているかのようだ。「拷問台にかけるです!泣いて許しを請いたってもう許さんですぅ!!」
「果たしてそんことができるかしら」一方、真紅の言動は慎重だ。
「そうですね…」翠星石も負けじと考える。「相手が幻なのですから、私の世界樹や雛苺の蔓で拘束してもまるで無駄ですぅ。
見た目では縛れていても、所詮はやっぱり幻なのですから。手ごたえがないですぅ」
「霊体同士なら触れ合えるのよね?」
真紅が念を押すように聞いてくる。「みたいですぅ。そんなSFのちゃちー辻褄が本当に私たちの世界でも通じるとは思っても
みませんでしたが!」
さらに真紅は一考した。どうやらこの状況の打開法を導きつつあるらしい。「なら、薔薇水晶の協力が得られれば…あの子の水晶
の力で七体目を封じ込めてしまえばいいのではないかしら。喋ることだけはできるように顔だけは出しておいて」
翠星石は、顔から下が完全に水晶に埋まった雪華綺晶を想像して思わず噴出しそうになった。「名案ですぅ真紅。でも、薔薇水晶
はきっと私たちをまだ敵視するでしょうね…」
真紅と翠星石が2人が議論しているさなか、薔薇水晶は剣で再び雪華綺晶に襲い掛かっていた。
雪華綺晶は床を転げながら自分の氷の剣を振るって相手の攻撃を弾き返す。若干歯を食いしばりながら氷の剣を扱っており、
余裕がやや失われているようにも見える。

254 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:15:06 ID:TuU5GYkV]
「雪華綺晶が薔薇水晶におされてる…?」戦い続ける二人を見つつ真紅がそう口にする。
だが、翠星石は確信に満ちているように首を横に振った。「いえ、あの白薔薇のことです…どうせ演技ですよ。
このままじゃ薔薇水晶が危ないですぅ!」
そう翠星石が言ったつぎの瞬間、薔薇水晶の紫の剣が力強く振り落とされた。雪華綺晶は床を転がってそれをよける。
的を外した薔薇水晶の剣が地面を叩くと、その剣に白の茨が伸びては絡まった。
「…!」しまったと薔薇水晶の表情に一瞬変化がでたかでないかのうちに、雪華綺晶が脚を持ち上げて薔薇水晶に蹴りを
入れた。薔薇水晶は後ろへとよろめき、一方茨に捕らえられたままの剣を手から落としてしまう。
雪華綺晶はその落ちた剣を左手に持った。右手に氷の剣、左手に紫の剣を突きたてて、薔薇水晶に迫る。
形勢が一瞬で逆転した。
薔薇水晶に恐れの暗い表情が入り、後ずさる。対して二本の剣を突きたてながら相手に迫り続ける雪華綺晶。

「翠星石、念のためもう一度確認するわ」離れたところで、真紅が再度翠星石に耳打ちする。「薔薇水晶と雪華綺晶は本当に
味方同士という訳でもなく、むしろ敵対しているのね。あれは芝居ではなくて」
「ですぅ。そもそも戦いバカの薔薇水晶に芝居なんかできっこないですよ」
「それはもしかして、薔薇水晶は私達と同じ敵を持ったと考えてもいいのかしら」
「そうですね。最悪それ以上はあるですぅ」

追い詰められた薔薇水晶の背中が水晶の壁にあたった。もう後が無い。
雪華綺晶はにじり寄る。
二本の剣の先端が接近してくる。
と、突然薔薇水晶は青みがかった髪から水晶の髪飾りを手に取った。形が変化して槍のように尖り、目にも留まらぬ速さで雪華綺晶に
迫る。が、予期していたように雪華綺晶はそれを水晶と氷の剣ではじいた。
秘密の武器まで軽くあしなわれ、いよいよ頬に冷や汗を流す薔薇水晶。
次の瞬間、彼女は顔面を膝でけられた。「うあ…っ!」壁際にしりもちをついて倒れる。
「もう終わりです」雪華綺晶は言う。悔し紛れに、薔薇水晶は下から相手を睨みあげる。だが左目からは止められない涙が流れ
暴力を振られて弱々しく泣く女の子のように見えてしまう。「かわいそうに。でもあなたはとうに踊り役を降ろされたの」

