- 500 名前:名無しさん@十周年 [2009/11/27(金) 14:10:04 ID:eV5zX2oEO]
- しかしながら、現実に支配してゐるのは国家の原理であり、イデオロギーの終焉はまだ絵空事であつて、むしろ、
技術社会の進展が、技術の自己目的によるオートマティックな一人歩きをはじめる傾向に対抗して、国家は このやうな自己内部の技術社会のオートマティズムを制御するために、イデオロギーを強化せねばならぬ傾向にある。 社会主義インターナショナルは単に多数民族、強力民族が少数民族をみづからの手中にをさめるための口実として 使はれてゐるにすぎない。 まだ国際政治を支配してゐるのは、姑息な力の法則であつて、その法則の上では力を否定するものは、最終的に みづから国家を否定するほかはないのである。平和勢力と称されるものは、日本の国家観の曖昧模糊たる 自信喪失をねらつて、日本自身の国家否定と、暴力否定とを次第次第につなげようと意図してゐる。そこで最終的に 彼らが意図するものは、国家としての日本の崩壊と、無力化と、そこに浸透して共産政権を樹立することに ほかならない。そして共産政権が樹立されたときにはどのやうな国家がはじまるかは自明のことである。 (中略) 一般大衆は、革命政権の樹立が、自分たちの現在守つてゐる生活に、将来どのような時間をかけてどのように 波及してくるかについてほとんど知るところがない。彼らは、現在の目前の問題としては、いつもイデオロギーよりも 秩序を維持することを欲し、ことに経済的繁栄の結果として得られた現状維持の思想は、一人一人の心の中に 浸み込んで、自分の家族、自分の家を守るためならば、どのようなイデオロギーも当面は容認する、といふ方向に 向つてゐる。そして、秩序自体の変質がどういふ変化を自分たちにおよぼすか、といふ未来図を彼らの心から 要求することは、ほとんど不可能である。人々はつねられなければ痛さを感じないものである。 もし革命勢力、ないし容共政権が成立した場合、たとへたつた一人の容共的な閣僚が入つても、もしこれが 警察権力に手をおよぼすことができれば、たちまち警察署長以下の中堅下級幹部の首のすげかへを徐々に始め、 あるひは若い警官の中に細胞をひそませ、警察を内部から崩壊させるであらう。 三島由紀夫 「反革命宣言」より
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