- 359 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 mailto:sage [2009/01/27(火) 08:32:46 ID:uOO09aqS0]
- 「お……おねがい、です…マスター、もう……ぶたないで…ください」
散らかり放題の薄暗い部屋に転がされたミクが、息も絶え絶えに呟く。 その身体は傷だらけだった。 口のなかはズタズタに切れ、唇の端から赤い鮮血が滴っている。 頬や目は腫れ上がり、赤くなるどころか青くなってさえいる。 おまけにそのか細い華奢な両腕は後ろ手に縛られ、 身動きひとつ取れないまま床に転がされていた。 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……ミクが悪い子でした、 悪いのはぜんぶ、ミクです……だから、もう、ぶたないでください……」 満身創痍の身体を微かによじらせ、ミクは弱々しく主張した。 けれど、彼女のマスターは、そんなミクの姿を見ても憐れみの情一つ湧かないようであった。 「人に謝るときはごめんなさいじゃなくて、すみませんだろうがぁ!」 「ひ、ぐぅ……っ」 脇腹に男の爪先がめり込む。鈍い音が響き、ミクが呻いた。 男はそれでも怯むことなく、しゃがみこむとミクの髪を掴んで、 怯え、震え、顔をそむけようとするミクの傷だらけの顔を覗きこんだ。 「あぅ、すみません、すみません、すみません、すみませ……」 「すみませんすみません、ってよ、お前、どんな悪いことしたわけ?」 「悪いのはミクです、悪いのはミクです、悪いのはミクです……」 「だからその悪いミクが何やったのかって聞いてんだろうがぁっ!!」 「ひゃうっ!!」 ミクの「マスター」である男が、ミクの腫れ上がった左頬を思い切り平手打ちした。 先程の爪先蹴りとは対照的に、大きく鋭い音が部屋中に響き渡った。 「なぁ、ミク……テメーもさ、馬鹿じゃねぇんだろ? んじゃよ、何で自分が怒られてんのかさ、説明してみ?あ?」 「……」 「もしもーし?日本語分かる?黙ってちゃ分かんないよ?」 「……み、ミクが……マスターが、お金をはらってミクを買ってくれたのに…… ぜんぜん何も出来なくて……ひぐっ、歌もうまく歌えなくて……だから……ぐぅっ!?」 ミクの言葉は途中で遮られた。 男がその哀れなミクの小さな顔面に向けて、思い切りストレートを放ったからだった。 音を立てて再び床に倒れこむミク。 床を染めるミクの、鮮血。 「分かってんじゃねぇかよ!!じゃ何で直さねんだよ!!ああ!?」 「ごめんなさい、あううっ、ごめんなさ……ひぐっ、えぐ、ううっ…!」 「テメーマジでふざけんじゃねぇぞコラ!分かってんのかよ!?」 「あああああああああああああああっ!!」 薄暗い六畳半の部屋で展開される地獄絵図。 その光景を知るものは、ミクとその「マスター」だけのはずであった。 しかし、その光景を覗き見ているものがいた。 その少年もまた、涙を流し、血が溢れるほどに拳を握り締め、 その地獄絵図をただ黙って見つめていた。
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