「薔薇水晶が泣いている…?」
真紅は、いままで眼帯に隠されていた彼女の左目から流れるそれに遂に気付いたのだった。「いままで左目を隠していた理由は、
それにあったというの?」
「思えばかわいそうなやつですぅ。ローゼンメイデンでもないのに私達のアリスゲームに巻き込まれ…」翠星石も口を揃える。
「本当は彼女だって、戦うことは辛く悲しい。その気持ちを、あの眼帯と一緒にきつく自分の中に封じて押し殺していたのかも
しれないわね」

雪華綺晶が両腕を持ち上げて上で二本の剣を交差させた。一気に薔薇水晶を切り刻もうとしているのだろう。
だがその表情は無感量で、楽しくも嬉しくも悲しくもないといった様子に見える。
薔薇水晶は逃げようとした。だが、恐怖が体から自由を奪っていた…こんな体験は生まれて初めてだった。
彼女は固く目を瞑る。せめて自分が切られる瞬間の光景から逃げるために − 目の当たりにしないために。
そして、まさか私がこんな自分に似たような姿の訳のわからないドールに負けるなんてことが未だに信じられない気持ちでいた。

金属の衝突音が高鳴る。
自分はあの白いドールに切られたのだろうか?薔薇水晶は目開ける。
まず一番そば見えたものは、水晶の剣でも氷の剣でもない、鉄の剣だった。混乱が頭を駆け巡る。なぜここに"水銀燈の剣"が
あって、それがまるで自分を護るように雪華綺晶に二本の剣と拮抗しているのだろうと。
その剣の持ち主へ薔薇水晶はゆっくり視線をずらした。剣の持ち主は第一ドールではなく、真っ赤なドレスの第五ドール、
真紅だった。薔薇水晶の目が見開かれる。「「これは一体どういうことなの…」なのです?」
薔薇水晶の台詞が雪華綺晶とはもった。

255 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:16:32 ID:TuU5GYkV]
真紅は、水銀燈の剣を伸ばして薔薇水晶を切りつけようとする二本の剣から彼女を庇っていた。
その第一ドールの形見である剣は、まだ以前人間を殺したときの返り血の色をまだ少し残している。

一見剣同士がせめぎあっているように見えるのも、これは七体目の幻だ。真紅はそれを理解していた。
雪華綺晶の背後から延びてきた翠星石の世界樹が、彼女の肩と首に絡まりつく。
「…真紅…」薔薇水晶があまり優しいとはいえない目でその真紅を見ると言った。「これはどういうつもりなのですか」
「薔薇水晶、」依然水銀燈の剣を握りしめて雪華綺晶と対抗しつつ真紅がそれに答えた。「あなたの力を借りたいの。お願いするわ…
いまあなたと私達は、敵同士ではないわ。私達はいまあなたと同様にこの雪華綺晶に用がある。そのはずよ」
「何をいってるの?」あまりの予想外の言葉に、薔薇水晶は笑い出しそうになった。「ローゼンメイデンは全て私の敵。あなた達なんて
みんな壊して差し上げることが、お父様のお望みにも応える、私の宿命」
そう言い返す彼女の左目から滴る涙が頬を伝って、紫のドレスまで濡らしつつある。金色の瞳からどうしようもなく流れ出る涙と、
真紅を睨み上げるその顔の表情がどうにも倒錯的だ。
「少なくとも、あなたのそのお父様は、このドールに心を奪われそうになっている。そうなのしょう?」真紅は説得を続ける。「私達も
同じような理由でこのドールには用事があるの。私達をもう一度壊したいならば、まずはこのドールから奪われた人たちの心を
取り戻すのが先では?」
「そんなこと…私一人でもできます…」バカにしないでというような目をする薔薇水晶。
すると、真紅は不適にもふっと笑って見せた。「そう。なら、私達も勝手それに参加させてもらうわ。ただし、思うに、
いまあの七体目を壊したりしたら、あなたののマスター達の心も勿論、あなたの人形師の心も一緒に吹き飛んでしまうわよ。
まずは動きを封じることね」
明らかに自分たちの作戦への参入を誘っているかのような真紅の言葉に甚だ薔薇水晶は憎たらしさを覚えたが、言っていることは
あながち間違っていないと思った。真紅達ならあとで壊してまえばいい。今はあの雪華綺晶という者を第一にどうにかしなければ
ならない。
あのドールの手からお父様を救うために。

