- 506 名前:熱病1 mailto:sage [2010/07/02(金) 12:50:44 ID:B7Tc2K+b]
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「雨に濡れたのがいけんだったですね…」 「んー…」 布団の中で、身の寒さに小さくなって震える茂を見ながら、 布美枝はいたたまれない気持ちでいた。 その日二人で出かけた深大寺で、いたずら好きの妖怪に 雨を降らされて二人は足止めをくった。 雨宿りした狭い手水場で、茂の左側がびしょびしょになってしまったのは 布美枝が濡れないようにしてくれていたからで…。 夜、寒い寒いと言いながら、それでもしっかり夕食をたいらげたので 布美枝はさほど茂の様子をおかしいとは思わなかった。 異変に気づいたのは、片付けがひと段落ついて、 温かいお茶を淹れた湯のみを襖の向こうに持っていったときだった。 かろうじてペンは持っているものの、 ぼーっとして一点を見つめている茂の顔色は真っ青で、 しかし顔の色とは対照的に、身体の熱は異常に高かった。 「よっぽどなら、お医者様を呼びましょうか」 「そげなことはせんでええ…。寝とったら治る…」 「そげなら、卵酒でも作りましょうか」 「…ええ。酒と名のついとるもんは…」 「あ」 「大丈夫だけん。お前も寝ろ…」 頭からかぶった布団の向こうから、茂のくぐもった声。 まだ冬には早かったが、あまりにも震える茂のために 半纏を出してきて布団の上からかけてやった。
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