- 101 名前:808 mailto:sage [2007/03/20(火) 13:08:54 ID:IW2q691V0]
- 10話 「涙の最期」 ナレーション
東京に出てきて、10年目の春が来ていた。 オカンは、すっかりやつれてしまったけど、 抗がん剤治療をやめて、吐き気や痛みはおさまり、 前より少し、調子が良さそうだった。 入院して以来3ヶ月、外出していないオカンを、 おばちゃんに、旅行へ連れて行ってもらうことにした。 その時の眠りは、ボクが今までに経験の無いぐらい 深くて優しい眠りだった。 オカンの最期の願いは、 3人がこうして同じ場所で、眠る事だったのだろう。 ボクの一番大切な人。 たった一人の家族。 ボクの為に、自分の人生を生きてくれた人。 ボクのオカン…。 オカンは死んだ。 その日東京は、突き抜けるような快晴で、 青空がどこまでも広がる中、赤羽の交差点から 真っ赤な東京タワーが、空にはしごをかけていた。 (つづく)
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