「ああうっ!」一方、雪華綺晶は世界樹によって後ろ向きに強く引っ張られ、体を仰け反らせながらまたしても床に転げた。
甲高い奇声をあげながら。しかもそのときわざとらしく両手から剣を手から落とす。
床に伏した雪華綺晶へ、すかさず薔薇水晶が自分の剣を取り戻すと前に乗り出た。その横に真紅も乗り出す。
さらに後ろに翠星石、その翠星石の隣に雛苺が並んだ。全員して雪華綺晶を囲み、睨みつける。
「柴崎のしじいとみっちゃんをどこへやったですか!!」
「みんなを返してなのお!!」
「あなたをこれ以上ジュンには近づけさせないわ」
姉たちの降り注ぐ非難と要求を浴びるなかで雪華綺晶は起き上がり、壊れがちな笑顔を作ると口を開いた。
「4対1ですか?ふふ、1対1でも、何対何でも、私とあなたのアリスゲームは違っているのに」
「いいえ、5対1よ。雪華綺晶」真紅はそれに修正を加えた。「これを見なさい。これは水銀燈の剣。第一ドールもあなたには怒って
いるわ。"マスターを返しなさい"、とね」

すると雪華綺晶は床の上をくるっと一回転廻ると自分を取り囲むドール達を見返した。「全てがここに集ったのですね。
歌と劇の終わるとき(ラスト・アリスゲーム)に − well come to the party,pal!」

256 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:19:03 ID:TuU5GYkV]
128

well come to the party , pal!

さあおいで。

ドール達に取り囲まれた中心で、雪華綺晶は左目の瞳を閉じた。首を垂らし、白い髪もそれに伴って降り下がる。
まるで自分の世界にどっぷり浸って夢見ているかのように、頭を揺れ動かしている。

これだけ沢山のドールにいっせいに狙われておきながら、なんて余裕なんだ。ジュンは思った。
「歌と劇の終わりに」彼女は目を閉じたまま言う。「さあ運命の糸車が速くなる。廻る廻る。速くなっていく…」

雪華綺晶の横に位置していた真紅の顔が強張る。後ろに位置するは翠星石、雛苺。そして正面には薔薇水晶。
その位置合いを目を瞑ったままで、雪華綺晶は完全に把握しているように思えた。そんな異質な気配を七体目は漂わせている。

と、そのとき薔薇水晶の足が動いた。彼女は右手に持つ剣とは別に、左手に数個水晶の髪飾りを取り出す。
次の刹那それに呼応したかのように真紅が動き出した。ほぼ同時にそれに続いて翠星石と雛苺が動ずる。

金色の左目がぱっと開かれた。もろとも片足で飛び跳ねる雪華綺晶。白い茨が体から伸びる。いってしまったような瞳で
遠く彼方を見つめながら、両手を別方向に挙げて歓呼する。「切れる、糸が切れる!」

その雪華綺晶の片足がガラス張りの床に強く着地すると、ガシャンと大きな音をたてて床が割れ、真紅達や薔薇水晶、ジュンの立つ
ところにまで蜘蛛の巣状のヒビが広まった。
その場の全員が瞬く間にそのヒビに巻き込まれる。そして、床がバラバラに砕け散って落ちた。
「うわぁ…!」「きゃあ!」
薔薇水晶も、真紅も、だれ一人雪華綺晶に触れる前に足場を失い、下へと落下していった。雪華綺晶本人もろとも、ジュンや巴までも。
雨あられと降るガラスの木っ端微塵の破片のなかにまみれる姉妹たち。

