- 137 名前：文責・名無しさん mailto:sage [2021/03/10(水) 06:01:29.87 ID:BVGUYWl10.net]
- 産経抄 ３月１０日
世界で一番高価な液体は、プリンターのインクだ、と聞いたことがある。かつてフランスの首相クレマンソーは「石油は血の一滴」という言葉を生んだ。第一次世界大戦中ドイツの猛攻のなか、米国大統領ウィルソンに電報で石油の重要性を訴え、支援を求めた。
▼もっとも今や、一滴たりとも無駄にできない液体といえば、新型コロナウイルスのワクチンにとどめを刺す。その貴重なワクチンをあやうく大量に廃棄するところだった。
▼先月から医療従事者に先行接種されている米製薬大手のファイザー社製のワクチンは、１瓶あたり６回接種できるという触れ込みだった。直前になって特殊な注射器でないと内部に薬剤が残り、５回分しか取れないことがわかった。
▼政府がファイザーと契約している７２００万人分のうち、１０００万人分以上が台無しになる計算である。大失態の政府は急遽（きゅうきょ）、国内の医療機器メーカーに特殊な注射器の大幅増産を要請した。ところが８日になって、京都府の病院が７回に増やせると発表したから驚いた。
▼糖尿病患者に使われるインスリン用の注射器が、特殊な注射器以上の威力を発揮することがわかった。ワクチンは日本ではなじみの薄い筋肉注射で行われる。インスリン用の注射器は皮下注射で使われ、針の長さが筋肉注射の注射器の半分程度しかない。ただし日本人は欧米人に比べて皮下脂肪が薄いから、インスリン用でも筋肉注射が可能だというのだ。まさに目からウロコの解決策である。
▼新型コロナの感染者や死者が、欧米に比べて日本を含む東アジアで少ないのはなぜか。京都大の山中伸弥教授がいう「ファクターＸ」はまだ特定できていない。とりあえず、薄い皮下脂肪に感謝しておこう。
|
 |
