- 575 名前:氏名黙秘 mailto:sage [2009/04/08(水) 20:08:15 ID:???]
- zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090406-00000001-aera-soci
その日は朝から、電話も鳴らなかった。四つの机と接客スペースからなる小さなオフィスは、 いつも以上に静かだった。 「いったん、事務所を閉めようと思うんだ」 司法書士のケンジさん(30)が切り出すと、事務所を共有する会社経営者の友人もうなずいた。 苦しい状況は、お互いにわかっていた。 20代の頃、ケンジさんはとにかく稼げるようになりたかった。大学時代はトラックの運転手や カード会社のアルバイトをし、月収が50万円近くあった。それをネタに就職活動を行うと、 都市銀行から内定を得た。 任される客や配属される支店を見れば、自分の評価がわかる。上司にも取引先にも可愛がられたが、 入社して2年した頃、迷いが生まれた。このまま会社に与えられたレールの上を歩いていて、 いいのだろうか? 何か新しいことをやりたいと思ったとき、司法書士に興味を抱いた。昔から、思い立つと止められない。 周囲の反対を押し切り、2年2カ月で退職した。 予備校に通い、毎日10時間以上勉強した。馴れ合いになるのが嫌だから、予備校では友達も 作らなかった。一服の時間がもったいないからたばこもやめた。それでも、合格率3%の難関資格は 甘くない。27歳で2度目の試験に落ちたとき、銀行の一般職として働く同じ年の恋人にこう言われた。 「あんたのせいで私の人生めちゃめちゃよ」 結婚を焦る彼女に泣かれ、フラれた。 29歳のとき、4度目の挑戦でついに合格、これですべてがうまくいくと思った。 だが、本当に大変なのはそこからだ。独立して事務所を構えたものの、当てにしていた銀行時代の 人脈からは仕事がもらえない。交通費をかけて会いに行っても、「無料相談」で終わってしまう。
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