水晶城の内部を、落ちていく。底へと。

257 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:21:44 ID:TuU5GYkV]
129

ズシンと、落下音が鳴る。
「いたた…」
最初に体を起こしたのは、翠星石だった。
茶色の長髪が視界を覆って邪魔しているので、それを手でどける。すると地面が見えた。
はじめ落ちてきたとき、地面が意外にも柔らかいと思ったが、その謎が解けた。いま自分たちが立っている所は地面ではない。

植物。
そこらじゅう隙間なく埋め尽くされた白い茨の上に立っているのだ。言い換えれば、自分たちは茨同士が大量に絡まりあって
できた足場のようなところに立っていて、歩くにも立っているにも常に茨を踏み続けざるを得ないということだ。
はっきりいって、かなり気味が悪い。

空間そのもの自体は丸っぽい円柱のような形をしている。床は茨まみれだが、壁については分厚い冷たそうな水晶でできていた。
その壁際には四方それぞれに一つずつ、大きな縦長の絵画の額が計4つ飾られている。
だが、その絵画には何も映っていない。

ジュンは真紅に駆け寄っていた。
「真紅、大丈夫か?」
「ええ平気よ」彼女は応えつつ起き上がる。「それより、あなたは自分の心配をしなさい…!七体目はあなたを狙っているのよ」
ジュンは息を呑んだ。いままでただ彼女達のアリスゲームを端から力を分け与えるだけだったが、いまは違う。本格的に自分も
いまアリスゲームの犠牲者として有力な候補となっている。「その七体目はいまどこに…?」
「あそこよ!」真紅は指差した。だが、自分でも驚いているように若干その眼が見開かれている。「あれを見て!」

空間のど真ん中には丘のように突然盛り上がってる所があり、そこに人間サイズの数倍はあるであろう大きさの巨大な白い薔薇
が咲いていた。
その薔薇の花びらの上に雪華綺晶が立っていて、しかもその隣、白薔薇の中心には茨に縛られたまま眠っている柿崎めぐがいる。
「水銀燈のマスターが!あんなところに!」
すると雪華綺晶は真紅に視線を送りながら眠っている柿崎めぐの頬を軽く持つように触ると、ふっと笑みを浮かべた。

「このような子が第一ドールのお姉さまのマスターになることは少し私に遠まわしをさせた。でもそれももう終わり。この子は
いま夢を見ている。永遠に眠り続ける眠り姫の夢を。死ばかりを望んでいた頃は私にとってその心は毒気でした。でもいまはそれも
偽りと嘘によって綺麗になり、私を補うのに相応しい養分となるのです」

彼女がそう言い終えると、ふと遥か上の天井からにょっともう一つの巨大な白い薔薇が下に伸びてきた。それはいま雪華綺晶の
乗っている白薔薇と相するように、上下に向き合う形で止まる。さながら接合部位を向き合わせる二つの脳神経のシナプスだ。
「その子に何をするつもり!?」
「"浄化"です紅薔薇のお姉さま」彼女は横向きになりつつそれに応える。「この子は綺麗になるの。するとそれに適った、
美しい薔薇の花が咲くのです」
上の方からしゅるっと下ってきた数本の蔓が柿崎めぐを絡めとり、吊り上げた。しっかりと強靭に巻きついて、それから彼女を
徐々に持ち上げていく。
直後に、真紅は雪華綺晶のいった浄化というものがろくでもないことを瞬時に理解した。
「いけない!やめなさい!」
なす術もなく柿崎めぐはどんどん上へと蔓に引っ張り上げられ、下向きに構える白い薔薇の中に吸い上げられた。
その薔薇はごっくんとめぐを飲み込んだとばかりに不気味な音を鳴らす。

人間が巨大な薔薇の中に呑まれた。
その恐ろしく気味の悪い光景にジュン、巴、真紅、翠星石、薔薇水晶が息を殺しながら果たしてその柿崎めぐがどこにいって
しまったのか目で追った。
天井に咲く巨大な薔薇より上にのびる、巨大な茎。いまごろ肉食動物に食われた生き物が食管を通っていくように、柿崎めぐも
あの茎の中を昇り詰めていっているに違いない。
その図太いホースのような茎は天井まで伸び…水晶にぶち当たると…

