- 276 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2006/07/21(金) 03:04:41 ID:???0]
- しかし確実にその現場へと向かっているようだった。
「呼ばれてるみたい…」 つぶやくアカネをユウジロウは無視した。 森を抜け山を下り、街で空腹を満たし、やがて日本海がちらちらと 見え始めた。真夏の太陽に照らされて波頭が白く輝いている。 ふいに、軽自動車が止まった。あの場所。 近藤ユタカがクルマを止めた、あの場所だった。 砂浜もなく、人もいず、あるのは絶壁と、荒れた地面だ。 眼下に海がある。 断崖のギリギリまでユウジロウは進んで遥か水平線に目をやった。 言うか言うまいかアカネは迷っていた。 間違いなく自分はここで人を殺した。しかも二人。一人を蘇らせる 為に、二つの命を地獄の釜に突き落としたのだ。 「お兄ちゃん、ここね…」 「知ってるよ。でも、もう何も、ない」 崖から下に金属の階段が下りていた。潮風にやられたのか所々 穴が空いたり溶接が剥がれたりして、少し怖い。 つづく
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