- 1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [NG NG.net]
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かつて芥川龍之介も「蜘蛛の糸」という Webに溺れた青年と 1本のイエローケーブルを題材にした名作を残したが 我らUNIX屋も次世代に残る長短編を残そうではありませんか 過去の名作文庫(前スレ) IP パケット − はるかなる旅 pc.2ch.net/test/read.cgi/unix/1005373223/ UNIXにまつわる創作、ノンフィクション、 論文を発表するスレッドです リレー作成、解説、批評なんでもあり
- 125 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [NG NG.net]
- >>123流に書き換えて掲載キボンニュ
- 126 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [NG NG.net]
- 老人の言ってたように、その先には、またもやルータが待ち構えていた。
今度の検査官は、若手のインテリ風の男だ。 延々と続く行列を、見事な手さばきで処理している。 「ハイ、次の方。IDは…?じゃあ、向こうですね。行ってらっしゃい。 次の方。どうぞ。」 先ほどの老人に比べると、処理速度はかなり速い。 すぐに俺の番がやってきた。
- 127 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [NG NG.net]
- 「お待たせしました。IDを見せてもらえますか?」
「さっきの爺さんに比べると、えらく手際が良いですね。」 お世辞ではない。事実、彼の動きはとてもスムーズで、ストレスをまるで感じさせないのだ。 見事な動きだった。彼は苦笑いを浮かべながら、 「つい最近配属されたばかりなんですよ。もっとも私も、いつまで現役で居られるか分かりませんけどね。」 俺は自分の耳を疑った。 「どうして?そんなに仕事が出来るのに。」 「この世界は、私たちが考えている以上に寿命が短いですから。(笑)前の前任者は結構長く勤めたみたいですけどね。」 寿命が短いのはパケットの宿命とは分かっていたが、ハードの連中も同じ不安を抱えているらしい。
- 128 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [NG NG.net]
- 「ええっと。あなたの行き先は…。ああ、****.comですね。随分前に、あなたのお仲間が通り過ぎていきましたよ。」
「もしかして、俺が最後かな?」 「さあ、そこまでは分かりかねますが…。おっと失礼。」 さっと彼の腕が伸びた。俺が来た方向と反対側の方向、すなわち会社内に入り込もうとしたパケットを、彼がクイッとつまみ上げた。 鼻をクンクンさせているそいつを彼は、ヒョイと壁に叩きつけた。 目にも止まらぬ早業。俺は改めて思い知った。彼もまた「門番」なのだと。 しかし、彼が一瞬呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。 「許せよ…これも仕事なんだ…。」 彼はすぐに、笑顔を浮かべたが、それはほのかに苦味を帯びていた。
- 129 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [NG NG.net]
- 「はい、確認終了。あなたの行き先は、こちらです。」
検査官は、そういって俺に一枚の紙片を手渡してくれた。 「ここに行って、次の目的地を聞いて下さい。途中、いろんな連中と出会うでしょうが、相手をしない方が良いですよ。 最近は、怪しげな連中も増えましたから。」 「今みたいな連中?」 「ええ。他にもいろいろと。…物騒な世の中になりました。」 ふと検査官は寂しげな表情を浮かべたが、すぐに笑みを取り戻すと、俺の背中を押した。 「さあ、行きなさい。ここで足止めをさせるわけには行きません。あなたにも私にも、お互いの職務があります。 御無事を祈ってますよ。」 俺はこの、どこまでも職務に忠実な検査官に、もう一度会いたいと思った。そのことを正直に伝えると 「そうですね。あなたは見たところ、メールのようですから、おそらくまた会えるでしょう。 お気をつけて。いまなら道も空いています。」 こうして俺はようやく老人のいう「外部」へと足を踏み出した。
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