と、天井部に開いた小さな穴の先からメグが現れた。天井に付いていた小さな水晶の容器の中にすっぽり身体が収まってしまう。
さながら天井に吊るされた人間用のカプセルだ。
それを見上げているうち、その水晶のカプセルが他に幾つも天井にあることにジュンは気付いた。
そして、ついに見つけた。
草笛みつ、柴崎元治、…薔薇乙女のマスター達の姿を。一人残らず天井の水晶カプセルの中に収められて眠っている。

258 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:24:24 ID:TuU5GYkV]
その人間の扱いにジュンはX−ファイルや宇宙戦争などに登場するエイリアンの装置を思い出した。
恐らくここが雪華綺晶の持つ世界での心臓部ともいえるところなのだろう。
水晶城は外見は幻想的で美しいが、奥に潜む中身はえげつない。まさに雪華綺晶そのものだ。

真紅はわが目を疑っている様子だった。「マスター達になんてことを…!」

残るは僕と槐だけという訳か。ジュンは心の中で唸った。
その槐を助けるために、薔薇水晶もまた雪華綺晶と戦っている。

とはいえ、彼らを見つけられた以上、他のマスター達だって救う手段はゼロではないのかもしれない。ジュンは思った。
「私から…決して離れないで、ジュン」真紅は言い、手に持った水銀燈の剣をしかと構えなおす。
床は柔らかな茨の集合体のみでできているので、足場が安定しない。その床の茨は恐らく全て上向きに咲く方の白薔薇に繋がっている。

一方柿崎めぐを収めて、また一歩アリスへと近づいた雪華綺晶は次の獲物とばかりの瞳でジュンを見据えた。
それから急にびっくりするような金色の目に変わる。
「起きたままの人間がここへやって来るなんて、それは私の最も願ったことの逆だったのに!」
それはこの実態を目の当たりにした人間がどう考えても七体目に敬遠になるからに違いない。
「ふふ…まあよいでして!」そして彼女は右腕を挙げ、薔薇の花びらの上でまた狂ったように飛び上がった。「だってあなたはもう
ここから逃げられないのですもの!」

ぞっとする戦慄が稲妻のように背筋貫くのをジュンは痛いほどに感じ取った。
逃げられないだって?あたりを見回してみる。確かにそうだ。壁に囲まれて、何処にも逃げる所なんかない。
僕はこのまま水銀燈のマスターと同じように薔薇に呑まれ、あの水晶の中に収められるのか。

「ジュン!怖がらないで。七体目にそんなことさせはしないわ」
足のすくみそうなジュンを見た真紅が勇気付ける。それは真紅自身の勇気付けでもあった。「翠星石や雛苺もついているんですもの。
それに…」
みんなを助けるために意気込んでここまで来たのに自分が情けないが、自分を護ろうとしてくれるドールがいることが今ではジュンは
あまりにも頼もしく、ありがたさを感じた。同時に自分も最悪足を引っ張らないくらいの、出来ることをすべきだとも思った。

一方、雪華綺晶はひとしきりその場で踊り狂ったあとに大きな薔薇の花ひらの上に腰掛けた。真紅を − ジュンを庇うように側に
ついている真紅を上から見つめ、にっこり笑ってみせる。
それから両脚を振り子のようにブランコさせながら、挑発するように投げキスにも近い右手の動作をした。

続いて気付かれないように − それは雪華綺晶の得技でもあるが − 真紅達へと瞳を向けつつその実視線を壁際四方に
各々置かれた四つの絵画へと走らせた。それからこの場の素材たちを数える。真紅翠星石雛苺薔薇水晶それに自身に人間。
場違いなのは一人だけだ。

