- 172 名前:風と木の名無しさん mailto:sage [2015/02/02(月) 11:21:02.56 ID:ELgkzKXVO]
- それからなんでか帰りには、皆川くんが一人きり。もう姿も見えなくなような、暗い、暗い教室で、机にずっと突っ伏してるんだ。
時々なでたり、なにかを思い出すみたいに。ずーっと一人、吉井くんの席で。 僕はといえば放課後は、教室の水槽の水を替えるんだ。2組の前に水道があるので、時々気付いたり、時々気付かないふりをしたり。 春には二人は、違う高校へ行くんだってさ。 どうするんだろう、二人してそんな、一人で悩んで。 僕がどうこう言えたことじゃあないけどさ、好きなものは、仕方がないじゃないか。 そういえば一度、口止め料か知らないけれど、吉井くんにはココアを奢ってもらったことがあったっけ。 仕方ない、3年5組の小林、僕は暇なんだ。毎日、すごく。 僕は水槽を置いて、2組に向かって話しかけた。 僕の朝は早くて、帰りは遅い。 朝、学校にくると僕はまず、花瓶の水を取り換える。黒板を掃除して、机を並べる。 それから自販機にジュースを買いに行こうと廊下を一人で歩いていると、この頃よく見る。2組の吉井くんと皆川くん。 僕はなんだかうれしくて、気付かれないよう引き返しては遠回りして、自販機にココアを買いに行く。 時々二人が「小林くん、おはよう!」と、ココアをくれることがあるので、なにも言わずに、笑って受け取ることにしている。
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