- 727 名前:すれ違い、仲直り1 mailto:sage [2010/07/27(火) 02:14:16 ID:pDKqOJjz]
- 夕刻、家路につく布美枝の足どりは重かった。
今日は赤羽に住む、姉の暁子の家にお邪魔していた。暁子から呼び出しがあったからだ。 その呼び出しの用件とは…。 「布美ちゃん、貴方、村井さんとは仲良くやっとるの?」 家に上がるなり、暁子は眉をひそめて布美枝の顔を伺った。 「え?ど、どういうこと?」 暁子の質問の意味を理解しかねた布美枝は、ためらいながら訊いた。 「私…見たのよ、昨日。村井さんが、女の人と一緒におるところ」 「え?」 「楽しそうにデパートで買い物しとったのよ。間違いなく村井さんだった」 「…そんな。昨日は…嵐星社に原稿を届けに行っとったのよ」 「それ本当?」 「締め切りが昨日だったけん、間違いないわ」 「でも…片腕の人を見間違うことはないでしょう?私も気になって、しばらく後つけとったし」 「…ど、どげな人?相手の…」 「う…ん、髪はこれくらいで、くるっと巻いとったわ。かっちりしたスーツにハイヒールで、 どこかの大きい会社の秘書さんみたいな。…美人だったわよ」 茂の知り合いで、布美枝が知る限り、その外見だと (加納さん…?) 嵐星社に行っていたことが間違いないのだとしたら、 一緒に居た相手が加納郁子だと考えるのが自然ではないだろうか…。 「暁姉ちゃん、他に男の人は一緒でなかった?背が高くて、さわやかそうな男前の人」 「ううん。しばらく見てたけど、連れの人が居る様子はなかった…」 「…」 もしかしたら、深沢も一緒に居たのかも知れないと思ったが、それも否定された。 布美枝の心の中に、黒い小さなシミがぽつっと浮かんだ。
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