雪華綺晶は薔薇の花びらから飛び降りた。「紅薔薇に全てのお姉さま、今こそ迎えがやって来ました!もう一つの意識に目覚める境界に −
見えること触れるもの全てが − 新しくなるのです!」
それから軽快な足取りのステップで馴れ馴れしくも雛苺に駆け寄りだす。
そのときの横向きの状態が、顔からはみ出る右目の白薔薇をいやに目立せた。
「いけない、雛苺…!」危険を予感する真紅。
「偽と知っていても、嘘と分かっていても」雪華綺晶は言いながら雛苺の金髪を触る。「迎えに告げられたのなら、もっと素敵な
夢を見れるのに」彼女の身体から伸びる白い茨が、雛苺の目の前を蛇のように通過する。ぎょっと雛苺は目を血走らせた。

そこへ、急遽間に割ってきた真紅が遮った。「雛苺から離れなさい…!そしてみんなのマスター達を開放しなさい!」
驚きの反射神経で、雪華綺晶は真紅の胸倉を手に掴んだ。そのまま真紅に倒れ込むようにして寄りかかる。
真紅の顔に雪華綺晶の顔がぐっと接近する。
その彼女の丸っこい瞳はやはりいってしまっていた。真紅は気圧され、一瞬訳が分からず一緒になって後ろへ数歩ふらついた。
「そう、もっと私に触れて。見つけるのです。ふふ… − いまその手に真に望んだ終わりを!」
白の茨が伸びる。そのまま雪華綺晶は真紅を押し倒してしまうが如くだ。気味の悪くなった真紅は思いっ切り金髪のツインテールを
鞭のようにしならせて彼女を追い払った。「は、はなしなさい!」
金髪にぶたれた雪華綺晶はバランスを崩し、真紅から離れた。そのまま体をよろめきさせながら、今度は翠星石に近寄り始める



259 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:25:59 ID:TuU5GYkV]
雪華綺晶がどんどん狂ったようにこっちに迫ってくる。翠星石はあまりの薄気味悪さに身の毛をよだらせそこから逃げ出した。
「きゃぁぁぁ!来るなです白薔薇くるなですぅ!」
だが、いざ走ろうとすると茨だらけの足場ということもあり、その内一本の茨に足をとられて翠星石はずっこけた。「いぃゃぁっ!」

とそのとき、その雪華綺晶を蹴り出した横から飛んできた影があった。薔薇水晶だ。

「助かった…?」と翠星石。
「翠星石、無事なの…?」真紅と雛苺がすかさず駆け寄ってきた。「ええ…どうも薔薇水晶のおかげで…なんか喰われるかと
思ったほど怖かったですぅ…」
真紅は顔の向きを変えて薔薇水晶を見つめた。転げた雪華綺晶の喉元に自分の剣の先を突きつけている。
どうも七体目には踊ったり、逆さになったり、転げてのたうち廻ったりと奇矯な挙動が多い。
「さっきあの子にマスター達を解放しなさいと説得したのだけれど」真紅は口を開いて仲間の2人に話しだした。「それの返答が
まるで理解不能だったわ。触れて−とか、見つけて−とか…人の話しをまるで聞いてないわ。困ったものね!」
「あんなのとまともに意思伝達できるのはきっとE.Tかダークマター知性体でもない限り不可能ですぅ」
真紅は大きなため息をついた。天井を見上げる。ローゼンメイデンのマスター達ががっちりと閉じ込められてしまった天井の水晶を。
こんなことになってしまうなんて。
「薔薇水晶に続いて…雪華綺晶…七体目が現れたことで、私たちのアリスゲームのルールはもう完全に狂ってしまったのだわ。
いまのこのアリスゲームに、お父様はなにを望んでおられるのというのでしょう…?お父様…」

260 名前:Rozen Maiden Latzt Regieren Z:The Civilization mailto:sage [2007/11/20(火) 01:29:22 ID:TuU5GYkV]
130

