- 342 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 [2009/06/02(火) 17:53:07 ID:EnA/97HE0]
- 「哲子様っお願い!この通りだっ」ガバッと目の前で土下座する小柄な中年男性は私の父親だ。
所は高田馬場のブルセラショップ。 時間はマジで遅刻する午前八時五秒前。 皆さん朝です!おはようございます。 場所は不健全、シチュエーションはミステリアス、ただ時間だけが健全。 お日様も昇って今日も良い天気になりそーだっ。 だって今日私、入学式ですからっ! 私の名前は哲子。 今日から深川高校に通う女子高生。 偉い人は言いました。花の命は短い恋せよ乙女と。 私もこれから始まる高校生活に心をときめかせましたよ、昔は。 元々うちは私が生まれた時からブルセラショップを生業としていました。 そんな訳で物心つくまで、別段何とも思ってなかった訳ですよ。 それが普通なんだと。 父からの英才教育をそれはもう、ボクシング三兄弟みたいな感じで、施されちゃいましたから。 転機が訪れるのは、小学校に上がってから。 露骨にお友達にこう言われましたからね。 「お母さんに、ブルセラショップの子とは遊んじゃいけないって言われた!」 私の子供心をブレイクするにはその一言で十分でした。。 家に帰って私はママに泣きながら聞いたんだ。 「ブルセラショップの子と遊んじゃいけないって言われた」 ママは「仕方がないわね」と 私の頭を撫でて慰めてくれたけどー、勿論、その時ママはセーラー服姿です。 私が中学に上がると、次の転機が訪れます。 うちの店は、勿論買取もやってましたが、メインは自主制作で、 つまりママがうちのブルセラショップ『ブルマオフ』の看板娘だった訳です。 需要があるので私も幼い時から、手伝ってましたけど。 それが、私が中学生になった時に均衡が崩れてしまうのです。 つまり、私の売り上げがママのそれを上回ってしまったと……。 「ママさんショーック」くらくらくらり。 人気商売ってのは、全くもって残酷なものですね。 娘の私に負けたママは、笑顔で娘の成長を祝福してくれたくれたものの、 翌日、 『探さないで ママ』と書き置きを残して失踪したのでしたー。 それ以降、今日までの約三年間は、父と娘の二人三脚で店を切り盛りしてきましたが、 都知事によるブルセラ弾圧と、顧客のリストラとのダブルパンチで、 ブルマオフの経営は火の車、閉店寸前まで追い込まれていたのでした。 そこで、父さんが私に提案したのは。 「すまんが哲子、高校で友達を百人作ってくれ。そして、制服を売ってもらうんだ、いいな?」 私だって、ちゃんと抵抗をね、したんだよ? 「高校デビューなのよ。やっと、同じ中学から行く人もいない。人間関係リセットできるのにぃ。電車通学だし、うちの商売隠し通せるまたとない機会よ」 私の力説は続く 「初めて友達が出来るかもなのに、作っても制服を売ってよって聞かなくちゃ〜なんて。あんまりだよ、父ちゃん!!」 私は泣きながらダッシュして店を飛び出した! 二日後、お腹を空かして、私が店に帰った時には、ある程度自分の中で納得済みでした。 だって、私をここまで育ててくれたのはブルセラなんだもん。 勿論、幼少の折より、私だって協力してきたけど。 だから、決して私はブルセラを嫌いじゃない。 血は争えないってやつ? それに、いくら都立高校と言っても、学費は納めないとならない。 お金が必要。 今日日高校くらいは卒業しておきたい。 とてつもない大きな溜息を連発したけど、そうして私はブルセラショップに帰ってきたのでした。 店内に居たお客に愛想を振りまきつつ、そそくさと私はカウンター奥の居住スペースに戻ったのだ。
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