- 67 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 mailto:sage [2008/05/02(金) 18:31:22 ]
- 『カエアンの聖衣』 バリントン・J・ベイリー
“服は人なり”。 このアイデアだけで最後まで突っ走るSF小説。 カエアン製の衣裳は、着た人間に向精神薬のような影響を与え、 さらにその影響を周囲にも及ぼす独創的なスタイル。 その服装の隠された秘密を追い求めるのがメインテーマ。 話としては、『指輪物語』の一つの指輪を巡る展開に似ていました。 ちなみにゴクリみたいな人も出てきますw。 それにしてもこの小説は奇想天外なアイデアを扱っているよう見えますが、 この“服は人なり”は、なかなか含蓄のあるテーマだと思いました。 今から10年前くらいに読んだ『豊かさの精神病理 (岩波新書)』という本の中で、 「ブランド物で個性に自信」などのファッション雑誌の決まり文句が紹介されてました。 当時は、自分が高度消費社会を生きているという自覚が無かったので、 ブランド物や雑誌のマニュアルで強化される“個性”って何だよ(笑)、 と無責任に嘲笑っていました。 でも世間で普通に「勝負服」、「勝負パンツ」という言葉が流布されているように、 カエアン的な発想が、普通に我々を蝕んでいる現実も無視できないんだよなぁ……。 小ネタで言えば、日本人の末裔も出てきます。 宇宙空間に適応化したサイボーグや、“ヤクーサ・ボンズ”としてw。 70年~80年代のSF小説に有りがちな変な日本人ですねw。 あとは、小説冒頭の可聴下音(インフラサウンド)に支配された惑星のネタも面白かった。 評価:8点
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