喉元に剣を突きつけられた雪華綺晶は動きを止めはしたが、顔に浮かべる笑みを止めはしなかった。
「ふふ…いいのですか?私をここで壊してしまって?」
薔薇水晶はきついで雪華綺晶を見下し、目剣を握る手に力を込める。「私のお父様から手を引きなさい。そうでなければ
どの道あなたを壊すしかないのですから」
「かわいそうな薔薇水晶…」
そう静かに呟き、雪華綺晶は茨まみれの地面に一瞬だけ目を移すとすぐに薔薇水晶の目を見上げなおした。
「かわいそうな薔薇水晶…」もう一度繰り返す。
「手を引くの!?引かないの!?」薔薇水晶は苛立ち始め、口調を突然荒げた。呼吸が乱れ始める。
剣先が動き雪華綺晶の喉元にヒタと触れた。薔薇水晶は続ける。「これが最後です!!さあどうするの!?」
ほどなくして雪華綺晶に出した答えは、きしくも薔薇水晶の言葉を真似たものだった。「これが最後です」顔が残酷に笑う。

突然、薔薇水晶の足元がガクンと沈んだ。「な…っ!!」床の白い茨が動き出して彼女の脚を絡めとリ、下へ引きずり込もうとしている。
驚いている間もなく付近一帯から無数の茨が取り巻くように伸び、薔薇水晶の両手にも首にも腰にも、これ以上ないほど
絡め取られてたちどころに全身を拘束された。必死にもがいたが、右手から剣もこぼれ落としてしまう。「ああ…いや!」
再び身体がガクンと落ち、腰の辺りまで体が茨の中に沈む。彼女はすると床の茨にしがみついて懸命に抵抗する。「あっ…!」

この茨の床全てが罠だったのか!
その恐るべき光景を目の当たりにして、ジュンは昔に読んだ"ハリー・ポッターと賢者の石"の後半にでてきた、
"悪魔の罠" − 人を絡めとる植物に満たされた落とし穴を思い出した。三面犬を潜り抜けたあとのあの罠だ。
その雪華綺晶バージョンにいま自分が直面しているのか。あの小説と違って、今回は大人しく白い茨に絡められていれば無事で
済むようには無論、思えない。

薔薇乙女たちも自分の立たされた危険すぎる状況に気付いたのか、足元の茨を気にしながら慌てふためいた。
だが床は一面全て白い茨に満たされており、避難できそうなところは何処にもない。

「いやあああああ!!」幼い雛苺は恐怖のあまり絶叫しながら茨の床を走り抜け、水晶の壁にぶち当たると死に物狂いでよじ登ろう
と壁を引っ掻き始めた。当然登れるはずもない。壁は90度で、しかももっと上になるとねずみ返しの構造になっている。
むなしく罠のなかであがく雛苺その姿は、アリ地獄にはまったアリが必死に這い出そうとする姿に似ている、とジュンは思って
しまった。もう僕達は誰一人雪華綺晶のこの罠から逃れられない。

「"For the music is your special friend! Dance on fire as it intends!"」
沈んでいく薔薇水晶を放置して雪華綺晶は立ち上がり、奇妙な英語を口走りながら茨の床の上をスキップする。
床の茨は彼女に従って動くので、やはり雪華綺晶自身を絡めとることはない。

「薔薇水晶…!」自分まで茨に絡められてしまう前に、真紅は下へ引きずり込まれつつある薔薇水晶の元へと駆け寄った。
もう肩近くまで下に沈んでいる。「う…真紅…」薔薇水晶は真紅を睨みつける。「私を笑いにきたの…!」
「私たちもいずれ同じ運命にあるのかもしれない。だから笑えないわ」答え、真紅は薔薇水晶の前に座り込む。「残念だわ。仲間を
一人失ってしまって」ぐいぐい薔薇水晶は下へと引っ張られていく。いまや顔と手だけが茨の外にでている。「あなたは…私の仲間
なんかじゃ…な…い…!」自由の効く顔だけ動かして真紅を噛み付こうとする。「あなたは弱い!お父様はローゼンより、最高の
人形師…!」だが、その槐も雪華綺晶によって心を吸収されつつある。薔薇水晶は泣いた。初めて、左目ではなく右目から
も涙が出た。もう本当にこれでおしまいだ。私も、お父様も。






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